消費者ブランドの顧客データ有効利用を助けるDaasityが約17.1億円調達

Daasityの共同創業者Sean Corson(ショーン・コーソン)氏とDan LeBlanc(ダン・ルブラン)氏(画像クレジット:Charmaine Gray Photography)

eコマースの分析とデータ収集を行うDaasityは、消費者ブランドが顧客データをより賢く活用するためのアプローチを開発し続ける中で、シリーズAで1500万ドル(約17億1000万円)の資金を調達した。

この、出資者数が予定を超えたラウンドをリードしたのはVMG Catalystで、他にCove FundやExeter Capital、1855 Capital、Mooring Ventures、Okapi Venture Capital、そしてSerra Venturesらが参加した。これで同社の総調達額は2070万ドル(約23億6000万円)になる、とCEOのDan LeBlanc(ダン・ルブラン)氏はいう。

ブランドは同社の技術を利用して、Shopify、Amazon、Facebook、Klaviyoなどなどから自分に関連したデータを取り込んで分析し、その結果をマーケティングのチャネルに押し込み、これまでのパフォーマンスの履歴から得られる洞察に基づいて、消費者体験の最適化を図る。

ルブラン氏によると「消費者製品のブランドが現在ほど多いときは過去にありません。そのため競合は慢性的に激しくなっています。ブランドは、迅速で確実性の高い意思決定に導く正しいデータにアクセスすれば勝利できます。データの需要もかつてないほど高いため、私たちはデータのインフラストラクチャに投資して、ブランドが彼らの必要とするデータにアクセスできるようにしています」という。

Daasityは現在、ManscapedやVuori、Caraway Homeといった1600を超えるブランドを扱っており、2021年は経常収益が前年比で300%増え、従業員数は倍増した。

今回の資金で従業員数をさらに増やし、2022年末までに160%の増員になるという。また同社は、良好なデータアクセスとデータソース、および、分析結果により良い洞察を込められるための教育リソースのための技術開発にも投資している。今後は、より個人化された顧客データにも取り組む計画だ。

今後、同社はブランドがデータインフラストラクチャの各部位を自由に構成できるようにして、彼らのデータインフラストラクチャをモジュール状にしたいという。構成アイテムのピックアップは、メニューから料理を選ぶような簡便なやり方で、新しいデータソースやウェアハウジングのオプション、デジタルトランスフォーメーション、そして視覚化ツールなど、およそ35の新しい統合を加えていく。

VMG CatalystのパートナーであるBrooke Kiley(ブルック・カイリー)氏の声明文によると「同社が成長の次の段階に入っていくときに、ダンとDaasityのチームとのパートナーシップを継続できることはすばらしいことです。私たちは、データの有効利用がブランドにとって一貫して難しい、という状況を毎日のように見ていますが、そのニーズもかつてないほど大きくなっています。今日の競争の激しいeコマース環境では、データ利用の成功の鍵になっています。Daasityはデータをすべてのブランドにとってアクセス可能なものにし、彼らを行動に結びつくような洞察で強くして、彼らのマーケティングチャネルを必要不可欠な顧客データでより豊かにしています」という。

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

フードデリバリーDoorDashの共同創業者・CEOがMetaの取締役に就任

Doordash(ドアダッシュ)の共同創業者・CEOであるTony Xu(トニー・シュー)氏がFacebook(フェイスブック)の親会社Meta(メタ)の取締役に就任したことを米国時間1月11日に同社が発表した。シュー氏は2013年以来DoordashのCEOを務め、2020年11月には取締役会長に任命された。Metaは、シュー氏の就任は即時に発効されるという。シュー氏の就任によりMetaの取締役会は総勢10名となった。

「何百万もの地域商店がMetaのツールを使って成長し、日々の業務を遂行しています。会社が次のステージへと進む時に取締役として仕事ができることを楽しみにしています」と発表を伝えるプレスリリースでシュー氏が語った。

この日の発表は、ここ数年Metaが商取引に大きく力を入れ、Facebook、Instagram(インスタグラム)、WhatsApp(ワッツアップ)など同社の傘下アプリ全体でさまざまなショッピング機能を導入していることを受けたものだ。同社は、ショッピングやeコマース機能を自社プラットフォーム内で直接提供することによって、ユーザーがアプリを離れないようにすることに焦点を当てている。

声明の中でMetaのCEOであるMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は、シュー氏が商取引における複雑な問題を解決した経験を持っていることを説明し、同社がメタバースを構築する上でシュー氏の体験を活用するつもりであることを話した。商取引はメタバースで重要な役割を演じることから、シュー氏はその方面で取締役会に助言する可能性が強い。

「トニー(シュー氏)は、何百万もの人たちに、何十万というレストランや商店の食品その他の商品を届けるすばらしいサービスを作り上げました」とザッカーバーグ氏が声明で語った。「私は優れたテック・リーダーを取締役会に迎えることが重要であると常々考えていましたが、トニーにはテック企業経営と商取引の複雑な問題解決の両方での直接体験があります。当社がメタバース構築へ向かう中で、彼の見識から学んでいくことを楽しみにしています」。

Metaの取締役には、ザッカーバーグ氏の他、PayPal(ペイパル)のグローバルセールス担当執行副社長Peggy Alford(ペギー・アルフォード)氏、Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)の共同ファウンダーMarc Andreessen(マーク・アンドリーセン)氏、Dropbox(ドロップボックス)の共同ファウンダー・CEOであるDrew Houston(ドリュー・ハウストン)氏、McKinsey and Company(マッキンゼー・アンド・カンパニー)の元シニアパートナーNancy Killefer(ナンシー・キレファー)氏、MetaのリードインディペンデントディレクターでWilmerHale LLP(ウィルマーヘイルLLP)のシニア国際法務顧問Robert Kimmitt(ロバート・キミット)氏、Metaの最高執行責任者Sheryl K. Sandberg(シェリル・K・サンドバーグ)氏、Founders Fund(ファウンダーズ・ファンド)のマネージングディレクターPeter Thiel(ピーター・ティール)氏、およびThe Estée Lauder Companies(エスティ・ローダー・カンパニーズ)の執行副社長兼CFOであるTracey T. Travis(トレーシー・T・トラビス)氏がいる。

画像クレジット:Meta

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(文:Aisha Malik、翻訳:Nob Takahashi / facebook

新資金で潤うFoxtrotの「未来のコンビニ」があなたの近くにやってくる

シカゴにあるFoxtrotの店舗の1つ(画像クレジット:Foxtrot)

Foxtrot(フォックストロット)は、コンビニエンスストアに対する考え方を変えようとしている。同社は、今後2年間で実店舗を50店舗まで拡大するために、新たに1億ドル(約115億5100万円)のシリーズC資金を調達した。

前回、シカゴを拠点とするFoxtrotに注目したのは2020年初頭、世界的なパンデミックに世界が震撼する直前のことだった。成長ラウンドで1700万ドル(約19億6300万円)を確保し、商品を店舗で購入するか、オンラインで注文して配送するかという選択肢を顧客に提供していた。そして当時、ダラスとシカゴに小売店舗を構えていた。

関連記事:窮地のコンビニを再構築するFoxtrotが19億円を調達

2014年にMike LaVitola(マイク・ラヴィトラ)氏とTaylor Bloom(テイラー・ブルーム)氏が創業した同社は、街角のコンビニエンスストアを再構築しようとしている。その起源は、デジタルファーストのコマースプラットフォームだが、彼らはそこに小売り店舗の体験を追加した。Foxtrotの主力商品であるコーヒー、すぐに食べられるカフェ料理、ワインに加え、同社は現在地元の職人による最高レベルの食品を探し求めている。

前回、FoxtrotはワシントンD.C.をマーケットリストに加え、その後、この3都市で16の小売店をオープンした。5分以内のピックアップ、迅速なオンデマンド配送「Foxtrot Anywhere」という全国配送ツールなどを提供している。

加えて、同社は1年前にプライベートブランド商品にも着手し、現在では同社の小売商品の約30%、小売とeコマースの売上のほぼ半分を占めるまでになったと、CEOのLaVitola(ラヴィトラ)氏はTechCrunchに語っている。同氏は、今後1年間に約200の新しいプライベートブランド商品が発売されると期待している。

米国時間1月11日の新たな資金調達は、D1 Capital Partners(D1キャピタル・パートナーズ)が主導し、既存の投資家であるMonogram Capital(モノグラム・キャピタル)、Imaginary(イマジナリー)、Almanac(アルマナック)、Wittington(ウィッティントン)、Fifth Wall(フィフス・ウォール)、Beliade(ベリアード)、Lerer Hippeau(レラー・ヒポー)、Revolution(レボリューション)が参加したものである。このシリーズCにより、Foxtrotの総資金額は1億6000万ドル(約184億円)に達した。

パンデミックでの現状で見られるように、ほとんどの販売はオンラインに移行した。しかし、ラヴィトラ氏はFoxtrotの小売店舗へのアクセスが増加したことに気がついた。小売店舗へ足を運ぶのは、新しいスナックを発見するのにはそれほど激しくなく、かつレストランや食料品店に行くよりも「人々の日常の中の20分の楽しみとなった」ことに言及した。

同社は2021年、事業を倍増させたが、小売店の導入は、新たな資金を使って2022年に25店舗を新たにオープンするための原動力の1つにもなっている。新店舗には、ボストンのバックベイ地区、オースティン初となる2店舗、シカゴのウィリスタワー、トリビューンタワー、リグレーフィールド付近への追加店舗が予定されている。2023年には、ニューヨーク、ナッシュビル、マイアミなどの新市場にも進出し、現在の都市でも店舗を拡大する予定だ。

「私たちが見た最大のトレンドは、顧客が小売体験に完全に傾倒し、それがオンラインビジネスの主要な顧客獲得ポイントになっているということです」と、ラヴィトラ氏は述べている。「配送は今後も続くでしょうが、お客様は最終的に私たちの商品の価値を理解するようになります。その結果、私たちは、誰が一番おいしいドーナツ、コーヒー、トルティーヤを持っているかという点にとことんこだわりながら、対面での体験に私たちの90%の時間を費やしています」。

Foxtrotは小売店舗に加え、新たな資本を商品化モデルの拡張に投資し、エンジニアリングの人材を追加採用し、2023年にはチームの規模を3倍にする計画だ。ラヴィトラ氏は物流、店舗決済、在庫管理、パーソナライゼーション、Foxtrotのロイヤルティプログラムである「Perks(特典)」の分野でも採用を予定している。

Perks自体は2021年に110%以上の成長を遂げ、同時期に、5分以内マーケットピックアップは250%、カフェオーダーは375%の成長を遂げたという。

Monogram Capitalの共同創業者でFoxtrotの取締役を務めるJared Stein(ジャレド・スタイン)氏は、Foxtrotがオムニチャネルブランドとローカルプロダクトキュレーターとして支配力を発揮している点を「カテゴリーキリングモデル」と称した。

「Foxtrotは、我々の中では、稀有な存在です。Foxtrotは、一から技術スタックを構築しました。それに、同じレベルのキュレーションとおもしろいブランドとのローカルなパートナーシップを持つ会社を見つけるのは難しいものです。それが、人々が物語に入ってくる理由なのです。他の企業もこれをやっていますが、複雑です。Foxtrotは、それをスケールアウトする前に取り組んだのです」。

編集部注:1月11日6:29 a.m. PT:Foxtrotは、投資家のリストにM3 VenturesのBeliadeへのブランド変更を含むように修正しました。

画像クレジット:Foxtrot/シカゴにあるFoxtrot社の店舗の1つ

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(文:Christine Hall、翻訳:Akihito Mizukoshi)

実物大の3D製品イメージで消費者のショッピング体験を向上させるAvataarが52億円調達

eコマースの顧客の大多数は、購入前に商品を見ておきたいと思っている。かつてAmazon(アマゾン)のような企業が、ファッションや家庭用品のオンライン化に苦労してきたのはそのためだ。サンフランシスコとベンガルールを拠点とするスタートアップがこの問題を解決しようとしており、事業規模拡大のため、このほど新たに資金を調達した。

AIとコンピュータービジョンのスタートアップであるAvataar(アバター)は、現地時間1月7日にシリーズBで4500万ドル(約52億円)を調達したと発表した。このラウンドはTiger Globalがリードし、既存の投資家からSequoia Capital Indiaが参加した。6年の歴史を持つこのスタートアップは、創業者兼最高経営責任者から初期に調達した金額も含め、これまでの資金調達ラウンドで約5550万ドル(約64億円)を調達した。

Avataarは、消費者直販ブランドやeコマースマーケットプレイスが製品を3D表示し、コンシューマージャーニーを形成する支援を行う。企業はAvataarのプラグアンドプレイ技術を自社システムに組み込むことができる。顧客は携帯電話のカメラを使い、リビングルームにいながら、製品の実際の大きさと雰囲気を視覚化することができる。

Avataarの創業者で最高経営責任者のSravanth Aluru(スラバント・アルル)氏はTechCrunchのインタビューで、家具や大型家電などのカテゴリーで上位2社のeコマース・マーケットプレイスを含む数多くの企業と現在提携していると述べた。同氏は、守秘義務契約を理由に、顧客企業名の公表を断った(Samsungや Pepperfryなど、Avataarとの提携を公に認めている企業もある)。

アルル氏はデモで、提携するeコマースマーケットプレイスのアプリから、ソファや机などいくつかの製品を、自分のリビングルームにドラッグ&ドロップし、家の中でバーチャルアイテムの位置を変えずに色やアイテムを変更してみせた。アイテムをインタラクティブにすることもできる。例えば、冷蔵庫をバーチャルで再現すると、ユーザーはドアを開けたり閉めたりすることができる。

ブランドは、Avataarのサービスを利用するために何か大きな変更を加える必要はない。商品画像の解像度が1080p以上であれば、Avataarがバーチャル3D版を作り上げることができるとアルル氏は話す。消費者側でも、近年発売されたiPhoneやAndroidスマートフォンなら、バーチャルオブジェクトの表示やインタラクションをサポートする計算能力とグラフィックパワーを備えている可能性が高いという。

「カメラがホームスクリーンであることを考えると、エンゲージメントの時間を著しく長くとることができます。ブランドの売り上げへのコンバージョンは3.5倍以上になっています」と同氏は語る。同社は、エンゲージメント情報を提携ブランドに提供する。提携ブランドは、顧客によりよいサービスを提供するため、さらにパーソナライズする。

アルル氏は、この技術がもたらす利点を認識し、採用する企業がますます増えてきているという。この傾向は、今後ますます強まることが予想される。

ブランド名は明かさなかったが、いくつかのスマートフォン企業はAvataarの技術を利用してバーチャルローンチを行ったという。「当社は現在、ほとんどのプラットフォームに統合されています。もし、大容量のサービスで3Dを見ているなら、それは我々が提供したものである可能性が高いと思います」と述べた。

Avataarの創業チーム。左からMayank Tiwari(マヤンク・ティワリ)CBO、Sravanth Aluru(スラバント・アルル)CEO、Prashanth Aluru(プラシャント・アルル)取締役、Gaurav Baid(ガウラブ・バイド)CPO(画像クレジット:Avataar)

2025年までに、世界人口の75%近くと、ソーシャルアプリやコミュニケーションアプリを利用するほぼすべての人が、頻繁にARを利用するようになると、Snap(スナップ)はDeloitte(デロイト)と協力した最近のレポートで述べている。同レポートによると、ARを使って買い物をする顧客はすでに1億人を超えているという。

アルル氏は、メタバースが浸透していくなかで、同社は最前線に立つための準備をしており、この分野のいくつかの主要なプレイヤーと関係を持っていると述べた。

「メタバースはすでに存在しています。Avataar.meは、最大手のブランドに規模を創造する能力をもたらし、商売を実現する道を切り開いています。ARやVR環境において非常に有望なアプリケーションです」と、Sequoia IndiaのマネージングディレクターShailesh Lakhani(シャイレーシュ・ラカーニ)氏は声明で述べた。

「スラバント、ガウラブ、マヤンクと一緒に仕事をするのは楽しく、Sequoia Capital Indiaは、彼らのシリーズBラウンドに再びコミットすることをうれしく思います」。

業界の推計によると、デジタルおよびデジタルに影響される市場は、2025年までに18兆ドル(約2090兆円)に拡大し、2Dから3Dへのコマースシフトを推進する基盤としてのプラットフォームに対し、今後10年間で500億ドル(約5兆8000億円)を超える収益化の機会を提供すると予測されている。

「史上初めて、ライブカメラ映像により、消費者の物理的な現実を検知、理解、拡張、操作することができるようになりました。当社の特許取得済みのAI・CV機能はメタバース全体の進化に適用可能ですが、先行して消費者のショッピング体験の再定義に着手しました」とアルル氏は話す。

「このプラットフォームは、自宅のモバイルデバイスやARメガネ・ウェアラブルを通して、あるいは実店舗であっても、デジタル化されたカタログという無限の通路を見て回る消費者のショッピング体験を変革します」。

Tiger GlobalのパートナーであるEvan Feinberg(エバン・ファインバーグ)氏は声明で次のように述べた。「消費者はより良いeコマース体験を求め続けています。Avataarが生み出した革新的な技術は、この需要に応えるための強力なプラグアンドプレイ・ソリューションを顧客に提供しています。デジタル世界が2Dから3Dに移行する中、Avataarとその有能な経営陣は、この急成長市場において好位置につけています」。

画像クレジット:Avataar

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

2022年、注目すべき東南アジアのスタートアップ

東南アジアのスタートアップや資金調達の話を取材している私にとって、2021年を表す言葉としては、「whoa!(うわぁ!)」がぴったりだ。2021年は、世界の投資家がこの地域の技術エコシステムに注目し始めただけでなく、実際に資金を投入し始めた年でもあった。

国際的なパートナーに支えられて、Alpha JWCAC VenturesJungle Venturesなどの東南アジアに特化したVCが、過去最大の資金を調達した。

関連記事:インドネシアのVC、Alpha JWCが490億円の第3号ファンドを組成、東南アジア最大のアーリーステージ対象のVCファンドに

The Kenの報道によると、Grab(グラブ)やSea(シー)のIPOのようなエグジットが東南アジアのスタートアップエコシステムへの関心を高める中で、米国のVCであるA16z、Valar Ventures、Hedosophia、Goodwater Capitalなども、地域事務所を設立している(あるいは設立を計画している)。Golden Gate Venturesの包括的なレポートでは、BとCラウンドの増加もあって、記録的な数のエグジットを予測している

「東南アジア」という言葉を使うのは、いつも少し気が引けているのだが、それはこの地域があまりにも大きく複雑だからだ。もちろん簡潔に表現したい場合には一番簡単な選択肢なのだが。東南アジアは11カ国で構成されていて、たとえばシンガポール、ミャンマー、ラオス、ベトナム、フィリピン、インドネシアの間には当然ながら大きな違いがある。

グローバルな金融センターとして知られるシンガポールのスタートアップエコシステムは、近隣諸国と比べると独自のカテゴリーに属していると言えるだろう。特にインドネシアは、世界第4位の経済大国であり、人口2億7350万人に達する東南アジアで最も人口の多い国であるため、特別な注意が必要だ。両国とも2021年にはかなりの数のユニコーンを輩出している。たとえばシンガポールでは、Ninja Van(ニンジャバン)、Carousell(カルーセル)、Carro(キャロ)、Nium(ニウム)などがユニコーンのステータスを獲得したスタートアップだ。

シンガポールのスタートアップは他の東南アジア諸国(Niumの場合は米国とラテンアメリカ)に焦点を当てる傾向があるが、一方インドネシアを拠点とする創業者たちは、中長期的な国際展開計画を持っていたのかもしれないが、私が話をした創業者の多くは、少なくとも来年は国内展開に焦点を当てる計画のようだ。インドネシアは広大なだけでなく、地理的にも複雑で、1万7000以上の島があり、そのうち約6000の島に人が住んでいる。通常スタートアップ企業は、グレーター・ジャカルタ地域で事業を開始した後、バンドンやスラバヤなどの主要都市に進出する傾向があったが、特にフィンテックやeコマースのスタートアップ企業を中心に、いまや多くの企業が小規模な都市に注目している。

以下にご紹介するのは、2021年に飛躍し2022年に注目すべきいくつかの分野だ。

投資用アプリ

ミレニアル世代や初めての個人投資家を対象とした多くの投資アプリが、2021年初めに小規模なアーリーステージのラウンドで調達を行ったが、数カ月後にはそれよりはるかに大きな追加調達が行われた。例えばインドネシアを拠点とする暗号資産に特化したPintu(ピントゥ)、ロボアドバイザーのBibit(ビビット)、Ajaib(アジャイブ)、Pluang(プルアン)、シンガポールを拠点とするSyfe(セイフ)などがある。

インドネシアでは、個人投資の割合はまだ比較的低いが、その数はパンデミック期間中のファイナンシャル・プランニングへの関心の高まりと、株式インフルエンサーの人気によって、一部の人たちからの懸念にもかかわらず、増加している

インドネシアの中小企業に特化したスタートアップがフィンテックを深化させる

政府の発表によると、インドネシアには6200万社の中小企業(SME)があるとされているが、複数の創業者から聞いたところによると、特に家族経営の企業や個人事業主は計上されていない可能性があるため、この数字は実際よりも低くなっている可能性があるという。その正確な数はともかく、中小企業の多くはエクセルや紙の台帳で会計処理をしているため、技術系のスタートアップにとっては絶好の機会が広がっている。

最も注目すべきは、競合する2つの簿記アプリのBukuWarung(ブクワルン)とBukuKas(ブクカス)が、2021年多額の資金を調達したことだ。両社とも、当初は中小企業のデジタル化を支援することに注力していたが、最終的には、ユーザーがソフトウェアに入力したデータを利用して信用力を判断し、運転資金の融資などの金融サービスに製品を拡大する予定であるという点で互いに似通っている。

中小企業を対象とした他のスタートアップには、賃金前払いや給与管理のプラットフォームのGajiGesa(ガジゲサ)やWagely(ウェイジリー)などがある。

ソーシャルコマース

インドネシアの大都市に住んでいる人には、eコマースのプラットフォームの選択肢が多いのだが、地方では選択肢が少なくなる。これは、物流インフラが細分化されていることが一因で、商品の受け取りにコストと時間がかかることが問題なのだ(ただし、SiCepat[サイセパット]、Advoctics[アドボクティクス]、Kargo[カーゴ]、Waresix[ウェアシックス]などのスタートアップ企業もこの問題に取り組んでいる)。

そこで、中国のPinduoduo(拼多多、ピンドゥオドゥオ)やインドのMeesho(ミーショ)の成功をこの地で再現しようと、Super(スーパー)、Evermos(エバーモス)、KitaBeli(キタベリ)といったソーシャルコマースのスタートアップが登場している。いずれも、日用雑貨や食品などの生活必需品を対象としていて、同じ地域に住む人たちがまとめて注文を行うことで、サプライチェーンをより効率的かつ安価にするソーシャルコマースモデルを利用している。その意味では、少なくとも部分的には物流のスタートアップと呼ぶことも可能だ。

eコマースアグリゲーター

Thrasio(スラシオ)のように、小規模なeコマースブランドを買収するスタートアップ企業は、数年前から欧米で多くの資金を集めてきた。しかし、このようなeコマースアグリゲーターが東南アジアに進出するには、ある程度の時間が必要だった。

2021年、2つのeコマースアグリゲーターがベンチャーキャピタルからの資金提供を受けて正式に発足し、数ヵ月後にはどちらも追加の資金調達ラウンドを実施した。多くのeコマースアグリゲーターがAmazon(アマゾン)の販売者を中心に活動しているのに対して、Una Brands(ウナ・ブランズ)は「セクターは問わない」としている。アジアパシフィックを横断する有力なマーケットプレイスが存在しないため、同社はTokopedia(トコペディア)、Lazada(ラザダ)、Shopee(ショッピー)、Rakuten(楽天)、eBay(イーベイ)などのプラットフォームからブランドを探すシステムを開発した。一方、Rainforest(レインフォレスト)は、アジアのAmazon販売者に焦点を当てているが、消費財のコングロマリットであるNewell Brands(ニューウェル・ブランド)のオンライン版を目指すことで、他のアグリゲーターとの差別化を図っている。アジアを拠点とするeコマースの販売者が多いことから、Una BrandsとRainforestの両方が成長し、他のアグリゲーターが登場することも期待される。

画像クレジット:Abdul Azis/ Getty Images

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(文:Catherine Shu、翻訳:sako)

商用車販売特化の中古車EC「トラッカーズマーケット」など手がけるAzoopがシリーズBファーストクローズで9億円調達

商用車販売特化の中古車EC「トラッカーズマーケット」など手がけるAzoopがシリーズBファーストクローズで9億円調達

トラック運送業向けに車両売買プラットフォームや運送業務支援SaaSなど「トラッカーズ」ブランドを展開するAzoopは12月24日、シリーズBラウンドのファーストクローズとして9億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、既存投資家のジャフコグループ、新規投資家のモノフル。累計調達額は13億7000万円となった。2022年2月に追加の資金調達を予定しており、同ラウンドにおける調達額は約13億円、また累計調達額は約18億円となる予定。調達した資金は、人材採用や各プロダクトの開発にあてる。

トラッカーズブランドで提供しているサービスは、商用車販売に特化した中古車EC「トラッカーズマーケット」、商用車買取に特化したオンラインオークション「トラッカーズオークション」、運送業務効率化クラウドシステム「トラッカーズマネージャー」。こうしたサービスにより、古い慣習が色濃く残る物流・運送業界のデジタル化を進め、利益最大化と業務効率化に貢献していくとのこと。

2017年5月設立のAzoopは、トラッカーズのブランドにより「仕組みを変えて、『はたらくクルマに関わる個人と企業』の選択肢と可能性を広げていく」というブランドミッションを実現するとしている。

無駄な在庫が激減、ファッション業界向けのキャンセル待ちと予約注文のプラットフォーム英Purple Dotが4.6億円調達

ファッション業界は予測が難しいため、ファッションブランドは製品の需要を当てずっぽうで見積もることが少なくない。需要の予測が外れれば無駄な在庫を抱えることになる。衣服は最終的に焼却処分されることが多く、環境に影響を与える。英スタートアップのPurple Dotは、eコマースの「キャンセル待ちと予約注文」プラットフォームで、ファッションブランドは注文を受けた分だけを製造できるので結果として無駄が減る。

Purple Dotは、米国を拠点とするUnusual Venturesが主導したアーリーステージのラウンドで400万ドル(約4億6000万円)を調達した。以前に投資していたConnect VenturesとMoxxie Ventures、そしてIndeedの共同創業者であるPaul Forster(ポール・フォースター)氏のファミリーオフィスも参加した。

2019年に起業家のMadeline Parra(マデリーン・パーラ)氏とJohn Talbott(ジョン・タルボット)氏がPurple Dotを創業した。Purple Dotはeコマース企業が「売上を最大化するやり方で在庫を早く販売し、ブランドロイヤルティを構築し、需要のデータを早期に得る」プラットフォームだと同社は説明する。同社のキャンセル待ちソリューションを利用すれば、在庫を倉庫に入れる前に販売できる。同社はこうしたことが可能な、市場で唯一のソリューションであるとしている。

Purple Dotの共同創業者でCEOのマデリーン・パーラ氏は次のように述べた。「早い段階での販売は、ブランドが売上を獲得する上でまったく新しい世界を開きます。販売用の在庫を倉庫に置く必要があるというのがこれまでの考え方やテクノロジーでした。しかしPurple Dotを利用すると、販売と出荷を非同期にできるため常に販売できます。これは我々のブランドパートナーにとって驚きの瞬間です。早期販売の戦略を成功させるには、適切なカスタマーエクスペリエンスと社内運用を実現する専用のアプローチが必要です」。

Unusual Venturesの投資家であるRachel Star(レイチェル・スター)氏は次のように述べた。「Purple Dotは単なるeコマース支援ではありません。サプライチェーンの管理とブランドの販売方法を変革しつつあります。予約注文とキャンセル待ちがオンラインショッピングのこれからの形になると我々は考えています」。

画像クレジット:Purple Dotのマデリーン・パーラ氏(CEO)とジョン・タルボット氏(CTO)

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(文:Mike Butcher、翻訳:Kaori Koyama)

Shopify上での店舗のサブスク販売を支援するSkioが4.2億円調達

Skio(スキオ)は、Shopify(ショッピファイ)上の店舗のサブスクリプション販売にともなう苦痛を取り除くことを目指すスタートアップだ。同社は、シードラウンドで370万ドル(約4億2000万円)を調達した。

同社はHulu(フールー)とPinterest(ピンタレスト)に勤務していたエンジニアのKennan Davison(キーナン・デビソン)氏が4月に創業した。

デビソン氏はSkioを、フィンテックかつインフラの会社だと説明する。以前、Y Combinatorで練った構想から方向転換した。Skioが挑むのは、ReCharge Paymentsのような会社だ。ReCharge Paymentsもeコマースブランド向けにサブスクリプションソフトウェアを開発した。2021年初めには2億2700万ドル(約259億円)を調達し、同社には21億ドル(約2400億円)の評価額がついた

ニューヨークを拠点とするSkioは、Shopify上の店舗がサブスクリプションで販売できるよう、支払いスケジュールの管理だけでなく、サブスクリプションを管理するための顧客ポータル構築やSMSサブスクリプション管理など、消費者向けのプロセスに関わるあらゆることを支援する。

同社が使用する最新のフレームワークにより、既存のサービスよりも「はるかに迅速な構築」が可能になると主張する。

「迅速に構築するので、既存のソリューションよりも優れた機能を実現できます。Shop Payを使ったコンバージョン率を高めるワンクリック精算、カスタマーチケット(顧客からの問い合わせ)を減らすパスワードレスログイン、10倍速いサブスクリプション編集、すぐに使えて即時ロード可能なヘッドレスサブスクリプションポータル、グループサブスクリプション割引、ReChargeからの簡単な移行などがあります」とデビソン氏は語る。

Skioのしていることは正しいに違いない。すでにBev、MatchaBar、Remedy Organics、Quokka Brew、Muddy Bites、Barukas、Simulate、Red Bay、Dandelion Chocolate、Siete Foods、Doe Lashes、Backboneなど多くの顧客を抱えているからだ。

「私たちは、Shopifyの小規模な販売店とともに、市場の底辺からスタートしました」とデビソン氏はTechCrunchに語った。「今、ReChargeからSkioに、大規模な顧客が移ってきています」。

画像クレジット:Skio

この起業家のサブスクリプションに関する経験は高校時代に遡る。授業をサボり、Conscious Boxというサブスクリプションボックスのスタートアップでウェブ開発を行うようになったという。その後、Huluでエンジニアとして働き、サブスクリプション割引を管理するアプリをつくった。その後、Pinterestでグロースエンジニアとして、ユーザーのコンバージョンを高めるために200以上のA/Bテストを行ったという。

Skioは今のところ、Shopifyの販売店向けにサブスクリプションを支援しているが、デビソン氏の目標は、いつか「すべてのインターネット上の」販売店向けに仕事をすることだという。

AdjacentがSkioのシードラウンドをリードした。創業者のNico Wittenborn(ニコ・ウィットンボーン)氏は、モバイルファーストのサブスクリプション企業に焦点を当て、2020年同社を設立した。Adjacentを設立する前、ウィットンボーン氏はPoint Nine CapitalとInsight Partnersで働き、Calm、Revolut、Prose、Oura、Reflectlyといった企業を支援してきた。

今回の資金調達には、MuteSixのDaniel Rutberg(ダニエル・ラトバーグ)氏とMoody Nashawaty(ムーディー・ナシャワティ)氏、Shaan Puri(シャーン・プリ)氏、ItalicのJeremy Cai(ジェレミー・ケイ)CEO、Tiltの共同創業者でMagic Mindの創業者であるJames Beshara(ジェイムズ・ベシャラ)氏、Julian Shapiro(ジュリアン・シャピロ)氏、Sahil Bloom(サヒル・ブルーム)氏、そしてImmi、Thingtesting、Taika、Smile.io、Literati、Linjer、Raycon、Cresicor、Corted、Orcard Analytics、Cohereの創業者や幹部など多くのエンジェル投資家が参加した。

現在、Skioの従業員は5人だが、新しい資金を製品開発にあて「世界レベルのソフトウェアエンジニアを積極的に採用する」そうだ。

「1人で始めたため、適切な人たちにかなりの株式を与えることができる状態です」と同氏は話す。

リードインベスターのウィットンボーン氏はTechCrunchに対し、近年はShopifyエコシステムを追っており、その前は暗号資産のChainalysis、モバイルのRevenueCat、Salesforce(セールスフォース)エコシステムのOwnBackupなど、他の成長中のエコシステムに同様のインフラ投資を行っていたと語った。

「私がキーナンを紹介されたとき、彼はShopifyベースのサブスクリプションサービスのための基礎的部分を構築しているようでした。Skioの既存顧客や潜在顧客といくつかリファレンスコールをもったところ、同社の製品が既存のソリューションよりもはるかに有望で柔軟であることがすぐにわかりました」と同氏はメールに書いた。「真の競合他社はReChargeだけです。同社は市場の支配的な立場に安住しているように見えます。これはエコシステムのフラストレーションにつながると同時に、キーナンのような人に、より反応の良い統合された製品と、より良い顧客サポートで物事を揺るがす機会を作り出しました」。

画像クレジット:Busakorn Pongparnit / Getty Images

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

アマゾンの倉庫で働く従業員が、待遇改善を求めてクリスマス前にストライキ

米国時間12月22日、シカゴ近郊にあるAmazon(アマゾン)の2つの施設で働く数十人の倉庫労働者が、1年で最も忙しい時期にクリスマス前のストライキを行い、待遇改善と賃上げを要求した。

「私たちは昇給を見送られ、人員が足りているときでさえ過重労働させられています」。シセロにあるDLN2施設の従業員は、Amazonの従業員団体「Amazonians United(アマゾニアンズ・ユナイテッド)」のシカゴ支部が配信したライブストリームで語った。「約束していたボーナスを受け取っていません。正社員として雇われていたのに、バッジを取り上げられて臨時従業員にされてしまった人もいます。アマゾンはこの場所に安全でない人員を配置し、必要以上に人々を忙しく働かせています」。

午前1時20分から午前11時50分まで働くこれらの労働者は、時給5ドル(約570円)の昇給も要求している。アマゾンがTechCrunchに語ったところによると、ストライキを行った2つの施設、シセロのDLN2とゲージパークのDIL3では、現在の初任給は時給15.80ドル(約1800円)だという。Amazonians Unitedの発言者は、同施設では新型コロナウイルス対策として20分の休憩時間が設けられていたが、これが15分に短縮されたとも述べている。しかし、ウイルス感染流行はまだ終わっておらず、特にオミクロン変異株が広がっている。発言者によると、前日にはシセロの施設で検査を受けた3人の労働者が陽性反応を示したという。

ストライキを起こす前に、労働者たちは自分たちの要求を記載した嘆願書を経営陣に提示したが、それに対する回答が得られなかったため、今回のストライキに至ったと述べている。

発言者は、経営陣からストライキに参加する者は「バッジを置いていったほうがいい」と言われたとも主張している。つまり、もう戻って来られないという意味だ。

民間企業が、ストライキを行った従業員に対して措置を取ることは違法である。しかし、従業員がストライキ後に戻ってみると、スケジュールが空白になっていたり、その日はもう退社したことになっていたりといったことが報告されたため、ストライキ参加者の間では報復を懸念する声が上がっていた。

「当社は、従業員が抗議行動をする権利を尊重し、その法的権利を認識しています。当社では、従業員に一級の給与、他に引けを取らない福利厚生、そして会社とともに成長する機会を提供していることを誇りに思っています」と、アマゾンの広報担当者は、TechCrunchの取材に対して述べている。

アマゾンの担当者は、今回のストライキに参加したことで解雇や停職になった労働者はいないと付け加えた。同社によると、労働者は抗議しても報復は受けないと、繰り返し安心させられたという。

しかし、全米各地でアマゾンの労働者は、同社が労働者の組織化を制圧しようとしていると非難している。2020年、Amazonians Unitedの共同設立者であるJonathan Bailey(ジョナサン・ベイリー)氏は、組織化を行った同氏に報復したことで、アマゾンが労働法に違反していると、全米労働関係委員会(NLRB)に訴えを起こした。ベイリー氏はストライキを組織した後、マネージャーに90分間拘束され、尋問を受けたと述べている。NLRBはこれらの申し立てに価値があると判断し、アマゾンを連邦機関に提訴した。同社は和解し、和解条項の一環として、従業員には団結権があることを、メールや物理的な掲示板で再認識させるよう求められていた。

NBC Newsによると、ベイリー氏の訴えは、2020年2月から2021年3月までの間にNLRBに提出されたアマゾンに対する37件の提訴のうちの1件だったという。しかし、この和解のわずか数カ月後、アマゾンはスタテン島の従業員が休憩室で組合を呼びかける文書を配布するのを、違法に阻止したことが判明した。

アマゾンの社員さえも、同社に対してNLRBに苦情を申し立てている。9月には、新型コロナウイルス感染流行発生時に倉庫労働者を擁護したために解雇された、元シアトル本社勤務のMaren Costa(マレン・コスタ)氏とEmily Cunningham(エミリー・カニンガム)氏の申し立てにアマゾンが和解した。この和解案では、アマゾンはコスタ氏とカニンガム氏に失われた賃金を補償するとともに、従業員がアマゾンの問題について発言する権利を改めて通知することが求められた。

しかし、ここ数週間で、緊張はさらに高まっている。米国時間12月10日、イリノイ州エドワーズビルでは、竜巻によってDLI4の施設が破壊され、アマゾンの従業員6名が死亡した。アマゾンでは長年、倉庫内での携帯電話の携行が禁止されていたが、新型コロナウイルス感染流行の際にはこの方針を緩和した。しかし最近になって、アマゾンはこの方針を復活させており、そのため、米国気象局が避難を呼びかける緊急警報を出しても、アマゾンの従業員の中には、致命的な嵐が近づいていることを知る手段を持たなかった人もいた。

全国の施設で働くアマゾンの従業員が報酬や条件の改善を求めている中、この大手電子商取引企業は1年で最も忙しい時期を迎えている。

「私たちは、すべての人がクリスマスプレゼントを手にし、すべての人が荷物を手にすることができるように懸命に働きます」と、シカゴの倉庫で働く労働者は、FOX 32 Chicago(フォックス32シカゴ)に語った。「しかし、わかるでしょう、私たちはただ公平に扱われたいのです。それだけです」。

画像クレジット:Johannes EISELE / AFP / Getty Images

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

中小ビジネス向け融資プラットフォームのAmplaがシリーズAで約45.7億円調達

Amplaの創業チーム。(左から)Jim Cummings(ジム・カミングス)氏、Anthony Santomo(アンソニー・サントモ)氏、Jie Zhou(ジー・ゾウ)氏(画像クレジット:Ampla)

中小規模の消費者向け事業者に融資を行うAmpla Technologies(アンプラ・テクノロジーズ)は米国時間12月22日、4000万ドル(約45億7000万円)のシリーズAラウンドをVMG Partners(VMGパートナーズ)とForerunner Ventures(フォアランナー・ベンチャーズ)のリードで完了したことを発表した。

既存出資者のCore Innovation Capital(コア・イノベーション・キャピタル)もラウンドに参加した。Amplaはこの少し前、今回の株式投資とは別に2億5000万ドル(約285億4000万円)の負債融資を受けて事業を強化している。今回の資本投入によって、ニューヨーク拠点スタートアップの2019年創業以来の総調達額は、株式が5000万ドル(約57億9000万億円)、負債融資が3億3000万ドル(約376億8000万円)となった。

中小事業者やeコマース事業者に融資しているスタートアップは他にも数多くあるが、Amplaは自社の差別化要因を「オムニチャンネル」収益ストリームを考慮した融資限度枠を提供していることだと説明している。目標は、ファウンダーが低コストでより多くの資本を手に入れられるようにすることだとAmplaのCEOでファウンダーのAnthony Santomo(アンソニー・サントモ)氏はいう。

たとえばAmplaの主力プロダクトは、企業に(収益を上げる前でも)運転資金を貸し出すことで、在庫確保やマーケティングなどに出費できるようにすることが目的だ。現在Amplaは、eコマースと小売店舗チャンネル両方の消費者ブランド業界にいる中小企業を扱っている。同社「独自の」のデータに基づく保証ツールは、ビジネス全体を評価し「完全に透明」な利息と高い貸し出し限度で融資を行い隠れコストはない、とサントモ氏はいう。

ベンチャー資金の調達とは異なり、運転資金の調達は非希釈的(既存株主の持分比率が減らない)だ。最近、Clearco(クリアコ)やSettle(セトル)など、代替融資を行うスタートアップがいくつもでてきている。

Amplaはその一歩先を行き「新興企業がより効率的に成長する」ための周辺金融ツールを提供しているとサントモ氏はいう。

現在同スタートアップには、Partake Foods(パーテイク・フーズ)、Bev(ベヴ)、Good Planet Foods(グッド・プラネット・フーズ)、およびSerenity Kids(セレニティ・キッズ)など200社以上の顧客がいる。Amplaの顧客企業のファウンダーは、30%近くが白人以外で、40%以上が女性だと同社幹部は語った。

同社は具体的な売上数値は明らかにしなかったが、月間取引量は直近12カ月に300%以上伸びたと言った。同じ期間に社員数は4倍の40名になった。

Amplaは新たな資金を使って、プロダクト、テクノロジー、営業、および運用各部門の追加雇用を行う計画だ。

「チームを拡大することによって、新たなプロダクトの提供と既存プロダクトの改善を迅速に行えるようになります」とサントモ氏がTechCrunchに話した。「すべてのプロダクトは顧客からのフィードバックと要望に基づいています」。

新型コロナウイルス感染症のパンデミックはeコマース利用に変革を起こした。パンデミック到来時「Amplaはすぐに、顧客基盤の大部分でEコマース販売が急増していることに気づきました」とサントモ氏は言った。「こうしたeコマース販売の大幅な増加によって、商業レベルの本格的運転資金ソリューションの需要が世界中で生まれました」。

Forerunner Venturesの代表、Jason Bornstein(ジェイソン・ボーンスタイン)氏は、Bonobos(ボノボス、Walmart[ウォルマート]のeコマース主導アパレル小会社)の創成期に顧客獲得・需要計画の責任者を務め、1億ドル(約114億4000万円)以上の資金を調達した。

同氏はこう回想した「当時オンラインでブランドを構築するのは簡単でしたが、オンラインでビジネスを構築するのはとても困難でした」。

「それでもこの10年で、デジタルブランドを立ち上げる手法が確立されました。プロダクトやサービスの実施レイヤーが成熟し、今はデジタルブランドの活気あふれるエコシステムができ上がっています」と同氏がメールで言った。「しかし、こと融資となると選択肢はまったく明確ではありません。有名ブランドがVCエコシステムを通じてベンチャー資金を得ている一方で、ほとんどのブランドは規模拡大のための適切な資本を利用できません。どのブランドにも、自分たちのビジネスモデルや資金需要、そして熱意を正しく認識し理解してくれる融資プラットフォームがあるべきです」。

Forerunnerはデジタルブランドの早期からの支持者としてで知られているが、ボーンスタイン氏は、同社が「常に」、ブランドの販売戦略と市場でのプレゼンス確立において、店舗と卸(おろし)が重要な役割を果たし続けると信じてきたことを強調した。

「Amplaはこの信念を共有していて、融資引き受けにあたってオムニチャンネルによる収益を考慮してくれる稀有な存在です」と同氏は言った。

VMG CatalystのパートナーであるBrooke Kiley(ブルック・カイリー)氏は、VMGには消費者プロダクトに投資してきた長い歴史があり、新興ブランドには有効な運転資金の選択肢がないことを直に見てきたことを指摘した。

「既存の選択肢は、起業家に混乱とイライラを与えるだけです。Amplaを使えば、見た通りのものが手に入ります」とカイリー氏がメールに書いた。「隠れコストや意図的に混乱させる仕組みはありません。会社は1つの収益チャンネルだけでなくビジネス全体で評価されます。そして、顧客を念頭においた柔軟な条件で融資を受けられます」。

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アマゾン、インド独禁監視当局にCatamaranからのPrione株式購入の承認を求める

Amazon(アマゾン)は、eコマースプラットフォームで最大級の販売事業を運営するCatamaran Ventures(カタマラン・ベンチャーズ)が持つPrione(プリオーネ)の株式を購入するため、インドの反トラスト法監視当局の承認を求めている。両社が2022年5月以降は合弁事業を更新しないと発表してから数カ月が経過している。

今回の発表は、CatamaranがPrioneの76%の株式を所有していることから、驚きをもって受け止められている。Amazonは以前、同社の49%の株式を保有していたが、eコマース企業が自社のマーケットプレイスで販売する企業に直接または間接的に出資することを禁じるインドの法律を順守するため、24%に希釈した。

両社は現地時間12月22日の共同声明で、取引を完了するために「すべての資産と負債を含む」適用法を遵守しており、規制当局の承認を求めていることを明らかにした。Amazonはインドの監視機関であるインド競争委員会に承認を求めていると、この件に詳しい人物は述べた。

億万長者のN.R. Narayana Murthy(N.R. ナーラーヤナ・ムールティ)氏のCatamaranとAmazonは、2014年にインドで合弁事業を開始した。インドの規制変更にともない、合弁会社は2019年に所有権を再編した。そして2021年8月、両社は提携を終了すると発表した。

その発表は、ロイターがAmazonの資料を引用して、AmazonがCloudtail(クラウドテイル)を含む少数の販売者グループに何年も優遇措置を与え、インドの法律を迂回するためにそれを利用していたと報じた後だった。インド競争委員会はそれとは別に、AmazonとFlipkart(フリップカート)が自社のeコマースプラットフォームで一部の販売者(出資している販売者)を宣伝し、競争を阻害する商習慣を用いた疑いがあるとして2021年に調査を命じている。両社はこの調査を却下する試みを行ったが、失敗に終わった。

AmazonとCatamaranは12月22日に共同声明で「合弁会社の事業は現経営陣のリーダーシップの下で継続し、規制当局の承認を得た上で、PrioneとCloudtailの取締役会は適用される法を遵守して取引を完了するための措置を取ります」と述べている。

Cloudtailは、インドのAmazonで最大の販売者の1つだ。30万人以上の販売者と起業家のオンライン化を実現し、400万の加盟店にデジタル決済機能を提供してきたと、両社は2021年初めに発表した。

インドでは長年の法律により、Amazonや他のeコマース企業が在庫を保有したり、消費者に直接商品を販売したりすることが制限されてきた。これを回避するために、企業は在庫保有企業として活動する現地企業との合弁事業という迷路を通じて事業を展開してきた。

インドは2018年末、当時国内におけるアメリカ企業への最大の反撃と広く見られた動きで、この抜け穴の修正に取りかかった。AmazonとWalmart(ウォルマート)傘下のFlipkartは、何十万もの商品を店頭から撤去するために奔走し、関連企業への投資をより間接的なものにした。

2021年6月、インドはさらに厳しいeコマース規制を提案し、とりわけAmazon、Flipkart、その他のeコマース企業が自社ブランドあるいはプライベートブランドを運営することを禁止している。この新提案では、eコマース企業に対し、顧客に直接販売するための売り手として、その関連・関係者がプラットフォームに掲載されないようにすることを求めている。(インド政府はまだこの新規制について動いていない)。

Amazonは、Patni Group(パトニグループ)との合弁会社であるAppario Retail(アパリオリテイル)を含む、さらにいくつかのサードパーティの販売者に出資している。

画像クレジット:NOAH SEELAM / AFP Photo / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

【TC Tokyo 2021レポート】酔っぱらいたくない新世代に届けたい、米国の酒販D2CブランドHausの「誰のまねもしなかった」起業ヒストリー

12月2日から3日にかけてオンラインで開催されたスタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo 2021」。2日目午後0時30分から1時00分には、D2Cブランドについてのセッションが行われた。ゲストは米国でネットを介して食前酒を販売するスタートアップ「Haus」の共同創業者兼CEOであるHelena Price Hambrecht(ヘレナ・プライス・ハンブレヒト)氏が登壇。硬直した米国酒販業界でどのように後発組として成功してきたかについて語ってくれた。モデレーターはライター / 翻訳家の大熊希美氏だ。

IT屋とワイン屋の夫婦から生まれた新しいサービスHaus

ハンブレヒト氏は、シリコンバレーでFacebook(現Meta)、Fitbit、Google、インスタグラム、Microsoft、Pinterest、Square、Twitterなどさまざまなブランドの立ち上げにPRという立場で関わってきた、いわば「IT屋」だ。

そこで新世代の消費者が、製品の原料を強く意識していること、製品の信ぴょう性、販売者の透明性を重視していることを知った。

なかでも、アルコール類への不満が多いことに気づいたハンブレヒト氏は「高カロリーで、酩酊性が強く、眠りが浅くなるうえ、二日酔いもひどい。合成原料やさまざまな添加物など、摂取を控えたいようなものを含んだ飲料しかなく、その他の選択肢がないことへの不満の声だった」という。

共同創業者は元夫のWoody Hambrecht(ウッディ・ハンブレヒト)氏。ワイン醸造農園主の三代目だ。

関連記事:酔っ払いたくないミレニアル世代は仕事の飲み会で何を飲む?

そのこともあり、アルコールにまつわる業界の態度と消費者のニーズに強い興味を持ったハンブレヒト氏は、さらにミレニアル世代やZ世代のニーズを調べ、そこでアルコール業界の真実を知ることとなる。

「米国だけでも280億ドル(約3兆1790億円)という巨大産業が硬直したまま革新的なことをしてこなかった。新しい世代は、自分たちの飲むアルコールに関して変化を求めていた」(ハンブレヒト氏)

そこで、欧州で何世紀も愛されてきた実績があり、米国内でも人気が出てきたアルコール度数が低く、たくさん飲んでも酩酊することの少ないアルコール飲料である食前酒を開発し、販売するためにHausを立ち上げたのだった。

型破りな解決策

Hausが販売する食前酒は、従来のリキュールと異なり、甘みや苦味が薄く、新鮮な天然の原料から造られる。ブドウを主原料にさまざまなハーブをブレンドした蒸留酒で、飲み口が優しいのが特徴的だ。

フレーバーは8種類あり、カンパリやアペロールといった、従来のリキュール類と異なり「グレープフルーツハラペーニョ」「レモンラベンダー」など、名前だけでどのようなフレーバーなのかをイメージしやすくなっている。

「ロックでも、ソーダ割りでも、低度数カクテルとしても飲むことができる。さらにはそのままでも洗練されたカクテルのような味わいのある飲みやすいお酒だ」とハンブレヒト氏は説明する。

販売方法は、今のところオンラインのみで、基本はサブスクリプション制。会員は、月1本、2本、6本のコースを選べ、本数によって割引を受けられる。フレーバーも自分で選択でき、一時停止も可能だ。会費、送料ともに無料。限定フレーバーやセールの案内も受け取れる。

起業するに当たり、障害となったのは「禁酒法時代から変わりのない酒販への厳しい規制と、フィジカルなものづくりに必要な費用の準備」だった。

酒類販売には厳しい規制があるため、ネットで注文があると「受注したウェブサイトでは、宅配業者を手配し、その宅配業者が注文品を買って配送する」という複雑な手を使うのが一般的であるという。

「製造業者、卸売業者、消費者が購入するための酒類販売店がある。酒類販売には、こうした重層的な制度を使うしかなかった」(ハンブレヒト氏)

しかし、Hausはオンラインで直販している「酒販業として、米国で唯一の」D2Cブランドだ。それが実現した理由を「ブドウを主原料とする低度数のアルコール飲料はネット通販が法的に可能だったから」と説明する。

オンライン直販を全米で開始するためにかなりの資金をかけたというが「史上初のD2C酒販業となれたし、目立った競合もいない」と、その成果を語る。

Hausの製品は自社製造のため、インフラ整備に莫大な費用がかかった。米国の酒造業界では、小企業が製造委託を行う仕組みがないからだ。

製造設備、包装設備、倉庫などを用意せねばならなかったが、酒販スタートアップへの出資を禁止しているファンドが多く、VCは非協力的。「シリコンバレーとファンドに知人が多かったものの、投資家のほとんどが手を出さなかった」と振り返る。

そこで取った方法が、少額でも多数の出資家を募ることだ。

10社のファンドと100人の個人投資家から450万ドル(約5億1000万円)を調達することに成功した。「面談に面談を重ね、理念に共感してくれる出資者を探した」と、ハンブレヒト氏。「初期のスタートアップは、資金調達先を絞るのが定石といわれているが、何事も固定概念に縛られてはいけない。創造的に、これまでにない解決策を探していけば、驚くような答えに巡り会えるものだ」。

「出資者を絞らなかったおかげで、その人の人格に悩まされるというよくある話とも無縁だったし、何より全員が応援してくれるようになった。資金調達の方法が増えれば監視の目はゆるくなり、起業や成長、イノベーションの機会が広がる。

消費者向けブランドの場合、出資者、つまり利害関係のある人が多いことは、顧客になる可能性のある人が増えることを意味している。クラウドファンディングならなおさらだ。大勢から出資を受ける方法にはメリットしかない」(ハンブレヒト氏)

手を抜かないものづくりのために、かさんでしまう初期費用を無事に調達し、生産性の高いインフラを完成させた。しかも、理念に共感し、応援してくれるたくさんのファンを生み出すことにも成功したのだ。

2019年6月にローンチしてからの販売ペースについて大熊氏から尋ねられたハンブレヒト氏は「起業からの2年間で数十万本が売れた」と回答。「業界人から無謀だと思われていたし、反感を買いやすい製品だと自分では考えていたので、これほど早く全米に波及するとは予想外だった」と振り返る。

成功の秘訣は、ハンブレヒト氏が新興企業のPRを経験しており、ブランド創出に詳しかったこと、製品自体が注目を集めやすくメディアが取り上げたこと、また「なぜその製品が必要なのか」を宣伝したこと。

それまで、酩酊性と二日酔いの強いアルコール飲料しか選べず、不満をいだいていたZ世代からミレニアル世代、さらにはベビーブーマー(WWII後のベビーブーム時代に生まれた世代)までもが顧客になっているという。

パンデミックの影響を最小限に抑えられた理由とは

コロナ禍の影響については「強かった」とハンブレヒト氏。「Hausは、人とのつながりで広がっていく製品。共有したいと思うような飲み物だ。しかし、人の交流が途絶え、口コミも止まってしまった。仲間と飲んでいたのが、突如として1人きりで飲むようになり、消費も鈍った」。

しかし、追い風になったこともあるという。

「酒類のネット購入が増加傾向にあった。これはHaus創業時に意識していたこと。それを最大限に活かし、オンライン宣伝を開始。これにより、かなりの成功を収めることができた」(ハンブレヒト氏)

なお、酒類卸売業界全体では停滞が見られたが、Hausは卸との関係が薄かったため、その影響を受けることがなかったという。口コミという強力なマーケティングの有効性がなくなったときに、すぐさま変化に対応するスピーディーさも悪環境を事態を好転させられた理由の1つだろう。

顧客の課題解決を優先し誠実さを示す

現在は、配送先を米国内に限定し、かつオンラインでの直販という形をとっているHausだが、卸売や、将来的には国外への販売も視野に入れているという。

「大手の傘下に入らなければ、全国的な流通網に乗せられず、独立業者は地元のレストランにしか商品を売れない。そこで、D2Cを足がかりに、全国に顧客網を広げた。人気や需要の高さをデータで視覚化できれば、卸売進出へ有利になる。

今は、飲食店や小売店、販売店から前代未聞とも思える数の引き合いがききている。卸売のテスト販売は、まだカリフォルニアでのみ行っているが、2022年には多くの市場に本格参入する予定だ」(ハンブレヒト氏)

Hausが米国で最初で唯一の酒販のD2Cとなったことで、米国の酒販に関係した法律が変わる可能性も出てきた。というのも、重層的な流通体制や前述のような配送仲介を通したネット通販では収益性が低いからだ。D2Cの収益性を目にし、規制緩和への声が高まる可能性がある。

「ネット通販では売れない、と硬直していたのは消費者ではなく販売側」とハンブレヒト氏。「しかし現実はそうではなかった。飲食店で店外用の酒類販売も認められるようになった。厳格な規制が緩み始めた。規制緩和への明るい材料がそろってきたと考えている」。

このように、前例のない事業を展開してきたハンブレヒト氏は「顧客の価値観を最優先させる魅力的なD2Cブランドを尊敬し、さまざまな企業のロードマップを参考にしてきたが、誰の真似もしていない」と言い切る。「その企業が起業した当時の環境に合っていたから成功しただけかもしれず、再現性があるとは限らない。1つの企業だけを手本にしてもいいことがない」。

最後に、これから起業する人へ向けて次のようなメッセージで締めくくった。

「資金調達の方法は1つではない。大手ファンドやVCがだめだったからとあきらめず、個人投資家やクラウドファンディングなどさまざまな方法を探して欲しい。挑戦し続けて欲しい。

D2Cブランドの創業は、以前より難しくなっている。だからプロダクトには十分な配慮が必要だ。粗悪な原料を使わない、ズルをしない、手を抜かない、他社の真似をしない。顧客を優先させ、顧客の持つ課題を解決するように努めて欲しい。その誠実さは、消費者に伝わり、さまざまな障害を克服する助けとなるに違いない」(ハンブレヒト氏)

TechCrunch Tokyo 2021は、12月31日までアーカイブ視聴が可能だ。現在、15%オフになるプロモーションコードを配布中だが、数量限定なのでお早めに。プロモーションコード、およびチケット購入ページはこちらのイベント特設ページからアクセス可能だ。

アリババの東南アジアECモールLazada、年間アクティブコンシューマー数1億3000万人を達成

Alibaba(アリババ)は、中国以外の国の顧客にも同社のeコマースサービスを提供することを常に目指してきた。その戦略は多面的だ。ECの巨人が自社開発したAliExpress(アリエクスプレス)は近年、ロシアで成功を収めている。2016年には、Rocket Internet帝国から生まれたLazada(ラザダ)を買収し、東南アジアに特化したマーケットプレイスの競争力を高めている。

12月16日に行われたAlibabaの投資家デーでのプレゼンテーションによると、Lazadaは9月までの18カ月間で80%成長し、年間アクティブコンシューマー数(AAC)が1億3000万人に達した。9月時点の月間アクティブユーザー数(MAU)は1億5900万人で、AACよりも多いのは、Lazadaを利用するすべてのユーザーが最終的に商品を購入するわけではないからだろう。

中国の姉妹アプリであるTaobao(淘宝网、タオバオ)と同様に、Lazadaはライブストリーミングやゲームなどのエンターテイメント機能を導入しユーザーを引きつけて、純粋なショッピングアプリ以上のものにしようとしている。

Lazadaは、2021年に210億ドル(約2兆3880億円)の商品総額(GMV、経費を差し引く前の売上額)を記録した。また、9月の時点で、92万2000の出品事業者(その多くは中国からの出品者)が毎月活動しており、その規模は1年前の2倍以上になっている。

東南アジアのデジタル経済の発展の一翼を担おうとしている中国の大手企業は、Alibabaだけではない。Alibabaの宿敵であるTencent(テンセント)は、LazadaのライバルECプラットフォームであるShopee(ショッピー)を運営するSea Groupの主要投資家の1つだ。2020年、Seaは354億ドル(約4兆255億円)のGMVを記録した。

Alibabaのもう1つの中国の競合企業JD.comは、インドネシアのEC部門であるJD.IDが2020年初頭にユニコーンの評価額まで上昇したことがTechCrunchの取材でわかった。

画像クレジット:Lazada

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

インド競争当局がアマゾンによるFuture Group企業への出資取引を取り消し、事実隠蔽で罰金約30億円

インドの独占禁止監視当局は、Amazon(アマゾン)が2019年にFuture Group(フューチャーグループ)傘下の企業に出資することについて認めていた承認を取り消し、事実を隠蔽したとしてAmazonに約2630万ドル(約30億円)の罰金を課した。

インド競争委員会(CCI)は、2019年にFuture Coupons(フューチャークーポンズ)に出資したAmazonが「結合の実際の範囲と目的を隠し」、商業上の取り決めのいくつかを届け出なかったと指摘した。

インド最大の小売チェーンReliance Retail(リライアンス・リテール)は1年前、Future Groupの小売・卸売事業と物流・倉庫事業を34億ドル(約3870億円)で買収することで同社と合意したと発表した(CCIはインド2大小売チェーン間の取引を承認している)。

事態がややこしくなったのは、その直後からだ。AmazonはFuture Groupを契約違反で訴え、Future Groupへの先行投資の権利があると主張して、Future GroupとReliance Retailの取引停止を求めてシンガポールの仲裁センターに申し立てた。この問題はインドの最高裁にまでおよび、最高裁は8月に取引停止というAmazonに有利な判決を下した

当初、AmazonとFuture Groupの取引を承認していたCCIは、Future Groupからの申し立てを受けて再度審査を開始した。

「フォームIの項目8.8に基づく開示要求に対して、Amazonが関連する重要な文書を隠蔽した行為は、法45条1項(c)に反する 」とCCIは現地時間12月17日に59ページにわたる命令を出した[H/T ロイターのジャーナリストAditya Kalra(アディティア・カラ)氏]。

60日以内の罰金支払いを求められたAmazonは、命令をレビューしている、と声明で述べた。

「我々はインド競争委員会が下した命令をレビューしており、次のステップについては今後決定します」と、広報担当者はTechCrunchに語った。

命令の数日前に、Amazonはインドの反トラスト機関に、Future Groupとの2019年の取引を取り消せば外国人投資家にネガティブなシグナルを送り、インド最大の小売チェーンを所有するRelianceが「さらに競争を制限する」ことを可能にすると警告していた

インドの数百万の小売業者を代表するロビー団体、全インド商業者連合(Confederation of All India Traders)は、CCIの命令は「画期的なものであり、Amazonはその不正行為と、法律や規則の継続的な違反とともに、あらゆるレベルでの多くの嘘を完全に露呈した」と述べた。

画像クレジット:NOAH SEELAM / AFP Photo / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

グーグルのArea 120、デジタルクリエイター向けウェブストアフロントを提供するサービス「Qaya」を開始

米国時間12月15日、GoogleのチームがQayaという名前の新しいサービスを立ち上げた。クリエイターはこのサービスを使ってウェブ上に店舗をオープンし、自分のプロダクトやサービスをオーディエンスに直接販売することができる。Area 120は、初期のプロジェクトの多くがGoogleのCloud、Search、Shopping、Commerceなどの部門に移管されたことを受け、地位を昇格させた会社の大規模な再編成の一環となる。

関連記事:「Google Labs」の名が復活、AR&VR、Starline、Area 120が新設された「Labs」チームに移動

新プロジェクトQayaは、Area 120の社内創業者であるNathaniel Naddaff-Hafrey(ナサニエル・ナダフ-ハフリー)氏らが共同で創業した。ナダフ-ハフリー氏は以前、求人のマーケットプレイスKormoに在籍し、インドやインドネシア、バングラデシュなどのいわゆる「次の10億人の」インターネットユーザーを狙っていた。

彼は何十人ものクリエイターから話を聞き、デジタルビジネスの構築は時間ばかりかかってたいへんであることを理解し、そこから、彼らがファンに直接販売できるサービスとしてQayaを考えた。Qayaのチームにも数名のクリエイターが在籍しており、既存のクリエイターツールを使った体験を貴重なものとしてQayaに持ち込んだ。彼らは自分の体験と他のクリエイターたちの話から、クリエイターが自分の作品でお金を稼ぎ、自分のファンともっと良好な関係を築ける、ワンストップショップのような、柔軟性に富んだノーコードのプロダクトへの需要があることを知った。

Qayaのソリューションでは、クリエイターが自らの店をウェブ上に開き、プロダクトやサービス、その他のダウンロード可能なデジタル作品を並べて販売する。そこには、彼らのYouTube Merch Shelfのリンクがあってもよいし、Google検索やGoogleショッピングを統合することができる。写真やファイル、eブック、デジタルアート、写真のフィルターやプリセット、各種の仕事の生産性を高めるためのテンプレート、編み物のパターン、フィットネスのビデオなど、扱える作品にはほぼ制限はない。Googleによると、1つの店で最大1000のプロダクトを取り扱うことができる。

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また、デジタル作品ではないリアルのグッズや他のプラットフォーム上のサービスを売りたいクリエイターは、それらをQayaのページ上にフィーチャーでき、それらを自分のブランドにすることもできる。

各ストアは「qaya.store/●●●」という形の独自のカスタムURLを持つ。そしてそれを、LinktreeBeaconsなどが提供しているソーシャルメディア上のいわゆる「リンクインバイオ(プロフィール上のリンク)」の代わりに使ってもよい。

そうしたストアのサービスを利用するとクリエイターは、自分のさまざまなオンラインプレゼンスを指すマイクロウェブサイトを作ることができる。そこで、ソーシャルメディアのチャンネルとかショップ、ブログ、音楽やポッドキャストなどを紹介し、リンクを張ればよい。

この種のサービスの慣行に倣って、Qayaのストアでもページ最上部にある名前と自己紹介の下に、クリエイターは他のオンラインプロフィールのリンクも置ける。しかし、ストアの本来の目的は、クリエイターが販売したいと思うコンテンツにファンを直接コネクトすることだ。ファンをクリエイターのプロフィールやその他のサービスにコネクトする、単なるランディングページではない。

QayaにはGoogle Payが組み込まれており、サブスクリプションやチップ、都度払いなど、いろいろなタイプの収益化方法をサポートしている。また、Qayaはクリエイターの商品の売れ行きに関するインサイトや分析も提供する。

現在、このプロダクトは無料で使用でき、マネタイズはトランザクションベースで管理されている。つまり、クリエイターはQayaにアップロードして販売した商品から得られる収益の「大部分」は、クリエイターの手元に残るとGoogleはいう。

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Googleは現在、Qayaのベータに参加した一部のYouTubeクリエイターに、YouTube Merch Shelfの統合を進めている。同社によると、そのうちQaya でも、もっと広い範囲のプロダクトを販売できるようにするという。「その他のタイプのデジタルグッズ」も含まれるとのことで、おそらくそれはNFTのことだろう。Googleは、この話題について無視しているが。

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Googleによると、この新しいサービスは米国では本日からローンチし、他の国のユーザーはこれからとなる。Qayaのベータにアクセスしたいクリエイターは、Qayaのウェブサイトで招待状をリクエストできる。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)

元Snap社員が会話型コマースのスタートアップWhymが4.9億円調達

元Snapの社員たちが作った会話型のコマースサービスWhymは、モバイルデバイスからの買い物をもっと簡単にしようとしている。チェックアウトのフォームに長々と記入したり、決済カードの詳細を手で入力する代わりに、Whymでは1回のタップでApple PayやGoogle Pay、あるいは単なるテキストメッセージでチェックアウトを終えることができる。同社は、一般消費者製品や健康グッズ、美容製品などで成功し、このほど430万ドル(約4億9000万円)のシード資金獲得を発表した。

ラウンドはDeciens Capitalがリードし、DNX VenturesやReciprocal Ventures、Unusual Ventures、Chaos Ventures、Magic Fundらが参加、またSequoiaやLightspeed、Canaan Partnersらも小額を投資した。さらにStripeやPayPal、Venmo、Microsoft、Salesforce、Google、Facebook、Twitter、TikTok、Snapchat、Uber、Airbnb、Red BullそしてSpotifyなどの創業者や役員からのエンジェル投資もある。

同社は2017年にCEOのKelly Nyland(ケリー・ナイランド)氏とCOOのRhenee Bartlett(レニー・バートレット)氏が創業した。2人はともに、Snapに在籍していた。ナイランド氏はSnapの消費者プロダクトとマーケティングのトップとして、SnapのARサングラスSpectaclesの市場開拓戦略をつくった。バートレット氏はSpectaclesのイベントマーケティングとパートナーシップを担当。Whymの創業に加わりエンジニアリングのVPになったRyan Hornberger(ライアン・ホーンバーガー)氏は、彼のスタートアップであるScan, Inc.が買収されたあとSnapで働き、SnapchatのSnapcodeの基本を作った。

画像クレジット:Whym

Snapにいたときナイランド氏は、ユーザーの多くが、毎日、DM(ダイレクトメッセージ)の画面からSnapを利用し始めることに気づいた。そこで彼女は同社に、アプリ機能の一部として、ブランドと消費者がSnapの上で直接コミュニケーションできるようにしたらどうか、と提案した。

「その経験から、未来のソーシャルショッピングではメッセージングがとても重要だと確信しました」とナイランド氏はいう。

Whymのチームは、メッセージングとコマースを一体化して、テキスト(SMS)やDMのスレッドでショッピングができるようにすれば、ソーシャルショッピングの新しいかたちになると確信し、2018年にベータでローンチした。それによりブランドは、テキストメッセージで「買い物行動に対する応答」ができるようになった。

その後、Whymは小さな店を提供し、それをテキストによるキャンペーンと組み合わせて、その場で商品を買えるようにしている。テキストのやり取りで色やサイズなどを指定することができ、チェックアウトもできる。ブランドはソーシャルメディアやメッセージングアプリで、他の場所のリンクを宣伝してもよい。それを、リンクインバイオやスワイプアップ(Instagramのリンクステッカーなど)、メッセージングアプリなどで展開できる。

画像クレジット:Whym

消費者は、これまでのようにモバイルサイトをあちこちクリックしなくても、簡単かつ迅速に精算できる。小さな店に行ってカートをカスタマイズし、それからApple PayやGoogle Payをタップして買い物が終わる。Whymは初期のようにテキストでチェックアウトもできるが、今後は消費者の電話番号を使う方法も導入する。つまり2022年から、消費者は商品を選んで電話番号を入力すると、それだけでその商品に対する関心や近く買う意思を示せる。従来のようにウェブサイトのリンクを送ったり、スクリーンショットを撮ったりしなくてもいい。

今後は、Whymが顧客にユニバーサルカートを提供して、いろいろなブランドから買い物できるようにし、またブランド側はユーザーに、案内メッセージを送れるようにする。

「中心的な業種は、新進気鋭のD2Cブランドや美容、ウェルネスなどとなります。リピートの多いブランドを重視したい。Whymにできることは顧客のカートを個別一対一で再構築して、そうしたブランドのための「買い物によるリプライ」(リプライの一環として購入アクションがある)を作っていくことです。そのためにはバックグラウンドでテキストメッセージングのパワーを利用して、ブランドと消費者に生じるリピート購入体験を自動化していきます」とナイランド氏はいう。

Whymを利用しているブランドは今数百社で、1回のオーダーにつき3%+10セント(約11円)の手数料を払っている。今同社は年間総取引額が5000万ドル(約56億8000万円)から2億5000万ドル(約284億円)という高級で高額なブランドに注力し、段階的な料金制を導入しようとしている。まだ、そのレートは発表されていない。

自分のブランドをWhymに統合したい人は、その処理の一部始終をセルフサービスでできるが、約10分間かかる。同社の営業チームが、Whymのデモをしたり、Whym統合や最初のキャンペーンを手伝ってくれる。

現在、同社は社員が50名ほどで、今回の資金は新しいブランド顧客の開拓とプロダクトの機能強化に充てる。新しい機能の多くは、顧客の要望によるものだ。これまでWhymは、700万ドル(約8億円)を調達している。

画像クレジット:skaman306/Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)

アフリカ最大のeコマースプラットフォームJumiaのブラックフライデー売上高は30%増

アフリカのeコマースは急速に成長しており、より多くの人々がインターネットに接続するようになった今でも、その潜在可能性は依然として非常に大きい。2021年のGSMAモバイルエコノミーレポートによると、サハラ以南のアフリカ全体では、人口の約28%にあたる3億300万人がモバイルインターネットに接続しており、この数字は3年後には最大40%増えると予想されている。

インターネットにつながる人の数が増え、買い物客がますますオンラインでの購入を選ぶようになると、最近Jumia(ジュミア)で起こったように、eコマースプラットフォームでは注文数と購入金額が急増することになる。

アフリカ諸国にまたがるeコマースプラットフォームであるJumiaが12月7日に発表した米証券取引委員会(SEC)への報告書によると、ブラックフライデーシーズンに同社のプラットフォームでの販売額は、2021年は30%ポイント増加して1億5000万ドル(約170億円)に達した。

Jumiaのブラックフライデーセールは2012年に始まり、11月の第1金曜日から月末まで行われる。この期間中の注文件数は2021年、前年比39%増の430万件に達し、販売者数も11%ポイント増の4万6000だった。また、Jumiaの同期間中のユニークビジター数は4000万人を記録し、27%ポイント増だった。

先にお伝えしたように、Jumiaで最も人気のある商品は消耗品で、次いで美容・ファッションアイテムだった。これより前に、Jumiaは食料品カテゴリーを拡大するために、ダークストアをさらに立ち上げた。第3四半期決算からするに、この取り組みは報われたようだが、ニューヨーク証券取引所に上場している同社の収益確保は依然としてうまくいっていない。

JumiaはSECに提出した報告書の中で「当社の消費者は、日常的なニーズを満たすためにますますJumiaを利用するようになっており、数量ベースで最も急速に成長している物販カテゴリーのトップ3は、短期間で消費される日用消費財(FMCG)、次いで美容、ファッションとなっています」と述べている。

Jumiaは、TechCrunchとの過去のインタビューで、ショッピング習慣の変化をもたらしたものについて、オンライショッピングの需要を増大させた外出禁止の規制に加えて、新しいトレンドをすばやく取り入れる若年層、アフリカ大陸全体でのスマートフォンとインターネットの普及率の向上などを挙げている。スマートフォンは、eコマースサイトへのトラフィックに最も多く(75%)貢献しており、これはより多くの人々がインターネットに接続するようになるとオンラインショッピング利用者が増加することを意味している。ナイジェリア、南アフリカ、ケニアがJumiaのオンライン販売の大半を占めている。

Jumiaの配送事業部門Jumia Logisticsがブラックフライデーシーズンに扱った荷物は530万個に達し、これは「2021年の10月までの月平均量の2倍超」とのことだ。

Jumiaは現在、アフリカ最大のeコマースプラットフォームであり、ナイジェリアのMarketplace Africaや南アフリカのSouq、bidorbuyなど数百にのぼる他社をリードしている。Jumiaのプラットフォームは、アルジェリア、セネガル、チュニジア、コートジボワール、ウガンダ、モロッコなどアフリカの11の市場で利用可能だ。

画像クレジット:Jumia

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(文:Annie Njanja、翻訳:Nariko Mizoguchi

【TC Tokyo 2021レポート】コロナ禍で成長したD2Cブランドが、今後も生き残る条件とは?

12月2日から3日にかけてオンラインで開催されたスタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo 2021」。2日目午後3時25分から午後4時にかけて行われたセッション「D2C」では、コロナ禍で需要の伸びたeコマースの中でも、D2Cブランドにスポットが当てられた。セッションには、D2Cブランドとしてお菓子セットのサブスクリプションサービスを提供しているBokksu(ボックス)創業者兼CEOのDanny Taing(ダニー・タン)氏と、ツール提供側からオンラインストアの自動化ツールを提供しているAlloy Automation(アロイオートメーション)共同創業者兼CEOのSara Du(サラ・ドゥ)氏が登壇。モデレーターはライター / 翻訳家の大熊希美氏だ。

食を通じて日本文化を広めたい

タン氏はニューヨーク出身。スタンフォード大学で心理学と日本語を学んだ後、Googleで1年間デジタルマーケティング業務を行った後、東京に移り住んだ。早稲田大学で、さらに日本語を学んでから2010年に楽天に就職。2013年頃に楽天を辞め、故郷のニューヨークへと戻ることにした。

ニューヨークに戻ってからの悩みは「日本のおいしいお菓子が手に入らないこと」。「日本にいた4年間で日本語をだいぶ操れるようになったので、日本中を旅することができた。そして、各地で「地方限定」のお菓子と出会えた。しかし、米国ではそれを手に入れるのがとても難しかった」とタン氏は振り返った。

また、自分がアジア系というマイノリティであることに言及した後「米国の大多数は、日本にはピカチュウかゲイシャしかないと考えているのではないか、と思うことがあった」と所感を述べる。

「でも、日本にはもっと多様な文化がある。深いレベルで、食を通じて文化の橋渡しをしたい。家族経営で作っているお菓子は、みんなをワクワクさせる力がある。それで、2016年4月、日本のお菓子やお茶のセットを詰め合わせたボックスを、毎月届けるサブスクリプションサービス Bokksuを立ち上げることにした」とタン氏。

Bokksuのボックスで届くお菓子は、北海道から九州、沖縄まで日本各地のもの。数百年続いている老舗のメーカーや家族経営店など約100軒の菓子メーカーと契約しており「中には五代以上続くビジネスもある」という。「お花見、月見などを楽しむ文化が日本にはある。毎月、文化的なテーマに沿ってキュレーションを行い、約14~16種類の商品をボックスに入れている」とタン氏。発送先は世界中の約100カ国、発送個数は100万個近くに上るという。

創業当初の登録者数は40人ほど。菓子メーカーも2〜3軒だった。「外部からの資金提供もなかったので、できるだけコストに無駄のない手段を使いたかった」というタン氏が選んだツールは、ShopifyとReChargeだった。ShopifyはECプラットフォームを、ReChargeは、ECサイトにサブスクリプション決済を実装可能にするツールだ。

「おかげで、わずか数千ドル(数十万円)で起業。自分でウェブサイトを作り、ニューヨークの自宅の居間でお菓子を箱詰めして出荷するという一連のサイクルを回すことができた」とタン氏はいう。

垂直型成長に潜む落とし穴

立ち上げ当初は、口コミ、アフィリエイト、現物支給のインフルエンサーマーケティング紹介プログラムなど、コストのかからないマーケティング手法しか取れなかった。「ビジネスを始めてから2〜3年目までは、サービスの完成度を高めることに重点を置いた」とタン氏。「そのために、毎月顧客にアンケートを送り、改善点を尋ねながら、サービスを改善していった」。

タン氏は「顧客基盤があるサブスクリプションサービスだからこそ、継続的な改善が可能だった」と話す。

そして、2018年にそれは突然訪れた。バイラルキャンペーンが当たり、わずか1カ月で加入者が1000人から3000人に増加したのだ。

「私たちとしては、顧客が増えたと大喜びだった」とタン氏。「しかし急速に拡大したため、倉庫では出荷が、梱包時には人手が、カスタマーサポートは遅延によるクレーム対応がそれぞれ追いつかなくなり、すべてが壊れてしまった」と振り返った。

「急激な規模拡大には、ウェブサイトのソフトウェア面だけでなく、フルフィルメントなど物理的なインフラもしっかり用意しておく必要があった」(タン氏)

ツールによる自動化の必要性に迫られる

セッションは、ウェブサイトで利用できるツールに焦点を当てて続けられた。そして、この段階で必要性を増したのが、eコマースに関連したものすべてを包含可能な自動化ツールの利用だった。

「起業当初は、Shopifyに入ってくる注文1つ1つをチェックして興奮していた」とタン氏。「しかし、規模が大きくなり、1日に数千件もの注文を受けるようになると、手作業では対応できない。そこで、100%の確率で機能する強力な自動化ツールの導入を検討することにした」。

自動化ツールでは、トリガーに対して適切な対応を行える。注文のタグ付け、顧客プロフィールに応じた礼状の送付、さらにABテストなども実行できる。

「Alloyがなければ、顧客が受け取ったものをABテストし、それによりサービス向上につなげることはできなかっただろう」とタン氏はAlloyの有効性について述べた。

ここで、Alloyについて触れておこう。Alloyは、2019年に創業したスタートアップAlloy Automationが提供するeコマース向けのツールだ。eコマースを運営するためには、受注、決済、倉庫への連絡、顧客への連絡などさまざまな作業が必要で、場合によっては作業ごとにアプリを変える必要がある。それらをまとめて管理し、タスクを自動化するのがAlloyというわけだ。

ドゥ氏は、ハーバード大学の学部生だったが、休学し、米国のショッピングアプリ「Wish」でインターンを行う。そこでZapireのような自動化ツールに興味を持ったが、アプリ同士をつなげる程度のシンプルなことしかできなくても、年間2万ドルもするような高額のものであることに気づいた。

「既存のワークフローを視覚的にする自動化ツールの構築に興味を持った」とドゥ氏。エンジニアであり、デザインの勉強もしていた氏らしい発想だ。

そして、さまざまなアプリ同士を連携させ、循環させるツール開発に取り組み始め、2019年10月に公開するや、爆発的にヒットした。

公開からしばらくは、用途を念頭に置くことなく、データ操作や論理的操作を実行する機能、つまりコアの構築にしぼってツールに磨きをかけていった。それにより、さまざまなAPIをサポートし、ワークフローエンジンを持たせるという当初の目的を果たすツールに成長したのだ。

「パンデミックが本格化する直前の2020年3月には、eコマースで磨きをかけた」とドゥ氏。「わたしも小さなストリートウェアブランドを立ち上げたばかりだったし、友人にも店舗経営者が幾人かいた。そこで、最初の統合にShopifyを加えることにした」。

Shopify FlowやZapireといった、他の自動化ツールとの違いについて大熊氏から尋ねられたドゥ氏は「接続アプリ数の違い」を挙げた。

「Zapireなどでは2つまたは4つのアプリを接続してデータを同期するだけだ。しかし、わたしたちの顧客の多くは20、または30以上の非常に複雑なワークフローを構築している。それに対応し、さらに視覚化するのがAlloyだ。

また、eコマースに重点を置いたツールで、プラットフォームでは行えないような深いところでのアプリ同士の統合を、エンジニアチームを必要とせずに行うことができるという特徴もある」(ドゥ氏)

実に、130ものアプリをサポートしているというのだ。それにはSMS、Eメールロイヤリティ、UGC、返品アプリの3PLなどが含まれる。そのため、商品の追加や在庫の更新、自動応答といった作業をすべて自動で行える。

「データがさまざまなアプリ間でサイロ化(データを横断的に使えない状態)されている、大量のデータを手動でさばききれないときなどに、Alloyはマーケターをサポートする。Bokksuのように、サブスクリプション決済を行っているケースでも、対応できる。しかも、ノーコードで、マウス操作のみでそれらが可能だ」(ドゥ氏)

顧客自ら参加したくなるコミュニティの形成でD2Cブランドを確固たるものへ

急激な成長時には、まだAlloyが誕生していないこともあり、Bokksuの自動化ツールとして利用できなかったタン氏だが「今ではAlloyのおかげで、Shopifyに関連した90%ほどの作業を自動化できている」と喜ぶ。「在庫が少なくなったことを検知するトリガーを設定し、倉庫にメールを送る、再入荷があった場合に顧客にメールを送る。これらを手動ではなく、自動的に行えるようになった」。

そのおかげで、本家のbokksu.comだけでなく、日本のキッチン用品や包丁、ガラス製品などを都度販売するbokksugrocery.comという2つのストアを円滑に運営可能となった。「Alloyは、bokksu.comに登録されている顧客がbokksugrocery.comで購入した場合に、特別な方法で識別して、タグ付けできる。これは、Shopify Flowではできないことだ」とタン氏は説明した。

最後に大熊氏は、2人にD2Cブランドの構築と拡大に重要な要素についてどう思うかを尋ねた。

ドゥ氏は「コミュニティの重要さ」について語った。「フォロワーが5万人いるのに、投稿に対しての『いいね!』が20件のコミュニティより、フォロワーが3000人しかいないのに、『いいね!』が常に300件つくようなコミュニティを育てるブランドのほうがはるかにいい。そのためにも、リテンション(顧客との関係性維持)に取り組むのに役立つツールも重要になってくると思う」。

タン氏も、コミュニティの重要さを肯定しつつ「商品を販売していては、Amazonに勝てない。D2Cブランドが提供すべきなのは、ユニークな体験だ」と語る。「Bokksuも、単にお菓子の詰め合わせを送っているわけではなく、24ページ以上ある『カルチャーガイド』マガジンに、アレルゲン情報や、製品の最高の楽しみ方、メーカーへのインタビュー、日本の地図や製品の産地などを紹介している。おいしいお菓子だけでなく、日本のグルメ旅行も楽しんでもらえる、そういう体験を提供しているのだ」と説明した。

「顧客が、『これは特別だ』と感じてくれるものを提供する。学び、記憶に残る経験をしてもらう。それができるD2Cブランドは、人々をコミュニティに引き込み、コンテンツに参加させることができ、成功に至ると思う」とタン氏は語る。

作業そのものはツールで自動化を図り、顧客に最高の体験を提供することに専念する。それにより、顧客満足度が上がり、良質なコミュニティを形成できる。これこそが、D2Cブランドの成功の秘訣だ、と感じられるセッションであった。

TechCrunch Tokyo 2021は、12月31日までアーカイブ視聴が可能だ。現在、15%オフになるプロモーションコードを配布中だが、数量限定なのでお早めに。プロモーションコード、およびチケット購入ページはこちらのイベント特設ページからアクセス可能だ。

中南米のeコマースアグリゲーターMeramaが創業わずか1年でユニコーンに

最近、中南米のeコマースアグリゲーターへの投資が絶好調だ。

中南米でデジタルブランドの買収、立ち上げを行っているMerama(メラマ)は、シリーズBをリードしたAdvent InternationalとSoftbankから6000万ドル(約68億円)の追加投資を受け、設立後わずか1年で評価額12億ドル(約1361億円)を達成した。そしてこのわずか1日前には、中南米eコマースアグリゲーターのQuinio(キノ)が30社を買収するために、初の資金調達で2000万ドル(約22億7000万円)を獲得した。

今回の追加投資は、9月に発表され、メキシコ・ブラジル拠点企業の評価額を8億5000万ドル(約964億円)へと押し上げた2億2500万ドル(約255億2000万円)のシリーズBラウンドに続くものだ。当時同社はこれを「中南米で実施された史上最大のシリーズBラウンド」と豪語した。

TechCrunchが初めてMeramaを紹介したのは2021年4月で、負債と株式合わせて1億6000万ドル(約181億4000万円)をシードおよびシリーズAラウンドで獲得して、eコマースアグリゲーターの世界に飛び込んだ。同社の調達総額は4億4500万ドル(約504億7000万円)で、うち3億4500万ドル(約391億2000万円)が株式、1億ドル(約113億4000万円)が負債による。

同社の共同ファウンダーは次の5人で、CEOのSujay Tyle(スジャイ・タイル)氏は、Frontier Car Groupの共同ファウンダーで元CEO。Felipe Delgado(フェリップ・デルガド)氏はBeetmann Energyの元CEO、Oliver Scialom(オリバー・シャロム)氏はPetsyの共同ファウンダーで元CEO、Renato Andrade(レナト・アンドレード)氏はMcKinseyの元アソシエートパートナー、Guilherme Nosralla(ギルハーム・ノスララ)氏はWildlife Studiosの元グロース責任者だった。

「中南米は世界最速で成長しているeコマース市場ですが、ブランドはほとんと生まれたばかりか存在しない状態です」とタイル氏はいう。「今後5年のうちに、中南米に数十億ドル(数千億円)規模のブランドが複数誕生するとMeramaは確信しています」。

現在。Meramaには180人以上の従業員がいて、メキシコ、ブラジル、チリ、コロンビア、およびペルーにわたり20のブランドを抱えている。2021年は2億5000万ドル(約283億6000万円)以上の商品を販売する見込みで「キャッシュフローは大幅な黒字」になる見込みだとタイル氏は語った。

同社の有力ブランドには、エレクトロニクス会社のRedlemon(レドルモン)、チリのベイビー用品販売会社、Bebesit(ベベシット)などがある。現在850億ドル(約9兆6417億円)の中南米eコマース市場は急成長中であり、2023年には1162億ドル(約13兆1818億円)に達すると予測されている。

デジタルブランドの買収以外に、同社は独自ブランドも立ち上げている他、ブランドが中南米全体で成長するのを手助けするオートメーションとスケーラビリティーのツールも開発している。また、ブランド管理とサプライチェーン自動化のために自社開発している基礎技術を収益化する計画もある。

最新の調達資金は、同社のアルゼンチン、米国への進出を可能にするものだ。Meramaは、Mandaeの元CTO、Danilo Ferrira(ダニロ・フェレイラ)氏をCTOに、MercadoLibreの元マーケットプレイス担当ディレクター、Ignacio Nart(イグナシオ・ナート)氏をブライベート・レーベル担当上級副社長に迎えて幹部チームを強化した。

全体的に見てeコマースアグリゲーターは、過去数年の間に世界中で勢いを増しており、最近では成功した企業が数十億ドルのベンチャーキャピタルマネーを獲得している。前述したQuinoに加えて、今週北京拠点のNebula Brands(ネビュラ・ブランズ)が5000万ドル(約56億7000万円)を調達した。

それ以前には、ヘルスケアブランドに特化した Gravitiq(グラビティック)の参入やHeyday(ヘイデー)の5億5500万ドル(約629億4000万円)のシリーズCがあった。アグリゲーターのビッグネームでは、Amazon(アマゾン)アグリゲーターのThrasio(スラシオ)が10月に10億ドル(約1143億1000万円)の資金調達を発表し、Perch(パーチ)は5月に7億750万ドルの巨額の資金を獲得した。

ThrasioとPerchとは異なり「中南米は成長ストーリーの舞台なので、Meramはごく少数のブランドに絞り、スケーリングと拡張に焦点を当てています」とタイル氏は説明した。ゴールは主要なeコマースカテゴリーそれぞれにカテゴリーリーダーを1つ持つことで、何百というブランドを集約することではありません」。

新たな資金は「中南米初の消費者直販ブランドのためのインキュベーター」と同社がいうMerama Labs(メラマ・ラボ)の設立にも充てられる。この社内インキュベーターは、新たなD2Cブランドをファッション、化粧品、サプリメント、飲料などの部門に創設する。これは複数のカテゴリーでデジタルD2Cブランドを育成し立ち上げるための新しいグロースチャンネルだ。

「当社はインフルエンサーと協力してブランドを作っていきます」とタイル氏は付け加えた。

画像クレジット:Merama

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(文:Christine Hall、翻訳:Nob Takahashi / facebook

Gadgetはeコマースアプリ開発者の生産性を高めるプラットフォームを提供

カナダのオタワに拠点を置くGadget(ガジェット)は、Shopify(ショッピファイ)の元社員2名によって設立された開発者の生産性向上を支援する企業だ。同社はシード資金として、850万ドル(約9億6700万円)を調達したことを発表した。この資金調達ラウンドは、Sequoia Capital(セコイア・キャピタル)とBessemer Venture Partners(ベッセマー・ベンチャー・パートナーズ)が主導し、OpenAI(オープンAI)の共同創業者兼CTOであるGreg Brockman(グレッグ・ブロックマン)氏、Klarna(クラーナ)のCTOであるKoen Koppen(コエン・コッペン)氏、Shopifyのデータサイエンス・エンジニアリング部門の責任者を務めるSolmaz Shahalizadeh(ソルマズ・シャハリザデ)氏などが参加した。

2020年にHarry Brundage(ハリー・ブランデージ)氏とMohammad Hashemi(ムハンマド・ハシェム)氏が設立したGadgetは、eコマースアプリの開発者がコードを書く時間を削減する方法を提供することを目的としている。同社のプラットフォームを利用することで、開発者は作業にともなう無駄な仕事を省くことができ、アプリの構築と拡張をより効率的に行うことができる。

「私たちがGadgetを起ち上げた理由は、自分たちでさまざまなものを作ろうとしていた時に、何かを実現するまでには、どれほど長い時間がかかるかということに不満を感じたからです」と、CEOのブランデージ氏は、TechCrunchによるインタビューで語っている。「発売前の準備に何週間もかかるのは、フラストレーションがたまります。私たちは他の多くの人が同じ問題を抱えていると考え、それを解決するものを構築したいと思いました」。

Gadgetは、開発者が必要とするツール、ライブラリ、API、そしてベストプラクティスを1つにまとめ、開発者が、内蔵ステートマシン、自動アクセス制御、即時のAPI生成、他のSaaSプラットフォームとの統合など、一連の高度なプリミティブにアクセスしながら、データモデルを定義し、コードを書くことができるようにした。

画像クレジット:Gadget

今回調達した資金を使って、Gadgetはサーバーレススタックを公開し、Shopifyを手始めにサードパーティのAPIとの接続を構築する予定だ。ブランデージ氏とハシェム氏は、Shopifyの製品やエンジニアリングに関する専門的な知識を活用するために、まずはこの大手eコマース企業に注力する。

将来について、ブランデージ氏とハシェム氏は、重要なソフトウェアをより容易に開発できるようにするために、息の長い永続的な会社を作りたいと望んでいる。ブランデージ氏は、まだ作られていない実現可能な役に立つツールがたくさんあると指摘し、Gadgetは同社でそれらのツールを実現したいと考えている。

「ソフトウェア開発は転換期を迎えています」と、SequoiaのパートナーであるMike Vernal(マイク・ヴァーナル)は声明で述べている。「私たちが使用するソフトウェアに多くを期待するようになったことで、開発者はその要求に追いつくために、構築に使うツールに多くを求めるようになりました。Gadgetのプラットフォームは、eコマースの開発者が拡張性の高いソフトウェアを驚くほど速く構築できるように支援するという約束を果たしています」。

画像クレジット:Gadget

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hirokazu Kusakabe)