フォードとボルボがカリフォルニア州でEV用バッテリーの無償リサイクルプログラムに参加

Tesla(テスラ)の元CTOであるJB Straubel(J・B・ストラウベル)氏が創業したスタートアップRedwood Materials(レッドウッド・マテリアルズ)は、カリフォルニア州で電気自動車のバッテリーリサイクルプログラムを開始する。Ford(フォード)とVolvo(ボルボ)が設立パートナーとなる。EVの材料調達に圧力が高まっていることが背景にある。

基本的な計画は、Redwood Materialsがカリフォルニアのディーラーや解体業者と協力し、ハイブリッド車や電気自動車の使用済みバッテリーパックを回収するというものだ。ストラウベル氏によると、このプログラムはバッテリーを持ち込む側にとっては無料だ。バッテリーを回収し、適切に梱包して、ネバダ州北部にあるRedwood Materialsのリサイクル施設に輸送する費用は、パートナー企業であるVolvoとFordとともに、Redwood Materialsが負担する。同社は、車種に関係なく、カリフォルニア州内のすべてのリチウムイオン電池とニッケル水素電池を受け入れる予定だ。

「今は混乱していて、人々にとってすばらしい、つまり明白で明確な解決策がないのです」とストラウベル氏はいう。「これは、私たちが変えたいことの本当に重要な部分です。最初はアメリカの誰もが、そしてゆくゆくは世界の誰もが、非常に簡単にバッテリーをリサイクルし、材料がかなり高い割合で回収されるようにしたいのです」。

同社は、スクラップ回収業者やディーラーがバッテリーの回収を組織化するために利用できるポータルを立ち上げた

このパイロットプログラムはまだ初期段階にあり、いくつかの部分は明確に定義されていない。

「強調したいのは、私たちはこのすべてにおいて学習中であり、これはちょっとした西部劇だということです」とストラウベル氏は話す。「少し複雑であることが、これまで実現しなかった理由の一部かもしれないと考えています」。

Redwood Materialsは、循環型サプライチェーンの構築を目指し、2017年に創業した。同社は、携帯電話のバッテリーやノートパソコン、電動工具、パワーバンク、スクーター、電動自転車などの家電製品だけでなく、バッテリーセル製造時に出るスクラップもリサイクルしている。そして、これらの廃棄物を加工し、通常は採掘されるコバルト、ニッケル、リチウムなどの材料を抽出し、それらを再びパナソニックやAmazon(アマゾン)、Ford、テネシー州のAESC Envisionなどの顧客に供給している。

目的は、クローズドループシステムを構築することで、最終的に電池のコストを削減し、採掘の必要性を相殺することにある。

現在市販されている電気自動車には、リチウムイオン電池が搭載されている。電池には2つの電極がある。一方がアノード(負極)で、もう一方がカソード(正極)だ。真ん中に電解液があり、充放電の際に電極間でイオンを移動させる運び屋として働く。アノードは通常、黒鉛でコーティングされた銅箔でできている。

自動車メーカーが電気自動車の生産を拡大し、やがて内燃機関を搭載した自動車やトラックに取って代わるようになると、電池とその材料の需要が急増すると見込まれる。自動車の電動化に取り組む主要自動車メーカーのほぼすべてが、バッテリーセルメーカーやその他のサプライヤーと提携を結び、サプライチェーンの強化に努めている。

2022年初め、既存のパートナーであるパナソニックは、Redwood Materialsとの関係拡大の一環として、Teslaとともに運営するギガファクトリーで製造するバッテリーセルに、2022年末までにリサイクル材をもっと使うと発表した。

Redwood Materialsは、バッテリーセルのアノード側の重要な構成要素であるリサイクル材から製造された銅箔のパナソニックへの供給を始める。Redwood Materialsは2022年前半に銅箔の生産を開始する。銅箔はパナソニックに送られ、年末までにセルの生産に使用される予定だ。

画像クレジット:Screenshot/Redwood Materials

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

フォードマスタングMach-E、テスラのModel 3を抜いてコンシューマー・レポート誌の「最も推薦できるEV」に選出

Tesla(テスラ)の「Model 3(モデル3)」は、過去2年間にわたって「Consumer Reports(コンシューマー・レポート)」誌の「最も推薦できるEV」に選ばれてきたが、同誌は今回、新たなチャンピオンを宣言しようとしている。CRは、Ford(フォード)の「Mustang Mach-E(マスタング・マックE)」がModel 3を押しのけて、コンシューマー・レポート誌のトップピックEVに選ばれたことを明らかにした。CR編集部によると、このマスタングのクロスオーバーは「より実用的」であるだけでなく、発売年度の信頼性が高く、基本的な操作に複数の手順を必要としない「はるかに簡単な」インフォテインメントシステムを備えているという。乗り心地の良さや騒音が抑えられていることも評価された。

関連記事:【レビュー】フォード2021マスタングMach-E GTとGTパフォーマンス初試乗、ついに「Mach-E」の名にふさわしいものに

また、フォードの運転支援技術「BlueCruise(ブルークルーズ)」は、運転者監視システムがテスラより効果的で、これが車両スコアに加算されることも、Mach-Eの首位に貢献した。テスラの運転支援技術「Autopilot(オートパイロット)」は、ドライバーが目を離している間も機能してしまうことが減点の対象となった。

それでもコンシューマー・レポートは、Model 3のスポーツカーのようなパフォーマンス、長い航続距離、充電ネットワーク、テクノロジーなどを評価し、依然として推薦車種に挙げている。しかし、Mach-Eの直接的なライバルである「Model Y(モデルY)」は、EVトップピックとして推薦できないと、CRには判断された。このテスラのSUV風モデルは、ラインアップの平均的な車種よりも信頼性が「はるかに低く」、平均的と評価されているModel 3よりも明らかに劣るという。

これは、長年にわたりCRとあまり友好的ではない関係を築いてきたテスラにとって、喜ばしいことではない。両者はこれまで、テスト結果を巡って何度か論争し、CRはいくつかのモデルの推薦を一時的に取り下げたこともある。しかし、今回の評価は、テスラのなかなか消えない信頼性に対する懸念が反映されたものになっている。このEVメーカーは、最近数カ月の間に相次いでリコールを行っており、オーナーからは製造品質の問題が頻繁に報告されている。これだけがテスラを首位から陥落させた原因ではないかもしれないが、同社の足を引っ張ったことは確かだ。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のJon FingasはEngadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:MATT BURNS

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(文:Jon Fingas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

EVスタートアップFiskerが350万円切りの街乗りEV「PEAR」の予約受付を開始、納車は2024年予定

EVスタートアップFiskerが350万円切りの街乗りEV「PEAR」の予約受付を開始、納車は2024年予定

Fisker

EVスタートアップのFiskerは、5人乗りの「街乗りEV」であるPEARの予約受付を開始しました。価格は2万9900ドル(約345万円)からと非常に低価格。これはFiskerが先に発表しているSUVモデルのOceanの3万7499ドル(約433万円)や、安い安いと言われたテスラModel 3の当初価格3万5000ドル(約404万円)よりもはるかに安価です。

PEARを購入するにはまず予約金として250ドル(約2万9000円。2台目なら100ドル・約1万1000円)が必要です。また納車や記事執筆時点では2024年になる予定です。

大企業というわけでもないFiskerが、なぜPEARをこんなに安価に作れるのかとお思いの方もいるかもしれません。実は、この新しいEVはFiskerとFoxconnの提携によって開発製造されることになっています。Foxconnは昨年、オハイオ州にあるEVベンチャーLordstown Motorsの工場を買収しており、ここでLordstownのEVや提携しているFiskerの新型EVの製造を手がける予定だと発表していました。また10月には独自のリファレンスモデルとしてEV3車種を発表しています。もしかするとFiskerのEVが安価なのはこのリファレンスモデルが関係しているのかもしれません。ちなみにFiskerはPEARを年間25万台以上生産することを予定しているとし、スポーティな走りと直感的なUI、スマート充電機能その他「業界初へのこだわり」といった売り文句を並べてはいるものの、その仕様詳細はまだ明らかにしていません。

なお、Fiskerはまず2022年11月にOceanの生産を開始する予定となっています。そしてPEARが登場する2024年ごろには、既存の自動車メーカーを含め多数のEVが市場を賑わせるようになっていることが予想されます。そのなかで2万9900ドル(約345万円)という価格がどれぐらい武器になるのか、またその性能、品質や安全性などがスポイルされることなく提供されるかどうかが気になるところです。

(Source:FiskerEngadget日本版より転載)

2024年発売予定の新型電動4ドアGT「Polestar 5」は軽量で高剛性のアルミニウム接着構造プラットフォームを採用

2024年末に発売されるPolestar 5(ポールスター5)は、それ以前のモデルとはまったく異なる作りになるようだ。スウェーデンに本拠を置く電気自動車メーカーのPolestar(ポールスター)は現地時間2月15日、今後登場するこの電動パフォーマンス4ドアGTが、Polestar 1や2のようなスチール溶接ではなく、まったく新しい軽量なアルミニウム接着構造プラットフォームを採用すると発表した。

画像クレジット:Polestar

アルミニウムを溶接すると一般的に降伏強度が半分になるため、同じ性能を得るためには2倍の材料を使用しなければならず、そもそも軽量な金属を使用する目的が失われてしまう。一方、アルミ製の部品を接着(ネジや接着剤で取付)すると、材料の使用量は減るが、生産時間は長くなる。

「接着剤を硬化させるためのサイクルタイムは、一般的な溶接セルと比較するとかなり長くなります」と、Polestarの車両エンジニアリング担当ディレクターであるSteve Swift(スティーブ・スウィフト)氏はEngadgetにメールで語り「製造の一貫性をコントロールする戦略は、従来の製造方法とは大きく異なります」と続けた。

アルミニウムを使用することによる素材の優位性を維持しつつ、部品を接着することによる生産上の不利を最小限に抑えるために、Polestarのエンジニアリングチームは、ボディとプラットフォームを一斉に組み立てる、より高速な製造プロセスを開発した。

画像クレジット:Polestar

「プロジェクトの初期段階で、我々が求める運動性能を実現するために必要な構造剛性の目標値を固めることができました」と、スウィフト氏は述べ、ユニボディ構造の利点を説明する。

「そのため、性能を実現するために後から設計を変更する必要はなくなります」と、同氏は認めている。「従来の戦略では、プラットフォームとボディの性能に対する貢献度がアンバランスであることが判明した場合、妥協や修正が必要になります」。

この設計による時間短縮の効果はすでに生まれており、開発開始からわずか18カ月で、初期段階の一連の試作品を製造・納入することができたという。スウィフト氏は、このプロセスによって「必要となる一部の生産ツールの製作期間も短縮できる」と期待している。さらに、Polestarは火曜日の発表で、5は「伝統的な2人乗りのスポーツカーやスーパーカーよりも優れたねじり剛性を持つように設計されている」と言及し「より小さなセグメントの車よりも軽い重量になることが予想される」と述べている。これによって移動する車両の質量が減るため、航続距離が伸び、ハンドリングも改善されるはずだ。

画像クレジット:Polestar

この技術は、Polestar 2の生産にさかのぼって適用することはできないが、Polestar 5での成功をきっかけに、将来のプロジェクトにも適用される可能性はある。「まだ何も研究開発していませんが、私たちはその可能性を夢見ています」と、スウィフト氏は語っている。

編集部注:この記事はEngadgetに掲載されている。本稿を執筆したAndrew Tarantolaは、Engadgetの編集主任。

画像クレジット:Polestar

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(文:Andrew Tarantola、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

テスラ、オランダのSuperchargerネットワークをすべてのEVに開放

Tesla(テスラ)は現地時間2月14日、同社製以外の車両の所有者がオランダのすべてのSupercharger(スーパーチャージャー)ステーションで電気自動車(EV)を充電できるようになったと発表した。

この措置は、2021年11月に10カ所のステーションで開始されたパイロットプログラムの拡大だ。CEOのElon Musk(イーロン・マスク) 氏はもともと、同年夏にSuperchargerネットワークを他のEVに開放することに関心を示していた。

他の自動車メーカーとは異なり、Teslaは広大な独自ネットワークを運用していて、これまでは他自動車メーカーのEVがSuperchargerの充電器を利用することはできなかった。Teslaが2012年に構築を開始したこのネットワークは、現在、全世界に3万カ所のSuperchargeステーションを有している。

Teslaのパイロットプログラムは、オランダとフランス、ノルウェー、ベルギーなど欧州の一部のステーションで、Tesla車両以外のEVのドライバーにTeslaのアプリを使って充電させるもので、同社はまだPlugShare(プラグシェア)など他のEVステーションプラットフォームと統合していない。

Teslaは、自社製車両にしか装着できない独自のプラグを使用しているため、試験ではCCS(コンバインド・チャージング・システム)対応車のみがアクセス可能だ。Superchargerには2本のケーブルがあり、Tesla製以外の車両はCCSコネクタを使用することができる。このコネクタはすべてのクルマに合わないかもしれず、その場合、ドライバーはカスタマーサポートセンターに問題を報告することになる。

同社によると「幅広い車種の充電をサポートするために発生する追加費用と、これらの車種に対応するためのサイトの調整」のため、Tesla製以外のEVはTesla施設での充電を享受するために、より多くの料金を請求される可能性がある。とはいえ、ドライバーが充電メンバーシップを購入すれば、1kWhあたりの充電価格は下がるかもしれない。

Teslaは「拡大する前にエクスペリエンスをレビューし、混雑を監視し、フィードバックを評価する」ために、一部の拠点から始めると述べた。将来設置される施設については、利用可能な容量がある場合にのみ、Tesla製以外の車両に開放される予定だ。

オランダには欧州で最も多くのEV充電ステーション(7万5000基)があり、Teslaがこのパイロットをさらにテストする上で競争的な環境となっている。ウェブサイトによると、Teslaはオランダにステーション33カ所を展開していて、18の新しいステーションが「近日オープン予定」だ。

画像クレジット:Jakub Porzycki/NurPhoto / Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

Natureの次世代HEMSシステムNature Remo EがEVバッテリーを家庭用蓄電池として利用できるEVパワーステーションに対応

Natureの次世代HEMSシステムNature Remo EがEVバッテリーを家庭用蓄電池として利用できるEVパワーステーションに対応

スマートリモコン「Nature Remo」を手がけるNatureは2月9日、家庭向け次世代HEMSシステム「Nature Remo E」(ネイチャーリモイー)について、EVパワーステーションに同日より対応したと発表した。「Nature Remoアプリ」(Android版iOS版)でEVパワーステーションを操作し、充放電量を確認できる。

EVパワーステーションとは、EV(電気自動車)のバッテリーを家庭用の蓄電池として活用できるようにしたV2H(ビークル・トゥ・ホーム)システムを指す。EVパワーステーションの操作は、Nature Remoアプリのバージョン7.18.0およびNature Remo Eのバージョン1.3.5から行える。また対応通信プロトコルは、ECHONET Lite(エコーネットライト)のAppendix Release J以降。Natureの次世代HEMSシステムNature Remo EがEVバッテリーを家庭用蓄電池として利用できるEVパワーステーションに対応

Natureの次世代HEMSシステムNature Remo EがEVバッテリーを家庭用蓄電池として利用できるEVパワーステーションに対応Nature Remo Eは、家庭の太陽光発電システムや蓄電システムなどの電力を数値として見える化をし、1日の電力消費、太陽光発電による売電、電力系統からの買電、蓄電池、EVパワーステーションの充電・放電といった、電力のトレンドグラフと累積の電力量を最短数分単位で確認できるという製品。配線工事や専門業者は必要なく、家庭のコンセントに挿すだけで取り付けが完了する。

エネルギーマネジメントを誰でも行えるよう開発しており、今回のアップデートにより、対応製品としてEVパワーステーションが追加され、Nature Remoアプリでコントロール可能となった。

Natureの次世代HEMSシステムNature Remo EがEVバッテリーを家庭用蓄電池として利用できるEVパワーステーションに対応

次世代HEMSシステム「Nature Remo E」(ネイチャーリモイー)

Natureは、「自然との共生をドライブする」というミッションの実現によりフォーカスし、「Behind The Meter」事業の基盤構築を行うとともに、外付けIoT製品群を超えた、EVパワーステーション事業にも着手していく予定。Behind The Meterについては、家庭用太陽光の導入とエコキュート(給湯器)・蓄電池・EVなどのエネルギーマネージメントをセットで行うことで、戸建て住宅のエネルギー自給自足を再生可能エネルギーで実現する事業という。

日産「日欧中向けガソリンエンジンの新規開発を終了する方針、電気自動車の開発に集中」と報じられる

日産「日欧中向けガソリンエンジンの新規開発を終了する方針、電気自動車の開発に集中」と報じられる

Nissan

日産自動車が、米国以外のほぼすべての市場で新型ガソリンエンジンの開発を終了し、電気自動車の開発に集中する計画だと日本経済新聞が報じています。

日経は12月に、日産が米欧に2025年までに新しいバッテリーリサイクル工場を建設する計画を立てていると伝えていました。今回の報道でも、欧州で2025年にも新しい排ガス規制が導入されるとして新規のエンジン開発はコスト面で見合わないと判断、欧州規制に準じる日本および中国向けの開発も終了する方針だとし「日本車大手でエンジン開発の終了方針が明らかになるのは初」と述べています。

とはいえ、もしこれが本当ならば、いよいよ国内メーカーもこれまで自動車の心臓部として技術ノウハウを蓄積してきた内燃エンジンから、電気へシフトする姿勢を鮮明にしてきたと言えるかもしれません。

なお、日産自動車は米国市場向けに、主にピックアップトラック用のガソリンエンジンの限定的な開発を継続すると記事では伝えています。ただ、これも情報の出所は示されておらず、Reutersなどは日経の記事に対するコメントを日産に求めています。

ちなみに、日本車大手としてはホンダが現社長の三部敏宏社長の就任の会見で、全製品および企業活動を通じたカーボンニュートラル化の一環として2040年までにEVおよびFCVの販売比率100%を目指すと宣言しており、これが”VTEC”技術でならしてきたホンダの事実上のエンジン開発終了を意味するとして話題になっていましたが、三部社長はwebCGのインタビュー記事で「エンジン開発はゼロにはしない」と、縮小はしつつも今後十数年のあいだは継続する考えを述べています。

一方、韓国Hyundai(ヒョンデ:現代自動車)は昨年12月に内燃式エンジン(ICE)の開発部門を解散したと報じられました。欧州連合(EU)は、2035年までにハイブリッド、プラグインハイブリッド車を含むガソリンエンジン搭載の新車販売を禁止する方針を打ち出しており、欧州自動車各社はこれに対応すべくEVシフトを鮮明化しています。

(Source:Nikkei(1)(2)。Via ReutersEngadget日本版より転載)

フォードの電気自動車への移行はコスト削減が中心となる

フォードの新しい電気自動車(EV)モデルは、最高経営責任者のJim Farley (ジム・ファーリー)氏が 「信じられないほどの需要」と呼ぶほど好調だが、同社はその需要を満たしつつ利益率の改善を図る中で、コスト削減をEV戦略の重要な要素に位置づけた。

