Samsungタブレット新製品はBixby 2.0を載せてスマートホームのハブをねらう

SamsungのスマートアシスタントBixbyは今やいろんなスマートフォンや家電製品にあるが、なぜか同社のタブレットの上では、どこを探しても見つからなかった。ただしぼくには、この件で同社の戦略について知ったかぶりする能力はない。

いずれにしても、もうすぐMWC(Mobile World Congress)と同社のUnpacked(S10)イベントが始まるという今日(米国時間2/15)のこの日に同社は、タブレットとしては初めてBixby 2.0を載せたTab S5eに関する情報を大量に放出した。その最大のねらいは、タブレットも含むモバイル製品を同社のスマートホーム戦略の主役に据えることだ。

同社はこう言っている: “Tab S5eは、あなたのデバイスと対話するための、よりスマートでより便利な方法を提供し、また、あなたのコネクテッドホームデバイスをコントロールする理想的なハブとして奉仕する。Quick Commandで、テレビと電灯を同時にスイッチオンできる。あなたがカスタマイズして、もっと多くのアクションを一つのコマンドで実行できる。家の中のさまざまな音声コントロールがずっと速く、簡単に、そしてあなた好みになる”。

しかし、いろいろな家電製品がBixbyをサポートしているが、現状はほとんどSamsung製品ばかりだ。それが、AlexaやSiri、Google Homeなどに比べて深刻な限界だ。

この新しいタブレットは電池寿命が延びて14.5時間、10.5インチのsAMOLEDディスプレイと最大6GBのRAM、そして128GBのストレージを搭載する。発売は本年第二四半期、お値段は400ドルからだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

社会課題解決を目指すインパクト投資が“使命”のミッション・キャピタル、遺伝子・自動運転領域に出資

ミッション・キャピタルのマネージング・パートナー、金武偉氏

マネージング・パートナーの金武偉氏が率いるミッション・キャピタルは2月15日、社会課題解決型のインパクト投資1号ファンドにおいて、総額約2億円の投資実行を終了したと発表。出資先はアメリカ発遺伝子系ベンチャーのジェノプランならびに自動運転などの技術で知られるZMPだ。

ミッション・キャピタルは2018年8月の創業。社会課題解決型のインパクト投資を専門テーマにする独立系ファンド運営会社だ。

その代表の金氏は1979年に京都で生まれた。16歳で外交官を目指し渡米、高校と大学をアメリカで履修後、大学院留学の学費を稼ぐため、東京でゴールドマン・サックス証券に入社。一時、JP モルガン証券に転籍後、アメリカ東海岸のロースクールに通った。

卒業後はニューヨーク州で弁護士資格を取得し、サリヴァン・アンド・クロムウェル法律事務所に入所。約5年間、国際案件に携わった。その後、ユニゾン・キャピタル投資チームに参画し、日韓投資案件に従事。そして2014年、「ベンチャーの勃興」があり、以降は国内外複数のAIやIoT関連のベンチャーを経営してきた。

並大抵ならぬキャリアバックグラウンドを持つ金氏だが、「すごく勉強して必死に生きてきたわりには、味気のない人生だと思った」と感じたこともあったのだという。その上で、「自分よりも優れた人間はいるのでは。自分とは何なのか」と自問自答し、「良いことをしながらお金持ちになりたい」という結論にいたった。

2011年、金氏がまだニューヨークで弁護士をしていたころに、社会的インパクト投資が欧米ではよく知られるようになってきたのだという。

「社会問題を直接的に解決し、かつ投資家のリターンが上がるビジネスモデルを知った。ビジネスモデルとテクノロジーのイノベーションでそのようなことができるようになった。実際に社会を良くしているのに、リターンが上がる」(金氏)

「2011年以降、自分はまだ準備不足だと思い続けていた」という金氏だが、2018年に独立した後、色々なベンチャーからの誘いもあったものの、インパクト投資を「今すぐ」始めるよう周りから背中を押され、8月にミッション・キャピタルを創業した。

ミッションキャピタルは地方優良企業の内部留保資金やファミリーオフィス資産を預かり、従来型のベンチャーキャピタルおよびプライベートエクイティファンドに求められる投資利回り(IRR15〜20%)の超過を目指す、高リターン重視のインパクト投資を展開している。

「真のインパクト投資を行なっているファンドは無いと考えている。本当に良いことをやっていて、本当にリターンが上がる。それを証明してみせますよ、というのがミッション・キャピタルだ」(金氏)

金氏は「ある2つの条件」が充足している場合は投資を実行するファンドを作りたかったのだという。1つ目の条件は、会社自体が、実在する大きな社会課題を解決しに行くことが定款としてあること。2つ目は、IRRが15から20%、もしくはそれ以上であること。

「(日本では)現在、インパクト投資ではESG(環境/Environment・社会/Social、ガバナンス/Governance)SRI(社会的責任投資/Socially Responsible Investment)やCSR(企業の社会的責任/Corporate social responsibility)がごちゃまぜになってしまっている。何となく良いことをしていればインパクト投資、というのは間違っている。欧米だと、会社の存在目的自体が、実在する大きな社会問題の解決にあるべきだ、というのがインパクト投資の定義。僕はそれがやりたいと考えている」(金氏)上記に加えてリターンを上げられることが重要であり、でなければ「投資」でなく「寄付」になってしまうのでは、と同氏は加えた。

ミッション・キャピタルでは今後、引き続き、社会的インパクトと高リターンの両立を重視しつつも、将来的には国内外のソーシャルインパクトボンド(SIB)から上場株式まで、様々なインパクト投資機会を投資家へ提供して行くという。金氏は2号ファンドでは30億規模を目指す、と話していた。

 

電脳交通が兵庫県篠山地区でタクシー乗り放題サービスを実証実験

電脳交通は2月15日、西日本旅客鉄道、日本交通、兵庫県・篠山市と共同で、タクシー乗り放題サービスの実証実験を開始することを発表した。同社は、電話でのやり取りが主体となる旧来のタクシー予約システムを、クラウドに移して効率化を目指すスタートアップ。TechCrunch Tokyo 2018のスタートアップバトルでファイナリストに残った1社だ。

具体的には篠山エリアへの旅行者を対象に、タクシー乗り放題用パスポートを定額で販売。購入者はこのパスポートを提示することで、JR篠山口駅および篠山市内の指定観光施設を相互に何度でも乗り放題となる。

タクシーを呼び出すには、パスポートに記載されているQRコードから専用のウェブサイトにアクセスして、行き先や配車時間を入力すればいい。電脳交通は今回の実証実験で、この配車システムの構築を担当するとのこと。

実証実験は、3月9日〜17日の9日間で、利用には当日を含む事前の予約が必要となる。パスポートの料金は5000円、販売数量は1日5組、利用時間は10時〜19時(配車は18時30分で終了)となっている。パスポート1枚で中型タクシー1台の利用が可能だ。乗り降りが可能な施設は、JR篠山口駅のほか、丹波古陶館/能楽資料館、特産館ささやま、丹波杜氏酒造記念館、福住宿場町ホテルなどを全19カ所。

今回の実証実験で各社は、鉄道とタクシーを組み合わせた周遊移動手段を提供することで観光地のさらなる発展を目指すとのこと。

荷物預かり「ecbo cloack」が西鉄福岡(天神)駅の西日本鉄道と提携

荷物預かりサービス「ecbo cloak」を運営するecboは2月15日、福岡が拠点で西鉄福岡(天神)駅などを有する西日本鉄道との業務提携を発表した。ユーザーは今後、同サービスを西鉄福岡(天神)駅や西鉄天神高速バスターミナルと直結した「SPACE on the Station」内で利用できる。

荷物の預かり可能時間は同施設の営業時間である午前9時から午後9時まで。バッグサイズからスーツケースサイズまで預けることができ、料金は一律700円だ。

ecboは2015年の創業。2017年1月には同サービスを開始し、同年11月に開催されたTechCrunch Tokyoスタートアップバトルにも出場している。同社は2017年3月にANRI、個人投資家の渡瀬ひろみ氏と千葉功太郎氏から数千万円のシード資金を調達。また、2018年にはJR東日本やメルカリ、そしてサッカーの本田圭佑氏から資金調達を実施している。

美容動画メディア「DINETTE」運営が資金調達、D2C事業に参入しコスメブランドをローンチ

ビューティー特化型の動画メディア「DINETTE(ディネット)」運営のDINETTEは2月15日、D2C事業に参入しコスメのプライベートブランド「PHOEBE BEAUTY UP」をローンチした。

同社は2月4日、アプリコット・ベンチャーズ、個人投資家のバルクオム代表取締役CEO野口卓也氏、元Candle代表取締役の金靖征氏を引受先とした3,000万円の第三者割当増資を実施し、調達した資金をもとにPHOEBE BEAUTY UPを立ち上げると発表していた。

DINETTEは2017年4月よりInstagramを中心にメイク方法や美容の悩み解決方法、新作コスメの紹介などの動画を展開してきた。運用開始後、ノンプロモーションで9万人のコスメ好きフォロワーを獲得。美容動画メディアの中で国内最大級規模の動画再生数を誇る実績を作ってきたという。公式メディアのDINETTEは2018年2月にローンチした。

本日ローンチしたコスメプライベートブランドPHOEBE BEAUTY UPはDINETTEユーザーの声をもとに立ち上がった。

第1弾として、本日、芸能人モデルのヘアメイクを担当するヘアメイクアップアーティストであり、インフルエンサーの小林加奈氏がディレクターを務めるまつげ美容液を発売開始。DINETTEユーザーから「目を大きく見せたい」「まつ毛が細い」「まつ毛が抜けやすい」「まつ毛のハリやコシがない」「まつ毛エクステンションでダメージが」などの悩みが多く寄せられ、発売に至った。製品のパッケージは「思わずSNSに投稿したくなる」をテーマにしている。

DINETTEでは今後、同社いわく“美容動画メディア初の女性向けD2Cブランド”として、まつ毛美容液の市場で国内シェア1位を目指し、ブランドとして商品の横展開をしていく予定だという。

AWSがハードウェアレベルのコントロールを必要とする顧客のためにベアメタルインスタンスを提供

Infrastructure as a Service(IaaS, サービスとしてのインフラストラクチャ)といえばそれは通常、マルチテナントの環境に存在する仮想マシンを、お金を払って利用することだ。つまりそれは、一定の共有リソースを使用する。多くの企業にとってはそれでも十分だが、もっと独自のコントロールをしたければ、他のユーザーに共有されない、全体を自社でコントロールできるハードウェアリソース一式が収まっている、シングルテナントのシステムを選ぶだろう。このやり方のことを、業界用語で“ベアメタル”と呼ぶ。そして今日AWSは、新たに5種類のベアメタルインスタンスを発表した。

このようなサービスはひとつの物理サーバーをユーザーが独占し、プロセッサーやストレージなどのリソースを自分でコントロールすることになるので、料金は高くなる。でもこれは一連のプロダクトの一部であり、すべてのクラウドベンダーが提供している。ユーザーは、ふつうの仮想マシンを使って、ハードウェアのコントロールほとんどなしを選んでもよいし、あるいはベアメタルを選んでハードウェアを細かくコントロールしてもよい。どちらにするかは、クラウドに載せるワークロードの性質や目的による。

この新しいインスタンスを発表するブログ記事でAWSは、具体的なユースケースを述べている: “ベアメタルインスタンスでEC2の顧客は、詳細なパフォーマンス分析ツールを利用するアプリケーションや、ベアメタルのインフラストラクチャへの直接アクセスを必要とする特殊なワークロード、仮想環境ではサポートされないレガシーのワークロード、そしてライセンス制限のあるティア1のビジネスクリティカルなアプリケーションを動かすことができる”。

5種類のベアメタルインスタンスはそれぞれm5.metal、m5d.metal、r5.metal、r5d.metal、およびz1d.metalと呼ばれ(憶えやすい名前だねAmazonさん〔皮肉!〕)、さまざまなリソースを提供する:

チャート提供: Amazon

これらの新しいプロダクトは今日(米国時間2/14)から、ユーザーの要求に応じて、オンデマンドインスタンス、リザーブドインスタンス、またはスポットインスタンスとして提供される。

関連記事: WTF is cloud computing?…クラウドコンピューティング入門(未訳)

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

独自コイン軸に熱いファンコミュニティを作れる「Gaudiy」がジャフコや毎日新聞社らから資金調達

ブロックチェーン技術を活用したコミュニティプラットフォームや、ブロックチェーンプロトコルの開発を行うGaudiy。同社は2月15日、ジャフコ、毎日みらい創造ラボ( 毎日新聞社、メディアドゥ、ブロードバンドタワーが共同で設立)、Gumi会長の國光宏尚氏、山本治氏らから資金調達を実施したことを明らかにした。

具体的な調達額については非公開だが、関係者によると数千万円規模の調達になるという。

Gaudiyが手がける「Gaudiy」は企業が独自通貨(コイン)を軸に熱狂的なファンコミュニティを作ることのできるプラットフォームだ。同社が「あらゆるプロダクトをトークンエコノミー化するコミュニティサービス」という表現をしている通り、各コミュニティ内では独自のコインを発行することが可能。このコインがユーザーのアクションや貢献度に対する“インセンティブ”のような役割を果たすことで、コミュニティを活性化させる。

GaudiyにはSlackのようにメンバー同士で気軽に議論や雑談ができる「チャット機能」のほか、運営側からアイデアや投稿を募集できる「掲示板機能」が搭載。ユーザーはこの依頼に応えたり、コミュニティ内で活発に活動することでコインを獲得することができる(メンバーがそれぞれの書き込みに対して「いいね」をし合い、その評価によってコインがもらえる仕組み)。獲得したコインはコミュニティ限定アイテムと交換する際に使える。

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    運営者からユーザーに依頼できる「掲示板」
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    書き込みや他者からのいいねに応じて「レベル」が上がる
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    投げ銭をすることもできる

2月9日にβ版が公開されたばかりで現在開設されているのはGaudiy自体のコミュニティのみだけれど、今後は大手企業やスタートアップを含め数十社がコミュニティを開設する予定とのこと。ハードウェアからアプリ、D2Cまで幅広いジャンルのコミュニティが計画されているという。

Gaudiyは2018年5月の創業。自社でGaudiyや「Gaudiy Blockchain protocol」のプロトコル開発を行なっているほか、毎日新聞社博報堂とはブロックチェーンやコミュニティに関する共同研究にも取り組んでいる。

アプリ開発でヘマしないための控えめな提案

設計と開発のための技術の分野は進化し続けているのだから、そうしたシステムをデザインするためのプロセスも進化すべきだ。

投資のためなのか、製品の開発を手助けするためなのかは別として、起業家や企業にとって、その製品の長期的な影響を考慮し、よりよく気を配った慎重なアプローチを熟慮することの必要性を伝えることは重要なことだ。

製品化のためのプロセスは、常に次の順序で実行する必要がある。まず戦略、次に設計、最後にエンジニアリングだ。これらのプロセスの柱に対して、「なぜ?」という態度で臨めば、より優れた製品、より高い消費者の関心が得られるはずだ。そして拡張し続けるインターネットに対しても、有益な貢献ができるかもしれない。

フェーズ1:製品戦略

この製品戦略の柱の中では、製品を開発できる人がいるからといって、必ずしもその人に開発を任せるべきとは限らない、ということを覚えておくことが重要だ。ある種の技術が利用できるからといって、それが使いやすさを向上させるとは限らない。目的が製品開発を推し進めるのはであって、技術自体ではけっしてない。

最近開催された第40回のInternational Conference of Data Protection(国際データ保護会議)で、その会議のホストであるGiovanni Buttarelliは、「法律に準拠していて、技術的に実現可能でありさえすれば、道徳的に持続可能だというわけではない」と述べた。言い換えれば、「それを開発すべきなのか?」という問いを、この段階では常に問い続けるということになる。このフェーズを真に理解するためのヒントは、「このフェーズを始める前と、終えた後で、自分の考えがどのように変わるのか?」と自問してみることだ。

考え方が発展すればするほど良い、ということになる。

フェーズ2:製品設計

もし設計者がフェーズ1と2の間を行ったり来たりするようなら、それは良い兆候だ。フェーズ1で消えてしまうアイデアは、それにどれだけの作業や時間が費やされていたとしても、成功と見なされるべきだというを覚えておこう。

そして製品設計のフェースに移行する際には、消費者は飽きている、本当に飽き飽きしている、ということを意識しておくのは非常に重要となる。

従来的技法のほとんどに、もはや消費者は共鳴しないと仮定すべきだ。それは技術の燃え尽き症候群が広まったような状態、App Fatigue(アプリ疲労)というべきものなのだ。この完璧な例は、通知や、思慮を欠いた警告に見られる。

通知によって使いやすさは増すだろうか? 通知があることによって、ユーザーはそのソフトウェア、アプリを使いたいと思うようになるだろうか? もしそのように問われたら、それには大声で「ノー」と答えることになる。戦略フェーズに戻り、顔を洗ってやり直すべきだろう。

ここで質問すべきことは非常にシンプルだ。「通知や、似たような小細工を使わずに、この製品を使い続けたいとユーザーに思わせるものは何なのか?」ということ。

顧客と共鳴できるようにするには、どのような体験を作り出せばよいのだろうか? もしユーザー体験が、全般的に個々のユーザーと共鳴するものであれば、彼らは通知機能などなくても、喜んで使い続けるだろう。これは自明で簡単なことに思えるかもしれないが、自明な答えというものは、概して答えるのが最も難しく、そのために無視されがちだ。

Uberがタクシーを呼ぶために、あるいはAirbnbが休暇の賃貸のために何をしたか、ちょっと立ち止まって考えてみよう。これらの企業は、消費者にとって本当に有意義で豊かな機会を提供する製品体験を可能にするための技術を利用している。彼らは、消費者をつなぎ留めておくために通知は必要としなかった。 消費者がその必要性に気付いていなかったサービスを提供しているのだ。それは、独創的な差別化されたアイデアだった。問題は、障害を乗り越える新たな飛躍が遂げられるか? ということなのだ。

開発者が戦略段階を経て、設計すべきコアな機能を理解したら、エンジニアリングのアーキテクチャとユーザーのデータについて、より安全で配慮の行き届いた体験を提供できるようにするため、新たなエンジニアリングの解法に集中べきときだ。

フェーズ3:エンジニアリング

現在、Facebook、Google、Amazonのいずれの会社でも、ほとんどのユーザーデータは集約されたサーバー内に格納されている。これはセキュリティとプライバシー上の懸念を生じさせている。

こうした数の限られた大手ハイテク企業のどれかに託すのではなく、もっと配慮の行き届いた方法でユーザーデータを扱うために、開発者はどうすれば良いだろうか? フォロワー、友達、その他の似たようなメカニズムを利用して製品上の人々を結び付けるようなアーキテクチャでは、データを暗号化して、集約型のサーバーではなく、ネットワークで接続された電話機内に保存すべきだろう。簡単に言えば、ユーザーデータのバトンを、大企業ではなく、あなたの友達に手渡すのだ。

まだ初期段階のものだとしても、このようなアーキテクチャは、将来の世代のアプリに焦点を合わせた全般的な製品体験と、うまく組み合わせることができるはずだ。それによって、企業ではなく、消費者に有利な分散型アーキテクチャを作り出すことができる。これも、配慮の行き届いた「ユーザー優先のアプローチ」の例の1つだ。これは、スタートアップにとって大きな飛躍となる得る。この場合は、ユーザーデータとセキュリティに関して、新しいアプローチについて考え、常に規範に挑戦し続ける好例となる。

それらをすべて統合して

以下のようなケーススタディを青写真として考えてみよう。ここでは、本質的にソーシャルなアプリケーションの開発を提案することを想像してみる(この例は現実的だ。というのも、多くの若い起業家は、依然として彼らの中核にソーシャルを位置付け、多くの企業はソーシャルが、重要な第一の差別化要因であると信じているから)。

この回答例は、「なぜそのようなソフトウェアを開発したいと思っているのか?」というもの。さらに、「それが、人々や社会に対して、ポジティブな、あるいは生産的な方法で役立つと感じているか?」と続く(別に彼らの注意を引こうとしているわけではない)。これらの的を絞った質問は、ソフトウェアの行く末の重要性と、それが社会に及ぼす大きな影響に焦点を合わせたものだ。

これ以降は、高レベルの戦略(何を開発しているのか、そしてそれはなぜ?)から、具体的な機能(設計フェーズ)に焦点をシフトしてみよう。通常は、友達やフォロワーという、つながりのモデルがある。それによって人の活動を見ることができるが、ある程度の煩わしい通知や、入力の要求、あるいはアップデートもある。

それから、こうした標準的な機能に代わる、配慮の行き届いたソリューションを提供することに焦点を合わせる。製品が提供しているものを明確にするために、友達リクエストの数を制限することを検討すべきだろうか? あるいは、開発がもう少し先に進んでいる場合には、広告は見たくないという潜在的な顧客のために、有料コンテンツを設定することも考えてみるべきか? または、一定のアルゴリズムによってコンテンツを並び替える代わりに、ポストされたらすぐにコンテンツを表示するのか、あるいは消費者にオプションを提供するのか、といったことも考慮すべきだろうか?

いくつかの企業は、こうした類の選択肢を模索し始めている。Appleが、最近のiOSのリリースで、マップ共有のために採用した方法を考えてみよう。Googleも、それに追従している。

ソフトウェア設計および開発の世界では、現在も将来も、少ないほど効果が多い、と言われる。そして、配慮の行き届いた思慮深い決定が、次世代のアプリと、より大きなソフトウェアのエコシステムの基盤を強化することにつながる。

混雑した市場で価値を提供するのは、非常に困難だが、やりがいのあることだ。配慮の行き届いたアプローチを製品設計に取り入れることによって、合理化されたアーキテクチャーが可能になる。それによって、時間を節約し、人々が本当に使いたいと思う製品を開発するための枠組みを提供することができるのだ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Amazon Goの初の米国外店舗はロンドンになるかも

Reutersが取り上げたThe Grocerの報道によると、Amazonはロンドン中心部に小売スペースを確保した。Amazonはまだ米国外でAmazon Goを展開していないことから、このスペース確保は意味深長だ。

いま、米国内にAmazon Goは10店舗ある。4店舗がシアトルに、もう4店舗がシカゴ、そして残り2店舗がサンフランシスコだ。このパターンから察するに、Amazonはあまりにも少ないボリュームでの展開の仕方はしたくないらしい。進出都市を決めたら、複数のAmazon Goを展開する。同じことがロンドンでも起きるか、見てみよう。

Amazon Goは通常のグローサリーストアとは少し異なる。店舗に入るときはAmazonアプリを立ち上げ、スマホに表示されたQRコードをスキャンする。すると、店内で欲しい商品を選んでそのまま店を出ることができる。

AmazonはAmazon Goにたくさんのカメラやセンサーを設置し、客が何を購入するのかいつでもわかるようにしている。少し気味が悪いように聞こえるかもしれないが、これにより客は時間を節約できる。欧州のプライバシー監査当局がAmazon Goのコンセプトを許可するかどうかは興味深いところだ。

他の報道によると、Amazonは米国内の空港での小売スペース確保にも乗り出しているということだ。Amazonは人通りの多いところで自社のテクノロジーを示すために小型のレジなしGoストアを空港に開店させることができるかもしれない。

Amazonが次に何をするかは予測がつかない。Amazon GoストアはAmazonのブランドを促進し、わずかながらの収入を生み出すための手段にすぎないのだろうか。それとも、大きなゴールを目指しているのだろうか。一方でAmazonはWhole Foodsも所有していて、米国中にあるWhole Foodsにはまだレジが置かれている。

原文へ 翻訳:Mizoguchi)

Operaがデスクトップブラウザーのニューデザインを開発中

ブラウザーのメーカーOperaはこれまで、“Reborn3”、略してR3と呼ばれる新たなプロジェクトをちょい見せしてきたが、今日(米国時間2/14)からはそれをベータで使えることになった。それは、同社のデスクトップブラウザーの、まったく新しいデザインだ。

今のところそれは、Operaのデベロッパーバージョンのみだが、それでも話題はいろいろある。

このニューバージョンの主な違いは、サイドバーとタブバーが同じ色になったことだ。サイドバーは、ボタンがいっぱい並んだ、よく目立つ黒いバーではなくなった。今ではそれらのボタンは、後からつけたものではなくブラウザーの一部のようだ。

今では、Webページと現在のタブとアドレスバーが一体化している。背景が白だったり、明るいテーマのWebサイトが、とても見やすいだろう。でも微妙な影があるので、あくまでもブラウザーの‘部品’であることは分かる。

右上のコーナーは、スナップショットボタンや、ブックマークボタン、自分のすべてのデバイスで現在のページを見つける“My Flow”ボタンなどなどで混雑していたが、あまりスペースを取らなくなり控えめになった。

Operaのモバイルブラウザーには暗号通貨のウォレットがあるが、これからはそれに、デスクトップのアプリケーションからもアクセスできるようになった。それは、デスクトップ上のWhatsAppと似ている。OperaはQRコードを表示するので、それをスマートフォンでスキャンする。処理はすべてスマートフォン上で行われるが、デスクトップブラウザーはモバイルのウォレットのいわばインタフェイスだ。

このブラウザーのWindowsバージョンは、macOSバージョンと同じルックスだが、Windowsボタンがコーナーにある。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Neftlixのハリウッドオフィスに拳銃男が侵入(拘束済み)

米国時間2月14日午後、Twitterに心配なニュースが流れた。ハリウッドのサンセット通りにあるNetflixのオフィスに武装犯が侵入した。TechCrunchがロサンゼルス警察に確認したところ銃を持った男は3:53 AM PSTに最初にやってきた。同警察によると実際に発砲されることもけが人の報告もなく容疑者は拘束された。ソーシャルメディアには異なる情報も流れていたようだが、警察は改めて容疑者は一名ですでに確保されていることを確認した。5:12 AM現在、Netflixの社員は現場から徒歩で退出することが許されているが一部の場所は安全のために閉鎖されたままだ。

Netflixが最初にハリウッドの歴史あるサンセット・ブロンソンスタジオに入ったのは2015年で、2017年には賃借面積を拡大した。同社は地元放送局KTLAと場所を共有している。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

FacebookにFTCが数十億ドルの罰金を課す可能性

Washington Postによると、FacbeookのFTC(連邦取引委員会)との争いは、同委員会史上最高額の罰金という結末になる可能性がある。交渉継続中と見られるなか、同紙は本件に詳しい筋2名から、FTCがFacebookに対して「数十億ドル規模の罰金」を課すという情報を得た。これは2016年の排ガス不正の際にVolkswagenと合意に達した 147億ドルの和解に匹敵する。

2012年にGoogleは、プライバシー規則違反でFTCと和解するために過去最高の2250万ドルを支払ったが、今日の基準では微々たる額だ。以前本誌が報じたように、FTCのその程度(あるいはその数倍)の罰金は、昨年わずか一四半期で130億ドルを稼ぎ出した企業にとっては容易に受け流せる金額だ。Facebookに億単位の罰金を課すことは、数百万ドルくらい一時の頭痛にしか感じない裕福な会社に罰を与える唯一の方法だ。

FacebookにFTCとの交渉状況について尋ねたところ、規制遵守に関するお決まりの文章を繰り返しただけだった。「われわは米国、英国その他の当局に協力している」とFacebook広報はTeChCrunchに伝えた。「当社は一般市民の証言を提示し、質問に回答し、当局の作業が続く限り協力することを約束した」

FTCがFacebookに記録的罰金を課す立場を固守すれば、Facebookは法廷で強く抵抗し、膨大な資金をつぎ込んで将来にわたって会社に影響を与える罰を避けようとするに違いない。このとてつもない金額はFacebookの最近のプライバシー違反の大きなシンボルとなり、たとえ実際に罰金が払われなくても、Facebookが何らかの透明性を担保し基準を明らかにするきっかけになるだろう。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ニューヨークの政治家たちは第二本社が来なくなってもAmazonを批判

最初の進出計画のときと同じように、Amazonがニューヨーク市のクイーンズ区に第二本社を作らないという今日のニュースは、好悪さまざまな反応の洪水に見舞われた。企業誘致に賛成な人びとや不動産業界は、荷物をたたんで出て行くというリテール巨人の決定を非難している。本誌にも今日(米国時間2/14)の午後いっぱい、いろんな立場に人たちからの反応が押し寄せたようだ。

一方地元の政治家たちは、そのニュースをむしろAmazon自身の足元に突っ返しているようだ。

本誌TechCrunchに提供された声明でニューヨーク市長のBill de Blasioは、Amazonの変節について、いかにもニューヨークらしい辛辣な感想を述べている:

“ニューヨークでそれをやるには、よほどの覚悟が必要だ。われわれはAmazonに、世界でもっとも偉大な都市における良き隣人となり、事業を行なう機会を与えた。しかしAmazonは、コミュニティと協働する代わりに、その機会を投げ捨てた。われわれには世界最良の人材がいて、毎日のように、より強力で万人にとってより公平な経済を育てている。Amazonがその価値を認識できないなら、そのコンペティターが認識するだろう”。

もちろん、de BlasioはAmazonの最初の決定のキーマンだった。市長は、Amazonに対する税の巨額な優遇措置などを取り決めた‘密室の協議’を多方面から批判された。わずか三日前には彼は、その計画を“ミッションクリティカル”と呼んだ

市長の現在の立場はどうやら、本来の彼らしくないもののようだ。

一方Corey Johnson議長は、最初から反対派の先頭に立っていた。彼はAmazonの代表者たちが呼ばれた市議会の会議で、税の優遇措置や都市インフラ、そして同社が長年、社員の組合結成に反対していることを問題視した。

彼の声明はこう述べている: “私が一緒に仕事をしたいと願う企業は、ニューヨーカーたちと積極的に関わりを持ち、世界で最良のビジネスの町であるニューヨーク市が抱えるさまざまな課題に、共に取り組んでいける企業だ。私はこれが、ハゲタカ資本主義とわれわれの血税の最良の使い方に関する、会話の始まりになることを希望する。そう、私ならヘリパッドではなく大量輸送公共交通機関を選んだだろう”。

当然ながら、ニューヨーク市のDSA勢力たちも、やはり祝賀ムードだ。彼らの声明に曰く: “Amazonの進出は、労働者階級のクイーンズ区の住民とニューヨーカーたちを資本主義が抑圧するやり方の、ひとつの例にすぎない。何百万人ものニューヨーカーたちが未だに、基本居住権すら認められず、家賃の値上げや退去命令、追い立てなどの脅威におびえている”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

LEGOがAR対応セット8種を発売へ

LEGOは伝統的玩具会社の中でも、モバイルアプリからロボティクスまで最新技術の取り込みに関して常に業界をリードしてきた。同社は、数年前からWWDCで拡張現実(AR)の活用計画について話してきたが、このたびついにAR向けセット8種の発売にこぎつけた。

いずれもHidden Sideと呼ばれる現実とバーチャルの境界をなくそうとする新シリーズの一部で、悪魔にとりつかれた建物を子どもたちがゴーストハンティングアプリを使ってさまよいながら、自分たちの街で起きている奇妙なできごとの謎を探る。

セットの価格は20~130ドルでストーリーの公開とともに体験できるものが増えていく。デジタル部品を採用したことでメーカーは今後の商品開発がやりやすくなるかもしれない。セットを購入していない人もアプリを使ってゴーストの視点からスタンドアロンゲームを楽しむことができる。ただし、もちろん実物のLEGOを持っていた方が楽しみは倍増する。

どのセットも完全な新作で、以前WWDCで見せたものと異なり、ARに対応するために一から作られている。また同社はこの体験を開発するためにARKitやARCoreを使わず、実績のあるVuforia SDKのモデル認識を利用していることも興味深い。

発売は「夏の終わり」の予定で、同時期にアプリもApp StoreとGoogle Playの両方で公開される。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

HyperSciencesは超音速ドリル技術で宇宙飛行の「大逆転」を目指す

Eron Muskがトンネルを掘りながら、地球の遙か上空を飛びたいと考えているのは偶然ではない。HyperSciencesに聞けば、宇宙へ行く最良の方法は、ドリル技術を逆にして先端を上に向けることだと話してくれる。それは、一般にロケットだと思われている大きな筒の上に小さなペイロードが載っかったやつを推進するための、巨大で高価な燃料タンクの「段」を取り去ることを意味する。

今月、同社は準軌道飛行を成功させ、その冒険の旅を大きく前進させた。これは、NASAの助成金で行われた研究の第一段階を締めくくるものであり、概念実証のための打ち上げを2回成功させ、同社のラム加速と化学燃焼のワンツーパンチを見せつけた。

HyperSciencesは、ニューメキシコ州トゥルース・オア・コンシクエンシーズから1時間という人里離れた商業用宇宙港スペースポート・アメリカの打ち上げ場で、いくつもの高高度試験を行い、アイデアの実現に取り組んでいる。同社は1.5フィート(約45センチ)から9フィート(約274センチ)を超えるものまで「さまざまな発射体」を打ち上げた。HyperSciencesは、テキサス大学の航空宇宙研究グループとパートナーシップを組み、市販の電子部品を使ってシステムを製作している。

「私たちは600Gから1000G(つまり地球の重力の600倍から1000倍)でペイロードを打ち上げることを目標にしていましたが、それが達成できました」とHyperSciencesの上級顧問Raymond Kaminskiは話す。「ペイロードが感じる衝撃は、市販の電子製品(携帯電話など)を床に落としたときと同じ程度のものです」。Kaminskiは、エンジニアとして国際宇宙ステーションの仕事に就いていたNASAを離れ、しばらくスタートアップの世界へ転向していたが、その後、HyperSciencesで航空宇宙の世界に戻ってきた。

1.5フィートのシステムを打ち上げれば、NASAの目的を満たすには十分だったが、彼らは誰が見ても驚く長さ9フィート、直径18インチ(約46センチ)の発射体も試している。「私たちは9フィートのやつを打ち上げます。もう誰も否定できないでしょう」とKaminskiは言っていた。

面白いことにすべての始まりは、HyperSciencesの創設者でCEOのMark Russellが、深い深い穴をいくつもあけた後のことだった。Russellは、Jeff Bezosの宇宙事業Blue Originでカプセル開発の指揮を執っていたが、家業の採掘事業に加わるためにBlue Originを去った。彼はBlue Originの10人目の社員だった。Russellには、採掘と掘削の経験があった。そこから、岩を砕き穴を掘るために化学薬品を詰め込む筒を長くすれば、宇宙へ行けるのではないかと思いついたのだ。

「筒と発射体を用意する。先端を尖らせて、筒には天然ガスと空気を詰める」とRussellは説明してくれた。「それは、サーファーが波に乗るように、衝撃波に乗るんです」

彼らは、もっと手早く、安く、ずっと効率的に宇宙に物資を打ち上げることができると信じている。しかしそれには、プロセスを根底から考え直さなければならない。SpaceXの再利用型の第一段ロケットが宇宙飛行の潮流を変えたのに対して、HyperSciencesの技術は新発見に過ぎない。ただ、彼らの展望、つまり推進力としての超音速技術をスケールアップさせれば、宇宙に物資を送るという複雑で危険性の高いビジネスに応用できる。

超音速推進システムは、発射体を少なくとも音の5倍の速度で打ち上げることができる。つまりそれはマッハ5以上のスピードであり、1秒で1マイル(約1.6キロメートル)以上進むことができる。現在話題になっている超音速技術のほとんどは、防衛技術に関するものだ。高度なミサイル防衛システムもかいくぐったり、迎撃される間もなく目標を攻撃できる高速なミサイルなどだ。しかし、航空宇宙と地熱は、また別の興味深い大きな分野でもある。

昨年12月、ワシントンポスト紙が伝えたところによると、現在、ロケット推進式の兵器から超音速兵器へ移行する計画は、防衛政策において優先順位が「第一位、第二位、第三位」だという。米国防総省の2019年度予算のうち20億ドル(約2220億円)が超音速計画に割り当てられていて、それはほぼ3年連続で前年比を上回っている。「政府が欲しいと言ったときにその技術を開発し始めるのでは遅すぎます」とKaminski。「後追いになってしまいます」

そうしたチャンスはあるものの、HyperSciencesは兵器の世界への参入を熱望しているわけではない。「私たちはプラットフォーム型超音速企業です。兵器開発業者ではありません」とHyperSciencesのメンバーはTechCrunchに話してくれた。「武器商人になるつもりはありません。HyperSciencesは、世界をより良くすることに専念しているのです」

そのためHyperSciencesは、武器以外の超音速利用に針路を向けている。同社は、同社が利用しているラム加速技術の応用では先駆者であり、そこで発明された技術の独占権を持つワシントン大学の研究所室に資金援助をしている。

Shellから10億ドル(約1110億円)の出資を受けた地熱事業で、HyperSciencesは、彼らが呼ぶところの「Common Engine」(共通エンジン)を開発できた。地熱が溜まっている深度まで穴を掘ることができ、星に向けて物資を打ち上げることもできる超音速プラットフォームだ。「HyperSciencesとは、まずは地球を本当に理解することなのです」と、掘削から学んだ教訓を飛行計画に応用できる相互互換システムのひとつの利点を指して、Russellは言った。

「私たちのHyperDrone技術は、NASAの新しい吸気式超音速エンジンのテストや、世界の各地を1時間から2時間で結ぶ次世代の超音速または極超音速飛行機を開発したい航空機メーカーの役に立ちます」とHyperSciencesのメンバーは説明してくれた。「現在は、実験のためだけに大型飛行機にロケットを載せる必要があります。私たちは、地上に設置した管の先でそれが行えます」

買収に興味を示しているとの噂もあるHyperSciencesだが、今のところは堅実で実践的な航空宇宙業界ではまずあり得ない、通常とは違う風変わりなクラウドファンディング・モデルを追求している。同社は現在、SeedInvestのキャンペーン中で、適格投資家以外の小規模な投資家による最低1000ドルからというじつに少額な投資を、夢の実現のために募っている。この記事を書いている時点では、2000人近くの比較的小規模な投資家から500万ドル(約5億5500万円)が集まっていた。

「SpaceXのシードラウンドは、大手のベンチャー投資企業から受けています」とRussellは言う。「どこから入れるでしょう? 巨大な業界です。普通なら一般人は絶対に投資に参加できません」

Russellは、HyperSciencesの事業を柔軟な形にしておきたいと考えている。そして、ベンチャー投資家に頼れば、会社の目標を絞るように強要されるに違いないと恐れている。Shellとの関係はあるものの、その石油とエネルギーの巨大企業は彼らの株式は一切持っていないと、HyperSciencesは即座に答えてくれた。業界固有の契約の間を渡り歩きながら、クラウドファンディングで資金を得て、HyperSciencesはそのプラットフォームを並行して適用させる道を追求し続けたいと願っているのだ。

「宇宙飛行の次なるアーキテクチャーでは、全般的に超音速を使うことになります」とRussellは話す。「私たちはまさに、宇宙飛行の流れを変えるアイデアから、これをスタートさせました。ロケットの第一段と、できれば第二段を省略し、すべてのエネルギーを地上に置く……間違いなく宇宙飛行の流れが変わります」

[原文]
(翻訳:金井哲夫)

エッジコンピューティングを再定義するXnorのクラッカーサイズの太陽電池式AIハードウェア

しかしそれは単なるガジェットではない

「もしAIがそんなに簡単だというなら、この部屋に1つもないのは何故でしょう?」と、シアトルのユニオン湖を窓の外に見下ろす会議室で、まわりを身振りで指しながら問いかけるのは、Xnorの創業者でCEOのAli Farhadiである。その指摘は正しい。ここには何台かのディスプレイ、電話、そしてその他のガジェットがあるにも関わらず、本当にAI的な仕事に使えるものと言えば、それぞれがテーブルの上に置いている携帯電話しかないのだ。にもかかわらず、私たちは今やAIがどれほど身近で、柔軟性があり、遍在しているかを聞かされている。

だが多くの場合には、AIを実行する能力があるデバイスであっても、自身では機械学習技術を使わずに、データをより効率的に処理できるクラウドへ送っている。なぜなら”AI”を構成するプロセスは、多くの場合リソース消費型で、CPU時間とバッテリの電力を大量消費するからだ。

それこそが、2017年にアレン人工知能研究所からスピンオフしたXnorが、解決または少なくとも軽減することを狙っている問題である。彼らのブレークスルーは、エッジデバイス上での深層学習モデルの実行を飛躍的に効率化したことである。このため例えば5ドルのRaspberry Pi Zeroでも、最先端のコンピュータービジョンプロセスを、スーパーコンピューター並に実行できるようになった。

チームはそれを成し遂げ、Xnorの超高効率機械学習(ML)モデルは現在、さまざまなデバイスやビジネスに統合されつつある。補足しておくと、チームは利用者の観点に沿って、その狙いを高くも低くもしてくれる。

AIが組み込まれたデバイスの不足という自分自身の問いかけに答えながら、FarhadiはPi Zeroプラットフォームが組み込まれたかつてのデモ用機器のバッテリーパックを指さして、こう言った「これが問題なのです。電力が」。

電話やPi Zeroなどの、CPUや能力が制限された機器に、彼らがAIを搭載するために克服しなければならないボトルネックが、電力だった。そこで、チームはクレイジーな目標を思いついた:バッテリーを全く必要としないAIプラットフォームを作ったらどうだろう?1年も経たないうちに、彼らはそれをやり遂げた

出来上がったものは、本格的なコンピュータービジョンタスクをリアルタイムで実行することができる。秒以下の僅かな時間で、視野の中の、人や、車や、鳥やその他を検知し、その情報を無線で中継することができる。そしてそれは、通常はソーラー電卓に使われているような太陽電池を利用しているのだ。

Farhadiとハードウェアエンジニアリング責任者のSaman Naderipariziが、私に見せてくれたデバイスはとてもシンプルなものだった ―― もちろん必然的にそうなったのだ。320×240の解像度を持つ小型カメラ、オブジェクト認識モデルを搭載したFPGA、画像とカメラソフトウェアを扱うための少量のメモリ、そして小さな太陽電池。非常に単純なワイヤレス設定を行うことで、かなり控えめな速度でデータを送受信する。

「これはとても非力です。それでも超安物のカメラを搭載した2ドルのコンピューターですが、最先端の対象認識を実行することができます」と熱心に語るFarhadiは、Xnorチームが作成したものにとても満足している様子だった。

参考のために。同社のデビューで披露された以下のビデオは、デバイスが内部で行っている仕事の様子を示している:

太陽電池が、十分な光の中にある限り、イメージプロセッサと対象認識アルゴリズムに給電が行われる。それを動作させるには約100ミリボルトが必要だが、それ以下の場合でも頻度は落ちるもののイメージをキャプチャすることは可能だった。

単なる太陽電池からの給電のみでも動作することは可能だが、もちろん何らかのエネルギーストレージなしに使おうとすることは実用的ではない。このため、このデモデバイスには、一晩中動作することができたり、あるいは光源が隠されたときにも動作を続けられるようなスーパーキャパシター(蓄電部品)が備えられている。

その効率性のデモンストレーションとして、例えば腕時計のバッテリーを使うことにしたとしよう。Naderipariziは、その場合にはおそらく、毎秒1フレームの速度で30年以上動作し続けるだろうと語った。

独立した商品ではない

もちろん、ソーラーパワー式のカメラが手に入ったことがブレークスルーというわけではない。それは確かに役に立つかもしれないが、それ自体はそれほどはしゃぎまわるようなことではない。大切なことは、洗練された深層学習モデルが本当に安価なコンピューターの上で実行可能で、しかもスリープ状態の携帯電話よりも電力を使わないという事実なのだ。

「これは独立した製品ではありません」と、Farhadiはこの小さなハードウェアプラットフォームについて語った。「これはイネーブラー(何かを可能にしてくれるもの)なのです」。

顔認識や自然言語処理などの、推論プロセスを実行するのに必要なエネルギー量は、それらを使って何ができるかに対して厳しい制限を課してくる。声で命令すると点灯するスマート電球は、本当はそれ自身はスマートではない。電球の筐体の中に入っている基盤が、音声をハブへと中継し、そしておそらくはどこかのデータセンターの中で、話された内容が解析されてその結果が返され、ライトが点灯するのだ。

それは複雑というだけではない、遅延が発生するし、プロセスが途絶したり攻撃されたりする可能性のある場所を増やすことになるのだ。そして、その間にも定常的に電源もしくはバッテリーが要求される。

一方それとは別に、鉢植えに差し込んだり、壁に取り付けたり、本棚などの上に載せたりするカメラのことを想像してみよう。ただし、このカメラはそれを照らすある程度の光による電力以上のものを必要としない。クラウドと通信することなく単独で音声コマンドを認識し、画像を分析できる。入力をほとんど持っていないのでハッキングすることも難しい。そしてその部品はおそらく10ドル程度のものだ。

本当に広く遍在できるのはどちらか1つだけだ。もちろん後者だけが、インフラストラクチャへの多大な投資を必要とせずに、数十億のデバイスへと拡張することができる。

そして正直なところ、プライバシーや遅延の懸念がある膨大なアプリケーションにとっては、後者の方が好ましいもののように思える。動きを監視するために画像をせっせとクラウドサーバーにストリーミングする、赤ちゃんカメラの方がお好きだろうか?それとも、インターネットに接続していなくても、子供が起きているかどうかを判断できる赤ちゃんモニターの方がお好みだろうか?もしどちらも上手く機能するなら、後者の方が明らかな選択肢のように思える。そしてそれは、その他の膨大な消費者向けアプリケーションにも当てはまるのだ。

驚くべきことに、プラットフォームの要求する電力コストはこれで底打ちというわけではない。このデモユニットでコンピューティングを行うために使用されたFPGAという仕掛けは、提供する処理能力に比べて特に効率的なものではないのだ。もしカスタムチップとして焼き付けた場合には、さらに1〜2桁消費電力を小さくすることが可能で、推論のための作業コストをマイクロジュールレベルへ引き下げることができる。なおサイズは、カメラの光学系とアンテナのサイズによってより制約を受ける。アンテナは無線信号を送受信するためにはある程度の大きさが必要なのだ。

繰り返しになるが、これはこの特定の小さなデバイスを数百万個単位で売ろうという話ではない。Xnorが既にその顧客と行っているように、プラットフォームとその上で実行されるソフトウェアは個別のプロジェクトとハードウェア用にカスタマイズすることが可能である。ある者はモデルをMIPS上で実行することさえ望んでいたが、それは現在すでに実現されている。

自己完結型推論エンジンを実行するために必要な、電力と大きさを大幅に削減することで、まったく新しい製品カテゴリを生み出すことができる。それらは不気味な存在だろうか?おそらくは。しかし、少なくともそれらはどこかと通信する必要はない。

[原文へ]
(翻訳:sako)

Amazon、ニューヨーク市の第2本社建設を断念

Amazonは第2本社の一つをニューヨーク市内に建設することを断念すると発表した。クイーンズ区のロングアイランドシティーの第2本社計画がキャンセルされた原因は地元の住民、議員からの強い反発によるものだ。Amazonが長年反労働組合的な姿勢を取ってきたこと、また自治体のAmazonに対する税制優遇措置などが反対の理由として挙げられていた。

TechCrunchはAmazonから「候補地選定を再開する考えはない」とする長文の声明を受け取った。Amazonはバージニア州アーリントンの第2本社、またテネシー州ナッシュビルでの大型フルフィルメントセンターの建設計画を推進する。

こちらがAmazonの声明の全文だ。

慎重に考慮を重ねた結果、クイーンズ区ロングアイランドシティーにAmazonの第2本社を建設する計画を進めることを中止すると決定した。 Amazonが新本社建設にコミットするためには州政府、地方地自治体との長期にわたる良好な協力関係を築かねばならない。これには首長、議員による積極的な支持を必要とする。世論調査によれば、ニューヨーク市民の70%がAmazonの計画とそれにともなう投資を支持している。しかしながら州や自治体の多数の政治家がわれわれの進出に反対し、ロングアイランドシティーの建設プロジェクトを前進させるために必要な良好な関係を構築するつもりがないことを明らかにしていた。

このような結論となったことを遺憾に思っている。われわれはニューヨークを愛しており、そのダイナミズム、市民、文化は比類ないものと考えている。ことにロングアイランドシティーではスモールビジネスのオーナーや住民など、希望に溢れ、前向きに思考する多くのコミュニティー・リーダーと知り合うことができた。現在ブルックリン、マンハッタン、スタテンアイランドでは5000人以上がAmazonで働いており、われわれはこのチームをさらに拡大していくよう務める。

クオモ・ニューヨーク州知事、デブラシオ・ニューヨーク市長、またそのスタッフは第2本社を招致するために献身的かつ熱意に溢れる努力を払ってきた。われわれはこうした支援に深く感謝する。ニューヨークの市民を代表してクオモ知事、デブラシオ市長はAmazonの投資と職の創出を支援するために全力を挙げてきた。われわれはこうした努力に適するような感謝の言葉を知らない。【略】

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第2本社として選定された他の地区を異なり、クイーンズの場合はAmazonの計画発表と同時に地元からの反発が起きていた。反発の原因の一つはすでに不人気なビル・デブラシオ市長とAmazonの密室取引がある。ニューヨーク市のインフラは限界に近く、住宅事情も逼迫していた。さらに第2本社建設予定地が学校や公園、低所得者向け住宅と小規模な商業区域のための再開発用地だったことも助けにならなかった。

Amazonの代表者は市議会で繰り返し激しい攻撃を浴びた。「ニューヨークは組合の町だ」というスローガンを掲げる議員もいた。先週、Amazonはロングアイランドシティーの計画をキャンセルするかもしれないと報じられたが、その時点ではTechcrunchに対して「撤退の考えはない」と述べていた

しかもわずか2日前にはデブラシオ市長はミッション・クリティカルな計画だと述べていた。残念ながらこの「ミッション」は空中分解したようだ。

画像:Andrew Lichtenstein/Corbis / Getty Images

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滑川海彦@Facebook Google+

米証取委、Appleの元社内弁護士をインサイダー取引疑いで告発

Appleに少し傷がついた。SEC(米国証券取引委員会)は今日(米国時間2月13日)、Appleの元社内弁護士Gene Levoffをインサイダー取引の疑いで告発した。決算発表前に数百万ドル分の株を売却して38万2000ドルの損失を回避し、これとは別に、その前には24万5000ドルの利益を得ていたという。

Levoffは2008年にAppleで法務部門のディレクターとして働きはじめ、その後シニアディレクターになった。そして2018年7月に勤務停止となり、9月に解雇された。

告訴は2015年から2016年にかけての取引を対象としていて、これは2017年にAppleが時価総額1兆ドルに近づく前の業績が落ち込んでいた時期だ。

今回のニュースはなかなか皮肉だ。しかし、Levoffが裁量権を持つ情報を考えた時に、これは驚きではないかもしれない。Levoffは Appleの法務部門のシニアディレクターを務めていて、“社のインサイダー取引ポリシーの徹底と、四半期ごとの決算時の取引で従業員(自身も含む)がやってはいけないことを取り決める責任を負っていた”。

調査は別の方向にも向いた。SECは、Levoffが2011年と2012年にも市場に影響を及ぼすようなニュースの発表に先駆けて株取引をし、24万5000ドルの利益を得たとしている。

SECは、“訴状に記した行為で得た利益・回避した損失と同じ額”の罰金を支払うこと、そして公開企業の幹部職に就かないこと求めている。

SECの告発では、2015年から2016年にかけて“少なくとも”3つの取引を指摘している。この期間、Levoffは公開される前の決算情報を知り得る立場にあり、その後情報に基づいて取引を行なった、としている。

訴状に記された取引の一つを挙げると、LevoffはiPhoneの販売台数が市場予想を下回るという情報をAppleが公開する前に1000万ドル分の株を売却した。

SECは、Levoffの利益のための動きと、Appleでの役割の切り離しを明確に記している。Levoffは、Appleのディスクロージャー・コミッティーのメンバーだった。このコミッティーは、社の情報公開の正確さと適時性を監視する責務をCEOとCFOが果たせるよう、サポートするためにつくられた。 コミッティーはAppleの公開義務を決め、さらにはSECへ提出する書類の内容や、他の情報公開がタイムリーで正確かつ完全なものか、Appleの財政状況や業績を正しく反映しているかといったことを確認する。また、 Appleの情報公開の過程が適切なものかといったことも確かめる。

LevoffはAppleの機密部分にかかわっていた。彼はまた、Appleの多くのM&A案件にも名を連ね、彼はかつて議員に対し、Appleが欧州で密かに買収したスタートアップの法的書類を調査しているとも話していた。

Levoffはまた、Appleのオフショア口座に関する2013年の調査でも名前があがっている。調査に対し、彼は70ものAppleの子会社の役員会に関わっていたことを明らかにしている。オフショア活動に関する報告書によると、この子会社には“従業員はおらず、実在もしない創業30年の企業であるApple Operations Internationalも含まれる。この企業の運営は米国外で行われている。Appleの広範にわたるオフショアコーポレート構造の中核として2009年から2011年にかけて300億ドルもの収益を受け取っているにもかかわらず、Apple Operations Internationalは税法上の居住地を申告していない。つまり、過去5年間どこの国にも法人税を払っていない”とのことだ。

しかし今回の告発では、SECはAppleが株取引禁止期間や、株取引・財務の情報に関する一般的な合法・違法のプラクティスについて従業員に警告するいくつかのステップを踏んでいたと記し、Apple自体はインサイダー取引に関わっていなかったことを明確にしている。

「Levoffの違法取引に先立ち、AppleはLevoffが受け取った非公開の決算結果を含め、非公表の情報に基づく株取引を従業員が行わないようにするいくつかの措置をとっていた」と訴状に記している。「Appleは全従業員に適用されるインサイダー取引ポリシーを持っていた。Levoffを含め多くの従業員は“ブラックアウト”期間として知られる株取引を制限する期間になると通知を受け取る。ブラックアウト期間とのタイトルで従業員に電子メールが送られるこの通知でインサイダー取引ポリシーの周知徹底を行なっていて、少なくとも2015年からはインサイダー取引ポリシーへのリンクも含んでいた」。

今回のニュースは、Appleが固く口を閉ざしている企業の一つであり、またユーザーのプライバシーといった問題で抜きん出た姿勢を見せているだけでなく、競合する他社の製品に比べてプレミアム価格で製品やサービスを展開していることにプライドを持っているなど、Appleがモデル企業としての役割を果たしているという意味において、かなり議論を巻き起こすものだ。

我々はAppleにコメントを求めていて、何かわかり次第、情報をアップデートする。

原文へ 翻訳:Mizoguchi)

上場1年未満のメルカリがトヨタやソニーが名を連ねる国内ブランドランキングにランクイン

企業のブランディングを専門とするインターブランドジャパンは2月14日、「Best Japan Brands 2019」として日本企業のブランドランキングを発表した。インターブランドジャパンは、1974年に英国・ロンドンで設立されたブランディング専門会社の日本法人。企業のブランド価値を金銭的価値に置き換える独自の測定方法でランキングを作成している。この測定方法は、ISO(国際標準化機構)に認定されているものだ。

世界ランキングに日本企業は8社がランクイン

2018年に発表された「Best Global Brands 2018 Rankings」では1位から順に、Apple、Google、Amazon、Microsoft、Coca Colaとなっている。FaceBookは9位だがGAFA勢の勢いとMicrosoftの底堅さを感じるランキングだった。

インターブランドジャパンが発表した「Best Japan Brands 2019」は、海外売上比率が30%以上の「Japan’s Best Global Brands Top 40」、30%未満の「Japan’s Best Domestic Brands Top 40」の2つに分かれる。なお、企業名=ブランド名ではないため、企業の海外売上比率が30%満たない場合でも、ブランドとして海外売上比率が30%以上の場合はグローバル 、その逆の場合はドメスティックとなる。対象となるのは、財務状況が一般公開されている企業。調査期間は、2017年11月~2018年11月の1年間となっており、各社の第3四半期(2018年10~12月期)の業績は反映されていない。

インターブランドジャパンの代表取締役兼CEOの並木将仁氏

Japan’s Best Global Brands Top 40は1位から、TOYOTA(トヨタ自動車)、HONDA(本田技研工業)、NISSAN(日産自動車)、Canon(キヤノン)、SONY(ソニー)、MUFG(三菱UFJフィナンシャル・グループ)、Panasonic(パナソニック)、UNIQLO(ユニクロ)、Nintendo(任天堂)、SUBARUと続く。自動車メーカーがトップ3を独占したかたちだ。TOYOTAは11年連続でブランド1位となったほか、前年比プラス6%のブランド価値向上となった。3位のNISSANは、2018年11月に発生した金融商品取引法違反による元CEOのカルロス・ゴーン氏の逮捕が、来年以降どう影響してくるのか注目だ。

Japan’s Best Global Brands Top 40

上位40位でブランド価値成長が前年比で著しかったのは、15位のShiseido(資生堂)のプラス30%、Suzuki(スズキ自動車)のプラス23%、25位のYamaha(ヤマハ)のプラス20%、9位のNintendo(任天堂)のプラス19%、8位のUNIQLO(ユニクロ)のプラス19%となる。Nintendoは2017年度の連結海外売上高比率が75.3%で、企業価値は6億9600万ドルと試算。Nintendo Switchの引き続いての超大ヒットが貢献したと考えられる。

Japan’s Best Domestic Brands Top 40(10位まで)

Japan’s Best Domestic Brands Top 40では、NTT DOCOMO(NTTドコモ)、SoftBank(ソフトバンク)、au(KDDI)と大手キャリアがトップ3を占めたた。4位以降は、Recruit(リクルート)、Rakuten(楽天)、Suntory(サントリー)、Asahi(アサヒビール)、Kirin(麒麟麦酒)、nissin(日清食品)、Japan Airlines(日本航空)と続く。

ドメスティックの上位40位でブランド価値成長が前年比で著しかったのは、25位のZOZOTOWN(ZOZO)のプラス38%、KOSÉ (コーセー)のプラス27%、7位のAsahiのプラス25%、29位のMatsumotokiyoshi(マツモトキヨシ)のプラス21%、33位のNitori(ニトリ)のプラス21%。前述のように直近の10~12月期の業績は考慮されていないため、ミキハウスやオンワードホールディングス、ユナイテッドアローズなどが次々と撤退したZOZOTOWNが来年どうなるのか、前澤社長の手腕に注目が集まるところだ。

ドメスティックブランドでは、40位に滑り込みでMercari(メルカリ)が初ランクインしたのも注目。先日の2018年7~12月期の連結決算の発表では、純損益44億7500万円の赤字を発表した同社だが、国内に限って言えば営業利益44億円と力強い。上場から1年に満たない企業がランクインするのは珍しい出来事だ。

メルカリの小泉文明取締役社長兼COO

発表会の後半では、そのメルカリの小泉文明取締役社長兼COOが登壇。まず小泉氏は、メリカリは2019年2月1日で6周年を迎えたことに触れ、米国を足がかりに世界戦略を継続することを明言。「今後は米国以外の地域への展開、国を超えたマーケットプレイスを構築したい」と語った。現状、米国で苦戦を強いられているが、流通総額8700万ドルと前年比(YoY)では70%近く伸びており、先日の決算発表会でも流通総額が1億ドルに近づけば黒字化も見えてくる」と発言していた。なお、米国ではサービスのUI、ブランドロゴも変えるなど米国向けにローカライズして戦っている。小泉氏は、「メリカリを世界的ブランドに育てて、将来的にはベストグローバルランキングへのランクインを目指したい」と力強く語った。

国内については、1200万人超のアクティブユーザーがおり、40~50代やシニアの利用者も伸びている。そして、上場したマザーズ市場ではトップ3に安定して入っているとのこと。また、日本の隠れ資産(1年以上使われていないもの)は合計37兆円、国民1人あたり28万円という試算があり、メルカリは国内でまだ3倍ほどのポテンシャルがあるとコメント。最近では、新しい商品を買うときにメルカリを見て価格感を掴む人が増えているとのことで、自動車やブランド品などのように中古品を買うことによるネガティブな印象が薄まっていることを紹介した。

通常は上場セレモニーの際に5回打つ鐘を、メルカリ小泉氏は3回、インターブランドジャパン並木氏は2回鳴らした。

最後に2月13日に始まったばかりの子会社のメルペイのサービスについて触れ、「当初はiOSのみの対応となるが、メルカリ内の売上金を、銀行口座への振り込みだけでなくそのまま街中で電子マネーとして使える」と利便性を強調。PayPayやLINE PAY、Origami Payなど先行するモバイル決済サービスはキャンペーンが合戦で殴り合いの攻防を続けているが、ここにメルカリが参入するのか、独自路線を進むのかも気になるところだ。

恋愛詐欺は被害総額がすべての消費者詐欺の中でずばぬけてトップ

連邦取引委員会(Federal Trade Commission, FTC)が発表したデータによると、昨年同機関に報告された消費者詐欺の中で被害総額がいちばん大きいのは恋愛詐欺であり、しかも問題は悪化している。恋愛詐欺の犯人たちはデートサイトやデートアプリ、またはソーシャルメディアでターゲットをねらい、多くの場合偽のプロフィールと泣かせるような話(お涙ちょうだい話)を使って被害者を信用させ、巨額のお金を送らせる。

FTCに報告された恋愛詐欺の件数は、2015年の8500件から昨年は21000件へと増加した。その間に被害総額も3300万ドルから1億4300万ドルに増加している。2018年の数字は、FTCの消費者の被害申し立てデータベースConsumer Sentinelに提出された、21368件の報告に基づいている。

恋愛詐欺はとくに、被害者個人にとって高くつく。恋愛詐欺の被害者が報告した被害額のメジアンは2600ドルで、ほかのタイプの詐欺すべての被害額のメジアンの7倍である。40歳から69歳までの層の恋愛詐欺の被害額は20代の2倍だが、高齢者になると被害額はさらに大きく、70歳以上では被害額のメジアンが10000ドルになる。

FTCによると、被害者の大半は振り込みによる送金を求められたが、ギフトカードや、 Moneypakのようなリロードカード(チャージカード)を求められた者もそれに次いで多かった。いずれの方法も迅速で取り消しが困難、そして受取人は匿名を維持できる。恋愛詐欺の犯人は、医療などの緊急事態のためにお金が要る、と称することが多く、実際に会うことができない言い訳を作り出す。たとえば軍に在籍していて海外の基地にいるとか、そちらまで出かける旅費がない、など。

被害を防ぐためにFTCは、プロフィールの写真を逆画像検索してプロフィールが偽でないかチェックする、会ったことのない人にお金を送らない、ネット上の関係について家族や友人にオープンであること、などを勧めている。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa