GMがより低コストで航続距離の長いEV用バッテリーの開発施設を建設中

General Motors(ゼネラルモーターズ)は、ミシガン州ウォーレンのキャンパスに新しい施設を建設している。その目的は、バッテリーのコストを削減しながら航続距離を伸ばす画期的なセル技術を開発することだ。

GMは米国時間10月5日、このWallace Battery Cell Innovation Center(ウォレス・バッテリー・セル・イノベーション・センター)と呼ばれる施設の建設が始まったことを発表した。同社のグローバル・テクニカル・センターの敷地内に建設中のこの新施設は、2022年の半ばに完成する予定だ。敷地面積は約30万平方フィート(約2万7900平方メートル)だが、必要に応じて当初の面積の少なくとも3倍に拡張することを計画しているという。GMはこの施設に「数億ドル(数百億円)」を投資していると述べるだけで、建設費用については明らかにしなかった。

この施設の名前は、2018年に亡くなったGMの取締役で、同社のバッテリー技術に貢献したBill Wallace(ビル・ウォレス)氏から付けられた。同氏は、Chevrolet(シボレー)ブランドから発売されたプラグインハイブリッド車の「Volt(ヴォルト)」の初代および二代目モデル「Malibu Hybrid(マリブ・ハイブリッド)」、そして電気自動車「Bolt EV(ボルトEV)」のバッテリー・システムを開発したチームを率いていた。ウォレス氏はまた、GMとLG Chem(LG化学)R&D(現在のLG Energy Solution)の関係を築いた人物でもある。

すでにGMは、より安価でエネルギー密度の高いバッテリーの開発に取り組んでいるラボや研究開発施設を持っている。この新しいセンターは、同社の化学・材料サブシステム研究開発ラボやバッテリーシステムラボで行われているさまざまな取り組みをすべて結びつける役目を担う。

GMがこの新設で目指しているのは、1リットルあたり最大1200ワット時のエネルギー密度を持ち、コストを少なくとも60%削減したバッテリーを開発することだ。この目標は野心的であり、高尚だともいえるだろう。そしてこれはGMにとって、ラインナップの全車または大部分を電気自動車に切り替えるという計画を発表している他のすべての自動車メーカーと競争するための、重要なステップであるとも考えられる。

現時点において、GMのEVへの転換戦略の基盤となっているのは、Ultium(ウルティウム)プラットフォームとUltiumリチウムイオン電池だ。2020年に公開されたこの新しい電動車アーキテクチャとバッテリーシステムは、コンパクトカー、商用ピックアップトラック、大型高級SUV、パフォーマンスカーなど、GMのさまざまなブランドで幅広い製品に使われる予定だ。

GMは、このUltiumのバッテリーセルを製造するLGエナジーソリューションズとの合弁会社に、50億ドル(約5570億円)を投資する計画を発表している。両社は、オハイオ州北東部のローズタウン地区にバッテーセルの組立工場を設立し、1100人以上の新規雇用を創出するとともに、テネシー州スプリングヒルにも第二の工場の建設を予定している。

Ultiumバッテリーは、レアアースであるコバルトの使用量を減らし、単一の共通セル設計を採用することで、GMの現行バッテリーよりも小さなスペースで高いエネルギー密度を効率的に構成することができると、同社では述べている。

GMのグローバル製品開発・購買・サプライチェーン担当取締役副社長のDoug Parks(ダグ・パークス)氏によると、新設されるウォレスセンターは、将来的により手頃な価格で航続距離が長いEVの基礎となるバッテリーを製造するというGMの計画の重要な部分を占めることになるという。このような画期的な技術は、間もなく市場に投入されるUltiumバッテリーの世代にはまだ見られない。

ウォレスセンターでは、リチウム金属電池、シリコン電池、固体電池など、新技術の開発を加速させることが期待されている。また、このセンターでは、GMがLGと合弁で運営するローズタウンとスプリングヒルの工場をはじめ、米国内ある非公開の拠点を含むGMのバッテリーセル製造工場で用いることができる生産方法の改善にも力を入れていくという。

さらに特筆すべきは、この新施設では、一般的に携帯機器や研究用に使われる小型のリチウム金属電池セルを超えた、自動車に使用できる大型リチウム金属電池セルのプロトタイプを製造できる能力を持つようになるということだ。これらのセルはGM独自の方式で作られ、初期のUltiumバッテリーで使われるパウチセルの約2倍に相当する1000mm程度の大きさになる可能性があるという。

画像クレジット:GM

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

米幹線道路交通安全局がテスラのバッテリー管理システム公式捜査の請願を却下

幹線道路交通安全局(NHTSA)は、ネット経由アップデートの欠陥が5台の車の火災を引き起こしたとする申し立てを巡り、Tesla(テスラ)のバッテリー管理ソフトウェアの公式調査を要求した2019年の請願を却下した。

同局が公式捜査を行わない理由の1つは、該当事象の過半数が米国外で起きているためである、と同局のウェブサイトに掲示された文書で述べられている。

NHTSAは評価の一環として、請願書に記載された2012年から2019年のModel SおよびModel X6万1781台に対する59件の苦情申立を検討した結果、却下を決定した。59件の苦情のうち、52件がバッテリー容量の減少を、7件がソフトウェアがアップデートされた後に充電速度が低下したことをそれぞれ主張していた。車のログデータによると、苦情の58%で車両の電圧制限ファームウェアが有効になっていたが、その後のアップデートによって当該車両のバッテリー容量は部分的あるいは完全に復旧したと報告書概要に書かれている。

同局は、最悪の事態が重なって2019年に中国で発生した2件の火災を引き起こしたことは認識している。それらの車両は直近に高速充電処理を完了し、バッテリーは高い充電状態にあり、バッテリー冷却システムが切断された状態で駐車されていた。2台の車には高負荷下で利用されていた履歴もあった。

Teslaのバッテリー管理システムに詳しい筋によると、もし本当に系統的なソフトウェア問題が存在したなら、5台をはるかに越える車が火災を起こしているだろうと語った。そのような稀少な事故は、製造上の物理的欠陥あるいは利用中の物理的損傷が原因である可能性が高い。例えばこの種の火災が発生した中国ではよくあるとNHTSAが指摘する、高速充電されたばかりの車に高い負荷をかけるような行為だ。

米国でも2件火災が起きているが、1件は高速充電の履歴がなく火災発生時に走行中だった車両によるものであり、もう1件は高電圧バッテリーシステムとの関連性がなかった。5番目の火災はドイツで発生し、車両は低い充電状態で長時間駐車されていた。

「米国内で高速充電に関連する事象が起きていないこと、および2019年5月以降同様の事象が世界中で起きていないことを踏まえると、この請願を許可した結果実施された捜査によって、安全に関係する欠陥の通知と改善に関わる命令が発行される可能性は極めて低い」と裁定は結論づけた。「よって、請願書に記載された情報、および安全に関わる潜在リスクを十分に検討した結果、本請願は却下された」。

報告書は、今回の請願が却下されたことに関わらず、将来安全に関わる欠陥が認められれば、同局がさらなる措置をとる可能性があることを示唆している。

NHTSAはこの請願を拒否したものの、これとは別にTeslaのソフトウェア「Autopilot」の捜査を今も継続している。高度な運転支援システムを有効にした車両が、非常灯を点滅させて駐車していた緊急自動車に衝突するなど、2018年以来死者1名負傷者17名を生む事故を起こしたのを受けたものだ。Teslaは10月22日までに詳細なAutopilotのデータを提出しないと1億1500万ドル(約128億5000万円)の罰金を課せられるが、同社の第2四半期の純利益11億4000万ドル(約1273億9000万円)を考えると軽いお仕置きだ。

関連記事:米交通安全局がテスラに運転支援システム「Autopilot」の詳細な情報提供を命じる

画像クレジット:PIERRE-HENRY DESHAYES/AFP / Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nob Takahashi / facebook

フォードとSKが1.27兆円をかけEVとバッテリーに特化した2つの製造キャンパスを米国に建設

Ford Motor Company(フォード・モーター)とバッテリー製造メーカーのSK Innovation(SKイノベーション)は、114億ドル(約1兆2680億円)をかけてテネシー州とケンタッキー州に巨大工場キャンパスを建設し、バッテリーおよび次世代電動トラックのF-Seriesを製造する。このプロジェクトは1万1000人分の新たな雇用を生む、と両社は述べている。

2つのキャンパスに入る施設は、バッテリーセルの製造とサプライヤーパークへのリサイクルから組み立て工場まで、電気自動車を作るエコシステム全体を網羅するようにデザインされている。Fordは同プロジェクトに70億ドル(約7790億円)を投資しており、同社118年の歴史の中で、単独の製造プロジェクトにおける最大の金額だ。この投資は、Fordが以前発表した2025年までに電動自動車に300億ドル(約3340億円)を投入する計画の一環だ。

同社はさらに今後5年にわたりテキサス州を皮切りに全米でハイテクジョブトレーニングを行うために5億2500万ドル(約580億円)を費やす予定であることも話した。この投資はFordが今後次々と発売する電動およびつながる自動車をサポートする技術者の要請に特化している。

Fordの「メガキャンパス」計画(同社にとって世代で最初の施設)は、Mustang Mach-E(ムスタング・マッハE)、Ford E-Transit cargo van(Eトランシット・カーゴバン)やすでに15万台の予約注文が入っているF-150 Lightning pickup truck(F-150ライトニング・ピックアップ・トラック)など増え続けるEV製品群をサポートすることが目的だ。また、バッテリーのコストを1キロワット時当たり80ドル(約8900円)レベルまで下げる同社の戦略の一部でもある。

「これらの投資のタイミングは非常に重要です。なぜならバッテリー電気自動車への本格的転換はすごそこまで来ているからです」とFordの北米最高執行責任者、Lisa Drake(リサ・ドレイク)氏が米国時間9月27日のメディア会見で語った。「すでにその証拠は業界内に見られますし、今回当社自身の製品発表でも明らかになりました」。

そしてFordはEVの需要に関して強気だ。同社は2030年までにフルサイズピックアップ部門の3分の1が完全電動化すると予測している、とドレーク氏は言った。

画像クレジット:Ford

この日の発表は、Fordの来たるべきF-150 Lightningの生産能力を拡張して年間8万台の全電動トラックを製造するために2億5000万ドル(約280億円)を投入し、450人分の新たな雇用を創成する計画をはじめとする一連の投資計画に続くものだ。新たな資金と雇用はミシガン州、ディアボーンのRouge Electric Vehicle Center(ルージュ電気自動車センター)、Van Dyke Electric Powertrain Center(バンダイク電動パワートレインセンター)、およびRawsonville Components Plant(ローソンビル部品工場)の3カ所に振り分けられるとFordはいう。

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フォードがEV普及に向け、バッテリー原料リサイクル企業のRedwood Materialsと提携

今回の発表は、FordがRedwood Materials(レッドウッド・マテリアルズ)との提携によって、製造スクラップと終末を迎えたEVのリサイクル、およびバッテリーの原材料を供給するクローズドループシステムを作る計画を発表してから1週間も経っていない。バッテリーやそれを作るための部品の供給を確保することの重要性は、自動車業界にバッテリーセル製造メーカーとの提携を促し、Redwood Materialsのような会社への注目が益々高まっている。

ドレイク氏は提携の詳細として、Redwood Materialsがテネシー州メンフィス近くのいわゆるBlue Oval City(ブルー・オーバル・シティ)キャンパスにリサイクル施設を構える予定であることを付け加えた。

テネシーキャンパス

テネシー州スタントンの56億ドル(約6230億円)をかけるキャンパスは、完成すると面積、人口ともに小さな村に匹敵する。3600エーカー(1457万平方メートル)のキャンパスはクローズドループ製造センターとして作られる。つまり、製造に使用された材料が新しいEVを作るために再利用できるという意味だ。

キャンパスには、SKと提携して運用されるバッテリー製造施設、サプライヤーパーク、および電動Fシリーズトラックに特化した組立工場が作られる予定だ。バッテリー製造施設は43ギガワット時のセル容量を生産する能力をもつ。組立工場は2025年の製造開始時点からカーボンニュートラルになるように設計されている、とFordはいう。

ケンタッキーキャンパス

Fordは、ケンタッキー州中央部グレンデールに位置する同キャンパスに、双子のバッテリー工場を建設する。そこで製造されたバッテリーは、2020年代後半にFordおよびLincoln(リンカーン)の新しい電気自動車製品ラインで使用される。リチウムイオンバッテリーの製造は2025年に開始する予定だ。

この1500エーカー(607万平方メートル)のバッテリーキャンパスを、FordはBlueOvalSK Battery Park(ブルーオーバルSK・バッテリー・パーク)と呼び、約58億ドル(約6450億円)の費用をかけ、5000人を雇用する。双子のバッテリー工場はそれぞれ最大43ギガワット時、合わせて年間86ギガワット時の生産能力がある。テネシー州の第3のバッテリーセル工場を加えて、総容量は最大129ギガワット時になる、とSKの執行副社長兼マーケティング全世界責任者のYoosuk Kim(ユースク・キム)氏は説明した。

全体では100万台の電気自動車を駆動するのに十分な容量だとドレイク氏は言った。

以前Fordは、同社のバッテリー電気自動車の世界計画のためには2030年までに240ギガワット時のバッテリーセル容量が必要だという。これはおよそ工場10カ所分の容量だ。また同社は、北米には140ギガワット時が必要であり、残りをヨーロッパ、中国など他の地域に割り当てるとも語っていた。

画像クレジット:Ford

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nob Takahashi / facebook

フォードがEV普及に向け、バッテリー原料リサイクル企業のRedwood Materialsと提携

Ford Motor(フォード・モーター)は、バッテリー原料リサイクル企業のRedwood Materials(レッドウッド・マテリアルズ)と提携し、今後大量に投入される電気自動車のためのクローズドループ・システムを構築することにした。この提携では、生産過程で発生する廃棄物や寿命を終えた電気自動車のリサイクルに加え、フォードの電気自動車に使用されるバッテリーの原材料の供給も行うことになる。

2020年発売された「Mustang Mach E(マスタング マックE)」や、間もなく発売されるピックアップトラック「F-150 Lightning(F-150ライトニング)」をはじめ、フォードがそのラインナップに電気自動車を増やしていく中で、今回の提携は結ばれたものだ。電気自動車用のバッテリーやその原料を確保するために、自動車業界は電池メーカーとの提携を進めており、レッドウッド・マテリアルズのような企業に目を向けている。

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フォードだけでも膨大な量のバッテリー供給が必要になる。同社が2030年までに全世界で投入を計画している電気自動車は、合計で少なくとも240ギガワット時以上のバッテリー容量を必要とするという。これはおおよそ工場10カ所分の容量に相当する。フォードは以前、北米だけで140ギガワット時が必要になり、残りは欧州や中国を含む他の地域に割り当てられる分だと述べていた。

フォードの北米地域担当最高執行責任者を務めるLisa Drake(リサ・ドレイク)氏は「寿命を終えた我々の製品においてクローズドループを構築し、その資源をサプライチェーンに再投入することが可能になれば、コスト削減につながります」と、プレス説明会の中で語った。「当然ながら、バッテリーを製造する際に現在使用している多くの原料の輸入依存度を下げることにもつながります。そして、それによって原材料の採掘も減らすことができます。これは今後、私たちがこの分野の規模を拡大していく上で、非常に重要なことです」。

これらすべてが、EVをより安価に、より持続可能なものにすると、ドレイク氏はいう。

レッドウッド・マテリアルズは、バッテリーセルの製造過程で発生する廃棄物や、携帯電話のバッテリー、ノートパソコン、電動工具、モバイルバッテリー、スクーター、電動自転車などの家電製品をリサイクルしている企業だ。Tesla(テスラ)の元CTOであるJB Straubel,(JB・ストラウベル)氏が設立し、率いているこの会社は、ニッケル、コバルト、リチウム、銅などの元素を平均して95%以上回収できるという。

レッドウッドは、これらの廃棄物を処理して、通常は採掘で得られるコバルト、ニッケル、リチウムなどの素材を抽出し、それらを顧客に供給する。現在、その顧客の中には、テスラと共同でネバダ州のGigafactory(ギガファクトリー)を運営しているPanasonic(パナソニック)や、テネシー州にあるEnvision AESC(エンビジョンAESC)のバッテリー工場などが含まれる。レッドウッドはAmazon(アマゾン)とも提携しており、電気自動車などのリチウムイオン電池や事業所から出る電気電子機器廃棄物をリサイクルしている。レッドウッドが初めてパートナーシップを組んだ自動車業界の企業は、2021年3月に提携した電気商用車メーカーのProterra(プロテラ)だった

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「事前に計画を立て、生産能力や適切な地域で適切な時期に生産することを戦略的に考えないと、現在の世界的な半導体不足に少々似た状況に陥るリスクがあります」と、ストラウベル氏はプレス説明会で語った。

米国時間9月22日に発表されたこのパートナーシップでは、レッドウッド・マテリアルズはまず、フォードと協力して、同自動車会社のバッテリー生産ネットワーク内でリサイクルを設定し、回収された原材料をメーカーに戻してバッテリーに使用する。フォードは具体的な内容を明らかにしていないが、それはおそらく、バッテリーセルのサプライヤーであるSKとの協力を意味していると思われる。

フォードとSKは2021年5月、BlueOvalSK(ブルーオーバルSK)という合弁会社を設立し、2020年代中期から年間約60ギガワット時の駆動用バッテリーセルとアレイモジュールを生産することで合意した。

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レッドウッド・マテリアルズとフォードのパートナーシップの最終的な目標は、製造廃棄物のリサイクルとフォードへの原料供給から、寿命を終えた車両のリサイクルオプションの構築まで、バッテリーのライフサイクル全体に関わることだ。この最後の部分が複雑になるのは、これらのEVがフォードの所有ではなくなるからだ。多くのEVは、廃車になるまでに複数の所有者を経ることになる。

今回の提携が発表される数カ月前に、レッドウッド・マテリアルズは7億7500万ドル(約858億円)以上の資金を調達しているが、その中にはフォードからの5000万ドル(約55億円)が含まれていることが後に明らかになった(同社は当初「7億ドル以上の資金を調達した」と発表していた)。

また、9月に入ってから同社は、事業をバッテリーのリサイクルだけでなく、重要なバッテリー材料の生産にも拡大する計画を明らかにし、そのために米国に100万平方フィートの新工場を建設するとしている。同社はリチウムイオン電池の構成材料となる正極活物質と負極用銅箔を生産したいと考えている。

現在、同社が建設地を探しているこの工場は、おそらく正極材の生産に特化することになるだろう。レッドウッドは、この工場の正極材生産能力を、2025年までに電気自動車100万台分に相当する100ギガワット時まで引き上げるつもりであるという。

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画像クレジット:Ford

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

テスラのバッテリー生産拠点「Megafactory」がカリフォルニアで着工

Tesla(テスラ)の大型バッテリーシステムMegapack(メガパック)を生産することからその名が付けられた新しい生産施設「Megafactory(メガファクトリー)」がカリフォルニア州で着工した。

これまで未発表だったこのニュースは、ラスロップ市のSonny Dhaliwal(ソニー・ダリワル)市長が、一度削除された後に再度投稿されたFacebookへの投稿で確認された。ダリワル市長は「Teslaの最新の拡張であるMegafactoryの本拠地になったことを誇りに思います」と述べている。「未来のグリーンエネルギーは、私たちのコミュニティで生産されることになります」。

カリフォルニア州北部の小都市ラスロップにあるこの工場は、フレモントにあるTeslaの自動車工場の近くにある。ラスロップには、Teslaの87万平方フィート(約8万平方メートル)の配送センターもある。

Megapackは、Teslaの他のエネルギーストレージ製品と同様に、ネバダ州スパークスにあるGigafactory(ギガファクトリー)で製造されていた。MegafactoryはMegapackに特化した最初の工場となるが、同社のPowerwall(パワーウォール)やPowerpack(パワーパック)など他のストレージ製品の生産が新工場に移行するかどうかは不明だ。

この新工場は、Teslaのエネルギー部門の成長を後押しするものだ。Megapackは、家庭用バッテリーであるPowerwallとは対照的に、ユーティリティースケールのエネルギーストレージを目的としている。太陽光発電所や風力発電所を建設する公益事業者は、余剰エネルギーを蓄えて後で送電するために、発電設備を大型バッテリーと組み合わせるケースが増えている。先週、アリゾナ州の電力会社Salt River Project(ソルト・リヴァー・プロジェクト)は、100メガワット時のMegapackプロジェクトを稼働させたばかりだ。

Elon Musk(イーロン・マスク)CEOは、2021年6月に行われた第2四半期の決算説明会で、これらのストレージ製品に対する「大きな需要」があることを確認し、Megapackは「来年まで基本的に完売した」と述べた。また、Powerwallの需要は年間100万台を超えると推定している。

マスクCEOは投資家に対して、ボトルネックの多くは単に生産能力の問題ではなく、セルの供給と世界的な半導体不足が生産量の上限を生み出していると語った。

「Powerwallには、自動車と同じチップがたくさん使われているので、どちらを作りたいのかという状態になります。クルマを作らなければならないため、Powerwallの生産量は減っているのです」という。

しかし、チップ不足は一向に解消される気配がなく、実際、ホワイトハウスは米国時間9月23日に、テクノロジーおよび自動車産業への継続的な影響に対処するため、半導体メーカーおよび購買担当者との2回目のサミットを開催する予定だ。

画像クレジット:Sonny Dhaliwal

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Yuta Kaminishi)

フェイスブックがスマートスクリーンPortalシリーズにバッテリー駆動タイプを追加

FacebookのPortalシリーズは、スマートスクリーンの世界では常にちょっと変わり者という存在だった。Facebookがこの分野に最も顕著に貢献していることと言えばほぼ間違いなく、AIを使って被写体を追跡し、それに応じてパンやズームをしてフレーム内にとらえ続けるスマートカメラだ。大手で初めて市場にこの賢い機能を提供し、GoogleやAmazon、そしてAppleまでも同様の機能にそれぞれ取り組んでいる。

Portalの(NestやEchoと比べた場合の)もう1つの大きな訴求点は、MessengerやWhatsAppといったFacebookのソフトウェアとの統合だ。こうした利点はあるが、コネクテッドホームのハードウェアとスマートアシスタントの世界で、Portalシリーズは出足の良かったAmazonやGoogleとの差別化に苦戦してきた。

画像クレジット:Facebook

米国時間9月21日にバッテリーで動くスマートスクリーンのPortal Goが発表され、興味深い観点が加わった。10インチのデバイスで、背面に持ち手があって手に取りやすい。バッテリー駆動時間は標準的な使い方で5時間、画面をオフにして音楽を再生する場合は最長14時間となっている(現時点ではバッテリー節約用のモードはない)。

ラインナップに追加されるモデルとしては巧みなものだ。タブレットの領域に近づいてきているが、筆者はNest Homeを別の部屋に持っていきたいという衝動に何度も駆られている。使い方は人それぞれ異なるだろう。

画像クレジット:Facebook

実物はまだ見ていないが、デザインを詳しく検討してみよう。丸みを帯びていて黒いベゼルはやや太い。ここ数年のスマートホーム製品でよく見られるように背面は布張りになっている。全体はくさびのような形状で、前面に2つのスピーカー、背面にウーファーが1つがある。

前面には超広角の12メガピクセルカメラがあり、前述したようなスマートなパンができる。プライバシー保護のために物理的なレンズカバーがある。画面の傾きは見やすく調整できる。現時点では複数のスピーカーをセットアップするFar-Fieldテクノロジーには対応していない。対応するとなると、家の中で持ち運ぶ際のセットアップが複雑になりそうだ。

Portal+の新バージョンも発表された。カメラはPortal Goと同様で、傾きを調整できる14インチ薄型ディスプレイにはZoom使用時に最大25人を同時に表示できる。Portal Goは199ドル(約2万1800円)、新しいPortal+は349ドル(約3万8200円)だ。両方とも米国ではすでに予約が始まっており、10月19日から出荷される。

画像クレジット:Facebook

さらにFaceboookは、スマートスクリーンをビデオ会議用製品に位置づけるPortal for Businessも発表した。リリースでは以下のように説明されている。

Portal for Businessを利用すると、中小企業は従業員用のFacebook Workアカウントを作成し、管理できます。これは企業が自社のメールアドレスを使ってPortalをセットアップできる、新しいアカウントタイプです。2022年にはこのWorkアカウントで、Portal以外にも人気のあるFacebookの業務用製品にアクセスできるようになります。

Portal Device Mangerを使うと、IT部門が従業員のマシンをセットアップし、リモートで消去できる。このシステムは現在、クローズドベータとして提供されている。

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画像クレジット:Facebook

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(文:Brian Heater、翻訳:Kaori Koyama)

循環経済を重視してCO2排出量の削減を目指すBMW Neue Klasseのラインナップ

BMW Groupは、米国時間9月2日、走行車両の全世界の二酸化炭素排出量を2030年までに、2019年レベルから50%、車両の全ライフサイクルの二酸化炭素排出量を2019年レベルから40%削減するという目標に向けて尽力する意向を発表した。これらの目標は、持続可能性の高い車両ライフサイクルを達成する循環経済の原則を重視する計画も含め、同社のNeue Klasse(新しいクラス)と呼ばれる新ラインナップ(2025年までに発売予定)で明らかになる。

3月に発表されたBMWの「新しいクラス」と呼ばれる計画は、同社が1962年から1977年までに生産したセダンとクーペのラインナップ、つまりBMWのスポーツカーメーカーとしての地位を確固たるものにしたラインナップを根本的に見直すものだ。同社によると、この新しいラインナップの目玉は「一新されたITおよびソフトウェアアーキテクチャ、新世代の高性能電気ドライブトレインとバッテリー、車両の全ライフサイクルに渡って持続可能性を達成するまったく新しいアプローチ」だという。

「Neue Klasseは、CO2削減の取り組み姿勢を一段と明確にし、世界の平均気温上昇を1.5度に抑える目標を達成するための明確な進路に沿って進むという当社の決意を表明するものです」とBMW AGの取締役会長 Oliver Zipse(オリバー・ジプス)氏は今回の発表で述べた。「CO2削減の取り組みは法人の活動を判断する大きな要因となっています。地球温暖化対策では、自動車メーカー各社の自社製車両の全ライフサイクルにおけるCO2排出ガスの削減量が決め手となります。当社がCO2排出量の大幅な削減について透明性が高くかつ野心的な目標を設定している理由もそこにあります。実際の削減量はScience Based Targets(科学的根拠に基づく目標)イニシアチブによって評価され、効果的で測定可能な貢献度として示されます」。

BMWによると、同グループのCO2総排出量の70%は、車両の利用段階で発生したものだという。これは、BMWの販売車両の大半が未だにガソリン車であるという事実からすると納得がいく。2021年上半期のBMWの総販売台数に占める電気自動車またはプラグインハイブリッド車の割合は11.44%であった(2021年上半期収益報告書による)。同社は、2021年末までに、ハイブリッド車を含め100万台のプラグイン(コンセント充電型)車両を販売するという目標を表明している。第2四半期終了時点で、約85万台を売り上げているが、車両利用段階でのCO2排出量を半分にするという目標を達成するには、CO2排出量が低いかゼロの車両の販売量を大幅に増やす必要がある。同社にはすでにi3コンパクトEVシリーズを販売しており、2021年後半には、i4セダンとiX SUVという2つのロングレンジ(長航続距離)モデルが発売され、2022年にはさらに別のモデルも投入される予定だ。GMやボルボと違い、BMWはガソリン車を廃止する計画をまだ発表しておらず、最初から電気自動車として設計されたラインナップの販売も開始していない。

今回の発表は、BMWが、Volkswagen(フォルクスワーゲン)、Audi(アウディ)、Porsche(ポルシェ)など、ドイツの他の自動車メーカーとともに、1990以来、排出ガスカルテルに関与していたことを認めた2カ月後に行われた。これらのメーカーは、EUの排出ガス規制で法的に必要とされる基準を超えて有害なガス排出量を削減できるテクノロジーを持ちながら、共謀してそれを隠ぺいしていた。EUは4億4200万ドル(約486億円)の制裁金を課したが、BMWの第2四半期の収益が60億ドル(約6599億円)近くになることを考えると、軽いお仕置き程度に過ぎない。

関連記事:EUがBMWとVWに約1110億円の制裁金、90年代からの排ガスカルテルで

また、2021年8月に発表されたEUの「Fit for 55」エネルギーおよび気候パッケージでは、世界全体のCO2ガス排出量の目標削減量が、2030年までに40%から55%に上方修正された。これは、自動車メーカーが電気自動車への移行ペースを早める必要があることを意味し、BMWもその点は認識している。欧州委員会では他にも、CO2ガス排出量を2030年までに60%削減し、2035年までには100%カットするという提案事項も検討されているという。これは、その頃までには、ガソリン車を販売することがほぼ不可能になることを意味する。

BMWによるとNeue Klasseによって、電気自動車が市場に出る勢いがさらに加速されるという。同社は、今後10年で、完全電気自動車1000万台を販売することを目標にしている。具体的には、 BMW Group全体の販売台数の少なくとも半分を完全電気自動車にし、Miniブランドは2030年以降、完全電気自動車のみを販売することになる。BMWは、循環経済重視の一環として、Neue Klasse計画による再生材料の利用率向上と、再生材料市場を確立するためのより良い枠組みの促進も目指している。同社によると、再生材料の利用率を現在の30%から50%に高めることが目標だというが、具体的な時期までは明言していない。

BMWによると、例えばiXのバッテリー再生ニッケルの使用率はすでに50%に達しており、バッテリーの筐体での再生アルミニウムの使用率も最大30%になるという。目標はこれらの数字を上げていくことだという。また、BMWは、BASFおよびALBAグループとの提携プロジェクトで自動車の再生プラスチックの使用量を試験的に増やす試みも行っている。

BMWが称する総合リサイクリングシステムの一環として「ALBA Groupは BMW Group製の寿命末期車両を解析して、車両間でのプラスチックの再利用が可能かどうかを確認している」という。「第2段階として、BASFは分類前の廃棄物をケミカルリサイクル処理して熱分解油を取得できないかどうか調べています。こうして得られた熱分解油はプラスチック製の新製品に利用できます。将来的には、例えばドアの内張りパネルやその他の部品を廃棄車の計器パネルを利用して製造できる可能性があります」。

リサイクリングプロセスを簡素化するため、BMWは、車両の初期段階設計の考え方も取り入れている。材料は、製品寿命が終わったときに容易に分解 / 再利用できるように組み立てる必要がある。BMWでは、再利用可能な材料に戻すことができるように車内インテリアを単一の素材で製造することが多くなっているという。

「例えば車内の配線システムは、車両内のケーブルハーネスで鉄と銅を混在させないようにして、容易に取り外しできるようにする必要があります」と同社は述べている。「鉄と銅が混在していると、再生鉄での鉄の必須特性が失われるため、自動車業界の高い安全性要件を満たすことができなくなるからです」。

また、循環経済では、高品質の車両を使用する必要がある。そうすることで、パーツを容易にリサイクルまたは修理できるため、結果として全材料数が削減されるからだ。

今回の発表で、BMWは車両のライフサイクルについて透明性を高めることを約束している。同社は、他のほとんどの大手自動車メーカーと同様、ライフ・サイクル・アセスメント(生産から回収再利用までの過程で環境に対する影響度を評価する手法)を公開しているが、業界の標準があるわけではない。このため、異種の車両を比較することが難しい場合がある。車両の全ライフサイクルを把握することは、CO2排出量の削減目標を達成するのにますます重要になっている。バッテリーと車両を製造するために必要なすべての材料を取得するためにサプライチェーンおよび製造段階で発生する排出ガスについての調査結果がようやく明らかになってきているが、この調査により、EV化の動きがライフサイクル全体のCO2排出量を却って増やす可能性があることが明らかになるかもしれない。

「内包二酸化炭素の数値化は大変難しく、特にEVでは非常に複雑で不確実です」とManhattan InstituteのシニアフェローMark Mills(マーク・ミルズ)氏は最近のTechCrunchの記事に書いている。「EVは走行中には何も排出しないが、生涯総炭素排出量の約80%は、バッテリーを製造する際のエネルギーおよび自動車を動かすための電力を発電する際のエネルギーから発生している。残りは、車の非燃料部品の製造によるものである。従来型の自動車の場合は、生涯総炭素排出量の約80%が走行中に燃焼した燃料から直接発生する二酸化炭素で、残りは自動車の製造とガソリンの生産にかかる内包二酸化炭素から発生する」。

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画像クレジット:BMW Group

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

台湾の電動スクーターと交換式バッテリーインフラ企業Gogoroが評価額2575億円のSPACを経てNASDAQへ上場

Gogoro(ゴゴロ)が上場する。電動のスマートスクーターと交換式バッテリーインフラで知られている同社は現地時間9月16日、Princeville Capital(プリンスビレキャピタル)傘下のSPAC(特別買収目的会社)Poema Global(ポエマグローバル)との合併を通じてNASDAQに上場すると発表した。この取引でのGogoroのバリュエーションは23億5000万ドル(約2575億円)で、2022年第1四半期の取引完了を目指している。合併会社の社名はGogoro Incとなり、ティッカーシンボル「GGR」で取引される。

発表によると、募集以上の申し込みがあったPIPE(上場企業の私募増資)での2億5000万ドル(約274億円)、そしてPoema Globalが信託で保有する3億4500万ドル(約378億円)を含め、Gogoroは上場の過程で5億5000万ドル(約603億円)を調達すると予想している。PIPEでの投資家には、Foxconn Technology Group(フォックスコン)や、GojekとTokopediaの合併で誕生したインドネシアのテック大企業GoToといった戦略的パートナー、Generation Investment Management、台湾の国家開発基金、Temasek、Ruentex GroupのSamuel Yin(サミュエル・イン)博士、Gogoroの創業投資家などの新規・既存投資家が含まれる。

資金はGogoroの中国、インド、東南アジアでの事業拡大と、テックエコシステムのさらなる開発に使われる。

台湾で10年前に創業されたGogoroのテクノロジーには、交換可能なスマートバッテリー、充電インフラ、車両やバッテリーの状態やパフォーマンスをモニターするクラウドソフトウェアが含まれる。Smartscooters、Eeyo電動自転車といった自前のブランドを手がけているだけでなく、Gogoroは自社のPowered by Gogoro Network(PBGN)プログラムを通じて利用できるプラットフォームを作り、パートナー企業がGogoroのバッテリーや交換ステーションを使う車両を製造できるようにしている。

SPAC取引の数カ月前に、Gogoroは中国とインドでの大きな提携を発表していた。中国ではバッテリー交換ネットワークの構築でYaeda、DCJと協業し、インドでは世界最大の二輪車メーカーの1つ、Hero MotoCorpがGogoroのテックをベースにしたスクーターを発売する。Gogoroはまた、ヤマハ、スズキ、AeonMotor、PGO、CMC eMOVINGなどのメーカーとも提携している。

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これらのパートナーシップが整ったことで「我々は現在、真に当社を次のレベルに持っていく必要があります」と創業者でCEOのHorace Luke(ホイレス・ルーク)氏はTechCrunchに語った。GogoroがSPACのルートを取った理由について、同氏は次のように説明した。「ビジネスチャンスやストラクチャー、提携とは何か、かなり掘り下げて語ることができるため、急ぎのロードショー(さまざまな機関投資家への会社説明会)よりも正しく会社を評価できます。当社の事業計画を考えると、SPAC上場は事業拡大にフォーカスする絶好の機会となります」。

GogoroがPoemaを選んだ理由の1つは「Poemaの持論が当社のものとかなり一致していたからです」とGogoroの最高財務責任者Bruce Aitken(ブルース・エイトケン)氏は述べた。「例えばPoemaは持続可能性の基金を持っていて、当社の環境と持続可能性に対する情熱はそれとうまく融合します」。

5年もしないうちに累計で売上高は10億ドル(約1097億円)に、バッテリー交換インフラの契約者は40万人超になる、とGogoroは話す。同社は2021年第4四半期に中国・杭州で試験プログラムを立ち上げ、2022年にはさらに6都市でも展開する。インドではHero MotoCorpが現在、Gogoroをベースにした初の車両を開発中で、2022年にニューデリーでバッテリー交換インフラの展開を開始する。

「想像したよりも中国での需要は大きく、これは当社にとって良いニュースです。そしてこれは上場する必要がある基本的な理由の1つでもあります。当社はこうしたマーケットに実際に大規模に貢献するのに必要な資金やリソースを調達しなければならないのです」とルーク氏は述べた。

Gogoroが東南アジアに進出するのにGoToと同様の提携を結ぶのか尋ねたところ「重要なのは東南アジアが二輪車マーケットとしては中国、インドの次に3番目に大きいことを認識することです。Gogoroはこうした大きなマーケットを追い求めるためのビジョンを常に持っています。GoToはインドネシアですばらしい成功を収めていて、GoToの当社への投資は会話のきっかけになりますが、GoToがPIPEに参加するということ以外、現時点で発表できることはありません」とルーク氏は話した。

発表資料の中で、Poema GlobalのCEOであるHomer Sun(ホーマー・サン)氏は「Gogoroが構築したワールドクラスの提携との組み合わせで開発したテクノロジーの差異化は、2つの世界最大の二輪車マーケットでかなりの成長機会をもたらすと確信しています。Gogoroの事業エリア拡大の計画とNASDAQ上場企業への移行をサポートすべく、同社の傑出した経営陣とともに取り組むことを約束します」。

画像クレジット:Gogoro

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(文:Catherine Shu、翻訳:Nariko Mizoguchi

ニッケル水素電池で定置型エネルギー貯蔵に革命を起こすEnerVenueが109億円調達、クリーンエネルギーを加速

再生可能エネルギーは、1日のある時間帯に発電が過剰になり、ある時間帯には足りなくなる傾向にある。これを普及させるために、電力網は大量のバッテリーが必要になる。リチウムイオンは家電製品や電気自動車には十分だが、バッテリーのスタートアップEnerVenue(エナベニュー)は、定置型エネルギー貯蔵に革命を起こす画期的技術を開発したという。

ニッケル水素バッテリーのテクノロジー自体は新しくない。実際、航空宇宙分野では人工衛星から国際宇宙ステーション、ハッブル望遠鏡にいたるまで、数十年前からさまざまなものの電力源として用いられている。しかしニッケル水素は、地球規模で利用するには高価すぎた。しかし、スタンフォード大学教授(そして現在EnerVenueのチェアマン)のYi Cui(イ・クイ)氏は最適な材料を組み合わせる方法を見つけることでコストを大幅に引き下げようとしている。

ニッケル水素にはリチウムイオンをしのぐ重要な利点がいくつかある、とEnerVenueはいう。まず超高温にも超低温も耐えられる(空調や温度管理システムが必要ない)、メンテナンスがほとんど必要ない、そしてはるかに寿命が長い。

このテクノロジーが石油・ガス業界の巨人2社の目に留まり、エネルギーインフラストラクチャー企業のSchlumberger(シュルンベルジェ)と石油最大手Saudi Aramco(サウジアラムコ)のVC部門はスタンフォード大学とともに、EnerVenueのシリーズAラウンドに計1億ドル(約110億円)を出資した。EnverVenuがシード資金1200万ドル(約13億1000万円)を調達してから1年後のことだ。同社はこの資金をニッケル水素バッテリー製造の規模拡大に使用する予定で、米国のGigafactory(ギガファクトリー)はその1つだ。またSchlumbergerとは国際市場における製造・販売契約の交渉に入っている。

「私はEnerVenueと出会う前に3年半、リチウムイオンと競争できるバッテリーストレージ技術を探していました」とCEOのJorg Heineでmann(ヨーグ・ハイネマン)氏が最近のインタビューでTenCrunchに話した。「私はほとんど諦めかけていました」。そしてクイ氏に会った。彼は研究成果を駆使して、キロワット時当たり2万ドル(約220万円)のコストを100ドル(約1万1000円)にまで下げる見通しを立てた。それは既存のエネルギー貯蔵と肩を並べる驚愕の価格低下だった。

EnerVue CEOのヨーグ・ハイネマン氏(画像クレジット:EnerVenue ))

ニッケル水素バッテリーはバッテリーと燃料電池のハイブリッドの一種だと思って欲しい。圧力容器の中で水素を発生させて充電し、放電すると水素は水に再吸収される、とハイネマン氏は説明した。宇宙にあるこのバッテリーとEnerVenueが地球上で開発しているものとの大きな違いは材料にある。軌道上のニッケル水素バッテリーはプラチナ電極を使っていて、ハイネマン氏によるとコストの最大70%を占めている。従来技術はセラミックのセパレーターも使っていてこれもコスト高の要因だ。EnerVenueの重要なイノベーションは、低コストで地球に豊富に存在する材料を新たに見つけることだ(ただし具体的な材料は公表していない)。

ハイネマン氏は、社内の上級チームが別の技術革新に取り組んでいて、さらにコストダウンを進めてキロワット時当たり3ドル(約330円)以下を目指していることもほのめかした。

利点はそれだけではない。EnerVenueのバッテリーは、充電速度と放電速度を顧客のニーズに合わせて変えることができる。10分の充電または放電から10~20時間の充電・放電サイクルまで可能だが、同社は約2時間の充電と4~8時間の放電に最適化している。EnerVenueのバッテリーは性能を落とすことなく3万回の充電サイクルが可能なように作られている。

「再生可能エネルギーが益々安くなることで、1日の多くの時間、たとえば1~4時間、何かの充電に使える無料に近い電力を得られる時間帯が生まれます。そしてその電力は電力網のニーズによって速くあるいはゆっくりと送り出される必要があります」という。「そして私たちのバッテリーはまさにそれをやります」。

このラウンドが石油・ガス業界で大きな位置を占める2社によって出資されたことは注目に値する。「私が思うに、現在石油・ガス業界の100%近くが再生可能エネルギーへの大がかりな転換に取り組んでいます」とハイネマン氏は付け加えた。「彼らはみんな、エネルギーミックスがシフトしていく未来を見据えています。私たちは今世紀半ばに75%再生可能を目指していますが、多くの人はそれがもっと早く訪れると考えていて、それは石油・ガス業界が実施した研究に基づいています。みんなそれをわかって新しい台本が必要だと知っているのです」

画像クレジット:EnerVenue

ニッケル水素がもうすぐあなたのiPhoneに搭載されることを期待してはいけない。このテクノロジーは大きく重い。できる限りスケールダウンしても、ニッケル水素バッテリーは2リットルの水筒くらいのサイズなので、当分はリチウムイオンが主役を続けるだろう。

定置型エネルギー貯蔵は別の未来を迎えるかもしれない。EverVenueは現在、米国に工場を建設するための、場所とパートナー選びの交渉が「レイトステージ」に入っている。毎年最大1ギガワット時のバッテリーを生産し、最終的にさらに規模拡大することを目標にしている。ハイネマン氏は、メガワット当たりの設備投資はリチウムイオンのわずか20%になると推計している。SchlumbergerはEverVenueとの提携の下で、独自にバッテリーを生産してヨーロッパと中東に販売する計画だ。

「これは今使えるテクノロジーです」とハイネマン氏は言った。「私たちは技術革新を待っていません、未来に何かを証明するために必要な科学プロジェクトはありません。うまくいくことはわかっています」。

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画像クレジット:EnerVenue

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nob Takahashi / facebook

テスラ共同創業者が設立したバッテリーリサイクルRedwood Materialsが事業拡大、バッテリーの材料も生産

元Tesla(テスラ)共同創業者のJB Straubel(JB・ストラウベル)氏がバッテリーの循環サプライチェーンを作ることを目的に興した会社Redwood Materials(レッドウッド・マテリアルズ)が事業を拡大する。主にリサイクル会社として知られてきたが、同社は米国で重要なバッテリー材料を生産することでサプライチェーンを単純化する計画だ。

そのために同社は現在、10億ドル(約1100億円)かけて新設する広さ100万平方フィート(9万3000平方メートル)の工場のための場所を探しているとBloombergは報じた。工場はリチウムイオンバッテリーの重要な構成要素である陰極箔と陽極箔の生産に特化する。年間生産量は2025年までに最大100ギガワットアワーとなる見込みで、これは電気自動車100万台に使うのに十分な量だ。

しかしそれですべてではない。2030年までに同社は年間のバッテリー材料生産を500ギガワットアワーに増やす計画で、これは電気自動車500万台を走らせるボリュームだ。

こうした数字は驚くほど野心的なものだ。Redwoodがそれをやってのけることができるなら、大半がアジアにある世界最大の材料企業と互角に張り合えることになる。カソードサプライチェーンを米国に集積し、一定割合でリサイクル材料を使用すれば、バッテリーパック生産にともなう二酸化炭素排出を41%抑制するかもしれない、とBloombergNEFは推計した。

画像クレジット:Redwood Materials

Redwoodはリサイクル事業の拡大を計画しているが、リサイクルだけで生産に関するこの数字は達成できない。同社はリサイクルされたバッテリーと、持続可能な方法で採掘された材料からカソードとアノードを生産する、と声明文で述べた。差し当たり、同社はこの新たな冒険のパートナーに関しては沈黙したままだが、今後、提携と事業拡大についての発表があるだろう。

今回のニュースは、何カ月もの間、積極的に拠点拡大に取り組んできた同社の最新の大胆な動きだ。2021年夏の初めにRedwoodは、ネバダ州カーソン・シティの広さ15万平方フィート(約1万4000平方メートル)のリサイクル施設の規模を3倍に拡大する、と述べた。同社はまた、ネバダ州スパークスに立地するTeslaとPanasonic(パナソニック)のギガファクトリーに近い100エーカー(約40万平方メートル)の土地を購入した。このニュースのすぐ前には、シリーズCラウンドで7億ドル(約770億円)をBill Gates(ビル・ゲイツ)氏のBreakthrough Energy Ventures、AmazonのClimate Pledge Fund、 Baillie Gifford、Goldman Sachs Asset Managementといった主要投資家から調達した。この資金調達によりRedwoodのバリュエーションは37億ドル(約4060億円)になった。

関連記事:バッテリーリサイクルRedwood Materialsが拡大の一環としてテスラギガファクトリーの近くに拠点設置

画像クレジット:Redwood Materials

同社はTesla、Amazon、電動バスメーカーのProterra、電動自転車メーカーのSpecialized Bicycle Componentsとリサイクル取引を結んでいる。Redwoodはリチウムや銅、ニッケル、コバルトなどの重要な材料の95〜98%をリサイクルバッテリーから回収することができる、と話している。

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画像クレジット:Redwood Materials

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

Sila Nanotechnologiesの次世代バッテリーがWhoopのウェアラブルデバイスで初めて商用利用

米国時間9月8日、Sila Nanotechnologiesの次世代バッテリー技術がWhoopのフィットネストラッカーの新製品で商用製品デビューを果たした。これは、1つのセルにできるだけ多くのエネルギーを低コストで詰め込もうとするこのシリコンバレーの企業にとって10年にわたる謎解きのような研究開発の成果だ。

バッテリーの化学的な改良にはこれまでの数年間で数十億ドル(数千億円)が投じられ、さまざまなスタートアップが、アノードやカソードを、シリコンや固体電池企業の場合はリチウムのような変換材料に置き換えようとしている。

Silaのバッテリー化学のレシピは、バッテリーセルのアノード中のグラファイトをシリコンで置き換えて、エネルギー密度が高く安価なバッテリーパックを実現する。BASFなどその他の企業は、エネルギー密度の高いカソードを作ることにフォーカスしている。

現在では、さまざまな企業がさまざまな化学構造のバッテリーの実現を目指しているが、それらはいずれも今日のリチウムイオンバッテリーのように、従来的なセルの技術をそのまま継承している。最新のヘルス&パフォーマンストラッカーであるWhoop 4.0で使用されるSilaのバッテリーは、この数十年間において世界で初めて市販の次世代バッテリー化学製品となる。

Sila Nanotechnologiesの創業者でCEOのGene Berdichevsky(ジーン・ベルディチェフスキー)氏は「小さなフィットネストラッカーは、些細なものにしか見えないかもしれませんが、市場に初めて登場する弊社の革新性を実証するデバイスです。今後、もっと大きくなりあらゆるものの電動化に使われることになるでしょう」という。

電気自動車と、それらを動かすSilaの役割が、ベルディチェフスキー氏のいう「あらゆるものの電動化」リストのトップにある。そして同社は、そこでもすでにリードしている。

Sila NanotechnologiesはBMWやDaimlerとのバッテリーに関するジョイントベンチャーで、同社のシリコンアノード技術を使ったバッテリーを開発する。自動車としての市販開始は、2025年の予定となっている。

「Whoopの成功を自動車に持ってくる方法にはさまざまなものがある。今日では、走行距離の長いクルマが欲しければ大型車を買えばいい。小型のEVはバッテリーをたくさん倒産できたいため、その距離も短くなります。しかし、弊社の技術が自動車業界で本格的に採用されることになれば、走行距離600kmのシティーカーの実現も可能です。これにより自動車産業におけるより広い分野で、電動化を目指せるようになるでしょう」とベルディチェフスキー氏は語る。

2021年9月初めに、36億ドル(約3967億円)の評価額で2億ドル(約220億円)を調達したWhoopは、Whoop 4.0をウェアラブルデバイスとして市場に投入するが、Sila製バッテリーのおかげで、そのサイズは前モデルよりも33%小さい。ベルディチェフスキー氏によれば、そのエネルギー密度は17%高いという。しかもバッテリーの高密度化でウェアラブルデバイスが小さくなるだけでなく、Whoop 4.0は、睡眠のコーチングや触覚によるアラート、パルスオキシメーター、皮膚温度センサー、ヘルスモニターなど機能が豊富になり、しかもバッテリー寿命は前モデルと同じ5日間のままだ。

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「弊社のような化学構造が可能になったことによって、これまでできなかったことができるようになったのが大きい」とベルディチェフスキー氏はいう。

Whoopの場合は、同社がAny-Wearと呼ぶ新技術により、バンドなど腕時計以外の部分もウェアラブル化し、胴体や腰、ふくらはぎなどからもデータを集めることができる。

製品の成功の鍵となるのは、Sila製バッテリーの新しい化学構造だけでなく、重要なのはむしろ製品のスケーラビリティだ。スケーラビリティは、Silaのロードマップに最初から存在する。

ベルディチェフスキー氏は「弊社のサイエンティストとエンジニアには、最初の頃からグローバルに利用される日用品向けの設計はそのまま、数百万台のクルマの設計に活かすことができると言っています。両者は大量生産の技術という点で共通しており、平面リアクターではなく体積リアクターを使える点が大きい」という。

この、リアクターのタイプの違いについては、次の例がわかりやすいかもしれない。小さな広場で大群衆に食事を提供するためには、大鍋でチリをつくる、つまり体積型の方が1人1人にピザパイを提供する、つまり平面型よりも効率がいい。

また、ベルディチェフスキー氏は、スマートフォンや自動車、ドローンなどのバッテリーを供給するあらゆるのバッテリー工場のプロセスに、シームレスに組み込むことができるものでなければならないとチームに語っている。

ベルディチェフスキー氏によると、Silaはすでにスケーラビリティを2度実証している。最初は、ラボからパイロット事業への100倍のスケールで、約1リットルサイズの体積リアクターから始まった。9月8日に結んだWhoopとのパートナーシップが2度目のスケールアップで、5000リットルのリアクターを実現した。5000リットルのリアクターは、その上に人間が2人乗れるような大きさだ。次の段階のスケールアップは、3年後を狙っている自動車に載せられる量となる。

「現在、自動車に搭載されていない理由は、実際に自動車に搭載するためには100倍のスケールアップが必要であるためです。しかし、材料は同じです。”粒子や粉末は、これまでに作ったどのスケールのものも同じです」とベルディチェフスキー氏はいう。

画像クレジット:Whoop

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hiroshi Iwatani)

固体バッテリー開発のSolid Powerが生産能力拡大、2022年にフォードとBMWに試験用バッテリーを納入

Ford(フォード)とBMWが投資するバッテリー開発企業のSolid Power(ソリッドパワー)は、2022年初めの固体電池パイロット生産の準備のため、コロラド州にある工場を拡張する。

新しい生産施設は、同社の主力製品の1つである硫化物系固体電解質材料の生産に特化し、現在の最大25倍の生産量を見込む。また、この新施設には、商用グレードの100アンペア電池をパイロット生産する最初のラインを設置する。これらのパウチ型電池は、2022年初めにFordやBMWで自動車試験が行われる予定で、2020年代後半の自動車での実用化を目指す。

固体電池は、長い間、電池技術の次のブレークスルーだと考えられてきた。TechCrunchのライターであるMark Harris(マーク・ハリス)が説明しているように、固体電池には液体電解質がない。従来のリチウムイオン電池では、液体電解質が正極と負極の間でイオンを移動させる物質だった。固体電池の開発者によれば、この技術によって得られる利益は、エネルギー密度の向上、コストの削減、優れた電池寿命などだ。

また、開発者らによれば、固体電池はより安全だという。GMがChevrolet Bolt(シボレー・ボルト)を3回にわたってリコールしたように、火災の危険性を考慮すると、それは重要なポイントだ。Solid PowerのCEOであるDoug Campbell(ダグ・キャンベル)氏はTechCrunchの取材に対し「熱暴走を引き起こす火種」となるのは電解液であると述べた。「現代自動車とGMが現在直面しているこうした問題は、固体電池で解決できると強く信じています」。

同社は新しい電池のパイロット生産ラインを建設するものの、最終的には電解質材料のみを生産し、OEMや電池メーカーに電池のライセンスを提供する計画だ。

「長期的に見れば、当社は材料メーカーです」とキャンベル氏は話す。「固体電解質材料の業界リーダーになりたいと考えています」。そのため、今回の電池生産への進出は、同社にとって最後のものになるだろうとキャンベル氏はいう。予定しているパイロット生産ラインでは、複数のOEMメーカーに自動車の認定試験用の電池を供給するのに十分な量を生産し、より大規模な生産は自動車メーカーや電池セルメーカーが行う想定だ。

電池を自社で生産するのではなく、パートナーにライセンス供与するという決断は、常識的なアセットライトモデルだと同氏は語る。

「正直なところ、小さなSolid Powerが成長して、パナソニックやLG、CATLのような企業を駆逐する可能性がどれほどあるでしょうか」。スウェーデンのNorthvoltのようにそれに挑む企業もあるが、材料事業の利益率は高く、直接の競争相手となる大手はいない、とキャンベル氏は付け加えた。「資本的には軽いものの、現実的でもあります」。

このスタートアップは2021年6月に、白紙小切手会社であるDecarbonization Plus Acquisition Corp IIIとの12億ドル(約1320億円)の逆さ合併により株式を公開すると発表した。キャンベル氏によると、この取引で約6億ドル(約660億円)の現金が得られる見込みで、2026年または2027年までの十分な資金となるという。

特に、2027年までに年間10ギガワット時の電池容量を支えるだけの電解質材料の生産を目指しているため、2030年まで乗り切るためには十分な資金が必要となる。そのためには、今回の発表と比べ「桁違い」の電解質生産能力が必要になるとキャンベルはいう(発表の内容自体が桁違いではある)。

Solid Powerは、電解液の生産だけに留まるつもりはない。キャンベル氏は、低コストの正極材の開発にも取り組んでいることを示唆した。この正極材は、電池の原材料の中でも最もコストのかかるニッケルやコバルトを含まないものだ。

「この業界は材料費に支配され、材料費はニッケルとコバルトを含む正極材のコストに支配されることになるでしょう」とキャンベル氏は話す。「2021年の終わりに公開するこの特定の化学物質は非常に低コストで、今日の(ニッケル・マンガン・コバルトの)陰極のコストの20分の1から30分の1になります」。

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画像クレジット:Solid Power

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

EVバッテリーの充放電をクラウド管理し再エネ電力需給バランス調整向け蓄電システムに変える「Yanekara」が5500万円調達

EVバッテリーの充放電をクラウド管理し再エネ電力需給バランス調整向け蓄電システムに変える「Yanekara」が5500万円調達

EVをエネルギーストレージとして活用する充放電システムを開発する東大発スタートアップ「Yanekara」(ヤネカラ)は9月8日、シードラウンドにおいて、J-KISS型新株予約権による5500万円の資金調達が完了したことを発表した。引受先は、オープンイノベーション推進1号投資事業有限責任組合(AOI1号ファンド。東京大学協創プラットフォーム開発)、ディープコア、エンジェル投資家など。

Yanekaraは、「屋根から自然エネルギー100%の未来を創る」ことを目指すエネルギーテック領域のスタートアップ。現在、1基で複数台のEVに太陽光で充電できる充放電機器(V2X)と、EVを含め多様な分散エネルギー源を群管理するクラウドシステムを開発している。

それは、日本のカーボンニュートラルを実現させる再生可能エネルギーを大量導入する際に、常に変動する再生エネルギー電源からの発電量と電力需要量を一致させるための蓄電システムだ。駐車場で眠っているEVのバッテリーを有効活用すると同時に、EVによるモビリティーの脱炭素化も進める。太陽光でEVを走らせ、その蓄電能力を電力の需給調整に利用することで、「再エネが主力電源化した日本を1日でも早く実現します」とYanekaraは話す。

今回調達した資金は、充放電器の実証実験、量産準備に使われる。また、充放電器とクラウドシステムの開発を行う人材も採用するとのことだ。

【コラム】材料、電池、製造の炭素排出量を積み上げたEVの本当のカーボンコスト

EVの未来を夢見る投資家や政治家は、EVこそが世界の二酸化炭素排出量を大幅に削減すると信じている。しかし、その夢は完全に不透明だ。

従来型の自動車からEVへの置き換えが進んでも、世界の二酸化炭素排出量削減の効果はあまり大きくない。それどころかかえって排出量を増加させてしまう可能性もある、とする研究結果は増え続けている。

問題となるのは、発電時の炭素排出量ではない。顧客がEVを受け取るまでに発生する、私たちが気がついていない炭素排出量、すなわちバッテリーの製造に必要なすべての材料を入手し、加工するという迷路のように複雑なサプライチェーンで発生する「エンボディド・カーボン(内包二酸化炭素、環境負荷の指標)」のことだ。

ハンバーガー、住宅、スマートフォン、バッテリーなどのすべての製品で、生産工程の上流に「隠された」内包二酸化炭素が存在する。マクロレベルの影響については、フランスの気候変動に関する高等評議会が2020年発表した研究結果を参照して欲しい。この分析では、フランスが国を挙げて炭素排出量の削減を達成したという主張は幻想であることがわかる。炭素排出量は実際には増加しており、輸入品の内包二酸化炭素を計算すると、報告されていた値よりも約70%高くなった。

内包二酸化炭素の数値化は大変難しく、特にEVでは非常に複雑で不確実である。EVは走行中には何も排出しないが、生涯総炭素排出量の約80%は「バッテリーを製造する際のエネルギー」および「自動車を動かすための電力を発電する際のエネルギー」から発生している。残りは、クルマの非燃料部品の製造によるものである。従来型の自動車の場合は、生涯総炭素排出量の約80%が走行中に燃焼した燃料から直接発生する二酸化炭素で、残りは自動車の製造とガソリンの生産にかかる内包二酸化炭素から発生する。

従来型の自動車の燃料サイクルは狭い範囲に限定され、ほとんどの特徴が十分に解明している。そのため、厳しい規制がなくてもほぼすべてが追跡可能で、仮定(推定)の部分は少ない。しかし、電気自動車の場合はそうではない。

例えば50の学術研究を調査したレビューによると、電気自動車のバッテリー1つを製造する際の内包二酸化炭素は、最低でも8トン、最高で20トンである。最近の技術的な分析では、約4〜14トンとするものもある。14トンや20トンといえば、効率の良い従来型の自動車が、生涯の走行でガソリンを燃やした際に発生する二酸化炭素とほぼ同じ量である。それに対し、今挙げたEVの数値は、自動車が顧客に届けられ、走り出す前の話である。

この不確実性の原因は、バッテリーのライフサイクルで使用されるエネルギーの量と種類の両方が持つ、固有かつ解決できないばらつきにある。いずれも地理的条件や処理方法に左右され、データが公開されていないことも多い。内包二酸化炭素の分析によれば、ガソリン1ガロン(約3.7リットル)に相当するエネルギーを貯蔵できる電池を製造するために、エネルギー換算値で2〜6バレル(1バレルは約159リットル)の石油が必要であることがわかっている。つまり、EV用バッテリーの内包二酸化炭素は、無数の仮定に基づく推定値であり、実際のところ、今現在のEVの「炭素換算単位あたりの走行距離」を測定したり、将来の数値を予測したりすることは誰にもできない。

政府のプログラムや気候変動対策ファンドへの資金は殺到している。2021年もBlackRock(ブラックロック)General Atlantic(ジェネラルアトランティック)、TPGの3社がそれぞれ40〜50億ドル(約4400~5500億円)規模のクリーンテックファンドの新設を発表するなど、2021年の投資額は2020年の記録を上回る。私たちは炭素排出量を削減するための万能薬と思われているEVなどの技術の内包二酸化炭素に対し、きっちりと検討する時期を逸してしまった。ここからは、この万能薬が期待通りの結果を出していないことをご紹介する。

鉱山のデータ

自動車の目標は、燃料システムが総重量に占める割合をできるだけ小さくして、乗客や貨物のためのスペースを確保することだ。リチウム電池は、ノーベル賞級の革新的な製品であるはずだが、機械を動かすパワーの指標である「エネルギー密度」は、いまだに1位のはるか後塵を拝し、2位に甘んじている。

リチウム系の電池が本来持つ重量エネルギー密度は、理論的には1キログラム(バッテリーセルではなく、化学物質のみの重量)あたり約700ワット時(Wh/kg)である。これは鉛蓄電池のエネルギー密度に比べれば約5倍だが、石油の1万2000Wh/kgに比べればごくわずかに過ぎない。

30kgのガソリンと同じ航続距離を得られるEVのバッテリーは500kgになる。この差はガソリンエンジンと電気モーターとの重量差によっては埋められない。なぜなら、電気モーターはガソリンエンジンよりも90kg程度しか軽くないからだ。

自動車メーカーは、EVのモーター以外の部分を鉄ではなくアルミニウムやカーボンファイバーを使用して軽量化することで、バッテリーの重量による損失の一部を相殺している。残念なことに、これらの素材は鉄と比較して内包二酸化炭素がそれぞれ300%、600%多い。EVの多くに使用されている500kgのアルミニウムによって、バッテリー以外の内包二酸化炭素が(多くの分析で無視されているが)6トン増加することになる。しかし、すべての要素の中で最も炭素排出量の計算が面倒なのは、バッテリー自体の製造に必要な要素である。

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リチウム系の電池にはさまざまな元素の組み合わせがあり、安全性、密度、充電率、寿命など、バッテリーの複数の性能指標を妥協しながら選択される。バッテリーの化学物質自体が持つ内包二酸化炭素は、選択された元素によって600%もの差がある

広く普及しているニッケル・コバルト系電池の主成分を考えてみよう。一般的な500kgのEV用バッテリーには、約15kgのリチウム、約30kgのコバルト、約65kgのニッケル、約95kgのグラファイト、約45kgの銅が含まれている(残りは、スチール、アルミニウム、プラスチックの重さである)。

内包二酸化炭素の不確実性は、鉱石の品位、つまり鉱石の金属含有量から始まる。鉱石の品位は含まれる金属や鉱山、経年によって異なり、わずか0.1%から数%である。今わかっている平均値で計算すると、EV用のバッテリー1台分に必要な鉱石は次のようになる。1000トン以上のリチウムブライン(かん水)から15kgのリチウム、30トン以上の鉱石から約30kgのコバルト、5トン以上の鉱石から約65kgのニッケル、6トン以上の鉱石から約45kgの銅、約1トン以上の鉱石から約95kgのグラファイトである(なお、採掘にはエネルギーを大量に消費する重機を使用する)。

ボリビア・ウユニ塩原の南側ゾーンにある国有の新しいリチウム抽出施設の蒸発プールで、ブラインを積み込むトラックの航空写真。現地時間2019年7月10日(画像クレジット:PABLO COZZAGLIO / AFP via Getty Image)

さらに、そのトン数には、金属を含む鉱石に到達するまでに最初に掘らなければならない岩石物質の量(オーバーバーデン)を追加する必要がある。オーバーバーデンも、鉱石の種類や地質によって大きく異なるが、通常は1トンの鉱石を採掘するために約3〜7トンのオーバーバーデンを掘削する。これらの要素を総合すると、500kgのEV用バッテリー1台を作るためには、約250トンの岩石を掘削して、合計約50トンの鉱石を運搬し、さらに金属を分離するための加工を行う必要があることになる。

内包二酸化炭素は、鉱山の場所によっても影響を受ける。これは理論的には推定可能だが、将来的な数値は推測の域を出ない。遠隔地にある鉱山ではトラック輸送の距離も長くなり、ディーゼル発電機によるオフグリッド電力に頼らざるを得ない。現在、鉱物部門だけで世界の産業エネルギー使用量の約40%を占めている。また、全世界のバッテリーやバッテリー用化学物質の半分以上は、石炭火力発電の多いアジアで生産されている。欧米での工場建設が期待されてはいるとはいえ、いずれの調査も、鉱物のサプライチェーンは長期にわたってアジアが完全に支配すると予測している。

電力網とバッテリーの大きなばらつき

EVの炭素排出量の分析では、ほとんどのケースでバッテリーの内包二酸化炭素が考慮されている。しかし、この内包二酸化炭素は、異なる電力網でEVを使用した場合に生じるばらつきに対し、単純化のために単一の値を割り当てて計算されていることが多い。

国際クリーン輸送協議会(ICCT)が最近行った分析は非常に参考になる。ICCTは、バッテリーに固定の炭素負債を設定し、ヨーロッパのどこでEVを運転するかによってカーボンフットプリント(ライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量を二酸化炭素に換算した指標)がどのように変化するかに着目した。その結果、EVのライフサイクルにおける炭素排出量は、燃費の良い従来型の自動車と比較して、ノルウェーやフランスでは60%、英国では25%削減されるが、ドイツではほとんど削減できないことがわかった(ドイツの送電網における1kWhあたりの平均炭素排出量は、米国の送電網とほぼ同じである)。

この分析では、平均的な送電網の炭素排出量データを使用しているため、必ずしもバッテリー充電時の炭素排出量を表しているわけではない。充電に使用される実際の電力源は、平均値ではなく特定の時間によって決定される。水力発電と原子力発電が24時間稼働しているノルウェーやフランスでは、EV充電のタイミングによる変動は少ないが、それ以外の地域では、太陽光100%の時間や石炭100%の時間など、充電の時間帯や時期、場所によって大きく変動する可能性がある。一方、ガソリンの場合は、使用する場所と時間にこのような曖昧さはなく、全世界でいつでも同じである。

ドイツ・ボクスバーグにある亜炭火力発電所。ドイツ東部のルサティア地方とその経済基盤は、イェンシュヴァルデ、シュヴァルツェ・プンペ、ボクスベルクの石炭火力発電所に大きく依存している(画像クレジット:Florian Gaertner / Photothek via Getty Image)

ICCTが最近行った別の分析でも電力網の年平均値が使用され、従来型の自動車と比較した場合のEVのライフサイクルにおける炭素排出削減量は、インドでは25%、ヨーロッパでは70%となっている。しかし、欧州内での比較と同様に、バッテリー製造時の炭素排出量に、単一の低い値を仮置きしている。

国際エネルギー機関(IEA)は、現在のほとんどの鉱物生産は、炭素排出量の振れ幅の上限で行われていると報告している。そのため、バッテリーの内包二酸化炭素には単一の低い平均値を仮置きするのではなく、バッテリーごとに異なる内包二酸化炭素の影響を考慮しなればならない。ICCTの結果を内包二酸化炭素の現実に合わせて調整すると、EVのライフサイクルにおける排出削減量は、ノルウェーでは40%削減(調整前は60%)できるが、英国やオランダではほとんど削減できず、ドイツでは20%の増加となる。

現実世界での不確実性はこれだけではない。ICCTもその他の類似の分析でも、480kmの航続距離(従来型の自動車からEVへの置き換えを進めるために必要な距離)を実現できるバッテリーのサイズよりも、実際よりも30~60%小さいバッテリーで計算している。現在のハイエンドEVでは大型のバッテリーが一般的だ。バッテリーのサイズを2倍にすると、内包二酸化炭素も単純に2倍になり、多くのシナリオ(あるいはほとんどのシナリオ)で、EVのライフサイクルにおける炭素排出削減効果が大幅に損なわれるか、ゼロになる。

同様に問題なのは、将来の排出削減量を予測する際に、将来の充電サプライチェーンがEVが存在する地域に「存在する」明示的想定していることだ。ある分析は広く引用されているが、米国のEV用アルミニウムは国内の製錬所で製造され、電力は主に水力発電のダムで供給されると仮定している。理論的には可能かもしれないが、現実はそうではない。例えば米国のアルミニウム生産量は全世界の6%に過ぎない。製造プロセスがアジアにあると仮定すると、EV用アルミニウムのライフサイクルにおける排出量は計算上150%も高くなる。

EVの内包二酸化炭素算出の問題点は、石油が採掘、精製、消費される際の内包二酸化炭素の透明性に匹敵する報告メカニズムや基準が存在しないことだ。エグゼクティブサマリーやメディアの主張には反映されていないとしても、研究者は正確なデータを得るためには課題があることを知っている。技術資料の中には「リチウムイオン電池の使用が急速に増加している現状の、環境への影響を正しく評価するためには、リチウムイオンバッテリーセルの製造に必要なエネルギーをより深く理解することが重要である」というような注意書きが見られることがよくある。また、最近の研究論文には「残念ながら、その他のバッテリー原料の業界データはほとんどないため、ライフサイクル分析の研究者はデータギャップを埋めるために工学的な計算や近似値に頼らざるを得ない」という記載もあった。

全世界の鉱物のサプライチェーンを計算の対象にして、何千万台もの電気自動車の生産に対応させようとすると、この「データギャップ」が大きな壁となる。

量を増やす場合

最も重要なワイルドカードは、国際エネルギー機関(IEA)がいうところの「エネルギー転換鉱物」(ETM、風力や太陽光を電気に変換するために必要な鉱物)を必要量確保するために予想されるエネルギーコストの上昇である。

IEAは2021年5月、バッテリーや太陽電池、風力発電機の製造に必要なエネルギー転換鉱物の供給に関する課題について、重要な報告書を発表した。この報告書は、他の研究者が以前から指摘していたことを補強している。従来型の自動車と比較して、EVでは1台あたり約5倍のレアメタルを使用する。これに従い、IEAは、現在のEVの計画と風力発電や太陽光発電の計画を合算すると、一連の主要鉱物を生産するためには、全世界で鉱山生産量を300〜4000%増加させる必要があると結論づけている。

例えばEVは従来型の自動車に比べて銅の使用量が約300〜400%多いが、全世界の自動車総数に占めるEVの割合はまだ1%にも満たないため、世界中のサプライチェーンには今のところ影響が出ていない。EVを大規模に生産するようになると、電力網用のバッテリーや風力・太陽光発電機の計画と合わせた「クリーンエネルギー」分野は世界の銅消費量の半分以上を占めるようになるだろう(現在は約20%)。現在はごくわずかしか使用されていないニッケルとコバルトという関連し合う鉱物についても、クリーンエネルギーへの移行を進めることで、その分野の需要が全世界の需要のそれぞれ60%、70%を占めるようになると考えられている。

横浜港に到着し、駐車場に並べられたテスラ社の車両。2021年5月10日月曜日(画像クレジット:Toru Hanai/Bloomberg via Getty Images)

電気自動車の義務化が鉱業に及ぼす究極の需要規模を説明するために、5億台の電気自動車が普及した世界(それでも自動車全体の半分にも満たない)を考えてみよう。この世界では約3兆台のスマートフォンのバッテリーを製造できる量の鉱物資源を採掘する必要があり、これは、スマートフォンのバッテリーを2000年以上も採掘・生産してきたことに相当する。念のため確認しておくと、これだけのEVを導入しても、世界の石油使用量は15%程度しか削減されない。

全世界での驚異的な採掘量の拡大がもたらす環境、経済、地政学的な影響はさておき、世界銀行は「鉱物と資源の持続可能な開発のための新たな課題」について警告している。原材料の調達はEVのライフサイクルにおける二酸化炭素排出量のほぼ半分を占めるので、このような採掘量の増加は、将来の鉱物の二酸化炭素排出原単位(carbon intensity、炭素集約度ともいう)の予測に直接関係する。

IEAのレポートでも指摘されているように、エネルギー転換鉱物の問題は「二酸化炭素排出原単位が高い」だけでない。鉱石の品位が長年にわたって低下し続け、採掘量1kgあたりのエネルギー使用量が増加する傾向があるのだ。鉱物の需要が加速すれば、採掘者は必然的に低品位の鉱石を、より遠隔地で採掘することになる。たとえばIEAは、リチウムとニッケルをそれぞれ1kg生産する際の二酸化炭素排出量は300~600%増加すると予測している。

フランスの海外共同体ニューカレドニアのチオにあるニッケル鉱山(画像クレジット:DeAgostini / Getty Images)

銅の動向はこの課題をよく表している。1930年から1970年にかけて銅鉱石の品位は年々に低下していったが、採掘後の化学プロセスも進歩したため、1トンの銅を生産するためのエネルギー使用量は30%減少した。しかしこれは、最適化された化学プロセスが物理学的な限界に近づくまでの一時的なものだった。1970年以降も鉱石の品位は下がり続け、それに伴って銅1トンあたりのエネルギー使用量は増加し、2010年には1930年と同じレベルに戻ってしまった。近い将来、他の鉱物でも鉱石の品位が下がると、同じパターンをたどることになるだろう。

それにもかかわらず、IEAは他の機関と同様に、今現在の推定平均サプライチェーン二酸化炭素排出原単位を用いて「将来EVが増加することで二酸化炭素の排出量を削減できる」と主張している。しかし、IEA自身の報告書のデータは、エネルギー転換鉱物の内包二酸化炭素が増加することを示唆している。さらに、IEAは、太陽光発電所や風力発電所は天然ガスの発電所に比べて500〜700%多く鉱物を必要とすると指摘しているが、それらの発電所の建設が大幅に増加すると、鉱山サプライチェーンがさらに逼迫し、商品市場では価格が劇的に上昇することになる。

Wood Mackenzie(ウッドマッケンジー)の資源専門家は、EVのシェアが現在の1%未満から10%に近づくと、到底対応できないほどの資源需要が発生し「バッテリー技術の開発、テスト、商業化、製造、EVとそのサプライチェーンへの適用がこれまで以上に迅速に行われなければ、EV目標を達成し、ICE(内燃機関)を禁止することは不可能であり、現在のEV普及率予測に問題が生じる」と予測している。

政策を定めたところで、化学物質の開発・製造や鉱業など、すでに業界トップクラスのものを短期間で加速させる能力があるという証拠はない。リチウム電池の化学的原理が発見されてから、最初のTeslaセダンが発売されるまでに30年近くかかっているのだから。

炭素効率性を追求するバッテリーサプライチェーン

もちろん、EVサプライチェーンの炭素排出量の増加が世界を脅かす要因を改善する方法はある。それにはバッテリーの化学的性質の改善(1kWhの蓄電に必要な材料の削減)、化学プロセスの効率化、鉱山機械の電動化、リサイクルなどが挙げられ、いずれも「避けられない」あるいは「必要な」解決策とされることが多い。しかし、EVの急速な普及を想定した場合、これらはいずれも大きなインパクトがあるものではない。

よくありがちなニュースでは、何らかの「ブレークスルー」があったように報道されるが、EVの1kmあたりに必要な物理的材料を桁違いに変化させるような、商業的に実現可能な代替バッテリーの化学原理は見つかっていない。ほとんどの場合、化学組成を変えても重量が変わるだけだ。

例えばコバルトの使用量を減らすためにはニッケルの含有量を増やすのが一般的である。炭素やニッケルなどのエネルギー原子を使用せず、代わりに鉄などの(レアではない)エネルギー密度の低い元素を使用したバッテリー(リン酸鉄リチウムイオン電池など)は、エネルギー密度が低くなる。後者の場合、同じ航続距離を維持するためには、より大きく、より重いバッテリーが必要になる。いつかは組成的に優れた電池用の化学物質の組み合わせが発見されるだろうが、化学メカニズムを検証から産業用に安全にスケールアップするには何年もかかる。それ故に、現在、そして近い将来自動車に搭載されるバッテリーに使用される技術は、いつか理論的に可能になる技術ではなく、今現在実現している技術となる。

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また、鉱物の精製や変換に使用されるさまざまな化学的プロセスの効率化も期待されている。技術者が技術者である以上、改良は当然であり、デジタル時代にはさらに改良が進むかもしれない。しかし、研究されつくした物理化学の視点では、すでに物理学的限界に近い状態で精製や変換のプロセスが行われているので「ステップ関数(階段関数、階段を上がるように数値が増える関数)」的な変化は期待できない。つまり、リチウム電池は、プロセス(およびコスト)効率の急速な改善が見られる初期段階をとっくに過ぎて、少しずつしか改良されない段階に入っているのだ。

鉱山用トラックや機器の電動化についてはCaterpillar(キャタピラー)、Deere & Company(ディアアンドカンパニー)、Case(ケース)などがプロジェクトを進めており、量産機もいくつか販売されている。有望なデザインが登場しているユースケースもあるが、ほとんどのユースケースで重機に24時間365日の電力供給を行うにはバッテリーの性能が不足している。さらに、鉱山機械や産業機械の回転率は数十年単位であり、鉱山では、今後も多くの石油燃焼機材を長期間使用することになる。

リサイクルは新たな需要を軽減するためによく提案される手段だ。しかし、仮にすべてのバッテリーがリサイクルされたとしても、現在のEV推進策で提案されている(あるいは義務化されている)EVの増加予測から生じる膨大な需要の増加には到底対応できない。いずれにしても、バッテリーをはじめとする複雑な部品からレアメタルをリサイクルする際の有効性と経済性については、技術的な課題が未解決のまま残っている。いつかは自動化されたリサイクルが可能になるだろうと想像できるかもしれないが、現時点ではそのような解決策は存在しない。また現在も将来も、バッテリーの設計は統一されておらず、政策立案者やEV推進者が想定している期間内に設計の統一化を実現するための明確な道筋はない。

法規制の混乱とEVの排出権

ここまで見てきたとおり、EVの炭素排出量については非常に多くの仮定、推測、曖昧さがあるため、炭素排出量削減に関する主張は、詐欺とまではいかなくても、操作の対象となることが避けられない。必要なデータの多くは、技術的な不確実性、地理的要因の多様性と不透明性、多くのプロセスが公開されていない現状を考慮すると、通常の規制方法では収集できないと思われる。それでも、米国証券取引委員会(SEC)は、そのような開示要求を検討しているようだ。EVのエコシステムにおける不確実性は、欧州や米国の規制当局が法的拘束力のある「グリーン開示規則」を制定したり、二酸化炭素の排出量に関する「責任ある」ESG指標(企業を、環境[Environment]、社会[Society]、企業統治[Governance]の観点から評価した際の指標)を施行したりすれば、法的な大混乱につながる可能性がある。

自動車の石油使用量の削減に熱心な政策立案者に対しては、バッテリー化学や採掘の革命を待つまでもなく、技術者は目標を達成するためのより簡単で確実な方法を開発済みだ。燃料使用量を最大50%削減できる内燃機関はすでに存在している。より効率的なエンジンを積んだ自動車を購入するインセンティブを与え、その半分が燃費の良い自動車を購入するとしても、3億台のEVが供給されるよりも早く実現でき、安価である。そしてその検証は透明で、不確実性は存在しない。

編集部:本稿の執筆者Mark Mills(マーク・ミルズ)氏は「The Cloud Revolution」の著者。「The Cloud Revolution: How the Convergence of New Technologies Will Unleash the Next Economic Boom and a Roaring 2020s」を出版予定。マンハッタン研究所のシニアフェロー、ノースウェスタン大学マコーミック工学部のファカルティフェロー。

画像クレジット:Xu Congjun/VCG / Getty Images

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(文:Mark Mills、翻訳:Dragonfly)

EV時代を見据えてCox Automotiveがバッテリー関連サービス企業のSNTを買収

自動車関連サービス企業のCox Automotive(コックスオート・モーティブ)が、電気自動車用バッテリーのライフサイクルビジネスに参入する。

同社は米国時間9月1日、オクラホマ市に拠点を置くSpiers New Technologies(スピアーズ・ニュー・テクノロジーズ、SNT)を買収したと発表した。SNTは、EV用バッテリーパックの修理、再製造、再生、再利用などのサービスを提供している企業だ。

両社は買収額などの条件を明らかにしていない。Coxは今回の買収により、今後とりわけ「EVが中心的な存在になる」中で、バッテリーに関するサービスの提供を確立することができると述べている。同社によれば、電気自動車は、内燃機関の自動車とはサービス業務の内容がまったく異なり、その多くはバッテリーに関連するものだという。EVのバッテリーパックは車両コストの40%を占める場合もあるため、そのバッテリーをサポートすることは特に重要だ。

米連邦政府による電気自動車への投資が増加し、多くの自動車メーカーがEV事業の強化のために数十億ドル(数千億円)規模の投資を発表しているにもかかわらず、依然として一般の人々の多くはEVに対して懐疑的だ。Coxの調査によると、電気自動車の購入を検討していない人の10人中8人が、バッテリーの価値や耐用年数について懐疑的な見方をしているという。

Coxは現在、SNTのソフトウェアプラットフォーム「Alfred(アルフレッド)」を使用したバッテリー健康度診断ツールをSNTと共同で構築している。Coxは、この診断ツールを使って、電気自動車に対する信頼性を高めていくとしており、それは自動車の価値評価で知られる「Kelley Blue Book(ケリー・ブルー・ブック)」が、従来の(内燃機関で走る)自動車の状態に関する透明性を高めて消費者に提供してきたのと同じだと、同社は述べている。

今回の買収により、Coxはバッテリー再利用事業への投資も行うことになる。SNTは、自動車での使用に適さなくなったEV用バッテリーに「第二の人生」を与えることを専門とする数少ない企業の1つだ。SNTが受け取るバッテリーの約80〜90%は自動車メーカーからのもので、残りは自動車解体業者からのものだと、同社は数カ月前のTechCrunchによるインタビューで答えている。この事業分野は、EVの普及にともなって今後も拡大する可能性が高い。今回の買収によって、Coxは使用済みバッテリーの販売にも参入することになるだろう。

画像クレジット:Xu Congjun/VCG / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

テスラがテキサス州での電力販売を計画

8月中旬にテキサス州の電気規制当局に提出された申込書によると、Elon Musk(イーロン・マスク)氏のTesla(テスラ)は電気自動車、ソーラーパネル、蓄電バッテリー以外にも目を向けていて、いま顧客に直接給電したいと考えているようだ。この申し込みについてはEnergy Choice Mattersが最初に報じた。

2021年8月16日テキサス州の公共事業委員会に提出された申込書は、Teslaの子会社Tesla Energy Venturesのもとに、いわゆる「電力小売事業者」(REP)になるためのものだ。規制緩和されたテキサス州独自の電力マーケットでは、REPは通常、発電事業者から卸電力を購入し、顧客に販売する。現在、REP10社以上が公開市場で競合している。

Teslaはまた、同州でいくつかの実用規模バッテリーの申し込みも提出した。オースティン周辺に立地するギガファクトリー近くにある250メガワットバッテリーとヒューストン近くの100MWのプロジェクトだ。これらのプロジェクトは電力供給会社になるという取り組みとは関連がないが、全体として同社のエネルギー事業の野心的なロードマップを露わにしている。

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想像して欲しい。Teslaが顧客に電気を販売するだけではなく、ブローカー顧客がTeslaのPowerwallやソーラーパネル製品からの余剰エネルギーを電力網に販売できるかもしれないのだ。明らかに、あらゆる家庭を分散型発電所に変えるというマスク氏のビジョンを実現する1つの方法だ。

公共事業委員会へのこの最新の申し込みの6カ月前、前代未聞の大雪によってテキサス州の送電網の大半が何日間も停止し、何百万人という人が氷点下の数日間を電力なしで過ごすことを余儀なくされた。このウィンターストーム後にREP数社が事業をたたんだ。こうした企業は卸電力の価格をメガワットアワーあたり9000ドル(約99万円)にしていた(季節平均価格は約50ドル、約5500円だ)。

ボカチカにあるSpaceXの広大な施設を含め、多くの事業をカリフォルニアからテキサスに移したマスク氏は当時、Twitterでテキサス州の送電事業者を批判していた。

マスク氏は、テキサス電気信頼性評議会は「Rを獲得していない」と述べ、頭字語でR(Reliability、信頼性)に言及していた。

Tesla Energy Venturesは公共事業委員会に、同社のモバイルアプリやウェブサイトの活用を含め、販売促進するのにTeslaの既存のエネルギー部門を使うと伝えた。「具体的には、(Tesla Energy Venturesは)Tesla製品を所有している既存顧客をターゲットとし、モバイルアプリとTeslaウェブサイトを通じて顧客に小売を販促します」と申込書には書かれている。「TeslaモバイルアプリとTeslaウェブサイトに加えて、申込者の既存の『Tesla Energy Customer Support』組織は顧客獲得の取り組みにおいて顧客サポートとガイダンスを提供するよう訓練されます」。

Ana Stewart(アナ・スチュアート)氏がTesla Energy Venturesの社長となっている。スチュアート氏は2017年からTeslaで規制クレジット取引担当ディレクターを務めている。その前は同氏はTeslaが買収したSolarCity(ソーラーシティ)で働いていた。

申し込みの整理番号は52431だ。

画像クレジット:Darrell Etherington

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

GMがシボレー・ボルトのリコール損失約1100億円をLG Chemに請求すると表明

米国の自動車メーカーであるGeneral Motors(ゼネラル・モーターズ、GM)は米国時間8月20日、バッテリーの製造上の欠陥による火災の危険性を理由に、電気自動車(EV)であるChevrolet Bolt(シボレー・ボルト)のリコールを拡大した。そしてGMは、バッテリーセルの製造パートナーであるLG Chem(LGケム)に、10億ドル(約1097億円)相当の損害賠償を求めることも発表している。

関連記事:GMがシボレー・ボルトEVに3度目のリコール、欠陥バッテリーから火災のおそれ

GMがこの車両に対して行った3回目のリコールのニュースを受けて、LG Chemの株価は米国時間8月23日に11%下落し、60億ドル(約6582億円)の市場価値を失った。またGMの株価は市場終了時に1.27%下落した。

LG Chemのバッテリーが自動車メーカーのリコールにつながったのは、今回が初めてではない。2021年初め、現代自動車(Hyundai)が同様のバッテリー発火の危険性があるとして8万2000台のEVをリコールたが、その費用は約8億5190万ドル(約934億7000万円)に上ると推定されている。現代自動車の共同バッテリー事業は、9月の新規株式公開(IPO)を準備しているLG Chemの、バッテリー専門部門であるLG Energy Solution(LGエナジーソリューション)とのものであったが、専門家によれば今回のリコール費用のためにIPOが延期される可能性があるという。

GMが行ったバッテリーの不具合調査では、陽極タブの破れや曲がったセパレーターなどの、バッテリーセルの不具合が見つかっている。今回のリコールは、LG Energy Solution製のバッテリーを搭載したフォルクスワーゲンAG ID.3 EV で火災が発生して1週間後から始まった。2021年に入ってから、フォルクスワーゲンやテスラは、LG Chemブランドのパウチ型リチウムイオンバッテリーセルから、CATLやサムスンSDIのようなプリズム型のバッテリーセルに移行する動きを始めている。

このリコールによって、GMには北米で販売できる完全な電気自動車がなくなり、電気自動車の販売が伸びているTesla(テスラ)や他の自動車メーカーに対抗することができなくなる。販売台数の減少、安全面でのリスク、さらにはより優れた技術が登場する可能性があることから、GMは他のビジネスに向かうかもしれない。

だが今はまだ、一緒にやるべきことが残されている。GMは、シボレー・ボルトEVおよびEUVに搭載されている欠陥のあるバッテリーモジュールを、新しいモジュールに交換すると発表しており、これが10億ドル(約1097億円)の損失の原因になっているとしている。これは、2020年11月に発生したボルトのリコールのためにGMがすでに支出している8億ドル(約877億8000万円)に加えての支出となる。エネルギーストレージの調査会社であるCairn ERA(ケアンERA)のデータによれば、バッテリーパックは電気自動車の中で最も高価な部品であり、平均して1kWhあたり約186ドル(約2万円)かかっている。GMは1kWhあたり約169ドル(約1万9000円)を支払っており、ボルトは66kWhのバッテリーパックを搭載している。

なお、LG ChemとGMが問い合わせに回答していないため、4月に両社が発表した、米国2カ所目のバッテリー工場をテネシー州に建設する計画を、進めるつもりがあるのかどうかは不明だ。この合弁会社はUltium Cells(アルティウム・セルス)という名で、70GWh以上のエネルギー生産を目指すとされていた。

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画像クレジット:Veanne Cao

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(文: Rebecca Bellan、翻訳:sako)

電気自動車のバッテリー交換サービス拡大に向けENEOSも出資するAmpleが176億円調達

サンフランシスコを拠点とするAmple(アンプル)は、バッテリー交換サービス拡大に向けシリーズCで1億6000万ドル(約176億円)を調達した。電気自動車(EV)の使用方法を全面的に見直したいと考える8年目のスタートアップである同社にとって、これまでで最大のラウンドとなる。

Ampleのアプローチは比較的単純だ。同社のモジュール式バッテリーパックを搭載した車が、Ampleの自動充電ポッドのある場所に行き、消耗したバッテリーをフル充電されたバッテリーと交換する。交換されたバッテリーはポッドの中で充電され、別の車に再装着される。

Ampleのバッテリー交換モデルは一見シンプルだが、同社はEVのバッテリーをまったく別の方法で考えることを提案している。同社はEVのバッテリーを、iPhoneのように充電が必要なものではなく、デジタルカメラのバッテリーのように交換可能なものにしたいと考えている。

米ドルで9桁の資金調達は、投資家が注目していることの表れだ。今回のシリーズCでは、Moore Strategic Venturesがリードし、タイの国営石油・ガス会社であるPTTとDisruptive Innovation Fundが参加した。既存の投資家から、日本の石油・エネルギー会社であるENEOS、シンガポールの公共交通機関であるSMRTも参加した。Ampleの資金調達総額は2億3000万ドル(約253億円)となった。

「我々は、電気自動車に大きな問題があることに気づきました」とAmpleの共同創業者John de Souza(ジョン・デ・スーザ)氏は話す。

業界の対応としては、DC急速充電器のような技術が開発され、充電時間を20~30分に短縮することに成功した。だがデ・スーザ氏は、充電時間の短縮は根本的な問題を解決するものではないという。「急速充電は大量の熱を発生させます。送電網はそれをサポートしていません」と同氏は語る。「仮に5分で充電できるバッテリーができたとしても、非常に強力な充電器が必要ですし、そのためにはあらゆる場所に発電所が必要になります」。

現在、Ampleはフリートに取り組んでいる。ベイエリアでは、Uberのドライバーが参加する5つのバッテリー交換ステーションを運営している。またニューヨークでは、タクシーやラストマイル配送向けEVレンタル会社であるSallyと提携した。だがAmpleは、このバッテリー交換サービスが一般消費者にも適していると考えている。Ampleの共同創業者であるKhaled Hassounah(カレド・ハスナ)氏は、バッテリー交換が、アパートに住む人など、充電設備が整っていない個人消費者にも有効だという。「私たちは、すでに製造されたEVではなく、これから発売される車により力を入れます」と同氏は付け加えた。

関連記事:10分で満充電にできるEVバッテリー交換のAmpleがENEOSと日本国内での交換インフラ展開、運営で提携

Ample. Ampleの共同創業者であるジョン・デ・スーザ氏とカレド・ハスナ氏

Ampleはモジュール式システムを採用しているため、ドライバーは必要な分だけバッテリーを持ち歩けばよいという。これは、同社にとって、バッテリーの無駄遣いを減らし、車両の重量を減らすことを意味する。

Ampleのビジョンの多くは、自動車メーカーの賛同を得られるかどうかにかかっている。例えば、個人が自動車を購入する際、自動車メーカーは固定式バッテリーか、Ampleのバッテリーシステムを搭載した車両のいずれかを提供することになるとAmpleは想像している。

同社によると、このアプローチは、自動車メーカーと直接連携して10種類の車種で検証しており、いずれも車両の改造を必要とするものではないという。電圧ケーブルや冷却ラインなど、バッテリーと車の間に変更が必要なインターフェースがないわけではないが、実際のEVのアーキテクチャーは思ったよりもシンプルだ。

「自動車メーカーのマーケティング部門は、『これは超高性能バッテリーで、車と非常によく統合されており、切り離すことはできない』と言いたがります」とハスナ氏は話す。「実際のところは、完全に別個に作られています。テスラを含む自動車のすべてのバッテリーがそうです」。

「私たちは、システムをさまざまな車両とのインターフェースが容易になるよう開発し、バッテリーコンポーネントを車両からいわば抜き出しました」と同氏は付け加えた。

現在、Ampleは自動車メーカー5社と提携しており、その中には「世界最大級の自動車メーカーも含まれています」とデ・スーザ氏は話す。「フリートからの需要の高まりは、車の販売に熱心な自動車メーカーとの対話と密接に関係している」と付け加えた。

EVのコストの多くをバッテリーシステムが占めるため、これは魅力的な提案となるだろう。中国の自動車メーカーNio(上海蔚来汽車)は、このアイデアを市場に導入した。同社では、車両にバッテリーがある・なしを選んで購入できるオプションを提供している(後者の場合、Nioはバッテリーをリースする)。リースの場合、車両価格を7万元(約118万円)安くできる。創業者のWilliam Li(ウィリアム・リー)氏は5月「Nioはすでに中国のドライバーのために240万台以上のバッテリーを交換した」と語る。

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今後の展望として、Ampleは純粋に拡大に力を入れている。新しい都市で大規模な顧客と一緒に展開するということだ。興味深いことに、デ・スーザ氏は、EVへの移行を望むが必要な充電インフラがない国の政府から多くの関心が寄せられていると話す。

「問題は、インフラ整備よりも、どうやって走行距離を伸ばし、自動車をより電気的にするかということです」とハスナ氏は語る。「100万台の急速充電器を設置しても、誰も使わないのであれば、何も達成したことにはなりません」。

画像クレジット:Ample

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

LG Energy Solutionが豪州企業とニッケルとコバルトの購入契約を締結、EV用バッテリー製造のため

韓国のLG Energy Solution(LGエナジーソリューション)は、豪州の鉱山会社と6年間にわたるコバルトとニッケルの購入契約を締結し、電気自動車用バッテリーの製造に必要な主要鉱物の安定供給を確保した。

LG Chem(LG化学)の子会社であるLG Energyは、2024年末からAustralian Mines Limited(オーストラリアン・マインズ・リミテッド)から7万1000ドライメトリックトンのニッケルと7000ドライメトリックトンのコバルトを購入する。これは、1回の充電で310マイル(約500キロメートル)以上の走行距離を持つ130万台のEV用のバッテリーを作るのに十分な原材料だ。

LGエナジーソリューションのCEOであるJong-hyun Kim(ジョンヒョン・キム)氏は「近年、世界中で電気自動車の需要が高まる中、重要な原材料を確保し、責任あるバッテリーサプライチェーンを構築することは、業界内での支配力を高めるための重要な要素となっています」と述べた。

この材料は、Australian Minesがクイーンズランド州で15億豪ドル(約1200億円)を投じて開発中のスコーニプロジェクトから調達する。このプロジェクトでは、ろ過した尾鉱を保管するために「ドライスタッキング方式」を採用している。鉱石を地域の水源に投棄したり、地下の採石場に埋めたりするのではなく、ドライスタッキングによって廃棄物から水分を取り除き、砂状の物質にして管理施設で安全に保管する。

LG Energyは声明で「ドライスタッキング法は、建設費や維持費などがかかるため、従来の方法に比べてコストは高いものの、環境に優しい原料採取方法だと考えられています」と述べた。

本契約の唯一の条件は、Australian Minesが2022年6月末までに本プロジェクトの建設資金を確保することだ。融資が確保された場合、この契約は同サイトの予想生産量のすべてを占めることになる。

なお、両社は相互の合意により、契約をさらに5年間延長するオプションを有している。

LG Energyは、世界最大級のバッテリーおよびバッテリー材料メーカーであるLG Chemの子会社だ。同社は2021年7月にバッテリー事業、特に負極材、分離膜、正極バインダーの生産に6兆ウォン(約5570億円)を投じたと発表した。また、2021年夏の初めには、Queensland Pacific Metals(クイーンズランド・パシフィック・メタルズ)と、10年間にわたり年間7000トンのニッケルと700トンのコバルトを購入する契約を締結した。契約は120億ウォン(約11億円)の価値があるとされている。

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LG Chemは、Volkswagen(フォルクスワーゲン)、General Motors(ゼネラルモーターズ)、Tesla(テスラ)などを顧客としている。LG Chemは、世界のバッテリー市場が今後数年間で拡大し、2021年には39兆ウォン(3兆6200億円)、2026年には100兆ウォン(9兆2800億円)になると予想している。

原材料確保を目指すのは大手企業だけではない。Teslaはバッテリー原料を独自に確保するため、7月にコモディティ生産大手のBHPと西オーストラリア州の鉱山からニッケルを調達する契約を結んだ

また、LG ChemとGeneral Motorsとの合弁会社であるUltium Cells(アルティアム・セルズ)のように、OEMメーカーがバッテリーメーカーと提携してバッテリーを開発するケースもある。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:LG Energy SolutionLG ChemコバルトニッケルオーストラリアバッテリーEV鉱山

画像クレジット:Fairphone / Flickr under a CC BY-SA 2.0license.

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

テスラが旧来のリン酸鉄リチウムバッテリーに賭けていることは、メーカーにとって何を意味するのか

Elon Musk(イーロン・マスク)氏は、鉄ベースのバッテリーに関してこれまでで最も強気の発言をした。Tesla(テスラ)は、エネルギー貯蔵製品と一部のエントリーレベルのEVにおいて、旧来の安価なリン酸鉄リチウム(LFP)セルへの「長期的なシフト」を行っていると強調した。

テスラのCEOは、同社のバッテリーは最終的に製品全体で鉄ベースが3分の2、ニッケルベースが3分の1になるだろうと思慮深く語り「これは実際に好ましいことです。世界には十分な量の鉄が存在していますから」と付け加えた。

マスク氏のコメントは、主に中国の自動車業界ですでに進行中の変化を反映するものだ。中国以外の地域でのバッテリー化学組成は大部分がニッケルベースで、具体的にはニッケル・マンガン・コバルト(NMC)とニッケル・コバルト・アルミニウム(NCA)である。これらの比較的新しい化学組成は、エネルギー密度が高いことから自動車メーカーにとって魅力的なものとなっており、OEM(完成車メーカー)におけるバッテリーの航続距離の改良に貢献している。

マスク氏の強気の姿勢がEV業界全体に真の変化をもたらしつつあるとすれば、中国以外のバッテリーメーカーが追随できるかどうかが問われるところだ。

LFP方式への回帰を示唆しているのはマスク氏だけではない。Ford(フォード)のCEOであるJim Farley(ジム・ファーリー)氏は2021年、一部の商用車にLFPバッテリーを採用すると発表した。一方、Volkswagen(フォルクスワーゲン、VW)のCEO、Herbert Diess(ヘルベルト・ディース)氏は、同社のバッテリーデーのプレゼンテーションで、VWのエントリーレベルEVの一部にLFPが使用されることを明らかにした。

エネルギー貯蔵の面では、マスク氏がコメントで言及した、Powerwall(パワーウォール)とMegapack(メガパック)でのLFPベースの化学組成の採用は、鉄ベースの処方を推進する他の定置型エネルギー貯蔵企業の潮流に沿うものとなっている。「定置型貯蔵業界は、より安価なLFPへの移行を志向しています」と、バッテリー調査会社Cairn Energy Research Advisorsを率いるSam Jaffe(サム・ジャッフェ)氏はTechCrunchに語った。

LFPバッテリーセルが魅力的な理由はいくつかある。まず、コバルトやニッケルのような極めて希少で価格が変動しやすい原料に依存していない(主にコンゴ民主共和国から調達されているコバルトは、非人道的な採掘条件のためにさらなる精査の対象となっている)。また、ニッケルベースの化学組成に比べてエネルギー密度は低いものの、LFPバッテリーははるかに安価に製造できる。電気自動車への移行を促進したいと考えている向きにとって、これは朗報となる。EVの普及には、1台あたりのコストを下げることが重要な鍵となる可能性が高いからだ。

マスク氏は明らかに、テスラにおける鉄ベースの化学組成に大きな未来を見出しており、同氏のコメントは、LFPが再びスポットライトを浴びるのに効果的な役割を果たした。ただし、それがショーのスターであり続けている場所は1つ、中国である。

中国によるLFPの独占

「LFPは中国でしか生産されていないといっても過言ではありません」と、調査会社Benchmark Mineral Intelligenceで価格・データ評価の責任者を務めるCaspar Rawles(キャスパー・ローレス)氏は、最近のTechCrunchとのインタビューで説明している。

LFPバッテリー生産における中国の優位性の一部は、大学や研究機関のコンソーシアムによって管理されている一連の主要なLFP特許に関連している。このコンソーシアムは10年前、中国のバッテリーメーカーとの間で、LFPバッテリーが中国市場でのみ使用されることを条件に、ライセンス料を徴収しないことで合意した。

こうして、LFP市場は中国が独占する形となった。

中国のバッテリーメーカーは、LFPへの構造的シフトのポテンシャルから最大の恩恵を受ける可能性がある。具体的にはBYD(比亜迪)とCATL(寧徳時代新能源科技)で、後者はすでに、中国で生産・販売されているテスラ車専用のLFPバッテリーを製造している。(一方、フォルクスワーゲンは中国のLFPメーカーGotion High-Tech[国軒高科]にかなりの出資をしている。)こうしたバッテリーメーカーの勢いはとどまる気配を見せていない。1月にCATLとShenzhen Dynanonic(深圳市徳方納米科技)は、中国の地方省の1つと、LFPカソード工場を2億8000万ドル(約307億円)の費用で3年をかけて建設する契約を結んだ。

業界アナリスト企業のRoskillによると、LFPの特許の存続期間の満了は2022年で、中国以外のバッテリーメーカーが生産の一部を鉄ベースの製品に移行し始める機は熟していることが予想されるという。しかし、LG Chem(LG化学)やSK Innovation(SKイノベーション)など、韓国の大手企業との合弁事業が多い欧州や北米のバッテリー工場はいずれも、依然としてニッケルベースの化学組成にフォーカスしている。

「米国がLFPの強みを生かすには、北米の製造業が必要となるでしょう」とジャッフェ氏は説明する。「今日、米国でギガファクトリーを建設する人々は皆、高ニッケル化学製品の製造を計画しています。現地で製造されるLFPバッテリーに対するアンメットニーズが非常に高くなっています」。

ローレス氏は、特に特許の有効期限が失効した後、数年のうちに北米と欧州である程度のLFPキャパシティが確保されると予想している。ドイツではCATLも、他のバッテリーメーカーSVOLT(蜂巣能源科技)も動きを見せているが、どちらも中国企業であり、その他のアジア企業や欧米企業がLFP市場で競争できるかについては疑問が残る、と同氏は指摘した(Stellantis[ステランティス]は2025年以降のバッテリーサプライヤーの1つとしてSVOLTを選定している)。

エネルギー貯蔵に関して、ジャッフェ氏は「定置型貯蔵システムのほとんどが最終的にはLFP系になることは避けられない」と考えているという。

しかし、米国の国内製造業にとってすべてが失われるとは限らない。「地元でLFP製造を確立するための好材料として、サプライチェーンがシンプルであることが挙げられます。リチウム以外にも、鉄とリン酸という2つの安価な材料が(米国で)大量に生産されています」とジャッフェ氏は付け加えた。

結局のところ、これはバッテリーの化学的性質の問題ではない。より有望な点は、テスラを含む自動車メーカーの動向からすでに明らかになっている。鉄ベースのバッテリーは主にエントリーレベルの低価格車に使用され、ニッケルベースのセルはハイエンドの高性能車に使用される。多くの消費者は、300マイル(約483km)から350マイル(約563km)の走行距離を持つ車よりも、数千ドル(約数十万円)安い200マイル(約322km)から250マイル(約402km)の走行距離の車の方に満足するだろう。

自動車メーカーは、垂直製造や既存のバッテリー会社との合弁事業を通じて、バッテリー供給をコントロールする方向に動き始めている。このことは、北米と欧州におけるLFPキャパシティの拡大は可能性が高いだけでなく、必然的であることを意味している。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:Elon MuskTeslaバッテリー電気自動車FordVolkswagenPowerwallMegapack中国エネルギー貯蔵リチウムイオン電池

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Dragonfly)