以前Uberでサイト・リライアビリティ・エンジニアを務めていたSusan Fowlerは、本日(米国時間2月20日)公開したブログポストの中で、セクハラの蔓延や人材管理上の怠慢について同社を非難した。
今回の事件を含め、Uberの企業文化に深刻な問題があることを示唆する出来事は、これまでに複数件発生している。
Fowlerは、トレーニング修了後の初出勤日に、上司から社内チャットを通じて性的な関係を迫られた。彼女は即座にメッセージ画面のスクリーンショットを撮り、Uberの人事部にその画像を送った。通常であればこのような問題はすぐに解決できるはずだが、Fowlerはその後もセクハラ行為が続き、彼女の昇進も妨げられてしまったと記している。
「上層部は、セクハラ行為に及んだ上司は『パフォーマンスが良い』ため、恐らく悪気はなかったであろうミスを理由に彼を罰したくないと私に言いました」とFowlerはブログポストの中で説明する。
この段階で、彼女は同じチームに残って「低い人事評価」を受け入れるか、他のチームに異動するかという選択肢を与えられたとFowlerは言う。
「そして私は(1)2度と上司と顔を合わせなくて良いように他のチームに移るか(2)同じチームに残るかという2択を迫られました。さらに上層部は、ふたつめの選択肢を選んだ場合、上司は私に低い人事評価をつける可能性が高いが、自分たちはそれに関して何もできることがないと言い放ったんです」とFowlerは付け加える。
彼女は自分にもっとも適性があると感じていたポジションを離れたくなかったが、結局他のチームへ異動することにした。そして新しい仕事にも慣れてきた頃、彼女がよく話していた女性の同僚から、人事部の怠慢に関してFowlerのケースと似たような話を聞き、さらにその同僚も同じ上司からセクハラ被害にあっていたという信じられない話を耳にしたのだ。そこで彼女は何人もの同僚を引き連れ、人事部に対してセクハラ行為が蔓延していることを再度伝えることにした。しかしFowlerによれば、Uberは同上司のセクハラ行為については、1度しか報告を受けていないと言い張ったという。
社内政治の混乱が続く中、Fowlerは転部希望を提出したが、それが受け入れられることはなかった。良好なパフォーマンスを残していた彼女は、転部希望が却下された理由を理解できないでいた。
「担当者からは『仕事はパフォーマンスが全てではなく、ときに仕事以外のことやプライベートなことも仕事に関係してくる』と言われました」とFowlerのブログポストには書かれている。
最終的に、彼女は次の人事評価まで同じ仕事を続けることにした。しかし2回目の異動希望も通らず、彼女の「人事評価は修正され」た上、Fowlerには「上向きのキャリアパスを描こうとしている兆候が」見られないという評価までなされ、彼女のフラストレーションが解消されることはなかった。結果的に彼女は、Uberが成績優秀な社員に授与している、スタンフォード大学コンピューターサイエンス学部修士課程の奨学金の選考にも落ちてしまった。
それ以外にも、Fowlerはブログポストの中で、Uber社内には性差別が広がっていると記した上で、金額が高いという理由で女性サイズのジャケットの購入を断った社員の話にも触れている。彼女がどれだけ苦情を申し立てても、人事部は全ての苦情は彼女に関することだとほのめかすだけだった。さらに、それ以上Fowlerが人事部に苦情を届けないよう、彼女に脅しをかける人までいたという。
Fowlerのブログポストに応える形で、Uber CEOのTravis Kalanickは事件の真相究明を約束した。KalanickはAxiosに対する声明の中で、これまでに報告されているような行為と、彼がUberの企業文化のコアにあると考えているものは全く別物だと語っている。
「Susan Fowlerのブログポストをたった今読みました。彼女が体験したという行為は許しがたいもので、Uberが支持している考えや、信じていること全てに反しています。私がこのような話を耳にするのは初めてだったので、新しい人事部長のLiane Hornseyに早急に疑惑の真相を解明するよう指示しました。Uberはあくまで人が働く場であり、Fowlerが被害を受けたとするような行為は言語道断です。セクハラ行為や性差別を助長するような行為をした人、さらにそのような行為を容認するような人は解雇します」
メディア界の大物でUberの取締役も務めるArianna Huffingtonは、本件に関し”独立調査”を行うとツイートし、何か情報を持っている人が連絡をとりやすいよう、自身のメール・アドレスを公開した。
先ほどTravisと話をしました。私はUberの取締役として、Lianeと強力しながら独立調査を今から開始します。
セクハラはシリコンバレー中に蔓延しており、残念なことにそのほとんどは記録さえされていない。Fowlerによる苦情を抑え込もうとしたというUberの動きが本当だとすれば、同社の企業文化は恐ろしいほどひどいものだ。
Uberが企業文化に関してネガティブな注目を浴びたことはこれまでにもあった。しかもその内容は、人間関係に留まらず、ビジネスモデルや競争の激しい交通サービス業界とどのように折り合いをつけるかといったことにまで及ぶ。2014年には、ある幹部(この人物は今もUberに在籍している)が部屋いっぱいのジャーナリストに対して、Uber批判を繰り返している人のオポジションリサーチ(政治的に対立する相手を攻撃するための調査)を行うと発言した。なお糾弾されたジャーナリストの1人は(多くのジャーナリスト同様)、Uberが乗客の安全を真剣に考えていないと批判していた。
実際のところ、乗客の安全や他社との競合に関して、Uberはこれまでにも複数の事件に関わっており、Uberの運営方法が批判されたり、地域によっては営業を禁じているところまである。顧客情報へのアクセスに関するプライバシー侵害で非難されたこともあった(既に解決している問題もあるが、今でも議論にあがるものもある)。
Uberは採用情報を公開していないため、どのくらいの女性エンジニアが同社に在籍しているかはわからないが、Jesse Jacksonは他の事項に優先してこの状況を変えようとしている。しかし、たとえKalanickが事件に加担していなかったとしても、Fowlerの身に起きたことから、Uberは社員の道徳や良識よりもパフォーマンスを優先しているということがわかる。
TechCrunchでは、現在UberとCEOのTravis Kalanickにコメントを求めているので、何か新しい情報が入り次第、本記事をアップデートしていく。
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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter)