マイクロソフトがデータプライバシーとガバナンスサービスのBlueTalonを買収

Microsoft(マイクロソフト)は米国時間7月29日、従業員がデータにアクセスする方法のポリシーを企業が設定するのを助けるデータプライバシーとガバナンスサービスを提供するBlueTalonを買収したと発表した。このサービスは、一般的なデータ環境全体にポリシーを適応し、ポリシーとアクセスを監視するためのツールも提供する。

MicrosoftもBlueTalonも、今回の買収に関する金額は明らかにしていない。Crunchbaseによれば、今回の買収に先立ちBlueTalonは約2740万ドル(約30億円)を調達している。投資家にはBloomberg Beta、Maverick Ventures、Signia Venture Partners、Stanford’s StartX fundが含まれる。

 

MicrosoftのAzure Data担当コーポレート・バイスプレジデントのRohan Kumar(ローハン・クマール)氏は「BlueTalonを通じて獲得したIPと人材は、ビックデータ、セキュリティ、ガバナンスの頂点に独自の専門知識をもたらす」と語っている。「今回の買収によって、Azureをつうじた集中データガバナンスによってデータを適切に利用しながら、さまざまな企業がデジタルトランスフォームを向上させることができる」

当然のことながら、BlueTalonチームはAzure Data Governanceグループの一員となり、データプライバシーとガバナンスに関するMicrosoftの強化に取り組む。なお、MicrosoftはAzure向けにアクセス及びカバナンスコントロールツールを提供している。しかし、事実上すべてのビジネスがデータ中心になるにつれ、システム間で機能する一元的なアクセスコントロールの必要性は高まる一方であり、新しいデータプライバシー法はこのプロセスを容易にはしない。

BlueTalonでCEOを務めるEric Tilenius(エリック・ティレニウス)氏は、ブログ投稿「our incredible journey」にて、「顧客によりよいサービスを提供するために、さまざまな大規模クラウドプロバイダーとの提携の機会を模索する中で、Microsoftは我々に深い感銘を与えた」と述べている。「Azure Dataチームはデータガバナンスに関して独自の思慮深さと先見性を持っていた。そして、我々は彼らこそがミッションと文化の両方で最適であるとわかった。そこでMicrosoftが我々へ買収を持ちかけてきた時、我々はその機会に同意したのだ」

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

ギャバード米大統領候補が広告アカウント停止でGoogleを提訴

トゥルシー・ギャバード氏の選挙運動組織であるTulsi Now(トゥルシー・ナウ)は、Google(グーグル)が彼女の言論の自由を妨害したとして今週提訴した。2020年大統領選挙の民主党候補は、第1回候補者ディベートのあと、合計6時間にわたって選挙運動アカウントを停止されたことについてオンラインの巨人を非難した。

「私のキャンペーンに対するGoogleの差別的行動は、インターネット検索における彼らの完全な支配がいかに危険であり、公共の議論に対する巨大IT企業の影響が大きくなることがアメリカの基本理念を揺るがすものであることを如実に表すものだ」とギャバード氏がTechCrunch宛ての声明で語った。「これは言論の自由、公正な選挙、ひいてはわれわれの民主主義に対する脅威であり、私は米国のすべての国民を代表して戦うつもりだ」。

Googleによると、ギャバード議員のアカウントは「支出の急激な変化」によって自動不正防止システムが作動した結果「異常な活動」であると認定された。同議員の選挙運動は6月27~28日にかけて夜間に約6時間停止した。比較的短い時間だったが、民主党の大票田で重要な2つのディベートが行われた直後の非常に貴重な時間帯だった。

ギャバード陣営は出馬表明後、巨額の費用を検索につぎ込んできた。「今日に至るまでGoogleは、何百万人もの人たちが聞きたがっていたギャバード氏の政治発言が妨害された理由について、信用できる答えはもちろん、単純な説明すら提供していない」と同陣営は訴状に書いた。

民間企業であるGoogleは、憲法が定める言論の自由に違反する立場にない。しかしギャバード氏は、最近類似の問題についてIT企業を非難している多くの政治家と同様の行動をとった。ただし、これまでの訴えはそのほとんどが共和党陣営によるものであり、TwitterやFacebookの民主党寄りを指摘したものだった。

その後ギャバード陣営は、資金集めの強化に方針転換している。「米国の基本理念である言論の自由と公正な選挙のために戦うギャバード氏にどうかご支援を」と同陣営は訴える。「大企業は自身の行動に責任を持つべきであり、そのためにホワイトハウスはギャバード氏を必要としている」

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

海外企業の日本進出を強力サポートする、Makuake Global Plan始動

クラウドファンディングサイトとしておなじみのMakuakeは7月29日、Makuake Global Planの提供を開始した。具体的には、日本進出を考えている海外企業に、技適(技術基準適合証明、技術基準適合認定)取得のサポートや日本語でのカスタマーサポート体制の構築などを支援する。

Makuake Global Planは、主に同社の海外専門チームが対応する。同社には現在、台湾、香港、中国、韓国などのアジアや米国を中心に、現地企業と現地言語で直接やり取りできるキュレーターが在籍している。日本特有の商習慣や文化、価値観などを現地言語で共有することで、言語や文化と言った障壁を低くするのが狙いだ。

具体的には、日本市場および日本のユーザーに合わせた進め方や訴求方法、コミュニケーションの取り方などを共有し、必要に応じて翻訳者や制作会社を紹介。もちろん、希望する海外事業者については代理店との契約も仲介する。国内のMakuake製品と同様に、広報やマーケティングの担当者も付けてPR活動などをサポートしていくという。

Makuake初の海外企業プロジェクトは、2016年11月に開始したスマートフォンに装着可能な360度カメラ「Pi SOLO」。この製品は、台湾パソコン受託生産大手であるQuanta Computer(クアンタ・コンピュータ)によるプロジェクトだ。同社初の自社ブランド製品となることもあり、日本市場に参入するためまずはクラウドファンディングを活用した。Makuakeが前述のようなサポートを実施した結果、日本での一般販売も実現したという。
Makuakeではこの成功をきっかけに海外専門チームの拡充を図り、台湾Minfort(ミンフォート)の木製スピーカー「MIN7」や、同じく台湾XROUND(エックスラウンド)の小型サラウンドプロセッサー「XPUMP」、韓国welle(ウェレ)の360度スピーカー内蔵サイドテーブル「Mellow」、香港Vinpok(ヴィンポック)のワイヤレスメカニカルキーボード「Taptek」、米国MOFT(モフト)の薄型ノート PCスタンド「MOFT」などを手がけた。

Makuakeで代表取締役を務める中山亮太郎氏よると「Makuakeでは、韓国や台湾、中国・深センなどで定期的にセミナーや商談会を開催し、現地企業と関係を深めてきた」とのこと。その結果、韓国のクラウドファンディングサービス「Wadiz」、台湾を拠点とするECプラットフォーム「citiesocial」や「uDesign」との業務提携を締結。「今回Makuake Global Planを公にしたことにより、海外企業が日本に進出する際のサポートをより積極的に進めていきたい」と中山氏。これらの提携により、逆に日本企業が海外へ進出する際に、Makuakeを窓口として提携先の海外パートナーへ紹介するといった支援も進めていくそうだ。

最近のMakuakeは、資金調達のためのクラウドファンディングサイトというよりも、海外企業のテストマーケティングの場となっていることについて中山氏は「どういった目的にせよ商流を円滑にすることを目指しており、Makuakeが海外企業が日本に参入する際の足がかりになるように支援したい」と語る。

有力な海外企業についてはすでに日本の代理店が付いているのでは?という問いに中山氏は「直輸入で入ってきている製品はありますが、日本のユーザーが知らない企業やプロダクトはまだまだある」とのこと。前述のように、言語や商習慣の壁によってそもそも日本にアプローチできない企業のほうが多いそうで、そういった企業を現地言語を話せるMakuakeのキュレーターがピックアップしていくそうだ。

ちなみに海外企業からの問い合わせについてはハードウェア関連が多いとのこと。「中国や韓国の企業は米国進出よりも、世界第3位の市場である日本への進出を真っ先に考えているところもある」と中山氏。アジアに中国を中心にはさまざまなガジェットを開発・販売している企業があるが、個人で掘り出し物を見つけるのはなかなか難しい。Makuake Global Planが言語と商習慣の壁を取り除くことで、さまざまな企業のアイデア満載のプロダクトが国内で手に手軽に入る未来に期待しよう。

noteがTypeScript×WebGL活用の高速コミックビューア開発、「キャプテン翼」サイトが採用

文章や写真、イラスト、音楽、映像などを手軽に投稿できるプラットフォームであるnoteを開発・運用しているピースオブケイクは7月28日、高速なページ送りと表示を実現したコミックビューアを発表した。第1弾として8月31日までの期間限定で「キャプテン翼公式サイト」で「小学生編」の全話無料公開に採用されている。同社によると、今後一定の実証期間を経て2019年中にnote上で公開予定とのこと。また、出版社・ユーザーが利用できるように広く提供することも考えているという。

今回発表されたコミックビューアは、同社CXOを務める深津貴之氏が今年の5月上旬に原型となるビューアを作ったのがキッカケ。深津氏は、既存のコミックビューアのUXに不満を感じていたことから、TypeScriptを使った高速なビューアの開発に至ったそうだ。

その後、この原型ビューアをnoteのエンジニアである板橋毅彦氏が改良を施したうえでの一般公開となった。レンダリングにWebGLを採用したことでさらに高速化できたという。WebGLとは、JavaScript APIの一種で、2D/3Dグラフィックスをレンダリングするためのライブラリ。TypeScriptは、JavaScript互換の静的プログラミング言語だ。

レトロPCの時代を思い起こさせてくれるウェブサイト「Poolside.fm」

ここ数年、インターネットはますます複雑化するばかりだ。しかし時には、Poolside.fmを訪れてみるのも面白い。このウェブサイトは1980年代後半のデスクトップをブラウザのウィンドウに再現し、完璧なサウンドトラックと低解像度のレトロビデオが再生される、コンピューターがシンプルだった時代のタイムマシンだ。

Poolside.fm自体は新しいものではない(2014年にサイトが開設された)が、クラシックなMac OSをベースにした新しいデザインにより、さらに洗練された。これはNiek DekkerLewis KingMarty Bellといったデザイナーや開発者のクループによるプロダクトで、この新鮮な外観はテーマを変えてパーソナライズすることができる。

「オーディオ・プレーヤー・アプリ」はいくつかの異なるステーションが用意されており、より活用したい場合にはアカウントを登録して自分のプレイリストに曲を保存することができる。また、アカウントがなくても、3つのステーション(Poolside.fm、Hangover Club、Tokyo Disco)のお気に入りの曲をリンク経由で友達と共有することもできる。

つまり、仕事用のタブのなかに紛れ込ませ、バックグラウンドのサウンドトラックに最適なのが、このPoolside.fmなのだ。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

WhatsAppの世界最大のマーケットであるインドのユーザー数は4億人

インスタントメッセージアプリのWhatsAppが今日明らかにしたところによると、同アプリにとって最大のマーケットであるインドのユーザーが4億人という大台に乗った。

影響力のあるインドのシンクタンクのNITI AayogでCEOを務めるAmitabh Kant(アミターブ・カント)氏が7月25日に、ニューデリーで開かれたWhatsApp主催の記者会見で新たな統計を明らかにした。WhatsAppの広報は、インドで4億人超もの月間アクティブユーザーがいることを認めた。

2年以上前に、WhatsAppはインドでユーザーが2億人に達したと明らかにしていた。WhatsApp(Facebook)はそれ以来、インドにおける具体的なユーザー数を公開していなかった。

今回の数字で、インドにおいて優勢であることをFacebookは再確認したはずだ。インドではほぼすべてのスマホユーザーがWhatsAppを使っていることになる。調査会社のCounterpointによると、インドには4億5000万ものスマホユーザーがいる(一部の調査会社は若干少なく見積もっている)。

WhatsAppがフィーチャーフォン向けのモバイルオペレーティングシステムのKaiOSをサポートしていることは指摘するに値するだろう。インドではこれまでにKaiOSで動く何百万ものJioPhone端末が出荷された。加えて、複数の業界予測によるとインターネットユーザーは5億人だ。

WhatsAppがインドでユビキタスなものになるにつれ、サービスは急速的にさらなるニーズに応えるものになっていて、ソーシャルコマースアプリのMeeshoのようなビジネスがWhatsApp上で構築された。Facebookは最近Meeshoに出資し、これはFacebookにとってインドのスタートアップへの初の投資となった。そしてもちろんWhatsAppはインドで誤った情報を拡散したとして困った事態にも陥っている。

ByteDance(バイトダンス)や他の企業がインドで積極的に事業を拡大するにつれ、Facebookのインドにおけるこれまでの優勢はここ数カ月脅かされている。インドで1億2000万人ものユーザーを獲得しているByteDanceのTikTokはFacebookの最大のライバルだとされている。

WhatsAppの広報はまた、WhatsAppにとってインドが依然として最大のマーケットであるとTechCrunchに対し語った。2017年にFacebookはインドにユーザー2億5000万人を抱えていると話していた。この数字は数年間アップデートされていない。

世界で約15億人もの月間アクティブユーザーを抱えるWhatsAppは、インドでは大きな競争相手はいない。この国で競争相手になりそうなのは、Facebookが展開する他のプラットフォームであるMessengerと、デイリーアクティブユーザーが数百万人のHikeだ。いくつかのニュースプラットフォームやエンターテイメントサービスなどを手がけるインドのインターネット複合企業Times Internetは毎月インドで4億5000万人ものアクティブユーザーがいるとしている。

前述の記者会見でWhatsAppのグローバル責任者のWill Cathcart(ウィル・カスカート)氏は、WhatsAppが支払いサービスのWhatsApp Payを全ユーザー向けに年末までに展開する計画だと述べた。これについてはTechCrunchも以前取り上げている。

増加の一途をたどっているインドの支払いサービスの分野への参入は、Google  Pay、FlipkartのPhonePe、そしてPaytmとの間に緊張を生むことになるかもしれない。Facebookは現在のところ暗号通貨ウォレットCalibraをインドで展開する計画はなく、WhatsApp Payの成功は重要なものだ、とTechCrunchに対し語った。

今週あった発表の中ではまた、WhatsAppは女性の起業を促進するためにNITI Aayogとタイアップすることも明らかにした。「Gateway to a billion opportunitiesとデジタルスキルトレーニングプログラムを立ち上げることで、すでに展開されている素晴らしい取り組みに光を当て、次世代の起業家を育てたい」とカスカート氏は語った。

7月24日にムンバイで開かれた会議で、カスカート氏はインドの公共政策の大学院との提携を発表した。これは公共政策、プロダクトデザイン、マネジメントの理論とプラクティスについてのインド初のプログラムで、将来、政策立案を担う人たちにプライバシーデザインのワークショップを提供する。WhatsAppは、こうしたワークショップでは「テクノロジーが社会にポジティブな影響を与えるものになるよう、プライバシーを重視したデザインの重要性やプラクティスを模索することになる」としている。

イメージクレジット: Jaap Arriens/NurPhoto / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

T-MobileとSprintの合併を司法省が承認、衛星放送のDishが携帯事業に参入へ

米国時間7月26日、米司法省はT-Mobile(Tモバイル)とSprint(スプリント)の超大型合併を承認した。この合併により加入者数で米国で第3位と第4位のモバイルキャリアが単一の会社となる。T-Mobileは260億ドル(約2兆8255億円)をSprintに支払う。

反トラスト法をクリアするため、SprintがBoost Mobileなどのプリペイド携帯事業をDish Networkに売却することが合併の条件となる。この条件に基づき、900万人のプリペイド携帯のユーザーはDishに移るが、向こう7年間はT-Mobile、Sprintの携帯網にアクセスできる。

TechCrunchはこの4月にT-MobileとSprintが合併で最終合意したが、米政府の承認が課題と報じている。T-MobileはドイツのDeutsche Telekom(ドイツテレコム)、Sprintは日本のソフトバンクのそれぞれ子会社だ。

この合併は両社間で合意をみていたが、規制当局による審査に時間がかかっていた。これはAT&T、Verizon(ベライゾン)と合併後の3社が米国の携帯電話加入者の95%を占めることになるからだ。先月、ニューヨーク州、カリフォルニア州の司法長官を代表としていくつかの州の司法省が合併を承認しないうよう求めて訴訟を起こしていた。訴状によれば、この合併は競争を制限することにより料金の上昇を招き、長期的にみて消費者の利益を脅かすからだという。ニューヨーク州司法長官のLetitia James(レティーシャ・ジェームス)氏はTechCrunchに対して次のよう述べた。

合併の条件としてT-Mobileが約束する(プリペイド携帯などの事業をDishに移管するという)措置は、そもそも市場に健全な競争がなければ無意味となる。競争を促進するという口実のもとに政府が恣意的に第4位のキャリアを創設しようとすることに我々は深刻な懸念を抱いている。これは消費者にもテクノロジーのイノベーションにとっても有害な結果をもたらす。

カリフォルニア州司法長官の広報担当者はTechCrunchに対して「我々は引き続き合併条件を検討している」と述べた。州司法省による訴訟は以前として合併を妨げるハードルになり得る。Consumer Reportsの上級政策担当弁護士であるGeorge Slover(ジョージ・スローバー)氏は次のように批判した。

報じられている合併は実績ある競争者であるSprintを消滅させ、携帯事業者としてまったく実績のない新参のDishを4位の事業者にしようとするものだ。Dishは衛星放送事業者であり、独自に携帯を構築、運用した経験はまったくないため、ゼロからのスタートなる。携帯電話事業が寡占とならないことを保証するためにDishの参入が必要とされたわけだが、同社が携帯電話事業で現在Sprintが占めている地位に到達するまでには(到達できるとしても)何年もかかるだろう。

一方、合併推進派は現在の米国の携帯電話事業はVerizon and AT&Tが圧倒的に優勢であり、合併はT-Mobile、Sprinがこれら上位2社との競争を助けるものだとしている。合併が実施されればT-Mobile(合併後はT-Mobileが存続会社)は米国において8000万人のユーザーを持つことなり、それぞれ1億人以上の契約者をもつVerizon、AT&Tに迫るサイズとなる。T-MobileとSprintはそれぞれAT&T、Verizonに対する競争力の強化と巨大な建設費を要する5Gネットワークの実現には両社の合併が必要であると主張していた。司法省はこの主張を認めたかたちだ。

司法省反トラスト法部門のトップであるMakan Delrahim(マカン・デラヒム)氏はWall Street Journalに対し次のように述べた

この合併とこれに付随する取り決めにより、現在利用されていないか、利用が著しく不十分である電波帯域を米国の消費者が必要とする高品位な5Gネットワーク建設のために活用することできるようになる。

T-Mobileは合併の意思を固めた後、実現に向けて何年も非常にアグレッシブなロビー活動を行ってきた。特にCEOのJohn Legere(ジョン・レジャー)氏を始めとする経営陣は4月以降、ワシントンDCのトランプ・インターナショナル・ホテルで滞在費など19万5000ドルを使っている。

【Japan編集部注】TechCrunchは、Verizonに属するウェブメディアだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

グローバル化を目指すTencentがクラウドサービスで日本進出

世界最大のビデオゲーム企業が、自国の外に成長の機会を求めている。メッセージングアプリWeChatのオーナーで、大ヒットしたゲームも多い中国のインターネット大手Tencent(テンセント)が7月26日に、同社の2019年の国際進出の一環としてそのクラウドサービスを日本で展開すると発表した。

この発表よりも前に、Tencent Cloudは日本の顧客にサービスを提供していたが、このように初めて公式に発表するのはグローバル展開を急ぎたいという同社の意思の表れだろう。しかもこの時期、Tencentの国内事業は、ゲームに対する中国政府の規制に圧迫されている。

逆にTencentのクラウドコンピューティング部門は今年売上の5倍増を掲げており、Tencent Cloudの副社長Da Zhiqian氏によると、日本もその重要市場のひとつだ。

調査企業IDCのデータによると、Tencentのクラウド事業はマーケットシェア11%で国内第2位だ。すなわちこの深圳の企業は、クラウドの国内マーケットシェア43%のAlibaba(アリババ)の背中を見ながら走っている。しかし中国の外ではクラウドコンピューティングは競争がなお一層熾烈で、Canalysの調査データによるとAWS、Microsoft Azure、Google Cloudなどの大手がそれぞれ、シェア31.7%、16.8%、および8.5%で先頭集団にいる。

しかしTencentは大手のやり方、すなわちクラウドの利用から学ぼうとしている小規模なゲーム企業にとって、ホスティングのソリューションとして魅力があるだろう。中国の外でHonor of Kingsの成功を再現しようとした試みは失敗に終わったが、しかしすぐにギアを入れ替え、Steam的なゲームプラットホームWeGame Xをローンチして、海外市場をねらう中国のゲームデベロッパーに訴求した。また、モバイルのPlayersUnknown Battlegroundはグローバルに成功し売上増に貢献した。

またTencentには、世界中にポートフォリオのネットワークがある。中国でゲームのライブストリーマーとして上位にいるHuyaとDouyuはどちらもTencent系で最近では国際的にも伸びており、ビデオのレイテンシーを避けるためには強力なクラウドコンピューティングの支援が必要だろう。同じことが、やはりTencent系のショートビデオアプリKuaishouについても言える。こちらは、中国の中でも外でもTikTokの好敵手だ。

Tencentのゲーム用クラウドエンジンには、チームメート間のコミュニケーションを円滑にするための仕組みがいろいろある。それらは、マルチプレーヤーの音声チャット、音声による3D位置決め、音声メッセージング、そして音声からのテキスト認識などだ。同社は世界の25か国にクラウドインフラストラクチャサービスを提供しており、5月現在で世界中に展開しているサーバーの台数は100万台を超えている。Tencentによると、今後はゲーム以外にも、日本ではeコマースやビデオストリーミング、モバイルのモビリティクライアントなど向けに調製されたクラウドソリューションを提供していきたい。日本での既存のパートナーとして、ゲーム企業のPitayaやIT企業E-businessがいる。

画像クレジット: Calvin Chan Wai Meng

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Apple Cardは8月前半に登場か

Apple Cardの登場が間近に迫っていると、ブルームバーグが伝えている。米国の顧客は8月前半に新しいクレジットカードを申し込めるようになりそうだ。

iOSの最新アップデートのiOS 12.4で、Apple Cardを利用する準備は整ったと言われている。アップルがサーバーの設定を変えればカードを使えるようになる。

ブルームバーグは米国時間6月20日、正式リリースに先立ってアップルリテールのスタッフがApple Cardにサインアップし、テストをしていると報じていた。

おさらいをしておこう。アップルはゴールドマン・サックスと提携して米国の顧客向けにクレジットカードを提供する。ゴールドマン・サックスがバンキングのインフラを管理し、アップルがユーザーエクスペリエンスをコントロールする。ユーザーはiPhoneのWalletアプリから直接サインアップできる。Apple CardはApple Payで利用できるほか、マスターカード加盟店で使えるチタン製のカードも発行される。

最近の取引一覧に加え、購入をカテゴリーごとに見ることもできる。Apple Cardの会費や海外取引手数料は発生しない。物理カードでの支払いで1%、Apple Payでの支払いで2%、アップルからの購入で3%のキャッシュバックが受けられる。

キャッシュバックはApple Cashカードに直接付与される。付与された金額はApple Payを利用して、Apple Cardで支払いをしたり銀行口座に振り込んだりすることができる。

セキュリティに関しては、カードにクレジットカード番号が記載されていない。Apple Payに対応していないWebサイトで買い物をするときは、Walletアプリでバーチャルカード番号が発行される。

Apple Cardは3月に発表された。その時点でアップルは、今年の夏に提供を開始する予定と説明していた。

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(翻訳:Kaori Koyama)

Salesforceが中国でのローカライズと販売に向けてAlibabaと提携

20年の歴史があるCRMツールのリーダーSalesforce(セールスフォース)は、中国テック企業最大手のひとつ、Alibaba(アリババ)と提携してアジア進出を進める。

両社が7月25日に発表したところによると、Alibabaは中国本土、香港、マカオ、台湾の企業に対してSalesforceを独占的に提供し、SalesforceはAlibabaが販売する企業向けの独占的なCRMソフトウェアスイートになる。

中国のインターネットは、TencentのWeChatメッセンジャーやAlibabaのTaobaoマーケットプレイスなど、もっぱら消費者向けのものとして利用されてきた。しかし企業向けソフトウェアが企業や投資家から注目を集め始めている。例えばワークフローオートメーションのスタートアップのLaiyeは最近、Cathay Innovationの主導で3500万ドル(約38億円)の資金を調達した。成長段階のファンドであるCathay Innovationは、中国では「企業向けソフトウェアの急速な成長が始まった」と見ている。

このパートナーシップにはお互いに利点がある。Alibabaは、膨大な数の中小企業に対してeコマースのマーケットプレイスで販売したり、自社のクラウドコンピューティングサービスで提供したりすることのできる、Salesforceに相当する製品を持っていない。Salesforceのような大手と組めば、この欠落が埋まる。

一方のSalesforceは、Alibabaを通じて中国で売上を伸ばすことができる。Alibaba Cloud IntelligenceのKen Shen副社長は声明の中で、AlibabaのクラウドインフラとデータプラットフォームはSalesforceにとって「ソリューションをローカライズし、多国籍企業のお客様にとってよりよいサービスを提供できる」ものだと述べている。

Salesforceは声明で「多国籍企業のお客様から、世界中どこでも、事業を展開しているところでは対応してほしいという要望が増えている。このことが、今回Alibabaとの戦略的パートナーシップを発表した理由だ」と述べている。

430日までの3カ月間のSalesforceの売上は、20%がヨーロッパ、70%が米国で、アジアはわずか10%にすぎない。

Salesforceはこの提携により、顧客獲得のチャネルを得るだけでなく、中国ベースのデータをAlibaba Cloudに保存することもできるようになる。中国では、海外企業はすべて、中国のユーザーに由来するデータの処理と保存は中国国内の企業と連携しなくてはならない。

Alibabaの広報はTechCrunchに対し「この提携により、中華圏で事業を展開しているSalesforceのお客様はAlibaba CloudでローカルにホストされているSalesforceに独占的にアクセスできるようになる。Alibaba Cloudはローカルのビジネス、文化、規則を理解している」と述べた。

クラウドはAlibabaにとって垂直成長の重要な部分だ。大手の提携先の獲得は、中国最大のクラウドサービスプロバイダとしての基盤強化につながる。Salesforceは2018年12月に日本のスタートアップへの投資を目的とした1億ドル(約108億円)のファンドを設立して、アジア進出を前進させた。今回のAlibabaとのパートナーシップにより、いよいよアジアの顧客を獲得していくことになるだろう。

画像:Alibaba

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(翻訳:Kaori Koyama)

Googleクラウドの年間予測売上が約8700億円を突破

Google(グーグル)が同社のクラウド事業に関する財務データを最後に公表してからかなり時間がすぎた。しかし現地時間7月24日の決算会見でGoogle CEOのSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏は、同ビジネスユニットの年間予測売上が80億ドル(約8700億円)に達したことを発表した。2018年に発表したときは40億ドル(約4350億円)だった。ピチャイ氏は最近、元Oracle幹部のThomas Kurian(トーマス・クリアン)氏を Google Cloudの新しい責任者に指名した

Googleは、クラウド戦争の舞台では落後者のように見られることも多いが、差を縮めつつあることは間違いない。「他のクラウド業者は、誰もGoogleなど使っていないと信じさせようとするだろうが、それは真実ではない」とクリアン氏は今年4月に私に話した。今度は具体的な数値でこの主張を裏付けることができる。

比較してみると、AWSは直近の四半期に年間予測売上300億ドルを超えており、Microsoft Azureは110億ドル前後と見られているが、正確な数字を知ることは難しい。

「Q2もGoogle Cloudにとって好調な四半期だった。年間予測売上は80億ドルを超え、著しい速さで成長を続けている」とピチャイ氏は語った。「顧客はさまざまな理由でGoogle Cloudを選んでいる。中でも信頼性と使用可能時間は決定的に重要だ。例えば、Lowe’s(ロウズ)のような小売業は、顧客やサプライチェーンの体験を変化させるために当社のクラウドを活用している」。

ピチャイ氏は、顧客は自分たちのやり方でクラウドに移行できる柔軟性を望んでいることにも触れた。これはGoogleの競合(中でもMicrosoft)たちが以前から集中して取り組んできた点だ。Anthosなどのプロダクトによって、Googleも追いつこうとしている。

さらにピチャイ氏はAIについて、この技術の使い道を大企業が検討し始めたタイミングで推進することがGoogleの役割であることを強調した。

関連記事:Google Cloudの新CEOが語る、顧客獲得、スタートアップ、オープンソースサポートの戦略

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ゲーマー向け無料ボイスチャット‎Discordのサーバーがフォルダへとグループ化可能に

Discordを使っているユーザは、おそらく1つのチャットサーバだけしか使っていないということはないだろう。Fortniteのフレンドとチャットし、そのうちの誰かはApex Legendsのサーバを始める。また、お気に入りのストリーマー(動画配信者)はサーバを持っているので、それらにも入ることだろう。クラン(オンラインゲームのグループ)に入ったら、そのサーバも加えなければならない。さらに、世界各地のポケモンGO Discordと、きりがない程だ。

最終的には40件ものサーバリストを取り扱うことになり、小さな円形アイコンから目当てのサーバを見つけることは実に面倒になる。Discordはこの点を考慮し、ユーザが長年要望してた機能となるサーバフォルダを導入する。

Rocket Leagueのチャットを1つのグループまとめ、ポケモンGOのサーバを別のフォルダに入れたい?iOSやAndroidでフォルダを作り慣れている人は、ほとんど同じ方法が使える。アイコンを他のアイコンにドラッグすれば、フォルダが作成される(もし機能が使えない場合には、後ほど確認してほしい。アップデートは1日かけて順次ユーザにロールアウトされているようだ)。

フォルダは色分けされているのでより見つけやすく、またこのアップデートはデスクトップ版とモバイル版の両方にロールアウトされる。特に便利なのは、フォルダ全体の通知やバッジ一気に消せることだ。朝に未読のチャットを片付ける場合などに、重宝しそうだ。

まだ、Discordは新しいフォルダ機能の動画も作成している。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

AWSがSlackなどにシステムアラート用チャットボットを提供

AmazonのクラウドコンピューティングサービスAWSは米国時間7月25日、AWS Chatbotのベータローンチを発表した。それはSlackやAmazon Chimeなどのチャンネルに忍び込んで、ユーザーのAWSリソースに問題が起きたことを伝える小さなお喋り屋さんだ。

いまどきのDevOpsチームは、たいていSlackなどのツールを使っているから、前からチャットボットを構築できるすべてのツールを提供していたAWSがそのようなサービスをローンチしなかったことがむしろ意外だ。

ボットはAmazon Simple Notification Service(SNS)につながり、ユーザーはそれをそのほかのAWSサービスに統合する。今そのリストに載っているのは、Amazon CloudWatch、AWS Health、Budgets、Security Hub、GuardDuty、そしてCloudFormationだ。AWSのサービスだったら何でもとはいかないが、ユーザーのAWSデプロイメントをウォッチする機能がほとんど揃っている。

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AWSのプロダクトマネージャーであるIlya Bezdelev(イリア・ベズデレヴ)氏が、今日の発表声明にこう書いている。「DevOpsのチームはコミュニケーションのハブとしてチャットルームをよく使っている。チーム内の会話だけでなく、彼らが運用しているシステムとの対話にもチャットが利用される。ボットはそのような対話のための便宜を提供し、重要な通知の配布や、ユーザーからシステムへのコマンドのリレーに利用されている。オペレーションレベルのイベントや通知さえも、チャットルームから来るようにしているチームが多く、それらがチームの全員に見えて次のステップを議論できるというチャットルームの特徴が好まれている」。

ここでもしかしAWSの流儀に漏れず、AWSのチャットボットが動くようになるためには、セットアップに多少の手間を要する

しかし当面は、すべてのコミュニケーションが一方通行のようだ。Slackにアラートが来ても、少なくとも現状のベータでは、AWSへのコマンドをプッシュバックすることはできない。このチャットボットは、お喋りは好きだけど、聴くのは苦手らしい。でも一般公開されるころには、もっと成長しているかもしれない。

画像クレジット: Thomas Cloer/Flickr CC BY-SA 2.0のライセンスによる

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

AWSの成長率はやや鈍化したがAmazonのために金の卵を産み続ける

先週のAzureと同じく、AWSも米国時間7月26日の決算報告で成長率の鈍化を報告した。それは昨年の49%に対して、本年今期は37%だった。総売上高は昨年のQ2の61億500万ドル(約6630億円)から今期は83億8100万ドル(約9100億円)に増加した。年商としては330億ドル(約3兆5800億円)という驚異的な額になる、AWSだけで。つまりそれは、それでも成功している企業の一部門の売上にすぎないのだ。

でも、本体のAmazonもうれしいはずだ。今四半期AWSは同社の総収入の13%を占め、Amazon全体を引っ張るほどの勢いになっている。しかし多くの点でこれはいいニュースであると同時に、加速を続けている市場でMicrosoftとAmazonの両者がやや減速したことは奇妙だ。それでもなお、両社のクラウドインフラストラクチャ市場の支配は続いている。

Amazonは市場のほぼ33%をコントロールし、Microsoftはほぼ16%。アナリストによって数字に若干の違いはあるが、AWSのマーケットシェアはMicrosoftのほぼ倍である。しかし現時点では、2位以下の中でシェアが2桁の企業はMicrosoftだけだ。

両社の成長率の低下は、単純に大数の法則かもしれない。つまり、この2社のように大きくなりすぎると、成長市場においてもかつてのような高い成長率を長期的に維持することが困難になる。

Moor Insights & Strategyの主席アナリストであるPatrick Moorhead(パトリック・ムーアヘッド)氏は「これはいわゆる大数の法則であり、売上が大きくなりすぎると高い成長率の維持は困難になる。それでもAWSの売上は、2位から5位までを合わせた額より大きい」とコメントしている。

市場が成熟すると成長は自然に鈍化し、市場がどれだけホットでもAmazonが40%台の成長を維持することはできない。でも、その売上高は依然高く、AWSはAmazonの成功の大きな要因であり続けている。

関連記事:AWS remains in firm control of the cloud infrastructure market(AWSはクラウドインフラストラクチャ市場のトップの座を譲らず、未訳)

画像クレジット: Ron Miller

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

eBayが長らく待たれたAmazon競合の配送サービスを来年提供へ

eBayはAmazon(アマゾン)の歴史的な成長を目の当たりにしてきた。オークションサイトは順調だが、収益に関してはeコマースの巨人と比べるとわずかだ。そしてeBayはついに、Amazonにより直接的に対抗するサービスを導入する用意をしている。

来年米国でローンチされるManaged Deliveryは、eBayセラー向けのエンド・ツー・エンドのフルフィルメント(配送)だ。同社は販売業者の製品をサードパーティーの倉庫に保管し、より迅速な配送を可能にするとともに、2〜3日の納期で無料配送を提供するオプションを提供する。

eBayがAmazonから学んだ教訓はこれだけではない。ブランディングに関する視点も存在している。以下は、同社によるプレスリリースだ。

Managed Deliveryにより米国内のeBay出品者から毎日約150万個の荷物が送られ、今後数年以内にも何億ものeBayブランドの箱や荷物が全米の玄関先に置かれることになる。これらのブランド化されたパッケージは顧客により良いショッピング体験を提供するだけでなく、人気のあるショッピングサイトとしてeBayのブランドアイデンティティを強化することになる。

ロイターによると、この新サービスは現在オークションサイトに掲載されているアイテムのうち最大で半数に適応されるという。他社に遅れても、やらないよりはマシだろう。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

セールス業につきまとう悪いイメージを一掃するBravado、13億円を調達

あなたがご存知の営業成績トップの人って、どんな人?

その人は、あなたが尊敬している人?ではないだろう、たぶん。このほど、Redpoint VenturesやFreestyle Capital、Precursor Ventures、Village Global、Kindred Venturesなどから1200万ドル(約13億円)を獲得してステルス状態を卒業したBravadoは、今の社会に蔓延している営業軽視、ときには蔑視の風潮を変えようとしている。

BravadoのファウンダーでCEOのSahil Mansuri(サヒル・マンスーリ)氏は、最初の仕事がセールスだった。優秀な学生だったが、父親の健康問題のため、大学を出たらすぐに本格的に金を稼がなければならなかった。大学の就職相談員がセールスはどうかと勧めたとき彼は、うるさい電話セールスたちでいっぱいのオフィスを想像した。自分が生まれ育ったサンフランシスコのB2B企業で高い給料をもらっているセールスの姿は思い浮かばなかった。

マンスーリ氏はその後、セールスという仕事に愛着を持つようになり、その職業のイメージを高める企業Bravadoを創ることになる。しかしそうやって自分のベンチャーを始める前は、彼はeBayが買収したSalesPredictの副社長だった。そこは、データを利用して顧客の購入行動やセールスの成功率を予想する企業だ。そしてその前にいたGlassdoorでは、成績トップのセールスマンになった。そこは、求人求職情報の一環として匿名ないし口コミの企業レビューを集めているプラットホームだ(2018年に日本のリクルートが買収)。

マンスーリ氏の両親はインドからの移民で、彼がセールスというキャリアを選んだことに最初は反感を示した。でもその後は、考えを変えてくれた。彼の現在の望みは、一般社会がセールス、営業という仕事にもっと好イメージを持ってくれることだ。

彼は「僕の家族はセールスの見方を変えてくれたけど、でもぼくのこれまでの人生の中では、仕事がセールスであることはネガティブなスティグマだった。そのスティグマを抱えて生きることが、僕の人生だった」と語る。

「セールスは人が憧れる職業ではない。偉大なエンジニアやプロダクトマネージャーには誰もが憧れるけど、セールスで偉大になった人は一人もいない」。

Bravado Community

Bravadoは収益化の方法がまだ決まっていないが、当面はネットワークの構築に力を入れる計画だ。現在、営業のプロたちはBravado Credibility Scoreという評価システムを利用して自分の信用度を上げている。その元になるのは、彼らのBravadoプロフィールに記録されている顧客の証言だ。今後は、ネットワーキングのイベントやワークショップを通じてセールスのワーカーたちがキャリアを開発展開できるようにしていきたい。

次世代のセールスのプロを育てることも、Bravadoの重要な事業だ。マンスーリ氏によると、米国の上位100大学のどれにも、セールスの学部や学科がない。だから学生たちは、セールスのエキスパートになろうという意欲を持てない。しかしBravadoにはセールスのメンター事業があるので、その受講者たちにはセールスについて学ぶカリキュラムや、企業に営業として配置される機会、そして、目下成長中のセールスのプロたちのネットワークに加わる機会が提供される。マンスーリ氏はそれを、「セールスのプロフェッショナルになるための入門課程」と呼んでいる。

営業チームにとっては、ダイバーシティも重要だ。セールスという仕事が男子会的なイメージを持たれがちなのも、男が支配している世界だからだ。米国の場合、女性は25%未満であり、LGBTQの人たちはほとんどいない。Bravadoはコンテンツを工夫することによってこの問題に光を当て、セールスのコミュニティに新しい顔を招き入れようとしている。

マンスーリ氏は「最良の人材が、その外見がどうであっても、『私はセールスをやってみたい、今やそれは立派なキャリアだから』と言えるような世界を作りたい」と説明する。

Bravadoのコミュニティには現在、SalesforceやLinkedIn、Microsoft、Slack、WeWork、Uber、Oracle、IBMなどなどからの5万名のメンバーと1000のセールスチームが参加している。同社は最近、Redpoint VenturesのAlex Bard(アレックス・バード)氏とAnnie Kadavy(アニー・カダヴィー)氏がリードするシリーズAのラウンドで850万ドルを調達した。その大半は、コミュニティの拡大に使われる予定だ。収益化については、今後の一連の「有料プロダクト」に乞うご期待というところだそうだ。

Bravadoが上記のような目標を達成するには、一般社会が抱いている営業やセールスに対するステレオタイプなイメージを改める活動も重要だ。また、米国全土の学生たちに、セールスという分野を見直し、専攻課程として積極的に参加してもらう働きかけも必要である。

マンスーリ氏は曰く、「セールスは、就活落ちこぼれのキャリアだと思われている。私たちは、セールスという専門職に尊敬と信用をもたらし、すばらしいキャリアのひとつとして新たな定評を確立したい」。

関連記事: Showpad, a sales enablement platform for presentations and other collateral, raises $70M(プレゼンテーションでセールスを助けるShowpad、未訳)

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

好決算を受けたSnapの株価がIPO価格を上回る

Snap(スナップ)はニューヨーク証券取引所でもはや笑い者ではない。最新のユーザー数の増加と四半期決算の内容を受け、Snapの株価は水曜日、18.68%アップの17.60ドルで引けた。終値がIPO価格の17ドルを上回ったのは昨年3月以来のことだ。

Snapの株式公開はかなり期待され、2017年3月の上場初日、株価は44%上昇した。しかし、上場後初の決算で、ユーザー数の成長が減速したことが明らかになり(その後しばらく低迷することになる)、Snapの株価はすぐさま急落した。株価がデビュー価格17ドルを下回ったのはわずか数か月後のことで、2018年の初めにはデビュー価格を上回ったりもしたが、12月末には4.82ドルにまで下がった。

Snapが昨日発表した2019年第2四半期決算は、急激に投資家に見放されてここ数カ月、幹部やエンジニアの確保に苦しんでいるとされる同社にとってターニングポイントになるかもしれない。第2四半期の決算ではSnapの経営陣は、デイリーアクティブユーザー数が前年同期比1300万増え、18〜24歳のユーザー数で盛り返したと強調した。

そうした成長を維持できるかどうかは、直近の四半期だけで700〜900万の新規ユーザー獲得につながったARレンズのような、プラットフォームにユーザーを呼び込めるヒットを続けて出せるかにかかっている。
今回の回復によりSnapはオリジナルコンテンツの戦略、そしてゲーム開発やARプラットフォームのような野心的な取り組みに力を注ぐことができそうだ。

イメージクレジット: BRYAN R. SMITH/AFP

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(翻訳:Mizoguchi)

Facebookが連邦取引委員会の捜査を受けていることを公表

Facebookの株主たちは、同社がFTCから課せられた50億ドル(約5400億円)の罰金が株価に影響を与えたことには動揺しなかったが、反トラスト問題を巡って現在もFTCの捜査を受けていることを認めたことは驚きだった。

Facebookは第2四半期の決算リリースで、同社が巨額の罰金を支払い、一定のプライバシー条項に同意したことを詳しく説明したが、リリース文には、同社のFTC問題が継続する可能性についても短く書かれていた。

「当社を含め、オンライン技術業界は前四半期に規制当局から厳しい監視を受けた」とリリースに書かれていた。「2019年6月、当社はFTCから反トラスト捜査を開始する旨を通知された。2019年7月には、司法省が主要オンラインプラットフォームに対して反トラスト調査を開始すると発表した」

つい昨日、米国司法省は同省の反トラスト局が、国内大型IT企業に対する捜査を開始したことを発表した。

関連記事:米司法省は巨大IT企業の独禁法違反に対する調査に着手

近く行われる同社の決算会見で詳細がわかる見込みだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

AWSがEC2のリソースの無駄遣い指摘ツールを立ち上げ

AWSのEC2のユーザーに、ちょっと便利なアップデートが登場した。米国時間7月24日、AWSはEC2 Resource Optimization Recommendations(EC2のリソース最適化の推奨)と呼ばれる新しい機能を立ち上げた。その名のとおり、ユーザーにリソースの最適利用に関する推奨を行う。派手に目立つような機能ではないが、ユーザーのお金を相当節約してくれるだろう。ついでに、担当者であるあなたの昇進もあるかもしれない。

このリソース最適化ツールはユーザーのEC2の使い方を見て無駄な部分を見つけ、その状況に合った推奨をする。そのためにユーザーのリソース使用履歴やCloudWatchの測定値、そしてユーザーの現在の予約量などを調べる。

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そして遊んでいるインスタンス(CPUの利用率1%未満)を見つけたら、ユーザーにシャットダウンを推奨する。それは、まあ当たり前だ。利用率の低いインスタンスに関しては、3つの新しいサイズを提案し、その中から利用目的にいちばん合ったものを選ばせる。

なお、この機能が提供されるのは標準的なEC2インスタンスのみで、GPUインスタンスには適用されない。

この新しい機能はAWSの全ユーザーが利用できる。窓口はAWSのコスト管理スイートで、そこで既存の予算管理ツールの仲間入りをする。AWSの料金体系を単純明快と褒める人は一人もいないから、一見小さな機能でも相当大きな節約効果を生むこともある。

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画像クレジット: Ron Miller/TechCrunch

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

誰もがインフルエンサーになりたい!Z世代のイベントVidConで感じたソーシャルメディアの未来

毎年ロサンゼルスのアナハイムで開かれるデジタルコンテンツのカンファレンスVidConが、今月の開催で10周年を迎えた。VidConは、影響力を高めたいと願っているオンラインクリエイター、そのファンやブランドマーケター、娯楽企業のためのイベントだ。

昨年は7万5000人以上の参加者があり(今年はそれを上回っている感じ)、ティーンエイジやトウィーンエイジ(9歳から14歳ぐらいの女の子)の若者たちも、大好きなインターネットのスターに会いに世界中から集まって来る。

VidCon2019に登場した虹の滑り台、かき氷とアイスクリームと綿飴を合体させたビックリもののユニコーン、巨大なInvisalignブランドのキャンディーマシン

今回は、私たちにとって2回目のVidConになる(2018年の取材記事はこちら)。ティーンエイジャーのカルチャー、インフルエンサーのマーケティング、ソーシャルプラットフォームの未来を知りたい人間にとって、ここは最高の場所だと私たちは感じた。そこで、私たちがこのイベントで学んだ5つのことを、興奮を交えてお伝えしたいと思う。私たちが見逃したものがあれば、どうか教えていただきたい。ミレニアル世代、Z世代についてもっと詳しく知りたい方は、私たちの週刊ニュースレターを購読していただきたい。

要約:私たちが持ち帰った5つのお土産

  1. TikTokはZ世代の間で爆発的な人気を呼んでいて、多様で「リアル」なクリエイターが他のプラットフォームよりもずっと多く生まれている。ブランドマーケターは、今でもTikTokのエコシステムが自分たちの居場所だと考えているが、一部のアーリーアダプター(メキシカンファストフードチェーンのChipotleなど)は大変に大きな結果を得た。
  2. トップクリエイターたちはメンタルヘルスについて、またユニークで高品質なコンテンツを継続的に生み出し続けることの大変さについてオープンに話し合うようになっている。彼らは新しいクリエイターたちに、もっと「安定した」プラットフォーム(アルゴリズムの依存度が低いもの)を探すこと、そして自分自身の価値を数値で測るのを止めようと訴えている。
  3. クリエイターたちは、ブランドとのスポンサー契約に慎重になりつつあり、自身のプロダクションを立ち上げる人たちが増えている。多くのクリエイターは、制作の管理のためのビジネスマネージャーを雇っている。また、インターネットを使って比較的簡単にそれが行えるようになっている。適切に行えば、増収と、ファンからの暖かい反応が得られる。
  4. 5年前は、デジタル・クリエイターはセレブになりたがっていた。今はセレブがデジタル・クリエイターになりたがっている。俳優やスポーツ選手は、今に彼らの「本来の仕事」よりもデジタル作品を通してZ世代の間で有名になるだろう。
  5. コンテンツ制作技術が民主化され、誰もがインフルエンサーを目指すようになった。VidConは、純粋なファンのためのイベントから、インフルエンサーが戦術的なヒントやキャリアアップのためのつながりを求める戦略的なビジネス・カンファレンスに移行しつつある。

TikTokとニューウェーブの本物のクリエイター

15秒という短い動画を配信するアプリであるTikTokは、間違いなくVidConのスターだった。TikTok関連の討論会は、ほぼすべてが立ち見のみだった。2016年にローンチされたこのアプリは、現在、世界中で月間5億人のアクティブユーザーを誇るまでに成長した。前進であるMusical.ly(最大で1億人)をはるかにしのぐ。

完璧にキュレートされているInstagramのフィードとは対照的に、TikTokに最もふさわしい表現は「奇抜」だろう。動画は、コメディー番組の一場面や、ダンスや、TikTokのチャレンジで人気を呼ぶ奇妙な技などにより、瞬間的な笑いや幸福感を引き出すように作られる。VidConのようなイベントでは、ユーチューバーは警備員に囲まれて有料の懇談会でファンと接触しているのに対して、ティックトッカーはもっと身近だ。外見にも多様性がある。ティックトッカーの多くは、Instagramのモデルというよりは、ビリー・アイリッシュに近い。

TikTokのスター座談会。髪の毛が青でもピンクでもないクリエイターは6人のうち1人だけ。

TikTokは、本物を重視することで差別化を図っている。同社のプロモーション動画では、インフルエンサーではなく行動する人を求めると公言されている。撮影と編集に何十時間も費やすユーチューバーと違い、ティックトッカーは、自らの作品を自然発生的なものと言っている。ダンサーデュオのOurFireのChris Kerr(クリス・カー)は、「TikTokとは瞬間に生きること。15秒しかないから、瞬間的にやって上げるだけだよ」と話している。ティックトッカーのAndrea Okete(アンドレア・オキート)(dreaknowsbest)は、「他のプラットフォームみたいにボックスの中に自分をはめ込む必要を感じさせないからTikTokが好き。私はただのドレアになって、みんなも私がそうすることを喜んでくれる」と話していた。彼女は、TikTokの動画に映ったミスをわざと残して、ファンがそれを見つけてシェアできるようにしている。

このプラットフォームの驚くべき多様性に、人々は気付いていません。あらゆる人種、年齢、職業。消防士、おばあちゃん、看護師、12歳児。他のプラットフォームでは声を上げられない人がたくさんいます(TikTokジェネラルマネージャー、Vanessa Pappas(バネッサ・パーパス))。

TikTokの本物志向は、Z世代を採り入れようとする多くのブランドにもアピールするものだ。Chipotleの上級デジタルマネージャー、Candice Beck(キャンディス・ベック)は、同社がもっと信頼性のあるコンテンツをマーケティング戦略に採り入れようと決めたとき、TikTokで2億人以上もの視聴者を集めていた#LidFlipChallengeのインフルエンサー、David Dobrik(デイビッド・ドブリック)と手を組んだと話している。Chipotleは、ドブリックブリトーを発売した後、1日のデジタルセールスの最高額を記録した。その他、TikTokと手を組んだブランドには、ジミー・ファロンNBAワシントンポストがある。

メンタルヘルスの限界点に到達

クリエイターたちは、燃え尽き症候群やメンタルヘルスとの戦いについて、堰を切ったように話し始めている。この問題をテーマにした討論会では、5人のクリエイターが、YouTubeで成功した後に神経衰弱を患った体験談を交換した。ギャビー・ハンナ(Gabbie Hanna)は、動画撮影の合間にパニック障害に陥り、毎週水曜日公開のスケジュールに間に合わないと泣き伏した話していた。Elle Mills(エリー・ミルズ)は、絶え間ないツアーと撮影の異常なスケジュールにより、スターダムにのし上がって1年も経たないうちに「大っぴらに精神疾患を発症」したと話していた。

誰も見てくれてないと感じて、とても辛かった。私が頑張ってきたすべてのものが、私から持ち去られてしまうって。だから多くのユーチューバーは精神をやられる。そんな心理状態なの(エリー・ミルズ)

ユーチューバーは簡単で楽しい仕事のように思われるかも知れないが、トップのクリエイターたちは過酷なスケジュールに苦しんでいる。自身のチャンネルNatalies Outletに800万人近い購読者を持つナタリー・アルゼータ(Matalie Alzate)は、毎週2本の動画を制作するために1日18時間働いている。クリエイターを目指す人たちに、彼女は「本当に体にこたえる」と警告している。そして、いずれはYouTubeをフルタイムの仕事ではなく、趣味にしたいとも話している。11歳でユーチューバーになったMikey Murphy(マイキー・マーフィー)は、21歳になった今は「アイデアが枯渇した」と話している。毎週定期的に動画を公開するYouTubeの基準は「病的だ」と断定し、若いクリエイターたちには「自分を潰してしまう」ので、アナリティクスは無視するよう助言している。

よくある悪意のコメントによるプレッシャーだけでなく、メタルヘルスに関してオープンに発言するクリエイターたちには、同じ悩みを抱えるファンたちのコミュニティの代表としてのプレッシャーもある。ユーチューバー(ContraPoints)のナタリー・ウィン(Natalie Wynn)は、ジェンダー、人種、政治を題材にした動画を制作しているが、もっとも怒りに満ちたコメントは、同じトランスジェンダーの人たちから来るという。その対処は「本当に大変」だ。YouTubeのアルゴリズムは、彼女のファン以外にも動画を広く配信してしまうため、トランスジェンダーに反感を持つ人たちにもアピールする内容にしなければと、彼女は責任を感じている。そのため彼女は、深刻な問題について語るときでも、楽しく「押しつけがましくない」口調を心がけている。

クリエイターは#SponConから独自ブランド設立に動いている

クリエイターにとって、スポンサー付きのコンテンツは、長い間厄介な問題だった。有名になって、ひとつのブランドと契約を交わすと、「身売りした」とか「信用できない」といった批判を数多く受けるようになる。ブランドから報酬を受け取れば、ファンは、そのブランドの製品のお勧めや使用レポートを信頼しなくなる。そのため、スポンサーが付いている事実を隠してコンテンツを流すクリエイターも一部に現れる(それは違法だ)。

今回、私たちは、クリエイターのスポンサー契約に対する考え方の変化に気がついた。クリエイターの多くは、ブランドからの申し出は、自分自身がそのブランドを本気で愛していて、ファンもそのことをよく知っている場合を除いては、もう検討しないと話していた。58万人の購読者を誇るファッション系ユーチューバーのSierra Schultzzie(シエラ・シュルツィー)は、アメリカンイーグルのジーンズの話をよくするので、彼女の動画にアメリカンイーグルをタグ付けするファンが多いと話していた。彼女がそのブランドと契約を交わしたとき、「やっと」彼女のスポンサーになってくれたと、ファンたちは歓迎した。

シエラ・シュルツィーのファンは、彼女がアメリカンイーグルとスポンサー契約を交わしたとき、それ以前から彼女がこのブランドを大好きだったことを知っていたファンは、これを受け入れた(このブランドの製品を勧める彼女へのファンの信頼が厚かったこともある)

マーケターも、創造性に関する自社の支配権を譲ることに同意している。クリエイターは、どんな内容が共感を呼ぶかを知っている。企業から渡された宣伝文句を読み上げることなどしたくない。WeRateDogsを運営するMatt Nelson(マット・ネルソン)は、新作映画「ダンボ」のためのTwitterキャンペーンをディズニーとともに行った。キャンペーンの成功の勝因を彼は、「ディズニーが僕をクリエイターとして尊重して、人々が何を求めているかを知るボクに、自由にやらせてくれたこと」だと話している。彼はアナリティクスにこだわりを持つことで、どうすればうまくいくかを把握している。結果とて彼は2万2000件のコメントを受け取り、ダンボのような耳の犬の写真を募集する投稿で7万件の高評価を獲得した。

金曜日に『ダンボ』が公開されるのを記念して、ダンボみたいな耳の犬の写真を募集します。勝者の発表は木曜日!

多くのクリエイターが、独自ブランドの創設へ一歩踏み出している。彼らは、誰でも製品ラインを立ち上げることができる新サービスを利用している。これはもはや、YouTubeのメガスターだけのオプションではない。事実、80万人の購読者数を誇る15歳のFiona Frills(フィオナ・フリルズ)は、セフォラやアルタといったショップではニキビ用のスキンケア商品が見つけられず、独自の商品をローンチしたのだが、それは簡単だったと話している。妻がCute Girls HairstyleというYouTubeチャンネル(購読者数560万人)を運営しているShaun McKnight(ショーン・マクナイト)は、条件のいいヘアーブランドからの申し出を10年間断り続けていると話していた。自分たちの独自ブランドを立ち上げる計画があるからだ。

マクナイトの双子の娘、ブルックリンとベイリー(購読者数620万人)も、独自のマスカラのブランドを立ち上げた。自宅で開発し、一部の資金をIndiegogoで調達した。その後、彼女たちは、このブランドを、その他の美容製品やアクセサリーにまで広げ、25万セットものシュシュを売りさばいた。インフルエンサーが独自ブランドを立ち上げることができるのなら、収益のほんの一部しかもらえない、好きにコンテンツを作らせてくれない、その上ファンから「身売りした」と責められる企業とのスポンサー契約など交わす必要があろうか。

セレブがクリエイターになりたがる時代

この5年間、私たちはZ世代の“伝統的”なセレブがインフルエンサーに置き換わってゆくのを見てきた。この世代は、従来型のテレビ放送を見る時間がきわめて短く、スマホを見て過ごす時間が長い。平均的Z世代はインターネットの動画を1日に3.4時間視聴している。Z世代の最大のスターが、ディズニーやニコロデオンなどではなく、YouTubeやInstagramやTikTokから現れるのもうなづける。そして今、主流のセレブも、デジタル・クリエイターになってZ世代に近づきたいと考えている。

その最たる例がウィル・スミスだ。彼は2017年末にInstagramアカウントを開設し、昨年、YouTubeチャンネルを開設した。今では大量のコンテンツをアップし、十代の若者の間で人気のチャレンジに参加し、キング・オブ・インスタグラムの称号を獲得している。プロスポーツ選手も、若いファンを獲得しようとソーシャルメディアを活用し始めている。プロバスケ選手カメーロ・アンソニーのビジネス戦略チームを率いAsani Swann(アサニ・スワン)は、アンソニーが「子どもが視ているものをたくさん視てる」と話している。彼は常に、こう自問しているという。「子どもたちは、どんなふうにコンテンツを取り込んでいるのか、次の流行は何なのか?」。

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ウィル・スミスの1000万フォロワーを祝うInstagramの投稿。「昔は、映画スターになるには、謎めいていて別世界の存在になる必要があった」ため、これまでソーシャルメディアは避けてきたと彼は話している。

2つのアカウントで300万フォロワーを持つユーチューバーのKristopher London(クリストファー・ロンドン)は、バスケットボールのコンテンツで、YouTubeの有名人になった。プロとしてプレイしたことはないが、NBAサマー・リーグなどのイベントでは、NBAの選手よりも人気が高い。彼は「子どもたちがボクと写真を撮りに来るとき、NBA選手には目もくれない」という状況を奇妙に感じると話している。彼の元には、NBAのビッグスターたちから動画に出演したいとの申し出が寄せられる。

オリンピック体操選手のShawn Johnson(ショーン・ジョンソン)は、現在、週2回、YouTubeで動画を公開している。彼女は常にチャレンジに参加し、ストーリーをアップし、十代のインフルエンサーたちとコラボしている。クリックベイトも気にせず使う。ショーン・ジョンソンのことを体操選手ではなくユーチューバーとして知れ渡る世界を想像するのは難しくない。

クリエイターの偶像化から新世代のエンパワーメントへ

数年前、VidConはほぼファンの集いだった。ファンが大好きなクリエイターと増え合える場だった。今でも、そうした企画は数多く行われてはいるものの、自分もクリエイターになりたいと願うファンも増えてきた。VidConに参加する若い人たちは、次第に、インターネットで実績を積む方法を学びに来るようになっている。最近の調査によれば、英国の11歳〜16歳の若者の、憧れの職業の第2位がインフルエンサーだ。

大きくなったら何になりたいか?英国の11歳〜16歳の子どもを持つ親2000人を対象とした調査

この変化は、VidConの内容にも影響を与えている。コンテンツの作り方とオーディエンスの集め方に重点を置いたクリエイターセッションが、今では目玉の出し物になっている。モデルでイン・リアル・ライフのストリーマー、Bri Teresi(ブリー・テレシ)を招いて行われたライブストリーミングのためのクリエイターセッションでは、参加者はお決まりのファンの質問コーナーを飛ばして、ストリームのオーバーレイにはどんな技術を使っているのか、新しいストリーマーにはどんなプラットフォームがもっとも使いやすいか、ドキシングをどのように避けるかといった質問がブリーに向けられた。

ブランドは、意欲のあるクリエイターを引き立てることで、自社のコンテンツへのエンゲージメントが増やせることに気がついた。eスポーツのメディア・プラットフォームであるSuper League Gamingの上級マネージャーであるMichelle D’Antonio(ミシェル・ダントニオ)は、若いゲーマーを盛り立てることが、ブランドの成長の鍵だったと話している。Super Leagueは、現在、「Spawn Point」という番組を毎日配信し、ユーザーの投票で選ばれたプレイヤーを紹介している。「(今の若者たちは)こんな感じ。『Ninjaもすごいけど、自分がそうなりたい』」のだという。

この変化は、VidConの巨大な展示ホールにも現れている。若い消費者を惹きつけようと、ブランドがブースを並べていた。インフルエンサーの物品販売ブースは、インフルエンサー本人がたまたま居あわせたとき以外は、驚くほど閑散としていた。人気のブースでは、来客自身のコンテンツ制作を行わせて、潜在オーディエンスの獲得を狙っていた。バービーやベストバイといったブランドは、ブースに簡易スタジオを設け、客をクリエイター席に座らせていた。こうしたブースには、スポットライトを浴びたい人たちの数十人から、ときには数百人の列ができていた。私たちは、こうした流れは加速すると見込んでいる。そのため、消費者がコンテンツを作り、そこからビジネスを発展させられる新しい技術が登場することを、大いに期待している(私たちはこれをクリエイターインフラストラクチャーと呼んでいる)。

生の観客の前で、eスポーツのステージに上がりビデオゲームをプレイしようと列を作る若者たち。プロの大会と同じように、彼らのプレイは大きなスクリーンに映し出される

最後に、VidConの展示ホールとコミュニティセッションで見つけた表面的なトレンドをいくつか紹介しておこう。

  • Twins  :特にTikTok上で。そっくりな2人の人が、まったく同じダンスの動きを見せる。
  • ASMR  :ASMR作家を招いた座談会はひとつだけだったが、来場者は2018年の4倍だったとパネリストの一人は話していた。すべてのクリエイターが、ASMRは、去年からずいぶん主流になってきたと認めている。
  • Glitter ✨:去年のVidConではタトゥーが大人気だったが、今年はグリッターや、その他のキラキラ光るものやホログラム物が流行っていた。とくに人気を集めていたのが、BlingerHolo TacoLemonhead LA
  • Facebook Watch/IGTV  :どちらのプラットフォームも、年齢層の低い若者たちの利用を目指しているが、Z世代の目は、IG、Snap、TikTokに向いている。Facebook WatchもIGTVも、クリエイターはもっと高い年齢層を対象にしていた。または、そのようなコンテンツの制作を奨励されていた(ただし、それでとくに満足していたとは限らない)。

【編集部注】著者のOlivia Moore(オリビア・ムーア)はと、姉妹のJustine Moore(ジャスティン・ムーア)は、ともにCRVのベンチャー投資家。Cardinal Venturesを設立。

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(翻訳:金井哲夫)