NFT・DeFi革命を支えるイーサリアム、大型アップグレード「イーサリアム2.0」について簡単解説

NFT・DeFi革命を支えるイーサリアム、大型アップグレード「イーサリアム2.0」について簡単解説

編集部注:この原稿は千野剛司氏による寄稿である。千野氏は、暗号資産交換業者(取引所)Kraken(クラーケン)の日本法人クラーケン・ジャパン(関東財務局長第00022号)の代表を務めている。Krakenは、米国において2011年に設立された老舗にあたり、Bitcoin(ビットコイン)を対象とした信用取引(レバレッジ取引)を提供した最初の取引所のひとつとしても知られる。

2021年の暗号資産業界は、NFT(ノン・ファンジブル・トークン)やDeFi(分散型金融)などに代表にされるように、ビットコイン以外の領域で大きな革命が起こった年です(日本銀行「暗号資産における分散型金融」も参照)。2021年のビットコイン(BTC)価格の上昇幅は、株など伝統的な資産と比較すればかなり高いリターンですが、実は主要仮想通貨20銘柄でみると、下から3番目の低記録です。理由は、イーサリアム(Ethereum)や「第3世代」といわれるその他ブロックチェーンの台頭です。本稿では、NFTやDeFi革命をさらに加速させる原動力となるイーサリアムの大型アップグレードと、その成功のカギについて、解説します。

NFT・DeFi革命を支えるイーサリアム、大型アップグレード「イーサリアム2.0」について簡単解説

(出典:Kraken Intelligence「2021年のリターン 主要20種(SHIB除く)」)

ブロックチェーン第3世代

DeFiやNFTのプロジェクトは、ほとんどがイーサリアムを基盤としています。イーサリアムの最大の功績といって良いのが、スマートコントラクトの発明。スマートコントラクトは、ブロックチェーン上であらかじめ決められた契約を自動的に実行する仕組みです。スマートコントラクトのおかげで、イーサリアムのブロックチェーン上で、仲介業者なしで成り立つ分散型アプリ(dApps)開発が進みました。イーサリアムがNFTやDeFiの受け入れ基盤として大きなシェアを獲得している理由は、スマートコントラクトの先駆けである点が大きいでしょう。

しかし、最近はソラナ(Solana。GitHub)やアヴァランチ(Avalanche。GitHub)、カルダノ(Cardano。GitHub)など「イーサリアムキラー」と呼ばれるブロックチェーンが台頭し、DeFiやNFT領域におけるイーサリアムの市場シェアを奪う動きが出ています。例えば、DeFi関連データの集計サイトDeFi Llamaによりますと、約1年前、DeFiプロジェクト全体の預かり資産(Total Value Locked)は、イーサリアムがほぼ100%のシェアを占めていましたが、63.13%(2021年12月13日時点)まで低下しました。

NFT・DeFi革命を支えるイーサリアム、大型アップグレード「イーサリアム2.0」について簡単解説

(出典:Kraken Intelligence「DeFi預かり資産に占めるイーサリアムの割合」)

なぜでしょうか?

そこには、「ブロックチェーンのトリレンマ」問題が深く関わってきます。これは、イーサリアム創設者ヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏が指摘した問題で、「スケーラビリティ」(規模の拡張性。Scalability)と「セキュリティ」、そして「分散性」(Decentralization)の3つすべてを同時に成立させることは難しいことを意味します。

イーサリアムは、分散性とセキュリティでは成功していますが、問題となっているのがスケーラビリティです。スケーラビリティとは、いわば、増え続けるユーザーやデバイスをサポートするブロックチェーンの「容量」を指します。

NFTやDeFi市場の急拡大によって、多くのユーザーがイーサリアムに殺到した結果この「容量」が課題となり、イーサリアムのネットワークの「渋滞」とそれに伴うガス代(手数料)の高騰が発生。それを嫌気した多くの開発者やユーザーが他のブロックチェーンに移るという現象が発生しています。

イーサリアムの代替となるブロックチェーンは、第3世代ブロックチェーンと呼ばれています。ビットコインを第1世代のブロックチェーン、イーサリアムを第2世代のブロックチェーンとすると、先に触れたソラナやアヴァランチ、カルダノは第3世代のブロックチェーンと位置付けられ、主にスケーラビリティ問題の解決に注力しています。

また、第3世代のブロックチェーンは、「インターオペラビリティ」(ブロックチェーン間の接続性。Interoperability)や「持続可能性」(サステナビリティ。Sustainability)も重視しています。とりわけ環境面の持続可能性問題に関して、ほとんどの第3世代は、環境に優しいといわれるPoS(プルーフオブステーク)というコンセンサスアルゴリズムを採用しています。

第3世代のブロックチェーンに関する詳細な解説は、次の機会に譲ります。今回は、イーサリアムも、やられっぱなしではなく、「イーサリアム2.0」(Eth2)と呼ばれる大型アップグレードによってスケーラビリティの問題に対応しようとしていることを紹介します。

「イーサリアム2.0」の目玉その1、「ステーキング」

イーサリアム2.0の目玉となるのが、「ステーキング」と「シャーディング」です。まずは、「ステーキング」を理解する上で必要な知識であるPoWとPoSという2つのコンセンサスアルゴリズムの違いについて解説します。

イーサリアム2.0と現在のイーサリアムの大きな違いの1つに、コンセンサスアルゴリズムと呼ばれる取引承認に関する合意形成の方法が変わります。現在のイーサリアムではPoW(プルーフ・オブ・ワーク)と呼ばれるコンセンサスアルゴリズムを採用しています。イーサリアム2.0では、これがPoS(プルーフ・オブ・ステーク)と呼ばれるコンセンサスアルゴリズムに変更されます。

PoWは、時価総額1位のビットコイン(BTC)も採用しています。ビットコインなどPoWのネットワークに参加するコンピューター(ノードと呼ばれる)は世界中に分散していますが、それらのコンピューター同士が取引記録の検証作業で競争をする仕組みになっています。

具体的には、条件を満たすハッシュ値を探すという演算競争で、最も早く解を得たコンピューターが報酬をもらえる仕組みになっています。この報酬をめぐって、世界中の企業がマイニング施設の建設や機器購入に巨額マネーを投じています。

演算の解をめぐるマイニング競争には大量の電力が必要となります。このためマイニング、ひいてはPoWというコンセンサスアルゴリズムは環境に悪いと見方があります。

対照的にPoSは、環境フレンドリーなコンセンサスアルゴリズムといわれています。イーサリアム財団は、PoWに移行したらPoWで使う電力消費量の99.95%を削減できるという試算を発表しました。

PoSにはマイナーが存在しておらず、代わりにバリデーターと呼ばれる存在が取引記録の検証を行います。一定の仮想通貨をPoSのネットワークで長期保有(ロック)することで、バリデーターがブロックを検証・承認する権限を獲得する仕組みです。これにより、PoWで見られたようなマイナー同士の競争がなくなり、電力の消費量が大幅に削減されることになります。

PoWとPoSは一長一短ですが、現在はESGs重視という世間的な後押しがあります。そうした状況では、何かとPoSに注目が集まるでしょう。イーサリアム2.0は、世間的に強い追い風を受ける中で立ち上げを迎えられるかもしれません。

「イーサリアム2.0」の目玉その2、「シャーディング」

次は、もう1つの目玉であるシャーディングについてです。先述のスケーラビリティ問題への対策として位置付けられます。

シャーディングとは、データベースを分割することで負荷を分散させる技術を指します。イーサリアムの場合、シャーディングによりイーサリアムのネットワークをさらに64の新しいチェーンに分割することで、取引処理能力向上を目指します。分割されたチェーンを「シャード」と呼びます。

シャードのおかげで、イーサリアムのこれまでの取引記録を分散して保管することができます。バリデーターは、全体ではなく、各シャードの取引記録を検証すればよくなります。

イーサリアム財団によると、2022年に、2020年12月に立ち上がったイーサリアム2.0の基盤となるブロックチェーン(ビーコンチェーン)と、現在のイーサリアムのブロックチェーンによるマージ(統合。Merge)、またそれによるPoSへの移行が予定されています。イーサリアム共同創設者ジョセフ・ルービン(Joseph Lubin)氏が設立したコンセンシス(ConsenSys)によると、マージは2022年の第1四半期か第2四半期に実施されます。

シャードチェーンの導入は、イーサリアム財団によりますと、2023年と推定されています。

現在イーサリアムは、開発者のリソースとユーザーベースで他を圧倒しており、DeFiやNFTなど業界最先端技術の受け皿となっています。今後の焦点は、「イーサリアムは『イーサリアムキラー』からどこまでシェアを守れるのか?」でしょう。イーサリアム2.0の進捗が予定通り進んでいることで開発者やユーザーを安心させ、ガス代高騰が長続きしないことを示すことが、イーサリアム成功のカギとなるでしょう。

画像クレジット:Kanchanara on Unsplash

【コラム】インフレヘッジとしてのビットコインの力を再考、金持ちはより金持ちに

七面鳥からガソリン、衣類、1ドルショップに至るまで、人間の活動のほとんどすべての手段がインフレの不安に見舞われてきた。世界的にインフレ率の上昇が購買計画と支出を混乱させている。

このインフレの猛威に直面して、フィアット通貨の減価を懸念する消費者や金融機関はヘッジの代替策を模索してきた。Bitcoin(ビットコイン)をはじめとする多くの暗号資産が現時の対策として選ばれており、こうした状況は、米証券取引委員会が暗号資産を投資可能な資産クラスとして受け入れる気運を後押ししている。

ビットコインは年初来のリターンが高く、金のわずか4%に対して130%を超える上昇率を示し、伝統的なヘッジを凌駕している。さらに、機関採用の増加毎週の流入額に裏付けられるデジタル資産への継続的なアペタイト、メディアでの露出の広がりは、疲弊した投資家の間のビットコイン擁護論を強固にしている。

これらがビッグマネーに基づいてなされているのであれば、賢明な動きであろう。しかし、ビットコインに対抗するヘッジという展望には個人投資家も興味を抱くかもしれない一方で、個人の金融リスクを軽減する上でのビットコインの有効性については、一定の根強い疑問が依然として残存する。

誤算されている期待

インフレヘッジとしてのビットコインの進行中の議論は、この通貨がしばしば市場の動揺と変動に影響されやすいという事実を前に置く必要がある。ビットコインの価値は2017年12月に80%超、2020年3月に50%、さらに2021年5月には53%急落している。

ビットコインが長期的にユーザーリターンを向上し、ボラティリティを低減する能力があるかどうかはまだ証明されていない。金のような伝統的なヘッジは、1970年代の米国の例をとっても、持続的な高インフレ時に購買力を維持するのに効果があることが実証されているが、ビットコインについてはまだその検証がなされていない。こうしたリスクの増大によって、時として通貨に影響を与える急激な短期的変動にリターンがさらされることになる。

ビットコインが有効なヘッジ手段だと判断するのは時期尚早である

ビットコインが限られた供給を意図している事実を踏まえ、伝統的なフィアット通貨と比較して減価から守られていると推定し、それを根拠にしてビットコインの支持を唱える向きも多い。これは理論的には理に適っているのだが、ビットコインの価格は外部の影響を受けやすいことが示されている。ビットコインの「クジラ(大口保有者)」は大量に売買して価格を操作する能力で知られており、ビットコインはマネーサプライルールだけではなく、投機勢力によっても支配され得るのである。

もう1つの重要な考慮事項は、規制である。ビットコインやその他の暗号資産は、依然として規制当局、そして法域間で実に多様性に富む法律に翻弄されている。反競争的な法律や近視眼的な規制によって、基盤となる技術の採用が著しく妨げられ、資産価格がさらに下落する可能性もある。ビットコインを有効なヘッジ手段と判断するのは時期尚早であるといえよう。

富裕層への迎合

この論争の背景と対照をなして、別の顕著な傾向がその勢いを牽引している。ビットコインの人気が高まる中、それは一部の裕福な個人や企業を含む消費者の間で、この通貨の採用と機関化を促進し続けている。

最近の調査によると、英国のファイナンシャルアドバイザーの72%がクライアントに暗号資産投資の要領を授けており、半数近くが暗号資産は無相関資産としてポートフォリオを多様化するために利用できると考えている。

また、技術的に進歩的であることで知られる、億万長者のウォール街の投資家Paul Tudor(ポール・チューダー)氏、Twitter(ツイッター)の元CEOであるJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏、Winklevoss(ウィンクルボス)氏兄弟、Mike Novogratz(マイケル・ノヴォグラッツ)氏など、潤沢な個人からのビットコイン支持も相当数存在する。Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)やMorgan Stanley(モルガン・スタンレー)といった有力企業でさえ、ビットコインに有望な資産としての関心を示している。

この勢いが続けば、ビットコインの不名誉なボラティリティは、より多くの富裕層や機関がこの通貨を保持するようになるにつれて、徐々に消滅していくであろう。皮肉なことに、ネットワーク上の価値のこのような増加は富の集中につながり、上流の排他的な1%の影響の下で、ビットコインが何のために作られたかのアンチテーゼとなる可能性がある。

財政思想の古典的な流派に従えば、このことは実質的に個人投資家をより大きなリスクにさらすことになるであろう。機関による売買は、クジラが行うような市場操作に似ていると考えられる。

中核的なエートスとの逆行

ビットコインの人気の高まりは、間違いなくそれを所有する人々を増やすであろうし、最大の富の保有者たちが(例によって)その大部分を手にすることになると主張することもできるであろう。

ビットコインをはじめとする暗号資産サークルにおける、超富裕層の個人や企業に向かう影響力の注目すべき転換は、ビットコインのホワイトペーパーがピア・ツー・ピアの電子現金システムを説明したときに基盤としていたエートスそのものに逆行する。

暗号資産の基本的な理論的根拠には、パーミッションレスで、任意の機関による検閲や統制に耐性がある必要性が含まれている。

今、前記の1%が暗号資産市場のパイのより大きな部分を得ようとしており、伝統的で影響力の弱い個人投資家ができない方法で、短期的にこれらの資産の価格を押し上げている。

この動きは間違いなく少数の者をより裕福にするであろうが、市場を1%の意のままにしかねないという議論すべき論点が存在しており、ビットコインの意図したビジョンと相反することになるであろう。

編集部注:本稿の執筆者Kay Khemani(ケイ・ケマニ)氏は、Spectre.aiのマネージングディレクター。

画像クレジット:Boris SV / Getty Images

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(文:Kay Khemani、翻訳:Dragonfly)

フェイスブックとInstagramがNFTの作成・販売をサポートするかもしれない

NFTの波に乗る次の企業はMetaかもしれない。Financial Timesの情報筋によると、MetaはFacebookやInstagramでNFTを作成、表示、販売する方法を開発しているという。同社Noviのウォレット技術は「サポート機能」の大部分を担うことになると、ある情報提供者は述べている。Instagramは、NFTを展示する方法をテストしているとされ、Metaはこれらのデジタルコレクションの売買を支援するマーケットプレイスについて議論しているという。

同社はすでにコメントを控えており、情報筋は、この取り組みはまだ初期段階にあり、変更される可能性があるという。しかし、InstagramのリーダーであるAdam Mosseri(アダム・モセリ)氏は2021年12月に、彼のソーシャルネットワークは「積極的にNFTを模索している」と述べている。少なくとも、この技術は同社の頭の中にある。

NFTへの参入は理に適っている。NFTとメタバース(ただNFTを提供するだけではメタバースをつくっているとはいえない)のつながりを悪用する企業もあるが、Metaは、仮想世界の住人がユニークなデジタル商品を販売できるように、そのためのフレームワークを求めているのかもしれない。NFTが一時的なトレンド以上のものであると証明された場合、このMetaの動きはOpenSeaのようなサードパーティープラットフォームが強すぎる支配力を得るのを防ぐのに役立つかもしれない。

編集部注:初出はEngadget。執筆者のJon FingasはEngadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:SOPA Images / Contributor

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(文:Jon Fingas、翻訳:Katsuyuki Yasui)

Web3のパワープレイヤー「アニモカブランズ」大解剖

ここ1年間程度でAnimoca Brands(アニモカブランズ)という名を耳にしたことがないという読者は勉強不足だ。デジタルエンターテインメント、ブロックチェーン、ゲームなどさまざまなコンテンツを提供し、香港に拠点を置く創業8年目、従業員600人の同社は、ますます多くの関係者が次世代のウェブと考える世界で最も活動的な1社となっている。

LAを拠点とするFan Controlled Football League(ファン・コントロールド・フットボール・リーグ)は、ファンがチームに関する決定をリアルタイムで投票するスポーツリーグで、米国時間1月13日、Animocaが共同リードするシリーズAの資金調達で4000万ドル(約45億9000万円)を調達したと発表した。スマートフォンやタブレット向けのゲーム開発からスタートしたAnimocaは、2017年頃にブロックチェーンゲームに進出して以来、150社以上の企業に投資を行っている。

それはまるで運命の出会いのようなもので、Animocaの創業者であるYat Siu(蕭逸)氏にとっては一目惚れともいえるものだった。当時Animocaは、ベンチャースタジオのAxiom Zen(アクシオム・ゼン)とオフィスを共有していたFuel Powered(フュエル・パワード)という会社を買収しようとしていたのだが、その際Axiomが取り組んでいた CryptoKitties (クリプトキティーズ)というブロックチェーンゲームに蕭氏は強く惹かれたのである。Axiomの創業者であるRoham Gharegozlou(ローハム・ガレゴズロウ)に助言をしていたFuel Poweredの共同創業者、Mikhael Naayem(ミカエル・ナイエム)を通してその存在を知ったという。

その直後の2018年初頭、AnimocaはAxiom Zenと1年更新の独占ライセンスおよび販売契約を結び、CryptoKittiesの出版契約を結ぶことになる。これが大反響を呼んだため、ナイエム氏とガレゴズロウ氏はチームを組んでDapper Labs(ダッパー・ラブズ)を設立し、Animocaが初期バッカーとなったのだ。現在Dapper LabsはNBA Top Shot(NBAトップショット)マーケットプレイスでさらに有名になっている。

それ以来、Animocaはすばらしい業績を上げている。パブリッシャーとして、また最近ではブロックチェーン資産やトークンの買い手としても活動しており、その膨らみ続けるポートフォリオには、10月に30億ドル(約3436億8000万円)の評価額で約1億5000万ドル(約171億9000万円)の資金調達を完了した世界的大ヒット作Axie Infinity(アクシー・インフィニティ)の開発元Sky Mavis(スカイメイビス)や、プレイヤーがゲーム内資産を作成して収益化できるゲームで、11月にSoftBank(ソフトバンク)が主導して9300万ドル(約106億6000万円)でシリーズBの資金調達を完了した人気メタバーススタートアップThe Sandbox(ザサンドボックス)などが含まれている(2022年1月初旬時点で、ユーザーがSandboxで購入できる最も小さな土地の価格は1万1000ドル[約126万円]以上だった)。

またAnimocaは、現在133億ドル(約1兆5218億円)もの評価を受けているNFTマーケットプレイスOpenSea(オープンシー)に早くから出資し、2021年ブレイクしたプロジェクトの1つであるBored Ape Yacht Club(ボアード・エイプ・ヨット・クラブ)と協力してBored Apeをテーマにしたゲームを制作するなど、常に活動的な姿勢をアピールしている。

こういったことすべてが積み上げられ、1月初旬に蕭氏と話したところによると、2021年11月下旬の時点ではAnimocaの保有資産は約160億ドル(約1兆8297億円)になっていたという。これはAnimocaがSequoia Capital China(セコイア・キャピタル・チャイナ)も参加した6500万ドル(約74億3000万円)の資金調達ラウンドで22億ドル(約2516億円)と評価されてから間もなくのことである。

興味深いのは、Sequoiaと残りのシンジケートが上場株式を買い上げたことだ。蕭氏の説明によると、Animocaは以前オーストラリア証券取引所で取引されていたのだが「Animocaが暗号を扱っていることが気に入らなかった」ため、2020年3月に上場廃止にされたという。現在同社は非上場公開会社として運営されているため、自社サイトやメーリングリストを通じて株主とコミュニケーションをとることができ、約2500人の株主が他の個人に株式を個人的に売却することができるのだ(誰がそれを所有しているかを知ってさえいれば買うことができる)。

一方、OpenSeaとDapper Labsの株式は同社の資産の一部とみなされており、その価値は今のところ理論上のものとなっている。「貸借対照表科目と同じで、基本的にAnimoca Brandsの資本価値に回っていきます」と蕭氏は話している。

Animocaの道のりに障害がなかったわけではない。米国時間1月10日、スポーツNFTを鋳造するAnimocaの子会社にセキュリティ違反があり、ユーザーは1870万ドル(約21億3700万円)相当のトークンを失い、子会社のトークン価格は92%も暴落してしまった(この華麗な新世界には独自のリスクがついてまわるのだ)。

それでも、現在Animocaのグループ執行会長兼マネージングディレクターである蕭氏は明らかにWeb3の信奉者であり、完全な分散型ビジネスを実現するための実用性を含め、最近よくささやかれている批判をあまり信用していない。

例えばBox(ボックス)のCEOであるAaron Levie(アーロン・レヴィ)氏は最近Twitter(ツイッター)で、コミュニティの意見に依存する分散型組織が常に合意形成の試みに追われていては、どう競争できるのかと疑問を呈している。

このことについて問われると、蕭氏は「全ユーザーが先見の明があるわけではありません。比較するものがあれば、何がベストなのかわかるようになるでしょう」と答えている。

蕭氏によると、現在Animocaは2022年に実行する可能性のある投資やパートナーシップに重点を置いており「ゲームスタジオをブロックチェーン上に移行させ、エンドユーザーに本質的にデジタル財産権を提供する」ためにゲームスタジオの買収を続けていると話している。また投資面では、NFTのようなデジタルプロパティのネットワーク効果を発展させ、成長させることができるインフラに惹かれているとも伝えている。

それがどういうことかというと「融資、DeFi、細分化、プロトコル、そしてレイヤー1(ブロックチェーン)、レイヤー2(ブロックチェーン)」なのである。実際Animocaは、急成長中の企業が成長を続けるために必要な「クロスチェーン」を重要視しているのだ。

「企業がゲーム資産やNFTを立ち上げる際、例えばEthereum(イーサリアム)でも立ち上げて欲しいのですが、同時に(Dapper Labsによって設計されたブロックチェーンの)Flow(フロー)も検討するべきなのです。またSolana(ソラナ)でも開始して欲しいですし、HBAR(ヘデラハッシュグラフ)も検討して欲しいのです。つまり、できるだけ多くのプラットフォームかつできるだけ多くのプロトコルで、資産を展開することを推奨しているのです。それはこの独立性が非常に重要であると私たちは考えているからで、チェーンを国と同じように考えています。もし、ある国でしか製品を発売できないのであれば、その国の文化や可能性に制限されることになるからです」。

オーストリアで中国系として育ち、若干10代でドイツのAtari(アタリ)に就職し、その後同氏が初めて立ち上げたスタートアップを魚油会社に売却した蕭氏との対談は、ここから聞いていただける。Facebook(フェイスブック)のメタバース計画、Jack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏のWeb3に関する考え、中国が境界線を引き直す中で香港のビジネス界がどのように変化しているかなど、さまざまなことを話し合った。

関連記事:イーサリアムよりはるかに高速だと主張するトップ暗号資産投資家たちに人気のブロックチェーンプラットフォーム「Solana」

画像クレジット:South China Morning Post / Getty Images

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(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)

史上最高のQBトム・ブレイディ氏のセレブNFTスタートアップ「Autograph」がトップ暗号資産投資家から193.5億円調達

著名アメフトプレイヤーのTom Brady(トム・ブレイディ)氏が共同創業に参加したNFT代理店のAutograph(オートグラフ)は、特にスターパワーの宝庫だ。同社はこのたび、このプラットフォームによって新世代のセレブリティとそのファンを、暗号資産コレクションの世界に引き込むことができると期待する暗号資産投資家たちから新たな資金を調達した。

スタートアップがクローズしたのはAndreessen Horowitz(a16z、アンドリーセン・ホロウィッツ)とKleiner Perkins (クライナー・パーキンス)が主導した1億7000万ドル(約193億5000万円)のシリーズBだ。ラウンドにはKatie Haun(ケイティ・ホーン)氏の新しいファンドとLightspeed(ライトスピード)のパートナーであるNicole Quinn(ニコル・クイン)氏も参加している。これは、01AとVelvet Sea Ventures(ベルベット・シー・ベンチャー)が共同で主導し、2021年7月にクローズしたシリーズAラウンドに続くものだ。今回の調達により、ホーン氏、a16zのArianna Simpson(アリアナ・シンプソン)氏、Kleiner PerkinsのIlya Fushman(イリヤ・フッシュマン)氏の3名が新たに取締役会に加わった。

彼らは、ブレイディ氏、Apple(アップル)のEddy Cue(エディー・キュー)氏、FTXのSam Bankman-Fried(サム・バンクマン=フライド)氏、The Weekndとして知られるアーティストのAbel Tesfaye(エイベル・テスファイ)氏などの有名人を擁する多彩な取締役会に加わることになる。

Autographは、恐ろしく騒がしいNFTの世界で、個人的な存在感を発揮したいと考えているセレブリティアスリートやエンターテイナーを仲介する代理店のような存在だ。有名人のNFTは、2021年初めに暗号化されたコレクターアイテムが人気を博して以来、さまざまな結果を見せている。ファンに報いるために考え抜かれたプロジェクトとともにこの世界に入ってきた人たちがいる一方で、多くの人に嘲笑されるような金儲けのためのプロジェクトも多数あったのだ。

これまで一般に暗号資産は、目の肥えた有名人が自身の評判(という資産)を失うことなく、世間に影響を与えたり利益を得るのは難しいとされていた。たとえばマット・デイモン氏は、2022年1月、つまらない暗号広告キャンペーンに出演したことで、かなりの嘲笑を浴びることとなった。今週初めには、キム・カーダシアン氏とフロイド・メイウェザー氏が、過去に2人が承認したトークンに対して投資した投資家から訴訟を起こされている。

他のNFTユニコーンであるDapper Labs(ダッパー・ラボ)は、NFL Players Association(NFL選手協会)やNBA Player Association(NBA選手協会)をはじめとする、米国の包括的なスポーツリーグの選手協会とパートナーシップを結んでいるが、これに対してAutographは、個々のアスリートと、彼らがプレーするチームや彼らが所属するリーグの文脈の外で、彼らをとりまく個人的な魅力に焦点を当てているようだ。Autographの初期のパートナーは主にスポーツ界だが、ブレイディ氏、タイガー・ウッズ氏、シモーネ・バイルズ氏、デレク・ジーター氏、大坂なおみ氏、ウサイン・ボルト氏、ウェイン・グレツキー氏、トニー・ホーク氏など、それぞれのスポーツ界で最も有名なアスリートたちが名を連ねている。

Autographの目的は、最高レベルの顧客が、より厳選された環境下で、暗号資産の世界へ関わることができる入口を用意することにあるようだ。

Autographは先の7月にDraftKings(ドラフトキングス)との提携を発表したが、同社はすでに多くのマーケットプレイスと提携してきたという。Autographは主に、Ethereum(イーサリアム)のインフラストラクチャを利用するPolygon(ポリゴン)ブロックチェーン上でNFTを提供してきたが、トランザクションあたりのエネルギー消費量はかなり少ない。これは、ブロックチェーン技術に対する環境批判に晒されることを警戒している有名人にとっては重要な要素だろう。

またスポーツ界以外では、The WeekndやSlam Magazine(スラム・マガジン)、ホラーシリーズのSaw(ソウ)の公式NFTなどを手がけている。

関連記事:NFTコレクターズマーケットプレイスの立ち上げ計画をDraftKingsが発表

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(文:Lucas Matney、翻訳:sako)

英国の暗号資産ブームに影、マーケティングと利用に関する制限を検討

広告によって盛り上がりを見せている英国の暗号資産取引ブームは、大幅な速度制限に向かうようだ。同国の金融監視当局は、暗号資産をカバーするために規制当局の権限を拡大することを政府が現地時間1月18日に確認したのに続き、暗号資産のマーケティングに関する規則を強化し、利用対象に制限を設ける可能性もあると述べた。

近年、暗号資産の広告がロンドン中のビルボードに貼られ、取引ブームを煽っているが、広告基準監視当局から何度か叩かれている

広告規制局は2021年12月、「消費者の経験の浅さを無責任にも利用し、投資のリスクを説明しなかった」として7つの暗号資産広告を禁止し、暗号資産の広告に関する新しいガイダンスを作成することを望んでいると述べた。

しかし、金融監視当局の介入が、英国の暗号資産バブルを大幅に減衰させることになりそうだ。

金融行動監視機構(FCA)は、2021年に発表した「消費者投資戦略」に沿って、ハイリスク投資の「容易さとスピード」についての懸念に対応するため、今回の変更案を発表した

FCAが2022年夏までに明らかにするという新しい暗号資産規則の計画には、 暗号資産のマーケティングと利用に関する制限案が含まれている。

「FCAは、適格な暗号資産を『制限付き一般向け投資』に分類する計画で、消費者は制限付き、富裕層、洗練された投資家に分類される場合のみ、暗号資産の金融プロモーションに対応することができる」と規制当局は書いている。

「このようなプロモーションを行う企業は、明確で公正、かつ誤解を招かないという要件など、FCA規則を遵守しなければならない」と付け加えている。

規制当局は、3月23日を回答期限として、この提案に関するコンサルティングを行っている。

FCAの市場担当エグゼクティブディレクターであるSarah Pritchard(サラ・プリチャード)氏は「あまりにも多くの人々が、理解できない商品に投資させられています。それはリスクが大きすぎます。消費者が安心して投資するためには、明確で公正な情報と適切なリスク警告が必要であり、これは我々の消費者投資戦略の主要目的です」と述べた。

政府は1月18日、誤解を招く広告に対処するため、暗号資産のプロモーションを金融プロモーション法の範疇とするよう立法することを確認し、次のように書いている(あるいは、警告している)。「これは、適格な暗号資産のプロモーションが、流動資産、株式、保険商品などの他の金融プロモーションと同じ高い基準でFCA規則の対象となることを意味します」。

財務大臣のRishi Sunak(リシ・スナック)氏は声明の中で「暗号資産は、人々に取引や投資の新しい方法を提供し、刺激的な新しい機会を提供することができます。しかし、誤解を招く主張で消費者に製品が販売されないことが重要です」と付け加えた。

「消費者の保護を徹底すると同時に、暗号資産市場のイノベーションを支援しています」。

FCAが2021年夏に発表した暗号資産消費者調査によると、(英国人口約5200万人のうち)約230万人が暗号資産を所有しており、これは英国人の4.5%弱に相当する。2020年にFCAは、約190万人の英国人が暗号資産を保有していると発表しており、つまり前年比21%増となっている。

暗号資産を保有する英国人についての他の推定値は、ここ数カ月の暗号資産宣伝によってさらに大きなものとなっている(しかし、暗号資産取引宣伝はそれ自体がしばしば宣伝バブルの内側にある)。

英国では暗号資産取引に関するマーケティングが盛んで、人々の間の認知度は高まっているようだ。FCAは、成人の78%が暗号資産について聞いたことがあると報告しており、これは2019年の42%、2020年の73%から増えている。

しかし、FCAは、認知度の上昇にもかかわらず、暗号資産に対する理解度は低下していることも確認し「一部の暗号資産ユーザーは、自分が何を購入しているのかを十分に理解していない可能性がある」ことを示唆した。本当にそうなのだろうか。

FCAの調査では、暗号資産をギャンブルと考える暗号資産ユーザーは減少し(47%から38%に減少)、主流の投資の代替または補完と考えるユーザーが増え、暗号資産ユーザーの半数がより多く投資するつもりだと回答している。

つまり、無知な英国人が、輝かしい暗号資産のマーケティングに包まれたねずみ講のようなものにお金をつぎ込むのを阻止するために、英国政府と金融規制当局が、そろそろ規制強化に踏み切るときだと判断した理由は理解できなくはない。

他の国も同様の措置を取っている。

ちょうど今週、シンガポールの金融規制当局が暗号資産マーケティングに対する独自の締め付けを発表した(Nikkei Asiaより)。

さらに進んでいる国もある。中国インドでは暗号資産の禁止が計画されている。

自由奔放な取引お祭りはまだ終わっていないが、世界中の規制当局が暗号資産ランドのギャング・パラダイスに徐々に迫っている。

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画像クレジット:Cory Doctorow / Flickr under a CC BY-SA 2.0 license.

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

デジタルファッションブランド「XXXXTH」がNFTタトゥーのAR試着体験をSnapchatで提供開始

デジタルファッションブランド「XXXXTH」がNFTタトゥーのAR試着体験をSnapchatで提供既読が運営するデジタルファッションブランド「XXXXTH」(フォックス)は1月20日、2021年発表したNFTコレクション「ネオ東京 – “人気”に潜む光と闇」の一部アイテムに関して、ARサービスを提供するOnePlanet協力のもと、SnapchatAndroid版iOS版)を利用したAR試着体験の提供開始を発表した。また、同日17時からNFTマーケットプレイス「OpenSea」「Foundation」で対象商品を販売する。

AR対象は、「Defensive attack #02」「狐 GAME BOYS #02」「OtattoO AImi」の3アイテム。Snapchatのアカウントを持っていれば誰でもAR試着を体験できる。

「Defensive attack #02」

「狐 GAME BOYS #02」

「OtattoO AImi」

  • Snapchat URL:AImi
  • 販売場所:Foundationで販売予定。XXXXTH公式Twitterで販売URLを公開予定。ARは素肌での利用となり、服の上からは表示されない
  • 販売期間:2022年1月27日〜28日

XXXXTHは、現実世界と仮想世界(メタバース)を横断する日本発のアパレルブランド。遠くない未来に、2つの世界の境界がなくなり、どちらの世界に存在する自分も本当の自分になる日が来ると考えており、そんな未来を楽しく過ごせるような、デジタルウェアを展開しているという。

また、「東京がメタバース化され、性別・容姿・職業など、あらゆるものを自分の思うがままに設定することができたらどうなるだろう?」という妄想から「ネオ東京 – “人気”に潜む光と闇」コレクションの構想に至ったそうだ。

共通の思い出をNFTとして鋳造する「そこにいた証明」Web3スタートアップが約11.4億円を調達

ブロックチェーンがデジタル史の不変の記録であるならば、我々はそこにどのような歴史を刻みたいのだろうか。予想どおり、これまでの記録のほとんどはトランザクションデータだったが、起業家たちがNFTへの野心を膨らませるにつれ、スタートアップはこうした資産トランザクションを現実世界のイベントや交流と結びつけることを目指している。

POAPは「Proof Of Attendance Protocol(出席証明プロトコル)」の略で、NFTを使ってインターネット上のコミュニティを構築するというアイデアをより深く掘り下げ、よりアクティブなコミュニティを作り、イベントへの出席というような個人の参加に対して見返りを与えるプロトコルだ。POAPは、そのプロトコルを視覚的に表現するために、バッジを中心に構成されている。現実世界の例では、ユーザーがQRコードをスキャンしてNFTの記念品を受け取ると、それによってオンラインコミュニティへの参加が可能になり、将来的にドロップを獲得することができる、といったシナリオが可能だ。

このような機能は、イーサリアムのプロジェクトにも数多く存在している。ブロックチェーンの基本的な機能の一部により、開発者は特定の時点でプロジェクトにリンクしているアクティブなウォレットの「スナップショット」を作成することができる。POAPのエコシステムには、イーサリアムを利用した投票、ラッフルコンテストの仕組み、プライベートチャットの検証技術など、他にも多くのツールが含まれている。

同スタートアップは今週、ArchetypeとSapphire Sportが主導するシードラウンドで1000万ドル(約11億4000万円)の資金を調達したことを発表した。Sound Ventures、The Chernin Group、Advancit Capitalが出資した他、Collab Currency、1KX、Libertus Capital、Red Beard Ventures、6th Man Ventures、Delphi Digital、A Capitalなど、多くのクリプトネイティブファンドがこのラウンドに参加した。

POAPは2021年に、NFTコミュニティの成長が加速し、同社のプラットフォームを利用しようとする人々の数が増えたことで、圧倒的な数のスパムが流入し、プラットフォームが停止してしまうという課題に直面した。同社はブログ記事の中で、新たな資金をアプリケーションとプラットフォームレイヤーへの投資に充てる予定だと述べている。

画像クレジット:POAP

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(文:Lucas Matney、翻訳:Aya Nakazato)

レコチョクがWeb3時代を見据えブロックチェーン活用ビジネスに参入、NFT発行・販売や音楽業界にDAO提案

レコチョクがWeb3時代を見据えブロックチェーン活用ビジネスに参入、NFT発行・販売や音楽業界にDAO提案

有料音楽配信サイトなどを手がけるレコチョクは1月18日、Web3時代を見据え、NFTの発行から販売、またチケット・ERC-20トークンや音楽業界へのDAOの提案など様々なブロックチェーンを活用したソリューション事業に本格参入すると発表した。

取り組みの第1弾として、音楽業界向けワンストップECソリューション「murket」(ミューケット)にNFTアイテムの販売機能を追加。同機能を使い、1月19日17時よりソロシンガー「CAIKI」(カイキ)が100個限定でNFTを期間限定で販売する(「CAIKI ONLINE STORE」参照)。

レコチョクは、Web3時代を見据え、エンタテインメント分野における次代に向けたサービスの企画・開発を推進すべく、国内外の情報収集や研究開発を展開してきたという。

特にNFTは、その特性から音楽やアートなどエンタテインメント分野での新たなサービスの提供が実現できると考え、2021年7月より「Web3.0プロジェクト」を開始。ブロックチェーン技術を活用したNFT、ERC-20トークンなどを用いた新たな音楽体験サービスの提案、DAO、仮想空間(メタバース)でのサービス提供へ向けた開発に取り組んできた。

また、特別なツールや技術知識がなくても手軽にNFTが販売できるようにサービスを設計。ウォレット作成不要、暗号資産購入も不要で、法定通貨のみで決済を可能とした(イーサリアムのサイドチェーンにあたるPolygonを採用)。今春にはNFTの2次流通対応も予定している。

レコチョクは、今後もアーティストやファンの多様な需要に対して、あらゆるデジタルコンテンツ配信への対応や著作権管理を活かしたシステムを提供するとともに、NFTをはじめ新たなファンエンゲージメント向上に向けたビジネスを展開することで、音楽市場におけるさらなる成長を多面的に支援するとしている。

Gaudiyと大日本印刷、ブロックチェーンを活用したコンテンツビジネス・次世代のファンサービス構築を目指し業務提携

Gaudiyと大日本印刷、ブロックチェーンを活用したコンテンツビジネス・次世代のファンサービス構築を目指し業務提携

ブロックチェーン技術を活用したファンエコノミー事業を展開するGaudiy(ガウディ)は1月18日、アニメ、マンガ、ゲームなどの新しい知的財産を活かしたビジネス創出を目指して、大日本印刷(DNP)と業務提携することを発表した。ファンエコノミーの構築を進めるGaudiyと、リアルとバーチャルの「ハイブリッドな強み」を持つDNPの提携で、新しいコンテンツサービス創出のための共同研究を推進するとのことだ。

Gaudiyは、インターネットやメタバースなどの仮想空間にファンエコノミー(ファンによる応援や創作で生まれる価値を適正に評価し還元する経済圏)の構築を推進するスタートアップ。非代替性トークン(NFT)はじめブロックチェーン関連技術を活用したデジタルコンテンツの適正な取り引き環境を整備し、日本製コンテンツによる世界規模のビジネスを展開することを目指している。

エンターテイメント産業の課題解決に向けて、大手コンテンツホルダーとも協業し、漫画・アニメ・ゲーム・スポーツ・音楽などの領域で、コンテンツとファンを直接つなぐコミュニティサービスを展開している。

一方DNPは、「多彩な表現技術や、高度なセキュリティー環境」で膨大な情報を安全に処理するノウハウを持ち、多様なパートナーとの連携による「リアルとバーチャルの融合」の一環として、新しい体験価値を創出するXR(Extended Reality)コミュニケーション事業を展開。アニメ、マンガ、ゲームなどのコンテンツと、ファンや企業とをつなぐ新しいコミュニケーションモデルの創出に取り組んでいる。

両社は、今回の業務提携を通じてそれぞれの技術やノウハウを掛け合わせ、メタバースをはじめとする新たな領域での価値創出および「未来のファンサービス」を創出するという。

この業務提携による取り組みの第1段として両社は、2022年1月21日から「東京アニメセンター in DNP PLAZA SHIBUYA」で開催される「約束のネバーランド POP UP SHOP in 東京アニメセンター」と連動し、ファンコミュニティー向けデジタルコンテンツを提供する実証実験を行う。

バンクシーの作品を燃やしたBurnt FinanceがDeFi志向のNFTオークションサービスを開始

Burnt Finance(バーント・ファイナンス)は、実物のBanksy(バンクシー)の作品を燃やしてNFT(非代替性トークン)を作成し、それを「通常の」オープンなアート市場価格の2倍に相当する40万ドル(約4600万円)で販売するというスタントをやってのけた暗号資産スタートアップだ。

NFTのオークションはもっと改善できるという考えに基づき、同社は2021年、そのSolana(ソラナ)ブロックチェーン上に構築された分散型オークションプロトコルのために、300万ドル(約3億5000万円)の資金を調達した。このラウンドは、Multicoin(マルチコイン)とAlameda Research(アラメダ・リサーチ)が主導し、マルチチェーンネットワーク「Injective Protocol(インジェクティブ・プロトコル)」の中核的貢献者であるInjective Labs(インジェクティブ・ラボ)がインキュベートした。

現在はより本格的になっている。

Burnt Financeは今回、ブロックチェーンゲームや伝統的なゲームなどの幅広いポートフォリオを開発・販売しているAnimoca Brands(アニモカ・ブランズ)の主導でシリーズAラウンドを実施し、800万ドル(約9億2000万円)を調達した。

このラウンドには他にも、Multicoin Capital(マルチコイン・キャピタル)、Alameda Research、DeFiance(デファイアンス)、Valor Capital Group(ヴァロー・キャピタル・グループ)、Figment(フィグメント)、Spartan Capital(スパルタン・キャピタル)、Tribe Capital(トライブ・キャピタル)、Play Ventures(プレイ・ベンチャーズ)、HashKey(ハッシュキー)、Mechanism Capital(メカニズム・キャピタル)、DeFi Alliance(デファイ・アライアンス)、Terra(テラ)などが参加した。

これらの投資家の中でも、2017年からブロックチェーン分野に投資しているMulticoinは、おそらく最もよく知られている企業の1つだろう。同社はSolanaやNEAR(ニア)、そしてSignal(シグナル)のP2P決済に使われているMobileCoin(モバイルコイン)など、いくつかの重要なプロジェクトに投資してきた。

Burnt Financeは今回、独自のNFTマーケットプレイスを英語とオランダ語で立ち上げ、Buy Now(すぐ買う)オークションを提供し、NFTレンディング、ステーキングインセンティブをともなう流動性マイニング、細分化、GameFi(ゲームファイ)などのDeFi(分散型金融)機能を統合することで、NFTのハブとなることを目指している。

これにより、NFTへのパーミッションレス(自由参加型)なアクセスが可能となり、低い手数料と高速性を実現できると同社は主張しており、すでに「16万人のユーザー」が順番待ちリストに名前を連ねているという。

Burnt Financeによると、同社の「Spark(スパーク)」テストネットでは、7日間で1億ドル以上の取引量を処理したという。

同社では、Terraやその他のEVM互換のレイヤー1プロトコルを含む追加のブロックチェーンに拡大することも計画している。

Animoca Brandsの共同設立者であるYat Siu(ヤット・シウ)氏は、次のようにコメントしている。「パーミッションレスのエコシステムで資産を鋳造・取引することは、オープンなメタバースの経済的基盤にとって非常に重要です」。

DappRadar(ダップレーダー)によると、NFTの世界市場は2021年に約220億ドル(約2兆5000億円)に達したという。伝統的なオークションハウスであるChristie’s(クリスティーズ)やSotheby’s(サザビーズ)もNFTの分野に進出している。

Burnt Financeは開かれたドアを押している。NFTの売上は、2021年12月だけで4億ドル(約460億円)に達した

競合他社には、もちろんレベルはさまざまだが、OpenSea(オープンシー)、SuperRare(スーパーレア)、Rarible(ラリブル)、NiftyGateway(ニフティゲートウェイ)などがある。しかしながら、Burntは明らかにまだ非常に初期の段階ではあるものの、Solanaを使い、DeFiの領域を狙うことで、より大きなプレイヤーたちを追い越そうとしている。

画像クレジット:Burnt Banksy

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【コラム】ソーシャルメディアの人々をWeb3へと誘う5つのNFTトレンド

Twitter(ツイッター)に対する批判が高まる中、大半のテック創業者とVCたちは、Web 2.0かWeb3のどちらかを支持している。

Web3の支持者は、Web3がインターネットの未来であり、今後数年でブロックチェーンベースの製品がWeb 2.0に完全に取って代わると信じている。

Web 2.0の断固たる支持者は、Web3は利益を出すことを目論むさまざまな暗号技術によって祭り上げられた誇大広告に過ぎず、ブロックチェーン技術の応用範囲は基本的に限られていると主張している。

筆者は、Web 2.0アプリを10年以上に渡って構築し、やはり10年以上に渡って暗号技術に投資してきた創業者として、最もおもしろいビジネスチャンスは、Web 2.0とWeb3の交差部分に存在すると思っている。

ブロックチェーンの消費者市場における真の潜在性は、Web 2.0とWeb3の併合によって解き放たれる。

エネルギー、人材、リソースがWeb3に注入され、インターネット初期が思い起こされるのはワクワクする。インターネット初期の状況を思い出すくらいシリコンバレーに長くいる人たちにとって、現在の状況と当時の状況の類似性は否定できない。

しかし今回は、成長率が非常に高い。Web3の専門家はこの事実をWeb3がインターネットの未来であり、Web 2.0はまもなく消滅するという議論を支える事実として指摘している。

しかし、インターネットの初期と現在とでは、1つ重要な違いがある。Web 1.0より前は、インターネットは存在していなかった。我々はみんなアナログの生活を送っていた。普及当初のインターネットは比較的退屈な存在と戦っていた。フリーポルノ、チャットルーム、ゲーム、音楽、eメール、動画などだ。指先を動かすだけで世界の情報が手に入るようになった。土曜日にわざわざ大ヒット映画を観に行くこともなくなった。決してフェアな戦いではなかった。

自分では絶対に履かないとわかっているスニーカーを2000ドル(約23万円)で買ってしまった。このスニーカーはNFTとしてのみ存在するため、履けないのだ。狂気の沙汰かもしれないが、昔親指が痛くなるヒールにお金を使っていたのと大差ないような気がする。

Web3は新しい段階に入ってきている。現代人は強く惹き付けられるデジタル製品に夢中になっている。平均的な消費者がTikTok(ティックトック)をスクロールするのを止めないのは、分散化の時代の先触れとなりたいからでも、クリエーターエコノミーを支援したいからでも、インフレーションを抑制したいと考えているからでもない。彼らはそんなことはどうでもよいのだ。それに彼らは、BAYC(Bored Ape Yacht Club)CryptoPunksを買うお金もない。

平均的なインターネットユーザーが気にしているのは、ソーシャルメディアで自分がどのように見えているかである。これが橋渡し役となる。そして、この橋渡し役の鍵となるのがNFTである。

ソーシャルメディアのオーディエンスをまとめてWeb3に移行させる5つのNFTトレンドを以下に示す。

NFTの検証

懐疑的な人は、NFTは右クリックするだけで基盤となるファイルを保存できるため、間抜けだという。しかし、これは一時的な問題だ。近い将来、すべての大手ソーシャルプラットフォームはNFT検証を実装するだろう。これにより、ウォレットを接続して、自分のプロファイルの検証済NFTを表示できるようになる。と同時に、指紋テクノロジーによって、各プラットフォームは、盗まれたファイルを容易に検出し、削除できるようになる。

TikTokユーザーが自分の投稿で一意の検証済NFTを表示して使用できるようになると、ゲームは完全に様変わりすることになる。というのは、NFTを購入して配信することのソーシャル的な価値が急激に向上するからだ。

サイドチェーン

Polygon(ポリゴン)などのサイドチェーンが普及してくると、NFTの価格は下がってくる。輸送費がかからないため、開発者はNFTにより高い対話性と構成可能性を組み込むことができ、その結果、本質的にNFTのソーシャル性を高めることができる。

ポケモンGOをブロックチェーン上で運用して、各ポケモンが交換したり売ったりできるNFTになっている状況を想像してみて欲しい。獲得した各ポケモンは独自の特徴を備えており、さまざまな場所で課題をクリアすることでポケモンを独自に進化させることができる。ポケモンのレベルが向上すると、そのパワーがオンチェーンでアップデートされる。ゲームを進めていくと、暗号化トークンを獲得できる。このトークンはゲームの外の世界でも価値を持っている。

音楽

2021年のNFTブームでは主に視覚的なアートが中心だったが、次の段階では、音楽が対象になる。音楽NFTは最終的にはアートよりもずっと大規模なものになると思われる。収集するものが物理的なアートであれNFTであれ、コレクターの行為を促す強い欲求は同じだ。つまり、自身の芸術的センスを相手に表現したいという欲求、個人グループを問わず自身のアイデンティティを表現したいという欲求、そして場合によっては利益を上げたいという欲求だ。

初期のNFTブームには少なからず投機的な動機があったものの、自己表現とアイデンティティを取り巻く衝動こそがアート収集を促すより基本的な原動力であると思う。そして、人が自身の特徴やアイデンティティを表現する方法として最も普及している方法の1つとして音楽がある。

TikTokミュージック動画を始めて以来、ミュージックトラックはTikTok上で共有される動画の主要コンポーネントになっている。だが、現在使用できるミュージックはごく一般的なものだ。みんな同じ曲を使うことしかできない。

お気に入りのアーティストが60秒の音楽トラックをNFTとして数量限定でリリースするようになったらどうだろう。あなたはその1つを購入して、クールなTikTokを作る。これが口コミでまたたく間に広がる。数百万人の人たちが突如としてその曲を使って独自のTikTokを作りたいと考えるようになる。しかし、使える数は100コピーだけ。あなたには毎日、その曲を購入したいというオファーがくる。販売するか手元に置いておくかはあなた次第。

ファッション

Web 2.0時代幕開けの頃、筆者は20代だったが、自分の収入をすべてファッションに使っていたものだ。おしゃれなジーンズ、かかとの高いヒール、サングラス、ハンドバッグ。良いものを身に付けたいという欲求は飽くことを知らなかった。

しかし、この10年でソーシャルな活動の大半がオンラインにシフトし、筆者のファッション支出も減少した。最近本当に欲しいものといえば、エクセサイズ関連商品を除けば、カラフルなZoomのトップくらいだ。おしゃれな洋服を購入する楽しみはすっかり薄れてしまった。

ところが先日、筆者は自分でも驚くようなことをしてしまった。自分では絶対に履かないとわかっているスニーカーを2000ドルで買ってしまったのだ。このスニーカーはNFTとしてのみ存在するため、履けないのだ。暗号資産の泥沼にはまり込んだことない人に、このような買い物をする理由を説明するのは難しいが、ほとんど狂気の沙汰であることは自分でもわかっている。だけど、昔親指が痛くなるヒールにお金を使っていたのと大差ないとは思うのだが。

ソーシャルメディアのオーディエンスがデジタル版の自己を着飾るために使うデジタル製品に大金を使う時代がやってきたようだ。既存の代表的なNFTといえば大半がゲームやアバター関連だが、大量のオーディエンスに変革をもたらす魅力的な使用例としてARフィルターがある。

Kim Kardashian(キム・カーダシアン)がカスタムのARフィルターをリリースしたらどうだろう。フェイスリフト、リップフィルター、メークアップ、ヘアスタイル、衣服、宝石などだ。どれもキム独自のものだ。これらを購入すれば、あなただけがそのフィルターで自分のTikTok動画を飾ることができる。飽きたら転売すればよい。キム、あなたのホワイトリストに私を追加してくれる?

ダイナミックなアバター

はいはい、わかってますよ。プロフィール画像を気味の悪い類人猿に変えるなんて何を考えているのかわからない、ですよね。実は私もBored Ape(ボアード・エイプ)のデジタルアートを持っている。ただし、自分のプロフィール画像に使う気にはならならず、代わりにWorld of Women(ワールドオブウーマン)の画像を使っている。どうして仕事用の顔写真の代わりに自分になんとなく似ているアルゴリズムで生成された漫画の画像を使うのかって?楽しいからだ。それに写真ではなかなか表現できない私の性格の一面を表すことができる。

ただ、私のプロフィール画像はちょっと古くさい感じになってしまった。少し動く画像だったらよかったのに。

ダイナミックさ、パーソナライゼーション、動きがNFTアバターにも取り入れられるようになってきた。セルフィーを撮ると、AIが理想のあなたに近いユニークなカスタムの3Dアバターを生成してくれる。Bitmojiに似ているが、もっと良い。人物の表情やポーズ、衣服、アクセサリーを更新することもできるし、人物を踊らせることもできる。キーボードを打つだけで自分の声でしゃべらせることもできる。これを使えば、自分の印象をうまく伝えているという実感が持てる魅力的なTikTokの投稿を簡単に作れるだろう。演技力や撮影のスキルを磨くための時間は最小限で済み、その分、自分の伝えたいメッセージの作成に時間を費やすことができる。

ダイナミックなアバターはソーシャルメディア上での自己表現を民主化する機会になるだろう。その結果、より多くのクリエーターたちが自身を表現できるようになるだろう。

Facebook(フェイスブック)が登場した当初は、ばかげていると思ったが、楽しかった。数日おきにログオンすると、親友の誕生日を知らせてくれたりするし、友人の派手なプロフィール画像につっこみを入れたりしていたものだ。その後、フィード、モバイル写真とアルゴリズム、インタグラムモデル、ラテ、完全にフィルターされた生活がやってくる。その過程で、楽しさは薄れソーシャル奴隷のようになってしまう。ほとんど知らない人たちの気分の悪くなる記事をスクロールして読んでは、お返しとばかりに醜悪な投稿をする。こんなはずじゃなかったのに。

Zuckerberg(ザッカーバーグ)氏がMeta(メタ)についてのビジョンを語ったとき、みんな軽蔑の目で見ている感じだった。「ソーシャルメディアで私達の生活を台無しにした上に、今度は残された最後の物理的なつながりまで消滅させて、Matrix(マトリックス)に出てくる植物人間のようにしてしまうつもりか」と誰もが叫びたい気持ちだった。

とはいえ、賛否両論はあると思うが、私達はすでにメタバースの世界へと歩みを進めており、それは止められない。生活のバーチャル化は進む一方だ。Web3では、バーチャル世界での豊かな経験が実現される。これが空虚感の少ない、少しは人間らしいものであってくれることを願うばかりだ。

NFTおよびWeb3がもたらすあらゆるものによって、人との交流が昔のように楽しいものになるような仮想現実が創造されることを楽しみにしたいと思う。

編集部注:本稿の執筆者Prerna Gupta(プレーナ・グプタ)氏は、HookedやSmuleといったモバイルエンターテイメントアプリを立ち上げ、10億人以上の人々にリーチしてきた。現在、NFT領域でステルスプロジェクトに取り組んでいる。

画像クレジット:Iryna+ mago / Getty Images

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(文:Prerna Gupta、翻訳:Dragonfly)

【コラム】ソーシャルメディアの人々をWeb3へと誘う5つのNFTトレンド

Twitter(ツイッター)に対する批判が高まる中、大半のテック創業者とVCたちは、Web 2.0かWeb3のどちらかを支持している。

Web3の支持者は、Web3がインターネットの未来であり、今後数年でブロックチェーンベースの製品がWeb 2.0に完全に取って代わると信じている。

Web 2.0の断固たる支持者は、Web3は利益を出すことを目論むさまざまな暗号技術によって祭り上げられた誇大広告に過ぎず、ブロックチェーン技術の応用範囲は基本的に限られていると主張している。

筆者は、Web 2.0アプリを10年以上に渡って構築し、やはり10年以上に渡って暗号技術に投資してきた創業者として、最もおもしろいビジネスチャンスは、Web 2.0とWeb3の交差部分に存在すると思っている。

ブロックチェーンの消費者市場における真の潜在性は、Web 2.0とWeb3の併合によって解き放たれる。

エネルギー、人材、リソースがWeb3に注入され、インターネット初期が思い起こされるのはワクワクする。インターネット初期の状況を思い出すくらいシリコンバレーに長くいる人たちにとって、現在の状況と当時の状況の類似性は否定できない。

しかし今回は、成長率が非常に高い。Web3の専門家はこの事実をWeb3がインターネットの未来であり、Web 2.0はまもなく消滅するという議論を支える事実として指摘している。

しかし、インターネットの初期と現在とでは、1つ重要な違いがある。Web 1.0より前は、インターネットは存在していなかった。我々はみんなアナログの生活を送っていた。普及当初のインターネットは比較的退屈な存在と戦っていた。フリーポルノ、チャットルーム、ゲーム、音楽、eメール、動画などだ。指先を動かすだけで世界の情報が手に入るようになった。土曜日にわざわざ大ヒット映画を観に行くこともなくなった。決してフェアな戦いではなかった。

自分では絶対に履かないとわかっているスニーカーを2000ドル(約23万円)で買ってしまった。このスニーカーはNFTとしてのみ存在するため、履けないのだ。狂気の沙汰かもしれないが、昔親指が痛くなるヒールにお金を使っていたのと大差ないような気がする。

Web3は新しい段階に入ってきている。現代人は強く惹き付けられるデジタル製品に夢中になっている。平均的な消費者がTikTok(ティックトック)をスクロールするのを止めないのは、分散化の時代の先触れとなりたいからでも、クリエーターエコノミーを支援したいからでも、インフレーションを抑制したいと考えているからでもない。彼らはそんなことはどうでもよいのだ。それに彼らは、BAYC(Bored Ape Yacht Club)CryptoPunksを買うお金もない。

平均的なインターネットユーザーが気にしているのは、ソーシャルメディアで自分がどのように見えているかである。これが橋渡し役となる。そして、この橋渡し役の鍵となるのがNFTである。

ソーシャルメディアのオーディエンスをまとめてWeb3に移行させる5つのNFTトレンドを以下に示す。

NFTの検証

懐疑的な人は、NFTは右クリックするだけで基盤となるファイルを保存できるため、間抜けだという。しかし、これは一時的な問題だ。近い将来、すべての大手ソーシャルプラットフォームはNFT検証を実装するだろう。これにより、ウォレットを接続して、自分のプロファイルの検証済NFTを表示できるようになる。と同時に、指紋テクノロジーによって、各プラットフォームは、盗まれたファイルを容易に検出し、削除できるようになる。

TikTokユーザーが自分の投稿で一意の検証済NFTを表示して使用できるようになると、ゲームは完全に様変わりすることになる。というのは、NFTを購入して配信することのソーシャル的な価値が急激に向上するからだ。

サイドチェーン

Polygon(ポリゴン)などのサイドチェーンが普及してくると、NFTの価格は下がってくる。輸送費がかからないため、開発者はNFTにより高い対話性と構成可能性を組み込むことができ、その結果、本質的にNFTのソーシャル性を高めることができる。

ポケモンGOをブロックチェーン上で運用して、各ポケモンが交換したり売ったりできるNFTになっている状況を想像してみて欲しい。獲得した各ポケモンは独自の特徴を備えており、さまざまな場所で課題をクリアすることでポケモンを独自に進化させることができる。ポケモンのレベルが向上すると、そのパワーがオンチェーンでアップデートされる。ゲームを進めていくと、暗号化トークンを獲得できる。このトークンはゲームの外の世界でも価値を持っている。

音楽

2021年のNFTブームでは主に視覚的なアートが中心だったが、次の段階では、音楽が対象になる。音楽NFTは最終的にはアートよりもずっと大規模なものになると思われる。収集するものが物理的なアートであれNFTであれ、コレクターの行為を促す強い欲求は同じだ。つまり、自身の芸術的センスを相手に表現したいという欲求、個人グループを問わず自身のアイデンティティを表現したいという欲求、そして場合によっては利益を上げたいという欲求だ。

初期のNFTブームには少なからず投機的な動機があったものの、自己表現とアイデンティティを取り巻く衝動こそがアート収集を促すより基本的な原動力であると思う。そして、人が自身の特徴やアイデンティティを表現する方法として最も普及している方法の1つとして音楽がある。

TikTokミュージック動画を始めて以来、ミュージックトラックはTikTok上で共有される動画の主要コンポーネントになっている。だが、現在使用できるミュージックはごく一般的なものだ。みんな同じ曲を使うことしかできない。

お気に入りのアーティストが60秒の音楽トラックをNFTとして数量限定でリリースするようになったらどうだろう。あなたはその1つを購入して、クールなTikTokを作る。これが口コミでまたたく間に広がる。数百万人の人たちが突如としてその曲を使って独自のTikTokを作りたいと考えるようになる。しかし、使える数は100コピーだけ。あなたには毎日、その曲を購入したいというオファーがくる。販売するか手元に置いておくかはあなた次第。

ファッション

Web 2.0時代幕開けの頃、筆者は20代だったが、自分の収入をすべてファッションに使っていたものだ。おしゃれなジーンズ、かかとの高いヒール、サングラス、ハンドバッグ。良いものを身に付けたいという欲求は飽くことを知らなかった。

しかし、この10年でソーシャルな活動の大半がオンラインにシフトし、筆者のファッション支出も減少した。最近本当に欲しいものといえば、エクセサイズ関連商品を除けば、カラフルなZoomのトップくらいだ。おしゃれな洋服を購入する楽しみはすっかり薄れてしまった。

ところが先日、筆者は自分でも驚くようなことをしてしまった。自分では絶対に履かないとわかっているスニーカーを2000ドルで買ってしまったのだ。このスニーカーはNFTとしてのみ存在するため、履けないのだ。暗号資産の泥沼にはまり込んだことない人に、このような買い物をする理由を説明するのは難しいが、ほとんど狂気の沙汰であることは自分でもわかっている。だけど、昔親指が痛くなるヒールにお金を使っていたのと大差ないとは思うのだが。

ソーシャルメディアのオーディエンスがデジタル版の自己を着飾るために使うデジタル製品に大金を使う時代がやってきたようだ。既存の代表的なNFTといえば大半がゲームやアバター関連だが、大量のオーディエンスに変革をもたらす魅力的な使用例としてARフィルターがある。

Kim Kardashian(キム・カーダシアン)がカスタムのARフィルターをリリースしたらどうだろう。フェイスリフト、リップフィルター、メークアップ、ヘアスタイル、衣服、宝石などだ。どれもキム独自のものだ。これらを購入すれば、あなただけがそのフィルターで自分のTikTok動画を飾ることができる。飽きたら転売すればよい。キム、あなたのホワイトリストに私を追加してくれる?

ダイナミックなアバター

はいはい、わかってますよ。プロフィール画像を気味の悪い類人猿に変えるなんて何を考えているのかわからない、ですよね。実は私もBored Ape(ボアード・エイプ)のデジタルアートを持っている。ただし、自分のプロフィール画像に使う気にはならならず、代わりにWorld of Women(ワールドオブウーマン)の画像を使っている。どうして仕事用の顔写真の代わりに自分になんとなく似ているアルゴリズムで生成された漫画の画像を使うのかって?楽しいからだ。それに写真ではなかなか表現できない私の性格の一面を表すことができる。

ただ、私のプロフィール画像はちょっと古くさい感じになってしまった。少し動く画像だったらよかったのに。

ダイナミックさ、パーソナライゼーション、動きがNFTアバターにも取り入れられるようになってきた。セルフィーを撮ると、AIが理想のあなたに近いユニークなカスタムの3Dアバターを生成してくれる。Bitmojiに似ているが、もっと良い。人物の表情やポーズ、衣服、アクセサリーを更新することもできるし、人物を踊らせることもできる。キーボードを打つだけで自分の声でしゃべらせることもできる。これを使えば、自分の印象をうまく伝えているという実感が持てる魅力的なTikTokの投稿を簡単に作れるだろう。演技力や撮影のスキルを磨くための時間は最小限で済み、その分、自分の伝えたいメッセージの作成に時間を費やすことができる。

ダイナミックなアバターはソーシャルメディア上での自己表現を民主化する機会になるだろう。その結果、より多くのクリエーターたちが自身を表現できるようになるだろう。

Facebook(フェイスブック)が登場した当初は、ばかげていると思ったが、楽しかった。数日おきにログオンすると、親友の誕生日を知らせてくれたりするし、友人の派手なプロフィール画像につっこみを入れたりしていたものだ。その後、フィード、モバイル写真とアルゴリズム、インタグラムモデル、ラテ、完全にフィルターされた生活がやってくる。その過程で、楽しさは薄れソーシャル奴隷のようになってしまう。ほとんど知らない人たちの気分の悪くなる記事をスクロールして読んでは、お返しとばかりに醜悪な投稿をする。こんなはずじゃなかったのに。

Zuckerberg(ザッカーバーグ)氏がMeta(メタ)についてのビジョンを語ったとき、みんな軽蔑の目で見ている感じだった。「ソーシャルメディアで私達の生活を台無しにした上に、今度は残された最後の物理的なつながりまで消滅させて、Matrix(マトリックス)に出てくる植物人間のようにしてしまうつもりか」と誰もが叫びたい気持ちだった。

とはいえ、賛否両論はあると思うが、私達はすでにメタバースの世界へと歩みを進めており、それは止められない。生活のバーチャル化は進む一方だ。Web3では、バーチャル世界での豊かな経験が実現される。これが空虚感の少ない、少しは人間らしいものであってくれることを願うばかりだ。

NFTおよびWeb3がもたらすあらゆるものによって、人との交流が昔のように楽しいものになるような仮想現実が創造されることを楽しみにしたいと思う。

編集部注:本稿の執筆者Prerna Gupta(プレーナ・グプタ)氏は、HookedやSmuleといったモバイルエンターテイメントアプリを立ち上げ、10億人以上の人々にリーチしてきた。現在、NFT領域でステルスプロジェクトに取り組んでいる。

画像クレジット:Iryna+ mago / Getty Images

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(文:Prerna Gupta、翻訳:Dragonfly)

「暗号資産の未来」への投資競争には確実に金がかかる

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ!

先週もなんとか乗り切れた。電話やTwitter(ツイッター)ではみんな疲れた姿を見せていたが、なんとかなったようだ。なんとか平日を乗り切って、週末にしばし休息は得られたろうか。そう、今日は暗号資産の話だ。楽しもう。

私は、Coinbase(コインベース)がより大きなブロックチェーン市場の他の企業に資本を投入するペースに感銘を受けている。米国の上場企業は比較的少額(売上と比べての場合だが)を支払うことで、スタートアップの所有権と情報アクセス権の両方を買うことができ、何が起きているかの早期警告データを得ることができるので、これは賢明な動きだ。Coinbaseが、暗号資産市場における明らかな既存大手であり、ある意味門番のようなものであることを考えると、その投資は理に適っている。

しかし、他にもあちらでも投資、こちらでも投資が続いている。今回発表されたFTXファンドは、かなり速いペースで取引されているにも関わらず、これまでCoinbaseが行ってきた取引よりもさらに積極的なものになっているようだ。

FTXの暗号資産ファンドの総額は約20億ドル(約2276億8000万円)で、インタビューによると2022年中に投資されるだろうという。これは、ワイルドな投資ペースだが、おそらくa16z(アンドリーセン・ホロウィッツ)が最近22億ドル(約2504億5000万円)の暗号資産ファンドを立ち上げたことを思い出す人もいるだろう。

いくつか疑問がある。

  1. インターネットに比べてはるかにユーザー数が少ない暗号資産市場に、なぜこれほどまでの資金が必要なのか?
  2. なぜ私たちは、暗号資産に資金を供給するために、これほど多くの決断を下してしているのだろうか?

これらは相互に関連した疑問だ。結局これらは、なぜ暗号資産市場で有用なものを作るのは難しいのか、という私の素朴な疑問に対応している。CoinbaseとFTXは、暗号資産の世界の端に存在し、従来の経済とその未来になりうるものとの間でお金を行き来させている。彼らが投資するのは賢明なことだが、彼らが投資しようとしている金額と、従来のベンチャーキャピタルがブロックチェーンスタートアップに投じている金額とを比較すると、私はやや混乱する。一体資産は何に使われているのか?

2つの主要なブロックチェーンは確立されており、もはや新しいものではない(Ethereum[イーサリアム]は2013年に案出され2015年にローンチされたし、Bitcoin[ビットコイン]のホワイトペーパーは2008年に発表された)。多くのステーブルコインが存在し、多くの安定したプレイヤーがいて、膨大な資金がNFT(非代替性トークン)マーケットプレイスやいくつかの暗号資産ゲームへ流れ込んでいる。その中には、そこそこの利用者ベースを築いているものもある。しかし、スペースに流れ込むお金の量と、利用可能な結果として見えてくるものを比較すると、やや凝縮されすぎているような気がする。

Institutional Investor(インスティテューショナルインベスター)のレポートによると、2021年は総額328億ドル(約3兆7340億円)が「暗号資産やブロックチェーン技術事業」に投資されたという。おそらく、そのお金で作られた多くのものが今にも出てきて、私たちをびっくりさせるのかもしれないが、Bitcoinが誕生して10年以上経った今でも、私はブロックチェーンで動くアプリやサービスを日々使ってはいない。もちろん、研究目的で暗号資産の世界の一部をあれこれこねくりまわしているのなら別だが。

すでに私は認めたくないほど多くの時間をオンラインで過ごしているのだ!おそらく新しいFTXファンドは、単なる投機の手段ではない、大衆向けのブロックチェーン製品を市場にもたらすだろう。何が登場するか待ってみようと思う。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

北朝鮮が2021年にハッキングした暗号資産は約455億円相当(大量破壊兵器にも利用の疑い)

ブロックチェーン分析会社Chainalysisの報告書によると、北朝鮮のハッカーたちは2021年、暗号資産プラットフォームに少なくとも7件の攻撃を仕掛け、約4億ドル(約455億円)相当のデジタル資産を盗み取っていたという。

「2020年から2021年にかけ、北朝鮮が関係したハッキングは4件から7件に急増し、抜き取った総額は40%増えた」と報告書は述べている。

これらの攻撃は、主に投資会社や集中型取引所を標的にしていた。

報告書によると、ハッカーたちは、フィッシング詐欺、脆弱性をつくコード、マルウェア、高度なソーシャルエンジニアリングなどの複雑な手法を駆使して、インターネットに接続された標的組織の「ホットウォレット」から資産を抜き出し、北朝鮮が管理するアドレスに移していた。

「北朝鮮はいったん資産を握ると、それを隠ぺいして現金化するための慎重なロンダリング(資金洗浄)プロセスを開始した」と報告書は説明している。

2021年に標的となった資金は、イーサリアムが58%、ビットコインが20%を占め、残りの22%はERC-20トークンやアルトコインからだった。

また同報告書は、国連安保理の報告を引用して、北朝鮮はハッキングにより盗み出した資金を使い大量破壊兵器(WMD)や弾道ミサイル関連の開発計画を進めているとしている。

分析レポートによると「Lazarus Group(ラザラス・グループ)」と呼ばれるハッカー集団による攻撃だった可能性が高いとのこと。同グループは、北朝鮮の主要な情報機関、朝鮮人民軍偵察総局(RGB)に所属するとみられている。Lazarus Groupは、これまでにもランサムウェア「WannaCry(ワナクライ)」を使った攻撃や、Sony Pictures Entertainment (ソニー・ピクチャーズエンタテインメント)へのサイバー攻撃に関わった疑いがもたれている。

北朝鮮が盗んだ資金の65%以上は、ミキサー(何千ものアドレスからデジタル資産をプールしてスクランブルをかけるソフトウェアツール)を使ってロンダリングされたという。

また、北朝鮮は、2017年から2021年までの49件のハッキングで得た、1億7000万ドル(約194億円)相当とみられるロンダリングされていない暗号資産も保有している。

「ハッカーたちがなぜこれらの資金を放置しているのかは不明ですが、事件に対する法執行機関の関心が薄れ、監視されずに現金化できるようになることを期待しているのかもしれません。理由が何であれ、北朝鮮がこれらの資金を保有している期間の長さは興味深い点です。自暴自棄で性急な行動ではなく、慎重な計画であることを示唆しているからです」と報告書は述べている。

画像クレジット:RobertAx / Getty Images

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(文:Kate Park、翻訳:Aya Nakazato)

暗号資産APIプロバイダーのConduitは分散型金融のStripeを目指す

金融機関は暗号資産市場に参入する方法を模索し続けており、分散型金融(DeFi)商品は、金融機関がシェアを獲得するのに役立つ仕組みの1つだ。DeFi商品の投資家は、利子と引き換えに暗号資産を貸し出すことで、資本の利回りを得ることができる。

しかし、DeFi融資は、資産クラスの変動性もあり、従来の融資よりもはるかにリスクが高い。「高利回り」債券が、平均よりリスクの高い企業に賭けることで投資家に多くの現金を補償するように、DeFi融資は、顧客が実質的に銀行にお金を貸すという従来の普通預金よりはるかに高い金利を提供することができる。

Conduit(コンデュイット)は、開発者がDeFi製品へのアクセスを提供するプラットフォームをつくるために使用できるAPIセットを構築している。ConduitのCEOで共同創業者のKirill Gertman(クリル・ガートマン)氏は、2021年11月にCoinbase(コインベース)が買収した暗号資産ウォレットBRDの製品担当副社長として、同氏のチームがユーザー向けの製品を作るために必要なバックエンドツールを提供するベンダーを見つけるという困難を直接経験した。Arrival Bank(アライバルバンク)での勤務と、製品責任者として消費者金融Eco(エコ)での半年間の勤務を経て、ガートマン氏は探したものの見つからなかったバックエンド・ソリューションを提供するためにConduitを設立した。

ビデオ通話をするConduitのチーム(画像クレジット:Conduit)

「フィンテックの側を見ると、それをサポートする巨大なスタックがすでに構築されています。Stripe(ストライプ)があり、カードを発行したければMarqeta(マルケタ)があります。あなたが思いつくどんなユースケースでも、それを提供する準備ができているAPIを誰かが持っています」と、ガートマン氏はインタビューでTechCrunchに語った。

Conduitは、ネオバンクや金融機関が自社の製品をDeFiエコシステムに組み込むためのワンストップショップとなることを目指している。Conduit自体が規制やコンプライアンスに準拠していることからツールを使用する企業のコンプライアンス負担が軽減されるため、より簡単になるとガートマン氏は述べた。

消費者がDeFiの利回りを得るには、まずフィアット通貨をフィアット通貨の価値に固定された暗号資産の一種であるステーブルコインに換える。すると、CompoundやAAVEなどのさまざまな暗号資産プロトコルに投資できるようになる。Conduitは、企業がこれらの利回りにアクセスできるよう、2つのソリューションを提供している。

1つは、ネオバンクが顧客に提供する成長収益口座で、フィアット通貨をDeFiに投資できるようにするものだ。もう1つは、Conduitのコーポレート・トレジャリー・ソリューションで、高利回りのDeFi口座を企業に提供している。

「当社は台帳を作成しています。基本的に(顧客のために)非常にシンプルなバンドルを作成するための多くのことを行いますので、ドルをステーブルコインに変換する方法やレートの計算方法など複雑なことを心配する必要はありません」とガートマン氏は話す。

同氏はConduitの具体的な顧客名を挙げることは断ったが、顧客は特に中南米などの地域におけるネオバンクと小規模な暗号資産取引所という2つのカテゴリーに属していると述べた。最大の顧客は、同社の製品が最初に発売されたカナダとブラジルであり、次は米国と欧州を含む他の市場への拡大を目指していると、ガートマン氏は述べた。

同氏は、DeFi製品の拡大には2種類の利点があると見ている。1つはアクセスだ。DeFiのプロトコルはパーミッションレス(承認なし)なため、どのユーザーもクレジットスコアや本人確認、担保なしで資金の貸し借りを行うことができる。2つ目は、DeFiがユーザーをグローバルにつなぐことだ。これにより、極端な低金利やマイナス金利の国の投資家が高い利回りを得ることができ、また企業がグローバルな流動性プールから資金を引き出すことで有利な金利での借入を容易にすると同氏は付け加えた。

Conduitは、現地に精通したエンジニアリング、セールス、コンプライアンスの専門家を採用することで、2023年中に北米と中南米地域で従業員を3倍に増やす予定だ。現在、同社の従業員はリモート勤務している。また、Conduitがどの国をターゲットとしてきたかは規制が影響していて、米証券取引委員会(SEC)の規制が明確でないためにConduitの米国進出が遅れている、と同氏は付け加えた。

世界展開を推進するため、Portage Venturesがリードし、Diagram Ventures、FinVC、Gemini Frontier Fund、Gradient Ventures、Jump Capitalが参加したシードラウンドで1700万ドル(約19億円)を調達した、とConduitは1月13日に発表した。同ラウンドには、PayPal、Coinbase、Google Payなどの企業を含め、多くのフィンテック企業の幹部も参加した。

Conduitはすべての市場でコンプライアンスを確保するために高い法的費用を負担しており、ガートマン氏は「平均より大きなシードラウンド」を調達する必要があると判断した。

「明らかに、市場の状況は当社を助け、当社はそれを利用しました、私はそれを隠すつもりはありません……たとえ暗号資産の冬かそのようなものがあるとしても、当社は生き残ることができます」とガートマン氏は述べた。

画像クレジット:hocus-focus / Getty Images

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(文:Anita Ramaswamy、翻訳:Nariko Mizoguchi

【コラム】米国で増えている暗号資産市長

Bitcoin(ビットコイン)をはじめとする暗号資産の価格は、2021年に急騰した。パンデミックの時代、この分野では暗号資産で大富豪になったという話もよく聞く。

暗号資産といえば、元々は民間セクターの話である。ビットコインやその他の暗号資産プロジェクトは、非中央集権的で政府の金融政策の影響を受けない変更不能なデジタル通貨を作ることを意図して始まったものだ。

しかし、この市場の価値が2兆ドル(約230兆円)を超えた近年、公的機関も暗号資産に注目するようになった。初期の規制を導入した国、全面的に禁止した国、大規模な導入を行った国など、対応も国によってさまざまである。

自国の不換紙幣を印刷する国家政府と地方自治体とでは、暗号資産に対する見方は大きく異なり、最近では、暗号資産をこの新しい産業が持つ技術的、財政的、経済的発展の可能性を活用する機会と見る都市も増えている。

確かに、市役所でビットコイン、ブロックチェーン、NFT(非代替性トークン)といった言葉を聞くことはあまりない。しかし、マイアミ、タンパ、ニューヨーク、ジャクソン(テネシー州)などの4都市ではこれらの言葉を耳にすることも増えてきた。というのも、市長が自身の給与の一部をビットコインで受け取ることに合意するなど、暗号資産の分野に参入するためのきっかけを示したからだ。

都市のイノベーションに関する多くのストーリーがそうであるように、このストーリーも1人の市長が話題を先導し、他の市長たちに挑戦状を叩きつけることから始まる。今回のケースでは、マイアミ市長のFrancis Suarez(フランシス・スアレス)氏が、次の給料をビットコインで受け取るとツイートしたことに対抗して、次期ニューヨーク市長のEric Adams(エリック・アダムス)氏が複数回の給料をビットコインで受け取ると発言している。

スアレス氏は次のように話す。「教育は、暗号資産にまつわる恐怖や誤解を払拭するための最良の方法であり、アダムス市長と私の発言の根本は教育を狙ったものです。私たちが真っ先に水に飛び込む姿を見れば、おそらく他の人々も自信を持って水に足をつけることができるでしょう」。

1人目の市長は注目すべきで、2人目の市長はその模倣だろう。しかし、3人以上の市長がビットコインの勢いに乗るのであれば、これは明らかにトレンドといえる。

ジャクソンは人口約7万人。Scott Conger(スコット・コンガー)市長は、同市が選出した市長の中では最も若い部類に入るが、この友好的な挑戦に参加し、給与をビットコインで受け取ると発言した。コンガー氏とスアレス氏は、これについてツイッターでやりとりをしている。コンガー氏はジャクソンという小さな都市で、暗号資産分野のイノベーションを起こしてきた。

これに負けじとフロリダ州の別の市長も参入してきた。タンパの Jane Castor(ジェーン・キャスター)市長は、コンガー氏のツイートからわずか数日後、タンパで開催された暗号資産カンファレンスで、給料をビットコインで受け取ることを発表したのだ。最近、新興技術都市のトップに選ばれたタンパは、フロリダ州内の技術系雇用の25%を占め、暗号資産という新興分野と親和性が高い。

コンガー氏は、スアレス氏の行動は大都市だけに当てはまるものではなく、あらゆる規模のコミュニティで通用すると指摘する。彼は、大都市で起きているテクノロジーや暗号資産に関する興味深い出来事を観察し、それがジャクソンのような(小さな)都市にはどのように反映されるかを考え、(優れた市長なら当然だが)ジャクソンの経済発展の可能性に目を向けた。

彼は次のように話す。「マイアミや大都市に限定される必要はありません」「ジャクソンにはそのチャンスがあります。ジャクソンは、テネシー州で家庭にギガビットの光ファイバーを導入した最初の都市です。新しい技術をいち早く取り入れるのは当然でしょう?」。

ジャクソンでは超高速のインターネットサービスが普及しており、ハイテク企業の獲得競争に大きく貢献している。コンガー氏は、この結果としてジャクソンに暗号資産や分散型金融(DeFi)の企業が増えるはずだ、と考える。

「場所は存分にあります」とコンガー氏。小売業界が縮小し、既存の企業が使用する物理的な空間が減る中、彼はチャンスを見出している。「DeFi、暗号、技術系の企業が生まれれば、彼らには事業を行う場所が必要になります」。

この小さなコミュニティの利点を強調し、コンガー氏は次のように付け加える。「人口7万人の都市で十分なのに、なぜ数百万人の都市に行く必要があるのでしょうか」。

経済発展を重視する姿勢は、4人の市長だけでなく、暗号資産の世界を知ることとなった他の地域のリーダーたちも共通していて、彼らはそれぞれの都市で雇用の未来について考えている。マイアミでは、暗号資産分野における市長の取り組みの中核にそれが見て取れる。

スアレス氏は次のように話す。「マイアミは共通のテーマの上に成り立っています。マイアミに来る人たちは、自国の政府に取り残されたり、さらにひどいケースでは迫害されたりすることに嫌気がさし、より良い生活を求めてここに来ています。そしてお返しにとこの街をもっと良いものにしてくれます」「マイアミムーブメントは、質の良い、高収入の仕事をこの街にもたらしています。私は、マイアミの将来を見据え、次世代のリーダーたちをこの街から輩出したいと考えています」。

人材の誘致と定着に力を入れているのは、国内の多くの都市でも同じである。マイアミは、テクノロジー、金融、(そしてこの記事で紹介するようにその両方が融合した)暗号資産といったあらゆる分野を成長させることを目指している。

「マイアミムーブメントは、パンデミックなどの数々の要因で人々がマイアミに集まったことに起因するものですが、成長中の金融やテック部門への支援は何十年も前から行っています 」とスアレス氏。「多くの人が思っているほど『突発的』なものではありません。この街にイノベーションと成長を呼び込むことは、すべてのマイアミの住人にとって大きな利益となります」。

金融の分野で長年の優位性を持ち、テック部門も引き続き強化されているニューヨークのような都市が、暗号資産の分野で何ができるかは想像することしかできない。同様に、何年も前から成長を続けるタンパも、テック系の人材を惹きつける力と経済的なポテンシャルがますます高まっている。暗号資産分野が成熟するにつれて、興味深い違いが見えてくるかもしれない。

メタバースで重要なポジションを取る最初の都市は?最初に自治体のNFTを導入する都市は?このデジタル分野の成長に取り組む市長たちのリーダーシップが現場レベルで発揮されれば、その答えはすぐに出るはずだ。

編集部注:本稿の執筆者Brooks Rainwater(ブルックス・レインウォーター)氏は、Center for City Solutions and Applied Research at the National League of Citiesのディレクター。

画像クレジット:Alexander Spatari / Getty Images

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(文:Brooks Rainwater、翻訳:Dragonfly)

ボーダーレス暗号資産ネットワークは国家による制裁と戦う、曖昧なガイドラインでWeb3企業はイランなどのユーザーを置き去りに

イランのような国に対する米国の金融制裁は、暗号資産スタートアップがその戦いを慎重に選ばなければならない厄介な規制環境を作り出している。これまでのところ、これらの企業が選んでいない戦いはユーザーに実質的な影響を与えており、時には企業が主張する分散化の哲学と相反することもある。

「誰かに何かが降りかかってくるでしょう。こうした規制がどこで、いつテストされるのか、私たちにはわかりません」と、テクノロジーに精通した共同体の「自律分散型組織(DAO、Decentralized Autonomous Organization)」の実現に注力するSyndicate(シンジケート)のゼネラルカウンセル、Larry Florio(ラリー・フロリオ)氏は述べている。

以前の例では、暗号資産カストディスタートアップのBitGo(ビットゴー)が、制裁対象国のユーザーとのインタラクションの発生を「防ぐように設計された制御を実装」しなかったとして、2020年に外国資産管理室(OFAC、Office of Foreign Assets Control)から罰則を科された。BitGoは基本的に暗号資産銀行のようなものである。クライアントの資産を安全な金庫室に保管することを支援している。この法的な罰則は、そのようなクライアントの一部が制裁対象国の個人から暗号資産を受け取った可能性がある場合に生じた。OFACはこうしたことが米国の制裁下では許容されないことを示したのである。同様の流れで、暗号資産取引所のBinance(バイナンス)は、イラン人とキューバ人が所有するアカウントを定常的に無効化していることで知られている。

業界をリードするEthereum(イーサリアム)主体教育機関の1つであるConsenSys Academy(コンセンシス・アカデミー)が、2021年11月に自社のオンラインプラットフォームから約50人のイラン人学生を締め出したのも、それが理由であろう。「当社の記録の最近のレビューに基づき、米国の法律で商品やサービスの提供が禁じられている国にあなたが所在していることが示されました」と主張するものだった。

このコンプライアンスレビューは、同プログラムが無料であり、取引は含まれていないことから、疑問を提起している。ConsenSys Academyの開発者リレーションヘッドであるCoogan Brennan(コーガン・ブレナン)氏は、イラン人学生と彼らが直面する課題に関するインタビューを2021年2月にCoinDesk(コインデスク)へ提供していた。このプログラムに参加していたSalman Sadeghi(サルマン・サデギ)氏は、TechCrunchに対し「イラン人はWeb3で二流市民のように扱われている」と語った。

「彼らは私たちがイラン出身であることを最初から知っていました」とサデギ氏。「このように制裁は、政府ではなく罪のない人々に害を与えていると思います。公正ではありません【略】イランにおいて、Ethereumマイニングはまだ一般大衆に普及しています。しかし、暗号資産マイニングのほとんどは政府によって行われているのが実情です」。

さらに、@Alireza__28と名乗る別の学生は、自分はアカデミーで勉強するためにテヘランでの仕事を辞めており、何カ月も参加した後で修了証なしにプログラムから追い出され、キャリアプランを台無しにしたと語っている。

「本当に屈辱的でした」と同氏は話す。「暗号資産で報酬が得られるリモートブロックチェーンの仕事のオポチュニティは数多くあります。どこに住んでいるかは関係ありません。私は1つの希望として、ビザのスポンサーシップで(イランを去って)仕事のオファーを受けることを期待していました。そしてもう1つの大きな展望は、私自身で、この地から分散型のアプリを作り上げることでした」。

この教育プログラムに制裁が実際に適用されるかどうかも不明だ。教育プラットフォームのCoursera(コーセラ)は、米国政府から直接許可を得てイランの学生を受け入れている。金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN、Financial Crimes Enforcement Network)の元ディレクター代理のMichael Mosier(マイケル・モシエ)氏によると、バイデン政権はイランとの関係を緩和しようとしており、OFACはこうしたユーザーへのサービス提供の許可をConsenSysに与えた可能性がある。別の認可国の例として、OFACは2020年に、ベネズエラでの人道支援を目的としたStableCoin(ステーブルコイン)流通キャンペーン承認している。

「ConsenSysのような事例から見えてくる大きな要点は、OFAC領域の経験豊富な弁護士と話す価値があるということです」とモシエ氏は語る。「ConsenSysにこれができないのは信じ難いことです。人々は往々にして、リスクに対処するのではなく、逃げ道のようなものを自ら選んでしまうことがあります」。

一方、フロリオ氏は、こうした制裁に保守的な姿勢を取っている企業を責めることは難しいと反論した。

「免除を求めようとするだけでも、自分たちの注目度を高め、規制当局のさらなる監視を引きつけることがあります」とフロリオ氏。「最近の業界のやり方の多くは、問わない、話さない、というものです」。

イランのEthereumファンにはまだ希望があるかもしれない。ConsenSysのグローバルPRリードであるElo Gimenez(イーロ・ギメネス)氏はTechCrunchに対し、同社は「明日のデジタルエコノミーを構築するという自らの使命に全面的に専心しており、国際的なエンゲージメントが困難な地域を含め、世界中で合法的に共有し教育する方法を模索しています」と語った。

その一方で、依然としてイラン人たちにとっては、Gitcoin(ギットコイン)やMetaMask(メタマスク)といったEthereumの共同創設者Joe Lubin(ジョー・ルービン)氏のポートフォリオ企業が提供する集中型NFTプラットフォームやツールを使う上で、通常はVPNサービスと組み合わせて、自分たちのロケーションを隠すことが常套的になっている。例えばクラウドファンディングプラットフォームのGitcoinは、ペルシア語を話す学生のためのキャンペーンをホストしており、同キャンペーンは2021年3月から12月までアクティブになっていた。

GitcoinのCOOであるKyle Weiss(カイル・ワイス)氏がTechCrunchに語ったところによると、2021年12月8日現在、同氏の資金調達プラットフォームは「米国の法律を順守するために細心の注意を払い、この助成金を非アクティブ化している」という。

しかし、暗号資産取引所のKraken(クラーケン)でビジネス組織のための判決ガイドライン策定に貢献した元顧問弁護士のMary Beth Buchanan(メアリー・ベス・ブキャナン)氏はTechCrunchに対し、GitcoinやConsenSys Academyのような企業が制裁対象国のユーザーを必然的に禁止する必要があるという考えには同意しないと語った。

「彼らが携わることを望んでいた活動は、制裁の対象外になる可能性も十分にあります。おそらく、企業が適切な問いを発しなかったのでしょう」とブキャナン氏は語っている。「多くの活動が制裁体制から完全に免除されており、その他の活動は一般認可を受けることができます。また、OFACに個別に申請して、行っていることに問題がないかを確認することも可能です。一般の人々でも、OFACに電話して活動が制裁から免除されるかについて相談できるように、問い合わせ窓口が用意されています」。

端的にいえば、暗号資産企業は、社会から取り残されたコミュニティを取り込む戦略的な方法を考案するのではなく、コミュニティを回避することを選択しているのかもしれない。ブキャナン氏によると、特に芸術や教育に関するケースでは、ほとんどのビジネスオーナーが予想する以上に、コンプライアンスに従うコストははるかに低いという。一方、イラン、キューバ、その他の制裁対象国の一部の人々は、暗号資産業界が事実上のカースト制度で運営されていると感じている。オンラインコミュニティに参加するために自分のアイデンティティを隠す必要があることは、コミュニティがボーダーレスで包括的であることと同一ではない。

「確かに、私たちは独自のユーザーインターフェイスとWeb3ウェブサイトを開発することができます」と、閉鎖されたGitcoinキャンペーンに関わった女性の1人であるAysha Amin(アイシャ・アミン)氏は述べ、EthereumプロジェクトやSolana(ソラナ)のようなアルトコインの競合相手を語る際に人々が言及する、Web3あるいは「メタバース」という深遠なコンセプトについて次のように言い表した。「この種の孤立は良くないように思います」。

Gitcoin以外では、アミン氏は現在、Secureum(セキュリアム)と呼ばれるEthereum Foundation(イーサリアム財団)が支援する教育プログラムに参加している他、テヘランを拠点とするテック企業でも働いている。この記事で紹介している多くのイラン人同様、同氏もMetaMaskのユーザーで、特定のプラットフォームでの差別的な禁制にもかかわらずこの分野で働き続ける意向である。

「このグループ(ブロックチェーン愛好家のためのファルシ語[ペルシア語]言語グループ)を始めたのは(別の)ConsenSysブロックチェーン開発者ブートキャンプを終えた後でした」とアミン氏は続けた。「自分のプライベートキーさえあれば、心配する必要はありません。MetaMaskは自分の情報をローカルに保存します」。

少し背景を説明すると、同氏が所属するイラン人グループには、2019年のDevCon Ethereumカンファレンスの際に日本で出会ったメンバーも含まれている。アミン氏は、2021年にこのイラン人女性5人のグループに加わった。米国を拠点とする同氏らのGitcoinキャンペーンのパートナーであるThessy Mehrain(テッシー・メヘライン)氏は、Gitcoinキャンペーンについて次のように説明した。

私は多様性イニシアティブでConsenSys Academyと協働してきました。その一環としてマイノリティコミュニティのための奨学金を提示され、それをWeb3に関する教育を目的としたアムステルダムに拠点を置くCoinIran(コインイラン)に供与したのです。私は彼ら(CoinIranのブロガー)と大阪で開催されたEthereumカンファレンスで会いました。2020年にある女性開発者グループがSolidity(ソリディティ)ブートキャンプに参加して【略】そしてWomen in Blockchain(ウーマン・イン・ブロックチェーン)の支部がテヘランで結成され、ニューヨーク、ボストン、ブリスベン、ラゴスなど世界中で行われているのと同じように【略】ローカルに、完全に独立して運営されており、テクノロジーとそのオポチュニティに関する教育を行っています。

すべてを考慮すると、これらのイニシアティブは金融取引よりも教育に重点を置いているようだ。

「教育は、個人が情報に基づいた決定を自ら行うのを助け、社会と国家の発展に貢献します」とメヘライン氏。「こうした女性たちは国際社会の一員であり、教育によって有意義な貢献を行う権限を与えられるべきです」。

また、この最近のGitcoinにまつわる禁止措置は、Ethereum Foundationの創設者であるVitalik Buterin(ヴィタリック・ブテリン)氏やConsenSysの主要投資家であるルービン氏のようなEthereumの共同創設者が資金提供した世界的なイニシアティブの中では突出しているようだ。その理由の一端には、フロリオ氏が指摘したように、メタバース全体を識別することは不可能だということがある。

「主権国家が外交政策を放棄するとは思えません【略】しかし、何らかのファイアウォールをイラン全土に適用しなければイラン人は何にも参加できないと主張するのは、法的強制力のないことです。そうしたインターネット封鎖のようなことを行う技術は存在しないと思います」とフロリオ氏は語っている。「制裁法を課すことは容易ではなく、創造的な解釈を必要とするでしょう【略】執行がそこにどのようにもたらされるのか、あるいはこのコンテキストで完全に遵守する方法が既知ではないことが考慮に入れられるのかどうかはわかりません」。

今のところ、一部の暗号資産企業は、イランなど制裁対象国の人々を含めて法的に対応する戦略を求めるよりも、アクセスを禁止する方を選んでいる。

「常時のフルアクセスを私たちは有していません。Web3では簡単に排除したりアクセスを禁止したりできます」とアミン氏。「ここイランでは、ブロックチェーン技術を扱う人々、マイニングを行う人々、トレーダー、開発者は常にWeb3へのアクセスについて不安を抱いています。そして私たちは間違いなく、この『二級市民』扱いを感じているのです」。

画像クレジット:cokada / Getty Images

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(文:Leigh Cuen、翻訳:Dragonfly)

ビットコイン急落、大台4万ドルを割り込む

米国時間1日10日早朝の取引で、Bitcoin(ビットコイン)の価格は4万ドル(約461万円)の大台を割り込んだ。

人気の暗号資産であるビットコインは10日朝、急激に売られ、イーサなどのライバル通貨も値を下げた。現在、Coinbase(コインベース)のデータによると、1コインあたり3万9831ドル(約459万円)の価値があるビットコインは4.3%減、イーサは5.1%減となっている。

暗号資産の世界で価格変動を取り上げることは常にリスクをともなうが、ビットコインの価値の下落は、注目に値するものから重大なレベルへと閾値を超えた。Yahoo Financeによると、ビットコインは最近の史上最高値では、1コインあたり6万8789.62ドル(約793万円)という高値で取引されていた。今日の価格を見ると、ビットコインの現在のドローダウンは42%強となっている。

これは、ビットコインがテクニカルな弱気相場に入ったと判断されるために必要なスイングの2倍、調整相場の条件を満たすために必要な4倍にあたる。

しかし、特定の暗号資産の価格下落は、必ずしも分散型の世界をスローダウンするものではない。暗号資産に特化したメディアであるThe Blockは10日朝、人気の高いOpenSea(オープンシー)マーケットプレイスでのNFT取引量が年初から好調であると指摘した。このように、最近の価格下落にもかかわらず、Web3の活動はいくつかの指標では好調に見える。この例に限っていえば、今回の暴落がNFT取引活動に影響を与えるかどうかはまだ明らかになっていない。

他の暗号化市場の参加者にとっては、今回の暴落は短期的な業績に悪影響を及ぼす可能性がある。暗号資産価格の上昇と取引量の間には、歴史的な正の関係がある。Coinbaseなどの企業は、取引手数料で日々の糧を得ているため、暗号資産価格の下落は一般的に業績に悪影響を及ぼすことになる。もちろん過去は未来を完璧に予測するものではないが、今日の急落は決して強気とはいえない。

10日朝の取引で下降している揮発性の高い資産は暗号資産だけではない。テック株全体では1.81%の下落(NASDAQ)、ソフトウェア株ではさらに痛い2.62%の下落(WisdomTree Cloud Computing Fund)となっている。

画像クレジット:Daro Sulakauri/Bloomberg / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Aya Nakazato)

NFTマーケット大手OpenSeaの評価額が約1.5兆円へ、わずか半年で約9倍に

NFTオークションマーケットプレイスのOpenSea(オープンシー)は2021年に大ヒットとなり、その結果、同社のプライベート評価額がほぼすべての他のスタートアップよりも急速に増加している。

暗号資産企業の同社は、米国時間1月4日夕方、ParadigmとCootueが主導するシリーズCラウンドで3億ドル(約348億円)を調達したと発表した。この資金調達により、同スタートアップの評価額は133億ドル(約1兆5440億円)となり、ここ数カ月の間に見られた同社の急激な成長を示すものとなった。シリーズCラウンドの詳細については、11月にThe Informationが最初に報じ、5日、Newcomerが追加情報を確認した。

OpenSeaは、過去30日間の取引量が24億ドル(約2786億円)を超え、2021年は数億ドル(数百億円)の手数料を獲得した。この会社の評価額は、わずか6カ月前にAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)の暗号資産投資部門から与えられた15億ドル(約1741億円)の評価額から急上昇しており、これはOpenSea自体の取引量の増加だけでなく、2021年に76億ドル(約8825億円)の評価額で資金調達したDapper Labs(ダッパー・ラブス)を含む他の主要なNFT企業の評価額も反映している。

OpenSeaのDevin Finzer(デビン・フィンザー)CEOはブログ記事の中で、2021年に同プラットフォームの取引量が「600倍以上」増加したことを強調している。

OpenSeaは、数十におよぶ他のNFTマーケットプレイスからは追い落とす相手として注目されているが、現時点では主要な競争相手はほとんどいない。ただし、Coinbase(コインベース)はこの機会に注目しており、または他のNFTマーケットプレイスが立ち上がって資金を獲得すれば、状況は変わるかもしれない。2021年にNFT市場は多くの参加を得たが、OpenSeaの価値実現は、同社の継続的な成功と、急成長中の暗号収集品の世界に新規参入者を誘う能力にかかっている。

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画像クレジット:Tony Hisgett / Flickr under a CC BY 2.0 license.

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(文:Lucas Matney、翻訳:Aya Nakazato)