Meta、企業が広告の掲載場所をコントロールできる新ツールのテストを2022年後半から開始

Facebook(フェイスブック)から社名を変更したMeta(メタ)は、FacebookとInstagram(インスタグラム)のフィードに表示される広告の位置を、広告主がコントロールできるようにする新しいコンテンツツールのテストを開始すると発表した。このツールを使うことで、企業は自社の広告が、政治、悲劇、暴力に関する投稿など、不適切なコンテンツの隣に表示されるのを防ぐことができるようになる。

同社は2022年後半から、この新しいコンテンツコントロールのテストを開始し、2023年初頭より正式に展開を計画している。Metaによると、テスト段階では主に英語圏の市場に注力するとのこと。2023年中に、ストーリー、ビデオフィード、Instagramのエクスプローラーページなどに設置される広告のコントロールを拡大していき、最終的には他の言語にも展開する予定だ。

「広告主が広告を表示する場所をコントロールできるように、Meta全体で適合性コントロール機能を開発しています」と、Metaはこの発表に関するブログ記事に書いている。「私たちは以前、広告がブランドの好みに合わないコンテンツに隣接して表示されるという広告主の懸念に対処するため、コンテンツベースの適合性コントロールを構築するという取り組みを発表しました。我々はGARM(Global Alliance for Responsible Media、責任あるメディアのための世界的同盟)と緊密に協力しながら、GARM Suitability Framework(GARM適合性フレームワーク)に沿ったこれらのコントロールを開発しています」。

Metaは、企業がブランドの適合性を測定できるプラットフォームのZefr(ゼファー)と提携し、Facebookに表示される広告のコンテクストを監視・報告することも発表。広告が適切なコンテンツの隣にのみ表示されるように検証していく。MetaとZefrは、2022年の第3四半期に小規模なテストの開始を予定している。

この新ツールは、広告が好ましくないコンテンツに隣接して表示されないように、広告掲載の管理強化を繰り返し求めてきた広告主からの高まる要望に応えるものだ。

同社はこれまでも、こうした懸念に対応するための取り組みを進めてきた。

2021年11月、Metaは英語で広告を掲載している広告主に対して、ニュースフィードのコントロールを拡大し「トピック除外コントロール」を利用できるようにすると発表した。このトピックとは「ニュースと政治」「社会問題」「犯罪と悲劇」の3つで、広告主がこれらのトピックのいずれかを選択すると、最近これらのトピックに関わった人には広告が表示されないようになる。Metaは当時、このツールでは広告主の抱えるすべての懸念に対応できない可能性があることは認識していると述べ、将来的にはコンテンツベースのコントロールを開発すると約束していた。

Facebookのアルゴリズムは、扇動的なコンテンツや危険な誤報を助長することで悪評が高い。そのため、Metaにはプラットフォームを浄化し、その方法をより透明化するように求める規制当局からの圧力が強まっている。現代のニュースサイクルやオンライン広告の状況では、ブランドが不適切なコンテンツの隣に広告を表示されてしまうことを避けるのは難しい。ほとんどの企業は、広告を作成してMetaの広告オークションに送信するというやり方で広告を購入しているため、広告の配置をコントロールする手段がなかった。これから導入される新しいツールは、そんな状況を変えてくれるはずだ。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

グーグル、ランサムウェア犯罪集団に初期アクセス手段を提供するブローカーとして働く組織を発見

Google(グーグル)の脅威分析グループは、ランサムウェア「Conti(コンチ)」を使う犯罪集団などロシアのハッカーの仲介役として働く、金銭的動機を持った脅威アクターの存在を確認したと発表した。

Googleが「EXOTIC LILY(エキゾチック・リリー)」と呼ぶこのグループは、初期アクセス手段のブローカーとして、脆弱な組織を見つけ、そのネットワークへのアクセス情報を、最高額の入札者に販売する。Contiのようなランサムウェア犯罪集団は、被害者となるネットワークへの初期アクセスをこのグループに委託することで、攻撃の実行段階に集中することができるというわけだ。

EXOTIC LILYの場合、この初期アクセスは標的に電子メールを送信する活動から始まる。メールのやり取りの中で、EXOTIC LILYはなりすまし用ドメインや偽のIDを使って、正当な組織や従業員を装う。多くの場合、なりすましドメインは、既存の組織の実際のドメイン名とほぼ同じだが、トップレベルドメインが「.us」「.co」「.biz」に変わっている。EXOTIC LILYは、なりすました組織の正当な従業員に見せかけるため、ソーシャルメディアに偽のプロフィールを作成し、そこにAIで生成された人間の顔の画像を使っていた。

この攻撃グループは、まずビジネス提案を口実に標的型フィッシングメールを送り、最終的にはWeTransfer(ウィートランスファー)やMicrosoft OneDrive(マイクロソフト・ワンドライブ)などの公開ファイル共有サービスにアップロードしたマルウェアをダウンロードさせるという手口を用いる。そのメール送信などの活動時間帯から、グループは中央または東ヨーロッパで活動している可能性が高いと、Googleは考えている。

Googleの研究者であるVlad Stolyarov(ヴラド・ストリャロフ)氏とBenoit Sevens(ブノワ・セブンス)氏は、公開前にTechCrunchに共有したブログ記事で「大規模な作戦に焦点を当てたサイバー犯罪グループにとって、このレベルの人的交流はかなり珍しい」と指摘している。

これらの悪意のあるペイロードは、当初はマイクロソフトのMSHTMLブラウザエンジンに存在するゼロデイ脆弱性(CVE-2021-40444として追跡されている)を悪用した文書の形をとっていたが、最近では攻撃者が「BazarLoader(バザーローダー)」マルウェアを隠したISOディスクイメージの配信に切り替えている。この移行から、Googleの研究者は、EXOTIC LILYが「WIZARD SPIDER(ウィザード・スパイダー)」という名称で追跡されているロシアのサイバー犯罪集団と関係があることが確認されたと述べている。UNC1878としても知られるWIZARD SPIDERは、2018年以降、企業や病院(米国のUniversal Health Services[ユニバーサル・ヘルス・サービス]を含む)、政府機関を標的に使用されてきた悪名高い「Ryuk(リューク)」ランサムウェアを使うサイバー攻撃組織だ。

この関係の性質は依然として不明だが、EXOTIC LILYはメール送信活動による初期アクセスの獲得に重点を置いており、Contiや「Diavol(ディアヴォル)」ランサムウェアの展開を含むその後の活動とは、別の独立した組織として運営されているようだと、Googleは述べている。

Googleによると、2021年9月に初めて観測され、現在も活動を続けているEXOTIC LILYは、活動のピーク時には1日に5000通以上のフィッシングメールを650もの組織に送信していたという。同グループは当初、ITやサイバーセキュリティ、ヘルスケアなど特定の業界をターゲットにしていたようだが、最近では、あまり特定の焦点にこだわらず、さまざまな組織や業界を攻撃し始めている。

Googleは、組織のネットワーク防御に役立てるため、EXOTIC LILYの大規模な電子メール活動から得たIOC(セキュリティ侵害インジケーター)も公開している

画像クレジット:Yasin Ozturk / Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【レビュー】Mac Studio、すてきでパワフルで値段も高い、Macのデスクトップに求めるものがほとんど揃う

先週のイベントで行われた発表は、そのほとんどが事前に噂されていたものだった。しかし、多くの消費者向けハードウェアが変わりばえのしないものになったこの時代に、Apple(アップル)は驚きを与えることに成功した。イベントの発表の中で明かされたMac Studio(マック・スタジオ)は、大きな変化球ではなく、Appleがパーソナルコンピューター戦略を進化させ続けていることを示すサインだった。最初のAppleコンピューターの登場から半世紀近くが経過したが、このカテゴリーにはまだ寿命が残っている。

ほんの数年前なら、その言葉に自信を持てなかったと思う。Macはまさに「中年」の危機を迎えていたのだ。iPhoneが、Appleの象徴という意味でも売上シェアでもトップに躍り出て、iPadがその残りを吸収していたのだ。イノベーションという観点からは、macOSはモバイル版の残り物を再利用しているようにしか見えなかった。

一方、ハードウェアの面では、かつて同社の基盤の重要な部分を形成していたプロフェッショナル向けクリエイティブ分野を放棄し、MicrosoftのSurfaceシリーズのような製品が花開く余地を残したように見えていた。一時はTouch Barの追加で再び盛り上がりを見せようとしたが、結局Appleもまぼろしに見切りをつけ、その奇妙な実験を静かに終了させた。

数年前のMacは、訴訟沙汰にもなったキーボードの不良や、ポート不足に悩まされていた。後者をAppleの合理化のせいにすることは簡単だが、だからといって失望は抑えられなかった。

画像クレジット:Brian Heater

しかし、2020年に再びパラダイムシフトが起こった。この変化をもたらしたのはやはり、iPhoneの研究開発の直接的な成果だった。しかし、今回は新しいiOSアプリが追加されたわけではない。この間に、AppleはiPhoneのチップを自社開発へと移行し、Macのハードウェアを飛躍的に向上させたのだ。同社はこれまで、可能な限り単独で物事を進めたがってきたが、自社で主要な半導体(Appleシリコン)を開発したことで、その機会が大きく広がった。

Appleがその半導体をMacにも使うのは時間の問題だった。同社はM1チップを発表し、同時に、MacBook Air、MacBook Pro、Mac Miniの3つの新しいMacを発表してパンデミックの最初の年を終えた。Macは復活した──少なくとも性能の面では──というのがほぼ一致した評価だった。家のリフォームやウェブサイトのリニューアルをしたことがある人ならわかると思うが、解体には時間がかかるものだ。M1のデビュー戦は古い車体に新しいエンジンを搭載したようなものに思えた。

2021年5月、アップルは新しい24インチiMacを発表した。このときは新しい半導体(M1)を新しいデザインの筐体に搭載し、約10年半ぶりにオールインワンマシンを根本的に作り直した。こんなことは1度か2度あるかないかだ。私は、ハードウェアのデバイスを指して「cute(かわいい)」という形容詞を行うことはない。「かわいい」はウサギと赤ん坊のためにある形容詞だ。だが2021年のiMacも「かわいい」のだ。かわいくて、しかも力強い。1年以上、デスクトップを日々の手足として使っているが(以前ほど自宅から出なくなった)、M1の限界を超えたと感じた瞬間は一度もなかった。

画像クレジット:Brian Heater

24インチの画面領域で十分ならば、ほとんどのユーザーには、特に私のようにスペースに制約のあるユーザーには、iMacを心からお勧めできる。個人的な唯一の問題点は黄色にしたことだ。

しかし、あえていうなら、新しいMacの誕生は2021年10月だったのだ。私の話を聞いて欲しい。そのとき発表された最新のMacBook Proは単に新しいハードウェアだっただけではなく、ハードウェアに対する新しいアプローチを提示していた。Appleは、自社のデザイン決定に一心不乱に取り組むあまり、その過程で世論の反発を招くことがしばしばあると言っても、あまり驚かれはしないだろう。iPhone SEに関するDevin記者の熱のこもったエッセイを読めば、私が何を言いたいかわかるはずだ。愛着のある機能を失うこと、それは時には進歩の名の下に、時には美学のために行われるが、いつもおおごとなのだ。

2021年のMacBook Proは、いつもと違う感じがした。それが明らかになったとき、活気のないスタッフの間にそれなりの興奮が巻き起こった。何年も我慢を重ねてきたあとで発表された、新しいM1 ProとMaxチップを搭載したMacは妥協のないものだと感じられた。最近のMacのリリースで散見されてきたような不安要素はなく、Macユーザーにも勧めやすい製品だった。

では、Mac Studioはこの中でどこに位置するのだろうか?一見したときよりも、少々込み入った話になる。1つは、上にも書いたように、この製品の登場が意外だったことだ。先週の時点では、デスクトップは27インチiMacが確実視されていた。すなわち2021年のオールインワンをステップアップさせ、iMac Proの穴を埋めるような製品だ。今にして思えば、それはAppleがM1ロードマップを練り上げ、Mac Proのゆらぎを正している間のつなぎだ。

画像クレジット:Brian Heater

27インチiMacは出るのだろうか?おそらくはノーだ。報告によれば、それはすぐに起こりそうもなく、率直にいってMac Studioと重なる部分が多すぎるものだろう。2021年のモデルでは、iMacはAppleのエントリーレベルのデスクトップとしての正当な位置に事実上返り咲いた(非常に強力なマシンだがM1によって全体の水準が上がってしまったのだ)。そのカラーリングは、iPodやiPhone Miniのような製品の伝統を受け継ぐものであることは間違いない。

画像クレジット:Brian Heater

価格設定も、一見したところでは少々複雑だ。現在、M1 Mac Miniは699ドル(日本では税込7万9800円)から、iMac M1は1299ドル(税込15万4800円)からとなっている。一方、Mac Studioは1999ドル(税込24万9800円)からで、事実上2つの製品を合わせた価格だ。だが、もう少し複雑なのは、この中3つの中ではディスプレイを内蔵しているのはiMacだけだという点だ。要するに、お金を節約したい、あるいはすでに完璧なスクリーンを持っているのであれば、必ずしもApple製のディスプレイを使う必要はないということだ。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

もちろん、このレビューのためには、Appleから送られてきたStudio Display(スタジオ・ディスプレイ)を使っている。これでさらに1599ドル(税込19万9800円)が追加され、開始価格は約3600ドル(税込44万9600円)になる。本当のお金の話はこれからだ。テストした機種はM1 Max搭載だ。32コアのGPU、64GBのRAM、1TBのストレージを搭載し、価格は2799ドル(税込33万7800円)である。M1 Ultraが欲しい?その場合は3999ドル(税込49万9800円)からとなり、7999ドル(税込93万9800円)までとなる。しかし、このような価格帯では、議論しているのは全Macユーザーの0.1%(実際の数字ではない)以下のニーズということになる。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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予想通り、GeekBenchでは2021年のM1 Max Proと遜色ない性能を発揮している。Appleシリコン版テストでは、MacBook Proの1781/12674に対してStudioは1790/12851、Intel版テストではMacBook Proの1348/9949に対してStudioは1337/9975というスコアだった。GFXBench Metalテストでも、MacBookの279.6に対して307と差をつけている。残念ながらUltraチップは入手することができなかったが、それでも結果は非常にすばらしいものだった。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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さらに印象的だったのは、Intelモデル上では非常にリソースを消費するような作業を、Studioではファンをそれほど回すこともなく、触っても暖かくなることもなく実行できたことだ。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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先週のイベントで「最後に1つ」とMac Proを予告したAppleが、これからどこへ行こうとしているのか、気になるところだ。M2チップだろうか?おそらくは。とはいえ、ピクサー映画をフルにレンダリングしたり、本当にハイエンドなVRコンテンツを開発したりする必要のある人はあまりいないだろう。もちろん、そういう人はいるし、これからどんどん増えていくだろう。そして、ノートパソコン以上に、これらのデバイスを将来にわたって使えるようにすることが重要なのだ。3000ドル(約35万6000円)もするデスクトップなら、しばらくは使い続けたいものだ。

新しいMacBook Proと同様に、Mac miniよりもトレードオフは少ない。まず、一番大事なのはポートだ。ポートは重要だ。あなたの機器を他の機器につなげることができる。Studioは、前面にUSB-Cポートを2つとSDリーダーを備えている。特に後者は、頻繁に取り扱うものなので、前面に出しておくと便利だ。裏側には、さらにUSB-Cが4つ、USB-Aが2つ(iMacにはなくなって残念なもの)、Ethernet、ヘッドホン端子、HDMI出力(ただし、入力は不可)がある。Studio Displayを加えると、さらに4ポートのUSB-Cが手に入る。

画像クレジット:Brian Heater

Studio本体以上に、Studio DisplayはAppleのラインアップにある重要な穴を埋めるものだ。思い出して欲しいのだが、Appleは、5000ドル(約60万円)のPro Display XDRが登場するまでしばらくの間、自社製のディスプレイ提供から完全に撤退していた。Mac ProやM1 Ultraと同様、Pro Display XDRはほとんどの人が必要としているものをはるかに上回っているモニターだ。もしあなたがApple製のモニターを手に入れたいと考えているなら、27インチの5K Retina Apple Studioディスプレイはほとんどの人にとって十分なモニターだ。さらに300ドル(税込4万3000円)を足せば、反射防止コーティングとNano-textureガラスを採用し、映り込みが劇的に低減される。これはプロユーザーにもノンプロユーザーにもうれしい仕様だ。

iMac 2021のマイクテスト

Mac Studio 2022(Studio DIsplay)のマイクテスト

マイクの品質は良好で、Appleは「スタジオ品質」と位置づけているものの、ウェブ会議以上のことをするつもりなら、前述のポートのいずれかに外部マイクを接続することをお勧めする。とりわけ、よりタイトに入り込むことができる余裕が生まれるだろう。スピーカーのサウンドは最新のiMacよりも充実しているが、これは広くて厚いフレームのおかげで、下向きに音を出すグリルの表面積を広げることができるからだ。

左上から時計回りに:iMac 2020、iMac 2021、外付けウェブカメラOpal C1、Mac Studio(Studio DIsplay)

AVの観点から見て、一番残念なのは、間違いなくウェブカメラだ。センターフレームは追従性が良いが、最近のM1搭載Macと比べると驚くほど映像画質が落ちている。ホワイトバランスが崩れ、画像ノイズが多くなっている。最初は、誤ってそのままにしてあった保護フィルムをはがせばよいかと思ったが無駄だった。その結果が上の画像だ。1599ドル(税込19万9800円)以上のモニターとしては、かなりがっかりだ。

M1のISP(画像信号プロセッサー)に注力し、カメラそのものをアップデートしたので、新しいMacでは外付けのウェブカメラは必要ないとAppleが最近主張していることが、この状況をさらに悪化させている。上の画像を見れば、その意味は明らかだろう。少なくとも今のところ、仕事のインタビューやポッドキャストでは外付けカメラを使い続けるだろう(同じような照明条件で撮影しているが、Opalはデフォルトで画像を反転させることに注意して欲しい)。修正版が出たら、喜んで再挑戦する。

画像クレジット:Apple

カメラモジュールは事実上、新しいiPadに搭載されているものと同じなので、システムアップデートで修正されるのを期待したい。このようなシステムのチューニングは、ソフトウェア側で行われる場合が多いからだ。Matthew記者もStudioをしばらく使っていて、近々公開されるハードウェアに関する大きな記事の一部として、Studioについて説明する予定だ。その一部を引用する。

私たちが行ったテストでは、Studio Displayのカメラは、ローカルでもリモートでも、粒子が粗く、コントラストが低く、全体的に貧弱な画像を生成した。目の前の画像は、現時点では、2021年型24インチiMacのカメラが出力する画像よりも悪い。

ウェブカメラを初めて起動したときに、すぐに品質の問題に気づいた。他のデバイスともつないで確認したところ、MacOS 12.2を搭載したMacBook Proで使った場合、すばらしいとまではいえないものの、若干良くなることに気がついた。こうした違いがあることから、何らかの処理ミスがあるのではと推測している。私はAppleに、この結果が典型的なものであるかどうかを尋ね、サンプル画像とビデオを送った。検討の結果、Appleの広報担当者からは、システムが期待どおりの動作をしていないことと、カメラの性能に対応するためのアップデートを行うことが伝えられた。

それらのアップデートのタイムラインや具体的な内容はわからないが、AppleはStudio Displayのカメラ画質に問題があることを認識しており、修正に取り組んでいるとのことだった。このことは、購入の判断材料として知っておいて損はないし、アップデートで品質が向上するかどうかを確認できるまで待つ理由にもなる。

現時点では、ディスプレイ本体やインモニターオーディオの新基準を打ち立てたスピーカーの優れた性能に並ぶことはできない。

画像クレジット:Apple

Appleが「修理する権利」に関心を持ち始め、サステナビリティへの関心を広げている中で、ユーザー修理性は機会を逸したように思える。ケースを持ち上げて内側からファンを掃除したり、パーツを交換したりすることができれば、多くのユーザーにとってうれしい方向に向かうと思われる。しかし、Appleはその点については、まだコミットメントの準備が整っていない。必要が生じた場合には、ユーザーはApple正規代理店に持ち込む必要がありそうだ。つまり、おそらくWWDCで登場するだろうMac Proでは、モジュール性とアップグレード性が大きな差別化要因になる可能性が高いということだ。

画像クレジット:Brian Heater

iMacと同様に、Studioもデスクトップに置いて見栄えがする。背の高いMac Miniという形容が最も近いデザインで、Mini同様に丸みを帯びたコーナーとブラッシュドアルミニウムが特徴だ。最高にデザインされたMacと同じように、それはインダストリアルでありながら、冷たくはなく、同じアルミニウム製スタンドの上に置かれたStudio Displayの隣に置けば印象的だ。高さを調節できるスタンドオプション(2299ドル、税込4万4000円)や、縦長に傾けられるVesta Mountアダプターもある。少なくとも1人のTechCrunch編集者は、2台目のTweetdeck(ツイートデック)用モニターとして、これを欲しがると思う。

また、最大5台のモニター(USB-C経由で4台、HDMI経由で1台の4K)に対応し、その点でも大いに期待できる。今、Macに5台のスクリーンを接続する習慣がなくても事態はすぐに進展するものだ。テストしているStudioは、2799ドル(税込33万7800円)の構成だ。これに1899ドル(税込24万2800円)のディスプレイ(Nano-textureガラス版)を加えると、4700ドル程度(税込58万600円)になる。これに、Touch IDと数字パッドを備えた新しい黒いキーボード(税込2万800円)に、マウス / トラックパッド(99ドル[税込1万800円] / 149ドル[税込1万5800円])を追加すると良いだろう。気の弱い人や財布の薄い人には向かないマシンだ。

前回試用したIntel搭載27インチiMacより数百ドル(数万円)高く、単体のPro Display XDRとほぼ同じ価格だ。まあすべては相対的だよね?

Appleは、在宅勤務の推進に乗り遅れたことを反省しているに違いない。もし、新しいiMacとMac Studioが2020年の初めか半ばに発売されていたら、同社は大儲けしていたことだろう。しかし、それでも多くの人がオフィスに戻る日は来ないかもしれない。多くのユーザーはやはりiMacを選ぶだろう。しかし、映像や音楽など、リソースを大量に消費するクリエイティブな編集を行い、より大きな予算を持っているなら、これはすばらしいマシンだ。Mac Proは現時点では最後のクエスチョンマークだが、新しいStudioはほとんどの購入希望者にとって十分なマシンだ。

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画像クレジット:Brian Heater

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(文:Brian Heater、翻訳:sako)

紛失・盗難対策トラッカーTileがモバイルアプリにストーカー対策安全機能を追加

貴重品の紛失・盗難対策トラッカーで AppleのAirTag(エアタグ)と競合するTile(タイル)は米国時間3月17日、初のストーカー対策機能「Scan and Secure(スキャン・アンド・セキュア)」を導入する。2021年10月に発表されたこの技術は、2022年初頭の導入が約束されていた。Tileのモバイルアプリを利用するユーザーは、一緒に移動している可能性のある未知のTileまたはTile対応デバイスをスキャンすることができるようになる。同社によると、この新技術を利用するためには、ユーザーがTileの所有者であったりTileの発見ネットワークに加入している必要はない。また、iOSとAndroidの両方で誰でもアクセス可能だ。

Scan and Secureを利用するには、最新バージョンのTileアプリが必要。また、Bluetooth、Location、Location Services、Precise Locationをモバイルデバイスで「オン」にしておく必要がある。Tileによると、この機能を使用するために、以上の設定やその他の許可設定を変更する必要がある場合は、モバイルアプリ内でそれを促す表示が出るという。

画像クレジット:Tile

アップデート後、新規ユーザーは、アプリのサインイン画面の右上にある「Scan」アイコンをタップすると、この機能にアクセスできるようになる。既存のユーザーも、アプリの設定から「Scan and Secure」にアクセスすることができる。

スキャンのプロセスには、ユーザーの近くにあるTileデバイスを見つけることを可能にするような「正確な場所を探す」ツールは含まれていない。Scan and Secureを機能させるためには、ユーザーは一定の距離を歩くか車で移動する必要がある。Tileによると、フルスキャンを完了し、正確な結果を出すには、連続でも最大10分かかる。家の中をただ歩いている場合や、公共交通機関の中など、近くにある他のTileを検知してしまうような人混みでは機能しない。

スキャンの結果は、完了するとアプリに表示される。ユーザーは、その結果を法執行機関に提出するために保存しておくことができるとTileは助言する。同社は、ユーザーが複数のスキャンを実行することが望ましいと指摘する。スキャン中に一時的に通過したデバイスや、実際に一緒に移動していたデバイスの可能性を排除するためだ。また、スキャンの画像を使って、見た目でデバイスの位置を特定することも提案している。残念ながら「正確な場所を探す」機能はないため、巧妙に隠れたデバイスを見つけられないユーザーもいるだろう。

画像クレジット:Tile

同社は、ストーカー行為などの犯罪行為に使われたデバイスの所有者を特定するために、裁判所命令を通じて法執行機関と協力するとしている。

TileのScan and Secure機能は、Apple(アップル)が提供するAirTagの安全性を確保するためのツール群ほど包括的なものではない。Appleは、AirTagがストーカー行為やカージャックに利用されたという多くの報告を受け、AirTagsとFind My networkをアップデートし、警告とアラートを強化した。これには、Appleがストーカーを特定し、そのデータを警察と共有することができるというストーカー予備軍への警告や、ストーカー被害者の可能性を示す詳細で先を見越したアラートなどが含まれている。さらにAppleは、今後のアップデートにより「正確な場所を探す」機能や大きな音が鳴るアラートを使って、一緒に移動しているAirTagの位置を特定できるようにすると述べた。ゆくゆくは、スピーカーを無効にしたデバイスを見つけることができるようになるという。

Scan and Secureは、Tileモバイルアプリのユーザーを対象に今後数週間かけて徐々に提供されるが、Tileアカウントの有無にかかわらず、iOSおよびAndroidのすべてのユーザーがアクセスできるようになる予定だ。

同社は、この新機能について、安全の専門家に相談したと述べている。専門家らは、ユーザーが自身でスキャンができることは有用な機能だと助言した。特に、ストーカー被害者の70%近くが加害者を知っており、その多くが被害者のパートナーであることもわかっている。

「例えば、家庭内暴力の被害者がパートナーと別れる準備をしている場合、最も安全な時間や場所を選んで、自分の位置を追跡できるデバイスがあるかどうかを前もって確認できるのは便利です」とドメスティック・バイオレンス撲滅全国ネットワークのセーフティ・ネット・プロジェクト・ディレクターであるErica Olsen(エリカ・オルセン)氏は話す。「安全性を高めるには、コントロールを彼らの手に委ねることが重要です」と同氏はいう。

ストーカー問題とは関係のないプライバシーに関する懸念が、ここ数カ月Tileを悩ませてきた。Tileの新しい親会社であるLife360が、顧客データを位置情報仲介業者に売っているとの報道があったからだ。調査の結果、Life360は販売を終了すると述べた

Tileは、他の専門家や支援団体と協力し、時間をかけて安全機能をさらに向上させていくとしている。

画像クレジット:Tile

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

アパレル事業者向けクラウドを展開するpark&portがプレシリーズAファーストクローズとして8000万円調達

アパレル・ライフスタイル製品事業者へ向けた業務クラウド「PORTUS CLOUD」(ポルタスクラウド)を展開するpark&portは3月17日、プレシリーズAラウンドのファーストクローズとして、第三者割当増資による8000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、新規投資家のHIRAC FUND(マネーフォワードベンチャーパートナーズ)、BDJキャピタル。調達した資金は、プロダクト開発および拡大に向けた人材採用にあてる。引き続きセカンドクローズへ向けて動き、必要資金を調達する予定。

PORTUS CLOUDでは、アパレル事業者の中心的業務が「商材」にひも付いていることに着目し、商材情報のデジタル化を起点とした業務効率化・フローのデジタル化を実現させたという。park&portによると、アパレル業界は、消費者の趣味嗜好が多様化していることを受け、今後小売企業はより細分化し、商材品種も増えると見ているそうだ。PORTUS CLOUDでは、そうした商材情報をデジタル化することで既存業務を効率化するとともに、リソースの最適が図れるとしている。さらにデジタル化した商材情報をアセットとした、新しいビジネスの可能性も切り開く。

park&portは、「自分のスキを手に取れる世界の実現」をパーパスに据え、「ファッションプロダクトの流通最適化」をミッションとして掲げるスタートアップ。アパレル業界出身の代表とITベンチャー出身の共同創業者により、2019年4月に設立された。PORTUS CLOUDの開発と運営を事業として展開している。

セキュリティライブラリーwolfSSLが耐量子計算機暗号(PQC)に対応、組み込み機器で通信が可能に

セキュリティライブラリーwolfSSLが耐量子計算機暗号(PQC)に対応、組み込み機器で耐量子計算機暗号による通信が可能に

米国ワシントン州を拠点に組み込みシステム向けに軽量なセキュリティライブラリーを提供するwolfSSLは3月16日、主力製品の組み込みシステム向けセキュリティライブラリー「wolfSSL」が耐量子計算機暗号(PQC。耐量子暗号、ポスト量子暗号とも。Post-quantum cryptography)に対応したことを発表した。これにより、wolfSSLライブラリーを組み込んだ製品は、インターネットセキュリティーの標準プロトコル「TLS」上で、アプリケーションに変更を加えることなく、ポスト量子暗号による通信が可能になる。

現在、米国標準技術局(NIST)では、本格的な量子コンピューターの時代を見据えた耐量子計算機暗号の国際標準化を進めている。その候補として最終的に絞り込まれた技術のアルゴリズムを、オープンソースソフトウェア(OSS)プロジェクト「Open Quantum Safe」(OQS)が「liboqs」ライブラリーとして提供しており、wolfSSLはこれを実装し、組み込みシステムで利用できるようにしたということだ。

すでに、現在提供されている最新バージョン「wolfSSL 5.2.0」で耐量子計算機暗号に対応している。TLSで試すサンプルプログラムとその使用法の説明は、「wolfSSLのポスト量子暗号対応」で公開している。

デジタル開発から真に恩恵を受けるのは誰か?

TechCrunch Global Affairs Projectは、テクノロジー部門と世界政治のますます複雑になっている関係を検証する。

国際的開発は、ほぼすべてのセクターと同様に、問題をコード化できると考えている技術者たちの関心を集めており、開発の実践者たちが彼らを助成している。USAID(米国際開発庁)からBill & Melinda Gates Foundation(ビル&メリンダ・ゲイツ財団)、国連に至るまで、デジタル開発プログラムの数は急増の一途をたどっている。いくつかの取り組みは非常に有益であるが、謳い文句から私たちが期待するような効果はないと考え得る理由も存在する。場合によっては、それらは能動的な有害性を現すことがある。

デジタル開発にはある程度の有望さがある。貧しい人々にデジタルプロダクトとサービスを提供することは、間違いなく一部の人々を貧困から救い出すであろう。しかし、デジタル開発は多くの場合、妥協のない善として描かれているが、しばしばその代償が見過ごされている。データは今や世界で最も価値のあるコモディティであり、未開拓のデータの最大のソースは、まだインターネットに接続していない30億人の人々である。欧米の開発主体がこれらの人々をデジタルサービスと接続する際、人々は自分たちのプライバシーやデータを、それらを収益化しようと躍起になっているテック企業のなすがままにしている。表向きは貧困削減を目的とするイニシアティブが、一方でテック企業を豊かにし、彼らが社会的弱者のデータから利益を生み出すことを可能にもしているという矛盾が、デジタル開発の中心に存在する。

一部の向きはこのことを、貧困から人々を救い出すための許容可能なトレードオフであると考えるかもしれない。しかし、こうした人々の生活のあらゆる側面からのデータ生成は、データに基づく差別の正当化を生むことや、大手テック企業による地元企業の弱体化を促すことを通じて、開発イニシアティブの有効性を低減し、他者を貧困に閉じ込めてしまう可能性もある。

デジタル金融サービスが、この原動力への窓を呈している。モバイルマネー口座を通して支払われることも多い小口融資、いわゆる「マイクロローン」は、貧困層に資金を提供する方法として一般化している。Grameen Bank(グラミン銀行)の創業者であるMuhammad Yunus(ムハマド・ユヌス)氏がマイクロローンにおける功績で2006年にノーベル平和賞を受賞しているが、最近のエビデンスは、マイクロローンが貧困の減少に寄与していないことを示している。

多くのランダム化比較試験において、マイクロローンは国や大陸にわたって貧困にほとんど効果をもたらしておらず、単に現地の銀行やコミュニティメンバーからの借入の代用となっている可能性があることが確認されている。バングラデシュのいくつかの村では、マイクロローンにより脆弱なコミュニティで負債が増大し、一部の人々が土地を失うという事態も生じている。

このような状況にもかかわらず、デジタル金融サービスは、手数料や投資機会、そして人々の消費習慣の価値あるデータを生み出すという側面を背景に、活況を呈している。マイクロクレジットは今では、2億人を超える人々に融資を提供する600億ドル(約6兆9538億円)規模の産業に成長している。米国と中国の投資家はアフリカのデジタル金融サービス企業への出資比率を2倍超に増やしており、デジタル金融サービスへの投資は現在、アフリカのテック企業への投資総額の60%を占めている。

テクノロジーエバンジェリストの予測をよそに、デジタル金融サービスへの投資の増加が相応の貧困削減を導く兆候はない。それどころか、金融サービスのデータが個人の信用評価に利用されており、アルゴリズムに欠陥を抱えた意思決定に基づいて、貧困層の信用取引へのアクセスを拒否し、経済的排除を悪化させている。一方で、現金給付のようなより効果的な金融サービスソリューションでは、収益性の高い利払いが得られないことから、リソースが減少している。

重大な欠点があるのはデジタル金融サービスだけではない。最近、デジタル開発の推進者たちは、政府のサービスに人々をつなぐ手段としてデジタルIDの採用を推進している。その中で最大かつ最も賞賛されている取り組みは、インドのAadhaar(ヒンディー語で「財団」)と呼ばれるデジタルIDシステムで、指紋と目のスキャンを記録することで人々にデジタルIDを割り当てるものである。2009年以降、AadhaarでデジタルIDを付与されたインド人は12億人を超える。

Aadhaarの最も重要な支持者の1人はBill Gates(ビル・ゲイツ)氏で、同氏はこのプログラムを他の国々で再現することを目的に、世界銀行へ資金を提供している。ゲイツ氏はAadhaarを「驚くべき資産」と称しており、また「それ自体はプライバシー問題を引き起こさない」し「富裕国でさえこれまでいかなる政府も行ったことがない」ものだと述べている。

だが、ゲイツ氏は間違っている。Aadhaarは、インドの政府機関から何百万人もの人々を排除している。Aadhaarへの登録には身元証明と住所証明が必要であり、登録者の99.97%がすでに十分な本人確認を受けていると政府の記録が示していることは驚くに値しない。Aadhaarで初めて身元が証明された人も少数いるが、安定したインターネットアクセスが困難な国では、デジタルIDは信頼できないものである可能性がある。残念なことに、Aadhaarのデータベースは粗雑であることで知られる。「指紋認証エラー」が多発しており、技術の欠陥のために指紋で身元を確認できない人が30%にも上る。インドでは、Aadhaarシステムの欠陥の結果、100万人を超える子どもたちが学校への入学を拒否され、150万人の人々が政府の給付金を受けるためのアクセスを失っている

Aadhaarはまた、インドのテック企業向けに大量の価値あるデータを生成している。つまり、こうした企業は、固有のID番号を使って個人の金融活動を追跡したり、それをサードパーティに販売することが認められており、ひいてはターゲット広告の制作や、個人の保険やローン審査へのデータ利用にもつながっている。2018年にインドの最高裁判所は、民間企業がAdhaarのデータを販売することは違憲であるとの判決を下したが、インド中央政府はすぐに法律を改正してこの決定を回避した。プライバシー活動家のUsha Ramanathan(ウーシャ・ラマナサン)氏は「データは新しい黄金であり、Aadhaarはそれを手に入れるためのツールとなる」と述べている

Aadhaarの例が示すように、デジタル開発イニシアティブのユーザーを保護する十分な防護柵がないことが多い。世界の最貧国の大半はデータ保護法やプライバシー法を持たず、多国籍企業による監視やデータ抽出の対象となっている。デジタル開発の実践者たちは、プライバシーを重視するデジタル開発の原則のようなベストプラクティスに従うことで、これらの国でも倫理的に仕事を遂行できると主張する。これは実質につながる根本的な原動力を見逃している。デジタル開発の中核的な信条は「デジタルビジネスに対する規制の合理化」であり、このことは、現地企業に対する適切な保護がない国において、多国籍企業に有利に働く。

さらに悪いことに、大手テック企業は一貫して、より徹底したデータ保護法を施行する取り組みを世界中で妨害してきた。例えば、ケニアが米国と自由貿易協定を交渉する中、Amazon(アマゾン)とGoogle(グーグル)は米国政府に対し、ケニアの2019年データ保護法に直接違反する形となる、国境を越えたデータの流れを自由化する方策を盛り込むよう働きかけている。このような動きを通じて、AmazonとGoogleは、個人の財務データを分析して新たなビジネスチャンスを得ようとする競争において、地元企業をしのぐ力を手にすることになる。ケニア政府は個人のデータを現地に保管する要件を維持しようとしているが、バイデン政権はこれらの企業を支持する姿勢を見せており、ケニアが大手テック企業の要望に同意するまで、貿易協定が頓挫する格好となっている。

適切なデータ保護と、データの最小化を求める措置がなければ、デジタル開発プログラムの利用者は危険にさらされる。つい先月(2022年1月)には、Red Cross(赤十字社)がハッキングを受け、50万人の脆弱な人々の機密情報が盗まれたことが明らかにされた

テック業界の支援者たちは多くの成功例を主張するかもしれないが、彼らの勝利主義は確かなエビデンスに代わるものではなく、多国籍企業の選好を地域社会の選好の上に置くことを正当化することはできない。基本的な現実は、デジタルサービスだけでは世界の貧困を解決することはできず、それが偶発的な被害につながることがあまりにも多いということである。もしテック業界のリーダーたちが、本当に世界の貧困を終わらせたいのであれば、もっと直接的な方法を考えることもできるはずだ。つまり、彼らの年間利益の半分に満たない額を再分配することで、世界の貧困を根絶するために必要な2000億ドル(約23兆1794億円)を20年間にわたって提供できるのである。デジタル開発の実践者は、テクノロジー企業の利益を拡大するのではなく、再分配することを推奨すべきである。

編集部注:Kevin Klyman(ケビン・クライマン)はテクノロジー研究者であり、国連のデータ保護ポリシーを執筆した経験もある。Human Rights Watch、San Francisco Chronicle、Campaign to Stop Killer Robotsに寄稿している。

画像クレジット:blackdovfx / Getty Images

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(文:Kevin Klyman、翻訳:Dragonfly)

飲食店向けSaaS「delico」を手がけるフードテックキャピタルが1.4億円のシード調達、事業強化と加盟開発事業加速

飲食店向けSaaS「delico」(デリコ)をはじめ飲食店向けテック事業を展開するフードテックキャピタルは3月16日、シードラウンドとして合計1億4000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、西山知義氏(ダイニングイノベーション創業者)など複数の投資家。調達した資金は、主力事業であるdelicoの開発や、加盟開発事業の成長にあてる。主にシステム開発と人材採用に充当するという。

delicoは、フードデリバリーサービスの注文一元管理サービス。コロナ禍もあって、飲食店から「各店舗の業態を増やしたい」「導入プラットフォームを増やしたい」というニーズが増えているものの、フードデリバリーごとに管理端末が必要となってしまう「タブレット地獄」や、現場・本部における管理が煩雑になるという課題により実行が難しくなっている。

delicoはその課題解決策を目指しており、1台のタブレットですべてのプラットフォームからオーダーを受注可能となる。同様に、1台の専用プリンターでオーダー伝票の印字を行え、配達スタッフへの受け渡しまでがスムーズに進められる。マネージャー機能により、一元管理された売上の可視化も可能となっており、スピード感のある業態改善などを実現する。飲食店向けSaaS「delico」を手がけるフードテックキャピタルが1.4億円のシード調達、事業強化と加盟開発事業加速

加盟開発事業は、同社がダイニングイノベーションと「七宝麻辣湯」(チーパオマーラータン)のフランチャイズ加盟開発を目的とする業務提携を行っていることから進めているもの。七宝⿇辣湯の加盟店候補先との相談窓口として、物件審査および出店に関わる事業計画の策定・加盟契約締結をサポートしている。

2020年12月設立のフードテックキャピタルは、「テクノロジーで食の未来をつくる」をミッションに掲げ、食業界のプロ、テクノロジーのプロ、ビジネスのプロが三位一体となって飲食業界を変革すべく事業を展開。テクノロジーとデザインを融合し、30年後の日本の食がより良いものになるために、食の未来を作るとしている。

一般向け製品の技術的優位性が大国間競争に直結、シリコンバレーは原点に立ち返る

TechCrunch Global Affairs Projectは、テクノロジー部門と世界政治のますます複雑になっている関係を検証する。

国家間で繰り広げられる飽くなき競争は、グローバル化とともに加速している。冷戦時代、米国とソ連はイデオロギーや軍事面での競争こそしていたものの、消費財をめぐる競争をすることはなかった。米国人はソ連製のトースターに興味がなかったのである。

現在ではその境界線が曖昧になり、各国は経済全体や武力などあらゆる領域において優位性を求めて戦っている。消費者向け製品や企業向け製品の技術的優位性は、空、陸、海、宇宙、サイバーをめぐる大国間競争に直結しているのである。

スタートアップの創業者やエンジニアたちも、この戦いにおける自身の役割を認識するようになっている。彼らはジョージ・W・ブッシュのような好戦的愛国主義者ではなく、自由民主主義を支持し、最前線にいる人々が仕事をするための最良のツールを手に入れられるようにしたいと考えているのである。

これは、ベトナム戦争へのプロテストに端を発したベイエリアの反戦感情が、アフガニスタン戦争やイラク戦争へのプロテストにまで発展した過去数十年とは異なる大きな変化である。ここ数年、国家安全保障関連の契約に反対する抗議活動が目立っていたが、現在では米国の国土や同盟国を敵から守るために防衛技術を開拓するという、シリコンバレー本来の文化が戻りつつある。特に中国の台頭に立ち向かうことが、偏ったワシントンの中で数少ない超党派的な立場になっていることもあり、防衛技術に関しては、国防総省や同盟国とだけ仕事をしたいと考える人が増えているのである。

防衛技術に携わろうとしているエンジニアにとっては、あらゆる分野において課題とチャンスが存在する。空中分野では、中国が極超音速ミサイルの実験に成功したと言われているが、情報機関の予測によると米国がこの技術を手に入れるのはまだ何年も先のことだと考えられている。極超音速ミサイルの脅威的な移動速度に加え、センサーによる探知が不可能であることから、現在の米国の防空システムの多くはなす術を失ってしまうだろう。

まったく新しい空中の脅威も出現している。安価で暴力的なドローンの群れは、人間が操作することなく迅速に展開することが可能だ。米国のFrank McKenzie(フランク・マッケンジー)将軍は最近、倉庫型小売店にちなんでこういったドローンを「コストコ・ドローン」と呼んでいるが、わずかな防衛予算しか持たない国でさえも、武装した米軍を圧倒することができるようになるだろう。

同様に海上でも、何千人もの船員が乗船する高価な大型空母から、小型で安価な自律型の船舶へと移行している。どの政府(または非国家主体)でも、重要な海上通商航路を簡単に攻撃することができ、防御は非常に困難になっている。また、海の底には世界経済の大部分を担っている海底インターネットケーブルが存在し、敵はそれを攻撃する能力を日々確実に高めつつある。

宇宙空間では、ロシアが数週間前に個々の衛星を破壊する直撃型の対衛星兵器の実験を行っている。このような攻撃を受ければGPSや全世界の通信(およびそれに依存する商業、輸送、物流)が壊滅的な打撃を受けるだけでなく、地球近傍の宇宙空間の大部分が破片によって人工衛星を使用できなくなる可能性がある。こういった兵器は検出が難しく、また既存の防衛技術では阻止することが困難になっている。

最後に、サイバー領域では過去10年間にわたってサイバーセキュリティ分野に何百億ドル(何兆円)もの資金が投入されてきたにもかかわらず、大規模なサービス妨害や情報流出を行う身代金要求やスパイ行為に対して、企業や政府は非常に脆弱な状態を改善できないでいる。SolarWinds(ソーラーウインズ)の大規模なハッキング事件から1年が経過したが、国家主導のサイバー戦争を防止・防衛する方法はまったく確立されていない。

こういった領域の課題すべてが未解決であり、この問題に立ち向かわなければ、米国は経済的にも政治的にも軍事的にも莫大な損失を被ることになるだろう。

幸運にも、複雑で困難な課題こそが、一流のエンジニアやスタートアップの創業者たちが取り組みたいと感じる問題なのである。米国の防衛力が敵の挑戦に対応できていないという証拠が次から次へと出てきているにもかかわらず、ワシントンの官僚たちがいつも通りの仕事を続けていることに対しては、文民の防衛担当高官からも批判の声が上がっている。

今日の防衛世界では、敵というのは我々自身のことである。スタートアップは今、国防総省の時代遅れの調達システムに阻まれている。我々はこの官僚主義を即座に回避し、最高の技術ではなく最高のロビイストを持つ、凝り固まった独占企業や寡占企業に打ち勝つ必要がある。つまり国内の大手防衛関連企業として知られる巨大な「プライム」を排除しなければないのである。今では動きが鈍く、まったく競争力のない選手たちを、かつては偉大だったからと言って米国を代表してオリンピックに参加させるようなことはない。確実に負けるからである。それなのになぜ我々は、防衛という重要な分野でこのようなことが起きているのを黙って見過ごしているのだろうか。

米国防総省は、スタートアップを巻き込むためのさまざまなプログラムを導入している。こういったプログラムの意図は良いのだが、ポイントがずれている。国防総省はこれまでの調達方法を一新し、現在の敵が実際に使用している武器に合わせた防衛力を再構築する必要がある。1機1億ドル(約115億円)以上もするF-35統合打撃戦闘機が「コストコ・ドローン」に打ち負かされる世界だ。米国の長年にわたる防衛面での優位性が、各国に非対称的な革新をもたらし、今では彼らが先を行っているのである。

幸いなことに、非対称な競争というのはシリコンバレーやスタートアップの創業者たちが日々行っていることである。豊富な野心と限られた予算を持つ彼らは、少ない資源でより多くのことを行うという方法を繰り返している。凝り固まった既存企業に立ち向かい、その弱点を見極め、それを容赦なく利用して競争上の優位性を生み出すのが彼らの仕事である。我々は、米国の防衛を強化するための技術、ノウハウ、人材をすでに有しており、あとは国防総省がやる気を起こし、最も競争力のある米国のスタートアップに積極的に大型契約を発注するようになればいいのである。

最も重要なのは国防総省の変革だが、米国以外の各国にも自由民主主義国を防衛する方法はある。ヨーロッパには同大陸の防衛に応用できる才能と技術が非常に豊富に存在する。しかし欧州の防衛システムは、技術的には「バベルの塔」であり、相互運用性に大きな課題を抱えている。次世代技術のために防衛基準を合理化することができれば、米国だけでなく多くの同盟国にも利益をもたらすことができるだろう。

今日の米国は、競争優位性において近年稀に見るほど大きな課題に直面しており、武力のあらゆる領域と経済分野で優位性が損なわれている。敵はこれまで以上に激しく弱点を突き、それは悪化をたどる一方だ。しかし、米国の価値観と影響力の核心には、新しいアイデア、新しい人々、新しい機会に対する開放性という巨大なソフトパワーがある。中国やロシアのような敵対国の権威主義に対抗し、米国の開放的な価値観を何としても守らなければならない。他のすべてのセクターが今後も安心して米国を頼りにするためにも、シリコンバレーが取り掛かるべき次なるセクターは、防衛技術でなければならないのである。

編集部注:本稿の執筆者Josh Wolfe(ジョシュ・ウルフ)は、マルチステージのベンチャーキャピタルであるLux Capitalのマネージングパートナー兼共同設立者で、宇宙や先端製造からバイオテクノロジーや防衛に至るディープテック企業への投資を行っている。

画像クレジット:Patrick Nouhailler / Flickr under a CC BY 2.0 license.

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(文:Josh Wolfe、翻訳:Dragonfly)

ペンタゴンとシリコンバレーのパートナーシップを再起動

TechCrunch Global Affairs Projectは、テクノロジー部門と世界政治でますます複雑になる関係を検証した。

2021年11月15日、ロシアは警告なしに対衛星ミサイルを地球低軌道に発射し、自国の衛星を破壊した。この際に生じた破片やデブリは、国際宇宙ステーションに滞在する宇宙飛行士を危険にさらしただけでなく、GPSや電力網など、地球上の重要なインフラを支える衛星網に、今後何年にもわたって深刻なダメージを与える可能性がある。

その1カ月前には、中国が地球を1周する極超音速ミサイルを発射したが、これは現在の技術で防御することは不可能だ。

これらの出来事は警鐘である。米国の技術的リーダーシップは保証されておらず、新たな技術の進歩が我が国の安全保障に対する新たな脅威を生み出す現在、私たちがパートナーや同盟国とともに発展させて維持してきたグローバルスタンダードは書き換えられつつある。

しかしながら、これらの新たな脅威は決して乗り越えられないものではない。むしろ、人工知能、宇宙、サイバーセキュリティ、自律システムといった新たな技術分野の最前線で活躍する起業家や投資家にとっては、これらの出来事は明らかに呼び水となるはずである。

非対称戦争(双方の軍事力、戦略や戦術が大きく異なる戦争)やサイバー戦争がもたらす新たな課題に対応するためには、60年以上前にシリコンバレーや現在の我が国の技術的リーダーシップを構築した際と同じように、米国国防総省、学界、産業界が協力して取り組む必要がある。インターネットや半導体が生まれ、ヒトゲノムのマッピングも実現したのも政府の投資によるものだ。

筆者は商業技術分野で30年を過ごしたのちに、過去50年にわたる米国の経済力と世界的なリーダーシップの基盤となった関係を再構築するために国防総省に移籍した。

国防総省とシリコンバレーの関係はなぜ復活させる必要があるのか?

国防総省は、戦争の性質の変化に対応するだけでなく、必要なビジネスプロセスの改革を生み出すテクノロジーの近代化策を積極的に推進している。例えば、商業宇宙では、ユビキタスなインターネットアクセスを提供するための小型衛星や、さまざまな(宇宙の)エリアに積荷を届けるための迅速な打ち上げ能力の開発がすでに行われていて、自動運転車は交通手段を提供し、ドローンの大群が石油パイプラインの監視や商業ビル、インフラの検査を行っている。

これらの革新技術はすべて2つの側面をもつ技術で、軍事的な用途に使用できる。このソリューションをネットワーク化するには、費用対効果が高く、安全で拡張性のあるグローバルなクラウドオプションが必要である。企業と同様、軍も膨大なデータに含まれるインサイトを活用し、AIや機械学習で予測能力を実現し、より迅速で優れた意思決定を行う必要がある。

防衛力の改善には、同様にビジネスプロセスの改革も重要である。国防総省のビジネスプロセスのほとんどは1960年代に確立され、戦車や艦船、飛行機などの大型兵器プラットフォームの構築に重点が置かれていた。商業部門が急速に進歩したことで、軍の技術的優位性は高まっているが、国防総省は、継続的に購入している大型兵器プラットフォームを補完する多くの技術を購入する必要がある。

これからの10年が、技術の優位性をめぐって各国が激しい競争を繰り広げる時代となるのは確実で、多くの民間企業にとっては、国防総省と協力して複雑な問題に取り組むことのできる初めての機会となるはずだ。

例えば、アセット(資産)を空、宇宙、海中、陸上、サイバー空間に持つ国家安全保障機構は、事実上、世界最大のセンサーの集合体である。しかし、これまでのところ、これらのセンサーはシームレスに統合されるようには設計されておらず、通常はサイロ状に構築・運用されているので、アップデートや、共通の運用計画の作成は難しい。宇宙にモノのインターネット(IoT)、すなわちグローバルなセンサーネットワークを構築することで、リアルタイムの状況把握、作戦決定を支える復元力のある通信インフラ、そして小型かつ多数で機敏な海・陸・空・宇宙システムの自律部隊の基盤が提供される。

これらのシステムは膨大な量のデータを生成するので、ストレージ、管理、分析の強化が必要である。技術の近代化とは、情報を収集、分析、理解し、国家安全保障のためにより良い意思決定を行うためのさらに優れたツールを構築することを意味する。また、脆弱性に対するサイバー攻撃からシステムを保護する高度な手段も必要である。そして、よりクリーンなエネルギーを利用してこれらの新機能を物理的に実現する必要がある。

これらのテクノロジーを開発しているのは民間企業だが、国防総省は、国家安全保障を強化し、(国家としての)商業的な成功を促進するために、これらを迅速に評価し、効率的に調達する能力を高めなければならない。このビジョンを実行すれば、これまで以上に多くの企業が、21世紀の国家安全保障を強化するための一世一代の経済的機会に参加できるようになる。

国防イノベーションユニット:国防総省におけるスタートアップ

アッシュ・カーター国防長官(当時)は、最高の技術を軍に提供するためには、制度の壁を取り払い、商業部門からフレッシュなアイデア、技術、方法論を取り込む必要があると認識していた。2015年、彼はこのつながりを再構築するために「Defense Innovation Unit(国防イノベーションユニット、DIU)」の開設を発表した。DIUは、革新的で迅速な契約メカニズムを実現し、国防総省とのビジネスをより手軽に、(民間企業にとって)より望ましく、より収益性の高いものにするために設計されたものである。

すでにDIUでは、ハードウェアやソフトウェアのライフサイクルにおける重要なポイントでの継続的な投資や、試験施設への継続的なアクセスを提供し、民間企業に防衛分野でも成長するための道筋を示すといったコラボレーションがいかに強力であるかを証明している。このコラボレーションでは、製品の開発の加速、企業の成長の促進、そして投資家に新しい市場へのアクセスを提供することが可能である。

しかし、主要技術における米国の優位性を維持するには、60年来の買収システムを変える必要がある。現在では、国防総省は、多くの技術において、先駆者でも主要投資家でもマーケットメーカーでもない。国防上の問題を解決するためには、国防総省は、自らが開発したものではない商業技術を適応・統合するファーストフォロワーになる必要がある。DIUは次の3つの分野での活動を提唱してこの目標に取り組んでいる。

  • 防衛仕様の要求に縛られた軍用のカスタムソリューションを作るのではなく、利用可能な商用ソリューションで直接問題を解決する
  • 買収を合理化し、商業的なスピードをもって機会を拡大する
  • 予算編成プロセスに柔軟性を持たせる。現在、防衛のために1ドルの支出を計画して実際に支出するまでに、最長で3年かかっている

一見当たり前のようにも思える3つの分野だが、国防計画や議会の承認など、長年にわたって確立されてきたプロセスを覆すのは容易ではない。また、(民間企業には)防衛以外にも大きな市場があるので、国家安全保障に関わる仕事に対応するサポートテクノロジー企業には、健全なビジネスケースを提示できるようにすることも重要だ。

国防総省だけ、あるいは一部の民間企業だけの参加では、変化のペースを速め、障壁を取り除くことはできない。企業、大学、政府の3者が積極的に関与し、さまざまなアイデアやアプローチを提供して、モダナイゼーションのペースを加速させる必要がある。人材の交換、製品の獲得、重要な問題についてのオープンなコミュニケーションなど、国防総省と民間企業のつながりを再構築することは非常に重要である。

国防総省のリーダーたちは、米国史上かつてない技術テクノロジーの進化の時代に生きていることを認識している。DIUは、商業的な技術と方法論を採り入れて軍の重要インフラを近代化する、という他にはない重要な役割を担っている。昔、シリコンバレーが誕生したときのように、私たちは協力して、国家の安全で豊かな未来を守ることができるはずだ。

編集部注:本稿の執筆者Mike Brown(マイク・ブラウン)は、Defense Innovation Unit(DIU)のディレクター。DIU以前は、Symantec CorporationのCEO、Quantum Corporationの会長兼CEOを務めていた。また、国防総省のホワイトハウス大統領イノベーションフェローとして2年間勤務し、中国の米国ベンチャーエコシステムへの参加に関する国防総省の研究を共同執筆している。本稿で述べられている見解は著者のものであり、国防総省または米国政府の公式な政策や立場を反映するものではない。

画像クレジット:Jeremy Christensen / Getty Images

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(文:Mike Brown、翻訳:Dragonfly)

ウクライナ発の顔交換アプリ「Reface」が反戦キャンペーンに対するロシアユーザーの反発を受け同国から撤退

Facebook(フェイスブック)、Instagram(インスタグラム)などの主要ソーシャルネットワークが最近ロシア当局にブロックされ、ロシア政府がウクライナ戦争に関わる会話を完全制御しようとする中、ウクライナ発の顔交換アプリReface(リフェイス)は、自発的にロシアから撤退した。

プーチン大統領が2月末にウクライナ侵攻を軍隊に命じて以来、同スタートアップは、自社アプリをロシア政府によるメディア検閲を回避するために使う試みを早々に決定し、ユーザーに反戦メッセージをプッシュ送信し、ロシアに対する制裁を支持するよう呼びかけた他、ウクライナで起きている荒廃の画像をアプリで表示した。さらにRefaceは、ロシア人ユーザーに向けて位置ターゲットされたメッセージを送り、戦争に反対する運動に参加するよう呼びかけた。

この反戦キャンペーンの結果、数百万件という反戦メッセージがロシアのRefaceユーザーに届けられた。米国時間3月15日のブログ記事で、約1300万件の反戦プッシュ通知が送られたとスタートアップは語った(同社によるとロシアの同アプリのユーザーは200万人程度)。

しかし、その反戦コンテンツはロシアのユーザーから直ちにネガティブな反応を受け、キャンペーンは中止され、アプリは星1つのレビューで埋め尽くされた。以下にブログ記事のグラフを載せた。

画像クレジット:Reface

Refaceのブログには、同社はロシアのユーザーのネガティブな反応を、彼らがウクライナで壊された家屋や殺された女性や子どものことを気にかけていないことの証だと解釈しつつ、中には完全に否定的とは言えない言葉もあったことを指摘した(ただし、ほとんどがネガティブであるとも言っている)。

「私たちの努力が、ロシアの国を上げてのプロパガンダと争うには不十分であったことを認識し、当社はRefaceアプリをロシアのApp Store(アップ・ストア)およびGoogle Play(グーグル・プレイ)から削除することを決定しました」と同社は書いている。3月10日以前にアプリをダウンロードした人は今も使用できるが、新規のダウンロードとサブスクリプションは無効になっている。

「ロシアの市場やロシアと何らかの関わりのあるものから、いかなる利益を上げることも当社は望んでいません。この国によるウクライナに対する残酷な戦争のために起きている経済制裁や技術的孤立の影響を、すべてのロシア人が感じるべきです」とRefaceは付け加えた。

同社CEOで共同ファウンダーのDima Shvets(ディマ・シュベッツ)氏は、ロシアからアプリを撤退する決定はRefaceだけの判断であることを明言した。

「当社はロシアのインターネット検閲による制限は受けていません」と同氏がTechCrunhに話した。「ロシアの巨大な情報キャンペーンの後、撤退を決めました。ロシアとは一切接点を持ちたくなかったからです。

画像クレジット:Natasha Lomas/TechCrunch(スクリーンキャプチャー)

これはロシアにおけるインターネット体験がウェブの主流から取り残されつつあることを示す小さな兆候の1つであり、それはロシアの銀行、著名な企業幹部、その他の組織(たとえば悪名高いInternet Research Agencyという名の荒らし軍団)に対する西側諸国の正式な制裁措置によるだけでなく、 大企業から小企業までさまざまなテック企業が自主的に市場を離れたことによるものだ。

RefaceアプリのAI利用の顔交換エフェクトは元々純粋なエンターテインメント目的であり、ユーザーは自分の顔を有名な映画シーンのセレブと交換したりしていたが、開発チームの母国ウクライナで起きた戦争は、 穏やかな気持でアプリ運用するための状況を明確かつ著しく変化させた。

「以前、Refaceユーザーは自分をジャック・スパロウやアイアンマンと入れ替えて楽しんでいました。今私たちは、自分たちをゼレンスキー大統領と入れ替え、ウクライナ国歌とともに写真に息を吹き込むよう働きかけています。今やゼレンスキー氏には カニエ・ウェストより多くのInstagramフォロワーがいます。何というタイムラインでしょう!」とRefaceは消費者の状況の変化ぶりをブログ記事に要約した。

現在同社は自社アプリを使って、ロシア外でのウクライナ支援を呼びかけるために使い続け、ユーザーに、ウクライナ大統領、Volodymyr Zelensky(ヴォルディミル・ゼレンスキー)氏の人気ビデオクリップや、ユーザーがアップロードしたウクライナ兵士の画像と顔交換できるようにしている。

Refaceは作成された親ウクライナ合成メディアに、#StandWithUkraine(ウクライナ支持)のハッシュタグを付加して、こうした支持のビジュアルメッセージをソーシャルネットワークで拡散するようユーザーに呼びかけている。

ウクライナ国土で進行している実際の戦争とともに、オンラインで同時進行する情報戦争で起きた最近の出来事として、ウクライナ大統領がオンラインで自国の戦争努力を傷つけているように見せかけるディープフェイク映像が出現した。最近、ゼレンスキー氏が降伏しているように見せる改ざん動画が、Telegram(テレグラム)、およびFacebook(フェイスブック)とロシアのライバルサービスであるVKontakte(ヴィー・コンタクテ)などのソーシャルネットワークに出回っていることがわかった。

これらの偽動画の出どころがどこなのかははっきりしていない。しかし2022年3月、ウクライナの戦略コミュニケーションセンターは、ロシアが改ざん動画を流布して、自らの侵攻に対する一般大衆の認識を操作しようとしていると警告した

関連記事:ウクライナのゼレンスキー大統領が降伏するフェイク動画をMetaが削除

画像クレジット:Efrem Lukatsky / AP

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nob Takahashi / facebook

NICTとトヨタ自動車、工場の無線通信安定化を目指す「製造現場をガッカリさせない無線評価虎の巻」実証実験で有効性確認

NICTとトヨタ自動車、工場の無線通信安定化を目指す「製造現場をガッカリさせない無線評価虎の巻」の実証実験で有効性を確認

情報通信研究機構(NICT)は3月16日、工場内での無線環境の評価方法「製造現場をガッカリさせない無線評価虎の巻」の実証実験をトヨタ自動車高岡工場の部品搬送工程において実施し、その有効性を確認したと発表した。この評価方法を利用することで、無線システムの導入を検討している現場おいて、本格導入までの検証ステップを短縮できるという。

工場の部品搬送工程では、複数の無線システムが混在し電波干渉を起こしたり、金属の遮蔽物が多い場所で人や物が動くことにより無線環境が動的に変化したりなど、設計どおりの機能が発揮されないことが多いのだが、その原因の特定には手間がかかる。そうした課題に対処すべく、NICTは2021年6月、「製造現場をガッカリさせない無線評価虎の巻」を策定した。今回の実証実験では、部品搬送機器の自動運転化のために無線システムの導入を計画しているトヨタの工場で、「情報収集」「処理」「制御」の3段階で電波環境を評価し対策を行った。

まずは「情報収集」の段階として、搬送機器に計測システムを設置し、「搬送機器と工場内のアクセスポイントとの間の電波到達距離と受信信号強度」「通信遅延と通信のパケットロス数」を調査した。すると、「無線システムが現場で必要なスペックを下回っていること」と「適切なアクセスポイントにつながらないことによるパケットロスや通信遅延があること」が明らかになった。次に「処理」の段階として、搬送機から遠いアクセスポイントを除外し、「制御」の段階として、電波強度が大きく変化する状況での通信の自動切り替えを行った。こうして、無線システムが不安定化する要素を1つずつ排除することで、安定化wp実現した。

通信の遅延時間とパケットロス数を時間ごとに表したグラフ。左は対策前。パケットロスが現れた部分では往復遅延時間が1秒を超えている。右は対策後。遅延時間は1秒以内に収まっている

通信状態を実際に測定してみると、搬送車が走行中に接続するアクセスポイントは、もっとも近くにあるものとは限らず、同じルートを走行する場合でも、毎回同じアクセスポイントを使うわけでないことがわかった。これが、通信品質の劣化を招いていた。今回は「通信遅延1秒以内」という指標を想定して評価を行ったが、通信が不安定になるとパケットロス数が増加し、遅延が1秒を超えることがあった。これは、電波が不安定になっても同じリンクを使い続けようとするローミングの特性ということだ。そこで、遠くのアクセスポイントは選択しないようにフィルタリング設定を行い、不安定なリンクは早めに手放して別のアクセスポイントを選択できるよう安定化機構を有効にするという対策を施した。

今後は、専門家がいなくても無線環境の把握とシステムの安定運用ができる可視化技術の研究開発を進めてゆくという。また、NICTとトヨタ自動車は、引き続き搬送自動化のための無線通信の安定化に取り組んでゆくとのことだ。

ミツバチを飼わずに精密発酵と植物科学で本物のハチミツを生産するMeliBio

MeliBioは、9000年の歴史があるハチミツの生産方法を一変させようとしている。同社の生産方法はハチをいっさい使わず、精密発酵と植物科学を利用する。

ハチミツ企業の役員だったDarko Mandich(ダーコ・マンディッチ)氏と、科学者でアマチュアのシェフでもあるAaron Schaller(アーロン・シャラー)氏は、全世界で100億ドル(約1兆1878億円)のハチミツ市場にサステナビリティを導入することを狙って、2020年にサンフランシスコで同社を立ち上げた。マンディッチ氏によるとこれまでのハチミツ産業は「サプライチェーンと品質管理が破綻している、最も持続可能性を欠く農業分野」だ。

マンディッチ氏の説明によると、彼の着想はWiredの記事でハチを巣箱で飼うやり方は、これまで2万種のハチの野生在来種を断ち、ハチの集団の多様性(ダイバーシティ)を失わせてきたという指摘を読んだときに生まれた。

「食べ物を持続可能にし、もっと栄養豊富にし、ハチたちをはじめ愛すべき動物たちを犠牲にしないようにするために、食品産業を変えたい」とマンディッチ氏はいう。

ただしハチの分野ではすでにBeewiseのような企業が精密なロボットを使って巣箱を自動化したり、またハチの健康管理をするBeeHeroのような企業もある。

関連記事:IoTでミツバチの動きや健康状態をリアルタイムで追跡するBeeHeroの精密受粉プラットフォーム

イスラエルのBee-ioは、同社が特許を持つバイオ技術を用いるハチを使わないハチミツ生産方法を追究しているが、しかしマンディッチ氏によるとMeliBioは、ハチを使わずに本物のハチミツを生産する最初の企業だ。製品はニューヨークの4つのレストランでテストを行い好評だった。

MeliBioのハチのいないハチミツ生産方法は、二段階になっている。まず植物科学により、ハチがどのように植物にアクセスして、蜜をつくるために何を得ているのかを理解する。

第2段階では、分子の組成を改良して製品とその大量生産を可能にする。そこに登場するのが、精密発酵だ。この精密発酵が、目的を達成するために役に立つ有機物を特定することで、食べ物にかけるだけでなく、パンなどでオーブンで焼けるようにするなどいろいろな使い方ができるようにする。

同社はこのほど570万ドル(約6億8000万円)のシード資金を調達して、外食産業やB2Bアプリケーションへの市場拡大に努めている。マンディッチ氏によると、すでにMeliBioは30社と提携しており、製品の評価事業に参加しているという。

シードラウンドをリードしたのはAstanor Venturesで、これにSkyview CapitalやXRC Labs、Collaborative Fund、Midnight Venture Partners、Alumni Ventures、Big Idea VenturesそしてHack Venturesらが参加した。

MeliBioのチーム。左からMattie Ellis(マティー・エリス)氏、アーロン・シャラー氏、ダーコ・マンディッチ氏、Benjamin Masons(ベンジャミン・メイソン)氏(画像クレジット:MeliBio)

Astanor VenturesのパートナーであるChristina Ulardic(クリスティーナ・ウラルディック)氏は次のように述べている。「MelBioの、植物科学と精密発酵を結びつけて次世代の食品技術を開発していくアプローチはすばらしい。ハチミツの商業的な生産のサプライチェーンから負担を取り除き、授粉者のダイバーシティを回復することに、ダーコとアーロンは情熱を燃やしている。そんな彼らの最初の製品にはとても感動しました」。

新たな資金は研究開発の継続と、微生物を利用する発酵工程の規模拡大、そして4月に予定している製品の正式な立ち上げに使われる。またマンディッチ氏は、正社員を年内に現在の4名から10名に増やそうとしている。14名の契約社員は現状のままだ。

同社はまだ売上を計上していないが、マンディッチ氏は製品が発売され、大手食品企業やレストランなどとの契約が実現すれば状況も変わると信じている。

次にマンディッチ氏が構想しているのは、市場規模5000億ドル(約59兆3760億円)の原材料市場に進出して、同社の精密発酵技術で未来の市場のマーケットシェアを獲得することだ。

「私たちは科学とオルタナティブな方法を利用して野生在来種のハチの負担を減らしています。ハチミツの需要は伸びていますが、私たちの方法ならハチの生物多様性を保全することができます。米国の企業は世界中からハチミツを輸入していますが、その過程はますます複雑になっており、品質も保証されていません。本物のハチミツでないこともありえます。しかし国内生産ができればサプライチェーンを単純化でき、サプライヤーは国内だけなので、納品の遅れや品質の問題もありません。MeliBioはハチミツを1日3交替、365日の稼働で生産するため、市場の他の製品と価格でも十分競合できるでしょう」とマンディッチ氏はいう。

画像クレジット:MeliBio

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

代々木ゼミナールが記憶定着のための学習プラットフォーム「Monoxer」を採用、2022年4月より一斉導入

代々木ゼミナールが記憶定着のための学習プラットフォーム「Monoxer」を採用、2022年4月より一斉導入

モノグサは3月17日、記憶定着のための学習プラットフォーム「Monoxer」(モノグサ。Android版iOS版)が代々木ゼミナール(代ゼミ)の高校生向けクラス・高卒生向けクラスに2022年度新学期の4月から一斉導入されると発表した。

代ゼミは、これまで紙のプリントを活用し実施していたチェックテストをMonoxerを活用してデジタル化することで、効率化を図るという。また、Monoxerによって生徒がスキマ時間を有効活用した学習が実施できるようになる。また、担任や担任スタッフが生徒個別の学習状況データを基に、より適切な指導ができる体制を構築する。

2022年度から、高校1年生となる生徒を対象とした、新課程対応の代ゼミ講座「レベル別対策講座」と連動したチェックテストが実施される。

Monoxerは、代ゼミの「代ゼミ高校メイト会員」(高校生)、「大学受験科生」「代ゼミ高卒メイト会員」(高卒生向け)に提供。活用方法は下記を予定している。

  • 代ゼミ講座連動チェックテスト、オリジナル教材の活用:入試で必要な英単語や古文単語などが覚えられる代ゼミオリジナル教材をはじめ、代ゼミ講座連動型のチェックテストをMonoxer上にBook(問題集)として搭載。知識分野の記憶定着と、代ゼミの講義内容についての理解度確認および復習が、自分のスマートフォンやタブレット端末で行える。スキマ時間を有効に活用し、効率的に学力を向上させられる
  • 「学習計画機能」活用:Monoxerの「学習計画機能」により、覚えたい事項の期間を設定するだけで日次の学習計画が自動設計される。これにより、各生徒に最適化された学習計画が作成され、知識分野の記憶定着を補助する
  • 「小テスト機能」活用:Monoxerの「小テスト機能」により、これまで主に紙のプリントで実践されていた代ゼミ講座連動のチェックテストをMonoxer上で効率的に実践できる

Monoxer上で学習できる代ゼミオリジナル教材は、幅広い科目に対応しているという。具体的には、国語(現代文、古文、漢文)、数学(IA、IIB、IIIC)英語、理科(化学、物理、生物、地学)、社会(日本史、世界史、地理、倫理、政治経済、現代社会)の搭載を予定している。また教材の種類としては、インプット中心の教材とアウトプット中心の教材の2種類を用意する。

Monoxerは、あらゆる知識を確実・最小限の負荷で身につけられる「記憶のプラットフォーム」。学校や塾といった教育機関を中心に、全国3900以上の教室で導入されているという。

ユーザーは、英単語、漢字、歴史、数式など、記憶したい知識をインポートすると、Monoxerが記憶定着のために最適な問題を生成。また、Monoxerがリアルタイムでユーザーごとに学習内容を解析し、知識の定着度合いを可視化する。その情報を基に、出題する問題の難易度・頻度をユーザーに合わせて自動で最適化する。

マセラティ、2025年までに6車種の電気自動車を市場に投入

イタリアの高級車ブランド、Maserati(マセラティ)は、2025年までにラインナップの各モデルに電気自動車バージョンを導入し、2030年までには内燃エンジンの廃止を計画している。これによって同社は、Aston Martin(アストンマーティン)からVolvo(ボルボ)まで、電気自動車への移行を公約に掲げる自動車メーカーの長いリストに加わる最新のブランドとなった。

マセラティは2023年に、3車種のバッテリー駆動電気自動車を発売する予定だ。次世代型の2ドアクーペ「Granturismo(グラントゥーリズモ)」とコンバーティブルの「Grancabrio(グランカブリオ)」、そして新型ミッドサイズSUV「Grecale(グレカーレ)」のEVバージョンである。さらに2025年までに、スーパースポーツカー「MC20」と、次世代にモデルチェンジする4ドアセダン「Quattroporte(クアトロポルテ)」およびSUV「Levante(レヴァンテ)」にEVが登場する。つまり、2025年までにマセラティは、全部で6車種のEVを提供することになるわけだ。

3月22日に発表イベントが予定されているグレカーレは、現行のレヴァンテに続くマセラティのSUVだ。レヴァンテは、現在マセラティのラインアップで唯一のSUVだが、同社の売上の60%近くを占めている。グレカーレは、EVと高級SUVに対する消費者の需要の高まりに対応することで、市場のスイートスポットを突く可能性がある。

マセラティのクルマは、今後もイタリアで生産が行われる予定だ。マセラティの親会社で、Fiat-Chrysler(フィアット・クライスラー)とPSA Group(PSAグループ)の合弁会社であるStellantis(ステランティス)は、積極的に電動化を推進している。このコングロマリットは、2030年までに全世界で500万台のEVを販売するという目標を掲げ、そのために75車種以上のバッテリー電気自動車を用意する計画を立てている。

マセラティのDavide Grasso(ダヴィデ・グラッソ)CEOは、これらマセラティの新モデルが親会社の他の車種とプラットフォームを共有するかどうかについては明言を避けた。

「もちろん、ステランティスの中で、私たちは多くの機会を持つビッグファミリーの一員です」と、グラッソ氏は語った。「マセラティがパフォーマンスとラグジュアリーの象徴であることは明らかであり、それは将来も確実に守られていくはずです。電動化に向けて、マセラティでは最高の航続距離とパフォーマンスの実現に焦点を当てた専用アーキテクチャを、より多く目にすることになるでしょう」。

グラッソ氏によると、マセラティは今のところ、Formula One(フォーミュラ・ワン、F1)から距離を置き、自動車メーカーがバッテリー技術をテストするために役立つ電気自動車レースシリーズのFormula E(フォーミュラE)に集中するという。「今はフォーミュラ・ワンの参戦は計画していません。しかし、今後も絶対にないとは言いません」。

画像クレジット:Maserati

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(文:Jaclyn Trop、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ウクライナのゼレンスキー大統領主演ドラマ「国民の僕(しもべ)」、米ネットフリックスが再放送

ウクライナのゼレンスキー大統領主演ドラマ「国民の僕(しもべ)」、米ネットフリックスが再放送―同氏を大統領に押し上げた作品

米ネットフリックスが、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が主演を努めた人気ドラマ「国民の僕(Слуга народу:Servant of the People)」の米国における再配信を開始しました。

国民の僕(しもべ)は、さえない歴史教師の政治批判が隠し撮りされ、ネットでブームになったことから、あれよあれよという間に大統領に……というストーリーから始まるコメディ・ドラマシリーズです。

このドラマのストーリーをなぞるように、ゼレンスキー氏は大統領選に出馬して当選し、現在も苦境のウクライナを率いていることは、もはやおなじみかとおもいます。

この作品はもともと、ウクライナでは2015年から2019年まで放映されていたシリーズ。アメリカのNetflixでも以前に配信が行われていました。今回は、その配信が再開されたかたちとなります。

一方でネットフリックスは、ロシアにてそのサービスを停止しています。また国民の僕はYouTubeでも視聴することが可能で、こちらでは自動翻訳による日本語字幕も利用できます(再生リストはこちら)。

コメディアンから大統領へと転身し、自ら前線に立ちウクライナを鼓舞するゼレンスキー氏の出世作となった本ドラマ、今だからこそチェックしておきたいものです。

(Source:the VergeEngadget日本版より転載)

【3月18日】掲載記事アクセスランキング・トップ5―1位はGoogle Cloud値上げ、2位はRISC-V搭載キーボード一体型PC

【3月18日】掲載記事アクセスランキング・トップ5―1位はGoogle Cloud値上げ、2位はRISC-V搭載キーボード一体型PC

掲載記事のうち、3月18日午前7時現在集計で最もアクセスのあった記事5本を紹介。

第1位:Google Cloudが大幅値上げ、2022年10月1日から実施


クラウドインフラのレンタル料金は、通常時間が経つにつれて安くなるが、米国時間3月15日、Google Cloudがその流れに逆らって、多くのコアサービスで大幅な値上げを発表した。

第2位:64ビットRISC-V版のキーボード一体型PC「DevTerm Kit R-01」をClockwork Techが発売、組み立て式で価格約3万円


Clockwork Techは3月16日、64ビットRISC-V(リスク・ファイブ)チップ版のキーボード一体型PC「DevTerm Kit R-01」の発売を開始した。組み立てキットの体裁で販売しており、直販価格は239ドル(約2万8261円)。

第3位:ドイツがカスペルスキーの利用を控えるよう警告、ロシアの侵攻で「相当程度」のサイバーリスク


ドイツ連邦情報セキュリティ局(BSI)は、ロシアによるウクライナでの戦争が続く中、カスペルスキー・アンチウイルスソフトウェアがサイバースパイに利用されたり、サイバー攻撃を仕掛ける恐れがあるとして、さまざまな組織に対して警告を発した。

第4位:【レビュー】iPhone 13/13 Proの新色グリーンを実機でチェック!iOS 15.4のマスクありFace IDも試した


第3世代iPhone SEの予約受付が開始されましたが、忘れてはいけないのがiPhone 13シリーズの新色。iPhone 13、13 miniには「グリーン」が、iPhone 13 Pro、13 Pro Maxには「アルパイングリーン」が追加されます。

第5位:米国で17年ぶりにCD売上げが増加し前年比21%増を記録、アナログレコード売上げも61%増で1986年以来の売上高に


近年の音楽市場はすっかりストリーミングが主流になり、もしかするともう何年もCDを購入していないという人が多数を占めているのかもしれない状況ですが、全米レコード協会(RIAA)のまとめによると、2021年のCDの売上げが5億8400万ドル(約690億円)になり、前年に比べ21%も増加したことがわかりました。米国でCD売上げが増加するのは2004年以降で初めて、17年ぶりとのことです。

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【レビュー】アップルStudio DisplayのNano-textureガラスは効果大、Windowsでも使ってみた

Mac Studioと「Studio Display」。セットだとやっぱりかなりバランスのいい組み合わせだ

Mac Studioと「Studio Display」。セットだとやっぱりかなりバランスのいい組み合わせだ

3月18日、Mac Studioとともに発売されるのが「Studio Display」だ。

Mac Studioと組み合わせることを強く意識した商品だが、もちろんほかのMacと組み合わせて使うこともできる。

各種機能のクオリティはどうなっているのか、Mac Studioとの組み合わせだけでなく、Windows PCにつないで使ったときの動作も含めて検証してみた。

Nano-textureガラスは効果大、5Kを生かすなら有用

Studioディスプレイにはいくつかのモデルがあり、購入時にカスタマイズするのが基本となっている。ディスプレイとしての仕様は表面加工以外同じで、スタンドなどの仕様変更が中心だ。

基本はアンチグレア加工の「標準ガラス」で、傾きを変えられるスタンドが付いている。

そこに、より微細な表面加工で反射を防ぐ「Nano-textureガラス」を使ったモデルがあり、さらに「傾きと高さを変えられるスタンド」、そして「VESAマウント」から選ぶ。

Appleの購入ページより。スタンドは3種類から選ぶ

Appleの購入ページより。スタンドは3種類から選ぶ

今回テストしているのは「Nano-textureガラス」を使い、スタンドは傾きだけを変更できるタイプのもの。これでも価格は24万2800円なので、相当に高価なディススプレイである。

今回使っている「Nano-textureガラス」採用モデル。かなり強く光を当てても、反射はこのくらい

今回使っている「Nano-textureガラス」採用モデル。かなり強く光を当てても、反射はこのくらい

サイズは27インチ。解像度は5K(5120×2880ドット)だが、ミニLEDなどを使った「ローカルディミング」は行なっていない。トップ輝度は600nitsで、いわゆる10ビットカラー対応となっている。

27インチなのでパッケージサイズはかなり大きい。上に置いているiPad Air(10.9インチ)と比較するとイメージが湧きやすいだろう

27インチなのでパッケージサイズはかなり大きい。上に置いているiPad Air(10.9インチ)と比較するとイメージが湧きやすいだろう

パッケージから取り出すのも一苦労。この辺はiMacにも通じる

パッケージから取り出すのも一苦労。この辺はiMacにも通じる

まず使って感じたのは、Nano-textureガラスの効果の高さだ。

いわゆるアンチグレアだと色が拡散する効果が出てしまい、精彩感と発色が落ちやすい。そのため、テレビにしろディスプレイにしろ、「光沢仕上げ+薄膜の反射低減コーティング」というものが多いのだが、仕事で使う場合、反射はない方が疲れにくい。

Nano-textureガラスによるコーティングは、精彩感・発色を落とすことなく反射をほぼ感じられないレベルへと軽減してくれる。

MacBook Pro 14インチと並べて。光沢仕上げのMacBook Proとは、映り込みの状況が全く違う

MacBook Pro 14インチと並べて。光沢仕上げのMacBook Proとは、映り込みの状況が全く違う

実のところ、輝度の突き上げを含めたHDR感では、ミニLEDを使っている14インチMacBook Proのディスプレイの方がいい。発色は同等だと思う。

だが、どこから見ても反射がない、画面が消えてもおっさんが映り込まないという点では、圧倒的に快適だ。

画面を表示した上で、斜めから。Studio Displayは映り込みなくすっきり見えるが、MacBook Proだとそうはいかない

画面を表示した上で、斜めから。Studio Displayは映り込みなくすっきり見えるが、MacBook Proだとそうはいかない

このコーティングは汚れがあると効果が落ちる。一方、表面に傷をつけても効果が落ちるため、柔らかく、汚れが落ちやすいもので拭く必要がある。

そのため、このモデルには「Apple ポリッシングクロス」が付属する。1980円と高価であることから「しんじゃのぬの」なんて皮肉で呼ばれたりもする、あれだ。Appleはこの布で拭くことを強く推奨している。

付属の「Apple ポリッシングクロス」。ネタにされがちだが、とても使いやすく、品質が良いクロスだ

付属の「Apple ポリッシングクロス」。ネタにされがちだが、とても使いやすく、品質が良いクロスだ

今回初めて使ってみたが、確かに非常に使いやすく、手触りも良かった。

とはいえ、同様のマイクロポリッシングクロスはもっと安く売られているので、追加で買うのは好き好きかと思う。まあ、Nano-textureガラス版のStudio Displayを使っているなら、積極的に使っていくべきなのだろう。なにしろ付属していて、サポート対象なのだから。

