グーグルが発話障がい者のための音声認識・合成アプリ「Project Relate」 をテスト中

Google(グーグル)が、発話障がいがある人たちにコミュニケーション手段を提供するAndroidアプリの開発で、テスターなどの協力者を求めている。Project Relateと名づけられたプロジェクトおよびアプリは、音声の書き起こしと合成を提供し、言葉の理解をサポートする。

Project Euphonia」がこのプロジェクトの始まりで、TechCrunchは2019年に発表されたときに取り上げ、その後の研究についても触れている。その研究開発努力のリーダーはGoogleの研究科学者Dimitri Kanevsky(ディミトリ・カネフスキー)氏で、彼自身も発話能力に障害があり、その体験者としての知識をAIを用いるソリューションに持ち込んだ。現在、このプロジェクトの主要パートナーでアプリのユーザーでもあるAubrie Lee(オーブリー・リー)氏はマーケティングのチームにも所属しておりアプリの命名者でもあるが、筋ジストロフィーのため自分の言葉を人やアプリに理解してもらうのが難しい。彼女の様子は動画で見ることができる。

シンプルな事実として、AIによる音声認識は、人の発話を正しく理解できるようになるために大量の録音された発話を必要とするが、しかしそれらのデータは多くの場合、健常者の発話パターンに偏っている。訛りや変わったアクセントのある発話はAI用の教材として使われていないことが多いから、それらの理解もできない。発話障がいの人びとの喋りが含まれていることは、さらに稀だ。そこで、通常の音声認識デバイスを彼らは使えない。

第三国などで特殊なアクセントで喋られる英語の理解は最近改善されているが、しかし障害などで個人によって強烈なクルのある発話パターンを集めて分析するのはとても難しい。声は人によってみな違うが、脳卒中や重度傷害などで相当特殊なパターンになってしまった発話を機械学習のシステムに正しく理解させるのは困難だ。

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Project Relateの中核にあるのは、障がい者のための改良された音声書き起こしツールだ。その「Listen」ファンクションはユーザーの発話をテキストに変換する。それをどこかにペーストして、他の人が読むことができる。「Repeat」は、入力された発話を繰り返すが、2度目はやや聞き取りやすく加工されている。「Assistant」は書き起こしをGoogleアシスタントに転送して、音楽の再生や天気予報など単純なタスクをやらせる。

その能力を実現するためにGoogleはまず、できるかぎり多くのデータを集め、ボランティアによる100万以上の発話サンプルをデータベースに収めた。それらを使って、音声認識AIの基底的インテリジェンスとでも呼ぶべきものを訓練する。機械学習システムの例にもれず、これもまたデータは多ければ多いほど良いが、個々のユースケースに対応できるためには、特異なデータが多いほど良い。

 

Google ResearchのプロダクトマネージャーであるJulie Cattiau(ジュリー・カティアウ)氏は、TechCrunch宛のメールでこんな説明をしてくれた。

ターゲットのオーディエンスが必要とするものを事前に想定することを避けたかった。そのための最良の方法は、このプロダクトを利用すると思われる人たちと一緒になって作ることです。そうした人たちの最初の集団をテストに参加させることにより、アプリケーションが多くの人の日常生活の中でどのように役に立つかを、良く理解できました。どれほど正確であるべきか、どこを改良すべきかを理解してから、広範なオーディエンス向けに拡張しました」。

同社は、日常生活の中でこのアプリを試用してくれる、第一ラウンドのテスターを募集している。最初のステップではフレーズを集めて記録し、それを発話のモデルに組み入れて多様な発話パターンに対応する。このやり方なら自分の日常生活にも役に立ちそうだ、と思った方はボランティアに応募できる。あなたも、このアプリの改良に貢献できるだろう。

画像クレジット:incomible/iStock

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hiroshi Iwatani)

コードとドキュメントの同期を自動化するSwimmが約31.1億円調達

開発チームはプロジェクトの細部を理解したり、新人に仕事を任せるときなどにドキュメントが必要だ。公開するAPIを作っているときには、それらの実装の仕方を述べた良質なインストラクションがますます重要だが、伝統的にドキュメントとそのメンテナンスは多くのプログラマーに愛されない仕事だ。

イスラエルのスタートアップSwimmは、ここに着目した。同社は、デベロッパーにドキュメントを含めるよう促し、その作成を容易にし、古くなったら教えるソリューションを開発した。米国時間11月8日、同社は、そのソリューションの今後の成長のために、2760万ドル(約31億1000万円)という大きなシリーズAを発表した。そして同時に、Swimmのベータをリリースした。

このラウンドはInsight PartnersとDawn Capitalがリードし、これまでの投資家である Pitango FirstとTAU Venturesも参加している。Swimmによると、同社の総調達額は3330万ドル(約37億6000万円)になるという。

SwimmのCEOで共同創業者のOren Toledano(オレン・トレダーノ)氏によると、デベロッパーはドキュメントを軽視することが多い。彼らはコーディングに集中することが好きなので、同社はドキュメンテーションワークをコーディングの工程と容易に統合できる方法を考えた。

「Swimmの目標はデベロッパーがドキュメントを楽に作れる方法、それらがコード自体と一体化しているような方法を作ることだ。そして私の考えによると、そのもっとも重要な部分は、コードドキュメントにくっつけたときに、コードベース本体にある変化を見つけて、何かが変わったからお前は古い、と告げられることだ」とトレダーノ氏はいう。

そんなことをするSwimmは、当然ながらIDEやGitHubなどの上でデリバリーパイプラインの一部になる。そして、変化があればフラグする。それはワードプロセッサーのコメント機能に似ていて、ユーザーはその変化を受け入れたり、必要な変更を加えたりする。そのソリューションはプログラミング言語を特定せず、すべてのタイプのコードに対応する。

トレダーノ氏によれば、ひと言でいえば同社はドキュメントをコードとして扱う。

コードが所在するユーザーのリポジトリにコードも同居し、コードのように振る舞う。つまりコードをプッシュすると、Swimmのドキュメントもプッシュされる。ドキュメントはコードと同じ工程と、CIのパイプラインと、コードをデプロイする同じアプリケーションを通る。そしてこのような環境を使うと、ドキュメントが常にアップツーデートになる。

同社の社員は今30名で、米国に2人、ベルリンに1人、その他はテルアビブにいる。従業員の40%は女性だが、今後の雇用によって男女半々にしたいという。同社は、同社のための雇用のインフラストラクチャが確実にダイバーシティを実現していくものにしたい、という。

「そしてそうなればうちは、人事に関する知識やインフラがオープンになり、私たちが作っている人のインフラは、イスラエルで恵まれていない階層の人びとを今後加えていくものになる。そのやり方は、イスラエルのいろいろな機関とパートナーして、その階層の人たちをハイテクの世界で昇進させていくものになるだろう」とトレダーノ氏はいう。

同社は2019年にローンチし、2020年4月に570万ドル(約6億4000万円)のシード資金を獲得した。今回のラウンドは5月に締め切られた。

画像クレジット:Swimm

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

アップル、iOS 15.2開発者ベータ第2弾で「メッセージ」アプリに子供向け新安全機能を搭載

Apple(アップル)は、iOS 15.2の2回目のデベロッパーベータをリリースし、メッセージAppの新機能「コミュニケーションセーフティー」のサポートを開始した。この機能が2021年初めに発表された際は、児童性的虐待コンテンツ(CSAM)検出技術の新機能と並んでのことだった。同時に発表されたCSAMは物議を醸し、反発を受けて延期された。

一方、このメッセージAppの新安全機能は、子どもたちがオンラインコミュニケーションを上手に使いこなせるよう、親がより活発な、情報に通じた役割を果たすのを支援することを目指している。メッセージAppは、デバイス上の機械学習(ML)を利用して画像の添付ファイルを分析し、共有されている写真が性的に露骨なものかどうかを判断できるようになる。この技術では、すべての処理がデバイス上で行われるため、Appleが子どものプライベートな通信にアクセスしたり、読み込む必要はない。この機能はデフォルトでは有効になっておらず、ファミリー共有機能の中で、保護者がオプトインするようになっている。

メッセージスレッドの中にセンシティブな写真が発見された場合、その画像はブロックされ、写真の下に「これはセンシティブな写真かもしれません」というラベルが表示され、クリックするとその写真を見ることができるリンクが表示されるようになっている。子どもが写真の閲覧を選択すると、詳細情報を示す別の画面が表示される。ここでは、センシティブな写真や動画について「水着で隠すようなプライベートな体の部分が映っています」「あなたのせいではないけれど、センシティブな写真や動画はあなたを傷つけるために使われる可能性があります」というメッセージが子どもに伝えられる。

注目すべきは、Appleがコミュニケーションセーフティー機能について、当初の計画に比べていくつかの変更を加えたことだ。同社は当初、13歳未満の子どもがメッセージAppで露骨な画像を閲覧した場合、親に通知する予定だった。しかし、その通知システムが子どもたちを危険にさらす可能性があるとの批判を受け、Appleはこの機能を削除した。

このコミュニケーションセーフティー機能は、現在、iOS 15.2のベータ版で提供されている。Appleがこの機能を正式にリリースする予定は今のところ不明だ。

編集部註:9to5Mac.comによると、上記の通知システムは特定の状況で機能するため Appleは削除したという。iOS 15.2 beta 2での機能の実装では、子どもがよりコントロールできるようにすることに重点を置いており、Appleは現在、年齢を問わず、子どもが助けを求めたい場合には信頼できる人にメッセージを送るという選択肢を与えているが、その判断は、画像を見るかどうかの判断とは完全に切り離されているとのこと。

画像クレジット:Apple

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(文:Aisha Malik、翻訳:Aya Nakazato)

瞑想アプリ「Calm」が6アカウント利用できるファミリープランを新設

コロナ禍で急成長の瞑想アプリ「Calm」が日本上陸、日本語オリジナルコンテンツも提供開始

人気の瞑想アプリ「Calm」が、最大6アカウント利用できる「プレミアムファミリー」サブスクリプションプランを追加した。新しいサービスは、全世界で年間99.99ドル(約1万1300円)で利用できる。個人のプレミアムプランは年間69.99ドル(約7900円)だ。

プランのメンバー全員がそれぞれ個人アカウントを保有し、進捗の追跡、節目の祝福、瞑想と「Sleep Stories」のお気に入り登録などを行える。ファミリーメンバーは同じ世帯に居住している必要はないと同社は言っている。他のアプリのファミリープランではでは時々みられる制限だ。

現在のCalmユーザーが新プランに移行する場合、保存したお気に入りやダウンロード、セッション履歴などが失われることはない。それぞれのメンバーが独自のCalmアカウントをもち、それぞれのアカウントに自分のメールアドレスとパスワードでログインする。履歴、統計データ、チェックインなどのCalmアカウントに結び付けられた個人データは、ファミリーメンバー間で共有されない、とCalmは言っている。

プレミアムファミリーサブスクリプションには、Calmの全コンテンツライブラリーが含まれ、スリープストーリー、感謝と気分のチェックイン、ガイド付き瞑想、落ち着く自然の音、子ども向けの子守唄とスリープストーリー、ピークパフォーマンスのための特別講座、集中、リラクゼーション、および睡眠のための特別音楽などが入っている。

ちなみに、CalmのライバルであるHeadspace(ヘッドスペース)もファミリープランを提供していて、6アカウントで年間99.99ドルだというのは注目に値する。ただし、同サービスのファミリープランではグループの全員が登録時に同じ住所を入力し、全員が同じ世帯に済んでいることを証明する必要がある。このサブスクリプションプランではHeadspaceの全ライブラリーをアクセス可能で、人間関係のための瞑想、子ども用Headspace、家族行動にマインドフルネスをもたらすエクササイズなどが入っている。

Calmは他の瞑想アプリと同じく、パンデミック下でも順調で、ユーザー数が急増した。2020年、CalmはシリーズCラウンドで7500万ドルを調達し、評価額は20億ドル(約2257億円)に達した。既存出資者のLightspeed Venture Partnersがラウンドをリードし、Insight、TPG、およびSalesforce(セールスフォース)のCEOでSlack(スラック)の新たなオーナーでもあるMark Benioff(マーク・ベニオフ)氏なども参加した。

画像クレジット:Calm

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(文:Aisha Malik、翻訳:Nob Takahashi / facebook

サイバーセキュリティMcAfeeを投資家コンソーシアムが1.59兆円で買収

サイバーセキュリティソフトウェア会社McAfee(マカフィー)の長く曲がりくねった歴史は、新たに興味深い展開を見せた。米国時間11月8日、6つの投資会社からなる投資家コンソーシアムが140億ドル(約1兆5850億円)で同社を買収すると発表した。

この買収額は、1株あたり26ドル(約2945円)という株価に基づくもので、11月4日の終値に対して22.6%のプレミアムがついているという。なお、11月5日の株価は20%上昇し、同日の取引終了時点での時価総額は110億ドル(約1兆2460億円)をわずかに超えたというのも注目に値する。

このコンソーシアムは、Advent International、Permira Advisers、Crosspoint Capital Partners、カナダ年金制度投資委員会、GIC Private Limited、アブダビ投資庁の完全子会社で構成されている。AdventとPermiraが買収を主導した。

McAfeeは1987年以来、さまざまな形で存在してきた消費者向けセキュリティ企業だ。同社は2021年初め、法人部門をSymphony Technology Groupに40億ドル(約4531億円)で売却した

McAfeeは長い歴史を持っているが、消費者向けセキュリティ事業はまだ成長している。11月8日発表された直近の四半期決算では、売上高は前年同期比24%増の4億9100万ドル(約556億円)、新規加入者数は64万人だった。加入者合計は2000万人を超え、これはものすごい数字であり、投資家グループが注目せずにはいられないものだ。

Permiraのテクノロジー部門共同責任者であるBrian Ruder(ブライアン・ルーダー)氏は、消費者市場においてセキュリティが大きな関心事となっている中で の今回の買収だと指摘した。「パーソナライズされた、革新的で直感的なオンライン保護サービスに対するニーズはかつてないほど高まっています」と声明で述べた。また、PermiraはMcAfeeのブランド認知度、パートナーネットワーク、忠実な顧客基盤にも好感を持ったと付け加えた。ルーダー氏は、PermiraがMcAfeeのような企業と協力してきた経験を活かし、これらのポジティブな特徴を生かして、さらに会社を成長させることができると考えている。

投資家グループの各社は、それぞれ資金と経営資源を提供する予定だ。それがどのように機能するのかは完全には明らかになっていない。McAfeeが多くのボスを持つことになるのは確かだ。McAfeeが今回の契約に「ゴー・ショップ」条項を組み込んだことは注目に値する。これは、より良い価格を模索するために45日間の猶予を与えるという、かなり一般的な慣行だ。そのような結果になる可能性は低いものの、この条項は、会社が株主のために最善の取引をしたことを株主に証明するものだ。

3月の法人部門売却の際にも書いたが、McAfeeには複雑な歴史があり、上場と非上場を行き来し、一時は社名まで変更した。

同社の歴史は複雑で、1980年代にファイアウォールソフトウェアの販売から始まった。最終的には株式を公開したが、2010年にインテルに77億ドル(約8722億円)で買収され、再び非公開になった。2014年にはIntel Securityに社名を変更したが、2017年にIntelが42億ドル(約4757億円)でTPGに株式の過半数を売却し、社名をMcAfeeに戻した。

今回の買収はMcAfeeの株主やさまざまな規制当局の審査を通過しなければならないが、これらのハードルをクリアできれば、2022年前半には買収が完了する見込みだ。買収のニュースを受けて、同社の今朝の株価は0.57%上昇した。

画像クレジット:Justin Sullivan / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

旅行業界の再活性化に向け、ホスピタリティ管理ソフトウェアのCloudbedsにソフトバンクが投資

日程を決めずに宿泊チケットを買えるECサイトStay by Tripi運営のトリピが3800万円のシード調達

2021年夏、米国のホテル稼働率は新型コロナウイルス流行前の水準に達した。ホスピタリティ業界は、人々が旅行を再開することによる活動の活発化に備えているところだ。

このような状況には追い風も吹いている。「今後増える旅行者で最大の母集団は1979年以降に生まれた人々であり、この10年間により多くのお金を貯めたことで、自由裁量の支出が増え、それを旅行に使いたいと考えている」と、Cloudbeds(クラウドベッズ)の共同設立者兼CEOであるAdam Harris(アダム・ハリス)氏は述べている。

「新型コロナウイルス流行は誰もが歓迎しない状況でしたが、旅行業界は1兆ドル(約114兆円)規模の産業であり、世界でトップ5に入る規模です」と、同氏は付け加えた。「2019年にあった需要は、それから1年半も家に閉じ籠もらざるを得なかったことで、今はさらに強くなっています」。

Cloudbedsのプロダクト(画像クレジット:Cloudbeds)

ハリス氏と共同創業者のRichard Castle(リチャード・キャッスル)氏が、2012年にサンディエゴで設立したCloudbedsは、独立系ホテルからバケーションレンタル(民泊)まで、宿泊事業者向けのホスピタリティ管理ソフトウェアを提供している。このソフトウェアは、運営、収益、流通、グロースマーケティングなど、これまで別々に行われていたビジネスの機能を、1つのクラウドベースのツールに統合する。

人々の蓄積されてきたエネルギーにより、今までにない数の旅行が実施されるようになると、ハリス氏は確信している。このチャンスを活かすため、同社は新たな投資家であるSoftBank Vision Fund 2(ソフトバンク・ビジョン・ファンド2)が主導した資金調達で、1億5000万ドル(約170億円)を確保した。

Cloudbedsとソフトバンクとの関係は2年前に始まったが、ハリス氏はこの投資会社が「世界で最も優れた旅行投資家の1つ」だと述べている。最近では、Yanolja(ヤノルジャ)、GetYourGuide(ゲットユアガイド)、Klook(クルック)などの旅行関連企業に、ソフトバンクは資金を提供している。

今日の市場では、ホテルが競争力を高めるためにテクノロジーを導入することが「重要」であり、世界的な新型コロナウイルス流行がその導入を加速させる要因になっていると、SoftBank Investment Advisers(ソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズ)のディレクターであるAndrew Zloto(アンドリュー・ズロト)氏はメールで述べている。

「Cloudbedsは、この機会を利用して、ホスピタリティ業界におけるテクノロジーの利用方法を根本的に変えたと、我々は確信しています」と、ズロト氏は語る。「これまでサイロ化され、複雑に絡み合っていたテクノロジーサービスを、Cloudbedsは単一のプラットフォームに統合し、あらゆる規模の宿泊施設に最適なソリューションを提供しています。重要なビジネスツールを統合して簡素化することによって、同社は独立系ホテル経営者が活躍できる場を広げ、絶えず進化する市場で成長するための支援を行っています」。

今回の投資ラウンドでは、ソフトバンクに加え、Echo Street(エコー・ストリート)とWalleye Capital(ウォールアイ・キャピタル)が新たな投資家として加わった。さらに既存投資家として、Viking Global Investors(バイキング・グローバル・インベスターズ)、PeakSpan Capital(ピークスパン・キャピタル)、Counterpart Ventures(カウンタパート・ベンチャーズ)も参加。これにより、Cloudbedsがこれまでに調達したベンチャー資金の総額は、2億5300万ドル(約287億円)となった。

この資金を武器に、Cloudbedsは研究開発の拡大、教育およびアドボカシー活動への投資、エンジニアリング、プロダクト、セールスの各チームの拡大を進めていく。さらにプレIPOに向けてチームを整えることに重点を置き、リーダーシップを強化していくと、キャッスル氏は述べている。

ハリス氏は成長指標を公表しようとはしなかったものの、Cloudbedsは2020年、新型コロナウイルス流行にもかかわらず成長を遂げた、ほんの一握りの企業の1つであると語っている。同社は現在、157カ国で2万2000人以上のグローバルな顧客にサービスを提供している。

「私たちは、この会社が200億ドル(約2兆3000億円)規模の企業になれると信じています」と、ハリス氏は付け加えた。「競合他社との競争を見れば、当社はリードしています。しかし、現金を投入する必要があり、そのために私たちは夜も眠れません。現在、当社のビジネスモデルには予測可能性があり、目標はIPO候補となり組織を成熟させることです」。

画像クレジット:num_skyman Shutterstock

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

AIを活用したエンジニアリング卓越性プラットフォームのPropeloがシリーズAで約13.6億円を調達

ここ数年、DevOpsツールの数は飛躍的に増加しており、それにともない、企業がソフトウェア開発プロセスを改善するためにそうしたツールが生み出すデータの量も増加している。しかし、ほとんどの場合、これらのデータは単にダッシュボードの中でばらばらに分析されている。Propelo(旧社名:LevelOps)は、この混沌とした状況に秩序をもたらしたいと考えており、機械学習(ML)を活用した分析サービスとノーコードのロボティックプロセスオートメーション(RPA)ツールを組み合わせた「AI駆動のエンジニアリング卓越性プラットフォーム」を構築し、ユーザーがこれらのデータポイントを実用的なものに変えられるようにすることを目指している。

同社は米国時間11月4日、Decibel Partnersが主導するシリーズAラウンドで1200万ドル(約13億6000万円)の資金調達を実施したと発表した。このラウンドには、Fike Ventures、Eniac Ventures、Fathom Capitalも参加した。

Propeloの創業者兼CEOであるNishant Doshi(ニシャント・ドーシ)氏は、2015年にPalo Alto Networks(パロアルトネットワークス)が買収したSaaS型セキュリティサービス、CirroSecureを共同創業した経験がある。その後、Palo Alto Networksに数年間在籍し、シニアディレクターやエンジニアリング担当VPとして、DevOpsツールの爆発的な普及を身をもって体験した。開発プロセスをよりよく把握するために、チームはJira、GitHub、Salesforceなどのソースからデータをつなぎ合わせる必要があった。

画像クレジット:Propelo

「これは手作業が多く、多大なリソースを必要とします」と同氏は語る。「ビジネスの核心にフォーカスしていないのに、解決策を探そうとすると、いつも別のツールが必要になってしまうのです。また、それらのツールを手に入れても、何を測定すればよいのかわかりません。当社のような専用のソリューションがもたらす進歩にアクセスできず、さらに重要なのは、行動可能性がないということです」。

画像クレジット:Propelo

そして、最後の部分がキーポイントだとドーシ氏は強調する。優れたデータや分析結果があっても、その情報に基づいて実際に行動を起こすことができなければ、開発プロセスを改善することはできない。PropeloのRPAツールを使えば、ユーザー(同社によれば、主にエンジニアリング・リーダーシップ・スタックのユーザーを対象としている)は、企業内のDevOpsプロセスを改善するための多くのタスクやワークフローを簡単に自動化することができる。

このサービスは現在、Jira、GitHub、GitLab、Jenkins、Gerrit、TestRailsなど、約40種類のDevOpsツールと連携している。Propeloは、AIを活用することで、ユーザーが隠れたボトルネックを発見したり、スプリントが失敗しそうなタイミングを予測したりできる。実際、データの衛生管理やJiraチケットの更新は、ほとんどの開発者があまり考えたくないことなので、Propeloは定期的に開発者にそれを促すことができる。

現在のPropeloのユーザーには、Broadcom(ブロードコム)やCDK Globalなどがいる。Broadcomでセキュリティ技術とエンドポイントソリューションを担当するエンジニアリングVPのJoe Chen(ジョー・チェン)氏はこう述べている。Propelo は、DevOps の摩擦を減らし、無駄な動作を減らす方法について、スクラムチームごとの非常に細かいレベルで、データに基づいた洞察を提供してくれます。これは、追加技術投資の効率を最大化し、エンジニアのペインポイントを取り除くのに役立ちます」。

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Aya Nakazato)

開発者がアプリのサイズを小さくとどめるために役立つツールを提供するEmerge Tools

アプリは時間が経つに連れて大きくなる傾向がある。新しい機能を追加するということは、より多くのコード、より多くのサードパーティ製フレームワーク、より多くの画像や動画などのアセットを追加するということだ。フォントやサポートドキュメントのようなリソースは重複し、最適化や圧縮が行われないままビルドプロセスを通過してしまう。

アプリを小さく維持することは、ユーザーにも開発者にもメリットがあるものの、必ずしも常に最優先されるものではない。開発チームの規模や優先順位によっては、誰かに文句を言われるまで忘れ去られてしまう類のことだ。

Y Combinator(Yコンビネータ)W21(2021年冬)クラスのEmerge Tools(エマージ・ツールズ)は、アプリを小さく留めるためのツールを開発している企業だ。このツールは、ビルドごとの変更を監視し、必要なストレージ容量を削減するためのアクションを推奨してくれる。

なぜアプリを小さくするのか?理由はいくつかあるが、Emergeの共同設立者であるJoshua Cohenzadeh(ジョシュア・コヘンザデ)氏は次のようなことを指摘している。例えば、開発したiOSアプリのサイズが大きすぎると、App Store(アップ・ストア)はユーザーに、Wi-Fiが使えるようになるまでダウンロードするのを待つように提案するため、ユーザーが興味を失ってしまうことがある。ちなみにUber(ウーバー)は最近のブログ記事で、App Storeのサイズ制限によって最大でインストール数の10%が失われたと書いている。世界中にユーザーを拡げたいと考えているアプリ開発者は、潜在的なユーザーの多くが低速のネットワークを利用していたり、メガバイト単位で通信料を支払っている可能性があることを考慮しなければならない。あるいはまた、スマートフォンの空き容量を確保しようとした時に「おいおい、なんで〇〇のアプリが400MBも使っているんだ?」と思ったことがない人はいないだろう。

Emergeを共同で設立したコヘンザデ氏とNoah Martin(ノア・マーティン)氏は、文字通り子どもの頃から一緒にものづくりを行ってきた。高校時代には、Macの画面解像度をすばやく変更するためのメニューバーツール「QuickRes(クイックレズ)」を開発した。その後も、人気の高いMac用スクリーンショットマネージャーや、MacからTesla(テスラ)をコントロールするためのメニューバーウィジェット、さらにTinder(ティンダー)の写真をA/Bテストするためのツールなどを作成したが、コヘンザデ氏によると、これは配布停止命令を受けることになってしまったとのこと。

大学卒業後、大企業に就職した2人は、サイドプロジェクトとしてのアプリ開発(コヘンザデ氏は「小さな取るに足りないアプリ」と呼んでいた)をやめて、本格的にスタートアップを起ち上げることにした。Y Combinatorに応募した2人は、アイデアを練っているうちに、モバイルネットワークに制限がある国々では、ユーザーがデータ転送に多大な労力を費やしているという調査結果を見つける。そこで2人は、アプリがどこでデータを浪費しているかを調べ、さらに掘り下げていったところ、アプリのサイズについては、多くの開発チームが、多くの大企業でさえも、常に重視しているわけではないことがわかった。

「小規模な企業では、独自のパフォーマンスチームを持つほどのリソースはありません。クレイジーな最適化などを行うリソースもありません」とコヘンザデ氏はいう。「だからEmergeの基礎となったのは、これを標準化しようということでした」。

Emergeは、いくつかの異なる方法でインサイトを提供している。開発チームのGitHub(ギットハブ)に接続して、アプリのサイズ変更を各プルリクエストのコメントとしてフラグを付けることもできるし、一方でEmergeのダッシュボードでは、アプリ内で何がスペースを占めているかを複数の異なるビューで表示し、スリム化する方法を提案する。

Emergeの「X-Ray」ビュー(画像クレジット:Emerge)

「X-ray」ビューでは、各フレームワークやアセットがどれだけの容量を占めているかが一目瞭然だ。特定のフレームワークを1つか2つのあまり使わない機能にしか使用していないのに、アプリのサイズの5分の1を占めている場合、そのフレームワークを使用する価値はあるだろうか? ビルドに何度も紛れ込むように管理されたファイルもハイライトされる。「重複ファイルを抱え込んでいる会社が多いことには驚かされます」と、コヘンザデ氏はいう。

「Breakdown」ビューでは、アプリの中でバイナリ自体が占める割合、画像や動画などのアセットが占める割合などが、カテゴリーごとに分けて表示される。

Emergeの「Insights」ビュー(画像クレジット:Emerge)

「Insights」タブには、アプリのサイズに最も大きな影響を与える可能性のあるアクションが提案される。例えば、Swift(スイフト)のバイナリでバイナリシンボルを削除したり、所定のプラットフォームで異なる画像タイプを使用したり(iOSではPNGの代わりにHEICを使用するなど)、前述の重複ファイルを削除する方法を考え出したりする。

自分たちが開発したアプリの中からEmergeが何を見つけるか、興味がある人もいるだろう。だが、1つ問題がある。同社のツールはまだ誰にでも公開されているわけではないのだ。というのも、コヘンザデ氏によると、彼らが提携している企業のほとんどは、このようなツールにアクセスを許可する前に、厳格なセキュリティ審査と法的契約を必要とするからだ。Emergeでは、小規模なチームを対象とした「完全セルフサービスのモデル」を近々発表する予定であるという。価格は、アプリの数、ビルドの数、チームの規模、どのプラットフォーム向けにビルドするかといった基準に基づき、企業ごとに異なる。Emergeが2021年初めに設立された当初は、iOS向けアプリのみに集中していたが、2021年10月よりAndroid向けアプリのサポートも追加した。

Emergeは最近、170万ドル(約1億9000万円)を調達した投資ラウンドを完了させたが、これは同社にとって初のラウンドだった。コヘンザデ氏によると、このラウンドにはHaystack(ヘイスタック)、Matrix Partners(マトリックス・パートナーズ)、Y Combinator、Liquid2 Ventures(リキッド2ベンチャーズ)の他、数名のエンジェル投資家が参加したとのこと。

画像クレジット:Emerge

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(文:Greg Kumparak、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

「コピーされて殺された」、ショート動画アプリPhhhotoがフェイスブックを反トラストで訴える

Instagramのかつてのライバル企業が、Meta(旧Facebook)が競合製品のクローンを作成し、最終的に同社のビジネスを消滅させたと、反トラスト法違反の疑惑で訴訟を起こしている。

2014年に登場した「Phhhoto」というアプリは、GIFのような短い動画を作成してユーザーに共有を促すというものだ。聞き覚えがあるとすれば、それは同じ機能がInstagramアプリ「Boomerang」で普及したからだ。その機能は現在、Instagramの主要機能の一部になっている。

新たに提出された訴状(本記事の下部にリンク)によると、Facebookがソーシャルグラフへのアクセスを遮断し、提案された関係の進捗を遅らせ、最終的にはPhhhotoの主要機能である数秒のループ動画のコピーを独自にリリースしたことで、Facebookの行動が独占禁止法に違反したと主張としている。

この訴訟では、メンローパークに拠点を置く弁護士であるGary Reback(ゲイリー・リバック)氏がPhhhotoの代理人を務める。リバック氏は、連邦政府がMicrosoftに対して行った反トラスト法違反の訴訟を成功させたことで広く知られている。この訴訟は結局、巨大ハイテク企業の分裂にまで至らなかったが、同社はコンピュータ事業の一部を開放することを余儀なくされ、その結果は今日のハイテク業界にも影響を与えている。

リバック氏は、Phhhotoの経験は、巨大なハイテク企業が競合他社を買収してそれらの事業を運営し始めることが、なぜ市場にとって有害なのかを示していると主張する。

「この記録は、FacebookがPhhhotoと提携して、Instagramと競合していたであろうこのすばらしい新ソーシャルネットワークを立ち上げていたことを示しています」とリバック氏はいう。Facebookのトップが、この生まれたばかりの競合他社に対して、異例ともいえる積極的なアプローチをとったことをリバック氏は強調しています。

Phhhotoはリリース後、iOSアプリのチャートを賑わせた。話題のソーシャルアプリが注目を集めると、Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏をはじめとするFacebookの幹部たちも関心を寄せました。

「2014年8月8日頃、ザッカーバーグ氏は携帯電話にアプリをダウンロードしてインストールし、Phhhotoアプリに自分の端末の電話番号を入力して個人アカウントを作成し、新しいPhhhotoアカウントに自分のプロフィール写真(以下に再現)を投稿した」と訴えている。

訴状には、そのときのレシートとして、彼がそのアプリを試しているときに撮った自撮り写真が含まれている。

画像クレジット:Phhhoto

また、当時Instagramを率いていた同社の共同創業者のKevin Systrom(ケヴィン・サイストロム)氏も、このアプリをダウンロードしてその機能を探っていた。訴訟によると、FacebookはPhhhotoとの提携の機会を提供し始めたが、後に撤回した。

……Facebookの戦略的パートナーシップマネージャーだったHurren(ハーレン)がPhhhotoに接近して「Phhhotoは本当にすばらしい」と主張した。ハーレンはまず、Phhhotoの技術をFacebookのMessengerサービスに組み込むことを提案した。Phhhotoがそれを断ると、ハーレンはPhhhotoのコンテンツをFacebookのユーザーのニュースフィードに組み込むことを提案した。Phhhotoはこのプロジェクトにかなりの投資を行ったが、結局ハーレンは社内での「法律的な会話」を理由に、このプロジェクトを進めなかった。

この関係が実現しなかった後、訴訟では、FacebookがPhhhotoを廃業に追い込むために、アプリ上のコンテンツの発信元を示すInstagramのハッシュタグがあらかじめ入力されていない状態にするなど、さまざまな行動を取ったと訴状にはある。また、Instagramは、Phhhotoをソーシャルグラフから切り離し、競合他社と思われるユーザーがInstagramの友人とアプリ内で接続できないようにした。

Phhhotoの終焉にはドラマチックな瞬間もあった。2015年10月22日、同社がアプリのAndroid版を発表することになっていたその日に、InstagramがBoomerangを発表したのだ。訴訟では、BoomerangのプロダクトマネージャーJohn Barnett(ジョン・バーネット)氏は「熱心はPhhhotoユーザー」とされている。発売当時、TechCrunchはBoomerangがPhhhotoに「疑わしいほど似ている」と指摘していた。

この訴訟では、BoomerangがFacebookの反競争的な取り組みの頂点であり、Phhhoto社の革新的技術を「機能ごと」再現した模倣アプリによって、小規模な企業を事実上消滅させたと主張している。

訴訟によると、Phhhotoは当時、Facebookが他の競合他社に対してどの程度の攻撃的な行動をとっているのかさえ知らず、2018年末に英国議会が同社の内部文書を大量に公開した後に詳しく知ったという。

Phhhotoは、このような事態になっても、Facebookの動きについて発言することを恐れていない。「Boomerangがリリースされるほぼ1年前に、サイストロム氏と彼のプロダクトチームがPhhhotoをこっそり使っているのを見ていました」と、Phhhotoの共同設立者であるChamp Bennett(チャンプ・ベネット)氏は2017年にTechCrunchに語っている

アプリが閉鎖された後、Instagramが独自のクローンを立ち上げたことは「まったく驚きではなかった」とベネット氏は述べている。


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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)

社内のインシデント対応における人間的側面を示すレポート機能「ヒートマップ」をKintabaが公開

Kintaba(キンタバ)は、Facebookサイトの信頼性向上に貢献してきた2人が立ち上げたスタートアップで、インシデント対応をライフサイクル全体で監視するプロダクトを開発している。米国時間11月4日、同社は「ヒートマップ」と呼ばれる新しい機能を発表した。これは、人間的な側面からレスポンスを見て、インシデントが発生したときに組織内の人々がどのように対応するかを理解するための方法だ。

Kintabaの共同創業者でありCEOのJohn Egan(ジョン・イーガン)氏は、同社の創業者たちはFacebook(フェイスブック)で経験を積んだ後、データを通じてインシデント対応にポジティブな焦点をもたらす、あらゆる組織規模に対応したプロダクトを作りたいと考えていたと語っている。従来のインシデント対応ツールでは把握することが難しかった、インシデントに最も関与した人物を把握することができるのだ。

「これは、管理一式全体のレポートをより高いレベルで見ることができます。つまり、その場で何が起こったかを見るのではなく、時間を追って振り返ることができるのです」とイーガン氏は説明する。

画像クレジット:Kintaba

ヒートマップを見ることで、インシデントがいつ発生したのか、さらにはそのインシデントによって影響を受けているのは誰なのか、といった傾向を把握することができると同氏は考えている。「これは、これまで欠けていた、もう一段階高いレベルのインシデント情報です」と語った。

このデータが前向きに活用され、時間をかけてプロセスを改善したり、インシデントの報告や対応に尽力している人々に報いることで、会社や顧客への影響を軽減できるようになることを願っている。同氏は、これはインシデント対応の自然な進化であり、人間的、文化的側面に目を向けたものだと考えている。

「文化的な課題は、実際には人々の課題であり、会社全体レベル(インシデント対応の)で導入をする際には、こうしたデータが必要になります。そして、これこそがこの分野の進む方向性であり、(従来の評価基準よりも)はるかに興味深いものだと思います。この分野では、企業がインシデントレスポンス管理をより健全な方法で実践できるように進化し続けていると思います」と述べている。

Kintabaは2020年設立され、これまでに225万ドル(約2億5500万円)を調達している。

画像クレジット:PM Images / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Akihito Mizukoshi)

マイクロソフトが、サプライチェーンと製造業を近代化する新ツールを発表

新型コロナウイルス感染流行は、原材料の欠如や労働力の不足など、様々な理由で世界のサプライチェーンに大打撃を与えた。問題は依然として続いており、Microsoft(マイクロソフト)はサプライチェーンと製造業の近代化に、多大なリソースを投入することを決定した。

これらの問題に対処するために、同社は「Microsoft Cloud for Manufacturing(マイクロソフト・クラウド・フォー・マニュファクチャリング)」と呼ばれる新しい製造業向けソリューションと、「Dynamics 365 Supply Chain Insights(ダイナミクス365サプライチェーン・インサイト)」という、サプライチェーンのルート上で起こっていることをより可視化し、問題が発生したときに対処するためのインテリジェンスを提供するためのツールを発表した。米国時間11月2日に開催された「Microsoft Ignite(マイクロソフト・イグナイト)」で発表された両製品は、同日よりプレビュー版が提供されている。

マイクロソフトの製造・サプライチェーン担当VPを務めるCaglayan Arkan(カグラヤン・アルカン)氏によれば、同社はこれらの問題を企業が解決するのに役立つ方法を考えるのと同時に、製造業にとって課題となっている、よりデジタルに注力した企業への進化を支援する方法を考えてきたと述べている。

アルカン氏によると、この事態を調査したマイクロソフトは、新型コロナウイルスの圧力に直面した際に、持ち堪えることができない脆弱なシステムを目の当たりにしたという。「製造業やサプライチェーンは非常に確固とした状態にあり、非常に引き締まっています。おそらく引き締まり過ぎているのです。これらの業界では、非常に長いサイクルと手動でサイロ化されたデータの状態に大変満足してきました」。

新型コロナウイルス感染流行が起こるまで、製造業は何年もこの方法で仕事をしてきており、変える理由がなかったのだと、アルカン氏は付け加えた。「(新型コロナウイルス流行によって)すべてが止まりました。従業員を現場に送ることができなくなり、物資もそこにはありませんでした。サプライヤーの顔を見ることもできず、商品がどこにあるのかもわからず、大きな混乱に陥りました」と、アルカン氏は説明する。

マイクロソフトの製造業向けクラウドは、工場のデジタル化を支援し、従来の記録システムからアルカン氏の言う「現実のシステム」へ移行することによって、完全なデジタル化への道筋を提供する。

つまり、製造企業は、市場でどんな需要があるか、現場で何が生産されているか、世界で何が供給されているかをリンクさせて、全体像を把握できるようになる必要があり、それによって新型コロナウイルス流行の初期にトイレットペーパーやPPE(個人防護具)の需要が急増したときのような、不意打ちをくらわないようにすることができるということだ。

Cloud for Manufacturingは、このような徴候を収集し、追加の供給が必要になった場合には製造業者に警告を発するように設計されている。そしてSupply Chain Insightsツールは、サプライチェーンのルートをマッピングし、ボトルネックが発生する前に、主要な原材料の供給に影響を与える可能性のある問題を根絶するように設計されている。これらのツールを組み合わせることで、製造企業は俊敏性と柔軟性を向上させることができる。

Microsoft Dynamics 365 Supply Chain Insights 画像クレジット:Microsoft

マイクロソフトは、これまで非常にゆっくりと近代化を進めてきたこの種の企業が、既存のシステムを引き剥がして取り替えたり、大規模なプロジェクトを抱えたりすることは望んでいないと理解している。アーカン氏が言うように、まずは1つのプロジェクトを成功させてから、次のプロジェクトに移る必要があり、アーカン氏によれば、このソリューションはそれができるように設計されているという。

しかも、それぞれのプロジェクトは互いに積み重なり、節約とイノベーションによって、次のプロジェクトの資金源になると、アーカン氏は言う。「デジタルトランスフォーメーションにおけるすべてのステップ、当社とのすべてのエンゲージメントは、次のプロジェクトに資金を追加するための経済的余裕を生み出します。なぜなら、当社のソリューションは、8~12週間のうちに、総収入や生産能力を増やしたり、コスト削減や品質向上をもたらすからです」と、アーカン氏は述べている。

これは大胆な約束ではあるが、もしマイクロソフトが本当にそれを実現できるなら、伝統的にこのような大きな変化を拒んできた企業にも、モダナイゼーションへの快適な道が開かれることになる。

マイクロソフトをはじめ、SAPやSalesforce(セールスフォース)などの大企業がこれらの本質的な問題を解決できれば、今日見られるようなサプライチェーンの問題が緩和される可能性がある。ソフトウェアだけでは、不足している原材料を魔法のように生産したり、物資の製造や配送のために十分な人員を雇用したりすることはできないが、将来におけるこのような危機を緩和するために役立つソリューションの一部となることはできる。

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画像クレジット:xPACIFICA / Getty Images
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(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

友人とのつながり・コミュニケーションを楽しみつつグループ購入できる「シェア買い」のカウシェが総額約8.1億円調達

友人とのつながり・コミュニケーションを楽しみつつグループ購入できる「シェア買い」のカウシェが総額約8.1億円調達

友人や家族などとコミュニケーションを楽しみながらグループ購入を行える「シェア買い」アプリ「KAUCHE」(カウシェ。Android版iOS版)を提供するカウシェは11月4日、第三者割当増資による総額約8億1000万円の資金調達を発表した。引受先は、リードインベスターのデライト・ベンチャーズ、SBIインベストメント、既存株主のANRI、グローバル・ブレイン、千葉道場ファンド。2020年11月発表の資金調達と合計した、これまでの総調達額は約10億円となった。調達した資金は、新規顧客獲得・既存顧客エンゲージメント向上のためのマーケティング強化、「カウシェ」のサービス開発のためのエンジニアや事業者開拓のための営業職など幅広い職種での採用強化にあてる予定。

KAUCHEは、ショッピングの醍醐味ともいえる「この商品、よくない?」「一緒に買おうよ!」といったコミュニケーションを、オンラインで実現するショッピングアプリ。商品を選び、割引価格での購入を決定後、その情報をSNSでシェア。その後友人や家族など、1人以上が同商品の購入を決めると「シェア買い」が成立し、定価から割引された価格で商品を手に入れられる(商品により割引率は異なる)。

またコロナ禍においてカウシェは、商品の売り先を失った事業者の販売拡大をサポートすべく、緊急事態宣言に合わせ、事業者への手数料を無料にするプロジェクトを実施。都心部だけではなく全国の事業者支援を見据えて、地方自治体と連携を行うなど、様々な取り組みを行ってきたという。その結果、「カウシェ」を利用する事業者数は、2020年9月のサービスリリース時と比べ、2021年10月には約8倍に拡大、また事業者ごとの平均売上も同比約4倍、流通取引総額(GMV)も約33倍へと伸長したそうだ。

Firefoxモバイルブラウザーがアップデート、最近のタスクにすばやくアクセス可能に

モバイルブラウザーFirefox(ファイヤーフォックス)は現地時間11月2日、iOSおよびAndroid向けの最新版をリリースし、開いているタブの数が多すぎることによる煩雑さや、前回アプリを閉じたときに中断した場所に戻る必要があることなど、よくある問題への対応を目的としたアップデートを行った。今回の変更は、モバイルウェブへの再アクセスポイントとして機能するようになる新しいホームページを導入したFirefox Betaの一環として行われたものだと、ブラウザの製造元であるMozilla(モジラ)は述べた。

この変更により、Firefox は、Apple(アップル)のSafari(サファリ)や Google(グーグル)のChrome(クローム)のようなモバイルデバイスのデフォルトオプションとの競争力を高めることができる。他のApple アプリから送られてきたものを共有するSafariの新しい「あなたと共有」や、Chrome の最近のタブや検索履歴に簡単にアクセスできるボタンのように、Firefoxの「新しいタブ」ページは、ブックマークやリーディングリストなどのアイテムをユーザーに提供している。

しかし、Firefoxの場合は、単なるボタンではなく、ホームページ上で直接スクロールできるリストとして表示されるので、読んでいた記事や最近の検索結果などの項目により簡単に戻ることができる。

例えば「Jump back in(ジャンプバックイン)」セクションでは、タブの混乱の原因になりがちなユーザーが読みかけの記事をすぐに見つけることができるようになる。これらは、ホームページに直接表示される最新のヘッドラインの隣に「すべて表示」リンクをクリックするとリストで表示される。

最近保存したブックマークは、デスクトップのFirefoxから同期したものも含めて、ホームページ上に表示されるようになった。また、最近の検索結果は、トピックごとにグループ化されてホームページに表示される。Mozillaによると、これらの検索結果は最大14日間保存されるので、検索履歴を調べなくても、オンラインリサーチに簡単に戻ることができる。

大きな変更点の1つは、モバイルブラウザを使用する際の最も一般的な問題の1つであるタブの乱立に対処することだ。ユーザーは、参照する必要のあるタブや読み終える必要のあるタブを閉じずに開いたままにすることがよくある。しかし、これでは多くのタブが開いたままになり、実際に開いているタブを移動させる必要が生じたときに、混乱することになる。

Firefoxはこの問題に対処するため、14日間再訪していない非アクティブなタブを保存し、開いているタブが多すぎることによる視覚的な混乱やストレスを軽減するために、これらのタブを表示から削除する新機能を導入した。残念ながら、この機能は発売時にはAndroidベータ版でしか利用できない。

また、同社は「あとで読む」のためのアプリPocket(ポケット)との提携を拡大し、ユーザーが自分の興味に合ったストーリーでホームページをカスタマイズできるようにする。これまでもFirefoxでは、新着記事をPocketからAndroidユーザーに提供していたが、ユーザーからのどのような記事を表示するか、もっとカスタマイズしたいという声が寄せられていた。この機能も当面はAndroidのみの提供となる。

その他の変更点としては、新たに18種類以上のテーマを選択できるようになったこと、Site Isolation(サイトアイソレーション)と呼ばれるセキュリティアーキテクチャの導入によりサイドチャネル攻撃への対応が強化されたことなどが挙げられる。

今回の変更は、5月に導入された大規模なデザイン変更にさらに磨きをかけたものだ。このデザイン変更は、ごちゃごちゃしたメニューをなくし、ナビゲーションを簡素化し、新しいタブデザイン、iOSアプリの更新、プライバシー機能の強化など、ブラウジング体験をシンプルにすることを目的としている。その際、Mozillaは、年内にさらなるアップデートを行うことを約束した。

また、Mozillaは2021年10月、プライバシーを重視したブラウザFirefox Focus(ファイヤーフォックスフォーカス)を刷新し、ユーザーが頻繁にアクセスするサイトにすばやくアクセスできる方法を盛り込んだ。

新しいブラウザのアップデート版であるFirefox 94は、現在、Google Playストアで「Firefox Beta」と検索することで入手でき、Android 5.0以上で動作する。iOSでは、ユーザーはTestFlightを通じてベータ版をダウンロードする必要があり、iOS 13以上に対応している。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Yuta Kaminishi)

マイクロソフトがアプリを横断して使えるコラボツール「Microsoft Loop」を発表

Microsoft(マイクロソフト)は、Google(グーグル)が2009年に立ち上げて2010年に早々と閉鎖し、運の尽きたリアルタイムメッセージング&コラボレーションプラットフォームGoogle Waveを復活させる。

この再登場は予想すべきだったかもしれない。2019年にMicrosoftはFluid Frameworkを発表した(Fluentデザインシステムと混同しないで欲しい)。ここでのアイデアは、ビジネス文書の性質と、開発者がリアルタイムアプリケーションを構築する方法を再発明しようとするものに他ならなかった。同社は2020年にFluidをオープンソース化し、自社のOfficeアプリケーションのいくつかに組み込みを開始した。そして米国時間11月2日、Igniteカンファレンスにおいて、Fluidをベースにしたまったく新しい製品を発表した。Microsoft Loopだ。

Loopは、Fluidフレームワークを採用した新しいアプリケーションであり、新しいコンセプトでもある。Fluidフレームワークは、リアルタイム編集ベースのアプリケーションを作成するために、開発者が自由に組み合わせられる柔軟なコンポーネントを提供し、ユーザーが文書でコラボするための新しい体験を創り出す。リアルタイムのコラボに加えて、開発者用のフレームワークとプロトコルを提供することで、Waveをあらゆる場所で利用できるようにするというのが、Google Waveの約束でもあった。

そしてあなたはこういうかもしれない。Teamsのためのものではないのか? なぜこれがTeamsに組み込まれていないのか、と。その通りだ。それらの取り組みは進行中だ。しかしLoopアプリでもある。このアプリは、Microsoftがいうところの「パワフルでフレキシブルなキャンバスと、アプリ間を自由に移動して同期を保つポータブルなコンポーネントを組み合わせたもので、チームがともに考え、計画し、創造することを可能にする」ものだ。

Loopには3つの要素がある。リスト、テーブル、ノート、タスクなどの「生産性の原子単位(atomic units of productivity)」(このフレーズを考え出した人には脱帽だ)であるLoopコンポーネント「コンポーネントを整理し、ファイルやリンク、データなどの他の有用な要素を取り込み、チームが考え、つながり、コラボするのに役立つ柔軟なキャンバス」であるLoopページ、そしてみんなが取り組んでいることを把握し、共有する目標に向けての進捗を確認できる共有スペースであるLoopワークスペースだ。

Waveにはなかったことだが、Loopの中核的な機能として、Loopはカーソルの位置をリアルタイムに追跡することができる。これはメタバースの現状を表す。カーソルを動かしているときほど、会議に参加していることをアピールできるものはない。

間もなく提供されるLoop / Fluentの新しいコンポーネントとしては、投票表(Google Waveの最初の機能だ)とステータストラッカーがある。

Google Waveは明らかに時代の先を行っていた。

画像クレジット:Microsoft

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nariko Mizoguchi

フラーが次世代の筑波山登山を体験できるアプリ「Mount Tsukuba」公開、茨城県・警察・消防・地元企業など協力

フラーが次世代の筑波山登山を体験できるアプリ「Mount Tsukuba」公開、茨城県・警察・消防・地元企業など協力
アプリやウェブの開発などデジタル支援を展開するフラーは11月1日、筑波山の登山がデジタルでもっと安全に楽しくなるアプリ「Mount Tsukuba」の開発を発表した。これは、茨城県「DXイノベーション推進プロジェクト」の一環として、警察・消防・地元企業・研究教育機関などの協力を得て作られた。11月1日よりApp Storeで公開されている(iOSのみ)。

Mount Tsukubaの主な機能は3つ。1つは、スマートフォンのカメラを通して、拡張現実でオリジナルデザインの旗(ARフラグ)を立てられるというもの。登頂時の記念撮影がより楽しくなる。2つ目は、登山届けがアプリから行えるというもの。山岳遭難時に重要となる登山届が、簡単に提出できる。そして3つ目は、ビーコンと連動した登山体験。登山道10コースと山頂2カ所に設置されているビーコンを検知すると、オリジナル缶バッジやアプリ内チケットがもらえるというもの。グッズの収集を楽しみに加えることで、登山者が分散しコースの混雑解消に役立つ上に、再来訪の動機にもなるということだ。このほか、アプリのダウンロードでオリジナルボトル水や温泉割引チケットなどのオマケももらえる。アプリの機能は、今後もアップデートで拡張するという。

このアプリ開発には、アプリとコンテンツの開発を行ったフラーのほか、プロジェクトの統括を行ったARC地域研究センター、アドバイシングとアートディレクションを行った筑波大学(原忠信准教授)、アプリと連動した筑波山のサインおよびトレイル整備を担当したつくばトレイルガーディアンズ、コンテンツ開発と実証実験、広報などを行ったタバーンが参加している。

WhatsAppがビジネスAPIをクラウド化して導入を促進

WhatsApp(ワッツアップ)は米国時間11月1日より、新しいクラウドベースのWhatsApp Business API(ワッツアップビジネスAPI)のベータテストを開始する。同APIは親会社Facebook(フェイスブック)のインフラを利用する。クラウドへの移行に伴い、APIとの統合のためのセットアップ時間がこれまでの数週間からわずか数分に短縮されるため、企業はより迅速にWhatsAppのAPIプラットフォームに移行し、メッセージの受信をオプトインした顧客とのコミュニケーションを図ることができるという。

同社はここ数年、ビジネスAPIの開発を着実に進めてきた。これは無料のメッセージングアプリであるWhatsAppが、サービスから収益を得るための重要な手段の1つとするためだ。現在、企業はメッセージごとにWhatsAppに料金を支払っていて、その料金はメッセージの送信数や地域に応じて異なっている。現在は、Vodafone、Coppel、Sears Mexico、BMW、KLM Royal Dutch Airlines、Iberia Airlines、Itau Brazil、iFood、Bank Mandiriなどを含む何万もの大企業が、既存の(非クラウドベースの)APIを採用している。

この旧バージョンのAPIは今後もサポートされ、現時点では新しいクラウドベースのバージョンへの移行を強制する計画はない。

一般的にWhatsApp Business APIを利用する企業は、Zendesk(ゼンデスク)やTwilio(トゥイリオ)などのAPIを顧客のバックエンドシステムに統合する作業をサポートするソリューションプロバイダーと連携する。このようなケースでは、WhatsAppは企業のカスタマーコミュニケーション戦略の一部に過ぎないことが多い。また顧客とのコミュニケーションを、SMSやその他のメッセージングアプリ、電子メールなど、他のチャネルに誘導することもある。しかし、こうしたAPI統合作業は、これまでは数週間、場合によっては1カ月もの時間を要していた。

COVID以前から始まっていたオンラインショッピングへの移行が、パンデミックの影響で加速していることもあり、多くの企業は新しいシステムの立ち上げにそれほど時間をかけたくないと考えている。

新しいクラウドベースのAPIは、技術的な統合プロセスをより簡単に、そしてより迅速に行うことで、統合問題を解決することを目的としている。

新しいAPIのベータテストには、米国のZendesk、ブラジルのTake(テイク)、EUのMessageBird(メッセージバード)など、WhatsAppの既存のソリューションプロバイダーパートナー数十社が参加する予定だ。

ZendeskのMike Gozzo(マイク・ゴゾ)製品担当副社長は声明の中で「クラウドAPIは、私たちのようなサービスプロバイダーとお客様の双方にとって、WhatsAppを使用する際の複雑さを軽減するための大きな一歩となります」と述べている。そして「WhatsApp Clientのホスティングを気にする必要がなくなることで、APIを介して利用可能になる多くのリッチな機能のサポートに集中できるようになります」と付け加えている。

今回の発表は、人びとと企業とつながる方法が変わりつつある中で行われた。WhatsAppによれば、現在毎日1億7500万人以上のユーザーがビジネスメッセージを送信しており、この傾向は特にインド、ブラジル、インドネシアなどの米国以外の市場で拡大しているという。WhatsAppは顧客から、電話システムを運用したり保留にしたりしなければならない1-800番号(米国のフリーダイヤル)を使う代わりに、メッセージングに移行したいという要望を受けている。電話システムは煩わしいものだし、コールセンターは、企業にとっても運営コストがかかる。

WhatsAppが2020年実施した独自の調査によると、ユーザーは通話よりもメッセージングを好む傾向にある。その結果、最大規模の国々のユーザーの75%が、メッセージングを通じて企業とコミュニケーションを取れるようにしたいと答えていることが判明した。また、68%の人が、メッセージで連絡が取れた企業と取引したり、購入したりする可能性の方が「より高い」と答えている。

WhatsAppは、別の場所でもこの傾向を利用している。大きな収益源となっているのは、FacebookのニュースフィードやInstagram(インスタグラム)に表示される、クリックチャット広告だ。これは消費者が広告上のボタンをクリックするだけでWhatsAppで企業にメッセージを送ることができるというものだ。

その一方で、同社はWhatsApp Business Appを使って小規模ビジネス市場にも対応しており、パパママショップのような地元の小さなお店がオンラインを使って顧客とやり取りできるようにしている。2018年にローンチされたあと、現在では全世界で5000万人のユーザーを抱えるまでに成長している。

本日(米国時間11月1日)のクラウドAPIの公開に先立ち、WhatsAppは他のAPIの改善にも取り組んでいた。たとえば企業が受信したメッセージに対してより迅速に対応できるようにしたり、顧客が指定した場合に在庫切れなどのさまざまな種類のメッセージをサポートしたりしている(これまでのWhatsAppのAPIは、たとえばフライトの搭乗券を送信するような「タイムリー」な通知に焦点を当てていた)。

企業からの連絡を受けた顧客には、会話の先頭に情報メッセージが表示され、(完全に暗号化されている)友人や家族とのメッセージとは異なるものであることが伝えられるとのことだ。また顧客は、企業のサポート内容に応じて、さまざまなやりかたで通信を終了させることもできる。企業からの連絡を止めるためにメッセージを送ったり、変更のために会社のウェブサイトにアクセスするだけで、オプトアウトすることができるだろう。だが最も簡単な方法は、アプリ内で企業をただブロックすることだろう。

クラウドAPIは、米国時間11月1日から限定的なベータ版が開始され、厳選されたパートナーが数日のうちに最初の顧客を迎え入れる予定だ。

その一方で、WhatsAppは2022年から、他のソリューションプロバイダーや企業に直接APIを開放する予定だ。

画像クレジット:WhatsApp

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(文:Sarah Perez、翻訳:sako)

モバイルアプリを直接スマホ上で作成できるiOSネイティブ製品デザインツール「Play」

モバイル環境向けのデザインを行う際、従来の方法では、開発者が1つのプログラムでデザインを行い、別のプログラムでプロトタイプを作成し、さらに別のツールでコラボレーションを行うというように、多くのやりとりが必要だった。

新しいスタートアップの「Play」は、自らを「スマートフォンから直接作成、イテレーション、コラボレーションすることを可能にする唯一のiOSネイティブ製品デザインツール」と位置づけている。従来のソフトウェアでは、同じようなことをするために回避策やハックを要求されると、同社の共同設立者で共同CEOのDan LaCivita(ダン・ラチヴィータ)氏は説明する。

「これは、携帯電話を主な入力デバイスとして使用する唯一のデザインツールです」と同氏はTechCrunchに語った。「スマホからデザイン、プロトタイプ、コラボレーションを行うことができ、プロダクトデザイナーが使用しているメディア上で作成中のデザインを体験する方法を提供する唯一のものです。基本的にコーディングをしなくても、Apple(アップル)のサンドボックスで遊ぶことができます」。

ユーザーは、ゼロから作成するか、Figmaなどのツールからデザインをインポートするかを選ぶことができ、ボタン、カード、ビデオプレーヤーなどの一般的なUIコンポーネントには「Play Library」を、完全に機能するページを素早くカスタマイズして作成するには「Page Layouts」を使用する。また、ライブマップ、AR(拡張現実)、カメラ機能など、iOSのネイティブ機能も利用できる。

ラチヴィータ氏は2019年に、Eric Eng(エリック・エン)氏、Joon Park(ジュン・パーク)氏、Michael Ferdman(マイケル・フェルドマン)氏と一緒に会社を立ち上げた。彼らは全員、前身のFirstbornというスタートアップで一緒に働き、ウェブサイトやモバイル製品を作っていた。

「私たちは、すべてのペインポイント(問題点)を身をもって経験しました」 とラチヴィータ氏はいう。「ジュン(・パーク)が『もっと良い方法があるはずだ』と言ったんです。我々は従来のグラフィックデザインソフトウェアをベースにして開発を続けているのだから、別のツールではなく、入力デバイスとして携帯電話のような別のアプローチが必要なんだ、と」。

PlayはApp Storeで公開されているが、現在はプライベートベータ版で、2万5000人以上がウェイティングリストに登録している。今後数カ月から来年にかけてユーザーを追加していく予定だ。今はフリーミアムモデルだが、2022年にはいくつか異なる価格帯を提供する予定とのこと。

米国時間11月1日、同社はFirst Round Capitalが主導し、Oceans Venturesを含む910万ドル(約10億4000万円)の資金調達を発表した。本ラウンドは、2021年初めと2020年のシードラウンドを組み合わせたものだ。

今回の資金調達は、チームの規模拡大と、2週間前に発表したPlay for iPadのような、顧客からの直接の要望による新製品の開発継続のために使用される。また、最近では、ユーザーが互いにコラボレーションするためのTeams機能も発表した。

創業者たちがFirst Round CapitalのTodd Jackson(トッド・ジャクソン)氏と最初に会ったとき、彼らは資金調達を考えていなかったが「意気投合して関係がうまくいった」とラチヴィータ氏はいう。ベンチャーキャピタリストとしてではなく、チームメイトとして協力してくれるパートナーを見つけたのだ。

ジャクソン氏は、Twitter(ツイッター)でPlayを見つけて興味を持ったという。同氏は、Dropbox(ドロップボックス)やFacebook(フェイスブック)で、同じようなユーザビリティの問題を抱えるデザイナーたちと仕事をしていた。

彼は、デスクトップでしか利用できないツールで長い時間を費やしデザインを構築したり、アニメーションを追加したりしていた友人らにPlayを送った。

「スマートフォンでここまでできるとは思いませんでした」と彼はいう。「1つのことをするのに、1つのデザインツールしかないというメンタルモデルで我々はものを考えがちです。よく、モバイル製品のアイデアの多くは、誰かと共有できないために日の目を見ないという話をします。Playがあれば、そのような状況に陥ることはありません」。

画像クレジット:Play

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(文:Christine Hall、翻訳:Aya Nakazato)

スマホで撮影した数枚の写真で簡単に3Dモデルが作れるLumaが4.9億円調達

おそらくオンラインショッピングで、商品を回転させて、全方向から見ることができる写真を見たことがあると思う。こうしたものは、製品をあらゆる角度から撮影した写真を何枚も用意して、それらをアニメーションのように再生するのが一般的だ。Apple(アップル)のAR(拡張現実)およびコンピュータビジョングループを離れたエンジニアたちによって創業されたLuma(ルマ)は、これらの課題を解決しようとしている。


同社が開発した新しいニューラルレンダリング技術は、少ない枚数の写真を撮影するだけで、製品のフォトリアリスティックな3Dモデルを生成し、陰影をつけてレンダリングすることを可能にした。その目標は、ハイエンドなeコマースアプリケーション向けの商品写真撮影を大幅にスピードアップするだけでなく、あらゆる角度から商品を見せることでユーザー体験を向上させることだ。そしてすばらしいことに、撮影された画像は実際に3Dとして解釈されたものであるため、どの角度からでもレンダリングできるだけでなく、わずかに異なる角度からの2つのビューポートを使って3Dで見ることも可能だ。言い換えれば、検討中の製品の3D画像をVRヘッドセットで見ることができるということなのだ。

この分野をずっと追い続けてきた人なら、民生用のカメラと初歩的な写真測量技術を使って3D表現を行おうとするスタートアップは繰り返し見てきたことだろう。はっきりいってしまえば、これまでのそうした技術は決してすばらしいものとは言えなかった。だが新しい技術には新しいチャンスがあり、それがLumaの狙う場所なのだ。

Lumaの技術が実際に適用されたデモ(画像クレジット:Luma)

Luma AIの創始者であるAmit Jain(アミット・ジェイン)氏は「何が今までと違うのか、そしてなぜ今このようなことをしているのかを説明するなら、ニューラルレンダリングの考え方が台頭してきたということです。従来、写真測量で行われてきたのは、何枚かの画像を撮影し、それを長時間の処理を経ることで点群を得て、そこから3D構造を再構築するというものでした。最終的にはメッシュを作成することになりますが、高品質な3D画像を得るためには、ノイズの多い実在のデータから高品質なメッシュを作成できる必要があります。この問題は今でも根本的に解決されていないのです」と説明し、この課題がが業界では「インバースレンダリング」と呼ばれていると指摘した。同社は、この課題に別の角度からアプローチすることにした。

ジェイン氏は「点群から正確なメッシュを得ることはできないという前提の下に、別のアプローチをとることにしたのです。オブジェクトの形状に関する完璧なデータ、つまりレンダリング方程式があれば、PBR(Physics Based Rendering、フィジカルベースドレンダリング)を行うことができます。しかし問題は、スタートが写真であるため、そのようなレンダリングを行うには十分なデータがないということです。そこで、新しい方法を考えたのです。クルマの写真を30枚撮って、そのうちの20枚をニューラルネットワークに見せるのです」と説明する。残りの10枚の写真は「チェックサム」、つまり方程式の答として使われる。ニューラルネットワークが、20枚のオリジナル画像を使って、最後の10枚の画像がどのように見えるかを予測できれば、アルゴリズムは、撮影しようとしているアイテムに対するかなり優れた3D表現を作成できたことになる。

非常にマニアックな写真の話だが、かなり大規模な実用的なアプリケーションが作られている。同社の思う通りにもし進んだならば、eコマースストアで物理的な商品を閲覧する方法は、これまでとは違ったものになるだろう。商品写真を、軸の周りに回転させるだけでなく、撮影されていない角度も含めて、あらゆる角度からズームやバーチャルな動きを取り込むことができる。

上の2枚が写真。下の画像はこれらを元にして作られたLumaレンダリングによる3Dモデル(画像クレジット:Luma)

ジェイン氏は「誰もが製品を3Dで見せたいと思っていますが、問題は3Dアーティストに参加してもらって、スキャンしたものに調整を加えてもらう必要があるということです。その分、コストが大幅にアップします」という。そして、これでは3Dレンダリングができるのは、ハイエンドのプレミアム製品に限られてしまうとジェイン氏は主張する。Lumaの技術は、この状況を変えることを約束している。なにしろ3Dモデルのキャプチャーと表示にかかるコストを、1つのモデルごとに数百ドル〜数千ドル(数万〜数十万円)ではなく、数十ドル(数千円)程度に抑えることができるようになるからだ。

Lumaの共同設立者であるAmit Jain(アミット・ジェイン)CEOとAlberto Taiuti(アルベルト・タユティ)CTO(画像クレジット:Luma)

同社はYouTubeのような埋め込み型のプレイヤーを開発し、小売店が商品ページに立体映像を簡単に埋め込めるようにする予定だ。

Matrix Partners、South Park Commons、Amplify Partners、RFCのAndreas Klinger(アンドレアス・クリンガー)氏、Context Ventures、そして多くのエンジェル投資家たちが、このビジョンを受け入れ、430万ドル(約4億9000万円)の資金を提供した。ラウンドを主導したのはMatrix Partnersだ。

MatrixのゼネラルパートナーであるAntonio Rodriguez(アントニオ・ロドリゲス)氏は「次の偉大なコンピューティングパラダイムが3Dに支えられていくことは、よほど事情に通じていない人以外なら誰でも知っていることです。しかし、来るべき3D環境に人を増やしていくためには、手間のかかるオーダーメイドの方法ではスケールアップできないことをきちんと理解しているひとは、Lumaの外にはほとんどいません。写真を撮って送信するのと同じように、私の作品を3Dにする手段も簡単でなければならないのです!」。

その技術がどのようなものかが、以下のビデオで紹介されている。

画像クレジット:Luma

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:sako)

非テック企業のAIアプリ構築を支援するプラットフォームPeakが約82億円調達

人工知能(AI)はますます多くのエンタープライズアプリケーションに組み込まれてきている。そうした中、企業、特に非テック企業がよりカスタマイズされたAI意思決定ツールを構築するのを支援するプラットフォームを手がけるスタートアップが、大幅な成長資金を獲得した。英国・マンチェスターに拠点を置き「Decision Intelligence」プラットフォームを構築しているPeak AIは、7500万ドル(約82億円)の資金を調達した。同社は今後もプラットフォームの構築を続け、新たな市場への進出を図り、来四半期には約200人の新規雇用を行うことを予定している。

シリーズCにはかなりビッグネームの投資家が参加している。SoftBank Vision Fund 2が主導しており、これまでの支援者であるOxx、MMC Ventures、Praetura Ventures、Areteもこれに名を連ねている。このグループはPeakの2100万ドル(約23億円)のシリーズBに参加し、同ラウンドは2021年の2月にクローズした。同社の調達総額は1億1900万ドル(約131億円)に達している。評価額については公表していない。

PeakのCEOであるRichard Potter(リチャード・ポッター)氏は、資金調達の迅速なフォローアップはインバウンドの関心に基づいており、同社が行ってきたことはその一端につながっていると語る。

PeakのいわゆるDecision Intelligenceプラットフォームは、小売業者、ブランド、製造業者などが在庫レベルを監視し、パーソナライズされた顧客エクスペリエンスを構築するために使用している。また、より効率的に機能するある程度の自動化機能を備えたその他のプロセスにも使用されており、異なるファクターを相互に測定してよりインテリジェントなインサイトを提供する洗練性も求められる。現在の顧客リストにはNike、Pepsico、KFC、Molson Coors、Marshalls、Asos、Speedyなどが名を連ね、過去12カ月で売上は2倍以上になった。

Peakは、次のようなことに取り組んでいる。AIは、現代の多くの先進的ITアプリケーションやビジネスプロセスの基盤となっているが、もしあなたが組織であり、特にテクノロジーに依存していない組織であるなら、AIへのアクセスとその利用方法は必ずしも自分に合わせたものではなく、他者が構築したアプリケーションによってもたらされることになる。よりカスタマイズされたソリューションを構築するためのコストは往々にして非常に高くつく。Peakによると、同社のツールを使用するユーザーの平均収益は5%増加し、広告費は2倍になり、サプライチェーンコストは5%、在庫保有(企業にとっては大きなコストだ)は12%減少したという。

Peakのプラットフォームは、その問題を解決するための「ノーコード」のアプローチではないことを指摘しておかなければならない。少なくとも今のところは、そのような組織のデータサイエンティストやエンジニアに向けたものであり、彼らが、AIツールから恩恵を享受できるかもしれないオペレーション内の各種プロセスを容易に特定し、それらを比較的少ない労力で構築できるようにすることを目的としている。

また、重要な役割を果たすさまざまな市場ファクターも存在している。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を例にとると、企業における「デジタルトランスフォーメーション」の拡大と、消費者需要の高まりやサプライチェーンの逼迫に対応するためのeコマースプロセスの効率化の両方で、企業はよりオープンになり、自動化をインテリジェントに改善するためのツールへの投資に熱心になっている。

これはPeak AIの収益増加とも相まって、SoftBankが興味を示していることの一部だ。この投資家はしばらく前からAIに注目しており、そのような投資先企業に戦略的サービスを提供することを目的として、自社の投資ポートフォリオの1セクションを構築している。

これにはeコマースやその他の消費者向けビジネスが含まれ、Peakの顧客ベースの主要セグメントの1つを構成している。

特に、この分野に特化した最近の投資の1つが2021年に入ってマンチェスターでも行われており、D2Cビジネスのためのソフトウェアを開発し運営するThe Hut Groupの7億3000万(約803億円)ドルの株式を取得している(将来的にはさらに16億ドル[約1760億円]を取得する可能性もある)。

SoftBank Investment Advisersのシニア投資家Max Ohrstrand(マックス・オーストランド)氏は声明で次のように述べている。「私たちは、将来の企業がバリューチェーン全体を最適化できる集中型AIソフトウェアプラットフォーム上で運営されるという、共通のビジョンを持つパートナーを得ています。これを実現するには新しいタイプのプラットフォームが必要であり、リチャード(・ポッター)氏とその優秀なチームがPeakで構築したものに非常に感銘を受けています。彼らがDecision Intelligenceにおけるカテゴリー定義のグローバルリーダーになるのを支援できることをとても喜ばしく思っています」。

SoftBankの2つのマンチェスター関連会社が協力するかどうかは明らかではないが、そうなれば興味深いシナジー効果が期待できるし、何よりもSoftBankが関心を持っている分野の1つを強調するものになるだろう。

長期的に、Peakがどのように進化し、すでに顧客となっている組織のより幅広いユーザー層にプラットフォームを拡大していくのか、またその展開がどうなるのかを見るのは興味深い。

ポッター氏は、短期的にも中期的にも「技術的な傾向のある人々」が同社製品のユーザーになる可能性が最も高いと考えているという。例えば、マーケティングマネージャーのような人たちはそうしたことをしないだろうと思うかもしれないが、多くのソフトウェアツールの一般的な傾向はまさに、データサイエンティストが使っているのと同じツールのバージョンを構築し、技術に詳しくない人たちが、自分の使いたいものを作るプロセスに関与できるようにすることにある。

「データパイプラインを流す能力を民主化し、それらをアプリケーションで動作するように最適化できることが重要だと考えています」とポッター氏は付け加えた。

画像クレジット:

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

人工知能と機械学習を使ってブランドと顧客の距離を縮めるSocial Chatが約6.8億円調達

ブランドがソーシャルメディアやその他のサードパーティを通じて製品を販売する場合、それらのプラットフォーム上で広告を出すために数百万ドル(数億円)を費やすことがよくあるが、実際の顧客が誰であるかについてはほとんど、あるいはまったく知ることはない。ソーシャルコマースのスタートアップであるSocial Chat(ソーシャル・チャット)は、この状況を変えようとしている。

Social Chatは、Wish(ウィッシュ)のグロース部門の責任者であったFrost Li(フロスト・リー)氏が機械学習と人工知能を活用して、パーソナライゼーション、レコメンデーション、ライブ・カスタマー・サービスを実現するソフトウェアを開発するために5月に設立した会社だ。これにより、ソフトウェアで、ブランドが大規模なエンジニアリングチームに頼ることなく、失われたソーシャルエンゲージメントを収益や顧客獲得につなげることを可能にする。

「Wishでは、適切なショッピング体験を提供するためには、絶対的なパーソナライゼーションが必要であることを学びました。それを機械学習のエンジニアが行っていたのですが、Wishを辞めてブランドにアドバイスをしていると、Wishで行っていたことが珍しいことだとわかりました。人が手作業でやっていたので、結果的にパーソナライゼーションがあまりできなかったのです」とリー氏はTechCrunchに語っている。

彼女は、店頭でお気に入りの販売員と接するときのような顧客体験を、デジタルの世界でも再現し、ソーシャルイベントの中で消費者が購入や取引を行えるようにすることを目指している。

リー氏は、ソーシャルコマースはすべての店舗の標準となるべきだと考えており、それは近い将来実現するかもしれない。2021年初め、Grand View Research(グランド・ビュー・リサーチ)は、世界のソーシャルコマース市場は、現在から28%以上の成長を遂げ、2028年には3.4兆ドル(約387兆円)に達すると予測している。

「現在、オンラインショッピングは非常に取引という色の強いものですが、私たちは、お客様とのソーシャルな交流を通じて、長期的な関係を構築するお手伝いをしています」と彼女は付け加えた。

Social Chatは、eコマースのカスタマーエンゲージメントおよび収益ソフトウェアの提供を開始するにあたり、Race Capital(レース・キャピタル)とGradient Ventures(グラディエント・ベンチャーズ)が共同で600万ドル(約6億8300万円)のシードラウンドを実施したことを発表した。このシードラウンドには、Twitch(トゥイッチ)の共同創業者であるKevin Lin(ケビン・リン)氏、Agora.io(アゴラ)の創業者であるTony Zhao(トニー・チャオ)氏、Lyft(リフト)の元チーフプロダクトオフィサーであるRan Makavy(ラン・マカヴィ)氏、AfterPay(アフターペイ)のエンゲージメント担当グローバルヘッドであるAlanna Gregory(アラーナ・グレゴリー)氏、Wishのエンジニアリング担当バイスプレジデントであるJack Xie(ジャック・シー)氏が参加した。

Social Chatチーム、左からRichard Lin(リチャード・リン)、Pearl Tsang(パール・ツァン)、フロスト・リー、Michael Chen(マイケル・チェン)の各氏。(画像クレジット:Social Chat)

Race CapitalのパートナーであるEdith Yeung(エディス・イェン)氏は、未来のショッピングはソーシャル化すると述べている。子どもたちはテレビを見る機会が減り、TikTok(ティックトック)を見る機会が増えているため、ブランドは視聴者を他のプラットフォームに奪われないように、データを管理する必要がある。

「フロスト氏がやっていることは、ブランドに力を与えて、顧客を自社のウェブサイトに戻し、売上につなげることです。Facebook(フェイスブック)は人々に再び信頼してもらおうとしていますが、企業は何百万ドル(数億円)ものお金を払い続けながら、自分たちの顧客が誰なのかを知らないまま、翻弄されているのです」と同氏は付け加えた。

一方、Social Chatは以前、200万ドル(約2億2700万円)を調達し、合計800万ドル(約9億1000万円)を調達しており、この資金を使って人工知能や機械学習のエンジニアを増員し、製品の提供を拡大する予定だ。

まだかなり新しい会社であり、具体的な成長指標を見るには時期尚早だが、Social ChatはすでにHTCをはじめとする10のブランドの顧客と協力しており、初期の牽引力を発揮している。

ソーシャルコマース市場が数百億ドル(数兆円)規模の市場に成長し、トラッキングの技術的な部分がなくなっていくのを見ているリー氏は、会社の規模を拡大し、ユーザーの問題を解決する機会を提供していくことになるだろう。

「私たちは、ユーザーが価値を見出すことができ、かつユーザーを維持するためにFacebookにお金を払い続ける必要がないように、人工知能を活用した差別化を図っています。Google(グーグル)がクッキーを廃止したら、とんでもないことになります。ユーザーとコミュニケーションをとるためには、ファーストパーティデータを自分たちで所有しなければならず、そうでなければ可視性を失うことになるでしょう」。と彼女はいう。

画像クレジット:Busakorn Pongparnit / Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Akihito Mizukoshi)