WineryGuideはその名のとおりワイナリーのガイドだ(目下カリフォルニアのナパヴァレーに限定)

ワインとガイドブックの両方が好きなぼくは、WineryGuideに目がとまった。Aga/Mariusz Andryszewski夫妻が作ったこのサービスは、ナパヴァレーのワイナリーのコンパクトでスマートな詳しいガイドだ。

CTOのMariusz Andryszewskiは曰く、“WineryGuideには、プロのワインコンシエルジュが長年蓄積した経験や知識とツアーガイドが、簡単なユーザーインタフェイスの下に詰め込まれている。よく聞かれる質問に最新の技術を使って答えているし、ユーザーが今いるところから行きたいところへどうやって行くべきかを、正確かつ簡明に説明している”。最初のバージョンは簡単なガイドだったが、今のiOSネイティブアプリにはクーポンや位置対応のお買い得特典などがミックスされている。

制作にはワインのエキスパートJohn Stallcupが参加し、ワイナリーのマーケティングツールに過ぎないアプリではないアプリを作り上げた。また、当地のホテルに必ず置いてある観光パンフレットのような、浅いガイドでもない。

“Agaとぼくは、ナパヴァレーに何年も通っている。どの季節に行っても景色は素晴らしいけど、ワイナリーは行くところがだんだん絞られてきた”、とMariuszは語る。“だから、おかしなことに、新しいワイナリーを見つけようと思ったら地元の地方紙を見たり、旅行ガイドや誰かの推薦に頼るようになった。既存のモバイルアプリは、広告費を払っているワイナリーを優遇しているし、Google Mapsはワイナリーの情報が詳しくない。もっと、ナパのインサイダー的な情報が必要だ、と思った。そこでシカゴからベイエリアに引っ越して、協同ファウンダーを見つけ、プロジェクトをスタートさせた”。

このサービスはまだ完全に自己資金のみで、一日のユーザー数は数十名だ。今後の展望としては、ワイン中心のナパヴァレーガイドに成長して、すべてのハイテク企業をスポンサーにしていきたい。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

生鮮で苦戦しているAmazonが冷蔵不要・常温保存の食事の配達を研究中

‘MRE’という言葉が、軍隊やサバイバル技術に関する話のなかによく登場する。それは、“Meal, Ready-to-Eat”(すぐ食べられる食事)、すなわち携行食のことだ。Amazonは今、独自のMREを研究しているらしい。しかもそれは、前線の兵士やサバイバルごっこのハイカーたち用ではなく、一般消費者向けのおいしくて満足感のある食品としてだ。

Amazonは、軍用に開発された技術を利用して、冷蔵庫を要しない、常温保存のできる即席食を作ろうとしている。そもそもそれは、在庫管理やロジスティクスという面で売る側にメリットがある。倉庫も輸送も簡単だ。Reutersのその記事によると、生鮮に進出しようとするAmazonにとって最大の難関が商品の日持ちであり、しかもその対策は簡単ではない。

しかしこれはさらに、オンデマンドの食事配達(meal delivery)への進出に際しても、Amazonのアドバンテージになる。同社はすでに、専業のBlue Apronなどとどうやって競合するかを考えつつ、パイロット事業を動かしている。

その技術は‘microwave assisted thermal sterilization’(マイクロ波による過熱消毒, MATS)と呼ばれ、封をしたパッケージを高圧の水槽に入れてマイクロ波を照射すると、食品の風味と栄養を損なわないだけでなく、細菌を排除して最大1年の棚持ちを可能にする。この技術の商用化を今、915 Labsというスタートアップが探求している。

それはまだ、消費者への提供が確定したわけではなく、目下テスト中の生鮮と配食の分野における試行錯誤の一環にすぎない可能性もある。でもその分野で、日持ち棚持ちという大きな障害にぶつかったeコマースの巨人が考えた対策としては、なかなかおもしろい研究開発のテーマだ。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

3Dプリントされた果物が本物の果物をよりおいしくする

今度あなたが箱入りの果物を買ったりもらったりしたら、その中にはそっくりさんがひとつ入っているかもしれない。そのフェイクフルーツは、箱の中のプラムの温度や動きや衝撃を調べたり、桃の糖度と硬度が適切で傷んでいないことを確認したりする。

スイスのFederal Laboratories for Materials Science and Technology(国立物質科学技術研究所)が作ったEmpaは、3Dプリントで作ったリンゴで、中にいくつかのセンサーがあり、本物のリンゴの群れの中に身を隠す。大きさも形も色も重さも本物のリンゴと変わらないから、箱詰め作業をする人がとくに気にする必要がない。

最初のモデルは温度センサーだけだが、今後はもっといろんなセンサーを詰め込む予定だ。するとこのロボットリンゴはほかのリンゴたちと同じ体験をするから、彼らが受ける扱いを、センサーが感取し記録できる。そして消費地のお店などは、そのデータをチェックする。

このプロジェクトはJournal of Food Engineeringで紹介され、“本物のリンゴと同じように温度に反応するフルーツシミュレーター”、と説明されている。そして、“コールドチェーンの全過程における果肉の温度履歴をモニタできる人工果実”、だそうだ。果物の流通技術における、画期的な発明かもしれない。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

「植物肉」バーガーのImpossible Foodsが7500万ドルを調達

カリフォルニア州レッドウッドシティを拠点とする、設立6年目の企業Impossible Foodsが、7500万ドルの資金を調達したことを、先週ひっそりと公表した。ファンディングを主導したのはTemasekで、Open Philanthropyだけでなく以前からの投資家たちであるBill Gates、Khosla Ventures、そしてHorizo​​n Venturesも参加している。

それ以上の詳細については公表しないと同社は語ったが、今回のラウンドによって調達資金はおよそ3億ドル近くに達した。過去にはGV、Viking Global Investors、そしてUBSが参加していた。

Impossibleのハンバーガーは、ヘムを運ぶタンパク質の大豆レグヘモグロビンを用いて作られている。ヘムはあらゆる動物や植物の中に自然に存在する、鉄原子を抱えた分子だ。

同社は、多くの動物由来製品を、植物由来の製品で置き換えたいと明言しているが、現段階では明白に、そのハンバーガーを世界に広げようとしているようだ。この戦略の一環として、同社は5月にカリフォルニア州オークランドに工場を開設した、そこでは毎月100万ポンド(約450トン)の「植物肉」を生産することが期待されている。

ハンバーガーは現在、一部のレストランでのみ提供されているが、Impossibleは自社製品を食料品店に早く供給するためには、動きを早める必要があることを認識したのだ。他社製品であるBeyond Meatのハンバーガーは既に、Whole FoodsやSafewayの数百箇所で販売されている。Beyond Meatは動物性タンパク質で作られた食品の代わりに植物由来の製品を生産する、Bill Gatesによって支援されている企業だ。

先週Beyond Meatは、13州にまたがる600以上のKrogerの店舗でも販売を開始すると発表した。

Impossibleの大型ラウンドは、その野望を考えれば意外なものではない。とはいえTemsakは、まず最初にImpossibleのことを良く理解しているということを示す必要があった筈だ。

Impossibleの創業者兼CEOのPatrick Brownは、この5月、私たちの編集者がホストを務めたイベントで、一般的に投資家たちは、理解していない科学を扱う取引について、十分な勉強をしていないと述べていた。

「私はVC、特に私たちに投資したVCが大好きです」とBrownは語った。「しかし、テクノロジー企業の基盤をなす実際の『科学』に対して、彼らが如何に精査を行わないかは、本当に驚くべきことです」。

「ときどき」と彼は冗談半分に語った、「一緒に仕事をしているVCの中には、私に他の会社の中身を見てくれと依頼してくるところもあります。しかし、実のところそこで私が何を言っても意味がないのです。なぜなら時折私は『もし私があなただったら、そのままお金をトイレに流しますね、どうせお金が無くなるなら、その方が速いし簡単ですから』と言うのですが、その意見は聞かれず、結局取引が行われるのですから」。

[ 原文へ ]
(翻訳:Sako)

デリバリピザのニューモデルZume Pizzaは製造を完全にロボット化、窯を乗せたトラックが地域に出張

Zume Pizzaは、ロボットを使ってスピードと品質を上げ、Pizza HutやDominoなど宅配ピザの老舗たちに勝とうとしている。これまでの2年間、ファウンダーのJulia Collinsは彼女のピザ製造ラインに次々と新しいマシンを導入して、味を犠牲にする小細工に依存することなく、一貫して合理化に努めてきた。

今日同社は、生地回し(dough spinner)〔参考動画〕を機械化する“Doughbot”を導入したことを発表した。この部分の機械化を機に、パロアルトにも進出し、当地でも、窯を搭載したトラック軍団と配達用スクーターによる分散デリバリ方式を試す気だ。

Doughbotは、ピザの製造工程を36秒短縮する。Collinsによると、装置自身は一般市販品だが、生地を傷めないためと、添加剤不要にするために、相当お金をつぎ込んだそうだ。

ピザは、生地を延ばすとき、生地が縮むのを防ぐために。特殊なオイルや化学製品を使うことが多い。しかし超強力なDoughbotを使えば、ふつうのオリーブオイルを塗るだけで十分だ。化学物質は使わない。

ピザ1枚につき数秒節約しても、たいしたことない、と思えてしまうが、Zumeのビジネスモデルにとってはとても重要だ。同社は、既存の大手チェーンのピザデリバリを完全に打ち負かしたいのだ。Zumaの場合、製造拠点は1都市1箇所、そして、ピザの入ったバッグ(複数)をティーンエイジャーが運転する1998年型Toyotaの後ろに積み込む方式ではなく、窯を搭載したトラックのきめ細かいネットワークを張りめぐらし、モペット(原付き自転車)で配達する(下図右)。トラックへのピザの補充は、それ専用のバンが担当する。

この分散型のピザデリバリは需要の変化に素早く対応できるし、また需要予測を有利に生かせる、とZumeは期待している。従来のピザデリバリは、新たな出店に際して、需要に対する‘賭け’をする。そしていったん出店したら、需要の変動に機敏に対応できない。製造能力は、つねに一定だ。

これに対してZumeは、窯を乗せたトラックの配置を変えることで、需要の変動に即座に対応できる。このやり方の欠点は、需要が急増したとき、ピザを作る拠点店のロボットたちが、ボトルネックになることだ。そして、そうならないためには、ピザの製造時間を短縮してスループットを上げるしかない。

かつてゼネラルマネージャーとしてUberEATSを指揮したSusan AlbanがこのほどZumeに加わり、その複雑なロジスティクスを担当することになった。今現在、ピザを焼くトラックは6台だが、パロアルト進出に備えて近く4台を増車する(現在はマウンテンビューのみ)。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Nectarが作った酒瓶の注ぎ口とストッパーは超音波技術+IoTでバーの在庫管理ができる…人気酒の‘飲み率’も分かる

レストランは売上の60%をアルコール飲料に依存している。だから、バーの背後の棚にしまわれたあと、お酒に何が起きるかを知ってることは、バーのオーナーにとってきわめて重要だ。そこでIoTスタートアップNectarは、超音波を利用して瓶の中のお酒の在庫管理ができる、ストッパーと注ぎ口をローンチした。

バーの常連が見ると、Nectarの注ぎ口とストッパーは、そこらに売ってるものと変わりない。でも、その黒いプラスチック製の外套の中には超音波センサーがあって、瓶の形と液体の深さを瞬時に捉え、その瓶から消費されたアルコールの量を計算する。

複数の瓶から集められたデータは、Nectarの在庫管理ソフトウェアに送られる。そこで消費量を容易に調べることができ、よく売れる/飲まれる瓶の再注文もボタンにタッチしてできる。

Nectarはテクノロジー系のスタートアップだけど、実態はNielsenなどの測定企業に近い。ただしテレビの視聴率ではなく全国のバーの瓶たちから集めた酒類の消費データは、広告主や酒造企業に、今後の宣伝戦略や製品計画のための貴重な洞察を提供するだろう。

NectarはJoe LonsdaleLior Susanから、455万ドルの資金を調達している。両人は自分のファンド、8VCとEclipse Venturesとは別にこの投資をしている。またCameronとTyler Winklevossなど、ホスピタリティー産業と縁のあるエンジェルたちも、この投資に参加した。

このストッパーと注ぎ口は、今予約を受け付けているが、発売日は未定だ。バーはこのセンサー付き製品の代金を払うのではなく、会費制でそれらを使用する。月額会費は299ドルからで、大きなバーほど高くなる。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Amazon Go、年内にベータ公開―アプリ・ベースの食品ショッピング・システムはレジなし、行列なし

2016-12-06-amazongo-bottle-grab-desktop-_v523327232_

Just Walk Out〔そのまま歩いて出る〕と非常にストレートに名付けられたテクノロジーがAmazon Goのベースとなっている。同時にこのシステムの目的がよくわかる。

このショッピング・サービスはシアトルのAmazon本社内に年内にオープンする予定の1800平方フィート(167平米)社員向けストアでベータ公開される。Amazonによれば、Goは「まったく新しい形のストアであり、出口での精算手続きを一切必要としない」という。

顧客はGoアプリを利用してストアにチェックインする。ストア内ではカメラを含む各種センサー、コンピューター・ビジョン、ディープラーニングを応用した人工知能の組み合わせが顧客の行動を解析して「何を棚から取リ出したか(あるいはその後戻したか)を」
認識しバーチャル・カートに加える。必要なものを買ったら顧客はそのままストアを出ればよい。ストアはAmazonのアカウントに自動的に課金する。このとき顧客はデジタル・レシートも受け取る。

Amazonはこのストアの開設のために4年前から開発を行っていたという。Amazonの公式のGoサイトには、「レジ前の行列も、そもそもレジ処理もないショッピング体験が実現できたらすばらしいだろう。コンピューター・ビジョンと機械学習の限界を押し広げ、顧客は必要なものを棚から取り、そのまま店を出られるようなストアを創り出すことは可能だろうか、とわれわれは自問した」と書かれている。

現在オープンが予定されているストアは食品だけを扱う。フル機能のスーパーマーケットというよりは21世紀版のオートマットといった雰囲気だ。ファーストフード店との競合に敗れるまでアメリカで人気があったオートマット食堂には細かく仕切られたショーケースが回転するようになっており、簡単な食事やスナックを取り出すことができた(調理は人間がやっていた)。

chef-kitchen-desktop-_v523327237_

Amazonが物理店舗の実験をするのはこれが初めてではない。昨年はやはりシアトルにAmazon Booksというワンオフの書店が開設された。Amazonではこの種の物理店舗を全米にチェーン展開する計画があるらしい。AmazonFreshは生鮮食品の配達サービスで、ここ数年アメリカ各地に少しずつカバー地域を広げている(このサービスAmazonが所在するワシントン州で開始された)。

Goは物理店舗と配達サービスの良い点を結びつけようとしたシステムだ。ショッピングから行列(と人手)をなくそうとするのが最近のトレンドだが、ここでAmazonは最大の存在になっている。生鮮食品の自動チェックアウト・システムにはSelfycart、さらにこの方向に舵を切った大きな存在としてInstacartがある。Amazonが準備しているストアは来年の早い時期にに一般のAmazonユーザーも利用可能になる。Amazonの過去の動きから判断すると、これは何か非常に大きなクサビの先端の役割を果たすのかもしれない。

〔日本版〕日本では167平米という売り場面積は平均的なコンビニより広く、小型のスーパーよりかなり狭い。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

人工肉スタートアップのMemphis Meatsは感謝祭のターキーも人工肉にしたいと願う

3137581906_912ebcba73_o

Memphis Meatsは、今年の初めに人工肉のミートボールでスタートアップ世界の話題になった。今度同社は、ほかの肉にも挑戦しようとしている—たとえばターキー(turkey, 七面鳥)だ。

同社はこのほどIndiegogoのクラウドファンディングキャンペーンを立ち上げ、未来の肉の姿とその味を一般大衆に教育することによって、毎年の感謝祭に屠殺される5000万羽近くの鳥たちの一部を救おうとしている。

私はIndiegogoのキャンペーンを記事にすることに、それほど熱心な方ではないが、同社の場合は、目的はターキーなどの肉を作るための資金を得ることではなく、啓蒙のためだ、という。資金に関してはMemphis Meatsはすでに、採取した動物の細胞をペトリ皿の中で培養するために、300万ドルのシード資金を獲得している。

動物をめぐる産業複合体は、この惑星と人類にとって非常に有害だ、とMemphis Meatsは言う。一個のハンバーガーを作るために660ガロンの水を消費し、そしてCDC(疫病管理センター)によれば、生肉は食品が媒介する疾病を起こす細菌の、主要な発生源である。そこで同社は、動物の細胞を培養して生物学的に同一の肉を作り、本物の肉だけど残酷さとは無縁で地球環境にフレンドリーな、食肉を提供しようとしている。

Memphis Meatsによれば、その“クリーンミート”が、スーパーの棚に並ぶようになるのは、5年後だそうだ。

Memphis Meatsには、その5年間にやることが、たくさんある。菜食主義者の友人たちに、人工肉を食べたいか聞いてみると、分からない、とか、気持ち悪いという人が多い。でもMemphis Meatsのような、培養によって作った動物製品は、菜食ではなく肉をふつうに食べたいけど、健康や環境上の理由から今は食べていない、という人たちには、理想的かもしれない。

しかしながら同社は、多くの消費者がその気になるためにはかなりの準備期間が必要だ、と認めている。同社は啓蒙活動の一環として、支援者からの寄付を募っており、その一口は3ドルから1000ドルまでだ。3ドル寄付すると–それはふつうのファストフードのバーガーの値段だが–、その人はMemphis Meatsから“チャンピオン”(champion, 主義主張の擁護者)の称号をもらえる。金額に応じて、ロゴ入りのステッカーや水筒、フーディー (hoodie, フード付きトレーナー)なども、もらう。1000ドルの人は、すべての賞品をもらって、Webサイトに名前が載る。

現在までに集まった寄付金は、700名近くの支援者から計52000ドル近い。これもまた、同社がベイエリアのラボで作っているターキーなどの人工肉の、将来的な市場化を支援する。

感謝祭に多くの人たちが人工肉のターキーを買うようになるのは、まだ遠い未来の話だと思うが、でも、もしかして、それほど遠くないかもしれない。

同社のスポークスパーソンはこう語る: “最初は挽肉状の人工肉を開発するが、成型肉も計画している。チキンブレストや、ステーキ、そしてまるまる一羽のターキー(“七面鳥の丸焼き”用)も、需要があれば作るだろう”。

同社からもらったビデオでは、グリルの上でビーフのようなものを焼いている。これの次がターキーか? では、あなたが生まれて初めて見る、Memphis Meats製のビーフ・ ファヒータ(fajita)をご覧いただこう:

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Gfreshが2000万ドルを調達、海産物の売買のかたちを変える

crab_gfresh

中国では平均可処分所得の増加とともに、海産物の消費量が増えている。しかし生で食べられる魚や甲殻類については、中国の国境をまたいで売買・輸送するのが難しい。

さらに過剰漁獲が問題になっている中、活魚を輸送する際の複雑さや、衛生・関税に関する規制対応の結果、毎年何トンもの海産物が廃棄されている。

上海を拠点とするスタートアップのGfreshは、効率的に中国全体および国外へ生の海産物を売買・輸送できるように、モバイルマーケットプレイスを開発するとともに物流サービスを提供している。

Gfreshの共同ファウンダーAnthony Wanによれば、同社はシリーズAで約2000万ドル(1億人民元)を調達し、ラウンドにはAlibaba傘下の投資会社Riverhill Fundと、RenRenという中国で人気のSNSに早くから投資していたLegend Capitalが参加していた。

すでにこのディールは8月にクローズしていたが、本日Gfreshは、中国で行われたQingdao Seafood Expoにて、Alibabaの共同ファウンダーであるSimon Xie Shihuangを同社の取締役に迎えると発表した。

Regs Groupという、家具輸送サービスを提供している大手企業のスピンオフとして2年前に誕生したGfreshは、これまでに2億ドル分の活魚を卸してきた。

Gfresh is a mobile marketplace for sales of live seafood.

Gfreshは活魚を扱うモバイルマーケットプレイス

同社はAndroid・iOS向けアプリのほか、ウェブアプリも準備しているが、現状ほとんどのユーザーがAndroid端末からアクセスしているとWanは話す。

プラットフォームの販売者側では、在庫や産地、魚種、品質、価格が設定可能だ。さらに、販売者は全体の販売価格や需要に関するデータを確認でき、これをガイドとして値段を設定することができる。

そしてユーザーがGfresh経由で海産物を購入すると、同社はGpayのエスクロー口座にその料金をおさめる。

また、少量の注文であれば、Gfreshが複数の注文をまとめてひとつのコンテナで輸出の手配を行い、それぞれの送り先に応じた、衛生基準や関税に関する書類の準備まで行うようになっている。

さらに商品到着時は、Gfreshが所定の港や空港まで冷蔵車でピックアップに向かう。

その後Gfreshは注文の品を卸業者のもとまで届け、そこでは検査官が受け取り時にビデオ撮影をするようになっている。これには、箱の中のロブスターが何匹が死んでいたり、高級食材である浮き袋の箱に十分な海水が入っていなかったりといった問題が発生した際に証拠を残しておく意味がある。

商品に何か問題があれば、Gfreshは販売額を割り引きし、残りの金額を事前に合意した条件に従って販売者へ支払う。Gfreshは将来的に、購入者が携帯電話やタブレットを使って、自分たちで品質管理のためのビデオを撮影するようになると考えている。

このようなビデオ撮影やエスクロー口座の使用は、世界中を飛び回って見込み顧客に会うための予算や詐欺を防ぐ手立てを持っていない、小規模もしくは職人気質の生産者にとっては大きな助けとなる。

またGfreshがバッチ輸送を行っていることから、小規模生産者は、輸出業者の提示する価格に屈することなく、限られた量の海産物を販売することができる。

「マーケットプレイスが、ホテルの予約や靴の購入のかたちを既に変えている一方で、私たちがGfreshを設立するまで、水産業界ではまだ握手とFAXに頼って取引が行われていました」とWanは説明する。

Gfresh cofounder Anthony Wan.

Gfreshの共同ファウンダーAnthony Wan

海産物の生産ハブとなっているオーストラリアのオークランドやシドニー、カナダのバンクーバーなどにオフィスを構えるGfreshは、シリーズAでの調達資金を、増員や新拠点の設立のほか、新たな”リバースオークション”機能のローンチに向けて使っていく予定だ。

生ものの在庫を抱える水産業では、シアトルからシドニーを含む主要な市場において、リバースオークションが1番人気の競りの形だとWanは話す。

長期的な計画として、Gfreshは同社のサービスとアプリをアジア以外の地域にも展開するとともに、例えば(生きていなくても)新鮮な魚やフルーツのように、傷みやすくて輸送の難しい活魚以外の商品を取り扱っていきたいと考えている。

 

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

生まれたてのヒヨコが殺されるのを防ぐテクノロジーが登場

chicksinabox

何十億羽ものオスのヒヨコが毎年養鶏業界で殺されている。これは業界で処分と呼ばれている普通の慣行であり、生まれて1日のヒヨコを窒息させるか、もっと惨たらしい場合は、マセレーションという方法を使う。これはベルトコンベヤーと巨大なブレンダーを使う方法だ。ビデオを載せるのは止めておくが、見てみたければ、簡単にオンラインで見つかるはずだ。

業界がこのような物議を醸す方法を採用している理由は、単純に、卵を産ませるためのニワトリ(の品種)は経済的に意味を成すほどの大きさにまで成長しないということだ。つまり、農場にとってメスだけが金になる。もう一方は、文字通り、まとめてポイと捨てられる。

TeraEggというのは、Vital Farmsとテルアビブのテック企業であるNovatrans社が今週発表したテクノロジーで、この業界の慣習を終わりにするべく開発された。この技術はテラヘルツ波を使った分光学的手法を利用して、非侵襲的に卵の性別と稔性を判別できる。このテクノロジーは卵の表面の小さな穴から漏れ出すガスを検出することで数秒のうちに卵がオスかメスか、未受精卵かを判別できるのだ。これはヒヨコが生まれるまで約3週間待って判別するよりも飛躍的に早い。

このテクノロジーは2017年の終わりまでを目処に商用化されることが期待されている。年何十億ものヒヨコを救い、恐らく処分を請け負う業者にとってより重要なことは、お金の節約にもなることだろう。

Via Engadget

[原文へ]

(翻訳:Tsubouchi)

代替食品のSoylent、顧客の体調不良報告を受け栄養バウダーの販売を中止

p10408111

摂取するだけで食事の代わりとなる栄養バウダーを製造するSoylentは、同社の製品を摂取した顧客が体調を崩したという事態を受け、その原因調査の一環として、同社の主力製品の販売を中止した。

今月初め、この、ベンチャー・キャピタルの支援を受けている企業は、顧客の一部が同社の製品であるスナック・バーを食べた後体調不良を訴えた件を受けて、そのスナック・バーの販売を取り止めた。今回、同社のSoylent Powder のフォーミュラ1.6の販売を中止し、問題となっている栄養パウダーから、今回のPowder 1.6と、先にリコールされたスナック・バーに共通する、問題を引き起こす可能性のある原材料を取り除く意向だ。

同社の更新されたブログ情報によると、そのスナック・バーに対して行われた検査(病原菌、毒素、外部からの汚染)では、異常は検出されなかった。その結果、原因解明の焦点は食品不耐症にシフトすることとなった。

そのブログによれば、全体の0.1%未満からなる一握りの顧客が、Powder1.6を摂取したのち胃関連の不調を訴えていたのだが、その症状が、今回のスナック・バーの件で報告されている症状と一致していると同社は気付いたようだ。Soylent 1.5のフォーミュラではその様な問題はなかったことから、上述の二つの状況の関連が疑われている。

「この二つの件の関連性により、検証する対象を格段に狭めることが出来ました。今回のスナック・バーとPowder 1.6の間で共通する原材料はたったの数種類しかありません」と、その記事は記している。

同社スポークスマンによれば、Soylentの他の製品であるSoylent DrinkやCoffiestではこれまでのところ苦情は報告されていないとしている。

Soylent Bar同様に、Soylent Powder中の原材料のリストはとても長い。両者に共通する原料としては大豆タンパク質分離物、キャノーラ油、イソマルトオリゴ糖、さらには種々の塩やビタミン類がある。

我々は同社に対して、どの原料が疑わしいか、これまでスナック・バーとSoylent Powerに関して何件苦情があったかを問い合わせており、返答が得られ次第続報をお届けする。

同社は今の所、問題となった原材料を特定しておらず、Powder 1.6の販売を停止中であり、スポークスマンの言葉を借りれば、「用心しすぎるに越したことはない」ということのようだ。また、スナック・バーとSoylent Powerの原料の組成を変えて、「問題となっている可能性のある原料を除く」と言う。

改良した製品は遅くても来年の第一4半期の初旬には売り出される予定だ。

今回の問題の原因は食品汚染というよりはむしろ食品不耐性が関係しているようなので、これまでPowder 1.6を使用して特に問題がなかった人に関しては、摂取を特に中止する必要性はないと、同社は付け加えた。

Soylentは創業以来約2230万ドルの資金を得て、栄養補給を低コストかつ高効率で実現することを目標に掲げている。

Soylent使用者が自らの経験をRedditで綴っているが、それらの中には胃の不調を訴えるものが幾つかある。同社製品の一つであるCoffiestを飲んだ後の不調についての報告もあるが、その件に関して同社は現在の製品のリコールとは無関係だと主張している。一方でSoylent Powderの発売中止期間中、何で代替したら良いのか心配している人もいる。

「 Soylent 1.6で問題が生じ、やめました。新しいバージョンでは改善されていると良いですね。胃酸や痙攣、その他いろいろ酷かったです」という人がいれば、「Soylent 1.6だけで平日のカロリー摂取の全てを補っています。急に摂取した時は胃に違和感を覚えます。一杯のsoylentを4〜5分かけてゆっくり摂取するのが良いようです」という人もいる。

[原文へ]

(翻訳:Tsubouchi)

 

代替食品のSoylentバー、食後不調を訴える人が出てリコール開始

soylent-bar

「食の未来」の消化器官は、常に快調とはいかないようだ。

「飲む夕食」粉末の提供元であるSoylentが、製品リコールを発表した。リコール対象は主力の食事代替粉末ではなく、噛む必要のある2ドルのスナックバーだ。

Andreessen Horowitzが支援するこのスタートアップはバーを8月に出荷開始したばかりだった。この250カロリーのスナックを「簡便で完全な、栄養の最新の進化系」として売り込んでいた。

まあ、それが一部の人びとの胃袋には「最新」過ぎたということが判明したわけだ。

リコールは、バーによって吐き気や下痢などの症状を伴う「激しい不調」に陥った顧客のレポートを受けてのものだ。

どれ位の数の顧客がバーを食べた後に気分が悪くなったのかは明らかではないが、Soylentに行動を決意させるには明らかに十分だった。

そのプロダクトリコールに触れた同社のブログによれば、同社はこのように述べている「最近Soylent Barを召し上がった後に、胃腸の不調を経験されたお客さまが少数いらっしゃったことが、目に止まりました。予防措置として、私たちはすべてのSoylent Barの販売および出荷を停止し、お客さまにはお手持ちのバーを廃棄していただくようお願いしています」。

2013年の創業以来2230万ドルを調達しているこのスタートアップは、苦情を調査していると回答した ‐ しかし、その根本原因は突き止められていない。

「この件に関する私たちの調査は続いていますが、私たちは慎重すぎるほど慎重になることを決め、予防措置をとることに致しました」同社のブログはこう述べ、更に「私たちは全てのバーカスタマーに全額返金を申し出る電子メールをお送りします」と付け加えている。

また「Soylentバーを食べた後、何らかの不快な経験をなさった」顧客への謝罪を述べ、残されたバーを食べることなく破棄するよう依頼している。

Soylentバーの完全な成分リストはとても長いものになる ‐ おそらく、特定の物質に対するアレルギーのリスクを上昇させていることだろう。同社のウェブサイト上ではまた、大豆とグルテンが含まれていることから、バーがアレルゲンフリーではないことに注意を促している。

列挙された主要成分の中含まれるものは:大豆タンパク、コーンシロップ、オート麦粉、キャノーラ油、グリセリン、全藻類粉、イソマルツロース、イソマルトオリゴ糖繊維ならびにオートミールである。

私たちはリコールについての質問をSoylentに送っている。もし何かの返答があれば、この投稿を更新する予定だ。

自己破壊するハイエンド携帯電話から胃袋の不調を招く未来の食品まで、今週は製品リコールにとって、愉快とは言えなかった。あるいは複数のコンポーネントの組み合わされた難しい問題のトラブルシューティングにとっても ‐ SamsungはGalaxy Note 7が炎上した理由をいまだに特定できていない。

[ 原文へ ]
(翻訳:Sako)

オンライン食品デリバリー市場には2100億ドルの可能性

A day's worth of meals from a raw-vegan delivery service, ready for a cleanse or detox. Includes: crepes, berries, collard green wraps, sushi, salad and pizza.

編集部注著者のEric Kim氏は、LA拠点のモバイル食品オーダースタートアップRushOrderの、共同創業者兼CEOである

昨年私は、広範囲にわたるオンライン食品オーダリングへの長期的シフトについての記事を書いた。その時には、対象領域に大量の資金が流入しているのを目撃した。それから1年が経ち、私たちは今や、非常に異なる資金調達環境を目にしている。調査会社のCB Insightsによれば、食品デリバリーカテゴリーへの国際的な資金の流入は、16年第1四半期に69パーセント減少し、そして更に第2四半期には49パーセント減少している。

Source: CB Insights

出典:CB Insights

ファイナンスの視点からは流れは間違いなく後退している一方で、オンライン食品デリバリー業界が示すマーケットの可能性は、相変わらずの大きさを誇っている。実際、今年6月の最新業界レポートのMorgan Stanley Researchの指摘によれば、(デリバリー業界からの)アプローチ可能なコアとなるレストランは年間2100億ドルを売り上げているのに対し、オンライン食品デリバリーはわずか100億ドルを計上しているのに過ぎない。5%以下である(Morgan Stanley Research: Restaurants and U.S. Internet)。この金額は「電子商取引の2分の1、オンライントラベルの8分の1」に過ぎない。これらのメトリクスが示しているのは、オンライン食品デリバリーは明らかに「いまだに成長待ち段階」ということだ。

Source: Public Company Filings, AlphaWise, PhocusWright, US Census Bureau, ComScore, Forrester, Euromonitor, Morgan Stanley, and Wall Street Research Reports

出典:Public Company Filings、AlphaWise, PhocusWright、U.S. Census Bureau、ComScore、Forrester、Euromonitor、Morgan Stanley、そしてWall Street Research Reports

あまり頻繁に議論されていない統計は、この2100億ドルのアプローチ可能なマーケットの60パーセントがピザだと見積もられていることだ。これ自身は興味深いデータであるが、一方AlphaWiseが4月に行ったサーベイの結果が示すのは、消費者はピザ以外のデリバリーオプションを欲しているという事実である。

5000人以上の米国の消費者を対象とした彼らの調査では、回答者のほぼ3分の2がそれ以前の半年の間にレストランでテイクアウトの注文を行っている;こうした、容易にデリバリー注文に置き換え可能なテイクアウト注文が、ピザの代わりに頼めるオプションとして使われているのだ。調査ではさらに、こうした需要の高まりが「都市や、郊外、そして農村のマーケットを問わず」一貫して起きていると述べている(Morgan Stanley Research: Restaurants and U.S. Internet2016年4月のAlphaWiseの調査)。

そしてオンライン食品デリバリーサービスが急速に拡大し続けるにつれ、これまでデリバリーを提供できなかったレストランが、ますます多くデリバリー向けにアクセス可能になって来ている。以上のことが意味することは、これまで歴史的にピザの領域であったパイの一部の1260億ドルが、急速に手に入れやすくなってきたということだ。

Source: Morgan Stanley, AlphaWise

出典:Morgan Stanley、AlphaWise

この考慮すべき2100億ドルマーケットの可能性が、固定された数字ではないということも忘れないようにしよう。もし消費者たちが全体としてレストランでの外食時間を減らし、より多くの時間をオーダーに使ったならば、全体のパイは大きくなる。実際に、市場調査会社のThe NPD Groupは、次の10年間の店外フードサービスの成長は、レストラン業界全体の成長の速度を上回るだろうと予測している。

もし私たちが外食産業全体を広く眺めれば、そのマーケット規模は4900億ドルとなり、食品デリバリーの可能性(アプローチ可能な部分)はそのうちのちょうど43パーセントとなる。この角度から眺めれば、このマーケットの半分以上はまだ技術的に追求可能である。そこでは、ただの1パーセントの成長が、ほぼ50億ドルのデリバリーマーケットの機会拡大につながる(Wall Street Research Reports)。

Source: Public Company Filings, Morgan Stanley, Technomic

出典:Public Company Filings、Morgan Stanley、Technomic

とは言ったものの、メディアから流される膨大なノイズのために、ここで追加された視点は容易に見過ごされてしまう。長期的傾向は時間をかけて生まれるものであることを忘れてはならない ‐ しばしば、かなりの数の上下する投資サイクルを経て。そして、これらのサイクルを通じて、歴史上常にそうであったように、企業は栄えたり没落したりしていく。覚えておくべき重要なことは、発生の頻度は低いものの、広範で長期的なシフトは、それを活用できた幸運な者たちには並外れた機会を与えてくれるということである。

[ 原文へ ]
(翻訳:Sako)

Blue Bottle Coffeeが新たな大型投資ラウンドを計画中か

LOS ANGELES, CA. - MARCH 12, 2014:  Blue Bottle Coffee shot in the Los Angeles Times Studio an item from the Natural Products show in Ananheim that Mary will talk about on March 12, 2014.  (Photo by Anne Cusack/Los Angeles Times via Getty Images)

サンフランシスコのコーヒー戦争が再燃している!

情報筋によれば、昨年の7500万ドルにおよぶ大型資金調達から、1年わずかしか経っていないにも関わらず、Blue Bottleが新たな大型ラウンドを計画しているようだ。調達額については分かっていないが、コーヒーに対するシリコンバレーの投資家の大きな(そしてときに不思議な)興味を考慮すると、前回に近いか、同等レベルの金額に達しても驚きではない。シリコンバレー、そしてサンフランシスコのコーヒー愛には際限がなく、その熱は投資家にも飛び火しているようで、何千万ドルという資金がBlue Bottle CoffeeやPhilzといった会社に流れ込んでいる。

ということで、ここは何よりもコーヒーを優先させよう!コーヒー!コーヒー!コーヒー!

シリコンバレーは、数々の一風変わった投資で知られている。投資先のビジネスは、オルタナティブフードの生産から宇宙探査までさまざまで、コーヒーも決してその例外ではない。しかし、そこにはちゃんとした裏付けがある。コーヒー市場の規模は巨大かつ、800億ドルのバリュエーションを誇るスターバックスという、ほぼ完璧な比較対象が存在するのだ。どんなコーヒー関連企業も、市場のほんの一部を獲得できれば、ユニコーン企業の仲間入りを果たすことができる。そしてもちろん、そのような企業を買収しようと考える企業も同時に存在する。

それでは、ここでコーヒービジネス関連の最近行われた大型ラウンドを見てみよう。

私たちの理解では、上記にSightglass Coffeeがこれまでに調達した資金は含まれていない。(同社には、Square CEOのJack Dorseyが投資しており、ベイエリア界隈では、このことがよく知られている)

また、Blue Bottleは、アメリカ中で精力的に店舗の数を増やしている。店舗の様子も、ブルックリンから近く(以前)流行っていたWilliamsburgのエリアにあるロースター兼コーヒー店から、サンフランシスコのダウンタウンにあるアップルストア風のもの(ここのワッフルはとても美味しい)までさまざまだ。スターバックスが営業している場所では、競合するコーヒー店がうまくやっていける余地が当然ある。特に、スターバックスよりも良いコーヒーや、少なくともより良いエクスペリエンスが提供できるならばなおさらだ。

スターバックスも一般消費者の視点から見るとユニークな立場にある。というのもスターバックスは、会社として大きく成長した結果、一般投資家からその動向をいちいちチェックされてしまうようになったのだ。そしてそんな中でも結果を残すことを求められている。そのため、もしかしたら原料となるコーヒー豆にそのしわ寄せが来ている可能性がある。一方で、Blue Bottleはその高単価を背景に、良質なコーヒー豆を使用できるほか、より良いサプライチェーンを(今無いとすれば)構築しているというイメージを与えることができる。

しかし、Blue Bottleも新たな収入源の発掘を行っており、コーヒー豆のほかにも、ニューオリンズスタイルのアイスコーヒー(小学校の頃の給食に出てきたような可愛らしい牛乳パックに入っている)やコールドブリューコーヒーを販売している。Sightglassも、Ritualのような新興コーヒー企業と同様にコーヒー豆の販売を行っている。このような動きを背景に、コーヒー市場(少なくともサンフランシスコ・ベイエリアのコーヒー市場)は驚くほど競争が激化しており、広く知られるようになるまでには、強く後押ししてくれる、流行に敏感な人が何人かいなければいけない。

(もしかしたら、読者の方には流行に敏感ではないものの、一押しのコーヒー店があるかもしれないが…)

Blue Bottleのケースで言えば、店舗の数を増やすうちに、最終的には海外市場に目を向けざるをえなくなるだろう。これまでにBlue Bottleは、コーヒー好きの間では確固たるブランドを築いてきたものの、今後はカフェイン狂の都市部の消費者以外にも、自分たちがスターバックスより優れていると説得していかなければならない。海外市場の中でも特に、コーヒーが日常的な飲み物と捉えられ、良いワインや食べ物のような職人の手によって作られたものだとは思われていないような地域では、そのプロセスはより困難を極める。

結局のところ、コーヒー市場は、企業が新たに参入するにはなかなか悪くない市場のようだ。実際、スターバックスのサイズだけを考えてみても、世界中にコーヒー豆や関連製品を販売する、こだわりのコーヒー店やロースターを複数社支えるくらいの市場規模である。課題となるのは、どのように店舗・物流網を拡大していくかということで、そのためにはもちろん多大な資本が必要となる。

最終的にコーヒー戦争は、私たち消費者にとってはもちろん良いことだ。コーヒー自体素晴らしいものだし、競争激化でより良いコーヒーを楽しめるようになる。

Blue BottleとSightglassの担当者に、本件に関してコメントを求めたが、回答は得られていない。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Instacartが普段の食料品の買い物の仕方を変える


普段の食料品の買い物を支援するアプリのInstacartは、商品の選択、包装と配送をオンデマンドで簡便化する独自の方法を考え出した。

TechCrunchでは同社において人とテクノロジーが実際にどのように機能するのか、サンフランシスのコストコに実際に出向いて取材を行った。明らかになったことは、このサンフランシス発のスタートアップは食料品店の売り方を永遠に変えてしまったということだ。

同社の最高執行責任者であるRavi Guptaによれば、Instacartの核となるイノベーションはそれほどハイテクという訳ではない。肝となるのは、同社が食料品店で量の多いオーダーをさばく為の専用のレーンを確保して、そこに会計、袋詰め、タグ付けを行う専属スタッフを配置することだ。

Instacartで買い物を実際にする人は、顧客がオンラインで注文したもの全てをピックアップし、料金を支払い配送用に袋に詰める。Instacart専用の特別レーンがコストコ、Whole Foodsやサンフランシスコ地元のMollie Stone’s、Andronico’sやBi-Riteなどの食料品店で用意されており、買い物はあっという間に終わる。

最終的には、Instacartはまず同社で働いているショッパーに対して、レジでの支払いをスキップできるようにしようとしており、ゆくゆくはその機能を同アプリを使っている人全員が使えるようにするつもりだ。これが実現すれば、買い物客はレジでの支払いをスキップでき、代わりに品物をスマホでスキャンして支払いを済ませることが出来るようになる、とGuptaは言った。

今の時点では、Instacart専属ショッパーにとっては、同社専用レーンだけでも十分にショッピングのスピードアップが図られているようだ。

Screen Shot 2016-08-30 at 4.43.39 PM
ハイテクに関して言えば、Instacartは主要な食料品店チェーンから品目のリストと店内レイアウトのデータを取得して、協力して店内の売り場マップを作成することも行っている。店内マップがあれば、買い物客は買い物リストに並ぶ品々を簡単に見つける事が出来る。目眩がするほどたくさんのパッケージやラベルの並ぶ売り場の棚から、探し回ることなく欲しいものを素早く見つけることができ、以前一度も買ったことがないものでも容易に探し出せる。

この店内マップのサービスについては、協力関係にあるすべての店舗で展開している訳ではないが、現在そのサービスを拡張中だと、Guptaは言った。

Instacartのシフト・リードであるGloria Shuによれば、店内マップのサービスは現在のところサンフランシスコのコストコでは行われていない。しかし、それはInstacartのアプリ中にある数多くの重要な機能の内の一つである、そういった機能の多くは現在同社のショッパーとドライバーに使われているが、顧客には見えないようになっている。

バックエンドにおいては、Instacartアプリは同社のショッパーが効率よく買い物が出来るよう手助けをする、と彼女は付け加えた。つまり、ショッパーの買ったアイスクリームが溶けてしまわないように、また調理済みの暖かい食料が冷めてしまわないように、Instacartはショッパーに最も効率が良い買い物ルートを教えて、そういった冷凍物や温かい食料は最後にピックアップするよう指示を出す。

Screen Shot 2016-08-31 at 5.51.43 PM

Instacartが大量のオーダーを処理する店舗においては、温かい食品や冷たい食品は袋詰めされた後、運転手がピックアップに来るまでの間、温度コントロールがされた場所で一時保管される。

次回にWhole Foodsやコストコ、もしくは他の主要食料品店で買い物をする時は、Instacart専用のチェックアウトレーンや買い物の一時保管場所、Instacart専属ショッパーがスマホ片手に店内を動き回っている様子に目を向けてみよう。同社特有の緑のTシャツが目印だ。

Instacartは今の所競争をリードしているようだが、競合他社も間違いなく同様の特別レーンを店内に確保しようと躍起になるだろうし、独自のテクノロジーを開発して優位に立とうとするだろう。

同じベンチャー・スタートアップであるPostmatesからGoogleのShopping Expressサービス、さらには地元の物流サービス会社に至るまでの全てがInstacartと競合する可能性があるのだ。

[原文へ]

(翻訳:Tsubouchi)

マイクロバイオームが医療と食品に対する概念に革命をもたらす

6946913449_a7bb50a760_o


【編集部注:本稿の執筆者、Kobi GershoniはSignals Analyticsの共同設立者で主任研究官でAlexandra V. EberhardはSignals Analyticsのサイエンス担当VPでSignals Analytics Europeのゼネラルマネジャー】

ヒトのマイクロバイオームと言う時、それは人体内に住むすべての微生物の遺伝子のことを指す。ヒトのマイクロバイオームが今、オーダーメイド医療と食事療法のあり方を塗り替えようとしている。ヒトゲノムプロジェクトの完成後、テクノロジーの進歩により病気の診断とその治療の精度は極めて高いレベルにまで押し上げられた。

マイクロバイオームのことを「新規に見つかり、ほとんど調査されていない臓器」と呼ぶ科学者もいるくらい、マイクロバイオームは我々が直面しているもっとも深刻な病気の診断と治療の方法を革新する可能性を秘めている。それらの疾患にはクローン病、糖尿病、肥満や様々なガン、急性下痢、精神障害などが含まれる。

あたかも人体だけでは複雑さが足りないかのごとく、我々一人一人は独自の微生物環境を持っている。新薬の発見と栄養摂取という観点において、それぞれの人が独自の微生物環境を持つということは人それぞれがオーダーメイド治療や摂取した食品にどのように反応するのかという点で重要になってくるだろう。かつてオーダーメイド医療は、実際のテクノロジーが追いついていなかったため法外な費用がかかり、SF映画の中でのみ存在するコンセプトに感じられた。マイクロバイオームの夢はオーダーメイド医療と個人に最適化した栄養摂取を全ての人々の手の届くものにすることだ。

それでは、人の健康状態の維持・管理や栄養摂取を専門とする企業はこの新たなテクノロジーの進歩に対して、どのように対応するのだろうか。

人の腸内マイクロバイオームのおかげで我々が若々しく、より健康的な食事をして慢性疾患とはおさらばする日が来るのだろうか?

これからマイクロバイオームが人の健康に利用される機会がどんどん増え、オーダーメイド医療を一般の人々に浸透させるために今後より多くの投資がなされるのは疑う余地がない。製薬産業はマイクロバイオーム関連のプロジェクトの発掘を行ってきたが、その中でもとりわけプロバイオティクスとプレバイオティクスの分野の成長が顕著だ。体重管理の市場はアメリカだけでも600億ドルに近い規模であり、そのうちの半分以上がプロバイオティクス関連である。プロバイオティクス商品はすでに何年もの間市場に出回っているが、FDAは自身が栄養補助食品に関してはモニターしていないことを明言しており、栄養補助食品には十分注意するよう消費者に対し警告を発している。

プロバイオティクスとプレバイオティクスをめぐってはすでに大量の文献、特許及び臨床試験が存在するが、確かな結果を消費者にもたらす食製品を開発することは製薬市場の研究チームが今度解決して行かねばならない課題である。

例えば、ViThera Pharmaceuticalsはプロバイオティクな細菌株(一部は臨床試験済み)を使って慢性疾患の治療に役立てようとしている。しかしヨーグルトなどの食品に利用可能な菌株などはマーケティングがより困難だ。ダノンのActivaやDanActiveラインの製品は歴史的に見て消化を助けプロバイオティクス細菌を摂取するのに適した食品として売り出されている。

マイクロバイオームは我々が摂取するものをどのように変化させるだろうか。

マイクロバイオームの多くはヒトの腸に焦点を絞っている。腸には高密度の微生物が生存しており、多国籍企業はこれについてさらなる知見を得ようとしている。

今年度の初めに、ワイツマン科学研究所の二人の科学者がPersonalized Nutrition Projectの元で行った研究成果を発表した。その研究では、人それぞれが同じ食物に対してもいかに異なった反応を示すかを調べたもので、この反応の違いの一因は個々人のマイクロバイオームの違いに由来するものだ。その研究で明らかになったのは、食物の人に与える影響は人それぞれで、その影響は予想し難く、栄養摂取は個々人に対して最適化されるべきだということだ。

それでは、私にとって健康的なものがあなたにとって健康的でないとすれば、どのようにして我々はどの食物が自分に健康的だと判別すれば良いのだろうか。幅広い消費者層に対応している大企業の多くが既に気づいていることは、大衆の未来はカスタマイゼーションと共にあるということだ。それらの企業は、これまで伝統的に行われてきた人口分布に基づいた分析をやめ、マイクロバイオーム分析の理解を通じた顧客分析を開始した。

ワイツマンの研究結果がもし広く受け入れられるとすれば、その結果は我々の、健康・栄養関連製品およびそれらを製造する企業、に対する考え方に大きな影響を与えることになるだろう。これまで知られていたよりはるかに多くの病気が人とその人の体内にいる微生物との相互作用により引き起こされている可能性が次々と示されている。

マイクロバイオームを使った診断

ガンとの闘いでは早期診断が有効な治療に不可欠だ。医療会社はガンや他の疾患の診断を効率化するためマイクロバイオームを利用した新しい方法を開発している。

 Metabiomicsはマイクロバイオームをガン診断に応用している企業の一つで、分子レベルの初期診断を専門としている。Metabiomicsは特に、非侵襲的な検便をベースとしてヒトの腸内マイクロバイオームを分析することに焦点を絞っており、結腸内のポリープやガンをより早期に、かつ正確に発見することを目指している。Metabiomicsの技術革新の鍵は特許取得済みのMultiTag™ DNAシーケンス技術であり、この技術によりこれまで不可能であったやり方でマイクロバイオームを解析することが可能になった。

マイクロバイオームの研究は病気の予防とコントロールに向けた新しい道を切り開くかもしれない

オーダーメイド医療のもう一つの波として盛り上がりを見せているのが糞便移植(Fecal Microbiota Transplant)である。これは、テストを受けたドナーより糞便を採取しある種の腸疾患を治療しようというものだ。研究者はIBSやクローン病などの胃腸疾患の治療に糞便移植が使えるか、その可能性を模索している。マイクロバイオームをベースにした治療法を商品化するのはなかなか大変だが、バイオテクノロジー系のRebiotixなどの企業は糞便移植の商品化に取り組んでいる。それらのバクテリアや糞便中の微生物関連製品を使い、生きたヒトの微生物を患者の腸に送り込むことで疾患の治癒を目指す。

オーダーメイド医療の開発とヒトのマイクロバイオーム特有の性質の組み合わせにより製薬企業大手にとっては、近傍領域の産業が真似のできないような装置を開発する機会が到来している。

マイクロバイオーム系企業のEnteromeとEvolve Biosystems

微生物は体を病気から守り免疫力を増強するので、マイクロバイオームの技術革新と疾患予防分野はとてもよくマッチしている。疾患予防は医療会社にとっては巨大なマーケットであり、2020年までにプロバイオティクスの市場規模は500億ドルを超えるだろう

しかしながら、消化器系の健康のためのプロバイオティクスだけがマイクロバイオームを使った予防医療のアプリケーションという訳ではない。

マイクロバイオームの研究では治療と診断が鍵となるアプリケーションである。

現時点では商業化可能な製品はないかもしれないが、この領域での技術革新を推し進めている医療会社は依然多い。そう言った企業であるEnteromeEvolve Biosystemsは、マイクロバイオーム関連の疾病・疾患を治療、診断する目的でマイクロバイオームに目を向けている。 

Enteromeはパリを拠点する、ヒトの腸を専門に扱う企業である。同社は炎症性腸疾患や、糖尿病や肥満などの代謝性疾患の治療を目指している。Enteromeの中で最も開発の進んでいる治験薬であるEB 8018は、同社のメタゲノミクスプラットフォームの強みを生かし、腸内マイクロバイオームを標的にする。そのような腸内マイクロバイオームはクローン病の発症に重要な役割を果たしていることがわかっているからだ。

一方でEvolve Biosystemsが扱うのは妊娠である。幼児における呼吸器や胃腸の疾患、s過剰なアレルギー反応の発症と母親の腸内マイクロバイオームには高い相関があることが判ってきたからだ。同社の目標は、向こう半年の間に同社独自のプロバイオティクスに基づいた生物的治療システムを開発して幼児のマイクロバイオームの健康状態を改善することだ。

製薬市場の研究者は特許や臨床試験以外にも学術論文の重要性を認識して、その利用方法や競合他社の技術革新という点においてマイクロバイオーム市場がどこに向かっているのか見極める必要がある。

マイクロバイオームは製薬、医療、健康管理と栄養摂取の領域に渡って何度も登場するトレンドであり続けるだろう。また、この度のワイツマンの研究結果が示しているのは、我々は自分たちが摂取する食品や製品においてマイクロバイオームが果たしている役割について、まさに理解し始めたところだということだ。個人各々が自分の持つ微生物に基づいて個人に最適化した健康管理と栄養摂取プログラムを持つ日が来ることを想像して見て欲しい。我々各人が科学に基づき最適化され、新規薬物療法にどう反応するのか、摂取するものからどのような恩恵を得るのかを理解するようになるのだ。

マイクロバイオームの将来

イクロバイオームの研究は病気の予防とコントロールに向け、新しい道を切り開くかもしれない。健康な人たちや症状の無い患者は病気の予防に向けて行動を起こすことにそれほど乗り気ではなく、特に症状が進んでいない状態では、病気の進行を遅らす取り組みにも消極的である。ジョンソン&ジョンソンやダノンなどの企業はマイクロバイオームにおける市場を牽引しており、将来的にはもっと多くの会社がこの領域のイノベーションに参画してくるはずだ。マイクロバイオームは既に消費者の毎日の行動に影響を与え始めており多様な商品を通じて生活に浸透して来ている。

健康維持から本当の意味での病気の予防とその進行の阻止にその役割を移行してゆくことは簡単には行かないだろう。しかし現実においてはマイクロバイオームは我々の生活のあらゆる局面にインパクトを及ぼす可能性を秘めている。それは病気の診断や健康な体内微生物群の維持、もしくは直接・間接的な微生物関連の疾患を予防するための早期診断であるかもしれないが、マイクロバイオームは結果的に我々の平均寿命に影響を及ぼす可能性を秘めている。実際にはそれがどのように我々の生物学的寿命と進化に影響を及ぼすのかというのが大きな問題である。ヒトの腸内マイクロバイオームのおかげで、我々が単に長く生きるということを超えて、若々しくあり続け、健康的食生活を送り慢性疾患を克服する日が来るのだろうか。その答えはイエスである。
[原文へ]

(翻訳:Tsubouchi)

同業他社が沈む中iFoodが3000万ドルを調達し南米市場を攻める

ifood_office-22

世界的にフードデリバリースタートアップの勢いが落ちてきているようだが、南米の投資家は、少なくともひとつのある企業に新たな光を見出している。

ブラジル発のオンデマンドフードデリバリーサービスを展開するiFoodは、この度3000万ドルを新たに調達し、南米でのビジネス拡大とオンラインフードデリバリー市場での基盤固めをしようとしている。

オリンピック選手がブラジルで金メダルを目指す中、iFoodは新規に調達した資金を利用して、フードデリバリースタートアップ界の表彰台のトップを見据えているのだ。

3000万ドルの資金はiFoodもよく知る投資家から出資されることとなった。Naspersが投資を行ったモバイルコマースの雄Movileや、イギリスを拠点とするグローバルオンラインテイクアウトサービスの上場企業JUST EATは、昨年にもiFoodに対して5000万ドルの投資を行っていた

そのため、この度の資金調達は3社の複雑に絡み合った関係の延長線上にあると言える。今年に入ってiFoodはブラジルにあるJUST EAT傘下のhellofood Brazilを買収しており、新たな資金の一部はメキシコへの拡大を目的として、JUST EATのメキシコ子会社SinDelantalの買収に利用される予定だ。

以前のTechCrunchの報道によれば、MovileはiFoodの支配権の60%を握っている一方、グローバルプレイヤーであるイギリスの巨大フードデリバリー企業Just Eatもその30%を保有している。

メキシコ最大のフードデリバリー企業であるSinDelantalは、2015年2月にJUST EATに買収された。そして2016年2月にJUST EATが買収したhellofood MexicoのオペレーションをSinDelantalと統合したことで、SinDelantalの勢いはさらに増した。

新しい買収話がまとまれば、iFoodはSinDelantalの株式の49%を保有し、SinDelantalはiFoodと、iFoodの30%を保有するJUST EATのジョイントベンチャーとして事業を行うこととなる。なお、買収金額は発表されていない。

Screen Shot 2016-08-10 at 7.54.10 PM

「iFoodは常にモバイルエクスペリエンスのことを意識しています。私たちは携帯電話を使ったフードデリバリー業界で、1番簡単で使いやすいサービスを提供したいと考えています」とiFoodの共同設立者兼CEOのFelipe Fioravanteは説明した。「Movileが持つモバイルの強みのおかげで、常に進化を続ける世界レベルのサービスを生み出すことが出来ました」

この南米のスタートアップに対する新たな投資は、フードデリバリー業界への投資に勢いが無いグローバル市場の流れとは逆行するように映る。

グローバル市場で企業の統合や評価額の急低下が普通になっている中、JUST EATとiFoodだけがその恩恵を受けているのだ。アメリカではSpoonRocketが業務を停止し、その資産をiFoodに売却した一方、ヨーロッパではRocket InternetがJUST EATに対してフードデリバリー事業の売却を行った。

新興市場の状況はさらに悪く、最近のBloombergの記事が示唆しているように、特にインドは大きな打撃をうけている

以下はBloombergのウェブサイト上にあるSaritha Raiの記事の抜粋だ。

ベンチャーキャピタルの資金は干上がり、スタートアップは次々と市場から消えていっている。ムンバイを拠点とし、フードデリバリーアプリの先駆け的存在でもあるTinyOwlは、Sequoia Capitalを含む投資家から2300万ドルを調達していたものの、資金がほぼ底をついてしまったため、TinyOwlよりも規模の小さな競合のRunnrに身売りすることとなった。また、GoogleやAmazon幹部から資金調達を行ったDazoの昨年の事業停止に続き、SequoiaとSnapdeal.comの支援を受けた食料品配達サービスのPepperTapも4月にその幕を閉じた。グルガーオンを拠点とし、インドで唯一のフードテック系ユニコーンであるZomatoでさえ、HSBC Securities and Capital Markets (India)のアナリストによって、今月その10億ドルにおよぶ評価額を半減させられてしまった。

一方、南米でも特にブラジルとメキシコのビジネスは様子が違うようだ。

5年前にローンチしたiFoodは、1万軒以上のレストランとパートナシップ契約を結び、毎月170万件の配達実績を積み上げている。

「ブラジルでの成功を見た後、メキシコでもiFoodと協力関係を結ぶというのは当然の決断でした。」とJUST EAT CEOのDavid Buttressは声明の中で述べた。「iFoodはローカル市場について細部まで理解していて、モバイルサービスにも強みを持っています。この勝利のコンビネーションこそ、私たちが拡大に向けて求めているものでした」

justeat

細かな情報を超えて、南米中のテクノロジー・サービス業界の成長率を表す数字の中には驚くべきものがいくつかあり、これがJUST EATやMovileによる南米企業への投資の理由なのかもしれない。

言葉にするととても味気ないが、世界銀行は南米の中期的な経済見通しの中で、その大きな成長可能性について触れている。

以下が世界銀行のコメントだ。

マクロ経済の持続や物価・金融の安定、さらには引き続き強気の投資家の存在を背景に、経済成長の原動力が再度バランスし、安定した消費拡大を補完するような形で(ネット)輸出額や、プライベートセクターへの投資が増加していくだろう。中期的には、金融・通信・エネルギー分野でのさらなる構造改革によって、経済活動の活発な拡大に向けた土台が固められることが期待される。

世界銀行のこの評価は星の数で言えば3個半くらいに値する。また、マクロ指標と同じくらい重要なのが、他の業界が縮小している南米経済でのEC業界のシェアの大きさだ(多くの新興市場で似た現象が起きている)。

南米中で劇的に増加しているスマートフォンの保有率や、WhatsApp・Facebookといったソーシャルメディアを支配する膨大な利用者数(人口の半分しかインターネットを利用できないにも関わらず、南米のユーザーがWhatAppのユーザーベースの38%、Facebookのユーザーベースの20%を占めている)を背景に、ソーシャルメディアの利用者数は今後さらに増えていくだろう。

同時にアメリカのテック企業は南米の可能性に気づきはじめた。PayPalは最近メキシコの通信大手América Móvilとパートナシップを組んで、モバイルウォレットプラットフォームの開発にあたっている。

18カ国で約3億人の契約者(AT&Tの契約者数の約3倍)を抱えるAmérica Móvilも、Uberと同社のLTV(顧客生涯価値)の一部を含む戦略的提携を行い、南米でモバイル業界が担う役割の重要性を強調する結果となった。

ECが同地域では突出しており、2015年には南米全体で23%の成長率を記録している。これは中国を除く全ての市場を上回る成長率で、中でも経済危機で何年にもわたる打撃を受けたアルゼンチンでは40%の成長を遂げていた。クレジットカードの普及率が15%程度で、人口の約半数が銀行口座を持っていない地域におけるこの数値の意味を考えてみてほしい。このような状況にあっても、様々なデジタルソリューションが人々に求められるているという実態が数字から見て取れる。

これらのトレンドは、iFoodが成功し続ける上で良い前兆となるものばかりであると同時に、マクロ経済が振るわない市場にあってもデジタルビジネスは成長できるということを証明している。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

フードデリバリーのDeliverooがイギリスでお酒の配達も開始

brahms-liszt-4

今年4月の成功に終わった試みに続いて、レストランデリバリー・スタートアップのDeliverooがアルコールの配達に業務を拡大する。ロンドンに本社を置くこの会社は、Majestic Wines、BrewDow、全国にある数多くの個人事業主やその他のワイン商店と提携し、UKでワインとビールのデリバリーサービスをローンチした。

私たちが聞いたところによると、新しいプロダクトは、Deliverooの既存のレストランフードデリバリーサービスと同じ方法を用いている。提携したアルコール飲料の販売主は、タブレットコンピューターとDeliverooのアプリを提供される。そのアプリ上で、販売主が注文の受注や処理を行い、注文商品をピックアップし、近くのDeliverooメンバーのバイクや自転車により商品が配達される。平均配達時間は20分と公約している。

このような、スタートアップの既存のフードデリバリーサービスにアルコールデリバリーを追加する動きは、既存の車両や配送基盤を存分に活用するという面もありつつも、手近に利益を得られる施策を取っているという感覚が大いにある。ことのほか、Deliverooの投資家たち(既存および将来の支援者)は継続的な(そして飛躍的な)成長を要求しているのだろうから。

もしくは単に、最近のUberによる競合サービスUberEatsのロンドンでのレストランデリバリーサービスのローンチ、もしくは噂されているAmazonのUK進出に対して祝杯をあげるうってつけの方法であるのかもしれない。

これはもちろん冷やかしである。ただ、タバコや夜更かし用のお菓子と一緒に様々なアルコール飲料が注文でき、対象地域に1時間以内で配達する「お酒のUber」と言えるロンドンの Bevyは、ほぼ確実に歓迎していないであろう。

[原文へ]

(翻訳:Shino Shimizu)

Kelloggが新ファンド「1894」を設立、食品関連スタートアップに投資

kelloggs_corn_flakes

シリアルを掬っている間に、大きなニュースが入った。Kellogg Companyはベンチャー部門「Eighteen 94 Capital(1894)」をローンチし、食品と食品関連テクノロジー企業に投資する。

この名前はKellogg CompanyのファウンダーであるDr. John Harvey Kelloggと彼の兄弟W.K. Kelloggが、どう見てもローテクなシリアルを初めて開発した年に敬意を表し、命名された。

ベンチャー投資家は、これまでコンシューマー向けパッケージ製品に関心を示すことはなかったが、ソーシャルメディアから分子センサーに至るまで、食品の開発、製造、マーケティング、販売においてテクノロジーは大きな役割を担いつつある。

Kelloggの取り組みは、食品の巨大なグローバル市場で注目されるスタートアップ企業を押さえるために続々と設立されたファンドのうちの1つだ。

米国農務省のデータによると、グローバルな食品小売販売は年間4兆ドルに達するという。そして、2020年にはパッケージ食品だけでも3兆300億ドルの収益になるとAllied Market Researchは予測している。

食品関連企業に特化する最近のベンチャーファンドにはAccel FoodsCAVU VenturesS2G VenturesCircleUpなどがある。

コンシューマー向けパッケージ食品の大手企業でベンチャー投資をすでに定常的に行っているところにはGeneral Millsの301 INC ファンド、Campbell Soup Co.が単独のLPであるAcre Venture Partnersなどがある。

Canaan Partners、Andreessen Horowitz、Khosla Venturesといった確立されたテクノロジー投資企業も、食品や飲料メーカーに投資している。それぞれNatureBoxSoylentHampton Creek Foodsに投資している。

KelloggはサンフランシスコのTouchdown Ventures と協力して、新ファンドを設立したと1894のマネージング・ディレクターSimon BurtonとKellogg Companyの副会長を務めるGary Pilnickは伝える。

Kelloggがベンチャー投資を始めた理由についてBurtonは「私たちの業界におけるイノベーションは急激に加速しています。物事は素早く変わっていって、将来において何が重要になってくるかを見極めるためには投資するのが良い方法だと考えています」と話す。

1894は、500万ドルから1000万ドルの収益がある自然食品、オーガニック食品や飲料、新たなパッケージ食材、材料の製造企業や販売やマーケティングテクノロジーに関する北米企業を対象に投資を始めるとBurtonは話す。

1894の標準的な投資規模は、シリーズA、シリーズBステージのスタートアップ向けに100万ドルから300万ドルの間となる予定だという。ファンドでは、次の5年間で累計1億ドルをスタートアップに投資する準備を整えているという。国際的な投資もゆくゆくは行う予定だ。

Eighteen94 Capitalは、ミシガン州バトルクリークにあるKellogg Co.の投資部門

「もちろん食品企業にフォーカスを当てます」とPilnickは言う。「しかし、コンシューマーや販売パートナーへのリーチを助けるテクノロジー企業にも投資を検討します。私たちは買い物客が買い物をする接点も確保したいと考えています。当然のことのように思うでしょうが、そうするにはたくさんの方法があるのです」。

1894の投資資金はKelloggのバランスシートから引かれる。

Touchdown VCのマネージング・ディレクターRich Grantと会長のScott Lenetは、引き続き1894とKelloggに協力する。ミシガン州、バトルクリークにあるKelloggと広いVCコミュニティー、そして食品関連企業のアクセラレーターとをつなげていくと言う。また、Kelloggと共同投資家をつなげるだけでなく、1894に投資案件を持ち込み、それらを評価したり、スタートアップのデューデリジェンスを行う面でもサポートしていくという。

最終的にKelloggが独自の投資判断で、どこにいくらで投資するかを決定するとGrantは強調した。

Kelloggはシリアルを作っていることで有名だが、他にもMorningStarやGardenburgerといったベジタリアン向けブランド、PringlesやAustinなど塩気の多いお菓子ブランドなど多くの製品ブランドを保有している。

Burtonは、Kelloggが社内に持つ深く広い見識、特に食品小売業との関係や知識が、この新たなファンドに食品関連の起業家を惹きつける魅力になることを期待している。

Pilnickは「仕事を成し遂げるためにパートナーと組んで、協力するというアメリカ中西部の精神が私たちにはあります」と話す。

このファンドはまだ具体的な投資案件を発表していない。

[原文へ]

(翻訳:Nozomi Okuma /Website

微生物からなんでも作り出すGinkgo Bioworksが1億ドルを調達、合成DNAの大量購入のため

unspecified

Ginkgo Bioworksはポストンに拠点を置くバイオテックのスタートアップで、微生物からありとあらゆる種類の香料や調味料を作り出している。この度Ginko Bioworksは6億ベースの製造されたDNAを入手するため1億ドルの資金をシリーズCのファンディングで獲得した。Ginkgoによるとこれは「これまで購入された合成DNAとして最大の規模」だという。

同社はその何百万ベースもの遺伝コードを使って新しい領域に乗り出そうと計画している。例えば、「汎用の化学薬品、工業用酵素、保健医療」などの市場だ。

新たな資金は全て現金で、これでGinkgoがY Combinatorでローンチしてから2年足らずで得た資金の合計は1億5千4百万ドルにもなる。これはY Combinator発のスタートアップの中でもトップ10に入る額だ。

この新しい形態のバイオテック、つまり薬品製造がらみではないバイオテックは、2014年になって、DNA合成コストの劇的な低下に伴い俄然ヒートアップしてきた。GinkgoはY Combinatorが投資した最初のバイオテックスタートアップの内の一つで、今なお競合相手がほとんどいない。数少ない競合相手の中には、西海岸で似たような業務を行うZymergenがあり、微生物のDNAを操作し消費者向け材料を大量生産することを目標に、今日までに4500万ドルの資金を調達した。

このラウンドの資金はYCのContinuity Fund、Senator Investment Group、Cascade Investment、Baillie Gifford、 Viking Global Investors、Allen & Company LLCより調達した。Viking GlobalはシリーズBのリードインベスターでもあった

Ginkgoは現在調味料、香水、食品産業のための商品を製造しているが、DARPAとも共同でプロバイオティックを製造しており、それはアメリカ兵が海外でお腹の調子を崩した時、整腸するためのものだ。しかし同社は昨年から他の産業分野への事業拡張を視野に入れ始めた。

Ginkgoは2015年の春に、1億ベースのDNAを購入し新しい製造分野に進出すると発表したが、それ以来その量を6億ベースに引き上げ、Twist BiosciencとGen9と業務提携し合成DNAの供給を受ける。Twistは少なくともその内の4億ベースを2017年の内に納入すると誓約している。

Ginkgoはさらに資金の一部をBioworks2を建てるのに使う予定だ。Bioworks2は7万平方フィートの広さを持つ新しい自動化された設備で、GinkgoでデザインされたDNAのプロトタイプをテストし新しい製品を創出する場所だ。その製品とは共同設立者のJason Kellyが言うところの「テックが見捨てたバーティカル製品」、例えば栄養や製薬業など。

「これらの産業はソフトウェアのように根本的に破壊的ではないのでとてつもなく大きなチャンスがあります」とKellyは言う。「生物をデザインすることがもっと上手く行き出せば、なんでも作れるようになります。そうすれば、これまでのテック産業が近づくことのできなかったセクターを崩せるのです」

Ginkgoは既にこれらの産業分野で多くの新しい製品を作っており、Kellyによれば、今回の資金は、Bioworks2が完成するのに伴い、Ginkgoがこれまでしてきたのと同様のことを今後も継続して行ってゆく上での助けとなるということだ。

[原文へ]

(翻訳:Tsubouchi)