ヒートアップする倉庫や仕分けのロボティクス、Zebra TechnologiesがFetchを約324億円買収

Zebra Technologies(ゼブラテクノロジーズ)は米国時間7月1日、ベイエリア拠点の倉庫ロボティクス会社Fetch(フェッチ)を買収する意向を発表した。買収額2億9000万ドル(約324億円)のこの取引では、すでにZebraが保有しているFetchの株式5%に加え、残りの95%を取得する。

パンデミックで労働力が不足し、また小売事業者がAmazon支配への抵抗で潜在的な優位を模索していることを受けて、倉庫や仕分けのロボティクスはヒートアップし続けている。そうした中でこの取引は興味深いものだ。最近SPAC(特別買収目的会社)と合併したBerkshire-Greyを含め、大小のロボティクス会社への投資にとってロボティクス業界のヒートアップは大きな原動力となっている。

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Zebraに関していうと、同社はロボティクス分野でかなり攻めている。2020年初めに発表した在庫システムSmartSightのような自前の小売ロボティクスを立ち上げたのに加えて、LocusのようなFetchの直接的な競合相手に投資してきた。Zebraは2020年6月、Locusの4000万ドル(約45億円)のシリーズDラウンドをリードした。

外から見ると、Zebraは1つの統一されたプレイをめぐるマーケットを統合することを模索しているかのようだ。LocusのCEOであるRick Faulk(リック・フォーク)氏は直近の別のラウンドの際に「独立して操業することで最大かつ最高の価値を生み出せると考えています。『Amazon』競合社とされていない企業を助けるために投資したい投資家もいます」と筆者に語った。

フォーク氏は当時、Locusは買収されることに興味はないとも語った。Zebraが積極的にLocus買収を追求していたのかどうかはわからないが、もし今日のニュースが何らかの兆候であるなら、Zebraがどちらのご馳走にも飛びつくことを考えていたのは明らかだ。そしてFetchの多様なモジュラー商品は手始めとしては最適だ。

「Fetch Roboticsの買収は、ワークフローを強化する新しいモードを擁し、ますます自動化されデータで動く環境において当社の顧客がより効率的に操業できるようサポートすることで、Enterprise Asset Intelligenceビジョンと、インテリジェントな産業オートメーションにおける成長を加速させます」とZebraのCEO、Anders Gustafsson(アンダース・グスタフソン)氏は声明文で述べた。「この動きは生産から消費に至るまでのサプライチェーンを最適化するという当社のコミットメントをさらに広げます。FetchのチームをZebraファミリーに迎えることを楽しみにしています」。

FetchのCEOであるMelonee Wise(メロニー・ワイズ)氏は「FetchのチームはZebraに加わって、AMRと当社のクラウドベースのロボティクスプラットフォームを通じてフレキシブルなオートメーションの浸透を加速させることに胸躍らせています。一緒になることで、我々は真に顧客の問題を解決するエンド・ツー・エンドのソリューションを提供するために、正しいテクノロジーを持つ正しいチームを抱えます。顧客が動的に最適化し、梱包、配送、そして製造のオペレーションを全体的に統合するのをサポートすることで、顧客が増大する需要に先んじ、また配達時間を最小化し、縮小しつつある労働力の問題を解決するのをサポートします」。

TechCrunchはさらなるコメントを求めている。買収取引はいつものことながら当局による承認次第だ。第3四半期の取引完了が見込まれている。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Zebra TechnologiesFetch倉庫買収

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

Slackの新音声・動画ツールは買収完了後のSalesforceプラットフォームにうまくフィットする

忘れるのは簡単だが、Salesforce(セールスフォース)は2020年末におおよそ280億ドル(約3兆1240億円)でSlack(スラック)を買収し、この取引はまだ完了していない。完了がいつになるのか正確なところはわからないが、Slackは最終的にSalesforceの一部になるのを待つ間も、新たな機能を加えてプロダクト計画を発展させ続けている。

ちょうど米国時間6月30日朝、Slackはこのところ話していた新しいツールを正式に発表した。ここには、6月30日から利用できるようになったSlack Huddlesという音声ツールや、ビデオメッセージ、Slack Atlasというディレクトリーサービスが含まれる。

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これらのツールは、取引完了時にSlackがSalesforceの一部になったとき、プラットフォームの機能性を高めるのに役立つと証明されるはずだ。Salesforceのプラットフォームに統合されたとき、Huddlesやビデオツール(あるいは会社内部と外部組織の閲覧向けのSlack Atlasすら)の統合がどのように機能するか想像するのは難しいことではない

SlackのCEOであるStewart Butterfield(スチュワート・バターフィールド)氏は、コミュニケーションに関する当局の制限があるためにSlackとSalesforceはまだ協業を始めていないと話すが、これらのツールがSalesforce Service CloudやSales Cloudなどと連携して機能し、ユーザーがSalesforceにあるデータをSlackのコミュニケーション能力と合体させ始めるのを必ず目にするはずだ。

「(Salesforceの)大きなSoRから(Slackの)コミュニケーションへのワークフロー、そして会話が行われているところにデータを表示するといったところに変化があります。セールスやマーケティング、サポートなど顧客とのやり取りにおいてこれらの機能を間接的に活用することに多くのポテンシャルがあると考えています」とバターフィールド氏は述べた。

2020年導入された、社外の人とやり取りできるようになるSlack ConnectをSalesforceが利用するかもしれない、とも同氏は話した。

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「Slack Connect内に全機能をそろえています。会話をきちんと開始する、問題を解決する、(顧客と)コミュニケーションを取るもっといい方法としてビデオを使うのにHuddlesを活用したときに得られるものと同じメリットを手にします」と同氏は説明した。

これらの発表は、仕事の未来、そして買収がらみのものとに分けられるようだ。Salesforceのプレジデント兼COOのBret Taylor(ブレット・テイラー)氏は、買収を発表した2020年12月にその取引についてTechCrunchに語ったとき、その点を確かに認識していたようだ。同氏は2社が仕事のフェースを変えることに直接取り組んでいるとみている。

「Customer 360向けの次世代インターフェースになるためにSlackが本当に欲しいというとき、我々が意味するところは2社のシステムを合体させるということです。我々が現在身を置いている、どこででもデジタルで働ける世界ではチームが分散していて、どのようにこうしたシステム周辺でチームを集めるのでしょう。コラボレーションはかつてないほど重要になっています」とテイラー氏は述べた。

CRM Essentialsの創業者でプリンシパルアナリストのBrent Leary(ブレント・リアリー)氏は、2社が一緒になることで仕事方法の未来が明らかに出現する、と話す。「自宅からミーティングやコラボレーションを行うためにウェブカメラとマイクの前でますます多くの時間を費やすようになっているとき、今日のSlackの発表のような動きは、仕事の将来に関しトレンドとなっているものに応えるものです」とリアリー氏は話した。

Huddlesは、多すぎるミーティングや意見のタイピングによるスクリーン疲れをSlackがなんとかしようとしている1例だ。「こうした『オーディオファースト』の能力により、うまく機能させようと追加で何かすることなしに、ただ口で伝えられるようにして要点が得られれば、意図するところをタイプしようとしなくてもよくなります」と同氏は話した。

さらにリアリー氏は「ただ人々が話せるようにするだけでなく、人々に話しかけながら沸き起こる感情や心の状態をより理解して、チャットのテキストの裏にある意図や感情を推測しなくてもいいようにします」と付け加えた。

EngadgetでKarissa Bell(カリサ・ベル)氏が指摘したように、Huddlesはビジネスの文脈でDiscordのチャット機能のようにも働く 。これはSalesforceのプラットフォームに統合されたときにSalesforceツールにとってかなり有用かもしれない。

当局が買収を精査している間、Slackはプラットフォームやプロダクトの開発を続けている。巨大な買収取引が完了しても、Slackはもちろん独立会社として引き続き事業を展開するが、クロスプラットフォームの統合がかなり行われるのは確かだろう。

そうした統合がどのようなものになり得るのか、たとえ経営陣が公に語れなくても、買収取引が完了した暁にはSalesforceとSlackでは、さらには概して仕事の将来にとって、これらの新しいツールがもたらす可能性について多くの刺激があるはずだ。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:SlackSalesforce買収

画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

ID認証の独IDnowが同業の仏ARIADNEXTを買収、新型コロナ追い風に事業好調

ドイツ拠点のID認証スタートアップIDnow(アイディナウ)が、リモートID認証とデジタルID制作を専門とするフランスの同業ARIADNEXT(アリアドネクスト)を買収する。両社は買収額を非公開としたが、情報筋から得たところでは取引はおおよそ5900万ドル(約66億円)だったとTechCrunchは理解している。

AI駆動から人間によるサポート、オンラインから店頭での認証オプションに至るまで、合併会社は総合的なID認証プラットフォームを提供することができる、とIDnowは話す。同社は英国、フランス、ドイツ、スペイン、ポーランド、ルーマニア、その他のマーケットでサービスを提供していて、2021年の売上高は2019年の3倍超を見込んでいる。

IDnowはまた、パンデミックにより企業がデジタルプロセスに切り替えたことから同社のプロダクトの使用が前年比で200%以上増えた、とも話す。

IDnowのCEO、Andreas Bodczek(アンドリアス・ボドゼック)氏は声明で次のように述べた。「ARIADNEXTとの合体は欧州広域でID認証・アズ・ア・サービスのソリューションのリーダーになるというビジョンに向けた重要なステップです。直近のTrust Management AG買収に加え、ARIADNEXTとともにIDnowは1つのプラットフォームを通じて顧客にさらに幅広いプロダクトをシームレスなユーザーエクスペリエンスで提供できます」。

ARIADNEXTの社長Guillaume Despagne(ギヨーム・デスパーニョ)氏は「IDnowのチームに加わり、欧州広域の顧客に安全で将来性のあるソリューションを提供するという共有するビジョンに向けて協業するために経験とスキルを合体させることを楽しみにしています」と述べた。

IDnowは、ARIADNEXTがレンヌ、パリ、マドリッド、ブカレスト、ヤシ、ワルシャワに置く拠点と125人超の従業員を維持する。買収は当局の承認次第だ。

この買収はIDnowが欧州のもう1つの同業大手OnFidoに肩を並べることを意味する。TechCrunchの理解では、IDnowは2021年5000万ユーロ(約66億円)超の売上高を達成し、2023年までに売上高を1億ユーロ(約131億円)とする目標を上回ることが予想される。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:IDnow買収個人認証ドイツ

画像クレジット:IDNow founders

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

Zoomが会議でのリアルタイム翻訳を実現するためにドイツのスタートアップを買収

企業が世界に展開し、Zoom(ズーム)のようなツールでオンライン会議を行うようになると、言葉の壁が仕事を進める上での大きな障害となる。Zoomは、ドイツのスタートアップ企業であるKarlsruhe Information Technology Solutions(カールスルーエ・インフォメーション・テクノロジー・ソリューションズ、略称Kites[カイツ])を買収し、機械学習を利用したリアルタイム翻訳機能をプラットフォームに導入するつもりであることを発表した。

両社は取引の条件を明らかにしていないが、Kitesを買収することで、Zoomはトップレベルの研究者のチームを手に入れて、同社の機械学習翻訳の知識を強化することができる。「Kitesの12名の優秀な研究チームは、Zoomのエンジニアリングチームを助けて機械翻訳の分野を進化させ、Zoomユーザーに多言語翻訳機能を提供して、会議の生産性と効率を向上させる予定です」と同社は声明で述べている。

今回の買収は実際には、この12人の研究者をZoomエンジニアリンググループに迎えるための、買収という名の人材獲得(acquihire)となるようだ。このチームはドイツに残し、機械学習翻訳の研究開発センターを開設する予定で、この分野にリソースを投入するに従い、時間をかけて追加で採用を進めていく予定だ。

Kitesのウェブサイトでは住所以外の情報はほとんど明かされていないが、LinkedIn(リンクトイン)にある会社概要ページによれば、このスタートアップは2015年に、カーネギーメロン大学とカールスルーエ工科大学で教鞭をとっていた2人の研究者が、機械学習による翻訳ツールの開発を目的として創業したものだ。

「Kitesのミッションは、言語の壁を取り払い、シームレスな異言語交流を日常生活の中で実現することです」とLinkedInの概要では述べられている。Google(グーグル)やMicrosoft(マイクロソフト)を含む数少ない企業と並んで「最先端の音声認識・翻訳技術」を開発したと謳っていることから、Zoomはいくつかの重要な技術を獲得したと考えられる。

同社は商用製品を持っていたわけではないようだが、このサイトによると、機械学習による翻訳プラットフォームを持ち、アカデミアや政府で使用されているようだ。とはいえ、この会社の研究成果は、今後はZoomのものになる。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Zoomビデオ会議翻訳ドイツ買収

画像クレジット:SurfUpVector / Getty Images

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(文: Ron Miller、翻訳:sako)

ゲーミングチャットアプリのDiscordがARスタートアップUbiquity6を買収

投資家から数千万ドル(数十億円)も調達し、2021年初めに実質的な方向転換を図った後、拡張現実(AR)のスタートアップUbiquity6とそのチームはゲーミングチャットアプリのDiscordに買収された。

野心的なUbiquity6はBenchmark、First Round、Kleiner Perkins、そしてARコンテンツをホストする消費者向けプラットフォームを構築するというビジョンに賭けていたGoogleのGradient Venturesなど一流の投資家からこれまでに3750万ドル(約41億円)を調達した。公開された直近の資金調達は2700万ドル(約30億円)を獲得した2018年10月のシリーズBだった。

Discordによる買収の条件は明らかにされなかった。しかしここ数カ月、Ubiquity6は構築に最初の数年を費やしたプロダクトの大半を放棄していたようで、これは同社が幅広いオーディエンスを見つけるのに苦労していたことをうかがわせる。

2017年創業のUbiquity6は携帯電話ユーザーがARコンテンツをブラウズするのに中心的な方法になるアプリの構築を描いていた。2019年後半に同社は、3Dスキャニングの物理的環境のプロセスをスマホのカメラでゲーム化することを目指すDisplaylandというプロダクトを立ち上げた

大衆に受け入れられるようにするという同社の取り組みは、AppleやGoogleなどを含むテック大手がかなり投資してきたにもかかわらずここ数年勢いを得るのにほぼ失敗していたモバイルARマーケットによって妨げられた。

2020年初め、CEOのAnjney Midha(アンジニー・ミドハ)氏はUbiquity6が従業員65人を雇用している、とTechCrunch に語った。

ここ数カ月でUbiquity6はかなり抜本的な方向転換を実行した。ユーザーがシンプルなオンラインパーティゲームをリモートで一緒に遊ぶことができるデスクトッププラットフォームを構築することを選び、ARを完全に捨てたのだ。Backyardというベータプラットフォームは米国がパンデミックから立ち直るにつれてなくなりつつあるパンデミック時代の習慣のためにデザインされていた。

買収を発表するMediumへの投稿の中で、ミドハ氏はUbiquity6のARテクノロジーがDiscordの中で生き続けるとの期待を控えめに述べた。

「Ubiquity6での我々のミッションは常に、人々が共有体験を通じてつながる新しい方法を見つけることでした」とミドハ氏は書いた。「Discordに加わることで我々はそのミッションを加速させることができます。Ubiquity6のチーム、プロダクトのBackyard、そしてマルチプレイヤーテクノロジーはDiscordに統合されます」。

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カテゴリー:VR / AR / MR
タグ:Discord買収拡張現実

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(文:Lucas Matney、翻訳:Nariko Mizoguchi

eコマースEtsyが英Depopに続き「ブラジルのEtsy」ことElo7を約240億円で買収

若いユーザーをターゲットにしたソーシャル販売に足を踏み入れ、そして欧州での事業を本格的に拡大するためのDepop買収という巨額の取引に続き、Etsy(エッツィー)はまたもリーチを拡大する大きな取引を明らかにした。今回の対象は南米だ。EtsyはElo7を2億1700万ドル(約240億円)で買収すると発表した。Elo7はクラフトクリエイターに人気のマーケットプレイスで「ブラジルのEtsy」と言われている。

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Etsyはすでにブラジルで事業を展開しているが、ブラジルで最も大きな10のeコマースサイトの1つであるElo7はアクティブバイヤー190万人、アクティブセラー5万6000人、そして販売アイテム800万点を擁し、Etsyはブラジルでプレゼンスを大幅に高めることになる。

Depop(Etsyに16億ドル[約1770億円]で買収された)とReverb(Etsyが2016年に買収した楽器マーケット)と同様、Elo7は独立ブランドを維持し、現在の経営陣がブラジル・サンパウロの本社で指揮を取る。

今回のElo7買収はEtsyのCEOであるJosh Silverman(ジョッシュ・シルバーマン)氏が描く統合のシナリオを強調するものだ。シルバーマン氏はeコマース業界に長く身を置き、買収全盛期だった頃のeBayにも在籍した。

「Elo7は『ブラジルのEtsy』であり、目的やビジネスモデルは当社のものと似ています」とシルバーマン氏は声明文で述べた。「最近のDepop買収合意に続き、ユニークなマーケットプレイスをまた1つEtsyファミリーに持ってくることに胸躍らせています。この取引は当社にとって南米における足掛かりとなります。現在Etsyは南米でそれほど大きな顧客ベースを持っておらず、浸透が不十分なeコマース地域です。Elo7の優秀な経営陣と従業員をEtsyファミリーに迎え入れることを楽しみにしています」。

よりアグレッシブな成長モードに向かっているEtsyにとって興味深い動きだ。eコマース業界ではこれまで、企業はオーガニックではない形、特に同じ業界の企業あるいは新しく参入したい分野の企業の買収を通じて事業を拡大してきた。この手法はeBay、Amazon、Groupon、その他多くの企業がとってきたものだ。

おそらくeコマースが成熟してきたためかもしれないが、Amazonは巨大になりすぎて参入障壁が高くなっている。そしてそうしたモデルの「クローン」と呼べる企業に貼られた負のレッテルのようなものを世界のあちこちで目にするようになっている。

そのため、Etsyがこのケースにまさしく当てはまる買収を行うというのは興味深い。発表では、2社の事業モデルのシナジーによって囲い込みが簡単なものになると指摘した。これはElo7によって強調されるものでもある。Elo7はこれまでにAccel、Monashes、Insight Partnersといった投資家から1800万ドル(約20億円)を調達した。

「Etsyは我々にとって常にインスピレーションであり、参考にするものでもありました。EtsyのミッションやカルチャーはElo7のものとかなり近く、Etsyの一部として成長に向けた旅を続けることに興奮しています」とElo7で長らくCEOを務めてきたCarlos Curioni(カルロス・クリオニ)氏は述べた。「Elo7のマーケットプレイス、コミュニティ、チームがブラジルにおける我々の最大限の可能性を十分に引き出すために、Etsyのプロダクトやマーケティングの専門性を活用することを楽しみにしています」。

ブラジルはオーガニックでない買収戦略を展開するのに真に主要なマーケットだ。同国は人口、購買力、デジタルデバイス浸透度合い(特にスマートフォン)において世界で最も大きなeコマースマーケットの1つだ。多くの成熟したマーケットではeコマース成長は停滞に直面していて(パンデミックによる2020年の44%成長を除く)、米国のeコマース成長は15%程度とパンデミック前に比べて緩やかだが、ブラジルのeコマースは活況を呈している。浸透率はまだ低く、成長要因はそろっている。Etsyは2024年までにブラジルのeコマースが26%成長すると予想する数字を引用している。

「最近のDepop買収取引に続き、Elo7の買収を発表できることをうれしく思います。いずれもEtsyの資本活用のための高いハードルをクリアするエキサイティングな会社です」と同社のCFO、Rachel Glaser(レイチェル・グレイザー)氏は声明文で述べた。「当社の基幹事業Etsy.comマーケットプレイスの成長を引き続き促進するのに加え、DepopとElo7をEtsyファミリーに統合することに注力しています。Reverb、Depop、そしてElo7は今後も才能ある権限を委ねられた経営陣によって運営され、価値創出を加速させる方法でブランドにまたがる主要な機能をつなげ、個々の合計より全体の価値を高めます」。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Etsy買収ネットショッピングブラジル

画像クレジット:Philippe Perreaux / Flickr under a CC BY-SA 2.0 license.

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

AWSが米国家安全保障局お墨付きの暗号化メッセージングサービスWickrを買収

Amazon(アマゾン)のクラウドサービスであるAmazon Web Services(AWS)が、暗号化されたメッセージ事業に参入する。AWSは米国時間6月25日、政府や軍、企業向けのサービスを提供しているメッセージングアプリ「Wickr(ウィッカー)」を買収したと発表した。Wickrは、米国家安全保障局(NSA)が定めたセキュリティ基準を満たす唯一の「コラボレーションサービス」であると、同社では主張している。

AWSはWickrの運営をそのまま継続し、AWSの顧客にそのサービスを「事実上即座に」提供すると、AWSのバイスプレジデントで最高情報セキュリティ責任者(CISO)を務めるStephen Schmidt(スティーブン・シュミット)氏は、このニュースを報告するプログ記事で書いている。

短い発表の中で金銭的条件は開示されていない。調査会社PitchBook(ピッチブック)のデータによると、Wickrの資金調達総額は6000万ドル(約66億5000万円)に満たない(3000万ドル以下との評価額も記されているが、これはかなり古い推定値のようだ)。一方、アマゾンのクラウドエンタープライズ部門であるAWSは、電子商取引とオンラインサービスの巨大企業にとって強大な存在となっている。AWSの前四半期の売上は、前年同期比32%増の135億ドル(約1兆5000億円)で、純利益は81億ドル(約9000億円)だった。

アマゾンが、政府機関に安全なサービスを提供しているメッセージングプロダクトを買収したこのタイミングは、Microsoft (マイクロソフト)がTrump(トランプ)政権時代に米国防総省から獲得した100億ドル(約1兆1080億円)規模のクラウド契約「JEDI」をめぐる争いに引き続き巻き込まれている時期でもある。

この買収が、アマゾンが自社のサービスを充実させるために、より多くのインフラやサービスを構築しようとする取り組みの一環なのか、それとも、JEDIの契約獲得の有無にかかわらず、アマゾンが引き続き政府機関という市場に働きかけかけようとする兆候なのかはわからない。

また、この動きはアマゾンがメッセージング分野への進出を、これまで以上に推進している可能性も示唆している。これは同社に待望されていたことだという声もある。

AWSでは現在、Amazon Chime(アマゾン・チャイム)というコミュニケーションサービスを提供しており、組織でのミーティングやチャット、ビジネスコールなどを可能にしている。しかし、これはあまり知られていない製品で、ライバルサービスであるSlack(スラック)やMicrosoft Teams(マイクロソフト・チームズ)ほどの影響力を持てずにいる。また、Wickrのようなエンド・ツー・エンドの暗号化にも力が入れられていない。

アマゾンは、2017年にもメッセージング製品を開発中と報じられたが、それはより一般消費者に向けたものだったようだ。同社は多くのソーシャルメディア関連の特許も保有している。

2021年になると、メッセージングサービスには、暗号化やプライバシー保護機能など、2017年にはあまり重要な要素ではなかった考慮すべき事項が山ほどある。また、メッセージング全般においてますます高度化が進んでいる。

アマゾンが興味を持ちそうな分野については、特に以下の4つが上げられる。1. Wickrをビジネスサービスとして提供し、現在の使い方を継続する。2. 他のAWSサービスのように、他の企業が自社のアプリで利用できる「メッセージング・アズ・ア・サービス」を構築する。3. Wickrのインフラ上に消費者向けのメッセージングアプリを構築する。4. Echoに接続するサービスを増やし、より大きなソーシャルコマース/インタラクティブプレイに向けて機能を拡張する。あるいは上記のすべてを実行する。

今回の買収について、AWSのCISOであるシュミット氏は次のように述べている。「この種のセキュアな通信へのニーズは加速しています。新型コロナウイルス感染流行の影響もあり、ハイブリッドな就業環境への移行が進む中、企業や政府機関では多くの遠隔地をつなぐ通信を保護したいという要望が高まっています。Wickrの安全性が高いコミュニケーション・ソリューションは、企業や政府機関がこのような就業形態の変化に対応するために役立ち、AWSが顧客やパートナーに提供するコラボレーションや生産性向上のためのサービスが、ますます充実することになります」。

Wickrのウェブサイトに掲載された告知には、次のように書かれている。「10年前の創業以来、当社は世界中の幅広い業種の組織にサービスを提供するまでに成長しました。AWSとともに、当社のソリューションを、お客様やパートナーのために、次のレベルに引き上げることを楽しみにしています」。

2011年にサンフランシスコで設立されたWickrは、自らを「最も安全な」ビデオ会議とコラボレーションのプラットフォームと表現している。他ののコラボレーションツールでは、ユーザーのデバイスから企業のサーバーに送信されるメッセージは暗号化されるが、それらの通信は暗号化されない状態で保存される。Wickrはエンド・ツー・エンドの暗号化を採用しているため、会話の両端にいる人のみが暗号化を解除してメッセージを読むことができる。またWickrには、ユーザーが開封から数秒という短い時間でメッセージを自動消去できる「削除タイマー」を設定する機能も備わっている。

同社は最近、人々の大規模なオンライン・コミュニケーションへの移行にともない、企業向け展開にも大きく力を入れている。2021年2月には、企業や政府機関がネットワーク外部にいる業務上重要なパートナーとエンド・ツー・エンドの暗号化を用いて安全に通信できる「Global Federation(グローバル・フェデレーション)」という機能を導入した。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:AWS買収Amazonメッセージ

画像クレジット:Pedro Fiúza/NurPhoto / AP

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(文:Carly Page, Ingrid Lunden、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Visaが欧州の主要フィンテック企業、オープンバンキングプラットフォームのTinkを約2380億円で買収

Visa(ビザ)は米国時間6月24日、Tink(ティンク)を18億ユーロ(約2380億円)で買収する計画を発表した。TinkはオープンバンキングAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)に注力している、欧州の主要フィンテックスタートアップだ。

今回の動きは、Visaが別の人気オープンバンキングスタートアップPlaid(プレイド)の買収を諦めてから数カ月後のことだ。元々VisaはPlaidの買収に53億ドル(約5880億円)を使う予定だった。しかし規制の壁に阻まれて買収を白紙に戻した。

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Tinkは顧客が銀行口座をアプリやサービスからつなげることができるAPIを提供している。例えばユーザーは取引明細書へのアクセス、支払い、銀行情報の取り込み、データ定期更新をするのにTinkのAPIを活用できる。

EUのPayment Services Directive PSD2によりすべての銀行や金融機関は現在、オープンバンキングのインターフェースを提供しなければならないが、統一基準はない。Tinkは3400の銀行と金融機関を統合している。

アプリデベロッパーは、さまざまな金融機関で銀行口座とやり取りするのに同じAPIコールを使うことができる。ご想像の通り、これはオープンバンキング機能の導入プロセスを大幅に簡素化する。

300の銀行とフィンテックスタートアップがサードパーティーの銀行情報にアクセスするのにTinkのAPIを使っている。クライアントにはPayPal、BNP Paribas、American Express、Lydiaなどがいる。Tinkは欧州で計2億5000万もの銀行顧客をカバーしている。

スウェーデン・ストックホルム拠点のTinkのオペレーションは買収後もこれまで通り続くとみられる。VisaはTinkのブランドと経営陣を保持するつもりだ。

Crunchbaseデータによると、TinkはDawn Capital、Eurazeo、HMI Capital、Insight Partners、PayPal Ventures、Creades、Heartcore Capitalなどから3億ドル(約330億円)超を調達している。

「過去10年、Tinkを欧州でトップのオープンバンキングプラットフォームにすべく懸命に取り組んできました。Tinkのチーム全体が一丸となって構築したものをとても誇りに思っています」とTinkの共同創業者でCEOのDaniel Kjellén(ダニエル・ケレン)氏は声明で述べた。「我々はすばらしいものを構築し、と同時に上っ面をなでたにすぎません」。

「Visaに加わることで、我々はこれまでよりも迅速に動き、さらにリーチを伸ばすことができます。次のステージに向けてVisaは最適なパートナーであり、今回の買収がTinkの従業員、顧客、そして将来の金融サービスにもたらすものに非常に胸躍らせています」。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:VisaTink買収API

画像クレジット:Tink

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

EAが「ゴルフクラッシュ」開発元Playdemicを1554億円で買収、モバイルゲームに多額の投資続ける

ビデオゲームの巨人Electronic Arts(EA、エレクトロニック・アーツ)は、モバイルゲーム市場での存在感を高めようとM&Aの動きを続けている。

2021年4月に24億ドル(約2664億円)を投じてGlu Mobileを買収したばかりのEAは、Warner Bros. Games(ワーナー・ブラザース ゲーム)傘下のモバイルゲームスタジオであるPlaydemic(プレイデミック)を14億ドル(約1554億円)で全額現金により買収すると発表した。Playdemicは「Golf Clash(ゴルフクラッシュ)」で知られる英国マンチェスターのスタジオで、同タイトルは全世界で8000万ダウンロードを記録しているという。

このタイミング的に不吉ともいえる名前のスタートアップは、430億ドル(約4兆7720億円)規模のWarnerMedia(ワーナーメディア)と(ディスカバリー)の合併に先立ち、新天地に移される。Warner Bros. Gamesの残りの部門は、合併会社に存続することになる。

EAは、時価総額約400億ドル(約4兆4400億円)の欧米第2位のビデオゲーム会社だ。同社の成功は「バトルフィールド(バトルフィールド)」「Star Wars(スター・ウォーズ)」「Titanfall(タイタンフォール)」などの人気フランチャイズタイトルを含む、PCおよびコンソールタイトルによるところが大きい。2016年にKing(キング・デジタル・エンターテインメント「キャンディークラッシュ」の開発元)を買収して金を掘り当てたActivision Blizzard(アクティビジョン・ブリザード)のような競合他社に追いつくために過去10年ほどの大半を費やしてきた同社は、モバイルでの覇権獲得には苦戦を強いられてきた。

EAはここ最近スタジオを次々に買収しており、2021年に入ってから総額50億ドル(約5550億円)相当におよぶ3つの大規模な買収を発表している。

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カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:EAモバイルゲーム買収

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(文:Lucas Matney、翻訳:Aya Nakazato)

新たなテックに懐疑的なFTCがアマゾンのMGM買収を審査するとの報道

Amazon(アマゾン)によるMGMの買収は、Amazonに対する批判で有名なLina Khan(リナ・カーン)氏が新たに委員長となったFTC(米連邦取引委員会)の精査を通過しなければならないとThe Wall Street Journalが報じた。84億5000万ドル(約9300億円)の合併は止められそうにないが、今回のような買収で複数の業界を統合する巨大企業に対するアプローチを、FTCがどのように見直すかを示す初期の指標になるかもしれない。

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この買収案は2021年5月に発表された。MGMの4000本の映画と1万7000本の番組がAmazonのライブラリーに加わることは、プライム・ビデオにとって強力な加勢となりそうだ。プライム・ビデオは、Amazonの店先と同様、顧客がオンデマンドメディアを利用する際のデフォルトの手段となることを目指している。

権利が持ち札を変え、企業が戦術を変えると、ストリーミングを取り巻く状況も刻々と変化する。Netflix(ネットフリックス)がオリジナルコンテンツに注力し(Amazonも負けてはいない)、Disney(ディズニー)が独自の定番作品を持つ中で、他の企業は番組や映画のコレクションをバラバラに入手し始め、それがストリーミング業界における収益性の高いロングテールを形成している。

しかし、規制当局の間では、MGMのようなコンテンツ会社がAmazonのようなプラットフォームに所有されるべきかどうかという正当な疑問がある。映画やテレビの独立したプロデューサーであるMGMは、独自のライセンス契約を結ぶことができ、同種の企業と直接競合することができる。しかし、Amazonの子会社になると、おそらくかなりの部分で小売・ウェブの大手企業の社内制作会社になり、製品の良し悪しによってではなく、複数の業界にまたがる帝国の一部として競争に臨むことになる。

先に任命されたばかりのFTC委員長リナ・カーン氏は、後者のビジネスモデルを先頭に立って批判してきた人物だ。同氏の有名な論文「Amazonの独占禁止の逆説」によると、Amazonは、ウェブホスティングにおけるAWSのようなある業界での優位性を利用して、まだ始まったばかりの配送サービスのようなあまり成功していない他の部門を補強していると主張している。前者の支えがなければ後者が失敗してしまうのであれば、Amazonは市場支配力によって可能となる反競争的行為を行っている可能性がある、というのが(大まかな)主張だ。

そうした市場での力と行為が異なる分野に存在するために、最近の反トラスト法の教義の下では(消費者にとって価格が上昇しない限り)Amazonに言い訳の余地があったが、カーン氏はこの論文でその教義に挑戦することを目指した。そして今、国内で最も強力な規制当局の1つとして、同氏はその形を直接変える機会を与えられている。

このような大規模な取引は常に連邦当局が審査するが、今回はFTCが担当すると言われている。おそらくFTCが別件でAmazonに対する反トラスト調査の役割をすでに担っているからだ。FTCはまた長年にわたって何度も揉めてきたFacebook(フェイスブック)も担当しており、FTCの執行パートナーである司法省はGoogle(グーグル)とApple(アップル)の調査を担当している。FTCはコメントを控え、調査の有無については明らかにしないとしている。

今回のケースでは、AmazonによるMGMの買収が阻止される可能性は低いと思わる。この分野では実際に競争が行われており、MGMは独自の道を歩むことができていないため、売却はほぼ避けられないだろう。しかし、それでも審査は行われ、FTCがこの種の合併に対するアプローチをどのように変えるのかが明らかになると思われる。

今回の取引が軽いタッチで承認されたとしても、新しい教義が適用される機会となることは十分に考えられる。例えば、表向きは無関係な市場におけるAmazonの独占的な地位が、これまでのFTCの監督下においてよりも大きな役割を果たすことになるかもしれない。これは、今後のより包括的で積極的な審査の舞台となるかもしれない。また、カーン委員長が明確な可能性として述べているように、過去に承認された合併をひっくり返すことになるかもしれない。

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カテゴリー:ネットサービス
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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nariko Mizoguchi

アマゾンの中国販売者にVCやロールアップ戦略の企業は熱視線を送っている

Amazon(アマゾン)で販売している中国の販売業者は、今まさにチャンスが訪れている。郊外の工場地帯を歩き回り、常に資金繰りに追われることに慣れている無骨な輸出業者は、突然、次のSHEINAnkerを探すために多額の小切手を持ってきている中国のトップベンチャーキャピタルやインターネット大手の投資担当者とコーヒーを飲んでいる。ベンチャーキャピタルは、彼らが迅速にスケールするための資金提供はできるが、多くのVCには戦略的な面で支援するための専門知識がない。

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そこでブランドアグリゲーターという人たちが現れ、小売に関する有効なノウハウを提供する。また彼らはロールアップと呼ばれる手段で、将来性がありそうなeコマースブランドを経営の相乗効果を狙って買収していく。ロールアップ戦略は当初、米国とヨーロッパで始まり、最近は東南アジア、今ではひっそりとと中国に上陸している。中国では、従来のホワイトレーベルのメーカーがバリューチェーンを拡大し、独自のブランドを確立しようとしている。

中国に進出した最新のロールアップ戦略の企業がBerlin Brands Group(BBG)で、創業者でCEOのPeter Chaljawski(ピーター・チャルジャウスキー)氏によると、同社は今後数年間で数十件のブランドを買う予定だという。現在、このドイツ企業のポートフォリオの中身は、自社ブランドが14、買収したブランドが20だが、中国進出で大きく膨らむだろう。

中国進出に備えてBBGは2億4000万ドル(約265億8000万円)を借入金で調達し、企業買収に3億ドル(約332億3000万円)をつぎ込むと発表した。同社が負債を選んだ理由の1つは、すでに創業時から利益を上げているためだ。しかし創業者によると、最近の資金調達が最後ではなく、将来的には他の金融手段を利用することもあるという。

チャルジャウスキー氏は、VCや企業投資家をブランド探しの直接のライバルとは考えていない。「中国には、Amazonで大きな収益を上げている販売者は何万もいます。VCの資金が適用されるのは一部の企業だけであり、ロールアップモデルはさらにそのうちの一部にしか適用されません。しかしその『一部』はとてもとても大きな数字なのです」とチャルジャウスキー氏はいう。

BBGにとって中国は初めてではない。15年前に創業した同社はこれまで、中国のメーカーに依存して同社のキッチンウェアやガーデニングツール、スポーツ用品、家電製品などを作ってきたし、今でも同社製品の90%はこの国で作られている。ブランド買収という新しいビジネスでも、深圳に数十名のスタッフを雇っており、チャルジャウスキー氏によると、グローバルな輸出と製造、最近はデザインにおいても重要な役割を果たしていることからて、深圳は「Amazonのシリコンバレー」だという。

Amazonに代わるブランド

BBGは、中国の消費者製品に、Amazon上の無名のブランドであることを超えて、ヨーロッパと米国で成長する新しい道を提供したいと期待している。販売業者は米国の巨大な怪物から自由になって、自分で消費者データをコントロールしたい。しかし彼らが自力でD2Cブランドを構築するのは、難しすぎる。

チャルジャウスキー氏によると、Amazonのサードパーティービジネスとして好調な販売業者も、その多くは、自前のロジスティクスなどでAmazonを超えるだけのインフラを持たない。ヨーロッパでは、BBGが計12万平方メートルのフルフィルメントセンターを管理しており、Amazonへの依存を解消できる。

ヨーロッパにおいて、中国のブランドはAmazonではないブランドで勝負したいと考えているかもしれないとチャルジャウスキー氏はいう。ヨーロッパでは、eコマースの状況も米国よりずっと細分化されているからだ。

チャルジャウスキー氏は「米国はAmazonが支配している。しかしヨーロッパでは、Amazonが握っているオンラインリテールのシェアはわずか10%です。つまり、90%はAmazon以外なのです。オランダにはBolというブランドがあり、ポーランドにはAllegroがある。そしてフランスには複数の上位プレイヤーがいる」という。

ヨーロッパを狙っている国際的なブランドが抱えているギャップを埋めるためにBBGは、20近いD2Cブランドを、Amazonで販売するだけでなく、それらのウェブ専門店をヨーロッパの主な国でオープンしている。また同社の売上は、米国でも伸びている。現在、同社の売上の60%以上がAmazon以外の流通経路からによるものだ。

BBGはすでに中国の一部のブランドとの交渉を進めているが、現時点ではその名前は明かされていない。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Berlin Brands GroupAmazon中国eコマース

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(文:Rita Liao、翻訳:Hiroshi Iwatani)

現代自動車がソフトバンクからBoston Dynamicsの支配権取得を完了「歩くクルマ」に向け前進

Hyundai(現代自動車グループ)は現地時間6月21日、Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)の買収を完了したと発表した。この取引は革新的なロボットメーカーを11億ドル(約1210億円)で評価するもので、2020年末に発表されていた。両社は、今後の財務的な詳細については明らかにしていない。

韓国の自動車大手である現代(ヒュンダイ、2020年よりヒョンデに表記変更)は、これまでソフトバンクグループ(SBG)が所有していたBoston Dynamicsの支配的利権を持つことになった。3年強にわたってBoston Dynamicsを所有していたGoogle(グーグル)から前者を購入したSBGは、実質的に過渡期のオーナーだった。

ソフトバンク傘下にあった期間はGoogle / Alphabet X時代に比べてそれほど長くはなかったが、Boston Dynamicsは約30年前に設立されて以来、初めて2つの製品を商品化した。同社は、四足歩行ロボット「Spot」を市場に投入し、2021年には、倉庫用ロボット「Handle」のアップデート版である「Stretch」のローンチを発表した(発売日はまだ未定)。

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現代自動車のErnestine Fu(アーネスティン・フー)氏は、TechCrunchのMobilityイベントに最近出演した際、Boston Dynamicsの80%経営支配権を取得する計画について語った。フー氏は、現代自動車のUMV(Ultimate Mobility Vehicle、究極の移動手段)開発に特化したユニットであるNew Horizon Studiosが、数十年にわたるBoston Dynamicsの研究を基にした「歩く」自動車のコンセプトを複数プレビューしていることに言及した。

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「New Horizon Studiosでは、ロボット工学と、歩行ロボットや歩行車両などの従来の車輪付き移動手段とを組み合わせたときに何ができるかを再考することが課題となっています」とフー氏はTechCrunchに語った。「当然、Boston Dynamicsが開発してきた技術は、そのようなコンセプトを実現する上で重要な役割を果たします」とも。

Boston Dynamicsはこれまでの変遷の中で、独自の研究部門を維持することにこだわり、ヒューマノイドロボット「Atlas」のような商業的ではない技術を生み出してきた。現代自動車の傘下でどのように機能するかは未知数だが、現代は少なくとも将来を見据えたアプローチを維持することに強い関心を持っているようだ。

Boston DynamicsのCEOであるRob Playter(ロブ・プレイター)氏は、今回の買収が発表された際にこう述べていた。「当社と現代自動車はモビリティがもたらす変革力という視点を共有しており、最先端のオートメーションで世界を変える計画を加速させ、両社の顧客のために世界で最も困難なロボティクスの課題を解決し続けられるよう、協業することを楽しみにしています」。

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:Boston DynamicsHyundaiソフトバンク買収

画像クレジット:Boston Dynamics

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

HRテックのGustoが研究開発税額控除サービスのArdiusを買収

政府から無料でお金がもらえるというと、まるで宝くじに当たったような気分になるが、実際には技術系のスタートアップ企業はもちろん、地元の小売店やレストランであっても、米国の研究開発に関する税額控除の対象となる可能性がある。ただこの税額控除は、ハイテク企業の税率をゼロに近づけてはくれるが、中小企業にとっては、膨大な書類の提出や税務調査の費用の可能性のために、受けることが困難になっている。

そこで、この問題を解決するために多くのスタートアップ企業が立ち上げられたが、ここにきて大企業も参入し始めた。

中小企業向けの給与計算サービスから始め、その後従業員の入社手続きや保険、福利厚生などの人事サービスにも事業を拡大してきたGusto(ガスト)は米国時間6月17日、研究開発費の税額控除に特化した税務コンプライアンス自動化スタートアップのArdiusを買収すると発表した。

ロサンゼルスを拠点とする同社は、それまで会計事務所EYで10年以上勤務していたJoshua Lee(ジョシュア・リー)氏が2018年に創業した。買収条件は公表されていない。Ardiusは独立した事業として運営され、チーム全体がGustoに移る。

ここでの戦略はシンプルだ。ほとんどの研究開発税額控除では給与明細書が必要になるが、そのデータはすでにGustoの記録システムに保存されている。現在のArdiusは、多くの給与データプロバイダーからデータを抽出し、それを検証可能な税務書類に変換できる。今回の提携により、両社はGustoの膨大な数の顧客のために自動でそれを実行することができる。

Gustoの共同創業者でCEOのJoshua Reeves(ジョシュア・リーブス)氏は、今回の買収は顧客とシンプルさを重視する同社の長期的な方針に沿ったものだと話す。「我々は、テクノロジーと優れたサービスを融合し、政府をよりシンプルにしたいと考えています」と同氏はいう。「ある意味では、給与計算をよりシンプルに、医療費をよりシンプルに、PPPローン(米政府の融資制度の1つ)や税額控除をよりシンプルにするなど、当社が行っている多くのことは、これらが意図された通りに機能するようにすることなのです」。Gustoはおそらくそうした機能を自社で開発することもできたが、Ardiusを最初の買収対象にしたのは「Time to Market(市場投入までの時間)」が重要なポイントだったと同氏は指摘する。

共同創業者で最高製品責任者のTomer London(トマー・ロンドン)氏は「私たちが長い間この分野に注目していたのは、独善的な製品を作るという当社の当初の製品理念の1つにつながるからです」と話す。人事のような複雑な分野で「私たちは単なるツールではなく、アドバイザーでありたいと考えています。これは、私たちがすでに持っている給与データを数回クリックするだけで、数日後にはそのビジネスにとって本当に重要なキャッシュフローにアクセスできるというすばらしい例です」。また、税額控除については「長い間、私たちのロードマップにあったものです」と述べた。

Gustoは、100以上のサードパーティーサービスと連携しており、プラットフォーム上で統合することができる。リーブズ氏は、ArdiusがGustoの一部となっても、すべての企業(Ardiusの製品と直接競合する可能性のある企業も含む)は、引き続きGustoのプラットフォームのデータに平等にアクセスできることを強調した。同社はプレスリリースで、Boast.ai、Clarus、Neo.Tax、TaxTakerなどを現在Gustoと統合している税務製品の例として挙げた。

もちろん、Ardiusは、研究開発や経済開発の税額控除の分野で登場した数多くの競合企業の1つにすぎない。筆者が以前、2020年のシードラウンドで紹介したMainStreetは、3月にSignalFireがリードした資金調達で6000万ドル(約66億円)を調達したばかりだ。一方、こちらも筆者が2020年紹介したNeo.taxは、総額550万ドル(約6億500万円)を調達している。

リーブズ氏は、この分野が注目されていることと、Ardiusにとっての競争の可能性について、前向きに考えている。研究開発費の税額控除については「アクセス性を高めるものであれば、私たちは賛成です」と語る。「率直に言って、まだ十分に活用されていないため、認知度が高まっているのはすばらしいことです」。また、Gustoのデータやソフトウェアを活用すれば、他の競合他社よりも垂直統合型のソリューションを提供できると強調した。

パンデミックの影響を特に受けたのは中小企業で、中小企業は大企業のような資金力を持たないため危機を乗り切れないことが多いが、Gustoは新しい企業の誕生とともに事業を拡大してきた。リーブズ氏によると、4月に終了した前事業年度は同社の顧客ベースが50%増加したという。「パンデミックや経済危機の中では、給与の支払いや医療へのアクセスなどが非常に重要であることがわかりました」とリーブス氏はいう。Gustoは、中小企業が政府の景気刺激策であるPPPローンを獲得するためのプログラムを開始した

Gustoの主な拠点は、サンフランシスコ、デンバー、ニューヨークで、Ardiusの拠点はLAのままだが、Ardiusのスタッフを含めリモートワーカーの数は増えている。リーブズ氏は今後の買収については言及していないが、Gustoは従業員と企業の両方を対象とした包括的なファイナンシャル・ウェルネス・プラットフォームへの拡大に注力していることから、将来的にはさらなる買収が行われる可能性がある。

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カテゴリー:HRテック
タグ:Gusto税金買収

画像クレジット:Grace Cary / Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:Nariko Mizoguchi

デリバリーサービスのGopuffがフリートマネジメントプラットフォームのrideOSを127億円で買収

オンデマンドの商品・料理・アルコールデリバリーサービスのGopuff(ゴーパフ)が、フリートマネジメントプラットフォームのrideOS(ライドOS)を1億1500万ドル(約127億円)で買収した、とこの取引に詳しい関係者が語った。

今回の買収は、フィラデルフィア拠点のスタートアップであるGopuffが、11億5000万ドル(約1265億円)の資金調達を発表してからわずか数カ月後のことだ。バリュエーションは2020年10月の39億ドル(約4290億円)から89億ドル(約9790億円)へと上昇した。2020年秋には3億8000万ドル(約418億円)を調達し、飲料販売会社のBevMoを買収した。Gopuffは、今回の新たな買収にともなう最新のバリュエーションを公表していない。

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Gopuffは、米国の650以上の都市で、掃除用品、ペット用品、市販薬、料理などあらゆるものを配達している。30分以内の配達には1.95ドル(約215円)の料金を課し、非常に遅い時間まで、あるいは24時間365日の対応も行う。

このことは、同社が2021年ニューヨークに進出するにあたり、非常に重要な意味を持つ。ニューヨークでは、住民は高い家賃に加えて、フムスからオムツまであらゆるものを午前4時に届けてくれることを期待している。オムツに関して、GopuffはTechCrunchに対し、ベビー用品のカテゴリーを2倍に増やし、何百もの新しいローカル商品を追加したばかりだと語った。また、美容用品や「ベター・フォー・ユー」商品(オーガニック商品と健康的なスナックをミックスしたような商品)の配達にも進出したところだという。

また、2021年5月には英国のFancy Deliveryを買収し、海外市場への初進出を果たした。今後、より複雑で高密度な都市での展開や新たな業種への参入に向け、高度なルーティング、複雑なディスパッチ(配達員の手配)、フリートの最適化を実現するrideOSの技術は不可欠だとGopuffはいう。同社は、この新しい知財を利用して、マルチモーダルデリバリーを強化し、デリバリー時間の短縮を目指している。

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Gopuffは、rideOSを買収することで、ユニットエコノミクスを改善し、配送担当者やパートナーが現場でより組織的かつ効率的に活動できるような新しいツールを開発したいと考えている。rideOSは、Uber、Google、Appleの元社員が中心となって開発した地図やライドシェアのためのプラットフォームで、今回の買収は、規模を拡大し、インスタント・ニーズ・エコノミーを定義する最前線に立ち続けるためのチャンスだと考えている。

「Gopuffのミッションと世界的な野心は、世界中で人や物を効率的に移動させるソフトウェアを開発するというrideOS社のビジョンの自然な延長線上にあります」と、rideOSの共同創業者でCEOのJustin Ho(ジャスティン・ホー)氏は話した。そして「Gopuffの飛躍的な成長を考慮して、2021年末までに人員を大幅に増やし、シリコンバレー、ピッツバーグ、ベルリンでのプレゼンスを拡大する予定です」と語った。

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カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:Gopuff買収オンデマンド配送

画像クレジット:Gopuff

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

フォードがEVバッテリー管理ソフトウェアのElectriphiを買収、法人顧客向けEV事業を強化

Ford(フォード)は法人顧客向けの電気自動車(EV)2種、E-Transit貨物バンF-150 Lighting Proを準備中だ。そして現在、同社はバッテリー管理と車両モニタリングソフトウェアのスタートアップElectriphi(エレクトリフィ)の買収で未来のEV法人事業を完成させようとしている。

買収取引条件は公開されなかった。Fordは創業3年のサンフランシスコを拠点とするElectriphiが、2030年までに充電だけで10億ドル(約1100億円)超の売上高を達成すると期待している。新部門Ford Proは充電にとどまらず財政面での野心を抱えている。ハードウェアとその周辺のもの、そして新たなサービスで、2019年に270億ドル(約2兆9810億円)だった売上高が2025年までに450億ドル(約4兆9690億円)になると予想している、と述べた。

30人のチームのElectriphiは新設のFord Proに加わる。Ford ProはE-Transit貨物バンとF-150 Lighting Proピックアップトラックの法人顧客へのサービス提供に注力している。Fordは2021年後半に顧客へE-Transitの納車を開始する。全電動Lightingピックアップトラックの商用モデルであるF-150 Lighting Proは2022年春にマーケット投入される見込みだ。

「法人顧客が電気自動車を管理車両に加えるにつれ、顧客は車両が毎日充電され、仕事に使う準備ができているようにするために車両デポ充電ステーションのオプションを求めています」とFord ProのCEOであるTed Cannis(テッド・カニス)氏は述べた。「Electriphiの既存の高度なテクノロジーIPをFord Proの電動車両とサービスのポートフォリオに持ってくることで、我々は法人顧客向けのエクスペリエンスを向上させ、車両デポ充電のための単一ソリューションになります」。

Electriphiは、州や連邦政府の命令で重量車や中型商用車が電動化されることが明白になった2018年に創業されたと共同創業者でCEOのMuffi Ghadiali(マフィ・ガディアリ)氏は最近のTechCrunchとのインタビューで語った。Electriphiは米国内外でスクールバスや公共バスなどを含む商用電動車両を展開する部門にフォーカスしてきた。

「今後10年で何が起こるのかを考えてみてください。エネルギーとソフトウェア向けのモビリティでかなりのトランフォーメーションを目にします」とガディアリ氏は話した。「リスクは高く、事は一刻を争います」。同氏は2020年代末までにゼロエミッション車両に移行することを求める、今後出される命令に車両オペレーターが神経質になっている、と指摘した。「すべての車両を10年で交換するためには、ただちに動き始めなければなりません。『このトランジションの間にも車両オペレーションを止めないようにしなければ』というはずです」。

Fordは2021年初めにElectriphiに接触した。ElectriphiはFordとの取引の前に約1100万ドル(約12億円)のバリュエーションで420万ドル(約4億6400万円)を調達した。

FordのフォーカスはE-TransitとLightning Pro向けのソフトウェア構築である一方で、同社がElectriphiの顧客ベースに引き続きサービスを提供するのはあり得る。

「興味深いことに、基本的なFordのプラットフォームはさまざまなタイプの車両やスクールバスで使われていることがわかりました」とガディアリ氏は話した。「ですので、我々が行っていることに関連があるため、どの部門に我々が関与しないことになるのか明言は困難です。もちろん、我々はFordが2022年に始める大量出荷に照準を当てています」。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Ford電気自動車買収

画像クレジット:Ford

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

Spotifyがポッドキャスト発見プラットフォーム「Podz」を買収

ポッドキャストが大流行しているが、聴きたいポッドキャストを見つけ出すのは難しいものだ。Spotify(スポティファイ)は6月17日、ポッドキャスト発掘にかかる問題を解決しようとしているスタートアップであるPodz(ポッズ)の買収を発表した。

「Spotifyでは、我々は世界で最高の(そして最もパーソナライズされた)ポッドキャストディスカバリーのエクスペリエンスの構築と展開に投資しています」と同社は述べた。「Podzのテクノロジーは発見を促進し、リスナーに正しいコンテンツを正しいときに届け、そしてこの部門の成長を世界中で加速させるためのSpotifyの集中的な取り組みを補い、発展させます」。

ポッドキャストは通常30分ほどの長さであり、リスナーは新しい番組をブラウズするのは難しい。ポッドキャストのエピソードを視聴するのは、新しいアーティストの曲を試すほどに簡単ではないのだ。そのため、Podzはユーザーにさまざまな番組の60秒のクリップを提示する「初のオーディオニュースフィード」と呼ぶものを開発した。ポッドキャスト配信者は往々にして、自身のソーシャルメディアアカウントでの宣伝に使うクリップを制作するためにHeadlinerのようなアプリを活用する。Podzはそれと同じアイデアを踏襲している。しかしポッドキャスト配信者が番組をどのように宣伝するかを手作業で行うのに代わって、Podzは機械学習モデルを使ってクリップを選ぶ。この機械学習モデルは、ジャーナリストやオーディオエディターの監修のもとに10万時間超のオーディオを使って訓練されている。

画像クレジット:Podz

Spotifyに買収される前、PodzはプレシードラウンドでM13、Canaan Partners、Charge Ventures、Humbitionなどから250万ドル(約2億7560万円)を調達した。Katie Couric(ケイティ・クーリック)氏、Paris Hilton(パリス・ヒルトン)氏といったセレブも投資した。

「平均的なポッドキャストリスナーは7つのポッドキャストを購読していますが、Podzでは30近いポッドキャストをフォローしています」とM13のゼネラルパートナーLatif Peracha(ラティフ・ペラチャ)氏は2021年2月に電子メールでTechCrunchに語った。「初期のサインを受け、チームがこの分野で変革的なプロダクトを構築できると我々は楽観的にとらえています」。

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買収は、ポッドキャスティングマーケット、概してオーディオエンターテインメントを独占しようというSpotifyの野心を示すものだ。ちょうど6月16日に同社はClubhouseのライバルとなるライブオーディオ「Greenroom」をデビューさせた。ポッドキャストサブスクからの収益の促進という点では、SpotifyとAppleは互角だ。4月にAppleはポッドキャストサブスクへの進出を発表している。そしてその翌週、Spotifyは2月に予告していたサブスクプラットフォームの展開を開始した。Appleは初年度にポッドキャスト売上の30%を徴収すると述べたが、この割合は2年目に15%に下がる見込みだ。一方、Spotifyのプログラムは2023年までクリエイターから手数料を徴収せず、その後は5%となる。

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ポッドキャストクリエイターはサブスク売り上げの30%の徴収より5%に降参した方が利益が大きいと即決できるが、リスナーは最高のユーザーエクスペリエンスを提供するアプリに群がるだろう。そしてポッドキャスト発見へのSpotifyの投資が報われるのなら、ポッドキャスティング分野で長らく優位性を維持してきたAppleにとっては由々しき事態となる。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:SpotifyポッドキャストPodz買収機械学習

画像クレジット:Spotify

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nariko Mizoguchi

サブスクで好きな都市へ気軽に移り住める、職場と住居一体シェアハウス「コリビング」の独Habytが約26.2億円調達

WeWorkが登場したとき、他の起業家たちはそのモデルを見て「コワーキングを不動産に適用できるなら、コリビング(職住一体型のシェアハウス)にも適用できるのではないか」と考えた。その結果、米国ではCommon(コモン)が登場し、アジアではHmlet(ハムレット)が現れた。一方EUでは「Habyt」が立ち上げられ、すでに競合のQuarters、Goliving、Erasmo’s Roomを吸収している。

今回Habytは、2000万ユーロ(約26億2000万円)のシリーズBラウンドをクローズし、2016年にSebastian Wuerz(セバスチャン・ウエルツ)氏によって設立されたもう1つの競合企業「homefully」と合併した。このラウンドには、HV Capital(旧Holtzbrink Ventures)、Vorwerk Ventures、P101、Picus Capitalが参加した。

2017年にLuca Bovone(ルカ・ボヴォーネ)氏がベルリンで設立したHabytは、これにより6カ国、15都市で5000以上のユニットを持つことになる。合併後の会社は、仕事や都市を頻繁に移動する20歳から35歳までの若いプロフェッショナル向けに、テクノロジーを駆使したユーザーエクスペリエンスとコミュニティへの注力とともに、家具とサービスが完備された居住ユニットを提供する。

Habytの創業者兼CEOであるルカ・ボヴォーネ氏は次のように述べた。「この1年半、当社はすばらしい旅をしてきました。完璧とはいえない市場環境にもかかわらず、M&A戦略の成功により大きな成長を遂げることができました。その結果、当社はヨーロッパにおけるこの分野のリーダーの地位を獲得し、まだまだ多くの可能性を秘めています。今回の2000万ユーロ(約26億2000万円)のシリーズBラウンドは、有機的な成長とさらなるM&Aの両方を通じてHabytを構築し続けるための扉を開くものです。我々は現在、ヨーロッパ、特にフランスとイタリア、そして他の大陸、特にアジアでの戦略的ターゲットを検討しています」。

homefullyの創業者であるセバスチャン・ウエルツ氏は次のように述べている。「コリビング市場は統合フェーズにあり、Habytはこの機会を迅速かつ効果的に捉え、世界規模でこの分野のリーダーになるための最良の道を歩んでいます。力を合わせることは、この方向に向けての重要なステップであり、私は当社チームがこの旅の一部になることを非常に楽しみにしています」。

HVのパートナーであるFelix Kluehr(フェリックス・クルーア)氏はこう述べた「Habytが欧州コリビング市場でトッププレイヤーとして台頭してきたことをうれしく思います。また、HVは、ヨーロッパを代表するコリビングカンパニーを構築するという同社チームの野心的な計画をサポートできることを楽しみにしています」。

インタビューの中で、ボヴォーネ氏はこう語った。「これはメンバーズクラブのようなものです。当社はサブスクリプションモデルを採用しており、メンバーは月々の料金を支払い、それが家賃となります。もちろんそれから、どこか他の場所に部屋を申し込むこともできます。当社はヨーロッパ全土で相当な規模を持っており、いずれは南ヨーロッパにも展開します。当社のモットーは『どこでも住める』ことです」。

同氏はまた、パンデミックの影響で人々はコワーキングスペースを利用しなくなったことを指摘し「人々は、月に50〜100ユーロ(6500円〜1万3000円)多く出しても、自宅で快適に仕事ができるようなより良い住宅環境を手に入れたいと考えている」と述べた。

「当社の顧客ベースの中には、ベルリンに6カ月、マドリッドに3カ月滞在した後、再びベルリンに戻ってくる、というようなケースがすでに見られます。従来の住宅市場では、切ることができない光熱費などの契約があり、そのようなことはできませんでした。そうした慣習は時代遅れの商品でしかないと考え、当社はその問題に取り組もうとしています」。

カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:Habyt資金調達コリビングベルリンサブスクリプション買収

画像クレジット:Habyt Room

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

WordPress.comのオーナー企業Automatticがプライベートな日記アプリ「Day One」を買収

Automatticは、MacおよびAppleモバイルデバイス向けの人気ジャーナリングアプリ「Day One」を買収し、オンラインライティングプラットフォームのラインナップを拡充する。Day Oneは、2011年3月にMacおよびiTunes App Storeでリリースされて以来、1500万回以上ダウンロードされており、ユーザーが自分の考えを共有できるプライベートな場所を提供、App Storeのエディターズチョイス、App of the Year、Apple Design Awardを受賞し、様々なレビューで賞賛を受けている。

買収の条件は公表されていない。Day Oneは10年間、自己資本のみで運営してきた。

Day Oneの追加は、Automatticの今増加中のライティングツールコレクションの興味深い拡張だ。同社のライティングツールといえば今やブログプラットフォームのWordPress.comとTumblrがその筆頭だが、後者は2019年にAutomatticが、その古びたソーシャルブログネットワークを親会社のVerizonから、同社の買値10億ドル(約1100億円)のほんの一部のわずかな金額で買い取ったものだ(TechCrunchTechCrunchはまだVerizonがオーナーだ)

関連記事:VerizonがTumblrをWordPressの親会社Automatticに売却

WordPressやTumblrのように公開することを重視したアプリとは異なり、Day Oneはプライバシーを重視している。このアプリはテキスト、メディア、さらには音声記録を含むすべての日記エントリーに対して、エンド・ツー・エンドの暗号化を提供する。また、自動バックアップ、Instagramの投稿の自動インポート、ボイストランスクリプション、テンプレート、リッチテキスト形式、位置情報、オプションである本へのプリントといった高度な機能や、Spotify、YouTube、Facebook、Twitterなどの他のプラットフォームとの統合も行っている。

Day OneがAutomatticに加わったことによって、ユーザーは本来プライベートな日記の一部をWordPress.comやTumblrで公開したり、近々、それらのコンテンツをDay Oneにインポートできるようになる。既存のTumblrユーザーにとっては、プライベートなエントリーを誤ってメインブログに公開するのではなく、より保護・バックアップされたライティングツールに同期するための手段としても有効だ。

Automatticの発表によると、買収後もDay OneのCEOであるPaul Mayne(ポール・メイン)氏がDay Oneの開発を継続する。12名のチームも、現在のままだ。

メイン氏はTechCrunchに次のように語った。「私たちは彼らのチームがスムーズに統合されるように努力しており、一緒になって集団的で強固な文化を作り続けることができます」。メイン氏によると、現在の顧客に関しては、移行プロセスというものはない。何もかも、これまでと同じだ。

メイン氏はブログで、Day Oneを売却した理由に触れている。それによると、WordPress.comやTumblrを支えている技術的、財務的、そしてセキュリティのメリットにDay Oneもアクセスできるようになるという魅力は大きいものだという。

「これはとてもエキサイティングなニュースです。Day Oneを立ち上げてからの10年間、私は世界で最高のデジタルジャーナリング体験を作るだけでなく、長く使っていけるものを作るために努力してきました。Automatticに参加することで、Day Oneの保存と寿命は確実なものになるとこれまで以上に確信しています」とメイン氏と語る。

メイン氏はまた、Day Oneのプライベート性を変更する予定はないが、このアプリは今後Automatticの他の製品と統合され、サブスクリプションモデルによって維持されることになると述べている。既存ユーザーには、価格の変更はないとのこと。

Sensor Towerのデータによると、Day Oneのモバイルアプリは全世界で440万インストールされている。2020年のインストール数は約99万3000件で、2019年の100万件以上から10%減ったが、このわずかな減少は、ユーザーが新型コロナウイルスによるロックダウン中に自宅のコンピュータからジャーナルを更新したため、デスクトップ版のダウンロードが増えたことが原因となった可能性がある。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Day OneAutomatticWordPress.comTumblr買収アプリジャーナリング

画像クレジット:Day One

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)

FacebookがPopulation: OneのゲームスタジオBigBox VRを買収

近年、仮想現実のゲームスタジを数社買収してきたFacebookが、金曜日(米国時間6/11)にシアトルのBigBox VRを買収してポートフォリオにまた一社を加えた。

このスタジオの主力タイトル「Population: One」は、FacebookのOculus Quest 2ヘッドセットのローンチ後のビッグリリースのひとつで、かなりモロにFortniteクローンだ。ゲームプレイの重要なテクニックの多くをコピーしているが、仮想現実向けに調整されており、また裏技やアートは独自化している。

これまでもそうだが、このようなゲームスタジオの買収は価額などの条件が公表されていない。CrunchbaseによるとBigBoxは650万ドルを調達しており、その投資家はShasta VenturesやOutpost Capital、Pioneer Square Labs、およびGSR Venturesなどだ。

FacebookのMike Verdu氏がブログにこう書いている: 「POP: ONEはわずか9か月前にVRシーンを席巻し、Oculusのプラットホームで上位に定着した。最大で一度に24名が接続して、仮想世界の中でプレーし争っている」。

ゲームのハードウェアプラットホームのオーナーが自分のスタジオのネットワークを作り、専用プラットホームを構築することは珍しくないが、VRの世界では、Facebookと競合する者もあまりいないので、やや状況は異なる。

Oculus Studiosのデベロッパーの多くがValveのStreamストア向けにゲームを作り続けており、それらはサードパーティのヘッドセットとでプレイできるが、Facebook以外のVRプラットホームというものがVR市場全体の中で先細りであり、しかも大衆化を狙ったFacebookの積極作戦と違って高価格だから、将来が難しいだろう。FacebookのOculus Quest 2は小売価格が299ドルで、これまでの、デバイスとのセット販売は数か月で売り切れた。

4月にFacebookは、VRシューティングゲーム「Onward」のDownpour Interactiveを買収した。

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(文:Lucas Matney、翻訳:Hiroshi Iwatani)
画像クレジット: BigBox VR

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EdTech大手Course Heroが古典文学の要約サービス「LitCharts」を買収

実は、英語の授業で私を含むクラスの半分が、実際に原文を読まずにSparkNotesを使ってシェイクスピアの「Twelfth Night(十二夜)」を読んでいた、と先生に告げ口したのはこの私だ。そのサイトは本の各章の要約を教えてくれるので、テストの前に長編小説などを復習するのにとても便利だった。あるいは、多くの本が積ん読状態で、その本を開いたことさえないようなときの土壇場の救世主でもある。

そんな歴史を考えると、誰もが愛する読書先延ばしツールSparkNotesの開発者たちが、EdTechのユニコーンの目に留まったのも当然だ。米国時間6月10日、SparkNotesの子孫であるLitChartsが、新進のEdTechユニコーンCourse Heroに買収された。その価額は公表されていない。しかしCourse Heroは2020年8月のシリーズBで8000万ドル(約87億7000万円)を調達しているため、その一部が今回の買収に投じられたことは確かだろう。

SparkNotesを開発したBen Florman(ベン・フローマン)氏とJustin Kestler(ジャスティン・ケストラー)氏が作ったLitChartsは、彼らの成功作の延長線上にある。LitChartsは2000あまりの文学作品の原文の注記や定義、そして翻訳を提供する。SparkNotesと同じくLitChartsも、複雑な章句を簡略化する。Course Heroを創業したAndrew Grauer(アンドリュー・グラウアー)氏の推定によると、LitChartsの会員の約30%は教師や教育者だ。

グラウアー氏はCourse Heroの長期展望について次ぎのように語る。「私たちは特定分野のベストソリューションを正しいTPOで提供したいと考えています。学習者であるユーザーの役に立つ良質なツールの、信頼できる推奨者でもありたいのです」。生徒をあるリソースから別のリソースに結びつける、こういったネットワーキングは、バーチャル教育の利点の1つだ。なぜなら、1つのエラーにも、これまでの生徒たちが犯してきたさまざまなつまづきの履歴があるのだから。

グラウアー氏によると、Course Heroの中核は、生徒1人ひとりの特異性をぎりぎりまで重視する質疑応答のプラットフォームだ。有料会員である生徒は、学習と教授のためのすべてのコンテンツにアクセスでき、その中には教師と発行者が作ったコースの教材もある。当然ながらCourse Heroの戦略の大きな部分は、生徒が苦戦している共通の主題に関する教材を提供することだ。英語も、そんな教材の1つだ。

「私たちのプラットフォーム上のデータをよく見れば、生徒が最も行き詰まっている箇所や助けを必要としている箇所、多くの質問が集中する箇所などがわかります。そんな情報が役に立つのです」とグラウアー氏はいう。

同社はこれまでの5〜6年間、自力で文学ライブラリを構築してきた。LitChartsを手中に収めたことにより同社は、その文学ライブラリと、そこにある膨大な量のビデオやイラストレーション、注記、そしてテキストに大きな投資をしたことになる。

これはCourse Heroにとって、8カ月ぶりの買収だ。同社は2020年10月に、人工知能を利用する計算アプリSymbolabを買収している。これは生徒が複雑な数学の問題を解いたり理解するのに役に立つ。その買収でCourse Heroの数学の部分が強化され、そして今日の買収では文学のリソースが充実した。どちらのブランドも独立した運用を続けるが、それはグラウアー氏の「起業家たちを分散状態で強くしていく」という哲学の表れだ。

関連記事:EdTechのCourse Heroが数学専門の解答エンジンSymbolabを買収、他科目の買収も目指す

「すべてを一元化すれば、同じように見えるので力を発揮するかもしれませんが、実際には、あまりにも多くの小さな特定のユースケースに最適化しているため、動きが遅くなり、迅速な意思決定や目標への前進ができなくなります」とグラウアー氏はいう。Course Heroが最近買収した2つのスタートアップは、10年以上の歴史があり、その規模とブランド力は、無理に包括的なブランドにするのではなく、そのままにしておく価値があると同氏は考えている。

さまざまなプラットフォームを抱えるCourse Heroは、現在の有料会員数が推定200万〜300万人で、1年前の100万から大きく増加している。

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カテゴリー:EdTech
タグ:Course Hero買収

画像クレジット:PM Images/Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Hiroshi Iwatani)