ペット動画のマーケットプレイスCamlistが約1.4億円のプレシード資金を調達、英国での成長を目指す

ペットのための動画マーケットプレイスのCamlist(カムリスト)は、プレシードラウンドで130万ドル(約1億4900万円)を調達した。この資金は、プラットフォームの開発と従業員の増員に充てられる予定で、2021年初めに参入したアラブ首長国連邦に次ぐ2番目の市場である英国での事業拡大を目指している。

他のマーケットプレイスとは異なり、Camlist(カメラリスティングからきている)では、売りたいペットの動画を掲載することができ、コンタクトが取れれば、買い手と売り手はアプリ内で動画とテキストチャットの両方を使ってやり取りすることができる。

マーケットプレイスでは、今のところペットだけ出品できるが、近い将来、他の商品にも拡大していく予定だ。

「クラシファイド、あるいはP2Pコマースは、eBayが登場して以来、古いやり方に固執しています。それ以来、大きな革新はありませんでした。ただ、画像と電話番号が掲載されているだけです」と、Camlistの共同設立者で最高経営責任者のMoustafa Mahmoud(ムスタファ・マフムード)氏は述べている。

「しかし、Camlistではそれを変えようとしています。マーケットプレイスをビデオ体験に変えようとしています。すべての所有物にストーリーがあるからです」。

マフムード氏は、誰もが安全にペットを探すことができるように、検証済みの健康診断や、一括払いができない人のためにサードパーティと提携した無利子融資も保証していると述べている。Camlistは、これまでに6000匹以上のペットを新たな飼い主に繋げている。

「当社のアプリ内GMV(流通取引総額)は、2四半期ごとに100%成長しています。そのため、四半期ごとに倍増しており、総GMVは月に約200万ドル(約2億3000万円)になります」とマフムード氏は語っている。

このY Combinator(Yコンビネータ)企業は、2020年、新型コロナウイルスのパンデミックが発生する直前に、アラブ首長国連邦のドバイで設立され、事業を開始した。その結果、家に閉じこもることを余儀なくされた人々が、一部退屈しのぎだが、世話をする時間も増えたため、ペットを購入するようになりサイトは人気を博した。

「私たちはマーケットプレイスをカテゴリーごとに構築していますが、ペットのリスティングは非常に大きく、また十分なサービスが提供されていないと感じています。今後、成長に合わせてさまざまなアイテムに拡大していく予定です」と、コンピューターサイエンティストでもあるマフムード氏は語る。

他の共同設立者には、最高製品責任者のMaha Refai(マハ・リファイ)氏がいる。彼女は、デジタル製品の構築と拡張での16年の経験を持っている。彼女は、MBC(中東最大の無料放送局)のプレミア・ビデオ・プラットフォームや、その他の複数のビデオ・ストリーミング製品のクリエイターでもある。

Camlistの最高技術責任者であるAlsayed Gamal(アルサイード・ガマール)氏は、15年のソフトウェアエンジニアリングの経験を持っている。モバイルプラットフォーム、データエンジニアリング、DevOps、API設計、マイクロサービス、サーバーレスアーキテクチャに関する知識と経験を持っている。

マフムード氏は、アラブ首長国連邦のドバイでクラシファイドサイトを利用して購入した際に、商品が誤って紹介されていたり、詐欺が多かったりした嫌な経験に対抗する必要があったことが、Camlistを始めるきっかけになったと述べている。

Camlistの最高経営責任者であるムスタファ・マフムード氏は、同社の最高製品責任者であるマハ・リファイ氏、最高技術責任者であるアルサイード・ガマール氏と共同で動画マーケットプレイスを設立した

駐在員の街でもあるドバイでは、クラシファイドサイトは荷物の処分のために利用されるため人気があるが、一方で詐欺師が無防備な人々を狙う機会にもなっている。このような状況に対処するため、Camlistはアプリ内での支払いを可能にしている。購入者がペットを受け取ったことを確認した時点で資金が支払われる仕組みだ。この機能により、業者を装った詐欺師を防ぐことができ、購入者が詐欺に遭うことがなくなる。

マフムード氏と彼の他の共同設立者は、購入者が購入する前に、興味のあるアイテムをビデオで体験できるマーケットプレイスを提供している。これは、購入者が詐欺の手口から守られ、高品質のサービスを保証することに加えてのことだ。

また、同社はプラットフォーム上の販売者が、ペットを健康的な環境で飼育・繁殖しているかどうか、ワクチン接種や駆虫、マイクロチップの装着などを行っているかどうかしっかりフォローアップしている。

「また、私たちはワクチン接種、マイクロチップ、駆虫、保険、ペットフードを無料で提供することで、購入者と販売者をサポートしています。買い手と売り手に最高の体験を提供することを心がけています」と同氏は述べている。

同スタートアップは、Y-Combinator、テクノロジー・スタートアップ・アクセラレーターであるAct One Ventures(アクトワン・ベンチャーズ)、アーリーステージのベンチャーファンド、そしてHouseparty(ハウスパーティー)、Mux(マックス)、Facebook(フェイスブック)などのエンジェル投資家から新たな資金を調達した。

「私たちは、未来のマーケットプレイスを構築するというビジョンを信じてくれる投資家を心待ちにしていました。そして、このビジョンを信じ、実際にビデオ業界で働き、アプリケーションを構築している人たちを得られたことは、本当に幸運でした」とマフムード氏は述べている。

英国での成功を収めた後、Camlistは米国市場への参入を計画している。これは彼らにとって巨大で重要な市場になると確信している。

「英国はかなり大きな市場なので、現在の私たちの状況は英国内での拡大です。ここで、私たちが行っていることの反響を確認することもできます。しかし、市場の過半数を占めるような一定の段階に達した時点で、米国への進出を開始する予定です」と、エジプトで生まれ、6歳のときに家族でドバイに移住してきたマフムード氏は語る。

画像クレジット:Camlist

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(文:Annie Njanja、翻訳:Akihito Mizukoshi)

スペースデブリ除去に取り組む軌道上サービスのAstroscaleがシリーズFで約125.7億円調達

日本の宇宙ベンチャー企業であるAstroscale(アストロスケール)は、新たなシリーズFラウンドで1億900万ドル(約125億7500万円)の資金を調達し、同社の累計調達額は3億ドル(約346億円)に達した。Astroscaleは軌道上サービス技術を専門としており、軌道上でのビジネスをより持続可能なものにする手段として、軌道上の運用高度に存在するデブリの量を減らし、また、既存の衛星の寿命を延ばすことを目的としている。

日本のTHE FUNDが主導し、Seraphim Spaceなどの投資家の参加を得た今回のラウンドにより、Astroscaleの資金調達総額は3億ドル(約346億円)となった。Astroscaleの創業者兼CEOである岡田光信氏は、プレスリリースの中で、今回の資金調達により、事業規模の拡大と「2030年までに軌道上でのサービス提供を日常的に行う能力を劇的に加速させる」ことが可能になると述べている。

Astroscaleにとって、2021年は大きな年だった(ちなみに岡田氏は、米国時間12月15日に開催されるTC Sessions: Space 2021のメインステージに参加する予定だ)。同社は、8月にはデブリ除去技術実証衛星「ELSA-d (エルサディー、End-of-Life Services by Astroscale – demonstrationの略)」の技術デモを成功させた。年内にその次のフェーズとなるミッションを控えており、また、2022年初頭に予定されている宇宙航空研究開発機構(JAXA)向けのミッションでも、軌道上デブリ除去のデモンストレーションを行う計画が進んでいる。

Astroscale社が前回5100万ドル(約55億円)を調達したのは2020年10月で、その年に同社は、 地球上の主要な通信インフラである大型静止衛星のサービスに注力しているEffective Space Solutionsを買収した。

関連記事:Astroscaleが約54億円を調達、静止衛星長寿命化や軌道上デブリ除去など業務を多様化

画像クレジット:Astroscale

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Aya Nakazato)

ゲーマー向けコミュニティプラットフォームGauGが4000万円のシード調達、マーケティングや開発人材強化

ゲーマー向けのコミュニティプラットフォーム「GauG」(ゴーグ)を運営するGauGは11月24日、第三者割当増資による総額4000万円の資金調達を行ったと発表した。引受先はマネックスベンチャーズ。調達した資金はGauGのサービス向上のため、eスポーツ大会主催を含む新規顧客獲得のためのマーケティング強化と、開発人材・インターンの採用強化にあてる。

GauGは、ゲーマーもしくはチームとしてのプロフィール作成・管理ができるほか、掲示板でフレンドやチームメンバーの募集、配信・イベント告知などが可能なプラットフォーム。ゲームのオンラインプレイデータを反映することで、プロフィール情報を充実させることも可能。11月には、新サービスとして大会の主催・運営が行えるトーナメント機能をリリースし、データ連携を通じた自動集計も提供している。

2021年10月設立のGauGは、メンバー全員がハードコアゲーマーというスタートアップ。ゲーマーにとって使いやすい、またワクワク感を得られるコミュニティプラットフォームとすべく、GauGの開発を進めている。eスポーツ大会「GGT」(GauG Tournament)の主催なども実施しているそうだ。

スペースデブリ・宇宙ごみ問題に取り組むアストロスケールが約124億円のシリーズF調達、累計調達額約334億円を達成

スペースデブリ問題に取り組むアストロスケールが約124億円のシリーズF調達、累計調達額約334億円を達成

持続可能な宇宙環境を目指し、スペースデブリ(宇宙ごみ。デブリ)除去サービスを含む軌道上サービスに取り組むアストロスケールホールディングス(アストロスケール)は11月25日、シリーズFラウンドにおいて、第三者割当増資による約124億円の資金調達を発表した。過去最大額の調達額という。また6回目となる今回の資金調達により、累計調達額は約334億円となった。

調達した資金により、グローバルに開発するミッションとサービスを躍進させる。安全で費用対効果の高い軌道上サービスに関わる技術開発、日本、英国、米国における量産に向けた自社施設の拡張など、グローバルでの成長が可能になるとしている。

引受先は、日本のTHE FUND投資事業有限責任組合(THE FUND)、日本グロースキャピタル投資法人などをはじめ、英国のセラフィム・スペースインベストメント・トラスト(Seraphim)、フランスDNCAファイナンス傘下の DNCAインベストメント・ビヨンド・グローバル・リーダーズを含む海外投資家グループなど。詳細は以下の通り(50音順)。

  • DNCAインベストメント・ビヨンド・グローバル・リーダーズ(DNCA Invest Beyound Global Leaders)
  • EEI4号イノベーション&インパクト投資事業有限責任組合
  • THE FUND投資事業有限責任組合
  • アクサ生命保険
  • イノベーション・エンジンが運営する3ファンド(IEファスト&エクセレント投資事業有限責任組合、イノベーション・エンジンNew Space投資事業有限責任組合、イノベーション・エンジンPOC第2号投資事業有限責任組合)
  • オプス
  • セラフィム・スペースインベストメント・トラスト(Seraphim Space Investment Trust plc)
  • ソラリス ESG マスターファンド(Solaris ESG Master Fund LP)
  • 千葉道場2号投資事業有限責任組合
  • 日本グロースキャピタル投資法人
  • プレリュード・ストラクチャード・オルタナティブズ・マスターファンド(Prelude Structured Alternatives Master Fund, LP)
  • ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス(Yamauchi-No.10 Family Office)
  • ワイズ・インベストメント(Y’s Investment Pte. Ltd.)

アストロスケールは、宇宙機の安全航行の確保を目指し、次世代へ持続可能な軌道を継承するため、デブリ除去サービスの開発に取り組む世界初の民間企業。2013年の創業以来、軌道上で増加し続けるデブリの低減・除去策として、今後打ち上がる人工衛星が寿命を迎えた際や恒久故障の際に除去を行うEOL(End of Life)サービスや、既存デブリを除去するためのADR(Active Debris Removal)サービス、稼働衛星の寿命延命措置(LEX。Life EXtension)、宇宙空間上での宇宙状況把握(ISSA。In Situ Space Situational Awareness)、軌道上サービスの実現を目指し技術開発を進めてきた。

また、長期に渡り安全で持続可能な宇宙環境を目指すため、技術開発に加え、ビジネスモデルの確立、複数の民間企業や団体、行政機関と協働し、規範やベストプラクティスの策定に努めている。

同社は2021年8月、デブリ除去技術実証衛星「ELSA-d」(エルサディー。End-of-Life Services by Astroscale – demonstration)の実証において、模擬デブリの再捕獲に成功。現在は、2021年内実施予定となっている次のフェーズとして、捕獲機(サービサー)の自律制御機能を用いた「自動捕獲」に向けて準備を進めている。

日本では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の商業デブリ除去実証プロジェクト(CRD2プロジェクト。CRD2はCommercial Removal of Debris Demonstrationの略称)フェーズⅠの契約相手方として選定されている、商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」(アドラスジェー。Active Debris Removal by Astroscale-Japan)の組立作業を2022年前半に開始予定。英国においては、英国宇宙庁による軌道上衛星2機の除去研究プログラムにアストロスケールが選定され、2024年の商用化に向けてEOLサービスの機能充足に努めているそうだ。また、米国・イスラエルのチームはLEXIの開発マイルストーンを順調に達成し、主要な試験を実施している。

バックオフィス支援サービスSUPPORT+iA運営のグランサーズが約1.5億円調達、プロダクト開発・人材採用強化

バックオフィス支援サービスSUPPORT+iA運営のグランサーズが約1.5億円調達、プロダクト開発・人材採用強化

バックオフィス業務を支援するアウトソーシングサービス「SUPPORT+iA」(サポーティア)運営のグランサーズは11月24日、第三者割当増資による約1億5000万円の資金調達を実施したことを発表した。引受先は慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)、グリーベンチャーズ、個人投資家。調達した資金はプロダクト開発、正社員や外部協力者の採用・教育資金に充当される。

グランサーズは、会計税務・バックオフィス全般を支援する税理士法人を母体として2013年に設立された。税理士法人を含めたグループ全体の累計顧客数は1500社を超え、会計士・税理士業務、経理・給与計算などのバックオフィス支援を通じて、顧客の多様なニーズと課題解決に応える事業を展開。バックオフィス業務のアウトソーシングサービスのほか、コンサルティング、SES(エンジニア派遣)、コワーキングスペースの運営を手掛けている。

サポーティアは、庶務・財務・経理・人事労務・総務など、バックオフィス業務を幅広く支援するサービス。従来の派遣やアウトソーシングサービスと異なり、オンラインコミュニケーションによって業務を完結できる。作業量に合わせた費用プランが用意されており、最低月6時間から契約することが可能。ユーザーがコア業務に集中できる環境づくりをトータルサポートする。

また昨今では、専門性が求められる経理・財務・人事労務などのバックオフィス業務を担う人材の不足や、「ノンコア業務を必要な分だけ誰かに任せたい」というニーズが増加傾向にある。グランサーズは会計士・税理士業務とバックオフィス支援で培ったノウハウをデータベース化し、システム開発とRPAなどの技術を組み合わせることで、多くの企業に共通するバックオフィス業務を効率化・自動化するプロダクト開発を進めている。今後もより多くのユーザーに対し、DX化された生産性の高いバックオフィス業務の提供を目指したいという。

血糖値に基づきリアルタイムでその人だけの減量アドバイスをするSignos、シリーズAで約14.8億円調達

日常的に歩数を数えて心拍数を測り、週に1度体重計に乗って体にどのくらいの変化が起きているかを時折確認する、というのでは効果はあまり期待できない。質量を告げるガラスのオラクルの上に1日に何度か立ってみても、実際には体重は後を追う指標であり、何が起きそうかではなく、何が起きたかを示すものだ。主要な指標の1つとなるのが血糖値だが、減量スタートアップのSignos(シグノス)は、自分の代謝の違いに興味がある人がリアルタイムの血糖値モニタリングに登録したり、健康状態を維持するためのアラートに登録することに期待を寄せている。そして同社の1300万ドル(約14億8000万円)のシリーズAラウンドをリードするという観点から、GVも同様の考えを持っていることが伺える。

基本的な科学は次の通りである。オートミールを1杯食べると血糖値が急上昇する。散歩やランニングをすると血糖値が下がり、体重増加が抑えられる。筆者の体の反応は、異なる日、異なる時間に、異なる種類の食べ物を接種することでさまざまな影響を受けているかもしれないし、自分の体に関する予測不能のあらゆる要素や、自分が何を食べ、その日どうしているかによっても違ってくるかもしれない。重要な点は、筆者の体を例に挙げても意味がないということだ。あなたの場合は違ったものになるだろう。Signosは、継続的に測定することで、人々が各自の健康に必要なデータを手に入れることができると考えている。少なくとも情報を得ることができれば、体に何を入れるべきか、体重を落とすためにどのくらいの頻度で体を動かすかを選択できる。

同社は米国時間11月10日、総額1700万ドル(約19億4000万円)の資金を調達したことを明らかにした。これには1月にCourtside Ventures(コートサイド・ベンチャーズ)、1984 Ventures(1984ベンチャーズ)、Tau Ventures(タウ・ベンチャーズ)がリードした400万ドル(約4億6000万円)のシード資金も含まれる。現在のラウンドはシリーズAで、GVがリードし1300万ドルを調達している。

同社の創業者は、減量の課題にはかなり密接な個人的関係があると筆者に語り、始まりの経緯を概説してくれた。

「私はかなり太りすぎの、肥満気味の子どもとして育ち、10代の前半まではそういう状態でした。それからスポーツを始め、減量し、実質的にまともなアスリートに成長しました。最終的には大学にホッケーをしに行き、NHLでのプレーの誘いを2回受けるまでに至りました」とSignosのCEOであるSharam Fouladgar-Mercer(シャラム・フーラドガー=マーサー)氏は語る。トップレベルのスポーツを経験した後、同氏の体は再び変化し、体重も大幅に増加した。「数年前にはまたかなり太ってしまい、私は何か良いガイダンスはないかと探し求めるようになりました。標準的なアドバイスとして、成人男性の1日のエネルギー摂取量は2500キロカロリーとされていますが、4000~5000キロカロリーを摂取しながら体重を増やしたことのない友人を持つ人も多いでしょう。また、1500キロカロリーの摂取量で体重を減らせない人もいます。そして私の家族が糖尿病と診断されたときに、持続血糖モニタリング(CGM:Continuous Glucose Monitoring)のことを知りました。家族からその仕組みの説明を受けながら、CGMを使って代謝が実際に体重減少にどのように影響するのかを解明したいという思いを抱いたのです」。

手短にいうと、フーラドガー=マーサー氏は会社を設立し、構築に取りかかった。

「すべての人の体に特有の代謝ニーズを可視化しています。以前はカロリー削減やマクロ栄養素の計算、炭水化物の除去にこだわっていましたが、現在では、効果のないダイエットを効果的なプランに変えるために、人々と協働できるようになっています」とフーラドガー=マーサー氏は説明する。「数日から数週間のうちにプランを考案し、最適な体重管理と全体的な健康のために時間をかけて洗練させていくことができます。優秀なアスリートや入念なダイエッターは多くの場合、膨大な量の試行錯誤を重ねて結果を出しますが、それと同じ成果を短期間で実現できます」。

Signosのプラットフォームは、何を食べるか、いつ食べるか、どのようなエクササイズが減量に役立つかといった基本的な質問に対する、パーソナライズされた回答を出すのに役立つ。このシステムの心臓部には、Dexcom(デクスコム)のG6持続血糖モニタリングデバイスが組み込まれている。これは一般的に糖尿病患者に使用されているものだ。Dexcomは戦略的投資家として、Signosの最新の投資ラウンドにも参加している。

ユーザーの血液中のグルコース濃度を数分ごとに測定するハードウェアコンポーネントに加えて、SignosはAIを強化したアプリを開発し、持続的な体重減少を促すためのリアルタイムデータとレコメンデーションを提供する。Signos体験の最初に、ユーザーは自分が食べたものをログに記録し、Signosのプラットフォームが特定の食べ物に対する体の反応を学習できるようにする。一度調整されると、Signosはそのデータを使用して、各ユーザーに最適な食品や、いつ食事を摂るべきか、いつ運動をすれば血糖値が最適な減量範囲内に戻るかなど、個別の栄養アドバイスを提示する。

「このデバイスを10日間、フルタイムで装着します。シャワーを浴びたり、ランニングをしたり、睡眠をとったりしながら、測定を続けます。測定が終わるとビープ音が鳴り、取り外して新しいものと交換するときが来たことを知らせます」とフーラドガー=マーサー氏は説明し、デバイスの性質上、環境に優しい技術という面では、ここしばらく私たちが目にした中でベストな水準には達していないことを認めた。リサイクルも再利用もできない。「これは医療機器であり、廃棄する必要があります」。

持続血糖測定デバイスを装着するには、地元の薬局に立ち寄って、小さな電子吸血鬼を内臓に解き放つだけでは不十分だ。医師がデバイスを処方する必要がある。

「米国では、CGMを取得するために医師の処方箋が必要であり、そのオーダーに対応するために薬局も必要です。私たちはすべてのオペレーションを水面下で行っています。サイトを訪問してくだされば、私たちがプロセス全体をご案内します」とフーラドガー=マーサー氏は続ける。「それを終えると、適切な州で認可された薬局を経由して、あなたの元にすべてが入った箱が届きます。さらに、ダウンロード可能な当社のソフトウェアも必要です」。

このシステムの魔法は、ほぼリアルタイムのモニタリングとアラートシステムにある。夜寝る前にスマートフォンをチェックし、午後1時35分に血糖値が急上昇したことを知っても役に立たない。行動を起こす適切な時期は、血糖値が上昇しているときだと同社は主張する。

「長期にわたってこのようなフィードバックループを即時かつ継続的に行うことで、当社のメンバーが達成しようと試みる健康上の成果を実現することができるのです」とフーラドガー=マーサー氏は強調した。

同社によると、10万人以上の潜在顧客がこのプロダクトの利用開始を待っているという。今回の資金調達により、2022年のどこかの時点で、このプロダクトが全米で利用可能になる見込みである。

画像クレジット:画像クレジット:Signos

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

新世代チームコラボレーションツールAirtableのようなCRM構築を目指すAttio

Attioは、AirtableNotionZapierのような新世代のコラボレーションツールをよく知ってる人たち向けの新しいCRMだ。同社が作ろうとしているのは、ユーザーの顧客やサプライヤーやパートナーに関する重要な情報をすべて収められるプロダクトだが、それにはまた同時に、データを容易に編成し、一覧し、操作できる柔軟性がある。

AttioはPoint Nineがリードする770万ドル(約8億9000万円)のシードラウンドを調達し、これにBalderton CapitalHeadlineが参加した。同社の以前からの投資家であるPassion Capitalと、数名のエンジェル投資家も参加した。後者はFrontの共同創業者でCEOのMathilde Collin(マチルデ・コリン)氏、Loomの共同創業者でCTOのVinay Hiremath(ヴィネイ・ヒレマス)氏、LoomとHyperの共同創業者であるShahed Khan(シャヘド・カーン)氏、そしてIndeedの共同創業者であるPaul Forster(ポール・フォースター)氏らとなる。

投資家のリストがこんなに長いのも、創業者の経歴を見ればうなずける。Attioの共同創業者でCEOのNicolas Sharp(ニコラス・シャープ)氏は以前Passion Capitalのアソシエイトで、その後Alexander Christie(アレクサンダー・クリスティー)氏とともにAttioを起業。彼は、同社のディールフロー(取引の流れ)部分の処理に多大な時間を投じた。

シャープ氏は特に、AirtableとNotionからヒントを得たという。「現在、ビジネスソフトウェアの世界にはすばらしいことが起きつつあり、特に変化が著しいのはCRMです。今のCRMは、顧客が望むものを何でも作ることができます。その一方で、このようなことが起こっており、それ自体が興味深いものです。CRM市場では、新しい販売方法のパラダイムシフトが起きています。今や、さまざまなチャネルを通じて関係性を育むことが重要になっています」。

つまりCRMソフトはもはや、営業のチームに限定されていないということだ。現在では、A社で仕事をしている多くの人たちが、B社のさまざまな人たちとやりとりをしている。そのような状況で、単一のコンタクトポイントにこだわっていると全体の把握も、追跡もできなくなってしまう。

画像クレジット:Attio

Attioは、既存のさまざまなツールからデータを取り込む。アカウントをセットアップするときは、自分のチームのコンタクト(連絡先)もインポートする。また、メールの会話をCRMのプラットフォームと同期できる。共有のレベルは、メタデータだけか、または件名とメタデータかのどちらかを選ぶ。そしてもちろん、カレンダーの同期もできる。

そうやって設定したあと、AttioはユーザーデータをTwitter、LinkedIn、Facebookといったサードパーティのソースから自動的に補足する。自分の会社と特定のコンタクトとの最近の対話のタイムラインを見ることもでき、他の企業を検索して、その企業にいる自分が知っている人を調べることもできる。

さらにおもしろいのは、コレクションの構築だ。コレクションは、特定のプロジェクトのためのコンタクトのリストだ。例えばすべての投資家のコレクションを作ったり、営業のための情報通信チャネル(いわゆる「コネ」)のコレクションを作れる。知っている記者たちのコレクションもあるだろう。

コレクションの見方は、いろいろある。Airtableのように、行と列からなるスプレッドシート状のインターフェースで、データを加えてもよい。あるコレクションに必要になったら、新しい属性の列(カラム)を増設できる。

あるいは、コンタクトをあるカラムから別のカラムに移動できる。カレンダー形式でもよい。それぞれのビューは、さまざまなフィルターや整列(ソート)の基準でカスタマイズできる。

画像クレジット:Attio

Attioは、多くのSaaS同じような設計なので、チームで利用するのに適している。タブ方式で最新のアクティビティをそれぞれで確認できるし、タスクを作って注記を加えれば、そこからチームとしてのプロジェクトが始まる。

現在、同社には120社ほどの有料顧客がおり、Coca-ColaやSupercell、Saltpay、Causal、Upfront Venturesなどの企業でチームが利用している。しかし、このようにしてCRMを「再発明」しよとしているのはAttioだけではない。競合他社には、最近紹介したFolkや、4DegreesAffinityなどがいる。

シャープ氏がこのプロダクトを思いついたときは、競争がまだそれほど激しくなかった。「当時はNotionが開業したばかりでしたし、みんな新しいスプレッドシートや新しいノートアプリのようなものを開発していました。新しい原理をCRMに応用しようとしている人は皆無でした」とシャープ氏はいう。

ユーザーにとっては、CRMプラットフォームの選択肢は大きく増えた。この分野がどのように進化していくのか、興味深く見守っていきたい。

画像クレジット:Attio

画像クレジット:Attio

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(文:Romain Dillet、翻訳:Hiroshi Iwatani)

補助金・助成金DXのStayway、補助金・地域金融機関・VCから総額7500万円のハイブリッド型資金調達

補助金・助成金DXのStayway、補助金・地域金融機関・VCから総額7500万円のハイブリッド型資金調達

Stayway(ステイウェイ)は11月25日、地銀と信金向けの補助金・助成金対応DXツール「補助金クラウド」の支援モデルケースとして、事業再構築補助金採択に基づく地域金融機関(神奈川県)からの融資、日本政策金融公庫の新型コロナ対策資本性劣後ローンによる7000万円、ベンチャーキャピタル(VC)の出資による500万円の資金調達を実施したことを発表した。累計調達額は1億5000万円となった。調達した資金は、補助金クラウドの開発と機能強化、事業開発、エンジニア・カスタマーサクセスの人材採用にあてられる。

日本政策金融公庫の新型コロナ対策資本性劣後ローンは、コロナ禍の影響を受けている中小企業・小規模事業者の財務体質強化のために資本性資金を供給することで、資金調達を円滑化することを目的とした制度。ほかの債務より返済順位が後で、融資審査では資本とみなされるため、地方銀行・信用金庫が融資しやすいことが特徴とされている。中小企業やスタートアップにとっては、無担保・無保証かつ5年超返済不要といった中長期的視点で成長事業を構築するのに適したスキームで、コロナ禍の長期化により同ローンのニーズが拡大している。

なお、日本政策金融公庫の公表情報(日本政策金融公庫×民間金融機関連携の取り組みHP)によると、Stayway本社のある東京・南関東での資本性ローン実行件数は25件となっている。

補助金・助成金DXのStayway、補助金・地域金融機関・VCから総額7500万円のハイブリッド型資金調達

11月にクローズドβ版の提供をスタートした補助金クラウドは、法人営業のためのクラウド型補助金・助成金獲得支援サービス。地域金融機関で属人的になっている補助金等案内業務の自動化、外注により不透明になっている補助金等申請支援業務の可視化、つなぎ融資・協調融資のスピード感を向上といった補助金・助成金対応業務のDXにより、地域金融機関などの戦略的・効率的な業務プロセスの構築を可能にする。補助金・助成金DXのStayway、補助金・地域金融機関・VCから総額7500万円のハイブリッド型資金調達

補助金クラウドの正式版リリースは2022年度を予定。地域金融機関に対する支援を通じ、中小企業やスタートアップに株式以外の資金調達の手段を提供する。今回の引受先となった日本政策金融公庫との連携を深めて資本性ローンの獲得支援を拡充し、これまでアナログな手法で管理され分散していた補助金の情報や融資手法をデジタル化することで、より短時間で補助金の情報を収集し、申請・融資支援につなげたいという。補助金・助成金DXのStayway、補助金・地域金融機関・VCから総額7500万円のハイブリッド型資金調達

英国のメンタルヘルス企業iesoが10年間も蓄積した患者セラピスト間のテキストを武器に約60.9億円調達

英国を拠点とするデジタルセラピー企業ieso(イエソ)は、米国時間11月23日に5300万ドル(約60億9600万円)のシリーズBラウンドを発表した。このラウンドは、より直感的な自律型テキストセラピーを実現するという、まったく新しい方向に進むために同社が必要とする資金だ。

つまり、何千時間もの現実世界でのセラピーに基づいて訓練されたAIが、チャットでパーソナライズされたセッションを提供できるということだ。

iesoは10年ほど前から、英国の国民健康保険サービスを通じて、テキストのみのセラピーサービス(片方は人間のセラピストが担当)を行ってきた。同社のCEOであるNigel Pitchford(ナイジェル・ピッチフォード)氏は、これまでに約8万人の患者にテキストベースのセラピーを提供してきたが、積極的にセラピーを受けている人は6000人だとTechCrunchに語った。これまでのセラピー時間は合計で46万時間にもなるという。

ピッチフォード氏は「今晩、我々のネットワークを介して、400時間の治療を行う予定です」と述べている。

今回の資金調達は、Morningside(モーニングサイド)が主導し、Sony Innovation Fund(ソニー・イノベーション・ファンド)が参加した。また、既存の投資家であるIP Group(IPグループ)、Molten Ventures(モルテン・ベンチャーズ)、Ananda Impact Ventures(アナンダ・インパクト・ベンチャーズ)も参加している。

iesoは最終的に、人間ベースのセラピストシステムから、スケールアップした自律的なシステムへと発展させることを目指している。AIベースのチャットセラピーというアイデアは、この分野では特別なものではないが(これを追求している他の企業についても紹介している)、iesoのアプローチの背景にあるデータは、同社が秘密のソースと考えているものだ。

iesoの「圧倒的な強み」は、ピッチフォード氏が「トランスクリプト・オブ・ケア」と呼ぶ、患者とセラピストの間で交わされた10年間の現実のテキストベースの会話だ。このデータセットは、患者の臨床結果に関するリアルタイムのデータとセットになっており、同社はそれらのチャット内容と合わせて収集している。

Morningsideの投資パートナーであるStephen Bruso(スティーブン・ブルーソ)氏は「iesoは、テキストセラピーのデータセットで、この分野で最もすばらしいデータ資産を構築してきました」と述べている。このデータセットは、投資家としての彼にとっては最も魅力的なiesoの一面であり「前例のない」ものだと述べている。

このデータセットは、ある治療上の会話や技術が、患者の改善にどのように結びついているか(あるいは結びついていないか)を追跡するために使用されている。そして、同社がそのデータを利用して洞察を得ることができたという証拠もある。例えば、同社は2019年に9万時間のセラピーを分析した論文を「JAMA Psychiatry」ジャーナルに発表した。この論文では「将来の計画を立てる」といったセラピーの側面や、特定の認知行動療法の手法が、患者の改善につながることを発見した。

同社のグループ・チーフ・サイエンス&ストラテジー・オフィサーであるAndy Blackwell(アンディ・ブラックウェル)氏は「データでは1時間のセラピーのうち28分は、患者の転帰に『直接影響を与える』会話やエクササイズが含まれていることが示唆された」と述べている。

また、直感に反しているかもしれないが、この論文では、治療上の共感が患者の転帰にマイナスの影響を与えることがわかったという。しかし、他の研究では、セラピストが自分のことを理解してくれていると感じたとき、患者はより良い結果を得ることができるとも言われている。ブラックウェル氏は、この共感に関する発見を、共感は他の治療技術と一緒に用いるべきだという証拠だと解釈した。

ピッチフォード氏は最終的に、このデータセットとJAMAの論文で行われたような分析は、AIベースのセラピストがどのようにトレーニングされ、パーソナライズされるかを示すロードマップであると捉えている。

「つまり、私たちは、最高のセラピストが何をしているのかを非常に大きなスケールで研究し、それを再構築することで、世界中で大きな問題となっている、人間による心理療法を受けることができない人々に治療を届けることができるのです」とピッチフォード氏は述べている。

このようなデータセットをもってしても、iesoはますます混み合った領域での活動を強いられているようだ。第3四半期のSilicon Valley Bank(シリコンバレー・バンク)のトレンドレポートによると、メンタルヘルス関連のスタートアップ企業への資金提供は、2021年に30億ドル(約3400億円)を突破すると予想されている。つまり、従来のセラピーに関連する問題に注目している人が、今たくさんいるということだ。

ブルーソ氏は、iesoを、少なくとも自社のデータセットを使って実際の健康状態を示すことができる、数少ないメンタルヘルス企業の1つだと考えている。

「私たちは、実世界のデータに基づいて構築されたiesoのデジタル製品と、これらの製品を既存のユーザーベースで試用して初日から成果データを得ることができる同社の能力との間に、ユニークな相乗効果があると信じています。最終的には、個人の健康と社会的な成果の両方に測定可能な影響を示すことができる製品が、この分野で生き残ることができるでしょう」と述べている。

ブラックウェル氏は、この分野がいかに混み合っているかを認識しており、実際、消費者にとってこれは問題だと考えている。iesoのリーダーたちは、これらのアプリは、自助努力か、マインドフルネス、または軽度のメンタルヘルス診断を受けている患者のためにデザインされていることが多いと見ている。

iesoも、軽度のメンタルヘルスの苦悩を抱える人々を治療することができるものの、同社は中等度から重度の診断にも焦点を当てている。彼の言葉を借りれば、ただの「ウェルネス・ソリューション」ではなく、より集中的なケアを必要とするグループにも利用できるのだ。

このような観点から、自傷行為に対する安全対策を特に強化する必要がある。ブラックウェル氏によると、同社の人間ベースのセラピーモデルには、英国最大級のメンタルヘルスプロバイダーとして10年間かけて磨いてきたリスクエスカレーションプロトコルが導入されている。将来的には、それらのプログラムを自律型セラピー製品に組み込むことを計画している。

今のところ、同氏は、より困難な規制の道を想定していない。それは、より高いレベルのメンタルヘルス診断を扱うことを考えているからだ。

「良い点は、市場に投入する際に利用できる前例や前提条件があることです。しかし、重要なのは、実証的に安全で効果的な製品を作ることです」と述べている。

同社はすでに大量のデータを収集しているため、通常の臨床試験よりも「何倍も早く」有効性と安全性に関する知見を得ることができると、ブラックウェル氏は主張している。

iesoは今後、今回のラウンドを利用して、AIベースのセラピー部門を構築し、米国での知名度を強化する予定だ。チームは来年までに約200人に拡大する予定で、今後2年間での市場投入を目指す。

画像クレジット:Feodora Chiosea / Getty Images

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(文:Emma Betuel、翻訳:Akihito Mizukoshi)

英国のメンタルヘルス企業iesoが10年間も蓄積した患者セラピスト間のテキストを武器に約60.9億円調達

英国を拠点とするデジタルセラピー企業ieso(イエソ)は、米国時間11月23日に5300万ドル(約60億9600万円)のシリーズBラウンドを発表した。このラウンドは、より直感的な自律型テキストセラピーを実現するという、まったく新しい方向に進むために同社が必要とする資金だ。

つまり、何千時間もの現実世界でのセラピーに基づいて訓練されたAIが、チャットでパーソナライズされたセッションを提供できるということだ。

iesoは10年ほど前から、英国の国民健康保険サービスを通じて、テキストのみのセラピーサービス(片方は人間のセラピストが担当)を行ってきた。同社のCEOであるNigel Pitchford(ナイジェル・ピッチフォード)氏は、これまでに約8万人の患者にテキストベースのセラピーを提供してきたが、積極的にセラピーを受けている人は6000人だとTechCrunchに語った。これまでのセラピー時間は合計で46万時間にもなるという。

ピッチフォード氏は「今晩、我々のネットワークを介して、400時間の治療を行う予定です」と述べている。

今回の資金調達は、Morningside(モーニングサイド)が主導し、Sony Innovation Fund(ソニー・イノベーション・ファンド)が参加した。また、既存の投資家であるIP Group(IPグループ)、Molten Ventures(モルテン・ベンチャーズ)、Ananda Impact Ventures(アナンダ・インパクト・ベンチャーズ)も参加している。

iesoは最終的に、人間ベースのセラピストシステムから、スケールアップした自律的なシステムへと発展させることを目指している。AIベースのチャットセラピーというアイデアは、この分野では特別なものではないが(これを追求している他の企業についても紹介している)、iesoのアプローチの背景にあるデータは、同社が秘密のソースと考えているものだ。

iesoの「圧倒的な強み」は、ピッチフォード氏が「トランスクリプト・オブ・ケア」と呼ぶ、患者とセラピストの間で交わされた10年間の現実のテキストベースの会話だ。このデータセットは、患者の臨床結果に関するリアルタイムのデータとセットになっており、同社はそれらのチャット内容と合わせて収集している。

Morningsideの投資パートナーであるStephen Bruso(スティーブン・ブルーソ)氏は「iesoは、テキストセラピーのデータセットで、この分野で最もすばらしいデータ資産を構築してきました」と述べている。このデータセットは、投資家としての彼にとっては最も魅力的なiesoの一面であり「前例のない」ものだと述べている。

このデータセットは、ある治療上の会話や技術が、患者の改善にどのように結びついているか(あるいは結びついていないか)を追跡するために使用されている。そして、同社がそのデータを利用して洞察を得ることができたという証拠もある。例えば、同社は2019年に9万時間のセラピーを分析した論文を「JAMA Psychiatry」ジャーナルに発表した。この論文では「将来の計画を立てる」といったセラピーの側面や、特定の認知行動療法の手法が、患者の改善につながることを発見した。

同社のグループ・チーフ・サイエンス&ストラテジー・オフィサーであるAndy Blackwell(アンディ・ブラックウェル)氏は「データでは1時間のセラピーのうち28分は、患者の転帰に『直接影響を与える』会話やエクササイズが含まれていることが示唆された」と述べている。

また、直感に反しているかもしれないが、この論文では、治療上の共感が患者の転帰にマイナスの影響を与えることがわかったという。しかし、他の研究では、セラピストが自分のことを理解してくれていると感じたとき、患者はより良い結果を得ることができるとも言われている。ブラックウェル氏は、この共感に関する発見を、共感は他の治療技術と一緒に用いるべきだという証拠だと解釈した。

ピッチフォード氏は最終的に、このデータセットとJAMAの論文で行われたような分析は、AIベースのセラピストがどのようにトレーニングされ、パーソナライズされるかを示すロードマップであると捉えている。

「つまり、私たちは、最高のセラピストが何をしているのかを非常に大きなスケールで研究し、それを再構築することで、世界中で大きな問題となっている、人間による心理療法を受けることができない人々に治療を届けることができるのです」とピッチフォード氏は述べている。

このようなデータセットをもってしても、iesoはますます混み合った領域での活動を強いられているようだ。第3四半期のSilicon Valley Bank(シリコンバレー・バンク)のトレンドレポートによると、メンタルヘルス関連のスタートアップ企業への資金提供は、2021年に30億ドル(約3400億円)を突破すると予想されている。つまり、従来のセラピーに関連する問題に注目している人が、今たくさんいるということだ。

ブルーソ氏は、iesoを、少なくとも自社のデータセットを使って実際の健康状態を示すことができる、数少ないメンタルヘルス企業の1つだと考えている。

「私たちは、実世界のデータに基づいて構築されたiesoのデジタル製品と、これらの製品を既存のユーザーベースで試用して初日から成果データを得ることができる同社の能力との間に、ユニークな相乗効果があると信じています。最終的には、個人の健康と社会的な成果の両方に測定可能な影響を示すことができる製品が、この分野で生き残ることができるでしょう」と述べている。

ブラックウェル氏は、この分野がいかに混み合っているかを認識しており、実際、消費者にとってこれは問題だと考えている。iesoのリーダーたちは、これらのアプリは、自助努力か、マインドフルネス、または軽度のメンタルヘルス診断を受けている患者のためにデザインされていることが多いと見ている。

iesoも、軽度のメンタルヘルスの苦悩を抱える人々を治療することができるものの、同社は中等度から重度の診断にも焦点を当てている。彼の言葉を借りれば、ただの「ウェルネス・ソリューション」ではなく、より集中的なケアを必要とするグループにも利用できるのだ。

このような観点から、自傷行為に対する安全対策を特に強化する必要がある。ブラックウェル氏によると、同社の人間ベースのセラピーモデルには、英国最大級のメンタルヘルスプロバイダーとして10年間かけて磨いてきたリスクエスカレーションプロトコルが導入されている。将来的には、それらのプログラムを自律型セラピー製品に組み込むことを計画している。

今のところ、同氏は、より困難な規制の道を想定していない。それは、より高いレベルのメンタルヘルス診断を扱うことを考えているからだ。

「良い点は、市場に投入する際に利用できる前例や前提条件があることです。しかし、重要なのは、実証的に安全で効果的な製品を作ることです」と述べている。

同社はすでに大量のデータを収集しているため、通常の臨床試験よりも「何倍も早く」有効性と安全性に関する知見を得ることができると、ブラックウェル氏は主張している。

iesoは今後、今回のラウンドを利用して、AIベースのセラピー部門を構築し、米国での知名度を強化する予定だ。チームは来年までに約200人に拡大する予定で、今後2年間での市場投入を目指す。

画像クレジット:Feodora Chiosea / Getty Images

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(文:Emma Betuel、翻訳:Akihito Mizukoshi)

ローコード / ノーコードアプリの安全性確保を支援するZenityが約5.8億円調達

基幹業務のアプリケーションの構築にローコード / ノーコードのツールを採用する企業が増えており、そのエコシステム内にツールのセキュリティにフォーカスした新たなサービスが登場しているのも当然かもしれない。テルアビブのZenityはそんな企業の1つで、同社は現地時間11月23日、ステルスを抜けて500万ドル(約5億8000万円)のシードラウンドを発表している。そのラウンドはVertex VenturesとUpWestがリードし、GoogleのCISOだったGerhard Eschelbeck(ゲルハルト・エッシェルベック)氏や、SuccessFactorsのCIOだったTom Fisher(トム・フィッシャー)氏といった多くのエンジェル投資家が参加している。

Zenityによると、従業員たちが自分でアプリケーションを作るようになり、RPA(ロボットによる業務自動化)などのツールを採用するようになると、新たなアプリが、ハッキング行為やランサムウェアなどに対して、これまでなかったようなドアを開いてしまうこともある。

Zenityの共同創業者でCEOのBen Kliger(ベン・クリガー)氏は、このような状況について「企業は現在、大々的にローコード / ノーコードを採用していますが、そのリスクやリスクに対して自分たちが共有すべき責任について理解していません。弊社はCIOやCISOたちをサポートし、彼らがローコード / ノーコードアプリケーションをシームレスに統括できるようにし、不意のデータ漏洩や事業への妨害、コンプライアンスのリスク、悪質な侵害などを防ぐ」と述べている。

Zenityのプラットフォームは、企業にその組織内のローコード / ノーコードアプリケーションのカタログを作らせ、問題の可能性を減らし、彼らの組織のための自動的に施行できるガバナンスのポリシーをセットアップする。同社によると、従来的なセキュリティサービスの方法はローコード / ノーコードのアプリケーションに適用できないにもかかわらず、そんなツールへのニーズだけが独り歩きで増えている。しかもそれを使っているデベロッパーにセキュリティの経験や知識がない。中にはソフトウェア開発の経験知識のないデベロッパーもローコード / ノーコードの世界にはいるだろうという。

画像クレジット:Zenity

同社はCEOのクリガー氏とCTOのMichael Bargury(マイケル・バーガリー)氏が創業した。2人とも、それまではAzureに在籍し、Microsoftのクラウドセキュリティチームで仕事をしていた。

Zenityのアドバイザーで元OracleとQualcommのCIO、そしてeBayのCTOでもあるTom Fisher(トム・フィッシャー)氏は次のように述べている。「ビジネスを邪魔せずローコード / ノーコードのソリューションにありがちなリスクとセキュリティの脅威を減らすことが難題です。Zenityには、ガバナンスとセキュリティツールの完璧な組み合わせと、ビジネスに対するプロのアプローチが備わっているため、企業のデベロッパーは安心してともにセキュリティを構築できます」。

画像クレジット:Zenity

[原文]

(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

音楽の使用権を取引できるマーケットプレイスAudiostockが6.7億円調達、登録クリエイター2万組・取り扱い音源数70万点超

音楽の使用ライセンスを売買できる、ロイヤリティフリーのストックミュージックサービス「Audiostock」(オーディオストック)を運営するオーディオストックは11月24日、シリーズCラウンドにおいて、第三者割当増資による約6億7000万円の資金調達を発表した。引受先は、リードインベスターの米Susquehanna International Group(SIG)、新規株主のセレス、ベクトル、既存株主の日本ベンチャーキャピタル、中国銀行グループ、HBCC Technology Investment。創業からの累計調達額は約11億円となった。

2007年10月設立のオーディオストックは、音楽クリエイターの音楽作品を預かり、Audiostockを通して販売・配信を行うプラットフォーム事業を展開。登録クリエイターは2万組、取り扱い音源数は70万点以上と世界最大の楽曲数を誇るという。

同サービスでは、音楽クリエイターは自身で制作した音楽を登録して使用権を販売でき、売上に応じた印税を受け取れる。顧客は、単品購入・サブスクリプション方式で購入手続きを行うだけで音楽の利用許諾を得ることができ、映像・ゲーム・アプリ・広告・SNS投稿動画などの商用コンテンツに音楽を組み込める。契約から印税分配まですべてオンライン上で完結させることで、適切な収益を得られる環境を構築し、音楽作品を生み出す方々を支援している。

2019年より開始した定額制プランの利用者数が伸長し、日本の音楽コンテンツの海外需要も高いことから、さらなる国内外でのシェアの拡大を目指し、システム開発費や広告宣伝費などを強化する目的で資金調達を実施したという。これまでに同社は、2018年3月にシリーズAラウンドにて2億6200万円、2020年6月にシリーズBラウンドで1億2000万円の資金調達を行っている。

調達した資金の使途としては「国内外の新規顧客獲得のための広告宣伝費用」「Audiostockシステム強化のための開発費用」「良質な音楽コンテンツ獲得・制作のための費用」を挙げている。

国内外の新規顧客獲得のための広告宣伝費用

同社は、国内向けの新たな定額制プランとして、法人・個人の区分けをなくし使用シーンや人数に合わせて選択できるプランを11月1日から開始。これにより用途ごとに使いやすいサービス環境を整えているが、クリエイターにとって良質な音楽コンテンツのプラットフォームであることを知ってもらうため、動画マーケティングなどを行い認知拡大を図る。

また海外では、ストックミュージックサービス市場の高まりを受けて、類似企業が数百億円などの巨額な資金調達を果たすなども動きもある中で、Audiostockは和楽器を使った楽曲やアニメゲームの映像に合うものなど、日本ならではのコンテンツ需要がアジア圏を中心に高いため、今後海外向け定額制プランも提供する予定。海外シェア拡大のためにマーケティングを強化する。

Audiostockシステム強化のための開発費用

Audiostockは、取り扱う音源数70万点以上となる一方で、ユーザーが求める音源にどのように出会えるかという点においてシステムに対する課題やユーザーの意見があるそうだ。より良い環境を作るためにAIなどのテクノロジーを活用するなど、ユーザーの利便性を高めるアップデートを目指し、システムの強化を予定している。さらに、海外向けの定額制プランのシステム開発を行う。

良質な音楽コンテンツ獲得・制作のための費用

同社は、プロの奏者によるスタジオで生演奏の収録をしており、高品質な生演奏BGMは人気コンテンツの1つとなっていることから、今後はレコーディングコンテンツの拡充を行う。また、著名人の音楽コンテンツの販売も視野に入れており、エンターテインメント性の高い著名人のコンテンツを積極的に配信する取り組みは業界的にも珍しいため、ユーザーに他にない良質なコンテンツを届けられるよう、準備する。

中小企業向け契約書レビューAIクラウドLeCHECKを提供するリセが5.5億円調達、プロダクト開発・販売・人材採用を強化

スタートアップや中堅・中小向け契約書レビューAIクラウド「LeCHECK」(リチェック。旧り~が~るチェック)を開発提供するリセは11月24日、第三者割当増資による総額5億5000万円の資金調達を発表した。引受先は大和企業投資、グローバル・ブレイン、マネーフォワード。

調達した資金により、レビュー対象の契約類型数の追加や他社サービスとの連携強化などによる「中小企業向けの機能強化」を図るとともに、中堅・中小企業に対する販促アプローチ、人材採用などを加速させる。また、マネーフォワードとは業務提携を行い、中堅・中小企業に法務部門におけるDXを推進し、より高度な業務効率化、生産性向上の実現を目指す。

LeCHECKは、文書OCR機能、高品質な英文契約書レビュー・解説機能、管理やノウハウ共有までを実現する法務業務サービス。契約書とチェック箇所を左右に並べて確認できるなどのシンプルなレイアウト設計、20名以上の専門弁護士の協力の基提供する高品質なレビューAI機能などを備えるという。電子帳簿保存法にも対応した契約書データの保管管理機能も無料提供している。中小企業向け契約書レビューAIクラウドLeCHECKを提供するリセが5.5億円調達、プロダクト開発・販売・人材採用を強化

EVへの関心は電動ボートにも波及、Arcが約34.5億円調達

Arcはまだ創業1年にも満たないが、この電動ボートのスタートアップはVCのAndreessen Horowitzやエンターテインメント業界の大物たちからの投資を惹き寄せ、初期のTesla(テスラ)の役員で同社の初期の製造部門を率いた人物がリードする3000万ドル(約34億5000万円)の投資ラウンドを実らせた。

今回の3000万ドルのシリーズAはGreg Reichow(グレッグ・ライチョウ)氏がリードしたが、彼は元Teslaの役員で現在はEclipse Venturesのパートナーだ。今回は、これまでの投資家であるAndreessen HorowitzやChris Sacca(クリス・サッカ)氏のLowercarbon Capital、そしてRamtin Naimi(ラムティン・ナイミ)氏のAbstract Venturesらも参加した。同社は米国時間11月23日の発表で、ライチョウ氏が取締役会に加わることを発表した。これまでのArcの調達総額は3700万ドル(約42億5000万円)だが、それにはWill Smith(ウィル・スミス)氏のDreamers VCやKevin Durant(ケビン・デュラント)氏とRich Kleiman(リッチ・クレイマン)氏のThirty Five Ventures、そしてSean “Diddy” Combs(ショーン・コムズ)氏のCombs Enterprisesなどからの初期の投資も含まれている。

この若い企業に資本と強力な支援者が殺到していることは、電動化への関心が2つの車輪、4つの車輪を持つ乗り物を超えて広がっていることを反映している。後者は巨額の私募資金と驚異的な額の公開市場資金で溢れかえっているが、今週初めにGMは、電動ボート企業のPure Watercraftの株式の25%を取得したことを発表している。

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もちろん、30万ドルの限定版ボートを皮切りに、水上のあらゆるものを電動化するというArcの特殊なビジネスに対する高い評価となる。

CEOのMitch Lee(ミッチ・リー)氏と元SpaceXの技術者であるRyan Cook(ライアン・クック)氏が共同で創業したArcは、さまざまな価格帯と用途の電動船を開発していく計画だ。同社は最初、専用の船体と同じく専用のバッテリーパックの設計と開発に注力した。最初のボートArc Oneは、24フィート(約7m32cm)のアルミニウム製で475馬力、1回の充電で3〜5時間駆動する。このArc Oneは、最大で25隻の限定生産の予定となっている。

その後、2種類の高価なボートを数十隻作り、未来に向けて拡大していく計画だ。ただし短期的にはArc Oneに集中すると同社はいう。

画像クレジット:Arc

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hiroshi Iwatani)

大手がメタバースに夢中になる中、ARを食料品店での現実的な活用を構築する英Dent Realityが約3.9億円調達

AppleやFacebookが「メタバース」の未来に巨額の資金を投じる一方で、近年はARに勝機を見出そうとしているスタートアップに関するベンチャーの動きは明らかに低下している。Magic Leapなどの大型案件への投資で消耗した多くのVCはAR技術の短期的な成果についてテック大手にはチャンスが大いに残されていると見ているが、小規模のスタートアップも投資家にアピールするような参入の道を見つけようとしている。

ロンドンに拠点を置くDent RealityはARテクノロジーとハイパーローカルなマッピングの力を示す小規模なエクスペリエンスに特化し、まずは食料品店のような場所から取り組みを始めている。食料品店では、同社のARプラットフォームを利用して店内通路の詳しいレイアウトを買い物客に示し、店舗のデータベースと統合して特定の商品が置かれている棚のデータも提供する。AR機能を使うユーザーはスマートフォンをかざして目的の商品への経路を表示できる。

CEOのAndrew Hart(アンドリュー・ハート)氏は、オンラインの買い物客に対してパーソナライズをするツールが有益さを増しているため、小売店はオンラインのツールセットを実店舗の買い物客のエクスペリエンスに活かす方法に広く関心を持っていると語る。Dent Realityは食料品店で商品を見つけることに特化したプラットフォームではないが、同氏によれば食料品店は商品の密度が高いため技術のストレステストをするには理想的な場所だという。

同氏はTechCrunchに対し「我々が解決したい課題に対して最も難しい場所として食料品店を選びました」と述べた。

投資家はDent Realityの取り組みにチャンスがあると見ている。同社はPi Labsが主導するシードラウンドで340万ドル(約3億9000万円)を調達した。このラウンドにはSugar Capitalと7Percent Venturesも参加した。

Appleが開発者向けARプラットフォームのARKitをリリースしてからの数年間、ハート氏は自分が作った未来のAR技術のデモの多くをTwitterで紹介してきた。Dent Realityは未来へ向けたそうしたユースケースのいくつかを現在の開発者向けテックプラットフォームにしようとする取り組みだ。スマートフォンはARを利用するには完璧なデバイスではないが、同社は消費者に3Dインターフェイスの体験と操作を提供している。ハート氏は、3Dインターフェイスの利用の中心となるのは今後到来するARメガネだろうと考えている。

画像クレジット:Dent Reality

同氏は「一般にインターフェースは平らなスマートフォンの画面に制限されています。ARには平面のインターフェースでは実現できない、多くの可能性があります」と語る。

Dent Realityは今後、大規模なオフィスビルから病院、大学のキャンパスなどあらゆる場所で、ハイパーローカルなマップデータとAR、同社独自のアプローチによって、建物に新たなハードウェアインフラを導入することなく、公共のWi-Fiデータとスマートフォンのセンサーからユーザーの居場所を特定する取り組みを進めたい考えだ。

画像クレジット:Dent Reality

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(文:Lucas Matney、翻訳:Kaori Koyama)

高度な数学力と3次元CADの開発力で建設DXを推進するArentが総額約19億円のシリーズC調達

高度な数学力と3次元CADの開発力で建設DXを推進するArentは11月24日、シリーズCラウンドにおいて、12億円の第三者割当増資、約7億円の融資による合計約19億円の資金調達を発表した。引受先は、リード投資家のSBIインベストメント、またFUSO-SBI Innovation Fund(フソウとSBIインベストメントによるCVCファンド)、東日本銀行地域企業活性化ファンド(東日本銀行とフューチャーベンチャーキャピタルによるファンド)、ザシードキャピタル。借入先はみずほ銀行およびりそな銀行などの金融機関。累計調達額は約29億円になった。事業シナジーを見込む企業を対象にしたエクステンションラウンドも予定しているという。

調達した資金は、エンジニアやPMの採用強化および「BIM/CIMの自動設計SaaS」「配管の自動設計・積算SaaS」などのプロダクトの開発にあてる予定。なおBIM/CIM(Building / Construction Information Modeling, Management)とは、調査・計画・設計段階から3次元モデルを導入し、施工、維持管理でも3次元モデルを連携・発展させて事業全体にわたる関係者間の情報共有を容易にし、一連の建設生産・管理システムの効率化・高度化を実現すること。

2012年7月設立のArentでは、「高難度のDXに挑み、巨大産業のグローバルイノベーションに貢献する」をミッションに、高度な数学力と開発力を有するエンジニアが、日本の企業が持つ世界トップレベルの技術やネットワークを見極め、業務改善にとどまらず、新規事業を創造する企画力と実行力で新しいサービスやプロダクトの開発・社会実装を推進。千代田化工建設との大規模JV設立など、「熟練技術者の暗黙知のモデル化による設計の自動化・最適化」を実現している。高度な数学力と3次元CADの開発力で建設DXを推進するArentが総額約19億円のシリーズC調達

OSSクラウド可視化サービスの商用化を進めるAutoCloudが約4.6億円を調達

AutoCloud(オートクラウド)は、米国時間11月22日、400万ドル(約4億5900万円)のシードラウンドを発表した。Animo Ventures(アニモ・ベンチャーズ)がリードし、Uncorrelated Ventures(アンコリレイテッド・ベンチャーズ)B Capital Group(Bキャピタル・グループ)Moxxie Ventures(モクシー・ベンチャーズ)が参加している。

AutoCloudは、CloudGraph(クラウドグラフ)オープンソースプロジェクトの商用版だ。オープンソース(OSS)と商用のハイブリッドな組み合わせは、市場を攻めるスタートアップの手法としてますます人気が高まっている。Hashicorp(ハシコープ)は最近、そのOSSコアの強みを部分的に活かして上場した。Jina.ai(ジーナアイ)は、ニューラル検索への商業的かつオープンソースのアプローチで3000万ドル(約34億4600万円)の資金調達を発表したが、これはさらにアーリーステージでの例である。

CloudGraphは、AWSやAzure(アズール)などの複数のクラウド事業者から利用データを取り込み、標準化し、GraphQL(「State of Javascript 2020」レポートによると、この技術自体が利用され、好意的な評価を受けている)を使ってクエリを可能にするOSSツールだ。

AutoCloudはCloudGraphの上に位置し、自動化されたデータ取り込み、セキュリティコンプライアンス、クラウドリソースのビジュアライゼーションを提供する。同社の共同設立者兼CEOであるTyson Kunovsky(タイソン・クノフスキー)氏は、TechCrunchに対し、同社の目標はHashicorpなどが行ってきたように、大規模なクラウドプラットフォームが苦手としている作業を回収し、その経験を改善することにあると述べている。

AutoCloudの創業チーム(画像クレジット:AutoCloud)

成功する可能性のあるすべてのOSSプロジェクトと同様に、その目標は、有用なものをオープンコードとして市場に提供し、一般に利用可能なものの上に商業ビジネスを構築することだ。AutoCloudの場合、それはSaaSモデルであり、トラッキングされた資産の数に応じて価格が設定されるようになっている。

同スタートアップは初期の段階にあるため、収益成長率や純ドル保持率など、従来の牽引力を示す指標がない。クノフスキー氏がTechCrunchに語ったところによると、彼の会社は主にCloudGraph自体に注力してきたが、OSSサービスの何百人ものユーザーがプロジェクトの「Readme」を通じてAutoCloudを見つけ、そのウェイティングリストに登録しているという。

AutoCloudは2021年末までに有料製品を発売する予定で、もうあと数週間だ。そのため、次に同社と話をするときには、収益の伸びや関連する指標について説くことができるだろう。

シカゴを拠点とするAutoCloudは、アルゼンチンやチリなど複数の地域にチームを置いているという点で、今日の一般的なスタートアップであるということは特筆すべきだ。

クノフスキー氏は、この会社に大きな情熱を持っている。AutoCloudは、クラウドのコマンドラインから、GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)に変換したいと考えていると同氏は説明してくれた。それは簡単なことではない。

AutoCloudがマルチクラウドに対応していることを考えると、Amazon(アマゾン)やMicrosoft(マイクロソフト)、Google(グーグル)のクラウドチームが直接市場に参入する可能性は低いと思われる。しかし、他のクラウド事業者がそのうちに参入してくるかもしれない。その時には、CloudGraphプロジェクトが単独でどれだけ強くなっているかが、AutoCloudがより多くの既存のテック企業に対抗できるかできないかの重要な決め手となるだろう。

いずれにしても、AutoCloudのラウンドをあなたのOSSスコアカードに加えてみて欲しい。次の四半期か2四半期に必然的に資金再調達をするときには、さらに追加して欲しい。

画像クレジット:AutoCloud

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Akihito Mizukoshi)

さまざまな保険を1つのアプリで簡単に管理、契約変更できる仏インシュアテックLeocareが大型資金調達を実施

フランスの保険会社Leocare(レオケア)は、Eight Roads(エイト・ロード)を中心としたシリーズBの資金調達を行った。全体で1億1600万ドル(約133億1300万円)を調達したことになる。このラウンドは、エクイティとデットのラウンドで、つまりこの金額の一部はキャッシュ・フォー・エクイティの取引で、残りはクレジットラインということになる。

同社は、シリーズAの調達から1年も経たないうちに、現地時間11月23日のシリーズBの調達を行っている。また、Felix Capital(フェリックス・キャピタル)、Ventech(ベンテック)、Daphni(ダフニ)などの既存の投資家は、今回のシリーズBでさらに資金を投入している。

Leocareは、顧客が必要とするすべての保険を1つの屋根の下で提供したいと考えている。このスタートアップ企業は、家、クルマ、バイク、スマートフォンに保険を提供しており、消費者がモバイルアプリを使って新しい保険商品に加入したいと考えていると踏んでいる。なぜなら、その方が便利だし、新しい機能が増えるからだ。

関連記事:モバイルアプリで保険を管理できる仏LeoCareが約19億円を調達

例えば、同社は「TakeCare」という新機能を開発中だ。共同創業者でCEOのChristophe Dandois (クリストフ・ダンドワ)氏は「これはWaze(ウェイズ)のようなもので、危険度の高い地域に入ったときに教えてくれるものです」と話してくれた。

しかし、TakeCareはスピード違反取り締まり区間を警告するものではない。その代わりに、Leocareアプリは、その地域でよく交通事故に遭う人がいるかどうかを教えてくれる。同社はこの機能のために、交通安全のオープンデータを活用している。同様に、もし隣人が週末に自分のクルマを使いたい場合、数回のタップで2人目のドライバーを追加し、月曜日には削除することができる。

また同社は、意味のあるところで、データを利用して価格を調整している。例えば、Leocareでは、ユーザーがどのチャンネルを利用して登録したかを追跡したり、ユーザーが使用しているスマートフォンのモデルを調べたり、セッションの時間をチェックしたりしている。つまり、動的な価格設定が可能なのだ。

また、保険に加入したいときも、やはりモバイルアプリを使えばいい。電話で連絡することもできるが、ほとんどの顧客がすでにアプリのほうを利用している。

長期的なビジョンは非常に明確で、Leocareは、私たちが所有するすべてのモノと、定期的に行うすべての事をカバーする単一の契約を作りたいと考えているのだ。利用者が必要なときにいつでも保険のオプションを微調整できるようにするべきだ。同社は、自転車保険のような商品も追加したいと考えている。旅行保険のような単発の保険商品でない限り、基本的にはすべてLeocareでカバーできるかもしれない。

また、多くの人たちが同じものに二重にお金を払ってしまっているため、すべてを集約することそのものに意味がある。例えば、家の保険は通常、盗難に備えるものだ。自宅での盗難はLeocareの家財保険でカバーされているので、自転車保険では家の外での盗難をカバーできるわけだ。

同社は現在、複数の保険会社と提携する総代理店として活動しており、保険商品を自社ブランドで販売している。

「今回の資金調達では、同じモデルを踏襲しつつ、独自のリスクキャリアを使用する機能を追加する予定です」とダンドワ氏は述べている。保険商品によっては、Leocareが最初から最後まで保険商品を管理することになるかもしれない。

新しい保険商品に加えて、同社は新しい市場にも進出したいと考えており、まずはスペインなどの南ヨーロッパに進出したいと考えている。現在、Leocareのアクティブな顧客数は6万5000人で、2022年は1億ユーロ(約129億円)の収益を目指している。

画像クレジット:Leocare

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(文:Romain Dillet、翻訳:Akihito Mizukoshi)

「動物なし」のモッツァレラチーズの商品化を進めるNew Cultureが約28億円を獲得

Allied Market Research(アライド・マーケット・リサーチ)によると、チェダーやモッツァレラの販売に牽引され、米国のチーズ市場だけでも2019年には343億ドル(約3兆9300万円)、2027年には455億ドル(約5兆2200万円)に達し、年平均成長率は5.25%になると予測されている。

それに比べて、ヴィーガンチーズの業界は小さく、同社の調査によると、2019年の市場規模は約12億ドル(約1370億円)、2027年には44億ドル(約5050億円)に達すると予測されている。

しかし、このような大きなギャップにもかかわらず、シンジケートの投資家たちの「牛がいない牛のチーズ」を販売するNew Culture(ニュー・カルチャー)への、シリーズAでの2500万ドル(約28億6900万円)の資金投入は止まらなかった。それどころか、投資家たちは、ベイエリアを拠点とする設立3年目のこのスタートアップ企業が、動物を使用しないモッツァレラを通じて、市場を大きく成長させることができると考えている。投資家のSteve Jurvetson(スティーブ・ジュルベッソン)氏によれば、味も香りも伸び方もミルクチーズのようであり、彼が「これまでのところ、非常に不愉快だ」と表現したほとんどのヴィーガンチーズとは一線を画す。

ジュルベッソン氏によると、不足している成分は牛乳のカゼインタンパク質で、これまでは牛乳からしか摂取できなかったという。一方、New Cultureでは、精密な発酵プロセスにより、カゼインタンパク質を大量に生産しているという。VegNewsの記事に説明されているように、New Cultureは、巨大な発酵タンクを使って、糖液を与えた後に目的のタンパク質(αカゼイン、κカゼイン、βカゼイン)を効果的に発生させるよう微生物にDNA配列を注入しているそうだ。

その後、カゼインを回収し、水、植物性油脂、ビタミン、ミネラルなどと混ぜ合わせてモッツァレラを作る。

コレステロールや乳糖が含まれていないため、より健康的な製品ができあがる。また、環境にも優しい。実際、乳製品を使ったチーズを1oz(28.35g)生産するのに必要な水の量は56gal(約211L)といわれている。(土地の使用量もはるかに少なくて済む)。

なお、New Cultureのモッツァレラは近所の食料品店では販売されていない。まだいまのところは。計画では、まず2022年から全国のピザ屋にこのチーズを卸すことになっている。

ニュージーランド出身で、遺伝学と微生物学を学び、以前は教育関連のレビューサイトを立ち上げて販売していたNew Cultureの共同設立者兼CEOのMatt Gibson(マット・ギブソン)氏は、最終的には、ヨーグルトやアイスクリーム、さらには牛乳も作ることができるだろうと述べている。しかし、当面はモッツァレラが中心であることを強調した。

New Cultureのラウンドは、Ahren Innovation Capital(アーレン・イノベーション・キャピタル)とCPT Capital(CPTキャピタル)がリードした。また、ADM Ventures(ADMベンチャーズ)、Be8 Ventures(ビーエイト・ベンチャーズ)、S2G Ventures(S2Gベンチャーズ)、Marinya Capital(マリンヤ・キャピタル)、そしてジュルベッソン氏とパートナーのMaryanna Saenko(マリアンナ・サエンコ)が運営するFuture Ventures(フューチャー・ベンチャーズ)が新たに参加した。

今回の資金調達には、SOSVのIndieBioプログラム、Bee Partners(ビー・パートナーズ)、Mayfield(メイフィールド)、Bluestein Ventures(ブルースタイン・ベンチャーズ)、Kraft Heinz(クラフト・ハインツ)のコーポレートベンチャー部門であるEvolv Ventures(エボルブ・ベンチャーズ)など、以前からの支援者も参加している。

画像クレジット:New Culture

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(文:Connie Loizos、翻訳:Akihito Mizukoshi)

Slopeが「グローバルB2B決済のStripe」を目指し、初めての資金調達

Alice Deng(アリス・デン)氏とLawrence Murata(ローレンス・ムラタ)氏は、人工知能企業で働いていたときに、それぞれ自身のファミリービジネスからヒントを得て、Slope(スロープ)を創業した。同社は「今買って後で払う(BNPL)」サービスを企業が簡単に提供できるようにする。

「世界的なパンデミックの前、サプライヤーは請求書の日付から30日以内に支払うという条件を延長したりしていましたが、その程度では中小企業にとって信用を築くのは難しいのです」とムラタ氏はTechCrunchに話した。

「世界的な大流行により、企業間決済のオンライン化が加速しました。私たちは、支払いをオンライン化し、企業の資金調達を容易にすることで企業に力を与えたいと考えました」とムラタ氏は語った。

企業は数秒で承認を得ると、分割払いを提示することができる。顧客は支払いの際、自分に合った支払い方法を選べる。Slopeは、融資、引受、債権回収を担当し、製品やサービスが提供されたときに企業に支払う。

Slopeの仕組み。画像クレジット:Slope

デン氏とムラタ氏はY Combinatorで2回創業しており、直近では2021年のサマーコホートに参加した。参加したときは今の会社ではなかったが、方向転換して現在のSlopeのビジネスモデルを作り、8月に立ち上げた。

すでに同社は、過去30日間で取扱高が15倍になるなど、驚異的なペースで成長している。この3カ月間で、米国、カナダ、メキシコ、インド、シンガポールの販売業者の顧客を獲得した。近々、中国、ブラジル、ヨーロッパの販売業者がウェイティングリストに加わる予定だ。

同社は11月22日、Global Founders Capitalのほか、Dropbox、DoorDash、Opendoor、Plaid、PlanGrid、Mercury、Pilotの創業者らからシードで800万ドル(約9億円)を調達したと発表した。今回の資金調達の目的は、Slopeのチームを拡大し、顧客中心の体験を実現するためのインフラを構築し、ウェイティングリストの販売業者にサービス提供を開始することだ。

世界のB2B決済市場は、2020年には8700億ドル(約99兆円)だったのが、2028年には1兆9000億ドル(約217兆円)に達すると予測されている。同時に、127兆ドル(1京4500兆円)の決済フローがB2B決済によるものだと推定され、これも2028年までに200兆ドル(2京2800兆円)に増加すると予想されている。

「我々のビジョンは、グローバルB2BのStripe(ストライプ)になることです」とデン氏は話す。「B2Bで勝利するためには、AffirmやAfterpayのようなB2Cプレーヤーが取り組む必要がなかった、グローバルなクロスボーダー取引のインフラと中核となる技術を構築する必要があります」

また、デン氏とムラタ氏は何百もの中小企業にBNPLの必要性を聞き取り調査し、Slopeが製品を開発する前から既に契約を結ぶ結果となったが、これは市場に大きなニーズがあることを証明するものだとデン氏は指摘する。

Global Founders CapitalのパートナーDon Stalter(ドン・スタルター)氏はSlopeの成長について、「最初から印象的で、今のステージとチームの規模からして、私たちがこれまでに見てきた世界的な急成長企業の1つです」と語る。

企業はこれまで事業融資を銀行に頼ってきたが、それは「ジャンキーなプロセス」だった。テクノロジーを駆使し、そのプロセスを5倍の速さで改善できる企業は大きなディスラプターになり、100倍にできれば革命を起こすことができる、とスタルター氏は付け加えた。

その大きなB2B決済市場を狙い、ビジネスの可能性を広げる人工知能と新しいテクノロジーで攻めることで、デン氏とローレンス氏にはそれができるとスタルター氏は確信している。

画像クレジット:Slope

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi