アップル、正体不明のAirTagを発見するAndroidアプリ「Tracker Detect」をリリース

Apple(アップル)は、プライバシー保護の観点から、アップル製品を所有していない人が近くにある身に覚えのないAirTag(エアタグ)を特定できるようにするための新しいAndroidアプリ「Tracker Detect」をリリースした。追跡されているかもしれないと思ったユーザーは、このアプリを使って近くにあるAirTagをスキャンすることができる。もし見つかったら「unknown AirTag」としてフラグが立てられる。検出されたアイテムトラッカーが10分以上アプリユーザーと一緒に移動していることがわかった場合、ユーザーは検出されたアイテムトラッカーから音を出して、その場所を特定することができる。そこから、そのアイテムトラッカーについて詳しく知る方法と、バッテリーを取り外して無効にする方法が案内される。

「Tracker Detectは、所有者から離れた、AppleのFind Myネットワークに対応しているアイテムトラッカーを探します」とアプリの説明にある。「対象となるアイテムトラッカーには、AirTagや他の企業が提供する互換性のあるデバイスが含まれます。誰かがAirTagや他のデバイスを使ってあなたの位置を追跡していると思われる場合、スキャンしてそれを見つけることができます」。

差し当たって、Google Play StoreのTracker Detectアプリは、AppleのAirTagやChipolo ONE Spotを含む、Find Myネットワークをサポートしているアイテムトラッカーと互換性がある。例えばTile(タイル)のような、Find Myネットワークと互換性のない他のトラッカーは対象外だ。

また、このアプリではAppleアカウントに関連付けられたAirTagをユーザーが追跡することはできないため、実際にはAirTagの機能をフル活用できていない。

「AirTagは業界をリードするプライバシーとセキュリティ機能を提供し、今日、当社はAndroidデバイスに新しい機能を持ってきます」とAppleの広報担当は電子メールでTechCrunchに述べ、 新アプリの提供開始を認めた。「Tracker Detectは、Androidユーザーが、知らないうちに自分と一緒に動いているかもしれないAirTagまたはFind Myをサポートしているアイテムトラッカーをスキャンできるようにします」。

もしユーザーが身に覚えのないAirTagを見つけた場合、iPhoneや他のNFC対応デバイスでそれをタップすると、AirTagを無効にする方法が案内される。Tracker Detectアプリのユーザーは、アプリ内でAirTagの詳細とそれらを無効化する方法を確認することができる。

この新しいアプリの導入は、AppleのAirTagが、バッグやコートの中に入れておけるほど小さいため、密かに人を追跡するために使われるのではないかという懸念を受けてのことだ。2021年初めのワシントン・ポストの報道では、AppleのAirTagによって、相手に気づかれずにストーキングすることが容易になる可能性がある、とされている。他にも、この追跡デバイスが個人を密かに監視するために使われる可能性があると主張する報道が多くあった。

こうした報道を受けてAppleは、所有者の元を離れたAirTagが動いたときに音が鳴るまでの期間を更新した。発売当初は3日間としていたが、8〜24時間の間でランダムに設定できるように変更した。また、ユーザーのiPhoneは、近くに身に覚えのないAirTagを検出した場合、「Item Detected Near You」というメッセージを表示するようになった。つまり、iOSユーザーは見知らぬAirTagを見つけるために別のアプリを必要としない。

しかし、Androidユーザーが近くにある見知らぬAirTagを発見する方法がなかったため、Appleはユーザーが一緒に移動しているかもしれないAirTagを検出できるAndroidアプリを発表する予定であることも発表していた。

AirTagに対する懸念はあるものの、Appleがトラッカーのスキャンをサポートしたことで、まだストーカー対策機能を提供していない競合他社をリードすることになった。この発表を受けて、競合するTileは、誰でもTileアプリを使っていつでも手動スキャンを行えるようにすると述べた。この機能は2022年初めに提供される予定だ。

Appleは2021年4月にAirTagを発売した。価格は1個29ドル(日本での価格は税込3800円)、4個入りで99ドル(税込1万2800円)となっている。アイテムの追跡には、同社が「Precision Finding」と呼ぶ、同社独自の超広帯域チップ「U1」が使用されている。また、Bluetooth LE(低消費電力)も採用している。

画像クレジット:Apple

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(文:Aisha Malik、翻訳:Nariko Mizoguchi

日本最大級のハードウェアコンテスト「GUGEN2021」結果発表、折りたためる電動バイク「ICOMA タタメルバイク」が大賞

日本最大級のハードウェアコンテスト「GUGEN2021」大賞作品を発表、「ICOMA タタメルバイク」が大賞受賞

ピーバンドットコムが主催する日本最大級のハードウェアコンテスト「GUGEN2021」の選考会および授賞式が、12月11日に開催された。「ユーザーの課題を解決する『未来のふつう』となるアイデア・製品を具現(GUGEN)化する」をテーマに行われたこのコンテストでは、一次選考通過作品22点から、大賞ノミネート作品6点が選出され、そこから大賞1作品、優秀賞2作品、学生賞1作品などが選ばれた。

GUGENは、ピーバンドットコム代表取締役の田坂正樹氏の「ハードウェアのものづくりに関わる人たちにもっとスポットライトを浴びてもらいたい」という思いから始まり、2009年の「電子工作コンテスト」から13回目となる。

今回の最終審査を担当した審査員は、TomyK代表鎌田富久氏、JENESIS代表取締役CEO藤岡淳一氏、セイタロウデザイン代表山﨑晴太郎氏の3名。

田坂氏は、「世論を反映してコロナ感染症対策の作品が多く」あり、「社会課題を解決していくという部分において特色があった」と振り返っている。

受賞作品は以下のとおり。

GUGEN2021大賞:ICOMAICOMA タタメルバイク

日本最大級のハードウェアコンテスト「GUGEN2021」大賞作品を発表、「ICOMA タタメルバイク」が大賞受賞
ICOMAICOMA タタメルバイク」は、原付一種規格の小型電動バイク。折りたたんで机の下などに収納できる。

優秀賞:輝翠Tech農業用AIロボット

日本最大級のハードウェアコンテスト「GUGEN2021」大賞作品を発表、「ICOMA タタメルバイク」が大賞受賞

輝翠Tech農業用AIロボット」は、SLAM技術で自己位置の推定ができ、収穫場と収集場を自動で往復運搬できる。りんご園の害虫やりんごの樹勢などの監視も行える。

優秀賞:HA-PPY「微生物蛍光ライト

日本最大級のハードウェアコンテスト「GUGEN2021」大賞作品を発表、「ICOMA タタメルバイク」が大賞受賞

HA-PPY「微生物蛍光ライト」は、内視鏡に使われているガンを見つけやすくする蛍光イメージング技術を懐中電灯型の機器に収めたもの。光を当てるだけで手やドアノブなどの衛星状態が可視化できる。

GOODアイデア賞:Team Loglee「塗り薬情報記録デバイス Loglee

日本最大級のハードウェアコンテスト「GUGEN2021」大賞作品を発表、「ICOMA タタメルバイク」が大賞受賞

Team Loglee「塗り薬情報記録デバイス Loglee」は、塗り薬の容器を置くと、薬の種類、塗った時間、量を記録できるセンシングデバイス。

この他、「ほしいね賞」に「マイコン学習ボード」、学生賞に「Venty-テレワークのための換気促進デバイス」などが選ばれた。一次選考作品と全受賞作品は、「GUGEN 2021 受賞作品」に掲載されている。

【レビュー】邪魔にならない、スマートリング「Oura Ring」第3世代モデル

Oura Ringについて、誤った意見を持っていたことを認めざるを得ない。筆者はこのデバイスをApple Watchの代替品として考えていた。ざっくりいえばその通りだが……ほとんどの人がどちらか一方を選択するだろう。活動量計2つは多すぎるし、コスト的にも難しい。299ドル(約3万4000円)あればスマートウォッチが1つ買える。

また、この第3世代からOura Ringには月額6ドル(約700円)のサブスクリプションが追加される(6カ月の無料期間あり)。サブスクリプションには新しい機能も追加されているが、これまで無料だった機能まで有料になる。Oura Ring 3はまさに「投資」だが、スマートウォッチではない。

Oura Ring 3はどちらかといえばフィットネスバンドを後継する製品だ。最近はフィットネスバンドの話をあまり聞かないが、Appleがウェアラブル市場に参入する前は、フィットネスバンドがこの市場を完全に支配していた。Fitbit(フィットビット)やXiaomi(シャオミ)のような企業は今でも毎年大量にフィットネスバンドを販売しているが、同種の、さらに機能が充実した製品に押されてもはや時代遅れになってしまった。しかしながら、Oura Ringをフィットネスバンド(あるいはヘルスバンド)として考えてみると、その意味がわかるようになる。

画像クレジット:Brian Heater

Oura Ringは、いうなれば受動的なデバイスだ。ブザーやビープ音が鳴り、常に注意を向けなければならないデバイスではない。装着しておくだけのデバイスで、活動のリマインダーなど、あらかじめ設定された小さな刺激がある以外はほとんど無視できる。実際その通りなのだ。フィットネスバンドにはディスプレイがあったりなかったりするが、リングという形状はスペース的に非常に大きく制限される。

それを逆手に取り、Oura Ringは邪魔にならないように設計されている。リングで収集された睡眠、健康、フィットネスの実用的なデータは、後から接続済みのモバイルアプリで見ることができる。それこそがOura Ringのセールスポイントだ。リングという形状はフィットネスバンドよりも邪魔にならないようにすることができる。このタイプの最初の製品であるMotiv(モーティブ)のリングはそれが魅力だった。Motivはその後フィットネスカテゴリーから離れていったようだが、Ouraがその後を引き継いだ。

画像クレジット:Brian Heater

先に進む前に告白しておこう。筆者はリング的なものが好きではないので、身につけることもない(締め付けないでくれ、といったところだ)。これはOura Ringを使わない大きな理由の1つだが、正直なところスマートウォッチに愛着もある。とはいえ、ここ2週間はOura Ring 3を装着している。製品をレビューするにあたり、Oura(オウラ)に提案、というか控えめに要求されたのだ。

筆者はこの提案を不思議に思った。ハードウェアをレビューする際、できるだけ長く製品を試して欲しいと思うのは一般的だ。時としていうは易く行うは難しだが。しかし同社は、ある種の基準となる測定を行うために2週間使ってくれと主張する。最初の2週間の測定値が悪いということではなく、少しの間デバイスを装着し、Ouraがユーザーの習慣、睡眠、生体認証をより明確に把握するとより良い結果が得られるということらしい。

私たちはそれぞれが異なる個性を持っているので、どのような種類の健康器具にとってもカスタマイズは重要だ。299ドルのリングを購入しようとするユーザーには賛同してもらえると思う。付けていてもあまり影響はないので装着し続けるのも難しくはない。繰り返しにはなるが、リングが好きではなく、寝不足気味の筆者にとっては慣れるまでに多少時間がかかった。それでも大きくてかさばるスマートウォッチを装着したままにするよりも楽だった。睡眠の邪魔になる睡眠トラッキングデバイス、というのも皮肉なものだが、Oura Ringはそれには該当しない。

Oura Ringはリングであるが故に快適だ。リングが好きでなくても、単に身体に触れる面積が小さいだけで侵襲性が低い(影響が少ない)。デザインは前作とほとんど変わらず、丸い単色のメタルバンドだが、上下を示すために上部は平らになっている。

画像クレジット:Brian Heater

自分の指輪のサイズがわからない場合は、プラスチック製のダミーリングが多数入ったサイズ調整キットが送られてくる。Warby Parker(ワービー・パーカー、気になるメガネを自宅で試着できるサービスを展開)みたいだ。人間の指は日中でもサイズが変わるから、1つのリングを丸一日装着することが推奨される。サイズとカラー(筆者はマットブラックを選択)を選び、製品を待つ。実際のリングはプラスチック製のダミーよりも少しゆるい気がしたが、問題なく装着できた。そして日を追うごとにフィット感が増していくように感じられた。

一見すると普通のリングのように見え、それが実に魅力的である。しかし、心拍数の計測時にはリングの内側から緑の光が見えてしまうことがある。発売当初に搭載されたいくつかの新機能の中には日中の心拍数モニターがあり、(筆者が使う機会はなかったが)生理日予測や温度感知機能も改善されている。これらの新機能だけを見ても、第3世代は第2世代よりも進化していることがわかる。

関連記事:Oura Ringは今の時代を生き抜くための指輪型健康トラッカー、睡眠分析機能はwatchOS 7を凌ぐ

2021年から2022年にかけて搭載される予定の機能は、瞑想や呼吸法などの新コンテンツ、ワークアウト時の心拍数モニター、より正確な睡眠ステージング、動脈血酸素飽和度(SpO2)測定など、盛りだくさんだ。最後のSpO2測定機能については、導入が遅れたとしてもまったく不思議ではない。発売後に重要なヘルスセンシング機能を追加するのはOuraだけではない。Ouraの場合は、(少なくとも今のところ)米国食品医薬品局(FDA)の承認の問題ではなく、実装の問題だ。

Samsung(サムスン)やApple(アップル)でもなければこの種の機能をきちんと実装するのは難しいだろうが、今後の予定となっている機能は数多くあり、多くの潜在ユーザーが「なぜOuraはより完全に機能を実現した製品まで待たなかったのか」と思うことだろう。筆者は、これはベースとなるハードウェアを提供し、製品の耐用年数が尽きるまで機能の改善と展開を続けることを約束する、という熟慮された戦略の一環なのではないかという考えに至った。

Ouraがこの製品に対して長期的な目標を持っていることは間違いない。同社が参加した数多くの研究に目を向けてみよう。同社のブログをざっと見ただけでも、うつ病、スマートフォンの使用が睡眠に与える影響、海底環境への適応など、あらゆる研究が紹介されている。すべてが解明されるわけではないとはいえ、ほとんど(または多く)が今までにない、新しい機能につながると思われるが、少なくとも、センサーを使用するとどれだけ正確にモニター / 予測できるかについては興味深い洞察が載っている。特に、これらの研究では指と手首で心拍数などを測定する際の精度が明らかになっているようだ。

結局、筆者はワークアウトのトラッキングにはApple Watchのような手首に装着するタイプのトラッカーの方が好みだが、この2つを組み合わせることで自分の活動の全体像を知ることができた。とはいえ、誰もができる方法ではないし、皆が希望するものでもないことは承知している。Oura Ringが従来のトラッカーと比較しても結果的に成功しているのは、Ouraが実用的な分析情報にフォーカスしているからだ。だからこそ、Oura Ringの効果を判断する前に基準を決めることにこだわるのだろう。

画像クレジット:Brian Heater

この手のデバイスでは、回復(リカバリー)や準備状態(レディネス)といったものが見落とされがちだが、Ouraは後者について次のように説明している。

レディネスはOuraのメインスコアであり、あなたのためだけに設計され、何があなたの身体とライフスタイルに合っているのかを認識できるようにします。レディネスは、最近の活動、睡眠パターン、身体に負担がかかっているかどうかを示す直接的な身体のシグナル(安静時心拍数、心拍変動、体温など)を考慮した、あなたの健康の全体像です。

実際上は、収集したすべての指標を使用して十分にリカバリーできているかを判断する。筆者にとってはリカバリータイム(身体が次のトレーニングに適した状態になるまでの時間)が常に要注意だった……まあそれはおいておこう。筆者はワークアウトとワークアウトの間に身体を回復させることができたし、もっと上手くやるべきだった。赤の「Pay attention(注意)」が示しているように、確かに改善すべきポイントだった。

画像クレジット:Brian Heater

もう1つ注目すべきは睡眠だ。「ホーム」タブをタップすると「昨日の夜、心拍数が低下したので、まだ完全には回復していないかもしれません。身体の充電のために、今日はゆっくりしてみませんか?」と表示される。例えば、(筆者は朝に瞑想をしているが)朝ではなく夜に瞑想したり、寝る前に呼吸法を行ったりする方が、イヤフォンで音楽を聴きながらTwitterでネガティブ情報ばかり追ってしまうよりも良い睡眠が得られる(実際筆者の睡眠の質は悪い)というのは明らかだろう。

しかし、日々の仕事に追われているとこの事実は見失いがちである。筆者は常々、ウェアラブルデバイスの利点は指に結んだ紐と同じように気にならないことであり、過小評価されていて議論もされていないと発言している。このテクノロジーは、マインドフルネスをもたらし、そもそもなぜ投資をしたのかを思い出させてくれる。私たちがこれらの製品を購入するのは、自分自身を改善したいからである。ともすればテクノロジーが真逆のことをしてしまう現在、ウェアラブルのテクノロジーによるポジティブな補強はネット・ポジティブ(差し引きプラス)だ。

画像クレジット:Brian Heater

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(文:Brian Heater、翻訳:Dragonfly)

【レビュー】Urtopiaのeバイクはまるで車輪付きコンピューター

自転車の電動化といえば、これまでは単に「自転車に電動モーターを搭載したもの」を意味していた。上位モデルには、便利な機能がいくつも搭載されているかもしれないが、基本的には「シンプル・イズ・ベスト」とされていた。しかし、中国を拠点とする最新のeバイク(電動アシスト付きスポーツ自転車)ブランドUrtopia(ユートピア)の考えは違う。そのデビューモデルは、これまで見てきた中でも最もハイテク仕様のeバイクの1つであり、そのスペックシートは、次世代eバイクというよりも、まるでスマートフォンのようだ。

例えば、3段階のライディングアシスト機能を備え、推定航続距離は30~80マイル(50~130キロメートル)とされる250Wのハブモーターの他、ドットマトリックスディスプレイ、指紋リーダー、GPS、4G通信(eSIM利用)、車両検知用のミリ波センサー、内蔵アラームなど、数々の機能が搭載されている。

バイク自体は、2021年最も先進的なテクノロジーを備えたモデルであることを隠すことなく、印象的な美しさを放つ。BMW(ビーエムダブリュー)やIKEA(イケア)などでのキャリアを持つMathis Heller(マティス・ヘラー)氏がデザインした、滑らかな曲線とレーシングラインのフレームが特徴的だ。また、すべてのワイヤーをフレーム内部に隠すことで、ステルス爆撃機のような外観を実現している。ユートピアはシティサイクルとして売り込まれており、取り外し可能なバッテリーは目立たないものの、単なる足漕ぎ自転車ではないことは一目瞭然だ。

このバイクが届いたとき、筆者は組み立てるのが不安だった。これまでの経験から、複雑ではなくとも、セットアップのために、それなりの時間と場所を確保する必要があると考えたためだ。しかし実際には、筆者が試したプロトタイプモデルでは、前輪を装着し、ポンプでタイヤに空気を入れるだけで、問題なく使用できた。

画像クレジット:James Trew / Engadget

ガジェットファンにとっての魅力は、間違いなく「スマートバー」と呼ばれるハンドルバーに内蔵されたオンボードコンピューターだろう。ハンドル中央に据えられたドットマトリックスディスプレイは、まさに「未来から来たバイク」という雰囲気を醸し出している。また、ハンドル右側の通常ベルがある位置には、コンピューターをいくつかの方法で操作するための指紋リーダーがある(デジタルベルでもある)。そして、左側には4方向のDパッド(十字キー)があり、モードや設定を変更したり、バイクの電源をオンにしたりできる(オフにはできないが、これについては後述する)。

スマートな機能が数多く列挙されているが、筆者の試用のために送ってもらった試作機では、そのすべてを試すことは出来なかった。ミリ波センサーのハードウェアは実装されているものの、それを起動する方法がない。また、GPSとeSIMの動作にはコンパニオンアプリが必要だが、これもまだ用意されていない。残念ながら、これらの非常に興味深い機能については、今後の状況を見守る必要があるが、その他のほとんどの機能は正常に動作している。

興味深い機能の前に、パワー、スピード、距離などのeバイクとしての基本的な機能について見ていくと、これまでに筆者が試乗した他のハブモーターバイクと同等であるように感じた。例えば、最近テストしたTenways(テンウェイズ)のシティサイクルは、250Whのバッテリーと250Wのモーターを搭載している。対するユートピアのバッテリーセルは360Whだ。しかし、どちらも250Wトルクベースのブラシレスハブモーター、および同じGates(ゲイツ)製のカーボンベルトを使用している。

バイクの電源を入れると、さらにエキサイティングなことが起こる。スマートバーのスピーカーからは「ビューン」という音が聞こえ、ディスプレイに会社のロゴが表示された後、デフォルトのスピードメーター表示に戻る。一部のサウンドはユーザーが設定できるようになっているとのことだが、それにはサウンドをオフにするオプションも含まれていることを期待する。まず乗る前には、操作方法に慣れておきたいものだ。Dパッドを上下に動かすと、アシスタンスレベルが切り替わる。アシスタンスレベルには「ペダル」「エコ」「コンフォート」「スポーツ」のモードがあり、スロットルモードに相当する「ターボ」モードもある。

ユートピアのeバイクは、方向指示を地面に投影する。

画像クレジット:James Trew / Engadget

Dパッドを左右にタップすれば、方向指示が地面に投影される(ライトが点灯しているときは点灯したままだが、左右に曲がり始めると点滅に変わる)。しかし、実際にライトを点灯させるためには、バイクに話しかける必要がある。つまり、手動での操作はできず、音声でのみ操作ができるということだ。

ここからが少しおかしな点だが、ユートピアはプレス資料の中で、音声認識システムは完全には「学習」していないと警告している。しかし、筆者の場合は完璧に動作した。もしかしたら、くもった声のイギリス人でしか学習していないのだろうか。とにかく、ライトを点灯させるには、指紋リーダーに指を置き少し待つと、ディスプレイに顔のアイコンが表示され、Knight Rider(ナイトライダー)のMichael Knight(マイケル・ナイト)のようにコマンドを発することができるのを知らせてくれる。これはすばらしいことだが、それでもやはり、公共の場で自転車に話しかける必要がないように、物理的なスイッチが欲しいところだ。また、特に走行中は風の音などでスマートバーに声が届きにくくなることもある。そのため、ちょっと立ち止まったり、ハンドルに顔を寄せて走ることになるが、どちらもあまりエレガントとはいえない。

現在、音声で操作できるものは、アシストモードの変更、バイクのロック、方向指示、スマートバーの音量変更などだ。これらのうち、音量(とライト)以外は、物理的な操作も可能だ。音声での操作は、ハンズフリーの選択肢を提供する気の利いたアイデアだが、実際には、ボタンを押すだけの操作よりもどれほど便利なものかは疑問だ。

また、必ずしもテクノロジーが行き届いていないと感じる機能としてベルがある。このバイクでは、指紋リーダーに内蔵されており、指紋リーダーを長押しすると音声認識が作動し、短押しすると「リンリン」というデジタル音が鳴る。機能はするのだが、物理的なベルのように反応がよいわけではない。人の後ろから近づいていったとき、自分の存在を知らせたいと思って指紋リーダーを押しても、すれ違ってから0.5秒後にベルが鳴るということもあった。また、ベルを鳴らすために2、3回押してみなければならないこともあった。

画像クレジット:James Trew / Engadget

アラームの使用感についても、少し改善の余地がある。自転車を「ロック」した状態で離れたときに、誰かが動かすとアラーム音が鳴るというアイデアは気に入っている。問題は、ユートピアをロックしている間はいつでもこの機能が働くということだ。基本的に「ロック」とは「スタンバイ」であり、バッテリーを接続するとすぐに自転車がこのモードになることを知るまではこの問題に気づかない。つまり、バッテリーを接続した後、バイクを玄関から運び出そうとすると、アラームが鳴ってしまうのだ。

これを簡単に止める方法はあるが、完全に解決するというわけではない。eバイクの電源を入れれば、アラームは解除される。公正な立場でいえば、これはプロトタイプであるがゆえの不完全さだ。製品モデルでは、指紋センサーやコンパニオンアプリでアラームを無効にすることができるとのことだが、筆者がテストしているバイクでは確認できない。現時点では、バッテリーを取り外す以外にこのeバイクの電源を切る方法はないが、これらの不備が発売までに解消されることを祈っている。筆者はユートピアの担当者にそういった計画について訪ね、その予定であることを確認した。

