モバイルファクトリーがブロックチェーン関連の新会社「ビットファクトリー」設立へ

位置情報連動型ゲーム「ステーションメモリーズ!(駅メモ!)」などで知られるモバイルファクトリーは7月25日、ブロックチェーン関連事業本格化にあたり新会社、「ビットファクトリー」を設立すると発表した。代表取締役はモバイルファクトリー代表取締役の宮嶌裕二氏が務める予定だ。

新会社ビットファクトリーはDapps(分散型アプリケーション)の普及を目指しており、そのプロジェクトを「Uniqys(ユニキス)Project」と呼んでいる。手軽にDappsで遊べるモバイルユーザー向けサービス「Quragé(クラゲ)」と、手軽にDapps開発が可能となるデベロッパー向けサービス「Uniqys Kit」を包括する「Uniqys Network」を構想している。

新会社設立の発表と同時に、プロジェクト第一弾となるウォレット機能付きモバイルDappsブラウザQuragéのAndroid版を同日にリリース。iPhoneユーザーは年内には同サービスが使えるようになるという。また、Dapps紹介メディア「Quragé Magazine」も同日にリリースされ、Uniqys Kitの開発者向けプレビュー版もGitHub上で公開された。

Uniqys Kitは2018年の冬にベータ版を公開予定。2019年には正式リリースを目指している。同ツール上では一般的なWebアプリと同様に作りやすい言語でDapps開発が可能となり、トランザクション手数料やブロック報酬を無料、定額も含めて自由に選択できるようになる。また、Ether(ETH)またはデベロッパーによる独自トークンを流通させることも可能になるという。

同社は「ゲーム事業に留まらず、SNSやシェアリングエコノミーなど、多くのサービスがDappsに置き換えられていく力を秘めている」と感じている。だが、「日本発のDappsはまだまだ少ないのが現状」のため、「そのような次世代のインターネットとも言うべき可能性を秘めたDappsを普及するため、Dappsを身近に、そして、容易に開発できる環境を提供すべくUniqys Projectを発足した」と説明している。

モバイルファクトリー代表取締役の宮嶌裕二氏は、ブロックチェーンを「次世代のインターネットのようなものだと思った」と説明。だが、「イーサリアム(をはじめとしたブロックチェーンプラットフォーム)は数年後、もう1つのインターネットになる」と期待している一方、現状のままでは「一般には普及しない」とも説明した。

新会社の設立以前、モバイルファクトリーがブロックチェーン関連サービスの開発に着手した当初、ゲーム分野での進出を構想していた。だが、イーサリアムに代表されるブロックチェーンプラットフォーム上に先行してリリースされている複数のゲームを研究した結果、トランザクションの手数料が高かったり、モバイル環境での動作が想定されていないゲームが大半であったり、といった課題があることがわかったという。また、デベロッパーにとってもイーサリアムのままでは作りにくい、というところがもう1つの課題だと話した。

その課題を解決するためのソリューションがQuragéとUniqys Kitだ。

取材中、宮嶌氏は「企業がこぞってホームページを提供しはじめた、20年前を思い出して欲しい」と繰り返した。「それから数年をかけて会社概要を掲載したホームページだけでなくユーザーとの重要な接点としてインターネットがECなどに活用されるようになった。当時と同じように、これから2~3年内に多くの企業がユーザー接点のひとつとして分散型アプリを当たり前に提供するようになり、ある程度のユーザーを持つ企業は、独自トークンを発行しはじめる世界がやってくる」(宮嶌氏)

新会社ビットファクトリーに関しても、Uniqys Network内で使える独自トークンを構想中だという。

Global Informationの「ブロックチェーン技術の世界市場予測2022年」によると、世界のブロックチェーン技術の市場規模は、2017年の4億1150万米ドルから2022年までに76億8730万米ドルへ拡大すると予測されている。また、IDC Japanの「2017年国内ブロックチェーン関連ソリューション市場ビジネス動向:分散アプリケーションプラットフォームの可能性」は、内におけるブロックチェーン関連ソリューション市場は、2016年〜2021年の年間平均成⻑率133.0%、2021年市場規模は298億円と予測している。

今後もUniqysをはじめとする新たなブロックチェーン関連サービスに注目したい。

写真左がモバイルファクトリー代表取締役の宮嶌裕二氏、右が取締役の深井未来生氏

分散ファイル共有サービスの老舗BitTorrentをブロックチェーンの若手スタートアップTronが買収

ファイル共有サービスBitTorrentの今日(米国時間7/24)のブログ記事によると、同社はブロックチェーンのスタートアップTronの一部になった。買収の噂は先月の中ごろから流れていたが、これで確実となった。BitTorrentは詳細を述べていないが、Tronはブロックチェーンという未開の世界への比較的新しい参入者だ。買収額は1億2600万ドルと言われている。

BitTorrentはもちろん、そこらのひよっ子ではない。同社は2004年にサンフランシスコで生まれ、Napster以前の時代におけるファイルシェアリングの代名詞とも呼べるプロトコルを開発した。

BitTorrentによると、現在のアクティブユーザーは全世界で約1億、彼らはクライアントとして主にBitTorrentとBitTorrent Nowを使っている。後者はビデオや音楽の用途が多い。同社は今後も、これらクライアントのメンテナンスを継続し、Tronのサンフランシスコ・オフィスから“Tronのグローバルなビジネス開発とパートナーシップへの強力なサポートを提供し、また、世界最大の分散エコシステムとしてのビジョンを追求していく”、という。

Varietyの記事によると、BitTorrentは最近、買収をめぐるユーザーの懸念を解消するために、“今後もこれまでのサービスをそのまま継続する。将来的にも暗号通貨の採掘に弊社のサービスを提供する予定や計画はない”、と言っていた。

しかし今後の計画については、まだ何も発表されていない。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

ブロックチェーン・アプリ開発ツールのTECHFUNDが1.2億円を調達、起業家への技術支援を加速

写真右からTECHFUND代表取締役の川原ぴいすけ氏、共同代表の松山雄太氏

スタートアップや起業家の技術的支援を行うTECHFUNDは7月17日、野村ホールディングスのコーポレート・ベンチャーキャピタルファンド、ユナイテッド、インフォテリア、西川潔氏、竹内秀行氏、そのほか数名の個人投資家を引受先とする1億円の第三者割当増資、ならびに西武信用金庫と日本政策金融公庫からの2000万円の融資により、総額1.2億円の資金調達を実施したと発表した。

同社は2018年6月21日に、ブロックチェーン・アプリケーションの開発を支援するサービス「ACCEL BaaS」β版をリリース。今回の増資をもとに、同サービスの開発を加速させるという。

ACCEL BaaSの強みは簡単にブロックチェーン・アプリケーションを開発できること。APIを呼び出してブロックチェーン・アプリケーションの開発に必要となる基本機能を実装することが可能だ。特定のプログラミング言語に依存しないため、ウェブだけでなくIoTや基幹システムなど多様なケースへの導入が想定されているという。

同サービスは頻繁に使われるスマートコントラクトをテンプレート化、そして設定をGUI化することで、Solidityなどのプロトコル固有の開発言語に習熟せずに、一般的なブロックチェーン機能を提供できるように設計されている。

また、各種ブロックチェーンのプロトコル間で互換性を担保。サービス開発の検証におけるプロトコル間のスイッチングコストを低減し、本番稼働までスピーディに移行できる。現在はEthereumのみの対応だが、NEOやLISKなど各種ブロックチェーンに順次対応していく予定だ。

代表取締役の松山雄太氏は「ブロックチェーンで何かをやろうと思った時に、実際にサービス化出来ないとうケースが非常に多い」と開発理由について説明。

共同代表の川原ぴいすけ氏は「僕たちのサービスを使うと、簡単なDapps(分散型アプリケーション)が5分くらいで作れたりする。そういった意味で、ブロックチェーン・アプリのケース・スタディーを爆発的に量産させたい。そうすることによって、イノベーションの波を作っていく、というところに寄与したい」と語った。

TECHFUNDは2014年10月9日に設立。お金の代わりに技術を投資することによってスタートアップを支援する技術投資ファンド(同社いわく世界初)として活動を開始した。これまで250チーム以上のメンタリング及びデューデリジェンスに携わり、6社への技術投資を実行したという。

だが、いわゆるコンサルティング・サービスを提供してきた同社がプロダクトをリリースするのは今回のACCEL BaaSが初めてだ。川原氏は「そういった意味では大きな転換期だ」と話した。

松山氏によると、これにより「より多くのスタートアップを支援できる」という。「色んなところに拠点を持つ、もしくは拠点がないスタートアップが多くなってきている」と説明し、「私たちがスタートアップを支援するには、物理的な支援よりも今回のツールのような間接的な形による支援が一番良いと思った」と述べた。

とは言え、ACCEL BaaSもリリースしてからまだ1ヶ月ほどしか経っていない。同社は調達した資金を「プロダクトの開発であったり、マーケティングに使用していく」という。

その上で、川原氏は「目指すべきところは ICOプラットフォームの創造。まずはDapps、ブロックチェーン界隈の市場をつくっていく必要がある」と語った。

「今回、インフォテリアというBCCC(Blockchain Collaborative Consortium、ブロックチェーン推進協会)を主導しているような株主にも参画していただいた。力を借りながら、“ブロックチェーンは必要だ”という市場を作るというのが、直近でやるべき事だと思っている」(川原氏)

GunosyとAnyPayがブロックチェーン関連事業を行う合弁会社「LayerX」の設立へ

写真左がLayerX代表取締役社長となるGunosy代表取締役 最高経営責任者の福島良典氏、右が代表取締役副社長となるAnyPay取締役の日向諒氏

GunosyAnyPayは本日7月12日、ブロックチェーン関連事業を行う合弁会社「LayerX(レイヤーエックス)」の設立について合意したと発表した。

同社の代表取締役社長はGunosy代表取締役 最高経営責任者の福島良典氏、代表取締役副社長はAnyPay取締役の日向諒氏、資本金は5000万円(株主構成はGunosy:50%、AnyPay:50%)となっており、設立は2018年8月1日を予定しているという。

新会社LayerXではブロックチェーン技術に特化したコンサルティングや開発、自社サービスの運営を軸に展開する方針。具体的にはトークンの設計コンサルティングや開発、ハッキングを防ぐコード監査、そして仮想通貨マイニングに関する事業などを検討しているそうだ。

