リストラから2年経ったDockerが4倍増の年間経常収益を達成してコンテナ化市場にカムバック

2013年に創業したオープンソースのコンテナ企業Dockerにとって、至近の2年は確かに波乱の年だったが、それでもやっと正常な財務基盤を再び見つけたようだ。米国時間2月1日、同社は、最前の年間経常収益(ARR)が前年比で4倍増し、5000万ドル(約57億4000万円)を超えたと発表した。

2019年以降、混迷していた同社にとってそれは見事なカムバックだ。同年、CEOのSteve Singh(スティーブ・シン)氏はその座を去り、短い期間、Rob Bearden(ロブ・ビアーデン)氏に代わった。そのすぐ後に同社は、主な収益源だったエンタープライズ事業を手放し、長い間、役員だったScott Johnston(スコット・ジョンストン)氏はCEOに昇格した。

当時、同社は新たに資金を調達して、出直しすることになっていた。実際のところ同社は、シリーズAの企業としてその投資を受け取った。同時に同社は、開発者を主軸とする新しい戦略を実装し、400名いた社員をわずか60名に減らした。その数カ月後に、パンデミックの第一波が襲った。不安定な時期を乗り切らなければならなかったジョンストン氏にとってそれは、容易な時間ではなかった。

ジョンストン氏は「2019年11月はリスクと不確実の時期だったが、私たちは市場の追い風を信じ、また弊社プロダクトへの開発者の愛を信じて、チーム一丸となってデベロッパーにフォーカスし、優れたプロダクトをお届けするとともに、まっとうなビジネスを築いていった」と述べている。

Dockerはその不確実な中にあって、いくつかの利点を抱えていた。1つは、開発者間における広範なブランド認知であり、アプリケーションのコンテナ化といえばDockerという定評があった。それはソフトウェアを、1つの一枚岩的なアプリケーションではなく、クラウド上の個々のサービスの集まりとしてパッケージし配布する方式だ。

さらに同社には大量のオープンソースのコードがあり、それは営業の糸口にもなりうるものだった。そのため同社の無料のプロダクトのユーザーを有料の顧客に変えていく可能性もあった。ARRの急増から見ると、2021年はまさにその変化が増加傾向で起きたようだ。

初期の構造改革の目標は、ブランドに対するデベロッパーの愛着や信頼を軸として、彼らに無料のオープンソースのプロダクトを提供し、彼らの何割かを時間をかけて有料のプロダクトのユーザーに変えていくというものだった。それは、Docker Enterpriseを主に企業のITに売っていた頃に比べるとまったく違うアプローチであり、デベロッパーとその管理者を顧客の中心に据えるものだった。

この、プロダクトが引っ張る形の成長は商業的にも成功し、管理者たちが関連の商用ツールを買い始めた。「デベロッパーが無料のプロダクトで良い経験をし、チーム全体としてもツールを使うようになると、そこには管理者の機能もあるから、彼らは金を払ってでも使おうという気になる」とジョンストン氏は述べる。

彼はさらに「ブログにも書いている私たちのパフォーマンスの向上は、大きな企業がそんな生産性上の利点を理解しているからこそのものだ。彼らは管理レベルのセキュリティツールを有料で利用し、その全社的な採用を可能にしています」という。

Dockerは2013年に創業し2019年にリストラしたが、そのとき、そのエンタープライズ事業をMirantisに売り、Benchmark CapitalとInsight PartnersがリードするシリーズAで3500万ドル(約40億2000万円)を調達した。そして2021年3月には、2300万ドル(約26億4000万円)のシリーズBを手中に収めた

リストラのとき、私は次のように書いた。「このやり方が有効かまだわからないが、ジョンストン氏はこれを前に進むための道だと見ている。この戦略の有効性は、時間が教えてくれるだろう」。

ARRは5000万ドルを超えたが、陪審員たちはまだ審議中かもしれない。でも確実にいえるのは、同社が正しい方向に向かっているということであり、多くの投資家たちも満足だろう。この勢いを、失わないようにして欲しい。

画像クレジット:Ron Miller/TechCrunch

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

【コラム】「大量退職時代」はテックワーカーがキャリア代理人を利用するきっかけになるか?

大量退職時代(The Great Resignation、ザ・グレート・リジグネーション)は、テックワーカーに彼らの力を再認識させた。給料は上がり、人材需要は高まり、もしあなたがStripe(ストライプ)のエンジニアなら、アイデアのタネもないうちからプレ・シード会社を支援してくれる投資家が少なくとも3人いる。

しかし、求人熱の高まりは、進路決定をやさしくするわけでは決してない。もしあなたがShopify(ショッピファイ)のクリエイティブ・ディレクターか、Thrasio(スラシオ)のプロダクト責任者なら、オファーが殺到するだろう。

Free Agency(フリー・エージェンシー)は、2019年にSherveen Mashayekhi(シャービーン・マシャエキ)氏とAlex Rothberg(アレックス・ロスバーグ)氏が共同設立したスタートアップで、スタートアップ人材に対する熱望をビジネスの糧にしようとしている。テックワーカーも、ハリウッドスターやスポーツ選手が代理人から受けているのと同じようなサービスの恩恵に預かれるはずだ、とこのスタートアップは考えた。Free Agencyは、プロダクト、エンジニアリング、マーケティング、デザインなどの分野にわたり、中級から上級幹部レベルの候補者に代理人サービスを提供する。これまでに同社は、4700回の面接で候補者を支援し、交渉の結果獲得した提示給与総額は2億ドル(約229億4000万円)に上るとFree Agencyは推定している。

例えばFree Agencyが手がけたあるクライアントは、プロダクト担当シニアディレクターとして90万ドル(約1億円)の報酬を得て前職の総報酬から53%急増した。その過程で同社は、Snapchat(スナップチャット)、Coinbase(コインベース)、Lyft(リフト)などの企業と計21回の面接を設定し、クライアントは求職活動中1通の応募書類もメールも送る必要がなかった。

「当社のネットワークと仕事検索エンジンを使って、クライアントが寝ている間に面接を設定しました」とマシャエキ氏はメールに書いた。

このエージェントモデルは、ハリウッドでは比較的よく見かけるものだが、テック業界はサードパーティーを通じたキャリアマネージメントという発想をまだ受け入れていない。転職マーケットプレイスを設立し、Toptal(トプタル)やStella.ai(ステラ・エーアイ)などの求人会社で働いた経験を持つマシャエキ氏は、人材活用におけるテクノロジー利用は、伝統的に雇用者を喜ばすためのもので、従業員のためではないと話す。

「もしあなたが人材テック分野のエンタープライズ向けスタートアップのファウンダーなら、雇用者のところへ行って『私のツールを買ってください』と『マーケットプレイスにお金を払ってください』というほうが簡単です。なぜなら相手は問題の緊急性を理解しているから」と彼はいう。「雇用者は、そのお金が雇用と従業員維持の問題を解決することを理解していますが、候補者は歴史的にそういうお金の使い方をしてきませんでした」。

「スパム」を送ったり候補者の「パターンマッチ」をするために雇用者から料金を取るのではなく、Free Agencyは候補者の目的のみに焦点を当てている。同社は、候補者に初年度報酬の5~10%程度を請求して利益を得る。

一方雇用者は、Free Agencyが1週間に最大5人の候補者を紹介するサブスクリプションサービスを無料で利用できる。キャリアを管理するためにリクルーターに金を払えと従業員にいうのは大きな頼み事だ。しかも、候補者は今の職に満足していれば、そのサービスを少なくとも数年間、おそらくもっと長い間必要としない、

マシャエキ氏は、Free Agencyは入社時だけでなく、社内異動、能力向上など昇進サイクルを通じて候補者を手助けすることで価値を示すことができると強調する。現在同社は積極的にプロダクトを拡充しており、エンジニアリング・チームはキャリア・オペレーティング・システムの開発を進めている。そこではユーザーが求人情報や勤務評価、報酬評価などを行える。

もう1つの疑問は、Free Agencyは同社のサービスを最も必要としている人たちに提供するのか、という点だ。歴史的に過小評価され、概してネットワークとのつながりがなく重要な情報を得られない人たちだ。それとも、すでに十分つながりのある人たちをもっとよいところに着地させる手伝いをするだけなのか。

「率直に言って、Free Agentsに登録されている人たちの多様性の内訳は可もなし不可もなしです」とマシャエキ氏がメールで語った。同社は営業、顧客獲得、および市場開拓プログラムを展開してこれを変えようとしている。現在同社のプラットフォーム上にいる代理人は60%が女性で、20%が過小評価グループ出身だ。

こうした疑問符をつけられながらも、Free Agencyは2021年12月、1000万ドル(約11億5000万円)のシリーズAラウンドをアーリー・ステージ投資会社、Maveron(マベロン)のリードで完了した。さらに、Free Agencyのクライアント20社も出資しており、他にKevin Durant(ケビン・デュラント)氏のThirty Five Ventures、Resoloute、Bloomberg Beta、Kygo(カイゴ)氏のPalm Tree Crewなども参加した。同社は以前に、535万ドル(約6億1000万円)のシードラウンドも完了している。

それでもFree Agencyの最終テストは、管理された職探しを積極的に外部委託しようとい候補者を十分な数集められるかどうかだ。大量退職時代は、転職希望者がFree Agencyのようなサービスを試してみる推進力になっているかもしれないが、一度、波が去った後、求職者がどこまで確信を持てるかは不透明だ。

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画像クレジット:Gary Waters / Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Nob Takahashi / facebook

Yahoo! Japanが欧州からのアクセスを4月6日午前11時から遮断、サービス利用不可に

Yahoo! Japanが欧州からのアクセスを4月6日午前11時から遮断、サービス利用不可に

Yahoo! JAPANは欧州(EAAおよびイギリス)からのアクセスを4月6日以降遮断します。

4月6日以降、Yahoo!メール、Yahoo!カード、ebookjapanを除く全サービスが、EAAおよびイギリスからアクセスできなくなります。

Yahoo! Japan広報担当者はアクセス遮断の理由について『今後の法令遵守対応コストなどの観点から、継続的なサービス提供が難しいと判断し、今回以下の通りお知らせさせていただきました』とコメント。加えて、EUにおけるプライバシー保護規則「GDPR」が原因かヤフー広報部に尋ねましたが、こちらについては明示できないとのことでした。

なお、Yahoo!プレミアムなど月額利用料金が自動更新されるサービスを利用の場合は解約の手続きをするよう呼びかけています。Yahoo! Japanが欧州からのアクセスを4月6日午前11時から遮断、サービス利用不可に

(Source:Yahoo! JapanEngadget日本版より転載)

元Symantec・McAfee幹部によるIsland、セキュリティ重視のエンタープライズ向けブラウザで脱ステルス

ダラスを拠点とし、Chromium(クロミウム)ベースのエンタープライズ向けブラウザを開発しているスタートアップ「Island(アイランド)」が、約1億ドル(約114億7000万円)の資金を得てステルス状態から脱却した。

Islandによると、同社が約2年前から開発を進めてきた、わかりやすい名前の「Enterprise Browser」は、既存のコンシューマー向けブラウザと、ますます複雑化するエンタープライズのIT・セキュリティ要件との間にあるギャップを解消することを目的としているという。

Symantec(シマンテック)で社長兼COO、McAfee(マカフィー)でGM兼CTOを歴任したIslandのMike Fey(マイク・フェイ)CEOは、TechCrunchの取材に対しこう語った。「企業内で最も広く導入されているアプリケーションはブラウザですが、それはコンシューマー向けに設計されたものです。一般の消費者は、無限の自由を求めています。好きなものをインストールし、好きな場所に行き、問題なくブラウザを使って何でもできることを望んでいます。ですがエンタープライズの場合は、顧客データが安全であること、重要な情報が保護されていること、そして顧客が良い体験をしていることを確かめる必要があります」。

Islandのブラウザは、Google ChromeやMicrosoft Edge、BraveやVivaldiなど、多くの主要なブラウザを支えているオープンソースプロジェクトであるChromiumをベースにしている。これにより、企業のアプリケーションやデータに対する重要なセキュリティコントロールとガバナンスを組み込むことが可能になり、ブラウザを親しみやすいものにできるという。

このブラウザは、重要なSaaSや社内ウェブアプリケーションをデータ漏洩から守り、契約社員やBYODワーカーに安全なアクセスを提供し、セキュリティチームがコピー、ペースト、ダウンロード、アップロード、スクリーンショットなど、重要なデータを漏洩させる可能性のあるラストマイル操作を制御することを可能にする。また、セーフブラウジング、Webフィルタリング、Webアイソレーション、エクスプロイト防止、スマートネットワークルーティング、ゼロトラストアクセスなどのセキュリティ機能を内蔵している。

フェイ氏はこう語る。「この製品は、エンタープライズ向けの無限のラストマイル・コントロールを備えたブラウザと考えてください。私たちは、環境を強化し、アイテムを暗号化し、より多くのコントロールを提供しています。必ずしもハッカーを排除するわけではありませんが、(彼らの)勝利を排除しているのです。実際には、ハッカーがアクセスしたいデータが、彼らが盗めるようなエンドポイントに置かれていないということです」。

100人以上の従業員を擁するIslandは、Insight Partners、Sequoia Capital、Cyberstarts、Stripesなど、アーリーステージの有力投資家から1億ドル(約114億7000万円)近い資金を獲得した。同社はTechCrunchに対し、今回の投資をスタッフの増強と市場投入戦略の拡大に活用すると述べている。

「才能の点で妥協することなく、できるだけ早く200人のエンジニアを確保したいと考えています」とフェイ氏はいう。「それだけの素晴らしいエンジニアを見つけるのに可能な限りのスピードで、増員していきます」。

同社は、すでに次の資金調達も視野に入れているという。「シリーズAやシリーズBは当然あるでしょうし、私たちの夢や希望を実現するためには、近く資金を調達しなければなりません」とフェイ氏は語った。

画像クレジット:Island / YouTube(video)

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(文:Carly Page、翻訳:Aya Nakazato)

Netflixが他では有料のRiot Games LoL音ゲー「Hextech Mayhem」を含むゲームを2作追加

ストリーミングサービスのNetflix(ネットフリックス)は、ゲームのラインナップを再び拡充し、2月1日午後5時(米国東部時間)から全世界で展開を開始する2作品を追加した。新たに加わったのは、Riot Games(ライアットゲームズ)の「Hextech Mayhem(ヘクステックメイヘム:リーグ・オブ・レジェンド ストーリー)」で、同タイトルはNintendo Switch、Steam、Epic Games Store、GOG.comなどのゲームプラットフォームやマーケットプレイスでも販売されており、他では9.99ドル(約1145円)の有料ダウンロードとして提供されている。もう1つの新タイトル「Dungeon Dwarves」は、カナダのデベロッパーHyper Hippo(ハイパーヒッポ)の作品。同社はClub Penguin(クラブペンギン)の共同設立者であるLance Priebe(ランス・プリーベ)氏が2012年に設立した会社だ。

1日にリリースされるタイトルは、いずれもNetflixにとって新たなゲーミングパートナーシップとなる。

Netflixによると「Hextech Mayhem」はハイスピードなリズム&ランナーゲームで、テスト市場であるポーランド、イタリア、スペイン、ブラジルですでにソフトローンチしていたが、今回、全世界の加入者に向けて提供開始される。注目すべきは、このゲームは、2021年11月に他のゲームプラットフォームでリリースされたばかりのかなり新しいゲームであるということだ。また、Netflixのゲームコレクションに初めて登場するメジャーなゲームフランチャイズでもある。しかし、他で販売されているゲームがNetflixに登場するのはこれが初めてではない。最近追加された「Arcanium: Rise of Akhan(アルカニアム: ライズ・オブ・アカン)」もプレミアムタイトルとして他のプラットフォームで販売されている。

一方、ダンジョンクロウルゲーム「Dungeon Dwarves」は、Netflix会員向けに配信が開始されたばかりだ。これは、Netflixサービスでローンチされた最初で唯一の放置系ゲームになる。

画像クレジット:Netflix

Netflixのユーザーは、他のゲームと同様に、iOSおよびAndroidの同社アプリを通じて新しいタイトルにアクセスすることができる。Android版では、アプリのメインナビゲーションにあるゲーム専用タブなど、複数の場所でゲームを見つけることができる。しかしiOSでは、ゲームはアプリ内で専用の列に表示される。ゲーム自体はNetflixのインフラではなく、各プラットフォームのアプリストアでホストされているが、プレイできるのはNetflixのユーザーのみだ。ゲームをインストールすると、ユーザーはNetflixのアカウント情報を使った認証を求められる。

Netflixは、2021年末に「Stranger Things(ストレンジャー・シングス)」をテーマにしたいくつかのタイトルや、その他のカジュアルなタイトルを含む初期のラインナップを発表して以来、ゲーミングサービスの構築を進めてきた。その後、パズルゲーム、レースゲームオープンワールドストラテジーなど、急速にサービス内容を拡大している。ゲーム自体は、Netflixが自社で開発したものではなく、Frosty Pop、Rogue Games、BonusXPなどのパートナーから提供されてきた。Netflixはこれまでに12のタイトルをリリースしているが、「Oxenfree」などのストーリー重視のゲームで知られるNight School Studiosを買収したことを、今のところ活かせていない。

Netflixは投資家に向け最近行われた第4四半期の決算説明会で、これらの初期ゲーム配信は、Netflixの新サービスに対する顧客の要望をより深く理解するための準備であると説明した。

NetflixのCOO兼チーフプロダクトオフィサーであるGreg Peters(グレッグ・ピーターズ)氏はその際、通話の中でこう述べている。「ここまで来ることができたのは、非常にエキサイティングなことです。というのも、このようなことができるようになるまでに、裏方の配管やすべての技術インフラを構築してきたからです。今後、これらのゲームから、発見パターン、エンゲージメントパターン、パフォーマンス、会員がNetflixサービス上のゲームに何を求めているかを学んでいくことができます」。

とはいえ、Netflixは同社ゲームのパフォーマンスの詳細についてはまだ明らかにしておらず、ゲームタイトルのデイリーアクティブユーザー数(DAU)およびマンスリーアクティブユーザー数(MAU)が「増加している」とのみ述べている。

また、Netflixは、将来的に人々に認知されるような大規模なゲームIPのライセンス取得に前向きであることを示唆しており「今後1年間で、そのようなことがいくつか起こると思います」と述べている。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Aya Nakazato)

ソフトウェア企業の使用量ベース価格モデルへの移行を支援するMetronomeが約34億円調達

多くのソフトウェア企業が使用に応じたより柔軟な価格設定モデルに移行する中、その多くが顧客に対して使用量ベースの課金を選択している。

これは顧客にとっては簡単なものだが、使用量ベースの課金を容易に行える課金システムを備えていないソフトウェア(SaaS)企業にとっては頭痛の種となっている。

そこで登場したのがMetronome(メトロノーム)だ。このスタートアップは、大規模なデータを「確実に」処理できる課金・データインフラプラットフォームを開発し、使用量ベースの企業がコードを変更することなくビジネスモデルを反復できるようにした。顧客の利用状況や課金データをリアルタイムAPIとして提供することでこれを実現している。

Dropbox(ドロップボックス)の元社員であるKevin Liu(ケビン・リュー)氏とScott Woody(スコット・ウッディ)氏は、それぞれのスタートアップを売却した後に同社で出会い、2020年にMetronomeを設立した。2人は「使用量ベースの課金を大規模に機能させるという共通の苦労を共有する」何百もの企業と話した後、このコンセプトを思いついたという。

「ソフトウェア市場で見られるこの変化は、顧客が製品から何を得ているかという価値にマッピングされています」とリュー氏は話す。「そして、これらのモデルがいかに成功するかを証明したTwilio(トゥイリオ)、Snowflake(スノウフレーク)、AWSのような企業の市場での成功によってすべてが加速しました」。

リュー氏によると、Metronomeのプロダクトにより、企業は「どんな規模や段階でも機能する課金インフラで、迅速かつ容易に新しいビジネスモデルを立ち上げ、反復し、拡張する」ことができるという。その鍵は、企業が課金の制約をめぐる設計を回避できることだという。顧客にはCockroach Labs、Starburst、Trueworkなどがいる。

Metronomeのモデルは、投資の世界で有名な人たちを惹きつけている。サンフランシスコを拠点とする同社は米国時間2月1日、Andreessen Horowitz (a16z)がリードするシリーズAラウンドで3000万ドル(約34億円)を調達したと発表した。このラウンドには、Elad Gil(エラド・ギル)氏、Lachy Groo(ラッチー・グルー)氏、Databricksの共同創業者Reynold Xin(レイノルド・シン)氏とIon Stoica(イオン・ストイカ)氏、Confluentの共同創業者Neha Narkhede(ネハ・ナークヒード)氏、Snowflakeの製品担当SVPのChristian Kleinerman(クリスチャン・クラインマン)氏、Plaid共同創業者のWilliam Hockey(ウィリアム・ホッキー)氏とZach Perret(ザック・パレット)氏、HashiCorpの共同創業者でCTOのArmon Dadgar(アーモン・ダッガー)氏ら多数のエンジェル投資家に加え、シードラウンドで投資したGeneral Catalystも参加した。Metronomeは以前、General Catalystが主導したシードラウンドで500万ドル(約5億7000万円)を調達している。

A16zのゼネラルパートナーMartin Casado(マーティン・カサド)氏は、ソフトウェア業界全体が「使用量ベース価格をはじめとして、よりきめ細かく表現力のある価格モデル」に移行しつつあると考えている。

「それをサポートするシステムを構築するのは技術的に非常に難しい課題です」と、同氏は電子メールでTechCrunchに語った。「ケビンとスコットは、この問題に対する背景と理解を持ち、大手ソフトウェア会社の課金処理に必要な規模、正確さ、稼働時間をサポートできる唯一のシステムを構築しました」。

カサド氏はまた、この問題がソフトウェア会社にどのような影響を与えるか、直に目にしてきたと述べた。

「取締役として、製品のリリースから重要なGTM戦略の変更まで、あらゆるものが課金の複雑さのために失敗するのを目の当たりにしてきました。また私自身、創業者としてもこうした問題を経験しています」と語った。同氏はNicira Networksを共同で創業し、同社は2012年に12億6000万ドル(約1445億円)でVMwareに買収された。

より柔軟性を求める企業の進化は起こるべくして起こったと、リュー氏は話す。

「最初のサブスクリプション管理課金システムが登場した10〜15年前は、使用量ベースのモデルはもっと複雑でした」と同氏はTechCrunchに語った。「今日、ソフトウェア会社は、データを大規模かつリアルタイムに扱えるシステムを必要としています。これは、Metronomeの製品のかなり重要な特性です」。

従来のサブスクリプション管理システムは「まったく別の問題のために」作られたものだと、リュー氏は付け加えた。

ウッディ氏も同意見で、Metronomeは新製品を開発し、できるだけ早く市場に出したいと考えている企業を支援することができると説明した。Metronomeは、エンジニアリングチームにとって「できるだけ労力のかからない」統合モデルを開発し「非常に迅速に、中には1日で」稼働させることができる、と同氏は語った。

「我々が設計した課金システムは、ボトムアップ、セルフサービス、市場投入の動きと同様に、オーダーメイドの高度に特殊な企業契約モデルにも対応できます」とウッディ氏はTechCrunchに話した。「Metronomeは、両方の用途に同時に対応できるように設計されています」。

さらに同氏は、この製品は規模に応じた設計になっていると付け加えた。

「企業が成長すればするほど、顧客は増え、その顧客はますますサービスを利用するようになります。そして、その規模を拡大するためのアーキテクチャを当社は設計しました。レジリエンス(復元力)とセキュリティ(安全性)を中心に設計しています。当社の顧客のために構築しているのは、製品や顧客のダッシュボードを強化するのに役立つリアルタイムの真のデータソースであり、同時に他のビジネスシステムを直接統合することができます」。

Metronomeの従業員数は現在20人で、新資本の大部分は特に研究開発チームと市場投入チームの採用に充てる計画だ。

画像クレジット:Co-founders Kevin Liu and Scott Woody / Metronome

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

Waymo、一部の自動運転車技術データをさらに22日間秘匿可能に

米国時間1月31日、Waymoは自動運転車の運用に関する一部の詳細データを一般に公表しないでもよい件に関して、小さな勝訴を勝ち取った。

Alphabet傘下の同社は先に、カリフォルニア州自動車局に対して、その自動運転車の展開許可証からの情報の一部を非公開とし、また、自動車局と同社との間のメールも、名称など非公開のサードパーティーから公開リクエストがあった部分を非公開にできるよう、訴訟を起こしていた。1月31日に判事はWaymoに対して、同社は一時的制限命令を発行して、非公開とされた情報をさらにあと22日間、非公表にしてもよいことになった。

これを恒久的な差し止めとしてWaymo側を安心させるか否かに関しては、2月22日に別のヒアリングが行われる。そのヒアリングでは、一部の情報が公開記録から永久かつ継続的に取り除かれていても良いか否かを検討する。

Waymoなどの自動運転車の開発者は、カリフォルニアでテストし展開するかぎり、州自動車局から一連の許可証を獲得しなければならない。カリフォルニア州の許可証を申請するために企業は、その安全対策と技術と、自動車局が通常求めるその他の情報を提出する必要がある。

Waymoの許可証に向けて記録公開リクエストがあると、自動車局は同社を招いて、企業秘密の部分を尋ねる。Waymoが、自動車局が尋ねた質問までも含めて企業秘密部分を指定すると、自動車局はそれら重要部分がブロックされたパッケージをサードパーティに送る。情報要求者がその黒塗りに抗議すると、自動車局はWaymoに、Waymoが消去部分のない公表を禁じる差し止め命令を要求しない限り、情報をリリースしなければならないと告げる。Waymoによると、自動車局は同社にアドバイスして、一時的な禁止令(一時的制限命令)を申請するよう勧めた。

今回のヒアリングで自動車局は、一時的な禁止令の申請に反対しなかったという。この件における自動車局のやや受け身の役割は、同局がどちらか一方の側にはつかない、というサインであり、最終決定を法廷に委ねている。

Waymoが守りたい(一般公開したくない)詳細は、自動運転車が何らかの状況を見つけても走行を続ける場合のやり方であり、人間ドライバーに任せるべきと判断するのはどんなときか、いつAV車隊のサポートを提供するのか、制御不能や衝突のインシデントにどう対応するのか、といった情報だ。同社は、サクラメントの州最高裁にこれらの件の訴訟を提出している。

同社の主張では、情報の公開はWaymoやAV技術への投資者にとって有害であるだけでなく「業界全体に水をさす」という。

訴状によると「AVのカリフォルニア州における展開に利害を有する市場参加者は、企業秘密の開示履歴が明らかとなれば、この技術を開発する貴重な時間とリソースへの投資に向かう積極性を失うだろう」という。

また他社も、どれだけの情報を自動車局と共有すべきかに関して引っ込み思案になってしまい、民間部門と行政との間の透明な対話よりも、業界は規制の精神の理解ではなく、規制を表面的に遵守するだけの態度を選ぶだろう。これによって、もしも自動車局がAVの規制を作って実施するために必要な全面的な展望を持っていなければ、技術の安全性が脅かされるだろう。これが、訴状でのWaymoの主張だ。

さらに他方では、Aptivが買収したnuTonomyの前法務部長で、ニューヨークにあるイェシーバー大学のカードーゾ・ロースクールの法学教授Matthew Wansley(マシュー・ワンズリー)氏は以前TechCrunchに、Waymoが隠したい情報のすべてが企業秘密といえるか、それは疑問だが、その隠された部分を実際に見ないかぎりは真相は分からないという。

画像クレジット:Waymo

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hiroshi Iwatani)

SiriusXM、音楽配信PandoraやポッドキャストStitcherなどにまたがって視聴者を識別・追跡する新手法「AudioID」を導入

トラッキングクッキーの使用は徐々に減っておりApple(アップル)のアンチトラッキング・プライバシーのアップデートは、モバイルアプリの広告収入に影響を与えている。しかし、これらの変化は、アドテック業界がその解決策でより創造的になるよう促しているだけだ。その最新例が、Pandora(パンドラ)の親会社SiriusXM(シリウスXM)によるものだ。同社は1月31日の週に「AudioID」という、アプリ間で視聴者を識別して追跡するための新しい方法を導入した。

この新しいIDソリューションは、Pandoraが2018年に1億4500万ドル(約166億円)で買収したデジタルオーディオアドテック企業AdsWizz(アズウィズ)からのものだ。この買収でPandoraは、ダイナミック広告挿入、キャンペーン監視ツール、ポッドキャスト文字起こし技術、さらには広告中にユーザーが電話を振って行動を起こす「Shake Me」といった奇妙な機能など、アドテック製品へのアクセスを手に入れた。そして今、AdsWizzはAudioIDに搭載することで新たな形で技術を活用している。

AudioIDの仕組みはというと、自社の衛星ラジオ音楽サービスや、ストリーミングアプリのPandora、2020年に3億2500万ドル(約372億円)で買収したポッドキャストアプリのStitcherなど、SiriusXMの事業全体のユーザー情報のデータセットを照合する。

データセットの中から重なり合うシグナルを探す、と同社は説明している。例えば、顧客がPandoraとStitcherの両方に同じ電子メールアドレスで登録した場合、SiriusXMはそれらのアカウントを1つの「AudioID」にまとめることができる。消費者は、こうしたマッチングが裏で行われていることを知ることはなく、アプリから追加情報の提供や同意を求められることもない。オプトアウトもない。それは、AudioIDが従来の識別子を代替するものであり、過去の識別子にはユーザーの個人情報を含んでいたり、リンクしていたりした可能性があるからだ。一方、SiriusXMは、AudioIDはユニークだが「匿名化」されていると説明する。

しかし、AudioIDは、電子メールや電話番号だけでなく、あらゆる信号を照合して、作成を知らせることができる。この技術はデバイスID、IPアドレス、その他のユーザープロファイルデータを横断的に検索し、ストリーミングアプリにまたがる識別子を作成することができる。つまり、モバイルアプリ、ブラウザ、車両、家庭内のスマートデバイスで音楽やポッドキャストを再生していても、ユーザーの視聴行動を追跡することが可能だ。

言い換えると、広告主がユーザーをターゲットに、より関連性の高い広告を提供し続けることができる方法をSiriusXMは考え出したが、リスナーの個人情報や身元を難解にし、代わりにリスナーが聴くコンテンツに焦点を当てようとする方法だ。

まずはこのソリューションはファーストパーティの広告ターゲティング、測定、リーチ、予測、フリークエンシーキャッピング(広告表示回数の上限設定)といったユースケースをサポートする、とSiriusXMは話す。

AdsWizzのSVPで広告製品・技術・運営責任者のChris Record(クリス・レコード)氏は「文化的にも技術的にも、アイデンティティの新しい時代を迎えようとしています。紙に書かれた人物、あるいは使わなくなったクッキーによってではなく、興味と情熱で特徴づけます」と述べた。「AudioIDは、消費者第一でプライバシーに配慮したインフラであり、視聴者に最高の体験を提供し、マーケティング担当者にこれまでにないデータ駆動型の機能へのアクセスを提供します」。

もちろん、消費者がこの種のソリューションの位置づけを評価するかどうかはまだわからない。特に、モバイルアプリで「追跡禁止」のポップアップをタップしてから、高度にターゲット化された広告を受信した後ではなおさらだ。もちろん、マーケティング担当者側の前提は、消費者は自分の興味に関連性が高い場合、パーソナライズされた広告を歓迎する、というものだ。消費者は自分の個人情報が広告主の記録に浮遊することを望んでいないことが問題だとマーケティング担当者は考えている。しかし、間違いなく、トラッキングをオプトアウトする消費者は、それと引き換えに自分が出会う広告の精度が落ちる可能性があることを理解している。だが、彼らはとにかくそのボタンをタップする。むしろ、消費者がオプトアウトするのは、プライベートな個人情報を守りたいからだけでなく、高度にパーソナライズされた広告があまりにも不気味になったからだろう。AudioIDソリューションは、消費者が現代のアドテックに抱いている不満を解決していないようだ。特に、より良いターゲティングのためにユーザーの「興味と情熱」を収集・集計しているのであればそうだ。

SiriusXMは、このソリューションが提携するパブリッシャーやマーケターにとってオプトインであることを指摘している。言い換えると、AudioIDを使う必要はない。2022年後半には、このファーストパーティターゲティングを、米国内のAdsWizzのオフプラットフォームマーケッターや広告主にも拡大する予定だという。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

欧州のマイクロモビリティスタートアップのDottが約80.5億円獲得

アーバンモビリティスタートアップであるDott(ドット)は、シリーズBラウンド延長を獲得した。もともと2021年春の発表で同社が8500万ドル(約97億7800万円)のシリーズBラウンドを調達した際には、株式と資産担保債務のミックスだった。そして米国時間2月1日、同社はこのラウンドにさらに7000万ドル(約80億5200万円)を追加した。今回も再び株式と債務のミックスとなる。

Dottは、スクーターシェアリングサービスでよく知られるヨーロッパのマイクロモビリティスタートアップ企業だ。最近、同社は一部の都市でeバイクのシェアリングサービスも開始している。

abrdn(アバドン)はDottの既存投資家Sofina(ソフィーナ)とともにシリーズBの延長を主導している。その他、EQT Ventures(EQベンチャーズ)やProsus Ventures(プロサス・ベンチャーズ)など、既存の投資家がさらに多くの資金を投入している。

Dottは、ヨーロッパで他のマイクロモビリティスタートアップと競合している。最も直接的な競合相手は、Tier(ティア)Lime(ライム)Voi(ヴォイ)である。価格設定やスクーターに関してはよく似ており、そのほとんどがOkai(オカイ)と協力してスクーターデザインを手かげている。しかし、必ずしもまったく同じ市場で事業を展開しているというわけではない。

現在、Dottはヨーロッパ9カ国の36都市をカバーしている。4万台のスクーターと1万台のバイクを管理している。Dottは収益の数字を共有していないが、同社は2021年に2020年に比べて130%多い利用を処理した。

マイクロモビリティ事業者の差別化要因として、他にロジスティクスと規制がある。ロジスティクスに関しては、Dottはプロセスを可能な限り内製化しようとしている。サードパーティの物流業者とは提携せず、自社で倉庫と修理チームを持ち、保有する車両のケアを行っている。

規制に関しては、同社はパリやロンドンといった憧れの市場で営業許可をいくつか獲得している。しかし、パリは現在、スクーターシェアリングサービスを厳しく規制しようとしており、新たに最高速度を時速10km(つまり時速6.2マイル)に設定した。現在、パリには最高速度時速10kmの低速ゾーンが700カ所ある。

関連記事:パリ、スクーターシェアリングサービスに時速10kmまでの制限を要請

ここで、2つの重要なポイントがある。まず、マイクロモビリティの会社を作るには、膨大な資本が必要だということだ。スクーターの購入にはお金がかかり、バッテリーの充電にもお金がかかり、すべてを円滑に進めるために人を雇うのにもお金がかかるので、これは驚くには値しないだろう。

第二に、規制の状況はまだ進化しており、スクーターのスタートアップにとってはまだ不確定要素があるということだ。Dottは電動バイクで製品を多様化させているが、これは賢い選択だと思う。また、充電の最適化を図り、より費用対効果の高いサービスを提供する計画にも注目したい。

画像クレジット:Dott

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(文:Romain Dillet、翻訳:Akihito Mizukoshi)

チャットやビデオ会議の代わりにアバターを採用、孤独を感じない快適なデジタルワークプレイスを提供する「Pesto」

Pesto’の社員アバター(画像クレジット:Pesto)

私たちの仕事の世界がメタバースに移行しつつある中、以前はPragli(プラグリ)として知られていたPesto(ペスト)は、リモートワークを少しでも孤独を軽減しようと、アバターアプローチで参入している。

「Zoom疲れ」は、2019年に会社の構想を練り始め、1年後に正式発表したDoug Safreno(ダグ・サフレノ)氏と共同創業者のVivek Nair(ヴィヴェク・ネア)氏にとってリアルなものだった。彼らのアイデアは、従業員が職場でアバターをカスタマイズできるデジタルネイティブなヒューマンワークプレイスで、アバターがビデオの代わりとなり、疲労感が少なく、よりパーソナルになるというものだ、CEOのサフレノ氏はメールで説明した。

「workplace(ワークプレイス)」には、社員が作ったさまざまな部屋があり、スクリーンシェア、ビデオ、ゲーム、または空間的な機能を含むオーディオファーストのコラボレーションのための組織的なスペースとなる。

「私たちがPestoを設立したのは、テキストチャットとビデオ会議の間で行き詰まったからです」と、サフレノ氏は付け加えた。「テクストチャットは、やりとりが多く、時間がかかるのでイライラしますし、また、ビデオ会議は堅苦しく、スケジュールを組むのが大変でした。ビデオ会議は、やる気をなくさせるようで、楽しいものではないです。Pestoは、より人間らしいリモートワークの方法なのです」。

2年近く経った今、Enhatch(エンハッチ)、Sortify.tm(ソルティファイ.tm)、HiHello(ハイヘロー)、FullStory(フルストーリー)、aiPass(aiパス)、Tidal Migrations(タイダルマイグレーション)といった企業の1万以上のチームと連携し、ユーザーは1億分以上の音声とビデオを記録しており、同社の初期の仕事は成果を上げている。

米国時間2月1日、同社は、Headline(ヘッドライン)が主導し、K9 Ventures(K9ベンチャーズ)、Rucker Park Capital(ラッカーパークキャピタル)、NextView Ventures(ネクストヴューベンチャーズ)、Collaborative Fund(コラボレーティブファンド)、Correlation Ventures(コーリレーションベンチャーズ)、Garrett Lord(ギャレット・ロード)、Nikil Viswanathan(ニキル・ヴィスワナサン)、Joe Lau(ジョー・ラウ)が参加する500万ドル(約5億7300万円)のシード資金調達を発表した。

サフレノ氏は、世界は「産業革命以来、人々の働き方に最大の変化が起きています」と、語る。オフィスの稼働率が20%以下にとどまっている中、ほとんどの社員が対面式の仕事に戻る可能性は低いにもかかわらず、オフィスで働くために作られたツールを使わざるを得なくなっていると彼は考えている。これに対し、Pestoは、対面よりもデジタルで共同作業や交流を行う未来の仕事に適合するように設計されていると、彼は付け加えた。

利益率や売上高は明らかにしなかったが、1年前は創業者2人だけだったのが、今では従業員数は8人に増えたという。

今回の資金調達により、ペストは総額600万ドル(約6億8800万円)の投資を行うことになる。この資金は、製品設計やエンジニアリングチームの雇用、製品開発、特に職場のメタバース体験を深める機能の構築し、より複雑なコラボレーションニーズを持つ大企業をターゲットにした開発に使われる予定だ。

Pestoは現在、無料で利用できるが、2022年後半には有料ティアを導入する予定だ。

HeadlineのパートナーであるJett Fein(ジェット・ファイン)氏は「こだわりのあるユーザーベース」を持つ企業をよく探しており、Pestoにそれを見出した。

リモートワークがなくなるとは思えないので「より本格的でコラボレーション可能なツール」が求められているのだと、彼は付け加えた。Pestoは、多くの企業や従業員が抱えている、ビデオ会議疲れやコラボレーションスペースの不足といった問題を解決してくれると確信しているからだ。

このように、同社のメタバース機能は「自然で自由な人間同士の交流」を職場に取り戻すことができる点で、際立っていると感じており、今後このような従業員間の交流に投資する企業が増えていくことが予想される。

「Doug(ダグ)、Vivek(ヴィヴェック)、Daniel Liem(ダニエル・リエム)氏(創業者 / 製品責任者)の3人は、まさに未来の仕事のために作られたプラットフォームを作り上げました」とファイン氏はいう。「過去数年間、私たちは分散型チームで仕事をすることの利点と落とし穴を目の当たりにしてきました。自由と柔軟性を手に入れた反面、職場でよく見られる仲間意識や予定外の会話は失われてしまいました。Pestoはこうした課題に対する答えであり、遠隔地でのコラボレーションや共同作業が、直接会っているときと同じかそれ以上に効果的に感じられるような未来を創造するものです」。

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(文:Christine Hall、翻訳:Yuta Kaminishi)

年老いた仮想化の巨人CitrixをVistaなどが約1.9兆円で買収、TIBCOと合併してSaaSの大企業に

IT業界では、ハイブリッドな働き方が定着したこの世界で幅広いニーズに対応する「ワンストップショップ」を求める企業の新たな需要に応えるため、さらなる統合が進んでいる。

クラウドコンピューティングへゆっくりと移行を進めている年老いた仮想化の巨人Citrix(シトリックス)は、PE(プライベート・エクイティ)企業のVista Equity Partners(ビスタ・エクイティ・パートナーズ)と、Elliott Investment Management(エリオット・インベストメント・マネジメント)の関連会社であるEvergreen Coast Capital(エバーグリーン・コースト・キャピタル)に、165億ドル(約1兆9000億円)で買収されることになった。Vistaでは、2014年に43億ドル(約4900億円)で買収したTIBCO(ティブコ)と、Citrixを統合することを計画している。全額現金による取引には、Citrixの負債の引き受けも含まれると、両社は述べている。

今回の買収は、Citrixをめぐる長期の憶測の末に行われることになったもので、同社は少なくともこの5カ月間、複数の戦略的な選択肢を検討してきた。2021年12月にはこの憶測も頂点に達し、VistaとElliottが130億ドル(約1兆5000億円)で同社を買収するという報道があった。

現在、Citrixの株はNASDAQで取引されているが、今回の買収により同社は非公開企業となる。同社によると、Citrixの株主は「VistaとEvergreenによる入札の可能性に関する報道がなされる前の最後の取引日 」である2021年12月20日の終値に24%のプレミアムを加えた、1株あたり104ドル(約1万1900円)の現金を受け取ることになるという。なお、Evergreenが今回の買収の前に、すでにCitrixへの投資を行っていたことは注目に値するだろう。

PE企業は、VCと同様に、投資が必要な瞬間のために膨大な資金を抱えている。これに対処するための1つの明白な方法は、リストラや統合を必要としている大規模なテクノロジー企業を買収することだ。

CitrixとTIBCOを統合することで、後者のアナリティクスと前者の仮想化およびクラウドコンピューティングのサービスを、抱き合わせ販売することが可能になる。これは多くのバイヤー、つまり企業が、よりシンプルなサプライヤーとのパートナーシップや、新型コロナウイルス流行の影響を受けてリモート勤務が増えている従業員のためのITサービスに関する財務状況の改善を求めている時期とも合致する。

合併後の会社は、当初から大きなビジネスを展開することになる。CitrixによればFortune(フォーチュン)500社の98%を含む40万社の顧客を持ち、世界100カ国に1億人のユーザーを抱えることになるという。

Citrixの取締役会議長であり、暫定的な最高経営責任者兼社長であるBob Calderoni(ボブ・カルデローニ)氏は「過去30年間にわたり、Citrixは安全なハイブリッドワークの明確なリーダーとしての地位を確立してきました。市場をリードする当社のプラットフォームは、従業員が業務を遂行するために必要なすべてのアプリケーションと情報への安全で信頼性の高いアクセスを、どこでも必要とする場所へ提供します。TIBCOとの統合により、我々はこのプラットフォームとお客様の成果を拡大していきます」と、声明で述べている。「TIBCOと一緒になることで、我々はより大きなスケールで事業を展開することができるようになり、より多くのお客様に幅広いソリューションを提供し、デジタルトランスフォーメーションを加速させ、ハイブリッドワークの未来を実現させることが可能になります。我々は非公開会社として、DaaSなどの高成長の機会に投資し、進行中のクラウド移行を加速するための財務的および戦略的な柔軟性を高めることができます」。

VistaとCitrixは、今回の取引の前から何かと縁があった。Citrixは1年前に22億5000万ドル(約2580億円)を支払って、プロジェクト管理プラットフォームのWrike(ライク)をVistaから買収している。また、TIBCOにも売却の噂があったが、Vistaは別の道を選んだようだ。TIBCOをCitrixと組み合わせることで、企業が現代のITをどのように評価し、購入しているかを物語るような、より興味深い資産の使い方ができるかもしれない。

TIBCOのCEOであるDan Streetman(ダン・ストリートマン)氏は「コネクテッド・インテリジェント・アナリティクスのビジネスを展開する上で、今ほど良い時代はありません。業界をリードする当社のソリューションを、Citrixのグローバルな顧客に提供できることに興奮しています」と、声明の中で述べている。「勤務場所は常に変化しており、あらゆる企業が、自社と従業員、そして彼らのエコシステムで利用可能な、ますます膨らむ大量のデータから、より速く、より賢い洞察を得るために、リアルタイムにアクセスできることを必要としています。両社のビジョンの融合にはこれ以上ないほど期待しており、強力なパートナーシップが築けることを楽しみにしています」。

Vistaのフラッグシップ・ファンドの共同責任者であり、シニア・マネージング・ディレクターを務めるMonti Saroya(モンティ・サロヤ)氏は、声明の中で「私たちはCitrixのことを、業界の状況を変えた数多くのカテゴリーを構築・定義してきた真のテクノロジー・パイオニアであると考えてきました」と述べている。「非公開会社として、Citrixはより多くのリソースとサポートを利用できるようになるだけでなく、最新で安全なリモート・ハイブリッド・ワークを支持するトレンドを背景に、長期的な強い追い風を利用して、統合された顧客基盤にサービスを提供し、高成長市場に投資するためのさらなる柔軟性を持つことになるでしょう」。

画像クレジット:Blue Planet Studio / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ゲームコーチングの需要拡大を見込み同プラットフォームMetafyが事業拡張に向け約28億円調達

ビデオゲームコーチングのマーケットプレイスを運営するスタートアップMetafy(メタフィ)は2月1日、2500万ドル(約28億円)のシリーズAを完了したと発表した。Tiger GlobalとSeven Seven Sixが同ラウンドをリードした。

TechCrunchが前回Metafyを取り上げたのは2021年5月で、その際、同社は315万ドル(約3億6000万円)のシードラウンドに追加して550万ドル(約6億3000万円)を調達した。

その資金調達以降、MetafyはライバルのゲームコーチングプラットフォームGamersRdyを買収し、Metafyによると、同社のサービスを利用するコーチは2021年に100万ドル(約1億1000万円)超を売り上げた。Metafyが同社のプラットフォームを利用したコーチからその収入の一部を徴収することはなく、5%の手数料を生徒に課している。

Metafyプラットフォームでコーチが行うアクティビティには、有名なビデオゲーム作品や、ポーカーやスポーツくじといったStarcraftとはかけ離れたものも含まれる。

Metafyは、ゲーム市場が今後も成長し、文化的な価値が維持され、ニッチな分野で人気のあるタイトルが高いスキルを要求すると見込んでおり、コーチング需要対応に賭けている。ビデオゲームは時代とともに複雑化し、またプラットフォーム技術企業によるゲームスタジオの巨額買収がこのほど発表され、この賭けには裏づけがあるようだ。

ラウンド

TechCrunchは、Metafyの共同創業者でCEOのJosh Fabian(ジョシュ・ファビアン)氏が、自社にとって早い段階での出来事と表現したこのラウンドについてインタビューした。

ファビアン氏によると、MetafyはシリーズAをまとめたとき、以前調達した資金の約半分を銀行に預けていた。なぜ、現金が必要となる前に調達したのか? 同氏は、市場環境の変化により、投資の「冬」になるかもしれない時期に先駆けて資本を確保することになった、と述べた。

TechCrunchでは、上場しているテック企業の価値が急速に減少していることを指摘し、そうした価値低下がスタートアップの投資や評価額にどのような影響を与えるかを調査した

今回のラウンドがどのようにまとまったかは、2021年のハイテンポな資金調達環境を物語っている。ファビアン氏は、最初の2回の資金調達は「ストレスと時間のかかるものだった」と述べている。しかしシリーズAは違っていたという。同氏がベンチャーコミュニティで「有名人」と表現した人たちと話した後、Forerunner VenturesはTiger Globalにファビアン氏を紹介し、Tiger Globalは迅速かつ詳細にMetafyを調査した。その際、ファビアン氏の過去の経歴や、Metafyのプラットフォームで活躍する7人のコーチなど、さまざまな人物の調査も行った。そのプロセスはあっという間だった。

スタートアップのCEOの中では珍しく素直な性格のファビアン氏によると、Tigerからのすばやい契約要項によって、同氏が話した他の投資家にMetafyが実施する取引を知らせることになった。その後、他の契約要項も続々と送られてきたという。このように、Tigerの迅速な取引決定は、従来のベンチャープレイヤーを急ぎ足モードにしているようだ。

Metafyは、今回用達した資金をもちろん雇用やさらなる買収に使うつもりだ。また、今後18〜24カ月の間に、対戦型トーナメントやその他のゲームコミュニティイベントに投資するための資金として100万ドルを拠出することも決めた。

TechCrunchがMetafyの第2次シードラウンドを取り上げたとき、月間プラットフォーム支出額は2021年4月の7万6000ドル(約870万円)から、同9月には前月比52%増の19万ドル(約2180万円)にまで拡大していた。同社が2022年どれだけ早くプラットフォームGMV(流通取引総額)を拡大させることができるか、また、これまで獲得してきた2桁の前月比成長率を維持することができるか、興味深いところだ。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Nariko Mizoguchi

HBO Maxが3月にサービス提供地域をさらに15カ国追加

米国時間2月1日、WarnerMedia(ワーナーメディア)は同社の動画配信サービスであるHBO Max(エイチビーオーマックス)を2022年3月8日からさらに15カ国で展開すると発表した。追加される15カ国は、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ブルガリア、クロアチア、チェコ、ハンガリー、モルドバ、モンテネグロ、オランダ、北マケドニア、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、セルビア、スロバキア、スロベニア。さらに2022年後半には、ギリシャやトルコなどさらにヨーロッパの6カ国を追加する予定だ。

HBO Max Internationalの責任者であるJohannes Larcher(ヨハネス・ラルヒャー)氏は発表の中で「HBO Maxはグローバルでの展開を進め、ヨーロッパの15カ国でプラットフォームを提供することで世界の61の地域での展開となります。我々は世界中でD2Cの戦略を実行し、すばらしいコンテンツともあいまって、世界最大級のストリーミングプラットフォームに必要な成長がもたらされるでしょう」と述べた。

親会社であるAT&Tの1月の発表によれば、HBO Maxを含めたHBOは2021年末時点でサブスクリプション契約者数が全世界で7380万人に達した。HBO Maxは2020年5月に米国でサービスを開始、2021年夏にはラテンアメリカとカリブ海地域で海外展開を開始した。その後、ヨーロッパでは初となる北欧とスペインにも展開した。現在サービスを提供しているのは46カ国で、WarnerMediaは2022年にHBO Maxをさらに拡大していく計画だ。

今回HBO Maxが拡大計画を発表する数日前には、ディズニーがDisney+(ディズニープラス)を2022年夏に欧州、中東、アフリカの42の国と11の地域で新たに開始することを発表していた。新たに追加される国に南アフリカ、トルコ、ポーランド、アラブ首長国連邦が含まれるのが目を引く。Disney+は現在、64カ国で利用できる。

HBO MaxとDisney+はここ数年、Netflix(ネットフリックス)やAmazon(アマゾン)プライム・ビデオなどのストリーミングサービスと競争している。世界展開に関していうと、NetflixとAmazonプライム・ビデオは数カ国の例外を除いて世界中で利用できる。Netflixは中国、クリミア、北朝鮮、シリアで利用できない。Amazonプライム・ビデオは中国大陸、イラン、北朝鮮、シリアで利用できない。

画像クレジット:Presley Ann/Getty Images for WarnerMedia

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(文:Aisha Malik、翻訳:Kaori Koyama)

レストランでQRコードとスマホを使った会計できるシンプルな決済ソリューションを提供するQlub

我々のレストランやイベント会場における行動は、新型コロナウイルスの影響からこの2年間で大きく変わったが、テーブルからスマートフォンで注文できたり、クレジットカードを出さずとも支払いさえできるようになったことの大きなメリットに気づいた人も多いだろう。2020年には存在すらしていなかったフランスのスタートアップ企業であるSunday(サンデイ)は、多額の資金を調達して、人々が簡単に支払いを済ませたり会計を共有できるようにすることで、店員を解放し、レストランの回転率を高めた。

この種のトレンドには、Toast(トースト)やGoodEats(グッドイーツ)など、他にも多くのスタートアップが飛びついている。

今回、ステルスを脱したQlub(クラブ)も、同様の分野に取り組んでいるが、しかし同社は米国以外の市場に目を向けている。この消費者向けレストラン決済ソリューションを提供する会社は、ベルリンのCherry Ventures(チェリー・ベンチャーズ)とドイツのPoint Nine Capital(ポイント・ナイン・キャピタル)が共同で主導したラウンドで、1700万ドル(約19億5000万円)のシード資金を調達した。このラウンドには、STV、Raed Ventures(レード・ベンチャーズ)、Heartcore(ヒートコア)、Shorooq Partners(ショルーク・パートナーズ)、FinTech Collective(フィンテック・コレクティブ)などの他のVCや、多くの起業家から転身したエンジェル投資家たちも参加した。

Qlubは、Sundayと同様に、携帯電話でQRコードをスキャンすることによって、レストランですばやく会計を済ませることができる。アプリや登録は不要だ。顧客は友人と一緒に請求額を割り勘にして、Apple Pay、クレジットカード、あるいはBNPLと同様に分割払いで支払うこともできる。

レストランにとってのメリットは、テーブルの潜在的な回転率が上がること、店員に対するチップの可能性が高まること、そしてシンプルな支払い体験を気に入ったリピーター客が増えることだ。また、Qlubによれば、その使い勝手の良さから、Qlubを導入したレストランが、口コミサイトで高い評価を受ける傾向もあるという。もちろん、店員との接触が減るので、ウイルスの感染予防や一般公衆衛生にも有効だ。

共同創業者のEyad Alkassar(アイアド・アルカッサー)氏は、次のように述べている。「複数のフードデリバリー企業を立ち上げた経験から、私は過去20年の間に、テクノロジーの進歩によって、外食体験がいかに改善されていなかったかということに当惑しました。クレジットカードが登場してから、ほとんど何も変わっていません。新型コロナウイルス感染流行がもたらした2つのメガトレンド、すなわちレストランのQRコードとキャッシュレス決済を組み合わせ、私たちは未来の決済機能を作り上げます」。アルカッサー氏は現在、Rocket Internet Middle East(ロケット・インターネット・ミドル・イースト)の共同創業者兼マネージングディレクターを務めているが、関与を段階的に減らしている最中である。

Qlubの創業チームは、アルカッサー氏の他、Arun Sharma(アルン・シャルマ)氏、Filiberto Pavan(フィリベルト・パヴァン)氏、Gizem Bodur(ギゼム・ボドゥル)氏、Jeff Matsuda(ジェフ・マツダ)氏、Jianggan Li(ジャンガン・リー)氏、John Mady(ジョン・マディ)氏、Mahmoud Fouz(マフムード。フーズ)氏、Oscar Bedoya(オスカー・ベドヤ)氏、Ramy Omar(ラミー・オマー)氏で構成されている。このチームは、Lazadaa(ラザダ)、Namshi(ナムシ)、Snapp(スナップ)など、さまざまな企業を設立し、規模を拡大してきた。

Cherry Venturesの創業パートナーであるFilip Dames(フィリップ・デイムス)氏は、次のように述べている。「オフラインでの支払いが回転率の障害となっているレストランにとって、セルフチェックアウト・ソリューションの採用は考えるまでもないことです」。

Point NineのパートナーであるRicardo Sequerra Amram(リカルド・セクエラ・アムラン)氏は、次のように述べている。「Qlubは、キャッシュレス決済の自由度とセルフチェックアウトの利便性を求める消費者と、新型コロナウイルス流行後の世界で、固定費を圧縮し、収益を生み出す仕事にスタッフを割り当てることを一層心掛けているレストランのオーナーの双方にとって、ウィンウィンのサービスを構築しています」。

QlubはこれまでにUAE、KSA、インドでサービスを開始しているが、今後数週間から数カ月の間に他の国際市場にも拡大していく予定だ。

画像クレジット:Eyad Alkassar

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

仏政府が発表したフランス最大のスタートアップ企業リスト

毎年、フランス政府と政府が支援するイニシアチブのLa French Techは「Next40」と「French Tech 120」という2つのスタートアップランキングを発表している。これらのリストに載っているスタートアップは、それぞれフランスに拠点を置く業績の良いトップ40とトップ120のスタートアップであるとされている。

フランス政府がこれらのリストを作成するのは今回で3回目である。French Tech 120に含まれる120のスタートアップのうち、84社が2022年もこのインデックスに残っている。そのうち36社は初めてリストに登場することとなった。

そのうち2社は2021年のNext40に入っていたが、2022年は株式公開のため登場しない。OVHcloud(OVHクラウド)Believe(ビリーブ)だ。

以下が2022年のFrench Tech 120となる。赤いロゴはNext40の一部だ。

画像クレジット:La French Tech

Next40に選ばれるには、2つの方法がある。

  • 過去3年間に1億ユーロ(約129億2500万円)以上の資金を調達している、または会社の評価額が10億ドル(約1146億5800万円)以上に達しているユニコーン企業であること。
  • 過去3年間の売上高が500万ユーロ(約6億4600万円)以上で、前年比成長率が30%以上であること。

French Tech 120の残りの80社のスタートアップについては以下だ。

  • うち40社は、過去3年間の資金調達ラウンドで2000万ユーロ(約25億8400万円)以上を調達している。
  • うち40社は、年間売上高と成長率に基づき選出されている。

もちろん、これらのインデックスは、イノベーション分野で活躍するフランスの民間企業に限定されている。French Tech 120については、行政区ごとに最低でも2社のスタートアップが選出されている。

2021年は、世界中で技術資金調達の超大型年となったが、それはフランスでも同様だ。「今日、Next40に入るには少なくとも5000万ユーロ(約64億5900万円)を調達しなければならない」と、フランスのデジタル担当大臣Cédric O(セドリック・オ)氏は記者会見で述べた。2017年、フランスのスタートアップは合わせて25億ユーロ(約3229億2400万円)を調達した。2021年には120億ユーロ(約1兆5500億円)近くを調達している。

資金調達ラウンドに加え、彼はフランスのテックエコシステムにおける他の面の功績も挙げた。例えば、2021年には10億ユーロ(約1291億8500万円)を超えるIPOが2件あり、これは過去25年間と同数の10億ユーロ(約1291億8500万円)を超えるIPOがあったことになる。

また、統合も行われている。ここ数週間では、Doctolib(ドクトリーブ)がTanker(タンカー)を買収し、Luko(ルコ)もドイツの競合Coya(コヤ)を買収したが、Frichti(フリッチ)はベルリンのスタートアップGorillas(ゴリラズ)に買収された

「Next40とFrench Tech 120が何であるか、みなさんに思い出していただきたかったのです。多くの人が、これはランキングだと考えています。もちろん、ランキングであり、その一員であることを誇りに思ってください」と、La French Techのディレクター、Clara Chappaz(クララ・チャパズ)氏はいう。

「しかし、ランキングの要素に加え、サポートプログラムでもあるのです。今日のフレンチテックのミッションには、スタートアップのマネージャーとして活動しているメンバーが数名います。彼らは、Back Market(バック・マーケット)のようなスタートアップや、ここにあるすべての企業をサポートし、あらゆる種類の問題に関して行政とのやり取りを円滑にしてくれます」とも述べている。

60もの行政機関にフレンチテックの担当者がいるのだ。彼らは外国人従業員のビザ取得、認証や特許の取得、行政への製品売り込みなど、スタートアップを支援してくれる。

しかし、1つだけ目立つことがある。過去の年と同様、フランス政府は、多様性と包括性(ダイバーシティ&インクルージョン)に関して、テック系スタートアップはもっと努力すべきと考えているということだ。

French Tech 120の女性創業者は7名から14名になったが「エコシステムにおける女性の登用に関しては、もっとやらなければならない」とセドリック・オ氏は述べている。

また、大統領選挙が近いこともあり、セドリック・オ氏は、過去5年間にスタートアップを手助けした政策変更をいくつか挙げている。

「富裕税(ISF)改革、フラットタックス、労働市場改革、Tibiイニシアチブ、ストックオプション(BSPCE)改革、フレンチテックビザがなければ、今日のフレンチテックはありません」と同氏は述べている。

2021年フランス政府は「Green20」というグリーンテック分野のスタートアップに特化したプログラムも発表した。グリーンテックスタートアップにとって、多くの資金を調達し、多くの収益を上げるには通常より時間がかかることが多いからだ。フランス政府は、今回の記者会見でこのプログラムについて言及しなかった。

26社のスタートアップがユニコーンの地位を獲得し、フランスのテック・エコシステムは最近特に好調だ。しかし、一歩引いて考えてみると、2021年、世界中のユニコーンの数は569から959に急増した。

この2つの指標は、テック産業が経済全体においてますます重要性を増していること、そしてそれがグローバルな競争になっていることを証明している。フランスのスタートアップの中には、それぞれの垂直方向で欧州や世界のリーダーになるための正しい道のりを歩んでいる企業もある。そして、誰がローカルな成功をグローバルな成功に変えていくのか、興味深いところだ。

画像クレジット:経済産業省・財務省・復興庁

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(文:Romain Dillet、翻訳:Akihito Mizukoshi)

Mozilla、モバイルおよびデスクトップのVPNに新プライバシー機能を展開

Mozilla(モジラ)は、モバイルとデスクトップVPNサービスの新しいアップデートを展開すると、米国時間2月1日に発表した。Mozilla VPN 2.7では、Firefoxの人気アドオンの1つであるマルチアカウントコンテナーをデスクトッププラットフォームに導入し、AndroidとiOS版のVPNサービスにもマルチホップ機能を導入している。

Firefoxのマルチアカウントコンテナーにより、ユーザーは仕事、ショッピング、バンキングなど、オンライン活動の異なる部分を分離することができる。仕事のメールをチェックするために新しいウィンドウや別のブラウザを開く必要がなく、その活動をコンテナータブに分離することができ、他のサイトがウェブ上の活動を追跡するのを防ぐことができる。同社は、このアドオンとMozillaのVPNを組み合わせることで、ユーザーの区分されたブラウジング活動にさらなる保護層を追加し、ユーザーの位置情報にもさらなる保護を追加することができると述べている。

「例えば、仕事で出張中、フランスのパリで仕事のメールをチェックするためにコンピュータを使用しているが、ニューヨークの個人の銀行口座もチェックしたいとします。そこで、マルチアカウントコンテナーに加え、Mozilla VPNの追加プライバシーと30カ国の400以上のサーバーから選択することで、仕事と個人の財務のオンライン活動を分離することができます」と、Mozillaは新しい発表についてブログ投稿に書いた。

2021年、Mozillaは、1つのVPNサービスではなく、2つのVPNサーバを使用することができるマルチホップ機能をデスクトップで発表したが、今回、それがモバイル上でも展開されることになった。この機能は、最初にエントリのVPNサーバー、そして出口のVPNサーバーを介してあなたのオンラインアクティビティをルーティングすることによって動作する。Mozillaは、VPNサービスのAndroidとiOSバージョンにこの機能をもたらすことは、ブラウジング時にユーザーにさらなるプライバシーを与えると言っている。同社は、この機能は、プライバシーについて特に注意したい人々に有用であり、政治活動家や敏感なトピックについて書いているジャーナリストにも有用であることを指摘している。

これらの新しいアップデートは、Mozilla が最近、Android 版 Firefox Focus にクロスサイトトラッキングに対抗するために使用する Total Cooke Protection (トータルクッキープロテクション)の提供を開始したことに続くものだ。Total Cookie Protection の目的は、毎日訪れるサイトや検索している製品などの情報を企業が収集するクロスサイト・トラッキングを緩和することだ。Mozillaは2021年、Firefox Relayを発表した。これは、ユーザーのアイデンティティを保護するために、ユーザーの実際の電子メールアドレスを隠すための製品だ。

画像クレジット:David Tran / Getty Images

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(文:Aisha Malik、翻訳:Yuta Kaminishi)

テスラ、一時停止の標識を通過させる「完全自動運転」機能をリコール

Tesla(テスラ)は「Full Self-Driving(FSD、完全自動運転)」ベータ版に含まれていた、クルマが一時停止の標識を通過することが可能になる機能をリコールするため、無線でのアップデートを行っているとABCニュースが報じた。この機能は、FSDベータ10.3において、いわゆる「アサーティブ(積極的)」プロファイルの追加により初めて登場した。ABCによるとこの機能は、四差路交差点の一時停止標識を最大5.6MPH(約9.0 km/h)の速度で違法に通過することを許可するという。

Teslaは、米運輸省道路交通安全局(NHTSA)の関係者との2回の会合を経て、リコールに合意したと報じられている。これは16-22年型のModel S(モデルS)およびModel X(モデルX)のEV、17-22年型のModel 3(モデル3)、20-22年型のModel Y(モデルY)を含む約5万4千台のTesla車に影響する。NHTSAはリコールレポートで「一時停止の標識で止まらないと、事故のリスクが高まる可能性がある」と記している。だがTeslaは、この機能が原因で発生した怪我や事故は関知していないと述べている。

テスラは以前、左折時の後退、ファントム前方衝突警報、オートステアリングのバグなど「いくつかの問題」を理由に、FSD10.3ソフトウェアを撤回して前バージョンに戻した。また、中国ではAutopilot(オートパイロット)の問題で30万台のリコールを余儀なくされ、その他の地域でもカメラやトランクの不具合サスペンションの分離などでリコールを実施している。

以前にも指摘したように「Full Self-Driving」という名称は一般的にはレベル4の自動運転を意味するが、Teslaのシステムはレベル2の高度運転支援(Advanced Driver Assistance)を提供しているに過ぎないため、誤解を招く恐れがある。停止線で止まらず徐行する「ローリングストップ」を無効にするOTAアップデートは、2月上旬までに送信される予定だ。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Steve Dent(スティーブ・デント)氏は、Engadgetのアソシエイトエディター。

画像クレジット:NurPhoto / Contributor

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(文:Steve Dent、翻訳:Aya Nakazato)

OBS経由でZoomビデオ会議に利用可能、PCとウェブカメラだけでVTuber用アバターが使えるシステムが無償公開

ユーザーローカルは1月28日、ウェブカメラの映像を基にPC用ウェブブラウザー上にVTuberで使われるVRMキャラクターを表示する「ユーザーローカルWebcam VTuber」の無償提供を開始した。ソフトウェアをインストールするといったことは必要ない。利用者によるオリジナルVRMモデルのアップロードをサポートするほか、オープンソースソフトウェアの配信ツールOBS(Open Broadcaster Software)やHDMIキャプチャーと組み合わせることで、YouTubeでの配信やZoom通話に利用できる。

Webcam VTuberは、ウェブカメラを搭載したPCのウェブブラウザーで「ユーザーローカルWebcam Tuber」サイトにアクセスするだけで利用可能なサービス。

同サービスでは、AIアルゴリズムによってカメラ映像から利用者の顔の動きやまばたきを読み取り、画面内のVRMキャラクターにリアルタイム反映させる。ハンドトラッキングにも対応しており、腕や手のひら、指の動きを3Dモデルに反映できる。なお、AIによる顔のトラッキングや骨格推定はすべてウェブブラウザー内でのみ行われ、利用者のカメラ映像がインターネット上に送信されることはない。

顔の表情は「笑顔」「困り顔」「怒り顔」などがプリセットされており、画面上の表情アイコンやショートカットキー(1~5の数字)により変更可能。キャラクターアバターも複数モデルに切り替え可能で、利用者によるオリジナルVRMモデルのアップロードにも対応する。

動画配信ツールOBSなどで画面合成して配信したい場合、背景をグリーンバックに変更する必要がある。画面上の操作ボタンは非表示にできる。配信中のキャラクターのサイズ変更は、ショートカットキーとして「i」(ズームイン)、「o」キー(ズームアウト)を利用する。

対応OSは、Windows、Mac(M1以降推奨)、対応ブラウザーはChrome、Firefox。利用マニュアルも同時に配信している。

横浜国立大学、超柔軟なゲルや生体組織などに液体金属で配線する新技術を世界で初めて確立

液体金属を用いたゲル基板上の立体配線。(a)ゲル上およびゲル内部への液体金属配線と LED の点灯の様子。(b)液体金属を用いたゲルファイバー表面のらせん配線

液体金属を用いたゲル基板上の立体配線。(a)ゲル上およびゲル内部への液体金属配線と LED の点灯の様子。(b)液体金属を用いたゲルファイバー表面のらせん配線

横浜国立大学は1月31日、ゲルや生体組織といった超ソフトで非平面の基板上に、液体金属で配線を転写する技術を、世界で初めて確立したと発表した。今までよりもさらに柔軟なウェアラブルデバイスの開発や、インプラントデバイスへの応用が期待される。

横浜国立大学の太田裕貴准教授、渕脇大海准教授らによる研究グループは、液体金属で配線を行ったPVA(親水性がよい合成樹脂の一種であるポリビニルアルコール)フィルムを超柔軟基板の上に置き、フィルムを水で溶解させることで超柔軟基板上へ配線を転写することに成功した。配線可能な線の最小幅は165µm(マイクロメートル)と非常に細いため、らせん構造や三次元に交差する立体構造の配線も可能だった。

また、ラットの迷走神経を刺激する柔軟電極を設置したところ、生体組織に与える物理ストレスが抑えられた。さらに、PVAフィルム上に構築した温度測定システムを、機能を維持したままゲルに転写し、腕に貼り付ける実験も行ったが、その状態での温度測定も可能だった。

液体金属配線技術を用いたアプリケーション。(a)ラットの迷走神経に配線した液体金属の写真。(b)腕に取り付けたゲル基板上の温度測定デバイス。(c)作製したデバイスの上面図とデバイスの断面構造を示す回路図

液体金属配線技術を用いたアプリケーション。(a)ラットの迷走神経に配線した液体金属の写真。(b)腕に取り付けたゲル基板上の温度測定デバイス。(c)作製したデバイスの上面図とデバイスの断面構造を示す回路図

液体金属は、次世代スマートデバイスの配線素材として注目されている。生体適合性が高く柔軟であるため、ゲルと組み合わせれば、非常に柔軟なウェアラブルデバイスが作れるようになるのだ。剛性を表す比例係数ヤング率はゲルよりも低く、伸縮性と生体適合性は高く、変形による抵抗値変化が小さいという優れた特徴を持つが、加工しづらいという欠点もある。従来の方法では、非平面基板に複雑な回路を作ることは難しかった。この研究で、そうした課題が克服され、柔軟な素材のみを使用し、人体への密着性を高め、不快感を少なくしたウェアラブルデバイスの開発が可能となるとのことだ。

今後は、生体組織に液体金属で配線を施し、「健康状態を測定できるようなインプラントデバイスの開発」も期待されるという。

カキの養殖・技術DXなどを手がけるリブルが総額1億円調達、養殖技術の強化拡大を目指す

牡蠣(カキ)の人工種苗生産・販売から養殖・販売・スマート漁業化まで牡蠣関連事業に取り組むリブルは2月1日、第三者割当増資により総額1億円の資金調達を実施したことを発表した。引受先は食の未来1号投資事業有限責任組合、SBプレイヤーズ、地域とトモニ1号投資事業有限責任組合、Less is design、瀬戸内Startups 1号投資事業有限責任組合、オプティマ・ベンチャーズ。

調達した資金は、水産業界においてニーズが高まっているという三倍体種苗の生産・供給能力の拡大と、養殖技術の見える化や生産作業の省力化・効率化(水産DX、スマート漁業、スマート養殖)、他地域漁場への技術展開にあてる。三倍体種苗とは、生き物が通常2組持つ染色体を3組持つ「産卵しない」牡蠣という。卵を作らないため身痩せすることがなく、通年で出荷することが可能。種なしブドウや種なしスイカが代表例とされる。

2019年よりリブルは、自社漁場においてシングルシード生産方式の実装可能性を模索し、新たな養殖技術の見える化に取り組んできた。シングルシード方式とは、ホタテの貝殻に密集した状態で付着した牡蠣を筏から吊り下げる従来型の養殖手法ではなく、牡蠣をかごに入れて1粒1粒バラバラの状態で養殖をする手法という。付着物が付きにくく、殻が綺麗に形成される。

従来の牡蠣養殖の手法では、天然採苗と養殖育成の過程で資材として使われるプラスチック部材の大量消費・流出が課題となっており、同社では、シングルシード生産方式への切り替えを通じて、経済性向上に加え、環境負荷を軽減した手法を全国に広める取り組みを展開している。これにより、SDGs(持続可能な開発目標)の実現に向けて、「海の豊かさを守る」取り組みを続けていくとしている。

また、牡蠣養殖の要となる「種苗」において、天然種苗からのマーケットシフトに備え、研究開発を繰り返し、国内トップ水準を自負できる人工種苗の技術力を築いてきたという。今後、シングルシード生産方式におけるスマート養殖技術の他地域展開、高品質な三倍体種苗の供給の強化・拡大を展開していくため、資金調達を実施した。

2018年5月設立のリブルは、牡蠣養殖から日本の水産業の改革に取り組む水産領域スタートアップ。自社漁場を所有し養殖に取り組み養殖事業者目線でのニーズを熟知しているほか、種苗生産から成品生産販売・スマート漁業化まで一気通貫で取り組んでいる。日本の水産業に今一度誇りを取り戻すとともに、「世界一おもしろい水産業へ」をコンセプトにチャレンジを続けている。