VMwareがマルチクラウドロードバランシングのAvi Networksを買収

VMwareは、ユーザーのデータセンターの仮想マシンの構築と管理を助ける企業から、オンプレミスでもパブリッククラウドでも仮想マシンがどこにあってもそれらの管理を助ける企業へと変わる努力を続けてきた。米国時間6月13日に同社が買収を発表した設立6年のスタートアップであるAvi Networksは、クラウドとオンプレミスの全域にわたってアプリケーションのデリバリを均衡化するサービスで、まさに今のそんなVMwareに合ってる企業と言える。なお、買収の価額は公表されていない。

Aviは、うちは昔のロードバランサーの現代版だ、と主張する。彼らが昔と呼ぶ時代には、アプリケーションは頻繁に変わることもなく、企業のデータセンターにオンプレミスで棲息していた。しかし、企業がますます多くのワークロードをAWS、Azure、Google Cloud Platformなどのパブリッククラウドに移行させている今日では、Aviのような企業がもっと現代的なロードバランシングツールを提供しなければならない。それらのツールは、ロケーションやニーズに応じてソフトウェアのリソース要求を均衡化するだけでなく、要求の背後にあるデータを調べる必要がある。

図表提供: Avi Networks

VMwareもユーザー企業のインフラストラクチャを、それらがクラウドやオンプレミスのどこにあっても顧客企業が一貫したやり方で管理できるよう努めてきた。Aviの買収もその努力の一環であり、今回は主にモニタリングとロードバランシングのツールを手に入れたことになる。VMwareのネットワーキングとセキュリティ事業担当上級副社長を務めるTom Gillis氏は、この買収が同社のそういうビジョンによくフィットしている、と言う。「この買収は弊社のVirtual Cloud Network(仮想クラウドネットワーク)ビジョンをさらに前進させる。そこでは、ソフトウェア定義の分散ネットワークアーキテクチャがすべてのインフラストラクチャに行き渡り、そのすべてのパーツを、パブリッククラウドにあるオートメーションとプログラマビリティで統合する。Avi NetworksとVMware NSXが結びつけば、企業は新たな機会への対応力を増し、脅威に対して強く、新しいビジネスモデルを作ってすべてのアプリケーションとデータにサービスを届けられるようになる。それらがどこにあっても」。

Aviの共同創設者たちはブログ記事でこれと同様の気持ちを表明し、さらに強力に前進できる企業になる、と期待している。彼らは曰く、「VMwareとの合体を決意したのは、両者のビジョンとプロダクトと技術と強力なマーケティングと企業文化の相性がきわめて良いと判断したからだ。私たちはこれからも継続して弊社のミッション遂行に努め、マルチクラウドのデプロイメントをオートメーションとセルフサービスで加速化して、顧客のアプリケーションサービスの現代化を助けていきたい」。というわけなので今後に期待しよう。

今後はVMwareの一部になるAviの顧客の中には、Deutsche Bank、Telegraph Media Group、Hulu、Ciscoなどがいる。Aviは2012年に創業され、Crunchbaseによればこれまでに1億1500万ドルを調達している。主な投資家は、Greylock、Lightspeed Venture Partners、Menlo Venturesなどだ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

イスラエルのセキュリティスタートアップがシード段階で7億円超調達

クラウド上のセキュリティサービスを提供するイスラエルのOrca Securityが、YL Venturesがリードするラウンドで大金650万ドル(約7億500万円)を調達した。このイスラエルのVCは、主にセキュリティ専門のスタートアップへの投資に力を注いでいる。

大金と書いたのは、これがシードラウンドだからだ。しかしCheck Point Securityの役員だった二人が創業した同社は、クラウドに置かれたアプリケーションを、エージェントを使わずにセキュリティを確保するという困難な問題に挑戦している。

同社の共同創設者でCEOであるAvi Shua氏は次のように説明する。「Orcaはクラウドネイティブのセキュリティプラットホームだが、顧客のクラウドネイティブアプリケーションと、クラウドへ移行させたレガシーアプリケーションの両方の安全をエージェントを必要とせずに護る。そのために用いる「SideScanning」というコンセプトは、デプロイされているソフトウェアスタックの全体を(深海調査のサイドスキャンソナーのように)漏れなく調べ、脆弱性や非推奨またはバージョンの古いソフトウェア、構成の間違いなどのリスクを見つける」。

このアプローチは、デベロッパーがコンテナに収めたアプリケーションをKubernetesを使ってクラウドでローンチする場合にはうまくいく。まさに、エージェント不使用のアプローチだからだ。

Orcaのダッシュボードのスクリーンショット

競合する既存のセキュリティベンダーにはRapid7やTenableなどがいるが、Orcaはもっと現代的なアプローチでクラウドのセキュリティの構築に努める。それはクラウドネイティブのために完全に新しく作られたセキュリティサービスだ。Shua氏はこう語る。「うちはデータセンター用の既存のセキュリティソフトウェアの転用はしない。だからうちでは顧客自身のクラウドネイティブのワークロードの分析とセキュリティ確保ができるだけでなく、クラウドへ移行されたレガシーのワークロードや、両者のハイブリッド環境でも十分に扱える」。

同社の場合、創業は2019年だからシード資金の獲得としても相当に早い。現在社員は15名で、ベータの顧客が数社いる。プロダクトを完成し、顧客の現代的なソフトウェア方式が抱えるセキュリティ問題の解決に本格的に寄与貢献していきたいと同社は願っている。本日の資金調達は、それに向かっての歩みを助けるだろう。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

AIや機械学習の企業導入を助けるスタートアップがエリック・シュミットなどから5.7億円調達

RealityEngines.AIは、525万ドル(約5.7億円)のシードラウンドを発表した。同社は、不完全なデータしかなくても、企業がAIをうまく使えるように手助けするスタートアップ。

このラウンドをリードしたのは、Googleの元CEOで会長だったEric Schmidt(エリック・シュミット)氏と、Googleの創設メンバーの一人であるRam Shriram(ラム・シュリラム)氏だ。ほかにKhosla Ventures、Paul Buchheit(ポール・ブックハイト)氏、Deepchand Nishar(ディープチャンド・ニシャー)氏、Elad Gil(エラッド・ギル)氏、Keval Desai(ケヴァル・デサイ)氏、Don Burnette(ドン・ブレネット)氏などがこのラウンドに参加した。

これだけ多くの著名な人々やVC企業がシードに参加したのは、彼らが同社のコンセプトに強く惹かれたからだ。サービスなどのプロダクトがまだ1つもない同社はその特技を、小さくてノイズの多いデータでも有効に利用して、顧客企業がすぐにでも製造に持ち込める、高度な機械学習とAIを提供することと定義している。そのシステムが行う予測にはさまざまなバイアスがなく、しかもその予測に至った理由や背景を顧客に説明できる。ブラックボックスであるAIやMLでは、内部動作の説明はとても難しいことだ。

RealityEnginesのCEOであるBindu Reddy氏は、それまでGoogle Appsのプロダクトマネージメントのトップで、今回の資金は研究開発チームの育成にあてると言った。結局のところ同社は、現在の機械学習の最も基本的で難しい問題に取り組んでいる。例えば、データセットが小さい場合には、Generative Adversarial Networksのような、既存のデータセットを拡張するソリューションがあるが、RealityEnginesそれらをさらに強力にすることを狙っている。

またReddy氏によれば、Reinforcement Learningも同社の中核的機械学習技術のひとつとして重視している。

プロダクトが完成したら、同社はそれを即時払いで従量制のマネージドサービスとして提供していく。ユーザー企業はそれにより、機械学習をより容易に実用化できる。大企業だけでなく中小企業も、このやり方で念願のAI/MLを導入し、競争力を強化できるだろう。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

世界を飢えから救う農業技術コンペの初受賞者決まる

世界の食糧危機を解決するイノベーションを懸賞付きコンペで募集している財団FoodShot Globalが、そのコンペ「Innovating Soil 3.0」の初回の受賞者を決定した。

受賞者Trace Genomicsは、土の健康を分析して農地の使い方の最適化を推奨するスタートアップで、賞金としてFoodShotのVCパートナーS2G Venturesからの投資を受領した。その金額は非公開だ。

ほかに25万ドルの賞金が、再生可能農業に計数管理と情報管理を導入するためのツールCOMETの普及にむけて活動しているKeith Paustian氏と、長期的な生物多様性の研究家Gerlinde De Deyn氏に贈られた。

また、農業技術に関する知識をカタログ化して無料でその情報を全世界の農家コミュニティに配布する、オープンソースのデータプロジェクトを開発しているDorn Coxに、3万5000ドルの賞金が贈られた。

FoodShot Globalの創設者で理事長のVictor Friedberg氏は次のように述べる。「FoodShot Globalを作ったのは、世界中の指導的立場にある人々によるイノベーションと資本と協力精神によって変化を起こしたいからだ。最初に土、土壌を選んだのは、将来の世界の100億の人口が、維持可能なかたちで健康的に食べていくためには、健康な土を必要とするからだ。今日選んだ3名の受賞者はすべて画期的な仕事をしており、今の文明が直面している緊急事態に対する、次世代のソリューションの基盤になりうる。立ち上がったばかりのFoodShot Globalの最初の受賞者たちは最高に素晴らしい人たちであり、彼らがやっていることをもっと広範にシェアしていきたい」。

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小規模eコマースでも傘下マーケットプレースを容易に増やして管理できるMirakl Connect

中小eコマースのお助けサービスを提供するMiraklが、Mirakl Connectという新製品を立ち上げた。これはユーザーであるeコマース企業が複数のマーケットプレースをパートナーにしている場合、それらパートナーのコントロールやコミュニケーションを行うダッシュボードだ。

フランスのスタートアップであるMiraklは最近、7000万ドルの資金を調達した。同社はeコマースのプラットホームと協働して、彼らのサイトにサードパーティのマーケットプレースを、いわば新たな在庫としてくっつける。

eコマースのWebサイトは今、マーケットプレースをくっつけることがますます流行している。Miraklもこれまで、Darty、Office Depot、カナダのBest Buyなどをマーケットプレースで強化してきた。同社は、B2B(買い手が消費者でなく企業)のマーケットプレースも扱う。

しかし契約マーケットプレースが多くなると、eコマース企業はその現状理解とコントロールが難しくなる。ある品物を、どこが扱っているか、分らなくなることも多い。それぞれのマーケットプレースの顧客とのコミュニケーションも、難しい。

そこでMirakl Connectを利用すると、セラーが企業のプロフィールを作ったり、複数のマーケットプレース上で同時に製品を販促したりできる。また始めたばかりのeコマースプラットホームは、Mirakl Connectを使えばサードパーティのセラーを見つけやすくなる。

あなたが小さなeコマースサイトをやっていると、サードパーティのセラーは売上ボリュームの少ないところへ自分の製品を出そうとしない。でもMirakl Connectを使えば、小さなeコマースでもマーケットプレースを容易にパートナーにできる。

そしてMirakl Connectの上でセラー(eコマースサイト)とマーケットプレースがチャットでコミュニケーションできる。まさにMirakl Connectはマーケットプレースのマーケットプレースみたいだ。その上で、マーケットプレースがどんどん増えていく。

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腸内細菌の正常化で病気を治すWhole Biomeが2型糖尿病向け製品をリリース

マイクロバイオーム(体内微生物相)の応用企業Whole Biomeが、シリーズBで3500万ドル(約37億8000万円)を調達した。投資家はSequoia、Khosla、True Ventures、Mayo Foundation、AME Venturesなどなど、大物揃いだ。資金調達の目的は、微生物の力で人間を健康にし、病気を治すことだ。

数年前から医学は、マクロバイオティックスとしても知られるこれらの微生物によって確保促進される腸の健康の重要性に着目してきた。そして今ではスタートアップたちがベンチャー資金を使って、新しいアイデアを次々と生み出している。

Whole Biomeの協同ファウンダーでCEOのColleen Cutcliffe氏はこう語る。「今は人類の歴史の上で、今しかないと言えるほどの希少かつ貴重な時期だ。そこではマイクロバイオームが最先端のテクノロジーおよび生物情報科学(バイオインフォマティクス)と合体して、まったく新しい分野の革新的な健康産業が生まれようとしている」。

DNA配列企業Pacific BiosciencesにいたCutliffeが、パートナーのJim BullardやJohn Eidと共に作ったプラットホームは、マイクロバイオームのさまざまな母集団の情報を計算によって求め、それらの遺伝子解析により、患者のフローラの欠陥と健康問題の関連を見つけ出そうとする。

今回の新たな資金の用途は、2型糖尿病を管理するプロダクトを立ち上げることだ。

市販されている糖尿病の処方薬の多くが、胃の不調やめまい、発疹、アルコールの消化不能など、副作用を伴う。しかしWhole Biomeによると、同社の製品には副作用がまったくない。

すでに本格的な治験を済ませ、2020年に発売予定のその製品は、特殊なプロバイオティクスを患者の腸にリリースし、血糖値スパイク(食後過血糖)を減少させる。

SequoiaのパートナーRoelof Bothaは語る。「Whole Biomeは新しい病気治療目的のマイクロバイオーム投与法を作り出しつつある。それによって、今日の人びとが直面している多くの重大な健康問題を改善できるだろう。彼らが作り出した学際的で統合的な方式による研究開発および商用化の手法により、複雑なマイクロバイオーム的生物学が開錠され、臨床効果と他に類のない安全性を併有する製品が作られている」。

Whole Biomeのこれまでの調達総額は5700万ドル(約61億5600万円)である。

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ネットで鍋を売るGreat Jonesがテキストメッセによる料理相談サービスを開始

鍋やフライパン類、オーブンなどを消費者に直接売っているGreat Jonesが、新しいお料理お助けサービスを始めた。そのPotlineと名付けたサービスは、テキストメッセージで料理のレシピなどを教えてくれる。

料理の途中で何かおかしくなったときの対策や後片付けの方法も。Great Jonesの共同ファウンダーのSierra Tishgart氏の説では、同社はこれまでも、カスタマーサービスでお鍋など料理用品以外の質問にも答えてきたから、このサービスはいわばその自然な延長だ。

Tishgart氏は「新しいボーイフレンド(やガールフレンド)に料理を作ってあげたいんだけど、ローストチキンのレシピ教えて、なんて質問が来ると楽しいわよ」とのこと。

なぜ、テキストメッセージという方法を選んだのか。彼女は「パスタを作っていてソースがうまくできないとき、どうやって助けてもらいたい?私なら、誰かにメッセージを送るわね。それが一番早くて、直接的で自然なコミュニケーションよ」とコメントする。

Great Jones Potline
「自分の誕生日パーティーを庭でしたいけど、ベジタリアンの友だちには何を作ってあげたらいい?」

「パンにオリーブオイルかバターを塗って、きれいな焦げ目がつくまで焼く。その上にリコッタチーズとグリルで焼いた野菜を載せる。野菜は、かぼちゃやアスパラガス、ピーマンなどがいい」

「パンは、なにがいい?」

「LAに住んでるのね。だったらGjustaの皮の堅いサワードウやチャバッタできまりね」

Potlineのサービスは、月曜日と水曜日の東部時間午後4時から8時まで。週にたった8時間だけだが、本物の人間がリアルタイムで答えてくれる。本物の人間とは、Great Jonesの顧客体験担当Gavy Scelzoのことだ。

Tishgart氏はさらに「今は実験段階だから、そんなに大きなチームにはできない。質問にはGabyが答える。オフィスにはほかに7人いるけど、当面はGabyの能力と大きなレシピデータベースを頼りにしたい」と答えた。

もちろん、実験がうまくいったら他の曜日や時間にも拡大していく。テキスティングのアドレスは1-814-BISCUITだ。

関連記事: Move over Le Creuset? A new cookware startup founded by and for millennials is getting down to business(ありそでなかったお鍋専門のネットショップ、未訳)

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Uberの性差別的男子文化を暴いたスーザン・ファウラーの回想録

Uber内部のセクハラを明るみに出したSusan Fowler(スーザン・ファウラー)氏の回想録「内部告発者」(Whistleblower)は、2020年3月3日に書店に並ぶ予定だ。予約の受付は6月12日からだ。

2017年のおそくに、Penguin Random House傘下のViking Booksが権利を取得した回想録は、ウェブサイトの信頼性担当技術者としてUberに在職していた間にファウラー氏が直面したハラスメントと差別を記録している。

Vikingの前宣伝によると、彼女の回想録は「スタートアップの文化の中に蔓延している構造的欠陥を暴露し、特に彼女がUberで直面したハラスメントと差別を公表した後に起きた、これまで報道されなかった詳細を記述している」。

ほかにも同書は、米国経済における女性の役割や困難の多い職場環境の実態にも触れ、「女性がどんなに正しく振る舞っても巨大な障害物にぶつかってしまう労働文化を、読者がびっくりするほどの率直な筆致で描写し、幅広く告発している」。

28歳のファウラー氏は、2017年に発表した忌まわしいブログ記事「Reflecting On One Very, Very Strange Year At Uber,」(Uberにおけるとってもとっても奇妙な1年を振り返って)で一番よく知られている。その3000ワードのエッセイは、急成長しているライドシェア大手に蔓延している性差別的男子文化(Bro-CultureBro Culture)と、それに対する人事部門の怠慢を詳説している。意外にもその記述はファウラー氏をひと晩でテクノロジー世界の有名人にしてしまい、業界のリーダーたちは彼女の勇気を賞賛した。

そのブログ記事がきっかけとなり、紆余曲折を経てUberの創業者CEOであるTravis Kalanick(トラヴィス・カラニック)氏は排除され、およそ20名のUber社員はセクハラまたはそのほかの不適切行為で起訴された。カラニック氏に代わって元ExpadiaのCEOだったDara Khosrowshahi(ダラ・コスロシャヒ)氏が会社を率い、最近では大きく期待されたIPOをリードした。

ファウラーは、#Metoo運動のTarana Burke(タラナ・バーク)氏やレイプ後の妊娠中絶を敢行したAshley Judd(アシュレイ・ジャッド)氏らとともに、Time誌の2017年「今年の人」(Person of the Year)に選ばれ、Vanity Fair誌の新しい支配者リスト(New Establishment List)に載り、そのほか数多くの賞を受賞した。

書くことに目覚めたファウラー氏はStripeに参加し、季刊誌Incrementの編集長になった。そしてその後The New York Times紙にスカウトされ、今では同紙のオピニオン欄の編集者を務めている。なお、彼女にはコンピュータープログラミングに関する著作が2冊ある。

「内部告発者」の出版に加えて、ファウラー氏を扱ったドキュメンタリー映画も制作が進んでいる。脚本はアカデミー賞にノミネートされた「Hidden Figures」(邦題:ドリーム)のAllison Schroeder(アリソン・シュローダー)氏、契約プロデューサーは元ディズニーのKristin Burr(クリスティン・バー)氏、映画のタイトルは「創造的破壊者」(Disruptors)だ。

ディザスター・アーティスト」(The Disaster Artist)のプロデューサーであるErin Westerman(エリン・ウェスターマン)氏が、この映画のプロジェクトを独立系のプロダクションGood Universeに持ち込んだとしてクレジットされている。彼女が、実質的な総監督ないし執行プロデューサーになる。2017年の晩くにウェスターマン氏は、Deadline誌にこう語っている。「このプロジェクトは女性のための聖歌であり、一人の女性の声が持つ力を知るべきときに、必ず思い出される重要な映画になるだろう」。

関連記事: Uber ends policy of forced arbitration for individual sexual assault claims(Uberが性的暴行の訴えの強制仲裁=強制示談を廃止、未訳)

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ARによるビジュアルな遠隔会議をサポートするStreemが類似企業のSelerioを買収

遠隔会議のソフトウェアにコンピュータービジョンの技術を組み合わせたAR企業Streemが、同じく拡張現実の応用企業であるイギリスの小企業Selerioを買収した。

両社は昨年共に、Betaworksのアクセラレーター事業VisionCampに参加し、コラボレーションをしたり、別々にARにおけるコンピュータービジョンの問題に取り組んだりした。

Streemの持ち味はパワーアップしたSkype通話みたいなところにあり、たとえば各種ホームサービスのプロバイダーが家の持ち主とチャットする場合、多くのビジュアルデータを得られる。たとえば電話口で機器の30桁のシリアルナンバーを口頭で伝えるのではなく、画像や映像で分かる。それらのビジュアルデータから間取りを計測したり、その家の特徴に関するノートを取ったりできる。

ポートランドに本社を置く同社は、これまで1000万ドルあまりの資金を調達しているが、最近も新しいラウンドを完了したばかりだ(詳細情報は未発表)。

Selerioの専門技術は、空間の意味的な構造を理解することだ。同社は、ケンブリッジ大学における研究から生まれた。すでにシード資金を獲得しているが、額は公表していない。投資家はBetaworks、Greycroft Partners、GGV Capitalなどだ。同社の3名の社員は全員Streemに加わる。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

JALとVirginが出資するBoomが超音速旅客機開発計画の詳細を明かす

今のところテクノロジー業界の注目は自動走行車に集まっているが、別の分野のレースも激しさを増している。超音速旅客機の開発だ。高度1万mにおける音速は時速1027km程度だが、Boomが開発する旅客機は時速1230kmを目指している。

現在航空会社が運航させているジェット旅客機のスピードは時速650kmから800kmぐらいだ。燃料の消費は速度とともに急激に増えていくため、この速度に落ち着いている。つまり理由は主として経済的なものだ。

最近多くのスタートアップが超音速機計画を推進している。もっとも先進的なのは昨年誕生したアトランタのスタートアップであるHermeusだ。同社はニューヨーク、ロンドン間を90分で飛ぶ旅客機を計画中だ。先週、金額は不明だが、Khosla Venturesから資金を調達することに成功している。アドバイザーにはジェフ・ベゾス氏の宇宙企業、Blue Originの元プレジデントも加わっているという

Aerion SupersonicSpike Aerospaceのプランはもっと現実的で、12座席、時速1600km程度を目指している。これらは富豪や企業向け自家用機マーケットがターゲットだ。

しかし最も野心的でもっとも影響が大きい計画はBoomのものだろう。デンバーに本拠を置き、社員は150人のこのスタートアップは1億4100万ドルの出資を受けており、 これはマッハ2で飛行する55座席の旅客機の初期設計を開始するのに足る資金だ。画期的なのは料金が現在のビジネスクラス程度になるという点だ。Boomでは航空会社に多数の機体を販売することができれば、最終的にはエコノミークラス程度の料金に引き下げることができるとしている。

ニューヨークとロンドン、サンフランシスコと東京、シアトルと上海といった大部分が洋上の区間ならこれが可能になるかもしれない。実は超音速機の就航を妨げている大きな理由は超音速飛行にともなう衝撃波の存在だ。多くの国が人口密集地の上空を超音速で飛ぶことを禁じている。

今月16日に開催されたTechchCrunchのStrictlyVCイベントにBoomのファウンダー、CEOのブレイク・ショル(Blake Scholl)氏を招き、同社の超音速機開発計画についてインタビューすることができた。ショル氏は私の質問に詳しく答え てくれた。以下はインタビューの主要部分の要約だが、やり取りを直かに見たい読者のために記事末にビデオをエンベッドしておいた。

TC:ブレイク(・ショル)の経歴を振り返ると、元Amazonでその後モバイル支払システムのKima Labsを共同創業した。これはGrouponに買収され、Grouponに加わった。航空産業のバックグラウンドはないようだが、超音速機を開発する会社を創業しようと考えた理由は?

BS:実はKima Labs売却以前にさかのぼる話になる。(会社を売るか、売らないかは)常に難しい問題だ。私はGrouponのオファーを受けて売却した。スタートアップというのは常に困難な仕事だ。スタートアップの仕事に楽な部分などない。目を覚ましたときに、果たしてこんな苦労をする価値があるのだろうかと考える日が来る。

Grouponを去ったとき、自動車レンタルからヘルスケアまでありとあらゆるスタートアップのアイディアを抱えていた。しかしはるか昔から私自身が情熱を向けてきたのは飛行機だった。それならこの機会にフィージビリティだけでも調査すれば長年の固執をさっぱり忘れることができるのではないかと思ったわけだ。

TC:それがマッハ2で飛行する旅客機を開発するという具体的な計画に変わったのはどういう経緯?

BS:最初に調べたのは「なぜまだ実現していないのか?」だった。常識的だが不正確な説明がいろいろあった。巨大な資本が必要だ、規制が厳しい、長距離を飛べる旅客機を作っているのは世界で2社(ボーイング、エアバス)しかない、等々。つまり起業家などの入り込む余地はないというのだ。

そこで私は第一原理、つまり出発的に戻って考えてみた。コンコルドは50年も前、計算尺と風洞実験で設計された。では(テクノロジーが圧倒的な進歩を遂げた)今なぜできないのか?Wikipediaを調べただけでも最大のハードルは燃料コストだと判明した。超音速で飛ぶと莫大な燃料を消費する。誰もそんなコストを支払えない。利用者が少なければ飛行機も売れず、1機あたりの価格も高価になる。

しかし50年前の燃料消費率を30%改善すれば経済的に成立するとわかった。 その程度の改良なら不可能とは思えない。そこでさらに航空関係の教科書を呼んだり、教科を受講したりした。またできるかぎり大勢の業界の人間に会って私のアイディアに穴がないか尋ねてまわった。ディスカッションを重ねていくうちに皆が「これはうまく行くかもしれないな」と言い出した。そこでBoomを起業したというわけだ。

TC:Boomが計画している機体はどのくらいがレガシーでどのくらいが独自に開発したものなのか?

BS:コンコルドは50年前に設計されたと言ったが、われわれは文字通り先人の業績の上に立っている。しかし当時の機体は主としてアルミだったが今はカーボンファイバーの複合素材が利用できる。風洞しかなかったが、今はクラウド経由でスーパーコンピュータによる精密なシミュレーションが可能だ。50年前のジェットエンジンは騒音がひどく燃費も悪かった。これも圧倒的に改善されている。

エンジンや機体のメーカーといった大企業は1960年以後、航空機テクノロジーを着実に改善し続けてきた。しかし大手航空機メーカーはひたすら効率化を優先してきた。しかしスピードを優先すればまったく新しい機体が開発できるはずだ。要するに航空機テクノロジーというのは非常に保守的な分野だが、同時にデザインの根本的な方向転換も可能なのだ。

TC:エンジンは何基搭載?

BS:両翼下に1基ずつ、胴体後部上面に1基、合計3基だ。

TC:エンジンのメーカーは?

BS:まだ決定していないが、ジェットエンジン・メーカー3社(GE、P&W、ロールスロイス)のうち2社と協力している。最終決定は入札となるだろう。

TC:Boomはまず3分の1のスケールモデルで試作を開始し、続いて実機の製作に移るというが、実機の55座席というサイズはどのようにして決定したのか?

BS:コンコルドの経験を考えてみよう。クールな機体を作るだけでは充分ではない。多くの人々が支払えるような金額で座席が販売できなければビジネスは成り立たない。座席数が増えれば料金を下げることができるから機体のサイズはビジネス面で重要となってくる。だが航空機ビジネスでいちばん重要なのは数字はロードファクターだ。これは全座席数に対する有償座席の比率だ。想定される金額に対して座席数が多すぎると空席が増え、ロードファクターが下がる。何百もの路線でビジネスクラス料金で満席にしてビジネスを成立させることができるのが55座席だとわれわれは考えている。

TC:コンコルドの室内は非常に狭く、乗客にはあまり居心地のいい空間ではなかったと聞く。居住性というのは他の要素にくらべて優先順位はさほど高くないかもしれないが、Boomではこの点はどうなのだろう?

BS::実は共同ファウンダーのガレージで一番最初に作ったモックアップはキャビンだった。超音速機でもキャビンの快適さの重要性は非常に高い。現在の旅客機のように7時間から9時間もかからないにしても、数時間は機内に座っていなければならない。居住性は重要だ。現在のビジネスクラスで標準的な広さの快適なシートが必要だろう。窓も大きくなければならないし、リラックスして必要なら仕事もできるスペースがいる。しかしせいぜい4時間程度のフライトであれば現在のビジネスクラスほどフラットに倒せるシートでなくてもよい。


TC:ジェットエンジンのメーカーはまだ決まっていないということだが、このプロジェクトは非常に野心的なものだ。エンジン・メーカー以外の提携というと(会社への投資家でもある)日本航空だろうか?

BS:航空機を開発、製造するのはハードルの高い事業だが、中でも投資家が注目するのが航空会社との関係だ。そのアエライン企業はまずエンジンをどうするのか知りたがる。逆にエンジン会社はエアラインとの関係を尋ねる。われわれ、投資家、エンジン・メーカー、航空会社というのは「ニワトリとタマゴ」の複雑な四角関係となる。チームのメンバーにわれわれはタマゴを割らないと仕事が始まらないオムレツ製造業なのだと冗談を言うことがある。【略】

エンジンなどのコンポネント・メーカーとの提携にせよ、エアラインとの提携にせよ、最初はかなりゆるい関係から始めざるを得ない。企画書、目論見書、仮発注といったあたりだ。そこから徐々に信頼関係を築いていくい現在のところ我々は(JALとVirginから)1機2億ドルで30機を仮受注(pre-sold)している。

TC:仮受注(pre-sold)の意味は?

BS:これは予約意向確認書(letter of intent)よりは一歩進んだ段階だが、ここではあまり詳しく内容を説明できない。簡単に言えば、来年われわれがプロトタイプの製造で一定の段階に達することができるかどうかで本発注かキャンセルかが決まる。この段階をクリアできれば、Boomの前途は非常に明るくなる。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

AIデータのアノテーションをしているDefinedCrowdがモバイルアプリで高速化

一昨年、TechCrunch主催のStartup Battlefieldにも出場したDefinedCrowdは、AIを訓練するためのデータを作り、その精製もしている。同社はこのほど、その仕事をする人間アノテーター軍団のためのiOSとAndroidアプリを作った。業界最速を自慢している同社の処理がさらに速くなるだろう。

AIが実は人間が注記注釈を記入した(アノテートした)データに全面的に依存していることは、今や多くの人が知っている。写真に写っている物や状況とか、文章や式などの意味は、すべて人間アノテーターが記入する。その仕事は零細な家内工業みたいで、多くがパートタイムやほかの仕事を抱えてやっている。

でもその仕事のインタフェイスが特定のプラットホームに限定されていたら、できる量に限界がある。メールに返事を書いたり、プレゼンテーションをざっと見たりすることは、バスに乗っていたりランチを食べながらでもできるが、この仕事もできればそうしたい。というわけで、モバイルアプリが生まれた。

DefinedCrowdが独自に作ったそのアプリは、同社のアノテーションコミュニティと同じNeevoという名前だ。アノテーターはこのコミュニティに登録し、画像やリアルタイムの音声に注釈を付けていく。アプリは米国時間5月21日から、iOSとAndroidで使用できる。

CEOのDaniela Braga氏によると、それは市場の自然な進化だ。今ではこのようなアノテーションワークの需要が膨大なので、それをやる人のスケジュールや使用するプラットホームを制限するのはナンセンスだ。今後は誰もがこのアプリを使えるようになるので、アノテーターという仕事も、そのほかの生産性サービスやメッセージングサービスと変らないものになると彼女は言う。

関連記事: DefinedCrowd’s next-gen platform solves the AI data acquisition problem(AIのデータ取得問題を解決するDefinedCrowd、未訳)

同社は社員の数も、最初の数名から100名余に急速に成長した。オフィスも今ではリスボン、オポルト、シアトル、そして東京にある(日本語版記事)。市場も同じく爆発的に大きくなり、今では多くの企業が、仕事にAIを導入したいだけではなく実際に導入できるという認識に変わりつつある。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

単眼のカメラから3D画像情報を取り出す次世代3Dセンサー

テルアビブのMultiVuは、1つのセンサーとディープラーニングを組み合わせた新しい画像技術を開発している。同社は米国時間5月16日、700万ドルのシードラウンドを発表した。ラウンドをリードしたのはクラウドファンディングのプラットホームOurCrowdCardumen Capital、および香港のJunson Capitalだ。

テルアビブ大学のイノベーション推進ファンドがMultiVuの中核的技術の初期の開発を支え、それは同大のDavid Mendlovic教授の研究室から生まれた。Mendlovic氏は前にスマートフォン用カメラのスタートアップCorephotonicsの共同ファウンダーだったが、同社は最近サムスン(Samsung)に買収された

MultiVuのセンサーは、従来のような2つのセンサーではなく単眼のカメラを使って3D画像を作り出す。そのたった1つのセンサーが1回の撮影で奥行きと色のデータを取り込む。

従ってセットアップはコンパクトになり、部品が少ないぶん費用も安くなる。それを可能にしているのが、同社が特許を持つライトフィールド技術だ。

現在同社のチームは、スマートフォンなど小型デバイスの顔認証でそのセンサーを利用することにフォーカスしている。それはもちろん成長市場だが、小型の3Dセンサーにはもっと多様なアプリケーションがありうる。顔認識以外のセキュリティ技術や、自動運転車のセンサーにも使えるだろう。

MultiVuのCEO Doron Nevo氏は次のように語る。「この技術は概念実証の段階を終えており、3Dの顔認証技術や、低コストの3D画像技術をモバイルや自動車産業、そのほかの工業分野、そして医療の分野にも提供できる。この技術を商用化する機会が与えられたことを、嬉しく思っている」。

しかし当面は、そのセンサーそのものの市場化に力を入れていく。今回の新たな資金もそのためのマーケティングや事業開発に充てられる予定だ。

OurCrowdの上級パートナーEli Nir氏はこう語る。「未来の3Dセンサー技術に投資できることはたいへん喜ばしく、MultiVuは市場に深く浸透していくだろう。現在の高コストな3D画像技術を利用できない企業はとても多い。David Mendlovic氏の3つめの創業企業に投資できることを誇らしく思うし、またCEO Doron Nevo氏の豊富な起業履歴や高い能力を持つチームにも大きな期待が持てる」。

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AR用ディスプレイのメーカーがサムスンとナイアンティックから追加資金調達

広義のAR市場は大部分が誇張や空騒ぎだが、本質的な部分ではそれは、導光板ディスプレイ(Waveguide Display)がますます薄くなり同時に良質で安価になるという技術開発の動きだ。

導光板のメーカーであるDigiLensは、その高価な部品のコストダウンに励んでいる。同社は最近、Universal Display Corporationのベンチャー部門とSamsung Venturesから、シリーズCで5000万ドル(約55億円)を調達した。また前の発表では、Pokémon GOを作っているNiantic(ナイアンティック)と三菱がこのラウンドで戦略的投資を行っている。同社の調達総額は8500万ドルになった(日本語参考記事)。

カリフォルニア州サニーベールに拠を置く同社は、最近では2017年に2200万ドルを調達し、ほかにFoxconn(フォックスコン)やソニー、パナソニックなども投資している(調達履歴:Crunchbase

導光板ディスプレイはディスプレイのガラスの側面から画像をロードし、その光をエッチングが反射させて見る人の目の前に完全な像を作り出す。AR画像用に別のハードウェアを必要とする方式は使いづらいから、この導光板方式はARにとって理想的だ。その光学系は画像を曲面ディスプレイに反射させるだけだから大変安い。しかしそれを消費者向けの薄くて高解像度の製品に仕立てようとすると、相当な開発努力を要する。

DigiLensはARグラスのほかに、シースルーディスプレイの市場として自動車市場にも目を向けている。

CEOのChris Pickett氏は声明の中で「弊社の製造工程は、消費者向けの価格設定が可能な導光板だけを作っている」と述べている。

競合企業は、大手テクノロジー企業の中にも、そして他のスタートアップにも、決して少なくない。Magic LeapとMicrosoft(マイクロソフト)は、彼らの最新のARヘッドセットのために独自の導光板ディスプレイを設計している。昨年Apple(アップル)は、コロラド州デンバーで同様の技術に取り組んでいるAkonia Holographicsを買収した。

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特定の企業や人としかファイルを共有できないDocpackのアイデア

Docpackは企業に文書(ドキュメント)をシェアする簡単な方法を提供する。同社の顧客は特に、DropboxやGoogle Driveのようなサービスの利用が禁じられている大企業が多い。

ファウンダーでCEOのRurik Bradbury氏によると、彼がこの問題に気づいたのはLivePersonで会話型アプリを開発していたときだ。LivePersonを使ってるような大企業の多くは、ファイル共有サービスのリンクを受け付けない。そこで、プリントアウトした文書をFedExで送ったり、少なくとも一度は、文書を載せたAndroidタブレットを送ったこともある。

しかもこれは、限られた企業の特殊な問題ではなく、広く蔓延している問題のようだ。ある調査によると、BoxやDropboxやGoogle Driveなどは、エンタープライズのIT部門がブラックリストに載せて、警戒し排除しているアプリケーションの仲間なのだ。

Bradbury氏によると、企業が特に心配しているのが完全な双方向のファイルシェアリングだ。そこで、彼が見つけたそれを回避する方法は、各企業が小さなウェブサイトを共有すべき文書ごとに作ることだ。そこから誰か特定の人や企業だけが文書をダウンロードできる。ITから見ると、それらは単なるふつうのウェブサイトで、社員たちが勝手に文書をシェアし入手することはできない。ゆえに、それならブラックリストには載らない。

大きなDropboxではなく、極小のDropbox、ファイルが1つしか保存できないし、特定の人や企業しかアクセスできないDropboxを、必要に応じいくらでもたくさん作ると考えてもいい。Bradbury氏はそう言う。

ただし、この小さなウェブサイト方式はスケーラブルでない。そこでDocpackは、どんな顧客でも簡単迅速にそれらを作れるようにした。Bradbury氏はこのやり方を、WixやSquarespaceのようなウェブサイトビルダーになぞらえる。技術の全然ない人でもウェブサイトを一瞬で作れるという意味で。

Docpack Screenshot

Docpackのユーザーはほんの数クリックでミニウェブサイトを作ることができ、それに自社のブランド色を持たせたり、文書をアップロードできる。それらの文書は、特定企業のメールのドメインの中の人しかアクセスできない。また、文書をアップロードした者は、それをどこの誰がダウンロードしたか追跡できる。

料金は、スタンダードプランで一人あたり10ドルだ。そもそも会社の仕事は外部との文書共有で動いている部分が大きいから、営業や事業開発、マーケティング、PRなど、いろんな部門でDocpackを便利かつ安全に利用できるだろう。また、特定のジャーナリストたちのための無料アカウントもある。

Bradbury氏によると、Dropboxのようなファイル共有サービスもエンタープライズを意識し始めているが、それは単なる既存のサービスの拡張にすぎないという。これに対し、Docpackが提供するのはあくまでも特定企業間のファイル共有だ。

「それには十分に大きな需要があるはずだ。新しい種類のファイル共有サービスとして、ジャンルが確立してもいいよね」と彼は付け加えた。

画像クレジット: Stock4B

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サーバーレスをモニタするEpsagonがAWS Lambdaオンリーを脱して多極化

イスラエルのEpsagonが昨秋ローンチしたときは、サーバーレスのアーキテクチャの中でも特にAWS Lambdaをモニタする意向だった。しかし自分のレパートリーを狭くすることを嫌った同社は米国時間5月7日、もっと多様なマイクロサービス開発方式をモニタしていくと発表した。

CEOで共同ファウンダーのNitzan Shapira氏によると、ローンチしたときはサーバーレスを対象とし、中でもLambdaが最有力のツールと思えた。彼はこう語る。「当時の弊社のプロダクトはLambdaのエコシステムのためにトレーシングやトラブルシューティング、そしてモニタリングを自動化するツールだった。しかしその後、Lambdaに限定されない大きな変化が市場に生じた」。

その変化は、この種のデプロイメントのもっと幅広い視野への移行で、マイクロサービスが関与する一連の現代的なアプリケーションのすべてをカバーするものだ。デベロッパーがそのような現代的で多極的なアプローチに移行すると、単純なエージェントではモニタリングができない。そしてそれでもデベロッパーは、そんなアプリケーションの内部への可視性を必要とする。

Shapira氏によると、そこで同社はこのタイプのモニタリングツールとしては初めて、トレーシングとロギングを一体化したツールをローンチした。彼曰く、「今日では、エンジニアリングとDevOpsがかつてないほど密接に協働している。そこで、マイクロサービスアプリケーションのトレースの自動化をエージェントを使わずに行い、ひとつのプラットホームでトレーシングとロギングを結びつけることが、極めて重要になってきた」。

彼によると、今後の同社の計画は、このようなオープンなトレーシングが複数のツールや複数のフレームワークに対してデフォルトでできるようになることだ。「今はますます、いろんなフレームワークが使われるから、Lambdaだけでなくそれらをすべてサポートすることが必要なんだ」、と彼は言う。

関連記事: Serverless computing could unleash a new startup ecosystem(新しいスタートアップエコシステムを育てるサーバーレスコンピューティング、未訳)

サーバーレスという言葉は、やや誤称だ。サーバーは依然としてあるけど、デベロッパーがそのサーバー上で起動するプログラムを書くのではなくて、クラウドインフラストラクチャのベンダーが、デベロッパーがコードを動かすために必要とするインフラストラクチャリソースを必要なときに、自動的に提供する。

マイクロサービスはこの考え方を利用して、一枚岩的なアプリケーションを構築する代わりに、アプリケーションを一連の小さなサービスに分割し、通常はそれらをコンテナに収めてローンチする。そしてそれらのコンテナをKubernetesのようなツールがオーケストレーションする。

同社は10月にステルスを脱したばかりでまだ新人だが、すでに米国に営業オフィスを置いて4名が常駐している。技術チームはイスラエルにいる。今社員数は、20名に近い。

Shapira氏は顧客数を公表しないが、今のユーザー数は数百社で、有料ユーザーは毎月倍増しているそうだ。

関連記事: サーバーレスのインフラをモニタするEpsagonがステルスを脱して正式ローンチ

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ARパズルで子どもたちにロボティクスとプログラミングへの関心を喚起するRosieReality

チューリッヒで消費者向けの拡張現実を作っているRosieRealityが、RedAlpineがリードするシードラウンドで220万ドルを調達した。そのほかの投資家は、Shasta Ventures、AtomicoのパートナーMattias LjungmanとSiraj Khaliq(どちらも個人資格で)、およびAkatsuki Entertainment Fundだ。

2018年に創業したRosieRealityの最初のAR作品は、子どもたちにロボティクスとプログラミングに関心を持たせることが目的だ。スマートフォンのカメラを使うそのアプリはキュートなARロボット「Rosie」(ロージー)が主人公で、LegoのようなモジュールでできたAR世界に住んでいる。その世界の中でユーザーとその友だちは、公園の遊具ぐらいのサイズの3Dパズルを作ったり解いたりする。

そのキモは、パズルを解くためにはロージーをプログラミングして拡張世界の中で動かす必要があることだ。

RosieRealityの共同ファウンダーでCEOのSelim Benayat氏はこう語る。「Rosie the Robot(ロボットのロージー)は、初めてのスマートフォンのカメラフィードの中だけで生きている対話的でモジュール構造の世界だ。コンピューターを使用するこの新しいプラットホームによって、子どもたちは遊具サイズのパズルゲームを作り、解き、そして友だちや家族とシェアできる。Legoの現代版のように」。

主な想定ユーザーは、複雑なパズルに挑戦することが好きなティーン。ARゲームを作ったのは、CEOの子どものころの体験もヒントになっている。彼はいろんなものを作って友だちを招き、それらを見せることが最大の楽しみだった。

彼は主張する。「今の子どもたちも、それほど変わっていない。でもARなら、同じような、形があってストーリーもある感動を経験できるだけでなく、彼らの創造性にもっと大きな発露の機会を与えることができる」。

「拡張現実の背景となる現実世界としてカメラを使えば、それは教えるツールとしても、また新しい創造のツールとしても最高だ。とくにゲームは、究極のクリエイティブでソーシャルでそして教育的な創造の場だ」、とRosieRealityのCEOは力説した。

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多機能化を目指すウェブサイト構築ツールSquarespaceがオンラインアポ管理のAcuity Schedulingを買収

ウェブサイトビルディングツールを開発する創業2003年のSquarespaceは米国時間4月23日、初めての買収を発表した。相手は企業がオンラインのアポイントメントを管理するためのサービス、今年で13歳になるAcuity Schedulingだ。

SquarespaceのCEOであるAnthony Casalena氏によると、同社はすでに、ウェブサイトの構築だけではない多様なサービスの複合体に成長しているが、今後はさらにオンラインのプレゼンスやコマース、マーケティング方面のツールも提供していきたい、という。

これまでSquarespaceは、さまざまなプロダクトを自作してきたが、しかし今回は、Squarespaceのページ構築ツールがすでにAcuityのスケジューリングを統合しているので、同社を買収するのがむしろ理にかなっているとCasalena氏は語る。

彼は曰く「AcuityのCEOであるGavin Zuchlinski氏は素晴らしいビジネスを作ってきた。同社の今日までの成長はとても自然で無理がなく、45名の社員全員が仕事をよく理解し、極めて顧客中心的な企業文化を育んできた。そのプロダクトも素晴らしい。あれだけのものをうちでゼロから自作していたら、どれだけ時間がかかるかわからない」。

Acuity Scheduling logo

計画では、時間をかけてSquarespaceとの統合をより密にしていくとともに、従来どおりのスタンドアローンなプロダクトとしてのAcuityもサポートを続ける。Acuityのチーム全員がSquarespaceに加わり、Zuchlinski氏は同社のAcuity担当副社長になる。

Squarespaceの今後の買収の可能性について聞くとCasalena氏は曰く「これまでは自分の会社のことしか眼中になかったけど、でもこれぐらい大きくなってしまうと、どうしてもまわりに目が行くね。そして、世の中には良いものがいろいろあることが、わかってくるんだ」。

なお、同社が昨年立ち上げたメールマーケティング機能がベータを終了し、本番化とともにキャンペーンのスケジューリングやアナリティクスの改良などの新たな機能が加わった。

関連記事: WebサイトビルダーSquarespaceがユーザーのビジネスツールの一環としてメールマーケティングを提供

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評価の高い速成コースのLe Wagon、定時制コースで多くの学習希望者の便宜を図る

コーディング・ブートキャンプ(プログラマー速成コース)のLe Wagonはこのところ好調だ。自己資本だけでやってきたこのフランスの企業は今では22の国に34拠点のキャンパスがある。そして今回Le Wagonは、定時制のコースによってさらに学生数を増やそうとしている。

定時制の授業はロンドンで試してきたが、これからはすべてのキャンパスで展開する。コースは火曜夜、木曜夜、そして土曜日の週3日で、これなら会社などに努めている労働者でも勉強できる。

Le Wagonの主力はこれからも、その評判良い全日制のコースだ。2013年の創業から今日までおよそ5000名の学習者が同社の9週間の全日制ブートキャンプを受講した。学習内容は、フロントエンドとバックエンドの開発、そしてコースが終わると自分のプロジェクトを最初から最後まで自力で作れるようになる。

ということは、およそ2か月で、スタートアップを始められるし、既存のスタートアップにソフトウェアエンジニアとして加われる。Le Wagonは今でも規模を拡大中で、今年は2000名から3000名の学習者を受け入れる。

定時制のコースも学習内容と費用は全日制と同じだ。全日制の学費はパリの場合で6900ユーロだ(およそ87万円)。定時制のコースはパリで8月に始めるが、2020年1月までにはほとんどのキャンパスでやりたい。同社は、定時制のコースによっていろんな可能性が開けると期待している。

家族のある人は、仕事を辞めたり長期休暇を取るのは難しいだろう。今の会社で役員にまでなってるような人は、辞めたあとの確実な成功がほしい。今度の定時制は、そんな人たちでも勉強できるし、またすごい顔ぶれが同社の同窓生の中にいるようになる。

学習者の多くが卒業後自分のスタートアップを立ち上げている。Le Wagonの卒業生が立ち上げたフランスのスタートアップはこれまで、計4800万ドル(およそ50億円)の資金を調達した。

ただし、めでたく卒業するためには、最後までモチベーションを高く維持することが重要だ。今のフルタイムの仕事に加えて、パートタイムの仕事を新たに引き受けた、と考えた方がよい。この人は最後まで高いモチベーションを維持できるか、同社は最初に入学希望者をふるいにかけている。

今は企業も、社員が2か月もいなくなるのはいやだから、Le Wagonの全日制を受講することを渋る。でも、定時制なら社員たちを心から支援できるだろう。

Le Wagonには、チームリーダーを育てる管理者/役員コースがあり、定時制はこのコースを一層充実させる。新しいコースだが今すでに大企業の多くの社員たちが関心を示しており、とくに彼らは、短時間で新しいスキルを習得することを求めている。

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IoTのセキュリティサービスは需要急増でArmisは早くもシリーズCで70億円相当を調達

Armisは、エージェントを使わずにネットワーク上のIoTデバイスを保護する。その技術は市場のニーズにフィットしたらしく、同社の売上は前年比で700%も増加した。そしてそれは当然投資家の関心を惹き、彼らは同社にシリーズCのラウンドで6500万ドル(約70億円)を、同社の成長の加速を今後も維持するために注入した。

Sequoia Capitalがそのラウンドをリードし、新たな投資家としてInsight Venture PartnersとIntermountain Venturesが加わった。また、これまでの投資家Bain Capital Ventures、Red Dot Capital Partners、そしてTenaya Capitalも参加した。同社によると、これで調達総額は1億1200万ドルに達する。

同社は、ネットワーク上のデバイス管理の中でもとりわけ難しい問題を解決する。デバイスはあちこちにあるけど、それらの上でエージェントを動かせないとしたら、どうやって管理するか?同社の協同ファウンダーでCTOのNadir Izrael氏は曰く「古いデバイスは、ポートをスキャンしただけでシャットダウンしてしまうこともある。細心の注意が必要なんだ」。

そこでArmisは、受け身なアプローチでセキュリティの問題に臨む。まず、正常なデバイスのやることを観察し学習し理解する。それらは、動作の指紋のようなものだ。Izrael氏は次のように語る。「デバイスがネットワークの上でやることを観察する。彼らがどう振る舞うかを見る。そこから、必要なことをすべて見つけ出す。Amisの本質は、デバイスのビヘイビアを知るための大きなクラウドソーシングエンジンだ。基本的に、Armisのどのクライアントも、デバイスの動作をつねに学習している。そしてそれらの統計モデルや機械学習のモデルをもとに、マスターモデルを作る」。

データの取り方の詳細は聞かなかったが、いずれにせよ同社の技術はセキュリティの痛点を捉えているのだろう。同社は1年前に3000万ドルのシリーズBを発表したばかりだが、成長がはやく人手が足りないので、新たな雇用のための資金が必要になった。

急成長はそれ自身がスタートアップにとってチャレンジになる。今125名のワークフォースを年内に倍にしたいのだが、新しい社員たちと新しい顧客のためのシステムを即動くように整備することも欠かせない。

もちろん新社員は営業とマーケティング方面でも必要だが、そのほかにカスタマサポートの充実や、パートナーシップ事業によるシステムインテグレータやISV、MSPたちからの協力も重要だ。彼らは、同社のためにも顧客のケアをやってくれるだろう。

関連記事: Armis raises $30 million Series B as enterprise IoT security heats up(ArmisのシリーズB、未訳)

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GoogleのAI専門VCが機械学習のモデル開発を助けるLabelboxに投資

機械学習アプリケーションのためのデータセットを作り、管理し、メンテナンスするLabelboxが、新たな投資ラウンドで1000万ドルを調達した。

そのリード投資家Gradient Venturesは、GoogleのAI専門のベンチャーファンドだ。これに、前からの投資家Kleiner Perkins、First Round Capital、エンジェル投資家のSumon Sadhuが参加した。

Labelboxは、データのラベリングをアウトソーシングする過程を管理し、企業や団体に彼らが集めるデータを管理し、データのクォリティーを確保するためのツールキットを提供する。同社CEO Manu Sharma氏はそう説明してくれた。

CEOのSharmaとCTOのDan Rasmuson、そしてCOOのBrian RiegerらLabelboxのファウンダーたちにとっては、彼らが開発したツールは前に社員として勤めていたDroneDeployやPlanet Labs、Boeingなどで必要性を痛感していたサービスの実現だ。

今回得た資金は、社員を現在の11名から22名に増やして営業とマーケティングのチームを作ることに充てたい、という。

Labelboxの現在の顧客はおよそ50社で、課金は彼らがアップロードするデータの量と利用するサービスの種類に基づいて行われる、名前を挙げてもよい顧客は、FLIR Systems、Lytx、Airbus、Genius Sports、KeepTruckinなどだ。

Labelboxが昨年ステルスを脱したとき本誌も報じたように、同社のツールキットは誰でも無料で使える。利用量が一定の閾値を超えたときのみ、課金される。たとえばLytxは、ドライブレコーダーDriveCamのためにLabelboxを利用している。すでに50万台のトラックにインストールされているそのカメラはAIを使って危険運転を検出するので、その能力は訓練によってアップする。またメディアと出版の大手企業Conde Nastは、ランウェイ上のファッションを同社のコンテンツアーカイブにあるファッションと関連付けるためにLabelboxを利用している。

Sharma氏が声明文の中で言っている。「Labelboxはモデルの開発時間を大幅に減らし、データサイエンティストたちが自力ですばらしい機械学習アプリケーションを作れるようになる。新たな資金でデータラベリングのインフラストラクチャをさらに強化して、機械学習のチームに強力なオートメーションとコラボレーションとエンタープライズ級の機能を提供していきたい」。

Gradient Venturesはこの技術に投資したいと思うほどの関心を持ち、機械学習のツールの開発をグローバルにサポートしていける同社の能力に将来性を見出している。

Gradient VenturesのファウンダーでマネージングパートナーのAnna Patterson氏はこう言っている。「Labelboxは機械学習を製造業、運輸交通業、ヘルスケアなどさまざまな分野にわたって産業化していける位置にいる。そうすることによって同社は、AIのポテンシャルを全世界の企業に向けて開放するだろう」。

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