ロシア政府がアップル・メタ・GoogleなどIT大手に現地オフィス開設を要求、違法な情報に対するアクセス制限への同意も

ロシア政府がアップル・メタ・GoogleなどIT大手に現地オフィス開設を要求、法律に違反する情報へのアクセス制限への同意も

Mikhail MetzelTASS via Getty Images

ロシア政府は今週、アップルをはじめとする米ハイテク企業が同国での事業を続ける場合、2021年末までに現地オフィスを開設するよう求めました。

同国の通信規制当局ロスコムナゾル(Roskomnadzor)は、現地に公式なオフィスを持たない企業は広告やデータ収集および送金が制限され、あるいは業務を禁止する可能性があると警告しています。

今年7月、ロシアのプーチン大統領は「ロシアでのインターネット上での活動を行う企業」に対して現地オフィス開設を義務づける法律に署名しています。そして今週初め、ロスコムナゾルが初めて対象となる企業のリストと、ロシアの要件を満たすために具体的に何をすべきかを明らかにしたかっこうです。

今回の企業リストにはアップル、Meta(Facebook)、Google、TikTok、TwitterおよびTelegramが含まれています。Reutersいわく、この措置はロシア政府が米ハイテク大手の活動を抑え、国内のIT企業を育成・強化しようとしているためとのことです。

すでにロシア政府は外国のデジタルサービスに対する課税、国内のIT企業に対する減税、さらにはロシア国内で販売されるスマートフォンなどにロシア製ソフトウェアをプレインストールすることを義務付けるなどの政策を打ち出してきました。アップルもiPhone初回起動時に政府推奨アプリ導入の仕組みを取り入れたり野党指導者アプリを削除しろとの要求に応じるなど、数々の譲歩をしてきました。

ロスコムナゾルがReutersに語ったところによると、対象となった企業はロシア国内にオフィスを開設することに加え「ロシアの法律に違反する情報へのアクセスを制限する」ことに同意しなければならないそうです。

米9to5Macは、これは基本的に「ロシア政府に逆らう情報を検閲する」ことを意味しており、米ハイテク各社が困難な立場に置かれる、と指摘しています。

なおロスコムナゾルに名指しされた企業は、いずれもこの件についてコメントしていません。もしも要求に素直に従ってしまえば、ロシア政府の検閲や人権侵害(反政権活動家ナバリヌイ氏の毒殺未遂事件や、それに続く収監など)を支持したことにもなりかねず、欧米で厳しく追及される可能性もあります。

アップルやGoogleがどういった対応を取るのか、今後の展開を見守りたいところです。

(Source:Reuters。Via 9to5MacEngadget日本版より転載)

モバイルバッテリーシェアChargeSPOTを展開するINFORICHがデジタル障害者手帳「ミライロID」と連携開始

モバイルバッテリーシェアリングサービス「ChargeSPOT」を展開するINFORICHは11月22日、ミライロが提供するデジタル障害者手帳「ミライロID」(Android版iOS版)と連携することを発表した。

今回の提携により、ミライロ監修の元、より障害者の方が使いやすい場所にChargeSPOTの設置を推進する。さらに、すでに設置されているChargeSPOTのデジタルサイネージを活用して、ミライロIDを広く社会に普及させるサポートも行うとしている。また2022年1月31日まで、ミライロID内にて5日間無料クーポンが配布するそうだ。

ChargeSPOTは、モバイルバッテリーを「どこでも借りられて、どこでも返せる」をコンセプトに展開しているサービス。ChargeSPOT専用アプリ(Android版iOS版)、もしくは対応アプリでバッテリースタンドのQRコードをスキャンするだけでレンタルが可能という手軽さも特徴。借りた場所とは別のスタンドに返却することもできる。2018年4月からサービスを開始し、全国の駅、空港、商業施設、飲食店、コンビニエンスストア、公共施設など現在3万カ所に設置している。料金は最初の30分未満で165円、48時間まで330円、その後は1日330円で利用できる。

INFORICHは、ミライロが掲げる「国籍、性別、年齢、身体特性や能力などの多様性を力に変え、ユニバーサルデザインの考えのもと、社会に新たな価値を創造しています。」という考えに共感し、障害者の方々やその家族も含めたあらゆる人々の移動や生活をもっと便利に、もっと自由になることを、ChargeSPOTによる充電という角度からサポートするとしている。

東芝、ズームレンズと単眼カメラで撮影した複数写真のみで遠隔地にある対象物のサイズ計測が可能なAIを開発

東芝、ズームレンズと単眼カメラで撮影した写真のみで遠隔地にある対象物のサイズ計測が可能なAIを開発

東芝は11月22日、ズームレンズと一般的な単眼カメラ(一眼レフカメラ)で撮影位置などの条件を変えて撮影した写真のみから、遠隔地にある対象物のサイズを3次元計測できる技術を世界で初めて開発したことを発表した。インフラ点検などにおいて、高所や傾斜地など危険な場所に近づくことなく計測が可能になる。

国内のインフラ設備の平均年齢が35年を超えるなど、道路・橋・トンネルといったインフラの老朽化が問題となり、早急な対応が求められているが、効率的な工事を行うには、補修箇所の正確なサイズ計測が重要となる。だが、高所や斜面など危険な場所では目視による計測が難しい。そこで東芝は、危険な箇所に近づくことなく、遠くからズームレンズで撮影した写真から簡単にサイズ計測ができるAI技術を開発した。異なる位置から撮影された複数の写真(多視点画像)から割り出された相対的な奥行き情報と、画像のボケ情報を組み合わせ、スケール情報と焦点距離を未知パラメータとする最適化問題を解くことで、撮影画像のみでサイズの絶対値がわかるというものだ。

カメラの画像でサイズが計測できるアプリはスマートフォンにも搭載されている。これには、多視点画像から得られた相対値に絶対値を与えるジャイロセンサーと、あらかじめ学習されたAIモデルが必要となる。そのため、学習の範囲を超える遠距離となると精度が落ちてしまう。

東芝が開発したシステムでは、7m離れたひび割れのサイズを高精度に計測できた。屋外の11カ所で、5〜7m離れた対象物のサイズを計測したところ、サイズ誤差は3.8%に抑えられた。この精度は、公益社団法人日本コンクリート工学会が定めるコンクリートのひび割れ補修指針に基づく数値シミュレーションで「高精度の補修の必要性を判別できる」と確認された。さらに、2mm以下のひびのサイズの絶対値の計測も行えた。

この技術は、インフラ点検のみならず、製造、物流、医療など、カメラによるサイズ計測が行われる分野に応用ができると東芝では話している。今後も様々なカメラやレンズを使った実証実験を進め、早期の実用化を目指すということだ。東芝、ズームレンズと単眼カメラで撮影した写真のみで遠隔地にある対象物のサイズ計測が可能なAIを開発

フェイスブックがケニアで最も未成年者の性的搾取が横行するSNSであることが判明

新たに公表されたDisrupting Harmレポートによると、ケニアにおいてインターネットを通じた未成年の性的搾取が、他のどのサイトよりもFacebook(フェイスブック)で横行していることが判明した。この大手テクノロジー企業のプラットフォームは未成年にとって極めて危険なものになっている。

インターポール、ユニセフ・イノチェンティ研究所、子どもに対する暴力撲滅に関する活動がまとめたこのレポートにより、2020年の東アフリカ諸国における未成年者に対するオンラインでの性的搾取や性的虐待に関する事例の90%以上がFacebookを起因とするものであることが判明した。このレポートは、全米行方不明・被搾取児童センター(NCMEC)のデータ、未成年者やその両親、警察機関、法定代理人との面談に基づいて作成されたものである。

Facebook以外に、WhatsApp、Instagram、YouTubeも児童の性的虐待に関する画像や動画が広く所有、制作、配信されるプラットフォームとして言及されているこのレポートは、NCMECのデータを受けて公表されたものである。そのデータによると、2020年1年間にFacebookが報告した児童の性的虐待の画像は世界全体で2000万件以上にのぼるが、これは2番目に件数が多かったGoogleの37倍であったという。その後に行われている調査でも、Instagramが10代の少女のメンタルヘルスに深刻な影響を及ぼしていることが判明したため、Instagramの親会社であるMetaも、現在中断している13歳未満の未成年者を対象としたInstagram Kidsを開始する計画について熟慮している。

自社のプラットフォームから未成年者の搾取を排除するためにどのような取り組みを行っているかについてMetaからコメントを得ようとしたが、この記事を発表する際の期限までにコメントを得ることはできなかった。

NCMECのCyberTiplineレポートによると、全体的には、ケニアの児童に対するオンラインでの性的虐待も、6%増えて1万4434件となっている。CyberTiplineは、未成年者の性的搾取に関する事例を報告するための一元的なシステムである。ケニアは東アフリカで唯一、同国の犯罪調査局(DCI)の人身売買防止・児童保護課(AHTCPU)やインターポールの国際児童性的搾取データベースを通じてNCMECの報告システムに直結している国である。

同レポートには次のように記されている。「WhatsAppとFacebook(またはFacebook Messenger)は、児童が最も標的にされるソーシャルメディアやインスタントメッセージアプリであった。その理由はおそらく、FacebookとWhatsAppがケニアで最も人気がある2つのソーシャルメディアプラットフォームであり、子どもたちが多くの時間をオンラインで過ごす場所だからである」。

AHTCPUの責任者であるMueni Mutisya(ムエニ・ムティシャ)氏は、TechCrunchの取材に対し、同課がサイバー情報に関するレポートを毎日22件受け取っていると答えた。ケニアでは、新型コロナウイルス感染症が世界的にまん延し始めたあとに記録された事例が増大しており、これもソーシャルサイトの利用に起因する状況であると同氏はいう。

同氏は次のように述べている。「ソーシャルメディアによって、オンラインでの児童の性的搾取と性的虐待(OCSEA)の共有、作成、配信が拡大した。搾取者が若者をだまして、自分自身の露骨な画像を提供させたり、過度に人を性の対象として見る文化のえじきにしたりすることが格段に容易にできるようになった」。

このソーシャルメディアの勢力レポートによると、WhatsAppはFacebookとYouTubeに次いでケニアで人気のあるソーシャルアプリである。これまでに、ケニアの人口の4分の3以上がインターネットにつながっており、FacebookやWhatsAppといったサイトに容易にアクセスできるようになっている。

犯罪者が児童を食い物にする方法が変化しているように思える状況下で、このレポートを作成するにあたって面談を行った被害者の半数以上が、性的なコンテンツの要求はオフラインではなくオンラインで行われたと言っており、未成年者の5人に1人が直接のアプローチを受けている。少年と少女のどちらもオンラインで同程度のリスクに直面しているという事実を報告している調査によると、オンラインでの性的搾取という危険に最もさらされているのは12歳から17歳の未成年者だった。

犯罪者は一般的に被害者の知っている人物であることが判明しており、プレゼントや金銭(性的な恐喝)を利用して、犯罪者に会ったり、画像や動画を共有したりするように未成年者を誘導していた。勧誘は一般的にFacebook(またはFacebook messenger)、WhatsApp、YouTubeを利用して行われる。InstagramやByteDanceのプラットフォームであるTikTokを挙げる者も少数いたが、ほとんどの者はゆすられたり脅されたりして、わいせつなコンテンツを提供させられたり、わいせつな行為に関わらされたりしている。

同レポートにはさらに、ケニアが児童に対する性的虐待の商業的ライブストリーミングの発信地になっていることを国外の法執行機関が明らかにしたことも示されている。Google検索エンジンのトレンドから、ケニアの性犯罪者はティーンエージャーとの性行為、ティーンエージャー同士の性行為、児童や乳児との性行為を題材にした画像や動画を探し求めていることが判明した。安全保障当局のレポートによって、国々を移動する外国の児童性的犯罪者にとってもケニアはホットスポットであることが明らかになっている。

性的な目的で子どもにオンラインで身づくろいをさせる行為もソーシャルサイトで横行している。この行為は、虐待のコンテンツを作成・提供するように操る意図を持って行われているものであり、直接子どもに会ったり、児童を虐待したりする意図はまったくない。これは、現在のケニアでは犯罪行為とはみなされないOCSEA(児童に対するオンラインでの性的搾取と性的虐待)の1つの形態であると同レポートには記述されている。犯罪者を告発する際の根拠となる法律は、児童を性的なコンテンツにさらした加害者を罰するコンピューター不正使用法と児童ポルノを刑事罰の対象としている性犯罪法のみである。

同レポートは次の点を指摘している。「ケニアにおいて、間もなく成立する、オンラインでの身づくろいに対処する児童法案2021(Children Bill 2021)の条文は、児童に会うことを目的としたオンラインでの身づくろいしか対象としていないため、例えばオンラインプラットフォームで性的なコンテンツを送るように犯罪者が児童に求めた場合には適用されない可能性がある」。

現在、立法府の承認手続きが進められているこの法案は2020年に提出されたものである。2週間前に国会議員がこの新しい法律に対する提言を一般に募り、先ほど述べた抜け穴を埋めるチャンスが到来した。

同レポートは次のように述べている。「性的虐待がオンラインで発生する行為である身づくろいを禁止する条文が依然として盛り込まれるように願っている」。

この種の犯罪には、国境を超えて行われるという性質があるため、ケニアは犯罪者の行動を追跡したり、犯人を検挙したりできるように国際機関や地方自治体と綿密な連携を行っている。ケニアのDCI AHTCPUも国の通信規制当局と連携して、この種の犯罪の性質を一般大衆に警告したり、報告を行うことを推奨したりしている。

ムティシャ氏は次のように語る。「インターネット犯罪には国境を超えて行われるという性質があるため、DCI AHTCPUはOCSEAとの戦いをサポートするために、国内や国外の戦略的パートナーと手を組んでいる。国境を超えるOCSEAの事例が発生した場合には、我々はインターポールを利用して通知を発令する」。

「英国高等弁務官事務所の国際渉外官や(ケニアの)米国大使館のFBI法務専門職員およびケニアにおいて同等の役割を担う人々と綿密に連携し、オンラインで虐待を受けた被害者のために正義を求め、犯罪者を追跡していく。これは、社会への啓蒙や学校訪問によって実現する教育、意識の向上と鋭敏化に加えて行うものである」と同氏はいう。

Disrupting Harmの執筆者たちは、同レポートに記された調査結果が、児童に対するオンラインでの性的虐待に関する戦略を導入するための指針となることを願っている。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Annie Njanja、翻訳:Dragonfly)

福岡市がワクチン接種証明による特典を提供し経済復興支援の検証を開始、感染拡大防止と経済活動の活性化を目指す

福岡地域戦略推進協議会(FDC)、KDDIauコマース&ライフ(auCL)、ミナケアは11月18日、福岡県福岡市において、ワクチン接種証明による経済復興支援の検証を目的とした実証実験を行なうと発表した。期間は11月18日から12月31日まで。

現在、新型コロナウイルス感染症の感染状況は下降傾向にあるものの、将来の再拡大の可能性に備えて引き続き警戒が必要な状況にある。一方、対面型サービス業を中心に依然集客が厳しい商業施設の活性化が課題となっている。ワクチン接種証明を活用することでその両立を図ることができるのか、今回の実証実験によって検証する。

同実証実験の内容は、KDDIとauCL運営の総合ショッピングサイト「au PAY マーケット」から福岡市を中心とした対象店舗(11月18日現在で18店舗。随時拡大予定)の事前購入型飲食店チケットを購入したうえで、当日店頭でワクチン接種証明を提示すると、ワンドリンクサービスやデザートサービスなどの特典を受け取れるというもの。店舗の検索や予約はau PAY マーケットの特集ページより行なえる。

またワクチン接種の証明は、福岡市がワクチン接種管理アプリとして利用しているミナケア製「Health Amulet」(ヘルスアミュレット。Android版iOS版)の活用を推奨している。

FDCは、同実証実験で得られた結果を福岡市における経済復興支援策の立案に活かしていくとのこと。実証実験においてKDDIとauCLはau PAY マーケットの運営とワクチン接種証明の提示による特典付き商材の提供を行なう。ミナケアではHealth Amuletの運用、接種記録機能の同実証実験向け提供を担う。さらにKDDI、auCL、ミナケアの3社は、今回の実験で得られたノウハウを基に、感染拡大防止と経済活動活性化の両立を目指す他の地域・自治体への展開を視野に入れ連携を強化していく予定。

Z世代が安心して少額寄付を行えるようにするソーシャルメディアWishly

米国時間11月16日、社会的責任に焦点を当て、Z世代の視点から資金調達のあり方を変えることを目指す新しいソーシャルメディアプラットフォームWishly(ウィッシュリー)が、120万ドル(約1億4000万円)を調達したことを発表した。同プラットフォームは、消費者ブランド、慈善活動家、非営利団体の活動が交差する興味深い地点を目指している。その願いは、ソーシャルメディアの力を利用して、社会に貢献することだ。

このアプリは、経験豊富なソーシャルインパクトマーケターであり、非営利団体の資金調達者であり、管理者でもあるJoanne Gonzalez-Forster(ジョアン・ゴンザレス=フォースター)氏とJustine Makoff(ジャスティン・マコフ)氏の2人によって作られた。彼らは、Z世代の楽観主義と利他主義を受け入れ、人びとが団結し世界に真のポジティブな変化をもたらすことができるソーシャルプラットフォームの必要性を感じていた。

「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)やBlack Lives Matter(ブラックライブスマター)への支援が爆発的に増えた2020年初頭、私たちは子どもたちやその友人たちがソーシャルメディアを使って、フォロワーに行動を起こさせたり、自分たちが気にかけている活動に寄付をさせたりしている様子を目の当たりにしました」と、共同創業者でCEOのジョアン・ゴンザレス=フォースター氏は語る。「しかし彼らにとって、非営利団体を見つけて吟味したり、少額の寄付をして友人にも参加を促すような簡単な方法はありませんでした」。

同社は、Pelion Venture Partnersの創業パートナーであり、現在は引退しているJim Dreyfous(ジム・ドレイファス)氏や、ソーシャルインパクト投資家であるJoshua Mailman(ジョシュアメールマン)氏などの、名のあるエンジェル投資家を集めることができた。この2人は、2020年に40万ドル(約4570万円)のプレシードラウンドに投資したあと、現在のシードラウンドに80万ドル(約9140万円)を投資するために他の投資家を連れて戻ってきてくれたのだ。

ゴンザレス=フォースター氏は「Z世代やミレニアル世代の子どもたちが何をしてくれるのか、私たちはとても楽しみにしています。機会はたくさんありますし、世界にはやるべきことがたくさんあります。毎日のように自然災害が起きていますし、たくさんの社会的な動きがあります。私たちは彼らが、つまり今の若い世代が、小さな行動で世界にポジティブな影響を与えることができるようにWishlyを作りました」という。「『慈善家』をGoogle検索しても、ビル・ゲイツ、ジェフ・ベゾス、ウォーレン・バフェットといった人たちの写真は出てきますが、若い人の顔は出てきません。私たちはそれを変えたいのです。さまざまな色や形、そして大きさの若い顔を見たいのです」。

同社のビジネスモデルはシンプルで、プラットフォーム上で調達した資金の5%を得るというものだ。また、Wishlyは、プラットフォームに掲載されるすべての非営利団体をしっかり精査する。

「私たちはIRS(米国国税庁)から、登録されているすべての501c3団体(課税を免除される非営利団体)のリストを入手しており、それらの団体はすでに私たちのプラットフォームに登録されていて、それらの団体向けの寄付を受け付けることができます。ゴンザレス=フォースター氏は「非営利団体がアプリ上でプロフィール掲載を要求したら、それを合図にその団体の審査を始めます」という。「私たちはIRSの検索ツールを使って、彼らがIRSと良好な関係にあるかどうか、つまり3年連続できちんと税金を申告しているかどうかを確認します。また、Charity Navigator(チャリティーナビゲーター)やBetter Business Bureau(ベタービジネスビューロー)をチェックしたり、Googleでその非営利団体に関する詐欺や訴訟、誤解を招くような情報がないかを確認したりします。世の中には悪質なチャリティがたくさんあるのです」。

このアプリは現在、iOSAndroid上で提供されているが、チームによれば、このプロダクトは近日中に予定されているより一般的なローンチまでは、基本的に親しい者向けのステージだという。

画像クレジット:Wishly

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:sako)

【コラム】ユニコーンを多数輩出、高い潜在能力を持つイスラエルのテックが抱える問題

人口がEUの50分の1ほどしかないイスラエルで、EUと同じくらいの数のユニコーンが誕生しているのは一見すばらしいことだ。奇妙に思えるかもしれないが、このギャップはさらに広がる可能性がある。実際、奇妙なことだ。

テック系エコシステムは弾み車のようなものだ。創業者が会社を売却したり上場したりすると、エコシステムに資金が流れ込むが、これには3つの形がある。1つはいうまでもなく、資本家からの流動性の注入だ。

2つ目の効果は新しい投資家の創造だ。新しく富裕層になった創業者たち(および従業員たち)は最初に家を買ってから、スタートアップへの投資を開始するという話には一理ある。3つ目は、ベンチャー資金は以前にイノベーションを成功させた人材に集まる。これは一種のハロー効果で、イスラエルにもサンフランシスコと同様明白に存在する。

こうしたことは、Google(グーグル)、Uber(ウーバー)、Twitter(ツイッター)などの初期の社員で、投資家や創業者になった人たちに起こった。イスラエルでも同じようなことが起こっている。ただし、イスラエルでは、そうした社員が、自分たちに富をもたらした創業者たちよりもうまくやれると確信していることをはっきりと態度に表すことも珍しくない。

Monday.comやSentinelOneなど、イスラエルのサクセスストーリーとなっている企業で創業10人目の社員になることは、ウーバーやインスタグラムで創業15人目の社員になるようなものだ。ハロー効果という点でも、ウーバーやインスタグラムほどはないものの、確かにある。このように社員から創業者になる人たちには、投資家が求めているスキルとバックグラウンドがある。また、イスラエル人独特の図太さも強みだ。

イスラエルに100ものユニコーン企業(評価額10億ドル[約1128億6000万円]以上の多くはテック系の株式非公開企業)が誕生している理由もそこにある。人口ではイスラエルよりも圧倒的に多い欧州だがユニコーン企業は125社しかない。イスラエルのこの成功は奥が深いので説明が必要だろう。

起業家にとっては、欧州のビジネス文化はイスラエルに比べてリスク回避的だ。過去の成功に基づいて評価するからだ。EUの大半の国では、もっと簡単に確実にもうける方法はいくらでもあるが、イスラエルでは、古い考え方にあまり縛られていないため、テック系起業家への道は魅力的だった。

こうしたパラダイムは、真の平和というものを経験したことがなく、大部分が移民とその子どもたちで構成されているまとまりのない社会には適していた。イスラエル人の冒険精神、そしてそれに通じるイノベーションや起業家精神の根本にはこうした要因がある。それに加えて、警備産業や軍事産業によって推進されたテクノロジーもある。これは、戦争、解体後のソビエト連邦からの移民の大量流入などによってもたらされた。

新しい要因としては、新型コロナウイルス感染症がある。イスラエルは、早期にワクチン接種を行ったことと、外部のテック分野(おそらく労働人口の10分の1を占める)がリモートワークに適していたため、パンデミックから何とか強く抜け出すことができた。また、パンデミック期間中、イスラエルには大量のVC資金が流入した。

こうしたことが最高のタイミングで起こっている。イスラエルの企業は、サイバー、フィンテック、SaaSなどの分野ですでに自分より格上の企業と張り合っており、フードテック、アグリテック、宇宙テクノロジー、そしてもちろんワクチンなどの分野でも大きな可能性を示している。

しかし、この辺りから見通しが少し怪しくなってくる。大きな障害がこうしたイスラエルの潜在能力の実現を阻害している可能性がある。

表面上は、イスラエルは産業に供給できる十分な労働力を備えているように見える。実際、このデータが示している通り、この国には1万人ごとに135人の科学者とエンジニアがいる。これは先進諸国中で一番の数字だ。しかし、急成長中のテック分野の需要に応えるにはそれでも足りない。

Israel Innovation Authority and Start-Up Nation Central発行の2020 High-Tech Human Capital Reportによると、テック企業の60%が人材の確保に苦労しており、イスラエル国内には現在、1万3000件のテック関連求人があるという。最近のさまざまな調査で慢性的なエンジニア不足が報告されている。9月現在で、1万4000人のエンジニアの求人があるという。

エンジニア不足のせいでエンジニアの賃金が上がっており、イスラエルのエンジニアの賃金は先進諸国中で最も高くなっている。こうした状況の中、リモートワークの時代にあって、企業側はウクライナやルーマニアなどから労働力を調達している。これは「スタートアップ国家」という特製ソースの瓶詰めを続けるにはあまり良い兆候ではない。

悪い方向に進んでいることは他にもある。イスラエルの学生の国際テストにおける数学、科学、国語の成績が他国と比較して急低下しているのだ。政治的大変動が主な原因だが、後続政権は、数学をまったく教えないことが多い宗教色の非常に強い学校の制限なしの成長を許している。

これは、超伝統派の急速な拡大という広範な問題と関係している。超伝統派では、男性の半分はフルタイムで宗教の研究を行い(残りの半分の多くは膨大な宗教関係の業務をこなしている)、女子は1人平均7人以上の子どもを育てることに専心する。テック経済に相応の寄与をしていないもう1つのセクターとして、イスラエルのアラブ系市民がある。アラブ人コミュニティは伝統的に権限が低く資金不足のコミュニティで、犯罪率も高い。

すぐに思いつくアプローチとして、超伝統的ユダヤ人とイスラエルのアラブ系市民を統合して、より広範なイスラエルを形成し、あらゆる道具を与えるようにすることだろう。イスラエルのアラブ系市民の街と学校の資金不足はなくし(2021年から少しずつ始まっており、アラブ系政党が新連合に参加している)、政府はアラブ系コミュニティで蔓延する犯罪を厳しく取り締まるよう警察に命令する必要がある。数学や科学を教えない学校に対しては資金の提供を拒否すべきだろう(これは超伝統派を統合するために必要な多くのステップの1つだ)。

イスラエル政府は官民協力体制のイニシアチブを取って(過去に有望なスタートアップを生み出し資金を提供したときと同じアプローチ)、教育システムの改善を推し進める必要がある。目標は同じで、経済を加速することだ。イスラエルはアイアンドームを建設し反対派に対処したときと同じ活力で教育問題に取り組む必要がある。

考えられる取り組みとして、STEM(科学、テクノロジー、エンジニアリング、数学)教育の改善がある。具体的には、教師の待遇改善、親による教育への積極介入の制限、さらには、Fullstack Academyや外部のコーディング専門学校などの外部プログラムに奨励金を給付してイスラエル国内に学校を設立する、Wixなどのテック大手と協力してシリコンバレースタイルのキャンパスで自国の人材を育成するといったことが考えられる。

学生にコーディングやプログラミングを教えることを早期に始めてもらうようにすれば、研究開発や認知分野を重視している軍の部門にも役立つ上、新しい人口グループに求人対象が広がり、テック分野の新しい社員が生まれることになるだろう。

これらはどれも簡単ではないが、現状に満足していては高い代償を払うことになる。何もしないで最善を望むのは、ただ何もしないよりなお悪い。それでは、不可思議な運命によってイスラエルに授けられた途方もない才能を無駄にしてしまうことになる。

画像クレジット:matejmo / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

【コラム】ダイバーシティに関するデータが透明性を欠いている理由

テクノロジー業界では、ダイバーシティが大きな話題となっている。FacebookやGoogleなどの企業が企業文化の向上を目指し、ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンへの取り組みを行っている。しかし分析によると、DEIを推進しているとされるこれらの企業では、こうした取り組みにもかかわらず、過去10年間でダイバーシティに大きな変化は見られなかった。

2010年代に入り、多くのハイテク企業が透明性を示すために年次のダイバーシティに関する報告書を公開したが、データを見てみると問題が浮かび上がってくる。報告書は、ダイバーシティの数値の増減を記載していることが多いが、企業が具体的な変化を起こすのに役立つデータを分析できていないことが多いのだ。

データを活用し、ダイバーシティに影響を与えるシステムを深く掘り下げる

これらの報告書に記載されているデータは、結果を示すものだ。企業がダイバーシティにおける測定分野(人口統計学的コミュニティが一般的だ)において成長したのか、衰退したのかがわかる。しかし、なぜそのような結果になったのか、システムのどの段階で失敗しているのかはわからない。

したがってこれらの報告書は、改善されたプロセスやシステムを測定するという、説明責任の強力な効果を逃しているのだ。

一例として、ある企業のマーケティングデータを見てみよう。

大企業がマーケティングファネルを最適化しようとするとき、マーケティングプロセスのあらゆるレベルのデータを見ることがある。例えば、外部のマーケティング活動から得られるインプレッション数を推定したり、広告からウェブサイトへのコンバージョン数を数値化したり、ウェブサイトの訪問者のうち何人が顧客に転換したかを計算したりする。これらの情報は、パフォーマンスを最適化し、売上を増加させるために定期的に使用される。そしてこれらの情報は、企業が成功するためには収益の創出が不可欠であることをリーダーたちは知っているため、優先的に使用される。

リーダーは採用システムのすべての段階でデータを記録し、分析すれば、採用段階で質の高い分析を行うことができる。データセットには、すべての交流ポイントにおける以下の(しかしこれに限定されない)人口統計学的情報が含まれるだろう。

  • 求人広告のインプレッション数
  • ソーシングチャネルを通じて特定された候補者
  • 面接に来た候補者
  • 面接官による評価結果
  • 内定および承諾された内定

それからリーダーは、プロセスの各段階で、就職可能な人材と少なくとも同等の人口構成のコミュニティを確保することができる。そして結果の改善のために(毎年ではなく)、このデータを利用して、優先的に定期的にシステムに変更を加える必要があるだろう。

採用活動はその一例に過ぎず、他にもさらに有益なダイバーシティデータを活用できるビジネス分野はある。

情報の実用化

リーダーは、説明責任を果たすための情報やより高い公平性と包括性を実現する情報を公開することで、データを実用的なものにするという選択ができる。

以下の各項目の共有を検討してみて欲しい。

  • 人口構成別の給与の透明性と給与の公平性
  • エンゲージメントとインクルージョンのデータ(人口構成別)
  • 人口構成別の昇進率
  • 人口構成別の定着率

このような提言をすると、ジェネラルカウンシルは不安になるかもしれない。しかし、人材、文化、エクイティの分野でイノベーションを起こしている企業は、こうした透明性と説明責任の領域に踏み込んでいる。

さらに、これらのデータを公開することで誠実さを全面的に打ち出している組織は、ダイバーシティを中心とした帰属意識の高い文化の構築に向けて大きく前進している。

データの透明性とデータの説明責任は別物である

私たちはよく、何かを測定できるなら、それを変えることができると信じている。しかし、測定だけでは変化はやって来ない。測定可能な変化に対してステークホルダーに責任を持たせながら、適切なデータ要素を測定することが極めて重要だ。

これが営業ではどうなるのかを考えてみて欲しい。

営業チームは、収益目標の達成に貢献したかどうかで個人の業績を評価する。結果を出さなければ仕事を失うリスクがある。なぜなら失敗すればビジネスに悪影響を及ぼすからだ。

DEIでも同じように、業績評価の目標の一部として、四半期ごと、あるいは毎年、具体的な結果を出すことに責任を持つリーダーが出てくるだろう。だが残念ながら、何が起こったかを報告するだけでは、リーダーたちが結果に有意義な影響をもたらすプロセスを変えるためにさらに行動するようにはならない。

低い数値を基準にしても変化は起こらない

ダイバーシティの報告書では、自社の過去の指標、業界全体、同規模の企業、または地域全体(米国など)に対し、毎年のデータを基準とすることがよくある。このような方法で進捗を測定すると、少しずつの進歩が実際の成果よりも大きく見える。リーダーはこのデータを見て、自分たちは業界標準を満たしているということはできるが、業界の進歩率がごくわずかであれば、それはただ結果を改善する責任がなくなるだけだ。何十年もの間、企業はダイバーシティを正しく理解していなかったのに、なぜその標準以下の実績を基準にするのだろうか?

簡潔にいうと、低い実績を基準にするのはお粗末な行為だ。

基準を設けるなら、少なくとも、ダイバーシティとそのコミュニティに関して上位4分の1に入る成績を収めている企業を基準とすることで、真の意味での改善を目指すことだ。しかしこれによってまたハードルが上がり、リーダーにはより戦略的になることが求められる。

さらに重要なことは、企業は利用可能なタレントプールを(米国の労働統計局のデータや、人口構成や専攻分野別の卒業率を利用しながら)基準として、地理的、業界的、職種的に人材の数が少ない箇所を特定することだ。

例えば、コンピュータサイエンスを専攻した女性の卒業率は、ほとんどの企業における新入社員レベルのソフトウェアエンジニアリング職に就いている女性の割合を大幅に上回っている。

しかし、米国の労働統計局のデータでさえ、誰が雇用対象なのかに関する前提条件に依存しており、真に雇用可能な人々の全体像を除外してしまうという欠陥がある。このことから、これらの基準と地域の人口データを組み合わせれば、効果を示す別のデータセットとして利用することもできる。

もしハイテク企業が、組織内で現在起こっていることについてのデータだけでなく、システミックな偏見が、組織にアクセスできない多様な人材に対してどのような影響を与えているかを示すデータを公開すれば、そのような報告書が行動変革の動機となり、自分たちの組織の成果を向上させたいと考えている他の業界の読者にとって価値のあるものになるかもしれない。

編集部注:本稿の執筆者Fran Benjamin(フラン・ベンジャミン)氏はGood Works Consultingのマネージング・パートナー。Monique Cadle(モニーク・キャドル)氏は、Good Works Consultingの創立パートナーであり、Delfi Diagnosticsの人材担当VP。

画像クレジット:A-Digit / Getty Images

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(文:Fran Benjamin、Monique Cadle、翻訳:Dragonfly)

産総研が地震計データからコロナ禍における人間活動の観測に成功、経済・余暇活動の縮小を可視化

産業技術総合研究所(産総研)は、首都圏に設置された地震計のデータから、新型コロナウイルス感染症が感染拡大した時期に人の社会活動が低下したことを明らかにした。これにより、地震計は地震動だけでなく、人間活動のモニタリングにも応用できることが示された。

産総研活断層・火山研究部門地震災害予測研究グループの二宮啓研究員と、九州大学地球資源システム工学部門の辻健教授、池田達紀助教による研究チームは、首都圏地震観測網の101台の地震計で得られた4年分のデータから新型コロナ発生後の変動を調べた。調査では、観測点ごとに振動の強さを示すパワースペクトル密度(PSD。Power Spectral Density)を計算した。それにより、次のことがわかった。

101台の地震計の設置場所と池袋の観測点(E.IKBM)

101台の地震計の設置場所と池袋の観測点(E.IKBM)

2020年4月、1回目の緊急事態宣言が出されたとき、PSDがもっとも大きく低下した。緊急事態制限が解除されると、平日のPSDは回復し始めたものの、日曜日はしばらく低いままだった。Go Toトラベルキャンペーンが始まって、平日、日曜日ともに例年の水準に戻った。第3波の到来で、日曜日のPSDは再び減少したが、2回目の緊急事態宣言時は、平日の日中のPSDは減少しなかった。そして2回目の緊急事態宣言が解除される前から、平日、日曜日ともにPSDが増加に転じた。

つまり、最初の緊急事態宣言の直後は、経済活動はすぐに回復したものの日曜日は余暇活動を控える人が多く、Go Toトラベル中も日曜日は多くの人が余暇活動を自粛していたと想像される。しかし2回目の緊急事態宣言時には、新規感染者数が減少したことからPSDが増加し、社会意識に変化が表れたと産総研では推測している。

地震計が観測する振動は、地震のような大きな揺れの他、風や海の波などの自然現象による振動や人の活動によるものもある。自然の振動は1秒に1回程度とゆっくりなのに対して、人間の活動に由来するものは1秒あたりの振動数が多いのが特徴だ。そのような人為的な振動は、地震観測の際には不要なノイズとして除去されるのだが、これを逆に活用しようという、今回のような研究も各方面で行われているとのこと。

人の活動由来の振動は、交通機関や工場などさまざまな要素が混在しているため、振動源の特定が難しい。また、曜日や季節による変動があるため、そうした要素の影響を取り除かなければ詳細なPSDの変化が掴めない。この研究でも、2017年4月から2019年3月までのデータで曜日と時間帯別にPSDの季節変動を計算し、それをコロナ禍の期間のデータから差し引いている。

ただ人為的な振動は局所的なものなので、狭い範囲を観測することで振動源が特定できる。産総研ではそれを応用して、「振動情報を用いた防犯システムや交通量調査など、人為的な振動を利用したモニタリングや物理探査」を進めるとしている。

MovesはギグワーカーにUber、Lyft、DoorDash、Grubhubの株式を提供しようと取り組む

トロントを拠点とするギグエコノミーフィンテックのスタートアップMovesは、ギグワーカーらが所属する企業の株式を、ギグワーカーへの報酬として提供できるようにしたいと考えている。Moves Collectiveと名付けられた同サービス。第一弾として木曜日にはUberの株式を提供し、その後すぐにLyft、DoorDash、Grubhubの株式を提供する予定だとMovesのCEOであるMatt Spoke(マット・スポーク)氏は話している。

ギグワーカーたちが株主になれば、彼らが働くプラットフォームと彼ら自身の経済的なつながりをより強く感じてもらうことができるかもしれない、というのがMovesの考えである。さらにMoves Collectiveを通じて十分な数の労働者がこれら企業の株式を保有すれば、将来的には議決権を持つ集団を形成して企業の意思決定に実際に影響を与えることができるかもしれないと考えているのである。Movesによると、Moves Collectiveはすでにこれらの企業の「かなりの株式」を保有しており、そのすべてが議決権付きの普通株式だという。

この1年間、ギグエコノミーワーカーの劣悪な労働条件が労働者の抗議行動を引き起こし、カリフォルニア州、イリノイ州、マサチューセッツ州、ニュージャージー州、ニューヨーク州ではギグワーカーを従業員として見直し、ヘルスケアや休暇手当、有給病気休暇などの基本的な権利を与えようとする試みが行われてきた。Uber、Lyft、DoorDash、Instacartなどの企業は、カリフォルニア州で進行中の「Proposition(プロポジション) 22」をめぐる騒動に反撃し、マサチューセッツ州ではギグワーカーを独立した契約者として分類する提案を2022年11月の投票にかけるための連合体を結成している。

「ギグワーカーはギグエコノミーに膨大な価値をもたらしていますが、貢献した結果としての経済的リターンはまったく得られていません。私たちが解決しようとしているのは、ギグワーカーのみなさんが働いている企業の成功には、彼らが経済的に関与しているのだと感じられるようにすることです」とスポーク氏はTechCrunchに話している。

すでに同社のプラットフォームを利用しているギグワーカーは、Collectiveに登録して株式という形で報酬を受け取ることが可能だ(ギグワーカーはさまざまな企業からの金を追跡および管理し、毎月の支出口座や最大1000ドル(約11万4000円)までの即時ビジネスキャッシングを利用できる)。「3人の友人を紹介する」や「ユーザーアンケートに参加する」など一連のタスクをこなすことで、ギグワーカーは無料の株式や株式の一部を受け取ることができ、その株式はMovesが開設したユーザー自身の証券口座に入るという仕組みになっている。

「Moves Collective」という名の通り、長期的には莫大な数のギグワーカーを結集させて企業のガバナンス決定に反映させられるだけの声を生み出すことを目的としている同社。ギグワーカーの利益を確実に反映させるために、これら大手プラットフォームの年次株主総会で委任状資料の提出を提案する予定だとスポーク氏は話している。

ギグワーカーがMovesカードを使って買い物をするたびに蓄積されるインターチェンジレートがMovesの主な収益源となっており、またその収益がMovesからワーカーに還元される株式の原資となっている。

「新規顧客を獲得し、その顧客を維持するために、収益を効率的にトレードしていると言えるでしょう。ギグワーカーの当座預金の利用で我々が得た収益を商品に還元し、株式建ての報酬の資金を調達しているのです」とスポーク氏は説明する。

現時点では同プログラムは招待制になっており、株式報酬プログラムであるBumped Financialとの提携により株が蓄積されている。スポーク氏によるとMovesはInstacartの株購入を見据えて同社のIPOにも注目しているという。またFlexの配達員にはAmazonの株を、Shiptの作業員にはTargetの株をサポートすることも検討しているという。

アプリを使ったギグエコノミー企業はどこも「同じ問題」を抱えているとスポーク氏はいう。「ドライバーや作業員の離職率が非常に高く、作業をしてくれる人が定着しないのです。彼らは他のギグアプリに移るか、ギグエコノミーから完全に離れてしまうため、これらの企業は何千万ドル、何億ドルもの費用をかけて常に労働者を入れ替えているのです」。

参考:Uberがドライバーを取り戻すためにインセンティブとして2億5千万ドル(約285億円)を費やした結果、第2四半期に大規模な損失が発生

UberとLyftは株式公開前、ドライバーの定着率を高めて、労働者のロイヤルティを生み出す仕組みとしてドライバーに株式を発行することを検討したものの、規制上の問題が両社の真摯な取り組みを阻んだ。最終的に両社は一部のより活動的なドライバーに対して一度限りの現金を支給し、株式を購入するオプションを与えることにした。Uberはドライバーに向けて全体の3%にあたる普通株540万株を用意したが、ドライバーによって買い占められなかった場合は一般に提供すると伝えている。

参考までに書くが、株式公開時に8.6%の株式を保有していたUberの創業者兼CEOのTravis Kalanick(トラビス・カラニック)氏は、その持ち株で約50億ドル(約5691億円)を得ている。また5.2%の株式を保有していたAlphabetは約32億ドル(約3643億円)を獲得。当時、米国を拠点とするドライバーは、最大1万ドル(約114万円)相当の自社株を購入できる現金ボーナスを利用することができたのである。

ギグエコノミーに依存している企業が労働者にストックオプションを提供する際の規制は、非常に厳しいものとなっている。SEC Rule 701は、企業が従業員、コンサルタント、アドバイザーに報酬としての株式を発行する際に、詳細な財務記録を提出する必要がないことを認めているが、ギグカンパニーにはこの適用除外がうまく当てはまらない。2018年、SECは働き方の変化に適応するためにルールを拡張するとした場合の、可能な方法についてコメントを要求した。Uberは締め切り日を過ぎたものの回答を提出し「パートナーに会社の成長を共有することで、パートナーとその先の世代の収入と貯蓄の機会を強化」できようにするためにSECがルールを改定するよう要求している。

現在の法律では、UberやLyftがドライバーに株式でインセンティブを与えようとすれば、雇用者のテリトリーを侵害することになりかねない。しかし、UberやLyftのこれまでの姿勢を見ると、このようなサービスは将来的に外部に委託することになるのではないだろうか。

「Uber、Lyft、DoorDash、Instacartの4社がProp 22のような課題で一致団結し、新たな規制に反対するロビー活動を行っていることもあり、彼らはこれが業界にとって全般的にプラスになるとは考えていないでしょう」とスポーク氏。「最終的に我々は彼らと経済効果を共有する方法を模索することになると思います。1年後、2年後には、弊社が提供できる具体的な利益についてUberと話し合い、『Uber株を発行されたドライバーは、より長く働く可能性がX%高いためこの資金調達に一部参加すべきだ』などと提案することになるでしょう」。

Movesによると、現在全米50州で約1万人のユーザーが同社のプラットフォームを利用しているという。ライドヘイリング業界がパンデミックで大打撃を受ける直前の2020年2月に設立され、2021年4月から市場に進出した同社。来年前半には再び資金調達を開始する予定だが、スポーク氏によるとMovesは事業のシナリオにおけるユニットエコノミクスを洗練させ、Moves Collectiveのユースケースが出来上がるまでは、資金調達を行いたくないと考えている。

「Uberがドライバーを大切にしていないわけではないのですが、ドライバーは彼らの主要なステークホルダーではありません」とスポーク氏。「Uberの主なステークホルダーは消費者です。彼らは消費者側の市場価値を革新するために全力を尽くしており、労働者は後回しにされていることが多いのです」。

画像クレジット:Moves

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

中国との関係は競争ではない、戦争だ。書評「The Wires of War: Technology and the Global Struggle for Power」

ここしばらく、自由市場経済に取り組んでいるように見えた中国だったが、2021年、その幻想は完全に打ち砕かれた。3年前、憲法から自らの任期の制限を撤廃した習近平(シュウ・キンペイ)国家主席は、自国のハイテク企業の権限を突然奪い、今までよりも厳しいメディア検閲を行うように指示した(任期制限の撤廃については、当時NPR[旧称ナショナル・パブリック・ラジオ]が指摘したように、中国はいずれにせよ「何千年もの間、絶対君主によって支配されてきた」国であり、任期制限は1980年代に初めて導入されたものも、短期間の実験的なものであった)。

ブルッキングス研究所の中国戦略イニシアチブ共同議長であり、スタンフォード大学サイバーポリシーセンターの元シニアアドバイザー、Google(グーグル)の元ニュースポリシーリード、さらには米国大統領選挙運動中に米国運輸長官のPete Buttigieg(ピート・ブティジェッジ)氏の顧問を務めたJacob Helberg(ジェイコブ・ヘルバーグ)氏は、米国、特にシリコンバレーは、習近平国家主席の権力の強化にもっと注意を払う必要があると指摘している。ヘルバーグ氏は「The Wires of War:Technology and the Global Struggle for Power(戦争への引き金:テクノロジーと世界的権力闘争)」と題された新著の中で、中国の「テクノ全体主義」体制が中国国民(本の中では「最初の犠牲者(first victims)」と表現されている)に与える影響、そしてインターネットのソフトウェア / ハードウェアをさらにコントロールしようとしている中国の取り組みが、なぜ米国やその他の民主主義諸国にとって、確かに現存し、急速に拡大する危機なのかを説明している。

ヘルバーグ氏は、米国の民間企業と米国政府が一体となって抜本的な対策を講じなければ、2020年中国政府からサイバー攻撃という脅しを受けたと推測され、2000万人規模の都市で停電が発生したインドと同じことが米国でも起こると話す。現地時間10月13日、TechCrunchはヘルバーグ氏にチャットによる取材を申し込んだ。以下は要約であるが、興味があれば詳細をこちらで確認して欲しい。

TC(TechCrunch):あなたは、2016年の米国大統領選挙の直前に、Googleでグローバルなニュースポリシーを扱う職に就いていますね。当時、ロシアとその疑惑のキャンペーンに注目が集まっていたことを考えると、米露関係についての本ではなかったことに驚きました。

JH(ジェイコブ・ヘルバーグ):この「グレー」の戦争には、実際には2つの戦線があります。まず、人々が見るものをコントロールするというフロントエンドのソフトウェアの戦線です。ここにはさまざまなプレイヤーが存在しますが、ロシアは他国への干渉という領域で最初に動きを見せた国の1つです。そして、物理的なインターネットとその物理的なインフラに焦点を当てたバックエンドのハードウェアの戦線があります。本書が主に中国に焦点を当てることになった理由の1つは、この戦争で最も決定的な要素は、物理的なインターネットインフラをコントロールすることにあるからです。インターネットのインフラを支配すれば、その上で動くあらゆるものをコントロールしたり、危害を加えたりすることができます。バックエンドをコントロールすれば、フロントエンドも併せてコントロールすることが可能です。だからこそ、私たちはバックエンドにもっと注意を払うべきなのです。

バックエンドとは、携帯電話、衛星、光ファイバーケーブル、5Gネットワーク、人工知能などですね?

人工知能もソフトウェアとハードウェアの組み合わせなので興味深いところですが、基本的には光ファイバーケーブル、5G衛星、低軌道衛星などです。

この本では、中国が2020年インドをサイバー攻撃したとされる事件が早速取り上げられています。この事件では、列車や株式市場が停止し、病院は非常用発電機に頼らざるを得なくなりました。米国にも、私たちが中国による攻撃だとは気づかなかったサイバー攻撃があったのでしょうか?

グレーゾーン戦争の特徴、つまり米国政府がこれほどまでに新たなグレーゾーン戦術に力を注いでいる理由の1つは、(攻撃者の)帰属(アトリビューション)を明らかにすることが非常に難しいという点にあります。米国では民間企業がインターネットの多くを運営しています。中国とは異なり、米国の民間企業は政府から完全に分離されています。このような民営化されたシステムにより、民間企業には、市場的にも法的にも、サイバーセキュリティ侵害を過少に報告する一定の動機が存在します。サイバーセキュリティ侵害を受けた企業は、被害者であると同時に、場合によっては過失と見做され責任を問われる可能性もあります。そのため、企業はサイバーセキュリティ侵害の報告に非常に慎重になることがあります。

また、(攻撃者の)帰属を明らかにすることが非常に難しい場合もあります。米国でもインドと同様のサイバー攻撃が行われた可能性がないわけではありません。米国もかなりの規模のサイバー攻撃を受けていることは事実であり、多くの情報機関が米国のエネルギーグリッドが無傷でいられるかどうかを懸念しています。人事管理局がハッキングされたことは明白ですが、これも重要な問題です。というのも、中国は現在、極秘情報にアクセスできる多くの政府職員のリストを持っているということになるからです。サイバー攻撃は数え上げるときりがありません。

あなたはインドのハッキングは米国への警告だったと考えていますね?

インドへのハッキングが歴史的に重要な意味をもつのは、もしこのグレーゾーン戦争が激化すれば、独立戦争以来初めて、米国が他国の攻撃者によって物理的に破壊されるような戦争になる可能性がある、という最初のシグナル(危険信号)だったからです。内戦だった南北戦争や9.11を除けば、外国勢力が実際に米国に上陸して大量破壊を行ったことはありませんでした。しかしながら、今回のインドへのサイバー攻撃を考えると、中国との関係が悪化した場合には(米国内の)原子力発電所の安全性を確認しなければならない、というシナリオも考えられますね。

こういった脅威に私たちはどのように対応すべきですか?米国政府は、米国内にインフラを構築しようとしているHuawei(ファーウェイ)に対し、非常に強い姿勢で臨んでいます。あなたは、Zoom(ズーム)のような企業には多くの中国人従業員が在籍し、中国の諜報機関に(米国の情報が)さらされる可能性があると指摘していますね。どこで線引きをすべきですか?(これらの問題に対応しながら)企業の権利を保護するには、政府はどうすれば良いでしょうか?

特に中国が台湾に侵攻するリスクが迫る中、これは私たちが現在直面している危機的局面における非常に重要な問題です。私は米国政府が対米外国投資委員会(CFIUS)の枠組みを構築することを強く支持しています。現在、米国政府には国家安全保障を理由として外国からのインバウンド投資を審査し、(危機を)阻止することができる枠組みがあります。この考え方の基本に則り、アウトバウンド投資にも同じ枠組みを適用すると良いでしょう。米国政府が国家安全保障に基づき、米国から米国外への投資、特に中国への投資を審査する手段をもつ、ということです。ここまでの話からもわかるように、米国企業が中国に何十億、何千億ドル(日本円では何千億円、何十兆円)もの資金を投入すれば、時として深刻な問題を引き起こす可能性があります。

中国に進出し続ける企業がもつ経済的なインセンティブ(動機)を考慮すると、アウトバウンド投資への枠組みはどの程度現実的だと思われますか?

私の提案に類似した、アウトバウンド投資への枠組みを目指す法案がすでに議会で検討されています。ですから、このアイデアが実現する日もそう遠くはないと思います。この問題が差し迫ったものになり、議会で優先的に審議され、大統領に署名してもらうために必要な支持を得られるのはいつなのか、という点については、実際の危機というきっかけが必要なのかもしれません。(私たちがこれまで観てきたように)残念ながら、ワシントンでは実際に危機が起こって初めて多くのことが決定されるからです。

米国の銃規制のように、イエスでもありノーでもある、ということですね。あなたが、米国vs中国の競争であるというアイデアを捨て、この問題を(戦争として)提起したことは興味深いと思います。(米国、中国間には)これまでルールがあったかのように見えたとしても、実際には相互で守るべきルールが存在しない、ということですね?

競争には負けても良いという意味が内包されます。競争には、勝つか負けるかという余裕があるからです。商業的にはドイツや日本と常に競争していますが、トヨタがゼネラルモーターズよりも多くの車を販売していても、実際にはそれほど大きな問題ではありません。それが市場であり、お互いが守るべきルールに基づいて、同じ土俵で活動しているからです。一方、現在の中国との関係において「戦争」という言葉がはるかに正確で適切な表現である理由は、これが政治的闘争であり、その結果が私たちの社会システムの政治的な存続に関わるからです。また、これは「戦争」なので、これに打ち勝つために優先順位を上げ、十分な決意と緊急性をもって対処する必要がある、ということが理解しやすくなるというのもその理由です。

もう1つの理由は、戦争であれば、結果を出すために短期的なコストを負担することもできるという点にあります。第二次世界大戦では、ゼネラルモーターズが戦車や飛行機を製造し、国中が動員されました。Apple(アップル)に空母を作れとは言いませんが、私たちはサプライチェーンを中国から中国国外に移動する際にかかる短期的コストを真剣に考え始める必要があります。多額の費用がかかり、手間もかかる難しい問題ですが、サプライチェーンが利用できなくなることで生じる潜在的なコストは莫大です。手遅れになる前に労力やエネルギー、時間を費やして移動を実現する価値があります。その方がコストもかかりません。

あなたは本の中で、このように国家安全保障を目的として経済外交を中断すれば、冷戦時代に戻ると指摘したうえで、アウトバウンド投資へのCFIUSプログラムの適用と、すべてのサプライチェーンを中国国外に移すことを提案しています。民間企業が中国を切り捨てるために、あるいは巨大な市場機会としての中国への関心を減らすために、他にどのようなインセンティブが必要だとお考えですか?

過去に成功したプログラムの多くは、要は「アメとムチ」です。私は中国への機密性の高い投資を行う投資家や企業に一定の罰則を適用する一方で、米国や民主主義にリスクを及ぼさない他国との取引などの行動にインセンティブを与えるという組み合わせであれば、おそらく成功し、経済界の共感を得ることができると思います。

米国が戦争をしているのは権威主義的な中国政府であって、中国の人々ではないという違いを指摘していますね。大変残念なことに、この指摘が伝わっていない人もいるようです。

「グレーゾーン戦争」について語るとき、さらに中国との問題について国家的な議論をするときには「これは中国国民や中国文化に対するものではなく、中国の政治体制や中国共産党に対するものだ」と繰り返す価値はあると思います。

中国との関係において、私たちが正しいことをしているとする理由の1つは、最初の犠牲者、つまり中国共産党によって最も苦しんでいる人々が中国国民であるという事実です。三等国民として扱われているウイグル人やチベット人、政治的反体制派の人々も中国国民であることを忘れてはいけません。また、中国国営のニュースメディアは「中国に対して強硬な態度をとることは中国に対する人種差別である」というストーリーを流布しようとすることが多々あります。これも覚えておく必要があります。

画像クレジット:Simon & Schuster

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(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)

Rivianが有害な「ボーイズクラブ文化」で女性の元副社長に性差別訴訟を起こされる

このほどIPOを申請した電気自動車メーカーのRivian(リビアン)が、元営業・マーケティング担当副社長から性差別の疑いで訴えられた。

この訴訟では、2020年11月にRivianに入社する前にJaguar Land Rover(ジャガー・ランドローバー)やAston Martin(アストン・マーティン)で長い職歴を持っていた元営業・マーケティング担当のLaura Schwab(ローラ・シュワブ)氏が、同社の人事部に性差別を報告した後に解雇された、としている。米国時間11月4日にオレンジ郡のカリフォルニア高等裁判所に訴状が提出された。

Rivianの広報担当者はTechCrunchに対し、株式公開を控えた静粛期間にあるため、コメントは出せないと話した。

シュワブ氏は、米仲裁協会(AAA)に主張の声明を提出し、Mediumに掲載されたブログ記事の中で自身の主張を述べている。TechCrunchが閲覧したAAAの声明では、同社の上層部における「有害な兄弟文化」について述べられている。この訴訟では、シュワブ氏は問題を指摘しようとしても上司に度々無視されていたと主張している。また、男性の同僚が出席する会議からもよく排除され、シュワブ氏のチームに関する決定は同氏の意見を無視して行われていたと、声明には書かれている。また、AAAに出した声明によると「Rivianの誤解を招くような公表や欠陥のあるビジネス慣行」に関する彼女の懸念は却下されたという。

シュワブ氏が「ボーイズクラブ文化と、経営幹部から受けていた性差別」について人事部に話したところ、Rivianは突然彼女を解雇した、と声明にはある。

ブログの中で、シュワブ氏は次のように書いている。

Rivianは自社文化を公に自慢しています。ですから、私が入社してすぐに、女性を疎外し、会社のミスを助長するような有害な兄弟文化を経験したときは、痛烈なショックを受けました。上司からの性差別「ボーイズクラブ」文化、そしてそれが私や私のチーム、会社に与えている影響について、私は人事部に懸念を示しました。その2日後、上司は私を解雇しました。

この訴訟は、Amazon(アマゾン)の支援を受けているRivianが、2021年最も期待されている上場の1つを行う準備をしている中で起こされた。規制当局に提出された直近の書類によると、Rivianは新規株式公開で最大84億ドル(約9560億円)の資金調達を計画している。同社は、1億3500万株を57〜62ドル(約6480〜7055円)の価格で提供する予定だ。また、引受人は2025万株まで追加購入できるオプションを持っている。引受人がこのオプションを行使した場合、Rivianは最大で96億ドル(約1兆925億円)を調達することになる。

発行済み株式数に基づくと、その市場評価額は約530億ドル(約6兆320億円)になる。従業員のストックオプションやその他の制限付き株式を考慮すると、評価額は600億ドル(約6兆8290億円)にもなる。同社は10月1日に米国での上場を申請した。

画像クレジット:Kirsten Korosec

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi)

政治的な偽情報がケニアのTwitterトレンドトピックを覆う

ケニアのUhuru Kenyatta(ウフル・ケニヤッタ)大統領がオフショアのタックスヘイブンに資産を秘密裏に保有していることが明らかになった直後、Odanga Madung(オダンガ・マドゥン)氏はTwitter(ツイッター)上で奇妙なことに気づいた。ケニヤッタ大統領が密かにタックスシェルタースキームを利用しているという決定的な情報にもかかわらず、ケニアのツイッターでは、苦境に立たされた大統領を擁護する話題が流布しているのだ。

ケニア大統領の隠し口座は「パンドラ文書」の中で明らかになった秘密の1つにすぎない。同文書は、世界のリーダーや有名人、億万長者が、パナマや英領ヴァージン諸島などに隠している財産を詳述したもので、約1200万件が漏洩した。

いずれもMozilla Tech and Societyのフェローであるマドゥン氏とそのサポートリサーチャーであるBrian Obilo(ブライアン・オビロ)氏は新しい調査で、パンドラ文書発覚の直後に、ネットの政治的プロパガンダが同国の情報の空白をどう埋めたかを明らかにした。

「これは、ケニアにおけるTwitterのプラットフォームに非常に広く見られる問題です」とマドゥン氏はTechCrunchの取材に対し答えた。

2人は、TwitterのFirehose APIを利用して、パンドラ文書の公開後、10月3〜10日に送信された8331件のツイートを分析した。その結果「#offshoreaccountfacts」と「#phonyleaks」という2つのハッシュタグが発見された。これらのハッシュタグは、流出した財務情報に含まれる正当な暴露を妨害する意図があり、同期間中、ケニアのトレンドトピックとして急浮上した。

「政府と大統領が圧力を受けるなか、ネットで怒りが高まり、反論作戦が実行され、Twitter上に強い味方を見つけました」とマドゥン氏は書いている。「その結果、歪んだ見方が勢いを増し始めました。そこでは、ケニアの人々が、パンドラ文書の決定的な調査結果に対してではなく、ケニヤッタ大統領が不正行為をしたことに対して憤慨しているように見せています」。

2人の分析によると、このトレンドは自然発生的なものとは程遠い。2人は、関連するハッシュタグを繰り返しツイートし、喧伝するアカウントを多数発見した。その内容は、ケニヤッタ氏の隠された資産に関する情報を隠蔽し、その行為がいかなる法律にも違反していないことを主張し、オフショアでの保有を賢明な財務的行動であると擁護するなど、ケニヤッタ氏の容疑を晴らそうとするものだ。

マドゥン氏が過去の調査と照合した結果、真実ではないコンテンツをアップロードしたアカウントが、ケニアの政府支持派周辺のプロパガンダを流していることが判明した。

「ここで重要なのは、これらのコンテンツの多くが明確な嘘ではなかったということです」とマドゥン氏は書いている。「これは、プロパガンダと偽情報を組み合わせた政治色のある偽りの草の根運動です。特に、ケニア人の多くがケニヤッタ大統領を支持し、パンドラ文書に不信感を抱いているというコンセンサスを捏造することを目的としていました」。

キャンペーンの手法は洗練されたものではなかったが、組織的かつ効率的だった。同じ画像や言葉遣いを繰り返したり、有名人の名前を頻繁に使ったりしていたため、アカウントの特定は容易だった。それら同士の関連性が強かったため、2人はノイズを突破して、Twitter上ではっきりとわかる複数のトレンドトピックを識別することができた。

偽りの草の根運動によるキャンペーンの多くは、真実を曲げて伝えることを目的としているが、それらの主催者は情報の捏造も躊躇しなかった。例えば、ナイロビ在住の経済学者Reginald Kadzutu(レジナルド・カズツ)氏がBBCのインタビューでケニヤッタ大統領を擁護しているように見える画像があるが、そのインタビューは実際には行われていない。画像は偽物だ。

Twitterは、マドゥン氏からの通報を受け、230以上のアカウントに対し、プラットフォーム操作とスパムに関するポリシー違反として措置を取った。

「Twitterのユニークでオープンな性質は、このような調査を後押しします」とTwitterの広報担当者はTechCrunchに話した。また、TwitterはAIと人間のモデレーターを組み合わせ、プラットフォーム上の会話を操作しようとする試みを検出しているとも述べた。

マドゥン氏によると、ケニアの情報エコシステムは、Twitterを翻弄し続ける、確立した偽情報産業に悩まされている。「偽情報は、他の産業と同じように、お金や明確な成果を求める産業です」とマドゥン氏はTechCrunchに語った。「多くの点でそうしたキャンペーンは通常の機関と非常によく似ています」。

この業界には、コンテンツをTwitterのトレンドモジュールにまで増幅させ、結果を出す確立された方法がある。2人のインタビューに応じたあるTwitterユーザーは、過去5年間、ケニアの政党の話題など、さまざまなコンテンツをTwitterのトレンドに載せるために金をもらっていたと説明した。

さらにマドゥン氏はインタビューを通じ、こうしたキャンペーンの中には、自分たちのメッセージを宣伝するために認証済みのユーザーを雇ったり、報酬を支払ったりして、Twitterのトレンドアルゴリズムの下で、さらにトレンドを押し上げようとしていることを知った。

この種の仕事を探している人は、国内のさまざまな政治キャンペーンのために人材を募集しているWhatsApp(ワッツアップ)グループを見つけることができる。そうしたグループは偽情報活動の司令塔としての役割を果たしており、メッセージを伝達し、そのメッセージができるだけ効果的になるようにタイミングを調整している。

「私たちが話を聞いたインフルエンサーの1人は、『ツイッターは簡単だ』と話していた」とマドゥン氏は書いている。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Nariko Mizoguchi

米国がスパイウェア「Pegasus」問題でセキュリティ企業NSOグループとの取引を禁止

監視ソフトウェア開発のNSO Groupは、今後非常に厳しい道のりを歩むことになるかもしれない。米商務省は、NSO Groupをエンティティリスト(輸出規制対象リスト)に追加し、同社との取引を事実上禁止した。これにより、米国企業は明確な許可を得ない限り、NSOと取引できなくなった。この規則では、輸出でのライセンスの例外は認められておらず、米国は審査を拒否することが基本となっているため、取引はほぼあり得ない。

NSOとイスラエル企業のCandiru(こちらもエンティティリストに入っている)は、権威主義政府による敵対的なスパイ活動を可能にしたとして非難されている。これらの企業はNSOのPegasusのようなスパイウェアを「権威主義的な政府」に提供し、そうした政府は反体制派を潰そうと活動家やジャーナリスト、その他の批判者を追跡するのにスパイウェアを使った、とされている。商務省によると、今回の措置はバイデン・ハリス政権が人権を米国の外交政策の「中心」に据えようとしていることの一環だという。

今回、ハッキングツールの販売で告発されたロシア企業Positive TechnologiesとシンガポールのComputer Security Initiative Consultancyにも取引禁止措置が適用される。

EngadgetはNSOグループにコメントを求めたが、同社の公式メディア連絡先ではエラーが表示された。同社は、殺害されたジャーナリストJamal Khashoggi(ジャマル・カショギ)氏を標的にするのにペガサスが使用されたことを否定するなど、過去に悪用を可能にしたという主張を強く否定してきた。NSOは、過去の不正行為のためにアクセスを遮断し、さらには名誉毀損を専門とする弁護士を雇いさえした。この弁護士は調査報道を行うジャーナリストとそのパートナーが誤った解釈と根拠のない仮定をしていると非難した。

しかし商務省は、NSOの行動の証拠を持っていると主張している。正味の影響は同じだ。NSOは必ずしも絶望的ではない。しかし、禁止リストに載っているHuawei(ファーウェイ)のように、これまで利用していた米国のパートナーにアクセスできず、事業運営に苦戦することになるかもしれない。

米国東部時間11月3日12時更新:NSO Groupの広報担当者がEngadgetに語ったところによると、同社は今回の決定に「落胆」しており、同社のツールは「テロや犯罪を防ぐ」ことで米国に貢献していると主張している。NSOは、禁止措置の撤回を求め「世界で最も厳格な」人権およびコンプライアンスシステムを有していることを改めて主張した。声明の全文は以下のとおりだ。

NSO Groupの技術がテロや犯罪を防止することで米国の国家安全保障上の利益や政策を支えていることを考えると、今回の決定には失望しており、この決定が取り消されるよう働きかけていきます。深く共有する米国の価値観に基づいた、世界で最も厳格なコンプライアンスおよび人権プログラムをNSO Groupがいかに有しているか、そしてこれによりすでに当社製品を悪用した政府機関との接触を複数回解除していることについて、全容を明らかにすることを楽しみにしています。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のJon FingasはEngadgetの寄稿者。

画像クレジット:JOEL SAGET / Contributor

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(文:Jon Fingas、翻訳:Nariko Mizoguchi

東京大学が街路を歩行者専用にすると小売店と飲食店の売上げが向上することを証明

提供メニューの「仕込み」を発注できる飲⾷店向けアプリ「シコメル」を運営するシコメルフードテックが1.5億円調達
東京大学が街路を歩行者専用にすると小売店と飲食店の売上げが向上することを証明

オープンストリートマップ(OSM)から取得した歩行者空間の時系列変化の例。バルセロナ市とヴァジャドリッド市の2012年12月における歩行者空間の分布

東京大学先端科学技術研究センターは10月29日、街路を歩行者空間化することで、街路に立地する小売店や飲食店の売上げが、非歩行者空間に立地する事業者に比べて売上げが高くなることを定量的に示す研究結果を発表した。ウィズコロナに対応した街づくりにおいて、パンデミックへの備えと経済活動とを両立させる街路の有効活用といった政策立案や住民との合意形成に、強い根拠になりうるとしている。

この研究は、東京大学先端科学技術研究センターの吉村有司特任准教授、熊越祐介特任研究員(研究当時)、小泉秀樹教授のグループが、マサチューセッツ工科大学センセーブルシティラボのセバスティアーノ・ミラルド、ポスドク研究員、パオロ・サンティ主任科学研究員、カルロ・ラッティ教授、アーバン・サステイナブル・ラボのイーチュン・ファン博士課程、スーチー・セン教授、ビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行(BBVA)のホアン・ムリーリョ氏らとの共同で行われた。

研究対象となったのはスペイン全土。2010年から2012年にかけて、毎月、歩行者空間の分布情報を取得、またBBVAからは、歩行者空間周辺に立地する事業者の匿名化された取引情報の提供を受けて調査が行われた。車が通れない歩行者と自転車専用の空間(歩行者空間)の周辺に立地した小売店や飲食店の売上げを、そうでない地域の小売店、飲食店と比較したほか、非歩行者空間から歩行者空間へと街路の用途変更が行われた地区での「周辺環境に及ぼす経済的影響」が調査された。その結果、どちらも歩行者空間での売上げが向上することが判明した。

以前から、生活必需品の購入は歩行者空間であるか否かはあまり影響しないが、ランチやディナー、お茶を飲むといった体験型の消費活動は「歩行者中心で編成される街路」が好まれるという推測はあったが、それがデータとサイエンスにより裏付けされる形となった。

【コラム】国家による「インターネット遮断」が政治的な武器に、今こそ武装解除すべきだ

21カ国の権威主義的な政府は、2021年に入ってから少なくとも50回は意図的にインターネットサービスを停止しており、この問題はさらに悪化することが予想されている。ベネズエラでは選挙が行われ、キューバでは抗議活動が行われているが、政府にとってデジタルでの自由を制限することで反対意見を封じ込めることが容易になっており、その方法もますます大胆になってきている。

インターネットを遮断することは、スイッチを入れるだけで簡単にできてしまう。2011年にはホスニ・ムバラク政権下のエジプトでこの方法がとられ、その10年後にはミャンマーで毎日のようにインターネットが遮断される状態が数カ月続き、何十万人もの人々からコミュニケーションの手段を奪い、同国のGDPを2.5%減少させたと言われている。今週、スーダンでは、軍事クーデターが続く中、市民がインターネットへのアクセスに支障をきたしている。

しかし、ほとんどの政府が、微妙な姿勢をとっている。

イラン政府は「緑の運動」が起こった2009年にいち早くウェブサイトをブロックした。また、チュニジアのように、2021年の説明責任の強化を求める抗議活動の中で、特定のウェブサイトのみをブロックした国もある。最近では、政府がインターネットサービスプロバイダをコントロールすることで、特定のドメインを使い物にならない速度まで「スロットル」、つまり減速させるケースが増えている。例えば、ロシアでは最近、野党のAlexei Navalny(アレクセイ・ナヴァルニー)氏に関する「好ましくない」コンテンツの削除を拒否したTwitter(ツイッター)に対してスロットルをかけた。

各国政府は、インターネットへのアクセスを制限する理由についていくつか挙げている。国家の安全保障や、デモの際の暴力への懸念などがその理由として多い。しかし、人々の生活の多くがオンラインで行われるようになった今、政府がインターネットへのアクセスを制限することは、安全、自由、幸福に対する重大な脅威となる。

インターネットが国境を越えたグローバルなネットワークとして発展してきたことは、情報を発見する新しい方法や組織化する新しい手段を提供し、人間の自由に貢献してきた。しかし、真にグローバルで開かれたインターネットに対して、驚くほど多くの政府が反対しており、私たちの生活の多くの側面がオンラインに移行するにつれて、自由がますます損なわれていく危険性があるのだ。

意図的な遮断の問題は深刻化している。国連の特別報告者であるClement Voule(クレメント・ブール)氏は最近、遮断がさらに悪化し、広範囲に及んでいると警告している。インターネットの遮断は、政府が国際社会の怒りを買うことなく反対意見を封じ込め、国民を統制するための主要な手段として、ますます利用されるようになっている。

インターネットの遮断は、通信手段の制限にとどまらず、商業や貿易の停止による経済の停滞、学校へのアクセスの妨げ、人命の危険など、さまざまな影響を及ぼす。しかし、スロットリングのような秘密裏に行われる妨害技術が一般的になるにつれ、遮断の検知はより困難になってきている。ただ、インターネットが複雑化しているため、政府が国民のアクセスを制限したときに何が起こっているのかを判断するのは難しい。そもそも目に見えないものを非難することは不可能でもある。

部分的なインターネットの遮断であっても、それを記録することは、この問題を世界的に解決するための重要な第一歩となる。いかなる政府も、国際社会に知られることなくインターネットを遮断することはできないはずだ。Jigsaw(ジグソー)は、Access Now(アクセス・ナウ)、Censored Planet(センサード・プラネット)、ネットワーク干渉公開観測所(OONI)などの研究者と協力して、情報を公開し、理解を深め、遮断の影響を軽減することを目指している。

インターネットの遮断による影響を軽減するためには、さまざまな手段がある。メッシュネットワーク、仮想プライベートネットワーク(VPN)、そして共有プロキシサーバーを使えば、インターネットが停止している間、人々がオープンウェブに接続するための手段を提供してくれる。また、インターネット全体の標準規格を導入することで、ドメインレベルでのスロットルを難しくすることも可能だ。

しかし、技術は解決策の一部に過ぎない。将来的なシャットダウンを防ぐためには、政治的な行動が必要であり、国際社会の監視のもと、そうした行動自体のコストを高める必要がある。

105カ国、240以上の団体で構成される「#KeepItOn」運動のように、インターネットの遮断を強調する草の根活動は、将来の遮断を防ぐための支持活動、技術支援、法的介入などを行っている。

民主主義政府も団結して行動すべきだ。

世界で最も技術的に進んでいる民主主義国が、T-12や日米豪印戦略対話(Quad)といったグループで技術問題に関する多国間の調整を正式に行う際には、インターネットの遮断をその議題の重要な主軸として優先させるべきだ。経済協力開発機構(OECD)を通じ、米国および志を同じくする国々は、オンラインの自由を約束する35の民主主義国で織りなすフリーダム・オンライン連合の活動を基盤とし、脅威の技術的側面の理解や、技術的および政策的対応を構築するための資金調達を強化することができるはずだ。また、将来的な遮断の際には、連合として非難を表明し、国際人権法上の義務に違反している国に制裁を加えるための「レッドライン」を明確にすることもできるはずだ。

このような課題はあるが、自由で開かれたインターネットを求める声を上げるのは、民主主義国にかかっている。そうして初めて、誰もがアクセスできるインターネットという約束が果たされるだろう。

編集部注:本稿の執筆者Scott Carpenter(スコット・カーペンター)氏はJigsawのPolicy and International Engagementのディレクター。Google以前は、Washington Institute for Near East PolicyのKeston Family Fellowや、民主主義・人権局の米国国務副次官補を務めていた。

画像クレジット:Jonathan Kantor / Getty Images

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(文:Scott Carpenter、翻訳:Akihito Mizukoshi)

【コラム】オンラインプラットフォームには子供たちを危害から守る責任がある

Facebook(フェイスブック)の内部告発者であるFrances Haugen(フランセス・ハウゲン)氏による、Instagram(インスタグラム)が10代の少女たちに与える影響に関するメッセージは明確だった。Facebookの調査によると、英国のティーンエージャーの13%が、Instagramが自殺の考えを誘発したと回答し、女性ティーンエージャーの17%がInstagramは摂食障害を悪化させると語った。

こうした数値は、しかし、ネットを利用するティーンエージャーの安全全般にかかわる問題の一部でしかない。

ある調査によると、 50万人以上の性犯罪者が日々インターネットで活動していると推計されている。2020年には2170万件の児童の性的搾取が、全米行方不明・被搾取児童センターのホットラインに報告された。何者かがインターネットを通じて搾取を目的に児童と連絡を取った際に発行されるオンライン誘惑レポートは前年より97%以上増加した。

オンライン性犯罪者の報告は増加しているが、ネット上の搾取行為の歴史はNetscape(ネットスケープ)に遡る。

わが家に最初のパソコンが来たのは1999年だった。私はNeopets(ネオペッツ)やGaia Online(ガイアオンライン)などのゲーミングプラットフォームを使い始めた。その後すぐにMyspace(マイスペース)とTumblr(タンブラー)で自分の考えを投稿したり他のユーザーと交流したりするようになった。オンライン世界が拡大すると、私はプリティーンを偽る成人男性と遭遇した。17歳の少年と「つきあい」始めたのは、私が12歳の時だった。もちろん誰にもこのことは話さなかったが、主としてそれは恥ずかしかったからだ。自分が「育成(grooming)」されていることなど知らなかった。性的暴力に関わる仕事を私自身が始めるまで、そんな言葉が使われるのを聞いたこともなかった。

育成は狡猾で、馴染みのないティーンエージャーは気づかない。育成によって信頼と精神的つながりを構築することで児童を操り、利用し、虐待できるようにする。その行為とは、たとえば年長のティーンエージャーが児童やティーンエージャーにウェブカム撮影を頼み、徐々に回転ポーズをとらせたり服を「可愛らしい」ものに着替えさせることや、デジタル「友達」がサイバーセックスを強要することだ。時として性犯罪者は、年齢を偽ることで写真や性的履歴などの個人情報を入手し、その情報を自らの享楽の武器にすることもある。

つい最近になって私は、自分のCSAM(児童席的虐待コンテンツ)がインターネットに出回っていることに気づいた。私の動画は今でも何者かの携帯電話やハードディスクでほこりを被っているかもしれない。そしてある日、Discord(ディスコード)やTelegram(テレグラム)のプライベートチャンネルでシェアされるのかもしれない。

インターネット上のティーンガールとしての個人的経験は、私が非営利のオンライン身元調査サイトを構築し、誰もが自分の話している相手に暴力行為歴があるかどうかを、理想的には対面する前に、調べられるようにするきっかけの1つだ。最近当サイトでは、最低13歳のユーザーから当サイトの公開情報データベースを利用できるようにすることを決定した。子どもたちがネット上で虐待されるのを完全に防ぐことはできないかもしれないが、少なくともオンラインで出会う人物に悪い行為の履歴があるかどうかを知るためのツールとテクノロジーで武装させることはできる。

もちろん、身元調査は安全を守る兵器の1つにすぎない。人は自分の名前や身元を偽ることがよくある。子どもが育成される時、あるいは大人が子どもを虐待する時、犯罪者は往々にして匿名で孤立して秘密裏に行動する。

オンラインで待ち受ける危険を避けるよう、子どもたちを教育することが重要である理由はそこにある。love bombing(ラブ・ボミング / 大げさな愛情攻撃)や極端な嫉妬、要求の限度を広げるといった早期の赤い旗に気づかせる教育も必要になる。他にも私たちは、若者たちに健全で安全で合意に基づく関係とは何かを、赤ではなく「緑の旗」とともに伝えることもできる。

子どもたちの教育に取り入れられる実用的スキルにもさまざまな種類がある。シェアする写真や誰のフォローリクエストを承認すべきかを慎重に選び、オンラインで知り合った人物と現実世界で会う時には大人を連れて行くことを教えるべきだ。

周囲の大人たちが、オンライン出会いやインターネットでの会話の危険性について、常に率直に話し合っていれば、子どもたちはリスクを認識する方法を学習する。これは深刻な心的外傷を防ぐ上で大きな役割を果たす可能性がある。ネット上の安全に関する会話は、性教育と同じく、親たちに任せられることが多くいが、親たちは子どもたちが学校で教えられていると思っている。この種の会話の進行は簡単ではなく、オンラインカルチャーに馴染みのない親にとっては特にそうだが、親たちは情報を探して自ら学習することが絶対に必要だ。

ホーゲン氏が指摘するように、オンラインプラットフォーム側にも責任がある。各プラットフォームに信頼と安全の部署が設けられたのは比較的最近であり、学習、改善すべき点がまだ数多くある。

多くのデジタルプラットフォームにおいて、コンテンツモデレーター(コンテンツ検査担当者)は人材不足、低賃金、訓練不足だ。オンラインプラットフォームは、利益より保護を有線し、自らのプラットフォームを安全に保つ責任を持つ人々のさらなる教育と心の健康の維持にもっと投資すべきだ。問題のあるコンテンツについて考えるために必要なツールと時間を安全管理チームに与えることによって、効果的かつ注意深く任務を遂行できるようになる。

インターネットは悪用につながる環境を作る可能性をもっていると同時に、若者たちに警告の前兆と世界の現実について教える強力なツールでもある。ネット上で話している相手に関する情報を入手できるように武装させることもその1つだ。

事後措置によって悪事と戦うことは、刑事司法制度からプラットフォームモデレーターまで、出血している傷口をバンドエイドで覆うようなものだ。性的虐待を事前に防ぐことは子どもたちに対する最良の保護だ。ネット上で起きる潜在的危害の責任を負うことによって、プラッフォームであれ政治家であれ親であれ、私たちは全員にとってより安全な世界をつくり始めることができる。

編集部注:本稿の執筆者Kathryn Kosmides(キャスリン・コスマイズ)氏は性的暴力被害の克服者で身元調査の非営利団体、Garboのファウンダー。

画像クレジット:JGI/Jamie Grill / Getty Images

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(文:Kathryn Kosmides、翻訳:Nob Takahashi / facebook

G20が巨大IT企業の税逃れ防止のため法人税率を最低15%以上とする協定に合意

G20が巨大IT企業の税逃れ防止のため法人税率を最低15%以上とする協定に合意

Kirsty Wigglesworth – Pool/Getty Images

10月30日にイタリア・ローマで開幕した主要20か国および地域首脳会議、通称G20は、多国籍企業の世界最低税率を15%以上に設定する協定を結ぶことで合意しました。この協定は主にGoogle、Amazon、Meta(Facebook)といった大手インターネット・IT企業を対象とするもので、これら企業はタックスヘイブンと呼ばれる無税もしくは税率の非常にやすい国や地域(租税回避地への無形資産移転によって、ビジネスをおこなっている国や地域にでの法人税などの納税を回避しています。

2015年の経済協力開発機構(OECD)の試算によると、これらの企業による租税回避によって、全世界で約1000億~2400億ドルの法人税が収められていないと報告されています。

今回のG20での合意は、米国が主導して議論されました。世界の大企業の最低税率を15%に設定することで、企業が租税回避地に利益を移す旨みをなくすことを目的とします。OECDはこの措置により世界銃の企業から合計1500億ドルを得られるようになると述べました、

この協定によって本来得られるはずだった税金が納められるようになれば、各国の政府は公共サービスへの資金や、気候変動やその他の問題にそれらを割り振ることが可能になります。

ただ、合意された15%という最低税率は、先進国の法人税の平均となる約23.5%をはるかに下回る税率です。また影響を受ける企業は100社に満たないと言われ、貧しい国にはほとんどお金をもたらさないと主張する意見もあります。

いずれにせよ、G20各国における法人税回避の現状を打破するのなら、それは各国の人々にとっては良いことと考えて良さそうです。

(Source:BBC News、。Engadget日本版より転載)

表記ゆれの影響受けず物件を特定できる「不動産共通ID」正式版が公開、国土交通省「不動産IDルール検討会」とも連携予定

表記ゆれの影響受けず物件を特定できる「不動産共通ID」正式版が公開、国土交通省「不動産IDルール検討会」とも連携予定


オリジナル地図を自由に作成できるサービス「Geolonia Maps」などを提供するGeolonia(ジオロニア)と不動産テック協会は10月29日、「不動産共通ID」正式版の提供を同日開始した。利用料金は原則無料。また、緯度・経度が取得できる有料APIの提供も予定している。

不動産共通IDは、不動産取引における企業間での情報連携やデータ連携などの実現を目的として提供するID。不動産事業において統一されていない住所や物件名の表記に対して、同一物件を示す情報に共通のIDを付与することで、表記ゆれに影響されることなく物件の特定が容易となるインフラ環境を構築し、不動産情報のデータ連携にかかるコストの削減を図る。表記ゆれの影響受けず物件を特定できる「不動産共通ID」正式版が公開、国土交通省「不動産IDルール検討会」とも連携予定

Geoloniaは、2020年8月に日本全国の住所マスターデータをオープンデータとして公開。不動産共通IDは、同マスターデータを基にGeoloniaと不動産テック協会が共同で整備を行い、2021年4月15日にベータ版を公開した。大手不動産会社や不動産テック企業、放送局、公的機関など100社を超える参加企業からのフィードバックを踏まえ、今回正式版開始した。

不動産共通IDのAPIは基本無料で提供。APIに住所と物件名を送ることで、不動産共通IDに加えて、正規化された住所と建物名の一部を取得できる。また、今後提供予定の有料APIでは、無料APIの情報に加えて、緯度・経度も取得できる。有料APIの利用料は月額5万円(税込)で、不動産テック協会の会員は月額1万円(税込)を予定している。

国土交通省との連携

不動産をIDで管理する試みについては、国土交通省が「不動産IDルール検討会」を開催しルール整備を進めており、その第1回から不動産テック協会理事が参加するなど全面的に協力しているという。

国主導の「不動産ID」整備後は、ID乱立によってユーザーが混乱する事態を避けるため、不動産共通IDとの連携を図るプログラムを提供するなどの取り組みを行う。同協会からは「不動産テック協会主導の不動産共通ID→国土交通省においてルール整備が検討されている不動産ID」に変更できるプログラムの提供を予定しているという。また同時に、これまで「住所→不動産共通ID」を返答していたプログラムに修正を加え、「住所→不動産共通ID+国土交通省においてルール整備が検討されている不動産ID」を返答するプログラムの提供を目指すとしている。

不動産共通IDの詳細および国土交通省との連携については不動産テック協会サイトで確認できる。

不動産テック協会の目的は、自協会のIDを普及させることではなく、不動産にIDが付与されることで、不動産業全体のDXが推進されることとしている。今後も、国土交通省と連携を取りながら、IDの普及を推進するという。表記ゆれの影響受けず物件を特定できる「不動産共通ID」正式版が公開、国土交通省「不動産IDルール検討会」とも連携予定

OKIが東京ドームでの「声を出さない応援」の測定・分析に成功

沖電気工業(OKI)は10月28日、東京ドームでのプロ野球の試合中に、観客がどれだけ歓声をあげているかを測定し分析する実証実験を実施したと発表した。コロナ禍で声を出す応援が禁止される中、観客の歓声だけを抽出し、声を出さない応援がどれだけ守られているかを確認するためのものだ。

実験が行われたのは、東京ドームで行われた東京読売ジャイアンツの試合のうち、4月と7月の2回。特別に指向性を高めたマイク装置を観客席に3基設置して試合中の会場内の音を収録。その音響データから、野球の打球音や場内アナウンス、BGMなど歓声以外の音声をおよそ15dB(デシベル)低減することで、観客の歓声の音量を測定した。これにより、歓声が発せられたタイミングから、音量の推移が定量的に評価できるようになった。OKIが東京ドームでの「声を出さない応援」の測定・分析に成功

このことから、試合中に声を出さない応援が、どれほど守られているかがわかる。これは、イベントにおいて声を出さない応援の実効性を示す指標のひとつとして活用できるとのことだ。この実験結果を踏まえ、音声分析技術をさらに発展させて「コロナ下での社会経済活動の再開」に貢献したいと、OKIは話している。