全自動でフィットネス活動を記録する「Human」、ついにAndroid版が登場

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iOS版ではHumanというアクティビティ&カロリートラッカーが人気となっている。新しい年を迎え、ついにこのアプリケーションがPlay Storeにも登場してきた。

Humanはアクティビティのすべてを自動的に記録して、健康維持に役立ててもらおうとするアプリケーションだ。1日に30分間の活動時間を目標として定め、習慣化するための手伝いをしてくれる。アプリケーション中ではこの目標数値を「Daily 30」と呼んでいて、目標達成を促してくる。

なお、今回のリリースにともなって「Human Pulse」なる機能も追加された。他のフィットネス記録つーる同様に、リアルタイムでリーダーボード上で競うことができるようになったのだ。ただしHumanの掲げる目標はあくまでも「日常の軽い運動」を促すことであり、「より多くのフィットネス活動」を促すような仕組みはとっていない。

リーダーボード上に表示されるのは友人や、近郊の人々の運動状況だ。他の人が運動している様子をみれば、きっと本人も運動したくなるに違いないという発想から実現された機能だ。

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もちろん他人と競うことなど必要なく、ただ単に自分のアクティビティを把握したいということであればそのように使うこともできる。ダウンロードして必要な設定を行えば、あとはアプリケーションのことは忘れてしまってもかまわない。フィットネスアクティビティについての通知が、自動的にやってくるようになる。

通知される内容以上の情報を知りたい場合には、もちろんアプリケーションを開くことになる。記録の際にはアプリケーションを開く必要もない。ランニングなのか自転車なのかなどについては、自動的に判別されるようになっているのだ。アクティビティの内容について詳しくみたいという場合には、最近のバージョンより地図つきのタイムライン表示がサポートされてもいる。統計情報や消費カロリーなどが表示されるようになっている。

これまでに100万人がHumanをダウンロードしており、記録されたアクティビティは15億件にものぼるとのこと。iOS版のみでこれほどの成績をおさめていたわけで、Android版のリリースに伴い、さらに多くの人が利用するようになり、記録されるアクティビティも飛躍的に増大することとなるのだろう。

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(翻訳:Maeda, H

ウォンテッドリーがビジネス向けのチャットアプリ「Sync メッセンジャー」をリリース

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ビジネスSNS「Wantedly」を提供するウォンテッドリーが、ステルスでサービスを展開していたグループチャットサービス「Sync メッセンジャー」の正式リリースを発表した。ブラウザで利用できるウェブ版のほか、iPhone、Android、Mac、Windows向けにアプリも提供している。

Sync メッセンジャーは、社内外のビジネスコミュニケーションに特化したチャットサービスだ。料金無料のフリー版から、月額600円のプロ版、月額1200円のビジネス版と3つのラインアップを用意する。テキストの冒頭に「@」とユーザー名を付け、特定ユーザーに名指しでメッセージを送信できるほか、チャット内容の全文検索(プロ版以上で提供)、保存期間無期限のファイル共有(プランにより容量は変化)、URLやQRコードを利用した招待機能などを備える。デバイス間の同期もしており、サービスを各デバイスで立ち上げた際には、どこまでが既読で、どこからが未読なのかといった表示などもしてくれる。アカウントはWantedlyと連携しており、名前に加えて、会社名や役職、学歴などから知り合いを検索することも可能になっている。

これまで採用に特化したビジネスSNSを展開してきたウォンテッドリーがなぜビジネスチャットを作ったのか? 同社は「シゴトでココロオドル人を増やす」をミッションに掲げているが、このミッション実現のために、「働くすべての人のインフラになる事を目指し事業展開している」のだそうだ。そのための施策として、2015年4月には人脈管理機能「Sync サーチ」を提供しているほか、11月にはAPIの公開も行っている。今回のサービス提供もその延長線上の施策となる。

すでにSlackChatWorkTalknoteのようなビジネスチャットサービスは存在しており、ビジネスシーンでメールや電話に代わるコミュニケーション手段としてその重要性を高めている。ウォンテッドリーでもこの点に注目。また「Facebook メッセンジャーやLINEなどの既存のSNS では、公私混同が起こりやすく、職場でのSNS ハラスメントなどの問題も引き起こしている。調査(自社ユーザー399人を対象にしたもの)によると、半数近くの人がビジネスのやり取りをFacebook メッセンジャーやLINEで行うのに抵抗を感じている」(同社)といった課題があったことからプロダクトの提供に至ったとしている。

Withings、歴代最高にスマートな体温計をアナウンス

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読者の方々は、Withingsのスマートウォッチのことはご存知かもしれない。しかし実は、Withingsとはヘルス関連デバイスについて歴史を持つ企業なのだ。今回発表された100ドルのWithings Thermoも、やはり同社の「ヘルス関連デバイス」のひとつに位置づけられるものだ。「スマート体温計」ともいうべきもので、現在入手できるベストのものだと言うこともできよう。

体温は、側頭動脈から測定するようになっている。こめかみあたりにデバイスをもっていき、ボタンを押して2秒すれば体温の測定が完了する。

「便利すぎてあり得ない」と思う人もいるかもしれない。しかし16個の赤外線センサーを用いて4000回の計測を行うことで、正確性を担保しているのだ。測定した体温はデバイス上でも読むことができるし、もちろん、接続した他デバイス上で確認することもできる。

他デバイスとの接続にはWi-Fiを用いたり、あるいはBluetooth経由でスマートフォンと直接つなぐこともできる。モバイルアプリケーションでイブプロフェンを摂取した日時を記録しておくこともできるし、もちろん複数のプロファイル設定にも対応している。

Withingsはスマート体重計血圧計ないし体温計を扱っている。すなわちWithingsは、健康管理のためのデバイスをフルセットで備えているわけだ。

これによりWithingsは個人の健康情報を多面的に収集することができるようになっている。消費者側からみても、自分の健康データを簡単に医師に送ることができるようになっているわけだ。

世界では高齢化が進んでおり、時間および費用を抑制しながら健康管理データを医師と共有することがますます重要となってきている。

このデバイスは2本の単四電池で動作する。バッテリーの持ち時間は2年となっているので、使うたびに充電するというような操作も必要ない。2016年の第1四半期の出荷予定で、価格は100ドルと予定されている。

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(翻訳:Maeda, H

グロービスが総額160億円の5号ファンドを組成、年金基金の出資は「VCの悲願」

gcpちょうど1年前の年始、僕はインキュベイトファンドが組成した110億円の3号ファンドについて記事にしたのだけれども、2016年も年始に大型のファンド組成のニュースがあった。

ベンチャーキャピタルのグロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)は1月4日付けで第5号となる新ファンド「Globis Fund V, L.P.、グロービス5号ファンド投資事業有限責任組合」を組成した。一次募集(ファーストクローズ)は約140億円。出資するのは三井住友信託銀行、日本政策投資銀行、大同生命保険、マスミューチュアル生命保険株のほか、国内大手企業年金基金を含む国内外の大手機関投資家。ファンド総額は160億円の予定だが、すでにそれ以上の出資要望があるそうで、3月末の最終募集(ファイナルクローズ)を前に、すでに募集が完了している状況だという。

GCPでは1996年に1号ファンド(5億4000万円)を組成。1999年に2号ファンド(200億円)、2006年に3号ファンド(180億円)、2013年に4号ファンド(115億円)を組成。累計120社以上への投資を行っている。直近の投資先上場企業としてはピクスタやイード、カヤック、ブイキューブなど、TechCrunchの読者もよく知るIT企業が多い。

投資領域は「6 Tech」ほか、投資額は1社最大20億円超に

5号ファンドで投資対象とするのは、「6 Tech」(FinTech、HealthcareTech、EduTech、HomeTech、AutoTech、FrontierTechの総称)のほか、シェアエコノミーやAR/VR、IoT、AIなど。GCPパートナーの高宮慎一氏いわく、「IT(Information Technology:情報技術)&IT(Industry Transformation:産業の変革)の領域。2016年に『来る』という領域かどうかに関わらず、ファンドが終了する10年先までを見据えた投資を行う」とのことだ。

投資対象とするのはシードマネーを調達済みで、シリーズA以降の調達を検討しているアーリーステージのスタートアップが中心。GCPというとレイターステージの資金調達を手がける印象が強かったのだけれども、よくよく考えてみると、メルカリやスマートニュースなどもアーリーステージでの投資だ。内訳としては「ざっくり45%がアーリーステージ、35%がミドルステージ、残りがレイターステージ」(高宮氏)なのだそう。具体的には1社あたり数億円〜最大で20億円超の出資を行う予定だという。

昨日はシード特化のVCであるSkyland Venturesの新ファンドのニュースがあった。その中でパートナーの木下慶彦氏が自身の投資スタンスについて、進捗報告のために起業家の時間を取るようなことをしないためにも「ノーハンズオン」だと語っていたが、GCPのスタンスは、バリバリの「ハンズオン」なのだそう。もちろん投資対象のステージも違うし、事業内容によって出資先ごとにVCが支援するべき内容は異なるので、どちらが正しいという話ではない。

GCPのハンズオンの中で特徴的なのは、3R、すなわちIR、PR、HRの業務支援だという。投資担当以外のキャピタリストや親会社であるグロービスのスタッフ、社外のパートナーなどと連携して各種のリソースを提供するのだそうだ。例えば元証券会社の引受担当者がIRまわりのコンサルティングをしたり、グロービスの広報チームがPRの支援をしたりするほか、GCPが投資先企業の人材ニーズをとりまとめてヘッドハンターに共有。一括で広く人材の確保を進めるといったこともしているそうだ。

年金基金からの出資は「VCの悲願」

ファンド組成のニュースはこれまでいくつもあったが、少し珍しいのは、「企業年金基金などの機関投資家が出資している」という内容だ。高宮氏はこれについて、「ある意味では国内VC、ひいてはベンチャー業界の悲願ではないか」と語る。

それはどういう意味か? 100億円超のファンドを組成するとなると出資者1組織ごとに10億円ほどの額を集める必要が出てくる。かといって10億円もの資金を出せるような組織なんてそうそうはない。そこで銀行や保険会社、政府系金融機関などの機関投資家からの出資を仰ぐ必要があるわけだ。そんな機関投資家の中でも、年金基金といえばリスクに対して非常にセンシティブな運用を行ってきたところだ。例えば2015年には、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が年金の運用において、四半期での損失を出したと批判を浴びた。もちろん短期的に見れば8兆円近い損失という大きな話だ。だがたった1つの四半期の損失という見方もできる。長期的に見ればGPIFは高い運用成績を上げており、しかもベンチマーク(運用成果を測定し、評価するための基準)と比較しても良い結果となっている。

しかしそういったネガティブな反応を意識する以上、年金の運用はセンシティブにならざるを得ないというのは致し方ないところ。とはいえ年金基金は数千億円を超えるような運用総額を誇っているわけだし、代替資産(株式や債権以外の資産。不動産もVCへの出資もこれにあたる)に長期的視点で腰をすえて投資するプレーヤーであるという意味でも、機関投資家の中でも大きな存在だ。米国においては、年金基金からの資金がVC業界の発展を支えてきた側面が大きいとも聞く。

そんな背景がある中で年金の資金が入ることについて、高宮氏は「もちろん我々の成果が評価されたということや、そのIRを行った結果ではある」とした上で、「それ以上に、ベンチャーというハイリスクハイリターンな領域に、年金の大きなお金が流れ始めたということが大きい。GCPだけの話ではなく、VC業界、ベンチャー業界全体に意味があること」(高宮氏)と説明する。

2015年3月に発表されたJapan Venture Researchのレポートでは、スタートアップの調達額は増加(一方でその社数は減少)というトレンドが紹介されているが、米国と比較すれば国内VCの投資額はまだまだ小さい(2012年度で米国VCの投資額は国内VCの約24倍という数字もある。リンク先はベンチャーユナイテッド チーフベンチャーキャピタリストである丸山聡氏のブログ)。今回の発表は「GCPが大きなファンドを1つ作った」というだけ(もちろん、「だけ」といっても大きなファンドができることは国内のスタートアップコミュニティにとっては大きな意味がある)の話だが、背景を読み解けば「国内VCに流れるお金の変化」という大きな兆しの見える話とも言えそうだ。

5年後になくなっているもの5つ

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【編集部注:本稿の筆者、Tom GonserDocuSignの最高戦略責任者。】

わずか5年前、世界はまったく違う場所だった。2010年、iPadはデビューしたばかり、Kickstarterは資金調達の様相を変えることになる新しい形のベンチャーキャピタリズムを生み出し、Squareはどんな規模の売り手でもモバイル端末にカードを通すだけで支払いを受け取れるようにした。後戻りはしていない。

次の5年間で、現在想像もしていない製品やサービスが出てくることは間違いない。しかし、前進するにつれてなくなるものはなんだろう?今使っているもので、新しい革新やテクノロジーや方法によって破壊され、完全になくなったり絶滅寸前になるであろうものをいくつか紹介する。

現金、小切手帳、クレジットカード、およびATM:デジタル財布の中には何がある?

いまやSquareによって、あらゆる売り手がデビットカードやクレジットカードを受け入れられる。Venmoを使えば、友達と夕食の支払いをテキストメッセージを通じて割り勘できる。まもなく、あらゆる銀行取引がどんなモバイル端末ででもできるようになる ー 車からでも。連邦準備制度によると、米国全体の小切手利用は、2000年から2012年で57%減った。

35歳以下の消費者の94%がオンライン銀行を利用し、その20%以上が紙の小切手を書いて支払いをしたことがない、とFirst Dataのレポート、The Unbanked Generationは書いている。ヨーロッパでは、小切手を書こうとすると、異常な人間かのような目でみられる。家賃は、小切手を使う最後の大きな砦かもしれないが、それでさえ大家が電子支払いに切り替え、モバイル支払いが益々簡単になるにつれ減少している。

もう一つ:もっと先の未来には、現金がなくなる。現金がないことは現金マシンがなくなることを意味している ー バイバイ、ATM。

USBメモリー:物理メディアはあと何年?

2020年には、世界の70%がスマートフォンを使っていると、 Ericssonのモバイル報告書は言っている。 モバイル通信ネットワークが人口の90%をカバーする。Apple、Box、Dropbox、Google、Microsoftなどのクラウドサービスがほぼ無限のストレージをほぼ無料で提供するようになり、ポケットの中でストレージデバイスが場所を占める理由はほとんどなくなる。モバイル端末の標準ストレージサイズが次の5年で増加するのはもちろんだ。

世界中のイベント主催者は、カンファレンス参加者への記念品に何か新しいグッズを考える必要がある。USBはアナログ時代の象徴になるだろう。

より簡単で安全なアクセス:パスワードや鍵はなくなる

これは想像しにくいだろう。パスワードは今日非常に広く使われているのだから。平均的な人で、パスワードを19個を持っていると言われている ー そして半分近くの人が安全でない弱いパスワードを使っていると認めている。しかし、たとえあなたが絶対に強力なパスワードしか使わないとしても ー おわかりかな ー やはり破られる

まず今の生活にある旧テクノロジーのがらくたを捨てててスタートを切ろう。

生体認証はすでに主流になりつつあり、特にモバイル端末ではわれわれのオンライン活動の多くで主要な入り口となっている。指紋、音声、顔認識が、最初の犬の名前や結婚記念日に変わって安全なアクセス方法になるだろう。それぞれにセキュリティーのリスクはあるが、文字パスワードはなくなるだろう。

同様に、物理的な鍵を失くす心配もなくなる。これからはいつも持ち歩いてるスマート端末が鍵になり、生体認証と組み合わせることによって、持ち主だけが使用できる。

これがなくなって悲しむ人は誰もいない:リモコン

ソファーのクッションをひっくり返してあの見つけにくいリモコン(ホームオーディオやビデオシステムの設定によっては10台かもしれない)を探すことはなくなる。

調査会社のStrategy Analyticsは、モノのインターネット(IoT)、スマートホーム、およびウェアラブルに出現する新たなカテゴリーによって、2020年までに176億台のデバイスが新しくつながるようになる、と予測している。現在でも、Amazon Echoなどのデバイスは、音声による検索とコマンドを新たなレベルに引き上げている。2020年には大量の新しいデバイスがインターネットにつながることによって、単体のハードウェアとしてのリモコンは意味をなさなくなる。

静的文書および紙の契約書

紙ベースの署名と紙ベースの手続き ー 取引を完了させるのに必要な物理的印刷、FAX、スキャン、あるいは承認、決定、署名のための配達便 ー は、今日のデジタル世界では急速に陳腐化しつつある。将来は、あらゆる取引が「クラウド契約」によってアクティブに管理されるようになる。

クラウド契約は:当事者たちの身元を(永久)に結びつけ、契約条件が満たされたら支払いを行い、必要な時期が来たら自発的に契約担当者と接触する。

不動産、金融サービス、保険、ハイテク、および医療企業は 予算を縛られた政府機関さえも ー クラウドコンピューティングを導入して、効率を高め、コストを下げ、エンドユーザー体験を改善している。もうすぐ、契約の管理方法は大きく変わるだろう。

新年の抱負を考えるときは、まず今の生活にある旧テクノロジーのがらくたを捨てて、デジタル新年のスタートを切ろう。たしかにまだ時間はある。しかし、これだけ魅力的なテクノロジー破壊が起きているのに、待つ必要はない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

BASEとメルカリがタッグ、最大4.5億円の出資を含む資本業務提携

左からBASE共同創業取締役の家入一真氏、メルカリ代表取締役の山田進太郎氏、BASE代表取締役の鶴岡裕太氏、メルカリ取締役の小泉文明氏

左からBASE取締役の家入一真氏、メルカリ代表取締役社長の山田進太郎氏、BASE代表取締役の鶴岡裕太氏、メルカリ取締役の小泉文明氏

今日から仕事が始まる人も多いだろうが、早速大きなニュースが飛び込んできた。ネットショップ開設サービス「BASE」を提供するBASEは1月4日、フリマアプリ「mercari」を提供するメルカリとの資本業務提携を実施したことをあきらかにした。

今回の提携に伴い、BASEはメルカリを引受先とした最大4億5000万円の第三者割当増資(マイルストーン達成による最大額)を実施する。出資比率は非公開。また元ミクシィ取締役CFOで、現在メルカリ取締役を務める小泉文明氏がBASEの社外取締役に、メルカリ プリンシパルエンジニアの長野雅広氏がBASEの技術アドバイザーに就任する。

サービス面での連携も検討中だというが、具体的には明らかにされていない。BASEでは今後採用活動やマーケティングを強化するとしている。近いうちにも採用向けのイベントなどを共同開催するほか、アプリでの送客やマーケティングなどで協力する予定だという。

同じビルでスタートしたBASEとメルカリ

BASE代表取締役の鶴岡裕太氏、メルカリ代表取締役社長の山田進太郎氏の2人が語ったところによると、両社はもともと非常に近い関係にあった。BASEは2012年に六本木一丁目にあったビルで業務を開始したが、そこはpaperboy&co.(現GMOペパボ)創業者であり、BASEの共同創業・取締役である家入一真氏が当時手がけていたプロジェクト「Liverty」や、クラウドファンディングサービス「CAMPFIRE」のハイパーインターネッツなど、家入氏が関わるスタートアップが数多く入居していた。

2012年にZynga Japanを退任し、約1年かけて世界一周を旅行。再び起業の準備をしていた山田氏もそのビルを拠点にしていた。また両社はともにベンチャーキャピタルのEast Ventures(EV)から出資を受けることになる。そのためビルの取り壊しが決まった際の移転先も同じ、六本木にあるEVのインキュベーションオフィスだった。

もともと家入氏と山田氏は同世代(家入氏は1978年生まれ、山田氏は1977年生まれ)の起業家として、また個人投資家として親交が深かったが、これに鶴岡氏も加わるかたちで「ときどき事業の相談をしたり、お互いが人の紹介をしたりしていた」(鶴岡氏)のだという。創業当時22歳だった鶴岡氏からすればひとまわり年上で、起業家経験の長い山田氏はメンター的な存在の1人だった。今回の発表も、もともとVCなどからの資金調達に動いていた鶴岡氏が山田氏に相談したことがきっかけなのだという。

BASEの店舗数は現在20万店舗。流通総額で見れば、年間数十億円後半の規模にまで成長した。「これまで出店者を増やすことに注力してきたが、2016年からは購入者を集めるフェーズになる。購入者を集めるノウハウを持っているのがメルカリ。彼らの持っているノウハウで学べるモノがあればなんでも学んでいきたい」(鶴岡氏)。メルカリは2013年からの2年半で日米2700万ダウンロードを達成。この短期間でテレビCMを含むマーケティングも経験している、この速度で成長を遂げたスタートアップはそう多くない。

メルカリ、今後はスタートアップ出資を加速

メルカリについては、2015年12月に黒字化を達成していることを報じたばかりだが、本格的な出資はこれが初めて。山田氏は今後、スタートアップへの出資や買収を「積極的にやっていきたい」と語る。

CtoCコマースだけでなく、BASEのようなスモールBtoCのコマースを自社でやる可能性はなかったのかとも思ったのだが、メルカリの山田氏は「現在リソースの9割をmercariの米国展開に使っている。またCtoCといっても、サービスCtoCのような領域もあって幅が広い。なのでBtoCについては連携してやっていくのがいいと思っている」と語る。

またBASEについては、代表同士だけでなく、経営陣や社内のキーマンらに親交があり、文化的にも近い(小泉氏いわく「ミクシィやフリークアウト、paperboyなど出身の『ネット大好き企業』の集まり」だそう)ことも出資の動機になったという。なお今後BASEを買収する可能性についても聞いたのだが、「BtoCとCtoCなので実は全然サービスが違うし、ブランディングも違う。権限や責任を与えて自走できるのが筋肉質な組織を作ると考えている」(小泉氏)とのことだった。

将棋で磨いたAI技術をFintechへ応用、HEROZが1億円を追加調達

将棋AIをビジネス化して実績を伸ばしているHEROZが今日、創業6年目にして追加で1億円の資金調達を行ったと発表した。これまで取り組んきたでボードゲームAIによるビジネスの国際展開に加えて、金融やヘルスケア領域にもAIを適用していくという。第三者割当の引受先は一二三(ひふみ)インキュベートファンド。

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HEROZの「将棋ウォーズ」については以前TechCrunch Japanでも取り上げた。将棋なら羽生名人ということになるが、人間のチャンピオンを凌駕する実力を持つに至ったAI技術を活かし、HEROZは人間同士のオンライン対戦のコミュニティーを作ってきた。一般プレイヤーからすると、AIはすでにあまりにも強いので、AIが「コーチ役」を果たしていて、これにユーザーは課金するという仕組みが回り始めている。月商は非公開だが原価率が低く済む割にユーザーの熱量が高いのが特徴といい、強力なAIを呼び出して自分に代わってAIに指してもらうのが5手で100円。それから1日3局という対局数制限が解除できる月額500円の有料課金ユーザーが全体の1割程度。提供開始から3年、現在1日20万局以上の対戦が行われているという。

将棋ウォーズで培ったマネタイズモデルを国際展開しようというのが「バックギャモンエース」、「チェスヒーローズ」だ。将棋人口は約1270万人。これに対してバックギャモンは約3億人、チェス約7億人と、市場はより大きい。チェスやバックギャモンは、欧米では高級指向の文化として受け入れられていてプレイヤーの贅沢品の購買傾向が高いことから、HEROZではメディアとしての価値もあると見ているという。例えば、世帯収入が12万ドル以上ある人のうち21%が日常的なチェスプレイヤーなのだそうだ。

金融やヘルスケアでも応用が効く

将棋AIで培った機械学習やディープラーニングのノウハウは、「そのままではないものの並列化や機械学習のテクニックなど応用が効く」(HEROZ共同創業者で代表取締役の高橋知裕氏)ことから、まずは金融分野に進出する。具体的には市場のアービトラージを取るようなもので、過去データから将来を予測するようなもの。これはすでに証券会社に提供してて、「証券会社が持っている分析よりも良い結果を出している」(高橋氏)という。また、まだ実証段階の取り組みであるもののヘルスケア領域でもAIの適用を試みる。こちらの分野では、医療系ベンチャーの日本医療機器開発機構と協業に向けて模索を開始した段階という。

HEROZは2009年4月創業で、創業時にビッグローブキャピタルなどから1億円の資金調達をしたあと、モバイルゲーム関連で収益を上げてビジネスを回してきた。会社として「AI x モバイル」を掲げていて、将棋AIで最高峰の強さであるPonanzaの開発者の山本一成氏など過去3人の将棋電脳戦出場者がいるなどトップエンジニアを抱えているのが強み。社員数は現在約70名。

日本のVCが予想する2016年のスタートアップ・トレンド(後編)

2015年にもさまざまなスタートアップ企業が登場したが、来年はどんな1年になるだろうか。TechCrunch Japanでは、2016年のテック業界とスタートアップのトレンドについて計19の国内VCとエンジェル投資家に意見を求めた。

回答いただいた質問は2つ。2015年のスタートアップシーンを象徴するキーワードは何ですか、というものと、2016年に盛り上がりが予想される分野やサービス、企業名など理由とともに教えてください、というものだ。では早速国内VCたちの意見に耳を傾けてみよう。

後編ではシリーズA以降など比較的投資額の大きいVCの意見を中心にまとめた。エンジェル投資やシード期の投資家の意見については、以下の記事前編を見てほしい。

日本のVCが予想する2016年のスタートアップ・トレンド(前編)

※各VCから回答を得ているとはいえ、投資担当者は通常カバー範囲が決まっている。だから各回答は必ずしもそのVCを代表する意見ではない。

ATOMICO

岩田真一氏(Patner)
2015年のキーワード:シェアリングエコノミー、C2C、FinTech

2016年のトレンド:FinTechは法規制の緩和や業界の理解も進み、2016年はさらなる盛り上がりを見せると思われます。C2Cに関してはネットワークエフェクトの組込み方や、ユニークな売買体験、支払いの簡易化など各社独自の戦略を取り差別化が進むでしょう。またC2Cは比較的マーケット展開がしやすいため、スケールも楽しみです。シェアリングエコノミーは定義が広がり、細分化された命名がなされると思います。Bを活用したものとC同士のもの、などは本来別物ですが、これらを表わす言葉がありませんから、いずれ新しい呼び方が生まれてくるでしょう。広義ではクラウドソーシングもシェアリングエコノミーとして議論されることもありますが、そのような俯瞰した議論と並行して個別のビジネスモデル、スケーラビリティー、アップサイドなどについても議論が深まっていくことでしょう。

グリーベンチャーズ

堤達生氏(General Partner)
2015年のキーワード:動画サービス、FinTech

2016年のトレンド:2015年に急速な立ち上がりを見せたモバイル動画サービスの分野が、2016年以降、さらなる拡大・普及期に入ると思います。ユーザーのモバイルでの動画接触頻度・時間がより一層、増えることで、モバイルに適した形の動画コンテンツ、動画広告が新たに出てくると思います。注目しているサービスとしては、LINE LIVEですね。立ち上がりも順調に視聴者を伸ばしているようですし、テレビでは見られないコンテンツの形態をいろいろ模索している様子が窺えて、今後の展開が楽しみですね。このLINE LIVEを筆頭に、新たな動画プラットフォームプレイヤーの出現も注目ポイントの1つです。おそらく大手のインターネット企業の何社かも同様のプラットフォームを出してくると思いますので、より一層、良質なコンテンツの獲得合戦になると思います。

上記の流れを受けて、米国でも急成長中のNow Thisのような、Distributed Contents(分散型メディア)のプレイヤーも日本でこれから続々と出るのではないでしょうか。

もう1つの注目は、引き続き、FinTech領域になります。国全体の後押しがあることもあり、この領域へのリスクマネーの流入は来年も引き続き活発になると思います。ただ、時間のかかる領域でもあるので、各社も具体的なマイルストーンを示していかないと、現在の動きが一過性のもので終わってしまう可能性もあります。

最後にVRの領域は要注目ですね。まだ、それほど多くのプレイヤーがいるわけではなく、あったとしてもゲーム領域のプレイヤーが中心ですが、ハードの革新とともに、非ゲーム領域へのVRサービスが出始めると非常に面白いビジネスができるのではないかと考えています。

アイ・マーキュリーキャピタル

新和博氏(代表取締役社長)
2015年のキーワード:動画サービス、VR

2016年のトレンド:VR。以前、初めてOculusのデモを見たときに衝撃を受けた。2016年はプラットフォームやハードの環境が整い、コンテンツも急増しそうな雰囲気を感じる。ネット系上場企業の動向も要注目。ゲーム以外の分野での応用に関心がある。

サイバーエージェント・ベンチャーズ

田島聡一氏(CEO)
2015年のキーワード:シェアリングエコノミー、動画サービス、C2C、FinTech

2016年のトレンド:

IoT:2014年に3Dプリンターの主要特許が切れたこともあり、今後SLS法を含めた3Dプリンターのコモディティ化が進むと思います。そんな中で期待しているのは、実需としてのオンデマンド型SCMソリューション、及びその周辺プレイヤー。ここの存在感が高くなってくると期待しています。弊社投資先:Kabuku

FinTech:権利移転がともなうさまざまな取引にブロックチェーンのストラクチャー導入検討が進むと思っており、ソフトウェアやAPIとしてブロックチェーン環境が提供できるソリューションの存在感が高くなると期待しています。弊社投資先:Orb

VR:すでにコロプラやGumiが力を入れているVRですが、プレイステーションVRの登場により、VRのマス層への浸透が大きく進むと思っており、それにともないゲーム会社はもちろん、周辺プレイヤーへの注目度が大きく高まると思います。

インバウンド需要の取り込み:インバウンド需要の高まり、特に中国からの来日客がまだ増加すると考えています。そういった意味では、旅行・飲食・エンタメなどのインバウンド需要を受け入れるO2Oが伸びると考えています。弊社投資先:Retty、Loco Partners

従来型産業のDisrupt:金融、不動産、医療などネットがあまり浸透していない従来型産業のDisruptが大きく進むと考えています。このあたりの分野は、実は中国や東南アジアの方が先行しているケースも多く、北米ではない海外事例はとても重要になってくると考えております。弊社投資先:プラネットテーブル

分散型メディアの拡大:あらゆるコンテンツのソーシャルメディアへの最適化によって、分散型メディアが成長すると考えており、ソーシャルコンテンツのネットワーク(集合体)が大きく育ち始めると思います。そういう意味では、コンテンツホルダーに対して、適切なソーシャル環境を提供するプラットフォームに注目しています。弊社投資先:リボルバー

NTTドコモ・ベンチャーズ

秋元信行氏(取締役副社長)
2015年のキーワード:IoT

2016年のトレンド:我々が2016年として注目している分野は、UAS(Unmanned Aircraft System)、いわゆるドローン分野と、IoT向けサイバーセキュリティー分野です。

UAS分野については、単に機器としてのドローンということではなく、無人飛行システム及びその運行に関わる機器、制御システム、データリンク、テレメトリー、通信、航行システムといった広い産業として理解しており、これまでの地上と管理された一部の航空システムが担っていた移動手段がさらに拡大し、かつコモディティー化する新しいフロンティアとして理解しています。これまで先行していた欧州に加え、米国においても規制緩和、技術革新、市場拡大が進み、数多く新規参入している民間企業群がNASA(アメリカ航空宇宙局)やFAA(連邦航空局)など国家機関と連動しながら管制システムの整備と商業実験を進めています。我が国においても、民間企業の進出や政治的にも特区指定などが急速に進展しています。商用利用の拡大にともない、管制インフラの整備や金融等産業派生商品などの事業拡大が創出されるものと考え、我々の本業である通信の観点からも大いに着目しているところです。

IoT向けサイバーセキュリティー分野については、今後否応なく進展するIoT化にともない、さまざまなデバイスがネットワークにつながるようになると、従来のPCやスマートフォンのように人々が能動的に利用していた情報機器だけでなく、人々がそれと気づかずに日々動いている生活基盤や各種機器に対するサイバーアタックが増加されることが予測され、当然にその対策が従来のものから質的にも量的にも大きく変容することが予想されます。当面は、自動車などの危険度が高く、数が多いエリアと、発電所やガス・水道といった人々の生活に重大な影響を及ぼすインフラ系から拡がっていくものと想像しており、このような対策技術の創出国として、欧米に加えて、イスラエルにも大いに注目しています。

GLOBIS CAPITAL PARTNERS & Co

今野穣氏(パートナー、COO)
2015年のキーワード:シェアリングエコノミー、動画サービス、AI、C2C、FinTech

2016年のトレンド:PC時代から続く、主にエンターテイメント・コンテンツやコミュニケーション領域などのオンライン完結のサービス・プロダクトは、2013年~14年のスマートデバイスにおけるWebからアプリへの一定範囲でのコンバージョンを経て、ほぼプレイヤーとして出そろい、今後はますますリアル社会との接点、日常生活の中でのインターネットという領域にその主軸が移りつつあると認識しています。

そのような文脈において、5つの切り口で今後の注目領域を紹介します。

1.「6TECH」領域での産業進化
業種・セクター的な切り口でいえば、6つのセクターとテクノロジーの融合に注目しています。3TECHとしては良く、Fin-Tech、Edu(cation)-Tech、Healthcare-Techが挙げられることがあります。私はそれにCar-Tech、Home-Tech、Frontier-Techの、(2+1)TECHを加えて見ています。「Frontier」は、宇宙やドローンなどの新たな領域を意味していますが、基本的には既存の産業の進化系の領域なので、ユーザーの日常生活における「実需」をどう組み込めるかが大事だと思います。

2. オフライン領域も踏まえたユーザー参加
ユーザーとインターネットとの関わりという意味では、スマートデバイスの普及によって、ユーザーのインターネットとの接点が多様化・細分化されるとともに、スマートデバイスが予約や決済と言ったUXを通じてバーチャル世界からの「出島」になりつつあります。そのような状況下でCtoCやシェアリングエコノミーを実現するサービスが増加しています。この領域においてもリアル社会の実需をきちんとオンラインに載せることと、規制およびその緩和による事業機会をきちんと掴むことが重要と認識しています。

3. 技術動向としての新領域の可能性
技術的な動向という側面では、AI、VR、IoTなどが挙げられるかと思います。しかしながら私(弊社の投資ステージ)にとっては、この領域がメインストリームになるのは時間軸としてもう少し先になるような気もしています。AIに関してはビッグデータ解析からどう本質的に進化できるのか、VRとしてはスムースなUI/UX設計、IoTに関してはデータ取得後の後工程における提供価値など、「プロダクト→サービス→マネタイズ」と言った進化論をどのように設計するかが肝要に思います。

4. コンテンツ領域におけるリッチ化
冒頭にエンターテイメント・コンテンツやコミュニケーション領域においては、プレイヤーとして出そろった感があると書きましたが、大局的なトレンドとして「テキスト→写真」から動画へと進化していくのは、一定程度自明な流れとなるでしょう。ただし、広く動画と言っても、その領域に対する参入の仕方やファンクションの担い方は多様に存在するわけであり、かつ動画そのものは表現手法の1つに過ぎないので、ユーザーへの提供価値や、UI/UXをどう最適化するかが各領域での勝負の分かれ目になると認識しています。

5. シリアルアントレプレナーと「素人革命」による起業家の多様化
人材面では、「0→1」を生み出すことに長けている人材は、それ自体代替可能性が低いと意味で才能と言えます。さらにそれが複数回目であるシリアルアントレプレナーは、判断の精度の高さやチーム組成などの人脈力に加え、前回よりも大きなサービス・プロダクトというモチベーションも働き、成功確度が高いです。他方、CtoCなど「素人革命」を促すようなサービスにおいては、それを設計できる人材は、これまでの論理的なスペック論とは違ったユーザーと目線の近い起業家かもしれません。

6. スタートアップとしてのソーシング(発見・発掘)領域の優位性
スタートアップ業界の競争環境と言う意味においては、先輩上場ベンチャー企業も、インターネット完結で高いマネタイズ力と利益率を誇っていたゲームなどエンターテイメント領域からへシフトしている会社が増加しており、そのような資本力の高い企業もスタートアップのサービス開始後すぐに横一線の競合となりつつあります。そのような構図の中でスタートアップは、より泥臭く、よりローコストで、スピーディーに、新しい領域や、コミュニティー、資産、タレントを発見・発掘して行けるかどうかが大事だと思っています。

東京大学エッジキャピタル(UTEC)

山本哲也氏(取締役ジェネラルパートナー)
2015年のキーワード:ロボット、AI、IoT

2016年のトレンド:

1. VR/AR分野
米国での盛り上がりは報道の通り。Facebook、サムスン、ソニーなどのVR機器がマス展開開始。ベンチャーでは、Magic LeapやJauntVRや大型調達、2016年中の期待を煽る展開を想定。コンテンツの作成や、編集、配信、流通に関連した新たな技術・サービスの立ち上げが2016年に期待される。中でもコンテンツの共有が鍵に。UTEC山本の投資先では、3D写真のFyuseを展開するFyusionが関連投資先です。

2. IoT分野
日本でも経産省・総務省主導のIoT推進ラボが設置され、政府の取り組み強化。米国でもCESの1つの目玉になる感触。ただ分野の定義が広い分、幅広くベンチャーの参入を後押しするバズワード化している印象も。2016年は具体的なキラー・アプリケーションの模索を開始する年になると思います。技術先行の会社はアプリケーションを探して当面もがくことになるでしょう。UTEC山本の関連投資先では、Dragonfly Technoloy(商用及びスマートホーム向け無線センサーネットワーク開発)。アグリ分野もTPP関連で注目増です。UTEC投資先としてはベジタリア、ルートレック・ネットワークスがあります。

3. ロボット分野
2016年は、知能化された産業用ロボットが実際の製造・物流の現場に入り出す年になるでしょう。一部、ディープラーニング系のAI技術を産業用ロボットや、自動走行車関連に応用していく試みがプレス的には注目されるでしょうが、統計処理では機器制御の全てを解消できずに、話題先行にとどまるかと。その中で、モデル・ベースのシミュレーションを軸にロボットの知能化を実現しているUTEC山本の投資先、Mujinはより注目を集めるでしょう。ドローン分野の産業用分野への応用展開も2016年には日本でも動き出すのではと期待。

4. AI分野
ディープラーニングを軸にする人工知能は、猫も杓子も味付けのキーワードとして言及し盛り上がりつつ、混乱が増すかと。TensorFlowなどがオープンソース化されたことで、それらを用いたベンチャーなども出始めると思いますが、一部、データ解析や、曖昧さが許容される画像処理や認識などの分野で限定的な用途で現場での利用が多少されると思いますが、実際の効果を示せないケースが増えて2016年後半から幻滅期に入っていくかと思っております。UTEC山本のAI分野での個人的な関心はパーソナライゼージョン。

グローバル・ブレイン

百合本安彦氏(代表取締役社長)
2015年のキーワード:シェアリングエコノミー、ロボット、AI、C2C、IoT

2016年のトレンド:マクロ的には、来年前半に相場調整がさにに入る可能性が高いと考えているが、投資姿勢は2015年同様積極的な姿勢を崩さず、下記8つの領域を中心に50億円~100億円を、すべてのステージのベンチャー企業にグローバルに投資をしていく。

まずは昨年も注目を集めたロボティクス領域。カメラやセンシングデバイスなどの低価格化や高性能化、AI技術の進歩を背景に、大きく成長すると予測している。中でも、Jiboのようなソーシャルロボットや、ライフロボティクスのような産業用コ・ロボットの分野が伸びると考えている。

2つ目はFinTech。米国ではブロックチェーンが注目され、AndreesenやVISAが投資や事業を加速化している。この波は日本にも上陸し、日本の大手金融機関の活動も活発化するのではないかと期待している。

3つ目は昨年に引き続き、アドテク分野に注目。本領域ではより一層の質の向上が求められており、シンガポールのNearやEyotaなどのAIを使ったアドテクの成長が予想される。

Eコマースの分野では、CtoCコマースがさらに成長すると予想する。メルカリ、クリーマ、ミンネ、BASEなど、ある程度プレーヤーが出そろっており、将来的には合従連衡の動きが進むと予想される。また、近い将来、ブロックチェーンを活用した取引形態に移っていき、より一層の活発化が予想される。

クラウド分野にも注目している。AWSなどのクラウドサービスとIoTの普及により、迅速にサービス開発・運用を行うDevOpsのニーズが高まっており、RightScaleやNagiosなどのDevOps向けツールを提供する企業が欧米で増えている。こういったサービスが今後、日本でも増えると考えられる。

6つ目は、IoTを使ったビッグデータ・プラットフォーム領域。単体としてのIoT製品は普及してきたが、今後は単体のモノとしてIoTではなく、August、BitfinderやArcstoneのようにIoT機器を複数繋いで、より幅広いサービスを提供する企業が増えてくると考えられる。

他にも、近年注目されているAI領域、ヘルスケア領域にも着目している。特に監視カメラなどの動画像認識技術を利用したサービス、カスタマーサポート支援などの言語処理技術を利用したサービスや、個人の行動変容を促し、健康リスクの低減を支援するサービスなどに注目している。

Draper Nexus Ventures

中垣徹二郎氏(Managing Director)
2015年のキーワード:FinTech、IoT、Marketing Automation

2016年のトレンド:BtoC市場が中心であった日本のスタートアップシーンにおいてBtoBの存在感が増す事になるだろう。この1年でもフロムスクラッチ、Freee、マネーフォワードなど企業向けクラウドサービスの会社の大型増資が話題になった。

この分野では、北米に遅れること久しいが、Venture Beatで取り上げられた2016年に上場予定企業の記事で挙げられた36社のうち8割がB向け企業、引き続き北米もB向け市場は熱い。Draper Nexusは、1号ファンドからB向けの企業向けの投資を中心に進めており、どの会社も業績は拡大。SaaSがいよいよ日本でも普及期に入る。SaaSの中でも、マーケティングオートメーションの分野は、競争が激化する。この分野に弊社も2社(イノーバ、フロムスクラッチ)に投資を実行しているが、イノーバはHub Spot、フロムスクラッチはMarketo、Pardot、Eloquaといった外資系のツールとの競合という形になっており、国内の増資のニュースだけでは見えない激しい競争が始まっている。SaaSの普及において導入支援・サポートの役割は重要であり、弊社投資先のtoBeマーケティングも、SaaSの導入・サポートの企業として、急成長が予想される。

AIも引き続き注目。AIを何に活かすのか、アプリケーションや市場をどのように掴むのかが重要なことは言うまではない。Draper Nexusの北米の投資先であるCylance社は、AIをセキュリティーソフトに活かしており、マルウェア対策ソフトとして急成長。日本でも、2016年はさらに興味深い会社が出てくると期待。

近年盛り上がりを示す事業会社のCVCやアクセラレーションプログラムが更に活発化するだろう。並行して大企業によるスタートアップの買収の件数が増加することも期待したい。

伊藤忠テクノロジーベンチャーズ

河野純一郎氏(パートナー)
2015年のキーワード:シェアリングエコノミー、C2C

2016年のトレンド:2016年に盛り上がりを見せる分野は、FinTechです。会計や請求などのバックオフィス効率化、決済分野を中心に、すでに投資の活発化、市場への浸透が進んでいますが、「一部の人だけが享受している金融サービスの大衆化」というFinTechの本質という意味では、まだまだ開拓余地のある分野であると考えています。提携や出資、自社サービスの展開など、既存金融機関も危機意識を持つだけでなく実際の行動に転化してくることも予想されるため、プレイヤーも資金の出し手も含め群雄割拠の様相を呈しながら、市場発展を迎えていくのではないでしょうか。この分野で個人的に注視しているのは米国アトランタを拠点とする中小企業向け融資サービスを展開する「kabbage」です。

また、2016年に市場全体として盛り上がるかは分かりませんが、個人的に注目している分野は「農業」です。農業従事者の高齢化や広大な耕作放棄地の存在という構造的な課題、TPP参加や農地法改正に伴う参入緩和等々の市場の潮目の変化、ITとの親和性と改善可能性の高さ。難しい領域ではありますが、ベンチャーキャピタリストとして是非チャレンジしていきたい分野と考えています。

日本のVCが予想する2016年のスタートアップ・トレンド(前編)

クラウド会計のfreeeがFinTechファンドなどから10億円を調達、年間の調達額は45億円に

freee代表取締役の佐々木大輔氏

クラウド会計ソフト「freee」をはじめ、クラウド給与計算ソフト、会社設立支援ツールなどを提供するfreeeは12月28日、SBIホールディングス傘下のSBIインベストメントが運用する「FinTechファンド」などを引受先とした合計10億円の第三者割り当てを実施したことをあきらかにした。同社の2015年の資金調達額は8月の調達とあわせて45億円。同社の発表によると、未上場企業においては年内で最大の額になるという。

freee代表取締役の佐々木大輔氏

freee代表取締役の佐々木大輔氏

クラウド会計ソフトのfreeeはこれまで40万件以上の事業所が利用。12月には三菱東京UFJ銀行やみずほ銀行など11の銀行との協業も発表している。これはfreeeのユーザーである中小企業や個人事業主の会計データを、ユーザーに許諾を得た銀行が閲覧できるようになるというもの。今後銀行側では、会計データを与信にした融資など、新たな金融サービスを企画・検討していくという。

またfreeeは12月16日にメディア向けの説明会を開催しているが、その際には、現状のfreeeはまだサービスの第1段階であると説明。今後は、会計事務所向けに、経営判断のためのレポーティング機能や分析機能、マーケティング機能などを提供していく。

その説明会の際に同社が強調していたのが、「10年後になくなる職業として公認会計士が挙げられているが、そうはならない」ということ。

多くの職業が今後コンピューターで置き換えられるとした2013年のオックスフォード大学のレポートでは、人工知能の発展により10年後には会計士の仕事がなくなるとも言われている。だが今後、企業のリアルタイムな経営パートナーになっていくことで、「なくなる職業」にはならないというのがfreeeの主張だ。freeeをはじめとする会計ソフトは、毎月ではなく、リアルタイムにレポートを閲覧できる。このリアルタイムな数字をもとに、素早い経営判断を支援していくことが求められているのだと。前述の機能強化は、この方針に沿ったもの。具体的なスケジュールは未定だが、2016年中にも順次新機能が提供される見込みだ。

freeeの今後のプロダクト開発について

freeeの今後のプロダクト開発について

クラウド家計簿提供のBearTail、今度は経費精算サービスの提供を開始

keihi

スマホでレシートを撮影するだけで全自動で家計簿を作成できるクラウド家計簿サービス「Dr.Wallet」。このサービスを提供するBearTailが、今度はビジネスパーソンをターゲットにした新サービスを公開した。同社は12月24日、クラウド経費精算サービス「Dr.経費精算」ベータ版の提供を開始した。サービスは月額980円(30日間無料)。2016年1月には法人向けプランの提供も予定する。

Dr.経費精算は個人時事業主や中小企業向けの経費精算サービス。スマートフォンアプリやウェブサイトにて領収書を撮影して送信するだけで、データ化、さらに仕訳までを行う。登録されたデータは事後の編集も可能。データはExcel、CSV形式で提供される。

もともとBearTailが提供してきたDr.Walletでは、撮影したレシートのデータを、画像認識とクラウドソーシングの手入力で処理。目視をはさむことで高い精度を提供していた。今回提供を開始したDr.経費精算ではそのノウハウをいかしてサービスを提供しているという。

経費精算の自動化と聞いて気になるのは、交通系ICカードの読み込みだ。例えば先行する経費精算サービスであるクラウドキャストの「Staple」などは5月にICカードの読み込みに対応。この機能のリリース後にユーザーを拡大しているといった話を以前の取材で聞いた。

BearTailでもそのあたりのニーズは意識しているようで、ベータ版では交通経路検索機能により、駅名からの料金登録をまず実現。今後は「2016年早いタイミングで予定している正式版では、ICカードのNFC読み込み、オンライン利用明細の自動取り込みの機能も追加する予定」(BearTail代表取締役の黒崎賢一氏)としている。

Fintechという言葉でひとくくりにするワケではないが、電子帳簿保存法の改正を受け、2017年度にもスマートフォンで撮影した領収書での経費精算が可能になると見込まれていることからも、この領域のスタートアップの動きは活発。BearTailもそこに着目した。「今後クラウド化が進んでこなかった経費精算サービスが一気にクラウド化すると考えている。帳票入力や回覧・保管にかかわる経費精算関連市場は1兆円とも言われるが、その中でデファクトスタンダードを目指す」(黒崎氏)

動画学習のスクーはユーザー20万人に、1980円のプレミアム課金サービスも開始

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オンライン動画学習サービス「schoo WEB-campus」を提供するスクー。2011年10月に立ち上がったこのサービスは、2015年12月時点でユーザー数20万人を数えるまでに成長した(2014年12月時点でのユーザー数は11万人)。

現在は個人および法人(現在100社が導入)向けの有料課金サービスでマネタイズしているschooだが、今回、個人向け有料課金プランにおいて、上位プランとなる「プレミアムプラスプラン」の提供を開始した。これまで提供してきた個人向けの課金サービス「プレミアムプラン」が月額980円(4月以降。それ以前は月額525円だった)なのに対して、この新プランはその約2倍、月額1980円という価格設定になっている。

ではこのプレミアムプラスプランではどういったサービスを提供されるのか。まずは、既存の課金プラン同様の録画授業の視聴機能。無料であれば基本的にリアルタイムでしか視聴できない授業を、無制限でタイムシフト視聴できるというものだ。これに加えて、登壇した先生の資料のダウンロード機能、動画と連携したリッチノート機能、途中で中断した授業を続きから再生できる記憶機能などが提供される。

リッチノート機能のイメージ

リッチノート機能のイメージ

今回の取り組みはスクーいわく「質の高い学習コンテンツを、より多く生成するための生態系の強化」なのだそうだ。オンライン上には無料だったり、低価格帯のコンテンツがあふれている。スクーはそれらとの差別化として、「学習効果を最大化するための良質なコンテンツを提供し続ける」ということ重視しているとのことで、「良質なコンテンツを提供し続けるためには高いレベルでのビジネススキームを作る必要がある。ユーザーに学習しやすい環境を整える機能を提供し、学習に対する満足度を高めてもらう。そして、スクーは授業生成におけるすべてに対して投資を行うことで、質の高い学習体験をユーザーに還元する。そのための手段」(同社)としている。

フィリピン留学の口コミサイト「School With」が刷新、欧米含む7カ国に対応

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安価かつ日本からの距離も近いということで、英語レッスンのためにフィリピン・セブへ留学するという話はよく聞くようになった。フィリピンにおける日本人留学生の数は2010年時点で4000人だったが、この5年で8倍に増加しているという。だが一方で課題になるのはトラブル。ウェブサイトでうたう制度や設備も、いざ現場に行ってみると十分に整っていなかったりすることもあるそうだ。

フィリピン留学の口コミサイト「School With」を運営するスクールウィズ代表取締役の太田英基氏も、フィリピン留学中にそんなトラブルに見舞われた1人。創業に関わったスタートアップを離れ、トラブルがきっかけとなり、「信頼できる口コミの集まる場を作りたい」という思いから2013年に会社を設立。School Withを立ち上げた。

これまで集まった口コミは140校、1700件以上。語学学校の基本情報から金額、英語使用ポリシーなどが掲載され、学校ごとにユーザーの実名による口コミが投稿されており、月間4万人の留学希望者がアクセスしているという。同サイトを通じて留学の契約が成立することで手数料を得るビジネスモデルで、売上高は非公開ながらも「成長中」(太田氏)だという。同社経由での申し込みでは、学校倒産時の補償や、カード決済による留学費用の分割支払いといった機能を提供している。

そんなスクールウィズが12月22日にリニューアルを実施。フィリピンに加えて米国、カナダ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、アイルランド、マルタの7カ国の語学学校の情報の掲載をスタートした。

今回のリニューアルにより、School Withに掲載される学校数は合計1014校になった。太田氏は「独自アンケートを実施したところ、フィリピン留学の認知度は大学生で3割程度とまだまだ低い。海外の様々な地域の情報を集めた場所を提供することで、よりフラットに語学留学について考えられると思う」と語る。最近ではフィリピンで基礎的な英語を学び、その後欧米でより上のクラスの英語を学ぶ「2カ国留学」の需要も徐々に高まっているそうで、今後もこういったユーザーのニーズにあわせた機能強化を進めるとしている。

シリコンスロープ―テクノロジー・スタートアップの新たな聖地、ユタはユニコーンを量産中

2015-12-22-utah

この季節、オグデンからプロボにかけての山の斜面、地元のユタ州民が「シリコン・スロープ」と呼ぶワサッチ郡にはすでに雪が降っている。しかしロッキー山脈のこのあたりは単なる雪山ではない。そのニックネームから想像されるとおり、ユニコーン―評価額10億ドルを超えるスタートアップ―を多数産みだしているのだ。

ユタ州の新たな特産となったユニコーンのうち、4社はワサッチ地区に本拠を置いている。Omnitureのファウンダーとして有名なJosh Jamesのビジネス・インテリジェンスのスタートアップ、Domoもその一つだ。さらにPluralsightQualtricsInsideSalesもユニコーンだし、他にいくつかの「半ユニコーン」も存在する。

ユタの経済成長は主として最近の2年間に集中している。リードしているのはテクノロジー産業だ。こうしたテクノロジー・スタートアップの特長はベンチャーキャピタリストが注目する前からすでに黒字化を達成している企業が多いことだろう。

「蜂の巣」効果

ユタのテクノロジー・スタートアップでは地元コミュニティが以前から大きな役割を果たしてきた。ユタはOmniture、WordPerfect、Landeskの誕生の地であるだけでなく、Pixarの共同ファウンダー、エド・キャットムル、Atariの共同ファウンダー、ノーラン・ブッシュネルの2人はどちらもユタ大学の卒業生だ。付近の大学やカレッジは高度な学位を取得したエンジニアを毎年何百人も社会に送り出している。ユタはさほど生活費も高くなく、十分な教育を受けた人材が地元には多数住んでおり、彼らの大部分は他所に移ることを望んでいない。しかもユタのスタートアップの多くはベンチャーキャピタルの資金を受け取る必要なしに運営されている。

「ユタには時間をかけて良好なファンダメンタルを備えた企業を育てる文化がある」とFarmingtonに本拠を置く教育スタートアップ、PluralsightのCEO、Aaron Skonnardは言う。Pluralsightは外部の資金援助なしに9年近くやってきた。「シリコンバレーにはわれわれのところのような強い忍耐心の強さはない」とSkonnardは考えている。

最初からそのような財政規律の教育を受けていたため、長期にわたってじっくりスタートアップを育てることができたファウンダーを何人も知っている。

—QualtricsのRyan Smith

ユタではシリコンバレーに比べてベンチャーキャピタルが遠い存在だったのは事実だが、それだけに当地のスタートアップは生まれた瞬間から収益性に注意を払わざるを得なかった。「われわれはスタートアップはどうしたら企業を黒字化できるか常に考えることを規律として叩き込まれている」とプロボのスタートアップ、InsideSales.comのCEO、Dave Elkingtonは言う。

しかし最近、ベンチャーキャピタルはユタで珍しい存在ではなくなってきた。数年前、名門VCのSequoiaはQualtricsのファウンダー、Ryan Smithに7000万ドルのベンチャー資金をシリーズAラウンドとして投じた。以来、Qualtricsには2億2000万ドルのベンチャー資金が流れ込んでおり評価額は10億ドルを超えている。

SmithとSkonnardはいくつかの点で同意見であることがわかった。たとえば、スタートアップは最初期の時点から収益性を考えなばならないという財政規律だ。「最初からそのような財政規律の教育を受けていたため、長期にわたってじっくりスタートアップを育てることができたファウンダーを何人も知っている」とSmithは言う。

急がずIPOへ

Smithはユタで生まれた有名なワープロ・ソフトウェアを例にこういう。「WordPerfectはものすごいイノベーションを起こしていたかもしれない。しかし1992年に売却されている。、もしこの売却がなかったらどうなっていただろう?」

ユタのユニコーンは現在の10億ドルの評価額を得るまでに非常に長い期間、多くは10年以上をスタートアップとして過ごしている。これはSnapchatやPinterestとは比べものにならないくらい長い期間だ。

TechCrunchはNational Venture Capital Associationが収集したデータを検討したが、今年の第1四半期から第3四半期までに7億ドル弱がユタのテクノロジー・スタートアップに投資されている。

ユタに投資したこうしたベンチャーキャピタリストの狙いはもちろん高配当だ。教育テクノロジーのスタートアップ、Instructureは昨年上場した。 Domo、 Pluralsight、InsideSales.comの3社も間もなく後に続きそうだ。2016年には相当数のユタのスタートアップが上場を果たすに違いない。

InstructureのCEO、 Josh Coatesは「ユタのエコシステムは信じられほど急速に拡大している。ユタには現在5、6社の極めて活気あるテクノロジー企業が存在するが、いずれも近く上場を果たす準備ができている」と言う。

Smithがわれわれに語ったところによると、Qualtricsも来年か再来年には上場するという。「あらゆる面でそうなるだろうという兆候が見える。いずれにせよ、われわれは上場企業として自らを律している」とSmisthはTechCrunchに語った。

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スーニコン―「すぐにユニコーンになる」存在

一般のメディアの注目を引かないステルス的スタートアップにも検討を要する存在が多数だ。Entrataは不動産管理ソフトの企業で、そう聞けば想像がつくとおり、AirbnbやUberのような分かりやすい派手な存在ではない。しかし同社には通年換算で1億ドルの売上があり、しかもこれまでベンチャーキャピタルの支援を全く受けていない。完全に自己資金のみで運営されている。

紙の健康情報をデジタル化することを目的とするユタのスタートアップ、Catalystは最近5億ドルの評価額でベンチャー投資を受け、ユニコーンへの道の半ばまで来た。これまで総額1億6500万ドルの資金をユタ内外のベンチャーキャピタリストから調達しており、これにはユタきっての大手ベンチャーキャピタル、Sorenson Capitalも含まれる。手元資金の総額は10億ドルを超えるだろう。

エンタープライズの成長も有望

ユタの成長の大きな部分は大企業の成功のせいでもある。これまでユタの大企業はスタートアップ以上にメディアや投資家の注目を引くのが難しかった。注意を引くにはきわめてど高い利益を産み出すか巨額の評価額を獲得する必要があった。

「当地の大企業にはSnapchatのような爆発的急成長もAmazonのような持続的巨大化も難しい。そいう土地ではないのだ。しかし投資家がユタの企業をじっくり検討すると、満足して次の会社、またその次の会社と投資すjることになる」とSmith。

ベンチャーキャピタルのAccelはQualtricsだけで7000万ドルを投資している。Accelはまたユタのフラッシュメモリー・メーカー、Fusion-ioにも投資中だ。

「ほぼすべての主要なシリコンバレーの投資家がユタを注視している」とElkingtonは言う。

「ユタの企業文化は長続きする会社を育てる」Skonnardは胸を張って主張する。

F画像: Andrew Zarivny/Shutterstock

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

強力な暗号化は絶対に必要だ

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世界には2種類の人間がいる。暗号化する人 、しない人。前者のグループは後者よりはるかに小さい。それは変わるべきなのだが、そうなりそうにない。つまるところ、暗号化の「マンハッタンプロジェクト」と言われているものに関する議論は実に不毛だ。暗号化のマンハッタンプロジェクトは、データをお菓子の箱くらい安全なパッケージに入れて世界中に送って平気な人々にとっては何の意味もないし、少しでも暗号化を理解している人にとってはまさに愚の骨頂だ。

真実はこうだ。人はそれが不便に至るまで暗号化を使う。あなたは私の公開鍵を使っていくらでも私宛にメールを送ることができるがメールの暗号化に関する私のチュートリアルもある)、あなたは強力な暗号化利用者という圧倒的少数派の一人であり、私のメール相手というさらに圧倒的少数派の一人だ。httpsは確かに普及しているが、本誌のサイトではデフォルトになっておらず、われわれの認証は出来が悪いらしいことに気付いた。政府がいかに暗号化を誤解しているかを笑うのは簡単だが、われわれがもし暗号化を使わなければ、政治家たちが揃って唱えるレベルそのものの情報透明化に自らを晒していることになる。

結局、暗号化はどうでもよいのかもしれない。Buckeyeキャンディーのレシピから目をそらす努力は無駄であり、被害妄想にすぎるのかもしれない。隠すものがなければ、ないものを隠す方法に期待すべきではないのかもしれない。

ちなみに私は、もっとずっと注意深くあるべきだ。特に自宅のパソコンやサーバーに関しては、かなり積極的な暗号化基準を適用しようとしているが、重要なものに対して強化していないことはわかっているし、実際これ以上強力にする方法を知らない。端的に言って、私は不便なレベルに至るまで暗号化した。私の場合そのバーは比較的高い。殆どの人たちのバーは不快なほど低い。

しかし心配はいらない。暗号化の世界には儲ける方法がある。政治家たちがマンハッタンプロジェクトに不平を言う間に、われわれは裏庭で原子炉を作って売るなりタダで配るなりすることができる。たとえば私はGPGToolsが大好きだ。私のメールアプリに直接組み込めて、ワンクリックでメールを暗号化できるからだ。Appleはボタン一つでディスク全体を暗号化できるオプションを提供している。Sucuriは私のWordPressインスタンスを無料安全にする方法を提供し、何が間違っているかを正確に教えてくれる。安全にチャットしたい時、私はiMessageの代わりにZendoを立ち上げる。そしてこれはほんの始まりにすぎない。

ウェブメールのメッセージを暗号化する方法が欲しい。FaceTimeやSkypeを暗号化する方法が欲しい。テキスト文書を書いたそばから暗号化する方法が欲しい。ジェイソン・ボーンのように感じられるように、不便さの閾知を高くしてほしい。Twitter上でNSAをあざ笑う代わりに、自分たちのツイートの暗号化を始めるべきかもしれない。Facebookでブライバシーの失敗を面白がるより、Facebookメッセンジャーでメッセージを暗号化する方法が欲しいかもしれない。IRCよりほんの少し安全な二流アプリを作るより、今使っているツールに強力な暗号化機能を組み込んでほしい。オープンでフリーの暗号化は存在するが、複雑で使うのが難しい。しかもわれわれ技術者は、その使い方をみんなに教えようとしない。重要なのは説明ではなく見せることであり、簡単で驚くことをやってくれるツールを提供することが最善の見せ方である。

もしAppleが簡単なやり方を提供していなければ、私は自分のディスクを暗号化しなかっただろう。そのためのボタンがなければメールを暗号化していなかっただろう。自分が悪いインターネット市民であることはわかっている。しかし、他の何億人も同じだ。私は自分のコミュニケーションを暗号化する差し迫った必要を感じたことがない。しかし、この怠慢な態度が後に災いを呼ぶことになるのは間違いないので、実行する準備はできている。あなたの次のスタートアッププロジェクトは、こうしたニーズに答えるものかもしれない。政府がわれわれの裏口から侵入しないことを信じるより、裏口のないものを作ろう。われわれが不便のハードルを上げた時、世界を成長させ、改善し、安全を保つ手助けできる。それはわれわれが市民として暗号家としてできる最低限の仕事だ。インターネットはわれわれを必要としている。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

飲み友マッチングの「JOIN US」にAndroid版、来春までにはマネタイズも開始

joinus

6月にiOSアプリに限定してサービスを開始したマッチングサービス「JOIN US」が、12月18日にAndroid版アプリを公開した。Google Playから無料でダウンロードできる。

JOIN USは以前にもご紹介したとおりで「今夜の飲み仲間を探す」というコンセプトを持ったマッチングサービス。正午から翌日5時までに限定してサービスを提供。時間を過ぎると、チャット履歴なども毎日リセットされる。サービスを利用するには、Facebookアカウントでログインした後、今夜どこで、何人(1人、2人、3人以上)で飲むかを登録すればいい。

そうするとユーザーの周辺で飲んでいる、もしくは飲む予定のユーザーを最大8組までマッチングしてくれる。マッチングは男女問わず、距離の近さやログイン時間の近さをもとに、「より飲みに行きやすい人」が優先される。Facebook上の友人とはマッチングしない機能も用意する。

特徴的なのが、初回ログイン時に行われる「審査」だ。同社がネットワークする「飲み会好きのアンバサダー」たちが、Facebookのプロフィールやアクティビティをもとにその人物が信頼できるかを調査して、不正利用を防ぐという。当初審査の通過率は30%前後だと聞いていたのだが、現在は18%とより“狭き門”になっているという。ただし既存会員は友人を会員に招待することができる。

サービスは現在無料だが、運営するVikona(当初はエニグモの創業メンバーらが2013年に設立したgram30が運営していたが、JOIN US事業を切り出すかたちで分社化した)代表取締役の内田洋輔氏によると「2月ぐらいからマネタイズのテストを開始して、3月にも(課金機能を)実装する予定」だという。課金ユーザーに対してはマッチング数を拡大するほか、マッチング場所の指定といった機能を提供していく予定。またユーザー数などは明らかにしていないが、「利用者の70%〜80%程度が翌月も利用してくれている状況」(内田氏)だという。

数値経営入門―スタートアップは常に優れたメトリクスを利用して課題を把握しよう

2015-12-18-metrics

私はベンチャーキャピタルのパートナーという立場上、たくさんの取締役会資料を見てきた。どれも手作業で美しく仕上げられ会社の現状を細かく報告している。ところが、こういう美麗な報告書の山は私を不安な気持ちにさせる。

私は部内でサービスの管理のために利用されているダッシュボードのスクリーンショットの方がずっと好きだ。こういうスクリーンショットは取締役会向けに慎重に用意されたものではない。毎回取締役会には同じフォーマットのスクリーンショットを提出してくれるとありがたい。

その理由は、一見皮肉な事実だが、取締役会向け資料が重要なのは取締役会が重要だからではない。会社のパフォーマンスを正確に描写している限りにおいてその資料は会社経営チームにとって重要なものとなるのだ。だから会社経営チームは取締役会向け資料ではなく、ダッシュボードにもっと注意を払う必要がある。

優れたメトリクス〔客観的基準に基づいて収集された数値〕は業種を問わず共通に比較できる要素を備えている。比較できるだけでなく、即座に誰でも理解でき、そこから会社が必要としている決定がどのようなものか分かる。比較できるというのはつまり、メトリクスが時系列やユーザー別に整理されており、自社とライバルの動向がひと目で分かるようなもの、ということだ。優秀なメトリクスは、取締役会で常に問題となるあの質問、「この情報が事実であるなら、次にどのように行動すべきか?」に答えを与えてくれる。

これに対してわれわれが「虚栄のメトリクス」と呼ぶのは、たとえばページビューの数だとかFacebookの「いいね!」の数だとかいうような収入に直接結びつかない数値だ。虚栄のメトリクスには実質的な情報は含まれていない。今後の行動の指針にもならないし、ビジネスのパフォーマンスを改善する方法も教えてくれない。こういうものは取締役会の資料として無意味だ。

Arnold CapitalのPaul Arnoldは「大半のメトリクスで、時間はかかるが、私は最後には絶対値と動向とを見分けることができるようになる。会社を運営するにあたっては後者が決定的に重要だ」と言っていたが、私も同意見だ。

トップクラスの CEOはメトリクスに基いて会社を運営する。ところが大半のCEOにとってこれは不自然な行動に思える。人間ではなく数字を重視しなければならないからだ。数字を正しく認識し、その動きに対して自分も責任を持ち、部下にも責任を持たせるというのは非常に難しい任務だ。どうしたらそのような任務に正しく取り組めるだろう?

決定的に重要なメトリクスを選び出す。 どんな会社の場合であっても、われわれが求める財務情報は、予算、粗売上、販売原価、粗利益、人件費、純損益、キャッシュバーンレート(現金消耗率)、手持ちの現金及び現金等価物、等々だ。

IT系スタートアップ企業の初期段階の重要なメトリクスには、プロダクトのアクティベーション、エンゲージメント、リテンションなどが含まれる。ここでカギとなるのはその会社のプロダクトが本当にユーザーのニーズを満たしつつあるのかどぷかという点だ。それによってユーザーがプロダクトを今後も使ってくれるか、理想的には、そのプロダクトなしの生活は考えられないほどに気に入ってくれそうかどうかが占える。MetricStory,のCEO、 Josh Gebhardtの観察によれば、B2Bプロダクトの場合、各種サイロ的ビジネスにおいて垂直ないし水平の切り口で見た利用率の変化は優秀なメトリクスとなるという。

これらに加えてわれわれは投資先企業に対して次のような財務情報の提供を求めるのが普通だ。

SaaSのスタートアップThe Better Software Company(われわれのffVCのポートフォリオの1社)のCEO、Steve
Codyは「われわれに必要とされる成長を達成するためには社内文化をそれに適合させると同時に、セールスのカギとなる次の3つの分野のメトリクスに対する注意を怠らないことだわれわれば顧客数、MRR額、顧客の重要行動の3分野をこ常にライブでモニターしている。これらは会社の運営にとっていわば主要な燃料ともいうべき要素だ」と述べている。

また、Lean Analyticsは、これら一連のメトリクスに注目することをさらに広い範囲のスタートアップにも勧めている。

https://lh6.googleusercontent.com/Cr9y-0Ev08WrsUQF-hZlPTc8PTLC3YGR1x0NDotIY1QTt98n_J6mLoKADkNhaHunL7vlkA1TA9L2XI5MxnYZDOCW9JowEg9_OWCmZpYHHXX0_Z0uhexLm1jayX7bkIFfTL362GE

経営チームのためのダッシュボード。 現在さまざまなダッシュボード・ツールが利用できる。AnaplanChartMogulDomoFathomGeckoboardGoodData,、RJ MetricsMicrosoft Power BIMode AnalyticsTableauなどだ。高いレベルで経営の概要を知りたい場合、TrustRadiusが ビジネス・インテリジェンスを得る助けになるだろう。この点ではG2 Crowdも役立つ。

社員のパフォーマンスをモニタする。この分野では Betterworks15Fiveが優秀なツールだ。

ライバルとのベンチマーク比較。 ベンチマーク化されたメトリクスはことの他に役立つ。注目している分野においてどれが最高水準であり、どれが平均的な数字であるかひと目で分かるからだ。Google Analyticsは先ごろ、ベンチマーク機能を提供することを発表した。Compass.coPayScaleもそれぞれの分野のメトリクスを知るために役立つ。

事前の財務予測と現実の達成度を取締役会に報告する。 仮に会社が極めて初期段階にあり、まだ正式の取締役会が開かれない場合でもファウンダーと経営チームは取締役会と同様のアドバイザーの組織を作っておくことを強く勧める。私は以前、取締役会(同様のアドバイザー会議を含む)のための提出資料のテンプレートを作っておいた。またシリコンバレー最大のVCであるAndreessen Horowitzのスタートアップ・メトリクスという記事も参考になる。

われわれのベンチャーキャピタルのCFOのグループはスタートアップがメトリクスを利用することを積極的に助けている。私の同僚でポートフォリオ・アカウンティングの責任者を務めるCristian Valbuenaは最近3日間にわたってサイト上でセミナーを開催し、メトリクスの利用に関連する問題を扱った。

たとえばChristianは、「ウエブサイトへの訪問者」というメトリクスは、1)サイトを訪れた実際の人数が不明(1人のユーザーが100回訪問することもあれば、100人が1回ずつ訪問することもある)、 2) 訪問者の行動の結果が不明(そのまま立ち去ったのか、売上に結びついたのか?)、などの点を指摘した。

つまりユニーク訪問者数とコンバージョン率の双方を組み合わたものでなければ良いメトリクスとはいえないわけだ。良いメトリクスは現状を正確に理解する助けになるだけではなく、今後どのような行動を取らねばならないかを知るうえでも非常に役立つ。

ベンチャーキャピタリストとしてのこれまでの経験から、われわれは論理的に正しい良いメトリクスを導入し、一貫して利用する経営チームは成功を収める確率が非常に高くなることに気づいた。われわれはこうした有望なグループに読者の企業も加わることを強く願っている。

画像:robuart/Shutterstock

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

動画プロダクション・メディア運営の3Minuteが3億円の調達、セプテーニとは協業も

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女性特化のYouTuberプロダクションや動画メディア「MINE」を運営する3ミニッツ(3Minute)は12月16日、セプテーニと動画広告領域での資本・業務提携を締結したことを明らかにした。セプテーニのほか、複数社(社名非公開)を引受先とする第三者割当増資も実施。合計約3億円を調達している。

今回の提携を契機に、3Minuteがマネジメントするインフルエンサー(女性YouTuberなど)を素材に、両社が共同で広告クリエイティブを制作。セプテーニが広告販売していく。今後は共同での広告商品開発も進める予定だ。

このほか、動画メディア「MINE」のスマートフォンアプリ「MINE TV」もiOSおよびAndroid向けにリリース。MINEは25〜35歳の女性インスタグラマーを中心にサービスを拡大。現在MAU(月間アクティブユーザー)40万人を誇る。配信するのは自社制作のオリジナル動画が中心。月間数百本の動画を制作しており、ネイティブ広告の取り組みもスタートしているという。

クラウドソーシングでマンガ制作——フーモアがデジガレなどから2億円の資金調達

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クラウドソーシングでマンガ制作を行うスタートアップのフーモアは12月16日、デジタルガレージ傘下のDGインキュベーションおよびDK Gate(講談社との合弁。今回が初の投資となる)、アドウェイズを引受先とした合計約2億円資金調達を実施したことを明らかにした。

フーモアは2011年11月の設立。クラウドソーシングの仕組みを利用してゲーム向けのイラストや3DCGなどを制作してきた。競合サービスであるMUGENUPなども詳細は違えど同様のスキームを採用しているとも聞くが、制作工程を分業する独自のスキームを採用、さらに、国内外で約3000人のクリエイターをネットワーク化することで、短期間で高品質な制作物の量産を実現しているとしている。売上高は非公開だが、2年目以降、前年比500%、230%、140%というペースで成長しており、現在は売上高数億円という規模になっているという。

このノウハウを元に、2015年1月からはマンガ制作の新規事業を開始。漫画制作の工程についてもイラスト同様に分業することで、スマートフォンに特化したマンガの制作を行っている。ディー・エヌ・エー(DeNA)の「マンガボックス」をはじめとしたスマホ向けのマンガアプリが登場しているが、そこに配信するマンガ——スマホ向けゲームのコミカライズや「マンガ広告」、すなわちネイティブアドなど——をこれまで1年弱で150本以制作してきたという。

以前、とあるスタートアップがマンガ広告を作成して漫画アプリ上で配信したが、コンバージョンは「通常広告と比較しても厳しい結果が出た」なんていう話を聞いたことがあった。通常の広告と同じように、マンガ広告も演出や構成が重要だし、なによりコンバージョンまで導かないといけない。またフーモアのように制作に特化しているのであれば短期間に漫画を量産し、品質を落とさないことも求められる。このあたりの課題を解決するために、分業型のクラウドソーシングのスキームが有効だと説明する。

フーモアでは今回の出資もとに、マンガを使った広告素材の制作、オリジナル作品の制作を進めていく予定。

オンデマンドでメイクやネイル、マッサージの施術を受けられる「careL」、MOSO mafiaがサービス公開

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昨日もシェアリングエコノミー協会設立のニュースがあったが、人やモノ、スペースなどさまざまな遊休資産の貸し借りを行うプラットフォームは多数登場している。その市場規模は10年後には3350億ドルにも上るなんていう話も出ている。

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東京・恵比寿に拠点を置くスタートアップのMOSO mafiaもシェアリングエコノミーの文脈に沿ったサービスを手がける1社だ。同社は12月15日、ネイルやヘアメイク、エステなど美容・リラクゼーションのCtoC型のオンデマンド予約サービス「careL(ケアエル)」を公開した。当面はオープンベータ版サービスとして、東京都内の渋谷、恵比寿、表参道、代々木、六本木、麻布十番、赤坂周辺でサービスを展開する。

careLは、ドライマッサージ、ヘアセット、メイク、ネイルケアのリアルタイム予約サービスだ。サイト上では、ユーザーが現在いる場所をもとにして、最速・最短距離で予約できる施術者を探して、予約までを行うことができる。口コミやレビューの投稿も可能。決済は今後カードに対応する予定だが、現在は当事者間で現金を手渡しで支払う仕組み。店舗に行くだけでなく、出張サービスを受けることも可能だ。

料金はサービス内容によって統一しており、施術者に関わらず、ドライマッサージでは15分980円、ネイルケアではパーツ付け放題のプランで5800円いった設定をしている。

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サービスを支える施術者は、MOSO mafiaが独自にネットワークするヘアメイクアーティストやネイリストなど約50人。彼らの多くはフリーランサー、もしくは小規模の事務所で仕事を請け負っている。本業を持つかたわらで、隙間時間にcareLでのサービスを引き受ける。

代表を務める渡辺大介氏は、学生時代にアート作品に興味を持ち、それがきっかけでクリエイティブコモンズの存在を知り、ついには弁理士になったという人物。その後は弁理士事務所、ユニチャーム、コンサルティング会社のプライマルで務めた後、独立。本業と並行して、エステサロンを経営することになった。

「エステサロンはクオリティと場所、料金設定を調整できれば儲かるビジネス。しかし課題があった。どれだけ抑えても、1店舗出店するには2000万円以上の初期投資が必要になる。一方で年間の売上は3000万〜5000万円。これでは一気に店舗を増やすことは難しい。また広告を打つにしても店舗数が多くないとレバレッジが効かない」(渡辺氏)。そこで目を付けたのがシェアリングエコノミーの仕組みを使ったサービス提供だった。

ユーザーのニーズもまさにシェアリングの仕組みがマッチしたのだという。カットやパーマであれば店舗もスケジュールも決まっていることが多いが、ヘアメイクやマッサージ、ネイルなどは突然オーダーしたいニーズが高い。そのためリアルタイムに施術を受けたい個人と時間の空いている施術者を結び付けることが価値を生み出すと考えたという。米国には先行するオンデマンドメイクサービス「Glamsquad」などがある。同社は今年10月、700万ドルの資金を調達している。

Labitがゲームメディア運営の子会社「ゲームエイト」をGunosyに譲渡

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Labitは12月15日、同社子会社のゲームエイトの保有株式をニュースアプリ「グノシー」を運営するGunosyに譲渡することで合意したことを明らかにした。譲渡の金額等は非公開。これによりゲームエイトはGunosyの連結子会社となる。また現在代表取締役を務める西尾健太郎氏が、引き続き事業を牽引する。

Labit代表取締役の鶴田浩之氏は兼任していたゲームエイトの取締役を辞任、また西尾氏もLabit取締役を辞任する。すでに西尾氏が保有していたLabit株式は鶴田氏が買い取っており、今後Labitとゲームエイトの資本・経営両面での関係性は一切なくなるという。

ゲームエイトは2014年8月の設立。Labitで運用していたゲーム情報サイト「Game8」の事業を切り出すかたちで100%子会社として分社化した経緯がある。その後西尾氏に加えて外部株主2者がいる状況だったが、今回Gunosyが100%の株式を買い取ることとなった。Game8は現在、月間ユーザー数1059万人(11月14日〜12月14日実績:Google Analytics調べ)で、単月黒字化を達成。Labitいわく「国内で有数のゲーム情報メディアとして成長いたしました」とのこと。

では子会社を売却したLabitの今後はどうなるのだろうか? 代表の鶴田氏は次のように語る。「Labit社としての物語は続く。何年後か分からないが、世界有数のカンパニーになることを夢見ている。 現在フルタイムのコアメンバー3人にアルバイト2人の少数精鋭。今夜にも新サービスをリリースする予定だ」