カメラやマイクを内蔵、接続は「USBデバイス」として

Studio Displayはただのディスプレイではない。昨今のビジネス向けディスプレイのトレンドを反映し、「多機能化」している。

上部・下部にはスピーカーが内蔵され、上部中央にはカメラとマイクが入っている。

上部・下部にはスピーカーのための穴が。音はかなり良い

上部・下部にはスピーカーのための穴が。音はかなり良い

上部中央には12メガピクセルのカメラとマイクが。ノッチはない

上部中央には12メガピクセルのカメラとマイクが。ノッチはない

インターフェースはThunderbolt 4の入力が1つだが、そこからUSB Type-Cが3つつなげられる。入力のためにつないだ端子からは96Wでの電源供給も行える。すなわち、MacBook Proなら電源ケーブルを接続する必要がないわけだ。

本体を横から。電源は本体中央につながる

本体を横から。電源は本体中央につながる

3つのUSB Type-C端子と、Thunberbolt 4端子がある。ディスプレイに接続するときにはThunberbolt 4端子を使うので、1入力になる

3つのUSB Type-C端子と、Thunberbolt 4端子がある。ディスプレイに接続するときにはThunberbolt 4端子を使うので、1入力になる

重要なのはカメラやマイク、スピーカーの存在。macOS側から見るとわかりやすい。

カメラやスピーカー、マイクはそれぞれ「USBデバイス」として接続され、OS側から利用可能になっている。だから、色々なアプリから特に意識することなく使える。

macOSのサウンド設定から。マイクやスピーカーはUSBデバイスになっているのがわかる

macOSのサウンド設定から。マイクやスピーカーはUSBデバイスになっているのがわかる

macOSのサウンド設定から。マイクやスピーカーはUSBデバイスになっているのがわかる

以下の動画は、Mac版のZoomから「センターステージ」を使ってみたものである。自分の動きに合わせ、きちんとフレーミングが追従しているのがわかるだろう。

これらの制御には「A13 Bionic」が使われており、実質的に、ディスプレイの中に独立したデバイスが組み込まれているような構造になっている。A13 Bionicが入っているといってもiPhoneやApple TVの機能を持っているわけではなく、各デバイスの制御用SoCとして使っている形のようだ。

音もいい。空間オーディオ楽曲を再生すると「広がり」をしっかり楽しめる。ただし、低音は強いがちょっと響きすぎるところもあり、その辺は好みが分かれるかも、と感じた。

Windowsにもつながるが、フル機能は生かせず

と、ここで気になる点が一つ。

USBデバイスとしてつながっているということは、Mac以外につないだらどうなるのだろうか? AppleがサポートしているのはMacとiPadだが、Windows PCをつないだらどうなるのだろう?

答えは「意外と普通に動く」。

Thunderbolt 4端子でつなげば、Windows PCでも普通にディスプレイとしては使える

Thunderbolt 4端子でつなげば、Windows PCでも普通にディスプレイとしては使える

デバイスマネージャーから見ると「デバイス方向センサー」が動いていないが、カメラもマイクもスピーカーも、一般的なデバイスとしてつながり、利用できる。表示ももちろん問題ない。

デバイスマネージャーを表示してみた。カメラやマイク、スピーカーはUSBデバイスでつながっているが、「デバイス方向センサー」が動いていない

デバイスマネージャーを表示してみた。カメラやマイク、スピーカーはUSBデバイスでつながっているが、「デバイス方向センサー」が動いていない

Windows版のZoomでもカメラとして認識できた。ただし、「センターステージ」は動かない

Windows版のZoomでもカメラとして認識できた。ただし、「センターステージ」は動かない

すべての機能が動いているわけではない。

「センターステージ」はWindowsでは動いていないし、Siri連動も当然使えない。また、今後ファームウエアのアップデートがあっても、サポート外のWindows PCからアップデートできるとは限らない。

サポート外なので、このくらい動けば御の字……というところではないだろうか。

HDMI非対応で「1入力」をどう見るか

全体的にみて、Studio Displayは好ましい製品だ。画質も良く、音もいい。デザインも、Mac Studioと合わせて使うのにちょうどいい。

一方で、今のPCディスプレイのトレンドを考えると、ちょっと不満な点もある。

入力が実質1系統である、という点がまず気になる。特に、HDMI入力がない点だ。

PCディスプレイやテレビだと、複数のデバイスをつないで切り替えて使ったり、同時に2出力で画面を分割したり、という機能があるが、それはできない。

輝度は高く発色もいいが、HDRには弱い。そもそもの想定として、HDR編集には、より高価な「Pro Display XDR」や、ミニLED搭載のMacBook Pro、iPad Proを……ということなのかもしれないが、これだけ高価な製品なので、ちょっともったいない。

HDRや複数入力にこだわらなければ、Studio Displayはとてもいい製品だと思う。ただし、この価格を許容するなら、だが。もちろん、この価格相応に、長く使えるディスプレイではある。

(西田宗千佳。Engadget日本版より転載)

ウクライナ大統領、暗号資産を合法化する法律に署名

ウクライナ議会は1カ月前、暗号資産を合法化する法案を可決し、Bitcoin(ビットコイン)やEthereum(イーサリアム)などの暗号資産の規制と管理の枠組みを準備した。そして現地時間3月16日、同国のVolodymyr Zelenskyy(ウォロディミル・ゼレンスキー)大統領は、法案「暗号資産について」に署名し、規制された暗号資産マーケットを運営するための法的枠組みを確立した。

「議会は暗号資産に関する法律を採択しました。数日のうちに大統領が署名して法制化されると思います。ですから、我々はできるだけ暗号資産に友好的であろうと努力しています。そして、戦時中もこの努力を続けています」と、ウクライナの副首相兼デジタル変革担当大臣のMykhailo Fedoro(ミハイロ・フェドロフ)氏は3月15日、TechCrunchのインタビューに答えている。

Cointelegraph(コインデレグラフ)やCoindesk(コインデスク)などデジタル資産に特化したメディアの報道によると、暗号資産取引所やデジタル資産を扱う企業はウクライナで合法的に活動するために政府への登録が必要となり、銀行は暗号資産企業向けの口座開設を許可されることになる。

この法律はまた、デジタル資産に関する国の政策を決定し、暗号を扱う企業にライセンスを発行し、金融監視機関として機能する権限をウクライナの国家証券市場委員会に与えると伝えられている(実際には、ウクライナの議会は2021年9月に暗号資産を合法化する法律を可決したが、ゼレンスキー大統領はその後すぐに暗号資産を管理するための新しい規制機関を立ち上げる余裕はないとして法案を否認した)。

もしあなたが、ウクライナでは暗号資産はすでに合法だったと考えていたのなら、それはあなただけではない。ブロックチェーン分析企業のChainalysisによると、正式な規制がなくても、2020年秋までにウクライナ人、ロシア人、ベネズエラ人は(この順で)デジタル通貨のアクティブな小売ユーザーの仲間入りを果たしていた。

当時、Chainalysisの調査責任者は「本当にテックネイティブな人口」や「勤勉なスタートアップ環境」など、いくつかのトレンドがウクライナを上位に押し上げているとCoindeskに語った(Coindeskはまた、東欧は他の地域よりもサイバー犯罪活動が盛んで、これも多くの取引量を牽引する役割を果たした可能性が高いと述べている)。

ロシアがウクライナに侵攻し、兵士と市民を同様に殺害し始め、人口4200万人の国から推定300万人が脱出するようになってから数週間、ウクライナは数千万ドル(数十億円)相当の暗号資産による寄付を受け、法律として成立したばかりの規制の種類は新たな緊急性を帯びてきている(NPRはポーランドに逃れたウクライナ難民、およそ180万人をワルシャワの人口にたとえた)。

新しい法律が施行されたことで、ウクライナ初の暗号資産取引所であるKuna(クナ)は、もはや同国が寄付金を暗号資産を扱っているサプライヤーに直接使うことを支援するだけに限定されず、暗号資産を切望されているフィアット通貨に変換することができる。一方、ウクライナはバハマに拠点を置く取引所大手FTXとも提携し、ウクライナの戦争活動を支援する暗号資産による寄付をフィアット通貨に換え、ウクライナ国立銀行に預けることができるようになった。

具体的には、Coindeskが3月14日に報じたように、FTX、KunaそしてとEverstakeというステーキングプラットフォームはウクライナ政府当局と提携し、Aid for Ukraineというユーザー向けの寄付サイトを立ち上げ、Bitcoin、Ether、Tether、Polkadot、Solana、Dogecoin、Monero、Icon、Neoで「自由のために戦っている人々を支援するため」の寄付を受け付ける。

世界中からの資金調達に関しては、暗号資産による寄付がカギを握っている。「我々は5500万ドル(約65億円)を集めることができました。そして、そのすべてはウクライナ軍の要望に充てられました」と、フェドロフ氏は15日にTechCrunchに語った。

Everstakeが指摘したように、この取り組みが「公的金融機関への暗号資産による寄付のリードを提供した最初の暗号資産取引所の例」であることが事実かどうかはわからないが、最初の1つであることは間違いないだろう。

確かに、ほんの数カ月前にニューヨーク・タイムズ紙でウクライナが「The Crypto Capital of the World(世界の暗号資産首都」という見出しで紹介されたときにウクライナ当局が期待していたようなことは起こっていない。

ウクライナのデジタル変革省の副大臣Alex Bornyakov(アレックス・ボルニャコフ)氏は想像を絶する事態が起こる前の11月に、記事の取材で「暗号資産企業にとって世界トップの権威の1つになる、というのが狙いです」と語った。

「我々は、これが新しい経済であり、未来であり、そして我々の経済を後押しするものだと信じています」。

画像クレジット:Vasenka Photography / Flickr under a CC BY 2.0 license.

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(文:Connie Loizos、翻訳:Nariko Mizoguchi

グーグル、EC企業の配送業務の最適化を支援する2つの新ツールを提供開始

Google(グーグル)は米国時間3月17日、大規模な配送車両を運用する企業向けの2つの新しいツール、Last Mile Fleet SolutionとCloud Fleet Routing APIを発表した。Google Maps Platformの一部である新しいLast Mile Fleet Solutionは、注文から配送までのラストマイル配送プロセスの各ステップを最適化することに重点を置いている。その名の通り、Google Cloudの一部である新しいRouting APIは、配送車両のフリート全体のルートプランニングに重点を置いている。

Last Mile Fleet Solutionは、現在パブリックプレビュー中だ。Cloud Fleet Routing API は2022年の第2四半期に一般利用が可能になる予定とのこと。どちらも企業向けサービスであるため、価格情報は公開されておらず、どちらの製品も潜在的な顧客はGoogleの営業チームと連絡を取る必要がある。

「パンデミックは、すでに急増していたeコマースと配送件数の両方をさらに加速させました。配送ネットワークへの負担の増加に加え、ドライバー不足、住所データの不備、工場の閉鎖、燃料価格の上昇など、多くの要因が配送時間や成功率に影響を与えました」と、Google Cloudのグローバルサプライチェーン&物流業担当マネージングディレクターであるHans Thalbauer(ハンス・タルバウアー)氏は述べている。「Google Maps PlatformのLast Mile Fleet SolutionとCloud Fleet Routing APIにより、配送フリート事業者がこれらの問題に対処し、消費者、ドライバー、フリートマネージャーにシームレスな体験を提供することが容易になります」とも。

画像クレジット:Google

Google Maps Platformは、企業がオンデマンドでドライバーを派遣するためのソリューション「On-demand Rides & Delivery」をすでに提供している。同社は、新しいLast Mile Fleet Solutionは、このサービスをベースにしていると述べている。

一方、Fleet Routing APIは、企業のルートプランニングを支援するまったく新しいGoogle Cloudサービスだ。ユーザーはこれを使って社内の車両管理システム用のツールを構築し、時間帯、荷物の重量、車両の容量など特定の制約条件に基づいてシステムが配送ルートを最適化させるために利用できる。その過程で、サステナビリティの目標達成に向けたルートの最適化も可能になるという。

英国を拠点とする宅配便サービス、PaackのCTO兼CPOであるOlivier Colinet(オリヴィエ・コリネ)氏はこう語る。「Paackでは、欧州で最大級のeコマース小売業者が毎月受け取る数百万件の注文に対して、優れた配送体験を実現するための支援にこだわっています。迅速にスケールアップするために、Last Mile Fleet SolutionとCloud Fleet Routingを採用しました。これにより、ドライバーとフリートマネージャーは最高の効率を維持し、98%の定時・初回配達率を超えることができました」。

画像クレジット:Bruce Bennett/Getty Images / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Den Nakano)