これまでAnyPayではICOコンサルティング事業を展開。一方のGunosyでも2018年5月よりシェアオフィスなどの運営を手がけるツクルバと、ブロックチェーン技術の不動産領域への活用にむけた共同研究を開始している。

日向氏はTechCrunch Japanの取材に対し、「AnyPayがビジネス面、Gunosyが開発面でのサポート。合弁にして一緒にやっていくことで相乗効果が出てくる」と意気込んだ。

IDC Japanは2017年6月に発表した調査で「国内ブロックチェーン関連ソリューション市場の市場規模は今後急速に拡大し、2021年には298億円、2016年~2021年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は133.0%になる」と予測している。

そのような状況が背景にある中、福島氏は「おそらくこのブロックチェーンによる変化は数十年に一回あるか無いかの変化。ここに専念するというのが会社としての流れだ」と語った。

Gunosyは役割の明確化のために、代表取締役を2名体制から1名に変更。代表取締役 最高経営責任者は⽵⾕祐哉氏が勤め、福島氏はGunosy取締役 ファウンダー、そしてLayerX 代表取締役を兼任することになる。この異動は2018年8月24日に正式に決定される予定だ。

「代表である僕が新会社に専念する形になる。それだけ本気でこの領域を立ち上げる」(福島氏)

新会社LayerXはICO市場で技術的に⾼度で専⾨的なサポートへの需要が⾼まっていくと予測し、設立される。

コード監査事業に関しては、福島氏の話だと「スマートコントラクトでは一度コードをすると契約が自動的に執行されるため、性質上バグが入り込んでしまっても容易に修正できない。海外の大きなプロジェクトではプロフェッショナルに事前のコードチェックが当然のようにやられている」そう。今後日本でもブロックチェーンのアプリケーションが増えていく中で、同じような需要が増えていくことを見据えた事業になるという。

また、マイニングに関する事業に関して、「課題としては今、中国がマイニングのシェアの7割以上に到達している。この状態は仮想通貨・ブロックチェーンの未来を考えると良い状況ではない」と説明した上で、「日本の電気代とかだとなかなかマイニングするのが難しく、そもそもマイニング自体の専門的な知識も必要だ。たとえば僕たちが海外の良い場所を探してきてお客さんに提供できないか、といったことを検討している」と語った。

福島氏はGunosyの今後の方針に関して、「Gunosyはニュースアプリや、”LUCRA”のような女性向けメディアなどの”メディアの会社”としてやってきたが、本当の強みは裏側のアルゴリズムなどのテクノロジーの部分だ。メディアカンパニーというところから、テクノロジーの総合カンパニーに移行していく」と語った。

なお、Gunosyは同日、技術革新や規制緩和が期待できる領域のスタートアップに対する投資育成を行うコーポレートベンチャーキャピタル「Gunosy Capital」を設立することを発表した。「主にブロックチェーン/シェアリングエコノミー/AI 等のデジタル領域等、今 後規制緩和や技術革新が期待できる領域に対する投資育成」を目的としているという。設立は2018年9月1日を予定している。

Linux Foundationのブロックチェーン支援事業Hyperledger Projectがコードベースを充実

【抄訳】
ブロックチェーン革命が近づいているが、でも、その姿は目に見えないかもしれない。Linux FoundationのHyperledger Projectの事務局長Brian Behlendorfは、そう見ている。

スイスのツークで行われた本誌TechCrunchのブロックチェーンイベントTC Sessions: BlockchainでBehlendorfは、ブロックチェーンの導入でもたらされるイノベーションの多くは、いわば舞台裏で、人に知られることなく起きるのだ、と説明した。

Behlendorfは曰く、“多くの消費者にとって、銀行や政府のWebサイトのWebフォームが背後でブロックチェーンを使ってることは、分からないしどうでもいいことだ。LinkedInのプロフィールで、学歴が詐称だったらそこにグリーンのチェックマークが表示されても、その機能がブロックチェーンを利用していることを一般消費者は知らない。すべてが、舞台裏でひそかに行われる”。

“でもこれは、ストレージとネットワーキングと消費者の革命なのだ”。

ブロックチェーンが大きなインパクトを与える分野は何か。Behlendorfの考えでは、真っ先に大きく変わるのはオンラインのアイデンティティの領域だ。今のFacebookやTwitterなどのように情報の保存を中央集権的なシステムに依存するのではなく、ブロックチェーンは情報をもっと安全に保存でき、またその自己証明型身分証明(self-sovereign identity, 自己主権型アイデンティティ)システムには、より多様な用途がありえる。〔参考記事

“ブロックチェーンにさまざまな用途がありえる中で、いちばん重要と思えるのが、アイデンティティ、自己証明、本人証明の分野だ”、とBehlendorfは語る。“しかしどんなに正しいソリューションも、エンドユーザーにおける自分のアイデンティティの管理や利用が、ちょうど財布から運転免許証を取り出すときのように簡単にならなければ、普及しない”。

Hyperledgerは、それらによってブロックチェーンの分野でイノベーションを可能にする、とLinux Foundationが期待する、フレームワークとツールを提供している。そしてBehlendorfによると、現在は10のコードベースがあり、うち2つはプロダクション(本番開発)ですでに利用され、8つはブロックチェーンを構築するためのフレームワークだ。Hyperledgerは“オーガニックな”開発過程を重視しているので、オプションは今後もっと増える、という。

【後略】

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Castboxはポッドキャスターたちが収益を得る手助けをするために、ブロックチェーンを採用する

先月末、ポッドキャストプラットフォームであるCastboxが、Contentboxを発表した。これはポッドキャストのホストやプロデューサーたちが、そのプロダクト(番組)から実際の収益を挙げるための支援を行うものだ。このポッドキャストという媒体は、誕生以来ずっと苦難の道を歩み続けて来た。長年にわたるポッドキャストのリスナーなら、Casperマットレスの広告を1万回ほどもスキップした経験から、そうした流れはとっくにご承知だろう。

事前あるいは途中広告が頻繁に流されるような、成功したスタートアップの数が少ないのも事実だが、この媒体を用いて生計を立てているポッドキャスターがわずかしかいないのもまた単純な事実である。ということで、公開プラットフォーム上で人気のあるプログラムたちが、NPRやThe New York Timesのようなメディアの巨人たちによって、すぐに取り込まれてしまうのも無理はない。

私はここ数ヶ月というもの、多くの大手ポッドキャストプロバイダーと対話をしてきたが、そこで得られた一致した見解は、ポッドキャストの収益化に対して万能の手段は存在しないだろうというものだった。例えばGimletStartup、Reply Allを提供)は興味深い事例を提供している。番組をライセンスすることによって、その番組を宣伝しながら、キャッシュフローも得ることに成功したのだ。

またPineapple Streetの共同創業者であるJenna Weiss-Berman(Hillary Clintonのポッドキャストと、大成功を収めたRichard Simmonsのプロデューサー)は、私に対して彼女の会社が請負アプローチを採用していると語った、基本的に他の人びとの番組のためのスタジオ提供とプロダクション作業を行うのだ。だがこうした手段はポッドキャスターの多くにとって、実行可能なソリューションではない。

先週中国杭州で開催されたTechCrunchのイベントで行われた打ち解けたインタビューの中で、CastboxのCEOであるRenee Wangは、ブロックチェーン技術をベースにしたマイクロペイメントプランをポッドキャスターたちに提供する、彼女の会社の計画について説明した。

「Contentboxはデジタルコンテンツ業界のためのブロックチェーンベースのインフラストラクチャです」とWangは私に語った。「既存のモデルは上手く行っていません。クリエイターはその価値に相応しい支払いを手に入れておらず、消費者もそのコンテンツに係ることでの報酬を手にしていないのです」。

同社はそのプロダクトをこのように説明している:

Castboxは、アプリを離れること無くプレミアムコンテンツを発見し、ロックを解除し、楽しむことができる単一のプラットフォームへ、面倒くさいサブスクリプションプロセスを統合することでこの問題に対処します。Castboxはユーザーの面倒を解消し、有料の定期購読を簡単に利用できるようにするので、コンテンツ提供者はより多くの収益を得て、ファンを増やすことができるのです。

American History TellersDirty Johnのような番組を提供している、20世紀Fox系ネットワークのWonderyが、この技術を採用する最初の企業となる予定だ。私は、Castboxは今年の初めに作り始めたオリジナルコンテンツ(SerialのパロディであるThis Sounds Seriousなど)のための課金システムを、まず提供するのではないかと想像している。

2年前に自宅を売却してスタートアップの資金を調達した元Google Japanの従業員であるWangは、この技術を使うことで、リスナーたちがプロダクト(コンテンツ)にもっと投資することができるようになると考えている。

「ブロックチェーンを使うこの小さなマイクロペイメントシステムによって、非常に早い段階、たとえばコンテンツが作成される前から、利用者が投資を行うことが可能になって、一部の収益を受け取ることが可能になります」と彼女は語った。「このことでリスナーが投資家になることが可能になります。番組に対する投資家でもあるため、リスナーたちは番組の共有と拡散に、より責任を負ってくれるようになります。こうした行動をシステムが促してくれるのです」。

同社はまだこのプランの詳細を明らかにしていないが、Castbox以外のアプリを使うユーザーたちが番組にアクセスできるように、ソーシャルメディアへのプラグインを含む、番組の宣伝手段を沢山用意することだろう。

(日本版:Castbox がもともとポッドキャストのためのアプリであるため、記事もポッドキャスト中心の書き方が行われているが、Contentboxのサイトで公開されているホワイトペーパー(PDF)を読むと、デジタルコンテンツ全体を非集中的に管理し収益化を行うための汎用プラットフォームを考えていることがわかる。またイーサリアムなどとの違いも書かれていて興味深い)。

[原文へ]
(翻訳:sako)

Facebookのブロックチェーン重視いよいよ鮮明、上級エンジニアをグループのトップに

すでに知られているように、Facebookは社内にブロックチェーンの研究グループを作り、長年MessengerのチーフだったDavid Marcusをそのトップに据えた。しかし最近の役員人事を見ると、同社はブロックチェーン技術とその応用について、より本気になってきたことが伺われる。

LinkedInのプロフィールを見ると、Facebook本体の技術部長だったEvan Chengが、ブロックチェーン担当の技術部長(Director of Engineering, Blockchain)になった。いわゆる“低レベルの”コンピューター技術者として尊敬されていた彼は、それまで同社のプログラミング言語とランタイム(Programming Languages & Runtimes)グループを3年近く統轄していた。

その前のChengは10年近くAppleに在籍し、その最後には低レベルツール部門のシニアマネージャーを担当していた。。また彼は、コンパイル技術などのバックエンドのエンジニアリングも担当した。

彼のツイートにはブロックチェーンの話題が多く、実際にこれまで、ZilliqaやChainLinkなどブロックチェーン技術のスタートアップやプロジェクトを、アドバイザーとして支援してきた、と言われる。

ブロックチェーンを追っている某情報筋の推測では、“これでブロックチェーンがFacebookにとって単なる研究プロジェクトではないことが明らかになった”、という。その情報筋氏によると、パフォーマンスやスケーラビリティについても詳しいChengをブロックチェーングループのトップに置いたことは、プロジェクトの重要性を示しているのだそうだ。

Facebookでブロックチェーンの仕事を担当する/した役員は、MarcusとChengだけではない。最近の役員人事では、元Instagramのプロダクト担当VP Kevin Weilが、Facebookのブロックチェーン部門のプロダクトVP(VP of Product, Blockchain)になった。本誌TechCrunchのFacebook役員人事詳細記事を見ても、最近の同社のブロックチェーン指向ぶりが分かる。

アップデート: FacebookはEvan Chengの新しい職責、Director of Engineering, Blockchainを確認した。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

「アートとブロックチェーンは相性がいい」美術家が創業したスタートバーン、UTECから1億円を調達

アート×テクノロジーを軸に複数の事業を展開するスタートバーン。同社は7月5日、UTECを引受先とする第三者割当増資により、約1億円を調達したことを明らかにした。

同社では今回の調達も踏まえ、以下の3つの事業に取り組む方針だ。

  • 文化・芸術品の管理に特化したアート×ブロックチェーンネットワークの構築
  • ネットワークと連動する自社サービス「Startbahn BCM(仮称)」の開発
  • アート領域以外の事業者も含めたブロックチェーン事業の共同開発

ブロックチェーンネットワークは9月末より試験運用を開始、Startbahn BCMも同様に9月末より提供を開始する予定だという。

油絵専攻の現代美術家が立ち上げたアートスタートアップ

スタートバーンが今後取り組む事業には、同社がこれまでやってきたことが大きく関わっている。ということで、まずは同社の成り立ちや手がけてきたプロダクトについて紹介したい。

スタートバーンは現代美術家として活動していた施井泰平氏が、東京大学大学院に在学していた2014年3月に立ち上げたスタートアップだ。施井氏は多摩美術大学の絵画科出身。大学で油絵を専攻した後、美術家として「インターネットの時代のアート」をテーマに制作活動を行ってきた。

ギャラリーや美術館での展示に加えて、複数のオンラインプロジェクトも発表。東京藝術大学では教鞭をとった経験もある。

そんな施井氏が起業するきっかけとなったのが、かねてから構想を進めていた「Startbahn」のアイデアだったという。

「テーマとしていたのは『アートの民主化』。インターネットの時代では、様々なジャンルで名もない多くの人たちが業界を盛り上げ、それが中心となって新たな市場を開拓してきたという背景がある。ただしアートに関しては限られたトッププレイヤーだけしか市場に関わっていなかった。結果的に一部の作品だけがやりとりされ、情報も広がっていかない。そんな状況を変えたいと思っていた」(施井氏)

たとえば毎年1万人以上が美術大学を卒業するのに、マーケットに流通するアーティストになるのはわずか1〜2人程度なのだそう。そう考えるとほんの一部の人だけがチャンスを掴めるシビアな市場だ。もちろんネットによる民主化が進まなかったのには、アート市場特有の理由もある。

「通常、多くのマーケットでは基本的に中古市場より新品市場の方が商品価値が高い。一方でアートは新品が最も値段が安いというケースがほとんど。アーティストのキャリアや、その作品がどんな人に買われたか、どんな展覧会に展示されたかによって価値が高まっていく。そのような情報を管理するのが困難だったため、簡単にネット上で自動化もできず、アートをやりたい多くの人たちの作品が流通してこなかった」(施井氏)

転売されるごとにアーティストへ還元金が分配

2015年12月にリリースした「Startbahn.org」は、これらの課題を解決するために作ったプロダクトだ。

同サービスはアート特化のSNSとオークション組み合わせたような仕組み。アーティストが自身の作品を掲載したり、レビュワーが作品のレビューを投稿するSNS機能に加え、アーティストとコレクター間だけでなくコレクター同士でも作品を売買できるオークション機能を備える。

特徴は再分配システムを搭載していること。Startbahn.orgでは作品の来歴がトレースされるほか、コレクター間で作品が売買されるごとに(n時販売時に)オリジナル作者へ還元金が支払われる仕組みになっている(日米間で特許を取得済み)。

これは上述した「トッププレイヤー以外の作品が流通しやすくなるための仕掛け」のひとつだ。

「まず作品の価格決定の仕組みを変える必要があった。従来の仕組みでは若手のアーティストの作品が高いと感じられがち。たとえば30日かけて作った作品が30万円で売られていても、多くの人は高いと思うはずだ。そこで初期の価格を落とす一方で、転売されるごとにアーティストに還元されるようにすれば、ひとつの作品から同じくらい、もしくはそれよりも多くの収益が得られるのではと考えた」(施井氏)

ブロックチェーンを活用すれば課題を解決できる

ところが実際にサービスの運用を続けていると、いくつかの課題が明確になった。特に頭を悩ませていたのが、外部サービスで作品が売買されてしまった場合、来歴のトレースも還元金の徴収もできなくなってしまうことだ。

どうすればこの問題を解決することができるのか。ずっと打開策を考え続けていた時に施井氏が出会った技術こそが、ブロックチェーンだったという。

還元金や証明書の情報はブロックチェーンに記録し、かつブロックチェーンネットワークを通じて外部サービスとも連携できる仕組みを作れば、サービスをまたいで来歴の管理や還元金の徴収も可能になる。

約2年に渡ってその考えを磨き続けた結果生まれたのが、現在開発を進めているアート×ブロックチェーンネットワーク構想であり、自社サービスのStartbahn BCMだ。

アート×ブロックチェーンネットワークでは、アートマーケットの発展のために共有すべき「作品のタイトルやサイズ、制作年度、作者情報、来歴情報」といったデータをブロックチェーン上でオープンにする。

一方で所有者の個人情報や販売管理者のための管理情報など、共有したくない情報については自社で管理できる仕組みを整備。双方のバランスをとりつつ、ネットワークを活用すれば参加機関が独自の作品証明書発行サービスを立ち上げたり、既存のプロダクトをアップデートできる環境を作る。

ネットワークの参加機関として想定しているのは、アーティストやクリエイター、ギャラリー、オークションハウス、管理業者など、文化や芸術作品に携わるあらゆるプレイヤー。まずは第一段階として9月末から一部のパートナー企業と共に試験運用を始め、2019年初には正式版を公開する予定だという。

同じく9月末の公開を予定しているStartbahn BCMは、アート×ブロックチェーンネットワークに参加するサービスのひとつという位置付け。Startbahn.orgのコンセプトや特徴を引き継ぎながら、従来抱えていた課題をブロックチェーンの活用で解決し大幅にアップデートしたものだ。

Startbahn BCMでは外部サービスとの連携だけでなく、独立性やカスタマイズ性を重視。作品や商品管理機能をバージョンアップし、ギャラリーやショップ、イベント、教育機関での利用も視野にいれている。

施井氏いわく「イメージとしてはBASEやSTORES.jpにも近い」部分があるそう。それぞれのユーザーが独自性のある作品サイトを作成でき、裏側では各サイトがStartbahn BCMに紐付く仕組みだ。

またスタートバーンではアート×ブロックチェーンネットワークの構築を通じて培った知見を、文化や芸術以外の領域にも応用していく方針。来歴管理や証明書発行、真贋鑑定技術などを必要とする事業者と共同で、オリジナルのブロックチェーンネットワークを開発していきたいという。

アート界隈でも注目度の高いブロックチェーン

海外ではすでにブロックチェーンをアート市場の課題解決に用いたスタートアップが増えてきた。特に作品の真贋鑑定や来歴管理はブロックチェーンと相性がよく、「Codex」や「Verisart」を始めとしたサービスが注目を集めている。

施井氏の話ではアート界隈の人と話していても「トレーサビリティだけでなく国際送金やエスクローの仕組みなど、ブロックチェーンへの関心度や期待値は高い」そう。特にアート業界は贋作が多いと言われていて、それが業界の透明性を下げてきた部分もあるからだ。

その一方でギャラリーやオークションハウスとしては自分たちの情報を守りたいという思いもあり、従来は双方のバランスをとりながら情報公開を進めることができていなかった。

スタートバーン代表取締役の施井泰平氏

「自分たちの強みがあるとすれば、このような問題をもう何年も前から現場で考えてきたこと。(各プレイヤーに)ヒアリングを重ねながら、どのようなインセンティブ設計や再分配の仕掛けがあればみんなが参加したくなるのか、どうすれば機関を横断して情報共有ができるかずっと模索してきた」(施井氏)

それだけにブロックチェーン技術が台頭してきたことは、スタートバーンにとっても大きな追い風だ。同社では今回調達した資金も活用して、アート×ブロックチェーンネットワークの構築、展開の加速を目指す。

トークンエコノミーで実現する新しい政治コミュニティ「ポリポリ」のβ版が公開

「正直、政治にものすごく興味があったかというとそんなことはない。ただ政治は世の中に与える影響が多く市場規模も約6兆円と大きい一方で、イノベーションが進んでいない領域。だからこそテクノロジーでもっと良い仕組みを作れる余地も十分にあると思った」ーーそう話すのはポリテック(政治×テクノロジー)分野のスタートアップPoliPoli代表取締役社長の伊藤和真氏だ。

開発中のアプリ「ポリポリ」を通じて同社が目指しているのは、ブロックチェーンを使ってトークンエコノミーを構築することで良質な政治コミュニティを作ること。その第一段階として、トークンを絡ませない同アプリのβ版(iOS)を7月2日より公開している。

3つの機能を持つ政治コミュニティ

β版段階のポリポリは、比較的シンプルな政治コミュニティアプリといえるだろう。

軸となる機能は大きく3つ。気になる政治トピックについて議論したりニュースにコメントしたりできる「議論機能」、登録している政治家の政策や実績を閲覧できる「政治家一覧機能」、政治家へ質問や提言ができる「質問機能」だ。

ユーザーはトークルームと呼ばれるスレッドのようなものを作成することができ、そこで身の回りの政治に関するトピックについてディスカッションすることが可能。選挙前などには各候補者の情報を比較したり、政治家の考えを確認することで正しい情報を収集するツールにもなりえる。

また政治家側には複数のSNSへ同時に投稿できる機能を提供。情報発信の負担を下げるという効果もあるそうだ。

伊藤氏は今の政治が抱える課題として「情報の流通」と「荒れやすいコミュニティ」をあげる。

情報についてはマスメディアの発信できる情報量に限りがあり、どうしても人気政治家やスキャンダルに関する報道が目立つ。反面、政治家がどんな活動をしているのか、どんな考えを持っているのかといった重要な情報は不足してしまいがちだ。

また一部の政治家はSNSなどを通じて市民とコミュニケーションをとっているものの、インターネットを活用して十分に情報発信をできている政治家は少ない。結果的に政治家へ直接質問したり、意見交換したりできる機会もかなり限られる。

かといって政治に関するネットコミュニティはどうしても荒れやすい。自分と別の意見を持つユーザーへの誹謗中傷なども多く、コミュニティにユーザーが定着しない原因にもなっている。

ポリポリのアイデアは、現在のベータ版にトークンをかますことでこれらの課題を解決しようというものだ。

良質なコミュニティ作りのカギを握るトークン

トークン実装後のポリポリのモデル

ポリポリの正式版では独自のトークン「Polin」が発行されるようになり、これがあらゆるシーンで良質なコミュティを作るカギとなるインセンティブの役割を担う。

たとえばコミュニティ内で良い発言をするなど、活躍したユーザーには信頼スコアに基づいてPolinが付与され、反対にコミュニティを荒らすようなユーザーはスコアが下がる仕組みだ。

このPolinは政治家に投げ銭のような形で送ることもでき、個人献金プラットフォームの性質も持つ。信頼スコアによってコミュニティの質を担保することができれば、政治家も余計な炎上リスクを気にせず積極的に情報発信をするようになるかもしれない。

そうすれば従来の仕組みでは実現が難しかった、市民と政治家双方が積極的に意見交換をする議論プラットフォームが生まれる可能性もある。これがポリポリの目指すトークンエコノミーを用いた政治コミュニティの形だ。

「トークンの価値が出てくると、さらにその価値を高めようとインセンティブが働き、ユーザーがコミュニティ内で活発になる。トークンエコノミーのポイントはコミュニティを作れること。うまくインセンティブを設計できれば、おもしろい政治の仕組みができると思う」(伊藤氏)

長期的にはPolinを交換所で交換できる仕組みや、実店舗の決済時に使える仕組みなども整えながら流動性を高め、Polinの価値を高めていく狙い。ポリポリの主なビジネスモデルは通貨発行益、つまりPolinの価値があがるほど収益がでる構造だ。「トークンの価値が上がるような仕掛け」を作れるかどうかは、PoliPoliにとっても重要になる。

個人的には正直このモデルが成り立つのか予想がつかないが、この点について伊藤氏は「そもそも政治家に献金したいという市場が約数百億円ある」ことに加え、「アンケートによって集めたユーザーのデータを企業や政治家がPolinを使って取得できる仕組み」を設けることなどで、トークンを買いたいと思う理由を作っていきたいという。

なお仮想通貨を用いた献金については法律が十分に整備されていない領域ではあるが、献金者の情報を取得していれば年間150万円まではOKとされているそう。ただし外国人からの献金は禁止されているため、政治家にPolinを送る際にはパスポート認証をするなど、法律に遵守した形で慎重に設計していきたいとのことだ。

政治×トークンエコノミーに感じた可能性

PoliPoliのメンバー。左から2番目が代表取締役社長の伊藤和真氏

PoliPoliの設立は2018年の2月。1998年生まれで現役慶応大生の伊藤氏を始め、若いメンバーが集まる。5月にはネットエイジ創業者の西川潔氏、Labitの創業者の鶴田浩之氏、F Venturesから約1000万円を調達した。

冒頭でも触れたとおり、もともとは政治にそこまで興味がなかったという伊藤氏。ただ海外のスタートアップなどを調べていると、OpenGovなど政治領域のスタートアップが盛り上がっていることを知った。日本の政治はテクノロジーの活用が十分ではなかったこともあり、チャンスがあると考えこの市場に取り組むことを決めたのだという。

2017年の秋には市川市選挙に合わせてポリポリの原型となるアプリを作成。候補者の政策比較や、候補者に質問や提言ができるという機能を搭載したところ、約1000人にダウンロードされた。

そこから現在のポリポリの構想に行き着くきっかけとなったのは、トークンエコノミーを活用した新しい収益化の仕組みを備えたメディア「Steemit」を知ったこと。「Steemitはトークンの時価総額が約500億円もある。このような仕組みは政治とも相性がよく、今までにない形でマネタイズができるかもしれない」(伊藤氏)と考えたそうだ。

PoliPoliでは今回リリースしたβ版を通じてコミュニティを育てながら、9月〜12月を目処に無料でトークンを配布していく計画。2018年末を目処に完成版をリリースする予定だ。

「『政治家や市民が何か良い発言をすればトークンをもらえたり投げ銭できる』というある種のゲーム要素が大切。PoliPoliでは『政治をエンターテインする』ことをテーマにしているが、政治に興味がないような人でも入ってくるようなインセンティブを設計することで、新しいコミュニティを作っていきたい」(伊藤氏)

Second Lifeの共同開発者によるVRブロックチェーンスタートアップが3500万ドルを調達

「ブロックチェーンベースのVRプラットフォーム」というフレーズに驚いてしまうようなら、今すぐタブを閉じてラッダイト運動を続けた方がいいだろう。

Second Lifeのクリエイターが立ち上げたソーシャルVRスタートアップのHigh Fidelityは、この度ブロックチェーンに特化した投資会社Galaxy Digital Venturesがリードインベスターを務めたシリーズDで3500万ドルを調達した。同ラウンドには、Breyer Capital、IDG Capital Partners、Vulcan Capital、Blockchain Capitalも参加していた。

High Fidelityは、ユーザーが作る世界をつなぎ合わせた宇宙のようなプラットフォームを開発している。プラットフォーム上ではユーザーが自由に交流でき、同社によれば市場に流通するVRハードウェアが彼らの期待に追いつけば、早急にスケール化が狙えるのだと言う。

最近ではゲーム内決済やその他の機能を推進するために、ブロックチェーン部分の開発に多大なリソースを割いており、レイテンシーや3D音声、背景の高画質化などに注力しながらも、プラットフォームの用途で差別化を狙っているようだ。現在60名いる従業員のうち、7、8人のエンジニアがブロックチェーンテクノロジーの開発にあたっていると、共同ファウンダーのPhilip Rosedaleは語る。

他方、Second LifeはLinden Dollarと呼ばれる通貨をベースにしたゲーム内経済の活発さで知られており、Rosedaleによれば、実は現在でも年間7億ドルものP2P決済が行われているのだという。

High Fidelityに関して言えば、ブロックチェーンを活用することで、ユーザーは購入したデジタルグッズを実際に所有した上で、アバターに装着できるようになる。そしてすべての決済は、同プラットフォームのデジタルアセット台帳に非中央集権的な形で記録されるのだ。さらにHigh Fidelityは、Virtual Reality Blockchain Alliance(VRBA)という団体を立ち上げた。先進的企業が集まるこの団体の目的は、ユーザーのアバターが購入物を持ったまま異なるプラットフォームを自由に行き来できるような環境を構築することだ。

VR上であればブロックチェーンを中心に据えたクローズドな環境を構築できるため、実用範囲が決まっていることの多いブロックチェーンサービスにとって、試験場のような役目を果たせるかもしれない。

High Fidelityが実現しようとしている未来は仕組みだけでなく、見た目にもかなり違いがある。Facebook SpacesやMicrosoftのAltspace VRでは、頭が体から切り離されて浮いているようなアバターが登場するが、High Fidelityはもっとリアリスティックなデザインアプローチをとっており、見ていて若干不安になるようなSecond Lifeのアバターとかなり共通点があるように感じられる。

Lineden Labが開発したVRプラットフォームSansar

Second Lifeの開発元であり、High Fidelityの株主でもあるLinden Labは、すでに独自のVRプラットフォームSansarのベータ版をローンチ済みだ。High Fidelity同様、Sansarでは各ユーザーが作り上げたスペースが、ゲームエンジン版のワールドワイドウェブのように統合され、それぞれのスペースをユーザーが行き来できるようになっている。Linden Lab自体もSansarのことを「VR版のWordPress」と呼んでいるように、現状のプラットフォームはそこまで洗練されているとは言えないものの、High Fidelityのような三次元仮想空間を使った構想が秘められているであろうことは察しがつく。

利用状況に関する情報が公開されておらず、まだベータ版のプロダクトしかないVRスタートアップのHigh Fidelityにとって、7000万ドルという累計調達額はかなりの金額だと言えるだろう。競合相手のFacebookが何十億ドルという資金を投入していることを考えるとなおさらだ。

Rosedale自身も状況の厳しさは認めつつも、Facebookにつきまとうプライバシーに関する不安は、今後VRが普及するにつれて、ますます高まっていくと考えているようだ。

「VRが一般化すれば、Facebookのようなサービスに関連したプライバシーやセキュリティ、アイデンティティ絡みの人々の不安は、現状のそれとは大きく変わってくるだろう」とRosedaleは弊誌のインタビューに答えた。「そのため私は、Facebookの広告頼みの収益構造や中央集権的なサービスには付け入るスキがあると見ている。だからこそHigh FidelityはソーシャルVR市場に進出しようとしているのだ」

彼らのゴールはいたってシンプルだが、Rosedaleを保守的だと非難する人はいないだろう。なぜなら彼は、今後10年間のうちにVRユーザーは10億人を超え、ゲーム内グッズの市場規模は1兆ドルに達すると予想しながら、自らの会社をその先頭に立たせようとしているのだ。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake

Chris Dixonインタビュー:Andreessen Horowitz、3億ドルの暗号通貨ファンド結成――元連邦検事が女性初の共同責任者に

シリコンバレーを代表するベンチャーキャピタルの一つ、Andreessen Horowitzがビッグニュースを2つ発表した。今日(米国時間6/25)、同社は総額3億ドルの暗号通貨専門ファンドの設立を完了した。Cryptoファンドは先週、Andreessen Horowitzのリミッテッド・パートナーから出資契約を得ていた。

Cryptoファンドは最近シリコンバレーのベンチャー業界最大の話題となっていた。というのも他のベンチャーキャピタルも暗号通貨テクノロジーに対する戦略を決めようとしており、この5年間、暗号通貨への投資を着実に増やしていたAndreessen Horowitzの動向を注視していたからだ。

もうひとつのビッグニュースは、創業9年になるAndreessen Horowitzに初めて(ついに)、女性のジェネラル・パートナーが誕生したことだ。Katie(Kathryn) Haunは以前からジェネラル・マネージャーを務めるChris Dixon(筋金入りの暗号通貨支持者)と共にAndreessen Horowitzの暗号通貨ファンド担当のジェネラル・パートナーに就任した。Haunの株はこの数年シリコンバレーで上昇を続けていたので同社がジェネラル・パートナーに選んだことは意外ではない。

Haunは司法省の連邦検事を10年以上務め、証券取引委員会、FBI、財務省などと協力して詐欺、サイバー犯罪、企業のコンプライアンス違反の捜査と訴追に当ってきた。Haunの略歴には司法省初のデジタル資産担当調整官という職務もみえる。中でも注目すべきなのは、暗号通貨取引所の歴史で最大の経済事件となった、Mt. Goxの不正を捜査し、オンラインの麻薬や違法物質の取引所となっていたSilk Roadを捜査するチームに加わっていた点だろう。Haunはまたスタンフォード大学ビジネススクールの講師、暗号通貨取引ネットワーク、Coinbaseの取締役を務めている。 Andreessen HorowitzはCoinbaseの最初期からの出資者で、Dixonが取締役だったためHaunと知り合ったという(2人は現在も取締役)。

今日、TechCrunchはChris Dixonにインタビューすることができた。われわれはファンドの詳細、特にDixonとHaunが投資先の暗号通貨スタートアップのエグジット(現金化)についてどう考えているかを尋ねた。これまでのところクリプト企業がエグジットに成功した例は少ない。なお、読みやすさと文章量を考慮して以下のテキストには若干の編集が行われている。

Chris Dixonインタビュー

TC: 3億ドルの出資者の大部分はもともとAndreessen Horowitzの本体のファンドの出資者だと思うが、暗号通貨ファンドの結成は今後の本体ファンドの結成に何らかの影響を与えるだろうか? つまりAndreessen Horowitzは暗号通貨分野にこれまで以上に力を入れ、反面、他の分野への投資は減少することになるのだろうか?

CD: 答えはノーだ。われわれはこれまで投資してきた分野への投資をフルスピードで続ける。Cryptoファンドの結成はこの分野への努力を倍加するということであり、コンシューマー向け、エンタープライズ向けのプロダクトだろうと、バイオ・テクノロジーだろうと、これまでのコミットメントを減少させることはまったくない。

TC: 新しいファンドが他の暗号通貨ファンドに投資することはあり得る? Union Squareはこれを積極的に推し進めているが?

CD: あり得る。しかし当面そのつもりはない。われわれは暗号通貨ビジネスについて学ぼうと考え、Polychainその他何社かに1年半前から投資を始めている。今回暗号通貨を専門とする本格的ファンドが作られ、初期段階、後期段階両方の暗号通貨プロジェクトに出資できる体制が整えられた。われわれの使命はあくまでそうしたスタートアップへの直接投資だ。もっとも何ごとであれ「絶対ない」と言うつもりはない。

TC: Andreessen Horowitzはこれまでに何件ほど暗号通貨プロジェクトに投資してきたのか? そのうちの何件かは新しいファンドに移管されるのか?

CD: われわれはこの5年で20件程度の暗号通貨投資を行っている。. [Bitcoinのライバル] Ripple は私の最初の暗号通貨投資で、2013年1月のことだった。その後、同年中にCoinbase、21.coに投資した(同社はEarnになり、今年Coinbaseが買収している)。 その他、OpenBazaar、Mediachainにも投資した。やがてEthereumがスタートして暗号通貨分野の動きが激しくなってきた。才能ある起業家や優秀な企業が参入し始めた。われわれの[既存の暗号通貨プロジェクトへの]投資は当初の枠組みのまま本体ファンドに残る。

TC: 新ファンドですでに投資を決めた案件は?

CD: いくつか検討中のプロジェクトがある。ただし決定したものはない。

TC: このファンドの投資はどのような形態になるのか?

CD: エクイティー〔株式〕投資の一部はトークンによる投資 [つまりスタートアップがトークンを発行し、投資家が購入できる場合]が行われるだろう。われわれは〔適格投資家のみを対象とする〕SAFTによる投資も実施している。 われわれはまたストレートなBitcoinやEthereumの購入という形式でも投資してきた。しかし〔Andreessen Horowitzの〕本体ファンドでは投資方法に限界に突き当たった。そこで優秀な起業家がビッグかつ重要なアイディアを実行に移そうとしており、それに経済的将来性があるなら、あらゆる方法で投資したい。そこで条件を整えた専門ファンドを結成したわけだ。

TC: そうした投資のエグジットはどうなるのか?

CD: いい質問だ。これまでわれわれは暗号通貨資産を売却したことはない。この業界のプレイヤーの多くはデイトレーダーだ。しかしわれわれは投機筋ではなく、投資家だ。われわれはどんな投資も5年から10年にわたってポジションを維持していく考えだ。こうしたスタートアップの一部が発行するトークンは自由に流通するようになるだろうから、そういう形でのエグジットも可能だろう。いちばん可能性が高いシナリオは、アーリー・ステージの暗号通貨プロジェクトに投資し、引き換えにデジタルコインあるいはトークンを受け取ることだろう。その後プロジェクトが成功すればこうしたデジタル資産はそれに応じた評価を受ける。しかし何億という人々に利用されるようになることを目標とするプロジェクトの場合、われわれはそうした目標が実現するまでエグジットを考えることはない。

TC: ファンドの出資者に対してトークンで払い戻しを行うことはないと考えていいだろうか?

CD: そのとおり。われわのリミッテッド・パートナーは通常のキャッシュを好んでいる。

TC: 投資先企業における持ち分比率についてどのように考えているか?

CD: 伝統的なベンチャーキャピタルのビジネスモデルでは10%から20%の持ち株比率を目標とする。しかし暗号通貨スタートアップの場合は固定的な持ち株比率を考えるのは現実的でない。ごく初期のプロジェクトでは持ち株比率が会社評価額と連動するからそれを目安とするかもしれない。しかし一般的に言って、われわれは率ではなく額を問題にする。この投資は元が取れるほど成功しそうか、といったことだ。次のビッグウェーブに登場する企業はわれわれがこれまで経験したのに比べて10倍も大きくなるだろう。

TC: ICOについてどう考えるか? 将来適格投資家以外にもトークンを広く販売する予定の会社にも投資する予定か?

CD:適切に実施されるならICOは暗号通貨へのアクセスを拡大し、デモクラタイズする。これは正しい考えだと思う。参加者を増やすために役立つアイディアはなんであれ歓迎だ。しかし現在実施されている多くのICOは規則を忠実に守って実施されているとは考えられていない。われわれはこうしたICOには一切関与して来なかった。われわれはFilecoinに投資しているが、このICOの対象は厳密に適格投資家に限られていた。

TC: 投資における利益相反についてどう思うか? この分野はスタートしたばかりなので同種の企業に投資する制限についてもこれまでの例とは異なる点が多いのではないかと思う。伝統的分野におけるベンチャー投資では、当然ながら、複数のライバル企業に投資するのはタブーだが。

CD: クリプト企業への投資では伝統的なベンチャー企業への投資とは行動基準が違ってくる。基本的にベンチャーキャピタルは直接の競合関係になる会社の双方に投資してはならない。しかし暗号通貨では倫理が異なる。企業同士はライバルというより協力関係にあることが多い。この分野の参加者はパイ一切れの大きさを巡って戦うのでなしに、まず協力してパイ全体を大きくしたいと考えている。われわれは競合するプロジェクトへの投資が行われないようチェックしてきた。しかし暗号通貨のような動きの速い新興マーケットでは固定的なカテゴリーで考えることは難しい。この分野での投資基準はまだ確立していないが、たとえば、暗号通貨を複数の種類支援することはあり得る。

TC: Basisの投資家の1人としてステーブルコインについてどう考えているか? 価値が不規則に変動せず安定したプロダクトを作り出そうとしているスタートアップだが、暗号通貨が広く利用されるためには価格安定性が必須だろう。ステーブルコインでは複数のプレイヤーが存在する余地があると考えるか?

TC: われわれはBasisだけでなくMakerにも投資している。両者の仕組みは大きく異なるが、われわれは相互補完的だと考えている。投資を決定する際に両者に詳しく話を聞いた。ステーブルコインというアイディアは重要だ。暗号通貨がメインストリームになるためには、現在のような価値がボラタイルな通貨でなく、アメリカ・ドルのような安定した外部の価値によって担保される仕組みが必須だ。そうした重要性を持つインフラだけに、勝者は複数存在することになるだろう。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

仮想通貨取引所向けウォレットのスタンダード目指すフレセッツ、UTECとセレスから約3.5億円を調達

仮想通貨やブロックチェーン技術の研究開発を行うフレセッツは6月18日、UTEC(東京大学エッジキャピタル)およびセレスを引受先とした第三者割当増資により総額3億4900万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回調達した資金をもとにエンジニアの採用など組織体制を強化する方針。近日公開予定の事業者向けウォレット管理システム「Bitshield」の開発を進めるほか、マーケティング活動への投資も行う。

フレセッツは2017年8月の設立。同年9月にセレスとストーンシステムから約2300万円、2018年3月にも同じくセレスとULSグループから約3500万円を調達している。

社内に専門家がいなくても導入できるウォレット

フレセッツが現在開発しているのは、複数のホットウォレットとコールドウォレットをそれぞれマルチシグで複合利用できる事業者向け(仮想通貨取引所向け)のウォレットだ。

「コールドウォレット(ネットワークに接続されていない環境に秘密鍵を保存したウォレット)」や「マルチシグ(送金に必要な秘密鍵を分割し複数管理することでセキュリティを高める技術)」については1月にコインチェックからNEMが流出した騒動で取り上げられたこともあり、仮想通貨を保有していない人であっても聞き覚えがあるキーワードかもしれない。

この1件の影響もあり、金融庁では仮想通貨交換業者への一斉検査を実施。複数の事業者が行政処分の対象となり、一時は16社あったみなし業者も半数以上が登録申請を取り下げている。

こういった背景からすでに仮想通貨交換業に参入している事業者やこれから参入を目指している事業者は、これまで以上にセキュリティ面に配慮する必要がでてきた。特に安全性と利便性を兼ね備えたウォレットの整備は急務だ。

今までウォレットと言えば一般ユーザー向けのものが複数登場する一方で、事業者向けのものはアメリカの「BitGo」などほんのわずか。このBitGOでさえもAPI利用が前提となるため、コンプライアンス面がネックになる場合もあるという。

フレセッツのBitshieldはそのような事業者の課題を解決すべく、ウォレットの組み合わせやマルチシグによる運用管理をはじめとした機能により安全面を担保。それと同時に可用性やスケーラビリティを実現することを目指したものだ。

Bitshieldでは根幹となる標準化されたモジュールと、顧客ごとにカスタマイズできるモジュールを明確に分割。社内に高度な知識やスキルを持つ専門家がいない事業者でも、社内の内部統制基準に合わせて導入できることが特徴だ。技術面のアップグレードや、将来的に金融庁から新たな要望があった場合にも対応できるように設計しているという。

利用料金は初期費用と月額の利用料。BitGoのように出金額の一定割合(0.25%)が手数料となる仕組みではなく、取引額の大きい取引所でも使いやすい形で提供する。

まずは近日中にビットコイン向けのウォレットをリリースする計画で、年内を目処にイーサリアムなどほかの通貨への対応を目指す。

事業者向けウォレットのデファクトスタンダードを目指す

フレセッツの代表取締役社長を務める日向理彦氏は、東京大学の博士課程在学中にビットコインと出会ったことをきっかけに、モナコインの取引所の開発・運営を始めビットコイン決済のできるECサービスや、Twitter上でビットコインを送金できるサービスなどを開発してきた。

並行して専門家向け、初心者向けに仮想通貨関連の勉強会をかれこれ約2年に渡って運営。エンジニアとしてプロダクトを開発するだけでなく、ナレッジの提供や情報発信なども積極的に行っている。

フレセッツ創業のきっかけとなったのは、2017年4月の改正資金決済法の施行が決まった2016年の秋頃。これを機に仮想通貨交換業への参入を決める企業が一気に出てきた中で、上述したようなウォレットの問題が発生し、日向氏のもとに相談が寄せられたのだという。

共同創業者である余語邦彦氏とともにいくつかの事業者を回り、事業者向けウォレットのニーズを確認。8月にフレセッツを創業しBitshieldの開発を始めた。

2人の話では「社内に専門的な技術者がいない事業者が仮想通貨交換業に参入するのは日本がはじめてのこと」で、そこに海外展開も含めて大きなチャンスがあるという。まずは事業者向けウォレットのデファクトスタンダードを目指しつつ、ゆくゆくはウォレット以外にも同社の仮想通貨・ブロックチェーン技術を活用したプロダクトを開発する予定だ。

Bitcoin価格急落――しかし取引は続く

最近Bitcoinマーケットを見ていなかったなら驚いたはずだ。笑った人もいるかもしれない。Bitcoinは1万9000ドルという過去最高値を付けた後で急落した。この記事を書いている時点で6785ドルあたりを低迷している。そこでBitcoinという実験は終わりだと考えたものも多い。しかしもっと多くの人間がこれは何かの始まりによくある現象に過ぎないと考えている。

もちろんこの暴落で痛手を受けた話にはこと欠かない。ルーマニアの起業家から聞いたところによると、友達がクレジットカードで目一杯BTCを買った末、ひどい苦境に陥っているという。Bitcoinブームのテールエンドにようやく滑り込んだつもりの人間は努力が水の泡となるのを見ただろう。私の友人は仕事中のウェイターが1万8000ドルでBitcoinのトレードをしていのを目撃した。暴落前にポジションを処分していることを祈る。

しかし暗号通貨を積んだ列車は止まる気配をみせていない。 世界中のスタートアップはICOを検討し、実行している。初期からの暗号通貨のマイナーやトレーダーは十分な利益を確保しており、あらゆる形で投資することができる。ブロックチェーン・サービスのR3が苦境に陥っていることに対してBitcoinコミュニティーは冷淡だ。金融機関は「重要なのはブロックチェーン・テクノロジーであってBitcoinではない」といった意見にはあまり興味を示さない。金融機関は伝統的な証券やコモディティ商品と同様、Bitcoinも重要な金融マーケットの一つであると認識し始めている。.

もちろんマーケットにおける取引も活発に続いている。これは重要なことだ。Coindeskのレポートも指摘しているように、何を扱う市場であれ、市場というのは乱高下するものだ。リスクを取ることをいとわない参加者にとって暴落はチャンスとなる。

私の言うことを鵜呑みにする必要はない。下に掲載したのはほぼすべての主要なマーケットにおけるこの7日間の取引量だ。

Bitcoinは過去に例を見なかったレベルで組織的かつ国際的に富の再編、移転をもたらすという点が本質だ。これまでこうした富の再編は、相続や事業合弁によって徐々に行われてきた。しかし暗号通貨取引は世代も遠近も問わず、ほとんど即時にパートナーを形成することができる。これは非常に興味深い経済的な仕組みであり、近い将来に無用になるとは思えない。

価格は急上昇することもあれば急降下することもある。賢明な参加者でありたいなら市場の本質として覚えておくべき点だろう。市場の心電図は激しく動いており、決して水平なラインを示していない。患者は死んでいない。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

「僕には必勝パターンがある」、gumiがブロックチェーン特化の30億円ファンド設立

スマホゲームの開発などを行うgumiは5月30日、仮想通貨およびブロックチェーン技術に特化した投資ファンド「gumi Cryptos」を設立すると発表した。ファンド規模は3000万ドル、日本円にして約30億円だ。

「投資には、僕なりの必勝パターンがある」ーー gumi代表取締役の国光宏尚氏は、TechCrunch Japanの取材でこう語った。

gumiはこれまで、モバイル動画とVRの領域においてスタートアップ投資とインキュベーションを行ってきた。モバイル動画ではCandeedelyなどに出資を行い、VR領域ではインキュベーションプログラム「Tokyo VR Startups」からInstaVRよむネコなどを輩出した。

モバイル動画とVR。それぞれ領域は違えど、gumiによるスタートアップ支援はきれいにパターン化されている。スタートアップにシード・アーリー期から深く関わることでコミュニティを作り、そのメンバー全員で、ある問いに対する答えを見つけるというものだ。

「まず、3〜5年後にくるであろう領域を見つける。それから、その領域で有望なスタートアップのインキュベーションやシード・アーリー期の投資を行う。僕は何についても“〇〇ファースト”なプロダクトやサービスが最後に勝つと思っている。だから、出資先の起業家たちとお互いの成功体験、失敗体験を共有しながら、『何がスマホファーストなのか、何がVRファーストなのか』というのを検証していくんです」(国光氏)

そして、このインキュベーションと投資によって得た知見を自社プロダクトの開発に活かす、というのが国光流必勝パターンの最終形態なのだという。VR領域で言えば、2017年3月に発表されたよむネコのグループ会社化などがその例だ。

そのgumiが、次の“3〜5年後にくる”と読んだのが仮想通貨とブロックチェーンの領域だ。gumiは米国の仮想通貨取引所「Evercoin」の創業者であるMiko Matsumura氏を共同事業者に迎え、2018年2月にgumi Cryptosを設立。3000万ドル(約30億円)規模のファンドを立ち上げた。合同会社であるgumi Cryptosの業務執行社員には、gumi Ventures(グループ傘下のVC)とMiko Matsumura氏が就任する。

同ファンドはすでに、ゲームの配信プラットフォームを開発するRobot Casheや動画配信プラットフォームのTheta(いずれも米国)など5社に出資を実施済みだ。1社への出資額は25万ドル〜100万ドルだという。

「この領域でも同じく、ブロックチェーンならではのモノとは何かを検証していく。その仮説の1つが、ブロックチェーン上ではデータがトレーダブルであり、かつコピー不可という特徴をもつという点だ。これまで、インターネット上のデータはコピーされてしまうものなので、価値を持たなかった。だから、Spotifyも音楽データを販売するのではなく、“音楽に囲まれた日常”というサービスを売ってきた。でも、これからは、ゲーム内のデータがコピー不可でユニークなものとなり、資産性を持つという世界になるかもしれない」(国光氏)

ちなみに、詳細はまだ不明ではあるものの、これまでのパターン通り、gumiはすでにブロックチェーン技術を活用した自社プロダクトの開発に着手しているようだ。

マネーフォワード、2018年内に仮想通貨取引所を開設

資産管理サービスなどを展開するマネーフォワード523日、金融機関とテクノロジーの融合をテーマにした「Fintech&マーケティングフォーラム2018」を開催。同社はそのクロージングセッションにおいて、ブロックチェーン領域のビジネスを行う新会社を設立したと発表した。

新会社名は「マネーフォワードフィナンシャル(以下、MFフィナンシャル)」。MFフィナンシャルでは、2018年よりブロックチェーン・関するメディアを開始するほか、2018年内に仮想通貨交換所の開設を目指すという。また、時期は未定であるものの、将来的に仮想通貨の送金・決済プラットフォームの構築も見据えている。新会社の代表取締役に就任するのは、「MFブロックチェーン・仮想通貨ラボ」の中心メンバーで、日本銀行出身の神田潤一氏だ。

マネーフォワードはこれまで、資産管理と確定申告に利用できるサービスを提供してきたが、仮想通貨に関して「知る(メディア)」、「交換する(交換所)」、「利用する(送金・決済)」を提供することで、仮想通貨の認知から確定申告まで一貫してマネーフォワードグループのサービスで解決できる世界を目指すという。

以上の発表に加え、マネーフォワードは資産管理サービス「マネーフォワード」が連携する仮想通貨取引所の数を現在の3社(bitFlyerCoincheckZaif)から約20社に拡大することも併せて発表。新しい連携先には、BTCBOXbitbankQUOINEXFISCOなど国内外の取引所が含まれる。また、今後はマネーフォワードで自動取得した仮想通貨の取引データをCryptactCryptoLinCG-taxなどの損益計算ツールとAPI連携を行うことで、計算結果をCSV形式でダウンロードできるようになる。そのファイルを確定申告用の「MFクラウド確定申告」にインポートすれば、申告書の自動作成も可能になる。

クロージンセッションに登壇した神田氏は、「世界中のユーザーにフリーでフェアなサービスを提供することが、MFフィナンシャルの使命。仮想通貨の取引をしないユーザーの47.3%がセキュリティに不安があるからと答えている結果(同社実施のアンケート結果)を受け、MFフィナンシャルの取引所ではセキュリティを最優先事項とする」と話した。

「これからはCurrency2.0の時代。場所・時間・手段からの自由、国境やイデオロギーからの自由、固定された価値からの自由を意味すると私たちは考えている」(神田氏)

MFフィナンシャルでは、3年後までに100名規模の採用と育成、ブロックチェーン技術の実用化に向けた研究開発、全国の金融機関との連携を進めていくという。

(アップデート:5月23日18:50)

以下、セッション後に開催された質疑応答の内容をまとめる。

MFフィナンシャルの仮想通貨取引所における取り扱い通貨について、神田氏は「比較的規模が大きく、ユースケースが明確な通貨をまずは取り扱う」とコメントした。セキュリティを最優先すると強調した同社だが、コールドウォレットとマルチシグによる運用は現在「検討中」(神田氏)。MFフィナンシャルはすでに仮想通貨交換業登録を申請中で、現在金融庁とビジネスモデルについての意見交換を行っている最中だという。

マネーフォワードの株主には、SBIやマネックスなど仮想通貨交換業への参入に興味を示す企業が名を連ねているが、神田氏は「各企業はそれぞれの考え方に基づいてビジネスを行っているが、そのなかで、連携できるところは連携を進め、ライバルとなる場合でも、お互いが切磋琢磨して業界全体のレベルを上げることが出来ればと考えている」と話した。

XRPエコシステム構築に向けて動き出したリップル

ついにこの時が来た。これまでの銀行・送金サービスへのフォーカスから一転し、リップルがそれ以外の分野へも自社の仮想通貨XRPを活用しようとしているのだ。

仮想通貨の代名詞とも言えるビットコイン、そして開発者から多大な支持を得ているイーサリアムに続き、XRPは世界第三位の仮想通貨だ。Coinmarketcap.comの情報によれば、その時価総額は5/14時点で287億ドルにのぼる。その一方で、これまでに発表されたいくつかのパイロットプロジェクトを除くと、XRPは実世界ではほとんど利用されていない。

しかしそれもすぐに変わるかもしれない。リップルはこの度、新たなイニシアティブ「Xpring(読みは『スプリング』)」を発表した。このイニシアティブの目的は、起業家や彼らのビジネスをXRP(仮想通貨とXRPレジャー)に誘致し、新たなエコシステムを構築すること。リップル自体は引き続き金融ビジネスにフォーカスしながら、投資や補助金、インキュベーションといった手段を使って企業を誘い込み、XRPの普及を図ろうとしているのだ。

同社は自分たちがXRPをコントロールしていないと言い張っている(同社はXRPの総発行量の60%を保有しているため、この点については熱い議論が交わされている)が、どうやら同通貨の発展には常に関心を持っているようだ。そして直近6ヶ月の様子を眺めても、XRPのユースケースの多様化が大きな課題であることは明らかだ。

昨年末から年初にかけて仮想通貨が高騰した際、2万ドル近い最高値を記録したビットコインと共にXRPの価格も急上昇し、ピーク時の時価総額は1280億ドル以上に達したものの、1月後半には価格を大きく戻した。さらに、XRPはこれまで銀行のためのツールと謳われていたが、実際には海外送金サービス目的の顧客しか獲得できておらず、実用性の観点からも避難を浴びていた。

リップルを越えて

そこでリップルは、これまでFacebookでディベロッパー・ネットワークのディレクターを務め、投資会社グレイロック・パートナーズの客員起業家(EIR)でもあったEthan Beardを社内に迎え、今後は彼がXpring、ひいてはリップルの開発者向けプログラムを率いていくことが決まった。

「イニシアティブのゴールは、XRPレジャーとシナジーがあると思われるビジネスをサポートすること」とリップルのビジネス・オペレーション部門のSVPを務めるEric van Mittenburgは語る。「”サポート”にはさまざまな形があり得る。投資、インキュベーション、さらには買収や補助金という可能性さえある。支援先は、リップルのレジャーとXRPを使って、真の意味で顧客の課題を解決できるような実績のある起業家に絞っていく」

さらにvan Mittenburgは、すでに「何年にも渡って」複数の起業家や企業からXRPを使ってビジネスをしたいという誘いを受けてきたが、リップルは金融サービスに特化しているため、具体的な話が出たことはなかったと語った。

また彼は「これまでの活動から勝機を感じており、今が攻め時だと判断した。直近の4〜6か月の間に(Xpringのアイディアが)かなり具体化した」と付け加えた。

2010年のLeWebに登壇したEthan Beard(写真:Adam Tinworth/Flickr

今年に入ってからのリップルの動向を追っていた人にとっては、今回のニュースはそこまで驚きではなかっただろう。

仮想通貨企業の多くが自分たちでファンドを立ち上げる(ファンドではなく企業として資金を調達するか、Ethereum Community Fundのように業界中から広く資金を募るかは別として)なか、リップルは密かに投資に力を入れていたのだ。

まず今年1月、2人のリップル幹部がベイエリアのOmniという企業への2500万ドルの投資に参加し、その後3月にはリップルCEOのBrad Garlinghouseが弊誌の取材に対し、リップルは現在の軸を保ったまま「もちろんXRPをさまざまな方法で活用しようとしている企業ともパートナーシップを結んでいく」だろうと語っていた。

すべてはXpringに絡んだ動きだったのだ。

ジャスティン・ビーバーも参画?

van MittenburgとBeardは、XRPとシナジーがありそうな分野として、トレードファイナンス、ゲーム、バーチャルグッズ、個人情報、不動産、メディア、マイクロペイメントを挙げる。

筆者がリップルはXRPの280億ドルという時価総額を正当化する理由を探しているだけではないのかと尋ねたところ、van Mittenburgは他の仮想通貨に比べればXRPの投機性はかなり低いと答えた。

「すでにXRPのユースケースは存在する。稼働中のブロックチェーンを運営する企業のなかでも、リップルは数少ないエンタープライズ向けのソリューションを提供している1社だ。さらにXRPとXRPレジャーはきっと他の企業にとっても有益なテクノロジーになるはずだと感じている」(van Mittenburg)

また彼は、「XRP以外のブロックチェーンを採用したものの満足していない」プロジェクトもリップルに関心を寄せており、Xpringを活用して”移住先”を探すプロジェクトの取り込みに注力することもできるだろうと付け加えた。ただし、ICO投資やトークンの購入、XRPブロックチェーン上でのICOの開催は考えていないという。

XRPを「近いうちに」マーケットプレイスに追加する予定のOmni以外にも、すでにXpringの支援先として目をつけている企業はいくつかある。ジャスティン・ビーバーのマネージャーとして有名なScooter Braunは、「XRPを使ってアーティストのマネタイズやコンテンツ管理を支援できるような方法を模索している」。

Braunが具体的にどんなアイディアに取り組んでいるのか(ブロックチェーンを使った著作権管理システムやストリーミングサービスの開発に取り組むプロジェクトはすでにいくつも存在する)までは、van MiltenburgとBeardは明言しなかったが、ふたりによれば少なくともBraunは安易に他者のまねをするような人物ではないとのことだ。

Braun自身は「エンターテイメント業界の中ではかなり早い段階でブロックチェーンと触れ合っており、今後に期待している」と定型的な返答をするに留まった。

「今後もXRPのユースケースを拡大していく予定なので、まだこれは始まりに過ぎない」(Braun)

Braunの他にも、現在はリップルのCTOながらも新企業Coilを設立し、マイクロペイメントサービスの立ち上げに取り組んでいるStefan Thomas(近いうちにCTOの座からは退く予定)とのパートナーシップが報じられている。また、XpringはベンチャーキャピタルのBlockchain Capitalに出資しているほか、TechCrunchのファウンダーMichael Arringtonは、最近立ち上げたファンドの資金をすべてXRPで調達した

リップルCEOのBrad Garlinghouseは以前からXRPを活用する企業とのパートナーシップについて語っていた(写真:Christopher Michel/Flickr

エコシステムの構築

ただし、Xpringが今後どのような動きをとるかについては未だハッキリと決まっていないようだ。

Beardは、Facebookのタイムラインやソーシャルグラフの力でSpotify、ZyngaそしてBuzzFeedといったスタートアップが主要テック企業へと進化していったように、次のイノベーションの波はブロックチェーン業界から起きると言う。さらに彼は、XpringとXRPは「新しいビジネスを立ち上げ、業界構造を変える」力を秘めていると考えているようだ。

van Mittenburgは具体的なゴールにはコミットしなかった。

「私たちが目指すのは、XRPレジャーとデジタルアセットのポテンシャルを最大限引き出すこと。リップルを含むさまざまな企業にとってメリットのある、健全で強力なXRPエコシステムを構築していきたい」(van Mittenburg)

提携企業へのインセンティブとして、リップルが提携先にXRPを配布していることはよく知られているが、Braunのような著名なパートナーにどのくらいのインセンティブを供与しているかや、Xpring全体の予算といった数字は明らかになっていない。

この点についてvan Mittenburgは「大きなチャンスがあればアグレッシブに攻めていくつもりだ。投資が必要なプロジェクトには多額の資金を投じることもいとわない」としか語らなかった。

おそらくXpringには多額の資金(XRP)が投じられていることだろう。何百という数の仮想通貨が共存する現在のシステムは持続可能とは言えず、今後は十分な価値を生み出しているものだけが生き残れるようになるはずだ。そういう意味では、リップルが目指す独自のエコシステムの構築は理にかなっている。世界第三位の仮想通貨としてXRPには大きな期待が寄せられているが、年初の大暴落が示す通り、その価値は上昇よりも早く下降する可能性がある。

そのため、リップルのコアとなる金融サービスとは毛色が違うながらも、Xpringはコミュニティの創造、そして最終的にはXRPのユースケース拡大を目指すなかで重要なポイントになってくるだろう。残された疑問は、スタートアップコミュニティがさまざまな投資オプションにどうアプローチしてくるかという点だ。

注:本稿の筆者は少額の仮想通貨を保有している。保有金額はテクノロジーについての理解を深められる程度ではあるものの、人生を変えるほどではない。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake

起業家の有安氏を含む6人のメンバー、ブロックチェーン特化のコワーキングスペース立ち上げへ

ブロックチェーン領域に特化したスタートアップのHashHub。同社は5月10日、会社の設立と仮想通貨とブロックチェーン領域に特化したスタジオ型コワーキングスペースを今年夏頃にも立ち上げることを発表した。設立メンバーは、仮想通貨領域のメディアの運営やウォレットの開発などを手がけてきた東晃慈氏(HashHubの代表取締役に就任)を中心とする6人。その中には、起業家でエンジェル投資家の有安伸宏氏も含まれる。

HashHubのコワーキングスペースは東京大学がある東京都本郷に設立される予定だ。ブロックチェーンを活用したビジネスを立ち上げたい個人やチームが対象となる。入居費用は月額3万5000円から。

HashHubは施設をコワーキングスペースとして開放する一方で、自社でもブロックチェーン技術を使ったプロダクトやサービスの開発を進める。入居者も巻き込みながら新しい事業の開発に取り組むという、“スタジオ型”のコワーキングスペースだ。また、HashHubはブロックチェーン技術がオープンソースで開発されることの重要性を認識しており、売上の一部をオープンソースでの開発支援にあて、開発者による勉強会やワークショップ、技術アドバイスを行っていくという。

設立背景について、代表取締役の東氏は「国内では仮想通貨の投機市場が大きく伸びたが、それ以外のビジネスが育っていない。この状況を打破しなければ、海外勢に遅れをとってしまうとの懸念からコワーキングスペースの運営に乗り出した」と語る。

また、有安氏は「『分散型の◯◯を作ります!』と意気込む起業家と会えるようになったのは、ここ最近のこと。しかし、従来のWebビジネスと比較すると、ブロックチェーン関連事業に必要なテクノロジーや法関係などのノウハウには、黎明期ならではの学びにくさがあります」と話し、ブロックチェーン領域でイノベーションをおこす起業家へのサポートの重要性を語った。

HashHubのコワーキングスペースは今年の夏頃にオープンする予定だ。入居申し込みや価格プランなどの詳細は、このWebページで確認できる。

「学習と人脈のハブ機能となる物理的な拠点の誕生は、エコシステムにとって王道的な布石。かつて、日本のWebビジネス黎明期に渋谷周辺が「ビットバレー」と名づけられ、多様なベンチャーが集積したように、様々なblockchain startupが日本でもポコポコと生まれてくることを期待している」(有安氏)

日本のICOファンド「B Cryptos」、韓国のブロックチェーン・プラットフォーム「ICON」と提携

左より、B Dash Ventures代表取締役の渡辺洋行氏、B Cryptos代表取締役の本吉浩之氏、ICON Foundation創業メンバーのJH Kim氏

B Dash Venturesが設立したICOファンドのB Cryptosが、ブロックチェーン・プラットフォーム「ICON」を提供する韓国のICON Foundationとの戦略的パートナーシップを発表した。これにより、ICON Foundationの創業メンバーであるJH Kim氏がB Cryptosの投資委員会に参加し、主に海外の投資案件に対する助言を行うという。

2017年12月に設立したB Cryptosは、国内および海外の仮想通貨へ直接投資を行うICOファンドだ。B Cryptos代表取締役の本吉浩之氏によれば、「来月中にも本格的な投資活動を開始する」という。なお、当初は100億円規模のファンド設立を見込むと話していたB Cryptosだが、設立後に起きたNEM流出事件の影響からか、現時点ではその目標までには達していないという。具体的なファンド規模は非公開。

一方、B Cryptosが提携を発表した韓国のICON Foundationは、イーサリアムやNEOなどと同じく、分散型アプリケーションの構築や、異なるガバナンスをもつ独立したブロックチェーン・ネットワーク同士の連結を目的としたプラットフォーム「ICON」を提供している。また、韓国の証券コンソーシアム向けのブロックチェーンを活用した本人認証システムや、韓国の生命保険会社Kyobo Life Insuranceと共同の自動保険金請求システムなどの開発実績もある。

記事執筆時点では、ICONで使用される仮想通貨「ICX」の時価総額は約17億ドル(約1800億円)で世界20位。「C-rep」と呼ばれる代表者たちによってICXの発行枚数が決定されるシステムや、「SCORE」と呼ばれる独自スマートコントラクト技術をもつことなどで注目を集めている。また、イーサリアムなどの他のプラットフォームとは違い、サービス提供者とユーザーとの間で取引手数料の負担比率の調整が可能であることも特徴だ。

B CryptosとICON Foundationは今回の戦略的パートナーシップにより、今後ハッカソンやデモデイを共同で開催するほか、ブロックチェーン技術のインキュベーションプログラムを運営していくとしている。来月にも本格的な仮想通貨への直接投資を開始する予定のB Cryptosにとっては、JH Kim氏をはじめとするICON Foundationがもつ投資案件の“選球眼”を手に入れることになる。

なお、現時点ではB CryptosがICXへ投資するかどうかは「検討中」(本吉氏)だという。一方、JH Kim氏は「今後、日本のレギュレーションに沿ったかたちで、ICXを日本の仮想通貨取引所へ上場させることも目指す」と話した。

Amazonからブロックチェーン・アズ・ア・サービス――BaaSのライバルはOracleとIBM

Amazon Web Servicesは先週末、Blockchain Templatesを発表した。このプロダクトはブロックチェーン・アズ・ア・サービスでOracle、IBM.の同種のプロダクトのライバルとなるものだ。Amazonの参入でこれらのテクノロジー大企業がブロックチェーンでライバルに先駆けようといかに熱心に努力しているかが分かる。とはいえ、その顧客企業の多くはブロックチェーン・テクノロジーをどのように利用するのがもっとも効果があるかまだ検討中だ(一方、一部の投資家はやや興ざめめしつつある)。

AWSのバイス・プレジデントでチーフ・エバンジェリストのJeff BarrはBlockchain Templatesの利用法を説明するブログ中で、今のところブロックチェーンにはいろいろ不明確な点があることを認め、1970年代の人気コメディー番組、サタデーナイト・ライブのShimmer床ワックスというコントに触れている。このワックスは植物性油脂でできており、床も磨ければデザートのホイップクリームも作れるという触れ込みだった。

「私が話し合った人々の一部はブロックチェーンは新しい金融システムの基盤を提供し、国際送金のあり方を一変させると考えている。別の人々はブロックチェーンは分散台帳による偽造困難なデータソースをもたらす点が重要だと考えている。このテクノロジーはロジスティクス、サプライチェーン、不動産登記、クラウドファンディング、その他多数の方面に応用が可能だ。どちらの考え方を取るにせよ、数多くの魅力的な可能性が開けるはずだ。AWSでは新しいサービスによって顧客がブロックチェーンをいっそう効果的に利用できるようになるものと期待している」とBarrは書いている。

AWS Blockchain Templatesを利用すればユーザーはEthereumまたHyperledger Fabricネットワークを利用するブロックチェーン・アプリケーションを効率的に開発できる。同種のサービスとしては、半年前にOracle OpenWorldでOracleがHyperledger Fabric向けクラウドサービスを、1年前にIBMがHyperledgerベースのBaaSクラウドサービスを発表している。

BaaSとしては、先週深センで開かれたアナリスト・カンファレンスでHuaweiがHyperledgerベースのBlockchain Serviceを発表している。またBaiduやTencentなどの中国の巨大企業も以前からブロックチェーン・プラットフォームを展開している。

画像:David Ryder/Stringer / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

広告をブロックするブラウザーBraveがDow Jones Media Groupとパートナーしてブロックチェーンを実験

Mozillaの前のCEOだったBrendan Eichが始めた広告をブロックするWebブラウザーBraveに、少なくとも一社の、大手ニュース発行者が味方についたようだ。

Brave Softwareと、Dow Jonesのメディア部門Dow Jones Media Groupが今日発表したパートナーシップにより、Media Groupのコンテンツ、具体的にはBarrons.comや有料のニューズレターMarketWatchへのフルアクセスが、Braveブラウザーをダウンロードしたユーザーの一定数に、早いもの勝ちで提供される。

さらに、Barron’sとMarketWatchは、BraveのBasic Attention Token(BAT)プラットホーム上の公認パブリッシャーになる。それは、消費者と、最終的には広告主たちがパブリッシャーに支払うための、ブロックチェーンを使ったシステムだ(Braveは昨年、ICOで大成功を収めた)。

そして両社は、メディアや広告の業界におけるブロックチェーンのさまざまな有効利用について今後実験を重ねていく。

Barron’sのSVP Daniel Bernardが、発表声明で述べている: “グローバルなデジタルパブリッシャーとして弊社は、高品質な顧客体験の構築に利用できる新しいテクノロジーを継続的に探求していくことが重要、と信じている”。

なお、パートナーシップの相手はDow Jones Media Groupであり、The Wall Street Journalなどを発行しているより大きなDow Jones本体*ではない。また両社の発言からは、実験が今回のパートナーシップの主な目的であることが伺われる。〔*: さらにそのオーナー企業がNews Corp.〕

でも、パブリッシャーたちはこれまでもっぱら、ブラウザーの広告ブロック機能を痛烈に批判してきたのだから、今回の動きは劇的な変化だ。たとえば2年前には、WSJ紙を含む新聞発行者のグループが、Braveのビジネスは“われわれのコンテンツを盗んでWebサイト上に載せることと同じだ”、とする書簡を発表した

Braveはまた、最近発表したリフェラルプログラム(referral program, 紹介制度)により、ファンをBraveブラウザーに切り替えさせたクリエイターに報奨としてBATを提供している。その発表声明の中では、当ブラウザーの月間アクティブユーザーが200万、と言っている。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa