印象的な1コマからマンガを探せる「アル」のAndroid版登場、2億円の資金調達も

アルは6月11日、マンガ探しアプリ「アル」のAndroid版をリリースした。また、ANRI、East Ventures、ABBA Lab、にしのあきひろ、中川綾太郎氏、片桐孝憲氏などから総額2億円の第三者割当増資を実施したことも明らかになった。

アルは、出版社がウェブで無償公開しているマンガのリンクをクロール・解析し、マンガ探しに困っているユーザーに向けて、新刊情報の通知のほか、許諾が得られた作品についてはマンガのコマからマンガを探せるといったサービスを提供する。新刊の通知については、Gmailでログインすることで過去の購入履歴をGmailのメッセージから解析して、新刊を自動通知してくれる仕組みだ。

同社のサービスは、これまでアプリはiOS版のみの提供で、PCやAndroidで閲覧するにはウェブ版を利用する必要があったが、今回待望のAndroid版アプリが登場した。

アルは、マンガ好きのユーザーが「読みたいマンガをうまく探せない」という声から生まれたサービス。各作品のページでは、みどころが解説されているほか、無償公開しているマンガの場合はその出版社のサイトへと移動するリンクも張られている。Amazonへの購入リンクからすぐにコミックを購入することも可能だ。ユーザーが投稿できるコメント欄も用意されており、ユーザー同士の交流もできる。

マンガの1コマにコメントを付けて共有して、興味を持ったユーザーを呼び込み、簡潔にまとめられたあらすじを読ませる、無料公開されているマンガへのリンクを案内、気に入ったら購入、という流れで、サービスがまとめられている。

代表取締役の古川健介氏によると「現在のところマネタイズはできていない」とのこと。まずは、既存のビジネスモデルを変えない、マンガの形態を変えない、漫画家の負担を増やさないというコンセプトでサービスを作り上げていく方針のようだ。

YouTubeのCEOがヘイトスピーチ対策の現状と将来を語る

YouTubeのCEO Susan Wojcicki(スーザン・ウォシッキー)氏は、保守系のコメンテーターSteven Crowderを排除しない同社の決定を擁護している。彼女のそのコメントは、この右翼評論家によるVoxのホストCarlos Mazaの取り上げ方がどれだけ人種差別や同性愛者嫌悪の中傷的言葉を常に使っていても、同社のポリシーには違反していない、という調査結果が出てから一週間後に語られた。Crowderには、380万あまりのサブスクライバー(チャネル登録者)がいる。

彼女はアリゾナ州スコッツデールで月曜日に行われたCode Conferenceで、RecodeのPeter Kafkaにこう語っている。「YouTubeに対するそのような批判は、真剣に受け止めることが重要だ。またそういうポリシーは公平に適用しなければならない。公平さを欠くと、ユーザーからの苦情も増える。インターネットの上には、ラップもあれば、夜晩くのトーク番組もある。ユーモアもある。そしてそれら多くのコンテンツの中には人種差別や性的差別の言葉がたくさん使われている。それらをすべて取り締まることは不可能だから、目立つもの一つ二つを取り締まると、あれはどうだ、これはどうだ、という苦情が必ず殺到する。だから一定のポリシーを斉一公平に適用することが、きわめて重要だし難題でもある」。

VoxのStrikethroughのビデオ製作者Mazaは先週Twitter上で、YouTubeが虐待や同性愛者嫌悪、いじめなどを盛大に許容している、と非難した。彼は曰く、「何年も前からだ。いろんな機会に警告してきた。でもYouTubeは、どんなポリシーも強制していない。CrowderにはYouTubeのサブスクライバーが300万いるから、ルールを適用したら今度は反保守的のラベルを貼られてしまうのだ」。

“私のことを2年間もゲイだラテンアメリカ系だと中傷してきたCrowderをYouTubeは罰しないことに決めた。”

結局YouTubeはCrowderのチャネルの収益化を停止し、ビデオ上の広告で稼げないようにした。YouTubeはそれらのビデオを、「広範なコミュニティを傷つける言語道断な行為であり、YouTubeのパートナーポリシーに違反している」、とした。しかしCrowderは、左翼を批判するスローガンを印刷したTシャツなど、商品も売っている

批判の高まりを受けてYouTubeは、ヘイトスピーチに対するポリシーを変えた。それにより、ネオナチや白人至上主義など極端なイデオロギーを宣伝する何千本ものビデオが削除された。

Wojcickiによると、これらの変更は同社が社内規制をより厳格にし、また外部の規制にも対応するために今行っている多くの作業の一環だそうだ。

WojcickiはLGBTQのコミュニティにも気を使って、彼らに謝罪した。自分にそれができたなら、Crowderの収益化の停止はもっと早く実施しただろう、と彼女は言っている。「われわれの決定がLGBTQのコミュニティを傷つけたことは承知している。それはまったく、私たちが意図したことではなかった。対策はもっと早めにやるべきであり、自分たちの本意でなかったことの表明と謝罪も、もっと早くすべきだった」、と彼女は言う。

YouTubeは、ビデオから収益を得るクリエイターに関して「より高いスタンダード」を設けている、とWojcickiは説明するが、ユーザーをヘイトスピーチから護るポリシーの採用は、ずいぶん遅かった。

Kafkaの的を絞った質問を適当に躱(かわ)しながらWojcickiは、今週がYouTubeにとって厳しい週だったと何度も繰り返し、質問への直接の答を避けた。

彼女は曰く、「高品質なコンテンツの提供に注力したいが、意見や物の見方の多様性を排除したくはない。多くの人たちやクリエイターを困らせるような事態には、私たちも困惑している。今週は、そういう意味で不運だった。多くの人びとに迷惑をかけた。厳しい仕事だけど、YouTubeを自分の情熱の追究のために有意義に利用している方々のお話もたくさん聞いているから、それらにはとても勇気づけられている」。

関連記事: YouTube will let bigot monetize if he removes link to homophobic merch…偏見のようなビデオでも性差別的商品へのリンクがなければYouTubeはOK(未訳)

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Salesforceがビジュアルデータ分析のTableauを157億ドルで買収

先週Googleがデータ分析のスタートアップ Looker26億ドルで買収したのもつかの間、米国時間6月9日にSalesforceはビッグニュースを発表した。データのビジュアル化をはじめ、企業の持つ膨大なデータに意味を持たせるビジネスに参入すべく、SalesforceTableau157億ドルで買収する。支払いはすべて株式交換で行われる。

Tableauは上場しており、同社のClass AおよびClass Bの一般株は、Salesforceの一般株 1.103株と交換されると同社は言っている。つまり157億ドルという数字は、Salesforceの2019年6月7日時点の平均株価に基づく会社価値で表した買収金額になる。

これはTableauの最新時価総額から見て大きな飛躍だ。Google Financeによると米国時間6月7日の取引終了時点で同社の時価総額は107.9億ドルだった。(このニュースに伴い同社の株は取引が停止された)。

両社の取締役会はすでに契約を承認している、とSalesforceは言った。両社の経営チームは東海岸時間の午前8時から電話会見を行う。

CRMソフトウェアからデータ分析の深い部分へと多様化を目論むSalesforceにとっても、実に大きな契約だ。

かつて同社はLinkedInを買収しようと力を入れたが失敗に終わった(代わりにMicrosoftが買った)。LinkedInとTablearuに類似点はあまりないものの、今回の契約もSalesforceの既存顧客との結びつきを強化するのが狙いだ。

「世界の#1CRMと#1分析プラットフォームが一緒になった。Tableauは人々がデータを見たり理解したりするのを助け、Salesforceは顧客をつなぎとめ、理解するのを助ける。あらゆる顧客が世界を理解するために必要とする2つの最重要なプラットフォームを組み合わせることで、両方の世界の最高の部分を提供することができる」とSalesforce共同ファウンダー・チェアマン兼CEOのMark Benioff氏が声明で語った。「Adamと彼のチームをSalesforceに迎えるのを非常に楽しみにしている」

Tableauは約8万6000社の顧客を持ち、Charles Schwab、Verizon(TechCrunchの親会社)、Schneider Electric、Southwest、Netflixなどの企業が名を連ねる。買収後もTableauは現在のブランドを継続し独立に運営されるとSalesforceは言った。ワシントン州シアトルの本社やCEO Adam Selipsky氏率いる経営陣もそのまま残る。

ただしそれは両社が今後一緒に仕事をしないという意味ではない。むしろSalesforceは、現在同社がEinsten(2016年に同社が提供開始したプラットフォームで、SalesforceのAIプロジェクトはすべてこの上に作られている)で行っていることを拡大する計画をすでにTableauと検討中だ。オムニチャンネルの営業・マーケティング向けサービスの「Customer 360」についても同様だ。Tableauのサービスの大きな特徴が、大局的な洞察力の提供であることから、この協業は相補的で理にかなっている。

「Salesforceと力を合わせることで、あらゆる人々がデータを目で見て理解するのを手助けする我々の能力が強化される」とSelipsky氏は語った。「世界#1のCRM会社に加わることで、Tableauの直感的で強力な分析機能が、より多くの企業と人々に有意義な洞察を与えられるようになる。」

「Salesforceの驚くべき成功は、顧客のニーズを予測し、顧客のビジネスが成長するために必要なソリューションを提供することから生まれた」とSalesforceの共同CEOであるKeith Block氏は言った。「データはあらゆるデジタル活動の基盤であり、Tableau が加わることで、あらゆるデータを統合しすべてを見渡す強力をツールを提供して顧客に成功をもたらすことができるだろう」。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

不動産テックのEQONが3000万円を調達、査定+エージェント検索で「仲介2.0」に備え

不動産取引をエージェント探しから始められるサービス「EGENT(イージェント)」を提供する、不動産テックのスタートアップEQONは6月10日、サイバーエージェント・キャピタルが運用する2号ファンド(CA Startups Internet Fund2号投資事業有限責任組合)を引受先として、J-KISS方式で3000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

不動産エージェントを厳選する「EGENT」

EGENTは、不動産エージェントとユーザーをつなぐプラットフォームだ。ユーザーは物件やエリアを入力することで、その地域の相場に詳しく、売買実績や専門知識が豊富な担当者に不動産取引について相談することができる。売買・賃貸の取引形態やマンション・戸建てなど物件の形態は問わない。

2019年1月にベータ版を正式公開したEGENTは、その後フルリニューアルを実施。ユーザーがエージェントの選別をするステップを省き、フォーム入力後、EGENTのカスタマーサクセスチームから連絡する方式に変更された。

加盟する不動産会社は東京23区で約150社、登録エージェントは170名ほどになっている。EQON代表取締役の三井將義氏によると、リニューアル前と同様「担当者はかなり厳選している」とのこと。「実務経験で平均15年、年間の売買件数は担当者全体で延べ4000件ほどと、実績のあるエージェントがそろっている。担当者のハズレはない、という水準が維持できている」(三井氏)

EGENTのカスタマーサクセスでは、ユーザーの“相場理解”をサポートする取り組みとして、EGENTが収集するエリアの売買事例や売出事例をExcelシートにまとめて提供している。23区内であれば各地域(町丁目の周辺単位)ごとに平均100〜200件の事例をファイルで渡し、利用者が自分でExcelを操作しながら売出価格や購入価格を決められるようにしている。

賃貸物件と異なり、中古住宅やマンションの売買では地域の相場が分かりにくい。「不動産屋では、購入するときには相場より高い物件を紹介され、販売するときには早く取引を完了させたいと安い売出価格を付けられがち」と三井氏。Excelシートは「すでに不動産屋から査定書を入手している場合には、それが適正価格かどうかの判断材料としても活用してもらっている」という。

カスタマーサクセスでは、ユーザーが紹介したエージェントとスタンスが合わないと感じれば、変更にも随時応じているという。EGENTに要望に合うエージェントが登録されていない場合でも「どの不動産業者がどのエリアで優秀か把握している」(三井氏)ということで、登録されていない他社の担当者を推薦することもあるそうだ。

「ググれば家の価格が分かる」仲介2.0時代

今回の調達資金について三井氏は、「EGENTのサイトフルリニューアルも完了し、本格的にマーケティングを行う段階に入った。ユーザー向けのマーケティングと、カスタマーサクセスの強化に投資していく」と話している。また新プロダクトとして、AIによる不動産の査定サービス「HomeEstimate(ホームエスティメート)」のリリースも予定しているそうだ。

三井氏によれば、AI査定サービスは2015年以降、日本で20弱ほど存在しているとのこと。最近では5月に、GA technologiesが運営する「RENOSY」でAI価格査定などを提供する中古マンション売却サービス「RENOSY SELL」がリリースされたばかりだ。そのAI査定精度は、MER(誤差率中央値)3.32%と発表されている。

「東京23区での売出価格と成約価格の差は約7%であることを考えると、街の不動産屋の値付けよりはAI査定の方が正確と言ってよいレベルまで来ている」(三井氏)

三井氏は「遅かれ早かれ、ここ数年で『ググれば家の価格が分かる』世界が来る」と予測。「EQONとしてもAI査定サービスは参入したい領域」として開発を進めている。「この領域のブレイクスルーには、エンドユーザーの納得感が必要だと思っている。UI/UXに向き合ったプロダクトを作りたい」(三井氏)

不動産屋へ通い、エージェントに会わなくても相場が分かる時代になれば「生き残るのは相場より、より高く売れる、より安く買える担当者だ」と三井氏はいう。「そうした腕利きのエージェントを見つけるためのサービスがEGENT。査定サービスとの相乗効果も期待できると考えている」(三井氏)

新サービスのローンチは9月末ごろを予定しているという三井氏。「これまで物件価格を知るためには不動産屋に足を運ぶ必要があったが、検索で価格が分かるようになれば、エージェントの価値が『価格を知っている』というところから別の価値へ移っていく。情報の非対称性だけで仕事をしていた不動産屋は淘汰される可能性もあるだろう」と述べている。

「いよいよ『仲介2.0』が始まろうとしている時代。『価格が知りたい』と査定サービスを入口として利用したユーザーが、自然に『次はよいエージェントが知りたい』と流れてくるような、一気通貫のサービスを展開したい。また、反響(ユーザーの問い合わせ)の数が増えてくれば、自社買取も実施できるのではないかと検討している」(三井氏)

ウォルマートの会話型パーソナルショッピングサービスは一顧客に毎月16万円超を売る

1年前にWalmart(ウォルマート)は、パーソナルショッピングサービスのJetBlackをニューヨークで立ち上げた。そして米国時間6月7日の発表によると、JetBlackの顧客の3分の2が週ベースでこのサービスを利用し、平均して毎月1500ドル(約16.2万円)の買い物をしている。ただしそれらの顧客は全員がWalmartやその子会社Jet.comなどで買い物をしているわけではない。JetBlackは独立のeコマース企業であり、Walmartが育成した。そして、いろんなリテイラーからの商品を配達している。

実際のところ、JetBlackが扱っていないのは、生鮮とアルコール、大麻由来製品、タバコ、処方薬、そしてレンズだけだ。

Walmartがインキュベートしたこのスタートアップは、ショッピングにコンシエルジュを絡ませてeコマースを会話型にする実験であり、顧客はリクエストをテキストメッセージで送り、そしてWalmartやJet.com、そのほかの地元リテイラーからの商品推奨を受け取る。会費は月50ドルでAmazon Primeよりも高いが、本格的な高級コンシエルジュサービスのHello AlfredMagicなどよりは安い。これらは、JetBlackがデビューする数か月〜数年前から注目されている。

Walmartによると、このサービスは、オンラインショッピングの利便性と専門知識を持つエキスパートの個人的アシスタントを組み合わせて、都市の忙しい核家族に効率的なショッピング方法を提供する。

JetBlackは、Rent the Runwayの共同創業者であるJenny Fleissらが創り、WalmartのインキュベーターStore No. 8のインキュベート事業に参加した。インキュベーターを立ち上げてから数か月後の2018年9月にWalmartは、The Wall Street Journalの取材に対し、JetBlackの会員は毎週平均300ドルの買い物をしている、便利なサービスだから買い物の頻度も上がる、と言っている。2019年3月では、毎週の買い物品目数が10以上だが、そのうちいくつがWalmartの商品か、という内訳は公表されていない。

米国時間6月7日はWalmartの株主総会だったが、JetBlackに関する話は少なかった。平均買い物額が増えたことだけが、言及された。

Walmartの国内eコマース部門のCEOであるMarc Lore氏は「JetBlackは会話型コマースに活気をもたらした」とコメント。。そして彼は、eコマース関連の最新の数字を「どれも顧客のおかげ」と述べた。

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

インスタはカラオケ歌詞表示でTikTokに一歩先行

リップシンク(口パク)は、TikTokInstagramに代わって、ティーンズカルチャーの中心に急浮上させた。そこでFacebookの所有するInstagramは、新しい機能で反撃に出た。Musicスタンプ機能を使って追加したビデオStoryのサウンドトラックに、歌詞(Lyric)を同期表示させることができるようになるのだ。歌詞が表示されることで、クリエイターとファンたちが一緒に歌うことができるようになる。そして視覚的なきらめきは、アマチュアMTVコンテンツを、より見栄えのするものにしてくれるだろう。

Instagramが、歌詞付きStoryのデモビデオとして、「怖いポップ現象」として人気を誇るBillie Eilishをフィーチャーしたところ、絶大な支持を得た。このビデオはInstagram Musicが提供されているすべての国(米国、ドイツ、そしてフランスなど。ただし現在日本ではまだ提供されていない)で視聴可能になっている。

この機能を利用するには、撮影する前にMusicレンズタイプ(オプションとしてはBoomerangなど)を選ぶか、撮影後にMusicスタンプを選択する。曲を選ぶと、音楽の再生したい部分を特定するのに役立つ歌詞が、ポップアップ表示される。その後は、伝統的なカラオケ歌詞表示、歌が進むにつれて表示されて行くタイプライター型、そして大きくピカピカしたビルボードフォントなどの中から、スタイルを選択することができる。

「MusicはInstagram上での表現で大きな部分を占めることが可能です。Storyに音楽を加えることと、アーティストとつながること、歌の録音を送り合うことなど、Instagramの上で音楽とつながる手段は沢山あるのです」とInstagramの広報担当者は私に語った。「現在私たちは、音楽機能を開発しながら、ユーザーがストーリーに歌を追加したときに歌詞も追加できる機能も追加しているところです」。Instagramが提供してきたほとんどすべてのものと同様に、この機能はまず、TechCrunchにしばしばタレコミを行うリバースエンジニアリングマスターのジェーン・マンチュン・ウォン(Jane Manchun Wong)氏によってAndroidのコードから掘り出されて、世界へ知らされることになった。彼女が最初にLyrics気が付いたのは3月だった。それを受けて私たちは4月にプロトタイプについて言及した記事を書いている。

だがTikTokもただ待っているわけではない。本日TikTokは、ビデオにオーバーレイされたキャプションを加える、独自のテキスト機能を開始した。通常、クリエイターたちがテキストを加えるためには、Snapcat、Instagram Stories、またはデスクトップ編集ソフトウェアを使用する必要があった。クリエイターたちが、TikTok上のテキスト表示のための、爆笑もののユースケースをたくさん見つけてくれるのは確実だ。そしてそれは、これまでキャプションを紙の上に書いて、クリップの中で見せるという、よくあるやり方を置き換える手助けになるだろう。

こうした機能のすべてが、ソーシャルビデオの鮮度を保つためのものである。The Atlantic上でTaylor Lorenzがきっちりと示したように、手入れの行き届いた、骨の折れるポーズをとるInstagramの美学は終わりを告げたのだ。ファンは完璧さにうんざりしていて、それは嫉妬を生み出し、偽物や不正なもののように感じさせている。コメディ、不条理、そして現実世界の生々しさが、ソーシャルメディアの新しい「外観」になりつつある。歌詞とテキストをオーバーレイするためのツールは、より複雑なジョークを表現したり、単に馬鹿げた振る舞いをする自由をクリエイターたちに与える。Billie Eilish自身のおどろおどろしくシックなファッションと、彼女自身の不安を表現しようする意欲に対する人気の高さは、このシフトを示す例だ。なので彼女をビジュアルコミュニケーションの次の波を表す顔として使ったInstagramはスマートなのだ。

【Japan編集部追記]現在日本ではInstagram Musicそのものがまだ提供されていないため、歌詞表示機能も提供されていない。

[原文へ]

(翻訳:sako)

Facebookの独自仮想通貨でユーザー間の送金や購入代金の支払いが可能に

Facebookは、Libraというコードネームで呼ばれる仮想通貨の詳細を発表する準備をようやく整えたようだ。同社の仮想通貨の概要を説明するホワイトペーパーが、今のところこの6月18日に発表される予定となっている。複数の投資家が、Facebookからこの日付を明かされた、と主張する、ある情報筋からもたらされた話だ。

一方、Facebookの北ヨーロッパを担当する金融サービスおよびペイメントパートナーシップ部門長のLaura McCracken氏も、ドイツの雑誌、WirtschaftsWocheのSebastian Kirsch氏に、ホワイトペーパーが6月18日に発表されるはずであると明かしている。また、その仮想通貨は、たとえば米ドルのような単一の通貨に連動するのではなく、通貨バスケット制を採用して、 価値の変動を防ぐことになるという。Kirsch氏は「私は、火曜日にアムステルダムで開催されたMoney 2020 EuropeでLauraに会いました」と、私に明かした。それは彼女が、同僚のFacebookのペイメント担当役員のPaulette Rowe氏の講演を聴いた後のことだった。「彼女によれば、彼女はDavid Marcus氏が率いる『Facebookブロックチェーン』チームの活動には関与していない、ということでした。彼女は私に、詳しいことは6月18日にホワイトペーパーが公開されるまで待つように言ったのです」。彼女は彼に、その発表の日付が、すでに公になっているはずだと伝えたのだが、実はそうではなかった。

そして米国時間の6月5日、TechCrunchは6月18日に関するニュースの差し止めを、Facebookのブロックチェーンチーム担当の、あるコミュニケーション部門長から要求された。とはいえ、The InformationのAlex Heath氏とJon Victor氏も、すでに米国時間の6月5日、Facebookの仮想通貨プロジェクトが今月後半に発表されると報じている。

Facebookは、同社の仮想通貨プロジェクトに関するニュースについてのコメントを控えている。パートナーとなる企業や政府とのゴタゴタが生じた場合には、発表の日時が変更される可能性は常にある。ある情報筋によれば、Facebookは2020年に正式に仮想通貨の扱いを開始することを目標にしているという。

それをLibraと呼ぶのか、何と呼ぶのかは別として、これはFacebookにとって、商取引と支払い機能の新時代の幕開けとなるだろう。たとえば、友人同士で、無料、または安い手数料での支払いが可能となったり、海外に出稼ぎに出ている労働者が稼いだお金を家族に送金したりするのにも使えるだろう。一般の送金サービスは手数料が高過ぎるので、これは歓迎されるはず。

Facebookの仮想通貨を利用すれば、クレジットカードの取引手数料を回避できるので、従来からある電子商取引にとっても、安価な支払い方法を確保できることになる。さらに、気に入ったニュース記事に対して支払う少額取引や、コンテンツのクリエーターへのチップの支払いなどを促進する可能性もある。またFacebook自身にとっては、誰が何を購入しているか、あるいはどのブランドが人気なのか、といった情報が得られるので、広告の計測やランク付け、コアビジネスを増強するためのターゲティングにも有効だ。

Facebookの仮想通貨の仕組み

Facebookのブロックチェーンプロジェクトについて現在分かっているのは以下の通り。

名前:Facebookは、この仮想通貨の正式名として、Libraというコードネームをそのまま使う可能性がある。以前にBBCが主張したGlobalCoinという名前にはならないだろうと、The Informationはレポートしている。ロイター通信によれば、FacebookはスイスでLibra Networksという名前の金融サービス会社を登記したという。Libra(てんびん座)という名前はLIBORをもじったものかもしれない。それは、London Inter-bank Offered Rate(ロンドン銀行間出し手金利)の略で、銀行間での借入の基準金利として使われるもの。LIBORが銀行向けなら、Libraは一般市民向けというわけだ。

トークン:Facebookの仮想通貨は、ステーブルコインになるはず。一定の価値を維持するように設計されたトークンで、支払いまたは交渉の過程で価格が変動することによる話の食い違い、やっかいな問題の発生を防ぐ。Facebookは、仮想通貨の価値を安定させるための担保として、複数の国際不換通貨を含む10億ドル規模の通貨バスケットと、低リスクの債権を創出するための資金の拠出について、すでにいくつかの金融機関と交渉していると、The Informationは報じている。Facebookは、ステーブルコイン公開の事前承認を得るため、多くの国々との交渉も進めているという。

TechCrunch Disrupt 2016で講演するFacebookのブロックチェーンチームの責任者、David Marcus氏(左)。

使い方:Facebookの仮想通貨は、MessengerやWhatsAppといったFacebookの製品を介して、無料で転送可能となる。Facebookは、その通貨による支払いを受け付けるよう、業者と協力して作業を進めていてる。サインアップボーナスを提供する可能性もある。The Informationによれば、Facebookは、ATMのような物理的な装置も導入したいと考えている。ユーザーは、それを使って仮想通貨を通常の貨幣と交換することができる。

チーム:Facebookのブロックチェーンプロジェクトは、PayPalの元社長で、現在はFacebookのMessenger担当副社長David Marcus氏が率いている。そのチームには、Instagramの製品担当副社長だったKevin Weil氏や、Facebookの元財務部門の責任者、Sunita Parasuraman氏も参加している。The Informationによれば、このParasuraman氏が、仮想通貨の財務を監督するという。さらに、Facebook社内のさまざまな部門から抜擢された多くの優秀なエンジニアが参加しているということだ。このチームは、機密保持のため、他の従業員の立ち入りを禁止したFacebookの本社の専用エリアで仕事をしてきた。とはいえ、立ち上げにはあちこちとのパートナーシップが必要なこともあって、少なからぬ情報がリークされてきた。

ガバナンス:Facebookは、その仮想通貨を監督するための独立した財団法人を設立することを協議していると、The Informationは報じている。その仮想通貨を使った取引を認証可能なノードを運用する企業に対しては、1000万ドル(約10億8500万円)を拠出するようFacebookは求めている。その支払いと引き換えに、その通貨のガバナンスに対する発言権が得られる。そうしたノードの運用者は、財務的な利益が得られる可能性もある。このプロジェクトのガバナンスについて、一定レベルの分権化を実現することで、Facebookが世界の通貨に対して強大な力を獲得することによって規制の対象となるのを防ぐことができるかもしれない。

原文へ

(翻訳:Fumihiko Shibata)

Google Stadiaのパフォーマンスはインターネット接続のスピードでどう違う?

ゲームプレイを双方向ストリーミングで提供するGoogleのクラウドサービスStadiaは、米国時間6月6日のローンチに際してさまざまな情報や資料が提供された。バイスプレジデントのPhil Harrison氏が提供してくれたのは、ユーザーのインターネット接続のクオリティの違いによる、このサービスのパフォーマンスの違いに関するデータだ。そのトップにあるのは、4Kの解像度+HDRのカラー+60fpsのフレームレート+5.1サラウンドサウンドで、このクォリティを得るためには少なくとも35Mbpsの接続が必要だ。

4KでなくHD1080pでよければ、HDR+60fps+5.1サラウンドのままで20Mbpsもあれば十分だ。そしてGoogleはストリームの円滑性の最適化を60ftpの前提でずっと下のほう、10Mbpsからさらにその下まで行っている。そのレベルではストリームの解像度は720pとなり、サウンドはサラウンドではなくステレオになる。

Harrison氏は「Staidaではゲームを誰でも楽しめるようにしたかった」という。誰でもというのは、インターネットの接続のスピードだけでなく、使えるデバイスのこともある。今回のローンチの時点でStadiaは、テレビ(+Chromecast Ultra)、デスクトップ、ラップトップ、タブレット(+ブラウザー)、スマートフォンで使えるが、最後のスマートフォンは当面、Pixel 3とPixel 3aのみ(+Stadiaアプリ)のみだ。

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ビデオ会議のZoomが2019年Q1で予測上回る決算、売上は132億円超

2019年はZoom(Nasdaq:ZM)にとって素晴らしい年となっている。Zoomは木曜日、アナリストの予測を上回る第1四半期の決算を発表した。

今年の大当たりの1つとされるIPOを今年4月に実施して上場企業となった収益をあげているビデオ会議のZoomは、2019年4月30日までの3カ月間の売上高として1億2200万ドル(約132億円)を計上し、前年同期比109%増だった。

このニュースを受け、Zoomの株価は時間外で上昇している。株価は米国時間6月5日、79ドル超と2%上昇した。IPO後の2カ月で、同社の株価はIPO価格の2倍超で取引されている。

「公開企業としての第1四半期は、Zoomのビデオコミュニケーションプラットフォームが広く受け入れられたことにより、売上高が前年同期比103%増となった」と創業者でCEOのEric Yuan氏は発表文で述べた。「顧客に幸せを届けるのは我々の最優先課題だ。顧客をハッピーにできれば、今後も成功するはずだ」。

かつてノーマークのユニコーン企業だったZoomは、周囲の期待をものともしていない。同社は4月にIPO価格をわずか36ドルとし、Nasdaqデビューを81%上昇で飾った。

第1四半期決算では、Zoomは再び期待を上回った。アナリストの予測では売上高は1億1140万ドルで、1株あたりの利益は1セント以下とされていた。しかし実際には1株あたりの利益は3セントだった。

通年見通しとしてサンノゼ拠点のZoomは、年間売上高はを億3500万ドル〜5億4000万ドル、non-GAAP収益(損失)を0〜300万ドルと見込んでいる。

イメージクレジット: Kena Betancur / Stringer / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi)

Google Stadiaプラットフォーム向けゲームの予告編一挙紹介

ゲーム専用機というのはゲームがなければただの箱だということは誰もが知っている。ストリーミング・サービスであっても事情は同じだ。

世界最大のゲームカンファレンスのひとつ、E3 2019を控えて、GoogleはStadia Connectを発表した。これはNintendo Dirctと真っ向から激突することになるクラウドゲームのプラットフォームだ。今回の発表で4K動画であることや料金プランなどやや詳しい情報が得られた。中でも重要なのはこのプラットフォームに投入されるゲームの予告編が公開されたことだ。

リストには有名シリーズに加えてGoogle独占のタイトルも含まれる。個別ゲームは月額10ドルからサブスクリプションできる。

こちらは Moonshine Studios/Coat SinkのGet Packedだ。Stadiaで独占公開されるゲームは引っ越しのための家具の荷造りを一連のゲームにしたものだ。誰もが経験するとおり、家具をパネルパネルバンに積み込むのは非常に苛立たしい作業だが、Get Packedでは細部の物理特性を維持したままシチュエーションを大いに過激化している。4人まで参加できるゲームが加わる予定だ。家具の荷造りは友達に参加を呼びかけるのに格好のテーマだからこれは巧妙な戦術だ。

ActivisionからDestinyシリーズのライセンスを取り戻したBungieは続編をStadiaで公開する。これはスーパーヒーロー的な一人称シューティングゲームで月面で戦うShadowkeepも含まれる。

もうひとつのStadia独占ゲームはGyltというタイトルの単一プレイヤーによるパズルアドベンチャーだ。主人公の若い女性が謎の失踪を遂げた従姉妹を探す。開発元はTequila Worksで、暗い舞台で超自然的な現象が起きる。

Baldurの Gate IIIはダンジョン&ドラゴン系のRPGでStadia版の他にパソコン版も用意される。

Googleは各種ゲームタイトルのいいところを見せるStadiaのプロモーションビデオも製作した。ゲーム開発元にはUbisoft、Take 2、SquareEnix、Warner Bros、Bandai Namco、Bethesdaといった有名メーカーが含まれている。

Googleでは「Stadiaをプレイするには専用機もパソコンもCDもいらない」とストリーミングの利点を主張している。Stadiaは11月にスタートする予定。

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

オバマ夫妻がSpotifyと契約しポッドキャスト番組制作へ

Spotifyはバラク&ミシェル・オバマ夫妻のプロダクション会社Higher Groundとの提携を発表した。この提携でオバマ夫妻は「ポッドキャストを制作し、幅広い話題について世界中のリスナーに語りかける」とSpotifyは説明している。

Higher Groundは、オバマ夫妻がコンテンツ制作でNetflixと契約した2018年に設立された。同社が手がけるNetflix向けの最初のコンテンツは1カ月ほど前に発表されたばかりで、オハイオ州の産業開発についてのサンダンス・ドキュメンタリーから、ニューヨークタイムズの死亡記事欄に載らなかったけれど注目すべき人々を取り上げたニューヨークタイムズのシリーズ記事から選んだアンソロジーまで、全てをカバーする。

一方のSpotifyはスタートアップのGimletとAnchorを買収し、そして長らくメディア業界で役員を務めてきたDawn Ostroff氏をコンテンツ責任者に起用するなど、ポッドキャストにかなり力を入れている。

Netflixの最初の発表と同じように、Spotifyの発表には番組の放送日や詳細な情報は含まれていない。今回の提携に伴い、Higher Groundはポッドキャスト専門の部門Higher Ground Audioを立ち上げる。

「ポッドキャストは生産的な会話を育み、人々を笑顔にし、そして人々を考えさせ、また私たちを結びつける稀な機会を提供するものであり、Higher Ground Audioの展開を楽しみにしている」と前大統領のオバマ氏は発表文で述べている。

イメージクレジット: Mark Wilson / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi)

小規模eコマースでも傘下マーケットプレースを容易に増やして管理できるMirakl Connect

中小eコマースのお助けサービスを提供するMiraklが、Mirakl Connectという新製品を立ち上げた。これはユーザーであるeコマース企業が複数のマーケットプレースをパートナーにしている場合、それらパートナーのコントロールやコミュニケーションを行うダッシュボードだ。

フランスのスタートアップであるMiraklは最近、7000万ドルの資金を調達した。同社はeコマースのプラットホームと協働して、彼らのサイトにサードパーティのマーケットプレースを、いわば新たな在庫としてくっつける。

eコマースのWebサイトは今、マーケットプレースをくっつけることがますます流行している。Miraklもこれまで、Darty、Office Depot、カナダのBest Buyなどをマーケットプレースで強化してきた。同社は、B2B(買い手が消費者でなく企業)のマーケットプレースも扱う。

しかし契約マーケットプレースが多くなると、eコマース企業はその現状理解とコントロールが難しくなる。ある品物を、どこが扱っているか、分らなくなることも多い。それぞれのマーケットプレースの顧客とのコミュニケーションも、難しい。

そこでMirakl Connectを利用すると、セラーが企業のプロフィールを作ったり、複数のマーケットプレース上で同時に製品を販促したりできる。また始めたばかりのeコマースプラットホームは、Mirakl Connectを使えばサードパーティのセラーを見つけやすくなる。

あなたが小さなeコマースサイトをやっていると、サードパーティのセラーは売上ボリュームの少ないところへ自分の製品を出そうとしない。でもMirakl Connectを使えば、小さなeコマースでもマーケットプレースを容易にパートナーにできる。

そしてMirakl Connectの上でセラー(eコマースサイト)とマーケットプレースがチャットでコミュニケーションできる。まさにMirakl Connectはマーケットプレースのマーケットプレースみたいだ。その上で、マーケットプレースがどんどん増えていく。

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

マイクロソフトとオラクルがクラウド相互接続を発表

MicrosoftOracleは今日、ユーザーがそれぞれのクラウドで作業しているものやデータをシームレスに両社のクラウドで動かせるよう、クラウドをネットワークで直接つなげるという新たな提携を発表した。この提携は単につなげるという以上のものであり相互運用性を含んでいる。

この手の提携は、本質的には競合するクラウド業界にあってどちらかといえば一般的ではない。しかしOracleはこの業界で主要プレーヤーになることを望んでいるが、AWSやAzure、Google Cloudのような規模をすぐに展開できないということを認識している。Oracleにとってこの提携は、OracleのユーザーがOracleのクラウド内にあるOracleデータベースを使いながら、Oracle E-Business SuiteやAzure上のOracle JD Edwardsのようなサービスを展開できることを意味する。そのうえで、Microsoftはワークロードを展開し、Oracleもこれまで通りのものを展開する(AzureユーザーはまたAzureクラウドの中でOracleデータベースを引き続き利用できる見込みだ)。

「Oracleクラウドは売上、サービス、マーケティング、人事、財務、サプライチェーンなどのアプリを統合した完全サービス、そしてOracle Autonomous Databaseというかなり自動化されそして安全な第二世代インフラを提供する」とOracle Cloud Infrastructure (OCI)の副社長であるDon Johnson氏は発表文で述べている。「OracleとMicrosoftは何十年にもわたり顧客である企業のニーズに応えてきた。今回の提携で、両社の顧客は再構築することなく、そして多額を投資することなくすでに抱えているアプリケーションをクラウドに統合できる」。

当面は、2つのクラウドの直接の相互接続はAzure US EastとOracleのAshburnデータセンターに限定される。2社はこの提携を将来は他の地域にも広げたい考えだが、詳細については明らかにしていない。おそらく、JD Edwards EnterpriseOne、E-Business Suite、PeopleSoft、Oracle Retail、そしてAzureのHyperionのようなアプリケーションをRAC、Exadata、 Oracle Autonomous DatabaseといったOracle データベースとのコンビネーションでサポートする。

「Fortune 500社の95%超がAzureを使っているという、企業に選ばれるクラウドとして、我々は常に顧客がデジタル移行で成功するように取り組んできた」とMicrosoftのクラウド・AI部門副社長であるScott Guthrie氏は語った。「Oracleは企業を得意としていて、今回の提携は自然な選択だ。2社が共有する顧客が企業アプリケーションとデータベースをパブリックのクラウドに統合するのを加速させるものとなる」。

今日の発表は、他の企業向けサービスを展開している大企業と提携するという最近のMicrosoftの傾向に沿うものだ。MicrosoftはこのほどSAPやAdobeとオープンデータ提携を結び、ソニーとは異例のゲーム面での提携を結んでいる。

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi)

Google Cloudでリソースの容量能力を予約でき確約利用割引の対象を拡大

Google Cloudが2つの重要な料金改定を行った。ただし残念ながらそれは、よくあるコンピュートとストレージの値下げではなくて、最初のは確約利用割引の拡大だ。GPUsや、Cloud TPU Pods、ローカルSSDなどを一定量、1〜3年契約で利用しているユーザーは、その長期的ロックインの代償として料金がオンデマンド料金の55%引きになる。

もうひとつはCompute Engineの(VMの)容量予約システムで、ユーザーが特定のゾーンにリソースを予約しておくと、あとで本当に必要になったときに確実にそれを使える。

一見すると、容量予約はクラウドらしくないコンセプトだ。なぜならリソースの縮小拡大はランタイムに必要に応じて自動的に為されるはずであり、その可用性をユーザーがいちいち気にするするべきものではない。

では一体、予約システムは何のためにあるのか?Googleの上級プロダクトマネージャーであるManish Dalwadi氏はこう語る。「想定ユースケースは災害復旧やそんなときのための安心感だが、ブラックフライデーやサイバーマンデーのような一時的で特殊な特売イベントのサポートも対象になる」。

つまり、その日には絶対的に必要なリソースが確実に利用できる、ということ。Googleのようなクラウドサービスの大手なら仮想マシンはいくらでもある、と思いがちだが、しかし一部のマシンタイプは特定の可用性ゾーンでないと使えないこともある。仮想マシンというリソースは、その点がその他のリソースとは異なる。

ユーザーは予約をいつでも作ったり取り消したりできるし、既存の割引が自動的に適用される(継続利用割引と確約利用割引)。

確約利用割引に関しては、かなりの柔軟性がある。たとえばユーザーは特定のマシンタイプを3年確約するのではなくて、CPUコアやメモリーなどの数量を確約すればいい。

GoogleのプロダクトディレクターPaul Nash氏は「顧客たちからよく聞くのは、他社の確約モデルには柔軟性がないことと、利用率が60%、70%ととても低いことだ。だからうちの確約割引の設計目標は、自分たちの容量計画を参考にして、ユーザーに十分なお得感があるような割引率にした。気楽に利用できて厳密な管理が要らないことも、目標とした」と説明する。

確約利用割引の拡大と、新たなCompute Engineの容量予約システムは、どちらもGoogle Cloud上ですでに利用できる。

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

声のブログ「Voicy」がダウンロード機能実装、オフラインで楽しめる

Voicyは6月5日、ボイスメディア「Voicy」のiOS版Android版にて自動音声ダウンロード機能をリリースした。

同機能により、利用者がVoicyでフォロー中のチャンネルの最新放送などをスマホ本体に自動的にダウンロードできる。通勤や通学などで通信環境に影響されず、音声コンテンツを楽しめるようになる。特に、地下鉄を利用しているビジネスパーソンや学生にはうれしい新機能だ。

自動ダウンロード機能は、オン/オフの設定が可能。Wi-Fi環境下のみダウンロードを有効にするといった設定もある。

なおVoicyは今後、デバイスメーカーやコンテンツメーカーと連携を予定しており、同社独自の音声配信技術やデータ解析、パーソナライズなどの音声技術を駆使することで、新しい音声体験を提供することを目指す。

Tinderがユーザープロフィールに性的指向と性自認を追加

米国の出会い系アプリ最大手のTinderは、プロフィール情報の項目に性的指向と性自認を追加する。

同社はLGBTQ支援団体のGLAADと協力して、同社のデートアプリの多様性対応を改善し、よりインクルーシブにした。

自分の性的指向に関する情報を変更、追加したいユーザーは、通常通りプロフィールを編集すればよい。Tinderユーザーは「orientation」ボタンをタップして、最大3項目の性的指向を選択できる。この情報は非公開にも公開にもできるが、アプリのマッチングに使用される可能性が高い。

Tinderは新規ユーザー向けの手順も変更し、登録後すぐに性的指向を入力できるようになった。

マッチングの並び順指定も改訂され、ユーザーは「Discovery Preference」フィールドで、同じ性的指向の人たちが先頭に表示されるようにできる。

これは多様性を高める取り組みの第一歩だと同社は語った。Tinderは今後もGLAADと協力してアプリを改善していく。新機能は米国、英国、カナダ、アイルランド、インド、オーストラリア、ニュージーランドの各国で6月中に順次公開される。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

サイト・アプリ多言語化サービス「WOVN.io」が総額14億円を資金調達

ウェブサイトやアプリの多言語化サービスを提供するWovn Technologies(ウォーブンテクノロジーズ)は6月5日、第三者割当増資と銀行などからの融資をあわせ、総額約14億円の資金調達を実施したと発表した。

Wovn Technologiesが提供するのはウェブサイトの多言語化サービス「WOVN.io(ウォーブンドットアイオー)」と、アプリの多言語化に対応した「WOVN.app(ウォーブンドットアップ)」だ。

WOVN.ioは既存の1言語のサイト・アプリがあれば、簡単に多言語化できるというソリューション。詳しい仕組みについては過去の記事を見てもらえればと思うが、言語ごとに別サーバーやページを用意することなく、最大で40カ国語に翻訳が可能で、システム開発やサイト運用、翻訳にかかるコストを削減することができる。

 

今回の第三者割当増資の引受先は、Eight Roads Ventures Japan、NTTファイナンス、オプトベンチャーズ、近鉄ベンチャーパートナーズ、マイナビ、OKBキャピタルの各社だ。

Wovn Technologiesは資金調達により、サイトやアプリを通じた顧客企業の海外戦略をサポートする専任チームを強化する予定だ。同社代表取締役社長の林鷹治氏によれば「一口に多言語化といっても各社、目的はいろいろ」とのこと。「越境ECの商品説明、インバウンド向け旅行会社のツアー紹介、交通機関の安全への取り組みなど、それぞれの企業が目指す外国人戦略について、コンサルティングというよりは併走して支援していく体制を強化したい」(林氏)

また1万5000サイトへと導入が進む中で、大規模サイトや大手企業による利用も増えているというWOVN.io。Wovn Technologiesでは、大規模サイトのための機能開発や、AIによる翻訳業務効率化のための研究なども進めるという。

「我々は、『インターネットをローカライズする世界的な黒子企業』を目指す」という林氏。近日中に、多言語化に関わる新しいサービスの発表も予定しているということだったので、引き続き注目したい。

写真左から、Wovn Technologies取締役製品担当 サンドフォド ジェフリー氏、代表取締役社長 林鷹治氏、取締役副社長 上森久之氏

Wovn Technologiesは2014年3月の設立。これまでに、インキュベイトファンドからの総額約3000万円のシード投資をはじめとして、2015年9月にオプトベンチャーズ、ニッセイ・キャピタルから1.3億円2016年12月にはSBIインベストメントや凸版印刷などから3億円を資金調達している。今回の調達を含め、創業以来の累計調達額は約20億円となる。

天安門事件に関する記事を載せたCNNとロイターが中国政府によりブロック

CNNのウェブサイトは現在中国本土でブロックされている。その前に同サイトには、トップ記事の中に天安門広場の大虐殺の30周年記念に関する記事があった。GreatFire.orgの履歴データによると、同サイトは通常は中国でもアクセスできる。

北京在住の記者であるMatt Riversが、ブロックをTwitter上で報告している(下図)。それによると、「政府はこの話題に関する会話を制限することに関してほとんど強迫観念に駆られているようだ」、という。

天安門広場の民主化デモは、政府が軍に命じて活動家たちを追い払ったときに終わった。この事件に関する情報は中国では抑止されているが、しかしこの国の検閲機関はその取り組みを強化し、毎年記念日が近くなるとその数週間も前から、関連するどんな記事や情報でも根絶しようとしている。

6月3日には、金融情報のプロバイダーであるRefinitivも、その情報サイト「Eikon」から天安門広場に関するロイターの記事を取り下げた。それは中国政府のインターネット検閲機関であるCyberspace Administration of China(CAC)から命じられたからだ。命令に従わなければ中国におけるサービスを停止する、と言われたらしい。

記事がブロックされたのは中国国内だけのはずだ。しかしロイターによると、中国の外にいるユーザーにも本日その記事は見られなかった。その理由は不明だ。報道を停止されたこと自体はEikonに記事として載ったが、その後その記事も削除された。

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

事業は全てが契約、契約をプロジェクト単位で管理し最適化する「Holmes Project Cloud」

Holmes代表取締役の笹原健太氏

新ソリューション「Holmes Project Cloud」とは

契約書の作成から管理までを一括サポートするクラウドサービス「Holmes(ホームズ)」を運営するHolmesが新ソリューション「Holmes Project Cloud」の提供を開始した。同社はこの展開を「新たなHolmesへのパラダイムシフト」としている。

Project Cloudは、ビジネスに必要となる数ある契約をプロジェクト単位で設計し、最適化するための「契約マネジメントシステム」。

従来のプロダクトでは1つ1つの契約書の作成から管理までを行なっていたのに対し、新ソリューションでは「プロジェクト単位で複数の契約の管理」を行うことが可能だ。

プロジェクトの例を挙げるならば、「開発プロジェクト」「新卒社員雇用プロジェクト」「株主総会プロジェクト」など。

事業が大きくなるにつれ、契約の数も、当然、爆発的に増えていく。

「必要な契約書は全部揃った?」「あの会社との契約どうなってる?」「この契約って、誰がどういう経緯で交わしたの?」などの問題が発生しがちだが、管理プラットフォームとなっているProject Cloudを使うことで、どのようなアクションが必要かは一目瞭然となり、情報や注意点を共有することで、ミスコミュニケーションにより生じるリスクを軽減することが可能だ。

なお、「一連の契約書業務を効率化」する従来のプロダクトは「Holmes Contract Cloud」となるが、今後はProject CloudとContract Cloudのセットがスタンダードプランとして提供される。

「事業は全てが契約」「契約に関係のない人はいない」

Holmes代表取締役の笹原健太氏は、契約は企業の「血液だと思っている」、そういった意味では「Holmesは企業にとっての大動脈となる」と話す。

笹原健太氏
Holmes 代表取締役
東京出身、中央大学法学部へ進学、その後慶應義塾大学法科大学院を中退。弁護士業務に従事し、2013年に弁護士法人 PRESIDENTを設立。「世の中から紛争裁判をなくす」という志のもと、17年にリグシー(現Holmes=ホームズ)を設立。18年末にはジャフコ、500 Startups Japan(現Coral Capital)など著名なVCおよび個人投資家から総額約5.2億円の資金調達を実施。現在は弁護士登録を抹消し、CEOとしてHolmesの経営に力を注いでいる。

「売り上げ、仕入れ、人や物・場所の調達、など、事業は全てが契約だと思っている。契約書の集合体が点。契約書の集合体が事業。事業の集合体が企業。契約書は事業の時間軸の中の、ある1点だ。なのに、これまでは契約書という点だけを解決しようとしていた」(笹原氏)

これまでの電子契約の世界観は「印紙や郵送などのコストをカットしたり、契約の締結の部分だけを楽にしよう」というものだった。従来のプロダクトは法務部など、限られた部署のタスク軽減や時間短縮のためのサービスに止まっていた、と同氏は説明する。

だが、契約には、多くの場合、企業内の複数の部署が関わっている。笹原氏は「契約書は法務部や弁護士が担当するイメージがあるが、契約に関係のない従業員はいない」と言い、以下のように課題感を説明した。

「企業の中には無数の契約があり、その1つ1つの契約の中には、様々な権利義務が存在する。全ての権利が実行されたかどうか、全ての義務が履行されたかどうかを、個人個人が把握するのは不可能だ。現在、契約書を結んでしまったら、それはどこかのファイルに収納してあったり、電子化されていたりしても、簡単に探せる状態にはなっていない。契約の締結後も取引は続いていくのにも関わらず、契約内容を現場がどれくらい把握しているかというと、できていない」(笹原氏)

例えば、賃貸借事業には、入居前、入居時、入居後など、様々な時間軸があり、その様々な時間軸の中には数々の契約書が存在する。そして、そのプロセスには、営業部だけでなく、審査部、総務部など、様々な部署が絡んでいる。

そのような中で「賃貸者契約書の作成から締結までのプロセス」だけが簡単になったとしても、書類漏れが防げないほか、更新されたかどうかは把握できない。だが、Project Cloudでは「どういう書類がどういう部署でどういうやりとりをされたのか、全ての情報が線となり集約されている」(笹原氏)

加えて、「契約書を適切に管理していないと契約情報を認識せずに取引をしてしまったり、契約更新に漏れがあったり」「担当者がいなくなった時に、契約の前後関係がブラックボックス化してしまう」といったリスクも回避できる、と同社は説明する。

事業成⻑のためには契約を最適化することが不可欠

プロジェクト単位で契約を管理することは、企業にとってどのようなメリットがあるのだろうか。

「事業成⻑のためには契約を最適化することが不可欠」だと謳うHolmesは、「権利と義務を最適にマネジメントすれば、それだけ事業が伸びる」と説明している。

「最適な権利実現」により「売上UP / 無駄な支出減」、「最適な義務履行」により「顧客満足 / 紛争リスク減」、そして「コンプライアンス」を強化することで「社会的な信用」を失うリスクを回避できると同社は説明する。

「契約書の作成から締結まで」「書類を自動作成」といったサービスを提供するリーガルテック領域のスタートアップが増えてきている中、「事業と契約は表裏一体」と話す笹原氏が率いるHolmesのProject Cloudはより包括的だ。かつ、「事業成長のためのツール」であるといった意味で趣旨が大きく異なる。

「事業」視点で開発されたProject Cloudのリリースで、Holmesは冒頭でも説明したとおり「新たなHolmesへのパラダイムシフト」を迎えたと言えるだろう。

ターゲティング広告がパブリッシャーにもたらす利益はほとんどない

ユーザーのプライバシーを踏みにじるトラッキング技術を使ってウェブサイトの閲覧者に表示する広告を選ぶ行動ターゲティング広告で、パブリッシャーはどれほどの価値を引き出せるのか?

最新の調査によれば、パブリッシャーが得られる価値は、ターゲッティング広告を使わなかった場合と比較して、わずか4%増でしかないとのこと。

これは、なぜかくも多くのニュース編集室の予算が削られ、ジャーナリストが職を失い、それでいてアドテクノロジーの巨大企業は相も変わらず大儲けをして金庫を膨らませ続けているのかといった問題に挑発的な光を投げかける発見だ。

サードパーティーのクッキーがひしめく一般的なニュースサイト(TechCrunchも含まれる)を訪れたときは、そのパブリッシャーは本業の他に、ユーザーをプログラマティック広告システムに接続して貴重な個人データが吸い上げ、表示すべき広告の決定に使用するユーザーの閲覧傾向を販売して膨大な利益を貪っていると考えていいだろう。

オンライン広告市場は巨大化し、成長を続けている。IAB(Interactive Advertising Bureau、非営利団体インタラクティブ広告事務局)の資料によると、米国では、2017年に880億ドル(約9524億円)の収益を上げ、前年比で21%増加している。パブリッシャーは、コンテンツだけで大儲けしているわけではないのだ。

それとは対照的に、近年の調査によると、パブリッシャーの大半は、ディスプレイ広告の経済学に締めつけられていることがわかる。2015年のEconsultancyの調査では、そのうち40%ほどが、広告収入が停滞しているか減少していると報告しているという(それゆえ、購読の形式に手を伸ばすパブリッシャーが増えていると断言できる。TechCrunch自身もExtra Crunchを提供している)。

デジタル広告収益の大部分は、最終的にはアドテクノロジーの巨人、つまりGoogleとFacebookがさらっていってしまう。いわゆるアドテクノロジーの複占だ。eMarketerによれば、アメリカでは、この2社がデジタル広告市場での支出のおよそ60%を占めている。およそ765億ドル(約8兆2900億円)だ。

この2つの企業の年間収益は、デジタル広告費全体の伸びを正確に反映している。Googleの親会社Alphabetの場合、収益は、2015年から2018年にかけて、749億ドル(約8兆1083億円)から1368億ドル(約14兆8115億円)に増加している。Facebookは179億ドル(約1兆9382億円)から558億ドル(約6兆0424億円)と増えている(これに対してアメリカのオンライン広告費は、2015年から2018年にかけて、598億ドル(約6兆4745億円)から1075億ドル(約11兆6389億円)以上にステップアップしている)。

eMarketerは、2019年にはこの複占企業の合計シェアは初めて減少に転じると予測している。しかしこれは、パブリッシャーにツキが回って突如として大金が転がり込むからではない。もうひとつのハイテク巨大企業、Amazonがデジタル広告市場のシェアを拡大しているからだ。それは、eMarketerが呼ぶところの「複占の小さな凹み」の始まりと期待されている。

行動ターゲティング広告、いわゆるターゲティング広告は、トラッキング技術の拡散と規制対象とならない目立たない場所でのテクニックを助長するプラットフォームの力学により、オンライン広告市場を支配するようになった。そして、オンライン広告主の目からは、これが非常に効率的に見えたのだと報告書は書いている(測定と特定に疑問が残るものの、多くの研究はターゲティング広告は広告代理店にとって有益であり効率的だと考えているようだ)。

これが、広告の選択を脈絡要素(例えば、今見ているコンテンツや、使用中のデバイスのタイプや、今いる場所など)に依存する非ターゲティング・ディスプレイ広告を閉め出す原因となった。

この非ターゲティングディスプレイ広告は、今では例外的な存在となっている。クッキーがブロックされたときの予備的な地位に追いやられてしまった(とはいえ、プライバシーを保護をうたう検索エンジンのDuckDuckGoは、脈絡に依存した広告事業を黒字に転換させている)。

2017年にIHA Markitが行った調査では、ヨーロッパにおけるプログラマティック広告の86%が行動データを使用していたことがわかった。しかも、そのモデルによれば、非プログラマティック広告の4分の1(24%)も、行動データを使用していたという。

「2016年のディスプレイ広告市場の成長は、その90%が行動データを利用した形式や処理からもたらされた」と同社は見ている。また、2016年から2020年の行動ターゲティング広告は106%成長し、こうしたデータを使用しない形式のデジタル広告は63.6%減少すると予測している。

非ターゲティング広告ではなく行動ターゲティング広告を推すという経済的誘因は、広告主、サイトの訪問者、コンテンツ、行動データのすべてにおいて規模を拡大し、インターネットの分散した多様なオーディエンスから価値を引き出すことに依存している支配的なプラットフォームには自明の理に思える。

しかし、コンテンツ制作者と彼らが関わるユーザーのコミュニティにとって、プライバシー軽視の規模の経済に服従しようという誘因は、きわめて不明瞭だ。

オンライン広告市場に潜在する不均衡に対する懸念はまた、大西洋を挟んだ両地域の政治家や規制当局の、市場の透明性に対する疑問を誘発する。そして、透明性の大幅な改善が求められるようになる。

人のトラッキングで獲得できる賞金

来週、ボストンで開催されるEconomics of Information Security(情報セキュリティーの経済学)カンファレンスのワークショップで発表予定の新しい調査結果がある。この調査の狙いは、ひとつのパブリッシャーが、行動ターゲッティング広告を選んだ場合と、選ばなかった場合の価値を数量化して、デジタル広告の収益のパズルを解く新たなピースになることにある。

この調査については、以前、研究に携わった一人の学者が米連邦取引委員会の公聴会にて研究結果を引用したとき、その存在をお伝えしているが、今回初めて報告書の全文が公開された。

Online Tracking and Publisher’s Revenue: An Empirical Analysis」(オンライン・ターゲッティングとパブリシャーの収益:実証的分析)と題されたこの報告書は、次の3人の学者が共同執筆している。Veronica Marotta氏(ミネソタ大学スクール・オブ・マネージメント、情報および決定科学助教)、Vibhanshu Abhishek氏(カリフォルニア大学アーバイン校Paul Merageスクール・オブ・ビジネス准教授)、Alessandro Acquisti氏(カーネギーメロン大学ITおよび公共政策教授)。

「広告主のキャンペーンの有効性におけるターゲッティング広告のインパクトは広く実証されているものの、オンラインターゲッティングとターゲッティング技術がパブリッシャー、つまりウェブサイトの広告スペースを販売する業者にもたらす価値については、ほとんど知られていない」と彼らは書いている。「事実、行動ターゲッティング広告によるパブリッシャーの利益に関する社会通念は学術研究で精査されたことがほとんどない」。

「報告書でも簡単に触れましたが、複数の株主(小売り業者、パブリッシャー、顧客、仲介者など)のためのオンライントラッキングと行動ターゲッティングの共通の利益に関する主張があるにも関わらず、独立系の研究者からの経済的結果に関する実証的な評価は驚くほど少ないのです」とAcquistiは私たちに話してくれた。

「事実、評価のほとんどは市場の広告主側に焦点を当てられたもので(例えば、ターゲッティング広告のクリックスルーやコンバージョンレートによる増収の評価は非常にたくさん行われてきた)、市場のパブリッシャー側の評価は、ほとんど知られていません。この調査を始めるに当たり、私たちの予測を裏付けるデータがほとんど存在しなかったため、どんな事実が出てくるのか、純粋に好奇心が湧きました」

「私たちには、適格な予測の元になる理論的根拠がありましたが、それらの予測はまったく反対の結果なる場合もありました。ある状況では、ターゲッティングはオーディエンスの価値、広告主のビッド数を増やし、パブリッシャーの収益を増加させますが、別の状況では、ターゲッティングによって広告に興味を持つオーディエンス層が縮小し、それがディスプレイ広告の競争力を低下させ、広告主のビッド数を減らし、結果的にパブリッシャーの収益を減少させます」。

この調査のために、研究者たちは、ニュース、エンターテインメント、ファッションといった幅広いバーティカル市場のウェブサイトを運営するある大手パブリッシャー(企業名は明かされていない)が所有する複数のオンラインショップでの、1週間にわたる「数百万件」ものディスプレイ広告の取り引きのデータセットを提供された。

このデータセットには、サイトの訪問者のクッキーIDが使えるか否かの情報も含まれている。これにより、行動ターゲッティング広告と非ターゲッティング広告の価格の違いが分析できるようになる(研究者たちは統計的メカニズムを用いてクッキーを拒絶したユーザー間の系統的差異に対処している)。

上記のとおり、今回の最も大きな発見は、データ解析の対象となったパブリッシャーが得られた利益の上昇率は、非常に低かったというものだ。それは4%前後に留まる。つまり、平均的な収益の差額は広告1本につき0.00008ドルだ。

この発見は、ネット上で吹聴されている、行動ターゲッティング広告はパブリッシャー、ひいてはジャーナリズムを支えるために「必要不可欠」だとする、声高ながら根拠のない主張と真っ向から対立するものだ。

例えば、これは今月の初めにフリーランスのジャーナリストが公開した「An American Prospect」(米国の繁栄)と題した記事だが、その中に「サードパーティーのクッキーを使わないオンライン広告の掲載料は、同じ広告にクッキーを用いた場合のわずか2%だ」と書かれている。ただし、その数値的データの出所は確認されていない。

「この記事の著者が私たちに話したところによると、情報源は、Index ExhangeのAndrew Casaleが2018年に行ったスピーチだという。その中で彼は、購入者IDのない広告の依頼は、同じ広告でID付きの依頼に対して99%もビッドが低かったと話している。この情報に、アドテクノロジー業界の人たちから彼女が独自に聞いた、クッキーのない広告の価値の減少率は99%から97%という数値の中間値を加味している」。

同時に米国の政策立案者たちは、今になってプライバシー規制に関してヨーロッパに大きく遅れをとっていることを痛感し、インターネットのユーザーがアドテクノロジーの巨大企業によるトラッキングと顧客プロファイルの厳密な実態調査と、その恐ろしさの喧伝に慌てて力を入れている。

米上院司法委員会が今月の初めに開いた公聴会(「デジタル広告のエコシステムとデータ機密性と競争方針を理解する」ために招集された)では、巨大ハイテク企業を規制するか否かではなく、独占的な広告巨大企業をどれほど厳重に処置するかが話し合われた。

「それのために、今日私たちは集まりました。(インターネット上での消費者のプライバシーを保護するための)選択肢の欠如です」とRichard Blumenthal上院議員は言った。「GoogleとFacebookと、その他の市場を独占する企業が過剰にして驚異的な力を有していることは、紛れもない事実です。だからこそ、早急なプライバシーの保護が絶対的に不可欠なのです」。

アドテクノロジー業界が組織的に展開している「侵襲的な監視」とも言うべき行為は、「政府が行おうものなら断じて許されませんが、FacebookもGoogleも、建国の父祖が夢にも思わなかった権力を手にしています」とBlumenthalは続け、アドテクノロジー業界の監視複合体によって吸い上げられ利用されるいくつかの個人情報のタイプを示した。「健康、交際、位置、経済、非常に私的な情報、これらがほとんどなんの制限もなく、誰にでも提供されています」。

この「侵襲的な監視」を思えば、単純に脈絡によって提供される(そのためウェブユーザーをどこまでもトラッキングする必要がない)広告に対して、パブリッシャーにとって4パーセントだけ「プレミアム」なプライバシー蹂躙広告は、とんでもない詐欺に思える。パブリッシャーのブランドも、オーディエンスの顧客価値も、インターネットユーザーの権利とプライバシーも被害者だ。

ターゲッティング広告による増益はほんのわずかであることが、この調査で判明した。しかも研究者たちは、パブリッシャーのプライバシー規制に準拠するためのコストを加味しなければならないと指摘している。

「訪問者へのトラッキングクッキーの設定が無料で行えるとすると、ウェブサイトは確実に損をする。しかし、トラッキングクッキーの広範な利用と、さらに広範に行われているインターネット上でのユーザーのトラッキングは、プライバシー問題を引き起こし、とくに欧州連合においては、厳しい規制の導入を招くことになった」と彼らは綴り、International Association of Privacy Professionals(国際プライバシー専門家協会)による評価の引用へと続く。それによれば、フォーチュンのグローバル500に選ばれた企業は、EU一般データ保護規則に準拠するために、およそ78億ドル(約8444億円)を支出する計画を立てているという。

組織的にインターネット上のプライバシーを侵害するために多額なコストを費やしても、パブリッシャーが価値を得ることは難しい。こうも考えられる。迷惑なトラッカーでサイトを飾り立て、ブランドの評判とユーザーのロイヤリティを獲得しようとするパブリッシャーが負担するコストであろうが、もっと大きな社会的コストであろうが、それはデータを燃料にして弱い立場の人たちを操り搾取する危険性につながっていると。平たく言えば、何も見えていないということだ。

パブリッシャーはこの調査によれば、差益のために自社のコンテンツとオーディエンスという資産の剥奪に加担しているように思える。しかし、アドテクノロジー業界が不透明であるために、彼らを手中に収めている巨大広告企業の計らいで、彼らがどのような「取り引き」をしているかは、彼ら自身にもほとんどわかっていないことが推測される。

そのために、この報告書は、オンラインパブリッシング業界にとって非常に魅力的なものになっている。そして、アドテクノロジー業界で働く人にとっては、実に気まずいニュース速報でもある。

https://platform.twitter.com/widgets.js
行動ターゲッティング広告でパブリッシャーが利益を得ることはない。それは、インターネットでタダのものをくれるわけでもない。Googleなどのアドテクノロジー企業があなたのデータを売っているに過ぎないのだ。その企業が持っている価値は、監視もなく広告主に届けられる。

この調査は、ひとつのパブリッシャーが経験した、広告市場の経済のスナップショットを提供したに過ぎない。これが示した兆候は、大金をつぎ込んでプライバシー法に反対し、「行動ターゲッティング広告を潰せばインターネットから無料のものが消える」との主張を根拠にアドテクノロジー業界のロビイストが描こうとしている絵とは、はっきりと異なる。

これ以上不気味な広告は出さないと宣言しても、パブリッシャーの収益がわずかに減るだけかも知れず、まったく同じ破滅を導く指輪を持ってるわけではないことは明確だ。

「簡単に言えば、この調査は指摘されてきたものの実証的な確認がほとんどなされていなかった広告エコシステムの一部の、最初のデータポイントを提供するものです。結果として、これはデータの流れからどのようにして価値が生み出され、さまざまな株主に配分されるのかを透明化する必要性を強調するものとなりました」とAcquisti。この調査結果は、広告市場全体と照らし合わせて読むべきだと総括している。

この調査の反応を聞くべく、広告業界紙IABのCEOであるRandall Rothenberg氏にコンタクトをとったところ、彼はデジタルサプライチェーンは「あまりにも複雑で、不透明すぎる」ことに同意した。さらに、ターゲッティング広告が生み出す価値のうち、パブリッシャーに渡る量が比較的わずかであることに懸念を表明していた。

「身元不明のパブリッシャー1社の1週間ぶんのデータでは、予測可能な調査材料にはなりません。それでも、この調査は、ターゲッティング広告がブランドにとって膨大な価値を生み出すことがわかりました。この匿名のパブリッシャーが競売にかけた広告の90%以上が、ターゲッティング付きで購入されています。しかも広告主は、その広告に60%増しの特別料金を喜んで支払っています。しかし、その価値のほんのわずかしか、パブリッシャーには流れません」と、彼はTechCrunchに語った。「IABがこの10年間訴え続けてきたとおり、デジタルサプライチェーンはあまりにも複雑で、不透明すぎます。この価値の格差は、透明性の大切さを明らかにしています。そうすることで、パブリッシャーは、自分たちが生み出した価値から恩恵が得られるようになります」。

報告書では、アプローチの制限と、追加調査のアイデアについても論じられている。たとえば、クッキーの価値が、そこに含まれる情報の量によって変化する問題だ(これに関して、彼らは初期の発見についてこう書いている。「情報をほとんど含まないクッキーと情報をある程度含むクッキーとを比較したとき、情報は(パブリッシャーの観点からは)非常に貴重であるかに見える。しかしある時点から、クッキーに情報を追加してもパブリッシャーにとっての価値は高まらなくなる」)。また、「クッキーの有無が競売に変化をもたらす」仕組みの調査だ。広告の競売の力学と潜在的メカニズムの働きを解明しようというものだ。

「これは、ひとつの新しい、そして便利であって欲しいと願うデータポイントです。他の人たちの追加調査を必要とします」とAcquistiは、締めくくりとして私たちに話した。「調査活動の鍵は、積み重ねによる進歩にあります。より多くの調査研究が発展的に追加されることで、問題の理解はより深まります。この分野での研究が進むことを楽しみにしています」。

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)