「空飛ぶクルマ」eVTOLを開発するSkyDriveがJAXAと協力し空力特性の研究開始、プロペラの試験データ取得

「空飛ぶクルマ」eVTOLを開発するSkyDriveがJAXAと協力し空力特性の研究開始、プロペラの試験データ取得

「空飛ぶクルマ」(eVTOL)や「物流ドローン」を開発するSkyDrive(スカイドライブ)は8月10日、JAXA(宇宙航空研究開発機構)と協力し、空力特性に関する研究を開始したことを発表した。これまでSkyDriveでは独自に研究を積み重ねてきたが、今回の研究は、空飛ぶクルマのプロペラ(ローター)の試験データを、JAXAが保有する日本最大の航空機用風洞試験設備で収集することが目的。

空飛ぶクルマのプロペラは、飛行機のプロペラやヘリコプターのローターとは異なる使われ方をするため、空力特性には未知の領域があるとSkyDriveは話す。「空気がプロペラにどのような影響を与えるかを正確に把握すること」が機体の開発には極めて重要であり、プロペラの形状や回転数を最適化することで、電力活用の高効率化、飛行の安定化・静音化などの性能向上につながるという。

2025年ごろの事業開始を目指すSkyDriveでは、今後、プロペラのみならず、機体を使った風洞試験、計算流体力学(CFD。Computational Fluid Dynamics)による解析、飛行データの解析でもJAXAと共同で研究を進めるとのこと。

空飛ぶクルマは、都市部のタクシーサービス、離島や山間部の新たな移動手段、災害時の救急搬送といった利用法に期待が寄せられているが、2018年からは経済産業省と国土交通省が主催する「空の移動革命に向けた官民協議会」が開かれ、空飛ぶクルマに関する法整備、運用方法、駐機場の確保、保険などさまざまな分野で実用化に向けた検討がされている。また経済産業省と国土交通省は、2023年ごろに事業を開始し、2030年には本格普及するというロードマップを制定している。

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電動航空機メーカーLiliumがアズールブラジル航空と総額約1100億円の受注に向け交渉中

ドイツの電動航空機メーカーであるLilium(リリウム)は、ブラジル最大の国内航空会社の1つであるAzul Brazilian Airlines(アズールブラジル航空)と、総額10億ドル(1092億円)におよぶ220機の受注に向けた条件交渉を行っていると、両社は米国時間8月2日に発表した。アズール航空との契約が進めば、Liliumにとって創設以来最大規模の受注であり、南米市場への初進出を果たすことになる。

Liliumの広報担当者は「タームシートには調印しており、今後数カ月以内に最終合意に向けて動き出します」とTechCrunchに語った。

この220機の航空機は、ブラジルで運航される新しい共同ブランドの航空会社ネットワークの一部として飛ぶことになる。両社が合意に達した場合、アズール航空は7人乗りフラッグシップ機の運航とメンテナンスを行い、Liliumは交換用バッテリーを含むカスタムスペアパーツと機体の健康状態を監視するプラットフォームを提供する。

納入は2025年に始まる予定だ。これはLiliumが計画している欧州と米国での商業運航開始から1年後にあたる。ただし、これらのタイムラインは、Liliumが各国の必要な航空宇宙規制機関から、主要な認証承認を得ることが前提となっている。アズール航空は今回の契約の一環として「ブラジルで必要な規制当局の承認プロセスにおいてLiliumをサポートする」と述べている。

仮に契約が成立したとしても、Archer Aviation(アーチャー・アビエーション)がUnited Airlines(ユナイテッド航空)から10億ドルの注文を受けた際の条件と同様に、Liliumが一定の性能基準やベンチマークを達成することが条件となるだろう。しかし、このような金額の受注があるということは、市場や投資家に対して、電動垂直離着陸機(eVTOL)がまやかしではないという肯定的なシグナルであると考えられる。

また、これもArcherと同様に、LiliumはSPAC(特別買収目的会社)方式での上場を計画している。同社は2021年3月、Qell Acquisition Corp.(ケル・アクイジション)と合併して「LILM」というティッカーシンボルでNASDAQに上場する意向を明らかにした。SPAC方式は、交通機関業界全体で一般的な上場手段となっているが、特に資本集約的なeVTOLスタートアップには人気がある。

この合併は、同社の事業継続のために必要なものと思われる。ドイツのニュースサイト「Welt(ヴェルト)」によると、Liliumは2019年の貸借対照表に、SPACとの合併が完了しない場合には2022年12月に資金が枯渇すると記したリスク警告を追加したとのこと。

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画像クレジット:Lilium

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Liliumの電動ジェット機のバッテリーは同じくドイツのCustomcellsが供給

電動エアタクシーのLiliumは、ドイツのメーカーCustomcellsと提携、同社フラグシップ機Lilium Jetのバッテリーを提供してもらうことになった。

Liliumによると、そのバッテリーのIPは複数の企業などが保有するが、製造そのものはCustomcells一社の仕事になる。両社の協定の一部であるバッテリーシステムの数をLiliumは明かさなかったが、Customcellsは2026年までに保証容量を生産する契約だ。

Customcellsは、航空機や自動車、海運業などのために高性能のリチウムイオンバッテリーを開発している。同社は最近、高級スポーツカーのPorsche AGとCellforce Groupという合弁事業を興し、レーシングカーやパフォーマンスカー用バッテリーの少量生産を行なうことになった。

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Liliumはこのところ、部品と機体のテストに向けて準備を進めているが、その中にはいくつかのパートナーシップもあり、Customcellsはその1つにすぎない。ミュンヘンのeVTOL企業であるLiliumは、パートナーシップの国際的なネットワークを築いており、その中には炭素繊維複合素材で日本の東レ、ジェット機の機体ではスペインの航空宇宙サプライヤーAciturri、ソフトウェアサービスでは同社の投資家でもあるPalantir Technologiesなどがいる。2021年6月にLiliumは、ジェット機の航行制御とアビオニクスのために、航空宇宙の大メーカーであるHoneywellをその名簿に加えた。

主要部品を既成のメーカーにアウトソースするLiliumの決定は、エンジニアリングと生産の大部分を内製することを選んでいるJoby Aviationといったその他の多くの主要eVTOL開発企業のやり方との訣別となる。Liliumのやり方には利点もある。何よりもまず、生産とテストのための設備機器に対して長期間、費用を使う必要がない。しかしLiliumの役員たちがほのめかすもっと重要な利点は、公的認可の過程かもしれない。

他のeVTOLメーカーと同じくLilium Jetも、商用運行のためには、EUの航空安全局と米国の連邦航空管理局からの認可が必要だ。Liliumも、その主要競合他社も、商用運用の開始を強気に2024年としている。既成の航空宇宙サプライヤーは、その最小限の性能規格に関して規制当局の認可をすでに得ている部品を使えるかもしれない。それによって、認可までの時間を節約できるだろう。

LiliumのチーフプログラムオフィサーであるYves Yemsi(イヴ・イェムシ)氏は、2021年初めにTechCrunchに対して次のように語っている。「エキスパートや航空宇宙のパートナーたちとのコラボレーションは、私たちの意図的な選択です。市場化までの時間を短縮できるだけでなく安全です」。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hiroshi Iwatani)

テトラが「空飛ぶクルマ」eVTOLの新機種「Mk-5」を米国で一般初公開、コンセプト動画も

テトラが「空飛ぶクルマ」eVTOLの新機種「Mk-5」を米国で一般初公開、コンセプト動画もテトラ・アビエーションは7月28日、世界最大級の航空ショー「EAA AirVenture Oshkosh 2021」(エアベンチャーオシュコシュ)において、「空飛ぶクルマ」とも呼ばれるeVTOL(垂直離着陸型航空機)の新機種「Mk-5」(マークファイブ)を7月26日に一般初公開したと発表した。合わせて予約販売も開始した。

今後、個人顧客向けに40機ほどの予約を獲得し、予約から1年後のデリバリーを実現する。また、米国においては、プライベートパイロットライセンスを持つ富裕層向けに販売することで顧客コミュニティを形成し、ユーザーとともに次世代eVTOLを開発し、量産へつなげる。引き続き日米の開発拠点を行き来し、資金調達をしながら開発を進めるという。

同社は、2020年2月に米国で開催された国際航空機開発コンペ「GoFly」において唯一の賞金獲得チームとしてディスラプター賞を獲得し、その後1年をかけてMk-5を開発した。Mk-5は固定翼に32個のローターにより垂直方向へ飛行し、尾翼にある1個のローターで水平方向への飛行を行うeVTOLとなっている。32個のローターのうち4つが故障した場合でも安定した飛行を行えるそうだ。

なお、現地時間7月31日8時30分(日本時間7月31日22時30分)からEAARadioへの出演も決定している。こちらのラジオはラジオアプリTUNEINを利用することで、日本からも視聴可能。

テトラが「空飛ぶクルマ」eVTOLの新機種「Mk-5」を米国で一般初公開、コンセプト動画も

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2021年7月、福島ロボットテストフィールド屋内飛行場にて撮影

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Mk-5製品仕様。現行はSN2、次機がSN3

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街中での商業利用に求められる静かなエアタクシーを開発するWhisper Aeroが脱ステルス

ドローンを使った配達や電動垂直離着陸機が、夢のような話から商業化に移行しようとしている今、多忙で騒々しい空が始まる日の前夜だ。NASAの元エンジニアで、Uberのエアタクシー部門を任されていた人物が開発しているのは、空の交通から騒音を取り除く技術だ。

後にJoby Aviationに買収されたUber Elevateの技術部長だったMark Moore(マーク・ムーア)氏は、Whisper Aeroと呼ばれる彼自身の会社を立ち上げた。今週ステルスを脱したこのスタートアップは、デリバリードローンやeVTOLから出るノイズをバックグラウンドレベルにブレンドして、人間の耳が気づかない程度の音にしてしまう電動スラスターを開発している。

これが本当だとすると、恐るべき挑戦だ。ノイズという問題の解決方法は、単純に音量を下げればいいものではない。ノイズと呼ばれる音のプロファイルには、周波数など音量以外の変数がある。たとえばヘリコプターにはメインローターとテールローターがあり、2つが異なる周波数を生み出す。それによって人間の耳は、単一の周波数よりもうるさく感じてしまうとムーア氏は最近のTechCrunchインタビューで話した。

eVTOLは、状況をさらにややこしくする。eVTOL企業が作っているものは、これまでとはまったく違うタイプの航空機で、ヘリコプターのような従来の回転翼航空機とは異なる音響プロファイルを生み出す。米国陸軍が最近行った研究調査によると、eVTOLのローターは、ヘリコプターが生成するトーナルノイズ(単一音調)ではなく、一般にブロードバンド(広帯域)と呼ばれるようなタイプのノイズであることが確認された。それぞれのeVTOL企業が独自の設計を開発しているため、すべての電動航空機が同じレベル、同じ種類のノイズを出すわけではない。

ところがWhisperは、全業界から採用してもらえるようなスケーラブルな製品を設計している。

ムーア氏によると、そのアイデアが形を成すまでに数年を要したという。彼と同社COOで、Elevateで戦略とシミュレーションを指揮していたIan Villa(イアン・ヴィラ)氏は数年前に、ノイズをなんとかしないかぎり、エアタクシーの商用化はありえないと悟った。

「はっきりしてのは、ノイズが最も重要だということです。最も突破困難な障壁です。しかし、解決しようと時間とリソース、マインドシェアを費やしている開発者の数はほとんどいませんでした」とヴィラ氏は語る。

WhisperのCEOマーク・ムーア氏(画像クレジット:Whisper Aero)

ヘリコプターはあまり頻繁に使われないため、あのひどいノイズもあまり問題にならない。しかしJoby AviationのようなeVTOL企業のプロダクトは、利用頻度が桁違いに多い。ムーア氏がいち早く指摘したのは、Joby(2020年末にElevateを買収)のような企業はすでにヘリコプターよりずっと静かな航空機を開発しており、その開発の方向性は正しいということだ。

しかしながらムーア氏は「彼らの現状は、大量に採用されるほどのレベルに達しているだろうか?その疑問から、我々はスタートしました」と語る。

Whisperはその電動スラスターの詳細について口をつぐむが、すでにLux CapitalやAbstract Ventures、Menlo Ventures、Kindred VenturesそしてRobert Downey Jr.(ロバート・ダウニー・Jr)氏のFootPrint Coalition Venturesなどから約750万ドル(約8億3000万円)の投資を獲得している。同社はまた、2022年にはその暫定特許を国の正規の特許にしたい意向だ。

今後同社はまず小型のドローンを2023年に発売し、それから徐々にエアタクシーのサイズへスケールしていきたいと考えている。ムーア氏によると、乗用機用のスラスターは2020年代に完成するという。第1世代のeVTOLが、Archer AviationやJobyがいうように2024年に市場に出現するなら、Whisperの製品の登場はeVTOLの第2世代になるだろう。

当面の間、Whisperはテストとまだ残っている技術的課題の解決努力を継続する。最終製品のコストを合理的な範囲内に収めることも、その課題の1つだ。同社はまた、テネシー州の本社で行なうスタティックなテストに加えて、風洞を使用する実動試験も準備しており、その一部については米国空軍の協力を求める。

「バックグランドノイズに溶け込むほど静かでなければなりません。私たちはそう自覚しており、そのための技術を開発しています」とムーア氏は語る。

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画像クレジット:Whisper Aero

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hiroshi Iwatani)

空飛ぶクルマ・eVTOLのテトラが新機種Mk-5の7月末予約販売開始を発表、開発と人材育成で福島県南相馬市と連携協定

「真に価値のあるパーソナルな移動体験を開発」するとうたう航空機スタートアップ「テトラ・アビエーション」は7月7日、福島県南相馬市と連携協定を締結し、同市での試験飛行や人材教育を行うと発表。締結式では、新型eVTOL「Mk-5」(マークファイブ)のイメージ画像と模型が公開された。

これまでもテトラ・アビエーションは、福島ロボットテストフィールドでの試験飛行を行ってきた。今後は、2025年の大阪万博、2030年以降の「エアモビリティ」の実用化に向けて南相馬市と連携し、試験飛行の継続と、次世代エンジニアの育成を強化するという。

