産業用ロボットが人間に取って代わるのは良いことだ

Rotherham, UK

【編集部注】執筆者のMatthew Rendallは、Clearpath Roboticsの産業部門・OTTO MotorsのCEO。

間違った人の話を聞くと、北米の製造業は絶望的な状況にあると感じることだろう。

アメリカとカナダの仕事が、過去50年の間に海外へと流出していることに疑いはない。2000年から2010年の間だけで560万もの仕事が消え去った

しかし興味深いことに、外国へとアウトソースされた仕事はそのうち13%にしか満たないのだ。失われた仕事の大部分にあたる残りの85%については、”生産性の向上”、つまり機械が人間を代替したことがその原因となっている。

多くに人にとって、このシナリオは事態がさらに深刻であることを物語っている。中国やメキシコは「アメリカ・カナダ人の仕事を奪っている」かもしれないが、少なくともその担い手は別の人間だ。一方ロボットには、製造業のような分野の仕事をこの世から消し去ってしまう恐れがあると言われている。“How to Keep Your Job When Robots Take Over.(ロボットから自分の仕事を守る方法。)” “Is a robot about to take your job?(ロボットが私たちの仕事を奪おうとしているのか?)” “What Governments Can Do When Robots Take Our Jobs.(ロボットが人間の仕事を奪う中、政府に何ができるか。)” など、人々の恐怖心を利用しようとする動きも多く見られ、もう怖気づかされるのはたくさんだ。

しかし実情は少し違っている。過去20年間でアメリカのインフレ調整済み製造業生産高は40%も増加しており、アメリカ国内の工場が生み出す付加価値も過去最高の2.4兆ドルに達している。つまり仕事の数が減る一方で、製造業の生産高は増えているのだ。製造業に従事する人の教育・給与水準は上がり、彼らは作業員の生産性を向上させるテクノロジーを含め、価値ある製品を生み出している。

実際のところ、主に労働者の高齢化を背景に製造業では200万人もの労働者が不足している。彼らの平均年齢は45歳で、これはアメリカの非農業部門雇用者の中央値よりも2.5歳ほど高いほか、若い世代の同業界への関心も低い。

これまでもテクノロジーが存在する限り、技術の進歩を文字通り破壊するラッダイトのような人たちが存在していた

この数値からは違った結論が導き出される。ロボットは私たちの仕事を奪っているのではなく、私たちの仕事をより良いものにしているのだ。

ロボットを利用すれば安全性は向上するし、パフォーマンスも安定する。海外の労働力を搾取するより道徳的にも優れている。さらにロボットは驚くほど費用対効果が高く、投入資金を12ヶ月以内に回収できることもよくある。つまり、常にコスト削減の方法を模索し、進化のスピードが遅いことに悩まされている製造業にとって、ロボットはゲームチェンジャーだと言えるだろう。

さらにその後に続くコスト削減が連鎖反応を起こし、人がやりたがるような仕事がもっと北米にとどまることになる。そして製造業界は、イノベーションを生み出すことに資金や人員を集中できるようになるのだ。その結果、より良い教育を受け、高度な技術をもった労働者を必要とし、同時に彼らを生み出すような新しい仕事が誕生するだろう。短期的には仕事が減るだろうが、長期的に見るとロボットは労働者・社会の両方に利益をもたらす。

これは何も根拠のない非現実的な見解ではない。歴史的にも、テクノロジーの転換期には一定のパターンが見て取れる。前世紀のあいだに車の作り手は人間からロボットへと代わっていった。その結果、車の生産台数が増加し、車一台当たりの労働者数も以前よりむしろ増えたのだ。労働者は、危険な作業を行う代わりにプログラミングを担当してロボットに大変な仕事を任せ、彼らの給与は以前より増加した。これまでもテクノロジーが存在する限り、技術の進歩を文字通り破壊するラッダイトのような人たちが存在していたが、冷静に周りを見れば、生産性は向上し、生活の質はこれまでにないほど高まっている。

経済的にもこの理論は証明されている。産業革命のように、自動化技術への重点的な投資が行われる時期と、一国のGDPが増加する時期の間には強い相関関係が確認されており、さらにGDPの増加は生活の質の向上と強い関係がある。生活の質の向上とは、ケガの少ない安全な労働環境から、より高度な仕事をこなすことで得られる個人の満足度の向上までを意味しており、それがさらなる好循環を生み出すことになる。高度な仕事をすることで人々の収入が増え、高度な教育も賄えるようになり、その結果より高度な技術をもった労働者が生み出され、彼らがその時間と資金を使って経済をさらに加速させていくのだ。

最近のWashington Postの記事にこの流れが上手く説明されている。「(これこそ)生産性を向上させ、市場経済を豊かにする原動力だ。農業の生産性が向上したことで多くの農家が市街地へと移住し、彼らは市街地で工業経済を支える労働力となった。さらなる生産性の向上のおかげで、最終的に私たちは医療サービスや教育、そして政府を賄えるようになった」私たちは今まさしく同じサイクルの中にいるのだ。

ここでもう一度北米の製造業の現状に立ち戻ってみよう。恐怖心を利用しようとする動きや大げさなメディアの存在、人々のまっとうな不安、むなしく響く政治家の暴言にも関わらず、ロボットは製造業をより良い方向へ導こうとしている。ロボットはこれまでのテクノロジーのように、人の仕事を奪うとされる批判の対象でしかなく、ロボットが奪おうとしている仕事はそもそも人間がする必要がないのだ。

実際には、ロボットのおかげでより多くの(そしてより良い)仕事が母国にとどまり、国内産業が発展し、ミクロ・マクロ両方のレベルで私たちの生活の質が高まっていくだろう。自動化が進み、効率・安全・生産性が向上することで、北米の製造業はただ生き残るだけでなく、私たちのイノベーションや想像力のパワーを世界に見せつけることになるだろう。

結局、ロボットが私たちの仕事を奪っていくのか、と聞かれればそうかもしれない。しかしその代わりに、私たちや私たちの子ども、そして孫たちは、もっと意味があって高収入の仕事につく可能性が高くなるだろう。私の目には、これはまっとうなトレードオフのように映る。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

この「ballbot」は現実世界のBB-8?

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映画スターウォーズ「フォースの覚醒」に出て来る愛らしい球形ドロイドのように可愛くはないが、このカーネギーメロン大学のロボットには映画の特殊効果(それもクールであることは間違いないが)以上の有益さが宿っている。そして信じられるかどうかはともかく、このロボットは基本的に可動部品をもっていないのだ。

いま、あなたはこう考えているかもしれない、「このロボットに関するCMUの記事には『2つの可動部品』と書いてあるぞ、うっかりさん」。しかし、その記事をもっとじっくり読んで欲しい(そうしてくれた人に感謝!)。その可動部品の1つは部屋の中を動き回るロボット自身だ;私たちは紙飛行機を投げたとき、それを可動部品と呼んだりはしない。そしてもう一つは、それが移動に使うボールである。そしてそのボールは上に載ったロボットとは接続されていないのだ!だから私は専門家たちの意見にもかかわらず、可動部品ゼロにこだわっている。ここでは、 私が専門家だ。

ともあれ、このロボットは実際には10年ほどかかってデザインが進化してきたものだ: Ralph Hollisが「ballbot」を創造したのはだいぶ昔のことだが、そのときは機械的に駆動されていた。それが働く方法を説明するのはとても簡単だ:マウスのボールを想像して欲しい、ただしボールが内側の小さなローラーを動かす代わりに、ローラーがボールを動かしているものを。

慎重にこれらのモータを制御することで、任意の方向へボールを回転させながら、ロボットが基本的にボールの上でバランスを保つことを可能にする。生じる問題は、マウスに起きるものと同様だ:ローラーは摩耗したり汚損したりするので、交換しなければならず、モーターは再調整されなければならなかった。

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球面誘導モーター。詳細を示すために裏返されている。

この問題に対する解決策は、マウスに対して行ったような、ボールを無くすことではなかった。その代わりにローラーを無くしたのだ。新しいバージョンでは誘導モーターが使われている。これは磁気的に球体(銅で覆われた鉄球)を、固定子を使って駆動するものだ。なお他の誘導モーターでは球体の代わりにローターが駆動されている。

これによって摩耗が減り、ボールに対する制御のレベルが増大する、なぜなら考慮しなければならない機械的な力がより少なくなるからだ。電圧を調整してやれば、ボール上の磁気力が移動させたい方向へボールを推進してくれる。オンボードシステムは、ロボットを直立させバランスをとる、そして周りから押されたときに元に戻ることができる ‐ 脚付きロボットほどではないが、それでも。

このSIMbot(spherical induction motor=球面誘導モーターから命名)は、まだ研究室内での実験レベルに過ぎないが、おそらくその全方向運動と、洗練されてエレガントな制御メカニズムは、移動に脚または複数の車輪を使用するロボットたちの羨望の源となるだろう。

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(翻訳:Sako)

可愛らしく活動的な、ダイレクトドライブ方式の四足ロボット

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週明けを迎えると、誰しもが暗い気分になるものだ。そこでわたしたちは硬い床でつるつる滑る子犬や手を繋ぐラッコ、あるいは跳ねまわったり、壁をよじ登るロボットなどの動画を見て、心に元気を注入するのだ。今回紹介するロボットも、驚きと元気を感じさせてくれそうだ。

ロボットの名前はThe Minitaurで、もともとはペンシルバニア大学の研究プロジェクトとして生まれたものだ。そこからGhost Roboticsというスピンオフ企業が誕生し、商用利用の可能性を探っているところだ。足の動きを「ダイレクトドライブ」にしているところが新しい。すなわち変速機やスプリング、パワージョイントや減速機などを介さずに、モーターと脚部を直接に接続しているのだ。

そんなことをしては、なめらかな動きが実現できないだろうと考える人が多いだろう。ジョイントやギアを使うことで姿勢を細かに制御したり、あるいは衝撃を吸収することができるようにしているからだ。しかし開発を行ったGavin KenneallyとAvik Deは、モーター自体に周辺機器の機能を担わせることにした。上の写真やビデオにある三角形の足で、跳ねたり走ったりする際に生じる力を予測する。そしてモーターの動きで衝撃をコントロールするようになっているのだ。スプリングやショックアブソーバーを搭載しているような動きに見えるが、この動きはソフトウェアにより実現されているものなのだ。

小走りに動きまわったり、全力疾走したり、あるいはジャンプしたり回転したり、さらには階段を登ったりもする。そのそれぞれでダイレクトドライブとは思えない動きをみせてくれる。このMinitaurにはハイスピードカメラおよびセンサーが搭載されていて、周囲の状況を正確に判断するのに役立てている。たとえばドアを開ける際には、まずドアノブに向かってジャンプするようなことまで行うのだ。

KenneallyはIEEE Spectrumで次のように述べていた。

後ろ足を跳ねあげて逆立ちをします。そしてジャンプして、左足にドアノブが触れるのを検知します。すなわち足が「触角」のような働きもするわけです。触覚はすべてモーターで検知しており、接触を検知するためのセンサーは搭載していません。ドアノブに触ったことを検知した瞬間に足を引いてドアノブを動かすのです。そして足を元の状態に戻すのです。こうした動きの一切はミリ秒単位で行われます。動きを目で確認することはできないほどです。ドアノブを動かしたのではない方の足も空中にあるわけですが、これでドアを押し、回したノブがただもとに戻ってしまうようなことがないようにしています。もちろんこの動きは逆立ち状態にある自分自身を元の姿勢に戻すのにも役だっています。姿勢が元に戻り始めたら足は折りたたんで、着地姿勢をとるようになっています。

なかなかクールな仕組みのように思える。なんとなく人に対する戦闘要員のように見えないかと言われればそんな気がしないでもない。そう思ってみていると、だんだん不気味にも見えてくる。

しかしそんな心配をしなくてはならないのは、まだ当分先の話だろう。今のところは、このMinitaurが元気に動きまわる様子を微笑ましくみておけば良いのだと思う。研究者の方や、ロボット大好きな人たちは、ぜひこのロボットを手元におきたいと考えるかもしれない。現在のところの価格は1万ドルあたりだとのことだ。生産台数が増えることになれば、もちろん価格は下がっていくことになるだろう。高額なアクチュエーターやギアを用いていないのも、低価格化の一因となり得る。

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(翻訳:Maeda, H

ロボットが居る、今そこにある未来

TO GO WITH STORY BY KATHY KATAYI AND JUNIOR KANNAH
This picture taken on January 22, 2014 shows a traffic robot cop on Triomphal boulevard of Kinshasa at the crossing of Asosa, Huileries and Patrice Lubumba streets. Two human-like robots were recently installed here to help tackle the hectic traffic usually experienced in the area. The prototypes are equipped with four cameras that allow them to record traffic flow, the information is then transmitted to a center where traffic infractions can be analyzed. The team behind the new robots are a group of Congolese engineers based at the Kinshasa Higher Institute of Applied Technique, known by its French acronym, ISTA. AFP PHOTO / JUNIOR D. KANNAH        (Photo credit should read Junior D. Kannah/AFP/Getty Images)

【編集部注】著者のAllan Martison氏はStarship TechnologiesのCOOである。

Walmartは、自律ショッピングカートの実験を行っている。Domino、Uber、そしてAuroは自動運転に多額の投資を行っている。ロボットは、警備員として働き、手術を行い、食料品店の在庫をチェックし、倉庫作業を支援し、ルームサービスを届け、海底の宝物を探してくれさえする。

ロボット工学が制御された環境を離れて、人間の側の実世界に関わるようになるとき、疑問が残される:私たちがロボットとお互いにやりとりを行い、働き、語りかけるやりかたにどのような影響を与えるのだろうか?

マシンとの相互作用

すでに操縦者がオートパイロットを使って、ドローン、調査ロボット、そして自動運転車を操作しているところを見ることは当たり前になってきている。これらは、単なるサイエンスフィクションの中の壮大なビジョンではない;それはいまや現実なのだ。そして、私たちの日常生活におけるロボット利用の最も驚くべき成果の1つは、ほとんどの人が、それにまったく気づいていないようだということだ。

例えば、自動配達のために使用されるロボットが、より普及するにつれ、あなたの通勤の足が、そこにいる誰か他の人によって提供されるだけでなく、他の人々の流れに違和感なく混ざった異なる形状や大きさのロボットによって提供されることも考えられる。

あなたが食料品の買い物をしているときに、頭上をドローンが飛んで在庫のチェックを行う一方で、自動ショッピングカートが後をついてくる。その一方、裏の倉庫ではロボットたちが忙しくアイテムを選び出し、オーダーに応えるために商品をある箇所から別の箇所へと動かしていく。

これは、すでにサンフランシスコのStanford Shopping CenterとUserの自動車検査場で見ることができる。私たちのオフィス、ショッピングモール、そして小売店は、人間の警備員が伴ったマシン警備員によって保護される。

OceanOneのようなロボットも登場するだろう。深海作業でダイバーと一緒に働き、ダイバーが到達できない深度から宝物のようなアイテムとデータを回収する人魚のようなロボットだ。実際、人類がこれまで敢えて行こうとしていなかった場所で私たちと一緒に働いてくれる、様々なロボットがこの先生み出されることだろう。

ロボットの存在で、法律や規制はどのように変わるのだろう?

ロボットは、誰と何が公共の場所を移動することを許されるのかについての、新たな先例を設定する。現在、歩道上を走る自律車両に関する規制は、市ごとそして国ごとに異なっている。しかし、一つだけ確かなことがある。ロボットが日常的なものになるにつれ、議会はより注意を払わなければならなくなり、ロボットとそれを使う企業に対する規制と保護を決めていく必要がある。

欧州議会が今年5月に起草し、欧州委員会に考慮を促した動きは、以下のようなものだった「少なくとも、最も洗練された自律ロボットは、特定の権利と義務を有する『電子人間』(electronic persons)のステータスを持つものとして扱うことが可能である」。これは、人間の労働者に対する場合と同じように、ロボットに対する社会保障を支払う責任を企業に負わせるものだ。

すでに操縦者がオートパイロットを使って、ドローン、調査ロボット、そして自動運転車を操作しているところを見ることは当たり前になってきている。

法案はまた、自律ロボットと法的責任をカバーする基金の設定を同時に行う登録制度を提案したり、組織が人間の代わりにロボットを使うことによって可能になった社会保障の節約額を税収のために宣言させることを提案したりしている。この動きにはドイツのVDMA(エンジニアリング協会)などの組織からの強烈な反対が起きていて、議会を通過するには多大な政治的バックアップを必要とするだろう。結果はどうであれ、この動きはロボットの権利とそれらに対する人間の責任に関する重要な疑問に光を当てることになった。

米国内には、既にロボットが特定の作業をすることが許された場所が沢山ある一方で、多くの州ではまだ具体的な規制の検討が必要とされていない。ワシントンD.C.が最近、「Personal Delivery Device Act of 2016(パーソナル配送デバイス法2016)」という法律を制定して米国におけるロボット規制に先鞭をつけた。この法律は配送ロボットに関する規則と規制を概説し、そして、この種のロボットが今後国の首都内で稼働することを許諾したものだ。この法律は、より多くの市や州が、こうした新しいテクノロジーに対処する重要性に気づかせるための1つの例となるだろう。

連邦航空局(FAA)は、メーカーや政治家からの多大な圧力を受けた後、6月に55ポンド以下の小型ドローンの商用利用に関する運用規則を発表した。規則は、多くの者が望んでいたものよりも厳しいものだった。パイロットは有資格者でなければならず、ドローンは常に視界の中に留まっている必要がある。パイロットはまた、移動する車両に乗っていることはできず、またTSA(運行安全局)による審査を受ける必要がある。

規制によれば、ドローンは最高で400フィート(約121メートル)の高さまでしか飛ぶことができない。伝えられる限り、規則への反応は好意的なものが多かったが、その影響で、Amazonはドローン配送のテストをより田舎や郊外の地域で行うために英国政府とパートナーを組むことになった。英国民間航空局はAmazonに、FAAの規制では拒否された配送テストの許可を与えた。

自律型ロボットの登場が、多くの日常タスクに対する私たちの理解を変えてしまうことは間違いない。それはサービス提供者や配送業者との対話のやりかたを変えてしまう。私たちのロボットに対する認識は、道路上、ショッピングセンター、そして家庭でありふれたものになるにつれ、進化を続ける。毎日の通勤で、仕事の場で、そして余暇の時間で、ロボットと人間のやりとりは普通のものとなって行くだろう。

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(翻訳:Sako)

Disruptのステージにロボット登場―Boston DynamicsのCEO Marc Raibertが解説とデモ

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サンフランシスコで開催中のTechCrunch Disruptの参加者は四脚ロボット、Spotがステージに登場して身軽に動きまわったことに驚いた。Boston DynamicsのロボットについてはYouTubeに多数のビデオが投稿されているものの、目の前で実物を見るのはやはり印象が強烈だった。

Boston Dynamicsのファウンダー、CEO Marc Raibertはステージ上でTechCrunchのBrian Heater記者のインタビューを受けた。海兵隊が一時テストした四脚ロボットのBigDogから人型二足歩行のPetmanまでまでBoston Dynamicsが開発してロボットを紹介するかなり長いビデオが上映され、Raibertがそれぞれに簡単なコメントを加えた。

ステージに登場したSpotロボットは特に商品の宅配を意識して開発されている。見たところは大型犬のようで、さまざな寸法の階段を上り下りしたり、ドアを開けて室内に入ったりできる。Boston Dynamicsのロボットは世代を重ねるごとに小型化している。数カ月前に発表された最新世代のSpotMiniはSpotをさらに小型化したものだ。同社のモットーは「スモール・イズ・ビューティフル」らしい。

「われわれはロボットをフレンドリーな存在にするためにと努力している。残念ながらわれわれの250ポンド〔113kg〕のロボットには誰も近寄りたがらない」と
Raibertは言う。SpotMiniロボットはなら狭いアパートの部屋でも歩き回れる。デモビデオでは生きた鶏を使ってSpotMiniの折りたたみ自由のアームが安定化されている様子が説明された。SpotMiniは一滴もこぼさずにワインを注いだグラスを運んでくることができる。たぶん世界で一番執事に近いロボットだろう。

「YouTubeチャンネルでは嫌いと好きの比率が20対1だった。数年前は50対1で嫌われてきたから、一般視聴者の態度は好意的になっている。しかしメディアはロボットといえばホラースーリーばかり好むのは困ったものだ」とRaibertは嘆いた。

SpotMiniの大型の兄弟、オリジナル版のSpotDisruptのステージを歩き回っただけでなく、足を伸び縮みさせて姿勢を変えたり、横歩きしたり、その他高等馬術で要求されるような動作を披露した。ロボットは二本脚でジャンプしたが安定を崩さなかった。

GoogleがBoston Dynamicsの買い手を探しているとぃう噂について、Raibertはコメントを避けた。

「〔Googleに〕買収されたときに私は『DARPAも大きな予算を持っているがGoogleの予算はもっと大きい。Googleは〔DARPAより〕さらに大きな野心を持っている』と言った。またGoogleグループの一員になったことでBoston Dynamicsの自由度はさらに拡大した」とRaibertは述べた。

RaibertはBoston Dynamicsの製品は恐ろしげな軍用ロボットばかりではないことを証明しようとしている。Disruptの聴衆から上がった「おお」という歓声から察れば、このキュート化キャンペーンは功を奏しつつあるようだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

6歳のSriyaがデモしたペッパーはハイタッチで自閉症を改善

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アメリカの児童は64人に1人の割合で自閉症スペクトラムに起因する問題を抱えているという。明らかにこれには対処のための研究が必要だ。TechCrunchが開催しているSF Disruptのハッカソンでは6歳のShriya Sreejuがこの点を訴えた。Sreejuが紹介したのはペッパー・ロボットをプラットフォームに利用した自閉症ソリューションだ。

「ペッパーはスクリーンにカードを表示します。子供が正しいカードを選んでカメラにかざすと、ロボットとハイタッチできます。ペッパーは『グッドジョブ!』と言います。ハイタッチに2回成功するとペッパーははうれしがってダンスを踊ってくれます。スクリーンにはニコちゃんマークが表示されて感情の表現を助けます」とShriyaは説明しいた。

ロボットが支援する

Sriyaが紹介したとおり、このロボットは自閉症の子供たちが感情、情緒を把握するのを助けることを目的としている。

「パパがコンピューターがやる部分を作りました」ということだ。Shriyaはこのロボットがどのように動くべきかをデザインした。「もし間違ったカードを選ぶと、ペッパーはそのカードの名前を言います。自閉症の子供たちはこれによってカードを選ぶという作業への集中を切らさずにすみます」。

なるほどSriyaはソフトウェアそのものをコーディングしたわけではないが、実際に話し合ってみたところ、彼女がこの問題に本当に熱心に取り組んでいることがわかった。その熱心さはステージでの説明を見ればはっきり感じ取れる。プレゼンには確信があり、明快でわかりやすかった。お許しいただきたいが、一部のハッカソン参加者のプレゼンよりわかりやすかったと思う。

プレゼンを終えてステージから降りてきたSriyaに「緊張しなかった?」と尋ねてみた。

「いいえ?」というのが答えだった。質問自体ナンセンスだったらしい。たいしたものだ。

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Sriyaのパパでメディカル・スタートアップのエンジニアであるSreejumon Purayilによれば「SriyaはDash and Dotでずっと遊んでいた。2人いろいろなテクノロジーを試したのです」ということだ。

Sriyaは将来の進路をテクノロジーに決めたわけではない。「私はいろいろなことが好きです。アート、工作、テクノロジー、それに体操も好き」ということだ。

下のビデオでハッカソンでのプレゼンを見ることができる。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

「AI時代」の子どもたちはロボットの夢を見るか?

Little boy holding his daddys hand, wearing box over his head with robots face drawn on it.

編集部:Crunch Network ContributorのRemi El-Ouazzaneは、最近Movidiusに加わった。前職ではTexas InstrumentsのOpen Multimedia Applications Platform (OMAP) 部門担当およびグローバル業務部長を務めた。

想像してみよう、ここに5歳の女の子がいる。母親はSiriに、父親はAlexaに話しかけているのを毎日のように見ている。こうしたやり取りは、その子の目にはどのように映っているだろうか。最近の子どもたちは、心を持っているような、あるいは関わり合いの対象として実在物のようにすら見えるコンピューターを目の当たりにしているのだ。今の子ども世代にとってのマシンというもの - そして世界そのもの - の認識は、当然私たちのそれとは大きく違っているのではないだろうか。

人工知能(AI)は、今日最も前途有望なテクノロジーのひとつだ。たとえ私たちの生活様式、経済の動向、社会が機能する方法に衝撃的な変化をもたらす可能性が低かったとしても、そのことに変わりはない。膨大な量のデータと、それを分析する計算力のおかげで、テクノロジー企業はまるでゴールドラッシュの様相を見せるAI分野で進歩を遂げている

ディープ・ニューラル・ネットワークの活用のような新しいアプローチは、AI分野では画期的な成果をあげた。その一部は、次の10年では起こらないだろうと予測されていたほどだ。Googleが囲碁の世界チャンピオンを負かしたのは有名なだし、今後も推論や計画の組み合わせによるディープラーニングの進歩、あるいは創造性とアートのエミュレーションすら含め、さらに多くの事例が登場することだろう。

機械学習のアプローチはAIへと進化を遂げつつあり、医用画像から株取引にまで応用されている。それによりマシンはビッグデータの多大なる利点を保ちつつ、より人間らしい方法で思考できるようになるのだ。

2016年現在、私たちの多くがコンピューターの使用における次世代の始まり — AI革命 —  に立っていると信じている。この「人工知能の時代」が「モバイルの時代」を継承すると仮定するならば、このことは「ジェネレーション I」(情報化時代)を継承する子どもたちにとって、何を意味するのだろう?「AIの時代」に育つことの意味とは?そして社会全体として、私たちはこの変化をどのように促進し、この進歩が善用されるようにできるだろう?

現在のオートメーションに関する議論は、すでに対立があることを示している。それが自動運転車、工場のオートメーション、あるいはロボット手術についてであろうと、この話題に不安あるいは疑念すら抱いてかかる大勢の人々がいるのだ。

人が行っている仕事の大部分をマシンが遠隔で再現するなんて突拍子もない考えだと多くの人が思っている。というのは、マシンたちの優雅さに欠けた進歩の過程を目にしてきたからだ。今生きている大人なら、日常生活にコンピューターが存在していなかった世界を、また黎明期における成長痛の目撃例を思い出せるだろう。分厚いマニュアルやクラッシュ画面、2000年問題のバグに苦しめられた、あの時代だ。今の子どもたちが目にする直感的かつ堅ろうで、信頼できる現在のシステムと比較になるだろうか。

子どもたちはもう間もなく、マシンを「エンジニアリングの偉業」ではなく、「感覚をもった存在」として認識しながら育っていくだろう。

しかし、一部の人々がいくら懐疑的になったところで、事実を否定することはできない。AIが工程を改善し、安全と効率を向上しているという見方は広く認められている。やがて車のハンドルをマシンに明け渡さないと軽率あるいは公然の無責任として受け取られる日が来るだろう。法的な観点では、1975年(41年前)のKlein対米国連邦判例がすでに先例となっている。この件ではパイロットが自動操縦装置を解除し、手動操縦を選択したことが怠慢とみなされたのだ。人々が車の自動運転を解除して手動で運転することを選び、怠慢とみなされて訴えられる日まで、あとどれだけかかるだろう?

TeslaのCEO、イーロン・マスクは、自社の自動運転機能がアメリカ国内の自動車平均よりも10倍安全であると示せた時点で「ベータ版」と書かれたシールをはずすと述べた。しかし将来的にシールが取れたとしても、統計的に10倍安全なオプションを意図的に避けているという理由で、「無責任な行動をとっている」と手動ドライバーを非難するのは難しいだろう。AI世代ならばそんな説得工作がなくても、マシンに主導権を明け渡すのではないだろうか。

オートメーションを受け入れたあかつきには、社会における生産活動と労働の捉え方は根本的に変化するだろう。AI世代が生活のあらゆる面でオートメーションを取り入れれば、経済はそれに適応せねばならないし、実際に適応の道筋をたどることになるはずだ。富の再分配、私企業、あるいはユニバーサルな生活賃金のような概念について対処する必要も出てくるだろう。技術的かつ知的な苦闘のあとには、もっと大変な作業が待ち受ける。コンピューターが発明される200年も前に生まれた1人の男の著述に根付いた経済システムと「自動化を認めた世界」を順応させる、あるいはまるごと入れ替えるという哲学的な課題だ。

I世代がiPadとスマートフォンを生まれながらに受容したのと同様に、AI世代は、AIの備わったマシン - 精神と、思考(として認識される)能力が宿るマシン、さらには人工的な共感性やカリスマすら備わったマシン - を当たり前のように受容するだろう。

社会が大きくて根源的な問いに答えを出さねばならない一方で、AI世代としても自分たちの私生活でどのようにAIを取り入れるのか考える必要が出てくる。チャットボットとの会話や仮想デートの利用は、今でこそ「不気味」の領域に入ってしまうが、iPhone上のSiriや、キッチンに置いたAlexaに話しかける両親のもとで育った子どもたちにとっては、移ろいやすい人間関係を避け、シミュレートされた関わり合いに興味をもつのも、敷居は低いだろう。

未来の世代にとっては「ロボットの権利と保護」という発想も、大して違和感がなさそうだ。当然のことながら権利には責任がついてまわる。いつの日か自動運転車が殺人の罪で訴えられるようになるだろうか。あるいはお手伝いロボットが刑事的な違法行為で起訴されるのだろうか。冷笑する前にちょっと思い出してほしい。私たち自身の司法システムがサルを裁こうとしたのは、ほんの少し前のことだったではないか。

子どもたちはもう間もなく、マシンを「エンジニアリングの偉業」ではなく、「感覚をもった存在」として認識しながら育っていくだろう。彼らにとっては、「何がAIを『真のAI』たらしめるのか」という哲学的な議論が争点になるだろう。なぜなら、実際に「何が」AIを動かしているのかに気づくよりもずっと前に、マシンが人間らしい方法でインタラクションする世界(そう、驚くべきことに人間「だけ」に向かって!)で彼らは育つのだ。本物そっくりな人格や共感のシミュレーションのおかげで、マシンの擬人化はさらに簡単になるはずだ。

車輪の発明を目の当たりにした私たちの祖先は、おそらく「車輪ってけっこう便利だな」とは思っただろうが、その後も数多くの技術の進歩にとって重要な役割を果たすことになるなどとは思いもしなかったはずだ。私たちは、というと、AIが未来の世界に影響をもたらすだろう、と、かろうじてその方法を想像し、うっすらと感じ取ってはいるように思える。しかし、人間社会がここで述べたような課題にどのように向き合い、「必ずしも人類だけが知的な存在ではない世界」に順応するかは、時間のみが知るところだ。

画像提供: SALLY ANSCOMBE/GETTY IMAGES

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(翻訳:Ayako Teranishi / website

日本の羽田空港には道案内をしてくれる(かわいい)ロボットがいるぞ!

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ロボットは友だちだ。少なくとも羽田空港ではそうだ。上の写真にある小さなロボットたちを見つけたら、ぜひ近づいていって目的の場所までの道を尋ねてみると良いだろう。日立製作所のEMIEW3が、東京にある主要国際空港にて第一段階の実証実験を行なっているところなのだ。実験は第2旅客ターミナルで行われ、旅行者に対して英語および日本語でのガイドを行う。

EMIEW3は、日立製ヒューマノイドロボットの第3世代となるものだ。まさに今回実験を行うようなサービスを提供することを目的として開発されている。第一段階のテストではEMIEW3は、専用のカウンター内にて質問を受け付ける。9月2日、および6日と7日にテストされる予定となっている。日本語と英語の双方の質問に応じ、言葉を使って案内をする。さらにカウンター脇に設置された、施設内マップなどを表示する情報ディスプレイとも連動して詳細の情報を提供するようになっている。

この第一段階テストでは、ロボットの役割は、質問入力プロセッサーといった感じだ。質問を受けて応答しつつ、詳細情報をモニター画面で表示するようになっているのだ。テストが9月8日から9月14日によていされている第二段階となると、活躍の場所をカウンター外に広げる予定だ。カウンターの外で質問を受け、必要に応じて利用者をディスプレイの一まで案内して、情報を提供するようになる。そして12月に予定される第三段階では、EMIEW3自身が目的地の場所を問うてきた利用者を、目的地まで案内することを予定している。

EMIEW3はヒューマノイドではあるが、もちろん人間ではない。何に見えるかといえば、未来からやってきた自動応答ロボット猫といった感じだろうか。個人的には、ぜひとも話しかけてみたいと思わせられる存在だ。

ちょっと羽田までのチケットを予約してきてみようか、などと考えてしまっているのだ。

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(翻訳:Maeda, H

ロボットも猫のような頬髭(ほおひげ)があれば精密な方向感知や匂いの発生源発見ができる

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鼠(ねずみ)などの頬髭(ほおひげ)のある動物は、人間にない感覚を利用する。彼らは迷路を走り抜けたり、人間の顔をなめてそこにバーベキューソースがないことを確認できるだけでなく、科学者たちの発見によれば、一部の動物は、垂れるように生えている頬髭使って風の方向を知ることができる。それは、未来の、方向を感知するロボットに応用できるかもしれない。

ノースウェスタン大学のMcCormick工科大学院の学生たちは、鼠たちが自分の頬髭を使って空気の流れの源(みなもと)を突き止めることを見つけた。それは一見、常識のようだが、これまではそれを証明する方法がなかった。

この発見に導いた実験で、共同研究者のYan YuとMatthew Graffは、直径6フィートの円卓の周縁に、5つのファンを等間隔で半円状に置いた。各回の試行でひとつのファンをランダムに選び、卓の反対側にある“出発ドア”に向けて風を送った。ドアから出たラットは、風を送っているファンを目指して歩き、そのファンの前にある穴に落ちなければならない。各ファンの前の穴から卓下部に導くトンネルがあり、その先に、正しいファンを選んだごほうびがある。卓上部のカメラが、ラットたちの成績を記録した。

 

実験に参加したラットの一部は、頬髭を苦痛を与えずに切られていた。彼らの成績は、ほかのラットに比べて20%劣った。ラットたちは風の方向を判断するために、あらゆる感覚を利用した…毛に当たる風の感触や小さな鼻に感じる風の向きなど。しかし、もっとも役に立ったのが頬髭であることは、明らかだった。

研究論文を書いたChris Breseeによると、“ラットは明らかに複数の手がかりを利用している。しかし彼らがいちばん重視しているのは頬髭であり、野生の鼠が自然を探究するときも頬髭で風を感知するのだろう”、という。

チームは今、ロボットに人工的な“気流センサー”を付けることを研究している。その可撓性のシステムは、風で振動する。その人口頬髭の下にはレセプターがあって、センサーのデータを位置データに翻訳する。未来のロボットはこんなセンサーを使って自分の位置を知り、自分のスピードや、風の上流/下流方向を感知できるだろう。

教授のMitra Hartmannはこう語る: “気流の構造を推定できる能力はとくに、匂いの発生源を特定するために重要だ。匂いの元を検出できれば、爆発物や、有害化学物質や、生物学的物質の発見に利用できる”。

一部の馬鹿どもにとっても、便利かもしれないな。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

コンピューターアートをきっかけにロボットが受け入れられるようになる?

These robots can play any tune requested by an audience, according to their creator, Didier Jouas Poutrel.

【編集部注】執筆者のMotti Nisaniは、emazeのCEO。

多くの人は、ロボットで溢れる未来がゼロサムゲームだと考えている。つまり、人間かロボットのどちらかが世界を動かすことになるという考え方だ。陰謀論に関するウェブサイトだけでなく、ニュースのヘッドラインを見てみても「30年以内にほとんどの仕事がロボットに奪われてしまう」や「将来たくさんのロボットがいる中、人間の仕事は少ししか残されていない」といった悲惨な予測で溢れている。中には、自分の仕事が「クリエイティブ」や「人間中心」の分野だから大丈夫だと考えている人もいるかもしれないが、このリストを見るとそんな人たちも心配になるかもしれない。

もはやアートの世界でさえも安全ではないのだ。コンピューターがアルゴリズムを使って芸術作品をつくりだす「コンピューターアート」の技術が現在盛り上がっている。今年新たなプラットフォームであるMagentaを発表したように、Googleが関わりだすとその分野への取り組みが本気なのだと気付かされるだろう。「Magentaは、音楽やアートをつくるためのマシン・インテリジェンスに関する最新技術を推進する研究プロジェクトです。機械学習の技術は、既に音声認識や翻訳などの分野で、コンテンツを理解するために広く利用されています。私たちは、Magentaを使って現在行っていることの反対側、つまり音楽やアートのつくり方を学習し、最終的には人を惹きつけるような芸術作品を自分自身で生み出すことができるようなアルゴリズムの開発を行いたいと考えています」とGoogleはMagentaについて語っている。

では人間のクリエイティビティの時代は終わったのか、というとそうでもない(少なくともまだそうではない)。Googleが6月にMagendaを発表した際、その初めての作品となる1分23秒の曲も同時に紹介されていた。それを聞いた人は、ひとつの曲としてはそこまで評価していなかったものの、コンピュータ自らが作曲を行ったという事実には感銘を受けていた。Magentaやその他のコンピューターアート関連プロジェクトでは、ニューラルネットワーク技術を利用して作品が作られており、ルーブル美術館に展示されるほどのレベルにはまだ達していないが、そのソースとなっているものを考慮すると、なかなかの可能性を秘めている。

ロボットは多くのことに長けているが、全て上手くこなせるわけではないということが分かってきた。

しかし、人間もまだまだ終わりではない。ロボット技術は、多くの人が信じる程の脅威にはならないという議論も存在するのだ。このような意見を持つ評論家によれば、ページビューを目的としたジャーナリストやブロガー、もしくは、最低賃金や政府の補助金増額といった、ロボットに仕事が奪われるようになると当然必要になってくるお金を目的とした福祉国家賛成派によって、ロボットの脅威に関する情報は誇張されているかもしれない

ロボット技術にそろそろブレイクスルーが起き、人間の仕事を奪う(または人間を檻に閉じ込めてしまう)ことになると感じている人がいる一方、この盛り上がりは、投資家に今ロボット業界がアツいと信じこませるための策略に過ぎないのかもしれない。ちょうど同じようなことが数年前にビッグデータに関して起きていた(そしてこれもそこまで上手くいかなかった)。

というのも、ロボットは多くのことに長けているが、全て上手くこなせるわけではないということが分かってきたのだ。特に、地図を作ったり、ものをすぐに認識するなど、応用的な動作を行うのに必要な、基本的なタスクの処理にはまだ難点が残る。

MITの教授である、AI専門家のDavit Autorによると、「ジャーナリストやプロのコメンテーターは、機械による人間労働力の代替の度合いを誇張した議論を展開し、生産性の向上や、賃金の上昇、高い技術をもった労働者の需要の高まりといった、機械の発達に伴う補完性を無視しています。柔軟性や判断、常識といったスキルが必要となるタスクで、機械が人間に取って代わる上での課題は、未だに大きなものとして残っています」

それよりも、人間とロボットの「パートナーシップ」が今後発展し、ロボットや、ビッグデータ、拡張現実(AR)、さらには真価を発揮しつつあり、今後も進化を続けるであろうその他の最新技術の力を人間が利用することになるとAutorは考えている。そして、そのパートナーシップの最先端が、驚くべきことにアートなのだ。様々な分野のアーティストたちが、テクノロジーを駆使して、国際的な賞や称賛に値するくらいユニークで素晴らしい新たな作品を生み出している。

そこまでの才能に恵まれていない人も、オンライン・オフラインに関わらず、そこかしこに溢れている最新のツールを上手く利用することで、芸術力の底上げができる。

例えば、アメリカで最も有名なアーティストの1人であるJeff Koonsは、キャンバスアートや彫刻、「雑貨」の制作にテクノロジーを用いていることで有名だ。2013年に発表された彼の作品のひとつである「Balloon Dog Orange」がオークションで5840万ドルで落札され、彼は存命する中で最も作品に高値がつくアーティストとなった。2014年には、ニューヨークのホイットニー美術館で、Koonsの作品の回顧展が初めて行われた。初めてというのも、Koonsの作品をきちんと展示するのに必要なテクノロジーを用意するのは、とてつもなく大変な作業なのだ。なぜそこまでテクノロジーに頼った作品をつくるのかという理由に関して、あるインタビュー中にKoonsは、「私が作品の作りはじめに持っているビジョンが、制作中も、完成したときにも変わらずにあり続けることができると安心できるからです」と語った。

Koonsのように、コンピューターやテクノロジーを使って、美しくて素晴らしい芸術作品を生み出している人間のアーティストはたくさん存在する。もちろん、全てのアーティストがKoonsのようなキャリアを築けるわけではないが、そこまでの才能に恵まれていない人も、オンライン・オフラインに関わらず、そこかしこに溢れている最新のツールを上手く利用することで、芸術力の底上げができる。これは「イカサマ」ではなく、彼らはこれまでとは違う新しいメディア上で作品をつくっているに過ぎない。作品はアーティストが手がけており、もしもオンラインツールを使うことで作品がより良くなるのであれば、それを利用するまでだ。

Googleでさえ、アートを人間とテクノロジーのパートナーシップの賜物だと捉えている。Magentaは、現在自分で作品をつくれるように「トレーニング」されているところだが、Googleによると、このプラットフォームの本当の目的は、「アーティスト、コーダー、そして機械学習の研究者から成るコミュニティをつくることにあります。Magentaのコアチームは、今後音楽やアートをつくるためのオープンソースのインフラ開発を行う予定です。まずは、音声と動画を対象として、MIDIのようなフォーマットに対応したツールを準備し、さらにはアーティストと機械学習モデルを結びつけることができるようなプラットフォームをつくっていきます」

「アーティストやミュージシャンが新しいツールを使ってどのような事をするのかは分かりませんが、今後それを紐解いていくのが楽しみです」とGoogleは語る。人間のアーティストがテクノロジーを使って考えだす作品は、恐らくコンピューターだけでつくり出した作品よりもずっと面白いものになるだろう。結局のところ、RickenbackerやGibsonといったエレキギターブランドも、当時の革新的な技術が搭載された製品を開発した際に、「ジミ・ヘンドリックスやセイント・ヴィンセントなどの登場を予期していなかったんです」とGoogleは言う。

このように、アートは社会全体に手本を示すことさえできるのだ。ロボットだけでもできるが、ロボットと人間が一緒にやればもっと上手くできる。こんなにアートを身近に感じられることがあっただろうか。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

SoftbankのPepperロボットがアメリカのハイテク製品ショップで販売員のアルバイト

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アジア各地の小売店にPepperが進出中だ。日本のファーストフード店ではレジ係をしているのが一例だ。Softbankのこの人間型ロボットはアメリカでは職を見つけるのに苦労していた。しかしアメリカでのリリースを年内に控え(最初の海外での販売は台湾)、あちこちでPepperを目にする機会が増えそうだ。

実際、Pepperはベイエリアのハイテク製品のチェーン店、b8taで短期のアルバイトをするという。アメリカでロボット販売員が顧客への挨拶を担当するというのはこのデモが最初らしい。 b8taのフラグシップ、パロアルト店では 8月11日から1週間Pepperを雇う。4フィート(1.2m)のロボットはピザハットのレジ係より一段と目立つ存在なりそうだ。

Softbankでは同時にデベロッパー・ワークショップも開催する。5月の I/Oでスタートしたデベロッパー向けのポータルにさらに多数のプログラマーを参加させるのが狙いだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

火星ローバーのキュリオシティは気になるものを自分で選ぶ

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キュリオシティ(2012年に火星に着陸したローバー)は、もはや老犬かもしれないが、いまだに新しい技を身につけ続けている。NASAのジェット推進研究所(JPL)が最近The Vergeの記事で明らかにしたのは、このロボットは今やレーザー分光計でスキャンする岩石を選ぶ際に、自分自身で目標を選ぶことができるようになったということだ。この作業はこれまでは地球の科学者たちによって遠隔で行われていたものである。

JPLは、ローバーに搭載されたChemistry and Camera(ChemCam)機器による分析のために、「週あたり複数のターゲット」をキュリオシティに選ばせるソフトウェアを開発した。ターゲットの大半は、まだ人間による指示を受けているものの、ある程度の自律性の付加により、キュリオシティはChemCamが視野に入れているものに対する人間の指示が無くとも、ターゲット候補の識別と分析を続けることが可能になった。

キュリオシティがどこに向けてそのレーザー分光計を向けるべきかを助けているソフトウェアはAEGIS(Autonomous Exploration for Gathering Increased Science:先進科学知識増強のための自律探索)と呼ばれている。これは人間が他のことで忙しい際に、補佐する役割を果たすように設計されている。

「おそらく長い移動の途中とか、あるいは地球、火星、探査船の活動のスケジュールによって惑星間の情報共有に遅延が発生する際に、科学チームが探査に関わることが難しい、あるいは不可能な場合においては自律性は特に有益です」と、JPLにおけるAEGIS開発のリーダーのロボットエンジニアTara Estlinは説明している

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NASAのキュリオシティ火星ローバーは、ChemCam機器のレーザーと分光計カメラのターゲットを自律的に選択する。例えば、オンボードソフトウェアは、左のようなNavcamの画像を分析し、黄色のドットで示される目標を選ぶ、そしてレーザー照射のためにChemCamをそちらに向けて右側のような画像を取得する。

キュリオシティの自律動作は人間の指定した範囲も考慮して行われる。つまり科学者達は発見に興味がある対象に応じて、適切なターゲットを選択するための基準を変更することができるということだ。

自律ガイド機能はまたキュリオシティが科学者を重要な点で支援する手助けをしている。私たち人間の目は物体のとても細かい表面上でターゲットを探そうとするときには、ひどく当てにならなくなる、特にそれが広大な宇宙空間を横切って遠隔で行われる際にはなおさらだ。AEGISはキュリオシティがごく小さなターゲットでも始めからイメージ分析に使う手助けをしてくれる。自律的に対象の絞り込みが行われるおかげだ。

宇宙探査のための自律性の増強は、より大きなデータセットが取扱えることを意味している。そしてそれは画期的な発見につながる可能性の拡大を意味するのだ。ただNASAには、いつでも(映画スタートレックの)ヴィジャーの警告的な逸話を心に留めていて欲しい

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(翻訳:Sako)

Fordの自動車組立ラインでは、人とロボットが協力して作業している

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あなたの次の同僚は工業ロボットかもしれない。Fordは、将来的に世界中の自動車の組立ラインで人とロボットが手を取り合って作業する道筋をつけるためのパイロットプロジェクトを行っている。

この自動車メーカーは協力的な新型ロボットを活用する。名前はco-botsといい、作業員がFiestaの車種にショックアブソーバーを取り付ける助けをする。このロボットはドイツ、ケルンにある組立工場に導入されている。このタスクではco-botsと作業員が協力し、毎回完璧に取り付けることを支援するものだ。このトライアルがスムーズに機能すれば、Fordはco-botsを近い将来、他の工場にも導入していくことを検討している。

「これが十分効率的であることが証明されれば、他の工場に導入することを検討することができます」とFordの担当者Karl Henkelは今日私に話した。「このco-botsで人を置き換えるのではなく、人と協力することを提案します。人ができないことをロボットがするということでもありません。補完的な役目を担っていて、チームとして協力するものです」。

Fordが戦略的にショックアブソーバーを取り付けるタスクを選んだのは、これは通常過酷な仕事で、7時間から8時間、組立ラインに人がいなければならないからだ。1メートルくらいの高さのco-botsは、その作業を手伝う。組立ラインで人とco-botsが協力している様子はこの動画をみてほしい。

Henkelによると、Fordのケルンにおける人とロボットのトライアル運用は、Industry 4.0 Automation(産業4.0自動化計画)を進めるための調査の一環だという。この自動化計画では、co-botsや他の自動化テクノロジーを組立ラインや他の分野で活用することを検討している。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website

「足もと」の新技術で、より人間らしく歩くロボットを開発 ― ジョージア工科大

ロボットを、人間と同じように歩かせるというのは非常に難しいことだった。しかしジョージア工科大学(Georgia Institute of Technology)が道を切り拓いたのかもしれない。AMBER Labに持ち込まれたDURUSというヒューマノイド(正確には4分の3ヒューマノイドだろうか)が、まさに人間のような歩みを見せてくれるのだ。

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ちょっと見ただけでもDURUSが、過去の人間型ロボットよりも人間らしく歩いていることがわかるだろう。まずかかとから地面に足をつき、そして回転運動を使ってつま先で地面を蹴るのだ。これまでのロボットはといえば、ベタ足で動きまわるだけだったのだ。

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ジョージア工科大学のチームが行ったのは、足のパーツにアーチをもたせたことだった。装着してみて4日間ほどの試行で自然な歩行ができるようになったのだそうだ。開発に携わった学生は、さらに人間らしさを増すためにアディダスのシューズを履かせてみたそうだ。なるほど、よく似合っているといえそうだ。

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ジョージア工科大学の開発した技術は、歩行困難社を支えるための装具としても応用可能だと期待されている。

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(翻訳:Maeda, H

AIロボットCozmoのメーカーAnkiがSDKを公開、最終的には子どもやノンプログラマーも対象とする

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最初のCozmoたちの、Pixarからヒントを得たような目に、世界が見えるようになるまで、あと数か月待たなければならないが、メーカーのAnkiはすでに、この小さなロボットのための大きなプランを公表している。その最初は、ハッカーやメイカーや研究者たちをターゲットとするSDKの大々的なローンチで、それは10月のローンチと同時期になる。

ソフトウェア開発キットの展開は三段階から成り、SDKはその最初の段階だ。その次の段階は、K-12の教育者(教師)と児童生徒が対象、そして三つめの段階は商用アプリのデベロッパー向けだ。これらのスケジュールは明確ではないが、同社のHanns Tappeinerによると、第二第三の段階は2016年後期から2017年初期にかけてだ。

Tappeinerはこう説明する: “Cozmoの開発にはすでに4年半あまりを費やしている。消費者向けロボットとしてはもっとも高度なものの一つになるだろう。SDKを作ることは、かなり容易な作業だった”。SDKはPythonで書かれていて、それらがこの元気なかわいいロボットの100万行にもおよぶコードにアクセスする。それによりデベロッパーは、顔認識や歩行経路の計画、3Dモデリングなどの複雑なアクションを、ほんの数行の簡単なコードで書ける。

Ankiの構想は、さらにもっと大きい。Tappeinerによると、CozmoのSDKはロボットプログラミングを大々的に大衆化し、同社が数年かけて開発してきたシステムを小中学生でも自分のプログラムで利用できる。ユーザーにはできるかぎり多くを提供し、ほとんど制約なく、Cozmoのコードにアクセスできるようにしたい、とTappeinerは言っている。プログラマーにとっての利用価値とともに、初めてプログラムを書く人たちにも使えるようにしたい、というのだ。

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Tappeinerは語る、“ロボットという分野を、もっと一般的なものにしたい。どんな産業でもそうだと思うが、それが実験室から一般社会に大きく拡散して、非専門家でもアイデアやフィードバック等で貢献できるようになれば、それでやっと、一人前の産業と言える。2007年に、スマートフォンが大変身したように、ロボットも、そろそろそうなるべきだ。今やスマートフォンでは、専門のデベロッパーだけでなく、アーチストや化学の専門家など、いろんな人がアプリを作っている。そうなって初めてその産業は、爆発的に成長していくのだ”。

SDKは最初ベータでリリースし、いろんなフィードバックを得てから、消費者デベロッパーも対象とする最終リリースへ向かう。同じ期間にAnkiは、アプリの配布の形式も検討する。新たにアプリストアを作るべきか、それともiOSやAndroidなどの既存のアプリストアを利用すべきか、など。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

銃撃犯をロボットを使って殺したダラス警察、警察によるロボットの‘使用例’は過去にもある

The MARCbot IV extends its camera nearly four feet in the air to search for suspected improvised explosive devices at the training course in Fort Polk, La. Paratroopers of the 3rd Brigade Combat Team will have the opportunity use this tool in their upcoming deployment in support of the war on terror.

署長のDavid Brownが今日(米国時間7/8)の記者会見で明かしたところによると、ダラス警察は、爆発物を搭載した爆弾拡散ロボットを使って銃撃犯を殺害した。爆発物は、犯人(Micah Xavier Johnson、25歳と判明)に妨害されないために、ロボットの延伸アーム(上図)の先に取り付けられた。12名の警官が撃たれ、内5名が死亡したこの事件は、警察が最近Philando CastileとAlton Sterlingを撃ったことに対する抗議行動だ、という。

警察が大量の爆発物を使って事件の被疑者を実際に殺したことは、知られている例としてはこれが初めてかとも思われるが、警察が爆弾拡散ロボットを武器として使用したことは過去にもあり、そのときには一軒のモービルホーム(移動式住宅)が全焼した。

また2014年に統合失調症患者のStephen Foughtがモーテルの部屋に長時間閉じこもったときは、殺傷目的ではなく彼の攻撃性を抑止する目的で、爆発物ロボットの軍団が展開された。そのときアルバカーキ警察の爆発物ロボット部隊は、“化学兵器”を展開するために利用された、と当時の警察の公式報告書は言っている。

上記のモービルホームが焼け落ちた一件では、テネシーの警察が催涙ガス手榴弾を“ロボット部隊を使ってリビングルームに落とした”が、それは屋外用の手榴弾だったため、たまたま発火してしまい、トレーラー一台を炎上させた。しかしあとで、被疑者が不在だったことが分かり、事件による死傷者は生じなかった。

しかし警察が武装ロボットを使用した例は、もっと過去にさかのぼる。2007年のWired誌の記事は、軍用のロボットがアメリカ各地の警察に大々的に売られていることを、詳しく報じている。それらはどんな装備かというと:

• マルチショットTASER電子制御デバイス、レーザー照準。
• 交渉用のラウドスピーカーと音声受信装置。
• 夜間視覚と感熱カメラ。
• 致死性能の有無による武器の選択
 – 40mm手投げ弾ランチャー – 2ラウンド
 – 12ゲージショットガン – 5ラウンド
 – FN303無致死性ランチャー – 15ラウンド

この記事が載った時点では、これらのロボットは警察が実際には使用していないし、今回ダラス警察が使ったものとはまったく違うものだ。今回のはたぶんMarcbot-IV EODで、それは爆弾の拡散専用にに設計され、攻撃用武器ではない。このようなロボットは、ダラス警察がやったような即興的なやり方で、実戦でもかなり使われている。

これは、ダラス警察の2012年のツイートで、写真は爆弾拡散ロボットを一般公開している:

このように、過去に警察が、ロボットを武器の展開に利用したケースがあったとしても、今回の事件は‘前例がない’と言える。その意図(ないしありうる結果)が、人の命を終わらせることであった、最初の例だから。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

光で動くマイクロロボットが血管中を泳いで薬を正しい場所に運ぶ…北大の研究より

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小さなロボットを体内に固定するというアイデアは、楽しいとも思えるけど、でもそのロボットが電池切れになったり爆発したらどうなるのか? しょっちゅうではなくても、いつかは起きるだろう。

北海道大学理学部化学科の研究者たちが、青い光を浴びると自分で動き出す結晶構造を作った。つまりこの微小なロボットに光を当てて、血管中を目的地に向けて泳がせることができる。

この結晶はアゾベンゼン(azobenzene)およびオレイン酸(oleic acid)という有機物でできている…染料や食用油によく使われる物質だ。この化合物に青い光を当てると、“何度も繰り返して、ある形から別の形へ変化する”。

“これがアゾベンゼン-オレイン酸結晶の構造に影響を及ぼすかテストした。結晶には、シス形とトランス形のアゾベンゼンが不等量で含まれている”、と研究者たちは書いている

このロボットは、とてもロボットには見えないかもしれないが、正しい条件下では泳ぎだすので、マイクロロボット技術の未来の実装に役立ちそうだ。

“何度も繰り返してひっくり返る動作など、リズムのある動きを自分で編み出すので、その点は生物器官の基本的な性質に近い”、と研究者のYoshiyuki Kageyama(景山義之(北海道大学大学院理学研究院化学部門液体化学研究室))は述べている。“このメカニズムは将来、生物系の分子モーターやロボットの開発に利用でき、それらの応用〜アプリケーションは、医療を初め、広範囲に存在するだろう”。

この技術を商用化する計画は、まだない。小さな、光を動力とするロボットが体内を泳ぎまわることは、電池で動く小型の烏賊(いか)のような怪物より、ずっと楽しい。Neoも、そう言うだろうね。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

地上走行配送ドローンの普及は近い―Skypeの共同ファウンダーのスタートアップが実験を拡大

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今のところ空を飛ぶドローンによる配送は現実性というより話題作りで会社をPRするのが主な目的だ。しかし車輪によって歩道をゆっくり走る自動運転ドローンはeコマースの配送手段として意外に早くわれわれの身近に姿を現しそうだ。

ロンドンに本拠を置くStarship Technologiesの共同ファウンダーにはSkypeの共同ファウンダーとして著名なAhti HeinlaとJanus Friisが含まれている。このスタートアップは今月からイギリス、ドイツ、スイスで自動運転配送ドローンの大規模な実用化テストを開始する。

Starshipの小型の車輪走行ロボットは、すでに9ヶ月前から12カ国で試験走行を行ってきた。しかし今回はこのドローンとしては初めて実際に商品を配達する実験を行う。つまり提携企業に対し、実際に配送能力を提供するものだ。世界的に料理配達ネットワークを展開するJust Ea、ロンドンのPronto.co.uk、、ドイツのリテラー、Metro Group、荷物の配送ネットワークのHermesなどがパイロット・プログラムに参加する。テストでは5都市でこれらの企業の実際の顧客にロボットが注文の品を配達する。

ドローンが最初に歩道に登場するのはロンドン、デュッセルドルフ、ベルンになる。このテストが成功すればヨーロッパとアメリカの他の都市にも運用が拡張される。Starship Technologiesのマーケティングとコミュニケーションのマネージャー、Henry Harris-BurlandはTechCrunchのインタビューに対し、「テストは6ヶ月から8ヶ月を予定している。テストの結果にもよるが、われわれは2017年にも全面的な実用化ができるものと期待している」と語った。

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テストの目標についてHarris-Burlandは「いろいろあるが、中でも公衆の反応、テクノロジーの信頼性、人間とのコミュニケーションが重要だ。また食べ物でいえば熱いもの熱く、冷たいものを冷たいまま運べるか、生鮮食品を運べるかなどもテストする」と語った。

私はHarris-Burlandにこのロボットはいたずらやバンダリズムの被害に遭う(残念ながらそういう実例がある)ことはないか、また行き会う人々を驚かせはしないか尋ねてみた。

メールで送られてき回答によると、「ロボットに対する不正な行動は実はごくまれだ。 5000マイルにおよぶテストを繰り返してきたが、これまでに第三者による妨害に遭遇したことは一度もない。しかし多数のドローンが路上を走行するようになれば、いずれは何かが起きる可能性がある。そうした妨害を予防し、対処するテクノロジーを確立することも実用化に向けたテストの目的の一つだ。ロボットには9台のカメラが装備されており、ごく近距離まで常時監視している。正常な運行に障害が生じればオペレーターに直ちに警告が発せられる。いずれにせよロボットは40万以上の人々の間で運用されてきたが、これま問題は起きていない」ということだ。

この先進的ロボットが一般人を驚かせるのではないかという質問に対して、Starship Technologiesでは「ロボットの目的(商品の配送)を広く啓蒙する」ということだ。またHarris-Burlandによれば「広汎なテストを通じてロボットと人間との付き合い方を研究していく」と語った。

「配送実験の初期の段階ではロボットは単独では運用されず、人間のオペレーターが付きそう。これにはいくつかの理由があるが、公衆の反応を観察するのもその一つだ。たとえば門口にロボットが現れたとき注文主はどういう反応を示すか? 注文主が抱くであろう疑問に対して答えるのも付き添いのオペレーターの役割だ。いずにしても世界最初のロボット配達の注文主になるのは大いにクールな経験として喜んでもらえると思う」とHarris-Burlandは付け加えた。

Starship Technologiesではロボットを社会に溶けこませるためにどうしたらよいかなどロボットの実用化にあたって見過ごされがちな点を細部にわたって検討している。こうしたロボットがオペレーターの介入の必要なしに順調かつ効率的に荷物の配送を続けられるとよいと思う。

〔日本版〕ビデオではSkypeの共同ファウンダー、アーティ・ヘインラ〔Ahti Heinla〕がサラ・バー記者にロボットの機能やテスト計画を詳しく説明している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

テクノロジーの分野で脚光を浴びる折り紙に注目!

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【編集部注:本稿の執筆者、Don Basileは起業家でテクノロジー、ヘルスケア、通信の分野で20年以上の管理職経験を持つベンチャーキャピタリスト】

3Dプリンターの出現よりはるか以前から、平らな紙を使って実物そっくりのモデルを作り出せる、折り紙と言う技術が存在した。折るということは構造を畳んだり、曲げたり、広げたりが思いのままにできるということだ。つまりこういった性質を利用すれば工学的に様々な局面での利用が考えられる。消化可能な折り紙でできた錠剤があれば侵襲的な外科手術を行わないで済むかもしれないし、ソーラーパネルに応用すれば、航空機で輸送する際は小さく畳んでおいて、打ち上げた後で広げてやれば良い。折り紙が現代において利用される要因は、折り紙の技術を使えば物の形を劇的に変化させることができるからだ。

折り紙自身、6世紀に仏教徒が中国から日本に紙を伝えて以来変化し続けている。紙は当時高級で広く普及はしていなかったため、最初の折り紙の利用法は宗教儀式においてであった。

もっとも初期に見られる形の1つは「紙垂(しで)」と呼ばれ、ジグザグに折って裁断された紙をいくつもロープや木に結わい付け、浄化の儀式を表すのに使われた。次に現れるのが「雌蝶」と「雄蝶」、つまりメスとオスの蝶の折り紙で、伝統的な神道の結婚式において日本酒の瓶に飾られた。17世紀までには折り紙は儀式の域を超えて一般的な娯楽として楽しまれるようになった。紙の大量生産が実現したおかげである。そして何百万という紙の折り鶴が作られることとなった。

それ以降、折り紙の様式自体に大きな変化がないまま月日は流れたが、1950年代に日本人の折り紙アーティストである吉澤章が現れ、その複雑かつ実物そっくりの動物の立体モデルは新しい世代の芸術家と科学者に強い印象を与えた。そして現れたのが物理学者のRobert Langである。彼はコンピュータ折り紙の発展において主導的役割を果たし、数学の公式と紙を折る技術を結びつけたのだ。Langは折り紙技術を実生活に応用する様々なアイディアを思いついたが、その中には自動車のエアバッグの安全性を向上させるものもある。

複数分野が交錯するこの領域では、現世に存在する種々の工学的問題を解決する可能性で満ちているが、このことは折り紙がコンプライアントメカニズムで作動するのが主な理由である。折り紙においては蝶番やベアリングではなく、曲げたりたわましたりすることで動きをつけ、そういった動きは紙自身の柔軟性に依存する。もしこういった強さや柔軟性の原則を紙よりも丈夫な素材に適用すれば、その可能性は無限大だ。

折り紙の「極小の」可能性

昨年スウェーデンのカロリンスカ研究所の科学者たちが示したのは、何重にも折りたたんだDNAは優れたドラッグ・デリバリーの手段と成り得るということだ。何度も巧妙にDNAを畳むことにより、コンピュータでデザインした、例えばウサギのような複雑な形も、合成DNAを使って組み上げることが出来る。

形状が多次元の場合、折り紙構造の全てのでDNA鎖は広がることになる。この方法はオイラー閉路と呼ばれる数学の方程式を利用したもので、環状のDNA分子を、その柔軟性を保ったまま簡単に折りたたむことができる。「この成果により、生理的塩濃度の環境下でも折りたたまれ、形が崩れないDNA折り紙をデザインすることが可能になりました。このことはDNAのナノ構造を生物学的に応用する上で非常に重要なことです」と、この研究をリードしたBjörn Högbergは述べた。この画期的方法により、既にこれまでより高効率でガン腫瘍に到達するドラッグ・デリバリー・システムが開発された。

一方で、MITの研究者は子供の間でしばしば見られる、バッテリーの誤飲問題に対して、新たな解決方法を見つけ出した。それはざっと以下の通りだ。小さな折り紙で出来た錠剤を飲めば、それが胃の中で開いて、さらに磁石と併用することでバッテリーを体外にすくい出してしまう。これまでのところ、この方法は豚の胃を使った実験で成功を収めているが、人間ではまだ試していない。こういった、麻酔も必要としない非侵襲的なアプローチは大きな可能性を秘めている。

MITは世界最小の(且つ最も気持ち悪い)、自己組み立て型ロボットも開発した。このロボットは歩いたり、掘ったり、泳いだりでき、終いには溶けてなくなってしまう。

このロボットはたったの1.7センチの大きさで、磁石とPVCがレーザー裁断された紙かポリスチレンの層に挟み込まれた素材で出来ている。加熱素子で加熱することでPVCは収縮し、あらかじめ切れ込みを入れておいた箇所が折れ曲がる。それが下面に設置した電磁コイルと協働し、ロボットが折れ曲がって動く為の動力源となる。

さらに研究を進めることでもっと小さな、より多くのセンサーを積んだ自律型ロボットの開発が期待される。これらのロボットは完全に溶けてしまう様にデザインされているので、がん細胞の退治や動脈詰まりの解消といった用途が想定される。

巨大折り紙も活躍中

折り紙が宇宙研究の分野に貢献できる可能性は極めて大きい。折り紙技術によって物体を折り畳めれば収納が簡単になり、いったん目的地に着いて展開すれば元通りにできる。ソーラーパネルを軌道に乗せ、宇宙空間からエネルギーを地球に向け照射する場合を考えてみれば良い。

Bigelow Aerospace

 ソーラーパネルの効率はその巨大なパネルサイズに依存しており、その様な大きなものを如何に宇宙に持ち出すかが常に問題だった。それに対する答えが、賢くたたみ込むことだ。この理屈に基づきNASAはソーラーアレイのプロトタイプの開発に取り組んでいる。このソーラーアレイは宇宙船に積み込むことができ、収納時は差し渡し8.9フィートにしかならないが、いったん設置すると直径82フィートもの大きさにまで広がる。

さらにNASAは新しいプロジェクトであるBigelow Expandable Activity Model (BEAM)を立ち上げたが、これは巨大なエアーバッグ状の物体で、膨らますことでスペースステーションの居住空間を拡張することができる。宇宙ステーションに拡張可能な居住空間が設置されるのは初めての試みであり、これから2年間に渡りISSで行われるテストがうまくいけば大きなブレークスルーとなるだろう。

もし人類の火星旅行を実現させようとするならばスペースシャトルの今のサイズでは不十分で、そのサイズを拡張することが必要になるだろう。それでは、この太古の技術である折り紙が未来の宇宙探査にできることとはなんだろうか。それについては、NASAが用意したorigaBEAMiを自分で作って確認してほしい。「乗組員による手順の説明」にしっかりと従うように。「しっかり正確に折らないと居住モジュールの空気が漏れ出す危険があります。安全第一を心がけましょう」

折り紙は何世紀もの歴史があるが、我々は世界を変えうる程の折り紙の潜在能力にやっと気づき始めたに過ぎない。あたかもドラッグ・デリバリーロボットやスペースステーションの拡張では十分でないかのように、折り紙はそれ以外にも建築、医学、ロボット工学などの分野での革新に貢献している。折り紙が工学の分野でこれ程までに新しいフロンティアを切り開くとは誰が予想できただろうか。

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(翻訳:Tsubouchi)

Boston Dynamics、かわいい四脚ロボットがバナナの皮で転倒するビデオを公開

Boston Dynamicsといえば、世界でもっとも恐るべきロボットと世界でもっとも恐るべきロボット・ビデオを作ってきた会社だが、今回はややユーモラスな側面を見せた。

このビデオで公開されたSpotMiniがGoogleの親会社であるAlphabet傘下でBoston Dynamicsが発表する最後のロボットになるものと思われる。

SpotMiniはミニサイズのキリンのような外観で、非常に高度な作業能力を備えている。ビデオではSpotMiniが階段を上がったり、シンクから皿を取り出して食洗機に入れたりするところがデモされている。また最後のシーンではこのロボットが人間のところに清涼飲料の缶を運んでくるが、なかなか離そうとしないところを見せる。

Boston Dynamics

新しいロボットはBoston Dynamicsがこれまで開発してきたロボットに比べて非常に小さく、ずっとかわいらしい(といってもデビッド・リンチが『トランスフォーマー』を監督したらこうもあろうかというような不気味なかわいさだが)。付属装置を一切省いた胴体部分だけで55ポンド(25kg)、物体をつかめるキリンの頭を加えると65ポンド(29.5kg)だという。

Boston Dynamics

SpotMiniは油圧作動ではなく、1回の充電で90分作動する。奥行きを認識カするメラ、移動や傾斜を認識する作動部分をもたないジャイロなどさまなセンサーを備え、自由に歩きまわって必要な作業を行うなど外界と適切に交渉できる。初歩的なタスクに関しては自律的に行動できるが、複雑な作業では人間の指示が必要となる。

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またこのロボットは床のバナナの皮で足を滑らせて転倒してから立ち上がるなどコメディアンとして十分な演技力もあるようだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+