EUのプライバシー専門家が新型コロナ接触追跡において分散型アプローチを推進

欧州のプライバシー専門家グループがBluetoothベースの新型コロナウイルス(COVID-19)の接触追跡のための分散型システムを提案した。このシステムは、データを集中管理するために局所に取り組むアプリよりも、より強力に不正使用や悪用からデータを保護することができると、グループは主張している。

グループが分散型プライバシー保護近接追跡(DP-PPT)と名付けたこのプロトコルは、スイス連邦工科大学チューリッヒ校、ベルギーのルーヴェンカトリック大学をはじめとする、欧州全土の7つ以上の研究機関の学者約25名によって設計された。

グループは、こちらでDP-PPTアプローチについて記載したホワイトペーパーを公開している。

このホワイトペーパーで重要なのは、この設計には、短期間のBluetooth識別子(ホワイトペーパーではEphIDと呼ぶ)を生成および共有するデバイスに基づいた、ユーザーのデバイス上における接触追跡とリスクに対するローカル処理が伴うという点である。

データをデバイスにプッシュするためには、バックエンドサーバーを使用する。つまり、感染者が新型コロナウイルス感染症と診断されると、保健当局が感染者のデバイスから感染期間中のEphIDの簡易表示をアップロードすることを認可する。アップロードされたデータは他のユーザーのデバイスに送信され、リスクの有無がローカルで計算され、適宜ユーザーに通知される。

この設計では、プールされたデータによってプライバシーリスクをもたらすような匿名化IDの集約を必要としない。そのため、システムを信頼してこのプロトコルを使用する接触追跡アプリを自発的にダウンロードするようにEU市民を説得することも容易になるだろう。これは、国家による個人レベルの監視には転用し難い設計であるからだ。

グループでは、ローカルで交換されたデータを盗聴したり、アプリを逆コンパイル/再コンパイルして要素を改変するなど、技術に精通するユーザーによって発生し得るその他の脅威についても議論している。包括的な論点は、「監視の忍び込み」(つまり、国家が公衆衛生上の危機に乗じて市民レベルの追跡インフラストラクチャを確立・維持するのではないかということ)につながる危険性のあるデータの中央集中型システムと比較して、こうしたリスクはより小さく管理しやすいということだ。

DP-PPTは、使用目的が限定され、公衆衛生上の危機の終結後は廃止することを考慮に入れて設計されている。

EPFL(スイス連邦工科大学ローザンヌ校)のCarmela Troncoso(カルメラ・トロンコソ)教授は次のように記している。「DP-PPTプロトコルは、プライバシーが保護された近接追跡アプローチが可能であり、国または組織がリスクと不正使用を支持する手法を受け入れる必要がないということを示しています。法律によって厳密な必要性と妥当性が求められ、近接追跡の基盤として社会的サポートがある状況では、この分散型設計で、不正使用されることのない近接追跡の実行手段を提供できるのです」。

ここ数週間、欧州各国の政府が、新型コロナウイルスを追跡するさまざまな目的でユーザーデータを引き渡すようデータ管理者に迫っている。また、研究者が新型コロナウイルスに対抗するうえで役立つという症状報告アプリなど、民間企業によって複数のアプリが市場に投入されている。大手テクノロジー企業は、公的医療目的と主張してインターネットユーザーの永続的な追跡を再度パッケージ化するためのPRの機会をうかがっているものの、実際の用途は不明瞭だ。

通信会社によるメタデータの取得は、市民の追跡ではなく、新型コロナウイルス感染症の蔓延のモデル化を目的としていると、ECが発言

欧州委員会は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって引き起こされた公衆衛生上の緊急事態への対処の一環として、集約されたユーザーの位置情報を共有するようヨーロッパの通信会社に求めている。「欧州委員会は、集約され匿名化された携帯電話の位置データの提供について携帯電話事業者との議論を開始した」と本日発表した。

新型コロナウイルスに関する次の大きな技術推進は、接触追跡アプリである可能性が高い。接触追跡アプリは、近接追跡Bluetoothテクノロジーを活用して、感染者と感染していない人々との間の接触をマッピングするアプリだ。

これは、何らかの形式で接触追跡を実施しなければ、人々の動きを抑制することでなんとか低下させた感染率が、経済活動や社会活動が再開された後、再び上昇するリスクがあるからである。ただし、接触追跡アプリが政策立案者や技術者の望み通り、新型コロナウイルス感染症の封じ込めに有効であるかどうかについてはまだ疑問が残る。

ただし、現時点で明確なのは、設計上プライバシーを考慮して慎重に設計されたプロトコルがなければ、接触追跡アプリによってプライバシー、すなわち、人々の居場所など、やっとのことで手に入れた人権に対するリスクが実際に生じるということだ。

新型コロナウイルス感染症との闘いという大義名分で権利を踏みにじることは、正当でもなく、その必要もないというのが、DP-PPTプロトコルを支持するグループの真意だ。

ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのMichael Veale(マイケル・ビール)博士は次のように述べている。「集中化に伴う大きな懸念事項の1つは、システムが拡張可能であり、国家が誰と誰が近しい関係にあるというソーシャルグラフを再構築できるため、それに基づいてプロファイリングやその他の規制に展開できるという点である。このデータは、公衆衛生以外の目的で法執行機関や情報機関によって勝手に使用される可能性があるのです」。博士は分散型設計の支持者でもある。

「一部の国ではこれに対して有効な法的保護措置を講じることができるかもしれませんが、欧州に集中型プロトコルを導入することで、近隣諸国は相互運用を余儀なくされ、分散型システムではなく集中型システムを使用せざるを得なくなります。逆の状況も当てはまります。分散型システムでは、他の国々がプライバシー保護アプローチを確実に使用することで、世界全体で新型コロナウイルス感染症のBluetoothに基づく追跡を監視目的で不正使用することに対する厳しい技術的制限が課されます」。

博士は近接データの集中化について次のように付け加えた。「集中化はまったく不要です。設計によるデータ保護では、目的に必要なデータのみを使用するように、データを最小限に抑えることを義務付けています。データの収集や集中化は、Bluetoothの接触追跡には技術的にまったく不要なのです」。

4月上旬、TechCrunchではドイツのフラウンホーファーHHI研究所が指揮する、技術者と科学者で構成される別の団体によるもう1つのEUにおける取り組みに関する記事を公開した。その記事では、汎欧州プライバシー保護近接追跡(PEPP-PT)という名称の、新型コロナウイルス感染症接触追跡に関する「プライバシー保護」標準の取り組みについて報告した。

記事を公開した時点では、このアプローチについて、匿名化IDの処理で集中型モデルのみに用途が固定されるかどうかは明らかになっていなかった。今回TechCrunchに語ってくれた、PEPP-PTプロジェクトの共同創始者の1人であるHans-Christian Boos(ハンス・クリスチャン・ブース)氏は、標準化の取り組みにおいて、接触追跡の処理で集中型アプローチと分散型アプローチの両方をサポートすることを認めた。

この取り組みは、EUのプライバシーコミュニティの一部から分散型アプローチではなく集中型アプローチにとって有利になると批判されている。批評家たちは、ユーザーのプライバシーを保護するという主要な主張が損なわれると強く反発している。しかしながら、ブース氏によると、この取り組みは世界中におけるデータの取り込みを最大化するために、実際に両方のアプローチに対応している。

また、ブース氏はデータが集中化されているか分散化されているかにかかわらず、相互運用可能であると述べている(ブース氏は、集中化シナリオでは、PEPP-PTを監督するために設立された非営利団体が(資金調達については懸案中であるものの)、集中型サーバー自体を管理できることが望まれる。これは、人権のための体制が整っていない地域などでのデータ集中化によるリスクをさらに軽減させるためのステップであると述べている)。

「集中化と分散化、両方の選択肢があります」と、ブース氏はTechCrunchに語った。「ニーズに応じて両方のソリューションを提供し、提供したソリューションを運用していきます。しかしながら、私がお伝えしたいのは、どちらのソリューションにもそれぞれメリットがあるということです。暗号学のコミュニティからは分散化を望む声が多く、一方医療コミュニティからは、感染者に関する情報を所有する人が多くなり過ぎることを懸念するため、分散化に反対する声が多くあります」。

「分散型システムでは、感染者の匿名IDをあらゆる人にブロードキャストすることになるという基本的な問題があります。そのため、一部の国の医療関連の法律では完全に禁止されています。暗号化手法を導入しているとはいえ、IDをあちこちにブロードキャストすることになります。これは、接触の有無を特定する唯一の手段が、ローカルの携帯電話であるからです」とブース氏は続ける。

「これは、分散型ソリューションの欠点です。その他の点は申し分ありません。集中型ソリューションには、単一の運用者が匿名化IDへのアクセス権を持つという欠点があります(ユーザーはその運用者を信頼するかしないかを選択できます)。これは、匿名化IDがブロードキャストされている場合とほとんど変わらないといえます。そのため、問題は、1人の関係者に匿名化IDへのアクセス権を持たせるのか、このアクセス権を全員に持たせるのかということになります。これは、最終的にはネットワーク経由で匿名化IDをブロードキャストすることになるため、なりすましにつながることがあるためです」。

「誰かが集中型サービスをハッキングできる可能性があると仮定すると、その誰かはサービスが経由しているルーターもハッキングできるということも考慮する必要があります。問題点は同じなのです」とブース氏は付け加えた。

「そのため、私たちはどちらのソリューションも提供します。どちらかを信奉しているというわけではありません。どちらのソリューションでも適切なプライバシーを提供しています。問題点は、どちらについてもどの程度信頼するか決めなければならない、ということです。データをブロードキャストする対象の大勢のユーザーか、サーバー運用者か、どちらをより信頼すべきでしょうか。または、ルーターがハッキングされる可能性があるという事実か、サーバーがハッキングされる可能性があるという事実か、どちらを信頼すべきでしょうか。どちらを信頼することもあり得ます。両方とも至極もっともな選択肢です。暗号化コミュニティの人々の間では、宗教染みた議論であるともいえます。ただし、暗号化で求められる内容と医療で求められる内容の間でバランスを取らなければなりません。そして、私たちはどちらを選択すべきかを決定できないため、両方のソリューションを提供することにしました」。

「私は選択肢は必要であると考えています。国際基準の策定を目指しているのであれば、宗教じみた争いは排除しなければならないためです」。

また、ブース氏は、このプロジェクトの目的は、各データへのアクセスに基づいてリスクを比較し、リスク評価を実施するためにそれぞれのプロトコル(集中型と分散型)を研究することだとも述べている。

「データ保護の観点からすると、当該データは完全に匿名化されています。これは、位置情報、時間、電話番号、MACアドレス、SIM番号のうち、どれも付属していないためです。明らかにされている唯一の要素は接触、つまり、2つの匿名ID間に問題となる接触があったということです。わかるのはそれだけです」と、ブース氏は述べている。「コンピュータサイエンティストやハッカーに対して問いたいのは、彼らに接触に関するリストやグラフを提供した場合、それからどのような情報を得られるのか、という点です。グラフでは、情報は相互に結ばれた数字にすぎません。問題はどのようにしてグラフから何らかの情報を導き出すのかということです。コンピュータサイエンティストやハッカーは今それに取り組んでいます。どのような結果が得られるか見守りたいと思います」。

「この議論については正当性を主張しようとする人が大勢います。これは正当性に関する議論ではありません。正当なことを実行することに関するものです。つまり、私たちは、このイニシアチブで適切な選択肢であればどんなものでも提供します。また、集中型にも分散型にも欠点がある場合は、それを公表します。そして、できる限り、その欠点について確証を得たり、それについて研究したりしていきます。各システムの特性を公表し、人々が地域のニーズに合ったタイプのシステムを選択できるようにします」とブース氏は付け加えた。

「一方のシステムが運用可能で、もう一方が完全に不可能であると判明したら、運用が不可能な方を廃止します。これまでのところどちらも「プライバシー保護」という観点から運用可能であるため、両方とも提供する予定です。ハッキングや、メタ情報の取得が可能であり、許容できないリスクが明らかになったため、運用不可能であると判明したシステムについては、完全に廃止して提供を止めます」。

ブース氏が「課題」と述べていた相互運用性については、氏によると各IDを計算する仕組みについて最終的な調整段階に入った。ただし、ブース氏は相互運用性については引き続き取り組みが進行中であり、相互運用性は必要不可欠な要素だと強調した。

「相互運用性がなければ、システム全体が意味を成さなくなります」とブース氏は述べる。「なぜまだこの相互運用性を得ることができないのかは課題といえますが、私たちはこの課題を解決しつつあり、まちがいなくうまくいくでしょう。相互運用性を機能させるためのアイデアはたくさんあるのです」

「すべての国が相互運用を行わないとすれば、もう一度国境を越えて連携する機会は訪れないでしょう」とブース氏は付け加えた。「ある国にデータを共有しない複数のアプリケーションがある場合、感染追跡の実現に必要となる大規模な参加者を集めることはできないでしょう。また、プライバシーに対する正しい取り組みについて単一の場で十分に議論しないと、そうした正しい取り組みはまったく浸透しないでしょうし、他人の電話番号や位置情報を使用する人々も少なからず現れるでしょう」。

PEPP-PTの連合グループはまだプロトコルやコードを公表していない。つまり、参加を望む外部の専門家が、レビューを行うために必要なデータを入手できていない。そうした専門家は、規格案に関連する具体的な設計上の選択肢について、情報提供を受けたうえでフィードバックを行うことができる。

ブース氏によると、連合グループはMozillaライセンスに基づき、4月上旬にコードをオープンソース化するとした。また、プロジェクトへの「あらゆる適切な提案」について大歓迎だと述べている。

ブーズ氏は次のように語っている。「現在、ベータメンバーのみがコードにアクセスできるのは、ベータメンバーがコードを最新バージョンに更新すると約束したためです。コードの最初のリリースの公開時までに、データプライバシーの検証とセキュリティの検証を確実に実施したいと考えています(こうした検証はオープンソースシステムでは省略されることがあるのです)。そうすることで、大幅な変更が発生しないという確信を持つことができます」。

プライバシーの専門家は、このプロトコルに関する透明性の欠如を懸念している。このような懸念により、詳細が決まっていないサポートを保留するよう開発者に求めている。また、EU各国の政府が介入し、中央集中型モデルに向けた取り組みを推進して、基本設計やデフォルト設定に組み込まれるべきEUの中核的なデータ保護原則から逸脱しようとしているのではないかという憶測さえあった。

SedaG @sedyst ·2020年4月6日
このすぐには理解できないメッセージは、PEPP-PTコンソーシアムには透明性が欠如しているということを意味しています。また、(複数の)政府がこのプロセスに介入して集中型モデルに向けた取り組みを推進しているか、介入している場合はどの程度介入しているのかということについて述べています。
非常に憂慮すべき展開です。


Michael Veale @mikarv
新型コロナウイルス感染症のBluetoothによる近接追跡に関する重要事項

「PEPP-PT」プロトコルは確定されていません。分散型プライバシー設計(DP-3T)は、恣意的な利用や機能クリープを防止します。集中型ではこれらを防止できません。

分散型に対する明示的な条件付きサポートがない限り、PEPP-PTを支持しないようにしましょう。


Mireille Hildebrandt @mireillemoret 2020年4月6日 午後9時40分
私はこれを読んで、PEPP-PTでは「ユーザー」(政府、プラットフォーム)が望む内容に応じて、さまざまな構成を実現できる、という意味に解釈しました。そこがDPbDDとは異なっていますね。それに、パートナーは誰であるのか、どのようなNDAが関係するのか、どのようなダウンストリームデータフローを使用するのかという疑問に対する答えも得られませんでした。

現状では、EUで長年使用されてきたデータ保護法は、データの最小化などの原則に基づいている。もう1つの主要な要件は透明性である。また、4月上旬、EUの主要なプライバシー規制当局であるEDPSは、新型コロナウイルス感染症接触追跡アプリに関する開発を監視しているとTechCrunchに語った。

「EDPSは、新型コロナウイルス感染症のパンデミックと戦うための技術とデジタルアプリケーションの開発をサポートし、他国のデータ保護監督当局と連携してこれらの開発を注意深く監視しています。パンデミックと戦う上で保健当局が必要だと考えている個人データの処理について、GDPRは障害にはならないという見解を堅持しています」と広報担当者は語った。

「新型コロナウイルス感染症のパンデミックに対する戦いにおいて、すべての技術開発者が現在取り組んでいる有効な対策は、最初からデータ保護を実装している必要があります(例:設計原則によるデータ保護を適用する)。EDPSおよびデータ保護コミュニティは、この共同の取り組みで技術開発者を支援する準備ができています。データ保護機関の指針については次の資料を参照してください。EDPB Guidelines 4/2019 on Article 25 Data Protection by Design and by Default、およびEDPS Preliminary Opinion on Privacy by Design」。

また、私たちは、欧州委員会が新型コロナウイルスに関連して多数のアプリやツールが突如出現したことに注目しており、その有効性と欧州データ標準への準拠について注視していることも把握している。

ただし、欧州委員会は同時に、デジタル化、データ、AIを中核とする、欧州圏の産業戦略の再促進の一環としてビッグデータアジェンダを推進してきた。さらに、4月6日付のEuroactivの報道によると、欧州理事会からリークされた文書には、EU加盟国と欧州委員会がデジタルドメインのすべての領域で今後の政策を通知するために、「新型コロナウイルス感染症のパンデミックから得た経験を徹底的に分析する」と記載されていた。

そのため、EUにおいてさえ、新型コロナウイルス危機との接触リスクに関するデータが強く求められており、個人のプライバシー権を損なう恐れのある方向に開発が推し進められている。このため、国家によるデータの奪取を防ぐため、接触追跡を分散化しようとしている一定のプライバシー推進派から激しい反発が生じている。

欧州はデータの再利用を促進し、「高リスク」AIを規制する計画を立てている

欧州連合(EU)の議員は、あらゆる産業やセクターでデジタル化を推進し、欧州連合委員長のUrsula von der Leyen(ウルズラ・フォン・デア・ライエン)氏が「デジタル時代に適合した欧州」と掲げた課題を実現するため、欧州圏の新しいデジタル戦略に対する一連の提案を初めて立案した。また、これは、中国や米国に対する地域的な優位性を高めるための戦略として、新世代のデータ主導型サービスを強化するという目的で、ヨーロッパの大規模データセットのプールにある障壁を取り除くことに熱心な、欧州連合の「AIの奪い合い」とも言える。

ブース氏は、ベストプラクティスと見なされている「データの最小化」は、最終的には誰により大きな信頼を寄せるかという考え方に他ならないと述べている。「分散型アプローチおよび集中型アプローチについては、どちらもデータを最小化しているという意見があるかもしれませんが、1つのポイントでデータの最小化が行われていても、分散型システム全体でデータの最小化が実施されていることにはなりません」とブース氏は示唆する。

「問題は誰を信頼するのかということです。誰により大きな信頼を置くのか、これこそが本当の問題です。重要なデータは匿名化された接触のリストではなく、感染確定のデータであると理解しています」

「こうした問題の多くは、分散化と集中化の間で昔から行われてきた、宗教染みた議論において討論されてきました」とブース氏は付け加えた。「一般的に、ITは、分散化ツールと集中化ツールで揺れています。つまり、全面的な分散型または全面的な集中型のどちらか一方に決定することができないのです。どちらも完璧なソリューションではないためです。ただし、今回のケースでは、分散化と集中化の両方が有効なセキュリティオプションを提供すると考えています。また、どちらのアプローチも医療データを使用して実現が求められていることと、実現してはならないことに関して異なる意味を持っています。決定は全員に委ねられています」。

「私たちに求められているのは、両方のオプションを選択可能にすることです。また、ある機能についてその仕組み、相違点、リスクに関してじっくりと議論を交わし、単なる推測ではなく、適切な調査を行う必要があります」。

PEPP-PTの議論に誰が関与しているかという点について、プロジェクトの直接の参加者以外に政府と保健省が参加しているのは、「医療プロセスにPEPP-PTを組み込む必要がある」という実務的な理由からだと、ブース氏は述べた。「多くの国が、現在、公式の追跡アプリを作成しており、当然ながら、そのようなアプリはPEPP-PTに接続する必要があります」とブース氏は言う。

「また、私たちは各国の医療システムがどのようなものであれ、医療システムの関係者と話し合います。これは、医療システムとの最終的な境界にPEPP-PTを組み込み、検査と連動させる必要があるためです。感染症に関する法律とも連動させ、人々が、プライバシーや連絡先情報をさらすことなく地域の疾病対策予防センターと連絡を取ることができるようにする必要もあります。こうした点についても議論が交わされています」。

早期(ベータ)アクセス権を持つ開発者は、すでにシステムの簡易検査を実施している。PEPP-PT技術を利用する第一陣のアプリが一般的に出回る時期について尋ねると、ブース氏は、数週間以内でまもなくであると示唆した。

「そういったアプリのほとんどでは追跡レイヤーにPEPP-PTを導入するだけで済みます。医療プロセスとPEPP-PTを接続する方法を理解できるように十分な情報をすでに提供しています。アプリのリリースまでに長くかかるとは思いません」とブース氏は述べる。また、このプロジェクトでは、すぐに稼働させることのできる開発者リソースのない国を支援するために追跡参照アプリも提供している。

「ユーザーエンゲージメントでは、単なる追跡以上のことを行う必要があります。たとえば、疾病対策予防センターからの情報を含める必要があります。しかし、プロジェクトとして(より簡単)にこうしたこと開始するためにアプリのスケルトン実装を提供します」とブース氏は述べた。

さらに、ブース氏はこのように続けている。「先週以降私たちに電子メールを送信してくれたすべての人々が自分のアプリにPEPP-PTを導入してくれれば(幅広く導入してもらえる見込みです)、半数が導入してくれれば、滑り出しは非常に順調といえます。各国からの大量な人の流入と、従業員の復帰を特に望む企業の存在といった要因により、とりわけ、国際的なやり取りと相互運用性を実現するシステムの導入を求める声が強くあります」。

接触追跡アプリが、新型コロナウイルス(インフルエンザよりも感染性がはるかに高いことが判明している)の蔓延の制御に役立つかどうか、という広い観点に立って、ブース氏は次のように述べている「感染を隔離することが重要であるということがあまり議論になりません。この病気の問題点は、すでに感染していても無症状であることです。つまり、その人の体温を測定してそれで終わり、というわけにはいかないのです。過去の行動を調査しなければなりません。そして、デジタルを活用することなく、この調査を正確に実施できるとは思えません」。

「多くの病気が示しているように、感染の連鎖を隔離する必要があるという理論が全面的に真実であるならば(ただし、それぞれの病気は異なるため、100%の保証はないが、すべてのデータが隔離の必要性を示しています)、隔離こそがまちがいなく実行すべきことです。現在これほど多くの感染者がいるので、この議論には納得がいきます。世界は密接かつ相互につながっているため、世界各地で同じようなロックダウンが実施されることになるのでしょうか」。

「これこそが、R0値(1名の感染者から感染する可能性のある人数)が公表された時に、このようなアプリが市場に出回ることが納得できる唯一の理由です。R0値が1を下回ると、その国の感染件数が適切なレベルまで減ったことになります。また、感染症の関係者の言葉を借りれば、これは、病気を軽減するアプローチではなく、病気を封じ込めるアプローチ(今私たちが行っているような)に戻ることを意味するのだと思います」。

「接触連鎖評価のアプローチを使用することで、検査の優先順位が高まります。ただし、現在、人々は優先順位が正しいのかということではなく、検査のリソースに対して疑問を感じています」と、ブース氏は付け加えた。「検査と追跡は相互に独立しています。どちらも必要です。接触を追跡しても、検査を実施できないとしたら、追跡はいったい何の役に立つでしょうか。そのため、検査インフラストラクチャ『も』間違いなく必要です」。

画像クレジット:Rost-9D / Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳: Dragonfly)

神戸市と500 Startupsの支援プログラムが6月開始、新型コロナと戦うスタートアップを国内外から募集

神戸市長の久元喜造氏は4月23日、神戸市と米国のベンチャーキャピタルである500 Startupsと連携したスタートアップ育成プログラム「500 KOBE ACCELERATOR」の参加募集を6月から開始することを明らかにした。新型コロナウイルス蔓延のため、プログラム自体は完全にオンラインで実施され、プログラムの成果を発表する場であるDemo Dayも現在のところオンラインでの開催を検討しているとのこと。

なお、すでに4月20日から神戸市独自で同様のプログラムの募集が始まっているが、重複して応募することも可能とのこと。

関連記事:神戸市が新型コロナと戦うスタートアップを募集、2営業日以内のオンライン一次審査後に社会実装へ
500 KOBE ACCELERATORは、約6週間の短期集中型起業家支援プログラムで、日本発のスタートアップエコシステムを神戸から生み出すことを目指して2016年から開催しているもの。第4回の昨年は、ヘルステック領域に特化。神戸市は、人工島であるポートアイランドに先端医療技術の国際的な研究開発拠点として神戸医療産業都市を有しており、医療関連のスタートアップを育成する環境が整っていることからテーマが決まったそうだ。申込数は174社で、そのうち半数以上が海外からの申し込だったとのこと。第1回からの採択企業の累計資金調達額は100億円を超える。そのうち3社はM&Aによる事業買収を受けたほか、8社は現在も神戸を拠点に活動している。

5回目となる今年は、さらにジャンルを絞り込み新型コロナウイルス(COVID-19)と戦うスタートアップ企業を募集する。開催概要は以下のとおりだが、コロナウイルス感染への治療や創薬、一部の医療機器開発などの事業は対象外となる。

また投資プログラムではないため、採択された企業への500 Startupsの基本的に出資はない。プログラムは原則として英語で実施されるが、講義ビデオは日本語字幕付きで、メンタリングは必要に応じて逐次通訳でサポートする。

  • プログラム名:500 KOBE Accelerator 2020 for COVID-19 Emerging Technology
  • 募集期間:2020年6〜7月(予定)
  • プログラム期間:2020年8月から10月(予定)
  • 開催方法:オンライン(デモデイの開催方法は社会状況に応じて今後検討)
  • 対象領域:ウイルス感染予防、公衆衛生などに関する正確な情報発信(デマ防止)、健康管理、リモートワーク・学習、食品物流、オンラインイベントなど
  • 参加資格:国内外の起業家または起業家候補でシード(最小限のプロダクト・モデルを開発済み)、アーリー(製品開発済み、顧客あり、第三者からの投資を獲得する段階)期にある ※すでに製品やサービスを持っており、チーム活動しているスタートアップを推奨
  • 参加者枠:20チーム

プログラム内容は以下のとおり。

  • メンタリング:500 Startupsのグローバルスタッフによる1対1形式のメンタリング
  • 講義:マーケティングやマネタイズ手法、UX/UI、資金調達などに関する専門家による講義
  • コミュニティ:選抜されたスタートアップのコミュニティ形成支援
  • 神戸医療産業都市のサポート

記者会見で久元市長は、新型コロナウイルス感染症対策で1624億円の緊急補正予算を組むことも発表。

この予算により、医療や教育、ひとり親やDVの被害を受けている人、中小企業への支援などを進める方針だ。そして、500 KOBE ACCELERATORプログラムでスタートアップの力も借りて戦後最悪ともいえる難局を乗り越える。

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雇用維持のために誰もが利用可能な金融テクノロジーを

【編集部注】本稿はAnn Marie Mehlum(アン・マリー・メフルム)氏とJavier Saade(ハビエル・サーデ)氏による寄稿記事である。メフルム氏は、Summit Bankなど数社で役員を務める人物。FS Vector上級顧問、Fenway Summer顧問。前職はSBA資金アクセス担当副長官。サーデ氏はFenway Summerベンチャーパートナー、FS Vector上級顧問、Fenway Summer投資顧問を務める人物。前職は、SBA副長官兼投資イノベーション担当部長だ。

我々は以前、米国中小企業庁(SBA)で中小企業向けの資金、投資、ローン、イノベーションに関するプログラムを監督する職に就いていた。米国は3000万社の中小企業を支援している。中小企業による雇用は米国の就労人口の半分以上にのぼり、新規雇用の大半は中小企業が創出している。一方で、中小企業の8割は手元の資金で60日以上の期間を持ちこたえることができない。

今、世界の企業活動と雇用は、未曾有の規模と速さで壊滅的な影響を受けている。米国議会と政府が総額2兆ドル(約215兆円)の経済対策を打ち出したことは称賛できる。このうち3500億ドル(37兆7300億円)が米国の中小企業に注入されている。また、本記事の執筆時点で、さらに2500億ドル(約27兆円)の追加対策案の検討と交渉が進行中である。

政府は金融部門と定期的に話し合いを行ってきたが、中小企業を効果的に救済するには、あらゆる規模の銀行、フィンテック企業、その他のテクノロジー企業、地方銀行、資金のパイプ役となるその他の企業を巻き込んだ救済策が必要である。とにかく資金を企業に確実に届けることが急務であり、そのためにはテクノロジーの活用が必要不可欠だ。

米国時間4月8日、2つの有望な展開があった。1つは、SBAが金融機関の新規参入をより簡単にするために、AWSを利用したゲートウェイシステムを立ち上げたこと、もう1つは、ノンバンクやフィンテック企業への融資申し込みが可能になったことだ。もちろん良い展開だが、環境の変化に対応するように後付けされた対策にはたいてい根本的な制限が付いて回る。

温故知新ということで過去を振り返ってみると、2008年の金融危機は多くの点で、我々が現在直面している危機の「予行演習」だったと思う。両者には類似点がある。しかし、今回のパンデミックでは、実質的に経済のあらゆる部門が同時に大打撃を被っている。このことは、1700万人が失業保険の受給申請を行っていることからも明らかだ。

2008年の金融危機は、金融システムにおける過剰なリスクによって引き起こされたもので、そのショックが経済に及ぼす影響もある程度は予測できた。しかし、今回のパンデミックが経済に与えている外的ショックは、2008年の場合よりも相互関連度が高く、より速くかつ広範に打撃を与えている。

21世紀の問題には21世紀の解決策が必要だ。そのためには、政策から実施までのあらゆる段階でこれまでの考え方を一新する必要がある。米国の経済活動の大部分は中小企業と金融システムの交差部分で行われている。だからこそ、この分野において新しい考え方と実施方法が必要なのである。

ここで指摘しておくべきことが1つある。CARES Act法の実施に制限があるのは、銀行業務に今もなお利用される従来型のテクノロジーが足かせとなっていることが原因だ。各政府機関の時代遅れのシステム(これまでに何度も指摘されている、SBAの旧式で扱いづらいE-Tranシステムなど)もそれに含まれる。

政府機関のシステムはもちろん政府機関自体も、これほど大規模で緊急度が高い事態に対応できるようには作られていない。しかし、金融テクノロジーにはもともと、こうした事態にも対応できるスケーラビリティ、普及率、インフラ、アルゴリズム的機能、資金支給パイプとしての機能が備わっており、今こそそれを発揮すべきときである。以下この点について詳しく説明する。

金融システムは、テクノロジーが採用されるまでのタイムラグ、(現状を維持しようとする)組織的な慣性、規制による制約に大きく左右される。それが、今回の政策の実施に伴う混沌とした状況を生み出す原因となっている。今後検討される可能性がある経済対策の第4弾は、その点を考慮に入れて策定すべきである。中小企業に追加資金を注入するのは良い決断だが、その実施プロセスは改善する必要がある。

規制当局と各政府機関には、米国の中小企業が今回の危機によって受ける被害を最小限に抑えつつ、議会の本来の意図に従ってCARES Act法を実施して欲しいと願う。本記事の執筆時点では、納税者や中小企業に十分な現金が行き渡っているとは思えない。最新の数字によると、すでにSBAの救済資金の25%が中小企業に対して融資されることが確定しているという。これは心強い指標ではあるが、それでも3500億ドルという総額からみれば、ほんのわずかに過ぎない。

おそらく理解しておくべきもっと重要な点は、銀行が融資を確約したとしても、それで即、現金が中小企業に届くというわけではないという点だ。

現金が動くには、以下のような方法により、CARES Act法が中小企業に対して円滑に実施される環境を整える必要がある。(1)銀行券発行残高に関する最終指針の決定、 (2)流通市場の流動性の向上、(3)最新のデジタルインターフェイスによりすべてのステークホルダーが簡単に接点を持てるようにすること、(4)例えばフィンテック企業がサービスプロバイダー、資金のパイプ、または融資機関としての役割を担えるようにするなど、新規参入者への門戸開放。

これらが重要なのは、SBAは処理能力を最低でも50倍に拡大せよとの使命を課せられているからだ。SBAの全融資プログラムの融資額を合計しても年間250億ドルである。SBAは現在、8~12週間で3500億ドルという巨額の融資を取り扱っている。SBAが財務省、FRB、その他の政府機関と連携して24時間体制で、システム、テクノロジー、融資の実施に対応していることは分かっているが、喫緊の課題の解決に障害となる摩擦点が存在する。

今回のSBA融資に必要な資金の流動性をバックアップするために、FRBがサポートを表明したことは良いニュースだ。しかし、その実施にも時間がかかるだろう。同様に、FDIC(連邦預金保険公社)による地方銀行のレバレッジ比率の緩和も歓迎すべきニュースだ。規制当局は、慎重かつ一時的な要件および制限事項の追加緩和を検討している。これらはすべて今回の救済策の円滑な実施を助けるものだが、それでもまだ未解決の疑問点が残っており、さまざまな金融機関が傍観者となる原因になっている。

融資の規模や件数、短期間で融資を実施する必要性などの要因を考えると、デジタル化と最新テクノロジーの活用が急務である。SBAおよびその他の政府機関と規制当局には、デジタルファイナンスと金融テクノロジーを活用するためにエネルギーとリソースを投入することを求めたい。

金融テクノロジーは、融資申請の簡素化、顧客の確認(KYC)と資金洗浄防止ルールへの準拠、融資申請の自動化に役立つ。また、テクノロジーにより、融資の創出、引受、支出、処理なども改善される。これを使わない手はない。数百万の中小企業のうち最も脆弱な企業に限って、実は銀行与信を利用していない。しかし、そのような中小企業でも、例えばSquareなどのモバイル決済システムを利用している。フィンテックは今や、誰でも利用できるレベルに達しているのだ。今の状況にまさにぴったりである。規制当局はテクノロジーの集約的な能力をフルに活用して欲しい。

銀行に行くことができないだけでなく、プリンタさえ持っていない人もいる。だが、大半の中小企業とその経営者はスマートフォンを所有しており、すでに何らかのデジタルテクノロジーを活用している。多くのフィンテック企業が銀行自体にテクノロジーを提供している。そうした銀行は、今こそ迅速に動いて、そうしたテクノロジーを活用する必要がある。金融危機以来、2000億ドルが金融テクノロジーに投資されてきたことを考えれば、はっきり言って、フィンテックをイノベーションの実験だと考える段階はとっくに過ぎている。

資金を出すということに計り知れないプレッシャーがかかっているが、厳しい規制も同様に大きな障害となっている。今回のパンデミックにより、誰もが利用できる金融システムを導入する必要性が浮き彫りになっており、その中核となるのがテクノロジーである。新しい仕組みを試すのに今以上の好機はない。

失われた雇用を再び創出するのは本当に難しい。それよりも、雇用を維持すること(これは米国政府の最近の対策すべてに共通する基本理念だ)にエネルギーを注いだほうがはるかに効率的である。雇用を維持し、米国経済の心臓である中小企業に救済資金を届けることに力を尽くそう。
“新型コロナウイルス

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(翻訳:Dragonfly)

中国のEVスタートアップ「Byton」が米国本社社員450名の半数を一時帰休に

中国拠点の電気自動車スタートアップ、Byton(バイトン)は、カリフォルニア州サンタクララにある北米本社の従業員450名の約半数を一時帰休させたことを発表し、同社の電気自動車、M-Byteの発売時期は不確定要素が高まってきた。

BytonはTechCrunchに、一時帰休はCOVID-19(新型コロナウイルス)パンデミックが理由だと語った。休ませた社員は将来呼び寄せる意向だと同社は言っているが時期は明らかにしていない。

「パンデミックが世界経済と自動車産業に与えている影響を踏まえ、当社は他の一部企業と同じく、直面する課題に対して行動を起こす必要があった」とByton広報担当者がTechCrunch宛のメールに書いた。「この一時帰休はBytonの米国事業全域が対象であり、中国の社員は一時帰休させていない」

Electrek(エレクトレック)が最初にこのニュースを伝えた

この一時帰休は同社が電動SUV、M-Byteを今年中に量産するための準備をしている最中に起きた。新型車はおそらく48インチの巨大デジタルダッシュボードで一番よく知られており、中国の南京(ナンキン)工場で製造される予定だ。M-Byteは中国、米国、および欧州で販売される。

Bytonは以前、中国では2020年後半に販売を開始し、続けて米国で販売すると言っていた。欧州への上陸は2021年前半の予定だった。しかし、新型コロナ・パンデミックとそれに伴う一時帰休によって、Bytonの予定は変わるかもしれない。

Bytonは、現在新型コロナがM-Byteの生産に与えた影響を評価しているところだと、TechCrunchに伝えた。同社の中国工場は2月中旬に再開し、現在はほぼフル稼働している、と同社は言っている。

Bytonは8億2000万ドルの資金を調達済みで、同社の創業チーム、FAW Group、Nanjing Qiningfeng New Energy Indstry Investment Fund、およびCATL(寧徳時代新能源科技)が出資した。

BytonはシリーズC調達ラウンドの準備をこの数ヶ月間続けている。同社はTechCrunchに、現在ラウンド準備の「最終段階」にあり、FAW Group、南京市政産業投資ファンド、韓国のMyoung Shin Co、MS Autotech、および日本の丸紅株式会社らが参加する予定だと語った。.

画像クレジット:Byton

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Spotifyが予告していたアーティストのための募金機能の提供を開始

Spotify(スポティファイ)は先月、新型コロナウイルスに関する取り組みの一環として、プラットフォームにアーティストのための募金機能を間もなく加えると発表していた。そして今日(4月22日)、「Artist Fundraising Pick」の立ち上げを発表した。この新機能では、アーティストが自分自身やクルー、そしてSpotifyがすでにSpotify COVID-19 Music Reliefプロジェクトを通じて資金を提供している音楽救済イニシアチブの1つのために寄付を募ることができる。

立ち上げにあたっては、Spotifyは寄付プロセスを簡単にするために、Cash App、GoFundMe、PayPal.meなどいくつかの資金調達を扱うパートナーと共に取り組んでいる。

Cash Appは現在、Spotifyが好んで使っている手段で、Cash Appはまたアーティストのための100万ドル(約1億円)の基金を設置した。Spotifyのアーティストが自分たちのArtist Fundraising Pickとして“$cashtag” を選び、額に関係なく少なくとも1件の募金を確保したら、Cash Appからアカウントに100ドル(約1万円)が入る。これはCash Appの100万ドルが全て提供されてなくなるまで続く。Cash App基金は米国と英国のアーティスト向けだが、世界中のSpotifyユーザーがCash Appを通じて募金できる。

新たな募金ツールを使うには、アーティスト(もしくはSpotify for Artists管理者ユーザー)は自分のArtistダッシュボードにいき、上部にあるバナーの「Get started(始める)」をクリックしてFundraising Pickを提出する。これはアーティストが自分のプロフィールに表示したいトラックを選ぶプロセスに似ている。

そしてオンになったら、ファンはアーティストプロフィールを通じてアーティストに募金できる。Cash Appに加えてPayPalも広く利用でき、 GoFundMeは19マーケットで利用可能だ。

もしアーティストが音楽救援組織のための募金を立ち上げるなら、Spotifyの既存のチャリティー・プロジェクトと関連するものから選ぶことができる。このチャリティー・プロジェクトはMusiCares、PRS Foundation、そしてHelp Musiciansとの提携のもとに先月始まった。今ではローカルのものも含め、幅広い組織が含まれていて、現在も拡大している。

今日の立ち上げでは、一握りのアーティストがすでに新機能を活用している。Tyrese PopeBoy ScoutsCash Appを通じて寄付を募っている。MarshmelloMusiCaresのために、そしてBenjamin IngrossoMusikerforbundetのために資金を調達しようとしている。

Spotifyは、この機能がアーティストがファンのグローバルネットワークから寄付を募るのをサポートするユニークなものになると考え、立ち上げに素早く取り組んだ。しかし、この手のものをこれまでに立ち上げたことはなかったとも説明し、同社はこれを「初のバージョン」とらえている。今後、同機能はアーティストのフィードバックをもとにアップデートされていくはずだ。

「多くのSpotifyユーザー、そして世界中の人にとって今は極めて困難なときだ。そして困難なときをサポートする多くの正当な理由がある」と同社は発表で述べた。「新機能で我々は純粋に、助けが必要なこの時に関心のある人がアーティストをサポートし、COVID-19 Music Reliefパートナーが音楽のための取り組みを続けるために必要な資金を調達する機会をつくり、我々の産業を浮揚させることがきればと願っている」。

画像クレジット: Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

ソーシャル・ディスタンス制限を緩和すればピークは5月中旬にずれ込む、コロンビア大学の新型コロナ最新予測

米国ニューヨーク州のコロンビア大学メールマン公衆衛生学部は、米国における新型コロナウイルス(COVID-19)感染数のピークと減少について、ソーシャルディスタンス基準の違いに応じた最新予測を公表した。最新の情報に基づいて改定された予測によると、人との接触を約30%減らすことで、4月末にこの国の新規感染者数をピークにもっていける。しかし、減少が20%に留まると様相は劇的に変わり、ピークに達するのは5月半ばにずれ込み、1日の新規感染者数は最大3万人に膨れ上がる。

コロンビア大学の予測数値はホワイトハウスのコロナウイルス・タスクフォースや米国疾病対策センター(CDC)、ニューヨーク市を始め全米の数多くの自治体への助言に使用される。今回改定された予測では、近々ピークを迎える可能性はあるものの、それは同じ時期に病院やICUの収容能力が最大限に達することを意味していると指摘している。さらにコロンビア大学の研究者らは、この情報はピーク到達の地域差は考慮にいれておらず、30%の接触削減が着実に行われていた場合であっても、地域によってピークを迎える時期が異なる可能性があると警告している。

コロンビア大学研究チームが開発したモデルは、感染者数および死者数、都市や州の境界をまたぐ移動、緊急野戦病院の収容能力など、モデルが最初につくられたときには入手できなかった情報も取り入れている。コロンビア大学のウェブサイト経由でモデルから導かれた日々の予測をインタラクティブなグラフで見ることができる

これ以外にも、最近多くの公衆衛生専門家、伝染病学者、医学研究者らが改定された予測を発表しており、ソーシャル・ディスタンスの緩みが新型コロナウイルス感染拡大を長期化、悪化させる壊滅的に結果につながり、さらには医療従事者(特に現場作業者)の負担を増やすことを指摘している。

MITも、現在の対人接触の制限緩和が及ぼす影響について、「指数関数的爆発」が起きると予測している。一方一部の州では、専門家や研究者が時期尚早との意見で一致しているにも関わらず、すでに制限の緩和を実施している。

画像クレジット:Rob Kim / Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ソフトバンクが出資するインドのOyoが追加で従業員を一時帰休に、役員報酬もカット

インドの格安ホテルスタートアップOyoは、新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックにより売上高がおおよそ60%減っている。この対応策として経費削減を模索していて、グローバルでさらに多くの従業員を一時帰休とし、役員報酬を7月まで25%カットする。

OyoのCEOであるRohit Kapoor(ロヒット・カプール)氏は22日に開いたバーチャル対話集会の中で従業員にこのニュースを伝えた。ここ数カ月で同社は数千人を対象にした一時帰休と解雇をすでに実施している。

TechCrunchが入手した文書によると、カプール氏は「今日、当社はインドにとって困難だが必要なステップをとる。全てのOyoプレナーズ(役員会メンバー)に固定報酬の25%減を受け入れてもらう。これは4〜7月の支払いが対象となる」と述べた。

カプール氏は、影響を受ける従業員に同社が“限定された”福利厚生の提供を続けると強調し、今後追加の解雇は行わないと約束した。Oyoの広報担当はTechCrunchに対しそうした内容を認めたが、何人が一時帰休となるのかは明らかにしなかった。

Oyoの創業者で最高責任者のRitesh Agarwal(リテッシュ・アガーウォール)氏は今月初め、新型コロナ感染拡大がグローバルで同社の事業に深刻な影響を及ぼしていると話していた。その際、同社の客室稼働率と売上高は今年初めから50〜60%超落ち込んでいると述べた。

Oyoの2019年3月に終了する事業年度の世界全体の売上高は9億5100万ドル(約1024億円)で、3億3500万ドル(約360億円)の損失となった。

同社のこのところのパフォーマンスは孫 正義氏のソフトバンクにとって最新の打撃となる。ソフトバンクのポートフォリオにあるいくつかのスター企業は新型コロナで苦戦している。

ソフトバンクはすでに、昨年瓦解したWeWorkに訴訟を起こされている。そしてソフトバンクが強力にサポートしているもう1つの企業のUberは先週、2020年の業績予想を撤回した。ソフトバンクはこれまでにUberに19〜22億ドル(約2050〜2370億円)を株式投資している。

AIベースの貸し出しプラットフォームKabbage一時帰休を実施し、グローバルコミュニケーション企業OneWebは破産申請した。オンライン不動産売買スタートアップのOpendoorは先週、全従業員の35%にあたる600人を解雇すると明らかにし、eコマーススタートアップのBrandlessは今年初めに廃業した。不動産ブローカースタートアップのCompassも従業員を解雇した。

ソフトバンクは今月初めに2020年3月期決算が70億ドル(約7500億円)の赤字となり、営業損失は125億ドル(約1兆3000億円)に膨れるとの見通しを示した。

“新型コロナウイルス

画像クレジット: Akio Kon / Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

WhatsAppがWHOと協力して新型コロナ関連のステッカーを公開

世界中の人々が新型コロナウイルスの感染拡大と戦う中、Facebook傘下のWhatsAppはWHO(世界保健機関)との連携を深めている。米国時間4月21日、同社はWhatsAppのプラットフォーム上で1日に何十億回も使われる言葉、ステッカーでユーザーに注意を喚起する試みを始めたと発表した。

20億人以上のユーザーが利用しているWhatsAppは、「Together At Home」という新しいステッカーのセットを公開した。人々が日々経験する瞬間や感情をとらえたものだ。

WHOとの協力で開発されたこのステッカーは、英語のほか、アラビア語、フランス語、ドイツ語、インドネシア語、イタリア語、ポルトガル語、ロシア語、スペイン語、トルコ語にローカライズされている。

WhatsAppは2018年にステッカーの機能を導入した。同社はブログで「手を洗い、対人距離を保ち、運動し、そして何より医療関係のヒーローたちや生活の中の個人的なヒーローを楽しく讃えようと人々に呼びかけるために、このセットを提供する」と述べている。

ステッカーは、インドなどの新興市場では特に人気が上昇している。Tencentが支援するインドのメッセージングサービスのHikeは、ここ数カ月で数万のステッカーをアプリに追加し、まだ提供が追いついていないと述べている。

2020年3月にWhatsAppはWHOと協力して情報サービスを開始し、数日のうちに1000万人以上のユーザーがアクセスできるようになった。新型コロナウイルス感染症に関して信頼できる情報を提供できるよう、多くの国や州政府とも協力している。

日本の人気キャラクター、リラックマを採用した、日々の気持ちを表現するのに使えるステッカーセットも世界中で公開した。

WhatsAppはさらに新しい機能も開発中だ。現在は最大4人のビデオ通話とオーディオ通話を、最大8人にするテストを開始した。この機能がすべてのユーザーに公開されれば、ここ数週間でユーザー数を急激に増やしているHousepartyやZoomの直接の競合になるかもしれない。

WhatsAppは先日、アプリ上でのメッセージの転送に新たな制限を適用した。また、受信したテキストやメディアコンテンツの正確さを確認するのに役立つ新機能を開発中であることも認めている。

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Kaori Koyama)

新型コロナ隔離者の日記、中国から米国、そして中国への逃避行

【編集部注】TechCrunchのライターであるRita Liao(リタ・リャオ)の中国から米国、そして中国への帰国の旅は、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックが世界中で発生する何カ月も前に計画されていた。パンデミックによって、単なる帰国は大変な印象に残る旅になった。記事には彼女が移動した場所には触れられているが、ストーリーの本題に集中するためその詳細は省く。

焦点は、新型コロナウイルスの感染規模が拡大するなか、移動とともに世界の展望と見通しが変化する様子をユニークな視点で見ることができたことだ。この期間の日記をここに掲載することで、読者に主観的な視点の一部を伝える。当然ながら、(テック業界で働いているかどうかにかかわらず)現在のあらゆる人の生活に関係しているテクノロジーを、この記事では切り口にしている。アプリは、実際に人と会うことができないときに我々をつなぎ、物事を進めるうえで不可欠なものになっている。各国政府は事態の追跡にテクノロジーを慌てて使用している。驚くべきことに、最も一党独裁主義的だと考えられた対策でも危機には十分ではないのだ。結局、我々の情報すべてはインターネットからくるのだから。

14日にわたる中国での隔離は、午前1時に核酸検査のために街外れまで連れていかれるなど、想像を絶したものだった

出発

3月13日夜、フィラデルフィアから中国へ帰国するフライトの前夜、滞在していたAirbnbのホストが私の部屋にお別れを言いに来た。私は多数のマスクやハンドジェル数個をスーツケースに詰め込んでいたところだ。2月初旬、米国に到着してすぐ新型コロナウイルス感染防止のために買いだめしたものの残り。中国で生産がハイピッチで行われるようになったので、中国の家族に持ち帰ろうと思っていたもののほとんどを米国の友人や親戚に譲っていた。

3月初めにこの家に着いた際、細身で快活な50代初めの植物学者のホストにもこれらの防御グッズが必要かどうかを聞いた。彼女は穏やかに微笑んで、自分は心配していないと言った。フィラデルフィアにはほとんど感染者は出ていなかったし、彼女はマスクは使ったことがないらしい。

丁寧に断りながら彼女はこう尋ねた。「マスクをすると病気だと思われるわ。アジアの人はどうしてマスクをするの?」。

一般の人にマスクが必要かどうかについては賛否両論があると説明した。新型コロナウイルスの伝染を防ぐためには効果があるというのが合意の下にあるのだと。西洋の衛生当局者は長らく、患者または感染者と接触のある人だけに着用を推奨していたが、最近米国では公の場ではあらゆる人にマスクを着用するよう勧める動きが出てきた

アジアでは、新型コロナの発生以前からマスクの風習があった。 この病気の潜伏期間は27日間にもなる場合があり、多くの人が気づかないうちにキャリアになる可能性があることから、マスクの着用が他の人を守る結束の表れになった。中国の都市では、すでに公共の場でのマスク着用が義務付けられていた。私にとって、マスクは気休めでもあり顔を触らないためにも役立っていた。

1週間のうちに感染は全米で急速に拡大し、フィラデルフィアにも新たに何十人かの感染者が報告された。あらゆる大規模なイベントは中止され、私のホストも何件かのキャンセルの被害にあっている。

防御グッズがいらないか、もう一度彼女に聞いてみることにした。「ありがたくいただくわ。ハンドジェルを持ってないし、 マスクも持ってないの」。今回は目を輝かせて答え、こう尋ねた。 「でも、どうやって着けるの?」。

グッズを渡しながら、自分がコロナウイルスから逃れようとするのは2回目であることに気が付いた。数カ月前、今回の米国旅行を計画しているときは、それが2回もの大脱出になろうとは想像もしていなかった。最初は病気の感染が広がり始めている中国からの脱出、そして同様の危機が起こり始めようとしている米国からの脱出だ。

第1~2週:パラレルワールドでの恐怖

50日ほど前に米国に旅立つ際、私は不安で落ち着きをなくしていた。 客観的に考えれば、私が新型コロナに感染する可能性は低い。効果的な対策をいち早く講じた台北のような被害の少ない都市にいたし、香港発のフライトの99%の乗客はマスクを着けていた。しかし、出入国管理の突然の変更や、予告なく行われたフライトキャンセルなど、伝染病の流行によって引き起こされた不透明な出来事が重なることで、私の不安も高まっていた。

到着地のテキサスは不気味なほど普通だった。2月下旬に米国初の市中感染が報告される3週間前のことだ。入国審査では予想していた検査はなかった。体温チェックも、最初の新型コロナウイルス発祥地の中国の都市、武漢にいたかどうかの質問もなかった。 安心すると同時に、機内で着けていたマスクを捨てた。「ここは安全だ」と自分に言い聞かせた。マスクを外した理由の多くは、この地にはマスクに対する偏見があるためだったが、マスクをしていない人たちを見ることで安心感を得ようとしていた。

この安心は長くは続かなかった。実際この時から8週間、私は理性と妄想の間で揺れ続けることになった。

宿泊させてもらうはずの親戚と友人は、私を泊めることができなくなっていた。 彼らの雇用主はどちらもアジア系で、テキサス州にはそのような規制はなかったものの、中国からの訪問者と接触のある従業員に14日間の自己隔離を義務付ける新しい規則が言い渡されていた。

3月上旬、クリーニング用品が品切れになったテキサス州プレイノのコストコ。この時点での州全体の新型コロナ発生件数は1件。 この地区には多数のアジア系の人が住む(写真: TechCrunch)

厳密には、私は自由に外出できたが、現地の中国人コミュニティ内に存在する恐怖は明白だった。 祖国から離れている人々の気持ちを祖国につなぐためのデジタルツールは、国外の現実から引き離すものにもなった。 WeChatからの恐怖をあおる多量の投稿を見て、多くの中国人移民は、米国で大規模な流行が報告されるずっと前から日用品の買いだめを始めていた。 チャイナタウンはゴーストタウンと化した。中国にいる母は、米国ではアジア系の人しかマスクをしていないことを聞くと縮みあがり、マスクをするように、人込みを避けるように、というメッセージを連日送ってきた。

私が従ったのは後者のメッセージ、人込みを避け、自主的に14日間、他の人との距離を取ることだけだった。感染を恐れてのことではなく、無症状感染者として他の人を感染させるのでは、という妄想にかられていたからだ。この伝染病を理解するための情報をむさぼる行為は不安を強めることにしかならなかった。ここで体験した沈黙は、コロナウイルスがすべての人類にもたらした大きな不確実さの中での孤立と同様に、耐え難いものだった。

第2~5週:折り合いを付ける

2週間後、ついに人との接触を再開することを決めた私は、礼儀として自分が中国から来たことを人々に明かした。人々の反応はさまざまだった。

ほとんどの米国人の友人は中国の状況に同情を示し、私が安全な場所にいることを喜んでくれた。高齢者と同居している現地の歯科医は、21日後までは診察できないと言った。新型コロナの症状がでるまでに最長で21日間かかるという。 米国在住の中国人の友人の何人かは、疫病からの脱出を祝福するジョークを飛ばした。脱出のために来たのではないが、実際私はラッキーだった。50代の中国人の知人は握手を避け、米国に来て何日経つかを恐る恐る聞いてきた。

私を疑いの目で見る人のことは気にしないように努めた。 彼らの反応は生き残るための本能に過ぎないのだから。中国での感染の拡大に伴って信頼も損なわれていった。隣人たちはおしゃべりをやめ、エレベーター内でくしゃみをする人はひんしゅくを買った。 仕方ないことだが、こうしたちょっとした態度の変化が長期的には人との関りや精神衛生に打撃を与える可能性があるだろう。

この時点で、私は自分はおそらく感染していないと思った。 テキサス州が正常に機能していたこともあり、閑散とした並木道を他の人と距離を取りながら歩くことができた。 平静を取り戻したところで、米国旅行の2番目の目的地、フィラデルフィアに移動した。私は中国語で書かれたこの伝染病に関する記事の山をむさぼるように読み始めた。ウイルスの暗闇の中に一縷の望みが見いだせればと思っていた。

室内に閉じ込められた中国の人々は、難しい問題を熟考せざるを得なかった。それは離婚率の増加など、意図しなかった結果を招いた。例を見ない数の市民活動や、今回の危機に端を発する討論は、多少の慰めになった。一般の人が病気と闘うストーリーが党や市民のジャーナリストによって鮮明に語られた。内部告発者の李文亮氏の死は、インターネット上で類を見ない怒りを生み出した。もう1つ興味深いことは、インターネットユーザーが暗号を使って検閲されたインタビューを急いで保存したことだ

中国当局に対する異例の集団抗議運動は、瞬く間に断片化されたデジタルの世界に姿を隠した。中国の強硬な封鎖が実質的な効果を見せ始めると、オンラインユーザーは国の緊急時対策をいち早く声高に賞賛し始めた。一部の人はモバイルゲームや動画のストリーミングなどの気晴らしに没頭することで時間をつぶした。この間、学校や企業は、民間のテック企業によるITサポートの下、デジタル技術を駆使して再開されようとしていた。

人民の活力を維持するため、新型コロナ危機の中働く中国のフードデリバリーグループ美団のスタッフ(写真: Meituan(美団)

オフラインの世界でも中国は通常に戻りつつあった。 実店舗は再開を許可され、移動の制限は全国で緩和された。 人々は徐々に自宅から出始め、警備員の目の届かないところではマスクを外して新鮮な空気をこっそりと吸い込むのだった。

日常生活にそれほど変化がない人にとっても、生活はより不確かなものになった。 高収入を得られる職業に就いている人は仮想会議に出席したり、テレワークブームの恩恵を受けたりする一方で、サービス、製造、物流業界で働く人々は自宅にいるわけにはいかず、人々の生活を守るために昼夜を通して働いていた。おそらく彼らには有給休暇はなく、多くは企業健康保険も持たない。今回の健康危機は、格差を浮かび上がらせることにもなった。

第6週: 安全を求めることの代価

中国行きフライトの出発ゲートにたどり着くやいなや、中国が近いことが肌で感じられた。群衆は一様に何らかの予防対策を顔に装着していた。私はまだだった。何週間にもわたるマスクのない環境に慣れ、シカゴでの乗継時には着用の必要性を感じていなかった。他の人との距離を保つことだけは注意していた。香港と中国本土への乗客以外には、空港ではマスクを着けている旅行者はほとんど見られなかった。

それでも、私も一致団結の精神にのっとりマスクをつけた。しかし他の人の防御手段は、私を恥じ入らせるほどのものだった。多くの人は医療用手袋をはめ、研究室用の保護ゴーグルを装着している人もいる。中にはプラスチックのポンチョをかぶり、自分で触った物を消毒してまわっている。マスクの片耳を外して水を飲んだ私は悪いことをしたような気になった。機内食を食べるなどもってのほかだ。

他の人の防御手段に圧倒されただけではなく、それぞれが入手したマスクの違いにも興味を引かれた。丈夫だが入手が困難なN95マスクには法外な値段を払わなければならない。ほとんどの人はより安価な医療用マスクをしているが、これも供給者にコネがなければ入手は困難になってきている。スポンジマスク、イラスト付きの洗える布マスク、果てには自作のオシャレなショールのようなものなど、効果が定かではないものを着けている人もいた。2002年にSARSが流行した時には、私もハローキティのマスクを着けて小学校に通ったものだった。

フライトも防御格差を見せる小宇宙となった。ファーストクラスでは乗客同士は安全だと言われる距離を保って席に着くことができ、窮屈なエコノミーの乗客は伝染病が大流行する最中に飛行機に乗るリスクと、安全だと思う国への帰国のメリットを天秤にかけたのだった。

飛行機の席を確保できたことさえ恵まれたことだった。 航空会社はいずれも渡航禁止令による影響を受けていたものの、大規模な政策変更の前後には、需要が一時的に急上昇する可能性があった。新型コロナを世界的パンデミックとするWHOの宣言を受け、世界中の学校がオンラインでの授業に移行し、学生寮は閉鎖され、海外留学生は自国へ帰るように促された。 航空券の値段は急騰した。 帰国を希望しながら、その値段を支払えない人は取り残されることになった。

第7週:不確実さとの闘い

新型コロナを持ち込まないための中国入国時の健康検査(写真: TechCrunch)

飛行機が地球を横切っている間、新型コロナの中心地は国外に変遷し、私の地元の深圳市では海外からの感染の流入を防ぐため、4カ国からの入国者への強制隔離を8カ国に拡大した。これには米国も含まれていた。

午後8時、深圳の税関検査は病院の待合室の様相を呈し、何百mにも伸びた列はほとんど動いていないようだった。 コロナウイルスの感染者を検出するための検査が行われていた。この最新の政策は正式には発表されておらず、多くの旅行者はまだ家族が到着ゲートで待っているものと思っていた。イライラと混乱が、強烈な蛍光灯に照らされるホールに充満した。 全員へのウイルスのテストは入国時なのか、あとで隔離場所でされるのか?外国人も無料でテストを受けるのか?隔離には料金の支払いが必要なのか?

入国審査官すら詳細を知らなかった。中国の封鎖対策はウイルスの拡大と同様に流動的だった。帰国者の波は国の医療リソースを急速に圧迫し、隔離施設に姿を変えた格安ホテルを満員にした。

午前1時、やっと私の体温チェックの順番が来た。旅行履歴や健康状態など、同じような質問が書かれた異なる政府機関用の十種類ほどの書類に記入した。優れた技術力を誇っているはずの中国で、なぜこのような面倒な作業がまだデジタル化または合理化されていないのか?国民を監視するリソースが、政府の他の優先事項に回っているのか?

私は疲れ果てていたが、私を検査した税関職員は私より疲れているようだった。12時間を超えるシフトによる疲弊は明らかだった。防護具を全身につけてはいるものの、彼はマスクが鼻の下にずれているのに気が付かないようだった。

「あなたはいつ家に帰れるの?」と私が聞くと、「さあ。帰国者はこんなにいるんだよ。また中国で大流行を起こすわけにはいかない。今は働くしかない」と何でもないことのように答えた。

私の書類が整うと、国境を超えることができた。 直ちに中国はテキストメッセージで私の入国を祝福し、公安部への登録が促された。通信事業者からのロケーションデータで、私が最近「感染の被害が甚大な」米国にいたことが示されているからだ。 ウイルスの蔓延は、個人を監視することを政府にさらに正当化させた。不思議なのは、政府はすでに豊富な市民データを自由に利用できるのに、なぜ当初、武漢からの旅行者の追跡に苦戦していたのか、ということだ。

Rita Liao(リタ・リャオ)@ritacyliao 2020年2月12日
中国政府が移動データを基にコロナウイルスへの感染リスクを測るアプリを立ち上げた。 しかしなぜ今? 地方政府や企業から市民データを収集/統合することが困難だったから? もっと前に導入されていれば、このアプリがウイルスの封鎖に役立っていたのでは?

Rita Liao(リタ・リャオ)@ritacyliao
@thisboyuanが教えてくれたように、政府が伝染病発生中の人々の移動の追跡に苦心したことから、北京で実施している国民の監視システムにはまだかなりの問題があることうかがえる
2020年2月12日 3:45 PM

私は20人の旅行者からなるグループに振り分けられ、隔離先のホテルへ向かうシャトルバスを待った。20人のうちほとんどが海外へ留学していた中国人学生だった。私たちはすぐに打ち解け、この現実離れした8時間の入国審査について愚痴を言い合ったが、実際に怒っている人は誰もいなかった。反対に、最前線で働く医療従事者と出入国管理職員に心からの感謝を一様に口にした。

お腹がペコペコだった。1人が全員のWeChatグループを作って、食べ物のデリバリーを注文することを提案した。「3.14隔離」というピッタリな名前が付いた私たちのWeChatグループは、さまざまな問題が発生した隔離期間中の情報交換や、支え合いに役立つことになった。道路清掃車の音が遠くから聞こえる。時計は朝4時を打ち、バスはホテルに到着した。

第8週: 混沌の甘受

体温チェック、食事の配達、核酸検査、各種政府機関からの電話、新しい隔離場所への移動などが突発的に行われるなか、ホテルでの隔離中に身体を中国時間に戻すのは事実上不可能だった。ある夜、私たちは30分で荷造りして、バスで深圳の外れまで移動するように言われた。そこで私たちはウイルス検査を受け、8時間後の午前3時にまた前と同じ地区にある別のホテルに連れて行かれた。

隔離仲間たちは、この予測不可能な状況にいら立ち、助けになりそうな人に手あたり次第電話をかけ始めた。ホテル従業員、現地職員、親戚、友人から得た情報の断片をWeChatグループで共有するなか、何かが見えてきた。隔離システムは、民間組織と公的機関の間の大規模な動員と複雑な調整によって行われているらしい。これには、医療従事者や共産党下級行政機関(居民委員会と呼ばれる)から、政府の助成を受けたホテルや団地までが含まれる。

政策立案者による頻繁な変更に際し、たびたび各地の当事者はこれを大慌てで実施しなければならず、誤解を招いたり、逆効果の行動をとってしまうこともある。私たちをバスに詰め込み右往左往したのもこの結果だった。持ち場の仕事の説明しか受けないので、プロセス全体を把握していない。そのため、政策立案者に近いところからの情報を得ることが死活問題だった。ホテル従業員に何が起こっているか聞くより、疾病管理部で働く親戚に電話する方が役に立っていただろう。不確実な状況で少しでも確実な情報を把握したいとき、中国では個人的なコネが一層重要なようだった。

内部情報を聞き出した一部の仲間が、この仕組みを解明した。隔離場所に送られる前に、私たちは自宅住所を報告していた。これは各区政府がその帰国住民の隔離を担当するためだ。通常、財源の豊富な地区ほど質の高い宿泊施設と食事を提供するので、少しでもよい扱いを求めるのに必死な人たちにとって、この情報も貴重だった。

私は混乱を甘受することにした。少しでも情報を収集し、上層部からの継続的な規則の変更を把握しようとしたが、この対処法だと瞬く間に不安に陥ってしまうからだ。

セルフケアのためのアイデアは、これまでにいろいろと提案されているが、コロナウイルスから2回の脱出を遂げた私としては、少なくともその有効性は証言できるだろう。情報は1つか2つの信頼できる情報源に絞り込むこと。身体を動かすことを忘れないこと。誰かに電話すること。ユーモアのセンスをなくさないこと。深呼吸をして、マインドフルネストークに時間を当てるのもいい。新型コロナによって長期的な変化が起きる可能性はますます高まっている。今後の変化に備える気概を維持しておくことがのぞましい。

3月29日の午後、私の地区の居民委員会の職員が私のドアをノックした。青い防護服に身を包んだ職員に最後の体温チェックを受け、隔離完了を告げる書類をもらった。私はすぐにマスクを着け、階下に降りた。

街は一瞬いつもと同じように見えたが、よく見ると、中国を離れた2カ月間で起こった、目立たないが長期的な変化が見えてきた。

あらゆる人がマスクをしている。一人で車を運転している人でも。建物の入り口では体温チェックと消毒が行われている。多くの小さなレストランは閑散とし、営業を再開しているところでは中で食べている人より、外で待っている配達スタッフの方が多い。戦時下のようなプロパガンダポスターが街頭のあちこちに貼られ、疫病との戦いはまだ終わっていないことを告げている。世界は、以前と同じ状態にはもう戻らないのだろう。

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳: Dragonfly)

LabCorpの新型コロナ検査キットが家庭用として初めて米食品医薬品局が認可

LabCorp(ラブコープ)の家庭用新型コロナウイルス感染症(COVID-19)検査キットPixel(ピクセル)は、米食品医薬品局(FDA)が排除していた検査方法として、初めての緊急時使用許可(EUA)を取得した。これは家庭用の検体採取キットで、鼻腔スワブなどの検体採取用具と、採取した検体を検査機関に送るためのパッケージが含まれている。

これまでFDAは、家庭用の検査や検体採取のためのキットの使用を認めてこなかった。実際、同じように家庭で検体を採取して、新型コロナウイルスの存在を検出する分子リアルタイムCPR検査の実施をすでに許可されている研究所に送付し、検査結果を教えてもらうという検査キットを数多くのスタートアップ企業が発表するようになると、FDAはガイドラインを示し、家庭用検査キットは認可できない旨を強調していた。

FDAによれば、認可されたのはLabCorpの新型コロナリアルタイムPCR検査のみで、他の同様の検査キットは、今でも前もってEUAを取得しなければサービスは開始できないという。遠隔医療により有資格の医療専門家の指導を受けるか否かに関わらない。FDAガイドラインの例外を利用して、家庭での血清検査を実施している研究所もあるが、それは新型コロナウイルスの発症を確認するための検査ではないというのが同局の見解だは。

家庭での検査が許可されたことは(家庭での完全な検査の実施ではなく単なる検体検査ではあるが)、FDAがこれまでの方針を変更したという意味で、大きな一歩だ。FDAは先日、ガイドラインを更新し、同局は家庭用検査キットのメーカーと協力して、それを一般に普及させる最良の方法を探ると表明した。なぜならFDAは「家庭での検体検査を含む安全で正確な検査方法を通じて、新型コロナウイルスの検査の機会を増やすことに公衆衛生上の意味があると認識した」からだ。

LabCorpは40年以上の歴史を誇る米国の医療診断企業であり、Pixelシリーズには、大腸癌、糖尿病、心臓脂質の状態を家庭で検査できるものがある。FDAは家庭での検体採取の認可に道を開きたいと考える企業の中でも、業界で長年実績を積んできた相手を好んだようだ。専門家の立ち会いなく自分で検体採取を行い、パッキングして、送るといった手間がかかることで、間違いが増える恐れがあると同局は考えたのだろう。

米国では現在、新型コロナウイルスの検査は、診療所や病院に加えてドライブスルー施設に依存している。だがこれらの検査は、リスクプロファイルや症状発現など、受けるための条件が厳しい。また検査を実施する医療専門家は、自身が感染の危険にさらされる。家庭で検査ができれば、検査率が全体に高まと同時に、新型コロナウイルスパンデミックが実際にはどこまで広く、どれほど深く及んでいるかを、より正しくイメージできるようにもなるはずだ。

“新型コロナウイルス

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(翻訳:金井哲夫)

経験豊富なポッドキャスターに愛用機材やワークフローを聞く

ポッドキャストのいいところは誰でもすぐに始められることだ。ポッドキャストを作るのは見るのと同じくらい簡単だ。こういうメディアは他にないだろう。しかも複数の人間がまったく同じポッドキャストをすることはありえない。NPRの完備したスタジオからUSBスティクとSkypeという手軽なセットアップまでやり方は無数にある。2020年3月TechCrunchに「家に閉じこもる今、ポッドキャストを始めるためのヒント」という記事を書き、これまで使ってきた各種のハード、ソフトについて紹介した。

最近、私のポッドキャストに作家、ジャーナリスト、ポッドキャスターのSarah Enni(サラ・エンニ)氏がリモートインタビューで登場し、ポッドキャストを始めた経緯やセットアップについて詳しく語ってくれた。

エンニ氏も(私同様)、新型コロアウイルス(COVID-19)の流行で「直接に会って話す」というアプローチを修正せざるを得なかったという。エンニ氏のFirst Draftは著名な作家、アーティストにインタビューするポッドキャストだ。最近、 アメリカで本が出版されるまでのステップを詳しく紹介するTrack Changesというミニシリーズをスピンオフさせている。

以下はエンニ氏のインタビューをまとめたものだ。

2014年に私(サラ・エンニ)はワシントンD.C.で司法関係を扱う記者をしながら著作家を目指していた。NPRのスター司法記者であるNina Totenberg(ニーナ・トテンバーグ)のような存在になりたいと願っていたわけだ。これがきっかけで私は「First Draft」(第1稿)というポッドキャストを始めた。

司法記者として大勢の上院議員や弁護士に取材してきたが、そのとき使っていたのは小さいICレコーダーだったので、ポッドキャストとなればもっとまともな音質でしかもポータブルなマイクと録音装置が必要になった。

まずZoom H2n ハンディーレコーダーを選んだ。これはステレオでもサラウンドでも収録できる小型マイクで、ポッドキャストを始めて最初の2年はこのマイクを三脚に載せて著作家のインタビューに使った。Zoomは手頃な価格だが優れた音質で持ち運びにも適しており、コンパクサイズで相手と顔を合わせてインタビューするときに最適だった。First Draftは作家、著作家に対するロングインタビューがテーマで、「直かに会って話す」のは打ち解けた空気を作り、相手の本音を引き出すために必須と考えた。

収録データは外部ハードディスクにバックアップし、GarageBandで編集した。ヘッドホンはSony MDR-7506 を使い、LibSynでインターネットにアップした。

3年ほど前にポッドキャストをリニューアルしようと決心した。Hayley Hershman(ヘイリー・ハーシュマン)氏にプロデューサーをお願いした。ハーシュマン氏はオンデマンド契約のプロデューサーでセットアップにも詳しく、新しいシステムを紹介してくれた。Zoom H2nをZoom H6にアップグレードし、カーディオイド型コンデンサーマイクのShure BETA 87Aを併用することにした。

携帯についてはTimbuk2のドップキットバッグを購入し、 ポータブルスタジオとして使うことにした(下のGIF画像参照)。これらをGoRuck GR1に詰めて運んでいる。ちなみにGoRuckとはとても相性がいい。他のバックパックではてきめんに肩、腰を傷めてしまう。なおインタビューのときには必ず質問事項を事前にまとめて用意して行く。手書きのほうがゲストをリラックスさせるのに良いようだ。

インタビューはZoom H6nで収録し、オーディオファイルをAirTableにアップロードする。AirTableは私のチームが制作プロセスの管理に使っているスプレッドシートとデータベースを統合したツールだ。ポッドキャストを始めてからの5年間で発見した中で最高のツールだと思う。AirTableは私のポッドキャストのワークフローを全面的に変えた。インタビューと付随するボイスオーバーのオーディファイルと編集指示のテキストをまとめてAirTableにアップしてしまう。

プロデューサーはその通知を受けるオーディオブック制作ツールのHindenburgで編集する。各回のエピソードが完成するとプロデューサーはLibSynにドラフトとしてアップする。私はエピソードをチェックした上でLibSynとSquareSpaceを使って私のウェブサイトで公開するという手順だ。その後でさらに文字起こしツールのTemiにアップロードしてテキスト化する。

パンデミック以前の245本のポッドキャストはすべて相手に直接に会ってインタビューしていた。しかし新型コロナウイルスの感染が問題となり始めたため、パンデミックに進展する前からZoomやSkypeを使い始めた。インタビューを依頼し、日程を決めるときにUSBマイクやスマートフォンのボイスメモアプリを使ってリモートで会話を録音にしてもらうよう依頼した。するとプロデューサーはこうしたファイルをつなぎ合わせ、ブラッシュアップしてゲストと私があたかも対面して会話しているような雰囲気を作ってくれるわけだ。

現在、私はTrack Changesという米国の書籍出版の内幕を紹介するミニシリーズを製作している。機材や仕事のワークフローは上で紹介したとおりだ。新型コロナウイルスのために直接インタビューすることができなくってしまったことを別にすれば、プロデューサーとのコミュニケーションにはAirTableを使っており、ハードウェアもそれ以前と同じだ。しかし新シリーズの編集作業のためにGoogleドキュメントでのファイル共有や電話打ち合わせの回数は増えているかもしれない。

5年間インタビューのポッドキャスティングを続けてきたわけだが、新シリーズでは1つのストーリーに沿ったノンフィクションの制作に挑戦している。困難は多々あるが、こうした新しい試みに没頭できることをたいへん幸運だと考えている。

以上がサラ・エンニ氏へのインタビューとなる。また、著名なポッドキャスターにワークフローや使っているハード、ソフトについてインタビューしてきたので参考にしていただきたい。

RiYL remote podcasting edition
Family Ghosts’ Sam Dingman
I’m Listening’s Anita Flores
Broken Record’s Justin Richmond
Criminal/This Is Love’s Lauren Spohrer
Jeffrey Cranor of Welcome to Night Vale
Jesse Thorn of Bullseye
Ben Lindbergh of Effectively Wild
My own podcast, RiYL

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

アマゾンの社員が新型コロナ下における労働条件でさらなる抗議活動を計画

在宅命令で世界の大部分が一時的に休止している中で、Amazon(アマゾン)は動き続けている。スーパーマーケットやドラッグストアへ行くという日常的な用事すら危険になっているため、米国でも海外でも、この小売大手が多くの人びとにとって必要不可欠なビジネスだ。

同社は多くの人びとに生活必需品を提供し続けているが、現在はその労働政策にも光があたっている。それはAmazonにとって初めてのことではない。同社は一貫して、新型コロナウイルスパンデミック間の公正と安全を欠く労働条件という示唆をはねつけてきたが、労働者たちは今週、同社の労働政策に対する大規模な抗議活動を計画している。

労働者たちの権利団体United for Respect(尊敬のための団結)によると、Amazonの50の事業所から300名あまりの従業員が抗議活動に参加する。同団体の趣意書によると、「新型コロナウイルスのアウトブレークに対するAmazonの対応は、Amazon社員の生命を増大したリスクと曝露にさらした」とし、多数の事業所で従業員がウイルスに感染したことを挙げている。

同団体が求めているのは、確認された新型コロナウイルス発症者に関する透明性と、衛生条件の向上、そして関連する社員福利の拡充だ。例えばそれは2週間の有給病休や、パートタイムやドライバーなど正社員でない労働者の健康の確保となる。

TechCrunchに送られてきた書面において、Amazonはこれらの主張を強く否定している。同社は、抗議声明を大げさと表現し、かねてからの主張を繰り返した。

AmazonのスポークスパーソンであるLisa Levandowski(リサ・レヴァンドウスキ)氏は 「複数の労働組合が組織した本日のイベントへの社員参加記事は、著しく誇張されている。本日既に25万人あまりが出勤しており、先週よりもむしろ多くの人びとが彼らのコミュニティ(担当地区)に奉仕している。この時期の彼らの努力に大きく感謝し、また誇りに思っている。組合の組織者たちの主張もまったくの嘘だ。真実はマスクや検温、手洗い、休憩時間の増加、昇給などが弊社全体のスタンダードであり、社員の健康と安全には常に深く配慮している。この危機においてAmazonが採っている健康と安全に関する措置を、他のリテラーとぜひ比較していただきたい」と述べている。

先週はさらに2人の社員が、Amazonのポリシーを公の場で批判したとして解雇されたという。3月には、スタテンアイランドの社員が労働条件を批判して解雇された。

Amazonは関連性を否定している。同社は「雇用主の労働条件を批判するすべての従業員を我々はサポートする。しかしそれは、社内のポリシーの何に違反してもよいとする全面的な免責ではあい。これらの社員は社内のポリシーに繰り返し違反したため解雇した」という。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

建設職人マッチングの助太刀が新型コロナ対策支援、有料プランを6カ月無料、融資や助成金の情報も発信へ

建設現場と職人のマッチングサービスを運営する助太刀は、新型コロナウイルスの蔓延に伴い、仕事減や収入減などの打撃を受けている建設事業者に対する支援として、有料プランの助太刀プロを6カ月無料で提供することを発表した。

無料の助太刀から助太刀プロに移行すると、経験年数や年齢、工事代金などでの詳細な絞り込み検索が可能になるほか、現場情報を2週間掲載可能になる。また無料では1カ月あたり3人に制限されているメッセージ機能を無制限で利用可能になるため、多くの建設現場や職人とやり取りできる。ほかにも、無料プランでは1日あたり10人だった「興味あり」のマーキングが無制限、検索結果の上位配置などのサービスも受けられる。

具体的には年額2万3760円のプラン料金が半額の1万1800円になる。また、国や各地方自治体などが提供している支援制度に関する情報を、助太刀アプリ内や公式SNS(TwitterFacebook)で配信することも併せて発表した。そのほか、建設業界が新型コロナウイルスに立ち向かうための情報をまとめたPDF「建設業界で働く仲間へ」も配布している。

建設業界では日本政府が発した緊急事態宣言を受け、多くの現場で工事が中止・中断になっている。また、大手建設会社では新型コロナウイルス感染による死者も出ている。助太刀は、大きく影響を受ける中小建設事業者を支援するために今回の取り組みを始めたとのこと。

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Netflixの2020年1Q新規加入者数は予測を大幅に上回る1577万人

新型コロナ(COVID-19)パンデミックでほとんどの人が家に閉じこもる中、Netflixが2020年第1四半期で良い業績を上げることは誰もが予想していた。しかし、結果は予想を超えていた。

現在の危機以前、Netflixはこのほど発表された決算時の新規有料加入者を700万人と予測していた。劇的な環境の変化によって、成長が予測を上回ることは明らかだったが、Q1の新規有料会員数は予想の2倍以上となる1577万人の純増だった。これでNetflixの有料会員総数は1億8286万人になった。

一方同社の売上、57.7億ドルと1株あたり利益(EPS)1.57ドルはウォール街の予測とほぼ一致しており、EPSがわずかに予測の1.65ドルを下回った。

投資家宛の書簡でNetflixは、パンデミックが同社の財務状況に与えた主な影響を3つ挙げた。

第一に、会員数の成長は自宅待機のために一時的に加速されている。第二に、海外売上は急激なドル高のために前回の予想を下回る見込みだ。第三に、制作の中断によって、コンテンツのための現金支出が遅れフリーキャッシュフローが改善されたが、一部のタイトルはリリースが一四半期程度遅れることとなった。

いまのところNetflixは、この成長は一時的な急増であり、視聴時間と会員数の成長は、「ウイルス対策の進展によって政府が自宅待機を解除すれば」すぐに減少すると見ている。このため同社のQ2予測の全世界会員数純増は750万人にとどまっている。

世界的経済停滞が映画テレビの制作に与える影響について同社は、Q2における影響は「控えめ」であり、主に字幕翻訳の部分だと言っている。今四半期は、つい最近買付けを発表したKumail Nanjiani(クメイル・ナンジアニ)とIssa Rae(イッサ・レイ)のコメディー “The Lovebirds”(当初は劇場公開の予定だった)やMillie Bobby Brown(ミリー・ボビー・ブラウン)のミステリー、”Enola Holmes”、さらには”Space Force”や”Hollywood”といった新番組も放映される。

「さまざまな国で通常の制作作業を再開できるのがいつになるのか、可能になった時、どのような海外渡航が可能で、さまざまな資源(タレント、ステージ、ポストプロダクションなど)の交渉がどうなるのか誰にもわからない」と投資家宛の書簡に書かれている。「当社への影響は今年の現金支出が減ることだが、これは一部のコンテンツプロジェクトが延期されたためだ。われわれは会員が望んでいるコンテンツを完成させるために全力を尽くしており、新たな映画や番組シリーズをライセンスすることで補っていく」

書簡には、最近の番組の視聴者数も書かれている。これはNetflixが前四半期に発表した “chose to watch” (意識的な視聴)という測定基準(ある番組や映画を2分以上見た人を数える)によるものだ。6400万人もの人たちが “Tiger King“というドキュメンタリーを見た。しかし、Mark Wahlberg(マーク・ウォルバーグ)の最新アクション映画、”Spenser Confidential”(スペンサー・コンスィデンシャル)の8500万人には及ばない。

東海岸時刻4月21日午後4:35現在、Netflix株は時間外取引でやや高とやや安の間を行き来している。これは、あの急激な会員増が投資家の予想通りだったことを示しているのだろう。

アップデート:決算会見の中で最高コンテンツ責任者(CCO)のTed Sarandos(テッド・サランドス)氏は、同社および同社パートナー企業のワークフローが劇的に変化したことについて語った。

「制作、ポストプロダクション、そして会社のオフィスも、今や世界中のリビングや寝室やキッチンに分散している」とサランドス氏は言った。「われわれは驚くべきイノベーションを目撃している。会社封鎖から数時間後、少なくとも数日後に、われわれの制作はリモートで稼働を始め、ポストプロダクションがリモートで進み、アニメーションがリモートで作られ、検討会はバーチャルで開かれ、ライターはバーチャルに集合している」

一方CEOのReed Hastings(リード・ヘイスティング)氏は、パンデミックがNetflixの成長に及ぼす長期的影響が予測不能であることを強調した。

「われわれは「推測する」や「当て推量」という言葉を軽々しく使わない」と彼は言った。「そういう言葉を使うのは多くの人々が困窮していて、先行きがわからないからだ。しかし、インターネット・エンターテインメントが次の5年でもっともっと重要になるのかどうか? そこは何も変わっていない。」

関連記事:Disney+の有料会員数が半年を待たずに5000万人を突破

画像クレジット:Krisztian Bocsi / Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Verizonが新型コロナで利用者が急増するB2Bビデオ会議のBlueJeansを約540億円で買収

Verizon

米国を本拠地とする電気通信事業者のVerizon(ベライゾン)*はB2Bビデオ会議プラットフォームの老舗のBlueJeans Network(ブルージーンズネットワーク)の買収に5億ドル(約539億円)近い金額を注ぎ込んだとウォール・ストリート・ジャーナルがスクープしている。

ベライゾンのスポークスマンは売却価格は5億ドルに近いことは認めたが、正確な金額は開示しなかった。Crunchbaseの記録によると、約10年前の創業以来、ビデオ会議プラットフォームのBlueJeans Networkは、米投資家NEA主導による2015年のシリーズEラウンドで約1億7500万ドル(約189億円)を調達している。

この取引に関するベライゾンのプレスリリースでは「没入型ユニファイドコミュニケーションポートフォリオ」拡大を目的とする、企業グレードのビデオ会議とイベントプラットフォーム買収の正式契約が発表された。

同プレスリリースでは「顧客はベライゾンの高性能グローバルネットワーク上で、BlueJeans Networkの企業グレードのビデオ体験ができるようになる。プラットフォームはベライゾンの5G商品計画の中核にも組み込まれ、遠隔医療、遠隔教育、フィールドサービス業務などの高成長部門でのセキュアでリアルタイムのエンゲージメントソリューションを提供する」としている。

Verizon Business(ベライゾンビジネス)CEOのTami Erwin(タミ・アーウィン)氏は声明の中で「私たちの働き方は常に変化している。企業と公共部門の顧客には、エンタープライズ対応のセキュアで手間のかからない、既存のツールと統合できる包括的な製品スイートが絶対に必要だ」と補足した。「ここ数カ月、あらゆる規模とセクターの事業で、コラボレーションとコミュニケーションは最優先事項になっている。BlueJeans Networkのビデオプラットフォームをベライゾンビジネスの接続ネットワーク、プラットフォーム、ソリューションに組み合わせ、顧客のニーズに応えることを非常に楽しみにしている」と述べている。

この買収は、 新型コロナウイルス感染症(COVI-D19)のパンデミックの影響を受けて世界中のホワイトカラーが自宅で会議に出席するようになったことによるビデオ会議の急増時期に重なる。

ただしここ数週間のビデオ会議の急激なブームで最も名が知られているのは、BlueJeans Networkのライバル企業であるZoomだ。Zoomは最近、同社プラットフォームを利用する1日の会議出席者数は12月の1000万人という控えめな数から、3月には2億人に急増したと発表している。

このような急激な成長と一般ユーザーの利用に伴いZoomには厳格な精査が行われ、その結果、セキュリティとプライバシーの懸念による多数の警告一部には禁止も)が発生した。2020年4月初めに同社は、ユーザーが急増し、その点検により表面化した多数の問題解決に集中するため、商品開発を当面凍結すると発表し、この急成長に多少の陰りが見えている。

単純に利用数のみで比較すると、B2Bに焦点を絞り続けているBlueJeans NetworkはZoomより規模が小さいことには違いない。同社のスポークスマンはTechCrunchに対して、現時点でARRは1億ドル(約108億円)、顧客は1万5000人を超えると語っている(ユーザーの中にはFacebookディズニーも名を連ねる)。

ベライゾンにとって最も関心が高いのは有料ユーザーだろう。これは、新型コロナウイルス感染症の影響によってデジタル化が加速期を迎える遠隔医療、遠隔教育、フィールドサービス業務の領域になる。一方でロイターによると、一般的にキャリアは、パンデミックで増加した使用数を収益に還元できていないらしい。これは新型コロナウイルス危機の間に株価を襲った固定費、負債、市場の混乱が重なった結果である。B2Bツールを買収することは、ネットワークによる収益を増やす一案かもしれない。

BlueJeans NetworkのCEOであるQuentin Gallivan(クエンティン・ギャリバン)氏は声明の中で「BlueJeansの世界クラスの企業向けビデオコラボレーションプラットフォームと信頼のブランドを、ベライゾンビジネスの次世代エッジコンピューティングイノベーションと組み合わせることで、大きな差別化要因を持つ魅力的なソリューションを両社の顧客に提供できる」と述べている。また「当社はベライゾンのチームに加わることに大きな期待を寄せ、ビジネスコミュニケーションの未来はここから始まると確信している!」という。

ベライゾンは4月16日、BlueJeans Networkの創業者と「主要社員」が買収の一環として同社に加わり、BlueJeansの従業員は取引の完了次第、ベライゾンの従業員になると述べた。これは通常の完了条件に応じて、第2四半期になると予測される。

ブルージーンズの共同創業者であるKrish Ramakrishnan(クリシュ・ラーマクリシュナン)氏は以前にもイグジットを遂げた経験がある。自社のスピンアウトの間に、自らも働いたことのあるネットワークの大手Cisco(シスコ)に数社のスタートアップを売却している。

*注:ベライゾンはTechCrunchを運営するベライゾンメディアの親会社でもある。

画像クレジット:David Ramos / Getty Images

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(翻訳: Dragonfly)

傘シェアのアイカサが新型コロナ対策第2弾、外出自粛期間中は何日借りてもレンタル料金は70円に

傘のシェアリングサービス「アイカサ」を運営するNature Innovation Groupは4月22日、利用開始から24時間ごとに発生する追加レンタル料金の70円をすべて無料にするサービスを開始した。通常は1日(24時間)の料金が70円で、その後は24時間経過ごとに70円が加算され、レンタル開始後6日後にレンタル料金の総額が420円になると、それ以降は1カ月後まで420円で傘を借りられるサービス。今回の期間限定サービスにより、新型コロナウイルスの蔓延防止のために外出自粛要請が出ている期間は、傘のレンタル料が何日借りても70円となる。

アイカサは4月15日時点で登録ユーザー数が9万2501人、アイカサスポット(傘の設置場所)が850カ所。今回の同社の取り組みは、利用者が追加料金の発生を回避するために返却場所まで外出するリスクを排除するのが狙い。

同社は、新型コロナウイルス対策の第1弾として4月18日からアイカサスポットなどに消毒用アルコールを設置する「#staysafe」プロジェクトも展開しており、4月21日からは都営新宿線沿線に計12カ所、西武新宿線沿線に計24カ所を追加設置している。設置スポットの詳細はアイカサの公式LINEアカウントから参照できるマップで確認できる。

同社では、アイカサスポットの有無に限らず、さまざまなかたちでの協賛企業様を募集中だ。

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Uber Eatsユーザーによるアプリ内でのレストラン支援寄付が3.2億円を達成

Uber Eatsの顧客は、新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミック対応としてアプリ内に設けられた新機能を使ってこれまでに300万ドル(約3億2000万円)をレストランに直接寄付した。

このマイルストーンは、顧客による寄付に連動させていたUber Eatsのキャンペーンの最後を飾るものだ。Uber Eatsは顧客の寄付と同額の300万ドルを全米レストラン協会のレストラン従業員支援基金(RERF)に贈る。同社はこの前にもRERFへ200万ドル(約2億2000万円)寄付している。

キャンペーンは終了した。しかしレストランへの寄付機能は続く。この機能は最初にニューヨークで始まり、現在は20カ国で展開されている。

Uber Eatsのレストランプロダクト管理チームを率いるTherese Lim(テレーズ・リム)氏によると、レストランを支援する機能は、7日間にわたって奮闘したエンジニアチームによって開発された。

「『この機能を作るべきだから、君達、今すぐ取り掛かってくれ』と言った幹部は誰もいなかった」とリム氏は話した。新型コロナウイルス拡大を受けて、これまで展開していた店内での飲食提供を取りやることを余儀なくされたレストランを目の当たりにして始まった草の根的な取り組みだとも付け加えた。Uber Eatsユーザーは、どうやったらレストランを支援できるか、LinkedInや電子メール、その他の手段を使ってレストラン従業員に連絡を取り始めていた。

「新型コロナでレストランが深刻な影響を受けているというのが目に見えるようになっていた」とリム氏は語った。「各州が、屋内退避や外出禁止の命令を出すと一層明白になった」。

チームは新機能に関して、2つの懸念を持っていた。ユーザーが配達員にあげたチップの一部を横取りしたくなかったし、顧客がレストランへの注文を少なくするようなことにもしたくなかった。

この機能で配達員へのチップが影響を受けないことを確かめるため、チームは4月1日にニューヨーク市内の狭いエリアで機能提供をスタートさせた。4月3日にはニューヨーク市全体に広げ、その翌週には全米に拡大した。この支援機能は今では20カ国のUber Eatsで提供されている。

「我々はレストランを傷つけるようなことは導入したくなかった。ユーザーがいらいらしたり結果を不満に思ったり、あるいは注文を取り止めたりといったことにつながり得る摩擦を生み出してないことを確認するのは大事なことだった」。

しかしこの機能が導入されてからのデータで、懸念は杞憂に終わったことが示された。顧客はチップを増やしただけでなく、頻繁にUber Eatsを利用するユーザーになった。

Uberによると、レストランに寄付したユーザーは、寄付しなかった人より30〜50%多いチップを配達員にわたしている。しかもレストランに寄付した米国内のUber Eats顧客の約15%は繰り返し寄付している。

データではまた、早い夕食タイム、午後6時ごろが最も寄付が多い時間帯であることも示された。午後5時〜11時の夕食時の寄付が全体の60%を占めているとのことだ。

インターナショナルな料理の注文がより多くの寄付につながっていることもわかった。中でも、フランス、エチオピア、アルゼンチン、タイの料理を提供するレストランへの寄付が多い。

そして、一部の州は他の州よりも寛大で、少なくとも1回は寄付をしたアクティブUber Eatsユーザーの割合が多かったトップ5の州はワシントン、バーモント、モンタナ、コネチカット、サウスカロライナだった。

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(翻訳:Mizoguchi

個人の違法解雇につながる?雇用主は従業員に新型コロナテストを実施できるのか

Amazon(アマゾン)のJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏が先週株主に送った毎年恒例のレターでは、当然のことながら新型コロナウイルス(COVID-19)について多く割かれていた。同氏はパンデミックを克服するためのさまざまなレベルでの取り組みを示した。その中には、従業員向けテストラボの設置が含まれていて「症状がない人を含め、全Amazon従業員を定期的に検査する」と書かれていた。

Amazonが、熱やその他の新型コロナ特有の症状がある従業員にテストを行うというのは既知の事実だ。結局のところ、同社は米国やその他の多くの国にとって小売を支える主要企業の1つだ。ウイルスが小包経由でうつされるとは考えられない、と世界保健機関(WHO)は述べたが、その一方でウイルスが倉庫内でかなり早く広まる可能性がある。

しかし症状のない従業員をテストするというのは、テストキットが限られているため、緊急性は低い。しかし、WHOやCDC(米疾病予防管理予防センター)、他の機関がそろって指摘しているように、症状がなくてもウイルスを運ぶことは大いにあり得る。この事実が新型コロナをより恐ろしいものにしている。

テストが広く利用できるようになったら、実際のところ、症状があるかないかにもかかわらず雇用主が従業員にテストを行えるのかをはっきりさせることが重要になる。公共の安全と個人の権利を考慮しなければならない大事な問題だ。

米雇用機会均等(EEO)委員会は、障害を持つアメリカ人法(ADA)のもとに雇用主向けのガイドラインを積極的にアップデートしている。

ADAとリハビリの法律を含むEEO法は新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミック時でも適用される。しかし、CDCや州・地方の公衆衛生機関が雇用主向けに出している新型コロナウイルスに関するガイドラインや提案を雇用主が守ることを妨げない。雇用主は、新型コロナウイルスパンデミックが広がるにつれ、公衆衛生当局が出すガイダンスが変わり得ることを考慮すべきだ。ゆえに、雇用主は職場の安全性維持に関する最新情報を引き続きフォローする必要がある。

パンデミックに対応するためにアップデートされたものの1つが、体温チェックを含むスクリーニングだ。「パンデミックの間は、ADAが適用される雇用主は従業員にパンデミックを起こしているウイルスによる症状があるかどうかを尋ねることができる」と米雇用機会均等委員会は続ける。「新型コロナウイルス感染症に関しては、症状として発熱や悪寒、咳、息切れ、喉の痛みなどが挙げられる。雇用主はADAに従って従業員の病気についての全情報を機密の医療記録として扱わなければならない」。

我々は、雇用と商事の訴訟を専門とするDebevoise & Plimptonの弁護士、Tricia Bozyk Sherno(トリシア・ボジック・シェルノ)氏に質問をぶつけた。

「既存従業員の場合、健康調査や検査は、特定の従業員がその健康状態によって『直接的な脅威』になると雇用主が合理的確信を持つ場合のみ許される」とシェルノ氏は説明する。「新規従業員に関しては、仮雇用契約のあとで雇用主が健康調査を実施することをADAは認めている。しかし個人が働き始める前に受ける検査は、同じ部門の従業員に提供されているものと同一のものでなければならない。既存のEEOCガイダンスが想定している主な『健康調査』は体温測定だ。参考ガイダンスでは新型コロナウイルス感染症テストについてまだ言及されていない」。

テストに関する現在のルールは、直近のガイドラインのもとでは完全に明確ではない。ただ、テストが広く受けられるようになり、また州政府が外出規制を緩和し始めているため、今後ルールがはっきりすると思われる。パンデミックがもはや脅威でなくなれば、ガイダンスは適用されないことが予想される。その後、ADAガイドラインのもとに残るものはといえば、新型コロナウイルス感染症のような症状をめぐっての個人の違法解雇だ。

「ADAは障害を持つ個人に対する差別を禁じていて、雇用主にはそうした個人に合理的配慮を提供することを義務付けている。地方自治体の法律が、影響を受けている従業員に追加の保護策を提供するかもしれない」とシェルノ氏は話している。

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(翻訳:Mizoguchi

VCがいま新規事業に出資することはないが、1カ月後には何かが変わるかもしれない

法律事務所のFenwick & Westは米国時間4月9日、ベンチャーキャピタル業界の最新動向を把握するために、Eniac Ventures創設者でジェネラルパートナーのHadley Harris(ハドリー・ハリス)氏、Primary Venturesの共同創設者でジェネラルパートナーのBrad Svrluga(ブラッド・スヴルーガ)氏、GreycroftのパートナーEllie Wheeler(エリー・ウィーラー)氏の3人とバーチャル座談会を開催した。いずれもニューヨークで活動する投資家である。

彼らは皆、新型コロナウィルスによるロックダウンの影響を受けているが、個々の状況は当然ながら三者三様である。しかし、仕事の話になると全員が口をそろえて「現在の状況でVCが新規事業に出資することはない、ということを起業家たちに認識してほしい」と言う。

プライベートでは、ウィーラー氏は第一子の出産を控えており、ハリス氏は奥さんとのランチを毎日楽しんでいる。スヴルーガ氏は「こんなに毎日連続して子どもたちと食事をしたのは本当に久しぶりだ。もう10年以上こんなことはなかった」と話す(彼は今の状況をご褒美だと思っている)。

仕事面では、プライベートとは反対に苦戦を強いられており、3人ともこの数週間忙殺されている。どのスタートアップが一番危ういか、この状況でも救済する価値のあるスタートアップはどれか、予想外のビジネスチャンスに恵まれる可能性のあるスタートアップはどれかといったことを検討し、それぞれのケースに対応する方法を考える必要があるからだ。

あまりにも忙しすぎて、いま初めて出資を募ってきた起業家がいたとしても、誰も小切手を切る余裕などないだろう。実際にハリス氏は、この危機の中でも起業家たちの売り込みに対して門戸を開いていると話す投資家たちに対して異議を唱える。「多くのVCがこの状況の中でも出資の申し込みを受け付けていると話していることは知っている。しかし私は、Twitterでもかなりズバッと発言したように、今のような状況で出資を続けられるなんていうのはほとんどデタラメだし、起業家たちに間違ったメッセージを送ることになると思う」とハリス氏は語る。

「現時点でVC業界には新規投資案件を扱うための余力はまったくない。既存の投資先企業に対してやるべきことが山積みだからだ。余力がないことが今一番の足かせだ。資金の問題ではない」。

余力が回復したらどうなるのだろうか?そうなっても、直接会社に出向くことなくオンラインのみで起業家とやり取りすることが、出資判断において的確、正常、あるいは有効な方法だと考えているVCなどないという点は覚えておかねばならない。

「豊富な実績を持つ一部のアクセラレータやシードファンドが多数のスタートアップに対して、何らかの方法や形で短期的にリモートでの出資判断を行っている例はあるが、直接会ったことがない人物に対する出資を検討するなど、賢い方法とは思えない」とウィーラー氏は言う。

「出資先の調査で最初に行うことはいつも決まっている。何も難しいことではない。スタートアップのチームと会い、その会社に出向き、こちらのチームにも会ってもらう。これをオンラインでやるのは無理がある。正式な場あるいは仕事外のカジュアルな場で一緒に時間を過ごすことから得られる情報をオンラインで得られるとはとても思えない。そこをわかっていない人が多い。現在の状況が長引くほど、その点を認識する必要がある」とウィーラー氏。

いずれにしても、今の状況で何をVCに売り込めばいいのか。3人とも、新型コロナウィルスによって一変した世界とあまり関連のない分野にはほとんど興味がない。「例えば、今は実店舗ビジネスについて新しいアイデアを提案する時期ではない」とハリス氏は言う。ウィーラー氏は別の視点から、この数週間で多くの人が「分散型チームとリモートワークは思っていたよりも実行可能かつ持続可能である」と気づいたようだと指摘し、Greycroftは引き続きこうした環境を実現するソフトウェアに注目していることを示唆した。

Primary Venturesも、よりシームレスなリモートワークを実現するソフトウェアに注目しているとスヴルーガ氏は言う。在宅勤務については「当社の18人の社員でしばらく行ってみたら自然に受け入れられた」と同氏。

必然的な流れとして、3人はダウンサイジングについて、この座談会のモデレータであるEvan Bienstock(エヴァン・ビエンストック)氏から質問を受けた。この質問については3人とも一様に、スタートアップが今すぐにランウェイを引き伸ばすには、ダウンサイジングはほぼ不可避だと指摘した。「最悪だよ。今、人々は職を失っている。(新しい事業を育てるのに最適な環境だった)60日前と同じ組織でチームの運営を続けるなんて不可能だ」とスヴルーガ氏。

3人はまた、人員削減を余儀なくされている管理部門に対するアドバイスについても話し合った。そこでは、2回目を行わずに済むように最初の人員削減で思い切って切るべきだという意見で一致した。

一緒にやってきた人たちを誰も好んで切りたいとは思わないが、「『しまった。人員カットをやり過ぎた』と言ったCEOに会ったことは今までに一度もない」と、自身も二度の不景気を経験したことのあるスヴルーガ氏は言う。彼の知っているCEOの「少なくとも30%」は、企業文化も守りながら事業を保護できる状態まで人員削減を行えていないと認めたという。

「二度目の人員カットはもっと大変になる。大なたを振るうことになるのは二度目のレイオフだ」とウィーラー氏は付け加えた。

今後については、3人とも「既存の投資先がレイオフ、バーンレート、ランウェイ予測に関する業務がひと段落したら、起業家の新しいアイデアを受け入れられるようになるだろう。それに加えて、新しい経済対策をスタートアップが最大限に活用できるようにサポートしていく」と答えた。

それがどのくらい先になるのかについては、「1カ月後にはこの混乱も少し落ち着いているかもしれない」とウィーラー氏とスヴルーガ氏は指摘する。「起業家たちも、4週間くらいあれば自分たちが抱えているさまざまな問題点を調整するために必要な時間を確保できるはずだ」。

ハリス氏も同じ意見だ。「少しずつやっていくことになるだろう。来週どうなるかはわからないが、1か月経ったらぜひ連絡して欲しい。新規出資を再開できる状態かどうか伝えるよ」。

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(翻訳: Dragonfly)

事業用不動産は新型コロナ終息後の回復に影

ここ数年の好景気により、事業用不動産のオーナー、不動産業者、土地所有者たちは、年間数千億ドルもの収益を上げてきた。

それが今、新型コロナウイルスのパンデミックによって引き起こされた経済危機で、大打撃を受けている。さらに悪いことに、不動産業界は元に戻れないほどに変わり果ててしまう可能性もある。

今、賃貸料を回収するのは明らかに至難の業である。National Multifamily Housing Councilによれば、米国では、3月5日の時点で家賃を支払えた世帯が81%であったが、4月5日にはそれが69%まで激減した。昨年の同じ時期には82%の世帯が家賃を支払っていたのに、だ。

解雇された人や自宅待機となった人の数が急増したことを考えると、この数は、5月5日までに、ほぼ間違いなく悪化するだろう。

事業用不動産でも、問題は深刻になりつつある。賃料を支払えなくなり、立ち退きを余儀なくされた小売店やレストラン業は数え切れない。さらに、大手チェーンの中にも、賃借料の支払いが困難になったり支払いを拒否したりする企業が増えている。

例えば、ウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じるところによると、WeWorkは米国にある一部の施設の賃借料を支払えず、リース契約についての再交渉を試みている。とはいえ、WeWorkは自社がコワーキングスペースを提供するテナントには賃料の請求を続けている

StaplesSubway、Mattress Firmも、賃貸料の値下げ、リース契約の修正、新型コロナウイルスの影響で被った損失を埋め合わせるその他の措置を講じるよう建物のオーナーに強く迫るため、賃貸料の支払いを停止したのである。

目まぐるしい変化

一番答えが知りたい質問は、次に何が起こるかということだ。行き詰ってしまった資産を何とかしようと、その方法を探る人たちもいるが、事業用不動産市場が元に戻らないという可能性は非常に高い。

小売業者やレストランが姿を消していく一方で、オンラインで事業を展開する企業の業績は上がっている。Amazonは、悪い評判がないとは言えないが、それでも一日ごとに市場シェアを拡大している。実際、Amazonの時価総額は今週1兆ドルの大台を取り戻した。

数週間前に報じた通り、ストリートウェアのオンライン販売を手掛けるStockXも急成長している。StockXのCEOであるScott Cutler(スコット・カトラー)氏は、その時にこう語っていた。「StockXは、これまでもずっと希少性の高い購買プラットフォームだったが、実際の店舗に行けなくなった今、StockXの利用者はさらに増えている」。

特に、サンフランシスコ、シカゴ、ボストン、ニューヨークといった市場では状況が急速に変化する可能性がある。個人経営の店やレストランがしのぎを削るエリアであったのに、ベンチャー企業の従業員やサラリーマンたちが突然在宅勤務となってその業務形態に順応してきており、消費需要が落ち込んでいるためだ。

Cadenceの創設者兼CEOであるNelson Chu(ネルソン・チュー)氏の例を考えてみよう。Cadenceは、ニューヨークにおいて17人のスタッフで証券化プラットフォームを運営する駆け出しの会社である。最近、400万ドルの資金調達に成功し、先月、住宅地内の物件の賃貸契約を結んだ。その契約では、オフィスを移転できるまでは、賃借料を請求されないことになっていた。

Cadenceにしてみれば、良い条件である。使ってもいない場所の貸借料の支払いを心配しなくて済むのだ。それにもかかわらず、Chu氏は、リモートで働かなければならない状況に追い込まれたことで、自社の業務形態にリモートワークをもっと組み込む余地があることに気づかされたと述べている。

Chu氏は次のように語っている。「これまでリモートワークがビジネスを継続する上で悪影響を及ぼすのではないかと心配されてきた。しかし現在、リモートワークが強いられる中でも、業務には何の支障も出ていない。これは、オフィスの規模を縮小し、州外に住む従業員が毎日出勤しなくても運営が成り立つことを示しているのではないだろうか」。

想像に難くないが、これまでテレワークというトレンドに同調してこなかった他の起業家や経営陣も、Slack、Googleスプレッドシート、Zoomなどのツールを使うようになり、同じ結論に達しつつある。

生き残りをかけて

リモートワークに関するこの新たな可能性は、不動産会社に直接影響する。

事業用不動産向けサービス会社大手のCBREで、調査と分析のディレクターを務めるColin Yasukochi(コリン・ヤスコチ)氏はこう語っている。「リモートワークは現在、その運用が活発に検討されている分野である。今はリモートワークを余儀なくされている状況だが、その働き方を今後も続ける企業が当然出てくるだろう。問題はリモートワークの規模や期間がわからないことだ」。

この状況はもちろん、CBREや他の不動産業界が今年期待していた動向ではない。昨年11月にCBREが発行した「市場展望」レポートの内容はかなり楽観的だった。当時は、「不測のリスクがなければ」と前置きした上で、「活発な経済活動、強固な財務基盤、低金利、資産クラスとしてある程度の魅力が不動産にあること」について考えると、2020年は事業用不動産業界にとって「非常に良い年」になるであろうと推測していたのである。

ご存知の通り、その後の数カ月間に生じた「不測のリスク」により、企業は休業に追い込まれ、産業界のほぼすべてのセクターにおいて一時解雇が余儀なくされている。また、ウイルス感染の本質が明らかになった今、オフィスに再び出勤できるようになったとしても、人が密集する職場に行くことに気乗りしない人が出ることも十分に考えられる。

オフィスに行かずに仕事ができることを知ってしまえば、間違いなくそうなるであろう。

それが、今後のオフィス用スペースの需要減少につながる可能性は高い。そして、減少したのと同じ(またはそれより大きな)スペースが、新たな形体のオフィスに利用されることになるかもしれない。このことは、事業用不動産業者を含め、誰にもまだわからないのだ。

Mark George(マーク・ジョージ)氏はカリフォルニア州サンノゼ在住の仲介業者で、Cresaという事業用不動産会社に勤務している。現在、在宅勤務を行っており、同じく初めてリモートワークを行う妻とオフィスを共有し、子どもたちと一緒に家にいる時間を楽しんでいる。「しかし、特に不動産業では、自宅から出られない状況で業界の動向の変化を把握するのは難しい」と同氏は言う。

ジョージ氏によると、仲介業者は「いくぶん孤立している」。「物件を見せられないので、内見などの仕事はすっかりなくなってしまった。どの地方自治体でも庁舎は閉まっていて許可を得られないため、不動産業界はまさに休業状態だ」とのことだ。

「最終段階まで来ていた取引は」新型コロナウイルスが米国で勢いを増す前に「おそらく契約までこぎ着け」た。しかし「契約成立まであと少しだったが、最終段階とは言えない取引はどうなったかわからない。私が見てきた取引は、全て保留になっている。皆が待機状態に陥っている」と同氏は語っている。

同じくCresaに勤務しており、サンフランシスコ在住のBrandon Leitner(ブランドン・ライトナー)氏も同じように感じており、「取引に急速な動きはない」と言う。それでも、自社がTwitterのような大企業をはじめ、シリーズAラウンドやシードラウンドのスタートアップとも取引があるため、現在の市の外出禁止令が解除され、仲介業者が再び物件を見せられるようになれば、取引は再び活発化するであろうと期待している。

CBREによると、過去数年間、サンフランシスコで商業用スペースは1平方フィート(1000平方cm)当たり88ドルで取り引きされていたが、ライトナー氏は、その価値が「最低でも10%、おそらく20~30%」低下すると予想している。要因としては、市内にある200万平方フィートのスペースを押さえていた複数の企業がそれを手放したがっており、取引が可能になるとすぐにその物件が市場に出回ることが挙げられる。

特に、取引可能な320万平方フィートの商業用スペースがすでにあることを考えると、この数字は大きい。さらに、CBREのヤスコチ氏は、過去6カ月間だけでも「相当」なスペースが市場に上がってきたと述べている。

回復に望みをかける

ライトナー氏が言うように、「市場に上がる物件の数を増やすことを今は控えたい」と言う不動産所有者には、ありがたくない話である。

同氏は、不動産所有者が「現実的」であり、「できる限り譲歩して」踏みとどまり、新たなテナントを募集するようにと提案している。もちろん、できることには限界がある。土地所有者もたいてい負債を抱えているのだ。つまり、業績不振が長引き、オフィス利用者の数が元に戻らなければ、自分たちも苦境を乗り切るのに、金融業者に頼らざるを得なくなるのである。

サンノゼ在住の仲介業者であるジョージ氏は金融業者は投資を保護するためにも、不動産業者に助けを差し伸べるだろうと考えている。連邦準備制度も、銀行に不動産ローンの支払いを先送りする権限を与えることで、不動産所有者が賃貸料の請求を先延ばししやすくする可能性もある。

とはいえ、新型コロナウイルス感染症の終息後、事業用不動産マーケットが元に状態に完全に戻るのかどうかは、フタを開けてみなければわからない。

ヤスコチ氏は「このパンデミックは、我々が今までに経験したことのない事態だ」と語っている。CBREのエコノミストは第2四半期と第3四半期の目算が「非常に厳しい」と予測しているが、同氏によると、第4四半期には市場に「大幅な上昇傾向が見られるかもしれない」とのことである。

ただし、「これは、需要が回復するか、業務拡張計画が延期になるのか、それとも永久に白紙になるのかにかかっている」とも語っている。

今のところヤスコチ氏は、特に地元サンフランシスコの市場では、通常通りのビジネスに戻れるだろうと楽観視しているようである。「Bay Areaは何かあるとすぐ悪影響を受ける気がするが、たいてい回復も早い」と語っている。

業界関係者は、その回復に望みをかけているに違いない。

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(翻訳: Dragonfly)