ICC KYOTO 2019スタートアップ・カタパルトの優勝は保険適用の夜間診察クリニックのファストドクター

優勝はファストドクター(YouTubeのLIVE中継をキャプチャ)

9月2日~5日かけて京都で開催されているICCサミット KYOTO 2019。9月3日にはスタートアップ企業のピッチイベント「スタートアップ・カタパルト」が開催された。

ICC(Industry Co-Creation)サミットは、B Dash CampIVS(Infinity Ventures Summit)などと同様に、ベンチャーキャピタルや投資家、大企業に向けての重要な露出の機会となるスタートアップの祭典だ。ICCサミットは毎年2回開催されており、2019年は2月18日~21日の福岡に続き、京都は2回目となる。

ICCサミット KYOTO 2019のスタートアップ・カタパルトの本戦出場を決めたスタートアップ企業は以下の15社だ。最終審査で、6位はシルタス、5位はLinc’well、4位はRevComm、2位は2社あり、データグリッドとガラパゴス、1位はファストドクターという順位となった。

RevComm

2017年7月設立。AI搭載型クラウドIP電話「MiiTel」(ミーテル)のサービスを提供する。5月に開始されたB Dash Camp 2019 Spring in Sapporoのピッチコンテスト「Pitch Arena」で優勝を勝ち取ったスタートアップだ。

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With The World

2018年4月設立。モニター通信授業による少人数のディスカッションや交換留学によって、社会問題について世界の学生たちと解決策を提案・実施する機会を創り、次世代のリーダーを育成するサービスを提供する。

ファミワン

2015年6月設立。LINEを利用した妊活コンシェルジュサービス「ファミワン」を提供。チェックシートへ回答することで、必要なアドバイスを受けられるのが特徴。妊活の専門家に病院選びを相談することもできる(初回無料)。

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エナジード

2012年10月設立。中高生向けの学習教材「ENAGEED」を開発・提供。現在、同志社中学校や東京都立高島高等学校などの学校や学習塾で100校以上で実際に使われている。国内だけでなく、フィリピン・ガーナ・ボリビアでも展開。そのほか、企業向け人材育成ツール「ENAGEED for Biz」の開発も手がけている。

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オリジナルライフ

2015年4月設立。結婚準備の情報を集めたポータルサイト「WeddingNews」を運営。結婚式に向けたメイクやネイル、スタイリンのほか、ウェルカムボードや席札のデザイン、人気のウェディングケーキなど結婚式にまつわるさまざまな情報を集約。キャンペーンやクーポンなどのお得情報も掲載する。

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Elaly

2018年5月設立。家具の月額レンタルサービス「AirRoom」を運営。約20ブランドが販売する500〜600品目の家具を月額定額で利用できるサービス。ユーザーはそれらの家具を月額500円から借りることができ、1カ月単位で自由に家具の入れ替えられる。高い料金のものでも月額5000円程度で家具を使うことができる。

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データグリッド

2017年7月設立。GANと呼ばれる技術を活用した「アイドル生成AI」「全身モデル自動生成AI」などを開発・運営。アイドル生成AIでは、実在のアイドルの顔画像を学習させることによって、架空のアイドルの顔画像を自動生成するサービスで注目された。全身モデル自動生成AIの場合は、実在しない人物の全身画像を自動生成可能なので、アパレルや広告などの業界で活用が期待される。

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シルタス

2016年11月設立。スーパーのポイントカードを登録するだけで、購入した食材などの栄養素を解析してくれるサービス「SIRU+」(シルタス)を提供。をリリース。神戸市内のスーパーでの実証実験を経て、今年7月からはダイエーの都内2店舗でもサービスが試験導入されている。

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Linc’well

2018年4月設立。クリニック向けのSaaSを開発・運営。患者の体験向上、およびクリニックの経営管理効率化のためのサービスで、ウェブやLINEを使った診察予約、 事前のウェブ・iPad問診、決済などの機能を備える。電子カルテとの連携なども可能だ。患者・消費者向けオンラインプラットフォームや院内オペレーションを最適化するためのサービスも提供している。

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YACYBER

2015年6月設立。近くの農園や直売所を探せるメディア「YACYBER」を運営。位置情報を利用して、現在位置から10km以内の野菜の直売所を見つけ出せる。同社は、食育やレシピなどの情報を集めたメディア「やさコレ」も立ち上げている。

Eco-Pork

2017年11月設立。モバイル養豚経営支援システム「Porker」を開発・販売。スマートフォンなどのモバイル端末を用いて農場現場で発生するさまざまなデータを現場で入力することで、繁殖や肥育の状況把握から経営分析までを可能にするシステム。2018年9月から提供を開始しており、2019年3月現在で全国20農家、母豚規模で3万5000頭ぶんの農場で稼働中とのこと。同社はTechCrunch Japanが2018年11月に開催した「TechCrunch Tokyo 2018」のピッチイベント「スタートアップバトル」のファイナリストだ。

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ファストドクター

2016年7月設立。夜間・休日に特化した救急往診を手配できるサービス「ファストドクター」を運営。保険適用可能で提携医療機関の医師がユーザーの自宅まで出向いて診察してくれる。対応エリアは東京23区。料金は、成人3割負担の場合で診察料が4950円~、往診にかかる交通費は実費(1000円程度)となる。往診可能時間は、月~金曜は19時~翌6時、土曜は18時~翌6時、日曜は朝6時~翌朝6時。

ギバーテイクオール

2017年2月設立。住宅・不動産業界向けのサービスを開発・運営。2018年2月に、LINEを使って住宅アドバイザーに家づくりについて相談できるサービス「auka」(アウカ)事業を立ち上げ。aukaでは、工務店の選定や住宅ローンを含む資金計画などもサポートしてくれる。

ガラパゴス

2009年3月設立。デザイナー向けAI「AIR Design」を開発・運営。AIを活用することで高品質なクリエイティブが短期間で制作でき、A/Bテスト実施を前提として計画からレポーティングまでワンストップで提供できる。

Tsunagu.AI

2017年4月設立。ウェブサイト開発プロセスをAI化して開発効率を高める「FRONT-END.AI」のクローズドベータ版をリリース。FRONT-END.AIは、複数のディープラーニングのモデルを独自に結合し、フロントエンド開発に特化した学習を行ったAIサービス。ページ全体のデザインカンプとウェブ用素材をアップロードするだけで、HTMLの構造および、デザイン要素の分析・自動でコーディングが可能。

【今週のスタートアップ】フィットネスのユニコーンPelotonの秘密兵器は人材

Startups Weeklyでは、注目のスタートアップやベンチャーキャピタルのニュースをお知らせする。

最新情報

Pelotonは今週S-1書類を提出し、今年中に予定しているIPOに向けて大きく前進した。書類には興味深い情報が満載だった。インターネットに接続するフィットネスバイクを製造し、フィットネスコンテンツをオンデマンド配信する同社は、年間9億ドル以上を売り上げている。まだ利益は上げておらず、営業とマーケティングの出費は増える一方だが、当初は多くの人たちから失敗するだろうと言われて会社にとって印象的な実績だ。

同社は、ハードウェア、メディア、インタラクティブ・ソフトウェア、製品デザイン、ソーシャル・コネクション、アパレル、物流などさまざまな業種を扱っているが、S-1書類によると、Pelotonの未来は人材にかかっているという。バイクやソフトウェアを開発する人材ではなく、同社のデジタルフィットネス・コースを教えている29人のインストラクターのことだ。Ally Love(アリー・ラブ)氏、Alex Toussaint(アレックス・トゥーサン)氏とその他27人の指導者たちは、カルト的な支持者グループを形成し、ファンはPelotonの月額39ドルという高額なコンテンツ使用料を喜んで払い、毎日お気に入りインストラクターの指導を受けている。

「Pelotonを作るためには、市場で最高のインドアバイクを作り、世界最高のインストラクターを集め、すべてを結びつける最先端ソフトウェアを開発する必要があった」とファウンダーでCEOのJohn Foley(ジョン・フォリー)氏がIPO目論見書に書いた。「社会通念に反し、懐疑的な投資家たちが多いなか、Pelotonはすべてをシームレスにつなぎ、実際にジムで受けるクラスのように魅力的な体験を提供するために、垂直的に統合されたプラットフォームを作ろうと決意した」。

Pelotonは最高の人たちを集めることに成功した。問題は、それを続けられるかどうかだ。急成長するフィットネス技術分野のライバルたちは、Pelotonのスターたちを引き抜きにかかるのではないだろうか?

関連記事:フィットネスユニコーンのPelotonIPO申請書類を公開

今週のスタートアップ

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

デジタルガレージと大和証券グループが「DG Lab2号ファンド」を組成、200億円規模を目指す

デジタルガレージと大和証券グループが合弁で設立したDG Daiwa Venturesは8月30日、「DG Lab Fund II E.L.P. Cayman(DG Lab2号ファンド)」を組成したと発表。

現時点で出資参画が確定している企業は、カカクコム、KDDI、三井住友信託銀行、損害保険ジャパン日本興亜を含み、8月末時点で総額100億円超の第一次募集が完了する。2020年3月にはファイナルクローズし、ファンド総額は最終的には200億円程度を想定。DG Daiwa Ventures はDG Lab1号ならびに2号ファンドを合わせ総額約300億円のファンド運用を目指すという。

DG Lab2号ファンドの投資領域は1号ファンドと同様に「ブロックチェーン」、「AI」、「VR/AR」、「セキュリティ」、「バイオヘルス」の5つが主な分野となる。

DG Daiwa VenturesはDG Lab Fundを「従来型のVCには無かった、『投資 × 世界レベルのR&D機能』を組み合わせることで、投資先のインキュベーションを圧倒的に加速する非常にユニークなファンド」と表現している。ポートフォリオにはBlockstreamやGoodpatch、WHILLなどが含まれ、最近では8月21日にIdeinへの出資が明らかとなった。

APIの良質な文書を作るReadMeがログ利用でサービスを高度化

ソフトウェアにAPIがあると、さまざまなツールがお互いにコミュニケーションでき、デベロッパーは自分でコードを書かなくても便利なサービスにアクセスでき、そのソフトウェアをプラットホームとしても運用できるようになる。でも、APIを上手に使うためにはしっかりとしたドキュメンテーション(文書)が必要だ。APIのドキュメンテーションの制作を助けるその名もReadMeが、AccelがリードしY Combinatorが賛助するシリーズAのラウンドで900万ドル(約9530億円)を調達した。同社は、2015年冬季にY Combinatorを受講している。

今日の投資の発表前には、同社は2014年に120万ドルのシード資金を獲得しただけだ。それが今では3000社の有料顧客がいて過去7年黒字という、珍しいほどの好成績を収めている。しかし成功に酔うことのないCEOのGregory Koberger(グレゴリー・コーベルガー)氏は、今後は大型顧客の獲得に努め、より高度な要求にも応じるために今回のラウンドに至った、と控えめに言う。

しかも同社は近年、企業のAPIのログを分析して各種の情況に応じたドキュメンテーションを制作でき、またAPIの使い方がわかると、ユーザーが抱えるいろんな情況のカスタマーサポートにも応じられるようになった。でも、よその会社のAPIログを見るのだからデータのセキュリティが重要だ。今回の資金は主に、その方面に投資される。

コーベルガー氏は「当たり前のように、技術者を増やしサポートやデザイナーも増やす必要がある。しかしそれは何のためかというと、もっと大きな企業を相手にし、そのためにデータのセキュリティを強化するためだ。それを正しくやるためには、お金がたくさん必要だ」と語る。

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画像提供: ReadMe

彼によると、各企業のAPIログを利用できるようになってから、いろんな可能性が一挙に開けた。なぜなら、データが人びとのAPIの使い方を知るための貴重な窓になるからだ。彼は「サーバーのログからいろんなことがわかるから、すごい。誰かがAPIで問題を抱えていたら、ログを見て問題の様相がわかるのでデバッグができる。サポートチームにも、ログから顧客のAPIの使い方に関するいろんなことが分かる」と語る。

今回の投資をリードしたAccelのDan Levine(ダン・レーヴィン)氏によると、APIの成否の鍵を握るのは、良質なドキュメンテーションがあるかないかだ。「APIは技術的な統合を作り出すためにあるだけでなく、そのサービスを軸とするエコシステムを作り、企業間のパートナーシップの強力な糊にもなって、数十億ドルの価値を生み出す。だからReadMeは企業にとって、サービスである以上に戦略だ。クリーンで対話的でデータドリブンなAPIのドキュメンテーションがあれば、デベロッパーはそれで仕事をすることが好きになり、それは100社や1000社のパートナーシップにも値する」とレーヴィン氏。

ReadMeは2014年に創業された。今サンフランシスコのオフィスには社員が22名いるが、今回の投資で当然増えるだろう。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Startup Investor Track、外為法改正のスタートアップへの影響を議論し、有志が声明を発表

国内独立系ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家から構成される Startup Investor Track (SIT)の有志は8月29日、「外為法に関する規制強化に対する表明」を公表。SITはGlobal Brain(グローバル・ブレイン)代表取締役社長の百合本安彦氏が発起人の1人となり今月発足したばかりの団体だ。「世界で戦えるスタートアップを生み出すために、VC業界全体の底上げをするためのノウハウ共有やリレーション構築」を目的としている。

8月27日に東京ミッドタウンで開催されたSITのキックオフイベントでは、米VCのAndreessen Horowitzの動向などについても意見が交わされていたが、特に深く議論されたのが、外為法(外国為替及び外国貿易法)上の事前届出業種の拡大がスタートアップのファイナンスに与える影響についてだ。声明にも書かれているが、SITによると8月31日以降、外国投資家が対内直接投資を行う場合、これまで以上に広い範囲で当局に対して事前の届出を行う必要があるという。

議論の末、スタートアップは「本件で最も影響を受ける主体の1つ」であるため、SITは幅広く内容を把握してほしいと考え、声明を発表するに至ったそうだ。外為法改正に関しては、Coral Capitalも「外為法改正が海外投資家の日本のスタートアップへの投資意欲を削ぐ懸念」という記事を8月22日に投稿している。

以下がSITによる声明の全文だ。

外為法に関する規制強化に対する表明

令和元年5月27日に、外為法に基づく対内直接投資(外国投資家による非上場株式の取得)に関する告示が発表されました。令和元年8月1日から適用されている改正告示には、経過措置が設けられていますが、令和元年8月31日以降に外国投資家が対内直接投資を行う場合、外国投資家は、これまでよりも広い範囲で当局に対して事前の届出を行う必要があります。

事前届出が必要となる特定の業種については、我が国の安全保障の観点から、これまでにも何度か規制対象が拡大されてきましたが、今般の改正告示により、国内の大半のベンチャー企業が関わっている、ソフトウェア開発やインターネットを用いた事業が、事前届出の対象業種に含まれることになりました。

なお、外国投資家の定義には、日本の上場企業が日本法に基づいて組成したファンドだが、当該上場企業の外国人株主比率が50%を超えるものが含まれ、日本のベンチャーキャピタルの多くが、外国投資家に何等か関係する状況になっています。

従来から、外為法は、外国投資家が対内直接投資を行うに際し、当該投資が特定の業種に係る場合に、当局に対する事前の届出を要求しており、我が国の安全保障はじめ重要な国益の維持発展に寄与してきていたと承知しております。

今般の外為法に関する改正告示につきましては、その趣旨として、以下の内容が掲げられています。

「近年、サイバーセキュリティーの確保の重要性が高まっていることなどを踏まえ、安全保障上重要な技術の流出や、我が国の防衛生産・技術基盤の棄損など、我が国の安全保障に重大な影響を及ぼす事態を生じることを適切に防止する観点」

我々は、ベンチャー企業への投資や育成に関わる立場として、我が国の安全保障等への重大な影響を防止するとの法令改正の趣旨に、大いに賛同しております。

他方、我々が支援しているベンチャー企業の大半は、我が国にイノベーションを起こし、我が国経済の将来を活性化し、国益を最大化させるとの大志を抱きながら、運転資金が途切れ、事業を閉鎖せざるを得ないリスクを常に抱えています。そのため、ベンチャー企業に対する資金提供者から迅速な投資意思決定を引き出し、運転資金を確保することが死活的に重要となっています。

我々ベンチャー投資に携わる者どもとしても、こうした適時的確な投資を行うことが、日本の国益の増進に適うものと確信し、活動を進めてきております。

しかしながら、今般の外為法に関する改正告示に基づいて事前届を要する業種が拡大したことにより、これまで事前届を要さず適時迅速な投資ができていたベンチャー企業に対しても、事前届が必要となり、期間短縮への配慮があるとは承知しつつも事前届の受理日から原則30日間は投資実行が禁止されることとなりました。

これにより、未来のイノベーションをけん引し、日本の国益を増進する主体の一つとなりうる有望なベンチャー企業が、適時迅速な資金調達ができなくなり、倒産の憂き目にあうケースが出てくる可能性が懸念されています。

実際に、我々ベンチャーキャピタルや個人投資家として、法令諸規則にしたがい8月以前から準備を進めてきたものの、実際の投資の機会が間近に迫った中で対応を行おうとすると、どうしても申請後から承諾受領までの期間が迅速性を損うことが、現実に起こりうるとの認識を強くしつつあります。

我々ベンチャー投資に関わる者どもとしては、今般の外為法に関する改正告示の趣旨に完全に立脚しながらも、同時にイノベーション促進による社会課題解決や経済の活性化といった国益の増進が図られるよう、改正告示の運用上の工夫等がなされることにより、適時かつ迅速な国内ベンチャー企業への投資が引き続き実現されるよう、強く期待しております。

先日開催したSITにおいても、本件議論がなされ、その際に、上記懸念と期待が示されたことを踏まえて、今回有志により本件表明をするに至ったものでございます。

国内独立系ベンチャーキャピタル・エンジェル投資家から構成される
Startup Investor Track (SIT) 有志

「Ready, Set, Raise」は女性起業家のためのY Combinator

今年Y Combinator(ワイ・コンビネーター)この夏バッチに参加したスタートアップの4分の1に女性の起業家がいた。PitchBookによると、2019年に米国で、女性起業家が1人以上いる会社が獲得したベンチャー資金が全体の約11%に過ぎないことを考えると、悪くない数字だ。起業家が女性のみの会社が獲得した資金はわずか3%だった。

しかし、まだまだ改善の余地はある。

こうした資金格差を埋めるべく、いくつかの女性起業家向けに考えられたプログラムは、事前に助言を与え育てることで、ベンチャーキャピタリストを印象づけようとしている。「Ready, Set, Raise」は、女性のための女性によるアクセラレーターで、女性やノンバイナリー(女性でも男性でもない第三の性別)の起業家がさらに多くの資金を調達したり、少なくとも投資家との関係を構築したりするのを手助けするプログラムだ。

シアトル拠点の起業家と投資家のネットワーク「Female Founders Alliance」(FFA)が作ったアクセラレータープログラムは、第2回目のバッチに参加したスタートアップを発表した。セックステックポッドキャスター向けのAIベースツール、工事現場や工場で働く女性向けに作られた作業服などさまざまなビジネスがある。

