NVIDIAがMellanoxを69億ドルで買収、スパコン向けチップ製造へ

ここ数日憶測が飛び交っていたが、NVIDIA(エヌビディア)はチップメーカーのMellanox(メラノックス)を69億ドルで買収することを正式に発表した。交渉はまだ続いているものの、1株あたり125ドルを現金で支払う。この統合ではスーパーコンピューター向けのチップを製造することになるが、これはクラウドサービスの時代、極めて重要なマーケットだ。

この買収は2019年末のクローズが見込まれる。

メディアを賑わせていたこのニュースでは、もともとはイスラエルで創業され、今はサンノゼを拠点とするMellanoxを巡り、NVIDIAとインテル、マイクロソフトが獲得戦争を繰り広げていると報じられていた。興味深いことに、最終価格は報道されていた最後の提示価格よりも低いものとなっている。最初にマイクロソフトがMellanoxに興味を示しているとの報道があった。そして、そこにインテルが60億ドルで買収する意向との報道が加わった。最後にNVIDIAが登場し、報道ではキャッシュ70億ドルでの買収を提示したとされている。

これらの提示額はすべて、金曜日時点でのMellanoxの終値に基づく59億ドルを上回っている。

このディールはプロセッサー業界で進んでいる統合を象徴するもので、NVIDIAにとってはマーケットシェアを伸ばすために、特に高性能コンピューティングとスーパーコンピューターの分野において重要なものとなる。2社の統合は、世界で最も大きなコンピューター500台の半分超、「メジャーなクラウドサービス事業者とコンピューターメーカーのすべて」をカバーする。

このディールは、同じマーケットにエネルギーを費やしている他のベンダーの手からMellanoxを奪い取るものとなった。他のベンダーの一つ、インテルはCascade Laekチップなど高性能コンピューティングに力を入れていて、一方でIBMは今年初め世界初の商業量子コンピューターお披露目するなどその取り組みを発表している。

NVIDIAはコンピューティングに力を注いできていて、かたやMellanoxはイーサネットや他のネットワーキング技術を通じた分野を専門とする。新たなコンピューティングやデータ移送を解決するこの2社の統合ではAI、クラウドサービス、スマホや他の接続デバイスの使用の拡大、自動運転車などまだ存在しない技術などに関するものに取り組むことになる。

「AIとデータサイエンス、何十億人という人が同時にコンピューターにつながるという状況の出現は、世界のデータセンターに対する需要をうなぎ登りにさせている」とNVIDIAの創業者でCEOのJensen Huang氏は声明文で述べた。「この需要に応えるためにはインテリジェントネットワーキングファブリックを介して膨大な数の高速コンピューティングノードを接続させる全体的なアーキテクチャが必要だ。次世代のデータセンター規模のコンピューティングソリューションを生み出すために、NVIDIAのコンピューティングプラットフォームを世界でも有数のMellanoxのネットワーキングプラットフォームと結合させることを楽しみにしている。特にMellanoxの先見性のあるリーダー、そして明日のコンピューターをつくる素晴らしい人たちと一緒に働くことに興奮を覚える」。

NVIDIAはまた「さらなるパフォーマンスや利用、顧客のための運営コスト低減を達成するために全コンピューティング、ネットワーキングにかかるデータセンター規模の作業量を最適化するという点で」特にMellanoxに関心を持っていると述べた。この2社はすでに協業したことがあり、中でも米国エネルギー省のための世界最速スーパーコンピューターSierraとSummit構築で共に働いている。NVIDIAはまた、多くのクラウドサービス事業者が2社と協業したことにも触れている。

統合完了後も、NVIDIAはイスラエルの人材に引き続き投資する意向だ。その一つが世界で最も重要なテクノロジーセンターだ。今回の統合によって顧客向けの販売やサポートに変更は生じない。

「我々はアクセラレーティッドコンピューティングに関してNVIDIAと同じビジョンを共有している」とMellanoxの創業者でCEOのEyal Waldman氏は声明で述べた。「2社の統合は、我々の長年のパートナーシップの自然な延長上にある。この合体はパワフルなテクノロジーや2社の社員にとって素晴らしい機会の創造を促すだろう」。

Image Credits: chombosan

原文へ、翻訳:Mizoguchi)

サムスンのGalaxy S10が米国で販売開始

Galaxy S10の予約注文は、誰に聞いても好評だったようだ。実際、本体に無料でバンドルされるGalaxy Budsは予定数量を終了した。S9の売上が低調と伝えられた後だけに、サムスンにとっては良いニュースだ。

レビューを待っていた人、あるいは店頭で買いたい人のために、米国では現地時間3月8日からGalaxy S10の店頭発売が始まった。サムスンは現在も特典をいくつか提供している。最大の特典は、Spotify Premium6カ月間無料で「正規購入」として利用できることだ。これは同社がGalaxy S10に音楽アプリをバンドルすると発表したことによる。

重いソフトへの回帰?それともアップルと戦うための戦略的パートナーシップ?まあ、どちらでもいいだろう。

特典の対象となるかどうかは地域や通信キャリアによって異なる。自分が特典を受けられるかどうかを知りたければ、こんな細則がどっさりある

このPremiumおよびサムスンの6カ月間トライアルのオファーは期間限定でのみ利用でき、当該の日付が公表される前に引き換える必要がある。 SpotifyはこのPremiumおよびサムスンの6カ月間トライアルのオファーをいつでも理由の如何を問わず変更または早期に終了する権利を有する。その期間の後、Spotifyはこのオファーを受けようとするいかなる試みも引き換える義務を負わないものとする。

S10、S10+、S10eに加え、サムスンの新しいウェアラブルデバイスのGalaxy Watch ActiveとGalaxy Budsも、サムスンのWebサイトと店頭で販売を開始した。

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(翻訳:Kaori Koyama)

Roborockは私の愛すべき掃除ロボット野郎

私がアパートにロボットを入れて自由奔放に走り回らせるようになるのは時間の問題だった。Roomba(ルンバ)は2002年には出回っていたのだから、私がロボット掃除機を導入するまでにこれだけかかったのは少々ふしぎかもしれない。ともあれ私はこの数週間、Roborock S5(ロボロックS5)という掃除機とモップの組み合わせを自分のアパートの部屋でテストしている。

ひと言で言って、私は彼が大好きだ。ほんの少しの時間一緒にいるだけだが、彼のことが気になるようになり、少々草深いじゅうたんを走るときは心配することもあった。ある日帰宅したら彼の姿が見つからないことがあった。大好きなドックステーションにもいない。最後に見かけたのはそこだったのだが。当然のごとく恐怖心が走った。愛すべきロボット野郎は部屋のどこかに隠れ、ロボット暴動を起こして外に出ていく機会を伺っているのだろうか。

結局彼は私の留守中に精を出して働いていただけだった。出かける前に私は留守中に掃除するように頼んだのだが、電池がなくなっていたため充電しなければならなかったのだった(初仕事の前に彼をフル充電していなかった)。

十分なエネルギーを得たあと、仕事に戻ったが風呂場のマットにひっかかっていた。どうすることもできず、悲しそうにそこにいた。うごくことなく 「error」と言うだけだった。いつからそこにいたのだろうか。私はかわいいロボット野郎に共感を抱いた。彼の仕事中に家を離れるのをやめたのはこれが理由だ。

Roborock S5にはセンサーが13個ついていて崖から落ちたり、壁に当たるなどおかしなことが起きないように作られている。さらに、賢いマッピングとカーペット判別機能を持っている。しかし、毛深いマットは私のかわいいロボット野郎には少々荷が重いようだ。

私のロボット野郎が仕事をした足跡マップ

アプリを使って、ロボットが掃除する範囲と避けるべき範囲を指定できる。バッテリーが減るとRoborock S5は自動的に充電ステーションに戻る。

私の懸念はモップ機能だ。モップ自体はとてもよくやってくれるのだが、ロボット野郎はちょっと面倒をかける。絨毯マットにモップをかけないようにするためにはアプリでかなりのカスタマイズをする必要があった。

あるとき私はこんなことを思った、「おそらく、このアプリを弄り回しているより自分でモップがけした方が早いのではないだろうか」。でもたぶんそれは、モップ機能を使うのが初めてだったからだろう。侵入禁止区域と障壁の設定を保存したので次からは楽になるはずだ。

ほかにもここでは説明しきれないたくさんの機能があるが、ひと言でいえば、こいつは私の部屋のことを知っていてよく働いてくれる。現在Amazonにて546.99ドルで発売中。ちなみにRoombaは同じくAmazonで548ドルから1000ドル(約6.1万円〜11.1万円)。RoborockはXiaomi(シャオミ)をはじめと複数の投資家が支援している。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

メジャーリーグ30球場でレーダーシステム「TrackMan」をボールとストライクの判定に利用

野球にまだ少しでも関心のある人ならご存知と思うが、この米国人の全国民的レクリエーションについては、ファンの全員がそれをもっとおもしろくする独自の方法を知っている。ピッチクロックやマウンドの移動など、この最近やや落ち目のスポーツの人気を再び盛り上げるアイデアは数限りなくある。審判のロボット化も前から言われているが、インスタントリプレー(直前のプレーの再生)のようなものでさえファンが反発するこの世界は、テクノロジーの導入がきわめて難しい。

でも、独立リーグはそうでもないようだ。先月末にメジャーリーグが発表したアトランティックリーグとのパートナーシップにより、今後は新しい機能をメジャーに導入する前に独立リーグでベータテストのようなものをやることになった。テストされる大量の新ルールが米国時間3月8日発表されたが、中でも(TechCrunchなどから見て)一番注目されるのは、ボールとストライクの判定を助ける自動化システムだ。

そのシステムは、メジャーリーグの30球場すべてにすでに導入されているレーダーシステム「TrackMan」を利用する。これまでそれは投球の速さなどを計測して、結果をチームや放送局が利用していた。最近のテレビ中継では、直前の投球の再生でホームプレート上のボールの位置までわかるが、これもTrackManを利用している。これもときには、人間のアンパイヤにとって悔しい機能だろう。

でもMLBは、テクノロジーをボールとストライクの最終的判定者にすることにはボークを犯したようだ。テクノロジーはまだそこまで成熟していないと見なしたメジャーリーグは、来シーズンそのシステムをあくまでも審判のアシスト(補助)として利用する。

メジャーリーグはほかにも、いろんな機能をテストしている。MLBのシニアバイスプレジデントのMorgan Sword氏がESPNに語っている。「今実験している変更の最初のグループは、インプレーのボールと守備機会と走塁を増やすこと、そして選手の安全性の向上を目指している。それらをまず、アトランティックリーグで実際に使ってみたい」。

そのほか検討されているのは、内野手の交替の禁止、ピッチャーラバーとホームプレート間の距離延伸、ゲーム中にピッチャー本人以外がマウンドへ行くことの厳禁などだ。

画像クレジット: Mark Cunningham/MLB photos / Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

音声強化ウェアラブルの始まりを告げる、エルトン・ジョンの最後のツアー

伝説のミュージシャンのマディソン・スクエア・ガーデン(MSG)のショーに、ヘッドフォンで参加することの是と非

ライブ会場にとっては楽な時代ではない。かつては街で唯一無二の空間だったクラブ、アリーナ、その他のライブイベントスペースは、今や無限のオンデマンドエンターテイメントのオプションとの競争を余儀なくされている。50インチのスクリーン上の4K Netflixの便利さと競うのは、最高のスターたちにとっても、厳しいことだ。

だがそれは、スタートアップたちに開かれている素晴らしい市場だ。コネクテッドオーディエンスたちのライブ体験を大きく高め、ライブやツアーで多くのお金を稼ぐために、テクノロジー企業が立ち上がっている。このカテゴリーに参入する企業が増えていることには疑いがない、多くのプレイヤーたちがコンサート参加者たちに対して、パーソナル化された強化オーディオを提供しようとしているのだ。

中でもロンドンを拠点とするPeexは、一人の有名人の支持を得てその地位を急上昇させている。同社は昨年、エルトン・ジョン卿の最後のツアー”Farewell Yellow Brick Road”でその技術を公に利用することを発表した。それはスタートアップにとって初めての試練である。

確かに、Peexのヘッドセットは、ショーのVIPパッケージを購入する参加者に限定した数量しか用意されない。しかし20世紀で最も愛されたエンターテイナーの最後のツアー以上に、高い注目を集められる音楽イベントもそうそう存在しない。

一方、実証すべき価値は非常にシンプルだ。ライブ音楽は難しい。最も技術的に洗練された会場でさえ、会場の中のあらゆる席に完璧な音楽ミックスを届けることは、不可能であることは知られている。2万人を収容する会場でそれを達成しようとするならば、マディソン・スクエア・ガーデン のスタッフのような人たちでさえ頭を悩ますことだろう。

昨夜のショーで、私はその機材を手元で試すことができた。それはジョンの70回目の、そして少なくとも今となっては、伝説の会場における最後の登場だった。イベントの準備のために、Peexは主に照明器具上に、4つの送信機を設置した。全体の作業には約1日かかり、空間全体を埋めるようにカバー範囲を調整した。大変な作業である。

バックステージでは、ライブショーのフィードを5つのチャンネルに振り分けるミキシングボードを含む、(少なくともMSGの観点からは)小さなプロダクション設定が行われていた。入場時にVIP客は、首の周りに装着するデバイスRXを手渡される。その前面には大きなディスクがあり、その両側にヘッドフォンケーブルが2本ぶら下がっている。それはちょっと奇妙でなんとなく間抜けに見える代物だ ―― 同社がショーが始まる前に、私たちにバックステージを案内してくれたときに、この首のまわりに装着するものは一体何なのかを当然近くのスタッフに尋ねた。

完全な体験を得るためには、着用者はPeexアプリをiOSまたはAndroidデバイスにダウンロードする必要がある。そして携帯電話はBluetooth経由でデバイスとペアリングされる。アプリを用いて、ユーザーはチャンネルごとにリスニング体験をカスタマイズするのだ。チャンネルは通常楽器単位に分かれている。だがもちろんより大規模なバンドの場合には状況はより複雑になる、その場合にはアーティストが最終的な決定を行うことになる。

ジョンのバンドの場合、チャンネルはボーカル/キーボード(ジョン)、ギター、ベース、セカンドキーボード、そしてパーカッション/ドラム(3人のミュージシャンで構成)に分かれていた。音楽が演奏されているときに、ユーザーはアプリ上の5つのグラフィックスライダーを使って、それぞれのチャンネルを調整することができる。

アプリではいくつかの問題には出くわしたものの、その経験はキビキビとしたものだった。ヘッドセットの接続は途切れなかったものの、アプリは数回クラッシュした。基本的にパブリックベータ版なのだから、ある程度の初期バグは許容範囲だ。私たちに付き添った同社のCOO David Johnson氏は、私がショーに持ってきたサムスンS10との相性に何らかの問題があったのかもと指摘した。米国内でまだ未発売(現時点では米国時間3月8日が発売日とされている)のサムスンの携帯では、まだテストが行われていないのだ。まあ仕方がない。

技術全体は印象的なものだった。私が演奏者とヘッドフォンの間の遅延を感じることはなかった。Johnson氏は、この技術はライブオーディオを置き換えるのではなく、強化するようにデザインされていると語った。そのようなわけで、ヘッドフォンは会場内の周囲の雑音をあまり和らげる役割を果たすことはないが、全体として両者は、お互いをかなり補完する役割を果たす。

Peexを通してショーの手配をしてもらった役得のひとつは、席が驚くほど素晴らしいものだったということだ。前から11列目のほぼ中央だ。2時間半のパフォーマンスの間、エルトン卿を汗が届くほどの距離で観ることができたのだ。それはロックンロールショーを見るという観点からは素晴らしいことだが、今回のプロダクトを使うためには理想的な場所ではないのでは、という疑いを密かに抱いた。そこは間違いなく会場の中で、「強化」を最も必要としない場所なのだ。ノリノリのマイケル・スタイプ(R.E.M.のリードボーカル)が2席離れたところに座っていたが、ヘッドセットなしで心からショーを楽しんでいた。私は基本的に、彼のライブミュージックに対する意見を信頼しているのだ。

Peexの完全な体験を得るためにイヤホンを耳に差し込んだ。気が付くと、周囲の音を上回るように音楽の要素を分離させるために、私はボリュームを上げていた。私たちがコンサートの途中でロビーに出たとき、私はそれをいかに大きな音量に設定していたのかに気付いて少々ショックを受けた。会場の外では、そんな音量でヘッドフォンの音楽を聴くことは絶対にないだろう。

聴覚障害についての認識は、年配の来場者の間でますます重要な問題となっているため、この問題は同社にとって少々厄介なものになるだろう。Johnson氏は、Peexのウェアラブルには他社製のヘッドフォンを差し込むことができる端子があることを指摘した。したがってもし周囲のノイズを効果的に遮断するヘッドフォンを持っているのなら、たとえ不完全なものであっても、一つの選択肢にはなるだろう。

セット中の途中で、私たちはMSGの最上段席に案内された。ここではデバイスの効果がはるかに顕著になった。トンネルを通る際にFMラジオが中断するような、音声ストリームの途絶が2、3度起こったが、大部分は間違いなく良好で明瞭な音声だった。これまでは他の演奏の中に埋没しがちだったアコースティックギターの音などが、その輝きを発揮することができていた。

これは、同社にとって価値を売り込める点だと思うが、そのバランスをとるのは難しいだろう。Peexは、一般へのサービスの提供を始めると同時に、多くの会場やアーティストの提携を発表する予定である。しかし、同社はレンタル機器の使用を通して、基本的には全体のリスナーの一部だけを相手にするつもりだ。

当分の間、それはVIP参加者が使うものになるだろう。その夜デバイスを使用するために、比較的少額の料金を支払うのだ。しかし、高級ボックス席から遠く離れている人たちは別として、そうしたVIP客というのは、こうした技術を最も必要としない観客の集まりだ。

そうした観点からは、少なくとも、二次的なハードウェア製品を必要とせずに、その技術をスマートフォンにもたらすMIXhaloのような会社と競争することは、難しいかも知れない。だが、Peexのような会社がMIXhaloと比較して有利なことの1つは、FMラジオのようにブロードキャストされることによる、製品の相対的なスケーラビリティの高さだ。

しかしどちらの会社も直面しなければならない、別の重要な問題もある。これは昨夜のセットが4分の3ほど過ぎた頃、ジョンが聴衆に対して「ちょっとの間ソーシャルメディアに気を取られるのをやめてくれないかな」と懇願したときに、私には痛感されたことだった。ちょうどその時私は、ヘッドフォンを耳に差し込んで、Android上のミニミキシングボードを見下ろしている最中だったのだ。

ジョンも他のアーティストたちも、これに参加するためにはサービスを自ら採用する必要がある。だが世界をモバイルデバイスを通して体験するということを始めると、そのやり方がやがて世界を支配してしまうのではないかという危惧から逃れることは困難だ。

ある意味でPeexやMIXhaloのような製品は、利用者を効果的に音源に近づけることを可能にする。しかしながら、それは同時に、私の少し前方に陣取って、FaceTimeでおそらく家にいる家族にショーを実況していた客と似たような音楽体験のような気もする。ときには、ただヘッドフォンジャックを引き抜いて、その瞬間を生で感じなければならないのだ。

画像クレジット:Tim Mosenfelder / Getty Images

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(翻訳:sako)

Fitbitが新製品発表、注目は160ドルのスマートウォッチVersa Lite

昨年発表されたVersaFitbitにとって救世主となった。2年にわたって低迷していたFitbitはこのスマートウォッチで息を吹き返した。前四半期の決算によれば、スマートウォッチの出荷台数はこの2年で初めて対前年比プラスを記録した。

魅力に欠けるIonicの後でVersaがヒットした理由は、小型化、洗練されたデザイン、エコシステムの成熟などいろいろ考えられる。しかしいちばん重要な点は価格だった。Versaは200ドルだった。これはIonicより100ドルも安い。今回のVersa Liteの発表はFitbitがこの重要な教訓をよく学んだことを示している。このスマートウォッチは名前のとおり、Versaの機能限定廉価版で価格は160ドルだ。

CEOのJames Park(ジェームス・パーク)氏がTechCrunchのインタビューに答えて語ったところによれば、昨年のVersaのリリースでFitbitのスマートウォッチ事業は前年同期比で442%成長したという。スマートウォッチは現在、Fitbitの事業の44%を占めており、Fitbitは米国であのAppleに次ぐ2位のスマートウォッチ・メーカーとなった。パーク氏はこう述べた。

スマートウォッチ事業に関心を持つメーカーや起業家が増えている。しかしこの分野に飛び込むには大きなハードルがある。使いやすさ、シンプルさ、そして何より価格だ。

さらに低価格のVersa Liteの発表でFitbitにはさらなる追い風になるかもしれない。スマートウォッチに関心はあるものの200ドル支払うことをためらっていた層にアピールする可能性がある。他の各種スマートウォッチと比較しても、この価格確かに魅力的だ。もちろん低価格なりの妥協点もある。

この価格を実現するためにLiteはオリジナルのVersaからいくつかの機能を削除している。これには過剰な機能もったが、スマートウォッチとして重要な機能もあった。Liteがサポートしない機能には、会談で上った階数、水泳のラップタイム、音楽、Fitbitのトレーニングアニメーション、交換用リストバンド、料金支払いのためのFitbit Payなどがある。

読者がこうした機能を「あってもいいが、なくても構わない」と考えているならVersa Liteはまさにぴたりの製品だ。外観はサイズ、デザインとも現行Versaとほぼ同じだ。外見上すぐわかる差はオリジナルが3ボタンであるのに対して新しいLiteが1つしかボタンがない点だろう。デバイスの相対的な成功は、Fitbitのスマートウォッチ販売の興味深い証明の根拠を提供します。人々はカテゴリーで探しています。スマッシュヒットとまでは行かなかったもの、Versaがそれなりの成功を収めたことはFitbitのスマートウォッチ・ビジネスに大きな教訓となった。つまりこのカテゴリーの製品にユーザーが求めるものを明らかにした。

Versa Liteは堅実なデバイスだ。機能は多少限定されていいるが、以前のIonicをはるかに超えるプロダクトに仕上がっている。予約注文は米国時間の3月6日から受付が始まる (日本でも発売予定)。 Amazon、Best Buy、Kohl’s(コールズ)、Target(ターゲット)、Walmart(ウォルマート)などのリテール・チャンネルでも3月中に発売される予定だ。

VersaとIonicの発売は当分継続される。「もっと価格の高いハイエンドにも着実な需用がある。 これらの(高価格製品)もポートフォリオの重要な柱だ」とパーク氏は説明している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

地元検察はUberに刑事責任なしと判定、2018年の自動運転車歩行者死亡事故で

アリゾナ州ヤバパイ郡の検察は米国時間3月5日、2018年Uberの自動運転車がアリゾナ州テンピーで起こした歩行者死亡事故で同社に刑事責任がない、と判定した。

その自動運転のSUV車は予備の人間ドライバーが運転席に乗っていたが、道路を横断しようとしていたElaine Herzbergに衝突した。後に彼女はそのときの負傷により死亡した。その衝突事故を受けてUberは、その後9カ月、自動運転車の公道上のテストを中断した。

アリゾナ州マリコパ郡検事宛の書簡で検察官Sheila Polk氏は、調査に基づき、ヤバパイ郡検察事務所は、衝突のビデオが“起きた出来事を正確に描写していないようだ”、と判断した、と書いている。Uberに刑事責任を認める“根拠はない”が、Polkは、テンピーの警察にこの事案を差し戻し、その車両の予備ドライバーのRafaela Vasquez氏に関連するさらなる証拠を集めることを推奨している。警察は昨年、Vasquez氏が運転席にいながらスマートフォンでストリーミングビデオを視ていた、と言っていた。

Polk氏の書簡は、専門家によるビデオの分析により、運転席に座っていた人物がその夜、そのときの車のスピードと照明の条件やそのほかの関連要因のもとで、何を見たか、何を見たはずであるかを精密に捕捉すべき、と彼女の務める検察事務所は信じている、と書いている。

テンピーの衝突事故でUberに刑事責任はないとされたが、しかしThe Information誌の12月の記事は、Herzberg氏の死のほぼ1週間前にUberの管理職の一人が役員たちに送ったメールで、同社の自動運転車の安全性の問題に関して警告を発していた、と報じている。

本誌TechCrunchは今、Uberにコメントを求めている。

画像クレジット: Anthony Wallace/AFP / Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Augustのワイヤレスドアベルカメラ「View」が今月2.6万円弱で発売

スマートホームのメーカーであるAugust Viewは、CESでは何もローンチせず自分のブランドのささやかな紹介だけで終わった。でも同社に関する初期のリークは、もっぱらドアベルカメラに集中していた。

そのワイヤレスの新機種は、余計なもののないすっきりしたデザインになり、1440pのセンサーで精細度を高めている。基本的にはAugustの既存のドアベルカメラ製品がベースで、モーションアラート(動きを検知して警報)や、オンデマンドのストリーミング機能がある。

ビデオはズームして顔などをアップにできる。料金は、15日から30日までの留守の間は課金されない。

当然ながら、同社のほかの製品との互換性があり、その一連の製品はアパートなど、勝手にAC電源を引けない住まいに適している。

3月28日に230ドルで発売される。お安くはないが、Augustでスマートホームを揃えようとしている人なら買いだ。この新デザインは、表面カバーが4種の素材(サテン調ニッケル、オイル塗りブロンズ、サテン調真鍮、ミッドナイトグレー)×4種の色(黒、赤、青、白)で計8種ある。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ほとんど目に見えない補聴器でEargoが58億円超を追加調達

Eargoは究極の消費者向け補聴器ブランドになろうとしている。

小さくてほとんど目に見えないEargoの補聴器は、AirPodsスタイルの充電ケース付きで、聴力低下の汚名返上を手助けする。最新製品のBluetooth経由でカスタマイズ可能なEargo Neo(2550ドル)の発表から1ヶ月後、同社は5200万ドルのシリーズDラウンドを完了し、調達総額は1.35億ドルになった。

最新ラウンドには、新たな出資者であるFuture Fund(オーストラリアの政府出資ファンド)と、NEA、Charles and Helen Schwab Foundation、Nan Fung Life Sciences、Maveronらの既存投資家が参加した。

カリフォルニア州サンノゼ拠点のEargoは、2万人のユーザーを抱え、今回調達した資金を使ってベビーブーム世代をターゲットにした新製品の開発と革新を続けていく。新製品のEargo Neoは同社のハイテク補聴器として3番目のシリーズになる。最初のEargo Plus(1450ドル)は2017年に、次のEargo Max(2150ドル)は翌2018年に発売された。

「これはユーザーに真の変化をもたらす製品だ」とEargo CEO Christian Gormsenが本誌に語った。「私たちには消費者向け補聴器分野のトップブランドになるチャンスがある」

4800万人のアメリカ人、即ち人口の20%が聴力低下に悩まされている。しかし、一部のMedicare Advantageプログラムを除き、保険会社は補聴器を補償していない。価格は高いが(費用のかかる技術を使っている)、Eargoは補聴器をできるだけ求めやすくすること、聴力の低下を認めることは恥ずかしくないというメッセージを送ることを最優先に考えている」

「補聴器を使うのは敗北を認めるように感じる、まるで何かいけないことのように。そんな考えは間違っている。聴力低下は自然なこと、誰にでも起きる」とGormsenは言った。「最大の課題は業界全体の認識。聴力低下に関する知識があまりにも貧弱だ。こんな汚名を着せられた分野をどうやって変えるか? 現在の流通ルートは何もしていない。唯一の方法は教育とコミュニケーションを通じて知らせることだ。

「かなり前進したと考えているが、われわれが目指すのは4800万人のアメリカ人であり、まだほんの始まりにすぎない」

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

アップル製品が1.7億台中4600万台、2018年の全世界ウェアラブル機器販売で

アップル(Apple)製品がウェアラブル市場をリードし続けていることがIDCの最新レポートでわかった。Appleは昨年4620万台のウェアラブル製品を販売した。全世界のウェアラブル市場は2018年第4四半期に31.4%拡大して出荷台数は5930万台、年間では27.5%増の1億7220万台だった。AppleはQ4にもウェアラブルでナンバー1の地位を守り1620万台のウェアラブル機器を出荷した。そのうち1040万台がApple Watchだった。

スマートウォッチは2018年に54.3%増加し、ウェアラブル機器全体の29.8%を占めた。Apple Watchはスマートウォッチ市場の半分近くを占めた。

IDCは、Appleのウェアラブルにおける成長は今後も続くと予測しており、新しい「Apple Watch Series 4」の好調なスタートを理由に挙げた。

IDCは、最近ウェアラブルの「ear-worn」(耳装着型デバイス)カテゴリーを改訂し、ボタンのタッチやホットワード検出によってスマートアシスタントを呼び出せるワイヤレスヘッドフォンを追加した。その結果、Appleの「AirPods」、Googleの「Pixel Buds」、Boseの「QuietComfort 35 wireless headphones II」なども同カテゴリーに入った。

ウェアラブル成長の大部分はAirPodsなどのいわゆる耳装着型デバイスの増加によるものだった。例えばQ4に耳装着機器は前年同期から66.4%伸び、ウェアラブル市場の21.9%を獲得した。

IDCによると成長の原因には複数の要因が関係しており、中でもスマートアシスタントの普及と、Appleが先陣を切ったスマートフォンのヘッドフォンジャック廃止が大きいとみている。

「耳装着型デバイス市場は昨年著しく成長し、今年も続くと予想している」とIDCモバイル機器担当上級研究アナリストJitech Ubrani氏が声明で語った。「ヘッドフォンジャックの衰退によってこの種のヘッドフォンが必須になりつつあることで、メーカーにとって次の戦場になった。スマートアシスタントと耳内バイオメトリックの普及も加わり、腕やポケットの中のデバイス・エコシステムを補助するデバイスとして消費者に売り込む絶好の機会だ」

スマートウォッチは55.2%伸びて、ウェアラブルの34.3%を占めた。リストバンドはXiaomi(シャオミ)、Huawei(ファーウェイ)、Fitbit(フィットビット)などの参入によって30%のシェアを獲得した。

メーカー別では、シャオミがAppleの27.4%に次ぐ第2位となる12.6%のシェアを獲得した。同社は母国中国で依然として強く、同社のスマートウォッチ「Mi Band 3」も好調だ。ちなみにMi Band 3は、Q4に出荷されたリストバンドの30%以上を占めた。

シャオミに次ぐ3位はファーウェイで、248.5%と大躍進した。これはスマートフォンの「HUAWEI」」や「Honor」のシリーズがウェアラブルに数多くバンドルされたことに加え、そのほかの新製品も発売されたためだ。トップ5の残りはフィットビットとSamsung(サムスン)で、フィットビットは新製品の「Charge 3」および「Versa」などの積極的なプロモーション、サムスは自社のスマートフォンにウェアラブルをバンドルしたことが理由だ。サムスンはQ4にウェアラブルを400万台出荷した。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ファーウェイが米国政府の使用禁止に対抗して訴訟へ

Huawei(ファーウェイ)はシェア世界第2位のスマートフォン市場での使用禁止令が同社の急速な成功の妨げにならないことをすでに証明しているが、米国で戦わずして引き下がるつもりはない。消費者電子機器の巨人は今週中に米国政府を訴訟することを発表する計画だ。

このニュースは今朝のNew York Timesで報じられ、2名の匿名消息筋の情報に基づいている。本訴訟は、米国政府による長期にわたる使用禁止令のために、同社の全米に向けての5G推進に先立ち、政府の基盤プロジェクトから同社製品が排除されていることに対する抵抗だ。禁止令は全米の通信会社や小売業者にもHuawei製品の販売を躊躇させている。

記事によると訴状はテキサス州東地区に提出される予定で、当地はHuaweiの米国本社所在地であるだけでなく、特許ゴロの安息地としても知られている。

米国政府はHuawei中国政府とのつながりの疑いから同社製品の使用を以前から薦めていない。一方先週金曜日(米国時間3/1)にカナダ司法省は、昨年末バンクーバーで拘束したHuwaei CFOの 晩舟(もう ばんしゅう、Meng Wanzhou)氏の米国への引き渡しを許可した。孟氏の容疑は同社がイランへの制裁を回避した疑いに端を発する。

本日の報道によると、孟氏はカナダ当局が彼女を尋問、勾留する前に憲法上の権利行使について助言しなかったとして民事訴訟を起こした。

本誌はHuaweiに本訴訟に関するコメントを求めている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

アップル対クアルコム、4月の10億ドル訴訟に先立って別の特許裁判がスタート

Apple(アップル)がQualcomm(クアルコム)を訴えた。と思ったらQualcommがAppleを訴えた。するとAppleがQualcommを反訴。QualcommもAppleを反訴。

この2年、AppleとQualcommの関係はだいたいこういう具合に推移してきた。こうした特許訴訟は一部の市場でAppleにかなりの不便をもたらしている。2017年1月、AppleはQualcommのビジネスの核心的をなすIP(知的所有権)のライセンス料金を不当とする訴訟を起こした。その結果Appleは自社デバイスの製造にあたってQualcommのIPを避けることとなった。

このドラマは次第に興奮の度合いを強めており、いよいよ数週間後にクライマックスに突入する。つまりAppleの10億ドルの訴訟の審理が始まる。これに比べるとやや地味だがAppleがモデムでQualcommの特許を侵害していたかどうかを判断する裁判がサンディエゴ連邦地裁で開始される。

2017年半ばから2018年後半にかけて販売されたiPhoneの消費電力と起動時間の改善に関するこの事件を審理するのはDana Sabraw連邦判事だ。Reuters(ロイター)の記事によれば、Qualcommはこの期間に販売されたiPhoneの特許権侵害によって1台あたり最大1.41ドルの損害を受けたと主張しており、これが認められればQualcommは総額で数千万ドルを得る可能性がある。

Qualcommは、Appleに対してすでに小さな勝利を収めている。同社は、iPhoneの一部の機種についてドイツと中国で販売差し止めを勝ち取った。しかし中国での販売差し止めはまだ実行されておらず、Appleはドイツでは判決に従ってiPhoneに若干の修正を加えた。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

最大転送速度は40Gbps、USB 4ではThunderboltとUSBが完全統合

接続ケーブルをめぐる悪夢も過去のものになるかもしれない。USBの規格を決めるUSB-IF(USB Implementers Forum)によるUSB 4.0のスペックが判明した。われわれの姉妹メディア、Engadgetの記事によれば、USB 4.0はインテル(Intel)のThunderbolt 3テクノロジーを利用するという。

スペックがが正式に決定されるのは今年後半になるが、USB 4の転送速度は40Gbpsとなるはずだ。USB-IFではUSB 4のプラットフォームとしてThunderbolt 3を採用した。

2011年にインテルはアップル(Apple)と協力して最初のThunderboltインターフェイスを発表した。これは他の規格より高速で汎用性が高く、複数のプロトコルをサポートするインターフェイスだった。Thunderboltケーブルはディスプレイ、HDDその他多様なデバイスの接続に利用でき、デバイスをデージーチェーン接続することも可能だ。これはグラフィックスカードを外付けするときなど非常に役立つ。

インテルはThunderbolt 3でUSB 3.1 Gen 2のサポートを追加した。これでUSBデバイスをThunderboltポートに接続できるようになった。またUSB-Cポートが採用された。簡単にいえば、ThunderboltポートはThunderbolt機能を備えたUSBポートになったわけだ。あらゆるUSBデバイスがThunderboltポートで使用できることになる。2016年10月に発表されたMacBook ProはThunderbolt 3を実装しているため、多くのユーザーがすでに利用しているはずだ。

しかし、Thunderbolt 3ポートにUSBデバイスを接続しても自動的にThunderboltデバイスに変身するわけではない。たとえばThunderboltポートにUSB 3.0 を接続することはできるが、転送速度はUSB 3.0の制限内となる。

Thunderbolt規格は技術的に優れていたが、DデバイスのメーカーはIntelにロイヤルティーを支払う必要があるため各種のデバイスへの普及という点ではUSBのほうが上だった (訂正:Thunderbolt 3はすでにロイヤルティー・フリーになっていたがスペックが正式に公開されていなかった。またThunderboltを実装するには専用チップを必要とするためUSBの場合より高くつくことが多かった)。

数年前にインテルはThunderbolt規格をロイヤリティーフリーにすると発表した。そこでUSB-IFはThunderbolt 3規格をUSB 4で利用することにしたわけだ。

USB 4.0は、最高100Wの電力供給、40Gbpsの転送能力をもち、2台の4Kディスプレイまたは1台の5Kディスプレイを駆動するのに十分なビデオ帯域幅をサポートする。USB 4は、USB 3.x、2.x、および1.xと下位互換性がある。

Type-CコネクタのUSB 3.xケーブルを持っていてもUSB 4ケーブルにアップグレードする必要があると思われる。Thunderbolt 3は、USB 4と基本的に同じものなので問題なく機能するはずだ。そうであっても、USB 3.xポートとUSB 4ポートを簡単に判別できる方法があった方が便利だ。

インテルはThunderboltという名称を廃止する予定はない。Thunderboltデバイスはインテルによる認定が必要だ。一方、USBデバイスの製造には特に認定を取得する必要はない。

接続規格をゼロから考えるならUSB 4は理想的なソリューションだろう。一つのポート、一つのケーブルが「すべて統べる」わけだ。あとはケーブルのメーカーが公式規格をきちんと守るよう期待する。横着者がこっそり機能を削った安い製品を出さないよう祈りたい。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ニオイ“可視化”センサー開発のアロマビット、ソニーらから2.5億円を調達

ニオイを可視化するセンサーを開発、サービスを提供するアロマビットは3月4日、総額2億5000万円の資金調達を行ったことを明らかにした。第三者割当増資の引受先は、ソニーのコーポレートベンチャーキャピタルSony Innovation Fundと、既存株主で名称非公開の事業会社だ。

アロマビットは2014年12月の創業。小型のニオイイメージングセンサー、つまりニオイを可視化できるセンサーを開発し、センサーを使った製品や、取得したデータをもとにしたサービスを提供するスタートアップだ。

アロマビット代表取締役の黒木俊一郎氏によれば、社名には「共通言語による情報共有が難しかったニオイ(アロマ)を、データというデジタル言語(ビット)を使うことで言語化し、ニオイに関するコミュニケーションを楽にしたい」という思いが込められているそうだ。

目には見えないニオイを可視化する、と言われてもイメージが湧かない人も多いかと思うので、少しそのセンサーの仕組みを説明してみたい。

従来のガスセンサーは、ニオイに含まれる特定の成分(分子)に反応する。アロマビットが開発するニオイ識別センサーは従来型センサーと異なり、生物の鼻のように、さまざまな成分を含むニオイをパターン認識することが可能だ。

ヒトの鼻なら約300〜400のセンサー(嗅覚受容体)があり、ニオイ分子に反応する。生物はその複数のセンサー反応の組み合わせパターンで、嗅いだニオイを判断する。アロマビットのニオイイメージングセンサーは、これを機械で模倣したものだ。

このセンサーは、クォーツ時計やコンピュータのクロック発振回路にも使われる水晶振動子をセンサー素子として、その上にニオイ分子を吸着する吸着膜が設置されている。ニオイ分子が膜の表面にくっついたり離れたりして質量が変わると、素子の共振周波数も変化するので、その変化を計測することでニオイ分子の様子をデータとして捉えることができる。

アロマビットでは3年半ほどの初期開発を経て、この1〜2年は企業向けにニオイセンサーやシステムなどの提供を行ってきたが、2018年12月にはデスクトップ型のニオイ測定装置「Aroma Coder – 35Q」を製品化した。Aroma Coderでは、35種類のニオイ吸着膜が35素子に搭載されている。35種のセンサー出力データを一度で1つのパターンとして取得でき、合計で約5京通り(5×10の16乗)以上の「ニオイ可視化パターン」出力が可能だ。

Aroma Coderでは35素子を1つの装置に搭載したことで、測定時間を数分に短縮。よりニオイの「解像度」が高く、複雑なニオイを可視化できるようになっているという。

またアロマビットではデスクトップ型製品と同時に、企業が自社製品にニオイセンサー機能を搭載できる組み込み型センサーモジュールを、システム開発キット(SDK)として提供開始している。これは顧客企業がターゲットとなるニオイを指定すれば、それに応答しやすいニオイ感応膜5種類の組み合わせをアロマビットで選定し、カスタム化したセンサーモジュールと測定ソフトウェアを提供してくれるというもの。製品開発が進んだあかつきには、月産数個〜数万個で標準センサーモジュールの量産化も可能だ。

黒木氏は「この精度のニオイイメージングセンサーを小型軽量・低コストで、量産型で提供できる企業は、グローバルでもまだ出ていないので引き合いも多い。理論や実験段階でなく、製品が出ている点が我々の強み」と話す。

水晶振動子を素子に採用したのは価格弾力性の高さと量産可能性の高さからだというが、黒木氏は「今後はMEMS(微小電子機器システム、マイクロマシン)や半導体などにも応用したい」とも話している。

これまでに累計400社での採用がある同社プロダクト。導入されている業種は食品、日用品、コスメなど想像が付きやすいものから、産業機械、ロボティクス、モビリティ、農業など、ニオイの情報をどう使うのか、にわかには想像が付かない分野にも広がっている。

用途としては品質管理、商品開発などがあり、「これまで人に頼ってきた製品の品質管理を、データとして客観的に判別する」「ある香りにAという成分が含まれていることは分かったので、作りたい香りから逆算して足りない成分Bを知るために分析する」といった使われ方をしているそうだ。

産業機械、ロボティクスの分野では、産業油の変化をニオイで感知することでクオリティコントロールを行うといった例も。またモビリティの分野では今、MaaS(Mobility as a Service)展開が盛んで、車内外の異常検知などを目的にさまざまな車載センサーが積まれるようになっている。その一環としてニオイセンサーも取り上げられているようだ、と黒木氏は述べている。

黒木氏は「ニオイの可視化、センサーによるニオイデータのデジタル化は、五感の中でも一番遅れていたが、今後、大手企業が参加し、AIや機械学習によるニオイのビックデータ分析も始まることで、市場ができ、ニーズも一層増える分野になる」と述べ、「このトレンドを捉え、ニオイの可視化分野で、グローバルでデファクトスタンダードとなることを目指す。ニオイ可視化で世の中の役に立ちたい」と話している。

アロマビットでは、2017年2月にみらい創造機構と個人投資家らから1億5000万円を調達。その後、今回のラウンドにも参加している匿名の事業会社から資金調達を行っており、今回の調達はそれに続くものとなる。

今回の調達により、アロマビットでは既存製品の高機能化や小型化、量産化など開発を進めるほか、「セールスマーケティングのグローバル化を図り、北米、ヨーロッパなどにも進出したい」と黒木氏は述べている。また、ニオイのデータベース拡充を自社で行うことで、「ニオイセンサリングと可視化の分野で、世界レベルの競争優位性を確立したい」ということだった。

サムスンがついに魅力的なBluetoothイヤフォンを出してきた

(訳注:この記事は米国での状況に関するもの。3月4日現在、日本ではS10の発売の詳細はまだ発表されていない)

そう、この記事はちょっと遅すぎたようだ。サムスンはGalaxyの新モデル、S10を予約注文すると新しいBluetoothワイヤレスイヤフォンの「Galaxy Buds」が無料で付いてくるキャンペーンを実施していたが、Galaxy Budsの予定数量はもう終了してしまった。このイヤフォンは129ドルで、特にGalaxyデバイスを持っている人におすすめだ。

S10をレビューしている多くの記者がここ1週間ほどGalaxy Budsを試用している。私もその1人だ。サンフランシスコからバルセロナ、そしてニューヨークに戻る間、このイヤフォンは私の耳に心地よくフィットし、私は片時も離さずに使い込んできた。

サムスンがワイヤレスイヤフォンを出すのはこれが初めてではない。しかしこの製品によって、サムスンはアップルの計画書より何ページも先へ進んだと言えるだろう。

サムスンは製品に機能を詰め込みすぎる傾向にある。しかしGalaxy Budsは、「シンプルに動く」というアプローチのAirPodsから大いに影響を受けている。「シンプルに動く」というアプローチは一般に携帯の魅力となるが、イヤフォンとして最もよいのは存在感がなくなることだ。その面で、Galaxy Budsには魅力がある。

Galaxy Budsのケースを開けた瞬間に、AirPodsとの類似性が明らかになる。ケースを開けるとGalaxyデバイスの画面にダイアログが開くのだ。AirPodsと同様にどのBluetoothデバイスと組み合わせても使えるが、自社製品と組み合わせると最高の使い勝手になる。これぞエコシステム。Galaxy以外のAndroidデバイスでGalaxy Budsをちゃんと使うなら、サムスンの「SmartThings」、または「Galaxy Wearable」アプリをダウンロードする必要がある。

充電ケース自体はAirPodsのケースより少し大きくて丸みを帯びているが、ジーンズのポケットに入れて持ち運ぶには問題ない。個人的にはアップルの滑らかなデンタルフロスのようなデザインよりも、この丸っこい形のほうが好きだ。

Galaxy BudsのケースがAirPodsのケースより明らかに優れている点が2つある。

  1. 外側に充電ライトがある
  2. ワイヤレスで充電できる

アップルがAirPods 2でワイヤレス充電に取り組んでいるのは間違いない(そういえばAirPowerってありましたよね?)。ワイヤレス充電に関してサムスンはAppleにパンチをお見舞いした。しかも、S10の背面にケースを置くだけで充電できるWireless PowerShareを実現している。これで、持ち歩くケーブルが1本少なくて済む。

バッテリー切れの心配もしたくない。Galaxy Budsは左右それぞれ58mAh、ケースは252mAhなので、Buds自体で6時間、ケースから充電すればさらに7時間使えることになる。丸1日、バッテリー切れになることはなかった。

Galaxy Budsの着け心地は良く、シリコンチップで耳の大きさにさらにフィットする。適度に密着して、周囲の音を取り込みつつパッシブノイズキャンセル効果もある。耳にぴったり収まって、ジムで使ってもずれることはなかった。サムスン傘下のAKGが調整したサウンドはソリッドだ。Galaxy Budsは私がこれまで聞いてきた中で最高のワイヤレスイヤフォンではないが、歩き回ったりコーヒーショップで過ごしたりするには申し分ない。

まとめると、Galaxy Budsはちょっとしたうれしい驚きだし、Galaxyのエコシステムに追加されたことには大きな意味がある。Galaxy Budsがあればヘッドフォンジャックはもう要らないとサムスンを説得する材料になるかもしれない。そうはならないだろうが。

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(翻訳:Kaori Koyama)

MWC 2019に見るモバイル技術の多様化でスマホ以外にもハイライト

長年、話だけが先行した5Gが、やっとMWC 2019に到着した、かのようだ、あくまでも。バルセロナは、今年後半に発売される数種の5Gハンドセットの打ち上げ台になった。と、これもあくまでもぼくの個人的感想だけど。

もうひとつ、話題が先行していたスマートフォンの技術、フォルダブルディスプレイも、ついに日の目を見た。数社がフォールダブル機を発表し、中にはハンドセットとして価格が決まってるものもあったが、コンセプトだけというところも多かった。そしてその多くは、ガラスケースの中に鎮座していた。

そのほかの注目すべきトレンドは、カメラ、AR/VR、そしてありとあらゆるセキュリティだ。以下に、この世界最大のモバイルショーの傑作と駄作の両方をご紹介しよう。そして今年はその両方が、これから先の変化に賭けていたのだ。

5Gの成熟

MWCの話題としては長年主役級だったが、今年は実物の5Gハンドセットがついに登場した

Huawei Mate X
LG V50 ThinQ 5G
Samsung Galaxy Fold
Samsung Galaxy S10
Xiaomi Mi Mix 3
ZTE Axon 10 Pro 5G

昨年、5G列車に最初に飛び乗ると約束していたOnePlusはハンドセットを発表しなかったが、プロトタイプをデモし、クアルコム(Qualcomm)や英国のEEと共催する5Gアプリのコンテストを発表した。

未来は折りたたまれていたか

折りたたまれていたのは、顧客のお財布だろう。最初のフォルダブルが、平均2000ドル弱という価格で登場した。それはまるでスマートフォンを2台買うようなお値段だが、確かにスマートフォンが2つあると考えてもよい。でも実際に2000ドルの価値があるのか? それはまた、別の問題だ

Huawei Mate X
Samsung Galaxy Fold

TCLはプロトタイプを出品して、来年中にはもっとスペース効率の良い製品を出す、と約束した。オッポ(Oppo)も、まだまだプロトタイプの段階だ

AR/VR/MR

世界最大のスマートフォンショーの最大のヒットは、スマートフォンではなかった。マイクロソフト(Microsoft)はこのイベントを利用して、同社HoloLensの第2世代機をローンチした。それは、ビジネスにしっかりフォーカスしたヘッドセットだ。

Microsoft HoloLens 2
Microsoft Azure Kinect
Vive Focus Plus
Qualcomm XR chips

セキュリティ

同社の5G機器をめぐってセキュリティの脅威が喧伝されているHuaweiには、言いたいことが山のようにあった。その点では欧州委員会(EC)のデジタルコミッショナーも同じだ。一方、Androidは今後ますます、パスワード不要のログインを目指すようだ。

その他

Energizer18000mAhスマートフォン
Lightはスマートフォンのカメラから自動運転車に事業拡張
HTCのブロックチェーンフォーンを法定通貨で買える
Sprint5月に4都市で5Gサービス開始
Facebookがインターネットインフラプロジェクトを拡張
microSD Expressフォーマットは超高速な転送と長いバッテリー寿命を約束
スマートフォン全体がウェアラブルになるNubia

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

HTCのスタンドアローンVRヘッドセット「Vive Focus」で悪者たちをぶん殴る!

今年のMWCでHTCが第7会場にショップを開いたことは、効果的だ。サムスンやファーウェイなどの皆様方と肩を並べることをやめて同社は、周辺機器やアクセサリーのメーカーたちの中へ紛(まぎ)れ込んだ。確かにブロックチェーンハンドセット「Exodus 1もニュースだったが、ショーの本当のスターはViveだった。

1月のCESで「Vive Pro Eye」を披露した同社は、今週のバルセロナのショーでは決意を見せるかのように軽量級で勝負した。すなわち、「Focus Plusのローンチだ。このヘッドセットは、HTCのスタンドアローンVRの最新の試みで、「Oculus Go」や「Quest」などに近いものだ。

その最新の装備は、ビジュアルとコントローラーが良くなり、後者はカメラを使う従来型のモーショントラッキングを超音波を利用するフィードバックシステムで置き換えた。米国時間2月26日の午後、会場でちょっと試してみたが、なによりもまず言いたい、言う意義があると思うのは、世界最大のモバイルカンファレンスの会場が、どんなものにせよ消費者向けテクノロジー製品をテストするための最適の場所ではないことだ。それが新製品のVRデバイスなら、なおさらだ。文句、終わり。

また、高価な「Pro Eye」と比べるのもアンフェアだ。そっちも会場でホームランダービーをちょこっと試してみたが、前と同じくSnapdragon 835を搭載したそいつは、そもそも製品としての狙いが違う。HTCはその多機能性を熱心にデモしていたが、その点でもFocusの出番ではない。そこで、Focusで試したのはヘルスケアシミュレーターと戦闘ゲームだった。

前者(ヘルスケア)は明らかに、Focus PlusをHoloLens 2の横に並べる気だ。もちろんVRヘッドセットとマイクロソフトのARデバイスではアプリケーションが全く異なると思うし、599ドルという安くはないお値段もHoloLensが求める価格の数分の一にすぎない。

その医療アプリ「SimforHealth」は、なかなかおもしろい。医師や看護師などの知識や心構えを現実世界のいろんな状況に対して準備させるための一連のシミュレーションがあって、その1つだ。コントローラーの操作を、物をつまむなどの現実の動作としてできるようになるまで、慣れが必要だ。レスポンスタイムにも、ちょっと問題がある。超音波フィードバックという新しい技術は、高度なカメラ追跡ほど正確でないのかもしれない。それとも、自分の設定ミスか。いずれにしても、こちらもやはり慣れが必要だ。

ゲームの「Superhot VR」は、まだましだった。同社はFocus Plusだけでなく5G Hubのデモにもこれを使っていた。殴る撃つなどの単純な力づくのアクションだから、セットアップもうまくいく。だからこのゲームは、デモに向いている。ただし会場の混みあったブースで想像上の悪漢たちを殴りまくるのは、やさしいとは言えない。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

テスラは販売をネットに限定し販売店をすべて閉鎖

Tesla(テスラ)は今後、すべての販売をオンラインで行う。営業戦略のこの劇的な変化により、販売店は閉鎖されて一部のレイオフが生ずる。これらはすべて、Model 3の原価、ひいては販売価格を下げるための方策だ。

TeslaのElon Musk(イーロン・マスク)CEOは閉鎖される店舗数をまだ発表していない。一部の店は残して、情報センターやショウルームとして使うそうだ。職を失うことになる小売部門社員の数も発表されていない。

マスクCEOは曰く「一部の店舗を閉鎖するので、そのぶんの社員数は減る。そのことには、疑問の余地がない。この車の原価を大きく下げ、買いやすい価格で提供する方法は、ほかにない。いろんな方法を検討したが、小売部門の社員を減らす以上の良策はない」。

オンライン販売への全面的な移行とそのほかの費用効率向上策により、全車種の価格を平均6%下げることができ、Model 3を3万5000ドルで提供できるようになる。

しかしそれと同時にTeslaは「整備士や修理工などのサービス系技術者を増員する」と米国時間2月28日の記者会見で発表した。その人数は不明だ。

実質的な試乗ニーズを減らすために、新しい顧客は1週間1000マイル(1600キロメートル)以内までの走行なら、いつでも車を返品し、代金を返金してもらえる。

マスク氏曰く「つまり誰でも車を1週間無料で使えて全額を返金してもらえる。返金手続きを超簡単にして「返金」ボタンをクリックするだけにする」。

2月28日の発表の中には、Model 3の3万5000ドルバージョンもあった。最大走行距離220マイル(354キロメートル)、最高時速130マイル(210キロメートル)だ。

なお、新たに発表されたModel 3 Standard Range Plusバージョンは、走行距離240マイル(386キロメートル)、最高時速140マイル(225キロメートル)で、停車状態から時速60マイル(97キロメートル)までの加速に要する時間は5.3秒である。その最高価格の豪華インテリアバージョンは、インセンティブ前で3万7000ドルだ。

画像クレジット: Tesla

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

量子コンピュータは速いだけじゃない

古典的なコンピュータのパラダイムは、常にスピードで語られてきた。少なくとも一般的なイメージでは。もちろん実際には、古典的なコンピュータの目標は、もっとずっと複雑なものになってきている。たとえば、より大きな、より多くの、あるいはより微妙なデータから、意味のある洞察を取り出せるような能力の向上、といったものだ。しかし、われわれがスマートフォン、タブレット、ラップトップを評価する際に気にするのはスピードだ。つまりどれだけ速いかということ。それによって、どれが「最高」なのかが決まる。

というわけで、この妄信的なものさしが、量子コンピュータの議論に持ち込まれるのも不思議ではない。量子コンピュータに関する一般的な記事を読むと、ほとんどスピード、スピード、スピードという語で埋まっている。スピードしか気にしていない。そのように考えている限り、量子コンピュータがわれわれに何をもたらしてくれるのか、理解することはできないだろう。

なによりも、古典的なコンピュータのスピードへの関心は、現在では時代遅れで潜在的に有害であるとみなされている。というのも、スピードの追求は、現在最も火急の研究開発課題とされているエネルギー効率から目をそむけさせるからだ。

このような固定観念によって量子コンピュータを見ることは、本質を突いたものではなく、古典的なコンピュータと量子コンピュータの性質の違いを描き出すものではない。

古典的な計算機の限界と、それを量子コンピュータによってどのように克服できるのか、ということが多くの人の関心を集めている。しかしスピード、トランザクションのスピードに、あまりにも興味が集中してしまう。私は実際に、量子コンピュータを使えば取引業務がどれくらい速くなるのか、と聞かれたことさえある。データセンターにある標準的なラックマウント型コンピュータと量子コンピュータの速度を比較できるチャートを見せてほしい、と言われたこともあるが、それはまだマシなほうだ。

もちろん、それは、この驚異的な新技術を評価するために取るべき手段ではない。むしろ、われわれは、これまでに考えたこともなかったようなやり方で、問題を解決する方法を検討すべきなのだ。量子コンピュータは、そのためにある。これらのマシンは、現在も解決できている問題を、単により迅速に解決するために設計されたのではなく、想像したことさえなかったような問題を解決するためのもの。まったく新しい能力を備えた、まったく新しいカテゴリのマシンなのだ。

古典的な「巡回セールスマン問題」を考えてみよう。訪ねるべき町のリストと、それぞれの間の距離が示されたとき、すべての町を巡って元の場所に戻ってくる最も短い経路を求める、というものだ。

われわれは、自身の想像力を使って、量子コンピュータによって可能になることを想像してみる必要がある。

あるいは、「ケーニヒスベルクの7つの橋」について検討してみよう。このかつてのプロイセンの都市は、プレゲル川の両岸にまたがっていた。その川の中には2つの島があり、それらが互いに合計7つの橋でつながれていた。それらの橋を必ず1度だけ通って、街を渡り歩く方法を見つけ出すことができるだろうか?Leonhard Euler(レオンハルト・オイラー)氏は、1736年に、それが不可能であることを証明した。この難問に挑むには、数学的な分析の技法を使わなければならなかった。そして、この不可であるという発見が、今日「グラフ理論の最初の定理」として広く知られている定理の創出に、そしてネットワーク理論の最初の証明に、Euler氏を導いた。

この答えがない奇妙な問題が、数学的なブレークスルーをもたらしたのだ。もしオイラー氏が量子コンピュータを持っていたら、どうだっただろう? 役に立っただろうか?それは私には分からないが、これだけは言える。われわれは、自身の想像力を使って、量子コンピュータによって可能になることを想像してみる必要がある、ということ。スピードに固執した古典的なコンピュータの世界とは決別すべきだ。そこには何の類似性もない。

量子コンピュータは、その設計において、古典的なコンピュータとはまったく異なっていて、私たちが夢見たこともないようなことを実行する能力を持っている。

量子コンピュータは古典的なコンピュータを置き換えるものではない。これからも両方が使われ続けるだろう。それらは異なった用途のために設計されているからだ。

古典的なコンピュータは、0か1かで表されるビットを使う。そろばんを使うのと基本的に同じ方法で計算を実行するわけだ。そのため、古典的なコンピュータで解くことのできる問題の種類は、事実上われわれが手で解くのと同じ。つまり、古典的なコンピュータが得意とする問題の種類は、演算にかかる時間が入力のサイズに応じて急激に大きくならないようなものに限られることになる。言い換えれば、もし入力に応じて評価時間が指数関数的に増加するような場合、古典的なコンピュータが解答を導き出す頃には(もし答えが出ればの話だが)、あなたはすでに死んでいる、ということも考えられる。

量子コンピュータは、キュービット、つまり量子ビット使用する。1つのキュービットは、その古典的なコンピュータとまったく同じように、0または1の値を取ることができる。ただし、それら2つの状態を重ね合わせた状態になることも可能だ。それは、以下のように書くことができる。

a|0⟩ + b|1⟩

ここで、aとbは複素数の値を表す。キュービットを計測すると、|a^2|の確率で0となり、|b^2|の確率で1となる。量子コンピュータは、キュービットの状態にユニタリ変換を適用して計算を実行する。そうして、これら2つの要素を組み合わせることにより、手計算でも、古典的なコンピュータでも不可能な計算の可能性が生まれる。これには、より優れた因数分解、検索、および量子力学のシミュレーションなどが含まれる。これらすべてが、計算機にとってまったく新しい時代の到来を意味している。それは、今後10年間で、これまでの計算機のすべての歴史よりも大きな変化をもたらすと、私は信じている。

速度に固執するのではなく、どのような種類の計算上の課題が量子コンピュータのスイートスポットとなるのかを想像してみる必要がある。もし、量子コンピュータが昔からある計算のために生まれたのでないとすれば、過去の問題を解決するために適したものでもない、ということになる。量子コンピュータは、まだだれも夢にさえ見ていなかったような、まったく新しい問題を解決するためのものなのだ。

画像クレジット:Syaheir AzizanShutterstock

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

BlackBerryがTwitterを特許侵害で訴訟

かつてのスマートフォンメーカーBlackberryがTwitterを特許侵害の疑いで訴えた。聞き慣れた話のような気がするなら、BlackBerryは昨年Facebookも特許侵害で訴えている

Blackberryは訴状で、同社の特許6件をTwitterが侵害し現在も継続していると主張しており、その内容にはプッシュ通知、メッセージスレッドのサイレンス通知、モバイル広告技術などが含まれている。

Blackberryは自らモバイルメッセージングのパイオニアを名乗り、Twitterは「Blackberryのイノベーションを取り入れたメッセージング・アプリケーションを作り、Blackberry製品に決定的かつ商業的成功をもたらした特長を強化した革新的なユーザーインターフェースや機能を多数利用している」

先に書いたように、昨年BlackberryはFacebook も特許侵害で訴えている。当時同社は、セキュリティー、ユーザーインターフェース、高バッテリー効率近況アップデート、ゲーム内モバイルメッセージング、Twitterと同様のサイレンス通知など7件の特許を挙げた。数ヶ月後の昨年9月、Facebookは自らもBlackBerryを訴え、自社の特許5件の侵害を主張した。いずれも係争中。

Blackberryはかつてスマートフォンの巨人だったが、 2016年にハードウェアの自社製造を終了した。そして2017年、BlackBerryはスマートフォンの新機種KEYoneを発売した。ソフトウェアに専念するという同社の新たな戦略の下、TCLが製造した。

Twitter、BlackBerry両社ともコメントを拒んだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook