運送管理SaaS「アセンド・ロジ」のascendがプレシリーズAエクステンションで5000万円調達、累計調達額約2.5億円に

運送管理SaaS「アセンド・ロジ」のascendがプレシリーズAエクステンションで5000万円調達、累計調達額約2.5億円に

運送管理SaaS「アセンド・ロジ」を開発するascend(アセンド)は12月14日、プレシリーズAのエクステンションラウンドにおいて、第三者割当増資による5000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、B Dash Ventures(BDV)が運用するベンチャーキャピタルファンド。調達累計額は約2億5000万円となった。

アセンド・ロジは、現在手作業・アナログでなされている運送事業者の運行管理業務をデジタル化することで一元集約し、運送業者の売り上げに直結する物流データ(荷物、車両、運転手、ルート等)を可視化するサービス。同時に、これらデータを基に運送事業者の経営改善に資するインサイトを提供するという。

また受注側による物流データの可視化には、発注側である荷主のポートフォリオを運送事業者側が把握・分析できるという側面もあり、双方が対等な交渉力を備える、健全な経済のあり方にもつながっていくものと、同社は考えているそうだ。

BDVは、地方中小企業のDX推進を目的とし、2021年10月に、地域金融機関への強いネットワークを持つ株式会社あおぞら銀行との合弁会社であるB Sparkを設立。ベンチャー企業の持つDXのナレッジと地方中小企業のDXニーズを効果的に結びつける挑戦を行っている。今回、BDVの運営ファンドからの出資を契機として、ascendもB Sparkの持つ地域金融機関とのネットワークを効果的に活用し、地方の中小運送業者のDX支援を強化できるよう務めるとしている。

Uberからスピンアウトした歩道走行ロボットServe Roboticsが約15億円獲得

Uber(ウーバー)傘下のPostmates(ポストメイツ)から3月にスピンアウトした自動運転によるサイドウォークデリバリー(宅配)会社のServe Robotics(サーブ・ロボティクス)が、拡張シードラウンドを1300万ドル(約15億円)で完了した。得た資金で、成長に向け歩道走行ロボットを増産し、新たな顧客層や地域への拡大計画を加速する。

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「当社の目標は、今後2~3年のうちに、米国の主要都市すべてにロボットを配備することです」と、Serveの共同創業者でCEOのAli Kashani(アリ・カシャニ)氏はTechCrunchに語った。

今回のラウンドには、Uberが戦略的投資家として参加した。また、Delivery Heroが出資するDX Ventures、セブン-イレブンのコーポレートベンチャー部門である7-Ventures、Wavemaker Partners傘下で、フードオートメーションのベンチャースタジオであるWavemaker Labsも参加した。本ラウンドは、Serveが3月に実施したシードラウンドを拡大したもので、ベンチャーキャピタルのNeoやWestern Technology Investmentなどの既存投資家に加え、起業家や、エンジェル投資家のScott Banister(スコット・バニスター)氏も参加した。

Serveは2018年から、ロサンゼルスの複数の地域でPostmatesの顧客に配達を行ってきた。その頃同社は、まだ「Postmates X」という社名で、配達プラットフォームPostmatesのロボット部門だった。2020年に商用サービスを開始した。同社のロボットは、ロサンゼルスとサンフランシスコの100以上の加盟店から、非接触型の配達を数万件実施したという。同社は11月の発表で、2022年初めからLAでUber Eats(ウーバーイーツ)の顧客に対し、オンデマンドのロボット配達サービスを提供すると明らかにした。

カシャニ氏は、シリーズAラウンドの前に新たな戦略的投資家を迎えることは意味のあることで、参加した投資家の顔ぶれに同社の2022年の動きに関するヒントが隠されていると述べた。

「Uber Eatsの顧客やPostmatesの顧客以外にも浸透しつつあります。2022年はLAで営業地域を拡大するとともに、新たな都市にも進出する予定です」とカシャニ氏は話す。「セブン-イレブンとDelivery Heroが出資しました。彼らとのコラボレーションについて今後ご紹介できると思います。他にも数多くのパートナーと協議中であり、準備が整い次第お伝えします」。

コンビニ大手のセブン-イレブンは、自動運転による配送に馴染みがある。同社は最近、Nuroと共同で、Nuroの自動運転車を使った商業配送の小規模試験を開始した。また、韓国のセブン-イレブンの運営会社が、同国のスタートアップNeubilityが開発した歩道走行ロボットの実験を開始した。2016年には、セブン-イレブンはネバダ州リノで、ドローン企業Flirteyと共同で自動運転配送の実験を行った。Delivery Heroも過去に歩道走行ロボットの実験を行った。2018年にはStarship Technologiesを起用して、デリバリー会社Foodoraの顧客にサービスを提供した

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「Serve Roboticsは、米国の主要都市に自動運転による配送をもたらし、最先端の自動技術でロボット分野をリードしています」と、DX VenturesのパートナーBrendon Blacker(ブレンドン・ブラッカー)氏は声明で述べた。「この革命的な技術は、配送の未来を再構築する可能性を秘めています。私たちはアリ氏のビジョンと彼が集めたワールドクラスのチームに投資します」。

カシャリ氏によると、シードラウンドの完了以外にも、Serveは自主性の向上についてのニュースをいくつか予定しているが、具体的な内容には触れないという。Segwayのロボットプラットフォームを自社の将来の車両に採用する契約を締結したばかりのCocoのように、自動運転のためには人間の関与が重要だと主張する競合他社もある。一方Serveは、可能な限りリモートパイロットを方程式から排除することを目指している。

「私たちのロボットは、ほとんどの場合、自動運転モードで独立して動くことができます」とカシャニ氏はいう。「このことは、安全性と経済性に非常に重要な意味を持ち、当社の車両を商業運用できる理由の1つでもあります」。

人間が関与すると、海外のリモートオペレーターを使ったとしても、経済的にはうまくいかないとカシャニ氏はいう。ただし同氏は、人間に頼ることが合理的ではないケースは、1対1の関係、つまり1人の人間が1台のロボットをモニターするということを1つ1つ行う場合だけだと認めた。CoCoと同様、Serveの問題は、街中に配置した複数のロボットを、1人の人間がモニターするというところまで自律性を高めるにはどうすればよいかということだ。

「ロボットには、ネットワークが切断されたときや誰かがミスをしそうになったときに、自分自身を安全に保つためのオンボード機能が必要です」とカシャニ氏は話す。「ロボットが道路を横断するときなどは、ロボットを見守っていただきたいのです。それは単に、安全の観点から、そういう時に人間とクルマが関わるからです。ロボットが理解できない場合、人間にバトンタッチすることもあれば、そうでないこともあります。通常は、ロボットが自分で状況を把握しようと試み、それができなければ人間が介入します。そうするのは、1つには時間がかかるからです。時間に追われていると、待ちたくないですからね」。

歩道走行ロボットによる配達は、業界としての盛り上がりと、最も洗練された技術と最良の市場戦略を持つ企業間の競争が始まったばかりだ。今回の資金調達と、それにともなうパートナー企業の登場により、Serveはすでに規模拡大に向けて準備を整えつつある。

「セブン-イレブンは私たちと協業できるコンビニエンスストアの代表であり、Delivery Heroは私たちが協業できる配送プラットフォームだといえます」と、Serveの広報部長であるAduke Thelwell(アデューク・テルウェル)氏はTechCrunchに話した。「私たちは、レストランチェーンとの提携、将来的には医療品の配送、薬、アルコール、大麻なども視野に入れています。このように、私たちはさまざまな分野でパートナーシップを築いています」。

画像クレジット:Serve Robotics

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

DoorDashがニューヨークでの「超速」配達開始でギグワーカーではなく正社員に頼る雇用モデルもテスト

DoorDash(ドアダッシュ)は米国時間12月6日、10〜15分で配達する「超速」配達をニューヨーク市のDashMart1店舗で始めることを発表した。まずはチェルシー地区の新店舗からスタートし、今後数カ月内にニューヨークや他の地域でも店舗や提携を増やしていく予定だ。そして、これらの新しい配達サービスを提供するために、同社はギグワーカーではなく正社員に依存する新しい雇用モデルのテストも開始する。

同社は、2020年4月にデジタルコンビニエンスストアチャネルDashMartを立ち上げた

DashMartでは、日用品やコンビニエンスストアにあるような商品を販売している。DashMartは商品約2000点を取り扱うマイクロフルフィルメントセンターで、DashMartの倉庫担当者が注文品をピックアップして梱包し、Dasherと呼ばれる配達員が注文品を集荷して顧客に届けるという仕組みになっている。本日から、デリバリーゾーン内のDoorDashの顧客は、DoorDashのアプリまたはウェブサイトにアクセスし、DashMartに注文して配達してもらうことができる。なお、DashMartチェルシー店の営業時間は毎日午前7時から午前2時までだ。

15分という配達時間を実現するために、超速配達ではDashMartからの配達範囲を狭くすることで配達員の配達移動時間を減らし、慣れ親しんだルートを通るようにしている。また、DoorDashによると、配達に使用する電動自転車の速度は時速20マイル(時速約32km)までとなっている。

そしてDoorDashは、超速配達では一定量の仕事とより多くの収入を求める配達員に新たな機会を提供すると発表した。DoorDashが新たに設立したDashCorpsは、定期スケジュールで働き、マネージャーに報告する配達従業員を雇用する。従業員には、時給15ドル(約1700円)〜の賃金に加えてチップが支払われ、医療・歯科・眼科保険、従業員支援プログラム、フレキシブルスペンディングアカウント、通勤手当など正社員の福利厚生が提供される。

DashCorpsの従業員は、特別にデザインされた新しいアプリを使用し、品出し、顧客サポート、管理業務など、配達以外の仕事も担当する。制服を着用し、平均週20時間の勤務となる。多くはフルタイムで働くとのことだ。

DoorDashは現在、ニューヨーク市内の400以上の地元のコンビニエンスストアや食料品店と提携していて、DashCorpsとのパートナーシップを通じて、より多くのローカル店舗に拡大していく予定だと話す。

この新しい雇用機会は、DoorDashが厳しいギグワーカーモデルから脱却し、戦略を転換していることを示している。同社はギグワーカーの雇用権を実現しようとする規制と戦ってきたいくつかのギグ企業の1つだ。今回の発表は、DoorDashが死守してきた既存のギグワーカーモデルからの脱却を意味している。

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「当社は、多くの人々の生活に適した経済的機会を提供するリーダーであることを誇りに思っています。そして今、DashCorpsが提供する、これまでとは異なるタイプの新しい雇用機会に期待しています」とDoorDash社長Christopher Payne(クリストファー・ペイン)氏は声明で述べた。

配達従業員に安全トレーニングと装備を提供するのに加え、正社員向けの新しい配達アプリにはDoorDashのアプリ内安全ツールキットSafeDashも統合される。最近導入されたこのツールキットは、同社の配達員が安心して仕事ができるようサポートするためのものだ。SafeDashは現在、ニューヨーク、シカゴ、フィラデルフィア、デトロイト、サンフランシスコ、ロサンゼルスで利用でき、年内に全米の配達員がSafeDashを利用できるようになる予定だ。

同社はまた、ニューヨークの中小企業との今後のパートナーシップに反映させるため、新たに中小企業諮問委員会を設置したことを発表した。そしてニューヨークの中小企業擁護・社会支援団体であるYemeni American Merchant Association(YAMA)とも提携した。

画像クレジット:DoorDash

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(文:Aisha Malik、翻訳:Nariko Mizoguchi

川崎重工、無人VTOL機K-RACERと配送ロボットの連携による完全無人物資輸送の概念実証に成功

川崎重工、無人VTOL機K-RACERと配送ロボットの連携による完全無人物資輸送の概念実証に成功

川崎重工は11月29日、無人VTOL機「K-RACER」と配送ロボットを連携させた無人物資輸送の概念実証に成功したと発表した。無人VTOL機に配送ロボットを搭載して飛行して、着陸後に配送ロボットが目的地へ荷物を届ける一連の作業を実施し、人の手を介さない完全無人による荷物の配送を確認できた。

K-RACERは、2020年に飛行試験を行った機体を改修し、100kgのペイロードを実現したもの。カワサキモータース「Ninja H2R」のスーパーチャージャー付きエンジンを搭載している。無人VTOL機は今後、長野県伊那市から委託を受けて実施する「無人VTOL機による物資輸送プラットフォーム構築事業」でも使用する予定という。

配送ロボットは、無人VTOL機に搭載可能で、荒れた路面や段差のある道路でも走行できるように開発された電動車両。

概念実証は、以下の流れで行われた。川崎重工、無人VTOL機K-RACERと配送ロボットの連携による完全無人物資輸送の概念実証に成功

  1. 手動積み込み:有人での配送ロボットへの積み込み
  2. ロボ自動乗り込み:配送ロボットが自動走行で駐機中の無人VTOL機へ接近し、自動で乗り込む
  3. 自動離陸:無人VTOL機が配送ロボットの乗り込み後に自動で離陸
  4. 自動飛行:無人VTOL機があらかじめ定められた経路を自動で飛行
  5. 自動着陸:無人VTOL機があらかじめ定められた着陸地点に自動で着陸
  6. ロボ自動離脱:無人VTOL機が着陸後、配送ロボットが自動で無人VTOL機から離脱し、配送目的地へ自動走行
  7. 手動取り出し:配送ロボットが自動走行で配送目的地へ到達後、有人で荷物を取り出し

川崎重工では今後、物流業界の労働者不足、道路状況や地形に左右されない物資輸送、山小屋や離島などへの安定した物資輸送のためのシステム開発といった社会課題の解決に貢献したいと話している。

セグウェイがCocoとの提携で歩道走行型ロボットによる配達に初進出

Segway(セグウェイ)は歩道を走行する配達ロボットに将来性を見出し、この急成長中の業界の主要メーカーとなるべく準備を進めている。

同社は、マイクロモビリティシェアリングのほぼすべての主要事業者に電動スクーターを供給しているが、ロサンゼルスに拠点を置く配達ロボットのスタートアップCoco(ココ)と提携し、部分的に自動化された、遠隔操作で操縦される歩道用ロボット1000台を製作する。Cocoは、2022年第1四半期に、ロサンゼルスおよび米国の他の2都市でロボットを展開する予定だ。

Coco Oneと命名したロボットの導入は、Cocoがビジネスモデルを実証するために最初に製作した「車輪付きの箱」である100台のCoco Zeroに続くものだ。同社の車両担当SVP、Sahil Sharma(サヒル・シャルマ)氏によると、同社はさらに1200台の車両を発注しており、これはまだ保留中の契約だが2022年5月または6月までに導入できる見込みだ。

Segwayは何年も前からロボティクスの研究開発を行っており、2016年には専門部門を設立した。同社がロボットLoomoを発表したのも同じ年で、基本的にはスクーターのベースに、IntelのRealSense RGB-Dカメラ、音声認識、自動運転機能を備えた小さなロボットヘッドを搭載している。

今回のCocoとの提携は、Segwayが「ロボティックモバイルプラットフォーム」を大規模に展開して配送する初めての試みだ。Segwayのグローバル事業開発担当副社長のTony Ho(トニー・ホー)氏は、今回の提携はロボットによる配達分野への長期的なシフトを示唆するものでもある、と話す。

「これは、我々のパートナーシップの始まりにすぎません」とホー氏はTechCrunchに語った。「私たちはプロダクト面にとどまり、Cocoはオペレーターになります。これは、マイクロモビリティの分野で、当社が車両やハードウェアを提供し、オペレーターが市やスタッフとの関係や運営全体を担うのと似ています。今は、2017年のスクーターの時のように、業界全体が盛り上がっている状態です。これは土地の奪い合いです」。

Segwayのeスクーターとeバイクの事業は好調で、車両について学んだこととサプライチェーンのリソースを共有することで、ロボティクスの成長を拡大するためのレバレッジになるとホー氏は話す。

「Cocoは非常に若い企業であり、自分たちが得意とすることに集中し、サプライチェーンの拡張をSegwayに委託するという賢い選択をしました」とホー氏は指摘し、Cocoとのパートナーシップは独占的なものではないと述べた。「我々はこの件に非常に真剣に取り組んでおり、迅速に事業拡大できる勝ち馬を支援するのが当社の戦略です」。

自律型配達ロボットの市場規模は、2027年までに世界で2億3659万ドル(約267億円)に達すると予想されており、最近ではそのパイの一部を支配しようとするさまざまなプレイヤーが登場している。歩道走行分野で競合するStarship Technologies(スターシップ・テクノロジーズ)は資金として総額1億200万ドル(約115億円)を調達し、Kiwibot(キウィボット)は最近、大学のキャンパスでの展開を拡大した。そして、車道で活動するNuro(ニューロ)は6億ドル(約678億円)を調達しセブン-イレブンとの提携を発表したばかりだ。Cocoは8月に3600万ドル(約40億円)のシリーズA資金を調達して累計調達額は4300万ドル(約48億円)となり、調達した資金の一部はSegwayの車両に使用した。

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Segwayは、歩道走行ロボットが特にラッシュアワー時の人口密度の高い都市部において、ファーストマイルとラストマイルの配達を実現する最も効率的な方法となると期待しているという。

「製品の観点からいえば、よりシンプルなデザインは、オペレーションの信頼性を高め、故障を減らし、初期の設備投資を抑えることができます」とホー氏は話す。「パンデミックによる労働力不足は、ロボットの普及に拍車をかけました。また、動きが遅く、積載量の少ない車両は、歩道を歩く歩行者にも優しいため、都市部では歓迎されています」。

ロボット配達のスタートアップの多くは実際にはまだ自律型ではなく、Cocoも例外ではない。カメラ、GPS、コンピュータなどを搭載した同社の車両は遠隔操作で操縦されるが、基本的な自律走行機能は備えている。例えば、直線走行が可能で、障害物があれば停止することができる。これにより、1人のパイロットが同時に複数の配達を監視したり、横断歩道のような厄介な場所では操作を引き受けたりすることができる。

Cocoの共同創業者でCEOのZach Rash(ザック・ラッシュ)氏はTechCrunchに対し「私たちは、非常にビジネス優先のアプローチをとっています」と述べ、完全な自律性の実現を待っていては市場参入が遅れるだけだと指摘した。「多くの人がL4やL5、90%の自律性について話しています。私たちは、この地域で一定量の配達を行うために、何人のパイロットが必要なのかを本当に理解したいと思っています。『自動運転車をいかにシンプルにするか』ではなく、『私たちのビジネスにとって何が理にかなうのか』『それをサポートするためにどのような技術を構築すべきか』を一から考えて構築しました。パイロットは我々のオペレーションの中心であり、今後も中心であり続けるでしょう。だからこそ、彼らを中心に製品を構築し、可能な限り効率化を図っていきます」。

Cocoのシステムは、さまざまなルートから収集したデータを使い、その情報をもとに自動運転ソフトウェア内の機械学習アルゴリズムをトレーニングする。しかし、大規模なフリートを持つことの本当の利点は、コミュニティのより多くのエリアをマッピングし、ロボットにとってより速く、より簡単なルートを見つけることができることだとラッシュ氏は話す。

「私たちは配達の1秒1秒を大切にしているので、最も効率的なルートを作るために街をマッピングし、接続性、歩道のインフラ、歩行者の通行量、車の通行量を考慮しています。フリート全体から多くのことを学んでいます。これは自律走行に限ったことではありません。私たちは、可能な限り効率的に街をナビゲートできるように、これらの情報をすべて収集しています」。

画像クレジット:Coco

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

レシピ動画「クラシル」のdely、スーパーの店頭商品を最短30分でオンデマンド配送する「クラシルデリバリー」開始

レシピ動画「クラシル」のdely、生鮮食品・日用品などスーパーの店頭商品をオンデマンド配送する「クラシルデリバリー」開始

管理栄養士監修のレシピを動画で提供するサービス「kurashiru」 (クラシル) 運営のdelyは12月1日、スーパーマーケットから商品をピッキングして最短30分で配達する「クラシルデリバリー」(Android版iOS版)の提供開始を発表した。

クラシルデリバリーは、生鮮食品から日用品まで、普段スーパーで購入する商品をオンデマンドで配送するサービス。ウェブやモバイルアプリから注文すると、指定したスーパーにおいて配達員がピッキングを行ない、指定の配送先に最短30分で届ける。ユーザーが利用しているスーパーを対象とすることから、プライベート商品を含めた「いつも買う商品」が揃っていることになるため、店頭での買い物と同様の豊富なラインナップから商品を選べるとしている。「今日の晩ごはんで使う食材が買いたい」など、「今欲しい」タイミングで配送できるという。

専用アプリ上では、スーパーでの買い物状況を把握でき、商品に関して直接コミュニケーションを取ることも可能で、ユーザーニーズに沿った対応を配達員にリクエストできる。また配達員の配達状況が把握可能となっており、いつ届くか正確に分かるため配達時間のために長時間拘束されることもない(完全非接触の受け渡しも可能)。レシピ動画「クラシル」のdely、生鮮食品・日用品などスーパーの店頭商品をオンデマンド配送する「クラシルデリバリー」開始

利用料は、商品代金のほかに送料(税込330円)とサービス料(税込198円)。商品代金が6000円以上の場合は送料が無料になる。

スタート期の配達エリアは東京都内3区(港区・渋谷区・中央区。一部地域を除く)、対応店舗はピーコックストア5店(代官山店・恵比寿南店・芝浦アイランド店・三田伊皿子店・トルナーレ日本橋浜町店)。受付時間は10:30〜19:00(土日・祝日も含む)。配達エリアと対応店舗は首都圏を中心に順次拡大予定。レシピ動画「クラシル」のdely、生鮮食品・日用品などスーパーの店頭商品をオンデマンド配送する「クラシルデリバリー」開始

スーパーマーケットが「クラシルデリバリー」を導入する場合

スーパーマーケットがクラシルデリバリーに出店(導入)する場合については、初期費用および固定費無料。商品在庫の管理ツールを含むすべてのシステム開発、スーパーマーケットの商品の写真撮影はdelyが行なう。商品のピッキング、ユーザー対応、レジでの支払い代行、配送までをクラシルデリバリーが行ない、スーパー側に配送費用の負担は発生しない。レシピ動画「クラシル」のdely、生鮮食品・日用品などスーパーの店頭商品をオンデマンド配送する「クラシルデリバリー」開始レシピ動画「クラシル」のdely、生鮮食品・日用品などスーパーの店頭商品をオンデマンド配送する「クラシルデリバリー」開始

Bilitiの電動トゥクトゥクなら都市のラストワンマイル問題も解決

創業から1年も経っていないBiliti Electricは、米国の密集した都市で電動の三輪自動車、トゥクトゥクを、当たり前に見かけるものにしたいと考えている。

米国時間11月17日、にロサンゼルスモーターショーで記者会見に臨んだ創業者でCEOのRahul Gayam(ラフル・ガヤム)氏は、この電動で運転席にドアがないGMW Taskmanという三輪のトゥクトゥクは、アジアとヨーロッパではすでに使われていると語る。インドのGMW Electricが作っているこの車両はヨーロッパや日本などにも輸出されており、ガヤム氏によるとすでに1200万回、2000万マイル(3200km)以上の配達を行ったという。同社はこれまで1400台ほど販売している。

現在、Biliti Electricは米国市場への進出を狙っている。

北米ではこのオートショーでデビューしたこのクルマは、機能性が高い電動の配達車を目指しており、充電しやすく、小さいわりに積載量は大きい。

販売価格8000ドル(約91万2000円)のGMW Taskmanは、世界のいろいろなところで見かけるトゥクトゥクなどに似ていて、ニューヨークやロサンゼルスやサンフランシスコなどの密集した都市で苦労しているAmazonやUPS、FedExのバンやトラックの、ラストワンマイルの配達の難しさを解決する車両になるよう設計されている。

画像クレジット:Biliti Electric

同社によると、Taskmanは1回の充電で最大110マイル(約176km)走り、最大1500ポンド(約680kg)の荷重を積載できる。荷台のスペースはおよそ64.6平方フィート(約6㎡)となっている。充電は家庭用の110Vなら7時間、220Vなら3時間半だ。商用車両にそのようなダウンタイムは困るので、Bilitiは交換バッテリーパックを無料で提供している。バッテリー交換はシザーリフトを使って1分間ですむ。

同社がオプションで提供している、荷台の三面につける太陽光パネルを使うと、それはガルウイングドアのように跳ね上がって空に対して水平になり、太陽の放射を吸収してバッテリーを充電する。Bilitiによると、その場合は理想的な条件下で充電時間は3時間半から4時間だ。ガヤム氏によれば、これらの車両の多くは、太陽の直射時間の長い北回帰線と南回帰線の間の熱帯地方で使われるという。

ロサンゼルスモーターショーでのガヤム氏のコメントによると、同社が狙う顧客はAmazonやWalmartのようなeコマースやリテールの大手だ。すでに米国とEU、日本、英国、UAE、インドで、AmazonやWalmart(Flipkart)、Ikea(イケア)、Zomatoなどにより実地テストが行われているが、最初の顧客はもっと小さな企業になりそうだ。

Bilitiのウリは、顧客の規模にかかわらず、ラストマイル配送を解決することだ。ルクセンブルグに拠点を置く投資家GEM Global Yieldが最近行った4億ドル(約456億円)のPIPE投資は、目標達成に必要な資金の一部となるだろう。

いろいろな荷物の、その最後のワンマイルの配達は、世界中の密集している都市を苦しめる難題であり、交通渋滞と地球温暖化と事故の増加に大きく貢献している。小さなパッケージや品物が配達センターから個々の目的地へ向かうときは、同じ場所に向かう他の荷物と一緒に小さな車両に積まれることが多い。そしてそのラストマイルは、ロジスティクスと環境の両方にとって悪夢であり、AmazonやFedExやUPSなどの全員を困らせている。そして今ではグッズを消費者や企業に届けるために、地元の郵便局が利用されることも多い。

Bilitiの車両は、1つの答えを提供するかもしれない。しかし、限界もある。まず、このクルマの最大速度は時速24マイル(約40km)だ。用途は、パークウェイから遠い都市部に限られるだろう。途中にハイウェイがあったり、州間ハイウェイなどは当然無理だ。

ガヤム氏によると、この車両は、カリフォルニア州などでは1月から登録可能になるという。

画像クレジット:Biliti Electric

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(文:Abigail Bassett、翻訳:Hiroshi Iwatani)

イオンネットスーパーの「先取り配送便」で最長10日先までの配送便が予約可能に

レシピ動画「クラシル」がネットスーパー機能開始、イオンと連携しレシピ検索から買い物まで提供

最長10日先までの配送便を予約できる──。これを約220店舗(イオン / イオンスタイル)で展開されているイオンのネットスーパーにて行えるようになりました。

イオンのネットスーパーは、専用サイトで注文した食料品・日用品を最短即日配送(一部地域・店舗を除く)することが可能なサービス。コロナ禍での外出自粛や自宅での食事が増えたことが追い風となり、同様のサービスが増えています。

利用者は、注文時に「先取り配送便」という項目を選択することで、最長10日先までの配送便を予約できます。ただし、配送日の2日前に商品の注文を完了する必要があり、指定日までに手続きをしなければ、自動的にキャンセル扱いとなります。

イオンネットスーパーの「先取り配送便」で最長10日先までの配送便が予約可能にイオンネットスーパーの「先取り配送便」で最長10日先までの配送便が予約可能に

このほか下記も注意点です。

・関東・北陸信越・東海・近畿・中四国の店舗で、一部対象外エリアがある

・注文先の店舗にて選択できる配送便の日時が異なる

イオンのネットスーパーをはじめとするネットスーパー事業は、注文を受けた商品を各家庭へ配送する便利なサービス。これによりレジ待ち解消だけでなく、店舗のない地域の買い物需要をカバーできることから、今後も業種の枠を超えた競争が激化しそうです。

(Source:イオンネットスーパーEngadget日本版より転載)

物流・輸送業向け「炭素測定・除去」APIを開発するPledgeが約5億円調達

気候変動の危機が迫る中、多くの企業が自らの役割を果たしたいと考えている。しかし、顧客に「今回の配送にともなうCO2排出量をオフセットしてください」とお願いするのは、たいていの場合、木の実を割るのにハンマーを使うようなものだ。カーボンオフセット関する透明性はほとんどない。さらに、中小企業は高品質のカーボンクレジットにアクセスしたいが、同時に製品、サービス、取引レベルでの影響も計算したい。そして、非常に不正確な「スキーム」ではなく、カーボンクレジットを小さい単位で購入できるといいと考えている。

Pledge(プレッジ)は、貨物輸送、配車サービス、旅行、ラストマイルデリバリーなどの業界を対象としたスタートアップで、顧客の取引に関わるカーボンオフセットを提示することができる。

Pledgeは、Visionaries Clubがリードするシードラウンドで450万ドル(約5億円1300万円)を調達した。Chris Sacca(クリス・サッカ)氏のLowercarbon CapitalとGuillaume Pousaz(ギヨーム・プサ氏、Checkout.comの創業者でCEO)の投資ビークルであるZinal Growthも参加した。Pledgeは、これまでクローズドベータ版として運営されてきた。

同社は、Revolut(レボリュート)の草創期の従業員であるDavid de Picciotto(デビッド・デ・ピチョット)氏とThomas Lucas(トーマス・ルーカス)氏、Freetradeの共同創業者で元CTOのAndré Mohamed(アンドレ・モハメド)氏が創業した。まず物流業と輸送業を対象にスタートする。同社によると、企業はPledge APIを組み込めば、カーボンニュートラル達成に向け、出荷、乗車、配送、旅行にともなう排出量を測定・軽減することができるようになるという。このプラットフォームは、分析や洞察に加え、時間をかけて排出量を削減するために推奨する方法を顧客に提示することを目指す。

Pledgeによると、同社の排出量計算方法は、GHGプロトコル、GLECフレームワーク、ICAOの手法などのグローバルスタンダードだけでなく、ISO基準にも準拠しているという。

重要な点として、Pledgeのプラットフォームでは、個人投資家が株式の一部を購入するように、企業は炭素クレジットの一部を購入することができ、また、ETFのように異なる方法論や地域を含むバランスのとれたポートフォリオにアクセスできる、と同社は話す。

Pledgeの共同創業者でCEOのデビッド・デ・ピチョット氏は次のように説明する。「現在、どのような規模の企業も利用できる、自社の排出量を把握・削減するための簡単で拡張可能な方法は存在しません。従来のCO2測定やオフセットのソリューションは、コストが高く、導入が難しいため、限られた大企業だけが利用できます。私たちがPledgeを立ち上げたのは、どのような企業でも、高品質で検証済みの気候変動対策製品を、可能な限り簡単かつ迅速に導入できるようにするためです」。

Visionaries Clubの共同創業者でパートナーのRobert Lacherは次のように語る。「Pledgeは、あらゆる企業が環境への影響を測定・軽減するためのアプリケーションを立ち上げる際に必要とする導管を開発しています。金融インフラプロバイダーが続々と登場し、あらゆる企業がフィンテックになれるようになったのと同様、Pledgeは関連するツールとその基盤となるソフトウェアインフラを提供し、気候変動対策を実現する会社となります」。

Lowercarbon CapitalのパートナーであるClay Dumas(クレイ・デュマ)氏はこう付け加える。「炭素除去の規模を拡大する際の最大のボトルネックは、供給と需要を結びつけることです。Pledgeのチームは、世界のトップレベルの金融商品開発で学んだことを応用し、ユーロやドル、ポンドを使って、空から炭素を吸い取ることに取り組んでいます」。

ピチョット氏は、大手プライベートエクイティファームでESGチームに所属していたとき、LP(主に年金基金)から、投資先企業のESG、特に気候に関するKPIの透明性や報告を求める声が増えるのを目の当たりにした。同氏は、報告・計算を合理化し、高品質のカーボンクレジットにアクセスして、社内外のステークホルダーにさらなる透明性とツールを提供する方法があるはずだと考えた。

「炭素市場が構築されたメカニズムを調べれば調べるほど、金融サービス業界との類似性が見えてきました。我々は、FreetradeやRevolutのような業界をリードする企業を設立や、設立支援の経験により、気候変動の流れを変えるユニークな切り口を提供できるのではないかと考え、調査を開始しました」とピチョット氏は述べた。

画像クレジット:Pledge / Pledge founders

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

Alphabet傘下のWingがショッピングセンターの屋上からドローンで配達する試験プログラムを開始

Alphabet(アルファベット)の子会社であるWing(ウイング)が、同社のドローンを使ってショッピングセンターの屋上から商品を飛ばす試験プログラムを開始した。実は同社最大の市場であるオーストラリアのローガン市で、このプログラムはすでに始まっている。Wingはオーストラリアの商業施設グループ、Vicinity Centres(ヴィシニティ・センターズ)と提携し、ローガン市のショッピングセンター「Grand Plaza(グランドプラザ)」で、この新しいビジネスモデルをテストしている。Wingのドローンは、発射台の真下にある店舗から、顧客に向けて直接注文された商品を飛ばしているのだ。

Wingは2年前からローガン市で事業を展開しているが、これまで企業は同社の配送施設に商品を配備する必要があった。参加企業が店舗を構えている場所から直接配達を行うのは、今回が初めてのことだ。8月中旬よりWingはGrand Plazaの屋上からドローンを飛ばし、同ショッピングセンター内の加盟店から寿司やタピオカティー、スムージーなどの商品を顧客に届けている。さらに現地時間10月6日には、市販の医薬品やパーソナルケア・美容製品の配達も開始した。

Grand Plazaでの運用開始から6週間で、Wingのドローンはすでにローガン市郊外のいくつかの地域へ2500件の配達を行っている。このAlphabet傘下の企業は、同ショッピングセンター内の提携加盟店に留まらず、配達エリアの拡大も計画している。

Wingのオーストラリアにおける政策・地域担当責任者を務めるJesse Suskin(ジェシー・サスキン)氏は、Grand Plazaでの試験運用が成功すれば「Vicinity Centresが運営する他の商業施設でも、同様のモデルを展開できる可能性がある」と述べている。

Grand Plazaでの試験運用が、より多くのVicinity Centresの店舗で屋上配達を行うことにつながるかどうかはまだわからないが、Wingがローガン市でかなりの成功を収めていることは確かだ。2021年に入ってから、同社は市内で5万回を超える配達を行っており、8月には総計10万回目の配達達成を祝ったところだ。

関連記事:ドローン配達のWingがサービス開始から2年で10万回の配達を達成、豪パイロットサービスで

編集部注:本記事の初出はEngadget。執筆者のMariella Moonは、Engadgetの編集委員。

画像クレジット:Wing

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(文:Mariella Moon、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

花のような形状のMatternetのドローン自動発着ステーションがスイスの病院で初めて実用化

ドローンによる配送が物流の将来にどのように適合していくのか、誰にもはっきりとはわからない。しかし、1つ確かなことは、ドローンが大事な荷物を、注文主の家の芝生に直接落としてしまうわけにはいかないということだ。その解決策となりそうなのが、Matternet(マッターネット)の「Station(ステーション)」と呼ばれる、自動化されたドローンの着陸スペースと荷物の受け取り・送り出し機能を備えたタワーだ。この花のような形の構造物は、ついにレンダリング画像から現実の世界へ飛び出し、スイスの医療施設に設置された。

このStationは2020年初めに発表があったものだが、コンセプトのレンダリング画だけでは、最終的にアイデア通りのものになるかどうかはわからない。今回のケースでは、完全に60年代のSF映画の小道具のようなものができあがった。

しかし、この特異な形状は、荷物運び用ドローンが着陸してバッテリーを交換するための安全な場所を提供し、雨や風などの天候、そして罪のないロボットから医療用ペイロードを奪おうとする困り者から、ドローンと荷物を保護するという目的に適っている。

初めて実際に設置された今回のケースでは、ドローンが輸送するのは温度管理されたハードシェルケースで、中には通常は陸路で移送される多数のバイラル瓶が入れられる。これらは検査サンプル、血液、薬など、使用期限が短く、何らかの理由で施設間を移動する必要があるものが対象となるだろう。

ドローンで別の施設に運ぶために、スイスポストのキャリアに入れる小瓶を仕分けする女性(画像クレジット:Matternet)

Stationの内部で、ハードケースはドローンから取り外され、許可された人が取り出せるように保管される。支柱の部分には、病院の制限区域に入るときに使うようなIDバッジで開閉が保護された小さな収集用のドアが備わる。これは通常の認証システムと統合させることで、ドローンによって運ばれた荷物を、空気チューブやカート、マニラ封筒のように、しかし同じ建物内にいなくても、簡単に受け取ることができるようにするアイデアだ。

最初のStationはルガーノのEOC病院グループに設置されたが、最初の大規模な展開はアブダビで、市の保健局および同地のドローン配送会社SkyGo(スカイゴー)と協力し、市内の40カ所にStationのネットワークを構築する予定だ。これらも、比較的軽量で緊急性の高い医療品の搬送という基本的に同じ目的のために使用されるが、その規模はより大きなものになる。

アブダビで提案されているMatternet/SkyGoネットワークの地図(画像クレジット:Matternet/SkyGo)

2021年8月、Matternetはドローン企業として初めて、Pfizer(ファイザー)製ワクチンを拠点間で輸送した。これはどこの病院ネットワークや保健所も実現を望んでいる短期輸送だ。もし繁華街で大量の注射が必要になったら、多数の人々を避難させるのではなく、配給所や近くの診療所から数百人分のワクチンを空輸することができるようになる。

もちろん、このような貴重な荷物は、中庭や屋根の上に無造作に置き去りにするわけには行かない。だからこそ、Stationはこの種のネットワークに必須となるだろう。とはいえ、ネットで注文した食品を配達してもらうために、自宅の裏庭にStationを設置しようとは思わないほうがいい。

画像クレジット:Matternet

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ローカルの店舗を軸に15分デリバリーの食料品レースに参加するJOKRがシリーズAで188億円調達

「より良質で、サステナブルで、地域と製品を尊重する、新たなAmazonのような存在を世界が求めているという事実に、当社のビジョンを見据えています」。Amazonに取って代わるという展望を主張するのは(その創業者の宇宙参入と同じように)かなりのことだが、JOKRの創業者兼CEOであるRalf Wenzel(ラルフ・ヴェンツェル)氏は、自社に見込みがあると固く信じている。そしてその目標に向けて大規模な資金調達を進めている。

急成長を続ける食料品と小売配達のプラットフォームが7月下旬、1億7000万ドル(約188億円)という巨額のシリーズA資金調達ラウンドを完了した。今回のラウンドは、同社が米国、ラテンアメリカ、欧州で事業をスタートさせてから3カ月後に行われたものだ。JOKRのチームは、foodpandaとDelivery Heroの両方を生み出した人物で構成されており、少なくとも外側から見ると、このチームは大きなビジネスを構築する才能を持ち合わせているように思われる。

本ラウンドを主導したのはGGV Capital、Balderton Capital、Tiger Global Managementで、Activant Capital、Greycroft、Fabrice GrindaのFJ Labs、ラテンアメリカのテック特化VCであるKaszekとmonashees、そして初の機関投資家としてHV Capitalも参加した。

2021年6月にローンチしたニューヨークを本拠とするJOKRは、米国、ラテンアメリカ、欧州の各都市へのロールアウトを計画している。現在、ラテンアメリカのブラジル、メキシコ、コロンビア、ペルーと欧州のポーランド、オーストリアにわたる9都市で展開中だ。

ヴェンツェル氏は次のように語っている。「発表した投資は、即時配送、ローカル製品オファリングへのフォーカス、サステナブルな配送とサプライチェーンを軸に、新世代のオンラインショッピングの最高のプラットフォームへと成長を遂げ、かつてないスピードで事業を拡大し続けるための、JOKRの原動力となるでしょう。このような傑出した国際的テック投資家グループのパートナーとなり、目の前にある大きな好機を捉えるサポートを得られることを、大変光栄に思います」。

JOKRが掲げる強みは、ローカルの小規模企業が他のローカル企業から調達した商品をプラットフォーム経由で販売できるようにし、複雑な物流や配送ネットワークを必要とせずにリーチを広げることができるというものだ。一方で、その地域的な側面は、同社のモデルにサステナビリティを組み込むことにもつながっている。

GGV Capitalのマネージングパートナーで、新たにJOKRの取締役に就任したHans Tung(ハンス・トゥン)氏は次のように述べている。「ラルフ(・ヴェンツェル氏)は、小売サプライチェーンを変革するフードデリバリーのためのオールスターチームを結成しました。フードデリバリーのエクスペリエンスと、在庫の配分と発送を最適化する高度なデータ機能の組み合わせにより、JOKRの事業モデルは他と一線を画しています。小売をより迅速に、民主的に、サステナブルなものにするという彼らのミッションに協力できることを、心から楽しみにしています」。

JOKRは、GorillasやGetirのような他のファストデリバリー食料品プロバイダーに続き、スーパーマーケットやコンビニエンス商品、医薬品だけでなく、通常のスーパーマーケットでは手に入らない「限定的な」ローカル商品の15分デリバリーを提供している。ただし、現時点ではGoogle Playでのみ利用可能となっている。

筆者とのインタビューで、ヴェンツェル氏は次のように語った。「当社は食料品に重点を置くInstacartに近い存在で、オファリングはGorillasよりもはるかに広範囲にわたっています。利便性やあらゆる種類の食料品カテゴリーにフォーカスしているだけでなく、スーパーマーケットのオファリングにも近づいており、最大の競合要素は、伝統的なスーパーマーケットやオフラインのスーパーマーケット、そしてオンラインの食料品のプロポジションにあると見ています。垂直統合により直接調達を実現し、中間業者を排除して独自の配送倉庫の構築を進めています」。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Dragonfly)

ウォルマートがフォード、Argo AIと共同で自律走行車の配送サービスを開始

米国時間9月16日、Walmart(ウォルマート)、Argo AI(アルゴAI)、Ford(フォード)は自律走行車による配送サービスをテキサス州オースティン、フロリダ州マイアミ、ワシントンD.C.で開始すると発表した。

顧客はWalmartの注文プラットフォームから食料品などをオンラインで注文する。ArgoのクラウドベースのインフラストラクチャがWalmartのオンラインプラットフォームと統合されて、注文が転送され顧客の自宅へ配送するスケジュールを決める。開始当初は商用サービスの提供は各都市の一部のエリアのみで、その後広げていく。テストは2021年中に開始する。

WalmartとFordは2018年秋に配送サービスのPostmatesとともに限定的なテストを実施した。このテストはマイアミでで実施され、自動運転車を想定した車を使って食品配送に関するユーザーエクスペリエンスを研究するものだった。Argo AIはこのテストには関わっていなかった。

今回の連携ではArgo AIの自動運転テクノロジーを統合したFordの車両が使われる。Argo AIの共同創業者でCEOのBryan Salesky(ブライアン・サレスキー)氏によれば、今回の目的は自律走行車による配送サービスの可能性を広く示すことだという。

今回の発表には、自律走行車を使って人や場合によっては荷物を運ぶ商用サービスを開始するための、Fordの研究と開発の方針が現れている。同社は専用の自律走行車を現実にどう運用するかについてビジネス面のテストをしてきた。2016年にはArgo AIを支援し、Argo AIとともに自動運転システムの開発とテストをしていた。

今回の発表から、オースティンとマイアミが初期の商用化計画の中心地となることもわかる。

2021年夏にArgo AIとFordは、マイアミとオースティンを皮切りに今後5年間で多くの都市でLyftの配車サービスネットワークに1000台以上の自動運転車を展開する計画を発表した。Argoの自律走行テクノロジーが搭載された初のFordの自動運転車は、2021年中にはマイアミでLyftのアプリから利用できるようになると予想される。

画像クレジット:Photo by Jared Wickerham/Argo AI

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Kaori Koyama)

アフリカでワクチンなどの必要物資を自社開発の自律走行型電動ドローンで届けるZiplineが278億円調達、物流ネットワークを拡大

アフリカ全土に医療用品を配送する事業として創業し、ドローンによる配送サービスを提供するスタートアップ、Zipline(ジップライン)が新たに2億5000万ドル(約278億円)の資金を調達した。今回の資金調達により評価額が27億5000万ドル(約3060億円)となった同社は、アフリカと米国における同社の物流ネットワークの拡大を今後さらに押し進める予定だ。

当初はルワンダで名を馳せたZipline。その後ガーナにも手を伸ばし、自律走行型電動ドローンを使って血液、ワクチン、救命薬などの必要物資を届けている。2014年に設立されたZiplineは、垂直統合型の企業である。つまり、無人のドローン、物流ソフトウェア、それに付随する発射および着陸システムの設計と製造をすべて自社で行なっている。TechCrunchの取材にて、ZiplineのCEOであるKeller Rinaudo(ケラー・リナウド)氏はこれは必要に迫られてのことだったと述べている。同社がドローン技術の開発を始めた当初、既製のものでは信頼性が低く、うまく統合することができないということにすぐに気づいたと同氏は振り返る。

「結局、フライトコンピューター、バッテリーパック、機体など、基本的にすべてのものをシステムから取り外さなければなりませんでした。そしてそれらすべてをゼロから作らなければなりませんでした」。

Ziplineは自らをドローン企業とは考えておらず、むしろ即席の物流プロバイダーであると同氏は強調している。また、同社は自律型ドローンのモデルを継続的に改善し続けているものの、過去5年間における成功の多くは、物流ネットワークの構築に関するものだった。困難に満ちていたとリナウド氏がいう初年の2016年に、ルワンダで事業を開始したその後、同社はルワンダにて物流会社のUPSとの提携を実現。日本でトヨタグループと提携し、またナイジェリアのカドゥナ州とクロスリバー州との連携も開始している。米国ではノースカロライナ州のNovant Health(ノヴァント・ヘルス)と提携して医療機器や個人用防護具を提供している他、小売大手のWalmart(ウォルマート)とも提携して健康・ウェルネス商品を提供している。

関連記事:米小売大手ウォルマートが医療品配達スタートアップのZiplineと提携、米アーカンソー州でドローン配送テストを拡大

パンデミックで打撃を受けた多くの企業とは異なり、Ziplineは個人用防護具だけでなく新型コロナウイルス(COVID-19)のワクチンの納入という同社の事業をさらに加速させる明白な機会を得た。同社によると、年内に240万回分の新型コロナ用ワクチンを納入する予定だという。

同社は、処方箋などの医薬品を人々の家に直接届けるいうようなサービスも今後視野に入れていこうと考えているという。「テレプレゼンスを完成させるためには、即席物流サービスの存在がとても重要だと病院は考えているようです。電話一本で医者と話せるようになっても、それでは必要物資はどうしようかという事になるからです」と同氏は話す。

画像クレジット:Zipline

同社は現在、パンデミックのため規制当局から与えられた緊急免除の下での運営から、完全な商業運営の認証に移行するため、連邦航空局(FAA)に働きかけている。FAAの認証プロセスにおいてZiplineが競合他社より有利な点は、Ziplineのシステムが安全であるということを示す何千時間もの飛行データを同社が持っているという点だ。成功すれば、同社はこのような認証を受けた初のドローン配送会社の1社となる。

長期的に見れば他の産業にも目を向ける可能性はあるが、現時点では医療分野に焦点を当てているとリナウド氏はいう。同氏によると、ここ数カ月だけでもナイジェリアで5件、ガーナで4件、新しく配送センターとのサービス契約を結んだ他、米国の病院システムとも「複数の新規サービス契約」を結んでいるという。今回の資金調達は、Baillie Gifford(ベイリー・ギフォード)が主導し、以前も投資したTemasek(テマセク)とKatalyst Ventures(カタリスト・ベンチャーズ)、新規投資家のFidelity(フィデリティ)、Intercorp(インターコープ)、Emerging Capital Partners(エマージング・キャピタル・パートナーズ)、Reinvest Capital(ラインベスト・キャピタル)の支援を受けて行われている。調達資金は新規契約のためのインフラ構築に使用される予定である。

今後3年ほどで、全米の一戸建て住宅の大半にZiplineのサービスを提供するというのが同社の目標だとリナウド氏はいう。

「トヨタやウォルマートなどの大企業がこの即席物流分野に大きな投資を始めているという事実は、人々がこの分野の到来を認識しているということの明確な表れだと思っています。変革の波が押し寄せているのです。これは医療システムや経済システムのあり方を大きく変えるものであり、物流によって人々に平等にサービスを提供できるようにするというのは、本当にエキサイティングなことです」。

画像クレジット:Zipline

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Dragonfly)

30分以内にiPhoneをお届け?ハイエンドブランド製品を宅配するドイツのArive

ヨーロッパと米国では、15分以内に食料品が配達されることが普通になりつつあり、この産業はスタートアップの巨大な戦場と化している。このためヨーロッパと米国でのスタートアップは、10分または20分以内の食料品配達のために、前四半期だけで31億ドル(約3409億円)以上を調達した。しかし、そうしてみなが争っているのは平均注文価格がかなり低い市場なのだ。だが、もしそれが数百ドル(数万円)単位のもので、しかも冷蔵を必要としなかった場合はどうなるだろう?

その場合、ハイエンドの消費財がラストワンマイルで配達されることになるため、これはおそらく消費者にとって最新の「15〜30分間を争う戦場」になるだろう。

この分野に登場した新顔がドイツのスタートアップのArive(アライブ)だ。Ariveはハイエンドの消費者ブランドを30分以内に配達する。今回、468 Capital、La Famiglia VC、Balderton Capitalから600万ユーロ(約7億8000万円)のシード資金を調達した。

有名なブランドを在庫に持ち、ラストワンマイルの配送を工夫することで、Ariveはフィットネス製品、化粧品、パーソナルケア、家庭用品、ハイテク製品、ファッションを提供する。消費者はアプリを介して注文を行い、配達は自転車のみを使って30分以内に行われる。

こうしたスタイルが今までなかったわけではない。パンデミックにより、私たちの多くが自宅で仕事や遊びをするようになって、都市の中心部の交通量は、新型コロナ以前のレベルをまだ下回っている。

Ariveは、ブランドと直接提携してオンデマンド配達用の製品を提供し、スピードと利便性を求める新しいタイプの顧客に新しい流通チャネルを提供すると述べている。

Ariveは現在ミュンヘンで利用可能であり、つい最近ベルリン、フランクフルト、ハンブルクでもローンチされた。30分の配達保証は、食料品業者ほど多数のマイクロフルフィルメントセンターを必要としないことを意味し、インフラストラクチャのコストを低く抑えるのに役立つ。

Ariveの共同創業者であるMaximilian Reeker(マクシミリアン・リーカー)氏は、次のように述べている「超高速食料品配達の分野は、徐々に競争が激しくなっていますが、私たちが愛してやまないブランドは、いまだに3日間配送スキームから抜け出せずにいることがわかりました。現代の時間のない消費者にとって、これは長すぎます」。

468Capitalの投資家であるBardo Droege(バルド・ドローゲー)氏は、次のようにコメントしている。「都市はダイナミックで動きの速い場所です。そこに住む人々は自分たちのライフスタイルを反映したツールやサービスを求めています。だからこそ、15分で届く食料品というカテゴリーが急速に普及したのはそれが理由です。Ariveのチームもこの流れに乗ることができると確信しています」。

画像クレジット:Arive

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(文: Mike Butcher、翻訳:sako)

データで最適化を図るサブスク型のワイン販売会社Bright Cellars社が約12億3200万円の資金調達を達成

6年前に設立されたサブスクリプション型のワイン販売会社Bright Cellars(ブライト・セラーズ)は、多くの新興企業と同様に、時間をかけて進化してきた。アメリカのウィスコンシン州ミルウォーキーを拠点とするBright Cellarsは、かつては会員の嗜好に合ったサードパーティ製のワインを送っていたが、現在では顧客に関する十分なデータが蓄積されているため、他のブランドのワインは販売していない。その代わりに、Bright Cellarsの「オリジナル」商品の中には確かに他のブランドから別の名前で販売されているものもあるが、パートナーであるワインメーカーにレシピの調整を指示することで、成功を収めるケースが増えている。

「私たちは、デジタル製品を最適化するのと同じように、ワインを最適化しています」と語るのは、サンフランシスコ出身の共同創業者兼CEOのRichart Yau(リチャード・ヤウ)氏だ。彼のスタートアップは、早い段階で地域のアクセラレータープログラムに参加し、そこに留まったが、現在では会社の大部分が分散化した。

今朝早く、ヤウ氏とこの方向転換について話をした。Cleveland Avenue(クリーブランド・アベニュー)を中心に、Revolution Ventures(レボリューション・ベンチャーズ)やNorthwestern Mutual(ノースウェスタン・ミューチュアル)などの投資家が参加して、シリーズBとして1,120万ドル(約12億3200万円)の資金調達を行っている。同社は現在、合計で約2,000万ドル(約22億円)ほどの資金を調達している。

また、ヤウ氏は、すべてのデータ収集によって見えてきた業界のトレンドについても語ってくれた。

TC:ワインのポートフォリオを作っていますよね。それはどういうことなのでしょうか?

ヤウ氏:私たちは、土地を所有していません。[Gallo(ガロ)やConstellation(コンステレーション)のような大手企業と同じように]主にサプライヤーと仕事をしていますが、以前よりも規模が大きくなったので、ワインの味や見た目をデザインすることができるようになました。このワインはどのくらい甘くすべきか、酸味はどうか、どのような色やブランド、ラベルにしたいのか、どの層のお客様がこのワインを一番楽しめるのかなど、さまざまな変数を最適化することができます。

TC:御社が調合したワインの中で、どんなものがあるのですか?

ヤウ氏:誰もスパークリングワインに使っていないブドウ品種を使って、シャンパーニュ方式で製造されたスパークリングワイン(シャンパーニュワインではなく、国産ワイン)がありますが、これは私たちのプラットフォームでもトップクラスの評価を得ています。スパークリングワインは、本当に好調です。

TC:サービスの登録者数はどのくらいいますか?

ヤウ氏:それは言えませんが、パンデミックの期間中、新規加入者数だけでなく、お客様の購買がD2C(ダイレクトtoコンシューマーの略)に流れる割合が増えたことで、かなり良い影響を生んでくれました。状況がすこし改善した夏になっても、家で引き続き料理をしたり、ワインを飲んだりする人が増えていました。

TC:このプラットフォーム上では、ワインの平均価格はいくらですか?

ヤウ氏:20ドル(約2200円)から25ドル(2750円)です。

TC:ブドウの仕入れ先はどこですか?

ヤウ氏:ワシントン州やカリフォルニア州などの西海岸が多いですが、南米やヨーロッパなどの海外にもブドウのサプライヤーがいます。

TC:ワインの種類はどれくらいありますか?また、どれくらい試し置きしているのですか?

ヤウ氏:これまでに約600種類のワインを試しましたが、常時40~50種類のワインを用意しています。すべてをずっとストックしているわけではなく、あまり売れないものは基本的に排除しています。

TC:多くのD2Cブランドが、最終的に実店舗を出店します。御社はそれをしていませんね。なぜでしょうか?

ヤウ氏:いつかはそうなるかもしれませんが、私たちはD2Cであることを気に入っていますし、登録会員の皆様が自宅で仕事をしていて、家にいても荷物を受け取ることができる今の世界では、D2Cであることはとても意味のあることだと思います。これは 、一般的なeコマースのトレンドとも一致します。食料品をお店で買わなくなったということは、ワインもお店で買わなくなったということですよね。

TC:ボトルはどこから出荷されるのですか?

ヤウ氏:様々な場所からですが、主に(ベイエリアの)サンタローザからです。

TC:カリフォルニアのワインメーカーの中には、ブドウを守るために日焼け止めを吹き付ける人もいるようですが、天候が与える影響を実感されていますか?

ヤウ氏:(気候変動が)ワイン業界に影響を与えているのは確かです。幸いなことに、私たちは取引先に柔軟性があるので、事業の健全性の観点からはそれほど影響を受けていません。なぜなら、当社の事業の多くはカリフォルニアで行われているからです。2年前は物流が滞り、出荷できない日があったり、気温の上昇による影響を受けたりしました。しかし幸いなことに、今年はこれまでのところ、オペレーションやサプライチェーンの混乱はありません。

TC:老舗企業(レガシー企業)から提携や買収の話を持ちかけられたことはありますか?

ヤウ氏:会話はしていますが、私たちは多くのデータを持っていて、彼らを手助けすることができるので、パートナーシップという意味での会話をしています。例えば、新しいワインを発売し、フォーカスグループのような形でフィードバックを得て、誰が何を好むかを把握することができます。また、あるワインの2種類のブレンドをスプリットテストして、どちらが良いかを調べることもできます。彼ら老舗のワイン企業との会話もそこから始まります。

TC:それでは、データの対価としてお金が支払われるのですね。

ヤウ氏:将来的にデータを売ることに反対はしませんが、どちらかというと、大きなワイン会社でイノベーションがどのように活用できるかを学ぶ機会としてアプローチしています。各州で大規模な営業力やディストリビューターをもつConstellationが得意とすることと同じことができるとは思っていませんが、補完的な方法でできることは、消費者を理解するということです。

TC:外部の人が驚くような発見はありましたか?

ヤウ氏:プティット・シラーは、プラットフォーム上でカベルネやピノ・ノワールと同等か、それ以上の成果を上げています。カベルネやピノはプティット・シラーの50倍もの市場規模がありますが、会員の皆様にはとても気に入っていただけているようです。

また、すべての層の人々が、思っている以上にメルローを気に入っています。メルローは嫌われがちですが、赤のブレンドワインで成功しているものを見ると……。

TC:人々はメルローに対してどんなイメージを持っているのですか?

RY:(笑)映画『Sideways』を見たことがありますか?やはり、それが関係しているのでしょうね。(作中、ピノ・ノワールを崇拝するキャラクターに、メルローがとにかく嫌われている)一方、ピノ・ノワールは依然として人気がありますが、(他のワイン販売業者が)思っているほど、人々はピノ・ノワールを好きではありません。

[原文へ]

小型無人飛行船でミドル・マイルの配達が抱える問題に挑むBuoyant

近年、飛行機やヘリコプターに取って代わられた技術である「飛行船」の復活を目指す企業が続々と登場している。

フランスのFlying Whales、英国のHybrid Air Vehicles、Lockheed Martin、億万長者のSergey Brin(セルゲイ・ブリン)氏などが、特に貨物輸送に重点を置いた飛行船プロジェクトを開発中だ。しかし、まだ顧客へのサービスを実際に開始したものはない。

Buoyantは、その最初の企業になりたいと考えている。

Buoyantは、ミドルマイルの貨物を運ぶ小型の無人飛行船を開発することを目的として、2021年Y Combinatorを卒業した。倉庫から家庭への配送ではなく、倉庫から倉庫への配送を考えてみて欲しい。創業者のBen Claman(ベン・クラマン)氏とJoe Figura(ジョー・フィグラ)氏は、小型飛行機やヘリコプターでの輸送に比べて、輸送コストを半分にできると述べている。また、他の企業が失敗している点については、小型であることで乗り越えられるという。Buoyantの最終的な飛行船は、建設に多額の資金と揚力に必要な大量のガスを必要とする数百フィート(数百m)の巨大な飛行船とは違い、約60フィート(約18.28m)の長さしかない。

クラマン氏とフィグラ氏は、MITのハードウェアエンジニアで、宇宙船やアンテナの製作に携わってきた。2人とも、以前の職場では、アラスカのような遠隔地(クラマン氏が育った地でもある)に低コストの通信手段を提供するプロジェクトに取り組んでいた。

Buoyantの創業者であるジョー・フィグラ氏とベン・クラマン氏(画像クレジット:Buoyant)

「ジョーと私がこれらの会社で働いていたときに話していたのは、インターネットだけでなく、実際の商品をこれらの地域に届けるのがいかに難しいかということだった」とクラマン氏はいう。「このような地域では、人々はオンラインで買い物をし、物を送ってもらっている。届くまでに何週間も何カ月も待たされることもある」。

クラマン氏は、Y Combinator参加時は、既存のプロトタイプに近い飛行船を作ることを想像していたと付け加えた。例えば、アマゾン(Amazon)のラストマイル配送ができる小型の機体だ。

「多くの企業と話をした結果、地方のラストマイルよりも地方のミドルマイルの方がはるかに大きな問題であることがわかった。例えば、ある地域に5000人の人が住んでいるとすると、その中の1人にラストワンマイルの配達を委託することができる。しかし、メインハブからその場所まで配達物を届けるのは、実際にはとても困難で、とにかくお金がかかる」。

この問題を解決するために、Buoyantは「ハイブリッド」なバッテリーを用いた電気飛行船を開発した。つまり、揚力の約70%を空気より軽いガス(この場合はヘリウム)で発生させる。残りの30%の揚力は、ティルトローター(垂直/短距離離着陸のための手法の1つ)の構造によるものだ。Buoyantによると、このハイブリッド設計により、貨物を降ろす際の困難な問題を解決することができる。ティルトローターを採用したことで、離着陸の際にヘリコプターに近い運用が可能になるからだ。

 

しかし、ヘリコプターには、カーボンファイバーやステンレススチールでできた1500~1万ポンド(約680〜4535kg)の重量を持ち上げる能力が必要だが、Buoyantの飛行船は、有効荷重自体とその機体の重量を持ち上げるだけで済む。これにより、資本コストを削減できるだけでなく、最終的には自律的に飛行することを目指して開発を進めているため、パイロットを使用する必要もない、とBuoyantは述べている。

Buoyantは、これまでに4隻の飛行船を試作し、飛行させてきた。最も最近飛行した小型スケールの船は、長さ20フィート(約6m)、最高時速35マイル(時速約56km)、積載量10ポンド(約4.5kg)だが、最終的な目標は、時速60マイル(時速約97km)前後の巡航速度で最大650ポンド(約294kg)の貨物を運搬できる飛行船を作ることだ。

この飛行船は、Part 107のライセンス(米国でドローンなど、航空機を飛行時に必要なライセンス)を取得して運航している。同社が顧客へのサービスを開始するには、飛行船の耐空性を証明する型式証明と、飛行船を操縦するグループに対する操縦証明の2つの証明を取得する必要がある。「どちらも多くの飛行時間を必要とするが、これが私たちの主な開発活動になる」とフィグラ氏はHackerNewsで述べている。

今後の予定としては、飛行制御システムの改良を続け、数カ月後には小型スケールのプロトタイプでフィールドデモを行う予定だ。Buoyantは、来年には実物大の試作機を作りたいと考えており、その際には自社で製造する可能性が高い、とクラマン氏は語っている。

Buoyantにとって、アラスカの地方航空会社を含む、複数の可能性のある顧客との間で交わした500万ドル(約5億4900万円)相当の趣意書を正式な契約に結びつけるためには、この先のいくつかのステップがとても重要になる。

また、今秋には小型スケールのプロトタイプ、1年後には実物大の機体で、いずれも物流・宅配会社を対象とした2つのパイロットプログラムを予定している。

「人間はコンピューターが登場する前から飛行船を建造していたし、空気力学を理解する前から飛行船を建造していたので、人類が飛行船を建造してきた期間の長さだけでもアドバンテージがある」とクラマン氏は付け加えた。「そこにはたくさんのデータがある。飛行船の開発が止まったわけではない。人類は基本的に、100年以上にわたって継続的に飛行船を開発してきた」。

関連記事:グーグル共同創業者セルゲイ・ブリン氏の災害救助用大型飛行船は水素燃料電池が動力

画像クレジット:Buoyant

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Akihito Mizukoshi)

ウォールマートが他社小売業者向けのラストマイル配達サービスGoLocalを発表

本日、ウォールマートはWalmart GoLocalという名の新たなデリバリーサービス事業を発表した。本サービスは、ほかの販売業者(大規模/小規模問わず)が、ウォールマートがもつデリバリープラットフォームを使って顧客から商品のオーダーを受けられるようにするものだ。販売業者は、配送時間指定や時間指定なしの配送、当日配送を含むさまざまな配送タイプを選んでサービスを利用することができ、配送容量とカバーエリアを顧客のニーズに応じて拡大することが可能になる。

GoLocalは、ウォールマートが当初同社のデリバリーニーズに応えるために開発したサービスによって支えられている。過去3年間ウォールマートは、2時間以内の配達を保証してくれる自社開発のExpress Deliveryサービスの拡大に力を注いできた。同社によると、本サービスは3000件の小売店から16万個以上の製品を取り扱っており、アメリカ人口の70%近くをカバーしているそうだ。そこでこの度、これらの機能をGoLocalを通してアメリカ全土のほかの販売業者にも提供していける準備が整ったとのことだ。

この新しいB2Bサービスのおかげで、販売業者がウォールマートのラストマイルネットワークとロジスティクスを活用することができるようになるものの、必ずしもウォールマート社員が配送するというわけではない。少なくともまず現段階では。

代わりに、GoLocalのラストマイル部分は、ウォールマートのSpark Driverプログラムに加入するギグワーカーによってまかなわれることとなる。また、同ドライバーが、ウォールマートの当日食材配送もサポートする。しかし、当日配送サービスが、付加的にRoadie、DoorDash、Uber傘下のPostmatesといった他社配送サービスにも頼らなくてはいけない一方、GoLocalではそれら他社配送サービスが関与することはないとウォールマートは語っている。

代わりにウォールマートは、自前ベースの配送をより増やせるようGoLocalを時間をかけて拡大させていく予定だ。例えばすでに、ウォールマートはノースウェスト・アーカンソー(アーカンソー州北西部)において、電気自動バンでの自前配送をテスト中だ。これらのバンを用いることで、ウォールマートはSpark Driverの個人用乗用車やトラックには収まらない大きな製品を取り扱う、より多種多様な販売業者のために配送を強化することができるようになる。またウォールマートは、ドローンや、すでに同社がExpress Deliveryサービスで実験している自律自動車のような、最新鋭の技術革新を通してGoLocalデリバリーを進化させていく予定だ。

「我々の顧客のため、安定したラストマイルデリバリープログラムを作るのにかなり努力をしてきた」と、米ウォールマートLast Mile部門役員(SVP)のTom Ward氏は声明で語っている。「これらの機能を活かし、地元の販売業者などさらに別の顧客にサービスを提供することができるようになり喜んでいる。地元のパン屋からだけでなく、全国規模の小売業者からの自動車用品の配送まで、Walmart GoLocalは、販売業者のあらゆる規模と業界に合わせてカスタマイズできるように設計されている。それにより顧客が配達スピードと効率を我々に任せ、彼らが最も得意とする分野に集中することができる。」と彼は加えている。

GoLocalに参加する際、ビジネスの大小規模は問わない。小さな個人経営のお店から全国規模の販売店まで誰でも本サービスの利用を選択することができる。さらにWalmart.comのマーケットプレイスで販売する必要もない。これは、ウォールマートが保管と配送両方を請け負うフルフィルメントサービスではないからだ。これはあくまでラストマイルの配送部分のみだ。商品の在庫管理は各自の販売店となる。

どんな小売店でもGoLocalを利用できるものの、始めるには小売店側で技術的な統合を必要とする。ウォールマートは、顧客が商品を発注した際にGoLocalに通知をしてくれる、自社の既存商用プラットフォームに繋がるためのAPIを提供している。これがGoLocalにドライバーを配備するよう促し、同時にウォールマートが配送の顧客フィードバックを取得するとのことだ。もしこれが広く普及すれば、ウォールマートはローカル配送データを獲得して分析ができるようになり、それにより自社配達事業の改善やフルフィルメントセンターの配置に関する意思決定に役立たせることができるようになる。これは競争上かなりの利点となる可能性を秘めている。

すでに全国規模の小売業者との契約を含め、いくつかの商用パートナーがすでにGoLocalに登録してくれているとのことだが、まだ彼らの名を公開する許可がおりていないとウォールマートは語っている。サービスの価格は、さまざまな機能を備えたホワイトラベルオプションとして各小売業者の個々のニーズに合わせてカスタマイズされていると説明しており、サービスの価格については詳しくは公開しないだろう。

本サービスは、ウォルマートが他の小売業者のニーズに応えることで収益を生み出すために現在進行中のいくつかの取り組みの1つだ。例えば最近では、ウォールマートは自社のeコマース技術へのアクセスを小売業者へ販売すると発表した。これはウォールマートの大きな戦略の一部であり、これまで自社の事業にのみ使用していた技術やサービスへのアクセスを提供することで利益を上げることに期待を向けている。

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【コラム】即日配送サービスがパンデミック後に生き残るためにはスピードだけでは不十分

スピードと利便性を中心としたまったく新しいeコマースの時代が到来した。ビジネスリーダーたちは、より迅速な配送サービスのため、配送能力の強化を優先事項とする必要に迫られている。

PwC(ピー・ダブリュー・シー)が2021年6月、8500人以上の消費者を対象に実施した「世界の消費者意識調査」では、オンラインショッピングの最も重要な要素として「迅速で信頼できる配送」を挙げており、eコマースの世界では配送サービスがますます重要になっていくことが明らかになった。

消費者が即日配送(および同時間配送)サービスモデルに慣れてきた今、配送オプションに対する消費者の期待は高まる一方だ。

実際、モバイルアプリのインテリジェンスプラットフォームであるSensorTower(センサータワー)の最新レポートによると、2021年1月と2月、上位のフード配送アプリは成長を続け、インストール数は前年同期比で14%増加した。しかし、DoorDash(ドアダッシュ)、Uber Eats(ウーバーイーツ)、GrubHub(グラブハブ)は、ユーザー数が増加しているにもかかわらず、利益が出ていない。では、ビジネスリーダーは、どうすれば消費者の期待に応えるスピードと高い収益性を兼ね備えた配送モデルを構築できるのだろうか。

課題:配送アプリが収益性を高めるには、スピード以外の何かが必要だ

競争力を維持するために、配送アプリはサービスを見直し、提供するサービスの幅を広げている。

Uberの食料品・新分野担当グローバルヘッドのRaj Beri(ラジ・ベリ)氏は「アマゾンは『ネクストデーデリバリー(翌日配送)』を推進している。当社は、『ネクストアワーコマース(1時間商取引)』を推進する」と5月に述べている

しかし、配送プロセスの高速化が、必ずしも収益につながるとは限らない。さらに重要なことは、迅速な高速配送を実現しても、宅配サービス全体として優れた顧客体験を提供できなければ顧客のロイヤルティは獲得できないということだ。

配送アプリや、配送サービスを提供しようとしているeコマース企業が直面している主な課題は、顧客にとってのスピードや利便性だけでなく、顧客体験におけるすべての側面を考慮した基盤を構築することだ。例えば、食品を配送する場合、配送を担当する業者は、食品を安全に取り扱い、汚すことなく配送しなければならない。温かいもの、冷たいものにかかわらず、配送中の温度を維持し、注文どおりのものを届ける必要がある。

ソリューション:即日配送には高度なテクノロジープラットフォームが不可欠

あらゆるものが「Uber化」し、消費者の期待が劇的に高まっている昨今、配送ビジネスで利益を上げるためには、配送アプリとドライバーの集団だけでは不十分だ。即日配送サービスを確実に遂行するためには、注文を受けてから顧客の手元に届くまでの間に、いくつものステップが滞りなく行われなければならない。また、商品が複雑であればあるほど、配送プロセスも困難なものとなる。

即日配送サービスを実現すると同時に収益性を高めるためには、顧客の期待に応えるためのテクノロジーを考慮した配送アプリが必要となる。それは、単にユーザー数を増やすためにアプリをデザインするだけではない。優れた顧客体験を提供する即日配送モデルが真に成功するためには、カスタマージャーニーにおけるさまざまな側面を一元的に管理し、顧客の視点でシームレスに見せることができる高度なソフトウェアプラットフォームが必要だ。

収益性の高い配送サービスは、人工知能システムとロボット工学を駆使した自動化システムによって構築される。そのためには、アプリのデザインやユーザー数の増加よりも、まずテクノロジーが重要となる。それ以外の配送ビジネスモデルでは、本末転倒となってしまう。

Domino’s Pizza(ドミノ・ピザ)は、テクノロジーをビジネスモデルの中核に据えることで、配送プロセスを完成させ、全体的な顧客体験を大幅に向上させたブランドだ。その転機となったのは、同社が自らを「ピザを販売するeコマース企業」と定義した時だった。同社は、データ活用に力を入れ、ロボット工学テクノロジーに基づくプラットフォームを導入し、配送プロセスにスピードと効率をもたらす電子配送システムを実現した。そして2021年4月には、ヒューストンの一部の顧客を対象に、ロボットカーNuro(ニューロ)による配送サービスを開始した。

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グラブハブもまた、ロボット機能を配送プロセスに組み込むための取り組みを行っている。最近の報道によると、同社は、ドローンのようなロボットを配備した自動運転ユニットを導入し、大学生に食品を配送することを発表した。このプログラムは、今秋に米国の特定の大学キャンパスで展開される予定で、配送時間の短縮と、できればコストの削減を目指している。

このようにテクノロジーを重視することは、配送アプリの世界ではもちろんのこと、新たに台頭してきた「ネクストアワーコマース」の領域で競争しなければならない企業にとっても重要だ。アプリを開いて商品をクリックし、決済を行って配送の予約をするまで、そしてさらにその先まで、カスタマージャーニーのすべての要素をつなぐことができるテクノロジープラットフォームに投資することが、収益性の高いビジネスモデルを成功させる鍵となる。

即日配送:これから目指すところ

誰もが携帯電話でアプリを開き、何でも欲しいものを1時間以内に届けてもらいたいと願う世の中では、ビジネスリーダーは、自社開発であれ、他社との提携であれ、配送アプリそのものに注目したくなるものだ。しかし、アプリだけに注目するのは、即日配送モデルに対する近視眼的な見方といえる。

その代わりに、ビジネスリーダーは広い視野で、カスタマージャーニーのあらゆる側面を考慮する必要がある。顧客はどのように自社のビジネスに関わっているのか。顧客はどのように自社の商品を探し、どのように見つけているのか。注文を完了するには何が必要で、注文を届けるためにはどのような条件が満たされる必要があるのか。また、注文がスムーズに行われ、顧客の満足を得るためには、注文後に何が必要なのか。

配送アプリとの提携に成功している企業もあるが、これには自社のブランドの評判を、顧客と接する最前線の従業員の役割を果たす他社に委ねるというリスクがともなう。また、既存のeコマースモデルに配送サービスのオプションを追加している企業もある。その場合、既存のテクノロジースタックに統合できるサードパーティのソフトウェアを利用する。残念ながら、この方法には限界があり、複数のコンポーネントを含む規制対象のビジネスには適用できない。

即日配送サービスでシームレスな顧客体験を実現する唯一の方法は、テクノロジーをビジネスの中心に据えた独自のソフトウェアプラットフォームを構築することだ。そうすることで、主要なプロセスを自動化し、配送モデルにスピードと利便性を持たせることができる。また、注文を迅速化するロボットシステムの統合、ビジネスの成長を促進する人工知能プロトコルの組み込み、ビジネスの拡大に合わせた配送モデルのスケーリングも可能となる。

新時代のeコマースで成功するために

「ネクストアワーデリバリー」というキャッチーなフレーズが消費者の支持を得ることは間違いないが、それが利益の向上につながるかどうかは不透明だ。即日配送サービスを中心に収益性の高いビジネスモデルを構築してきた企業のCEOである筆者は、配送システムを支えるテクノロジーに自動化、人工知能、あるいはロボット工学が欠けている場合「ネクストアワーデリバリー」というサービスが収益を向上させるかどうかについては懐疑的だ。

確かに、企業は即日配送での競争を余儀なくされるだろう。しかし、パンデミック以降に明らかになったもう1つの確かな事実は、この新しいeコマースの時代には、スピードだけでは満たされない、消費者の期待の高まりがあるということだ。顧客の満足度は、アプリで注文した商品が顧客のもとに届くまでの時間だけで決まるものではない。

配送サービス市場で成功するには、ビジネスリーダーはいくつかの観点で自問自答してみることだ。即日配送を実現するためには、自社のビジネスのどの部分が必要か。注文方法は直感的か。顧客は注文や配送の状況を確認できるか。届けた商品が正しいことを確認できるか。顧客の期待に応えているか。

そして、最も重要なことは、そのビジネスが、商品の検索、購入から即日配送、さらにその先まで、カスタマージャーニーと配送モデル全体をサポートできるテクノロジープラットフォームの上に構築されているかということだ。これらの質問に「イエス」と答えたビジネスこそが、パンデミック後の世界で成功すると信じている。

編集部注:Cary Breese(ケアリー・ブリーズ)氏は、デジタル薬局NowRxのCEO兼共同創業者。

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画像クレジット:Henrik Sorensen / Getty Images

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(文:Cary Breese、翻訳:Dragonfly)

Uberの第2四半期は配車、配達事業の売上高は成長するも赤字幅は拡大

Uber(ウーバー)は米国時間8月4日、取引開始直後に第2四半期決算を発表した。前日には米国内でのライバルであるLyft(リフト)も同期決算を明らかにしていた

Lyftが調整後EBITDAで黒字をなんとか達成した一方で、Uberはそうではなかったのは注目に値する。しかしUberはDidiやAurora Innovationなど他社への投資のおかげで第2四半期に11億4000万ドル(約1250億円)の純利益を生み出した。

上から順に、Uberのグロスブッキング(取扱高)は計219億ドル(約2兆4015億円)で、前年同期に比べて114%増えた。売上高におけるグロスプラットフォーム支出は39億3000万ドル(約4310億円)となり、前年同期の19億1000万ドル(約2090億円)から105%増となった。

第2四半期の業績は、Uberが税引前で黒字化を達成するという目標に向けて順調に歩むに足るもので、決算発表によると、同社は第4四半期までに調整後EBITDAで黒字を繰り返す。

Yahoo Financeが集めたデータによると、アナリストはUberの売上高を37億4000万ドル(約4100億円)、1株あたり利益はマイナス0.51ドル(約55円)と予想していた。売上高はアナリスト予想を上回ったものの、調整後EBITDA損失額は予想よりも大きくなった。アナリストは、調整後EBITDAで3億2450万ドル(約355億円)の赤字を予想していたが、実際には5億900万ドル(約560億円)の赤字だった。

Uberの株価は時間外取引で8%超下落した。その後は持ち直したが、それでも6%超落ち込んでいる。

Uberの各事業の取扱高に目を向けると、配車部門は第2四半期にこれまでで最大の伸びとなる前年同期比184%増の88億4000万ドル(約9690億円)だった。取扱高全体のかなりの部分を占める配達部門は同85%増の129億1000万ドル(約1兆4155億円)だった。

消費者支出額で大きな差があったにもかかわらず、配達部門の取扱高における売上高の割合は配車部門のものよりも少なくなり、売上高は配達部門が19億6000万ドル(約2150億円)、配車部門が16億2000万ドル(約1780億円)だった。

Uberの中で最も売上高が少ないFreightは前年同期比64%成長し、3億4800万ドル(約380億円)だった。小規模ではあるが、同社はFreight部門をを拡大し、2022年末までに調整後EBITDAベースで収支が合うようにするための手段として戦略的買収や提携を行ってきた。

Uber Freightは7月にプライベートエクイティグループTPG Capitalから22億5000万ドル(約2470億円)でTransplaceを買収した。この取引にはUber株での7億5000万ドル(約820億円)が含まれ、残りは現金で支払われた。

Uberの主要事業である配車事業と配達事業はいずれも黒字ではなく、Uberを調整後の赤字から救うことはできなかった。しかし、同社の配車事業は調整後EBITDAで2020年同期を下回ったものの1億7900万ドル(約200億円)の黒字を達成した。その一方で、配達事業は調整後EBITDAで1億6100万ドル(約180億円)の損失と、またも赤字となった。

Uberの配車事業の調整後EBITDAは、同社の未割り当て費用に比べればわずかなものだ。調整後EBITDAは5億900万ドル(約560億円)の赤字で、赤字幅は前年同期から39%縮小した。それでも収支が合うようになるまでの道のりは長い。

しかしUberの第2四半期には、他からの収入という点で特筆すべきものがあった。同社の11億9000万ドル(約1300億円)という営業損失は、19億3000万ドル(約2115億円)もの営業外収入でかなり改善した。営業外収入の大半は、Didiへの投資での14億ドル(約1535億円)の含み益、Aurora Investmentsへの投資での4億7100万ドル(約520億円)の含み益など、計19億1000万ドル(約2090億円)が「債券と持株」からのものだっった。

Didiは第2四半期に上場した。

地域別業績に目を向けると、Uberの事業が最も早く立ち直ったのはAPAC(アジア・太平洋)地域で、同地域の売上高は前年同期の2億1700万ドル(約240億円)から227%増加し、7億900万ドル(約780億円)に達した。次いでEMEA(欧州・中東・アフリカ)地域の成長幅が大きく、売上高は前年同期の3億5800万ドル(約390億円)から159%増の9億2900万ドル(約1020億円)となった。米国とカナダの売上高は前年同期の11億3000万ドル(約1240億円)から76%増の19億8000万ドル(約2170億円)で、南米はより控えめな44%成長だった。

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カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:Uber決算発表配送

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(文:Alex Wilhelm、Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi