Intelがイスラエルの交通アプリMoovitを約960億円で買収、自動運転部門を強化

イスラエルでは、スマート輸送の世界でいくつかの大きなM&Aが進んでいる。TechCrunchが入手した複数のレポートや情報筋によると、チップ大手のIntel(インテル)は、AIとビッグデータによる交通状況の分析に基づき世界約8億人におすすめの経路情報を提供するスタートアップのMoovit(ムービット)を買収する最終段階だという。買収契約は近く、10億ドル(約1070億円)程度の買収価格で完了する見込みだ。

(編集部注:インテルはその後に約9億ドル、約960億円でMoovitを買収したと発表)

Moovitの創業者兼CEOであるNir Erez(ニル・エレズ)とインテルの広報担当者に連絡しコメントを求めた。詳細は入手次第更新する。現時点では、Moovitの広報担当者はレポートの内容やTechCrunchが直接入手した情報を否定していない。

「現時点ではコメントはないが、何か変更があった場合は必ず知らせる」とMoovitの広報担当者は述べた。

Moovitは以前Intel Capitalから戦略的投資を受けている。情報筋によるとMoovitは、Mobileye(モービルアイ)を核とするインテルのイスラエルの自動車ハブの一部になるようだ。Mobileyeはインテルが2017年に153億ドル(約1兆6300億円)で買収した自動運転の会社だ。

Moovitがハブで果たす役割はまだはっきりしない。基本的に、自動運転車を導入する上で最も困難な点の1つは、信頼できるリアルタイムの交通情報データ取り込みとインテリジェントルーティング(最適な経路の選択)の実行だ。これはMoovitのコアビジネスだ。

実際、Moovitは既にMobileyeやインテルと協力している。インテルは、Moovitの最後のラウンドとなった2018年のシリーズDで5000万ドル(約53億円)の調達をリードした。その一環として、インテルの上級副社長でMobileyeのCEO兼CTOのAmnon Shashua(アムノン・シャシュア)教授がオブザーバーとしてMoovitの取締役会に加わった。シリーズDに参加したインテル以外の投資家にはNGP Capital、BMW、Sound Ventures、Gemini Israelといったそうそうたる名前が並んでいる。

人材を獲得し、それをインテルのより大きな戦略に統合することが買収の主な動機のようだ。従業員はリテンションパッケージの一部として最終的な買収金額の約10%を受け取る。詳細はイスラエルのヘブライ語の新聞The Markerによって報じられ、Wadi VenturesのアナリストであるDavid Bedussa(デイビッド・ベデュッサ)氏がTechCrunchに報告した。

最後の資金調達ラウンド時点で、Moovitには5億ドル(約530億円)以上のバリュエーションがついていたが、その後2年間で大きく成長した。

同社は都市内の最適な移動経路を教えてくれる人気のスタンドアロンアプリを開発している。Uber(ウーバー)のようなアプリとも統合し、Uberタクシー、自転車、公共交通機関、徒歩などの異なる移動手段を組み合わせるマルチモーダルルートを提供する。

Moovitは2018年にiOSAndroidウェブアプリが世界80カ国2000都市で1億2000万人のユーザーが利用したと発表した。2020年現在は102カ国、3100都市、45言語、8億人を超えている。

輸送面では、現在世界中の多くの人々が、世界的なパンデミックとなった新型コロナウイルスの感染拡大を遅らせるため、移動を控えるよう求められている。この公衆衛生危機の結果として世界経済は大きな下落局面にある。どちらも自動車業界に直接的な影響を及ぼしている。新型コロナの感染拡大を封じ込めるだけでなく、購買需要の著しい減退に対応するため、生産活動のスローダウンと次世代戦略の変更を余儀なくされている。

技術面では規模の大小を問わずあらゆる企業が、できるだけ最適化された方法でテクノロジーを活用し、物事を前に進める役に立つよう取り組んできた。特にこれは輸送関連のスタートアップの世界でも起こっていることだ。

移動の抑制によりユーザーによるMoovitアプリの利用量が大幅に縮小するなか、同社は一連の新型コロナ関連サービスを開始した。これは、今なお仕事を続け、移動を必要とする人々へのサービスだ。

サービスには、トランジットデータマネージャー(通常のB2B製品と異なり無料で提供されている)が含まれている。これは最新のトランジットデータ(経路情報)と交通量データの両方を受信し、短時間で大量の処理を迅速に行い、ユーザーは最新の情報に基づき最適なルートを選択できる。

また、Moovitアプリのユーザーがアラートを受け取れるリアルタイムサービスも開始した。さらに「緊急モビライゼーションオンデマンド」サービスも開始した。これにより、交通サービスのマネージャーはバスをより迅速にルートに再配置して、公共交通機関を利用しているエッセンシャルワーカーにより良いサービスを提供できる。

Moovitがさらなる資金調達を狙っていたのか、他の多くのスタートアップと同様に資金調達に不安を感じていたのか、あるいは買収提案の内容が良すぎて断れなかったのか、そもそも買収の話は新型コロナ前からあったのか、いずれも定かではない。Moovitのビジネスの規模と範囲を考えると、当面は進める価値があるビジネスのように見える。

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(以下、続報の要約)

インテルは5月4日、Moovitを約9億ドル(約960億円)で買収したと発表した。ただし、既に保有する持分の価値増加分を差し引くと、買収で支払う金額は8億4000万ドル(約896億円)となるという。

MoovitのテクノロジーはMobileyeの「Mobility as a Service(MaaS)」の拡大・強化に利用する。Mobileyeのドライバーアシスタンステクノロジーは現在約6000万台の自動車に搭載されている。「ロボタクシー」などの自動運転サービスはまだ初期段階にあるが成長の見込みは大きい。インテルはロボタクシーだけで2030年までに1600億ドル(約17兆1000億円)の市場規模になると考えている。

「インテルの目的は地球上のすべての人の生活を豊かにする世界に変えるテクノロジーを生み出すことであり、我々のMobileyeチームはその目的に向かって毎日前進している」とインテルのCEOであるBob Swan(ボブ・スワン)氏は述べた。「MobileyeのADAS(先進運転支援システム)テクノロジーは数百万台の自動車の走行安全性を既に改善しつつある。Moovitはフルスタックモビリティープロバイダーとして移動手段に真の革命をもたらす。混雑を緩和し、人命を救う」。

今回の買収が興味深い点は、インテルが自動運転事業への関与を深めていることを裏付けるだけでなく、新型コロナの影響による世界的な景気後退の中で自動車会社や自動運転車の試みが延期・中止されるこの時期に行われたことだ。Ford(フォード)は自動運転サービスを2022年まで延期すると発表し、Waymo(ウェイモ)とVoyage(ボヤージュ)はいずれもサービスを中止している。

「経済は逆風下にあり、自動車の研究開発に取り組む企業は計画を減速・縮小するかもしれないが、我々はドライバーレスMaaSのビジョンをいち早く実現するのに必要な価値ある資産を獲得する機会だと捉えている」とシャシュア氏はブログ投稿で説明した。

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(翻訳:Mizoguchi

インテルチップに新たな欠陥、攻撃者がセキュア領域にデータを忍び込ませることが可能に

Intel(インテル)チップに新しく見つかった欠陥 は、攻撃者がシステムを通過する特権情報を見ることを可能にするだけでなく、新しいデータを挿入することさえ可能にする恐れがある。この欠陥は、普通のユーザーが心配する必要のあるものではないが、情報のセキュリティに対する脅威といういう意味では時代の象徴だ。

読者はおそらくMeltdownやSpectre、そしてHeartbleedという驚異はご存知だと思うが、今回の脅威に与えられているのはそれよりは控えめなLoad Value Injection(LVI)と言う名前だ。この欠陥は、BitDefenderならびに、Van Bulck(バン・バルク)氏が率いる複数の大学が参加するあるグループが、それぞれ独自に発見したものだ。

欠陥の正確な技術的詳細は、普通のユーザーには理解できないものだし、自分たちで修正できるようなものでもない。ただし以下のことは知っておくべきだ。LVIとは最新のコンピューティングアーキテクチャで使用される「投機的実行」(Speculative Execution)と呼ばれる手法に関連する、一般的な欠陥の1つなのだ。

関連記事:スペクター!メルトダウン!カーネル・パニック!、今回の脆弱性はほぼ全員に影響が及ぶ

投機的実行というのは、誰かが黒板に数学の問題をかなりゆっくり書き始めた際に、それが解かれる可能性のある10種類の方向に先回りして、その問題を解いてしまうやり方に少し似ている。こうすることで、教師が黒板に問題を書き終えたときには、既に答が求まっているというわけだ。予想が外れたほかの解答は捨ててしまえばいい。プロセッサーもこれと似たようなことをやっている。もちろんはるかに複雑で統制された方法を行っているが、予備サイクルを用いて様々な計算を投機的に実行するのだ。

最近示されてきたのは、最深部のコードを注意深くチップの突いてやることで、普通なら極めて高度に保護され暗号化されたデータを吐き出させることができるという意味でこのやり方は安全性が低いということ。MeltdownとSpectreの場合は、漏洩を強制してデータを収集するようなものだったが、LVIはさらに一歩踏み込み、攻撃者がプロセス中に新しい値を埋め込むことを可能にし、結果に干渉したり、結果を制御したりすることさえできるようにする。

さらに悪いことに、これは安全であることを信頼できる難攻不落のサブシステムであるはずの「SGX Enclave」の内部で行われる。ただし、はっきりさせておきたいのは、まだ任意のコードが実行できるという段階ではないということ。安全だと思われているこのチャネルを操作するための、新しく効果的な手法なのだ。ここでは、それをよりはっきりと説明するため内容を更新している。

さて、これらのプロセスは、コンピューターの多くのコードと実行の階層の、非常に奥深い場所にあるため、何のために使えるのか、または使えないのかを言うことはできない。だがこの、攻撃者が特定の安全な値を独自のものに置き換えることができるという性質により、全体が危険にさらされていると想定すべきだ。

名前はそれほどキャッチーではないが、既にクールなロゴを持っている

もちろん緩和策はあるものの、それらはチップのパフォーマンスに深刻な影響を与える可能性がある。にもかかわらず、それらの緩和策は欠陥を抱えるチップ上に導入される必要がある。それには昨年より前に出荷されたほとんどの新しいインテルチップが関係している。

インテル自体はこの問題を非常によく認識しており、実際LVIとそれが可能にするさまざまな特定の攻撃方法に関する30ページの技術概要を公開している。ただし、最初に注意しておかなければならないが、これは世の中に大規模に展開されるようなものではない。

「LVIメソッドを思いどおりに実装するには、多数の複雑な要件を満たす必要があるため、LVIは実世界では実際的な脅威ではない」と上記技術概要の中には記されている。

そして、それこそが普通のユーザーが心配する必要がない理由なのだ。単純な真理は、おそらく普通のユーザーはこの攻撃の理想的なターゲットではないということだ。データを引き出すのは容易ではないうえに、個人ユーザーのデータは従来の手段(フィッシングなど)やデータセンターレベルで一括してデータを収集する方が得策だからだ。そこで重要なのは、個人ができるだけ早く自分のPCをアップデートすることではなく、何百万台ものサーバーを所有して運用している会社がアップデートを行うことだ。

ただし、その場合でも、一般に公開されていないシステムに対して攻撃者がアクセスすることはほぼ不可能であり、たとえ攻撃を行えたとしても価値のあるデータを取り出すことは難しいだろう。従って対処の優先度を最終的に決めるのはそれらの企業次第であり、その後、LVIやそれに類する欠陥を持たない将来のチップやアーキテクチャを設計するかどうかは、インテルのようなチップメーカー次第である。もちろん、これらのシステムの複雑さを考えると、そうした設計を行うのはかなり困難ではあるものの実際に存在しているものではあるのだ。

LVIの詳細については、その内容の文書化を行うために用意されたサイトを参照してほしい。あるいは単に、欠陥を特定した研究チームがまとめた、滑稽な「予告編動画」を見ることもできる。

関連記事:供給電圧を変化させてプロセッサを攻撃する新ハッキング手法「プランダーボルト」が発見される

画像クレジット: Getty Images

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(翻訳:sako)

クラウド上でAndroidアプリを動かすCanonicalのAnbox Cloud

Linuxの人気ディストリビューションUbuntuのCanonicalが、米国時間1月21日、クラウドサービスAnbox Cloudの立ち上げを発表した。企業はこのクラウドプラットホーム上でAndroidを動かすことができる。

Androidは、Anbox Cloudの上でゲストオペレーティングシステムになり、コンテナ化されたアプリケーションを動かす。これにより独自のエンタープライズアプリケーションやゲームサイトなど、さまざまなユースケースが期待されている。

Canonicalのクラウドサービスは、GoogleがChrome OSの上でAndroidアプリを動かせるようにしていることと似ているが、実装はまったく異なり、コンテナマネージャーLXDをベースとし、コンテナのプロビジョニングやデプロイの自動化などのためにJujuMAASといったCanonicalのプロジェクトを多数利用している。同社は発表声明で 「LXDのコンテナは軽量なので、仮想マシン上のAndroidエミュレーションと比べて、少なくとの2倍のコンテナ密度が得られる。ただし実際には、ストリーミングのクオリティーやワークロードの複雑さによって異なる」と述べている。

なお、Anbox自体はCanonicalとUbuntuの幅広いエコシステムから生まれたオープンソースプロジェクトだ。Anboxは2017年にCanonicalのエンジニアであるSimon Fels(サイモン・フェルズ)氏が立ち上げ、完全なAndroidシステムをコンテナで動かす。これによりユーザーは、Androidのアプリケーションを、どんなLinuxベースのプラットホーム上でも動かすことができる。

しかし、その意味は何だろうか? Canonicalの主張によると、Anbox Cloudを利用することで企業はモバイルのワークロードをクラウドへオフロード可能になり、それらのアプリケーションを社員のモバイルデバイスへストリームできる。またCanonicalによれば、5Gの普及により多様なユースケースが生まれるが、それに貢献するのは大きな帯域よりもむしろレイテンシーの低さだという。

Canonicalのプロダクト担当ディレクターStephan Fabel(ステファン・ファベル)氏は 「5Gのネットワークとエッジコンピューティングの普及により、多くのユーザーが、自分の好きなプラットホーム上で、超リッチなAndroidアプリケーションをオンデマンドで利用できるようになる。企業は高性能で高密度のコンピューティングをどんなリモートデバイスにも提供できるようになり、しかもその際の電力消費といった経費はきわめて低い」と発表で述べている。

Canonicalはエンタープライズ以外に、ゲーミングおよびゲームのストリーミングにも重要なユースケースを展望している。スマートフォンはますます強力になりつつあるが、それでも結局のところ、クラウド上のサーバーには敵わない。そこにCanonicalは目をつけている。

Canonicalが挙げるもう1つの重要なユースケースが、アプリのテストだ。デベロッパーはこのプラットホームを利用して、何千台ものAndroidデバイス上でアプリを並列させてテストできる。ただしAndroidのエコシステムは分裂が激しいため、重要なテストはエミュレーションでなく実機上で、となるかもしれない。

Anbox Cloudをパブリッククラウドで動かすことはできるが、CanonicalはエッジコンピューティングのスペシャリストをPacketとパートナーにして、それをエッジ上やオンプレミスでホストする。このプロジェクトのハードウェアパートナーは、AmpereとIntelとなっている。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

インテルがAIチップメーカーのHabanaを約2200億円で買収

Intel(インテル)は米国時間12月16日の朝、イスラエルのAIチップメーカーことHabana labs(ハバナ・ラボ)を買収したことを明らかにした。買収金額は約20億ドル(約2200億円)で、Nervana SystemsやMovidiusなどが名を連ねる人工知能分野への最新の巨額投資だ。

Habanaは7月、GPUベースのシステムを4倍上回る性能を実現したGaudi AIトレーニングプロセッサを発表した。Intelが人工知能分野に参入しようとしていることから、同社がIntelの買収のターゲットになっているという噂は以前からあった。インテルがモバイル分野で味わったような、過去の失敗を繰り返したくないのは明らかだ。

これまでのところ、インテルが2024年までに約240億ドル(約2兆6000億円)の市場規模に成長するとされる分野で、この戦略は同社に明らかな優位性をもたらしているように見える。インテルによると、2019年だけで「AIからの収益」の売上は35億ドル(約3800億円)を超え、前年比20%増となる見込みだという。

インテルでEVPを務めるNavin Shenoy(ナビン・シェノイ)氏は、このニュースに関するリリースで「この買収によりAI戦略が強化される。AI戦略とは、インテリジェントエッジからデータセンターまで、あらゆるパフォーマンスニーズに対応するソリューションを顧客に提供することだ」と述べた。「具体的には、Habanaは我々のAIワークロードを進化させ、高性能なトレーニングプロセッサファミリーと標準ベースのプログラミング環境にて、データセンター向けのAI製品を提供する」

Intelは当面、Habanaを独立した事業部門として運営しつつ経営陣をそのまま残し、主にイスラエルを拠点とする事業運営を続ける予定だ。HabanaのAvigdor Willenz(アビグドール・ウィレンツ)会長は引き続き、両社に助言を行う。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

インテルの最新RealSenseライダーカメラは在庫管理という巨大市場を目指す

Intel(インテル)は米国時間12月11日、同社のRealSenseシリーズに新製品を加えた。そのL515と呼ばれる製品はテニスボールぐらいの大きさで、もっぱら倉庫のロジスティクスで使われることを狙っている。それは世界中の商取引において、ものすごく重要で自動化がどんどん進んでいる分野だ。

この新しいカメラのそのほかのありえる利用分野としては、リテール、ヘルスケア、3Dのスキャンニング、ロボティクスなどが挙げられる。アイスホッケーのパックのようなこのデバイスは場面のスキャンができ、数百万のデプスポイント(奥行き点)から成る点群を1秒で作れるとインテルは語る。このサイズにしてはかなりすごいことだ。

インテルによると「L515は、それ自身が新しい独自の機種系列であり、0.25〜9mの範囲で高品質な映像を安定的に提供する。また2300万以上の正確なデプスピクセルを毎秒提供し、デプス(奥行き)の解像度は1024 x 768ドット、毎秒30コマとなる。このIntel RealSenseのライダーカメラの特徴は、内部にビジョンプロセッサーとブレ抑制機構があり、光子がデプスに達するまでのレイテンシーも短い。L515は軽量なので、消費電力が3.5W未満で電池寿命が長い。常に即使える状態を維持するL515は、較正の必要もなく、その全寿命においてデプスの精度を保つ。

このRealSense系新製品は、同様のカメラをドローンやロボティクス、あるいはAR、VRなどの消費者製品向けに作ってきた同社が、ロジスティクスという巨大な利益を上げられそうな市場に注力するようになったことの表れだ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

インテルとArgonne National Labの新型スーパーコンピューターAuroraがエクサの大台に

何百もの演算ユニットが、世界で初めて「エクサ」が頭に付く桁の計算(1秒間に1000兆回)に必要な性能を獲得し、スーパーコンピューターの規模は、ほぼ理解不能なレベルにまで成長した。どうやってそれを実現できたのか?「入念な計画、そして大量の配線だ」とこのプロジェクトに深く関わる2人は言う。

Intel(インテル)とArgonne National Labは(アルゴン・ナショナル・ラボ)は、Aurora(オーロラ)という名のエクサスケールの新しいコンピューター(米国ではいくつか開発中だが)の公開を予定しているとのニュースを今年の初めに知った私は、先日、インテルのエクストリーム・コンピューティング・オーガニゼーションの代表であるTrish Damkroger(トリッシュ・ダムクロガー)氏と、Argonneでコンピューティング、環境、生命科学を担当する研究所副所長のRick Stevens(リック・スティーブンス)氏から話を聞いた。

2人は、デンバーで開かれたスーパーコンピューティングカンファレンスにおいて、おそらくこの種の研究に関して深い知識を持っていると自認する人たちの前で、同システムの技術的な詳細について話し合った。インテルの新しいXeアーキテクチャーや汎用コンピューティング・チップのPonte Vecchio(ポンテ・ベキオ)も含むシステムの詳細については、業界誌や広報資料で読むことができる。そこで私は、この2人からもう少し大きな構想を聞き出そうと考えた。

関連記事:浮動小数点演算1回は100京ぶんの1秒、インテルとCrayが超高速次世代スパコンを共同開発中

こうしたプロジェクトが長期的なものだと聞いても、驚く人はいないだろう。しかし、どれだけ長いか想像がつくだろうか。10年間だ。そこでの難題のひとつには、開発当初に存在した技術を遥かに超えたコンピューティングハードウェアを確立しなければならないという点がある。

「エクサスケールが最初に始まったのが2007年です。当時はまだペタスケールの目標すら達成できていませんでした。つまり私たちの計画のマグニチュードは、3から4ほどかけ離れていたのです」とスティーブンス氏。「その当時、もしエクサスケールを実現したならば、ギガワット級の電力を必要としたでしょう。まったく非現実的です。そのため、エクサスケールの研究では、電力消費量の削減も大きな課題になりました」。

Xeアーキテクチャーを核とするインテルのスーパーコンピューティングは、7nmプロセスが基本になっているため、ニュートン物理学のまさに限界を押し広げようとするものだ。さらに小さくすれば、量子効果の影響を受けるようになる。しかし、ゲートを小さくすれば、必要な電力も小さくて済むようになる。顕微鏡レベルの節電だが、10億、1兆と重なれば、たちまち大きくなる。

だが、それは新たな問題を引き起こす。プロセッサーの能力を1000倍にまで高めると、メモリーのボトルネックにぶち当たってしまうのだ。システムが高速に思考できても、同じ速さでデータのアクセスや保存ができなければ意味がない。

「エクサスケールのコンピューティングを実現しても、エクサバイト級のバンド幅がなければ、非常に不釣り合いなシステムになってしまいます」。

しかも、これら2つの障害をクリアできても、3つ目に突き当たる。並行性と呼ばれる問題だ。高性能なコンピューティングにとって、膨大な数のコンピューティングユニットの同期も同程度に重要になる。すべてが一体として動作しなければならない。そのためには、すべての部分が互いにコミュニケートできなければならない。スケールが大きくなるほど、その課題は難しくなる。

「こうしたシステムには、数千数万のノードがあり、各ノードには数百のコアがあり、各コアには数千のコンピューティングユニットがあります。つまり、並行性には数十億通りあるということです」とスティーブンス氏は説明してくれた。「それに対処することが、アーキテクチャーの肝なのです」。

彼らはそれをどう実現したのか。私は、目まぐるしく変化する高性能コンピューティングアーキテクチャーデザインについて、まったくの素人のため解説を試みようなどとは思わない。だが、このエクサスケールのシステムがネットで話題になっているところを見ると、どうやら彼らは実現したようだ。その解決策を、無謀を承知で解説するなら、基本的にネットワークサイドの大きな進歩とだけ言える。すべてのノードとユニットを結ぶ継続的なバンド幅のレベルは尋常ではない。

エクサスケールでアクセス可能にするために

2007年当時でも、プロセッサーの電力消費量が今ほど小さくなり、メモリーのバンド幅の改善もいずれは実現できると予測できたが、その他の傾向については、ほぼ予測不能だった。たとえば、AIと機械学習の爆発的な需要だ。あの当時、それは考えも及ばなかったが、今では部分的にでも機械学習問題に最適化されていない高性能コンピューティングシステムを作ることは愚行と思われてしまう。

「2023年までには、AIワークロードは高性能コンピューティング(HPC)サーバー市場全体の3分の1を占めるようになると私たちは考えています」とダムクロガー氏。「このAIとHPCの収斂により、その2つのワークロードが結合され、問題をより高速に解決し、より深い見識を与えてくれるようになります」

その結果、Auroraシステムのアーキテクチャーには柔軟性が持たせられ、機械学習の一部のタスクではとても重要となる行列計算のような、特定の一般的演算の高速化にも対応できるようになっている。

「しかしこれは、性能面だけの話ではないのです。プログラムのしやすさも重視しなければなりません」と彼女は続ける。「エクサスケールのマシンにおいて、最も大きな挑戦のひとつに、そのマシンを使うためのソフトウェアが簡単に書けるようにすることがあります。oneAPIは、Open Parallel C++のオープン標準をベースにしているため、統一的なプログラミングモデルになるでしょう。これが、コミュニティーでの利用を促進するための鍵になります」。

これを執筆中の時点で、世界で最もパワフルな単体のコンピューティングマシンであるSummitは、多くのシステム開発者が用いているものとは使い方がずいぶん異なっている。新しいスーパーコンピューターを広く受け入れてもらいたいと開発者が望むならば、その使い方をできる限り普通のコンピューターに近づけるべきだ。

「x86ベースのパッケージをSummitに持ち込むのは、ある意味大変なチャレンジになります」とスティーブンス氏は言う。「私たちの大きな強みは、x86ノードとインテルのGPUがシステムに使われていることです。そこでは、基本的に既存のすべてのソフトウェアを走らせることができます。標準的なソフトウェア、Linuxのソフトウェア、文字どおり数百万種類のアプリが使えます」。

私は、そこで使われた経費について尋ねてみた。こうしたシステムでは、5億ドルの予算がどのように使われたのか、その内訳については謎とされることが多いからだ。たとえばメモリーかプロセシングコアか、実際にどちらに多くの予算が費やされたのか、またはどれだけの長さの配線が使われているのかなど、私は純粋に興味があった。だが、スティーブンス氏もダムクロガー氏も話してはくれなかった。ただスティーブンス氏は「このマシンのバックリンクバンド幅は、インターネット全体の総計の何倍にも及び、大変なコストがかかっています」と教えてくれた。あとは想像にお任せする。

Auroraは、その従姉妹であるローレンス・リバーモア国立研究所のEl Capitanとは違い、兵器開発には使用されない。

関連記事:6億ドルのCrayスパコンは核兵器開発で他を圧倒する(未訳)

「Argonneは科学実験室です。そしてオープンです。科学を機密扱いにはしません」とスティーブンス氏。「私たちのマシンは、この国のユーザーの資産です。米国全土にこれを使う人たちがいます。相互評価が行われ料金が支払われたプロジェクトには、たっぷりの時間が割り当てることで、最高に面白いプロジェクトを呼び込みます。そうした利用法が全体の3分の2。残りの3分の1はエネルギー省が使いますが、その場合も機密扱いはなしです」。

最初の仕事は、気候科学、化学、データ科学になる予定だ。それらの大規模なプロジェクトをAuroraで実現する15チームが契約した。詳細は追って知らされる。

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(翻訳:金井哲夫)

インテル最新のCascade LakeチップにZombieload系脆弱性、パッチリリースへ

またもや主要チップメーカーの最新製品に脆弱性が発見された。セキュリティー専門家はIntel(インテル)の最新プロセッサにある種の攻撃に対する脆弱性があることを発見した。 これは今年5月に発見されたZombieloadの変種で、同社のCascade Lakeチップをターゲットにしている。

インテルではこの攻撃をTAA(Transactional Asynchronous Abort) (トランザクション非同期停止)と呼んでいるが、マイクロアーキテクチャ・データ・サンプリング脆弱性を突いた5月の手法に似ている。これはサイドチャンネル攻撃とも呼ばれるが、TAAは最新のインテルチップに対してのみ有効だという。

Zombieload攻撃はCPUが解釈できない命令を読ませることによりCPUコアに不正な命令を実行させ、実行が放棄(アボート)されたときにバッファー内容を読み出すものだという。このデータを取得するために攻撃者はチップに物理的にアクセスできる必要がある。新世代のプロセッサは分岐が生じるまえに先のコマンドを予測して実行することによって処理速度の大幅なアップに成功している。しかしこの機能のために、本来外部からアクセスできないチップ内のバッファにアクセスが可能となることがある。

ZombieloadはMeltdownとSpectreという重大な脆弱性の場合と同じ専門家グループによって発見された。Meltdow/Spectreは先読み並列処理というアーキテクチャの欠陥を利用してCPU中の本来アクセスできないはずの部分に存在するパスワードなどの機密データを読み出してしまう。その後、最新のチップ、Cascade Lakeはこの種の攻撃に対する防御性を高めてあることが判明したし、インテルはソフトウェアパッチをリリースして危険の最小化を図った。

また専門家によればCascade LakeにはZombieload系のマルウェア、特にFalloutとRIDLなどの手法は無効だ。しかし「Cascade Lakeにおけるアーキテクチャの変更はサイドチャンネル攻撃を防ぐために十分ではない」という。

脆弱性を発見した専門家はインテルに4月に連絡していた。このとき同時に警告した他の脆弱性については翌月パッチが発行された。しかし今回の問題に関しては同社は対応に手間取り、今月に入ってようやく対応が始まったという。

インテルは再び脆弱性対策のパッチを発表し、Cascade LakeチップにZombieloadの変種に対する脆弱性があった事実を確認した。また同社は「対策を適用してもサイドチャネル攻撃を完全に防げる保証はない」と認めている。「ただしこの脆弱性を利用した攻撃が現実に行われたという報告は受けていない」と同社では述べている。

画像:Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

AMDのインテル対抗機EPYC RomeプロセッサーをGoogleとTwitterは早くも使用

AMDは米国時間8月7日、GoogleやTwitterもEPYC Romeプロセッサーをすでに使っていると、その7nmチップの立ち上げイベントで発表した。EPYC Romeのリリースは、AMDのIntel(インテル)とのプロセッサー競争で大きな差をつけたことになる。後者は先月、同社の7nmチップであるIce Lakeの提供は2021年以降になると発表したばかりだ。10nmノードのリリースは今年らしい。

データセンター用のプロセッサーでは依然Intelが最大のメーカーで、GoogleやTwitterもその顧客だ。しかしAMDの最新のリリースと低価格戦略は、同社を急速に手強いライバルに変えてしまった。

Googleは前にも、2008年のMillionth Server(百万台目のサーバー)などでAMDのチップを使用。そして今回は、自社のデータセンターで新世代EPYCチップを使っている最初の企業だ。今年遅くには、Google Cloud Platformからこのチップで動く仮想マシンが一般に供用される。

Googleのエンジニアリング担当副社長であるBart Sano(バート・サノ)氏は記者発表で「AMDの第2世代Epycプロセッサーにより私たちは、データセンターにおけるベスト、すなわちイノベーションを継続できる。そのスケーラブルなコンピュートとメモリとI/Oのパフォーマンスが、私たちのインフラストラクチャにおけるイノベーション推進能力を強化し、Google Cloudの顧客にはワークロードに最もよく合ったVMを選べる自由度を与える」とコメント。

一方Twitterは、同社データセンターにおけるEPYC Romeの使用を今年遅くに開始する。同社のエンジニアリング担当シニアディレクターであるJennifer Fraser(ジェニファー・フラサー)氏によると、このチップはデータセンターの電力消費量を節減する。すなわち[AMD EPYC 7702を使えばコンピュートクラスターのコア数増大と省スペースと省エネを同時に実現でき、TwitterのTCOを25%削減できる」という。

2ソケットIntel Xeon 6242とAMD EPYC 7702Pプロセッサーの比較テストで、AMDによれば「さまざまなワークロード」においてTCOを最大50%下げることができた。AMD EPYC Romeのフラグシップ機は64コア128スレッドの7742チップで、ベース周波数2.25GHz、デフォルトTDP225W、キャッシュ総量256MB、価格は6950ドルより。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

アップルがインテルのモバイル向けモデムチップ事業を約1000億円超で買収

TechCrunchはApple(アップル)がIntel(インテル)のモデム事業部の支配権を握る契約を結んだことを確認した。価格は10億ドル(約1087億円)前後で、知的所有権、製造設備、リース物件、社員の全てを含む。特に社員は 2200人全員がAppleに加わる。この契約により、Intelが保有していた分を加わることができたためAppleが保有するワイヤレステクノロジー関係の特許は1万7000件以上になる。

Appleのシニア・バイス・プレジデントであるJohny Srouji(ジョニー・スロージ)氏はプレスリリースで以下のようにコメントしている。

我々は長年にわたってIntelと協力関係にあった。消費者に世界で最高の体験を届けようとするAppleの情熱をチームは分かち合い、チームは一丸となってテクノロジーの進展に努めてきた。我々のセルラーテクノロジーグループは、買収より多数の優秀なエンジニアを迎え入れ、大きく成長する。Appleのクリエイティブかつダイナミックな企業文化は元Intelのエンジニアが活躍するのにふさわしいものと確信する。今回の買収により、我々はイノベーションの基礎となるべき重要な知的所有権を多数入手した。これは今後のApple製品の開発に大きく寄与するだろう。Appleの製品の差別化はさらに進む。

契約の締結発表はTechCrunchでも報じたとおり、しばらく前から流れていた情報が事実だったことを確認するものとなった。AppleがIntelのワイヤレスモデム事業を入手しようとした背景としてQualcomm(クアルコム)との関係がここ数年緊張したものになっていたことを考える必要がある。AppleはQualcommが設定したライセンス料金が高すぎるとして訴訟を起こした。両社はこの4月に和解し訴訟を終結させたものの、AppleはスマートフォンのモデムチップでQualcommに縛られることを強く嫌った。

この買収は Appleは2020年中にもスタートするはずのモバイルネットワークの5G化に向けた準備の一環だと見られている。5GテクノロジーはIntelとQualcommが二分しているが、Intelはこの10年間のスマートフォンブームに出遅れた感があり、5GソリューションではQualcommにやや劣るものと見られている。

Appleは最近デバイスのパーツをすべて内製しようとする攻勢を強めているが、今回買収もこの動きと整合する。CEOのティム・クック氏は10年前に内製化の方向を打ち出していた。クック氏は声明で「我々はプロダクトに使用される主要なテクノロジーを所有し、あるいはコントロールを握っておく必要があると考える。我々は自ら大きな貢献ができる分野にのみ進出すべきだ」と述べている。

今回の契約ではスマートフォン向け以外のモデム・テクノロジーを独自に開発しり権利をIntelは引き続き保持する。つまり各種のパソコン、IoTといったハードウェアだ。これには自動運転車も含まれる。IntelのCEOであるRobert Holmes Swan(ボブ・スワン)氏はプレスリリースで次のようにコメントしている。

今回の合意により、我々はさらに効果的に5Gネットワークの開発に注力することができるようになった。Intelが長年にわたって開発してきたモデムテクノロジーと知的財産を利用する権利は引き続き保持される。我々は以前からApple深い敬意を払ってきた。移籍するエンジニアにとってAppleは最良の舞台を提供するものと信じる。ネットワークのキャリア、接続プロバイダ、クラウド事業者などが必要とするテレコム機器の開発、製造に用いられるモデムチップを始め、Intelは引き続き消費者がもっとも必要とするワイヤレステクノロジーを提供し、5Gネットワークの実現に向けて全力を挙げていく。

この後、司法省の反トラスト法に基づくものなど規制当局の審査が行われるが、Appleでは第4四半期中にこの買収手続きを完了できると考えている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

アップルとインテルはモバイルモデム事業買収で交渉中、買収額は1000億円以上か?

この4月、Apple(アップル)はQualcomm(クアルコム)と和解し、巨額の小切手を書いた。これは5G iPhoneを市場に出すスケジュールを守るためだったが、アップルはいつまでもクアルコムに主導権を取らせておくつもりはなかったようだ。

米国時間7月22日、「インテルのモバイルモデムチップ事業をアップルが10億ドル(約1080億円)以上の価格で買収する交渉を進めている」とWall Street Journalが報じた。先月、Informationも同社がインテルのモデム事業を買収する可能性があると述べていた。

本日のニュースでは「早ければ来週中にも合意に達する」としている。もちろん破談になる可能性は残っている。

この買収が実現すれば、アップルは数百人の優秀なエンジニアと多数の基本特許を得ることになる。モデムチップなど現在クアルコムに多額のライセンス料金を支払っているモバイルネットワークへの接続を実現する各種デバイスを、アップルは独自に製造できるようになるかもしれない。

もちろんどんな契約が結ばれようと、クアルコムとの関係は短期的にはほとんど影響を受けないだろう。両社の和解条件には向こう6年間にわたってライセンスを許諾する条項が含まれいる。ただし和解内容の一部は現在も公開されていない。

アップルはこれまでもインテルのモデム事業部と密接に協力してきた。特にライセンス問題でクアルコムとの紛争が始まってからは距離がいっそう縮まっていた。ただしインテルのチームは、5Gモデムテクノロジーの開発でライバルに遅れを取っているという報道も出ていた。

アップルの広報はこの報道についてコメントを控えている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook)

アップルにARMの主席CPU設計者が入社

Apple(アップル)はここ数年、製品に使われる部品を製造する際に、サードパーティに依存する必要のない世界を明らかに夢見てきた。ハードウェアメーカーの大手として、自社製チップを採用することで、すでにその方向に着実に歩み出していた。そして最近の雇用は、それをさらに推し進めることになった。

LinkedInのアカウントによると、半導体メーカーARM社での10年間におよぶ勤務を経て、同社の主席CPUアーキテクトだったMike Filippo氏は、先月Appleに入社した。この動きは、Appleのチップデザインの責任者だったGerard Williams III氏が、この3月に退社したことを受けてのものだと見られている。Filippo氏は、その役割に完全に適しているように見える。実質的に世界中どこでも使われているARMの設計に、重要な役割を果たしてきたからだ。彼は、数年間IntelやAMDでも働いた経験を持つ。

ARMは、ブルームバーグ誌に掲載された声明で、Filippo氏の退社を認めている。「Mikeは、長年に渡りARMコミュニティにとって重要なメンバーでした」と同社は述べている。「私たちは、彼のこれまでの努力のすべてに感謝し、今後の仕事がうまくいくことを願っています」。一方のAppleは、この動きをまだ正式には認めていない。

Appleは、できるだけ多くの部品を自社開発しようとしてきた。もうだいぶ前から、Macシリーズ用としてIntelプロセッサの使用を止めるのではないかと噂されてきた。これもまた長い間噂されているARヘッドセットの開発にも、自社製のチップで取り組んでいると言われている。

完全にゼロからの製品開発を社内で遂行することは、単に長年の願望というだけでなく、他社への依存を大きく減らすことにもつながる。しかしこのような展開は、5G iPhoneの発売に向けて、Qualcommとの関係を改善しようという最近の動きとは対照をなすものだ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

ロボットが電子レンジを普通に使えるようになるためIntelが奮闘中

コンピューターやロボットのトレーニングは、オブジェクトを理解して認識する(たとえば、オーブンと食洗機を区別するとか)だけでは終わらない。人が日常行っている比較的簡単な作業ができるレベルにまで、訓練を重ねる必要がある。人工知能に冷蔵庫と薪ストーブの違いを教えることができても、本当に実用的なロボットにするには、それらの器具を操作できなければならない。

IntelのAI研究者たちが、カリフォルニア大学サンディエゴ校とスタンフォード大学と共同で取り組んでいる新たな課題がそれだ。コンピュータービジョンおよびパターン認識のためのカンファレンスで発表された報告書では、各部品に完全な注釈が付けられた非常に精細な3Dオブジェクトの大規模なデータセット「PartNet」を、共同研究チームはがどのように構築したかが詳しく説明されている。

このデータセットは他に類がなく、すでにロボティクス企業の間で需要が高まっている。なぜなら、オブジェクトを現実世界で認識し操作できるようデザインされた、人工知能用の学習モデル生成のための高度なアプリケーションを備えることで、オブジェクトを部品に分割して構造化できるからだ。そのため、たとえば上の画像のように、電子レンジを手で操作して残り物を温め直す作業をロボットにやらせたいときは、ロボットに「ボタン」のことと、ボタンと全体との関係を教えてやればいい。

ロボットはPartNetで訓練を行うのだが、このデータセットの進化は、どこかの道端に放置された「ご自由にお持ちください」とドアに貼り紙されたいかにもCGっぽい電子レンジを操作するだけに留まらない。そこには2万6000種類以上のオブジェクトがあり、それらは57万個以上の部品で構成されている。そして、カテゴリーの異なるオブジェクトで共通に使われる部品には、すべてが同類であることを示すマーキングがされている。そのため、ある場面で椅子の背を学んだAIは、別の場面でそれを見かけたときに椅子の背と認識できる。

これは、ダイニングの模様替えをしたいが、ロボット家政婦には、お客さんが来たときに、古い椅子でしていたのと同じように、新しい椅子の背も引いて勧めさるようにしたい、なんていうときに便利だ。

たしかに、今私が示した例は、遠い彼方の、まだまだ仮想の未来から引っ張ってきたものだが、世の中には、完成を目の前にした、詳細なオブジェクト認識のためのもっと便利なアプリケーションが山ほどある。しかも、部品特定能力は、汎用オブジェクト認識における判断力を強化してくれるはずだ。それにしても、家庭用ロボティクスにあれこれ思いを巡らせるのは、じつに楽しい。そこに、現在の進歩したロボティクス技術の商品化を目指す数多くの取り組みが集中している。

[原文へ]
(翻訳:金井哲夫)

ロボットが電子レンジを普通に使えるようになるためIntelが奮闘中

コンピューターやロボットのトレーニングは、オブジェクトを理解して認識する(たとえば、オーブンと食洗機を区別するとか)だけでは終わらない。人が日常行っている比較的簡単な作業ができるレベルにまで、訓練を重ねる必要がある。人工知能に冷蔵庫と薪ストーブの違いを教えることができても、本当に実用的なロボットにするには、それらの器具を操作できなければならない。

IntelのAI研究者たちが、カリフォルニア大学サンディエゴ校とスタンフォード大学と共同で取り組んでいる新たな課題がそれだ。コンピュータービジョンおよびパターン認識のためのカンファレンスで発表された報告書では、各部品に完全な注釈が付けられた非常に精細な3Dオブジェクトの大規模なデータセット「PartNet」を、共同研究チームはがどのように構築したかが詳しく説明されている。

このデータセットは他に類がなく、すでにロボティクス企業の間で需要が高まっている。なぜなら、オブジェクトを現実世界で認識し操作できるようデザインされた、人工知能用の学習モデル生成のための高度なアプリケーションを備えることで、オブジェクトを部品に分割して構造化できるからだ。そのため、たとえば上の画像のように、電子レンジを手で操作して残り物を温め直す作業をロボットにやらせたいときは、ロボットに「ボタン」のことと、ボタンと全体との関係を教えてやればいい。

ロボットはPartNetで訓練を行うのだが、このデータセットの進化は、どこかの道端に放置された「ご自由にお持ちください」とドアに貼り紙されたいかにもCGっぽい電子レンジを操作するだけに留まらない。そこには2万6000種類以上のオブジェクトがあり、それらは57万個以上の部品で構成されている。そして、カテゴリーの異なるオブジェクトで共通に使われる部品には、すべてが同類であることを示すマーキングがされている。そのため、ある場面で椅子の背を学んだAIは、別の場面でそれを見かけたときに椅子の背と認識できる。

これは、ダイニングの模様替えをしたいが、ロボット家政婦には、お客さんが来たときに、古い椅子でしていたのと同じように、新しい椅子の背も引いて勧めさるようにしたい、なんていうときに便利だ。

たしかに、今私が示した例は、遠い彼方の、まだまだ仮想の未来から引っ張ってきたものだが、世の中には、完成を目の前にした、詳細なオブジェクト認識のためのもっと便利なアプリケーションが山ほどある。しかも、部品特定能力は、汎用オブジェクト認識における判断力を強化してくれるはずだ。それにしても、家庭用ロボティクスにあれこれ思いを巡らせるのは、じつに楽しい。そこに、現在の進歩したロボティクス技術の商品化を目指す数多くの取り組みが集中している。

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(翻訳:金井哲夫)

インテルのIce Lake搭載/Project Athena準拠PCは年末までに登場

Computexが正式に開催される前から、AMDとQualcomm(クアルコム)はIntel(インテル)に対して新型プロセッサ5G PCをぶつけてきた。そして米国時間5月28日、インテルは台北にて実施されたキーノートのプレゼンテーションにて、第10世代CoreプロセッサとなるIce Lakeに加え、新型プロセッサとラップトップを公開した。

現在OEMへと出荷されている10nmプロセスのプロセッサは、インテルによればAI(人工知能)処理のスピードとグラフィックスの速度を向上させ、ワイヤレス通信速度を最大3倍に速めている。プロセッサはSunny CoveアーキテクチャとGen 11のグラフィックスエンジンに基づいており、最大4コア/最大8スレッドを内蔵し、ターボ時にはCPUは最大4.1GHz/GPUは最大1.1GHzで駆動できる。Gen 11はラップトップのグラフィック性能を向上させ、4K HDRにより数十億色に対応し、ゲームでは最大で2倍のフレームレートを実現する。またThunderbolt 3やWi-Fi 6(Gig+)を内蔵し、最大で3倍の無線通信速度を達成。Ice Lakeを搭載したデバイスはホリデーシーズン(年末)までには登場する予定だ。

さらに、新しいラップトップ基準「Project Athena」も発表された。Athena 1.0の仕様に準拠するラップトップは1秒未満でスリープ状態から復帰し、インテルによるテスト条件(デフォルト設定、ディスプレイ輝度は250ニット、バックグラウンドのOffice 365やGoogle Chromeといったアプリにて継続的にインターネットに接続)にて、日常的な使い方で9時間以上の動作が可能だ。さらに、ローカルで動画を再生した場合には16時間以上も駆動できるという。デバイスはThunderbolt 3、Wi-Fi 6 (Gig+)、OpenVINOを搭載し、今年のホリデーシーズンには間に合う予定だ。

Lenovo(レノボ)にてコンシューマー・デバイス部門シニアバイスプレジデントを務めるJohnson Jia氏は、昨日にはクアルコムのSnapdragon搭載5Gラップトップのローンチにも関わっていたが、インテルのステージではProject Athenaに準拠した1.2kgの超軽量ラップトップ「Yoga S940」を展示した。同ラップトップもホリデーシーズンまでに発売される予定だ。

米国時間5月27日、AMDはライバルのCore i9 9920Xの1100ドル(約12万円)の半額の価格で販売される、12コアのRyzen 9 3900Xを公開した。一方、インテルのCore i9-9900KSプロセッサも注目を浴びた。第9世代プロセッサとして、8コアのCore i9-9900KSはゲームプレイと配信を同時にこなしたいゲーマー向けの製品だ。他の第9世代プロセッサと同じく5GHz駆動が可能で、さらに8コアのすべてが同時に5GHzで動作する。価格は未発表だが、こちらもホリデーシーズンまでに出荷されるとされている。

ゲーマー向けには、8コア/16スレッドの第9世代Coreプロセッサを搭載したラップトップ「Alienware M15」「Alienware M17」も発表された。2機種のラップトップは6月11日より1500ドル(約16万円)から販売される。

インテルはIntel Performance Maximizerも来月から無料でダウンロードできるようになると明かした。これは第9世代のデスクトップ向けプロセッサにてオーバークロック機能に簡単にアクセスでき、また最大周波数で駆動できるソフトウェアだ。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

インテルやクアルコムなどがファーウェイへの部品供給を停止か

トランプ政権が先週、中国の大手通信企業かつスマートフォンメーカーのHuawei(ファーウェイ)を貿易に関するブラックリストにくわえた後、複数の重要メーカーが同社との取引を中止したことが報じられている。Bloomberg(ブルームバーグ)よると、半導体企業のIntel(インテル)やQualcomm(クアルコム)、Xilinx(ザイリンクス)、Broadcom(ブロードコム)は、通知がない限りファーウェイへと部品を供給しない。これは米国時間5月20日に報じられた、Google(グーグル)がファーウェイとの取引を中止し、オープンソースのAndroidにしかアクセスできなくなった別の報道に続くものだ。

今回のブラックリストへの追加は、ファーウェイのビジネスに影響を与えるだけでなく、5Gネットワークの立ち上げを準備している通信事業者にも影響を及ぼす。中国では3大キャリア(チャイナ・モバイル、チャイナ・ユニコム、チャイナ・テレコム)のすべてがファーウェイに大きく依存しており、5Gのロールアウトを遅らせるかもしれない。一方、米国の特に小規模な携帯キャリアは、すでに導入したファーウェイ製の機器を交換したり、あるいは新たなサプライヤーを見つけるために、数百万ドルを費やす可能性がある。

Huawei Factsによる先週のツイートによれば、同社はブラックリストを「ルーズ・ルーズ」な状況だと指摘した。さらに最近のツイートでは、「おっと!米国はすでにファーウェイから距離を置くのが思っていたよりも難しいことを認めてしまったようだ」とつぶやいている。これは、米当局がサービス中断を防ぐために一時的なライセンスをファーウェイに与えるとの報道に、Huawai Factsが反応したものだ。

ロイターが最初に報じたように、グーグルによるサムスンに次ぐ第2位のスマートフォンメーカーであるファーウェイの排除は、オープンソース版のAndroidにしかアクセスできなくなり、また他のスマートフォンメーカーにも悪影響を与えることになる。

ブルームバーグによれば、ファーウェイは米政府による制裁を見越して、3カ月ぶんのチップを備蓄していたという。これは、2012年の議会報告で安全保障による潜在的驚異としてファーウェイが名指しされたことを受けてのものだ(同社はこの訴えを否定している)。

ザイリンクスのスポークスパーソンはTechCrunchに対し、「我々は米国商務省がファーウェイに下した拒否命令を承知しており、協力を進めている。現時点では、これ以上の情報はない」と伝えている。また、ファーウェイのスポークスパーソンはノーコメントと返している。TechCrunchはブロードコムやクアルコム、そしてインテルにもコメントを求めている。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

イスラエルのAIチップメーカーが最新ディープラーニングチップを発表

Hailoは、テルアビブに本拠を置くAIチップメーカーだ。米国時間の5月14日、同社初のディープラーニングプロセッサとなるHailo-8チップのサンプル出荷を開始すると発表した。このチップは、1秒あたり最大26テラオペレーション(TOPS)が保証されている。現在、何社かの選抜された顧客とともにテスト中で、その多くは自動車業界だ。

Hailoは、昨年になって表舞台に登場した会社で、シリーズAラウンドで1250万ドル(約13億7000万円)を調達した。その時点では、まだチップのサンプル出荷もできていなかった。同社によれば、Hailo-8は他のあらゆるエッジプロセッサの性能を凌駕し、しかもより小さなチップサイズ、より少ないメモリサイズで、その性能を達成できるという。「ニューラルネットワークの中核的な性質に特化したアーキテクチャを設計することにより、エッジデバイスはディープラーニングのアプリケーションをフルスケールで、しかも従来のソリューションよりも効率的かつ効果的に、さらに持続可能な状態で実行できるようになりました」と、同社は説明している。

Hailoでは、自社のチップが、Nvidiaの競合するJavier Xavier AGXよりも、いくつかのベンチマークで優れていると主張している。しかも、消費電力も少ないので、比較的低温で動作するという。これは、小さなIoTデバイスでは特に重要な特長と言えるだろう。

もちろん、さらに多くのエンジニアがこうしたチップを手にしたとき、それらが実際にうまく動作するのか、ということも確かめる必要があるだろう。しかし、エッジ領域でのAIチップに対する需要が増え続けることは疑いようがない。なにしろ市場は数年前に、演算処理をクラウド内に集約化することをやめ、エッジに分散することにシフトしたのだから。それは、応答時間を短縮し、バンド幅のコストを削減し、ネットワーク性能に依存しない安定したプラットフォームを提供するためだ。

後にIntelに買収されたMobileyeという先例と同じように、Hailoも自動車業界のOEMや1次サプライヤと協業してチップを市場に供給することになる。しかしHailoでは、スマートホーム製品などの垂直市場も視野に入れている。実際には、物体の検出や識別のために高性能のAIチップを必要としている、あらゆる業界が対象となりうる。

「近年、ディープラーニングが応用可能な分野が増加し続けるのを目の当たりにしてきました。それはサーバークラスのGPUによって可能となったことです」と、HailoのCEO、Orr Danon氏は述べている。「しかし、産業はAIによってますます大きな力を獲得し、むしろかき回されているような状況もあります。そのため、類似したアーキテクチャで過去のプロセッサを置き換え、エッジ領域のデバイスでディープラーニングを可能にすることが、切実に必要となっているのです。Hailoのチップは、最初から、まさにそのために設計されたものなのです」。

関連記事:ディープラーニング専用チップのHailoが$12.5Mを調達、従来型CPUの数倍の性能を達成

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

インテルCPUに重大バグZombieLoad発見、各社がパッチを相次いでリリース

2011年以降に製造されたほとんどすべてのIntel(インテル)チップに重大な脆弱性がまた発見された。これを受けてMicrosoft(マイクロソフト)やApple(アップル)をはじめテクノロジー大企業は対応パッチを緊急リリースした。

火曜日に専門家グループは、ZombieLoadと呼ばれれる脆弱性に関する詳細なレポートを発表した。このバグはMDS(マイクロアーキテクチャ・データ・サンプリング)と呼ばれるテクノロジーを利用したもので、パスワード、暗号鍵、各種のトークンなどの秘密情報を、CPUから盗み出すことができる。

バグの詳細については先ほど公開したこちらの記事を参照していただきたい。結論からいえば、ユーザーはパニックを起こすべきではないが、速やかにシステムをアップデートして修正パッチを適用する必要がある。

専門家によるバグの動作実証画面

AppleはmacOS対応済み

Appleは2011年以後に出荷されたすべてのMacとMacBookにパッチをリリースした。

同社のセキュリティーアドバイスによれば、 macOS Mojave 10.14.5が作動するすべてのデバイス向けのパッチが月曜にリリースずみだという。このパッチはSafariその他のアプリを経由するZombieLoad攻撃を防ぐことができる。ほとんどのユーザーは、パッチの適用によるパフォーマンス低下などの影響を受けない。ハイパースレディングを完全に無効化するなどの防止策にオプトインした場合、最大40%のパフォーマンス低下が起きる可能性があるという。

セキュリティーパッチは今後Sierra、High Sierra版もリリースされる予定だ。 iPhones、iPad、Apple Watchは今回のバグでは影響を受けない。

MicrosoftはWindowsをアップデートずみ

MicrosoftもOS、クラウドの双方に対するパッチをリリースした。

Microsoftのシニアディレクターを務めるJeff Jones氏は「我々はインテルや他の関連メーカーと密接に協力して対策を開発、テストした」と述べた。

TechNetの報道によれば、Microsoftは「一部のユーザーはチップ・メーカーから直接マイクロコードを入手する必要があるかもしれない」と述べたという。Microsoft自身もWindowsアップデートでできるかぎり多種類のチップ向けマイクロコードのアップデートを発表している。また同社のウェブサイトからも入手できる。

OS自身のアップデートはWindowsアップデートとして本日にリリースされる予定だ。MicrosoftはZombieLoad攻撃を防ぐための方法を説明する専用ページを開設している。

Microsoft Azureのユーザーについては対策済みだという。

GoogleはAndroid対応済み、今後Chromeも

Googleも対策を取ったことを確認した。 同社によれば、「ほとんどのAndroidデバイスは影響を受けない」としている。ただしインテルチップ専用機に関してはチップメーカーがアップデートを発行したらインストールしておく必要がある。

ChromebooksなどChrome OSデバイスの最新版はパッチ済み。次のバージョンでさらに根本的な修正が行われる。

GoogleのChromeチームはアドバイザリーページでパッチについて「OSベンダーはこのバグを隔離し、システムを攻撃から防御するためのアップデートを発行するだろう。ユーザーはベンダーのガイダンスに従ってこれらのアップデートを速やかにインストールすべきだ」と述べている。つまりWindowsやmacOSのパッチを一刻も早く適用せよということだ。

Googleっはデータセンターのサーバーにパッチを適用済みだ。つまりGoogleクラウドのユーザーはすでに保護されているが、Googleのセキュリティー情報には今後も充分注意を払うこと。

AmazonはAWSを修正済み

Amazonの広報担当者はAmazon Web Servicesはインテルチップの脆弱性を利用した攻撃を防ぐためのアップデートを実施ずみだとして次のように述べた。

「AWSは従来からこの種のバグによる攻撃を防ぐための措置を取っている。MDS(データベース移行サービス)にはさらに付加的予防措置が取られている。すべてのEC2インフラはこうした新たな保護を適用されており、顧客側で必要とされる措置は特にない」。

MozillaはFirefoxに本体アップデートを来週リリース

Firefoxブラウザに関してMozillaは「長期的解決を準備している」と述べた。

Firefoxは、AppleがmacOSに関して推奨した防御措置を適用ずみだ。5月21日に予定されているmacOS版Firefox(v67)およびExtended Support Release(v60.7)へのアップデートにはこのパッチが含まれる。FirefoxベータおよびFirefox Nightly版にはこの修正が適用されている。

広報担当者によれば、Windows版、Linux版には特に対策は必要ないという。

アップデート:当初の記事を各社からのコメントによって記事を更新した。

【Japan編集部追記】今回のバグは昨年1月に発見されたMeltdownSpectreと同様にCPUデザインの欠陥を利用したものでIntelチップを利用したデバイスすべてに影響が及ぶ。ただし手法はまったく異なり、「CPUが解釈できない命令を読ませることによりCPUコアに不正な命令を実行させ」バッファー内容を読み出すものだという。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

浮動小数点演算1回は100京分の1秒、IntelとCrayが超高速次世代スパコンを共同開発中

「今のスマホは昔のスパコンだ」とよく言われる。しかし今の本物のスーパーコンピューターの能力はもちろんスマートフォンなどとは比べモノにならない。Intel(インテル)と Cray(クレイ)はエネルギー省の5億ドル(約553億円)の契約を獲得し、最大級のスーパーコンピューターを共同開発している。このマシンがいよいよエクサフロッップスを実現する

Auroraプログラムはいわゆる「エクサスケール」のコンピューティングシステムで、2021年にアルゴンヌ国立研究所に納入される。エクサ(exa)という接頭辞はものすごく巨大な数、10の18乗を表す。浮動小数点演算1回に100京分の1秒しかかからないわけだ。

読者の手元のデバイスに使われている最新のCPUはおそらくギガフロップス級の速度だろう。 1000ギガが1テラであり、その1000倍がペタ、さらに1000倍でやっとエクサの単位に到達する。たしかに半導体回路製造テクノロジーの驚異的な発達によってわれわれは非常に高機能のスマートフォンやタブレットを使えるようになった。しかし本物のスーパーコンピューターは文字通り桁違いに強力だ(これはCPUの場合で、GPUはもう少し込み入った話になる)。

ただし、そのスパコンも現在の世界最速は200ペタフロップス程度で、昨年TechCrunchが紹介したオークリッジ国立研究所で稼働するIBM Summitシステムだ。

しかしなぜエクサスケールのスパコンが必要なのか?ペタフロップス級で能力は十分ではないのか?実はペタフロップスでは間に合わないのだ。地球温暖化が特定の地域の雲の発達に与える状況をシミュレーションするには現在のスパコンの能力では足りない。こうしたシミュレーションの必要性が新たなスパコンの能力拡張競争を生んでいる。

気候シミュレーションは特にコンピューターのリソースを消費する処理だ。モデルの各点ごとに複雑な計算を必要とするため、当初のモデルはきわめて目が粗いものだった((最近の成果はたとえばこちら)。こう考えてもいい。ボールが地面にぶつかってはね返る。この現象は簡単にシミュレーションできる。では巨大なスケールのシステムに含まれるすべての分子についてこの計算が必要だとしたらどうだろう? 気候シミュレーションとなれば各ノードの相互作用、重力、気圧、温度、地球の自転、その他あらゆる要素を考えねばならない。2つの恒星が衝突するしたら?

コンピューターの能力がアップすればシミュレーションはそれだけ正確になる。 Intelのプレスリリースによれば、「天文学上の巨大なスケールの現象をシミュレーションしたり、化学物質が個々の細胞に与える影響を再現することで新しい効果的な薬品を開発したりできる」ようになるという。

IntelによればAuroraはアメリカにおける最初のエクサスケールのシステムだという。ただし中国はすでに1年前からエクサスケールを目指して開発を始めていた。中国のスパコンは現在でも世界最速クラスであり、この目標が達成できないと考える理由はない。

アルゴンヌ国立研究所がこのシステムを使って何をするつもりなのか興味があるところだ。そこで同研究所のサイトで公表されている研究テーマ一覧ざっと眺めてみたが、「何もかもほとんどすべてのジャンル」という印象だった。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

最大転送速度は40Gbps、USB 4ではThunderboltとUSBが完全統合

接続ケーブルをめぐる悪夢も過去のものになるかもしれない。USBの規格を決めるUSB-IF(USB Implementers Forum)によるUSB 4.0のスペックが判明した。われわれの姉妹メディア、Engadgetの記事によれば、USB 4.0はインテル(Intel)のThunderbolt 3テクノロジーを利用するという。

スペックがが正式に決定されるのは今年後半になるが、USB 4の転送速度は40Gbpsとなるはずだ。USB-IFではUSB 4のプラットフォームとしてThunderbolt 3を採用した。

2011年にインテルはアップル(Apple)と協力して最初のThunderboltインターフェイスを発表した。これは他の規格より高速で汎用性が高く、複数のプロトコルをサポートするインターフェイスだった。Thunderboltケーブルはディスプレイ、HDDその他多様なデバイスの接続に利用でき、デバイスをデージーチェーン接続することも可能だ。これはグラフィックスカードを外付けするときなど非常に役立つ。

インテルはThunderbolt 3でUSB 3.1 Gen 2のサポートを追加した。これでUSBデバイスをThunderboltポートに接続できるようになった。またUSB-Cポートが採用された。簡単にいえば、ThunderboltポートはThunderbolt機能を備えたUSBポートになったわけだ。あらゆるUSBデバイスがThunderboltポートで使用できることになる。2016年10月に発表されたMacBook ProはThunderbolt 3を実装しているため、多くのユーザーがすでに利用しているはずだ。

しかし、Thunderbolt 3ポートにUSBデバイスを接続しても自動的にThunderboltデバイスに変身するわけではない。たとえばThunderboltポートにUSB 3.0 を接続することはできるが、転送速度はUSB 3.0の制限内となる。

Thunderbolt規格は技術的に優れていたが、DデバイスのメーカーはIntelにロイヤルティーを支払う必要があるため各種のデバイスへの普及という点ではUSBのほうが上だった (訂正:Thunderbolt 3はすでにロイヤルティー・フリーになっていたがスペックが正式に公開されていなかった。またThunderboltを実装するには専用チップを必要とするためUSBの場合より高くつくことが多かった)。

数年前にインテルはThunderbolt規格をロイヤリティーフリーにすると発表した。そこでUSB-IFはThunderbolt 3規格をUSB 4で利用することにしたわけだ。

USB 4.0は、最高100Wの電力供給、40Gbpsの転送能力をもち、2台の4Kディスプレイまたは1台の5Kディスプレイを駆動するのに十分なビデオ帯域幅をサポートする。USB 4は、USB 3.x、2.x、および1.xと下位互換性がある。

Type-CコネクタのUSB 3.xケーブルを持っていてもUSB 4ケーブルにアップグレードする必要があると思われる。Thunderbolt 3は、USB 4と基本的に同じものなので問題なく機能するはずだ。そうであっても、USB 3.xポートとUSB 4ポートを簡単に判別できる方法があった方が便利だ。

インテルはThunderboltという名称を廃止する予定はない。Thunderboltデバイスはインテルによる認定が必要だ。一方、USBデバイスの製造には特に認定を取得する必要はない。

接続規格をゼロから考えるならUSB 4は理想的なソリューションだろう。一つのポート、一つのケーブルが「すべて統べる」わけだ。あとはケーブルのメーカーが公式規格をきちんと守るよう期待する。横着者がこっそり機能を削った安い製品を出さないよう祈りたい。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

IntelがロボティクスやAR/VRハードウェア用のインサイドアウトトラッキングカメラを発表

このほどIntelが発表したRealSenseカメラは、主にハードウェアメーカーに、彼らの製品が今世界のどこにいるかを自分で理解する能力を提供する。そのRealSense Tracking Camera T265(上図)で、ロボティクスやAR/VRのハードウェアにインサイドアウトトラッキングの能力を簡単に与えることができる。

このトラッキングカメラはSLAM(simultaneous localization and mapping)の技術を利用してデバイスの向きを制御し、同時に今自分が歩いている環境の詳しい空間レイアウトを作りだす。そして当然ながらコンピュータービジョンチップセットMovidius Myriad 2を搭載し、カメラのデータ処理をさせる。

インサイドアウトトラッキングはますます、計算集約的ではなくなりつつある。そしてこれこそが、IntelがT265で大きく進歩しつつある分野だ。

T265は2月末に199ドルで発売される。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa