脳でコントロールするロボットやコンピューターが手術不要で実現する

カーネギーメロン大学とミネソタ大学の共同研究グループが、ブレインコンピュータインタフェース(Brain-Computer Interface、BCI、脳とコンピューターのインタフェイス)およびロボット工学における大きな突破口を開いた。彼らが開発したのは、人間が自分の心でロボットアームをコントロールする方法だ。手術のような侵襲的な手続きは要らない。

この実験のマインドコントロールロボットは、高度な運動制御能力も示した。画面の上で動くコンピューターのカーソルを、追うことができたのだ。これは言うまでもなくロボット工学の分野における大きな前進であり、個別ケースではなく一般的に、コンピューターを脳で制御できる可能性を実証している。それにはありとあらゆる用途がありえるが、麻痺などで運動能力に制約のある人でも、コンピューター化されたデバイスを操作できるようになるだろう。

これまで成功した高精度のBCI技術は、脳の信号をピックアップするインプラントを必要とした。インプラントを埋め込むのは危険であるだけでなく、高価であり、人間への長期的な影響も解明されていない。そのため広く普及することはなく、少数の人たちだけが恩恵に与っていた。

研究グループが開発した画期的な技術では、体内に装着するのではなく皮膚に貼ったセンサーからの低品質な信号を利用する。彼らは皮膚感覚と機械学習を結びつけて、ユーザーからの信号を捉える。その信号の起源は脳の内奥だが、捉えた信号には非侵襲的なテクニックにありがちなノイズがない。

この画期的な発見は、医療現場での実用化に向けてそう遠くないかもしれない。チームは、近く臨床試験を始めたい意向だ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

NASAのロボット飛行士が宇宙で初の一歩を踏み出す

米国時間6月20日、NASAバージョンのコンパニオンキューブ(海外のゲーム「Portal」のキャラクター)が、初めて宇宙での「一歩」を踏み出し、国際宇宙ステーション(ISS)内の無重力空間で自ら回転する能力を示した。”Bumble”と呼ばれるそのロボットは、ISS内の宇宙飛行士と協力して働くためにNASAが開発したAstrobeeロボットの一つで、宇宙を単独で飛んだはじめてのロボットだ。

Bumbleの初飛行は、航空ショウで歓声の上がるようなものではない。ロボットが一歩前進して少し回転しただけだ。しかし、ロボットの推進システムが正しく動き、調整されていることを確認するための重要な基本動作だ。最終的にロボットは無人で動作し、基本的な保守作業や実験の補助を行う計画なので、気難しい人間宇宙飛行士と自由に空間を共有する前に、意図通り動作することを確認しておく必要がある。

Astrobeeシリーズには現在3体のロボットがいる。BmbleとHoney(これもISSにいる)、および予定通り行けば7月に次の補給ミッションに参加するQueenだ。いずれもカメラを搭載して人間が行う実験の様子を記録するほか、ロボット同士が協力して実験器具を移動することもある。充電のためにドッキングステーションに入ったり、小さなロボットアームで何かにぶら下がったり、ものを掴んだりすることもできる。

Bumble blinks!

この一辺30 cmの立方体ロボットは、NASAのエイムズ研究センターで開発された。フルに機能するようになれば、宇宙飛行士の作業を軽減し、人間にしかできないことに集中させられるはずだ。地球を周回するISSでは、実験、研究することが山ほどある。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

NASAが月軌道ゲートウェイへの補給について民間会社から意見公募

NASAが明かした初の女性宇宙飛行士を、そしてアポロ計画以来となる宇宙飛行士の月に送るという目標は、現在の予定では2022年末までに建設が開始される月を周回する新しい宇宙ステーションの設置を含む。米国時間6月14日、NASAは米企業がどのようにして宇宙ステーションへの補給を支援するのかについて、業界からフィードバックと見解を求める公募を発表した。

国際宇宙ステーション(ISS)と同様に、「月軌道プラットフォームゲートウェイ(LOP-G、あるいは単純にゲートウェイ)」は、目標の完成状態に到達するまで少なくとも6年はかかるとされている建設の多くの段階において、定期的な補給と貨物の輸送が必要になる。NASAはまた、月面着陸のためのパーツや、最終的には月面探査や基地の建設において、民間会社ができることを検討している。これは、正式な契約者を選定する前に、民間会社がどのような貨物の輸送手段を提供できるのかについて、非公式にガイダンスを求めている段階である。

業界からの要望をより深く掘り下げるために、NASAは6月26日に質問会を開催し、7月10日にコメントを発表する。実際の提案依頼書は今夏に公開され、NASAは最終的にその契約金額が70億ドル(約7500億円)に達すると予測している。

NASAは以前、ISSへの民間企業による商業輸送サービス(Commercial Resupply Services、CRS)として、SpaceX(スペースX)とOrbital Sciences(オービタル・サイエンシズ)、そして後にCRS の契約をOrbital ATK(オービタルATK、ノースロップ・グラマンに買収されたオービタル・サイエンシズ)とSierra Nevada(シエラネバタ)、Space Xにそれぞれ与えている。今回も、Space XやBlue Origin(ブルー・オリジン)、ノースロップ・グラマン、Lockheed Martin(ロッキード・マーティン)などが入札するものと予測されている。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

物の裏側をレーザー光の反射から像として求めるカーネギーメロン大らの研究

未来の自動運転車やそのほかのマシンインテリジェンスシステムは、視線の向かう先には見えないものからでも詳細な画像データを集められるだろう。カーネギーメロン大学(CMU)とトロント大学、およびユニバーシティカレッジロンドンの研究から生まれたテクニックを使うと、ここにいるまま「あの角を曲がった先」を見ることができる。

その方法は、特殊な光源とセンサー、そしてコンピュータービジョンの処理により、ここからは見えない場所の詳細な像を推測したり構築できる。それは、これまで写真や肉眼でしか得られなかった像よりもさらに詳細だ。

ただしこのテクニックには現状でやや制約があり、CMUのロボット研究所のSrinivasa Narasimhan教授によると「比較的狭い範囲内」でないと有効でない。

その制約はこのテクニックを、非視線型(non-line-of-site、NLOS)コンピュータービジョンの分野のテクニックと併用すれば緩和できる。そんなテクニックの一部はすでに商用化されており、たとえばテスラ(Tesla)のAutopilot(オートパイロット)システムは、反射ないし跳ね返ってきたレーダー信号を利用して、テスラ車の前面の、人の視線が届かない部分を見ている。

今回の新しい研究で使われたテクニックは、多くの自動運転車システムが利用しているライダーシステムと似た動作原理だ(ただしテスラはレーザー光線を使う視覚システムを嫌ってることで有名だ)。CMUとそのパートナーの研究機関は超高速のレーザー光線を使い、それの壁からの跳ねっ返りで、角の向こう側に隠れているオブジェクトを照らしている。

センサーが跳ね返ってくる光を捉え、そして反射光が原点に帰還するのに要した時間を計算する。そのほかのさまざまな測度も含め、ターゲットのオブジェクトのジオメトリー(幾何学的形状)の情報も使って、オブジェクトを正確かつ詳細に再構築する。その方法は、紙のような光を遮るものが介在していても有効なので、現実世界の環境センサーとしての有効な利用もありえそうだ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

NYSEに上場するSlackのIPO価格は26ドルに

Slackは米国時間6月20日にニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場する。WSJ(ウォールストリートジャーナル紙)によると、Slackは直接上場での基準価格を26ドルとし、これにより同社の企業価値は157億ドル(約1.7兆円)となる見込みだ。

WSJの情報筋によると、Slackの株価は上場後すぐに上昇することが予想される。Slackは、追加の資金調達や金融機関引受人の指名なしに現在の株をNYSEに持ってくるために、典型的なIPOプロセスを避けて直接上場を模索してきた。

テック業界でこうした手法をとるのは何もSlackが初めてではなく、Spotifyも昨年同様の方法を採った。しかし、これは流動資産のために株式公開を模索するスタートアップにとっては一般的なやり方ではない。

Flickrの共同創業者であるStewart Butterfield(スチュワート・バターフィールド)氏によって2013年に始まったSlackは当初、バターフィールド氏のゲーム会社Tiny Speckのためのチームコミュニケーションツールとして構築された。その後、現在使用できるものの中で最も名の知れた企業コミュニケーションツールの1つとなった。

アップデート:SlackのIPO価格とティッカーシンボル「WORK」が正式に発表された。

イメージクレジット: Rafael Henrique/SOPA Images/LightRocket /Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

Facebookの新暗号通貨プラットフォーム「Libra」を解剖する

米国時間6月18日、Facebookは独自の暗号通貨、Libraを発表した。プロジェクトの内容はTechCrunchの今月始めの予測とほぼ一致していた。LibraはFacebookが構築しようとしている新しい金融システムの一環となるものだ。

Libraを利用したウォレット・サービスのためにCalibraという子会社も設立された。またMastercard、PayPal、Visa、Uber、Andreessen Horowitz、Creative Destruction Labなど有力企業が提携先となっている。

FacebookのLibraイニシアティブは革新的、野心的である一方で大きなリスクもはらんでいる。実はLibraには先行する試みがあり、これと比較することがFacebookのビジョンを理解するために役立つとおもう。

ここで考えているのは英国ロンドン発のモバイルチャットサービスのKikと、そのソーシャルネットワークを利用した仮想通貨のkikkinだ。KinについてTechCrunchの読者に一番よく知られているのは、SEC(米証券取引委員会)に訴追を受けていることだろう。SECはKikが2017に実施したICO(暗号通貨による資金調達)を違法としている。KikはこのICOで1億ドルを調達したが、公衆からの資金調達に必要な認可をSECから得ていなかった。

KikのCEOであるTed Livingston(テッド・リビングストン)氏によれば「Kikが暗号通貨は通貨の一種でありSECの管轄外と考えているのに対し、SECは管轄内の証券の一種と考えていることによる」のが根本的な対立点だという。両者の主張の法的当否は別として(仮に通貨だとしてもKikには法定通貨を発行する権限がないのは明らかだ)、KinはFacebookが独自の暗号通貨を作った背景、仕組み、将来構想を理解するために役立つ。

Creative Destruction Labのイベントで先週、リビングストン氏は「我々には資金が必要だった」と語った。Kinはこの極めて差し迫った問題に対する回答だった。Kikではいくつか異なったマネタイズを試してきた。ひとつはCardsモデルで、これはモバイルメッセージアプリ内にHTML5で書かれたツールやゲームが利用できるエコシステムだ。これは中国のWeChatモデルに近い。

Kikは英国発のメッセージアプリとして大成功した(ただし子供を狙う犯罪者に愛用されているという指摘もあった)とはいえ、規模はFacebookとはかけ離れている。そのためFacebookのように安定した広告収入を得ることはできなかった。 LivingstonのCEOの回想によれば、2011年にKik はBitcoin(ビットコイン)を知り、「これが我々が探していたビジネスモデルかもしれない」と考えたのだという。

リビングストン氏は「ユーザーのコミュニティに自然な形で簡単、迅速に価値を交換できるため暗号通貨はKinのプラットフォームにとって大きな意味があると気づいた」と語った。Kinのコミュニティはクッキングなどメンバーの得意分野の知識を交換する場になっていたので、支払い手段として暗号通貨は適していた。

KikにとってカギとなったのはKinを利用することがユーザーにもデベロッパーにも利益となるようなモデルを構築できるかどうかだった。Kikやデベロッパーには当然ながらkinの普及を図る動機があったが、ユーザーがKinを利用したくなる動機とは別のものだった。リビングストン氏よれば、暗号通貨でサービス提供者とユーザーとの利益を調整するのは広告モデルのビジネスとは決定的に違うという。このため両者のインセンティブがまったく噛み合わないケースが出てくるのはわれわれもたびたび見てきた。

SECによる訴追も含めKinの将来については不確定な要素が多いが、上で述べた問題はすべてLibraにも当てはまる。両者の違いは規模だ。Facebookは成熟した大企業であり、それ自身の巨大な経済圏を持っている。Kikは暗号通貨を資金調達手段として利用した。これはすぐにも資金が必要だったからだ(そこでICOに飛びついた)。

Kikにはビッグネーム企業多数をプラットフォームに参加させ、自力で市場の構造そのものを変えるような力はなかった。見切り発車してコミュニティーに活用されることをデモし、投資家やパートナーが後から参加してくることに望みをつないだ。、

これに対し、FacebookはKikが持っていなかったものをすべて持っている。企業規模と市場支配力はプロジェクトのスタート当初から大企業をパートナーとして参加させるのに十分であり、背に腹は代えられない資金調達の必要にも迫られていない。もしプロジェクトが失敗しても機会損失というコスト生じるだけだ。また今後も相当期間、広告ビジネスからの安定した収入が見込める。

しかし根本的なレベルではFacebookとKikの暗号通貨プロジェクトは極めて似ている。 暗号通貨による決済プラットフォームは広告モデル以上にユーザーに利益をもたらし長期にわたって維持可能なビジネスモデルとなるという認識だ。

現在のところFacebookのLibraは広告ビジネスに対するリスクヘッジという意味が強い。これがFacebookの生き残りをかけたコミットメントに変わるときに真価が問われることになるのだろう。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ボルボがNVIDIAと共同で商用/産業向け自動運転トラックを開発

Volvo(ボルボ)とNVIDIA(エヌビディア)は米国時間6月18日、ボルボグループの商業/産業向けの自動運転トラックの次世代エンジンの開発を目標とした、新たなパートナーシップを発表した。この提携では、センサーからのデータの処理や知覚システム、位置情報、マッピングや経路予測/計画を担当する、エヌビディアの人工知能プラットフォーム「Drive」を利用する。

ボルボはすでに、初期サービスにて自動運転技術を搭載した貨物車をいくつか運行しており、これはスウェーデンのGothenburg(イェーテボリ)港のように厳しく管理され監視された環境にて配備されている。エヌビディアとボルボのパートナーシップではAI(人工知能)による自動運転が可能な車両を配備しテストするだけでなく、最終的にはこれらの商用車が公道や高速道路にて運行できることを目標としている。

また配送車両はパートナーシップの目標の一つにすぎず、エヌビディアとボルボはゴミやリサイクル品の回収、建設現場や鉱山、林業でも運用できる、自動運転システムと車両の構築を目指す。Nvidiaのブログによると、同社のソリューションは消費者向け荷物の運搬需要の増大による、世界的な配送需要の拡大の対処に役立つという。また、オンサイトでの港湾貨物管理など、小規模な用途にも対応できる。

両社の合意は数年間にわたり、それぞれのチームはイェーテボリにあるボルボの本社とエヌビディアのカリフォルニア州サンタクララの両方でスペースを共有する。

エヌビディアはこれまでにも中国の自動運転スタートアップのTuSimpleへの出資や完全自動運転を目指すEinrideの配送車両へのインテリジェンスの強化、そしてUber内部のATGによるトラック事業への協力など、数多くの自動運転トラック事業に関わってきた。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

月面のピット(竪穴)をロボで偵察して月の可住性を調べるNASAのプロジェクト

月面探査車はクールだけど、崖面を垂直下降できたら探査のお仕事はもっとクールだろう。カーネギーメロン大学(CMU)の研究グループは、NASAから200万ドルの研究助成金をもらって、垂直下降ロボットの開発に取り組む。それは、月面のあちこちにある竪穴を探検する方法を探る研究プロジェクトの一環だ。

ピットとクレーターは違う。クレーターは隕石の衝突によってできた面的構造物だが、竪穴すなわちピット(Pit)は地球上の陥没穴や洞穴に近い。表面はアクセスできるが地下には大きな空洞があって、そこには各種ミネラルや水や氷があるかもしれない。それだけでなく、未来の月探検者のための、すぐに使えるシェルターになるかもしれない。

CMUロボティクス研究所のRed Whittaker教授は、インテリジェントで機敏で早足のロボットを使って行うこれらのピットの接近調査には重要なミッションがある、と語る。すなわち、月を周回する軌道上からの観測でピットの存在はすでに分かっているけど、でもその詳細はまだまったくわかっていない。たとえば、これらの陥没穴のような竪穴は、未来の月探検ミッションの役に立つのか?役に立つとしたらどのように?

Whittakerの素案は「Skylight」というコードネームで呼ばれ、ある程度自律性のあるロボットが表面のどこを調べるか自分で選ぶ。しかもその行動は、速くなければならない。月面が夜になればずっとオフラインになる。だから1回のミッションで実働時間は約1週間だ。

NASAの野心的なミッションでは、2024年に再び月面に宇宙飛行士を送る。そして2028年には月に基地を作る。そのための重要な情報を「Skylight」のような偵察ミッションが提供する。しかし時間は切迫している。ロボットがピットを偵察するミッションは、2023年の予定なのだ。

画像クレジット: NASA/GSFC/Arizona State University

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ロボットが電子レンジを普通に使えるようになるためIntelが奮闘中

コンピューターやロボットのトレーニングは、オブジェクトを理解して認識する(たとえば、オーブンと食洗機を区別するとか)だけでは終わらない。人が日常行っている比較的簡単な作業ができるレベルにまで、訓練を重ねる必要がある。人工知能に冷蔵庫と薪ストーブの違いを教えることができても、本当に実用的なロボットにするには、それらの器具を操作できなければならない。

IntelのAI研究者たちが、カリフォルニア大学サンディエゴ校とスタンフォード大学と共同で取り組んでいる新たな課題がそれだ。コンピュータービジョンおよびパターン認識のためのカンファレンスで発表された報告書では、各部品に完全な注釈が付けられた非常に精細な3Dオブジェクトの大規模なデータセット「PartNet」を、共同研究チームはがどのように構築したかが詳しく説明されている。

このデータセットは他に類がなく、すでにロボティクス企業の間で需要が高まっている。なぜなら、オブジェクトを現実世界で認識し操作できるようデザインされた、人工知能用の学習モデル生成のための高度なアプリケーションを備えることで、オブジェクトを部品に分割して構造化できるからだ。そのため、たとえば上の画像のように、電子レンジを手で操作して残り物を温め直す作業をロボットにやらせたいときは、ロボットに「ボタン」のことと、ボタンと全体との関係を教えてやればいい。

ロボットはPartNetで訓練を行うのだが、このデータセットの進化は、どこかの道端に放置された「ご自由にお持ちください」とドアに貼り紙されたいかにもCGっぽい電子レンジを操作するだけに留まらない。そこには2万6000種類以上のオブジェクトがあり、それらは57万個以上の部品で構成されている。そして、カテゴリーの異なるオブジェクトで共通に使われる部品には、すべてが同類であることを示すマーキングがされている。そのため、ある場面で椅子の背を学んだAIは、別の場面でそれを見かけたときに椅子の背と認識できる。

これは、ダイニングの模様替えをしたいが、ロボット家政婦には、お客さんが来たときに、古い椅子でしていたのと同じように、新しい椅子の背も引いて勧めさるようにしたい、なんていうときに便利だ。

たしかに、今私が示した例は、遠い彼方の、まだまだ仮想の未来から引っ張ってきたものだが、世の中には、完成を目の前にした、詳細なオブジェクト認識のためのもっと便利なアプリケーションが山ほどある。しかも、部品特定能力は、汎用オブジェクト認識における判断力を強化してくれるはずだ。それにしても、家庭用ロボティクスにあれこれ思いを巡らせるのは、じつに楽しい。そこに、現在の進歩したロボティクス技術の商品化を目指す数多くの取り組みが集中している。

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(翻訳:金井哲夫)

ロボットが電子レンジを普通に使えるようになるためIntelが奮闘中

コンピューターやロボットのトレーニングは、オブジェクトを理解して認識する(たとえば、オーブンと食洗機を区別するとか)だけでは終わらない。人が日常行っている比較的簡単な作業ができるレベルにまで、訓練を重ねる必要がある。人工知能に冷蔵庫と薪ストーブの違いを教えることができても、本当に実用的なロボットにするには、それらの器具を操作できなければならない。

IntelのAI研究者たちが、カリフォルニア大学サンディエゴ校とスタンフォード大学と共同で取り組んでいる新たな課題がそれだ。コンピュータービジョンおよびパターン認識のためのカンファレンスで発表された報告書では、各部品に完全な注釈が付けられた非常に精細な3Dオブジェクトの大規模なデータセット「PartNet」を、共同研究チームはがどのように構築したかが詳しく説明されている。

このデータセットは他に類がなく、すでにロボティクス企業の間で需要が高まっている。なぜなら、オブジェクトを現実世界で認識し操作できるようデザインされた、人工知能用の学習モデル生成のための高度なアプリケーションを備えることで、オブジェクトを部品に分割して構造化できるからだ。そのため、たとえば上の画像のように、電子レンジを手で操作して残り物を温め直す作業をロボットにやらせたいときは、ロボットに「ボタン」のことと、ボタンと全体との関係を教えてやればいい。

ロボットはPartNetで訓練を行うのだが、このデータセットの進化は、どこかの道端に放置された「ご自由にお持ちください」とドアに貼り紙されたいかにもCGっぽい電子レンジを操作するだけに留まらない。そこには2万6000種類以上のオブジェクトがあり、それらは57万個以上の部品で構成されている。そして、カテゴリーの異なるオブジェクトで共通に使われる部品には、すべてが同類であることを示すマーキングがされている。そのため、ある場面で椅子の背を学んだAIは、別の場面でそれを見かけたときに椅子の背と認識できる。

これは、ダイニングの模様替えをしたいが、ロボット家政婦には、お客さんが来たときに、古い椅子でしていたのと同じように、新しい椅子の背も引いて勧めさるようにしたい、なんていうときに便利だ。

たしかに、今私が示した例は、遠い彼方の、まだまだ仮想の未来から引っ張ってきたものだが、世の中には、完成を目の前にした、詳細なオブジェクト認識のためのもっと便利なアプリケーションが山ほどある。しかも、部品特定能力は、汎用オブジェクト認識における判断力を強化してくれるはずだ。それにしても、家庭用ロボティクスにあれこれ思いを巡らせるのは、じつに楽しい。そこに、現在の進歩したロボティクス技術の商品化を目指す数多くの取り組みが集中している。

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(翻訳:金井哲夫)

ドミノ・ピザがNuroの自動運転車を使ったピザ配達をテスト中

Domino’s Pizza(ドミノ・ピザ)は、「イノベーション」への取り組みを強く押し出している。たとえそれがマーケティング戦術の一環だとしても、グローバルなピザブランドは有言実行だ。米国テキサス州ヒューストンでNuroとの提携によって実施する自動運転ピザ配達のパイロットテストがその好例だ。

自動運転技術のNuro は、Googleの自動運転車プロジェクト(後にWaymoになった)出身のベテランであるDave Ferguson氏とJiajun Zhu氏が設立したスタートアップで、Waymo、Apple、Uber、GM、Teslaなどで経験を積んだ自動運転技術者も加わった。同社がスタートアップとしてこれほどの人材を集められたのは、ソフトバンクから10億ドル近い資金を調達したことが大きな理由だろう。あるいは、その逆かもしれない。

ドミノ・ピザはNuroの自動運転テスト車を使って、ヒューストンでアプリまたはウェブで注文した人にピザを配達する。配達にはNuroの第2世代自動運転テスト車であるR2が使用され、サービスは今年中に開始される予定。自動運転車の利用はオプトイン方式で、注文した人にはチェックアウト時に自動運転オプションが提示され、選択すると到着した車のドアを開けて美味しいピザを受け取るための暗証番号が渡される。

ドミノ・ピザが自動運転ピザ(奇妙な表現だ)のテストをするのはこれが初めてではない。2017年にはFord(フォード)と組んで、消費者がこの種のサービスに何を期待しているかを知るための限定的なテストを行った。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Airbnb、「歩いてライオンに会いに行く」などの冒険ツアー事業をスタート

オンライン宿泊サービスのAirbnbが新しい旅行体験プログラムをスタートさせた。「Airbnbアドベンチャー(Adventures)」は、簡単にいえばAirbnbが提供する新しいツアーのコレクションだ。3日から1週間かけ、多くは徒歩で、ありきたりの観光スポット以外の興味深い場所を訪れる。

ケニヤのワイルドライフ・サファリがこうしたエキサイティングなツアーの一例だ。3日のコースのハイライトはナイロビ近郊の野生動物保護センターに泊まり、専門家のガイドで、徒歩で自然の環境で暮らすライオンに会いに行くのだという。キャンプファイヤーを囲んでブッシュティーを飲むなどのアトラクションも用意されている。ツアー料金500ドルには5回の食事、飲み物、テントでの2泊などが含まれている。

これまで提供してきた「体験(Experiences)」とは異なり、こうした冒険ツアーではAirbnbは大規模な旅行代理店ではなく、現地の専門家やツアーガイドと直接提携している。エキサイティングな要素を含むツアーの場合、旅行代理店を介在させることが保険その他事故責任に関して適当でないのだろう。またツアーの安全性を確保するため、Airbnbは第三者機関とも密接に協力しているという。

Airbnbのビジネスの中心はオンラインの短期宿泊先共有サービスだが、「体験(Experiences)」でツアー企画をデビューさせた。Airbnbアドベンチャーはツアー・ビジネスをさらに強化するものだ。ロイターによれば、Airbnbは5億人のユーザーベースを活かして動画ストリーミング事業に乗り出す計画で、サービスは年内にスタートするという。また同社は最近、ビジネス全体の黒字化を達成したと発表している。

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滑川海彦@Facebook

NASA探査機OSIRIX-RExが小惑星ベンヌで接近軌道の宇宙新記録を達成

宇宙のニュースが好きな人なら、Bennu(ベンヌ)という名前を聞いたことがあるだろう。それは、今から200年後ぐらいにわれわれの惑星に衝突するかもしれないと言われている地球近傍小惑星だ。衝突の確率は低いが、他の多くの小惑星よりは高い。この小惑星が注目される理由はいろいろあり、特に最近の発見では「アクティブである」と言われる。自分の軌道上をコンスタントに進みながら埃を噴出し、まわりの空間にばらまいているのだ。

その発見に促されてNASAは、宇宙を旅する岩を周回する探査機OSIRIS-REx距離を小さくする(小惑星により接近する)ことになった。探査機は昨年、観察のためにベンヌに到着したが、それはいくつかの既知の地球近傍小惑星の中から、調査ミッションに最適として選ばれたからだ。

OSIRIS-REx探査機は現在、ベンヌの質量中心の3000フィート(915m)上空にいるが、この距離は地球上空の平均的軍用攻撃ヘリの巡航高度よりも低い。NASAの親切な画像が、そのことを示している(訳注:図中の探査機の高度はBフェーズ更新後のそれと思われる)。

NASAは、今回の新しい(低い)軌道のことを「Orbital Bフェーズ」(B軌道段階)と呼んでいる。それはベンヌに限らず記録的な低さで、太陽系内の地球外天体への接近軌道としてはこれまででもっとも近い。8月半ばまでこの軌道にとどまり、今後数週間は小惑星表面の定期的写真撮影を行う。上で述べた、埃の噴出とばらまきを調べるためだ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

アップルがカナダ版HPにRaptorsへの賛辞を仕込む

トロントのバスケットボールチームことRaptors(ラプターズ)が米国時間6月15日の夜に2019年シーズンで優勝した。これを受け、Apple(アップル)のカナダ版のウェブサイトにはイースターエッグが仕込まれた。

https://apple.com/caを訪れると、一瞬の間だけウェブサイトのトップを押し下げて表示されるアニメーションを目にすることだろう。最初これを目にしたときには父の日の変わったプロモーションかと思ったものだ。

しかしページをリロードした時、このアニメーションが実際には渦巻く恐竜とカナダ国旗、そしてバスケットボールの絵文字でできていることに気づいた。そしてようやく、これがNBAチャンピオンシップの優勝チームに関連していることがわかったのだ。

なんであれ、このイースターエッグは楽しいし、たぶんクパティーノの本社の了承を得て埋め込まれたものだろう。頂上決戦に破れたGolden State(ゴールデン・ステート)のファンにとっては、苦々しいかもしれないが。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

ボルボのスポーティな自動運転電動トラック「Vera」がスウェーデンで運行へ

Volvo(ボルボ)の子会社が開発する自動運転電気トラックのVera(ヴェラ)は、人々が予測するような姿ではない。その見た目は地面を這うスポーツカーのようで、座席がないことが強調されている。しかしこの見た目の本当の理由は、車両が完全に自動運転されるからであり、スウェーデンのGothenburg港にて近日運行を開始するためにあつらえられているのだ。

Veraの最初の仕事は、物流センターから港のターミナルへと、船に積み込まれるトレーラーに積載された商品を配送することだ。今回の電気自動車による商用利用は、物流会社のDFDSと提携して実施される。

Veraの利用は、世界中の物流センターから配送先へと商品を輸送する巨大な接続システムを1つに取りまとめる。これらは自律的に動作するが、コントロールタワーのオペレータによって監視され、また最高時速も時速24マイル(約39km)に抑えられている。

これらは現在は基本的に重厚なトラックに過ぎないが、もし成功すれば世界中の港湾施設にて同様のサービスを提供することで、多くの潜在的なビジネスを生むだろう。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

NASAは国際宇宙ステーショの「商用化」を宣言、民間宇宙飛行士の受け入れも

6月7日に開かれたイベントで、NASAは、国際宇宙ステーション(ISS)を地球の低軌道での商業活動のハブとする案を発表した。長い間、NASAは、宇宙での民間事業を支援する拠点としてISSを位置づける計画を練っていた。

「国際宇宙ステーションの商用利用の解禁をお伝えするために、私たちはここに来ました」と、NASAの首席報道官Stephanie Schierholzはカンファレンスの口火を切った。20の企業とNASAの職員がステージに上がり、この新たな商用化の発表と、その機会や計画に関する討論を行った。

計画には、民間宇宙飛行士がアメリカの宇宙船を利用してISSを訪問し、滞在することを許可する内容も含まれている。また、「宇宙での製造」、マーケティング活動、医療研究「などなど」、ISSでの民間事業の活動を許可するとNASAは話していた。

NASAは、5つの項目からなる今回の計画は、ISSの政府や公共部門の利用を「妨げるものではなく」、民間の創造的な、また利益追求のためのさまざまな機会を支持するものだと明言している。NASAの全体的な目標は、NASAが、ISSと低軌道施設の数ある利用者のなかの「ひとつ」になることであり、それが納税者の利益につながると話している。

NASAの高官から今日(米時間6月7日)発表された、5つの内容からなる計画は次のとおりだ。

  • その1:NASAは、国際宇宙ステーション商用利用ポリシーを作成した。搭乗員の時間、物資の打ち上げと回収の手段を民間企業に販売することなどを含め、初回の必需品や資源の一部を提供する。
  • その2:民間宇宙飛行士は、早ければ2020年より、年に2回まで短期滞在ができる。ミッションは民間資金で賄われる商用宇宙飛行とし、アメリカの宇宙船(SpaceXのCrew Dragonなど、NASA有人飛行計画で認証されたもの)を使用すること。NASAは、生命の維持、搭乗必需品、保管スペース、データの価格を明確に示す。
  • その3:ISSのノード2 Harmonyモジュールの先端部分が、最初の商用目的に利用できる。NASAはこれを、今後の商用宇宙居住モジュールの第一歩と位置づけている。6月14日より募集を受け付け、今年度末までに最初の顧客を選定し、搭乗を許可する。
  • その4:NASAは、長期の商用需要を刺激するための計画を立て、まずは、とくに宇宙での製造と再生医療の研究から開始する。NASAは、6月15日までに白書の提出、7月28日までに企画書の提出を求める。
  • その5:NASAは、長期にわたる軌道滞在での長期的な商業活動に最低限必要な需要に関する新たな白書を発表する。

商用輸送の費用を下げることは、この計画全体にとって、きわめて重要であり、その問題は繰り返し訴えられてきた。それは、費用を始めとするさまざまな問題を解決し、単に商用化を許可するだけでなく、実行可能なものにするための手助けを、民間団体に呼びかけているように見える。もうひとつの計画は、次の10年、さらにその先に及ぶ長期にわたり、民間団体からのISSへの投資を呼び込み、ISSを民間宇宙ステーションに置き換える可能性を開くというものだ。それは最終的に、寿命による代替わりの問題の解決につながる。

補給ミッション中のSpaceXのDragonカプセルがISSを離れるところ。

TechCrunchのJon Shieberが、4月、ISS米国立共同研究施設の次席科学官Michael Roberts博士をインタビューした際に、宇宙ステーションの商用化について話を聞いている。

Roberts博士は、ISSで民間団体が事業を行えるようになる可能性は一定程度あると明言していた。これには、たとえば、関心の高い製薬業界の前臨床試験や薬物送達メカニズムといった分野の「基礎研究」も含まれる。製造業界では、無重力や真空という環境を利用して、現在の製造方法の改善を目指す民間企業をRoberts博士は挙げていた。

重要な細目としては、ISSで許されるマーケティング活動の範囲の拡大がある。ISSに搭乗してるNASAのクルーは、マーケティング活動に参加できる(とは言え、カメラの前でいかにもクルーらしく振る舞う程度だが)。民間宇宙飛行士の場合は、広告や宣伝が許される範囲が大幅に柔軟化されるため、さらに大きな仕事ができるようになる。理論的には、もしこれがディストピアの方向に流れたならば、レッドブルの超絶エクストリームな宣伝活動がもっと増えるということだ。

NASAによれば、現在も50の民間企業がISSで実験を行っているとのことだが、今回の発表は、その機会を、より望ましい形と規模の枠組みに、時間をかけて整備させてゆくことを意味している。

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(翻訳:金井哲夫)

民間宇宙探査のパイオニアAnousheh Ansariは国際宇宙ステーションの商用化を歓迎

XPRIZEのCEOでProdeaの創設者であるAnousheh Ansari(アニューシャ・アンサリ)氏は、イランで過ごしていた子供時代に宇宙飛行士になることを夢見ていた。しかし、ご想像のとおり、周りの人間はほとんどがその野心を理解してくれなかった。ところが2006年、彼女はロシア宇宙センターで私財を投じて訓練を受けてソユーズ宇宙船に乗り、個人資金で国際宇宙ステーション(ISS)を訪れた世界最初の民間女性となったのだ(しかもそれは、イランの民間人、そしてイスラム教徒の女性としても初だった)。

その当時NASAは、アンサリ氏が料金を支払ってISSに搭乗するというアイデアには興味がなく、むしろ明らかに嫌がっていた。それから13年が経った今週の初め、NASAは、ISSを「ビジネスに開放する」と公式に発表し、一晩の宿泊料を1人あたりおよそ3万5000ドル(約380万円)と提示した(これはあくまで宿泊料金。旅費は自分で考えないといけない)。今週、トロントで開かれているCreative Destruction Lab(創造的破壊研究所)イベントで、私はアンサリ氏に会い、今回の画期的な決定が宇宙ビジネスにどのような利益をもたらすのか、またこの分野での彼女の展望、さらに宇宙に特化したスタートアップ全般に与えられるチャンスについて話を聞いた。

「ほんと7年前の6日間、もっと長かったかも知れないけど、そのとき使っていたノートパソコンを持ってくればよかったわ。そこにはISSの賃貸化。それは現実になる!って書いてあったの。私には予知能力があったのね」とアンサリ氏は冗談を飛ばした。「でも、それは理に適っていると思います」。

宇宙ステーションを訪れ利用することで得られる商業的、個人的な利益に対するNASAの認識を考えるに状況が変化した理由はいくつもある。とりわけ大きな理由は、当初のミッションで設定されていた期間を超えて老朽化が進み、現実に機能上の寿命を迎えようとしていることだ。

「宇宙ステーションは【中略】、現在すでに寿命を延長した状態です」とアンサリ氏は言う。「なので、次世代への投資のために、(当初予定してたミッションに上乗せして)うまく利用して利益を生むことができるようになったのです」

最初に計画されていたミッションが事実上終了したとしても、まだしばらくの間は、民間企業がその施設を使うことで多大な恩恵を引き出せる。

「宇宙ステーションでの研究や実験には非常に大きな関心があるため、コストは劇的に下がると思います」と彼女は、NASAのガイドラインに提示された民間宇宙飛行士の費用に関して言い添えた。「とはいえ、それでもそこへ行くまでのコストはかかります。つまり、誰もが支払える額にはならないということです。しかし、一晩3万5000ドルの家賃を支払えば実験が行えるのです。それは驚きです」。

「多くの企業が、製薬、医療、健康などの本当にたくさんの企業が、それを利用して実験を行うと私は考えています」とアンサリ氏。「それに私はわくわくしています。実現してよかった」

5月15日、米国カリフォルニア州プラヤ・ビスタにて。写真に向かって左から、XPRIZEのCEOを務めるAnousheh Ansari(アニューシャ・アンサリ)氏、XPRIZEの創設者で執行委員長を務めるPeter Diamandis(ピーター・ディアマンディス)氏、Global Learningでエグゼクティブディレクターを務めるEmily Church(エミリー・チャーチ)氏。XPRIZEは、Global Learning XPRIZE財団大賞授与式のためにGoogleのプラヤ・ビスタ・オフィスを訪れた。(写真:Jesse Grant/Getty Images for Global Learning XPRIZE)

アンサリ氏にとって、宇宙の商用利用分野の成長は、XPRIZEの原点だ。彼女は昨年の10月から、この財団のCEOを務めている。アンサリ氏とその義理の弟であるAmir Ansari(アミー・アンサリ)氏が多額の寄付を行ったことでその名が冠された賞金1000万ドル(約11億円)のコンテストAnsari Xprizeは2004年に勝者が決まり、それが今日のSpaceXの事業の道筋を付けた。

「最初のコンテストは、2週間以内に2回宇宙に行くというもので、賞金は1000万ドルでした。繰り返しの打ち上げが可能であることを証明したかったのです。SFの話ではなく、商業的に可能だということを。しかも、妥当なコストで行えるということをです」とアンサリ氏は振り返る。「必須要件がありました。たしか、燃料の容積を除く95%が再利用可能であることです。2台のロケットを作って、ひとつを飛ばして、次にあっちを飛ばすとったやり方では主旨に合いません。それが本当にビジネスに利用できることを確かめられるよう、条件を整えたのです」。

そこで大切な要素は、民間企業でも手が届く投資レベルで商業的に実現可能な関心事になり得ることを、初めて実証することだった。もうひとつの大切な要素として、関係当局の認可のもとで、参加者が実際に打ち上げが行える環境を作ることがあった。

「私たちは規制当局と米連邦航空局(FAA)との協力のもとで、民間人の打ち上げがどうしたら可能になるかを探りました。FAAには、対処方法がわからなかったからです」とアンサリ氏。「彼らは、宇宙に何かを打ち上げたいという民間企業と関わったことがなかったのです。そこで私たちの働きかけと、NASAや規制当局と行ってきた実績から、彼らは門戸を開き、そのための部門を立ち上げました。今それは、FAA Office of Commercial Space Tranportation(民間宇宙輸送局)と呼ばれています」。

2017年から打ち上げられているSpaceXのCRS-11。SpaceXが民間ロケットを打ち上げられるようになったのも、XPRIZEが商用打ち上げ事業のガイドラインを確立したお陰だ

今日までの働きで、数多くの分野を開拓し、スタートアップのための道を切り開いてきたアンサリ氏だが、Creative Distruction Labの初日に行った基調講演で、参加していた起業家たちに対して、このチャンスに満ちた新しい分野についていくつかの要求を突きつけた。彼女は、「雲の上に存在するクラウドシステム」には多大な可能性があり、データ・ウェアハウス施設を宇宙で運用すれば、電力と熱管理の面で今すぐ恩恵が得られると指摘した。

彼女はまた、スタートアップに対して、自分たちが作るものの波及的な影響力を念頭に置くよう訴えた。具体例をあげれば宇宙デブリだ。より広義においては、急激な変化は自然に恐怖の反応を引き起こすことを忘れないで欲しいと話した。

「エンジニアは、おもちゃやテクノロジーで遊ぶのが、ただただ大好きなので、これは難しい問題です」と彼女は話した。「しかし、こうした考えを理解させるのは、ここに集った私たちの役目です」。

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(翻訳:金井哲夫)

テスラの車載ディスプレイがYouTube対応

Tesla(テスラ)は、同社の車載タッチスクリーン式インフォテインメントシステムに次々とソフトウェアを追加している(中には多くの人が頭をかきむしるものもある)。米国時間6月13日にロサンゼルスのE3イベントで行われたスペシャルQ&Aセッションで、テスラCEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏は、近いうちにTeslaの車載ディスプレイがYouTubeを正式サポートすることを明らかにした。

テスラのCEOが同社の車にYouTubeがやってくることを予告したのはこれが初めてではない。マスク氏は昨年8月にTwitterでファンからの質問に答えて、車載ソフトウェアのバージョン10でサードパーティー製ビデオストリーミングに対応すると発言した。同社は昨年車載ソフトウェアのバージョン9を公開した。

マスク氏は今日のE3イベントで具体的にYouTubeの名前を挙げた。ほかにもBethesdaのFallout 3が同社のインフォテインメントシステムにやってくることを公表し、AndroidゲームのBeach Buggy RacerがTesla Model 3のディスプレイで動いているデモビデオを紹介した。

最近のポッドキャストでマスク氏は、アプリやゲームのサードパーティー開発者向けにプラットフォームを開放することを検討すると語った。これまで同社は、独自のアプリや「イースターエッグ」を車載ディスプレイに載せてきたが、本格的なプラットフォームとして公開するのは、ずっと積極的なやり方だ。

車の中にストリーミングビデオのような注意を引くアプリを載せることは明らかに直感に反することだが、少々テスラを擁護して言うなら実際には多くのドライバーがスマートフォンをカーナビとして使っており、その気になればいつでもYouTubeを見ることができる。マスク氏の気持ちはテスラ車が完全自動運転になる日に飛んでいるのかもしれない。つい最近も、今後数年のうちにそうなるだろうと発言していた。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

アマゾンのAlexaは地域による違いに機械学習で対応

アマゾンの音声アシスタントのAlexaは大きな課題に挑んでいる。多言語対応の製品として動作するだけでなく、対応している各言語の地域による違いもAlexaが認識できるようにすることだ。

これを実現するためにAlexaはあらゆるバリエーションを完全に学習しなおした。これにはたいへんな時間とリソースを要する。しかしAlexaのAIチームは、音声認識をトレーニングする新しい機械学習ベースの方法を開発した。これにより、既存の言語の新しいバリエーションのモデルを構築しなおす作業は大幅に減る。

North American Chapter of the Association for Computational Linguisticsに提出された論文によると、アマゾンのAlexa Alの上級応用サイエンスマネージャー、Young-Bum Kim氏のチームは、テストに使用した米国、英語、インド、カナダの4種類の英語について、正確さがそれぞれ18%、43%、115%、57%向上する新しいシステムを設計したという。

チームは、ユーザ一がどこでリクエストしたかにかかわらず答えがあまり変わらない場合よりも、あるドメインのユーザーからのリクエストに対する答えが地域に固有のものであることが前もってわかっている場合(近くのレストランを教えて、と聞かれたときなど)に重みをつけて学習アルゴリズムを調整する方法を実装した。

次にAlexaのチームは、地域に固有のモデルを1つに統合し、その言語で場所の影響を受けないモデルも追加した。その結果、前述の向上が見られた。

基本的には、共通の基盤を活用し、答えが大きく変化することについて差異を追加するだけにすれば、あまり手間をかけずに地域によって違う答えを返すようになる。時間をかけてAlexaはもっと賢く、速く、言語面で柔軟になるはずだ。

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(翻訳:Kaori Koyama)

ロボットが人間の動きを予測するためのより良い方法をMITが開発

工場や建設現場で、人間とロボットが一緒に作業することは、非常に大きな可能性を秘めている。しかし、特にロボットが大型でパワフルな工業用である場合には、人間に対しての信じられないほどの危険性もあわせ持っている。

ドイツのロボット大手ABBによって製造されたYuMiのような製造機械などをはじめとして、「コロボティックス(協調ロボット)」を現実のものにするために、多くの努力が注がれている。だが、MITの研究者によって作成された新しいアルゴリズムは、人間とロボットが一緒に働くことを、さらに安全にするために役立つ。

自動車メーカーのBMWとの共同作業を通して、現在の製品ワークフローを観察していた研究者たちは、ロボットが工場内の人間に注意を払う際に、過剰なほど用心深いことに気が付いた。ロボットたちは自分の動線上を横切ろうとする人間が、実際にその行動を行う遥か前から待ちに入ることによって、生産に使えたかもしれない時間を失っていたのだ。

今回研究者たちが開発したのは、ロボットが人間の動線を予想する能力を大幅に改善するソリューションである。通常なら、あまりはっきりしなくても人間になんとなく似たものの前では停止してしまうロボットたちを、人間が歩く流れの周りに回避させながら、動作を継続させるのだ。

研究者たちは、通常行われるような(比較的一貫した移動経路を予測する場合にはとても優れている)音楽や音声処理に対するアルゴリズム予想を借用することは避けて、その代わりに、以前に収集した参照軌跡の大きなライブラリを使用してリアルタイムの軌跡データを参照する「部分軌跡」方法を案出した。

これは人間の動きを予測するより優れた方法だ。たとえ同じアクションを何千回も繰り返している工場労働者であったとしても、人間の動きは一貫性がなく頻繁に止まったり動いたりしているからだ。

これは潜在的な消費者アプリケーションの可能性も秘めている。研究者たちによれば、家庭内の人間のうごきでもこの手法を使った方がより良く予測できると言う。例えば、そのことは長期的観点から眺めた場合の老人ケアなどの役に立つだろう。

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(翻訳:sako)