Ready, Set, Raiseは、Microsoft for Startupと提携して、起業家に12万ドル(約1300万円)のAzureクレジットを提供するとともに、米国レドモンド拠点のソフトウェアの巨人の幹部が技術、ビジネスに関してアドバイスをする。他のパートナーには、Brex、Cartaという、いずれも豊富な資金を調達した会社がいて、スタートアップの財務、企業評価、資金調達条件など関して幹部が起業家に助言する計画だ。

「FFAとMicrosoftは、女性やノンバイナリーの起業家に与えられた機会はまだまだ少ないことを認識している」とMicrosoft for StartupsのマネージングディレクターであるIan Bergman(イワン・ベルイマン)氏が声明に書いた。「VC世界が必要としているこうした変化を協力して推進することを楽しみにしている」。

FFAの創業者/CEOで2017年に組織を立ち上げたLeslie Feinzaig(レスリー・フェインザイグ)氏は、起業家とベンチャーキャピタルの多様化について率直に語る擁護派であり、親でもある起業家たちに自覚とリソースを与える。

「私の資金調達の経験は、自分が女であり、新米ママでもはあっことによるところが大きい」と、かつて教育技術のスタートアップを創業したフェインザイグ氏がSeattle Business Magazineで語った。「1年後、投げ出す寸前だった。それでも私はFacebookグループを立ち上げ、知っている起業家やテクノロジー系スタートアップのリーダーたちを呼び寄せた。それこそが私の必要としていたグループで、私のつらい経験をよく理解してくれる人たちが集まっていた。そうやってFemale Founders Allianceは生まれた」。

RSR Cohort 2 Twitter

Ready, Set, Raiseは、6週間のプログラム期間中参加企業に児童保育を提供する。企業は10月16日に行われるデモデーを目指して、経験あるコーチ陣から1対1で訓練を受ける。

Ready Set, Raiseの第2バッチのスタートアップは以下のとおり。

  • Echo EchoAIベースのポッドキャスター向けツール
  • Give InKind生涯の主要なイベントを支援する
  • Honistly自動車の保証期間を延長をして短期の出費を抑える
  • Juicebox Itチャットボットを使って性生活のアドバイスを行う
  • Panty DropXS~6XLサイズまでの女性用下着通販
  • >The Labzクリエイティブコンテンツ開発をリアルタイムで保護、記録するプラットフォーム
  • Tougher機能的で着心地のよい女性熟練工向け作業着の販売

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

京急がアクセラレータープログラムのデモデイ開催、社長賞は手荷物預かりサービスのecbo

京浜急行電鉄は8月27日、ベンチャーキャピタルのサムライインキュベートと共同で開催中のスタートアップ支援の取り組み「KEIKYU ACCELERATOR PROGRAM」(京急アクセラレータープログラム)のデモデイ(成果発表会)を東京・品川で開催した。

今回は同プログラム第2期のデモデイとなり、手荷物預かりサービス「ecbo cloak」を運営するecbo、タクシーの相乗りのマッチングサービスを運営するNearMe、傘シェアサービス「アイカサ」を運営するNature Innovation Group、AIチャットボットを活用したホテルのカスタマーサポート支援サービスを提供するtripla、ヘリコプターのライドシェアサービス「CodeShare」などを展開するAirXの5社が採択企業として登壇した。

審査の結果、社長賞にecbo、オーディエンス賞にNearMeが輝いた。

ecbo cloak(ecbo)
ecbo cloakはコインロッカー難民を救済するサービスで、駅構内やカフェなどの特設スペースに荷物を預けられるのが特徴。京急との実証実験では、品川駅に設置されているコインロッカー数の50倍の荷物を預かることに成功。羽田空港にあるTIS(外国人観光案内所)での認知向上にも力を入れており、TICでecboのサービスを知って実際に利用する訪日観光客が増えているそうだ。今後は、羽田のTICから品川TIC、ecbo加盟店へのデリバリーなどを計画。最終的には、京急沿線すべてに配送可能なデリバリーサービスを提供を目指す。

nearMe.(nearMe)
NearMeは、同じ方向にタクシーで移動する人々をマッチングして、1人で利用するよりも実質的に安価なタクシー料金を実現するサービス。京急とは8月21日~8月27日に、品川、高輪、東銀座、秋葉原にある東急EXホテルから、羽田空港や都区内(中央区、港区、千代田区)の任意の場所に行ける相乗りのオンデマンドシャトル運行の実証実験を行った。今後は京急沿線と地域を繋ぐシャトルバスの実証実験も検討している。

アイカサ(Nature Innovation Group)
Nature Innovation Groupでは今回のプログラムの採択により、沿線11カ所にアイカサスポットを設置したほか、品川駅高輪口にある商業施設、ウィング高輪のB1Fにある京急ストア限定のクーポンとアイカサの連携、京急プレミアムポイントとの連携、京急オリジナルデザイン傘の製造などを実現。実証実験を行った7月は、品川エリアでの利用回数が同月の渋谷の133%という好成績を収めたそうだ。利用時間は10時間以下が60%、1時間以下の利用が17%という結果が得られたほか、品川エリアから駅前のSHINAGAWA GOOSまでの3分程度の利用もあったそうだ。渋谷はアイカサのサービス開始当時のサービスエリアで利用者も多く認知度も高いはずだが、京急との実証実験がそれを上回ったかたちだ。

tripla(tripla)
AIチャットボットを活用した多言語対応の宿泊予約サービス。ホテルのウェブサイトに予約機能を実装することで、オペレーションコストの削減を実現する。京急との実証実験では、京急EXの浜松町・大門前、品川・新馬場駅北口にtriplaを導入。導入後は予約件数が月あたり300件増、予約コンバージョンは業界平均が2.2%のところ、大門が3.8%増、新馬場が8.6%増になったとのこと。

SKY RESORT MIURA(AirX)
ヘリコプターのライドシェアサービスを提供。京急の実証実験では、三浦半島のコンテンツの充実や交通課題の解決をテーマとして新木場から三浦半島へのヘリコプター移動を計画。今後は三浦半島と都心部の新たな移動プラットフォームを開発していくという。

京急の取締役社長代表取締役を務める原田一之氏は、今回のデモデイについて「第1期からの成果が継続しており、どこも素晴らしいサービス」と言及したうえで、「ecboは京急沿線で3000件のスポットを開発し、荷物を携行しての移動を本気で少なくしていこうという取り組みを進めている。TISを活用して訪日観光客に積極的にecboを推進している点も評価した」と社長賞の評価ポイントを話した。

「京急を大企業だとは思っていないが、今回のスタートアップ企業の皆さんと一緒に事業開発した際に感じたのはやはりスピード感の違い」と原田氏。「今後も我々にもっと刺激を与えてほしい」と締めくくった。

約50億円のVCファンドがクロアチアのスタートアップシーンを加速

これまでクロアチアはスタートアップが盛んな国とは見られていなかった。近年で最も有名なテック企業はおそらく、首都ザグレブのスタートアップでポルシェのライバルになりそうな電動スーパーカーを作ったRimac Automobili(リマック・アウトモビリ)だろう。しかし東ヨーロッパの多くの国がそうであるように、クロアチアの技術力は高い。東ヨーロッパ諸国には、ソビエトがあった時代から長く続く工学と科学の豊かな遺産がある。

自国のVCファンドであるFil Rouge Capital(フィル・ルージュ・キャピタル)が登場して、クロアチアは成長しようとしている。同ファンドは若い起業家、スタートアップ、スケールアップ企業に投資し、クロアチアに起業のエコシステムを確立する計画だ。

Fil Rouge Capitalは先月の時点で完全に運営を始めており、すでに4200万ユーロ(約49億7000万円)以上の資金提供のコミットメントを受けている。投資家がクロアチアでのスタートアップエコノミーの成長に強い関心を持っていることの現れだ。

同ファンドのStevica Kuharski(ステヴィッツァ・クハースキ)氏は次のように語る。「スタートアップにはチャンスが必要だ。Fil Rouge Capitalは、まさにそのチャンスをクロアチアにもたらす。最も初期、初期、成長期にあるスタートアップの創業者にメンタリングと資金を提供する。Fil Rougeは、ソフトウェア、フィンテック、マーケットプレイス、製造、ハードウェア、IoT、ロジスティクスなどさまざまな分野に投資する予定だ」。

Fil Rouge Capitalは2023年末までの4年半の運営を目指し、クロアチアで事業に取り組む最大250社に対し、最も初期段階の企業を対象とする「スタートアップスクール」、すでに稼働している初期の企業を対象とする「アクセラレータープログラム」、そして最大150万ユーロ(約1億8000万円)の本格的な資金調達を目指す企業を対象とするプログラムの、3つのステージを通じて投資をしていく計画だ。

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(翻訳:Kaori Koyama)

ソフトバンクが従業員に新ファンド出資資金2兆円超を融資へ

ソフトバンクは、同社のビジョンファンドに再投資するための資金最大200億ドル(約2兆2000億円)を、CEOの孫正義氏を含む従業員に貸し出す計画だ。Wall Street Journal(WSJ)の最新記事が伝えた。

これは、ソフトバンクグループが全社を挙げてスタートアップ投資に賭ける高リスクで異例な行動だが、先ごろ同社が発表したビジョンファンド2号の目標額1080億ドルの約5分の1を、安定した投資家層から集められる可能性があるのは利点と言えるだろう。

ソフトバンクは先月ビジョンファンド2号の計画を発表し、同社自身が380億ドルを出資するほか、Apple、Microsoftらも参加を約束している。同社は初期のビジョンファンドでも同様のアプローチをとっており、調達金額1000億ドルのうち80億ドルを、融資を受けた従業員による出資で賄っている。

潜在的な見返りは大きい。同ファンドから本物の勝者が生まれて大きなリターンが得られれば、従業員は当初の融資を返済したうえで利益を手にすることができる。

ただし、当然リスクはある。現在の世界経済状況を考えればおさらだ。WSJによると、ビジョンファンド1号が購入したUber株の価値は、ソフトバンクが当初支払った金額を下回っており、ソフトバンクが賭けているWeWorkも、IPO後の投資家の利益は期待できそうにないという。

関連記事:ソフトバンクがマイクロソフトにビジョンファンド2号に参加を呼びかけ

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

新興VCの企業の育て方、知られざるVCの手数料体系を探る

これまで私たちは、新規の投資や新しいスタートアップの資金調達に関する話を数多く伝えてきたが、ベンチャー投資会社のキャッシュフロー問題についてはあまり触れてこなかった。そこを今日から改めよう。

ベンチャー投資会社を新規に立ち上げるのは、非常にハードルの高い挑戦となる。資金調達のための途方もなく膨大な作業だけに留まらない。同じ契約条件のリミテッド・パートナー(LP)を確保するだけで2年かかることもある。さらに新しい投資会社の経済状態は、多くの場合はとても悲惨だ。

ここでひとつ、業界でよく引き合いに出される(とはいえ、それほど一般的ではない)、2&20報酬モデルを採用した、2人のジェネラル・パートナーからなる投資会社が、初めて2000万ドル(約2126億円)のシード投資を行った場合を想定してみよう。この投資会社は年間の管理手数料として2000万ドルの2%である40万ドル(約4250万円)を集め、会社のあらゆる出費をカバーしている。

これには、オフィスの家賃、従業員の給与、法的費用、税金の確定申告や会計に関する費用、さらには出張費用や投資家を喜ばせるための娯楽費も含まれる。そして残ったお金を2人のジェネラル・パートナーで給与として分け合う。会社設立から数年間は、パートナーの年収が5万ドル(約530万円)なんてことも珍しくない。または、まったく無報酬の場合すらある。これは、この業界が超裕福な個人に依存してしまう理由にもなっている。

この業界への参入を目指す若い投資家にとって、これはお寒い状況だ。だからこそ、設立当初の投資会社を自力で成功させようと、経営者たちは管理手数料体系の構築に大いに創造性を発揮せざるを得ない。

関連記事:疑惑のVCマイク・ローテンバーグに米証券取引委員会は3000万ドル以上の支払いを要求(未訳)

このような投資会社の詳しい内情はほとんど口外されないのだが、Mike Rothenberg(マイク・ローテンバーグ)の一件のおかげで、私たちは新興投資会社の実際のデータから資産成長のための料金体系をどのように作っているかを知ることができた。業界の他の人たちとの話では、Rothenberg Venturesが採用していたモデルは、新しいフランチャイズの構築を目指す投資会社にとっては合理的で有効ものだという。

ここで示す分析に使用したデータは、すべてマイク・ローテンバーグに対する米証券取引委員会の訴訟(Case No. 3:18-cv-05080)の一環として、Rothenberg Venturesの評価を行った法廷会計士であるGerald T. Fujimoto(ジェラルド・T・フジモト)の専門家報告書別紙Aから引用している。この書類は2019年7月29日に作成された。この分析はRothenberg Ventureを批判するためではなく、今日の投資会社がどのような仕組みになっているかを示すためのものであるため、TechCrunchはこの法廷会計士の報告書の検証を行っていない。

下の表は、米証券取引委員会のマイク・ローテンバーグに対する訴訟で報告された同投資会社の仕組みを再構成したものだ。Rothenberg Venturesは、連続して4件のベンチャー投資を行い、慣習的な2&20モデルとは大きくかけ離れる手数料体系を用いていた。2&20モデルでは、投資先起業は10年の投資期間中に、2%の年間管理手数料を支払うことになる(投資会社によって体系は異なるものの、10年を超えて延長される場合は、それほど多額の手数料にはならないのが普通だ)。この計算からすると、管理手数料は通常、投資会社の出資約束金の20%となる。

米証券取引委員会によるマイケル・ローテンバーグ訴訟(別紙A)より

2013年
・運用手数料:投資金額の17.75%を一括前払い
・管理手数料:なし
2014年
・運用手数料:2年間の四半期ごとの各投資者の資本拠出の2%、投資契約期間の残り8年間の1年ごとの各投資者の資本拠出の0.5%、10年の投資期間の総計は20%
・管理手数料:なし
2015年
・運用手数料:10年間の投資資金の1.75%、2年ぶんの運用手数料を前払い、10年の投資期間の総計は17.5%
・管理手数料:10年間の投資資金の1%、投資初年に総計10%を支払う
2016年
・運用/管理手数料:各投資者の出資約束金の2.5%を運用手数料と管理手数料として10年の契約期間中に毎年支払う、10年の投資期間の手数料総計は25%

この会社の最初の投資では、ローテンバーグは260万ドルの投資が決定した時点で、時間をかけて少しずつ定期的に手数料から収入を得るのではなく、17.75%の手数料を一括払いさせることにした。それにより、同社には即座に47万ドルが舞い込むことになった。しかし、その後の継続的な手数料は徴収されない。この業界では、これほど多額な前払い金は珍しい。しかし、10年ぶんの投資運用手数料の文字通りの総額を初日に耳を揃えて支払うというのは、さらに珍しい。

LPの観点からすると、この手の手数料体系は同社が最初の投資が決定した時点で即座に追加資金を調達しなければならない状態であったと推察できる。将来のベンチャー投資の手数料は、最初の投資の数年先までの運用コストとして必要だからだ。要するにベンチャー投資家の自助努力とは、こういうものなのだ。

次に、2つ目の投資(2014年)を見てみよう。投資期間中に手数料を分散して受け取る従来の形にやや近づいているが、それでも前払い金に大きく比重が偏っている。合計で投資資金の20%を支払うという典型的な形式ながら、その80%は最初の2年間で支払うことになっている。ここからも、こうした自助努力により同社は、事業継続に必要な追加資金(従って運用手数料)を獲得できたことが暗に示されている。

2015年の投資でも同じパターンが見られる。手数料体系は正常になっているが、より積極的な前払いが要求されている。運用手数料に関しては毎年の支払額は均等になっているが、その手数料の2年分は投資が決定すると同時に支払わなければならない。同じく管理手数料も均等だが、投資初年に全額を支払うことになっている。

そして4つ目の投資(2016年)では、年間2.5%で前払いの決まりはないという、ずっと普通の形式に戻っている。これのどこが重要なのか?この数字が投資会社の運営にどのような意味をもたらすのか、手っ取り早く考えてみよう。

Rothenberg Venturesの推定運用手数料。緑は実際の手数料、オレンジは一般的な手数料(米証券取引委員会によるマイケル・ローテンバーグ訴訟(別紙A)のデータを引用)

見てわかるとおり、運用手数料の前払いは、その他の方法で得られたであろうものよりも、ずっと多くの資金をもたらしている。最初の3年間でおよそ510万ドルにもなる。年間2%の従来方式では120万ドルしか手に入らないところだ。もちろん、この自助努力のための工夫には後年にツケが回ってくる。投資運営のために使えるはずだった資金が目減りしてしまうのだ。

それでも、この前払い方式によって同社は実力よりもずっと高いところで勝負ができた。初年の手数料120万ドル(約1億2800万円)を加えて、実質的に6000万ドル(約64億円)の投資資金を得ることができた。まだ670万ドル(約7億1300万円)しか調達していないにもかかわらずだ。その後の数年間も、さらに積極的な手数料前払いのスケジュールで新たな資金を獲得し、実力を上回る勝負をしている。

もちろん、このようなアプローチには大きな重圧が伴う。一度に全部を賭けるやり方では、将来の資金調達を困難にするかも知れない誤差(連続して投資が失敗するなど)の許容範囲がほとんどない。脱出装置のないロケットのようなものだ。しかし、うまくいけばベンチャー投資界のトップになるまでの時間を劇的に短縮できる。10年早めることもできるだろう。

関連記事:破竹の勢いだったVC投資会社の死(未訳)

結局のところ、ベンチャー投資家は賭けが好きなのだ。それも明らかに自分に賭けることを好む。だからこそ、こうしたキャッシュフローの最適化が新興企業の間に広がっているのだろう。自分の会社が失敗することを想定している人間はいない。それに、このような運用手数料体系は、金のない人間が投資会社を立ち上げるときの数少ないツールのひとつになっている。新しく投資会社を設立した者は、またベンチャー投資業界に飛び込もうと考えているその他の人たちも、未来の資金を担保にして、いま金を使うことのリスクとチャンスの微妙な部分を理解できなければ勝ち目はない。誠実さを保ちストレスを溜めないためでもあるが、証券取引委員会の捜査員や法廷会計士の世話にならないためにも大切だ。

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(翻訳:金井哲夫)

中国最大のQ&Aプラットホームが450億円超を調達

中国で最大のQ&AプラットホームであるZhihu(知乎)が、シリーズFで4億3400万ドルを調達した。これは同社の2011年ローンチ以来最大のラウンドであるだけでなく、中国のインターネット文化およびエンターテインメント企業が調達した額としては過去2年間で最大である。この投資でファイナンシャルアドバイザーを務めたChina Renaissanceがそう言っている。

このシリーズFはビデオとライブストリーミングのアプリを作っているBeijing Kuaishouがリードし、Baiduが参加した。既存投資家であるTencentとCapitalTodayも加わった今回の投資は、主に技術開発と製品開発に使われる。中国のGoogleと呼ばれるBaiduがBloombergに語っているところによると、同社はZhihuのポスト1億件をメインのアプリに加える。

ZhihuはIPOの噂を否定しているが、昨年はCFOを雇用し、リストラを行った。その気は十分にあるようだ。

Zhihuのユーザーは教育水準と収入が比較的高く、また同社はテクノロジーやマーケティング、教育など専門分野のエキスパートを回答者に揃えているという評判だ。QuoraなどそのほかのQ&Aプラットホーム同様Zhihuも基本はユーザーがテキストでポストした質問に答えるという方式だが、ほかにディスカッションフォーラムや、パブリシングプラットホーム、企業がリアルタイムで質問に答えるためのライブのビデオなど多様なQ&A方式を揃えている。そして同社のストリーミングビデオのZhihu Liveはユーザーをエキスパートや企業に限定して、Douyinなどの競合他社と差別化している。DouyinはTikTokのローカルバージョンだが、TikTokの親会社ByteDanceはZhihuに投資している。ただし今回のラウンドには、参加しなかった。

Zhihuウェブページで創業者でCEOのVictor Zhou(ビクター・シュウ)氏は「中国のメディアとインターネット環境の急速な変化に乗り遅れないようにしたい」とコメント。彼によると「これまでの8年間でインターネットは単純な娯楽から生活や仕事上の問題解決の場へと変わってきた。そのため競争の焦点も、トラフィックの量ではなく質へと移っている」とのこと。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ライフタイムベンチャーズが最大10億円規模の2号ファンドを設立

ライフタイムベンチャーズは8月13日、インキュベイトファンド、アフラック・イノベーション・パートナーズ、個人投資家より出資を受けたことを発表。2号ファンドを最大10億円で設立し、デジタルヘルス、インダストリークラウド、クロスボーダー・ジャパン領域へのシード投資を開始した。

ライフタイムベンチャーズは、プレシード/シード特化型ベンチャーキャピタル。代表パートナーの木村亮介氏は、インキュベイトファンドでの4年半の企業支援を経て、2017年1月に同ファンドを設立。1号ファンドでは、Rehab for JAPAN、ウーオ、IMCFなど9社の投資・支援を行ってきた。2号ファンドでは、プレシード・シード期の企業は1社あたり3000万円前後、シリーズA以降の企業にはフォローオン投資を含め1社あたり最大8000万円を投資し、ハンズオン支援を実施するとのこと。具体的には、週次で個別定例ミーティングを実施し、プレシード・シードステージのスタートアップ企業に必要とされる経営戦略の策定から実行支援までを行う。投資分野の詳細は以下のとおり。

デジタルヘルス分野では、ヘルスケアAI、ヘルスケアIoT、デジタル医療機器(SaMD)、医療機関向けSaaS/PaaS、介護事業者向けSaaS/PaaS、ライフサイエンス企業向けSaaS・PaaSなど、デジタルテクノロジーを活用した医療・介護・健康関連サービス全般を対象とする。

インダストリークラウド分野では、電力、物流、製造業、金融、不動産、教育、行政など、特定業界のデジタルトランスフォーメーションに特化したSaaS・PaaSなどのクラウドサービス全般を対象とする。

クロスボーダージャパン分野では、インバウンド宿泊・体験予約、外国人採用・研修、外国人居住・生活支援、越境D2Cコマース、越境決済プラットフォーム、多言語化対応SaaS・PaaSなど、日本を基軸としたインバウンドまたはアウトバウンド関連サービス全般を対象とする。

スタートアップに「クリエイティブ」を投資する専門家集団NEWS設立

投資家によるスタートアップへの関わり方はさまざまだ。資金を出すだけでなく、経営に深く関わって細かく助言を与え、新米起業家には頼れる存在となるケースもあれば、「金は出すが口は出さない。自由にやって、成長してくれればそれでいい」というケースもある。

今日8月7日に設立が発表されたNEWS(ニュース)は、資金、キャッシュではなく、クリエイティブやマーケティングの知見をスタートアップに投資する、クリエイティブスタジオだ。クリエイティブの対価には、現金の代わりにストックオプションを得ることで、将来の成長からリターンを得る「クリエイティブキャピタル」でもある。

クリエイターにとっての「働き方改革」

クリエイティブをスタートアップに投資するという流れは世界的にも見られるものだ。米国のVC、Sequoia Capital(セコイアキャピタル)は2014年に「Sequoia Design Lab(セコイアデザインラボ)」を立ち上げ、デザインやクリエイティブ機能を提供している。またNike+などのプロダクト、サービスデザインを手がけるクリエイティブエージェンシーR/GAは2017年にベンチャーキャピタル機能をサービスに加えており、Verizon Venturesと共同で起業家支援・育成プログラムを実施するなど、資金やクリエイティブ資本、カスタマーリレーションシップを資本としてスタートアップに提供している。

日本でもSkyland VenturesとクリエイティブエージェンシーのPARKが2017年6月に提携し、シード期のスタートアップにコンセプト開発やクリエイティブをサポートする取り組みを行っている例がある。

今回設立が発表されたNEWSは、クリエイティブディレクターとして海外広告賞も多数受賞している梅田哲矢氏、東京を拠点にグローバルに活動するクリエイティブエージェンシーmonopo(モノポ)の代表を務める佐々木芳幸氏、「よるヒルズ」や「リバ邸」などコンセプト型シェアハウス立ち上げに関わり、2014年にビジョン提案型エージェンシーNEWPEACE(ニューピース)を創業した高木新平氏の3人が共同代表として創業。3人ともクリエイティブに携わり、クライアントワークを10年ほど手がけてきた人物だ。

写真左からNEWS共同創業者の高木新平氏、梅田哲矢氏、佐々木芳幸氏

梅田氏は「NEWSは、クリエイターにとってある意味での『働き方改革』を実現するために立ち上げた」という。クライアントワークとして、時間をかけて作品やコンテンツ、映像などをつくる中では「何のためにつくるのか」を考える場面も多い。その多くは大企業が展開する大きな事業で5%、10%をプラスする取り組みだ。梅田氏は「それも意義のないことではないが、世の中を変革したり、企業の価値を10倍にするようなうねりの中で仕事をする方が、クリエイターにとってはずっと楽しい。仕事の意義やメンタルへの影響を考え、やっていることの量より質を取る仕事をすることで、働き方改革を目指したい」と考え、スタートアップに特化したクリエイティブスタジオを構想するようになった。

スタートアップを相手にすることは決めたが、それでビジネスとして成立するのか。梅田氏は1年半ほどかけて検討を重ねた。大企業なら、大きな金額をキャッシュで動かせる。「量より質」のコンセプトをもとにスタートアップ向けのメニューを打ち出して、成長後にリターンを得るというモデルを現実に落とし込むと「収益が上がるのは何年後になるのか?」という課題は出てくる。言うまでもなくキャッシュフローは事業を行う上では大切だ。

梅田氏は、スタートアップと長期的に伴走を行うことを想定して、幅広い分野から参画メンバーをそろえ、「分散型」にすることでクリエイティブ投資を可能にしようと考えた。それぞれの参画メンバーには軸となる収入源があり、それとは別の時間を一部「投資」する形を取る。余剰資金を投資にまわす、というのと似た発想で、余った時間を投資するような感じ、という梅田氏。とはいえ「スタートアップの成長につながるよう、コミットはする」と述べる。

創業に先駆けて梅田氏は、所属する広告代理店の仕事とは別に、副業的に1年間ほど仕事を実際にやってみたそうだ。その結果「10の時間がかかると思っていた仕事でも、5で終わるようにできるものだと分かった」(梅田氏)とのことで、かえって生産性は上がり、余剰時間といえどもコミットは可能と判断したという。

8月の時点で参画するメンバーは、共同代表の3人も含めて11人。コピーライターから編集者、戦略コンサルタント、キュレーターと多様なメンバーが、案件の特性ごとに最適な組み合わせで参加することにより、幅広い対応と効率の両立を図る。

専門家集団が「分散型」でスタートアップに寄り添う

メンバーに本業があって、案件ごとに必要なメンバーだけが「バスケット方式」で参加していくスタイルになる、と聞いて気になったのが、本業でのクライアントとNEWSが手がけるスタートアップとの間で競合関係が生じることはないのか、という点だ。もちろんスタートアップは今までになかった事業にトライしていくものだし、そう簡単には衝突しないとは思うが、疑問を梅田氏にぶつけてみた。梅田氏は「領域でそう重なることはない、ということもそうだが、(自分たちが支援しようとしているシード期のスタートアップでは)規模的にも全く異なるので、おおむね問題にならないだろう」という。

また、スタートアップと既存の取引先の大企業とを引き合わせることで、互いにメリットを生み出す効果も期待できるという。「パイを奪い合うというよりは、大企業とスタートアップとが協調することでWin-Winの関係を築き、全体で大きく伸びようという時代が来ている」(梅田氏)

投資先としてNEWSが対象とするのは、生活を大きく変える可能性を秘める5つのメガトレンドに取り組むスタートアップだ。「自動化」「リアルタイム化」「グローバル化」「キャッシュレス化」「ノーマル化」でディスラプティブに社会や生活を変えるサービスを手がける企業に投資していくという。

クリエイティブスタジオとしてのNEWSの強みは、起業家と同世代の多様なメンバーが、専門家集団としてスタートアップに寄り添う、というところだろう。特に共同代表の佐々木氏、高木氏は、NEWSとは別に創業経験があり、そちらとの連携でスタートアップに提供できることも広がるとの想定がある。

メンバーはコピーライター、編集者、戦略コンサルタント、ビジネスデザイナー、コンテンツプロデューサーと多様。

佐々木氏が2011年に立ち上げたmonopoは、東京を拠点にグローバルで活動するクリエイティブエージェンシーとして、国内外の企業にブランド、UI/UXや広告デザインなどのサービスを提供している。佐々木氏が「南米以外の全世界から集まっている」というmonopoの社員は、30人中4割が外国人。日本から海外への進出、海外企業の日本進出でもサポートを行い、今年はロンドンに子会社も構えたそうだ。

佐々木氏自身はクリエイターとしてというよりは、プロデューサーとして動くことが得意だという。海外から日本進出を目指す企業を内側からクリエイティブで支援する際に、日本法人の株式を持つケースもあるそうだ。こうした活動の中で、クリエイティブと連携した投資ニーズを感じており、方法を考えていたところ、NEWSの構想と出会ったと佐々木氏は話す。

佐々木氏は「日本企業はグローバル化していない。中国・台湾やアジア進出は果たせても、欧米目線でブランドやコミュニケーションを考えたときに、本当にグローバルで展開できるかは疑問」と述べ、monopoで培った世界のクリエイターとのネットワークを通じ、NEWSで「グローバル進出を見据えたブランド戦略も提示できる」としている。梅田氏も「プロダクトのネーミングなど、最初から考えて手を打たないと、後から名称変更するとなるとブランド価値も損なわれたりムダになったりする。今後市場の縮小が予想される日本だけでなく、海外へ出ることを考えれば、起業後、早いうちからプロとタッグを組んだ方がいい」と述べている。

高木氏が率いるNEWPEASEは2014年創業の「ビジョニングカンパニー」。企業やプロジェクトへ事業視点でビジョンを提示する活動を行っている。

高木氏は「ビジョニングはスタートアップには手が出しにくい領域。資金面での難しさや、直接のメリットが見えにくく『ペイしない』と投資家にも受け取られるため、IPO後、もしくは早くてもプロダクトマーケットフィットした後でなければ着手されない」としつつ、「だが『どうすれば世の中の話題になるか』を考えると、実は長期的に、最初からビジョンを提示するほうがいい」と述べる。

例として高木氏は、米国のD2CブランドEverlane(エバーレーン)を挙げる。「Everlaneはビジネスモデル、原価開示そのものをコミュニケーションにして成功している。同様にスタートアップでは事業自体がコミュニケーションになる。事業そのものにアイデア、ビジョンが求められている」(高木氏)

こうした思いから高木氏も、スタートアップへ一部投資を行い、自らスタートアップへのビジョニングの事業化にも取り組もうとしていたが「スタートアップからお金をもらう仕組みがなかなかつくりにくい」(高木氏)ということからストックオプションによるクリエイティブの投資に着目したという。

「ストックオプションは社員へのサクセスシェアとして使われる手段だが、外部でも利用できると近年検討されており、それを取り入れた。ゼロからブランドづくりに関わり、積み上がったら資産としてそれをシェアする。その実験の場としてNEWS創業に参画することにした」(高木氏)

クリエイティブを生業とする人にも新しいチャンスを

梅田氏はNEWS設立の意義について「いわゆるメディア、広告とスタートアップとを近づける試み」と語る。「クリエイティブエージェンシーは、普通は大企業をクライアントとして手堅くやった方が儲かる。また日本の特性で、大企業やマスメディアがクリエイティブ市場に占めるシェアが大きいという点がある。フィーや制作費が出せず、プロダクトそのものと違って投資の優先度も落ちるため、スタートアップは長期的なブランドづくりができていない。そうした状況を変えたい」(梅田氏)

「マーケティング活動の専門家でない起業家にとっては、その分野で正しい意思決定をするのは難しい」と梅田氏はいう。「我々は、クリエイティブやマーケティングに関わるさまざまなノウハウを持っている。調達などによりマーケティング予算がある程度できたときに、NEWSではスタートアップがだまされたり、間違った使い方をしたりしないようにサポートすることもできるだろう。スタートアップとクリエイティブの世界を近づけ、成長速度を上げ、グローバル展開を支援する。これを大きなうねりにしたい」(梅田氏)

また高木氏は「今あるCMや広告も、手法が初めて出た当時には新しいものだったはずだ。その後、佐藤可士和氏が“クリエイティブ”というかたちで“経営”と対峙した。そして今はデジタルデバイスやインターネット、ソーシャルメディアなどの出現により、今ならではの手法がある」と述べている。「NEWSは、クリエイティブを生業にしている人にも新しいチャンスを提供できるだろう。さらに、新しい産業にも寄与する取り組みだと考えている」(高木氏)

ワコールが米国インナーウェアブランドの「Lively」を約92億円で買収

ワコールが、ニューヨークに本社を置くインナーウェアブランドのLively(ライブリー)を8500万ドル(約92億円)で買収した。この契約には追加の成果報酬として最大5500万ドル(約60億円)が含まれる。

LivelyはVictoria’s SecretのエグゼクティブだったMichelle Cordeiro Grant(ミシェル・コルデロ・グラント)氏が2015年に設立したブランドで、これまでに1500万ドル(約16億円)を調達していた。このうち、昨年後半のシリーズAでは、GGV Capital、NF Ventures、NauticaのCEOだったHarvey Sanders氏から650万ドル(約7億円)を調達したと発表していた。PitchBookによれば、シリーズAでは1億100万ドル(約110億円)と評価されていた。

この買収では、ワコールホールディングスが米国子会社のWacoal International Corp.を通じて株式を取得する。これによりワコールは、ミレニアル世代の顧客層で成功をおさめた優れたeコマースのチームを手に入れられる。

Livelyは、オンラインと、シカゴとニューヨークにある2つの実店舗でインナーウェアを販売している。ランジェリーやスポーツカジュアルウェアを販売する競合の新興企業には、ThirdLove、AdoreMe、TomboyX、Outdoor Voicesなどがある。

グラント氏は声明で「『LIVELY』は、女性たちが活き活きとし、自ら情熱的に、意図的に、自信を持って人生をおくることができるよう、彼女たちをインスパイアしています。私たちは、コミュニティとお客様が自分を大切にできるよう、お客様が最も美しく快適でいられる製品を届けることに努めています。『ワコール』と『LIVELY』、両ブランドの核となっている価値観を通して生まれる美しいシナジーは、マーケットシェアを高めるだけでなく、新しい市場を生み出すことを可能にするでしょう」と述べている。

[原文へ]

(翻訳:Kaori Koyama)

ジャーナリストからVCヘ、TechCrunch Japan前編集長の西村賢氏がCoral Capitalに参画

左からCoral Capital創業パートナーの澤山陽平氏、新たにパートナー兼編集長として参画したTechCrunch Japan前編集長の西村賢氏、創業パートナー兼CEOのJames Riney(ジェームズ・ライニー)氏

Sequoia Capitalのマイケル・モリッツ氏、Google VenturesのM.G.シーグラ―氏、Trues Venturesのオム・マリク氏。米国でベンチャーキャピタリストとして活躍する彼らにはある共通点がある。全員が過去にジャーナリストを経験しているということだ。

モリッツ氏はTIME magazine、シーグラー氏はTechCrunch、マリク氏は自身が立ち上げたテックメディアのGigaomに携わった後、キャピタリストへと転身している。

ちなみにシーグラー氏が以前在籍していたCrunchFundもメディア出身者が立ち上げたVC。創設者はTechCrunchの創設者でもあるマイケル・アリントン氏だ(現在アリントン氏はデジタル資産運用ファンドを立ち上げ、運営している)。

さて、ここまでは米国の事例をいくつか紹介してきたけれど、本日は日本国内におけるジャーナリストからVCへの転身ニュースを取り上げたい。

VCのCoral Capitalは8月1日、TechCrunch Japan(以下 TC)前編集長の西村賢氏がパートナー兼編集長として参画したことを明らかにした。

「ジャーナリストがVCへ移籍する、もしくはVCを立ち上げる」事例は米国に比べると日本ではまだまだ少ない。日経BPでの編集記者やCNET Japan編集長などを経て、慶応大VCである慶應イノベーション・イニシアティブの代表取締役社長に就任した山岸広太郎氏。そして西村氏の前にTCの編集長を務め、現在はB Dash Venturesで活動している西田隆一氏らが代表的な例だろうか。

今回は新たなチャレンジを始める西村氏と、Coral Capital(以下Coral)の2人の創業パートナーにジョインの背景や今後の取り組みについて話を聞いた。

テック系ジャーナリストからGoogleを経てVCへ

西村氏は2013年にTCへジョインする前からアスキーやITmediaにてテクノロジー領域のジャーナリストとして活動してきた。

特にITmedia時代には「@IT」の副編集長としてエンタープライズITやソフトウェア技術の動向を追いかけ、DropboxやAirbnbなど今やIT業界を代表する企業の創業者らにも取材をしている。2013年からは約5年間に渡ってTCの編集長を務めた後、昨年Googleに移籍。国内のスタートアップ支援や投資関連業務に携わっていた。

Coralではパートナー兼編集長としてウェブメディア「Coral Insights」のコンテンツ責任者を担うほか、新規投資先の開拓や投資業務などにも関わる予定。西村氏によるとまずはメディア側の仕事がメインになるそうで「直近は9:1とか8:2の割合でメディアを中心にしつつ、ゆくゆくは投資業務の割合を増やしていくことを考えている」という。

「TC時代に感じていたのは、国内のスタートアップコミュニティでは情報の非対称性が大きいということ。起業家に比べてVCが圧倒的に多くの情報を持っていて有利な状況で、メディアとして情報の透明性を高めることでなんとか変えたいと考えていた。『どうすれば日本のスタートアップエコシステムが健全に発展するのか』というのは個人のアジェンダとして何年も前から模索してきたことだ」(西村氏)

