ダブリンのExergynは形状記憶合金を使って温室効果ガスの原因となる冷媒を代替

Exergyn Ltdの共同創業者でマネージングディレクターを務めるケビン・オトゥール博士(画像クレジット:Conor McCabe Photography)

ダブリンに本社を置くExergyn(エクサージン)は、冷媒を固体素材に置き換えて、温室効果ガスの排出を削減する。この技術は、データセンターに適用できる可能性がある。

この産業用クリーンテック企業は今回、シリーズAラウンド3000万ユーロ(約39億円)の資金を調達した。この投資ラウンドはエネルギー・コモディティ企業のMercuria(マーキュリア)とファミリーオフィス系ファンドのLacerta Partners(ラセルタ・パートナーズ)が主導し、プラハを拠点とするプライベート・エクイティおよびベンチャー・キャピタルのMcWin(マックウィン)も参加した。

Exergynは固体形状記憶合金(SMA)と呼ばれる製品をてがけており、HVACRと総称される暖房、換気、空調、冷蔵や、自動車、航空宇宙などの業界で炭素排出量を削減できると主張している。HVACR産業は、世界のCO2排出量の10%以上を占めている。

同社の形状記憶合金は、熱を吸収したり放出したりしながら収縮と緩和を繰り返す。これによって冷媒が不要になる。

モントリオール議定書によれば、地球温暖化の第一の解決策は、地球温暖化係数の高いガスを除去することであるという。

競合としては、メリーランド大学やスロベニアのリュブリャナ大学がこの分野に注目しているが、同じ分野で事業を行う商業組織は少ない。磁気熱量効果はSMAの高価な従兄弟のようなものだが、一般的には高価すぎると考えられている。

今回のシリーズAの発表について、共同創業者でマネージングディレクターを務めるKevin O’Toole(ケビン・オトゥール)博士は次のように述べている。「Mercuria、Lacerta、McWinといったソートリーダーたちと力を合わせることで、当社の提供する製品を複数の新しいエキサイティングな垂直市場に拡大することができます」。

今回の投資について、MercuriaのマネージングディレクターであるDavid Haughie(デヴィッド・ホーヒー)氏は次のように言及している。「Mercuriaの目標は、これらのSMAによって冷却・冷蔵などの分野で伝統的な冷媒の必要性を排除し、さらにコスト効率の高い運用を可能にすることで、HFC(代替フロン)による環境への影響をゼロすることです」。

画像クレジット:Kevin O’Toole, PhD, CEng, MIMechE Managing Director, Exergyn Ltd. Picture Conor McCabe Photography.

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

コードとその変更を視覚化可視化するCodeSeeがセカンダリーシードで約8億円調達

CodeSeeは、コードベースのすべてのパーツがどのように組み合わされているかを開発者が理解するのを助ける一連のツールを構築している、その名にふさわしいスタートアップだ。米国時間1月20日、同社は2020年に受け取った300万ドル(約3億4000万円)に加え、700万ドル(約8億円)のセカンダリーシードを発表した。このラウンドは、新たな投資家である Wellington Access Ventures、Plexo Capital、Menlo Ventures に加え、最初のシード投資に参加した複数の業界エンジェルも加わっている。

同社のCEOで共同創業者のShanea Leven(シャネア・リーベン)氏によると、同社はコードベース全体を理解するという、どの開発者もその経験レベルに関係なく、特に新しいコードベースに出会ったときに苦労する問題を解決しようとしているという。

「初めて見るコードベースに対して、誰でも一種の恐れを感じ、圧倒されてしまいます。自分がこのコードベースに貢献できるという自信が持てるのは、かなり後になってからです。どんなに経験を積んでいても、そうです。誰にでもひるむ時があり、またコードベースは毎日変化するため、理解が追いつかないこともあります」とリーベン氏はいう。

リーベン氏によると、同社は2021年9月に同社のオープンソースのOSS Portプロジェクトを取材してからも成長が続いており、現在、数社と一緒にテストしている有料バージョンももうすぐリリースできるという。

関連記事:CodeSeeが開発者によるコードベースの可視化を支援するオープンソースプロジェクト「OSS Port」を開始

「これまで作ってきたチームやエンタープライズ向けのバージョンは完成間近です」とリーベン氏はいう。またReview Mapsという新しいツールも開発中で、これはGitHub上でコードベースに変化が生じたらそれらを視覚化するというものだ。変更されたファイルをアルファベット順にリストにする従来の方法では、どこがどう変わったのか、それが全体にどのように影響するのかわかりづらい。そこでReview Mapsは、その名のとおりリストではなく変化のマップを提供する。

「あなたがコードベースに有意義な貢献を提供できるようになり、最初のプルリクエストを書けるようになったら、それはあなたが行なうコードの最初の変更であるため、コードベース全体のコンテキストの中でその変化を視覚化できることが重要です」。大規模で複雑なプロジェクトでは、何百件もの変更が毎日のようにプッシュされているため、これはなお一層重要だ。

「600ものファイルが変更されたコードレビューを見ると、非常に気が遠くなってしまいます……。なので、コードレビューがこれほど大きくなると、ほとんどの人はレビューしないようになります。しかし、私たちなら、自分の変更点を確認することができます。ズームアウトして全体像を見ることもできます。自分の変更がコードベースにどのような影響を及ぼすのか、全体像を把握することができるのです。これは、開発者にとって非常に嬉しいことです」とリーベン氏はいう。

現在、同社の従業員数は13名で、2022年中に5〜6名の増員を予定している。

画像クレジット:Yumi mini/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

マイナンバー特化のデジタルソリューションを提供するxIDが総額2億円調達、金融・保険領域でのサービスを加速

マイナンバーカードに特化したデジタルIDソリューション「xID」(Android版iOS版)を提供するxID(クロスアイディ)は1月19日、第三者割当増資による総額約2億円の資金調達を実施したことを発表した。引受先は、スカラ、セゾン・ベンチャーズ(クレディセゾンのCVC)、SOMPO Light Vortex(SOMPOホールディングスのデジタル事業子会社)。

デジタルIDソリューション「xID」は、ユーザー向けの「xIDアプリ」と、開発者向けのAPI based SaaS「xID API」からなる。xIDアプリについては、初回登録時にマイナンバーカードの署名用電子証明書をスマートフォンのNFCで読み取り、本人確認後IDを生成することでより手軽に本人認証や電子署名が可能になるというもの。

また同社は、金融・保険領域を中心として、マイナンバーカード・xIDアプリを利活用したサービスの推進・加速に向け、各企業と以下取り組みを主とした協業・提携を進め、この連携を強固なものとするため資本提携を行った。

各社との取り組み

  • スカラ:スカラグループでは、主要顧客である大手企業、自治体向けに数多くのデジタルプラットフォームを開発、提供している。今後様々な業界で本格化するオンラインでの本人確認・電子署名・電子契約において、マイナンバーカードと連携した「xIDアプリ」を活用した次世代のデジタルプラットフォームの企画・開発の協業を推進する
  • クレディセゾン:クレディセゾンが発行するクレジットカード申し込み時の本人確認手続きに、xIDのデジタルIDソリューションを導入。ペイメント領域・ファイナンス領域において、次世代デジタルIDを活用した様々な協業に取り組む
  • SOMPO Light Vortex:行政との連携によるパーソナルデータのデータ分析や活用推進、住民の利便性向上につながる非保険領域でのデジタルサービスの提供に取り組む

2012年5月設立のxIDは、「信用コストの低いデジタル社会を実現する」をミッションとするGovTech領域のスタートアップ企業。2020年4月より「マイナンバーカードを、スマートに。」をサービスミッションに掲げ、xIDアプリとxID APIの提供のほか、デジタルIDを活用した民間・行政向けシステム開発を事業として展開。2021年12月には、アプリの大幅なUI・UXの改善と、API機能をアップデートしたxIDバージョン4.0をリリース。マイナンバーカードの署名用電子証明書による電子署名機能の提供も開始した。

2022年1月現在、xIDは全国の200を超える自治体において電子申請サービスなどで利用されているという(無償トライアル期間中の自治体を含む)。

新規事業・イノベーションに必要なつながりを提供するCtoCマッチングサービスSpreadyが1.1億円のプレシリーズA調達

新規事業に必要な情報とのつながりを提供するプラットフォーム「Spready(個人向け企業向け)」を運営するSpreadyは1月20日、プレシリーズAラウンドとして、第三者割当増資による総額1億1000万円の資金調達を実施したことを発表した。引受先は、HRテック投資事業有限責任組合、ベルテクス・パートナーズ、Relic、NEWh、CRGインベストメント、およびエンジェル投資家2名など。累計資金調達額は1億8000万円となった。調達した資金は、人材採用、利用企業・ユーザーの獲得に向けたマーケティング費用にあてる予定。

2018年5月設立のSpreadyは、日本のイノベーションに必要な出会いをワンストップで提供できるプラットフォーム構築を目指すスタートアップ企業。

同社が提供する「Spready」は、新規事業を創出しようとする企業と、その対象領域について知見を持った人材などとのマッチングを行うサービスという。独自の特徴として、「CtoC」体裁であることが挙げられる。これは、利用する企業が「新規事業のテーマ」と「会いたい人」について掲載すると、登録個人ユーザーが「会いたい人」の条件に該当する自分の知人・友人などを探して紹介するというもの。大手企業による新規事業の情報を閲覧できることから、ビジネス感度の高い個人ユーザーが登録しているという。登録個人ユーザー数は4343名、またのべ283社が利用している(それぞれ、2022年1月20日現在)。

もう1つの特徴として、個人ユーザーが紹介を行った際のインセンティブとして、金銭報酬を設定していない点がある。その代わり、新商品や話題のサービスが試せる独自のリワードプログラムを用意している。

膨大な量のデータのクラウド移行をローコードで実現するProphecyが約28.4億円調達

米国時間1月20日、データエンジニアリングのローコードプラットフォームであるProphecy.ioが、Insight PartnersがリードするシリーズAのラウンドで2500万ドル(約28億4000万円)を調達したと発表した。既存投資家であるSignalFireとBerkeley Skydeck、および新たな投資家Dig Venturesもこのラウンドに参加し、同社の総調達額は3100万ドル(約35億3000万円)になった。

Prophecyのユーザーエクスペリエンスの核は、データエンジニアやアナリストがワークフローを構築するためのビジュアルインターフェースとコードエディターをシームレスに切り替えることができるローコード環境だ。このインターフェースによって、Apache Sparkのコードをすばやく作成し、そのコードをAirflowサービスを通じて容易に実行することできる。

このコードとビジュアルインターフェースを切り替えていく方法で、一方が行った変更がすぐにもう一方に反映するようになり、また必要に応じてビジュアルインターフェースをカスタムの要素で拡張することもできるため、マーケットで優位に立てるとチームは願っている。まだレガシーなツールを使っている企業が非常に多いため、Prophecyは企業が既存のETLワークフローをモダナイズできるためのトランスパイラーを提供している。

Prophecyの共同創業者Raj Bains(ラジ・ベインズ)氏は、次のように述べている。「誰もが、データは新たなオイルだと、もう10年ぐらい言い続けています。しかし、実際に大企業へ行ってみると、データ管理は混乱しています。そんなところへ私たちが出ていって『直しましょう』というのです」。Prophecyと提携したDatabricksやSnowflakeはデータを利用するための処理エンジンを構築しているが、企業はクラウドへの移行を同時に進めているため、重い作業を行うための多くのツールをまだ必要としていると同氏はいう。

ベインズ氏によると、これらの企業は、オンプレミスで動いている何万ものデータパイプラインが下層にあることが多いという。そこでProphecyのツーリングによりこれらのパイプラインをモダナイズして、クラウド(できればProphecyのプラットフォーム)に移した方がすっきりする場合が多い。

つまり「そのために作ったコンパイラーは、極めて高度なツールです。それは、彼らの古いデータパイプラインを読み、クラウドとクラウド技術のための新しいデータパイプラインを自動的に書き出します。私たちは大企業の膨大な量のデータエンジニアリングの残骸に取り付いて、それらの全体をクラウドへ移行させる。現在、クラウドを志向している大企業は多いのですが、成功する移行方法はわかっていません。そこで、私たちはクラウドへの移行を支援し、まったく異なるエコシステムであるクラウドの世界で彼らが成功できるようにするのです」。

Prophecyは設立から間もないが、すでに多くのFortune 500や50の企業がデータのインフラの構築と管理のために同社サービスを利用している。

Insight PartnerのマネージングディレクターGeorge Mathew(ジョージ・マシュー)氏によると、同社に関心を持った理由は、ベインズ氏がHortonworksやNVIDIA、Microsoftなどに在籍していたからなどさまざまだという。

「ラジ(・ベインズ)とProphecyのチームは、昨日までの古いシステム、特にそのデータ部分をよく知っている。だからそれを、クラウドネイティブな世界のどこへどうやって移せば、その巨大な移行が成功するかもわかっています。しかも、ノーコード / ローコードでそれができるのです」とマシュー氏はいう。同氏によると、現在はデータウェアハウスやレイクに積み上がった膨大な量のデータを抱えている企業が増えているたタイミング的にも良いという。数年前までは、それほどでもなかった。

ベインズ氏が掲げる2022年の目標は、プロダクトをもっと磨いて顧客がパイロットではなくプロダクションで成功できるようにすることだ。そのため、当然ながらこの度の資金は同社の市場化努力、特にフルスタックのデータエンジニアリングプラットフォームの構築に投じられる。

画像クレジット:Artur Debat/Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

車いすユーザーや運動障害を持つ人々の自立歩行を支援する外骨格ロボットメーカー「Wandercraft」

Wandercraft(ワンダークラフト)は2012年、車いすユーザーのモビリティを向上させることを目指して設立された。同社のソリューションは、ロボットエクソスケルトン(外骨格)によってもたらされ、着用者にロボットの助けを借りて歩く能力を提供できる。2019年、パリに拠点をおく同社は、12の自由度を持ち、歩行アルゴリズムに依存してユーザーの足取りを決定する自己バランス外骨格「Atalante」を発表した。

米国時間1月19日、同社は、これまでに調達した3050万ドル(約34億8000万円)の倍以上となる4500万ドル(約51億3500万円)のシリーズCをクローズしたと発表した。今回のラウンドは、既存の投資家であるBpifranceに加え、米国を拠点とするQuadrant Managementが主導した。特にQuadrantの参加は、WandercraftがAtalanteを欧州だけでなく、米国にも展開することになるという点で注目される。

同社のMatthieu Masselin(マチュー・マセリン)CEOは、リリースの中で次のように述べている。「当社の開発プログラムを進めるために、米国と欧州から世界トップクラスの投資家を引きつけることができ、非常に興奮しています。患者、医療関係者、ディープテックコミュニティの支援を得て、Wandercraftのチームは、リハビリケアを向上させる独自の技術を生み出しました。近い将来、車いすに乗っている人々が自立性を取り戻し、日々の健康を向上させることを可能にするでしょう」。

米国には、ReWalk Robotics、Ekso、SuitX、Sarcosなど、名の知れた外骨格企業で市場が混雑しており、これらの企業はこれまでに多額の資金を調達し、注目度の高いパートナーシップを発表している。しかし、Wandercraftが他と異なる点のひとつは、競合他社の多くが力仕事をする労働者や軍事用途を対象としているのに対し、ユーザーのモビリティーを重視していることだ。

この場合それは、病院やその他の医療機関との提携の可能性を意味する。

画像クレジット:Wandercraft

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

量子クラウドデータセンターから量子鍵配送まで、量子サービス(QaaS)目指すTerra Quantum

スイス・チューリッヒを拠点とし、サービスとしての量子(QaaS)プラットフォーム(最終的には独自の量子ハードウェアを含む)の構築を目指すスタートアップ、Terra Quantumは、現地時間1月20日、2019年のシードラウンドでも出資したLakestarが主導し、6000万ドル(約68億5000万円)のシリーズAラウンドを実施したことを発表した。今回のラウンドに参加した他の投資家は、匿名を希望している。Terraによると、世界的に有名なドイツ最大級のファミリーオフィス2社と、世界的に最も影響力のある暗号資産投資家1社が含まれているとのこと。

Terra Quantumの背景にあるアイデアは、新しいエンドツーエンド量子プラットフォームを構築することだ。同社が独自の量子チップを開発するのはまだ数年先のことで、現在は量子アルゴリズムのライブラリや、量子鍵配送サービスなどの量子セキュリティツールを顧客に提供することに注力している。

独自のハードウェアについては「超伝導量子ビットに非常に関心がある」とのこと。現在、同社は模擬的な仮想量子ビットへのアクセスをユーザーに提供しており、トポロジーやアーキテクチャを問わず、現在利用可能なあらゆるハードウェアプラットフォーム上でワークロードをサポートできる。

Terra Quantumの創業者兼CEOであるMarkus Pflitsch(マルクス・フリッチュ)氏は、次のように述べている。「今回のシリーズA資金調達により、ディープテック分野のスタートアップからグローバルな量子ビジネスへと発展した当社が、量子コンピューティング分野での主導的な地位をさらに高めることが可能になります。初のハイブリッド量子クラウドデータセンター(QMware)と、量子鍵配送(QKD)に基づく超安全なグローバル量子プロトコルを発表した最近のマイルストーンを非常に誇りに思うとともに、これまでも、そしてこれからも私たちの道を支えてくれるすべてのパートナーのサポートに感謝しています」。

Terra Quantumは現在、自動車業界やバイオテック業界のDAX40企業を顧客に抱えている。

Terra Quantumは、今回の資金調達により、研究開発能力の拡大(独自の量子ハードウェアを構築する場合に必要となる)と、量子サービスの拡大(そのためにはハードウェアが必要となる)を計画している。

LakestarのパートナーでありCTOのStephen Nundy(スティーブン・ナンディ)氏は次のように述べている。「当社は、優れた技術を持つ創業者とのパートナーシップを強く望んでおり、Terra Quantumの量子技術の素晴らしい可能性を最初から信頼していました。Terra Quantumは、第二次量子革命を推進する上で、主導的な役割を果たすことを一貫して証明しています。その先駆的な量子アプリケーションは、例えば差し迫った量子暗号の課題を解決するなど、非常に大きな可能性を秘めています。我々は、Terra Quantumの世界規模での継続的な成長をさらに支援できることを非常に嬉しく思います」。

画像クレジット:ALFRED PASIEKA/SCIENCE PHOTO LIBRARY / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Aya Nakazato)

消費者が自分のプライバシーデータを企業と共有、その見返りが得られるプラットフォームCadenが3.9億円調達

起業家のJohn Roa(ジョン・ロア)氏は、プライバシーの価値を信じている。2015年にデザインコンサルタント会社ÄKTAをSalesforceに売却した後、ロア氏はヨーロッパの島で数年間「世間から離れる」ことにした。

そして今、同氏はニューヨークに戻り、消費者が自分のデータを企業と共有し、その見返りとして報酬を得ることができるようにするスタートアップCaden(カデン)を立ち上げた。同氏はSalesforceで働いていたとき、長期休暇を始める直前に、データプライバシーの未来に関する論文の形で事業計画を書いたとTechCrunchに語っている。

事業計画を書いたときは「純粋に推論的なもの」だったとロア氏はいう。同氏は、サードパーティのデータ、つまり受動的に収集されたデータを保存する際に、規制によって企業に問題が生じると予想した。そして、ユーザーが自分の個人データを所有し、その使用について完全にコントロールして同意する「プライバシーファースト」の世界へ長期的には移行することを想定していた。

340万ドル(約3億9000万円)のプレシードラウンドでステルスモードから抜け出したばかりのCadenは、そうした世界を構築するためのロア氏の試みだ。このラウンドには、TechCrunchの親会社であるYahoo!の共同創業者Jerry Yang(ジェリー・ヤン)氏が、Starwood CapitalのBarry Sternlicht(バリー・スターンリヒト)氏、Citigroupの元CTO、Don Callahan(ドン・キャラハン)氏、その他のエンジェル投資家とともに参加した。

Cadenの創業者ジョン・ロア氏(画像クレジット:Caden)

同社は自らを「ゼロパーティ」データプラットフォームと呼んでいる。これは、ユーザーが自発的にのみブランドとデータを共有することを意味する。同社の主力製品の1つは、ユーザーが個人データを保存し、そこから導き出される洞察を見ることができる暗号化された「デバイス上の金庫」だ。この機能をロア氏は、Spotifyの「Year in Review」になぞらえたが、より広範な嗜好や行動パターンを網羅している。

Cadenの2つ目の主力製品はLinkと呼ばれるAPIで、ユーザーは自分のメールや銀行などのアカウントに接続し、データを抽出して金庫に保存することができる。ひとたび金庫に保存されると、ユーザーはCadenに保存されたデータの最終的な所有者であるため、いつでも信用する特定の企業にデータ使用の許可を与えたり、あるいは許可を取り消したり変更したりすることができる、とロア氏は話す。

同氏のチームは9カ月前にこの技術に取り組み始め、今後6カ月以内にベータ版のモバイルアプリを市場投入する予定だ。同氏はこのアプリを預金口座に例え「ユーザーは自分のデータに対する報酬をすぐに受け取り始めることができるようになる」と述べた。

米国の大多数の州では、2018年に制定されたカリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)と同様の法案が成立、または検討されている。この法律では、消費者は企業による自身の個人情報販売をオプトアウトする権利が与えられている。企業は長年にわたってユーザーに関するサードパーティデータを収集してきたが、監査やコンプライアンスの要件が厳しいため、企業にとってサードパーティデータ収集は「資産というより負債」になっているとロア氏は話す。「ゼロパーティ」のデータは、ユーザーから直接取得するため、より正確で堅牢だと付け加えた。

Cadenは、まず消費者ブランドを引き付けたいと考えている。なぜなら、データへのより良いアクセスによって得られるものが最も大きいからだと、投資家のジェリー・ヤン氏はTechCrunchに電子メールで語った。

「データの収集と保存、洞察の推測、保護、サードパーティデータの購入、そしてそれらをすべて最新に保つためにどれだけの努力とリソースが必要でしょう。Cadenは多くの企業が自分たちでそれをせずに利用できるようなプラットフォームソリューションを作り出しているのです。最初の段階を超え、Cadenは消費者向け企業をしのぐことができると確信しています」とヤン氏はいう。

この分野に進出した企業は、Cadenが初めてではない。Datacoup(データクープ)は2012年に、ユーザーが自分のデータを企業に直接販売できるプラットフォームとして挑んだ。しかしユーザーがわずかな金額しか稼げなかったため、2019年に閉鎖に至った。消費者データは価値を評価するのが難しく、企業はその対価をできるだけ少なくする方法を探そうとする。

ロア氏は、Cadenが優れたユーザー体験を提供することでこうした課題を克服できると考えている。

一般にブランドは、ユーザーにデータを返したがらないが「今は、法律的には返さなければなりません。しかし、その手間を省く必要はありません」とロア氏は述べた。

「Cadenや他社がやっているのは、完全にユーザー主導のプロセスをより合理的なものにする方法を考案することです。ですので、サードパーティにデータを返すよう促す必要はないのです」と付け加えた。

また、直接的な支払いだけでなく、より良いブランド体験を通じて、消費者のために無形の価値を引き出したいと同氏は考えている。

「Cadenを使うことで、あなたの生活が少し楽しくなったり、あなたのためになることがあったり、話しかけられたりする。当社が注力している価値のポイントです。そしてこの点は、同業他社の多くが苦労しているところです」とロア氏は述べた。

画像クレジット:Caden

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(文:Anita Ramaswamy、翻訳:Nariko Mizoguchi

リモートワークとクラウドの大量導入で1Passwordが約706億円の特大資金獲得、評価額約7740億円に

パスワード管理プラットフォームの1Passwordが6億2000万ドル(約705億7000万円)という巨額のシリーズCを終え、68億ドル(約7739億5000万円)の評価額となった。

この投資をリードしたのはIconiq Growthで、Tiger GlobalやLightspeed Venture Partners、Backbone Angels、そして同社の2億ドル(約227億6000万円)のシリーズA1億ドル(約113億8000万円)のシリーズBをリードしたAccelが参加した。その他の投資家としてCrowdStrikeのCEOであるGeorge Kurtz(ジョージ・カーツ)氏やGeneral MotorsのCEOであるMary Barry(メアリー・バリー)氏、そしてLinkedInの会長Jeff Weiner(ジェフ・ワイナー)氏らも参加した。また、このラウンドでは個人投資家のRyan Reynolds(ライアン・レイノルズ)氏やRobert Downey Jr.(ロバート・ダウニー・Jr.)氏、そしてJustin Timberlake(ジャスティン・ティンバーレイク)氏らからの投資もあった。

この特大のラウンドは、1Passwordのこの1年間の目覚ましい成長の結果によるものだ。同社はTechCrunchに、2021年7月のシリーズB調達以来、有料ビジネス顧客ベースが9万人から10万人以上に増え、Datadog、Intercom、Snowflakeなどの大企業加入者を加え、社内従業員数を475人から570人に増えたと述べている。この背景には、リモートワークやハイブリッドワークの継続、クラウドアプリの急速な普及、仕事による燃え尽き症候群の加速という3つの要因があると同社はいう。

同社によると、後者の点は特に懸念すべきサイバーセキュリティの脅威となりつつあるという。オフィスワーカーの80%、セキュリティ専門家の84%が、パンデミックの結果、燃え尽きたと感じており、12%が結果的に職場のすべてのものに同じパスワードまたはほんの数種のパスワードを使っていることが判明しているという。

「ストレスや燃え尽き症候群があると、2つのことが起こることがわかっています。まず、人は簡単な方法を探します。過労になると、セキュリティを後回しにするようになるのです。ストレスと燃え尽き症候群のもう1つの副作用は、変化したいという願望であり、それは大量辞職が起こります。IT部門が認識していないアプリやサービスを持ち出すことになるので、セキュリティの問題につながります」と1PasswordのCEOであるJeff Shiner(ジェフ・シャイナー)氏はいう。

1Passwordは、今回調達した資金を継続的な成長のために使用する。同社は、エンジニアリングおよびカスタマーサポートチームを3倍に増やし、サインインの成功と失敗を可視化する、ビジネスに焦点を当てたイベントAPI機能を構築し、さらに買収資金を調達する予定だという。

「戦略的買収を検討しています」とシャイナー氏はいう。「私たちは2021年にSecret Hubを買収しましたが、今後も買収を検討し、それらが私たちのミッションと目標の達成にどのように役立つかを検討していきます」。

最終的に、シリーズCの資金調達ラウンドで1Passwordにかなりの資金が提供されたが、Shiner氏は同社には「まだ」イグジットの計画はないという。

シャイナー氏にとって「資金は、これから大きなことをやろうとするときの安心材料」になるという。

関連記事:企業の秘密を「マシン・ツー・マシン」で保護する1Passwordが110億円調達、約2180億円の評価額に

画像クレジット:Boris Zhitkov/Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Hiroshi Iwatani)

世界に通用する女性エンジニアを育成するオンラインブートキャンプ「Ms. Engineer」が7500万円のシード調達

世界に通用する女性エンジニアを育成するオンラインブートキャンプ「Ms. Engineer」が7500万円のシード調達女性エンジニアを育成するオンラインプログラミングブートキャンプ「Ms.Engineer」(ミズエンジニア)を運営するMs.Engineerは1月20日、シードラウンドとして総額7500万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、NOW、iSGSインベストメントワークス、ほか個人投資家数名。

調達した資金は、「Ms.Engineer事業を運営する人材の採用」「戦略的パートナーシップ提携」にあてる。これにより、スクールカリキュラムの質を向上させながら、さらに多くの女性ハイクラスエンジニアを輩出する。

  • Ms.Engineer事業を運営する人材の採用:Ms.Engineer事業を通じ「リスキリングの力で世界を押し上げる」というビジョンの実現に向け、人材を募集する
  • 戦略的パートナーシップ提携:日本のIT業界のジェンダーギャップに課題解決に賛同する、国内トップIT企業とのパートナーシップの提携を進める。Ms.Engineer受講者に限った、実践的な就業機会や特別採用選考フローなどを提供

Ms.Engineerは、未経験から最短6カ月で世界に通用するクラスのエンジニアを育成する、女性のためのオンラインプログラミングブートキャンプ。プログラミングブートキャンプ「Code Chrysalis」(コードクリサリス)ととカリキュラム提携を行い、エンジニアに必要なプログラミングや応用技術、世界的なハイクラスエンジニアを目指す際に必須となるコンピューターサイエンス、アジャイルの概念、ソフトスキルなどを組み込んだ高度なカリキュラムを通じ、一般的なプログラミングスクールでは学びにくい最高峰のテクノロジーを短期間で身に付けられるとしている。

また、あえて女性のみの学習環境を用意することで、女性ならではのライフスタイルに寄り添った学びやすさやサポート体制を提供している。

Ms.Engineer代表取締役社長のやまざきひとみ氏は、「ジェンダーギャップ解消の速度を、女性の雇用環境を改善するという手段でさらにブーストする存在になります。エスカレーターに乗りたいという意志のある女性が報われる社会を創る側にまわります」とコメント。

「女性がエンジニアになるというのは、今最もそれに近い手段であり、切符です。1人でも多くの女性がその切符を手に人生を変えられるように、今回いただいたチャンスを最大限生かし、Ms.Engineerのチームとして誠心誠意で挑んでいきたいと思います」と話している。

中小企業の営業とサポートチーム向け自動化プラットフォームSaaS Labsが約48億円を調達

SaaS Labs(SaaSラボ)は、中小企業の営業およびサポートチーム向けの自動化プラットフォームを積極的に成長させるため、前回の資金調達完了から3カ月足らずで新たな資金調達ラウンドで4200万ドル(約48億490万円)を調達し、2社のスタートアップを買収した。

SaaS LabsのシリーズBラウンドは、Sequoia Capital India(セコイア・キャピタル・インディア)が主導した。このラウンドには、既存の出資者であるBase 10 Partners(ベース10パートナーズ)とEight Roads Ventures(エイト・ロード・ベンチャー)の他、起業家の Anand Chandrasekaran(アナンド・チャンドラセカラン)氏、Allison Pickens(アリソン・ピケンズ)氏、Michael Stoppelman(マイケル・ストッペルマン)氏、Amit Agarwal(アミット・アガーワル)が参加している。今回の資金調達は、カリフォルニアとノイダを本拠地とする同スタートアップが10月に行った1800万ドル(約20億5800万円)のシリーズA調達に続くものだ。

大企業やエンタープライズ向けには、営業やサポート業務の効率化をもたらすツールが数多く存在する。しかし、中小企業には同じことは当てはまらない。これが、Gaurav Sharma(ガウラブ・シャルマ)氏が米国で立ち上げたHelloSociety(ハローソサエティ)というベンチャー企業で得た学びである(この会社は、New York Timesに買収された)。

彼はTechCrunchのインタビューで「中小企業は、彼らの指先にあるソフトウェア製品を見てみると、それほど愛されておらず、十分なサービスを受けられていないことがわかる」と語っている。それに比べて大企業は「エージェントの生産性を向上させるためのすばらしいツールにアクセスできる」と彼は述べている。

SaaS Labsはこの6年間、中小企業の営業チームやサポートチームを強化するために「同じくらい強力」なAI搭載ツールを構築してきた。これらの製品はノーコードソリューションであり、導入のためにITチームを持つ必要性を排除している。

「これらのツールはまた、非常に手頃な価格で、中小企業が依存する他のビジネススタックやオンプレミスのハードウェアソリューションとシームレスに統合することができます」と同氏は語る。

現在、1500万人以上の販売・サポート担当者が直面している課題は、コールログやCRMツールを手動で更新しなければならず、そのツールは上司にリアルタイムの更新情報を提供するようには設計されていないということだ。このため、彼らのコミュニケーションチャネルにギャップが生じ、リアルタイムに介入することができないのだ。

中小企業が営業やサポートチームのためにクラウドベースのコンタクトセンターを数分で立ち上げることができるSaaS LabのJustCallのダッシュボード(画像クレジット:SaaS Labs)

「顧客とのコミュニケーションを行う5人のチームを持つと、大混乱が起こり始めるものです。例えば、JustCall.ioは100以上のビジネスツールと統合されており、これらのチームが利用することができます。JustCallは1億件以上の通話データベースを持ち、機械学習によって通話の品質やプレイブックやワークフローが守られているかどうかを確認することができます。管理者は、すべての通話をふるいにかけるのではなく、評価の低い通話だけを見ることができるのです」と同氏はいう。

このスタートアップは、全世界で6000社以上の顧客を獲得している。小規模な企業であれば、月々25ドル(約2800円)程度の支払いで利用でき、ビジネスの成長とともに年額数万ドル(数百万円)の支払いに移行していくのが一般的である。

顧客のうち70%以上が米国、10%が英国に拠点を置いている。顧客にはGrab(グラブ)、GoStudent(ゴースチューデント)、Booksy(ブックシー)、HelloFresh(ハローフレッシュ)などが含まれる。

同スタートアップは何年も黒字を続けており、2021年は売上を2.5倍に伸ばしたという。

米国時間1月20日には、2つの買収も発表した。ポーランドに拠点を置くCallPage(コールページ)は、営業チームがリードと即座につながるためのコールバック自動化ツールで、フランスに拠点を置くAtolia(アトリア)は生産性とコラボレーションツールである(彼らのチームは、正社員としてSaas Labsに参加する予定だ)。シャルマ氏は、これらの買収はSaaS Labsの製品提供の幅を広げ、さまざまな市場での足跡を深めるのに役立つと述べている。

シャルマ氏によると、今回の資金の一部は、さらに多くのスタートアップを買収するために投入される予定だという。

「当社は十分な資本を有していますが、今回の資金調達により、成功した事業をさらに強化したり、優れた人材をグローバルに採用したり、革新的な製品を発売したり、ブランドマーケティングに注力したり、戦略的M&Aを積極的に行うために必要な資金を確保することができるようになります。中小企業が営業、サポート、マーケティングなどさまざまな機能を現代化するためにソフトウェアを導入し続ける中、SaaS Labsはこの機会を捉え、今後5~7年で30倍の成長を遂げることができると確信しています」。と述べている。

彼は、今後4~5年以内にSaaS Labsを上場させることを視野に入れているという。

「SaaS Labsは、中小企業向けのマルチチャネルの顧客コミュニケーションプラットフォームを構築しています。一連の製品を通じて、デジタルの効率性とオフラインのコミュニケーションチャネルの親密性を融合させた体験を提供しています」と、Sequoia Capital IndiaのMDであるTejashwi Sharma(テジャシュウィ・シャルマ)氏は声明で述べている。

「例えば、同社の主力製品であるJustCallは、大きなインパクトを与えることができました。顧客は、平均して1人のエージェントが手作業で行う時間を週に12時間短縮したと報告し、顧客満足度は30%向上しました。Sequoia Capital Indiaは、顧客コミュニケーションの未来を築くガウラブとそのチームと提携できることをうれしく思っています」とも述べている。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Akihito Mizukoshi)

「気になったら、アポイントなしでその場でオンライン商談」ウェブ接客ツールOPTEMOのジェイタマズが8500万円調達

ウェブサイト上で企業と顧客がワンクリックで商談可能な接客ツール「OPTEMO」(オプテモ)を運営するジェイタマズは1月18日、シードラウンドとして、第三者割当増資による総額8500万円の資金調達を実施したことを発表した。引受先はSBIインベストメント、千葉道場ファンド、Headline Asia、Skyland Ventures。

調達した資金は、プロダクト開発および採用・組織体制の強化にあてる。今後は、大学との共同研究に向けた取り組みを強化し、AIを活用することでインサイドセールスが最適なタイミングで最適な対応を実現できるプロダクト強化を推進するという。

OPTEMOは、「アポイントを取らずにその場で商談する」をウェブ上で実現する接客ツール。既存ウェブサイト上でワンクリックするだけで、顧客と音声通話が行える。また、自社サイト訪問者がどのページを見ているのかをリアルタイムで可視化することで、顧客が求めるタイミングで企業側から声をかけることも実現可能。個人情報や特別なツール、専用URLなどは不要で、今見ているウェブサイト上でそのままオンライン商談を行える。

ジェイタマズは「ヒト、コト、モノがさっとはまる」をビジョンに掲げ、2020年7月に設立したスタートアップ企業。従来の「問い合わせフォーム経由でしかコミュニケーションが取れない」という状況をアップデートするため、OPTEMOを運営している。

ジェイタマズ代表取締役CEO小池桃太郎氏は、「ビデオ会議ツールが営業で当たり前になっている現在、OPTEMOは『企業と顧客の最初の接点』であるウェブサイトの体験をアップデートするもの」と位置付けている。新たなウェブサイトの体験を社会実装し、「気になったときにさっと会話する」ことで、お互いの理解を進め、企業と顧客の関係性をウェブで最適化することを目指す。

ウェブ会議の議事録作成を効率化できる録音・メモツールEkaki提供のChiefが2000万円のシード調達

ウェブ会議の議事録作成を効率化できる音声メモツールEkaki提供のChiefが2000万円のシード調達

ウェブ会議のための録音・メモツール「Ekaki」を開発・提供するChiefは1月18日、シードラウンドにおいて、第三者割当増資による2000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、Skyland Ventures。調達した資金はEkakiの開発費用にあてる。

Ekakiは、ウェブ会議のためのオール・イン・ワンツールを目指し、2021年11月よりクローズドβの事前受付を開始。現在のEkakiは、録音とメモが一体化した音声メモツールとなっており、今後の機能追加により議事録作成・メモ・スケジュール管理などを統合し、ウェブ会議の際に使用されるツール間の行き来をなくしてさらなる業務の効率化を図る予定。将来的には、コールセンターの電話業務と後処理業務、また医療業界の記録業務への対応も進めるという。

Ekakiでは、会議や商談中のメモ作成が素早く行えるほか、会議後に録音を聞き返しながら議事録作成が可能となる。ウェブ会議を妨げないよう操作用ツールバーをコンパクトにまとめており、映像を見ながら会議のメモを取れる。ワンクリックで栞を登録する機能により、メモを取る余裕がない場合にも対応しやすいとしている。

Chiefは、代表取締役社長の飯塚氏が早稲田大学在学中の2019年3月に設立したスタートアップ企業。ウェブ会議システムが新たなワークツールとして定着する中で、素早い対応が求められるウェブ会議中の作業を楽にするツールを作りたいという飯塚氏の意志の元、Ekakiの開発を開始した。

同社は、馬が一般的な交通手段であった時代に速い馬を育てるのではなく、車というまったく新しいものを作りたいという。将来的には「コンピュータ上の操作を自動化する」というミッションを実現するため、ウェブ会議を行う世界中の人々に愛されるグローバルなプロダクトを開発し、日本で初めてのプロダクト・レッド・グロース(PLG。Product-Led Growth)を達成したいとしている。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)解決ソリューション開発のマリが3億円のシリーズA調達、開発中の治療機器の薬事承認化を加速

睡眠時無呼吸症候群(SAS)解決ソリューション開発のマリが3億円のシリーズA調達、開発中の治療機器の薬事承認化を加速

イビキや睡眠時無呼吸症候群(SAS)などの睡眠障害を解決するソリューションを開発するマリは1月20日、シリーズAラウンドにおいて第三者割当増資による総額3億円の資金調達を実施したことを発表した。引受先は、既存投資家のMPI-2号投資事業有限責任組合(MedVenture Partners)のほか、イノベーション京都2021投資事業有限責任組合(京都大学イノベーションキャピタル)、KIRIN HEALTH INNOVATION FUND(グローバル・ブレイン)。

2017年11月設立のマリは、SAS患者の負担が少なく受け入れやすい完全非接触の診断・治療法の提供を目指す京都大学発のスタートアップ企業。調達した資金により、現在開発中のSAS治療機器の臨床研究を推進し、独自技術による治療ソリューションを確立させ、医療機器の薬事承認に向けた治験の準備を進める。

SASは、日本において治療が必要な患者が約500万人とされ、患者本人が気づかない間に高血圧・動脈硬化などをもたらし、重篤な場合は心不全や脳梗塞などの疾患につながる可能性もある。しかし自覚症状に乏しく、治療の第1選択肢である持続陽圧呼吸療法(CPAP)は受け入れや治療継続面での課題が顕在化しているという。このような課題に対してマリは、「Sleep Freely. 世界の睡眠障害をやさしく解決したい」を理念に掲げ、ミリ波レーダー計測・解析技術や音声解析技術を用いた非接触睡眠状態評価・生体情報センシング技術を開発している。

史上最高のQBトム・ブレイディ氏のセレブNFTスタートアップ「Autograph」がトップ暗号資産投資家から193.5億円調達

著名アメフトプレイヤーのTom Brady(トム・ブレイディ)氏が共同創業に参加したNFT代理店のAutograph(オートグラフ)は、特にスターパワーの宝庫だ。同社はこのたび、このプラットフォームによって新世代のセレブリティとそのファンを、暗号資産コレクションの世界に引き込むことができると期待する暗号資産投資家たちから新たな資金を調達した。

スタートアップがクローズしたのはAndreessen Horowitz(a16z、アンドリーセン・ホロウィッツ)とKleiner Perkins (クライナー・パーキンス)が主導した1億7000万ドル(約193億5000万円)のシリーズBだ。ラウンドにはKatie Haun(ケイティ・ホーン)氏の新しいファンドとLightspeed(ライトスピード)のパートナーであるNicole Quinn(ニコル・クイン)氏も参加している。これは、01AとVelvet Sea Ventures(ベルベット・シー・ベンチャー)が共同で主導し、2021年7月にクローズしたシリーズAラウンドに続くものだ。今回の調達により、ホーン氏、a16zのArianna Simpson(アリアナ・シンプソン)氏、Kleiner PerkinsのIlya Fushman(イリヤ・フッシュマン)氏の3名が新たに取締役会に加わった。

彼らは、ブレイディ氏、Apple(アップル)のEddy Cue(エディー・キュー)氏、FTXのSam Bankman-Fried(サム・バンクマン=フライド)氏、The Weekndとして知られるアーティストのAbel Tesfaye(エイベル・テスファイ)氏などの有名人を擁する多彩な取締役会に加わることになる。

Autographは、恐ろしく騒がしいNFTの世界で、個人的な存在感を発揮したいと考えているセレブリティアスリートやエンターテイナーを仲介する代理店のような存在だ。有名人のNFTは、2021年初めに暗号化されたコレクターアイテムが人気を博して以来、さまざまな結果を見せている。ファンに報いるために考え抜かれたプロジェクトとともにこの世界に入ってきた人たちがいる一方で、多くの人に嘲笑されるような金儲けのためのプロジェクトも多数あったのだ。

これまで一般に暗号資産は、目の肥えた有名人が自身の評判(という資産)を失うことなく、世間に影響を与えたり利益を得るのは難しいとされていた。たとえばマット・デイモン氏は、2022年1月、つまらない暗号広告キャンペーンに出演したことで、かなりの嘲笑を浴びることとなった。今週初めには、キム・カーダシアン氏とフロイド・メイウェザー氏が、過去に2人が承認したトークンに対して投資した投資家から訴訟を起こされている。

他のNFTユニコーンであるDapper Labs(ダッパー・ラボ)は、NFL Players Association(NFL選手協会)やNBA Player Association(NBA選手協会)をはじめとする、米国の包括的なスポーツリーグの選手協会とパートナーシップを結んでいるが、これに対してAutographは、個々のアスリートと、彼らがプレーするチームや彼らが所属するリーグの文脈の外で、彼らをとりまく個人的な魅力に焦点を当てているようだ。Autographの初期のパートナーは主にスポーツ界だが、ブレイディ氏、タイガー・ウッズ氏、シモーネ・バイルズ氏、デレク・ジーター氏、大坂なおみ氏、ウサイン・ボルト氏、ウェイン・グレツキー氏、トニー・ホーク氏など、それぞれのスポーツ界で最も有名なアスリートたちが名を連ねている。

Autographの目的は、最高レベルの顧客が、より厳選された環境下で、暗号資産の世界へ関わることができる入口を用意することにあるようだ。

Autographは先の7月にDraftKings(ドラフトキングス)との提携を発表したが、同社はすでに多くのマーケットプレイスと提携してきたという。Autographは主に、Ethereum(イーサリアム)のインフラストラクチャを利用するPolygon(ポリゴン)ブロックチェーン上でNFTを提供してきたが、トランザクションあたりのエネルギー消費量はかなり少ない。これは、ブロックチェーン技術に対する環境批判に晒されることを警戒している有名人にとっては重要な要素だろう。

またスポーツ界以外では、The WeekndやSlam Magazine(スラム・マガジン)、ホラーシリーズのSaw(ソウ)の公式NFTなどを手がけている。

関連記事:NFTコレクターズマーケットプレイスの立ち上げ計画をDraftKingsが発表

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(文:Lucas Matney、翻訳:sako)

なぜ女性ファウンダーは資金獲得に苦労しているのか?

2021年、女性のみの設立チームが獲得下ベンチャーキャピタル資金は全体の2%以下で、最近5年間の最低だったとPitchBook(ピッチブック)の最新データが示した。2021年に女性のみの設立チームが獲得した絶対的金額は前年より83%多かったが、これは米国のスタートアップ全体がこの年に記録的金額を集めたからである可能性は高い。

しかし、その高まった潮はすべての船を持ち上げたわけではない。女性のみの設立チームが獲得した資金のシェアは2年連続で減少したことをPitchBookは示している。

では、一体なぜ、近年のスタートアップへの出資ブームにも関わらず、ベンチャーキャピタル業界は、女性が資金調達するのが困難な場所になっているのだろうか。

先週、ベンチャー投資家のDel Johnson(デル・ジョンソン)氏は、近年、ベンチャーキャピタル業界には女性が増えているにも関わらず、女性のみの設立チームだけが、資金調達プロセスで不利な状況にあるのは事実なのか、そうであればなぜなのかを語り合う場をTwitterスペースでホストした。

ジョンソン氏が紹介したある説は「男性の影の実力者たちが、自分たちの家父長支配的偏見を共有する女性VCを選んで資金を提供する傾向が強いために、そうした偏見をもたない多くの女性が排除されている」というものだったと同氏がTechCrunchに書面で伝えた。簡単に言えば、女性VCは、男性の仲間たちと同様に男性ファウンダーを好む傾向にある、ということだ。

議論に参加し、その後TechCrunchと話した連続起業家のGentry Lane(ジェントリー・レーン)氏も、ベンチャー業界は本質的に女性に対する偏見が強いと信じている。Zoom(ズーム)などのオンライン対話のおかげで、トップクラスのVCがこれまでになく接触しやすくなっているのに、女性ファウンダーの調達資金シェアが増えるのではなく減っていることを、他に説明できるだろうか? これは「染み付いた女性蔑視」だとレーン氏はいう。彼女はベンチャーキャピタルの支援を受けている国家安全保障ソフトウェア会社、ANOVA Intelligence(アノーバ・インテリジェンス)のCEO・ファウンダーだ。

Twitter Spacesでの会話で浮上した説は他にもあった。VCは過小評価されているファウンダーを支援するためのイベントを主催するほうが、実際に資金提供するよりも気が楽なのだと、何人かの参加者が指摘した。投資家は小切手を書く代わりに、いわゆる美徳シグナリングに携わっている、と不満をつのらせた起業家たちは観察する。

さらにレーン氏は、プレゼンテーションと売り込み資料を「通常の人間的会話」よりも重視するVCたちの変わらない性分が、そうした経験が少ない傾向にある過小評価されたファウンダーに対してネガティブな影響を与え続けている、と指摘する。

投資ステージによる部分もあると、参加者たちは主張した。2021年のベンチャー投資全体の増加は、後期ステージラウンドが押し上げたものだが、そのステージは男性ファウンダーが支配する傾向が強い

さまざまな憶測が飛び交う中、PitchBookレポートには明るい兆しもあった。何かといえば、PitchBookのデータは、女性ファウンダーが少なくとも1名いるVCが支援する企業は、回数で2021年の全ベンチャー投資の25%以上を占め、総投資金額の17.6%を獲得したことを示している。このカテゴリーの大部分は設立チームに男性と女性両方を含んでいる。

アクセラレータープログラムOn Deck(オン・デック)のShriya Nevatia(シュリア・ネバシア)氏は、PitchBookのデータを楽観する理由に挙げ、女性ファウンダーを1人以上含む案件が最近増加していることをツイートで指摘した。「これは50%にかなり近い、2008年が11.8%だったことを思えば相当な早さです」とネバシア氏は書いた。

さらに彼女は「私たちは『今』前進しているところです、みなさんこの調子でがんばりましょう」とツイートした。

画像クレジット:Ponomariova_Maria / Getty Images

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(文:Anita Ramaswamy、翻訳:Nob Takahashi / facebook

共通の思い出をNFTとして鋳造する「そこにいた証明」Web3スタートアップが約11.4億円を調達

ブロックチェーンがデジタル史の不変の記録であるならば、我々はそこにどのような歴史を刻みたいのだろうか。予想どおり、これまでの記録のほとんどはトランザクションデータだったが、起業家たちがNFTへの野心を膨らませるにつれ、スタートアップはこうした資産トランザクションを現実世界のイベントや交流と結びつけることを目指している。

POAPは「Proof Of Attendance Protocol(出席証明プロトコル)」の略で、NFTを使ってインターネット上のコミュニティを構築するというアイデアをより深く掘り下げ、よりアクティブなコミュニティを作り、イベントへの出席というような個人の参加に対して見返りを与えるプロトコルだ。POAPは、そのプロトコルを視覚的に表現するために、バッジを中心に構成されている。現実世界の例では、ユーザーがQRコードをスキャンしてNFTの記念品を受け取ると、それによってオンラインコミュニティへの参加が可能になり、将来的にドロップを獲得することができる、といったシナリオが可能だ。

このような機能は、イーサリアムのプロジェクトにも数多く存在している。ブロックチェーンの基本的な機能の一部により、開発者は特定の時点でプロジェクトにリンクしているアクティブなウォレットの「スナップショット」を作成することができる。POAPのエコシステムには、イーサリアムを利用した投票、ラッフルコンテストの仕組み、プライベートチャットの検証技術など、他にも多くのツールが含まれている。

同スタートアップは今週、ArchetypeとSapphire Sportが主導するシードラウンドで1000万ドル(約11億4000万円)の資金を調達したことを発表した。Sound Ventures、The Chernin Group、Advancit Capitalが出資した他、Collab Currency、1KX、Libertus Capital、Red Beard Ventures、6th Man Ventures、Delphi Digital、A Capitalなど、多くのクリプトネイティブファンドがこのラウンドに参加した。

POAPは2021年に、NFTコミュニティの成長が加速し、同社のプラットフォームを利用しようとする人々の数が増えたことで、圧倒的な数のスパムが流入し、プラットフォームが停止してしまうという課題に直面した。同社はブログ記事の中で、新たな資金をアプリケーションとプラットフォームレイヤーへの投資に充てる予定だと述べている。

画像クレジット:POAP

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(文:Lucas Matney、翻訳:Aya Nakazato)

低コスト細胞培養技術CulNet Systemのインテグリカルチャーが7.8億円調達、2022年に世界初の培養フォアグラ上市を目指す

低コスト細胞培養技術CulNet Systemのインテグリカルチャーが7.8億円調達、2022年に世界初の培養フォアグラ上市を目指す

独自開発の低コスト細胞培養技術「CulNet System」(カルネット システム)の生産プラットフォーム化を目指すインテグリカルチャーは、シリーズA’ラウンドにおいて、第三者割当増資による総額7億8000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、リアルテックファンドやFuture Food Fund1号投資事業有限責任組合をはじめとする複数のベンチャーキャピタル、および事業会社の計12社。累計資金調達額は約19億円となった。また、2022年後半以降には施設拡大を目的としたシリーズBを予定。

  • リアルテックファンド
  • Future Food Fund1号投資事業有限責任組合(新規)
  • Beyond Next Ventures
  • 食の未来ファンド(kemuri ventures。新規)
  • りそなキャピタル6号投資事業組合(新規)
  • Plan・Do・See(新規)
  • 山口キャピタル(新規)
  • SuMi TRUST イノベーションファンド(新規。三井住友信託銀行とSBIインベストメントが共同設立したプライベートファンド)
  • いよぎんキャピタル(新規)
  • AgFunder
  • VU Venture Partners
  • ほか1社

調達した資金は主に、CulNet Systemのスケールアップと、これを用いた細胞農業生産プラットフォーム構築に向けた研究開発、および培養フォアグラ製品上市や化粧品原料などの事業化資金にあてる。細胞農業プラットフォーム構築に向けた研究開発では、主に培養プロトコル開発の動物種を広げ、食品会社や細胞農業スタートアップを中心に、受託研究や共同研究パートナーを拡大する。低コスト細胞培養技術CulNet Systemのインテグリカルチャーが7.8億円調達、2022年に世界初の培養フォアグラ上市を目指す

同社は、2021年に細胞農業オープンイノベーションプラットフォーム「CulNetコンソーシアム」を12事業体で設立し、その後も加盟企業が増えているという。2021年4月にリリースした、細胞培養上清液を用いた化粧品原料「CELLAMENT」(セラメント)は、原料販売・OEM事業をスタートした。今後も、原料およびOEM製品として事業拡大を計画しているという。

食品事業では、2022年に培養フォアグラの世界初の上市を予定しており、月産8kg/機の安定生産を実現した上で、数年おきにスケールアップを達成、生産規模の拡大および低コスト化を目指し研究開発を進める。

同社代表取締役CEOの羽生雄毅氏は、「引き続き弊社ミッション『生物資源を技術で活かし、健やかな社会基盤を創る」に向けた技術開発を進め、2022年に培養肉をついに現実のものとします。色々な食文化が新たに生まれる世界が見えてきており、ワクワクしています」と話している。

ノーコードで営業やマーケティングのためのデモが作れるWalnut、4カ月で700%の成長を遂げ約40億円調達

ヨアヴ・ビルナー氏とダニー・フリードランド氏(画像クレジット:Walnut)

企業の営業やマーケティングのためにノーコードでデモを作ることができるサービスWalnutが、8月の1500万ドル(約17億2000万円)のシリーズAに続き、シリーズBの3500万ドル(約40億円)の資金調達ラウンドを発表した。

Walnutのノーコードプラットフォームは、カスタマイズされた製品デモを迅速に作成し、営業やマーケティングのプロセスに統合することができ、さらにデモから洞察を得ることができる。

共同創業者でCEOのYoav Vilner(ヨアヴ・ビルナー)氏によると、シリーズA以降同社は、年間経常収益が700%という驚異的な成長を示した。同社は現在、Adobe、Dell、Medallia、NetApp、Treasure Data、Funnel、People AI、ContractBookといった100近いSaaSの顧客と提携している。

「発表直後から、多くの投資家が関心を寄せてくれた。当初の予定では、もっと後に資金調達するつもりだったが、このペースを維持していることから、今がチャンスだと思いました。ラウンドの間隔が3カ月というのは珍しいことですが、私たちが作っているものは、間違いなくもっと資金が必要な状態だったのです」とビルナー氏はいう。

最前のラウンドをリードしたFelicis Venturesは、これまでの累積で同社に5600万ドル(約64億1000万円)を与えている。ビルナー氏によると、Felicisという社名は彼がこれまで何度も耳にした名前であり、共同創業者のDanni Friedland(ダニー・フリードランド)氏もFelicisのSaaSとソフトウェアを対象とする投資に関心を示し、Walnutに合ってると感じた。

Felicisに加わったのは既存の投資家NFXとEight Roads Ventures、そしてA Capital、および戦略的エンジェル投資家のグループ、すなわちSalesforceの社長でCMOのSarah Franklin(サラ・フランクリン)氏、Oktaの共同創業者Frederic Kerrest(フレデリック・ケレスト)氏、TripActionsの共同創業者でCEOのAriel Cohe(アリエル・コーエ)氏、Papaya Globalの共同創業者でCEOのEynat Guez(アイナット・ゲズ)氏だ。

この新たな資金でWalnutは、米国とヨーロッパとイスラエルのチームを現在の55名から合わせて100名近くに増員できるとビルナー氏はいう。またもちろん、技術と製品開発にも注力する。

「ようやく需要を満たし、国を越えて人材を増やし、さまざまな接点での販売を促進するためのより広いプラットフォームを構築できるようになる。まだ名前すらない新しいカテゴリーを作っていますが、私たちの目標は販売スペースに革命を起こすことです。」と彼は付け加えた。

FelicisのゼネラルパートナーViviana Faga(ビビアナ・ファガ)氏と副社長のJake Storm(ジェイク・ストーム)氏はこのラウンドのリード投資家で、Walnutが行っていることを「sales experience」と呼び、同社は市場開拓のチームが顧客と対話できるようにしているという。ただしパンデミックである現在、誰も営業に会いたいとは思わないため困難な仕事だとファガ氏はいう。

それでもファガ氏は、Walnutのようなツールにとって今は好機だという。企業は、デモにますます力を入れようとしているからだ。また、営業チームだけが利用するのではなく、マーケティングやカスタマーサクセスチームもこの技術を採用するようになっている。ストーム氏によると、その結果、現在のWalnutはより効率的な販売の実現とボトムアップの成長に向けた取り組みという2つの波に乗っているという。

「ヨアヴ(・ビルナー)とダニー(・フリードランド)に会った時、私たちは彼らが巨大なチームを作ることを知っていたし、Walnutを使いたいと願うユーザーのウェイトリストを見て、私たちはそれが世界で必要な解決策であることを知りました」とファガ氏は付け加えた。

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

時間給労働者向けのオールインワンの労働力管理ツールを提供するNowstaが新たな資本を獲得

Nowsta(ノースタ)は、ハイブリッド化が進む労働環境において、雇用主が時間給労働者とより密接に関わることを支援するアプローチでベンチャーキャピタルを魅了した。

同社は米国時間1月19日、GreatPoint Ventures(グレートポイント・ベンチャーズ)が主導するシリーズBで4100万ドル(約46億8500万円)の資金調達を発表し、これまでの資金調達額は5900万ドル(約67億4200万円)に達した。今回の資金調達には、GreatPointの他、VMG Catalyst(VMGキャタリスト)、Rally Ventures(ラリー・ベンチャーズ)、Tribe Capital(トライブ・キャピタル)、既存投資家のGreen Visor Capital(グリーン・バイザー・キャピタル)、Compound Ventures(コンパウンド・ベンチャーズ)、Clocktower Technology Ventures(クロックタワー・テクノロジー・ベンチャーズ)が参加している。

CEOのNick Lillios(ニック・リリオス)氏は2015年にNowstaを設立し、その後1年半をかけて、ニューヨークのフードサービス業者との自身の仕事経験から生まれたこの技術を構築した。時間給労働者の運用の複雑さが同社の技術の着想の源であり、時間給労働の変化についていけない現在の労働力管理ソリューションに対する答えであった、と彼はいう。

Nowstaのウェブとモバイルアプリは、自動スケジュール管理、タイムトラッキング、給与計算、コミュニケーションなどの労働力管理ツールをオールインワンのリソースに統合したもので、信頼できる第三者人材派遣業者が調達した熟練労働者と雇用主をつなぐオンデマンド型労働マーケットプレイスも含まれている。また、ウォレット機能もあり、ユーザーはシフトごとに支払いを受け、将来の稼ぎを確認することができる。

「どの雇用主も臨時労働力を活用し、その隙間を埋めるために1099型労働者(米国における個人事業主)を使おうとしている」とリリオス氏はTechCrunchに語っている。「我々の市場は、必要としている雇用者と従業員をマッチングし、彼らがどのように訓練され、審査されたかを見ることができるので、雇用者は迅速な決定を下すことができます」。

同社は2019年4月に810万ドル(約9億2500万円)のシリーズAを調達し、マーケットプレイスを作るための後押しとなった。世界的なパンデミックが発生したとき、Nowstaは従業員を一時解雇しなければならない顧客と協働を開始し、このリソースによって同社は顧客が従業員を他の仕事に移行させる手助けをすることができたのだ。

リリオス氏は、時間給の仕事が元に戻るとは思っていない。むしろ、より多くの従業員が柔軟性を求め、より多くの雇用主が適応するためのツールやリソースにアクセスできるようになるため、過去2年間に見られたシフトは永続的に続くだろう。

かつてテクノロジーに乏しかったこの市場には、現在、このように十分なサービスを受けていない人々に注目するスタートアップがひしめいている。直近では、従業員の能力を引き出すアプリで3200万ドル(約36億5500万円)のシリーズB資金を調達したAskNicely(アスクナイスリー)について報じた。

その他にも、フロントワーカーが組織で使われているさまざまなITサービスを利用したり、お互いに交流したりするためのアプリ、Blink(ブリンク)などがある。シフトワーカーと雇用主をマッチングするマーケットプレイスのShiftsmart(シフトスマート)は9500万ドル(約108億円)を調達し、メッセージングアプリのWhen I Work(ウェン・アイ・ワーク)は2億ドル(約228億円)という巨額のラウンドに至った。一方、Fountain(ファウンテン)は8500万ドル(約97億1000万円)、Seasoned(シーズンド)は1870万ドル(約21億3600万円)を調達し、レストラン従業員のためのツールを開発した。2022年の初めには、Homebase(ホームベース)が7100万ドル(約81億1100万円)を調達し、ホームサービスのプロに焦点を当てたWorkiz(ワークイズ)が1300万ドル(約14億8500万円)を調達した。

現在、Nowstaの技術は、スポーツスタジアム、ホテル、フードサービス業者、倉庫など600の雇用主で、毎月30万人以上の労働者を管理している。パンデミックの間、より多くのスタジアムやホテルがオンラインに戻り、約1000人の従業員を雇用する必要があったため、Nowstaは最初に数百人の労働者を調達することができた。リリオス氏は「ビジネスに革命を起こし、フレックスワークの新しいモデルを切り開いた」と述べている。

今回の資金調達により、新たに米国内の25の市場に事業を拡大し、年末までに68人の人員を倍増(2021年は25人)し、製品開発や営業・マーケティングに投資することが可能となる。2021年に収益を大きく伸ばした後、リリオス氏は、それを繰り返すことは考えていないものの、2022年の収益は少なくとも3倍から5倍に成長すると予測している。

GreatPoint VenturesのマネージングパートナーであるAshok Krishnamurthi(アショク・クリシュナムルティ)氏は、文書で次のように述べている。「この2年間で、労働市場にパラダイムシフトが起き、時間給やフレックスタイム制がますます普及しています。あらゆる種類の企業が、オンデマンドの労働力に簡単に繋がり、効率的に管理しなければならなくなりました。そのための最も効果的な方法がNowstaであり、ニックとそのチームと提携してこのビジョンの達成を支援できることを、これ以上ないほどうれしく思っています」。

画像クレジット:Marko Novkov/EyeEm / Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Akihito Mizukoshi)