ナイジェリアが中国の足跡を追ってデジタル通貨を試験的に導入

中央銀行は世界中で通貨の流通と供給を統制しているが、暗号資産の驚異的な増加により、その権威、統制、権力が脅かされている。

そのため世界各国の中央銀行は現在、独自のデジタル通貨を生み出している。現地の活動や暗号資産への関心(米国に次いで2番目に大きな暗号取引市場)に支えられたアフリカ大陸の革新的な動きとして、ナイジェリアが2021年10月下旬、そのリストに名を連ねた。

ナイジェリアの中央銀行は過去3年間の開発段階を経て、現在アフリカ初のデジタル通貨の試験運用を行っているところだ。

これまでに中国、スウェーデン、韓国など14カ国が独自の中央銀行デジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)の試験段階に入っており、合計81カ国がその他の段階でCBDCを模索中である。

バハマ、グレナダ、セントクリストファー・ネイビス、アンティグア・バーブーダ、セントルシアの5カ国のみが正式にローンチしている。

eNaira(eナイラ)と呼ばれるこのデジタル通貨は、ナイジェリア中央銀行(CBN:Central Bank of Nigeria)が支援・発行する。ほとんどの政府と同様、ナイジェリアがデジタル通貨を導入する理由は、物理的な現金よりもコスト効率が高く、銀行口座を持たない人々の金銭へのアクセスを容易にし、違法行為をある程度制限できることにある。

しかし、中央銀行が発行するデジタル通貨には利点がある一方で、市民に対する監督を行ってきた、あるいは監督を試みてきた実績のある政府によってそれがどのように利用されるのかという懸念が存在する。

eNairaについてこれまでにわかっていること

この試験的なローンチに向けて、CBNは8月、デジタル通貨の開発と展開のための事業者としてバルバドスを拠点とするBitt Inc.(ビット・インク)を選定した。

同社は、東カリブ海諸国通貨同盟(ECCU:Eastern Caribbean Currency Union)に協力し、デジタル通貨DCash(Dキャッシュ)の設計とローンチを支援してきた実績を持つ。DCashは独自のCBDCを完全にローンチした5カ国のうちの4カ国、アンティグア・バーブーダ、グレナダ、セントクリストファー・ネイビス、セントルシアで使用されている。

9月27日、CBNはeNairaのウェブサイトを立ち上げ、ナイジェリア人がどのように同国のデジタル通貨にアクセスし、利用できるかについて必要な情報を提供した。

ナイジェリア人は最初にeNairaモバイルアプリをApple StoreかPlay Storeでダウンロードする必要がある。サイト上のQRコードをスキャンしてサービスにアクセスすることも可能だ。

ユーザー登録後、お金の保管や送受信を行うためのSpeed Walletと呼ばれるウォレットを登録・作成する。プラットフォーム上では、銀行口座を持つ、あるいは持たない、さまざまなIDレベルのユーザーに対応するために、複数層のウォレットが用意されている。

ウェブサイトには、eNairaの4つの主要機能が掲載されている。顧客がeNairaウォレットからお金を移動できる統一決済システム、ユーザーが残高や取引履歴を確認できる銀行口座管理機能、QRコードを読み取って店頭で支払いができる非接触型決済サービス、そしてユーザー同士がリンクされた銀行口座やカードを介して送金を行うP2P決済だ。

暗号資産がCBDCに移行

ビットコインのような暗号資産は、従来のグローバルな銀行システムの枠を超えて生み出されたにもかかわらず、お金のデジタルな未来についてのポテンシャルを際立たせている。そしてその普及率の急激な上昇は、お金の将来を決定づけることにおいて、伝統的な機関との衝突につながっている。

暗号資産に対する議論は、一般的には詐欺やボラティリティに関する懸念に焦点が当てられてきた。それでも、エルサルバドルのような一部の国では、ビットコインを法定通貨として使うことをやめていない。ビットコインや暗号資産を自国の銀行や金融システムへの脅威と考える他の国々にとって、CBDCは、法定通貨以外のものへの関心の高まりに直接代わるものとして機能する。

Blockchain Nigeria User Group(ブロックチェーン・ナイジェリア・ユーザー・グループ)の創設者でコーディネーターを務めるChimezie Chuta(チメジー・チュタ)氏は、TechCrunchの取材に対して次のように述べている。「CBDCの概念は、中央銀行にとって不可欠なものとなっています。お金は人々を統制するためのツールです。ビットコインやイーサリアムのような非公開で発行された暗号資産の流入は、世界中の中央銀行の権威に対する直接的な挑戦であり、中央銀行は主要な統制ツールが損なわれるのを許容することはできないと考えています。CBDCは、弱いながらもその対抗策として浮上してきたのです」。

暗号資産はかなり独立性がある一方、デジタル通貨は紙の通貨と同じ価値を有している。ナイジェリアの場合、eNairaはナイラに連動しており、ナイラと同様に米ドルに対して変動する。

CBDCと暗号資産のもう1つの重要な違いは、前者が規制と統制にさらされていることにある。これは中国とナイジェリアの政府の核心にある共通のテーマだ。

2014年以降、中国は中央銀行である中国人民銀行(PBOC:People’s Bank of China)が支援する国家デジタル通貨(デジタル人民元)の開発に取り組んできた。その前年に、中国政府は銀行や決済企業がビットコインなどの暗号資産関連サービスを提供することを禁止している。

2017年には、中国はマイニング、イニシャル・コイン・オファリング(ICO:Initial Coin Offering)、および暗号資産取引プラットフォームが法定通貨を暗号資産に変換することを禁止した。

しかしこの禁止にもかかわらず、ビットコインや他の暗号資産はそれ以降もこのアジアの国で大きな牽引力を得てきた。そのため、2021年5月には、フィンテック企業が暗号化プラットフォームに口座開設、登録、取引、清算、決済に関するサービスを提供することを禁止する、より厳格な法律を制定した。

これまで中国は、地元の暗号資産プラットフォームのみをターゲットにしており、個人がオフショア取引所で暗号資産を保有することは禁止していなかった。

しかし2021年9月、中国政府が暗号資産取引(マイニングを含む)に関するすべての取引を違法であると宣言したことで状況は変わった。同政府はまた、Binance(バイナンス)のような海外の暗号資産取引所が中国本土の人々にサービスを提供することも違法であるとしている。

「中国は過去に何度も暗号資産にまつわる『禁止』措置を取ってきましたので、驚くに値しませんが、今回は曖昧さがありません」とPwCの暗号資産リーダー、Henri Arslanian(ヘンリ・アルスラニアン)氏はツイートした。「中国では、あらゆる種類の暗号資産取引と暗号資産関連サービスが禁止されています。議論の余地はありません。グレーの領域は存在しません」。

一部のアナリストは、中国によるこれらの禁止や制限は、2022年にこのアジアの国が完全にデジタル人民元をリリースすることを目的としていると述べているが、その見方は妥当であろう。WeChat(ウィーチャット)とAlipay(アリペイ)が5回に4回のデジタル決済を行っているこの国で、流通している現金の一部を置き換えるためにデジタル人民元をローンチしたと中国政府は主張している。

暗号資産に対するさらなる取り締まりや監督の可能性

PBOCは政府の支援を受けて、上海、成都、北京で2020年4月から試験運用が開始されたデジタル人民元により、オンライン決済の市場シェアをAlipayとWeChatによる複占から取り戻そうとしているのかもしれない。

eNairaと同様に、ユーザーは中央銀行が開発・管理するモバイルアプリをダウンロードすることによってのみ、デジタル人民元にアクセスできる。これまでのところ、700万以上の個人のデジタルウォレットと100万以上の企業のウォレットがデジタル人民元を使用している。Business Insider(ビジネスインサイダー)によると、これらのトライアルから合計53億ドル(約6050億円)の取引が行われたという。

ナイジェリアは暗号資産マイニングの国ではないものの、国民は暗号資産のヘビーユーザーだ。Paxful(パックスフル)によると、多くのナイジェリア人がナイラの下落から自身の貯蓄を守るために暗号資産を利用しており、この西アフリカの国はビットコイン取引で米国に次ぐ2位に位置している。

Chainalysis(チェイナリシス)のデータに基づくと、ナイジェリア人は5月に24億ドル(約2700億円)相当の追跡可能な暗号資産を取引している。2月にナイジェリア政府がCBN経由で暗号資産取引の禁止やそのような取引への銀行の参加を制限し、暗号資産を使用するナイジェリア人の口座を閉鎖するよう銀行に命じたことを考えると、これは驚くべき数字である。

そして、中国と同様に、ナイジェリアのその後の行動は自国のデジタル通貨を試験導入する方向に傾いた。しかし中国とは異なり、ナイジェリアは現金中心の社会だ。バハマのような小国がデジタル通貨を導入した主な理由(金融包摂性の改善の可能性を含む)の1つがここにある。こうした目的に照らしてみると、ナイジェリアでのデジタル通貨の導入は紙面上では理に適っている。

しかし、それが暗号資産を使用したい人々へのインセンティブを減らすための政府の策略であることを理解する人がいる一方で、多くのナイジェリア人はその有用性に疑問を抱いている。だが、懸念すべき微妙な要素は他にもある。同国における暗号資産活動の監督や全面的な取り締まりに対するものだ。

典型的には、政府は金融取引を監視し、疑わしい、あるいは異常な金銭活動に関する情報を収集するために、金融インテリジェンスユニットを使用する。しかし、CBDCは事態を1段階引き上げるかもしれない。

複数の出版物が、中国政府はデジタル人民元を使って国民に対する監督を進める可能性があるとほのめかしている。中央銀行であるPBOCの説明では、デジタル人民元サービスを運営している機関は「非同期伝送によって中央銀行に取引データを適時に提出」することが期待され、それにより中央銀行は「データを追跡し、マネーロンダリングと犯罪の取り締まり」ができるようになるとされている。

CBNも同様の目的を持っており、eNairaは「各eNairaの追跡可能な固有ID」により詐欺行為やマネーロンダリングを最小化する、と以前に述べている。

「銀行や通信会社はすでに検証プロセスを通じて必要な情報を持っています」とチュタ氏はいう。「しかし、CBDCは監視と監督を強化するでしょう。なぜなら、デジタル環境で実際にお金の流れを追跡することができ、配備している台帳上で各ユーザーの取引に対するフォレンジック分析を行えるからです」。

6月に現地メディアが報じたところでは、ナイジェリアはインターネットファイアウォールを構築するために中国と協議中のようだ。同報道によると、中国の「グレート・ファイアウォール」は政府のオンライン検閲と監督の中枢になっているという。ナイジェリアにはこうした監督用のファイアーウォールを構築するリソースがないが、eNairaは規模こそ小さいものの、同じ目的のために設計されたのではないかと考える向きもある。

「CBDCは追跡可能であり、政府が不当な監督を行うことを決定した場合に有用になると思います」と匿名を希望する暗号資産ユーザーはTechCrunchに語った。

また、中国のケースと同様に、eNairaの採用が計画通りに進まない場合や、政府がeNairaを国内で取引される唯一のデジタル通貨として強制する場合には、暗号資産の取り締まりがさらに強化される可能性がある。

その典型的な例が、中国の新たな命令により、世界最大の暗号取引所であるHuobi(フォビ)とBinanceの2カ所でユーザーの新規登録が停止されたことだ。Huobiは年末までに現在のアカウントを廃止することを明らかにしている。

ナイジェリア政府がこのような権限を行使できるかどうかは定かではない。それでも、ナイジェリア人に対するサービス提供や雇用をオフショア暗号プラットフォームから禁止し、成功した場合、ピア・ツー・ピアの活動(ナイジェリアで暗号資産を繁栄させてきた)は深刻な打撃を受けるだろう。

「政府は概して、暗号資産に脅威を与えています。現実世界の権力をつ人がいるような状況では、暗号資産の取引で投獄される可能性があります」とナイジェリアの暗号資産交換プラットフォームで成長リードを務める人物は述べている。「政府が本当に自国内での暗号資産の使用を禁止することを決定した場合、暗号資産は抑圧され、ある時点でそれを使用する価値がなくなる恐れがあります」。

しかし現時点では、ナイジェリアと同国の頂点にある銀行は、eNairaに対して高潔な意図を持っているようだ。CBNのGodwin Emefiele(ゴッドウィン・エメフィーレ)総裁は、eNairaはより安価で迅速な送金流入と国境を越えた貿易の増加につながると述べている。

送金に関しては、eNairaは国外にいるナイジェリア人が故郷に送金するためのより良い代替手段を提供すると思われ、長期的にはナイジェリアへの送金が増加傾向にあり、2020年は170億ドル(約1兆9400億円)に達している。

中国の銀行がナイジェリアでの業務を拡大しているとのニュースが2021年9月に広まったが、この事実は、両国間のクロスボーダー貿易の有効性に対する極めて重要な要素を示しているのかもしれない。中国はナイジェリアの最大の貿易相手国で、両国間の2021年の貿易額は200億ドル(約2兆2800億円)を超え、2020年の192億ドル(約2兆1900億円)から増加している。3年前、両国はより良い貿易を目指して通貨スワップ協定を試みたが、何も具体化しなかった。しかしチュタ氏は、両国のデジタル通貨は完全な代替物として機能できると主張する。

「両国にとって有益な相互運用性があると思います。ナイジェリアから中国に送金したい場合、少なくとも4つの異なる手続きを踏まなければなりません。それには3、4日かかります」とチュタ氏。「ですが、中国とナイジェリアのCBDCが相互運用することを想定してみましょう。中国のサプライヤーに送金したい場合、アプリ上の簡単な操作でeNairaを中国人民元に交換してサプライヤーに送信すれば、サプライヤーは従来の送金機関で通常行う手続きに比べてごくわずかな時間で支払いを受けることができます」。

ナイジェリアの中央銀行は、eNairaは「支払い効率、歳入と税徴収、そして対象を絞った社会的介入」の改善にもつながるだろうと述べている。

ナイジェリアの頂点に立つ銀行は、これらすべてを達成できるだろうか?パイロットモードでも完全にローンチされたモードでも、大規模な成功を収めた国はまだ存在しないため、断言するには時期尚早である。eNairaはポートハーコート、アブジャ、カノ、ラゴスの4都市で段階的に展開される予定だ。しかし、政府主導の同様の取り組みが過去にどのように行われてきたかを考えると、本格的な展開が実現する見込みはほんのわずかしかない。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)

グーグルがケニアでクラウドソーシングアプリ「TaskMate」を展開、グローバル展開も検討

米国時間10月18日、Googleは、ケニアにTaskMateを立ち上げた。これはスマートフォンを利用して仕事を見つけ賃金をもらうというクラウドソーシングなアプリで、同社は成長途上のギグ経済を活用する。Googleはケニアで1年間の実験を経てこれからベータテストを行い、この大陸の他の国にも導入するための準備をする。このアプリはインドでもパイロットとして利用できる。

アプリTaskMateのユーザーは、企業が求める翻訳や写真撮影など、スキルを要する、あるいは要しないタスクを充足するが、求人が載るためにはGoogleの承認を必要とする。

TaskMateのような、人びとがサービスを実行して代金をもらうというタイプのGoogleのアプリは、他にもある。たとえば有料でアンケートの回答者になるというアプリや、またLocal Services Adsというアプリは企業に、その会社のサービスを必要としている知人等を見込み客として結びつけて謝礼を得る。

TaskMateのプロダクトマネージャーであるMike Knapp(マイク・ナップ)氏は「TaskMateをローンチしましたが、アフリカだけでなく、も世界でオープンするのもこれが初めてです」と挨拶している。

パイロット事業は2020年後半に始まり、ユーザーはペンシルベニア州立大学の研究プロジェクトのために植物の写真を撮ったり、その他いろいろな仕事をした。このアプリのギグワークには、在宅と現場仕事の両方がある。

ナップ氏は、パイロット事業について「パイロットでは1000名の人たちがアプリを使用し、とてもポジティブなフィードバックが得られました。そこで、今日からはベータ段階に移行します。より大規模な実験になるでしょう」と述べている。

「今は、実験に協力してくれる企業やスタートアップを探しています。彼らの難しい問題の解決にどれぐらい役に立つか、それを検証したい」。

このプラットフォームに求人をポストする企業は、求職者のグループを指定できるし、また特定のスキルを持つ人を招待できる。ケニアのTaskMateのユーザーは、稼いだお金をモバイル決済サービスM-Pesaから引き出せる。M-Pesaを運用しているSafaricomは、東アフリカで最大の通信企業だ。

「クラウドソーシング方式なので、求人を広めるのも、仕事を達成するのもシンプルです。このアプリはケニアの人たちに仕事と収入を得るチャンスを提供し、コミュニティの創成と副収入の獲得の両方の役に立ちます。これはGoogleのアフリカに対するコミットメントであり、DX(デジタルトランスフォーメーション)の旅路でもある」とナップ氏はいう。

TaskMateの立ち上げと同時期にGoogleは、ガーナとケニアとナイジェリアと南アフリカの小規模企業を助けるための、1000万ドル(約11億4000万円)のローンを発表した。パンデミックによって停滞した経済の回復を助ける意図もある。ローンの提供は、サンフランシスコの非営利貸付組織Kivaを通じて行われる。この融資は、先々週に発表されたアフリカへの10億ドル(約1143億円)の投資の一部だ。

Googleの投資に含まれる海底ケーブルは、南アフリカとナミビアとナイジェリアとセントヘレナを貫き、アフリカとヨーロッパを結ぶ。それは高速インターネットを提供し、2025年までにナイジェリアと南アフリカに、デジタル経済の成長により170万の雇用を作り出す、と言われている。

アフリカのデジタル経済はこのような統合化の継続とともに一層の成長が期待され、接続人口の増加によっても成長の新たな機会が生まれる。アフリカのサハラ南部地域では、人口の28%、約3億300万人が現在、モバイルインターネットに接続している、と2021年のGSMAモバイル経済報告書はいう。そしてこの数字は2025年には40%にもなり、TaskMateのようなインターネット接続を利用するサービスや、アフリカの若い人口により、インターネットをベースとする企業やサービスにさらに大きな機会を提供する。

画像クレジット:SpVVK/Getty Images

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(文:Annie Njanja、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Uberがアフリカで相乗りサービスをテスト、世界的には新型コロナで類似サービス停止中

Uber(ウーバー)は、同じ方向に向かう乗客が乗車料金をシェアできる機能「Pool Chance」をケニアでテスト中で、ガーナとナイジェリアでもこの低価格サービスを展開する予定だ。ケニアのナイロビで車を予約する際にこのオプションがあるのをTechCrunchが発見した。Uberの広報担当者によると、このサービスはパイロット版(ベータ版)の一部であり、小規模なテストの結果を踏まえてより広範囲に展開する予定とのことだ。

アフリカで初めて導入されるこの新サービスは、2014年にサンフランシスコのベイエリアで開始され、その後、世界の複数の都市で導入されたUberPoolに似ている。この低価格で人気のサービスは、米国やカナダを含む多くの地域で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)規制のために一時停止したままだが、Uberは一部の市場で徐々に復活させていて、これまで展開していなかった場所にも導入しつつあるようだ。同社は、この2つのプロダクトのコンセプトは似ているものの同じではないとし、さらなる詳細は明らかにしなかった。

しかし、Uberのドライバー向けフォーラムのこちらのスレッドでは、その違いを次のように説明している。Pool Chanceは、ドライバーが他の乗客を拾えば割引料金で乗車できるチャンスがあり、そうでなければ個別に乗車した場合に支払う通常料金が課される。UberPoolは、他に誰か乗車するかどうかにかかわらず特定の相乗り料金が適用される。

Pool Chanceオプションは、ナイロビでは格安サービスのChap Chapで利用でき、ナイジェリアの人口の多い都市ラゴスとガーナの首都アクラでは、UberXカテゴリーで利用できるようになる。

Uberの東・西アフリカ地域のコミュニケーション責任者であるLorraine Ondoru(ロレーヌ・オンドル)氏は「当社は現在、新しいUberライドであるPool Chanceを試行しています。これはナイロビ(ケニア)の乗客が同じ方向に向かう他の客と乗車を共有する場合、料金を抑えることができるというものです」とTechCrunchに語った。

「新しいサービスを導入する際には、このような方法を用いて、市場が健全でバランスのとれた状態を維持するようにしています。このサービスが正式に展開される際に詳細をお伝えします」と付け加えた。

Uberは、2020年10月にウクライナのキエフでPool Chanceを導入し、そして4月にはニュージーランドのオークランドでも展開を始めた。また、2021年初めにはオーストラリアのシドニーとパースでも低価格のライドシェアサービスを導入し、その後アデレードでも開始した。

Uberはアプリ上で、Pool Chanceにより乗車料金を最大30%抑えられ、客はさらにお得に移動できるようになる、と話している。

同社はこの新サービスについて、アフリカ3カ国のドライバーに向けたメッセージの中で「手頃な価格のシェアライドは、アプリを利用する乗客が増えることを意味し、より多くの移動、ダウンタイムの減少、そしてドライバーの全体的な収益につながります」と述べた。

Uberはアフリカで、エジプト、南アフリカ、ウガンダ、タンザニア、モロッコなど8つの市場でサービスを提供している。

エストニアを拠点とする配車サービスBoltのようなライバルとの競争が激化する中、Uberは顧客の維持と新規顧客の獲得を目的とした新戦略のもと、ここ数カ月の間にアフリカ大陸全体でサービスを拡大し、新プロダクトを導入してきた。

今月初め、Uberはナイジェリアのイバダンとポートハーコートの2都市に進出し、すでにサービスを展開していた他の3都市に加えた。

また南アフリカでは、2021年9都市に事業を拡大し、UberX、UberBlack、格安サービスのUberGoとともにプレミアムサービスのUber Comfortを導入した。また、8月には、世界の他の市場ではすでに提供されていた、1カ月前から乗車予約ができる機能を追加した。

Uberがアフリカの市場で乗車料金を割り勘にするサービスを導入する計画は、同社が最近のレポートで「ライドシェアは今後3~5年の間に公共交通機関の中でますます重要な役割を果たすようになるだろう」と述べたことを受けてのものだ。

バスや鉄道は大勢の人を運ぶことができるため、今後も公共交通の中核となるが、マイクロトランジットやライドシェア、マイクロモビリティなどの手段によって補完されていくだろうと同社は付け加えた。

「ライドシェアのようにコストが変動する新しい交通手段が加わり、オンデマンドサービスが普及することで、公共交通機関の効率化と低コスト化に新たな一石が投じられることになる」と述べた。

これにより「公共交通機関のネットワークの公平性、アクセス性、回復力、柔軟性」を確保し、改善することができる、としている。

公共交通機関にサービスを提供する部門であるUber Transitと、2020年買収した交通機関向けソフトウェアを提供する会社Routematchを通じて、交通機関がより効率的に運営できるような新しいツールを提供し、ライダーもサポートするとレポートで述べている。

2015年にUber Transitを設立して以来、同社は世界各地で公共交通機関をシームレスにすることを目指したサービスを展開してきた。

2019年初めには、デンバーの乗客が旅の計画やチケット購入ができるUberアプリ内サービスを開始し、カリフォルニア州のMarin Transitとの提携では公共交通機関を動かすソフトウェアを提供した。

2020年9月には、一部の市場で「Uber and Transit」を開始し、乗客が電車やバスといった他の公共交通手段と組み合わせて配車サービスを利用できるアプリ内機能を立ち上げた。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Annie Njanja、翻訳:Nariko Mizoguchi

南アフリカの通信大手TelkomがNetflixの配信を停止

南アフリカの通信事業者Telkom SA SOC Ltdは、2021年10月以降、電話とインターネットのセットトップボックスからNetflix Inc.を廃止したとBloombergが報じている。

記事によると、Telkomのコンテンツ担当役員Wanda Mkhize(ワンダ・ムキゼ)氏が声明で、両社のパートナーシップは回復されないと述べ、それ以上の詳細は語られていない。

現在、両社に問い合わせ中なので、情報が得られ次第この記事を更新する。

Netflixは近年、アフリカ全土で成長を探り、有料会員と売上の増加を狙ってきた。Telkomとの関係が終わった今、同社が既存の会員や消費者向けに別のルートを作るのかはまだ明らかでない。

2021年9月、同社はケニヤのAndroidスマートフォン向けに無料プランを発表して新会員の獲得に乗り出した。このプランでは「同社のテレビ番組および映画の約4分の1」にアクセスできるという。

関連記事:Netflixがケニアで無料プランを開始、東アフリカでの成長を加速へ

全アフリカでの会員獲得と維持を目指すNetflixは今では、この大陸の多様な市場で作られた南アフリカの「Queen Sono(クイーン・ソノ)」、ケニヤの「Sincerely Daisy」、ナイジェリアの「2 weeks in Lagos」といったコンテンツを前面に打ち出している。

GSMAモバイル経済報告によると、モバイルインターネットに接続したサハラ以南の人口は2021年に全人口の約28%、3億300万人に達し、それをビデオストリーミングサービスも顧客として狙っている。モバイルインターネットに接続した人たちは2025年に人口の約40%に達すると予想され、Netflixのようなインターネット企業により大きな市場を提供する。

大陸全土にわたる安価で高速なインターネットはNetflixやAmazonなどのビデオストリーミングサービスに、この大陸に巨大な足場を築く機会を与えている。

Netflixには、同国にもう1つのパートナー、MultiChoice Group Limitedがいる。同社は大陸最大のペイTVプロバイダーで、南アフリカではペイTVサービスの一環としてNetflixやAmazonを提供している。MultiChoiceが両社と契約を交わしたのは、2020年半ばだ。それはあくまでもMultiChoiceのペイTVの会員確保努力であり、そのために2015年には低料金のストリーミングサービスShowmaxを導入した。

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画像クレジット:Sam Wasson/Getty Images

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(文:Annie Njanja、翻訳:Hiroshi Iwatani)

グーグルがアフリカへの約1114億円の投資を再確認、容量20倍の高速海底ケーブル含め

大規模なインターネット企業にとって、発展途上諸国は最も成長のチャンスがある地域を意味する。今日、その中でも最も大きな企業の1つが、この問題に取り組むための戦略を発表した。

Google(グーグル)は、アフリカの「デジタルトランスフォーメーション」を支援するために10億ドル(約1114億円)を投資すると発表した。これには、インターネットの高速化を実現するための海底ケーブルの敷設、中小企業向けの低金利融資、アフリカのスタートアップへの出資、スキルトレーニングなどが含まれる。

この計画は米国時間10月6日、GoogleおよびAlphabet(アルファベット)のCEOであるSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏が中心となって開催されたイベントで発表された。会社の最高責任者をイベントのトップに据えることは、同社がこの賭けにプライオリティーを置いていることの証といえるだろう。

ピチャイ氏は次のように述べた。「私たちはこの10年で大きな進歩を遂げましたしかし、すべてのアフリカ人がインターネットにアクセスでき、手頃な価格で便利に使えるようにするためには、まだまだ努力が必要です。本日、アフリカのデジタルトランスフォーメーションを支援するために、5年間で10億ドル(約1114億円)の投資を行い、接続性の向上からスタートアップ企業への投資まで、さまざまな取り組みを行うことで、アフリカへのコミットメントを再確認できることをうれしく思います」。

Googleはこの投資を、ナイジェリア、ケニア、ウガンダ、ガーナなど、アフリカ大陸の国々で実施されるプロジェクトに投入すると述べている。

海底ケーブルは、南アフリカ、ナミビア、ナイジェリア、セントヘレナを横断し、アフリカと欧州を結ぶ。Googleのアフリカ担当マネージングディレクターであるNitin Gajria(ニティン・ガジュリア)氏は「アフリカ向けに建設された前回のケーブルに比べ、約20倍のネットワーク容量を提供することになる」と述べた。

「これにより、ナイジェリアではインターネット料金が21%下がり、インターネットの速度が向上し、南アフリカでは速度が約3倍になります」とガジュリア氏はいう。

デジタル経済の発展にともない、2025年までにナイジェリアと南アフリカで約170万人の雇用創出が予測されている。

また、Googleは、Africa Investment Fund(アフリカ投資基金)の設立を発表した。同社はアフリカ大陸のスタートアップ企業に5000万ドル(約55億7000万円)を投資し「Googleの従業員、ネットワーク、テクノロジーへのアクセスを提供し、彼らがコミュニティのために意義のある製品を構築することを支援する」としている。

さらに、パンデミックの影響で苦境に立たされているナイジェリア、ガーナ、ケニア、南アフリカの中小企業に対し、1000万ドル(約11億1000万円)の低金利ローンを提供する。これは、サンフランシスコに本拠地を置く非営利の融資組織であるKiva(キヴァ)とのパートナーシップにより行われる。Kivaは、アフリカで人々の生活を改善している非営利団体に4000万ドル(約44億6000万円)を提供することを約束した。

ガジュリア氏はこう述べた。「アフリカの革新的なテックスタートアップシーンにとても刺激を受けています。2020年は、技術系スタートアップへの投資ラウンドがこれまでになく多く行われました。私は、アフリカで最も大きい問題を解決するのに、アフリカの若い開発者やスタートアップ創業者ほど適した人材はいないと確信しています。当社は、アフリカのイノベーターや起業家とのパートナーシップを深め、支援していきたいと考えています」。

画像クレジット:lex Tai/SOPA Images/LightRocket / Getty Images

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(文:Annie Njanja、翻訳:Aya Nakazato)

ナイジェリア大統領が「ツイッター禁止令」は現地オフィス設置や納税により解除すると発表

ナイジェリアのMuhammadu Buhari(ムハマドゥ・ブハリ)大統領は現地時間10月1日、現在行われているTwitter(ツイッター)の使用禁止措置を、同社が一定の条件を満たす場合に限り解除すると発表した。

ブハリ大統領は、ナイジェリアの61回目の独立記念日に、国民に向けたテレビ放送の中でこの意向を明らかにした。

大統領は、Twitterが情報発信に利用されていることを認めた。しかし、同プラットフォームを悪用して「犯罪行為を組織化、調整、実行し、フェイクニュースを広め、民族的・宗教的感情を助長する」悪質な行為者がいると警告した。

こうした理由から、政府は6月5日に同ソーシャルメディアプラットフォームの活動停止を決定し、これにより、政府はそうした課題に対処するための対策を講じることができたとブハリ氏は述べた。

関連記事:ナイジェリアが大統領の投稿削除を受けツイッターを無期限停止に

その一環として、同政府はTwitterチームと対話を行っていると主張している。

例えば8月、Lai Mohammed(ライ・モハメド)情報相は、ナイジェリアがTwitterの業務を再開するために同社と協議していることを明らかにした。

モハメド情報相によると、10件の要請があったものの、同政府がTwitterと合意に達したのはそのうち7件とのことだった。残っている課題としては、Twitterが現地オフィスを設置すること、現地で納税すること、コンテンツや有害なツイートを規制するためにナイジェリア政府と協力することなどが未解決となっていた。

それ以来、一見何も変わっていないようだ。大統領は1日、同じような姿勢を示したが、より微妙な表現になっている。

大統領によると、同氏が設立した委員会は、国の技術チームとともに、国家の安全と団結、登録、物理的な存在(オフィスの設置)と代表、公正な税金、紛争解決、ローカルコンテンツなどの問題についてTwitterと協議した。Twitterが政府から提示されたこれらの要件を満たすことに同意すれば、禁止措置は解除されるという。

「広範な協議を経て、私は、ナイジェリア国民がビジネスやポジティブな交流のためにプラットフォームを使い続けることができるよう、条件が満たされた場合に限り、停止措置を解除するよう指示しました」と同氏は述べている。

6月、ナイジェリア政府は、大統領が同国南東部の分離独立派集団(IPOB、ビアフラ先住民族)を処罰すると示唆した脅しにとれる投稿をTwitterが削除したことで、同社の活動を停止した。

それから4カ月が経過したが、国際社会からの圧力や、表現の自由を阻害する不必要な試みであると非難する活動家の声が高まっているにもかかわらず、ナイジェリア政府はこの禁止措置の解除に近づいていない。

ナイジェリア政府側は、Twitterと協力して禁止措置を解除すると2度にわたって表明しているが、Twitterはこの件について口を閉ざしている。

【更新】Twitterの広報担当者によると「ナイジェリア政府との協議は継続しており、ナイジェリアのすべての人々がTwitterを利用できるようにするための道筋をつけることをお約束します。ナイジェリア政府との話し合いは、敬意を持って生産的に行われており、サービスがまもなく復旧することを期待しています」とのこと。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Aya Nakazato)

フェイスブックが支援する「2Africa」は完成すれば最長の海底ケーブルに

Facebook(フェイスブック)は米国時間9月28日、2Africa(ツーアフリカ)ケーブルの「2Africa Pearls」(ツーアフリカ・パールス)と呼ばれる上陸地に9つの新拠点を追加し、合計4万5000km以上の長さになることを発表した。この海底ケーブルはアフリカ、ヨーロッパ、アジアの3つの大陸を直接結ぶものだ。

フェイスブックによれば、今回の延長により、2Africaは完成すれば世界最長の海底ケーブルシステムになるという。これは、現在SEA-ME-WE 3ラインが持つ、東南アジア、中東、西ヨーロッパの33カ国を結ぶ総延長3万9000kmの記録を上回るものだ。

海底ケーブルへの継続的な投資は、より多くの人々をオンラインにするためのフェイスブックの取り組みの一環だ。当初、フェイスブックは アフリカの人口約12億人に手頃な価格でインターネットを提供することを目指していた。その計画はやがて、アフリカ、中東、ヨーロッパの23カ国を結ぶ3万7000kmのケーブルを敷設するコンソーシアムの形に変容した。

先月フェイスブックはこの数を増やし、セーシェル、コモロ諸島、アンゴラ、ナイジェリア南東部への上陸地点を追加した。6月にも新しい分岐が、カナリア諸島(国ではない)へ接続されている。

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2Africa Pearlsの分岐に、新しい接続拠点が加わり、 地上ではエジプトを通してバーレーン、インド、イラク、クウェート、オマーン、パキスタン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦が接続される。

2Africa Pearlsへの拡張が行われることで、このシステムは さらなる18億人に接続性を提供することが可能になり、合計30億人に接続できるようになるとフェイスブックは述べている。同社はまた、これらの人びと33カ国にまたがり、世界人口の36%を占めていると付け加えた。

2Africaコンソーシアムは今でも、China Mobile International(チャイナ・モバイル・インターナショナル)、フェイスブック、MTN GlobalConnect(MTNグローバル・コネクト)、Orange(オレンジ)、STC、Telecom Egypt(テレコム・エジプト)、Vodafone(ボーダフォン)、WIOCCで構成されている。先月行われた前回の延長と同様に、コンソーシアムは9つの拠点を展開するために、ノキアのAlcatel Submarine Networks(アルカテル・サブマリン・ネットワークス、ASN)を選択した。

ただし、最新の開発に関しては、コンソーシアムから海底ケーブルの建設がいつ完了するかについての発表は出されていない。しかし、これまでの発表を見る限り、フェイスブックと通信事業者グループは、2023年後半から2024年前半という設定を想定しているものと思われる。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:sako)

医薬品チェック技術と偽造医薬品排除技術の拡大を目指すアフリカのRxAll、約3.5億円獲得

ある研究によれば、偽造医薬品による事故が原因で年間100万人が死亡し、そのうち10分の1はアフリカで発生している。偽造医薬品は、発見、検査、定量化、排除が難しい。これは世界的な問題で、基準に満たない医薬品による不当な利益は年間1000億ドル(約11兆300億円)を超えている。

この問題を解決するためのいくつかの技術が開発されている。製品の容器に無線ICチップが埋め込まれたシリアルナンバーを付けて、そのデータを読み取る無線識別技術はその1つだ。最近では、RxAll(アールエックスオール)の技術のような、より現代的なアプローチも採用されている。RxAllは、深層技術を活用して医薬品の品質を確保する技術を展開するスタートアップ企業で、米国とナイジェリアを拠点としている。現地時間7月21日、同社は、既存の市場での規模拡大と技術の向上を図るべく、315万ドル(約3億5000万円)の資金調達ラウンドを発表した。

RxAllはAdebayo Alonge(アデバヨ・アロング)氏、Amy Kao(エイミー・カオ)氏、Wei Lui(ウェイ・ルイ)氏によって2016年に設立された。当時イェール大学の学生だった3人がRxAllを創設したのは、自分自身、または身近な人が直面した問題を協力して解決するためだった。

アロング氏は2006年、致死量のジアゼパムが含まれた偽造医薬品を飲んで生死の淵をさまよい、3週間の昏睡状態に陥った。

アロング氏はTechCrunchの電話による取材に次のように応える。「私は15年前、ナイジェリアで3週間昏睡状態に陥りました。共同設立者のエイミーは、タイで偽造医薬品を飲んで入院しました。ウェイは、汚染された偽造医薬品のせいで家族を失いました」。

アロング、カオ、ルイの3人は、イェール大学化学学部での研究開発プロジェクトをベースに、機械学習と分子分光法を医薬品や原材料の品質、品質保証に応用する方法を検討し始めた。3人には、安全で評判の良い医薬品の販売者を認証するマーケットプレイスを構築し、まず高品質な医薬品の入手が難しいアフリカの問題を解決し、次に全世界に広げていく、という大きなアイデアがあった。

アロング氏は続ける。「調べていくうちに、私たちが経験したことが一過性のものではないことがわかりました。これは現在進行形の問題です。毎年、10万人のアフリカ人が、偽造医薬品が原因で亡くなっています。世界中では100万人です」。

画像クレジット:RxAll

RxAllの独自技術であるRxScannerは、ユーザーが医薬品を検査するための携帯型検査装置である。同社によると、RxScannerは20秒で処方薬の品質を識別し、モバイルアプリですぐに結果を表示することができるという。

RxAllは、質の良い販売者を自社のマーケットプレイスに集め、RxScannerを提供する。対象の医薬品を分光分析して、機械学習モデルで基準となる医薬品(リファレンス)と比較した場合の同一性や品質を示す検査を行い、結果を送信する。バッチテストが終わると、販売者は製品をマーケットプレイスに出して、オンデマンドの注文や受け取りだけでなく、配送サービスも利用できるようになる。販売者はフィルターを使って探すことができる。

RxAllはマーケットプレイスでの取引による手数料で収益を上げ、RxScannerには、個人や企業を対象としたサブスクリプションモデルを採用している。

同社の革新性にもかかわらず、アフリカを重要視した多くのディープテック(最先端のテクノロジー)プラットフォームと同様に、RxAllは資金調達をほとんど行っていなかった。このようなスタートアップ企業は研究から商業化までのサイクルが長く、ベンチャーキャピタルはサイクルの後半に関与するから、というのが、その主な理由だ。RxAllはこれまで、助成金やコンテストでの賞金の他、アフリカに特化したアクセラレーター、Founders Factory Africa(ファウンダーズファクトリー・アフリカ)などから新株発行で資金調達してきた。

アロング氏は、RxAllはディープテックとヘルステックを組み合わせた世界の先駆者であり、少なくとも当面は、RxScannerのシステムと直接競合する他社は出てこないと考える。

「医薬品のeコマースとは別物です。薬物検査の分野で言えば、他のソリューションには実験室用の高価な機器しかなく、RxAllの市場、応用分野、価格帯、深層学習とスマートフォンを使ったソリューションとは比較になりません」とアロング氏。

しかし、技術的な優位性だけでは製品は売れず、ビジネスも成り立たない。アロング氏によれば、RxAllの技術を拡大するための鍵は、コストがかかっても市場に受け入れられる製品を作ることだという。同社は現在、投資家にわかりやすい技術の開発に加え、この課題にも取り組んでいる。

RxAllチーム(の一部)

RxAllは、自らをグローバル市場で活躍する企業と表現する。しかし、先に述べたように、同社の顧客と収益の大部分はアフリカ、特にナイジェリアにある。現在、RxAllは10都市にサービスを展開中で、西アフリカ諸国の2000以上の病院や薬局にサービスを提供し、100万人の患者に対する医薬品の真贋を検証している。2021年中にサービス提供範囲をさらに14都市拡大し、2022年にはアフリカ全土での展開を予定している。

今回の資金調達ラウンドは、最近クローズした200万ドル(約2億2000万円)のシードラウンド(申し込みが上回り、225万ドル[約2億5000万円]のオーバーサブスクライブとなった)と、2020年末に調達した90万ドル(約1億円)のプレシードを合計したものだ。Launch Africa Ventures(ローンチアフリカベンチャーズ)が主導し、SOSV(エスオースブイ)のアクセラレータープログラム「HAX(ハックス)」と本田圭佑氏のKSKファンドが参加した。

今回のラウンドについて、Launch Africa Venturesのマネージングパートナー、Zachariah George(ザカリア・ジョージ)氏は次のように話す。「Launch Africa Venturesは、RxAllの優秀かつ経験豊富なチームに対して、この資金調達ラウンドを主導できることをうれしく思います。RxAllは、医薬品販売プラットフォームのパイオニアとして、薬局や患者が検証済みの医薬品をオンラインで購入することを可能にし、アフリカで質の高いヘルスケアを受けられるかどうかという大きなギャップを埋めていると確信しています。偽造医薬品を排除するための独自のモバイル分光計技術と、医薬品販売のサプライチェーン全体と独自の決済手段を所有することで、顧客1人あたりで高い経済性を実現し、複数の収益源を獲得しています。アフリカ全土、さらに全世界での大きな成長と規模拡大の機会が見込まれます」。

SOSVのジェネラルパートナーであり、HAXのマネージングディレクターであるDuncan Turner(ダンカン・ターナー)氏も「私たちは、RxAllの拡張性と顧客の需要に対応する能力に非常に感銘を受けています。この1年間で、RxAllのチームは、世界レベルのハードテクノロジーと卓越したオペレーション能力を結集し、100万人以上のナイジェリアの人々の、緊急の課題を解決してきました」と続ける。

では、RxAllの次の展開は?アロング氏は、RxAllが次に力を入れるのはパートナーシップだという。同氏によると、RxAllがナイジェリア、アフリカ、その他の地域でマーケットプレイスやRxScannerの提供範囲を拡大するには、パートナーシップが不可欠だ。

「RxAllは、病院や薬局、患者さんだけでなく、政府や各国のFDA(食品医薬品局)にもRxScannerを販売しています。そのため、ナイジェリアだけでなく、アフリカ、東南アジア、北米、南米など、世界各地でしっかりとしたパートナーシップを確立したいと考えています。私たちが目指すのは、これらの主要市場への規模拡大です」。

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)

アカツキが現地子会社を設立しインド市場に本格参入、日本発アニメやキャラクターの新興国市場展開を開始

ゲームなどIPプロデュースのアカツキが現地子会社設立しインド市場に本格参入、日本発アニメやキャラクターの新興国市場展開開始

「ゲームを軸としたIPプロデュースカンパニー」として事業を展開するエンターテインメント企業アカツキは9月22日、インドでの戦略的事業拠点となる子会社Akatsuki India Privete Limitedの設立を発表した。日本発のアニメやキャラクターを使ったインド市場での事業を開始する。

アカツキでは、エンターテインメント、メディア、ライフスタイル領域のスタートアップを対象としたファンド「AET Fund」を通じて日本とアメリカでの投資活動を行っているが、2018年6月からはインド市場にも力を入れ、インドのコンテンツおよびメディア領域のスタートアップへの純投資を開始した。これまでに20社超への投資を実行している。そして今回、「今後10年以上の長期的視点」に立って、インドでの日本発IP(知的財産)を使った事業展開を本格化する。

インドで予定している事業内容は、日本のコンテンツを現地語にローカライズし、さまざまなメディアで配信する「IPのメディア展開」、現地語でのデジタルマーケティングとソーシャルマーケティングを行う「IPの認知最大化」、インドの消費者向け商品の企画、現地生産、eコマースでの直販販売などを行う「マーチャンダイジング」(商品化)、現地企業と連携した販促品の展開やIPコラボレーション、現地のモバイルゲームなどのオンラインサービスとのIPコラボレーションを行う「プロモーション」となっている。

玩具などの生産は、当面は現地の製造工場との連携で行うが、ゆくゆくは独自の製造拠点を構える予定。また既存のアニメやキャラクターのライセンシングにとどまらず、グローガル展開を前提としたオリジナルIPの創出も進めるという。将来的には、アフリカを含む新興国市場での展開も視野に入れている。

「本取り組みを通じて、日本の魅力的なキャラクターとストーリーを世界に届け、世界中の人びとの人生を彩り豊かにすることを目指してまいります」とアカツキでは話している。

Netflixがケニアで無料プランを開始、東アフリカでの成長を加速へ

Netflix(ネットフリックス)は米国時間9月20日、2000万人以上のインターネットユーザーがいる東アフリカへ展開を進めるため、ケニアで無料モバイルプランを開始すると発表した。

この無料プランは、今後数週間のうちにケニアのすべてのユーザーに提供される予定で、アカウント登録時に支払い情報を提供する必要はないとのこと。18歳以上でAndroidスマホを持っているユーザーであれば誰でも利用でき、広告も含まれない。

世界190カ国以上でサービスを提供しているNetflixは、近年、発展途上国の顧客を獲得するために、さまざまなプランを実験的に導入してきた。例えば、2018年にはインドで3ドル(約320円)のモバイル専用プランのテストを開始し、その後、他のいくつかの国のユーザーに拡大した。

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また、Netflixが自社のサービスを無料で、あるいはほぼ無料に近い形で提供するのは、今回が初めてではない。同社はこれまでにも、多くの市場で無料トライアルをサポートしたり、オリジナルの映画や番組のごく一部を非加入者に提供したりしており、インドでは少なくとも1回、週末にサービスを無料で利用できるキャンペーンを実施したことがある。

しかし、今回のケニアでのサービスは、やはり注目に値する。ロイター通信によると、同社は東アフリカの国で、映画やテレビ番組のカタログの約4分の1を無料プランのユーザーに提供しているそうだ。

Netflixのプロダクト・イノベーション・ディレクターであるCathy Conk(キャシー・コンク)氏は「これまでにNetflixを見たことがない方(そしてケニアでは多くの方が見たことがない)にとって、これはNetflixのサービスを体験するのに最適な方法です」とブログで述べている

「気に入った作品があれば、有料プランに簡単にアップグレードできるので、テレビやノートパソコンでもフルカタログを楽しむことができます」。

同社は、この無料サービスをケニアでいつまで提供するのか、また他の市場への拡大を検討しているのかについては明らかにしていない。

Netflixの経営陣は、過去の決算説明会で、各市場を調査し、すべての人にとってより魅力的なサービスを提供する方法を検討していると主張してきた。支払い情報なしで登録できることは、そのような主張に信頼性を与えてくれる。発展途上国では、クレジットカードやデビットカードを持っていない人が多く、登録時に決済手段を必要とするサービスにはアクセスができない。

モバイルゲームの提供も計画しているNetflixは、2021年6月に終了した四半期において、150万人の有料会員を獲得したのみで、その数字は予想を下回っていた。2億900万人以上の加入者を集めているNetflixをはじめ、Amazon Prime Video(アマゾン・プライムビデオ)などのストリーミングサービスは、より速い成長率を維持するために、米国外の顧客を獲得しようとする動きを強めている。

2021年初め、Amazonはより多くの顧客を開拓するために、インドのショッピングアプリ内に無料で広告付きのビデオストリーミングサービスを導入した。

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画像クレジット:Krisztian Bocsi / Bloomberg / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Akihito Mizukoshi)

グーグルの気球Loonの遺産、ワイヤレス光通信でコンゴ川を挟み高速インターネットを届けるアルファベットのProject Taar

Google(グーグル)の親会社であるAlphabet(アルファベット)は2021年初めにProject Loonを終了したが、インターネットアクセスを提供する気球から学んだことは無駄にはならなかった。Loonで開発された高速無線光リンク技術は、現在、Taaraプロジェクトという別のムーンショットに使用されている。TaaraのエンジニアリングディレクターであるBaris Erkmen(バリス・エルクメン)氏は、新しいブログ記事の中で、このプロジェクトのワイヤレス光通信(WOC、wireless optical communications)リンクがコンゴ川を越えて高速接続を実現していると明らかにした。

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Taaraの構想は、LoonチームがWOCを使って100km以上離れたLoonの気球間でのデータ転送に成功したことから始まった。チームは、この技術を地上でどのように利用できるかを検討した。WOCの応用可能性を探る一環として、彼らはコンゴ共和国の首都ブラザビルとコンゴ民主共和国の首都キンシャサの間に存在する接続性のギャップを埋めることに取り組んだ。

これら2つの場所はコンゴ川を挟んで、わずか4.8kmしか離れていない。しかし、キンシャサでは、川を囲む400kmの範囲に光ファイバーを敷設しなければならないため、インターネット接続のコストがはるかに高くなってしまう。Project Taaraは、ブラザビルからキンシャサまで、川を挟んで高速通信が可能なリンクを設置した。同プロジェクトは20日以内に、99.9%の稼働率を実現し、約700TBのデータを提供した。

Project Taaraでの光ビーミング接続の仕組み

TaaraのWOCリンクは、お互いを探し出して光のビームを結ぶことにより高速インターネット接続を実現している。霧の多い場所での使用には適していないが、Taaraプロジェクトでは、天候などのさまざまな要因に基づいてWOCの利用可能性を推定できるネットワーク計画ツールを開発した。将来的にはそれらのツールを使って、Taaraの技術が最も効果的に機能する場所を計画することができるようになる。

Taaraのエンジニアリングディレクターであるエルクメン氏はブログ記事でこう述べた。

追跡精度の向上、環境対応の自動化、計画ツールの改善により、Taaraのリンクは、ファイバーが届かない場所に信頼性の高い高速帯域幅を提供し、従来の接続方法から切り離されたコミュニティを接続するのに役立っています。我々はこれらの進歩に非常に興奮しており、Taaraの機能の開発と改良を続ける中で、これらの進歩を積み重ねていくことを楽しみにしています。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Mariella Moon(マリエラ・ムーン)氏は、Engadgetのアソシエイトエディター。

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画像クレジット:Alphabet

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(文:Mariella Moon、翻訳:Aya Nakazato)

ナイジェリアの自動車テックAutochekがROAM Africaからのオンライン自動車販売Chekiのケニアとウガンダ事業を買収

ナイジェリアの自動車テック企業であるAutochek(オートチェク)は、現地時間9月6日、Ringier One Africa Media(ROAM、リンギアー・ワン・アフリカ・メディア)からCheki Kenya(チェキ・ケニア)とCheki Uganda(チェキ・ウガンダ)を非公開の金額で買収することを発表した。

声明によると、Autochekは今後数週間のうちに取引を確定する予定だ。今回の買収により、Autochekは東アフリカへの進出を完了し、約1年前にChekiからナイジェリアとガーナの事業を最初に買収したのに続くものとなる。

Chekiは2010年に、ケニアのディーラー、輸入業者、個人販売者向けのオンライン自動車販売事業を開始した。ナイロビに本社を置くChekiは、その後、ナイジェリア、ガーナ、タンザニア、ウガンダ、ザンビア、ジンバブエに事業を拡大した。

その後2017年にROAMに買収され、Jobbermanのようなネットワーク内のオンラインマーケットプレイスやクラシファイドの仲間に加わった。

ROAMのウェブサイトによると、Chekiはまだタンザニア、ザンビア、ジンバブエで事業を行っている。しかし、これらの市場はかなり不活発なため、実質AutochekはChekiの主な事業をすべて完全に買収したといっていいだろう。

Chekiのケニア市場は、双方にとってワクワクする市場だ。この子会社には70万人のユーザーがいて、毎月1万2000台以上の車両を掲載している。また、過去2年間で前年比80%の成長を遂げているとのことで、Autochekの地域拡大計画にとって貴重な資産となっている。

AutochekのCEOであるEtop Ikpe(エトプ・イッペ)氏は「Cheki Kenyaは、常に最重要部門のような存在でした。ナイジェリアとガーナの買収を完了した当時は、このようなことを意識していたわけではありませんでしたが、実現したことはすばらしいことです」とTechCrunchの取材に語っている。

ケニアでは、ナイジェリアやガーナに比べて、自動車金融におけるクレジットの普及率が高い。東アフリカでの普及率は27.5%であるのに対し、西アフリカ全体市場では5%だ。そのため、Autochekが東アフリカ市場を楽観視しているのも納得できる。今回の買収に先立ち、創業1年の同社は、ガーナやナイジェリアと同様の戦略で、ケニアのいくつかの銀行と共同で、クルマの所有者に資金を提供する試験的な取り組みを行った。今回の買収は、この市場における当社の地位を確固たるものにするものだとイッペ氏は述べている。

Chekiがすべての主要市場で事業を1年以内に売却したことから、4つの事業体の業績が悪かったためにROAMは適切な買い手を早く見つけざるをえなかったのではないか、と考える人もいるかもしれない。

しかし、CEOのイッペ氏は、窮地に追いやられたことによる売買の憶測については否定した。今回の買収が立て続けに行われたのは、Chekiが運営していたクラシファイドモデルが、より現代的な取引モデル(Autochekやアフリカの主要な自動車メーカーが採用している)に移行する必要があることを双方が理解していたからだと述べている。そのため、今回の取引をChekiにとって必要な移行であると捉えている。

イッパ氏は過去にRingier(合併前のROAMの1部門)との関係を築いており、Ringierが最終的に買収したクラシファイド型取引会社であるDealDey(ディールディ)を経営していたため、Autochekに会社を売却することは難しい決断ではなかったと、イッパ氏はTechCrunchに語っている。

「彼らにとっては長期的な戦略であり、私たちのビジネスモデルを信じてくれているのだと思います。そして、私たちが将来的に何かを成し遂げられるという希望を持っています。また、このビジネスと従業員にとって適切な場所を見つけてあげるということでもありました」と述べている。

ROAMのClemens Weitz(クレメンス・ヴァイツ)CEOは声明の中で「世界中で、デジタル自動車プラットフォームの新たな進化が見られ、深い専門性が求められています。特にアフリカでは、Autochekこそが、これまでにない消費者体験を生み出すための、最高のチームと専門知識を持ったプレイヤーであると考えています。ROAM Africaにとって、今回の売買は単に良い取引だったというだけではありません。我々の他の事業の戦略的なシナリオにさらに集中することができるようになります」と述べている。

Autochekの東アフリカへの進出はMoove(ムーブ)、Planet42(プラネット42)、FlexClub(フレックスクラブ)などの自動車関連企業が投資家から注目されている最中のことで、アフリカ大陸では柔軟な自動車金融のニーズが高まり続けている。

この大陸で最も重要な自動車金融市場は、間違いなく南アフリカだ。他の自動車会社も何らかの形でこの市場に進出しているが、Autochekもこの市場での事業拡大を計画している。その理由は明らかだ。

南アフリカは、大陸の中でも自動車ローンの普及率が最も高い、最良の市場だ。競争は激しいように見えるが、イッパ氏は、他社とは異なる市場に合わせたサービスを提供する機会が存在すると考えている。

「当社のプラットフォームの良さは、多様性があることです。例えば、我々は小売りやB2Bのアプローチが可能です。ダイナミックなたくさんのやり方ができるのです。だからこそ、すべての地域に進出することを目標とするのは当然のことだと思っています。東と西に進出しましたが、北と南のアフリカでも同じようでありたいと思って活動を続けていきます」と述べている。

Autochekによると、この目標を達成するための資金調達を現在行っており、年内には完了する予定だ。

画像クレジット:Autochek / Autochek

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Akiito Mizukoshi)

アフリカでワクチンなどの必要物資を自社開発の自律走行型電動ドローンで届けるZiplineが278億円調達、物流ネットワークを拡大

アフリカ全土に医療用品を配送する事業として創業し、ドローンによる配送サービスを提供するスタートアップ、Zipline(ジップライン)が新たに2億5000万ドル(約278億円)の資金を調達した。今回の資金調達により評価額が27億5000万ドル(約3060億円)となった同社は、アフリカと米国における同社の物流ネットワークの拡大を今後さらに押し進める予定だ。

当初はルワンダで名を馳せたZipline。その後ガーナにも手を伸ばし、自律走行型電動ドローンを使って血液、ワクチン、救命薬などの必要物資を届けている。2014年に設立されたZiplineは、垂直統合型の企業である。つまり、無人のドローン、物流ソフトウェア、それに付随する発射および着陸システムの設計と製造をすべて自社で行なっている。TechCrunchの取材にて、ZiplineのCEOであるKeller Rinaudo(ケラー・リナウド)氏はこれは必要に迫られてのことだったと述べている。同社がドローン技術の開発を始めた当初、既製のものでは信頼性が低く、うまく統合することができないということにすぐに気づいたと同氏は振り返る。

「結局、フライトコンピューター、バッテリーパック、機体など、基本的にすべてのものをシステムから取り外さなければなりませんでした。そしてそれらすべてをゼロから作らなければなりませんでした」。

Ziplineは自らをドローン企業とは考えておらず、むしろ即席の物流プロバイダーであると同氏は強調している。また、同社は自律型ドローンのモデルを継続的に改善し続けているものの、過去5年間における成功の多くは、物流ネットワークの構築に関するものだった。困難に満ちていたとリナウド氏がいう初年の2016年に、ルワンダで事業を開始したその後、同社はルワンダにて物流会社のUPSとの提携を実現。日本でトヨタグループと提携し、またナイジェリアのカドゥナ州とクロスリバー州との連携も開始している。米国ではノースカロライナ州のNovant Health(ノヴァント・ヘルス)と提携して医療機器や個人用防護具を提供している他、小売大手のWalmart(ウォルマート)とも提携して健康・ウェルネス商品を提供している。

関連記事:米小売大手ウォルマートが医療品配達スタートアップのZiplineと提携、米アーカンソー州でドローン配送テストを拡大

パンデミックで打撃を受けた多くの企業とは異なり、Ziplineは個人用防護具だけでなく新型コロナウイルス(COVID-19)のワクチンの納入という同社の事業をさらに加速させる明白な機会を得た。同社によると、年内に240万回分の新型コロナ用ワクチンを納入する予定だという。

同社は、処方箋などの医薬品を人々の家に直接届けるいうようなサービスも今後視野に入れていこうと考えているという。「テレプレゼンスを完成させるためには、即席物流サービスの存在がとても重要だと病院は考えているようです。電話一本で医者と話せるようになっても、それでは必要物資はどうしようかという事になるからです」と同氏は話す。

画像クレジット:Zipline

同社は現在、パンデミックのため規制当局から与えられた緊急免除の下での運営から、完全な商業運営の認証に移行するため、連邦航空局(FAA)に働きかけている。FAAの認証プロセスにおいてZiplineが競合他社より有利な点は、Ziplineのシステムが安全であるということを示す何千時間もの飛行データを同社が持っているという点だ。成功すれば、同社はこのような認証を受けた初のドローン配送会社の1社となる。

長期的に見れば他の産業にも目を向ける可能性はあるが、現時点では医療分野に焦点を当てているとリナウド氏はいう。同氏によると、ここ数カ月だけでもナイジェリアで5件、ガーナで4件、新しく配送センターとのサービス契約を結んだ他、米国の病院システムとも「複数の新規サービス契約」を結んでいるという。今回の資金調達は、Baillie Gifford(ベイリー・ギフォード)が主導し、以前も投資したTemasek(テマセク)とKatalyst Ventures(カタリスト・ベンチャーズ)、新規投資家のFidelity(フィデリティ)、Intercorp(インターコープ)、Emerging Capital Partners(エマージング・キャピタル・パートナーズ)、Reinvest Capital(ラインベスト・キャピタル)の支援を受けて行われている。調達資金は新規契約のためのインフラ構築に使用される予定である。

今後3年ほどで、全米の一戸建て住宅の大半にZiplineのサービスを提供するというのが同社の目標だとリナウド氏はいう。

「トヨタやウォルマートなどの大企業がこの即席物流分野に大きな投資を始めているという事実は、人々がこの分野の到来を認識しているということの明確な表れだと思っています。変革の波が押し寄せているのです。これは医療システムや経済システムのあり方を大きく変えるものであり、物流によって人々に平等にサービスを提供できるようにするというのは、本当にエキサイティングなことです」。

画像クレジット:Zipline

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Dragonfly)

フェイスブックが「2Africa」海底ケーブルネットワークをさらに4つの地域へ拡張

Facebook(フェイスブック)は米国時間8月16日、アフリカ大陸および中東地域をカバーする「最も包括的」な海底ケーブルを、さらに4つの地域へ拡張すると発表した。

Facebookは、China Mobile International(チャイナ・モバイル・インターナショナル)、MTN GlobalConnect(MTNグローバルコネクト)、Orange(オレンジ)、STC(サウジ・テレコム)、Telecom Egypt(テレコム・エジプト)、Vodafone(ボーダフォン)、WIOCCからなる「2Africa」コンソーシアムと共同でこれを行う。

新たに加わる地域はセーシェル、コモロ諸島、アンゴラ、ナイジェリア南東部だ。最近発表されたカナリア諸島に続き、これらの国々へ新たに海底ケーブルが拡張されることになる。

Facebookは2020年、この2Africaプロジェクトで3万7000kmのケーブルを敷設すると発表した。これらのケーブルは、エジプトを経由してヨーロッパと、サウジアラビアを経由して中東と、そしてアフリカ16カ国21カ所の陸揚局を相互接続する。

関係者は当時、2Africaプロジェクトは2023年か2024年初めには完成するだろうと語っていた。このシステムが稼働すれば、現在アフリカで提供されているすべての海底ケーブルの総容量を超えるサービスが提供できるようになるという。

画像クレジット:2Africa

コンソーシアムから発行されたFacebookの新たな声明によると、計画は依然として2023年後半の稼働を予定しているとのこと。2Africaプロジェクトはいくらか進展しており、海底ルートの調査活動の大部分が完了していると、コンソーシアムは述べている。エジプト海と地中海の接続もほぼ完了していると、声明には書かれている。今回発表された新区間の海洋調査も、2021年末までに完了する予定だという。

コンソーシアムは、新支線の敷設にNokia(ノキア)のASN(アルカテル・サブマリン・ネットワークス)を選定。これによって2Africaの陸揚局は26カ国35カ所となる。

「Facebookによる2Africaへの多額の投資は、南アフリカ、ウガンダ、ナイジェリア、コンゴ民主共和国におけるインフラ投資など、私たちがこれまでに行ってきたいくつかの投資の上に成り立っているものです。新型コロナウイルスの感染拡大は、世界中の何十億もの人々が仕事や学校、大切な人とのつながりを保つためにインターネットに依存し、接続性の重要性を浮き彫りにしました」と、Facebookの広報担当者は、同社によるアフリカへの継続的な投資について述べている。

「2Africaは、アフリカ大陸全体の接続インフラを前進させる重要な要素であるだけでなく、経済回復の重要な時期に行われる大規模な投資にもなります。ますます多くの人々がインターネットに依存するようになる中、常に大事な人やものと確実につながるために、海底ケーブルは不可欠な要素です。Facebookが海底ケーブルに投資するのは、当社の製品を利用する人々により良い体験を提供するためですが、当社の投資はすべての人にコスト効率の良いインターネットを提供することになります」。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Facebookアフリカ中東海底ケーブルヨーロッパ

画像クレジット:ANDER GILLENEA / AFP / Getty Images

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ザンビアから初めてY Combinatorに入学したスタートアップがアフリカ初のカード発行APIを開発

過去10年間、40以上のスタートアップがアフリカの国々からY Combinator(ワイ・コンビネーター)にやってきた。米国時間8月5日、ザンビア共和国がそのリストに加わり、初の参加企業となった Union54(ユニオン54)は最初をかざるにふさわしいスタートアップだ。

Union54(54はアフリカの国家数にちなんだもの)は、Perseus Mlambo(パースース・ムランボ)氏とAlessandra Martini(アレサンドラ・マーティニ)氏が立ち上げたフィンテック企業だ。同社はアフリカ初のカード発行APIの提供を目指して今年創業したばかりだ。しかし、Union54は突如現れたわけではない。2人が以前たちあげたスタートアップ、Zazu(ザズ)から生まれたたプロジェクトだ。

Zazuは2015年にザンビアでチャレンジャー・バンクとして設立された。アフリカ大陸のフィンテックがみなそうであるように、Zazuはユーザーがウォレットにつなぐことのできるデビットカードを自ら発行しなければならなかった。Zazuは国の提携銀行がカードを発行するまで数ヶ月またされることがほとんどだった。18ヶ月待たされたこともある、とムランボ氏は言った。

そんな中、2人のファウンダーは自身でカードを発行するために地域の銀行と交渉を開始した。しかし、銀行の対応は無気力だった。「処理業者や銀行には私たちの質問に答える能力も、私たちが求めていたプロダクトを提供する能力もないことがわかりました」とムランボ氏が本誌のインタビューに答えて語った。

そこでスタートアップはMastercard(マスターカード)を直撃した。カードを発行する会社と交渉できるのに銀行を待つ必要などない、ということた。最終的に同社は、Mastercardプリンシパル・メンバーシップを獲得した自称アフリカ初のフィンテックになった。

プリンシパル・メンバーになったZazuはカード発行銀行として活動する資格を得た。言い換えれば、彼らはデビットカードを発行できるようになり、それはアクワイアラーとして取引処理サービスを提供できることを意味する。

その過程でファウンダーらは、アフリカのフィンテックを本格的に推進するためには、どの国のフィンテックでも簡単にバーチャルまたはプラスチックのデビットカードを発行できるようにすることが不可欠だと気づいた。そこでチームはZazuからUnion54をスピンアウトさせた。 現在同プラットフォームには、プログラム可能なデビットカードをどのフィンテックでも発行できるAPIがいくつかある。

「私たちはメンバー資格を利用して、自身でカードを発行したいアフリカのフィンテックの支援もできるようになりました。当社に来てAPIを手に入れるだけで、長い時間交渉することなく今すぐ行動に移せます」とアフリカの他のフィンテックにサービスを提供することについてムランボ氏は語った。

同社のターゲットは、バーチャルまたはプラスチックのカードを発行するために数十万ドルもの初期費用を使いたくないフィッテックだとCEOは語る。Union54は、BIN(銀行識別コード)の付与、管理・調停プログラムなどを行うAPIを通じて数週間でカードを発行できると言っている。

こうしてUnion54は、アフリカ初のカード発行APIを謳う権利を得た。このチャンスに目をつけたフィンテックはほとんどない。多くの会社が決済ゲートウェイからウォレットまでその他のさまざまな分野に焦点をあててきた。興味深いのは、これらの分野の大物たちが結局は自社顧客にバーチャルカードやプラスチックカードを作ろうとして複雑な作業に直面していることだ。Union54はそのギャップを埋めようとしている。現在まだベータ段階だが、すでに数多くのお得意様がウェイティングリストに名を連ね、プラットフォームを利用していることを同社は誇っている。

「素晴らしいことに、利用しているのはただの企業はありません、アフリカでトップ5%に入るフィンテックです。そして私は常に、自分たちがアフリカ・フィンテックの黄金世代だと言っています。だから、この分野のリーダーとされる人たちが使うためのカード発行プロダクトにとって今は最適の時期です。これは、人々が毎日使いたいものを私たちが持っている、という意味なのです」とCEOは付け加えた。

ウェブサイトには、 同社のAPIのユースケースが8種類紹介されている:Ledger based(帳簿ベース)、アクワイアラー/ゲートウェイ、バイ・ナウ・ペイ・レイター(後払い)、信用組合、運送会社、デジタルバンキング、クレジットカード管理、および法人カード。

Union54を使用するフィンテックは、カードのデザイン、使用する通貨の設定ができるほか、誰が使うか、何に使うか、いつ使うか、どう使うかが書かれたカタログを作ることもできる。

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フィンテックはUnion54の利用料金をAPIを使用する毎に支払う。プラスチック・カードを作るためには7〜9ドルの固定料金および取引が成立したときの固定料金(非公開)を支払う。

ムランボ氏はYCの2021年夏組に参加したことで、初期の顧客をYCのネットワークから獲得することができたと語った。彼はYCについて、初日から役に立つプログラムだと説明している。

「Union54がザンビアで最初Y Combinatorに参加を許されたフィンテックであることを誇りに思います。アフリカ南部では2番目です。ご存知のように、世界の投資家がアフリカを見る時、アフリカ西部から考えることがほとんどです。私たちがY Combinatorに入ることで私たちの幅広い仮説のごく一部が実証されました。ザンビアのようにフレンドリーな国がアフリカの役に立てるのです」

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画像クレジット:Union54

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Nob Takahashi / facebook

パンデミックの影響が鈍化し始めている

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

先週私たちの仕事は中国で始まりアフリカのスタートアップ活動を掘り下げもう一度中国を扱い、ラテンアメリカのスタートアップエコシステムを深く掘り下げ、そしてそしてRobinhood(ロビンフッド)IPOの再考で締めくくった。言い換えれば、実際にはほとんど何も起こっていなかったのだが。

金曜日にAmazon(アマゾン)の株が急落するのをみて驚いたことだろう。なにしろ、同社はこの四半期に1130億ドル(約12兆3940億円)をわずかに超える巨額の収益を記録したのだ。そして、パブリッククラウドビジネスであるAWSは、順調に進んでいるように見えている。

しかし、投資家はそれ以上の成長を期待しており、それに応じてシアトルを拠点とするeコマースプレイヤーAmazonの価格を設定していたのだ。Amazonが収益に対する期待を裏切って、2021年第3四半期の成長を「2020年第3四半期と比較して10%から16%の間」成長となることを予測したために、投資家たちがその株を手放したのだ。

しかし、金融プレスの一部が指摘しているように、投資家からひどい目にあわされているのはAmazonだけではない。Etsy(エツィー)とeBay(イーベイ)も今週下落している。投資家たちは、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックのおかげで電子商取引にもたらされた急成長期が、少なくとも鈍化していて、実質的には終わっている可能性を予想しているようだ。つまり、スタートアップを含む多くの企業で評価額がリセットされるということだ。

パンデミックの初期段階で減速したすべての企業が苦しんでいるわけでもない、Duolingo(デュオリンゴ)は成長が鈍化しているにもかかわらず、公開企業として力強い第1週を過ごした。しかし、デルタ変異種があろうとなかろうと、投資クラスは市場の枠組みを変えている。それを心に留めておくのが賢明だろう。

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それは新しい製品だ

先週から私の脳裏を離れないのは、Robinhoodが消費者投資に関するゲームをどれだけ変えたかということだ。もちろん、先週は主に同社のIPOとそのやや軟調な初期の取引実績について取り上げた。しかし、最終的なS-1/A申請書に埋もれているのは、Robinhoodの文化的影響に関する新しい証拠なのだ。

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同ユニコーンの申請書の冒頭に掲げられているのは2つの統計値だ。それは以下のようなものだ。

画像クレジット:Robinhood

げっ、と思ったかもしれないが、これが示しているのは膨大な投資アカウント数と、毎月のアクティブユーザー数だ。だが考えてみれば、これらは2021年3月31日の数字だ。それらはすでに古くなっている。同じ申請書内で、Robinhoodは、6月30日までの四半期に投資アカウント数が2250万に増加したことを示している。これは、1四半期で25%の成長だ。

当然のことながら、2021年の第2四半期には、二度と起こらないことがいくつか起きたが、それでもこれはなお驚くような結果だ。

Robinhoodの初期の投資家であるIndex(インデックス)のJan Hammer (ヤン・ハマー)氏は、彼の投資先の公開を受けてコメントを送ってきたが、同社の動向は、金融サービスを揺るがすためにハイテク企業によって行われている動きの一部なのだと主張している。Robinhoodのような企業は「古い金融商品に新しい塗装を施したものではない」と彼は書いている。

それは正しいと思う。そして重要な点は、時代遅れのウェブサイトや二流のモバイルエクスペリエンスを提供している市場の既存のプレイヤーたちを酷評しているところだ。たとえばZ世代が、Robinhood、eToro(イートロ)、M1 Finance(M1ファイナンス)でなければ代わりに何を使えば良いというのだろう。まあよくわからないがジョン・ハンコック(アメリカ独立戦争を資金面で支えた政治家)とか?。彼らが言うように、歯磨き粉はチューブに戻らない。

Fidelity(フィデリティ)とVanguard(ヴァンガード)は、一体どうすればRobinhoodのユーザーたちに自分たちのサービスに戻るように説得できるというのだろう?彼らはそうできるのだろうか?それともある世代の投資家たち全員が既存の金融プレイヤーを完全にスキップしてしまったのだろうか?強気のRobinhoodは後者のように考えているに違いない。そしてその見方を私も打ち消すことができないのだ。

Robinhoodの業績が、今後の何期かの四半期にどのように推移するかはわからないが、RobinhoodのMAU(月間アクティブユーザー数)や、M1のAUM(運用資産残高)などを考えると、フィンテックのスタートアップたちは信頼できる401(k)業者たちのいくつかを出し抜いたと言えるだろう。それはフィンテックたちが間もなくさらに深く掘り下げると、私が確信している市場だ。

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アフリカについて

アフリカに戻ってみよう、7月のデータはどうだっただろうか?私たちのアフリカ大陸の2021上半期の力強いパフォーマンスの調査は、6月で終わっていたので、いくつかのデータを追加しておこう。アフリカを情勢をウォッチするThe Big Deal(ザ・ビッグ・ディール)によれば、アフリカのスタートアップたちはこの四半期に71回のラウンドで3億800万ドル(約337億8000万円)を調達した。これは約37億ドル(約4058億2000万円)のランレートだ。よりシンプルに言えば、アフリカのスタートアップは、ベンチャーキャピタルの調達に関しては、これまでで最高の年を迎えている。

ではまた、ワクチン接種が無事に終わりますように。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:The TechCrunch Exchange新型コロナウイルスワクチンRobinhood決算発表アフリカ

画像クレジット:TechCrunch

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(文: Alex Wilhelm、翻訳:sako)

パンデミック後のアフリカのモバイルアプリ市場と急上昇するモバイルゲームアプリ利用率を読み解く

パンデミックは世界のアプリ市場に大きな影響を与えている。モバイルアプリに対する消費者の支出は2021年第1四半期および上半期にそれぞれ320億ドル(約3兆5200億円)、649億ドル(約7兆1700億円)となり、新記録を樹立した。

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アフリカの状況は世界のアプリ市場に関するレポートでもあまり言及されないので、正確な消費者支出を求めるのは難しい。それでも、Google(グーグル)とAppsFlyer(アップスフライヤー)が共同で発表した最新のレポートでは、2020年のパンデミック発生以降のアフリカにおけるアプリ市場の状況について、いくつかの重要な情報を読み取ることができる。

このレポートは、アフリカの3大アプリ市場(ケニア、ナイジェリア、南アフリカ)における、2020年第1四半期~2021年第1四半期のモバイルアプリのアクティビティを追跡している。

この3大市場における6000のアプリと20億のインストール数を分析したところ、2020年上半期から2021年上半期にかけて、アフリカのモバイルアプリ業界(主にAndroid)全体でインストール数が41%増加した。ナイジェリアは最も多く43%増、南アフリカ、ケニアではそれぞれ37%増、29%増となった。

ロックダウン期間の数字

アフリカでは2020年3月22日にルワンダが初めてロックダウンを実施。続いて、ケニア(3月25日)、南アフリカ(3月27日)、ナイジェリア(3月30日)でロックダウンが開始された。

2020年第2四半期からは自宅で過ごす人が増え、アプリのインストール数は3か国で20%増加。南アフリカではロックダウンの影響が最も早く表れ、インストール数は2020年第1四半期と比較して17%増加した。

一方、ナイジェリアとケニアにおける同時期のインストール数の増加は、それぞれ2%と9%だった。レポートによると、このような差は、各国の規制レベルの違いにより生じたものだという。南アフリカは規制レベルが最も厳しく、ロックダウンの頻度も高かった。

2020年第1四半期~第2四半期ではゲームアプリが好調に推移し、非ゲーム系アプリの販売が8%増であったのに対し、ゲーム系アプリは50%増となっている。これは、全世界で2020年第2四半期にゲームアプリのダウンロード数が急増(140億ダウンロード)し、過去最高を記録したトレンドと一致する。

アプリ内課金による収益と前年同期と比較した増加率

AppsFlyerによると、最も大きなトレンドとして注目されるのはアプリ内課金による収益だ。2020年第3四半期におけるアプリ内課金による収益の数字は、2020年第2四半期と比較して136%という驚異的な伸びを示し、2020年の総収入の33%を占めた。レポートによれば「アフリカの消費者が小売店での購入からゲームのアップグレードまで、アプリ内でどれだけ消費しているかがはっきりした」という。

アプリ内課金による収益は南アフリカで213%増加、ナイジェリアとケニアではそれぞれ141%、74%増加した。

スマートフォンの利用時間が増えたことから、アプリ内広告収入も前年同期比で大幅に増加し、2020年第2四半期から2021年第1四半期にかけて167%増加した。

先ほど2020年第1四半期~第2四半期で比較したゲームアプリと非ゲームアプリについては、2020年第2四半期と2021年第1四半期との比較では、それぞれ44%、40%増加している。

フィンテックとスーパーアプリ

過去5年間、アフリカのスタートアップに対するベンチャーキャピタルの投資は、フィンテック分野が圧倒的に多いが、それも当然である。フィンテックは、主にモバイルを利用する、大多数の銀行口座を持たない消費者、銀行口座を使いにくい消費者のみならず、銀行口座を持つ消費者にも多くの価値をもたらす。アフリカにおける10億ドル(約1100億円)規模のスタートアップのうち、1社を除いてすべてがフィンテックであるのは、この価値を踏まえてのことだ。

Disrupt Africa(ディスラプトアフリカ)のレポートによると、アフリカのフィンテックは、2017年から2021年の間に89.4%の成長を遂げ、現在、大陸全体で570社以上のスタートアップ企業が存在する。多くのフィンテックはモバイルベースで、アフリカの消費者が毎日利用するフィンテックアプリの数が反映されている。南アフリカとナイジェリアの消費者によるフィンテックアプリのインストール数は、前年比でそれぞれ116%、60%増加した。

AppsFlyerは、フィンテックアプリと同様に、スーパーアプリも増加していると報告している。スーパーアプリ、すなわち「オールインワン」アプリは、銀行業務、メッセージング、ショッピング、ライドヘイリングなど、さまざまな機能をユーザーに提供する。このようなアプリの増加は、大陸ではデバイスが限られることにも起因するが、フィンテックアプリの急増と同様、システム的な銀行口座の使いにくさも一因である。

レポートは「スーパーアプリは、ユーザーが直面する課題を解消し、顧客情報の取得や従来の銀行では実現できないレベルの利便性の提供を可能とする」と報告している。

AppsFlyerのEMEA & Strategic Projects担当リージョナルバイスプレジデント、Daniel Junowicz(ダニエル・ジュノヴィッチ)氏は、本レポートで取り上げられているトレンドについて次のように話す。「2020年来の(パンデミックによる)混乱にもかかわらず、アフリカのモバイルアプリ市場は盛況で、インストール数は増加し、消費者は今まで以上に多くのお金を費やしています。企業が収益を上げる上で、モバイルがいかに重要であるかがわかります」。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:アフリカアプリケニアナイジェリア南アフリカフィンテックスーパーアプリ

画像クレジット:Getty Images

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)

【コラム】アフリカ諸国政府にブロックチェーンサービスを売って学んだこと

編集部注:本稿の著者Mohammed Ibrahim Jega(モハメド・イブラハム・ジェガ)氏は、Domineum Blockchain Solutionsの共同ファウンダー。連続テック起業家、スタートアップアドバイザー、フィンテック専門家でブロッチェーン推進者。

ーーー

アフリカ大陸の大きな魅力の1つは12億という人口であり、そこに獲得可能な巨大市場があることを意味している。しかし、ターゲット顧客が54カ国の政府だと何が起きるのか?

我々のケースがそれだ。Domineum Blockchain Solutions(ドミニエム・ブロックチェーン・ソリューションズ)を設立したのは、アフリカ諸国政府が貨物の出荷と記録管理に関わる問題を解決するのを手助けするためだった。

大変な仕事になることはわかっていたが、最初の顧客を獲得するのが最難関になるとは予想していなかった。

当社の最初のプロダクトは、貨物の出荷元と移動経路を追跡し、あらゆる国との輸出入製品の内容を特定する貨物サービスだった。我々は、貨物が非公式な裏経路を通ることによる収入減少問題を解決するためにこれを開発した。

サハラ以南アフリカに焦点を合わせていた我々は、2019年に4つの国に打診した。母国ナイジェリアとケニア、ガンビア、ギニア共和国の各国だ。

最初に話を持ちかけた時、どの政府からも期待した反応を得られなかった。我々のソリューションを試す準備が整っていなかった。提案は新奇であり、彼らがブロックチェーン技術に馴染みがなかったためだ。動揺した我々は、ターゲットに小国を加えた、シエラレオネだ。

首都フリータウンの港湾は、シエラレオネの貿易の主たる玄関口として貿易量の80%がここを通過している。同港には貿易中継地としての長い歴史があり、ヨーロッパとアメリカ大陸の中間という戦略的に重要な位置の恩恵を受けてきた。

しかし、フリータウンはアフリカはもちろん、サハラ以南アフリカの中でも主要な港湾都市とはいえない。この港を通過するのは、全世界の輸送取扱量の1%にも満たない。世界人口のおよそ0.1%が住むアフリカの小国はダイヤモンド、カカオ、コーヒーなどを輸出し、食糧、機械、化学薬品などを輸入している。

ある時この国は、一連の製品の輸出入に関して大きな課題に直面した。シエラレオネのあるサプライチェーンマネージャーが状況を説明した。「私たちは輸出手続きで大きな課題に直面しました。港で長期に渡る遅延が起きていたのです。深夜前に到着した私たちのトラックは、何時間、時には何日間も順番を待たせられました。書類手続きが非常に複雑でした」。

世界銀行によると、シエラレオネの「貿易問題はいくつかの要因に起因する。貿易情報の欠如、高レベルな現物検査、さまざまな手数料、ライセンス、許可証、証明書。手作業による手続き。当局部署間の連携の欠如など」。Domineumはこれを解決することを目指した。

シエラレオネ政府との最初の話し合いは順調に進んだ。幸運なことに、シエラレオネは国境を越える物品の移動に必要な時間とコストを減らすために、世界銀行グループの支援を受けて5年計画(2018~2023年)を展開していた。目標は、貿易コストの10%削減だ。3カ月に渡る検討の結果、当社の貨物追跡システムが導入された。

当社は2019年の終わりにこの提携事業を開始し、さもなければ失われていた200万ドル(約2億2000万円)の収益を獲得することに成功した。ビジネスモデルはシンプルだ。当社の貨物追跡システムによってシエラレオネ政府が獲得した追加収益の40%を手数料として我々が受け取る。

アフリカに参入する際、ナイジェリアや南アフリカ、ケニアなどの大きくて人気のある市場に焦点を当てたがるのが一般的だ。しかし、これまでに我々が学んだのは、この国々は会社にとって最初の参入国ではない可能性が高いということだ。ビジネス-政府モデルは一筋縄ではいかない。政府と仕事をするためには実にさまざまな政治活動が必要だ。

これまでうまくいっているのが、まずいくつかの国に接触して足がかりを得て、それをコンセプトが通用する検証として使うやり方だ。シエラレオネでの成功を受け、我々は他の国々に戻って、よりよい反応を得られることを期待している。

シエラレオネの成功は、我々が提供していたサービスを考え直すきっかけになった。当初の話し合いは貨物追跡サービスから始まったが、やがて我々は、始めにノーと言った国に別のサービスを提案すべきなのではないかと考えた。

アフリカでは土地登記が共通の問題であることがわかった。アフリカの農村部の90%以上が未登記であり、土地収奪の温床になっている。このことが農業その他の産業の成長を阻んでいる。紛争時に土地が他者に略奪されたり、政府に強制収用されるからだ。

我々は再び各国を訪れ、ブロックチェーンを用いた土地所有登記などのサービスを提案した。ナイジェリア政府から肯定的反応があり、パイロットプログラムを実施することになった。このパイロットフェーズが終わった暁には次のビジネス契約を獲得できることを楽観している。

アフリカ諸国政府とのビジネスはどんな感じだったか?小さくて獲得可能な市場である。もしあなたが、アフリカの国の政府に製品やサービスを売り込むつもりなら、最初の顧客は小さな国にいることを念頭に置くのがよいだろう。

その他のチャンスをつかむために、我々はこの発想に基づいて今後も他のアフリカ諸国への拡大計画を続けていくつもりだ。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:アフリカシエラレオネコラムナイジェリア南アフリカケニア

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(文:Mohammed Ibrahim Jega、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アフリカでの銀行業務と決済のためのローカルソリューション構築を目指すナイジェリアのAppzone

アフリカのフィンテック分野は、ここ数年の投資で一定の注目を集めているが、スタートアップ企業の多くが、高品質な製品の提供を課題としている。それでも従来型のコスト構造や極めて低い業務効率などの課題を抱える伝統的な銀行と比較すると、スタートアップ企業の首尾は上々のようだ。

フィンテックソフトウェアを提供するAppzone(アップゾーン)は、伝統的な金融機関のバンキングサービス・決済サービス向けに独自のソリューションを構築している数少ない企業の1つである。2021年4月、同社は1000万ドル(約11億円)のシリーズA資金調達ラウンドを完了したと発表した。

アフリカの金融機関は、通常、問題が生じた際に海外の技術ソリューションを利用しているが、その場合、価格、変化に対する柔軟性、現地の技術サポートの不足といった問題が付きまとう。ここに目を付けたEmeka Emetarom(エメカ・エメタロン)氏、Obi Emetarom(オビ・エメタロン)氏、Wale Onawunmi(ウェール・オナウンミ)氏の3人は、2008年、ナイジェリアのラゴスを拠点としてAppzoneを設立した。

Appzoneの手法は他のアフリカのフィンテック企業とは明らかに異なる。他社と明確に差別化される要因の1つは、同社が銀行や決済におけるイネーブラ(enabler、手助けする存在という意味。ここでは決済レールやコアインフラ)として機能しているという点にある。

同社は、商業銀行にカスタムソフトウェア開発サービスを提供するサービス会社として設立された。2011年に、マイクロファイナンス機関をターゲットとした最初の勘定系サービスを発売。2012年に商業銀行向けの最初のサービス(ブランチレスバンキング)を発売し、2016年にはモバイルバンキングとインターネットバンキング向けのサービスを開始、2017年にカード即時発行サービスを発売した。2020年には、銀行の融資業務におけるエンド・ツー・エンドの自動化サービスとブロックチェーンの交換に対応したサービスを開始した。

AppzoneのCEOであるオビ・エメタロン氏はTechCrunchに次のように話す。「私たちは(アフリカ)大陸における銀行業務と決済のための革新的なローカルソリューションを構築することを目指してAppzoneを立ち上げました。焦点となったのは、イネーブラとしての力を活用して、この分野での独自技術を開発することでした」。

画像クレジット:Appzone

Appzoneのプラットフォームは、アフリカの18の商業銀行と450以上のマイクロファイナンス金融機関で利用されていて、年間の取引額は20億ドル(約2200億円)、年間の融資額は3億ドル(330億円)に達する。

Google for Startups Acceleratorにも参加した同社は、設立以来、アフリカのフィンテック分野をリードし、アフリカからいくつかの世界初の試みを行ったという。1つ目は、世界初の分散型決済処理ネットワークの構築。2つ目は、クラウドでの勘定系およびオムニチャネルソフトウェア。そして3つ目が、複数の金融機関での口座振替サービスである。

エメタロン氏は、Appzoneを独自技術に重点を置いたフィンテック製品のエコシステムと表現する。このエコシステムの2つの層、すなわち、金融機関の業務全体を動かすソフトウェアを提供するデジタル勘定系サービスと、ブロックチェーンを利用した分散型ネットワークに金融機関を統合する銀行間処理については上述のとおりだ。

Appzoneは、今回の資金調達で、エンドユーザー向けのアプリケーションに焦点を当てた第3の層を導入し、規模を拡大する。銀行とフィンテックの両方のレイヤーを構築してきた同社は、次に個人や企業と自社のサービスをつなげようとしている。新時代のフィンテックスタートアップのほとんどが参入している分野で、Appzoneは遅れて参入することにはなるが、エメタロン氏は優位に立っていると考えている。

「エンドユーザー向けのアプリケーションを提供する企業の多くは、自社サービスを提供するために、勘定系システムと銀行間処理サービスに頼らざるを得ません。私たちはすでに両方のレイヤーで事業を展開しており、コストや柔軟性の面で優位性があると考えています」と、エメタロン氏は他社との競合について話す。

10年以上もひっそりと活動してきたAppzoneだが、ここにきて製品やサービスの規模を爆発的に拡大しようとしている。450以上の顧客の大部分はナイジェリアを拠点としているが、同社はまず、アフリカ全土への拡大を真剣に取り組む。コンゴ民主共和国、ガーナ、ガンビア、ギニア、タンザニア、セネガルは存在感を増しているが、Appzoneには、これらの有望な市場に積極的に参入するためのリソースが不足していた。シリーズA資金調達ラウンドを完了した今、同社はこれらの国々を手始めに、さらにアフリカ全土に拡大していく計画だ。

また、Appzoneは規模の拡大を実現するために、同社が誇るエンジニアリングチームをさらに成長させることを計画している。すでに従業員150人のうち半数がエンジニアであるが、この数を2倍に増やす。ナイジェリアの多くのスタートアップ企業と同じように、Appzoneもシニアエンジニアを重視している。しかし、他の企業ではシニアエンジニアの不足が問題になっても、Appzoneでは有望な若手人材を育成して専門知識を身につけさせることができる、とエメタロン氏は話す。

「わずかなコストでイノベーションを起こすことができる私たちの独自の技術は、基本的に地元の優秀な人材によって構築されています。私たちのシステムは非常に複雑で、必要とされるイノベーションのレベルも別次元です。文字通りナイジェリアのトップ1%の人材を求めています」とエメタロン氏。「たとえ専門知識がなくても、最高の人材を育成すれば、専門性の高い人材をスムーズに得られることがわかっています。エンジニアを育てれば育てるほど彼らの専門性は高まり、私たちが期待する世界標準グレードの品質でサービスを提供できるようになります」。

Appzoneの共同創業者兼CEOオビ・エメタロン氏(画像クレジット:Appzone)

資金調達ラウンドに話を戻そう。注目すべき点は、参加した投資家のほとんどがナイジェリアを拠点としていることで、公開されている情報によると、ナイジェリアの投資家が主導したラウンドとしては最大規模であることは間違いない。主導したのは、ラゴスに拠点を置く投資会社のCardinalStone Capital Advisers(カーディナルストーンキャピタルアドバイザー)V8 Capital(V8キャピタル)Constant Capital(コンスタントキャピタル)Itanna Capital Ventures(アターナキャピタルベンチャーズ)の他、ニューヨークを拠点とし、アフリカに特化した企業であるLateral Investment Partners(ラテラルインベストメントパートナーズ)も参加した。

これまでにAppzoneは、南アフリカのBusiness Connexion(BCX、ビジネスコネクション)から200万ドル(約2億2000万円)のラウンドを2014年に獲得している。その4年後には、転換社債で250万ドル(約2億7000万円)を調達し、その過程でBCXから株式を買い戻した。全体としては株式発行による資金調達で1500万ドル(約16億3000万円)を獲得したことになるという。

CardinalStone Capital Advisersの共同設立者兼マネージングディレクターのYomi Jemibewon(ヨミ・ジュマイボワン)氏は、今回のAppzoneへの投資について、アフリカが将来的に世界クラスのテクノロジーの拠点となる可能性をさらに証明するものだと話す。

「Appzoneは、アフリカの金融業界のバックボーンとなる革新的なフィンテックエコシステムを構築しており、決済、インフラ、サービスとしてのソフトウェアにまたがる商品を提供しています。Appzoneは、アフリカ大陸全体の金融包摂(Financial Inclusion)を推し進めるサービスと同時に、金融機関に最適な低コストのソリューションを提供していて、この企業活動がもたらす影響は多岐にわたります。また、優秀な人材に重点を置くことで頭脳流出を防ぎ、アフリカの優秀な人材に最高の雇用機会を提供しています」とジュマイボワン氏。

アフリカのフィンテック分野は、2021年1月の低迷の後、Appzoneの資金調達も含め、ペースの速い投資活動を継続している。この2カ月を見ると、2月には南アフリカのデジタルバンクTymeBank(タイムバンク)(1億900万ドル、約119億円)、3月にはアフリカの決済会社Flutterwave(フラッターウェーブ)(1億7000万ドル、約185億円)による大規模な資金調達など、8社以上のフィンテック企業が100万ドル(1億900万円)規模の資金調達を行った。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:Appzone資金調達アフリカナイジェリア

画像クレジット:Appzone

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)

2021年のアフリカへのVC投資は史上最高額を記録するとの予測

アフリカのスタートアップへの投資は、観測されるようになった2015年以来、堅調に伸び続けている。その年、Disrupt Africa(ディスラプト・アフリカ)とPartech(パーテック)は独立して調査を行い、ベンチャーキャピタル投資額それぞれについて、1億8600万ドル(約202億円)と2億7700万ドル(約301億円)という異なる数値を示した。どちらも一大陸の数字としてはばかばかしいほど小さい。たとえば創業4年のSnapchat(スナップチャット)は同じ年に1回のラウンドで5億ドル(約544億円)調達している。しかし、アフリカと急成長中の米国スタートアップ1社への投資の格差は続いているものの、アフリカ大陸に入ってくるお金が増えているのは良い兆候だ。

2019年、アフリカのベンチャーキャピタル投資は史上最高額に達したとPartechのレポートが伝えている。Partechによると、アフリカの234社のテック企業が、250回の調達ラウンドで計20億2000万ドル(約2197億円)調達した。これは2018年のスタートアップ146社、ラウンド164回による調達額11億6300万ドル(約1265億円)から74%成長したことを示している。

2020年には新たな記録が達成されるだろうという共通の期待があったが、それはパンデミック前のことだった。このため、アフリカのテックエコシステムアクセラレーターであるAfricArena(アフリカリーナ)は、アフリカ大陸のスタートアップへの2020年のベンチャーキャピタル投資額を12億ドル(約1305億円)と18億ドル(約1957億円)の間になると予測した。そして、経験に基づく推測なのか計算された予測なのか、PartechとBriter Bridges(ブライター・ブリッジズ)の年末レポートは、総投資額をそれぞれ14億ドル(約1522億円)と13億ドル(約1414億円)と推定した。

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2021年、AfricArenaは最新レポートで、同大陸のスタートアップへのVC投資は22億5000万~28億ドル(約2447億〜3045億円)へと増えると予測している。達成されれば2019年の数字を超える大陸の新記録になる。

予測の背景にある論理的根拠をレポートの抜粋とともに紹介する。

2021年前半の第2四半期は、いくつかの理由で2020年第4四半期に似てくると予測します。ワクチン接種が有意な結果をもたらまでには期待していたよりも時間がかかる可能性が高くなりました。しかし、接種が始まったことで、たとえ実際どれほど長くかかるとしても、パンデミックの終わりに対する大きな不確実性が取り除かれ、時間だけの問題になりました。

その結果、私たちはシードからシリーズBにかけての投資が著しく加速され、いくつかのIPO(ナイジェリアのInterswitchなど)とともに、これまで見たことのないレベルまで投資行動を推進すると予測します。2020年4月現在の2021年への私たちの予測は、16億ドル(約1740億円)以下から30億ドル(約3262億円)以上まで幅があります。ワーストケースのシナリオは、アフリカ経済に対する長引く断続的な影響に基づくものであり、ベストケースのシナリオは、2021年第1四半期における完全復旧を織り込んでいます。上記の観察に基づき、現時点での当社の2021年予測は22億5000万~28億ドルの範囲になります。

4月30日現在、公表されたベンチャーキャピタル総額は8億ドル(約870億円)をわずかに上回る。BFA Global(BFAグローバル)のシニアベンチャービルダーであるMaxime Bayen(マキシム・ベイン)氏による。もしこのペースが2021年いっぱい続けば、アフリカ発スタートアップの調達総額は20億ドル(約2175億円)を超えるかもしれない。

画像クレジット:AfricArena

2020年にはアーリーステージ投資の数は増えたが、成長に賭けるグロースディールの数や、全体的な投資規模が減ったため、投資活動の減少を招いた。Partechによると、シードラウンドは前年比で80%成長し、全投資金額の64%を占めた。全体で、アフリカスタートアップはシードファンディングで2億2000万ドル(約239億円)を調達し、対前年比で47%の増加だった。シリーズAとBラウンドも同じく成長した。シリーズAは9%増(86ラウンド)、シリーズBは16%増(29ラウンド)だったが、投資規模はそれぞれ5%(4億4700万ドル、約486億円)と8%(4億4900万ドル、約488億円)減少した。

グロースディールも16%減少し、5000万ドル(約54億円)以上の完了した取引はわずか2件だった。2019年は10件で、そこにはInterswitch、OPay(オーペイ)、Branch(ブランチ)、Andela(アンデラ)などが入っていた。

2021年に20億ドルの壁を超えるための推進力は、VCが投資件数を増やし、スタートアップが2019年の大型グロースラウンドを再現することにかかっている。前者は、アフリカスタートアップが毎週のように資金調達を続けていることから実現しそうだ。しかし、後者についてはまだやるべきことがある。これまでに1回のラウンドで1億ドル(約109億円)以上調達したアフリカスタートアップは2社にすぎない。フィンテックスタートアップのFlutterwave(フラッターウェーブ)とTymeBank(タイムバンク)だ。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:アフリカ投資

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Nob Takahashi / facebook