情報が普及することでエコシステムのレベルアップに繋がる

Coral Capitalが運営するメディア「Coral Insights」

西村氏がジョインしたCoral Capitalは500 Startups Japanの創業チームが2019年3月に立ち上げたVC。500 Startups Japanの立ち上げ期から自社のブログメディアを軸に、オリジナルコンテンツの発信や投資契約書「J-KISS」の無償公開など情報公開を積極的に行ってきた。4月に紹介した起業家調査レポートも同社が作成したものだ。

Coral Capital創業パートナー兼CEOのJames Riney(ジェームズ・ライニー)氏も話していたが、米国ではVCが自ら情報発信する文化があり、多様な情報やナレッジが普及することでスタートアップエコシステム全体のレベルアップにも繋がっている。

たとえば日本のメディアにもよく登場するAndreessen HorowitzやY Combinatorなどはテキストコンテンツはもちろん、ポッドキャストを通じた音声や動画コンテンツにも以前から取り組んでいる。

ジェームズ氏らもファンドを組成した当初から「(年間のスタートアップ投資が数千億円の)限られた日本市場のパイを奪い合うのではなく、パイ自体を大きくする挑戦をしたいと考えていた」ため、エコシステムのさらなる発展に向けて日本語での情報発信に力を入れてきたという。

これまではジェームズ氏と創業パートナーである澤山陽平氏の2人を中心に手探りで取り組んできたが、メディア機能を一層強化する上ではプロフェッショナルにジョインしてもらったほうがいいと感じていたそう。2号ファンドがクローズしてリソースが増えたタイミングで、以前から付き合いのあった西村氏を正式に招き入れた。

「ここ数年で大型の調達も増え、起業家のバックグラウンドも多様化するなど国内のスタートアップ環境が大きく変わった。スタートアップ界隈の人にはこれまでのやり方でも情報を届けられるかもしれないが、『大企業にいてなんとなくスタートアップにいる人』や『(テックとは)まったく繋がりのなかった業界や士業の人』にまで広く情報を届けるには、さらにパワーアップさせる必要がある」(澤山氏)

ちなみに最近ではCoral Capitalでも新たに動画コンテンツの配信に取り組んでいて、YouTubeの公式チャンネルでは投資先インタビューやセミナーのパネルディスカッション、澤山氏によるファイナンスのレクチャーなどが配信されている。

このチームでなら、大きなインパクトを残せるかもしれない

Coralの2人のパートナーと西村氏の出会いは2015年に500 Startups Japanが始動する以前に遡る。元起業家でかつてディー・エヌ・エーの投資部門にも在籍していたジェームズ氏とはTCのイベントなどで、野村證券出身でエンジニアとしての顔も持つ澤山氏ともTC主催のハッカソンなどで交流があった。

双方とも「当時は後に同じチームでスタートアップ投資をやることになるとは思ってもいなかった」と口を揃えるが、ファンドのリブランディングとメディアの強化を考える時期に差し掛かりジェームズ氏から熱烈にオファーしたそうだ。

「起業家に親身になって考える姿勢はもちろん、バイリンガルな点や自ら手を動かしてものを作れる点も含めてカルチャーにフィットしていると感じた。特にCoralのメンバーは自分でものを作れるメンバーが多く、大事にしている考え方の1つでもある。サイトも自分たちでデザインして作っていて、澤山とはVCを立ち上げる前に2人でプロダクトを開発していたこともあるほど。(TC時代から社内ツールを自作するなどしていた西村氏とは)似ている部分も多い」(ジェームズ氏)

「何事もデータ・ドリブン、テックドリブンでスケーラブルなやり方を考えるという文化がある。情報発信にしても草の根的に直接伝えることもやりながら、記事や動画にしてコンテンツをシェアしていくことも並行して行う。その点でも(西村氏は)相性がいいと考えていた」(澤山氏)

西村氏も彼らの情報発信のスタンスには500 Startups Japanの頃から注目していたとのこと。もともとは今回のタイミングで転職を考えていなかったため「ジェームズから声をかけられなければ、当然のようにGoogleに在籍していたと思う」と話すが、カルチャーや目指しているビジョンなども合致したことで最終的には参画を決めたようだ。

「コンテンツに関われること自体が自分にとっては報酬のようなもの。アーリーステージから、よりダイレクトに起業家と接していられる環境も魅力的だった。でも1番はジェームズの話を聞く中でこのチームと一緒にやれば大きなインパクトを出せるんじゃないかと直感的に思えたこと。ジェームズは起業家出身ということもあって、けっこうしつこいところがある(笑)。それはとても大事なことで、ビジョンを掲げて人を巻き込む力が強く、そこにも共感できた」(西村氏)

チーム「Coral Capital」としてエコシステムの発展目指す

Coralとしては今回西村氏が加わったことで「これまではブログ的な形で運営していたが、本格的なメディアを作るくらいの熱量で情報発信する」(ジェームズ氏)とのこと。まずは日本のスタートアップへの投資額を1兆円規模まで拡大させることを1つの目標に、メディアを始め各領域で投資担当以外のメンバーも招き入れながらチームとしてスタートアップを支援していくという。

「Coralには投資担当以外にもすでに(投資先の採用を支援する)採用担当や広報を支援するパートタイムのPR担当がいて、お金以外のバリューをどれだけ出せるか強く意識しながらやってきた。継続的にリターンを出しながらエコシステムの健全な発展に大きなインパクトを与え、歴史に名を残せるような存在を目指してチームで取り組んでいく」(ジェームズ氏)

西村氏も「近年はVCが今まで以上にチーム戦になってきている」と感じているそう。日本のスタートアップ環境の変化とともにVCを取り巻く状況にも変化が訪れているタイミングで、「2019年は日本のVCにとってティッピングポイントになるのではないか」という。

「たとえばAndreessen Horowitzは約150名のメンバーのうち投資担当は50名弱ほど。コンテンツだけでなくデザイナーやエンジニア視点でアドバイスができるメンバーなども含め、VCがチームとしてスタートアップを支える基盤を強化している。日本でも同じような流れになるのではないか」

「ここ2〜3年で日本国内のスタートアップコミュニティ内でも、ものすごいスピードで情報のキャッチアップが進んできた。とはいえみんなが当たり前のようにエクイティの話をしたり、幅広い層に情報が行き届く状態には達していない。まずはVCの中から情報発信を通じて、スタートアップエコシステムの発展につながるチャレンジをしていきたい」(西村氏)

サイバー攻撃をリアルタイムで止める「Confluera」が9億8000万円を調達

米国時間7月29日、またも大規模な侵害が明らかになった。Capital Oneが、ハッキングにより数年分のクレジットカードの申込の情報が流出したと発表したのだ。しょっちゅうハッキングがあるが、問題は企業はおびただしい数の攻撃からいかにして自社を守れるかということだ。2018年に設立されたパロアルトのスタートアップであるConflueraは、リアルタイムでこうした攻撃を止められるとする新しいツールを企業に提供しようとしている。

米国時間7月30日、ConflueraはLightspeed Venture Partnersが主導したシリーズAで900万ドル(約9億8000万円)を調達したと発表した。Microsoftの会長でSymantecのCEOだったJohn W. Thompson(ジョン・W・トンプソン)氏、SnowflakeのCEOでServiceNowのCEOだったFrank Slootman(フランク・スロートマン)氏、Palo Alto NetworksのCEOだったLane Bess(レーン・ベス)氏といった影響力のあるテック業界のエグゼクティブも支援している。

Conflueraのサイバーセキュリティに対するアプローチは注目を集めている。同社の共同設立者でCEOのAbhijit Ghosh(アビジット・ゴーシュ)氏はTechCrunchに「Conflueraはリアルタイムのサイバーセキュリティ企業だ。我々は決定論的にリアルタイムでサイバー攻撃を止める、業界初のプラットフォームだ」と語った。

ゴーシュ氏によれば、これを実現するために、同社のソリューションは顧客のインフラ全体を監視し、問題を見つけたら、攻撃を軽減する方法を推奨する。「我々は、使われているソリューションが多すぎることが問題だと考えている。必要なのは、インフラ全体を可視化し、複数のソースからのセキュリティ情報をもとに攻撃者の状況と対処方法を判断するプラットフォームだ」と同氏は説明する。

Conflueraに投資しているMicrosoft会長のトンプソン氏は、これはリアルタイムの検出、あるいはリアルタイムの対処以上のものだと語る。「これは単なる監査証跡ではなく、何をすべきかを教えてくれる。しかもリアルタイムで攻撃をブロックする。このことが、このプラットフォームのユニークな特徴であり、データサイエンスから得られる知見によって本当にリアルタイムで攻撃をブロックできる」。

Conflueraはまだ始まったばかりで、従業員は19人、このプラットフォームを使っている顧客は3社だ。まずは来週開催されるセキュリティ関連のイベントであるBlack Hatで正式に公開する。その後は、プロダクトの構築を続け、繰り返し発生するさまざまな攻撃を説明通りにブロックできることを証明する必要がある。

画像:sesame / Getty Images

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(翻訳:Kaori Koyama)

神戸市がヘルステック強化へ、医療系に特化したアクセラレータープログラムの募集開始

神戸市は7月29日、米国シリコンバレーのVC(ベンチャー・キャピタル)である500 Startupsと共同で、「500 Startups Kobe Accelerator」の募集を開始した。今年で4回目となるアクセラレータープログラムで、過去3回で計56社のスタートアップを育成し、資金調達額は計80億円超となっている。

アクセラレータープログラムの正式名称は「500 Startups Kobe Accelerator with a focus on Health」。過去3回は特にジャンルを決めずデジタル分野全般を対象としていたが、今回はヘルステック関連に絞ったスタートアップ育成に特化する。

神戸市は、雇用の確保や経済活性化、市民の健康・福祉の向上、そしてアジア諸国の医療技術向上への貢献を目的とし、阪神・淡路大震災の震災復興事業として1995年から神戸医療産業都市という取り組みを進めている。

具体的には、医薬品、医療機器再生医療を重点的な研究分野として、研究機関、医療機関、企業などの誘致や共同研究などを実施。同市によると、現在約350拠点の先端医療の研究機関、高度専門病院群、企業や大学の集積が進んでいる。

この取り組みの一環として神戸市が開発した人工島であるポートアイランドには、先端医療研究センター、神戸臨床研究情報センター、国際医療開発センター、神戸ハイブリッドビジネスセンター(レンタルラボ施設)などが集まっている。これらの施設にら、神戸空港からはポートライナーを使って1〜2駅、10分以内に行けるという立地のよさは注目だ。

今回のアクセラレータープログラムは、この神戸医療産業都市の目的に沿ったかたちで開催される。選抜されたスタートアップは、神戸市が主導することにより、通常は難易度の高い医療機関や医療系企業との連携や情報共有が可能になる見込みだ。

募集期間は8月31日までで、専用ウェブサイトで参加者を受け付ける。書類と面談で選考を進め、最終的には約20社に絞り込む予定だ。同プログラムは、すべて英語(日本語同時通訳あり)で実施され、海外からの参加申込も積極的に受け付けている。昨年は海外スタートアップが半数を超え、全体では237社が集まったとのこと。なお、8月5日19時〜20時30分にはオンライン説明会も開催する。この説明会では、概要説明のほか、過去参加者によるQ&Aなどが予定されている。

参加資格は以下のとおり。

  • 国内および海外の起業家または起業家候補
  • シード(最小限のプロダクト・モデルを開発済み)、アーリー(製品開発済み、顧客あり、第三者からの投資を獲得する段階)のステージ
  • 診断・治療支援、病院等の業務改善、健康増進、栄養管理、介護支援、障害者支援などヘルステック(医療機器などハードウェアを含む)でベンチャーキャピタルなどの外部資金が調達可能なビジネスを持っている(創薬や医療機器の一部のように事業化までに数年を要するものは対象外)
  • すでに製品やサービスを持っており、チーム活動しているスタートアップを推奨

プログラム期間は11月4日~12月16日までだが、前半2週間(11月4日~11月15日)、後半2週間(12月2日~12月13日)に分かれる。最終日の12月16日は、デザイン・クリエイティブセンター神戸KIITO(神戸市中央区小野浜町1-4)でデモデイが開催される。

ソフトバンクが1080億ドルでAIフォーカスの第2ビジョンファンドを立ち上げ

ソフトバンクグループは7月25日、第2のビジョンファンドを立ち上げると発表した。これにはアップルやフォックスコン、マイクロソフトなどのテクノロジー企業と投資家が参加する。このファンドはVision Fund 2(ビジョンファンドツー)と呼ばれ、AIベースのテクノロジーにフォーカスする。ソフトバンクによるとファンドの資本金は、了解覚書ベースで約1080億ドル(約11兆7300億円)達している。そのうちソフトバンクグループ自身による投資は380億ドル(4兆1200億円)だ。

なお、この第2のビジョンファンドのリミテッド・パートナーの予想リストには現在、サウジアラビア政府からの参加者はまったく含まれていない。最初のビジョンファンドはモハメッド・ビン・サルマン皇太子などの人々との密接な結びつきがあり、皇太子は後にジャーナリストであったジャマル・カショギ氏の殺害に関与したとされた。そのことは当然ながら、投資家や企業や人権監視家などからの大きな懸念の原因になった。

しかしソフトバンクグループによると、まだ他の参加者とも話し合いを続けており、ファンドの総額は今後増加すると予想される。現在覚書に署名している参加者は、次のとおり。

  • アップル
  • フォクスコン・テクノロジーグループ
  • マイクロソフト
  • みずほ銀行
  • 住友三井銀行
  • 三菱UFJ銀行
  • 第一生命保険
  • 住友三井信託銀行
  • SMBC日興証券
  • 大和証券グループ
  • National Investment Corporation of National Bank of Kazakhstan
  • Standard Chartered Bank
  • 台湾の複数の投資家

ソフトバンクがこの第2ファンドを立ち上げる意図は、今週初めにWall Street Journalが報じた。その新たなファンドはサウジアラビアからの投資にあまり依存しないものになるとされ、そしてまた、スタートアップとマイクロソフトのような巨大企業と投資家三者の関係を変える可能性がある、と言われた。

この第2のビジョンファンドにより、世界で最も影響力の大きい投資家としてのソフトバンクの立ち位置がさらに強化されるだろう。最初の970億ドルのビジョンファンドにより同社は、数十社もの著名な成長企業に投資してきた。それらは、ライドシェア大手のDidi ChuxingGrab、インドのグロサリーデリバリーGrofers、決済企業Paytm、低料金ホテルのOyoなどだ。

最初のビジョンファンドは2016年10月に発表され、2017年の前半から投資を開始した。ソフトバンクの先月の発表によると、ファンドは62%のリターンを稼いだ。ソフトバンクの投資は一貫して額が大きい(多くが1億ドル以上)ことで知られ、調査企業CB Insightsによると、全世界で377社あるとされるユニコーン(評価額10億ドル以上の企業)のうち24社にも投資している。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

DeNAが100億円規模のファンド組成、南場智子氏がマネージングパートナーに

ディー・エヌ・エー(DeNA)は7月25日、事業のスピンアウトおよび起業家輩出を主目的としたベンチャー・ビルダー事業を開始したことを発表。これに伴い、デライト・ベンチャーズ1号投資事業有限責任組合を組成した。デライト・ベンチャーズは、有限責任組合員(LP)がDeNA、無限責任組合員(GP)がDeNAの100%子会社であるDelight Venture Investmentとなる。Delight Venture Investmentの代表はDeNA創業者の南場智子氏が務め、DeNA出身の渡辺大氏ともにファンドを運用する。

関連記事:ディー・エヌ・エーが約100億円の新ファンド設立へ

DeNAのベンチャー・ビルダー事業は、従来社内で行っていたインキュベーションの仕組みを改良したもので、、社内外の人材によるスピンアウトを前提とした事業創出を進めていくという。具体的には、新規事業のアイデア発掘から立ち上げまでをデライト・ベンチャーズがDeNAとともに主体的に行い、外部投資家からの早期の資金調達を通じて事業のスピンアウトを目指す。スピンアウト後は、デライト・ベンチャーズは少数株主として支援することになる。

Delight Venture Investmentは、南場氏と渡辺氏の両氏がマネージングパートナーを務めるほか、アドバイザリーメンバーとしてDeNAフェローの川田尚吾氏、DeNAからスピンアウトしたミラティブ代表取締役の赤川隼一氏やSHOWROOM代表取締役CEOの前田裕二氏なども名を連ねる。そのほか、Salesforce Ventures代表の浅田慎二氏、DeNA出身でアカツキの共同創業者で代表取締役CEOを務める塩田元規氏もアドバイザリーメンバーだ。

ソフトバンクがマイクロソフトにビジョンファンド2号に参加を呼びかけ

ソフトバンクグループは、投資総額400億ドルというマンモス級のベンチャー投資となるビジョンファンド2号の組成を発表する準備を進めているとウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が報じた。これに先立って、1号ファンドの運用成績が投資家を熱狂させるほどではなかったため、ソフトバンクグループは2号ファンドの資金集めに苦労しているという噂が数週間前から出ていた。

同社はコメントを控えている。

ビジョンファンド2号に出資することを確約した投資家の第一陣にはゴールドマン・サックスとStandard Carteredが含まれているが、ここにきてソフトバンクグループはMicrosoft(マイクロソフト)と話し合いを行っている情報が流れた。ソフトバンクグループがポートフォリオ企業に対し、クラウドインフラをAWSからMicrosoft Azure,に乗り換えるよう勧めることがMicrosoftがビジョンファンドに参加する条件だという。ビジョンファンドには台湾の年金基金や保険会社も興味を示しているという。Microsoftにも取材を申し込んでいるが、今のところ回答はない。

T-Mobileとソフトバンクグループが過半数の株式を握るSprintとの合併について、米司法省は早ければ来週にも承認を与える見込みだ。この合併が承認されれば、ソフトバンクグループは資金繰りに余裕が生まれ、ビジョンファンド2号に対する出資に追い風となる。

2016年に同社のビジョンファンド1号がデビューしてその規模で世界を驚かせて以来、同社のファウンダーでCEOの孫正義氏はメディアの注目集めてきた。2017年5月には第1回の投資締め切りで930億ドルを確保、さらに追加投資を得て、ファンドの総額は980億ドルとなった。ポートフォリオのターゲットは世界のテクノロジー・スタートアップで、特にIoT、AI、ロボティクス、mバイル、コンピューティング、クラウド・テクノロジー、コンシューマ向けテクノロジー、フィンテックに注力している。これまでのところ、大型投資先には、Brandless、WeWork、Ola、Grab、滴滴出行、Uber、Lemonadeなどが,含まれる。

1号ファンドに対する最大の出資者はサウジアラビアとアブダビの国営投資ファンドだった。サウジがこれまで数々の人権侵害を行ってきたことから、ビジョンファンドがサウジマネーを大規模に受け入れたことはシリコンバレーで倫理的問題に関する議論をよんだ。Apple(アップル)、Qualcomm(クアルコム)、Foxconn(フォックスコン)もビジョンファンドにLP(リミテッド・パートナー)として参加している。

画像:Alessandro Di Ciommo/NurPhoto / Getty Images[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook