テスラ、太陽電池パネルの欠陥疑惑で米証券取引委員会が調査

米国証券取引委員会(SEC)は、Tesla(テスラ)が太陽電池パネルシステムに火災リスクがあることを株主に開示していなかったという内部告発者の疑惑を受け、同社に対する調査を開始した。

Reuters(ロイター)の報道によると、この告発はテスラの元従業員であるSteven Henkes(スティーブン・ヘンクス)氏によるもので、同氏は2019年に米国証券取引委員会に告発状を提出している。この調査が明らかになったのは、ヘンクス氏が当初の内部告発を申し立てた結果について、情報公開法に基づく要求を委員会に提出したためだ。

SECはヘンクス氏に何の記録も提供していないものの、9月24日付けの書簡で「あなたが記録を求めている調査はまだ有効であり、進行中である」ことを認めた。SECはTechCrunchの問い合わせに対し「調査の可能性の有無についてはコメントしない」と述べている。

ヘンクス氏は告発状の中で、テスラと同社が2016年に買収した子会社のSolarCity(ソーラーシティ)が、火災の原因となり得る欠陥が見つかった電気コネクタのことについて、顧客に知らせていなかったと主張している。

LinkedInのプロフィールによると、ヘンクス氏は約4年半にわたってテスラに勤務した後、2020年8月にテスラを解雇されている。解雇される前、同氏は現場の品質管理者だった。また、ヘンクス氏は以前、Toyota North America(北米トヨタ)で品質開発および計画を担当するマネージャーとして働いていたことがある。

ヘンクス氏はその後、テスラを不当解雇で訴え、解雇は安全上の懸念を提起したことへの報復だと主張した。訴状によると、ヘンクス氏はSECに懸念を告発する前に、テスラに火災の危険性を通知していたという。

テスラのソーラーパネルで安全性に関する問題が明るみに出たのは、今回が初めてではない。2019年には、Walmart(ウォルマート)の7つの店舗に設置された屋上のソーラーパネルシステムから火災が発生したとして、契約違反と重過失の疑いでテスラはウォルマートから訴えられた。それから3カ月後に両社は和解に達し、ウォルマートは訴訟を取り下げた。

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また、Business Insider(ビジネス・インサイダー)は、テスラがコードネーム「Project Titan(プロジェクト・タイタン)」と呼ばれる大規模なプロジェクトを実施し、欠陥のあるソーラーパネルのコネクターを交換していたことを暴露した。

テスラはまた、別の連邦規制機関からの安全性に関する調査にも直面している。米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)は、テスラの先進運転支援システム「Autopilot(オートパイロット)」が作動していた際に発生した事故について調査を行っているところだ。

画像クレジット:Tesla

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【TC Tokyo 2021レポート】キノコの菌糸体からレザーを作るBolt Thread、2022年には日本ブランドとのコラボも

先に開催された「TechCrunch Tokyo 2021」。「海外スタートアップとSDGs」と題したセッションでは、スピーカーにBolt Threadsの創設者でCEOのDan Widmaier(ダン・ウィドマイヤー)氏を迎えた。モデレーターは米国を中心にスタートアップやテクノロジー、VCに関する最新トレンドなどを配信する「Off Topic」を運営する宮武徹郎氏が務める。

2022年春には大手ブランドからキノコの菌糸体で作ったレザー製品が発売される

Bolt Threadsは代替レザー素材の「Mylo」(マイロ)で注目されている。マイロは、キノコの根にあたる部分で繊維質が多く糸状の形状をしている菌糸体から作られる環境負荷の少ない素材だ。動物性の毛皮やレザーを使わないことで以前から知られるStella McCartneyの他、adidasやKering、lululemonなどのグローバルブランドとコンソーシアムを形成して、マイロを使った製品開発を進めている。adidasはスニーカーの「スタンスミス マイロ」を2022年春夏コレクションで発売、ルルレモンはヨガマットとバッグを2022年春に発売することを、それぞれ発表済みだ。Stella McCartneyも2021年3月にマイロを使った衣服を公開した。

ウィドマイヤー氏はカリフォルニア大学サンフランシスコ校で化学と化学生物学の博士号を取得した。2009年に2人の共同創業者とともに、バイオテクノロジーを活用して次世代の材料を開発するBolt Threadsを設立。現在の同社は、社員約100人を擁する生体材料プラットフォーム企業に成長した。同氏は2021年に英国・グラスゴーで開催されたCOP26でマイロを紹介した。

自然の材料エコシステムと自分たちの専門性から生まれたビジネス

「クレイジーで破壊的なビジネスについて、あますところなくお話しします」とセミナーの口火を切ったウィドマイヤー氏。創業の経緯について「私たち世代のメガトレンドとなるであろうものを見据え、そこにビジネスチャンスがあると考えました。気候変動とそれに対する人類の適応です。自然界にすばらしい材料エコシステムがあることと、自分たちが合成バイオロジーとバイオテクノロジーの専門家であることを結びつければ、今後長く続くであろうメガトレンドにフィットした製品やサービスを提供できるというシンプルなアイデアからBolt Threadsを立ち上げました」と説明した。

こうした考えから開発したのが、キノコの菌糸体から作るマイロだ。ウィドマイヤー氏は「地球上には38億年前から生命が存在しています。あなたの周囲を見れば生物が成長しているでしょう。見渡す限り、すばらしい材料が存在しているはずです。これらはすべて循環的に進化しています。自然は、自然の中にある材料を摂取し、新しい材料の中に返すのです」と循環型経済の素晴らしさを語る。

これに対して宮武氏は、同社のサステナブルなイノベーションがファッション業界に与えるインパクトを尋ねた。

ウィドマイヤー氏によれば、ファッションのサステナビリティに影響する要素として「環境負荷の75%は製品の原料とその調達方法の選択によるもの」で、同社は将来的に大きなインパクトを与えられるという。

同氏は「今、私たちは地球環境に大きな影響を与えるかどうかの瀬戸際にいます」と語り、オーディエンスに対して「科学技術者は将来何を実現できるかについて、夢追い人かつ楽観主義者であるべきです。資源をより効率的に使用している未来を夢想し続けるのです」と呼びかけた。

マスマーケットで販売する道筋が見えてきたマイロ

では、マイロとはどういう素材で、現在はどのような状況なのか。

ウィドマイヤー氏は「自然が創り出した非常に細かい繊維です。これを利用すればまるでレザーのような感触のものを作れるのです」と説明し、実際にマイロレザーをカメラの目の前にかざして見せてくれた。布状にした後で、エンボス加工と仕上げの加工を施したものだという。菌糸体は効率的に育てることができ、土壌の中で有機分を分解してそれを他の生物が食べて成長するという循環が成立する。

マイロのサンプル

こうした特性を活かした製品化にあたっては「技術は拡張可能でなければならない、高品質でサステナブルで価格競争力がなければならない。こうした要件をすべてクリアしてきました。菌糸体は間違いなく最適な選択でした」と同氏はいう。

ウィドマイヤー氏から「価格競争力」という言葉が出たことから、宮武氏はマイロが市場で価格競争力を得る見込みを尋ねた。

ウィドマイヤー氏は、マイロに関しては2021年に生産設備を増強し、2022年に稼働させて、年間生産量を100万平方フィート(約9万2000平方メートル)に拡大すると説明した。ただし「ファッションは巨大産業で年間350億平方フィート(32億5000万平方メートル)のレザーが消費される世界ですから、当社が生産量100万平方フィートになり、さらに拡大していったとしても到底およばないのですけどね」とのことだ。

「人が開発するものは、それが何であれ、最初は非常に高い価格となります。しかしその価格は急速に下がります。私たちはスケールアップのためのいくつかのステップをクリアして、マイロをマスマーケットで販売する道筋が見えています」(ウィドマイヤー氏)

サステナブルな素材を消費者に届けるための協業

マイロをマスマーケットで販売する道筋、それがブランドとともにコンソーシアムを作った目的だ。「流通システムを持っているのは誰か、人気商品を販売するための消費者との接点を持っているのは誰か。そこでしか人々に影響を与えたり消費者とつながったりすることができません」(ウィドマイヤー氏)

同氏は次のように言って、ブランドにマイロを売り込んだという。「これは世界が必要とするもの、消費者が求めるもの、あなた方が求めるものです。生物が住み続けることのできるサステナブルな地球を維持したいでしょう?ビジネスモデルを変えていきましょう。Bolt Threadsは御社の力なしではこの技術を消費者に届けられません。御社はBolt Threadsの技術がなければ消費者に製品を提供できません。1つのブランド、1つのスタートアップ企業が達成できる以上のことを、ともに協力して成し遂げようではありませんか」。

サステナビリティなビジネスを牽引するのは消費者

宮武氏から消費者の変化について聞かれたウィドマイヤー氏は、次のように語った。

「消費者はこの10年間で劇的に変化しました。10年前はサステナビリティやビーガンなどの用語は笑い飛ばされるだけでした。ベンチャーキャピタルも企業も消費者も誰も相手にしてくれませんでした。それが今では山火事など気候変動による急速な影響を目の当たりにして、人々は環境保護に熱心になりました。若い世代ほど熱心です。彼らは私たちがダメにしたこの地球でこれからも生きていかなければならないですから。こうした大きな変化によってBolt Threadsが成長できただけでなく、多くのブランドがコンフォートゾーンを抜け出してでも解決策を模索し、採用するようになりました。このビジネスを牽引しているのは、まさに消費者です。多かれ少なかれ、企業は消費者の需要に応えるものです。消費者がトレンドを引っ張り、変化を実現するのです」。

日本のブランドとの協業も!

セッションの最後に、ウィドマイヤー氏は日本のオーディエンスに向けてサプライズを用意していた。具体的な社名は明かさなかったものの「2022年に日本のブランドと初めてパートナーシップを結びます」と公表し、発売予定の財布のプロトタイプを見せてくれたのだ。菌糸体でできたレザー製品を実際に見て試す機会は、すぐそこまで来ている。

日本のブランドとコラボした財布を見せるウィドマイヤー氏

(文:Kaori Koyama)

レストランやフードデリバリーの容器再利用を進めるDispatch Goodsが4.2億円を調達

プラスチック容器は、リサイクル品の受け入れを停止した国が増えているため、世界中の埋め立て地や海に捨てられている。これはとても深刻な問題だ。平均的な米国人は、毎年110ポンド(約50kg)の使い捨てプラスチックを使用・廃棄しているが、米国でリサイクルされているプラスチックはわずか8%だ。

レストランやフードデリバリーサービス、食料品店でもらうクラムシェル型のプラスチック容器はすべてリサイクル可能だと思うかもしれないが、現実としてはすべてのリサイクルセンターでそれらを受け入れられるわけではない。

Dispatch Goodsの再利用可能な容器のコレクション(画像クレジット:Maude Ballinger)

Dispatch Goodsの共同創業者でCEOのLindsey Hoell(リンジー・ホーエル)氏は、プラスチック容器やフリーザーパック、パッケージを回収するという重労働を引き受けるインフラを構築するために、2019年に同社を立ち上げた。容器類ははすべて同社の施設に運び込まれ、洗浄・消毒され、再利用のために再び販売される。レストランやフードデリバリーの顧客も、容器に記載されている番号をテキストで送信して、Dispatch Goodsによる回収を予約したり、容器を返却箱に入れたりすることができる。

会社を設立する前、ホーエル氏は医療関係の仕事をしていたが、カリフォルニアに移住してサーファーになることを夢見ていた。同氏は結局、カリフォルニアに移住し、そこでプラスチック危機を知ることになった。共同創業者のMaia Tekle(マイア・テクル)氏とは、Dispatch Goodsの立ち上げ時にSustainable Ocean Alliance(持続可能な海洋連合)を通じて出会った。当時、テクル氏はCaviarで西海岸のパートナーシップを担当していた。

ホーエル氏はTechCrunchに次のように語った。「リサイクルは人々に良いことをしているように思わせますが、もっと深く掘り下げてみると、流通市場での需要がなければ、必ずしも良いことをしているとは言えません。容器はダウンサイクルしかできませんが、容器を回収して処理する良いインフラがありません」。

Dispatch Goodsはそのインフラの構築に着手し、現在では週に1万〜1万5000個の食品パッケージを回収・処理している。また、DoorDashやImperfect Foodsなどの50社以上の顧客や、Bomberaをはじめとするベイエリアの50のレストランと提携している。ホーエル氏によると、Bomberaは夏にDispatch Goodsを利用し始めてから4000個の容器を交換した。

2021年に合計で約25万個の使い捨てプラスチックを交換したDispatch Goodsは12月6日、370万ドル(約4億2000万円)のシード資金調達を発表した。このラウンドはCongruent Venturesがリードし、Bread and Butter Ventures、Precursor Ventures、Incite Ventures、MCJ、Berkeley SkyDeckが参加した。今回のラウンドによりDispatch Goodsの資金調達総額は470万ドル(約5億3000万円)弱となった、とホーエル氏はTechCrunchに語った。

ホーエル氏とテクル氏は、トラックやフォークリフトの運転を学ぶほどの実践的な創業者だが、2020年9月に700ドル(約8万円)だった月間売上高が5月には2万ドル(約226万円)にまで成長したことを受けて、Dispatch Goodsは後押しを必要としていた。

2人は、チームを成長させ、サンフランシスコのマイクロハブを含む現在の施設を、その地域外で起きている成長やボルチモアの新施設に対応できるようにするために資本を探し求めた。

「このユースケースは以前には存在しなかったので、再利用のための施設をどのようなものにするか戦略化するまでの間、これを最大限活用します」とホーエル氏は話す。「私たちは今、戦略を構築している最中です」。

新たな資金は、地理的拡大、レストランとの提携拡大、新しいパッケージングの可能性の追求などに投資する予定だ。また、現在スタッフは9人だが、年内に3人加える。

Dispatch Goodsは、主にレストランとの提携を進めているが、先月、一般消費者を対象としたパイロットプログラムを開始した。一般消費者からの関心は寄せられたが、最終的な参入障壁を低くするために、企業への販売に徹するとホーエル氏は話す。

ホーエル氏は、成長の指標については具体的に説明しなかったが、収集したアイテムの数と立ち寄った回数を記録していると述べた。事業開始当初は、1回の立ち寄りで約4点のアイテムを回収していたが、現在では平均12点を回収し、立ち寄り回数も3回から9回程度に増加している。

一方、ホーエル氏とテクル氏は、Congruent Venturesの副社長であるChristina O’Conor(クリスティーナ・オコナー)氏を新しい役員会メンバーの1人として迎え入れることを楽しみにしている。

オコナー氏は「ゼロ・ウェイスト(ごみゼロ)運動は急速に拡大しており、持続可能な未来のためには、循環型パッケージングは避けて通れないものだと考えています」と声明で述べた。「リンジーとマイアは、再利用のために設計されたインフラを支える新しいシステムを構築するための熱意、戦略的洞察力、そして情熱を持っていることを証明しました」。

Dispatch Goodsのアドバイザリーチームには、DuContra Venturesの共同創業者で俳優のAdrian Grenier(エイドリアン・グレニアー)氏というスターパワーもある。グレニアー氏は、Dispatch Goodsの活動について「ずっと気になっていました」と語った。実際、同氏はプラスチック容器に反感を持っており、テイクアウトを極力避け、自分で再利用可能な容器を持ち込んだりさえする。

「私たちは、世界を再構築することがいかに困難であるかを知っています。テクノロジーが与えてくれたオンデマンドのライフスタイルに誰もが興奮していますが、どれほどの犠牲を払っているのでしょうか。Dispatch Goodsは、企業の利便性を高め、ビジネスモデルにおけるこの種の転換を可能にする機会を提供します」と同氏は述べた。

画像クレジット:Maude Ballinger / Dispatch Goods co-founders Maia Tekle and Lindsey Hoell

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

環境保護は企業の負担ではなく利益の機会とSpoiler Alertは主張する

私たちは食品の育成や加工、輸送、販売などに、とてつもない量のリソースを割いている。十分に食べられない人がいる世界で、米国では生産される食べ物の30から40%が消費されていないことは恥ずかしいことだ。Spoiler Alertはこの問題に焦点を当てた。同社は最近1100万ドル(約12億30000万円)を調達してその仕事の規模を広げ、もっと多くの食べ物を、祭壇の供物にすらならないことから救おうとしている。

Spoiler Alertの共同創業者でCEOのRichard Ashenfelt(リチャード・アシェンフェルト)氏の説明によると「食品の廃棄は企業の利益機会の大きな喪失で終わる問題ではなく、地球レベルの気候危機の最大の原因でもあります。私たちが最初から抱えているビジョンと仮説は、『食糧を大規模に生産している企業などに、良質な製品が廃棄物になることを防止するツールや英知、そしてネットワークへの接続を効果的な方法で提供するためには、何をどうすべきか』という点にあります。私たちは、大量廃棄や有機物リサイクルに頼る前に、このビジョンをできるだけ多くの消費者に届けようとしています」。

Spoiler Alertのプラットフォームを、現在、多くの世界の大規模加工包装食品メーカーが、彼らのB2B流動化プロセスのデジタル化のために利用している(従来廃棄物になっていたモノの現金化)。顧客は、NestléやKraft Heinz、Campbell Soup Company、Danone North Americaなどで、4社とも世界最大の食品と飲料メーカーだ。

Spoiler Alertの共同創業者でCPOのEmily Malina(エミリー・マリナ)氏は次のように語る。「私たちが固く信じていることは、もはや廃棄という処理方法は必要なものではなく、事業費用として容認できるものでもないということです。私たちが行っていることのすべては、そのままにしておけば腐敗するだけの食品在庫をできるだけはやく移動して、それらを企業とリテイラーと消費者とそしてこの惑星の利益に変換することです」。

それがどうして同社のミッションになったのか、アシェンフェルト氏の説明は続く。「世界の食べ物の、供給の30〜40%は、消費されずに終わる。さまざまな対気候変動ソリューションをリストし検証しているProject Drawdownの研究調査によると、地球規模の気候危機に対する有効性の大きい対策の1つが、食品の廃棄を減らし解消することだ。私たちの場合は、食べ物を埋立地行きから救いだせば救い出すほど、大気汚染は減少し、リソースはそのプロダクトをもっと良い方法で収穫し流通することに向けられる。それは究極的には、それらのプロダクトを売ることによって企業の利益にもなり、プロダクトの償却が減るので、廃棄費用も不要になります」。

Spoiler Alertの創業者リチャード・アシェンフェルト氏とエミリー・マリナ氏(画像クレジット:Liz Linder Photography

企業はSpoiler Alertの柔軟性が高くしかもプライベートな流動化プラットフォームを利用して、余剰在庫や短納期の在庫、陳腐化した在庫などをシームレスに販売することができる。それが企業の利益を増やすことにつながり、リテイラーやその他の在庫一掃チャネルにとって臨時在庫の強力な供給になる。しかも「遅すぎた」ということがない。Spoiler Alertの強さを感じるのは、同社が資本主義の枠内で操業してこの問題の解決に取り組んでいるためだ。

アシェンフェルト氏は「私の父は環境問題の弁護士で、学生および学者としての私はその全精力を、世界最大のエネルギーと環境の問題を、プライベートセクターがプライベートセクターでありながら解決できる方法の研究に捧げてきました。私は生まれながらの環境保護家ですが、商業的であろうと努めてきました。企業や消費者が環境に対して正しいことをするための、容易で具体的なソリューションを私は追究してきた。そんな私たちが強く感じているのは、持続可能な気候にフォーカスした投資へのベストアプローチは、企業がスケールできる本物のビジネスに根ざすものでなければならない、ということです」という。

この投資をCollaborative Fundがリードし、Acre Venture PartnersThe Betsy & Jesse Fink Family FoundationMaersk GrowthSpring Point Partners、そしてValley Oak Investmentsが参加した。

画像クレジット:Spoiler Alert

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ポルシェがカーボンニュートラルな家庭のためのワンストップショップを目指す独スタートアップに出資

Porsche(ポルシェ)のベンチャー部門は、エネルギー貯蔵、電気自動車の充電インフラ、太陽光発電など、カーボンニュートラルな家庭を実現するために家庭に必要なものをすべて提供することを目指しているドイツのスタートアップ1Komma5(ワンコンマファイブ)に少数株主として出資した。

投資額は公表されていないが、Porsche Venturesは過去2年間に、イスラエルのセンシング技術のスタートアップTriEye電動マイクロモビリティのオンラインディーラーRidePandaバーチャルセンシングのスタートアップTactile Mobilityなどに出資してきた。

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今回の投資は、Porsche Venturesの典型的なモビリティ技術に関するものとは少し異なる。

Porsche Ventures Europe and Israelの責任者であるPatrick Huke(パトリック・ヒューケ)氏は「今回の投資で、スマートシティとサステナビリティの分野における我々の野心を強調したいと思っています」とTechCrunchに語った。

ドイツ・ハンブルグ拠点のこのスタートアップは、CFOを務めるMicha Grueber(ミーヒャ・グルーベル)氏、そしてTeslaとエネルギー貯蔵システム会社Sonnenで働いた経験を持つPhilipp Schröder(フィリップ・シュローダー)氏によって設立された。

パリ協定の目標である「気温上昇を1.5度以内に抑える」ことにちなんで名付けられた1Komma5は、ワンストップショップという目標に向けて興味深い方法をとっている。

シュローダー氏は最近のインタビューで「今日、どの企業も太陽光発電やエネルギー貯蔵などのコンポーネントの販売に集中しています。その一方で、ヨーロッパでは、これらの分散型資産をまとめることに注力している企業はありません。これでは問題が発生するのは必至です」と話した。

「分散型エネルギーの世界では、各家庭にヒートポンプや充電ポイント、蓄電システムがあっても、それらがグリッドレベルで(あるいは相互に)通信しなければ問題が発生します」と同氏は話す。

1Komma5は、買収だけでなくソフトウェアを通じてすべてを統合することを目指している。具体的には、1Komma5はドイツ国内で、太陽光、ヒートポンプ、エネルギー貯蔵などの再生可能エネルギーに特化した大手電気設備会社の買収を目指しており、最終的にはオーストリアやスイスなどの他の国にも拡大する予だ。1Komma5は、これらの企業に対して、管理業務や顧客関係管理を行うための法人向けソフトウェアや、充電、太陽光、エネルギー貯蔵を結びつけるエネルギー管理ソフトウェアを提供する。

1Komma5のビジネスが興味深いのは、ソーラーやエネルギーストレージなどのコンポーネントを、家庭レベルとグリッドレベルで相互に接続する計画があるからだとシュローダー氏は話す。

1Komma5は、これまでに現金および株式による5件の買収を行っている。

この若いスタートアップは、今後2年間で1億ユーロ(約127億円)の現金と株式を使って、再生可能エネルギーに特化した設置会社をさらに買収するという壮大な野望を抱いている。ターゲットとしているのは、500万〜2000万ユーロ(約6億〜25億円)の売上と、熟練した労働力を持つ設置会社で、単に他の業者に委託しているような販売会社ではない。

Porscheからの資金は、1Komma5の事業拡大のために使用される。その計画には、プレミアムなAppleデザインのような雰囲気の小売店舗を開設し、潜在的な顧客がカーボンニュートラルな住宅に不可欠な構成要素について学べるようにすることが含まれる。このような店舗では、例えば、家庭用充電器、エネルギー貯蔵、太陽光発電などの隣にPorscheのTaycanが展示されるかもしれない。

最初のショールームは、ハンブルクのビネナルスターとリンゲン・アン・デア・エムスに計画されており、2022年第1四半期にオープンする予定だ。

Porscheは、1Komma5の製品を自社の顧客層に提供することをすぐには考えていない。しかし、ヒューケ氏が指摘したように、Porsche Venturesは戦略的な投資を行っており、中長期的にはさまざまな可能性を検討していくことになる。

画像クレジット:Porsche

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

Energy Domeは太陽エネルギーの貯蔵に二酸化炭素を利用する

長時間にわたるエネルギー貯蔵は厄介だ。だが多くのバッテリー技術は「EVをさらに数百マイル走らせるために、バッテリーをどれだけ速く充電できるか」に焦点を当ててきた。急速充電は、月が夜空をゆっくりと散歩している12時間に使う電力を、昼の12時間で太陽から得ようとすることとは根本的に異なる問題だ。

米国時間11月30日、Energy Dome(エナジードーム)は、拠点を置くイタリアのサルデーニャ島での実証プロジェクトで、世界初の商用CO2(二酸化炭素)バッテリーを設置するために、1100万ドル(約12億5000万円)のシリーズA資金調達を行ったことを発表した。

同社によれば、CO2バッテリーの最適な充電 / 放電サイクルは4〜24時間であり、日次および日中のサイクルに最適だという。また、これは現在急成長している市場セグメントであり、既存のバッテリー技術が十分にカバーできていなことも指摘している。具体的には、太陽光発電の余力がある日中にCO2バッテリーを充電しておいて、電力需要が太陽光の供給量を上回る夕方や夜間のピーク時に放電することを想定している。なぜなら──まあ当たり前過ぎてわざわざ書くのもはばかられるが──夜は太陽が出ていないからなのだ。

同社は、市販のコンポーネントを使用して構築されているそのCO2バッテリーが、75〜80%の充放電効率を達成していると主張している。しかし、おそらくもっと興味深いのは、バッテリーの動作寿命がおそそ25年程度になると予測されていることだ。他の電力貯蔵ソリューションの事情をよく知っている人なら、ほとんどのソリューションの動作性能が、10年を超える頃には大幅に低下し始めることに気がついているだろう。同社は、製品のライフサイクルコスト全体を考慮した場合、エネルギーを貯蔵するコストが、同じサイズのリチウムイオン電池で貯蔵するコストの約半分になると予測している。

この技術は非常に優れており、同社はCO2をガスから液体に、そしてまたガスに戻す閉ループサイクルで利用する。ソリューションの一部となる、ガス状のCO2を充填した膨張可能なガス容器部品にちなんで、会社は「ドーム」と命名されている。

充電時には、システムは電力網から電力を引き込む。この電力を用いてドームからCO2を引き出して圧縮するコンプレッサーを駆動し、熱を発生させるのだ。この熱は蓄熱装置に蓄えられる。次に、CO2は圧力下で液化され、環境と同じ温度で液体CO2容器に保管され、充電側サイクルが完了する。放電時には、このサイクルが逆になる。液体のCO2を気化させ、蓄熱装置から熱を回収し、高温のCO2をタービンへ送り込んで発電機を駆動する。電気はグリッドに戻され、CO2は大気に放出されることなくドームを再膨張させ、次の充電サイクルに使われる準備が整えられる。このシステムの貯蔵容量は最大200MWhだ。

今回のラウンドはディープテックVCの360 Capitalが主導し、他の多くの投資家が投資ラウンドに参加した。その中には、インパクト投資アプローチを採用する大手銀行バークレイズの一部門であるBarclays’ Sustainable Impact Capital プログラム、ジュネーブを拠点とするマルチファミリーオフィスのNovum Capital Partners、そしてRMIとNew EnergyNexusによって設立されたグローバルな気候テクノロジースタートアップアクセラレーターのThird Derivativeが含まれている。

画像クレジット:Energy Dome

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:sako)

AWS、エネルギー業界対象の「AWS Energy Competency Program」を発表、持続可能なエネルギーの未来への移行をナビゲート

Amazon(アマゾン)は米国時間11月30日、エネルギー業界に向けた専門的なソリューションを開発するAWSパートナーを正式に認定する新しいプログラムを発表した。この新しいAWS Energy Competency Program(AWSエナジーコンピテンシープログラム)は、より持続可能なエネルギーの未来への移行をナビゲートしながら、世界中のエネルギー生産者が最新の技術を用いてAWSを搭載したソリューションを構築・実装することを助けることができる技術的専門知識と顧客の成功をすでに実証している専門パートナーを特定するものだ。

現在、多くのAWSパートナーがエネルギー業界と連携し、石油・ガス資産の探査段階から集荷・加工・輸送・管理・保守に至るまでの運用管理や、再生可能・持続可能な分野での運用管理など、AWSテクノロジーの活用を支援している。これらの業界では現在、クラウドコンピューティング、モノのインターネット(IoT)、人工知能(AI)、機械学習(ML)などのソリューションの導入が加速しているとAmazonはいう。

新しいAWSエネルギーコンピテンシープログラムは、持続可能な再生可能エネルギー資産を含むポートフォリオの開発を支援できるパートナーを含め、世界のエネルギー生産者との連携に関して、特定の専門知識を持つAWSパートナーを業界がよりよく識別できるようにする。

このプログラムは、エネルギー生産者向けの新しいプログラムの開発を支援するためにAWSと協力した32のグローバルパートナーを含んでいる。このグループには、特化したソリューション分野、業界の垂直構造、またはワークロードを支援できるパートナーが含まれている。パートナーは、エネルギー業界特有のベストプラクティスに関連した厳格な技術検証を受けなければならないため、これは現在、AWSパートナーが達成できる最も厳しい指定の1つであると、Amazonは指摘している。

画像クレジット:Amazon

パートナーの1つであるSlalom(スラロム)は、北米のエネルギー企業であるTC Energy(TCエナジー)の4万4000kmにおよぶ天然ガスパイプラインの管理を支援している。TC EnergyはSlalomと協力して、顧客がガスのスケジューリングを最適化できるよう機械学習を利用したビジネスインテリジェンスアプリケーションを開発した。別のパートナーであるAIビデオ分析プロバイダーのUnleash Live(アンリーシュ・ライブ)は、風力発電所、ソーラーパーク、水力発電、天然ガスプロジェクトなどを運営するインダストリアル・エンジニアリング・ソリューション・プロバイダーのWorsley(ウォーズリー)を支援した。Worsleyは、Unleash Liveを利用して、ドローンとコンピュータビジョンを活用して検査を行っている。

その他のパートナーは上流、中流、下流、新エネルギー、基幹業務アプリケーション、ヘルス、安全、環境、データアナリティクスなどのソリューションの提供を支援できるとAmazonは述べている。現在、プログラムへの参加に関心のあるAWSパートナーは、AWS Service Partners(AWSサービスパートナー)とAWS Software Partners(AWSソフトウェアパートナー)の両方の検証チェックリストを見ることができる。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Yuta Kaminishi)

気候変動に配慮する企業の水に関するリスクと持続可能なソリューションを追跡するWaterplan

新鮮な水は、気候変動の影響をますます受けている多くの資源の1つである。そしてその影響は、この豊富だが限りある天然資源に依存している企業にも及んでいる。シードラウンドで260万ドル(約2億9000万円)を調達したWaterplan(ウォータープラン)は、企業の水使用が地域の環境にどのような影響を与えるかということだけではなく、避けられないと思われる危機が到来したときに事態を沈ませておくのに役立つ緩和策を分析し、追跡することを目指している。

Jose Galindo(ホセ・ガリンド)氏とNicolas Wertheimer(ニコラス・ヴェルトハイマー)氏、そしてその同僚であるMatias Comercio(マティアス・コメルシオ)氏とOlivia Cesio(オリビア・セシオ)氏は、環境セクターとその周辺で長年働いた後にWaterplanを設立した。同氏らは水にまつわる現状を意識していた。二酸化炭素排出に関する多くの行動、データ、計画が存在するにもかかわらず、水のリスクに関しては、それが脅威として認識されるに至っていないため、比較的ほとんど行われていない。4人は会社を立ち上げ、Y Combinator(Yコンビネーター)の2021年夏のコホートに参加した。

「より多くの企業が水の安全性や水に関するその他の考慮すべき事柄を開示し、行動していますが、水のリスクの定量化とメディエーションを担うSaaSプラットフォームが必要です」とガリンド氏は語る。「企業は事後対応型のアプローチを取ってきましたが、そうした(気候関連の)弊害が頻繁に起こるようになってきているため、事態の予測と先手を打つ行動のオポチュニティが生じています。気候変動はすでにこの分野に及んでおり、今後さらに加速していくでしょう」。

もちろん、これは「水道水を出しっぱなしにしない」というような単純なアドバイスではなく、雨押さえの補充や主要な自治体の工事など、産業規模の取り組みである。Waterplanはまず衛星画像からデータを抽出する。そして林冠、水域、その他の重要な指標を、客観的な測定値としてさまざまなコンテクストとともに示す。何年にもわたる画像と分析の結果から立証された明確な傾向に基づくものだ。この測定値は、これらの資源を綿密に監視する水や環境関連の当局による直接測定値と組み合わされる。

一例を挙げると、コーヒー豆を加工する工場では、近くの川の水を1時間に1万ガロン(約3万8000リットル)も使うことがある。工場の影響を示す過去のデータと将来的なデータを分析することで、5~10年後には持続可能な比率ではなくなり、下流で問題が発生することが示されるかもしれない。これらの問題により、会社はその時期に4000万ドル(約45億円)の損失を被ることにもなり得る。しかし、1000万ドル(約11億円)ほどのコストで、森林を再生して樹木の樹冠を拡大する現地の取り組みを倍増させれば、保水力が高まり浸食が緩やかになっていく。水の利用可能性が正味で増加し、4000万ドルのリスクを回避することにつながるだろう。

実際のレポートは明らかにより詳細で、特定の場所や企業に高度に特化している。それらがどのような規模で運用されているのか、どのような種類のデータを追跡しているのかを以下に示したい。

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  2. waterplan-2

  3. waterplan-3

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この種の分析とアドバイスは決して前例がないわけではないが、環境コンサルタントが年に1回か数回(もしあれば)行うようなものである。Waterplanのアプローチは、これを可能な限り自動化し、ビッグデータの問題として扱う。そこにはさまざまな因子が含まれており、リスクや緩和戦略のような要素が対極から浮かび上がってくる。もちろん、これはそれほど単純なことではないが、市場と自然現象の両方の変化が加速している現状では、より迅速に、よりターゲットを絞った実行可能な方法でこれを行う必要がある、と創業者たちは説明する。

「事前対応型よりも事後対応型の方がコストがかかります」とヴェルトハイマー氏。「私たちはこれを意識的な取り組みにする必要があります」。

ガリンド氏は、地元の水供給、復旧作業、その他の要因に関するデータの多くが断片化しており、互換性がないことを強調した。これらの異種の情報源を調整し、そのデータを統合されたマップと予測にまとめるには、多くの作業が必要となる。

ステージ上でイスに座る創業者たち。左からホセ・ガリンド氏、ニコラス・ヴェルトハイマー氏、マティアス・コメルシオ氏、オリビア・セシオ氏(画像クレジット:Waterplan)

「企業にとって重要なのは、さまざまな気候シナリオや場所で何が起きるのかを理解し、継続的にアップデートされた詳細な方法でそれを確認できることです」とガリンド氏は語っている。「現時点では水は安くて豊富ですが、常にそうであるとは限りません。2030年には需要と供給の間に30%のギャップが生じるでしょう。今後10年の間に圧力が生まれると考えています」。

より優れたデータを持ち、積極的に対策を講じてきた実績のある企業は、資源が減少したり、ウォータークレジットのようなものをめぐる競争が激化したりする中で、より有利な立場に立つことになる。現在でも、カーボンクレジットをはじめとする資源や投資が深刻に不足しており、何億ドル(何百億円)もの資金を投じたいと考える企業でさえ、そのオポチュニティを得られていない可能性がある(カーボン先物はこの問題を解決するポテンシャルがあり、清水などの資源についても同様の市場が出現することも考えられる)。

今後10年で気候監視エコシステムの大部分を占めることになるかもしれない分野に早期に参入することは、Waterplanの最初の投資家たち(Y Combinatorに続く)にかなり良い賭けだと判断されたようだ。260万ドルのラウンドをリードしたのはGiant Venturesで、参加者のリストには次のような著名な投資家が名を連ねている。Sir Richard Branson(サー・リチャード・ブランソン)氏一家、Monzo(モンゾ)の創業者Tom Blomfield(トム・ブロムフィールド)氏、Unity(ユニティ)の創業者David Helgason(デイビッド・ヘルガソン)氏とNicholas Francis(ニコラス・フランシス)氏、NFLのレジェンドJoe Montana(ジョー・モンタナ)氏、Microsoft(マイクロソフト)の元グローバルウォータープログラムマネージャーPaul Fleming(ポール・フレミング)氏、MCJ collective(MCJコレクティブ )、Climate Capital(クライメート・キャピタル)、Newtopia(ニュートピア)、Jetstream(ジェットストリーム)、Mixpanel(ミックスパネル)の創業者Tim Treffen(ティム・トレフェン)氏。

ヴェルトハイマー氏とガリンド氏によると、当面の計画は、主に開発を強化することに置かれているという。プラットフォームを構築するという複雑な作業を処理して、さまざまな業界や環境が望むような洞察を生み出し続けるためには、エンジニアや水文学者が必要だ。

同社が作成したデータや分析は政府やNGOに歓迎される可能性が高いが、変化をもたらす可能性が最も高いステークホルダー(そして、いわなければならないが、そのサービスのためにお金を払っている)は、リスクの削減や現地での地位の向上を目指す民間企業である。ただし創業者たち(以前は水へのアクセスやNGOとの関わりを強調していた)は、ひとたび牽引力が発揮され、プロダクトや手法が確立されれば、もっと広く利用できるようにしたいと考えている。

画像クレジット:dan tarradellas / Getty Images

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

北陸先端科学技術大学院大学が最先端ナノ素材を用いた電界センサー素子で雷雲の電界検出に成功、落雷予測の実現に期待

北陸先端科学技術大学院大学が最先端ナノ素材を用いた電界センサー素子で雷雲の電界検出に成功、襲雷予測・落雷検出の実現に期待

北陸先端科学技術大学院大学は11月26日、最先端のナノ素材グラフェンを用いた超小型電界センサー素子を開発し、雷雲が生み出す大気電界の検出に世界で初めて成功したことを発表した。襲雷予測のための広域雷雲監視ネットワークや落雷検出ネットワークの実現に期待が寄せられる。

グラフェンとは、炭素原子が蜂の巣状の六角形結晶格子構造で配列された単原子シートのこと。北陸先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科のアフサル・カリクンナン研究員、マノハラン・ムルガナタン講師、水田博教授らによる研究グループは、音羽電機東京工業大学地球インクルーシブセンシング研究機構と共同で、これを使った微細センサー素子「グラフェン電界センサー」を開発。雷雲が生み出す大気電界(大気中の微弱な電流)の時間的変化を検出することに、世界で初めて成功した。大気電界の極性も判別できるため、雷雲内部の電荷分布も推定でき、「複雑な雷現象のメカニズム解明に大きく寄与する」という。

(a)フィールドテストの様子、(b)グラフェン電界センサーの検出信号と既存のフィールドミル電界計の検出信号の比較、(c)検出地点から10キロメートル以内での雷発生状況

研究グループは、このセンサーをモジュール化して屋外で雷雨時に動作試験を行ったところ、20km以上離れた地点での落雷を電界ピーク信号として捉えることができた。このとき同時に既存の電界検出装置(フィールドミル型)も使用したが、その検出タイミングの精度がほぼ一致した。また、測定結果の解析により、5km圏内の落雷を32分前に予測できることもわかった。重量が1kg以上と重く、外部電源も必要とするフィールドミル型と比較して、グラフェン電界センサーは太陽電池で駆動できる超小型であるため、これを広域に数多く配置すれば、落雷検出ネットワークが容易に構築できるという。

ドイツの次期政権は石炭火力廃止を2030年に前倒し、連立政権樹立のための妥協に懸念も

ドイツは、最新の気候変動対策の一環として、従来の計画より8年早い2030年までに石炭の使用を廃止することを計画している。同年、ドイツでは電力の80%を再生可能エネルギーで賄うことを目標としている。BBCによると、ドイツ社会民主党のOlaf Scholz(オラフ・ショルツ)党首は、緑の党、自由民主党との3党連立政権の下で、前副首相がドイツを統治することになる協定の一部として、現地時間11月24日にこの計画を発表した。

9月26日に行われたドイツ総選挙では、緑の党が連邦議会で118議席を獲得し、過去最高の結果となった。ショルツ氏は、緑の党のリーダーであるAnnalena Baerbock(アンナレーナ・ベーアボック)氏を外務大臣に起用する見込みだ。さらに、緑の党の共同党首であるRobert Habeck(ロベルト・ハーベック)が副首相に就任し、国のエネルギー転換を監督する機会を得ると思われる。

注目すべきは、連立政権がより積極的な排出削減目標を設定しなかったことだ。同国は、2030年までに1990年比で65%の削減を目指すとしている。非営利団体Climate Action Trackerの試算によると、パリ協定で打ち出された摂氏1.5度の目標を達成するためには、ドイツは2020年代の終わりまでに、温室効果ガス排出量を少なくとも70%削減する必要があるという。

さらに、社会民主党との合意にあたり、緑の党は大きな妥協をした。Bloombergによると、石炭と再生可能エネルギーの間の移行を容易にするために、天然ガスを使用するとのこと。評論家たちは、連立政権はEVの導入を促進するためにもっと努力すべきだったと発言している。同国政府は、2030年までに1500万台のEVをドイツの道路で走らせるということしか計画していない。生物学者でNGOのCampact代表であるChristoph Bautz(クリストフ・バウツ)氏は、Clean Energy Wireに次のように述べている。「これは進歩のための連合には見えません。気候変動運動は、真の意味での気候変動政府にするために、連立政権に働きかけ続ける必要があります」。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Igor Bonifacic(イゴール・ボニファシッチ)氏は、Engadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:John W Banagan / Getty Images

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(文:Igor Bonifacic、翻訳:Aya Nakazato)

トラッキングと再利用可能な食品容器の最大のネットワークを構築していきたいPyxo

Pyxo(ピクソー)は、フランスのスタートアップ企業で、過去3年間、使い捨てのプラスチック製食品パッケージについて多くのことを考えてきた。同社は、再利用可能な食品用保存容器を簡単かつ低コストで大規模に利用できるようなサービスを提供したいと考えている。

Pyxoのアイデアは、パリのチュイルリー公園で開催された見本市で生まれた。屋台のすぐそばには、ソーダのカップやハンバーガーのクラムシェル容器など、使い捨ての食品パッケージがゴミ箱にあふれていた。

同社はまず、フランスの企業向けケータリングサービス会社であるSodexo(ソデキソ)と協力を開始した。彼らと協力してプラスチックカップを交換し、すべてを再利用できるようにしたのだ。しかし、コロナウイルスの流行やリモートワークへの移行に伴い、Pyxoは他のクライアントを探し始めることとなった。

Foodles(フードレス)Popchef(ポップシェフ)など、冷蔵庫にお弁当やスナックを詰めて提供するフードテック企業との連携を開始した。

しかし、Pyxoの最大の市場機会は、規制の変更からやってきた。2020年7月、フランスの議会は、いくつかの抜本的な変更を伴う廃棄物対策法を可決したのだ。レストランは2023年1月までに、再利用可能な食品容器に切り替えなくてはいけなくなった。

つまり、ファストフードのレストランチェーンでは、紙やプラスチック製のカップ、使い捨てのクラムシェルボックスなどが使えなくなるということだ。Pyxoはすでに、フランスの無名のファーストフードチェーンと協力して、再利用可能なパッケージへの切り替えを支援している。

同社は、再利用可能な食品容器の市場を作り、業界のあらゆる企業を結びつけている。ファストフード店が容器をまとめて購入すると、すべての容器にQRコードやNFCチップが付いてきて、どこにいても追跡できるようになっている。

レストランは清掃を専門業者に委託することができ、その業者がその日の容器を取りに来たときに、きれいな容器を一括して渡すことができる。これらの委託会社は、容器やカップなど、清掃するものを何でもスキャンしてくれる。

それに加えて、客はテイクアウトの食べ物を注文し、再利用可能な容器に入れて持ち帰ることもできる。その場合、アプリを使って最寄りの回収場所を探すこともできる。必ずしも注文したレストランである必要はないのだ。Pyxoでは、ゲーミフィケーションや少額のデポジット制を導入することで、返却のインセンティブを高めることを考えている。

共同創業者でCEOのBenjamin Peri(ベンジャミン・ペリ)は、「私たちのビジョンは、これがインフラ産業になることです」と話してくれた。Pyxoは、電力網のように機能するネットワークを構築していると考えている。将来的には、レストラン、集積所、清掃センターなどが密集したネットワークが形成されると信じている。

ファーストフードチェーンは、1つの顧客が全国に数多くのレストランを持っているため、この業界の起爆剤になるかもしれない。ファーストフードチェーンは、Pyxoがネットワークオペレーターを務めることで、他のアクターにネットワークへの参加を促すことができる。

現在、Pyxoを積極的に利用しているレストランは数軒しかないため、同社はまだ始まったばかりだ。しかし、このスタートアップは、Eurazeo(ユーラゼオ)、FiveSeasons Ventures(ファイブシーズンズ・ベンチャーズ)などから790万ドル(700万ユーロ/約9億円)の資金調達を行っている。

2023年1月1日には、このスタートアップは、レストラン業界だけで2000の販売拠点と連携することを期待している。Pyxoは、今後もフードテック企業や企業のケータリングサービスとの連携も期待しているが、事業の中での割合は小さくなるだろう。本日の資金調達により、同社は70名の従業員を追加採用する予定だ。

画像クレジット:Pyxo

画像クレジット:Pyxo

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(文:Romain Dillet、翻訳:Akihito Mizukoshi)

【コラム】不安定化が進む気候環境における分散型保険の重要性

「一生に一度」のような気象現象が毎年発生するようになっている状況は、経済、政府、地域社会にとってどのような意味を持つだろうか。

世界中でまったく新しい規模の自然災害が見られるようになっている。これまでは、新興経済諸国が誘発的な気候災害の打撃にさらされてきたが、現在では地球のどの地域に住んでいても、気候変動による壊滅的な影響を無視することはできない。

カリフォルニアにおける山火事は、毎年数千人と報告されている大気汚染による死亡者数に拍車をかけている。一方、ドイツでは2021年、記録的な洪水のために数百人が命を失った。このような極端かつ危険な気象条件への準備は、今や私たちすべてにとっての優先事項である。

このような異常気象の増加により浮かび上がる多くの疑問の1つは、誰が費用を負担するのかということだ。AON(エーオン)の報告によると、2021年上半期の自然災害による経済的損失の総額は約930億ドル(約10兆6000億円)と推定されている。2021年の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)が開催され、気候変動がもたらす経済的意味合いは、解決すべき多くの問題の中に重くのしかかっている。

気候変動は世界経済にとって最大のリスク要因であり、2050年までに経済価値全体が10%下落すると予測されている。これまでと同様、マレーシア、タイ、インド、フィリピン、インドネシアといった国々を含む新興経済圏が最も経済的にマイナスの影響を受けるとされており、2050年までに世界経済はGDPの18%を失うことになるという。

気候変動の影響を緩和するための代替アプローチを評価する時期にきている。新興経済国に住む何十億人もの経済的に疎外された人々は、これらの破壊的な影響にどのように対処しているのだろうか。

ブロックチェーンの善用

暗号資産と非代替性トークン(NFT)は、エネルギー消費に関して相応の精査を受けているものの、多くの未解決の領域が依然として注意と解決を必要としている。しかし、これらのユースケースの先に目を向けると、気候変動により不当に影響を受ける人々を保護するために特別に設計された、ブロックチェーンベースのソリューションが現れつつあることが見えてくる。

関連記事:【コラム】暗号資産とエネルギー消費をめぐる議論

ブロックチェーンは、環境再生型農業(リジェネラティブ農業)の促進から意識的な消費の促進まで、すでに建設的な役割を担っている。急成長を遂げている別の領域として、分散型パラメトリック保険が挙げられる。この保険は世界経済フォーラムでも注目されており、異常気象による混乱が一層深刻化している、伝統的にサービスが行き届いていない地域社会にライフラインを提供する手段として認識されている。

分散型パラメトリック保険の優れた点は、そのシンプルさにある。それは、スマート契約を通じて自動的に実行される「if/then(もし〜ならば〜する)」方程式として理解できる。例えば、ある地域で24時間以内に5インチ(127mm)の雨が降った場合、保険加入者である農業者は、合意済みの洪水関連損害賠償契約に従って直ちに支払いを受ける。実にシンプルである。

高額な保険評価プロセスを排除し、これを自動支払いプロセスにおける有意なイノベーションと組み合わせることで、パラメトリック保険は取引コストと請求サイクルを大幅に削減している。パラメトリック保険の請求はネットワーク接続された基本的なスマートフォンを介して行えるため、遠隔地にいる人や、おそらく意外なことに、基本的なテクノロジーにしかアクセスできない人でも、ブロックチェーン方式の保険を利用することができる。

世界的な食物連鎖の保護

気候変動が近い将来、食料価格を上昇させ、多くの人々の特定の食料を購入する能力を損なうことはほぼ確実である。天候リスクに対する作物保護のケースでは、パラメトリック保険により、通常は従来の保険商品にアクセスできない農家に対して追加の保護レイヤーが提供される。

農作物の収穫量の運命は、農家自身の過失ではなく、二酸化炭素排出量の増加と絡み合っている。これは、世界の食料安全保障と小規模農家の雇用保障に重大な脅威をもたらす。5ヘクタール(5万㎡)未満の土地を所有する小規模農家が世界の食料生産の平均50%を担っていることを考えると、世界の食料供給の観点から保護措置を講じることは必要不可欠である。

今日の新興経済諸国においては、2億7000万もの小規模農家が十分な保険に加入しておらず、農業保険を利用できるのはわずか20%である。この数字は、サハラ以南アフリカでは3%にも満たない。

世界の人口は2050年までに100億人近くに達すると予測され、新興経済国の農業者が直面する危機とも相まり、小自作農産業は保護強化に向けた新たなアイデアを切実に必要としている。分散型パラメトリック保険のような、ブロックチェーンを利用したデータ駆動型のイノベーションは、多方面にわたる解決策として機能する。厳しい気象条件に苦しむ人々を救済し、意識的な消費を奨励するとともに、大規模な資本を気候変動適応策に導き、小規模農家と世界規模の食糧生産に利益をもたらす。

ユースケースと投資家の拡大

地球の気候の不安定化が進む中、破壊的な事象を管理し、その影響の規模を縮小する取り組みにおいて、技術的なイノベーションが果たす役割は大きくなっている。

海面上昇により洪水の危険にさらされている人々の保護を強化する必要性については、英国をはじめとする複数の国がすでに報告書を委託している。洪水リスクの評価と保険料の計算方法を再考し、再構築するオポチュニティが生まれているのである。洪水の深さの報告と正確でタイムリーな支払いを行うための十分に根拠のあるデータが、パラメトリック契約を通じて保険会社に備わることになるだろう。

分散型保険は、保険適用の恩恵を受けている人々にとってより包括的であるだけではなく、リスク資本の定義を再定義し得るまったく新しいタイプの投資家にも保険に関するオポチュニティをもたらす。この形態の保険ははるかにオープンであり、従来の市場における高資本投資家の閉鎖的な場所に留まらず、より幅広い投資家グループの関与を可能にする。

さらに、ブロックチェーンはクラウドファンディングと保険の媒体として機能するポテンシャルを有しており、善意の社会的および環境的影響の名の下に交差する。CSR(企業の社会的責任)やESG(環境・社会・ガバナンス)への投資意欲は高まっている。

ESGファンドは、2020年に500億ドル(約5兆7000億円)を超える新規資金を獲得した。これは前年の2倍以上である。加えて、米国のESGファンドの数は2020年400近くに増加しており、2019年から30%の伸びとなっている。

今すぐ行動し、後から話そう

世界のリーダーたちがCOP26に集結し、国内および国際レベルで気候変動に取り組むための長期的な戦略とアプローチを決定しようとする中で、世界中の何百万もの人々が、長年にわたる無行動と現実的な変化の遅れがもたらした結果に目下苦しんでいる。

現在、分散型パラメトリック保険などのブロックチェーンソリューションは、気候変動の影響を最も受ける人々への圧力を軽減する上で目に見える進歩を遂げている。結束したグローバルなアプローチへの政治的合意が待たれる一方で、ブロックチェーンは、最も必要としている人々を支援するための、容易に実装できるソリューションを提示しているのである。

編集部注:本記事の執筆者Michiel Berende(ミシエル・ベレンデ)氏はEtheriscのチーフ・インクルーシブ・オフィサー。インクルーシブ保険を通じて、最も金融サービスを必要としている人々に、より良い金融サービスへのアクセスを提供したいと考えている。

画像クレジット:Peter Dazeley / Getty Images

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(文:Michiel Berende、翻訳:Dragonfly)

東京都八王子市と町田市においてAI配車システムを用いた紙おむつの効率的回収事業が開始

白井グループは11月18日、凸版印刷が受託した東京都モデル事業「家庭用紙おむつの効果的回収と完結型リサイクル事業」に参画し、八王子市と町田市において紙おむつリサイクルの低炭素型回収コースをAI配車システムを用いて最適化すると発表した。

現在、家庭から廃棄される紙おむつは可燃ごみとして回収されている。これに対して同事業では、紙おむつの素材であるパルプとプラスチックを再生原料にリサイクルするため、従来の可燃ごみとは別の車両で回収し、再生工場まで運搬するという。八王子市と町田市は、同事業において紙おむつ回収のモデル地区をそれぞれ設定し、従来の可燃ごみと紙おむつを両市の委託企業が回収する。

白井グループは、両市において、紙おむつのみを選択的に回収した場合の最短ルートを、2014年から実用しているAI配車システムで計算。これらの結果を総合して、両市をまたぐ広域回収のシミュレーションを行うとともに、両市が各々全域に適用した場合の必要車両台数を試算する。

なお、白井グループのAI配車システムは、これまで約2000の排出事業者が回収依頼する可燃ごみ、不燃ごみ・資源物を、排出曜日ごとに異なる約150コースをAI配車システムで計算し、2014年から手作業に比べ10%以上の削減効果を出しているという。廃棄物ビジネスの革新を目指す白井グループが八王子市と町田市においてAI配車システムを用いた紙おむつの効率的回収事業を開始

一般に、全国の自治体では、リサイクル推進のため廃棄物を種類ごとに分別排出する取り組みが進められている。この実効性を高る方法としては「一括回収後に再度分別する」「種類ごとに車両を配車」の2つがあり、それぞれ実態としてはさらなる経済性の向上が重要になっているという。今回の取り組みのような「種類ごとに車両を配車」の分別回収ケースでは、最も経済的なコースで回収することで、追加の車両や重複ルートを省くことが可能となる。またこのため、移動に伴う二酸化炭素排出量を削減できるとしている。

白井グループは、1933年創業で家庭系廃棄物(東京都23区委託)と事業系廃棄物の両事業をカバーする数少ない企業。「都市の静脈インフラを再構築する」ことをミッションとして掲げ、ITやAIなどを積極的に活用し廃棄物ビジネスの革新を目指しているそうだ。具体的には、廃棄物処理を受け付ける情報プラットフォーム事業や、配車台数を削減するAI配車システムなどを事業化しており、今回は、社会として廃棄物量を削減するためのサーキュラーエコノミー事業にあたるという。

また廃棄物処理依頼の電子化、RFIDとブロックチェーンを用いたトレーサビリティ検証を進めており、それらの成果を統合して、2022年度からは静脈物流のさらなるDX化を加速するとしている。

現在の気候問題における文化的な狂気、書評「The Great Derangement」

気候変動は、長年にわたり、人類が解くべき最も奥深く、最も困難な知的パズルだ。複数のシステムのさらにその上で複数のシステムが動いているため、直観的なアイデアを簡単に破滅的な行き詰まりに変えてしまうような創発的な性質がある。1つのアクションに対して複数のリアクションがあり、システムのある部分を改善すると、必ずと言っていいほど他の部分の弱点があぶり出される。

当然のことながら、この課題の及ぶ広さを考えると、地球を理解するために複雑性理論や「システム思考」が重要になってくる。システム思考は、技術者に人気のあるフレームワークでもあり、概してソフトウェアエンジニアリングやテクノロジー製品、そして社会全体にもよく当てはまる。それは、世界の小さな特徴や変化を1つ1つ個別に捉えるのではなく、それらすべての関係性を構築し、一般にはばらばらの現象にしか見えないところにつながりを見出すものだ。

インドの著名な小説家であるAmitav Ghosh(アミタヴ・ゴーシュ)氏は、深遠で魅力的な著書「The Great Derangement(グレート・ディレンジメント、未邦訳)」の中で、鋭い分析力と観察力を発揮し、訪れた各所で直感では理解しがたい人間と地球の相互関係を見抜き、書き綴っている。同氏が2015年にシカゴ大学で行った一連の講義を編集したこの本は、緊張感があり刺激的な思考に溢れ、筆者が近年読んだ本の中でも最高のものの1つだ。

アミタヴ・ゴーシュ著「The Great Derangement:Climate Change and the Unthinkable」/ The University of Chicago Press(シカゴ大学出版局)、2016年、176ページ(画像クレジット:The University of Chicago Press)

ゴーシュ氏の主な論点は、気候危機の状況を説明する上での文化、特に文学的な文化の役割にある。同氏は、それがまったく機能していないことに驚愕し、それがこの本のタイトルである「グレート・ディレンジメント(大いなる狂乱)」につながっている。気候変動は文化に付随して起きるものに他ならず、ストレスにさらされた地球の日常的な危機にますます怯える世界においては、正気の沙汰ではないということだ。実際「気候変動を扱った小説は、正統な文学誌ではほとんど相手にされないといってもいいだろう。テーマとして気候変動について触れているだけで、文学的な小説や短編がSFのジャンルに追いやられてしまうことが多い」と同氏は書いている。

同氏は、気候変動に関連して身に起きたことを語っている。若い頃、都市部を襲った猛烈なサイクロンで九死に一生を得たことがあったのだ。しかし、そのことを思い返しているうちに、同氏は、この死と隣り合わせの経験は、小説の題材には行かせないということに気づいた。あまりにも恣意的で、心の広い読者でさえ陳腐に思える三流ドラマ的なネタだ。同氏自身の生々しい体験、つまり本物のリアルな経験であっても、ほとんど起こりえないことのように思えるため、文芸作品としては書くことができない。

個人単位でみれば、気候変動に起因する大惨事が降りかかる確率は低いが、数多くのサイコロを振った結果の総数と同様に、災害の頻発は保証されているようなものだ。そのことがゴーシュ氏に確率の歴史について熟慮させるきっかけとなった。「確率と現代小説は実は双子のようなもので、ほぼ同じころに、同じ人々の間で、同じような経験を封じ込める器として働くことを運命づけられた同じ星の下に生まれた」と同氏は書いている。何千年にもわたって人類の特徴であった人生の不規則性は、産業時代の幕開けとともに規則化されてきた。人類は、世界の混沌をなんとか抑えた後、自分たちの環境と運命をコントロールし始めた。そのため、近代になると確率はあまり重要ではなくなった。

もちろん、まさにそのようなコントロール志向こそが、現在の気候の崩壊をもたらした。生活の水準を向上させる代わりに、人類に必要な自然の調和を犠牲にしたのだ。サンフランシスコのベイエリアで見られたのどかな自然は、今や干ばつや山火事など、相次ぐ気候の危機によって阻害されている。私たちが織り成すグローバルコミュニティは、現在、サプライチェーンの混乱、旅行のキャンセル、国境の閉鎖、政策の変更などで足元が定まらない。私たちの調和のシステムは、自らと戦うシステムになってしまっている。

ゴーシュ氏が問題だと考えていることの1つは、文化が、地球の力の前に為す術もなく打ち負かされている個人の物語を中心としたものになっていることだ。同氏は、John Updike(ジョン・アップダイク)氏の「individual moral adventure(個人のモラルをめぐる冒険)」という言葉を借りて、特に西洋で作られた現代文学について説明している。私たちはヒーロー、つまり主人公を求めている。直感的に共感でき、挑戦の旅に乗り出し、最終的にその克服に至るまでの苦難を理解できる人物だ。

しかし、気候はシステムであるため、実際のところ個人の行動では歯が立たない。Kim Stanley Robinson(キム・スタンリー・ロビンソン)の「The Ministry for the Future(ミニストリー・フォー・ザ・フューチャー、未邦訳)」のレビューで指摘したように、気候をめぐる変化の基礎となる官僚的な奮闘について読者の関心を引くのはほぼ不可能だ。自分たち全員を除いて悪役はいない。それは、読者や視聴者が小説に期待している筋書きではない。

さらに悪いことに「個人のモラルをめぐる冒険」という物語のニーズは、問題の本質が物語の中心でさえない世界へと私たちを引きずり込んでしまう。ゴーシュ氏は、このような状況を批判し、次のように書いている。「フィクションは目撃し、証言し、そして良心の軌跡を描くような形で、読者の心の中で再構成されるようになる。このようにして、政治においても文学においても、誠実さと信頼性が最大の美徳となる」。その結果、個人や集団の主体性が低下していく。「大統領選挙からオンライン嘆願書まで、あらゆるレベルで公的領域がますます行為遂行的になるにつれ、実際の権力行使に影響を与える能力はますます弱まっていく」と同氏は書いている。

システム思考というと、技術的あるいは科学的な関係だけで切り捨てられがちだが、ゴーシュ氏はその範囲を広げ、文化もその要素にうまく含めている(本書の3つの章は「物語」「歴史」「政治」と題されており、同氏の貢献の対象がうかがえる)。自然の生態系を調べ、中で何が起こっているかを見るだけでは不十分だ。そもそも人間がどのようにこのシステムを考え、結びつけているのかを理解しなければならない。同氏の分析は、すでに深い階層になっている問題に、新たな重要な層を加えるものだ。

では、この文化、権力、政治へ踏み込むには、どうすればよいのだろうか。最終的にゴッシュ氏は、伝統的な宗教指導者が気候変動問題の主導権を握ることが重要だと考えている。同氏は次のように書いている。

宗教的な世界観は、気候変動が既存の統治機関にとって大きな課題としているような制限を受けない。また、国民国家を超え、世代を超え、長期的な責任を認めている。そして、経済主義的な考え方に支配されていないため、現代の国民国家が広く共有する推察力ではおそらく不可能な方法で、直線的ではない変化、つまりカタストロフィーを想像することができる。

ゴーシュ氏は、このスリムな本の中で、他にも多くのテーマに触れているが、同氏の博識で、時に一般とは異なる考え方は、気候問題と未来のガバナンスをめぐる議論や参照すべきポイントの多くをうまく再構成している。優れたシステム思考と同様に、同氏の分析は、最終的には「難しい問題を理解するためのさまざまなレンズ」という総合的なものになる。私たちは幸運にも、この泥沼から抜け出す道を見つけられるかもしれない。

あるいは、そうではないかもしれない。気候に関する議論は何十年も続いているが、私たちは根本的な問題を解決するために、実際のところまだほとんど何もしていないからだ。ゴーシュ氏は、1961年に初めてアジア出身の国連事務総長となった、第3代国連事務総長、U Thant(ウ・タント)氏の言葉を引用している。

夕方から夜にかけて、スモッグに覆われた、私たちが生まれ育った地球の汚染された海に沈んでいく太陽を見ながら、将来、他の惑星に住む宇宙歴史家に私たちのことをこう言われたいと思うかどうか、真剣に自問する必要がある。「天才的な才能と技術を持ってしても、彼らは先見性と空気と食料と水とアイデアを使い果たしてしまった」あるいは「彼らは世界が崩壊するまで策を弄し続けた」と。

その歴史は今まさに刻まれている。目の前に置かれたパズルは確かに厄介だが、理解できないわけでも、解決できないわけでもない。

画像クレジット:Juan Silva / Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:Dragonfly)

カーボンオフセットのサブスクを行うEcologiがクラウドファンディングで資金調達

人々は音楽に定額料金を支払っているのだから、カーボンオフセットにも定額料金を支払い、気候危機に対する良心の呵責を和らげようとする人だっているはずだ。そう考えた英国のEcologi(エコロジ)というスタートアップ企業は、サブスクリプション会員から集めた資金を使って、アフリカやラテンアメリカなどの地域で10日ごとに100万本の木を植えたり、インドネシアの泥炭地を保護する活動などを行っている。そうすることによって会員のカーボンフットプリントを減らし、カーボンオフセットを購入することで会員の排出した二酸化炭素を相殺するというわけだ。

Ecologiは2021年4月、プレマネー評価額1650万ポンド(約25億2000万円)でシード投資ラウンドをクローズし、リードインベスターであるGeneral Catalyst(ジェネラル・キャタリスト)とEntrée Capital(アントレ・キャピタル)から、405万ポンド(約6億2000万円)の資金を調達した。

3万5000人の個人および企業が利用しているこのサブスクリプションサービスでは、会員は毎月少なくとも12本の木を植えて「自分の森を育てる」ことができ、さらに幅広い炭素削減プロジェクトに資金を提供することで、自分のカーボンフットプリントをオフセットすることができる。

2019年の設立以来、これまでブートストラップで運営してきた同社は、領収書、証明書、取締役会議事録、財務諸表などもすべて公開台帳に載せている。

現在は、英国の投資クラウドファンディングプラットフォームであるCrowdcube(クラウドキューブ)では、目標額の200万ポンド(約3億500万円)を上回る資金を集めており、プレマネー評価額は7500万ポンド(約115億円)に達している。この資金は、製品の開発、チームの拡大、米国およびEUでの事業拡大に充てられる予定だ。また、同社は現在、B-Corp(ビーコープ)認証を待っているところだという。

2022年初頭には、企業向けのリアルタイムカーボンフットプリントソフトウェア「Ecologi Zero(エコロジ・ゼロ)」の発売を予定している。

これによって同社は、Normative(ノーマティブ)、Spherics(スフェリックス)、Plan A(プランA)といった他のカーボンフットプリントSaaSスタートアップと競合することになる。

Ecologiは、9カ月間で650%以上の成長を遂げ、2020年1年間で炭素削減による効果を330%増加させたと主張している。2021年1月におけるARR(年間経常収益)は300万ポンド(約4億6000万円)だったが、2021年は850万ポンド(約13億円)のARRで終える見込みだという。

同社はこれまでに合計で2500万本以上の木を植え、120万トンのCO2を相殺したと主張する。これらの木の大部分は、マダガスカル、モザンビーク、ニカラグア、米国、オーストラリア、英国、ケニアで植えられた。さらにインドネシアの泥炭地保護、トルコにおける埋立てガスからのエネルギー生産、インドにおける廃棄籾殻からのエネルギー生産などのプロジェクトを支援している。

共同設立者でCEOのElliot Coad(エリオット・コード)氏は次のように述べている。「コミュニティ・オーナーシップは我々の活動の中心であり、過去2年間の成長の原動力となってきました。だから、当社の熱心な定額会員のみなさまに、Ecologiの株式を所有する機会を提供することは、当然のことだと考えました。そこで私たちは、2021年4月にGeneral Catalystから出資を受けて以来、この3カ月間はベンチャーキャピタルからの出資を断り、コミュニティベースのクラウドファンディングを採用したのです」。

画像クレジット:Ecologi / Ecologi co-founder Elliot Coad

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

PETボトルを常温で分解し原料を高純度で回収する方式を産総研が開発、原料化温度を従来の200度以上から常温まで低下

産業技術総合研究所(産総研)は11月8日、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂を常温で効率的に分解し、再利用を可能にする技術の開発を発表した。環境負荷やエネルギーコストが大幅に削減され、ペットボトルから新しい高品質なペットボトルを再生産する道が拓かれる。

PETボトルの再生方法には、熱で溶かして再成形する「マテリアルリサイクル」と、化学的に低分子化合物に分解して新たに製品化する「ケミカルリサイクル」とがある。マテリアルリサイクルは、回収されたPETボトルを分別して熱で溶解するが、不純物が混じり込むことが多く、溶解前の製品と同品質にすることが難しい。また、ケミカルリサイクルでは、一般に大量の薬剤や高温処理が必要であったため、コストも高く環境負荷も大きい。

PETボトルからまたPETボトルを作る「ボトルtoボトル」を実現するには、高純度な原料を高効率で回収できなければならない。それが可能なのはケミカルリサイクルだ。ケミカルリサイクルでは、PET樹脂はテレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとに分解される。しかし、この2つの原料は分解時と同じ条件で再び結合してPET樹脂に戻ってしまう。そのため、この2つを反応させないための工夫が必要となる。その反応を止めるには、大量の反応剤を投入する方法と、200度という高熱をかけてエチレングリコールを取り除く方法とがあるが、どちらも非効率だ。

今回、産総研が開発した方式はケミカルリサイクルだが、大量の薬剤も高温処理も必要としない。市販の飲料用PETボトルをフレーク状に粉砕した試料に、メタノール、炭酸ジメチル、アルカリ触媒であるリチウムメトキシドを適切な比率で混合し3時間ほど室温に置くことで90%以上が分解できるというものだ。反応温度を50度にすると、すべてのPETが分解した。この方法では、テレフタル酸ジメチルは簡単な精製によって99%以上が分離できる。また、エチレングリコールは炭酸ジメチルに捕捉され、高い割合で回収ができる。PETボトルを常温で分解し原料を高純度で回収する方式を産総研が開発、原料化温度を従来の200度以上から常温まで低下

分離したテレフタル酸ジメチルはPET樹脂に加工でき、テレフタル酸ジメチルはリチウムイオン電池の電解液などに再利用できる。リチウムメトキシドは反応後は不溶物として沈殿するため、簡単に分離、回収ができる。

今後は、このリサイクル方法の社会実装を目指し、触媒の改良、反応のスケールアップ、PET含有製品への適用可能性を検討するとしている。

核融合科学研究所、核融合プラズマの乱流制御に新たな可能性を発見

核融合科学研究所、核融合プラズマの乱流制御に新たな可能性を発見

大型ヘリカル装置(LHD)の実験室内部。中心の丸い部分がLHD本体

大学共同利用機関法人の核融合科学研究所は、11月5日、日本とドイツのヘリカル方式の装置を使った世界初の比較実験で、核融合のプラズマ封じ込めの際の障害となる乱流の制御に、磁場構造が重要な影響を及ぼすことを明らかにしたと発表した。これは乱流制御に新たな可能性を示すもので、「従来にない磁場構造を持つ革新的核融合炉を目指した研究」に大きく貢献するとのことだ。

この研究は、核融合科学研究所の田中謙治教授、沼波政倫准教授、仲田資季准教授と、ドイツのマックス・プランク・プラズマ物理研究所のフェリックス・ワーマー博士、パブロス・サントポウロス博士らとの国際共同研究によるもの。核融合科学研究所は、ヘリカル方式の核融合を研究する世界最大級の実験装置、大型ヘリカル装置(LHD)を所有し、マックス・プランク・プラズマ物理研究所は、同規模のヘリカル方式の実験装置、ヴェンデルシュタイン7-X(W7-X)を所有している。

核融合は、超高温のプラズマを磁場で閉じ込めることで可能となるが、プラズマは2つの原因により拡散してしまう。ひとつは粒子の衝突、もうひとつが乱流だ。粒子の衝突による拡散は、プラズマを閉じ込める磁場の構造で低減できることがわかっているが、乱流による拡散については、まだわからないことが多く、制御は大変に困難とされていた。

そこで、同規模のヘリカル式実験装置を持つ核融合科学研究所とマックス・プランク・プラズマ物理研究所はそれらを使い、プラズマの体積、密度、温度をほぼ等しく揃え、磁場構造だけが異なるという条件で、世界初の比較実験を行った。それにより、衝突拡散はW7-Xのほうが格段に低く、乱流拡散はLHDのほうが数分の1と低いことがわかった。この結果は、日欧のスーパーコンピューターによる同条件のシミュレーションでも確認された。

核融合科学研究所、核融合プラズマの乱流制御に新たな可能性を発見

LHD(日本)とW7-X(欧州)。ねじれたドーナツの形をしたプラズマを磁場で閉じ込めている。プラズマの体積はいずれも30m3(立方メートル)だが、両者は磁場を形成するコイル(青色)の形状が異なる。LHDは乱流拡散が小さく、W7-Xは衝突拡散が小さいのが特徴。W7-Xの画像はマックス・プランク・物理学研究所提供

これらの実験装置の磁場構造が、それぞれ衝突拡散の低減、乱流拡散の低減に役立っていることがわかり、これらの長所を組み合わせることが「非常に有効」だという。現在、核融合科学研究所とマックス・プランク・プラズマ物理研究所は、LHDとW7-Xを発展させてプラズマの拡散をさらに低減させる磁場構造を、スーパーコンピューターを駆使して探求している。「このような革新的な核融合炉を目指した研究が、今回の成果をもとにさらに進展すると期待されます」と核融合科学研究所では話している。

魚やフジツボにも負けず海に浮かんでデータ収集する自律制御式センサーの増加をSofar Oceanが計画

海は広大で謎めいている……が、数千個もの小さな自律制御式のブイが毎日興味深い情報を報告してくれたら、そんな謎はかなり減るだろう。それこそがSofar Ocean(ソーファー・オーシャン)という企業の目的であり、同社は7つの海をリアルタイムで理解するというビジョンを実現するために、3900万ドル(約44億円)を調達した。

Sofar Oceanでは「オーシャン・インテリジェンス・プラットフォーム」と称しているが、本質的には海流、水温、天候など、さまざまな重要な海洋指標のリアルタイムマップを同社は運営している。これらの情報の一部は、人工衛星や海上の大規模な船舶ネットワークからいつでも簡単に得ることができるが、数千もの熱心な観測者が波に乗ることで得られる粒度やグラウンド・トゥルースは非常に明確だ。

昨日の測定値や通過する衛星による推定値ではなく、15分前のデータを得ることができれば、航路や天気予報(陸地でも)などについて、より多くの情報に基づいた判断を下すことが可能になる。もちろん、このような大量のデータは無数の科学的応用にも役に立つ。

現時点で、数千個の同社が「スポッター」と呼ぶものが海に存在しているという。

「海の大きさを考えると、この数はまだ少ないと言えるでしょう」と、CEOのTim Janssen(ティム・ヤンセン)氏はいう。確かに、他の誰も実現したことがない数ではあるが、まだ十分ではない。「私たちはすでに5つの海すべてをカバーしていますが、これからさらにギアを上げて、この分散型プラットフォームの密度を高め、可能な限りパワフルなセンシング能力を発揮できるようにします。そのために、今後数年間で急速に多くのセンサーを追加し、収集するデータを拡大して、より正確な海洋の洞察を得られるようになると我々は予想しています」。

SofarとDARPA(米国防衛高等研究計画局)は先日、人々が独自の海洋データ収集装置を設計する際にリファレンスデザインとなるハードウェア規格「Bristlemouth(ブリストルマウス)」を発表した。これは、海中で増え続ける自律機器を可能な限り相互運用できるようにすることで、重複しながらも互換性のなかったネットワークの問題を回避することを目的とするものだ。

フジツボに覆われ、魚にかじられ、風雨にさらされた、何千ものロボットブイのネットワークを運営する難しさは想像に難くない。ヤンセン氏によると、同社の「スポッター」は外洋での長期間の活動に耐えるように設計されているため「最小限のメンテナンス」しか必要としないという。「最近では、過酷な天候のために氷に覆われてしまったスポッターがありましたが、数カ月後に氷が解けた途端、自動的にデータの共有が再開されました」と、同氏は振り返る。スポッターが海岸に打ち上げられてしまった場合は、同社が発見者を支援し、必要な場所に戻す。

このデバイスは、手動のデータオフロードやメッシュネットワークではなく(それもオプションの1つだが)、イリジウム衛星ネットワークを介して報告する仕組みになっているが、ヤンセン氏によれば、同社は「Swarm(スウォーム)のような、衛星通信分野に革命をもたらす最新技術にも取り組み始めている」という。TechCrunchでも初期の頃から取材しているSwarmは、低帯域の衛星通信ネットワークで、消費者向けインターネットではなく、IoTタイプのアプリケーションに焦点を当てたものだ。現在、SpaceX(スペースX)が同社の買収を進めている。

海流などの海の状態を表示するSofarのインターフェース(画像クレジット:Sofar Ocean)

今回の3900万ドルを調達した投資ラウンドは、Union Square Ventures(ユニオン・スクエア・ベンチャーズ)とThe Foundry Group(ザ・ファウンドリー・グループ)が主導した。両社はプレスリリースの中で、海運業のような現在の事業においても、気候変動の研究のような将来に向けた仕事においても、より多くのデータが必要であることは明らかだと述べている。

「特にCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)の開催を受けて、気候変動に関する議論がようやく中心的なものになってきました。世界各国の政府が、ハリケーンや暴風雨の増加、海面上昇、サンゴ礁などの生態系の危機に備えて、調整や計画を進めています」と、ヤンセン氏は説明する。「気象パターンの変化、海流や気温の変化、繊細な海洋生態系の変化について、明確な情報を提供できるようにすることは、当社やそのパートナーにとってだけではなく、地球上の1人ひとりにとっても、刻々と迫る時間に間に合わせるために一丸となって取り組む上で、本当に有益なことなのです」。

政府が何かをすべきかと考えている一方で、もちろん、海運会社やサプライチェーン管理会社は、燃料使用量を最小限に抑えて物流全体を改善するためのより良い経路選択を期待し、Sofarのデータに喜んでお金を払う。

「リアルタイムのデータにアクセスできるようになることで、これらの業界全体の不確実性が低減し、より効率的で、より良いビジネス判断ができるようになり、さらに燃料を節約して炭素排出量を削減することができます。つまり、すべて持続可能性や将来に対する備えの向上につながるというわけです」と、ヤンセン氏は述べている。

画像クレジット:Sofar Ocean

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

衣服の素材イノベーション企業Allbirdsが新規上場、次代を制する企業を見極める鍵は「持続可能性」

Allbirds(オールバーズ)は米国時間11月3日、NASDAQに新規上場し、それにふさわしいティッカーを選んだ。「BIRD」だ。

天然ウールを使用した控えめなデザインの(そして大変履き心地の良い)靴から始まったAllbirdsだが、現在は単なるアパレル企業ではない。今や衣服の製造方法に革新をもたらす素材イノベーション企業となっている。素材をオープンソース化して他者に提供することで業界に変化をもたらし、それによって持続可能性を実践する業界の旗手だ。

ファッション業界では、毎年21億トンもの二酸化炭素を大気中に排出している。これは、現在米国で使用されているすべての自動車から排出される量の2倍に相当する。現在、私たちが身体に身につけているもののほとんどは合成樹脂でできている。その合成樹脂は、化石燃料である石油から作られる。

この状況は変える必要がある。そしてそれは変わるだろう。

Allbirdsは、単に顧客に服を着せるだけではない。人々が自分の子どもたちも自分がしてきたような生活を楽しめるようにする可能性に貢献できるように、しかもそれを製品の快適さ、スタイル、性能を通じて、気持ちよく行えるようにすることで、人々が賛同するだけでなく、人々に愛されるブランドを作ろうとしている。

このようなビジョンやイノベーションは、Allbirdsだけのものではない。例えばTesla(テスラ)の仕事は、単にドライバーをある場所から別の場所に移動させるだけではなく、Impossible Meats(インポッシブル・ミート)の仕事は、空腹の客に食事を提供するだけではない。これらの企業の仕事は、我々の住む地球が数十年後も確実に生き残るだけでなく繁栄できるようにすることであり、同時に消費者がライフスタイルの質を落とさずに、積極的にそれに参加できる選択肢を提供することでもあるのだ。

持続可能性に取り組む企業が次世代をリードする

「サステイナブル(持続可能)」になることの重要性は認識されているものの、「サステイナビリティ(持続可能性)」を実現するためには何年もの時間が必要になる。このような一般的な見方は、レースが始まってから単に追いつくことが、どれほど難しいかを過小評価している。逆に起業家にとっては、社会に世代を超えて影響を与える「目的ネイティブ」な企業を構築する大きなチャンスとなる。従業員や投資家にとっても同様だ。

持続可能性というテーマは、消費財に限らず、あらゆるビジネスに当てはまる。ある日突然、町外れにある小さなサステイナブル・テクノロジーの会社に、巨額の資金提供が行われたというニュース(大手ベンチャーキャピタルはすべて、少なくとも1社の代替食肉会社を投資先に入れている)や、大企業のESG(環境・社会・企業統治)責任についてのニュースを見つけることは珍しくない。

The Economistによると、2021年に投資家が「エネルギー移行(エネルギーや輸送から産業、農業まで、あらゆるものを脱炭素化すること)」に注ぎ込む金額は5000億ドル(約57兆円)を超え、2010年の2倍になるという。地球の脱炭素化に必要な投資額は30兆ドル(約3400兆円)以上と推定されており、人々は炭素排出量のネットゼロを目指すレースに参加する企業に投資できる貴重な機会を得ている。気候変動は投資家にとって、今世紀最大の追い風だ。

EV(企業事業価値) / NTM(今後12カ月)の収益が、約16倍というテスラのような企業の現在の評価は、収益の7倍から10倍の間で取引されている他の自動車メーカーや、フォワード収益の約10倍で取引されているBeyond Meat(ビヨンド・ミート)と比較すると、非常に高額であるという認識がある。

このようなビジネスに投資するには、単に「持続可能」という変化だけでなく、長期的に劇的な変化があり、そこでは持続可能な活動をすべての意思決定の中心に据えることができる企業が長期的な勝者となると信じる必要がある。

今、会社を設立するのであれば、それは「目的ネイティブ」でなければならない。こうした企業にとって、現在の採用率と成長率は、この優位性のおかげで、同業他社よりも長く継続することが可能であり、おそらく実際にそうなるだろう。サステイナブル・ファーストの企業は、次世代の勝者となる可能性が最も高いのだ。

Allbirdsは次のNike(ナイキ)のような企業となり、数十年にわたって最大25%という成長率を記録できるだろうか?私にはわからないが、他のどのアーリーステージの挑戦者よりも、その可能性が高いことは確かだ。持続可能性がCO2を噛み砕く前に、世界が自分自身を食べてしまわないことを祈ろう。

TDM Growth Partners(TDMグロース・パートナーズ)は、Allbirdsに出資している。

編集部注:本稿を執筆したEd Cowanは、国際的投資会社TDM Growth Partnersの投資チームメンバー。

画像クレジット:Spencer Platt / Getty Images

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(文:Ed Cowan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

今、対応を迫られている気候変動リスクとは何か?ジュピター・インテリジェンスCEOとキャシー松井氏がわかりやすく解説

Jupiter IntelligenceのCEOリッチ・ソーキン氏

気候変動リスクへの対応が迫られている。2022年4月には東京証券取引所が「プライム」「スタンダード」「グロース」の3市場に再編され、プライム市場に上場する企業は気候変動リスクを開示しなければならない。日本初のESG重視型グローバル・ベンチャー・キャピタル・ファンドであるMPower Partners Fund(エムパワー・パートナーズ。以下、MPower)でゼネラルパートナーを務めるキャシー松井氏は「投資家は投資先のリスクを評価して意思決定を行いますが、企業が気候変動リスクを開示しなければ『十分なリスク評価』は行えません」と話す。

気候変動リスクを予測・分析するプラットフォームを提供するJupiter Intelligence(ジュピター・インテリジェンス。以下、ジュピター)CEOのRich Sorkin(リッチ・ソーキン)氏と同氏が対談し、気候変動リスク対応の今後を語った。

「気候変動リスク」とは?

気候変動リスクはビジネスにおいてどう重要なのでしょうか?

ソーキン氏:エネルギーセクターを例に考えてみましょう。気温が下がり過ぎてしまうと、発電設備が停止してしまうことがあります。あまりに強い風が吹けば電線が吹き飛ばされてしまいます。水温が高すぎると、発電設備全般、特に原子力発電の冷却効率が下がります。洪水が起きればオペレーションが止まったり、送電が止まってしまいます。

米国では2021年2月「February Freeze」と呼ばれる現象が起き、テキサス州全域の送電網が2週間と3日にわたって停電しました。影響はメキシコにもおよび、一部サプライチェーンの停止も引き起こしました。こうした例は枚挙にいとまがありません。

MPower Partners Fundでゼネラル・パートナーを務めるキャシー松井氏

地球温暖化などによる気候変動は、エネルギー供給に影響します。さらに、どんなビジネスもどこかのプロセスで電力を使うので、無関係ではいられません。気候が工場や社屋、ロジスティクスに与える影響を考えれば、その重要性が極めて大きいことはご理解いただけるでしょう。

MPowerは9月中にジュピターに投資を行いました。ESGと気候変動リスクの関係をお教えください。

松井氏:少し前まで、ESGは「コンプライアンスの問題」とされていました。しかし今、企業の成長においてESGは避けては通れない課題です。世界的に規制が増加を見てもわかるように、環境への配慮が社会的に要請され始め、気候変動リスクの開示も求められています。

投資家は、投資先を決定する上で、企業のリスクを評価します。先ほどソーキンさんが話した通り、気候、天候がビジネスに与える影響は大きなものです。つまり投資家は、気候変動リスクの評価を抜きに十分なリスク評価はできないのです。企業が成長する上で、気候変動リスクを開示し、ESGにも配慮して投資家を惹きつけることは喫緊の課題なのです。企業、官公庁などの組織が気候変動リスクをより正確に把握し、リスクマネジメントすることの重要性は増すばかりです。

ジュピター・インテリジェンスのビジネス

ジュピターはどのようにしてスタートしたのでしょうか?

ソーキン氏:当社の創業は2017年ですが、ビジネスのアイデア自体は2016年頃からありました。気候変動の影響が大きくなり、2015年のパリ協定で設定した目標を各国が達成したとしても、状況の悪化は避けられないのだと、私は考えたのです。しかし、この事態が何を意味するのか、どうすればいいのか、明確な答えを持っている人はいませんでした。それにもかかわらず、企業、官公庁、NGOなどの意思決定者は行動を起こさなければならなかったのです。

そこで、気候変動による物理的な影響や、深刻化の進捗の具体的な割合、影響を受ける地域などをソフトウェアによってモデル化し、可視化しようと考えました。

創業から今までの間にコロナ禍があり、クライアント企業の状況も変わっていく中で、山も谷もありました。ですが、コロナが落ち着き始め、一度去ったクライアントが戻り、2021年には米国の国防総省とのコラボレーションが始まりました。また、もともと米国内の気候変動リスクの分析のために当社を活用していたクライアントが、ヨーロッパやアジア地域の会社資産の気候変動リスクの分析も任せてくださるなど、活躍の場を広げています。

松井氏:ジュピターは日本でも顧客を増やしています。2020年7月からはMS&ADインシュアランス グループ ホールディングスとMS&ADインターリスク総研と連携し「TCFD向け気候変動影響定量評価サービス」を提供しています。また、チューリッヒ保険やNASAなど、大きなクライアントを抱えています。MPowerは気候変動リスク分析ではジュピターがリーディングカンパニーだと考えて投資しています。

気候変動リスク分析とは

ジュピターはどのように「気候変動リスク分析」を提供しているのでしょうか?

ソーキン氏:当社では大きく分けて2種類サービスを提供しています。1つは、リスクに曝されている資産すべてをスキャンするサービスです。顧客層としては、1000万件の住宅ローンを保有する銀行や、世界中に工場を持つ製薬会社を想像してもらうとわかりやすいでしょう。このサービスでは、顧客は世界中に分散している自社の資産が気候変動によって受けるリスクを確認することができます。

もう1つのサービスは、資産の種類ごとにリスクを分析するサービスです。こちらはワクチン生産の施設や、発電所、軍の基地、ホテル、大きなオフィスビルなど「物理的な資産」を念頭に考えていただくとわかりやすいと思います。こうした物理的な資産は、特定の場所に存在し、その場所特有の気候変動リスクに曝されています。それを分析するのです。

ジュピターのサービスはどんな問題を解決するのでしょうか?

ソーキン氏:順を追って説明しましょう。誰かが何かを建てようとするとき、その建築物は想定されるリスクに耐えられるように設計されます。そのリスクは風だったり、洪水だったり、水を使う施設なら、水温だったりします。こうした想定リスクは、設計時点での「平均的な天候」を基に計算されています。

ここで、完成して10年経った発電について考えてみましょう。発電所の建設には時間がかかるので、完成の10年前くらいに計画が始まります。この発電所の計画時点で採用される想定リスクのデータは、過去10年ほどの平均データです。それを使って10年かけて発電所が建てられます。つまり、この発電所の完成時点における想定リスクは、20年前の想定リスクです。

リスクが変動しないのであれば、想定リスクのデータが古くても問題ありません。しかし、実際、20年もあればリスクも変動し、洪水のリスク、海面の上昇、風の状況などが変わります。さらに、この発電所はすでに10年使用されており、その間にリスクも刻々と変化しています。つまり、既存のやり方で想定リスクに対応しても、実際のリスクには対応できていないのです。

では、ジュピターはその問題をどう解決するのでしょうか?

ソーキン氏:私たちは今の気候、天候はもちろん、1年後、5年後、10年後と、それぞれのタイミングで気候と天候がどう変化していくのかを予測します。火災、風、水温などの予測データを活用することで、顧客はより洗練された設備を建設することができます。また、顧客がすでに保持している特定地域の施設や建物などの資産が将来的にどんなリスクに曝されているのかを知り、対策を練ることもできます。

企業に迫る「開示」の圧力

2022年4月には東京証券取引所が新しい3市場に再編され、プライム市場に上場する企業は気候変動リスクを開示しなければなりません。

松井氏:「気候や天候が企業にとって大きなリスクである」という認識は、世界的に急速に広がっています。金融庁も有価証券報告書による気候変動リスクの情報開示の義務化を検討しています。対象になるのは上場企業や非上場企業の一部など約4000社といわれています。

開示に関する規制が迅速に進んでいく一方、企業の情報開示のための体制が整っていないのもまた事実です。そのため、ジュピターのようなサービスを提供している企業が重要になってくるのです。

ソーキン氏:気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures, 以下、TCFD)の提言をきっかけに当社のサービスを検討する企業も多くあります。TCFD提言は、企業等がビジネスに影響する気候変動のリスクと機会を把握し、ガバナンス、戦略、指標と目標について開示することを推奨するものです。

気候変動リスクに関する情報を開示するということは、リスクを理解することです。リスクを理解したら、企業は手を打たずにはいられなくなります。そのため、TCFDは自社の気候変動リスクに向き合うとても良いきっかけになります。

松井氏:どの企業も、どの業種も、規模に関わりなく気候変動リスク対応を行わなければなりません。気候は刻一刻と変わっています。日本だけでも深刻な自然災害が次々に起こっています。気候変動リスクを把握できていなければ、資産、人、地域に対するリスクも把握できていないということです。私たちのような投資家やステークホルダーは、投資先企業の全体像を見なければなりません。こうした背景があるからこそ、日本政府もカーボンニュートラルを急いでいます。

測れないものは管理できません。気候変動リスクの対策をするなら、リスクを把握することから始めなければいけません。これはもう選択の問題ではなく、避けられないことなのです。

ジュピターが日本でしようとしていることがあればお教えください。

ソーキン氏:日本は当社にとって非常に重要な市場です。私たちには、パートナーや顧客とコミュニケーションをとる日本担当のカントリーマネージャーが必要です。銀行、保険、電力、パブリックセクターに強い人材を必要としています。なぜかというと、私たちは「日本でビジネスをする米国企業」ではなく「日本の企業」としてこの国でビジネスを行いたいからです。興味のある人はぜひ、挑戦してもらいたいですね。

本日はありがとうございました。