Y Combinator 2019年冬クラス、Demo Day 1日目のスタートアップ(3)

Y Combinator(YC)の企業を抱えた2019年の冬クラスは200社以上が参加し、これまでのYCで最大の規模になった。私たちはその場に参加し、それぞれのクラスの話を聞きながら、見たもののメモを持ち寄った。以下に紹介するのは米国時間3月18日にピッチが行われた86社のスタートアップだ。

Y Combinator 2019年冬クラス、Demo Day 1日目のスタートアップ
・Part 1:パイオニアステージ(1)
・Part 2:パイオニアステージ(2)
・Part 3:パイオニアステージ(3)※この記事
・Part 4:パイオニアステージ(4)
・Part 5:ミッションステージ(1)
・Part 6:ミッションステージ(2)
・Part 7:ミッションステージ(3)
・Part 8:ミッションステージ(4)

パイオニアステージ

Loonify Space
小型の人工衛星を軌道に乗せるための、特製「打ち上げ」システム。気球がロケットを高度35kmまで運び、空中で発射を行う。彼らは155回分の衛星打ち上げの基本合意書を手にしており、その総額はおよそ7700万ドルに相当する。最初の「打ち上げ」は5月9日を予定している。

Supernova
デザインのモックアップに基いたアプリケーションプログラミングは内製の場合は難しく、外注した場合には高価で保守しにくいものになる可能性がある。Supernovaは、デザインをベストプラクティスに従った製品レベルのコードに変換するため更新も容易である。SupernovaのAIは、製品の目的を理解し、ナビゲーション要素とボタンなどを区別することが可能だ。より多くの企業がハイテク製品を用いて近代化を進めようとする際に、Supernovaはそれらの企業たちがコンピュータサイエンス以上に自分たちのサービスに集中できるようにする。

Kovi
ラテンアメリカのオンデマンドドライバーにレンタカーを提供する。彼らは現在、路上で利用可能な車を約300台所有しており、今年は既に3000件のレンタル要求があった。同社は、ラテンアメリカの運転手の70%が彼らの車を借りたりリースしたりすると見積もっている。

Deel
現在2000万人の国際的な契約作業者たちが、米国の企業と協力して働いているが、彼らに対する事務手続きを行ったり訓練を施すのは難しい。Deelは、事務処理と時間の無駄を解消するために、契約、支払い、そして税を1つのインターフェースで処理する企業だ。Deelは1契約業者につき月額10ドルの課金と支払いの1%を請求していて、1契約業者あたり平均して560ドルを売り上げる。グローバリゼーションの大きな潮流が続く中で、企業はより優れた遠隔HRツールを必要としている。

COUTURME
特製のAIデザインによる、ウェディング/フォーマルドレス。顧客が自分の好みを入力すると、ソフトウェアはオプションを提示する。その後ドレスは30日以内に生産され出荷される。1月に稼働を始めて以来、毎週約15%の成長を続けている。共同創業者のYuliya Raquel氏は、以前大きなサイズのデザイナーファッション会社IGIGIを創業した人物だ。

Instapath Inc
癌の生検は、結果が出るのに1週間ほどかかる場合がある。Instapathは、患者が診察室にいる間に組織サンプルをテストし、5分以内に診断を提供することができる、完全に自動化された病理学ラボを開発している。これにより煩わしい待ち時間がなくなり、患者の治療をより迅速に行うことができるようになる。Instapathは1処置あたり200ドルを請求し、すでに500個の生検を処理している。同社によれば9カ月以内にFDAの承認を得ることができる予定だと言う。

Bensen
レストランがSiri、Google Assistant、Alexaなどの音声アシスタントを介して車内から注文を受けられるようにすることで、ドライブスルーシステムを変革したいと考えている。今年後半には2つのレストランチェーンで利用を開始する予定だが、既に800社を超える企業から問い合わせを受けている。同社は1ロケーションごとに、年間3000ドルを請求する。

Socrates Intelligence
中国には読書に対する巨大な需要があるが、図書館は48万人の市民に対して1つしか存在していない。Socrates Intelligenceは、中国における書籍のNetflixスタイルの宅送ビジネスである。年間56ドルを支払えば、ユーザーは3冊までの本を同時に借りることができる。注文から入手までは48時間以内だ。スタートアップはすでに1万人の有料会員を抱えており、次には電子ブック、オーディオブック、雑誌へと展開することで、中国向けの「すべてをレンタルする店」になる予定だ。

Overview
多くの工場では、大規模なロボットを使って夜通し商品を製造しているが、必ずしも誰かが見守っているとは限らない。何か不具合が発生し、それを検知できなかった場合、ロボットが自分自身を破壊してしまう可能性がある。OverviewはカメラとAIを使用して製造ロボットを監視し、何か問題が発生した場合はそれらをシャットダウンする。

Sunsama
Trello、JIRA、AsanaなどのSaaSツールと統合され、作業者がその日に行うべきタスクを特定し管理することを助けるタスクマネージャー。

Kalshi
スポーツで賭けを行うだけでなく、Kalshiは誰もが何にでも賭けを行うことができるようにする。例えば今月末までにBrexitが行われるかとか、オスカーを受賞するのは誰かとか。ユーザー同士が賭けを行うため、正確にはギャンブルというよりは先物市場的なものである。そしてKalshiは賭けに負けた側からは賭け金以上のお金を徴収しないので、規制当局への受けもいい。それはすでに200カ国で合法的に運営できる2つのライセンスを所有している。現在米国の規制当局と、賭けに際して7%の取引手数料を徴収する件に関して協議中である。

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(翻訳:sako)

Y Combinator 2019年冬クラス、Demo Day 1日目のスタートアップ(2)

Y Combinator(YC)の企業を抱えた2019年の冬クラスは200社以上が参加し、これまでのYCで最大の規模になった。私たちはその場に参加し、それぞれのクラスの話を聞きながら、見たもののメモを持ち寄った。以下に紹介するのは米国時間3月18日にピッチが行われた86社のスタートアップだ。

Y Combinator 2019年冬クラス、Demo Day 1日目のスタートアップ
・Part 1:パイオニアステージ(1)
・Part 2:パイオニアステージ(2)※この記事
・Part 3:パイオニアステージ(3)
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パイオニアステージ

Ravn
歩兵にとって戦場で最も危険な行為の1つが、角で見回すことだ。Ravnは、銃、ドローン、または他の場所に設置されたカメラを使って、兵士や警察などが角の向こうを見回せるようにする。遮蔽に隠れながら敵を見ることができれば、命を守ることができる。Ravnは既に海軍と空軍に対して、40万ドルの契約を結んでいる。かつてネイビーシール(米海軍特殊部隊)の一員だった同社のCEOは、コンピューターサイエンスの勉強を行って拡張現実の専門家となり、国防総省にハードウェアを販売していた。Ravnは未来の兵士にとって不可欠なヘッドアップディスプレイを提供できるだろう。

54gene
54geneはアフリカ大陸の23andMeを目指している。同社によれば、競合他社のデータはユーザーの大部分が白人であるたに、限界があると言う。アフリカに焦点を当てることで、同社は、そうでなければ見過ごされる可能性があるDNAマーカーの検出と識別を支援することができる。共同創業者のAbasi Ene-Obong氏は、ロンドン大学で癌生物学の博士号を取得してる。

Slapdash
エンタープライズアプリケーションは動作が遅く、ファイルやメッセージを横断して特定のものを見つけるのは難しい仕事だ。Slapdashは、Slack、Dropbox、Asana、Salesforce、そしてGoogleなどのオフィスソフトウェアをすべて実行できる、デスクトップ上のソフトウェアスピードコンテナを提供する。ユーザーはすべてのアプリを横断して検索し、生産性を高めることができるので、その雇用主にSaaSサブスクリプションを促すことができる。

YourChoice
これは男性用避妊薬だ。YourChoiceは「世界でも有数の精子生理学者2名」とともに、精子中のABHD2およびANT4タンパク質を標的として、「副作用なし」で100%有効な飲み薬を作成したと述べている。彼らはまた、女性のためのホルモンを含まない避妊薬にも取り組んでいる。

AccioJob
インドの大学卒業生のうち就職できるものは3分の1に過ぎない。これは卒業する学校が、彼らを地元の採用者にしか紹介しないためだ。AccioJobは、学生を就職させる活動のために、年間1万ドルを大学に請求し、就職1件ごとに雇用主に対して請求を行う。同社は学生の連絡先情報と成績を所有しているので、登録する学生が増えて行くことでAccioJobはインドの最も優秀な大学卒業生たちへの窓口になりえるのだ。

CentaurLabs
医者を雇用して医療画像を大量にラベル付けしている。これらの画像はAIを訓練するために利用することができる。彼らの目標は医師と患者のためのセカンドオピニオンシステムを開発することである。

Travelchime
旅行を計画するには、Googleドキュメント、地図、ブログ、友達のおすすめ、インスピレーションを与えてくれるアプリ、そして予約サイトを一緒にまとめて使用する必要がある。Travelchimeは、旅行計画ツール群を、Google Docスタイルのインターフェイスの中に組み合わせたものである。そのインターフェイスは文脈情報に従った推薦を行い、すでに収集済みの人気のある旅行情報を取り込むことができる。その後ユーザーは、Travelchimeから予約を行うことができる。同社が狙っているのはより便利なTripAdvisorである。

Seawise Capital
インドの輸出業者のための貿易融資。創業者によれば、各ローンから10%の利益を得ており、過去6週間で55万ドルの融資残高を達成したと言う。2019年第3四半期までに500万ドル、2020年第1四半期までには2500万ドルの融資残高を達成する予定である。

PerShop
オンラインでのショッピングには欲求不満が溜まりがちだ。なぜなら見て歩いている個々の商品の価格の比較を行えなかったり、サイトにあまりにも多くの無関係な商品があったり、あるいはソーシャルアプリ上で購入できなかったりするからだ。PerShopは自分の好きなブランド、自分のサイズ、自分の払える価格帯に収まるアイテムだけを推奨してくれるパーソナライズされたショッピングサイトである。同社は最終的には、パーソナライズされて、ターゲットを絞ったeコマース広告を、販売する予定である。PerShopは、利用者たちが購入または娯楽目的で利用するにつれてよりスマートになっていく。

Prometheus
空気からCO2を取り出してガソリンを作る。彼らは1ガロン(3.79リットル)あたり約3ドルでガソリンを生産できると言う(1ドル110円として、87.07円/リットル)。過去の試行では、大規模な蒸留塔が必要だったが、創業者のRob McGinnis氏は、カーボンナノチューブ膜を利用することで、安価でかつはるかに場所をとらない手段を発見したと語る。