米国時間2月3日に行われた第4四半期および通期の決算説明会で、ファーリー氏は、フォードがバッテリー電気自動車(BEV)の部品表を「通常の部品コスト削減を超えて大きく」削減するためのタスクフォースを設置したことを明らかにした。

「例えばMustang Mach-E(マスタング・マッハE)では、私たちのチームは先月だけで、1台あたり1000ドル(約11万5000円)のコスト減の機会を見つけました。これは、設計の簡素化、垂直統合、生産の拡大にともなうサプライチェーンでの規模の活用によって意図的に実現してきたものです」とファーレイ氏は述べている。「そしてチームはまだ始まったばかりなのです」。

注目すべきは、フォードがコスト削減や効率向上につながる変更を行うために、第2世代のクルマまで待ってはいないという点だ。

ファーレイ氏は、Mach-Eの製造過程で、エンジニアリング、サプライチェーン、製造の各部門をよりよく統合することで、フォードは利益を拡大できる方法を学んだのだという。例えばMach-Eの冷却システムは、モーターが2個で済むところを4個使用していたり、ホースが60本もしくは70本もあるが、実際にはその3分の1で十分に機能するとファーレイ氏は指摘する。

「それらは今まさに追い求めているチャンスなのです。2023年を待つつもりはありません」と彼はいう。「マイナーチェンジ を待つのではなく、この車両を今リエンジニアリングして、そのノウハウをLightning(ライトニング)やE-Transit(イー・トランジット)、そしてもちろんすべての電動プラットフォームへ活用していきます」。

フォードのCFOであるJohn Lawler(ジョン・ロウラー)氏は、同社のBEVのマージンを改善する必要があると述べている。

「私たちにはチャンスがありますが、それを大規模にやらなければならないのです」とロウラー氏はいう。「現在のMustang Mach-EやLightning、そして商用車のE-Transitのような、大量生産されるセグメントの主要な車両で、頼りになる強力なラインナップを持ちたいと考えています。複雑さを削減していくのです」。

フォードF-150LightningトラックとE-Transitバンはまだ市場に出ていないが、バンは2022年1月末から納車が開始される予定だ。現在のフォードのBEVポートフォリオは、Mustang Mach-Eだけだが、2021年発売されて以来、このクロスオーバーEVの販売は加速している。2022年の1月だけでMach-Eは2370台を販売した(前年同月は238台)。

コストを下げるためには、明らかにオペレーションを拡大することが有効だが、そのためには多くの先行投資が必要となる。

フォードとバッテリーメーカーのSK Innovation(SKイノベーション)は、114億ドル(約1兆3000億円)を投じてテネシー州とケンタッキー州に2つの工場を建設し、バッテリーや次世代電動Fシリーズトラックを生産する計画で、1万1000人の新規雇用を創出するとしている。フォードはこのプロジェクトに70億ドル(約8047億2000万円)を拠出するが、これは118年の製造の歴史の中で単一としては最大規模の投資となる。この投資は、先に発表した2025年までに電気自動車に300億ドル(約3兆4488億円)を投入する計画の一環である。

ファーレイ氏は内燃機関(ICE)車事業を、成長著しいEV事業とは別の事業と位置づけているもの、フォードは内燃機関車事業のコスト削減にも力を入れている(Transitバンのように両セグメントにまたがるモデルもあるが)。フォードの利益は依然としてICEモデルが中心であるため、この点は重要なポイントだ。

ロウラー氏は「ICEビジネスでは、車両に対する計算を活用して、製造コストを大幅に削減し、業務を簡素化し、それを車両のボトムラインに還元していきます」と語り、パートナーと協力して流通コストを削減する方法も検討していると述べている。

健全なICEビジネスへの投資を継続することの目的は、健全なBEVビジネスの成長を促進することだとファーリー氏は述べ、ICE車の将来の製造は、フォードの電動化に注入できるキャッシュリターンを最適化することに主眼を置いていると語る。

フォードは、2020年の第4四半期に計上した28億ドル(約3222億6000万円)の損失から一転し、2021年第4四半期には123億ドル(約1兆4140億円)の純利益を計上した。このフォードの利益には、2021年11月に上場したEVスタートアップ企業Rivian(リビアン)への投資による82億ドル(約9427億5000万円)の利益が含まれている。Rivian社からの利益を除いた調整後の第4四半期の利益は20億ドル(約2299億4000万円)となる。第4四半期の売上高は、5%増の377億ドル(約4兆3344億円)だった。

通年でみたときにはフォード純利益は179億ドル(約2兆581億円)で、これは2020年の12億7000万ドル(約1460億2000万円)の赤字から改善している。

フォードの業績がアナリストの予想に届かなかったため、時間外取引でフォードの株価は4.37%下落している。

画像クレジット:Roberto Baldwin

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:sako)

GM Venturesが急速充電対応バッテリー技術のスタートアップSoelectに投資

ノースカロライナ州に本社を置くバッテリー技術のスタートアップSoelect(ソエレクト)は、1100万ドル(約12億円)のシリーズAラウンドをクローズした。同社は、新たに調達した資金を、電気自動車の次世代バッテリーを可能にするかもしれない、急速充電が可能な電極技術の拡張に使う予定だ。

リードインベスターのLotte Chemicalと投資会社KTB Networkに加え、General Motorsのコーポレートベンチャーキャピタル部門であるGM Venturesも戦略的投資家として参加した。GM Venturesは、輸送の安全性や持続可能性に関するソリューションを提供する企業に投資する傾向があり、そうしたソリューションは将来のGM車や製造施設、事業運営に導入することができる、とGMの広報担当Mark Lubin(マーク・ルービン)氏は述べている。

「SoelectをGM Venturesのポートフォリオに加えることの競争上の優位性の1つは、急速充電が可能な電極技術であり、これは将来のリチウム金属電池と固体EVバッテリーの電極設計の両方を可能にするものです」と、ルービン氏はTechCrunchに語った。「今回の投資、そしてこの分野における他の投資は、将来のGM製品の航続距離の増加、効率向上、コスト削減を可能にするバッテリー技術の進歩を加速させるGM Venturesの取り組みをさらに拡大します」。

VCが最近投資したバッテリー会社はSoelectだけではない。バッテリー寿命を向上させ、バッテリーを2倍のエネルギー密度にする「電極なし」のリチウム金属電池を持つ、MITのスピンアウトスタートアップSolidEnergy Systems(SES)にも投資し、提携した。SESとGMは、マサチューセッツ州にプロトタイプ製造施設を建設し、2023年までに大容量の量産前バッテリーを作ることを目指している。

関連記事:GMがバッテリーのエネルギー密度向上でSolidEnergy Systemsと提携

GMは、パートナーのLG ChemとUltiumバッテリーのための2つのバッテリー製造施設を建設中だが、GMは他の実りあるバッテリー提携の可能性にもオープンだ。同社は2021年10月、長寿命で急速充電でき、そして持続可能なバッテリーを実現するためのバッテリー技術を開発する新しいバッテリー研究施設をミシガン州に建設する計画を発表した。GMは、1リットルあたり最大1200ワット時のエネルギー密度を持つバッテリーを製造し、コストを少なくとも60%削減したいと考えている。

関連記事:GMがより低コストで航続距離の長いEV用バッテリーの開発施設を建設中

画像クレジット:Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

ランボルギーニは同社初のEVについて未だ思案中、4人乗りクーペになる可能性が有力

Lamborghini(ランボルギーニ)の会長兼CEOであるStephan Winkelmann(ステファン・ヴィンケルマン)氏は、超高級SUV「Urus(ウルス)」の需要に支えられて2021年の販売台数が過去最高を記録した自動車メーカーの指揮を執っているにもかかわらず、祝杯を挙げる暇もない。

このイタリアのスーパーカーメーカーを率いるヴィンケルマン氏は、販売台数が前年比13%以上増加したことや、1月が終わる前に2022年の生産台数をほぼ完売させた成功の余韻に浸るよりも、もっと差し迫った問題を抱えている。

それ以上にヴィンケルマン氏は、同ブランドを電動化の世界に導くことに集中しているのだ。これは、効率性よりも大げさなエンジンで知られるランボルギーニとは、相反する動きのように思える。

ランボルギーニは、2023年にハイブリッド車を投入するなど、いくつかの目標を設定している。しかし、そこから先のEV計画は不明瞭だ。

ガソリンの代わりに電気を使ってどのように車を走らせるのか、また、顧客にどのような体験を提供するのか、ランボルギーニは未だ決定できていない。

「私たちは、ランボルギーニのためのクルマを作るだけでなく、10年後にも対応するために、バッテリー技術やどのようなタイプのエンジンを搭載する必要があるのかということについて、よく検討しているところです」と、ヴィンケルマン氏はTechCrunchに語った。

「私たちには、EVを真っ先に採用する必要はないという利得があります」と、ヴィンケルマン氏はいう。それは、世の中の動きに目を光らせ、未来を見極めるようとしているという意味だ。EVの技術は急速に進化し続けているため、それは簡単なことではない。「もしかしたら、5年後には誰も気にしていないようなことを話しているのかもしれません」とCEOは認めている。

先行しようとする中で、自動車メーカーとしては、いくつかの点で間違っているかもしれないことを認めなければならないと、CEOは語った。それはつまり、適切なタイミングで適切な判断を下すことであり、あまり先を見過ぎてはいけないということだ。

「良いアイデアを持っていても、それが5年後、6年後、7年後、8年後には正しくないとわかるかもしれません」と、ヴィンケルマン氏は付け加えた。

ランボルギーニは、少なくとも全体的なデザインプランは持っている。

ヴィンケルマン氏によると、ランボルギーニ初のEVは2020年代の後半に登場する予定だという。それは現行モデルの「Aventador(アヴェンタドール)」や「Huracan(ウラカン)」のような純粋なスーパーカーではなく、(ウルスを除く)ランボルギーニに人々が期待する以上の地上高を持つ、より実用性が高い2+2シーターの4人乗り2ドアクーペになるとのこと。

もちろん、それはランボルギーニらしいルック&フィールを備えた車になるだろう。スーパーカーではないランボルギーニというものが冒涜のように感じる人は、同社が1968年から1978年まで、4人乗り2ドアクーペの「Espada GT(エスパーダGT)」を販売していたことを思い出していただきたい。

Lamborghini Espada GT(画像クレジット:Lamborghini)

そのクルマのデザインは、電気自動車であるがゆえに未来的になると同時に、ランボルギーニのDNAに沿ったものになると、ヴィンケルマン氏はいう。パワートレインも、EVならではの強大なトルクで、ランボルギーニ車のオーナーがこのブランドから思い描くパフォーマンスを実現するだろう。しかし、1つだけ決定的に失う要素がある。エンジンの咆哮だ。

「その代わりとなり得るスーパーカーとは何かという新しい見解を、どうやって示すことができるか、我々は見極めなければなりません」と、ヴィンケルマン氏は語った。ランボルギーニの魅力の1つは、そのエキゾーストノート(排気音)だ。これは、ランボルギーニの車を所有することで得られる「俺を見ろ!」という威勢の誇示に欠かせない。ランボルギーニには、ブランドに相応しい何かを考え出すための時間がある。それが車内にだけ聞こえる音なのか、それとも車外にも聞こえる音になるのかは、まだわからない。

今後のハイブリッド車については、まずアヴェンタドールのV12プラグインハイブリッドが登場する予定だ。PHEVパワートレインの採用は、特定の都市において排ガスを出さない電気駆動を求める規制の拡大に対応するためだ。

2021年発表された限定生産モデル「Lamborghini Countach LPI 800-4(ランボルギーニ・カウンタックLPI 800-4)」。2019年に発表された限定モデル「Sián(シアン)」のために開発されたスーパーキャパシタ技術とV12エンジンを組み合わせたハイブリッド・パワートレインを搭載する(画像クレジット:Lamborghini)

内燃機関については、2022年がランボルギーニにとって新型の非電動車を導入する最後の年となる。パワートレインの進化の始まりが、2023年に迎える同自動車メーカーの創立60周年と重なるのは、ある意味で相応しいとも言える。

ランボルギーニは、規制と筋金入りのファンの両方を満足させる方法として、今度のプラグインハイブリッド車をできるだけ長く製造したいと考えている。もし、合成燃料を使った低排出ガス化が実現すれば、2030年代に入ってもスーパーカーの導入と生産を続けることができるだろう。

しかし、最終的にランボルギーニとそのCEOは、同社初のEVとその後に続くモデルについて、決断を迫られることになるだろう。「この変化の一端を担えることを誇りに思いますし、光栄に思います」とヴィンケルマン氏は語る。

しかし、同氏はこれから起こることの重さを理解していると主張する。

「その一方で、私には当社で働く人々やその家族の将来に対する責任だけでなく、ブランドとその新製品という船を安全な場所に導き、対岸で待っているお客様の情熱的な手に引き渡すという、大きな責任があります」。

将来のランボルギーニの電気自動車に搭載されるバッテリーやパワートレインの技術について語るのは、少し時期尚早かもしれない。だが、ヴィンケルマン氏は、やや胸を張って次のように語った。「本当に信じられないほどパワフルで、ランボルギーニの精神に非常に忠実な車になると期待してください。まだ我々には時間が十分にあります。この車が発表されるときには本物のランボルギーニになっていると、私は強く確信しています」。

画像クレジット:Lamborghini

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(文:Roberto Baldwin、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ポールスター、スタッド付タイヤや4灯補助ライトを装備した雪上ラリーカー風の「ポールスター2」公開

雪の多いスウェーデンに本拠を置くPolestar(ポールスター)は、現地時間2月2日、電気自動車「Polestar 2(ポールスター2)」に極寒環境向けの装備と性能向上を施した特別仕様車を発表した。

このPolestar 2 Arctic Circle(北極圏)は、前後にモーターを搭載する(4輪駆動)Polestar 2 Long range Dual motor(ポールスター2 ロングレンジ・デュアルモーター)にPerformance Pack(パフォーマンスパック)を追加した仕様をベースに、さらにエンジニアは車高を30mm引き上げ、特別に製作されたスタッド付き冬用タイヤを装着した。専用にチューンされたÖhlins(オーリンズ)製ダンパーは、30%ソフトなスプリングと組み合わされ、車体のフロントとリアには、ねじり剛性とステアリングの反応を高めるストラットブレースを追加。2基のモーターの合計出力は300kWから350kWに、合計トルクは660Nmから680Nmに向上している。

そしてもちろん、Arctic Circleは本物のラリーカーのように、4つの巨大なStedi Quad Pro(ステディ・クアド・プロ)LEDライトと、カーボン製スキッドプレートが装備されている。

昔から自動車メーカーは、性能を誇示したり、人々の興奮を高めたりするために、ワンオフのコンセプトカーを使ってきた。これは、顧客の興味を判断するための効果的なツールであると同時に、自社のエンジニアに何か楽しいものを作らせる機会を与える。Tesla(テスラ)からGeneral Motors(ゼネラルモーターズ)まで、すべての自動車メーカーは、最終的な市販仕様に先駆けて車両を公開し、量産が近づくにつれて、評判(および道路法規や生産上の制約)に基づいて調整を施していく。

このArctic Circleは市販される予定はないものの、将来的にポールスターがこのクルマのパーツを販売することは考えられる。4輪駆動のデュアルモーターはすでにラインアップにある。向上したパワーは、ポールスターによると、2022年中に無線アップデートで顧客に提供される予定だという。調整可能なダンパーもすでに購入可能だ。スタッド付きタイヤやバケットシート、スキッドプレート、ライトなども、サードパーティのベンダーから販売されている。

このクルマの開発を主導したのは、ポールスターのチーフシャシーエンジニアであるJoakim Rydholm(ヨアキム・ライドホルム)氏で、同氏は余暇にはラリーに参戦し、数々のトロフィーを獲得しているという。それを聞くと疑問が頭に浮かんでくる。かつてラリーで活躍したPorsche 911 Safari(ポルシェ911サファリ)のように、次は車高を引き上げたポールスター2のラリー仕様車が登場するのではないだろうか?

画像クレジット:Polestar

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(文:Matt Burns、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【コラム】フツーのクルマを作ってください

最近のクルマは賢くあるべきところがフツーで、フツーであるべきところが賢い。勘弁して欲しい。ほとんどフツーのクルマを作って売ってみて欲しい。自動車メーカーが人々に与えているものはあまりにひどいので、消費者は余分に払ってでも少ししかついていないものを買うだろう。

最近のクルマは車輪付きの格安スマートフォンのようだ。ソフトが山ほどプレインストールされていて使いにくて動きが鈍い。自動車メーカーは常にユーザーインターフェースで苦労しているが、つい最近まで我々にとって最大の問題は「ツマミが多すぎる」ことだった。あの日々がなんと懐かしいことだろう!

タッチスクリーンと液晶のまん延によって、あらゆるクルマがカラオケルームのようになってしまった。アニメーションがブレーキで再生されたエネルギーを示し、スピードメーターは制限速度に近づくにつれて色を変え、ファンの速度や方向は3階層メニューの奥にある。機能を果たさないだけでない、このインターフェースは醜悪だ!UIの種類もレイアウトもアニメーションも「委員会がデザインして使う必要のない人に承認された」と叫んでいる。

もちろんプライバシーとセキュリティも心配だ。私が初めてクルマにGPSが付いているのを見たのは、20年ほど前、母親の古いRX300だった。「そうか、そうやって捕まえるのか」と私は思った。そして今、支払いが遅れたTesla(テスラ)は自分自身を拘束する。ようこそ、未来へ。あなたのクルマは潜入捜査官です。

輪をかけた屈辱は、これらの機能が大衆向けではなく、高級オプションとして売られていることだ。スクリーンはあまりに安いので、大量に買ってきて、どこにでも何にでもつけて、客には「次世代のモビリティーをお楽しみにください!」ということができる。しかし、実際にはこれはコスト削減対策であり、部品数を減らし、ダッシュボード開発チームはずっと楽をできる。その証拠に、ハイエンドモデルはノブとダイヤルに戻って「プレミアムなフィール」などと称している。

だから私が欲しいのは「フツーのクルマ」だ。私の考えるイメージを描いてみよう。

敢えてバカになれ

何よりもまず、スクリーンは一切いらない。これにはいくつか理由がある、実用的にも審美的にも。

実際のところ、この手のスクリーンがやることのほぼすべてを、すでにスマートフォンがやっている。ひどく時代遅れで、のろまで、メーカーブランド付きのSpotify(スポティファイ)やApple Music(アップルミュージック)のアプリなど必要ない。自分のスマホが完璧にこなしている。同様に、カーナビもスマホが完璧にやってくれる。いうまでもなく、すでにボイスコマンドも使える。

GPSやデータ(あるいは隠しマイクや隠しカメラ)がないことによって、あなたのクルマのプライバシーは当然高まる。それでもやつらはあなたのスマホにつながることはできるが、少なくとも、動きを追跡するためには昔のように車体の下にGPSパッケージをつける必要がある。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

メディア利用に関して言えば、AUX(補助)入力があればすべて事足りる。充電ケーブルも兼ねているし、他の新しいデバイスといつでも交換できる。ちょっとスマートなケーブル配線がなされていれば、スマホをコックピット周りの便利な場所にマウントできる。ただし、運転中に見たりタッチしろという意味ではない。Bluetoothが欲しいなら、ドングルを買えばよい。どうしても必要なものはボリュームつまみと、たぶん、ハンドルに付いた基本的な3ボタン再生コントロールくらいだろう。

大きなセンターLCDについているエアコン制御については2~3個ノブがあればいい。あの「ゾーン」なるものが実際機能すると思っている人は、いないよね?ゾーンが必要になるほど大きなクルマはない。青~赤のダイヤル、風力調整、エアコンと送風の切り替えがあれば十分だ。

計器クラスターには、普通の針式メーターがあればよい。スピード、燃料、オイル、水温、あとはチェックエンジン、タイヤ圧低下などいつものランプ群。

美的観点からいって、私はこれらのメーター類のデジタル・バージョンがいつも気に入らなかった。ドライバーは路上に集中すべきなのに、パネル内で常に変わり続ける鮮やかな情報表示には気を散らされる。メーターの針の目盛りの69と70の差は3mmほどで、67と68、68と69の差も同じだ。この連続的で予測可能な変化は直感的でありどんな運転目的にも十分な精度がある。デジタル表示の数字は大きくて瞬きがちで、71から69に変わる瞬間ドライバーの注目を引き続ける。2つの数値はまったく違って見えるので、視野の隅で確認するのは難しい。

シンプル、かつ安全に

メディア機能とカーナビをなくすことで、多くのコンピューティング能力を載せる必要はなくなるが、全部なくして欲しいわけではない。ここ数年、すべての新車に搭載することが義務付けられている安全機能がいくつか導入された、スマートなものもそうでないものも。トラクションコントロール(タイヤの滑りを制御する)やブラインドスポットモニター(後側方警戒支援)、車線逸脱警報、さらには自動緊急ブレーキ装置にもある程度のCPU能力が必要であり、使用されるべきだ。命を救うのだから。バックカメラは多くの人たちが手放したくないものの1つだろうが、基本的な近接センサーがどれほど役に立つかを知ったら驚くだろう。

エンジン自体も昔よりはるかにコンピュータ化されている。ただし室内のコンピュータ化とは異なり、これにはプラス効果がたくさんある。燃費改善、排ガス減少、信頼性向上、保守のための診断の簡易化などだ。安全で敏感なペダルとハンドルに必要なエレクトロニクスの正確なレベルが何かは議論のあるところだろうが、そこは専門家に委ねる。

実は、ウィンドウとドアロックのマニュアル式も提案する誘惑にもかられたのだが、それはわざとらしたの一線を越えそうだ(すでに大きく踏み出しているかもしれないが)。我々はビンテージカーを作ろうとしているのではない。過剰なテクノロジーを廃した現代のクルマを作りたいだけだ。ちなみにパワーシート位置調整は、今でも贅沢品だ。レバーを使おう。

私が提案したものはガゾリン車に限らないで念の為。電気自動車もまったく同じく悪い方向に走っている。これはノスタルジアではなく、有害なのに広く受け入れられているデザイン哲学を捨てようと言っている(わかった、多少のノスタルジアはある、でもほんの少しだけだ)。

もちろん、私の提案はシンプルさを謳っているにも関わらず、おそらく一種の高級車の類に行き着くだろう、つまりコストの最小化を目指しているわけではない。事実上現存するすべてのクルマは「最新」テクノロジーで設計されており、それは既存の金型や組み立て作業、品質管理などからの大がかりな離別を意味している。加えて、私はこのコンセプトが多くの人々を引きつけると思っているが、そんなに売れるものではない。ニッチなクルマであることに間違いはなく、価格はそれを反映したものになるだろう。

それでも、私が欲しいのは、すでに所有している他のデバイスのように通知を送ってきたり、ベルを鳴らしたり、エラーを報告してきたり、私に許可を求めたり、アップデートが必要になったりするような高圧的なところのないクルマだ。偽りの「昔はよかった」議論はおくとして、今の一連の機能にはとにかく大した意味がなく、もちろんそのでしゃばり方や質の悪さは正当化しようがない。ドライバーが運転するための、そしてみんながポケットに入れて持ち歩いているスーパーコンピューターを置き換えようするのではなく、必要なものを提供することに焦点を当てたクルマを作ることが、いったいどんなものなのか考えてみよう。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ボルボが車両のデジタル化が進む今後も「高い安全性」というイメージを維持する方法

現代の自動車において、安全性とはもはや単なるエンジニアリングの課題ではない。センサーやソフトウェアに依存し、ドライバーにとって明確で直感的なユーザーエクスペリエンスが鍵となる、テクノロジーとデザインへの挑戦なのである。

安全性の代名詞ともいえるVolvo(ボルボ)は、どのようにして核となるメッセージを失うことなく、彼らが革新的かつ先進的な考えを持ち、明敏な企業であることを顧客に伝えられるのだろうか。この新世界の目まぐるしい変化についていけなければ、最も高い安全性を象徴する自動車メーカーとしての評判を落とすことになりかねない。

Volvoがどのようにして、機敏かつ革新的でありながらも安全な会社であるというスイートスポットに到達しようとしているのか、そのヒントは伝統的なIPOの道を歩んでいる同社の株式公開へのアプローチや将来の自動車計画に見出すことができる。対照的に、スピンオフした兄弟企業のPolestar(ポールスター)は、ブランクチェックカンパニーとの合併により上場し、テクノロジーとデザインにおけるリーダーとしての地位を確立しようとしている。

Polestarのアプローチは、意図せずしてVolvoが安全性においてより慎重なリーダーであることを際立たせることになる。またVolvoは、Polestarのモデルで実証された最新の革新技術を利用しながら、差別化していくこともできるのである。

VolvoのUX部門の責任者であるThomas Stovicek(トーマス・ストヴィチェク)氏は次のように話している。「今私たちが目にしているのは、少し前にモバイル業界で起こったような業界の変革で、新しい機能や可能性、新しいセンサーなどが常に誕生している非常に興味深い分野だと思います。同時に、ユーザーにとっては複雑にもなりかねません。そのためユーザーエクスペリエンスの話をするときには、お客様にとっての使いやすさや、自動車という環境に置いたときの問題点を理解することについて話すことが多くなっています」。

しかしいくら安全性の先駆者とされるブランドでも、問題を完璧に避けることはできない。現代の自動車の安全性は、車体だけでなくシステムを運用するために必要な膨大なデータにまで及んでいる。Volvoは米国時間2021年12月10日、セキュリティ侵害により研究開発データの一部が盗まれたことを発表した。同社は「現在判明している限りの情報では、顧客の自動車の安全性やセキュリティ、あるいは個人データに影響を与えることはありません」と安全性への懸念に対してすばやく声明を出している。

関連記事:ボルボ、セキュリティ侵害で研究開発データの一部が盗まれる

オラフ vs エルサ

Polestarは企業アイデンティティを定義するにあたり、Volvoとは異なる方向性を示している。Volvoが「安全性と自律性を重視」しているのに対し、Polestarは「技術と性能を重視」している。またVolvoは「安全と責任」を掲げているが、Polestarは「持続可能で進歩的」を謳っている。

Polestarはクールでミニマルだが、 Volvoは暖かくて安心感のあるブランケットのようだ。「アナと雪の女王」で例えるならば、Volvoはオラフのような心地良い魅力を放ち、Polestarは氷の女王エルサである。

Volvoは姉妹ブランドであるPolestarの進化とは逆に、慎重に戦略を進めている。

例えば、VolvoはGoogle(グーグル)と共同でAndroid AutomotiveのOS開発に携わったにもかかわらず、Polestarブランドが先にこれを導入し「Polestar、Volvoには不可能な方法による電気自動車制作を目指す」などという見出しがつけれらている。

新参者であるPolestarは、 Volvoの年間販売台数が50万台であるのに対し1万台程度とまだ比較的小規模であり、その名を知らしめようと機会を模索している最中だ。

Polestarの広報担当者はメールで次のように伝えている。「Polestarはより大きなグループにおける技術リーダーであり、今後もそうあり続けるでしょう。すでに市場に投入されているGoogleのインフォテイメントシステムがその良い例です。Polestar 2が最初にデビューさせ、VolvoはXC40 Recharge、そして今回のXC60でそれに続きました。今後数年の新技術の展開に伴い、Polestarが先駆けてVolvoがそれに続くという形がますます増えていくと思います」。

画像クレジット:Kirsten Korosec

負荷を軽減

Polestarの先進的なメッセージとは対照的に、顧客向けの技術に関してVolvoは車内での体験を「Less is More」の考え方にシフトしている。そしてそのシステムも、Android Automotive OSの登場によって支えられている。

Volvoはこのシステムによってドライバーの認知的負荷を軽減させたいと考えており、人によってどのように情報が変化するかを理解するために、研究チームに行動心理学者を採用しているという。

「高いレベルでの原則として、当社は複雑さを単純化してからユーザーに提供しようとしているのだと思います」とストヴィチェク氏は話す。「まだまだできることはたくさんあります。私たちは衝突事故ゼロを目指していますし、今後プラットフォームに搭載される新機能を使えば、おもしろいことがたくさんできると思います」。

つまり、ドライバーに緊急事態を警告するために使用する場合を除き、鳴動音やブザー音、気が散るような通知は極力減らされるということだ。Volvoの広報担当者は「機能を隠すというのが目的なのではなく、ユーザーエクスペリエンスをシンプルにし、ドライバーの気を散らさないようにするというのが目的です」と伝えている。

「当社は、テクノロジーではなく、使う人を中心に設計、開発しており、可能な限り直感的なユーザーエクスペリエンスを実現できるよう追求しています」。

ここ数年、自動車にスクリーンが搭載されるようになって以来、自動車メーカーはインフォテインメントシステムにありとあらゆるものを投入するようになった。VolvoはXC90を発表した際、いち早く旧式のSensus OSを採用してスクリーンを標準装備している。現在も同社は、ドライバーに提示する情報をさらに厳選するために取り組んでいる他、NVIDIAに依頼して、グラフィック処理を必要とする入力ライダーセンサー、レーダー、カメラの匿名化された安全データを収集し、理解を深めようと試みている。

 完全電気自動車であるVolvo XC40に新しいインフォテイメントシステムを導入

最近Volvo XC60に乗ってみて私が気づいたのは、インフォテイメント画面が先代よりもシンプルで明るくなったということである。また、ワイヤレス充電システムはなかなか作動せず、設定画面を開かなければならなかった。目の前の画面での選択肢の少なさは、ここ10年で出た新型車に対するアンチテーゼとも言える。

Volvoは何十年もの間、道路上で最も安全な車という評判を守り続けてきた。同社がその安全性を主張できるのは、同社の画期的な研究開発によって得られた評価のおかげである。

1959年にはシートベルトが導入され、1972年には後ろ向きのチャイルドシート、1978年にはブースターシートが導入された。1994年には側面衝突防止装置が導入され、また2008年には衝突回避機能、そして歩行者保護機能が導入された。その年、Volvoは「当社の車の中では1人も重傷者を出さない」という目標を掲げている。2021年には米国道路交通安全局の新車評価プログラムにおいてVolvoの11車種が最高の安全性評価を受けた。

ハンズフリー

自動車メーカーたちは今、スマートフォンという運転上最も安全でないものを使って車載システムをコントロールしたがる顧客の欲求に直面している。しかしVolvoはスマートフォンを消費者の手から遠ざける方法を優先しているという。

同社のUX&イベント部門アシスタントトップのAnnika Adolfsson(アニカ・アドルフソン)氏は「ユーザーは車内では提供されていない機能を実現するために携帯電話を使用していますが、それが安全ではない環境を作り出しており、私たちはそれを避けたいと考えていました」。

サードパーティのアプリに対応するため、ソリューションはAndroid Automotiveのアーキテクチャに組み込まれ、運転中でも安全に使用できるプラットフォームとなった。

Volvoは、Android、Google Maps、Google Assistant、Google Play Storiesの各チームと協力し、その結果、シンプルでクリーンなエクスペリエンスが誕生した。「長い間使用し続けられるプラットフォームを開発できたという点が、特にすばらしい点だと思います」とアドルフソン氏は話している。

また、ドライバーが車に乗るとすぐに起動するため、先を見越した安全性が実現する。

「初めてクルマに乗った人がどのような体験をするのか、どうすればその人の助けになるのかを考えてきました。以前の車では、自分でセッティングから探さなければなりませんでした」とアドルフソン氏はいう。

安全第一

スモールオーバーラップ衝突試験。画像クレジット:Volvo

残念なことに、安全性と技術の進歩は、特に人間の判断が介在する場合には、必ずしも一致しない例が多く見受けられる。

「Tesla and self-driving accident(テスラと自動運転の事故)」で検索してみるといい。Teslaは際どい判断を下すことで有名だが、その莫大な価値には影響していないから不思議である(Tesla Model 3の衝突安全性については高い評価を得ていることを付け加えておきたい)。

TeslaもVolvoもその他の自動車メーカーと同様、最先端を行くためにより多くのADAS機能を将来の製品に組み込もうと精を出しているが、新技術の統合は消費者の信頼や一般的な安心感とは必ずしも一致しない。

AAA Foundation for Traffic Safetyの最近の調査によると、完全自律走行車に安心して乗ることができたドライバーは10人に1人しかいないという。

関連記事:【コラム】自動運転車の普及にはまず運転支援システムが消費者に信頼されることが必要

Volvoは自社のウェブサイトで「最近の消費者調査によると、 Volvoは安全な自律走行車を展開できる最も信頼されている自動車メーカーである」と述べている。完全な自律走行車の実現までには、まだ数年かかると同社は伝えている。

自動運転システムをいち早く完成させ、これまで以上に安全性を高めることができると顧客に確信させると同時に、一流の電気自動車メーカーになれると顧客に信じてもらうというのがVolvoの計画である。そのために慎重になっている同社だが、それは正当な考えだろう。

しかしここで、道路をより安全にするための技術がなぜ「技術第一」と呼ばれなければならないのかという疑問も当然起きてくる。これは、安全を守るということの意味を考える上で興味深い問題だ。

画像クレジット:Bryce Durbin

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(文:Tamara Warren、翻訳:Dragonfly)

【コラム】10代によるテスラ車のハックを教訓にするべきだ

Tesla(テスラ)をハックした19歳のDavid Colombo(デビッド・コロンボ)が騒がれるのは、当然といえば当然の話だ。彼はサードパーティソフトウェアの欠陥を利用して、13カ国にわたる世界的EVメーカーの車両25台にリモートアクセスした。ハッカーは、遠隔操作でドアのロックを解除し、窓を開け、音楽を流し、それぞれの車両を始動させることができたと話している。

関連記事:100台を超えるテスラ車が遠隔操作の危険性にさらされる、サードパーティ製ツールに脆弱性

コロンボ氏が悪用した脆弱性はTeslaのソフトウェアのものではなく、サードパーティのアプリに存在するもので、そのためできることに限界があり、ハンドルやアクセルそして加速も減速もできなかった。しかし彼はドアを開け、クラクションを鳴らし、ライトを制御し、ハッキングした車両から個人情報を収集した。

サイバーセキュリティのプロにとって、このようなリモートでのコードの実行や、アプリキーを盗むのは日常茶飯事だが、私が恐れるのは、情報漏洩の開示に慣れてしまい、今回の件がコネクテッドカーのエコシステム全体の関係者にとって貴重な学習の機会であることが見逃されてしまうことだ。

今回のハッキングは、サイバーセキュリティの初歩的な問題であり、率直にいって起きてはならない過ちだ。コロンボ氏がTwitterのスレッドを投稿して通知した翌日に、Teslaが突然数千の認証トークンを非推奨にしたことから、問題のサードパーティ製ソフトウェアは、セルフホスティングのデータロガーだった可能性があるのだという。一部のTwitterユーザーの中にはこの説を支持する人もおり、アプリの初期設定によって、誰でも車両にリモートアクセスできる可能性が残されていることを指摘している。これは、コロンボ氏による最初のツイートで、脆弱性は「Teslaではなく、所有者の責任」と主張したこととも符合する。

最近の自動車サイバーセキュリティ規格SAE/ISO-21434と国連規則155は、自動車メーカー(通称、OEM)に車両アーキテクチャ全体に対する脅威分析とリスク評価(threat analysis and risk assessment、TARA)の実施を義務化している。これらの規制により、OEMは車両のサイバーリスクと暴露の責任を負う。つまり、そこが最終責任になる。

Teslaのような洗練されたOEM企業が、サードパーティのアプリケーションにAPIを開放するリスクを看過していたのは、少々らしくないような気もする。しかし低品質のアプリは十分に保護されていない可能性があり、今回のケースのように、ハッカーがその弱点を突いてアプリを車内への橋渡しとして使用することが可能になる。サードパーティ製アプリの信頼性は、自動車メーカーに委ねられている。自動車メーカーの責任として、アプリを審査するか、少なくとも認証されていないサードパーティアプリプロバイダーとのAPIのインターフェイスをブロックする必要がある。

たしかに、OEMが検査し承認したアプリストアからアプリをダウンロードし、アップデートすることは消費者の責任でもある。しかしOEMの責任の一部は、そのTARAプロセスでそうしたリスクを特定し、未承認アプリの車両へのアクセスをブロックすることにある。

私たちKaramba Securityは、2021年に数十件のTARAプロジェクトを実施したが、OEMのセキュリティ対策には大きなばらつきが散見された。しかながらOEMは、顧客の安全性を維持し、新しい規格や規制に対応するためにできるだけ多くのリスクを特定し、生産前に対処することを最重要視している点で共通している。

ここでは、私たちが推奨するOEMメーカーが採用すべきベストプラクティスを紹介する。

  1. 秘密と証明書を保護する – 広義のなりすましや身分詐称を確実に失敗させる(ファームウェアを置き換える、認証情報を詐称するなど)
  2. アクセスや機能をセグメント化する(ユーザーに対して透過的な方法で) – たとえ1つのポイントが失敗しても、被害は限定的になる
  3. 自分自身で継続的にテストする(あるいは他の人にやってもらうために報奨金プログラムを立ち上げる) – 見つけたものはすぐに修正する
  4. インフォテインメント、テレマティクス、車載充電器などの外部接続システムを堅牢化し、リモートコード実行攻撃から保護する
  5. APIをクローズアップする。未許可の第三者には使用させないこと。このような習慣があれば、今回の攻撃は免れたはずだ

消費者に対しては、OEMのストア以外からアプリを絶対にダウンロードしないことをアドバイスしている。どんなに魅力的に見えても、非公認アプリは運転者や乗客のプライバシーを危険にさらしていることがある。

EVは楽しいものだ。高度な接続性を有し、常に更新されすばらしいユーザー体験を提供しれくれる。しかし、EVは自動車であり、スマートフォンではない。自動車がハッキングされると、ドライバーの安全とプライバシーを危険にさらすことになる。

編集部注:本稿の執筆者Assaf Harel(アサフ・アレル)氏は、Karamba Securityで研究とイノベーション活動を指揮し、革新的な製品とサービスの広範なIPポートフォリオを監督している。

画像クレジット:SOPA Images/Getty Images

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(文:Assaf Harel、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ルノー・日産・三菱アライアンス、2030年までに35車種の新型EVを製造する計画

Renault Nissan Mitsubishi Alliance(ルノー・日産・三菱アライアンス)は、2030年までに35台のEVを保有することを目標に、258億ドル(約2兆9783億円)を費やす計画を発表した。その一環で「smart differentiation(スマートな差別化)」戦略として、80%の共通利用が可能な、ブランド間で共有される5つの新プラットフォームを開発する。日産自動車は、これらのプラットフォームの1つをベースにした最初のクルマの1つを公開した。そのクルマは、同社の人気車種Micra(マイクラ)の後継として欧州で販売される予定の電気自動車のコンパクトカーだ。

アライアンスは、純粋なEVと「インテリジェント&コネクテッド・モビリティ」に重点を置いている。そして、プラットフォーム、生産工場、パワートレイン、車両セグメントをプールできる「スマートな差別化」システムにより、車両間の共通性を高めることを目的としている。「例えば、C・Dセグメント用の共通プラットフォームには、アライアンスの3ブランドの5車種(日産自動車Qashqai [キャシュカイ]とX-TRAIL[[エクストレイル]、三菱自動車Outlander[アウトランダー]、Renault Austral [オーストラル]と今後発売予定の7人乗りSUV)が搭載されます」と、Renault Group(ルノーグループ)はプレスリリースで述べている。

そのために、Renaultの格安モデルDacia Spring(ダチアスプリング)のベースとなる手頃な価格のCMF-AEV、超小型EV用の軽自動車KEI-EVプラットフォーム、Renault Kangoo(カングー)や日産自動車Town Star(タウンスター)などの商用車用LCVなど、5種類の個別のプラットフォームを発表した。もう1つはCMF-EVで、現在アライアンスが日産Ariya(アリヤ)やRenault Megane E-Tech(メガーヌE-Tech)などのクロスオーバーに使用している。

最後に、CMF-BEVプラットフォームは、コンパクトEVに使用されるが、現行のRenault Zoe(ゾエ)と比較して、コストを33%、消費量を10%削減することができる。これは、Renault、日産自動車、Alpine(アルピーヌ)の各ブランドで年間25万台のベースとなり、Renault R5や日産自動車がMicraの後継として発売するEVもこれに含まれる。

日産自動車は別のプレスリリースでその車両を予告し、陰影のある写真と短い動画でその姿を披露した。名前も価格も発売日も不明だが、フランス北部のRenault ElectriCity(ルノー・エレクトリシティ)センターで製造される予定だ。「この新型車は、日産自動車が設計し、Renaultが新しい共通プラットフォームを使って設計・製造することで、日産自動車らしさを維持しながらアライアンス資産を最大限に活用します」と、日産自動車のCEOであるAshwani Gupta(アシュワニ・グプタ)氏は述べている。「これは、アライアンスのスマートな差別化を示すすばらしい例です」。

Renault Groupは、共通のバッテリー戦略を採用し、2030年までに220GWhの生産能力を目指すとした。また、電池のコストを2026年に50%、2028年に65%削減する計画だ。2028年までに全固体電池(ASSB)の開発を目指し、そのプロジェクトは「電池技術のパイオニアとしての深い専門知識と独自の経験に基づいて」日産自動車が担当する。

また、アライアンスは2026年までに、Tesla(テスラ)のようなOTA(オーバー・ジ・エア)アップデートを可能にするクラウドシステムに2500万台の車両を接続することを目指すという。「アライアンスはまた、Google(グーグル)のエコシステムを自動車に導入する最初のグローバルな大衆向けOEMとなる」と、Renault Groupは述べている。

このニュースは、Renaultが2025年までに3分の2のクルマを電動化し、2030年までに約90%のEVをラインナップすると発表したことに続くものだ。Renaultと日産自動車は2021年、より緊密なパートナーシップを否定し、Renaultは両社が「効率的であるために合併は必要ない」と述べている。今回の新プラットフォームと協力関係の発表では「スマートな差別化」を実現する共通プラットフォームがそのカギを握ることになりそうだ。

編集部注:本記事の初出はEngadget。執筆者のSteve DentはEngadgetのアソシエイトエディター。

画像クレジット:Nissan

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(文:Steve Dent、翻訳:Yuta Kaminishi)

韓国EVバッテリーメーカーLG Energy Solutionが上場、時価総額で同国2位に浮上

韓国最大手のEVバッテリーメーカーであるLG Energy Solution(LGエナジーソリューション)は1月27日、成功裏に韓国取引所に上場した。終値で計算した同社の時価総額は118兆1700億ウォン(約11兆2600億円)で、Samsung Electronics(サムスン電子)に次ぐ国内2位の企業となった。

LG Energyの株価は、公募価格の30万ウォン(約2万8716円)を99%上回る59万7000ウォン(約5万7145円)で始まり、取引開始後は25%下落したこともあったが、最終的には68.3%値を上げた。

中国のCATL(寧徳時代新能源科技)に次いで世界2位のEV用バッテリーメーカーである同社は、先週、韓国最大のIPOで12兆8000億ウォン(約1兆2250億円)を調達し、同社の価値は590億ドル(約6兆8000億円)に達した。

セクターアナリストによると、LG EnergyはTesla(テスラ)、General Motors(ゼネラルモーターズ)、Volkswagen(フォルクスワーゲン)などを顧客とし、世界のEV用バッテリー市場の約23%を占めているとのこと。これに対し、中国のCATLは約35%のシェアでトップだ。また、日本のパナソニックは約13%、中国のBYD(比亜迪)は約7%のシェアをそれぞれ占めている。

LG EnergyはIPOで得た資金をもとに、グローバル市場での生産能力を高める計画だ。また、米国、欧州、中国の自動車メーカーと戦略的パートナーシップを結び、世界の競合他社に対抗していきたいと考えている。

2020年12月にLG Chem(LG化学)からスピンアウトしたLG Energyは、3万人以上の従業員を擁し、EV、モビリティ、ドローン、船舶、ITアプリケーション、電力貯蔵システム(ESS)用のリチウムイオン電池を開発している。上場後、親会社のLG ChemはLG Energyの81.8%の株式を保有することになる。

2021年6月、ソウルに本社を置く同社は、GMのChevrolet Bolt EV(シボレー・ボルトEV)についてバッテリーセルの欠陥により発火の危険性が指摘され、一連のリコールが行われたことを受けて、IPOプロセスを中断していた。

2021年7月に同社は、2025年までに電池材料に52億ドル(約6000億円)を投資する計画を発表した。LG Energyは1月25日、GMと共同で米国に26億ドル(約3000億円)規模のEV用バッテリー工場を建設する計画を発表した。

関連記事:LG化学がEV用バッテリー生産拡大へ向け2025年までに5770億円を投資

画像クレジット:LG Energy Solution

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(文:Kate Park、翻訳:Aya Nakazato)

韓国EVバッテリーメーカーLG Energy Solutionが上場、時価総額で同国2位に浮上

韓国最大手のEVバッテリーメーカーであるLG Energy Solution(LGエナジーソリューション)は1月27日、成功裏に韓国取引所に上場した。終値で計算した同社の時価総額は118兆1700億ウォン(約11兆2600億円)で、Samsung Electronics(サムスン電子)に次ぐ国内2位の企業となった。

LG Energyの株価は、公募価格の30万ウォン(約2万8716円)を99%上回る59万7000ウォン(約5万7145円)で始まり、取引開始後は25%下落したこともあったが、最終的には68.3%値を上げた。

中国のCATL(寧徳時代新能源科技)に次いで世界2位のEV用バッテリーメーカーである同社は、先週、韓国最大のIPOで12兆8000億ウォン(約1兆2250億円)を調達し、同社の価値は590億ドル(約6兆8000億円)に達した。

セクターアナリストによると、LG EnergyはTesla(テスラ)、General Motors(ゼネラルモーターズ)、Volkswagen(フォルクスワーゲン)などを顧客とし、世界のEV用バッテリー市場の約23%を占めているとのこと。これに対し、中国のCATLは約35%のシェアでトップだ。また、日本のパナソニックは約13%、中国のBYD(比亜迪)は約7%のシェアをそれぞれ占めている。

LG EnergyはIPOで得た資金をもとに、グローバル市場での生産能力を高める計画だ。また、米国、欧州、中国の自動車メーカーと戦略的パートナーシップを結び、世界の競合他社に対抗していきたいと考えている。

2020年12月にLG Chem(LG化学)からスピンアウトしたLG Energyは、3万人以上の従業員を擁し、EV、モビリティ、ドローン、船舶、ITアプリケーション、電力貯蔵システム(ESS)用のリチウムイオン電池を開発している。上場後、親会社のLG ChemはLG Energyの81.8%の株式を保有することになる。

2021年6月、ソウルに本社を置く同社は、GMのChevrolet Bolt EV(シボレー・ボルトEV)についてバッテリーセルの欠陥により発火の危険性が指摘され、一連のリコールが行われたことを受けて、IPOプロセスを中断していた。

2021年7月に同社は、2025年までに電池材料に52億ドル(約6000億円)を投資する計画を発表した。LG Energyは1月25日、GMと共同で米国に26億ドル(約3000億円)規模のEV用バッテリー工場を建設する計画を発表した。

関連記事:LG化学がEV用バッテリー生産拡大へ向け2025年までに5770億円を投資

画像クレジット:LG Energy Solution

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(文:Kate Park、翻訳:Aya Nakazato)

ロボット工学と統合されたeコマース配送プラットフォーム「Paack」が約257億円調達

Paack物流センター・マドリードの仕分けロボット(画像クレジット:Paack)

今や多くの人が、Amazon(アマゾン)などの広大なスペースに設置された倉庫ロボットを見慣れていることだろう。特にAmazonは、この技術のパイオニア的存在だった。しかし、2021年の今、倉庫ロボットとソフトウェアロジスティクスプラットフォームの連携は、もはや一企業の専売特許ではなくなっている。

後発のスタートアップで、このアイデアで「成功」しているのが、現代の物流業務に不可欠なロボット工学と統合された高度なソフトウェアプラットフォームを持つeコマース配送プラットフォームのPaack(パアック)である。

Paackは、SoftBank Vision Fund 2(ソフトバンク・ビジョン・ファンド2)が主導するシリーズD資金調達ラウンドで、2億ユーロ(約257億円)を調達した。この資金は、製品開発とヨーロッパでの事業拡大に充てられる予定だ。

このラウンドには、Infravia Capital Partners(インフラビア・キャピタル・パートナーズ)、First Bridge Ventures(ファーストブリッジ・ベンチャーズ)、Endeavor Catalyst(エンデバー・カタリスト)も新たに参加した。また、Unbound(アンバウンド)、Kibo Ventures(キボ・ベンチャーズ)、Big Sur Ventures(ビッグ・サー・ベンチャーズ)、RPS Ventures(RPSベンチャーズ)、Fuse Partners(フューズ・パートナーズ)、Rider Global(ライダー・グローバル)、Castel Capital(キャステル・キャピタル)、Iñaki Berenguer(イニャキ・ベレンゲール)といった投資家も参加している。

今回の資金調達は、本国スペインで収益性の高いポジションを確立した後に行われたが、Paackは、英国、フランス、ポルトガルなど、ヨーロッパ全域で同様の目標を達成する予定であると主張している。

Fernando Benito(フェルナンド・ベニート)氏、Xavier Rosales(シャビエル・ロサレス)氏、Suraj Shirvankar(スーラジ・シルヴァンカー)氏の3人が設立したPaackは、現在150の海外顧客から毎月数百万の注文を受け、1サイトあたり1時間に1万個の小包を処理しているという。そのうちの17社は、スペイン最大級のeコマース小売業者である。

同社のシステムは、eコマースサイトと統合されている。そのため、消費者はチェックアウトの際に配送スケジュールをカスタマイズすることができる、と同社はいう。

CEO兼共同設立者のベニート氏は「便利でタイムリーで、よりサステナブルな配送方法に対する需要は、今後数年間で爆発的に増加すると思われ、Paackはその解決策を提供しています。私たちはテクノロジーを使って、消費者に配送のコントロールと選択肢を提供し、配送にかかる二酸化炭素排出量を削減します」と述べている。

SoftBank Investment Advisers (ソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズ)の投資ディレクターであるMax Ohrstrand(マックス・オルストランド)氏は「eコマース分野が繁栄を続け、消費者にとって当日配送がますます当たり前になる中、Paackはその技術とサステナビリティへの取り組みの両面において、カテゴリーリーダーになるための好位置につけていると考えています」。と述べている。

世界経済フォーラム(WEF)の調査によると、ラストマイル・デリバリー事業は2030年までに78%成長し、そのうち3分の1近くで、CO2排出量が増加すると予想されている。

そのため、Paackは、電気自動車を使用し、環境負荷を測定することによって、すべての小包をカーボンネットゼロで配送することを目指していると主張している。現在、カーボントラストと国連の認証取得を目指している。

ベニート氏はインタビューで「私たちは、短期的なビジョンとして、ラストワンマイルデリバリーのための、おそらく最も先進的な技術によるデリバリープラットフォームを通じて、ヨーロッパにおける持続可能なeコマースデリバリーをリードすることを目指しています。例えば、当社のCTOは、Google Cloud(グーグル・クラウド)のCTOであり共同設立者でした」と答えている。

「最高の配送体験を実現するために、倉庫の自動化、時間帯、ルーティングの統合など、あらゆるものを開発しています」と語る。

Paackによると、複数のロボットパートナーとの提携が可能だが、現在は中国企業GEEK(ギーク)のロボットを使用している。

同社は、ヨーロッパのDHL、Instabox(インスタボックス)、La Poste(ラ・ポステ)のような大規模な既存企業に対抗できるようにしたいと考えている。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Akihito Mizukoshi)

起亜自動車EV6の価格は約483万円から、数週間以内に発売

Kia(起亜自動車)のEV6は、Hyundai(現代自動車)のIONIQ 5とプラットフォーム、バッテリー、モーターなどを共有し、1215ドル(約14万円)のデスティネーションチャージを含めて4万2115ドル(約483万円)からと発表された。この金額で、167馬力のモーターと、米国環境保護庁(EPA)の基準で航続距離232マイル(373km)の58kWhのバッテリーパックを搭載した後輪駆動(RWD)のベースモデル「Light(ライト)」が購入できる。このモデルは、7500ドル(約86万円)の連邦税額控除が適用されるため、3万4615ドル(約397万円)まで価格を下げることができる。

これは、IONIQ 5よりも1190ドル(約13万円)高い価格だ。この2台はプラットフォームを共有し、同様の性能を提供しているが、IONIQ 5はよりエッジの効いた角ばったデザインであるのに対し、EV6はよりクラシックで丸みを帯びたデザインになっている。

画像クレジット:Kia

KiaのEV6上級モデルは、価格がかなり跳ね上がる。77.4kWHのバッテリーパックと225馬力のモーターを搭載したRWDのEV6「Wind(ウィンド)」は4万8215ドル(約553万円)からで、EPAによる航続距離は310マイル(約498km)だ。一方、GT-Line RWDは、より豪華なオプションを装備しているが、ドライブトレインは同じで、5万2415ドル(約601万円)からとなっている。WindとGT-Lineの両モデルは、それぞれ5万2115ドル(約598万円)と5万7115ドル(約655万円)から全輪駆動(AWD)にアップデートすることができる。EPAによる航続距離は両モデルとも274マイル(約440km)に低下するが、7500ドル(約86万円)の連邦税額控除が適用される。

ちなみに、インセンティブ前の価格で、Ford(フォード)のMustang Mach-Eは4万4995ドル(約516万円)から、Tesla(テスラ)Model 3は4万6490ドル(約533万円)、Volkswagen(フォルクスワーゲン)ID.4は3万9995ドル(約459万円)だ。

IONIQ 5のロードテストでは、Hyundaiは最先端の技術を提供し、運転する喜びを感じられるレトロフューチャー的な勝者を作り出したと評価した。EV6も同じ基準に達することを期待したい。最初のモデルは、今後数週間のうちにディーラーに到着する予定だ。

編集者注:本記事の初出はEngadget。執筆者のSteve DentはEngadgetのアソシエイトエディター。

画像クレジット:Kia

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(文:Steve Dent、翻訳:Yuta Kaminishi)

Baiduの電気自動車ブランドJiduが約460億円調達、4月の北京モーターショーで初のコンセプトカー「ロボカー」発表

かつては長い開発サイクルを要する産業だった自動車産業は、中国のハイテク企業によって大きく変貌しつつある。現在、中国から生まれる新しい電気自動車ブランドには、とてもついていけない。Baidu(バイドゥ、百度)と中国の自動車メーカーGeely(ジーリー、吉利)がわずか1年前に設立した電気自動車メーカーJiduは現地時間1月26日、シリーズAラウンドで4億ドル(約460億円)近くを調達したと発表した

関連記事:中国の検索大手BaiduがEV製造ベンチャー設立へ

Baiduと、Volvo(ボルボ)を傘下に持つGeelyの出資によるこの新たな資金注入は、Jiduが2021年3月にクローズした3億ドル(約340億円)の創業資本を後押しするものだ。今回の資金により、Jiduは研究開発と量産を加速させ、4月の北京モーターショーで初のコンセプトカー「ロボカー」(同社は自動車ではなく、自動車用ロボットと分類)を発表できるようになる。ロボカーの量産モデルは2023年に発売される予定だ。

JiduのCEOである Xia Yiping(シャ・イーピン)氏は以前、APAC(アジア太平洋)地域におけるFiat Chryslerのコネクテッドカー部門を率い、2018年にMeituanが買収した中国の自転車シェアリングのパイオニアであるMobikeを共同創業した。

Jiduの前進速度は注目に値するが、その技術の実行可能性を疑問視する懐疑論者を容易に引きつける可能性がある。このスピーディーなサイクルは、量産車で個々のハードウェア部品をテストするのではなく、模擬プロトタイプを使ってスマートコックピットと自律走行システムを開発するという戦略のおかげだと、Jiduは説明している

同社は、わずか9カ月という短期間で、都市部や高速道路でのレベル4(ほとんどの状況で人間の手を介さない自律走行)機能の安全性と信頼性を「テストし、証明した」と述べた。

このEVスタートアップは、競合するNio(ニオ)が得意とするブランディングとファンコミュニティにもかなり注力している。12月には、オンラインやオフラインのイベントでクルマについてオタクになる「Jidu Union」への参加者を募集し始めた

今後、Jiduは自律走行、スマートコックピット、スマート製造などの関連技術に特化した人材を採用・育成していく予定だ。

画像クレジット:Teaser of Jidu’s concept robocar

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi