BMW、車載システムにAlexaを導入――音声だけでなくビジュアルも

BMWが数日中にAmazon Alexaのドライバー向けサポートを開始しようとしている。これまでBMWは、Alexaを筆頭にCortana、Google Assistantなどの音声アシスタントの導入計画について語っていたことから、このニュース自体は大きなサプライズというわけではない。しかし私は、車内でAlexaを使うとは一体どういうことなのかを実際に体験するため、ドイツ、オーストリア、アメリカ、イギリスでのオフィシャルローンチ(その他の地域でも近日中にローンチ予定)を前に、ミュンヘンへ飛んだ。

BMWでデジタル・プロダクト担当SVPを務めるDieter Mayは、今年の初めに、同社の車内デジタルアシスタントは、「カップホルダーに入ったEcho Dot」を凌駕するものでなければいけないと語っていた。つまり、デジタルアシスタントが車内での体験や車に搭載されているその他のテクノロジーと深く結びついていなければいけないということだ。先に結論を言うと、BMWは自分たちの考えをしっかりと形にできていた。それもかなりのレベルで。

おそらく私が一番衝撃を受けたのは、BMWのデジタルアシスタントとのコミュニケーションは音声インターフェースのみに留まらないという点だ。BMWはAlexaの視覚的なレスポンスにも対応するため、AmazonのAlexaチームと直接やりとりをしており、BMWのほとんどの新モデルに搭載されている、コンソール上部のタブレットのようなディスプレイを活用することで、BMWのデジタルアシスタントは単に質問の答えを読み上げるだけでなく、必要に応じて追加情報やグラフなどを表示できるようになっているのだ。そのためBMWのAlexaは、Echo DotよりもEcho Showを使っている感覚に近い(もちろんディスプレイ上で動画を見ることはできないが)。

私がデモを試したのは、Alexに対応するため特別に手を加えられたBMW X5(2015年製)で、例えば天気について尋ねたり、質問に対してウィキペディアの情報が返されたりすると、ディスプレイが自動的に起動するようになっていた。

素晴らしいのは、Alexa経由の情報にも、その他の車載システムと同じデザインが適用されているところだ。つまりAlexaが表示する天気予報は、BMW独自のConnectedDriveシステムが表示する天気予報とまったく同じ見た目をしているのだ。唯一の違いといえば、Alexaからの情報にはスクリーンの左上に「Alexa」という文字が表示されるくらいだった。

簡単に聞こえるかもしれないが、これを実現するためにBMWは相当Amazonと交渉を行ったはずだ。特にBMWのデジタルアシスタントのユニークなところである、2つ目のポイントに注目するとその意味がわかる。そのポイントとは、ユーザーが「話す」ボタンを押して質問を投げかけると(新しいモデルだとウェイクワードでもOK)、その質問がまずBMWのサーバーへと送られ、それからAmazonに送信されるという点だ。BMWは自分たちでデータをコントロールすることで、ユーザーのプライバシーを守りたいという考えから、このプロキシサーバを中間に置くことにしたのだという。そのため、Alexaからのレスポンスには、通常よりも少しだけ時間がかかるが、BMWチームはできる限りこのラグを短くできるよう努力を続けている上、デモを体験しているときは正直そこまで気にはならなかった。

担当チームによれば、彼らが最初に取りかかったのは、ユーザーのクエリを正しいサービスへと振り分ける仕組み作りだったという。すでに多くの車には、カーナビゲーションで目的地を設定するときなどのために、音声認識システムが搭載されている。しかしAlexaが搭載されると、ユーザーの「Alexa」という呼びかけに反応して、そのクエリをAlexaサーバーへとルートしなければいけない。また彼らは、いかにAlexaがBMWのシステムと深い部分で連携しているかを強調する。「私たちのシステムは、単にスマートフォンから情報をストリーミングしているわけでもなければ、周辺機器のように追加サービスとして上乗せされているわけでもない」と広報担当者は語る。

「ユーザーはBMWに期待する深いレベルでの統合を体験できる。そのために私たちは通信モジュール(SIMカードカード)をはじめとする、既存の車載システムを活用している」

Alexaのオープンなエコシステムの強みのひとつはスキルだ。もちろんすべてのスキルが車内で使うのに便利というわけではなく、中には運転中は邪魔に感じられるものもあることから、BMWのチームは車内で使えるスキルのリストを現在準備している。

BMWはAmazon以外にもMicrosoftと協業を進めており、BMWのクラウドサービスの多くはAzure上で管理されている。BMWによれば、AlexaとCortanaにはそれぞれの良さがあり、CortanaであればプロダクティビティやOffice 365との連携などがその利点なのだという。ということは近い将来、車内でAlexaとCortanaの両方できるようになるかもしれない。だからこそ、BMWは音声コマンドのルーティングの仕組みを築き、音声データを自分達でコントロールしようとしているのだろう。

さらにBMWは、ユーザーの利用状況に応じてこのデジタルアシスタントを改善していく予定だと言う。多くの機能はクラウド上で動いているため、アップデートは簡単で、チームは新機能をすばやく導入できるだろう――まるでソフトウェア企業のように。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake

ITで21世紀を代表するビールをつくる——元Tech in Asia日本編集長が創業したBest Beer Japanが1500万円調達

「ITで21世紀を代表するビールをつくる」。“ビール好き?”と書かれたTシャツを着たその男性は、創業したばかりの会社について、そう説明を始めた。彼の名はPeter Rothenberg。今年の初めまでTech in Asia日本編集長を務めていた人物だ。

Rothenberg氏が2018年5月に設立したBest Beer Japanは7月31日、エンジェルラウンドで1500万円の資金調達を実施した。調達には、家入一真氏と梶谷亮介氏が6月に設立したベンチャー投資ファンドNOW、谷家衛氏(ライフネット生命やお金のデザイン、CAMPFIREなどの創業に携わってきた)、Forbes JAPAN CEO/編集長でD4V Founder/CEOの髙野真氏が率いるMTパートナーズ、AppBroadCastを創業し、KDDIグループのmedibaへ株式譲渡した小原聖誉氏が代表を務めるStartPoint、グーグル日本法人で広告事業立ち上げに携わった小川淳氏ら、15のファンドやVC、企業、個人投資家が名を連ねる。

「直近の1年はまず、日本のクラフトビールの流通をよくすることと、20本という小ロットから注文できるオーダーメイドのクラフトビールづくりに取り組む」と話すRothenberg氏。ビールカンパニー設立にまつわる背景と「21世紀を代表するビールづくり」までの今後の構想について、彼に聞いた。

「今ここで起業しなければ5年後後悔する」

Rothenberg氏はカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の出身。学生時代に国際基督教大学の交換留学プログラムで来日したことをきっかけに、大学卒業後に再度日本へ。2010年から2012年の2年間、群馬県嬬恋村の小学校で外国語指導助手(ALT)職に就いていた。

2011年からはチャット型の英語学習サービス「Eigooo!」をスタート。2013年には法人化して翌2014年アプリをリリースした。このアプリはAppStoreでベスト新着アプリにも選ばれている。

その後、Rothenberg氏はEigooo事業を2015年に譲渡。2014年から2016年まではデジタルハリウッド大学大学院に在籍しながら、浅草で人力車の車夫としても働いていた(Rothenberg氏は車夫を体験したことで「お客さんを観察する眼、営業力が鍛えられた」と話している)。

デジタルハリウッド大学大学院を2016年に首席で卒業したRothenberg氏は、Tech in Asiaの日本編集長・コミュニティーヘッドに就任。イベントチケットの売上を50%アップするなどの実績を残した後、2018年にBest Beer Japanを創業した。

日本のビール製造業は、最近でこそ地ビール、クラフトビールブームでさまざまな小規模メーカーのビールが飲めるようになってきているが、大手5社が99%以上の量のビール系飲料を生産する寡占状態だ。Rothenberg氏がなぜ、これまでの経歴とは一見無関係に思えるビールの会社を今、日本で立ち上げたのか。率直な疑問をぶつけてみた。

Rothenberg氏は「もちろん第一にはビールが好きだということ。そして妻もビールが好きだということ」と言う。「以前起業したEigoooには、妻は興味がなかった。でもビールの事業なら、妻も応援してくれる。これはスタートアップでは大事なこと」(Rothenberg氏)。スタートアップあるあるの“妻ブロック”がビール事業なら発動しないらしい。

「そしてもうひとつ」とRothenberg氏は続けた。「日本のビールを取り巻く市場環境がこれまでになく、よい条件だからだ。今が起業するならベストタイミング。ここで起業しなければ、5年後にきっと後悔すると思った」

Rothenberg氏によれば、日本のクラフトビール市場は2010年から2015年の間に売上ベースで10.5%の成長率で「今後もっと加速すると思う」という。「今の日本の状況は米国の2004年ごろのクラフトビール市場の動向と似ている。その後の米国市場の伸びと同じ成長が米国の数年遅れで日本に来ると考えれば、2018年から2022年の5年では19.2%の成長率、売上規模では1000億円を超えるのではないか」

また「ビール類の酒税が変わることも追い風になる」とRothenberg氏は考えている。現在ビール類は麦芽の使用比率や原料により、ビール、発泡酒、第3のビールの3種類に分けられて別々の税率が適用されている。350ml缶で比較すると、ビールは77円、発泡酒は47円、第3のビールでは28円が税金だ。これが2020年から2026年にかけて、段階的にいずれも55円に一本化していくことになっている。

これまでの税制では、ビールの原料として認められていない、たとえば柑橘類のフレーバーなどが入ったフレーバードビールは“ビール”と認められなかった。そうなると職人がいくら「この味がよい」と思って作ったクラフトビールも発泡酒扱いになってしまう。一方税制のおかげで発泡酒は“安いビール”というイメージが付いている。

現状では、小ロットで材料にもこだわって利益が出るようにクラフトビールを作れば、値段はある程度高くなる。だが消費者にしてみれば「発泡酒なのに高い」と受け止められてしまう。税制が変わることで、「職人が作りたいものが作れない、という状況から解放されるはずだ」Rothenberg氏はそう話している。

最強のクラフトビールづくりは物流改革から

さて、冒頭でRothenberg氏の言葉を紹介したとおり、Best Beer Japanは「ITで21世紀を代表するビールをつくる」ビール製造所になることを目指している。もちろん立ち上げたばかりの小さなビールカンパニーが一挙にそこにたどり着くことは不可能だ。Rothenberg氏はそれを実現するためのロードマップを次のように考えている。

現時点で日本のクラフトビール製造業者は約350社ほどあるが、従業員10人未満の企業が7割、売上規模1億円未満が6割を占め、リソースが不足しているところが多い。そうした環境のもとで、Rothenberg氏はまずは「クラフトビールが売れるための仕組みが知りたい」と話す。

前述したとおりクラフトビールの売り上げは伸びているが、業界の課題として「大量生産ができないこと」「送料が高いこと」は否めない。送料の高さは発注ロットが小さく、1度に送る量が少ないことに起因する。

「クラフトビールの送料は原価の2割から3割を占める。発注側のビアバーなど飲食店にとってみれば、原価率を販売価格の3割ぐらいに抑えたいところを、送料の高さが値段を底上げして45%ぐらいの原価率になってしまう。クラフトビールの需要を上げるためには値段を下げなければいけない。そのためにはITの力を使って物流を効率よくするのが、一番早い」(Rothenberg氏)

クラフトビール物流改革の切り口としてRothenberg氏が考えているのが、樽(ケグ)の回収サービスだ。Best Beer Japanの第1弾プロダクトともなるこのサービスは、現状、個々の飲食店から各メーカーへ個別に宅配便などを使って返送しているビア樽を代わりに回収して倉庫にため、Best Beer Japanがまとめて一気にメーカーへ返却するというもの。樽回収サービスは来月にはスタートさせたい、とRothenberg氏は言う。

「樽は容器自体が1本1万円で、メーカーにとっては貴重な資源。また戻ってこなければ次の出荷もできない。でもその管理はExcelや紙ベースで行われているところがほとんど。樽回収を行いつつ、効率化を図るために管理システムを開発する。そのために回収トラックにはエンジニアにも同行してもらい、効率の悪いところを探してシステム化していくつもりだ」(Rothenberg氏)

飲食店から樽を返却してもらうには報奨も必要だが、Rothenberg氏は「物流を効率化することで報奨も出せるようになる」と考えている。

酒販免許の関係から、最初はメーカーへ返却する空の樽の回収からスタートするが、その後はメーカーから飲食店への配送も検討。また、メーカーにとって大きな出費となる樽容器をシェアできるサービスにもつなげていく考えだという。「現行でも樽は特にブランドごとにカスタマイズされているわけではない。それなら同じ樽でもかまわないのではないか」ということらしい。

また、ウェブアプリから苦味やホップの量などをカスタマイズして、自分だけのビールを作れるサービスも、プロトタイプを9月末までに始めたいとRothenberg氏は言う。このサービスは、20本単位の小ロットでオーダーメイドビールが注文できるというもの。当初は、小さなクラフトビールメーカーで稼働していない空きタンクを借りて醸造を行う予定だそうだ。

 

樽回収サービスとオーダーメイドビールサービスの提供を通じて、Rothenberg氏は「売れるビール」を知るためのデータを集めたいと考えている。

Rothenberg氏は、クラフトビール市場の伸びにより「ビール関連のインフラ事業も一緒に伸びる」と考えている。

クラフトビール製造業はリソース不足、と先にも述べたが、レストラン向け販路は大手メーカーの協賛の競争が激しい分野。体力のないメーカーでもサーバーや備品などの提供に付き合えなければ、銘柄を切り替えてもらえないという悩みがある。

東京商工リサーチの調査によれば、そうした中、地ビールメーカーの間では「今後伸びが見込まれる販売先」としてネット通販も期待されているらしい。そうした意識の変化に伴い、「もう少しIT化したほうがよいのではないかと、各メーカーが思い始めている」とRothenberg氏は話す。そこを見据えて「ビールのサブスクリプションサービスも試したい」というのがRothenberg氏の次のプランだ。

「ZOZOTOWNのクラフトビール版」と彼は表現したけれども、物流、オーダーメイドビール、サブスクリプションサービスの提供を通じて「実際にどんなビールをみんなが飲んでいるのか」「実はどんなビールが飲みたいのか」、データを蓄積して、データをもとに最強のビールを開発する、というのがRothenberg氏のもくろみである。

ビールで自分だけの人生を生きる人を応援したい

国内でブランドを確立した後は海外展開も視野に入れ、最後は「工場から流通まで、ビール製造を完全に自動化する」ことまで検討しているRothenberg氏。すべての構想を実現するには20年かかると見込んでいる。

「通常スタートアップには、10年以内にエグジットか株式上場を目指すことが求められる。今回の資金調達では、この20年戦略に賛同してくれた株主に参加してもらえた」(Rothenberg氏)

イギリスで急成長している(かつ個性的な味とかなりやんちゃなブランディングで有名な)クラフトビール会社のBrewdogは創業10年で年平均68.44%(直近7年)のROIを出している。Rothenberg氏は「Brewdogのように成長するにはどうすればいいのか? そう考えたときに、経営に強い株主も欲しかった」と明かした。

2度目の起業となるRothenberg氏。「スタートアップには、やはりつらさはある」と述べ、「起業からの経緯も、できるだけ透明化して見せたい。そうすることが、ほかの起業家や起業したい人にも力になれば」とも語っている。

「『これもビールなのか!?』という体験を広めたい。自分だけに合うビールを見つけてもらいたい。それは『こういう生き方もあるんだ』ということにつながる。人生を自分で切り開いた、野茂英雄投手やイーロン・マスク、初めて月に降り立ったニール・アームストロング船長のような、自分だけの人生をつくる人を応援したい。そのためにはビールは最強のツールだ」(Rothenberg氏)

写真左から:Best Beer Japn CEOのPeter Rothenberg氏、共同創業者でChief Beer OfficerのEldad Bribrom(Dede)氏

これが9月に発表されるiPhoneの外観らしい

この週末、次世代iPhoneの写真がいくつかリークされた。9月にAppleが発表するiPhoneの外観を予測するには絶好の素材だ。もちろんリーク写真のiPhoneは本物ではなく、ダミーだろう。

毎回、何社かのメーカーが次世代iPhoneと外観がそっくりのダミーケースを作る。こうしたダミーケースは本物のリーク情報に基づいて製造され、Appleの発表に先んじて製品を用意したいケースその他のアクセサリー・メーカーが購入している。

Ben Geskinが共有した写真には大型のiPhone Xと新しいiPhoneの2種類が写っている。新iPhoneはXに似ているがカメラのレンズが1つしかない。こうした点は、これまでわれわれがつかんでいた情報に合致する。

ご覧のとおり、大型のデバイスは現行iPhone Xそっくりだが、さらに大きい。これは6.5インチのiPhone Xの第2世代モデルX Plusだ。背面にあカメラが2台内蔵され、ディスプレイのトップにはおなじみの切り欠きがある。

噂によれば、第2世代のX Plusは定価999ドルだという。つまり現行iPhone Xと同価格だ。 Appleは5.8インチ版のXは現在よりさらに改良された上で価格が899ドルに引き下げられるかもしれない。

では下の写真の中央に写っているのが6.1インチiPhoneがカラフルモデルになるらしい。

Appleではもう少し手頃な価格のiPhone(切り欠きのあるモデル)を700ドルで販売するようだ。第2世代のiPhone X、iPhone X Plusとは異なり、こちらの新iPhoneのベゼルはやや幅が広く、ディスプレイはLCDだ。OLEDの製造コストは依然としてLCDより相当に高いので全モデルをOLED化するのは困難だ。

新iPhoneの背面カメラは1台で、ベゼルはステンレスではなくアルミが用いられる。Dimitri12がSlashleaksにアップした写真に写っているのはGeskinのダミーと同じもののようだ。

著名なApple製品アナリスト、Ming-Chi Kuo(郭明錤)の情報によれば、安価な方のモデルはグレー、ホワイト、ブルー、レッド、オレンジと豊富なカラーバリエーションになるという。第2世代iPhone X、X Plusはブラック、ホワイト、ゴールドの3色だ。

Appleが新しいiPhoneのラインナップを発表するのは9月の上旬になるはずだ。これらの写真と全く同じものになるとは限らない。その点多少割引して見る必要がある。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

LINE Pay専用の決済デバイス発表、「決済手数料ゼロ」は対象外

eng-logo-2015LINE Payが独自開発の決済端末を発表しました。

3Gネットワーク対応のSIMスロット&7000mAhバッテリーを内蔵し、レジに置くだけで決済機能を利用可能。中小店舗向けに年内に申込受付を開始します。

決済方式はQRコードに対応。紙などにQRコードを印刷せずに利用できる点を売りにします。なお、NFCにも対応しますが、リリース当初はNFC決済には非対応としています。

まず日本と台湾でリリースし、その後グローバルでも展開予定。LINE Pay以外のスマホ決済には非対応となります。

なお「LINE Pay店舗用アプリ」とは異なり、8月1日から3年間提供する「加盟店手数料ゼロ」のキャンペーンは対象外。決済ごとに3.45%の決済手数料がかかるとしています。

Engadget 日本版からの転載

JapanTaxiがNTTドコモから約22億円調達、提携タクシーでd払いが可能に

日本交通のグループ会社で、タクシー配車アプリの「全国タクシー」などを提供するJapanTaxiは7月30日、NTTドコモとの資本業務提携を締結したと発表した。これにより、NTTドコモからJapanTaxiへの出資総額は22億5000万円だ。

全国タクシーのダウンロード数は現時点で500万件。車両登録数は日本全体のタクシー車両の4分の1にあたる6万台以上だという。JapanTaxiはこの全国タクシーのほかにも、QRコードによる決済機能がついたデジタルサイネージ「Tokyo Prime」を展開中だ(Tokyo Primeについてはこちらの記事も参考にしていただきたい)。今回の資本業務提携により、NTTドコモの「d払い」など新しい決算手段が追加される予定。

QR決済機能付きデジタルサイネージの「Tokyo Prime」

また、両社は共同で、数時間後にある特定のエリアにいる人の数を予測する「近未来人数予測」などのNTTドコモの技術と、JapanTaxiが展開する配車プラットフォーム、広告プラットフォームを組み合わせた新サービスの開発も目指す。

JapanTaxiは今回の資金調達以前にも、2018年2月にトヨタから約75億円を、そして未来創生ファンドから10億5000万円を調達している。同社とNTTドコモはこれまでにも、全国タクシーとNTTドコモのAIエージェントサービス「my daiz」の連携を行うなどしていたが、その連携をさらに深めるために今回の資本業務提携の締結が決定されたようだ。

食材を収穫前に“青田買い”できる「OWNERS」、良いものを作る人が報われるあるべき農業のかたち

食材を買い物をするとき、「このお店の野菜はおいしい」とお店を選ぶことはあっても、「この人が作った野菜はおいしい」と特定の生産者を理由に食材を選ぶことはほとんどない。店頭に並んでしまえば、トマトはすべてただのトマトになってしまうけれど、もちろんその1つ1つに生みの親はいる。それを思い出させてくれるのが、2017年9月に設立されたスタートアップのukka(ウッカ)だ。

ukkaが提供する食材のオーナー制度プラットフォーム「OWNERS(オーナーズ)」は、収穫量が少ないなど、一般の流通で出回ることが少ない希少な食材を、作る前の段階から文字通り“青田買い”できるサービスだ。

ユーザーは農産物を栽培する数ヶ月前からその“オーナー”として予約注文をすることができ、収穫された農産物はユーザーの自宅まで直接届けられる。栽培中に生産者とコミュニケーションが取れるのも特徴の1つだ。生産者は、事前予約制のOWNERSを利用することで生産管理もしやすく、食べてくれる人の顔が見れることで栽培のモチベーションも上がる。

たとえ生産者が美味しいと思っても、ある程度のロットが確保できない希少な農産物は既存の流通市場に乗りづらく、生産に着手するのはリスクとなる。事前予約制という仕組みを利用することで、そういった農産物でも気兼ねなく生産に着手できるのがOWNERSの良さだ。

消費者に直接販売できることから、価格決定権を中間の流通業者から生産者の手に移行することもできる。また、これまでは栽培という初期投資を経て、収穫してはじめて収入を得るというキャッシュフローだったが、栽培の前に収入を得られるOWNERSではキャッシュフローが改善するというメリットもある。

ukkaの共同創業者であり、米農家を営む家庭で育った小林俊仁氏は、「農業には若い就農者がいないという課題がある。本当に良いものを作っている人には、その人がどこにいてもファンができるような仕組みが必要だと思った」とOWNERS設立の経緯について語る。

小林氏はオンラインゲーム「剣と魔法のログレス」などを展開するAmingでCTOを務めていた人物だ。「自分がこれまで培ってきたプロダクトマネジメントなどノウハウを、社会的に意義のあるところに使いたい」との想いから、共同創業者の谷川佳氏とともに農業領域での起業を決めた。

そのukkaは本日、OWNERSのリニューアルを発表。これまでは“事前予約制の食材EC”という域を出なかったOWNERSだが、このリニューアルにより、栽培中の様子をオーナーたちに伝える「手づくり日誌」や、逆にオーナーから生産者に感謝の言葉を伝える「ごちそうさまコメント」などの機能が追加され、よりコミュニケーションを重視したプラットフォームに進化した。

過去にTechCrunch Japanで紹介した「SPOTSALE」や「fanicon」のように、企業や個人と、彼らに共感するファンとの間でつくるコミュニティサービスが増えてきている。「誠実に美味しいものを作っている人が報われる」世界をつくるというukkaのメッセージからも分かるように、OWNERSが目指すのも、より美味しい農作物をつくることに心血をそそぐ生産物と、それを心待ちにするファンとの間でつくるコミュニケーションサービスだ。今回のリニューアルで、ukkaはその実現に一歩近づいたと言えるだろう。

株取引をゼロから変える——調達資金60億円をスマートプラスへ投資するFinatextの構想

FinTechスタートアップのFinatext(フィナテキスト)は7月30日、総額60億円の資金調達実施を発表した。第三者割当の引受先はKDDI、ジャフコ、未来創生ファンド。また、同時にFinatextでは、KDDIとの業務提携についても明らかにしている。

2013年12月設立、創業5年のFinatextは、金融サービス提供、ビッグデータ解析、証券サービス提供を3柱に、「金融を“サービス”として再発明する」というビジョンを掲げる。

今回の調達について、今朝の速報に続き、Finatext代表取締役CEOの林良太氏と取締役CFOの伊藤祐一郎氏への取材で詳しい話を聞けたので、お伝えしたい。

ユーザー視点サービスで金融の変革を目指す

今回の資金調達のリードインベスターはKDDI。持分法は適用されないが、60億円の出資の大半をKDDIが引き受けるという。創業5年以内の独立した企業としては、Prefered Networksに次ぐ規模の評価額となるのではないかと推測される。

その調達資金は、今年1月に証券業参入を発表した子会社スマートプラスへの投資に充てるという。

スマートプラスが提供する株取引アプリ「STREAM」は、コミュニティ機能と株取引機能がひとつになったプロダクト。4月にSNS機能限定版をローンチし、7月18日から現物取引サービスをスタートした。

STREAMは“従来型”の株式委託手数料が無料、というかなり振り切ったサービスだ。従来型は無料、というからには新方式の取引もある。東京証券取引所(東証)の立会外取引で、東証の株価気配値よりも有利に約定できた場合に、気配値と実際の約定価格の差額の50%を手数料とする「SMART取引」だ。つまり「お得に取引できた分だけ、手数料を払えばいい」という仕組みである。

林氏は「近年、FinTechスタートアップ各社は、これまで投資をしなかった層の人たちにアプローチしてさまざまなサービスを提供してきている。だが、各社の打ち出すサービスは手数料が高い」と話す。

「ある意味、投資したことがない人に高い手数料でサービスを提供するのは、よいのだろうかと。今まで投資しなかった人たちにこそ、障壁を下げて、より安いフィーでサービスを提供しようと、他社よりもう一歩踏み込んだ取り組みが、STREAMだ」(林氏)

ユーザーに寄り添う、という観点から、よりよいUI/UXやコミュニティ機能、加えて手数料0円という施策を打ち出すスマートプラス。その「ユーザーに寄り添う」発想は、そもそも金融サービスの参入障壁の高さから来る、ユーザーの利便性をないがしろにしてきた状況から生まれたと伊藤氏は説明する。

金融業界の近年の動向としては、ベンチャーによるテーマを絞ったニッチなサービス(ロボアドバイザーやテーマ投資など)への進出と、既にほかの顧客基盤を持つ非金融会社(LINEやNTTドコモなど)による参入の2つが挙げられる。「共通するのはユーザーを起点としたサービス設計と、データとテクノロジーの活用だ」と伊藤氏は言う。

「規制への対応やインフラに多額の費用がかかることから、これまでの金融サービスは、ユーザーが接する画面やサービスを高めることができずにいた。Finatextでは、モバイルサービスの設計力とグループ会社のナウキャストが持つビッグデータ解析技術などのテクノロジーを生かして、サービスをユーザー目線から見直す。それを『金融を“サービス”として再発明する』という言葉で表現している」(伊藤氏)

日本の株取引をゼロから変えたい、と話す林氏と伊藤氏。米国で先行する手数料0円の株取引アプリ「Robinhood」を引き合いに、今後のSTREAMの展開について、こう説明する。

「Robinhoodにはコミュニティ機能はなく、投資が初めての人でも使いやすいシンプルさがウリだが、非常にうまくいっている。5年弱で400万以上の口座数を獲得しているが、これは米国No.1のネット証券e-tradeと同水準。評価額も約6000億円と成長している。STREAMはコミュニティ型という違いはあるが、これから5年以内にミレニアル世代で市場シェアNo.1の地位を確立したい」(伊藤氏)

またKDDIとの提携については、スマートプラスだけでなく、グループ全体で取り組んでいく予定だ、と林氏は述べている。「Finatextグループの持つ、UI/UXデザインとサービス構築力、データ解析力と、KDDIグループが提供する幅広い金融サービスラインアップ、顧客基盤やデータとを活用することで、ユーザーへの新しい情報・サービス提供を共同で行っていく」(林氏)

ブラウザーメーカーのOperaがNASDAQで取引開始

Operaが上場企業になった。ノルウェー拠点の同社は1株当り12ドルでIPOを実施した。取引は1株当り14.34ドル、19.5%高で始まった。同社はこのIPOで1.15億ドルを調達した。

Opera Ltd.は、今月米国で上場申請した。現在同社はNASDAQでティッカーシンボルOPRAで取引されている。

読者がこの記事を読むために使っているのは、パソコンかAndroidならGoogle Chrome、iPhoneならSafariであいる可能性が高い。Operaの市場シェアはライバルと比べるとごくわずかだ。しかし、それでも売上が立つほどこの市場は巨大なのである。

F-1書類の中で同社は、2017年の売上が1.289億ドル、純利益が610万ドルだったと報告している。

Operaを巡る会社の歴史は少々複雑だ。数年前、Operaの株主らは中国企業のコンソーシアムにブラウザー事業を 売却した。アドテック事業はOtelloという別会社を作って運営している。

今回上場したOpera Ltd.には、いくつかの製品がある—— デスクトップ・ブラウザー、複数のモバイル・ブラウザーおよび、スタンドアロンのOpera Newsアプリ。全体では、毎月1.82億人がOpera製品を少なくとも1つ使っている。

Operaにとって主要な課題は、売上の大部分が2つの検索エンジン契約——GoogleおよびYandex——から成っていることだ。この2社はOpera製品のデフォルト検索エンジンになることに対して費用を支払っている。Yandexはロシアでのデフォルト、Googleはそれ以外の国々のデフォルトになっている。

同社は広告およびライセンシング契約によっても収益をあげている。Operaを初めてインストールすると、ブラウザーにはeBayやBooking.comなど、デフォルトで様々なサイトが登録されている。これらの企業はOperaに料金を支払っている。

Operaは今後、できるだけ多くのユーザーを集めてIT巨人らに対して意味のある存在であり続ける必要がある。Operaのビジネスモデルは、ユーザー基盤と直接相関している。Operaを使う人が増えれば、会社がGoogleやYandexや広告パートナーから手に入れる金額が増える。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Tesla、今度のブランド商品は1500ドルの…サーフボード

Teslaがブランド製品を出すのは珍しくない。カンパニー・ハット、Tシャツ、マグを作った。子供用のミニチュアTeslaやTesla車を充電するスーパーチャージャーを形どったUSB充電器といったイロモノもある。

そして、今度はサーフボード?

Teslaブランドのサーフボードは、ウェブサイトで1500ドルで販売されている(アップデート:今は売り切れ)。

税抜き価格1500ドルは、サーフボードとしてハイエンドの部類に入る。JSやRipcurlといった会社の一級品でも750ドル程度で入手できる。Lost(今回Teslaがコラボしているメーカー)のほとんどの製品が700~800ドル程度だ。しかし、限定200個というこの商品なら売り切れても不思議はない。私の予想では、壁に飾られるか、ルーフキャリアーの永久アクセサリーになることはあっても海で波を切ることはなさそうだ。

興味のあるサーファーのために書いておくと、Lost社の別の “Black Dart”モデルによると、ボードの長さは6フィート8インチ。フィンはついていない。200枚のボードは2~10週間で出荷されるとページには書いてある。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ソフトバンク傘下のARMが米データ分析企業Treasure Dataを6億ドルで買収か

7月30日、ソフトバンクグループ傘下のコンピュータチップ設計企業ARM Holdingsが米国のデータ分析企業Treasure Data(英語サイト。日本のサイトはこちら)を買収することに合意したとBloombergが報じた(英語)。記事によれば、買収金額は約6億ドル(約666億円)。関係者の情報によるもので、ARMおよびTreasure Dataは正式なコメントを発表していない。

Treasure Dataはカリフォルニア州マウンテンビューに本拠を置く、ビッグデータ分析企業。2011年にシリコンバレーでCEO兼共同創業者の芳川裕誠氏らにより設立された。購買履歴やIoTセンサーからの情報分析を行うSaaSプロダクトを提供。自動車、小売、IoT、エンターテインメントなどの業界で利用されている。

ソフトバンクは2016年7月にARM買収の意向を表明し、同年9月に240億ポンド(表明当時のレートで310億ドル)で買収を完了している。今回の買収はARMのIoT分野進出への一環として行われるものとみられている。

スター・ウォーズ/エピソード9に、レイア役キャリー・フィッシャーが未公開シーンを使って登場

〈最後のジェダイ」をまだ見ていない人にはネタバレ注意〉なのだが、現時点でまだ見ていない人が、次回作のキャスティング発表を読むことなどあるのだろうか。

スターウォーズの世界では誰も本当に死ぬことはない。Star Wars: Episode IXの公式キャスティング・リストが発表になり、そこには親しみのある魅力的な名前が並んでいる。待望のランド役として戻ってきたビリー・ディー・ウィリアムズと並んで、キャリー・フィッシャーの名前も載っている。

もちろんフィッシャーは残念ながら2016年に亡くなっているが、レイア・オーガナ姫は帰ってくる。CGを使ってキャラクターを再現するのではなく、監督・共同脚本家のJ・J・エイブラムスは「フォースの覚醒」の未使用シーンを再利用するつもりだ。

「キャリー・フィッシャーが大好きで仕方がなかった」とエイブラムスが発表のプレスリリースで言った。「スカイウォーカー物語の真に満足の行く結末を見つけるために彼女を欠かすことはできなかった。代役を立てたりCGを使うことは一切考えなたった。娘さん[ビリー・ロード]の協力と賛同を得たことで、キャリーと一緒に撮ったエピソード7の未使用フィルムをエピソード9で使ってキャリーのレイア姫としての遺産と役柄の栄誉を称えることができる」

「ローグ・ワン」では若きレイアをイングヴィルド・デイラとILMの古い技術を少々使って再現するという、少々不気味の谷的なアプローチをとった。

マーク・ハミルも戻ってくる。しかし「最後のジェダイ」で彼に何が起きたかを踏まえると、彼がゴーストとして登場するのかどうかはなんとも言えない。確かなことを知るためには2019年12月が来るまで待つほかはない。

ほかにも、デイジー・リドリー、アダム・ドライバー、ジョン・ボイエガ、オスカー・アイザック、ルピタ・ニョンゴ、ドーナル・グリーソン、ケリー・マリー・トラン、ヨーナス・スオタモらが帰ってくる。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

証券ビジネスをプラットフォーム化するFinatextがKDDIなどから60億円を調達

金融サービス開発やビッグデータ解析、証券サービス提供を行うFinTechスタートアップのFinatextが7月30日、KDDIジャフコ未来創生ファンドを引受先とした総額60億円の資金調達を実施したことが明らかになった。

Finatextは今年1月に子会社スマートプラスを通して証券業に参入することを発表。委託手数料0円のコミュニティ型株取引アプリ「STREAM」を提供している。またブローカレッジ、証券取引の執行機能をプラットフォーム化する「BaaS(Brokerage as a Service)」という考え方に基づき、証券ビジネスを効率化し、多様な証券サービスを低コスト・短期間で構築できる環境を展開している。

今回調達した資金はスマートプラスの財務基盤強化に充てられる。顧客のニーズに合わせたさまざまな証券サービスを提携パートナーと協力して提供し、5年以内に「ミレニアル世代向け証券会社No.1」となることを目指すという。

またFinatextは増資を機にKDDIと業務提携契約も締結。Finatextの持つUI/UXデザインやサービス構築力を生かし、「au WALLET」をはじめとしたKDDIグループ企業の金融・決済分野を中心に、スマートフォンアプリを通じてユーザーごとにあったライフデザイン提案を行う予定だ。

また、KDDIが持つ3900万人超の顧客基盤や豊富なデータ、KDDI子会社ARISE analyticsが持つデータ利活用ノウハウと、FinatextのAI/ビッグデータ解析技術を掛け合わせ、FinTech領域で新たな事業を生み出すことも検討していくという。

Finatextは2013年12月創業。2017年5月にジャフコから14億2500万円の資金調達を実施している。

同社は株式市場の予想アプリ「あすかぶ!」や仮想通貨を使ったFXの予想アプリ「かるFX」といったコンシューマー向けの投資アプリを手がけてきた。また、2016年4月からは日本アイ・ビー・エムと共同でロボアドバイザーのエンジンを金融機関に提供するビジネスも行う。

2016年8月にはナウキャストを買収し、機関投資家向けビッグデータ解析サービスを展開。2018年から子会社スマートプラスで証券業、証券ビジネスプラットフォーム事業を行っている。

TechCrunch Japanでは今回の資金調達について、Finatext代表取締役の林良太氏に取材を行い、調達の意図や今後の事業展開などについて詳しい話を聞く予定だ。

SoftBankの投資戦略を検討する――WeWorkへの5億ドルもテーマの一つに過ぎない

〔この記事はJason Rowleyの執筆〕

今週、WeWorkは中国における子会社、WeWork ChinaがSoftBankTemasek Holdings他から5億ドルの追加投資を得たことを発表した。これにより中国法人の価値は1年前の10億ドル(投資後会社評価額)から50億ドルにアップした。WeWork Chinaは前回の投資ラウンドをほぼ1年前、2017年の7月に発表している

SoftBankが同一会社に複数回投資することはめったにない。この記事の執筆時点で、Crunchbaseのデータによれば、SoftBank自身は144社に175回の投資を行っている。このうち、2回以上SoftBankから投資を受けた会社は23社だ。 このうちWeWorkは、中国法人も加えて、合計4回の投資を受けており、SoftBankの投資として最多となっている。

こうした実績から判断すると、SoftBankの戦略は各ビジネス分野におけるトップ企業に投資することのようだ。株式の持ち分として会社評価額の何パーセントにあたるのか外部から判断しにくい場合もあるが、SoftBankからの投資は各企業における最大の投資であることが多い。

たとえばWeWorkの場合を見てみよう。WeWork本体と現地法人、WeWork China、WeWork Indiaなどを含め、SoftBankの投資は単独出資であるか、投資ラウンドをリードしているかだ。また投資シンジケートの一員である場合もその中で最大級の金額を出資している。

特に市場拡大のチャンスが大きい分野の場合、SoftBankはその地域でリーダーの会社に投資することが多い。 なるほど世界征服というのは難しい企てだが、SoftBankは非常に巨大なので、ある事業分野について各地域のトップ企業の相当部分を所有することができる。結果としてSoftBankがその分野の世界のシェアのトップを握るチャンスが生まれる。

これは大胆な戦略だ。リスクも大きいし、巨額の資金を必要とする。しかしSoftBankは多くの急成長市場で最大の金額をコミットする投資家となっている。

不動産は投資テーマの一つに過ぎない

WeWorkはSoftBankの不動産投資の一例だが、下に掲げた表に同社の不動産、建設関係の投資の代表的なものをまとめてある。 順位はSoftBank(単独の場合、シンジケートの一員の場合双方を含む)の投資額だ。また関与したラウンド中に占めるSoftBankの投資額の比率も掲げておいた。

しかし、成長中の大型市場で成功を収めているトップ・スタートアップに巨額の投資を行うというSoftBankの戦略は不動産分野に限られない。オンライン・コマース、ロジスティクス、保険、ヘルスケア、そして大きな注目を集めたところではライドシェアとオンデマンド交通機関にもSoftBankは大型投資を行っている。

また人工知能スタートアップ分野で大きなポートフォリオを持っていることも見逃せない。SoftBankはNvidiaImprobableBrain CorporationPentuumなどに投資している。またMapboxCruise Automationに投資していることはSoftBank自身の自動運転車プロジェクト、SB Driveにも有利だろう。

SoftBankは古いものもすべてリニューアルしていく戦略の一例だ。 1990年代後半、SoftBankとファウンダーの孫正義はすでにテクノロジー分野で最大の投資家の一人だった。当時も現在同様、孫正義はSoftBankのポートフォリオをいわばバーチャル・シリコンバレー化しようとしていた。つまり投資先企業同士が協力することによってビジネス上のシナジー生むプラットフォームの構築だ。投資テーマを絞り込むSoftBankの戦略を見ると、今日、こうした大胆で愛他的な構想が実現する可能性は十分にある。しかし孫正義はテクノロジー投資の第1ラウンドではドットコム・バブルの崩壊で多額の損失を被ったことが知られている。第2ラウンドでSoftBankが成功するかどうかは今後に待たねばならないだろう。

画像:Ufuk ZIVANA / Shutterstock

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

iPhoneやiPad、Apple Watchを医療現場で活用ーーOchsner Health Systemが目指す“ヘルスケア変革”

国際モダンホスピタルショウで公演を行うOchsner Health SystemのRichard Milani氏

医療機関が抱える数々の問題をAppleのiOSデバイスなどを連携しアプリを導入することで解決へと導く。それがOchsner Health System(オシュナー・ヘルスシステム)のRichard Milani氏が抱えるミッションだ。

Ochsnerは、30の病院、プライマリケアを含む80を超えるクリニックからなり、急性期および慢性期医療を提供するアメリカ南部沿岸地域で最大規模の非営利大学医療センター。Milani氏はドクターでありながら、病院経営を改革すべくChief Clinical Transformation Officerとして病院の改革に注力する。現場にiPhoneやiPad、Apple Watchを導入し、医療のIoT化でヘルスケアの変革を推進している。

そのMilani氏が7月12日、東京ビッグサイトで開催された「国際モダンホスピタルショウ」にて「iPhoneやiPad、Apple Watchを活用したヘルスケア変革の実現」と題された国内初の特別公演を行った。

その公演の一部をTechCrunch Japanの読者にも共有したい。

Milani氏の話だと、医師は1日に平均にして約2300メートル、病院内を歩くのだという。「患者の情報を得る必要がある度に固定のワークステーションに立ち寄る手間を想像してみてほしい」と同氏は話した。病院は果てしなく広く、部屋数も膨大だ。施設内を移動中、どこでも必要な情報を得られることは医師や看護師だけでなく、もちろん誰よりも患者にとって大きなメリットとなるだろう。

Ochsnerでは現在、医師や看護師はiPhoneやiPadを操作することで患者のカルテやヘルスケア関連のデータを閲覧し、緊急時などにはApple Watchで通知を受け取っている。

Epic Systemsのアプリ「Haiku」を使い、勤務前に、前夜に入院した新しい患者の情報、担当患者の状況について確認。院内では「Canto」アプリを使い、カルテや検査結果、ラボからの報告、バイタルサイン、トレンドレポートなどの確認を行っている。こうすることで、医療機器を操作したり、紙のカルテをチェックしたり、などの手間を省くことに成功している。

また、患者は入院時にiPadを渡され、「MyChart Bedside」アプリを使うことで検査結果や服用中の薬、担当ケアチーム、スケジュールなどを確認することができる。医師や看護師の顔を覚えることが簡単になり、メッセージを送ったりすることで従来以上に密なコミュニケーションを図ることも可能だ。

日本でもOchsnerと同様の取り組みは実際に行われてる。例えば、新百合ヶ丘総合病院では2017年11月20日より、同院いわく「国内初」の試みとしてApple Watchを本格導入した。2014年8月電波環境協議会が出した「医療機関における携帯電話等の使用に関する指針」により、院内における携帯電話の利用が事実上解禁され、デバイスを医療・看護の現場で活用しようとする動きが高まった、と同院は言う。

Oschsnerの技術的革新はiOSデバイスやアプリの導入だけにとどまらない。2018年2月18日に発表しているとおり、EpicとMicrosoft AzureのAIとクラウドの技術を使い、急な心停止や呼吸停止、敗血症などを事前に察知する取り組みを開始している。これはカルテや検査・診断結果などの電子化によって成し得たと言っていいだろう。

AIは全ての患者のトータルで10億にもおよぶ医療情報を網羅し、次の4時間以内に起こり得る急な病状の悪化を察知するのだという。その短い時間内に対応するため、Ochsnerでは特別な医療チームが編成されている。チームのメンバーはApple Watchを身につけており、通知を受け取ることで急な対応を行うことが可能だ。「これがデジタルトランスフォーメーションの成果だ」とMilani氏は語る。「患者のケアを人類が今まで成しえなかった形で行うことができる」(Milani氏)

慢性疾患の退院後のモニタリングにもAppleデバイスはその力を発揮する。Milani氏は退院後、多くの患者が必要な服薬をしないのだという。だがHealthKitとEpicアプリ導入済みのApple Watchは患者に服薬のリマインドを通知。血圧や心拍数を計測してモニタリング目的のためクリニックにその情報を送信する。

続けて、OchsnerがなぜAndroidでなくAppleのiOSデバイスなどを採用しているのかを説明したい。何故ならその理由が単に「林檎のマークが格好いいから」というだけではないからだ。公演後、Milani氏はその理由を別室でのグループ・インタビューで詳しく解説してくれた。

インタビューに応じるMilani氏

Milani氏はAppleのデバイスは「操作が簡単・セキュリティーが高い・ハッキングが難しい」と公演中繰り返していた。それとは別に、「Android端末は作っている会社も機種数も多い」という点も、Appleのデバイスに限定している理由なのだという。グループ・インタビューに同席したAppleのWorldwide Healthcare Markets担当者Afshad Mistri氏は「Androidと聞くと1つの大きなファミリーに思えるかもしれない」と話し、だが実際には14000以上のAndroid端末が存在する、と説明。各Android用にインターフェイスを作るとコストが嵩んでしまうとMilani氏は語った。

Ochsnerが行なっているiPhoneやiPad、Apple Watchの導入による医療現場のIoT化は医師や看護師の負担を軽減しているだけでなく、患者のとのコミュニケーションや急な病状変化への対応、退院後のフォローアップにも大いに役立っている。日本でも今後、医療現場のイノベーションがさらに加速することを期待したい。

「WOVN.io」がスマホアプリ対応版の多言語化ツール「WOVN.app」提供開始

ウェブサイトの多言語化をたった1行のコード追加で実現するツール、それが「WOVN.io(ウォーブンドットアイオー)」だ。サービスを運営するWovn Technologies(旧ミニマル・テクノロジーズ)は7月30日、スマホアプリに対応した多言語化ツール「WOVN.app(ウォーブンドットアップ)」のベータ版提供を開始した。

Wovn.ioについてはTechCrunch Japanでも何度か紹介してきた。2014年秋に開催したTechCrunch Tokyo 2014 スタートアップバトルでは、PayPal賞、マイクロソフト賞を獲得。既存の1言語のサイトがあれば、簡単に多言語化できる点が特徴だ。言語ごとにページを用意したり別サーバを立てる必要はない。

Wovn.ioでは、翻訳したいページのURLを管理画面に入力すると、翻訳すべきテキストが抽出され、リストアップされる。テキストは機械翻訳で一括して翻訳することが可能。またリストの1つ1つを任意で訳すこともできるので、誤訳を修正することや、固有名詞や意訳など独自の翻訳コンテンツを用意することもできる。サイト内で共通して頻出する用語は用語集に登録することで、同じ言葉に翻訳してくれる。

対応する言語は約30言語。翻訳先の言葉が分からず自分で校正できない場合は、管理画面からプロの翻訳者に直接翻訳を依頼することができる。1語5円、通常24時間から48時間で翻訳が可能だそうだ。

翻訳が完了したら保存・公開を行って、サイトとWOVN.ioを連携させる。サイトとWOVN.ioとの連携は、1行のコードをHTMLに追加するだけ。JavaScriptのコードスニペットのほか、PHPやRubyのライブラリなどにも対応している。

料金体系は、ページ数やPV数を制限し、基本機能を無料で利用できるWOVN.ioと、大規模サイト向けに個別見積りで機能拡張にも対応する、有料版のWOVN.io PRIMEの2通り。エイチ・アイ・エスや東京急行電鉄など大手を含む1万以上の企業で導入されているという。

Wovn Technologies代表取締役の林鷹治氏によれば「一般向けの公開サイトだけでなく、企業内のワークフローシステムなど、日本に在住して働く外国人向けの利用も増えている」とのこと。カスタマイズが可能な有料版は、テーマパークのチケット予約サイトなどでの利用事例もあるそうだ。

小売やチケット販売などで有料での利用が伸び、売上ベースで前年比400%を超える勢いだと林氏は言う。その背景について「多言語化SaaSはニーズが高い。(サイトなどの)プロダクトが大きければ大きいほど、多言語化は困難だ」と林氏は説明する。

「多言語化では翻訳費用だけでなく、システム対応費用も発生する。WOVN.ioを使えば、1つのシステムで言語を切り替えて国際化することができ、開発コストを下げることができる」(林氏)

既存サイトに後付けで多言語ページが用意できるWOVN.ioでは、大規模サイトで従来発生していた数千万円単位の開発コスト、数カ月単位の開発期間を圧縮できる。「大きな組織ほど効果が評価され、大きな予算で利用してもらっている」と林氏は述べる。

「CDNサービスのAkamaiや、DBをベースにソフトウェア製品を出すOracleのように、大手企業の多言語化されたサービスの後ろでは、実はどれもWOVNが動いている、という状況に持っていきたい」(林氏)

そうした構想を強化すべく、今回新たに投入されることになったのが、スマホアプリ向けの多言語化ツールWOVN.appだ。

若年層を中心に、PCよりスマホなどスマートデバイスの存在感が増していること、スマホ内ではブラウザよりスマホアプリのほうが利用時間が長いという調査もあり、WOVN.ioを利用する顧客からもアプリの多言語化についての相談が増えていたという。そこで開発されたのが、WOVN.appだ。

7月30日よりクローズドベータ版として、まずはiPhoneアプリ用SDK(Swift)を提供開始。今秋には正式版としてローンチする予定だ。

「モバイルアプリは言語のローカライズをするだけでも、いちいちApp StoreやGoogle Play ストアに申請が必要だが、SDKをアプリに組み込むことで、WOVN.ioと同様に管理画面から翻訳ができるようになる」(林氏)

対応する言語はWOVN.ioと同じく、約30言語。これから開発する予定のアプリだけでなく、リリース済みのアプリに組み込むことも可能だ。「EC」「予約」「ニュース・メディア」「SaaS」「交通」などあらゆるアプリに組み込むことができるという。

「アプリの多言語運用は本当に大変。翻訳データをエンジニアに渡してビルドしてアップし、ストアへ申請する、ということをアップデートの度にやらなければならない。特にECサイトなど(コンテンツの多いプロダクト)では大変で、独立した部署や別会社を作るぐらいの体制で対応しなければならない。そうした企業でWOVN.appを使えば、運用コストが下がるのではないか」(林氏)

林氏は「WOVN.appは動的アプリの多言語化に強いサービスだ。まずはウェブサイトとアプリの両方があるプロダクトから、利用をお勧めしたい」と話している。

Discoveryも独自にストリーミングサービスを始めるかも?

Discovery Communicationsは、3月にScripps Networks Interactiveを146億ドルで買収したことに続いて、独自の消費者直販サービスの立ち上げを考え始めているようだ。AdWeekのレポート(有償)によれば、DiscoveryのCEOであるDavid Zaslavが、業界のとあるイベントで、月額5ドルから8ドルでDIscoveryネットワークの番組を提供するサービスを検討していると発表したそうだ。

このサービスが米国限定であるかどうかは決定しておらず、また立ち上げ時期に対するいかなるヒントもCEOからは提供されていない。

とはいえ、Zaslavはストリーミング業界の他の新参者たちに勇気付けられたと語っている。その新参者の中には例えば、安価なスキニーバンドル(番組数を減らしてコストを下げるといった意味)であるPhiloや、AT&Tが立ち上げたばかりのWatchTVなどが含まれている。

Discoveryのチャンネルは現在、30のネットワーク提供するWatchTVを含む、多くのオンラインTV配信サービス内で利用可能だ。

Scrippsの買収後、同社は25歳から54歳の女性向けケーブルネットワークの上位5社のうちの4社を運営することになった。ZaslavはまたID、HGTV、Food Network、そしてTLCについても言及した。さらに何曜日の夜であってもアメリカの女性視聴者の22%から25%は同社の系列の番組を見ていると述べた。そうしたかなりの数の視聴者たちと、”Shark Week”のような人気番組に対する需要を加味すれば、顧客達を独立したサービスへと誘導することは可能かもしれない。

しかし、最近のストリーミング世界の競争の高まりを考えると、どれほど多くの消費者たちがDiscovery単体のサービスに料金を払ってくれるのかは不明だ。

大手3社(Netflix、Hulu、Amazon)以外でも、消費者たちはさまざまなオプションが与えられている。HBO、Showtime、Starz、Cinemaxなどのプレミアムケーブルネットワークから、CBS All Accessのようなチャンネル独自のアプリ、そしてfuboTVのようなストリーミングスポーツサービスに至るまで選択肢は多様だ。

それに加えて、Sling TV、Hulu with Live TV、YouTube TV、PlayStation Vue、AT&T’s DirecTV Now、Watch TV、そしてPhiloといった沢山のライブストリーミングTVが存在する。

DIscoveryは、消費者自身がアラカルトサービスを選択できるAmazonプライムビデオチャンネルで、ある程度成功することが可能だった。

現在Amazonのチャンネルは、消費者直接ビデオ購読の55%を占めていると言われており、さらに成長を続けている。だが評論家たちの意見によれば、たとえScrippsを手に入れたとしても、DisneyがFoxを買収しさらにNetflixストリーミングを2019年に買収しようとしたり、またAT&TがTime Warnerを買収したりといった、業界の統合の流れを考慮すると、Discoveryがラインナップをより魅力的で競争力の高いものにするためには、さらに他の企業を買収する必要がある。

沢山の選択肢があり、NetflixやDiscoveryの従来のケーブルTV番組に、リアリティショーや、家庭DIY、動物ドキュメンタリー、そして料理ショーなどの、高品質で受賞歴もある番組が登場する状況では、独立したサービスに人びとを引きつける力は弱いだろう。

[原文へ]
(翻訳:sako)

自宅で尿検査できるFDA認可のアプリが初登場

尿路感染はかなり不快な症状に悩まされる。体の構造上、女性に多くみられる病気で、実際、メイヨークリニックによると多くの女性が少なくとも一度は経験する病気なのだという。

尿路感染に苦しむ人のほとんどが、保温パッドを使ったり、水分を多く摂取したり、また鎮痛剤を服用したりして自分で解決しようと試みる。しかしこの病気は短期間で悪化することが多く、医師が呼ばれたり入院したりすることになり、最終的には抗生物質を薬局にもらいに行ってなんとか落ち着く。

これが今までの流れだった。

設立されて間もないサンフランシスコ拠点のスタートアップScanwell Healthが今週、試験ストリップと携帯電話のカメラを使って自宅で尿検査ができるアプリを売り出した。FDA(米国食品医薬品局)の承認を得た消費者向けこの手の検査としては、初めてかつ唯一のものだ。このアプリでは、ストリップを分析するのに高度化された色メトリクスを用い、病気の有無を判断する。

このキットはたったの5ドルだ。Scanwellに電話して検査結果を確認するのにー外部の医師と提携しているー別途25ドルかかる。しかし、もし尿路感染が認められた場合、すぐに抗生物質の処方箋サービスを受けられる(ユーザーは抗生物質を注文することもできるが、届くまでに数日かかる)。

Y Combinator から12万ドルの資金を調達しただけのこのスタートアップはハーバード大のMBA を卒業したStephen Chenにより設立された。彼は、投資家をうっとりとさせるような経歴の持ち主だ。

MBA修了後は、体外診断薬と医療デバイスを扱う設立33年のTeco Diagnosticsに入社した。まずはR&Dマネジャーとして働き、後にGMとなる。彼は2013年にTecoを退社するが、Tecoで習得したものを活用してペットの尿を調べる会社Petnosticsを立ち上げた。このペット用の尿検査では、腎臓結石やバクテリア感染を診断できる。彼は数年前に、自宅から離れたところで“Shark Tank”が開催した公開テストでこの会社をアピールした(日本語版注:Shark Tankは米国のテレビ番組で、投資をしてもらうためにビジネスオーナーたちが投資家の前でプレゼンをするというもの)。そして会社の20%の株式と交換に30万ドルを調達した。

こうした露出作戦は奏功したが、額は大きなものではなかった。結局、Chenはこの資金を受け取らなかった。明らかに、その必要はなかった。というのもPetnosticsは消費者の関心を集め、Chenが言うところの彼のマスタープランの一部であるScanwellの開発費用を賄うのに十分な売上高を出してきた。事実、Chenは3年ほど前にScanwellにかかるFDA承認の手続きを開始した。なぜFDA承認取得に踏み込んだかというと、ヒトの尿路感染テストはペットより大きなマーケットだからだ。毎年、尿路感染による救急処置室行きの費用は数十億ドル規模というデータがある。はっきりとした額を算出するのは難しいが、尿路感染で救急処置室で手当てを受けるとなんと2600ドルもかかる。

こうした事態を変えられるかどうかは、 Scanwellが今後マーケットにどう効果的にアプローチするかにかかっているが、これまでのところはうまくいっているようだ。

消費者が直接使うサービスの導入には時間を要するものの(電話での処方箋サービスに関する規則は州ごとに異なる)、カリフォルニア州といくつかの州では今日からScanwellのサービスを利用できるようになった。一方で、Scanwellはこのキットをできるだけたさくんの大学のキャンパスで入手できるようにしたいと考えている。というのも、学生は性的に活発であり、尿路感染症によくかかるからだ。

また、Scanwellは保険会社とも連携を強化しようとしている。Scanwellのキットを活用することで医療サービスの利用、ひいては保険の支払いを減らすことができ、サービスの評価を高めることができるというのがScanwellの考えだ。

Scanwellの取り組みは尿路感染のテストにとどまらない。この4人のチームはすでに、慢性的な腎疾患や循環器疾患など他の病気を尿で調べるテストの開発に着手している。

「試験紙を使ったテストはかなり安価だ。AOLがかつて大量のCDを送っていたように、消費者に郵送できる。医療サービスと連携し、自宅テストを通して患者に効率的にアプローチできる」と Chenは語る。

Chenの考えに患者が納得するのが前提となるが、もちろんChenが指摘するように自宅テストは“待望のもの”である。

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi)

Samsungの曲げられるディスプレイは何度落としても壊れなかった

Samsungの“壊れない”ディスプレイを、最初から疑問視する人びともいる。人間は、疑う動物だ。でもやはり、2メートルの高さから落としても壊れないし異状もないスマートフォンと聞けば、すごく心惹かれてしまう人が多いことも、否定できない。

そのSamsungの自由に曲げられるOLED(flexible OLED, 可撓性OLED)が実機に載るのは、いつのことか。新製品への期待が大きいことを知ると、SamsungやLGは経済的な検討がまだない時点でプレビューをちらつかせる。こういう珍品に関心を向けすぎると、人びとは必ず、そんな残酷なジョークに見舞われる。

しかし、し・か・し、今度の噂は、来年発売される“折りたためる”ディスプレイ(foldable display, 褶曲性ディスプレイ)を指している。壊れないディスプレイを載せた壊れないスマートフォンという夢のような話も、そのとき正夢になるのだろうか。確かに、“それ”をめぐって今、いろんなテストが行われているようだ。

製品テストの老舗ULの落下テストは(やってる人は楽しかったと思うが)、ディスプレイを120センチメートル(4フィート)の高さから連続で26回落とした。超高温や超低温のテストも行い、上で述べたように、念のために180センチメートル(6フィート)からも落とした。いずれも、画面に損傷は生じなかった。

SamsungのGM Hojung Kimが言っている: “携帯用の電子機器には強化プラスチックのウィンドウがとくに適している。それは壊れにくいだけでなく、軽量で、伝導性を持たせられ、硬質である。これらの特長は、ガラスと比べて遜色がない”。

その技術は、スマートフォンだけでなく、自動車やゲーム機、タブレットなどにも使われるだろう。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Amazonのウィッシュリスト(ほしい物リスト)を友だち家族など参加型&会話型にできる

Amazonのウィッシュリスト(Wish List, ほしい物リスト)に、一部のユーザーが前から望んでいたコラボレーション機能がつくようだ。アメリカのamazon.comでは、一部のユーザーがすでに、そのモバイルアプリやWebサイトのウィッシュリストに“invite others”(ほかの人を招待する)オプションがある。これは自分のウィッシュリストのURLをメールやテキストメッセージやソーシャルアプリなどで共有できる機能だ。そのURLをクリックすると、元々のオーナーと同じように、ウィッシュリストにアイテムを加えたり取り去ったりできる。〔amazon.co.jpでは、自分のウィッシュリストの「友達」タブから共有ができる。〕

かなりマイナーな機能ではあるけれども、希望者は多かった。親は子どものウィッシュリストを共同管理したいし、また友だちやカップル、パーティーの幹事などは、リスト上にチームを作ってギフトのアイデアなどを共有〜分担したい。たとえば「△△ちゃんの誕生日プレゼント、あなたは何にする?」のように。

ただし現状では、Amazonがこの機能をテスト中なのか、それとも本格展開の初期の段階なのか、よく分からない。

Amazonはウィッシュリストの共有機能そのものについては何も語らなかったが、今は“少数の顧客”でテストしている、と言った。

またMacRumorsの記事によると、コラボレーション型ウィッシュリストのテストに参加している人たちですら知らない機能がある、という。たとえば一部の人のウィッシュリストページには「会話」アイコンがあって、リスト上のアイテムについて議論できる。もうひとつの楕円形のアイコンでは、リストの作者がそのリストのメンバーを管理できる。

今のところ、この機能が見つかるのはデスクトップのamazon.comと、iOSのモバイルWebサイトだ。Androidには、ない。Amazonは、モバイル機能を最初iOSでローンチすることが多い。最近の部品を見つけ機能も、そうだった。

画像クレジット: MacRumors

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Google Cloud CEOのDiane Greeneインタビュー:準備が整った私たちの戦いはこれからだ

今週Googleは、年次会議であるCloud Nextをサンフランシスコで開催した(米国時間7月24日〜26日)。2万5000人の開発者が参加するCloud Nextは、Google I/Oに比べるとクラウド特化型の会議となっている。Diane GreeneがGoogleのクラウドビジネスのCEOに就任したのは、数年前まだ参加者が2000人程度に過ぎず、Googleがまだこの会議をさびれた埠頭で行っており、Googleがこの領域でやや遅れをとっていたときのことだ。そのころAmazonとMicrosoftは元気に進撃を続けていた。その就任以来Googleは、ビジネスユーザーをクラウド(クラウドコンピューティングならびにG Suiteの両方)に取り込むための、真剣な努力を重ねてきた。

今年のCloud Nextに先行して、私はDiane Greene から、Google Cloudの現状と近い将来に期待できることについて話を聞く機会を得ることができた。Greeneが指摘したように、多くの企業が初めはクラウドコンピューティングをインフラストラクチャーのための道具として扱った。コストを低減しリソースに対する柔軟なアクセスを得るためだ。「それがいまや、それ以上のものになり始めています。誰もが、それがより安全な場所であることに気が付いていますが、私がさらに感じているのは、企業をより成功させるためには、情報密度を上げることが大切だということです」。結局のところ、企業がCloud Spannerのような世界的に分散したデータベースや、AutoMLのような機械学習ツール(および他のベンダーの同等のツール)にアクセスするのは、クラウド上なのだ。

GreeneがGoogle Cloudにやってきたときに気が付いたことは、Googleが大企業が必要とする多くの機能を持っていないことだった、と彼女は語った。「私たちは総合監査ログを持っていませんでしたし、きめ細かなセキュリティ制御の手段も持っていませんでした。そしてピアツーピアネットワークを持たず、コンプライアンスと認証の手段も持っていなかったのです」と彼女は私に語った。

周囲は彼女に、Googleが企業顧客の役に立つことができるようになるには、10年かかるだろうと言っていた。「これはMicrosoftの場合に必要だった期間を参考にしての意見です。でも私は10年だなんてとんでもないと思っていました」。チームはそれを挑戦として受け止めた。そして2年後のいまGreeneは、Google Cloudを企業に提供できる準備が整ったと主張している(彼女は世間がGoogleをAWSとAzureに「大きく水を開けられた」3番手だと呼ぶのに飽き飽きしていたのだ)。

現在彼女は、自身の組織のミッションについて考えるとき際には、それをGoogle自身のモットーの一種とみなしている。「Googleのミッションは、全世界の情報を整理することです」と彼女は語る。「なのでGoogle Cloudのミッションは、顧客の情報密度を高めることなのです」。

しかし、大企業に特定のベンダーに賭けることを納得させるためには、もちろん技術も大切だが、数年前のGoogleは、そうした企業に売り込むためのセールス部隊も持っていなかったのだ。それもまた変えなければならなかったことだ、Greeneは同社の新しいアプローチも上手く行っていると語る。そしてGoogleは適切なパートナーも必要としていた、いまではそのインメモリデータベースHana用としてGoogle Cloudを認定したSAPのような企業や、Ciacoのような企業が協力関係にある。

数ヶ月前、GreeneはCNBCに対して、世間はGoogleのクラウドビジネスの規模を過小評価していると思うと語った。そしてそれは今でも続いていると彼女は考えている。「間違いなく世間は私たちを過小評価しています。それがある程度私たちの足を引っ張っているかもしれません。しかし私たちは、自分たちのパイプラインと、私たちが進めている計画の全てを気に入っています」と彼女は私に語った。

大企業に使ってもらうことは大切だが、Greeneはまた、現在はおそらくエンタープライズ開発者にとって最も素晴らしい時だとも主張した。「企業がこんなにも積極的に最新技術を追求し、この破壊的な技術を採用しようとしているのは、これまで見たことがありませんでした。彼らはそれがもたらす利点を認識していて、もし争う相手が先にそれを採用してしまったら競争に遅れをとるということを理解しているからなのです」とGreeneは私に語った。「このため私は、企業内のイノベーションこそが現在起こっていると考えています。これは消費者の世界よりも速く、少し逆転してさえいるかもしれません」。

現在Google Cloudを選択している企業には、3つの異なるカテゴリがあるとGreeneは考えている。まずクラウドの中で生まれた企業群がある。Twitter 、Spotify、Snapのことを考えて欲しい。これらは皆Google Cloudに大きく賭けている。Greeneは、Googleの卓越した技術力を競合他社と比べることにためらいは見せない。「そうした企業がGoogle Cloudを選ぶのは、技術的な観点からみて私たちが最高だということを知っているからです」と彼女は言う。

しかし現在は、インターネットで先行してはいるものの、いまでも大量のデータを中心的に扱っている大企業たちの中に、クラウドへの移行を始めているものが沢山ある。そうした企業の例として挙げられるのは、あくまでもGoogle Cloudの顧客でということだが、Schlumberger、HSBC、そしてDisneyなどであるそしてGoogleが今年のCloud Nextで、Cloud Services Platformの開始によって本当に訴求していた相手は、そのようなハイブリッドなクラウド適用プランを欲している或いは必要としているビジネスたちだ。「そうした企業たちは、未来がクラウドの中にあることを知っています。彼らはどこが最高の技術を持つようになるのかを見ています。彼らは、クラウドのテクノロジーを使用することで、ビジネスニーズにもっと集中できるように人を再配置することができることを、よく理解しているのです」とGreeneは説明した。

私たちの会話全体を通して、Greeneは、機械学習ツールとKubernetesを支えるGoogleに、沢山の企業が問い合わせをしてきているのだと、強調し続けた。「そうした企業に対して私たちはクラウドを提供していくのです」と、Greeneはハイブリッドにしたいと考えているこれらの企業たちについて語った。「私たちはKubernetesとIstioを使い、コンテナワークフローの監視と保護を行います。そしてそれを、オンプレミスでも任意のクラウドでも稼働させ、すべてのサポートを手がけます。そうすることで、データセンターの中に留まりながらKubernetes環境を構築することができるようになります。そしてそうなれば、それをロックインの心配なしにクラウドへと展開することができるようになります」。

しかし、上の2つとは違う第3のカテゴリーがある。Home Depotのような旧来のブリックアンドモルタル型ビジネス(実店舗ビジネス)だ。こうした企業はしばしば大規模な中央システムを持たない。しかしいまや競争力を維持するために、自身のデジタルトランスフォーメーションを推進する必要にも迫られている。

Kubernetesやコンテナなどの新しいテクノロジーについて話をするのは面白いが、Greeneは大部分のユーザーたちがGoogle Cloudを使う理由は、今でもBigQueryのような、計算サービスとデータ管理そしてアナリティクスを行うためのツールを求めてのことだと指摘した。もちろん、Google Kubernetes Engineの背後でも、同社の機械学習ツール同様の多くの動きが起きている。しかし企業たちはそうしたツールに関してはまだ考え始めたばかりだ。

しかしGreeneはまた、多くの顧客がGoogle Cloudのクラウドコンピューティングの側面だけでなく、G Suiteツールを選択した際のセキュリティも求めていることを強調した。

「多くの企業がハッキングされている中で、Googleは幸いなことにハッキングされていません」と彼女は語る。「私たちはこれまでどんな会社が想定できたものよりも、ずっと安全なのです。」

もちろんそれは間違いないが、Googleはこれまで行ってきた無料の消費者向けビジネスのために、興味深い挑戦に直面している。Greeneは、Googleが一般ユーザー(無料サービスユーザー)のデータに対してGoogleが行っていることと、Google Cloudの中にあるデータに対して行っていることは大きく異なるということを、顧客に理解して貰うには、それなりの時間がかかることがあるということを指摘した。知られているように、Googleはより多くの関連性の高い広告を表示するために、無料ユーザーのデータを大量にマイニングして来た。

「私たちは何十億人という人々のデータを約20年にわたって、外部に対してはプライベートなままに保っています、もちろんそれは非常に大変な作業でした。しかしクラウドカスタマーのデータは完全に顧客自身のものであり秘密が保たれています。私たちは両者の違いについての教育をしっかりと続けて行かなければなりません。

ということで、Googleはそのクラウドを企業に適用することに関しては少々出遅れたものの、現在は正しい軌道に乗っているとGreeneは信じている。「もう一つ言っておきたいことは、私たちは長期的な活動に取り組んでいるということです」と彼女は語る。「これはまだ始まったばかりなのです。全てのワークロードのわずか10%程度しか大手のパブリッククラウドには置かれていない、と推定する人もいます。現在パブリッククラウドに置かれていないものは、いずれパブリッククラウドに置かれることになるでしょう」。

[原文へ]
(翻訳:sako)

写真: Getty Images