どんなVRヘッドセットでもワイヤレスで使用できるMITのMoVRシステムはミリ波による高速通信を利用

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ワイヤレスVRは、VRを広く普及させるための重要な鍵の一つだ。今OculusやHTC Viveなどについている、へその緒のような重いケーブルは、明らかに普及の阻害要因だ。そしてMITがこのほど作った新しいワイヤレス通信システムは、その重荷を取り払って、本当に没入的なVR体験を与えてくれる。

MITのComputer Science and Artificial Intelligence Labが考案した“MoVR”は、VRヘッドセットがPCとワイヤレスに通信できるようにする。そしてその際、グラフィクスやフレームレートの劣化はまったく生じない。仮想現実がスムーズで違和感のない体験であるためには、この点が重要だ。

MoVRは、次世代モバイルネットワークの5Gが使用するミリ波を利用して、ヘッドセットとそれを駆動するコンピューターとの通信を毎秒数Gバイトのスピードで行う。それは、既存のWi-FiやそのほかのRF技術よりずっとずっと速い。既存のWi-Fi等では、6Gbpsという要件にはとても達しない。

ミリ波通信技術は大量のデータを無圧縮で高速に送信できるが、いわゆる見通し線(視界内)という要件がある。そこでMoVRを開発したMIT CSAILのチームは、信号の方向を検知するプログラマブルなミラー(鏡)を使って、この難点を克服した。これにより信号が、ユーザーの手などの障害物に遮(さえぎ)られなくなる。

That huge cable is a big nuisance.

ケーブルはVRの邪魔もの

現在のテスト用システムは、クレジットカードの半分ぐらいのアンテナを二つ使うが、将来の完成品では装置全体をスマートフォンぐらいに小型化して、一つの部屋の中で複数のプレーヤーが使えるようにする。

先週発表された220ドルのViveアドオンもやはり、強力なPCで駆動するVRをワイヤレスにする。しかしMIT CSAILのプロジェクトは、もっと高いグラフィクス性能が期待できそうだし、ヘッドセットのタイプを特定しないから、より将来性がありそうだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

HTCは自社のVR技術とハードウェアを2017年までにアジアの“数千の”ゲームセンターで展開する

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アメリカではゲームセンター(arcade(s), アーケード)は90年代以降あまり人気がない。ゲーム専用機が安くなり、リビングルームから外へ出なくても容易に高度なゲームを楽しめるようになった。しかし、仮想現実はまだかなり高価だから、ゲーセンのようなお金を払ってコンテンツを楽しむ方式に、商機があるだろう。

HTCはアメリカでは、人びとがすでにVRコンテンツに平気で特別料金を払っている映画館で、VRによってゲーセンを復活させたい、と考えている。

アメリカ市場の攻略はまだ未来の話だが、中国には今でも、大小さまざまなエンタテイメントセンターがあって、そこは当たり前のように今でもゲームの商用ライセンスを買っている。そしてHTCのViveport Arcadeは、最初は中国と台湾でローンチし、2017年の終わりまでには何千もの場所に展開する気だ。

HTCでViveportと仮想現実のトップを務めているRikard Steiberによると、“Viveport Arcadeは、VRのデベロッパーたちに今後の2年間で1億ドル以上の市場機会を提供する”、そうだ。“大型アミューズメントセンターから家族向けの遊園地のようなところまで、仮想現実は明らかにエンタテイメントの次の王様になろうとしている。またそれにより、ハイエンドの仮想現実コンテンツへのアクセスが民主化され、最初は好奇心だけだった消費者を長期的なファンに変えるだろう”。

今週の初めにHTCは、巨大なゲームセンターVivelandを台湾でオープンした。

そこが最初から揃えているのは120タイトル、その中には人気のVRタイトル、Phosphor GamesのThe Brookhaven Experimentと、Sólfar StudiosのEverestのアップデートバージョンもある。

VRゲーセンは中国やアジアではすでに現実であり、そこを巨大市場として狙うHTCは、ブランド・ロイヤルティとユーザーベースを未来に向けて築こうと躍起だ。このような、アジアでのゲーセン大展開がアメリカ及ぼす影響は何か? 中国から何を学ぶかも、アメリカでは中国の現状のようなゲーセン的なインフラがもう/まだない、ということが前提になる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

VRヘッドセットに世界標準誕生か?HP, Dell, Lenovo, Asus, AcerがMicrosoftと提携で共通規格製品を作る

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Microsoftは今(米国時間10/26)、ニューヨークで報道陣向けのカンファレンスをやっている。そこで発表されるものには、拡張現実(AR)や仮想現実(VR)など、3Dと、ありとあらゆる‘現実’(realities)ものが多い。同社はその積極姿勢の一環として、PCメーカー5社とのパートナーシップにより、Windows 10の次のアップデートに間に合うべく、各社にVRヘッドセットを新発売してもらうことになった。

Microsoftの発表によると、HP, Dell, Lenovo, Asus, Acerの5社が全員、有線方式で6軸方向(前、後、上、下、左、右)の自由度センサーのある、PC用VRヘッドセットを作る。外付けセンサーが要らないし、HTC Viveのように大きな部屋も要らない。そしてお値段は、299ドルからだ。

これで、この規格のVRヘッドセットがたちまち市場でコモディティーになりそうだから、OculusやHTCなども急いでOEMの一員になるだろう。仮想現実の市場全体に、やっと、大きな突破口が見えてきた、とも言える。

Windows 10のCreators Updateはリリースが来春だから、ヘッドセットは年初から出回るだろう。Windows 10のアプリケーションのVR化デモも、今日行われた。仮想空間の中の壁にアプリケーションが投射され、それと対話できる。

しかもMicrosoftにはHoloLensという3D ARの伝家の宝刀があるから、VRが作る仮想の3Dオブジェクトやアニメーションなどを、現実世界の上にARすることもできるのだ。同社は、HoloLensの中でMicrosoft Edgeを動かす、というデモをやった。

このヘッドセットがあれば、たとえばHouzzの3Dオブジェクトを自分のリビングルームで見ることができる。自分の部屋にARで家具などを置いてみる、というやり方はすでにスマートフォンではふつうだが、そのARがHoloLensになれば、もっとすてきだろう(下図)。

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Microsoftが今日紹介したHoloTourアプリケーションは、名前はダサいけど、VRヘッドセットを有効に使える例だ。Google Cardboardのアプリケーションにも似たようなのがあったと思うが、世界中を旅して、有名なモニュメント(自由の女神、モアイ像、奈良の大仏、…)をその真ん前で見られる、という仮想体験だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

建築デザイン向けのVRツールを開発するIrisVRが800万ドルを調達

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ニューヨークを拠点とするIrisVRがシリーズAで800万ドルを調達したことを発表した。

同社は建築デザイン業界向けのVRツールを開発する企業だ。同社が開発するIris Prospectは、3Dの建築モデルや設計図を仮想現実化するツールだ。そして、Oculus RiftやHTC Vive、GearVR、CardboardなどのVRデバイスを使うことでその建築モデルに入り込むことができる。IrisVRはIris Scopeというツールも開発している。これはパノラマ写真を仮想現実化して、それをスマートフォンで楽しむことができるというツールだ。

同社のプロダクトは現在βテスト中であり、年末には正式版がリリースされる予定だ。IrisVRによれば、同社のプロダクトは正式リリース前にも関わらず、すでに108ヵ国でダウンロードされているという。

本ラウンドのリード投資家はEmergence Capitalで、そこでジェネラル・パートナーを務めるKevin SpainがIrisVRの取締役に就任している。今回のシリーズAにはこの他にも、Indicator Ventures、Pritzker Group Venture Capital、Valar Ventures、Azure Capital Partners、Locke Mountain Ventures、Morning Groupも参加している。今回のラウンドを含め、IrisVRはこれまでに合計で1000万ドルを調達している。

CEOのShane Scrantonは資金調達を伝えるプレスリリースのなかで、IrisVRは新しいテクノロジーによって建築デザイン業界を変えると語る。「この業界を変えるようなVRアプリケーションが誕生しており、IrisVRのプロダクトもその1つです」とScrantonは話す。「単純に言えば、この業界におけるコミュニケーションの全体像を作り変えようとしているのです。建築デザイン分野で働く人々にとって、プロジェクトの見た目はとても重要です。IrisVRはその見た目に命を吹き込むのです」。

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(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

退屈なスライド・プレゼンをVR化して迫力を増すSharalike(iOS, Android, Oculus用)

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ちょいと!待ちなさいよ! あなたはこの記事のタイトルの、‘スライド’という(つまらない)言葉を見て、逃げようとしたでしょ。でもちょっとだけ、付き合いなさい。たしかにスライドは、涙が出るほど退屈だけど、でもSharalikeの最新のVRアプリケーションは、退屈な2D画像にVR(仮想現実)という新しい命を与えてしまうんだ。

Exploring photo slideshows in VR is a trippy experience.

SharalikeのVRでスライドの写真を見るとまるで幻覚のようだ

アプリケーション(アプリ)はAndroidiOS用、そしてOculusのアプリもあり、いわゆる没入的なスライドショウを体験できる。アプリが画像を調べてテーマを決め、それに合った背景ビデオや音楽を使う。

VRのスライドショウを作るのは、比較的簡単で分かりやすい。ただし、それを見る側は、慣れるまでちょっとたいへんかも知れない。ぼくは写真家なので、スライドショウについては、よく分かっているつもりだった。でもそれがVRという不思議で奇妙な体験になると、最初のうちはかなりまごつく。

Sharalikeのアプリがローンチしたのは18か月前で、ダウンロード数130万あまりという大ヒットになった。その‘スマートスライドショウ’に変換された写真は、3000万以上にもなる。大成功ではあるけれども、現状ではVR画像の解像度が課題だ。レティナディスプレイで写真を見慣れた目には、今のVRの視界は、その最良のものでも、ちょっとしょぼい。

でも手元にある古い写真が、360度やVRの世界で生き返る、と考えると、夢は大きいね。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

InContext Solutionsが1520万ドルを調達、小売企業に対するVRデモサービスを強化

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VRを利用することで、企業は資金を投じて実際の店舗を建設する前に、デジタルな環境で消費者行動をモニタリングすることができる。

InContext Solutionsは、小売企業を主要なターゲットとし、新しい店舗のコンセプトをVR上でテストできるようなサービスを提供している。

そして同社は本日、Intel CapitalとBeringeaがリードインベスターとなったラウンドで、1520万ドルを調達したと発表した。今回のラウンドを含め、InContext Solutionsは今日までに4000万ドルを調達しており、Plymouth Venture PartnersやHyde Park Venture Partnersなどが投資家として名を連ねている。

これまで同社は、WebVRのソリューションを利用してVRサービスを提供してきたが、今回の調達資金を使って、今後はもっとVRヘッドセットの機能を活用した本格的なサービスの開発に注力していく予定だ。

「今回のラウンドでは、小売企業に対しこれまでにも増して強力で、ユーザーが夢中になれるようなVRソリューションを提供するという、私たちのビジョンをサポートしてくれる戦略的投資家から資金を調達することができました」とInContext Solution CEOのMark Hardyは声明の中で語った。「私たちはこれまで長い間、ウェブベースのVRサービスプロバイダーの先駆けとしてビジネスを展開してきました。今後は今回の調達資金を利用して、もっと積極的に自社VRプラットフォームの開発に注力することで、コストを下げつつも顧客のビジネスの高速化や売上拡大を支えていきたいと考えています」

InContext SolutionsのShopperMXプラットフォームでは、バーチャル空間で陳列棚を簡単に再現することができるほか、あるコンセプトのどこにユーザーが目を向けているかというのが分かるようになっている。さらに同社は、まだアイディア段階にあるものや既に作業中のものを含め、新しい陳列案にユーザーがどのように反応しているかというのを可視化するため、ヒートマップを含めた分析機能を開発中だ。

InContext Solutionsは、消費者向けのVRサービスが大衆に利用されはじめるずっと前の2009年に設立された。今後VRヘッドセットを利用したサービスを提供することで、同社が消費者行動に関してさらに意味のあるデータを集められるようになるのは確実だ。

Intel Capitalからの投資は、InContext SolutionsとIntel間で結ばれた、VRソリューションを共同で開発するためのパートナーシップがきっかけとなった。IntelはこれまでにもオールインワンのVRヘッドセットProject Alloyを含む、同社のRealSenseプラットフォームに関連した数々のVRイニシアティブを発表している。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

AR・VR業界で起きている競争の実情

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【編集部注】執筆者のTim Merelは、Eyetouch RealityおよびDigi-Capitalのファウンダー兼CEO.

仮想、拡張、複合現実(それぞれVR、AR、MR)は競争上の問題を抱えている。

ほとんどのAR・VR企業は、1番の競争相手となる企業と自社を比較し、どのくらい自分たちが優れているかについて宣伝しているが、彼らは戦う相手を間違えている。VRについてはOculusやHTC、Sony、Samsung、Google、AR(MRを含む)についてはMicrosoftやMagic Leap、Meta、ODGといった会社間での競争が取り沙汰されているが、これは真の意味での戦いではない。彼らにはもっと巨大で恐ろしい相手がいるのだ。

現状

現状(Status quo)こそがARとVRの最大の競争相手だ(ちなみにStatus quoとはLive Aidのオープニングアクトを務めたイギリスのバンドのことではない)。

現代人は、平均して1日のうち11時間を電子メディアの視聴に使っている。つまり平均寿命である79年のうち、34年以上がメディアに捧げられているのだ。何がそこまで魅力的で、私たちは一生の約半分をメディアに投じているのだろうか。

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その内訳としては、テレビ(ライブ・録画の両方)が48%、携帯電話・タブレットが20%、ラジオが18%、オンラインPCが9%、そしてその他が6%となっている。そしてほとんどのメディアにおいて、視聴時間が横ばいか減少傾向にある中、スマートフォンとタブレットに関しては、メディア市場の拡大という、これまで不可能だと思われていたことが起きている。携帯電話・タブレット上でのメディア視聴時間は、過去2年間だけで1日あたり2時間以上へと倍増したのだ。そしてこの傾向は若者に顕著に見られる。年配の人の、最近の若者は携帯電話ばかり見ているという愚痴には、実は現実が反映されている。

ここでの大きな問いは、ARやVRがどのようにテレビや携帯電話、タブレットと戦っていくのかということだ。

メディア以外に費やされる時間

しかもAR・VRが戦わなければならないのは、メディアだけではない。

私たちは一生の半分近くを電子機器に費やしている一方、それ以上の時間を、他のやらなければいけないことに使っている。仕事と睡眠にはそれぞれ1日あたり平均7時間必要で、メディアに費やされる時間と合わせると、それだけで地球の自転一周分にあたる24時間が埋め尽くされてしまう。

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睡眠に関しては、ARやVRもどうすることもできず、携帯電話でさえ睡眠の壁をこえられないでいる。しかし仕事(そしてその他の生活の一部)はどうだろうか?これこそ、ARやVRが携帯電話の栄光から学ぶべき点であるともに、ARとVRの差異が表れだすポイントだ。

マルチタスキング

感の鋭い人は、メディアと仕事と睡眠で24時間が埋まってしまうと、食事やスポーツ、家事、家族や友人との交流、通勤といった、その他の活動のための時間が無いということに既にお気づきだろう。もちろんこのような活動を行いたいと考えている人は存在し、ここで携帯電話が成功をおさめる上で大きな要因となった、マルチタスキングが力を発揮する。

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マルチタスキング(テレビに限って言えばセカンドスクリーニングとも呼ばれる)とは、同時に2つ以上の作業を行うことを指す。87%の人が、テレビを見ている時のセカンドスクリーンとして、携帯電話やタブレット、(数は減るが)PCを利用している。中には、携帯電話を使う合間にテレビを見る人の存在を指摘し、テレビの方がセカンドスクリーンになったと主張する人もいる。

しかし携帯電話とマルチタスキングには、他にも議論されるべき点がある。人は平均して1日に40回以上(若者の場合には70回以上)携帯電話をチェックしているのだ。つまり食事中や家事をしているとき、家族の面倒を見たり、友人と遊んでいるときや通勤中などにも、携帯電話が常に利用されている。そして携帯電話は、多くの人にとって朝目を覚まして最初に見るものだ(その他にもさまざまな朝の支度中に携帯電話が使用されており、これが最近の携帯電話に防水機能が搭載されている理由でもある)。

VRの性質

VRの売りはその没入感で、これこそVRが人気になるであろう理由のひとつだ。

しかしVRの性質として、全ての注意をコンテンツに向ける必要があり、携帯電話では問題にならなかったマルチタスキング上の課題が生まれてくる。VRヘッドセットをしたまま通りを歩いたり、VRの世界の外にいる人と意味のある会話を試みたりすると、その課題の意味が分かるだろう。また、VRコンテンツを楽しみながらテレビやスマートフォンをセカンドスクリーニングすることもできるが、それでもユーザーはVRの世界の中にとどまったままで、現実世界でセカンドスクリーニングをしているわけではない。

そのため、時間の観点から言えば、VRは既に埋め尽くされている24時間の枠の中にある他の欲求や、それに紐づいた活動と戦わなければいけないのだ。これは大衆消費者(コアなゲーマーではなくお年寄りや親戚の子どもを想像してほしい)を相手にする上でとても大きな問題だ。VRは、マルチタスキングの恩恵を受けずに消費者の時間を獲得するため、別の活動をステージから引きずり下ろす必要がある。これは現状やVR以外のもの全てとの真っ向勝負を意味する。

ARの性質

ARはVRよりも解決するのが難しい技術的な課題を抱えている。それゆえ、現在ARはエンタープライズをターゲットとし、未だ大衆消費者には手を伸ばしていない。しかしAR企業の中には、2017年から2018年にかけて大衆消費者向けのサービスをローンチするという積極的な計画を立てているところもあり、これはもはや時間の問題だ。

ARが消費者市場に登場すれば、携帯電話が持っていたマルチタスキングという利点を使うことができる。実際のところ、この点に関して、ARは携帯電話よりも大きなアドバンテージを持っている。

まずポケットからデバイスを取り出す必要がなく、スクリーンをチェックするためにデバイスを見下ろす必要もない。小さなスクリーンのサイズに制限されることもなければ、仕事中にCandy Crushで遊んでいるところを背中越しに誰かに見られてしまうこともない。さらにWeChatをチェックしながら歩いていて何かにぶつかってしまうこともないのだ。

しかもこれは単なる憶測ではない。これまでに街中でPokémon Goで遊んでいる子どもたちを見たことがあれば、私の言っていることがわかるだろう。Pokémon Goのように必要最小限のAR機能を備えたものでも、そのマルチタスキングのしやすさが既に証明されているのだ。

AR・VR界の内部での競争はどうなっているのか?

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AR・VR界のリーダーたち

業界内での競争はさらに白熱している。というのも、AR・VR業界のどこを見ても、これまで独占的なポジションを獲得できた企業が存在しないのだ。そもそも、市場の成長段階を考えると、どこかの企業が覇権を握るにはまだ早過ぎる。そのため、健全なレベルの競争が起きている中で、全てのプレイヤーにチャンスがあり、市場のルールも現在構築されている。

この業界の実情を内部から観察していて喜ばしいのは、各企業が競合相手を威圧しながらも、コミュニティ全体ではコラボレーションが促進され続けているということだ。どの企業も切磋琢磨の精神を理解しているように感じられる。だからこそ、私たちが毎クォーター開催しているReality CheckというAR・VR業界のCEO向けフォーラムには、競合し合う企業のCEOや幹部、VCのパートナーが何百人も参加して取引やコラボレーションを行っているのだ。

ということでAR・VR業界の競争は大歓迎だ。今後さらにこの業界は面白くなっていくだろう。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

GoogleのSprayscapeはわざとヘンテコな絵を撮るVRっぽいカメラ・アプリ

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GoogleはAndroid Experimentsでこれまでも小さな面白いアプリを作る実験をしてきたが、興味深いテクノロジーに注目を集めるという以外に役立っているようには見えなかった。この実験室から生まれた最新のアプリSprayscapeというAndroid向けVRカメラだ。しかしVRカメラ・アプリと聞いて想像するようなものとはだいぶ違う。

Google自身のCardboard カメラも含めて、他の本物の仮想現実アプリとは違い、 Sprayscapeには360度撮影機能はない。「人物の顔でも景色でも、その他なんであれ興味をひかれたものにスマートフォンを向けてタップしてください。撮影したイメージをアプリがカンバスに貼り付けます」というのがGoogleの説明だ。

最初に試したときにはスマートフォンをあちこちに向けるときにスクリーンから指を離しておかねばならないということに気づかないかもしれない。撮影されるのはひどくぼやけた画像だ。かなりヘンテコだがそれなりに面白い。

カメラを周囲に向けてあれこれ写しているとやがて360度のフォト・コラージュが出来上がる。このVRっぽい画像はリンクを使って公開、共有が可能だ。

このアプリはCardboard SDKでジャイロセンサーのデータを読んでおり、NatCam Unityプラグインがカメラをコントロールしている。GoogleはアプリのソースをGitHubで公開しているので、ユーザーは好みの改良を加えたアプリを開発することもできる。またGoogleのコードを分析してコーディング方法を学ぶ役に立てることもできるだろう。

アプリはこちらから入手できる。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

デジタルコミックのスタートアップMadefireが初のVRアプリを提供

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デジタルコミックのスタートアップMadefireは、数日前にその最新の資金調達ラウンドの発表を行った。共同創業者兼CEOのBen Wolstenholmeは、同社が仮想ならびに拡張現実へ参入する準備が整ったと話した。彼はその約束の早期実現の期待に応えて、SamsungのOculus-powered Gear VRプラトフォーム向けのプレビューアプリをNew York Comic Conの会場で発表し、デモを行った。

以前Wolstenholmeは私に、コミック読書体験内にとどまりながらも「ネイティブデジタル体験」を与えるものの創出に挑戦していると語った。デモから判断する限り、新しいVR体験とともにその構想はまだ生きている – 音楽、サウンド効果、そしてアニメーションが加わっているが、それでも基本的にはコミックを読んでいる感覚なのである。

Wolstenholmeは、MadefireのVRに対するアプローチを、読書体験に3つ目の次元を追加するものとして説明してくれた。それ自体は3Dコミックではないのだが、読者として、コミックパネルの前に浮かんでいるような感覚を受けるだろう。

彼はそれを、劇場や洞窟壁画と交互に比較した、どちらのメタファーを好むとしても、今まで以上の没入体験を与えてくれるだろう。私もそれを試してみたが、あたかも作品と同じ空間にいるように感じた、タブレットやスマートフォンのスクリーンで読んでいる時に比べて、遥かに大きく圧倒的に感じることができた(コミックが360度のシーンを含むことができるのも役に立つだろう)。

Madefireのオーサリングツールは、クリエイターたちが作品の3次元的側面を比較的単純にカスタマイズし制御できるようにしてくれる筈だ、とWolstenholmeは語った。しかし同社はそのコミックライブラリ全体も自動的にアップグレードしている最中だ:「クリスマスまでには全部を揃えたいと思います」。

一方、デモアプリが現在含んでいるのは、一握りのタイトルである、例えばDCのInjustice: Year OneとMadefireオリジナルのMono: he Old Curiosity Shop (WolstenholmeとLiam Sharp作)などだ。

またこのニュースに関してコミック作家のDave Gibbonsと議論するチャンスがあった。彼はここ2、3年Madefireと一緒に作品作りをしている。彼は新しいVRサポートを含むMadefireフォーマットを賞賛していた、なぜならそれは作家に、作品の読書体験に対するより多くのコントロールを与えてくれるからだ。

「Madefireはスイートスポットを見つけました – 単なる仕掛けではなく、物語が重要なのです」とGibbonsは語った。「(オーサリング)ツールは誰でも使えます、なので自分自身の作品を生み出すことに何の障害もありません。私には素晴らしいことだと思えます」。

WatchmenThe Secret Service(映画KingsmanThe Secret Serviceの原作)の共作者として、Gibbonsはコミックのストーリーとキャラクタが他のメディアに入り込んでいくのを見ている。彼はコミックが「ごく最近は、コミックが映画に向けてのプロトタイプあるいはプレゼンテーション用ツールとして使われるようになっています」と語った。Madefireの新しいフオーマットを使えば、コミックはこれからも様々なものの跳躍台の役割を果たし、一方書き手や描き手が新しいテクノロジーや、読者を引きつけ続けるための新しい方法を、探求することを可能にするだろう。

「これまで、もうすべての見るべきものは見たよう気がして満足していました、なので、このように新鮮で新しく、そして役に立つものを見ることはエキサイティングなのです」とGibbonsは付け加えた。

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(翻訳:Sako)

Facebookがジェスチャーでアバターに感情を持たせる「VR絵文字」を発明

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握った拳を振ると、仮想現実世界にいるアバターが「怒った」表情を見せる。映画「ホームアローン」の主人公のように、手を顔にあてれば「ショック」の表情だ。高々と手をあげればバーチャル世界のあなたが「喜んだ」表情を見せてくれる。

これはFacebookが開発する「VR絵文字」の例であり、Facebookが考える仮想現実世界での感情表現のあり方なのだ。アバターの頭の上に黄色の絵文字が表示されるわけではない。アバターの目、眉毛、口などが動き、現実世界さながらの表情をつくり出すのだ。

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FacebookのソーシャルVR部門を率いるMichael Boothが絵文字による感情表現について話してくれた。「私たちはテキストメッセージで感情表現をしたい場合、絵文字を使います」。テキストメッセージでは声のトーンや体の動きは伝わらない。だからこそ、テキストがもつ本当の意味を表すために絵文字が誕生した。これが無ければ、例えば「うそー」と書かれたメッセージを受け取った場合、それが「興奮」を表すのか、または「疑念」を表すのかを知ることは難しいのだ。

Boothが目指すのは、本当の顔を見ることができないソーシャルVRならではの感情表現の曖昧さを減らすことだ。その結果、単なる「いいね」以上に細かな感情を表現できる360 News Feedの「Reactions」よりも、さらに優れた方法を発明することに成功したのだ。

「アバターに感情を持たせるために、その引き金となるボディーランゲージを作るというアイデアです」と彼は語る。それこそが、Boothが言うところの「VR絵文字」なのだ。「私たちは無表情の存在にはなり得ません。(仮想現実にも)目があり、口がある。感情がなければ、なんの情緒も生まれないのです」。仮想現実世界で友人にショッキングな出来事を伝えるとき、無表情ではまったく臨場感が伝わらない。私たちは顔から情報を得ることに慣れ親しんでいるのだ。

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例えば、現実世界で何かについて長い説明を行うとき、相手の困惑した表情を見れば自分の話している内容が伝わっていないことが分かる。そのため、難しい言い方を避けたり、話の背景を説明したり、違う言い方でもう一度説明したりするべきだと分かるのだ。

VR絵文字がなかったとすれば、理解できてないことを伝えるために相手の話をさえぎるか、自分の言いたいことが伝わるか分からないまま手を振り回すか、話が終わるのを待つしかない。VR絵文字を使えば、そういう場合には手のひらを上に向けて肩をすくめるポーズをすれば、アバターが眉をしかめ、口をゆがませて困惑した表情を見せてくれるのだ。ただし、BoothはVR絵文字を使うためのジェスチャーは変更される可能性があると注意している。

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Mark Zuckerbergは、人間の脳がどのようにソーシャルVRを処理するのかを説明した

VR絵文字は目の動きや顔の表情のトラッキングを必要としない。VRヘッドセットにトラッキング機能を持たせるためには、追加のハードウェアが必要となってしまう。FOVEなど一部のスタートアップのなかにはアイトラッキングが可能なヘッドセットを開発する企業もあり、VRチャットアプリのAltspaceなどはアバターの目の動きをユーザーの目の動きと合わせている。しかし、アイトラッキング機能はOculus Rift、Gear VR、Google DaydreamとGoogle Cardboard、HTC Vive、Playstation VRヘッドセットには搭載されていない。

FacebookのソーシャルVRにおいて、実際の人間と同じようなアバターを生み出すうえでの4つのゴールをBoothが教えてくれた。

  1. “アバターで再現された自分の外見に満足できる”
  2. “一目見るだけで友人が自分だと気付いてくれる”
  3. “気味が悪かったり、不快にさせるような見た目ではない”
  4. “Facebookは17億人ユーザーそれぞれに似せたアバターを創り出すことができる”

Facebookはアバターをユーザーに似せる方法をまだ模索中だ。一つの選択肢は、ユーザー自身がアバターで再現する自分の顔を描くことができるイラストレーション・ツールだ。もう一つの選択肢として、Occipital Structureセンサーなどを使ってユーザーの頭部をモデリングする方法がある。SNSにアップロードされているユーザーの写真からVR用の顔を再現することも可能だろう。

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どのような方法が採用されたとしても、信頼するに足る働きをしてくれることだろう。さもなければ、上の1番と4番のルールに反したグロテスクな見た目のアバターが生まれるかもしれない。

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幸いにも、Boothはアバターにとても精通する人物だ。彼はValveでゲーム製作に10年間携わり、同じくゲーム会社のBlizzardでも2年間勤務している。彼は自身のVRゲームスタジオを立ち上げる予定だったが、FacebookがBoothの元を訪れ、ソーシャルVR「Toybox」のデモを彼に見せつけた。彼はそのデモに「本当に圧倒されてしまった」と話している。BoothはFacebookのチームに参加することになり、本日プロトタイプが公開された名称未定のソーシャルVR「Toybox」の責任者に昨年12月から就任している。

リアルな存在感だけでは十分ではなく、VRに意味を持たせなければならない。仮想現実世界で「やること」が無ければいけないのだ。BoothとMark ZuckerbergはVR絵文字の発表に加えて、アバターとなった友人と一緒にVR上の目的地を訪れるというデモンストレーションを見せた。デモの中で彼らは、トランプを楽しんだり、テレビを見たり、ちゃんばらごっこをして遊ぶ姿を観衆に披露した。なにかクールなものを見つければVRでセルフィーを撮ることだってできるし、手首にあるボタンを押すことで、撮ったそばからFacebookでその写真をシェアすることもできる。VRでFacebook Messengerのビデオ通話を受け取れば、バーチャル世界の自分と現実世界の通話相手が会話することになる。

だが、これらの機能はまだ序の口だ。Facebookが計画しているのは、ユーザーをVR世界のビデオカメラマンにすることだ。Facebookは「バーチャルなカメラを持って動き回ることができる」機能を開発中だとBoothが話してくれた。これにより、VRヘッドセットを持っていない友人でもユーザーのFacebookにアップされたその映像を見てVRの楽しみを知ることができるのだ。「ユーザーは自分の友人のためにVR世界の2Dカメラマンになることができるのです」とBoothは語る。「ビデオをストリーミングすれば、スーパースターの一員です」。

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FacebookのソーシャルVRの進化過程。初期段階のアバターからブロック型のアバター、丸みを帯びるようになったアバター、そして感情をもった生き物へ。

Facebook Liveストリーミングを現実世界からデジタルな世界にまで広げるというコンセプトによって、ビデオにフォーカスするFacebookはソーシャルVRを同社の中心的製品と考えるようになった。OculusとFacebookはそれぞれが固有のものとして始まったプロダクトではあるが、その境界線が薄くなってきているのだ。

Facebookが思わず夢中になるようなVR体験を大規模に実現できれば、その後は「マネタイズの方法を考えることになるでしょう。VR世界での広告はとても面白い存在になることは明らかです」とBoothは話す。

ただ、現時点でのソーシャルVRは世界をつなげ、どこにいても友人とのつながりを感じさせるというFacebookのミッションを達成するための次世代の方法でしかない。ごく基本的なプロフィールから写真付きのプロフィール、そしてニュースフィードの自動再生ビデオへと進化したように、テキストチャットからマルチメディアで機能するMessengerアプリへと進化してきたように、ウェブからモバイルへ、そして今ではVRへと進化したようにFacebookはこれからも進化し続ける。それを実現するテクノロジーが何であれ、Facebookはその第一原理である「People First」に忠実であり続けるのだ。そうBoothは語っている。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

FacebookとOculusがVRコンテンツとダイバーシティと教育に$250Mあまりを投資、VRを本気でメジャー化するつもりだ

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Oculusが望むのは、次のコンピューティングプラットホームが確実に、これまでみたいに白人男性が支配するものではないようにすることだ。同社は、女性や有色人種の人びとによるVRアプリやビデオの創造を支援するために、1000万ドルの基金を設ける、と発表した。

これと並行してFacebookとOculusはさらに2億5000万ドルを、高品質なVRコンテンツの潤沢な開発を加速するために投資する。これまでにもVRコンテンツに2億5000万ドルを投資しているから、一挙に倍増となる。

そのダイバーシティ資金は、OculusのLaunch Pad及びVR For Good事業へ行く。またそれは、“新しい声を増幅する”ためにも投じられる。多様なVR作者とオーディエンスを支援することによって、人生や正義や不平等など、さまざまな視点視野に関する理解が深まる。Oculusは今日(米国時間10/6)、Diverse Filmmakers Projectというダイバーシティ事業を立ち上げた。

1000万ドルの方はOculusのNextGen事業へ向かう。それは、UnityのワークショップとSamsungやAMDおよびOculusのハードウェアを大学に寄贈し、大学におけるVRコンテンツ創造事業を振興する。VRには、コンピューター科学以外にもさまざまな学科の学習を活性化する力がある。VRによる教育アプリ/アプリケーションは、授業をよりおもしろくし、児童生徒は歴史の教科書の上のテキストを読むだけでなく、実際に過去の戦場を体験できる。

デベロッパーがそのUnityのプラットホームで開発することの、リスクを減らすために、FacebookはUnityのロイヤリティを、デベロッパーたちの収益が最初の500万ドルに達するまで負担する。デベロッパーは、自分たちのアプリが商業的に軌道に乗ったら、その後は自分で払うことになる。

モバイルゲームのデベロッパー用に、5000万ドルが取り置かれる。ケーブルを引きずりながら体験するOculus Riftが今は注目されているが、VRの真価はSamsung Gear VRやGoogleのCardboardとDaydreamヘッドセットなど、モバイルのプラットホームにある。今後のユーザー人口を大きく増やすためには、ポータビリティと価格の手頃感が重要である。

何にも増して、こうやってFacebookが巨額を投じたからには、これからはVRデベロッパーにとって良い時代になるだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Sharpの小型HDディスプレイでVRの解像度が倍(1000ppi)になる

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仮想現実は、がんばって装着してみれば、なかなかすごい。でも今あるヘッドセットは、その最良のものでも、それほどシャープ(高精細)ではない。このことに着目したSharpは、今あるものの倍の解像度を持つVR専用のディスプレイを作った。

それはまだプロトタイプで、日本のCEATECで展示されている〔7日まで〕。PC Watch誌がSharpのブースで写真を数枚撮ったが、小型スクリーンは矩形と円形の両方がある(上図)。

矩形は2160×1920、円形は直径1920だが、サイズはわずか2インチだ。だからppiは1000にもなる。今のスマホの5〜6インチの画面が、300-500ppiぐらいだ。Oculus RiftやHTC Viveで使われてるのも、やはりそれぐらい。ただしVR用でなければ、もっとすごい、2000ppiの製品もすでにある。

このSharpのディスプレイが発色もレスポンスタイムも良好だとすると…IGZOだからそのはずだが…、VR体験に革命をもたらす。それは、レティナディスプレイの前とあとのiPhoneの違いにも匹敵するだろう。

展示されてる中で、もうひとつ、ぼくの目を引いたのが、5.2インチのHDパネル“Free Form” だ(下図)。ご覧のようにコーナーが円くて、完全にベゼルがないスマートフォンのプロトタイプだ。エッジの丸いところも画面表示の一部だから、すごい。来年は、これでキメたいな。

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PC Watchのページが、Sharpのブースを詳しく紹介している。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Foveの視線追跡型VRヘッドセットFove 0がついに11月から予約販売を開始

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消費者製品としては初めての、視線追跡(eye-tracking, 視標追跡)機能のあるVRヘッドセットが、いよいよ発売される。

その製品は今や公式にFove 0と呼ばれ、Foveはその予約受付を11月2日の午前8時(太平洋標準時)に開始する。価格に関する発表は、まだない。

Kickstarterで資金を募集していたころは、3月初旬の発売、とされていたが、その後数々の製造上の問題に遭遇し、ここまで延びてしまった

発売に関するある程度の情報とともに同社は、このデバイスの技術的仕様を明らかにした。

このヘッドセットは、ワイヤレスではなく有線。70hz 2560 x 1440のOLEDディスプレイを使用し、視野角は90ないし100度。視線追跡機能は120fpsでリフレッシュされ、中心窩レンダリング(foveated rendering)の機能もある。これは、人間の目を真似て、視界の端の方の解像度をやや粗くする描画技術だ。でも本来の解像度がとても大きいから、これによってコンピューティングの負荷が有意に軽減するか、それは疑問だ。

Foveが初めて視線追跡機能を世に問うて以来、さまざまなヘッドセットのデザインが登場してきた。中でも気になるのは、ワイヤレスのQualcomm VR820かな。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

コンピューターとの対話はマルチモーダルへと向かう

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私たちはテクノロジーと触れ合うために、長い間コンピュータのマウスを利用してきた。そしてタッチスクリーンが、私たちのガジェットへのコマンド入力に新しい方法をもたらしたが、それらはマウスクリックと基本的には同じ考え方に依存している。iPhone 7上の新しい3Dタッチにしても、指を使ってイエス/ノーに答える、恐ろしく洗練された方法だというだけの話だ。

Leap MotionのCEOであるMichael Buckwaldと、EyefluenceのCEOであるJim Marggraffの2人は、将来のヒューマンコンピューターインタラクションは、様々な入力手段が組み合わされた(=マルチモーダルな)ものになるということで意見が一致している。Marggraffは、Steve Jobsがマウスの役割を指で置き換えたことと同様のことを、目で行おうとしている。彼の会社は、ARとVRのための視線追跡テクノロジーを開発している。一方Buckwaldはコミュニケーションツールとして手の動きを活用する、やや方向の違うアプローチをとっている。

「誰もが今、それぞれのポケットに15年前のスーパーコンピューターを持っています」とBuckwaldが付け加えた。「しかし私たちがこれらのデバイスを実際に使う方法を比較してみると、その使い方は本質的にはオン/オフのバイナリのままなのです」。

人間には、コミュニケーションを双方向なものにしたい自然な欲求がある。こうした理由から私たちは触覚的なフィードバックや、実際のプラスチックボタンなどを熱望するのだ。しかし、新しいコミュニケーションの方法を生み出したときには、新しく不慣れなフィードバックにも間接的に出会うことになる。時には、このフィードバックは、VRで過剰に時間を過ごしたために感じる吐き気のような不快なものであり得るが、一方素晴らしいものとなる場合もある。

「報告によれば、70から80パーセントの人が、なんらかの触覚的フィードバックを得ているように脳が感じているようですね」と、Leap Motion Orionの利用者が感じるファントムセンセーション(実際に存在しないものがあたかも有るように感じる錯覚現象)に触れながら、Buckwaldは語った。

これは、退屈な日常の仕事を逃れてエベレストのベースキャンプへ行きたいと思っている人たちにとっても楽しいものである一方、切断手術に伴う幻肢痛に苦しむ人たちにとっては信じられないほど価値のあるものとなる。VRは、そうした人たちの失われた手足を、まだそれがそこにあると信じている脳に接続するための貴重なツールとして使われるのだ。

更に悪い例だが、閉じ込め症候群(locked-in syndrome)の人は容易に外部とコミュニケーションを取ることができない。彼らにとってコミュニケーションは、多大な努力を必要とする疲れるプロセスであり、私たちが当然と思っている早口に追いつくことも闘いなのだ。

「一般的に言って、メニューを視線で操作することは、手を使う時間に比べて、わずか数十ミリ秒で完結できるのです」とMarggraffは付け加えた。

比喩を使って話すことを好む人がいる一方で、ユーモアを使いたい人もいる。人間と機械の対話はこれが決定版だというような、勝者が総取りをするようなやり方にはならない。

「仮想オブジェクトを捕まえて、保持し、動かして、様々な方向から眺めて、その大きさを調べたり、色を変えたり、変形したり。そうしたことを手で始めて、目でそれを引き継ぐこともできるのです」とMarggraffは続けた。

私たちが確信しているのは、入力メカニズムがどうであれ、コミュニケーションは遅延や中断のないシームレスなものでなければならないということだ。自然さとリアルさは、経験の質と表裏一体である。世界がより没入型になるだけでなく、その中で不快に感じることも少なくなるだろう。

これは全ての人にとって意味のあることだ。いつか私たちの子供たちは、別の大陸にいる友達とVRを通して遊べるような世界で育つことになるだろう。これはAltspaceVRのような企業によって、共有体験の上に形作られるソーシャルネットワーク全体とともに探求されている仮説と同じである。

VRの成長の中で、コンテンツの品揃えは、エンターテインメントプラットフォームとして偏ったままである。この先「iPhoneが起こしたような転換」は起こり得るだろう。ただしそれはマルチモーダルなヒューマンコンピューターインタラクションを通してのことになる。

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(翻訳:Sako)

今週の東京ゲームショーにMSIからHTC Vive利用のバックパックVR登場

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バックパック式のVR〔仮想現実〕キットというのは、しばらく前から手作りの奇妙なワンオフ・ガジェットの域をを脱し、小規模とはいえ消費者向け製品になりつつある(が、印象はやはり奇妙だ)。かなり有名な製品もいくつか作られた。大手メーカーとしてはHPと台湾の有力メーカー、MSIがこの種の製品のパイオニアだった。

数ヶ月後、去る6月のE3ゲーム・エクスポでVRへ向かう大きなトレンドに加わる形でAlienwareが後続を買って出た(バックパックだから背負って出たというべきか)。 ただしAienwaveがお披露目したハードウェアはまだプロトタイプの状態だった。

当初MSIが発表した製品も低解像度のコンセプトマシンに過ぎず、正直に言えば、そのままでは誰も感心しないような製品だった。

MSIは今週開催される東京ゲームショー2016に先立ってバックパックVRの改良版であるVR Oneを発表した。製品名も新しくなり、デザインも角ばったものに一新された。テザリングのために邪魔な接続ボックスが必要だったが、これは取り除かれている。

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面白いことにバックパック中のノートパソコンぽい部分はHTCのViveチームと協力して製作されたのだという。VRヘッドセットのレースではHTCはすでにMSIと密接に協力してきたからこれは意外ではない。

MSIによれば2個のバッテリーを装備して1.5時間の駆動時間を確保している。さらにホットスワップ・テクノロジーにより片方ずつバッテリーを交換することにより無制限に駆動時間を伸ばせる(バッテリーの残量警告灯が点滅して交換のタイミングを知らせる)。VR OneはGeForce GTX 1グラフィックボードを採用しており、HDMI、Mini Display、Thunderbolt3の各ポートを備える。9本のヒートパイプ、多数の通気口が設けられている。これはゲームパソコンを人体に密着して使用する際に予想されるオーバーヒートを防止する試みだ。

VR Oneの重量は2.2kgでさほどうるさくない冷却ファンを内蔵する。出荷時期、販売価格などの詳細はおって決定される。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Bitmovinは高品質ビデオストリーミングをアダプティブ・ストリーミング技術で可能にする

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世の人々が仮想現実(VR)ビデオの気違い染みた可能性、8Kレゾリューション、3D立体視やライトフィールド対応映像など、について話している端で、私ときたらスマホでLouis C.K.のビデオクリップをスムーズに再生しようと四苦八苦しているのだから、全く奇妙なものだ。

VRが成功するためには、企業はストリーミングの高品質化に伴なう様々な問題を解決していく必要があるだろう。

Bitmovinはアダプティブ・ストリーミングというテクノロジーを使い、こういった問題の幾つかを解決しようとしている。そのテクノロジーとは、ユーザーの使用している端末とインターネット接続様式に合わせて動的にビデオの品質を調節しようというものだ。同社によれば、そのテクノロジーを使えば動画のエンコーディングが100倍高速化し、現在市場に存在するどんなものよりも高品質のサービスを供給可能だと言う。

Bitmovinのテクノロジーの中心は、異なったVRのヘッドセット間で見られる光学的な性質の不一致に関連した問題を解決することだ。例えるならば、普通のHDディスプレーのついたスマホのVRヘッドセットにとんでもなく高精度の画像を配信することは意味がない。高度なVRテクノロジーが更に進歩するにつれ、このミスマッチの幅はどんどん広がって行くと考えられる。

「今年度はOculusを始めHTCやソニーなどのVRヘッドセット、更にはOrah、GiropticやNokiaのOzoなどからは360度カメラが次々と市場に投入されました」と、BitmovinのCEOであるStefan Ledererは言った。「どの様にビデオを制作し鑑賞するかという点で大きな変化が起こっているのです」

Bitmovinは競争相手に先んじてこのチャンスをものにしようと目論んでいる。同社はAtomicoのリードにより、シリーズAで1300万ドルを調達した。Ledererはこの資金を使い、Bitmovinのアダプティブ・ストリーミングをVRなどの新しいメディアに対応させるべく、その開発を加速させる予定だ。

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同社はすでに幾つかのVRのビッグネームに対してサービスの供給を開始しているが、現在同社が最も注力しているのはどちらかといえばより伝統的なビデオ配信ビジネスの方で、それは同社の設立者が極めて豊富な経験を持っている分野である。

Bitmovinの共同設立者はMPEG-DASHストリーミングのスタンダードを打ち立てた人物であり、それはNetflixやYouTubeなどの配信を支えており、アメリカのインターネット・トラフィックにおいてピーク時の50%にも達するものだ。BitmovinのHTML5プレーヤーは様々なプラットフォーム上でMPEG-DASHやHLSフォーマットのビデオを再生することができる。そのプラットフォームはデスクトップのウェブやスマホ、Smart TVやVRヘッドセットなど多岐に渡る。

「消費者はどこにいてもどんなデバイスにおいてもビデオに対し高い品質を期待するようになりました」と、Atomico社長のTeddie Wardiは言った。「消費者はビデオの再生が滞ったり画像が飛ぶといったことに対してますます敏感になってきていますが、Bitmovinはそういった問題を解決します」

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(翻訳:Tsubouchi)

Oculusの短編VRムービー‘Henry’がエミー賞を受賞、いよいよハリウッドもVRに本気

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VRのオリジナルコンテンツは今やたくさんあるけど、それがメジャーな著名な賞をもらうのは、確かに今回が初めてだ。Oculusの短編”Henry”が、エミー賞の“オリジナルな対話的プログラム部門”で最優秀賞の受賞者になったのだ。

この仮想現実ムービーは、主人公がハリネズミのHenryだ。彼は全身に針が生えているのにハグが大好きだ。おもしろい部分はすぐにやってくる。彼は自分の誕生日パーティーに、風船でできた動物たちをたくさん招待する。

この短編映画のナレーターはElijah Wood、監督はPixarで“Brave”や“Cars 2”を手がけたRamiro Lopez Dauだ。

制作プロダクションのOculus Story Studiosには、多くの有能な映画制作者やアニメーター(アニメ作家)がいて、仮想現実という新しいメディアによる作品作りに取り組んでいる。

Oculusはこれまでもっぱら仮想現実によるゲームの企業、というイメージだったし、同じVR企業でもHTCなどに比べると、ゲーム以外のコンテンツで目立とうとしていない。でも“Henry”は、Oculus Story Studioの優れた能力を示す好例だ。彼らはVRによるストーリー展開の、より基本的な要素を探求している。VRによる映画的表現はまだまだごく初期の段階だが、彼らのクリエイターとしての才能は、賞の審査員である高名な評論家などの心をしっかりと捉えたのだ。

監督のRamiro Lopez DauがVariety誌に語っている: “これがVR産業の転換点になるといいね。VRがアートでもあることを、見せたかった。まだきわめて初期的段階だけど、それでも、ストーリー展開のための強力なツールだから、多くの制作者が魅力を感じるはずだ。今回のエミー賞が、そのことを証明している”。

ハリウッドはこのところますます本気で、仮想現実に関心を示している。この1年で彼らは、ギミック的なVRプロモーションコンテンツの製作から卒業して、本物のVRチームを起用し、オリジナルコンテンツを作ろうとし始めている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

HTCがVRゲームのSteel Wool Studiosに500万ドルを投資

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HTCは、引き続きVRエコシステムの構築に向けて重点的な投資を行いつつ、いつかはVR市場の覇権を握ろうとしている。

オークランドを拠点とするゲームスタジオのSteel Wool Studiosは、アニメ界での数十年におよぶ経験を持つ元Pixar社員によって設立され、本日(米国時間8月31日)HTCが単独で参加したシリーズAで500万ドルを調達した。なお、HTCはVRヘッドセットViveの製造も行っている。

過去6ヶ月の間に、HTCはVR界への投資を促すべく数々の取り組みを行ってきた。4月には、1億ドルを同社のVive Xアクセラレータープログラムに投じ、エコシステム全体の健全な成長に貢献するようなVRハードウェア・コンテンツを生み出しているアーリーステージの企業に対して小規模投資を行っている。

さらにHTCは、VR Venture Capital Alliance設立に向けた動きでも最前線に立っていた。この同盟は、36の投資家から構成されており、VR企業の成長を加速させるため、およそ120億ドルの資金を準備している。メンバーには、Sequoia CapitalやRedpoint Ventures、Lightspeed Venture PartnersなどVC界の大物が名を連ねる。

持続可能なVR業界の台頭は、HTCにとっては死活問題だ。というのも、彼らのモバイル端末事業はここ数年の間に崩壊の道を辿っており、現在HTCは、次世代のプラットフォームと彼らが信じる、VRを先導する存在となるべく方向転換を図っているのだ。

今回の投資は、HTCがこれまでVR企業に対して行ってきた単独投資の中で最高額にあたり、Steel Wool Studiosの制作物に対する同社の熱狂具合が表れている。

「Steel Wool Studiosには、クリエイティブなメンバーで構成された素晴らしいチームがいます。彼らは、誕生から間もないVRカテゴリーにおいて、最先端のコンテンツを制作できる力を既に証明しています」とHTC Corporation CEOのCher Wangは語った。「Mars Odysseyや現在彼らが取り組んでいるその他のプロジェクトを見てみると、グラフィックの驚くべき再現力と強力なストーリーテリングを併せ持ったコンテンツを利用して、Steel Wool StudiosがこれからVRの利用を加速させていくというのがすぐに分かります」

Steel Wool Studiosは、HTCおよびViveプラットフォームと長期間に渡って特別な関係を構築してきた。当初、Steel Wool Studiosはモバイルゲームの開発に注力していたが、同社のファウンダーが2014年にValve Corporation本社を訪れ、Viveヘッドセットのディベロッパー向け初期プロトタイプに触れて以降、すぐにVRコンテンツの制作へと事業内容を方向転換した。結果的に同社は、今年4月のViveヘッドセットのローンチに合わせて、戦略アクションゲーム「Quar: Battle for Gate 18」を発表した。

「Quarである程度実績を作った後、私たちが生まれてからずっと待ち焦がれていたメディアである、VR向けのコンテンツ制作に全てを賭けることにしました」とSteel Wool Studiosの共同ファウンダーであるAndrew Daytonは話す。

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先日、私は9月9日からSteamストアで販売が予定されている、Mars Odysseyの初期のデモ版で火星の表面を歩きまわったほか、まだタイトルの決まっていない別のゲームに触れることができた。そのときも、Steel Wool Studiosが、制作するコンテンツ全てにプレイヤーが夢中になれるようなストーリーを盛り込むことにこだわっているのは明らかだった。

Steel Wool Studiosのファウンダーたちは、今回HTCから資金を調達したからといって、今後全てのコンテンツをHTCのプラットフォーム専用に開発するつもりはなく、Oculus Riftや、もうすぐ発売予定のPlayStation VRといったほかのVRプラットフォーム向けのコンテンツもつくり続けていくと断言していた。

さらに、今回の調達資金によって、Steel Wool Studiosはこれまでのようなゲームのほか、もっと物語に軸を置いたものを含む、異分野のコンテンツ制作が行えるようになった。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Gestigon、ポケモンGOを使ってジェスチャーコントロール技術をアピール

ポケモンGOのAR機能をさらに進化させたらどうなるか。ジェスチャーコントロール技術を持つスタートアップのGestigonが、自らの手によってポケモンGOを操作することができればどうなるかを示しながらMR(mixed reality:複合現実感)技術をアピールしている。ポケモンGOがさらに魅力的になる可能性を示そうとするものだ。

このプロダクトは、Googleのカードボードをもとにしたヘッドマウントディスプレイと、独自のミドルウェアを組み合わせ、さらにpmdのpicoflexx 3D深度センサーとGalaxy S7を使って実現したものだ。Galaxy S7のカメラが周囲の様子を取り込み、それをpicoflexxの深度センサーの空間データと組み合わせて、手の動きとポケモンGO的世界を統合する仕組みだ。現実世界でスワイプしてポケモンGOを捜査したり、自分の手でポケモンボールを用意して、それをポケモンに向かって投げることができる。現実世界にポケモンが登場したような感覚を味わえるかもしれない。

ただし、上のビデオでおわかりのように、これは「オフィシャル」なプロダクトではない。UIも実際のポケモンGOとは異なるし、また流れている音楽も違うものだ。

大流行のポケモンGOを利用して、Gestigonのミドルウェア技術を使って何ができるかを示そうとしているわけだ。オフィシャルプロダクトではないものの、Gestigonの開発キットには、上のビデオにあるポケモンGO風ゲームもデモ用として同梱されている。ARはまだまだ黎明期にあるとはいえる。しかし本プロダクトのようなジェスチャーコントロールが次々に導入され、AR自体の魅力も拡張しつつあるところであるように思う。

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(翻訳:Maeda, H

ポケモンGOはAR/VRの全てを変える(そして何も変えない)

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【編集部注】著者のTim Merel氏はEyetouch RealityDigi-Capitalの創業者でCEO。

 

「ポケモンGOをARと呼ぶのはやめろ」と純粋主義者たちは言う。しかし、あれほど成功したものをどのように呼ぼうが、誰が気にするものか。起こったことを喜ぼう。そしてこれがAR/VR産業にどのような意味を持つかを探ろう。

ポケモンGOは、誰もが待ち望んでいたAR/VRのシンギュラリティ(特異点)である、しかしその姿は皆が期待していたものとは随分異なっている。それは未来のメガネでもなく、ハイテクでもなく、新しいハードウェアは不要でしかもタダなのだ。誰がこれを予想していただろう?

ポケモンGOの開発者であるNianticですら、そうした予想はしていなかったことだろう ‐ ユーザーからの圧倒的な需要が(DDoS攻撃の助け借りずに)開始時のサーバーダウンを引き起こした程の大いなる成功にも関わらず。

ポケモンGOの素晴らしいところは、8歳から80歳までの 1億人を超える消費者たちが、世界中でゲームをプレイし、それをプレイするひとを困惑しながら眺めたり、奇妙な経験についての長々とした記事を読んだり、主流メディアが膨大な情報を投入するところを見たりしたことだ。AR/VRは、もはや業界のインサイダーや、イノベーター、そしてアーリーアダプター(やTechCrunchの読者)のための珍獣ではない。1週間も経たずにAR/VRは主流の現象となった、そしてそれは(私たちを含む)もっとも楽観的な業界インサイダーが思っていたものよりも、何年も早く起きたのである。

なぜポケモンGOはこれほど成功したのか?

まず、ポケモンは私たちの心の中の、大切な場所を占めているということ。溺愛するX世代の両親と、ベビーブーマーの祖父母が見守る中で、新世紀生まれはポケモンと共に育ち、いまやどこにでもあるブランドである。

第2に、プラットフォームが普及していたということ。今年中にはスマートフォンとタブレットによるモバイル通信契約が40億に迫ろうとしている、いまやどこにでもあるプラットフォームである。

第3に、馴染みやすく、すぐに遊べるゲーム体験。それは子供のころに遊んだポケモンではない。よりアクセスしやすい、誰にでも馴染みやすいゲーム体験である。

しかし、純粋主義者たちはなお「ポケモンGOはARではない」と言い続ける

第4に、純粋なモバイル体験。どこへ行っても遊ぶことができ、どこに行ってもそこで遊ぶ意味がある。そして、それはポケモンGOの成功だけではなく、すべてのARの成功の鍵なのだ。ARは本質的にモバイルであり、逆にモバイルであることが過去10年間の技術革新の多くを牽引してきた。

ARは火星から、VRは金星から

しかし、純粋主義者たちはなお「ポケモンGOはARではない」と言い続ける。一体彼らは正しいのか、それとも間違っているのか?

いくつかの定義を再検討してみよう。VR(仮想現実)は、仮想世界の内部にユーザーを配置する。AR(拡張現実)は、仮想オブジェクトをユーザーの実世界の上に重ねることによって、現実世界の拡張を行う。ARと密接に関連しているが、MT(複合現実)は利用者の実世界にしっかりとした仮想オブジェクトを配置する。そのため利用者にとっては、それらは実物のように見える。これまでのところ、分類は非常にシンプルだ。

Digi-Capital Reality Matrix

しかしこのテクノロジーは、それが最初に現れたときよりも、もう少し多様なものである。Digi-CapitalのReality Matrixは、いくつかの基本的な定義を使用してマーケットを区分している。

  • Virtual(仮想):現実の世界は排除される(すなわち、ユーザーは仮想世界と仮想物体だけを見ることができる)。
  • Augmented(拡張):現実の世界は排除されていない(すなわち、ユーザーは現実世界と仮想物体を見ることができる)。
  • Immersive(没入):ユーザーの脳を騙してそれらが本当の体験であるような反応を引き出すテクノロジー要素群(多種多様である、詳しくはここで)。
  • Ambient(環境):Immersive程の没入体験はもたらさない、1つまたはいくつかのテクノロジー要素群。

Reality Matrixは4区画から構成されている。いくつかのプレーヤーは、異なるユーザーニーズに対応するために複数の区画にまたがっている。

Console/PC VRは、仮想クジラが海面下でユーザーに迫ってきたときに、ユーザーを飛び退かせる(例えばHTC Vive、Oclus、PlayStation VR);Mobole VRはとても良いVR体験を提供するが、位置追跡などのキー技術のために没入型ではない(例えばSamsung Gear VR、Google Cardboard、そしてDaydream);Augment Realityには日中の現実世界の中に仮想オブジェクトを表示するIron Manのホログラフィックディスプレイのようなもの(例えばAtheer)からスマートフォン/タブレットの「魔法の窓」AR(例えば Google Project Tango)のようなものまでが含まれる;Mixed Realityでは仮想オブジェクトが日中の現実世界の中にリアルな物体として登場(例えばMicrosoft のHoloLens、Magic Leap、Metaなど)したり、ARとVRの間を簡単に切り替えられる(例えばODG)。

しかし、ポケモンGOはどこに入ることができるだろう?

それが拡張現実なんだよジム ‐ でもそれは私たちが知っているものじゃない

この点が純粋主義者たちを少々慌てさせるのだ(これがThe FirmによるStar Trekの間違った引用だからだ、という理由だけではない)。なので、ここではっきり言ってしまおう。

ポケモンGOはARだ。その本当に基本的なバージョンというだけのことだ。

多くの点で、ポケモンGOは唯一のロケーションベースのエンターテイメントであり、業界の人々が思い描いていたようなARではない。しかし、そこがポイントなのだ。これは、業界の人々の認識がどうこうという言う問題ではなく、一般の人々の認識の問題なのだ。

たとすれば、ポケモンGOがAR/VRの開発のために意味しているものは?

一般の人々がポケモンGOをARであると考えているのなら、そういうものなのだ。

友人とポケモン狩りのために近所を歩き回るときに、それがARであろうとなかろうと何の関係もない。使われているテクノロジーが新規性のないもの(GPS、クロック、カメラ)であってもなんの問題もないし、ファンシーな光学機器、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping:地図作成と位置同定を同時に行うこと)、先進的コンピュータービジョン、その他のハイテク魔法が使われていないことにも何の問題もない。そのどれも重要ではないだ。

なぜなら楽しいから。そして、どこにでもあるから。そして人々は、あなたがそれを好きかどうかに関わらずARだと思っている。だから、そのように対処するだけだ。

全てを変え、そして何も変えない。

たとすれば、ポケモンGOがAR/VRの開発のために意味しているものは?

消費者に受け入れられたという点で、それは記念されるべきものだ。何年もの間VR/AR/MRに関心を示さず、試行もして来なかったひとたちが、いまやマーケットでアクティブに活動を始めている。それは、業界のためには途方もなく良いことだ。なぜなら今やマスマーケット消費者の認知が得られているからなのだ。

アプリ開発者について言えば、誰もが時流に乗ることができるかどうかを見出そうと大騒ぎの最中だ。これまでVR/AR/MRにリソースを投入すべきかどうか決めかねていた人々は、少なくともどうすべきかを考えている。そのキャリアを活かして何をすべきかを決定しようとしいる気鋭の関係エンジニアたちは、それによって影響を受けている。市場に流入してくる才能にとっては、とても好都合だ。

VR/AR/MRテクノロジーの中核会社(すなわち、ハードウェアメーカーたち)にとっては、テクノロジーがどのように開発されていくのかに対して、ポケモンGOはほとんどが影響を与えていない。すべての課題はそのままであり、ARが真にテイクオフする(現在のロードマップに従えば、2018年頃 )ためには、ヒーローデバイス、長いバッテリ寿命、携帯通信機能、強力なアプリのエコシステムと電話会社による内部相互補助といったもののマジカルな組み合わせをまだ必要とするのだ。

投資家にとっては、非常に刺激的であると同時に混乱もしている。ポケモンGOは多大な努力を必要とする特別なアプリケーションである。規模の点で模倣することは困難だ。任天堂の株価はモンスターボールというよりヨーヨーのように見えた。ということで既に存在している以上のマーケットを巡る話題はある一方(可能性はあるものの )、VCの根底にある考え方は大きくは変わらないままである。

Apple CEOのティム・クックの言葉が最高である :「ARは本当に素晴らしいものです。私たちはこれに対して、これまでも、そしてこれからも、多大な投資を続けます。ずっとARに夢中なのです。お客さまにとって素晴らしいものを提供することができ、そして素晴らしい商業的チャンスがあると私たちは考えています…とても巨大な」。

ポケモンにとっては小さな1歩だが、ポケ類のためには大きな1歩なのだ。

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(翻訳:Sako)