ドローン市場の先駆者Parrot、ブレイクのきっかけは音声処理だった


スタートアップ業界に関する日本最大のイベント「TechCrunch Tokyo 2014」では、多数のプログラムが開催された。テックトレンドのセッションの中で注目されたのが、無人飛行デバイス、いわゆるドローンについての講演。

現在注目の市場であるドローンは本誌でも連日記事が登場しているが、今回は開催前の予告記事でも紹介されたように、ドローン市場の先駆者であり、代表的メーカーであるParrotから、JPAC地域担当バイス・プレジデント兼マネージング・ディレクターのクリス・ロバーツ(Chris Roberts)氏が登壇。これまで日本ではあまり知られていなかった、同社がドローンに参入した意外なきっかけやドローンの可能性に関して語った。

音声処理から出発し、Bluetooth機器、そしてドローンへ

Chris氏はまず、同社の沿革とともに、なぜドローンを手がけたのかを紹介。パリに本社を構えるParrotは、もともと音声を中心としたデジタル信号処理を手がけるメーカーとして出発。90年代前半にBluetooth製品を手がけたことで、音声処理とも関わりが深いオーディオやマルチメディア系の製品、そして自動車関連機器に手を広げる。

とくに自動車関連機器では、同社が得意とする音声処理とBluetoothを活かしたハンズフリー技術を使った機器で支持を得て、多くのOEM先を獲得した。

現在Parrotの事業は大きく分けて3ライン(上図参照)となっており、1つがこの自動車関連機器という。残りの2ラインは、コンシューマー用のBluetooth接続オーディオ機器や、スマートフォン用ヘッドセットが1つ。これを同社は「Connected Objects」と表現している。

ここでChris氏は、Connected Objects分野での最新製品として、ノイズキャンセリング搭載Bluetoothヘッドフォン「Zik 2.0」と、Wireless Plant Monitorとジャンル名の付いた新製品「Flower Power」を紹介。後者は植物の脇に刺し、太陽光量や外気温、肥料濃度、土の湿度をモニターできる。つまり園芸に関連した機器となるわけだが、これは同社にとっても新ジャンルであり、大きく期待していると紹介した。

「ドローンはBluetoothで何が繋がるか、という発想から生まれた」

そして最後の1ラインがドローンとなる。ここでまずは「なぜドローンをビジネスとして手がけようと思ったか?」という点から紹介。「弊社のビジネスにおいて、ドローンは他のジャンルとの繋がりがないのでは? と言われるが、実はテクノロジーでは繋がっている」とChris氏は語る。とくに大きなトピックはBluetoothレシーバーの小型化。つまり同社にとってドローンはBluetoothで繋がる機器としての位置づけがあったという。「Bluetoothでどんなものが繋がるか、インスピレーションした結果だ」。

続けてそうした取り組みを証明するかのように、2005年に社内で開発していたというBluetooth接続のカメラ搭載ラジコンカー、プロジェクト名「BTT」(Bluetooth Toyの略)の試作機を紹介。Chris氏は当時、Parrot創業者のHenri Seydoux氏に「これは車だが、いつか飛ばしてみせる」と紹介されたという。つまり、当時からドローンの構想はできており、テクノロジーが整うのを待っていたということだ。

本格的な開発は2006年に決定したが、当時は社内でも、非常にクレイジーな計画と思われたとChris氏。実は当時の視点では、本体よりもむしろ手頃なコントロールデバイスがないほうが問題だったという。Bluetooth接続機器はヘッドセットやフィーチャーフォンが主流だったためだ。「しかし、2007年にiPhoneが登場し、続いてiOSアプリの開発が可能になった。突然イネーブラーとなりうる技術が登場した」。

ここから3年間の紆余曲折があったが、同社は2010年に初代「AR.Drone」を発売。開発にあたっては、安定した飛行で有利なクアッドコプター形状としながらも、さらに安定性を重視。「14歳の女性でも安定して飛ばせることを目標に、私たちのDSP技術をドローンの姿勢制御に応用した。OSにはLinuxを用いており、ファームウェアと合わせた機体制御には我々ならではのノウハウが多数盛り込まれている」と紹介した。

ここで実際に壇上で、現行製品であるAR.Drone 2.0をデモ飛行。機体自体を垂直方向に数回転させるアクロバット飛行テクニック「Flip」を含めて所狭しと壇上を飛行させ、実際の安定性を印象づけた。

プロ用ドローンの市場は順調に拡大

続けて、AR.Droneより小型となるクアッドコプタータイプの新製品「Rolling Spider」と、ジャンプ可能な走行型ドローン「Jumping Sumo」、さらに年末発売予定となるAR.Droneの第3世代「BEBOP Drone」を紹介。

前者2モデルはすでに発売しているが、BEBOPは未発売の製品。180度という超広角撮影が可能で、かつ3軸の角度制御が可能、さらにブレ補正も強力になったカメラをはじめ、Wi-Fiによる接続とオプションの専用コントローラーやVRヘッドセットへの対応などを「従来機に比べても大きく進化している。私たち自身も楽しみにしている製品」とアピールした。

続いて、プロ用ドローンの市場について紹介。農業分野や鉱山調査をはじめとする広大な土地状態の目視検査や、3Dマッピングによる地図データ製作といった精密測量用途での需要が増している点を強調した。

同社が買収したプロ用ドローンメーカー、Senseflyの次世代製品「eXom」についても紹介。eXomは高度な超音波センサーを備えたことで精密な障害物測定が可能となり、狭い箇所や複雑な地形下での飛行安定性が向上。さらにカメラの画質も向上しているという。

最後にChris氏は「時間が数分ありますので、BEBOP Droneのデモ飛行をお見せしましょう。日本では初めてです」と発言し、試作機のフライトを披露して観客を再び沸かせ、セッションはクローズ。「ハイテクとは楽しめるものでなければならない」(Chris氏)というParrotの姿勢が強く打ち出されたセッションとなった。


予算ゼロでNewsPicksを開発! TC Tokyo 2014で「CTOオブ・ザ・イヤー」が決定

「予算ゼロで新プロダクトを開発」「エンジニアのハイブリッド化で売上倍増」「本番環境をフルスクラッチで整備」――。こんな無理難題とも思えるようなミッションを解決したスタートアップのCTOたちが、11月18日に開催したTechCrunch Tokyo 2014の「TechCrunch Tokyo CTO Night powered by AWS」で、最もイケてるCTOを決める「CTOオブ・ザ・イヤー」の称号を競い合った。審査基準は「技術によるビジネスへの貢献度」。全9社(9人)のCTOが登壇してピッチを行い、「CTOオブ・ザ・イヤー」に選ばれたのは、株式会社ユーザーベース(SPEEDA/NewsPicks)の竹内秀行さんだった。

 

スタートアップ9社のCTOが登壇

登壇したCTOは、来年さらに飛躍が期待される9社9名で、以下の通りだ。

  • Beatrobo, Inc.(PlugAir) 竹井英行CTO
  • freee株式会社(freee) 横路隆CTO
  • Tokyo Otaku Mode Inc.(Tokyo Otaku Mode) 関根雅史CTO
  • ヴァズ株式会社(SnapDish) 清田史和CTO
  • 株式会社オモロキ(ボケて) 和田裕介CTO
  • 株式会社Moff(Moff Band) 米坂元宏CTO
  • 株式会社ユーザベース(SPEEDANewsPicks) 竹内秀行CTO
  • 株式会社エウレカ(pairs) 石橋準也CTO
  • 株式会社DoBoken(ZenClerk) 磯部有司CTO

登壇した9名のCTOを審査するのは、豊富な知見を持つ6名の審査員でありCTO。真剣に、時に笑いながら登壇者のプレゼンに耳を傾けていた。

  • グリー 藤本真樹CTO
  • クックパッド 舘野祐一CTO
  • ビズリーチ 竹内真CTO
  • はてな 田中慎司CTO
  • サイバーエージェント 佐藤真人CTO
  • アマゾンデータサービスジャパン 技術本部長 玉川憲氏

 

多様性のない組織は進化が止まる。CTOの仕事におけるテーマは「多様性の創出」

ユーザーベースの竹内秀行CTOは「とあるCTOのスタートアップ切り込み隊長日誌」と題したプレゼンを披露。

同社は、2009年1月にローンチした企業・業界分析プラットフォーム「SPEEDA」と、2013年7月にローンチした経済ニュース「NewsPicks」の2サービスを展開している。特にSPEEDAは全世界100万社超、550業界のデータを管理・提供しており、CTOが解決しなければならない技術的課題は大きい。

もちろん、サービスの技術的改善、エンジニアのスキル向上、健全な組織を作るための施策も検討・実行しなければならない。竹内CTOはそれを「ビジネスにおける多様性、技術における多様性、チームにおける多様性」の3つの多様性で表現した。

「多様性」を生み出すためにどのようなアプローチをしたのか。

技術面ではSPEEDAのシステムを再構築してMySQLベースからElasticsearchに乗り換えた。その結果パフォーマンスが大幅に向上、フィールド数10万を超えるデータベースにおいて複雑な条件でも100ms以下で検索完了、集計は1〜2秒で完了する変化を実現した。企業・M&A情報を複雑な条件でも素早く抽出できるようになったことで情報の提供先企業が増え、会社がビジネスとして取れる「選択肢」も広がった。新サービスに向ける余力が生まれたのである。

新サービスに向ける余力が生まれた同社。ある日、竹内CTOは代表取締役梅田優祐氏に呼ばれて「気軽に専門家の意見が聞けるサービスを作りたい」というオーダーを与えられた。「予算はゼロ」と言われて竹内CTOは絶句したそうだ。それが最近キュレーション系メディアとして存在感をましているNewsPicksの始まりだったと当時を振り返る。

開発に着手したのは2013年2月からローンチした7月までの5カ月間、彼は一人でAPI設計構築・バックエンド設計構築などサーバサイド全般を担当。その半年後に別のエンジニアが入社して業務を引き継ぎ、同時にチームにおける多様性も達成した。

スタートアップは時にシングルサービス・シングルプロダクトからなる多様性のなさで競合との戦いに疲弊することもある。逆に自分たちのキャパを超えてサービスやビジネスの拡張・複数化を進めて多様性で失敗することもある。そのどちらにも属さない多様性を追求できる可能性を感じるプレゼンとなった。

 

ハイブリットエンジニアで月間売上倍増

以降は特に印象に残ったCTO達を紹介していこう。

まずは株式会社エウレカの石橋準也CTOだ。マッチングサービス「pairs」やアプリ探しサービス「Pickie」などを運営する同社だが、大きく分けて3つの問題を抱えていたと語る。急激な成長を遂げたスタートアップの成長痛とも言える「社内のリソース不足」、担当業務に専属意識を持ちすぎるため、社内連携不足となるがゆえの「バグの頻発」、そして「責任感の欠如」だ。

それを解決したのが「全エンジニアのハイブリッド化」だった。

石橋CTOが定義するハイブリッドエンジニアとは、サーバサイド、ウェブ・フロントエンド、ネイティブ・フロントエンドの3側面を全て担当できるエンジニアのこと。通常のインターネットサービスは、データベースやネットワーク回りなどのサーバサイド、ウェブUIを含むユーザーの目に見える部分のウェブ・フロントエンドなどそれぞれでエンジニアが専属担当する。

同社の場合、従来はサーバサイド、iOS、Androidの3分野で専属エンジニアが業務を行っていたが、それを一貫して担当できるエンジニアを育てるという取り組みである。

石橋CTOは自身が「非ハイブリッドエンジニアだった」と語る。iOSとAndroidに関する知識がなかったため、ゴールデンウィークの時間を使って1カ月ほどで知識を習得した。その後、ノウハウを得た石橋CTOはエンジニア合宿を実施。エンジニアに普段担当していない分野をアサインし、分からないことを教えあう形式を採用した。現在では所属エンジニアの半数がハイブリッド化している。

ハイブリッド化の成果リソース不足の解消、生産性の向上、バグチケットの起票率2分の1、問い合わせの数2分の1、新規施策の実行3.5倍など明確に現れた。

また、生産性も向上した。1つの機能をリリースしようとすると分業担当制の場合、その担当者が多忙で対応できないとその段階で開発が止まってしまう。だが、分業せずハイブリッドエンジニアが一貫して担当すれば他者に影響を受けることがない。もちろん全てを担当するエンジニアには業務効率の向上が必須だが、その姿を見た他の社員は自然と刺激も受け、今後も良い業務環境が続くだろう。

 

本番環境をフルスクラッチで整備。急激なトラフィック増に対応して成長した「全員ダブルワーク」体制の力

「事故からはじまるスケールチャンス」と興味深いタイトルのプレゼンを披露したのは、株式会社オモロキの和田祐介CTO。今やバズるネタ元には高確率でbokete(ボケて)の存在が見えるまでに成長した、ユーザー投稿型サイトである。お題となる1枚画にユーザーが好きなコメントを付けていくスタイルを採用したシンプルなサービスだ。

順風満帆に見える同社だが、サービス開始当初の2008年9月から4年間ヒットに恵まれずに細々と運営されていた。しかし、2012年5月突然サーバからのアラートが発生。蓋をあけると事故ではなく、平穏運営の間に蓄積されていた投稿コンテンツがまとめられ、そのまとめが人気を呼んだことによる急激なトラフィック増だった。

対応に追われる和田CTO。4年前にリリースしたサービスは細かなメンテナンスを施してはいたが、2012年段階の最新技術は取り入れておらず、同時に提供しているアプリが本番環境でしか動かないという致命的な問題も抱えていた。

そこで、システムをフルスクラッチで再構築することを決意した。これは本番稼働しているサービスの仕組みをイチから作り直すわけだから、大きな決断である。失敗したり作業が遅れれば、サービスは停止・遅延するなどの問題が発生する可能性がある。だが、無事にシステムへの移行を成功させ、順調にアクセス数は増加していった。

すると次はマネタイズ必要性が出てきた。オモロキは創立当初、和田CTOと代表の鎌田武俊氏の2名体制であり、お互い本業を抱えたいわゆるダブルワークのプロジェクトだった。そこで仲間探しをするのと同時に、不得手なことを外部のパートナーに委ねるという戦略を採用したのである。

現在も同社代表の鎌田氏は熱海在住だし、和田CTOは父の和田正則さんと2人と立ち上げた株式会社ワディットの代表取締役でもある。集まったメンバーは社員ではなく役員で、全員が本業を持つダブルワーカーだ。定期的に熱海の同社オフィスに集合して外の経験を活かし、オモロキの仕事をする形式を取っている。

質疑応答で「CTOとしてオモロキでしたいことは何か?」と聞かれた和田CTO。「メンバー全員でビジョンを共有している、アフリカのタンザニアでbokete(ボケて)を展開するというような世界展開を実現したい」と語り、まとめとした。

CTOオブ・ザ・イヤーの意味とスタートアップにおけるCTOの存在

CTO Nightは日頃の成果をたたえ合うことが目的であり、優劣を付ける場ではない。自社のため、仲間のため、そしてユーザーのために考え実行してきた業務を共有し、先輩CTOからのコメントを受けて、新しいヒントが得られる場となったようだ。


テックエリートなんて眼中にない、新ポータル構想「Syn.」仕掛け人が大いに語る

2014年10月16日にKDDI主導で立ち上げたサービス「Syn.(シンドット)」。「中心のないポータル」を目指すとして話題となった。本誌でもローンチの際に取り上げたが、ネットユーザーたちの反響はあまり芳しいものではなかったのが正直な印象だ。11月19日に行われたTechCrunch Tokyo 2014で、編集長の西村賢がストレートに質問をぶつけてみた。

「今どき、ポータルなんて必要?」

「正直言って、必要ないと思いますよ」と森岡氏。「でもそれは、われわれや西村さん、またTechCrunchの読者のようなテックエリートの人たち、わずか一握りの人たちにだけ必要ないんです」。

今やスマートフォンの普及率は53.5%(平成26年年版情報通信白書より)。半数以上が所有していることになる。そしてスマートフォンで提供されているはアプリは250万以上と言われている。しかし、ユーザー1人がダウンロードする平均アプリ数は38。そのうち日常的に利用しているアプリはわずか8つ。さらにカメラやメールアプリなどを除けばわずか4つを普段使っているに過ぎない、と森岡氏。つまり、多くのユーザーは、スマートフォンで利用できるサービスを使いこなせていないのだ。

森岡氏はFacebook日本の元副代表を務めた人物。国内ユーザーが80万人の時代、2010年に入社している。その時も「mixiとTwitterがあるのになぜFacebook?」「実名重視のFacebookは日本のインターネット文化には受け入れられない」という声が多かったと振り返る。

ところが、現在ではその25倍に相当する2000万人以上の国内ユーザーをFacebookは擁し、mixiの月間アクティブユーザー数を上回るようになった。一部の人たちの「匿名性の高い日本のインターネット文化で広まるはずがない」という主張はもろくも崩れ去った形だ。

インターネットの一部のユーザーの憶測が外れたように、今回も「着実にやっていくことによって広がっていくはず」と森岡氏は強調する。

アプリを探してインストールする行為はハードルが高い

「自分たちで新しいサービスを取り入れられる人たちはいいですよ。でも、これだけ多くの人がスマートフォンを使うようになれば、ITに疎い人たちにも広まっていくはずなんです。例えば、大手スーパーが売り出している格安スマートフォンを店員に勧められるままに購入したような人たちとか。少し前はポータルサイトがあって、知りたいことや問題があったらそこにアクセスしたら解決できました。スマートフォン時代の現在ではアプリが解決してくれますよね。でも、一般ユーザーにとっては、問題を解決したくてもそれをしてくれるアプリに何があるかを調べることもできない。それにApp StoreやGoogle Playでアプリを探してダウンロードしてインストールする、という一連の動作は一般ユーザーにはハードルが高いんです。そんな人たちにSyn.という形でサービスの存在を知ってもらい、使ってもらえれば、スマートフォンのパフォーマンスそのものを発揮でき、その楽しさを知ってもらえ、その価値が倍増すると思うんですよ」(森岡氏)

Syn.では、カテゴリだけではなく、アプリとWebの垣根も越え、シームレスにサービスを行き来できるよう設計されている。それにより、ユーザーが複数のサービスを使いこなすための負担を軽減している。テックエリートには不要かもしれないが、どんな人でもスマートフォンを使いこなすために「ポータル的な存在は必要」だと森岡氏は言う。

スマートフォンを使いこなせなかった人たちも年月とともに経験値が上がり、インターネットの歩き方を知るようになる。そうなれば「Syn.そのものも、彼らに合わせてどんどん進化させていく」(森岡氏)ことになる。ただ、現状は「いいサービスをユーザーに届けることを最優先したい」。

「驚くようなビッグネーム」も参入に名乗り

スタート時点でアライアンスパートナーが11社だったSyn.。現在13社に増えたが、まだまだ点在するサービスを線でつなげた、いわば「山手線のようなもの」と森岡氏は語る。

「それらの点(駅)を行き来するのにタクシーを使ってもバスを使ってもいい。ただ、最寄り駅をもっと便利にしようという考えなんですよ。今のサービスの数が最終地点ではなく、あくまでも通過点。あまりにも大きなサービス事業者や有名どころは、志や目的地に共感するだけでなく経済的なものも含めたメリットがないと動けないでしょう。わたしたちの今のフェイズはSyn.の有用性などのファクトを積み上げて彼らの目の前に提出できるようにすることだと思うんです。すでに驚くようなビッグネームが参入への名乗りを上げてくれているので、このやり方は間違っていなかった、と確信しています。」

そのように話が進むことは「計画の一部」だったのだろうか。森岡氏は「計画的だったわけではないですよ」と否定する。しかし「そうなったら嬉しい、と思っていたことが実現した感じではありますよね。実名か匿名かの流れの時もそうですが、以前Facebookに在籍していたときに、リクルートと『コネクションサーチ』という企業内のOBを訪問しようというサービスを立ち上げたことがあったんですが、それで実名制とはどういうものかを示せました。何も考えず現状のインターネット文化に浸かっているのではなく、ユーザーの脳を覚醒する、そんな機会も提供できているのではないかと考えています」と語る。

最近よくあるサービスのように、ユーザーの嗜好を反映したカスタマイズされたサジェストなどは「気持ち悪い」ので取り入れるつもりはないという。しかしサービス参入者を増やし、カテゴリの中からユーザーが好みのコンテンツを表示できるようオープン化したいとのこと。

また、このアライアンス全体で集積したデータをサイドメニューや各社のコンテンツにフィードバックするDMP(Data Management Platform)も年明けに発表したいという。しかしどのように反映させるのかや、どんなデータを集めるのか、などについては言及を避け「もやっとしててください」と語るにとどまった。

ポータル最大手のヤフーは「ライバル視していない」

ポータルサイトといえばYahoo!が最大手だが、「ライバル視していません。むしろ仲間に入ってほしいくらい。僕らが目指しているのはポータルサイトではありませんから」と森岡氏。また、APIを解放し、海外で一般化しているように、「サイドメニューを共有化しその中で回遊できるようにしていきたい。そのツールが日本でも近い将来一般化するのを期待したい」と語った。

現在のところSyn.はKDDIという携帯通信キャリア主導で展開しているが、それはあくまでも「信頼を持って見てもらうためのもの。このサービス自体はキャリアのものではなく、インターネットのサービス」と強調。Syn.の目指すものが一部のユーザーだけではなく、全インターネットユーザーがやがてスマートフォンを使うようになり、それを使いこなし、スマートフォンのパフォーマンスを最大限に発揮することである、そんな未来像を描きながら、森岡氏は話を締めくくった。


Pebble創業者もTechCrunch Tokyoに来る! どうなるスマートウォッチ?

週明けの火曜日、水曜日(18日、19日)に迫ったTechCrunch Tokyo 2014の講演者を、また1人ご紹介したい。スマートウォッチの先駆者であり、ハードウェアスタートアップとしても注目の「Pebble」の創業者であるエリック・ミジコフスキー(Eric Migicovsky)氏の登壇だ。

ほかのセッションなどTechCrunch Tokyo 2014の紹介記事は、こちら

Appleがセクシーなスマートウォッチ「Apple Watch」を来年市場投入すると発表したり、GoogleがAndroidコミュニティと多数のパートナー企業という後ろ盾を得て、Android Ware市場が出てきて進化しているいま、独立系スタートアップのPebbleの立ち位置はどうなるのか、というのは大いに気になるところだ。サムスンに至ってはオリジナルのSamsung Gearに始まり、これまでTizen OS搭載、Android Wear搭載モデルを含めて6機種もリリースしている。LG電子やモトローラは丸型のかわいいAndroid Wearウォッチを出している。

市場としても腕に巻くウェアラブルデバイスの市場は急成長している。調査会社Canalysが2014年8月に発表したデータによれば、2014年上半期の市場規模は前年同期比684%と7倍近くになっている。そのほとんどはウォッチでなくバンドだが、多くのウォッチがバンドの機能を兼ねていることや、ウォッチの製品群がまだ出たばかりということを考えると、今後スマートウォッチ市場が大きく伸びる可能性は高そうだ。Pebbleはこの9月に大幅な値下げを行うと同時に、Fitbitのような活動量モニター系のアプリのためのバックグランド実行機能を強化している。これも、ウォッチがバンドを兼ねるという市場動向に対応してのこととも考えられる。

ほかのスマートウォッチとPebbleの違いはいくつかあるが、最大の違いは先駆者としてコミュニティベースで登場して、成長していることだろう。まだ他社のスマートウォッチの噂しかなかったころに、Kickstarterで華々しくデビュー。2012年4月のキャンペーンでは、10万ドルの目標金額をわずか2時間で達成。最終的には1000万ドル(約10億円)を超える支援金が集まるというKickstarter始まって以来の大きな調達記録を作った(ちなみに現在、Kickstarterの歴代支援額トップは2014年8月にCoolestという「21世紀のアイスボックス」によって塗り替えられた)。

Pebbleは電子ペーパーをディスプレイに搭載していて7日連続稼働可能というのも、ほかのスマートウォッチと違うところだろう。ぼくはここ何カ月かGoogle Wareを使っているけれど、1カ月に2、3度は真っ黒な画面の腕時計をしている感じで、バッテリ持続時間は大事だなと痛感している。

初代Pebbleはカラフルでスポーティーな腕時計だったが、この1月にはクラシックなデザインのPebble Steelも発売している。初代Pebbleが99ドル、Steelが199ドル。Steelは機能的には変わっていないものの表面の指紋防止性能が向上していたり、充電プラグを刷新して使い勝手を上げたりしているそうだ。

さて、Pebbleはスマートウォッチ市場の先駆者としても注目だが、ぼくはエリックの話でより傾聴すべきはハードウェアスタートアップとしての側面と思う。背が高すぎて既成品の椅子では飽きたらず、高校生のときに自分で持ち運び椅子を設計してしまったり、何でも「作る」ことが好きだったエリックが、どうやってプロトタイプを作り、そしてコミュニティを育てていったのか。以前、ぼくが聞いたエリックの講演で、彼はこんなことを言っていた

「Pebbleのプロトタイプを作るとき、ユニットあたり数ドルのコストのために素材を探しまわったことは、振り返ってみれば意味がなかった。そんなことより、開発者を巻き込むエコシステムを1日も早く作ってフィードバックをもらうことが大事。初期ユーザーはアーリーアダプターやファンが多いので、完成度に対する要求レベルが低い。だから、初期段階では素材にこだわるよりも1日も早くMVPを作って出せ」

Fortuneのインタビューに答えたエリックによれば、Pebbleには2014年3月時点で約1万2000人の登録開発者がいて、約1000以上のアプリがストアに登録されているという。テックジャイアントとの厳しい競争にされはじめたPebbleだが、今後なにがスマートウォッチの差別化ポイントとなっていくのか。エリックの話はKickstarterを経て成長中のハードウェアスタートアップの成功談としても、最高のストーリーとなるはずだ。

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TechCrunch Tokyo 2014の見どころをダイジェストで紹介するぞ!

きたる11月18日、19日に東京・渋谷ヒカリエで開催するスタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2014」まで1週間を切ったが、ご登場いただくスピーカー陣が「ほぼ」出揃ったのでダイジェストでお伝えしたい。「イベントまで1週間を切って『ほぼ』ってどういうこと?」とツッコミが入りそうだが、もしかしたら追加でお知らせできるかもしれないのでご容赦いただければと思う。(タイムテーブルはこちらから)。

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DAY1(11月18日)

シリコンバレーで次に来るサービスは?

さて、初日のオープニングセッションを飾るのは、シリコンバレーのテック業界で時代の寵児ともてはやされている「Product Hunt」の創業者、Ryan Hooverだ。Product Huntをざっくり言うと、イケてると思ったプロダクトに投票やコメントを書き込み、投票数が多いプロダクトほど上位に表示される仕組み。パッと見は、投票機能のある掲示板だが、Product Huntがスゴいのは、シリコンバレーのVCたちが参加し、日々チェックするサイトというポジションをあっという間に築き上げたことだ。セッションでは、米TechCrunchのライターとしての経験を持つSerkan Totoが、「シリコンバレーで次に来るアプリ・サービスは?」というテーマでRyanにインタビューする。

斬新なUIで注目、10億ドル企業入り目前のデートアプリ

続いて登場するのは、「ユニコーンクラブ」(短期間で時価総額が10億ドルを超えた稀有の成功事例)入り目前と評されるデートアプリ「Tinder」のバイスプレジデント、Rosette Pambakianだ。ロサンゼルス発のTinderは、スマホで異性の写真を見て「好み」「好みじゃない」と直感的に右へ左へと写真をスワイプしていくテンポの良いインターフェイスが特徴。この斬新なUIはファッションや学習、ニュースなどのアプリにも採用されるなど注目を集めている。登壇するRosetteは、そのままTinderのモデルになれそうな風貌の女性の持ち主。デートアプリで10億ドル(約1000億円)と言われてもピンとこないかもしれないが、彼女はTinderの戦略や、実際に周囲の人々がどう使っているかも含めて話してくれると思う。

クレイジーな起業家の創業ストーリーが目白押し

午後のセッションはファウンダーストーリー(創業物語)が目白押しだ。トップバッターはIPOも噂される企業向けクラウドストレージ「Box」を手がけるSam Schillace。彼はバリバリのテクノロジストでありながら、連続起業家としてもシリコンバレーで有名な存在。Google Docsの生みの親としても知られる。続いて、「部屋中どこでもワイヤレス充電」といいうニワカには信じられないテクノロジーを開発するOssiaのHatem Zeineや、学費がバカ高い米国の4年制大学をディスラプトすると豪語する「MakeSchool」のJeremy Rossmannなど、クレイジーな起業家の話はぜひ生で聞いてもらいたい。

このほかにも、「若さか社会経験か? 成功する起業家に必要なもの」や「超小型開発ボードのEdisonがWeb開発者に開くIoTへの道」をテーマにしたセッションがあったり、ドローンの先駆者である仏Parrot電子署名プラットフォームのDocuSignの講演があったり、ソフトバンクのPepperくんを魔法の指輪「Ring」で動かす夢の共演まであったりする。

10代がハマるネットサービスとは

海外スピーカー勢の後に控えるのは、日本人によるパネルディスカッションだ。まずは「10代がハマるサービス」というテーマで、10代のユーザーを多数抱えるスタートアップ3社が登壇。「ざわちん」や「けみお」といった10代に人気のタレントを生み出したと言われるツイキャス、HIKAKINをはじめとした国内の人気YouTuber約30人が所属するuuum、中高生向けオンライン学習塾「アオイゼミ」の代表が、普段は垣間見えにくい10代ネットユーザーの利用動向を話してくれる。

若手独立系VCが語る、注目分野とは

初日最後のセッションには、若手独立系ベンチャーキャピタリストである、ANRIの佐俣アンリとSkyland Venturesの木下慶彦が登場。スタートアップを取り巻く環境や彼らが注目する領域、さらにはベンチャーキャピタリストという生き方などについて、2人やその投資先を取材してきたTechCrunch Japanの岩本有平がぶっちゃけトークを繰り広げてくれることだろう。

そうそう、パネルセッションの裏番組にはなるが、日本で最も「CTO密度」の高い、CTOのためのイベント「CTO Night」も昨年に引き続き開催する。今年は「CTO・オブ・ザ・イヤー」を選出するピッチ・コンテスト形式として、9社9人のCTOの日々の仕事の成果をシェアし、たたえ合う場にする予定だ。

DAY2(11月19日)

今さらポータル?「Syn.」の方向性を聞く

2日目のオープニングセッションに登場するのは、スマホ向けの新ポータル構想「Syn.」の仕掛け人、KDDIの森岡康一だ。Syn.の発表時には「今さらポータルか」という声も聞こえてきたりして、ネット上での評判は必ずしも芳しくなかったのは事実。しかし、彼は「いまスマフォになだれ込んできているユーザー層は、ヤフーポータルにすら自分で辿りつけない人。こうした層にネットを楽しく便利に使ってもらうにはどうすれば良いのか、という課題に対する回答の1つがSyn.」と語る。そんなSyn.の狙いと今後の方向性についてお聞きする予定だ。

世界で勝負できるプロダクトとは

続いてのセッションには、フリマアプリ「メルカリ」の小泉文明、ニュースアプリ「スマートニュース」の鈴木健、リアルタイム型対戦脳トレアプリ「BrainWars」を手がけるトランスリミットの高場大樹が登場する。これまで海外進出をうたうスタートアップは数あれど、実際に「成功」と呼べるほどのプロダクトはほとんどなかったように思う。そうした中、スマートニュースは米App Storeのニュース部門、BrainWarsは同ゲーム部門でそれぞれ1位を獲得。国内のフリマアプリ市場で存在感を示すメルカリも9月に米国進出を果たし、本気で市場を取りに行っている。彼らには世界で戦えるプロダクトの作り方について聞く予定だ。

左からトランスリミット高場大樹さん、メルカリ小泉文明さん、スマートニュース鈴木健さん

同じ時間帯には、「スタートアップのためのモバイルEコマースと決済」というテーマで、PayPalのCorrado Tomassoni、ウェブペイの久保渓、Showcase Gigの新田剛史によるパネルディスカッションも行われる。

もちろん今年もやります、スタートアップバトル

ランチ休憩後には、イベントの目玉企画とも言える「スタートアップバトル」が始まる。今年は書類審査に応募した113社の中から選ばれた12社が自身のプロダクトを披露。優勝企業には賞金100万円を贈呈する。ちなみにスタートアップバトル直前には、昨年優勝した「Ring」を手がける吉田卓郎が登場する。彼にはスタートアップバトル優勝から紆余曲折を経て一般販売までこぎつけた話や、実際のデモを見せてもらう予定だ。

(おそらく)興奮冷めやらぬスタートアップが終了し、表彰式までの2時間も見逃せない。大学講義配信サービスの総称として使われる「MOOCs」ブームの火付け役となったUdacityのバイス・プレジデントClarissa Shenがオンライン教育の現状を語ったり、初日に続いての登場となるRyan HooverがProduct Huntの創業秘話を語ってくれる予定だ。同じ時間帯には、TechCrunch Japanとリクルートとのコラボレーションによる日本最大級のWebアプリ開発コンテスト「Mashup Award 10」も開催している。

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Amazon、Lambdaをリリース―ステートレスでイベント・ドリブンのコンピューティング・サービス

今日(米国時間11/13)、Amazonはラスベガスで開催中のre:Inventカンファレンスで、ステートレス、イベント・ドリブンのコンピューティング・サービス、Lambdaをリリースした。 事前にコンピューティング資源を一切割り当てる必要がなく、ダイナミックなアプリケーションに特に適しているという。

AWSのCTO、Werner VogelsはカンファレンスでLambdaを紹介した際に次のように説明した。

Lambdaはデベロッパーのプログラミング作業を大幅に軽減する。コードを書き、そのコードが実行されるべきイベントを定義しさえすれば、イベントの生起と共に自動的にコードが実行される。開発時間ばかりでなく運用コストの削減にもつながる。ときおり実行されるだけのプログラムを常時ロードし、作動準備させておく必要がなくなるからだ。Lambdaを利用すれば、実行が必要になるまで一切リソースを消費せず、必要になれば自動的に実行される。

Hacker NewsにLambdaについての体験が早くも現れている。Lambdaに事前のアクセスを許されたプログラマーによると、「Lamdaを効果的に使えるようになるためには少々時間がかかるが、 ひとたび慣れれば、AWSの利用スタイルを大きく変える可能性が見えてくる」ということだ。

Lambdaはプログラムの管理、スケーリング、イベントのモニタリングをすべて自動的に行う。イベントが発生するとミリ秒単位でステートレスなクラウド関数が処理される。また数千のLambda処理が並行して実行可能だ(リソースをいちいち割り上げる必要はない)。

Vogelsは、Lamdaのデザインを「関数(ビジネス・ロジック)、データ(ビジネス・ステート)、相互作用というプログラミングの基本モデルをロジックとデータが相互作用するイベントによって制御するものだ」と説明した。

当面、LamdaはJS/nodeだけをサポートするが、Vogelsは「将来はサポート言語を拡張するかもしれない」と述べた。プログラマーは関数を書き、コンテクストとリソースを定義する。リソースが変化すると、それがトリガーとなって関数が呼ばれ事前にデザインされた通りに実行される。すべては自動的で、個別に制御する必要はない。

最大月間100万リクエスト、320万秒までの計算時間が無料で提供される(ただしユーザーが利用できるメモリーによってこの条件は変化する)。有料版の方式はやや複雑で、100ミリ秒ごと、1リクエストごとにに課金が行われる。

〔日本版〕LambdaについてはAmazonのブログに英文の紹介がアップされている。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


TC Tokyoにメルカリ、スマニュー、BrainWarsが登場! 世界で勝負できるプロダクトの作り方とは?

photo by
Steve Cadman


左からトランスリミット高場大樹さん、メルカリ小泉文明さん、スマートニュース鈴木健さん

600万ダウンロードを超えたフリマアプリ「メルカリ」、500万ダウンロードに達したニュースアプリ「スマートニュース」やリアルタイム対戦型脳トレアプリ「BrainWars」――。3つのプロダクトに共通している点がある。いずれも海外市場を戦いの舞台としていることだ。これらのプロダクトを手がける3社が、「TechCrunch Tokyo 2014」2日目の11月19日に登場することが決まったので、お知らせしたい。

これまで、いくつものスタートアップが海外展開に挑戦してきたものの、そのほとんどは失敗に終わっている。そんな中、TechCrunchでも伝えたように、スマートニュースは10月にリリースした英語版が米App Storeのニュースカテゴリーの1位を獲得。米メディア界に豊富な人脈を持つメンバーを次々に採用するなど、人材面でも海外展開を加速していることが伺える。

BrainWarsはリアルタイムでのオンライン対戦が可能な脳トレゲームアプリ。友人や世界中のユーザーとリアルタイムのマッチングを行い、各種脳トレゲームの対戦スコアを競い合える。公開から5カ月で500万ダウンロードを突破し、海外ユーザー比率はなんと95%。米App Storeのゲームカテゴリで1位を獲得している。

BrainWarsを手がけるトランスリミット代表取締役の高場大樹さんは、創業当初のインタビューで「脳トレは非言語コミュニケーション。どこの国の人でも共通の土台で戦える。年齢も子どもから大人までカバーできるので提供範囲も広い」と語っていたが、その狙い通りに海外展開が進んでいるようだ。

10月にはLINEの投資ファンドなどから総額3億円を調達。LINE執行役員の舛田淳さんが「世界のポテンシャルをもっとも感じさせてくれるスタートアップ」と評価するように、海外市場を狙える数少ない日本のプロダクトの1つと言えそうだ。

国内のフリマアプリ市場で存在感を示すメルカリは、今年3月にサンフランシスコに子会社を設立。9月に米国でのサービスを開始した。メルカリ代表取締役社長の山田進太郎さんは、「何から何まで日本と事情が違う」と驚きつつも、1日の出品数が数千件に上るなど、順調な滑り出しを見せている。立て続けに実施した大型資金調達を受け、米国でのマーケティングを本格化していくそうだ。

TechCrunch Tokyo 2014では、スマートニュース代表取締役の鈴木健さん、トランスリミット代表取締役の高場大樹さん、メルカリ取締役の小泉文明さんにご登壇いただき、世界市場で戦えるスタートアップに必要なものは何なのか、といった話を伺う予定だ。

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参加はラストコール! 18日のCTO Nightの登壇CTOをご紹介

すでに告知させて頂いているイベント、CTO Nightの開催が来週18日火曜日と迫ってきたので、聴衆としての参加の呼びかけのラストコールとともに、登壇CTOのご紹介をしたい。

今年のCTO Nightは、1人(1社)あたり5分の発表と3分のQ&Aセッションを行い、全9社に登壇してもらうピッチ・コンテストとなっている。「技術によるビジネスへの貢献度」という観点から審査をし、2014年に最もイケてるCTOを1人選んで「CTOオブ・ザ・イヤー」として表彰するというのがイベントの趣旨だ。

CTOの日々の仕事の成果をシェアし、たたえ合う場にできればと考えている。スタートアップ企業のCTOの方々の取り組む課題なので、チーム全体の開発力向上のために何をやっているのかという人間組織に寄った話と、ガチのエンジニアリングの話の両方がある。例えば、スマートトイの「Moff」の米坂CTOは「ハードウェア、アプリ、クラウドで構成されるMoffの技術的な取り組み、主にセンシング解析技術(リアルタイムモーションセンシング)によって人間の自然な動作の認識に近づける挑戦」について話てくれるそうだ。

以下が登壇企業(プロダクト名)と、CTOの方々だ。

・Beatrobo, Inc.(PlugAir) 竹井英行CTO
・freee株式会社(freee) 横路隆CTO
・Tokyo Otaku Mode Inc.(Tokyo Otaku Mode) 関根雅史CTO
・ヴァズ株式会社(SnapDish) 清田史和CTO
・株式会社オモロキ(ボケて) 和田裕介CTO
・株式会社Moff(Moff Band) 米坂元宏CTO
・株式会社ユーザベース(SPEEDA/NewsPicks) 竹内秀行CTO
・株式会社エウレカ(pairs) 石橋準也CTO
・株式会社DoBoken(ZenClerk) 磯部有司CTO

コンテストは夕方4時にスタートして90分ほどでピッチ大会と表彰を行い、そのままTechCrunch Tokyo 2014の交流会と合流する形となっている。イベント内イベントという形なので、TechCrunch Tokyo 2014の本編チケットをお持ちの方は、そのままCTO Nightにも参加していただける。

TechCrunch Tokyo CTO Night 2014 powered by AWS

イベント名称TechCrunch Tokyo CTO Night 2014 powered by AWS
日時】TechCrunch Tokyo 2014初日の11月18日火曜日の夕方4時スタート(90〜100分)
コンテスト】登壇CTOによる1人5分の発表+3分のQAセッションを9社行い、審査を経て「CTO・オブ・ザ・イヤー 2014」を選出する
審査基準】技術によるビジネスへの貢献度(独自性、先進性、業界へのインフルエンス、組織運営についても評価対象)
審査】CTOオブ・ザ・イヤー実行委員会による
審査員
・グリー 藤本真樹CTO
・クックパッド 舘野祐一CTO
・ビズリーチ 竹内真CTO
・はてな 田中慎司CTO
・サイバーエージェント 佐藤真人CTO
企画・協力】アマゾンデータサービスジャパン
運営】TechCrunch Japan / AOLオンライン・ジャパン
問い合わせ先】techcrunch@event-info.jp
チケット】税込み2160円(懇親会参加費含む)


1000億円企業目前、話題のデートアプリ「Tinder」もTechCrunch Tokyoに来るぞ

11月18日、19日に迫ったTechCrunch Tokyo 2014の講演者を、また1人ご紹介したい。モバイルのオンラインデートアプリ「Tinder」でバイス・プレジデントを務めるロゼッテ・パンバキアン(Rosette Pambakian)氏だ。左の写真にあるように、ロゼッテはそのままTinderのモデルになれそうな風貌の女性で、きっとTinderの戦略だけじゃなくて、実際に彼女の周囲の人々がどうTinderを使っているかも話してくれると思う。

TechCrunch Japanの読者なら、Tinderのことは知っている人も多いだろうし、それなりに使っている人もいるかもしれない。スマホで異性の写真を見て「好み」「好みじゃない」と直感的に右へ左へと写真をスワイプしていくテンポの良いTinderのンターフェイスは、ファッション系アプリや、学習アプリニュースアプリでの模倣もあるぐらい斬新なUIとして広まっている。Tinderは、単に左右スワイプだけでなくて、「ダブルオプトイン方式」というのが新しかった。選ぶ方、選ばれる方の双方が「好み」としたときにだけチャットを始めることができる。

写真だけでデート相手を選ぶなんて、単なる出会い系でしょという批判もあるようだけど、進化心理学的な観点からはとても理にかなっているという意見もある。つまり、ぼくら人間(あるいはサル)は生存競争やメーティング戦略において、きわめて限られた情報を元に最善の判断をしてきたし、実はすごくその能力に長けているということだ。カメラに向かう肩のアングルや表情、周囲に写り込んだモノを見るだけでも、その人となりがだいぶ分かるし、チャットでメッセージを1、2往復もかわせば、それ以上話をしても仕方ないかだって分かるもの。ちなみに、日本では出会い系というといかがわしいニュアンスを帯びるが、米国では新婚の3分の1はその出会いがオンラインで、こうしたカップルの離婚率はオフラインで知り合った夫婦よりも低いという調査もある

Tinderは旅行先で非日常の恋を探すような若者の間で人気になっているという面もあるというが、今や24言語で提供され、約1000万人にも及ぶDAUがある大人気アプリとなっている。2013年には、TechCrunchを含む、GigaOm、VentureBeat、ReadWriteWebなどのテック系メディアが選ぶベストスタートアップ賞のCrunchiesを受賞しているほど注目されてもいる。

ここ1年ほどで東京でもずいぶん利用が増えてきている印象もあるが、まだまだ日本での利用は全然少ないようだ。Facebookで言えば2008年ぐらいの感じだろうか。

そういう状況だから分かりづらいけど、Tinderはアメリカでは「次のユニコーンクラブ会員になる日も近い」「とっくにビリオンは超えている」などと言われ始めている。テック系スタートアップ業界のユニコーンクラブというのは、短期間で時価総額が1000億円(1Bドル)を超えた稀有の成功事例のことで、例えばここに2014年4月の世界のユニコーンクラブ一覧表がある。

Tinderはアクティブ率も高く、デート・アプリとしては高い人気を誇っている。Tinderは、OkCupidやMatch.comといった出会い系サービスのほか、TripAdvisorやExpediaといった旅行系サイトも買収してきたIACという大手ネット企業から出てきたスタートアップ企業で、最近10%のエクイティを買い戻していたりする。このIACの圧力なのか、実は最近Tindert共同創業者のショーン・ラッド氏がCEOから降格となって、代わりとなる「エリック・シュミットのようなCEO」をTinderは探しているのだと伝えられている。現在進行形の話なのでTechCrunchの記事でも推測の部分が多いが、IACが「ユニコーン」を、ビジネス面での実績のない若いCEOに任せておけなかったのではないかとTechCrunch共同編集長のアレクシアは書いている。

Tinderは11月6日に有料版の「Tinder Plus」をリリースして動向が注目されている。これは従来のTinerに2つのプレミアム機能を加えたものだ。1つは、「Undo」の機能。もっともリクエストの多かった機能だそうで、間違って左にスワイプして消してしまった写真を取り戻す機能だ。Tinderでは一端スワイプしてしまうと、まずその人にはもう巡り会えないという割と一期一会的なデフォルト設定になっている。

もう1つの有料機能は「Passport」と呼ばれる自分の居場所を現在地と異なる都市に仮想的に移す機能だ。Tinderでは半径何kmといった指定で、近くの人をマッチする仕組みになっているが、お金を払うとこれを変えられる。旅行などで現地についてからTinderを起動するよりも、事前に居場所だけ設定で変えてしまって旅先のロマンスに思いを馳せる……、のだと思う。Tinder PlusのPR動画は、少なくともそんな感じだ。

TechCrunch Tokyoに来ていただくTinderのバイス・プレジデント、ロゼッテ・パンバキアン氏には、そもそもTinderが、どんな人たちに、どんな風に使われているのかといったことなんかも含めて、今後の戦略などをお話いただこうと思っている。

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ドローンの先駆者、ParrotがTechCrunch Tokyoで「飛ばす」デモと講演!

PCの登場、インターネットの興隆、モバイルへのシフトというように新しいプラットフォームが広がる時期には多くのイノベーションが起こる。次の大きなトレンドは何かというと、IoTとかウェアラブルというのがテック業界の緩やかな共通認識なんだと思うのだけど、同じぐらい見逃せないのが、急速な進展を見せている「UAV」(Unmanned Aerial Vehicle:無人航空機)市場だ。

平和な日本ではピンと来ないところもあるが、UAVはもともと軍事目的で開発が進んでいて、無人偵察機や無人攻撃機などのゾッとする応用がある。翼のある飛行機型のUAVは開発も機体も高価だったが、そこにDIY市場のノリで安価で高性能なクワッドコプターが登場してきたことで、一気に盛り上がってきた感があるのはTechCrunch Japna読者ならご存じの通り。昨年のクリスマスに突然Amazonのジェフ・ベゾスCEOが「Amazon、無人飛行ドローンによる配達を実験中」と世間を驚かせたりもしたのも記憶に新しい。ヨーロッパからは兵器利用禁止に関する議論も聞こえてくるし、最低限のルール作りのもとに多くのスタートアップ企業が生まれて、実験的アイデアを試し始めているとも聞いている。

クワッドコプター、もしくはドローンと総称される複数のローターを搭載する小型の自動飛行デバイスは、UAV市場の一部でしかないが、室内でも飛ばせる機動性の高さと安定性、操縦の容易さなどから一気に注目を集めている。GoProのようなカメラの登場や、スマフォとともに発展した多数のセンサーデバイスの高性能化が相まって、ドローンは「空飛ぶ無人高性能コンピューター」という感じになってきた。

UAV市場では、例えば広大な農場を空からモニターするような応用や、商業地図制作、考古学の発掘調査といった応用がある。FPS的なUIを使ってピラミッドにドローンを潜入させるなんていいよね。MITの広大な複雑な大学キャンパスを飛びながら音声で案内するSkyCallなんていうドローンの応用も話題になった。商業利用や研究利用がある一方で、ホビイスト向けのDIY市場もある。そして、商業向けUAVとDIY市場をつなげようとするスタートアップ企業の「Airware」が多くの資金調達して注目されていたりする。Airwareは2011年にMITの学生だったジョナサン・ダウニー氏が創業した会社だが、2013年にY Combinatorに参加し、デモ・デイでAndreessen HorowitzやGoogle Venturesから1070万ドル(約10億円)の資金を調達するというY Combinatorの歴史を通しても最大のシード後の調達額を記録している。さらに2014年に入ってドローンの商業利用について、利用可能地域や高度などの法整備の議論が進む中、Airwareは2014年7月に名門VCのKPCBからシリーズBとして2500万ドル(約25億円)の資金調達をして、さらに注目を集めた。Airwareは異なる機体やセンサーを超えて、統一したプラットフォームを提供する開発ボードとソフトウェアを提供している。UAVの商業利用とDIY市場を結び付けるカギとなるのかもしれない。

AirwareのダウニーCEOは、ドローンが殺人マシーンを想像させる状況を変えるべく、密猟による絶滅危惧のあるサイの観察プロジェクトをアフリカで行うなど、テクノロジーそのものには善悪はなく、ドローンには良い応用が多数あると主張している。例えば山スキーの遭難客など災害時に被災者を捜索するようなこととか、ピザ配達など物流への応用、交通量調査に使う、農場管理に使うなどだ。懸念されるのは人身事故だが、ダウニーCEOは、稚拙な運用による死亡事故が発生する前に、きちんとしたルール作りが欠かせないとか、もし申請による認可方式にするとしても、スタートアップ企業によるイノベーションを窒息させるような、複雑な申請プロセスにしてはいけないということなんかを主張したりしている。つまり、GoogleやAmazon、そして新興のAirwareなど、シリコンバレーはドローンの応用にかなり前のめりで取り組み始めているのだと思う。Intel Capitalもつい先日、11月4日に総額6200万ドルの投資を16のスタートアップに行っているが、そのうち1社はPrecisionHawkというUAV関連の企業だ。

クアッドコプターによってUAVへの参入障壁を劇的に下げ、ハッカーや研究者、ホビイスト、ゲーマーを中心にコミュニティーを作り上げた先駆者が、フランス企業のParrotだ。2010年に初代機、AR.Droneをリリース。2012年にはAR.Drone 2.0として、センサーやカメラ、ソフトウェアを大幅アップデートし、今はAR.Drone 3.0となる「Bebop Drone」の発売を控えている

AR.Droneといえば、4つのローターが対象に配置された平べったい機体を思い浮かべると思うけど、実はParrotは最近、ミニ・ドローンのシリーズとして「Jumping Sumo」や「Roling Spider」という変種も出している。Jumping Sumoは、以下のような感じだ。

Parrot社自体は、もともと車載向け無線デバイスや、UAV向けデバイスを事業として行っていて、近年はスピーカーやワイヤレス・ヘッドホン「Parrot Zik 2.0」をリリースしているほか、観葉植物観察ソリューションの「Parrot Flower Power」というのもリリースしている。DIY向け、ホビー向け、業務向けと幅広い。ちなみにノイズキャンセル機能を搭載し、耳のカップをなぞることで音量調整や再生コントロールができるParrot Zik 2.0は、11月12日から日本向にも販売を開始するそうだ。

このParrot社から、JPAC地域担当バイス・プレジデント兼マネージング・ディレクターのクリス・ロバーツ(Chris Roberts)氏をTechCrunch Tokyoにお招きして、デモと講演をお願いしている。UAV市場の全体像と、なぜ今ドローンがこれほど注目されているのかををお話いただくほか、同社の最新のデバイスを紹介してもらう予定だ。

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オンライン教育の「二宮尊徳問題」、TechCrunch TokyoでUdacityに解決法を聞こう

11月18日、19日に迫ったTechCrunch Tokyo 2014の講演者を、また1人お知らせしたい。MOOCsブームの火付け役ともなったスタートアップ企業群のうちの1社、Udacityのバイス・プレジデントを勤めるクラリッサ・シェン(Clarissa Shen)氏だ。

かつて大学という閉じた世界で繰り広げられていた教育を、講義風景動画を含めて教材ごとゴロンとネット上で無料でシェアしてしまい、ネット接続環境とやる気さえあれば、地球上のどこにいても最高の高等教育が受けられるようにする。こうした理想を掲げてMITやハーバード、スタンフォードといった米国のトップティアの大学が、次々とオンラインコースを開設。UdacityやCoursera、EdXといった教育プラットフォームが誕生して「MOOC」(Massive Open Online Course)という言葉が大きく注目を集めたのは2011年とか2012年のことだ。

Udacity創業者のセバスチャン・スラン氏は、GoogleフェローとしてGoogle Glassや自動運転運転カーの研究開発をリードしていた計算機科学者であり、スタンフォードの教授でもある。そのスラン氏が、2011年秋に「AI入門」という名称で行っていたスタンフォードの講義教材の一部をオンラインに出してみたところ、またたく間に16万人がサインアップ。コースを終了した人数は2万3000人だたものの、世界の190の国々、異なるバックグランドの人の参加を目の当たりにして、スラン氏は教育者としての自分の責務は世界中の人々に力を与えることで、そのためのメディアとして、インターネットが素晴らしいと気付いたという。これがUdacityの始まりに繋がっている。

2012年、2013年にはスター的なコンピューターサイエンスの教授らが、次々とオンラインコースを開始して、多くのオンライン聴講者を世界中から集めて話題となった。ニューヨーク・タイムズは2012年には「MOOC元年」と宣言し。世界中に高等教育を届けることが、特に途上国の貧困層にとっては教育格差、経済格差の解消に繋がるという文脈で語られ、期待もされた。

その一方で、2014年になると、MOOCs一般の問題として修了率が数%台と非常に低いことが明るみになってきた。しかもコース履修者の多くは、先進国の人々で、すでに学部相当の教育を受けた人々だったということが分かってくる。Edtech分野に明るい日本のある投資家は、「二宮尊徳問題」だと指摘しているが、教材をゴロンと出して、さあどうぞ! と言われて自力でコースを修了できるような勤勉さや熱意を誰もが持ちあわせているわけではなく、「誰もが二宮尊徳なんかじゃなかったのだ」ということが分かってきた、というわけだ。

Udacity創業者のスラン氏自身も、「皆が期待したように、あるいは私自身が願ったようには、われわれは人々に教育を届けられていない。われわれのプロダクトはヒドいものだ」と2013年に認めている

Udacityはこうした事情を受けて、スタートアップ界隈の用語でいえば、「ピボット」しつつあるようだ。1つはフリーミアムモデルに移行して、1対1のメンタリングなどに課金するコースを提供すること。もう1つは、アカデミックな教育よりも、実践的なプログラミング講座などで一種の認定制度を提供する「ナノ・ディグリー」(ミニ学位とでも訳すのか)を、GoogleやAT&T、Salesforceなどと共同で開発して提供するというモデルだ。ミニテストを用意してゲーム的要素を増やすなどもしているようだ。そのときどきで助言をくれるメンターのサービスで課金するというのは、伴走者がいたほうが修了率が高くなることを考えても理に叶っているし、コピーの限界費用がゼロに近いインターネット上では教材に課金するよりも合理的だと思う。産業界の要請を受けて実学に寄せていくことについては議論がありそうだ。

Udacity創業者のスラン氏が、MOOCsブームを「ハイプだった」と公に認めるのは大胆だと思う。社名のudacityはaudacious(大胆な)から来ているが、本当に大胆だ。そしてこの言葉は、いま現在もUdacityがオンライン教育のあり方を、実践を通して模索中であるということの表れなのだろうと思う。

スラン氏は以下のインタビューの中で、面白い歴史観を披露している。新しいメディアが誕生するとき、常に人々は1つ前のメディアをそのまま持ち込むものだという。映画が登場したときには、最初は演劇をそのまま録画するだけだったし、初期のテレビ番組もスチルカメラの延長で作られていた。オンライン教育のあり方についても、今はまだ教室の講義動画を出してみたりしているだけだが、今後50年でドラスティックに変化していくだろうという。

鳴り物入りでスタートしたUdacityなどのMOOCsは2013年には一種の幻滅期を迎えたが、実は端緒に付いたばかりなのかもしれない。そのトップランナーの1社であるUdacityのバイス・プレジデント、クラリッサ・シェン氏には、TechCrunch Tokyo 2014のセッションの1つで、MOOCsを取り巻くオンライン教育の現状や、Udacityの最近の取り組みの全体像をお話いただけると思う。ちなみにUdacityは、直近の2014年9月の3500万ドルのシリーズCを含めて、これまで3度のラウンドで合計5500万ドルもの資金を調達している。シリーズCへの参加VCとしては、Andreessen Horowizや日本のリクルートの名前が目につく。

オンライン教育やEdTechに興味のある人々には貴重な話が聞けるセッションとなることと思う。

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スマホで色変化をチラ見せして入場、TechCrunch Tokyoで「ColorSync」を使います!

以前「QRコードはもう古い!」と書いたら、ビミョーにネット上で怒られたのだけど、QRコードが古臭く感じられるほど斬新なアイデアに基づく電子チケッティングシステム、「ColorSync」をTechCrunch Tokyo 2014の入場時のチケットチェックで使うことにしたのでお知らせしたい。参加予定の人は事前にPeatixのアプリをダウンロードしておいてほしい(Google Play / App Store

ColorSyncの仕組みはコロンブスの卵っぽいナルホド感がある。ご存じない方は以下の動画をみてみてほしい。

動作原理は単純だ。イベント主催者側が用意したタブレットやスマフォなどの端末と、会場に入場する人々が手にしているスマフォに表示される色が、すべて1秒程度で同期しながら変化する。色は赤→青→緑→灰色などとランダムに変化するが、全ての端末がサーバにぶら下がる形となっていて、同じタイミングで同じ色を表示する。同一イベントなら色の変化は同期しているので、カラフルに変化する色の波間にある「仲間はずれ」(チケットを買ってない人)は、人間が見れば一瞬で分かる。

11月18日、19日のTechCrunch Tokyo 2014には1000人以上の人が来るイベントになる。朝の入場時にはどっと人が来るので、QRコードを使うにしろ、身分証明書の提示にせよ、行列ができることになる。あまりに一時に入場が集中すると大変なわけだが、ColorSyncだと人が流れる早さで入場が可能なはずだ。

可能な「はず」というのは、実はまだColorSyncに1000人を超える規模での実績がないからだ。もしColorSyncが期待の動作をしなかったら……と考えて、やっぱりQRコードにしようかという話を内部的はしたりもしたのだけど、TechCrunchが新しいものに懐疑的なんて何かおかしいだろうということで、「やろうよ」で押し切ってみた。まあ、バックアップとして名前を名乗ってもらえればリストと照合してチェックインはできるラインも複数用意するので問題はないと思う。

ご来場予定の皆さん、是非、朝の「色の川の流れ」を楽しみにしてください!

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「部屋中どこでもワイヤレス充電」の時代もすぐ? OssiaがTechCrunch Tokyoに来る

最大40フィート(12メートル)まで離れたスマホなどの端末を、1ワットの電力でワイヤレス充電できるテクノロジー「Cota」のことは、TechCrunch Japanの翻訳記事でも紹介したことがある。このCotaを開発するスタートアップ企業「Ossia」の創業者CEOのハテム・ゼイン(Hatem Zeine)氏が、TechCrunch Tokyo 2014のために来日して講演してくれることが決まったのでお知らせしたい。

ワイヤレス充電といば、「Qi」のように非接触というようなタイプのものはだいぶ普及しているけれど、WiFiのように10メートルぐらい離れたまま充電するような製品は市場に存在しない。もしCotaのようなテクノロジーが普及すれば、ぼくらは「充電」という行為自体を忘れる日が来るかもしれない。家やオフィスにいる間は、モバイルデバイスは勝手に再充電をスタートするからだ。ちょうどWiFiで半自動的にネットに繋がるようなものだ。Cotaは2015年にリテール市場に出荷予定という。

にわかに信じがたいワイヤレス充電のCotaだが、いきなり出てきたわけじゃない。ゼイン氏がCotaを創業したのは2008年にさかのぼり、長らく誰にも実現可能ということを信じてもらえないままステルスで開発を進めてきたのだという。先日2014年9月にサンフランシスコで行われたTechCrunch Disruptが実際に大勢の人の前でデモを見せるお披露目の場となった。

Cotaの送電側は一面に小型アンテナをグリッド上に配置したもので、壁などに埋め込んでもワイヤレス充電が可能なのだという。TechCrunch Disruptのイベントでは200個のトランスミッターが並んだ人の背の高さぐらいの畳状のプロトタイプを使っていたが、これはコンポーネント数が非常に多いために大きいだけで今後は家庭に設置できるサイズにまで小型化可能という。障害物があっても、それを避けるパスを見つけて離れた場所にある受電側に電力を送ることができるという。詳しくはイベントの講演で話してもらえることになっているが、WiFiでいうMIMOのようにマルチパスで送電するということのようだ。受電側は充電が必要になったら微弱なシグナルを発信し、これをキャッチした送電側が位置を特定して指向性の高い形で電力を送る。

ヨルダン出身のゼイン氏自身は、もともとアラブ語圏で最大手のSIerを創業して、マイクロソフトやシスコなどと協業するビジネスを育てた起業家。マンチェスター大学で物理学と数理言語学を学んだという。今はマイクロソフトのお膝元のシアトルを拠点にしている。Ossiaはこれまでに320万ドルを調達していて、Intel Captalも投資している。

残念ながら、Cotaのプロトタイプは今のところデカすぎた。太平洋を渡る輸送は困難なので、東京で実際の現物デモを見せるというのは今回は難しいということだが、ゼイン氏には、Coatの技術と今後の見通し、それから起業家としての創業ストーリーを話してもらう予定だ。

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4年制大学をディスラプト、MakeSchoolのクレイジーな起業家がTC Tokyoに来て話すぞ!

Airbnbの共同創業者の2人に2009年に初めてサンフランシスコで会ったとき、ぼくは「こいつらはクレイジーだ」と思った。泊めた、泊まったなんてことを、勝手にエンドユーザーにやらせるなんて、頭がおかしい。日本で言えば消防法とか旅館業法とか規制もあるだろうし、事故やトラブルがあったらどうするのか? そう聞くと、Airbnbの創業者らは「だって、問題があったら規制当局から電話でも来るよね。今のところ何も来てないし、問題なんてないね」と、シラけた感じで言うのみだった。彼らは、自分たちはCraigslistより安全だとも胸を張った。

Airbnb創業者たちは、楽しそうで自信たっぷりだった。ぼくもそのとき初めてだったAirbnb体験が、あまりに楽しいものだったので、確かに今は人々が経験を通して理解していないだけで、いずれこれは広がるのかもしれないなと思ったのを良く覚えている。

そんな風に、Y Combinatorがシード投資する起業家にはクレイジーなアイデアを語る人が少なくない。世の中を変えようという大きなアイデアを真剣に追求していて、話を聞くと、何だかものすごく説得力があったりするケースがある。おぉ! という感じで面白くてクレイジーなやつらが多い。

MakeSchoolの共同創業者でCEOのジェレミー・ロスマン(Jeremy Rossmann)も、まさにそんな若者の1人だ。激しいアフロヘアだったジェレミーに東京で初めて会ったとき、ぼくはジェレミーと、こんな会話をした。

「ちょ、ちょっと待って。つまりそれって、MITとかスタンフォードみたな大学を置き換えるってこと? ガチで大学と競争するってこと?」

「うん。その通り。3年もしたらMITよりウチを選ぶ学生が出てくるよ」

ジェレミーが共同創業者であるMakeSchoolは、既存の4年制大学をディスラプトしようとしている。Y Combinatorの2012年冬バッチに参加していたサンフランシスコベースのスタートアップ企業だ。

18日、19日に迫ったTechCrunch Tokyo 2014でジェレミーに講演を頼んで日本に来てもらうことにしたので、MakeSchoolのことを少し紹介したい。

最初のビジネスモデルは実は大ゴケ

MakeSchoolは過去半年でピボットして、この10月には社名を変えている。もともとは「MakeGamesWithUs」という名前のスタートアップだった。高校生や大学生にゲーム開発を指導し、そうして生まれた大量のゲームによる収益の30%をレベニューシェアとして徴収する。それがMakeGamesWithUsの当初の狙いだった。

「ゲームはたくさんできたし、学びに来た学生たちも喜んでくれましたよ。17歳で初めて作ったゲームで1カ月1000ドルの売上があった、なんて夢みたいな話でしょ? すごく喜ぶよね。大成功ですよ。でも、ぼくらにとっては300ドルで何人のエンジニアが雇えるのかって話なわけで。ゼロ人ですよ。ダメなビジネスモデルでしたね」

このモデルで何が起こったかというと、iOSでゲーム開発をして売上を立てていたということを履歴書に書いて、大手ネット起業に就職していくハッピーな学生たちがたくさん生まれたということ。そこでジェレミーたちは、生徒から直接授業料を取るモデルに変更したのだという。ゲームから生まれる収益は100%作った生徒のもの。これが、1年前からとても上手く回り始めているという。

面白いのは、授業料を払えば誰でも入れるというわけじゃないところ。応募の80%は門前払いとしていて、合格率は20%程度なんだとか。これはUCLAやボストン大学といった、アメリカのトップ10校より1ランク下の合格率で、MakeSchoolが狙っているのは、まさにここの層の学生だとか。

「大学のコンピューターサイエンスの学位を置き換えたいんですよ。いまはサマープログラムをやっただけだけど、今後は1年のコースを15人の生徒でスタートする。来年も1年コース。その次の2016年には2年のコースを開設する。うちの生徒は2年で必要なことを学んで、GoogleやFacebookに就職するようになる」

サマープログラムにはMITから来た生徒もいたそうだが、非常に評判が良くて、またMakeSchoolで学びたいし、同じ期間の学習なら、むしろMITより効率的で有用だと言っているそうだ。

「アメリカの大学は学費がすごく高いという問題がある。インフレ率より速いペースで学費が上がっています。学位を取るためだけに4年間で1000万円から2000万円かかる。これは生活費をのぞいて、ですよ。だからアメリカ人はみんな大学に行くために貯金をするんです」

「授業品質の問題もある。コンピューターサイエンスの教材は現実に追い付いていません。例えば機械工学や建築って、そんなに変わらないじゃないですか。いま最高の建築学科の教授は、たぶん20年後もそうでしょう。でも、コンピューターサイエンスはそうじゃない。この分野は過去20年で、コンピュータサイエンスの全歴史を通してよりも多くの発明が行われました。いまの大学教育だと、仕事を始めたときに学校とは全然違うことを学ばなければならなくなるんです」

日本でL型大学、G型大学の議論があるように、社会に出てすぐに役立つ実践的な知識と経験、例えばフロントエンド開発だとかiOS開発とかをやるのが、旧来の大学とMakeSchoolの違いの1つ。そうかといってコンピューターサイエンスの基礎理論を飛ばすというような話ではない、というジェレミーは言う。

「MakeSchoolでも理論を飛ばしたりはしていません。企業側に「何を分かっていてほしいか?」と聞いています。GoogleもFacebookも基礎理論は大事だといいますからね。データ構造やアルゴリズムは重要。でも、Facebookに行って実際どんなアルゴリズムをいちばん使ってるんですかなんて聞く人は、今まで大学関係者にはいませんでしたからね」

「ぼくらにはMITやスタンフォードのようなブランド力はないかもしれない。ぼくらのゴールは、FacebookやGoogleといった企業のお墨付きを得ること。こうした企業からの推奨が増えれば増えるほど、生徒にとってMakeSchoolは理にかなった選択になってくる。Facebookが、MakeSchoolのカリキュラムやった人なら雇う、というようになりますからね」

「大学だと4年間かけて1000万円とか2000万円。一方われわれのコースだと2年間で500〜600万円。シリコンバレーにコネクションを持っているので、Y Combinatorのパートナーや起業家、投資家にも会える。MakeSchool経由でインターンシップの紹介をするので、ひと夏だけで150万円は稼げるし、もしインターンシップが得られなかったら返金にも応じます。4年制大学に行った友だちより、2年早く800万円とか900万円の年収でスタートを切れるわけです。Googleなら新卒で1000万円が稼げる今の時代、大学院に行かない人が増えているし、Googleなんかは学部卒をバンバン雇ってますよ。今でも研究者になる気があるなら、4年制大学がベストの選択です。だけど大学院や博士課程に行こうと思わない人たちも、すごく多いわけです」

「4年制大学だと必修科目も多いですよね。文学とか哲学とか。ぼくらもそういうのが大事だとは思っていますよ。でも、そんなの仕事を始めてからやったっていいじゃないですか。人間として大事な教養は長く学ぶものです」

コンピューターサイエンスの基礎と、実践的で現代的なプログラミングの両方を学んだソフトウェア・エンジニアの需要は爆発しているが、大学の教育変革が追い付いていないとジェレミーは言う。

「MITやCMUなど、コンピューターサイエンスで良い教育をしているところは数が限らている。需要のほうが供給よりはるかに多いんです。MITって新入生が1年で何人か知ってますか? 1年で、たった1000人ですよ。このうち300〜400人ぐらいがコンピューターサイエンス専攻です。数万人の需要に対して、これじゃ、ぜんぜん足りていません」

「MITだと受験者の7%ぐらいが合格します。でも、試験に落ちた人のうち上位7%を受け入れたとしても学生の質はほとんど同じだと統計的に言われてるんです。つまり、今はそのぐらい応募が多い。質の高い学生のほうが大学の数より多いので数万人の学生がMakeSchoolのターゲットです」

需要があるのになぜ大学は定員を増やさないのか?

「応募してくる一部のトップを取れば十分と思っているんです。トップ・オブ・トップの学生の質で競争しているからです。MakeSchoolがMITなどの大学に勝てるのは、就職での結果による競争で勝てるからです。インセンティブが違うんですね。それに、大学というのは巨大な官僚組織。そんなに簡単に変われませんよ」

アメリカの大学はもう1つ大きな問題を抱えているとジェレミーは言う。

アメリカの大学には終身雇用に相当する「テニュア」の資格を持つ教授と、そうでない教員がいる。テニュアの教授は研究で評価はされるが、学生からの人気や評判によって辞めさせられることがない。一方、非テニュアの教員は給与が低く、安定もしていない。ニーズはあるのに、MITは教員の予算を削減する方向にあるのだという。こうした教員にとって、教える喜びがダイレクトに感じられるMakeSchoolは評判が良いのだという。「ぼくらは研究とは関係がないので、こうした教員をより良い待遇で迎えられるんです」

ところで、ジェレミーはときどき日本に来て、投資家や教育関係者、ネット企業の関係者らと議論をしたりしているようだ。中国だと北京大学、日本だと東大やDeNAの名前が彼の口から出てきた。MakeSchoolの日本展開はあるのか?

「楽天なんかは英語化を推進しているし、シリコンバレーのスタートアップ企業のマインドセットや技術を持った人たちをインターンとして受け入れるのは理に叶うはず。逆に、日本からシリコンバレーに学び来るというのもあり得る。すでにこれまで2人ほど日本からの参加もあったけど、とても優秀だったし、もっと来てほしいですね」

大学をガチでディスラプトしようというシリコンバレーの人たちの目線の高い発想と、それをガシガシ推進しているジェレミーの話は聞き応えのあるセッションになると思う。TechCrunch Tokyoのチケットにはまだ少し余裕があるので、今からでも是非来場を検討してほしい。

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TCハッカソンに感情認識ロボ「Pepper」が3体も来る! ハックは意外に簡単

ソフトバンクの感情を認識するロボット「Pepper」が、11月15日、16日の週末に予定している「TechCrunch Tokyo Hackathon 2014」に3体ほど来ることになったのでお知らせしたい。

Pepperは現在、開発者向け先行予約として200台限定で出荷準備中だが、実際には2000台を超える申し込みがあって人気となっているそうだ。本体19万8000円、開発者パッケージとしてメンテナンス費を含む月額9800円という比較的高額な価格設定でも、これだけの数を受注しているのにはワケがある。それは、大手企業の新規事業開発部門や、スタートアップ企業、教育や介護での応用を模索する人々などからの引き合いが強いから、という。ソフトバンクの孫社長の当初のプレゼンでは、家庭向けということを強調していたが、介護や店舗での案内係など、今はPepperとビジネスをつなげるという応用に注目が集まってる。

ぼくは、ほかのロボットをプログラムしたことがないので比較はできないのだけど、Pepperを使ったビジュアル開発環境「Choregraphe」は想像以上に手軽だった。開発環境のインストール方法は、ここのQiitaのページにまとまっているけれど、統合開発環境をインストールして同一セグメントのWiFi接続で開発環境を入れたPCをPepperに接続すれば、コードのアップロード準備は完了。統合開発環境にはエミュレーターで動くPepperも入っているので、簡単な動作確認はその場でできる。

開発は「ボックス」と呼ばれる単位で行う。ボックスの1つ1つは、ロボット動作やセンサー入力、条件分岐やループといった制御構造に対応していて、このボックスをドラッグ&ドロップして線で繋いでいくことでプログラムをする。ボックスには具体的には、オーディオ、振る舞い、コミュニケーション、データ編集、フロー制御、LED、数学、モーション、センシング、システム、テンプレート、追跡、ビジョンなどに分類して用意されている。それぞれのボックスには受け付けるインプット・アウトによって、色分けがされていたりして、何となくプログラミング言語の型を思わせるものもあるし、switch/caseのような制御構造で「音声を聞いて、答えがyesならA、noならB」というようなボックスもある。プログラミング経験者ならスラスラとブロックを並べられるだろうし、そうでなければ、むしろ良いプログラミング入門となりそうな印象だ。

ボックスをダブルクリックすると、その場でテキストエディタが開いてPythonで10〜30行程度のコードが表示される。このコードを直接カスタマイズすることでボックスの動作を変えられる。ボックスには、onLoadとかonUnloadといったフックとなるメソッドも用意されていて、JavaScriptなんかのモダンなスクリプト言語で開発経験があれば拡張は簡単にできそう。複数のボックスをグループ化して、新たなボックスを定義するなど抽象化もできるが、これまでの実例だと最大150個程度のボックスを使って複雑な動作をするプログラムを作った人もいるのだとか。

で、どんなアプリができるのか。

たとえば顔認識が搭載されているので、学校の校門に立ったPepperが登校して来る子どもたちの顔を認識し、父母に「学校に到着しました」とメールする仕組みを作ったような事例だったり、ヤマハのボーカロイドを使って、Pepperに何か言葉を投げかけると、その言葉を使った歌を作ってくれるというようなアプリがこれまで実装されたという。視覚と聴覚センサー、それに身振りが加わったハブのような存在として、各APIを繋いで何かを利用者に見せるエージェント的な動きをPepperが果たすというのは分かりやすい応用例。たとえば、占いのアプリをケータイでやると当たり前すぎるが、「占ってます、占ってます! キターッ!」という表現をつけるだけで面白いし、Pepperの担当者によれば、これが意外にハマるそうだ。人の顔写真を撮影して、それを絵画風にレタッチするようなサービスも、Pepperに画家の仮装をさせることで、UIが人型である魅力というのは出てくるという。PCとキーボードの組み合わせがネットを使う最適なデバイスじゃなかったんだね、結局、というのがモバイルシフト時代の共通認識だと思う。同様に、5年や10年経ったときに、天気予報やニュースを見たり、調べ物やレストランの予約をするようなサービスに適したUIは「タッチ画面なんかではなく人型UIだったんだね」ということになる可能性もあるのかなと思う。

ちなみに、今は開発者向けに出しているPepperだが、2月出荷を予定している一般出荷向けPepperには基本的な会話機能に加えて、アプリ数十個が最初から搭載される予定という。ちょうど、iPhone 3Gのローンチのようなもので、アプリストアもオープンして、アプリのエコシステムがスタートする。2月時点で有償アプリの仕組みを提供するかどうかは未定で、これは来年の夏以降となる見通しという。

なお、Pepperを使った開発をTechCrunch Tokyoハッカソンでやってみたい! という人は、9月に行われたPepper Tech Festival 2014のページで、開発者向け資料やクリエーターショー、Pepper技術セッションなどを見て予習しておくように! そして、以下から参加を申し込んで頂ければと思う。

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以下はTechCrunch Tokyo 2014本編のチケット。

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ザッカーバーグに質問してみよう―11月7日19時からFacebookが初の「コミュニティーQ&A」を公開

13億5000万人のユーザーの一人であるかどうかに関わりなく、Facebookに質問してみたい人間は多いだろう。FacebookはRedditの人気イベント、「なんでも聞いてね(Ask Me Anything)」セッションにヒントを得たのだろうが、CEOのMark Zuckerbergが自らカスタマー・サポート役を買って出て質問に答えることになった。Facebook初の“Community Q&A”は11月6日に実施される。

1時間のイベントの模様は“Q&A With Mark”というFacebookページ上でライブストリーミングされる。ザッカーバーグによればこのセッションは「金曜日に社員を集めてQ&Aミーティングをしている。全社員が参加でき、どんな質問でもできる」 というFacebookの昔からの伝統を拡大したものだという。

質問は ザッカーバーグの投稿のコメントとして投稿する。あるいは賛同する質問が投稿されていれば「いいね!」を押して投票してもよい。現在トップにランクされている質問には次のようなものがある。

  • Joshua Murphy将来、ソーシャル・ネットワークや道路、医療などの社会インフラで人工知能がどんな役割を果たすと思いますか? 途上国と先進国でそれぞれどんな影響があるでしょう?.
  • Calum James – Facebook社内で開発されたけれど結局公開されなかった機能の中でお気に入りは?
  • HaLe MeRonFacebookメッセンジャーを別アプリにした理由は何ですか?
  • Abdulla Sadequeインスタグラムはキログラムに換算するとどのくらい?

ご覧のとおり質問は真面目なものからばかばかしいジョークまで多岐にわたっている。セッションは11月6日午後2時〔日本時間:11月7日(金)午後7時〕から始まる。

このQ&Aセッションは「巨大な顧客ベースを持つ企業のCEOは公衆に対してどんな責任を追うべきか?」という興味ふかい問題を提起する。 証券取引委員会は公開企業が投資家に対してどんな説明責任を負うかを定めている。ザッカーバーグはFacebookをある種の公共インフラと考えているようだが、そうであれば彼は公衆に幅広い説明責任を負っているのではないだろうか?

というのは私はこういう疑問を抱いているからだ。1年ほど前、FacebookのCFOが四半期決算の電話記者会見で、Facebookではアメリカのティーンエージャーの利用度が少し減っていると述べたところ、Facebookの株価が即座に急落したことがあった。するとFacebookはそれ以後、ティーンの利用度について情報を出すことを拒むようになった。一方でサードパーティーの調査によると、アメリカのティーンのFacebook離れが進んでいるようだ。

そこで私の投稿した質問はこうだ。「昨年以来、アメリカのティーンエージャーのFacebook利用度は落ちているのか? 落ちているという調査結果をどう思うか?」

ぜひザッカーバーグの答えが聞きたいと思っている。この質問に「いいね!」を押して投票していただければうれしい

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


有力VCと17人の起業家が千葉で「合同合宿」、Incubate Campはアクセラレータから脱皮

2010年から始まった「Incubate Camp」は、日本のシードアクセラレーターの中でも草分け的存在の1つだ。もともとはプログラム名が示すとおり、独立系VCのインキュベートファンドが300万円の資金提供を主眼に置いたシード投資プログラムだった。過去6回の開催で合計500名規模の応募者から100名超を選出して70社のスタートアップを創出し、27社への投資を実行しているという。

今回で7回目を迎えたこのプログラムは性格を変えつつある。日本の有力VCと若手起業家が一同に会して、シード・アーリーの起業家へのメンタリングや資金提供を検討する1泊2日の「合同合宿」となっている。参加VCの顔ぶれを見ると、インキュベイトファンドのほかに、Globis Capital Partners、Infinity Venture Partners、ITV、WiL、Anri、サイバーエージェント・ベンチャーズ、グリーベンチャーズ、アーキタイプ、B Dash Ventures、ベンチャーユナイテッド、ニッセイ・キャピタルといったVCから17人のパートナーや投資担当者らが参加していたほか、LINE、コロプラ、DeNA、mixiから経営陣らが参加するなど、日本のネット系のスタートアップ界で有力な投資プレイヤーがそろった印象もある。参加していたあるキャピタリストは、「日本でスタートアップの投資をしているのは、だいたいここにいる人ぐらいの数しかいないんですよ」と、まだ比較的サイズの小さな日本のスタートアップエコシステムについてやや自嘲的に苦笑いしていた。

1日目となった金曜日の11月24日には起業家らに対して、ベンチャーキャピタリストが付いてメンタリングを行い、ビジネスモデルや事業計画、マーケティングメッセージのブラッシュアップを実施。2日目の土曜日の午後にはスタートアップ企業17社が一斉にリファインしたピッチ大会を行った。

会場は、企業などが研修に使う千葉のオークラアカデミアパークホテル。審査員の1人にチラッと審査シートを見せてもらったのだけど、ピッチによる評価を書き込む欄のほかに、投資を希望するかどうかの欄、すでに額面が記入済みのバリュエーションの欄があるなど、投資検討も前提にした面もあるプログラムとなっている。デモの発表形式も、起業家がプレゼンした後に、横に立ったメンター役のVCが補足説明や事業計画の妥当性について起業家に代わって回答するという姿が繰り返し見られた。各担当VCは必ずしも当該チームに対して投資検討をしているわけではないというが、1日かけてプレゼンや事業計画の改善したこともあってか、心情的には思い切り応援モードだったようだ。「儲かると分かれば大手ネット企業が内製してくるだろうから、やるなら速くやったほうがいい。価格競争が起こる前にユーザーを囲い込めばいい。そこまで走り切るためにも、(投資資金をここにいる皆さんに)ぶっこんでいただいて……」と、居並ぶ投資家たちに共同投資を半ばジョーク、半ば本気のような調子で呼びかけて笑いが生まれるような場面もあった。

デモ直前に主催者であるインキュベイトファンドのジェネラル・パートナー、赤浦徹氏は、「半分ぐらいのチームでタームシート(投資契約の条件を項目別にまとめたもの)が出るのではないか。投資は(複数VCの)相乗りがいい」と話していたが、終わってみての総評では、DeNAで投資を担当している戦略投資推進室室長の原田明典氏が「17社のうち投資したい会社が14社、バイアウトしたいのが4社」と参加スタートアップ各社の事業性を高く評価。懇親会の場で話を聞いたら、14社という数字は投資を検討する対話を始めたい会社の数だが、実際の投資に至るだろうというのは「7社程度になるのでは」と話していた。

ピッチ後の質疑応答では、起業家と投資家、それに大手ネット企業の経営者らが加わり、事業アイデアについて活発に、そして笑いがあふれるほど楽しそうに議論を交わす場面が繰り広げられたが、こうした「呉越同舟的なピッチイベント」は、日本のスタートアップ界隈の現状を良く表しているように思う。まだシリコンバレーほどプレイヤー数が多くなく、VCや経営者らは、みな顔なじみ。キャンプ終了後の総括でも、インキュベイトファンド代表パートナーの和田圭佑氏が「VC業界みんなでスタートアップを応援していく場にしたい。タームシートの調整なども引き続きやっていく」とVC間の共同投資について積極的な態度を表明していた。

さて、そんな和気あいあいとしたキャンプのピッチコンテストだが、17社がプレゼンを行った中で1位に輝いたのは……、現在ステルスで急成長中のモバイル向け、特定ユーザー層向けのメディア・コミュニケーションサービスだった。これはステルスモードなので、これ以上は書けない。

2位に輝いたのは、最速で英単語が覚えられるアプリ「mikan」を開発する宇佐美峻さん。mikanはTechCrunch Japanでも7月末に詳しく記事で紹介しているが、ローンチ間近のアプリだいて、先ほどリリースされたばかりのアプリだ。

3位の座を勝ち取ったのは、スマフォによる店舗予約が簡単にできる「スマート予約」を提供するBeer and Techの森田憲久さん。森田さんのメンター役となった独立系VC、Anriの佐俣アンリ氏は、「今日このプレゼンをやってバレるのが嫌だった」というほど、この事業アイデアに可能性を感じているという。何かというと、「飲食業界のアドネットワーク」を作るというスマート予約の構想だ。一見、ユーザー向けの便利アプリを8月にリリースしたスタートアップという風に見えるが、これはあくまで第1ステップにすぎないのだという。

森田さんは以前、ネットの広告代理店にいて広告を売りまくった経験があるという。オンラインの広告の世界は、かつてメディアが広告主に「手売り」をするところから始まった。やがて、メディアレップと呼ばれる代理店が各種媒体のページビュー在庫を抱えて広告クライアントと結び付けるビジネスとなり、今はDSP、SSP、RTBなどアドテクの興隆で、ここの自動化が進んでいる。

店舗予約をする飲食店利用者と飲食店の関係は、このオンライン広告ビジネスに構造が似ているのではないかと気付いたのが、森田さんがスマート予約というサービスを8月に開始した理由なのだという。

スマート予約のターゲットユーザー層は30代男性。業務時間中に今日とか明日という差し迫った会食を設定するというのは良くあると思うが、電話したら予約がイッパイとか、業務時間中に食べログやぐるなびのページを何店舗分も見るのは気分的にはばかられるというようなことがある。スマート予約では、日付や人数、利用目的などを入力すると、10分以内に空席かつ人気のお店を3店舗紹介してくれる。利用者はこの3つから選択するだけで予約できる。実際の予約は在宅ワーカーが店舗へ電話して代理しているという仕組みだ。競合となり得る食べログや、リクルートの「スマート幹事くん」などはどれも、送客ビジネスのモデル。予約成立の場合に1件で300円、もしくは売上の8%を店舗情報掲載サイト側に支払うのが相場だそうだ。ここまで聞くと、食べログや店舗開拓の営業力で勝るリクルートに対して勝ち目がないように見えるが、スマート予約が強い理由はいくつかあると森田さんは言う。

幹事ニーズではなく、2、3人で行くような当日・前日の予約に特化していてターゲット層が違うこと。限られた数の店舗を集中的に紹介するというモデルは、人気店舗以外の店舗にとっては送客してくれないサービスなのでお金を払う理由がない。つまり、リクルートがこれを真似るとホットペッパーの300億円の売上が吹っ飛ぶので彼らにはやれないはず、というのだ。

もう1つ、スマート予約が面白いのは、最初はテクノロジーが関係ないことだとVCの佐俣氏は言う。AirbnbやUberなどと同じで、最初は人間によるオペレーションでスケールさせて、後に自動化する。これはオンライン広告ビジネスで起こったことと相似形。しかもスマート予約と契約する在宅ワーカーが電話をして予約するので、必ず「スマート予約」と名乗ることができ、店舗側に送客が実際に起こっていることが分かる仕組みとなっていて、これは店舗開拓の営業では効果的だろうということだ。現在、スマート予約は東京・恵比寿の1エリアだけでリリースしているという。

上位入賞以外のスタートアップ・起業家と投資家のやり取りも紹介

上記3社以外のスタートアップについても、以下、発表順に簡単にまとめておこう。中には、起業したばかりで事業計画やプロトタイプ以前という発表もあったが、どの起業家も内発的動機から来る、世の中を「面白くしたい」「良くしたい」というパッションを感じさせるものではあった。ちなみに、ぼくが個人的に気になったのは、ターゲットユーザーになり得るという意味で、Cozre、マンションマーケット、airClosetあたり。「世の中のほうが間違っている!」という憤りにも近い感覚で共感するのは、KAUMOとLife Event Navi。完成度が高まればTechCrunchで個別に取り上げたいなと思ったのはmeleapだった。

Masquarade(Treadecraft、松村有祐氏)
従来のTinderのような出会いアプリは「高顔面偏差値」のリア充向けで、非モテ顔同士は互いに選ばれることがほとんどなくショックな思いをするばかり。この問題を解決するために、顔の一部を隠した写真を登録することをルールとしたマッチングサービス。起業した松村氏は「人工知能研究者あがりで、Uberからのスカウトを蹴っての挑戦」だそうだ。

KAUMO(カウモ、太田和光氏)
ECの口コミサイトがPCからモバイルへの移行で勝者不在となっているタイミングで、スマフォ向けに新世代の「口コミキュレーション」として6月にローンチ。10月で70万UUとトラクションが出ている。これまで価格コムに代表される口コミECサイトは、スペック比較を基本とし「マニアの自己満足的レビューが良いとされる文化」が問題だったと太田氏。リアル店舗では、店員に「運動会で子どもを撮りたい」と利用シーンで相談するほうが一般的だが、現在オンライン口コミサイトはいきなりスペック情報が出てきて、そうなっていない。そこで自社コンテンツとCGMで、商品動画や画像で商品のハウツー記事を作っていくのだという。

Sket(スマートキャンプ、古橋智史氏)
Sketは2014年7月ローンチのクラウド資料作成支援サービス。海外ではVisual.lyという類似サービスがある。IRの資料作成で実績があるという。利用料は、どの程度聞き取りに基いて資料を作るかによって1枚あたり1000円から5000円。この3カ月で40社の利用があり、大手企業も増えてきてニーズに手応えを感じているという。古橋氏はマッキンゼーのような戦略コンサルファームが資料作成の専門部隊を抱えていて10億円ほど費用を使っていることに触れ、市場性をアピール。もともとは、こうした資料作成サービスを若手ビジネスマンが使えないという課題を解決するつもりだったが、今後は「いくら予算をかけてもいいからサービスを使いたい」というハイエンド層にフォーカスし、IR資料作成などをコンサルティングも含めてやっていくという。IRは、資料の分かりやすさが株価に影響するような話でもあるので、完成資料を納品して終わりというサービスではなく、その資料によって効果がどの程度あったかという効果測定も含めてサービス化していくのだそうだ。

空飛ぶ処方箋(ファーサス、山口洋介氏)
元薬剤師の山口氏が取り組み、現在プロダクトがアプリストアに申請中というステータスの「空飛ぶ処方箋」は、患者が処方箋をスマフォで撮影することで、好きな薬局で薬が受け取れるサービスだ。待ち時間の短縮と、好きな薬局で受け取れる利便性を患者側に提供する。一方、「大手が店舗数4%なのに売上ベース8%のシェア」と経営に苦しむ中小薬局にとっては、リピーター客が得られるサービスになるという。ターゲットユーザーは、スマフォを持つ都市部の20〜50代で、年間1億枚の処方箋を想定、都市部の薬局2万7000軒への普及を目指すという。月額3000円、送信料金は処方箋1枚で50円。4年で導入店舗5000店、17億円程度の売上を見込むというのが事業計画だそうだ。ちなみに日本の全処方箋は約8億枚あるそうだが、まず300店舗程度が取れれば売上が1000万円となってビジネスとして立ち上がるのでは、とメンター役を勤めたベンチャーユナイテッドの丸山聡氏は概算していた。

Synapseサロン(モバキッズ、田村健太郎氏)
SynapseはFacebookの非公開グループを使った月額課金型コミュニティーサービスで、田村氏は「募集開始したらすぐに埋まる。これはサロン革命」だと鼻息が荒い。著名人のコンテンツ力をマネタイズするプラットフォームとしては、アメブロやモバイルのファンサイト、メルマガなどがあるが、いまアツいのはサロンだという。実際、売上の例としてホリエモンが1万800円の課金で利用者600人、月商650万円となっているほか100万円クラスのサロンも続々登場しているという。「時代がおいついてきた」といって次々と売上の数字を披露すると、苦戦する著名人の多いメルマガと大きく異る単価の高いビジネスであることに会場がどよめいた。サロンのポイントは実名、リアルタイム、安心というところだそう。Facebook依存は事業リスクだが、来春には専用アプリをリリース予定という。現在35サロンで月商1400万円。4年後には売上100億円、営業利益10億円を目指すという。

Cozre(トウキョウアイト、松本大希氏)
Cozreは、子連れの外出に必要な情報を提供するWebメディアで、キュレーションマガジンとCGM機能を持つ。8月時点で40万UU、80万PV。親子の時間を楽しくするライフスタイルメディアを目指しているそうで、遊ぶ・食べるをフックにして、おけいこ、ファション、雑貨、子育て課題、美容健康料理とジャンルを増やし、回遊率を高める。5年後に50億PVのメディアを目指すという。メンター役を勤めたGlobis Capital Partnersの高宮慎一氏は「子連れファミリーは、均質性の高い1700万人がいる市場で、かつシックスポケットと言われる」とマネタイズ視点から事業の可能性を語っていた。シックスポケットというのは両親と祖父母の合計6つの財布のこと。カテゴリをヨコ展開してスケールさせるというのは、高宮氏が投資していて先日KDDIに売却したnanapiでの成功体験から出てきた方法論だそうだ。

Maverick(ウィンクル、武地実氏)
「Googleが考えているスマートハウスはダサい!」と終始ハイテンションで会場から笑いを取りまくっていたウィンクルは、IoT系のスタートアップに分類されるのだと思う。ブランド名のmaverickは一匹狼のことだそうで、Googleなどテック系企業が提示するやたらリア充ぽいファミリーなスマートハウスより、「非リア充の独身貴族たち。自宅警備員のためのスマートハウス」がコンセプトだそうだ。maverickシリーズの1つ目のプロダクトはTwitterのタイムラインを音声化する小型キューブデバイスというネタっぽいプロトタイプ。声優の声でタイムラインが……という説明はぼくにはネタにしか思えなかったが、軽快なトークで会場からダントツで笑いを誘っていた。「これ、そもそもハードウェアである必要ってあったんですかね?」という審査員のマジレスで会場がどっと湧くのが見どころだったのだと思う。会場の審査員や投資家は苦笑いするものの、NestやGoProのようなプロダクトを日本からどうやって出していくかという議論や、スマートハウスが汎用より特定ターゲット層で立ち上がるかもしれない、という愛のある前向きな議論が続いていた。少しだけだけど。

LaFabrics(ライフスタイルデザイン、森雄一郎氏)
LaFabricsはファッションECプラットフォーム。色、素材、サイズなどがカスタマイズでき、1億通りの服が選べるという。カスタマイズ性が高いとはいえ、森氏は「サイズを選ぶのは昔の話」だといい、zimpleという機能で30秒でサイズ指定ができると話す。既成品のカスタマイズや、お気に入りの服を事務局に送って、その通りの服を仕上げてもらうようなサービスもやっているのだという。競合にオリジナルスティッチがあるが、カスタマイズの自由度ではLaFabricsのほうが勝るのだとか。2月のローンチ以来、累計182着、420万円の売上。ビジネスマンは1年間にシャツを3.5着、スーツを1.5〜2着ほど購入していて、リピート率も高いため、初期ユーザー獲得コストが1人当たり4000円程度であっても十分にビジネスとして立ち上がると計算しているという。ファッションアイテムをオススメするキュレーターのプリセットプランの提要やファンション系メディアとのタイアップも予定しているそう。利便性を提供する「ツール」であるよりも、「競合はユナイテッド・アローズ」というように、ファッションに対する意識が少し高めの層がターゲットという。

マンションマーケット(マンションマーケット、吉田紘祐氏)
マンションマーケットは、マンションに特化した個人間取引サービス。起業した吉田氏は、もともとリクルートのSuumoで300社を担当する法人営業をやっていたこともある不動産のプロ。「不動産市場はまだまだレガシー、変革が起きていない」という意識から、現在業者を通した取引費用が300万円程度のところを96万円に下げることを目指すという。不動産会社が介在しなければ、マンション売買のプロセスはぐっとシンプルになり、たとえば「重要事項説明」というプロセスを省くことができる。「実は誰でもできる。業者が個人間トラブルを煽ってると思う。実際にはトラブルは、そんなにない」と背景を語る。特にマンションは一軒家と違って管理組合や管理会社があるため査定もシンプルなのだという。ではなぜ、これまでマンション売買のC2Cマーケットが立ち上がっていないのか? 1つは不動産に特化しないと取引成立がスムーズにいかず、汎用C2Cサービスに不動産が不向きなこと。ヤフオクには結構不動産情報が載っているが、吉田さんは「現地見学や登記手続きなど不動産業務をサービスに落とし込まないとC2Cは立ち上がらないと思っている」という。サービス開始は2015年2月。ユーザー獲得のためのマーケティングツールとなる中古価格査定アプリはローンチ済みで、今後はタワーマンションへのポスティングなどで売主を開拓するのだという。まず首都圏のマンション市場を狙う。

meleap(meleap、福田浩士氏)
スマフォをデバイスにセットすることで、ライフルのような形で使えるARデバイスと、それを活用したゲーム。まずiPhoneで部屋などをぐるっと撮影してゲームの舞台となる世界をシステムに取り込む。続いてプレイヤーは、スマフォ単体、もしくはライフル型のフレームでできたデバイスにスマフォをセットして、ARなFPSゲームを楽しむ。リリースは来年4月を予定。まずは既存のサバイバルゲーム施設と組んで提供する。サバイバルゲーム愛好家は日本に3万人しかいないが、海外ではeスポーツ市場が立ち上がっていることから、「ウェアラブルの一歩手前」とも言えそうな、このジャンルは伸びると見ているという。

airCloset(ノイエジーク、天沼聰氏)
レンタルで多様な服を楽しむ、27歳から35歳の働く女性をターゲットとしたサブスクリプション型コマース。ファッションの好みやサイズを入力すると、数日で3着ずつ専用ボックスで届く。月額6800円。クリーニングや送料は無料。1着1万円のものを3着とすると、年間108着で約8万円。これはターゲット利用者の平均である年間12着で12万円よりも安く、アイテム点数も多くなるといい、「服との出会いを爆発的に増やしていきたい」と天沼氏は言う。1着あたり4回の貸出でコストがペイするモデルだそうだ。当初はコンサバ系ファッションの女性に向けたアイテムを中心に普段着向けサービスを提供するが、1回レンタルのみの「パーティードレス」というサービスも提供予定だそう。服を提供するブランド側が収益悪化を懸念するのではないかとの質問に対しては、「ブランド側の課題として新作のプロモーション先がないという問題を抱えている」と、むしろブランド側のメリットを指摘。「昨今勢いを増すファーストファッションとの戦い方を、ブランド各社に提案したい」と天沼氏は語っている。

工場DB(Emotional Brains、横田洋一氏)
もともと2Dイラストから3次元フィギュアを制作する共同購入サイト「Okuyuki」を1年ほど前にローンチしているが、Incubate Campの場ではピボットを宣言。「工場DBを作る」とした。現在製造業の世界では、IoTスタートアップの勃興やメーカーズムーブメントもあって、金型を起こしてプロトタイピングをするというかつての製造工程が古くなっている。一方、小ロットで作れる仕組みや工場があるものの、取り扱い品目・サービスなどのデータベースや情報サイトが存在していない。その工場が何ができるか、という「工場の食べログ」を目指すのだという。横田氏は富士通やHPでITコンサルタントをしていたが、「いつか絶対に起業する」という想いから50代半ばで実行して挑戦中なのだそうだ。

Life Event Navi(前田一人氏)
お金特化型キュレーションメディアと、お金の偏差値チェックサービスを提供していくという。まだ法人登記もこれからで、走り出したか出さないかという段階の起業家だが、次のようなことを狙っているそうだ。住友信託銀行で個人営業に従事して資産運用やローン、遺言業務などを担当し、「個人の金融リテラシーを上げたい」という思いから起業。富裕層は資産アドバイザーが知恵を入れているのでリテラシーが高いものの、日本は先進国の中でも「中間層の金融リテラシーが圧倒的に低い」という。たとえば日本とアメリカでは人口が3倍も違うのに、個人が支払う保険料はほぼ同額なのだという。だから駄目だというニュアンスで言っているのではなく、払い過ぎの保険料や、期限の長すぎる住宅ローンに苦しめられる個人を見てきて、そして「手数料が高い金融商品を80歳のおばあちゃんとかに売っていました」という売る側でもあった前田氏が抱く問題意識だったよう。日本で金融や保険、不動産、住設の市場は広告費だけでも5900億円もあるが、多くは売り手目線。本質的には「ユーザー側が賢くなるしかない」が、日本ではお金のことを考えるキッカケがないのが問題で、「お金のことを勉強しないまま家を買うという状況になっている」という。「中間層の金融リテラシーが上がって、はじめて個人金融の市場ができてくるのではないか。そのとき家計簿とアカウントアグリーゲーションを超えたFinTech系のサービスが出てくると思っている」と語る。

gamba(gamba、森田昌宏氏)
gambaは、TechCrunch Japanでも何度か取り上げたことのある日報共有サービス。現在4200社が導入済みで、日報共有によって、社員の一体感があがり、何気ない報告から大口案件獲得などの事例が出ているという。190社が有料契約をしていて、このうち85%が1週間に1度以上の日報やいいねが発生していてアクティブという。メンター役を務めたサイバーエージェント・ベンチャーズ代表取締役社長の田島聡一氏は、これまでに見てきたB2B事業の経験から、ソリューションニーズを感じているヒトと決裁者が一致していることが大事だということや、定性的なウリ文句よりも売上向上やコスト削減という定量的なメッセージのほうが響くだろうというアドバイスが出されていた。


マーク・ザッカーバーグ、北京の清華大学で中国語を披露して大反響

マーク・ザッカーバーグはフード付パーカは1着しか持っていないように見えるが、複数の言語が話せることがわかった。今日(米国時間10/23)、Facebookのファウンダーは北京の清華大学でインタビューされたとき、すべて中国語で会話した。聴衆は大喜びだった。もしかすると〔見た目が変わり過ぎたと炎上している〕レネー・ゼルウィガーも自分から注目がそらされる話題ができて喜んだかもしれない。

清華大学経済学・マネジメント大学院(SEM)では最近ザッカーバーグを顧問委員会のメンバーに迎えた(テクノロジー界からはAppleのCEO、ティム・クックとFoxconのファウンダー、CEOのテリー・ゴウも加わっている)。

ザッカーバーグがこの地位に就いたことが中国における彼のビジネス(現在Facebookは中国政府によってブロックされている)にどのくらい役に立つのかは明らかでないが、中国語でQ&Aを披露したことが大勢のファンを作ったことは間違いない。

実はティム・クックが2013年10月にSEMの顧問に就任したとき、iPhoneの中国での販売のライセンスについて交渉中だったが、その後、チャイナ・モバイル(中国移動通信)をキャリヤとして獲得することに成功している。

SEMの顧問委員会のメンバーには非常に有力は政治家も含まれていることは注目すべきだろう。王岐山は中国共産党の中国共産党中央規律検査委員会書記であり習近平主席の腐敗撲滅運動を担う有力な一人だ。陳元は中国人民政治協商会議第12期副主席、馬凱は第4副首相、周小川は中国人民政治協商会議副主席兼中国人民銀行総裁だ。

中国の起業家が西側に進出しようとすれば英語に堪能であることが求められる。Alibabaグループのファウンダー、ジャック・マー(馬雲)は元英語教師で、アメリカではたびたび長時間のインタビューに応じている。しかしアメリカの大物ビジネスパーソンが中国語を学ぶというのはもちろん例がごく少ない。

ザッカーバーグの中国語に対する反応は賛否両論だ。多くの好意的意見があった一方で、彼の中国語は幼児同然だとする声もあった。ある皮肉屋は 聴衆が喝采したのは「犬が二本足で歩くのを見て喜んだようなもの」だと言った。

Daniel Chow (@danielchownet) October 23, 2014は「私自身は中国語が母国語だが、ザックが中国語を話してくれたのは嬉しい」とツイートしているが、 malcolmmoore (@MalcolmMoore) October 23, 2014は「マーク・ザッカーバーグの中国語のおしゃべりは7歳児のレベルにも届かない。私の3歳6ヶ月の娘のほうがずっと流暢だ」と揶揄している。

しかしこういう批判はいささか不公平だ。ザッカーバーグが中国語を習い始めたのはほんの二三年前だし、なるほどいささかたどたどしく、声調もいくつか間違えていたが、ジョークを言えたし質問も正しく理解してすぐに答えていた。また数字を上げて議論できたのも驚きだ。大人になってから外国語を学習した者には数字は難物だ。私は子供時代を台湾で7年過ごしたので、聞き取りはネーティブだし、話す方もそこそこできる。それでも大勢の中国語の普通話ネーティブ・スピーカーの前で話すのは気後れする。ザッカーバーグの努力は大いに賞賛されるべきだと思う。

ザッカーバーグは「中国語を習い始めたのは妻のプリシラの父方の中国語しか話せないお祖母さんと会話できるようになりたかったからだ」と語っているが、今日の進歩をみると、Facebookが中国での地位を確立する助けにも十分になりそうだ。

ザッカーバーグはこのインタビューで、最近世界のいくつかの国を訪問し、インターネットに(そしてFacebookに)もっと多くの人々が参加できるようにするためにはどうすればいいか考えた」と騙り、そのために立ち上げたInternet.orgという運動を紹介した。また聴衆の学生にたいして起業についてもアドバイスを与えた(「社長になりたいというだけで起業してはならない、ビジョンを追求せよ、諦めるな」などいつも口にしていることを繰り返した)。

「Facebookの中国での計画は?」という質問(笑いと喝采が起きた)については「われわれはすでに中国で活動している。中国企業に対して携帯電話での各種のマーケティング・ツールを提供している」と答えた。またまたザッカーバーグは「中国と他国とを結びつける面で役立ちたい」と述べた。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


ハンズオン:新しいiMacのRetina 5Kディスプレイは圧倒的

最新のiMacのRetina 5KディスプレイはAppleによると「世界最高の解像度」だという。新しいスクリーンは一目見ただけで美しさに圧倒される。しかも長く見ていれば見ているほど賛嘆が深まる。私のように日頃Retina MacBook Proをメインマシンとしているユーザーにそう思わせるのだからただごとでない。

スクリーンには5K解像度の写真が表示され、一部分をクロップして拡大するデモが行われたが、相当に拡大した部分でも普通のデジタルカメラのオリジナルの表示より美しかった。新しいiMacもくさび形のデザインを受け継いでおり、いちばん薄い部分は5 mmしかない。Appleの工業デザインが長く色あせないのにも感心するが、iMacの目玉はやはりスクリーンだ。スクリーンの存在感があまりに強いので、正直、他の部分には目が向かなくってしまう。

毎日仕事で写真とビデオを扱っている人間として、Retina 5K iMacの優位性は議論の余地ないものと思われた。画面表示に関してはもっと強力なMac Proより上かもしれない。 iMacは4Kビデオを処理するのに十分なパワーを持っていたはずだが、Appleはプロセッサーとグラフィックカードの能力をさらに向上させた。その結果、フル解像度で画像を表示しながらFinal Cut Proの操作と設定のウィンドウも出せるようになっている。

新iMacの2499ドルという価格からしてもAppleが一般ユーザーをターゲットにしていないことは容易に想像できる。しかし同サイズのハイエンド4Kテレビよりは安い。しかもこちらはハイエンド・コンピュータなのだから、決定的にお買い得である。とはいえ高価な買い物であることは間違いない。単にオールインワンのコンピュータを求めているだけの層に向く製品ではない。

Retina MacBook Proと同様、iMacのターゲットはプロ、セミプロのユーザーだろう。しかしこの点は強く注意しておきたいが、将来コストが下がってくれば(そしてこういう製品の常として必ず下がる)、Retinaはデスクトップ・コンピュータの主流になるはずだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


iOS 8.1は火曜に公開―目玉はApple Pay、iCloud写真ライブラリー、カメラロールも復活

今日(米国時間10/16)、Appleのクパチーノ本社のタウンホール・オーディトリアムで開かれたプレスイベントで、ソフトウェア・エンジニアリング担当上級副社長のCraig FederighiがApple PayとiCloud Photo Libraryを始めとするiOS 8.1の新機能について説明した。iOS 8.1の一般公開は月曜日〔日本時間火曜〕となる。

Federighiによれば、8.1でiCloud Photo Libraryを利用する場合、5GBまでは無料、20GBまで月額0.99ドル、 200Gまで月額3.99ドルだという。プランは最高1TBまで用意されている。

もうひとつの良い知らせは、8.0で削除されて不評だったカメラロール・ギャラリーが8.1で復活したことだ。

Federighiは「この点についてAppleに苦情が押し寄せたのでわれわれは改善を決断した」とジョークを飛ばした。つまりカメラロールの削除を取りやめたわけだ。.

iOSデバイスのユーザーは8.0にアップデートした後、カメラロールとフォトストリームが見つからず、アップデートによって削除されたと知って強い不満を訴えていた。この問題に対する問い合わせと苦情でAppleのサポートスレッドはパンクしてしまった。iOS 8.0でAppleはカメラロールの代わりに「最近追加された写真」というセクションを用意したのだが、古い習慣は根強く、新しい仕組みはユーザーに受け入れられなかった。

iOS 8.1にはiCloud Photo Libraryのベータ版が追加され、すべてのAppleデバイスで写真を閲覧、編集できるようになる。またContinuityという新機能はユーザーがひとつのAppleデバイスで始めた作業を他のAppleデバイスで続けることができるようにする。デスクトップ、ノート、スマートフォン、タブレットがすべてシームレスにつながるという。またContinuityにはMacで電話を受ける機能が含まれている。

アップデート:iOS 8.1の一般公開は月曜という発表があったので本文をそのように修正した〔日本では火曜〕。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+