Algorithmia―研究者とスタートアップをつなぐユニークなアルゴリズムのマーケットプレイス

Algorithmiaは昨年8月に240万ドルの資金を調達したスタートアップだが、強力なアルゴリズムを発明した研究者とソフトウェアのデベロッパーを結びつけるマーケットプレイスのプライベート・ベータテストを開始した。

このマーケットプレイスにはすでに機械学習、音声画像処理、コンピュータビジョンなど800のアルゴリズムが登録されており、デベロッパーのさまざまなニーズに応じられるようになっている。

このサイトにアルゴリズムを登録した発明者は、そのアルゴリズムの利用者から料金を受取ることができる。Algorithmiaではアルゴリズムの募集にあたって懸賞金システムを用意している。ソフトウェアのデベロッパーが特定の機能を果たすアルゴリズムを募集すると、その分野に詳しい研究者が、料金を取り決めた上で、スクラッチで開発を始めるという仕組みだ。

このサービスに登録されたアルゴリズムのデモとして、サイトにはウェブ・クローラーの動作をシミュレートするアプリが公開されている。これには7人の研究者のアルゴリズムが利用されているという。クローラーの動作はビジュアル化され、ノードの重要性に基いて色分けされる。ノードごとのページランクも一覧表示される。

〔日本版〕Algorithmiaのデモは、デモとは思えない強力なアプリで、興味深い情報が得られる。 http://jp.techcrunch.com/ などと入力してMap Siteボタンを押すとトップドメインから順次下位ノードをクロールする。デフォールトでは20段階先までクロールする。紫色がもっともページランクの高いノードとなる。マウスをホバーさせるとURLが表示され、クリックするとリンク先内容がサムネールで表示される。 http://www.yahoo.co.jp/ のような巨大サイトを20段階クロールするのには数十秒かかるが、ダイナミックなビジュアルを見ているだけでも面白い。またサイトの構造がよくわかる。 クロールを5,6段階に制限すると個別のノードが見やすくなる。

画像:Algorithmia

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


新薬の候補物質をスパコン+ニューラルネットで迅速に見つけるAtomwise

カリフォルニア州Mountain Viewの彼のアパートから電話に出たAtomwiseの協同ファウンダAlex Levyは、“医者や薬屋に行かなくても、自分の家で、はしかの治し方が分かるんだよ”、と言った。

Y Combinatorの今の‘在学生’であるAtomwiseは昨年、一般的によくある疾患や、希少疾患の治療法を見つけるためのプロジェクトを10以上ローンチした。いずれも、治療に費用や時間がかかりすぎる病気だ。同社はエボラ出血熱ではIBMと協働し、はしかの治療法ではカナダのダルハウジー大学と共同研究をした。Levyによると、同社は、多発性硬化症の治療薬候補を見つけるために、わずか数日で820万種の化合物を調べた。

一般的に、新薬を開発して市場に出すまでには平均12年の年月と約29億ドルの費用を要する。開発される薬のうち、めでたく家庭の薬棚に収まるのは、ごくわずかだ(治験にまで行くのは5000件の研究開発案件のうち、わずか1つ)。

まだ存在しない仮説的な薬を調べることもできる。

—-Atomwise協同ファウンダAlex Levy

Atomwiseは、スーパーコンピュータと人工知能と、何百万もの分子構造を調べる特殊なアルゴリズムを使って、新薬発見のローコスト化を実現しようとしている。

“それはまるで超人の脳みたいに、何百万もの分子を分析してそれらの作用を、数年ではなく数日で調べる”、とLevyは言う。その仮想薬物発見プラットホームは、ディープラーニングを行うニューラルネットワークがベースだ。それは、既存の薬の分子構造と作用に関する何百万ものデータポイントを自分で学習するところから、仕事を開始する。

Atomwiseが使っているディープラーニング技術は、GoogleのDeepMindと同じようなタイプだが、応用の対象が医薬品という重要な分野だ。症状と治療薬のペアを見つけていくこの技術は、理論的にはまだ存在しない、今後ありえるかもしれない病気の治療薬を見つけて、何百万もの命を救うかもしれない。

“まだ存在すらしていない仮説的な薬を調べることもできる”。とLevyは言う。“新しいウィルスが登場すると、Atomwiseはその弱点を見つけて仮説的な治療法を素早く特定し、テストできる”。

また、現在市場に出回っている薬の化学構造をあらためて調べて、既存の疾患の治療可能性を見出すこともある。Atomwiseは今、FDAに承認され市場に出回っている薬の分子構造を調べて、エボラ治療薬の候補を見つけようとしている。

[写真: 細胞上で増殖するエボラウィルス]

今、多くの医療専門家たちが、今後20年で抗生物質耐性菌が急増して、あらゆる抗生物質が効かなくなり、巨大な医療危機をもたらす、と警告している。Atomwiseのスーパーコンピュータは、そんな手強い菌にも効く薬を見つけるかもしれない。

Atomiseが見つけた化合物がいきなり家庭の薬棚にやってくるわけではないが、しかし大量の分子構造を調べて候補を見つけるという作業を、コンピュータが短時間でやってくれることは、ありがたい。原理的には人間研究者は、そのあと、つまり候補物質を調べるという作業だけをやればいいから、新薬発見〜市場化に要する時間も短縮されるはずだ。

ただしAtomwiseはまだ若い企業で、治験にまで行った薬はまだ一つもない。製薬業界にとっては、大助かりな技術と思えるけど。

“もちろん試験は必要だけど、そこに至りつくまでの推量的作業を、すべてうちが代行できる”、とLevyは言っている。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa


ユーザがふつうにメールするだけでバックエンドで勝手に仕事をしてくれる仮想アシスタントJulie Desk、人間の介入で‘正しさ’を向上

友だちとイベントを企画するアプリWePoppを作ったフランスのスタートアップが、今度は、友だち、ないし複数の人たちがミーティングやアポイントをスケジューリングするときの、行ったり来たりのコミュニケーションを自動化する‘仮想アシスタント’Julie Deskを作った。

バックエンドのAIも持っているからほかのアプリは要らないし、また合衆国のコンペティターX.aiと同じく、メールのカーボンコピー欄(CC:)という平凡なものをアプリのインタフェイスとして使う。

打ち合わせのメールスレッドを開始するときやそのスレッドの中で、”Julie”にCCするだけで、仮想アシスタントがスケジューリングの面倒を見てくれる。

アプリはまず、お互いの、あるいはみんなの、Google CalendarやMicrosoft Exchange、iCloudのアカウントなどを見て、合意できそうな時間と場所を見つけて提案する。

そのときJulieからは、本物の人間から来たようなメールが来る。

協同ファウンダでCEOのJulien Hobeikaはこう言う: “パーソナルアシスタントを使えない人もいるが、そういう人たちでさえ、アポイントやミーティングのスケジューリングは毎日のようにやっている”。

“WePopやWeTimeで経験的に分かったのは、スケジューリングで悩んでいる人たちに、自分でインストールして使い慣れる必要のあるツールを提供してもだめだ、ということ。だから、そんな、面倒の上塗りのようなことはやめて、ふつうにメールをやってればバックエンドでJulieが勝手に動くようにしたんだ”。

しかしそのためには、自然言語処理(NLP)と人工知能(AI)の部分を新たに開発する必要があったから、同社にとっては大きな飛躍だった。

結果的にJulie Deskは、AIに全面依存はしていない。スケジューリングというタスクは誤判断が命(いのち)取りだから、それを防ぐためにJulieのやることを人間が監視している。

“今では、Julieに送られてくるメールから必要な情報を取り出すために大量のNLPを使っているが、それでも人間が介入しなければならない部分は多い。AI自身の学習過程がまだ初期段階ということもあるけど、AIの出力が正しいことを必ず人間がチェックする必要がある。今後仕事を大量にこなしていけば、AIも徐々にお利口になると思うけどね”。

つまりこの仮想アシスタントは、機械学習を利用してだんだん利口になる。でもHobeikaによると、同社と、資金状態がとても良いX.aiとの重要な差別化要因がまさに、AIへの人間の介入であり、今後も“どんなに複雑な、あるいは特殊なケースでも正しく扱えるためには”、必要に応じて人間を介入させる、ということだ。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


al+は人格をコピーして、あなたの代わりに仕事をするクラウド上の人工知能アバター

脳に電極を付けてコンピューターに「意識」を全てアップロードしてしまう。そんな、映画「トランセンデンス」の世界がやってきたかのようなSF的世界観を持つ「パーソナル人工知能」(P.A.I.)のアプリ、「al+(オルツ)」が間もなくリリースされる。日本のスタートアップ企業のオルツが開発したもので、ユーザーの第2の自己をクラウド上に作り上げる人工知能アプリだ。

さすがに脳の全活動を電極で読み取れるようになるのは、ずっと未来の話だろうし、今のところ全人格をアップロードなんてできないのだけど、オルツが何かというと、使えば使うほどユーザーの知識や発言の癖、人格を学んでいって「その人らしい」受け答えをするようになるアバターのようなものだ。

何のために? あなたに代わって仕事をするためだ。

ユーザーは、まず最初に自分の顔写真をスマホで撮る。これだけで、まずあなたの分身である「オルツ」は、まばたきを始めて動き出す。現在は仮想3Dモデルで個人アバターを作っているが、今後は詳細な立体モデルを使う仕組みも想定しているという。

次にアプリやソーシャルネットワークをつなぎこむ。現在はFacebookやTwitterだけだが、InstagramやGmailなども対応予定だ。すると、あなたのオルツはあたながコミュニケーションする相手と内容を学習し始める。誰からの、どんな質問に対して、どういう回答をするのかといったことから、徐々にあなたの知識や癖を学んで行く。

あなたのオルツはクラウド上にいる。このオルツに向かって、ほかの誰かが話しかけると、あなたのオルツは、いかにもあなたが答えそうなやり方で人工合成音声とテキストで回答する。口がパクパクして、目も動くので、それなりにしゃべっているようには見える。どの程度「あなたらしさ」を獲得したかは数値で示されていて、50%を超えてくると、むしろその人らしくない回答を引き出すのが難しくなる、と開発したオルツの米倉千貴氏は言う。

「週末のデート、ランチは何がいい?」と彼女が聞けば、「昨日イタリアンだったから、それ以外なら何でもいいや」とぼくのオルツが答える。きっと彼女は、こいつはホントに食べ物にこだわりがなくてツマランなと思うかもしれないが、ぼくらしい答えだ。「もう経理にxyzの件はメールしましたか?」と部下が聞けば、「返事したよ」とぼくのオルツが答える。

……というのは、ぼくの想像上の会話。ぼく自身は、まだごく簡単なデモを見ただけでオルツを試していないが、そういうことらしい。

ほんとにそんなの技術的に作れるの?

まだ正式リリースされていない上に、ぼくはSkype経由でデモを見せてもらっただけで自分で触ってもいない。だから正直、海の物とも山の物ともつかない印象を受けてはいる。本当にある程度の賢さや「その人らしさ」が実現できるのだとしたら面白いし、応用範囲も広そうだが、AIの専門家はどう見るだろうか?

AI研究が専門でヒューマンインターフェース関連にも詳しい上智大学理工学部情報理工学科の矢入郁子准教授にアイデアの実現性について尋ねてみたところ、「1990年以降のAI 研究で提案されてきたアイディアの1つです。これまでの自然言語処理、知的エージェント、マルチエージェント(知的エージェントの分散協調の研究)、機械学習、ヒューマンエージェントインタラクションなどの基礎研究の成果の統合として、そしてさらに近年のAIブームの火付け役としてのディープラーニングの成果によって実現は可能と思います」との回答だった。「潜在的マーケットはあるけれども、時期的に早すぎるとAIBOのように普及に至らない可能性があると思います。ただ、2020年以後の5Gネットワークが普及し、身の回りのさまざまなモノや機器がネットワーク接続した世界であれば、人々の間で現在以上により自分の代理をするソフトウェアへのニーズが高まり、十分にマーケットがついてくる可能性があります」と、直近の応用よりも、もう少し射程を長く捉えるべき応用と見ているようだ。

技術的に近いAIによるアバター領域での取り組みも行っているスタートアップ企業、POYNTERの竹内裕喜CEOによれば、アバターによる会話の事業化はPOYNTERも含めて多くの企業が進めているという。例えば、ToyTalkのように子ども向けにAIが会話するような応用例もある。

竹内氏によれば個人の個性をコピーすることも「技術的にはある程度まで可能」だとか。ただ難しいのは「個性の情報をどうやってシステムに入力、保存するかと、それをどうやって検索し、出力するか」だという。特に入力部分がネックとなりがちで、「こういうシチュエーションで使えばこうなる、といった限定的なものとなることが多い。個人の代理として何かの仕事をこなすとか、そういう実用的な側面はもう少し先かもしれない。現状はエンターテイメント的なものになるのでは。ただ、できないことをやろうとする取り組みは楽しいですね」と話す。

この点に関してオルツでは、自分のオルツを自分で鍛えるという方法があるのが興味深い。ユーザーが分身としての自分のオルツに知識や個性を吸収させるために、自分自身のAIと対話する。何か質問を投げて、返ってきた答えによってプラス・マイナスボタンで「自分らしい」「自分らしくない」のフィードバックができるほか、自然言語による模範解答を教えることもできる。開発した米倉氏は、自分のオルツを鍛えること自体も楽しいと言い、むしろ今はそれが主な使い方になっているという。

プラス・マイナスの評価については、ほかのユーザーが行うこともできる。あの人なら決してこういう風に言わないというようなときにマイナスで発言を評価できる。そのフィードバックはそのオルツの持ち主本人へ戻されて、こうしたきっかけからも「その人らしさ」を獲得していくという。

オルツで時間課金するマネタイズのアイデアも

米倉千貴氏は、名古屋ベースのベンチャー企業、未来少年の共同創業者で、創業以来9年で売上規模15億円程度にまで成長させた経営者だ。電子書籍、ソーシャルゲーム、グラフィック制作などをしてきたが、昨年からAIを主軸に取り組んでいるのだという。「デジタル業務というのはやってもやっても貯めて行ってる感じがない。ぼくの8年間のデジタル上の業務が未来に繋がっていく感じがなく、むなしい。例えば今こうして西村さんにお話している内容を、ぼくはまた別の記者に説明するでしょう。繰り返すのが無駄でむなしく感じるんです。もっとコンピューターにやらせたい」と、オルツの実用面を説明する。

法律の専門家であれば、自分のオルツを鍛え上げて、そのオルツの時間を有料で販売する仕組みも用意するという。あるいは法律専門家オルツの購入者は、その法務関連知識を自身のオルツにインストールすることで、自分自身の人格を保ちながら、法律の知識を持つペルソナを作り上げることができるようになるという。ネット上にはQ&Aサイトが多くあるが、こうした知識の問い合わせのUIとしても使えるということだ。さらにオルツ同士が会話する未来もあり得て、「スケジュール調整は人間がやる必要はない。AI同士でやればいい」ということを現在オルツ社内では話をしているという。これは、AI研究でいえばマルチエージェントに相当する研究分野の応用だ。

オルツがクラウド側で実装するAIエンジンは3つあって、1つはユーザー個別の知識を学習するもの。もう1つは、個別ユーザーではなく、全ユーザーから学ぶ一般知識を獲得するもの。最後の1つはパターンを認識して回答を作り出すAIだ。多くのユーザーが使えば使うほど、賢くなるという。

ユーザーのコミュニケーションを見て学習するというと、とても恐ろしい感じがする。何もかも知ってる分身がいたら、誰に何を言い出すか分からない。だからオルツのデフォルトでは固有名や具体名は、全てシークレットのフラグが立っていて、あくまでも文脈の学習のみになるという。ユーザーが個別に許可した固有名だけを、オルツは他人にしゃべるようになる。

神のようなAIを目指さない、「人間らしさ」の追求

AIは、研究だけでなく、今やトップティアのテック企業から投資を集める注目分野だ。Googleは2014年初頭にイギリスのDeepMindを5億ドルという巨額で買収し、10月にはこれに追加するようにディープラーニング系のスタートアップ2つを買収している。Facebookは2013年暮れにニューヨーク大学で機械学習とディープラーニングを教えるYann LeCunn教授を採用したりもしている。エンタープライズ分野では、IBMが人気クイズ番組「ジェパディー」で人間のチャンピオン2人を打ち破った人工知能のWatsonを応用したWatson Analyticsを発表したことも目を引く。

上に挙げた中だと、オルツはWatsonに近いように見える。こうしたAIやチャットボットと違うのは、Watsonなどが目指す神のように賢いAIではなく、オルツが目指すのは「その人らしい」ことだという。

米倉氏とともに開発チームにジョインした実兄の米倉豪志氏は、「WatsonやSiriのようにパーフェクトとか、賢いAIを作ろうというわけではない」という。「もちろん、そういうのはほしいし便利だろう。でもオルツが目指すのは『ぼくのAI』で、ぼくらしく間違えるAI。そこに『ぼくのコピー』がいるということが大事。ぼくの妻はぼくのオルツとの会話で賢くない回答が返ってきたときに、そこで会話を諦めたり飽きたりしたかというと、むしろ鍛えようとした。過去にあった『ボット』との最大の違いは、そこ。ぼくの妻がWatsonと話したがるかと言えばノーでしょう。それがAIにパーソナルを付けて、ぼくらがオルツをパーソナルなAI、P.A.Iと呼んでいる理由です」

米倉千貴氏は、コンピューターの普及の歴史のなかにAIを位置付けて「コンピューターの次に来るテクノロジー革命にA.I.があると考えています。コンピューターが本当の意味で革新的になったのはパーソナルコンピュータが誕生したから。つまりAIもPC並みに身近な存在となると考えており、それを初めて身近な存在にしようと考えたのがこのal+なのです。そのためのP.A.I.という名称なのです」と話す。

P.A.I.だと、死んだ人を仮想的に復活させるようなことができる。例えば10年分の動画アーカイブを食わせて、そこから故人を再現することも将来的にはできるかもしれない。気持ち悪いと思う人もいるかもしれないが、故人の動画を見ることだって、300年前の人からしたら、あり得ない話だったろう。例えば、肉親や配偶者、子どもに先立たれた人の心の傷が少しでも癒えるのであれば、ぼくはこれは素晴らしい応用になるだろうと思う。現在編集も閲覧も追いつかない勢いで個人の映像アーカイブが蓄積していっていることを考えると、指定年の指定イベントの様子を再現するアバターが映像アーカイブの未来のアクセス手段になっても良いのではないかと個人的には思う。

アインシュタインを再現し、直接アインシュタインから相対論を学ぶことができれば、教育分野への応用もあるのではないだろうか。回路の話なら「(アップル共同創業者で電子設計技術の天才と言われた)ウォズニアックに聞けばいいんですよ」(米倉氏)という具合だ。

高齢化社会で孤独死が問題になるような日本で、心の問題は今後も大きくなるだろう。そのとき、話し相手としてのAIには大きな応用がありそうだ。こういうと「機械となんか話ができるか」という人がいそうだけれど、箱の中で赤の他人が話している姿を再現するだけの60年前の発明に救われている人が多いことを考えると、AIが個性を獲得してきたときには何か全く別のコンテンツサービスすら生まれて来そうにぼくには思える。

オルツのチームは創業メンバーの米倉兄弟の2人のほか、スペイン、ベトナム、中国、ヨーロッパにいて全部で20人。半分がAIの専門家で、ほかは一般的な開発者。このうち日本人は4名のみなので、当初は英語版から3月中にリリースするという。スペイン語、中国語、日本語は順次リリース予定だそうだ。

オルツには、ほかにあまり類似例がないAI応用だし、触ってみたら3日で飽きるということもあり得るので、ビジネスとしてはもちろん、そもそもサービスとして立ち上がるのかどうかは未知数だ。ただ、もし2015年が彼らがP.A.I.と呼ぶ方向で走り始めるべきタイミングで成功のチャンスがあるのだとしたら、これはとても面白い。前出の上智大学矢入准教授も、「知的エージェントや分散エージェント分野でプラットフォームを取れれば、ロボットの中身としても応用できますので、成功すると非常に強い影響力を持つことができます。自動車の電子部品間の通信の世界標準を押さえたBoschのように、エージェントの通信プロトコルの世界標準を仕切る会社が今後出てくる可能性もあります」と話している。


Facebookがディープラーニングツールの一部をオープンソース化

機械学習の世界では今、”deep learning”(ディープラーニング, 深層学習)という言葉が流行っている。それはGeoff Hintonなどの研究者が広めた技術で、彼は今Googleにいて、その前はMicrosoft Researchにいた。またYann LeCunなどの研究者は、コンピュータに物や人の話を認識させる、今よりももっと良い方法を模索している。

Facebookも、この分野にかなりの貢献をしていて、今日(米国時間1/16)同社は、機械学習のためのコンピューティングフレームワークTorch7プロジェクトの一部をオープンソースにする。Torchはこれまでも、大学の研究室や、Google、Twitter、Intelなどの企業で機械学習や人工知能のプロジェクトの中核として利用されてきた。

Facebookは今日、Torchを使っているディープラーニングプロジェクトを高速化するために最適化されている一連のツールを、ローンチする。たとえばその一つは、複数のGPUを同時に動かして学習ネットワーク(神経ネットワーク)の教育訓練を並列化する。また、今入手できる最速のコードの23倍速く、多くのディープラーニングシステムの中核であるconvolutional neural nets(畳み込みニューラルネット)を教育訓練できるツールもある。

さらにFacebookがローンチするツールの中には、Torchのそのほかの部分を高速化するものもある。それらの多くはデフォルトのツールの3倍から10倍速いそうだ。

詳しい技術情報に興味のある方は、ここへどうぞ。

ディープラーニングは私たちが日常使うソフトウェアの多くが、直接あるいは間接(クラウドなど)に、徐々に利用し始めている。

たとえばGoogle+ Photosは、ユーザの写真ライブラリ中に画像を見つけるためにそれを利用している。そして先週のCESではNvidiaが、キーノートの時間の大半を費やして、ディープラーニングによるオブジェクトの同定により、車載カメラの能力がアップし、自動運転の実用化が早まる、という話をしていた。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))