Unicorn
1分単位でレンタルする電動スクーター企業は、毎日そのスクーターの2%が、壊れるか盗難にあっている。すなわち顧客が必要になったときに安全なスクーターが存在していないということだ。Unicornはスクーターを週または月単位でレンタルする企業だが、すでに利益を出している。車両は夜中に外に置かれることはなく、より多くの時間をレンタルされた状態で過ごすことになる。一方顧客はスクーターを買い上げずとも、使えるスクーターを手に入れることができる。Unicornの創業者はTileを始めた人物だが、現在はLimeやBirdよりも優れたユニットエコノミクスビジネスを作り上げたいと考えている。

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(翻訳:sako)

Y Combinator 2019年冬クラス、Demo Day 1日目のスタートアップ(5)

Y Combinator(YC)の企業を抱えた2019年の冬クラスは200社以上が参加し、これまでのYCで最大の規模になった。私たちはその場に参加し、それぞれのクラスの話を聞きながら、見たもののメモを持ち寄った。以下に紹介するのは米国時間3月18日にピッチが行われた86社のスタートアップだ。

Y Combinator 2019年冬クラス、Demo Day 1日目のスタートアップ
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ミッションステージ

Trexo Robotics
脳性麻痺と診断された人たちに提供できる、車椅子よりも優れたソリューションを開発している。このスタートアップは、病気を患っている子供たちにロボット装置を提供することに焦点を当てており、同社の最初の製品は月額1000ドルで家庭に提供される予定である。同社によれば、現在5つのユニットが使われており、米国とカナダでの使用が承認されている。

Pachama
世界の森林の保護と回復に焦点を当てた、カーボンクレジットのための認証済市場である。スタートアップは、二酸化炭素排出量を相殺するために、機械学習、衛星画像処理、ドローン、そしてLIDARを使用している。Pachamaは、カーボン購入者(彼らの二酸化炭素排出量を相殺しようとしている組織)をカーボンプロジェクトに結びつける。

Saratoga Energy
6年以上をかけて、同社はCO2からカーボンナノチューブを合成するための製造プロセスを開発し特許を取得した。スタートアップはスチールよりも強く軽量なカーボンナノチューブを、航空宇宙、バッテリー、コンクリート、その他のメーカーに低価格で販売している。週末には、同社は評価用の最初のバッチを出荷する予定だ。Saratogaは、この2年間で200万ドルの助成金を調達している。

Cherry
現代のスタートアップ向けのオフィス福利厚生ソリューションだ。従業員全員に同じ特典を与えるのではなく、共同創業者たちは人びとに、自分の好きなインターネットサービスを選択させたいと考えている。利用者はSlackbotインターフェースを通してサービスを選択し、ClassPassやHBO有料オプションを会社払にすることができる。同社によれば、有料パイロットプログラムには24社が参加している。

CityFurnish
インドで家具レンタルを提供するCityFurnishは、デリー、プネー、ムンバイ、バンガロールの顧客に対して、月々のレンタル料の受け取りながら家具を配達して設置を行い、引っ越しやメンテナンスには無料で対応している。同社は長期契約を求めないので、実際に家具を買うよりも安いオプションだと語っている。現在CityFurnishは、1万人の加入者と3百万ドルのARRを有しており、18カ月間利益を上げてきている。私たちは以前、TechCrunchでCherryを取り上げている。

NaturAll Club
要冷蔵のヘアケア製品を提供する。スタートアップの製品は、果物と野菜を原料にしている。チームの最初の製品は新鮮なアボカドから作られ「6カ月で200万ドルの売り上げを上げた」と同社は語っている。これは髪のためのJuiceroパック(大失敗したジュースプロダクト)のように聞こえるかもしれないが、オーガニック製品は美容分野では最も急成長している製品カテゴリである。

FlockJay
求職者がテック営業でキャリアを求める際に必要となる、スキルとトレーニングを提供する、オンラインセールスアカデミーを運営する。12週間の長さのブートキャンプで、研修生にコーチングとメンタリングを行う。同社は17人の学生と共に最初のクラスを立ち上げたが、その全員が既にジョブインタビューを受けていて、4割はすでにテック企業の中に新しいキャリアを得ている。

Demodesk
製品を顧客に直接デモしてセールスを変革したい会社向けの、画面共有ツールを開発している。ユニークなのは共有されるのは、デモを行う担当者自身のデスクトップではないということだ。それは、見込み顧客が長時間のダウンロードを待つことなくデモプレゼンテーションを見ることができる仮想マシンであり、それでもソフトウェアの動作を知るために、共同作業や編集を行うことができる。

Ultralight
ゲームやデスクトップアプリの中でHTML UIをレンダリングするために使用される、クロスプラットフォームアプリケーション開発ツールである。同社の目標は、GPUで高速化された独自のレンダラーを提供することで、Chromiumを置き換えることである。Ultralightは、ほとんどのプログラミング言語と互換性があると述べている。

Keeper
「1099」従業員(ギグ・エコノミーの契約労働者)たちが、納税申告書の細かな部分で損をしないようにしたいと考えている。同社によれば、平均的な契約労働者は、年間1249ドル以上税金を過剰に払っている。Keeperは機械学習を使用して、ユーザーの銀行取引明細書内から、税務控除を自動的に発見する。彼らは市場として全米に5000万人いる契約労働者を狙っている。

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(翻訳:sako)

Y Combinatorの2019年冬のDemo Day初日の有望スタートアップ10社

電気自動車の充電スタンド、兵士のためのヘッドアップディスプレイ、マリファナのコストコなど、一流アクセラレーターY Combinator(YC)の2019年冬のデモデーに登場したスタートアップには、TechCrunch好みの企業がいくつもあった。シリコンバレーの波動を感じたければ、YCこそまさにその場所だ。しかし、2日間にわたり2箇所で開かれた「Demo Day」(スタートアップが投資家にプレゼンを行うイベント)には200社を超えるスタートアップが登場し、そのすべてを把握するのは困難を極める。

興味のある方は、デモデー初日に登場した85社を超える企業の紹介記事を読み、完全な索引を見て2日目からピックアップした企業の記事を読まれるのがいいだろうが、ここではデモデー初日の半分から選んだ10社を紹介したい。私たちが選んだ理由も書き添える。

Ravn

戦場では、建物の角から顔を出すときが、兵士にとってもっとも危険な瞬間となる。Ravnは、兵士や警察官が、角を曲がった先の様子を確認できるヘッドアップディスプレイを作っている。銃やドローンや、周囲のカメラの映像を利用する。遮蔽物に身を隠したままで敵を見ることができれば安全だ。Ravnはすでに、米海軍と空軍との間で49万ドル(約5468万円)の契約を交わしている。海軍の特殊部隊Seals出身のCEOは、コンピューター科学を学び、拡張現実の専門家となり、国防省に売り込みをかけた。Ravnは、今後かならず必要になるであろう歩兵用のヘッドアップディスプレイを供給できる。

Ravnを選んだ理由:戦場はかならずAR化される。しかし、MicrosoftのHoloLensチームは、現在、弾倉にあと何発弾が残っているか、仲間はどこにいるかといった戦闘中の情報提供に重点を置いている。Ravnの技術は、そうした撃ち合いの惨状を体験してきた人間が開発した。彼は、兵士が危険な状態に陥る前に戦闘を回避する、あるいは勝利することを目指した。同社には、米政府にハイテク機器を売り込む専門家がいる。

Middesk

仕事のパートナーが税金を払っているか、破産宣告していないか、または訴訟に捲き込まれていないかを知るのは難しい。こうした事故による回収不能になった不良負債は、年間1200億ドル(約13兆3900億円)にのぼる。Middeskは、事業の優良不良を識別し、企業間取引、融資、投資、買収などの信頼性を高める適正評価を行っている。顧客が安心して資金を出せるよう、Middeskは、広範にわたる取り引きに介入する。

Middeskを選んだ理由:同社は、実質的にあらゆる取り引きに関与できるビジネス界の弁護士として信頼を高めている。情報が多いほど、愚かな決断は減らせる。Middeskは、疑わしい取り引き相手を信じてしまわないよう、予防してくれる」から。

Convictional

消費者に製品を直接販売している業者が、より簡単に大手小売り業者と取り引きできるようにする企業。通常、製品を提供する側が小売業者との関係を築き、製品を売ってもらえるようになるまでには長い時間がかかるが、Convictionalは、企業間のセルフサービス商取引プラットフォームで、この時間を短縮する。これを使えば、小売業者は簡単にメーカーとつながり、発注できるようになる。

Convictionalを選んだ理由:スーツケースからひげ剃りにいたるまで、あらゆるものが直販されるようになったが、製品の露出度や販売規模を拡大するためには、こうした商業分野から追い出されないように頑張っている小売り業者とつながる必要がある。仲介者であるConvictionalは、高収益が見込める立場にあると同時に、貴重な購買データの宝庫にもなり得る。

Dyneti Technologies

詐欺を50パーセント以上予防し、コンバージョンを5パーセントまで高められるクレジットカードのスキャナーSDKを開発。同社は、Uberの元従業員2人によって設立。そのうちの一人は、Account SecurityとUberEATSで詐欺の分析部門を立ち上げたCEOのJulia Zheng氏だ。Dynetiのサービスは深層学習に支えられており、あらゆるカード方式に対応する。設立からわずか2カ月で、RappiやGametimeなどの企業と契約を交わしている。

Dynetiを選んだ理由:サイバーセキュリティー上の脅威は増す一方だが、その対策が未熟な企業も、電子商取引に乗り出したいと躍起になっている。Dynetiは、Stripeのような基本的な企業間事業のひとつだ。複雑な問題を単純化して信頼をもたらす能力があるため、企業は自社の製品に集中できる。

AmpUp

「電気自動車充電器のAirbnb」と呼ばれるampUpは、大多数の人が電気自動車に乗る世界に向けて準備を進めている。スマホアプリで、無数にある充電スタンドとドライバーをネットワークで結んでくれる。このアプリを使うと、電気自動車の運転車は、最寄りで自分の車に適合する充電スタンドを素早く知ることができる。また、充電器のオーナーは、自分で決めた価格で料金を徴収し、自分のスケジュールで運営ができる。このサービスは現在、サンフランシスコ湾含地区で展開されている。

ampUpを選んだ理由:時代は電気自動車に向かっているが、確実に充電できるか否かの不安が、電気自動車の購買意欲を削いでいる。大規模な充電スタンドのネットワークを自社で構築したところで、ガソリンスタンド網には到底及ばない。そこでampUpは、充電器で収入を得たいと考える人なら誰もが、自分の土地に充電器を置けるようにした。

Flockjay

Flockjayは、オンライン営業学校だ。仕事を探している人なら、ハイテク産業での営業の実績が少なくても、専門の教育をほとんど受けていなくても受講できる。12週間のブートキャンプで訓練や指導を行う。同社は、17名の生徒とともにこのサービスを開始し、全員がすでに企業の面接を受け、40パーセントがハイテク産業での新しい仕事の内定をもらっている。

Flockjayを選んだ理由:プログラミングのブートキャンプの場合は参加条件が非常に厳しいが、優秀な営業マンはやる気のある人間を見習えばなれる。経験や教育が乏しい人たちは、一般に当たり前とされている機会を手に入れるために、自分を上手に売り込む方法をすでによく知っている。Flockjayは、職の確保が大変に難しい人たちに、エコノミック・モビリティ(所得階層の上位移動)をもたらす可能性がある。

Deel

世界には、米国企業と契約している業者が200万件あるが、彼らとしっかり取り込み管理するのは難しい。Deelは、契約、支払い、税金に関する業務をひとつのインターフェイスにまとめ、書類仕事と時間の無駄を削減する。使用料は月間10ドル。支払い1件あたり1パーセントの手数料も徴収する。これにより、契約業者1社につき年間平均560ドルの収益が得られる。

Deelを選んだ理由:遠隔勤務が奇異な目で見られなくなったことで、アメリカの産業には、海外での新しい人材確保の機会がもたらされた。しかし、遠く離れた国の人員を適切に管理できなければ、せっかく安い労働力を確保してもコスト削減にはつながらない。グローバリゼーションの流れは今後も続くため、企業にはよりよい人材管理ツールが必要となる。

Glide

以前から、トレンドはウェブページやモバイルアプリを簡単に作れるサービスに大きな関心が集まり、流れはそちらに向かっていた。Glideは、Googleスプレッドシートを使うことで、顧客が簡単に本格的なモバイルアプリを作れるようにする。ページが簡単に作れるだけでなく、サイトの情報を常に最新に保つ方法も単純化している。

Glideを選んだ理由:デスクトップ・ウェブサイト製作の市場は熾烈を極める。プログラミングができない人には、モバイルサイトの開発も容易ではない。視覚化されたレイアウトツールもまだ馴染みが薄いので、Glidesは、誰もが使ったことがあるスプレッドシートで作ることを考えた。このところ、どのブランドもインフルエンサーも、ウェブページから親密性が失われつつある。そのためGlideでは、第一に親近感があり個性的になるよう、アプリを仕立てる手助けをしてくれる。

Docucharm

Uberの元プロダクト・マネージャーMinh Tri Pham氏が共同創設者に加わったプラットフォームだ。書類をコンピューターに理解できる構造化データに変換して、書類の処理とワークフローを正確に自動化し、人間によるデータの打ち込みの必要を排除する。DocucharmのAPIは、たとえば給与明細など、いろいろなフォーマットの書類を認識でき、間違いなく必要な情報を抽出できる。顧客には確定申告代行業のTributiや貸金業者のAspireなどがある。

Docucharmを選んだ理由:高い技術を持つ高給の社員にデータの打ち込みをさせるのは無駄なことだ。Docucharmのような光学文字認識は、データ抽出を元に新しいビジネスの世界を切り拓く。このスタートアップには、その業界全体を支えるAI基盤になる可能性がある。

Flower Co

マリファナを安価に販売し配達する会員制のショップ。たいていの医療機関は、高価な製品と手厚い世話を求める金持ちや初心者の需要に応えている。それとは対照的にFlower Coは、低価格のマリファナを大量に求める昔からの愛好家の需要に応えるものだ。現在同社は700名の会員に月間20万ドル(約2200万円)のマリファナを売り上げている。会員料金は年100ドル。販売ごとに10パーセントの手数料を徴収する。

Flower Coを選んだ理由:マリファナは次なるゴールドラッシュだ。1世代に1回だけの土地の奪い合いとなる。しかし、大多数がずっと前から大勢の友だちと安いマリファナを楽しんできた愛飲家たちであるにも関わらず、ほとんどのマリファナ販売業者は、非常に目の肥えた高級な客に焦点を合わせている。マリファナの吸引をライフスタイルにしたい人たちは、今後大量に増えると思われるが、Flower Coは、そんな人たちの御用達業者になれる。

【編集部注】米国では過半数の州で医療用大麻が合法化されているほか、10州ほどで嗜好品としても合法化されているが、日本では大麻取締法で規制されている違法薬物だ。

その他の注目企業

Atomic Alchemy:核医学の不足を埋める。
Yourchoice:あらゆる性を対象としたホルモンを使わない妊娠調整。
Prometheus :二酸化炭素をガソリンに変える。
Lumos:意志のための医療用検索エンジン。
Heart Aerospace:短距離電動飛行機。
Boundary Layer Technologies:超高速なコンテナ輸送。

Y Conbinator 2019年冬のデモデー初日に登場した85を超えるスタートアップ紹介(本文は英語)

追加取材:Kate Clark、Greg Kumparak、Lucas Matney

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

Doorportはマンションのインターホンシステムをさらにスマートにする

都会に住んでいて、マンションのインターホンシステムに嫌気がさしているという人も多いのではないだろうか。その電子的な門番は、画面も小さく、ボタンは押しづらく、訪ねてきそうな友達の名前のリストは長過ぎる。

Doorportは、このような従来のシステムを、少しでも賢いものにしたいと考えている。それを実現するために、彼らは既存のインターホンシステムを利用して、そこに機能を追加できるデバイスを開発した。それにより、スマホを使ってマンションのドアを解錠することが可能となる。自分が帰宅したときも、来客を入れるときも、画面をタップするだけでいい。このデバイスを取り付けても、従来のインターホンの機能はそのまま動作する。ただし、以前よりちょっと賢くなるのだ。

この会社が作成したプロトタイプのハードウェアは、現状でちょうど一揃いのトランプほどの大きさに収まっている。すでに設置されているインターホンシステムの中の空きスペースに潜り込ませることができるように考えられたものだ。創業者によれば、取り付けには、ほんの5〜10分ほどしかかからない。磁石でインターホンの筐体の内側に固定し、2本の電線で電源を取り、あと2本の配線を解錠をコントロールする部分に接続するだけ。

Doorportのアプリを開くと、近くのアクセス可能なドアをBluetoothで探索する。画面に表示された鍵のマークをタップすれば、ドアを解錠できる。ICタグをスキャンしたり、暗証番号を打ち込む必要はない。友人にも、Doorportのアプリをインストールしておいてもらう。そうすれば、友達はアプリであなたを呼び出し、話をすることもできる。居住者がその建物から引っ越した場合には、管理人は、管理者用のパネルを使って、その人のプロファイルを削除するだけでいい。以後、退去者はアクセスできなくなる。

Doorportでは、当初、既存のインターホンの装置を丸ごと置き換えるフル装備のハードウェアを開発するつもりだった。ビデオ通話や、暫定的な1日限りのアクセスコード発行機能などを備えたものだ。しかし、市場調査によって、家主はそのような総入れ替えが必要なものには興味を示さないことがわかった。まったく新しいシステムを導入すると、古いハードウェアを撤去し、従業員を再訓練したり、すべての住民に新しいICタグを配ったりすることが必要となる。そこで、そうする代わりに、既存のシステムの上に付加できるタイプのものにシフトすることにしたのだ。

この会社は、まだまだ初期段階で、従業員は3人だけ。3Dプリンターを利用して筐体を作成し、何度もプロトタイプを作り直している。ほんの数ヶ月前、同社が初めてY CombinatorのWinter 2019クラスに入ったとき、共同創立者のReggie Jean-Brice氏は、「ハードウェアは文字通りブレッドボード上で動いています」と私に明かした。それに対して、私が最近目にしたデバイスは、側面に「Mark II」という刻印のある、きれいな小さな箱に収められていた。

新しい会社にはよくあることだが、Doorportはまだ彼らの製品の原価ががいくらになるのか、正確に把握しきれておらず、いろいろな値付けのモデルを検討している最中だ。その1つのモデルは、最初に取り付ける際に、家主に約350ドルを負担してもらう。その後は、マンションの1世帯あたり毎月1.5ドルを支払ってもらうというもの。別のモデルでは、1世帯あたり年間約30ドルのコストを、居住者に負担してもらう。家主は、より便利な付帯設備として、それをウリにすることができる。共同創立者のBen Taylor氏によれば、同社は現在プロトタイプのデバイスを、サンフランシスコ、オークランド、さらにニューヨークでテスト中とのことだ。

原文へ

(翻訳:Fumihiko Shibata)

全米一と評価されるアクセラレーターに参加の最新スタートアップ19社

AngelPadがニューヨークで開催した3カ月間スタートアップアクセラレーラーコースの第12回目が修了した。今回は、クライマックスをデモデーで飾るという形式をとらない2回目の実施となった。その代わりに、19の参加スタートアップ企業は、先週末、あらかじめ設定されていたベンチャー投資家たちと1対1で面談した。

AngelPadの共同創設者Thomas Korte氏とCarine Magescas氏は、昨年、同社の10年近い歴史の中で初めて、デモデーの伝統を廃止した。これまでAngelPadが指導したスタートアップには、Postmates、Twitterに買収されたMopub、Pipedrive、Periscope Data、Zum、DroneDeployなどがある。

「デモデーには、アクセラレーターが多くの企業を大勢の投資家に紹介できるといういい面がありますが、私たちはそれが、最高に生産的な方法だとは思っていません」とKorte氏は、昨年TechCrunchに語った。噂によれば、ライバル関係にあるアクセラレーターY Combinatorもデモデーの廃止を検討しているとのことだが、同社に近い情報源はそれを否定している。Y Combinatorはインベスターデー(投資家の日)を省略し、その代わりに「効率性を分析した結果」として、昨年AngelPadと同じように個々のスタートアップに投資家が面談できる機会を設けた。

デモデーを廃止したAngelPadの決断は評判がいい。Krote氏がTechCrunchに話したところによると、スタートアップのCEOたちは、投資が得られる確証もないのに大勢の前で売り込みのスピーチを強いられることがなくなって、ホッとしているという。

AngelPadは、各企業に12万ドル(約1340万円)ずつ投資している。それでは、今回参加した最新スタートアップを紹介しよう。

  • LotSpot
    大学、公園、ショッピングモールなどの駐車場を管理するツール。駐車場の入口と出口にカメラを設置し、車が出入るするごとに駐車場の空き状況を自動的に監視する。LotSoptの創設者はスタンフォード大学のイノベーション・フェロー。工学と営業の経歴がある。
  • Twic
    自由裁量で使える福利厚生管理プラットフォーム。これを使えば、企業は従業員に福利厚生を低コストで提供できる。このツールは、サービス提供業者の選定、利用状況のモニター、デジタルウォレットでの償還金の管理といった人事業務を助ける。Twicの顧客には、TwitchとOscarも含まれる。同社の現在の年間経常収益は26万5000ドル(約2960万円)。
  • Zeal
    企業同士の契約を自動化するプラットフォーム。営業部の人間が、機密保持契約書などの形式的な契約書の文面を、個別に、効率的に変更できるようになる。現在このスタートアップは大手企業で試験運用を行っている。創設者は弁護士や経営コンサルタントで、以前はAXIOMで営業や法務を担当していた。
  • ChargingLedger
    電気自動車のためのインテリジェントな充電技術を使い、送電線網の使用を最適化する試みを送電会社と共に行っている。同社の有料試験プログラムは、今月スタートする。
  • Piio
    検索エンジンの最適化に特化。ユーザーの利用形態、位置、デバイス、プラットフォーム、接続速度に基づいてウェブサイトの速度とパフォーマンスを最適化する技術を使い、企業のウェブプレゼンスを高める。現在、Piioは、JomaShopを始め、電子商取引小売業者との事業を進めている。年間経常収益は9万ドル(約1000万円)。
  • Duality.ai
    自律走行車両のための品質保証プラットフォーム。人間のテスト担当者とシミュレーション環境を支援し、自律走行のための歩道、車、トラックの出荷までの時間を短縮する。創設者は、Caterpillar、Pixar、Appleに在籍していたエンジニアやデザイナーたち。ベータ版の顧客2社から、年間計上収益10万ドル(約1117万円)を上げている。
  • COMUNITYmade
    ロサンゼルスの製造業者と協力し、地元産の高級スニーカーを製造している。この企業はAdidasなどのブランドの目を惹き、コラボを行っている。創設者は、アシックスzやTomsの出身者からなる。
  • Spacey
    ミレニアル世代に焦点を当てたアート購入プラットフォーム。限定印刷されたアート作品を低価格で販売している。また、オフラインでの会員制体験サービスもあり、ブランド大使プログラムには多数のフォロワーがいる。
  • LegalPassage
    法律事務所のための事務処理自動化ソフト。弁護士の時間を節約する。同社はとくに、集団訴訟、人身傷害に重点を置いている。創設者は訴訟弁護士であり、カリフォルニア大学へイスティングス校の法学元非常勤教授。サンフランシスコ弁護士会家族法部門議長の経歴も持つ。
  • Revetize
    評判を高め、推薦を促し、リピーターを増やすことで地方企業の収益を高める手助けをする。本社はユタ州にあり、22万ドル(約2460万円)の年間計上収益がある。
  • House of gigs
    フリーランスや単発の仕事を求めている人たちに「雇われているような」サービスを提供し、ユーザーの近所にある短期の仕事を紹介する。このスタートアップは9万人の会員を擁する。創設者は、サンフランシスコとベルリンの出身者。かつて、ベンチャー投資家の支援を受けた人材スタートアップで一緒に仕事をしていた。
  • MetaRouter
    高速で柔軟で安全なデータルーティングを提供する。クラウドベースの業務用プラットフォーム。年間経常収益は25万ドル(約2790万円)に達し、「Fortune 500に選ばれた2つの小売り企業」も顧客に含まれる。
  • RamenHero
    本格高級ラーメンのキット食品を提供する。2018年に創設され、およそ1700件の顧客を持ち、12万5000ドル(約1400万円)の収益を上げている。創設者は、いくつもの会社を立ち上げた起業家であり、日本のラーメン学校を卒業している。

    RamenHeroは本格高級ラーメンのキット食品を提供する

  • ByteRyde
    特にTesla Model 3sを対象とした自律運転車両のための保険。自律運転車の安全機能を考慮した。
  • Foresite.ai
    商業不動産投資家に、データ解析と位置情報を基にした傾向の視覚化を行うリアルタイムプラットフォームを提供する。
  • PieSlice
    ブロックチェーンをベースにした株式発行と管理のためのプラットフォーム。企業の株式に完全に対応するデジタルトークンの発行を手助けする。創設者は、トレーダー、株式ブローカーからプロのポーカープレイヤーになった人物。
  • Aitivity
    スケーラブルなブロックチェーンのアルゴリズムを開発しているセキュリティー用ハードウエア企業。とくにIoTを導入している企業向け。
  • SmartAlto
    19万ドル(約2117万円)の年間経常収益のある、不動産のリードを強化するSaaSプラットフォーム。デジタル・アシスタントで不動産業者同士をつなぎ、より多くの物件を紹介し合えるようにする。
  • FunnelFox
    企業の営業担当者と協力して、顧客リサーチ、パイプライン管理、報告のための時間を節約する。AIを利用したこのプラットフォームは、年間経常収益75000ドル(約8360万円)に達し、顧客にはBotifyやPaddleも含まれている。

A look at all the companies participating in 500 Startups’ 24th accelerator program


500 Startupの24時間アクセラレーター・プログラムに参加した企業たち(本文は英語)

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(翻訳:金井哲夫)

車いすのユーザーが近づくと自動的にドアが開くBluetooth Low Energyボタン

押すと自動的にドアが開くボタンやプレートがあると建物のアクセス性はよくなるが、常に最良のソリューションとは限らない。上体の動きが自由でない人が車いすに乗っていると、ボタンは押しづらいだろう。ボタンの位置が高すぎたり低すぎたり、あるいはドアから遠すぎて閉まってしまうこともある。

Portal Entrywaysは、そういう既存のボタンをもっと使いやすくする。同社が作ったデバイスをボタンの上にかぶせると、車いすの人が近づけばドアが自動で開き、開いた状態を維持する。ボタンを前と同じように単純にボタンとして使うこともできる。

Portalの製品には二つの部位があり、ひとつは既存のドア開閉システムにくっつけるBluetooth Low Energyのデバイス、もうひとつは車いすのユーザーのスマートフォンで動く付属アプリだ。アプリはそのBluetooth Low Energyデバイスを探す。通信範囲内にひとつ見つけたらコマンドを送ってドアを開き、ユーザーがその出入り口を通過するまでドアを開いたままにする。Portalを装備している出入り口にはステッカーがあるので、ユーザーは自分が近づけば開くとわかる。

PortalはY Combinatorの2019冬季クラスに参加している。でもその始まりはブリガムヤング大学のイノベーション事業における学生プロジェクトで、その課題は、現実世界の問題を解決すること、だった。共同創業者のSam Lew氏によると、最初彼らは建物のアクセシビリティとは全然関係のない、物流関連のプロジェクトを始めた。でもキャンパスで、友だちがドアを開ける時間のスケジュール表を作ったり、手が届かないボタンを押してあげている人物に会ったとき方針を変えた。

まだ始まったばかりだが、彼らは早い成功をねらっている。これまで250台近くのデバイスを据え付けたが「今月中に1250台ぐらいの契約を取りたい」と言っている。

今は、同社の創業者たちが自分でデバイスの据え付けをやっている。ボタンもモーターもドアによってまちまちだ。有線で接続しているところもあれば、すべてワイヤレスのところもある。それらすべてに接続するには、今のところ特殊な知識がいる。しかし共同創業者のJosh Horne氏によると、既存の人気製品のほとんどすべてで動作する。「骨董品でなければ動くはずだ」と彼は言う。

同社が今集中しているのは、大学やモールなど公開的な施設建物のドアだ。どれぐらいの使用料にするかまだ決めてないが、ドア1つにつき1年で100ドルか200ドルぐらいを想定している。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Y Combinatorで育った女性プロフェッショナルのためのネットワークLeapがElphaと改名して独立

Y Combinatorが開発した女性のネットワーキンググループLeapがついに、Elphaという新しい名前でひとり立ちした。

Cadran CowansageとAbadesi Osunsade、そしてKuan Luoの三名が創業したElphaは、テクノロジー産業で働くプロフェッショナルの女性のためのネットワークで、女性が孤立せず互いに結びつけるためのさまざまなコンテンツやリソースへのアクセスを提供する。そのブログポストでCowansageは、女性を重視する企業に関する情報へのアクセスも提供していく、と言っている。

ElphaのアイデアをCowansageは長年温めてきたが、2017年にY Combinatorの支援でローンチできた。Cowansageによると、Leapは最初、夜と週末だけのプロジェクトだったが、今では7500名のアクティブメンバーがいる。協同ファウンダーのAbadesiとKuanのうち、Leapグループの最初のコミュニティリードになったAbadesiはProduct Hunt出身で、テクノロジー業界のインクルージョンにフォーカスしたHustle Crewのファウンダーでもある。

元ニューヨーカーのKuanはスタートアップ世界のベテランで、ニューヨークのデータベース企業Cockroach Labsでデザインチームを率いていた。テクノロジー業界の女性リーダーたちのために退職後の生活プランをコンサルするFor The Womenの、アーキテクトでもある。

同社はもはやY Combinatorの系列企業ではないが、その冬季クラスを受講し、またYCからの投資も受けている。Cowansageによると、それはYC支援企業の標準的な形で、15万ドルの投資でYCが7%のオーナーシップを取る、という形だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

iPhoneの赤外線奥行きセンサーで人間の感情を読み取るObservant

Observantは、iPhone X, XS, XRの、赤外線を利用する奥行き(z軸方向)センサーの、新しい使い方を見つけた: ユーザーの顔の表情を分析して、製品やコンテンツに対する反応を読むのだ。

ObservantはY Combinatorの本年冬季の‘生徒’だったが、3月のデモデーの時点でもステルスだった。作者は、バグを報告するBuglifeを作ったのと同じ企業で、CEO Dave Schukinによると、彼のチームがユーザーの反応を正しく知りたいためにObservantを作った。

本誌TechCrunchはWebカメラ視標追跡(eye tracking)を使う方法を過去にも取り上げてきたが、CTOのDaniel DeCovnickと共に同社を興したSchukinによると、それらの方法はObservantに比べて精度が低い。とくにそれらは、表情の細かいニュアンスを捉えることができず、また十分明るくないと使えない。

彼によると、赤外線を用いる奥行きセンサーは、照度が低いところでも顔を詳細に捉えることができる。またObservantは独自のディープラーニング技術により、顔のデータをリアルタイムで感情に翻訳できる。

Observantは、どんなiOSアプリからでも利用できるSDKと、そのバックエンドとしてのリアルタイムの感情分析ストリームと、アプリ内イベントに対応するユーザーの反応のスナップ・ショットを提供している。今は完全招待制だが、Schukinによると、すでに一部のリテールやeコマース、それにフォーカスグループテストでも利用されている。

Observant

自分のiPhoneがこっそり自分の表情を捉えている、と後で知ったら誰しも気分悪いので、Schukinは事前にユーザーに知らせることを強調する。“ユーザーはそれがどのように使われるか明確に知っている”のだそうだ。またすべての分析はユーザーのデバイス上で行われるので、顔の映像やバイオメトリクスデータなどがどこかへアップロードされることはない。

この技術には、もっといろんな用途がありうる、とSchukinは主張する。たとえば消費者へのリコメンデーションの質をアップしたり、チャットボットが“感情認識能力”を持ったり、居眠り運転を検出したり、などなどだ。

現在、特定のスマートフォンの特定の三機種でしか使えないことに関してSchukinは、赤外線による奥行きセンサーがあるのは、開発を始めた当時iPhone Xだけだった、と言う。そして、いずれはAppleのiPhoneとiPadの全機種に搭載されるだろうし、Androidにも載るだろう、と彼は考えている。

現時点でObservantの将来性を占うのは時期尚早だが、Schukinによると、わずか一機種だったのがすぐに三機種になったのだから、今後この技術が広まっていくことは確実だ、という。

画像クレジット: Observant

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Y Combinator出身のサイバーセキュリティー・スタートアップTemplarbitが日本参入

左から、Bjoern Zinssmeister氏、Matthias Kadenbach氏

Y Combinator卒業生のコンビ、Bjoern Zinssmeister氏とMatthias Kadenbach氏が率いるサイバーセキュリティー・スタートアップTemplarbitは今月、日本市場にプロダクトを展開することを発表した。10月2日よりTemplarbitの全機能をあらゆる日本企業が利用可能となった。

Templarbitはソフトウェアをサイバー攻撃やデータ漏洩から保護するAIを使ったセキュリティー・ソリューション「Templarbit」を開発・提供している。最近では205 Capital、そしてY CombinatorやLightspeed Venture Partnersから3億円を調達した。

Templarbitはサイバー攻撃からアプリケーションを守るセキュリティー特化型プラットフォームで、Cross-site Scripting (XSS)、インジェクション攻撃、クリックジャッキング、DDoS攻撃などからアプリケーションを保護し、早期の脅威検知や脆弱性検査を可能とする。AIがデータを分析し、拡張性のある防御を構築。 同社の独自データと機械学習モデルを組み合わせ活用することによって実現されている。

Templarbitはその気軽さも1つの特徴だ。アプリケーションサーバーにエージェントをインストールすることで簡単にアプリケーションスタックへとデプロイできる。アプリケーション層を通過したデータをTemplarbitが分析し、不審な動きなどは管理画面にリアルタイムにレポートされる。

Templarbitが日本市場に参入したのにはワケがある。TemplarbitのCEOであり共同創業者のZinssmeister氏は「日本は非英語圏で最も多くのサイバー攻撃を受けている国の一つ」だからだとその理由を説明した。

「翻訳ツールの進化により、ハッカー達はより簡単にウェブサイト上で何が起こっているのか理解することができるようになった。ここ数年で日本でもサイバー攻撃が急増したのはそれが原因だ。だが、日本では残念ながらサイバーセキュリティーに対する投資が充分に行われていないと考えている。小規模な地方の銀行などはプロのハッカー集団などに対応するための準備が整っていない」(Zinssmeister氏)

アメリカでは2013年に顧客のクレジットカードとデビットカードのアカウント約4000万件が盗まれたTargetの事件が引き金となり、多くのECサイトがサイバーセキュリティーに大きな投資をしてきた。それを踏まえた上で日本とアメリカを比較すると「日本は6年から8年ほど遅れているのでは」とZinssmeister氏は警告する。

Zinssmeister氏は12ヵ月に渡り日本市場参入への準備を進めてきた。ローンチに際し同氏は「日本のテクノロジー業界、特に東京のテック・コミュニティーは非常に寛大でお互いにサポートしていることを知り、私達もその恩恵を受けてきた」とコメント。「日本では競合が少なくセキュリティー分野のニーズが高い。だが、国外初のマーケットとして日本は選んだことは私たちにとっては非常に難しいチャレンジとなるだろう」と付け加えた。

「アメリカの創業者は国外の文化に関する理解が乏しい。ヨーロッパやオーストラリアと同じ戦略で日本に挑むのは筋違いだ。日本の特殊なビジネスカルチャーを深く理解する必要がある。アメリカと違い日本では人間関係が重要で“推薦”が必要となってくる。それが原因で多くの米国企業がこの国で苦戦するのでは」(Zinssmeister氏)

Zinssmeister氏は10年ほどカリフォルニア州に住んでいるがドイツ出身だ。ヨーロッパと日本のビジネスシーンでは「保守的」だという意味で似ているため、日本でビジネスを展開する上で彼自身のバックグラウンドが大いに役立っているという。ローンチまでの準備は数年かかると予想していたが、12ヵ月で日本でのベースを築き上げることに成功した。

そんなZinssmeister氏は4ヵ月に一回ほどのペースで日本に訪れている。今では大手テック企業やEコマース、スタートアップなどを含む数々のビジネスがTemplarbitに興味を持ち始めているという。「私たちはまだ小さな会社だが、Templarbitの独自性と美しいUIが高い評価を得ている」(Zinssmeister氏)日本では特にUIのシンプルさ・使いやすさが重要視されていると同氏は話していた。

Templarbitはデータ漏洩やサイバー攻撃などの情報をまとめたBreachroomというブログを運営していたりもする。同社は日本ではまだローンチしたばかりだが、今後の成長を大いに期待したい。Templarbitではスタートアップ向けのプラン「Startup Security Program」も用意されているので、これも注目を集めるにはもってこいのフックとなるだろう。

Y Combinatorがこれまでに送り出した最も成功した企業たちトップ20

今月の初め、スタートアップのためのクレジットカードプロバイダーBrexは、評価額11億ドルで1億2500万ドルを調達したことを発表した。

このラウンドはいくつかの理由から印象的なものだった。創業者は2人組の22歳の若者で、決済事業に舵を切る前は仮想現実の会社を作ろうとしていた。彼らがシリコンバレーの有名なスタートアップアクセラレーターであるY Combinator(YC)のプログラムを終了したのは、わずか1年前のことだ。

Y Combinatorはスタートアップの世界において、仲間のアクセラレーターたちよりも、確かに多くの成功を支えてきた。アクセラレーターというものは皆、初期段階の企業にシード投資を行い(YCの場合は15万ドル)短期間のプログラムの中でメンターシップと教育的リソースを提供する。プログラムは最後のデモデーで最高潮に達する。

本日YCは、2005年にスタートアップのバックアップを開始して以来、最も成功した企業たちの最新リストを発表した。ランキングは評価額もしくは時価総額に基いておこなわれる。もちろんBrexはトップ20入りした最も若い企業だ。

  1. Airbnb :Brian Chesky、Joe Gebbia、そしてNathan Blecharczykによって創業された、オンライン旅行コミュニティならびにルームシェアプラットフォーム。評価額:310億ドル。 YC W2009(Wは冬、Sは夏を表す。YC W2009は2009年冬クラス卒業という意味。以下同様)。
  2. Stripe:JohnとPatrick Collisonによって創業されたインターネットビジネス向けのオンライン支払い処理システムプロバイダー。評価額:200億ドル。 YC S2009。
  3. Cruise:2006年にGMによって買収された。自動運転車の開発を手がける。Kyle VogtとDaniel Kanによって創業。評価額:140億ドル。 YC W2014。
  4. Dropbox:この3月に公開された。Drew HoustonとArash Ferdowsiによって創業されたファイルホスティングサービスとワークプレイスコラボレーションプラットフォーム。時価総額:100億ドル以上。 YC S2007。
  5. Instacart:Apoorva Mehta、Max Mullen、そしてBrandon Leonardoによって創業された食料品および家庭用品の配送サービス。評価額:76億ドル。 YC S2012。
  6. Machine Zone:Mike Sherrill、Gabriel Leydon、そしてHalbert Nakagawaによって創業されたモバイルゲーム会社。”Game of War”で知られる。評価額:50億ドル以上。YC W2008。
  7. DoorDash:Tony Xu、Stanley Tang、そしてAndy Fangによって創業されたアプリベースの食品配送サービス。評価額:40億ドル。YC S2013。
  8. Zenefits:Laks SriniとParker Conradによって設立された、中小企業向け人事ソフトウェアのプロバイダ。評価額:20億ドル。 YC W2013。
  9. Gusto :Josh Reeves、Tomer London、そしてEdward Kimによって創業された、企業の給与計算を自動化および簡素化するソフトウェアのプロバイダ。評価額:20億ドル。 YC W2012。
  10.  Reddit:会話と数千ものコミュニティのためのオンラインプラットフォーム。Alexis OhanianとSteve Huffmanによって創業された。評価額:18億ドル。YC S2005。
  11.  Coinbase:Brian ArmstrongとFred Ehrsamによって創業されたデジタル暗号通貨の取引とウォレットプラットフォーム。評価額: 約16億ドル。YC S2012。
  12.  PagerDuty:Baskar Puvanathasan、Andrew Miklas、そしてAlex Solomonによって創業された、インシデント管理プラットフォーム。評価額:13億ドル。 YC S2012。
  13.  Docker:Solomon HykesとSebastien Pahlが創業。ビジネスクリティカルなアプリケーションの開発、管理、セキュリティーを、開発者が自由に行えるようにするためのアプリケーション用のプラットフォーム。評価額:13億ドル。 YC S2010。
  14.  Ginkgo Bioworks:Reshma Shetty、Jason Kelly、そしてBarry Cantonが中心となって創業したカスタム微生物のデザインに重点を置くバイオテク企業。評価額:10億ドル以上。 YC S2014。
  15.  Rappi:Felipe Villamarin、Simon Borrero、そしてSebastian Mejiaが創業したラテンアメリカオンデマンド配送スタートアップ。評価額:10億ドル以上。YC W2016。
  16.  Brex:スタートアップにコーポレートカードを提供するB2B金融スタートアップ。その創業者にはHenrique DubugrasとPedro Franceschiが含まれる。評価額:11億ドル。 YC W2017。
  17.  GitLab:Sid SijbrandijとDmitriy Zaporozhetsによって創業されたデベロッパーサービス。完全なDevOpsライフサイクルプラットフォームを提供することを目指している。評価額:11億ドル。YC W2015。
  18.  Twitch:何百万ものユーザーがいるビデオゲーム用のライブストリーミング、プラットフォーム。Amazonが買収した。創業者はEmmett Shear、Justin Kan、Michael Seibel、そしてKyle Vogtなど。YC W2007。
  19.  Flexport:Ryan Petersenによって設立された、航空、船舶、鉄道、トラックで世界的な貨物輸送を行う物流会社。評価額:約10 億ドル。YC W2014。
  20.  Mixpanel:Suhail DoshiとTim Trefrenによって創業。ビジネスに関わる人間がそのユーザーを理解することを助ける、ユーザー分析プラットフォーム。評価額:8億6500万ドル以上。 YC S2009。

Y Combinatorの最も成功した100社の完全なリストはこちらから

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(翻訳:sako)

画像クレジット: Getty Images

Y Combinator 2018夏クラスのデモデーをビデオでチェック


先週マウンテンビューのコンピューター・ヒストリー・ミュージアムで開催されたY Combinator 2018夏のクラスのデモデーをビデオでまとめた。TechCrunchではすべてのスタートアップを紹介している。1日目のスタートアップ63チーム(ハイライト10チーム)、2日目のスタートアップ59チーム(ハイライト10チーム)。

会場の外にはUberやLyftの車が行列していたが、ドライバーたちは頭いい。Qurasense(1日目)は生理の血液から各種診断ができるというもの。Papa(1日目)は「オンデマンドでお孫さんを提供」というユニークなサービス。高齢者と大学生を結びつけて高齢者の社会的孤独という大きな問題を解決しようとしている。

2日目にはYCグループでスタートアップクラスを運営するYC CoreのCEO、Michael Seibel(Justin.tvの元CEO)に話を聞くことができた。スタートアップや投資家のビジネス成功に対する判断も社会的な要素を敏感になってきたという。クリプトやバイオのスタートアップが目立つようになったが、YCではどのようにスクリーニングしているのかと尋ねた。Seibelは「クリプトの場合は実際に何かの問題を解決するテクノロジーをもたらしているのかを見る」と答えた。バイオの場合、専門性が高いだけに判断はむしろ容易なようだ。実際バイオ関係のファウンダーは博士号保持者が多く超高学歴ぞろいだ。インタビュー全体は下のビデオを参照。


いずれにせよ、YCデモデーはシリコンバレーの最新のトレンドを一箇所で感じ取れるまたとないチャンスだと感じた。

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滑川海彦@Facebook Google+

Y Combinatorデモデー2日目からピックアップ10チーム

Y Combinatorのデモデー2日目には59チームのスタートアップが登壇した。アプリ内課金を処理するサービス、現実の対象を写した写真からアニ文字を作成するサービス、余剰医療機器の再販売プラットフォーム、それに、なんと大腸菌からまったく新しい生命形態を合成するスタートアップもあった。イノベーションはたしかに起きている。

以下、投資家の反応も加味し、TechCrunchが独自の視点からピックアップした10チームを紹介する。

こちらはデモデー1の全チーム紹介TechCrunchが選んだ1日目のトップ10だ。

64-x

バイオエンジアリングの一流のエキスパート( ハーバード大学Wyss InstituteのGeorge Church、Pamela Silver、Jeffrey Wayを含む) によって創立された64-xは通常の生命体が生存できないような過酷な環境でも機能する新しい生命形態を含め、最新のバイオエンジニアリングを利用した各種のプロダクトを準備している。CEOのAlexis Rovner自身、Wyss Instituteのポスドクのフェローであり、COOのRyan Gallagherは元ボストン・コンサルティング・グループのコンサルタントだった。チームはWyss Instituteのテクノロジーをビジネス化することを狙っている。

注目の理由:天才ぞろいのチームは新しい生命形態を創出するかもしれない。

CB Therapeutics

大麻の合法的利用研究とテストを行うSteep HillラボのディレクターだったSher Buttが創立したスタートアップはカンナビノイド(大麻の有効成分)が鎮痛やてんかん発作の抑制など慢性的症状に対して奇跡的効果があるとしてその薬用化を目指している。しかし植物由来のカンナビノイドは品質が一定せず、効果も不安定なため、Buttらはカンナビノイドの工業的合成により品質を安定させると同時に、コストを押さえようとしている。成功すれば収量は24倍、価格は10分の1以下に下がるという。世界的医薬品メーカーのNovartisで医薬品の商用化の経験を積んだButtら共同創業者はこうしたプロジェクトを推進するために理想的なチームだろう。

注目の理由:天然のもっとも効果的な鎮痛剤とされるカンナビノイドを新しいテクノロジーで工業的に大量に合成しようとするのはすばらしいアイディアだ。

RevenueCat

RevenueCat founders

RevenueCatはデベロッパーのアプリ内課金を助けようとしている。デベロッパーはこのチームが提供するAPIを利用してiOSとAndroidでアプリ内サブスクリプションを処理できる。つまり、デベロッパーはそれぞれのプラットフォームの細部やアップデートによる変更を気にする必要がなくなる。

またこのAPIによりデベロッパーはアプリ内サブスクリプションに関する情報を一箇所にまとめて管理できる。 誕生してから9ヶ月のスタートアップは現在、月額35万ドルの売上があるという。これ以外にも何かに取り組んでいるようだがそれが何かまだ明らかにされていない。

RevenueCat hereの記事.

注目の理由:アプリを開発したらすぐリリースする。収入はRevenueCatが管理してくれる。と、これはなかなか説得力があるビジネスモデルに思える。

Ajaib

インドネシアはあらゆる面で過渡期にある国だ。投資に十分な資産を持つ階級が急増しているが、既存の資産管理システムのハードルは高すぎてシャットアウトされている。この状況に対応しようとするのがAjaibだ。このスタートアップは中国で人気のオンライン支払サービス、Ant Financialの資産管理版を目指すという大きな野心を抱いている。 実際、中国は最近までインドネシアと状況がよく似ていた。4年前にAnt Financialがスタートして状況が大きく変化し、急増中の中産階級がオンラインで資産管理を行うことができるようになった。Antはすでに4億人のユーザーを抱えている。

中国と比較すればインドネシアは小さいが、2億6100万の人口がある。管理した資産から1.4%の手数料を徴収するだけでも可能性は巨大だ。

注目の理由:インドネシアの貯蓄は3700億ドルある。Ajaibの資産管理システムがターゲットとする国内マーケットは非常に大きい。

Grin

電動キックスクーターのブームはラテンアメリカにも広がっている。メキシコシティーを本拠とするGrinもその一つだ。共同創業者のSergio Romoらは.(Axiosの記事にもあるとおり)、アメリカでBirdのeスクーター共有事業に投資しようとして機会を逃した。そこでラテンアメリカをカバーするeスクーター事業を立ち上げたという。Sinai Ventures、Liquid2 Ventures、500 Startups、Monashees、Base10 Partnersらが投資している。

注目の理由:eスクーターは2018年を代表するホットな分野だ。 アメリカではBird、Limeの急成長を受けてUbe、Lyftrまで参入中だ。しかしまだ勝者は決まっていない。

Emojer

写真から動く絵文字を作成できるようにするのがEmojerの目的だ。写真を撮ると絵文字になって踊り出すというのはスマートフォンのカメラの面白い使い方だろう。Emojerのソフトは深層学習アルゴリズムによって人体のパーツを認識し、ユーザーは簡単な操作で撮った写真をアバターの動きに変換することができる。Photoshopの複雑なインターフェイスの操作もアニメーションに関する深い知識も不要だ。アバターの仕組みはクリスマのたびに口コミで人気が出るアプリ、Elf Yourselfに似ている。このアプリは友達の写真から顔をコピーして踊る妖精に貼り付けることができる。 Emojerのファウンダーは機械学習とコンピューター・ビジョンの分野で博士号を持っている。

注目の理由:EmojerのCEOは「人々がSnapを使うのはセクスティング(性的なメッセージや画像のやり取り)が大きな目的で、FacebookをHot Or Not(異性の写真を品定めする)に使う人間も多い」と語った。そういう「トロイの木馬」現象を考えるとEmojerは密かにセルフィーアニモジを流行らせるプラットフォームに化けるかもしれない。

Osh’s Affordable Pharmaceuticals

Osh’s Affordable Pharmaceuticalsは低価格の処方薬を提供することで医師と患者双方に利益をもたらすことを目的とする公益法人だ。同社では症例が少ないため探すのが困難だった医薬品の入手へのハードルを下げようとしている。3週間前に同社はウィルソン病に対する薬品を発表した。この症状に有効な薬品はこれまでブラジル、インド、カナダでは利用できなかった。また同社の新薬はコストを月3万ドルから120ドルへと劇的に下げた。Oshでは適用のある市場はトータルで170億ドルにもなると見積もっている。「ジェネリック医薬品の価格は決定的に重要だ。多くの患者が必要な医薬品を購入できないために死んでいる」とCEO、Alex Oshmyanskyは述べた。同社は解決策を提供できるかもしれない。

注目の理由:症例の少ない難病に対する有効な医薬品が入手できなかったか高価すぎた国々に低コストのジェネリック医薬品を提供するというのは単に優れたビジネスだというだけでなく世界を改善することができる。

Medinas Health

アメリカのヘルスケア・システムに存在する750億ドルもの頭痛のタネに解決策を与えるのがMedinas Healthの目標だ。同社は病院などの医療組織が使用ずみないし不要となった医療機器を再販売することを助ける。シード資金を提供したのはハリウッドスターでベンチャー投資家のアシュトン・カッチャー、Guy OsearyのSound Ventures、General CatalystのRough Draft Venturesファンドだ。 Medinas
Healthは資金不足に悩む地方のヘルスケアセンターの運営コストの引き下げにもなると期待している。

注目の理由:中古医療機器の流通はトータルでは750億ドルにもなる市場だというが、これまでビッグビジネスの目立たない片隅に追いやられていた。この分野をターゲットとして僻地の病院の運営を助けることができるならMedinasは応援すべきビジネスだろう。

And Comfort

大柄な女性のファッションの選択肢はNordstromやMacy’sのようなデパートでも限られている。ところがアメリカの女性の多数はこの「プラス・サイズ」のカテゴリーに入る。1億人のアメリカの女性が非常に少ない選択肢で我慢をしているという。And Comfortはこの状態を改革しようとしている。ハーバード大学でクラスメートだった2人の共同ファウンダーは、消費者直販のファッションブランドを立ち上げ、プラス・サイズの女性を悩ませているアイテムの供給不足という問題の解決を試みている。これにはスタイリッシュかつミニマリストなチュニックやエプロンドレスなどが含まれる。きわめて若いスタートアップだが、ブランドが販売を開始してから数週間ですでに2万5000ドルの売上があったという。

注目の理由:この直販のファッション・ブランドはこれまで無視されがちだった層に高品質でエレガントなアイテムを供給するという。これは有望だろう。

ShopWith

世界中のインフルエンサーの活動を一つのモバイル・アプリから見られるようにするのがShopWithの目標だ。ユーザーはバーチャル店舗に入り、通路に沿って並ぶファッション、コスメティックスなどのアイテムをショッピングすることができる。これらはお気に入りのブロガー、ユーチューバーなどのインフルエンサーが推薦しているアイテムだ。ユーザーはアプリから出ずにこインフルエンサーがフィーチャーしている商品を購入できる。ダウンロードは無料。

このサービスのビジネスモデルはテレビ通販のQVCにやや似ている。ただし〔90年代後半生まれの〕Z世代のユーザーの購入に影響を与えているのはテレビではなくYouTube、Instagram、Snapchatといったオンラインのソーシャルビデオだ。同社によれば、ある美容系インフルエンサーはShopWithプラットフォームを利用することで5時間で1万ドルの利益を得たという。共同ファウンダーはFacebook、Amazonでソーシャル通販ビジネスの運営の」経験がある。

注目の理由:Z世代向けQVC というキャッチフレーズもさることながら、これは着実に売上を伸ばせる方向だ。モバイル・ファーストでインフルエンサーをベースにしたショッピング・サービスは有望。

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滑川海彦@Facebook Google+

ドローン+AIで発電/送電施設等の異状を至近距離で検出するSterblue

ドローンの商用利用に関する政府の規制は、関連企業にとってとてもポジティブな方向に向かってるようだし、またドローンを利用するスタートアップにとっては、人工知能を利用して人間の努力なしで結果を得る機会がますます増えている。

Y Combinatorの最近のクラスを卒業したフランスのSterblueは、市販のふつうのドローンと、そのような自動化手法を使って、大きな屋外建造物の近接検査をする。

同社のソフトウェアはとくに、自動化されたシンプルな飛跡で大型の送電線やウィンドタービン(風力発電機のタービン)を検査し、それを人間がやるより短時間かつ少ないエラーで行なう。また、対象の至近距離まで接近できるので、細部の高精細画像が得られる。

混みあった都市環境と違ってSterblueが調べる対象物は、異状がそれほど多くない。またCADのデータが得られるので、飛行経路の設計も比較的易しい。そして、まわりに物が密集していないから、風などに対応してドローンの姿勢を直すための空間も十分にある。

ドローンのオペレーターは、ドローンをSterblueのクラウドプラットホームに接続し、そこに写真をアップロードしたり、構造物の3Dモデルを見たりできる。飛行の間、Sterblueのニューラルネットワークが、今後の精査が必要と思われる問題箇所を見つける。Sterblueによると、ドローンは送電線から3メートルの距離にまで接近できるので、同社のAIシステムは撮った写真から異状を容易に検出できる。汚損や傷などの最小検出サイズは、1ミリメートルととても小さい。

最初、ドローンは自社製を使っていたが、ユーザーを増やすにはDJIのような一般市販品をサポートすべし、と気づいた。同社のファウンダーたちはAirbusの元社員で、当面は電気などの公益企業を顧客にしていく予定だ。そして最初はヨーロッパ、次いでアフリカとアジアを市場としてねらっている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Cytera CellWorksは細胞培養を自動化してあなたの食卓に細胞から育てた肉を届けたい

Cytera CellWorksは、細胞培養の自動化によって、いわゆる“クリーンミート”産業を革命したいと願っている。そしてそれは、すべてが計画通りに行ったら、同社の製品がアメリカのすべての食料品店で買えるようになることを意味している。

でも、その日はまだまだ遠い。2017年にイギリスの二人の大学生Ignacio WillatsとAli Afsharが創ったCyteraは、ロボットを使用するオートメーションで細胞培養を構成し、 ペトリ皿でターキーの肉を育てたり、幹細胞を検査したりするようなときの培養過程を本格的な生産工程に乗せるつもりだ。

二人のファウンダー、イベントやスタートアップをやってきたWillatsと科学者のAfsharは、従来とは違うやり方でラボの構成を改良しようとしている。たとえば、GoProのカメラを全員が着用する、とか。二人はロンドンのインペリアル・カレッジで、ラボ(〜研究室)の自動化のためのイベントをやるつもりだったが、そこから友情が育ち、会社を作ることになった。

Afsharはこう言う: “当時、ラボの自動化はやや次善のアイデアだった。本当は、もっと強烈なインパクトのあるものを、やりたかったんだ”。

細胞レベルの農業(“細胞農業”)は、動物の細胞をラボで育てる技術で、すでにY Combinatorのこの夏のクラスに二社が入学している。つまりそれは、スタートアップの本格的な起業テーマになりつつある。もはや、人が眉に唾を塗るきわものではない。

ラボ製の食肉産業は、急激に拡大してきた。それは動物の細胞の生検を取って、それらをラボで育て、生きてて呼吸をしている動物ではないものから、肉を作ろうとする。過去2年間で、Memphis Meatsのようなスタートアップが雨後の筍し、ラボミートをレストランに提供してきた。完全植物性のマヨネーズで名を上げたHampton Creek(今はJust)でさえ、今はラボ育ちのフォアグラを作っている。

最初Cyteraは、ラボの一般的な自動化に関心があったが、世間の関心と今後の事業化の可能性から細胞培養の自動化に集中するようになり、名前も今のCyteraに変えた。すでに、著名な遺伝子治療企業など、将来性ありそうな見込み客も数社ある(まだ名前は公表できない)。

ラボの自動化は新しいテーマではなく、すでにいろんな業界が取り組んでいる。たとえば大手製薬企業は、投資額数十億ドルという大規模な機械化と電算化により、新薬発見過程を大規模に自動化している。そんな大企業が将来、食肉企業と組んで大規模なラボ製食肉生産を始めるかもしれない。現在まだそんな動きはないが、WillatsとAfshaは、大企業は小さなスタートアップと組んだ方が仕事が早いだろう、と見ている。

小にも大にも、それなりのトレードオフはあるが、でもCyteraが成功したら、そのころのあなたは、Cyteraのラボで作られた細胞を買った企業が培養した、鶏の胸肉を食べているかもしれない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Federacyが目指す、スタートアップでも使えるバグ報奨金プログラム

Y Combinator Summer 2018クラスのメンバーであるFederacyは、とても小さなスタートアップでも、バグ報奨金プログラム(見つけたバグによって謝礼を支払う制度)を利用できるようにすることが使命だと考えている。

従来からあるBugcrowdやHackerOneなどが提供するバグ報奨金プログラムは、より大きな組織向けに提供されてきた。それはそれで意義のあるものだったが、双子であるWilliamとJames Sulinskiの2人は、市場にはギャップがあることを感じていた。すなわちそうしたサービスが重要な意味を持つ小規模な組織が閉め出されていることだ。彼らはバグ報奨金プログラムをつくり、外部のリサーチャーたちを知らずともプログラムに簡単にアクセスできるようにしたいと考えた。それがFederacy誕生の動機だ。

「プラットフォームを自由に設定できるようにして、驚くほどシンプルにすることで、最もリソースの厳しいスタートアップに対しても、価値を引き出す上で最大のインパクトを生み出すことができると考えています。そうすることで、現在はBugcrowdやHackerOneなどを介して、数百社程度の会社が採用しているだけの報奨金プログラムを、将来的には100万以上の会社が採用できるものへと広げたいと思っています」と、William SulinskiはTechCrunchに語った。

これは野心的な長期目標だが、現時点ではまだ着手した段階に過ぎない。実際兄弟は、2、3ヵ月前にY Combinatorに参加したときから、プラットフォームの構築を始めたばかりだ。一度動く製品を作ったあと、彼らは仲間たちを使い、知識のある友人たちをセキュリティ研究者と見立てて、テストを始めた。

彼らは先週初めて、Hacker News上でサービスを公開し、すでに120件以上の登録があったことを報告している。彼らの目標は、年末までに1000件の登録を集めることだ。そうなれば数の上で最大のバグ報奨金プラットフォームになると、Williamsは言う。

スクリーンショット提供:Federacy

現時点では、彼らはプラットフォームに参加する全てのリサーチャーを審査しているところだ。もちろんこのアプローチを永遠に続けることはできないと認識しているものの、少なくともプラットフォームを構築している初期段階では。彼らはアクセスに対するコントロールを手にしていたいと考えている。彼らは、リサーチャーたちがエコシステムにもたらす価値を認識しており、特に注意を払う予定だ。

「リサーチャーたちを尊敬し注意深く扱うことは本当に大切です。こうした人たちは信じられないほどスマートで貴重ですが、しばしば適切な扱いを受けていません。大事なことは、彼らが報告を行ったときに、きちんと対応することなのです」Sulinskiは説明した。

スクリーンショット提供:Federacy

将来的にも、兄弟はプログラムの構築とプラットフォームの開発を続けていきたいと考えている。彼らが持っている一つのアイデアは、クライアントが特定のリサーチャーとの関係をもち、その個人と契約したい場合には、手数料を得るということだ。また各報奨金のわずかな部分を収益として得ることも計画している。

典型的なYCの参加者とは異なり、兄弟は30代半ばと少々高齢で、20年以上にわたる職業経験を身に付けている。 片割れのJamesは、2013年にTwitterが3億5,000万ドルで買収したモバイル広告プラットフォームMoPubのエンジニアリング責任者だった。それ以前には、Facebookが2010年に買収したファイル共有サイト、drop.ioのインフラストラクチャの構築を手伝っていたこともある。Williamの方は、AccelGolfとPistol LakeのCEO、そしてSharehololicの創業メンバー兼プロジェクトリーダーを務めた。

幅広い経験を持ってはいたものの、兄弟はY Combinatorが彼らに提供した実用的なアドバイスに価値を見出し、その鼓舞する雰囲気に気が付いた。「先人たちが、このプログラムの中で作り上げてきた。素晴らしいものたちに対して、畏敬の念を抱かずにいることは難しいことです」とWilliamは語った。

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(翻訳:sako)

画像クレジット:Matt Anderson Photography / Getty Images

Momentus、水噴射ロケットをマイクロ衛星でテストへ――ロシア生まれの連続起業家、新テクノロジー開発

Y Combinatorが支援するロケット・テクノロジーのスタートアップ、 Momentusのファウンダー、Mikhail Kokoricの野心は単に月に到達する以上のものだ。Kokoricはロシア生まれで同国を代表する大学の一つ、ノボシビルスク大を卒業した物理学者であり、ソ連崩壊語は連続起業家として資産を築いた。

Momentusのテクノロジーの核心は、ロケットの推進物質として高価な化学薬品ではなく、水を利用する点にある。

画像提供:Momentus

Kokoricによれば水の利用にはいくつもの利点があるという。まず、水は宇宙空間で豊富に入手可能な物質であり、水を噴射薬として利用することは地球外の低重力環境では極めて効果的になる。「化学推進薬で何かを月に送り込むことを考えてみよう。化学推進薬は強力な推進力を得るには適切な方法だ。しかし宇宙船がひとたび地球の重力井戸の外に出れば水のほうがはるかに効果的な推進薬となる」とKokoricは言う。

Phase 4のような会社はマイクロ衛星を定位置に誘導するためにキセノンのような希ガスをイオン化して推進力とする方法を用いている。Kokoricによれば、こうした方法ははるかにコストがかかりであり速度も得られないという。「イオン化推進は静止衛星を定位置に配置するために用いられるが、数ヶ月の時間を要する。水噴射なら半分の時間ですむ」という。

「われわれのテクノロジーを用いれば10トンの衛星を静止軌道にずっと早く送り込むことができる」とKokoricは述べた。

Momentusはすでにドイツを本拠とする衛星打ち上げサービス、ECM Spaceと契約を結んでおり、2019年初頭にマイクロ衛星にこの推進装置を搭載して初のテストを行う計画だ。

最初のロケットはZealと呼ばれ、最高出力30ワットのインパルス・ロケットで持続時間は150秒から180秒が予定されている。

Kororichはロシアで連続起業家として成功を収めていたが、「2011年に私はいわゆる中年の危機に襲われた。そこで私は(長年の関心の的だった)宇宙企業の創立に転じた」という。【略】

Utilisは衛星写真の解析により地下の漏水を探知する

クリミア併合以後のロシアと西側の関係の緊張の高まりに伴い、スタートアップの運営にも多大の影響が出たため、Kokoricはサンフランシスコに移ってアメリカで民間宇宙企業を創立することにした。【略】

それでもKokorichの抗議が功を奏し〔西側の対ロ経済制裁にも関わらず〕、Momentusはロシアにおけるパートナーとの関係をある程度維持することに成功している。
ロシアからの投資はOden Holdings Ltdを通じて行われている。同社に対しKokoricはロシア国外で創立した初の民間宇宙企業、,カナダに本拠を置くHelios Wireを通じて持ち分を所有している。Heliosはブロックチェーン・テクノロジーによってデータを暗号化し、安全な衛星通信のよるIoTの実現を目指している。

Kokoricがアメリカに移ってから2番目に起業した宇宙企業はAstra Digitalという衛星通信サービス会社だった。そして現在のMomentusでKokoricはロケット推進という宇宙ハードウェア技術の革新に挑んでいる。「移動のコストが低下するにつれて新たなビジネスモデルが多数生まれている。Momentusの推進テクノロジーは宇宙旅行のコストをさらに大きく削減する。これにより小惑星における採鉱事業や月の利用などに可能性が広がるはずだ」という。

Momentusのチームの目標は静止衛星の誘導にとどまらず、ビジョンははるかその先に広がっている。

Momentusでは水噴射ロケットのテクノロジーは月往復あるいは他の惑星への往復の基礎を築くはずだと考えている。

〔日本版〕記事には水を「燃料」と呼ぶなどいくつか不正確な表現があり、Koloric自身が投稿して疑問に答えている。Zealはプラズマ推進ではなく、水を推進物質に利用する電気抵抗加熱によるサーマル・スラスターであり、衛星を静止軌道の所定の位置に安定させることを目標としているため、ISP(比推力)はさほど大きい必要はないという。ただしMomentusが開発中のArdoride、Fervoride(一番下のイラスト)はプラズマ推進であり、比推力1000秒以上が実現できると書いている。別のコメントはFervorideのパワーソースは太陽光発電だろうとしている。また水を推進物質に利用する最大のメリットは地表から大重量の推進薬を軌道上に運び上げる必要がなく、月その他低重力の環境で調達できることだと推定している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

南インドの手料理をインスタント化したButtermilkがY Combinatorの支援下で好調

Mitra Ramanが実家を出て大学へ入ったとき、いちばん恋しかったのが、母が作るラッサム(Rasam)だった。インドからの移民の娘であるRamanは、ほとんど毎日、南インドの伝統料理を食べて育ったが、でも一人暮らしを始めてみると、その作り方を自分がまったく知らないことに気づいた。

一度実家を訪ねたとき彼女は母に、お母さんの作る料理を食べたい、と言った。そこで、母であるMrs. Ramanは、ラッサムのすべての原料をプラスチックのバッグにつめて娘に、お湯をわかしてその中にこれを入れなさい、と教えた。とても、簡単だった。

そこから、彼女のスタートアップButtermilkが生まれた。

Y Combinatorで育った同社は、お湯に加えるだけで完成するさまざまなインド料理を、低価格で提供している。

シアトルに拠を置くButtermilkは2017年にローンチし、最初は地元市場だけに売っていたが、やがて全国に製品を売るようになった。

Buttermilkの現在の料理製品は、サンバ(Sambar)、ダール(Daal)、キチディ(Khichdi)、ラッサム(Rasam)、ウプマ(Upma)などだ。どれも6ドル。バスマティ米(Basmati Rice)を1ドル50セントで売っている。

これらを個々に買うこともできるが、複数をまとめたセット販売もある。セットには名前がついていて、それらは、High Protein Pack, Buttermilk Suite, North Indian Favorites< South Indian Favoritesなど、お値段は39ドルだ。

先週Buttermilkが立ち上げた会員制では、毎月特定のセットを定価の10%引きで買える。また7月12日からは、新メニューとしてチャナマサラ(Chana Masala), ココナッツチャツネ(Coconut Chutney), そしてキナ(Quina), ブラウンライス(Brown Rice, 玄米)オプションなどの提供を開始する。予約は、明日(米国時間7/6)から受け付ける。

今後は、同じくママの手料理の味(‘おふくろの味’)に飢えている人びとのために、南インド以外の地方や国々の料理も製品化していくつもりだ。また、流通チャネルを食料品店やコーヒーショップなどにも拡大していきたい。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

OpenPhoneは仕事用の電話番号を持てるモバイルアプリ

OpenPhoneは、Y Combinatoの現行バッチに参加しているスタートアップだ。この会社は仕事の電話番号を使いやすくするアプリの開発に取り組んでいる。2台目の電話機は不要で、大会社向けの高価なソリューションも必要ない。

「共同ファウンダーと私は、二人とも両親の経営する会社の収入に依存する家庭に育った。後に私は家屋リフォーム業者のバックオフィスツールを開発するソフトウェア会社に勤めた」と共同ファウンダーのMahya Raissiは私に言った。

「そこで私は重要なことに2つ気が付いた。まず、ユーザーのほとんどが個人の電話番号を仕事に使っていて、そのことを非常に嫌がっていた。彼らは自分の番号をオンラインに載せたり赤の他人に教えたりしなければならなかった。これは、家族と過ごしていたり忙しく仕事をしているときに電話ががかり続けるという意味だ。もうひとつ、コミュニケーションの方法ががプロフェッショナルで応答の早い業者は成功して稼ぎが多かった」

OpenPhoneはiPhone、iPad、およびAndroid用のアプリだ。アプリをダウンロードして、月額9.99ドル払うと第2の番号が手に入る。番号は市内でも米国・カナダの無料ダイヤルでもよい。既存の電話番号を移行して2台目の電話機を捨てることもできる。

これで、仕事の電話やメッセージはOpenPhoneアプリで受信できる。プロフェッショナルと個人の電話やテキストは完全に分離できることになる。

第2の番号を持つメリットはいろいろある。留守番電話を別にしたり、営業時間を自分でコントロールできる。OpenPhoneアプリを使って留守電を文字起こしすることもできる。

OpenPhoneはVoIPを使って、通話とテキストはすべてインターネット接続を経由して送られる。定期使用料には米国・カナダ国内での無制限通話とテキストが含まれている。

いずれOpenPhoneは、協業を支援する新機能を追加したいと思っている。たとえば、自分の電話番号を他のチームメンバーと共有することも考えられる。Aircallに似ているところもあるが、OpenPhoneは社員20人以内の小企業に焦点を合わせている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Leena AIが、会社の規程に関わる質問に答えてくれるチャットボットを開発

例えばあなたが大企業で仕事をしていて、現在どれだけの休暇​​を残しているのかを知りたくなったり、新しく生まれた赤ん坊をあなたの医療保険に追加したくなったりしたとしよう。通常ならHR(人事総務)部門にメールを送ったり電話をしたりして回答を待つか、場合によっては必要な回答を得るために、複数のシステムを横断して問い合わせを行う必要があるかもしれない。

Y Combinator Summer 2018クラスのメンバーであるLeena AIは、そうした従業員の質問に即座に答えられるようなHRボットを開発して、その問題を解決したいと考えている。

このボットはSlackやFacebookのWorkplaceに統合することができて、構築時には会社規程集の情報を基に訓練を行い、OracleやSAPなどの様々なバックエンドシステムから情報を引き出すことができる。

Leena AI共同創業者であるAdit Jainによれば、同社はChatterronというスタートアップが起源だという。この会社は創業者たちが2015年にインドの大学を卒業したときに始めたものだ。その会社の製品は、人びとが自分のチャットボットを作ることを助けるものだった。Jainによれば、彼らはマーケットリサーチを進める過程で、HRの世界に強いニーズがあることを発見したのだという。その特化した要求に応えるために、彼らは昨年Leena AIを開始したのだ。

Jainは、Chatteronでの経験を通して、ボットを構築するときには、単一のテーマに集中する方が良いことを学んだのだと言う。それは基礎となる機械学習モデルが、使用されるほど性能が改善するからだ。「ボットを作ってからも、本当に価値が備わったり、本当に正確なものになったり、そして本当に役立つものになるまでには、沢山の時間と努力が必要とされます。そしてそうしたことは同じテーマを深めることでしか実現できません」とJainは説明した。

写真:Leena AI

さらに、創業者たちがHRのニーズをよく知るようになるにつれて、その質問の80%は休暇、病気、経費報告といった似通ったトピックをカバーしていることがわかった。また似たようなバックエンドシステムを使用している企業も多いため、今やSAP、Oracle、そしてNetSuiteなどの、一般的なアプリケーション向けの統合機能を標準で提供できる。

もちろん、人びとは似たような質問をするかもしれないが、各社は独自の用語を使っているかも知れないし、変わった質問の仕方をする人もいるかもしれない。Jainは、そこが自然言語処理(NLP)が活躍する場所だと言う。システムは、可能な問い合わせに対する、より大きなデータベースを構築して、こうしたバリエーションを徐々に学習することができる。

同社は2017年に立ち上がったばかりだが、既に10を超える有料顧客を抱えている。彼らはその数を、この先60日間で倍増させたいと思っている。JainはY Combinatorの一員であることが、その点で助けになると信じている。パートナーたちは、チームがピッチを洗練することを手助けし、このツールを利用できる企業を紹介する手助けをしている。

彼らの最終的な目標はユビキタス(ubiquitous:どこにでも存在する)なものとなり、複数のレガシーシステムの間を繋いで、従業員たちからの全ての質問に、シームレスに答えられるようになることだ。もしそれを達成できれば、成功は間違いない。

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(翻訳:sako)

画像:zonadearte / Getty Images