ボルボの高級EVブランドPolestarが約2兆2200億円の評価額でSPAC上場へ

スウェーデンのEVメーカーPolestar(ポールスター)は、特別買収目的会社(SPAC)のGores Guggenheim Inc.(ゴアズ・グッゲンハイム)との間で合併によるIPO(新規株式公開)に向けて合意したと発表した。これにより、Polestarの評価額は200億ドル(約2兆2200億円)に達する見込みだ。

ウォール・ストリート・ジャーナル紙は米国時間9月26日、この取引に詳しい関係筋を引用して、SPAC合意が間近に迫っていると報じていた。TechCrunchは、公式発表の情報を反映してこの記事を更新した。合併が完了すると、統合後の会社は、Polestar Automotive Holding UK Limitedという新しい公開企業が保有する。この会社は「PSNY」というティッカーシンボルでNASDAQに上場する予定だ。

PolestarはVolvo Car Group(ボルボ・カー・グループ)のEVパフォーマンスブランドに該当するが、PolestarとVolvoはともに、中国の自動車メーカーであるZhejiang Geely Holding(浙江吉利控股集団有限公司)が所有している。

今回の発表により、Polestarは、過去2年間にSPACを通じて上場した、Arrival(アライバル)、Nikola(ニコラ)、EVgo、Proterra(プロテラ)、Lucid Motors(ルーシッド・モーターズ)、Bird(バード)などのEVおよびEV関連企業の仲間入りを果たす。

Polestarは、EV製造業界におけるライフサイクルアセスメントの枠組みを構築することを目指している。製造、販売、廃車のプロセス全体が透明でトレーサブルであり、カーボンニュートラルな自動車を作ることができるというものだ。同社は、6月に初のSUVであるPolestar 3(ポールスター3)を米国で製造する計画を発表し、2022年にはグローバルに生産を開始する予定だ。高品質の部品と米国での製造施設は、決して安い取り組みではない。今回の報道が事実となれば、IPOはPolestarが目標達成に必要な資金を得る手段になり得る。

また、この合併は、PolestarがTesla(テスラ)に対抗するために、米国での市場投入を早めることにもつながる。Polestarは、セダンタイプのPolestar 2をTeslaよりも優れたクルマと位置づけているが、EV業界で同じような知名度を持ち、信頼されるためには、資金が必要だ。2020年、Polestarは部品の不具合により、全世界の車両のリコールを余儀なくされた

SPAC(特別買収目的会社)であるGores Guggenheimは、3月のIPOで8億ドル(約888億円)を調達し、7月にはBloombergがPolestarと交渉していると報じていた。

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画像クレジット:Geely holdings/Polestar

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Aya Nakazato)

どんな場所でも走れるキャタピラ採用電動スケボー「Ungoverned Vendetta」がIndiegogoで出資を募集開始

Ungoverned

Ungoverned

オーストラリアのサーファーでスケーターそしてスノーボーダーでもあるダン・ボールドウィン氏が、オフロードを含むあらゆるあらゆる場所を滑れるゴムクローラー式電動スケートボード「Ungoverned Vendetta」を開発、クラウドファンディングサイトIndiegogoで製品化に向けた出資を募集し始めました。

Vendettaはスケボーの板の下にウィールではなく、2つのモーター駆動のゴムクローラー(キャタピラ)を備えており、砂地や起伏の激しい岩場、さらには雪上での走行も可能。交換可能なバッテリーパックを備えており、フル充電状態なら体重75kgのスケーターが25km/hで約40分間走行可能です。また平坦な場所なら最高速度は50km/hに達するとのこと。加減速スロットルは有線のハンドコントローラーでコントロールします。

現在、Vendettaは走行可能なプロトタイプが10台だけ「手作業で」生産中。Indiegogoでは、このプロトタイプへの出資者を募集しています。

Vendettaの標準モデル”BLACK”の小売価格は6995豪ドル(約57万円)で、Indiegogoでの出資枠はそこから1000豪ドル値引きした6995豪ドル(約49万円)。金色カラーリングのVendetta “GOLD”版は1000豪ドル増しとなっています。

プロモーション動画では、スケーターが砂浜から森の中、雪上といった普通のスケボーが走れないような場所をわざわざ選んで軽快に走り抜ける様子が紹介されています。なかには丸太を乗り越えたり、横倒しの自転車の上を走り抜けたりと、なんでもありのフリーダムさで、眺めていればだんだん「ちょっとのってみたい」気がしてきます。

Ungoverned Vendettaと同種の電動オフロードスケートボードとしては、2005年に設立されたScarparが販売するものがあります。しかし実はこのScarparの製品も、もともとはダン・ボールドウィン氏が開発した電動スケートボードをベースに改良を加えたものです。Vendettaは、Scarparとは別に、ボールドウィン氏が新しく個人用かつ高性能な乗り物として開発を進めていると説明されています。

なおIndiegogoの説明によると、Ungoverned Vendettaはその出荷先がオーストラリア国内に限られていますが、米国、ニュージーランド、カナダ、ロシア、スウェーデンなどから問い合わせが来ているとのことです。

(Source:UngovernedIndiegogoEngadget日本版より転載)

【コラム】MPG(1ガロンあたり走行マイル)が電気自動車でも重要な理由

もし環境保護が単なるライフスタイルの選択肢の1つなら、自動車メーカーと彼らが作る最新電動自動車は役目を果たしている。Tesla(テスラ)のPlaid(プレイド)は性能が自慢だ。Leaf(リーフ)やPrius(プリウス)、Volt(ボルト)は謙虚さを説き、勧める。そしてFord(フォード)は電動Mustang(マスタング)とF-150を発売して力を見せつける。

しかし、もし消費者の選択がもっとグリーンな未来に向かっているなら、見せびらかしよりもエネルギー効率を重視するのなら、彼らには賢明な購入判断をできる能力が必要になる。そのために、昔ながらのガソリン時代の測定基準が役に立つ。MPG(ガロン当たりのマイル数)のコンセプトだ。

電気自動車(EV)時代になり、クルマの購入はMPGの高いクルマと安いガソリンを探すだけの簡単なものではなくなった。電気のコストはややこしい。価格と効率情報は見つけづらく、理解するのはもっと困難だ。そして最終的には、自分で計算しなくてはならない。

そのためにまず電気エネルギー単位を知る必要がある。「kWh」すなわち「キロワット時」、どちらかというとエンジニアリングの教科書の方が似合う単語だ。コストと炭素排出量を知るために、ドライバーはkWhをドルとマイルに変換する難問を解く必要がある。

それをしないのであれば、あなたは自動車メーカーがあなたと環境のために正しいことをすると信じることになる。

政府はこの問題を先導することができる。実際やってきたし、現在もやっている。ガソリンスタンドはガロン当たりの価格と給油したガロン数と総金額を表示することをが長年義務付けられている。クルマのEPA燃費(ダッシュボードとすべての新車のMPGステッカーに表示されている)はすべてを結びつけてくれる。

つまり、たぶん我々には、EV時代の共通単位がすでにある。コスト、効率、大気汚染について同じ土俵で比較できる親しみやすくて具体的なエネルギー単位だ。

わが同胞なる米国民のみなさん、もう一度、ガロンに「こんにちは」と言おう。たとえガソリン動力車を置き去りにしたとしても、そのエネルギー単位は使い続けることができる。それは具体的であり、ガソリンに含まれているエネルギーで使えるなら、電気にも使えるようにできる。

環境保護庁によれば、1ガロンの無鉛ガソリンにはおよそ34kWhのエネルギーが含まれている。それがわかれば、エネルギーの購入価格がいくらで、それがどこまで遠くへ自分を運んでくれるのかを簡単に計算できる。ガロンは他の電気使用量を理解するためにも役立つので、家庭のエネルギーコストを自動車のエネルギーコストと同列に比較できるようになる。

8月の光熱費をガロン化した結果、次のことがわかった。

  • わが家は56ガロン(212L/1888kWh)分の電気を使用した。
  • わが家の平均電気料金は6.34ドル/ガロン(185円/L)である。
  • Teslaの充電ステーションで、私は8.43ドル/ガロン(25セント[28円]/kWh)払った。

政府はすでに、電気自動車とハイブリッド車のMPG相当値を公開している。MPGを使うことで電気自動車が効率的であの高いガロン当たりコストを埋め合わせていることがはっきりする。中には100 MPG(42.5 km/L)を超えるものもある。

すでにMPGは自動車購入以外にも役立っている。ニューヨーク市のMPG基準は、タクシー燃費を2009年の2倍にすることを義務付けている(さらに同市は、タクシーライセンスの一部をハイブリッド車のために確保している)。Uber(ウーバー)とLyft(リフト)はグリーン政策を打ち出したが、規制状態の緩い彼らはMPG標準を回避することが可能だ。

スマートなエネルギーショッピングだけでは気候変動を解決できない。エネルギー監視団体も、業界の炭素排出への影響を、発電とEV関連ハードウェア生産の両面で監視する必要がある。

しかし、他の条件が同じなら、使用エネルギーが少ないことは大気汚染が少ないことを意味する。そして、共通する単位は、車だけでなはく、はるかに多くを網羅するスマートな選択肢へと我々を誘ってくれる。安いときに電気を貯めるためにバッテリーを買うべきか?ソーラーパネルに意味はあるのか? 断熱や効率のよい暖房器具はどうなのか?

MPGの高い自動車と、1ガロンがとても役立つ住宅。合わせれば確かなライフスタイルの選択肢になるだろう。

編集部注:本稿の執筆者Tom Rutledge(トム・ルトレッジ)氏は、タクシーとライドシェア業界における都市主導のイノベーション実現に特化したスタートアップWapanda(ワパンダ)の共同ファウンダー。

画像クレジット:Image Source / Getty Images

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(文:Tom Rutledge、翻訳:Nob Takahashi / facebook

カリフォルニア州は2030年までに自動運転車のゼロエミッション化達成を義務化

2030年から、カリフォルニア州で運用される小型車の自動運転車はゼロエミッションでなければならない。SB500はGavin Newsom(ギャビン・ニューサム)カリフォルニア州知事は、米国時間9月23日に署名した法律で、温室効果ガスの排出削減を目的に、内燃機関の新車販売を制限するための最新の取り組みとなる。ニューサム知事は2020年に、2035年までにガソリン車とディーゼル車の新車販売を事実上禁止する大統領令に署名した。同年、同州の大気資源局は、2045年までにカリフォルニア州で販売されるすべての新型トラックの排出量をゼロにすることを義務づけている。

Cruise(クルーズ)のグローバル・ガバメント・アフェアーズ部門の責任者であるPrashanthi Raman(プラシャンティ・ラマン)氏は、Engadgetに寄せた声明の中で、「これが業界標準となることを確実にするためのカリフォルニア州のリーダーシップに感謝します。AV業界は、都市における温室効果ガスの排出量削減をリードする素地があり、そのために私たちは当初から電気自動車やゼロエミッションの車両を運行してきました」という。Cruiseは、自律走行型配送サービスのスタートアップであるNuroを含むEmission Zero Coalitionへの参加を通じて、SB500を支援した。

環境保護庁によると、2019年以降、米国の温室効果ガスの唯一最大の排出源は運輸部門であり、その半分以上を小型車が占めている。しかし、現在、カリフォルニア州の道路を走る約1500万台の自動車のうち、自律走行車はごく一部に過ぎない。さらに、カリフォルニア州で完全自律走行型タクシーサービスをテストしている代表的な企業であるCruiseWaymoは、電気自動車ハイブリッド車だけで車両を運用している。今回のカリフォルニア州の動きは、自律走行車が将来的に大きな汚染源となることを防ぐためのものであり、特に完全自動運転のタクシーサービスが通勤者の間で人気になれば、その危惧は現実のものとなる。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のIgor BonifacicはEngadgetの寄稿者。

画像クレジット:Screenshot/GM

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(文:Igor Bonifacic、翻訳:Hiroshi Iwatani)

GMも中国初の自動運転ユニコーンMomentaに約330億円投資

General Motors(GM、ゼネラル・モーターズ)は、トヨタや中国国有企業SAIC Motor(SAICモーター)、Mercedes-Benz AG(メルセデスベンツAG)などを含む、中国の自動運転スタートアップMomenta(モメンタ)を支援する多くの大手自動車メーカーの輪に加わった。

車両販売という点で米国最大の自動車メーカーであるGMは米国時間9月21日、今後中国でのGM車両の自動運転テックの開発を加速させるためにMomentaに3億ドル(約330億円)を投資すると明らかにした。GMの上級副社長でGM China社長であるJulian Blissett(ジュリアン・ブリセット)氏は、今回の投資が「中国における(GMの)消費者のために作られたソリューション」をもたらすのに役立つ、と声明で述べた。

このニュースは、Momentaが約5億ドル(約554億円)の資金調達ラウンドをクローズしてから6カ月も経たない中でのものだ。そのラウンドにはSAIC、トヨタ、 Mercedes-Benz AG、Bosch(ボッシュ)が参加した。TechCrunchのRita Liaoが指摘しているように「巨大な投資ラウンドは資本集約的な自動運転車両の業界では当たり前になった」。しかしMomentaは、ソフトウェアを搭載した車両を2021年末までに大量生産することを目指していて、商業化に近づきつつあるようだ。

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GMが3.8兆円をEV開発へ投資、従来の計画に8850億円上乗せ

この出資はGMが次世代のテクノロジーに積極的に投資する最新例だ。同社は6月、2025年までに電動とAVのベンチャーに350億ドル(約3兆8760億円)をあてる、と述べた。米国では、自動運転テクノロジーへのGMの関心は自動運転の子会社Cruise(クルーズ)を介してよく知られている。CruiseはこのほどGMの金融会社から50億ドル(約5540億円)の与信限度額を獲得した。

しかしGMはまた、世界最大のEVマーケットでの足がかりを模索する中で、中国でかなりの提携も行ってきた。中国で最も売れている電気小型車であるWuling Mini EVはSAIC-GM-Wulingが生産していて、社名からわかるように、GM、SAIC、Wuling Motors(ウーリンモーターズ)の合弁会社だ。SAIC-GM-Wulingは人気のブランドBaojunも手がけている。

中国の自動運転スタートアップの幹部が6月にあったTC Mobilityで指摘したように、同国の地方自治体もまた、自動運転に対して積極的だ。

「中国では、各地方自治体の政府が我々起業家のように行動するよう動機づけられています」とMomenta欧州のゼネラルマネジャーであるHuan Sun(フアン・サン)氏はイベントで述べた。「地方自治体は地域経済の発展でかなり進歩しています。我々が感じているのは、自動運転テクノロジーが(地方自治体の)経済ストラクチャーを改善し、アップグレードできるということです」。

GMは、Momentaの技術がいつGM車両に搭載されるのかについては明らかにしなかったが、広報担当は2社の提携が米国でのGM車両生産と販売にはつながらないことを認めた。

画像クレジット:Momenta

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

Rivianがいよいよ始まる車両販売に備え、約5億円のサービスサポートセンターを開設

新規株式公開に向けて準備中の電気自動車メーカーRivian(リビアン)の急成長が止まらない。同社は、ミシガン州プリマスに電気自動車オーナー向けのサービスサポート施設を開設する予定だ。ちょうど計画どおり、2021年9月末には、R1Tピックアップの発売記念モデルの納車が開始されることとなっている。

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この施設では、100名の新規雇用を創出し、投資額は460万ドル(約5億円)にのぼる。うち、75万ドル(約8200万円)は州からのビジネス開発助成金からあてられる。ミシガン州のビジネス開発プログラムのような資金は、ビジネスを誘致し、州内での雇用創出と投資を促進するために使われるも。Rivianがミシガン州に投資するのは今回が初めてではない。同社の工場はイリノイ州のノーマルにあるが(第2工場も建設予定)、本社はプリマスにある。また、Rivianは2015年に2950万ドル(約32億5900万円)の設備投資でディアボーンに研究開発センターを開設している。

新しいセンターは、Rivianの現在の本社の拡張拠点的な位置づけだと、同社の広報担当者がTechCrunchに認めてくれた。ニュースリリースによると、この新センターを通じて「すべてのRivianオーナーをサポートすることを計画している」とのことで「北米のRivianオーナーに対して、Rivian Roadside and Service Support(リビアン・ロードサイド&サービスサポート)チームが、車両に関する質問、沿道からの依頼、サービス日程調整のニーズに対して、24時間体制でサポートする」とのことだ。

ミシガン州知事室は、この新規雇用を高賃金と謳い、授業料の払い戻しや育児支援などの福利厚生も付いていると話している。

Rivianは、ライバルであるTeslaと同様に、顧客がオンラインで直接同社に車両を注文できる直販モデルで運営されている。現在、自動車メーカーが顧客に直接販売できる州は22州に限られている。これらの州では、Rivianは展示室を設置して試乗することができるが、顧客がオンラインで直接注文することを禁止するものはない。

また、Rivianはサービスやサポートも自社で行う予定だ。同社のウェブサイトによると、Rivianは、トラブルシューティング、診断、予約のサポート、沿道でのアシスタンスなどを提供するサービスチームを通じて、24時間365日のサポートを提供する予定だ。

先週、RivianはTechCrunchに、3つの機関から必要な認証を受け、全米50州でのSUV「R1T」および「R1S」の販売・配送に許可が下りたことを認めてくれたところだ。

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画像クレジット:Rivian

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Akihito Mizukoshi)

フォードがEV普及に向け、バッテリー原料リサイクル企業のRedwood Materialsと提携

Ford Motor(フォード・モーター)は、バッテリー原料リサイクル企業のRedwood Materials(レッドウッド・マテリアルズ)と提携し、今後大量に投入される電気自動車のためのクローズドループ・システムを構築することにした。この提携では、生産過程で発生する廃棄物や寿命を終えた電気自動車のリサイクルに加え、フォードの電気自動車に使用されるバッテリーの原材料の供給も行うことになる。

2020年発売された「Mustang Mach E(マスタング マックE)」や、間もなく発売されるピックアップトラック「F-150 Lightning(F-150ライトニング)」をはじめ、フォードがそのラインナップに電気自動車を増やしていく中で、今回の提携は結ばれたものだ。電気自動車用のバッテリーやその原料を確保するために、自動車業界は電池メーカーとの提携を進めており、レッドウッド・マテリアルズのような企業に目を向けている。

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フォードだけでも膨大な量のバッテリー供給が必要になる。同社が2030年までに全世界で投入を計画している電気自動車は、合計で少なくとも240ギガワット時以上のバッテリー容量を必要とするという。これはおおよそ工場10カ所分の容量に相当する。フォードは以前、北米だけで140ギガワット時が必要になり、残りは欧州や中国を含む他の地域に割り当てられる分だと述べていた。

フォードの北米地域担当最高執行責任者を務めるLisa Drake(リサ・ドレイク)氏は「寿命を終えた我々の製品においてクローズドループを構築し、その資源をサプライチェーンに再投入することが可能になれば、コスト削減につながります」と、プレス説明会の中で語った。「当然ながら、バッテリーを製造する際に現在使用している多くの原料の輸入依存度を下げることにもつながります。そして、それによって原材料の採掘も減らすことができます。これは今後、私たちがこの分野の規模を拡大していく上で、非常に重要なことです」。

これらすべてが、EVをより安価に、より持続可能なものにすると、ドレイク氏はいう。

レッドウッド・マテリアルズは、バッテリーセルの製造過程で発生する廃棄物や、携帯電話のバッテリー、ノートパソコン、電動工具、モバイルバッテリー、スクーター、電動自転車などの家電製品をリサイクルしている企業だ。Tesla(テスラ)の元CTOであるJB Straubel,(JB・ストラウベル)氏が設立し、率いているこの会社は、ニッケル、コバルト、リチウム、銅などの元素を平均して95%以上回収できるという。

レッドウッドは、これらの廃棄物を処理して、通常は採掘で得られるコバルト、ニッケル、リチウムなどの素材を抽出し、それらを顧客に供給する。現在、その顧客の中には、テスラと共同でネバダ州のGigafactory(ギガファクトリー)を運営しているPanasonic(パナソニック)や、テネシー州にあるEnvision AESC(エンビジョンAESC)のバッテリー工場などが含まれる。レッドウッドはAmazon(アマゾン)とも提携しており、電気自動車などのリチウムイオン電池や事業所から出る電気電子機器廃棄物をリサイクルしている。レッドウッドが初めてパートナーシップを組んだ自動車業界の企業は、2021年3月に提携した電気商用車メーカーのProterra(プロテラ)だった

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「事前に計画を立て、生産能力や適切な地域で適切な時期に生産することを戦略的に考えないと、現在の世界的な半導体不足に少々似た状況に陥るリスクがあります」と、ストラウベル氏はプレス説明会で語った。

米国時間9月22日に発表されたこのパートナーシップでは、レッドウッド・マテリアルズはまず、フォードと協力して、同自動車会社のバッテリー生産ネットワーク内でリサイクルを設定し、回収された原材料をメーカーに戻してバッテリーに使用する。フォードは具体的な内容を明らかにしていないが、それはおそらく、バッテリーセルのサプライヤーであるSKとの協力を意味していると思われる。

フォードとSKは2021年5月、BlueOvalSK(ブルーオーバルSK)という合弁会社を設立し、2020年代中期から年間約60ギガワット時の駆動用バッテリーセルとアレイモジュールを生産することで合意した。

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レッドウッド・マテリアルズとフォードのパートナーシップの最終的な目標は、製造廃棄物のリサイクルとフォードへの原料供給から、寿命を終えた車両のリサイクルオプションの構築まで、バッテリーのライフサイクル全体に関わることだ。この最後の部分が複雑になるのは、これらのEVがフォードの所有ではなくなるからだ。多くのEVは、廃車になるまでに複数の所有者を経ることになる。

今回の提携が発表される数カ月前に、レッドウッド・マテリアルズは7億7500万ドル(約858億円)以上の資金を調達しているが、その中にはフォードからの5000万ドル(約55億円)が含まれていることが後に明らかになった(同社は当初「7億ドル以上の資金を調達した」と発表していた)。

また、9月に入ってから同社は、事業をバッテリーのリサイクルだけでなく、重要なバッテリー材料の生産にも拡大する計画を明らかにし、そのために米国に100万平方フィートの新工場を建設するとしている。同社はリチウムイオン電池の構成材料となる正極活物質と負極用銅箔を生産したいと考えている。

現在、同社が建設地を探しているこの工場は、おそらく正極材の生産に特化することになるだろう。レッドウッドは、この工場の正極材生産能力を、2025年までに電気自動車100万台分に相当する100ギガワット時まで引き上げるつもりであるという。

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画像クレジット:Ford

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

スマホ事業を閉鎖したLGが自動車向けサイバーセキュリティのCybellumを264億円で買収、

韓国の大手テック企業であるLG Electronics(LGエレクトロニクス)は、かつて携帯電話分野でトップシェアを誇っていたが、現在は同事業を縮小している。同社は、次世代の自動車向けハードウェアおよびサービスという新分野への意欲の表れとして、イスラエルの自動車用サイバーセキュリティ専門企業であるCybellum(サイベラム)を買収すると発表した。Cybellumは「デジタルツイン」と呼ばれる手法を用いて、コネクテッドカーのサービスやハードウェアの脆弱性を検出・評価する。

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LGによると、この買収は複数の部分からなっている。

まず、1億4000万ドル(約154億円)でCybellumの株式の64%を取得する。次に2000万ドル(約22億円)をSAFE(Simple Agreement for Future Equity)ノートの形で「第4四半期の取引プロセスの終了時に」拠出する。残りの株式は「近い将来」(日付の指定なし)に取得する予定で、これは最終的なバリエーションと投資が確定する時でもある。

現在のところ、バリエーションが一定であれば、この取引の総額は約2億4000万ドル(約264億円)になると見込まれる(市場やCybellumの業績が影響する可能性もある)。

LGは、自動車関連のスタートアップへの投資家としての実績を積み重ねているが、今回の買収は、イスラエル(Cybellumはテルアビブ拠点)での初の買収となる。この取引は、LGがハードウェアだけでなく、自動車業界にソフトウェアソリューションを提供することに興味を持っていることを示している。

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「自動車業界においてソフトウェアが重要な役割を果たしていることは周知の事実であり、それにともなって効果的なサイバーセキュリティ・ソリューションが必要とされています」とLG Electronicsのビークル・コンポーネント・ソリューションズ・カンパニーのKim Jin-yong(キム・ジンヨン)博士は語る「今回の取引は、LGのサイバーセキュリティの強固な基盤を一層強化するものであり、コネクテッドカーの時代に向けてさらに準備を進めるものです」。LGは以前からこの分野に注目していた。

この取引は、Blumberg Capital、Target Global、RSBG Ventures(ドイツの業界大手RAGのベンチャー部門)など、Cybellumの投資家にとても良いリターンとなる。Cybellumはこの取引に先立ち、1400万ドル(約15億4000万円)強を調達していた。

Cybellumは、イスラエル国防軍のサイバーセキュリティ部門のOBであるSlava Bronfman(スラヴァ・ブロンフマン)氏とMichael Engstler(マイケル・エングストラー)氏の2人が2016年に創業した。同社は長年にわたり、ジャガーランドローバーや日産自動車など、同社の技術を利用する大物顧客を数多く獲得しており、提携先にはハーマン、豊田通商、PTCなどが名を連ねている。

ブロンフマン氏は電子メールによるインタビューで、当面はこれらの企業との協力関係を継続し、独立した事業体として運営していく方針を明らかにした。

Cybellumの技術とそのLGによる買収は、コネクテッドカーとサイバーセキュリティの世界におけるいくつかの重要な傾向を示している。

コネクテッドカーは、悪意のあるハッカーにとって新たな攻撃対象だ。しかも、自動車に搭載されている複数の部品や、自動車という大きなエコシステムの中で動いている多数のOEMや自動車関連の会社を考えると、攻撃対象として非常に複雑だ。自動車がより賢く、よりつながりやすく、最終的にはより自律的に進化していけば、その複雑さは増していく一方だ。

大きな課題の1つは、これらすべてに共通するサイバーセキュリティへのアプローチを開発することだった。LGは、この市場での既存のプレイヤーとして、その地位をさらに高めたいと考えており、自社の将来のビジネスと、業界の幅広いサービスニーズに対応するための投資を行っている。

Cybellumのアプローチは、システムの「デジタルツイン」を作り出すことだ。これは、エンタープライズITヘルスケア世界でも採用されている手法で、脅威を特定・評価すべく全体像を把握するためにモニタリングを行う。個々のコンポーネントの断片化を解消する方法の1つであり、車のシステムに負担をかけずにリアルタイムでイベントを監視することができる。

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「これは何よりもまず、セキュリティへの投資です」とブロンフマン氏はいう。「Cybellumはサイバーセキュリティの会社です。LGは大手自動車サプライヤーの1つとして、現在のコネクテッドビークルの時代や、自動運転車への移行に不可欠な要素であることを理解しているため、サイバーセキュリティを優先しています」。

LGは現在、Cybellumの提携先ではないが、ブロンフマン氏は、両社の最初の統合は2022年に実現する可能性が高いと述べた。

画像クレジット:Joan Cros/NurPhoto / Getty Images 

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

Hacobuが動態管理サービスMOVO Fleetの配送計画機能に新機能追加、荷物・荷量情報を組み込み高度な輸送分析が可能に

Hacobuが動態管理サービスMOVO Fleetの配送計画機能に新機能追加、荷物・荷量情報を組み込み高度な輸送分析が可能に

「運ぶを最適化する」をミッションとして、企業間物流の最適化を目指すHacobu(ハコブ)は9
月21日、動態管理サービス「MOVO Fleet」(ムーボ・フリート)の配送計画機能に「荷物・荷量管理機能」を追加したと発表した。ドライバー向けオプション機能と併用することで、荷量と作業時間の実績データを取得でき、高度な配送業務の分析をサポートするという。

MOVO Fleetは、物流業界に特化したテレマティクスサービス(移動体に通信システムなどの機器を搭載し情報などを提供するサービス)。ロジスティクス・クラウド「MOVO」(ムーボ)のアプリケーションの1つにあたり、GPSを使った車両位置把握により、車両管理における業務負荷軽減や、配送の効率化を行える。

MOVO Fleetオプションの配送計画機能は、ダッシュボード上で配送計画を一覧表示し、計画に対する実績、遅れを把握することで運行管理の負荷を軽減するというもの。今回追加の「荷物・荷量管理機能」により、配送計画に配送の内容(荷物名、伝票番号、荷姿、数量など)も指示できるようになった。

Hacobuが動態管理サービスMOVO Fleetの配送計画機能に新機能追加、荷物・荷量情報を組み込み高度な輸送分析が可能に

配送計画機能画面

Hacobuが動態管理サービスMOVO Fleetの配送計画機能に新機能追加、荷物・荷量情報を組み込み高度な輸送分析が可能に

荷物・荷量管理機能により、配送計画に配送の内容(荷物名、伝票番号、荷姿、数量など)も指示できるようになった

運行管理者のメリットとしては、ドライバーに配送の内容を指示できる点がある。ドライバー向けオプション機能のドライバーサポートプランを併用すると、配送指示書の手渡しが不要になる上、配送改善のためのデータ取得が可能になる。具体的には、ドライバーがスマートフォンで登録する荷積み荷降ろしなどの実績データから、荷量と作業時間の分析ができるようになる。

ドライバーのメリットとしては、ドライバーサポートプラン併用により、配送計画、配送の内容をスマートフォンで確認可能になる点がある。荷物の検品管理、物品の破損が発生した場合の報告などに活用可能という。

 

Androidスマホに多数の運転者向け新機能、グーグルはホンダとの協業も発表

Google(グーグル)は米国時間9月23日「Android Auto(アンドロイト・オート)」に追加されるさまざまな新機能を発表した。また、2022年後半に北米で発売されるHonda(本田技研工業、ホンダ)の新型車より、ホンダとGoogleの協業による車載向けコネクテッドサービスの搭載が開始されることも、両社から発表されている。

Googleは2015年に「Android Auto(アンドロイト・オート)」と呼ばれるアプリを発表。これを使ってドライバーは車内でスマートフォンと車載オーディオを無線で接続し、スマートフォンから音楽を車内で再生したり、マップのナビゲーションをスピーカーから音声で読み上げたり、ハンドルを握ったまま車載サウンドシステムを通じて電話をかけたりすることができるようになった。それから6年が経った今、Android Autoも、それが動作する車載インフォテインメントシステムも、格段に賢くなっている。Googleは今回、さらに多くの機能をドライバーに提供すると発表した。これらの機能はドライバーがスマートフォンでAndroid Autoを起動しなくても、車載システムを通じて直接利用できる。

Android Autoは運転中のドライバーの気を散らさないように設計されたものだが、これまでは携帯電話を車載インフォテインメントシステムやオーディオシステムに接続するのにも一苦労だった。携帯電話でBluetoothが有効になっていることを確認し、クルマにデバイスを認識させてペアリングし、さらに実際にAndroid Autoにさせたいことをさせるためには、無数の音声コマンドを覚えなければならなかった。しかし、もうそんな必要はなくなるのだ! ドライバーは「Hey Google, let’s drive.」と声をかけるだけで、接続のプロセスを実質的に自動化できるようになる。

さらに、Googleはユーザーインターフェイスも刷新し、Amazon Music(アマゾン・ミュージック)、Audible(オーディブル)、iHeartRadio(アイハートラジオ)、JioSaavn(ジオサーバン)、Pandora(パンドラ)、Podcast Addict(ポッドキャスト・アディクト)、SoundCloud(サウンドクラウド)、YouTube Music(ユーチューブ・ミュージック)など、数多くのコンテンツソースにワンタップでアクセスできるようにした他、受信したテキストメッセージをシステムが読み上げ、ドライバーが音声で応答できるようにした。これらの新機能は、今後数週間のうちに、英語圏をはじめ、ドイツ、スペイン、メキシコ、フランス、イタリアの各市場で提供される予定だ。

また、デュアルSIM携帯電話を使用している国際的な旅行者のために、Android Autoでは仕事用と個人用のプロファイルを別々に設定し、運転している時間や用事に応じて、関連する連絡先リストやカレンダーの予定を表示できるようになる。

車載ディスプレイを搭載している車両では、Android Autoに追加されたゲームなどの新機能を利用できるようになる。GoogleはGameSnacks(ゲームスナックス)と提携し、車を駐車している間、ドライバーに手軽で楽しい気分転換を提供する。これで公共の充電施設で座ったまま、くだらないニュースを読んで時間を潰す行為から解放される。さらにGoogleは、ガソリン代の支払い方法も簡単にした。「Hey Google, pay for gas」というだけで、Google Pay(グーグル・ペイ)による非接触型の支払いが完了する。もっとも、燃料の種類を選択したり、実際に給油したりする作業は依然として必要だが。この機能はまず、Exxon Mobil(エクソンモービル)、Conoco(コノコ)、Phillips 66(フィリップス66)、76(セブンティシックス)の全米3万2500店舗のガソリンスタンドから利用できるようになる。

一方、車両搭載型システムの「Android Automotive OS(アンドロイド・オートモーティブOS)」は現在、Polestar 2 (ポールスター2)やVolvo XC40 Recharge(ボルボXC40リチャージ)といった一部の車に搭載されているが、今後はFord(フォード)やGMなど、さらに多くのメーカーやモデルに搭載されることになる予定だ。Googleはその最新のパートナーがホンダになることを発表した。ホンダはGoogleと協業して「Googleの車載向けコネクテッドサービス」を搭載した新型車を、まずは2022年後半に北米で発売し「その後、順次グローバルに展開」していくと述べている。Googleの車載システムは、Chevy Silverado(シボレー・シルバラード)とRenault Mégane E-Tech(ルノー・メガーヌEテック)にも搭載される予定だ。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のAndrew Tarantolaは、Engadgetの編集主任。

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画像クレジット:Geoff Robins / AFP / Getty Images

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(文:Andrew Tarantola、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

計158のMaaS系サービスをまとめた「MaaSカオスマップ」2021年度版をボールドライトが公開

  1. 計158のMaaS系サービスをまとめた「MaaSカオスマップ」2021年度版をボールドライトが公開

MaaS推進の基盤となるオリジナルの観光客向け地図などを簡単に実現できる観光DXプラットフォーム「Platinumaps」(プラチナマップ)を運営するボールドライトは9月21日、計158のMaaS系サービスを掲載した「MaaSカオスマップ」2021年度版を公開した。また、Platinumapsをアプリ化する「プラチナApps」機能の提供開始を明らかにした。

カオスマップ2021年版の考察

日本政府が強力に推進する超スマート社会「Society 5.0」ではシームレスで効率的な次世代移動サービス「MaaS」の実現が重視されており、MaaSは2030年に約2兆8000億円の市場規模になると予測されている。ボールドライトによると、2021年度は「混雑情報配信」「統合型アプリ」が増加傾向にあり、新型コロナウイルスの影響の他、自治体や民間の新プレイヤーの参入が見られたという。

コロナ対策のため、混雑情報配信が増加

2020年度と比較すると、コロナ対策のためのリアルタイム「混雑情報」配信の実証実験が増加した。混雑情報配信は、訪問者が事前に安全性を確認することで密回避できるだけでなく、店舗や施設にとっては閑散時と混雑時どちらでも適切な人数が集客可能になる。密回避のための、人の分散や移動を促進する人流制御機能の強化は特に今後必要とされると想定される。

近距離移動や移動自粛へのニーズの変化

コロナ禍の影響で遠距離の移動が制限された昨今は、遠方への旅行からマイクロツーリズムと呼ばれる居住地近隣の観光にシフト。移動需要の変化を受け、観光型MaaSは特に近距離へのサービス展開を重視しているという。各サービスの近距離移動や移動自粛に対する機能強化が今後も進むかどうかは、ワクチン普及や変異型ウイルスの感染拡大など、コロナ禍の状況次第と考えられるとしている。

魅力発信をするコンテンツ強化の必要性

各MaaSプラットフォームにおける「検索、予約、決済」機能の完成度が高まり、徐々に移動の理由となる「目的」開発のため、魅力的な観光施設や飲食店などのコンテンツ配信が進んでいるという。プラットフォームの完成度が高まりつつある今後は、事業社単体ではできないコンテンツ拡充が加速すると見られ、プラットフォーマー・自治体・コンテンツ事業者などの事業者間連携において、どのようなコンテンツをどのように配信していくかを協議していく必要性があるという。

国産プラットフォームの振興

スーパーシティ・スマートシティの基礎ともなるMaaSは、自治体によるDX推進の柱に位置づけられ、2019年前後から官民連携のMaaS組織が矢継ぎ早に立ち上がった。先行する海外のMaaSプラットフォームでは、グローバルや国内全体で利用できる大規模な共通プラットフォームが多く見受けられる一方、日本国内では各地域特性の課題からサービスの内容・質が市場ごとに異なるため、地域ごとのサービス開発が進んだ。例えば、過疎化により医療福祉やラストワンマイルに課題を持つエリアもあれば、観光目的の回遊重視のエリアなど様々あるという。

今後MaaSプラットフォーム事業者は、必須の共通基盤と各地域ニーズに対応可能な柔軟性の高いプラットフォーム構築が覇権争いの要となるとしている。

Platinumaps(プラチナマップ)のアプリ化、「プラチナApps」提供開始

Platinumapsは、多彩な表現によるオリジナル地図を作成可能な、次世代型観光DXプラットフォーム。「観る」「食べる」「買う」といった目的別レイヤーの高速切り替え、クーポン、スタンプラリー、グラフィックマップなど場所の魅力を高める機能が充実しているという。一目でわかる画像ピン、地図の上を滑らかに動くバスやクルーズ船など、観光客を目で楽しませる工夫も盛り込めるそうだ。さらに、混雑情報配信やCo2濃度計測などコロナ対策機能も採用している。

Platinumapsは、従来利用者がすぐに利用できるウェブサービス体裁で提供してきたが、より詳細なデータの活用や決済などの要望増に伴い、今回アプリ化対応を可能にした「プラチナApps」の提供を開始したという。計158のMaaS系サービスをまとめた「MaaSカオスマップ」2021年度版をボールドライトが公開

このプラチナAppsは、ウェブ版デジタルマップとネイティブ化されたアプリ版を1つのCMSから管理可能で、ウエブとアプリ両方のデジタルコンテンツを相互運用できるという。また、観光アプリに必要となる、観光ガイド、デジタルマップ、モビリティトラッキング、コース案内、スタンプラリー、クーポン配布、決済基盤などの多様なコンテンツをワンストップで提供し、かつ、利用者の行動データ分析も可能ととしている。

プラチナAppsは、北海道ニセコ町の観光アプリ「NISEKO NOW!」に導入済みで、利用ユーザーは、ニセコエリアの観光スポットの確認、おすすめの観光ルートをマップ上に表示するガイドツアー機能やクーポン、デジタルスタンプラリー機能などを利用できる。

2019年4月設立のボールドライトは、より豊かで持続可能な未来創出を目的とするイノベーター集団。SDGs・観光DXを推進し、「世界から紙の地図を削減する」をミッションとしたPlatinumaps事業を軸に、目的・手段・消費を一体化させた観光DXプラットフォームの社会実装を通じ、観光市場、MaaS市場の未踏領域に挑戦する。計158のMaaS系サービスをまとめた「MaaSカオスマップ」2021年度版をボールドライトが公開

テスラのバッテリー生産拠点「Megafactory」がカリフォルニアで着工

Tesla(テスラ)の大型バッテリーシステムMegapack(メガパック)を生産することからその名が付けられた新しい生産施設「Megafactory(メガファクトリー)」がカリフォルニア州で着工した。

これまで未発表だったこのニュースは、ラスロップ市のSonny Dhaliwal(ソニー・ダリワル)市長が、一度削除された後に再度投稿されたFacebookへの投稿で確認された。ダリワル市長は「Teslaの最新の拡張であるMegafactoryの本拠地になったことを誇りに思います」と述べている。「未来のグリーンエネルギーは、私たちのコミュニティで生産されることになります」。

カリフォルニア州北部の小都市ラスロップにあるこの工場は、フレモントにあるTeslaの自動車工場の近くにある。ラスロップには、Teslaの87万平方フィート(約8万平方メートル)の配送センターもある。

Megapackは、Teslaの他のエネルギーストレージ製品と同様に、ネバダ州スパークスにあるGigafactory(ギガファクトリー)で製造されていた。MegafactoryはMegapackに特化した最初の工場となるが、同社のPowerwall(パワーウォール)やPowerpack(パワーパック)など他のストレージ製品の生産が新工場に移行するかどうかは不明だ。

この新工場は、Teslaのエネルギー部門の成長を後押しするものだ。Megapackは、家庭用バッテリーであるPowerwallとは対照的に、ユーティリティースケールのエネルギーストレージを目的としている。太陽光発電所や風力発電所を建設する公益事業者は、余剰エネルギーを蓄えて後で送電するために、発電設備を大型バッテリーと組み合わせるケースが増えている。先週、アリゾナ州の電力会社Salt River Project(ソルト・リヴァー・プロジェクト)は、100メガワット時のMegapackプロジェクトを稼働させたばかりだ。

Elon Musk(イーロン・マスク)CEOは、2021年6月に行われた第2四半期の決算説明会で、これらのストレージ製品に対する「大きな需要」があることを確認し、Megapackは「来年まで基本的に完売した」と述べた。また、Powerwallの需要は年間100万台を超えると推定している。

マスクCEOは投資家に対して、ボトルネックの多くは単に生産能力の問題ではなく、セルの供給と世界的な半導体不足が生産量の上限を生み出していると語った。

「Powerwallには、自動車と同じチップがたくさん使われているので、どちらを作りたいのかという状態になります。クルマを作らなければならないため、Powerwallの生産量は減っているのです」という。

しかし、チップ不足は一向に解消される気配がなく、実際、ホワイトハウスは米国時間9月23日に、テクノロジーおよび自動車産業への継続的な影響に対処するため、半導体メーカーおよび購買担当者との2回目のサミットを開催する予定だ。

画像クレジット:Sonny Dhaliwal

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Yuta Kaminishi)

メルセデス・ベンツが高級EVセダン「EQS」の米国価格を発表、ガソリン車の「Sクラス」より安い約1133万円から

Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)は、電気自動車の最上級モデル「EQS」の米国における販売価格を、ガソリンエンジン搭載車の「Sクラス」よりも8700ドル(約95万円)以上低く設定した。これは北米で高級EVの展開を確実に成功させるためにドイツの自動車メーカーが取った戦略的な動きと言える。

2021年秋より米国のディーラーで発売になるEQSの価格は、1050ドル(約11万5000円)の配送料込みで10万3360ドル(約1133万円)からとなっている。連邦政府の税額控除により、実質価格はさらに7500ドル(約82万2000円)安くなる。

メルセデス・ベンツはまず「EQS 450+」と「EQS 580 4MATIC」という2つのモデルを米国市場に導入する。2基のモーターを搭載するハイパワーで4輪駆動の後者は、ベース価格が12万160ドル(約1317万円)と高めに設定されている。さらにこの2つのモデルには、いずれも3種類のトリムが用意されており、最上級の「Pinnacle(頂点)」と呼ばれる仕様は、配送料込みでEQS 450+が10万9560ドル(約1200万円)、EQS 580 4MATICは12万6360ドル(約1385万円)になる。

配送料込みで11万2150ドル(約1229万円)からというSクラスよりも、電気自動車のEQSを低い価格で販売するというメルセデスの決断は、EVに賭けた将来の投資と見ることができる。Sクラスは長い間、メルセデスの伝統的な高級フラッグシップセダンだった。しかし、2020年代の終りまでにすべての新車販売を電気自動車のみにすると宣言し、そのために400億ユーロ(約5兆1420億円)を投資する計画を2021年7月に発表したメルセデスは、従来のSクラスのオーナーをEQSに移行させるか、あるいは新たな購買層を見つけなければならない。

この2022年モデルのメルセデス・ベンツは、期待される通り、超高級な雰囲気に溢れている。しかしEQSはそれだけでなく、56インチのハイパースクリーン、超強力なHEPAエアフィルター、ドライバーの要望や必要を直感的に学習するソフトウェアなど、最新技術も満載だ。おまけに「No.6 MOOD Linen」と名付けられた新しいフレグランスも用意されており、これは「イチジクとリネンの青葉のような香り」と表現されている。

関連記事:あらゆるテクノロジーが詰め込まれたメルセデス・ベンツEQS 2022年モデル、350ものセンサーで実現された数々の新機能

メルセデスは、これらの技術に加えて、パフォーマンス、デザイン、そして価格が買い手を惹きつけることに賭けている。TechCrunchが以前指摘したように、これはメルセデスにとって大きな賭けだ。このドイツの自動車メーカーは、北米でEQSの導入を成功させることで、かつてクロスオーバーEV「EQC」の米国導入につまずいた(そして今はもうなかったことになっている)記憶を消し去ろうとしているのだ。

画像クレジット:Mercedes-Benz

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

FedExがAuroraの自動運転トラックを使った荷物運搬試験をダラス-ヒューストン間で開始

FedEx(フェデックス)は自動運転車両スタートアップAurora (オーロラ)、大型車両メーカーPaccar(パッカー)との試験プログラムの一環として、ダラス-ヒューストン間の荷物運搬に自動運転トラックを使い始めた。

州間高速道路45号線の約500マイル(約800km)のルートを完走させるのにAuroraのテクノロジーを搭載したPaccarのトラックが週に複数回使われる見込みだと米国時間9月22日に明らかにした。トラックにはバックアップのドライバーが乗り込むが、自動運転で走行する。

この提携は、セーフティドライバーが乗り込むことなくターミナル間で荷物を運搬する自動運転配送事業を2023年までに立ち上げるという目標を達成しようとしているAuroraの最新の動きとなる。これはまた、特別買収目的会社(SPAC)のReinvent Technology Partners Yとの逆さ合併を決める投票を控え、ここ数週間のAuroraによる一連の発表やアップデートの一環でもある。Reinvent Technology Partners YはLinkedInの共同創業者で投資家のReid Hoffman(リード・ホフマン)氏、Zyngaの共同創業者Mark Pincus(マーク・ピンカス)氏とマネージングパートナーMichael Thompson(マイケル・トンプソン)氏によって設立された会社だ。

関連記事:自動運転開発AuroraがSPAC合併で上場へ、評価額は約1.4兆円

ティッカーシンボル「AUR」でNASDAQに上場予定の合併会社の見込まれているバリュエーションは130億ドル(約1兆4270億円)だ。AuroraのバリュエーションはUberの自動運転部門買収後、100億ドル(約1兆980億円)だった。

「これは、トラック業界に起こる必要がある種の変化を模索し、理解しようとする試みです」とAuroraの共同創業者でCPOのSterling Anderson(スターリング・アンダーソン)氏はTechCrunchに話し、自動運転システムとAuroraが提供するクラウドサービスがFedExの事業にどのようにフィットするかも確認する、と付け加えた。

試験には少数のトラックを使用するとアンダーソン氏はいう。「大規模な試験をすぐに立ち上げるというのは理に適っていません」。そして「ひと握りのトラックを定期的に動かすことで、プロダクトの微調整や改良に着手できます」とも語った。

試験終了日は設定されておらず、ドライバーレスの能力を搭載したプロダクトに近づくにつれ、ダラスーヒューストン間で走らせるトラックを進化させ、また増やしていくことを見込んでいる。

9月22日から始まった試験は、AuroraとPaccarが共同で自動運転のPeterbiltトラックとKenworthトラックを開発・試験・商業化するという2021年初めの戦略的提携の発表に続くものだ。

今回の3社提携はまた、FedExの自動運転とロボティクスのソリューションへの関心をも示している。同社は引き続き過去最多の配達量をこなしている。ロジスティック大手の同社は6月、Nuroの次世代自動運転配達車両をFedExのオペレーションの中でテストし、最終的には使用するための複数年にまたがる多面的な戦略的提携を発表した。

関連記事:自動配送NuroがFedExと提携、配送ロボをライスマイルデリバリーに大規模導入

画像クレジット:Aurora

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

フォックスコンがタイのEV工場で2023年までに5万台の生産を開始と発表

台湾のスマートフォンメーカー大手であるFoxconn(フォックスコン)と、タイの国営石油会社PTT PLCが、タイ国内での電気自動車(EV)製造施設の開業に向けた合意を進めていることが明らかになった。この施設では、2023年までに車両の出荷を開始する予定だ。これまでFoxconnは、2022年にはタイと米国の両方に工場を建設する計画を発表していた。

6月にFoxconnとPTTは、EV生産で協力する覚書交わし、PTTが60%、Foxconnが残りの40%を保有する合弁会社を設立することとなった。タイ工場の初期生産能力は約5万台だが、フォックスコンはそれを2030年までには3倍に増やすとしている。Foxconnは、このタイ工場によって正式に自動車メーカーとしての地位を確立することになるが、同時にEVメーカーであるFIsker(フィスカー)と共同で米国にも工場を建設していて、こちらも2023年の生産開始を目指している。両社は、5月に「Project PEAR」と呼ばれる共同契約を締結した

関連記事:フォックスコンと米Fiskerが電気自動車製造に関する正式契約を締結

データと分析のコンサルティング会社であるGlobalData(グローバルデータ)のシニアオートモーティブアナリストであるBakar Sadik Agwan(バカール・サディク・アグワン)氏は「タイはEVの需給面ではかなり新しい国であり、生産しているメーカーも限られています」と述べている。「タイは、他の市場と比較して、自動車製造に適した政策と伝統を持っていて、Foxconnにとって大きな価値があります。また、中国ではByton(バイトン)と製造提携していますが、現在は保留になっていると言われています。中国は最大のEV市場ではありますが、EV市場が細分化されているために生産能力過剰の問題を抱えており、多くの自動車メーカーが十分なマージンを得ることができない状況になっています」。

タイ政府がFoxconnを支持しているのは、将来的にそれを「EVハブ」として現地生産を奨励することで、2030年までに総生産量に占めるEVのシェアを30%にまで高めたいと考えているからだ。

画像クレジット:SAM YEH/AFP/Getty Images

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(文: Rebecca Bellan、翻訳:sako)

GMがハマーEVなどの動力源となるモーターの詳細を発表

General Motors(ゼネラル・モーターズ)は、近日登場するUltium(アルティウム)バッテリーの能力については多くの時間を割いて語ってきたが、このバッテリーが動かすモーターについては多くを語ってこなかった。米国時間9月21日、それが変わった。同社は新しいUltium Driveモーターの詳細について語った。この日発表されたシリーズは3つのモデルからなる。180kW前輪駆動モデル、255kW後輪・前輪駆動モデル、および62kWの全輪アシストモーターだ。最初の2つは永久磁石モーターでGMは重希土類への依存度を減らすために設計した。

それぞれのモデルの具体的なトルクや出力密度について同社は言及しなかったが、それぞれに関して「完璧な」性能を提供するという。さらに同社は、2022 Hummer EV(2022年型ハマー EV)が255kWモデルを3基搭載することを明らかにした。GMは3基のモーターが合わせて1万1500ft/lb(1万5592 Nm)のトルクを生み出し、同車が時速0から60マイルまで約3秒で加速すると説明した。

GMは、同社のエンジニアが安定性を念頭においてモーターを設計したと語った。3種類とも同じようなツールと生産技術を用いてつくることができる。また、パワーインバーターなどの部品を直接モーターに統合することが可能で、それによってコストを削減し製造を単純化できるという。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Igor Bonifacic(イゴー・ボニファシック)氏はEngadgetのコントリビューティング・ライター。

画像クレジット:GMC

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(文:Igor Bonifacic、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アウディが最新電動SUV「Q4 e-tron」の米国導入を発表、約493万円から

Audi(アウディ)は、2025年までに30台以上の電気自動車およびプラグインハイブリッド車を市場に投入する計画の一環として、拡大するポートフォリオの中で4番目および5番目の電気自動車となる「Q4 e-tron(Q4イートロン)」および「Q4 Sportback e-tron(Q4スポーツバック・イートロン)」の米国導入を発表した。

2019年のジュネーブ国際モーターショーでコンセプトモデルとして初公開されたQ4 e-tronは、アウディの電動SUVではエントリーモデルにあたり、価格もそれを反映したものとなっている。米国では1095ドル(約12万円)の運送費を含め、4万4995ドル(約493万円)からと設定されている。注目すべきは、電気自動車のQ4が、ガソリンエンジンを搭載する同社のSUV「Q5」よりも、約1000ドル(約11万円)安いことだ(現時点で日本仕様・価格は未発表)。

米国で販売されるQ4 e-tronファミリーには、全部で3車種が用意されている。「Q4 50 e-tron quattro(Q4 50 イートロン・クワトロ)」と「Q4 Sportback 50 quattro(Q4スポーツバック 50 イートロン・クワトロ)」は、2基の非同期モーターを搭載する四輪駆動で、EPA(米国環境保護庁)による推定航続距離(一度の満充電で走行可能な距離)は、どちらも241マイル(約388キロメートル)となっている。

もう1台の「Q4 40 e-tron(Q4 40 イートロン)」は、非同期モーターを1基のみ搭載した後輪駆動車だ。そのEPA推定航続距離はまだ発表されていない。基本的にスペックは以下のようになっている。

画像クレジット:Audi/スクリーンショット

新型Q4は、2021年3月にTechCrunchでも紹介したように、その頑強そうな外観のパッケージにアウディの技術が詰め込まれたクルマになっている。特に、オプションとして用意されるAR対応フロントガラスは注目に値する。

大きめのコンパクトSUVに属するQ4は、オーバーハングが短く、ホイールベースは2764ミリメートル。そのため、外側からはコンパクトに見える。しかし内部には、全長1.83メートルの室内空間があり、大型SUVに匹敵する広さだ。Q4 40 e-tronとQ4 50 e-tronはオールシーズンタイヤを装着した19インチのホイールが標準装備となり、Q4 Sportback 50 quattroはより大径のオールシーズンタイヤ付き20インチホイールを標準で装備する。

重要な点は、Q4 e-tronがアウディの親会社であるVW(フォルクスワーゲン)のモジュラー・エレクトリック・ドライブ(MEB)と呼ばれる車両アーキテクチャを共有していること。この柔軟性の高いモジュラーシステムは、VWが2016年に初めて公開したもので、さまざまなEVモデルを効率的かつ費用対効果の高い方法で作るために開発された。

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画像クレジット:Audi

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Uberが第3四半期に黒字化達成か、デリバリーと配車事業が回復

デリバリー事業とモビリティ事業が回復していることを受け、Uber(ウーバー)は米国時間9月21日、予想よりも早い第3四半期に黒字化を達成するかもしれない、と明らかにした。配車サービスのUberは米証券取引員会に同日提出した書類で、第三四半期のグロスブッキング(総取扱高)が最後の投資家説明会で株主に示した予想よりも増加し、また調整後​​EBITDAも力強いものになりそうだと伝えた。

同社は偏在、第3四半期のグロスブッキングのレンジが228億〜232億ドル(約2兆4905億〜2兆5350億円)で、当初約束していた220億〜240億(約2兆4030億〜2兆6220億円)というレンジを上回ると予想している。収益性を測るのに使われる調整​​後EBITDAの予想もまた、赤字2500万〜2500万ドル(赤字27億〜27億円)に引き上げられた。以前は赤字1億ドル(約110億円)よりまし」な数字を予想していた。

「ピンチはチャンスを生む、と言いますが、Uberにとって過去18カ月は確かにそうでした」とCEOのDara Khosrowshahi(ダラ・コスロシャヒ)氏は声明で述べた。

Uberはいま、第3四半期の調整後​​EBITDAでの損得ゼロに向けて着々と進んでいます、とCFOのNelson Chai(ネルソン・チャイ)氏は述べた。非常に危険な不採算性が特徴とされる配車サービスにの経済性にあまり馴染みのない人にとっては奇異に映るかもしれない業績だ。

TechCrunchのAlex Wilhelm記者がExtra Crunchで説明しているように「調整後​​EBITDA」は利子、税金、減価償却費およびその他の費用を差し引く前の収益を計算している。例えばUberは2020年に67億7000万ドル(約7400億円)の赤字だった(前年の85億1000万ドル=約9300億円の赤字より改善していることは認める)。しかし調整後​​EBITDAでは、そうした数字は2020年は27億3000万ドル(約3000億円)の赤字に、2019年は25億3000万ドル(約2760億円)の赤字になった。

Uberはこのほど提出したフォーム8-Kで第3四半期の財務の全体像を見せておらず、明らかになるのは同四半期後に決算を発表するときだ。しかし、同社は投資家に長らく約束してきた調整後​​EBITDAの黒字を第4四半期までに達成できそうだ。

同社は、第4四半期の調整​​後EBITDAは0〜1億ドル(0〜約110億円)を予想していて、より一般的には「調整後​​EBITDAの黒字」を見込んでいると書いている。

それでも、同社にとって調整後EBITDAの黒字を目指してきた長い道のりの先が見えてきた。ここに至るまで、グローバルパンデミック、解雇、そしてそれ以上に高い代償が伴った。

画像クレジット:JOSH EDELSON/AFP / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

MITがテスラ車ドライバーは「オートパイロット使用時に注意散漫になる」研究結果を発表

今週末までには、数千人のTesla(テスラ)車ユーザーが、同社の「Full Self-Driving(フル・セルフ・ドライビング)」と呼ばれる機能の最新ベータ版ソフトウェア(バージョン10.0.1)を、公道で試すことになる可能性がある。だが、米国の規制当局や連邦政府は、いくつかの顕著な事故が起きていることを踏まえ、このシステムの安全性を調査している

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テスラの「FSD」や「Autopilot(オートパイロット)」システムは、名前から想像するのとは違い、実際には完全な自動運転が可能なシステムなどではなく、いわゆる先進運転支援システム(ADAS)に過ぎない。マサチューセッツ工科大学(MIT)は、このシステムが実際にはそれほど安全ではないのではないかという懸念を裏づける新しい研究結果を発表した。人間のドライバーが開始させた同社の運転支援システムが解除されるエポックのデータ290件を調査した結果、部分的にこのシステムを使用している場合、ドライバーが不注意になる傾向があることがわかった。

「視覚的な行動パターンは、『Autopilot』の解除の前後で変化する」とこの研究報告には書かれている。「システム解除前のドライバーは、手動運転に移行した後と比較して、路上を見る回数が少なく、運転に関係のない領域に集中している。手動運転に切り替わる前は、視線が道路から外れている割合が大きく、より長く前方に視線を向けて補われることはなかった」。

テスラのElon Musk(イーロン・マスク)CEOによれば、(オプションとして設定されている)FSDソフトウェアを購入したすべての人が、より多くの自動運転機能を約束するこの新しいベータ版を利用できるわけではないという。テスラはまず、ドライバーが十分な注意力を維持していることを確認するために、テレメトリーデータを使って、7日間にわたって個人の運転指標を取得する。このデータは、所有者の車両を追跡する新しい安全性評価ページにも使用される可能性がある。このページは保険にリンクされる。

MITの研究は、ドライバーがテスラのAutopilotシステムを推奨通りに使用していない可能性があることを示すものだ。Autopilotには交通状況に合わせて機能するクルーズコントロールや、自動的にハンドルを制御するオートステアリングなどの安全機能が搭載されているため、ドライバーは注意力が低下し、ハンドルから手を離すことが多くなる。このような行動が起きるのは、ドライバーがAutopilotの機能やその限界を誤解していることが原因である可能性があり、この機能がうまく働くほど、それらの誤解は強化される傾向があることを研究者たちは発見した。タスクが自動化されたドライバーは、視覚的・身体的な注意力を維持しようとすると自然と飽きてしまい、それがさらに不注意を生むと、研究者たちは述べている。

「A model for naturalistic glance behavior around Tesla Autopilot disengagements(テスラオートパイロット解除時の自然な視線の行動モデル)」と題されたこのレポートは、テスラの「Model S(モデルS)」および「Model X(モデルX)」のオーナーの日常生活を、1年以上にわたってボストン全域で追跡調査した後にまとめられたものだ。調査対象となった車両には、CAN-BUSとGPS、そして3台の720pビデオカメラから継続的にデータを収集する「Real-time Intelligent Driving Environment Recording(リアルタイム・インテリジェント運転環境記録)」データ収集システムが搭載されていた。これらのセンサーは、車両の運動、ドライバーと車両制御装置の相互作用、走行距離、位置情報、ドライバーの姿勢、顔、車両前方の景色などの情報を提供する。MITは約50万マイル(約80万キロメートル)分のデータを収集した。

この研究に関わった研究者たちは「自然主義的なデータに基づき、自動運転下におけるドライバーの注意力の変移の特徴を理解し、ドライバーが運転タスクに十分に従事し続けるためのソリューションの開発を支援することができる」という視線行動のモデルを作り上げた。これは、ドライバー監視システムが「不規則な」視線に対処するために役立つだけでなく、自動化がドライバーの行動に及ぼす安全上の影響を研究するためのベンチマークとしても利用できる。

Seeing Machines(シーイング・マシーンズ)やSmart Eye(スマート・アイ)のような企業は、すでにGeneral Motors(ゼネラルモーターズ)、Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)、Ford(フォード)などの自動車メーカーと協力して、カメラを使ったドライバー監視システムを、ADAS搭載車に導入するだけでなく、飲酒運転や運転障害による問題にも対応している。技術はすでに存在しているのだ。問題は、テスラがそれを使おうとするかどうかである。

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画像クレジット:Bloomberg / Contributor under a license.

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

2人乗りコンパクトEVのEli ZEROが生産開始、欧州で販売へ

コンパクトEV車のアーリーステージスタートアップ、Eli Electric Vehicles(エリ・エレクトリック・ビークルズ)は、同社の主力製品で市街地通勤向けにつくられた「neighborhood electric vehicle(ご近所電気自動車)」の生産を開始したことを発表した。同社はこの2人乗りEVを小規模ロットで生産し、欧州13か国で今後数カ月かけて販売する計画で、価格は1万1999ドル(約131万円)から。

マイクロ電気自動車市場は上昇中で、他にもRenault Twizy(ルノー・ツイッジー)、Citroën Ami(シトロエン・アミ)、チルト式Triggo(トリゴ)EVソーラーアシスト車のSquad Mobility(スカッド・モビリティ)などさまざまなコンパクト四輪車が市場に参入している。価格面では、Eliは1万6000ドル(約175万円)からのTwizyとともにスペクトラムのハイエンド側に位置する。対してAmiは約6000ドル(約66万円)、Squadは6790ドル(約74万円)だ。

Eliの拠点はロサンゼルスだが、生産パートナーは中国にあり、現在進行中の地政学的緊張は同社がまずヨーロッパ戦略を追求している理由の1つだ。州ごとに異なる法律も、公道走行可能な車両を最初に米国で販売することを難しくしている理由だとEliのCEOでファウンダーであるMarcus Li(マーカス・リー)氏はいう。ヨーロッパでは、Zeroは公道走行可能で、スピードの出過ぎない小さなコンパクトカーの文化がすでに作られている。

「ヨーロッパの多くの都市では、たとえばパリのように時速30kmという非常に厳しい法定速度が施行されていて、ウィーンやアムステルダムなどでもそのトレンドが起きると予想しています」とリー氏はTechCrunchに語った。

Zeroは、リサイクル可能ポリプロピレンと高強度アルミニウムで作られており最高速度は時速25マイル(40 km)。長さ約7フィート(2.1 m)、幅4.5フィート(1.35 m)、高さ5フィート(1.5 m)で積載容量は160リットルだ。バッテリー容量は5.8 kWhで航行可能距離は50マイル(80 km)、0から100%まで220ボルト、2時間30分で充電できる。

このマイクロビークルは、電動アシスト付きブレーキ、リアカメラ、パーキングセンサーの他、車室内には充電用USBポート、カップホルダー、冷暖房、チルト可能サンルーフ、7インチダッシュボードディスプレイも備えている。基本カラーはパールホワイトとシルバーで、プレミアムカラーとしてグラファイトとベービーブルーが用意されている。

またEliは最近、StartEngineというプラットフォームで資金調達クラウドファンディングキャンペーンを行うことを発表した。本稿公開時点で、キャンペーンでは今後の生産を進めるための資金22万4705ドル(約2461万円)が集まっている。リー氏によると、現在同社は保有する車両台数以上の予約を受けており、うれしい悲鳴をあげている。

Eliは前回StartEngineのプラットフォームで約140万ドルを集め、これまでに650万ドル(約7億1190億円)以上を調達した。リー氏によると、会社は2020年VC資金調達を試みたが、ベンチャーキャピタルらはEliが車をカーシェアリングに使用するなら投資してもよいと言った。

「正直をいうと、カーシェアリングにピボットしようと考えたこともありました、なぜならそれがほとんどの機関投資家のフィードバックだったからです」とリー氏は言った。「VCたちのビジネスモデルは、投資利益率に関して一般のハードウェア会社とは少々異なり、当社がカーシェアリングと高価値モデルに力を入れて3年以内のリターンを見込めるよにすることを望んでいました」。

ある投資グループは、Eliがカーシェアリング・プラットフォームを自社運用するなら投資してもよいと言ったが、時期はパンデミック直前だったので、最終的にはその方向にピボットしなかったことを喜んでいる、とリー氏は語った。

「販売方法は非常に伝統的なアプローチをとっています」とリー氏はいう。「B2Cはやっていません。販売はKSR Groupという既存の販売網を経由していて、彼らはオーストリア、ドイツ、スイスから始めて、その後ヨーロッパ諸国に展開するという販売戦略をもっています。

販売店を利用することで、アーリーステージ・スタートアップのEliがサービス、配車、試乗などを外部委託することが可能になったとリー氏は語った。

「目標は都市内移動に革命を起こし、都市とコミュニティを新しい形でつなぐことによって渋滞と大気汚染を減らすことです」とリー氏は声明でいう。「急速に変化する気候とともに都市圏が成長を続ける中、Eli ZEROのようにエネルギー効率が高く環境的に持続可能なマイクロEVの可能性は広がります」。

画像クレジット:Eli Electric Vehicles

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nob Takahashi / facebook