アウトドア地図アプリ「YAMAP」が栄冠、B Dash Campプレゼンバトル「ピッチアリーナ」

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B Dash Venturesの渡辺洋行社長(左)とセフリの春山慶彦社長(右)

 

福岡で開催中の「B Dash Camp」で10日、スタートアップのピッチコンテスト「ピッチアリーナ」が開催された。国内外54社が参加し、前日の予選を通過した12社が本戦でプレゼンを実施。本戦には韓国や台湾、タイなどの海外勢が9社半数以上を占め、国際色の強いコンテストとなった。最優秀チームにはアウトドア向けの地図アプリ「YAMAP」を手がけるセフリが選ばれた。以下、出場各社とサービスを紹介する。

YAMAP(最優秀チーム)
携帯の電波が届かない状態でも、スマートフォンで現在位置がわかる地図アプリ。地図を印刷して持ち歩くこともできる。利用シーンは登山、スキー、スノーボード、釣りなどアウトドア全般を想定。特に近年社会問題化しているという「山での遭難事故」を解決したいという。2013年3月にリリースし、ダウンロード数は10万件。アプリには自分のアウトドア用品を登録する欄があり、これと連動するアウトドア用品の比較評価アプリをまもなくリリースする予定。ちなみにYAMAPはTechCrunch Tokyo 2013のファイナリストでもあった。

VIDEO SELFIE(審査員特別賞)
加工機能のついた動画撮影アプリ。顔をリアルタイムでトラッキングし、顔の位置、距離に合わせて画像や音楽でデコレーションできる。2014年11月から50万ダウンロード。MAUは7万5000人。

CREVO(PayPal賞)
クラウドソーシングを活用したアニメーション動画制作サービス。企画から納品までをサポートする。国内外のクリエイター1000人が登録し、このうち7割は海外のクリエイター。リリースから1年間で250社が導入している。価格は18万円〜。過去にはhuluのテレビCM動画を作った実績もある。

MakeLeaps
フリーランスや中小企業向けの見積書・請求書オンライン作成・管理・郵送ツール。楽天などもサービスを導入しており、98.3%のリテンション率を誇る。これまでに500Startupsをはじめとして、75万ドルを調達。

BookTrack
音声付き電子書籍プラットフォーム。本を読んでいる位置をトラッキングし、その動きと同期して音楽やエフェクトを付け流ことができる電子書籍。サービスは1年3カ月前にスタート。これまで30カ国200万ユーザーが利用している。学校用のプログラムは1700校、2万5000人が利用している。

CATFI
ネットワーク接続する体重計付き自動給餌器。以前の名称は「Bisrto」でクラウドファンディングのIndiegogoなどにも出展していた。スマートフォンを通じて、ネコの食事量や体重を管理。猫向けの顔認識機能により、複数の猫への給餌が可能。また猫の健康状態に合わせて最適な餌を提供する。

PopUp Immo
法人向けの賃貸物件版のAirbnb。数週間とか短期間にだけレンタルするニーズに対応する。保険などもカバー。フランスのパリでサービスを展開。すでに大手企業からの引き合いもあるのだそうだ。ビジネスモデルは20%の手数料。今後は年末までに1500スペース(現在は500スペース)まで拡大。さらにアジア圏でのサービス展開を検討している。

Sellsuki

東南アジアのECサイト向けツール。東南アジアでは、ECサイトとのチャットを通じて購買まで至るようなECサイトもあるそうなのだが、そういったサイト向けの注文管理やコミュニケーションを管理できる。7000人(店舗)がサービスに登録

ChattingCat
英語のネイティブスピーカーに、自分の英語を添削してもらえるサービス。韓国人創業者のApril Kim氏によれば、世界で一番使われている言語は「ヘタな英語」。自身もその1人で、実際に先生に添削してもらった経験がある。これをオンラインで提供しようと、サービスを開発した。ユーザーは英文を入力すると、平均4分以内に世界中で登録している600人以上のネイティブスピーカーに添削してもらえる。

EatMe
レストランのディスカウントクーポンを配布する台湾のアプリ。ユーザーは2000店舗以上のレストランを検索できる。店舗側は、クーポンの利用状況に応じて、どんなキャンペーンがユーザーに刺さるかがわかる。年間で10万ユーザーが利用しているという。

FANDORA
クリエイターが投稿したキャラクターやイラストをグッズ化し、販売できるプラットフォーム。台湾で2013年にスタートした。1500人以上のクリエイターが登録し、4万点以上の商品が購入可能となっている。すでに130万ドルの資金調達を実施し、翌年には日本、中国、東南アジアにも進出する予定。

フリップデスク
スマホECサイト上で実店舗のような販促・接客を提供するASPサービス。サイトに埋め込んだタグによって訪問者の行動を解析し、最適な販促を行う。例えば、購入を迷っている新規ユーザーを判別し、オーバーレイコンテンツやクーポンを配布したり、チャットでサポートすることができる。販売開始7カ月で約200サイトが導入している。

全ユーザーの3割が投稿、なぜ10代はMixChannelに熱狂するのか?

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スマートフォンで撮影した10秒の動画を共有できる「MixChannel」は、10代に人気のコミュニティだ。月間アクティブユーザー数(MAU)は380万人、月間再生回数は5億回。こうした数字以上に驚くのは、動画を投稿したことのあるユーザーが全体の3割を占めることだ。なぜ、10代はMixChannelに熱狂するのか。

福岡で開催中のイベント「B Dash Camp 2015」で、サービスを運営するDonutsの福山誠氏が、その秘訣を明かした。

MixChannelで人気のコンテンツのひとつはカップル動画だ。どんな内容かというと、中高生の男女がカメラの前でイチャイチャと抱き合ったり、キスしたりというもの。ただそれだけの内容を何組ものカップルがマネをして、相次いで投稿しているのだという。

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MixChannelプロデューサーの福山誠氏

「MixChannelでは、他のユーザーが投稿した動画をマネる行為が多いんです。やってることはみんな一緒で、数千人が目をつぶってチューする動画を上げている。マネをしたり、されたりするのが、MixChannelのコミュニケーションなんです。」

ユーザーがコンテンツを投稿するCGMは、Instagramのように利用者のほとんどが閲覧も投稿もするサービスを除けば、投稿率は全体の1割以下というのが相場。福山氏の言葉を借りれば、MixChannelの投稿率の高さは、「お題に乗っかるコミュニティの楽しみ方がある」ということらしい。

資金調達・事業提携イベント「RISING EXPO 2015」、東南アジアから応募開始

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サイバーエージェント・ベンチャーズが主催するスタートアップ向けの資金調達・事業提携支援イベント「RISING EXPO」が今年も開催される。

このイベントは、1億円以上の資金調達を検討するスタートアップと、国内外の有力ベンチャーキャピタルや大手事業会社とのマッチングイベント。事前選考を通過したスタートアップのプレゼンテーションとネットワーキングの場を提供する。

昨年は日本のほか、東南アジア(インドネシアで開催)、韓国、中国のアジア4地域で開催したが、今回は日本、東南アジア、韓国の3地域で開催する予定。日本で開催された「RISING EXPO 2014 in Japan」では、スタートアップ15社、ベンチャーキャピタル60社、事業会社60社が参加した。

このイベントがきっかけになったもの、そうでないものを含めての数字にはなるのでどこまで参考になるかは分からないが、登壇企業の累計資金調達額は40億円以上、1社当たり平均資金調達額は3億円を超えているのだそう。今年は資金調達に加えて、事業会社とのマッチングについても力をいれるのだとか。

2015年の開催スケジュールは以下の通り。なお本日4月9日より、インドネシアで開催するRISING EXPO 2015 in South East Asiaの応募を開始する。その他の地域は決定次第随時特設サイトの情報をアップデートしていくとのこと。

・RISING EXPO 2015 in South East Asia:2015年6月25日
・RISING EXPO 2015 in Korea:2014年6月予定
・RISING EXPO 2015 in Japan:2014年8月7日

応募条件は次のとおり。なお本店所在地は国内外を問わない。
・IT・インターネット関連ベンチャー企業であること
・原則、サービスローンチをしており、一定のユーザー数もしくは一定の売上を獲得できていること
・1億円以上の資金調達を検討していること

ちなみに昨年、一昨年に引き続き、僕も事前審査員として参加させてもらう予定だ。伸び盛りのプロダクト、そして起業家と出会えるのを楽しみにしている。

「5円チョコが売れないECを変えたい」BASEとWebPayの創業者が語る”決済の未来”

スタートアップ業界を取り巻く旬のキーワードを読み解くイベント「TechCrunch School」。3月24日には、オンラインでの売買に欠かせない「決済」をテーマに、先日LINEの傘下に入った、クレジットカード決済機能を組み込める開発者向けサービス「WebPay」創業者の久保渓氏と、近日中に新たな決済サービス「PAY.JP」の提供を表明している、BASE創業者の鶴岡裕太氏が登場した。

2人をリクルートホールディングスが東京・渋谷に開設した会員制スペース「TECH LAB PAAK」に招き、TechCrunch Japanの増田覚が司会を務め、オンラインにおける決済という処理が抱える課題について語ってもらった。

LINEの買収で何が変わる?

久保氏は、API形式でクレジットカード決済機能を提供し、開発者がサイトやアプリなどに簡単に決済機能を組み込めるようにするサービス、WebPayを2013年5月に立ち上げ、提供してきた。

同社は2015年2月、モバイル送金・決済サービスを提供する「LINE Pay」を通じてLINEに買収されることを発表した。スマートフォンでの購入の広がりという大きなうねりにチャンスを見出していることが、買収に同意した大きな理由だったという。

現に、久保氏が会場で「スマホでものを買ったことのない人は?」と尋ねたところ、ほぼゼロという結果だった。「僕自身もそうだけれど、机に座っていて目の前にPCがあるのに、なぜかスマホでものを買ったりする。これって大きな習慣の変化だと思う」(久保氏)。検索などに時間のかかるPCに比べ、スマホは導線が短く、楽で、リアルタイムな購買体験を提供できる可能性がある。そこに、LINEと組む意味があると考えているそうだ。

「WebPayとLINE Payが組んで何が変わるの?」という率直な質問に対し、久保氏は「世界が変わります」と答えた。

「これまで、ものを買う行為って、土日など時間のあるときにやっていた。それが、スマホの決済が変わることで、空き時間、ほんの30秒あれば買うといったことが可能になる。決済という行為が、ストレスなく、リアルタイムで一瞬で終わるような世界を目指しています。安全で、ユーザー自身が意識して渡すと同意したとき以外は個人情報を渡さないという、エンドユーザーにとって理想的な世界の中で、モノやサービスを享受する体験ができる世界というのが、LINE PAYの提供する価値」(久保氏)。

これまで通り、開発者向けのWebPayも継続していく。ただ、WebPayがどちらかというとものやサービスを提供するマーチャント、サービス事業者向けのサービスだったのに対し、LINE Payではコンシューマーの視点に重点を置くことになる。

「決済がインフラだけで満足してもらう時代って、2014年で終わったと思っています。使いやすさや便利さも含め、使ってくれているサービス事業者の売り上げにどれだけ貢献できるかが決済事業者にも求められる時代です。マーチャントを向いて商売するだけでなく、一般のコンシューマーも見てサービスを提供していかなくてはならない。購買行動を全て設計するのが決済事業者」と久保氏。LINEが抱えるユーザーベースを基に、その人たちが買いたいものを最も買いやすく、心地よい導線を設計して、欲しいときにすぐ買える決済サービスを提供して、売り上げに貢献していきたいという。

ちなみにLINEによる買収の別の効果が、「門前払いがなくなりました」(久保氏)ということ。ある会社と新たにパートナーとなりたい、話をしたい、という時に、相手側も積極的に高いモチベーションで関わってくれるようになったそうだ。

「決済はうまみのないビジネス」

一方、「PAY.JP」の名称で決済ビジネスへの参入を表明した鶴岡氏だが、意外にも「決済って、あまりうまみのないビジネス。ビジネス的なうまみという観点なら、もっと他にいいビジネスがある」と述べる。

この点には久保氏も賛同する。しっかり、堅牢にやらなければいけないビジネスの性質上、導入までのリードタイムが3カ月程度かかることもざらにあり、「全部、3〜4カ月遅れで数字が出てくる」(同氏)。従って、いわゆるWebのスタートアップの感覚からすれば、決済ビジネスのスピード感は非常にゆっくりなのだそうだ。

「でも、決済業界に対する明確な課題意識があって、その課題を解決するために必要なことをやりたいんだ、という形であれば、カード会社も協力してくれるし、耐えられると思う」(鶴岡氏)。久保氏も、「N年コミットするつもりでやるのかどうかがすごく重要。僕はWebPayをやっていて、資本主義社会の根幹を自分が担えるかもしれない、というくらい、社会に触れ合っている感覚がある。自分たちが資本主義社会のインフラ、プラットフォームとして、社会を一歩前進させるところにコミットしているんだという信念があって、N年がんばろう、というのがあれば、すごくやりがいがある」と述べる。

5円チョコが売れないECサイト

鶴岡氏が抱いているその課題というのは、「今の決済が、過去のオフラインでの決済のプロセス、形式の影響をあまりに受け過ぎていること」だ。

例えば、インターネット上で1つの決済を処理しようとすると、間に非常に多くのプレイヤーが挟まることになる。「僕、これってすっごい無駄だなと思うんですよ。既に、Bitcoinのように二者間で直接お金をやり取りできる手段もあるし、自分の与信枠を与えるというやり取りだってできるのに、そうなっていない。そうした効率の良くない部分をPAY.JPで変えていきたいと思っています」(鶴岡氏)。

究極的には、オフラインの世界と同じような価値の交換スキームをオンラインでも実現するのが同社のミッションだという。

「オフラインだと、モノを売る人と買う人の2者だけで価値の交換が完結するわけですよ。でもひとたびインターネットが間に入るとそうはいかない。今、ECサイトで5円チョコって売れないんですよね。手数料がそれ以上にかかるので。だから、負担なく5円チョコを売れるECサイトができるように……つまり、手数料を誰か事業者が代わりに負担して『無料』にするのではなく、本質的に手数料のないスキームというのを構築できないかと考えています」(鶴岡氏)。

久保氏も、「決済のシステムでは、1980年代の仕組み、下手をすると1970年代後半の仕組みが動いている。そこでは、1つのトランザクションを処理するために原価として5円、10円という手数料がかかってしまい、それ以下にはできないんですよね。『オフラインを引きずっている』ってそういう意味です」と述べた。

「左手にクレカ、右手にスマホなEC体験は20年後に爆笑される」

1990年代、インターネットが広がりECサイトが生まれ始めた時期に、そうした過去のシステムとWebとを無理矢理つなげた仕組みによって、今の決済の仕組みは何とか保っている。とはいえそろそろひずみが来ており、トランザクションの仕組みを2010年代の今の技術に置き換えていくことができれば、原価を引き下げ、コストのかからない決済ができるのではないかと期待しているという。

鶴岡氏は、「今は、左手にクレジットカードを持ち、右手にスマホ持って番号を打ち込んで決済をしていますけど、20年後の人がこの姿を見たら爆笑すると思うんです。いろいろな方法で個人を特定できるこの時代において、オンラインにおいてもクレジットカードというものを使うのがなんかすごく効率が良くないなと思っていて、そういうところで『与信枠』というテーマを追求したいと思っています」と述べた。

これからの決済手段、「一回は多様化」?

決済をめぐるプレイヤーは多様化している。方やApplePayがあり、日本ではSuicaという存在がある他、ID決済の可能性もあるなど混沌とした状況だ。今後、決済手段はますます多様化するのだろうか?

この問いに対し久保氏は「一回は多様化すると思います。WebでさまざまなAPI標準がうわーっと出てきてREST APIに収束したのと同じで、一回は決済も多様化して、どこかでマジョリティが使っている良いものに集約される流れになるのではないか」と述べた。

一方鶴岡氏は、「決済という仕組みの中で、最強の立場にあるのがビザとマスターで、そこが変わらなければ言うほど大きく変わらないと思います。その意味で、これからの10年、20年で、あの立場に立つもの、入れ替わるものが出てくるかどうかが面白いポイントだと思っています」と言う。

取り残された領域にテクノロジの力を、「Airレジ」の取り組み

セッションの後半には、リクルートライフスタイルの執行役員、大宮英紀氏が登場し、POSレジの機能を提供する無料アプリ「Airレジ」について紹介した。2013年11月にリリースされてから、Airレジの導入件数は当初の予定を上回るペースで伸び、今や10万アカウントを突破。クラウド関連サービスとも連携を広げている。

Airレジというアプリをリリースした目的について、大宮氏は「テクノロジや環境が変わっていく中で、取り残されている領域がある、それを変えたいと思って数人で始めた」と振り返る。Airレジというプロダクトを通じて、それと意識することなく、テクノロジをうまく活用できるようにしたかったのだそうだ。

飲食店や小売店鋪、サービス業などの場合、店舗を開くには相応のイニシャルコストが必要になる。同じ金額をPOSレジに投じる代わりに、Airレジでまかない、マーケティングなどほかの部分に力を入れることで、中小企業の成長を後押ししたいという。


Facebook F8カンファレンス、初日のまとめ

今日(米国時間3/25)、Facebookのデベロッパー・カンファレンスF8が開幕した。初日の主要な発表をまとめてお送りする。大小さまざまな発表があったが、ここでは特に重要なものを選んで簡単に紹介する。

画像をクリックするとさらに詳しい元記事iにジャンプする〔日本版記事がある場合は日本版に飛ぶ〕。

メッセンジャーのプラットフォーム化

先週、われわれが全力を挙げてスクープに成功したとおり、 FacebookはMessengerをプラットフォームとしてデベロッパーに開放することに踏み切った。これによってデベロッパーはMessengerに新たな機能を追加できるようになる。GiphyのようなリアルタイムGIF画像検索、ボイスメッセージの声をいろいろに変える、チャットしながらお絵かきして友達に送れるようにする、など応用は無数に考えられる。Messenger内にミニ・アプリ・ストアができたようなものと考えるとよいだろう。

新しいリアルタイム・コメント・システム

Facebookを利用したブログのコメントシステム(この記事の下にも設置されている)はたいへん実用性の高い機能だが、リリース以来アップデートがないままかなり時間がたつ。

今日のアップデートで、ブログとFacebookページでコメントがリアルタイムで同期するようになった。つまりこの記事の末尾のコメント欄にコメントすると、すぐにTechCrunchのFacebookページにもそのコメントが反映する。

FBビデオがエンベッド可能に

FacebookはYouTubeの縄張りにも侵入しよとしている。Facebookビデオが他サイトに簡単にエンベッドできるようになった。もしかするとこれによってYouTubeにはアマチュアのホームビデオ的な投稿が減るかもしれない。Facebookはエンベッド・ビデオにも広告を表示するのだろうか? おそらくそうなるだろう。

360°全周ビデオ

面白いことに、Facebookは3D全周ビデオをニュースフィードでサポートすると発表した。ユーザーはビデオの再生中、マウスのカーソルで視点をあちこち動かすことができる。普通のディスプレイで全周ビデオを表示してもそれほどのインパクトはないが、カギはFacebookが買収したOculus Riftにある。バーチャル・リアリティー・ヘッドセットを装着して360°全周ビデオを再生するとそのインパクトは強い。FacebookはニュースフィードのVR化を狙っているのだろう。

あと10年くらいするとパパが子供にこんなことを言っているかもしれない。

「パパの若い頃はみんなでいっしょに>映画を見たんだぞ。みんなで同じスクリーンを見たんだ。そのスクリーンは平らだったんだ!」「わかったよ、パパ。いいからRiftを返してよ」

ParseはIoTのSDK

われわれは全速力でInternet of Things〔モノのインターネット〕の時代に突入しようとしている。コーヒーメーカーから冷蔵庫、照明、家のドアまでがインターネットに接続された世界だ。しかしモノのインターネットの規格化、標準化(そして当然相互運用性の確保)に関してはまだほとんど実績が挙がっていない。.

今日のF8でFacebookはParse for Internet Of Thingsを発表した。 これはさまざまなIoTプロジェクトにバックエンドを提供するSDKだ。相互運用性に関しても、まずArduinoをサポートし、順次範囲を拡大していくという。

LiveRail

去年、FacebookはLiveRailを買収した。これはサイトやアプリ内の広告スペースを入札によって販売する広告マーケットプレイスだが、今回、2つの変更を行った。まずビデオに加えてモバイル・ディスプレイ広告をサポートした。また広告のターゲティングのために匿名化されたFacebookのユーザー・データが利用できるようになった。

アプリのアナリティクス

Facebookはアプリとユーザーについてもちろん膨大な情報を持っている。今回Facebookはその一部をデベロッパーに公開し、どんな人間が彼らのアプリを使っているのか判断する手助けとすることを決めた。自分たちのゲームのプレイヤーは女性が多いのだろうか? ティーンエージャーの割合は? ティーンエージャーのアプリ内購入の平均は? アプリ内購入者の平均年齢は20代だろうか? Facebookの新しいアナリティクス・プラットフォームはそうした疑問に答えてくれるという。

明日のF8、2日目のレポートをお楽しみに。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


SXSWに来たクールな日本のスタートアップ4チーム紹介―AgIC、SenSprout、exiii、Plen

私は今年のSXSWの取材ではBates Motelの4号室をベースにしている(この話はまた別に)。ここで、この週末、はるばる東京からテキサス州オースティンにやってきたクールなハードウェアのスタートアップをインタビューすることができた。8チームのデモを次々にに見たが、そのうちの4チームには特に強い印象を受けた。

最初のチームはわれわれが以前に紹介したことがあるAgICだ。これはユーザーが銀(Ag)を含有する伝導性の高いインクを使って専用のペンまたはインクジェットプリンターで印刷することによってサーキットボードを自作できるというもの。

AgICは今回のSXSWで回路の大型化をデモした。デモを担当した杉本雅明氏によると、新しいバージョンでは部屋の壁ぐらいのサイズの回路を作成できるという。

またAgICは小型のハードウェア・コントローラーを開発した。ユーザーはこのコントローラーを介して自作したAgIC回路から他の電子機器を操作できる。つまり自作した回路をボタンに使ってほかのエレクトロニクスを動かせるわけだ。「A」の回路を押すと照明が点灯し、「g」の回路でステレオを鳴らすといったことができる。

テクノロジーとしても興味深いが、電子回路がビジュアルに美しいものになり得るというコンセプトが特に面白かった。杉本氏は「壁紙にもできる」と言っていた。

2番めのスタートアップは西岡 一洋、三根一仁、岡田隆太朗、川原圭博の4氏によって創立されたSenSproutだ。

SenSproutは農業のための環境の水分センサーシステムだが、実はセンサーにAgICの回路プリント・テクノロジーを利用している。インクジェットで導電性インクをプリントするだけよいので、従来の水分センサーに比べてはるかに低価格で製造できる。コンセプトの実証研究の段階で、 Wiredが紹介したことがある。2ヶ月前に会社が設立され、SenSproutの商品化を目指している。

SenSproutセンサーのユニークな特長はバッテリーを必要としないことだ。なんとこのセンサーは周囲を飛び交う電波(テレビ、ラジオ、携帯等)を微小な電力に換えて作動する。モニターの結果は、専用アプリで視覚化される。

次に未来的な筋電義手を開発しているexiiiのチームが登場した。共同ファウンダーの近藤玄大、山浦博志、小西哲哉の3氏に加えてプロダクトのユーザーでエバンジェリストの森川氏がデモを行った。eiiiはは家庭の3Dプリンターで出力できる低価格で高機能かつスタイリッシュな義肢の開発を目指している。義肢を必要とする人々すべてが購入できるような製品の市販がチームの目標であり、300ドル程度を目指している。日本では義肢を必要とする人々のうち筋電義肢を実際に利用できているのは、高価格に妨げられて1%程度に留まっているという。

森川氏が実際に装着してデモを行った。森川氏は右腕を一部失っているが、exiiiの義手により500g程度の物体をつかむことができた。またアタッチメントを介してカメラを保持することもできた。

デモセッションの最後はPlen2だった。 Led by 赤澤夏郎、富田敦彦、伊藤 武仙の3氏のチームの目標は「誰でも作れる小さなヒューマノイド・ロボットによりロボットと暮らす未来をみんなに届ける」ことだという。チームはロボットの日常のツールとしての価値を幅広い層に啓蒙しようとしている。

この目標を実現するために開発された小さなロボットはパーツの大部分が家庭で3Dプリント可能だ。ユーザーはモーター部分だけを購入すれば、他のパーツは自分でプリントして組み立てることができる。組み立て済みの完成版も注文できるというが、私には「プリントして自作できるロボット」というコンセプトが面白かった。かわいらしい小さなロボットはスマートフォンやタブレットから操縦でき、歩いたり、踊ったりするほか小さな玩具の車の運転までできる。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


惚れた起業家の夢を支える―、日本の独立系VCが学生にベンチャー投資の魅力を語る

近年、若者のベンチャーキャピタリストへの関心が増しているのだろうか。現役の有力ベンチャーキャピタリスト6人が集い、学生向けに講演を行う「VC SCHOOL」が3月12日に慶應大学日吉キャンパスで開催された。イベントには160名もの応募があったといい、同日開催のスタートアップカンファレンスとは異なり、VC SCHOOLは選抜された60名の学生がイベントに参加した。

登壇したのはEast Venturesパートナーの松山太河氏、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ パートナーの河野純一郎氏、インキュベイトファンド代表パートナー和田圭祐氏、CyberAgent Venturesジャカルタオフィス代表の鈴木隆宏氏、ANRI代表パートナーの佐俣アンリ氏、Skyland Ventures代表パートナーの木下慶彦氏の6人だ。

イベントでは6人が5分間のプレゼンが行い、経歴や投資先の紹介のほか、ベンチャーキャピタリストという仕事についての思いが熱く語った。

松山氏はAppleやMicrosoftやGoogleなどアメリカで急成長したIT企業の時価総額(240兆円)が日本の全上場企業の時価総額の約半分であることを指摘。これらの企業が設立当初にVCから資金調達をしており、VCとは「世界的経済を代表する企業を作り上げる格好いい仕事」と話した。しかし、「日本のスタートアップはまだまだ小さく、日本でVCが格好いい仕事になるには、このような規模を生み出す必要がある」とも伝えた。和田氏もAmazonへの出資で有名なKleiner Perkinsのジョン・ドーア氏を例に挙げ、「このくらいのインパクトを残したい」と語った。世界レベルでの実績が生まれれば、確かに日本でもVCへの注目はさらに増すのだろう。

成功した起業家が脚光を浴びる一方で、ベンチャーキャピタリストというのは陰で起業家を支える存在であることも多い。そうした黒子としての仕事の魅力について河野氏は「惚れた起業家の夢の実現を一番近くでサポートすることができる。惚れた起業家のために自分の人生を使えること」と熱い思いを述べた。よくコンサル志望の学生が「クライアントに寄り添って問題解決がしたい」と言っているのを耳にするが、ベンチャーキャピタリストを目指す学生は少ない。本当にそう思うのなら、ベンチャーキャピタリストも選択肢として含まれるるのではないだろうか。

世界の有力VCとともにインドネシアで出資を行っている鈴木氏は、このような世界レベルのVCの中で自分の価値を出すためには、「多様性を受け入れる柔軟性」「自分の強みを持ち、それを活かすこと」「大きな野望をもつこと」が重要であると学生に伝えた。その一方、佐俣氏はベンチャーキャピタリストがまだまだ少ない日本においては、チャンスであること、また9年前に木下氏とともに、この「VC SCHOOL」に参加者として参加していたことを振り返り、「この中から10人のベンチャーキャピタリストが生まれてほしい」とメッセージを送った。会場の参加者は高校生から、すでにVCでインターン経験をしている学生、ビジネススクールの学生など幅広かったが、この言葉はベンチャーキャピタリストを志すすべての学生の心に響いただろう。また、木下氏はスタートアップで働く若者を増やすための「3年で1000人スタートアップ計画」という自身の取り組みを紹介し、またこれから動き出したいという思いを抱く学生に向けて「大学生はプログラミングとTwitterを始めるべきだ」とアドバイスした。

質疑応答コーナーでは多くの学生が積極的に質疑に参加していた。シード出資とは起業家という人への投資ということにもなるが、その場合に「どのような点を重視しているか?」という質問に対して各ベンチャーキャピタリストそれぞれ少し違うものが感じられた。

「ベクトルが自分自身ではなく、社会に向いているかに注目する」という鈴木氏、「休日に出会っても話しかけたくなるような人がいい」という佐俣氏、これらに加えて「しんどい経験を乗り越えたことのある人」という和田氏、「変なプライドがなく、可愛げがある人」という河野氏、「かしこい、且つガッツのある人」という松山氏、「新しいことを考えていて、エンジニアチームがあることが重要」という木下氏。

起業家は不確実性の極めて高い状況を、リスクをとりながらも進み続ける必要がある。強い原体験からくる課題感などの強い思いや辛い時に踏ん張れる力、そしてまっすぐな姿勢は大切である。これらが合わさってはじめて、「一緒にやっていきたい」と感じられるのだろう。

ベンチャー投資というと与えるインパクトは大きく、華やかに見える側面もあるが、佐俣氏は「VCは太陽ではなくて月。起業家から受けた光で、初めて輝く」と、その役割を表現する。日本ではまだまだメジャーな職業とは言えないベンチャーキャピタリストであるが、60名もの学生が参加し、真剣に耳を傾けていたのは興味深い。未来を担う起業家を発掘するようなVCが生まれるかもしれないと感じられるイベントだった。来年の開催も期待したい。


写真提供:飯塚良貴


家庭用スマートデバイスは、オタクだけでなく大衆向けにする必要がある

家の中のデバイスがインターネットとつながることで、様々なことが可能になるだろう。しかし、そのようなスマートデバイスが一般に普及するようになるまでには、まだ多くの課題が残っているとQuirkyのCEO、Ben KaufmanはSXSWで話した。

「家具や家電をインターネットにつなげて今までにない機能を持たせることを皆が考えています。どのようにそれを実現するかを検討することは、とても面白いことです。しかしQuirkyを始め、この分野でそれを完全に成し遂げた企業はまだ現れていません」。South by Southwestの今日のイベントでAndreessen HorowitzのScott Weissとの対談でKaufmanはそう話した。

第一の課題は取り付け方法だとKaufmanは言った。箱から取り出して、コンセントに挿すだけで使えるのが理想的だが、現実はそう上手くいかない。例えば、インターネットと繋がるスマートロックを取り付ける場合、既存の錠を取り外し、ねじ穴を開け、スマートロック専用の器具を取り付ける作業が必要だ。サーモスタットをスマート化したNestでも、複数の回線とつなぐ作業が必要だ。だれもがその手間をかけてまで取り付けたいとは思わない、とKaufmanは説明した。

二つ目の課題は、端末を起動させるまでの準備だ。製品の取り付けが完了したら、今度はインターネットに接続しなければならない。今はまだWifiと繋げる方法が煩雑で、これを簡単につなげることができなければ、そこで諦めてしまう人が後を絶たないだろう。

次の問題は、バッテリーが持つ長さだ。Kaufmanは自社で開発した卵のトレーの話を引き合いに出した。彼は笑いながら、この製品は人が卵を買うよりも高い頻度でバッテリーを交換しなければならなかったと話した。もし3つのドアと窓に取り付けた25個のスマートロックのバッテリーを半年に一度は取り替えなければならないとしたら、顧客は不満に思うだろうと指摘した。

頭に留めておきたいのは、これらのスマートデバイスは、「電気のスイッチ」のような、ほぼ何のメンテナンスも必要としないものをリプレースしようとしていることだ。こうした電気スイッチのような物はバッテリーの交換やソフトウェアのアップデートをしなくても問題なく使えるのだ。

最後の問題は、ソフトウェアの観点から、どのようにデバイスに関わり、得られた情報を有効活用して物事を効率化するかということだ。今現在、デバイスの効率を高める為には、集められたデータを見てユーザー自身が何かを変えなければならないと彼は説明した。

「一番の価値は、得られたデータで物事を可視化し、インターフェイスを限りなくシンプルにすることで得られます。今はまだ、情報を表示してユーザーに動いてもらわなければなりません。例えば、何かの月々の料金を節約する為には、12ヶ月分のデータを見て、自分で各種の設定を変える必要があるのです。データを活用して、その一連のプロセスをプログラムに落とし込むことで、手動の作業を無くすことを進めていくべきでしょう。全てを自動化するということです。」と彼は説明した。

対談の後の質問で、参加者の一人が「おばあちゃんでもデバイスを使えるようになるでしょうか?」との質問があったが、そうまでなるには、まだまだ時間が必要であるとのことだ。

セキュリティーもスマートデバイスとスマート化した家の大きな懸念の一つだ。データのプライバシーの扱い方や、ハッカーからデバイスを守るといったことだ。スマートロックはハッカーの攻撃に屈してはならないし、誰も暖房や冷房、電気使用量の情報やデバイス製造元とのやりとりを共有したくはないだろう。このようなデバイスを販売する企業はこの問題について慎重に取り組まなければならない。

Kaufmanは、小売店での教育の問題についても指摘した。DIY商品を取り扱う店舗の従業員は既存の商品の販売には長年の経験があるだろうが、新しいスマートデバイスを販売するにはそれに応じたトレーニングが必要だと話した。予算の限られているスタートアップにとって、販売員が適切に販売が行えるように教育する費用を捻出するのは難しいかもしれない。

General Electricsと提携したQuirkyは、新しい発明品が簡単に手に入るようにする為に立ち上げたと、Kaufmanは話した。ユーザーコミュニティーから意見を募り、製品を発明していくこのプラットフォームはこれまで一定の成果を上げてきた。2013年頃から、意見の大半がインターネット接続関連のアイディアで占めるようになった為、取り扱う製品をスマートデバイスに特化させた。

発明家が商品を考えたり、販売したりできる場を提供してきた同社だが、ローンチしてから1億ドルの損失を出している。

Weissは、今のスマートデバイスの状況はパソコンの黎明期と似ていると話した。誰かが趣味として作る時期は過ぎたが、まだスマートデバイスが活躍するまでは技術的なハードルをいくつか超える必要がある。煩雑なプロセスの大部分が自動化されるまでは、これらのデバイスはオタクが熱狂するだけの製品に留まるだろう。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ facebook


「エンジニアの立場でスタートアップの成功確率を上げたい」―CTOという仕事を語り合う

2015年3月9日に開催したTechCrunch School第7回、「CTOというキャリアを考える」では、藤本真樹氏(グリー株式会社 取締役 執行役員常務 最高技術責任者)、舘野祐一氏(クックパッド株式会社 執行役 最高技術責任者)、増井雄一郎氏(株式会社トレタCTO)が集まり、CTO(最高技術責任者)にまつわる話題を語り合った。モデレーターを務めたのは西村賢(TechCrunch Japan編集長)である。

3人のCTOが語った「3つの数字」

3人のCTOに西村編集長から出されたのは「3つの数字」で自己紹介してほしいというお題。

グリー藤本氏が挙げた数字は、「3→1788」「10→ ?」「1→ >10」の3つ。最初の数字は従業員数だ。藤本氏が関わりはじめた10年前のグリーは3人の会社だったが、今の従業員数は4桁だ。2番目の数字はサーバ台数。藤本氏が参加した当時は10台だったが、今では「未公表ですが、5桁はいってます。だからバカスカ壊れます」。3番目の数字は利用しているプログラミング言語の種類だ。創業当時はPHPだけだったが、今や10以上の言語を使っている。西村編集長が「言語の割合は?」と聞くと、藤本氏は「PHPがやっぱり多い。C#、JavaScript、Objective-C、Javaとか。あとはRubyとか。C/C++もちょこちょこあったり」と返す。

クックパッド舘野氏が挙げた数字は、「3000→18992」「1→15」「1→5」の3つ。最初の数字は、同社のテスト数の推移だ。2010年、舘野氏が入社した時にはテスト数は約3000だったが、直近の数字は1万8992まで増えた。2番目の数字はサービス数、3番目の数字はサービスを提供する国の数の変化だ。サービス数はレシピサイト1種類だけではなくなり、サービスを提供する国も、アメリカ、スペイン、インドネシア、レバノンが加わった。

トレタの増井氏は「『IT芸人』か『フログラマー』で検索してください。私の記事が上位に出てきます」と笑いを取りつつ、「4社」「2000社」「3倍」と数字を挙げる。1番目の「4社」は増井氏が創業に関わった会社の数だ。大学時代に起業を経験。その後フリーランスになるが、米国に渡りBig Canvas社を立ち上げ、日本に戻ってmiilの創業に関わった。今のトレタは4社目ということになる。「さすがに少しずつ賢くなってきている」と話す。2番目は、飲食店の予約サービスを展開するトレタの顧客数だ。3番目は、増井氏のCTOとしてのミッションとして「エンジニアの数を3倍にする」目標があることから来ている。

CTOの役割とは結局なんなのか?

この「つかみ」の後で西村編集長が聞き出していったのは、3社3様のそれぞれの段階にあるスタートアップ企業にとって、CTOとはどのような役割なのかということだ。今や従業員数4桁の組織となったグリー藤本氏はこう話す。「300人のエンジニアがいるとする。普通にやると(組織を作ると)4レイヤーぐらいになる。これぐらいになると、信頼できる人にこのセクションを任した! となる」。直接コードを書く役割、エンジニアのマネジメントの役割は信頼できる人に任せる形となっていく。

一方、クックパッド舘野氏は、最近はJavaコードを集中的に書いているという。フロントエンドとなるAndroidアプリについて、もっと知るためだ。同社はもともとWebに強いエンジニアを抱えていたが、そのためネイティブアプリでは出遅れたとの反省があるという。今はモバイルアプリを重視する流れにある。

トレタ増井氏は、創業期のCTOの役割について「最初のエンジニアは、とても大事だ」と話す。会社の創業の時期には、CEOとCTOは密接な関わりを持つが、その人間関係が、そのままその後の会社とエンジニア達との関係に引き写されていく。起業家はエンジニアリングをどこまで理解しているべきか、という問いかけに対しては、「コードを書ける必要はないが、エンジニアリングへの理解、信頼は必要」と語る。

パネルディスカッションの終盤、グリー藤本氏は「日本のスタートアップの成功確率がもっと上がるようにやっていきたい」と語った。連続起業家や、CTOとしての参画経験が3社というような人が少なからずいるシリコンバレーに比べると、日本では起業経験を伝える人材の層が薄い。「起業の勝率、ふつうに負けるよなと」。藤本氏がTechCrunchのCTO関連イベントの登壇を引き受けたのも、そうした思いからだそうだ。

ところで、今回のTechCrunch Schoolが開催された会場は「Tech Lab PAAK」だった。アップルストア渋谷と同じビルにある、リクルートが運営する会員制コミュニティスペースだ。自由に使えるスペースで、卓球台もあれば、もちろんWiFiもある。このようなスペースの運営はリクルートの業務と直接の関係がある訳ではないが、麻生要一氏(Recruit Institute of Technology戦略統括室 室長)は「こういう場で世の中を変えるプロダクトが生まれることが、長期的にはリクルートの利益になると信じてやってます」と語る。現時点で40組100人ぐらいが登録しているが、まだ会員になれる余地はあるそうだ。

もう1件、リクルート関連の情報発信があった。リクルートが2012年に買収した求人情報検索サービス米Indeedの東京オフィスで働くエンジニアである濱田卓さんと西村編集長とのミニトークセッションだ。Indeedは、リクルート本体とは全く異なる米国のソフトウェア開発会社のカルチャーのまま、東京オフィスを運営している。濱田氏も、東京大学大学院修士課程で情報科学を学んだが、知名度が高い会社を蹴ってIndeedへの就職を決めた。「ミリ秒単位で性能を改善していこうという組織」である点が楽しいと話す。仕事中にビールを飲んでも、誰も文句を言わない素敵な職場だそうだ。

最後に、今回のイベントの印象をまとめておきたい。今回の「お題」はCTOだった。CTOはエンジニアのボスであるだけではなく、経営陣の一員でもある。エンジニアを理解して信頼する経営者が必要とトレタ増井氏が話すように、経営を理解して参加するエンジニアも求められているのだ。クックパッド舘野氏は最近は経営書を良く読んでいるそうだ。グリー藤本氏も、技術基盤やエンジニアのチームのことだけでなく、事業への関わりについて考えていると話す。エンジニア文化と経営の両方を理解するCTO経験者、CTO候補者がもっと大勢出てくることが、日本のスタートアップの「勝率」アップのためには必要だろうと感じたイベントだった。


「watav」はありそうでなかったイベントまとめアプリ

マーケティング支援を手がけるアライドアーキテクツが、ネット上のイベント情報をキュレーションするiPhoneアプリ「watav」(ワタビ)をリリースした。IT・テクノロジーのほか、アート・デザイン、ファッション、キッズなど11種類のカテゴリーの中から、気になるイベントを探せる“イベント版スマートニュース”のようなサービスだ。イベント好きな意識の高い人や、急に時間が空いてしまって何をしようかと考えている人は使えるかもしれない。



独自のアルゴリズムでニュースを収集するスマートニュースと異なるのは、すべてを自動化していない点だ。watavでは自動収集したイベント情報を目視でチェックしてジャンル分けするとともに、注目度の高そうなイベントをピックアップ。自動取得できないコンテンツについても手動で集め、随時100件近くのイベントを掲載する。

スタート時には、編集やサブカル関連のイベントを毎日開いている東京・下北沢の本屋「B&B」、東京のおでかけコースを紹介する「デカケル.jp」、アウトドア・レジャーの口コミサイト「そとあそび」など5サイトと提携。これらに加えて、Facebookのイベントページなど一部のサイトからAPI経由でイベント情報を自動で取得している。

イベントの検索以外では、イベント当日にプッシュ通知する「リマインド機能」、気になるイベントを保存する「クリップ機能」、Facebook上で招待されたイベントを自動的にwatavに取り込む機能などがある。今後はユーザーが参加したイベントのジャンルや日時、場所を参考に、オススメのイベントを通知する機能も盛り込む予定だ。

ありそうでなかった、ジャンル横断のイベント探しアプリ

TechCrunchの読者が興味を持ちそうなIT・テクノロジー関連のイベントだと、国内ではconnpassPeatixにも掲載されている。この点についてアライドアーキテクツの近藤俊太郎氏は、「watavはイベント参加者を対象にしているので、気になるイベントの検索や管理の機能が充実している」と話す。

IT・テクノロジー以外のジャンルでは、以前TechCrunchでも紹介した、“今夜のライブ情報”をキュレーションするアプリ「LIVE3」もあるが、watavのようにジャンル横断でイベントを探せるサービスは、日本ではありそうでなかった。(昨年4月に、国内初をうたうイベントキュレーションアプリ「Cocotte」がリリースされたが、現在は公開されていない。)

現時点では収益化は考えず、年内100万ユーザーを目標に掲げる。将来的には、イベント主催者がネイティブアド風に告知できる月額30万円のプラン、イベント主催者がアプリ上で参加者を管理できる月額3万円のプラン、有料ユーザー限定の月額300円のプランを考えているそうだ。


スタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2015」を渋谷・ヒカリエで11月に開催!

毎年秋にTechCrunch Japanが開催しているイベント「TechCrunch Tokyo」の開催日が決まったのでお知らせしたい。今年は11月17日(火)、18日(水)の2日間にわたって東京・渋谷のヒカリエで開催する。去年に続いて、スタートアップ集積地の1つである渋谷のど真ん中での開催だ。イベントホールのAホール、Bホールの両方を借りて、去年同様に通路やホールにはスタートアップ企業の方々にたくさんブースを出してもらえればと思っている。

2012年に約750人だった参加者数は、2013年は1500人弱と倍増。去年の2014年には1765人(ハッカソンも入れると約1900人)と規模が拡大してきている。幅広い層の人に参加していただける大規模なスタートアップのお祭りというのは案外ほかにない。そういう開かれた場として、ご期待いただけているということじゃないかなと感じている。起業家、投資家、その予備軍や業界関係者といったスタートアップ業界のコアの方々だけでなく、事業会社のビジネスパーソンや学生さん、エンジニア、マーケター、企画屋さんなどに広く参加していただければと思っている。

去年のTechCrunch Tokyo 2014関連記事一覧はこちら

これまでTechCrunch Tokyoでは、海外の注目スタートアップ起業家や投資家などキーパーソンをお呼びするのが1つの方向性だったのだけど、今年は日本国内のスタートアップの起業家や投資家の方々をたくさんお呼びして、テクノロジービジネスの話題や、日本のスタートアップの現状について講演やパネルディスカッションを行う予定だ。今年も米国もしくはアジアから本家TechCrunchの記者が来る予定だ。

スタートアップバトルもやります!

例年どおり「スタートアップバトル」を予定している。詳細はまだ決まってないが、プロダクトをオーディエンスの前で披露するピッチと質疑のセッションを10〜15チームぐらいに行ってもらって勝者決めるコンテストだ(2014年の様子2013年の様子)。

VCの投資家や個人投資家、企業の新規事業担当者、たぶん日本でも最もアーリーアダプターの多い聴衆、取材に来る関連メディア――。そういうスタートアップ企業にアツい視線を送っている人たちの前で未来を変えるプロダクトをローンチしてみませんか? 夏や秋ごろにサービスローンチを考えているスタートアップ企業の人たちには、ぜひTechCrunchでのデビューを検討してもらえればと思う。去年のスタートアップバトルの様子は本家TechCrunchでも英語で記事になっている。

ハッカソンやCTO Nightといった去年、一昨年と併催したイベント内イベントについは、まだ具体的に日時などが決まっていないためお知らせがもう少し先になりそう。スピーカーやセッション、その他のプログラムについても順次アナウンス予定なので、まずは11月17日、18日の火曜日・水曜日をカレンダー上で是非マークしておいていただければ幸いだ。


Apple Watch、ファーストインプレッション(ビデオあり)

今日(米国時間3/9)のAppleのプレスイベントでわれわれは実際にApple Watchの実機を手にとって試すことができた。昨年9月のイベントでも手首にはめてみることはできたが作動はしなかった。今回は4月24日に発売される製品版とほぼ同一だ。

Apple Watchのハードウェア、特にステンレス版は印象が強い。私の場合、38mm版の方がフィットする感じだが、42mm版もさほど大きすぎはしない。今日の発表で42mm版は38mm版よりおおむね50ドル高いことが分かったが、 私のように小型版が気に入っているものにはよいニュースだ。

Apple Watchのソフトはまったく新しいものだが、期待どおり直感的に操作できる。全タッチ方式のデバイスにあまりに慣れてしまったためデジタル竜頭の操作は最初にやや慣れが必要だった。しかしすぐに狭いディスプレイを有効活用するには巧妙なナビゲーション方法だと分かった。多少iPodのクリックホイールを思わせた。

Appleが「タプティック」と呼ぶデバイスを振動させてコミュニケーションに用いるテクノロジーは(新しいMacBookにも採用されているが)、スマートウォッチのようなウェアラブルデバイスには非常に適合している。振動はごく穏やかで、きわめてデリケートに調整されており、これまでのAndroidウェアラブルによく見られた粗野な振動フィードバックとはレベルが違うと感じた。タプティックの振動は人間が手首に触れるような独特の感触で、タッチは軽いのにはっきりと気がつく。

デフォールトのアプリ、ヘルス、フィットネス、カメラリモコンなどはすべて限られたモニタスペースをうまく使ったデザインになっている。サイドボタンを押して親しい連絡相手をサムネールで呼び出すシステムも巧妙で、数回のタッチで目指す相手にメッセージを送ったりApple Payで買い物をしたりできる。カメラ・リモコンを使えば、簡単に自分を含めたグループ写真が撮れる。下の写真のように、時計の表面にお絵かきして相手と共有できるスケッチという仕組みも面白い。

バンドのオプションも豊富で、全体としてつけ心地は快適だが、スポーツバンドの場合、ややエッジが気になった。もっともこれは使い込めば解消されるのかもしれない。

私自身、自動巻きアナログ時計のファンなのだが、Apple Watchの最大の強みは本当に「腕時計」と感じられる点だ。残念ながらこの点で、これまでのスマートウォッチはApple Watchに遠く及ばない。腕時計に慣れている私の場合は気にならないが、一部のユーザーにはやや厚いと感じられるかもしれない。しかし大半の自動巻きクォーツ時計はこれより大きく、重い。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


シェアリングエコノミーの本質はコミュニティにあり–TechCrunchイベントで識者が語る

「シェアリングエコノミー」と呼ばれるタイプのビジネスが、シリコンバレーを起点に世界中で成長中だ。ゆるやかな信頼をベースに、今余っているモノや人、リソースを今必要としている人に提供する事業の総称で、余っている部屋を貸し出す宿泊サービス「Airbnb」やカーシェアリングサービスの「Zipcar」などが代表例だ。

この波は、いま日本にも及んでいる。Airbnbや、タクシー・ハイヤーの配車サービス「Uber」が日本に上陸してサービスを開始したほか、遊休設備を生かして安価なオンライン印刷サービスを提供する「ラクスル」、駐車場を貸したい人と借りたい人をマッチングする「akippa」のように、  日本発のシェアリングエコノミー型サービスも生まれてきた。

2月19日にリクルートホールディングスが手がける東京・渋谷の会員制スペース「TECH LAB PAAK」で開催された「TechCrunch School Vol.6」では、そのシェアリングエコノミーに注目。「日本でも成長をはじめたシェアリングエコノミー」というテーマのもと、Uber Japan執行役員社長の高橋正巳氏、ラクスル代表取締役の松本恭攝氏、akippa代表取締役社長の金谷元気氏の3人に、それぞれが手がけるシェアリングエコノミー型ビジネスについて聞いた

むしろ規則の中でしっかりやりたい——Uber Japan

米国等での報道も含めて、TechCrunchでもおなじみのUber。スマートフォンからたった2タップするだけで、オンデマンドでハイヤーやタクシーを配車してくれるサービスで、「全世界54カ国、282都市強でサービスを提供しているが、毎週変わっているくらいのスピードで成長している」と高橋氏は言う。最近も22億ドルという規模の資金調達に成功したばかりだ。

日本市場で正式にハイヤーの配車サービスを開始したのは2014年3月で、8月からはタクシーも呼べるようになった。
「日本市場への参入構想は初期の頃からあった。電車や地下鉄、バスなどいろいろな選択肢がある中で、どれだけ需要があるのか、どうサービスを提供するのか検討した上でローンチしてみたが、いざローンチすると、ロンドンやロサンゼルスといった大都市に比べ2〜3倍の需要があった。特に東京は、高品質なサービスへの感度が高い」(高橋氏)。

一方で、既存の枠組との整合性には苦労した面もあるそうだ。現在Uber Japanは、「“超オンデマンド”な旅行代理店という考え方もできる」(高橋氏)ことから旅行業者の登録をして事業を展開している。世界54カ国の中で旅行業として登録しているのは「日本だけ」だそうだ。「われわれのビジネスは5年前、10年前には考えられなかったもの。一方で、それにまつわる法律や規則ができたのは何十年も前。そうした既存の規則や枠組みの中に、われわれのビジネスをどう当てはめていくかが難しい。この問題は日本のみならず、いろんなところで起きている」と高橋氏。「よく、『Uberは好き勝手にやっている』と言われているけれど、全然違う。われわれの会社のスタンスとしては、きちんと規則の中でやりたいと考えている」という。

高橋氏は、この状況を、インターネットオークションサイトが生まれたころになぞらえる。「インターネットオークションサイトが生まれた当時、ちゃんと落札者がお金を払ってくれるかなどいろいろな不安があったけれど、使ってみると便利なことも分かってきた。そこで、『どうしたら安心して使ってもらえるようになるか』という議論が始まり、いろいろな規則ができてきた。Uberについても同じように、どうやったら安心して使ってもらえるかという議論がアメリカで先行して始まっている」(同氏)。

泥臭いところに踏み込んでサービスを拡大—ラクスル

つい先日、総額40億円の資金調達が報じられたラクスルは、需要と供給がマッチングしにくい「印刷」にフォーカスしたサービスを提供している。印刷設備の非稼働時間と、ネットで全国から集めた受注とを適切にマッチングさせることで、安価な印刷を実現しているラクスル。元々は価格比較サイトから始まったが、「クオリティをコントロールする」ために、印刷生産性、効率向上のための手だてにも踏み込んでいるそうだ。

松本氏によると、「スマホから2タップ」のUberとは異なり、「ラクスルは、スマホに一応対応はしているもののウェブがベースで、90%強の注文がウェブから」なのだという。デザインという要素が密接に絡んでくるためにスマホでは十分なUXを提供するのが難しいという理由に加え、「われわれの顧客はほとんどが中小企業だが、中小企業の購買活動がスマホにシフトしているかというと、まだしていない。むしろ最近ネット化が始まったところで、スマホ化は5年先じゃないか」(松本氏)。

ネットとリアルをつなぐ上で、非常に泥臭い苦労もしてきたという。「印刷会社とのコミュニケーションでは、新しいことを始めようとしたときに理解を得づらいところがある。経済合理性で考えれば絶対に利益が出ると分かっているような枠組みを提供しても、『これまでやってこなかったし……』で片付けられることもあった」(松本氏)。ただ中には、強い変革意識を持った経営者がいて、思いに共感してくれることで関係を形作れるケースもあった。

今回調達した資金は、マーケティングや海外事業展開といった方向への投資はもちろんだが、「Uber X(海外で展開するUberのサービス。個人が所有する車に他のユーザーを乗せるというもの)のように、ユーザーに全く異なる体験、インターフェイスを提供できるサービスを開発していく」ことに加えて、「紙を共同購買したり、物流の交渉をまとめて行ったり、資材や物流など効率化を図ることで生産性が上がる部分のファイナンシャルなサポートにも取り組む」そうだ。

営業の会社からインターネットの会社へ—akippa

akippaは、法人や個人が所有する空き駐車スペースを登録しておくと、その周辺で駐車したい人が検索し、希望する時間に使用できるというサービスだ。シェアリングエコノミーを体現しているかのようなサービスだが、金谷氏によると「会社を立ち上げて6年になるが、そのうち5年は営業の会社だった」のだそうだ。

転機が訪れたのは2013年6月のことだったという。「毎月目標の売り上げを決めて、ホームページを作って営業して……とやっていたが、そのうち『これをいつまで続けるんだろう、何のために会社をやっているんだろう』と考えた」(金谷氏)。そこで、電気やガス、水道といった「なくてはならぬもの」を作ろうと、会社のメンバー全員で、今悩んでいること、困っていることを書き出してディスカッションしていた中に、駐車場の問題があったという。

早速このサービスをネットで展開しようと作り始め、とあるイベントで発表したところ、「家の空きスペースを貸すサービスなら『Airbnb』があるよ、と教えてもらった。それまでAirbnb自体知らなかった」そうだ。

その後、順調にサービスが成長してきたことから、思い切って社名もそれまでのギャラクシーエージェンシーからakippaに変更し、営業だけでなくエンジニアの数も増やした。「これでやっとインターネットの企業になれたかな、と感じる。今は営業もスーツを着ていない」(金谷氏)。

ただ、そのマインドを変えていくのが大変だったそうだ。「もともと営業の会社なので、営業担当のマインドを変えることが大変でした。赤字でも、ユーザー数を増やし、サービスを伸ばしていくためだからいいんだ、と言っても『売り上げゼロなんですけど、いいんですか?』と不安を抱かれることもありました」(金谷氏)。サービスを伸ばすために最初はお金を取らずにユーザーを増やす、そしてユーザー数が伸びれば売り上げも増えてくるというアイデアを、Gunosyなどを引き合いに出しながら説明して説得したそうだ。

シェアリングエコノミーはコミュニティか、ただのバズワードか

最後にモデレーターのTechCrunch Japanの岩本有平が「そもそもシェアリングエコノミーとは何か?」と問いかけた。

金谷氏は「昔からやってきたことをスマートフォンでつなぎ合わせたことだと思う」と語る。「akippaも、『隣の人に空いている駐車場を貸す』という昔からやってきたことをスマートフォンでやっているだけ」。そういう意味では、ライバルは、Airbnbなんかではなく、リアルに空きスペースを駐車場としてサービスを展開している「タイムズ」や「三井のリパーク」になるという。

松本氏は、「AIやビッグデータと同じバズワードの1つなんじゃないか」とした上で、「使われていないアセットをユーティライズしたということ以上に、スマートフォンやPCとつながって、ユーザー経験そのものが変わったことに大きな意味があるのではないか。この部分を生かすことでビジネスを伸ばすことができるのでは」と語る。

これらに対して高橋氏は、「ひとことで言うとコミュニティだ」とする。「共有という概念は、コミュニティがあってはじめて成り立つ。そのとき重要になるのはクオリティ。安心して共有してもらえるか、透明性が高いかということが問われてくる。Uberではフィードバックシステムを導入して、今まで乗った人の評価が全部見えるようにしているが、そこまでやって初めて安心感あるコミュニティが生まれると思う」とした。


TechCrunch School第7回は3月9日開催-テーマは「CTOというキャリアを考える」

2014年1月から不定期で開催しているイベント「TechCrunch School」では、これまでに「学生の起業」、「スタートアップのマーケティング」、「大企業からのスピンアウト」、「IoT」、「シェアリングエコノミー」などのテーマでセッションを繰り広げてきた。7回目の開催となる次回は、3月9日月曜日午後7時から「CTOというキャリアを考える」というテーマで開催する。参加は無料で、本日よりこちらで参加登録を受け付けている。

会場となる「TECH LAB PAAK」

テック系のスタートアップに欠かせないエンジニアリングチーム。このエンジニア集団をリードし、ときにはゼロから1人でチームを作り上げるのがCTOだ。会社が成長した暁には、経営陣の1人として技術面から多くの経営判断に加わりつつ、同時にコードを書き続けることも珍しくない。

日本でスタートアップ企業が多く誕生しつつある今、CTOという役職が注目されつつある。今後、あらゆる業種においてソフトウェアの果たす役割が大きくなっていくだろうから、この傾向はますます加速するだろう。外部から「ソリューション」を調達したり、開発を外部へ委託する情報部門やCIOではなく、自らビジネスのコアになるシステムやアプリを作り出すチーム体制への移行が時代背景としてあると思う。

そう考えると、エンジニアとしてのキャリアを考える上で「CTO」というのは何もスタートアップ企業やネット企業だけに限った話ではなくなってくるのだろう。CTOとしてキャリアを積み、複数のスタートアップの立ち上げに携わる「シリアルCTO」というキャリア形成も増えつつあるように見える。

グリー、クックパッド、トレタのCTOが登壇

3月のTechCrunch Schoolでは、CTOというキャリアに焦点をあてて、経験豊富な注目CTOたちに、ざっくばらんにエンジニアリング、経営、スタートアップというテーマで語っていただこうと思っている。

登壇者となる3人のCTOは、グリーの藤本真樹氏、クックパッドの舘野祐一氏、トレタの増井雄一郎氏だ。3人ともエンジニアコミュニティでは、よく知られているが、改めて簡単にご紹介したい。

グリーの藤本CTOは、創業初期から同社プラットフォームを支えてきたCTOだ。マンションの1室からスタートして1000〜2000人規模の組織となる10年間を、CTOという立場で見てきた人は日本では多くないだろう。これまでを振り返りつつ、今後CTOとして取り組んでいきたい領域やチャレンジについて聞いてみたいと思う。クックパッドの舘野祐一CTOは、RubyやJavaScriptのコミュニティでも良く知られたエンジニアで、2010年クックパッドへ入社。技術基盤やビッグデータ基盤の開発、構築を行い、2012年に技術部長、2013年のエンジニア統括マネージャを経て、2014年2月からクックパッド執行役CTOとなった人物だ。経歴から分かる通り、1人のエンジニアからCTOへというキャリアを歩んでる。舘野氏にはエンジニアにとって、マネジメントやビジネスを理解することの意味ということをお聞きしようと思っている。トレタの増井雄一郎CTOは、料理写真共有サービスの「ミイル」の元CTOで、現在は店舗向け予約受け付けサービスのトレタのCTOとして活動している。立ち上げ期のスタートアップ企業に関わるエンジニアという視点から話を聞ければと思う。

今回の会場は東京・渋谷の「TECH LAB PAAK」

さて、これまでTechCrunch Schoolは基本的にTechCrunchのオフィスが入居している東京・末広町の3331 Arts Chiyodaで開催していたが、今回は前回同様にリクルートホールディングスが東京・渋谷に開設したばかりの会員制スペース「TECH LAB PAAK」で開催する。

TECH LAB PAAKは入会審査ありの会員制だが、施設自体は会員であれば無料で利用できる。会員になれるのは「スペースを通じてみずからの持つスキルを深めたり、情報共有したりしたい」「技術やアルゴリズムの研究・開発に取り組んでおり、コラボレーションして発展させたい」といった思いを持つ個人やチームで、同社が定期的に開催する審査に通過する必要がある。リクルートホールディングスいわく、「本気でテクノロジーで世界をよくしたいと思っている」「イノベーションを起こすスキルを持ちながら、リソースが不足している」という人の応募を待っているとのこと。当日はその辺り話もRecruit Institute of Technology戦略統括室 室長の麻生要一氏からお話いただける予定だ。

TechCrunch School #7
「CTOというキャリアを考える」

【開催日時】 3月9日(月曜日) 18時開場、19時開始
【会場】 東京・渋谷 TECH LAB PAAK (地図)
【定員】 80名程度
【参加費】 無料
【参加資格】 CTOもしくはCTOに準じるエンジニア、もしくは今後CTOを目指したいエンジニア
【ハッシュタグ】#tcschool
【主催】 AOLオンラインジャパン
【内容】
19:00〜19:05 TechCrunch Japan 挨拶
19:05〜20:05 パネルセッション「CTOというキャリアを考える」
パネリスト
藤本真樹氏(グリー株式会社 取締役 執行役員常務 最高技術責任者)
舘野祐一氏(クックパッド株式会社 執行役 最高技術責任者)
増井雄一郎氏(株式会社トレタCTO)
モデレーター
西村賢(TechCrunch Japan編集長)
20:05〜20:20 講演セッション「リクルートが考えるオープンイノベーションとその取り組みについて」
麻生要一氏(Recruit Institute of Technology戦略統括室 室長)
20:20〜20:30 ブレーク
20:30〜22:00 懇親会(アルコール、軽食も出ます)
【申し込み】イベントページから事前登録必須
【事務局連絡先】tips@techcrunch.jp

世界中の13歳から18歳が競うGoogle Science Fair、本日より受付開始

Googleが今年もScience Fairを開催している。今年で5年連続の開催となるが、2015年については本日より応募の受付が開始された。このイベントはレゴエデュケーション、ナショナルジオグラフィック、Scientific American、およびVirgin Galacticなどと提携して実施しているものだ。応募できるのは世界各国の13歳から18歳の学生で、自分のプロジェクトについてのサイトを構築し、オンラインで投稿する。プロジェクトカテゴリーはさまざまのものが用意されており、優秀なものには10万ドルの奨学金やガラパゴス諸島への招待、あるいはVirgin Galacticツアーで最新の宇宙船を間近に見る機会などが与えられる。

Science Fairからは、これまでにも非常に優秀なプロジェクトが生まれている。たとえば手のひらの熱のみから電気を起こして点灯するライトや、アルツハイマーの親族のために製作し、高齢化社会問題に備えようとするウェアラブルなどだ。

このScience Fairは、粘土で火山を作って仕組みを理解するとか、あるいは縮尺モデルを作って波の発生原因を知るといったタイプのサイエンスフェアではない。何らかの支援を必要とする問題を、実際に解決していくためのプロジェクトを実際に産み出すためのものなのだ。募集カテゴリーも増え、より広い範囲での問題解決に向けたプロジェクトが評価されるようになっている。最優秀賞などが発表されるライブイベントは2015年9月21日に開催される。それに先立つ7月2日に、各地域のファイナリストが発表され、8月20日にグローバルファイナリストが発表される。

原文へ

(翻訳:Maeda, H


Google I/O 2015カンファレンスは5月28日、29日に開催―チケットは去年につづいてクジ引き

昨年、GoogleはI/Oカンファンレンスに参加するために重要な資格を一つ追加した―クジ運の強さだ。膨大な数の申し込みが殺到するので、参加希望者はチケットを買うためにまずクジを引かねばならない仕儀となった。.

賛否はともあれ、この仕組は今年も維持される。

先ほどGoogleはI/0 2015カンファレンスについて最初の情報を発表した。

  • 開催期日は5月28日と29日の2日間。会場は例年どおり、サンフランシスコのMoscone Center West
  • チケットの購入申し込みは3月17日午前9時(太平洋時間)から2日間。ただし慌てるには及ばない。なぜなら―
  • Googleは「チケット購入のチャンスを得る人々をランダムに選ぶ」としているからだ。

Google I/Oのチケットはこれまでも一瞬で売り切れた。その理由のひとつはGoogleがチケットの料金以上の「おみやげ」を気前よく配るからでもある。たとえば昨年は全員に1つどころか2つもAndroid Wearスマートウォッチを配った(プラス、おそろしくよく出来たボール紙のVRシステム、Google Cardboardも)。

まだチケットの料金については発表がない。昨年は900ドルだった。

画像:Maurizio Pesce/Flickr UNDER A CC BY 2.0 LICENSE

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


人は自分のきれいな写真を撮ってもらうと意識が変わる: 世界のホームレスのポートレートを撮り続けるイベントHelp-Portrait、70か国に展開

ホームレスの人たちから目を背(そむ)ける人もいる。Jeremy Cowartは彼らを直視する。やさしく。

Cowartはテネシー州ナッシュヴィルに住む高名な写真家で、Help-Portraitのファウンダだ。それは世界中から写真家を招待してホームレスのポートレートを撮り、彼らに“笑いと、みんなで集まることと、思い出を作ること”を、取り戻してもらうイベントだ。この前は12月初旬に行い、世界中から4万点あまりのポートレートが集まった。

Cowartは、モバイルの撮影ツールを使っている。リング状のプログラマブルなLEDライトとiPhoneだ。いろんな都市に出かけてホームレスを撮るには、モバイルが便利だ。彼の目標は、困っている人たちのきれいなポートレートを撮ることによって、ホームレスの人たちに顔(face)を与える*ことだ。〔*: faceless…日本語訳が難しい…ではない人間存在にすること。〕

[ホームレスの人たちのポートレート集]
〔ここにスライドが表示されない場合は、原文を見てください。〕

彼はこう言う: “2008年に、何かもっと意味のあることをしたい、と思うようになった。そこで地元ナッシュヴィルのホームレスたちを撮り始めた。これは全国全世界に広めるべきだと感じたので、ソーシャルメディアにそのことを書いた”。

2009年には数十か国の写真家数千名が、彼の呼びかけに応えた。この前のイベントでは28か国1万名のボランティアが参加した。

今年の彼は使用する用具をやや変えて、相手が身構えない、自然な写真が撮れるように努めた。

“でっかいDSLRを向けると、びびる人もいるからね。もっと小規模で素朴なセッティングにして、お互い気楽に撮れるようにしたかった”、と彼は言う。

Cowartが自作したリング状の撮影用ライトは、ワイヤレスのLED電球LIFXを使っている。そしてiPhoneのアプリから、輝度や色をコントロールする。被写体はリングの穴から撮る。ポートレートをできるだけ素早く仕上げることがかんじんなので、撮った写真はすぐにLightroom、あるいはつねに現場に持ち込んでいるEpsonのプリンタに直接送る。

“とにかく、人を待たせてはいけない。上質な写真をできるだけはやく撮ることが、重要だ”。

また、OlloClipを使ってiPhoneの35ミリのレンズを75や100ミリにして撮っている。

Cowartは、写真リクエストサイトOKDoThisのファウンダでもある。2015年12月の第一日曜日には、さらにたくさんの写真を集めたい、と彼は期待している。

“私がナッシュヴィルで始めたことが、今では70か国以上、そして合衆国のすべての州に広まっている”、とCowartは驚きの表情で語る。仕事としてセレブや有名人の写真を主に撮っている彼は、ふつうの人の写真を撮って彼らにプライドと、美しさと、あらためて身の回りの世界への注意力を提供できることは、それ自身が大きな報酬だ、と述べている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


議事録から離婚まで、TechCrunchハッカソンで生まれた「○○の再開発」

「り・こ・ん! り・こ・ん!」会場に鳴り響く、大・離婚コール。11月15日、16日に東京・台場のコワーキングスペース「MONO」で開催した「TechCrunch Hackathon Tokyo 2014」での一コマだ。ハッカソンのテーマは「○○の再開発」。24時間の耐久ハックを終えてできたのは、議事録やクラウドファンディングを再定義する実用的なプロダクトから、暗くて面倒な離婚をカジュアル化するというサービスまで。ちょっと長めのレポートになるが、参加を希望していて来られなかった人や、今後ハッカソンに参加したい人のためにも、異様な盛り上がりを見せたイベントの模様をお伝えしたい。

ドラえもんの「ひみつ道具」でアイスブレイク

当日は週末にもかかわらず、140人近くが参加。中には小学5年生の女子もいたが、参加者のほとんどは社会人。チームではなく個人での参加が大半だったせいか、会場には若干の緊張感も見られた。

そんな空気をほぐすアイスブレイクでは、スケッチブックに一筆書きで、自分が最も好きなドラえもんの「ひみつ道具」を描けという指令が。ぐるっと会場を見回してみると、どこでもドアが多い印象。

そのほかにも、もしもボックスやスモールライトがあったり、

特別ゲストとして参加してくれたmasuidriveこと、トレタの増井雄一郎さんは「こえかたまりん」を描いていたり、

もはや一筆書きでもなく「???」といったものまでが描かれていた。

APIを1つ使えばルールは自由

アイスブレイクの頭の体操で空気が和んだ後は、ハッカソンで利用するAPIの説明だ。今回のハッカソンでは下記のAPIのいずれかひとつを使ってサービスを開発することがルール。それ以外は、使用言語や開発プラットフォームは自由。こっそりランサーズに発注するのもアリだ。

・デンソー:NaviCon(スマホで探した場所をカーナビへ送るアプリ)のURL発行など
・エクシング:言語解析API(係り受け・形態素・ポジネガ・感情・感覚の解析)
・HOYAサービス:VoiceText Web API
・セイコーエプソン:MOVERIO BT-200
・朝日新聞社:朝日新聞記事検索API
・楽天:楽天API(楽天市場や楽天ブックス、楽天レシピなどの情報を取得できる)
・構造計画研究所:クラウドメール配信サービス SendGrid
・Gracenote:音楽ソリューションAPI
・KDDIウェブコミュニケーションズ:クラウド電話&SMS API Twillio
・ぐるなび:ぐるなびレストラン検索APIなど
・インテル:Edisonボード、Galileo開発ボード
・シャープ:ネットワークプリント
・ソフトバンクロボティクス:Pepper
・NTTドコモ:ドコモAPI(画像・文字・音声認識、音声合成、トレンド記事抽出など)

アイデア発想のコツは「他家受粉」

各社15分ずつの熱のこもった説明を終えると、次はアイデアブレストの時間。ハッカソンの進行役を務めたリクルートの伴野智樹さんは、そのコツは「他家受粉」にあると話す。

他家受粉とは、他の個体の花粉によって受粉されることを指す言葉。遺伝子の組み合わせが増えることで、種としての適応度が高まる。ハッカソンにおいては、異なるアイデアやコンセプトが専門領域を超えて「受粉」しあうことで、社会環境でのアイデアやコンセプトの適応度も高まるのだとか。

伴野さんが「他家受粉」を促すために採用しているのが、アイデア吐き出しツールとして知られる「はちのすボード」だ。

参加者は、いくつものマスで構成される「はちのす」の中央に、自分が興味のあるAPIを書き、その周辺の「はちのす」にAPIに関連するキーワードを書いていく。例えばTwillioであれば、「メール」「電話」「SNS発信」といった感じだ。

さらに、周りの「はちのす」に、自分が作りたいプロダクトのテーマ、例えば「エンタメ」や「目覚まし」といったキーワードを記入し、そこからそのキーワードを細分化していく。

こうすることで、自分では考えも付かなかったアイデアとAPIの組み合わせが生まれるのと、伴野さん。「イノベーションは意外と、偶然の組み合わせの先にあるんです」。

ぼっち飯、自己紹介、離婚……再発明が続々

はちのすボードを書き終えると、次は「アイデアシート」に記入する。アイデアシートは、今回のテーマである「○○の再開発」を設定し、3行のサービス概要と絵を入れることがルール。利用を検討するAPIも書き込む。

全参加者がアイデアシートを記入した後は、お互いのアイデアを確認するための「アイデアウォーク」。あまり聞き慣れない言葉だが、ざっくり言うと、参加者がお互いのアイデアシートを見て、良いと思ったアイデアに星マークを付けたり、付箋でアドバイスを貼り付けたりするもの。

チームビルディングが後に控えるだけあって参加者が熱心なのはもちろんだが、APIパートナーも外部の知恵を取り入れようと、熱心にアイデアシートを覗きこんでいたのが印象に残った。

ちなみに、最も多くの星を集めたアイデアの1つは「離婚の再発明」というアイデアだった。

お互いのアイデアを確認した後は、いよいよチームビルディングだが、その前に多くの星を集めた「モテアイデア」の持ち主が参加者の前でプレゼンを実施した。

そこでは、特別ゲストとして参加した堤修一さんも登場。iOS方面で著名なエンジニアの堤さんは、500 Startupsに参加するグロース・プラットフォーム「AppSocially」の元開発者でもある。アイデアは、エプソンのスマートグラス「MOVERIO」で相手を見ると、その人がどんな特技や技術を持っているかがわかるというもの。「ハッカソンで初めて会う人同士が神経をすり減らさなくて済む」とアピールしていた。

チームビルディングは、伴野さんの「ナンパしまくってください」という掛け声とともにスタート。

参加者の7割が徹夜でハック

チームビルディングで作られたのは合計32チーム。その後はひたすらハッキング。エンジニア、ディレクター、デザイナーがひたすら手を動かす時間だ。

ハッキング開始から約4時間後には各チームが中間発表。それぞれが独自の「再開発」のアイデアを披露した。

その後はひたすら、ハッキング。

夕食の弁当がふるまわれたあとは、

ハッカソンでよく見るレッドブルの差し入れも。250本のレッドブルタワーは一瞬にしてなくなった。

多くの参加者が近くの「大江戸温泉物語」などで泊まり込んだり、会場の机につっぷしたり、

地べたで寝るなど、ハッカソンならではの光景も見られた。参加者の約7割は自宅に帰らずに開発を続けていたようだ。

朝型、明らかに前日と比べて疲労の表情を色濃く見せる参加者だが、最後の追い込みにむけて作業を続ける。Pepperくんもグッタリしていた。

そしていよいよ、成果発表のときだ。審査基準は「イノベーション」「完成度」「デザイン」の3点。中でも最も重視するのがイノベーション。つまり、革新性と新規性というわけだが、ここでは入賞した5作品を紹介しよう。ちなみに5チームは、11月19日に東京・渋谷で開催した「TechCrunch Tokyo」でライトニングトークをしてくれた。

CFTraq(クラウドファンディング・トラック)

クラウドファンディングサイトをクローリングして情報を取得するサービス。複数のサイトの情報を一元化できるのが特徴で、各サイトで募集中のプロジェクトを一覧したり、過去の調達額や支援者数の多い順にプロジェクトを表示することができる。プロダクトを開発したsawayamaさんは、「クラウドファンディングのプロジェクトは基本的に公開されているが、情報が整理されていない。個人的にも欲しかった」と話していた。

どこでもドアノブ

世界各国の観光地に行った気分になれるドアノブ風のガジェット。ドアノブを回すと世界各国の映像を表示したり、現地の人とTwillioを通じて音声通話できるというもの。音声通話は観光地のパブリックスペースに電話を設置する。例えばエジプトのピラミッド近くに設置した電話に発信した場合、「おい電話なってるぞ」と気づいた人が出るのだとか。審査員を務めたコイニーの久下玄さんは「誰が世界各国に電話を設置するの? 電源やネットワークは?」と戸惑いながらもアイデアをたたえていた。

loltube

15秒間のニュース動画を作成して共有するサービス。ユーザーはYouTubeから動画のハイライトをピックアップして15秒にまとめる。ゲームのプレイ動画などテキストでは伝わりにくいネタが適しているのだという。投稿された動画を組み合わせてストーリーを作ることもできる。

ギジロク ジョーズ

周囲360度を撮影できるカメラ「RICOH THETA」を使って議事録を作成するアプリ。音声認識で発言を文字起こしし、LINE風のUIで議事録がまとまる。THETAで撮影した画像は顔認識技術を用いることで、誰が何を話したかを特定することが可能。特定の会話の動画を再生できるので、会議の雰囲気も伝わるのだとか。みやこキャピタルの藤原健真さんは、「シンガポールに文字起こしのスタートアップがあるが、日本にはプレーヤーがいない。音声認識できない部分はクラウドソーシングで文字起こしすれば良いサービスになる」と高く評価していた。

密告者

電車内の痴漢を監視するアプリ。痴漢被害にあった女性はアプリを開いてHelpボタンを押すことで、電車内に設置されたGalileo端末からドコモの音声合成APIを用いて「痴漢です」というアラートを流せる。Bluetooth通信で同じ電車に乗っているアプリの利用者全員にメッセージを送ることもできる。通信面ではメッシュネットワークを採用。Bluetoothだけでチャットができるため、インターネットに接続できない地下鉄でも利用できる。蓄積したデータをもとに、どこの路線の何番車両に痴漢が多いか、といったこともわかる。

アグレッシブ離婚
最後に、惜しくも入賞は逃したものの、会場で熱狂的な支持を集めたプロダクトをお伝えしたい。「日本は離婚がタブー視されすぎている」ことを問題視したチームが手がけた「アグレッシブ離婚」だ。ウェブ上で相手の電話番号とコメントを入力するだけで離婚を申し込めるという、まさに「離婚の再開発」といっていいプロダクトだ。

離婚申込み後は、Twillioが承諾を求める電話を代行。人間味のない自動音声で「離婚に承諾する場合は1を、しない場合は2を…」という声が流れるデモでは、会場が大爆笑の渦に包まれた。プロダクトとしてはちゃんと設計されていて、離婚の承諾が得られた場合には、承諾の意思と離婚届を印刷できるネットワークプリントサービスのコードをメールにて通知。近くのコンビニのコピー機で離婚届を印刷、提出して離婚が完了となる。

審査員を務めたリクルートホールディングスの石山洸さんは、「リクルートはゼクシィをやっているが、離婚が増えるともう1回結婚することになる。トランザクションが増えるので、ぜひ流行らせてほしい」と大絶賛(?)していた。

Some photos are shot by joohoun(twilio)


Infinity Ventures Summitのプレゼンバトル、登壇13社を紹介

京都にて12月3日から4日にかけて開催中の招待制イベント「インフィニティ・ベンチャーズ・サミット 2014 Fall Kyoto(IVS)。同イベント2日目の朝8時45分からは、毎回恒例となっているプレゼンバトル「Launch Pad」が開催中だ。

これまでクラウドワークス、スマートエデュケーション、freee、WHILLなどが優勝してきたLaunch Padだが、今回登壇するのは以下の13社。なお、Ustreamおよびスクーでもその様子は生中継される予定だ。

baton「マッチ

「高校生向け対戦型問題集」をうたうこのサービスは、大学入試問題集に出てくるような問題を対戦型のクイズとして楽しむことができる。

ザワット「スマオク

スマホアプリで利用できるオークションサービス。これまで24時間以内の入札に対応していたが、アプリをアップデートし、入札時間5分限定の「フラッシュオークション」にリニューアルしている。

ギャラクシーエージェンシー「akippa(あきっぱ)

駐車場などの空きスペース、空き時間がある人と駐車したい人をマッチングするパーキングシェアサービス。プレゼンでは、人に車を貸して、空きスペースを探してもらう「akippa+」も発表された。

落し物ドットコム「MAMORIO

Bluetooth LEを使った追跡用タグ。スマホと一定の距離が開くとアラートが鳴って置き忘れを未然に防ぐ。バッテリー交換なしで1年利用が可能。自転車が盗難にあった場合などに利用できる機能として、ユーザーが相互にタグをトラッキングする「クラウドトラッキング」を備える。

ビズグラウンド「Bizer(バイザー)

弁護士や会計士などさまざまな士業への相談サービスを提供していたBizer。今後はバックオフィス業務をサポートするクラウドサービスを提供していく。

Socket「flipdesk

スマートフォンECサイト向けの販促・接客ツール。ユーザー属性をリアルタイムに解析して、ダイレクトメッセージの送信やクーポンの発行ができる。年商100億円規模の起業でCVR5.6bai ,客単価15%アップという実績がある。

プレイド「KARTE

こちらもECサイト向け(flipdeskとは異なりPCにも対応する)の販促・接客ツールだ。ECサイトへの来客をリアルタイムに解析。ユーザーに合わせて商品のレコメンドやクーポン発行などができる。現在はクローズドベータ版として25社に限定して提供中。

オープンロジ「オープンロジ

CtoCコマースや小中規模ECサイトなどをターゲットにした物流アウトソーシングサービス。通常大規模ECサイトでないと利用しにくい物流サービスだが、同社があらかじめ物流業者と契約することで、少ない商品でも定額(サイズによる)、かつすぐに利用できるようになる。

フクロウラボ「Circuit(サーキット)

スマートフォンウェブからアプリにスムーズに遷移するための「ディープリンク」。その設定を容易できるグロースツール。シームレスなアプリ間移動を実現する。

ミニマル・テクノロジーズ「WOVN.io(ウォーブン・ドット・アイオー)

ウェブサイトに1行のスクリプトを足すだけで、ウェブサイトの多言語化を実現するサービス。翻訳は機械翻訳、人力翻訳に対応。リリース4ヶ月で登録ドメイン数は3000件、6万ページ。海外ユーザーが6割となっている。

セカイラボ・ピーティイー・リミテッド「セカイラボ

世界中のエンジニアチームに仕事を発注できるサービス。中国やベトナムなどのエンジニアチームに対して、日本語で大規模な開発を依頼できる。

YOYO Holdings Pte. Ltd.「PopSlide

新興国向けモバイルインターネット無料化サービス。スマホのロック画面に広告を表示し、それにスライドしてアクセスしたり、動画を閲覧したりすることでポイントを提供する。ポイントはロード(プリペイドの通信料金)と交換できる。

ファームノート「Farmnote(ファームノート)

酪農・肉牛向けのスマートフォンアプリ。タブレットやスマホを使って、リアルタイムに個体管理が可能。

以上が登壇する13社となる。11月に開催したTechCrunch Tokyo 2014の「スタートアップバトル」でも登壇してくれた企業がいくつかあるが、Launch Padは来場者、審査員とも経営者が中心のイベント。またプレゼンの内容も変わってくるかもしれない。個人的に応援しているスタートアップもあるのだけれど、ひとまずは各社のプレゼンを楽しみにしたい。


LED付き車輪広告、アルゴリズムで作曲配信など、Orange Fabが東京でデモ・デイ開催

フランス系グローバル通信企業のOrangeがアジアで展開するアクセラレータープログラム「Orange Fab Asia」の2期目のスタートアップ参加企業によるデモ・デイが東京・新宿で11月25日に行われた。Orange Fabは、Orangeの子会社であるOrange Labs Tokyoが運営する3カ月のプログラムで、資金投資などは行わない。デモ・デイでこのプログラムについて説明したオレンジ・ジャパンの西川浩司氏(パートナーシップマネージャー/ベンチャーパートナー プログラムマネージャー)によれば、「ゼロをイチにするのではなく、ある程度できて来ているスタートアップ企業を、グローバル展開するのを助ける」のがOrange Fabの趣旨だという。

Orange Fabはサンフランシスコで始まったプログラムだが、Orange本社が陣頭指揮をとっているのではなく「各拠点を勝手にやっている。サンフランシスコから始まったのもそういう理由」(西川氏)という。アジアでは東京を中心に去年の12月にスタートして、第2期は2014年9月から12月まで。「日本からアジアへ展開するということで、台湾や韓国に広げていった」が、今年後半に入ってからはOrange Fab自体は「イスラエルやコートジボワールでもスタートアッププログラムをやってる」のだという。これまで6カ国で66の企業がプログラムに参加してきた。

プログラムの狙いは、Orangeが持つ専門性やビジネス機会を提供して、シナジーを作りながら協業していくというモデルだったが、2015年春からは、より広い既存大手企業の参加を募ってパートナープログラムをやっていくという。具体的には、Air Liquide(フランスのガス会社)、アルカテル・ルーセント、大和ハウス、電通、EDF(フランス電力。ただし日本と違ってグローバルに事業を展開している)、ソニー、タレス(航空産業、宇宙産業、セキュリティ)、Veolia(水関連の事業を展開しているフランス企業)などが参加予定で、日本法人がある場合には、日本側を窓口としてグローバル・ネットワークを利用できるようにしていく狙いだそうだ。

5月に続いて今回で2度めのデモ・デイには、投資家や企業幹部、メディアなどが集まった。ピッチは一部日本のスタートアップをのぞいて英語で行われ、東京だけでなく、ソウルや台北から来た起業家たちが事業提携を呼びかけ、デモ終了後の各ブースでは参加者らと熱心に情報交換をする場面が見られた。

以下、ピッチした18社のうち日本、台湾、韓国のスタートアップ企業を、ざっと紹介する。

AlpacaDB(Ikkyo Technologies

画像にアノテーションを付ける技術を提供している。画像データの量は年々急増しているが、その多くはオブジェクトとして保存され、データベース上では単なるIDやURLとなっていることが多い。AlpacaDBは画像認識技術とディープラーニングを使って、大量の画像に対してキーワード付けや分類を行うという。こうした画像認識による多量の画像処理は、GoogleのようにAIや機械学習の専門家を雇える大手テクノロジー企業か、労働集約型として大量の人間を突っ込むかのどちらかだったといい、AlpacaDBはその中間のニーズを狙うという。これまでの利用事例だと、運動会の撮影写真で同一人物を判別してリコメンドすることで売上増につなげた例や、SNS上で300万枚以上の画像の中から類似画像を探しだして不正利用を発見するといった例があるという。

Fukushima Wheelアイズジャパン

自転車はちょうど200年前の1814年にドイツで発明された。200年間なんのイノベーションもないというアイズジャパンの山寺純氏は、「車輪の再発明」をすることで自転車プラットフォーム事業を立ち上げるのが目標という。Uber型の自転車レンタルサービスは自明なアイデアで、東京も含めて世界各年で取り組みがあるが、「どれも利益がほとんど出ていない」という。それは直接課金モデルだからで、Fukushima Wheelは車輪自体をLEDを使った広告媒体とするモデルで企業からの収益を狙うという。また自転車に各種センサーを搭載することで、北京の大気汚染、パリの騒音問題のように、政府や地方自治体などの調査利用に生かすというモデルに向けて、プロトタイプの自転車を開発中という。

Spectee(ユークリッドラボ)

リアルタイムのニュース配信サービス。世界のあらゆる場所で「今」起きてることをリアルタイム配信するというコンセプトで、写真や動画を常にSNSから引っ張ってきて配信しているそうだ。もともとはロケーション情報系のサービスだったが、ピボットし、2014年8月にベータ版アプリをローンチ。現在1万5000ダンロードでトラクションが出てきているという。高い速報性が求められる天災やスポーツイベントなどで、通信社やネット系メディアよりも、現場にる人たちのツイートのほうが有効だが、あらかじめ地域名や緯度経度情報、キーワードでTwitterやFacebookの公開投稿をクロールして地域性と同時性の高いイベントを判別し、それをデータを解析したり、機械学習したり、人間が見たりして、いち早く伝えるそうだ。RSSによる配信はしているが、恐らく通信社や媒体社への素材提供がビジネスとなるのだろう。

Musicshake Biz(SilentMusicBand)

韓国から参加しているスタートアップ企業のSilentMusicBandが提供するのは、リアルタイムに楽曲を生成して配信するサービス「Musicshake Biz」。利用シーン、音楽ジャンル、速度などをボタンから選ぶと、楽曲生成エンジンが「それらしい」音楽を作って再生する。同じ選択肢でも再生ごとに全く異なるものの同じような音楽がかかる。書店や衣料品店、レストランなどで流すBGM、ゲームや映画に利用する楽曲などを、安価に、法的問題なしに提供できる。今は1曲2ドルで提供しているが、2015年には1カ月1ドルというモデルで提供予定。韓国ではNexonやサムスンから投資を受けているほか、日本ではUSENと提携している。創業者のブルー・ユン氏は、もともとスタジオ・ミュージシャンであり、ゲーム開発者だったこともあるそうで、音楽サービス3000億円市場の10%をつかみたいと話している。

Cy7(Ambedded Technologies

台湾から参加しているAmbedded Technologiesが開発するのは多数のプロセッサを0.5Uもしくは1Uのサーバサイズに収納したARMサーバのCy7。SNSなど多数のユーザーに数十GBのストレージを提供するようなケースを想定したストレージで、容量あたりの電力消費量やメンテナンスコストが下げられる。ラックをフルにすると、532台のマイクロサーバーとなるが消費電力は7kW程度という。CephやGlusterFSなどのオープンソースの分散ストレージを使うソフトウェア・サポートも提供するという。

CallGate

韓国から参加しているCallGateは、キャリアでもあるOrangeらしい選択のスタートアップ企業。キャリア向けに提供するソリューションで、通話中の画面にコンテンツを表示することができる。顧客からすれば、カスタマーサポートやIVR(自動音声応答)、ウェブとサービス提供者とのチャンネルは増えて複雑化しているが、これを「通話」で1本化する。「電話をかける」というのを入り口としつつも途中の画面でIVRのメニューをたどれたり、地図やWebページを見たりできるのだという。既存のIVRにかぶせて利用できるほか、利用者に準備が不要で学習コストもかからない導入ハードルの低さがポイントだそう。韓国では、すでにロッテホームショッピングで利用されていて、2014年の売上は330万ドルの見込み。アシアナ航空なども導入予定で、2015年には800万ドルの売上予想で、グローバルにサービスを拡大予定という。

APPEXE(Mobilous

2011年に創業したMobilousは、GUIのアプリビルダーを使って安価にネイティブアプリを作れる「APPEXE」を提供している。iPhone/iPad、Androidだけでなく、Windows Phone、Windows 7/8のデスクトップアプリにも対応している。開発費が数十万円から数百万円までの市場を狙っていて「安いコストで短期で早く作りたい」というニーズに対応、もしくは掘り起こす。イベントなどの1度だけの使い捨てアプリの開発にも使われ始めているほか、すでにコンテンツを多く持つWebサイトや紙のカタログのモバイルアプリ化でも採用事例が出ているのだとか。

Repro

モバイルアプリ向け解析ツール。Mixpanelのように事業者が独自定義できるユーザーアクションごとのKPIがトラックできたり、ユーザーが利用中の様子を動画で把握できるのが特徴。アプリがクラッシュするケースでも、スタックトレースと動画でデバッグができるそう。人間のテスターのマッチングや回収作業も60カ国で自動で行うプラットフォームという。現在、ミクシィや楽天、KDDIなど200アプリで導入実績があるという。

このほか、ジムのトレーニング機器にデバイスを付けてフィットネス・データを収集する「Pafers」(台湾)、遠隔操作でペットに餌をやったり、ボールを投げて遊んでやったりできる「BallReady」(韓国)、Dropcamのような遠隔カメラの「QLync」(台湾)、街のビジュアル広告をスマフォなどで画像認識して、その場で商品購入ができる「Viscovery」(台湾)、独自3D技術でクロマキーなしに人物と背景の動画合成ができる技術などを持つ動画通信サービスの「Haeden Bridge」(韓国)、太陽光発電やハウス栽培で室温を適正に保つフィルター技術をもつ「SunValue」(台湾)、大容量の画像や音楽をメッセンジャーを介してシェアできる「Spika」(韓国)などがデモを行った。