日本版インスタカート「Twidy」が日産と提携、共同で大型マンション向けの実証実験へ

写真右端がダブルフロンティア代表取締役の八木橋裕氏

買い物代行サービス「Twidy(ツイディ)」を展開するダブルフロンティアは2月18日、日産自動車と同事業における戦略的提携に合意したことを明らかにした。両社では今夏からの共同事業開始に向けて、4月にも実証実験に取り組む計画だという。

Twidyは買い物を依頼したい人(注文者/リクエスタ)と、買い物を代行して商品を届けてくれる人(代行者/クルー)を繋ぐサービスだ。特にキャリアウーマンや子育て中の主婦が注文者として利用するケースが多く、忙しくて自分で買い物に行くことが難しい際などに、“近所のスーパーでの買い物”をクルーに依頼する。

地域に密着していることもあり、最短1時間で自宅に届くスピード感が特徴。サービス上から欲しい商品と希望の日時を選んで選択すれば、自宅まで商品が配送される。配送時間も11時から22時まで対応しているので、夕食の準備をしていて急遽足りないものに気づいた場合などにも使えそうだ。現在はライフ渋谷東店を対象に周辺エリアでサービスを展開している。

Twidyはダブルフロンティア代表取締役の八木橋裕氏がアメリカの「Instacart(インスタカート)」をヒントに開発したものだ。将来的にはC2Cの買い物代行(近所の主婦に“ついでに”買い物を依頼できるイメージ)を実現する構想もあるが、スタート時はクルーの作業を商品購入担当と配送担当で分担。前者をダブルフロンティアのパートスタッフが、後者を日経新聞の配達員が担っていた。

今回の日産との協業を通じて、今後Twidyに日産の自動車を組み合わせる形でサービスを展開する計画。共同事業の第一弾「Twidy Mansion(ツイディ マンション)」ではクルーが軽商用車NV100クリッパーを使用して商品を届ける。

大型マンションを対象とするTwidy Mansionでは、これまで分担していた商品の購入と配達を同じスタッフが担う。昨年ダブルフロンティアに出資をしている東京電力グループとタッグを組み(東京電力フロンティアパートナーズから昨秋に出資を受けている)、同グループで抱える電力検針員たちが空き時間を活用してクルーになる。

イメージとしては、対象となるマンションの空き駐車場に車NV100クリッパーを常備しておき、近隣にいる電力検針員がクルーとなって買い物代行作業を担当する形。4月から品川エリアのマンションにて実証実験に取り組む方針で、まずは1日あたり1回の配送を予定しているそう。主に「ワーキングママが仕事先から商品を注文しておくと、帰宅時には自宅に届いている」といった使い方を想定しているという。

Twidy Mansionの概要(画像はダブルフロンティアより提供)

これまでのTwidyが1時間単位で買い物を依頼できていたことに比べると、Twidy Mansionでは配送の時間帯や回数が固定されることで、正直そのメリットが薄くなる気もする。八木橋氏によるとその辺りは実証実験での反応も見ながら今後の方針を決めるとのこと。1回に複数件の商品を届ければ配送料を抑えられるため、従来よりも代行料(現在は注文時に1回あたり430円を払う仕組み)を安くできる可能性もあるということだった。

今回の共同事業では従来のネットスーパー宅配事業で使用されている黒・緑ナンバー車両ではなく、お買い物代行事業の領域とした白・黄色ナンバー車両を活用している。ダブルフロンティアではこの仕組みを全国的に広げることも計画していて、今後各地のパートナー開拓にも力を入れる予定だ。

また日産とも今回のTwidy Mansionに限らず別の形でも協業を見据える。同社ではカーシェアリングサービス「NISSAN e-シェアモビ」などを手がけているが、こうしたサービスとの連携なども考えられそうだ。

声のブログ「Voicy」がTBS、電通、中京テレビなどから7億円調達

声のブログ「Voicy」を提供するVoicyは2月18日、グローバル・ブレインをリードインベスターとする資金調達ラウンドで、約7億円を調達したと発表した。今回のラウンドに参加した投資家は以下の通りだ。

  • グローバル・ブレイン
  • D4V
  • TBSイノベーション・パートナーズ
  • 電通イノベーションパートナーズ
  • 中京テレビ放送
  • スポーツニッポン新聞社

2016年9月にリリースしたVoicyは、「声のブログ」として注目を集める音声メディアだ。インフルエンサーなどが「パーソナリティ」としてラジオのようにアプリに声を吹き込み、それをコンテンツとして公開する。内容としては、日々の生活を日記のように話すものから、他社のメディアコンテンツを声で読み上げるものまでさまざま。チャンネル数は現在約200ほどで、ユーザーはすべて無料でコンテンツを楽しめる。

同社はこれまでに2017年と2018年にそれぞれ2000万円と2800万円のエンジェル出資を受けていて、VCを含む本格的な資金調達ラウンドはこれが初めてだ。Voicyは今回調達した資金を利用して、新サービスの開発やそれに必要な人材の確保を進める。

TechCrunch JapanではVoicyに取材を実施し、今回の資金調達の背景やラウンドに参加した事業会社との連携により目指す世界観などを紹介する記事を近日中に公開する予定だ。

Facebookの災害支援機能で「無事」を反射的にクリックしてはいけない理由

まず断っておかねばならないが、Facebookの災害支援ハブは素晴らしいサービスだ。寄付やボランティアを申し出るために信頼できる場所であり、大規模な災害が起きたときに人々を大いに助けてきた。

しかしそう述べた上で注意を要する点がある。身近で災害が起きてFacebookのセーフティーチェックがオンになったとき、反射的に「無事」をチェックしてはいけない。

安否確認できるのはよいことだが、「世界は危険に満ちており、恐ろしいことが始終起きている」という誤った観念を強化するようなことがあってはならない。こういう考えは問題を解決するのではなく悪化させる。

たとえば、去年の秋、カナダのオンタリオ州オタワ市で竜巻というページが掲載された。実はわたしはオタワ市に住んでいたことがあり、現地に友達が何人もいる。Facebookを見るとトッドとジェニファーは「無事」をチェックしていた。しかしジョーは?ステファンは? 他の連中はどうだったのだろう?

安心してもらいたいが、みな無事だった。実のところ、人口130万のオタワでこの竜巻の結果病院に運ばれたのはたった6人だった。それにカナダで竜巻はしょっちゅう起きている。ちょっと割り算をしてみれば竜巻で被害にあった運の悪いオタワ市民は21万6666人に1人だったとわかる。仮に人口21万6000人の町で1人が負傷したらFacebookは災害安否チェックをオンにするのだろうか?

そんなことをしたらFacebookのユーザーはのべつまくなしに「無事」をクリックし続けねばならない。逆にニュースフィードは「無事」の報告で埋め尽くされてしまう。世界は災害で煮えたぎる魔女の大鍋のように見えてくるに違いない。こういう不注意な考え方をすると「一歩でも外に踏み出せばありとあらゆる予測不可能の危険が待ち受けている」という印象を受けることになる。新しいものごとに挑戦しようとする意欲が失せるかもしれない。少なくとも行ったことのない場所へ行ってみようという気持ちは大きくくじかれるだろう。

われわれの頭脳は恐怖や不安に過敏に反応することはよく知られている。悪いことが起こるであろう客観的な確率よりも、センセーショナルな映像や記事がわれわれの行動を支配する。本当に恐ろしい事象の可能性より、たまたま拡散されてきた過激な画像のほうが強い印象を与える。われわれは悪いことに対して過敏に反応する。仮にニューヨークの地下鉄でテロリストが15人を殺害したらFacebookは安否チェックを立ち上げるに決まっている。

しかし統計的いえばニューヨークでは毎月15人以上が交通事故で死んでいる。しかしFacebookは月末ごと「交通事故に遭わず無事だった」というハブを立ち上げることはない。極端な例に思えるかもしれないが、この仮定では交通事故で死ぬ確率のほうがずっと高いのだ。

つまりこういうことだ。ささいな問題でいちいち「無事」をチェックし、Facebookの友達全員に「無事」を知らせることは、短期的に何人かの友達の不安を軽減するかもしれないが、大局的にみるなら、不必要な不安を煽り、誤った世界認識を拡散する結果を招く結果になりかねないない。

ときとして本当に大規模が起きることがある。そのような恐ろしい事態なら上に述べたようなことはもちろん当てはまらない。その地域で1年間に交通事故で死亡するよりずっと高い確率で死亡するような災害であるかどうかは一つの目安になるだろう。Facebookがそういう本当の災害だけに「無事」をチェックする機能を制限するならこれはたいへん有益な機能だ。誤った不安を拡散しないようFacebookが災害対策関連のアルゴリズムを改善することを期待する。

(日本版)ちなみに東京都の交通事故統計によれば2018年の死者数は143人だった。母数を昼間人口の1600万人とすると、11万2000人に1人の確率となる。全国の交通事故死者数は3532人、日本の人口は1億2649万人だった。最近のベストセラー、『Factfulness』がこのバイアスを取り上げている。TED講演の再生3500万回という著者、ロスリング博士によれば「ジャーナリストは常に記事が注目されることを目指す必要があるため不安を煽る偏向がかかりやすい」という。ソーシャルメディアにもそのまま当てはまるろう。『Factfulness』はKindle版、印刷版とも刊行中。

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滑川海彦@Facebook Google+

3DENが200万ドルを調達、純粋従量課金の都会のリラックススペースを提供

3DENは、同社が呼ぶところの「日中のぽっかり空いた隙間時間」のための場所を提供しようとしている。

その名前”3DEN”(「エデン」と発音される)は、「3番目の場所」 ―― 家でも職場でもない空間というアイデアから来ている(英語の”den”という言葉には、動物の巣や隠れ家といった意味合いがある)。創業者でCEOのBen Silverは、会議と会議の間に空いた45分間を埋めたり、夜行便を降りたばかりでリフレッシュできる場所が必要な場合などに、使うことができるような場所を作り出すことが目標だと語った。

コーヒーショップ、コワーキングスペース、ジム、あるいはホテルなどがそうした機能をある程度提供してくれるだろう。だがSilverは3DENは「様々なサービスを合わせたもの」で、かつそれをとても「安心できる場所に」集めたものになると言う。彼は最もコンセプトが近いものは、会員制クラブハウスだと言う。ただし高額な月極会費を請求する代わりに、3DENはコミットメントを求めず、各訪問に対して30分毎に6ドルの料金を請求するだけになる。

今週初めに私は、ニューヨーク市のハドソンヤード再開発地区のショッピングエリアにある、3DENの最初のスペースに立ち寄った。スペースはまだ工事中だったが、しかし私は電話ブース、プライベートシャワー、そしてリラックスのためのブランコさえ見ることができた。

Silverは、瞑想スペースやCasperの仮眠ポッドも置かれる予定だと話した。そして、たくさんの木々や植物を使った自然に影響を受けたデザインだけでなく、空間の「音響的ゾーニング」を強調した。すなわちある場所は人が集まるためにデザインされる一方、別の場所はより静かで休める場所になるということだ。

したがって、仕事を集中して片付けたり、電話をかけたり、会議を主催することができるし、ただリラックスしてリラックスしたいだけなら、それも可能だ。

Silverによれば、この場所には少数のスタッフは配置されるものの、エクスペリエンスの鍵はテクノロジーだと言う。大部分の取引はスマートフォンのアプリを経由して扱われる。3DENスペースに行きたくなったら、アプリを通してチェックインを行う(それはあなたに現在の混雑レベルを知らせるが、もし満員の場合にはウェイティングリストに入れてくれる)。またシャワーを予約したり、買い物をしたりすることができる。

3DENのコアサービスは、30分毎6ドルの価格の中に含まれる予定だが、他に小売なども行い、訪問したひとは、食べ物や健康/美容製品を買うこともできるとSilverは語った。彼はまた、通常のゲスト価格に加えて、追加の価格モデル(例えば法人会員など)も検討していると語ったが、このスペースを広範囲のビジターたちにアクセスしてもらうことを可能にする、「コミットメントなし」価格の重要性を重ねて強調した。

今回のシードラウンドは、b8taとGraphene Venturesが主導したが、参加した投資家はColle Capital Partners、The Stable、JTRE、InVisionのCEOのClark Valberg、Targetの元最高戦略およびイノベーション担当役員のCasey Carl、およびFirebaseの創業者Andrew Leeである。

3DENの最初のスペースは3月15日にオープン予定だが、Silverはニューヨーク市内のさらに4拠点についても交渉中であると語った。

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(翻訳:sako)

宇宙銛(もり)を配備せよ

気を付けろ、宇宙クジラたちよ。君たちに、その惑星を破壊しかねない巨大なヒレで、脅かされている星の住民たち(人類)が、新しい武器を手に入れて、こうしている間にもテストの真っ最中だ。まあここに示した、その武器の小規模版は、せいぜい軌道上の危険なデブリを除去すること位にしか役立たないが、やがては君たちの、ハイパーカーボンの皮やその中心を貫くだろう。

文字通り宇宙銛(もり)だ(クレジット:Airbus)

しかし、現在の技術で可能なことを超えて憶測することは無責任なので、まずは現時点でこの銛で可能なことを要約しておけば十分だろう。

この宇宙銛(もり)はRemoveDEBRIS(デブリ除去)プロジェクトの一部である。これは宇宙デブリの除去のための手法を考案しテストすることを目指すヨーロッパのプロジェクトであり、複数の団体が参加している。微細なものから壊滅的な可能性のあるものまで、様々な大きさの何千もの障害物(宇宙デブリ)が、私たちの軌道周辺に散らばっている。

宇宙ゴミには様々な大きさや形があるので、それに応じてそれらの厄介なアイテムを取り除く方法は複数存在している。おそらく小さな断片に関しては、レーザーを用いて軌道減衰させていけば十分だろう。だが、より大きなものに関してはより直接的な解が必要とされる。そして、一見すべてが航海起源のように見えるが、RemoveDEBRISは、網、帆、そして銛を備えているのだ。(大砲はないのかって?)

以下の動画では、その3つのアイテム(網、帆、銛)がどのように動作するのかを見ることができる:

この銛は、例えば故障していてその軌道から外れているフルサイズの衛星などの、より大きなターゲットを狙うためのものだ。単純なマスドライバーを使って、それらを地球に向かって押しやることもできるが、それらを捕らえて降下を制御することは、より細心の注意を必要とする技術である。

普通の銛なら、単にクィークェグやダグー(2人とも「白鯨」に登場する銛撃ち人)のような者たちによって投げられるだけだが、宇宙では少々事情が異なる。残念だが、EVA(宇宙船外活動)ミッションのために、銛撃ち人を召喚するのは現実的ではない。そのため、全体を自動化する必要がある。幸いなことに、プロジェクトはターゲットを識別し追跡できるコンピュータビジョンシステムもテストしている。それがあれば、あとは銛をターゲットに向けて発射して巻き取れば良い。これが今日衛星によって実証されたことだ。

Airbusが設計したこの小さな装置は、クジラに撃ち込む銛(トグリング・ハープーン)のような動作をする。撃ち出されるとターゲットに突き刺さって回転し、抜けにくくなる。明らかにこれは一度きりの使用を想定されたデバイスだが、特に大きくはなく、一度に複数の軌道上に迎撃用に展開することができる。一度ターゲットを巻き取ったあとは、帆を開くことによって(上記のビデオにも示されている)、再突入を早めることもできる。推進力をほとんど、またはまったく使用せずに、すべてを行うことができるため、運用は非常に簡単になる。

明らかに、これは宇宙クジラたちにとってはまだ脅威ではない。だがいつか私たちは、それらのモンスターたちを仕留めるのだ。

(注)宇宙クジラ(starwhale)という呼びかけは、STEAMのゲームであるSTARWHALの名前にインスパイアされたもの

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(翻訳:sako)

Uber、運転手数の制限でNY市を告訴

Uberがニューヨーク市を相手取って訴えをおこした、とVergeが報道した。Uberは、ドライバーの数を制限する同市のルールをひっくり返したい。昨夏、NY市はドライバーへの新規ライセンス発行を12カ月間、一時的に停止する法案を承認した。

UberとNY市の戦いは数年に及ぶ。NY市の市長Bill de BlasioはUberを規制する法案に何年も賛成してきた。そしてNY市議会はようやく新ルールを2018年8月に可決した。もちろんUberは規制に猛反対してきた。採決の前は、ヘビーユーザーに電話をかけて地元選出の議員にUberのサポートを依頼するよう、お願いしさえした。

議員たちが、ドライバー制限になぜ賛成なのか、その理由はいくつかある。まず1つは、UberやLyft、その他の配車サービス企業によってマーケットが急に大きく変わり、タクシーライセンスを持っている人が苦しんでいる現実がある。ライセンスの価値は大きく下がり、そうしたライセンスを取得するのに大枚をはたいたドライバーたちは経済的困難を抱えている。

2つめに、配車サービスが交通混雑を引き起こしているということだ。UberのユーザーたちはUberを利用するようになって車を所有しなくなった。同時にUberは、地下鉄やバス、自転車といった他の多くの交通機関にも取って代わっている。

交通機関の使用パターンの変化に加え、NY市では多くのドライバーが運転しながら、次の乗車を待っている。こうした客の乗っていない車が道路を塞いでいる。

3つめに、こうした変化に伴う経済的な理由がある。Uberはドライバーと乗客をマッチングするマーケットプレイスだ。規制は、タクシードライバーに対してほど配車サービスドライバーに対しては厳密ではない、という事実をUberは利用しようとしている。そうしてUberは、必ずしもマッチできるわけではないのに、多くのドライバーを受け入れることができるわけだ。結果としてUberは賃金を下げるためにマーケットの不均衡をならすことができる。

新法案の採決の一部として、NY市は配車サービスドライバーの最低賃金も決定した。今後この最低賃金は消費者に跳ね返ることになるかもしれない。しかし多くの人が、インフラ投資と交通渋滞という点で多くの問題を生み出している公共交通機関から遠ざかってきた。

ニワトリ卵の状態だ。もし誰も地下鉄を利用することに興味を示さなかったら、より良い地下鉄システムは期待できない。そして信頼できるものにするための十分な投資がなければ、地下鉄に頼る人は見込めない。

原文へ 翻訳:Mizoguchi)

真の検証のススメ:あなたのスタートアップが評判倒れにならないために

米国市場への参入を望んでいるイスラエルの起業家たちに最初に尋ねることの1つは、自社の製品やサービスが狙っている市場でどのように受け入れられているのかを、私たちに説明してもらうことだ。どのようなフィードバックを受け取っているのか?潜在的顧客層は、チームが売っているものを熱望しているのだろうか?

より広いビジョンと初期の製品自体に対する検証が、意欲的な起業家にとっては、重要な位置付けでなければならない(訳注:本記事の「検証」はValidationの訳である。すなわち「目的に対して妥当であるかを確認する行為」のことで、特に「市場における妥当性の検証」を指している)。会社が正しい軌道に乗っているのか、それとも間違った道をたどって時間を無駄にしているのかを知るための唯一の方法が、製品をテストして具体的なフィードバックを得ることなのだ。ただし、自社の成功の為には、積極的な市場検証がいかに重要であるかを理解している経験豊富な創業者であっても、間違った方向の検証を追いかけることに気を取られてしまうことがしばしばある。

すべての検証が等価なものではない。創業者にとって、意味のある検証と、自身を気持ちよくさせる以上の意味がない虚栄心に満ちた「勝利」とを区別することは非常に重要なのだ。偽りの検証はいたるところにあるからだ。以下に紹介するのは、創業者たちが注意する必要のある、いくつかの良くある罠である。

すべての顧客が同じというわけではない

創業者は、市場に参入する時点で勧誘しようとする顧客数が多すぎないか、あるいは少なすぎないかには注意深くなければならない、もしそれが最終的に狙っている市場セグメントではないとしてもである。もし初期の顧客層が、最終的に獲得したい顧客層と異なる場合は、その初期の顧客たちが求めることや、彼らが提供するフィードバックによって、短期的な目標が歪められ、ビジネスを誤った方向に進めてしまうだろう。

外に出て潜在的な顧客からの現実的で具体的なフィードバックを得ることを恐れないのが、最高の企業や創業者というものだ

これは特に、米国の外からやってくる企業の場合によく見られるものだ。スタートアップたちはそのホームマーケットで顧客の長いリストを保持しているが、その顧客たちは米国の顧客とは同じニーズを持っているかも知れないし、そうではないかもしれないのだ。しかし、こうしたスタートアップたちが自国から外へと拡大する「準備」を整えようとして、彼らはその製品を投資家たちや異国の顧客に売り込むために大変な苦労をすることになる。なにしろその製品は自分たちの狭いマーケットで検証されただけの馴染みの薄いブランドなのだ。多くの場合、初期の顧客たちは、より大きな米国市場での競合的な製品に触れたことがないか、そもそも解決しようとしている問題が異なっているために、スタートアップに対して誤ったメッセージを送ってしまう。

顧客を確保することは、あらゆるスタートアップの成功にとって明らかに重要であり、スタートアップが初期にどのように自らを売り込むかを決めるのに役立つ。それでも創業者は、そうした顧客の系統をきちんと文脈の中で捉えることができなければならない。そして長期的なビジョンを前方の中心に備えておかなければならないのだ。正しい属性の顧客があなたの製品を検証するまで、その製品は本当に検証されたとは言えないのだ。

大企業とのパイロットプロジェクトは?

大企業たちは、次の成長段階を推進するための、次世代最先端技術を常に模索している。これこそが、イスラエルのような、AI、IoT、サイバーセキュリティなどに関する豊富な才能を擁する国が、企業イノベーションラボの設置を多く受け入れている理由だ。

一見したところでは、これはイスラエルの起業家にとって素晴らしいことに思える。なぜなら、それは彼らに世界最大の企業たちへの露出とアクセスを与えてくれるからだ。だがそうしたグループとの近さやフィードバックが全てではない。これらのイノベーションラボの多くは、地元のスタートアップたちを、そのプログラムへ受け入れている。これは、特に初期の段階では明らかに、創業者たちにとってエキサイティングなものになる可能性がある。その大企業はやがて、集まったきたスタートアップと、その製品のテストを行うパイロットプログラムの実施を狙うだろう。もちろんそれはスタートアップにとって有益なものである。しかし、この1社だけの顧客を獲得しても、将来の成功が保証されるとは限らないし、真の意味で製品が検証されるわけではない。

大企業とパイロットプロジェクトを実施できることは、素晴らしい機会ではあるものの、勤勉な創業者ならその他のパイロットの可能性も追求しなければならない。第1に、パイロットプログラムは必ずしも実際の採用につながるわけではないので、創業者たちは全ての卵を1つのカゴに入れてしまうことは避ける必要がある。第2に、ただ1社の大口顧客から創業者たちが受け取るフィードバックは、顧客セグメント全体を代表するものではないかもしれないのだ。単に1つのイノベーションハブの中にいるだけでは、長期的な成功のためには充分でないことはよくある。

スタートアップの友人全員がうちの製品はクールだと言っているのだが…

これは明らかに危ないことのように思えるかもしれないが、相変わらずあらゆる場所で見かけることができる。初めて創業を行った者は、自信過剰に陥りやすく、自分たちや自分たちの製品に対する良い評判を過剰に受け取りやすい。シリコンバレーのような非常に混み合った市場では、圧倒的な数の新しいスタートアップが生み出されているため、冷静で偏りのないフィードバックを得ることは困難である。

「あなたの製品は素晴らしい」と言われることは、単に嬉しいだけでなく、盲目的な中毒を引き起こす可能性がある

これは特に、自社の製品や特定のテクノロジの検証を始めたばかりのスタートアップに、よく当てはまる。「よくわからないな」と言う相手へのアプローチを恐れて、自分の聞きたいフィードバックばかりを追いかける創業者を見かける。そうした肯定的なフィードバックはしばしば、他の起業家から寄せられるものだ。だがそうした起業家たちは、テクノロジーの一部に感心してはくれるが、明らかに本当の顧客としてそれを買って使ってくれるわけではない。

間違った人たちからのフィードバックを自ら求めることによって、創業者たちは、市場の中で望まれること望まれないことをはっきり告げてくれる潜在的な顧客層の声を直接聞くことなく、製品の間違った側面に焦点を当ててしまう。

1000万ドルを調達できた。これは価値が認められたってことでは?

VCからかなりの額のラウンドを得ることさえ、偽りの勢いをつけてしまうことがある。このトピックについては多くのことが書かれて来たが、特定の分野の起業家たちにとっては、多額の資金を調達することが、いままでになく容易になっている。これまでにないほど、多くのシード基金が存在している。シード段階とシリーズA段階における評価額と取引額は上昇を続けている。これが本当に意味していることは、1つのスタートアップに対する成功/失敗の賭けが、会社のライフサイクルの早い段階で行われているということなのだ。

あるVCが企業への投資を決定したからといって、そのスタートアップが約束の地に到達したということは意味しない。VCはあなたの顧客ではないのだ。そして彼らが提供する資金はビジネスを発展させるためには重要なものである一方、対象とする市場に売り込めるかどうかの真の検証の代わりにはならないのだ。

勝ったぞ!

創業者は、表彰や広報活動が自社の事業に与える目に見える影響を、誤解したり過大評価したりしがちだ。起業家たちが、これまで勝ち抜いたコンペのことや、どんなトップ10リストに含まれているかを自慢してくるのは、見慣れた光景である。誤解しないで欲しいのだが、表彰されることそのものが悪いわけではない。それはスタートアップへ人材をひきつけて採用する役にたつだろう。しかし創業者は、その御利益には限度があることを認識しなければならない。真の検証には役立たず、往々にして投資家や潜在的な顧客がスタートアップを評価する際には、意味がないことがほとんどなのだ。

検証への道のりには、いくつかの潜在的な罠がある。起業家がゴールから目をそらしたならば、罠に落ちるのは簡単だ。「あなたの製品は素晴らしい」と言われることは、単に嬉しいだけでなく、盲目的な中毒を引き起こす可能性がある。外に出て潜在的な顧客からの現実的で具体的なフィードバックを得ることを恐れないのが、最高の企業や創業者というものだ。もしそれをしていないのならば、単に自分のビジョンを狂わせる可能性がある偽の検証の影響を受けやすくしているだけのことなのだ。

画像クレジット: VLADGRIN (opens in a new window)Shutterstock

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(翻訳:sako)

血液検査を数分に短縮するバイオテックAIスタートアップSight Diagnosticsが278万ドルを獲得

イスラエルの医療機器スタートアップSight Diagnosticsは、AI技術による高速な血液検査技術に278万ドル(約3億0700万円)のシリーズC投資ラウンドを獲得した。

同社はOLOと呼ばれるデスクトップ型装置を開発した。患者の血液をそのまま垂らしたカートリッジを手で挿入すだけで、解析が行われるというものだ。

この新規資金は、同じくイスラエルに拠点を置くベンチャーキャピタルLongliv Venturesと、多国籍コングロマリットCK Hutchison Groupのメンバーからもたらされた。

Sight Diagnosticsによれば、とくにに技術的、商業的拡大を支援するシリーズC投資を求めていたと言う。この分野のCK Hutchison Groupのポートフォリオには、ヨーロッパとアジアの1万4500件以上にのぼる健康、美容関連企業が含まれており、Sight DiagnosticsのOLO血液検査装置の市場開拓ルートは確保された形だ。

このラウンドに含まれるの他の戦略的投資家には、医療系慈善事業家でNicklaus Children’s Health Care Foundation(ニクラウス子ども医療基金)の理事でもあるJack Nicklaus2世、医療系インパクト投資家Steven Esrick、そして匿名の「大手医療機器メーカー」も含まれている。

Sight Diagnosticsはさらに、この装置を「世界の主要市場」に送り込むための戦略的パートナーも探していると話していた。

共同創設者でCEOのYossi Pollakは、声明の中でこう話している。「私たちは、次世代の診断によってすべての人の健康を増進させるという私たちの社命を心から信じてくれる、そしてとりわけ重要なこととして、金銭的支援を超えた大きな価値を与えてくれる個人または団体を探しました。すでに私たちはヨーロッパ全域での手応えを感じていますが、世界の主要市場でOLOを展開してくれる戦略的パートナーも増やしたいと考えています」

同社はまた、今年中に「ヨーロッパのいくつもの国」で、消費者が実際にOLOを利用できるようになることを期待しているという。

シリーズCには、OurCrowd、Go Capital、New Alliance Capitalといった投資会社も参加している。2011年に創設されたばかりのこの医療技術系スタートアップは、昨年にシリーズAとシリーズBを獲得したばかりなのだが、今日までに500万ドル(約5億5525万円)以上を集めた。

「私たちはヨーロッパの、とくにイギリスとイタリアの有望な顧客の協力を得て試験を行ってきました」と、共同創設者Danny LevnerはTechCrunchに話してくれた。「ヨーロッパは、パイロット試験、つまり大手顧客の所有する施設で現実的な条件のもとで行った細かい臨床評価が、市場の受け入れにつながる土地です。こうすることで、ユーザーはこの装置ならではの性能を体験でき、それが大量の初注文につながり、やがては広く普及することになります」

この資金は、アメリカの規制をクリアしてOLOの認可の得るために、米食品医薬品局(FDA)で実施中の一連の審査を通すための活動にも使われている。現在は、規制当局に資料を送り審査を待っている状態だと、Levnerは話していた。

「2018年12月、アメリカの3つの臨床現場での試験を完了し、今月末にFDAにデータを送ることになっています。私たちの望みは、510(k)FDA申請を行い、CLIA(臨床検査改善修正法)認証を受けた研究室での使用を可能にして、続けてCLIA免除手続きによって、すべての診療所で使えるようにすることです。私たちはアメリカでの試験結果に大変に満足しています。1年以内に510(k)FDA申請が通ると期待しています」と彼は話した。

「現在調達した資金を元に、まずイギリス、イタリア、北欧諸国を皮切りに、ヨーロッパ市場での商品化にフォーカスしてゆきます」と彼は言う。「アメリカでは、腫瘍学と小児科に新しい市場を探しているところです」

投資は、OLOで対応できる血液検査の範囲を広げるための研究開発にも使われる。

以前、彼らはTechCrunchに、その装置を、血液検査のポートフォリを管理できるプラットフォームに発展させたいと語っていた。血液検査を重ねることで、「個別の医院の検証」を経て、個人の結果が蓄積されるというものだ。

最初のテスト用OLOでは完全血球算定(CBC)が行われ、機械学習とコンピュータービジョン技術を使って、患者の指先から採取した1滴の血液の高解像度写真のデジタル化と解析が装置内で実行される。

それは、静脈血を採取して遠くの検査施設で解析を行うという今の方法に取って代わるものだ。OLOによるCBCは、ほんの数分で完了すると宣伝されている。OLOなら専門家でなくても簡単に実行できるという。血液検査は、専門機関に外注し、解析結果を数日間待つというのが現状だ。

研究開発の側では、Levnerは、OLOで白血病や鎌状赤血球貧血などの血液の疾患の診断を行うといった「膨大な可能性」を感じているという。

「指先から血液を少量だけ採るという低侵襲な検査方法のため、新生児スクリーニングにもOLOが使える可能性があります」と彼は言う。「そのため、次なる喫緊のステップは、新生児スクリーニングのための検査手順とアルゴリズムを確立させることです」

Lenverが私たちに話したことによると、パイロット試験では「オペレーターと患者の高い満足度」も認識できたという。「この試験で際立っていたのは、OLOの指先から血液を少量だけ採取する方法が好評だったことです」と彼は話す。

ひとつ注意すべき点として、Sight Diagnosticsがまだ、OLOの臨床試験に関する論文審査の結果を発表していないことがある。昨年7月、論文審査のある雑誌での論文掲載が保留されていることを、彼らはTechCrunchに伝えている。

「審査を経た論文の出版に関して、私たちはイスラエルでの臨床試験の結果と、アメリカで終了したばかりの臨床試験結果を組み合わせて、より確実な内容にしようと決めました」というのが現在の同社の話だ。「アメリカのFDAの認可を得てから、論文に集中しようと考えています」

[原文]
(翻訳:金井哲夫)

Amazon、電気自動車Rivianの資金調達7億ドルを主導

3カ月前に初の製品となる車2種をデビューさせた電気自動車メーカーのRivianは、Amazonが主導するラウンドで資金7億ドルを調達した。

このニュースは、GMとAmazonが電気自動車への投資の話し合いをしているというReutersの報道に続くものだ。

「我々は、電動交通の未来についてRivianが描いているビジョンに感激した」とAmazonのワールドワイド・コンシューマー担当CEO、Jeff Wilkeは声明で述べた。「RJはプロダクトのポートフォリオとテクノロジーをマッチさせることで、素晴らしい組織をつくった。そのようなイノベーティブな企業に投資できることに興奮している」。

Rivianは、設立以来ずっと鳴りを潜めていた興味深い会社だ。創業者でCEOのRJ Scaringeが2009年にMainstream Motorsとして設立し、2011年に社名をRivianに変え、フロリダを後にした。現在、同社は米国内4カ所の開発拠点と英国のオフィスに従業員750人超を抱えている。従業員のほとんどは、拡張力のある自動車サプライチェーンに近いミシガンにいる。

Rivianはまた、カリフォルニア州のサンノゼとアーバインにも拠点を置いていて、そこではエンジニアが自動運転車のテクノロジーに取り組んでいる。Rivianは、三菱自動車がDiamond-Star Motorsというジョイントベンチャーをクライスラーと立ち上げ、 Eclipse、Plymouth Laser、Dodge Avengerなどを生産していたイリノイ州ノーマルにある工場を2017年に買い取った。

Rivianはここ数年間活動的ではあったが、大きなカミングアウトは昨年11月のLAオートショーだった。その際、電気で走るR1TピックアップとR1S SUVを発表した。フレキシブルなスケートプラットフォームを使ったこ米国内顧客への納車は2020年後半に始まる見込みだ。

原文へ 翻訳:Mizoguchi)

マリオットの情報流出、自分が被害者かどうか確認できるようになる

世界最大のホテルチェーン、マリオットはスターウッド・ホテルズの情報流出問題に関し、被害にあっているかどうかを顧客が自分で確かめられるようにする。

マリオットは、“宿泊客が暗号化されないまま流出したパスポート情報の中に自分のものが含まれるか、自分のパスポート番号を調べられるメカニズム”を準備したことをTechCrunchに明らかにした。この措置は、昨年明らかになったデータ流出で500万件ものパスポート番号が暗号化されない状態で盗まれたことを認める先月の発表に続くものだ。

セキュリティ会社OneTrustが提供するチェッカーでは、ユーザーは名前、電子メールアドレス、パスポート番号下6桁といった個人情報を尋ねられる。

マリオットは、昨年9月に明らかにした情報流出で“最大3億8300万人の宿泊客”の名前、住所、電話番号、生年月日、性別、電子メールアドレス、予約情報などを含むデータが盗まれた、としている。その後、暗号化された2000万超のパスポート番号と、860万もの支払いカード情報が盗まれていたことも明らかになった。クレジットカードに関しては盗まれたもののうち情報流出の時点で35万4000のカードが有効だった、と昨年9月に明らかにしている。

市民向けにチェッカーを使えるようにすることは、情報流出以来、この大規模な事件のマリオットの対応の中では前向きなものだ。マリオットは初期対応を誤り、多くのセキュリティ専門家が自腹でギャップを埋めるために介入した。

チェッカーはすぐに結果を表示せず、ユーザーは返事を待つ必要がある。それがどれくらいかかるのか、マリオットは明らかにしていない。自分が情報流出の被害にあっているかどうかを調べるのにサードパーティーに自分のデータを提出しなければならないというのは、ある種皮肉ではある。個人情報を提出するというのは文字通り、情報流出の被害にあった人が最もしたくないことだ。しかし、それが今私たちが暮らす社会であり、そうであるというのは最悪だ。

チェッカーの使用は自己責任で。

イメージクレジット: Getty Images

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今度はドバイの空港がドローンで機能停止

今朝(米国時間2/15)、ドバイ国際空港が、近傍を飛行するドローンを目視したため約30分、フライトを閉鎖した。出発便は午前10時13分から午前10時45分まで“ドローンと疑われるアクティビティ”のため停止したが、到着便は着陸できた。

空港のソーシャルチームはTwitterで状況をアップデートし、“無許可で飛行するドローンはUAEの法律により有罪になると当局は警告した”、と述べている。

[無許可ドローンによる30分弱の遅れののち常態を回復した]

DXBはつねに、世界で旅客数の最も多い空港のトップスリーに入っている。2018年には、同空港は8800万人あまりの旅客を数えた。最近世界の空港は一連の恐怖を経験したが、その中には個人のドローンが商用空港の至近を飛行したケースもある。昨年のホリデーシーズンの最中には、ロンドンのガトウィック空港が同様の懸念で1日半閉鎖した。

このようなアクティビティの増加によりドローンのメーカーの対応も求められ、法律によるドローンの規制を求める声も大きくなっている。

DXBによると、同社は地元当局と連携してこの事件に対応している。“ドバイ空港は適正な機関と密接に協力して空港運用の安全を確保し、顧客へのいかなるご不便をも最小化すべく努力している”、と同空港はThe New York Timesに載った声明で述べている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

AsteroidはAR開発のためのインターフェースエンジンを開発中

われわれが今日のコンピュータと対話する際には、マウスを動かし、トラックパッドを撫でて、画面をタップする。しかし、マシンがそうした操作にうまく反応しないこともよくある。人間がどこを見ているのかセンスするのはどうだろう? その微妙なジェスチャーによって、ユーザーが何を考えているのかを伝えるのだ。

Asteroidは、将来のインターフェースが、生体を直接センスしたデータをはるかに多く取り込むことになる、という考えを提唱して、デベロッパーの期待を集めている。そのチームは、macOSおよびiOS用のノードベースのヒューマン・マシンインターフェースエンジンを開発した。それにより、デベロッパーはインタラクションを定義して、Swiftアプリケーションにインポートできるようになる。

「新しいヒューマン・マシン・インターフェース技術について興味深いのは、ユーザーが今日『ダウンロード』できるのと同じくらい『アップロード』できるようになるかもしれないという希望です」とAsteroidの創設者Saku PanditharatneはMediumへの投稿に書いている。

その開発環境に注目を集めるために、彼らはクラウドファンディングのキャンペーンを始めた。それにより、今日市販されているバイオセンサーによって可能となるユーザー体験の深さを確認するための材料を提供する。Asteroidは、ハードウェアのスタートアップになりたいとはまったく思っていないが、インタラクション設計の即戦力となるツールにはどのようなものがあるのかを、そのキャンペーンによってデベロッパーに広く示すことができる。

こんな開発キット、そんな開発キット、そしてあんな開発キットもある。トータルパッケージを求めて参加した開発者は、山ほどの電子部品やケースといったハードウェア素材を受け取る。それらを工夫して組み合わせ、インターフェースのソリューションを開発するのだ。450ドルのキットには、視線追跡、脳・コンピュータインターフェースのための電極、そしてモーションコントローラを組み立てるための電子部品などが含まれている。参加者は、200ドルの視線追跡キットを単独で購入することもできる。それはすべて完全に実用本位のもので、Asteroidがハードウェアを売って大儲けできるというわけではまったくない。

「長期的な目標は、できるだけ多くのARハードウェアをサポートすることです。独自のキットを作成したのは、実験室の外には適切なものが豊富にあるとは考えていないからです」と、PanditharatneはTechCrunchに語った。

これらのマニアックなハードウェアを見ると、当分はなんだか趣味の仕事のように思われるかもしれない。しかし、いくつかのAR/VRデバイスには、視線追跡機能が組み込まれていて、ほとんどの市販のVRデバイスより1世代進んでいる。それに、脳・コンピュータインターフェースシステムが組み込まれたハードウェアなど、他ではほとんど見ることはないだろう。Asteroidは、スマートフォンのカメラとマイクだけでも、彼らのエンジンは十分に機能すると言っている。とはいえ、開発キットがそれなりによく売れているのは、多くのデベロッパーが特定のハードウェアを対象に開発しているわけではないということを示している。人間が世界に対処している方法とよく絡み合うように、インターフェースがもっと成長することに期待して、実験を続けているのだ。

Panditharatneは、この会社を設立する前は、OculusとAndreessen Horowitzに勤めていた経験を持つ。そこで彼女は、ARとVRの将来に焦点を合わせて、多くの時間をつぎ込んでいた。 Panditharatneは、Asteroidは200万ドル以上の資金を調達した、と語ったが、まだその資金の出所を詳細には明らかにしていない。

同社は、彼らが始めたIndiegogoキャンペーンから2万ドルを集めることを目指しているというものの、その真の目的は明らかに売り込みであり、自社のヒューマン・マシンインタラクションのエンジンを多くの人に知ってもらうためのものだろう。Asteroidは、その製品の順番待ちリストに加わるためのサインアップを、サイト上で受け付けている。

画像クレジット:Bernhard Lang

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

企業のAI利用の前進と成長を助けるPeltarionが$20Mを調達

SpotifyやSkype、King、TrueCaller、Googleなどの元役員たちが創業したスウェーデンのPeltarionが今日(米国時間2/14)、シリーズAで2000万ドルを調達したことを発表した。このラウンドをリードしたEuclidean Capitalは、ヘッジファンドの億万長者James Simonsのファミリーオフィスだ。これまでの投資家FAMとEQT Venturesも参加し、このラウンドで同社の調達総額は3500万ドルになる。

もちろん、今の世の中、AIプラットホームに不足はない。そんな中でPeltarionは、“オペレーショナルAI”と同社が呼ぶものに特化している。そのサービスは、データの前処理からモデルの構築、それらのプロダクションへの導入など、企業がAIを利用する場合のあらゆる局面を支援するエンドツーエンドのプラットホームだ。このすべてがクラウドで動き、デベロッパーはグラフィカルなユーザーインタフェイスから自分のモデルの構築と試験を行なう。これに関しとくに同社が強調するのは、Peltarionのユーザーは低レベルのハードウェアやソフトウェアをいっさい扱う必要がなく、ひたすらモデルの構築にフォーカスできることだ。

PeltarionのCEOで協同ファウンダーのLuka Crnkovic-Friisは次のように説明する: “オペレーショナルプラットホームの上でAIシステムを構築しデプロイすると、そのスピードはTensorFlowなどの業界標準のツールを使った場合に比べて桁違いに速い。所要人員もはるかに少ないし、AIの高度な専門知識も要らない。それによって、これまでよりもずっと多くの企業がAIを運用でき、問題解決と変化の創成に集中できるようになる”。

しかし企業の選択肢がとても多い今の時代に、わざわざ無名に近いPeltarionを選ぶ理由はあるだろうか? Crnkovic-Friisはこう語る: “うちのクライアントのほぼ全員が、特定のクラウドプロバイダーへのロックインを心配している。ストレージやコンピューターを使うだけならどのプロバイダーも似たようなものだし、他のプロバイダーへの移行もできる。しかし彼らがとても心配しているのは、AWSやGCP、Azureなどのプロバイダーが提供しているさまざまな高レベルのサービスだ。それらが、完全なロックインを作り出す”。

もちろんPeltarionは、そのプラットホームがユーザーをロックインしない、と主張する。また、他のプラットホームは、個々の企業のオペレーションのヘルプではなく、自らの商用製品としてのAIサービスを作るためにAIの専門技術を大量に使っている、という。確かに同社の言うとおり、大手テクノロジー企業以外では、多くの企業がAIのスケーラビリティで苦戦している。“彼らはスターティングブロックの上で止まってしまう。二つの大きなバリヤがあるので、走り出せない: 未熟なパッチワーク的技術と、スキルの不足だ”、とCrnkovic-Friisは述べる。

同社は新たな資金を、開発チームの増員と、コミュニティやパートナーと協働できるチーム作りに向けていく。また、アメリカなどそのほかの市場における成長にも、充てていきたい、という。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Amazonの第二本社撤回でNYCは何かを失ったのか

意地悪で押しの強いニューヨーカーたちに付き合うよりも、第二本社計画を撤回することをAmazonは選んだ。そして事の推移を見守っていた人たちは、ニューヨーク市(そして地元の政治家)は抵抗したから損をしているとほのめかしている。

彼らは間違っている。

ニューヨーク市の現在の失業者率は4.3%で、国平均の3.9%より高いが、それでもおかしい数字ではない。Amazonの2万5000もの雇用(高給の仕事だ)を生み出すという約束は、この失業率の数字を少なくするかもしれない。しかしそうした創出される職にニューヨークやクイーンズの住民が就けるというはっきりとした保証はない。そうした職が、他の地域からやってくるAmazon社員に流れるかもしれないことを示す動きもある。

Amazonが第二本社をニューヨークに置くということが発表される前からAmazon社員はクイーンズ地区の不動産を購入し始めていた。

ニューヨークにオフィスタワーを建設するためにAmazon(世界で最も時価総額の大きな企業の一つだ)に何十億ドルもの税制上の優遇措置を与えないなんてニューヨーカーは馬鹿だ、という反応は、この国が市民の利益より企業の利益を優先していることの表れだ。

商業をAmazonに引き渡すことなしにニューヨークが地元経済を浮揚させるためにできることはある。クイーンズにオフィスを構えるためのインセンティブはニューヨークにすでにあるのだ。

さらに重要なことに、クイーンズの住人はAmazonがやってくることで周辺が様変わりするのではないかというもっともな懸念を抱いていた。

地元の政治家が誇張しない、というわけではない。ニューヨークの政治は汚職、収賄、ゆすり、おかしな駆け引き(私は交渉の場にはいなかった)と全く無関係ではない。しかし、どちらの側にも“過ちがあった”とは言えるだろう。

長期的にはAmazonはニューヨークの経済に恩恵をもたらしていただろう。そしてAmazonの幹部は地元住民の懸念に耳を傾け、成功例となっていたかもしれない。

というのも、Amazonがニューヨークの経済にとって有益になる確固とした理由があるからだ。第二本社をニューヨークに置くというニュースが発表されたあと、Noah SmithはBloombergに以下のように書いている。

Amazonはロングアイランドシティに設けるオフィスの資産税を払うだろう。また、法人税も払う。これは利益に基づいてではなく、資本ベースでだ。従業員、特に高給取りの従業員はニューヨーク市に個人の所得税も払う。もちろんそうした税金のいくらかは、市がAmazonに約束したインセンティブと相殺される。インセンティブは最大20億ドルで、Amazonが何人雇うか、いくつ建物を建設するかによって変わる。そうしたインセンティブは、企業の投資をひきつけるのには役に立たない。しかし長期的には、ニューヨーク市が第二本社から得る税収はおそらくコストをかなり上回るものとなるだろう。

しかも、ここには、周辺のビジネスや不動産価値へのAmazon効果は含まれていない。他のテクノロジー企業はAmazonがいるためにクイーンズに移ってきたがるだろう。従業員はラテからMRIに至るまであらゆるものを購入するのにお金を使う。第二本社が地元に及ぼす経済効果は年間170億ドルとの予測もある。その数字を半分に割ったとしても、そして推測が楽観的だったとしてもクイーンズの経済効果は最初の費用をすぐに取り返すだろう。これは、たとえば悪のささやきがあったウィスコンシン州のFoxconn工場とはまったく異なる(編集部注:Foxconnはトランプ大統領との話し合いの結果、工場計画を復活させた)。

そうした恩恵は本当だろう。しかし、雇用や支出が地元経済、住宅、交通、そして新住民の需要のある行政サービスに及ぼす影響を考えたとき、ニューヨークのような市にとってその恩恵がどれだけのものになるのか、を測るのは難しい。

シアトルやサンフランシスコが直面している住宅危機はまさしく、テクノロジー企業が急激に成長するとき(そこに富が伴うとき)どうあって欲しいのか行政が注意しなければならないことを示すものだ。

いずれにせよ、米国の都市はテック企業により急激に様変わりしている。テクノロジーが国の経済をデジタルを持てるものと持たざるものに二分したように、テクノロジー企業は持てる都市と持たざる都市を作り出している。

ブルッキングス研究所のMark MuroとRobert MaximはUS NewsとWorld Reportで下記のように指摘している。

学者は、熟練労働者への偏見もあり、テックが都市のヒエラルキーを変えるかもしれないと何年も疑いの目を向けてきた。10年以上前、研究者のPaul Beaudry、Mark Doms、Ethan G. Lewisは、パーソナルコンピューターを最も初期に素早く導入した都市では、相対的賃金が最も早く増加するとの考えを示した。いまや、我々が行なった調査も含め、デジタルテクノロジーが都市経済の成長に大きく貢献し、デジタルテクノロジーの大きなインパクトによりボストンやサンフランシスコのようなスーパースター都市が他都市を大きく引き離しているというさらなる証拠がある。

プリンストンのエコノミストElisa Giannoneは最近、1980年からの都市における賃金の変化をまとめて発表した。そこには、熟練したテック労働者とテック産業集合化の面で恩恵が増大したことが反映されている。同様に、ブルッキングスの研究でもかなりデジタル化された都市、往々にして沿岸のテックハブである数少ない都市はさらにデジタルになり、成長や収入でも抜きん出ていることがわかった。我々が“全てのデジタル化”と呼ぶものは、アメリカの経済情勢の不均一をさらに悪化させている。

ナッシュビルにオペレーション・センターを設けるというAmazonの判断は地元にはるかにポジティブな結果をもたらす、と評価するのは簡単だ。

しかしアメリカの都市をミスコンテストのようなスタイルで競争させ、都市が数十億ドル企業をなだめるのに懸命になるのは、実に不快だ。

地元コミュニティの怒りをかうことなく都市でいかに発展するかという例としては、Googleがいかにニューヨークで発展しているかが良い参考例になる。Googleはニューヨークに1万4000もの雇用をさらに生み出そうとしていて、ウェストサイドのキャンパス拡張に10億ドルを投じることも約束した。

見たところ、Googleはニューヨークの、あるいは他都市からやってくる人材争奪で存在感を増している。それは、ニューヨークが戦略上重要だからだ。Amazonのニューヨーク本社を撤回するという決定はそうした人材へのアクセスを失うだけでなく、他のテック企業がニューヨークに進出する機会を逸することになり、またはローカル企業にとっては優勢を維持することを意味する。

なので、ニューヨークの地元テックコミュニティがクイーンズに次のAmazonをつくることで2万5000もの雇用を提供し、それを達成するためにコミュニティとうまくやっていくことを祈るばかりだ。

最近、デモクラシーは神を金に取って変えた宗教のようだ。Amazonの追い帰しは、ニューヨークが少なくとも市民の責任を方程式のどこかに盛り込んだことを表している。

イメージクレジット: David Ryder / Getty Images

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Liltは中核に人間を据えた機械翻訳ビジネスを構築する(お望みならAI書記も)

ウェブサービスで読むあらゆる文章を、速やかに自動的に翻訳できる能力は大したものだが、本当に使えるのは、概略で足りる外国語の記事やメニューや道路標識といった程度の文章だ。この素晴らしいツールは、もっと有効に使われるべきではないだろうか。それは可能だ。Liltという企業が、もう密かに始めている。しかも嬉しいことに、人間的な要素を置き去りにしようとは考えていない。

人間の翻訳者の専門知識と、自動翻訳のスピードと汎用性とを組み合わせれば、双方のもっとも優れた能力を引き出すことができ、大きなビジネスになる可能性がある。

機械翻訳の問題点は、それを本気で使おうとしたときにわかるが、下手なことだ。トマトとポテトと間違えることはないが、一連の言葉の文字通りの意味を正確に訳す以上のことになると頼りない。ほとんどの場合は文字通りの意味で事足りる(メニューなどはそうだ)が、長い文章となると、十分とは言えなくなる。

単に利便性の問題ではない。業務においても個人的なものであっても、言葉は重大な障壁になり得る。

「英語でしか読めないものが大量にあります」と、Liltの共同創設者でCEOのSpence Greenは話す。中東で大学院に通いながらアラビア語を勉強していたとき、彼はその問題に遭遇し、英語を話さない人たちの不自由さを知った。

そうした情報は、ほとんどが機械翻訳には適さない内容だと彼は説明する。Google翻訳で訳された説明書を頼りに重機を操作しなければならない事態や、自分の読めない言語でしか移民法が書かれていない国で仕事をする状況を想像して欲しい。

「本、法的な情報、投票に関する資料……、質が求められるものの場合は人間の関与が必要です」と彼は言う。

中東で翻訳の仕事を行い、その後の2011年にGoogleでインターンとして働いていたとき、Greenは機械翻訳に関心を抱いた。ほとんどのシステムで内容が劣化してしまうのだが、質を保ったまま情報にアクセスできるように改善するにはどうしたらよいか。

そうして彼が、共同創設者のJohn DeNeroとともに追求し実現させたのが、翻訳のためのツールとしてだけではなく、翻訳者のためのツールにもなる機械翻訳システムだった。翻訳システムの中で作業することで、翻訳者はより速く、より良い仕事ができるようになり、認知的負荷が軽減される。

Liltのツールの基本的な考え方は、次の文章や段落の作業の参考になる翻訳をシステムが提供するというものだ。文章構成、時制、慣用句などを翻訳者が参照できることで、少なくとも可能性として、より短時間により良い作業ができる。Liltでは、1時間あたりの翻訳語数は5倍にもなると説明している。結果は、人間の訳者だけが行った場合に比べて同等か、それ以上のものが期待できるとのことだ。

「私たちは複数の論文を発表しています。……この技術が有効であることを、私たちはわかっていました。私たちは翻訳者たちと研究を重ね、大規模な実験も行いました」とGreenは言う。しかし、知りたいのはどのように進めたかだ。

大企業に話を持ちかけて興味を持ってもらったのか? 「それを行うことで、大企業は消費者向けアプリケーションにばかり目を向けていることを私たちは感じました。品質の基準はどこにもありません。それが翻訳業界の実態です」とGreenは語る。

学術研究に留まり、補助金を使ってオープンソース化する? 「お金は、ほぼ枯渇状態です」とGreen。911の事件の後、情報収集とコミュニケーション能力の改善という名目で、予算は潤沢に与えられた。しかし、あれから10年が経過すると切迫感が消え、同時に補助金も消えた。

会社を立ち上げた? 「この技術が必要であることは、わかっていました」と彼は話す。「問題は、誰がそれを市場に持ち込むかでした」ということで、自分たちがそれを行おうと決めた。

面白いことに、翻訳の世界の大きな変化は、彼らが本格的に取り組み始めたときに起こった。統計ニューラルネットワーク・システムが、文章のようなものを効率的に効果的に解釈する自然に近い親和性のあるアテンション・ベースのシステムに取って代わられたときだ。文章の中の単語は、画像の中のピクセルと違い、前後の言葉に構造的に依存している。彼らは中核的な翻訳システムを再構成する必要があったが、それが結果的には発展につながった。

両義的な文の機械翻訳で正しい訳語をガイドするGoogleのTransformerシステム

「これらのシステムは、ずっと流暢です。とにかく優れた言語モデルなのです。次に、学習が速い。わずかなアップデートで特定の分野に適応できます」とGreenは言う。つまり、ひとつの分野に限れば、技術書や不動産の法律など、難しい専門用語や特別な法則に素早く対応できるということだ。

もちろん、だからと言ってすぐさま翻訳ビジネスの真ん中に飛び込で、出版からリアルタイムのもの、技術系文書から無数のバーティカル市場にまで広がる世界に、「ほら、AIを使おう!」と言うことはできない。

「この業界には、何であれ現実に自動化することに対して猛烈な構造的抵抗力があります」とGreenは話す。大手出版社には、今使えている方式を変えようという気はなかった。

「有効なものが見つかるまで、私たちはいくつものビジネスモデルを試しました。『うん、この人間を組み入れた方式は問題を根本的に解決してくれる。それを基盤に会社を興そう』なんていう企業はひとつもありませんでした。そこで私たちはバーティカルに統合したのです。大企業や行政と協力して、彼らのための翻訳のワークフロー全体を私たちが持つことにしました」

品質を落とさずに高速化する方式は、基本的に効率性を倍加させる。正確に訳さなければならない文書が大量にあるが、ほとんどを自腹でやらなければならない組織にとって、それはマタタビのようなものだ。

こう考えて欲しい。それぞれ異なる言語を話す20カ国で製品を販売する企業の場合、パッケージ、広告、説明書などの翻訳は、実質的にはいつまでも完了しない作業だ。それが速く安く、高品質でできるなら、そしてそれを一手に引き受けてくれる企業があったなら、渡りに船だ。

「私たちは、Zendesk、Snap、Sprinklrなどと仕事をしています。すべての翻訳作業を引き受けています。これは海外市場への進出を手助けするものです」とGreen。翻訳用の予算や人員に限りがあり、一定期間内で可能な新規市場の開拓が5〜6件だった企業も、Liltを使えば、効率化の度合いにより、同じ予算と人員で開拓件数は2倍から3倍にできる。

現在彼らは、自然な流れとして顧客の獲得に努めている。「去年の第四半期には、初めての営業チームを結成しました」とGreenは教えてくれた。しかし、行政との最初の仕事はとくに励みになった。なぜなら「独特な用語が必要」であり、文書の量も膨大だったからだ。現在、Liltは29の言語に対応しているが、今年末には43言語に対応するという。校正機能は、翻訳者ばかりでなく編集者の作業効率も高めてくれる。

彼らはまた、学術経験者とのつながりを増やすことにも努めていて、Liltの周りに翻訳コミュニティーを構築している。学術経験者は翻訳者に欠かせない情報源であり、言語の専門家であり、大きな市場でもある。科学文献のほどんどは、高度に技術的な内容を他の言語に翻訳することが大変に難しいため、英語でのみ出版されている。

「ハイテク企業はあらゆる才能を吸い取って、アシスタントやらAlexaとやらにつぎ込んでいます」と話すGreenは、優れた研究者が退屈な仕事をさせられていることに腹を立てているように見える。AIやロボティクスのような先端技術の分野では、何度も繰り返されていることだ。

最後にGreenはこう話していた。「この輪を閉じて、書籍の翻訳に挑戦することが私の最大の夢です。儲かる仕事とは言えませんが、第三の目標なのです。もし可能なら、それは何か意味のあることを成し遂げたと気になれる道になります」

まずはアプリの説明書や政府の無秩序な契約書といった仕事から始まるのだろうが、Liltの人間を輪に組み入れた作業方法を受け入れやすい、そうした部類の文書や市場は増える一方だろう。それに、AIと人間が協力し合う未来は、人間が置き換えられる未来よりも心強い。少なくとも翻訳の世界では、人間の手が排除できるようになるのは、ずっと遠い話だ。

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(翻訳者:金井哲夫)

Amazonは過去を見て未来を作る

この20年間で、スマート家電は夢から日常へと進化した。家電量販店Best Buyの中を歩けば、わずか数分でセットアップできる製品が並んでいる。素晴らしいことだ。おまけに簡単に使えるのも嬉しい。大手からも小さなメーカーからも、照明やドアの鍵やスクリーンが発売されている。しかし、そこに問題がある。規格が統一されていないことだ。そんな中で、自社で販売する製品を統合して消費者や量販店に提供するというAmazonの方法は、解決策になり得る。

もちろん、どのスマート家電も役に立つのだが、いっしょにしたときにうまく協調してくれない。スマートホームは、スイッチを入れれば電灯が点くといった具合に簡単なものでなければいけない。AmazonはメッシュWi-FiのスタートアップEeroを買収したことが、それを物語っている。2つ3つより多くのスマート家電からなるスマートホームを形成するのは、至難の業だ。うまく使えなくなる要因がいくつもあり、スマートホームがトランプタワーのように頼りなく感じられてくる。

平均的な消費者にとってベストなものは、Amazonにとってもベストだ。スマートホームをできる限り簡単で便利なものにするには、それを提供する企業は、どの入口からでも同じ感覚で使えるように環境を整えることが大切だ。これはAppleがスマートフォンで実施している方法であり、Appleは、長年、もっとも簡単でもっとも安全なスマートフォンの使用環境を提供してきた。

理屈からすると、Amazonは、Amazon EchoにEeroルーターを同梱させるとか、Echo製品にメッシュネットワークを組み込むことを考えるだろう。いずれにせよAmazonは、Fire TVとEcho製品がAmazonのコンテンツ配信サービスを安定的に利用できるようにするだろう。それが、Amazonがスマートホームで儲ける形だからだ。

Devinが素晴らしい記事を書いて説明しているが、メッシュネットワークは、すべての部屋に入り込もうとしたAmazon自身が生み出した問題の解決策となる。本格的なスマートホームにWi-Fiは不可欠だが、Wi-Fi以外のネットワークもあれこれ存在する。スマートホームとは複雑なものだ。その始まりは20年以上前まで遡る。

無線ネットワークがまだ一般に普及していなかったころ、マニアや金持ちが立てた家では、エレクトロニクスを利用するために他の方法に頼らざるを得なかった。今でも、そのころのプロトコルの新しいバージョンを使っている製品は現役だ。Z-WaveやZigBeeといった通信方式を使えば、ホームセキュリティー・システムに無線監視カメラを接続したり、通常ならネットワークとは無関係なコーヒーメーカーや電灯などを操作できるようになった。

後に登場した無線通信規格は、Z-WaveやZigBeeと競合することになった。2000年代の初めにInsteonが現れ、無線電波と電灯線網を利用した冗長なネットワークを提供した。2014年には、Samsungの協力を得たNest、Qualcomm、ARM、その他の企業がThreadネットワーク規格を導入し、現代的な冗長性と高度な安全性をもたらした。それだけではない。Bluetooth 5、Wi-Fi HaLow、そして見渡せる範囲で使える赤外線信号を使った製品もある。

こうした競合する通信方式によってグループが分かれるため、それらに属する製品を同時に使ってスマートホームを形成し、ひとつのデバイスですべてを操作することは困難になる。スマートホーム製品の初期段階である現在は、さまざまな製品の統一的なコントロールを可能にするために自社製品の使用を促すという形をAmazonとGoogleが作り上げている。

Appleはそれを実行し、なんとか成功した。HomeKitフレームワークでは、iOS機器を家の中央コントロールポイントとして使うようになっている。電灯を点けたければ、iOSに表示されるボタンをクリックするか、今ならHomePodに話しかけるだけでいい。宣伝のとおりに機能してくれるが、対応する製品はAppleの認証を受けなければならず、そのため使える製品の数はAmazon Echo対応のものよりも少ない。

一方、GoogleとAmazonは両手を大きく広げてスマートホームに入ってきた。あらゆる製品に対応する姿勢を見せた。

それが功を奏した。この2年間でスマート家電メーカーは、自社製品がGoogle AssistantやAmazon Alexaに対応することで大きく前進できた。先月開催されたCESでは、便器がAlexaに対応したと発表されてジョークのネタにもなったぐらいだ。

スマートトイレには恐れ入るが、これらネットワークに接続される製品のすべてが、それぞれにセットアップを必要とする。すべての電灯、暖房の温度調節器、トイレも、初めてのユーザーがスマートフォンのアプリを操作して快適に使うことを要求している。ネットワークの設定がどうなっているのか、トラブルが起きたときに何をググればいいのかをユーザーが心得ているものと想定されている。なぜなら、トラブルはかならず起きるからだ。

AmazonのAlexaアプリは助けてくれない。ひとつのアプリは、音声通話、スキルの設定、遠隔操作、Alexaへのアクセスなど、さまざまな機能がに支えられている。ひとつのアカウントにいくつものEchoを登録してしまうと、もう仕事が多すぎて手に負えなくなってしまう。

何かを変えなければ。

スマートホームが新しいデモグラフィックに売り込みをかけようとするなら、難しいものは取り除かなければならず、集中コントロールが最重要となる。ITに詳しくない人でも、音声コントロールハブをいくつか買ってきて、照明をつないで、暖房の温度調節器をつないで、それらすべてをひとつのアプリで操作するよう設定できなければならない。個々の製品のネットワーク方式が異なっていてもだ。

Amazonはすでに、異なるスマートホーム用無線プロトコルに対応するという大きな一歩を踏み出している。2017年、AmazonはEcho Plusを発表した。このバージョンのEchoスピーカーは、ZifBee(ZigBee用Philips Hue LEDライトシリーズ)に対応している。さらに2018年、AmazonはEcho Plusをアップグレードし、温度センサーを搭載して、インターネットがダウンしてもオフラインでスマートホーム・ネットワークを使ってスマート家電をコントロールできるようにした。

Amazonは、スマートホーム関連企業のポートフォリオを膨らませている。自社製のEcho製品に加えて、ビデオモニター付きドアベルのメーカーRing、無線ビデオカメラ・システムのメーカーBlink、そして最近では屋外用照明のメーカーMr.Beamsを買収している。これにEeroが加わり、AmazonによるWi-Fi環境を買い手に提案できるようになった。残るは、これらのデバイスの使用環境の統一だ。

どの企業でも、スマートホームで競争に勝ちたいと思えば、消費者の絶対的な信頼を得る必要がある。Amazonは、今のところ、ユーザーのプライバシーに関する問題を起こした回数がもっとも少なく、内容も比較的軽いもので済んでいる。Amazonが音声データを行政当局に渡していたことを、複数の記事が伝えた。またAmazonが所有するビデオモニター付きドアベルのメーカーの製品が近所を監視して個人の特定や差別につながるのではないかと問題を提起した記事もあった。

Amazonは、そうした中傷記事で評判を落とすことはないだろうが、製品の不良により高収益をもたらすサービスが提供できなくなることには耐えられまい。

スマートホームの世界を占領しようと戦いを続けているのはAmazonだけではない。Google、Samsung、そしてAppleは、この成長を続ける市場を真剣に見据えている。彼らは、Amazonがパイをすべて食べてしまう事態を許さないだろう。家電大手も、消費者に人気の製品を持つスマートホーム製品のメーカーの引き抜きを続けてゆくだろう。Arlo、ecobee、Belkin、Wyze Labs、sevenhugs、Brilliantのような企業を買収しようと目を光らせているのだ。これらの企業は、彼らが目指す分野で最高の製品を作っている。大手家電メーカーがこれまでに買収した企業の隙間を埋めることで、完全に統一された使用環境を消費者に提供しようと目論んでいる。

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(翻訳者:金井哲夫)

ZOZO前澤氏とSpaceXによる宇宙旅行、常識破りの計画とその技術とは?

ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」率いる前澤友作社長が、米SpaceXの創立者ことイーロン・マスク氏と共同で発表した月旅行計画。その常識破りな計画の概要や、利用される技術、そして前澤氏とマスク氏の将来の目標について解説していこう。

2023年に実施される月旅行

2018年9月に発表された月旅行計画では、前澤氏は超大型ロケット「Starship」に搭乗。そして打ち上げから約2日後に月の周囲へと到達し、そのまま月の裏側を飛行して約5日後に地球へと帰還する。また、Starshipの打ち上げは2023年を予定している。

このような飛行経路は「自由帰還軌道」と呼ばれており、軌道に投入された宇宙船は月の重力を利用し、地球へと帰還する。またその途中で、宇宙船からは丸い地球や月、さらには月から地球が昇る「地球の出」も見られるはずだ。

再使用が可能なStarship

もともと、SpaceXは現在運用中の超大型ロケット「Falcon Heavy」による月旅行計画を発表していた。しかしその後、以前にはITS(Interplanetary Transport Sysytem)として開発され、次にBFR(Big Falcon Rocket)と改名され、最終的にStarshipと名付けられたロケットが利用されることになった。

Starshipは全長118m、直径9mのロケットで、上段の宇宙船がStarship、下段のブースターがSuper Heavyと名付けられている。ロケットには新開発の「Raptor」エンジンが搭載され、上段と下段はともにエンジン噴射による着陸が可能。また、機体を繰り返し利用することでのコスト削減も構想のうちにある。

建造が進むStarship

テキサス州のボカチカでは、Starshipのテスト機がすでに完成している。このテスト機は2019年の3月〜4月にも、低い高度でのテスト打ち上げを実施する予定だ。さらに2020年には、軌道に達するテスト打ち上げが実施されることとなる。

また、ロケットの素材がカーボンからステンレスへと変更されている点も注目したい。マスク氏はこれについて、極低温下や高温下においてステンレスは重量あたりの強度が優れると説明。また、機体表面に燃料を流して機体を冷却するシステムが利用されるそうだ。

旅行代金と前澤氏の目的

今回の月旅行では、前澤氏は6〜8人のアーティストを同乗させると発表している。これらのアーティストは、月旅行から得られたインスピレーションを作品作りに活かすことが期待されているのだ。

そして、前澤氏が今回の月旅行にどれだけの金額を支払ったのかについても、注目が集まっている。具体的な金額は明かされていないものの、過去の宇宙飛行士の打ち上げ費用や、他社の月旅行計画の金額を参考にすると、一人あたり約100億円、9人搭乗した場合には総額で1000億円近くの費用がかかるとの推測も登場している。

SpaceXとStarshipの今後について

ただし、月旅行はStarshipに任された役割のごく一部にしか過ぎない。Starshipは人工衛星の打ち上げから国際宇宙ステーション(ISS)への補給、さらには火星など他惑星の探査にも利用される予定となっている。

さらに、マスク氏は「地球が生存可能な環境でなくなったときのために、他惑星に文明のバックアップを用意しておく必要がある」とも説いてる。そしてその構想を実現するために、Starshipは一度に100人程度を搭乗させる火星開拓船としても利用されるというのだ。

SpaceXとマスク氏の宇宙開発において、今後中心的な役割を果たすであろうStarship。宇宙開発は予定されたスケジュールで進むことは稀だが、それでも一日でも早くStarshipが空へと舞い上がる姿を見てみたいものだ。

Image Credit: SpaceX

(塚本直樹@Twitter

Appleがトーキング・バービー人形の音声テクノロジー企業PullStringを買収

Appleはこのほど、SiriやHomePodなど同社の一連の音声製品のお仲間に、お話をするおもちゃ(トーキングトイ)を加えるためのタレントを獲得した。というのも、AxiosのDan PrimackとIna FriedによるとAppleは、PullString、またの名ToyTalkを買収したのだ。同社は、音声体験の設計ツール、それらの体験を実現するための人工知能、そしてMattelとのパートナーシップにより、トーキング・バービー(talking Barbie)や、きかんしゃトーマスの玩具なども作っている。2011年にPixarの役員たちが創業したPullStringは、これまでに4400万ドルを調達している。

AppleのSiriは、Amazon AlexaやGoogle Assistantに比べると伸び悩んでいるが、それは音声認識やユーティリティのせいだけではなく、デベロッパーのエコシステムも原因だ。GoogleとAmazonには、さまざまな音声アプリメーカーが作ったスキルを配布流通するプラットホームがある。その中には、お話やクイズ、ゲームなど子ども向けのものも少なくない。AppleがSiriやHomePodでコネクテッドリビングルームの主役に躍り出たいのなら、そこで時間を過ごす子どもたちと仲良くしなければならない。PullStringを買収したことによってAppleは、音声で動かす子どものための玩具に向けてスタートを切り、また音声デベロッパーのためのツールも揃えて行けるだろう。

PullStringは2015年に“子どもをスパイするデバイス”と非難されたが、Hello Barbie製品が内蔵しているセキュリティ機能を詳しく説明することによって反論した。そして、これまでに一度も、ハックされて子どもの声やそのほかの機密情報を盗まれたことはない、と述べた。しかし今では、プライバシーの規準が変わってしまって、いつでも耳をそばだてているEchoやGoogle Homeのような製品を、多くの人が平気で買っている。

2016年にPullStringに社名変更した同社は、会話をビジュアルにマッピングするデベロッパーツールに力を入れるようになり、また最終製品をGoogleやAmazonのプラットホームにも提供した。SiriKitの複雑性と機能の少なさに対してPullStringのConverseプラットホームなら、多くのデベロッパーにとって、Appleデバイスのための音声製品を作る道が拓けるだろう。

買収後もPullStringやToyTalkのオリジナル製品がそのまま入手できるのか、目下両社に問い合わせ中だ。

PullString/ToyTalkにこれまで投資した投資家は、Khosla Ventures、CRV、Greylock、First Round、True Venturesなどだ。PitchBookによると、最後の資金調達となった2016年のシリーズDでは、同社の評価額が1億6000万ドルだった。近年、音声テクノロジーの分野は爆発的に伸びているが、まだまだ音声体験のデベロッパーは、具体的な製品がないとお金を稼ぐのが難しい。しかも多くの企業は、PullStringが提供しているようなツールで、一体何を作ればよいのか迷っている。そこで同社はAppleと一緒の方が未来は明るいと判断し、いちばん多く普及しているのに、多くの人びとにいちばん嫌われている音声アシスタントの、テコ入れをしていくことになったのだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Samsungタブレット新製品はBixby 2.0を載せてスマートホームのハブをねらう

SamsungのスマートアシスタントBixbyは今やいろんなスマートフォンや家電製品にあるが、なぜか同社のタブレットの上では、どこを探しても見つからなかった。ただしぼくには、この件で同社の戦略について知ったかぶりする能力はない。

いずれにしても、もうすぐMWC(Mobile World Congress)と同社のUnpacked(S10)イベントが始まるという今日(米国時間2/15)のこの日に同社は、タブレットとしては初めてBixby 2.0を載せたTab S5eに関する情報を大量に放出した。その最大のねらいは、タブレットも含むモバイル製品を同社のスマートホーム戦略の主役に据えることだ。

同社はこう言っている: “Tab S5eは、あなたのデバイスと対話するための、よりスマートでより便利な方法を提供し、また、あなたのコネクテッドホームデバイスをコントロールする理想的なハブとして奉仕する。Quick Commandで、テレビと電灯を同時にスイッチオンできる。あなたがカスタマイズして、もっと多くのアクションを一つのコマンドで実行できる。家の中のさまざまな音声コントロールがずっと速く、簡単に、そしてあなた好みになる”。

しかし、いろいろな家電製品がBixbyをサポートしているが、現状はほとんどSamsung製品ばかりだ。それが、AlexaやSiri、Google Homeなどに比べて深刻な限界だ。

この新しいタブレットは電池寿命が延びて14.5時間、10.5インチのsAMOLEDディスプレイと最大6GBのRAM、そして128GBのストレージを搭載する。発売は本年第二四半期、お値段は400ドルからだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

社会課題解決を目指すインパクト投資が“使命”のミッション・キャピタル、遺伝子・自動運転領域に出資

ミッション・キャピタルのマネージング・パートナー、金武偉氏

マネージング・パートナーの金武偉氏が率いるミッション・キャピタルは2月15日、社会課題解決型のインパクト投資1号ファンドにおいて、総額約2億円の投資実行を終了したと発表。出資先はアメリカ発遺伝子系ベンチャーのジェノプランならびに自動運転などの技術で知られるZMPだ。

ミッション・キャピタルは2018年8月の創業。社会課題解決型のインパクト投資を専門テーマにする独立系ファンド運営会社だ。

その代表の金氏は1979年に京都で生まれた。16歳で外交官を目指し渡米、高校と大学をアメリカで履修後、大学院留学の学費を稼ぐため、東京でゴールドマン・サックス証券に入社。一時、JP モルガン証券に転籍後、アメリカ東海岸のロースクールに通った。

卒業後はニューヨーク州で弁護士資格を取得し、サリヴァン・アンド・クロムウェル法律事務所に入所。約5年間、国際案件に携わった。その後、ユニゾン・キャピタル投資チームに参画し、日韓投資案件に従事。そして2014年、「ベンチャーの勃興」があり、以降は国内外複数のAIやIoT関連のベンチャーを経営してきた。

並大抵ならぬキャリアバックグラウンドを持つ金氏だが、「すごく勉強して必死に生きてきたわりには、味気のない人生だと思った」と感じたこともあったのだという。その上で、「自分よりも優れた人間はいるのでは。自分とは何なのか」と自問自答し、「良いことをしながらお金持ちになりたい」という結論にいたった。

2011年、金氏がまだニューヨークで弁護士をしていたころに、社会的インパクト投資が欧米ではよく知られるようになってきたのだという。

「社会問題を直接的に解決し、かつ投資家のリターンが上がるビジネスモデルを知った。ビジネスモデルとテクノロジーのイノベーションでそのようなことができるようになった。実際に社会を良くしているのに、リターンが上がる」(金氏)

「2011年以降、自分はまだ準備不足だと思い続けていた」という金氏だが、2018年に独立した後、色々なベンチャーからの誘いもあったものの、インパクト投資を「今すぐ」始めるよう周りから背中を押され、8月にミッション・キャピタルを創業した。

ミッションキャピタルは地方優良企業の内部留保資金やファミリーオフィス資産を預かり、従来型のベンチャーキャピタルおよびプライベートエクイティファンドに求められる投資利回り(IRR15〜20%)の超過を目指す、高リターン重視のインパクト投資を展開している。

「真のインパクト投資を行なっているファンドは無いと考えている。本当に良いことをやっていて、本当にリターンが上がる。それを証明してみせますよ、というのがミッション・キャピタルだ」(金氏)

金氏は「ある2つの条件」が充足している場合は投資を実行するファンドを作りたかったのだという。1つ目の条件は、会社自体が、実在する大きな社会課題を解決しに行くことが定款としてあること。2つ目は、IRRが15から20%、もしくはそれ以上であること。

「(日本では)現在、インパクト投資ではESG(環境/Environment・社会/Social、ガバナンス/Governance)SRI(社会的責任投資/Socially Responsible Investment)やCSR(企業の社会的責任/Corporate social responsibility)がごちゃまぜになってしまっている。何となく良いことをしていればインパクト投資、というのは間違っている。欧米だと、会社の存在目的自体が、実在する大きな社会問題の解決にあるべきだ、というのがインパクト投資の定義。僕はそれがやりたいと考えている」(金氏)上記に加えてリターンを上げられることが重要であり、でなければ「投資」でなく「寄付」になってしまうのでは、と同氏は加えた。

ミッション・キャピタルでは今後、引き続き、社会的インパクトと高リターンの両立を重視しつつも、将来的には国内外のソーシャルインパクトボンド(SIB)から上場株式まで、様々なインパクト投資機会を投資家へ提供して行くという。金氏は2号ファンドでは30億規模を目指す、と話していた。