さて、技術的な話はさておき、実際の乗り心地はどうなのだろうか。座ったときの姿勢は、一般的なシティサイクルのような直立姿勢ではなく、ロードレーサーのような前傾姿勢になる。Velo(ベロ)のサドルはかなり硬く、ゲルクッションが施されているようには見えず、もう少しお尻に優しい方がよいかもしれないが、中・長距離ライドをしても快適だった。最長で11マイル(約18キロメートル)走ったが、まだまだ走れると感じた。

ペダルモードでは、このタイプのハブでありがちなモーターからの気になる抵抗はない。カーボンファイバー製のボディのおかげで、13kg、30ポンドとeバイクとしてはかなり軽量だ。つまり、バッテリーを使用しない場合でも、普通の自転車として機能する。しかし、Dパッドをタップすると、すぐに快適になる。他のeバイクと同様に、ユートピアは地域によってパワーアシストに制限がある。米国モデルでは時速20マイル(時速32キロメートル)に達するまでアシストが働き、EUモデルでは時速16マイル(時速25キロメートル)がアシストの上限となる。

画像クレジット:James Trew / Engadget

3つのパワーモードは、いずれもかなり速く感じられる。つまり「エコ」モードでも、快適に走れるということだ。「コンフォート」モードにすると、目的地にたどり着くまでに必要なパワーがほぼすべて得られ、運動とアシストのバランスが取れる。「スポーツ」モードでは、上限が標準設定されているにもかかわらず、非常に速く感じられる。他の人が近くにいるときは、よい意味できびきびとした操作感が得られるため、よくコンフォートモードに戻していた。

eバイクにすべてを任せ、リラックスして走りたい場合は、ターボモードがある。Dパッドの「上」を長押しすると、軽いペダリングでもすぐに時速20マイル(時速32キロメートル)に達する。レーシングスタイルの外観と前傾姿勢となるシートポジションのため、ほとんど力を加えず快適に走ることができる。

それを踏まえて、航続距離についても触れておく必要があるだろう。ユートピアは、30~80マイル(50~130キロメートル)のアシストが可能だとしている。もちろん、これは地形やどのパワーモードを使用しているかによるため、かなり幅のある推定値となっている。筆者はまだバッテリーを使い切っていないが、10マイル(約16キロメートル)の走行でも、スマートバーのバッテリーインジケーターは、かなり少なくなっているように見えた。これがプロトタイプゆえの特性なのか、単にバッテリーの減りが早いだけなのかはわからない(これについては、最終モデルの出荷までに最終的なファームウェアで改善されるのかどうかは不明だ)。

GPSと4G接続について、ここまで触れていなかったのはそのためだ。筆者にとって興味深いセールスポイントは、ほぼいつでも地図上でバイクの位置を確認できることだ。同社によると、4G接続用のデータバンドルを年間約30ドル(約3400円)で提供する予定とのことだが、万が一、バイクが行方不明になっても、どこにあるか位置を特定できるという安心感を考えれば、かなりリーズナブルといえるだろう。疑問は、スタンバイの状態でGPSと4Gを作動させていた場合、バッテリーの消耗にはどの程度の影響があるのかということだ。残念ながら、この疑問の答えは最終モデルの販売を待つことになる。

ミリ波センサーについても同様の疑問があるが、これも現在はテストできない。

画像クレジット:James Trew / Engadget

現時点でこのeバイクについてわかったことは、乗っていてとても楽しく、軽量なおかげでかなり扱いやすいということだ(筆者はアパートの5階に住んでいるため、小さなエレベーターに押し込めるのはありがたい)。テクノ調のスタイリングは、万人受けするものではないかもしれないが、筆者はとても気に入っている。そして何よりも、たとえ一部の主要な機能がまだ準備できていなかったとしても、これほどまでに先進的なテクノロジーを見ることができたのはうれしいことだ。準備ができればまた試してみたいし、同社と話した限りでは、まださらに何かありそうな気がした。冗談で、スマートバーのスピーカー(このeバイクにはBluetoothが搭載されている)で音楽を聴けるようにすべきだと提案したところ、同社はそういった新機能を提供するために必要なOTA(Over-The-Air、4G接続による)アップデートは可能だといってくれた。

現在、ユートピアはIndiegogo(インディーゴーゴー)で先行予約を受け付けている。そのため、正規の注意事項が適用されるが、筆者が受け取ったプロトタイプが最終モデルに近いことを考えると、これ以上の開発は必要なく、残っている機能の微調整を行うだけのように思われる。予約注文をすると、2000ドル(約22万7000円)で購入することができる。これは、このeバイクの追加機能が有効になっていないとしても、十分に魅力的な価格だ。キャンペーンによると、この価格は、小売店に並ぶときには2倍近くになるとのことなので、このeバイクに魅せられた方には早めに購入する価値があるだろう。

編集者注:本稿の初出はEngadget。執筆者のJames CrewはEngadgetのエディター。

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(文:James Trew、翻訳:Dragonfly)

産総研、シリコンを超えるGaNとSiCを一体化したハイブリッド型トランジスターの動作実証に成功

産総研、シリコンを超えるGaNとSiCを一体化したハイブリッド型トランジスターの動作実証に成功

産業技術総合研究所(産総研)は12月12日、窒化ガリウム(GaN)を用いた高電子移動度トランジスターと、炭化ケイ素(SiC)を用いたPNダイオードを一体化したハイブリッド型トランジスターの製作と動作実証に、世界で初めて成功したことを発表した。これは、産総研先進パワーエレクトロニクス研究センターパワーデバイスチームの中島昭主任研究員と原田信介研究チーム長の研究によるもの。

これは、電力エネルギーの変換や制御を行う電力変換器に使用されるパワートランジスターの一種。パワートランジスターは電気的スイッチとして用いられるため、次の3つの性能が求められる。

  1. 高効率な電力変換を実現するための、スイッチオン状態における導通損失を減らす低いオン抵抗
  2. スイッチング損失を減らすための、オンとオフの高速な切り替え性能
  3. 電力変換回路の異常動作時におけるノイズエネルギーの吸収源としての役割

現在の主流になっているシリコン(Si)トランジスターは、この3つの性能がほぼ限界に達していることから、効率の高いGaNトランジスターの研究が行われてきた。シリコントランジスターには、構造的にソースとドレインという2つの電極がPN接合されているため、本来的にダイオードの性質を持っている。ところが、GaNトランジスターにはそれがない。ダイオードは本来、片方向にだけ電流を流す性質があるが、パワートランジスターに含まれるダイオードには、過電圧がかかったときに一次的に逆方向に電流を逃して(アパランシェ降伏)、熱として消散させ、ノイズエネルギーを吸収する役割を果たす。つまりGaNトランジスターでは、求められる性質の3つ目である、異常動作時におけるノイズエネルギーの吸収が行われない。それが、普及の妨げになっていた。

産総研は、そこにSiCダイオードを追加して一体化することで、アパランシェ降伏動作を得ることができた。さらに、このハイブリッドトランジスターでは、GaNトランジスターのオン抵抗が低く、SiCダイオードの熱伝導率はシリコンの3倍と高いことが認められた。そのことから、次世代電力変換器の高効率化と信頼性向上が期待される。

今回開発したハイブリッド型トランジスターの構造

今回開発したハイブリッド型トランジスターの構造

今回製作されたのは、定格電流20mA(ミリアンペア)程度の小さなものだが、今後は10A(アンペア)程度の大きなものの動作実証に取り組むとのこと。また、GaNとSiCの融合技術は、ハイブリッドトランジスターの他にも多くの可能性が期待されるという。

慶応義塾大学、柔らかく伸縮性のある半導体デバイスで世界で初めて高周波数13.56MHz駆動に成功

慶応義塾大学、柔らかく伸縮性のある半導体デバイスで世界で初めて高周波数13.56MHz駆動に成功

慶應義塾大学は12月9日、柔らかく伸縮性のある半導体デバイスを、世界で初めて13.56MHzという高周波数で動作させることに成功したと発表した。伸縮性のある半導体デバイスはすでに発明されていたが、動作周波数は100Hz程度と低く実用化の壁になっていた。13.56MHzは交通系カードや携帯電話の無線充電などに使われる、とても重要な周波数だ。

慶應義塾大学理工学部電気情報工学科専任講師の松久直司博士と、スタンフォード大学化学工学科のポスドク研究員(研究当時)シミアオ・ニウ博士、ゼナン・バオ教授による研究グループは、薄いゴムのように肌に密着する柔らかい電子デバイスを使ったウェアラブル機器の実現につながる、柔軟で伸縮性のある半導体デバイスを開発した。これは、13.56MHzで駆動する伸縮性ダイオード。元の長さの1.5倍にまで引き伸ばしても、何度伸縮を繰り返しても、壊れることなく電気的特性が維持される。

開発の決め手になったのは「高周波駆動用に精密にチューニングされた様々な新しい伸縮性電子材料」だという。たとえば、割れやすい高分子半導体の化学構造の中に柔らかいシリコンゴムの化学構造を取り込んだり、導電性高分子材料や金属ナノ材料の一種である銀ナノワイヤなどの電子材料に伸縮性を付与し、電気特性が高周波動作の要件を満たすよう新しく設計した。

研究グループは、この伸縮性ダイオードを使ってセンサー・ディスプレイ・アンテナを備えた集積化したシステムを試作した。衣服に仕込まれたアンテナからワイヤレスで給電され、センサーの信号をリアルタイムでディスプレイ素子の色変化として表示する。こうしたデバイスは、肌に貼り付けても違和感なく使用できるため、長期間の生体情報の取得が可能となり、病気の早期発見などを行うヘルスケア分野のウェアラブルデバイスへの応用が期待されている。

慶応義塾大学、柔らかく伸縮性のある半導体デバイスで世界で初めて高周波数13.56MHz駆動に成功

「聴こえるだけ」で生活は豊かになる、骨伝導で難聴をサポートするFILLTUNEのワイヤレスデバイス

目が悪くなるように、加齢などが原因で耳も悪くなる。メガネやコンレクトレンズの利用者ならわかると思うが、ケガなどでなければ悪化は徐々に進み、気がつけば見えていたものが見えなくなっている。耳も同じだ。それまで聞こえていたものが、徐々に聞こえなくなる。

人は「蝸牛」という聴覚器官を経由して音声を感じる。その蝸牛内には音を感知するセンサーの役割を果たす外有毛細胞と音声情報を中枢神経に伝えるラセン神経節細胞が存在するが、感音性難聴の多くは、この外有毛細胞が死滅してしまっているため、言葉の明瞭度が悪くなる。

老人が大きなボリュームでテレビを見ていたりするのは、残された外有毛細胞でなんとか音を感じようとするためだ。耳が悪くなった人が使うものとして補聴器があるが、この補聴器は機能としては拡声器と同じで、同じく音のボリュームを大きくしてなんとか感じようとするものだ。

しかし、この従来の方法も絶対的なものではない。そもそも外有毛細胞が死滅しているため補聴器を使っても子音が聞こえづらいこともある。「しゃ、ちゃ」といった音もわかりづらい。正確に音が聞こえないため、聞き間違いも起こってしまう。そのため電話はもちろん、目の前での会話もおっくうになり人間関係にも消極的になってしまいがちだ。

FILLTUNEの「FILLTUNE CLEAR」は、補聴器では聴くことができない音声を明瞭に聴くことができる骨伝導を利用する聴覚サポートデバイスだ。感音性難聴への効果が実証されている。

小さな拡声器ともいえる補聴器と違い、骨伝導を利用して死滅した外有毛細胞を迂回して、ダイレクトにラセン神経節細胞へ正確な音声情報を伝える。それにより、会話や電話でも、相手の声をきちんと聴くことができる。さらに、さまざまな楽器やボーカルで構成される音楽も健康だった昔のように聴くことができるようになる。耳が悪くなると、音楽も違って聞えるため、思い出と違う印象を抱くこともあるが、FILLTUNE CLEARを使えば、昔、聴いたものとほぼ同じ聴こえ方で曲を楽しむことができる。

FILLTUNE CLEARはワイヤレスヘッドフォンタイプの聴覚サポートデバイスで、装着して周囲の音をそのまま聞くことはもちろん、BluetoothでスマートフォンやPC、テレビなどと接続すればイヤフォンのように騒がしい環境でもよりクリアに音声を楽しむことができる。

FILLTUNEの技術は、厚生労働省の平成25年度障害者自立支援機器等開発事業に採択されており、臨床試験において、高度難聴を中心とした被験者の6割に確かな聴こえが実証されている。

最近はイヤフォン、ヘッドフォンの利用者が増えており、50、60代をはじめ難聴の人が増えるかもしれないといわれている。そんな中、FILLTUNEの技術は、より情報量の多い聴こえで、質の高い生活の実現するためのものとして注目が集まっている。

FILLTUNEの技術はこれからのものであり、病院や介護施設などでBtoBを中心に展開されるというが、現在、その技術を搭載したフルワイヤレス聴覚サポートデバイス「FILLTUNE CLEAR」、クラウドファンディングGREEN FUNDINGで手に入れることができる。

また、2021年12月15日までだが、東京都世田谷区にある二子玉川 蔦屋家電1Fの「蔦屋家電+」で視聴することもできる。静かな店内ではあるが、外のバス乗り場で流れるアナウンスの声などまで聞える。「視界」ならぬ「聴界が晴れる」ように、そこにあったが認識できなかった音を感じとることができる。


クラウドファンディングも展示も終了まで、あまり時間がないがぜひ一度、その実力を試していただきたい。12月12日(日)には熊本県熊本市の蔦屋書店 熊本三年坂で、13日(月)には広島県広島市のエディオン蔦屋家電で体験会も行われる。

二子玉川 蔦屋家電での展示

場所:蔦屋家電+
日時:11月12日(金)~12月15日(水)10:00~20:00
住所:東京都世田谷区玉川1丁目14番1号
二子玉川ライズS.C.テラスマーケット二子玉川 蔦屋家電1F

FILLTUNE CLEAR体験会(熊本)

場所:蔦屋書店 熊本三年坂
日時:12月12日(日)12:00~18:00
住所:熊本県熊本市中央区安政町1-2

FILLTUNE CLEAR体験会(広島)

場所:エディオン蔦屋家電
日時:12月13日(月)12:00~18:00
住所:広島県広島市南区松原町3番1-1号 EKICITY HIROSHIMA 2Fラウンジスペース

【レビュー】Surface Duo 2、前機種よりはるかに洗練されたがいまだ進化の途上

現状に挑戦することが簡単であれば、私たちはもっと多くを知ることができるだろう。それはスマートフォンの世界では、10年半以上にわたりデフォルトになっているフォームファクターの長方形から離れて考える勇気を意味する。スマートフォンの販売が停滞している中、企業は徐々にだが確実にその流れを試している。

近年、進化の行き詰まりがいくつか見られた。ZTEのAxon Mが思い浮かぶ。重大な欠陥があるとはいえ、あらゆる意図と目的において、2つのスマートフォンをつなぎ合わせるというのは勇気ある試みだった。Samsung(サムスン)の折りたたみスマートフォンも、早くから同じような運命にあったようだ。

数世代を経て、同社は状況を好転させてきたものの、プロダクトラインとプロダクトカテゴリ両方の長寿性とメインストリームへの意味合いについては、依然としてあまねく疑問が残されている。GALAXY Z Flip 3は、使ってみて楽しい時間を過ごしたと素直に言える。意図された通りに動作し、他の折りたたみ式デバイスのように扱いにくくはなく、正直なところ、筆者が勧める第一の折りたたみ式デバイスだ。

Samsungと同様、Microsoft(マイクロソフト)もこの分野で優位に立っている。同社はかなり前にメインストリームのモバイル大手になるという希望を捨てた。もちろん努力が足りないからではない。しかし、72億ドル(約8200億円)でNokia(ノキア)を買収したからといって、その夢を実現できるわけではない。代わりに同社はSurfaceシリーズのハードウェアに慰めを見出し、いくつかの真に魅力的なフォームファクターを生み出した中程度の成功を収めた。

画像クレジット:Brian Heater

初代のSurface Duoは、標準的なPC / タブレットのフォームファクターを超えた考え方を誇るプロダクトラインの方針から生まれたものだ。同社は2019年10月のイベントで、デュアルスクリーンのノートPC「Neo」と、より小型化されたデュアルスクリーンのAndroid搭載端末「Duo」を発表した。前者は生産着手には至らなかった。Microsoftは5月にWindows 10Xのリリース計画を断念することを認めたが、Neoにも同様の意向が伺える。

2020年秋に発売されたDuoは2021年最も待ち望まれていたデバイスの1つだった。ZTEと同じように、Microsoftは、2つの画面をヒンジで融合することで折りたたみ式ディスプレイの必要性を回避した。それでも、10年近くにわたってSurfaceのハードウェアを手がけてきた同社は、明らかにこれまでよりはるかにエレガントなソリューションを生み出した。しかしながら、これまでのAxon Mと同様、初代Duoも大いに失望を招く結果となった。

ハードウェアの観点からは失敗ではなかったものの(セールスは違うストーリーかもしれないが)、問題が多すぎて1400ドル(約15万9000円)という提示価格を正当化できるものではなかった。外部カメラがないこと、ソフトウェアにバグがあること、5Gを搭載しないことなどが、課題の多いこのデバイスの主な問題点だった。第一世代の製品は不完全になる。これがアーリーアダプターの窮状だ。

画像クレジット:Brian Heater

しかし、消費者にこれだけの金額を払って新しいデバイスを買ってもらうには、期待される品質のレベルがある。初代Duoが満たせなかったものだ。ただし、Microsoftがこれに耳を傾けたことは称賛に値する。もちろん、最初のプロダクトを購入した少数の人には役に立たないものの、同社は将来の顧客により良いサービスを提供することをコミットしている。そういう意味では、Surface Duo 2は単に初代デバイスをアップデートしただけではなく、前世代の最大の過ちを正そうとする取り組みでもあるのだろう。

最初のDuoがこの新しいモデルに近かったなら、Microsoftはかなりの心痛を軽減していただろうという、かなり説得力のある主張ができる。Snapdragon 888と5Gの追加、背面トリプルカメラの搭載、デュアルスクリーン間のギャップの縮小、ソフトウェアの継続的な改善は、正しい方向への重要なステップである。しかしDuo 2は、ユーザーが心から勧めるようなデバイスというのにはまだほど遠い。Microsoftが今後数世代にわたってこのデバイスに投資を続けていけば、問題が根本的なものなのか、それとも単に継続的な改善が必要なものなのかを判断することになろう。

画像クレジット:Brian Heater

ディスプレイ間の切り替えにまだバグがあるソフトウェアは、後者になる可能性が高い。Microsoftは自社のデュアルスクリーンソフトウェアの開発に加えて、Google(グーグル)がSamsungなどの企業と行ってきた作業の多くを活用し、折りたたみ式ディスプレイで動作するバージョンのAndroidを開発している。もちろん、折りたたみ可能、かつデュアルスクリーンというフォームファクターを開発することは、完全な1対1ではない。しかし、Microsoftの膨大なリソースを考慮するなら、その体験を完全なものすることは、同社がどれだけの時間と資金を投じるかにかかっていると言えそうだ。それはひいては、このデバイスに関心があるという認識の産物でもあるのだ。

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初代Duoは内部カメラでの撮影に依存していたが、Duo 2には背面カメラが3つ搭載されている。これは一見すると確かに良さそうであり、間違いなく改善されている。しかし、カメラアプリは必要最低限のもので、画質はかなり安価なシステムと比較しても常に標準を下回っていた。Duoは混合光と微光の両方で苦戦した。それは2021年に1500ドル(約17万円)のシステムに期待するものを超えるものだった。

画像クレジット:Brian Heater

MicrosoftはSamsung、Apple(アップル)、あるいはGoogleほどモバイル写真撮影に投資していない。そのことは確かにここに表れているが、将来の世代で改善できることでもある。しかし、最終的には、カメラがデバイスの根本的な問題の1つを引き起こすかもしれない。初代Duoが内蔵カメラに依存していた理由の1つに、フォームファクターの実用上の問題がある。つまり、デバイスを開き、一方にカメラ、もう一方にビューファインダーとして機能する第2のディスプレイという構成で、本体を反転させるという点だ。

同社は実際、カメラの突起部分をうまく処理しており、ディスプレイの背面はやや斜めに重なっている。しかし、実際にそれを使うのは厄介だ。撮影した写真を表示するためのセカンドスクリーンがあるのは便利だが、そのプロセス自体は扱いにくく、タブレットを使って被写体を撮影しようとする感覚に近い。

このように避けられないと思われる欠陥がいくつかあるものの、Duo 2はハードウェアとして優れており、5月に初代Duoに搭載されたMicrosoft Penサポートやデュアルスクリーンゲームなどの機能が追加されたことで、プロダクトはあるべき姿に近づいている。Glance Barのように、デバイスを閉じたときに画面の隙間に通知がちらりと表示される便利な機能もあり、Microsoftが自身の保有するフォームファクターで巧みに仕事を続けていることを示している。しかし、継続的な問題と1500ドルという提示価格を考えると、このプロダクトが真の意味でメインストリームになるという見込みは、ひいき目に見ても何世代も先の話になりそうだ。

画像クレジット:Brian Heater

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(文:Brian Heater、翻訳:Dragonfly)

【コラム】開発者と設計者が企業の半導体不足解消のためにできること

米半導体メーカーMarvell Technology(マーベル・テクノロジー)のCEOであるMatt Murphy(マット・マーフィー)氏は2021年10月、半導体不足は2022年さらにはそれ以降にも及ぶだろうとの見解を示した。供給不足はすでに世界中で甚大な影響をもたらしており、ドイツの自動車メーカーOpel(オペル)は一部ラインの稼動を2022年初めまで停止すると発表している。

Society of Motor Manufacturers and Traders(英国自動車製造販売協会)が最近発表したところによると、2021年9月の英国の新車登録台数は1998年以降で最低を記録した。世界的に自動車メーカーは半導体不足に苦しんでおり、需要を満たすだけの車を製造・販売できていない。

しその余波はさらに広がっている。新型コロナウイルスのパンデミックを受けて需要が急増したコンシューマーエレクトロニクスも半導体不足の影響を受け始めており、調査結果からは、スマートフォンの生産に当初の予想以上の打撃が生じる可能性が示唆されている。Microsoft(マイクロソフト)のゲーミング担当エグゼクティブバイスプレジデントであるPhil Spencer(フィル・スペンサー)氏は、Xbox(エックスボックス)とPlayStation(プレイステーション)のゲームコンソールは2022年も供給不足が続くだろうとの見通しを表明した。

このことは、当社The Qt Company(ザ・キュート・カンパニー)がForrester(フォレスター)と最近行った、世界の製造業が直面している課題に関する調査でさらに実証された。驚くべきことに、私たちが話をした組織の80%が現在、デジタルプロダクトやサービスの産出に苦慮しており、62%がその原因として半導体供給の遅れを挙げている。

迅速な解決策はない

2020年を通じて、デジタルプロダクトとサービスに対する需要は前例のないペースで増加し、この需要はまだ揺らいでいない。2021年上半期に実施した本調査では、さらに82%の組織が、市場での地位を維持または成長させるためには新しいスマートプロダクトやコネクテッドプロダクト、サービスを迅速に導入する必要があると回答した。10組織のうち8組織近く(79%)にとって、これはソフトウェアの研究開発ライフサイクルの加速に意識を向けることを意味している。

スピードは依然として企業の最重要事項であり、半導体の供給やソフトウェア開発サイクルの遅れは深刻な問題を引き起こしている。多くの場合、このような遅延は数カ月間続く。そして、ファームウェアの課題にしっかりと向き合うことは、開発者スキルの不足という絶えず存在する懸念とも関係していることを忘れてはならない。

人材不足や半導体不足をすぐに解決することはできないが、企業が即座に有益なインパクトを生み出せる変革は存在する。そしてその中心には、半導体や組み込みデバイスに依拠するプロダクトやサービスを創造し、送り出す設計者と開発者が位置している。

開発プロセスへの挑戦

企業は危機に陥らないために、迅速かつ効果的な改善を行うための働き方に今すぐ目を向けなければならない。プロダクトのライフサイクルを見ると、ほとんどの企業は設計と開発に対して非常にサイロ化されたアプローチをとっている。そうした状況は、プロジェクトの着手時からのインタラクションの方法(あるいは多くの場合なされていない)に関してだけではなく、チームが使用するソフトウェアやツールを検討する際にも当てはまる。

これは、迅速で効率的なモバイルアプリ開発における中核的な課題の1つである、過度に複雑な開発者 / 設計フィードバックループに直接つながっている。デジタルプロダクトの制作を任されている開発者と、ユーザーエクスペリエンスやユーザーインターフェイスのような要素をより考慮している設計者との間には、しばしば断絶がある。

連携して作業を行うべきときに、両者は異なるサイロで活動している。開発者と設計者のコラボレーションを有効にすることは、このプロセスを促進し、チップ不足により失われた部分を補うために極めて重要である。

プロセスの一元化

開発と設計のツールとプラクティスを一元化することで、設計イテレーションを、中断ではなく開発プロセスへの貢献に転換することができる。骨の折れるフィードバックループのサイクルを断ち切り、ブランドはより早くプロダクトを市場に投入できるようになる。

DevOpsによるソフトウェア開発と同じような考え方で、設計と開発を「DevDes」として統合することは、サイロ化を解消し、ワークロードを軽減し、デリバリーをシンプルにすることを意味する。

クロスプラットフォームのフレームワークとツールは、これらの市場の課題の影響を緩和するために不可欠である。デジタルプロダクトの意思決定者は、柔軟性を維持し、調達可能なものを調達できる限り利用する必要があるだろう。例えば、多種多様なシリコンをサポートする柔軟なソフトウェアツールやプラットフォームに投資することで、サプライチェーンの不足による負荷を低減できる。

しかし、利点はそれだけではない。半導体不足を超えて考えると、プロダクトチームは多くの場合、複数のデバイスで使用可能でありながら、なおかつシームレスでネイティブなエクスペリエンスをエンドユーザーに提供できるプロダクトを、迅速に開発して展開することが求められる。繰り返しになるが、サイロを取り除き、DevDesアプローチをクロスプラットフォームフレームワークで採用することで、チームがネイティブ環境で作業できるようになり、プロセスの迅速化が可能になる。

将来にわたって機能するプロセス

私たちすべてがパンデミックの視点を離れ、より持続可能な未来を見据えつつあることに喜びを感じる一方で、過去20カ月間に得た教訓を決して忘れることはできないし、忘れてはならないと思う。

これほど急激に需要が高まることはないと思うが、再びピークを迎える可能性は高い。そして、消費者と企業の両方から期待されている、より良い品質のプロダクトの迅速な提供と、増え続けるデバイス間でのシームレスなエクスペリエンスは、今後も確実に続いていくトレンドである。

開発者のバーンアウトは広く語られており、必要なサポートを受けずにより多くのものをより速く提供するというプレッシャーは、持続可能なものではない。開発者スキルの不足に対応するために、より多くの開発者を育成していく上で、開発者がプロダクトチームの他の部分と真に統合された方法で作業できるようにすることは、極めて重要な意味を持つ。

今後しばらくの間、半導体不足が混乱を引き起こすことは避けられないだろう。それゆえ、現在のプロセスで実現可能なステップに目を向けることが、企業に委ねられている。その取り組みは、この困難な時期を乗り切るのに役立つだけではなく、将来にわたって存続できる企業を確立することにもつながるはずだ。それは開発ライフサイクルの中核をなす人とプロセスから始まるものである。

編集部注:本稿の執筆者Asa Forsell(アサ・フォーセル)氏は、The Qt Companyのオートモーティブ担当シニアプロダクトマネージャー。

画像クレジット:Mykyta Dolmatov / Getty Images

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(文:Asa Forsell、翻訳:Dragonfly)

【コラム】開発者と設計者が企業の半導体不足解消のためにできること

米半導体メーカーMarvell Technology(マーベル・テクノロジー)のCEOであるMatt Murphy(マット・マーフィー)氏は2021年10月、半導体不足は2022年さらにはそれ以降にも及ぶだろうとの見解を示した。供給不足はすでに世界中で甚大な影響をもたらしており、ドイツの自動車メーカーOpel(オペル)は一部ラインの稼動を2022年初めまで停止すると発表している。

Society of Motor Manufacturers and Traders(英国自動車製造販売協会)が最近発表したところによると、2021年9月の英国の新車登録台数は1998年以降で最低を記録した。世界的に自動車メーカーは半導体不足に苦しんでおり、需要を満たすだけの車を製造・販売できていない。

しその余波はさらに広がっている。新型コロナウイルスのパンデミックを受けて需要が急増したコンシューマーエレクトロニクスも半導体不足の影響を受け始めており、調査結果からは、スマートフォンの生産に当初の予想以上の打撃が生じる可能性が示唆されている。Microsoft(マイクロソフト)のゲーミング担当エグゼクティブバイスプレジデントであるPhil Spencer(フィル・スペンサー)氏は、Xbox(エックスボックス)とPlayStation(プレイステーション)のゲームコンソールは2022年も供給不足が続くだろうとの見通しを表明した。

このことは、当社The Qt Company(ザ・キュート・カンパニー)がForrester(フォレスター)と最近行った、世界の製造業が直面している課題に関する調査でさらに実証された。驚くべきことに、私たちが話をした組織の80%が現在、デジタルプロダクトやサービスの産出に苦慮しており、62%がその原因として半導体供給の遅れを挙げている。

迅速な解決策はない

2020年を通じて、デジタルプロダクトとサービスに対する需要は前例のないペースで増加し、この需要はまだ揺らいでいない。2021年上半期に実施した本調査では、さらに82%の組織が、市場での地位を維持または成長させるためには新しいスマートプロダクトやコネクテッドプロダクト、サービスを迅速に導入する必要があると回答した。10組織のうち8組織近く(79%)にとって、これはソフトウェアの研究開発ライフサイクルの加速に意識を向けることを意味している。

スピードは依然として企業の最重要事項であり、半導体の供給やソフトウェア開発サイクルの遅れは深刻な問題を引き起こしている。多くの場合、このような遅延は数カ月間続く。そして、ファームウェアの課題にしっかりと向き合うことは、開発者スキルの不足という絶えず存在する懸念とも関係していることを忘れてはならない。

人材不足や半導体不足をすぐに解決することはできないが、企業が即座に有益なインパクトを生み出せる変革は存在する。そしてその中心には、半導体や組み込みデバイスに依拠するプロダクトやサービスを創造し、送り出す設計者と開発者が位置している。

開発プロセスへの挑戦

企業は危機に陥らないために、迅速かつ効果的な改善を行うための働き方に今すぐ目を向けなければならない。プロダクトのライフサイクルを見ると、ほとんどの企業は設計と開発に対して非常にサイロ化されたアプローチをとっている。そうした状況は、プロジェクトの着手時からのインタラクションの方法(あるいは多くの場合なされていない)に関してだけではなく、チームが使用するソフトウェアやツールを検討する際にも当てはまる。

これは、迅速で効率的なモバイルアプリ開発における中核的な課題の1つである、過度に複雑な開発者 / 設計フィードバックループに直接つながっている。デジタルプロダクトの制作を任されている開発者と、ユーザーエクスペリエンスやユーザーインターフェイスのような要素をより考慮している設計者との間には、しばしば断絶がある。

連携して作業を行うべきときに、両者は異なるサイロで活動している。開発者と設計者のコラボレーションを有効にすることは、このプロセスを促進し、チップ不足により失われた部分を補うために極めて重要である。

プロセスの一元化

開発と設計のツールとプラクティスを一元化することで、設計イテレーションを、中断ではなく開発プロセスへの貢献に転換することができる。骨の折れるフィードバックループのサイクルを断ち切り、ブランドはより早くプロダクトを市場に投入できるようになる。

DevOpsによるソフトウェア開発と同じような考え方で、設計と開発を「DevDes」として統合することは、サイロ化を解消し、ワークロードを軽減し、デリバリーをシンプルにすることを意味する。

クロスプラットフォームのフレームワークとツールは、これらの市場の課題の影響を緩和するために不可欠である。デジタルプロダクトの意思決定者は、柔軟性を維持し、調達可能なものを調達できる限り利用する必要があるだろう。例えば、多種多様なシリコンをサポートする柔軟なソフトウェアツールやプラットフォームに投資することで、サプライチェーンの不足による負荷を低減できる。

しかし、利点はそれだけではない。半導体不足を超えて考えると、プロダクトチームは多くの場合、複数のデバイスで使用可能でありながら、なおかつシームレスでネイティブなエクスペリエンスをエンドユーザーに提供できるプロダクトを、迅速に開発して展開することが求められる。繰り返しになるが、サイロを取り除き、DevDesアプローチをクロスプラットフォームフレームワークで採用することで、チームがネイティブ環境で作業できるようになり、プロセスの迅速化が可能になる。

将来にわたって機能するプロセス

私たちすべてがパンデミックの視点を離れ、より持続可能な未来を見据えつつあることに喜びを感じる一方で、過去20カ月間に得た教訓を決して忘れることはできないし、忘れてはならないと思う。

これほど急激に需要が高まることはないと思うが、再びピークを迎える可能性は高い。そして、消費者と企業の両方から期待されている、より良い品質のプロダクトの迅速な提供と、増え続けるデバイス間でのシームレスなエクスペリエンスは、今後も確実に続いていくトレンドである。

開発者のバーンアウトは広く語られており、必要なサポートを受けずにより多くのものをより速く提供するというプレッシャーは、持続可能なものではない。開発者スキルの不足に対応するために、より多くの開発者を育成していく上で、開発者がプロダクトチームの他の部分と真に統合された方法で作業できるようにすることは、極めて重要な意味を持つ。

今後しばらくの間、半導体不足が混乱を引き起こすことは避けられないだろう。それゆえ、現在のプロセスで実現可能なステップに目を向けることが、企業に委ねられている。その取り組みは、この困難な時期を乗り切るのに役立つだけではなく、将来にわたって存続できる企業を確立することにもつながるはずだ。それは開発ライフサイクルの中核をなす人とプロセスから始まるものである。

編集部注:本稿の執筆者Asa Forsell(アサ・フォーセル)氏は、The Qt Companyのオートモーティブ担当シニアプロダクトマネージャー。

画像クレジット:Mykyta Dolmatov / Getty Images

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(文:Asa Forsell、翻訳:Dragonfly)

数分の1のコストで何日分も電気を蓄えられるというForm Energyのバッテリー、秘密主義な同社CEOがその理由と歩みを語る

現在の数分の1のコストで何日分も電気を蓄えることができる充電池を開発していると語るForm Energy(フォーム・エナジー)は、2017年にひと握りの創業者によって設立されて以来、優良な支援者から3億6000万ドル(約410億9600億円)以上の資金を得ているにもかかわらず、秘密主義に走りすぎていると非難されてきた。

その創業者の1人であるForm EnergyのCEOであるMateo Jaramillo(マテオ・ジャラミロ)氏は、テスラのエネルギー貯蔵グループの創設を主導した人物だ。先に開催されたイベントでジャラミロ氏は、元TechCrunchの記者で現在はCNBCの特派員であるLora Kolodny(ローラ・コロドニー)に、同社が一種の社外秘を貫いてきた理由について話した。ジャラミロ氏はフォーム・エナジーの運営方法について説明した他、テスラでElon Musk(イーロン・マスク)の下で働いた7年以上の期間を振り返り、なかなか厳しい時間であったことを語った。

インタビューの全編は以下から視聴できる。以下は、そのインタビューからの抜粋となる。

なぜ今、再生可能エネルギーの波が押し寄せ、フォーム・エナジーは別としても多くの企業が注目され、投資資金を集めているのか。

現在、世界で最も安価に入手できる電力源は再生可能資源であり、つまり地域にもよりますが、太陽光や風力です。しかし最も安い電気料金を探しているのであれば、現在では再生可能エネルギーになるでしょう。もちろん、再生可能エネルギーは天候によって左右され、天候はある程度しか予測できず、しかも断続的に変化します。つまり完全に再生可能な脱炭素の送電網を実現するためには、関連するすべてのタイムスケールにおいて断続的なエネルギー源を蓄えることができなければならないのです。

そう、太陽は毎晩沈み、毎朝戻ってくるため、その間を繋がなくてはなりません。また、季節や長い期間の気象パターンに関連したギャップについても考える必要があります。再生可能エネルギーは過去15年から20年の間に非常に大きな進歩を遂げたため、現在の普及レベルでは、電力系統の最後の30%から40%について、再生可能エネルギーや発電機を使ってどのように信頼性とコストを提供するかを真剣に考えなければなりません。

画像クレジット:Dani Padgett

ジャラミロ氏は、フォーム・エナジーが採用している鉄空気の技術が、50年近く前に連邦政府機関によって調査されたが(一度も商業化されなかった)、突然エネルギー貯蔵の方法としての意味を持つようになった理由についても言及している。

まず、最も普及している技術は揚水発電です。現在、世界にあるエネルギー貯蔵技術の中では圧倒的に揚水発電が多いのです。ですがその上を行く技術は、もちろんリチウムイオンです。このイベントにいる全員が5つのリチウムイオン電池を持っていると思います。それだけリチウムイオン電池が普及しているということです。

しかし、再生可能エネルギーの普及が進むと、リチウムイオンの能力とは異なるものが必要になってきます。風力、水力、太陽光などの再生可能エネルギーを100%使用するだけでなく、数時間を超える電力供給の中断についても考えなくてはなりません。そのためには、リチウムイオンよりもはるかに安価である必要があります。

(一方)鉄は非常に豊富な金属物質です。地球上で最も多く採掘されている金属です。人間は鉄についてよく知っています。鉄をいじくり回して、鉄にちなんだ名前が付いた時代もありました。そして多くのことがわかりました。そして現在も、もちろん鉄鋼生産の主原料として使用しています。鉄はまた、非常に安価です。どの大陸にも豊富にあり、世界最大級の規模を誇る産業でもあります。そして、これは新しい化学ではないというのはその通りです。フォーム・エナジーは鉄空気を化学的に発明したわけではありません。私たちがやったことは、2つの国立研究所が最初に研究したともいえる化学物質を、50年先の未来に引っ張り出し、現代の技術と方法論、電気化学、腐食、金属工学に関する現代の知識を適用して、40~50年前に存在していた性能を今日において可能なところまで引き上げたのです。つまり、将来のリチウムイオンの10分の1のコストのデバイスに取り組んでいるのです。(つまり)深い脱炭素化、高度な再生可能性、安価で信頼性の高い電力網を実現することができるということです。

「鉄空気電池」とはどういう意味でしょうか。簡単に言えば、電気化学的に鉄を錆びさせ、錆びていない状態に戻すということです。それが私たちのやっていることです。非常に可逆的なプロセスですが、非常に優れたやり方で行わなくてはなりません。

さらにジャラミロ氏は、同社がシステムの効率性について秘密にしてきた理由についても言及した(「秘密にしてきたのだとしたら、それは私たちのやっていることが不必要に誇張されるのを避けようとしてきたからです」)。

彼は、技術がどのように機能するかについてより正確に話してくれた。現在、鉄鋼業界で年間1億トンもの大量生産が行われているブルーベリーサイズの「高純度の」鉄ペレットをフォーム・エナジーがどのように活用しているのかが気になる方は、10分前後の部分をご覧いただきたい。

さらにコロドニーは、テスラで学んだことのうち、フォーム・エナジーで再現しようとしていること、そして自動車メーカーでのキャリアから学んだことのうち、再現したくないことを尋ねた。

私はテスラに約7年半いました。2009年に入社して、2016年末に退社しました。テスラはレッスンの工場です。クルマを作っているともいえますが、実際にやっていることは人々にレッスンを提供することです。その弧の中にいるのはすばらしい場所でした。私が入社したときの社員数は数百人でしたが、私が退社するときには3万人、4万人といった規模になっていました。

私が退職したのは、当時、テスラのエネルギー事業であるPowerwall(パワーウォール)とPowerpack(パワーパック)をすでに立ち上げていたからです。私は結婚しています。妻と私の間には3人の子どもがいます。結婚生活を続けたいですし、子どもたちの人生の一部でありたいと思っています。イーロンと一緒に働いた7年半は、私にとっては十分でした。また、私は意図的にイーロンと良い関係のまま退社したいと思っていましたし、物事は良い方向に向かっていましたので、私にとってはそれで良かったのです。

画像クレジット:Dani Padgett

私は後悔なく退社しましたが、多くのことを学びました。それは一緒に仕事をする人たち、そしてその人たちの質ほど重要なものはないということです。彼らは、取り組んでいる仕事のミッションに対して、可能な限り情熱的にコミットしていなくてはなりません。

もう1つの教訓は、時には人をその人自身から守らなければならないということです。それは転倒する可能性があるからです。美徳も行き過ぎれば悪徳になります。だからこそ、会社にコミットし、ミッションに熱心に取り組んでいる人に求めることには限界があり、限界を置くべきということを認識することが大切です。フォーム・エナジーでは、現在約200名の社員が働いていますが、全員が非常に情熱的で、献身的で、使命感を持っているという文化を作り、かつ家庭などを維持できていることを願います。この2つは相反するものではありません。

画像クレジット:Dani Padgett

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(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)

マーカー不要、動く物体にもプロジェクションマッピングが可能な高速プロジェクターを東京工業大学らが開発

今回新たに開発した高速RGB+IRプロジェクター。46×28cmとコンパクト

今回新たに開発した高速RGB+IRプロジェクター。46×28cmとコンパクト

科学技術振興機構は12月2日、マーカーがいらず、動くものにも投影可能なプロジェクションマッピング用高速プロジェクターを開発したと発表した。これは、24bitカラー(RGB)と、目に見えない8bitの赤外線(IR)をそれぞれ同時に投影し、空間センシングと映像の投影を同時に行うというもの。これにより、マーカーを必要としないダイナミックプロジェクションマッピング(DPM)が可能になった。

これは、東京工業大学渡辺義浩准教授東京エレクトロンデバイスの湯浅剛氏、フラウンホーファー応用光学精密機械工学研究所のUwe Lippmann(ウーヴェ・リップマン)氏、ViALUXのPetra Aswendt(ペトロ・アシュエンド)氏からなる日本とドイツの国際産学連携チームによる共同研究。およそ1000fpsという非常に高いフレームレートでRGB方式の24bitカラー画像と、IRによる8bitの不可視画像をそれぞれ同時に制御し、さらに独自開発の光学系システムにより、両画像の同軸位置合わせを行うことで、IR画像を投影し空間センシングしながら、リアルタイムでそれに合わせた画像の投影が行える。

建物などの立体構造物に映像を投影するプロジェクションマッピングでは、対象物の形状を捉え、自然に見えるように映像をその形状に合わせて加工し、投影する必要がある。特に対象物が動いている場合、カメラで対象物の位置や形状を認識し、それに合う形と陰影を持たせた映像をリアルタイムで生成し、相手の位置に合わせて投影することになる。そのため、動く対象物と映像のズレが人の目では感知できないほどの高速で同期させなければならない。これまで、それを実現させるためには、対象物を平面にしたり、対象物にマーカーを取り付ける必要があった。

同研究チームは、3Dセンシングの基本的な手法である、プロジェクターとカメラを組み合わせたシステムを構築し、プロジェクターで空間に投影された既知パターンの反射像をカメラで捉えることにより、マーカーを使わずに空間情報を取得できるようにした。これまで、この手法を用いたダイナミックプロジェクションマッピングでは、センシング用投影とディスプレイ用投影を同時に高速処理しようとすると干渉し合ってしまうという問題があったのだが、同チームはセンシングを目に見えないIRで行うことで、これを克服した。

マーカー不要、動く物体にも最大925fpsでプロジェクションマッピング可能な高速プロジェクターを東京工業大学らが開発マーカー不要、動く物体にも最大925fpsでプロジェクションマッピング可能な高速プロジェクターを東京工業大学らが開発

マーカー不要、動く物体にも最大925fpsでプロジェクションマッピング可能な高速プロジェクターを東京工業大学らが開発

今回のプロジェクターによる画像投影を行ったトルソー(上)。トルソーにRGB画像とIR画像を同時に投影し、RGB画像のみを撮影したもの(中)。IR画像のみを感知するカメラで撮影したもの(下)

これを実現したのは、縦横に並べた1024×768個の微小な鏡の角度を個別に制御して投影画像を変化させるテキサス・インスツルメンツの「DLP」という技術を用いた投影装置「デジタルマイクロミラーデバイス」だ。RGBとIRの照明光学系を分離して、デジタルマイクロミラーデバイスの反射後に像を統合することで、コンパクトで高輝度の投影が可能になった。

マーカー不要、動く物体にも最大925fpsでプロジェクションマッピング可能な高速プロジェクターを東京工業大学らが開発

RGB+IR画像を高速で同時に投影するプロジェクターの光学系システム

また、ダイナミックプロジェクションマッピングで重要な処理の高速化においては、デジタルマイクロミラーデバイスの制御と光源の変調を高精度に連携させることで、最大925fpsという高いフレームレートを実現させ、さらに映像データの転送を高速化して、コンピューターからプロジェクターへの映像転送から投影までを、わずか数ミリ秒で行えるようにした。

マーカー不要、動く物体にも最大925fpsでプロジェクションマッピング可能な高速プロジェクターを東京工業大学らが開発

RGB画像とIR画像を、同プロジェクターを用いてスクリーン上に925fpsで投影している様子。右側のモニター上には、RGB画像のみを捉えるカメラで撮影した投影像(モニター内右)と、IR画像のみを捉えるカメラで撮影した投影像(モニター内左)が表示されている。スクリーンには2種類の画像を投影しているが、IR画像は人間には見えないことから、この不可視の投影像を空間センシングに利用できる

研究チームは、この技術の応用分野として、エンターテインメント、アート、広告といったビジネス分野、拡張現実分野の他、作業支援や医療支援などの幅広い社会実装に着手してゆくとのことだ。

新素材「多孔性配位高分子PCP/MOF」を開発する京都大学発スタートアップAtomisが12億円のシリーズB調達

新素材「多孔性配位高分子PCP/MOF」を開発する京都大学発スタートアップAtomisが12億円のシリーズB調達

新素材「多孔性配位高分子PCP/MOF」を開発する京都大学発スタートアップAtomisは12月6日、第三者割当増資による総額12億円の資金調達を発表した。引受先は、リードインベスターの未来創生2号ファンド(スパークス・グループ運営)、クボタ、Mitsui Kinzoku-SBI Material Innovation Fund(三井金属鉱業とSBIインベストメントのプライベートファンド)、長瀬産業、MOL PLUS(商船三井100%子会社のCVC)、京銀輝く未来応援ファンド2号(京都銀行と京銀リース・キャピタルによる共同ファンド)の合計6社。また、事業会社4社と戦略的な業務提携に向けた取り組みに着手する。

業務提携

  • 三井金属鉱業:PCP/MOF素材の量産化、新用途開発
  • クボタ:水・環境分野におけるPCP/MOFの利活用
  • 長瀬産業:PCP/MOF素材の拡販、環境分野におけるPCP/MOFの利活用
  • 商船三井グループ:船舶向け水素サプライチェーン構築におけるPCP/MOFの利活用

Atomisは、調達した資金を活用し、多孔性配位高分子PCP/MOFの開発および量産に向けた新たな研究開発拠点を建設。また、環境領域(CO2分離変換)、エネルギー領域(次世代高圧ガス容器CubiTan)の開発を加速させ、今後も「気体を自在に操る技術」で持続可能な社会の実現に貢献するとしている。

米大型書店Barnes & Nobleが新型電子書籍リーダー「Nook GlowLight 4」を発表、約1万7000円

正直にいおう。電子書籍リーダー市場はかつてのようなものではない。Amazon(アマゾン)は長らく市場を支配し、Kobo(コボ)は相変わらず。だが、それでも両者から新しいデバイスが登場すると、いつも予想外の驚きが感じられる。市場の力が画期的なイノベーションを引き起こしているわけではない。

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一方、Barnes & Noble(バーンズ&ノーブル)も、まだコツコツと頑張っている、らしい。実際、同社は先日、2021年2台目となる「Nook(ヌーク)」デバイスを発表したばかりだ。Lenovo(レノボ)がデザインした10インチのタブレット(NOOK 10″ HD Tablet Designed with Lenovo)に加わったのは、2017年に発売された「GlowLight 3(グローライト3)」の後継機種である。

Amazonが待望のUSB-Cポートを「Kindle Paperwhite(キンドル・ペーパーホワイト)」に加えてから1カ月あまり、Barnes & Nobleは「GlowLight 4(グローライト4)」で同じことをやり、さらに内蔵ストレージを8GBから32GBへと4倍に増やした。

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ページめくりの物理的ボタンはそのままだが、ソフトタッチの筐体と同一平面に埋め込まれたことで、少しだけすっきりしたように見える。全体的には先代モデルよりも小さく軽くなっている。とはいえ、来週の発売を前に、同社はまだ、詳細な寸法や重量の数値は明らかにしていないけれど。画面は6インチ、300dpiと、先代モデルと変わらない。バッテリーも同様で、1回の充電で約1カ月間の使用が可能だ。

B&Nが継続的に事業を行っているという事実以外、特に興奮するようなことは何もない。当然ながら、Amazonの製品に代わるものを探している人にとっては、確かに1番の選択だろう。

同社のCEOも妙に元気づいたようで、リリースで次のように述べている。「Barnes & Nobleは現在、当社のNOOK製品群にかなりの投資を行っています。GlowLight 4は、2021年発売される2台目のNOOKデバイスです。私たちはお客様にデバイスの新しいファミリーをお届けすると同時に、今後数カ月から数年の間にNOOKを再活性化していきます。チームは新しいNOOK製品の開発にしっかりと取り組んでおり、私たちは2022年に向けたイノベーションの強力なパイプラインを目にすることができ、大変うれしく思っています」。

そうなのだ。2022年はNOOKの年だ。初めて聞いたかもしれないが。それはともかく、GlowLight 4は12月8日に発売される。価格は150ドル(約1万7000円)。レノボのタブレットより20ドル(約2260円)高い。20ドルのケースも用意されている。新型コロナウイルス流行中には、誰も彼もが「読書をしていた」と主張していたが、それで電子書籍リーダー市場は再び活性化するだろうか?まあ、おそらくそうはならないだろう。しかし、Barnes & Nobleは、今にもそうなりそうでウズウズしているというのであった。

画像クレジット:Barnes & Noble

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ユーザーのホログラムを世界中にテレポート、新たなつながり方で働き方や遊び方を変えるPORTLが13.7億円調達

Zoom(ズーム)がすばらしいことは認めよう。しかしコンピューターの画面に並んだたくさんの二次元の人と話すことは、我々が夢見ていた未来ではない。これに同意するのが「If you can’t be there, beam there(そこにいないならテレポートしよう)」というキャッチーなスローガンとともに、ユーザーのホログラムを世界中にテレポートするという新しい市場を切り開くPORTL(ポータル)だ。同社は先日、True Capital Management(トゥルーキャピタルマネジメント)が主導した資金調達ラウンドで、高さ67m分の20ドル紙幣の束を、投資家たちの銀行口座から自社の銀行口座にテレポートしたと発表した。そう、1200万ドル(約13億7000万円)分の20ドル紙幣で、高さ67m。もっとも、ラウンドの参加者はトランク一杯の現金を持ってくるのではなく、ワイヤー送金したはずだが。

PORTLの操業者でCEO、そして発明家であるDavid Nussbaum(デビッド・ヌスバウム)氏は次のように話す。「CEO、ブランド、大学、そしてNFTアートクリエイターたちが、PORTLを使ってまったく新しい方法でつながり、コミュニケーションをとっています。これからはPORTLが、私たちの働き方、学び方、遊び方を変えていきます」「ビジョンを共有できる投資家がいることは非常に幸運です」。

PORTLは現在、約40名のチームで構成され、そのうち半数はエンジニアリングのスタッフである。同社はこれまでに約100台のフルサイズのPORTL(Epic)を販売し、一部は非常設の設置やキャンペーンのために貸し出している。近々デスクトップ向けに設計されたより小型のPORTL Miniもリリースされる。PORTLは、等身大の人と同じ体積を持つ4Kのホログラムプロジェクションとして、すでに20カ国以上で、さまざまなユースケースで利用されている。

ヌスバウム氏は次のように説明する。「教育現場のユースケースとしては、セントラルフロリダ大学に設置されたPORTLでは、医療従事者の卵たちが遠隔で患者の治療法・診断法の訓練を受けています。スポーツスタジアムでは、PORTLを通じてスポーツ選手がファンに語りかけています。さらに、多くの企業にコミュニケーションツールとして利用してもらっています」「世界最大規模の小売業者の数社が、パイロットプログラムでPORTLを購入しました。お店に入って、PORTLに近づいていく自分を想像してみてください。お店にマネキンはありませんが、自分の体と同じサイズや形のバーチャルマネキンが表示されたPORTLで、店内のあらゆる服を試着することができます。PORTLはバーチャルアシスタントや企業のコミュニケーションなど、さまざまな場面で活用されています。エンターテインメント分野ではレンタルが上手くいきました。Netflix(ネットフリックス)やHBO(エイチビーオー)などがPORTLを採用し、展示会のブースにPORTLを設置して集客に利用しています」。

PORTL Epicに表示されるラッパーのクエヴォとアメリカンフットボール選手のマーショーン・リンチ。手前はPORTLの創業者でCEOのデビッド・ヌスバウム氏(画像クレジット:PORTL)

シードラウンドから1年、PORTLは多くの称賛を集め、収益を上げることに成功した。Mobile World Congress 2021 Barcelona(MWCバルセロナ2021)ではReuters(ロイター)がNo.1イノベーションとしてPORTLを選出。最近では、CES 2022イノベーションアワードの3つの賞にノミネートされた。今回新たに調達した1200万ドルで、同社はより積極的な成長を推し進めようとしている。

「Tim Draper(ティム・ドレイパー)をシードラウンドに迎え入れたことは、非常に大きな収穫でした。彼は  『物事を正しく進める』という意味では伝説的な存在です。彼の勝率は非常に高く、彼が「次は君たちの番だ」と言ってくれたことで、私たちは多くのことを実現できました。ドレイパー氏がいることで他のメンバーを簡単に獲得することもできたのです。彼は達人です」とヌスバウム氏。「シリーズAラウンドにドレイパー氏が戻ってきてくれたことで、ラウンドが活気づきました。前回のラウンドで最後の参加者だったTrue CapitalがシリーズAに再度参加し、ラウンドを主導してくれました」。

今回調達した資金で次の成長に向けてスタートを切ったPORTLだが、ヌスバウム氏は今後の展開について壮大な計画を持っている。筆者が10年後の世界について質問したところ、すべてが計画通りに進んだ場合、として話をしてくれた。

ヌスバウム氏は彼のビジョンを次のように語る。「すべての家庭にPORTL Miniがあり、すべての会議室に大型のPORTL Epicが置かれます。私はPORTLは単なるコミュニケーションプラットフォームではなく、ブロードキャストチャネルだと信じています。10年後には、ブロードキャストやコミュニケーション、さらには旅行手段までもが変わる未来が来るはずです。すべての駅、空港、小売店、喫茶店のテーブル、医療センター、学校、会議室などにPORTLが1台ずつ設置されることになると思います」「私たちはハードウェアを設計していますが、本来は受信の手段としてハードウェアを使用するソフトウェアとテクノロジーを扱う企業です。今回のシリーズAラウンドと今後のラウンドで獲得する資金をテクノロジーに投入すれば、可能性の限界を押し広げることができます。スタートレックでおなじみのテクノロジーは私たちが考えているよりもずっと早く実現するはずです」。

PORTLのCEOデビッド・ヌスバウム氏と投資家のティム・ドレイパー氏(画像クレジット:PORTL)

資金調達をしている他の多くの企業と同様に、同社はエンジニアリングと営業・運営の両面で採用活動を行っている。

True Capital Managementの共同創業者兼CEOであるDoug Raetz(ダグ・レッツ )氏は次のように話す。「1年ほど前、ビジネスパートナーに「今すぐLAに飛んでPORTLのテクノロジーを見てこい」と言われました。私はそこで未来に遭遇しました。その後はPORTLのデモのたびに新しい人を連れてLAに通っています。最初はDante Exum(ダンテ・エクザム、オーストラリアのプロバスケットボール選手)、次はRGIII(ロバート・グリフィン3世、アメリカンフットボール選手)。その後、QuavoにPORTLを紹介したところ、翌日には彼から電話があり「次のアルバムは、いくつかの都市で同時にライブを行ってリリースしたい」と言われました。それを実現したのがPORTLです。私たちのコミュニケーションとコンテンツの楽しみ方は今後必ず変化すると確信しました」「私たちのクライアントはテクノロジー、特に自分自身が信じ、個人的に利用したいと考えるテクノロジーの大ファンです。私は彼らがPORTLを見て興奮するだろうと思っていましたが、実際に全員が大喜びしました。私はPORTLを支えるすばらしいチームと、ビジネス拡大に向けた彼らのビジョンを知り、全面的にバックアップすることを決断したのです」。

画像クレジット:PORTL

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

【コラム】新たなハイブリッド生活、私たちと共存するハードウェアにできること

社会におけるさまざまな場面でハイブリッドモデルが登場しているが、それらは驚くほどの柔軟性がある一方で、仕事とプライベートの境界線はますます曖昧になり、私たちが精神的に疲弊をしていることは明らかだ。

儀式というのは、常に私たちの精神的、感情的な状態を形作る強力な力を持っている。例えば、人の集まり、物理的なトーテム、衣装や空間デザインなどはすべて、その経験を生み出すために機能する。しかし、ハイブリッドで働く人々にとっては、これまで慣れ親しんできた儀式の多くがもはや手の届かないものになっているのだ。彼らの日々の仕事には、人と集まることも、場所の変更も必要なく、服装もほとんど(あったとしても)変える必要がない。

1日に7時間以上も画面を見ている若者は、うつ病や不安症にかかりやすく、仕事をこなすのが難しいという研究結果が出ているにもかかわらず、私たちはハイブリッドなバーチャル体験を増やし続けている。さらに、従業員たちは、複数のタイムゾーンにまたがって行われる会議の連続で、毎日が果てしなく続くような感覚に陥り、疲労や倦怠感を訴えている。

現在、多くの人々が仕事や学校、買い物、銀行、医療など、あらゆる場面でコンピューターデバイスに依存していることを考えると、私たちは、ハイブリッドな仮想世界での新たな儀式に備えて、これらのデバイスをどのように設計・開発しているかを、より注意して見ていかなければならない。

今日「コンピュータデバイス」とは、従来のデスクトップ型ワークステーションから超ポータブルな携帯電話まで、あらゆるシナリオを想定している。しかし、これらのデバイスのデザインが、ユーザーの仕事とプライベートの境界を明確にするのに役立つとしたらどうだろう?

例えば、画面の前にキーボードがあるデバイスは「生産性の高いツール」という印象を与えるが、タッチ式のタブレット端末では、よりカジュアルでエンターテインメントに特化した印象を与える。もし、リモートワーカーがこの2つの様式を切り替えることで「仕事」から「プライベート」への切り替えを知らせることができたらどうだろう。

また、最近注目されているのが、ビデオチャットや会議ツールだ。私たちの多くにとって、人との交流の大半は、ビデオ会議アプリを使ったバーチャルミーティングで行われている。HDウェブカムやリング型ライトの需要は高く、バーチャルな背景やエフェクトの数は日々増加している。

ただ、ハードウェアの設計に大きく依存していることもあり、ビデオ会議の体験にはまだ多くの課題や制限がある。Zoom、Google Hangouts、Teamsなどのツールは、最新のアップグレードに対応しようと競い合っているが、統合された照明源、改良されたオーディオ、さらには触覚フィードバックなどのハードウェア上のハードルに取り組まなければ、ソフトウェアができるのはここまでだ。

しかし、対面からバーチャルへのパラダイムシフトを受け入れることができれば、ユーザーが同僚と直接目を合わせているように見せるために、ディスプレイ内埋め込み型の1ピクセル以下のカメラレンズのようなハードウェアのアップグレードによって、未来の日常に向けたデザインができるようになる。他にも、温度や触覚の技術を応用することで、仮想空間を介してお互いのつながりをより深く感じることもできるだろう。また、没入型の体験が進化していく中で、嗅覚の技術を追求することで、新たな可能性が生まれるかもしれない。

しかし、このようなハードウェアの進化は、実際に生産や消費の面ではどのようなものになるだろう?テクノロジーの便利さには目を見張るものがあるが、その一方で地球への負担も大きい。

消費者は地球を酷使する存在になってしまったのだろうか?

自分が大切にしているものを考えてみると、それらに共通しているのは、どれも古くて希少なものだということだ。もちろん、これは貴重なものに共通することだが、この価値観をハイテク製品にも適用できないだろうか。私はiPhoneを1〜2年ごとに交換しているが、Ducati(ドゥカティ)のバイクはパーツを少しずつアップグレードしていくことに大きな喜びを感じている。新品に交換するために捨てようとは決して思わない。

サステイナブルなソリューションを求める消費者が増えれば、ハードウェアメーカーはサービスを調整しなければならない。Apple(アップル)のような強力なブランドは、環境再生活動の強力なリーダーとなり得るだろう。デスクトップPCを自作することは(特にハードコアゲーマーにとっては)目新しいことではないが、すべてのポータブル機器がアップグレード可能なモジュール式になった未来を想像してみて欲しい。50年後、2025年に購入したスマートフォンが、いまだに機能していて価値の高いビンテージ品になっていたとしたらどうだろう?

私たちの新しい日常の現実は、デバイスの多さが解消されない一方で、ソフトウェアの開発が飛躍的に進んでいることだ。そろそろ私たちは、自分のデバイスを、クルマや家と同じように、最新の進歩に合わせて修理したり、改造したりして、大切にしていく対象として考えていかなければならない。

編集部注:執筆者Francois Nguyen(フランソワ・グエン)氏はfrogのプロダクトデザインのエグゼクティブデザインディレクター。

画像クレジット:Peter Cade / Getty Images

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(文:Francois Nguyen、翻訳:Akihito Mizukoshi)

米FTCがNVIDIAによるArm買収を競争阻害で提訴

NVIDIAによるArm買収計画が、大きな障害にぶつかった。連邦取引委員会(FTC)は、その400億ドル(約4兆5231億円)の取引がデータセンターや車載コンピューターなど複数の技術分野で競争を「阻害」するとして、合併を阻止するために訴えた。FTCによると、ArmはNVIDIAとライバルたちとの競争を育む「重要なインプット」であり、合併はNVIDIAに、競合他社を「弱体化」させる手段を与えることになると指摘している。

FTCはさらに、NVIDIAがArmのライセンシーの機密情報にアクセスすることを懸念している。またこの合併は、NVIDIAの事業目標に敵対するような技術を開発する意欲を損なうだろう、と委員たちはいう。この行政審判は2022年8月9日に始まる予定だ。

同社は、何も心配していないようだ。NVIDIAはこの訴訟を、FTCのプロセスの「次のステップ」と呼び、買収を肯定する主張を繰り返している。それによると、買収はArmの製品計画を「加速」し、競争を増大し、しかもチップのアーキテクチャの設計者のオープンライセンシングモデルは依然として保護される。その声明の全文は本記事の下部にある。

勇ましい主張だが、FTCからの訴訟はNVIDIAにとって大きな問題だ。同委員会が訴訟に踏み切るのは、企業が法律に違反していると見なした場合であり、しかも一定の譲歩では不十分な場合だ。しかも今回は、これよりも前の2021年10月に、買収に関する調査をEC(欧州委員会)が発動している。NVIDIAは、この買収を懸念している大国の規制当局からの疑問に直面しており、彼らはこのような答えで納得しないだろう。

現状では、NVIDIAの競合他社も満足していない。報道によると、QualcommはFTCなどとの対話でArmの取引に反対し、NVIDIAが設計のライセンスを拒否するかもしれない、という懸念を表明している。またAppleやMediaTek、Samsungなどの大物もArmに依存しているため、市場の残りの部分が賛成に回ることも考えづらい。少なくともこの裁判で、NVIDIAが最初2022年を目標とした組合の閉鎖が遅れることになりそうだ。

FTCプロセスの次のステップに進むにあたり、我々は、この取引が業界に利益をもたらし、競争を促進するものであることを示す努力を続けていきます。NVIDIAは、Armの研究開発に投資し、ロードマップを加速させ、競争を促進し、すべてのArmのライセンシーに多くの機会を与え、Armのエコシステムを拡大する方法で、Armの提供製品を拡大していきます。NVIDIAは、Armのオープンなライセンスモデルを維持し、現在および将来のすべてのライセンシーがそのIPを利用できるようにすることを約束します。

編集部注:この記事の初出はEngadget。執筆者のJon FingasはEngadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Omar Marques/SOPA Images/LightRocket/Getty Images

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(文:Jon Fingas、翻訳:Hiroshi Iwatani)

3Dプリンティング企業のEssentiumが、SPAC経由で株式公開する計画を発表

アディティブマニュファクチャリング(⾦属3Dプリント、⾦属積層造形)の世界も、SPAC(特別買収目的会社)ブームと無縁ではいられない。Desktop Metal(デスクトップ・メタル)、Shapeways(シェイプウェイズ)、Markforged(マークフォージド)、Velo3D(ベロ3D)の各社は、いずれもSPACによる株式公開を完了したか、またはその計画を発表している企業だ。オースティンを拠点とするEssentium(エッセンティアム)は米国時間12月1日、Atlantic Coastal Acquisition Corporation(アトランティック・コースタル・アクイジション・コーポレーション)との逆さ合併により、この増え続ける企業リストに自社の名前を追加する計画を発表した

この取引が完了すると、合併後の企業価値は9億7400万ドル(約1100億円)となり、そのうち3億4500万ドル(約390億円)をAtlantic Coastalが現金で受け取ることになる。Essentiumは、アディティブ・マニュファクチャリングや3Dプリンティングへの関心が高まっている要因として、現在も進行中のサプライチェーン問題を挙げている。

「既存のグローバルサプライチェーンモデルの根本的な欠陥が、貿易不均衡や新型コロナウイルスの世界的大流行のような障害の増大によって悪化し、流通のボトルネックを長期化させています」と、同社CEOのBlake Teipel(ブレイク・タイペル)氏は述べている。「本日の発表は、これらのグローバルな課題に正面から取り組むことができる新しい製造パラダイムのために、長期的かつ持続可能なソリューションを提供する当社の取り組みにおける重要なマイルストーンを象徴するものです」。

TechCrunchがタイペル氏から話を聞いたのは2017年のこと。Essentiumは当時、プラスチックの3Dプリント素材をプリントしながら融合させ、従来のFDMプロセスよりも強度の高いオブジェクト作り上げるプラズマベースのシステムを発表していた。同社はまた、標準的な押出成形に比べて5倍から15倍の速度を誇ると言われる高速押出成形プロセスも活用しており、既存の顧客には米国国防総省、Lockheed Martin(ロッキード・マーティン)、Ford(フォード)などがいる。

今回発表された合併は、2022年第1四半期に完了する予定だ。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

スマートマグメーカーのEmberが新たに約26.5億円を調達、医薬品・母乳ストレージにも期待

2021年2月、Emberのコンシューマー部門CEOに就任した元Dyson(ダイソン)COOのJim Rowan(ジム・ローワン)氏は、TechCrunchに対し、同社の名前を冠した温度調節機能付きスマートマグカップ以外にも事業を拡大する計画を説明した。その際、ローワン氏は、コールドチェーン、特に医薬品の輸送が、今後の同社にとって重要なカテゴリーになる可能性があると述べていた。

その約束を果たし始める時が来たようで、Emberは、新たにシリーズEラウンドで2350万ドル(約26億5000万円)を調達し、累計資金調達額を約8000万ドル(約90億3000万円)に引き上げた。注目に値するのは、今回のラウンドを主導したのはFoxconn(フォックスコン)の子会社であるGOLDTekと、シンガポールのEDBIだということだ。後者は、Emberが国際的なプレゼンスを高めるために、東南アジアにR&Dセンターを開設する計画を発表したのを受けての投資だ。

Emberは2021年に入ってからチームを76%増員しているが、センターの開設でさらなる人員の拡大が必要となる。

創業者でグループCEOのClay Alexander(クレイ・アレクサンダー)氏は、リリースの中でこう述べた。「5年前にEmberを立ち上げて以来、当社の使命は、精密な温度制御に関する専門知識を用いて、お客様の現実的な問題を解決することでした。Emberは現在までに、温度制御、データ、および接続に関する129件以上の特許を取得しています。今回の追加資本は、今後数年間で、特にヘルスケアや乳児の授乳の分野で、当社の膨大な特許ポートフォリオの技術を実現するために役立ちます」。

コールドチェーンの分野では、同社は「初の自己冷蔵型クラウドベースの配送箱」の登場を示唆している。製薬業界を対象としたこの技術は、現在、かつてないほどの負担を強いられているグローバルサプライチェーンを対象としている。

画像クレジット:Ember

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

クアルコムがPC向けArmベースSoC「Snapdragon 8cx Gen 3」発表、5nmプロセス採用・前世代比でCPU性能85%向上

クアルコムがPC向けArmベースSoC「Snapdragon 8cx Gen 3」発表、5nmプロセス採用・前世代比でCPU性能85%向上クアルコムは、Snapdragn Tech Summitの2日目に、前世代比で85%の性能向上を達成した、ArmベースのSoC(システム・オン・チップ)「Snapdragon 8cx Gen 3」を発表しました。クアルコムがPC向けArmベースSoC「Snapdragon 8cx Gen 3」発表、5nmプロセス採用・前世代比でCPU性能85%向上

「Snapdragon 8cx Gen 3」は、世界初のWindows PC向け5nm SoCです。

前世代(8cx Gen 2)と同等の消費電力ながら、CPU性能は最大85%向上。競合するx86プラットフォームと比較して、1Wあたりの性能は最大60%上回り、ノートPCで数日間のバッテリー寿命を実現するといいます。

GPU性能も前世代から最大60%向上。動画・写真の編集・ビデオ会議といったGPUに負荷がかかる場面でのグラフィックス・ソフトウェア体験を向上させています。フルHD(最大120fps)のゲーミングをサポートし、前述の電力効率とあわせ、バッテリー駆動でも競合プラットフォームに比べ最大50%長くゲームプレイを楽しめるといいます。

スマートフォンと同じSnapdragon X55 / 62 / 65モデムをサポートし、4G / 5Gネットワークにも常時接続可能。最大10Gbpsの5G通信にも対応します。クアルコムがPC向けArmベースSoC「Snapdragon 8cx Gen 3」発表、5nmプロセス採用・前世代比でCPU性能85%向上

SoCに統合したISP(画像処理プロセッサ)によって、オートフォーカス・オートホワイトバランス・オート露出をユーザーの動きや照明の状況によって適切に設定し、高品位なビデオ会議が可能。

最大4つのカメラや4K HDRカメラにも対応。AIを活用し、ビデオ会議中に犬の鳴き声のような不必要な背景音を取り除くことも可能です。なお、AI性能は29+TOPS(1秒間に29兆回以上の演算を実行可能)となっています。

クアルコムがPC向けArmベースSoC「Snapdragon 8cx Gen 3」発表、5nmプロセス採用・前世代比でCPU性能85%向上

Snapdragon 8cx Gen 3の概要

エントリー向け Snapdragon 7c+ Gen 3も発表

6nmプロセスを採用した、よりエントリー向けとなる「Snapdrgaon 7c+ Gen3」も発表。

こちらはWindows PC / Chromebook向けで、CPU性能は先代比で最大60%、GPU性能は最大70%向上。AI性能は6.5 TOPSとなります。

Snapdragon X53モデムをサポートし、最大3.7Gbpsの5G通信も可能。最大2.9GbpsのWi-Fi6 / 6E通信もサポートします。

Snapdragon 8cx Gen 3 / 7c+ Gen 3搭載デバイスはそれぞれ2022年前半に登場します。

Engadget日本版より転載)