アップルがiOS 15.3をリリース「活発に悪用された可能性がある」iPhoneの脆弱性を修正

Apple(アップル)は米国時間1月26日、iOS 15.3とmacOS Monterey 12.2のリリースにより、数十件のセキュリティ問題を修正した。

iOS 15.3では、同社が活発に悪用された恐れがあるとしている不具合を含む、合計10件のセキュリティバグが修正されている。CVE-2022-22587として追跡されているこの脆弱性は、IOMobileFrameBuffer(デバイスのメモリが画面表示を処理する方法を開発者が制御できるようにするカーネル拡張)のメモリ破壊バグで、悪意のあるアプリによるカーネルコードの実行につながる可能性がある。

また、AppleはmacOS Monterey 12.2をリリースした。ユーザーの最近のブラウジング履歴やGoogleアカウント情報が、Safari 15やサードパーティ製のウェブブラウザから流出する可能性があるというWebKitの不具合を研究者が発見し公表していたが、macOS 12.2ではそのバグに対する修正が含まれている。

この脆弱性は、ブラウザのフィンガープリンティングと不正行為の検出サービスを提供するFingerprintJSによって最初に発見されたもので、ブラウザにデータを保存するアプリケーションプログラミングインターフェース(API)であるIndexedDBのAppleによる実装に不具合があったという。

CVE-2022-22594として追跡されているこの不具合は、IndexedDBを使用しているウェブサイトが自分のドメインのみならず、ユーザーのブラウジングセッション中に他のウェブサイトが生成したIndexedDBデータベース名にアクセスすることを可能にし、ひいては、ユーザーが別のタブやウィンドウで訪れた他のウェブサイトを追跡することも可能にする。また、IndexedDBのデータベース名にユーザー固有の識別子を使っているGoogleなどのウェブサイトでは、攻撃者がユーザーのGoogleアカウント情報にアクセスできる可能性があるとFingerprintJSは警告している。

また、iOS 15.3には、アプリがルート権限を取得する可能性があるセキュリティ問題、カーネル権限で任意のコードを実行する問題、およびアプリがiCloudを通じてユーザーのファイルにアクセスできる問題の修正が含まれている。

一方、macOS Monterey 12.2では、合計13件の脆弱性が修正されている。後者は、以前に報告されたSafariでのスクロールの問題を修正し、MacBookにスムーズなスクロールをもたらすことも約束している。

また、レガシーバージョンのmacOS Big SurおよびCatalinaのセキュリティ修正プログラムもリリースされた。

今回の最新セキュリティアップデートの公開は、HomeKitを介して悪用され、持続的なサービス拒否(DoS)攻撃の標的となる可能性があるiOSおよびiPadOSの脆弱性が確認されたのを受けて、それを修正するためにAppleがiOS 15.2.2をリリースしてからわずか2週間後に行われた。

関連記事:アップルがAirTagストーカー問題に対応、「Personal Safety User Guide」を改定

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Carly Page、翻訳:Aya Nakazato)

アップルがiOS 15.3をリリース「活発に悪用された可能性がある」iPhoneの脆弱性を修正

Apple(アップル)は米国時間1月26日、iOS 15.3とmacOS Monterey 12.2のリリースにより、数十件のセキュリティ問題を修正した。

iOS 15.3では、同社が活発に悪用された恐れがあるとしている不具合を含む、合計10件のセキュリティバグが修正されている。CVE-2022-22587として追跡されているこの脆弱性は、IOMobileFrameBuffer(デバイスのメモリが画面表示を処理する方法を開発者が制御できるようにするカーネル拡張)のメモリ破壊バグで、悪意のあるアプリによるカーネルコードの実行につながる可能性がある。

また、AppleはmacOS Monterey 12.2をリリースした。ユーザーの最近のブラウジング履歴やGoogleアカウント情報が、Safari 15やサードパーティ製のウェブブラウザから流出する可能性があるというWebKitの不具合を研究者が発見し公表していたが、macOS 12.2ではそのバグに対する修正が含まれている。

この脆弱性は、ブラウザのフィンガープリンティングと不正行為の検出サービスを提供するFingerprintJSによって最初に発見されたもので、ブラウザにデータを保存するアプリケーションプログラミングインターフェース(API)であるIndexedDBのAppleによる実装に不具合があったという。

CVE-2022-22594として追跡されているこの不具合は、IndexedDBを使用しているウェブサイトが自分のドメインのみならず、ユーザーのブラウジングセッション中に他のウェブサイトが生成したIndexedDBデータベース名にアクセスすることを可能にし、ひいては、ユーザーが別のタブやウィンドウで訪れた他のウェブサイトを追跡することも可能にする。また、IndexedDBのデータベース名にユーザー固有の識別子を使っているGoogleなどのウェブサイトでは、攻撃者がユーザーのGoogleアカウント情報にアクセスできる可能性があるとFingerprintJSは警告している。

また、iOS 15.3には、アプリがルート権限を取得する可能性があるセキュリティ問題、カーネル権限で任意のコードを実行する問題、およびアプリがiCloudを通じてユーザーのファイルにアクセスできる問題の修正が含まれている。

一方、macOS Monterey 12.2では、合計13件の脆弱性が修正されている。後者は、以前に報告されたSafariでのスクロールの問題を修正し、MacBookにスムーズなスクロールをもたらすことも約束している。

また、レガシーバージョンのmacOS Big SurおよびCatalinaのセキュリティ修正プログラムもリリースされた。

今回の最新セキュリティアップデートの公開は、HomeKitを介して悪用され、持続的なサービス拒否(DoS)攻撃の標的となる可能性があるiOSおよびiPadOSの脆弱性が確認されたのを受けて、それを修正するためにAppleがiOS 15.2.2をリリースしてからわずか2週間後に行われた。

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画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Carly Page、翻訳:Aya Nakazato)

Discordがダウンしていたのはあなただけではなかった

グループチャットプラットフォームDiscordで、太平洋時間1月26日正午(日本時間1月27日5時)前からAPIの問題が広範囲に発生している。つまり、あなたがゲーマー / 暗号資産のプロ / Discord好きのどれかであるのなら、自身のポッドキャストのサーバー、#petsチャンネルに飼っている犬の写真をアップロードできなくなっている。スタートアップの中にはDiscordをSlackのように使っているところもあるため、短時間のシステム停止でも影響があったり、a16zが資金提供しているスタートアップの社員全員にお休みをもたらすかもしれない。

「API停止の根本的な問題を特定しましたが、データベースクラスタの1つで二次的な問題に対処しています。我々は、オンコール対応チーム全体がオンラインで、この問題に対応していま」と同プラットフォームは投稿している。本稿執筆時はサイトがダウンしてから約45分後であり、Discordはデータベースが再び健全な状態になり、ユーザーが徐々に再接続できるようになっていると述べていが、それでもすぐにログインできない可能性があり、エラーメッセージが表示される可能性が高いだろう。

Discord

最初の障害から1時間余り、Discordはサーバーステータスのページで、半分以上のユーザーがオンラインに戻ったことを掲示していた。

画像クレジット:Discord/Eric Szwanek

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Katsuyuki Yasui)

みんなの銀行、トンガ王国支援の取り組みとして「みんなのCheer Box」と「みんなのCheerコード」を開始

スマートフォンで完結するデジタルバンク「みんなの銀行」(Android版iOS版)は、火山噴火の被害を受けたトンガ王国を応援する「トンガにつなげよう、Cheer Box」と「トンガにつなげよう、Cheerコード」という2つの取り組みを1月25日に開始した。みんなの銀行、トンガ王国支援の取り組みとして「みんなのCheer Box」と「みんなのCheerコード」を開始

