検索結果で最新ニュースを優遇したいGoogleが複数のニュース企業とデータ形式で提携

Googleが今日(米国時間7/31)、複数のニュース企業と協力して、ジャーナリズムから得られるデータを検索結果に反映していく、と発表した。それは、これらの企業が作りだす大量のデータを見つけやすくし、そしてそれらを、検索結果という読みやすい形式で提示することがねらいだ。

今同社はProPublicaなど数社と協働して、検索の効率的なインデクシングに必要な定型データを作ろうとしている。つまり、たとえばそのデータがテーブル(表)なら、それをインデックスに拾うのもかなり簡単だ。

ProPublicaの副編集長Scott Kleinはこう語る: “ニュースが世界に与える影響をつねに意識しているわれわれのようなニュース企業は、情報を人びとがそれを必要とする時と所に届けることが、最大のミッションだ。たとえばわれわれが苦労して収集し準備しているデータを、何かの意思決定のためにまさにそれを必要としている時点で人びとに提供できれば、それはニュース企業の理想的な社会的貢献になる。そのようなデータ収集が、われわれの得意とするところであり、それを供するためのお皿であるコードを加えることは、われわれから見て(ニュースの収集に比べれば)些細な努力だ”。

そういう、人と社会の役に立っていることを自負しているニュース企業は、Googleのガイドラインに従った定型データを作れば、検索のインデクシングに拾われるようになる。そして検索式が適切なら、それらのデータは検索結果の上位に出る。だからそれは、頑張ってやる価値がある。検索のユーザーにとって、最初の結果がすべてであることが多いからね。

もちろんGoogleはこれまでも、ネット上の大量のデータをインデクシングし、検索結果として光を当ててきたが、ジャーナリズムのプロジェクトを意図的に取り上げる取り組みは、今回が初めてだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

スマホ1台でVTuberのように生配信、ライブ配信アプリ「Mirrativ」にアバター機能「エモモ」登場

今年に入ってバーチャルYouTuber(VTuber)の盛り上がりがすごい。

つい先日には大手芸能事務所のワタナベエンターテインメントにVTuberが所属するというニュースが話題になっていたけど、ユーザーローカルが公開しているランキングを見ていても、次々と新しいタレントが生まれ多くのファンを獲得していることがわかる。

IT業界界隈でもグリーがVTuber特化型のライブエンターテインメント事業を手がける新会社を、サイバーエージェントがVTuberに特化したプロダクションを設立するなど関連する動きが加速。以前紹介した「ホロライブ」を提供するカバーを始め、この領域で事業の拡大を目指すスタートアップも増えてきている。

VTuberが活気付いた背景には、テクノロジーの進化によって誰でもキャラクターになりきって動画やライブ配信ができるような環境が整ってきたこともあるだろう。自分の分身とも言えるアバターを使うことができれば、顔出しに抵抗がある人でも参加できるようになるし、普段の自分とは違ったキャラクターを演じやすくなる。

かなり前置きが長くなってしまったけれど、8月1日よりライブ配信プラットフォーム「Mirrativ」に追加された新機能「エモモ」はまさにそのような世界観のサービスだ。

スマホ1台でVTuberのように独自のアバターを作成し、生配信やゲーム実況ができることが特徴。まずはβ版として一部のユーザーから限定的に公開する。

アバターの作成からライブ配信やゲーム実況まで完結

Mirrativについてはこれまでも何度か紹介している通り、自分のスマホ画面を共有しながらライブ配信ができるプラットフォームだ。特にゲーム実況で使われているケースが多く、スマホゲームの配信者数では日本一の規模(2018年7月時点、ミラティブ調べ)になるという。

今回リリースしたエモモ(現時点ではiOS版のみ)はこのMirrativ上で使えるアバター機能という位置付け。Mirrativで配信できるスマホ端末が1台あれば、作成したキャラクターを声に合わせて動かしながら生配信することが可能。アバターの目や口、輪郭、髪型、髪や肌の色、洋服は自由に着せ替えられ、設定した喜怒哀楽の感情に応じて表情や動きも変化する。

iPhoneXや外部ツール等の特殊機材は不要。カメラ機能も使用しないため、自分の姿を配信に映すことなくキャラクターになりきれる。

すでにインカメラ等を使ってVTuber風に自分をキャラクターとして表示するサービスは存在するが、カスタマイズの自由度があり生配信まで完結する点、そしてゲーム実況と融合する点がユニークなポイントだ。

現段階でエモモを通じてできるのは、上述したことに加えてゲーム実況時に視聴者の画面上で配信者のキャラクターを表示すること。ミラティブ代表取締役社長の赤川隼一氏の話では、今後ユーザーの反応を見ながら「ボイスチェンジャー機能や、運営側で用意したモデルだけでなく自分で作ったものなどを持ち込めるような仕組みも検討していく」という。

同機能はまずMirrativのまいにち配信者(7日以上連続で15分以上配信している配信者)に向けて提供し、徐々に他のユーザーにも開放する予定だ。

独自の身体やアイデンティティを持つことで会話が豊かに

今回Mirrativにアバター機能を取り入れた背景には、多数の配信者が顔出しをせずゲーム実況をしていること、そして共通の好きなゲームを通じて繋がったユーザーの間で多くの雑談配信が生まれていることがある。

「海外のゲーム実況や韓国のMirrativユーザーの配信を見ていると顔出しをするのが多い一方、日本のユーザーは真逆で顔出しを好まない。エモモのイメージとしてはそこにTwitterのアイコンのようなサムネイルを提供するような感覚。ユーザーが独自の身体やアイデンティティを持つことで双方のことをもっと身近に感じ、コミュニケーションが豊かになるのではないかと考えた」(赤川氏)

赤川氏によると数ヶ月前からMirrativを使ってファンとコミュニケーションをとるVTuberが自然発生に出始めていたそう。実際にVTuberのゲーム実況を見てみると、実況中はキャラクターの顔が画面に写っていないにも関わらず配信が盛り上がっている様子を目の当たりにした。

「見ている人が配信者の声から顔や身体まで想像できるのであれば、仮に配信者が写っていなくてもその人のコンテンツとして消費される。これはバーチャルYouTuberに限った話ではなく、もっと普遍的なもの。Mirrativユーザーの体験をもっと良くできると腹落ちしたのでエモモの開発を決めた」(赤川氏)

ゲーム視聴時の様子。画面下にキャラクター(エモモ )が表示される

自分独自のキャラクターを作成できれば、顔出しをしないゲーム実況文化を豊かにするだけではなく、“なりたい自分”を表現しやすくもなる。赤川氏自身もディー・エヌ・エー(DeNA)で執行役員を務めていた際に「執行役員ぽく振る舞わないといけない、(SNSなどでも)うかつな発言ができない」といった考えが頭にあったそうだ。

もちろんそれも必要なことではあるけれど、現実のしがらみから解放されて好きなものを好きと言える空間もまた、個々人の人生を良くしていくためには必要だというのが赤川氏の考えであり、Mirrativを作っている理由でもある。エモモはこの空間をアップデートする上で重要な機能になるという。

ちなみにエモモという名前について見覚えがある人もいるだろう。もともとDeNA内で運営していたMirrativの事業を承継するため、赤川氏が設立していた会社の社名がエモモだった(現在はミラティブに変更)。

「Mirrativ自体がリアルタイムで人と人が話すことで熱量が伝わりどんどん仲良くなるサービスで、ユーザーの感情みたいなものを増幅させる装置として機能している。それを踏まえるとアバター機能によって身体を持つことはこの感情をさらに加速する行為であり、よくよく考えるとエモモという言葉にもハマるかもしれないと思った」(赤川氏)

社名を決めた当時からこのアバター機能を見据えていたわけではなく、メンバーからの提案で決まったそう。最初はないだろうと思っていたが、次第に「意外とエモモかもしれない」という思いが強くなっていったようだ(なおエモモはEmotional Modelingを略したものでもあるとのこと)。

スマホゲーム実況とアバターで世界へ

このエモモをひとつのフックとして、ミラティブではさらなるグローバル展開も見据えている。

「ちょうど先日韓国で初めて韓国語のバーチャルYouTuberが出てきたが、本質的に自分以外の何かに変身したいという欲求は人類の根元の欲求であり、グローバルでもポテンシャルはあると考えている。正しいサービスを作って正しく展開すれば、日本人が大勝ちできるチャンスのある領域だ」(赤川氏)

赤川氏の話ではライブストリーミングに関して先進国と言える中国ではゲーム実況だけがぐんぐん伸び続けているそう。5月にはライブ配信サービス「YY」の子会社でテンセントも出資していた「Huya(虎牙)」がニューヨーク証券取引所に上場するなど、ゲーム実況はグローバルにおいてホットな市場になっている。

スマホにフォーカスしたゲーム実況に取り組むスタートアップは海外で出てきているものの、大きく成功するには至らずまだ空いている分野だというのが赤川氏の見解。日本で活発な「バーチャルキャラクター」という概念を組み合わせることで、ユニークな存在にもなりうるという。

「自分としてはDeNA時代にソーシャルゲームのグローバル展開を本気でやって惨敗した経験がある。Mirrativはもう1回グローバルで挑戦する価値とその可能性がある事業。世界で受け入れられるようなプロダクト、機能を作り込んでいきたい」(赤川氏)

第三四半期がまたまたアナリストの予想を上回る好調でAppleの時価総額が1兆ドルに接近

今日(米国時間7/31)の第三四半期決算でアナリストの予想を上回り、株価をさらに数パーセント上げたAppleは、ついに、いよいよ、1兆ドル企業にあと一歩と迫った。なおAppleでは、ほんの数パーセントの株価アップが数百億ドルに相当する。

決算報告の直後の午後の株価はおよそ2.5%上げ、それが時価総額を200億ドルあまり押し上げ、取引終了時のAppleの時価総額はほぼ9350億ドルになった。数四半期前までは、1兆ドルが射程距離に入った、という言い方をしていたが、しかし現状は着弾寸前だ。同社は今年後半にもっとも重要な数四半期を迎えるが、例年のiPhone新製品とそのほかの製品が今年のホリデイ四半期にどんな売れ行きを示すだろうか。

下に、いくつかの数字を挙げよう:

  • 売上: 533億ドル、前年同期比17%増、アナリストの予想523.4億ドル。
  • 利益: 一株あたり2ドル34セント、アナリスト予想2ドル18セント。
  • iPhoneの売上: 4130万台、前年同期比1%増、売上ベースでは20%増。アナリストの予想は4179万台。
  • iPhoneの平均販売価格: 724ドル。
  • iPadの売上: 1155万台、前年同期比1%増、アナリスト予想1030万台。
  • Macの売上: 370万台、前年同期比13%減、アナリスト予想を下回る。
  • サービス売上: 96億ドル、前年同期比31%増。
  • そのほかの売上: 37億ドル、前年同期比37%増。

上記のように、台数ベースでは当たり外れがあるが、しかし売上ベースではiPhoneは前年同期を上回り、高価格品が売れたことを伺わせる。高級製品に賭けるというAppleの戦略はずばり的中、同社の成長をまたまた押し上げた。iPhone以外の製品は、サービスやそのほかの売上で成長が見られるものの、一貫して影が薄い。

この前の超高級バージョンのiPhone、iPhone Xに対しては疑問の声もあったが、しかしAppleの株価はそれを蹴散らして上昇を続けた。株価は1年で20%上がり、第二四半期にはさらに1000億ドルの、株主に対するリターンを発表した。当時はそれが、株価の大きな上昇要因だった。Appleは今回、以前の大型iPhoneでやったような、市場の予測を狂わせるような製品を出していない。むしろこの1年の堅実な開発姿勢と市場に対する姿勢が同社に勢いをつけ、1000000000000ドルに接近させた。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

任天堂のSwitchの成功から何を学ぶべきか?

ソニーのPlayStation 2が発売されたとき、私は家電量販店のCircuit Cityで働いていたので、何週間にわたって入荷する端から売り切れが続くのを目撃することになった。ゲームコーナーのブルーのデモ機の回りにはいつも人だかりができていた。後から考えればPS2がなぜあれほどのヒットとなったか理解するのはたやすい。パワーがあり創造的で地元のゲーム環境でも段違いに優れていた。当時のゲーム環境では理想的なデバイスだった。

最近の任天堂の成功から教訓を学べるとするなら、将来の環境に適合させるより現在の環境に適合させるほうがはるかに重要だという点だろう。

Nintendo Switchのスマッシュヒットで今期の営業利益は対前年比で88%アップするという記録的な好成績となった。任天堂はSwitchの発表以来、2000万台弱のシステムを販売することに成功している。これは Wii Uのトータル販売台数を抜き、Gamecubeの2170万台に迫る勢いだ。

いくら言っても足りないぐらいだが、Switchは偉大なシステムだ。そして、他の成功したプロダクトと同様、現在の環境に適合している。軽く、小さく、ポータブルであり、クラウドサービスに強く依存している。Switchは市場でもっともパワフルなシステムではないし、4kビデオやVR機能もない。SwitchはYouTubeもNetflixもサポートしていない。純然たるゲーム専用機だ。

Switchは任天堂にとって大きな賭けだった。同社は発売後ほどなくWii Uに見切りをつけた。このデバイスはMario Kart 8とSplatoonを除けば、よいゲームに恵まれなかった。任天堂は魔力を失ったかに見えた。しかし、ある意味で、Wii UはSwitchを生むために任天堂が通らねばならない段階だった。 Wii Uはゲームを居間のテレビから引き離し、ゲーマーの手に戻した。だがWii Uの場合、ゲーマーはベースステーションが置かれている部屋に留まる必要があった。Wii Uではゲーマーのテレビからの解放は十分とはいえなかった。

Switchが登場したときには、モバイル・ゲームの脅威は過去のものになっていた。数年以前にはスマートフォンがカジュアル・ゲームの市場も飲み込んでしまうだろうと真剣に考えられていた。ソニーでさえこの考え方に影響され、ゲーム機とスマートフォンのハイブリッド、Xperia Playを発表したほどだ。なるほど現在もスマートフォン・ゲームは健在だが、ゲーム専用機の世界まで飲み込むようなことは起きなかった。Xbox OneとPlayStation
4が発表されるとゲーマーは居間のソファに腰を落ち着けた。しかしSwitchが提供したものはこれと違っていた。しかもタイミングが絶妙だった。

当たり前のことを繰り返すようだが、Switchはモバイル・デバイスだ。そしてこれが現在の環境で必須だった。モバイルであることがXbox OneやPlayStation 4にない機能であり、しかも実装が優れていた。それまでの任天堂製品と同様、グラフィックスの精度は平均をやや下回っていたし、その他の機能のスペックもライバルほどではなかった。しかしその点は問題にならなかった。Switchはゲーム体験が優れていた。ともあれ私にとってはそうだ――私はSwitchを長旅の飛行機に持ち込んだが、PS4ではそうはいかない。

多くのゲーマーも同意見だったことは2017年の発売以来、2000万台という販売台数が証明している。ちなみに2013年発売のXbox Oneの販売台数が2500万台から3000万台の間とみられている。この世代のゲーム専用機の勝者はもちろんPlayStation 4で8000万台近くの台数が販売されている。またここでもソニーはPlaystation 4を現在のゲーマーを対象として作ったことが成功の原因だと主張することができるだろう。ソニーはMicrosoftがXbox Oneでサポートしたさまざまな付加機能をすべて省き、純然たるゲーム機としてデザインした。

実は任天堂がこうした方法で成功したのは今回が初めてではない。Wiiが発売されたのは2006年だった。その後の売上トータルは1億台を超えた。2006年にソニーはPlayStation 3、MicrosoftはXbox 360でHDゲームを強くプッシュした。これにはもっともな理由もあった。消費者は争って最初のHDTVを買っていた。そこでソニーとMicrosoftは未来の環境のためのシステムを用意した。PS3もXbox 360も長期に渡って健全な売れ行きを示した。しかしどちらもWiのような桁外れの成功を収めることはできなかった。

Wiiは新しく、見た目にも快かったので2006年と2007年のクリスマスでなくてはならぬプレゼントの地位を占めた。PS3と比べるとWiiのグラフィックスは子供っぽいといっていいくらいだった。しかしこれがかえって魅力の一部となっていた。初代のゲーマーたちは成長し、家庭を持つようになっいた。Wiiは両親から子どもたちまであらゆる年齢層にフィットした。誰もがWiimoteを振り回してテニスのボールを打つのに興じた。コアなゲーマーは別として、カジュアルゲームファンにはWiiは十分に魅力的な魔法だった。Wiiは時代環境に適切なタイミングで適切にフィットするシステムだった。

さて任天堂にとってはこの次がもっとも困難なステップとなるだろう。Switchは大成功を収めた。任天堂は活気あるエコシステム維持することができるようなゲームを開発し、サポートしていかねばならない。任天堂が優れたゲームをすべて内製することは不可能だ。任天堂はゲームのデベロッパー、パブリッシャーと協力し、そうしたサードパーティーがエコシステムに貢献する熱意を失わないよう努めていく必要がある。それができるなら、任天堂にはWiiに続いてSwitchでも一世代をまるごと飲み込むような成功を収めるチャンスが生まれるだろう。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Googleの目覚時計アプリがSpotifyをサポート――来週から好みの曲で起こしてくれる

普通のユーザーがAndroid版のGoogleの目覚まし時計アプリに特に注意を払っているようには思えない。簡単な設定をするだけで毎朝きちんと起こしてくれるのはありがたいが、感心な早起き人間は別として、そもそもあまりうれしくないアプリだ。デフォールトのアラーム音だけでなく、わざわざ選んだ他のサウンドも毎朝繰り返し聞いているうちにストレスが溜まってくる。

しかし朗報だ。Googleは今日(米国時間7/31)、時計アプリをアップデートし、Spotifyから好みの楽曲、ないしプレイリストをアラーム音として選べるようにした。

この機能は5.0 Lollipop以降のAndroidを搭載したスマートフォンすべてで利用できる。Spotifyの有料のプレミアム・アカウントは必要なく、無料アカウントでよい。新機能は全世界のユーザーに今週中に順次公開される。まだ手元のAndroidがアップデートされていないとしても、万事順調に運べば、来週の月曜の朝はお気に入りのメタルロックバンドの大音量の曲で目を覚ますことができるはずだ。

しかしGoogleが自社のアプリにSpotifyを使うのを不思議に思った読者もいるだろう。Google自身も音楽サービスを持っていたはずでは?  Google Play Musicも健在だし、YouTube Musicもある。実際、われわれもGoogleがここで商売仇のサービスをサポートしたことにいささか驚いている。もっともGoogleの音楽サービスに対する戦略はメッセージ・サービスに対するのと同程度の一貫性しかないともいえる(誰かAlloを覚えているだろうか?)

画像:stockvisual / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

WhatsAppで最大4人のグループ音声通話とビデオ通話が可能に

WhatsAppが、とても要求の多かった新機能を追加し、ユーザーがグループでの音声およびビデオ通話を行うことを可能にした。

Facebookによって所有されている同社が、音声通話を導入してから3年以上が経過した(音声通話の1年後にはビデオ会話機能を追加している)。現在WhatsAppは、毎月15億人を超えるユーザーを抱えていて、毎日そのサービスを通じて20億分の通話が行われていると言う。

今週から通話参加者は、スクリーン上の右上にある「参加者を追加」を意味するボタンを押すことで、他の友人たちを通話に追加することができるようになった。参加の最大数は4人であり、素晴らしいことにWhatsAppは通話がエンドツーエンドで暗号化されていると述べている。

それは簡単なことではない。自らをセキュアなメッセージアプリだと呼ぶTelegramでも、グループメッセージは暗号化されていない、ましてグループ通話はなおさらだ。

暗号化の面では、WhatsAppはWhisperSystemsと長年協力を行い、プラットフォーム上の全てのメッセージや通話を、盗聴から守ってきた。とは言え、WhatAppの共同創業者であるBrian Actonが彼の資産のうちの5000万ドルこの資産は2014年にFacebookによって買収されたときに手に入ったものだ)をWhisperSystemsに関係するSignal Foundationに寄付したことで、事情は少々複雑になった。

Actonは昨年Facebookを退職した。今年彼は、人びとにソーシャルネットワークを辞めるように呼びかけたが、それはデータとプライバシーの問題によるものだった。一方彼の仲間であるWhatsApp共同創業者のJan Koumも、今年の5月の時点で彼の後を追うように辞職した

Acton同様に、Koumもケンブリッジ・アナリティッティカのようなスキャンダルに悩まされていたようだが、彼の公式の辞職理由は「テクノロジーを離れて楽しみたい。例えば珍しい空冷ポルシェを集めたり、車の整備をしたり、究極のフリスピーでプレイしたりね」ということだ。それぞれが自分の道を…。

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(翻訳:sako)

写真: Chris Ratcliffe/Bloomberg、Getty Images (画像編集済)

身体を3D計測するボディスキャンアプリ3DLOOKが100万ドルを調達

3Dボディスキャンシステムは、何年もの停滞と再起動を繰り返したあとに、大きな動きを見せた。Original StitchのBodygramに続いて、新たな3Dスキャナーである3DLOOKが、世界中の身体を測定するために、100万ドルの資金を手に競争に参入したのだ。

創業者である、Vadim Rogovskiy、Ivan Makeev、そしてAlex Arapovdは、スマートフォンだけで人体を測定できることがわかったときに3DLOOKの開発を決心した。他のソリューションでは必要な精度を実現できず、高価なハードウェアに依存してしまうことがわかったからだ。

「広告業界で6年以上の起業経験を積んだ頃、私は普通の商品ではない新しいものを作りたいと考えていました」とRogovskiyは語る。「そのころ成長を阻害するものを克服する仕事をしたいと思っていて、アパレル業界がeコマースにおける増大し続ける返品問題で苦しんでいることに気が付いたのです。3DLOOKの共同創業者たちは、2016年にSAIA(Scanning Artificial Intelligence for Apparel:アパレルのためのスキャンAI)を作成する前に、1年以上をR&Dと、新しいアプローチと様々な技術の組合せのテストに費やしました」。

これまでチームは40万ドルを調達し、そしてつい最近会社を成長させるために、シードラウンドで100万ドルを調達した。

またチームは「フィットプロファイル」を収集しており、このプロファイルを「地理的位置、年齢、そして性別グループ」に基づいて、提供することが可能だ。このことが意味するのは、3DLOOKが測定値に基いた正確なサイズを答えることが可能であること、そして衣服がどれくらい身体にフィットするかを教えてくれることができるということだ。既に彼らは2万件のプロファイルを持ち、8つの有料顧客ならびに5つの大企業のシステムと連携して作業を進めている。例えばLemonade FashionとKoviemがこのプラットフォームを使っている。

「3DLOOKは、カジュアルな写真を2枚撮影するだけで人体計測を可能にする技術を開発した最初の企業です、そしてオンラインアパレル販売市場をディスラプトする計画をもっています。ブランドや小規模店舗が、顧客の身体測定値を集めてオーダーメードの提案ができるように、デスクトップ用APIやモバイル用SDKを提供します」とRogovskiyは語る。「さらに、わが社は人間の身体測定値に関するデータベースを収集しています、これによってブランドは全てのボディタイプ向けにより良い服を作ることが可能になりますし、サイズ合わせと返品問題を解決できるのです。こうすることで、店舗が今以上のアパレルを売ることができるだけでなく、顧客も高品質のアパレルを手にすることができるのです」。

3Dスキャナーは長年にわたり改良に次ぐ改良を重ねて来ているが、企業たちがほんの数枚の写真だけで身体をスキャンできるということは興味深い。こうしたものは、好みに関する意見を述べることはできないが、注文する前に服のサイズがぴったりであることを保証してくれることは間違いない。

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(翻訳:sako)

サーバーレスアプリケーションのデプロイと管理を助けるServerless, Inc.が新たに$10Mを調達

Serverless, Inc.は、早くからサーバーレスを手がけ、2015年にはデベロッパーのためのオープンソースのフレームワークを作っている。今日では同社は、これまでのプロダクトをベースとして、サーバーレスアプリケーションのデプロイとデリバリをデベロッパーがもっとコントロールできるようにしたい、と考えている。そのために同社は、Lightspeed Venturesが率いるシリーズAのラウンドにより1000万ドルを調達した。これで同社の調達総額は、1300万ドルになる。

同社はまた、総合的なツールセットServerless Platformを発表した。これには、Serverless Framework(フレームワーク)のほかに、Serverless Dashboard(ダッシュボード)とServerless Gateway(ゲートウェイ)が含まれている。これらのうち、フレームワークでデベロッパーは、さまざまなクラウドプラットホームで使用するサーバーレスのコードをセットアップでき、ファンクションのルールやインフラストラクチャの依存性などの、クラウドごとの違いに対応できる。ダッシュボードは、デプロイに関する情報を視覚化し、サーバーレスファンクションの動作を、さまざまなクラウドプラットホームの上でモニタできる。

図表提供: Serverless, Inc.

ゲートウェイは、レガシーのツールをサーバーレスのアプローチに取り込む方法を提供する。同社の説明によると: “Serverless Gatewayで企業は容易にサーバーレスを既存のサービスのメッシュに統合できる。それらはコンテナやSaaS、そのほかのレガシーシステムなどさまざまだ。Event Gatewayが、サーバーレスのコンピュートと共に、企業のすべてのビジネスイベントにコードで反応する強力な方法を与える”。

同社のファウンダーでCEOのAusten Collinsによると、企業がサーバーレスファーストの考え方に移行すると、アプリケーションの構築とデプロイの費用が低下するが、しかしそのためには、チーム全体や大きな組織全体にわたって使えるツールが必要である。そして同社は、そんなツールを提供していくのだ、と。

“サーバーレスの開発を実運用にまで持っていくためのツールの需要が、今拡大している。それは、チーム全体のデベロッパーや、あるいは全社のデベロッパーが、サーバーレスの開発を安全かつスタンダードなやり方で実践できるためのツールだ”、とCollinsは説明する。

Collinsによると、フレームワークと通信ゲートウェイは今後もつねにオープンソースだ。同社が企業に課金するのは、サーバーレスのコードのインサイトを得るためのダッシュボードと、ゲートウェイのホステッドバージョンへのアクセスだ。しかしゲートウェイは、オープンソースバージョンを使って企業が自力でホストしてもよい。

サーバーレスによって、デベロッパーは必要なインフラストラクチャを気にせずに、自分たちのアプリケーションを動かすことができる。彼らが書くのはインフラストラクチャにアクセスするコードではなく、イベントをトリガするファンクションであり、そのイベントを動かすために必要なコンピュートとメモリーとストレージは、クラウドのベンダーが面倒を見る。

デベロッパーは、適切なインフラストラクチャのデプロイについて悩む必要がなくなり、ただ、ファンクションがイベントをトリガするときに使うインフラストラクチャに関してのみ、課金される。それは従来の、アプリケーションのためにサーバーをまるまるデプロイし、それらが使われても使われなくても24/7支払うやり方に比べると、きわめて対照的だ。

このやり方は確かに、アプリケーションの開発とデプロイに伴う複雑性をかなり取り去ってくれるが、しかし企業などの一連のポリシーに従ってコードを正しくデプロイし管理していく責任はデベロッパーの肩に100%残る。Serverless, Inc.が提供するようなツールは、そんな新しいやり方には(そのままでは、それだけでは)欠けているかもしれないコントロールやインサイトを、デベロッパーに与える。

2015年にローンチした同社は、現在社員が22名いるが、彼らは分散オフィスの形をとっている。メインのオフィスは、サンフランシスコにある。顧客の中には、EA SportsやNordstrom, Reuters, Coca-Colaなどがいる。今回得られた資金は、主に、同社プラットホームの拡大に充てられる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

最大で50億円規模目指す「ドローンファンド2号」が設立へ、初期投資家として本田圭佑氏やKDDIらが参画

インターネットに接続されたドローンが当たり前のように空を飛んで、モノを運んだり、監視をしたり、それをクラウドで管理できる「ドローン前提社会」が5年以内に実現すると思っている——少し先の未来を見据え、個人投資家として知られる千葉功太郎氏がドローン領域に特化した「Drone Fund(ドローンファンド)」を立ち上げたのは2017年6月のこと。

それから約1年が経過した本日7月31日、千葉氏は新たに2号ファンド(Drone Fund2号 / 正式名称は千葉道場ドローン部2号投資事業有限責任組合)を8月1日に設立することを発表した。

1号ファンドから目指していたドローン前提社会の実現に加え、空飛ぶクルマを用いた「エアモビリティ社会」の実現を目指し、ドローンスタートアップ企業に特化して投資を加速させていくという。

今回立ち上げた2号ファンドには初期の投資家としてみずほ銀行やKDDI、セガサミーといった大企業に加えて、サッカー日本代表の本田圭佑氏(個人投資用のKSK Angel Fund)やマブチモーター創業家一家の馬渕喬氏、麗子氏、健彦氏が新規投資家として参画を表明。

合わせてMistletoe、キャナルベンチャーズ、日本アジアグループ、FFG ベンチャービジネスパートナーズ、オークファン、リバネスといった面々が1号ファンドから継続して出資する。

千葉氏によると2018年9月末をファーストクローズ、12月末をファイナルクローズとして「最大で50億円規模のファンド」に向けて動いているそう。すぐに中国やアメリカでそれ以上のファンドができる可能性はあるとした上で、これが実現すればドローンに特化したファンドでは世界でも最大級の規模になるという。

「想定よりも1年前倒しで進んだ」日本のドローン市場

Drone Fundを立ち上げてから約1年。この期間で日本のドローン市場はどのように変わってきたのだろうか。総額16億円規模の1号ファンドを通じて20社のドローンスタートアップに投資をしてきた千葉氏は、「当初2年ぐらいかかると思っていたイメージが、1年前倒しで実現している」と話す。

「1号ファンドを立ち上げた際は、まだ市場も法整備も進んでおらず手探りで始めたような状態だった。この1年を振り返ると、まずはこんなに日本国内で(投資の対象となる)ドローンスタートアップが生まれていたことに驚いている。もちろん実証実験や法整備が進んだことに加えて、大企業の動きも活発になってきた」(千葉氏)

法整備に関しては自民党の議員で構成されるドローン議連や官民協議会のような場において、ドローンを取り巻く制度や今後の方向性に関する議論が定期的に開催されている。また政府では年内を目処に経産省と国交省に「空飛ぶクルマ」に関して官民で議論する協議会と、ロードマップを策定する予定だ。

もともとドローンに関しては空の産業革命に向けたロードマップが準備されていたけれど、それとは別でエアモビリティのロードマップが作られるのは珍しい。「そんな国は先進国でもまだ例がなく、かなりアグレッシブ。製造では中国、ネットサービスではアメリカの勢いがあるが、法整備においては日本はかなり良いペースできている」(千葉氏)という。

茨城県にある竜ヶ崎飛行場で行われた記者会見ではドローンの飛行デモも実施した

実証実験に関しても農業や物流、検査などさまざまな分野で実施が進んだ。千葉氏いわく「次の1年は社会実装の段階。大企業が自分たちのビジネスの中でドローンを取り入れていくフェーズ」になる。

大企業内でドローンビジネスへの関心度が高まっていることはDrone Fundへ投資している企業を見ていてもわかるだろう。35社が投資家として参画した1号ファンドに続き、今回の2号ファンドではKDDIやみずほ銀行、セガサミーが加わった。

「まだ先が見えづらい市場にも関わらず35社が投資家として一緒にチャレンジをしてくれたことは、ひとつのムーブメントとして大きい。当初はふわっとしていた状態だったけれど、次第に投資家と投資先がひとつのグループになって活動できるようになってきた」(千葉氏)

Drone Fundでは設立時からスタートアップと投資家や大企業をつなぐ役割を目指していたけれど、同ファンドがハブとなることで、大企業がドローンビジネスにエントリーしやすくなる土壌が少しづつできてきているようだ。

ドローンの日本国内市場は2024 年までに2530億円を超える規模に成長すると予想されていて、世界で見ると2022年におけるドローンの潜在利用市場は18兆円を超える規模にまでなるという予測がある。今後の成長を期待して、これから大企業とドローンスタートアップのコラボレーションもさらに活発になっていくのではないだろうか。

2号ファンドの投資家にもさらなる国内の大手企業や個人投資家が参画予定だという。

日本企業が世界のドローン業界をリードする未来を目指して

Drone Fundが目指すドローン前提社会のイメージ。2023年に六本木ヒルズから見た景色だという

冒頭でも触れた通り、Drone Fundが目指すのは「ドローン前提社会を創る」こと。これは東京のような都市で多数の自立飛行ドローンが活躍する社会(レベル4)を指している。このドローン前提社会と同じく期待が集まるエアモビリティ社会に向けて、世界で戦える日本のスタートアップを育てることが2号ファンドの目標だ。

今回、日本マイクロソフトの業務執行役員でDrone Fundのアドバイザリーを務める西脇資哲氏にも少しだけ話を聞けたのだけど「(ドローン市場において)日本企業にも勝てるチャンスはある」というのが、千葉氏と西脇氏双方に共通する見解のようだ。

「日本では移動手段として自動車が定着していて、自動車メーカーだけでなく部品やタイヤに至るところまで技術力があり、世界でもトップクラスのシェアを築いてきた。だからこそ空でもできないわけがないはず。今後ドローンが機体登録制になれば日本の優れた車検制度の仕組みは生きるだろうし、同じように発展している自動車教習所の仕組みも活用できる。あとは『ドローンでイノベーションを起こして、世界を取っていくんだ』という気持ちだけ」(西脇氏)

Drone Fundではこれまでも千葉道場ドローン部としてスタートアップ経営手法を取り入れるための合宿を実施。特許共同出願を専門としたDrone IP Labやリバネスとの連携も通じて投資先のサポートを行ってきたが、今後もこのスタンスは崩さず「日本ドローン株式会社」のようにひとつのチームとして投資先を支援していきたいという。

「ドローン産業における『日本の台風の目』を目指していく。この業界に関わるありとあらゆる大企業とスタートアップが集結するような場所を通じて、国内のドローン関連企業が世界の第一線に立ち、ドローン業界をリードする未来を作っていきたい」(千葉氏)

最後に今回Drone Fundが発表したドローン前提社会やエアモビリティ社会の近未来予想図に関するイラストをいくつか紹介したい。千葉氏によると実現される年度についても実現可能性を踏まえて作成しているとのこと。今後ドローンがどのように身の回りで普及していくのか、これを見ながら想像してみるのもよさそうだ。

  1. VRと組み合わせたドローン観光(2020年)
  2. プロジェクターとなる室内型のドローン。スマートスピーカーと連携(2021年)
  3. ナンバープレートを付けて公道を走るホバーバイク(2022年)
  4. 消費者向けのドローンサービス。子供見守り、忘れ物配達、犬の散歩、自動追尾の日傘(2024年)
  5. 幼稚園送迎サービス(2025年)
  6. 墨田区のビル屋上で離発着するドローンタクシー(2025年)

「合法」となった3Dプリント銃の設計図配布が、21州からの集団訴訟を受けた

銃器構成部品をプリントするために使用される3Dモデルの合法化が行われた直後、21の州が連邦政府に対して、その決定が危険であるだけでなく、多くの理由で違法であるという集団訴訟を行った。しかしこの訴訟の効果は、いわゆるストライサンド効果によって裏目に出る可能性があり、この議論の的である技術をさらに確固たるものにしてしまうかもしれない。

7月の初め、米国連邦政府が、銃火器部品の3Dモデルを配布していたCody Wilsonと彼の会社を相手取って行っていた訴訟を、取り下げたというニュースが流れた。銃の製造と販売方法に対しは依然として制限があるものの、3Dデータを含み部品をプリントできるようにするファイルそのものは、そうした制限の下には置かれないと決定されたようだ。

これは、より厳しい銃規制法を支持する人たちにとっては不愉快なニュースだった。明らかに21州の州司法長官たちはそのグループに属しているようだ。ワシントン州の司法長官であるBob Fergusonは、この特定のデータ形式を合法化する連邦判断を、阻止する訴訟を指揮すると発表した。

「これらのダウンロード可能な銃は登録されず、金属探知機を使っても検出が非常に難しく、年齢、精神的健康状態、または犯罪歴に関係なく誰でも入手できるものです。もしトランプ政権が私たちに安全を保証しないならば、私たち自身がそれを行ないます」と彼は本日(米国時間7月30日)発表したプレスリリースで語った

彼らは、政権は国防総省がその決定に署名する必要があり、議会はその30日前に通知を受ける必要があると主張している。この決定は(召喚および諮問の記録が残されておらず)「恣意的で気紛れに」行われたものであり、従って行政手続き法に照らして違法なものである。

また権利章典修正第10条は、州に対して銃器を規制する権利を与えている。したがって訴訟人たちは連邦判断はその権利を奪うものであるから違憲であると主張している。

こうした主張はみな、もっともなものであるが、 3Dプリント銃のデータが持つとされている危険性は誇張され過ぎており、またその配布に対して政府や、州もしくは連邦が行える規制能力も過大に評価されている。もしこの訴訟に勝てたとしても、3Dプリント銃に対してはほとんど、あるいは全く影響はないだろう。

大勢の州司法長官たちから、マイケル・ポンペオ国務長官とジェフ・セッションズ司法長官へ送られた手紙には「銃火器のデザインをインターネット上で配布することを禁止することで、公共の安全と国家のセキュリティが守られている現状は、維持されるべきです」とある。

だが極端に激しい議論と繊細な政治的な話題に陥る危険性があるが(この記事には万一のために「Opinion」タグを添えている)、現状はそのようなものではない。もし効果的な銃規制が目標であるならば、追求すべきより重要なステップがあると言わざるを得ない。既存の規制には多くの抜け穴がある、例えばガンショーでは未登録の銃器が売られているし、少し手を加えれば銃を完成させることのできる「8割完成部品」の売買は全く合法なのだ。

さらには、何かをインターネットから取り除こうとする試みは、すでに何度も何度も見られているように、失敗に終わっている。あまりにも頻繁に観察される現象なので、ストライサンド効果というニックネームがついているほどだ。違法コンテンツを入手する手段は数多くあり、それぞれ有効なものだ。おそらく自分用の銃をプリントすることに関心のある人間は、VPNやトレントサイトを使用することをためらわないだろう。それどころか、インターネットから何かを取り除こうとする協調的な努力は、その対象をネット上に残し続け、当局の悩みのタネとなる。忘却という機能はインターネットのDNAには存在しないのだ。

3Dモデルを違法にすることで検察官や捜査官がもっと忙しくなることは間違いないが、世界の悪党どもは別にこの訴訟の行末をハラハラしながら見守ってはいない。犯罪者、テロリスト、異国の敵などは、そもそも未登録の銃を入手したり作製したりするためにそのようなデータは必要としていないし、違法行為と認定したところで少なくともその行為を抑止することはできない。

今回の訴訟によって、Wilsonとその支援者たちの行動を縛り破産に追い込むことは可能だろう。だがその勝利はさほどのものではなく、誰の安全性も高めることがないことは確かだ。残念ながら、解き放たれた悪魔はもう箱に戻せないのだ。

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(翻訳:sako)

Samsung、Galaxy S9販売不振で4〜6月期の増益率減速

中国スマホメーカーとの競争に苦戦し、Samsung Electronics 第二四半期決算は過去1年で最も低い増益率という、まったく振るわないものだった。明るい材料として、この韓国テック大企業はセミコンダクター事業が順調であることを挙げている。

営業利益は前年同期比5.7%増の14兆9000億ウォン(約133億ドル)で、2017年第一四半期以来、最も低い増益率だった。純利益は11兆ウォン(約98億ドル)で、昨年同期とほぼ同水準。売上高は4%減の58兆5000億ウォン(約523億ドル)だった。

Samsungは、同社の旗艦スマホGalaxy S9の販売が期待を下回ったこと、季節的な変動、そして低価格スマホとの競争が要因とみている。特にXiaomiとHuaweiという2つの中国企業が手ごわいライバルとなっていて、中国とインドのマーケットでSamsungに圧力をかけている。

スマホ事業で苦戦する一方で、前四半期でもみられたようにSamsungのセミコンダクター事業は好調だ。チップ事業の第二四半期の営業利益は前年同期比45%増の11兆6000億ウォンだった。高密度データセンターの需要のお陰で、今年後半もチップ需要は堅調と見込んでいる。一方、スマホ・タブレット需要は、そこそこのスペックでありながら低価格な端末との競争にさらされ、今後も停滞すると予想している。

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(翻訳:Mizoguchi)

モバイル決済ユーザー、2020年までに半数がApple Payを活用

調査会社Juniper Researchが発表した新たな予測によると、モバイル端末メーカーが提供する非接触型支払いサービスを使ったモバイル決済ユーザー数は、2020年に世界で4億5000万人に達するという。このモバイル決済にはApple PayやSamsung Pay、Google Payその他が含まれる。そして世界の“OEM支払い”ユーザーの2人に1人がApple Payのユーザーであることが見込まれる。これは、サードパーティのアプリではなく、端末メーカーが展開する支払いサービスを利用することを意味している。

今回の予測には、この分野への新規参入、たとえばVersaスマートウォッチのいくつかのエディションで使えるFitbitのFitbit Payなども含まれる。こうした新規参入組のサービスが今後数年間のうちに大きなマーケットシェアを奪うとは考えられない、という分析は特に驚くものではないだろう。

「この分野における今後5年間の成長は引き続き主要OEMプレイヤーのサービスによって独占されることが見込まれる」と、調査結果を執筆したNitin BhasはAppleやGoogle、Samsungの名を挙げて述べている。「加えて、Huawei PayやFitbit Payといったいくつかのマーケットで展開されているサービスがあるが、この点も今回の予測に含まれている」とも言及している。

2020年までに“OEM支払い”による決済額は3000億ドルに達し、店頭での非接触決済の15%を占めると見込まれる。

しかしながら、非接触決済マーケットの主流はモバイルウォレットではなく、カードだ。非接触カードによる支払いは中国を含む一部のアジアでポピュラーで、中国は世界の非接触決済の55%を占めている。店頭での非接触決済は2029年までに2兆ドルに達する見込みで、これは店頭決済の15%に相当する。

注目すべきは、2018年に初めて非接触決済が1兆ドルを超えると見込まれていることだろう。この達成は予測より1年早い。

一方で、Juniperはモバイル決済を使ったチケットの購入が、北米を中心に、そして中国を含む一部のアジアで2022年までに100億回近く行われると予測する。

今回のレポートで興味深いのは、世界のスマホ市場を独占しているのはiPhoneではなくAndroid携帯であるにもかかわらず、Apple Payが多くのユーザーを獲得すると予測していることだ。Android携帯の世界展開規模は、Googleの通信会社とのパートナーシップやAndroid携帯の低価格によるところが大きく、こうした点は発展途上国での市場開拓にも寄与している。いくつかの調査会社によると、世界のスマホ市場でAndroid携帯はいまや85〜86%を占め、一方のAppleのモバイル端末は14〜15%にすぎない。

もちろん、Androidにはアップルにないような問題を抱える。それは、Google Pay(旧Andoroid Pay)と競合する独自のモバイルウォレットを展開するSamsungのようなOEMの存在だ。これが全てではないにせよ、こうした分裂により、近い将来、非接触モバイル決済ユーザーの2人に1人がApple Payを活用する、ということになる。

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(翻訳:Mizoguchi)

Google Calendarで会議の予定変更が楽になった

ほとんどの人が、会議は嫌いだ。そして、ごく少数の、会議が好きな人たちは、あなたが、あの人たちとは会議したくない、と願う人びとだ。でも、会議に疲れてすこし楽をしたいときでも、次に開いてる日や時間を探すことしかできない。そんなあなたの嘆きに応えてGoogle Calendarのチームは、もっと楽に会議の予定変更ができるツールを作った。

二週間後の8月13日からは、会議のゲスト(主催者以外の人たち)の誰もが会議の新しい時間を提案でき、その提案に説明のメッセージをつけられる。主催者はその提案を検討して、OKしたり断ったりする。そのとき主催者は、新しい時間を提案している全員の提案を一つの画面上で見比べることができる(下図)。

ただしちょっとおかしいのは、全員の時間変更の提案を、手作業で比較検討することだ。Googleはすでに、会議の最適時間を見つけるために機械学習のアルゴリズムを使っている。しかし会議のスケジュールの変更のためには、なぜかその新しいアルゴリズムを使わないようだ。

でも、この新しい機能はG Suiteのドメインだけでなく、Microsoft Exchangeとも併用できる。ただし要注意: 会議の出席者が200名を超えたり、終日の会議だったりすると、この機能は使えない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

メイジー・ウィリアムズのDaisyはクリエーター向けSNS――ゲーム・オブ・スローンの人気女優インタビュー

メイジー・ウィリアムズは テレビシリーズ、ゲーム・オブ・スローンズのレギュラー、アリア・スターク役で非常によく知られていてるイギリス出身の若い女優だ。ウィリアムズは今年初め、Daisieというソーシャル・ネットワークを開発中であり、8月1日にスタートさせる予定だと発表した。ウィリアムズと共同ファウンダーのDom SantryはTechCrunchのニューヨーク・オフィスに立ち寄り、このSNSについてのビデオインタビューを受けた。

Daisieは映像作家、ミュージシャン、ビジュアル・アーティスト、ライターなどクリエーティブな人々が作品を公開し、共同作業ができるようにすることを目的としている。Daisieはすでに最初の100人のクリエーターを選定して実験をスタートさせている。

ウィリアムズとSantryはまずアプリそのものの仕組を簡単に説明した。一見したところではDaisieは他のSNSと大きな違いはないように見える。しかし最初の大きな違いはフォロワー数をカウントしないことだ。ウィリアムズ(自身フォロワーの数にはことかかない)の説明によると、「フォロワーのカウントが公表されると競争が起きてしまう。誰がいちばんたくさんフォロワーを獲得したかという一種の人気コンテストになりやすい」ためにこの機能を省いたのだという。

また多くの場合、フォローは一方通行の関係だが、 Daisieでは「連鎖(chain)」を作ることを目的としている。連鎖というのはつまり、フォロワーが一方的に相手のプロフィールを眺めるのではなく、アップされたコンテンツを見てなんらかの協力をするような緊密な関係だ。

連鎖は知り合いや(ことによったら知り合いではないかもしれないが、ともあれ)自分の活動に関係ある分野の人々と緊密な協力関係を作るのが目的だいう。ウィリアムズはDaiseへの投稿として『ハロー! 30秒のミュージックビデオを作ったから見てね。歌っているのは私ですが、作曲家、ミュージシャンの能力より作詞のほうが上だという気がしてます。あなたの歌は大好きです。あなたが作曲して私が歌詞を書けばすばらしい作品ができるのではないでしょうか?』という例を挙げた。

ウィリアムズはDaisieのプロフィールがクリエーターのコミュニティーにおける履歴書や作品のポートフォリオのような役割を果たすようになり、また理想的には、自分自身で条件を決められるような新たな仕事のチャンスが生まれるようになることを期待している。

「私たちはクリエーターに本来のパワーも取り戻す手助けをしたい。市場から他人のアイディアを受け取って処理するだけの注文仕事ではなく、自らの創造力が活かせるようなプラットフォームが作れればいいと考えている」とウィリアムズは語った。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ディップがチャットボットツールのhachidoriに約8.2億円の資本参加

アルバイト・パート求人情報サイト「バイトル」などを展開するディップが、チャットボットツール「hachidori」や店舗とアルバイトのコミュニケーションアプリ「CAST」を開発するhachidoriに資本参加をするようだ。両社は7月31日、それぞれのサイトで本件について発表している。

ディップでは約5億円の第三者割当増資を引き受けることに加えて、hachidoriの既存株主から発行済み株式の一部を約3.15億円で取得する予定。具体的な持ち株比率については非公開だが、今回の資本参加によってhachidoriはディップの持分法適用関連会社になるという。

hachidoriについては6月にTechCrunchでも紹介した通り、プログラミング不要のチャットボット開発ツールを軸に事業を成長させてきたスタートアップだ。同プロダクトを通じて作られたチャットボットの数は5000を超えるほか、企業や学校に法人向けのソリューションも提供している。

また5月から6月にかけて、新サービスとしてアルバイトやパートと店舗間の業務を効率化するチャット・シフト管理アプリCASTを公開。従来時間がかかっていたバイトのシフト管理をチャットボットのスマホ店長が半自動化することが特徴。専用のチャット機能を備えているほか、今後は給与管理の機能も追加していく計画だ。

同社で代表取締役を務める伴貴史氏によると「現在1万人のアルバイトが10万以上のシフトを入れている状態」であり、「(店舗側については)9月に有料版を出す予定だが、現在約400店舗が導入を決めている」という。

ディップは日本有数のアルバイト・パート求人情報サイトを運営していることもあり、同社とタッグを組めることはCASTの今後においても大きな影響があるだろう。伴氏はユーザー、クライアント双方の面で大きなシナジーがあるとした上で「今後求人や金融といった分野に参入していく上で、スタンドアローンでやるよりもスピード感を持てると考えた」と今回の提携の背景について話す。

hachidoriでは調達した資金をもとに、エンジニアを中心とした人材採用の強化とマーケティングの強化を進める方針。ディップの持つ営業網や求人分野の知見も活用しながらhachidoriとCASTの拡大を目指すとともに、求人や金融分野への事業展開にも力を入れる。

なお同社では本ラウンドで追加の調達も予定していて、2018年9月末のクローズを目安にファイナンスを進めていくという。

hachidoriは2015年5月の設立。2017年2月にはベクトル、コロプラネクスト、エボラブルアジア、オークファンと島田亨氏を含む個人投資家数名から1億円を調達している。

Firefoxが新しいロゴを制作中…ロゴというより“ロゴセット”だ

“Firefox”という言葉からは、たぶんこんなものが思い浮かぶだろう:

あるいは、これかもしれない:

小さな変化はあったけど、Firefoxのロゴは2002年のローンチ以来ずっと同じだ(上の下の図が初期のころ、参考ページ)。そろそろ変わるべきだ、とMozillaは言っている。

“evolving the Firefox brand”と題するブログ記事で、MozillaのクリエイティブディレクターTim Murrayが、同社の考え方を述べている: Firefoxは今や、一つのブラウザーではない。Firefox Rocket(低帯域用)やFirefox Reality(仮想現実用)のようなサイドプロジェクトもある現状では、デザインもその多様性を反映すべきだ。

そこで同社は、目下検討中のロゴデザインをいくつか公開したが、最終決定はまだだ。これらの原案も今後変わるだろうし、また外部からのフィードバックも期待している。あるいは、これらを捨てて白紙に戻すことも、ありえる。

というわけで、現状はまだ何も決まっていないようだが、わざと今の段階で公開したようだ。まだきわめて初期の段階だが、でも最後には、Firefoxの新しいロゴが決まるし、しかもそれは単数形(logo)ではなくて、複数形(logos)になるらしい。

候補作は二つの“システム”に分かれていて、そのそれぞれに、一つ“マスターブランド”と11のの補助的ロゴがある。マスターブランドはメインのロゴで、ブランド全体を表す。その下の補助的ロゴは、個々のプロダクトを表す。

アイコンは二つの“システム”へと編成される:

二つのシステムからどっちかを選ぶのなら、ぼくならSystem 2だね。Firefoxの今のロゴが好きだし、それが残っているので完全な置換ではなくてアップデートのようだ。System 1はFox(狐)を強調しているが、System 2はずっとFirefoxだ。

Firefoxによると、新しいロゴが決まるのは“数か月後”だ。元のロゴが好きな人も、あとしばらくは一緒にいられる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

月額1950円で自分だけの“AI先生”が最適な問題を出題、タブレット型教材「Qubena Wiz Lite」公開

AIが個人個人の得意・不得意を分析し、解くべき問題へと誘導するタブレット型教材「Qubena(キュビナ)」。同サービスを展開するCOMPASSは7月31日、この仕組みを家庭でも気軽に利用できるiPadアプリ「Qubena Wiz Lite(キュビナ ウィズ ライト)」を公開した。

Qubenaに関してはこれまでも何度か紹介している通り、生徒一人ひとりの問題の解き方や間違え方をAIが分析し、数万問の中から個々に合った最適な問題(簡単すぎることもなく、難しいすぎることもない)を出題してくれるサービスだ。

現在は小学算数と中学数学に対応。ペンを使ってタブレット上に手書きするスタイルで、定規やコンパス、分度器を使った作図もでき、タブレット1台あれば全ての学習が完結する。

間違え方によって次の問題が変わるのはもちろん、その単元の基礎となる部分でつまずいているような場合には、学年をまたいで本来解くべき問題へと誘導してくれるのが特徴。COMPASSで執行役員を務める坂井祐太氏の話では、このような仕組みによって「自分が解ける問題だけを解いたり、反対に難しすぎる問題ばかりに挑んでやる気を失ったりすることもない。モチベーションを保ちながら自信をつけていくことができる」という。

結果的に効率的な学習をサポートできるため、自社運営の学習塾では中学校の数学1年分の学習範囲が平均32時間で修了するという成果もでているそうだ。

これまでCOMPASSでは河合塾や練成会といった学習塾にQubenaを提供しているほか、自社運営の塾やフランチャイズ教室で同サービスを活用。また個人向けのプロダクトとして、Qubenaの教材と講師のチャットサポートをセットにしたオンライン家庭教師サービス「Qubena Wiz」を展開してきた。

今回リリースしたQubena Wiz Liteは、月額9800円で提供しているQubena Wizから教材部分だけを切り出して、月額1950円で提供するというもの。

「Qubena自体がまだまだ成熟しておらず、知名度も高くない段階。体験して初めて使い勝手がわかるプロダクトなだけに体験者を増やすことが目標だったが、月額9800円というのは価格面のハードルが高く想定ほど増やせなかったのが課題となっていた。アプリのみを提供することで価格を抑え、体験のハードルを下げていきたい」(坂井氏)

今までよりも安い価格で提供するといっても、アプリの機能自体は変わらず小学算数と中学数学をカバー。保護者がサイトから学習履歴や達成状況を確認することも可能だ。

ユーザーの要望によってQubenaを導入する学習塾やフランチャイズ教室を紹介することも、オンライン家庭教師サービスを紹介することもできるだろう。現在Qubenaのユーザー数は1.7万人とのことだけど、今回の新サービスは「ユーザー数を増やすための窓口のひとつ」(坂井氏)として機能することも期待されているようだ。

なお運営元のCOMPASSは2012年12月の設立。2015年6月にインフィニティ・ベンチャー・パートナーズと個人投資家から4000万円、2017年3月に7人の個人投資家から2.2億円、2018年4月に伊藤忠テクノロジーベンチャーズなどから6億円を調達している。

GoogleがChromeブラウザーを仮想現実(Daydream)対応にした…VRの新時代か?

Googleの今日(米国時間7/30)の発表によると、同社はVRプラットホームDaydreamにChromeブラウザーを持ち込み、そのヘッドセットからWebを閲覧できるようにするつもりだ。デスクトップとモバイルのChromeにおける、GoogleのWebVRの実験はもうかなり長いから、ついにそのときがきたという感じだ。

同社の発表によると、その実験が始まったのは2017年のGoogle I/Oカンファレンスからというから、確かにかなり長い。

Daydreamの大型アップデートの歩みが遅いのに対してFacebookのOculusは、新たに登場したスタンドアローンのヘッドセットを中心に、とくにモバイル方面で大きな発表が相次いだ。Daydreamは夏の初めに位置追跡機能のあるヘッドセットをLenovoと共に発表したが、コンテンツの不足がその足を引っ張っている。しかしWebの一部をDaydream対応にできたら、その問題も解消し、しかも多くのモバイルデベロッパーの関心をWebVRに向けることになるので、コンテンツの発見をもっと単純化しようとしているGoogleにとってさらに追い風が吹く。

昨年同社はWebVRのコンテンツをスマートフォン上のChromeで開き、それをCardboard(ボール紙製)ヘッドセットで見られるようにした。それによって、VRの中で何かをローンチしたり、探検したり、ほかのところへ移動したりが、できるようになった。

デスクトップのWebページをVRヘッドセットにロードできるようになったからといって、何かすごいことが起きるわけではないが、Googleが行なう最適化によって、WebVR対応ではないふつうのページでも、“シネマモード”と呼ばれる特殊効果をつけられる。ほかにも、匿名モードや音声検索、ユーザーが保存したブックマークへのアクセス、などの効果・機能がある。

[VRでWebを閲覧するとどうなるか]

そのブラウザーはLenovoのMirage Soloや、Google自身のDaydreamヘッドセットViewで利用でき、またAndroid上でChromeをアップデートしてもアクセスできる。

Webは仮想現実にとって、まだまだ未開の大陸だ。ヘッドセットは大衆的普及にはほど遠いし、最近はVRそのものがやや沈滞している。でもWebという要素が加われば、ソーシャル環境の仮想化などで面白いことができそうだし、VRに熱心な各社の中で今回Googleがブラウザーをヘッドセットに持ち込んだことは、デベロッパーの関心を再び呼び覚ますのではないだろうか。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

郵送でもフィッシングは可能――中国のハッカー、マルウェア入りCDで政府機関を攻撃

単純だが効果的なソーシャル・エンジニアリングの手法だ。中国のハッカーは政府機関に対してマルウェアを入れたCDを郵送するという攻撃を行っていいるという。DHS(国土安全保障省)が組織したMS-ISAC(Multi-State Information Sharing and Analysis Center)はこれに関する情報を公開して警戒を呼びかけている。

非常に単純なトリックで、中国の消印が押された封筒でCDが同梱された無意味な書簡が政府機関に届けられる。このCDのWordファイルにはスクリプト・ベースのマルウェアが仕込まれている。誰かがこのファイルにアクセスするとマルウェアが起動し、おそらくはシステムが乗っ取られるのだろう。セキュリティー専門家、Brian Krebsは次のように書いている

MS-ISACは予備的調査の結果として、CDには普通話中国語のMicrosoft Word (.doc)ファイルが複数含まれており、一部のファイルにはVisual Basicスクリプトで書かれたマルウェアが付属していると発表した。MS-ISACによれば、アメリカ政府や自治体の公文書館、史学協会、文化教育機関などにそれぞれの宛名を付したこうした郵便物が届いているという。これらの機関で誰かが実際にCDを公的なコンピューター・システムに接続したかどうかは不明だ。

なんであれ頼まないのに勝手に送り付けられてきたストレージデバイスをコンピューターに挿入してはならない。とはいえ、このマルウェア攻撃は多少の技術的知識とCD-ROMを製作、郵送する金さえあれば簡単に実行できることもはっきりしている。もっとも、いまだにCDドライブのあるコンピューターを使っている犠牲者を選ばねばならないのは欠点だ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ブランドワールド:中央集権化するエンターテイメント

私はハリウッドの興行収入を眺めることが好きだ。なぜならそれらは文化的トレンドに関する確度の高い統計的ビューを提供してくれるからだ。たとえば読者は、今月初めて、週末に米国で上映されたトップ10のうち8本が続編だったことを知っているだろうか?あるいは、2018年の前半にリリースされた映画は400本を数えるものの、総売上の40%近くがそのうちのたったの4本からもたらされていて、しかもそれらは皆スーパーヒーローものの続編だったことは知っているだろうか?

こんなことになるとは想定されていなかった。10年前には、ビジュアルストーリーテリングは大衆化されると考えられていた:新しいカメラ、新しい編集システム、安価なストリーミング、そしてBitTorrentが組み合わされて、高価な時代遅れのインフラストラクチャをもつハリウッドを凌駕すると考えられていたのだ。世界に広がる天才的な独立系映画制作者たちが、こうした新世代のツールを使い、徐々にハリウッドのスタジオやプロデューサーたちを、ビジュアルで物語性の高い文化の担い手として置き換えて行くと思われていた。

ああ、しかし。そんなことにはならなかったのだ。その代わりに、エンターテイメントの独裁帝国に、YouTube、Amazon、そしてNetflixといった、いくつかの新しい門番が加わっただけだ。新しい映画監督の時代を迎えることも、独自の動きやストーリーを取り入れることもなく、エンターテイメント業界は全く反対方向の振る舞いで巨大な成功を収めた。続編に倍賭けし、ブランドとフランチャイズを、法人ライセンス、製作委員会方式、プロデューサー主導のブランドエンターテイメントなどの巨大な世界へと広げてきた。それらはしばしば、映画、テレビ、書籍、ビデオゲーム、そしてテーマパークなどへ横断的に関わっている。マーベル・シネマティック・ユニバース(テレビ化されたものも含む)、DCエクステンデッド・ユニバース、スター・ウォーズ、スター・トレック、ハリー・ポッター、そしてジュラッシック・ワールド。

こうしたものは、それ自体は悪いことではない。私自身もそうしたもののファンだ。しかしこう問いかけることには意味はあるだろう:なぜ私たちはかつて予見されていたような、多くの優れた映画監督たちの、中央に縛られない広がりを目にするようにならなかったのだろう?そして、こうしたブランドワールド(ある世界観を中心に構成された世界)の圧勝が、長期的にポップカルチャーの草の根と次世代に与える影響はどのようなものだろうか?

最初の問いかけには2つの答えがある:コストと時間だ。映画やテレビの撮影や編集は以前よりもずっと容易になったが、セット、場所、俳優、そして脚本などは、どれも高価で簡単なものではない。優れたアマチュアの作品でも、プロフェッショナルの作品にはまだ遠く及ばない。そして確かに、TwitchやYouTubeのような興味深い新しいストーリーテリングの手段は存在しているものの、そのコンテンツが物語性のあるフィクションであることは滅多にない。そして暗黙的に(時には明示的に)何が人気があるものかを決めているゲートキーパーたちであるTwitchやYouTubeを通して、配信も収益化も行われている状態だ。

しかし、より重要なのは、生産手段を大衆化しても需要は増加しないということだ。テレビ番組の数を10倍に増やしても、(アクセスすることはもちろん可能だが)テレビを見る人が視聴に使える時間が、10倍に増える訳ではない。かつて、アクセス可能なマーケットが十分に大きく成長すれば、ニッチな聴衆から沢山のお金を稼ぐことができるという「ロングテール」理論が流行した。これは本質的には、聴衆の需要は「シンテール」ではなくて「ファットテール」(すなわち平均値からかけ離れた事象が、正規分布から予想される確率よりも頻繁に発生する)だという数学的な主張だった。

しかし、実際にはエンターテインメントに対する需要は、とてもシンテール(お馴染みのものに集中する)だったようだ。私たちの持つオプションが、増えれば増えるほど、すでに自分たちが知っている世界で、すでに知っているキャラクターがさらに求められているようにみえる。これは理にかなってはいる。新しい世界と新しいキャストに取り組むには多くの労力が必要だが、それが労力に値するものになるのかどうかには保証がないからだ。しかし結果として、ブランドワールドは徐々に広大なオープン世界のビデオゲームのように感じられるようになってきた。「メインストーリー」に付随した、サイドストーリー(ローグ・ワンやアントマン&ワスプなど)さえ生み出され、無限に新しいダウンロード可能コンテンツが生み出されているように見える。

私はまた、多くのチャプターに分かれ、多くのキャラクターで構成されている世界は、かつてよりもはるかに実現可能になっているのだろうと想像している。何故なら私たちはそうしたものたちに、より緊密にコネクトされているからだ。例えばインフィニティ・ウォー(アベンジャーズ)以前のマーベル映画を見逃しただろうか?まあ、その場合はいくつかの有名で重要なシーンを、映画全体をレンタルして観ることなしに、YouTube上で15分もあればチェックすることができる。あるテレビ番組の最新エピソードを見逃したりはしていないだろうか、またはただ単にその番組の結論を知りたくはないだろうか?十分な文化的反響があれば、VultureAVClub(どちらも米国のテレビや映画の話題が集まるサイト)が、おそらくCliff’s Notes(様々なテーマを簡単にパンフレット形式でまとめた情報サイト)として使えるような要点を投稿してくれることだろう。その気になればいつでも、映画館に飛び込んだり、真剣なビデオの一気見などの方法で、好きなブランドワールドに足を踏み入れることができる。

その他の興味深い疑問は:ブランドワールドの優位性が高まることが、次世代の作家、監督、プロデューサーたちにとって、どのような意味を持つのかということだ。明らかにプロデューサーたちは、これまでのように、作品を続編につなげて、続編をフランチャイズ化(世界観を基に様々な商業展開を行う)しようとしている。だが彼らはいまや新しいゴールを手に入れた。フランチャイズ化をブランドワールドの究極の目標にしようとしているのだ(ゲーム・オブ・スローンズ、ハンガー・ゲーム、ウェストワールドはその明らかな候補だが、それぞれは独自のハードルに直面している)。

明らかに作家と監督は、成功する可能性が最も高いものを創造したいと思うインセンティブを与えられる。だからといって、独立した1回限りの作品が排除されてしまうというわけではない。私たちはホラー分野(数々の名監督を輩出している)が、毎年「ゲット・アウト」や「クワイエット・プレイス」のような驚くべきヒットを生み出してきたことを知っている。しかし、それはクリエイターたちが物語と同時に世界設定にも焦点を当てることを意味し、ファン・フィクション(二次創作など)を多く生み出しやすくするだろう。結局、ブランドワールド内で書かれるものは、単にお金が払われるファン・フィクションなのだ(中国の急成長する市場でうまくいくかもしれないストーリーへの、インセンティブが与えられるクリエイターたちもいるだろう。だがその話はまた別の記事で)。

これもまた、何も本質的に悪いことはない。だが私が少し心配しているのは、ブランドワールドの数が増えるにつれて、需要が細り始めてしまう位に、エンターテイメントへの需要はシンテールなのではないかということだ。また1つのブランドワールドが大きくなり過ぎてしまうと、必ずしも成功し続けれられるとは限らないということは明らかだ(エイジ・オブ・ウルトロン(アベンジャーズ)、バットマンvsスーパーマン、失敗したスター・トレック映画、そしてソロ(スター・ウォーズ)などを思い浮かべてみよう)。ゲット・アウトのような、少々毛色の違うヒットは、受け入れ可能な程度に全体的な打率が高いので、資金を集めることができる。だが、もしブランドワールドが大衆のマインドシェアを取って、オリジナルな作品の打率がその制作費に届かないようになってしまったら、私たちはますますオリジナル作品を目にする機会を失ってしまうだろう。

そんなことが起きるだろうか?私にはわからない。しかしそうなっているかどうかを知るための良い方法は、数年後に週末興行収入を眺めて、トップ10のうち9つまでが続編かどうかをチェックすることだ。数字を見よう。それらは滅多に裏切ることはない。

[原文へ]
(翻訳:sako)