ロシアがフェイスブックをブロック、ウクライナに関する会話をコントロールする最新の試み

ロシア政府は、Facebook(フェイスブック)に対する部分的な規制を導入してから1週間後にあたる4日、ロシア国内で同ソーシャルネットワークを全面的にブロックし始めると発表した。

ロシアの通信情報技術監督庁Roskomnadzorは、世界最大のソーシャルプラットフォームへのアクセスを遮断する決定において「ロシアのメディアと情報リソースに対する26件の差別行為」を挙げ、同社が国営メディアに制限を課しているという以前の苦情を繰り返した

「ここ数日、同ソーシャルネットワークは、以下アカウントへのアクセスを制限しています。Zvezda TV(ズヴェズダ・テレビ)チャンネル、RIA Novosti(RIAノーボスチ)通信社、Sputnik(スプートニク)、RT(旧ロシア・トゥデイ)、Lenta.ruとGazeta.ruの情報リソースです」とロシアの通信規制当局は書いている

「上記の制限は『基本的人権および自由、ロシア連邦市民の権利および自由の侵害に関与する人物に影響を与えるための措置に関する』連邦法第272-FZ号の、とりわけ、情報の自由な流通と、ロシアのユーザーが外国のインターネットプラットフォーム上でロシアのメディアに自由にアクセスできるという重要な原則の侵害を防ぐ採択によって禁止されています」。

Meta(メタ)のグローバル・アフェアーズ担当社長で元英国副首相のNick Clegg(ニック・クレッグ)氏は、4日のロシアの発表について声明をツイートしている。

ロシア政府がロシア連邦でのFacebookへのアクセス遮断を決定したことについて次のように述べている。

「まもなく何百万人もの普通のロシアの人々が、信頼できる情報から切り離され、家族や友人とつながるのに日常的に使っている方法を奪われ、発言も封じられることになるでしょう。私たちは、人々が安全かつ確実に自己表現し、活動を組織することができるよう、サービスの復旧に全力を尽くし続けます」。

今週初め、Metaは、FacebookとInstagram(インスタグラム)全体でロシア国営メディアのリーチを制限し、それらのアカウントがロシア政府によって形作られたメッセージを広めることをより困難にすると発表した。

ロシア政府によるFacebookへの弾圧は、隣国ウクライナへの流血の侵攻に対する抗議が国内で盛り上がりを見せている中で行われた。反対意見の広がりを受けて、ロシア議会は4日、ウクライナでの同国の活動に関する「偽」の情報を故意に流した者に、最高で15年に及ぶ長期の禁固刑を含む厳しい処分を科す新法案を可決した。

ロシアのFacebookに対する新たな措置が、WhatsApp(ワッツアップ)やInstagramといった他のメタ傘下アプリへのアクセスも制限するかどうかはすぐにはわからないが、これらのサービスは抗議活動の組織化やロシア以外のニュースソースからの情報共有に利用されうることを考えると、そうなる可能性は高いと思われる。

画像クレジット:MLADEN ANTONOV/AFP/Getty Images / Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Den Nakano)

マイクロソフト、ロシアでの新規販売を全面停止

ウクライナ侵攻を受けてロシア市場から製品を撤退させるハイテク企業は、Apple(アップル)だけではない。Microsoft(マイクロソフト)は、ロシアにおけるすべての製品とサービスの新規販売を「停止」し、米国、英国、欧州連合(EU)の制裁を尊重すべく、ロシアでのビジネスの「多くの業務」を停止している。この動きの数日前に、Microsoftは自社のプラットフォーム上でロシアの国営メディアを制限し、またウクライナの副首相は同社にロシアのXboxアカウントをブロックするよう要請した。

Microsoftは、この撤退は事実上必要なことだととらえている。Brad Smith(ブラッド・スミス)社長によると、このような「具体的な措置」が最も大きな影響を与え、ウクライナの状況の進展に応じて「追加の措置」が取られることになる。Windowsの生みの親である同社は、ロシアによる侵攻を「不当で、いわれのないものであり、不法」とし、ロシアのウクライナに対するサイバー攻撃を特定し、それに対抗する努力を指しながらロシアを明確に批判していた。

Microsoftの動きは、ロシアのテックの使用に大きな影響を与える可能性がある。Windows、Office、そしてMicrosoft 365やAzureといったサービスなど、多くの国でそうであるように、ロシアでもMicrosoft製品はコンピューティングにおいて重要な役割を担っている。既存のユーザーがアクセスできなくなることはないかもしれないが、新しい製品を購入したり、サブスクリプションを更新したりする必要がある人にとっては問題となる可能性がある。Microsoftに、このことがロシアのPCベンダーにどのような影響を与えるか尋ねた。ベンダーがWindowsベースのコンピュータを販売する場合はライセンスが必要だ。

正確な影響がどうであれ、販売凍結はGoogle(グーグル)、Meta(メタ)、Reddit(レディット)、Twitter(ツイッター)などハイテク企業による一連の締め付けに続くものだ。ロシアはこれらの行動に対して必ずしも屈することはないだろうが、同国には明らかに協調した圧力がかかっている。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のJon FingasはEngadgetの寄稿者。

画像クレジット:Jakub Porzycki/NurPhoto / Getty Images

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(文:Jon Fingas、翻訳:Nariko Mizoguchi

ソニーとHondaがEVを共同開発・販売する計画発表、2025年に初期モデル発売へ

Sony(ソニー)はここしばらく、自動車メーカーになることに興味があるそぶりをして憶測を呼んでいたが、3月4日、実際の自動車メーカーであるHondaと、そのアイデアをさらに議論し発展させるための覚書(MOU)を締結したと発表した。

両社は共同で、新型EVの開発と販売、および新型自動車で使用する新しい「モビリティサービス・プラットフォーム」の開発と立ち上げを柱とする合弁会社を2022年中に設立する意向を検討すると明らかにした。

現在の計画では、ソニーは「イメージング、センシング、テレコミュニケーション、ネットワーク、エンターテインメント技術」を、Hondaは……クルマ技術を提供することになっている。

両社が設立する「新会社」は、出来上がった新型EVの設計・開発から販売まですべてを手がけるが、車の製造はHondaが代行することになる。ソニーは、新会社が使用するモビリティサービス製品を供給する。

すべてが計画通りに進めば(協議の初期段階であるため、ほぼ間違いなく変更の可能性がある)、この合弁会社は2025年から初期モデルの販売を開始することを目指す。

ソニーはこれまで、毎年恒例のCES技術展示会で、少なくとも3回、自動車メーカーとしての意気込みを示す派手な瞬間があった。2020年には「Vision-S」と名付けたコンセプトカーを出展して周囲を驚かせ、2021年にはサーキットと公道の両方で走行するプロトタイプの動画など、さらなる詳細を公開した。最近では2022年1月、オリジナルのセダンに加えてSUVコンセプトのVision-Sを発表し、独自のEVの商業化を「模索」することに焦点を当てた新会社「Sony Mobility Inc.(ソニーモビリティ株式会社)」を立ち上げると発表していた。

このうち「モビリティサービス」という部分は、ソニーが自社のEVコンセプトに注力するコンテキストの中で、おそらく最も興味深いものだろう。ソニーは、この分野では明らかに成功しているが、ユーザーやソフトウェアのインターフェースに定評があるとはいえないので(ソニーのカメラや携帯電話のユーザーならおわかりだろう)、どうなるかは大きな疑問符がつくところだ。

CESで3回はでやかなコンセプトを発表しても、自動車メーカーにはなれない。特にCESは、本質的に史上最大のベーパーウェアの展示会として知られているのだから。同様に、MOUは、2つの大企業が本格的に共同で創意工夫を凝らすための正式な合意書に過ぎないことが多い。しかし、ここには非常に多くの煙が立ちこめており、少なくともこのMOUには、より具体的になる時期を見極めるための明確なタイムラインがある。

画像クレジット:Sony

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Den Nakano)

稲畑産業、インテル「RealSense」代替品となる3Dセンサー「LIPSedge」シリーズを発売へ―台湾LIPSが開発

稲畑産業、インテル「RealSense」代替品となる3Dセンサー「LIPSedge」シリーズを発売へ―台湾LIPSが開発

写真上がLIPSedge L210u。写真下はLIPSedge L215u

電子部品などを扱う専門商社、稲畑産業は3月2日、2021年8月に事業撤退がリリースされたインテルの3Dセンサー「RealSense」の代替品を販売すると発表した。インテルのパートナー企業である台湾のLIPS Corporationが開発製造する「LIPSedge L」シリーズと「LIPSedge S」シリーズだ。

LIPSは、産業向けの3Dビジョン技術やAIソリューションを提供するテック企業。インテルとパートナーシップ契約を結び、自社製品に「RealSense」を採用し、またSDKなどの互換ソフトウェアも提供してきた。LIPSedgeには、以前からRealSenseの課題とされてきた防塵(IP67)対応、IMU(ジャイロセンサー)の搭載、イーサネットへの対応を果たし、産業用に特化した機能が付加されている。また、SDK、3Dミドルウェア、3Dシステムなどのソフトウェアの互換性も高く、既存RealSenseを用いた開発環境のままで代替が可能とのことだ。

今回発売されるのは、インテルRealSenseのFシリーズ、Lシリーズ、Dシリーズ(産業用途以外)の代替となる「LIPSedge L」シリーズ。すでに開発が完了し、少量のサンプル出荷が可能な状態になっている。また、産業用途の「LIPSedge S」シリーズも開発中とのこと。

LIPSedge Lシリーズには、「210u」と「L215u」の2品番があり、これらは「RealSense F455/F450」と同等のスペックとなる。LIPSedge Sシリーズでは、「RealSense D455」と同等スペックの「S210」「S215」の2品番の開発を行っている。

「LIPSedge L210u/215u」と「RealSense F455/450」のスペック比較

「LIPSedge S210/215」と「RealSense D455」のスペック比較

さらにLIPSでは、「RealSense」シリーズよりも解像度や測定精度を高めたアップグレード品の開発も進めている。

開発中のアップグレード品

ロボットの発話に「重み」を加えるとイライラするユーザーに許しの気持ちが芽生える

AIやロボットの発話に「重み」を加えるとイライラするユーザーに許しの気持ちが芽生える

筑波大学は3月1日、ロボットやAIが話すときに、ユーザーの手に「重み」を伝えることで話相手に与える影響を調査した。その結果、ユーザーがロボットに対して感じる真剣さの度合いが有意に高まることが確認され、イライラした感情た抑制される効果も認められたと明らかにした

ロボットやAIの話し方は平坦で、メッセージ内容について感情や意図が伝わりにくい。そこで、人と人のコミュニケーションを仲介する社会的仲介ロボットを研究する筑波大学システム情報系知能機能工学域の田中文英准教授らは、会話に合わせて内部の重りを動かして、ユーザーの手に運動を伝える小型ロボットを開発した。手に持って使用する小さなロボットに、250gのタングステンの重りをいろいろな軌道や速度で2次元運動させられる機構を内蔵し、会話の内容に合わせて重りが動くようにした。


AIやロボットの発話に「重み」を加えるとイライラするユーザーに許しの気持ちが芽生える
研究グループは、このロボットを用いて、筑波大学校内で募集した94人の成人を対象に実験を行った。対話シナリオは、社会心理学の既存研究にもとづいて設計された、ユーザーが怒りやフラストレーションを感じる場面、具体的には、待ち合わせに友人が遅刻してくる場面が使われた。ロボットは、友人からの連絡メッセージを伝えるとき、重りが動く場合と動かない場合の両方を被験者に体験してもらい、その効果を聞き取った。

それによると、重りが動くと、ユーザーはロボットに対して感じる真剣さの度合いが有意に高まることがわかった。そして、ユーザーの怒りの度合いが平均で23%抑制された。また。加害者に報復しようとする思いである「報復的動機づけ」と、加害者を避けようとする思いである「回避的動機づけ」の両方も有意に抑えられた。これらは、他人を許す思いに大きく関わるとされている。このことから、「ユーザーが他人に対して感じる許しの気持ちを促進する可能性」が示唆されたという。

研究グループは、この研究を含め提案している社会的仲介ロボットは「人と人の間に立ち、人と人の関係をより良い形にしていくための仲介を行う能力を備えたもの」だと話している。

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Craig Sybert on Unsplash

九州大学と土木研究所、1960年代から現在まで約60年間にわたる海洋プラスチックごみの行方を重量ベースで解明

九州大学と土木研究所、1960年代から現在まで約60年間にわたる海洋プラスチックごみの行方を重量ベースで解明

九州大学土木研究所 寒地土木研究所は3月2日、1960年代から現在までに海に流出したプラスチックごみ「海洋プラスチック」の行方を、コンピューター・シミュレーションによって重量ベースで解析したと発表した。その結果、海に流れ出たプラスチックは2500万トンほどであり、この60年間に陸上で環境に漏れ出たとされるプラスチックごみの総量の約5%に過ぎないことがわかった。残りの95%は陸上(5億トン程度)で行方不明になっている。

世界中で陸から海に流れ出るプラスチックごみは、年間で115万〜241万トン(Lebreton et al., 2017)と推計されている。しかし、実際に観測される浮遊プラスチックごみの現存量は25万トン程度(Eriksen et al. 2014)しかない。この推計流出量と観測された現存量とがかけ離れている状態は、「ミッシング・プラスチックの謎」といわれている。海に流れ出たプラスチックは、浮遊するものばかりでなく、海中に沈んでしまっているものもある。それらの総量を把握しミッシング・プラスチックの謎を解明しなければ、海洋汚染を回避するためにどれだけプラスチックを削減すればよいかがわからない。

そこで、九州大学応用力学研究所の磯辺篤彦教授と土木研究所寒地土木研究所の岩﨑慎介研究員による研究グループは、全世界の海を対象にプラスチックごみの移動を追跡するコンピューター・シミュレーションを行った。海流や波で運ばれるものや、風で吹き寄せられるものに見立てた仮想粒子を追跡するというものだ。これには、陸から海に流れ出たプラスチック量の他に、漁業にともなう投棄量も含まれる。

このシミュレーションには、大きなプラスチックごみがマイクロプラスチックに粉砕される過程や、破砕の後に生物が付着して沈んだもの、海岸の砂に吸収されたもの、破砕が進んで現状では採取できない微細なマイクロプラスチックになったものも、海底に沈んだものなど、海表面や海岸からマイクロプラスチックが消失する過程も組み込まれている。

そしてこのシミュレーションの結果を解析し、全世界でのプラスチック重量の収支を計算した。すると、世界で海に流出したプラスチックごみのうち、約26%(660万トン)は目視できるサイズのごみであり、約7%(180万トン)はマイクロプラスチックとして漂流や漂着を繰り返していることがわかった。世界の海岸に漂着したプラスチックごみの重量は約590万トン。そして、60年代から海に流出したプラスチックごみの総量約2500万トンのうち約67%(1680万トン)はマイクロプラスチックとなり海岸や海面近くから消失している。しかし、これらを合計しても2500万トンほどにしかならず、陸上で環境中に漏れ出たと推定されるプラスチックごみの総量の約5%に留まる。残りの95%(5億トン)は、陸上で行方不明となっている。

今後はこの5億トンのプラスチックごみの行方の追究が、「広範な環境科学の研究者が関わるべきテーマ」だと研究グループは言う。さらに、数百μm(マイクロメートル)以下の「微細プラスチック」の行方も問題となる。九州大学では、ごみ拾いSNSアプリ「ピリカ」(Android版iOS版)を使った、市民によるプラスチックごみの追跡プロジェクトを実施しており、これと並行して微細プラスチックの分布量把握、将来予測、影響評価を行う研究に取り組むとしている。

モバイルが盛り上がりに欠ける中、地味なMWCが閉幕

先週、奇妙なMWC(Mobile World Congress、モバイルワールドコングレス)になりそうだとの記事を書いた。「奇妙」というのは、今までの常識を超えて、すべてが「奇妙」になるという意味だ。世界的なパンデミック時に開催される2度目のショーであることに加え、スマートフォン業界が大きな変化を遂げたからだ。

前回の記事の内容を、簡単に箇条書きで紹介する。

  • 人々のデバイスのアップグレードの頻度が減り、他の場所にお金を使うようになった
  • サプライチェーンの問題やチップ不足が足を引っ張っている
  • LGとHTCは携帯電話の製造を中止し、劇的に縮小した。しかし、後者は少なくとも、ある流行語(ブロックチェーン)から別の流行語(メタバース)へと 飛び移る準備ができている
  • Huawei(ファーウェイ)は制裁を受けて一歩退いた立場に
  • Samsung(サムスン)やApple(アップル)といった企業は、今や自身のイベントに依存している
  • その結果、中国市場はXiaomi(シャオミ)をはじめとする多数のBBK(歩歩高)傘下企業に開放された
  • Qualcomm(クアルコム)は大型のSnapdragon(スナップドラゴン)チップを発表し、この技術を搭載した最初のデバイスの開発を各社を競わせている。

これらは、事実上スマートフォンの展示会となっていた同イベントにとって、逆風となっているように感じられる。個人的にはMWCは本来の姿であったB2B / ネットワーク / キャリアの展示会に戻る運命にあるのではないかと考えていたが、今週のバルセロナでは、ほぼその通りの展開になったようだ。

消費者にとって間違いなく2大ニュースとなる製品がSamsungのGalaxy Book 2 Proと Lenovo(レノボ)のThinkPad X13sという、どちらもノートPCであることは、表向きはスマートフォンの展示会となっている雰囲気にとって刺激的なものとはいえない。Huaweiもまた、電子書籍リーダー / タブレットのMatePad PaperとMateBook X Pro(#notMacbook)という2種類の携帯電話ではないデバイス(#notphones)で、ちょっとした話題作りに成功した。

ショーの直後、私はHuaweiのCTOであるPaul Scanlan(ポール・スキャンラン)氏に、米国の制裁によって同社がGoogle(グーグル)やQualcomm(クアルコム)のような巨大企業へのアクセスが遮断され、消費者向けの努力が妨げられたことを受けて、舵取りを余儀なくされた同社の計画について質問した。彼の答は以下のようなものだ。

その他の、電源管理、バッテリー、HarmonyOS層のソフトウェアなどで差別化を図っています。また、コネクテッドトレッドミル、コネクテッドバイク、コネクテッドテレビ、コネクテッドスピーカー、コネクテッドエアコン、コネクテッド心拍計などの、あらゆる要素をつなぐHarmony(ハーモニー)を、AppleやGoogleなどのエコシステムから差別化しようとしています。

【略】中国国内ではまだ好調です。海外では、GMS(Google Mobile Services)やiOSのエコシステムといったものと差別化できる機能が必要な場合がありますが、これは当社にとっては難しいことです。そのため、コンシューマービジネスグループを拡張し、スマートフォンだけでなく、他のさまざまなデバイスを含めるようにしたのです。スマートフォンについては、1年間で300億ドル(約3兆5000億円)程度の打撃を受けました

同社は、今回のウクライナ侵攻を受けたロシア市場における位置づけについてはコメントを控えた。

その他、多くの主要中国メーカーが実機の発表をリードした。TCLは、その30シリーズに、5GをサポートしたTCL 30 5Gを含む、多数のモデルを追加した。また、まだコンセプト段階の新しい折りたたみ式スマートフォンも披露した。旧HuaweiブランドのHonor(オナー)は6.8インチのフラッグシップ機Magic4を、旧XiaomiブランドのPoco(ポコ)は6.7インチのX4 Pro 5Gを披露した。一方、OnePlus(ワンプラス)は、年頭のCESで発表した10 Proの詳細について、さらに情報を提供した。

この1週間は、こうしたニュースを見逃していたとしても、許されるだろう。

今週、最もエキサイティングだったスマートフォンのニュースは、ショーの外で起こったものだった。このカテゴリーには、確かな経歴を持つ2つの新しいプレイヤーが参入しようとしている。上に述べたような理由から、今この瞬間は、この領域に入ることは非常にチャレンジングであると同時に、やりがいのある時期であると言えるだろう。このカテゴリー十分に成熟しているが、もしかしたら人々は、状況を一変させる新しいプレイヤーを待っているのかもしれない。

まずはNothing(ナッシング)だ。このハードウェアスタートアップは、創業者Carl Pei(カール・ペイ)氏の最初の会社であるOnePlusに続いて、新しい携帯電話を発売する準備を進めている。ある情報筋がTechCrunchに語ったところによれば、Nothingは2022年4月までに最初の携帯電話を発表する予定だという。バルセロナの展示会場の奥で、このデバイスは披露された。同社の最初の製品であるEar(1)と同様に、透明な部分を持つことは分かっているが、それ以上はよくわかっていない。

一方、Essential(エッセンシャル)の華々しい崩壊の跡から立ち上がったOSOM(オソム)は、当初、MWCを最初のデバイスであるOV1の発表の場とする予定だった。しかし、最終的にQualcommが同社に断りきれないほどのオファーを出し、デバイスのリリースを第3四半期から第4四半期に延期した。

創業者でCEOのJason Keats(ジェイソン・キーツ)氏は、TechCrunchの取材に対し「地元に密着していることが評価されているのです。私たちはチームと直接仕事をする長い歴史を持っています」と語った。「私たちのパートナーの1つは、Qualcommに『なんてこった、彼らと一緒に仕事をしているのですか。あなたたちやっていることに、もっと関わりたいですね』』と言わせるほどの大企業です。彼らは、繰り返しOSOMには何か新しいこと、エキサイティングなことをできる機会があると言っています。すべての仕組みを変える機会です。また、私たちが巨大企業ではないという理由から、彼らの生産力が巨大ではなかったとしても、1ヵ月に500万個のチップを出荷する心配をする必要はないということもあると思います」。

同社はまた、いくつかの仕様を紹介し、データ転送と充電の切り替えが可能なスイッチ付きの賢いUSB-Cコネクタを披露した。正直言って、他の企業が挑戦していないのが不思議なくらいだ。

ほぼ予想通りの展開とはなったものの、スマートフォンの最高峰の展示会としてのMWCを私はまだあきらめたわけではない。2022年もまた、業界や世の中全体にとって、ユニークなチャレンジに満ちた奇妙な年だった。人々の注意は、今は当然ながら別のところに注がれている。

画像クレジット:Josep Lago / AFP/Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:sako)

次世代いす型モビリティを手がけるLIFEHUBが1億円調達、進行方向を向いたままエスカレーターを利用可能など目指す

次世代いす型モビリティを開発するLIFEHUBが1億円調達、進行方向を向いたままエスカレーターを利用可能など「少し未来」目指す

二輪起立構造を実装した次世代型電動車いすを開発するLIFEHUBは3月1日、シードラウンドとして、第三者割当増資による約1億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、新規投資家のサイバーエージェント・キャピタル、既存株主のインキュベイトファンド。調達した資金は、「次世代のいす型モビリティ」の製品開発、経営基盤強化に向けた人材採用にあてる予定。また、2023年7月にイニシャルモデルの一般販売をスタートし、その後2024年中にも量産型の市販モデルを投入する予定。

2021年1月設立のLIFEHUBは、ロボティクスなど最先端テクノロジーを駆使し、すべての人が自由で豊かな生活を送ることをためらわない世界を作る「人類の身体的な制約からの解放」というミッション・経営理念を掲げるスタートアップ。

代表取締役CEOの中野裕士氏は、「日本市場および世界市場の車いすユーザーの方々に向けて、モビリティに搭乗したまま立ち上がって屋内や屋外を移動することができ、さらに進行方向を向いたまま健常者が利用するのと同じようにエスカレータを利用できる、電動車いすの少し未来の姿を提示したいと考えています。これは、人体の脚の機能をモビリティで再現するという、技術的にもビジネス的にも大きなチャレンジとなります」と述べている。

次世代いす型モビリティを開発するLIFEHUBが1億円調達、進行方向を向いたままエスカレーターを利用可能など「少し未来」目指す

同社が、次世代いす型モビリティの第1弾プロダクトとしてリリースを目指しているのは、二輪起立構造を実装した次世代型電動車いす「TRANSELLA」(トランセラ。仮称)。一般的な電動車いすに用意されているレバーやボタン、リモコンによる基本的な操作機能を備えるほか、重心移動による操作にも対応するよう研究を進めているという。

また、既存の車いすでは不可能な「歩く、立ち上がる、乗り越える」という動作の実現を目指しているそうだ。例えば起立機能では、車いすユーザーが店舗内の陳列された商品を眺める時や、レジやカウンターで用事を済ませたい時に、座ったままの状態で約60~80cm立ち上がれるようにする。この立ち上がりの実装については、周囲の人や物とぶつからないようレーザーによる接触防止機能や、転倒時にユーザーの身を守るエアバック機能、転倒を検知してスマートフォンに緊急アラートを通知する機能など、もしもの時に備えた安全装備についても実現できるよう準備を進めているという。

次世代いす型モビリティを開発するLIFEHUBが1億円調達、進行方向を向いたままエスカレーターを利用可能など「少し未来」目指す

さらに、テーブルや机の間といった狭いスペースで移動する際に、約1mの道幅でも360度自由に方向転換できる移動性能を持たせるとしている。

次世代いす型モビリティを開発するLIFEHUBが1億円調達、進行方向を向いたままエスカレーターを利用可能など「少し未来」目指す

アニメーションと音声で写真に生命を吹き込む、MyHeritageとD-IDが提携し故人が話す動画が作成可能に

2021年、家系調査サービスのMyHeritageが、故人の顔写真を動画化できる斬新な「ディープフェイク」機能を導入して話題になった。TikTokのユーザーたちはいち早くその技術に反応して、動画を投稿し、自分が会ったこともない親戚やまだその死を悲しんでいる故人を蘇らせて、「ディープノスタルジア」と呼んだ。今日まで、1億枚以上の写真がこの機能で動画になった。そしてその機能が進化した。米国時間3月3日、MyHeritageはパートナーのD-IDとともに「ディープノスタルジア」を拡張した「ライブストーリー」機能をローンチした。写真の人物を生き返らせるだけでなく、彼らに話をさせるのだ。

MyHeritageが技術をライセンスしたD-IDはテルアビブのスタートアップで、AIとディープラーニング利用した再現動画の技術で特許を取得している。

D-IDの技術は、APIを通じて開発者に提供され、メディア、教育、マーケティングなど、さまざまなライセンシーに利用されています。例えばWarner Bros.(ワーナー・ブラザーズ)は、D-IDを利用して、ユーザーが映画の予告編をアニメーション写真でパーソナライズできるようにしたり、ハリー・ポッター展のために協力した。Mondelēz International、広告代理店のPublicis、Digitas Vietnamは、地元の祭りのマーケティング活動でD-IDと提携している。インドの短編動画アプリJoshは、顔アニメーションの技術をクリエイティブツールとして統合した。また、非営利団体や政府も、さまざまな啓発キャンペーンにこの技術を利用している。

MyHeritageは、こライブストーリーでD-IDの最新AI技術をユーザー向けに利用している。この機能を使うためには、ユーザーはまず無料でMyHeritageのアカウントを無料で作成することができ、その技術を何度か無料で試用できる。その後は、有料のサブスクリプションでライブストーリーを無制限に利用できる。

本技術で先祖の人生を物語にしたり、それを本人に語らせることもできる。それを可能にするのが、D-IDの特許取得技術Speaking Portrait Technology(肖像発話技術)だ。アップロードされた写真をもとにナレーション入りの動画を作り、それを合成音声生成装置にかける。語られるストーリーは、ユーザーが提供したテキストだ。

 

言葉と唇の動きが同期するためにD-IDは、人が話している動画のデータベースでニューラルネットワークを訓練した。言語は、どんな言語でもよいというが、MyHeritageは10種ほどの方言や、性による声の違いを含む31言語をサポートしている。

D-IDの共同創業者でCEOのGil Perry(ギル・ペリー)氏によると「優秀な技術であるためドライバービデオは不要です」という。つまり、本物の人物の動きを動画で撮影し、それを静止画像にマップする処理は不要だ。「テキストと写真があれば、その人が話している動画ができ上がります」という。「ただし、まだ完璧な技術ではありません。現状は、本当に良質なリップシンクらしいものを作ったにすぎません」とのこと。

そうやって作成されたライブストーリーは、それを見たり、友だちと共有したり、ソーシャルメディアに投稿することができる。テキストを編集し、さらに話をカスタマイズし、別の声を選んだり、自分が録音したオーディオをアップロードしてもいい。

画像クレジット:D-ID

D-IDの長期的な展望は、この技術をメタバースの環境で使うことだ。メタバースであれば顔だけでなく、デジタルアバターを動画にできるし、体全体の動きを3Dで表現できる。ペリー氏はユーザーが自分の幼児期や家族、歴史的人物の写真をアップロードして、それらをメタバースで動かし、会話をさせることもできると考えている。

「子どもたちがAlbert Einstein(アインシュタイン)と会話して、彼の話を聞いたり、彼に質問したりすることもできるでしょう。しかも彼は疑問に答えてくれます。さらにユニバーサル翻訳であれば、アインシュタインはユーザーの母国語で会話することもできるはずです」。

もちろんそんな技術は何年も先のことだが、実現するとすれば、それらはディープノスタルジーやライブストーリーのような、今日開発したコンセプトに基づいて作られることとなる。

MyHeritageとD-IDはそれぞれ、この技術を別々のやり方でデモする独自のアプリを世に送り出す。D-IDによると、それは数週間後だという。

MyHeritageのライブストーリー機能は本日、米国時間3月3日、家族史テクノロジーのカンファレンスRootsTechで発表された。デスクトップとモバイルウェブ、MyHeritageのモバイルアプリで利用できる。

MyHeritageの創業者でCEOのGilad Japhet(ギラッド・ジャフェ)氏は、ライブストーリーのローンチに関する声明で次のように述べている。「最新機能で、MyHeritageは今後もオンライン家族史の世界をビジョンとイノベーションの両方でリードし続けることになります。AIを利用して歴史的な写真に新しい命を吹き込むことはユニークな機能であり、何百万もの人が先祖や愛する故人との感情的な結びつきを掘り起こし一新することができます。家系の本質は家族史の表現と保存にあり、私たちは世界に向けて家系の楽しさと魅力を伝えていきたい」。

D-IDは、Sella Blondheim(セラ・ブロンドハイム)氏とEliran Kuta(エリラン・クタ)氏が創業。現在、チームは32名で今後は米国や英国、シンガポール、そしてイスラエルでそれぞれ現地の人数を増やし、社員数を倍増したいと考えている。

画像クレジット:D-ID

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Netflixはさらに進化したインタラクティブ・クイズ番組「トリビア・クエスト」でトップ死守を目指す

インタラクティブコンテンツに力を入れているNetflix(ネットフリックス)は、アニメーションによるクイズ番組「Trivia Qeust(トリビア・クエスト)」を4月1日から開始すると3月3日に発表した。Sunday Sauce Productions(サンデー・ソース・プロダクションズ)のDaniel Calin(ダニエル・カリン)氏とVin Rubino(ビン・ルビノ)氏が開発したシリーズは、4月の間、毎日配信され、1日に24問出題される。

Netflixが日刊のトリビアゲームをスタートするのが、我々が今も毎日、自分のWordleのスコアを投稿し、絶対的クイズ王のAmy Schneider(エイミー・シュナイダー)氏が記録を破り、「Jeopardy!(ジェパディ!)」の人気を絶頂にした時と一致しているのは偶然ではない。だからNetflixは「Trivia Crack」というゲームをetermax(エターマックス)からライセンスして「トリビア・クエスト」を開発した。

毎日放映されるトリビア番組にはバイラルで流行する下地がある、ただし人々が連日プレイするだけの注意を引ければの話だ。予告編を見る限り、トリビア・クエストからは子どもっぽさも感じるが、ゲームの問題には「standard(普通)」と「hard(難しい)」があるようだ。そして筆者らは、予告編に出てくる「Avatar(アバター)」問題の答えを知らなかったことを告白しなければならない。予告には任天堂のWiiに関する問題もあったが、正直なところ、Wiiが何か知っている子どもはいるのだろうか?

「Black Mirror:Bandersnatch(ブラック・ミラー:バンダースナッチ)」は、Netflixのインタラクティブコンテンツが躍進した瞬間だったが、公開以来4年近く過ぎている。Netflixがゲーミング(インタラクティブコンテンツのもう1つの形態)に巨額の投資をしている今、どうやらこの会社の関心事はインタラクティブでもう1つの成功を収めることへとシフトしているようだ。

「Black Mirror」のクリエイターたちは、Netflixで「Cat Burglar(怪盗猫ラウディ)」を先週リリースしたばかりだ。トリビア問題に答えていくことで、視聴者はRowdy Cat(怪盗猫のラウディ)がPeanut the Security Pup(警備犬ピーナッツ)(すごい名前ばかりだ)を出し抜いて絵画を盗むのを手伝う。

「Squid Game(イカゲーム)」や「Inventing Anna(令嬢アンナの真実)」といったオリジナルコンテンツの大成功にもかかわらず、Netflixは絶好調とはいえない。2021年、同社加入者数の伸びは2015年以来の最低水準だった。理由の1つは、Disney(ディズニー、現在Disney+[ディズニー・プラス]、Hulu[フールー]、ESPN[イーエスピーエヌ]の親会社)やHBO Max(エイチビーオー・マックス)が成長を続け、Netflixの長年のトップを脅かしているからだ。だからゲーミングとインタラクティブ・コンテンツは、Netflixの将来戦略にとって大きな位置を占めている。

「当社は、みなさんのよく知っている膨大なゲーム資産をライセンスして利用していただくことに門戸を開いています」とNetflix COOのGreg Peters(グレッグ・ピーターズ)氏が前四半期決算発表時に言った。「1年以内にそれが始まるのを見られるでしょう」。Netflixは最近、ゲーム・スタジオのNight School(ナイト・スクール)を買収し、同社の知的財産をもとにゲームを開発した。そして3月2日、同社はゲームの「Stranger Things(ストレンジャー・シングス 未知の世界)」と「Walking Dead(ウォーキング・デッド)」の販売元であるNext Games(ネクスト・ゲームズ)を7200万ドル(約83億円)で買収した。「怪盗猫ラウディ」と「トリビア・クエスト」の出来次第では、今後さらに多くのインタラクティブコンテンツを目にすることになるかもしれない。

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画像クレジット:Netflix

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nob Takahashi / facebook

単純なセキュリティバグが大学キャンパスの「マスターキー」になっている

Erik Johnson(エリック・ジョンソン)氏は、大学のモバイル学生IDアプリがまともに使えなかったとき、何か回避方法はないかと探した。

そのアプリはかなり重要で、彼の通っている大学の学生は、これを使って食事代を払ったり、イベントに参加したり、さらには寮の部屋や研究室を始めキャンパスのさまざまな施設の鍵を開けることもできる。GET Mobile(ゲット・モービル)と呼ばれるそのアプリを作ったのはCBORD(シーボード)というテクノロジー企業で、病院や大学にアクセス制御や決済のシステムを提供している。しかしジョンソン氏(およびアプリのレビューに不満の星1つをつけた多くの人たち)は、アプリは動きが遅くロードに時間がかかりすぎると言っていた。もっといい方法があるはずだ。

そして彼は、寮室の鍵を開けた瞬間のアプリのネットワークデータを解析することで、ネットワークリクエストを再現することに成功し、iPhoneのショートカットボタンを1タップするだけでドアを解錠できるようになった。ただしこのショートカットが動作するためには、自分の正確な位置情報をアンロックリクエストと一緒に送る必要があり、それがないと鍵は開かない。ジョンソン氏は、セキュリティの観点からこのアプリを使ってドアを解錠する際に学生は物理的にドアの近くにいなくてはならないようになっていると語った。キャンパス内のあちこちで誤ってドアが開いてしまうことを防ぐための措置だ。

まずはうまくいったが、ここでやめる必要はある?アプリを使わずにドアをアンロックできるとしたら、他にどんな動作を再現できるだろうか?

ジョンソン氏は広く助けを求める必要がなかった。CBORDは、APIを通じて使えるコマンドの一覧表を公開しており、APIは学生の識別情報(例えば彼自身の)を使って制御することができた(各APIでは、インターネットを通じて2つの実体がやり取りすることが可能で、この場合はモバイルアプリと大学の学生データが保存されているサーバー)。

しかし、すぐに彼はある問題を見つけた。APIは学生の識別情報が有効であるかどうかをチェックしていなかった。つまりこれはジョンソン氏、あるいはインターネット上の誰でもが、このAPIを使って他のあらゆる学生のアカウントを、パスワードを知る必要なく乗っとることができるを意味している。ジョンソン氏によると、APIは学生のユニークIDだけをチェックしていたが、ときとしてそのIDは大学が発行した学生のユーザー名あるいは学生ID番号であり、大学によってはオンライン学生名簿で公開しているため秘密とはいえないと同氏は警告した。

ジョンソン氏はこのパスワードバグを、大学の「マスターキー」と評した、少なくともCBORDで制御されているドアに対しての。解錠するためにドアの近くにいなくてはならないという要件についても、バグのおかげで物理的にそこにいるとAPIを思い込ませることができたとジョンソン氏は言った。鍵そのもののおおよその座標を送るだけでよかった。

バグはAPI自身にあることから、他の大学にも影響を与えている可能性があるとジョンソン氏はいうが、アカウントのアクセス境界を超えることを恐れて、チェックはしていない。代わりに彼は、バグをCBORDに報告する手段を探したが、同社のウェブサイトで安全な専用メール窓口を見つけることはできなかった。彼は電話サポートにつないで脆弱性を報告したが、サポート担当者は、会社にセキュリティ窓口はないと答え、バグは大学を通じて報告するように言われた。

このバグは容易に悪用が可能(すでに実行されているかもしれない)であることを踏まえ、ジョンソン氏はTechCrunchに、脆弱性の詳細をCBORDに伝えるよう依頼した。

脆弱性はTechCrunchが2月12日に会社に連絡を取ってからまもなく解決した。CBORDの最高情報責任者、Josh Elder(ジョシュ・エルダー)氏はメールで、問題の脆弱性は解決済みであり、セッションキーは無効化されため、残存していた可能性のあるAPIへの不正アクセスも遮断されたことを確認した。エルダー氏は、CBORDの顧客に通知を送ったと言ったが、メール内容をTechCrunchに知らせることは拒んだ。CBORDを使用している別の組織のセキュリティ担当幹部は、CBORDからその脆弱性に関する通知を受けていない、とTechCrunchに話した。果たしてCBORDが、ユーザーやアカウント保有者、例えばジョンソン氏のような学生に通知するつもりがあるのかどうか、わかっていない。

エルダー氏はジョンソン氏の発見に異議を唱えなかったが、会社がログを保存しているか、あるいはAPIの悪用を検知する仕組みがあるのかという質問に対してそれ以上の回答を拒んだ。TechCrunchは同社広報担当者に追加質問への回答を要求したが、その後連絡を受けていない。

遠隔からドアを解錠できる脆弱性をCBORDが修正しなくてはならなかったのはこれが初めてではない。Wiredは2009年に、ドアの解錠コマンドを傍聴することで次のシーケンス番号を予測し、IDカードの要求を回避できることを報じた。

画像クレジット:Olena Ruban / Getty Images

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Nob Takahashi / facebook

フォード、前を走るテスラに追いつこうとEV投資を約5兆7730億円に増額

Ford Motor Company(フォード・モーター・カンパニー)は、EV事業向けの投資額を従来の2025年までに300億ドル(約3兆4645億円)という目標から、2026年まで500億ドル(約5兆7730億円)に引き上げる。このニュースは米国時間3月2日、Fordが2月上旬に行った2021年第4四半期決算説明会で触れたように、EV事業をガソリン車事業から分離し、独立採算制にすることを確認した後、Jim Farley(ジム・ファーリー)CEOが発表した。

Fordが電動化投資額を引き上げるのは、この1年足らずで3回目となる。Fordは2021年5月にEV事業に220億ドル(約2兆5378億円)を投資することを発表しており、業界のリーダーであるテスラに追いつくために、財務的な強化を続けていることを示している。

Fordは「Ford Model e(フォード・モデルe)」と名付けた新しいEV事業を通じて、2026年には世界年間生産台数の3分の1に相当する200万台以上のEVを製造し、2030年までに総台数の50%を電動化する計画だとファーリー氏は述べている。ただし、John Lawler(ジョン・ローラー)CFOによると、次世代モデルの生産が始まる2025年までは利益を上げられない見込みだという。Ford Model eと、同社のより伝統的なICE部門であるFord Blue(フォード・ブルー)は、2023年までに別々の決算を報告する予定だ。

Fordは2022年、EVに50億ドル(約5768億円)を費やすと見込んでおり、これは2021年の倍である。

多くの業界アナリストは、FordがEV事業をスピンアウトすると予想しているが、ファーリー氏は、それが近いうちに実現することを示唆しなかった。しかし、それは将来的にその可能性がないということではない。

「ICE事業はキャッシュを生み出すために、EV事業はイノベーションにフォーカスするために必要なのです」とファーリー氏は語った。

Fordは2月に7万2000台の車両を受注し、前年同月の5万4000台を上回った。その大半はトラックとSUVだが、同社のEV販売台数は2月までに55.3%増加し、セグメント全体よりも速いペースで伸びているという。

画像クレジット:Ford

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Den Nakano)

フォード、前を走るテスラに追いつこうとEV投資を約5兆7730億円に増額

Ford Motor Company(フォード・モーター・カンパニー)は、EV事業向けの投資額を従来の2025年までに300億ドル(約3兆4645億円)という目標から、2026年まで500億ドル(約5兆7730億円)に引き上げる。このニュースは米国時間3月2日、Fordが2月上旬に行った2021年第4四半期決算説明会で触れたように、EV事業をガソリン車事業から分離し、独立採算制にすることを確認した後、Jim Farley(ジム・ファーリー)CEOが発表した。

Fordが電動化投資額を引き上げるのは、この1年足らずで3回目となる。Fordは2021年5月にEV事業に220億ドル(約2兆5378億円)を投資することを発表しており、業界のリーダーであるテスラに追いつくために、財務的な強化を続けていることを示している。

Fordは「Ford Model e(フォード・モデルe)」と名付けた新しいEV事業を通じて、2026年には世界年間生産台数の3分の1に相当する200万台以上のEVを製造し、2030年までに総台数の50%を電動化する計画だとファーリー氏は述べている。ただし、John Lawler(ジョン・ローラー)CFOによると、次世代モデルの生産が始まる2025年までは利益を上げられない見込みだという。Ford Model eと、同社のより伝統的なICE部門であるFord Blue(フォード・ブルー)は、2023年までに別々の決算を報告する予定だ。

Fordは2022年、EVに50億ドル(約5768億円)を費やすと見込んでおり、これは2021年の倍である。

多くの業界アナリストは、FordがEV事業をスピンアウトすると予想しているが、ファーリー氏は、それが近いうちに実現することを示唆しなかった。しかし、それは将来的にその可能性がないということではない。

「ICE事業はキャッシュを生み出すために、EV事業はイノベーションにフォーカスするために必要なのです」とファーリー氏は語った。

Fordは2月に7万2000台の車両を受注し、前年同月の5万4000台を上回った。その大半はトラックとSUVだが、同社のEV販売台数は2月までに55.3%増加し、セグメント全体よりも速いペースで伸びているという。

画像クレジット:Ford

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Den Nakano)

マイクロソフトがVC・アクセラレーターと提携しアフリカで1万社のスタートアップを支援

Microsoft(マイクロソフト)は米国時間3月3日、アフリカ大陸のアクセラレーターやインキュベーターとのパートナーシップを含む一連のイニシアチブを通じて、今後5年間でアフリカのスタートアップ1万社を支援する計画を発表した。

同社はまた、ベンチャーキャピタル投資家と提携し、5億ドル(約577億円)の「潜在的」投資を引き出すことで、アフリカにおけるスタートアップの資金調達アクセスを向上させる計画も発表した。Microsoftは、すでにBanque Misr、Global Venture Capital、Get Funded Capitalと協力しているという。

これらの取り組みは、同社で最近設立されたAfrica Transformation Office(ATO、アフリカ変革推進室)を通じて実施される。ATOは、官民組織との提携により、アフリカにおけるMicrosoftの戦略的イニシアチブを推進していく。

ATOスタートアップ部門リードのGerald Maithya(ジェラルド・マイティヤ)氏はこう述べている。「ベンチャーキャピタル投資家とのこれらのパートナーシップを確立する上での我々の目標は、Microsoft、VC投資家、そしてスタートアップの間の潜在的なパートナーシップのネットワークを広げ、それによって、適格なスタートアップが利用できる資金を増やすことです」。

Microsoftは、Grindstone、Greenhouse、FlapMax、Seedstarsなどのアクセラレーターやインキュベーターと提携し、市場、技術スキル、投資機会を提供すると述べている。

スタートアップにさまざまなリソースやメンターへのアクセスを提供するセルフサービスハブであるMicrosoftのGlobal Founders Hubは、アフリカのスタートアップにも提供される予定だ。Founders Hubには、Microsoftの法人顧客やエンタープライズ顧客に共同販売する機会も含まれている。

ATOのマネージングディレクターであるWael Elkabbany(ワエル・エルカバニー)氏は、こう語った。「アフリカは、世界のスタートアップランドスケープの中で、デジタルイノベーションの盛んな拠点となる大きな可能性を持っています。アフリカのデジタル経済だけでなく、グローバルな社会にも貢献できるような、ローカルな発明が爆発的に増えることが我々の野望です」。

Microsoftは、アフリカのスタートアップをターゲットにしたイニシアチブを打ち出すテック企業のリストに加わることになる。Google(グーグル)は2021年、アフリカ大陸の初期および成長段階のスタートアップを対象とした5000万ドル(約57億7300万円)のAfrica Investment Fund(アフリカ投資基金)を立ち上げ、同社のGoogle for Startups Accelerator Africaプログラムを引き継いだ。

画像クレジット:Microsoft

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(文:Annie Njanja、翻訳:Den Nakano)

ウクライナ情報変革副大臣インタビュー「IT軍団と29億円相当の暗号資産による寄付」について語る

事態が憂慮すべき展開を続ける中、ウクライナは地上戦の枠を超えてロシアへの抵抗を強めている。インターネットを活用してロシアの攻撃に対抗し、ロシアの権力の中枢を積極的に攻撃し、何か支援をしたいと考える人たちからの(資金援助を含む)支援を集め、デジタル戦線で戦っているのだ。ロシアが常時警戒態勢から全面攻撃態勢に移行したことに驚いた人もいるかもしれないが、早期警戒の兆候をすでに認識していた人たちにとってはそのようなことはない。

ウクライナ時間3月1日のインタビューで、Oleksandr (Alex) Bornyakov(オレクサンドル[アレックス]ボルニャコフ)情報変革(Information Transformation)担当副大臣は「戦争は4日前に始まったわけではありません」と語った。「8年間続いているのです。ロシアはずっと攻撃していました」。

ウクライナの積極的なデジタルキャンペーンは、すでに大きな成果をあげ始めている。ボルニャコフ氏によると、2月28日の時点で、世界中からさまざまなオンライン寄付によって1億ドル(約115億6000万円)が集まったという。このうち2500万ドル(約28億9000万円)は、ウクライナ当局が共同管理しているアカウントや、官民パートナーシップでネットワークを運用しているアカウントへの暗号資産寄付によるものだ。その半分以上は、ウクライナのレジスタンスを支援するための物資にすでに費やされているという。

ウクライナ情報変革担当ボルニャコフ副大臣

ボルニャコフ氏は、以前から国のデジタル戦略の最前線に携わってきた。

先週まではそれが意味していたものは、同国のDiia City(ウクライナのITセクター向け仮想組織)イニシアチブの運営だった。それは、より多くの外国のテック企業がウクライナに進出して事業を展開することを奨励する大規模な計画、大きな優遇税制やその他の優遇措置で取引を有利なものとすることで、ウクライナのエコシステムでより多くのスタートアップが成長することを奨励することなどだった。

だが今週の時点でのボルコニャフ氏の仕事は、レジスタンス活動を支援するために暗号資産で資金を調達するという同国の大きな動きを管理すること、他のデジタル活動家の草の根活動を管理して連携させること、そして戦闘が激化する中で、コミュニケーションのための不測事態対応計画を考えることだ。

それぞれの領域で開発がどんどん進んでいる。彼にインタビューしたときには、ロシアがテレビ塔を爆破したというニュースが流れていた。ハイテク企業は、コンテンツやサービスの遮断を発表し続け、より多くの人々が逃げ惑い、戦い、銃撃戦に巻き込まれていたのだ。

ボルニャコフ氏本人は、いまでもウクライナに安全にとどまっていることは認めたが、正確な居場所は明かさず、取材に協力したアシスタントもまた別の場所にある防空壕からその作業を行った。またうまくいくコミュニケーションチャンネルを見つけるまでには、複数の経路を試す必要があった。これらがいつまで続くのかはわからない。私たちはみんな、この事態に終止符が打たれ、ウクライナが自立して強くなることを望んでいる。

物事が急速に進展している中で、私たちはボルニャコフ氏に話を聞き、いわゆるIT軍団の台頭、ウクライナのサイバーセキュリティ、ウクライナが取っている暗号資産への賭けなど、より大きなデジタル化の動きの中で、現在どのような状況にあるかを聞き出すことができた。その内容は、大局的に見れば、これから起こることに備えるだけでなく、冷静さを保ち、前進し、プレッシャーの中で繁栄さえできるかもしれないものだ。以下、そのインタビューと対談の内容を、長過ぎる部分を割愛し簡単に編集したものを掲載する。

TechCrunch:お時間をいただき、ありがとうございました。いま現地は極めて混沌とした状況だと思います。まず、どちらから通話をなさっているのでしょうか?まだキエフですか、それともどこか別の場所でしょうか?

オレクサンドル・ボルニャコフ氏:ウクライナにいますが、キエフではありません。大変なできごとですが、今のところ無事です。しかし多くのウクライナ人は無事ではありません。

了解しました。質問に入ります。魅力的なのはレジスタンス活動のデジタル化ですね。まず、IT軍団について質問させてください。IT軍団は、草の根のクラウドソース型ハッカー集団で、ロシアの多くのサイトをダウンさせ、大混乱を引き起こしている団体ですね。副首相でデジタルトランスフォーメーション担当大臣のFederov(フョードロフ)氏がそれを支持してTwitterで宣伝しました。Telegram(テレグラム)内のグループには、現在約27万人以上のメンバーがいます。これは政府とどんな関係があるのでしょうか?

彼らは副首相の呼びかけに応じただけのボランティアです。彼らのことはよく知りません。そして、個人レベルで調整を行うリーダーみたいな人もいません。とにかく大きなグループなのです。そして、そこには個人だけでない関係者が含まれていると思っています。組織も参加しているのです。ロシアですら「(IT軍団)が持っている力は、この世界でアメリカ、中国、ロシアの3カ国しか持っていないものに匹敵する」と言ったそうです。つまり、彼らの力を合わせれば、最大の国家的サイバー防衛グループに匹敵するのです。

相手を倒した数ではという意味ですよね?

ええ、どれだけの被害を及ぼせるかという意味ですね。

彼らがどこにエネルギーを注ぎ込むのかに対して、何らかの調整は行っているのでしょうか?

特定の人やグループと1対1のレベルでコミュニケーションをとっているわけではなく、グループ内にタスクを投入すれば、彼らがそれを実行するという流れです。その数分後には、いくつかのインフラがダウンします。私たちが依頼したら、どんなインフラでも破壊してしまうのです。

ロシアが、ウクライナと利害関係のあるものを地上とサイバースペース両方で最大限激烈な方法で攻撃しようとしていことを考えると、IT軍団は対象を攻撃する活動以外にも何か関与しているのでしょうか。

戦争は4日前に始まったわけではありません。8年間続いているのです。ロシアはその間、ずっと攻撃を続けていました。つまり、インターネット上のサイバーセキュリティレベルでということですが。そのような中で、私たちは非常に高度なサイバー防衛システムを開発してきました。だから、もしかしたら……そうですね、ロシアは私たちを攻撃しようとしていたのかもしれません。しかし、成功はできませんでした。サイバーディフェンスは、まったく別の人たちが担当しています。防衛のためには、制限されたシステムにアクセスできるようにする必要がありますが、誰にでもアクセスさせるわけにはいきませんし、IT軍団は公開グループですので誰が参加しているのかはわかりません。なので、守備側は完全に別の人たちの肩にかかっているのです。

IT軍団に関するより大きな戦略をお持ちですか?

まあ、このインタビューは公開されるものですから、戦略についてはあまり話せません。でも、ヒントのようなものはお答えできます。私たちは何年もの間、ずっとネットで攻撃を受けていました。それでも決して反撃はしませんでした。私たちは自分たちを守るだけだったのです。なので、インフラが攻撃され、カードや行政サービスが使えなくなったときに、私たちがどのような気持ちになったのかを、今回初めて伝えることができたわけです。ということで、これが答です。

IT軍団とその連携について、もう1つお聞きします。私にとって興味深いのは、彼らの規模と影響を示すことで、公に知られることが彼らにとって有利に働くという点です。しかし、Telegramはそれほど安全ではないという主張や、検閲される可能性があるという主張、そしてロシアがそれをコントロールしているという主張など、他の側面も考慮する必要があります。これらはどの程度、気になさっていますか?

まあ、実際にはメッセンジャーを使い分けています。でも、Telegramは……(笑)、Telegramとしての利用は多いですね。でも同時に、実のところほとんど全部のメッセージングアプリを使っています。個人的な好みはありません。私たちのチームの他のメンバーも、さまざまなメッセージングアプリを使ってコミュニケーションをとっています。この観点で私たちを打ち負かすのは本当に難しいでしょう。

他のコミュニケーションチャネルはどうでしょう。持ちこたえられていますか?

接続は維持できています。影響を受けた電子機器はまだありません。基地の1つが攻撃されましたが、大都市の中の1つに過ぎません。まだ他にたくさんありますので。おそらく、彼らはこの先接続を撹乱しようとすると思います。彼らが最初にそれをしなかったのは、事態を簡単なものだと思っていたからでしょう。単に街に侵入して、中央広場に集って、祝杯をあげるだけだと思っていたのです。だから、そもそもインフラには一切手をつけていなかったのです。しかし、やっとロシア人は自分たちがここでは歓迎されていないことに気づいたのです。彼らは領土を占領しつつあります。そしてほぼ1週間経って、彼らは我々のインフラを破壊し始め、民間の施設を攻撃し、民間人を殺し始めました。

イーロン・マスク氏のStarlink(スターリンク)の拡張は、通信計画にどのように関わってくるのでしょうか?

いいですか、そうした計画についてはお話できません。でもまあ、バックアップには何段階もあって……もちろんまだ計画だけですが。とはいえ、もし不測の事態に備えていなければ、私たちはとっくの昔にやられていたはずです。彼らがサイバー空間でどれだけ攻撃を仕掛けてきたか、ご存知ないでしょう。ということで、私たちのインフラは動いているし大丈夫です。サーバーを叩けば落ちるというものではありません。

発信なさっている国際的なメッセージの中には、他の人たちに自分たちでできることをして欲しいと訴えるという点で、とても効果的で直接的なものがあります。最近の例では、ICANNにロシアのトップレベル国別ドメイン名を「永久的または一時的に取り消す」こと、DNSを停止させること、そしてTLS証明書を失効させることなど、あらゆることを要請しています。これらの妥当性についてはどのようにお考えでしょうか。そして彼らから返事はあったでしょうか?

ICANNからの返事はありません。彼らがどのようなアクションを起こすのか、起こすべきなのかはよくわかりません。しかし、組織、あるいは人々が共通の人道的価値観を共有しているならば、ここで立ち上がらなければ、影響を受けるのは世界であることは間違いないでしょう。事態はこのまま終息しません。プーチンは完全にいかれていますし、さらなる追い打ちをかけてくるでしょう。彼のこの10年間の活動を見れば、限界に挑戦していることがわかります。そして、彼は「力による会話」を理解していると思います。ですから私の立場は、とにかく全力で反撃することです。そうでなければ、考えたくはありませんが、もしかしたら最終的には核兵器まで行ってしまうかもしれません。しかし、彼の国は、問題を解決するには戦争以外の方法があることを感じなければなりません。

そこで一部の団体や草の根レベルで国際協力を呼びかけているわけですね。サイバー防衛に関しても、米国や他の国々と連携しているのでしょうか?

たくさんの連携が取れていると思います。

(彼は他国の支援を高く評価し、特に米国と英国に感謝を述べたが、具体的な内容には触れようとしなかった)

暗号資産について少しお話させてください。ウクライナはこの週末、ウォレットのアドレスをツイートし、さまざまな暗号資産が莫大に流れ込んでいるようです。そのウォレットをウクライナ政府のために、あるいはウクライナ政府に代わって実際に運用しているのは誰なのでしょうか。

そうですね、私たちが運用しているファンドは、ウクライナの暗号資産取引所が運営しているものです。つまり、これは官民合同のパートナーシップのようなものです。より迅速な対応を行えるように、このたび、ある取引所と提携したところです。誰も手を出せないように、資産がしっかり確保できるようにする必要があります。もちろん、高速交換、高速送金も必要です。政府だけが関わっているわけではないのですが、私たちがアカウントを管理してます。そのほとんどがマルチ署名のアカウントです。つまり、それを使おうと思ったら、少なくとも3人くらいの署名をもらわなければなりません。

(ボルニャコフ氏はそのうちの1人だが、すべての口座の署名者ではない)

Kuna(クナ)はあなたが取引をしている取引所です。これが、暗号資産取引所との間の提携で、暗号資産を実際の通貨に交換するのを支援しているということですか。

はい。ほぼ、その通りです。

了解です。また、みなさんはどの暗号資産を扱い、どの通貨に交換しているのでしょうか?

主にBitcoin(ビットコイン)、Ethereum(イーサリアム)、Tether(テザー)を扱っていますが、Polkadot(ポルカドット)で500万ドル(約5億8000万円)という巨額の寄付をいただきました。他の暗号資産での寄付を希望される方も多いので、暗号ウォレットを追加中です。交換先の通貨としては、米ドルとユーロが多いと思います。

Airdrop(エアドロップ)が承認されました。寄付権利確定は明日3月3日、キエフ時間(UTC/GMT+2)の午後6時に行われる予定です。(日本時間では3月4日午前1時)
報酬は追って配布!

ウクライナの暗号資産寄付キャンペーンに関する続報は、@FedorovMykhailoをフォローして下さい。

(訳注:Airdropとは暗号資産の無償配布のこと。暗号資産による寄付に対してウクライナが WORLD という暗号資産を無償配布することを事前に表明していた)

【編集部注】日本時間3月3日の夜、上記のAirDropが中止されたことをフョードロフ氏自身が発表した。

検討の結果、airdropを中止することにしました。ウクライナの反撃に協力を申し出る人は日々増えています。その代わり、ウクライナ軍を支援するためのNFTをまもなく発表する予定です。私たちは、FT(代替可能なトークン。ex.普通の暗号資産トークンなど)を発行する予定はありません。

もう寄付金は使われているのでしょうか?それとも、まだ使わずに待っているのでしょうか?

半分はすでに何かの機材に使われています。具体的に何をとは言えませんが、今日も大きな買い物が行われました。活用しています。防衛省とも連携しているので、Kunaと私たちだけでなく、防衛省も巻き込んでの活動です。ですから、基本的には私たちがニーズを理解して、彼らがロジスティクスを助けてくれるのです。これが終わったら、みなさんに完全な透明性のある報告をするつもりです(別途Kunaから聞いたところでは、機材の購入にはドローンやその他の補助的な機材も含まれているとのことである)。

関連記事:ウクライナへの暗号資産による寄付金、政府基金の使われ方

これまでにどれだけの資金が使われたのでしょうか。また、これまでにどれくらいの寄付金が集まったのでしょうか。

これまでに約2500万ドル(約29億円)の資金が集まり、1400万ドル(約16億2000万円)ほど使ったと思います。

なぜ、暗号資産を使わないルートではなく、暗号資産による寄付を選んだのでしょうか?資金調達のルートはたくさんあります。

さて、みなさんはご存じないかもしれませんが、ウクライナ国立銀行は、これに先立って、最初に大規模な国家的キャンペーンを行っています、こちらは、ほとんど通常の通貨とカードで資金調達をしています。ということで作業は並行しています。暗号資産だけではありません。ファンドは沢山あるのです。人道支援に重点を置いているものもあれば、軍事だけに重点を置いているものもあります。政府業務をサポートするために存在するものもあります。つまり、正確には知りませんが、さまざまな機関の力を合わせると、1億ドル(約115億7000万円)ほど調達できたと思います。

余談になりますが、副大臣が担当されたテックシティプロジェクト「Diia City」についてお聞きしたいのですが。今は少し後回しになっているようですね。

この時点では、そう、後回しになっています。このプロジェクトに関しては比較的すばらしいスタートを切ることができました。巨大企業や国際的な企業など、何百もの企業が参入していましたが、残念ながらロシアの侵攻によって、これがご破算になってしまいました。延期ということにしておきたいと思います。しかし現在は、企業はほとんどの人員を避難させているところです。

ウクライナに残って仕事を続けている人もいますが、多くの人が去ってしまいました。とても残念なことです。

私もそう思います。本当に、信じられないようなことが起きてしまったんです。私たちの領土でこのような悲劇が起こるとは、想像もしていませんでした。でも、いずれは再建します。そしてもちろん、現状を打開できると思っています。しかしその道のりはとても険しいものでしょう。

画像クレジット:Pierre Crom/Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:sako)

【3月4日】掲載記事アクセスランキング・トップ5―1位はContiの内部チャットログ流出、2位はNVIDIA機密データ流出

【3月4日】掲載記事アクセスランキング・トップ5―1位はContiの内部チャットログ流出、2位はNVIDIAの機密データ流出

掲載記事のうち、3月4日午前7時現在集計で最もアクセスのあった記事5本を紹介。

第1位:ロシアのウクライナ侵攻支持を宣言したContiランサムウェアグループの内部チャットがネットに流出


ランサムウェアグループContiのチャットログのキャッシュが、ロシアのウクライナ侵攻を支持するグループに異議を唱えると主張している内部関係者らによって、オンライン上に流出した。情報は、マルウェアのサンプルやデータを収集するマルウェア研究グループであるVX-Undergroundに共有された。

第2位:NVIDIA、ランサムウェア攻撃で機密データが流出


NVIDIAは、先週のサイバー攻撃でハッカーが従業員の認証情報や会社の専有情報などの機密データを同社のネットワークから盗み出し、現在「オンラインでリークしている」ことを確認した。広報担当者が米国時間3月1日、TechCrunchに語った。

第3位:ネクソン創業者の金正宙氏死去、享年54歳


米国時間3月1日、ネクソンの持ち株会社NXCは声明を発表した。「深い悲しみとともに、ネクソンは、2月に亡くなった愛する創業者、キム・ジョンジュの予期せぬ死を悼みます」。彼の突然の死は、金氏をアイコンであり、パイオニアとして見ている韓国のゲーム業界に大きな衝撃を与えている。

第4位:【コラム】イーロン・マスクとテスラには「ティム・クック」が必要、今こそ「大人」が跡を継ぐときだ


スタートアップは偉大な個性のリーダーの下で開花し繁栄する。すぐに停滞が訪れる。会社の焦点は、無限に続く新製品を販売することから、顧客の要求を満たすものを作っていることの確認へと移り変わっていく。幸福な期間は終わり、新しい時代は、一貫して高品質な製品を大規模に出荷するために必要な退屈な日々から始まる。

第5位:グーグル、ウクライナでGoogleマップのリアルタイム交通状況ツールを無効に


Alphabetは米国時間2月28日、取材に対し、ウクライナでGoogleマップのライブ交通状況ツールの一部を無効にしたことを明らかにした。Reutersが報じたこのニュースは、同国がロシア軍からの攻撃に直面している中で、同社が地元当局と協議した後に発表された。

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ノバセルとアドレクス、テレビCMからウェブ広告まで一気通貫で運用する成果報酬型クロスマーケティングプランX-MAX開始

ノバセルとアドレクス、テレビCMからウェブ広告まで一気通貫で運用する成果報酬型クロスマーケティングプランX-MAXを提供開始

運用型テレビCMサービスを運営する、ラクスルグループのノバセルは3月2日、ウェブマーケティング事業を展開するADREX(アドレクス)と共同で、テレビCMからウェブ広告までを一気通貫で運用するオンオフ統合成果報酬型マーケティングプラン「X-MAX」(クロスマックス)を提供開始した。まずは同プランのリリースを先駆けとし、広告主の求める投資対効果を透明化しながら運用負荷も軽減し、事業を伸ばす。

X-MAXは、あらかじめ広告主と合意した成果指標を基に成果報酬制で広告費が決まるサービス。テレビCMに関しては「検索エンジンでの指名検索増加数」、ウェブに関してはROAS(Return On Advertising Spend、投資した広告コストの回収率)をそれぞれ計測指標とし、同目標の達成度を基準に手数料率が変動する仕組み。「広告主のビジネスにおける成功」と「広告費用」を連動させ「成果報酬型」の料金体系を実現するほか、複数広告会社に委託することで生じる、データや目標管理の連携不足を解消するという。

また、ノバセルの利用開始条件は以下2つという。
・これまでノバセルおよびADREXともに取引実績がない
・ノバセルおよびADREXが、成果報酬での取引が実施可能と判断

ノバセルは2020年にローンチ。テレビCMに関する企画・制作・放映・効果測定を通し、経験・知見を蓄積してきた。事業を運営する中で、「マーケティング投資後の広告主企業の売上拡大や新規顧客獲得などにおいて、広告費がどのような成果を得られたかに関わらず、固定で発生するもの」という商慣習に疑問を感じるようになったという。また広告運用面においても、テレビCMをはじめとしたマス広告の企画・実行を行う広告会社と、ウェブマーケティングを行う広告会社が別に存在していることで「マーケティング戦略にオンラインとオフラインで一貫性がなく、チャネル統合としての効果が最大化されないこと」や「広告会社が異なることで、広告主のオペレーションが煩雑になる」と感じてきたそうだ。そこで、ノバセルのノウハウと、ウェブマーケティング事業を通じ企業を支援してきたADREXのノウハウを組み合わせ、テレビCMからウェブ広告までを一気通貫で行おうと、X-MAXのリリースに至ったという。

ノバセル代表取締役社長でラクスル取締役CMOでもある田部正樹氏は、「ラクスルグループでは自社がほしいものを作っていくという文化があり、ノバセル事業を立ち上げました。新サービスであるX-MAXも、自分自身が発注者の立場となったときに必要だと思う機能を想像しながらプロダクトを設計しました。ウェブマーケティングとテレビCMを一貫して見られるツールはまだないことと、デジタルマーケティングにあたってまだテレビCMまでは不要という層にも事前にリーチしノバセルのカバレッジを広げたいという思いから、効果の最大化という由来を込めてX-MAXというプランを作りました」と語る。ノバセルの利用者は、企業フェーズを問わずインターネットサービス企業が中心とのこと。

ノバセルでは、マーケティング投資回収の仕組み化を通して、「マーケティングの民主化」というビジョンを掲げ、プロダクト作りを行っていく方針だという。

イーロン・マスク氏、テスラのカリフォルニア工場で組合投票を実施するよう全米自動車労働組合に挑む

Elon Musk(イーロン・マスク)氏は、Tesla(テスラ)がカリフォルニア州フリーモントの工場で全米自動車労働組合(UAW)が組合投票を行うことを阻止するために何もしないと述べた。マスク氏はツイートの中で、ベイエリアにおけるTeslaの真の課題は、求職者数より求人数が多いマイナスの失業率であり、そのため「(すばらしい)人々」をよく扱い、報酬を与えている、さもなければ彼らは去ってしまうだろう、と述べている。

マスク氏は、Biden(バイデン)大統領が一般教書演説でTeslaについて言及しなかったことを非難した際に、マスク氏の味方をしたKissのリード・シンガー、Gene Simmons(ジーン・シモンズ)氏に反応してこのツイートを投稿した。大統領は、Ford(フォード)とGeneral Mortors(ゼネラルモーターズ)が数十億ドル(数千億円)を投じて電気自動車を発売し、それによって何千人もの雇用を生み出していることを称賛しただけだった。Bloombergが指摘するように、大統領は労働組合の支持者であり、非組合員を抱えるTeslaを演説やインタビューの中でしばしば無視することがある。

マスク氏は、その後のツイートで、Teslaの工場労働者の報酬は自動車業界で最も高いと主張し、ソースとしてGMのMary Barra(メアリー・バーラ)CEOのインタビューを掲載した。そのインタビューでは、ニュースキャスターでジャーナリストのAndrew Sorkin(アンドリュー・ソーキン)氏が、Teslaの非組合員労働者は組合員労働者より多くの報酬を得ていると述べている。バーラ氏は、賃金だけでなく福利厚生も考慮しなければならないので、もっと情報を見なければならないが、ソーキン氏が言ったことは前回調べたときにはそうではなかったと答えている。

UAWは何年も前からTeslaの組合化に取り組んでおり、マスク氏は当初からそうした取り組みを批判してきた。2017年にフリーモントの労働者が劣悪な労働条件と低賃金を訴えたとき、マスク氏はUAWを攻撃すると同時に、要点を絞った手紙を従業員に送ったと伝えられている。彼は、組合の真の忠誠は「巨大な自動車会社にあり、従業員から会費で取る金はTeslaから稼ぐよりも莫大な額だ」と、述べている。

同年、全米労働関係委員会(NLRB)は、不当労働行為に関する苦情を調査した結果、同社を提訴した。NLRBによると、労働者はTeslaが組合結成について話し合えないような秘密保持契約を結んで「強制し、脅迫している」と述べた。2018年、NLRBは同社が組合活動家のRichard Ortiz(リチャード・オルティス)氏を解雇した際に労働法に違反したと認定し、逸失利益と福利厚生の補償を命じた。

また、労働委員会はマスク氏に対し、従業員への脅迫と思われるようなツイートの削除を命じた。このツイートでマスクは、同様に組合結成への取り組みを呼びかけていた。「我々の自動車工場のTeslaチームが組合に投票することを止めるものは何もない。彼らが望めば、(明日にでも)そうすることもできる」と彼は書いた。しかし、彼はこうも言っている。「だが、なぜ無駄に組合費を払い、ストックオプションをあきらめるのか?」NLRB議長のWilma Liebman(ウィルマ・リーブマン)氏は当時、従業員にとって、組合結成に投票したらストックオプションがなくなるように聞こえるかもしれないと説明した。Electrekが指摘するように、Teslaは、株式報酬制度をほとんどの従業員に提供しており、同社の株価上昇によって、この制度は非常に価値のある福利厚生となっている。

編集部注:本記事の初出はEngadget。執筆者のMariella Monn(マリエラ・ムーン)氏はEngadgetのアソシエイト・エディター。

画像クレジット:Sam Hall / Bloomberg / Getty Images

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(文:Mariella Moon、翻訳:Yuta Kaminishi)

KnativeがCNCFのプロジェクトになった

Cloud Native Computing Foundation(CNCF)は、今日の最も重要なオープンソースプロジェクトのホームであり、Kubernetesもその1つだ。米国時間3月2日、CNCFの技術監督委員会(Technical Oversight Committee)が、KnativeをCNCFのインキュベーションプロジェクトとして受け入れたことを発表した。

CNCFのCTOであるChris Aniszczyk(クリス・アニシュチェク)氏は「Knativeはクラウドネイティブのエコシステムに良質に統合された強力な技術であり、サーバーレスのコンテナを容易に動かせるようにしてくれる。このプロジェクトは当財団のオープンガバナンスモデルの下でさらに成長し、新たなコントリビューターやエンドユーザーに到達するだろう。Knativeのコミュニティと一緒に仕事をすることが楽しみであり、チームのコントリビューションを歓迎する」と述べている。

Knativeは「ケイネイティヴ」と読み、2018年にGoogleが開発したが、その後IBMやRed Hat、VMware、TriggerMesh、SAPなど業界の重鎮たちも貢献した。このプロジェクトの基本的な考え方は、Kubernetes上でサーバーレスおよびイベントドリブンのアプリケーションを容易に構築、デプロイ、そして管理できるようにすることだ。今は多くのエンタープライズがデジタルトランスフォーメーションの一環として新しいアプリケーションを開発したり、既存のアプリケーションをモダナイズするとき、まさにその方向に進んでいる。そしてKnativeは今なお極めて若いプロジェクトだが、すでにBloombergやAlibaba Cloud、IBM、VMwarenなどはプロダクションでそれを使っており、またGoogleはKnativeを使ってGoogle Cloudのサーバーレスコンピューティングプラットフォームを運用している。

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このプロジェクトは2021年11月にバージョン1.0の節目に達し、その直後にGoogleが、プロジェクトをCNCFに検討のために付託したと発表した。現在、その段階が完了したためGoogleはKnativeの商標とIPとコードをCNCFに寄贈することになる。

Knative推進委員会とDOCS-UXのリードであるCarlos Santana(カルロス・サンタナ)氏は次のように述べている。「Knative 1.0で安定に達したこのプロジェクトを、特定のベンダーに偏らないホームへ寄贈することは、プロジェクトの今後の成長とコミュニティの自己統治を可能にする次のステップです。私たちの信ずるところによれば、CNCFこそがそのベンダー不偏の団体であり、そこがKnativeを受け入れたことで今後多くの企業が採用する気になり、プロジェクトの寄与貢献や宣伝もしてくれるでしょう。また、Knativeのコミュニティが、自身が利用しているすべてのプロジェクトに限らず、このエコシステム内のその他のクラウドネイティブプロジェクトにも接近して、フィードバックと機能の善循環を確立するでしょう」。

画像クレジット:bugphai/Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

持続可能な方法でなければ軌道上のゴミは宇宙のゴールドラッシュの妨げになる

空を見上げれば、何百もの廃棄された衛星、使用済みロケットの上段部、ミッション関連の物体が地球を回り、1兆ドル(約115兆円)規模の宇宙経済を支えるであろう宇宙をベースとするサービスや将来のミッションに危険を及ぼしていることがわかる。

欧州宇宙機関(ESA)によると、現在、10cm以上の物体が3万6500個以上、1cm未満の物体が数百万個、地球を周回しているという。当然ながら、軌道上での衝突は壊滅的な被害をもたらす。弾丸よりも速い毎秒7kmの速さで移動するデブリは、1cmの破片でも宇宙船に大きな損傷を与え、ミッション全体を終了させる可能性があるのだ。

今日の宇宙における持続可能性の危機は、60年にわたる探査と利用が、宇宙活動が環境に与える影響をほとんど無視し、人工衛星やその他の宇宙資産を単一用途のものとして扱ってきた結果である。

このようなアプローチの結果、持続不可能なモデルが生まれ、コストが増大し、宇宙経済の壮大な将来性が危険にさらされることになったのである。地球低軌道はすでに人口が多いため、衛星オペレーターは交差を評価し、貴重な資源を消費したり、サービスに支障をきたしうるデブリ回避機動を行うことを余儀なくされている。

誰が責任を取るのか?

技術的な対策だけでは、宇宙の持続可能性の問題を解決することはできない。軌道上の衛星整備市場は、国の宇宙政策と衛星整備を直接支援する国際標準によって推進されなければならない。国の規制政策は、技術の進歩、衛星人口の増加、軌道上での新しい活動の展開に追いつくのに苦労している。

1967年の宇宙条約や2019年の宇宙活動の長期的持続可能性のためのガイドラインなど、多国間の国連規定は大枠でのガイダンスを提供しているが、具体的なライセンス実務は個々の国の規制機関によって作成・実施されなければならないのだ。

これらのガイドラインや大枠での協定を国際的に協調して実施するためのテンプレートはなく、世界の宇宙活動は単一の国や国際機関の管理下にはない。したがって、世界の宇宙活動を統制する共通の規則も、宇宙ミッションの終了時にハードウェアの適切な廃棄を保証するメカニズムも存在しない。また、軌道上にすでに蓄積された何十年ものスペースデブリを一掃するための協調的な努力も存在しない。

しかし、意識は変わりつつあり、過去1年間で、この問題をめぐる緊急性に大きな変化が見られ始めている。2021年6月、G7加盟国は、軌道上デブリを宇宙分野が直面する最大の課題の1つとして確認し、宇宙の安全かつ持続可能な利用にコミットすることを約束する声明を発表した。

この声明は、宇宙の持続可能性に関する問題の範囲を認識する貴重なものである一方で、正しい方向への一歩に過ぎない。各国政府から民間の商業企業に至るまで、国際社会全体の主要なプレイヤーは、宇宙交通と環境管理の開発および調整に着手しなければならないのだ。

軌道上サービス、持続可能な未来への鍵

これまで衛星オペレーターは、軌道上にある衛星のリスクを低減するための選択肢を持っていなかった。しかし、軌道上でのサービスは、このリスクシナリオを変えつつある。D-Orbit(ディー・オービット)、Astroscale(アストロスケール)、ClearSpace(クリア・スペース)は、宇宙分野を持続可能な時代に移行させるために力を合わせ、軌道上サービスを新たな現実のものにしようとしている。

軌道上サービスは、地球上の路上での自動車サービスに匹敵する。燃料タンクが空になったり、バッテリーの充電が切れたからといって、高速道路の真ん中に車を乗り捨てる人はいないだろう。しかし、宇宙時代の幕開け以来、ほとんどの衛星オペレーターがまさにこの方法で仕事をしてきたため、この比喩的な「軌道上の高速道路」はより混雑したままになっているのだ。

米国連邦通信委員会や国際電気通信連合に提出された申請書によると、地球低軌道にある衛星の数は2030年までに1万から4万個まで増加すると予測されており、最近では30万個を超える衛星の単一システムが提案された。このような増加により、深刻な問題を指数関数的に悪化させることが約束されている。

静止衛星の配備には、通常1億5千万ドル(約173億円)から5億ドル(約578億円)の費用がかかる。今後15年間で、100機以上の静止衛星が予定されている引退年齢に達するため、衛星運用会社は、単に交換するのではなく、その資産の価値を延ばすための選択肢を追求する必要に迫られている。衛星の寿命を延ばすことで、商業運営者や機関運営者は、資本の使い方をより慎重に考えることができるようになる。

衛星オペレーター、特に大規模な衛星郡を構築しているオペレーターは、打ち上げ前に低コストのインターフェースを衛星にインストールし、将来必要となるかもしれないサービスのコストと複雑さを軽減することができる。衛星が故障したり寿命がきたりした場合、レッカー車が道路で故障した車を運ぶように、サービス衛星がその衛星を撤去することで、軌道を確保し、同じ衛星群に属する他の衛星との衝突のリスクを低減することができるのだ。

また、衛星の撤去から軌道上での点検まで行うことで、衛星に異常が発生した場合、オペレーターは衛星の状態をより詳細に把握することができるようになる。軌道上リロケーションサービスを利用すれば、衛星の初期配置から運用軌道への投入、自然減衰を補うための調整、カバレッジの問題を解決するための衛星の再配置、不具合を補うための衛星の再配置を、燃料費をかけずに実施することができるのだ。

1950 年代の宇宙開発競争のように、研究開発に多額の投資を必要とする長期計画と同様に、持続可能な軌道インフラストラクチャーを飛躍的に発展させるためには、国家政府の役割が不可欠である。欧州宇宙機関や宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、ClearSpaceやAstroscaleなどの民間企業と共同で、地球低軌道でのデブリ除去ミッションに資金を提供し、積極的にデブリ除去サービスを開始する予定である。

この地球規模の問題を解決するためには、官民の多大な投資と業界のシステム改革が必要だが、その潜在的な報酬は事実上無限大だ。宇宙経済、つまり新しい、制限のない競技場は、私たちの惑星の生命に影響を与え、私たちの太陽系とその向こう側に新しいフロンティアを開く可能性を持っているのだ。

編集部注:本稿の執筆者Luca Rossettini(ルカ・ロッセッティーニ)氏はD-Orbitの創設者兼CEO。Nobu Okada(岡田光信)氏はAstroscaleの創業者兼CEO。Luc Piguet(リュックピゲ)氏はClearSpaceの共同設立者兼CEO。

画像クレジット:janiecbros / Getty Images

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(文:Luca Rossettini、Nobu Okada、Luc Piguet、翻訳:Akihito Mizukoshi)