「トンガにつなげよう、Cheer Box」は、誰か応援したい人を、「みんなの銀行」アプリの目的別貯蓄機能である「Box」を利用して支援できるシステム「みんなのCheer Box」の特別版。自分で口座にBoxを作り、それに「トンガにつなげよう」の9文字を含む名前を付けると、そこから日ごとの末残平均の1%が寄付される(1円未満切り捨て。顧客の口座からお金が引き落とされることはない)。計算期間は2022年1月25日~3月31日。寄付先は、日本財団「トンガ救援基金」。

「トンガにつなげよう、Cheerコード」は、「お友だち紹介プログラム」を応用したもの。みんなの銀行に口座を開くときに、対象コード「PjWTNkfZ」を入力すると、トンガ王国に1500円が寄付され、利用者の口座にも応援特典として1500円が入金されるというものだ。

こちらも計算期間は3月31日まで。寄付先は、日本財団「トンガ救援基金」となる。

みんなの銀行は、1月18日に利用者から寄せられた「口座からスグに義援金を振りだせる仕組みがあったらスゴい」との意見に「奮い立たされ」てこれを開始した。「みんなに価値あるつながりを。」とのミッションを掲げるみんなの銀行は、その思いをトンガ王国に「つなぐ」取り組みとして形にしたとのことだ。

情報通信研究機構(NICT)が世界最高性能の分解能15センチの航空機搭載用合成開口レーダーを開発、技術実証に成功

情報通信研究機構(NICT)が世界最高性能の分解能15センチの合成開口レーダーを開発、技術実証に成功

情報通信研究機構(NICT)は、分解能15cmの航空機搭載用の合成開口レーダー「Pi-SAR X3」(パイサー・エックススリー)を開発し、実証実験に成功した。2008年に開発した「Pi-SAR2」の分解能は30cmだったので、その2倍の性能となる。高精細画像が得られるようになり、自然災害時の被災状況のより詳細な把握や、効果的な救助活動や復旧作業に貢献できるという。

合成開口レーダー(SAR)とは、航空機や人工衛星などに搭載し、移動することで仮想的にレーダー直径(開口面)を大きくする仕組みのレーダーのこと。電磁波を送受信し、主に地表の観測に使われている。NICTの合成開口レーダーでは、X帯の電波(8〜12GHz)を使用しているが、Pi-SAR X3ではそのうち、従来の2倍となる9.2〜10.2GHzの帯域を使用。帯域幅を拡大することで、分解能を向上させた。また、観測データの記録装置は、従来比で書き込み速度は10倍、容量は8倍となった。2021年12月に能登半島上空で初めて行った試験観測では、田んぼに残されたトラクターの轍(わだち)もはっきりと写し出され、その高い性能が示されている。

2021年12月にPi-SAR X3で観測された輪島市近郊の画像と白枠内(田圃)の拡大図。拡大左図:15cm分解能、拡大右図:30cm分解能(Pi-SAR2相当)。Pi-SAR X3は、Pi-SAR2では計測困難だった田圃内の轍(わだち)を鮮明に観測することに成功。地震などで発生する地表面の変化をこれまで以上に詳細に観測可能となった

2021年12月にPi-SAR X3で観測された輪島市近郊の画像と白枠内(田圃)の拡大図。拡大左図:15cm分解能、拡大右図:30cm分解能(Pi-SAR2相当)。Pi-SAR X3は、Pi-SAR2では計測困難だった田圃内の轍(わだち)を鮮明に観測することに成功。地震などで発生する地表面の変化をこれまで以上に詳細に観測可能となった

今後はシステムの最適化による性能の向上を目指し、2022年度からは、地震などの自然災害のモニタリング、土地利用、森林破壊、海洋油汚染、海洋波浪、平時の火口観測などの環境モニタリングに関する技術の高度化を実施する予定とのこと。

細胞量産技術開発の東京大学発セルファイバと京都大学iPS細胞研究財団がiPS細胞増殖の効率化を目指す共同研究を開始

細胞量産技術開発の東京大学発セルファイバと京都大学iPS細胞研究財団がiPS細胞増殖の効率化を目指す共同研究を開始

iPS細胞を培養中の細胞ファイバー

東京大学発の細胞量産技術開発スタートアップのセルファイバは、iPS細胞増殖の効率化に関する研究を、京都大学iPS細胞研究財団(CiRA_F:サイラエフ)と共同で開始した。CiRA_Fの理念である「最適なiPS細胞技術を、良心的な価格で届ける」の実現を後押しするという。

セルファイバは、「細胞ファイバ」という技術を有している。髪の毛ほどの中空ハイドロゲルチューブの中に細胞を封入して培養するというものだ。細胞はゲルに保護されるため、従来の培養方式に比べて、細胞を良好な状態で長時間維持することができる。また細胞から分泌される物質はチューブの外に放出されるため、物質生産にも有用となる。この細胞ファイバ技術を使うことで、製造施設の省スペース化、品質と回収率の改善、プロス開発工数の短縮、製造工程の簡略化などが期待できるという。

共同研究では、この細胞ファイバ技術開発の知見を活かし、iPS細胞増殖技術の検討が行われることになる。安全で効率のよい製造手法が確立されれば、高額な再生医療費用の低価格化や、今よりも早く治療法を患者に届けることが可能になると、CiRA_Fは話している。

エネルギー卸取引マーケットプレイスeSquare運営のenechainが総額20億円調達、今後3年間で10倍以上の流動性増加を目指す

エネルギー卸取引マーケットプレイスeSquare運営のenechainが総額20億円調達、今後3年間で10倍以上の流動性増加を目指す

様々なエネルギー商品を売買できる卸取引マーケットプレイス「eSquare」を運営するenechainは1月26日、シリーズAラウンドでの16億円の第三者割当増資および取引銀行からの融資により、総額で約20億円の資金調達を行なったことを発表した。引受先は、リードインベスターのDCM VenturesとMinerva Growth Partners。調達した資金により、eSquareの流動性を拡大させ、エネルギー業界全体のDXを推進させたいという。

enechainは「Building energy markets coloring your life」をミッションに掲げ、あらゆるユーザーがオンライン上のマーケットプレイスeSquareを通じ、電力やLNGといったエネルギー商品を自由に売買できる社会の実現を目指すスタートアップ。

2016年の電力自由化以降には数百社の小売事業者が電力事業に参入し、従来の電力会社よりも安価に電力の販売がされるといったメリットが生まれた。しかしその一方で、自由化当初には想定されていなかった、燃料市況や需給動向に応じた電力のスポット価格の乱高下といった課題も浮き彫りになっている。このような事業環境では、生産者にとっても小売企業にとっても価格変動に対して「収益を安定化するためのヘッジ取引」が必要となるものの、これまで日本のエネルギー業界には価格をヘッジするマーケットが存在していなかった。エネルギー卸取引マーケットプレイスeSquare運営のenechainが総額20億円調達、今後3年間で10倍以上の流動性増加を目指す

そうした背景を受けenechainは、経済産業省の認可の元、法人ユーザー向けに電力やLNGなどエネルギー商品のヘッジ取引を行うマーケットプレイスを開設、取引のマッチングサービスを提供。創業から2年半で、ユーザーは電力会社やガス会社、新電力のほかにも欧米トレーダーなど120社を超えるまでに成長している。

今回調達した資金は、採用と組織拡大、コアプロダクトであるeSquareの開発およびユーザーへの導入の加速に充てる。今後3年間で、ソフトウェアエンジニアやコーポレート人材などを中心に社員数を150名と現状の3倍規模にまで増やす予定。ユーザー獲得の加速に向けた投資も積極的に行ない、eSquare上の流動性を10倍以上とすることを目指す。

enechainは、卸電力のヘッジマーケットプレイスでの取引を活性化させることで、発電・小売事業者の収益性を安定させ、エンドユーザー向けにより競争力のある条件での安定的な電力小売に寄与したいという。

レーザー核融合商用炉の実現を目指すフルスタック核融合スタートアップEX-Fusionが1億円調達、研究・開発を始動

レーザー核融合商用炉の実現を目指すフルスタック核融合スタートアップEX-Fusionが1億円調達、研究・開発を始動

レーザー核融合商用炉の実用化を目指すEX-Fusion(エクスフュージョン)は1月26日、第三者割当増資による1億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、ANRIが運用する「ANRI-GREEN1号投資事業有限責任組合」。調達した資金は、将来のレーザー核融合商業炉の基盤技術の1つであるターゲット連続供給装置とレーザー照準装置の開発にあてる。ハイパワーパルスレーザーを用いたレーザープラズマ実験の高繰り返し化を実現する。

EX-Fusionは、レーザー核融合商用炉の実用化を目指す国内唯一のスタートアップ企業。2021年7月、レーザー核融合研究開発を遂行してきた大阪大学レーザー科学研究所、光産業創成大学院大学の研究者が設立した。

核融合エネルギーは、発電時に二酸化炭素の排出がなく供給可能なクリーンエネルギー源として、近年ますます注目を集めている。特にレーザー核融合は、負荷変動に対応できるため、既存のエネルギー源を代替し、2050年のカーボンニュートラル実現に大きく貢献できる可能性を秘めた技術とされる。

同社は、日本を拠点とするレーザー核融合エネルギーのスタートアップとしての地位を確立することで、民間資本を集め、高い開発リスクを受け入れながら、実用化に必要な技術開発を加速する。さらに、レーザー核融合商用炉実現を目指す過程で得られる最先端の光制御技術・知見などを活用し、エネルギー分野にとどまらず、様々な産業分野の技術開発に貢献するとしている。

レーザー核融合とEX-Fusion

レーザー核融合商用炉の実現を目指すフルスタック核融合スタートアップEX-Fusionが1億円調達、研究・開発を始動レーザー核融合は、高出力レーザーを用いて重水素と三重水素の混合物を高密度に圧縮するとともに、高温度に加熱することで核融合反応を起こし、エネルギーを得る手法。日本をはじめ、米国・仏国・英国・中国・ロシアを中心に研究が行われている。

米国では、2021年8月、ローレンス・リバモア国立研究所の国立点火施設(NIF)の実験において、レーザー投入エネルギーの7割を超える核融合出力1.35メガジュールが達成された。これは、レーザー方式で核融合燃料を点火燃焼させることが可能であることを実証したものという。

ただ商用炉の実現には、(1)核融合反応発生効率の向上、すなわちレーザー投入エネルギーを超える核融合出力の達成、(2)核融合反応を10Hz程度の繰り返しで定常的に発生させ、核融合エネルギーを回収して電気・水素などの社会が利用可能なエネルギーに変換することが必要となる。

国内では、(1)の核融合反応発生効率の向上について、高効率化が期待される高速点火方式とよばれる外部からレーザーで高密度核融合燃料を追加熱する方式に注力しており、大阪大学レーザー科学研究所に整備された激光XII号・LFEXレーザーを用いて実験が遂行されている。EX-Fusion CEOの松尾一輝氏が第一著者としてまとめた最近の成果(Petapascal Pressure Driven by Fast Isochoric Heating with a Multipicosecond Intense Laser Pulse)は、米国のエネルギー高等研究計画局(ARPA-E)が出版した世界の核融合研究サマリーでも参照されているという。

(2)の高繰り返しレーザーによる核融合発生については、同社CTOの森芳孝氏が光産業創成大学院大学の中核メンバーとして、浜松ホトニクスが開発した半導体励起ハイパワーレーザーを用いてトヨタ自動車などの連携機関と共同研究を遂行してきた(2030年以降を見据えたレーザー核融合研究開発の中長期展望)。

EX-Fusionは、国内で培われてきたレーザー核融合に関する知見を集約し、レーザー核融合商用炉を実現するために設立された。現在、光産業創成大学院大学が所有する10Hz連続ターゲット供給レーザー照射技術を同社へ技術移管中という。同技術をコア技術として研究開発を始動するとしている。

月面活動に向け衛星コンステレーション構築を目指すアークエッジ・スペースがシリーズAファーストクローズとして16.7億円調達

キューブ衛星による小型衛星コンステレーションの構築を進める株式会社アークエッジ・スペースが16.7億円の資金調達を実施

超小型衛星の開発運用などを手がけるアークエッジ・スペースは1月26日、シリーズAファーストクローズとして、第三者割当増資による16億7000万円の資金調達を実施したことを発表した。引受先には、インキュベイトファンドをリードインベスターに、リアルテックファンド、MSIVC2021V投資事業有限責任組合(三井住友海上キャピタル)などが加わっている。累積調達額は約21億円となった。

アークエッジ・スペースは、経済産業省の「超小型衛星コンステレーション技術開発実証事業」に採択(2021年8月)され、JAXAの「⽉⾯活動に向けた測位・通信技術開発」の委託先にも採択(2021年12月)されている。さらにJAXAの公募型企画競争「Comet Interceptor ミッションにおける超小型探査機システムの概念検討」の委託先にも選定された(2021年8月)。またルワンダ政府より、同国初の人工衛星の製造開発を受注し、2019年にはISSの「きぼう」日本実験棟から放出を成功させるなどの実績を持つ。

今回調達した資金で、アークエッジ・スペースは、月面活動に必要となる通信と測位の衛星コンステレーション構築、6U衛星による衛星コンステレーションの実現、人材採用による組織力の強化を目指すという。

月面活動に関しては、「⽉⾯活動に向けた測位・通信技術開発」に関連し、2025年を目途に、月と地球間の超長距離通信システムの構築に必要となる超小型衛星の開発と実証を行う。また、月面活動向け通信・測位システムを担う超小型宇宙機の開発・打ち上げ実証を着実に実施するとしている。「日本の持続的な月、月以遠の深宇宙探査や月面産業の構築」に貢献するという。

6U衛星コンステレーションは、「超小型衛星コンステレーション技術開発実証事業」の一環。「IoT通信」「地球観測」「海洋DX(VDES)」「高精度姿勢制御ミッション」の4テーマに対応した6U衛星7機からなる衛星コンステレーションの開発と軌道上運用を2025年までに実現させる。この衛星により、世界中の政府や研究機関、民間事業者に6U衛星プラットフォームを提供し、「SDGs達成、地球課題解決、海洋のデジタルトランスフォーメーション、持続可能な宇宙産業の創出」に貢献するという。

YouTubeがNFT導入を検討中、CEOが書簡で示唆

YouTubeのCEOであるSusan Wojcicki(スーザン・ウォジスキ)氏は米国時間1月25日に公開した文書で、同プラットフォームにNFTを含むWeb3テクノロジーを導入する可能性があることを示唆した。NFT(非代替性トークン)はブロックチェーンに保管されたデジタルアセットを証明するもので、YouTubeクリエイターの収益化につながる手段となる。具体的な計画やYouTube上でNFTのテストが開始される時期は明らかにしなかったが、同氏はWeb3の世界で起きているイノベーションについて「YouTubeの継続的なイノベーションに向けたインスピレーション」と表現した。

ウォジスキ氏は文書の中で次のように書いている。「2021年は、暗号資産、非代替性トークン(NFT)、さらには自律分散型組織(DAO)までも含めた世界が、クリエイターとファンのつながりを深める機会として、かつて想像もつかなかった注目を集めました。NFTのような先進技術を利用してクリエイターの収益化を支援するようにするなど、私たちはYouTubeのエコシステムを発展させることを常に重視しています。同時に、クリエイターとファンによるYouTubeの利用体験を強化し、継続的に向上させることにも努めています」。

YouTubeにコメントを求めたが、NFT対応に関してYouTubeがどんな準備をしているのか、広報から詳しい説明はなかった。

とはいえ、YouTubeはNFTを見せたい人がそれを実現できそうな方法をすでに多数提供している。例えば、現在同社は、クリエイターのビデオの下に表示される「グッズ紹介」機能を提供している。これはクリエイターがアパレル、コレクターズアイテム、ぬいぐるみ、レコード盤などのプロダクトを紹介するもので、これに対応する販売パートナーは増加している。このことから、デジタルクリエイターが自分のNFTアートを紹介できるようにするために、YouTubeがNFTプラットフォームと提携して暗号資産ウォレット技術を統合できそうだと考えられる。あるいは、YouTubeは他の方法でクリエイターのプロフィールとNFT対応をさらに深く統合するかもしれないし、NFTを扱うクリエイター向けのツールを開発してお互いにネットワークを構築し作品を共有できるようにするかもしれない。

YouTubeがNFTの分野に進出しようと検討するのは当然と考えられる。他のソーシャルメディアプラットフォームも同様の動きを見せているからだ。Twitterは数日前に初のNFT対応として、NFTプロフィール写真を利用できるようにした。クリエイターは自分が所有するNFTを六角形のプロフィール写真として設定し、誰かがそのプロフィール写真をクリックするとアートに関する詳しい情報が表示される。InstagramもNFTを検討していることを公に認めたThe Financial Timesの最近の報道によると、FacebookはNFTマーケットプレイスを構築しているようだ。

将来的なWeb3対応に加え、ウォジスキ氏は2021年のYouTube全般を振り返りながら注目すべきアップデートをいくつか提示した。

ウォジスキ氏は、TikTokの競合であるYouTubeショート上での「リミックス」機能を拡大すると述べた。YouTubeショートでは現在、他のYouTube動画からオーディオコンテンツのみをリミックスする機能が提供されている。YouTubeは詳細を共有していないが、Instagramがすでに対応しているのと同様に、動画のリミックスに対応することを検討しているようだ。同氏は、YouTubeショートはこれまでに5兆回再生されたと述べた。再生回数よりもYouTubeショートを利用しているクリエイターの人数の方が興味深いが、その人数は共有されなかった。YouTubeショートファンドからの支払いを受けたクリエイターの4割以上は、同社のYouTubeパートナープログラムに参加していなかった人たちだったとも書かれている。これは、YouTubeショートが新しいタイプのクリエイターがYouTubeで収益化する手段になっていることを示唆している。

文書ではその他の取り組みや投資にも触れている。ゲーム、クリエイターの収益化、音楽、ショッピング、教育の他、さまざまな規制の問題に対する立場についても取り上げられた。ウォジスキ氏は、年間1万ドル(約114万円)を超える収益を上げている全世界のチャンネル数は対前年比で40%増加し、YouTubeチャンネルメンバーシップと有料デジタルアイテムは1億1000万回以上購入または更新されたと述べている。ゲーム関連では、再生数は8000億回、ライブ配信は9000万時間、アップロード数は2億5000万本をそれぞれ超えている。2020年には米国、日本、韓国、カナダ、ブラジル、オーストラリア、EUの合計でYouTubeのエコシステムにより80万人以上の雇用が支えられているという。

クリエイターに向けて、すでに発表されていたShopifyとの提携の計画メンバーシップギフト贈呈機能の提供開始、教育コンテンツを利用するユーザー数の倍増、ボーダーラインにあるコンテンツのおすすめの停止、YouTube Kidsの改善なども取り上げられている。ウォジスキ氏は「低評価」ボタンを削除する決定に対して反発があることも認めたが、削除が必要である理由を再び主張した。

画像クレジット:Olly Curtis/Future / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Kaori Koyama)

中国のスマート製造業に注力するAInovationが香港でIPOを申請、李開復氏やソフトバンクも支援

中国では、人工知能に金銭を支払う顧客を見つけようとする情熱が続いている。中国のコンピュータビジョンと機械学習のスタートアップ企業で、Kai-Fu Lee(カイフ・リー、李開復)氏のSinovation Ventures(シノベーション・ベンチャーズ)とSoftBank(ソフトバンク)が出資するAInnovation(エーアイノベーション、創新奇智)は、中国の巨大な製造業を自動化しようとしている。設立からまだ4年しか経っていないこのスタートアップは、香港で株式公開の申請を行っており、その目論見書では、今後数年のうちに中国の産業お青写真で重要な位置を占めるスマートマニュファクチャリングの商業的実行可能性を垣間見ることができる。

2010年代、SenseTime(センスタイム)やMegvii(メグビー)などのコンピュータビジョン企業は、中国の公的なセキュリティのインフラに顔認証技術を提供することで、大成功を収めた。しかし、競争によって価格が下がり、監視技術をめぐる米国の制裁による圧力が強まるにつれ、中国の初期のAIスタートアップ企業は多角化を模索している。SenseTimeは教育分野に進出し、Sinovation Venturesの支援を受けるMegviiは無人倉庫保管ソリューションを事業に加えた。

関連記事:米小売大手が中国企業の防犯カメラを店舗から撤去、人権侵害を指摘される

AInnovationは、AIアプリケーションの分野では若い企業に入る。目論見書によると、IBM、SAP、Microsoft(マイクロソフト)での経験を持つCEOのXu Hui(シュー・フイ)氏が共同で設立したこのスタートアップは、2021年9月までの9カ月間に、収益の半分を製造業の顧客から得ているとのこと。同社のコンピュータビジョンモジュールとカスタマイズされたサービスは、溶融した鉄の輸送(写真)、自動車の生産ラインにおける異常の検出、半導体製造での欠陥発見などの場面で使用されている。

収益の3分の1は金融サービスによるもので、残りは小売業、通信業、その他の産業から得ている。

AInnovationのような企業は、研究室で機械学習モデルを実行する博士号取得者を雇うだけでは不十分だ。文字通り自ら身体を動かし、実際に顧客の工場を訪問して、鉄鋼メーカーや衣料品メーカーにとってどのような自動化が最も良い利益を生むのかを学ぶ必要がある。そこで同社は、主要なパートナーである大手製鉄グループのCISDIおよび国有建設会社のChina Railway No.4(中鉄四局集団有限公司)と、それぞれ2つの合弁会社を設立した。

AInnovationのコンピュータビジョン技術を用いてネジの欠陥を検出する(画像クレジット:AInnovation)

AInnovationはまだ、スマートシティの先行企業ほどの収益を上げていない。2020年の売上は4億6200万元(約83億2000万円)だったが、SenseTimeは同年に34億元(約612億円)を得た。しかし、AInnovationは急速に成長している。2021年9月までの9カ月間で、その収益は5億5300万元(約99億6000万円)に達し、2020年の合計額を上回った。

とはいえ、課題もある。1つは、同社がいくつかの重要な顧客に大きく依存していることだ。2019年と2020年に同社が5つの大口顧客から得た収益は、それぞれ約26%と31%を占めている。

中国の初期のAI参入企業が顔認識に集まったのには理由がある。そのほとんどがソフトウェア事業であるため、儲かるからだ。例えばSenseTimeの利益率は、2018年の約57%から2020年には70%以上に上昇した。

AInnovationも、かつてはソフトウェアファーストの企業だった。目論見書によると、同社の売上総利益率は、2018年には63%だったが、2019年には31%、2020年にはさらに29%まで急落している。これは、同社がソフトウェアの販売を中心としていたビジネスから、より多くのハードウェア部品を含む統合ソリューションに軸足を移したことが原因だ。ハードウェアは一般的に材料費がかさむ。また、収益性が低下したのは、顧客基盤を拡大するために「競争力のある価格で提供」したためだという。AIビジネスでは、データがその燃料となる。

どちらもまだ不採算事業である。AInnovationは、2019年に約1億6000万元(28億8000万円)、2020年に約1億4400万元(25億9000万円)の調整後純損失を計上している。これに対してSenseTimeは、同時期に10億元(約180億円)、8億7800万元(約158億円)の調整後純損失を計上している。

中国の製造業の各分野は、簡単に数十億規模の市場機会となる。問題は、AInnovationが持続的な成長と健全なビジネスモデルへの道を見つけることができるかどうかだ。

Bloomberg(ブルームバーグ)による事前の報道によると、AInnovationの株価は仮条件レンジ下限の1株あたり26.30香港ドル(約385円)で設定されているという。この価格であれば、同社は香港でのIPOによって約1億5100万ドル(約172億円)を調達することになる。

画像クレジット:AInnovation

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(文:Rita Liao、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

産業用ロボットのノーコードプログラミングを実現する独Wandelbotsが新たに約95.7億円調達

ドイツのドレスデンを拠点とするWandelbotsは、2017年にDisrupt Berlinのステージに登場して以来、数年の間に健全な額を調達してきた。ノーコードのロボットソフトウェア企業である同社は2018年には680万ドル(約7億7000万円)を調達し、コロナ禍が製造業を一気にスローダウンさせたことで自動化への期待が高まっていた2020年6月には、3000万ドル(約34億2000万円)を調達した。

中央ヨーロッパ時間1月25日、同社は8400万ドル(約95億7000万円)のシリーズCを調達したことを発表し、これにより累計資金調達額は1億ドル(約113億9000万円)を軽く超えた。今回のラウンドはInsight Partnersがリードし、83North、Microsoft(マイクロソフト)、Next47、Paua、Atlantic Labs、EQTなどの既存の投資家が参加している。

Wandelbotsのミッションは一見シンプルなもので、多くの企業がこの分野での解決を目指している。ロボットのソフトウェアレイヤーは、工場でロボットを導入する際の参入障壁をどうしたら下げられるのか。具体的には、多くの外部サポートや多額の資金、ロボットのコーディングノウハウを必要とせずに、企業がロボット軍団を実装するにはどうすればよいのか。同社のソリューションは「TracePen」と呼ばれるインタラクティブなティーチングシステムで、このツールを使い人間のインストラクターが模倣すべき動作をデモンストレーションし、ロボットを訓練する。その後、ソフトウェア上で動作を微調整することができ、コーディングは不要だ。

「Wandelbotsのミッションが現実のものとなったことを大変誇りに思います」と、共同設立者兼CEOのChristian Piechnick(クリスチャン・ピエニック)氏はリリースで述べている。「当社のプラットフォームは、人間中心のロボットソリューションを業界で加速させるのに役立っていくことでしょう」。

画像クレジット:Wandelbots

今回の資金調達は、同社がロボットティーチングソフトウェアの開発者コミュニティの構築に取り組んでいる中で実施された。具体的には、開発者がWandelbotsプラットフォーム上で独自のティーチングアプリケーションを作成できるようにすることを目指している。Wandelbotsは現在、BMWやVWなどの顧客にロボットを提供しているUniversal RobotsやYaskawaを含む、より幅広いシステムとの相互運用性の実現にも取り組んでいるという。

またWandelbotsは、追加の雇用を行い、米国やアジアなどの市場にグローバルな事業を拡大する予定だ。

画像クレジット:Wandelbots

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

米国は半導体不足の解消からほど遠いとライモンド米商務省長官が警告

米商務省は米国時間1月25日、半導体市場の供給不足がどの程度広がっているかを把握するために150社を対象に行った調査の結果を発表した。自動車産業と医療産業は、この供給不足の影響を大きく受けている。

この調査結果を受けて行われた記者会見においてGina Raimondo(ジーナ・ライモンド)商務長官は、問題を厳しい言葉で表現し「半導体の供給問題に関しては、まだ脱却したとは言えない」と指摘。さらに「この問題は2022年後半まで、いや、もっと長く続きそうだ」と述べた。

ライモンド氏は、現在下院が起草しているU.S. Innovation and Competition Act(USICA)に、米国内での半導体生産増強のための520億ドル(約5兆9236億円)の資金が含まれていることを挙げ、議会の通過を強く要請した。

調査では、2019年から2021年にかけて需要が17%増加したことを指摘しており、この数字は今後さらに増加することが予想される。さらに、予期せぬ事態に直面した場合、破滅的な結果をもたらす可能性がある薄利多売についても述べている。

チップの在庫の中央値は、2019年の40日から5日未満に減少している。この在庫は、主要産業ではさらに少なくなってしまう。つまり、新型コロナウイルスの流行や自然災害、政情不安によって海外の半導体施設がわずか数週間でも混乱すれば、米国内の製造施設が閉鎖される可能性があり、米国の労働者とその家族が危険にさらされることになる。

ほとんどの製造施設は現在90%以上の生産能力で稼働しており、上工場を増やさなければこれ以上生産量を増やすことは不可能だという。特にIntelは、オハイオ州の2工場への大規模な投資を発表しているが、最初の工場が稼働するのは2025年だ。おそらく、現在行われている措置の多くは、将来の供給不足を回避することを目的としているのだろう。

「2021年初頭からの進展にもかかわらず、半導体不足は続いている。「半導体のサプライチェーンが複雑であることが一因だ。生産者は常に需要を明確に把握しているわけではなく、チップ消費者は必要なチップがどこで生産されているのかを常に把握しているわけではない。こうした障壁が、ソリューションの開発を難しくしている」と商務省の調査報告では述べられている。

画像クレジット:Joshua Roberts/Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

画面録画で情報共有、職場の生産性を高めるコラボプラットフォームCloudAppが約10億円調達

ビジュアルワークコミュニケーションツールのCloudApp(クラウドアップ)は、Grayhawk CapitalとNordic EyeがリードするシリーズAで930万ドル(約10億円)を調達した。このラウンドには、既存投資家のKickstart Fund、Cervin Ventures、New Ground Ventures、Bloomberg Beta、そして新たにPeninsula VenturesとForward VCが加わっている。また、CloudAppの顧客であるAtriumのCRO、Peter Kazanjy(ピーター・カザンジー)氏、Startup GrindとBevyのCEOであるDerek Andersen(ドレク・アンダーセン)氏も参加している。

CloudAppは、瞬時に共有できる動画、GIF、スクリーンショットを通じて、チームがより速く情報を共有できるようにすることを目的に2015年に設立された。このツールはHDビデオ、マークアップされた画像などをキャプチャしてワークフローに埋め込む、オールインワンの画面録画ソフトウェアだ。ユーザーが作成したファイルはすべてクラウド上に安全に保存され、CloudAppのネイティブMacアプリおよびWindowsアプリからアクセスできる他、パスワードで保護された安全なリンクを通じてウェブ上で共有することもできる。

同社の目標は、チームが電話や電子メールではなく、シンプルな共有可能な動画でメッセージを伝えられるようにすることだ。CloudAppは、ワークフローを中断することなくいつでも読むことができるビジュアルなボイスメールと自らを位置づけている。このツールはSlack、Atlassian、Trello、Zendesk、Asanaなど、数十のインテグレーションをサポートしている。サービス開始以来、CloudAppは400万人超のユーザーを獲得した。CloudAppの著名な顧客にはAdobe、Uber、Zendesk、Salesforceなどが含まれる。

CloudAppのCEOであるScott Smith(スコット・スミス)氏はTechCrunchに、今回調達した資金をツールの高速化、より深い統合、安全性向上のために使うと電子メールで述べた。同社はまた、より多くのチームが職場の生産性を高めるためにCloudAppに出会い、利用できるようにしたいと考えている。

画像クレジット:CloudApp

「これらの目標を達成するためには、当社がすでに持っているもの、つまりすばらしい人材がもう少し必要です」とスミス氏は話した。「スピードとユーザーエクスペリエンスを向上させるために、プロダクトチームとエンジニアリングチームを強化する予定です。また、マーケティングにも力を入れ、すべての職場でCloudAppがワークフローに欠かせない存在となるように努めます。営業チームの規模を拡大し、CloudAppを最も必要とするチームに直接提供できるようにします」。

将来については、従業員や顧客とのやりとりがこれまで以上に瞬時に検索・共有できるようになる世界をCloudAppは想定している、と同氏は話す。人工知能が最も関連性の高い重要なコンテンツを浮上させることができ、それがCloudAppのビジョンを可能にする、と同氏は指摘した。

「当初、我々はCloudAppを、共有する必要のあるものを非常に簡単かつ迅速に取り込むための方法だと考えていました。知識は力です。そこでチームは、ワークフローや統合を通じて、販売、サポート、製品、エンジニアリングチームなど、組織のあらゆる部分を助けるために使用できるコンテンツやクイックヘルプ動画のリポジトリを構築することができます」とスミス氏は書いている。「これからは非同期型の仕事です。そして、CloudAppは、すべてのチームメンバーがより生産的で超人的な存在になるのを支援できます」。

CloudAppのシリーズAは、2019年5月に発表された430万ドル(約5億円)のシードラウンドに続くものだ。シードラウンドはKickstart Seed Fundがリードし、既存投資家のCervin Ventures、Bloomberg Beta、当時Oracleの戦略担当副社長だったKyle York(カイル・ヨーク)氏も参加した。

画像クレジット:CloudApp

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(文:Aisha Malik、翻訳:Nariko Mizoguchi

ニール・ヤング、人気ポッドキャスターによるコロナ誤情報に抗議してSpotifyから楽曲を引き上げると宣言

ミュージシャンのNeil Young(ニール・ヤング)氏は、Spotify(スポティファイ)とポッドキャスターのJoe Rogan (ジョー・ローガン)氏との独占契約が反ワクチン運動を助長しているという懸念から、同ストリーミングサービスから自身の音楽カタログを引き上げると宣言した。

ヤング氏はマネージャーとレコード会社に宛てたオープンレターで「今日すぐにSpotifyに、私の音楽はすべて彼らのプラットフォームから削除するよう伝えてほしい。Spotifyは私かローガン、どちらかを選ばなければならない。両方はあり得ない」と書いている。その後削除された内容を、Rolling Stoneが報じた

「Spotifyで独占的に配信されているJRE(Joe Rogan Experience)は、世界最大のポッドキャストであり、多大な影響力を持っている。Spotifyにはプラットフォーム上での誤情報の拡散を緩和する責任があるが、今のところ、誤った情報に関するポリシーというものがない」とも。

Spotifyは、2020年に「The Joe Rogan Experience(ジョーローガン・エクスペリエンス)」の独占配信権を1億ドル(約113億9000万円)以上の価格で購入した。しかし、ローガン氏がトランスフォビア的な発言をしたり、トランスジェンダーコミュニティに批判的なゲストを招いたりしていることが話題になるなど、契約後、Spotifyは人気ポッドキャスターである同氏との関係をめぐる批判にさらされている。

2022年1月初めには、ローガン氏がTwitter(ツイッター)から追放されたウイルス学者、Robert Malone(ロバート・マローン)博士をゲストに迎え、新型コロナウイルスに関する誤った情報を広めたことを受けて、約300人の医療専門家からなるグループがSpotifyに公開書簡を提出し、誤情報に関するルールを導入するよう求めた。

「マローン博士は、JREのプラットフォームを利用して、新型コロナワクチンに関するいくつかのデマや、社会的リーダーが国民を『催眠術にかけている』という根拠のない説など、数々の無根拠な主張をさらに広めました」とその書簡には書かれている

「これらの発言の多くはすでに否定されており、信憑性のないものです。特にマローン博士は、パンデミック政策をホロコーストと比較した最近のJREのゲスト2人のうちの1人です。これらの行動は、不適切で攻撃的であるだけでなく、医学的にも文化的にも危険なものです」。

ローガン氏はパンデミックを通して、科学的なコンセンサスに疑問を投げかけ、健康な若年層にワクチン接種を思いとどまるよう勧めたり、FDAが一般市民に注意を促している動物用医薬品で、ローガン氏が自身のコロナ治療に使用したイベルメクチンを推奨したりしている。

ニール・ヤング氏がSpotifyから自身の楽曲を削除すると宣言したことで、他のエンターテインメント関係者からも圧力がかかるかどうかはわからないが、今回の発言により、Spotifyの誤情報に対する姿勢の甘さに注目が集まっていることは確かだ。同社はローガン氏と契約した後も、世界で最も再生されているポッドキャストとの独占的な関係を他のコンテンツと同様に扱っていた。

今やSpotifyは、どのコンテンツに対価を支払い、宣伝するかという編集上の決定には、特にそのコンテンツが公衆衛生上の危機に寄与する場合には、さらなる責任が伴うという現実を突きつけられているのかもしれない。

画像クレジット:Matthew Baker / Contributor / Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Aya Nakazato)

Oktaのアクセス管理データからわかるクラウド利用のさらなる多様化

アクセス管理とアイデンティティ管理の大手Oktaが提供するクラウドアプリケーション / サービスの利用に関する2022年(2020年11月1日-2021年10月31日)の「Business at Work」リポート(第8巻)によると、ユーザーの多くは従来のように単一ベンダーに固執するのではなく、各種業務のための最良のサービスを選ぶようになっているという。

やはりMicrosoft Office 365は依然として最も人気のあるサービスで、2位はAWS、3位はGoogle Workspaceで、前年比38%増と急成長している。しかし興味深いことに、単一ベンダーに縛られないようにしたいという願いが表れておりOffice 365を利用している企業の38%がGoogle Workspaceも利用しており、45%がZoom、33%がSlackも利用している。

Microsoftには、Zoomのビデオ会議機能とSlackの内部コミュニケーション機能を担当するTeamsがあり、Google WorkspaceがOffice 365と直接ライバル関係にあることを考えると、たとえMicrosoftが同様のツールを提供していても、企業は納得のいく競合製品を選ぶだろうことということを示している(少なくともOktaのユーザーはそうするだろう)。

とはいえ、このレポートは、マルチクラウドの利用やベンダー主導からの脱却など、市場で以前から耳にしているトレンドを反映している。

このことは、急成長中のツール(Notion、TripActions、Postman、Keeper、Airtable、Fivetran、Gongなど)の多くがBusiness at Workレポートデビューを果たした理由を説明しているかもしれない。なお、Fivetranは9月に56億ドル(約6374億8000万円)の評価額で5億6500万ドル(約643億2000万円)を調達している。Gongは2021年6月、75億ドル(約8538億2000万円)の評価額で2億5000万ドル(約284億6000万円)を調達。Airtableは2021年3月に57億ドル(約6489億1000万円)の評価額で2億7000万ドル(約307億4000万円)を調達しており、これらの企業が(少なくともOktaの世界で)主流になりつつあると同時に、投資家の目にはその価値が急上昇していることを示している。これが偶然だとは考えにくい。

画像クレジット:Okta

AWSはクラウドインフラストラクチャ市場のトップだが、Oktaのデータでも同様で、ユーザーの32%がAWSを利用という数字はそのままAWSのマーケットシェアでもある。そもそもAWSは近年、毎年ほぼい3分の1というシェアを安定的に維持している。

クラウド市場のマルチクラウドへの移行を受けて、Oktaのユーザーも14%がマルチクラウド方式を実装している。14%は、市場全体の動向よりやや小さいかもしれないが、でも2017年の8%よりは大きい。しかし意外にも、単独で人気の高いインフラストラクチャベンダーであるAWSとGCPの組み合わせは2.6%と小さい。

クラウドはもちろん、米国だけの現象ではない。このレポートによると、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、中東などそれぞれで、さまざまなクラウドアプリケーション / サービスが使われている。その中で断トツはGoogle Workspaceで、APAC市場では前年比で68%伸びている。そしてSlackとZoomは、EMEA市場でそれぞれ49%と45%ユーザーが増えた。

画像クレジット:Okta

このレポートの対象となっているOktaのユーザーはおよそ1万4000、彼らが上記期間に使ったクラウド / モバイル / ウェブアプリケーションは7000種だ。もちろんこれは、クラウド利用の全体の数字ではない。しかしそれでも、今日の企業とその社員たちのクラウド利用の実態が伺える。

OktaのCEOであるTodd McKinnon(トッド・マッキノン)氏によると、同社はこのレポートのための小さな専門チームを作ってデータの収集や整理を行っているという。

「5、6人ほどで、さらにデータウェアハウスの担当者2人がクエリと分析をやっている。私とコンテンツとPRの担当が、何がおもしろいか、口出しをすることもあります。そしてもちろん、ここに登場するユーザー企業はすべて私たちのパートナーであるため、彼らの話も聞きます。彼ら自身も、このデータに関心を持っています」。

画像クレジット:sorbetto/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

電動ピックアップトラックの戦いが過熱する中、GMがミシガンの4工場に約7970億円投資

General Motors(ゼネラルモーターズ)は、野心的なEV生産目標の達成を目指してバッテリーセルと電動トラックの製造に特化したミシガン州の4工場に70億ドル(約7970億円)超を投資すると発表した。ここにはパートナーのLG Energy Solutions(LGエナジー・ソリューションズ)との3つ目の工場も含まれる。

GMは、この投資計画で4000人の新規雇用を創出し、それとは別に1000人の雇用を維持するとしており、計画にはミシガン州ランシングにあるUltium Cellsバッテリーセル工場とミシガン州オリオンタウンシップのGMの組立工場の改造というすでに発表済みの2拠点への投資も含まれている。

3つ目の新しいUltiumバッテリーセル製造工場も、増え続けるEV特化施設のリストに加わる。26億ドル(約2960億円)が投じられるこのセル工場は、ミシガン州ランシングのGMから借りた土地に建設される予定だ。GMによると、280万平方フィート(約26万平方メートル)の施設の敷地造成が今夏開始され、工場は2024年後半にオープンする予定だ。この工場からミシガン州のOrion AssemblyおよびGMの他のEV組立工場にバッテリーセルが供給される。

LG EnergyとGMの合弁会社であるUltium Cellsは、この施設がフル稼働した場合、50ギガワットアワーのバッテリーセル容量になると予想している。2社はすでに、オハイオ州とテネシー州に建設中の2つのバッテリーセル製造拠点を計画している。

一方、オリオン工場はChevrolet SilveradoのEVと電動GMC Sierraの生産に使用される予定で、これはGMにとってフルサイズの電動ピックアップを生産する2つめの組立工場となる。GMのFactory Zero(旧称デトロイト・ハムトラック)は、GMC Hummer EVピックアップおよびSUV、Chevrolet Silverado電動ピックアップトラック、そして電動の自律走行ロボットタクシーCruise Originなど、GMが今後発売する一連のEVピックアップの生産も行う予定だ。

GMは、2025年末までに北米で100万台以上の電気自動車生産能力を持つことになると述べた。特に注力しているのはEVピックアップトラックで、これはGM、Ford(フォード)、そしてRivian(リビアン)のような新規参入企業が競合する分野だ。

画像クレジット:GM

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

DRP創薬を手がける産総研技術移転ベンチャーVeneno Technologiesが2億円のシード調達

DRP創薬を手がける産総研技術移転ベンチャーVeneno Technologiesが2億円のシード調達

Veneno Technologies(ベネイノテクノロジーズ)は1月24日、シードラウンドとして、第三者割当増資による2億円の資金調達を完了したと発表した。引受先は、SBIインベストメント、筑波総研、SBI地域活性化支援。

調達した資金は、採用・組織体制の強化、同社独自のペプチド創薬プラットフォーム技術のさらなる発展と、DRP機能性ペプチドを基盤分子とする自社創薬パイプラインの研究開発に投資し、DRP創薬を推進する。DRPは、ジスルフィドリッチペプチド(Disulfide-Rich Peptide)の略称。分子内に3つ以上のジスルフィド結合を有し特徴的な構造を持つ、20から60アミノ酸残基程度のペプチドの総称したもの。

Veneno TechnologiesのVeneno Suiteは、独自のDRP創薬一気通貫技術により、天然のDRPを鋳型に人工的に加速進化させ作成される巨大な遺伝子ライブラリーと、そのライブラリーから目的とするDRPを高速・効率的に探索できるスクリーニングシステムという。また多様なDRPを短期間で効率よく製造できる技術からなるとしている。

同社は、これまで創薬困難とされてきた膜たんぱく質などの標的や、それに関与する難治性疾患に対し新たな薬剤を提供することで、医療の進歩に少しでも貢献することをミッションとして掲げており、DRP創薬の新たな展開に向けて、調達した資金により以下の点を中心に強化するという。

・DRP創薬を進める高度な研究員の登用、研究所の新規開設
・DRP焦点化ライブラリー(DRP Space)の拡充
・DRP高速探索システム(PERISSTM)の強化とパイプライン拡充(共同研究の推進)
・DRP製造技術(Super Secrete)の開発(高効率な少量多品種製造技術の確立)
・DRP分析技術の開発

Veneno Technologiesは、DRP機能性ペプチドの研究開発を加速し、先進的で持続可能な医療と社会への貢献を目指し、2020年7月に設立。産業技術総合研究所(産総研)で長年研究されてきた革新的なDRP探索技術と、現在研究開発を進めているDRP製造技術の統合により、新薬や研究試薬、農薬、バイオスティミュラントなど、様々なDRP創薬の研究開発をリードするとしている。

また産総研による技術移転措置により、特許実施許諾契約を締結し、産総研技術移転ベンチャーの称号を付与されている。

オンライン肌相談・医薬品EC「「東京美肌堂クリニック」提供のLATRICOが3億円のシリーズA調達

オンライン肌相談・医薬品EC「「東京美肌堂クリニック」提供のLATRICOが3億円のシリーズA調達、マーケ・システム開発・採用強化オンライン医薬品EC「東京美肌堂クリニック」のシステム開発・運営、およびマーケティングを行なうLATRICO(ラトリコ)は1月26日、シリーズAラウンドとして、第三者割当増資による総額約3億円の資金調達を発表した。引受先は、コロプラネクスト、HIRAC FUND。累計調達額は約5億5000万円となった。

調達した資金は、経営基盤のさらなる強化を目指してマーケティング、システム開発および人材採用に充当。東京美肌堂クリニックの事業展開をさらに加速させる。

2020年9月設立のLATRICOは、「医療にテクノロジーのチカラを」をビジョンとし、人々の医療へのアクセシビリティの向上を目指すヘルスケア領域スタートアップ。同社ユーザー調査によると「この症状で病院に行っていいのか」と受診をためらってしまうケースや、待ち時間の長さを理由とする受診控え、クオリティにバラつきのある民間療法に高い費用をかけてしまう人は少なくないという。LATRICOはそのような背景を踏まえ、オンライン診療の普及を推進し、ユーザーには利便性とクオリティを両立したソリューションの提供を、医師には隙間時間の活用・働き方の多様化の機会を提供することで、医療インフラの有効活用への貢献を目指している。

東京美肌堂クリニックは「美容に医薬のチカラを」をコンセプトに、オンラインで肌の相談・診療と医療用医薬品・漢方薬を提供するサービス。オンライン診療とECのスキームを組み合わせることによって、医師との相談・お薬の処方を便利に利用できるという(東京総合美容医療クリニックと提携し、プラットフォーム・システムの提供、マーケティング、医薬品の発送を実施している)。肌にトラブルや悩みがあるものの、心理的・物理的なハードルの高さで美容皮膚科にアクセスしづらかったユーザーに対し、有益な情報と利便性の高いサービスを届けることを目標としている。

アップルがAirTagストーカー問題に対応、「Personal Safety User Guide」を改定

AppleのAirTagsがストーカー目的使われていることを伝える報道が最近数多くあったことを受け、米国時間1月25日同社は、現行の「Personal Safety User Guide」を改定し、近くにある未知のAirTagを発見したり、AirTagが音を発しているのに気づいた際に消費者が何をすべきかに関する新たな情報を追加した。同ガイドはAirTagのアラートの意味や、AirTagあるいはその他の「Find My(探す)」のネットワークアクセサリーが自分を追跡しているとき何をすべきかを具体的に説明している。Androidユーザー向けの説明も書かれている。

ガイドの改定を最初に見つけたのは、9to5MacAppleInsiderの両サイトだ。AppleはTechCrunchに対し、米国時間1月25日にユーザーガイドを改定し、AirTag関連の情報を追加したことを正式に認めた。

しかし、ガイド自体は新しいものではない。同じマニュアルは以前、個人の安全が脅かされていることを心配する人たちや、Apple製品を通じて何らかの方法でストーカー行為を受けたり追跡されたりする可能性を懸念する人たちに向けた情報を提供していた。総じてこのマニュアルは、以前パートナーと情報を共有していたが、今後は自分のアカウントやデータ、位置情報などを相手がアクセスできないことを確実にしたい人たちを手助けすることが主な目的だった。

しかしAirTagの場合、ストーカーに発つながるのはパートナーによる虐待行為に限らない。たとえばThe New York Times(ニューヨーク・タイムズ紙)のある記事は、自動車泥棒が盗もうとしている高価な車の位置を突き止めるためにAirTagデバイスを使う様子を報じている。他にも、地元のスポーツジムなどの公共施設を離れたあと、AirTagに追跡されていることを示すアラートを受けたと言っている人がいた。ティーンエージャーの子どもを追跡するために本人に伝えることなくAirTagを使う親もいると記事は伝えている。

Appleは、紛失物トラッカー業界の中で、近くにある未知のBluetooth追跡デバイスに関する事前警告を実装した最初の主要テック企業であることから、こうしたストーカー状況が白日に晒らされることになった。NYTが指摘するように、研究者の中には、AppleのAirTagは、テクノロジー由来のストーカー問題を必ずしも生み出していないと主張する人もいる。むしろ、AirTag固有のアラート・システムによって、すでにまん延していた問題が暴露されたとも考えられる。しかしAppleにとって不幸なことに、ユーザーの安全とプライバシーに焦点を当てていることを会社として強く宣伝してきたことから、状況は対外的責任問題になっている。

AirTagストーカー問題について、何人ものApple広報担当者が声明を発表しているが、新しいガイドは本件に関するより公式な書類だと考えられる。

同ガイドはユーザーに対し、どんな時にアラートを受けるのか、なぜAirTagが音を鳴らすのが聞こえることがあるのか、新しいAndroid用Tracker Detect(トラッカー検出)アプリをどうやって使うかなどを説明している。中でも重要なのは、未知のAirTagに追跡された時にどうすればよいか、見つけられないときに音を鳴らす方法などが書かれたAppleのサポートページが紹介されていることだ。

関連記事:アップル、正体不明のAirTagを発見するAndroidアプリ「Tracker Detect」をリリース

今回の改定にともない、ユーザーガイドはPDFではなく検索可能なウェブサイトで公開されている。これによってGoogle(グーグル)などの検索エンジンによるコンテンツのインデック化が改善され、検索クエリにもとづいてユーザーが目的のページに到達しやすくなる。また、新しい個人の安全に関する文書やガイダンスが発行された際のガイド改定も容易になる。

AirTag情報以外にも、改定されたガイドには、当初発行された時にはなかったAppleの新しい機能に関する情報が入っている。AppleのApp Privacy Report(アプリ・プライバシー・レポート)や復旧用連絡先の設定方法などだ。他にもHome KitとHome App、プライベート・ブラウジング・モード、メッセージや電話、FaceTime、メールなどで相手をブロックする方法、不審な活動の証拠を記録するためにスクリーンショットを撮る方法、アカウント復旧用連絡先を設定する方法などを扱うセクションが追加された。

アカウントのセキュリティとプライバシーの管理に関する既存の情報と合わせることで、今回改定されたガイドは、従来バージョンよりも包括的な文書になっている。

しかし、AirTagをめぐる問題は、情報の不足や消費者が取るべき行動に関する混乱ではなく、AirTag自身が簡単にストーカー目的に使えてしまうことだ。安価で入手しやすいことに加えて、警告音の大きさは気づくのに十分なほどではなく、クルマの下やナンバープレートの裏などに仕かけられた時はなおさらだ。そして、未知のAirTagに関するアラートが発信される頻度はあまりにも少ない、とプライバシー擁護派は指摘する。

Appleは上記やその他の不満に対して、AirTagの機能を変更することによる対応はしていないが、今回のガイドの公開は、同社が少なくとも問題を認識し、消費者に何らかの情報を提供しようとしていることを示している。

画像クレジット:James D. Morgan / Contributor / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook