企業向けSaaSのWorkdayが、元Google従業員が始めた若いスタートアップPatternのチームを獲得

創業2年目でカリフォルニア州レッドウッドシティを拠点とするスタートアップのPatternのチームは、密かにWorkdayに買収されていた。Workdayは2012年に株式公開を行なった財務管理と人事ソフトウェアベンダーだ。現在は時価総額209億ドルを誇っている。

買収の条件は明らかにされていない。Patter CEOのDerek Draperは、この買収を彼のLinkedInで発表したが、それ以上のコメントは拒否している。この移行の一環として、Patternは先週末の時点でPatternサービスを終了した。

Patternは営業担当者向けに顧客管理の負荷を軽減することを目標としていた。Felicis Ventures、SoftTech VC、First Round Capital、そして様々なエンジェル投資家たちから、昨年シードファンディングとして250万ドルの調達を行なっていた。(もしPatternが引き続き資金調達を行なっていたとしても、それは全く公表されていない)。

Draperと、その共同創業者たちであるZack Moy、そしてJosh Valdezはいずれも元Google従業員であり、1年前からはさらに5名の元Googleの同僚たちと会社を運営してきた。

DraperとValdezは、2012年にGoogleに売却された、ソーシャルメディアマーケティング会社Wildfireで出会った。

今週LinkedInでDraperは、彼と彼のチームが「この新しい冒険に乗り出すことに興奮していて」、Workdayで「未来を築く」ことを楽しみにしていると書いていた。

Workdayの過去の買収には、昨年買収した大型データ分析ベンダーPlatforaや、Workdayが昨年買収してすぐにシャットダウンしたオンライン学習会社Zaptionなどがある。この両取引の条件も明らかにされていない。

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(翻訳:Sako)

耳を澄ませて3Dプリンターへのサイバーアタックを防ぐ

3Dプリンタがよりスマートになり、製造および製品作成工程に組み込まれ続けるならば、他のすべてのデバイスやネットワークと同様に、オンラインの悪用者に対して晒されることになる。セキュリティ研究者たちは、ハッカーたちが3Dプリンタの出力を妨害することを防ぐ方法を提案している:注意深く耳を澄ませよう。

現在、もし3Dプリンターに対してハッキングを行う誰かが、特にひどい脅威を与えていないなら、まだ許容範囲だ。しかし、実際に3Dプリンターは趣味やプロトタイピングの目的以上のものに使われ始めている。例えば人工装具はありふれた用途の1つだ。そして材料の改良に伴い自動車や航空宇宙への適用も可能になってきている。

一部のセキュリティ研究者がすでに実証しているように、この問題の深刻な点は、ハッカーがマシンを乗っ取り単にシャットダウンさせるというだけではなく、出力される対象に欠陥を忍び込ませることができるかも知れないということなのだ。そのために必要なのは、小さな空洞、内部の支柱のずれ、あるいはその種の微妙な調整だけだ。そうされることで例えば、本来75ポンドを支えるものとして考えられていた部品が、20ポンドを支えることしかできなくなる。これは多くの状況で、致命的なものになる可能性がある。

そしてもちろん、妨害されたパーツは、肉眼では普通のものと全く同じように見えるかも知れない。ではどうすべきだろうか?

ラトガース大学ならびにジョージア工科大学のチームは3つの方法を提案している。そのうちの1つは、幅広く統合することが、簡単かつ賢明な方法だ。ある意味3DプリントのためのShazam*と言えるかも知れない(他の2つも同様にクールな手法だが)。

これまで読者が動作しているプリンターの側にいたことがあるかどうかは知らないが、それは大変な騒音を発している。なぜなら、多くの3Dプリンタでは、移動するプリントヘッドやさまざまな機械部品が使用されていて、それらの部品は、通常キンキン、カチカチ、その他のノイズを発生させるものだからだ。

研究者たちは、レファレンスプリントが作成されている間にそうしたノイズを録音し、そのノイズをあるアルゴリズムに投入して分類し、後からもう一度認識できるようにした。

新しい印刷が行われる際には、サウンドが再度録音され、アルゴリズムによる検査が行われる。もしそのサウンドが全て一致するようなものであるならば、印刷物は改ざんされていない可能性が高い。オリジナルのサウンドからの大きな乖離、例えばある動作が早く終わりすぎたとか、普通の平坦な場所の途中に異常なピークが存在したといった状況はシステムによって検知され、フラグが立てられる。

これは単にコンセプトの実証に過ぎないので、改善の余地がまだ大きい、誤検知を減らし、周囲のノイズへの耐性も必要となる。

もしくは音響による検証を、チームが提案している他の尺度と組み合わせることも可能だ。もう1つの方法は、プリントヘッドにすべての動きを記録するセンサーを装備する必要がある。これらの記録が基準モーションパスと異なる場合には、大当たり!フラグを立てよう。

第3の方法は、非常に特異的な分光特性を与えるナノ粒子を、成形材料に浸み込ませるという方法だ。もし他の材料が利用されたり、出力の中に空洞が残されていたりした場合には、特性が変化し、オブジェクトには問題があるのではないかと推測することができる。

DNAに仕込まれたマルウェアベクターの話題と同様に、ここで予測されているハックや対策は今のところ理論的なものだが、それについて考え始めるのに早すぎることはない。

ラトガースのニュースリリースで研究(PDF)の共同執筆者であるSaman Aliari Zonouzは次のように述べている「3D印刷業界では、約5年以内には、さらに多くの種類の攻撃が発見され、防御法も提案されることでしょう」。

そしてDNA研究同様に、この論文はUSENIXセキュリティシンポジウムで発表された。

*訳注:文中出てくるShazamというのは、音楽を聞かせるとそれが何の曲かを教えてくれるアプリのこと。

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(翻訳:Sako)

GoogleのLunar Xprize賞(民間・個人資金による月面着陸)は締め切りを変更して賞金の種類を増やした

民間ないし個人の取り組みで月面着陸を競うGoogleのLunar Xprize賞は、このほど参加のインセンティブを増やし、締め切りを延ばした。優勝者の資格は、2018年3月31日までにミッションを完了する、という一つだけになり、今年中に着陸船を打ち上げる、という要件はなくなった。

月へ行く宇宙船はほぼ完全に民間〜個人資金だけで作り、それが月面に着地するものでなければならない。さらにその後、着陸機は月面を1/3マイル(536メートル)動きまわり、画像とビデオを地球へ送信する。優勝賞金は2000万ドルである。二位の準優勝者は500万ドルもらえる。

The Vergeによれば、これらの情報が一般公開されたのは今日(米国時間8/16)だが、すでに参加者たちは数か月前から開発に着手している。打ち上げの締め切りがなくなったのは、来年初めなどかなり遅く打ち上げてもミッション締め切りに間に合うチームもありえる、と考えたからだ。

締め切りの変更に加えて、賞金計475万ドルの新条件が登場した。まず、3月よりも前に月を一周して着陸を開始したチームには175万ドル、さらに月面にソフトランディングして期間終了までにデータを送信し続けることのできたチームは300万ドルをもらえる(トップの優勝/準優勝チーム以外?)。

今残っている参加チームはMoon Express, Synergy Moon, SpaceIL, Hakuto, TeamIndusの五つだけだ。どのチームもすでにロケットを予約しているが、打ち上げの日程や、締め切りに間に合いそうかなどは、まだ分からない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

アンディ・ルービン氏のEssential Phoneは1週間以内に出荷開始。予約者へメールが届く

eng-logo-2015「Androidの父」として知られているアンディ・ルービン氏が、Google退社後に設立した企業 Essential。そのEssentialが5月末に発表したハイエンドスマートフォン Essential Phone(PH-1)が、一週間以内に発送されると予約者に対してメールを送信しています。

Androidの父が新スマホEssential PH-1発表。チタン&セラミックに狭額フル画面、拡張モジュール対応のハイエンド

このEssential Phone、発表直後には一か月以内に出荷予定とされていましたが、ようやく出荷の準備が整ったようです。ただし、今回出荷される本体色はBlack Moonのみ。
9to5Googleによると、予約を受け付けていたもう1つのカラーPure Whiteはさらに数週間かかるようで、こちらの予約者にはBlack Moonへの交換も可能と案内されています。

また、同時に特別価格で予約を受け付けていたオプションの360度カメラは今回含まれておらず、準備ができ次第あらためて連絡するとしています。

PH-1はルービン氏設立の企業からという点やその外観やなどから、発表時には大いに注目されたものの、7月上旬には幹部役員の退職が相次いて報じられるなど不穏なニュースも流れていました。

その反面、AmazonのAlexa Fundや中国Tencentから3億ドルの資金を調達、先日には製品出荷前にも関わらず企業価値として約12億ドルの評価を受けるなどのニュースも出ています。

実際の評価は端末次第ではありますが、その端末の情報も公式発表からは特にリークや噂なども出てきておらず、実際に手にしてみないと何とも言えないという状況です。

そのEssential Phoneの価格は$699(約7万7,000円)。公式サイトで販売されるほか、米キャリアではSprintが独占販売を行います。

また、以前にFinancial Timesが報じた内容によれば、日本、英国、欧州での販売も予定されているとのこと。ただし、米国外のキャリアでの取り扱いについてはしばらく後となり、年末に発表を行うとしています。
Engadget 日本版からの転載。

Microsoftの自律グライダーは上昇気流を自力で探し空を舞う

Microsoftは、飛行するためにエネルギーをほとんどあるいは全く必要としない、自律飛行技術を開発したいと考えている。同社は、自己誘導システムを搭載したグライダーのテストを、ネバダ州の砂漠で完了したばかりだ。この自己誘導システムは、可能な限り長時間空中に止まることを目標に、気流の上昇する地点を追跡し、その動きを予測するものだ。

今回のテストは、空を舞うためのMicrosoftのシステムが、とても有望であることを示した。New York Timesは試験機がうまく飛べたことを報告した。これにより熱上昇気流がこの先どこで発生するかを予測する数式の正しさが証明された。この数式は自律飛行機が学習に基いて利用するもので、研究者たちによって開発されたものだ。しかし今回は、セールプレーン(グライダーの別名)による1回の滞空時間の記録を破るという最終目標にはわずかながら及ばなかった。

その記録は5時間を超えるものだが、Microsoftのテストチームは2日間に及ぶテストの中で、装置の問題のためにその目標に到達することはできなかった。しかし、このテスト結果は、彼らの自律飛行へのアプローチが正しい方向へ進んでいることを示した。それはシステムが無人飛行を行う際に出逢う最大の問題 − 不確実性 − への対処である。

気象システムは、熱上昇気流などを、ある程度の正確さで予測することができるが、それは確実なものとは言い難い。事前マッピングと経路計画で、空気循環の変化を完全に予測することはできない。したがって、自律飛行システムを持つグライダーは、次の熱上昇気流が飛行経路上のどこに現れるのかを予測できなければならない、そうすることで高度を維持するために上昇気流のから上昇気流を渡り歩いて行けるのだ。

もちろん不確実性への対処は、グライダー以外にも応用できる。あるシナリオに対処できる効果的なツールであれば、他の領域にも適用することができるだろう。さらに、無人で省エネルギーの飛行機を飛行させようとするMicrosoftの仕事は、未開地へのインターネットの提供や、リアルタイムの地表状況並びに天候のモニターなど多くの計画に大きなインパクトを与える可能性がある。

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(翻訳:Sako)

人気YouTuberのインサイダー騒動で揺れる「VALU」、運営元が対応策を発表

YouTuberヒカル氏のVALUページ

個人が株式会社のように自分の価値を「模擬株式」として発行し取引できるサービス「VALU」。2017年5月31日にベータ版が公開されたばかりのサービスだが、当初から様々な観点で話題を集めた。

SNSのフォロワー数や友達数をベースに自分自身の価値が「時価総額」という形で数値化される斬新なアイデアに加え、知名度がない個人がファンを募れる可能性を持つサービスであり、そこに配当や優待という仕組みを組み込んだ点はおもしろいという声が多かったように思う。一方でVALUの発行者が退会した場合にVALUの価値がなくなってしまうリスクや、いわゆるインサイダー取引のような形で悪用されうることなど具体的な懸念点も言及されていた。

そんな状況下において、8月16日人気YouTuberのヒカル氏ら複数のユーザーがまさにインサイダー取引のように思われる行動をとったことで大きな騒動となった。それを受けて17日、運営元のVALUが本件の対応策を発表している。

騒動の発端となったのは8月14日にYouTuberのヒカル氏、ラファエル氏、いっくん氏がTwitter上などでVALUを本格的に運用し始める旨の投稿を行ったこと。多くのファンの期待を集め価格が高騰していたが、翌日15日には3人の株式を保有する井川氏を含む4人が全株式を売りに出した。(ヒカル氏らはVAZが立ち上げた事務所NextStageに所属しており、井川氏はVAZの顧問を務める人物)

一連の行動があらかじめ計画した上で行われたようにも思われたため「インサイダー取引」や「詐欺」にあたるのではないかという批判が殺到。本人たちは期待感を煽って価格を釣り上げたことや、インサイダー取引を否定した上で「自社株買いを行います」と17日に報告した。

運営元のVALUもその意向を受けて利用者保護の観点から、現在の売買注文をすべてキャンセルする特別措置をとることを発表。一連の取引で発生した手数料収入については、VALUと同様のミッションを掲げる組織へ寄付するという(寄付先、寄付金額は現時点では未定)。また取引に関する新たなルール作りを進めていることも明かした。なお現時点では4人のページでは赤帯で「このアカウントの出金を停止しています。」と表示されている。

まだ新しいサービスなだけに当初から課題も多く言及されていたVALU。今回の騒動でも整備が追いついていない印象を受けたが、期待値も高いサービスなだけに今後の対応に注目したい。

Microsoftが完全な管理を伴うイベントルーティングサービスAzure Event Gridを立ち上げ

Microsoftが今日(米国時間8/16)、Azure系列の新製品をプレビューとして発表した。それは、イベントベースのアプリケーションを作りやすくするためのツールだ。

そのAzure Event Gridは、画像やビデオがアップロードされた、ボタンがクリックされた、データベースがアップデートされた、などなどのイベントをAzureの正式のオブジェクトとして扱う。Event GridはMicrosoftの既存のサーバーレス製品Azure FunctionsやAzure Logic Apps(の足りない機能)を補完して、完全に管理されたイベントルーティングサービスへのアクセスを与える。この新しいサービスにより、どんなイベントに対しても、それを受け入れて反応する柔軟性が与えられる。それらは、Azure内部で起きるイベントでも、あるいはサードパーティのサービスや既存のアプリケーションで起きるイベントでもよい。

Event Gridを使うと、イベントを特定のエンドポイント(あるいは複数のエンドポイント)へルートしたりフィルタできる。

“サーバーレス”という言葉は、最初から一貫して誤称だ。たしかにアプリケーションはサーバーを呼び出さないけど、イベントに応じて何かをやるのは依然としてサーバー、というかサーバー上のコードだ。サーバーレスプラットホームの基本的なコンセプトは、このモデルではイベント駆動のアプリケーションを、それを支える低レベルのインフラストラクチャ(サーバーなど)をまったく気にせずに作れる、という点にある。

たとえば、MicrosoftのAzure ComputeのディレクターCorey Sandersによると、Event Gridは、マイクロサービスを作るためのMicrosoftのプラットホームService Fabricの上にあるが、デベロッパーはそのサービスについて何も知る必要がなく、プラットホームがすべての面倒を見る。

Event Gridはwebhookのエンドポイントとして、どんなアプリケーションからでも入力を取れるから、Azure FunctionsやLogic Appsなどよりもやや進んでいる。“目標は、顧客が管理でき操作できる正式のオブジェクトとしてのイベントを提供することだ”、と、Sandersは語る。基本仕様としてEvent Gridは、Azure Blog StorageやResource Manager, Application Topics, Event Hubs, Azure Functions, Azure Automation, そしてLogic Appsをサポートしている。またCosmosDBデータベースサービスやIoT Hubなどの新しいサービスも、年内にはサポートされる。IoTアプリケーションはイベント駆動が定石だから、IoT Hubのリリース時点でイベントのサポートがなかったのが、むしろ意外だ。

標準的なサーバーレスアプリケーションとインテグレーションはLogic Appsがあれば十分かもしれないが、Event Gridを使えばオペレーションのワークフローの一部を自動化でき、たとえば新しい仮想マシンやデータベースの立ち上げなどにも、自動的に対応できるようになる。

Event Gridの料金は処理するオペレーションの数による。最初の10万オペレーションは無料、そしてその後、100万オペレーションごとに60セントだ。現在のプレビューの時点では、30セントとなる。ひとつのオペレーションは、入力処理、高度な数値演算、デリバリの試み、管理タスクの呼び出しなどだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

キャッシュアウト、買収撤回、裏切り——ソウゾウ松本氏はどん底をどう乗り越えたのか

ソウゾウ代表取締役・メルカリ執行役員の松本龍祐氏

編集部注):起業家の成功談よりも、苦しい時期を乗り越えた話にこそ、重要な学びがあるのではないか。この記事では資金調達やプロダクトローンチのニュースではあまりフォーカスされない、起業家の経験を伝えていく。今回話を聞いたのは、現在ソウゾウ代表取締役・メルカリ執行役員を務める松本龍祐氏だ。松本氏はかつてソーシャルゲームやスマートフォンアプリを手がけるコミュニティファクトリーを立ち上げ、その代表を務めた人物。

コミュニティファクトリーは、2011年101月にリリースした無料写真加工アプリ「DECOPIC(デコピック)」がヒット。2012年9月にはヤフーが買収するに至った。いわゆるM&Aによるイグジットを果たしたわけだが、そこまでにはさまざまな苦労があった。どのようにして松本氏は苦労を乗り越えていったのか——これまでの歩みに迫る。

突如、追い出される……カフェ経営で味わった挫折

起業について最初から話をすると、2001〜2002年頃までさかのぼります。私は当時学生で起業し、都内でカフェをやっていました。当時はいわゆるカフェブーム。軽い気持ちでギャラリーを借りて、土日だけカフェにする、というイベントを友達と定期的に開催していました。

そうしているいうちに、知り合いから経営があまりうまくいっていないカフェのオーナーを紹介されて、実際に会ってみることにしました。その頃、飲食店経営の書籍も読んでいたこともあって、オーナーと話をする中で、「ここだったら坪単価、月10万円くらいの売上が欲しいですね」なんて本に載っていることをそのまま言ってみたら、どういうわけか「又貸しするよ」と言ってもらえたんです。

そのカフェはお世辞にもオシャレとは言えない内装だったので、内装も含めて普通にやれば上手くいくんじゃないかな、と思いました。とはいえ、飲食関係の人脈もなかったので、当時のガラケーのメーリングリストを使って知人や友人にいろんな人を紹介してもらいました。

オシャレな外国家電を個人輸入している人を紹介してもらったり、恵比寿のカフェで料理長やっていた人を紹介してもらったり——トントン拍子で良い人を紹介してもらうことができ、カフェの経営をスタートしました。

とは言え、フタを開けてみれば最初から自転車操業でした。家賃が月70万円くらいかかるのですが、貯金は20万円しかない。何かトラブルがあれば、すぐキャッシュアウトになるという状態でした。ですが、最初の月にはいろんな友達が貸切パーティーを開いてくれたりと支援してくれ、運転資金は少しずつですが積み上がっていました。

当時のことを振り返ると——自分が旗振りをして、決意を持って進めていけば、まわりの人がついてきてくれるんだなと思いました。これが今に続く起業の原体験になっています。

ただ、カフェの経営事態は結果的に失敗に終わりました。月70万円の家賃って、結構な額じゃないですか。当時、「もし何かあったら、逃げればいいかな」というズルい気持ちもあって、きちんと契約も結んでいなかったんです。そうしたら、黒字になってしばらく経った後、カフェから追い出されてしまいました。自分で購入したアンプやスピーカー、大きなポリバケツを抱えて、当時住んでいた家まで歩いて帰りました。これが最初の大きな挫折です。

SNSブームに乗って誕生した「コミュニティファクトリー」

追い出される前、カフェの経営はうまくいっていたので、まったく大学に行かず、辞めようと思っていました。ですが突如仕事がなくなったので、焦って大学に通い始めました(笑)。2004年のことだった思います。

ちょうど「GREE」に次いで「mixi」がサービスを開始するなど、ネットにはSNSブームが来ていました。そこで私は友達を招待しまくって、SNSでの発信を楽しんでいました。そんな中で“友達を10人紹介し、レポート書いたら1万円もらえる”というキャンペーンを実施している新たなSNSを友達から教えてもらいました。

自分でもレポートを書いてみたところ、どうやら一番細かい内容だったみたいで、中の人から「一緒に事業をやろうよ」と誘われて、社長とエンジニアに次ぐ、3人目のメンバーとしてジョインしました。この経験が、インターネットサービスを主体的に運営することになったポイントかもしれないですね。

その後、約1年ぐらい、GREEやmixiをライバル視しながら、SNSを作っていきました。結局その会社は現在の人人網(レンレン)に買収され、日本法人が解散になったタイミングで運営から抜けました。

また、目の前の仕事がなくなり、どうしようか……と思っていたのですが、2004年当時、SNSの企画を考えているような人はこの業界にもほとんどいませんでした。それで、自ら「プランナー」という肩書きで名刺を作り、ブログマーケティングやSNS利用の事例をまとめた冊子を作ったんです。それを持って、知り合いの広告代理店の人の営業に同行して、クライアントから「コミュニティサービスやりたいよね」と言われたら企画を提案する。そんなことをやっていました。

案件を受注できたら、知り合いのエンジニアやデザイナーに発注する。自分は営業、企画、ディレクターとして仕事を進めていきました。そうして、少しずつ実績を作っていったら、仕事の規模が大きくなっていきまして……。最終的に、ナショナルクライアントの仕事まで請け負うようになったんですね。取引上、さすがにここまで来たら会社にしてもらわないと困るということで、立ち上げたのがコミュニティファクトリーです。クライアントの代わりにコミュニティをつくるから、“コミュニティの工場”という意味で「コミュニティファクトリー」にしました。2005〜2006年(編集注:創業は2006年2月)くらいのことです。

コミュニティファクトリーのオフィスの一部

その頃はまだライブドア・ショックが起きる前。まだ企業内に「Web2.0」的な事業に費やす予算が残っている会社も多く、案件も想像以上に獲得できたこともあって、順調に会社も大きくなっていきました。

日本のメンバーが3人に増えた時に、前職での経験を生かして中国でのオフショア開発をやることになり、中国で3人のチームを作ってみたんです。今、考えると開発メンバーが日本に1人もいない段階で、中国にチームを作るのは相当無茶だったのですが。のちに日本に開発体制を戻したときに、横に人がいて開発が進むのは、かなりラクだと思いました(笑)

好調なスタートを切った学生向けSNS「LinNo」

中国を開発の拠点にして、日本と中国とを行き来する感じで働いていました。そうしたら、人人網がFacebookのクローンのようなSNSを開発し、大ヒットしたんです。「そのSNSを日本でも展開すればいい」という提案もあって、人人網の創業者・CEOのジョー・チェン(Joe Chen)から30万ドルを出資してもらい、体制を整え、開発を進めていき、大学生向けのSNSをつくりました。

人人網はローカルマーケティングが非常にうまくて、中国の大学内に学生組織をつくり、SNSのロゴを焼印で付けたチキンを配る代わりに、会員登録を促すというマーケティングをしていたんです。その手法でユーザー数をかなり伸ばしていました。

ただ、「日本の大学生はチキンじゃ釣られないかもな」とも思っていました。何が良いかいろいろと考えた結果、「日本は過去問だ」と思ったんです。テストの過去問を共有できる、ファイルアップロード機能を搭載したSNSにしました。それでビラをつくって、まずは慶應義塾大学の日吉キャンパスでテスト的に始めたら、全生徒1万2000人のうち4000人くらいが1週間で会員登録したんです。

そうした実績もあり、VCから出資を受けて「株式会社リンノ」を設立し、大学生向けのSNS「LinNo」の開発・運営をすることにしました。5人の学生を執行役員にしてマーケティングを行っていき、開発はコミュニティファクトリーに委託する。そんな感じのスキームでした。設立時に2億円の出資を受けたのは、当時(ローンチは2008年7月)としてはあまり例がなかったと思います。

執行役員が学生ということで、いろんな大学生が来てくれて、関東と関西を含めて30校近くの大学で支部が立ち上がりました。それぞれ学生から過去問を集めて、それをもとにしたマーケティングを実施していました。授業の評価ができる機能があったり、時間割を管理できたり、ガラケーでもPDFをFlash liteに変換して閲覧できる機能を作ったりして。大学生にとっては便利な機能だったんじゃないかと思います。当時は学生の売り手市場。最終的に企業の採用につながるようなビジネスモデルを考えていました。

ただ、LinNoを運営していく中で、過去問を共有するSNSだと、テスト期間が終わったら全く使われなくなることが分かりました。今考えれば当たり前です。とにかく、アクティビティが上がらない。そこでサービスを経常的に使うゲームやコンテンツがあったらいいんじゃないか、ということで、プラットフォーム化することにしたんです。ちょうどFacebookがオープン化し、オープンソーシャルの仕様が出たタイミングだったので、FacebookとオープンソーシャルのAPIに対応したプラットフォームを開発し、その上で内製で占いとかミニゲームなどをいくつか実装していました。

キャッシュアウトまで残り1カ月、消えた買収

ただ、リーマン・ショックが起こり、リンノに暗雲が立ち込み始めたんです。出資を受けた2億円は、1年間でマーケティング費用を中心に使い切る予定でした。計画は順調に進んでいて、次の増資を検討していた中での事でした。ほとんどのVCが新規投資自体をしなくなり、八方塞がりでした。そんな中、ジョー・チェンから「日本に進出しようと思っているから、お前の会社を買う」と言われ、助かったと思っていたのですが……。

キャッシュアウトまで、あと1カ月というタイミングで買収の話がなくなってしまったんです。今思えば買収話なんてそんなもので、アテにしていた自分が悪かったんですが。そこに追い討ちをかけるかのように、スタッフの学生が不祥事を起こして週刊誌の記者から電話が来るまでになりました。よくネットや漫画などで言われる「ガクブル」という状況はまさにこれか——そう思うまでになりました。そんな経験は初めてでした。

ただ、しっかりと話を聞いたら、(記者と学生)お互いに言い分があったようでした。その話を正直に記者に話して、何かあれば訴えてもらってもいいですと伝えたところ、「学生の不祥事に関しては記事にすることができない」と言われ、週刊誌沙汰になることはありませんでした。毅然とした態度をとった結果だったのかもしれません。ですが資金繰りが厳しい状態は変わらず、LinNo自体は縮小せざるを得なくなって、最大100人くらいいたインターン生も10人以下になりました。

これから先どうなっていくんだろうか——そんなこと漠然と考えているときに、エンジェル投資家から電話がかかってきました。もともと、小泉(メルカリ取締役社長兼COOの小泉文明氏。当時はミクシィ取締役CFOだった)との知り合いだったみたいで、「いま小泉と飲んでるんだけど来ない?」と言われたんです。夜の23時くらいだったんですけど、二つ返事で「行きます」と答えました。

実際に行ってみたら、「mixiのオープン化を考えていて、ミクシィファンドの立ち上げを考えているんだけど興味ある?」と言われて、すぐに「めっちゃあります」と。そこで小泉から「じゃあ今度、原田(DeNA執行役員の原田明典氏。当時はミクシィ代表取締役副社長だった)にプレゼンしてみてよ」と言われたので、プレゼンのために2週間くらいの時間で開発できるソーシャルアプリ、ソーシャルゲームの開発を進めていきました。

そしてプレゼン当日、「これがダメだったら会社を畳むかもしれない」ということをメンバーに伝え、プレゼンに臨みました。プレゼン自体は良い評価をしてもらえて、ミクシィから出資を受ける話が進んでいきました。ただ、ミクシィも初めての投資案件だったので、実行までに3カ月くらい時間がかかりました。当時、資金もなかったので、オフィスも安いところに引っ越しましたし、親戚にお金を借りながら受託事業をやっていました。

ミクシィからの出資を受けるまでを振り返って、VCから大きな出資を受けて舞い上がっていたなと思います。ただ、毎月のP/Lを見るのは怖かったんですよ。1日P/Lを見る度に背筋を凍らせて、残りの30日は楽しく過ごしてたんですけど、それじゃダメですよね。

あとはPR施策の見込みの甘さもありましたね。普通は2回くらい外したときに抜本的に施策を見直さなければいけないんですけど、学校のテスト期間は年に2回しかないので、なかなか変えられずにいました。中国の成功事例を見すぎていたのも良くなかったですね。

ただ、良かったことはオープンソーシャルに可能性を見出して、無理やりにでも乗っかったことです。それがあったからこそ、ミクシィから出資をしてもらえたと思います。

「お前は裏切られているぞ」大ヒットサービスの誕生前夜の事件

その後結果的に、リンノの社長を退任することになりました。当時の出資先から「VCキャリアをかけて言うけれども、ソーシャルアプリは絶対来ない」と言われたのが記憶に残っています。それ以降はコミュニティファクトリー1本でやっていくことになりました。

mixiオープン化のローンチパートナーということで、受託以外にも自社でアプリを開発していました。それでローンチ時に数本アプリを出したのですが、そのうちの1本が、「わたしのドレイちゃん」というアプリでして……大炎上しました。ローンチから3時間くらいでクローズすることになってしまいました(編集注:このゲームはユーザーがマイミクシィ(mixi上の友人)を「ドレイ」として買い取り、ニックネームを付けて強制労働させてお金を得る、というコンセプトだった。これにインターネット上で批判が集まり、公開当日の閉鎖となった)。

その後もmixiアプリをいくつか出していたのですが、なかなかヒット作が出ず、苦労していました。そんな中、大ヒットしたのが、「みんなのケンテイ」でした(編集注:さまざまなテーマの「検定」や「診断」をクイズ感覚でプレイできるアプリ)。最大で800万ユーザーが登録していて、1日に20万ユーザーずつ増えていくというペースでした。

当時飲み屋に行ったら、隣の大学生グループ全員が一斉にみんなのケンテイで遊んでいて、それをネタに飲んでたんですよね。当たり前に定着している、という状況にめちゃめちゃ感動しました。多くの人に使われるサービスを作りたい、と強く思うようになりました。

実はまだ、この段階ではコミュニティファクトリーの開発拠点は中国にありました。これから頑張っていこうと思っていたら、突然、中国にいるエンジェル投資家から、「お前は裏切られてるぞ」と連絡がありました。一体、何のことだと思っていたら、少し前に辞めたばかりの、中国法人の元代表からその投資家に出資の相談があったということが分かりました。その人物は創業からのメンバーだったのですが、いろいろと話を聞いてみたら、社内の優秀なメンバーを引き抜いて新しい会社を作ろうとしていたんです。さらには「日本法人にも協力者がいる」と言っていたことも知りました。社内に裏切り者がいる——その事実だけが明らかになったんです。

誰が当事者かわからず、誰にも言えないまま1人で調査を進めていましたが、数ヶ月後、実際に社内に引き抜きを画策している人物が見つかり、最終的には証拠の書類を全部見せて、その人物には会社を辞めてもらいました。問題は解決したのですが、これがきっかけで中国法人はクローズせざるを得なくなりました。ただ、ソーシャルゲーム事業の成長スピードは想像以上で、日本の社員も増えているところだったので、致命的とならなかったのが幸運でした。みんなのケンテイを中心とした広告収益が徐々に積み上がってきたのですが、ソーシャルゲームで大きなヒットを生み出すことはできていませんでした。

心の声には従え——アプリDLは累計8000万件に

そして次のタイミングではソシャゲは捨てて、スマホアプリの開発に振り切る、という経営判断をしたんです。2011年の頭に、「1年後に収益の半分をスマホアプリから上げる」という目標を立てたんですが、6月くらいのタイミングで100%をスマホアプリに切り替えることに。もちろん最悪のシナリオも想定した上で、この判断と、それでも会社に残ってもらえるかという手紙を書き、社員の前で読み上げました。

手紙を読み切った後、それでも一緒にやっていきたい」と言ってくれたメンバーは、これまでの半分以下の9人でした。そのメンバーと開発し、1カ月後にリリースしたアプリこそが、コミュニティーファクトリーの今後を決めることになる「DECOPIC」だったんです。

2011年当時、「Path」というコミュニケーションアプリを見て、少人数の写真のコミュニケーションが良さそうだと思い、「Mix Snap」という写真のコミュニケーションアプリをリリースしました。ただ、そのアプリはmixiログイン(mixiのアカウントを利用したログイン)しかできない上に、Android版からリリースしたこともあって、結局2000件ほどしかダウンロードされませんでした。ただそこにも学びがありました。ユーザーを見てみると、7割くらいが台湾からのアクセスだったんです。それで、「写真ならもしかして海外でもサービスが通用するのではないか」と思いました。また、日本の「カワイイ」文化が海外でも受けていることは知っていたので、ピボットして作ったDECOPICは、最初からなんとなく「当たる」という感じがしていました。

決して最初から女性向けのアプリを作りたかった訳ではないです。単純に考えたら、獲得できるユーザーが半分(男女のうち女性のみで)になっちゃうわけですから。ただ、それ以上にアプリを当てたかった。だからこそ振り切った判断をしました。最初の数日、バイラルでユーザー数が一気に増えて、そこからは試行錯誤しつつサービスが伸びていきました。そこからはDECOPICだけでなく会社全体を女性向けアプリ事業にピボットして、どんどん女子向けアプリをリリースしました。DECOPICをローンチした半年後には出資やM&Aの話が来るようになり、その半年後にヤフーと買収の話をした、という感じですね。2012年9月にバイアウトしました。その後ヤフー時代も含めるとコミュニティファクトリーのアプリ群で累計8000万件を超えていたので、このチャレンジとピボットは成功したんじゃないかと思っています。

M&A前、最初は事業会社でシナジーのあるところから出資を受けたいと思っていました。そこでいくつかの事業会社さんを中心に、増資、買収のお話を進めていました。

元々ヤフーにも出資のお願いに行ったんですが、当時のヤフーは「爆速」をキーワードに経営体制が変わった直後のタイミングでした。CMOの村上さんとお話したんですがヤフーが面白そうで、1時間の面談後には、バイアウトすることを決めていました。

自分の中で、教訓として残っているのは、「これはやった方がいい」という心の声が聞こえたときに、やらなかったことはすごく後悔する、ということですね。もちろん、当時はやらない理由もあったのですが、心の声には従った方がいい。社内のリソースの問題やそれまでの経緯など、やらない理由はいくらでも挙げられるんです。でも、そこで無理でもやるかやらないかが経営者としての実力だと思います。自分の場合、ソシャゲのときは100%やりきれなかったけれど、スマホアプリの時には「やるべき」と思ったから、社内に誰もエンジニアが居ない状態から無理やり体制を作って、なんとかローンチまで漕ぎ着けました。その結果なんとか生き残れたんだと思います。

スタートアップ業界で前向きにやった失敗を責める人なんて居ないので、とにかくなんでも挑戦をしていってほしいと思います。

クラウドファンディングで開発を持続できたeペーパータブレットreMarkableがついに8月29日に発売

紙の単純性と多用途性をテクノロジーの力で再現したい、という願いは今でも健在だが、それを実現したデバイスはまだない。でも、reMarkableでそれが変わるかもしれない。この ユニークで意欲的なタブレットは、紙にできることをもっと上手にやることをねらっている。そのアイデアが4年前に提案され、クラウドファンディングに載ってから1年近いが、チームはついに最初の製品を8月29日に発売する

reMarkableを、金だけ取って消えてしまう幽霊プロジェクトだ、と思った人も多かった。でもチームは諦めることなく、集中力を維持し、そして幽霊とはほど遠い意外な結果をもたらした。

まだ開発途上の製品なので、最初の製品を受け取った人たちも、今後の忍耐が必要だ。ぼくもテストするとき、そのことを忘れないようにしよう。でも、チームが長年心血を注いだ核心部分は、感触と基本的な機能だ。製品が届いたらすぐに、報告記事を書こう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

「セカイラボ」提供元のモンスター・ラボが7億円の資金調達、M&Aも実施し海外展開を加速

海外の開発チームに仕事を依頼できるオフショア開発サービス「セカイラボ」などを展開するモンスター・ラボは8月17日、YJキャピタルを含む複数の投資家による第三者割当増資により、約7億円を調達したことを明らかにした。

セカイラボを立ち上げてから4度目となる今回のラウンドに参加したのは、YJキャピタルのほか新生企業投資、山陰中央テレビ、Fenox Venture Capital、田部(島根県雲南市に本社を構える事業会社)および既存投資家だ。

モンスター・ラボは昨年11月に島根県のごうぎんキャピタル、りそなキャピタルなどから2.5億円の資金調達を実施しているほか、2015年11月にデジタルガレージとパソナテックから4億円、2014年8月にEast Ventures、SMBCベンチャーキャピタル、三菱UFJキャピタルなどから1.2億円を調達。今回調達した資金をもとに欧米企業からの受注拡大に加えて、日本企業が海外展開する際のサポートなどにもさらに力を入れていく。

モンスター・ラボはアジア、北米、欧州にそれぞれ開発拠点を持っているため、顧客はニーズに応じて最適なチームへ依頼できる点が同社のオフショア開発事業の特徴。世界の最適な場所、最適なチームにITサービス開発のプロセスをアウトソーシングできることから、同社では「グローバルソーシング」という打ち出し方をしている。

今月8日にはデンマークに本社を構えるアプリ開発会社Nodesを買収したことを発表。すでに事業展開していた北米とアジアに加え、今後は欧州でも事業を拡大していく予定だ。またこの買収によりモンスター・ラボは9ヶ国17都市に拠点を構えることとなった。

モンスター・ラボでは2019年を目処に、グループ全体の売り上げの約50%を海外市場から獲得することを目指していくという。

Apple、拡張現実(AR)を使った徒歩ナビを計画か?

ARKitは、iOS 11で最大の変化の1つだ。舞台裏でAppleは、iPhoneを非常に有能な拡張現実(AR)装置に変えようとしている。Felix Lapalme‏は、マップアプリのソースコードを見て、Appleがturn-by-turn[曲がり角ごと]ナビゲーションにARを利用するのではないかと探ってきた。

そして7月22日、iOS 11のベータ版を掘り返していたLapalmeは、マップアプリの中でこの謎めいた3D矢印を発見した。

従来のナビゲーションアプリのように、Appleはこの矢印をマップの経路案内に使うのだろうと思う人もいるかもしれない。しかし、コードの中には、徒歩ナビゲーションを利用中、顔の前で端末を傾けるよう指示する部分がある。

それに加えて、マップアプリはiPhoneのカメラを使うことになるらしい。これはiPhone 8が内蔵する可能性のある機能に関する大きなヒントだ。そして、そこにヒントがあるとき、Appleは隠そうとする。

[うーむ、これに関連するコードは全部消えているようだが、3D矢印だけは残っている]

GoogleのProject Tangoを覚えているだろうか。その中でGoogleは、美術館やショッピングモールなどの室内ナビにARを利用することを約束した。

すでにAppleは、空港やモールの詳細マップをiOS 11に組み込む計画があることを公表している。iOS 11と次期iPhoneは9月に公開される。だからもしAppleが、空港内を歩き回ったり、近くのコーヒー店を見つけるのにARを利用すると発表しても驚くにはあたらない。ARKitフレームワークを試しているAndrew Hartというデベロッパーが作ったアプリを下に貼ってあるが、これと似たようなものになるのだろうか。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Kickstarter Japan、正式ローンチは9月13日と発表

2017年5月、TechCrunch Japanでクラウドファンディングサービスの先駆けであるKickstarterが年内にも日本でローンチを予定していると伝えたが、ついにローンチ日が決まったようだ。本日Kickstarterは、9月13日にKickstarter Japanを正式ローンチすると発表した。

Kickstarterは今朝、日本ローンチの予告ページにサインアップしたユーザーに対し、「Kickstarter Japan 公開のお知らせ」のメールを送付した。その中で、Kickstarter Japanは9月13日に公開すること、またクリエイターは日本の銀行口座・身分証明書を使ってプロジェクトが立ち上げられることを伝えている。

お待たせしました!2017年9月13日、Kickstarter Japanを公開します。

当日から、Kickstarterを日本語で使用できるようになります。また、クリエイターは日本の銀行口座・身分証明書を使って、プロジェクトを立ち上げることができるようになります。

Kickstaterでプロジェクトの立ち上げを検討しているクリエイターはKickstarterの登録ページから事前に詳細を伝えることができる。

 

GoogleがコンピュータービジョンアプリFabbyを作ったAIMatterを買収、広告技術のイノベーションに利用か

【抄訳】
Googleがベラルーシで生まれたコンピュータービジョンのスタートアップAIMatterを買収した。同社は、画像の検出と処理をモバイルデバイスの上で高速に行うニューラルネットワークベースのAIプラットホームおよびSDKと、その技術の概念実証のような写真/ビデオ編集アプリFabbyを作っている。

買収の噂は5月からあったが、公式に完了したのが今日(米国時間8/16)だ。両社は買収を確認し、AIMatterのサイトには声明文がポストされた。

買収の価額等は公表されていないが、すでに200万以上ダウンロードされているFabbyはそのまま操業を続け、AIMatterの社員の多くはGoogleに移籍するようだ。AIMatterの社員たちは、ミンスクとベイエリアとチューリッヒに分散していた。とくにスイスは、コンピュータービジョンの技術が高度に発達している場所として有名だ(本誌関連記事: これこれ、そしてこれ)。今後彼らがどうなるのか、全員がGoogleに移籍するのか、等については現状では不明だ。

FabbyはこれまでHaxusなどから約200万ドルを調達している。ベンチャーファンドHaxusは主に人工知能のスタートアップを支援している。またAIMatterの協同ファウンダーで会長だったYuri Melnichekは、今では同社の投資者そしてアドバイザーになっている。彼はMaps.meのファウンダーでもあり、元Googleの社員だ。そしてAIMatterのCEO Andrei Kulikも、投資に参加している。

Haxusは、のちにFacebookに買収されたMSQRDにも投資している。またMelnichekのMaps.meにも投資しており、こちらはMail.ruに買収された。そしてあの人気の写真/ビデオ加工アプリPrismaにも、Haxusは投資している。

しかしこれからのコンピュータービジョン技術は、楽しいお遊びアプリに終わることなく、仮想/拡張現実や、自動運転車の技術など、重要な分野で利用されていくだろう。Googleには、次世代型ソーシャルアプリケーションを開発中との噂があり、そこではコンピュータービジョン技術がオーディエンスの獲得だけでなく、広告事業のための新しい技術としても活用されるのだろう。

【後略】

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Googleのスピーカー「Home」で無料通話ができるようになった

覚えているだろうか? 去る5月、GoogleはGoogle Homeで無料通話ができるようにする計画を発表した。

その機能が今日から提供開始された(残念ながら米国とカナダのみ)。

「OK Google、近くのサンドイッチ屋さんに電話して」などと言えば、状況を理解して食料手配を手伝ってくれる。

あるいは、Google Homeに連絡先のアクセスを許可していれば、「OK Google、ママに電話して」と言ってママに電話をかけることもできる。少々凝るなら、Google Homeが複数の声を認識するように設定しておいて、妻/夫/子供たちが、「OK Google、〈私の〉ママに電話して」と言えば、それぞれ正しいママを呼び出す〈はずだ〉。

ひとつ、厄介な落とし穴:現時点では、通話は未知の正体不明の電話番号から発信される…多くの人々が着信拒否することに慣れている番号だ。年内にはユーザーの個人電話番号を発信元に設定できるようにするとGoogleは言っている ―― ちなみに、Google Voice/Project Fiのユーザーはすでに可能。

新機能の配信は始まっているが、全員に行き渡るまでには一週間ほどかかるだろうとGoogleは言っている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

オーガニック農作物を農家から直接買えるマーケットプレイス「食べチョク」、正式サービス開始

東京・根津に店舗を持ち、都内に宮崎県産の野菜をデリバリーするベジオベジコ、農家・生産者とレストランの直接取引を実現するプラネット・テーブルなど、テクノロジーで農作物の消費や流通のあり方を変えるスタートアップが続々生まれているが、今回紹介するのは、個人の消費者と農家をマッチングするサービスだ。ビビッドガーデンは8月17日、オーガニック農作物の生産者と消費者をマッチングするマーケットプレイス「食べチョク」を正式リリースした。

食べチョクは、同社が設定した基準を満たしたオーガニック農家が出品者となり、自らが手がける農作物を1箱から出品、販売できるサービス。ユーザーがサイト上から農作物を購入すると、中間業者を入れることなく農家がすぐに直送するというもの。農家の月間手数料は無料で、リスクなく参加できることから、問い合わせも増えているという。正式サービスローンチ時には計60のオーガニック農家が出品者として登録する。

「食べチョク」の仕組み

5月にベータ版としてサービスをオープン。ノンプロモーションながら、口コミを中心にユーザーを増やしているという。今回、ベータ版でのユーザーの声をもとにサイトを改修。出品する商品についても「BBQセット」「珍しい果物セット」といったように、ユーザーの用途に合わせたパッケージを農家と協力して作っているという。「ベータ版のユーザーからは、『おいしかったのでギフトとして友人に送りたい』『夏のBBQなど、イベントに向けて購入したい』という声が多くあったため、カテゴリで商品を探せるようにしている」(ビビッドガーデン代表取締役社長の秋元里奈氏)。また、農作物に痛みや不備があった際の補償制度も用意。出品システムも改良し、農家の負担を削減しているという。

ビビッドガーデン代表の秋元氏の実家は、もともと農家を営んでいたが、市場出荷のみでのビジネスを継続することが難しく、現在では遊休農地となっているのだという。そこで、同じ悩みを抱える生産者の力になりたいという思いから、小規模農家の販路拡大を支援すべく食べチョクを立ち上げたと語る。

今後は正式リリースにあわせて、プロモーションも展開する。まずは二子玉川エリアを中心に、リアルイベントなども展開。年内にもユーザー数を数千人規模に、農家を100件規模に拡大することを目指す。「農家も数ではなく質を高めつつ、サービスを広げていく」(秋元氏)

「食べチョク」で取り扱う農作物について

史上最多の「いいね!」がついたツイートが、世界の現状をものがたる

先週末バージニア州シャーロッツビルで起きた出来事は、インターネットのいたるところで大きな反響を呼んだ。中でも、一人のTwitterユーザー、バラク・オバマ前大統領のツイートには、何百万もの人々が共鳴した。

昨夜(米国時間8/15)のオバマ氏のツイートには、本稿執筆時点で300万を超える「いいね!」が付き、史上最も多く「いいね!」されたツイートになった。

[肌の色や生い立ちや宗教を理由に、生まれつき誰かを憎む人はいない]

悲しいかな、この良識あるツイートは、オルタナ右翼を支持する驚くほど多くの人々 ―― 現大統領ドナルド・トランプ氏もその一人 ―― の考えに真っ向から反対するものだった。

しかし、おそらくもっと興味深いのは、Twitterがわれわれに与えてくれる世界を見渡すレンズだ。2014年、同サイトで最も多くのいいね!が付いたツイートは、エレン・デジェネレスがオスカー授賞式で撮ったセルフィーだった。

[ブラッドリー[クーパー]の腕がもう少し長ければ、最高だったのに]

次点はジャスティン・ビーバーの…これだった:

[誰が何と言おうと君たちは素晴らしい>> 神は共にいる、強くなろう>> ビリーバーたちがぼくの人生を変えた。これからも感謝し続けるだろう]

そして今年2番目にいいね!の多かったツイートは、マンチェスター爆破事件に対するアリアナ・グランデの発言だった。

[傷ついています。心の底から、本当に残念です。言葉がありません]

それでも、まったく希望がないわけではない。チキンナゲットが大好き#NuggsForCarterな青年の打ち立てた342万リツイートの記録は今も破られていない。しかし正直なところ、これもあまり慰めにはならない。

今年いちばんいいね!されたツイートが、テロリズムと外国人差別に対する反応であり、しかも誰もが生まれながらに知っているべきこと ―― 人はみな平等に創られている -- を言ったものだというのは、なんとも憂鬱だ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Amazonのプライベートブランド、大盛況――デバイスの成功を受けてファッションも拡大へ

Amazonはここ数ヶ月、プライベート・ブランドの充実に力を入れている。ただしブランドの所有者がAmazonだと表示されていない場合がほとんどなので、ユーザーにはAmazonブランドだということはわかりにくい。しかし1010dataが今週発表したレポートによれば、Amazonのプライベート・ブランドは活況を呈している。またAmazonBasicsや子供服のScout + Ro、Amazon Elements、またAmazon製デバイスのEcho、Kindle、Fire TVなどAmazonの名前を冠したブランドも急成長している。

1010dataはこれまでもAmazonのプライベート・ブランドを追跡しており、このレポートには詳しいアナリティクスが掲載されている。

今年上半期、Amazonのプライベート・レーベルは総販売点数の2%を占めるだけだった(マーケットプレイスへの出品、サービスのサブスクリプションを除く)。しかしAmazonのプライムデー・セールスの期間中、この割合は12%にも拡大していた。

実はAmazonBasicsはこの分野で今年トップのパフォーマンスを示している。AmazonBasicsには「毎日必要なアイテム」が多数取り揃えられている。スマートフォンの充電器からHDMケーブル、bluetoothスピーカー(Alexaを除く)のようなエレクトロニクス製品、各種オフィスサプライ、シーツ、バスタオル、ペット用品まで品揃えは充実している。トータルで2000種類近いプロダクトを取り扱っており、これまでのところAmazonのプライベート・ブランドとしては最大のものだ。

1010dataの調査によれば、2017年上半期のAmazonBasicsの売上は2億ドル以上になったという。

AmazonBasicsに続くのはエレクトロニクスで分野で、これにはEcho、Fire TV、Kindleが含まれる。上半期の売上はそれぞれ1億2000万ドル、1億1000万ドル、
7500万ドルだった。エレクトロニクス製品をすべてトータルするとAmazonのプライベートブランドの売上の55%となるという。 この急成長の主役はEchoで対前年比で2倍(101%アップ)だった。またKindle Fireの売上はほとんど3倍(184%アップ)となっている。

Amazon ElementsはAmazonのプライベート・ブランドでいちばん歴史が長い。ヒット商品は赤ちゃん用おしりふきのベビーワイプだが、最近取扱品目にビタミンとサプリを加えた。 このブランドも上半期に950万ドルを売り上げている。

最近加えられた新しいブランド、ベッドのシーツやバスタオルなどを扱うAmazon Pinzonは660万ドル、昨年スタートしたスナックのブランド,、Happy Bellyも同期に200万ドルの売上となっている。

さらに最近Amazonはファッション・ビジネスにも力を入れており、品揃えの拡大中だ。一部のブランドはすでにかなりの反響を得ている。女性向けアパレルのLark + Ro、男性向けドレスシャツのButtoned Down、またAmazon Essentialsのアパレルもトップ10入りしている。

中でも子供服のブランド、Scout + Roは対前年比542%のアップともっとも伸びが著しい。この急成長は品揃えの拡大と歩調をあわせたもので、昨年に比べて取り扱う種類も5倍に増えている。紳士靴のFranklin & Freemanも成長中だ。

とはいえ、プライベート・ブランドのすべてがバラ色ではない。たとえばPinzonは上記のように今年上半期で660万ドルの売上を得ているものの、対前年比では28%のマイナスとなっている。

またこのレポートによれば、Amazon Elementsが口コミ評価では群を抜いており、 42%と他のAmazonの4倍以上になっている。

また1010dataはアイテムをSKU〔単品管理〕で分析しており、プライベート・ブランドではAlexa Voice Remot機能つきの Fire
TV Stickがトップセラーとなっている。続いて黒のEcho Dotスピーカー、さらにAmazonBasicsのプロダクトが続く。Echo、白のEcho
Dotもトップ10に入っている。EchoデバイスはPrime Dayのベストセラーだったことを考えると意外ではない結果かもしれない。【略】

1010dataは契約上の守秘義務を理由としてデータのソースを明らかにしていないが、用いた情報は全体として「オフラインおよびオンラインにおける消費者の購入動向を独自に収集したもの」だと述べている。

画像: Ross D. Franklin/AP

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ジェネシア・ベンチャーズが30億円規模の第1号ファンド組成へ

シード・アーリステージのスタートアップへの投資に特化したジェネシア・ベンチャーズは8月16日、第1号ファンドとなる「Genesia Ventures Fund 1号投資事業有限責任組合(以下、1号ファンド)」のファーストクローズを行い、総額20億円で同ファンドを設立したと発表した。

左から、アソシエイトの河野優人氏、ジェネラルパートナーの田島聡一氏、アソシエイトの木村浩平氏

1号ファンドの主なLPは以下の通り:

なお、同ファンドは年内にファイナルクロージングを行う予定で、引き続き出資者の募集を行う。最終的に、ファンド総額は30億円程度まで拡大させるという。

アジアのシード・アーリステージ投資に特化

ジェネシア・ベンチャーズの1号ファンドが投資するのは、日本、東南アジア、北米に拠点をおくシードからアーリステージのスタートアップだ。同ファンドはすでに20社への投資を実施している。

その中には、TechCrunchでも紹介したスタートアップたちも含まれている。AI投資アドバイザー「VESTA」を提供するGoodMoneyger、貿易業界のクラウドサービスを提供するZenport、単純作業を自動化するRPAサービスのBizteXなどがその例だ。

それぞれのスタートアップの詳細は以下の記事を参照していただきたい:

運用しないロボアドバイザー「VESTA」が7500万円調達

貿易業務の効率化クラウドサービス「Zenport」が資金調達とオープンβ公開を発表

コピペ系単純作業はロボで代替――クラウド型RPAのBizteXが4000万円調達

ジェネシアは海外スタートアップへの投資にも積極的だ。東南アジアで「高級ホテル版Airbnb」とも言えるサービスを提供するLuxstayや、不動産マッチングプラットフォームのHomedyなどに出資している。

ジェネシア・ベンチャーズ創業者でジェネラル・パートナーの田島聡一氏は、「現在の海外出資比率は30%程度で、今後もこの割合を維持していく予定だ」と話す。

そういえば、「ジェネシア(Genesia)」という名前は、創生という意味を持つ“Genesis”という単語に“Asia”を掛けあわせたものらしい。だから、日本や東南アジアを含むアジア全体への投資というのが彼らのミッションでもあるわけだ。

ジェネシアベンチャーズの投資手法について田島氏は、「事業のアイデア作りの段階から支援に関わり、創業直後からプレAまでの投資に特化する。その後に追加出資というかたちでシリーズA以降のラウンドに参加することはあるが、基本はやらない」と語る。

ジェネシア・ベンチャーズは2016年に設立されたばかりのVCだけれど、創業者の田島氏はスタートアップ・VC業界では知名度も実績もある人物だ。

彼はさくら銀行(現:三井住友銀行)で約8年のあいだ企業融資業務などに携わったあと、サイバーエージェント・ベンチャーズに入社。2010年には同VCの代表取締役にも就任し、多くのエグジットも経験している。

チケット売買もビットコインで——コインチェックがチケットキャンプに対応

8月12日に単位価格が4000ドルを超えたビットコイン。そのビットコインを決済に使える場面が、また増える。ビットコイン決済サービス「Coincheck Payment」を提供するコインチェックは8月17日、ミクシィグループのフンザが運営する「チケットキャンプ」にCoincheck Paymentを導入。ライブやイベントなどのチケットを、ビットコイン決済で購入することができるようになった。日本のチケット業界では初のビットコイン決済対応となる。

チケットキャンプは利用者数500万人を超える、チケット売買のサービス。チケットキャンプでのビットコイン決済は全世界のビットコインウォレットに対応し、PCブラウザ、スマートフォンブラウザで利用できる。チケットキャンプのiOS/Androidアプリにも、今後対応していく予定だという。コインチェックが提供する「Coincheckウォレット」ではシステム上から直接決済が可能。またCoincheckウォレット以外のウォレットを利用する場合は、支払い時に表示されるQRコードを読み込むことで決済ができる。

コインチェックでは、これまでにもCoincheck Paymentを国内外へ提供してきた。現在、Coincheck Paymentで決済可能なサービスには、DMM.comの各サービスや、寄付金の受付電気料金の支払いなどがある。7月にはAirレジ向け決済サービス「モバイル決済 for Airレジ」にも導入され、メガネスーパーなどでビットコイン決済対応を開始している。

コインチェックは2012年の設立。2014年8月から仮想通貨取引所「Coincheck」の運営を行ってきた。8月10日には、Fintechスタートアップへの投資育成プログラム「Coincheck investment program」を開始。ブロックチェーンや仮想通貨、Fintech事業を開発・運営する法人・個人を支援していくと発表している。

Nayutaがジャフコらから1.4億円を調達、ブロックチェーン上のレイヤー2技術開発へ

福岡市に本拠を置きIoTとブロックチェーン分野に取り組むスタートアップ企業Nayutaが、ジャフコおよび個人投資家を引受先とする第三者割当増資により1億4000万円の資金を調達したことを明らかにした。調達実施日はこの2017年7月28日、出資比率は非開示。同社が外部から資本を調達するのはこれが最初である。

調達した資金は主に研究開発に振り向ける。現時点では同社のフルタイムスタッフは2名だが、Nayuta代表取締役の栗元憲一氏は「人員を増やしエンジニアを5〜6名にしたい。Biz Devの人材も採りたい」と話している。また、同社の取り組みにはハードウェア開発が関係することもあり大きめの資本が必要と判断したとのことだ。

同社が注力するのは、ビットコインを筆頭とするブロックチェーンの上に構築するレイヤー2(あるいは2nd Layer)技術だ。ブロックチェーンの上に「ペイメント専用のレイヤー(層)」を構築する試みである(下の図を参照)。現状のビットコインでは難しい「単位時間あたり取引能力の拡大」、「リアルタイムな取引」、「マイクロペイメント」を可能とする技術群を開発していく。

今までのNayutaの取り組みとしては、ビットコインのブロックチェーン上のOpen Asset Protocolを応用したスマートコンセント(発表資料(PDF))や、BLE(Bluetooth Low Energy)に基づく人流解析システム、大型放射光施設「SPring-8」の測定データの有効活用を図るためブロックチェーンを応用して構築したデータ流通インフラシステムのプロトタイプ(発表資料)などがある。この7月28日に開催した「MUFG Digital アクセラレータ」第2期のDemo Dayでは「準グランプリ」を受賞している。

レイヤー2で世界の最先端と実装を競う

レイヤー2に関連しては、ビットコインのLightning Networkが知名度も高く注目されている。Nayutaは、このLightning Networkと同様の機能を実現する層と、その上のアプリケーション層の両方を開発していく。同社が開発したビットコインの「レイヤー2」を用いる決済技術については以前TechCrunch Japanで報じている。同社はこの時点で、Lightning Networkの既存実装とは独立に、自社による実装に基づくマイクロペイメントを実現している

ブロックチェーンとレイヤー2は、どちらも必要とされる技術だ。この2017年8月には、レイヤー2プロトコル実装に必要となるSegWit仕様がビットコインのブロックチェーンでアクティベートされることが決定した。最近、いわゆる「ビットコイン分裂」の懸念が盛んに報道されたが、この騒動の実態はSegWit有効化をめぐる動きだった。SegWit仕様が使えるようになれば、レイヤー2技術の実装と応用が加速することは間違いない。

このように聞くと「すでに登場しているLightning Networkの実装を使ってその上のレイヤーを開発した方が効率的ではないか」との疑問を持つ人もいるかもしれない。この疑問に対して、同社では「レイヤー2はどの実装が標準になるのか、まだ分からない段階。Lightning Networkだけではなく、様々なパターンの技術が出てくるだろう。IoT分野に取り組む上で、自分たちで作ることでレイヤー2の技術を身につけておくことは大事だ」(栗元氏)と話す。特に大事な部分はリアルタイム性に関連する部分だ。

「IoT分野では、ほとんどのものにリアルタイム性が要求される。レイヤー2がうまく構築できれば、(リアルタイム性に欠ける)パブリックブロックチェーンでもIoT分野で新しいソリューション、ガバナンスを作っていける可能性がある」(栗本氏)。

Nayutaが狙うのは特にIoTと関連するレイヤー2分野だ。リアルタイム性を筆頭にIoT分野(あるいは組み込みシステム分野)では、技術をブラックボックスとして利用するだけでなく「中身」を把握していることが競争力につながる場合が多い。同社が自社による独自実装にこだわっている理由はそこにある。

ブロックチェーン、レイヤー2、IoTの組み合わせは世界的に見ても最先端の取り組みだ。その最先端のソフトウェアテクノロジー分野で日本のスタートアップが正面から世界との技術競争に挑む形となる。資金調達のタイミングと同時にSegWit仕様の有効化が重なったことは幸運でもあるが、競争も激しくなるだろう。今後の同社の取り組みは要注目といえる。