名門VC・a16zが暗号通貨スタートアップのための無料スクールを開校

先月、Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ、a16z)のジェネラルパートナーであるChris Dixon(クリス・ディクソン)氏がTechCrunch Disruptで、ベンチャーキャピタル企業である同社が暗号通貨を扱うスタートアップを育てる無料のスクールを開くと発表した。そして米国時間11月8日に同社は、そのスクールを公式に立ち上げた。すでに願書を受け付けており、受付期間は4週間だ。

この事業でa16zは、暗号通貨を大衆的に普及させたいと願っている。ディクソン氏とa16zのチームは暗号通貨とブロックチェーンに7年間関わっており、これからはその間に学んだことを起業家たちと共有したいと考えている。

これによって暗号通貨のコミュニティが育ち、今後のa16zの投資機会も創出されるだろう。ただしa16zは「暗号通貨のスタートアップスクールに参加したことはa16zからの投資を受けることを意味しない」と言っている。暗号通貨スタートアップへの投資に関してはa16zは思慮深い投資家であり、暗号通貨スタートアップスクールに参加した者だけを対象とせず、暗号通貨のコミュニティ全体が対象だ、と言っている。

そのa16zのCrypto Startup Schoolは7週間の課程を2020年2月21に開始する。授業料は無料であり、a16zは何ら所有権を有しない。

授業はメンローパークで行われるので、シリコンバレー周辺に住んでいない人はおよそ2カ月あまり下宿する必要があるだろう。「それでは大変すぎる」という人たちのためにa16zはすべての授業を録画する。そして誰もがそのビデオを見たり、スクールのカリキュラムや教材をダウンロードできる。

以下がコースの概要だ。

  • 暗号通貨のネットワーク(クリプトネットワーク)とは何か、なぜそれが重要なのか?
  • ブロックチェーンコンピューティングの基礎: 暗号技術とコンセンサス
  • アプリケーション開発ツールの概要
  • アプリケーションの現状と2025年
  • 暗号通貨のビジネスモデル
  • 暗号通貨の経済学
  • ユーザー体験、製品開発、セキュリティ
  • マーケティングとデベロッパーリレーション
  • コミュニティと参加と統治
  • 規制の現況と配慮
  • 資金調達ガイド

ご覧のようにこれらは、暗号通貨にフォーカスした授業と、資金調達やマーケティングなど一般的なスタートアップ入門のミックスだ。スクールが対象とするのは20から25ぐらいのチームで、40名前後の参加者総数を想定している。ソフトウェア開発の経験者であることが条件だが、暗号通貨のエキスパートである必要はない。授業内容は一週間に12〜15時間の講義とワークショップ、個人指導、そしてネットワーキングの実技だ。

最後に参加者は、プロジェクトのアイデアやプロトタイプのデモをを披露しなければならない。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ブロックチェーンを使った空港セキュリティチェックのZamnaが5億4000万円を調達

ブロックチェーンを使用して、航空会社と旅行当局の間で安全にデータを共有および検証して乗客の身元を確認することを目指すZamna(ザムナ)が、シードラウンドで500万ドル(約5億4000万円)を調達した。ラウンドを主導したのは、LocalGlobeとOxford Capitalで、それに加えてSeedcamp、London Co-Investment Fund (LCIF)、Telefonicaそして多数のエンジェル投資家たちが参加している。

既存の投資家であるIAG(International Airlines Group)も参加しているが、IAGは現在、最初の商用クライアントだ。Zamna自身は、VChain Technologyという元の名前から社名を変更した。

元VChain(今のZamna)が最初に登場したとき、私は混乱したことを告白しなければならない。ブロックチェーンを使用して乗客データを検証するのは、効果のない不適切なやり方のように思えたのだ。しかし、やがて驚くほど便利な用途があることがわかった。

そのアイデアは、現在は航空会社、政府、そしてセキュリティ機関の間で別々に管理されている乗客データセットを、ブロックチェーンを使って検証し接続しようというものだ。「これを行うことにより、手動または他のチェックの必要性を最大90%削減できる」とZamnaは述べている。そうしそうなら、大変な効率改善となる。

理論的には、時間が経ちより多くの乗客識別情報がデジタル検証されるにつれて(中間でブロックチェーンを使ってデータの安全性と乗客のプライバシーを守る)、空港におけるセキュリティプロセスは、実質的にシームレスなものとなり乗客は複数の空港を、物理的な書類や繰り返されるIDチェックなしに進んでいくことが可能になる。良さそうな感じだ。

Zamnaによれば、経歴(バイオグラフィー)および生体情報(バイオメトリックデータ)を扱う、同社のプラットフォームであるAdvance Passenger Information(API)検証プラットフォームが、一部の航空会社および入国管理局によって既に導入されているという。最近同社は、エミレーツ航空ならびにUAEの移民帰化局(GDRFA:General Directorate of Residency and Foreigners)と協力して、チェックインとトランジットの際の検査を実施し始めた。

仕組みは次の通りだ。Zamnaのプラットフォームは、Advanced Passenger Informationまたは生体情報の精度をチェックするアルゴリズムの上に構築されている。このときそれらのデータを第三者機関と共有する必要はない。何故なら既に検証済のデータには、匿名化されたトークンをアタッチするようになっているからだ。航空会社、空港、政府は、実際に代理店または競合航空会社が保有するデータを実際に「見る」必要はないまま、安全で不変な検証済みトークンの分散ネットワークにアクセスすることができる。Zamnaの技術は、これらの関係者のいずれかによって使用されて、自分が「自分だ」と申告する者をチェックするために暗号を使い、乗客の経歴および生体情報を検証することができる。

それでは、Zanmaが変えることになるかもしれない、これまでの空港における航空会社や入出国管理のセキュリティ対策では何がいけないというのだろう?

Zamnaの共同創業者兼CEOであるIrra Ariella Khi(イラ・アリエラ・キ)氏は、TechCrunchに対して次のように語った。「普通、空港に到着したときには、まるで魔法のように、航空会社があなたが誰なのかを知っていて、保安機関もあなたが誰なのかを知っていて、そして出発国と到着国の政府はどちらもあなたが2つの国の間を飛んでいることを知っていて、あなたがそうすることは合法的で安全であることも検証済になっている、という思い込みがなされていることでしょう。また、あなたとあなたの仲間の乗客の両方が同じ飛行機に乗っても安全であることを証明するために、それぞれの保安当局があなたの乗客としての情報を交換したと仮定することさえ可能です」。

「しかし、現実はこれとはほど遠いものです」と彼女は言う。「航空会社や政府機関がデータを共有したり相互参照したりするための簡単で安全な方法はありません、それらは(有効なデータを保護するため)サイロ化されたままです。なので、あなたが移動するたびに、手動で1回限りのデータチェックを繰り返す必要があるのです。たとえ事前に身元データを提供してチェックインし、同じ航空会社の同じ空港から何度も旅行する場合でも、同じ1回限りの旅客処理の対象であることがわかります(おそらく、すでに何度も経験しているはずです)。何より大事なことは『本人確認イベント』があると、そこで航空会社は乗客が保有している本人確認書類を確認するとともに、その身分証明書がその目の前の人間自身に属していることを確認しなければならないということなのです」。

この分野には3つの大きな流れがある。第1に、各国政府は航空会社に対してより正確な乗客データ(出発地と目的地の両方)を要求していて、航空会社から彼らに不正確なデータが提供された際に課される罰金を増額している。第2に、航空会社は、不正確なデータのために政府によって入国を拒否された場合には、乗客と荷物の送還を管理する必要があり、これには費用がかかる。そして第3に、ETA(eVisaなどの電子入国許可証)が増加しているために、政府と航空会社は、乗客のデータが旅行に適切なステータスを持っていることを確認するために、関連するETAのデータと正確に一致することを確認できるようにする必要があるのだ。これは、米国に到着するすべての旅行者が必要とするESTAの場合だが、他の多くの国にも同様の要件がある。英国の旅行者にとっては非常に重要だが、またこれはもうすぐ発効するEITAS規制の下でヨーロッパへ旅行しようとする乗客すべてに関係してくる。

その結果、航空会社は、乗客が定期的に飛行機を使う人間かどうかには関わらず、また事前にチェックインしたかどうかにも関係なく、空港での書類と身元の確認を強化している。

Zamnaのデータ検証プラットフォームは、乗客が空港に到着する前に、複数の関係者(航空会社、政府、保安機関)を、乗客の身元確認とデータ(経歴と生体情報の両方)に対する1つの検証と再検証方法でまとめ、安全にデータの所有権を確立するというものだ。

これは空港での新しいインフラストラクチャを何も必要とせず、関係者たちはデータを共有する必要もない。なぜなら「共有せずに共有すること」はすべてのデータソースの途中で、Zanmaのブロックチェーンプラットフォームによって行われるからだ。

LocalGlobeのパートナーであるRemus Brett(レムス・ブレット)氏は次のように述べている「今後20年間で乗客数が2倍になると予想されるため、新しいテクノロジー主導のソリューションは、航空会社、空港、そして政府がうまく切り抜けられるための唯一の方法なのです。Zamnaチームと協力できることを嬉しく思っておりますし、彼らがこれらの課題に取り組む上で重要な役割を果たすことができると信じています」。International Airlines Groupのグローバルイノベーション責任者であるDupsy Abiola(デュプシー・アビオラ)氏は次のように付け加える「Zamnaは、ブリティッシュ・エアウェイズおよび他のIAGキャリアを含む、デジタルトランスフォーメーションプロジェクトで、IAGと協力しています。非常にエキサイティングです」。

Zamnaは、国際航空運送協会(IATA)の戦略的パートナーであり、IATAの”One ID”ワーキンググループのアクティブなメンバーだ。

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(翻訳:sako)

ビットコイン急落の原因はFacebookか?Googleか?

 画像クレジット:Blablo101/Shutterstock(画像の一部を改変)

Bitcoin(ビットコイン)と他の暗号通貨の価格は、米国時間10月23日に暴落した。ここ数カ月、Bitcoinの価値は徐々に下落しており、年初には1万ドルを超えていたものが、昨日までに2000ドル以上も下げていた。

投資家は今回の急落の原因について依然として推測を巡らせているが、昨日までは当面の底値は8000ドルくらいだろうと楽観的に考える強気の投資家もいた。

早くもその期待は覆された。今日になってBitcoinの価格は、早朝にほぼ8000ドルだったものが一気に7448.75ドルまで下落した。

今回の暴落の原因がどこにあるのか、投資家はいまだ確信が持てていない状態だ。しかしBitcoinに詳しい識者は、疑わしい2つの要因を指摘している。

1つは、Facebookの最高経営責任者であるMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏の議会での証言がぱっとしなかったからというもの。これは、同社が推し進めようとしている暗号通貨Libra(リブラ)に関するものだった。

しかし、ザッカーバーグ氏の弱気な態度や、Libra自体の命運については、暗号通貨の純粋主義者はもとから冷笑していた。おそらく世界中のBitcoinに関わる人にとって、Google(グーグル)の量子コンピュータの研究室で起こったことに比べれば、大した問題ではなかったろう。

今朝Googleは、スーパーコンピュータで解くのに何年もかかる問題を量子コンピュータを使って解くことができたことを示し、量子コンピュータにおける優位を宣言した。これは理論物理学者や量子コンピュータの熱烈な支持者にとっては、確かに素晴らしいニュースだった。しかし、コンピュータの能力では解読できないのを前提として価値を保っている記録システムを信奉し、そこに何十億ドルもつぎ込んできた投資家にとってはいいニュースとは言えないものだった。

Googleの研究成果に関するニュースがFinancial Timesによるレポートなどによって、9月下旬から少しずつ漏れ伝わってきたとき、Bitcoinの専門家はそれが暗号通貨に対して問題を引き起こすという考えを否定していた。

「量子コンピュータを実用レベルにまで引き上げられるかどうか、まだわかっていません。量子ビットを追加していくには、天文学的なコストがかかるのは、まず間違いないでしょう」と、初期のBitcoinの開発者Peter Todd(ピーター・トッド)氏はTwitterに投稿した。

CoinTelegraphが取り上げたコメントによれば、Bitcoinの暗号を解読するための経済的なコストは、Alphabet(Googleの親会社アルファベット)の数十億ドルという潤沢な予算さえも、はるかに超えるものと思われる。