「Mk-5」10分の1の模型

テトラ・アビエーションは、7月26日からアメリカで開催される航空機の展示会「EAA AirVenture Oshkosh 2021」に「Mk-5」の実機を展示(ブース番号647)し、2022年の引渡を前提に、アメリカでの予約販売を開始する。当面は、アメリカの現行法に基づく形で、オーダーメイドキットとして販売し、ゆくゆくは日本でも自家用航空機としての販売を目指す。

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「スター・ウォーズ」のポッドレースを彷彿とさせるeVTOLレースが2021年開催、Airspeeder主催

eVTOL(電動垂直離着陸機)産業の大半が都市エアタクシーや貨物輸送に目をつけている一方で、起業家のMatthew Pearson(マシュー・ピアソン)氏は別のアイデアを持っていた。空飛ぶ電動レース機だ。ピアソン氏は2019年に2つの会社を興した。機体を製造するAlauda Aeronautics(アラウダ・エアロノーティクス)と、機体を競わせるインターナショナルシリーズのAirspeeder(エアスピーダー)だ。そして現在、Airspeederは初の電動飛行レース機のテストフライトを完了し、2021年EXAシリーズの最初のレースを開催する準備が整っていると話す。

飛行レース機である電動Alauda Mk3は南オーストラリアでテストフライトを実施した。機体認証を行うオーストラリアの民間航空局がフライトを確認した。ピアソン氏のビジョンは、Airspeederの映画のようなトレーラーを観るとわかるが、パイロット座席に人間が座っていない、「スター・ウォーズ」に出てくるポッドレースを彷彿とさせるレースだ。

2021年に開催されることになっている最初の3つのレースには、リモート操作される機体が参加する。Airspeederは2022年にもパイロットが乗り込んでのレースを計画している。

パイロットなしのMk3の最高速度は時速200km、重量は130kgだ。停止した状態から時速約100kmに達するまで2.8秒だと同社は話し、TeslaのModel SやPorscheのTaycanになぞらえた。フォーミュラ1やNASCAR(ナスカー)に忠実に、Mk3はピットに入っている間にすばやく取り替えられるバッテリーを搭載している。ピットクルーは、Alaudaがデザインしたバッテリーを20秒もかけずに取り替えることができる。Mk3は1つのバッテリーパックで10〜15分飛行することができる。そのため45分間のレース中、地上のパイロットは遠隔操作で約3回、機体をピットに着陸させることになる。

Mk3は、ピアソン氏がいう衝突回避システムを構成するLiDAR、レーダー、そしてマシーンビジョンを搭載している。同社は各機体に備わっているセンサーの数を明らかにせず、また専有情報だとしてシステムについてのさらなる詳細の提供についても却下した。しかし飛行レース機のための安全システムのデザインに関する課題は、機体が互いにぶつかることなく可能な限り近づけるよう十分なフレキシビリティを持たせることだ。競い合うパイロットにとってこれは問題だが、Airspeederのシステムについてもそうだ。

ピアソン氏は次のように説明した。「機体は互いに通信して、相手がどこにいるかを把握しており、同じアルゴリズムを使って同じ方法で衝突回避の問題を解決します。ですので、機体は互いの行動を予測することができることを知っています。それが衝突回避のフレームワークのようなものです。その中でパイロットに可能な限り多くの自由とコントロールを与えたいと考えています。パイロットとマシンの間にある壁をどこまで高くするのかという点が、本当におもしろいところです」。

エアタクシーサービスを開発しているメジャーなeVTOL企業と比べても興味深いものだが、電動飛行レース機のためのエコノミクスと商業化への道は異なる。「商業化モデルはかなり急速に進んでいます」とピアソン氏は話した。「商業展開が可能な他の誰よりも我々は真っ先にレースすることができます」。

Airspeederがそのように身軽に動ける理由の1つに、認証に向けた道が人々を輸送するエアタクシーとはかなり異なることが挙げられる。一部の推定によると、そうしたスタートアップはデザイン、認証、機体モデル1つの製造に数億ドル〜10億ドル(数百〜約1100億円)も使う。Mk3は特定の安全・対空性基準を満たす必要がある実験のための認証をオーストラリアの民間航空局から取得して飛行しており、重量規制は客を乗せる機体よりもかなり少ない。

「当社のプログラムに関して重要なことは、機体を一定の開発サイクルに維持することです。1つの機体を製造して、その後10年以上認証する代わりに、当社は毎年新しい機体を作ります」とピアソン氏は説明した。「航空がいかに普通に機能するかではありません。そして、乗客向けに応用したいのなら、どのようにするかではありません」。

Airspeederは2020年4月に額非公開で初の資金調達を行った。そのラウンドはオーストラリアの投資家Saltwater CapitalとJelix Venturesがリードした。ピアソン氏は自身も資金を注入し、ロジスティック企業DHLと高級腕時計メーカーIWC Schaffhausenとの提携を獲得したと述べた。Airspeederは、どのようにスモールスケールの航空機製造オペレーションの資金を賄ったのかについて詳細は明らかにしなかった。

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画像クレジット:Airspeeder

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

2人乗りの自律型デモ航空機「Maker」をArcher Aviationが公開、商業運航への「足がかり」に

Archer Aviation(アーチャー・アビエーション)は「Maker」(メーカー)と名づけられた自律型電動2人乗り航空機を米国時間6月10日に発表した。同社は同機を、2020年3月に発表済の、より大型の操縦士付き5人乗り航空機の認証取得に向けたテストに使用する予定だ。

6月10日に発表された航空機は、2024年に商業運転を開始した際に空を飛ぶものではない。だがArcherの認証責任者Eric Wright(エリック・ライト)氏は、TechCrunchに対して、自律型航空機から始めることでより効率的にテストプロセスを進めることができると語っている。

ライト氏は「2人乗りのMakerは、認証取得への足がかりとなるものです」と説明する。そして「これは飛行制御システムや電気推進装置など、私たちが認証を受ける航空機に搭載するものについての知識や認識を深めるためのテストベッドです。同時に私たちの試験を通して米連邦航空局(FAA)によるその設計への信頼を深めることができるようにするためのものでもあるのです。もちろん、FAAもその開発を見守ることになります」と述べている。

Makerと、まだ名前の決まっていない5人乗り航空機は、どちらも全部で12個のローターを持ち、そのうち前部6個のローターが傾く「ティルトローター」を採用しているという仕様上の共通点を持つ。このティルト機構により、航空機はヘリコプターのように垂直に上昇し、飛行機のように前進することができる。

両機はまた、それぞれ安全のために6つの独立したバッテリーパックを搭載しており、1つのバッテリーが故障しても残りのバッテリーが作動するようになっている。このバッテリーにより、両機は時速150マイル(時速約241.4km)で60マイル(約96.5km)の航続距離を実現している。2人乗り機は、翼幅が40フィート(約12.2m)で、重量は約3300ポンド(約1498.2kg)だが、より大きな機体ではもっと重くなるだろうとライト氏はいう。

画像クレジット:Archer

パロアルトに本社を置くArcherは、Makerが2000フィート(約608m)の上空から発する音は、わずか45dBだと予想している。この騒音仕様は、エアタクシーへの展開を目指している電動垂直離着陸機(eVTOL)メーカーにとって特に重要なものだ。一般の人々や規制当局に、同機の大量導入が受け入れられる可能性が出るのは、航空機が十分な静粛性を備えている場合に限られる。

Archerは、United(ユナイテッド)航空から10億ドル(約1096億円)の受注を獲得したと発表した後、2人乗り機の高品質なレンダリング画像を公開するなど、ここ数カ月の間にMakerに関する情報を少しずつ提供してきた(なお、このレンダリング画像の公開によって、ライバルのeVTOL開発会社であるWisk Aero [ウィスク・エアロ]から企業秘密の流用を主張する訴訟が起こされた)。米国時間6月10日のイベントは、38億ドル(約4167億円)の評価を受けている同スタートアップが、実際の航空機を一般に公開する初めての機会となった。

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このデビュー機が自律型である理由を聞かれたライト氏は、そのことでテストや検証のプロセスをより効率的に進めることができるからだと答えた。ライト氏は「航空機を自律的に動かすことで、航空機のパイロットが実際に操縦する必要なしに、より迅速に物事を進めることができます」という。「そうすることで、入力に対する機体の反応を、自律的な観点から、より早くより効率的に見ることができるのです」。

自律型エアタクシーが都市部で人々を運ぶようになるのはまだ先のことかも知れないが、Archerは他のeVTOL開発企業と同様に、長期的な青写真の中で、自律型エアタクシーを単に大型機の認証プロセスを促進するものではなく、運用可能な航空機として捉えているのだ。

ArcherのCEOであるBrett Adcock(ブレット・アドコック)氏は、別のインタビューの中で次のように述べている「輸送の世界に本当に大きな影響を与えようとするなら、長期的には、操縦士を使った方法でそれを実現することは本当に難しいと思っています。航空業界に入り、認証を受け、それをすぐにでも実現するという意味では、操縦士を使うやり方は確かに正しい方法だと思います。そして将来的には、乗客とネットワークの両方の安全性を高めるために、自律的な航空業界への移行が重要になってくると思っています。だから、業界がうまくスケールして大きくなるためには、ある程度の自律化は避けられないと思っています」。

創業3年目のこの企業は、2024年にロサンゼルスとマイアミを皮切りに商用運行を開始することを目指している。同社のシステムシミュレーションチームは、VTOL機離着陸場をどこに配置するかを決めるために、Prime Radiant(プライムラディアント)という名のシミュレーションツールを使っている。同チームを率いているのは、2020年12月にJoby Aviation(ジョビー・アビエーション)に売却された、Uber(ウーバー)のエアモビリティ部門Uber Elevate(ウーバー・エレベート)の、元データサイエンス責任者だ。

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またアドコック氏は、エアタクシーのルートを考える際には必ず必要となる、ファーストマイルとラストマイルの車での移動を統合するために、ライドシェア会社との間で話し合いを進めているのだという。

同社の共同創業者であるGoldstein(ゴールドスタイン)氏は、2024年のローンチ予定に先立ち、パートナーである自動車メーカーのStellantis(ステランティス)と2つの施設についての作業を進めていると語った。1つは従来の航空産業のように年間数百機を提供する施設で、もう1つは将来的にさらに大量の航空機を製造する施設だ。

Archerには、自動車メーカーと同様の製造上のニーズがあるとゴールドスタイン氏はいう「多くの部品に軽量のカーボンファイバーを使用し、自動車と同様に電気モーターやバッテリーを使用するのです」。

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画像クレジット:Archer

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:sako)

eVTOL企業Joby Aviationがアジアや欧州でも早期に事業開始を計画

電動垂直離着陸型旅客機のスタートアップ企業であるJoby Aviation(ジョビー・アビエーション)は、最初の商業展開を北米で開始することを目指しているが、同社創業者でCEOのJoeBen Bevirt(ジョーベン・ビバート)氏は、アジアや欧州でも早々に存在感を示すことができると期待している。

米国時間6月9日に開催された「TC Sessions:Mobility 2021(TCセッション:モビリティ2021)」に参加したビバート氏は、最初に商業活動を行う場所は明らかにしなかったが、最近の発表によればロサンゼルス、マイアミ、ニューヨーク、サンフランシスコ・ベイエリアに絞られているようだ。しかし、最初の都市がどこになるかについては慎重に言葉を選んだ。

「3つの地域にそれぞれ初期の市場を設定することになると思います」と、同氏は語った。「最初に事業を起ち上げる市場については、私たちのチームの多くが現在活動している地域に近いという理由から、北米になる予定です。しかし、すばらしい好機や都市は世界中にあります。私たちはできるだけ早く、多くの人々にサービスを提供したいと考えています。そのために、製造規模の拡大に力を入れているところです」。

Joby Aviationは、Toyota(トヨタ)の協力を得て設計された45万平方フィート(約4万1800平方メートル)の製造施設の建設を、2021年後半に始める予定だ。同社はすでに先行生産用の施設を完成させている。

かつては秘密主義的なスタートアップだったJobyは、この半年間に多くの衆目を集めてきた。2021年2月には、Reinvent Technology Partners(RTP)と合併することで同意に達したと発表。RTPは、
著名な投資家でLinkedIn(リンクトイン)の共同創業者であるReid Hoffman(リード・ホフマン)氏、Michael Thompson(マイケル・トンプソン)氏、Zynga(ジンガ)創業者のMark Pincus(マーク・ピンカス)氏によって設立された特別買収目的会社(SPAC)だ。ホフマン氏は、ビバート氏とともにTCセッション:モビリティ2021にも参加した。

SPACによる買収以前にも、Joby Aviationは長年にわたりeVTOLの開発で注目を集め、投資家を獲得してきた。トヨタは重要な支援者・パートナーとなり、2020年1月には6億2000万ドル(約679億円)の資金を調達したシリーズCラウンドを主導した。その約1年後、Jobyは複雑な取引の一環として、Uber(ウーバー)の空飛ぶタクシー事業であるElevate(エレベート)を買収している。

関連記事:Uberが空飛ぶタクシー事業ElevateをJoby Aviationに売却、最後の夢の事業から撤退

現在のJoby Aviationは、2018年から取り組んできた米国連邦航空局(FAA)の認証取得に加え、eVTOL(電動垂直離着陸機)の製造に注力しているところだ。同社はまた、どこでどのように運用するかというピースを組み合わせ始めている。従業員数も過去1年間で2倍に増やし、現在は約800人を雇用している。

Joby Aviationは2021年6月初め、まずはロサンゼルス、マイアミ、ニューヨーク、サンフランシスコ・ベイエリアを中心としたバーティポート(垂直離着陸用飛行場)のネットワークを構築するために、国内最大級の駐車場運営会社であるREEF Technology(リーフ・テクノロジー)および不動産買収会社のNeighborhood Property Group(ネイバーフード・プロパティ・グループ)と提携することを発表した。

2024年の運用初年度には、1〜2都市で事業展開することをビバート氏は想定している。

「私たちは、消費者のみなさまに変革をもたらす体験をお届けするために、十分な範囲のサービスを提供したいと考えています」と、ビバート氏はいう。「新しいサービスが開始されても十分な供給がないと、お客様は不満を抱くことがありますからね。私たちは、少なくとも需要の一部に確実に応え、お客様に本当に満足していただける体験を提供したいのです。私たちが企業として本当に大事にしている要素は、お客様を当社の熱狂的なファンにすることだと、私は考えています」。

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ドイツのeVTOLメーカーのLiliumにハネウェルが飛行制御システムとアビオニクスを供給

ドイツの電動エアモビリティ企業であるLilium(リリウム)は、同社初のeVTOL(電動垂直離着陸機)である7人乗り「Lilium Jet(リリウム・ジェット)」の電子回路および機械システムの開発において、航空宇宙メーカーのHoneywell(ハネウェル)と提携すると発表した。

ハネウェルは、飛行におけるすべての可動部を制御するコンパクトなフライ・バイ・ワイヤ・システムと、航空電子機器のアビオニクスを、Lilium Jetに供給することになる。同じeVTOL企業であるVertical Aerospace(バーティカル・エアロスペース)の航空機にも、ハネウェルのコンパクト・フライ・バイ・ワイヤ・システムが採用されているが、Liliumが使用するアビオニクス・システムは、Lilium Jet特有の技術的要件に合わせて設計された専用バージョンになるという。

ハネウェルは航空宇宙製造業界の巨人であり、アーバン・エア・モビリティの専門チームをいち早く創設した企業の1つだ。また同社は、Liliumが特別買収目的会社のQell Acquisiton Corp.(ケル・アクイジション)と合併した際に発表された私募増資(PIPE)の募集に参加し、Liliumの投資家にもなっている。

両社は2019年2月から話し合いと協力を続けてきたと、Liliumのチーフプログラムオフィサーを務めるYves Yemsi(イヴ・イェムシ)氏はTechCrunchに語った。同氏によると、Liliumは内製に留めておきたいコアコンピタンス(例えば、推進システムやバッテリーシステムの設計と組み立て、航空機の最終組み立てなど)を特定し、航空機の他の部分に関しては経験豊富な社外のサプライヤーと提携するつもりだという。

「専門家や航空宇宙分野のパートナーと提携することは、当社にとって熟考した上での選択です」と、同氏はいう。「安全性を確保しながら、市場投入までの時間を短縮できます」。

このパートナーシップの大きな利点は、認証プロセスで大いに役立つことだと、イェムシ氏は説明する。ハネウェル製の部品の中には、FAA(米国連邦航空局)が認める最低性能基準であるTSO(Technical Standard Order)をすでに達成しているものがある。TSOに認定された部品を使用することで、認証プロセスの時間を短縮することができるというわけだ。

すでにLiliumでは、Design Production Approval(設計生産承認)とProduction Organization Approval(生産組織承認)の取得に向けてチームを編成している。これらは欧州連合航空安全局(EASA)が発行する2種類の承認で、基本的にその会社が製品を市場に投入できることを証明するものだ。これらの承認は、Liliumの航空機(と他のすべてのeVTOL)が商業運航を開始する前に、FAAとEASAの両方で取得しなければならない型式認証を補完する。

航空宇宙メーカーとして実績のあるハネウェルとの提携は、Liliumの計画を大きく前進させることになるだろう。イェムシ氏によれば、ハネウェルから部品の納入が始まると、次のステップはシステム構築研究施設を使って地上でアビオニクスや電子システムのテストを行い、航空機の開発とテストを進めていくことになるという。

「これから大変な仕事が始まるのです」と、イェムシ氏は語っている。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Joby Aviationが空飛ぶタクシー乗降場所として立体駐車場に注目

Joby Aviation(ジョビーアビエーション)は米国時間6月2日、バーティポート(垂直離着陸用飛行場)のネットワークの構築で米国最大の駐車場運営事業者、そして不動産買収会社と提携すると発表した。ネットワークはまずロサンゼルスとマイアミ、ニューヨーク、サンフランシスコのベイアリーナにフォーカスする。

REEF Technology、Neighborhood Property Group(NPG)との提携では、Joby Aviationは「米国の全主要都市圏にまたがる前代未聞のきさまざまなルーフトップ、ならびに新しいスカイポートサイトの買収・開発の資金をまかなうメカニズムにアクセスできるようになる」と声明で述べた。

エアタクシーに乗車できるロケーションの便利でアクセスしやすい大規模なネットワークの構築は、どの企業が未来の乗客を自社サービスに取り込めるかを決める鍵を握る要因となる。ヘリコプターをサポートする現在のインフラは限られており、特に電動垂直離着陸機(eVTOL)企業がサービスを展開しようとしている都市部においてはそうだ。

提携によってJoby Aviationは、REEFの不動産ネットワーク内で長期リースを確保できる間、サイトへの独占的なアクセスを持つ。

電動航空機大手であるJoby Aviationの航空ライドシェアリングネットワークに関する意図はこれまでほとんど明らかになっていなかったが、創業者でCEOのJoeBen Bevirt(ジョーベン・べバート)氏は既存の立体駐車場を使うことのメリットについて公言していた。

そうした建物は通常、密集地域にあり、大型で、複数の小型航空機を支えられるだけの頑丈な材料で建てられている。しかしおそらく最も重要なことに、立体駐車場は移動の最初と最後に使われるという点で空飛ぶタクシーと協力し合うことになる別の交通手段である車を有している。

駐車場運営・サービスの会社ParkJockeyを有しているREEFはモビリティとロジスティックのハブ約4500カ所を展開していて、これは北米の都市部の人口の70%をカバーしているとのことだ。同社は2020年11月にソフトバンクやMubadalaなどから7億ドル(約768億円)を調達した

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新たな提携に加え、Jobyのバーティポートネットワークは既存のヘリポートと地方空港も活用する。

べバート氏は「今回の提携はJobyが進める変革的な空のライドシェアリングサービス構築において画期的なものです。NPGとREEFは米国中にすばらしいサイトネットワークを展開していて、我々の未来のサービスの屋台骨となるサイト選びで両社と協業することを楽しみにしています」と声明文で述べた。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

電気航空エコシステムの構築に向けBeta TechnologiesがシリーズAで約405億円調達

電動航空機のスタートアップBeta Technologies(ベータテクノロジーズ)は米国時間5月18日、Amazon(アマゾン)のClimate Pledge Fundからも投資を受け、3億6800万ドル(約405億円)のシリーズAラウンドをクローズした。新しい資本は同社が2021年発表した資金調達として2回目だ。同社は3月にも1億4300万ドル(約160億円)の資本を私募により調達した。

この資金調達ラウンドはFidelity Management&Research Companyがリードし、AmazonのClimate Pledge Fundも金額非公開で加わった。Climate Pledge Fundは持続可能な技術の開発を進めるために2019年9月に設立された20億ドル(約2200億円)のファンドだ。電気自動車メーカーのRivian、バッテリーリサイクルのRedwood Materials、水素燃料電池航空機のZeroAviaにも投資している。

CNBCによると、同社のバリュエーションは現在14億ドル(約1540億円)。10億ドルを超えるバリュエーションを達成した電気垂直離着陸機(eVTOL)の小さな輪に加わった。

Beta Technologiesは、10億ドル(約1100億円)を超えるバリュエーションを達成した開発業者のJoby AviationやArcher Aviationとは違う。エアタクシーに力を入れているわけではなく、防衛への応用、貨物配送、医療物流を対象とし、米国北東部で急速充電システムのネットワークを構築している。航空機デビューとなったALIA-250cは、そうしたさまざまな分野のソリューションに対応できるよう開発された。6人、またはパイロットと1500ポンド(約680kg)を運ぶことができる。

バーモントを拠点とする同社は、上記すべての業界ですでに大きな提携を達成した。その中には、人間への移植のために人工臓器を輸送するUnited Therapeuticsとの提携や、10機のALIA購入と140機の購入オプションをもたらしたUPSとの提携、そして米空軍との提携がある。

しかし、同社は旅客輸送を完全に無視しているわけではない。2021年4月、2024年に5機を納入するBlade Urban AirMobilityとの提携を発表した。

Beta Technologiesは、米空軍から耐空性の認証を得た最初の会社だ。同社は2021年6月に空軍と契約を結び、ワシントンD.C.とオハイオ州スプリングフィールドにある同社の航空機とフライトシミュレーターへのアクセスを許可する予定だ。ただし、さらに連邦航空局からの認証を取得する必要がある。

同社は18日のニュースリリースで、この資金は、ALIAの電気推進システムと制御装置の改良、製造に関連した領域の強化、バーモント州のバーリントン国際空港における利用面積の拡大などに使うと述べた。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

空飛ぶクルマ「ASKA」でNFT Inc. が都市と郊外の在り方を新たなものに

ここ数年、多くのスタートアップが空飛ぶクルマを市場に投入すると約束してきたが、現在のところこれを実現した企業はまだない。NFT Inc.は他社が実現し得なかったことを達成すると表明し、米国時間4月15日から、同社の最初の電気空中移動車であるASKAの先行予約を開始した。

SUVサイズのASKA(日本語で「飛ぶ鳥」の意味)は、空飛ぶクルマ、というよりは路面走行可能な飛行機というほうが正しいかもしれない。6つあるロータを完全に格納した時でも、ASKAの外見はまぎれもなく飛行機のそれである。フロントグラスはヘリコプターを思わせる丸みのある形状で、後部には、飛行機に乗ったことのある人なら誰でも知っている特徴あるテールがついている。

NFTは、一般消費者の空中移動車の使用に対応する安全規制および交通規制が2026年までには整備されると予測しており、それまではASKAの納入を行わない予定である。同社の広報担当者はすでに先行予約で注文が入り始めていることを認めており、値段は操縦トレーニングも含め、78万9000ドル(約8600万円)となっている。

消費者向け空中移動車を最初に市場に投入した会社となることは、野心的な目標である。NFTは、同社の後ろ盾である資金提供者を公表することは拒んだが、先行予約に必要な5000ドル(約55万円)は、100%返金可能だと述べた。

NFTの共同創設者であるGuy Kaplinsky(ガイ・カプリンスキー)氏と Maki Kaplinsky (マキ・カプリンスキー)氏は TechCrunchに、 ASKAをはじめとする空中移動車は、都市と郊外の生活を根本的に変えることになるだろう、と語った。

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ガイ・カプリンスキー氏が「これにより都市のダイナミクスは変化するでしょう」と述べ、マキ・カプリンスキー氏は「空中移動車の出現で郊外と農村地域の在り方は変わり、富は周辺地域に移行するでしょう【略】そしてそれは周辺地域の郊外に住む人々にとって非常に興味深いものになると確信しています」と付け加えた。

どういった変化が起こるかは簡単に想像がつく。超富裕層は、都市生活やそれにともなう交通パターンの束縛から逃れ、郊外といわず、さらに遠くに居を構えることができるだろう。ASKAの航続距離が250マイル(約400km)であることを考えると、彼らは必要な時、あるいはそうしたい時だけ、都市に飛んでくることが可能になる。

共同創設者の2人によると、ASKAが他の競合他社製品と違うところは、ASKAを運転するために空港へ行く必要がない点である。同様に、規制当局も郊外の空中移動車ユーザーがどっと空港になだれ込むことを心配する必要がない。NFTでは、ASKAをドア・ツー・ドアの乗り物として設計してきた。ユーザーに必要なのは、ウィングとローターブレードを広げるためのスペースだけである。ASKAは従来の飛行機のように滑走路を使って離陸することも可能だが、ヘリコプターのように垂直離陸することもできる。ガイ・カプリンスキー氏によると、滑走路を使った離陸のほうがエネルギーがかからないため、ユーザーはスペースのある郊外では滑走路を使い、都市では垂直離陸を選択するだろうと考えている。

それぞれのローターには、個別のバッテリーパックが装備されるが、NFTでは冗長性を確保するため、ガソリンで動力を供給するレンジエクステンダーを2つ設置することも決定した。ASKAの2つのミドルローターはウィングとしての役割も果たし、緊急時には滑空をサポートする。

「ASKAユーザーのほとんどは、新米パイロットということになりますから、当社では安全を第一に考えています。現在のところ、問題は(バッテリー)セルです。化学電池開発者で、その製品が空中で故障しないと断言する開発者はどこにもいません。したがって当社ではそのようなリスクを取ることはできません」。とガイ・カプリンスキー氏。彼によると、ASKAは将来的に全電気式製品になる可能性があるが、それはバッテリーテクノロジーに左右されるとのことである。

ASKAは、従来のガレージやガレージ前のスペースに保管できるコンパクトなサイズで、電気自動車用に設置された充電ステーションで充電できる製品になる。一部の電気自動車メーカーと同様、ASKAはサードパーティーによる半自律型テクノロジーを搭載する予定だ。「当社がターゲットにしているお客様にはプロではないパイロットも含まれるため、半自律型テクノロジーである程度のコントロールができるほうが、完全自律型の「ロボット」のような車に乗っているよりも、快適であると確信しています」。と同社の広報担当者はTechCrunchに語った。仮に規制当局が将来のある時点で完全自律型テクノロジーの使用を許可したとしても「多くのお客様は、半自律型である程度の操縦ができることを望まれると考えます」と彼は付け加えた。

またNFTは、4月15日にオープンするカリフォルニア州ロスアルトスのASKAショールームを通し、購入体験を新たなものにしたいと考えている。同社の顧客はショールームで空気力学や操縦装置の専門家と話すことができる。また先行予約で最初の1500人に入った顧客は、NFTの株式を一株付与され、同社が「創設者クラブ」と呼ぶものに加入することになる。クラブのメンバーになると、同社の幹部に3カ月から6カ月ごとに会うことが可能だ。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Dragonfly)

飛行モビリティWisk Aeroが特許侵害と企業秘密盗用の疑いでArcher Aviationを提訴

Kitty Hawk(キティ・ホーク)とBoeing(ボーイング)の合弁会社で、飛行モビリティを手がけるWisk Aero(ウィスク・エアロ)は、米国時間4月6日、Archer Aviation(アーチャー・アビエーション)を相手取り、特許侵害と企業秘密の横領を主張する訴訟を起こした。

Wisk Aeroは訴状の中で、Archer Aviationが機密情報と知的財産の「大胆な窃盗」を行ったと主張している。この訴訟では、2021年2月にArcher Aviationが初めて発表した電動航空機のデザインが、Wisk Aeroの潜在的なデザインの1つをコピーしたものであると指摘。そのデザインは2020年1月に米国特許商標庁に提出されており、類似点があまりにも多く、偶然の一致ではないとWisk Aeroは主張している。

さらにWisk Aeroは、Archer Aviationが同社の元エンジニア10名を雇用した後に行われた捜査で、そのうちの1名が退職前に数千ものファイルを密かにダウンロードしていたことが明らかになったと主張。別のエンジニアもファイルをダウンロードしていたと訴えている。

盗まれたファイルに含まれる情報には、システム設計、テストデータ、航空機のデザインなどが含まれていると、Wisk Aeroは4月6日に投稿したブログ記事で述べている。

「訴状で説明しているとおり、Archerが公開したデザインには、Wiskの長年による実験とモデリングに基づいた広範な空力試験と評価データに関する内部知見が反映されています」と、同社はブログ記事で述べている。「航空機全体のデザインが類似していることから、航空機の推進機関、電力管理、航空電子工学、飛行制御、製造方法に関連した特徴を含む、さらに詳細な設計上の特徴を、Archerが利用していることは明らかです」。

Archer Aviationは2021年、特別買収目的会社であるAtlas Crest Investment Corp.(アトラス・クレスト・インベストメント)との合併を2月に発表し、時価総額が38億ドル(約4171億円)に達するなど、いくつかの大きな勝利を掴み取っている。同じ2月に、このカリフォルニア州パロアルトを拠点とするスタートアップ企業は、顧客および投資家としてUnited Airlines(ユナイテッド航空)から10億ドル(約1100億円)の注文を獲得している。

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Archer Aviationの広報担当者は、TechCrunchに宛てたメールで次のように述べている。「Wiskが、従業員数名の離職の原因となったビジネス上の問題から目を逸らすために、訴訟を起こすことは遺憾です。原告がこれらの問題を提起したのは1年以上前ですが、徹底的に調べた結果、Wiskの独自技術がArcheに渡ったと信じるに足る理由はありませんでした。私たちは精力的に自らを弁護するつもりです」。

また、同社の広報担当者は、次のように続けた。「当社では、政府による調査と、ある従業員に対して出された捜査令状に関連して、その従業員を休職させました。この捜査は、その従業員が当社に入社する前の行為に焦点を当てていると、我々は考えています。Archerと、当該従業員が一緒に働いていた他の3名の従業員も、この捜査に関連した召喚状を受け取っており、全員が当局に全面的に協力しています」。

この刑事捜査のニュースを受けて、Wisk Aeroの広報担当者は「Archerがこの件に関する刑事捜査を開示したことは承知しており、当社は政府に全面的に協力しています。現時点ではそれ以上のコメントはありません」と述べた。

この訴訟は、カリフォルニア州北部地方裁判所に、ケースNo.5:21-cv-02450として提訴されている。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

2024年までにLAでの都市型エアタクシー導入を目指すArcher Aviation

特別買収目的会社との合併を通じて公開企業となることを最近発表した電動航空機スタートアップのArcher Aviation(アーチャー・アビエーション)は、2024年までにロサンゼルスで都市航空タクシーのネットワーク立ち上げを計画している。

今回の発表は、ロサンゼルス市長であるEric Garcetti(エリック・ガーセッティ)氏のオフィス、ロサンゼルス市交通局、そしてUrban Movement Labの3者が、都市型航空機を既存の交通網や土地利用政策に統合する方法についての計画を策定するための1年計画である「Urban Air Mobility Partnership」の結成から2カ月後に行われたものだ。2019年11月に立ち上げられたUrban Movement Labsは交通テクノロジーの開発・テスト・展開を目的とする地元政府と企業による官民連携の組織だ。Urban Movement Labsとロサンゼルス市は、人々が「Urban Air Mobility(UAM、アーバン・エア・モビリティ)」航空機に搭乗できる「垂直離着陸飛行場」の設計とアクセスに取り組んでいる。UAMとは、都市や郊外で乗客や貨物を低高度で運ぶことができる高度にかなり自動化された航空機を指す。

Archer Aviationは2週間前に、特別買収目的会社との合併を通じて公開企業となるという発表の中でUnited Airlines(ユナイテッド航空)が顧客、そして投資家となったことを明らかにした。Archer Aviationは2021年2月初めに特別買収目的会社のAtlas Crest Investment Corp.と合併することで合意に達した。この手法はスタートアップが従来のIPOプロセスを回避することを可能にしている最近頻繁に取られているものだ。ニューヨーク証券取引所にティッカーシンボル「ACHR」で上場する合併会社の評価額は、38億ドル(約4008億円)となる。

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ロサンゼルスに主要ハブを置くユナイテッド航空はこの取引の主要投資家の1社だ。合意条件に基づき、同航空は10億ドル(約1055億円)相当の航空機を発注した。5億ドル(約527億円)分の航空機を追加購入するオプションも持っている。

「初のeVTOL(電動垂直離着陸機)をユナイテッド航空のハブの1つで立ち上げるというArcherの約束は、当社の顧客が旅行のあらゆるステージで、座席に座る前から二酸化炭素排出を抑制することに1歩近づいたことを意味します」とユナイテッド航空の経営企画・投資関係担当副社長のMichael Leskinen(マイケル・レスキネン)氏は声明で述べた。「Archerにとってロサンゼルスは始まりにすぎないと確信していて、我々のハブ全体へと拡大するのをサポートすることを楽しみにしています」。

Archerが乗客をシャトル輸送するようになるまで、道のりは長い。同社はフル充電すれば時速150マイル(約241km)で60マイル(約96km)飛行するようデザインされているeVTOLをまだ大量生産していない。同社は以前、フルスケールのeVTOLを2021年後半に披露し、2023年の大量生産開始を目指している、と述べた。

垂直離着陸飛行場ハブのデザインと構築は、今後3年間で終えなければならない数多くのタスクの1つだ。同社の共同創業者で共同CEOのBrett Adcock(ブレット・アドコック)氏とAdam Goldstein(アダム・ゴールドステイン)氏は、短期的にはヘリパッドや駐車場のような既存インフラを使うのに前向きだ。同社によると、「Maker」という名のeVTOLは既存インフラに収まるサイズとなる。Urban Air Mobility Partnershipが仮にその戦略に同意するとして、そうしたフレキシビリティはArcherが2024年という目標を達成するのに貢献するかもしれない。

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

eVTOL開発のArcherがユナイテッド航空から受注、SPAC経由で上場も

都市部の航空モビリティマーケットをターゲットとしている電動航空機スタートアップのArcher Aviation(アーチャー・アビエーション)が、SPAC(特別買収目的会社)との合併を通じて公開企業となることを目指す一環で、United Airlines(ユナイテッド航空)を顧客そして投資家として獲得した。

Archer Aviationは米国時間2月10日、SPACのAtlas Crest Investment Corpと合併することで合意したと明らかにした。SPAC合併はスタートアップが従来のIPOプロセスを回避するのを可能にするという、このところよく見られる手法になっている。ティッカーシンボル「ACHR」でニューヨーク証券取引所に上場する合併会社の評価額は38億ドル(約3975億円)となる見込みだ。

ユナイテッド航空やStellantis、Exorのベンチャー部門、Baron Capital Group、Federated Hermes Kaufmann Funds、Mubadala Capital、Putnam Investments、Access Industriesといった投資家からのPIPE(私募増資)の6億ドル(約628億円)を含め、計11億ドル(約1150億円)を得ると予想される、とArcher Aviationは話した。Ken Moelis(ケン・モエリス)氏とその仲間、Archer Aviationの主要・初期投資家の1人であるMarc Lore(マーク・ロア)氏、そして初期投資家もPIPEに3000万ドル(約32億円)を投資する。

合併会社はまた信託で5億ドル(約523億円)を保有する。SPAC合併に先駆けてArcherはシードラウンドとシリーズAで6000万ドル(約63億円)を調達していた。

これとは別に、カリフォルニア州パロアルト拠点のArcherはユナイテッド航空がArcherに投資することに同意したと発表した。合意条件の下で、ユナイテッド航空は10億ドル(約1045億円)分の航空機をArcherに発注した。同航空は追加で5億ドル(約523億円)分の航空機を購入するオプションも持つ。

Archerはまだ電動垂直離発着機(eVTOL)の大量生産を開始していない。同社のeVTOLはフル充電すると時速150マイル(約241km)で60マイル(約96km)飛行できる。同社はフルスケールのeVTOLを2021年後半に披露する計画で、2023年の大量生産開始を目指している。

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同社は、ユナイテッド航空との取引、そして以前発表した自動車コングロマリットStellantisとの提携ならびにSPAC合併を通じて調達した資金によって商業化へ向けた取り組みを加速させられると確信している。

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ユナイテッド航空のCEOであるScott Kirby(スコット・カービー)氏は今回の投資は同社が空の旅の脱炭素化を進める手法の1つだと表現した。

「Archerとの協業で、ユナイテッド航空はよりクリーンで効率的な交通手段を擁する時だということを航空業界に示しています。正しいテクノロジーを活用して我々は航空機が地球に与えるインパクトを抑制できますが、これを早期に現実のものとする次世代の企業を特定し、そうした企業が飛び立つのをサポートする方法を見つけなければなりません」と同氏は述べた。

また今回の動きは、ゆくゆくはユナイテッド航空の乗客の空港送迎ができるかもしれないという新たなビジネスラインへの投資でもある。ArcherのeVTOL1機を使えば乗客1人のハリウッド-ロサンゼルス国際空港間の移動による二酸化炭素排出量を最大50%減らすことができる、とユナイテッド航空は算出している。ロサンゼルスはArcherが最初に機材を飛ばそうと計画している都市の1つだ。

Archer Aviationがステルスモードから登場して1年も経たないうちに、SPACとの合併契約とユナイテッド航空からの受注となった。Archerは2018年にAdam Goldstein(アダム・ゴールドステイン)氏とBrett Adcock(ブレット・アドコック)氏が共同創業した。2人はSaaS企業VetteryをAdecco Groupに1億ドル(約105億円)超で売却した。Archerの主要投資家はロア氏で、同氏は自身の会社Jet.comを2014年にWalmartに33億ドル(約3450億円)で売却し、現在はWalmartのeコマース責任者を務めている。

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

キャデラックが贅沢な空の旅を提供する1人乗り電動垂直離着陸ドローンのコンセプト公開

GMは米国時間1月12日、Cadillac(キャデラック)ブランドの電動垂直離着陸ドローンのコンセプトを公開した。これは(もし市販化が実現すればの話だが)オーナーが1人だけ贅沢な気分で空中をクルージングするために設計されたものだ。

バーチャルで開催されたCES 2021年で、GMが基調講演を行った際に、自律走行車と一緒に公開されたこの1人乗りのeVTOLは、同社初の空中モビリティに向けた試みだ。これは単なるコンセプトであり、実際の製品になる可能性は低い。しかしこれらのコンセプトは、企業がデザインや製品の方向性を示すものであり、電気自動車や自律走行車に関しては、GMがその技術に投資する意思があることを証明している。

「我々は電気駆動技術と自動運転技術の進歩によって、個人の空の旅が可能になる世界に備えています」と、GMのグローバルデザインを統括するMichael Simcoe(マイケル・シムコー)氏は、そのプレゼンテーションの中で語った。「これは、時間が最も重要であり、利便性が何より優先される瞬間のためにデザインされたコンセプトです」。

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キャデラックのeVTOLコンセプトは、搭載する電気モーターが90kWhの出力を発生し、4つのローターを駆動させ、乗員を屋上から目的地へと運ぶことができる。また、空と空および空と地上間の通信機能も装備している。

シムコー氏によれば、同社はさらに多くのコンセプトを計画しており、その中には「オーナーと特別な人のために設計された豪華な2人乗りの機体で、落ち着いてリラックスしながら、より親密な旅のために演出された多感覚に訴える体験を楽しめる」ものも含まれるという。

このコンセプトは、シムコー氏が説明するように自動運転とキャデラックのラグジュアリー性が「そう遠くない将来に」どのようなものになるのかを世界に示すものだ。

もちろん、これらのコンセプトは、GMがいかに交通機関の未来に本気で取り組んでいるかを伝えるためのものでもあり、その中心は電動化、自動運転技術、コネクテッドカーサービスだと考えられている。

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(翻訳:TechCrunch Japan)

エアタクシースタートアップArcherが電動飛行機生産で自動車メーカーのフィアット・クライスラーと提携

都市交通向けの電動垂直離着陸機(eVTOL)を開発するArcherは、自動車メーカーのFiat Chrysler Automobiles(FCA、フィアット・クライスラー・オートモービルズ)のエンジニアリング、デザイン、サプライチェーンおよび材料科学における専門知識を活用するために、同社と新たな提携関係を結ぶ。ArcherはeVTOLの量産を2023年に開始し、2021年の早い時期での機体初公開を目指している。

今回の新たな提携により、FCAはArcherのeVTOLのコックピット設計に貢献する情報を提供することになり、また自動車事業での何十年にもわたってドライバーのために空間を設計してきた豊富な専門知識でも貢献する。Archerの機体は電気モーターを搭載し、最高時速150マイル(時速約240km)で最大60マイル(時速約97km)飛行できる。同社のeVTOLは静粛性と効率性を重視して設計されており、FCAとの連携により、大量生産と持続可能性を実現するために製造コストの低減に向けた取り組みが進められている。

最終的にArcherはFCAの協力を得てプロセスの効率化を実現し、eVTOLを市場に投入することで、エンドユーザーが手頃な価格で利用できる健全なビジネスを実現することを目指している。パロ・アルトを拠点とするArcherは、将来的には世界中の都市でエアタクシーサービスを提供するために、最終的には年間「数千機」のeVTOL機を生産できるレベルまで生産規模を拡大したいと考えている。

共同創業者のBrett Adcock(ブレット・アドコック)氏とAdam Goldstein(アダム・ゴールドスタイン)氏が率いるArcherは、Airbus(エアバス)のVahana eVTOLイニシアチブで重要な役割を担ったチーフエンジニアのGoeff Bower(ゴエフ・バウワー)氏といった業界の重鎮が参加し、2021年初めにウォルマートのeコマース事業の現社長兼CEOであるMarc Lore(マーク・ローア)氏(ウォルマートに買収された際に同氏はJetの共同創業者兼CEOだった)の支援を受けて、ステルス状態からスタートした。

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter