英国の暗号資産ブームに影、マーケティングと利用に関する制限を検討

広告によって盛り上がりを見せている英国の暗号資産取引ブームは、大幅な速度制限に向かうようだ。同国の金融監視当局は、暗号資産をカバーするために規制当局の権限を拡大することを政府が現地時間1月18日に確認したのに続き、暗号資産のマーケティングに関する規則を強化し、利用対象に制限を設ける可能性もあると述べた。

近年、暗号資産の広告がロンドン中のビルボードに貼られ、取引ブームを煽っているが、広告基準監視当局から何度か叩かれている

広告規制局は2021年12月、「消費者の経験の浅さを無責任にも利用し、投資のリスクを説明しなかった」として7つの暗号資産広告を禁止し、暗号資産の広告に関する新しいガイダンスを作成することを望んでいると述べた。

しかし、金融監視当局の介入が、英国の暗号資産バブルを大幅に減衰させることになりそうだ。

金融行動監視機構(FCA)は、2021年に発表した「消費者投資戦略」に沿って、ハイリスク投資の「容易さとスピード」についての懸念に対応するため、今回の変更案を発表した

FCAが2022年夏までに明らかにするという新しい暗号資産規則の計画には、 暗号資産のマーケティングと利用に関する制限案が含まれている。

「FCAは、適格な暗号資産を『制限付き一般向け投資』に分類する計画で、消費者は制限付き、富裕層、洗練された投資家に分類される場合のみ、暗号資産の金融プロモーションに対応することができる」と規制当局は書いている。

「このようなプロモーションを行う企業は、明確で公正、かつ誤解を招かないという要件など、FCA規則を遵守しなければならない」と付け加えている。

規制当局は、3月23日を回答期限として、この提案に関するコンサルティングを行っている。

FCAの市場担当エグゼクティブディレクターであるSarah Pritchard(サラ・プリチャード)氏は「あまりにも多くの人々が、理解できない商品に投資させられています。それはリスクが大きすぎます。消費者が安心して投資するためには、明確で公正な情報と適切なリスク警告が必要であり、これは我々の消費者投資戦略の主要目的です」と述べた。

政府は1月18日、誤解を招く広告に対処するため、暗号資産のプロモーションを金融プロモーション法の範疇とするよう立法することを確認し、次のように書いている(あるいは、警告している)。「これは、適格な暗号資産のプロモーションが、流動資産、株式、保険商品などの他の金融プロモーションと同じ高い基準でFCA規則の対象となることを意味します」。

財務大臣のRishi Sunak(リシ・スナック)氏は声明の中で「暗号資産は、人々に取引や投資の新しい方法を提供し、刺激的な新しい機会を提供することができます。しかし、誤解を招く主張で消費者に製品が販売されないことが重要です」と付け加えた。

「消費者の保護を徹底すると同時に、暗号資産市場のイノベーションを支援しています」。

FCAが2021年夏に発表した暗号資産消費者調査によると、(英国人口約5200万人のうち)約230万人が暗号資産を所有しており、これは英国人の4.5%弱に相当する。2020年にFCAは、約190万人の英国人が暗号資産を保有していると発表しており、つまり前年比21%増となっている。

暗号資産を保有する英国人についての他の推定値は、ここ数カ月の暗号資産宣伝によってさらに大きなものとなっている(しかし、暗号資産取引宣伝はそれ自体がしばしば宣伝バブルの内側にある)。

英国では暗号資産取引に関するマーケティングが盛んで、人々の間の認知度は高まっているようだ。FCAは、成人の78%が暗号資産について聞いたことがあると報告しており、これは2019年の42%、2020年の73%から増えている。

しかし、FCAは、認知度の上昇にもかかわらず、暗号資産に対する理解度は低下していることも確認し「一部の暗号資産ユーザーは、自分が何を購入しているのかを十分に理解していない可能性がある」ことを示唆した。本当にそうなのだろうか。

FCAの調査では、暗号資産をギャンブルと考える暗号資産ユーザーは減少し(47%から38%に減少)、主流の投資の代替または補完と考えるユーザーが増え、暗号資産ユーザーの半数がより多く投資するつもりだと回答している。

つまり、無知な英国人が、輝かしい暗号資産のマーケティングに包まれたねずみ講のようなものにお金をつぎ込むのを阻止するために、英国政府と金融規制当局が、そろそろ規制強化に踏み切るときだと判断した理由は理解できなくはない。

他の国も同様の措置を取っている。

ちょうど今週、シンガポールの金融規制当局が暗号資産マーケティングに対する独自の締め付けを発表した(Nikkei Asiaより)。

さらに進んでいる国もある。中国インドでは暗号資産の禁止が計画されている。

自由奔放な取引お祭りはまだ終わっていないが、世界中の規制当局が暗号資産ランドのギャング・パラダイスに徐々に迫っている。

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画像クレジット:Cory Doctorow / Flickr under a CC BY-SA 2.0 license.

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

Operaが暗号資産ウォレットやdAppsサポートを搭載したWeb3「クリプトブラウザ」ベータ版で提供開始

Opera(オペラ)は、ビルトイン暗号資産ウォレット、暗号資産 / NFT取引所への容易なアクセス、分散型アプリ(dApps)サポートなどの機能を搭載したWeb3「Crypto Browser」ベータ版の提供を開始した。OperaのEVPであるJorgen Arnensen(ヨルゲン・アーネンセン)氏は「メインストリームユーザーが戸惑うことの多いWeb3のユーザー体験をシンプルにする」ことを目指していると声明で述べている。

主な特徴は、イーサリアム、ビットコイン、セロ、ネルボスなどのブロックチェーンに対応するノンカストディアル(自己管理型)ウォレットを最初から内蔵していることだ。また同社は、Polygon(ポリゴン)などとのパートナーシップも発表した。これは、拡張機能を必要とせずにユーザーが自分の暗号資産にアクセスできるようにするという考えによるもので、サードパーティのウォレットも使用できるようになっている。フィアットからクリプトへの交換により暗号資産を購入したり、直接ウォレット内で暗号資産を交換したり、それらを送受信したり、ウォレットの残高を確認したりすることが可能だ。また、コピー / ペーストの際に他のアプリがデータを取得できないようにするセキュアクリップボードも搭載している。

もう1つの主な機能はWeb3、つまりブロックチェーンベースの分散型インターネットへの対応だ。これは、暗号愛好家(および懐疑派)の間でバズワードとなっている。ブロックチェーン暗号化によるセキュリティ強化に加え、ユーザーはGameFiなどにアクセスすることで「あらゆる種類のメタバースをプレイして収入を得られる」とOperaは述べている。また、最新のブロックチェーンニュースを掲載した「Crypto Corner」も用意されており「Web3のスキルを向上させることができる」としている。

OperaのライバルであるMozilla(モジラ)は最近、暗号資産による寄付を受け付けることを発表したが、ブロックチェーンの環境への影響をめぐり、共同創業者のJamie Zawinski(ジェイミー・ザウィンスキー)氏を含むユーザーから強い反発を受けた。同様の反応を予想してか、Operaは、よりエネルギー効率の高いEthereumレイヤー2規格を「可能な限り早く」実装することを目指していると述べている。

Ubisoft(ユービーアイソフト)のようにNFTなどでブロックチェーンの時流に飛び乗った企業も、同様の批判にさらされている。しかし、Operaは少なくとも、通常のOperaブラウザゲーマー専用のブラウザも提供しており、複数のブラウザオプションでユーザーに選択肢を与えている。Crypto Browserは現在、AndroidWindowsMacに対応しており、iOS版も近日中にリリースされる予定だ。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者Steve Dent(スティーブ・デント)氏は、Engadgetのアソシエイトエディター。

画像クレジット:Opera

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(文:Steve Dent、翻訳:Aya Nakazato)

Block(旧Square)のCash AppがLightning Networkを統合、手数料無料でビットコイン支払い可能に

2021年11月、Twitter(ツイッター)CEOのJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏が辞任した。同氏が所有する別の会社Square(スクエア、現在はBlock)に全力を注ぐためだ。同社は近年ブロックチェーンと暗号資産に多大な投資を行っており、それはドーシー氏自身も同じだ。そして今、Blockの暗号資産への取り組みの結果が見え始めてきた。米国時間1月17日午前、Blockのモバイル決済サービスCash App(キャッシュ・アップ)はLightning Network(ライトニング・ネットワーク)との統合を発表し、米国ユーザーが世界中の誰にでもBitcoin(ビットコイン)を手数料なしで送れるようにした。

この機能は以前からCash Appユーザーに向けて徐々に公開されていたが、正式な発表はなかった。「今後数週間」のうちに米国の全Cash App利用者に行き渡る予定だと同社はいう。

新機能が有効になると、Cash AppユーザーはBitcoinを全世界の対応するウォレットに送れるようになる。家族や友達への送金の他Chivo Wallet(チボ・ウォレット)やBlueWallet(ブルーウォレット)、Muun Wallet(ムーン・ウォレット)などの自己管理ウォレットも対象だ。さらに、ユーザーはLightning Network決済に対応している商店にも手数料なしでBitcoinを送金できる。まだ主流にはなっていないが、一部の売り手がLightning決済を受け入れ始めているので、ユーザーはLightning Network経由でピザを注文したりギフトカードを買ったりできる。

Lightning NetworkがCash Appに統合されたことは、現在成長中のクリエイター経済にも力を与えるだろう。クリエイターやCause(大義)がLightning 決済に対応していれば、ファンはBitcoinを送って支援の気持ちを表すことができる。

画像クレジット:Lightning Network

Cash Appはこのシステムの優位性について、一般的なBitcoinネットワーク取引はLighning Networkと比べて、時間がかかり手数料も高いことを挙げ、Lightningという名前はその高速性を伝えるためだと説明した。同システム上での取引はブロックチェーンとは独立に(オフ・チェーンで)実行される。これは通常関わってくる手数料、時間、エネルギーを減らす効果がある。それでもLightning Networkがブロックチェーンのテクノロジーと分散化の恩恵を受けることができるのは、そこで行われた取引は、後にメインのBitcoinブロックチェーンに集約、記録されるからだ。

ドーシー氏は以前からLightning Networkに関心を示しており、2019年にツイートで、これは #BitcoinTwitterユーザーの間で行われている実験の「クールな事例」だという。最近では、BlockのBitcoinに特化した子会社、Spiral(スパイラル)がLightning開発キット(LDK)を提供して、どんなアプリにも簡単にBitcoin支払いを統合できるようにした。今回のCash AppへのLightning統合にもSpiralのLDKが使用されている。Cash Appは、LDKを組み込こんだ最初の、現時点で最大の決済アプリケーションだと同社はいう。

LDKの提供は、一部門の作ったツールが他のBlock傘下企業で使われるという点で、Blockの戦略的ビジョンが具現化された新たな事例でもある。

画像クレジット:ThaiMyNguyen / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

Animoca、Galaxy Interactive、Polygonが印ゲーム企業nCoreのWeb3推進を支援

nCore GamesはWeb3サービスの開始に向け、新たな資金調達ラウンドで1000万ドル(約11億5000万円)を調達したと同社のトップがインド時間1月17日に発表した。

暗号資産分野で著名な投資家であるAnimoca BrandsとGalaxy Interactiveの2社が、今回の資金調達を主導した。また、イーサリアムL2スケーリングソリューションで有名なPolygon(ポリゴン)とHyperedge Capitalもこのラウンドに参加した。

他にも、Google(グーグル)の元上級副社長であるAmitabh Singhal(アミターブ・シンガル)氏 、Polygonの共同創業者であるSandeep Nailwal(サンディープ・ネイルワル)氏、Dell(デル)のプログラム管理ディレクターKanwaljit Bombra(カンワルジット・ボンブラ)氏、Sohil Chand(ソヒル・チャンド)氏、Ashish Chand(アシシュ・チャンド)氏、映画監督のRam Madhvani(ラム・マドヴァニ)氏、Rakesh Kaul(ラケッシュ・コール)氏、Mannan Adenwala(マンナン・アデンワラ)氏、Sanjay Narang(サンジェイ・ナラン)氏、Taj Haslani(タジ・ハスラニ)氏、Playfishの共同創業者Kristian Segerstrale(クリスティアン・セガーストラーレ)氏、Sanjay Gondal(サンジェイ・ゴンダル)氏、Vedant Baali(ヴェーダン・バーリ)氏、Kartik Prabhakara(カーティク・プラバカラ)氏、Peter Leung(ピーター・レオン)氏、Yashraj Akashi(ヤシュラージ・アカシ)氏、Akshay Chaturvedi(アクシャイ・チャトルベディ)氏など、多くのエンジェル投資家がラウンドに参加した。

nCore Gamesは、Studio nCore、Dot9 Games、IceSpiceなど、複数のゲームスタジオを擁している。同社のポートフォリオには、数千万のダウンロードを記録したマルチプレイアクションゲーム「Fau-G」や「Pro Cricket Mobile」などがある。

nCore Gamesの共同創業者であるVishal Gondal(ヴィシャール・ゴンダル)氏は、TechCrunchのインタビューで同社は2021年中にさらに多くのゲームを立ち上げ、投資することを計画していると語った。

しかし今回の資金調達では、メタバースへの展開がより大きな焦点になるとのこと。nCore Gamesは独自のNFTやトークンの発行を検討しており、それらは今後数カ月以内に立ち上げる可能性があるという。

インドは、ダウンロード数で世界最大のモバイルゲーム市場の1つとして浮上している。ニューデリーで禁止される前の「PUBG Mobile」は、インドで5千万人以上の月間アクティブユーザー(MAU)を獲得していた。だがゲーム会社は、アプリ内課金の普及率の低さや広告収入の少なさから、このユーザー層を効率的に収益化するのに苦労している。

Galaxy InteractiveのゼネラルパートナーであるSam Englebardt(サム・エングルバルド)氏は「インドにおけるゲーミングの成長はすでに否定できないものであり、市場はさらに大きな飛躍を遂げようとしています」と述べている。

ゲーム業界のベテランで、前身のベンチャー企業をディズニーに売却した経験を持つゴンダル氏は、特に企業が収益を得るために広告に頼ることが多かった発展途上国の市場では、ゲーム経済に変化が起きているという。同氏は、アプリ内課金の収益が高くないインドと似た市場であるフィリピンでのAxie Infinityの人気を例に挙げた。

ゴンダル氏は、インド、インドネシア、フィリピンの類似点を挙げ、多くの市場でいくつかのカテゴリーに進出しているWeb3の製品が、インドのゲーミングでも人気を博すだろうと楽観視している。同氏は、Web3はすべてのステークホルダーに適切なインセンティブ構造を提供できる位置にあると考えている。

「現在、ゲームをプレイしているときには、コミュニティの一員になることが最大のメリットでした。これからはゲームをプレイしている間に、ゲームの価値を自分のものとして所有するチャンスがあるのです」。

IceSpiceの最高経営責任者であるTejraj Parab(テジラジ・パラブ)氏によると、nCore Gamesは、同社のすべてのタイトルとパートナー企業のゲームがコミュニティに提供するユニバーサルトークンを作ることを検討しているという。また、同社の技術を他のゲームデベロッパーが活用できるようにしたいと考えているとのこと。

Studio nCoreのDayanidhi MG(ダヤニディ・MG)CEOはこう述べている。 「当社は、グローバルリーダーや大きな成功を収めているファンド、企業、業界ベテランの方々と一緒に、新しいトレンドやテクノロジーを取り入れ、飛躍的な成長を遂げてnCoreを次のレベルに引き上げることに興奮しています」。

Web3は、インドでも普及し始めている。Tiger GlobalとSequoia Capital Indiaが支援するインドのスタートアップFaze(フェイズ)は、2021年、クリケットの世界的な統括団体であるICCと提携し、クリケットファン向けのNFTを立ち上げた。この件に詳しい2人の関係筋によると、同スタートアップは現在、Insight Partnersから新たな資金調達を行うための交渉を行っているという。ボリウッドの有名人も、企業と提携して独自のNFTを立ち上げている。

Animoca Brandsで共同創業者及び代表取締役会長を務めるYat Siu(ヤット・シウ)氏は、声明でこう述べている。「nCORE Gamesは、経験豊富なゲーム業界の専門家によって設立された会社であり、大規模な成長が見込まれるゲーム市場を有するインドにおいて、最も有望な投資先の1つです。nCORE Gamesは、ゲームにブロックチェーンとNFTを活用して、プレイヤーにデジタル財産権を提供するための適切なチームを持っており、グローバルなオープンメタバースに向けて、多くの製品を成功させることを期待しています」。

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(文:Manish Singh、翻訳:Aya Nakazato)

【コラム】ソーシャルメディアの人々をWeb3へと誘う5つのNFTトレンド

Twitter(ツイッター)に対する批判が高まる中、大半のテック創業者とVCたちは、Web 2.0かWeb3のどちらかを支持している。

Web3の支持者は、Web3がインターネットの未来であり、今後数年でブロックチェーンベースの製品がWeb 2.0に完全に取って代わると信じている。

Web 2.0の断固たる支持者は、Web3は利益を出すことを目論むさまざまな暗号技術によって祭り上げられた誇大広告に過ぎず、ブロックチェーン技術の応用範囲は基本的に限られていると主張している。

筆者は、Web 2.0アプリを10年以上に渡って構築し、やはり10年以上に渡って暗号技術に投資してきた創業者として、最もおもしろいビジネスチャンスは、Web 2.0とWeb3の交差部分に存在すると思っている。

ブロックチェーンの消費者市場における真の潜在性は、Web 2.0とWeb3の併合によって解き放たれる。

エネルギー、人材、リソースがWeb3に注入され、インターネット初期が思い起こされるのはワクワクする。インターネット初期の状況を思い出すくらいシリコンバレーに長くいる人たちにとって、現在の状況と当時の状況の類似性は否定できない。

しかし今回は、成長率が非常に高い。Web3の専門家はこの事実をWeb3がインターネットの未来であり、Web 2.0はまもなく消滅するという議論を支える事実として指摘している。

しかし、インターネットの初期と現在とでは、1つ重要な違いがある。Web 1.0より前は、インターネットは存在していなかった。我々はみんなアナログの生活を送っていた。普及当初のインターネットは比較的退屈な存在と戦っていた。フリーポルノ、チャットルーム、ゲーム、音楽、eメール、動画などだ。指先を動かすだけで世界の情報が手に入るようになった。土曜日にわざわざ大ヒット映画を観に行くこともなくなった。決してフェアな戦いではなかった。

自分では絶対に履かないとわかっているスニーカーを2000ドル(約23万円)で買ってしまった。このスニーカーはNFTとしてのみ存在するため、履けないのだ。狂気の沙汰かもしれないが、昔親指が痛くなるヒールにお金を使っていたのと大差ないような気がする。

Web3は新しい段階に入ってきている。現代人は強く惹き付けられるデジタル製品に夢中になっている。平均的な消費者がTikTok(ティックトック)をスクロールするのを止めないのは、分散化の時代の先触れとなりたいからでも、クリエーターエコノミーを支援したいからでも、インフレーションを抑制したいと考えているからでもない。彼らはそんなことはどうでもよいのだ。それに彼らは、BAYC(Bored Ape Yacht Club)CryptoPunksを買うお金もない。

平均的なインターネットユーザーが気にしているのは、ソーシャルメディアで自分がどのように見えているかである。これが橋渡し役となる。そして、この橋渡し役の鍵となるのがNFTである。

ソーシャルメディアのオーディエンスをまとめてWeb3に移行させる5つのNFTトレンドを以下に示す。

NFTの検証

懐疑的な人は、NFTは右クリックするだけで基盤となるファイルを保存できるため、間抜けだという。しかし、これは一時的な問題だ。近い将来、すべての大手ソーシャルプラットフォームはNFT検証を実装するだろう。これにより、ウォレットを接続して、自分のプロファイルの検証済NFTを表示できるようになる。と同時に、指紋テクノロジーによって、各プラットフォームは、盗まれたファイルを容易に検出し、削除できるようになる。

TikTokユーザーが自分の投稿で一意の検証済NFTを表示して使用できるようになると、ゲームは完全に様変わりすることになる。というのは、NFTを購入して配信することのソーシャル的な価値が急激に向上するからだ。

サイドチェーン

Polygon(ポリゴン)などのサイドチェーンが普及してくると、NFTの価格は下がってくる。輸送費がかからないため、開発者はNFTにより高い対話性と構成可能性を組み込むことができ、その結果、本質的にNFTのソーシャル性を高めることができる。

ポケモンGOをブロックチェーン上で運用して、各ポケモンが交換したり売ったりできるNFTになっている状況を想像してみて欲しい。獲得した各ポケモンは独自の特徴を備えており、さまざまな場所で課題をクリアすることでポケモンを独自に進化させることができる。ポケモンのレベルが向上すると、そのパワーがオンチェーンでアップデートされる。ゲームを進めていくと、暗号化トークンを獲得できる。このトークンはゲームの外の世界でも価値を持っている。

音楽

2021年のNFTブームでは主に視覚的なアートが中心だったが、次の段階では、音楽が対象になる。音楽NFTは最終的にはアートよりもずっと大規模なものになると思われる。収集するものが物理的なアートであれNFTであれ、コレクターの行為を促す強い欲求は同じだ。つまり、自身の芸術的センスを相手に表現したいという欲求、個人グループを問わず自身のアイデンティティを表現したいという欲求、そして場合によっては利益を上げたいという欲求だ。

初期のNFTブームには少なからず投機的な動機があったものの、自己表現とアイデンティティを取り巻く衝動こそがアート収集を促すより基本的な原動力であると思う。そして、人が自身の特徴やアイデンティティを表現する方法として最も普及している方法の1つとして音楽がある。

TikTokミュージック動画を始めて以来、ミュージックトラックはTikTok上で共有される動画の主要コンポーネントになっている。だが、現在使用できるミュージックはごく一般的なものだ。みんな同じ曲を使うことしかできない。

お気に入りのアーティストが60秒の音楽トラックをNFTとして数量限定でリリースするようになったらどうだろう。あなたはその1つを購入して、クールなTikTokを作る。これが口コミでまたたく間に広がる。数百万人の人たちが突如としてその曲を使って独自のTikTokを作りたいと考えるようになる。しかし、使える数は100コピーだけ。あなたには毎日、その曲を購入したいというオファーがくる。販売するか手元に置いておくかはあなた次第。

ファッション

Web 2.0時代幕開けの頃、筆者は20代だったが、自分の収入をすべてファッションに使っていたものだ。おしゃれなジーンズ、かかとの高いヒール、サングラス、ハンドバッグ。良いものを身に付けたいという欲求は飽くことを知らなかった。

しかし、この10年でソーシャルな活動の大半がオンラインにシフトし、筆者のファッション支出も減少した。最近本当に欲しいものといえば、エクセサイズ関連商品を除けば、カラフルなZoomのトップくらいだ。おしゃれな洋服を購入する楽しみはすっかり薄れてしまった。

ところが先日、筆者は自分でも驚くようなことをしてしまった。自分では絶対に履かないとわかっているスニーカーを2000ドルで買ってしまったのだ。このスニーカーはNFTとしてのみ存在するため、履けないのだ。暗号資産の泥沼にはまり込んだことない人に、このような買い物をする理由を説明するのは難しいが、ほとんど狂気の沙汰であることは自分でもわかっている。だけど、昔親指が痛くなるヒールにお金を使っていたのと大差ないとは思うのだが。

ソーシャルメディアのオーディエンスがデジタル版の自己を着飾るために使うデジタル製品に大金を使う時代がやってきたようだ。既存の代表的なNFTといえば大半がゲームやアバター関連だが、大量のオーディエンスに変革をもたらす魅力的な使用例としてARフィルターがある。

Kim Kardashian(キム・カーダシアン)がカスタムのARフィルターをリリースしたらどうだろう。フェイスリフト、リップフィルター、メークアップ、ヘアスタイル、衣服、宝石などだ。どれもキム独自のものだ。これらを購入すれば、あなただけがそのフィルターで自分のTikTok動画を飾ることができる。飽きたら転売すればよい。キム、あなたのホワイトリストに私を追加してくれる?

ダイナミックなアバター

はいはい、わかってますよ。プロフィール画像を気味の悪い類人猿に変えるなんて何を考えているのかわからない、ですよね。実は私もBored Ape(ボアード・エイプ)のデジタルアートを持っている。ただし、自分のプロフィール画像に使う気にはならならず、代わりにWorld of Women(ワールドオブウーマン)の画像を使っている。どうして仕事用の顔写真の代わりに自分になんとなく似ているアルゴリズムで生成された漫画の画像を使うのかって?楽しいからだ。それに写真ではなかなか表現できない私の性格の一面を表すことができる。

ただ、私のプロフィール画像はちょっと古くさい感じになってしまった。少し動く画像だったらよかったのに。

ダイナミックさ、パーソナライゼーション、動きがNFTアバターにも取り入れられるようになってきた。セルフィーを撮ると、AIが理想のあなたに近いユニークなカスタムの3Dアバターを生成してくれる。Bitmojiに似ているが、もっと良い。人物の表情やポーズ、衣服、アクセサリーを更新することもできるし、人物を踊らせることもできる。キーボードを打つだけで自分の声でしゃべらせることもできる。これを使えば、自分の印象をうまく伝えているという実感が持てる魅力的なTikTokの投稿を簡単に作れるだろう。演技力や撮影のスキルを磨くための時間は最小限で済み、その分、自分の伝えたいメッセージの作成に時間を費やすことができる。

ダイナミックなアバターはソーシャルメディア上での自己表現を民主化する機会になるだろう。その結果、より多くのクリエーターたちが自身を表現できるようになるだろう。

Facebook(フェイスブック)が登場した当初は、ばかげていると思ったが、楽しかった。数日おきにログオンすると、親友の誕生日を知らせてくれたりするし、友人の派手なプロフィール画像につっこみを入れたりしていたものだ。その後、フィード、モバイル写真とアルゴリズム、インタグラムモデル、ラテ、完全にフィルターされた生活がやってくる。その過程で、楽しさは薄れソーシャル奴隷のようになってしまう。ほとんど知らない人たちの気分の悪くなる記事をスクロールして読んでは、お返しとばかりに醜悪な投稿をする。こんなはずじゃなかったのに。

Zuckerberg(ザッカーバーグ)氏がMeta(メタ)についてのビジョンを語ったとき、みんな軽蔑の目で見ている感じだった。「ソーシャルメディアで私達の生活を台無しにした上に、今度は残された最後の物理的なつながりまで消滅させて、Matrix(マトリックス)に出てくる植物人間のようにしてしまうつもりか」と誰もが叫びたい気持ちだった。

とはいえ、賛否両論はあると思うが、私達はすでにメタバースの世界へと歩みを進めており、それは止められない。生活のバーチャル化は進む一方だ。Web3では、バーチャル世界での豊かな経験が実現される。これが空虚感の少ない、少しは人間らしいものであってくれることを願うばかりだ。

NFTおよびWeb3がもたらすあらゆるものによって、人との交流が昔のように楽しいものになるような仮想現実が創造されることを楽しみにしたいと思う。

編集部注:本稿の執筆者Prerna Gupta(プレーナ・グプタ)氏は、HookedやSmuleといったモバイルエンターテイメントアプリを立ち上げ、10億人以上の人々にリーチしてきた。現在、NFT領域でステルスプロジェクトに取り組んでいる。

画像クレジット:Iryna+ mago / Getty Images

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(文:Prerna Gupta、翻訳:Dragonfly)

【コラム】ソーシャルメディアの人々をWeb3へと誘う5つのNFTトレンド

Twitter(ツイッター)に対する批判が高まる中、大半のテック創業者とVCたちは、Web 2.0かWeb3のどちらかを支持している。

Web3の支持者は、Web3がインターネットの未来であり、今後数年でブロックチェーンベースの製品がWeb 2.0に完全に取って代わると信じている。

Web 2.0の断固たる支持者は、Web3は利益を出すことを目論むさまざまな暗号技術によって祭り上げられた誇大広告に過ぎず、ブロックチェーン技術の応用範囲は基本的に限られていると主張している。

筆者は、Web 2.0アプリを10年以上に渡って構築し、やはり10年以上に渡って暗号技術に投資してきた創業者として、最もおもしろいビジネスチャンスは、Web 2.0とWeb3の交差部分に存在すると思っている。

ブロックチェーンの消費者市場における真の潜在性は、Web 2.0とWeb3の併合によって解き放たれる。

エネルギー、人材、リソースがWeb3に注入され、インターネット初期が思い起こされるのはワクワクする。インターネット初期の状況を思い出すくらいシリコンバレーに長くいる人たちにとって、現在の状況と当時の状況の類似性は否定できない。

しかし今回は、成長率が非常に高い。Web3の専門家はこの事実をWeb3がインターネットの未来であり、Web 2.0はまもなく消滅するという議論を支える事実として指摘している。

しかし、インターネットの初期と現在とでは、1つ重要な違いがある。Web 1.0より前は、インターネットは存在していなかった。我々はみんなアナログの生活を送っていた。普及当初のインターネットは比較的退屈な存在と戦っていた。フリーポルノ、チャットルーム、ゲーム、音楽、eメール、動画などだ。指先を動かすだけで世界の情報が手に入るようになった。土曜日にわざわざ大ヒット映画を観に行くこともなくなった。決してフェアな戦いではなかった。

自分では絶対に履かないとわかっているスニーカーを2000ドル(約23万円)で買ってしまった。このスニーカーはNFTとしてのみ存在するため、履けないのだ。狂気の沙汰かもしれないが、昔親指が痛くなるヒールにお金を使っていたのと大差ないような気がする。

Web3は新しい段階に入ってきている。現代人は強く惹き付けられるデジタル製品に夢中になっている。平均的な消費者がTikTok(ティックトック)をスクロールするのを止めないのは、分散化の時代の先触れとなりたいからでも、クリエーターエコノミーを支援したいからでも、インフレーションを抑制したいと考えているからでもない。彼らはそんなことはどうでもよいのだ。それに彼らは、BAYC(Bored Ape Yacht Club)CryptoPunksを買うお金もない。

平均的なインターネットユーザーが気にしているのは、ソーシャルメディアで自分がどのように見えているかである。これが橋渡し役となる。そして、この橋渡し役の鍵となるのがNFTである。

ソーシャルメディアのオーディエンスをまとめてWeb3に移行させる5つのNFTトレンドを以下に示す。

NFTの検証

懐疑的な人は、NFTは右クリックするだけで基盤となるファイルを保存できるため、間抜けだという。しかし、これは一時的な問題だ。近い将来、すべての大手ソーシャルプラットフォームはNFT検証を実装するだろう。これにより、ウォレットを接続して、自分のプロファイルの検証済NFTを表示できるようになる。と同時に、指紋テクノロジーによって、各プラットフォームは、盗まれたファイルを容易に検出し、削除できるようになる。

TikTokユーザーが自分の投稿で一意の検証済NFTを表示して使用できるようになると、ゲームは完全に様変わりすることになる。というのは、NFTを購入して配信することのソーシャル的な価値が急激に向上するからだ。

サイドチェーン

Polygon(ポリゴン)などのサイドチェーンが普及してくると、NFTの価格は下がってくる。輸送費がかからないため、開発者はNFTにより高い対話性と構成可能性を組み込むことができ、その結果、本質的にNFTのソーシャル性を高めることができる。

ポケモンGOをブロックチェーン上で運用して、各ポケモンが交換したり売ったりできるNFTになっている状況を想像してみて欲しい。獲得した各ポケモンは独自の特徴を備えており、さまざまな場所で課題をクリアすることでポケモンを独自に進化させることができる。ポケモンのレベルが向上すると、そのパワーがオンチェーンでアップデートされる。ゲームを進めていくと、暗号化トークンを獲得できる。このトークンはゲームの外の世界でも価値を持っている。

音楽

2021年のNFTブームでは主に視覚的なアートが中心だったが、次の段階では、音楽が対象になる。音楽NFTは最終的にはアートよりもずっと大規模なものになると思われる。収集するものが物理的なアートであれNFTであれ、コレクターの行為を促す強い欲求は同じだ。つまり、自身の芸術的センスを相手に表現したいという欲求、個人グループを問わず自身のアイデンティティを表現したいという欲求、そして場合によっては利益を上げたいという欲求だ。

初期のNFTブームには少なからず投機的な動機があったものの、自己表現とアイデンティティを取り巻く衝動こそがアート収集を促すより基本的な原動力であると思う。そして、人が自身の特徴やアイデンティティを表現する方法として最も普及している方法の1つとして音楽がある。

TikTokミュージック動画を始めて以来、ミュージックトラックはTikTok上で共有される動画の主要コンポーネントになっている。だが、現在使用できるミュージックはごく一般的なものだ。みんな同じ曲を使うことしかできない。

お気に入りのアーティストが60秒の音楽トラックをNFTとして数量限定でリリースするようになったらどうだろう。あなたはその1つを購入して、クールなTikTokを作る。これが口コミでまたたく間に広がる。数百万人の人たちが突如としてその曲を使って独自のTikTokを作りたいと考えるようになる。しかし、使える数は100コピーだけ。あなたには毎日、その曲を購入したいというオファーがくる。販売するか手元に置いておくかはあなた次第。

ファッション

Web 2.0時代幕開けの頃、筆者は20代だったが、自分の収入をすべてファッションに使っていたものだ。おしゃれなジーンズ、かかとの高いヒール、サングラス、ハンドバッグ。良いものを身に付けたいという欲求は飽くことを知らなかった。

しかし、この10年でソーシャルな活動の大半がオンラインにシフトし、筆者のファッション支出も減少した。最近本当に欲しいものといえば、エクセサイズ関連商品を除けば、カラフルなZoomのトップくらいだ。おしゃれな洋服を購入する楽しみはすっかり薄れてしまった。

ところが先日、筆者は自分でも驚くようなことをしてしまった。自分では絶対に履かないとわかっているスニーカーを2000ドルで買ってしまったのだ。このスニーカーはNFTとしてのみ存在するため、履けないのだ。暗号資産の泥沼にはまり込んだことない人に、このような買い物をする理由を説明するのは難しいが、ほとんど狂気の沙汰であることは自分でもわかっている。だけど、昔親指が痛くなるヒールにお金を使っていたのと大差ないとは思うのだが。

ソーシャルメディアのオーディエンスがデジタル版の自己を着飾るために使うデジタル製品に大金を使う時代がやってきたようだ。既存の代表的なNFTといえば大半がゲームやアバター関連だが、大量のオーディエンスに変革をもたらす魅力的な使用例としてARフィルターがある。

Kim Kardashian(キム・カーダシアン)がカスタムのARフィルターをリリースしたらどうだろう。フェイスリフト、リップフィルター、メークアップ、ヘアスタイル、衣服、宝石などだ。どれもキム独自のものだ。これらを購入すれば、あなただけがそのフィルターで自分のTikTok動画を飾ることができる。飽きたら転売すればよい。キム、あなたのホワイトリストに私を追加してくれる?

ダイナミックなアバター

はいはい、わかってますよ。プロフィール画像を気味の悪い類人猿に変えるなんて何を考えているのかわからない、ですよね。実は私もBored Ape(ボアード・エイプ)のデジタルアートを持っている。ただし、自分のプロフィール画像に使う気にはならならず、代わりにWorld of Women(ワールドオブウーマン)の画像を使っている。どうして仕事用の顔写真の代わりに自分になんとなく似ているアルゴリズムで生成された漫画の画像を使うのかって?楽しいからだ。それに写真ではなかなか表現できない私の性格の一面を表すことができる。

ただ、私のプロフィール画像はちょっと古くさい感じになってしまった。少し動く画像だったらよかったのに。

ダイナミックさ、パーソナライゼーション、動きがNFTアバターにも取り入れられるようになってきた。セルフィーを撮ると、AIが理想のあなたに近いユニークなカスタムの3Dアバターを生成してくれる。Bitmojiに似ているが、もっと良い。人物の表情やポーズ、衣服、アクセサリーを更新することもできるし、人物を踊らせることもできる。キーボードを打つだけで自分の声でしゃべらせることもできる。これを使えば、自分の印象をうまく伝えているという実感が持てる魅力的なTikTokの投稿を簡単に作れるだろう。演技力や撮影のスキルを磨くための時間は最小限で済み、その分、自分の伝えたいメッセージの作成に時間を費やすことができる。

ダイナミックなアバターはソーシャルメディア上での自己表現を民主化する機会になるだろう。その結果、より多くのクリエーターたちが自身を表現できるようになるだろう。

Facebook(フェイスブック)が登場した当初は、ばかげていると思ったが、楽しかった。数日おきにログオンすると、親友の誕生日を知らせてくれたりするし、友人の派手なプロフィール画像につっこみを入れたりしていたものだ。その後、フィード、モバイル写真とアルゴリズム、インタグラムモデル、ラテ、完全にフィルターされた生活がやってくる。その過程で、楽しさは薄れソーシャル奴隷のようになってしまう。ほとんど知らない人たちの気分の悪くなる記事をスクロールして読んでは、お返しとばかりに醜悪な投稿をする。こんなはずじゃなかったのに。

Zuckerberg(ザッカーバーグ)氏がMeta(メタ)についてのビジョンを語ったとき、みんな軽蔑の目で見ている感じだった。「ソーシャルメディアで私達の生活を台無しにした上に、今度は残された最後の物理的なつながりまで消滅させて、Matrix(マトリックス)に出てくる植物人間のようにしてしまうつもりか」と誰もが叫びたい気持ちだった。

とはいえ、賛否両論はあると思うが、私達はすでにメタバースの世界へと歩みを進めており、それは止められない。生活のバーチャル化は進む一方だ。Web3では、バーチャル世界での豊かな経験が実現される。これが空虚感の少ない、少しは人間らしいものであってくれることを願うばかりだ。

NFTおよびWeb3がもたらすあらゆるものによって、人との交流が昔のように楽しいものになるような仮想現実が創造されることを楽しみにしたいと思う。

編集部注:本稿の執筆者Prerna Gupta(プレーナ・グプタ)氏は、HookedやSmuleといったモバイルエンターテイメントアプリを立ち上げ、10億人以上の人々にリーチしてきた。現在、NFT領域でステルスプロジェクトに取り組んでいる。

画像クレジット:Iryna+ mago / Getty Images

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(文:Prerna Gupta、翻訳:Dragonfly)

「暗号資産の未来」への投資競争には確実に金がかかる

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ!

先週もなんとか乗り切れた。電話やTwitter(ツイッター)ではみんな疲れた姿を見せていたが、なんとかなったようだ。なんとか平日を乗り切って、週末にしばし休息は得られたろうか。そう、今日は暗号資産の話だ。楽しもう。

私は、Coinbase(コインベース)がより大きなブロックチェーン市場の他の企業に資本を投入するペースに感銘を受けている。米国の上場企業は比較的少額(売上と比べての場合だが)を支払うことで、スタートアップの所有権と情報アクセス権の両方を買うことができ、何が起きているかの早期警告データを得ることができるので、これは賢明な動きだ。Coinbaseが、暗号資産市場における明らかな既存大手であり、ある意味門番のようなものであることを考えると、その投資は理に適っている。

しかし、他にもあちらでも投資、こちらでも投資が続いている。今回発表されたFTXファンドは、かなり速いペースで取引されているにも関わらず、これまでCoinbaseが行ってきた取引よりもさらに積極的なものになっているようだ。

FTXの暗号資産ファンドの総額は約20億ドル(約2276億8000万円)で、インタビューによると2022年中に投資されるだろうという。これは、ワイルドな投資ペースだが、おそらくa16z(アンドリーセン・ホロウィッツ)が最近22億ドル(約2504億5000万円)の暗号資産ファンドを立ち上げたことを思い出す人もいるだろう。

いくつか疑問がある。

  1. インターネットに比べてはるかにユーザー数が少ない暗号資産市場に、なぜこれほどまでの資金が必要なのか?
  2. なぜ私たちは、暗号資産に資金を供給するために、これほど多くの決断を下してしているのだろうか?

これらは相互に関連した疑問だ。結局これらは、なぜ暗号資産市場で有用なものを作るのは難しいのか、という私の素朴な疑問に対応している。CoinbaseとFTXは、暗号資産の世界の端に存在し、従来の経済とその未来になりうるものとの間でお金を行き来させている。彼らが投資するのは賢明なことだが、彼らが投資しようとしている金額と、従来のベンチャーキャピタルがブロックチェーンスタートアップに投じている金額とを比較すると、私はやや混乱する。一体資産は何に使われているのか?

2つの主要なブロックチェーンは確立されており、もはや新しいものではない(Ethereum[イーサリアム]は2013年に案出され2015年にローンチされたし、Bitcoin[ビットコイン]のホワイトペーパーは2008年に発表された)。多くのステーブルコインが存在し、多くの安定したプレイヤーがいて、膨大な資金がNFT(非代替性トークン)マーケットプレイスやいくつかの暗号資産ゲームへ流れ込んでいる。その中には、そこそこの利用者ベースを築いているものもある。しかし、スペースに流れ込むお金の量と、利用可能な結果として見えてくるものを比較すると、やや凝縮されすぎているような気がする。

Institutional Investor(インスティテューショナルインベスター)のレポートによると、2021年は総額328億ドル(約3兆7340億円)が「暗号資産やブロックチェーン技術事業」に投資されたという。おそらく、そのお金で作られた多くのものが今にも出てきて、私たちをびっくりさせるのかもしれないが、Bitcoinが誕生して10年以上経った今でも、私はブロックチェーンで動くアプリやサービスを日々使ってはいない。もちろん、研究目的で暗号資産の世界の一部をあれこれこねくりまわしているのなら別だが。

すでに私は認めたくないほど多くの時間をオンラインで過ごしているのだ!おそらく新しいFTXファンドは、単なる投機の手段ではない、大衆向けのブロックチェーン製品を市場にもたらすだろう。何が登場するか待ってみようと思う。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

暗号資産でB2B決済の高速化、手数料の抑制も目指すPaysailが4.4億円調達

企業は、材料費から外注費に至る主要なコストの多くを、請求書に基づき支払っている。依然として大多数の企業は、国境を越える支払いの際、銀行振込やクレジットカードを基盤とするソリューションに依存している。完了するまでに通常2~5日かかる、この国境を越える支払いは、世界で130兆ドル(約1京5000兆円)の市場を形成している

法人向け決済のスタートアップであるPaysail(ペイセイル)が、シード資金を調達した。同社は、国境を越える決済のプロセスを5秒未満に短縮するツールを開発する。同社のソリューションはステーブルコインを活用している。ステーブルコインについて同社は「商品または法定通貨にペッグ(連動)し、価格が安定するよう設計された暗号資産」と説明している。

Paysailによると、請求書の支払いにステーブルコインを使うことで、第三者の仲介を排除し、企業の取引手数料を削減することもできるという。Paysailの共同創業者であるNicole Alonso(ニコル・アロンソ)氏はTechCrunchのインタビューに対し、従来の銀行インフラを前提として決済を効率化するこの分野の他のスタートアップは、速くて安い決済手段を提供する点で限界に達していると語った。仲介業者が課す手数料が原因であり、特に定期的に決済が発生しない国同士の間ではそうだという。

Paysailの共同創業者であるニコル・アロンソ氏とLiam Brennan-Burke(リアム・ブレナン・バーク)氏(画像クレジット:Paysail)

「例えば米国・カナダ間の決済を大幅に安く、早くする大きな進歩がありました。しかし、米国からアフリカの国々への送金はまだ本当に難しく、法外な手数料がかかることもあります」とアロンソ氏は話す。

国境を越える決済にBill.comのようなレガシーシステムを使う場合のコストには通常、仲介業者が請求する取引手数料と為替手数料が含まれる。これに対し、Paysailによる送金では、ブロックチェーン上で取引を検証するためにかかる「ガソリン代」だけがかかり、現在のところ1セントの10分の1以下だとアロンソ氏はいう。

Paysailは現在、米ドル価格に連動するCeloのCUSDステーブルコインを使用して決済を行うが、将来同社が成長していけば、各国の不換通貨を裏付けとする他のステーブルコインにも拡大する予定だ。また、事業の収益を上げるために0.9%程度の取引手数料を検討している。アロンソ氏は、取引手数料が各企業の取引量に応じた段階的な設定となる可能性があり、価格面で「非暗号資産の既存の競合他社を大幅に下回る」ことが理想だと述べた。

同社は米国1月13日、Uncork Capitalがリードし、Tribe Capital、Pear VC、Mischief Capitalが参加した、400万ドル(約4億4800万円)のシードラウンドを発表した。このラウンドには、Google Payの事業開発・戦略責任者であるNik Milanović(ニック・ミラノビッチ)氏と、Eburyの創業者でCEOのJuan Manuel Fernández Lobato(フアン・マヌエル・フェルナンデス・ロバト)氏もエンジェル投資家として参加した。

Paysailの現在のユーザーは「少数」の企業で構成され、そのほとんどはすでに暗号資産で取引しているか、この分野に精通していると、共同創業者であるLiam Brennan-Burke(リアム・ブレナン・バーク)氏はTechCrunchに語った。同社は、暗号資産を使用したことのない顧客にも拡大する前に、暗号資産の利用に慣れている顧客向けのソリューションを微調整したいと考えていると同氏は付け加えた。

アロンソ氏とブレナン・バーク氏は2021年、クレアモント・マッケナ大学の学生として出会い、その後Paysailを立ち上げた。現在、Paysailの正社員は彼らのみだ。今回の資金をもとに、フルタイムのエンジニアリングチーム、法律顧問、そして最終的には営業チームを雇用する計画だ。

Paysailは、既存の暗号資産ウォレットを持たないユーザーが、サードパーティのウォレットプロバイダを通じ、同社のプラットフォームで取引を開始できるような技術を構築している。同社がユーザーに代わってノンカストディアルウォレットを用意する。ブレナン・バーク氏によると、最終的にはこの機能をプラットフォームに導入したり新機能を追加したりして、ユーザーが、保有するステーブルコインからPaysailウォレット内で利回りが得られるようにすることを目指している。ナイジェリアのように、現地通貨の下落が大きなリスクとなる国では、企業は変動の少ない通貨にペッグされたステーブルコインで資産を保有し、好きなときに現地通貨に移すことを好むかもしれないと、同氏は付け加えた。

ブレナン・バーク氏は「このプラットフォームの最終的な目標は、暗号資産決済を、暗号資産の経験がない企業や個人にとって、本当に消化しやすく、また使いやすくし、比較的やさしいものにすることです」と語った。

画像クレジット:Olena Poliakevych / Getty Images

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(文:Anita Ramaswamy、翻訳:Nariko Mizoguchi

北朝鮮が2021年にハッキングした暗号資産は約455億円相当(大量破壊兵器にも利用の疑い)

ブロックチェーン分析会社Chainalysisの報告書によると、北朝鮮のハッカーたちは2021年、暗号資産プラットフォームに少なくとも7件の攻撃を仕掛け、約4億ドル(約455億円)相当のデジタル資産を盗み取っていたという。

「2020年から2021年にかけ、北朝鮮が関係したハッキングは4件から7件に急増し、抜き取った総額は40%増えた」と報告書は述べている。

これらの攻撃は、主に投資会社や集中型取引所を標的にしていた。

報告書によると、ハッカーたちは、フィッシング詐欺、脆弱性をつくコード、マルウェア、高度なソーシャルエンジニアリングなどの複雑な手法を駆使して、インターネットに接続された標的組織の「ホットウォレット」から資産を抜き出し、北朝鮮が管理するアドレスに移していた。

「北朝鮮はいったん資産を握ると、それを隠ぺいして現金化するための慎重なロンダリング(資金洗浄)プロセスを開始した」と報告書は説明している。

2021年に標的となった資金は、イーサリアムが58%、ビットコインが20%を占め、残りの22%はERC-20トークンやアルトコインからだった。

また同報告書は、国連安保理の報告を引用して、北朝鮮はハッキングにより盗み出した資金を使い大量破壊兵器(WMD)や弾道ミサイル関連の開発計画を進めているとしている。

分析レポートによると「Lazarus Group(ラザラス・グループ)」と呼ばれるハッカー集団による攻撃だった可能性が高いとのこと。同グループは、北朝鮮の主要な情報機関、朝鮮人民軍偵察総局(RGB)に所属するとみられている。Lazarus Groupは、これまでにもランサムウェア「WannaCry(ワナクライ)」を使った攻撃や、Sony Pictures Entertainment (ソニー・ピクチャーズエンタテインメント)へのサイバー攻撃に関わった疑いがもたれている。

北朝鮮が盗んだ資金の65%以上は、ミキサー(何千ものアドレスからデジタル資産をプールしてスクランブルをかけるソフトウェアツール)を使ってロンダリングされたという。

また、北朝鮮は、2017年から2021年までの49件のハッキングで得た、1億7000万ドル(約194億円)相当とみられるロンダリングされていない暗号資産も保有している。

「ハッカーたちがなぜこれらの資金を放置しているのかは不明ですが、事件に対する法執行機関の関心が薄れ、監視されずに現金化できるようになることを期待しているのかもしれません。理由が何であれ、北朝鮮がこれらの資金を保有している期間の長さは興味深い点です。自暴自棄で性急な行動ではなく、慎重な計画であることを示唆しているからです」と報告書は述べている。

画像クレジット:RobertAx / Getty Images

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(文:Kate Park、翻訳:Aya Nakazato)

暗号資産APIプロバイダーのConduitは分散型金融のStripeを目指す

金融機関は暗号資産市場に参入する方法を模索し続けており、分散型金融(DeFi)商品は、金融機関がシェアを獲得するのに役立つ仕組みの1つだ。DeFi商品の投資家は、利子と引き換えに暗号資産を貸し出すことで、資本の利回りを得ることができる。

しかし、DeFi融資は、資産クラスの変動性もあり、従来の融資よりもはるかにリスクが高い。「高利回り」債券が、平均よりリスクの高い企業に賭けることで投資家に多くの現金を補償するように、DeFi融資は、顧客が実質的に銀行にお金を貸すという従来の普通預金よりはるかに高い金利を提供することができる。

Conduit(コンデュイット)は、開発者がDeFi製品へのアクセスを提供するプラットフォームをつくるために使用できるAPIセットを構築している。ConduitのCEOで共同創業者のKirill Gertman(クリル・ガートマン)氏は、2021年11月にCoinbase(コインベース)が買収した暗号資産ウォレットBRDの製品担当副社長として、同氏のチームがユーザー向けの製品を作るために必要なバックエンドツールを提供するベンダーを見つけるという困難を直接経験した。Arrival Bank(アライバルバンク)での勤務と、製品責任者として消費者金融Eco(エコ)での半年間の勤務を経て、ガートマン氏は探したものの見つからなかったバックエンド・ソリューションを提供するためにConduitを設立した。

ビデオ通話をするConduitのチーム(画像クレジット:Conduit)

「フィンテックの側を見ると、それをサポートする巨大なスタックがすでに構築されています。Stripe(ストライプ)があり、カードを発行したければMarqeta(マルケタ)があります。あなたが思いつくどんなユースケースでも、それを提供する準備ができているAPIを誰かが持っています」と、ガートマン氏はインタビューでTechCrunchに語った。

Conduitは、ネオバンクや金融機関が自社の製品をDeFiエコシステムに組み込むためのワンストップショップとなることを目指している。Conduit自体が規制やコンプライアンスに準拠していることからツールを使用する企業のコンプライアンス負担が軽減されるため、より簡単になるとガートマン氏は述べた。

消費者がDeFiの利回りを得るには、まずフィアット通貨をフィアット通貨の価値に固定された暗号資産の一種であるステーブルコインに換える。すると、CompoundやAAVEなどのさまざまな暗号資産プロトコルに投資できるようになる。Conduitは、企業がこれらの利回りにアクセスできるよう、2つのソリューションを提供している。

1つは、ネオバンクが顧客に提供する成長収益口座で、フィアット通貨をDeFiに投資できるようにするものだ。もう1つは、Conduitのコーポレート・トレジャリー・ソリューションで、高利回りのDeFi口座を企業に提供している。

「当社は台帳を作成しています。基本的に(顧客のために)非常にシンプルなバンドルを作成するための多くのことを行いますので、ドルをステーブルコインに変換する方法やレートの計算方法など複雑なことを心配する必要はありません」とガートマン氏は話す。

同氏はConduitの具体的な顧客名を挙げることは断ったが、顧客は特に中南米などの地域におけるネオバンクと小規模な暗号資産取引所という2つのカテゴリーに属していると述べた。最大の顧客は、同社の製品が最初に発売されたカナダとブラジルであり、次は米国と欧州を含む他の市場への拡大を目指していると、ガートマン氏は述べた。

同氏は、DeFi製品の拡大には2種類の利点があると見ている。1つはアクセスだ。DeFiのプロトコルはパーミッションレス(承認なし)なため、どのユーザーもクレジットスコアや本人確認、担保なしで資金の貸し借りを行うことができる。2つ目は、DeFiがユーザーをグローバルにつなぐことだ。これにより、極端な低金利やマイナス金利の国の投資家が高い利回りを得ることができ、また企業がグローバルな流動性プールから資金を引き出すことで有利な金利での借入を容易にすると同氏は付け加えた。

Conduitは、現地に精通したエンジニアリング、セールス、コンプライアンスの専門家を採用することで、2023年中に北米と中南米地域で従業員を3倍に増やす予定だ。現在、同社の従業員はリモート勤務している。また、Conduitがどの国をターゲットとしてきたかは規制が影響していて、米証券取引委員会(SEC)の規制が明確でないためにConduitの米国進出が遅れている、と同氏は付け加えた。

世界展開を推進するため、Portage Venturesがリードし、Diagram Ventures、FinVC、Gemini Frontier Fund、Gradient Ventures、Jump Capitalが参加したシードラウンドで1700万ドル(約19億円)を調達した、とConduitは1月13日に発表した。同ラウンドには、PayPal、Coinbase、Google Payなどの企業を含め、多くのフィンテック企業の幹部も参加した。

Conduitはすべての市場でコンプライアンスを確保するために高い法的費用を負担しており、ガートマン氏は「平均より大きなシードラウンド」を調達する必要があると判断した。

「明らかに、市場の状況は当社を助け、当社はそれを利用しました、私はそれを隠すつもりはありません……たとえ暗号資産の冬かそのようなものがあるとしても、当社は生き残ることができます」とガートマン氏は述べた。

画像クレジット:hocus-focus / Getty Images

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(文:Anita Ramaswamy、翻訳:Nariko Mizoguchi

Checkout.comが4兆6000億円の評価額で1145億円のラウンドを実施

決済サービスを提供するCheckout.com(チェックアウト・ドットコム)は、並のユニコーンではない。今回同社は10億ドル(約1145億4000万円)のシリーズD資金調達ラウンドをクローズした。本日のラウンドの結果、同社の評価額は400億ドル(約4兆6000億円)に達した。

これは、2021年の評価額からの大幅な増加だ。前回のシリーズCラウンドでは、150億ドル(約1兆7000億円)の評価額で4億5000万ドル(約515億4000万円)を調達していたので、12カ月間で評価額が167%上昇したことになる。決して悪い数字ではない。

Checkout.comは、ゲートウェイ、アクワイアラー、リスクエンジン、ペイメントプロセッサーとしての役割を果たす、フルスタックのペイメント企業を構成している。同社のサービスを使えば、事業者は自社のサイトやアプリで直接支払いを処理することができるが、一方ホスティングされた支払いページに頼ったり、支払いリンクを作成したりすることなども可能だ。

カード決済、Apple Pay(アップルペイ)、Google Pay(グーグルペイ)、PayPal(ペイパル)、Alipay(アリペイ)、銀行振込、SEPA口座振替、さらにはさまざまなローカルネットワークを通じた現金決済にも対応している。

2021年にはペイアウトを行う機能も追加された。Checkout.comの顧客は、銀行口座への送金が可能だ。また、Mastercard(マスターカード)またはVisa(ビザ)ネットワーク上のカードへのペイアウトにも対応している。例えばTikTok(ティックトック)やMoneyGram(マネーグラム)は、Checkout.comのペイアウト機能を利用している。

Stripeと違い、Checkout.comは取引量の多い大規模なグローバル企業の商取引に特化している。同社の顧客には、Netflix(ネットフリックス)、Farfetch(ファーフェッチ)、Grab(グラブ)、NetEase(ネットイース)、Pizza Hut(ピザハット)、Shein(シーイン)などがいる。また、Klarna(クラーナ)、Qonto(クォント)、Revolut(レボリュート)、WorldRemit(ワールドレミット)など、複数のフィンテックユニコーンの決済スタックにも寄与している。

今回の資金調達ラウンドに関しては、投資家のリストが非常に長いので、シートベルトを締めて読んで欲しい。今回のラウンドに参加した投資家には、Altimeter、Dragoneer、Franklin Templeton、GIC、Insight Partners、Qatar Investment Authority、Tiger Global、Oxford Endowment Fund、そして「西海岸の大規模な投資信託運用会社」が含まれていると、同社は発表文に記している。

また、Blossom Capital、Coatue Management、DST Global、Endeavor Catalyst、Ribbit Capitalなどの、同社の既存の投資家にも参加者がいる。

なぜCheckout.comはこれほどまでに資金を集めたのだろうか?それができるから、というのが理由だ。同社によると、ここ数年は利益が出ているので、投資家は長期的な成長のためにバランスシートに資金を追加しているだけだ。Checkout.comは、調達した10億ドル(約1145億4000万円)と引き換えに、同社の株式の2.5%を渡すだけで済んだ。

創業者でCEOのGuillaume Pousaz(ギヨーム・プザン)氏は声明文の中で「過去10年間、洗練された技術スタックと業界の専門知識、そして 『エクストラマイル』アプローチ(かゆいところに手が届くアプローチ)を組み合わせることで、当社は世界で最も革新的な企業と深いパートナーシップを築いてきました」という。「今回のシリーズDはその成果を証明するものですが、私たちはまだ旅の『第0章』の段階にあるので、資金は今後の膨大な手つかずの機会を引き出すために役立つことでしょう」と述べている。

同社は2021年だけで数千億ドル(数十兆円)の決済を処理している。3年連続で取引量が3倍になり、現在は19カ国に1700人の従業員を擁している。

Checkout.comは次に米国市場に焦点を当てたいと考えている。ロンドンに本社を置く同社は、当初はEMEA(欧州、中東、アフリカ)地域を中心に活動を行っていた。しかし、グローバルな企業のマーチャントと協力していく中で、すべての市場で通用するソリューションを持つことは、将来の顧客にとって大きなセールスポイントになるだろう。

Checkout.comのCFOであるCéline Dufétel(セリーヌ・デュフェテル)氏は声明の中で「EMEAでのアプローチと同様に、当社は企業、特にフィンテック、ソフトウェア、フードデリバリー、旅行、eコマース、暗号資産マーチャントへのフォーカスを続けていく予定です。弊社は、米国のお客様が国内外で成長し、米国以外のお客様が米国に進出することを支援したいと考えています」と語っている。

Web3のチャンス

今回の資金調達によって、Checkout.comはより多くの人材を雇用し、新たな顧客と契約することになるだろう。しかし、同社は立ち止まることなく、新製品を投入していきたいと考えている。

ペイアウトが可能になったことで、新たなチャンスが生まれた。特に、Checkout.comは2022年後半に、マーケットプレイスとペイメントファシリテーターをサポートする予定だ。それはマーケットプレイスの運営者がそれぞれの取引から手数料を徴収できるようにする完全なエンド・ツー・エンドのソリューションとなるだろう。その中では身分証明書の確認や支払いの分割機能も提供される。

また、マーケットプレイスの利用者は、新しいTreasury-as-a-Service(サービスとしての財務)機能により、マーケットプレイス上で直接資金をプールできるようになる。マーケットプレイスが金融サービスをその製品に直接組み込むことができることで、可能性が大きく広がる。

2021年、Stripe(ストライプ)は、Stripe Treasury(ストライプ・トレジャリー)を発表した。Shopify(ショッピファイ)はこの機能をShopify Balance(ショッピファイ・バランス)に採用している。こうしたことは、StripeとCheckout.comの両社がペイメントチェーンのより大きな部分をカバーしたいと考えていることを改めて証明している。

Checkout.comは、新製品に加えて、Web3が市場機会を提供することを認識している。同社はすでに、Coinbase(コインベース)、Crypto.com(クリプト・ドットコム)、FTX、MoonPay(ムーンペイ)、Meta(メタ)のNovi(ノビ)など、複数の暗号資産企業の決済機能の一部を提供している。

しかし、フィアット通貨(中央銀行券など)と暗号資産の橋渡しをすることは、Web3の方程式の一側面に過ぎない。Checkout.comは、顧客がデジタル通貨を使って商品取引を決済できるようにするためのソリューションの、ベータテストを行っている。つまり、Web3版のCheckout.comこそが本当の意味でのCheckout.comになる可能性が高いということだ。

画像クレジット:Checkout.com

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(文:Romain Dillet、翻訳:sako)

【コラム】米国で増えている暗号資産市長

Bitcoin(ビットコイン)をはじめとする暗号資産の価格は、2021年に急騰した。パンデミックの時代、この分野では暗号資産で大富豪になったという話もよく聞く。

暗号資産といえば、元々は民間セクターの話である。ビットコインやその他の暗号資産プロジェクトは、非中央集権的で政府の金融政策の影響を受けない変更不能なデジタル通貨を作ることを意図して始まったものだ。

しかし、この市場の価値が2兆ドル(約230兆円)を超えた近年、公的機関も暗号資産に注目するようになった。初期の規制を導入した国、全面的に禁止した国、大規模な導入を行った国など、対応も国によってさまざまである。

自国の不換紙幣を印刷する国家政府と地方自治体とでは、暗号資産に対する見方は大きく異なり、最近では、暗号資産をこの新しい産業が持つ技術的、財政的、経済的発展の可能性を活用する機会と見る都市も増えている。

確かに、市役所でビットコイン、ブロックチェーン、NFT(非代替性トークン)といった言葉を聞くことはあまりない。しかし、マイアミ、タンパ、ニューヨーク、ジャクソン(テネシー州)などの4都市ではこれらの言葉を耳にすることも増えてきた。というのも、市長が自身の給与の一部をビットコインで受け取ることに合意するなど、暗号資産の分野に参入するためのきっかけを示したからだ。

都市のイノベーションに関する多くのストーリーがそうであるように、このストーリーも1人の市長が話題を先導し、他の市長たちに挑戦状を叩きつけることから始まる。今回のケースでは、マイアミ市長のFrancis Suarez(フランシス・スアレス)氏が、次の給料をビットコインで受け取るとツイートしたことに対抗して、次期ニューヨーク市長のEric Adams(エリック・アダムス)氏が複数回の給料をビットコインで受け取ると発言している。

スアレス氏は次のように話す。「教育は、暗号資産にまつわる恐怖や誤解を払拭するための最良の方法であり、アダムス市長と私の発言の根本は教育を狙ったものです。私たちが真っ先に水に飛び込む姿を見れば、おそらく他の人々も自信を持って水に足をつけることができるでしょう」。

1人目の市長は注目すべきで、2人目の市長はその模倣だろう。しかし、3人以上の市長がビットコインの勢いに乗るのであれば、これは明らかにトレンドといえる。

ジャクソンは人口約7万人。Scott Conger(スコット・コンガー)市長は、同市が選出した市長の中では最も若い部類に入るが、この友好的な挑戦に参加し、給与をビットコインで受け取ると発言した。コンガー氏とスアレス氏は、これについてツイッターでやりとりをしている。コンガー氏はジャクソンという小さな都市で、暗号資産分野のイノベーションを起こしてきた。

これに負けじとフロリダ州の別の市長も参入してきた。タンパの Jane Castor(ジェーン・キャスター)市長は、コンガー氏のツイートからわずか数日後、タンパで開催された暗号資産カンファレンスで、給料をビットコインで受け取ることを発表したのだ。最近、新興技術都市のトップに選ばれたタンパは、フロリダ州内の技術系雇用の25%を占め、暗号資産という新興分野と親和性が高い。

コンガー氏は、スアレス氏の行動は大都市だけに当てはまるものではなく、あらゆる規模のコミュニティで通用すると指摘する。彼は、大都市で起きているテクノロジーや暗号資産に関する興味深い出来事を観察し、それがジャクソンのような(小さな)都市にはどのように反映されるかを考え、(優れた市長なら当然だが)ジャクソンの経済発展の可能性に目を向けた。

彼は次のように話す。「マイアミや大都市に限定される必要はありません」「ジャクソンにはそのチャンスがあります。ジャクソンは、テネシー州で家庭にギガビットの光ファイバーを導入した最初の都市です。新しい技術をいち早く取り入れるのは当然でしょう?」。

ジャクソンでは超高速のインターネットサービスが普及しており、ハイテク企業の獲得競争に大きく貢献している。コンガー氏は、この結果としてジャクソンに暗号資産や分散型金融(DeFi)の企業が増えるはずだ、と考える。

「場所は存分にあります」とコンガー氏。小売業界が縮小し、既存の企業が使用する物理的な空間が減る中、彼はチャンスを見出している。「DeFi、暗号、技術系の企業が生まれれば、彼らには事業を行う場所が必要になります」。

この小さなコミュニティの利点を強調し、コンガー氏は次のように付け加える。「人口7万人の都市で十分なのに、なぜ数百万人の都市に行く必要があるのでしょうか」。

経済発展を重視する姿勢は、4人の市長だけでなく、暗号資産の世界を知ることとなった他の地域のリーダーたちも共通していて、彼らはそれぞれの都市で雇用の未来について考えている。マイアミでは、暗号資産分野における市長の取り組みの中核にそれが見て取れる。

スアレス氏は次のように話す。「マイアミは共通のテーマの上に成り立っています。マイアミに来る人たちは、自国の政府に取り残されたり、さらにひどいケースでは迫害されたりすることに嫌気がさし、より良い生活を求めてここに来ています。そしてお返しにとこの街をもっと良いものにしてくれます」「マイアミムーブメントは、質の良い、高収入の仕事をこの街にもたらしています。私は、マイアミの将来を見据え、次世代のリーダーたちをこの街から輩出したいと考えています」。

人材の誘致と定着に力を入れているのは、国内の多くの都市でも同じである。マイアミは、テクノロジー、金融、(そしてこの記事で紹介するようにその両方が融合した)暗号資産といったあらゆる分野を成長させることを目指している。

「マイアミムーブメントは、パンデミックなどの数々の要因で人々がマイアミに集まったことに起因するものですが、成長中の金融やテック部門への支援は何十年も前から行っています 」とスアレス氏。「多くの人が思っているほど『突発的』なものではありません。この街にイノベーションと成長を呼び込むことは、すべてのマイアミの住人にとって大きな利益となります」。

金融の分野で長年の優位性を持ち、テック部門も引き続き強化されているニューヨークのような都市が、暗号資産の分野で何ができるかは想像することしかできない。同様に、何年も前から成長を続けるタンパも、テック系の人材を惹きつける力と経済的なポテンシャルがますます高まっている。暗号資産分野が成熟するにつれて、興味深い違いが見えてくるかもしれない。

メタバースで重要なポジションを取る最初の都市は?最初に自治体のNFTを導入する都市は?このデジタル分野の成長に取り組む市長たちのリーダーシップが現場レベルで発揮されれば、その答えはすぐに出るはずだ。

編集部注:本稿の執筆者Brooks Rainwater(ブルックス・レインウォーター)氏は、Center for City Solutions and Applied Research at the National League of Citiesのディレクター。

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(文:Brooks Rainwater、翻訳:Dragonfly)

ボーダーレス暗号資産ネットワークは国家による制裁と戦う、曖昧なガイドラインでWeb3企業はイランなどのユーザーを置き去りに

イランのような国に対する米国の金融制裁は、暗号資産スタートアップがその戦いを慎重に選ばなければならない厄介な規制環境を作り出している。これまでのところ、これらの企業が選んでいない戦いはユーザーに実質的な影響を与えており、時には企業が主張する分散化の哲学と相反することもある。

「誰かに何かが降りかかってくるでしょう。こうした規制がどこで、いつテストされるのか、私たちにはわかりません」と、テクノロジーに精通した共同体の「自律分散型組織(DAO、Decentralized Autonomous Organization)」の実現に注力するSyndicate(シンジケート)のゼネラルカウンセル、Larry Florio(ラリー・フロリオ)氏は述べている。

以前の例では、暗号資産カストディスタートアップのBitGo(ビットゴー)が、制裁対象国のユーザーとのインタラクションの発生を「防ぐように設計された制御を実装」しなかったとして、2020年に外国資産管理室(OFAC、Office of Foreign Assets Control)から罰則を科された。BitGoは基本的に暗号資産銀行のようなものである。クライアントの資産を安全な金庫室に保管することを支援している。この法的な罰則は、そのようなクライアントの一部が制裁対象国の個人から暗号資産を受け取った可能性がある場合に生じた。OFACはこうしたことが米国の制裁下では許容されないことを示したのである。同様の流れで、暗号資産取引所のBinance(バイナンス)は、イラン人とキューバ人が所有するアカウントを定常的に無効化していることで知られている。

業界をリードするEthereum(イーサリアム)主体教育機関の1つであるConsenSys Academy(コンセンシス・アカデミー)が、2021年11月に自社のオンラインプラットフォームから約50人のイラン人学生を締め出したのも、それが理由であろう。「当社の記録の最近のレビューに基づき、米国の法律で商品やサービスの提供が禁じられている国にあなたが所在していることが示されました」と主張するものだった。

このコンプライアンスレビューは、同プログラムが無料であり、取引は含まれていないことから、疑問を提起している。ConsenSys Academyの開発者リレーションヘッドであるCoogan Brennan(コーガン・ブレナン)氏は、イラン人学生と彼らが直面する課題に関するインタビューを2021年2月にCoinDesk(コインデスク)へ提供していた。このプログラムに参加していたSalman Sadeghi(サルマン・サデギ)氏は、TechCrunchに対し「イラン人はWeb3で二流市民のように扱われている」と語った。

「彼らは私たちがイラン出身であることを最初から知っていました」とサデギ氏。「このように制裁は、政府ではなく罪のない人々に害を与えていると思います。公正ではありません【略】イランにおいて、Ethereumマイニングはまだ一般大衆に普及しています。しかし、暗号資産マイニングのほとんどは政府によって行われているのが実情です」。

さらに、@Alireza__28と名乗る別の学生は、自分はアカデミーで勉強するためにテヘランでの仕事を辞めており、何カ月も参加した後で修了証なしにプログラムから追い出され、キャリアプランを台無しにしたと語っている。

「本当に屈辱的でした」と同氏は話す。「暗号資産で報酬が得られるリモートブロックチェーンの仕事のオポチュニティは数多くあります。どこに住んでいるかは関係ありません。私は1つの希望として、ビザのスポンサーシップで(イランを去って)仕事のオファーを受けることを期待していました。そしてもう1つの大きな展望は、私自身で、この地から分散型のアプリを作り上げることでした」。

この教育プログラムに制裁が実際に適用されるかどうかも不明だ。教育プラットフォームのCoursera(コーセラ)は、米国政府から直接許可を得てイランの学生を受け入れている。金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN、Financial Crimes Enforcement Network)の元ディレクター代理のMichael Mosier(マイケル・モシエ)氏によると、バイデン政権はイランとの関係を緩和しようとしており、OFACはこうしたユーザーへのサービス提供の許可をConsenSysに与えた可能性がある。別の認可国の例として、OFACは2020年に、ベネズエラでの人道支援を目的としたStableCoin(ステーブルコイン)流通キャンペーン承認している。

「ConsenSysのような事例から見えてくる大きな要点は、OFAC領域の経験豊富な弁護士と話す価値があるということです」とモシエ氏は語る。「ConsenSysにこれができないのは信じ難いことです。人々は往々にして、リスクに対処するのではなく、逃げ道のようなものを自ら選んでしまうことがあります」。

一方、フロリオ氏は、こうした制裁に保守的な姿勢を取っている企業を責めることは難しいと反論した。

「免除を求めようとするだけでも、自分たちの注目度を高め、規制当局のさらなる監視を引きつけることがあります」とフロリオ氏。「最近の業界のやり方の多くは、問わない、話さない、というものです」。

イランのEthereumファンにはまだ希望があるかもしれない。ConsenSysのグローバルPRリードであるElo Gimenez(イーロ・ギメネス)氏はTechCrunchに対し、同社は「明日のデジタルエコノミーを構築するという自らの使命に全面的に専心しており、国際的なエンゲージメントが困難な地域を含め、世界中で合法的に共有し教育する方法を模索しています」と語った。

その一方で、依然としてイラン人たちにとっては、Gitcoin(ギットコイン)やMetaMask(メタマスク)といったEthereumの共同創設者Joe Lubin(ジョー・ルービン)氏のポートフォリオ企業が提供する集中型NFTプラットフォームやツールを使う上で、通常はVPNサービスと組み合わせて、自分たちのロケーションを隠すことが常套的になっている。例えばクラウドファンディングプラットフォームのGitcoinは、ペルシア語を話す学生のためのキャンペーンをホストしており、同キャンペーンは2021年3月から12月までアクティブになっていた。

GitcoinのCOOであるKyle Weiss(カイル・ワイス)氏がTechCrunchに語ったところによると、2021年12月8日現在、同氏の資金調達プラットフォームは「米国の法律を順守するために細心の注意を払い、この助成金を非アクティブ化している」という。

しかし、暗号資産取引所のKraken(クラーケン)でビジネス組織のための判決ガイドライン策定に貢献した元顧問弁護士のMary Beth Buchanan(メアリー・ベス・ブキャナン)氏はTechCrunchに対し、GitcoinやConsenSys Academyのような企業が制裁対象国のユーザーを必然的に禁止する必要があるという考えには同意しないと語った。

「彼らが携わることを望んでいた活動は、制裁の対象外になる可能性も十分にあります。おそらく、企業が適切な問いを発しなかったのでしょう」とブキャナン氏は語っている。「多くの活動が制裁体制から完全に免除されており、その他の活動は一般認可を受けることができます。また、OFACに個別に申請して、行っていることに問題がないかを確認することも可能です。一般の人々でも、OFACに電話して活動が制裁から免除されるかについて相談できるように、問い合わせ窓口が用意されています」。

端的にいえば、暗号資産企業は、社会から取り残されたコミュニティを取り込む戦略的な方法を考案するのではなく、コミュニティを回避することを選択しているのかもしれない。ブキャナン氏によると、特に芸術や教育に関するケースでは、ほとんどのビジネスオーナーが予想する以上に、コンプライアンスに従うコストははるかに低いという。一方、イラン、キューバ、その他の制裁対象国の一部の人々は、暗号資産業界が事実上のカースト制度で運営されていると感じている。オンラインコミュニティに参加するために自分のアイデンティティを隠す必要があることは、コミュニティがボーダーレスで包括的であることと同一ではない。

「確かに、私たちは独自のユーザーインターフェイスとWeb3ウェブサイトを開発することができます」と、閉鎖されたGitcoinキャンペーンに関わった女性の1人であるAysha Amin(アイシャ・アミン)氏は述べ、EthereumプロジェクトやSolana(ソラナ)のようなアルトコインの競合相手を語る際に人々が言及する、Web3あるいは「メタバース」という深遠なコンセプトについて次のように言い表した。「この種の孤立は良くないように思います」。

Gitcoin以外では、アミン氏は現在、Secureum(セキュリアム)と呼ばれるEthereum Foundation(イーサリアム財団)が支援する教育プログラムに参加している他、テヘランを拠点とするテック企業でも働いている。この記事で紹介している多くのイラン人同様、同氏もMetaMaskのユーザーで、特定のプラットフォームでの差別的な禁制にもかかわらずこの分野で働き続ける意向である。

「このグループ(ブロックチェーン愛好家のためのファルシ語[ペルシア語]言語グループ)を始めたのは(別の)ConsenSysブロックチェーン開発者ブートキャンプを終えた後でした」とアミン氏は続けた。「自分のプライベートキーさえあれば、心配する必要はありません。MetaMaskは自分の情報をローカルに保存します」。

少し背景を説明すると、同氏が所属するイラン人グループには、2019年のDevCon Ethereumカンファレンスの際に日本で出会ったメンバーも含まれている。アミン氏は、2021年にこのイラン人女性5人のグループに加わった。米国を拠点とする同氏らのGitcoinキャンペーンのパートナーであるThessy Mehrain(テッシー・メヘライン)氏は、Gitcoinキャンペーンについて次のように説明した。

私は多様性イニシアティブでConsenSys Academyと協働してきました。その一環としてマイノリティコミュニティのための奨学金を提示され、それをWeb3に関する教育を目的としたアムステルダムに拠点を置くCoinIran(コインイラン)に供与したのです。私は彼ら(CoinIranのブロガー)と大阪で開催されたEthereumカンファレンスで会いました。2020年にある女性開発者グループがSolidity(ソリディティ)ブートキャンプに参加して【略】そしてWomen in Blockchain(ウーマン・イン・ブロックチェーン)の支部がテヘランで結成され、ニューヨーク、ボストン、ブリスベン、ラゴスなど世界中で行われているのと同じように【略】ローカルに、完全に独立して運営されており、テクノロジーとそのオポチュニティに関する教育を行っています。

すべてを考慮すると、これらのイニシアティブは金融取引よりも教育に重点を置いているようだ。

「教育は、個人が情報に基づいた決定を自ら行うのを助け、社会と国家の発展に貢献します」とメヘライン氏。「こうした女性たちは国際社会の一員であり、教育によって有意義な貢献を行う権限を与えられるべきです」。

また、この最近のGitcoinにまつわる禁止措置は、Ethereum Foundationの創設者であるVitalik Buterin(ヴィタリック・ブテリン)氏やConsenSysの主要投資家であるルービン氏のようなEthereumの共同創設者が資金提供した世界的なイニシアティブの中では突出しているようだ。その理由の一端には、フロリオ氏が指摘したように、メタバース全体を識別することは不可能だということがある。

「主権国家が外交政策を放棄するとは思えません【略】しかし、何らかのファイアウォールをイラン全土に適用しなければイラン人は何にも参加できないと主張するのは、法的強制力のないことです。そうしたインターネット封鎖のようなことを行う技術は存在しないと思います」とフロリオ氏は語っている。「制裁法を課すことは容易ではなく、創造的な解釈を必要とするでしょう【略】執行がそこにどのようにもたらされるのか、あるいはこのコンテキストで完全に遵守する方法が既知ではないことが考慮に入れられるのかどうかはわかりません」。

今のところ、一部の暗号資産企業は、イランなど制裁対象国の人々を含めて法的に対応する戦略を求めるよりも、アクセスを禁止する方を選んでいる。

「常時のフルアクセスを私たちは有していません。Web3では簡単に排除したりアクセスを禁止したりできます」とアミン氏。「ここイランでは、ブロックチェーン技術を扱う人々、マイニングを行う人々、トレーダー、開発者は常にWeb3へのアクセスについて不安を抱いています。そして私たちは間違いなく、この『二級市民』扱いを感じているのです」。

画像クレジット:cokada / Getty Images

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(文:Leigh Cuen、翻訳:Dragonfly)

クリエイターの収益化を支援するPatreon、「2022年に規模倍増」と同社CPOは語る

テクノロジーの世界が急速に成長するクリエイターエコノミーを受け入れる中、クリエイターの収益化を支援するスタートアップがあちこち出現している。しかし、2013年に設立されたPatreon(パトレオン)は「インフルエンサー」という言葉が私たちのボキャブラリーに入る以前から存在していた。「Tik Tok(ティックトック)」が誰も真似ようしているソーシャルプラットフォームではなく、Kesha(ケシャ)の歌だった頃のことである。

Patreonは2021年初めに評価額を3倍増の40億ドル(約4400億円)とした後、岐路に立っている。クリエイターのための構築という点で、同社は今後も勝ち続けるのだろうか。同時にPatreonは、クリエイターたちに自社のプロダクトが彼らの最善の利益を追求していると感じさせながら、その競争に先んじることができるのだろうか?

「私たちは(クリエイターエコノミーの)最初の8年間を定義した企業の1つになるのではなく、次の8年間を定義する企業になるつもりです」とPatreonのチーフプロダクトオフィサーであるJulian Gutman(ジュリアン・ガットマン)氏はTechCrunchに語った。

2022年のプラットフォーム計画についてTechCrunchに語ってくれたガットマン氏によると、Patreonは特にプロダクトとエンジニアリングの分野で積極的な採用を行い、時代を先取りしたいと考えている。ガットマン氏自身は2021年1月にPatreonに加わったばかりで、以前はInstagram(インスタグラム)でホームフィードエクスペリエンス向けプロダクトの責任者を務めていた。Patreonは2021年8月に、Google(グーグル)やTwitter(ツイッター)のチームを率いていたUtkarsh Srivastava(ウトカルシュ・スリヴァスタヴァ)氏をエンジニアリング担当シニアVPに迎えている。

「2021年前四半期にプロダクト、エンジニアリング、デザイン部門で60名を採用しており、このペースは2022年も続く見込みです」とガットマン氏。「Instagram、Uber(ウーバー)、Square(スクエア)の出身者を仲間に迎えています。これらの企業はいずれもクリエイターエコノミーの第一世代と言えるでしょう」。

Patreonは新しい会社ではないが、創業当初からクリエイティブな人たちの収益化を助けることをミッションとしていたことから、ガットマン氏は、かつての雇い主であるInstagramのようなソーシャルメディアプラットフォームよりも、同社はこの「第二世代」をリードする準備ができていると考えている。いずれにせよ、ソーシャルプラットフォームはクリエイターへの直接支払い多額の投資をしている。しかしPatreonのモデルでは、クリエイターは一時的なサプライズボーナスではなく、持続性のある月ごとの支払いを受けることができる。

Patreonは現在400人の従業員を擁しているが、2022年末までに1000人近くになることを目指しているとガットマン氏は語っている。Patreonは、特にプロダクト、エンジニアリング、デザインの分野の従業員を、現在の150人(最近採用した60人を含む)から2022年内に400人まで増やしたいと考えている。

「それは私たちが構築したいもの、そして構築する上でのペースと品質を反映していると思います」とガットマン氏。「私たちは今、潜在的なクリエイターたちに大きな期待を寄せており、彼らを支援するためにできる限り多くのツールを、できる限り早く提供したいと考えています」。

Patreonはすでに2022年に向けて取り組んでいるプロジェクトのいくつかの精査を始めており、その中には、ネイティブのビデオプラットフォーム(独占的なビデオコンテンツを限定公開のYouTubeリンクではなくプラットフォーム上で配信できるようにする)、より多くのフォーマットオプションによる投稿エクスペリエンスの向上、Patreonのページ上でコンテンツを整理するさまざまな方法、より多くのデータとアナリティクス、よりクリーンなアプリ設計、よりシンプルなマルチメディア再生エクスペリエンスなどが含まれている。Patreonによると、多くのクリエイターにとって「混乱とフラストレーションの源」であった課金システムの刷新も計画しているという。

しかし、Patreonにとってもう1つの大きな問いは、同社が暗号資産技術をプラットフォームに持ち込むかどうかである。2021年の秋、ガットマン氏は創業者でCEOのJackConte(ジャック・コンテ)氏とともに、クリエイターたちが収益を上げる方法としてPatreonが暗号資産を検討していることを明らかにした。Patreonは同社の秋のCreator Policy Engagement Program(クリエイターポリシーエンゲージメントプログラム)のアップデートで暗号資産クリエイターコインのアイデアを提案したが、その後のライブストリームでクリエイターたちは、Patreonが暗号資産に手を出すことでパトロンとの関係にどのようなインパクトを及ぼすかについて懸念を表明した。

Patreonが企業として取る行動は、プラットフォームで生計を立てているクリエイターの生活にインパクトを与える。このライブストリームに参加したクリエイターの中には、Patreonがクリエイターコインをローンチすれば、自分たちがそのツールを使っていなくても、暗号資産を好まないパトロンが購読をやめるかもしれないと心配する人もいた。

「(暗号資産)技術の中には実に興味深い基本的な要素がいくつか存在します。私たちのミッション、そして誰もがクリエイターエコノミーのために長い間求めていたもの、つまり権利の所有権、独立性、コンテンツの所有、ビジネスの所有、オーディエンスの所有、分散化、これらすべてのテーマに実質的に整合する要素です」とガットマン氏はTechCrunchに語った。「ただし、私たちは特定のアプリケーションやバンドワゴンに飛び乗る準備ができていないと思います」。

Patreonには暗号資産に取り組む専任チームは置かれていないが、暗号資産に情熱を持ち、ガットマン氏がいうところの「空き時間を利用した社内ポッド」を形成した従業員たちがいる。Patreonは2022年の早い時期に、暗号資産を活用してクリエイターをサポートする方法の可能性を調査する目的で、少人数のチームを立ち上げることを検討するかもしれないと同氏は語っている。

「『さあ、今すぐNFTプラットフォームを構築しよう』というものではありませんが、何人かの従業員がこの課題に専任で取り組むことになります」とガットマン氏。「ところで、彼らはこう結論付けるかもしれません。『今すぐここで構築すべきものは何もない』。それも十分理に適った結論です」。

Patreonは、暗号資産に足を踏み入れるかどうかという問題を軽く扱っていない。この選択は、自らのコミュニティを分断し、クリエイターに会社の決定の代弁者として行動することを強制することにもなり、個々のクリエイターのパトロンを遠ざける可能性もある。

2021年12月初旬、Kickstarter(キックスターター)はクラウドファンディングプラットフォームをブロックチェーンに移行すると発表し、特に一部のブロックチェーン技術に環境上の懸念を持つユーザーからの反発を巻き起こした。また2021年11月には、Discord(ディスコード)のCEOであるJason Citron(ジェイソン・シトロン)氏が、チャットプラットフォームのインターフェイスに組み込まれた暗号資産ウォレットMetaMask(メタマスク)の画像をツイートした。しかし、暗号資産に詳しいユーザーでさえ、暗号資産ウォレットをDiscordアカウントと連携させることで、プラットフォーム上で不正行為や詐欺を実行しやすくなるのではないかと懸念していた。ユーザーの間では、暗号化に向けた同社の動きに抗議して、有料のDiscord Nitro(ナイトロ)サブスクリプションを解約するよう互いに促す声も上がった。その後シトロン氏は、Discordは現時点でこの技術を追求する計画はないとする声明を発した。

「私たちにとってもう1つ重要なことは、今後数年間で、クリエイターたちが別々に大きなものを作り上げることのできるツールセットを提供したいということです」とガットマン氏。「クリエイターがそこで使うことを選ぶ可能性のあるものを考慮した場合、そのツールセットの中には暗号資産の要素が含まれるかもしれません」。

しかし、より即時的には、コミュニティがPatreonの2022年の焦点になることをガットマン氏は強調した。

「クリエイターというと、人々はコンテンツを考えます。ですが、クリエイターが大きく従事しているのは、今日のコミュニティです」とガットマン氏は語る。「彼らは実のところコミュニティのリーダーです。関心のある共通のトピックや共通の情熱を中心にコミュニティが集うことに貢献しています。このことは、クリエイターが世界に提供しているものの中で、特に今の時代において極めて過小評価されている部分だと思います」。

現在、クリエイターがファンに提供する一般的な特典は、利用者専用のプライベートなDiscordサーバーへのアクセスである。ガットマン氏によると、PatreonはDiscordのようなプラットフォームとの統合スイートに加えて、コミュニティを構築するためのプラットフォーム上のプロダクトを作りたいと考えているという。

「私たちはクリエイターファーストです。クリエイターが統合を利用したいと思い、統合の方を望むなら、私たちはそのことに大きな喜びを感じます」とガットマン氏。「プラットフォーム上対プラットフォーム外という種類の戦いほどにはなりませんが、より多くのファーストパーティコミュニティツールの構築を考察することに大きな期待を寄せています。私たちの期待の一端は、コンテンツとコミュニティが出会う接点にあります」。

Patreonのような会社における変革は、プラットフォームに依存して生計を立てているクリエイターに不安をもたらす可能性がある。2022年にPatreonは、同社のプロダクトプランの大きなシフトに最も影響を受ける人々との直接的なコミュニケーションを維持するために、クリエイター調査を実施する予定である。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Dragonfly)

ノートン 360、暗号資産イーサリアムの採掘機能を強制インストールする上に削除が困難と批判が相次ぐ

ノートン 360、暗号資産の採掘機能を強制インストールする上に削除が困難と批判が相次ぐ、15%の手数料も徴収

NortonLifeLock

NortonLifeLock社がPC環境に高度なセキュリティ環境を提供する「ノートン 360」につき、暗号資産の採掘機能「Norton Crypto」が強制インストールされ、簡単に削除できないとの苦情が相次いでいます。

Norton Cryptoは人気の高い暗号資産Ethereum(イーサリアム)を、PCがアイドル状態のときに自動的に採掘する機能です。昨年(2021年)6月に今後は追加されていく方針が発表されており、ひそかに忍び込まされていたわけではありません。

しかしノートン 360のユーザーはマルウェア対策やVPN、保護者機能などを求めて購入したはずであり、暗号資産を採掘したくて導入したとは考えがたいことです。当初、Norton Cryptoはアーリーアダプタプログラムに参加しているユーザーのみに提供されていましたが、現在ではより幅広いユーザー向けに展開されている模様で、物議を醸しているしだいです。

公式FAQによると、暗号資産の採掘はユーザーがオン/オフできるとのこと。しかし本機能のンストールは強制的に行われる上に、いったん有効にすると簡単にはオフにできないことが、複数のユーザーから報告されています。

そしてPCからNorton Cryptoを完全に除去したい場合は実行ファイルの「Ncrypt.exe」を手動で削除する必要があり、しかもアップデートで再び復活したり、第三者が利用できる脆弱性が残っていない保証はないとの声もあります。

またNcrypt.exeを削除することも非常に難しく、一部ユーザーは管理者権限でも無理だったと報告しています。さらにNorton Cryptoがレジストリに自らを埋め込んでおり、削除プロセスをややこしくしているとの分析もあります。

ほかNorton Cryptoが暗号資産を採掘するたびに、NortonLifeLock社が15%の手数料を徴収することも批判を強める要因となっています。また同社のソフトウェアが透明性が低く、過去にもアンインストール時にファイルを完全に削除していなくて揉め事が起きたとの指摘もあります

この暗号資産採掘機能に関しては、記事執筆時点では「アンインストールが限りなく難しく、一度オンにすると無効にしにくい」以外のセキュリティ問題は特に報告されていません。とはいえ、PCのアイドル時に採掘されたくない、そもそも暗号資産と関わりたくないノートン 360ユーザーは、インストール時にオンにしないよう気をつけたいところです。

(Source:WccftechEngadget日本版より転載)

ビットコイン急落、大台4万ドルを割り込む

米国時間1日10日早朝の取引で、Bitcoin(ビットコイン)の価格は4万ドル(約461万円)の大台を割り込んだ。

人気の暗号資産であるビットコインは10日朝、急激に売られ、イーサなどのライバル通貨も値を下げた。現在、Coinbase(コインベース)のデータによると、1コインあたり3万9831ドル(約459万円)の価値があるビットコインは4.3%減、イーサは5.1%減となっている。

暗号資産の世界で価格変動を取り上げることは常にリスクをともなうが、ビットコインの価値の下落は、注目に値するものから重大なレベルへと閾値を超えた。Yahoo Financeによると、ビットコインは最近の史上最高値では、1コインあたり6万8789.62ドル(約793万円)という高値で取引されていた。今日の価格を見ると、ビットコインの現在のドローダウンは42%強となっている。

これは、ビットコインがテクニカルな弱気相場に入ったと判断されるために必要なスイングの2倍、調整相場の条件を満たすために必要な4倍にあたる。

しかし、特定の暗号資産の価格下落は、必ずしも分散型の世界をスローダウンするものではない。暗号資産に特化したメディアであるThe Blockは10日朝、人気の高いOpenSea(オープンシー)マーケットプレイスでのNFT取引量が年初から好調であると指摘した。このように、最近の価格下落にもかかわらず、Web3の活動はいくつかの指標では好調に見える。この例に限っていえば、今回の暴落がNFT取引活動に影響を与えるかどうかはまだ明らかになっていない。

他の暗号化市場の参加者にとっては、今回の暴落は短期的な業績に悪影響を及ぼす可能性がある。暗号資産価格の上昇と取引量の間には、歴史的な正の関係がある。Coinbaseなどの企業は、取引手数料で日々の糧を得ているため、暗号資産価格の下落は一般的に業績に悪影響を及ぼすことになる。もちろん過去は未来を完璧に予測するものではないが、今日の急落は決して強気とはいえない。

10日朝の取引で下降している揮発性の高い資産は暗号資産だけではない。テック株全体では1.81%の下落(NASDAQ)、ソフトウェア株ではさらに痛い2.62%の下落(WisdomTree Cloud Computing Fund)となっている。

画像クレジット:Daro Sulakauri/Bloomberg / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Aya Nakazato)

Mozilla、強い反発を受けて暗号資産による寄付の受付を一時停止

Mozilla Foundationは、多くの人たちからの反発により、暗号資産で寄付を受け取ることを休止する。反対派の中には、Mozilla Projectの創始者もいる。

Firefoxブラウザーの開発を統括している同財団は米国時間1月6日に、暗号資産の環境への影響を議論し、暗号資産による寄付に対するこれまでの方針が「気候に関する同団体の目標に合致しているか」を検討していることを認めた。

財団はツイートのスレッドで「ウェブ技術の分散化は私達が探求すべき重要な分野であり続けるが、暗号資産による寄付に関しては、私たちがその受け入れを始めてから以降、多くのことが変化しました」と述べ、今後その検討過程のアップデートを提供すると約束している。

財団が反発にあい始めたのは、Bitcoin(ビットコイン)といったさまざまな暗号トークンでこの非営利団体に寄付をしようとする人びとを、彼らが歓迎するようになってからだ。

そのツイートに応じてMozillaの創始者であるJamie Zawinski(ジェイミー・ザウィンスキー)氏が、財団の態度に失望感を表明した。彼は「プロジェクトに関わる誰もが、この惑星を灰燼に帰すネズミ講詐欺と提携するこの決定を、心底恥じ入るべきである」と激しい言葉で言った。

このブラウザーのエンジンであるGeckoを創ったPeter Linss(ピーター・リンス)氏も会話に加わり、Mozillaに対し「前の方が良かった」と語った。

メジャーな企業や組織が、環境への懸念でビットコインに反発したり、距離を置いたりすることは、これが初めてではない。2021年5月にはTesla(テスラ)が、車両の代金をビットコインで受け取ることを保留にしたが、それは受け入れを表明してからわずか数カ月後だった。

Elon Musk(イーロン・マスク)氏によると同社は「ビットコインの採掘や取引で化石燃料、特に石炭の使用量が急増していることを心配している」そうだ。数週間後に同氏は、暗号資産の採掘に使われるエネルギーの50%が再生可能エネルギーになったら再びビットコインを受け入れるだろうと述べた。

ビットコインの環境負荷をめぐる疑問は、さまざまなトークンの作られ方と関連がある。ビットコインとイーサリアムは、PoW(プルーフ・オブ・ワーク)と呼ばれる仕組みを利用して自分たちのネットワークを動かし、各通貨の新しいブロックを作り出している。その計算方法は、数年にわたって、ネットワークの成長とともに複雑化する設計であり、そのパズルを解くことに何千ものGPUを昼夜不休で動かす企業の業界を生んでいる。

Cambridge Centre for Alternative Financeの推計によると、ビットコインの採掘は毎年、約148テラワット時のエネルギーを消費している。多くの暗号資産支持者はしかし、そんな所見に反論したり、暗号資産の存在意義を主張したりしている。

数カ月前には、この業界に大きな分裂が出現してきた。批判者たちは、Web3の基本的な価値命題に異議を唱えている。しかしビットコインを支持しているTwitterの創業者Jack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏は、VCたちがWeb3のプロジェクトからほとんど利益を得ていないという説を却下した

このような議論が続く中、多くの企業がWeb3の野心を小さくしている。Discordは11月、暗号資産とNFTの探求に反対する多くの人々の反発を受け、一時停止した。ゲーム会社GSC Game Worldは、複数のゲーマーから強いフィードバックがあったため、発売予定のタイトル「STALKER 2:Heart of Chernobyl」にNFTを搭載する計画を中止している。

画像クレジット:David Tran/Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Hiroshi Iwatani)

【コラム】ファクトチェックのスタートアップをの構築で学んだこと

2016年の米大統領選の余波を受けて、筆者はオンライン上のフェイクニュースの惨害に対処できるプロダクトの開発に着手した。最初の仮説は単純だった。偽の主張や疑わしい主張を自動的にハイライトし、それに対して最高品質のコンテクストに基づく事実を提案する半自動のファクトチェックアルゴリズムを構築する。私たちの論旨は、おそらくユートピア的であるとしても、明確であった。テクノロジーの推進力により、人々が真実、事実、統計、データを求めて意思決定を行うようになれば、誇張ではなく、理性と合理性を備えたオンラインの議論を構築することができるはずだ。

5年にわたる努力の末、Factmata(ファクトマタ)は一定の成功を収めた。しかし、この分野が真に成長するためには、経済面から技術面に至るまで、まだ克服しなければならない多くの障壁がある。

鍵となる課題

私たちはすぐに、自動化されたファクトチェックが極めて難しい研究課題であることを認識した。最初の課題は、チェックする事実そのものを定義することであった。次に、特定の主張の正確性を評価するために、最新の事実データベースをどのように構築し、維持するかについて検討した。例えば、よく使われているWikidata(ウィキデータ)の知識ベースは明らかな選択肢であったが、急速に変化する出来事に関する主張をチェックするには更新が遅すぎる側面がある。

また、営利目的のファクトチェック企業であることが障害になっていることも判明した。ほとんどのジャーナリズムやファクトチェックのネットワークは非営利であり、ソーシャルメディアプラットフォームはバイアスの告発を避けるために非営利団体との連携を好む。

これらの要因の枠を超えたところに、何が「良い」かを評価できるビジネスを構築すること自体が本質的に複雑で微妙であるという問題がある。定義については議論が絶えない。例を挙げると、人々が「フェイクニュース」と呼ぶものがしばしば極端な党派間対立であることが判明し、人々が「偽情報」と称するものが実際には反対意見による見解であったりする。

したがって、ビジネスの観点からは、何を「悪い」(有害、不道徳、脅威的または憎悪的)と判断するかということの方がはるかに容易であると私たちは結論づけた。具体的には「グレーエリア」の有害なテキストを検出することにした。これは、プラットフォームから削除すべきかどうかわからないが、追加のコンテクストが必要なコンテンツだ。これを達成するために、コメント、投稿、ニュース記事の有害性を、党派間対立性、論争性、客観性、憎悪性など15のシグナルのレベルで評価するAPIを構築した。

そして、関連する企業の問題についてオンラインで展開されるすべての主張を追跡することに価値があることを認識した。そのため当社のAPIを超えて、ブランドのプロダクト、政府の方針、新型コロナウイルス感染症のワクチンなど、あらゆるトピックで展開する噂や「ナラティブ」を追跡するSaaSプラットフォームを構築した。

複雑に聞こえるかもしれない。実際にそうだからだ。私たちが学んだ最大の教訓の1つは、この領域において100万ドル(約1億1400万円)のシード資金がいかに少ないかということだった。有効性が確認されたヘイトスピーチや虚偽の主張に関するデータを訓練することは通常のラベリング作業とは異なる。それには、主題に関する専門知識と正確な検討が必要であり、いずれも安価なものではない。

実際、複数のブラウザ拡張機能、ウェブサイトのデモ、データラベリングプラットフォーム、ソーシャルニュースコメントプラットフォーム、AI出力のリアルタイムダッシュボードなど、必要としていたツールを構築することは、複数の新しいスタートアップを同時に構築するようなものだった。

さらに事態を複雑にしていたのは、プロダクトと市場の適合性を見つけるのが非常に困難な道のりだったことだ。長年の構築の後、Factmataはブランドの安全性とブランドの評判にシフトした。当社のテクノロジーは、広告インベントリのクリーンアップに目を向けているオンライン広告プラットフォーム、評判管理と最適化を求めているブランド、コンテンツモデレーションを必要としている小規模プラットフォームに提供されている。このビジネスモデルに到達するまでには長い時間がかかったが、2020年ようやく複数の顧客からトライアルや契約の申し込みが毎月寄せられるようになった。2022年半ばまでに経常収益100万ドルを達成するという目標に向かって前進している。

やるべきこと

私たちが辿った道のりは、メディア領域で社会的にインパクトのあるビジネスを構築する上で、多くの障壁があることを示している。バイラル性と注目度がオンライン広告、検索エンジン、ニュースフィードの指標である限り、変化は難しいだろう。また、小規模な企業では、それを単独で行うことは難しい。規制面と財政面の両方の支援が必要になる。

規制当局は、強力な法律の制定に踏み切る必要がある。Facebook(フェイスブック)とTwitter(ツイッター)は大きな前進を遂げたが、オンライン広告システムは大幅に後れを取っており、新興プラットフォームには異なる形での進化を促すインセンティブがない。今のところ、企業が違法ではない発言をプラットフォームから排除するようなインセンティブはない。評判上のダメージやユーザーの離脱を恐れるだけでは十分ではないのだ。言論の自由を最も熱心に支持する向きでさえ、筆者も同様であるが、金銭的なインセンティブや禁止を設ける必要性を認識している。そうすることで、プラットフォームは実際に行動を起こし、有害なコンテンツを減らし、エコシステムの健全性を促進するためにお金を使い始めるようになるだろう。

代替案にはどのようなものがあるだろうか?悪質なコンテンツは常に存在するが、より良質なコンテンツを促進するシステムを作り出すことは可能である。

欠点はあるかもしれないが、大きな役割が期待できるのはアルゴリズムだ。オンラインコンテンツの「善良さ」すなわち品質を自動的に評価するポテンシャルを有している。こうした「品質スコア」は、広告ベースとはまったく異なる、社会に有益なコンテンツのプロモーション(およびその支払い)を行う新しいソーシャルメディアプラットフォームを生み出すための基盤となる可能性を秘めている。

問題のスコープを考えると、これらの新しいスコアリングアルゴリズムを構築するには膨大なリソースが必要だ。最も革新的なスタートアップでさえ、数億ドル(数百億円)とは言わないまでも、数千万ドル(数十億円)の資金調達がなければ厳しいだろう。複数の企業や非営利団体が参加して、ユーザーのニュースフィードに埋め込むことのできる多様なバージョンを提供する必要がある。

政府が支援できる方法はいくつかある。まず「品質」に関するルールを定義する必要があるだろう。この問題を解決しようとしている企業が、独自の方針を打ち出すことは期待できない。

また政府も資金を提供すべきである。政府が資金援助をすることで、これらの企業は達成すべき目標が骨抜きにされるのを回避できる。さらに、企業が自社のテクノロジーを世間の目に触れやすいものにするよう促し、欠陥やバイアスに関する透明性を生み出すことにもつながる。これらのテクノロジーは、無料で利用可能な形で一般向けにリリースされるよう奨励され、最終的には公共の利益のために提供される可能性もある。

最後に、私たちは新興テクノロジーを取り入れていく必要がある。コンテンツモデレーションを効果的かつ持続的に行うために必要な深層テクノロジーに真剣に投資するという点で、プラットフォームは積極的な歩みを見せてきた。広告業界も、4年が経過した頃から、FactmataやGlobal Disinformation Index(グローバル・ディスインフォメーション・インデックス)、Newsguard(ニュースガード)などの新しいブランド安全アルゴリズムの採用を進めている。

当初は懐疑的であったが、筆者は暗号資産とトークンの経済学のポテンシャルについても楽観的に見ている。資金調達の新たな方法を提示し、質の高いファクトチェック型メディアの普及、大規模な配信に貢献することが考えられる。例えば、トークン化されたシステムの「エキスパート」により、ラベリングに多額の先行投資を必要とする企業の手を借りることなく、主張をファクトチェックし、AIコンテンツモデレーションシステムのデータラベリングを効率的に拡張することが可能になるかもしれない。

ファクトベースの世界の技術的な構成要素として、Factmataに掲げた当初のビジョンが実現するかどうかはわからない。しかし、私たちがそれに挑戦したことを誇りに思うとともに、現在進行中の誤報や偽情報との戦いにおいて、他の人々がより健全な方向性を示すことに、私たちの経験が役立つことを期待している。

編集部注:本稿の執筆者Dhruv Ghulati(ドルヴ・グラティ)氏は、オンラインの誤情報に取り組む最初のグローバルスタートアップの1つFactmataの創設者で、自動ファクトチェックを研究する最初の機械学習科学者の1人。London School of EconomicsとUniversity College Londonで経済学とコンピューターサイエンスの学位を取得している。

画像クレジット:sorbetto / Getty Images(Image has been modified)

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(文:Dhruv Ghulati、翻訳:Dragonfly)

ランサムウェアの潮目が変わった、米国当局が勝ち目のないと思われた戦いにわずかながら勝利を収めた

2021年はランサムウェアが蔓延した。2021年には、ITソフトウェア企業Kaseyaへの攻撃で1500社がオフラインにされ、CD Projekt Redのハックでは、Cyberpunk 2077やThe Witcher 3などのゲームのソースコードがやられた。大手有名企業も被害を受け、その中にはオリンパス富士フイルム、そしてパナソニックが含まれている。

また2021年は、ハッカーが重要なインフラストラクチャを攻撃して世界的な注目を集め、被害者の中には米国の石油パイプラインColonial Pipelineや、食肉加工大手JBS、農家がコーンや大豆などを売るための協同組合Iowa New Cooperativeなども含まれる。

これらの犯行でプラットフォームの閉鎖が長引き、石油価格が高騰し、食糧不足の危険も生じたため、数年間何もしなかった米国政府もやっと腰を上げ、かつては勝てないと思われていたランサムウェアという疫病に対する戦いで、わずかながらも勝利を収めた。

最初は4月に米司法省が、Ransomware and Digital Extortion Task Force(ランサムウェアとデジタル強奪対策本部)を立ち上げた。司法省によると、ランサムウェア犯行の最悪の年と呼ぶ事態に同省が対応した動きで「ランサムウェアとデジタル強盗の壊滅と捜査と訴追」を最大の目的としている。そしてそれから2カ月後に司法省は、ラトビア国籍で55歳のAlla Witte(アラ・ウィッテ)を逮捕し、国際的サイバー犯罪組織で演じた役割で彼女を告訴した。銀行を狙った、よく知られ広く使われているトロイの木馬とランサムウェアツールTrickBotの背後にいるのが、その犯罪組織だ。

その数日後にはもっと大きな勝利がやってきて、司法省は、Colonial PipelineがランサムウェアギャングのDarkSideにビットコインで払った230万ドル(約2億7000万円)を押収し、データを取り戻したと発表した。その後、米国政府はその悪名高いランサムウェアグループのリーダーたちの発見や追跡の役に立つ情報の提供者に対する、最大で1000万ドル(約11億5000万円)の賞金を提示した。

同じころ米財務省は、暗号資産の取引所Chatexに対し、身代金の取引に便宜を図ったとして制裁を発表した。その数週間前にも財務省は、暗号資産取引所Suexに対して同様の措置を講じている。

司法省対策本部の最大の勝利は10月に訪れ、悪名高いランサムウェアギャングREvilを壊滅させた。検察の発表では、22歳のウクライナ人が、7月にKaseyaに対するランサムウェア攻撃を仕かけたギャングと関係があるとして訴追されている。司法省は、その悪名高いランサムウェアグループのもう1人のメンバーに結びついている600万ドル(約6億9000万円)の身代金を押収したという。

ランサムウェアグループを追う米国政府の2021年の取り組みは、多方面から称賛されている。特に評価が高いのは、金の行方を追うというその戦術だ。ブロックチェーンの取引を分析するソフトウェアを提供しているChainalysisは、司法省の対Suex作戦を、ランサムウェアの犯人たちに対する「大きな勝利」と称賛し、TechCrunchの取材に対して、ランサムウェアのグループが彼らの暗号資産を現金化する仕組みを解明して無効化すれば、彼らを弱体化する特効薬になるという。SentinelOneのチーフセキュリティアドバイザーであるMorgan Wright(モーガン・ライト)氏は、金という彼らのメインの動機がなくならないかぎり、ランサムウェアギャングたちの犯行と拡大は続くと述べている。

「規則や法律に従わないため、犯人たちの方は常に有利な状況にあります。しかし、現金を手に入れるという最終的な目標を達成する前にランサムウェアギャングの力を削ぐ、強力なアプローチが2つあります。身代金として暗号資産を使う能力を奪い、マシンスピードの犯行に対してはマシンスピードで応ずることだ」とライト氏はいう。

米国政府はまた、DarkSideの1000万ドルの賞金やREvilに関する情報への賞金にも見られたように、ランサムウェアの犯行手口に関する情報に報奨金を提供している。BreachQuestのCTOであるJake Williams(ジェイク・ウィリアムズ)氏は「賞金額がこれだけ大きければ、犯人たちの寝返りが続くことも考えられます。ランサムウェア・アズ・ア・サービス(RaaS)のアフィリエイトモデルへの信頼が損なわれる」と述べている。

しかし一部の人たちは、政府の行動で弱気になる者もいるかもしれないが、相変わらず金銭的な利益を追い続けているランサムウェアギャングたちのやる気を抑えることはできないと信じている。

ITセキュリティ企業QualysのJonathan Trull(ジョナサン・トラル)氏は「ランサムウェアの犯人たちに正義の鉄槌を下そうとする司法省の努力は称賛するが、逮捕拘禁されない可能性と、これらの犯行グループが作り出す巨額の金を比べると、断然後者は魅力的なものだ。残念ながらランサムウェアに対する戦いは非対称であり、膨大で複雑な捜査を扱うためにグローバルに必要となるリソースの量に、法執行機関の現状はまだ達していない」という。

ライト氏は同意し、これまでの米国政府の活動にあまり満足していないのは、次のような点となる。「これまで2人を逮捕して数百万ドル(数億円)を取り戻したが、それはランサムウェアに対する勝利ではない。それはむしろ、ランサムウェアに対して何かやったぞと誇示するための、政治的な声明だ。すでに失われた数十億ドル(数千億円)に対して、230万ドルは誤差にもならない」。

同様に、多くの人が、これらの戦術は新年以降におけるランサムウェアの脅威の成長を抑えるほど強力ではない思っている。特に悪者たちは、適応力がある。エキスパートたちによると、ランサムウェア・アズ・ア・サービスのモデルは、首謀者が自分のランサムウェアのインフラストラクチャを他人に貸して、得られた身代金の分け前をもらう。このモデルは2022年にも盛り上がり、法執行機関が首謀者を追うのもより困難になる。

何段階にも及ぶ犯行連鎖を予想する人たちもいる。フィッシングからスタートしたデータ侵犯がデータ窃盗になり、最後にランサムウェアになる。並行してそれは、ますます多くの犯人が手がける、流行のようなものになる。それによって、防護の厳しいネットワークインフラストラクチャでも、ハッカーは侵入できるようになる。

上記の後者の問題により、米国政府は2022年に民間部門との協力を密接にせざるをえなくなる、とトラル氏はいう。「法執行機関だけでは、潮流を逆転するのは無理だろうと私は思います。必要なのは法執行の複数のアクションがセットになって専門家と協力し、システムを強化し、重要なデータとシステムのバックアップを開発してその運用可能状態を常時維持し、さらにまた民間部門からの有効な反応も得られるようにしておくことです」とトラル氏はいう。

もっと多くのアクションが必要なことは明らかだが、米国政府は進歩している。ほんのひと握りの立件を軽視する人たちもいるが、しかしそれはインパクトを与えた。特に、ランサムウェアのグループがパートナーを獲得するための広告活動が被害を受けた。いろいろなところが注意するようになったため、一部の人気の高いハッキングのフォーラムではランサムウェアが禁じられ、あるハッキンググループは偽の会社を作って何も知らないITスペシャリストたちに訴求し、お金になる産業であるランサムウェア産業の継続的拡大に寄与させようとしている。

ランサムウェアのエキスパートでEmsisoftの脅威アナリストであるBrett Callow(ブレット・キャロウ)氏は「一部のサイバー犯罪フォーラムではランサムウェアグループが以前ほど歓迎されなくなっている」という。

関連記事:2021年に知ることになったサイバーセキュリティの6つのポイント

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Carly Page、翻訳:Hiroshi Iwatani)

【コラム】暗号通貨は送金の代替手段か、それとも付加的なものなのか?

ビットコインが誕生して以来、世界中の政府が暗号資産の導入、規制、さらには禁止を検討してきた。それ以来、暗号資産のエコシステムは、(何度も)月へ行ったり戻ったりしているロケット船のようなものだった。現在では、これまで以上に多くの人々がこのロケットに乗り込んでいるようだ。

また、このパンデミックの結果、あらゆる産業でデジタルプラットフォームへの大規模なシフトが見られた。世界の政治指導者たちも、自国の経済を同じ方向に向かわせるために、これに追随する措置をとっている。

最も新しい例としては、エルサルバドルがある。この国は、法定通貨としてビットコインを採用した最初の国になったことで話題になった(この動きはその後、市民から抗議を受けることとなった)。最初の発表で、同国の大統領は暗号資産を送金手段の競合として直接結びつけ、これによりエルサルバドルの低所得世帯が送金で受け取る金額が「毎年数十億ドル(数千億円)相当」増加すると言及した。

国境を越えた決済の流れの効果的な存在になるために、デジタル資産は、国境を越えたユースケースにかかわらず、すでにその導入能力を弱めている生来の課題を克服しなければならない。

個人が故郷の家族やコミュニティを支援するためにお金を送る行為である「送金」は、多くの国にとってGDPの重要な構成要素となっている。実際、世界銀行によると、2020年の世界の送金総額はおよそ7000億ドル(約80兆円)で、そのうち5400億ドル(約62兆円)は低・中所得国に送られたと記録されている。エルサルバドルはそのうちの60億ドル(約6890万円)近くを受け取った。一方、暗号資産は現在、世界の国境を越えた送金量の1%未満と推定されている。

では、暗号資産は送金手段の代替として有効なのだろうか?答えは、ノーだ。少なくともまだ現在のところは。

各サービスに対する需要は市場特有の話であり、リアルタイムでのデジタルと現金の払い出しオプションがあるにもかかわらず、受取人が依然として現金の方を選択することは珍しくない。送金を受け取る個人の多くは、商品やサービスの代金をデジタルで支払う能力がほとんどないため、これは驚くべきことではないだろう。その代わりに、彼らはMoneyGram(マネーグラム)のネットワークにある小売店や銀行などの実店舗を利用して、必要な資金を調達しているのだ。

デジタル通貨は確かに付加的な要素であり、暗号資産は間違いなく今後数年間で影響を与えていくことだろう。しかし、それには時間がかかり、メインストリームとして採用され、現金に依存し続ける何百万もの家庭が現金を置き換えるには、いくつかの逆風が吹いている。

まず1つに、正直言って、暗号資産を現地通貨と交換する際の複雑さを考慮すると、暗号資産による送金は、現状では現金よりも安く、速く、簡単な代替手段とは言えない。

エルサルバドルの場合、送金は同国のGDPの約4分の1を占め、約36万世帯が恩恵を受けている。暗号資産の売買は、送金プラットフォームを介した送金・受入よりもはるかに複雑なプロセスであることがわかっている。これらの世帯のすべてが、このまったく新しい決済システムをすぐに学び、適応する可能性は極めて低いだろう。

さらに、暗号資産で商品やサービスを購入するには、ほぼすべての状況で、デジタル資産を現地通貨に戻す必要がある。これは、日々の生活に必要な資金を迅速に入手するために送金を頼りにしている何百万人もの人々にとっては大変なことだ。

最近の顧客調査によると、送金者は主に食料(73%)、医療(59%)、住居(54%)など、生存と幸福のための基本的な費用をまかなうために送金していることがわかった。暗号資産は、このような多くの人々が即時性を求めて依存する生命線となるには、まだ早いのだ。暗号資産はほとんどの地域通貨と比較して特に変動しやすいため、20ドルがそのまま20ドルとして届くことを頼りにしている人たちの安全な避難所として頼りきることはできないのだ。ビットコインの価格推移を見れば一目瞭然だ。

最後に、米国を含め、多くの国がまだ暗号資産の取引 / 支払いに法的な道筋を認めていない、あるいは提供していない。大げさにいえば、2022年の年末年始のプレゼントはビットコインで支払うことになるかのように盛り上がっているが、通路の反対側には反対のアプローチを取っている国が何十とある。

国境を越えた決済の流れを効果的にするために、デジタル資産は、実用性の欠如、取引所の費用、複雑さ、変動性、地域通貨へのオン / オフランプの制限など、国境を越えた使用事例にかかわらず、すでにその採用能力を弱めている生来の課題を克服しなければならない。

暗号や暗号資産やデジタル通貨は、最終的には国境を越えた決済を効率化するのに役立つと私は信じている。個人的にも、投資として暗号資産を「保有」し、この業界の一翼を担うことは、とても楽しいことだ。しかし、多くの新技術がそうであるように、デジタル資産が世界的な送金の標準になるには、まだそれなりの障害が残っているのも事実だ。

開示:MoneyGramはステラとのパートナーシップに着手し、ステラネットワークに接続されたデジタルウォレットがMoneyGramのグローバルリテールプラットフォームにアクセスできるようになりました。

編集部注:本稿の執筆者Alex Holmes(アレックス・ホームズ)氏は、デジタルP2P決済の進化におけるグローバルリーダーであるMoneyGram Internationalの会長兼CEO。

画像クレジット:Olena Poliakevych / Getty Images

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(文:Alex Holmes、翻訳:Akihito Mizukoshi)