それはともかく、年初までは、ほぼ一年を通して着実に上昇し続けてきた暗号通貨にとって、この数カ月は暗い期間だった。もちろん、Bitcoinや近年IT業界に出回っているような暗号によって保護された他のトランザクション方式が、生き永らえられるかどうかは、そうしたオープンアーキテクチャを利用して誰もが実現可能な製品を作ることができるかどうかにかかっている。

線香花火的な流行を別とすれば、今後何が起こるのか、予断を許さない状況が続いている。

このような不確実性が影響を及ぼすのはBitcoinだけではない。実際、Coindeskの価格表が示すように、他の市場も同様に下落している。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Facebookの「リブラ」が大方針転換で現地通貨と連動か

Facebookは、同社のデジタル通貨プロジェクトを、さまざまな通貨を組み合わせた「通貨バスケット」と結びついた人工的通貨とする計画を変更する可能性があることを表明した。

ロイターによると、Facebookのリブラプロジェクト責任者、David Marcus(デイヴィド・マーカス)氏は銀行幹部グループに対して、同社の主要なゴールは優れた決済システムを作ることであり、当社提案したプロジェクトのしくみと異なる方法の採用も辞さないと語った。

当初、Facebookとパートナー企業らは、リブラ・アソシエーションが設定した主要通貨を組み合わせた「バスケット」と結びついた仮想通貨を作る計画だった。

各国の中央銀行はこれを、当局の規制を回避する危険な計画の一環だと考え、Facebookが構築した暗号通貨と決済技術の運用に対する監視を強化するまでプロジェクトを待機させている。

当局の調査の結果、暗号通貨の運用方法を決めるリブラ・アソシエーションの主要なパートナーの一部にさまざまな問題が見つかった。

先月、 リブラ・アソシエーションの設立メンバーのうち7社が脱退し、そこにはPayPal、Mastercard、Visa、Ebay、Stripeらが含まれていた。その7社はリブラにとって重要な戦略的価値をもっていた。Stripe、Mastercard、Visa、およびEbayは、新しい通貨の爆発的スケーリングに必要となる膨大な数の決済処理業者や小売店舗を抱えている。
関連記事:Libra claims 180 potential replacements for 7 mutineers

ここへ来てマーカス氏は人工的通貨の制定を断念し、リブラを運用する地域の現地通貨と結びつけられたステーブルコインを考えている。

「別のやり方もある」とリブラ・アソシエーション幹部の発言をロイターが引用した。「人工的通貨単位を作る代わりに、ドル・ステーブルコイン、ユーロ・ステーブルコイン、ポンド・ステーブルコインという具合にいくつものステーブルコインを作ることもできる。

こうした事象はすべて、Facebookが発表した暗号通貨リブラの発行日付に影響を与える。マーカス氏はロイターに、今でも6月発行が目標だが、リブラ・アソシエーションは、規制当局が指摘した問題を修正し、承認が得られるまでプロジェクトを進めないつもりだ。

ただし、その承認を得ることも難しくなりつつある。世界中の通貨政策が、ステーブルコインに対しても懐疑の目を向け始めているからだ。

ロイターによると、G-20参加国の財務担当者らは「ステーブルコイン・プロジェクトが『運営を開始』するためには、マネーロンダリング、違法金融、消費者保護などの問題を精査する必要がある」と語った。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

IBMは魚介類の安全性をブロックチェーンで向上させる

画像クレジット:Ivan/Getty Images

IBMは、さまざまな業界と協力して、ブロックチェーン技術を応用した食品の安全性向上に取り組んできた。米国時間の10月17日、その最新の取り組みを発表した。マサチューセッツの会社、Raw Seafoods(ロー・シーフード)とのパートナーシップにより、そのアプローチをシーフードにも拡げるもの。まずはホタテ貝から始める。

最近では、ビジネスにおいてブロックチェーンを取り巻く騒ぎは落ち着いてきた。しかし、サプライチェーンは、依然としてその強固なユースケースとみなされている。農場、工場、さらに漁船などからの出荷が市場へ届くまで、関連する人たちが追跡できるようにしようというもの。課題は、そこにサプライヤーを参加させることだった。というのも、サプライチェーンのサポートに関しては非常に広範な技術的選択肢があるからだ。

今回の取り組みでIBMは、マサチューセッツ州のニューベッドフォードに本拠を置くホタテ貝漁の船団と協力する。そしてホタテ貝漁に関するデータを、いつどこで漁獲したのかを含めてサプライチェーンのすべての関係者と共有できるようにする。IBMの説明によれば「このプラットフォームでは、漁船が接岸したこと、帆立貝の個々のロットが手作業で等級に分けて選別され、梱包され、目的地に向けて出荷されたことなども、すべて追跡できます」とのこと。また、漁船が港に到着する前から、漁の画像やビデオも共有される。

アクセス権のある人ならブロックチェーン上の情報にアクセスして、漁船から市場までの間のどこにホタテ貝があるのかノードをクリックするだけで確認できる。このようなデジタル化をしていなければ、食品の追跡は時間のかかる作業となる。ブロックチェーンを利用すれば追跡は瞬時に可能となる。

「伝統的な方法では、特定の食品を原産地までたどるのは、もし可能だとしても何日もかかるものでした。特に天然のホタテ貝の場合は面倒でした。それにかかる時間を、ほんの数秒に短縮することで、消費者がシーフードを敬遠してしまいがちな3つの懸念を解消できると考えています。それは安全性、持続可能性、それに信ぴょう性です」と、IBM Food Trust(フード・トラスト)のゼネラルマネージャーを務めるRajendra Raom(ラジェンドラ・ラオ)氏は述べている。

Raw Seafoodでは、このプラットフォームに接続するアプリの開発も計画している。それにより、レストランを訪れた消費者が、メニューに記載されたQRコードをスキャンして注文の前にホタテ貝の詳細情報を確認できるようになる。

昨年IBMは、Walmart(ウォルマート)とも同様のパートナーシップを発表した。そちらは、緑色葉野菜を農場からスーパーの棚まで追跡できるようにするものだ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

転売業者の荒稼ぎを防ぐYellowHeart、チケットをブロックチェーンで一元管理

YellowHeart(イエローハート)は、人気コンサートのチケットを買おうとしたことのある人の誰もが経験した思われる問題を解決しようとしている。そういう人気チケットは、転売業者(ダフ屋)がかっさらってしまい、非常に高く転売されることが多いのだ。

CEOのJosh Katz(ジョシュ・カッツ)氏によると、彼がYellowHeartを創業したのは彼自身が大の音楽ファンであると同時に、ダフ屋に食い物にされることにうんざりしてきたからだ。同時にまた、彼によると、それはコンサートに行く人たちだけの問題ではない。むしろそれは、ファンとアーティスト両方が、ウィンウィン(Win-Win)の逆のルーズルーズ(Lose-Lose)になっていることだ。ミュージシャンは高く売られたチケットにふさわしい額の利益をシェアできない。

そこでYellowHeartは、ミュージシャンやコンサート会場やそのほかのイベント主催者たちに、チケット転売のルールを作らせる。カッツ氏が望むのは「勇敢なアーティストがチケットを正価より高い値段で売るのはノー!と宣言する」ことだ。しかし彼が予言する現実としては、チケット価格の天井を設定し、転売で得た利益は売った者とアーティストまたは指定したチャリティーと分け合うルールになるだろう。

「チケットがどこで売られようと、そのルール守らなければならない」とカッツ氏は付け加える。なぜ守らざるをえないかというと、チケットの販売はすべてオープンなブロックチェーンの上で行われるからだ。そして「すべてのトランザクションがYellowHeartを経由し、売り上げもすべてYellowHeartを通る」。

計画では、そのようなチケット発行のプラットホームを来年の第2四半期に作る。カッツ氏によると、ユーザーは自分のチケットをYellowHeartのスマートコントラクトを使えるマーケットプレースならどこででも売れる。「でもそんなパートナーができてスマートコントラクトの統合が行われるまでには少々時間がかかるだろう」とカッツ氏は認める。

関連記事:BOTS Act punishing online scalpers passes Senate, moves on to the House(ネット上のダフ屋を罰するBOTS法が上院を通過、未訳)

カッツ氏によると、ブロックチェーンにはそのほかの利点もある。どのチケットにもユニークな(それ1つしかない)キーが付いていて、それはユーザーの本人性に結びついておりユーザーの仮想ウォレットに所在する。したがってニセモノは作れない。チケット発行のプロセスはエンドツーエンドで完全にデジタルであり、その例外は会場側が切符売り場でチケットをプリントするときぐらいだ。

同氏は音楽業界にいた履歴があり、以前はホテルやレストランなどの顧客のためにオリジナルのプレイリストを作るEl Media Groupを創業した。彼はザ・チェインスモーカーズと一緒にYellowHeartを作り、マネージャーのAdam Alpert(アダム・アルパート)氏はDisruptor Records(ディストラプター・レコーズ)のCEOでもある。

「ザ・チェインスモーカーズとは長年、転売業者の問題を率直に話し合ってきた。今回はうれしいことにYellowHeartがパートナーとなり、アーティストとファンがコントロールを取り戻せるスマートで効果的なソリューションを提供してくれた」とアルパート氏は声明で述べている。

そしてカッツ氏によると、YellowHeartはコンサートに限らず、どんなイベントのチケット管理にも利用できる。彼によるよ「スポーツや劇場などでも便利に使えるはずだ。今回はたまたま創業者が全員音楽業界出身だから、手はじめが音楽になっただけだ」。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

LayerXの取締役に元ユナイテッド手嶋氏・元Aiming CFO渡瀬氏が就任、新体制で既存金融のアップデートへ

ブロックチェーン領域で複数の事業を展開するLayerXは10月2日、昨日開催の株主総会及び取締役会において役員人事を決議し、同日付で新経営体制がスタートしたことを明らかにした。

今回の人事では新たに取締役2名、執行役員2名、監査役1名を選任。取締役CFOに元Aiming取締役CFOの渡瀬浩行氏、取締役(非常勤)に元ユナイテッド取締役の手嶋浩己氏が就任している。

  • 代表取締役 CEO / 福島良典氏 : Gunosy創業者
  • 取締役 CTO / 榎本悠介氏 : Gunosy時代に新規事業開発室部長
  • 取締役 CFO / 渡瀬浩行氏 : 元Aiming取締役CFO
  • 取締役(非常勤)/ 手嶋浩己氏 : 元ユナイテッド取締役、XTech Ventures共同創業者
  • 執行役員 / 牧迫寛之氏 : Gunosyの新規事業開発室で複数の事業開発を推進
  • 執行役員 / 丸野宏之氏 : 丸紅やワンオブゼムを経て参画
  • 監査役(社外)/ 掛川紗矢香氏 : 元メルカリ執行役員

LayerXは2018年8月の設立時よりブロックチェーンテクノロジーに関連する事業を展開。金融業界を軸に複数の企業と研究開発やブロックチェーンの社会実装を進めているほか、日本マイクロソフトなどともパートナーシップを締結してきた。

現在はエンジニアを中心に20数名のメンバーから構成される同社。先日には創業者である福島氏のMBOのニュースが大きな話題を呼んだが、渡瀬氏や手嶋氏ら経験豊富なメンバーを経営陣に加えエンタープライズ企業との取り組みをさらに加速させる計画だ。

直近の注力テーマは「既存金融のアップデート」

「ブロックチェーンは金融が大本命という考えは変わっていなくて、当初からずっと金融に張っている。ただこの1年間、業界の中に入って学習していく中で切り口は変わってきた」

福島氏はLayerXの現状についてそう話す。設立初期はトークンの設計やアプリケーションの実装などを通じてICOのプロジェクトをサポートするところに需要があると考えていたそうだが、今の軸はもっぱら既存金融の領域。特にエンタープライズ企業と中長期的な目線で新たなインフラ整備に取り組んでいる。

「既存金融システムは非常によくできているけれど、ブロックチェーンを用いることでもっとアップデートできる余地がある。時間がかかる領域だが『既存金融の上位互換』は大きな可能性があり、ここに自分たちの技術を提供する方が筋がいいのではという結論に至った」(福島氏)

具体的にすでにプロジェクトが始まっているのはいわゆる“証券化”の領域。ブロックチェーン上でアセットの権利を管理したり、新しいファンディングの管理ツールのような形で使ったり。福島氏いわくこの分野については「コストが下がる、より広い投資家にアクセスできるようになるなど、すでに価値があることが証明されている」ため、現実適用が1番進めやすいという。

「この1年でスタートアップ界隈はブロックチェーンに失望している感覚があるが、エンタープライズ側の反応は全く異なる。特に銀行や証券会社といった金融系の企業は『ブロックチェーンが少なくとも一部のシステムを置き換えるのは確定している』から積極的に投資すべきという意見だ」(福島氏)

昨年ガートナーが「日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル:2018年」を発表したが、その中でブロックチェーンは「過度な期待」のピーク期を越え、幻滅期へと坂を下りつつあるとしていた。

福島氏の感覚ではたとえばブロックチェーンを活用したゲームや著作権の管理などはまだハイプの山を登っている状況で、現段階ではビジネスとして取り組むには難しいのではないかという。一方でブロックチェーンはもともと通貨を作るために生まれた技術でもあるため、何かしらの価値を確定させたり、移転させるのには相性がいい。

「数年前から金融機関の実証実験でも確実にコストが下がるというのがわかってきている。これから求められるのはビジネスモデルをどう組み立てるか、経済性や現実性をどう設計していくかということ。特にエンタープライズはコンソーシアム型がメインになるので、そのコンソーシアムにどう乗ってきてもらうかの設計が重要だ。トランザクションスピードや秘匿化要件など技術的な課題ももちろんあるが、ビジネス側で滑らかなモデルを作っていけるかが問われている」(福島氏)

LayerXは大手金融機関がメイン顧客の“ソフトウェア会社”

福島氏によると今市場ではブロックチェーンテクノロジーへの深い理解を基に課題解決に伴走できるパートナーが足りていないそう。業界の仕組みを学習しながらその領域をサポートしていくのが直近のLayerXのビジネスの軸になる。

「CTOクラスのメンバーもどんどん加わり技術面ではかなり強い組織になってきているが、それだけで金融には入っていけない。人の重要なアセットを預かるのでWebサービスのノリで作ることはできないし、高い総合力が不可欠。優れた技術力とビジネスモデルの設計力や経営層を説得できる力、しっかりとした情報管理体制を持っていないと世の中から遠いものしか生まれない」(福島氏)

この考えが今回の経営体制強化にも繋がっている。取締役に就任した渡瀬氏や手嶋氏は共にベンチャーから上場させるところまで現場経験があり、体制作りやアライアンスなども含めて「大人のプレー」ができるメンバーだ。特に手嶋氏はビジネスサイドでの事業作り、渡瀬氏はバックオフィスを含めたコーポレート全般を強化する役割を担う。

2人に共通するのはLayerXのメンバーと実際に話す中でこのチーム、この領域ならものすごく面白いチャレンジができそうだと感じたこと。「この歳でやるということは最後のチャレンジになる可能性も高いので、伝説的な会社にする気持ちで取り組む」と口をそろえる。

同社では今後も「Zerochain」プロジェクトのようなR&Dを引き続き継続しつつ、まずはエンタープライズ企業のコンサルティングを中心に事業に取り組む計画。「『受託開発でしょ』とネガティブに捉えられるかもしれないが、この業界が今までのインターネットビジネスと違うのはパートナーありきになること。顧客もアセットもないスタートアップが重い業界に深く入るためにはパートナー企業が不可欠」というのが福島氏の考えだ。

「実際はコンサルというよりも一緒にプロダクト開発をやっている。自分たちとしては当然スケールするビジネスを狙っているし、今は『顧客が金融機関のソフトウェア会社』だと考えている」(福島氏)

収益の生み出し方もブロックチェーンテクノロジーをベースにした「ソフトウェアライセンス」と「それを活用した共同事業」が根幹だ。

一例としてPreferred NetworksやPKSHA Technologyの名前も出たが、まさにそういった企業が機械学習など他の分野で事業を急成長させたビジネスモデルに近い。少し意外なイメージもあったけれど、全銀システムなどスケーラブルなシステムを作っているという観点でNTTデータなどもベンチマークにしているという。

この辺りは福島氏がちょうど先日自身のnoteでも詳しく言及していたので、気になる方はチェックしてみるといいかもしれない。

技術力を前提に大人のプレーができる会社へ

ここ数年の間にブロックチェーンを活用した面白いプロジェクトがいくつも生まれた。その中には実際に多額の資金を集めたものもあるが「全体的には過剰にお金が集まったので、ここからの1〜2年は『これだけお金をつぎ込んで何ができたの?』という見られ方をするようになる」(福島氏)という。

福島氏によると市場全体としてまずは結果を出せという局面を迎えつつあり、現実的なエンタープライズ側の取り組みに方向性をシフトしていっている企業が目立つのは不可避な流れだ。

「世の中で言われている『ブロックチェーンを何に使っていいかわからない』は嘘だと思っている。先端にいる人たちの間では実際に現実適用が進み始めていて、議論の中心はビジネスモデルの設計やコンソーシアムにどう多様なプレイヤーを巻き込むかということへと明確に移っている」

「最近は技術を大前提にアライアンスなど大人のプレーができる会社の存在感が増してきている感覚。この1年で実用化の事例がどんどん世の中に出てくると予想していて、LayerXとしてもそこでしっかり勝負をしていきたい」(福島氏)

暗号資産取引のリスク検知でマネロン対策を支援するBassetが5000万円を調達

(写真右から3人目)Basset代表取締役CEO 竹井悠人氏

暗号資産(仮想通貨)による“自由な”取引が世の中に与えたのは、国境を越えた自由な送金や安価な送金コストといったメリットだけではない。日本では2017年4月に資金決済法が改正され、仮想通貨交換業者の登録制が導入されたが、その後もコインチェックZaifなど、取引所からの暗号資産流出事件が起こっているし、投機的な取引による利用者保護の問題や、違法な売買、マネーロンダリングで利用されるといった不適正な取引のリスクもある。

これらの課題を受けて、今年6月7日にはあらためて、資金決済法と金融商品取引法の改正法が公布された。また国際的にも規制強化への要求が高まるマネーロンダリングやテロ資金供与に関しては、6月21日、政府間会合である金融活動作業部会(FATF)から暗号資産サービスプロバイダーに対し、対策の強化を求めるガイドラインが発表されている。

暗号資産を巡るこのような背景の中、仮想通貨交換業者にも厳格な本人確認「KYC(Know Your Customer)」に加えて、資産の預入れ、引出しの取引を都度リスク評価・分析する「KYT(Know Your Transaction)」が求められるようになっている。2019年7月に設立されたBasset(バセット)は、仮想通貨交換業者や行政機関向けに、ブロックチェーン取引の分析・監視ソリューションを開発するスタートアップだ。9月18日、BassetはCoral Capitalを引受先として、5000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

“RegTechカンパニー”として金融機関を支援していく

Basset創業者で代表取締役CEOの竹井悠人氏は、前職のbitFlyerではCISO(Chief Information Security Officer)およびブロックチェーン開発部長を務めていた。ほかの3名の創業メンバーもbitFlyerに在籍していた同僚たちで、bitFlyerからスピンアウトするような形で独立したのがBassetだ。

竹井氏はbitFlyerでの業務を通して「暗号資産の取引所では今後、コンプライアンスがとても重要になる」と考えていた。同時にデータ分析の観点からも、コンプライアンスプロダクトの分野に強く魅力を感じていた。だが、bitFlyerは仮想通貨取引所。コンプライアンス製品をつくる会社ではないし、スタートアップとしてイノベーションを追うステージを卒業して、取引所、金融機関として安定した運営を金融庁からも求められるフェーズにあった。そこで竹井氏は「新しいチャレンジにそろそろ取り組むタイミング」として、6月末にbitFlyerを退職し、Bassetを立ち上げることにしたという。

Bassetが開発しているのは、暗号資産のマネーロンダリングを防止するためのデータ分析サービスだ。これはブロックチェーンデータを分析することで、資金の流れを追うプロダクトである。BTC(ビットコイン)やETH(イーサリウム)をはじめ、金融庁のホワイトリストで指定された暗号資産のリスク検知・評価とマネーロンダリング対策に対応していく予定だ。

Bassetでは、仮想通貨取引所や、金融庁などの行政機関へのソリューション提供を想定している。また警察や司法機関などでの利用も考えられている。竹井氏は「我々が把握しているだけでも、世界で過去2年間にサイバー攻撃によって取引所から暗号資産が流出した金額は1200億円相当にのぼり、流出した資産は小口の送金を繰り返してマネーロンダリングされ、犯罪者の手に渡っている」と述べ、「これらの取引による資金の流れは、世界各国の警察が欲している情報だ」と説明する。

竹井氏は「コンプライアンス関連のニーズは金融機関の間でどんどん高まっている。ブロックチェーンの世界はすべてデータでできている。その中でコンプライアンス遵守に対応する『レギュレーション(法規法令)×テクノロジー』のRegTechカンパニーとして、クライアントを支援していきたい」と話している。

世界的に見ると、同様のソリューションを提供する企業としては、米・ニューヨークに拠点を置き、欧米でサービスを展開するChainalysis、英・ロンドンに本社があるElliptic、今年5月に楽天ウォレットが提携したCipherTraceといった先行者がいる。

「彼らが日本市場へ進出するという話もあり、今後戦っていくことになるということは認識している」と竹井氏は述べつつ、「コンプライアンス強化のためには1つのサービスを使っていればよいということはなく、我々のような別の分析ソリューションが要らないというわけではない」と続ける。

「こういった分析ツールでは、どれだけ多くのデータをカバーするかというのが重要。海外の会社が英語圏で強いのは当然だが、一方アジア言語圏はどうかと言えば、日本語、中国語などのソースについては我々の方が目が届きやすい。そこにフォーカスをして差別化を図ろうと考えている」(竹井氏)

竹井氏によれば、あるシンクタンクが発表した統計では、金融機関が使うコンプライアンス関連のテクニカルソリューションの数は、これまで1製品で完結していることが多かったのだが、ここ数年は利用する製品数が増える傾向にあるのだという。「理由としては、データソースのカバレッジが多ければ多いほどよい、という状況の中で反社会的勢力のデータベースなど複数のデータをチェックすることが増えていることが挙げられる。また顧客や企業の照会をするといった、さまざまな用途がある中で、複数製品を組み合わせてコンプライアンスプログラムを組むのがより一般化しつつあるためだ」(竹井氏)

そのような背景から「我々のようなブロックチェーンのフォレンジック(インシデントにおける証拠調査・解析)の分野でも、1つの製品のみならず、複数の製品を組み合わせて利用していただくということは、今後あるのではないか」と竹井氏は見ている。

取引可視化はマーケティングに使える可能性も

プロダクトは現在も鋭意開発中。「MVP(Minimum Viable Product)はできあがっており、現在、いくつかの仮想通貨取引所でトライアルで利用してもらっている」(竹井氏)とのことだ。

調達資金はエンジニア採用などに主に投資すると竹井氏は述べている。ほかに、世界各国の犯罪者データベースを参照するためのデータパートナーシップ締結や、サーバー運用、分析のための計算にかかるフィーなどにも充てる可能性があるという。

竹井氏は今後の同社の展望について、「ブロックチェーン関連のコンプライアンスという領域をスタート地点としているが、実際の犯罪捜査に役立てるためには、まだまだいろいろな機能が足りていない。また取引所のコンプライアンス対応として、反社チェックまですべてやりたいとなるとブロックチェーンのデータだけでは完結しないので、ほかのデータも集め始めている。データを広げる、機能を増やすという観点での拡大は考えている」と話す。

また「捜査・コンプライアンスに関するフォレンジックツールとしてだけではなく、暗号資産の取引が可視化できるということは、マーケティングにも使える可能性がある。さらに、例えば将来ビットコインでの支払いを受け付けたいという店舗が増えた場合に、そうした店舗でマネーロンダリングの検出プラットフォームとして利用してもらい、店頭での高額商品の購入がマネーロンダリングの温床にならないような使い方というのも想定している」とも竹井氏は語っていた。

Facebookが仮想通貨「リブラ」のバグ懸賞プログラムをHackerOneと準備中

仮想通貨Libra(リブラ)のプロジェクトを進めているFacebookとそのパートナーらは、Libraのブロックチェーン上に作られたアプリケーションのバグ検証プログラムをHackerOneと協力して実施することを発表した。

この発表は、規制当局がLibraの合法性と世界金融システムに与える脅威を評価する間、プロジェクトを中止するよう同社に要求している中で行われた。

関連記事:Congressional testimony reveals some faults in Facebook’s digital currency plans(未訳)

中止要求にもひるむことなく、Facebookとプロジェクトのパートナーたちは、世界金融システムを全面改造することの責任をいかに真剣に捉えているかを示す証拠として、バグ懸賞プログラムを実施しようとしている。

プロジェクトでは、テスト用ネットワーク上で開発されたコードの欠陥を見つけたセキュリティー専門家に賞金最大1万ドルを提供する。

「我々はこのバグ懸賞プログラムを今、Libraのブロックチェーンが公開されるよりずっと早く開始する。世界中の人々がLibraを日々の財務ニーズに使えることがわれわれの願いなので、システム基盤は安全かつ信頼できる必要がある、とLibra Associationのポリシー・コミュニケーション責任者であるDante Disparte(ダンテ・ディスパート)氏が声明で語った。「Libraのブロックチェーンはまだテストネットワーク上にあり、初期段階のバージョンであって最終版とは大きく異なることに留意されたい。われわれは今後時間をかけて適切なシステムを運用することに責任を持って取り組んでいく所存であり、規制面の課題が解決し当局の承認を得られるまでLibraブロックチェーンを公開するつもりはない」。

しかし、承認を得ることはおろか、商用レベルにも達していないテスト段階のシステム向けにバグ懸賞プログラムを実施することは、時期尚早である可能性もある。何人かのプロジェクト関係者がLibraはまだ公開されていないことを強調した。

「Libraの正式公開に向けて、これはLibra Associationがセキュリティーに積極的に取り組んでいることを示す重要なステップだ」とブロックチェーン基盤サービス・プロバイダーで、Libra AssociationのパートナーでもあるBison Trailsの最高技術責任者、Aaron Henshaw(アーロン・ヘンショウ)氏が語った。

今回の行動を過剰な警戒と見る向きもある。あるいは、開始することすら保証されていないシステムのセキュリティーに対する大衆や当局の不安を鎮めるためのスタンドプレイだと指摘する向きもある。

Libra Associationの広報担当者は、Libraのテスト用ネットワークで現在いくつのプロジェクトが動作しているかについても語っていない。

FacebookとLibra Associationのパートナーたちは、バグ懸賞プログラムより、自分たちのプロジェクトが政府や世界金融システムに与えかねないバグの心配をしたほうがいいかもしれない。

関連記事:Libraはスイスの規制下に入るとFacebookが米国議会で証言予定

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

分散型IoTを可能にするブロックチェーン対応開発ボードElk

ブロックチェーンの分散型世界に物理的なオブジェクトを接続するというアイデアを模索しているハードウェア開発者なら、Elk(エルク)に注目すべきだろう。これは、ブロックチェーンを利用するあらゆるIoTプロジェクトに対応した、現在はまだ開発段階にある開発ボードだ。

たとえばこれを使えば、自分の家に出入りできる能力が遠く離れた大手企業のサーバーの稼働時間(と認証)に左右されたり、第三者の企業に出入りの記録をとられることなく、ドアの錠前に接続できる。

また、お勧めの別の例としては、起床せずにスヌーズボタンを何度も押すとビットコインで支払いが請求される目覚まし時計とか。これは痛い。

Elkの開発チームは、プロトタイプを製品化するため、Kickstarterキャンペーンでクラウドファンディングを開始したばかりだ。来年の春に開発者向けの出荷を目指している。

彼らの目標は2万ドル(約217万円)と控えめだ。早い時期にプレッジした人は59ドルで手に入るが、スヌーズボタンを押してしまってタイミングを逃した人でも、あと10ドル追加すれば手に入る。

私たちは昨年にもElkを紹介している。当時はまだ開発初期の段階で、Elkremと呼ばれていた。

そのときは、彼らは昨年末までに出荷したいと考えていた。しかし、クラウドファンディングの準備が整うまでの時間が、いくつかの難題に遭遇したことにより予想よりも長くなってしまった。

これが、彼らの最初のハードウェア製品ではないことを言っておくべきだろう。2013年に開催されたTechCrunch Disrupt Europeでは、彼らはスタートアップ展示場からオーディエンス推薦により引き抜かれ、スタートアップバトルフィールドに参加して大きな注目を浴びた。そこで彼らは、スマートフォンのセンサーをArduinoのシールドとして利用できるようにするアイデアの売り込みを行った。

その後、彼らはクラウドファンディングによって「1 Sheeld」を製品化した。これは今でも販売されている

通常のハードウェアのクラウドファンディングほど、警戒しなくても済みそうだ(もっとも、プロトタイプの出荷時期に関する宣伝文句は、遅れるものと思って聞いておくのが賢明だ)。

その製品の狙いと願望について、ElkのCEOで共同創設者のアムア・サラー氏に聞いてみた。

TC:Elkとは何ですか? 何に使うものですか?

サリー:Elkは、ブロックチェーンと分散型ウェブに対応したハードウェア開発ボードです。Arduinoをシンプルにしたものに、分散型ネットワークのネイティブな対応機能を組み合わせました。ほんの数行のコードを書くだけで、イーサリアム、IPFS、ウィスパーなど数多くのものを利用できるIoTが構築できるようになります!

Elkは、私たちが「Decent IoT」(ディーセントIoT、良識あるIoT)と呼んでいるものの開発を促します。ディーセントIoTとは、分散型で、本当の支配権と本当のプライバシーを私たちに与えるもので、支払い、オラクル、個人情報の販売などといった、まったく新しい使用事例を可能にします。

Elkを使えば、デバイスの使用を監視したり制御したりするクライドプロバイダーに依存することなく、玄関の鍵を遠く離れた場所から操作できるスマートロックが作れます。また、イーサリアムで借りられるチャージングステーションやランニングマシンにお金を入れてロックし、運動を終わらせなければお金を取り戻せないなど装置ものも作れます。可能性は無限代です。

TC:ブロックチェーンIoTデバイスを作るのに、専用のハードウェアがなぜ必要なのですか?このハードウエアの利点は、ライバルの製品、例えばRaspberry Piを使った場合と比較してどこにありますか?

サリー:ブロックチェーンIoTデバイスは、Raspberry Piを使っても、もちろん作れます。Elkを使う利点は、ハードウエアの面から言うと、マイクロコントローラーとマイクロプロセッサーが一体になっているところです。Wi-Fiモジュールと、専用OSをプリインストールした固定記憶領域の両方を備え、ブレッドボードにも対応しています。これにより、Arduinoにプログラムをするときと同じような、プラグ&プレイの開発が行えます。

Raspberry Piを使う場合と違うのは、Elkではウォレットとキーの管理や、ノードの設定で苦労したり、内蔵デバイスをうまく動かすために変数を調整したり、クラッシュに対処したりといったことが不要になることです。私たちは、10倍簡単なArduino感覚のブロックチェーンIoTの開発を提供します。Arduinoが対応しているライブラリもすべて使えます。開発者は、オーバーヘッドを気にせず、アプリケーション開発だけに集中できるのです。

TC:Elkは誰のためのものですか?ブロックチェーン・ハードウェアのコミュニティは、現在どれくらいの規模でしょうか?これから数年で、どれくらい大きくなると考えていますか?

サリー:現在、ブロックチェーンハードウェアの開発はまだ限定的で、ブロックチェーン愛好家のためのハードウェアウォレットの構築程度に留まっています。

私たちは、ブロックチェーンと分散型ネットワークは、もっとずっと大きく広がると信じています。Elkは、ブロックチェーンマニアだけのものではありません。プライバシー意識の高いメイカーのためのものでもあります。分散型ネットワークは、IoTをずっとプライベートで、安全で、便利なものにしてくれます。私たちはそれをディーセントIoTと呼んでいます。それはまさに、私たちがElkによって広めたいと思っているものです。

現在のIoTアーキテクチャは、通信とデータ保存に関しては中央集権的なクラウドプロバイダーに依存しています。ということはつまり、クラウド・プロバイダー(とそれをハックするすべての人間)は、私たちのデバイスをコントロールでき、私たちのアクセスを拒絶し、私たちの私生活を覗くこともできてしまうということです。

新しい分散型ウェブは、IoTのまったく新しいパラダイムを実現します。私たちの通信を取り仕切る中央の権威を介さずに、分散型ネットワークの中でプライベートに通信ができるパラダイムです。第三者が私たちのデバイスの使用状況を記録したり、私たちのデバイスを操ることもありません。加えてこれは、支払い、オラクル、個人データの販売といった新しい可能性も切り拓きます。

Elkは、たった数行のコードを書くだけで簡単にディーセントIoTを構築できるツールとユーザー・インターフェイスを提供します。これがやがては、ハードウェアコミュニティでの分散型ネットワークの拡散につながればよいと期待しています。

TC:Kickstarterのローンチが遅れたのはなぜですか? Elkのプロトタイピングで遭遇した困難について、また出荷日を守る自信のほどを聞かせてください。

サリー:ブロックチェーンと分散型ネットワークは、芽生えたばかりの分野です。Elkの安定したプラグ・アンド・プレイ体験を確実なものにすることが、本当に難関でした。

もうひとつ、私たちが遭遇した大きな難関は、Elkに搭載する機能の適切なバランスをとることでした。たとえば、当初私たちは、Elkを安全なハードウェアの飛び地にすることがもっとも重要だと考え、それに即したプロトタイプの開発に数カ月を費やしました。その後、ハードウェアのセキュリティーを緩和して、安定性と開発のしやすさを重視することに決めました。ディーセントIoTの開発のしやすさは、セキュリティーをさらに強化するよりも、ずっと大切だと私たちは考えています。

現時点で、私たちはこのハードウェアに関して、4回の個別の練り直しを行い、賢明に努力した結果、自信を持って製品をお届けできるまでになりました。特別なこともなく生産に移行できるはずです。私たちは、すでにハードウェアの製造過程を経験しています。前回のKickstarterでは、予定どおりバッカーたちに出荷できましたし、その翌年には、数万ユニットの製品を販売できました。

TC:ビジネスモデルはどのようなものですか? ハードウェアの開発だけでなく、SDKの配布やサポートで儲けるつもりはありますか?

サリー:今、私たちは、ElkをブロックチェーンIoTデバイス開発の標準にすることに集中しています。このキャンペーンが終わったら、より厳格なハードウェアの条件やサポートが要求される使用事例に着手する予定です。

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

暗号通貨が貯まるグルメアプリ「シンクロライフ」運営がオリコと資本業務提携

グルメSNSにトークンエコノミーの概念を取り入れた「シンクロライフ」は、ユーザーがレビューや加盟店の利用で暗号通貨「シンクロコイン(SYC)」をゲットできるアプリだ。

シンクロライフを運営するGINKAN(ギンカン)は7月17日、オリエントコーポレーションとの資本業務提携を発表した。オリコからの出資金額は非公開。出資は現在GINKANが実施中の資金調達ラウンドの一部に当たるという。

シンクロライフはSNS形式での口コミ投稿アプリとしてスタート。2018年8月にはレビュアー・口コミの信頼スコアに応じて、暗号通貨を付与するベータ版を公開している。また今年7月1日には、ユーザーが加盟店を利用すると食事代金の1〜5%をシンクロコインで還元するサービスも開始した。

サービスに加盟するレストランにとっては、飲食店専用アプリを初期費用・月額費用なしで利用でき、シンクロライフ経由の飲食代金の5%を支払えばアプリに広告を掲載できる。

一度来店したユーザーには、自動的に再来店を促すCRM施策を実施することが可能。7月中に50店舗が登録を予定しており、2019年中には1000店舗の加盟を目指すという。

GINKAN代表取締役CEOの神⾕知愛氏は、飲食店からの還元リワード導入については「東急不動産との実証実験を経ての本格リリース」とコメント。「ボーダーレスな暗号通貨を使ったトークンエコノミーの実社会実用化のスタート。まずは日本の飲食業界、その後アジアへも展開を図る」としている。

グルメアプリとしては、AIがレストランをレコメンドする機能を備え、検索要らずで使える点も特徴とするシンクロライフ。現在155カ国・4言語(日本語、英語、韓国語、中国語)で展開され、口コミは19万件、掲載店舗数は10万店舗を超えた。

今回の資本業務提携により、GINKANでは80万店以上の加盟店と1000万人以上のクレジットカード会員を抱えるオリコとともに、新しいプロモーションサービス提供や顧客向けサービス、Fintech事業などで協業を目指す。

神谷氏は「飲食店の課題へ強くフォーカスし、飲食業界の広告モデルを破壊する」という暗号通貨によるリワード還元についても「オリコと組んで挑む」と述べている。

ブロックチェーンは著作権やライセンス分野でも使えるのか?

誰に言わせても、ブロックチェーン技術の応用については、典型的な「ハイプ・サイクル(新技術に対する類型的な社会的反応の推移)」の初期段階にあるようだ。慎重なアナリストなら、そうしたノイズをフィルターで除去する必要があるが、すべてのテクノロジーバブルと同様に、ブロックチェーンに対して懐疑的な人もいれば、信奉している人もいる。

私はその真中あたりにいる。私に言わせれば、通貨投機は大規模な娯楽に過ぎないが、それによって私が興味を持っている情報サービスが進化していることは確かだ。そして、私が最も興味を惹かれるのは、著作権とライセンス供与の世界の正確さと効率を高めることのできる技術なのだ。

そこで、ブロックチェーンの技術は、実社会の著作権とライセンス供与の分野で、有意義な貢献ができるのかどうか、じっくりと検討してみよう。

ブロックチェーンとは何か、どうして気にする必要があるのか?

ブロックチェーンとは何か? どうしてこれほど多くのスタートアップや、専門家が追い求め続けているのか? それによって、どのような問題を解決することができるのか、そしてそうした問題を抱えているのは誰なのか? そしてもっと重要なのは、それが何の役に立つのか、ということ。

簡単に、かつ現実的に言えば、ブロックチェーンの1つのブロックは、計算によって数学的に導き出される固有の数字だ。この数字は1つのものについて1回だけ適用される。これを、さまざまな種類のデジタル著作物のルート識別子として使うことが可能だろう。このようなブロックチェーンによって保護される著作物の例としては、ドキュメント(PDF)、プログラムのソースコード、デジタル画像、その他1と0で表現される固定的な形式のものが挙げられる。

いったんルート識別子として確立されると、デジタル著作物への変更はすべてブロックチェーンに数字を追加するかたちで書き込まれる。すると、そのブロックチェーンはネットワークを介して、このブロックに関わっているすべての当事者に配布される。そして、「この著作物に関わる他人」を含む(それだけに限定されるわけではないが)サードパーティは、それぞれの「場所」で、該当する更新情報を見ることができる。このような更新情報の配布のしくみのため、ブロックチェーンは「分散型デジタル台帳」と位置づけられている。つまり、ブロックチェーンが付加されている限り、どんなアイテムについても、すべてのトランザクションの履歴が、論理的には、常に更新され、いつでも精査できる状態になっているわけだ。

この記事では、私が「ブロックチェーン」と言うとき、それはいつも分散型デジタル台帳の技術を指すものとする。それはすでに存在するものである場合もあり、近い将来に発明されるものであることもある。ここでは、特定の実装を意図しているわけではない。ブロックチェーンについての最近の記事の氾濫は、よく名も知られ、物議を醸すことも多いビットコインのような暗号通貨によって掻き立られたものだろう。ただし、Ethereum以降の実装は、元の概念に対する改善を示しているように見える。いずれにせよ、取引可能な通貨は、それがどんな種類のものであれ、ブロックチェーンの実装にとって不可欠な要素というわけではない、ということに留意することが重要だと私は考える。

極端な話、遊園地内や、漫画本の収集のような、さまざまな取引において、固有のトークンを使用することは常に可能だが、それはブロックチェーンの技術を使用することが必然だからではなく、不可避であるからでもない。暗号通貨はブロックチェーンの理論と実践に、トークンという1つの要素を追加したに過ぎない。それは、ここでの議論には関係のない要素だ。

将来有望で、破壊的な力を秘めた技術はみんなそうだが、ブロックチェーンも、現実の問題に対処することでこそ実証可能な有用性の上に成り立っている

もちろん、ブロックチェーンには適していない応用例も数多くある。批判的な読者なら、ブロックチェーンが有望な技術であるとして担ぎ上げる大騒ぎを、ガマの油のようなまやかしだと批判する多くの論文を、容易に見つけることができるはずだ。

とりあえず、こうした制限も、今後3〜5年以内に克服可能であり、実際に克服されるものと仮定しよう。それでは、著作権や、他のさまざまな知的財産権のライセンス供与に関する重要な問題を解決するという目的を考えたとき、ブロックチェーン技術の実用化の可能性という点で、我々は今どのあたりにいるのだろうか?

1つの考え方としては、まず著作権を登録する人、または法人が、グローバルなレジストリとして機能するブロックチェーンを作成する。それから重要な利害関係者や消費者をノードとして招待する。これは、ブロックチェーンの信奉者の「個人信用不要」の考え方と適合するものだろう。私は、これが既存のシステムを補完するものと見ている。おそらく比較的早期に実現されるのではないか。

ブロックチェーンから派生したコンテンツ識別子は、作者やその作品の管理に使用すれば、すでに利用されている固有の識別子、たとえばISBN、ORCID、DOI、ISNI、ISRCなどと同様に機能するだろう。ISCC(International Standard Content Code=国際標準コンテンツコード)は、まさにこの分野の実験だ。

単純なブロックチェーンによって可能な、最もシンプルで容易な著作権問題の解消の例としては、古くからある(そしてもうほとんど役にたたない)「貧乏人の著作権」の手法が挙げられる。これは、自分の作品のコピーを自分自身に郵送することで、消印という単純なタイムスタンプを付けるというもの。Right Chainを運営する人たちは、この古い手法を格上げすることをもくろんでいる。ただし、規模の拡大にともなってコストも増大するため、広範囲での実現性には限界があるだろう。

これも注意すべき点だが、ブロックチェーンは、一般的な著作権の侵害対策としては、あまり役に立たない。クロップ、スクリーンスクレーピング、あるいはダンプダウンといった手法によって、海賊版としては十分通用する品質のコピーを作成することは、今でも非常に簡単なのだ。そして、これは今後しばらくの間、そのままだろう。

カスタムなライセンス供与におけるグレーゾーンに伴う重大な困難は予測でき、合法的なフェアユースに関しては役に立たないという懸念もあるものの、商取引や、より日常的なライセンス条項を記録するのには、ブロックチェーンがかなり適していると考えられる。たとえば、電子書籍の作成と配布には最適だ。このようなコンテキストでは、台帳にあるエントリに限定された自己実行契約が、かなり有効だろう。基本的に、ライセンス契約に権利の転売を含める(あるいは除外する)ことができ、台帳がその施行を確実なものにする。

もう少し高度な領域の話だが、著作権の記録、消失、および譲渡といったことについては、ブロックチェーンが非常に有用であることが容易に想像できる。作者への権利の復帰、新しい代理人への譲渡、またはその他同様の記録された権利のやりとり、といった状態の更新を公衆に告知することができるからだ。

将来有望で、破壊的な力を秘めた技術はみんなそうだが、ブロックチェーンも、現実の人が答えを求めている現実の問題に対処することでこそ実証可能な有用性の上に成り立っている。もし、その代償があるとすれば、もちろんある程度の代償は避けられないわけだが、新しい価値の創造を明確に納得できる人が、それを負担する必要があるだろう。

これで納得していただけただろうか? 実は私自身も懐疑的なままだ。それでも結局のところ、著作権とライセンス供与に依存している業界が、すでに日常的に対処しなければならない現実のコンテンツと権利の問題を抱えていることを考えれば、有望な技術の将来に対する批判的な見解が正当化されうるものかどうか、疑問に思わざるを得ない。

読者はどう思われるだろう?

【告知】私は現在暗号通貨を所有していない。これまでに所有したことはなく、今後も所有するつもりはない。私がここで言及したどの会社とも、財務上の利害関係を持っていない。

原文へ

(翻訳:Fumihiko Shibata)

Facebookの仮想通貨「Libra」の登場で考える、お金とはどうあるべきものか?

Facebookコンソーシアムから、プロジェクトLibraのホワイトペーパーが発表されたことを受けて、インターネット、ハイテク業界、金融サービス業界、そして政策界のすべてが、プロジェクトの可能性についての大激論を重ねている。

私たちはまだ、Libraのある世界の、極めて初期段階に立っているだけだ。なにしろまだこれは提案書段階なのだ。そして、答えを待つ疑問がまだ山積している状態なのだ。このプロジェクトは、私たちのお金に対する認識を再定義することができるかもしれないし、あるいは完全に失敗してしまうかもしれない。どちらになるかがはっきりするには、この先何年もかかるだろう。

より詳しい内容が明らかになるまで、(他の何千人もの)評論家たちの並べるプロジェクトへの意見に、特に付け加えられることはないのだが、この瞬間の私たちには一歩後ろに下がって、お金そのものについて考え直す機会が与えられている。私たちは自分自身に問いかけるべきだろう。現在お金はどのように働いていて、将来どのように働くべきなのだろうか。

お金は、日々の生活の中にある、時代遅れのアナログな部分である。過去25年間には、通信(Eメール)から書店(Amazon)、そしてタクシー(Uber)に至るまで、ほとんどのサービスビジネスがデジタル化されてきた。だが、フィンテックが隆盛を誇り、消費者金融における著しい技術革新があったにもかかわらず、お金自体は不思議なくらい変わっていない。

お金の未来は始まったばかりだ

お金が変わらずにいたままだったのには、正当な理由がある。通貨は国家によって管理および発行が行われており、そして多くの理由から、通貨は国家によって管理および発行される必要がある。しかしその理由は、現行の「既成事実」を反映したものに過ぎない。私たちが、他の資産でみてきたものと同じレベルでの破壊的なイノベーションを許すには、お金というものは影響が大きすぎ、また重要すぎるものなのだ。しかし、もし今私たちが、ロールズ(Rawls)博士の言う原初状態(original position)から新しくお金をデザインしたならば、おそらくかなり異なるものになるだろう。

Libraは、お金について、単にそれが何であるかだけでなく、それがどういうものであるべきかを、私たちがオープンに語る機会を与えてくれる。そして規制や競争といった激しい逆風に直面しているLibraが、この先どうなるかにかかわらず、私たちがお金の未来に関して熟考した時間は、決して無駄にはならない。以下に示したものは(決して網羅的ではないが)いくつかの議論のネタである。レベルは基本的なものから風変わりなものまで様々なものが含まれている。

お金は無料で使えるべきだ

最も明らかなことから始めよう。簡単に言えば、お金を使うために誰かにお金がかかってはならないということだ。金融機関やフィンテックは(ゆっくりと)この合意に向かって進んでいるものの、多くの場合に、人びとは自分のお金にアクセスするだけのために支払いを行う必要がある。

ATMは引き出し手数料を請求する。小切手は印刷するのにお金がかかる(そして米国が先進的な国だと思っているひともいると思うが、世界の小切手の90%は米国内で書かれているのだ)。海外送金には送金手数料、銀行間送金にも手数料、小切手の換金にも手数料、PayPalで仕入先に支払うにも手数料など、枚挙に暇(いとま)がない。

Venmo、Square Cash、WeChat Pay(そしてそれ以前のClinkle)のようなアプリの当初からの約束は、送金や支払いを無料で行うことができるというものだ。Apple PayとGoogle Payは、ドルではなく携帯電話を対面購入のための主要手段にすることで、その約束をさらに一歩進めている。手数料なしで銀行もしくはクレジットカードから引き落としを行うのだ。

しかし、こうしたアプリは多くの国で同等のものが提供されているわけではない。M-Pesaのようなモバイルマネーサービスは、ケニアやその近隣諸国で広く普及しているが、アフリカ最大の経済規模を誇るナイジェリアのような国では、依然としてかなりのキャッシュコスト問題を抱えており、現金の利用に対する高価な政策的制限がかけられている。私はアフリカ東部で何度も「キャッシュを出すことができない」というエラーメッセージに遭遇した。ここでは銀行口座を持っているだけで、少なくないコストがかかる可能性があるのだ。

ただお金を使うためだけに手数料を支払うのは、時代遅れの標準なのだ。

お金は即座に送金されるべきだ

この記事を読んでいるほとんどの人にとっては、即時支払いと数日かかる支払いの違いは重要ではない。給料の支払いは金曜日もしくは月曜日に行われることが多い。Venmoのキャッシュアウトは、銀行口座への入金に1日か2日かかることがある。

しかしBrookings研究所のアーロン・クライン(Aaron Klein)氏が指摘しているように、遅い支払いは貧しい人々に不当な影響を与える。小切手の決済、送金資金の決済、または給与の支払いが行われるのに時間がかかるということは、請求書に対する支払いのために、当座貸越利息(一時的に口座がマイナスになるときにかかる利息)が発生することを意味する。つまり週末の食料品の買い物のために、十分なお金がないということにつながるかもしれない。こうした現実のために、消費者たちは給料担保金融業者(年間に徴収する利息は70億ドル/約7500億円)や小切手換金業者(年間手数料20億ドル/約215億円)に向かったり、もしくは貸越利息(年間240億ドル!/約2兆5700億円)を払ったりしているのだ。

アイデンティティはお金の中にプログラムされるべきだ

NPRはKickstarterの支払いを待っていたときに、次のように指摘した「Chase銀行の当座預金口座に電子的に送金するために、私たちが必要としているのはAmazon並に使いやすい銀行です。それは単なる情報伝達に過ぎないのです。どれくらい時間がかかるのでしょう。1分?1時間?いや、かかったのは5日でした」。こうなる理由は、米国でお金が動くレールが40年以上前に作られたものだからだ。クライン氏が指摘するように、今やワシントンDCからフィラデルフィアへの送金よりも、スロバキアからフランスへの送金の方が迅速に行えるようになっている。そしてこの遅延を修正することこそが、米国内での富の不平等と戦うための最も手っ取り早い手段である可能性があるのだ。

これはお金の将来にとっての、もう一つの明らかな勝利だ。

そしてその将来の兆候は現れ始めている。Earninのようなアプリや、ウォルマートなどの雇用主たちが、リアルタイムに労働者たちへの支払いを始めている。このことによって、人びとは自分が稼いだお金をすぐに使えるようになるのだ。Libraは自身のウェブサイト上で、お金を得ることそして使うことが「テキストメッセージを送信するのと同じくらい簡単で安価でなければならない」と述べている。お金はコミュニケーションと同じスピードで動くべきなのだ。

お金は「ワンクリック」で使えるべきだ

Amazonはワンクリック購入技術を追求し 、消費者と購入決断の間の最後の小さな障害を取り除いたことで有名だ。お金そのものもそうであって良いはずだ。お金を貯金し、友達に送り、融資や投資をしたり、請求書の支払いをしたり…こうした活動はみな使い勝手のよいUIに置き換えられるべきなのだ。しかし残念ながら、現在、あなたのお金にアクセスするためには、しばしばパスワード、PIN、ID、または2段階認証が必要になる。これらはすべてセキュリティにとって絶対に重要なものだが、不便を誘発しがちだ。

幸いなことに、過去数年のデジタルIDシステムはイノベーションの成熟が進んだ分野だった。現在スマートフォンのOSは、指紋やFace IDのようなバイオメトリック識別方法を使って、利用者のお金の使用承認をすることを可能にしている(成功の度合いは様々だが)。3Boxのような分散型IDシステムは、その上に構築された任意のサービスの許可に利用できる1つの汎用的な、自己所有IDプロファイルを売り込んでいる。

アイデンティティはお金の中にプログラムされるべきだ。もし通貨単位が「所有権」フィールドを持つことができるなら、ユーザーに結びついたより面倒の少ない識別子を用いてアンロックして、所有権が変わったときに再コードすることで、ワンクリック利用が可能になる。(これはEverledgerのダイヤモンド登録プログラムと同様に機能する)。これによって盗難も防ぐことができる。もし「所有権」IDフィールドが十分に守られていて、正当な譲渡でしか変更されないとするならば、仮にフィールドが不正に書き換えられた(つまり盗まれた)場合には、お金が使えないようにプログラムすることもできる。これは関連したある点を思い出させる…

お金は安全であるべきだ

モバイル決済の最も速い導入率を誇る都市の1つは、ソマリアのモガディシュだ。それは何故か?モバイルマネーが安全だからだ。モガディシュでは致命的な路上強盗が頻発しており、現金を持ち歩くことは生死に関わる問題なのだ。未来のお金は安全にデジタル化されているために、物理的な盗難がもはや不可能になっている。

お金は安定しているべきだ

ソマリアで、盗難がモバイルマネーの普及を促進している一方で、BBCによるレポート「 The surprising place where cash is going extinct (現金が絶滅する驚くべき場所)」は、近隣のソマリランドにおける、また別のキャッシュレス支払い促進要因を指摘している。ソマリランドシリングの急速な切り下げによって、以前は買うことができた商品が2倍の値段になってしまった。こうしたことから、買い物客たちは現金の束を使う代わりにモバイルドルを選ぶようになったのだ。

急激な変動がないこと。これは、Libraやその他のステーブルコイン(例えばGemini Dollarや、不幸な命運を辿ったBasisなど)たちが表明している約束の1つである。ケイトリン・ロング(Caitlin Long)氏は「発展途上国の中央銀行は、法定通貨の価値を維持する規律に欠けていることで悪名高いものたちです。このため購買力を失うこともしばしばあるのです」と指摘している。世界的なコンソーシアムが管理する通貨は、その不安定さを弱めることができる。

現在お金はどのように働いていて、将来どのように働くべきなのだろうか?

ハイパーインフレはそれほど珍しいことではない。私は2年前にジンバブエを訪れたときには、商品が3種類の価格で提示されている状況だった。昨年ヨーロッパでは1年の間に、トルコのリラが自身の危機によって、その価値を25%落とした。そして現在のベネズエラでは、インフレ率が100万%を超え、商品が買えない状況に陥っている。こうした出来事に対する最も一般的な説明は、国民がその通貨の価値を守る政府に対しての信頼を失ったときに、それは起きるというものだ。こうした価値の低下は、皮肉なことに、Bitcoinに安定を求めて、大量の資本逃避を引き起こした(ジンバブエの首都ハラレのBitcoin ATMもその1つだ)。

興味深いことに、Libraは提案された史上初の超国家的通貨ではない(経済学者ケインズ卿のバンコール計画を参照)。またLibraはバスケット方式に基づく最初の国際準備通貨でさえない。IMFはドル、ユーロ、人民元、円、そしてポンドに対して固定された混合国際準備資産であるXDRを管理している(Libraは人民元を除いた同じ通貨に対して固定される)。だがLibraは、非国家管理型としては世界初の国際準備通貨候補であり、個人が実際に使える初めてのものである。

米ドルが金本位制をやめたように、いつの日かLibra自身が(マット・リバイン氏が「共同フィクション」と呼ぶ)十分な固有の価値を持つようになり、その基礎となる通貨のバスケットから切り離すことができるようになるかどうかは、まだ不明である。

未来のお金は、個々の政府への信用に結びつくべきではない。急速な切り下げの危機に直面しないように、それ自身の価値と安定性を独立して保つべきなのだ。

お金は相互運用可能であるべきだ

インターネットの発展は全く違う形で行われたかもしれない。インターネットの黎明期を振り返ってみると、複数の競合する「囲われた庭」としてのインターネットたちが並行して成長し、ユーザーを奪い合い、そして相互の通信を拒むというシナリオは常に発生する可能性があった。幸いなことに、ICANNのような非営利団体の活動のおかげで、世界はほぼ1つのインターネット上で運営されている。中国のような特定のウェブサイトを利用できない国でさえも、インターネットのページは、世界中のあらゆる場所で使われているものと同じ一連のプロトコルを使用して、互いに通信している。

お金でも違いはないはずだ。ある通貨を使ってある国でランチ買うことと、同じ通貨を使って他の国でランチを買うことが、同じくらい簡単に行えるべきなのだ。物理通貨なのかデジタル通貨なのかを問わず、どんな購入行為に対しても、同じ支払いプロトコルが根底にあるべきだ。通貨間の移動は瞬時に無料で行われるべきであり(オンラインあるいはデジタルの)通貨取引所を訪れる必要はない。

極めて狭い用途向けに構築された暗号通貨(仮想通貨)の急増は、注目に値する。しかし真の相互運用は、利用者たちが手作業でそれぞれの通貨を交換することなく、面倒なく交換が行えるユースケースを実現する、世界共通の交換機構が登場することでしか実現しない。

異なる種類のお金は、地域別のものではなく、用途別のものであるべきだ

前項のポイントから派生した話題だ。もしお金が自分自身が何に使えるかを決定するルールを組み込んでいたとしたらどうだろうか?ダン・ジェフリース(Dan Jeffries)氏は、これがどのように見えるかについて、参考になる例をいくつか提供している:デフレーションコインはインフレーションに連動し、自動的に自身の価値を調整するだろう。またインフレーショントークンは、支払いを奨励するために、すぐに価値を失うように構成することができる。

政府は、環境にやさしい商品への支払いの際に、商品の価格を自動的に割り引く通貨を作成することによって、そうした商品の購入に報いることができる。通貨には、(例えばスターバックスなどが)特典やロイヤルティプログラムを自動的に組み込むことができる。特定の期間に使わなければ無効になってしまう通貨や、特定の日程になったり、特定のきっかけが与えられないうちは有効にならない通貨を考えることもできる。これは、単なる「デジタルゴールド」ではない「プログラマブルマネー」としての暗号通貨が行っている約束だ(これはEthereum/Bitcoinの議論である)。

お金はオープンな開発プラットフォームであるべきだ

もしお金がプログラム可能なものになれば、お金の上に構築できるものの可能性は、果てしなく広がる未踏の空間となる。最も明らかな例のいくつかは金融アプリケーションだ(例えば、プロジェクトLibraのウォレットであるCalibraのように)。

単一デジタル通貨の誕生と普及は、最初のステップにすぎない。そのステップに続いて、融資(機関投資家やピアツーピア)、投資、貯蓄、贈答などのアプリケーションが登場する。例えばユースケースとして、銀行にSMSで問い合わせて大きな買い物を行うための1週間のマイクロローンを申し込むことを想像してみよう、ローンは承認されてSMSで返信が返されてくる。あるいは、毎週子供への小遣いを自動的にSMSで送ることを想像してみよう、お小遣いを使い切ってしまわずに、一部を貯金に取り分けることができた場合には、それに対して「ボーナス」小遣いを与えることもできる。デビッド・グレーバー(David Graeber)氏が指摘するように、金融エコシステムの真の成長の可能性を生み出すのは、クレジット供与および投資アプリケーションだ。

多くの人びとはLibraを、その上に潜在的に無限のアプリケーションを構築して収容できる、iOSのApp Storeのような未来のプラットフォームとして捉えている。例えばこれらは、共通配車アプリ、航空リワードアカウント、eコマースエクスペリエンスなどで、みなお金が組み込まれた同じレールの上にプラグインされ、アカウント間のお金の移動を一切必要とせず、UIは完全にユーザーの(例えば何かを買いたいといった)意図によって駆動される。

お金は(なんらかの)ガードレールを持っているべきだ

お金が持っているべき最後の機能は、組み込みのガードレールだ。これは最も物議を醸している議論であり、検閲に抵抗する人たちや、自治的暗号通貨コミュニティの人たちの気持ちをざわつかせるようなものだ。

デジタルマネーには、安全ガードレールを作ったり、例えば、テロリストへの融資、ブラックマーケットの購入、マネーロンダリング、盗んだ資金の送金などを防いだりするための、トレーサビリティやプログラム可能なルールを、持たせられる可能性がある(たとえ、立法者たちの初期の反応が、懐疑から激怒までのすべてを含むとしても)。

それでも、デジタルマネーのガードレールに懐疑的になるべき正当な理由がある。抑圧的政権は、それらを資本逃避とオフショアリングを封じ込めるために使うことができる(これが中国におけるBitcoin向けの主要なユースケースだ)。彼らは個人の財布を狙って、移動や購入の自由を遮断し、個人の正確な物理的位置を追跡することができる。お金を無効にするために、ガードレール機能を悪用するバックドアハックは、国のインフラを完全に凍結し、金融システムをダウンさせるという影響を与える可能性がある。ガードレールをどこに設定するか、そしてそれらは国境を越えて異なるかどうかを検討する際には、そうした負の可能性も計算に入れることが重要だ。

お金の未来は始まったばかりだ。

なんと刺激的な時代だろう。何世紀にもわたる金融サービスのゆっくりとした進歩が、乗り越えられる可能性はこれまでになく高まっている。ブロックチェーンと暗号システムの創意工夫が組み合わされたインターネットは、世界を1つの金融標準に導く共通グルーバルネットワークのためのフレームワークを、構築できる可能性がある。ここからそこにたどり着く前には、答えなければならない疑問が山積している。だが触媒として振る舞うLibraを前にして、私たちはついに問いかけを始めているのだ。この先のさらなるイノベーションに備えよう。それはまだ始まったばかりなのだ。

【編集部注】著者のニック・ミラノビック(Nik Milanovic)氏は、モバイルペイメント、オンライン融資、クレジット、そしてマイクロファイナンスなどの分野で10年の経験をもつ、フィンテックならびにファイナンシャルインクルージョン(金融包摂)の信奉者である。

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(翻訳:sako)

FacebookのLibraは暗号通貨よりむしろ信用紙幣、金融当局はシャドーバンク化を強く警戒

米国時間6月18日、Facebookは新しい暗号通貨システム、Libraと運営母体となるNPO、Libra Associationの設立を発表した。Libraのホワイトペーパーは他の暗号通貨ビジネスにも大きな反響を呼んでいる。ただし率直に表現すれば、LibraはBitcoinより銀行に近い。

メンバー限定のブロックチェーン

Libraはビザンチン・フォールト・トレランント性を組み込んでおり、マークルツリーによるハッシュ化を用いて取引記録の縮約を行うなど通常のBlockchainテクノロジーをベースとしている。

しかしBitcoinやEthereumなど現在ポピュラーな暗号通貨とは異なり、誰もが自宅で採掘のためのノードを動かすことができなるわけではない。Libra Association の正式メンバーだけがノードを持てる。現在ノード運営能力をもつメンバーは Vodafone、Mastercard、Visa、Stripe、Uber、Spotifyなど28社に限られている。

Libraは一見するとブロックチェーンだが本当に分散化されたブロックチェーンではない。取引内容を記録したレッジャーにアクセスできるのもLibra Associationの正式メンバーに限られる。Facebookないし運営協会のメンバーが公衆向けAPIを作れば別だが、 今のところLibraはオープンなプロダクトではない。

もちろん、Facebookはこの点を認識しており、5年以内に「誰もがノードを運営できるようにする」計画だと述べている。(略)

リセラーは事前認証が必要

Libraは安定した価値を提供するステーブルコインの一種だ。Libraは他種類の法定通貨や債権のバスケットとリンクしている。このためLibra Associationのメンバーが採掘ノードを稼働させて新たなLibraを創造する場合、非常に複雑な処理と監視が必要だ。また売却や保管は通貨や債権を金融機関が処理する方式に準ずる。

これと同様、ユーザーがLibraを米ドルと交換したい場合、Libra Associationは法定通貨の場合と同様売り注文を出さねばならない。

このため、Libraの売買にはLibra Associationに事前に認証されていなければならない。このためLibraのエコシステムにとってLibra Associationは運用の中心をなす規制団体となる。

これは暗号通貨の分散性の理想には反するものだ。消費者がLibraを利用して支払いを行いたいという場合、中小の金融機関は運営協会が認証したリセラーに仲介を以来する以外ない。Libra Associationはデジタルマネーに関するVISAやMastercardのような存在になる。

ただしUSDCなど他のステーブルコインも基本的に同様の考え方で運用されている。例えば、USDCを支払いサービスに利用したならまずCENTREコンソーシアムのメンバー資格を取得しなければならない。(略)

シャドー・バンキング

フランスのブルノ・ル・メール経済財務大臣が Europe 1のインタビューに答えて「Libraは(強制通用力を持った)法定通貨には絶対になり得ない」と強い口調で語った理由はここにある。 もちろんインフレ率の高い国ではステーブルコインであるLibraはヒットする可能がある。こうした場合、消費者だけでなく企業も取引に利用するようになるかもしれない。

しかし現在法定通貨を発行し、金融政策の舵取りをしている各国中央銀行はIMF(International Monetary Funds)のメンバーであり、営利企業の連合とは目的、性格が大きく異なる。

現在のLibra Associationのメンバーを考えれば。Libraが法定通貨に準ずる存在になる可能性はある。ベネズエラ、アルゼンチン、トルコ、南アフリカなど高インフレ率に悩まされている国で特にそうだ。しかしLibra Associationのメンバーは営利企業であり、金融政策の適切化を目的としていない。

EUは長年単一市場を目指してきたが、各国の予算、税制、金融政策に関して一致できたことは一度もない。同様に中国もシャドーバンキングの急激な拡大に伴い、金融におけるシステミックリスクに直面している。

Lbraは新たな巨大シャドーバンキングになる可能性があるため、各国政府は厳重な監視の必要性を感じている。民間企業の集合体であるLibra Associationはビジネス上の理由から一夜にして方針を変えかねない。例えば、Libraの価値を担保している信用紙幣と債権のバスケットからある国の信用紙幣を外す決定をするかもしれない。もし債権の売出しを始めたらどんな影響があるだろう?

要約すれば、Libra Associationが今後運営しようとしているのは準信用紙幣だ。すまり各国の金融当局とさまざまな面で激しい摩擦を予期しなければならない。安全なデジタルマネーを供給するというテクノロジー面だけでなく、いかにして金融政策との調和を図りながら組織を運営するかも困難な課題となるだろう。

画像:Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

【以上】

Facebookの新暗号通貨プラットフォーム「Libra」を解剖する

米国時間6月18日、Facebookは独自の暗号通貨、Libraを発表した。プロジェクトの内容はTechCrunchの今月始めの予測とほぼ一致していた。LibraはFacebookが構築しようとしている新しい金融システムの一環となるものだ。

Libraを利用したウォレット・サービスのためにCalibraという子会社も設立された。またMastercard、PayPal、Visa、Uber、Andreessen Horowitz、Creative Destruction Labなど有力企業が提携先となっている。

FacebookのLibraイニシアティブは革新的、野心的である一方で大きなリスクもはらんでいる。実はLibraには先行する試みがあり、これと比較することがFacebookのビジョンを理解するために役立つとおもう。

ここで考えているのは英国ロンドン発のモバイルチャットサービスのKikと、そのソーシャルネットワークを利用した仮想通貨のkikkinだ。KinについてTechCrunchの読者に一番よく知られているのは、SEC(米証券取引委員会)に訴追を受けていることだろう。SECはKikが2017に実施したICO(暗号通貨による資金調達)を違法としている。KikはこのICOで1億ドルを調達したが、公衆からの資金調達に必要な認可をSECから得ていなかった。

KikのCEOであるTed Livingston(テッド・リビングストン)氏によれば「Kikが暗号通貨は通貨の一種でありSECの管轄外と考えているのに対し、SECは管轄内の証券の一種と考えていることによる」のが根本的な対立点だという。両者の主張の法的当否は別として(仮に通貨だとしてもKikには法定通貨を発行する権限がないのは明らかだ)、KinはFacebookが独自の暗号通貨を作った背景、仕組み、将来構想を理解するために役立つ。

Creative Destruction Labのイベントで先週、リビングストン氏は「我々には資金が必要だった」と語った。Kinはこの極めて差し迫った問題に対する回答だった。Kikではいくつか異なったマネタイズを試してきた。ひとつはCardsモデルで、これはモバイルメッセージアプリ内にHTML5で書かれたツールやゲームが利用できるエコシステムだ。これは中国のWeChatモデルに近い。

Kikは英国発のメッセージアプリとして大成功した(ただし子供を狙う犯罪者に愛用されているという指摘もあった)とはいえ、規模はFacebookとはかけ離れている。そのためFacebookのように安定した広告収入を得ることはできなかった。 LivingstonのCEOの回想によれば、2011年にKik はBitcoin(ビットコイン)を知り、「これが我々が探していたビジネスモデルかもしれない」と考えたのだという。

リビングストン氏は「ユーザーのコミュニティに自然な形で簡単、迅速に価値を交換できるため暗号通貨はKinのプラットフォームにとって大きな意味があると気づいた」と語った。Kinのコミュニティはクッキングなどメンバーの得意分野の知識を交換する場になっていたので、支払い手段として暗号通貨は適していた。

KikにとってカギとなったのはKinを利用することがユーザーにもデベロッパーにも利益となるようなモデルを構築できるかどうかだった。Kikやデベロッパーには当然ながらkinの普及を図る動機があったが、ユーザーがKinを利用したくなる動機とは別のものだった。リビングストン氏よれば、暗号通貨でサービス提供者とユーザーとの利益を調整するのは広告モデルのビジネスとは決定的に違うという。このため両者のインセンティブがまったく噛み合わないケースが出てくるのはわれわれもたびたび見てきた。

SECによる訴追も含めKinの将来については不確定な要素が多いが、上で述べた問題はすべてLibraにも当てはまる。両者の違いは規模だ。Facebookは成熟した大企業であり、それ自身の巨大な経済圏を持っている。Kikは暗号通貨を資金調達手段として利用した。これはすぐにも資金が必要だったからだ(そこでICOに飛びついた)。

Kikにはビッグネーム企業多数をプラットフォームに参加させ、自力で市場の構造そのものを変えるような力はなかった。見切り発車してコミュニティーに活用されることをデモし、投資家やパートナーが後から参加してくることに望みをつないだ。、

これに対し、FacebookはKikが持っていなかったものをすべて持っている。企業規模と市場支配力はプロジェクトのスタート当初から大企業をパートナーとして参加させるのに十分であり、背に腹は代えられない資金調達の必要にも迫られていない。もしプロジェクトが失敗しても機会損失というコスト生じるだけだ。また今後も相当期間、広告ビジネスからの安定した収入が見込める。

しかし根本的なレベルではFacebookとKikの暗号通貨プロジェクトは極めて似ている。 暗号通貨による決済プラットフォームは広告モデル以上にユーザーに利益をもたらし長期にわたって維持可能なビジネスモデルとなるという認識だ。

現在のところFacebookのLibraは広告ビジネスに対するリスクヘッジという意味が強い。これがFacebookの生き残りをかけたコミットメントに変わるときに真価が問われることになるのだろう。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

DAppsをスマホから楽しめるウォレットアプリ「GO! WALLET」のAndroid版登場

スマホからDAppsを利用できるブラウザ搭載ウォレットアプリ「GO! WALLET(ゴーウォレット)」を展開するスマートアプリは6月18日、同アプリのAndroid版をリリースした。

GO! WALLETはイーサリアムのウォレット機能とDAppsのブラウザ機能を兼ね備えたサービス。現在ERC20・ERC721形式に対応しており、これらに該当するトークンやアセットをウォレットで管理できるほか、イーサリアム上で動くDAppsアプリやブロックチェーンゲームをスマホから楽しめるのが特徴だ。

スマートアプリでは2018年10月にGO! WALLETのiOS版をリリース。10月末にはセレスから5000万円を調達し、同アプリのアップデートに取り組むとともにAndroid版の開発を進めてきた。

iOS版のリリース時からはアプリ上でDAppsや仮想通貨に関連するニュースが読める機能が加わったほか、2019年3月より独自のリワードポイント「GO!ポイント」をスタートしている。

これは広告の閲覧やアンケートの回答、商品の購入など該当するアクションを行うことで報酬となるポイントを得られる仕組み。貯めたポイントはETHやDAppsのアセットなどと交換(アセットとの交換については現在準備中)でき、スマートアプリ代表取締役社長CEOの佐藤崇氏によるとこれが1つのフックとなって国内外でユーザーが広がっているという。

現在は英語圏向けだけでなく中華圏・韓国語圏・ロシア語圏向けにもサービスを展開していることもあり、約2万人のiOS版ユーザーの内訳を見ても日本に続いてロシアやウクライナ、ベトナムなどのユーザーが多い。

佐藤氏の話では日本でも昨年秋に「My Crypto Heroes(マイクリプトヒーローズ)」が登場し、これを機にこれからイーサリアムをベースとしたブロックチェーンゲームが増えてくるのではないかとのこと。

スマートアプリでは「GO! WALLET」を軸として、国内はもちろん全世界のDApps・ブロックチェーンゲームとユーザーとの接点となるマーケティングプラットフォームを構築し、これらの経済圏の拡大を目指していくという。

今後はBTC、EOS、ICNなどのマルチトークンへの対応を予定。また煩雑な登録作業がほとんど必要無いサードパーティウォレットアプリとして一定の支持を得ていることもあり、カジュアルに仮想通貨や仮想通貨を活用したサービスを始めたいユーザーの受け皿となるように、ウォレット機能のアップデートにも取り組んでいく計画だ。

Aion NetworkがJava用ブロックチェーン仮想マシンを発表

Aion Networkは、ブロックチェーン技術を促進するためのツールの開発に注力しているNPOだ。米国時間の6月5日、一般的なJava Virtual Machine(JVM、Java仮想マシン)上に構築された新しい仮想マシンを発表した。最終的な目標は、デベロッパー間のブロックチェーン人気を高めることにある。

AionのCEO、Matthew Spoke氏によれば、ブロックチェーンの採用を広める際に障害となっているのは、Javaのような共通言語のデベロッパー向けツール類が欠如していることだと言う。長年使われてきたJVMの上に、ブロックチェーン専用の仮想マシンを構築することができれば、ブロックチェーンの利用をさらに推し進めることができるようになると、Aionは考えている。

Aionが発表したのは、AVM(Aion Virtual Machine)と呼ばれる、JVMの上で動作する仮想マシンだ。AVMを利用すれば、デベロッパーは使い慣れたツールセットを使って、ちょうどスマートコントラクトのような感じでブロックチェーンを使った開発が可能となる。JVMはいっさい変更する必要がない。

「JVMは変更したくなかったのです。そこで、JVMとやり取りできるある種の補助的なソフトウェアのレイヤーを作ればいいと考えたのです。ブロックチェーンには、固有のクライテリアがあります。決定性が求められ、演算処理はノードの分散ネットワーク上で実行される必要があります。しかし、JVMはこうした必要性を念頭に設計されたものではありません」と、Spoke氏は説明する。

Aionは、すでにあるものを作り直すことなく、ブロックチェーン用の仮想マシンを開発することにした。Javaが、もっとも人気のあるプログラミング言語の1つであることは十分に承知していたので、それに抗うこともしたくなかった。むしろ、その人気を利用したいと考えた。そこで、JVMの上で動作する一種のブロックチェーン用インタプリタを開発することにしたのだ。それならJVMの邪魔をすることがない。

「新しいシステムのメリットを売り込むのではなく、デベロッパーが慣れ親しんでいるシステムを、ブロックチェーンの上に持ってくることはできないだろうか、と考えました。そこで、その方向で開発を開始したのです。それから約1年間ずっと取り組んできて、こうしてリリースにまでこぎつけることができました。設定した課題を解決することができたのです」と、Spoke氏はTechCrunchに語った。

これまでのところ、Aionは仮想通貨のコミュニティに焦点を当ててきた。しかし同社は、ブロックチェーンを本当に広めるには、元来の信者の領域を超えていかなければならないと感じていた。それには、これまでブロックチェーンに真剣に取り組んだことのないデベロッパーを取り込めるようなものが必要だった。

「今私たちが注力しているのは、ブロックチェーンを利用したアプリの開発方法を、より伝統的なソフトウェア業界のデベロッパーに広く伝えることです。仮想通貨のデベロッパーの注目を得るために競うのではなく、ブロックチェーンをマイクロサービスのレイヤーのように扱えるものにしたかったのです。一般のソフトウェアデベロッパーが日々取り組んでいるようなものです」と、Spoke氏は続けた。

このようにして、ブロックチェーンのサービスにアクセスするための方法を提供することによって、それ以外の方法ではブロックチェーンに親しむことがなかったようなデベロッパーにも、ブロックチェーンのコンセプトを根付かせることができればと、Aionは考えている。これは、よりビジネス指向のユースケースにブロックチェーンを導入しようとする試みの1つに過ぎないが、Aionとしてはこれについて熟考を重ねてきた。そして、このアプローチによって、より広い分野のデベロッパーに対して、ブロックチェーンの利用を促すことができると信じている。

画像クレジット:scyther5/Getty Images

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

HTCはブロックチェーンスマホの普及機を発表、Zion Vault SDKオープンソース化

HTCは、Blockchain Weekで、近々発売予定のHTC Exodus 1sについて紹介し、このイベントを盛り上げるのにひと役買った。この好奇心をそそられる最新のブロックチェーンスマホは、Exodus 1の低価格版に相当するもの。Exodus 1は、一般の通貨での支払いも可能にした際に、699ドル(約7万7000円)という値段が付けられていた。

HTCは、やはりまだ正確な価格については明らかにしたくない様子で、単に「より価格重視のバージョン」とだけ称している。また、HTCは製品コストを下げるために、どの部分を削ったのかについても語らなかった。それについてはGoogle Pixel 3aという低価格機と似たような部分になるのではないかと推察される。ちなみに、Pixel 3aは元はHTCのチームによって開発されたものだ。Pixel 3aの場合、低コスト化によって影響を受けたのは、プロセッサーの処理能力と本体の素材が主だった。もちろん、Exodus 1の半透明リアパネルは、いい意味でギミック感があって、なかなかいい感じだったのだが。

ここで最も興味深いのは、低価格版を開発することにした動機だ。HTCのプレスリリースには以下のように述べられている。

これによって、新興経済国のユーザーや初めて暗号化の世界に足を踏み入れようというユーザーでも、手を出しやすい価格でこのテクノロジーにアクセスできるようになります。その結果、暗号化技術とブロックチェーン技術へのアクセスが民主化され、世界的な普及と受容が促進されるはずです。HTCは、今後数カ月以内に、詳細な仕様と正確な価格について公開する予定です。

これはちょっと大げさなビジョンかもしれないが、このアイデアには見るべきものがあると思われる。ブロックチェーン技術を利用するには、それに要する金額がネックになる場合がある。それでも、この分野の専門家の多くは、ブロックチェーンがこの先オンラインでの少額取引の重要な基盤となるということで意見が一致している。Exodus 1は、状況からして必ずしも大ヒットしたというわけではなかったが、これは最初の一歩として、興味深いものになるかもしれない。

今回の発表の中で、もう1つ興味深いのは、Zion VaultのSDKをオープンソースにするということだ。Zion Vaultは、HTCがExodus 1に導入したシステム保護機能、TEE(Trusted Execution Environment)だ。HTCでは、このSDKをデベロッパー向けにGitHubで公開する予定としている。「堅牢さとセキュリティを確保するには、コミュニティの力が不可欠だと理解しています」と、HTCは述べている。「そこで、Exodusチームにとって重要なのは、私たちのコミュニティが、ベストなツールを入手できるようにすることなのです」。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

マイクロソフトがフルマネージドブロックチェーンサービスを開始

Microsoft(マイクロソフト)は、ブロックチェーンテクノロジのAzureクラウドコンピューティングプラットフォームへの取り込みを急いではいなかった。しかしここ1年ほどの間に同社は、ブロックチェーン開発キットAzure Blockchain Workbenchを立ち上げ、そのペースを加速してきた。そして米国時間5月2日、開発者会議のBuildに先立ち、同社はAzure Blockchain Servicesを立ち上げることでさらに一歩前へと踏み出した。このサービスは、コンソーシアム型ブロックチェーンネットワークの形成、管理、そしてガバナンスを可能にするフルマネージドサービスだ。

ただし、ここで語られているのは暗号通貨の話題ではない。これは、企業たちがブロックチェーンテクノロジーの上に、アプリケーションを構築するのを支援することを目的とした、エンタープライズサービスなのだ。これはAzure Active Directoryと統合されており、新しいメンバーの追加、権限の設定、およびネットワークの正常性とアクティビティの監視を行うためのツールを提供している。

最初にサポートされる元帳はJ.P. Morgan(JPモルガン)のQuorum(クォーラム)である。「Quorumは世界最大のブロックチェーン開発者コミュニティを擁する、人気の高いEthereum(イーサリアム)プロトコルの上に構築されているので、それを選択するのは自然な選択でした」と本日の発表で述べたのは、AzureのCTOであるマーク・ルシノビッチ(Mark Russinovich)氏である。「これは、企業の顧客が要求している機密トランザクションもサポートしながら、豊富なオープンソースツールのセットと統合されているのです」。この統合を提供するために、MicrosoftはJ.P. Morganと緊密に連携を行った。

ただし、マネージドサービスはこのパッケージの一部に過ぎない。本日Microsoftはまた、開発者のスマートコントラクト開発を支援するVisual Studio Codeの拡張機能の提供も開始した。この拡張機能を使うことで、Visual Studio Codeユーザーは、Etheriumスマートコントラクトを作成およびコンパイルして、それらをパブリックチェーンまたはAzure Blockchain Service上のコンソーシアム型ネットワークに展開することが可能になる。そしてコードはAzure DevOpsによって管理される。

Microsoftの2つのワークフロー統合サービスであるLogic AppsFlowや、イベント駆動型開発用のAzure Functionsとの統合によって、これらのスマートコントラクト用のアプリケーション開発もさらに容易になる予定だ。

もちろんMicrosoftは、このゲームに参入する最初の大企業ではない。特にIBMは、近年ブロックチェーンの採用を強く推進しているし、AWSもまたこれまではこの技術をほぼ無視していたものの、いまやゲームに参加しようとしている。実際に、AWSはわずか2日前に、独自のマネージドブロックチェーンサービスを開始したばかりである。

AWSのマネージドブロックチェーンサービスが一般に公開

昨年マネージドブロックチェーンサービスの立ち上げを発表したAmazon Web Servicesが今日(米国時間4/30)、そのサービスの一般供用を開始した

AWSのCEO Andy Jassy氏が、これまでの同社の、ブロックチェーンの技術を無視する姿勢を改め、Hyperledger FabricやEthereumのようなオープンソースのフレームワークをベースに新しいサービスを展開する、と述べたのはわずか5か月前だ。

関連記事: AWS launches a managed blockchain service…AWSがマネージドブロックチェーンサービスを立ち上げる(未訳)

AWSでAmazon Managed Blockchainを担当することになったゼネラルマネージャーRahul Pathak氏は、声明でこう述べている。「顧客はHyperledger FabricやEthereumなどのブロックチェーンフレームワークを使ってブロックチェーンネットワークを作り、トランザクションのイミュータブルな記録を作りながら事業を迅速に運びたい、ただし管理権限は一点に集中したい、と考えている。しかしながら彼らにとっては、そういうフレームワークのインストールも構成も管理も難しい。Amazon Managed Blockchainは、ノードのプロビジョニングや証明の管理とセキュリティ、そしてネットワークのスケーリングのお世話をする。顧客はすぐ使えるブロックチェーンネットワークを迅速かつ容易にセットアップでき、ブロックチェーンネットワークの運用に時間を取られずにアプリケーション開発に専念できる」。

すでにAT&T BusinessやNestlé、シンガポール証券取引所などが同社のサービスの登録ユーザーになっている。

この発表でAWSは、マイクロソフトのAzureやIBMなどのエンタープライズ大手と共に、BaaS(Blockchain as a Service)のゲーム仲間になる。

関連記事: Microsoft wants to make blockchain networks enterprise-ready with its new Coco Framework…マイクロソフトのエンタープライズ向けブロックチェーンネットワークを作るCoco Framework(未訳)

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa