GMが3.8兆円をEV開発へ投資、従来の計画に8850億円上乗せ

General Motors(ゼネラル・モーターズ)は米国時間6月16日、2025年までに電気・自動運転車に350億ドル(約3兆8722億円)を投資すると述べ、これまでに明らかにしていた額を引き上げた。2020年11月に発表した計画の額に80億ドル(約8850億円)を上乗せする。

同社は2025年までにグローバルマーケットでEV30種を展開し、2035年までに全ゼロエミッションに移行する目標を打ち出している。新たな投資で、GMは新しい電動商用トラックを北米の計画に追加し、米国での電動SUV組立能力を拡大すると述べた。

新たなEVモデルの充実したポートフォリオを構築するのに加えて、同社はEV革命をリードしようと多面的なアプローチを取って来た。同社はまた、LG Chem(LG化学)とのジョイントベンチャーUltium Cells LLCのもとに2つの新規バッテリー工場にも投資している。そしてGMは2016年に過半数の株式を購入した自動運転部門Cruise(クルーズ)にも投資した。

今回のニュースの前日には、Cruiseが電気自動運転車両Originの商業化に向け、GMの金融部門から50億ドル(約5531億円)の融資を受けたと明らかにした。Originの商業生産は2023年の開始が見込まれている。

GMはまたホンダとのジョイントベンチャーHYDROTECで水素燃料電池も製造している。GMは6月16日、第3世代のHYDROTEC電池を2020年代半ばまでに展開することも明らかにした。GMは大型トラックデベロッパーNavistar、そして航空機向けの水素燃料電池システムを開発しているLiebherr-Aerospaceとパートナーシップを結んでいる。

GMは6月15日に、燃料電池とEVバッテリーをWabtec Corporationに供給するとも述べた。Wabtec Corporationはピッツバーグ拠点の会社で、世界初のバッテリーlocomotiveを手がけている。

「GMはグローバルでの年間EV販売台数を2025年までに100万台超にすることを目指しています。そして当社は展開を促進するために投資額を増やします。というのも、米国で電動化のモメンタムがあり、当社のプロダクトポートフォリオに対する顧客の需要を目にしているからです」とCEOのMary Barra(メアリー・バーラ)氏は声明文で述べた。

Fordも同様にEV投資を増やすことを5月に発表した。それまで同社は2023年までに220億ドル(約2兆4337億円)としていたが、2025年までに300億ドル(約3兆3187億円)投資すると述べた。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

自動配送NuroがFedExと提携、配送ロボをライスマイルデリバリーに大規模導入

Nurl(ニューロ)は2016年に元Google(グーグル)エンジニアのDave Ferguson(デイブ・ファーガソン)氏とJiajun Zhu(ジアジュン・スー)氏が設立した自動配送のスタートアップだ。このほど同社はFedEx(フェデラルエクスプレス)と提携して荷物輸送事業に参入する。

米国時間6月15日に発表された複数年複数フェーズの戦略的提携は、Nuroの次世代自動配送車をFedExの運用に組み込むテストおよび最終的な実運用を目指している。このロボット車はNuroの最新ロボットR2に続くものだ。自動運転分野の他社と異なり、Nuroの焦点は常に、低速度電気自動運転車で人ではなくパッケージを運ぶことだ。ただしその「パッケージ」は、食料品、料理、さらには医療用品の配達が中心だった。例えばコンビニエンスストア、Domino’s(ドミノ)、Kroger(クローガー)などと提携してきた。

FedExとの契約は同社にとって初めての小荷物配達への参入だ。パイロットプログラムはすでにテキサス州ヒューストンが始まっている。今回の複数年の取り組みによって、Nuroは同社のテクノロジーをより多くの人に新しい方法で届けることが可能になり、最終的には大規模な展開を目指している、とNuroの提携責任者であるCosimo Leipold(コシモ・リーポルド)氏は言った。

FedExはこれまで独自の自動運転技術に取り組んでいて、歩道を走る配達ロボットはよく知られている。Roxo(ロクソ)と名づけられたSameDay Botは、DEKA Development & Research Corpと、同社のファウンダーでSegway(セグウェイ)と車イスのiBot(アイボット)を発明したDean Kamen(ディーン・ケイメン)氏と共同で開発された。FedExが最初にSameDay Botを発表したのは2019年2月だった。そのFedExボットは、ライダーなどのセンサーと複数のカメラを装備し、機械学習アルゴリズムと組み合わせることによって、障害物を避けて安全な経路をたどり、かつ道路や歩道の交通ルールを守る。

当時同社は、AutoZone(オートゾーン)、Lowe’s(ロウズ)、Pizza Hut(ピザハット)、Target(ターゲット)、Walgreens(ウォルグリーンズ)、およびWalmart(ウォルマート)との共同で、自動ロボットを自社の配送ビジネスに適用する可能性を探ろうとした。FedExの狙いは、小売店が近隣の顧客からの注文を受け、ロボットを使って顧客の自宅や職場に同日配達することだった。同社は、テネシー州メンフィス、テキサス州のプレイノとフリスコ、およびニューハンプシャー州マンチェスターでテストを実施した、と広報担当者は言っていた。

Nuroとの提携は、歩道から離れて車道に進出するものだ。NuroのR2は大型で公道を走るように設計されており、重い荷物を遠くまで運ぶことができる。

FedExは、Nuroの自動運転ロボットをライスマイルデリバリーに大規模導入する長期契約を結んだと語った。

「イノベーションはFedExの礎であり、今後も会社のカルチャーとビジネス戦略の重要な部分でであり続けます」と先進技術およびテクノロジー担当副社長、Rebecac Yeung(レベッカ・ユン)氏は語った。

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nob Takahashi / facebook

10分で満充電にできるEVバッテリー交換のAmpleがENEOSと日本国内での交換インフラ展開、運営で提携

電気自動車のバッテリー交換を行うスタートアップのAmple(アンプル)は、何年にもわたって技術開発に取り組んできたが、2021年6月、日本とニューヨークへの拡大を促進するための2つのパートナーシップを締結した。2014年に設立され、先の3月にステルス状態を脱したこのスタートアップは、日本の石油 / エネルギー企業であるENEOS(エネオス)と提携し、日本国内でバッテリー交換インフラを共同で展開・運営することを米国時間6月15日に発表した。

両社は今後1年間、配車サービス、タクシー、自治体、レンタカー、ラストワンマイル配送などの企業を対象に、Ampleの全自動交換技術を試験的に導入する。また、AmpleとENEOSは、交換ステーションがエネルギーグリッドのバックアップ電源などの、他の用途にも使えるかどうかも評価する。まだパートナーシップは立ち上げの段階で、発表されていることは少ない。たとえばAmpleは、パイロットプログラムいつ日本のどこで始まるのかについては明らかにしていない。しかし、詳細には乏しいものの、ENEOSが関心を見せたことは、(少なくともAmpleの)バッテリー交換技術が信奉者を集めつつあることを示している。

今回のENEOSの発表は、Ampleが配車サービス、タクシー、ラストマイル配送用のEV(電気自動車)レンタル会社であるニューヨーク市のSally(サリー)との提携を行った数日後に行われた。Ampleの創業者でCEOのKhaled Hassounah(ハレド・ハッソウナ)氏によると、AmpleとSallyは、2021年の第4四半期までにニューヨークで5~10カ所のステーションを展開し、2021年には他の市場にも進出する予定だ。

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AmpleとSallyのパートナーシップは、数カ月後にはサンフランシスコにも拡大する。サービスを利用するコストにもよるが、少なくともカリフォルニア州では、配車サービスのドライバーにとっては有利な取引になるかもしれない。カリフォルニア州では2030年までにUber(ウーバー)とLyft(リフト)のドライバーの90%がEVに乗る必要があるとする法令が出されたばかりだ

「最終的には、交換ステーションをガソリンスタンドのようにどこにでもあるものにすることが目標です」とハッソウナ氏はTechCrunchに語った。

Ampleはこの3月に、ベイエリアで5カ所の交換ステーションの発表を行うと同時にステルス状態から抜け出した。また、Uberとの提携により、ドライバーはAmpleのバッテリー技術を搭載したクルマをAmpleから直接借りることができる。

Ampleのポリシー兼国際支援担当副社長のLevi Tillemann(レビ・ティルマン)氏は、TechCrunchの取材に対して「Ampleアーキテクチャは、あらゆる最新の電気自動車に統合できるよう設計されています」と答える。「一般的な電気自動車では、バッテリーパックをクルマから取り外すことは想定されていませんが、Ampleシステムを使えば、純正のバッテリーパックとまったく同じ寸法のアダプタープレートを備えたバッテリーパックと交換することができます。そのアダプタープレートこそが、バッテリー交換を可能にするためのアーキテクチャなのです」。

Ampleの標準化されたバッテリーモジュールは、Ampleプラットフォームで動作するように設定されたどの車両でも動作します、とティルマン氏はいう。今回のAmpleとSallyの提携により、Ampleはビジネスモデルを実証するために立ち上げた、自社による車両運行からの脱却を始めることができる。同社は、Sallyをはじめ、将来的にはおそらく他のフリート会社やレンタル会社とも協力して、Ample対応の車両を作っていく予定だ。

「Ampleのバッテリー交換技術は、どんな電気自動車にも対応していて、純正バッテリーとの置き換えが可能で、しかもクルマの改造(ハードウェア、ソフトウェアのいずれも)を必要としないので、EVインフラの導入にかかるコストと時間が劇的に削減されます」とハッソウナ氏はいう。

配車サービスのドライバーがEVへの乗り換えを躊躇する理由の1つに、バッテリーの充電時間がある。ハッソウナ氏によると、バッテリー交換には現在10分しかかからないが、年内には5分に短縮することを目指しているそうだ。より効率的でシームレスなプロセスを実現することで、配車サービスのドライバーや物流企業が切り替えを行う後押しをすることができるだろう。

「現在、ドライバーはエネルギーも含んでスワップサービスに対して1マイルあたり10セント(約11円)を支払っています。航続距離は車種やバッテリーサイズによって異なります」とハッソウナ氏は語る。「サービスの価格は電気料金によって変わりますが、ガソリンに比べて1~2割程度安くなることを目標にしています」。

ドライバーがバッテリーを交換したいときは、Ampleのアプリを使って近くのステーションを探し、自動交換を始める。各ステーションでは、1時間あたり5~6台程度のサービスが可能だが、年内にはその倍のサービスが可能になると見込まれている。とはいえ、これは各ステーションでの利用可能電力量にもよる。

ティルマン氏は、Ampleの拡大に伴い、既存のOEMパートナーと協力して、生産ラインで新車にAmpleの製造用プレートを取り付けるという選択肢を消費者に提供できる日を目指しているという。

彼は「私たちのユニットのコストは、バッテリースワップシステムにとって非常に有利なものです」という。「展開に大きなコストがかからないために、比較的少数の車両でも、バッテリー交換アーキテクチャーは経済的で収益性が高くすることができるのです」。

以前にAmpleに投資を行ったENEOSは、同社によれば、次世代のエネルギー供給に取り組んでいるとのことだ。同社はまた、水素についても検討しており、最近ではトヨタが日本で建設中の未来型試作都市「Woven City(ウーブン・シティ)」と提携した。同市は水素を使って電力を供給する予定だ。

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(文: Rebecca Bellan、翻訳:sako)

中国のPony.aiが2022年にカリフォルニアでのドライバーレスロボタクシー運用を計画

中国と米国で運用しているロボタクシーのスタートアップ、Pony.ai(ポニー・エー・アイ)は、2022年に計画している商用サービスに先立ち、カリフォルニア州の公道でドライバーレス車のテストを開始した。

ドライバーレス車両によるテストは、運転席にセーフティードライバー(安全管理者)がいない無人自動車が走ることを意味しており、カリフォルニア州フリーモントの公道で毎日行われている、と同社は語った。Pony.aiは中国の広州でもドライバーレス車のテストを行っている。

また同社は、2021年の夏にカリフォルニア州アーバインで、セーフティードライバーの乗った無人車を使ったライドシェアサービスを再開する計画であることも話した。目標は、2022年に完全ドライバーレス・サービスを展開することだ。

「完全ドライバーレス化は完全自律運用への鍵であり、私たちの野心的計画にとって不可欠な起爆剤です」とPony.aiのCEOで共同ファウンダーのJames Peng(ジェームズ・ペン)氏はいう。

Pony.aicが商用サービスを運用するためには規制のハードールがいくつか残っている。ドライバーレス乗車サービスを有料で提供しようとする無人運転車企業は、カリフォルニア州運輸局(DMV)とカリフォルニア州公益事業委員会(CPUC)の両方から運用許可を受ける必要がある。GM傘下のCruise(クルーズ)は、CPUCから乗客輸送テストが可能なドライバーレス自動運転サービス許可を受けた最初の企業となった。DMVの最後の一歩は運用開始許可で、これまでにNuro(ニューロ)のみが取得している。

Ponyのカリフォルニア州でのドライバーレス・テストのマイルストーンは、州がPonyの6台のドライバーレス車両によるテストを約39平方マイル(101平方km)の地域で行う許可を出してから1カ月後だった。何十という会社(計55社)がセーフティードライバー付き自動運転車のテスト許可を取得しているが、ドライバーレス車両の許可受けるのは稀だ。Ponyは同州でドライバーレス・テスト許可を受けた8番目の会社で、取得企業には中国のAutoX(オートエックス)、Baidu(バイドゥー)、およびWeRide(ウィーライド)、米国のCruise、Nuro、Waymo(ウェイモ)、Zoox(ズークス)らがいる。商業的運用が可能な deployment permit(運用開始許可)を受けているのはNuroだけだ。

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Pony.aiは、2016年にBaiduの開発者だったペン氏とLou Tiancheng(ルー・チャンチェン)氏が設立し、2017年にセーフティードライバー付き無人運転車のテスト許可を取得した。5月にカリフォルニア州DMVが発行したドライバーレス許可は、Ponyの州内における活動実績を踏まえて拡張された。

Pony.aiはカリフォルニア州のフリーモントとアーバインでライドシェアのテストを行ってきた。2019年、電動無人運転のクロスオーバー車、Hyundai Kona(ヒュンダイ・コナ)にPonyの自動運転システムとVia(ヴィア)のライドシェアリング・プラットフォームを搭載し、公道で乗客輸送を開始した。BotRide(ボットライド)と呼ばれるそのロボタクシー・サービスはドライバーレスではなく、運転席には常時人間セーフティードライバーが乗っていた。BotRideのパイロットは2020年1月に終了した。

その後同社は公開ロボタクシー・サービスのPonyPilotをアーバイン地区で運用開始した。その後、新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックのために、乗客輸送から貨物輸送に切り替えた。Pony.aiはeコマースプラットフォームのYamibuy(ヤミバイ)とも提携して、アーバインの顧客に無人ラストマイル配送サービスを提供した。その配送サービスは新型コロナパンデミックによって急増した注文に対応するための能力増強のために実施した、と当時Pony.aiは述べていた。

パンデミックが沈静化してカリフォルニア州に平常状態が戻るのに備え、Ponyは商業的ロボタクシーサービス運用の準備を進めている。その目標を達成するために、同社はすでに何社ものパートナーを集め、トヨタ自動車からの4億ドル(約440億円)を含む10億ドル(約1100億円)以上の資金を調達している。2020年11月、新たな2億6700万ドル(約290億円)の資金調達を完了した同社の企業価値は53億ドル(約5840億円)に達した。Ponyは、Bosch(ボッシュ)、Hyundai、トヨタをはじめとする自動車メーカー、部品メーカーとの提携、協業をいくつか行っている。

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画像クレジット:Screenshot/Pony.ai

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nob Takahashi / facebook

BMWとフォードが出資する全固体電池デベロッパーSolid PowerがSPAC合併で上場へ

Ford(フォード)とBMWが出資する全固体電池デベロッパーのSolid Power(ソリッドパワー)が上場する。同社は米国時間6月15日、特別買収目的会社Decarbonization Plus Acquisition Corp IIIとの合併を通じてNASDAQに上場し、取引後の時価総額は12億ドル(約1320億円)になると明らかにした。

取引では現金約6億ドル(約660億円)を獲得する見込みで、ここにはKoch Strategic Platforms、Riverstone Energy Limited、Neuberger Berman、Van Eck Associates Corporationなどの投資家からの1億6500万ドル(約181億円)のPIPE(上場企業の私募増資)が含まれる。Solid Powerは声明文の中で、調達した資金は成長とオペレーションにあてると述べた。

全固体電池はバッテリーテクノロジーにおける待望の次なるブレークスルーだと多くの人は考えている。この名称は、従来のリチウムイオン電池にある陰極と陽極の間をイオンが動くメカニズム、液体電解質を使用していないためだ。これについてはMark Harris氏が2021年初めにExtra Crunch記事で詳しく書いた。この液体の構成要素を取り除くことで、全固体電池はより安全で、エネルギー密度もはるかに優れているとSolid Powerは話す。同社は6月15日の投資家向け説明会で、同社のバッテリーが1回のフル充電で航続距離500マイル(約805km)を提供でき、寿命は従来のバッテリーの8年の2倍超となる見込みだと説明した。

Ford Motor CompanyとBMW AGはSolid Powerの出荷能力について強気の見通しを持っていることを明らかにしてきた。2社はSolid Powerの2021年5月の1億3000万ドル(約143億円)のシリーズBラウンドをリードし、試験的に生産される自動車規模のバッテリーを2022年初めに納品するという共同開発契約を結んだ。

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SPACとの合併は2021年第4四半期に完了する見込みだとSolid Powerは述べた。ニューヨーク証券取引所ではティッカーシンボル「SLDP」で取引される。

Solid Powerは、SPAC経由で上場する最新のバッテリー会社だ。主要ライバルの1社はVolkswagenが出資するQuantumScapeで、同社は2020年9月にSPAC合併経由で上場し、企業価値33億ドル(約3631億円)とした。2021年初めには欧州のバッテリーメーカーFREYRとパワーシステムデベロッパーのMicrovastもいわゆる「白紙小切手」会社との合併を発表した

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

KiaとUberが提携し欧州20マーケットのドライバーにEV車両を割引価格で提供

Kia(起亜自動車)のe-Niroとe-Soulの購入、リース、ローン、レンタルにかかる特別ディールを欧州の20マーケットに住むUberドライバーに提供するためにUber(ウーバー)とKia Europeがタイアップする。配車サービス大手Uberの二酸化炭素排出抑制の目標達成に向けた最新の取り組みだ。

Uberは2030年までに欧州全体でゼロエミッションモビリティプラットフォームになることに注力していて、同年までにドライバー3万人にKiaのBEV車両に乗り換えて欲しいと考えている。KiaはUberがドライバーに電気自動車の割引価格を提供する取り組みに加わる最新の自動車メーカーとなる。2021年5月にUberは、配車サービスドライバー向け専用電気自動車の生産でEVメーカーArrivalとの提携を発表した。そして2020年9月にはUberはカナダと米国のドライバーに全電動Chevrolet Boltを割引価格で提供すべくGM(ゼネラル・モーターズ)と提携した

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欧州連合が最近制定した法律は、2030年までに二酸化炭素排出量を1990年代に比べて少なくとも55%削減することを目指している。UberのKiaとの提携は、欧州で二酸化炭素排出に関する規制がますます厳しくなることを予想してのことだ。規制に対応するためにUberはまた、2025年までに欧州のプラットフォームでEV10万台超を所有し、アムステルダム、ベルリン、ブリュッセル、リスボン、ロンドン、マドリッド、パリでの走行の半分をゼロエミッション車によるものにすることを目指している。

Kiaは2026年までに11種のEVモデルを発売する準備を進めていて、自社のBEV普及のために今回の提携を活用したいと考えている。e-Niroクロスオーバーは航続距離239マイル(約384km)で、DC急速充電を使えば54分でリチウムイオンバッテリーの80%を充電できる。可愛らしい小型デザインのサブコンパクトクロスオーバーe-Soulの航続距離は243マイル(約391km)だ。

しかし割引があっても、Uberのロンドン拠点ドライバーがEVを購入できるポータルのPartnerPointで提供されているKiaモデルはまだかなり高価だ。Kiaが提供している割引幅は8%で、一方日産の割引幅は13%、Hyundai(現代自動車)は22%だ。Kiaの割引後の車両価格は2万9877.40ポンド(約463万円)〜3万6471.40ポンド(約565万円)で、これはロンドンのドライバーの年間給与とほぼ同額だ。

にもかかわらず、ドライバーはこの割引と、5%のローン利子やClean Air Feeなどその他のインセンティブを活用しているようだ。Clean Air FeeはEVのコストにあてるために1回の乗車あたり3ペンスを集めるというもので、Uberによるとドライバーは年平均3000ポンド(約46万円)を節約できる。

2019年にClean Air Planが導入されて以来、ロンドンでは完全電気自動車の乗車が350万回以上あった。ロンドンのプラットフォームに加わる新しい車の50%ほどが今では完全EVで、広域マーケットではこの数字は8%だ。過去1年でUberプラットフォーム上のEV台数は700台から2100台に増えた。同社は2021年末までにさらに倍増させたいと考えている。

今回の発表ではUberはまた、乗客が排気ガスの少ない車両の配車をリクエストでき、一方でドライバーがそうした乗車にかかるサービス料金の15%割引を受けられるUber Greenという取り組みを2021年末までに欧州60都市に拡大する計画だと述べた。このサービスは現在、ロンドンのゾーン1内から乗車する客にのみ提供されているが、今こそドライバーがプラットフォームを通じて安い維持費とさらなる潜在的な収入を手にするときだとUberは話す。

欧州のUberドライバーはドライバーアプリ、ダイレクトメール、ドライバー向けウェビナーでEVについての情報を収集できる、と同社は述べた。車両の価格はドライバーのローケーションによって異なることはない。

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

ジャガー・ランドローバーがディフェンダーベースの水素燃料電池EVを開発へ

Jaguar Land Rover(JLR、ジャガー・ランドローバー)は、新型SUVであるDefender(ディフェンダー)をベースにした水素燃料電池車の開発を進めており、2022年にはプロトタイプのテストを開始する予定だ。

Project Zeus(プロジェクト・ゼウス)という名のこのプロトタイプ計画は、2036年までにエグゾーストパイプからの排出ガスをゼロにするというJLRの大きな目標の一部だ。またJLRは、2039年までにサプライチェーン、製品、事業全体での炭素排出量をゼロにすることを約束している。

Project Zeusは、英国政府が出資するAdvanced Propulsion Center(英国の低排出技術推進機構)からも一部資金提供を受けている。また、AVL、Delta Motorsport(デルタ・モータースポーツ)、Marelli Automotive Systems(マレリ・オートモーティブ・システム)、UK Battery Industrialization Center(UKバッテリー・インダストリアライゼーション・センター)とも協力して、プロトタイプの開発を進めている。このテストプログラムは、ランドローバーの顧客が期待する性能や能力(牽引やオフロードなど)を満たす水素パワートレインを、どうすれば開発することができるかを技術者が検討できるようにすることを目的としている。

燃料電池は、水素と酸素を組み合わせて、燃焼することなく電気を作ることができる。この水素から発生した電気は、電気モーターの電力として使われる。一部の自動車メーカーや研究者、政策担当者たちは、水素を燃料とするFCEV(燃料電池車)は、短時間で燃料を補給でき、エネルギー密度が高く、寒冷時にも航続距離が短くならないという特徴から、この技術を支持している。この組み合わせが実現するのは、より長い距離を移動できるEV(電気自動車)だ。

FCEVとも呼ばれる燃料電池車は、燃料補給所(水素ステーション)が少ないこともあり、現在はほとんど市場に出回っていない。トヨタのMIRAI(ミライ)はその少ない例の1つだ。

だが国際エネルギー機関(IEA)のデータや自動車メーカーたちの最近の取り組みを見ると、この状況は変わりつつあるのかもしれない。2021年5月、BMWのOliver Zipse(オリバー・ジプシー)会長は、2022年には水素燃料電池を搭載したX5 SUVを少数生産する予定であると述べている。

世界のFCEVの台数は、2019年には前年の約2倍となる2万5210台になったことがIEAの最新データで明らかになった。2019年には落ち込みがあったものの、販売台数では米国がずっとトップで、それに中国、日本、韓国が続いている。

日本は、2025年までに20万台のFCEVを路上で走らせることを目標としており、インフラ面でもリードしている。日本は2019年の時点で113カ所の水素ステーションを設置しており、これは米国の約2倍の数だ。

ジャガー・ランドローバーの水素・燃料電池部門責任者のRalph Clague(ラルフ・クラグ)氏は、声明の中で次のように述べている「私たちは、水素が輸送業界全体の将来のパワートレイン構成において、果たすべき役割を知っています。また、バッテリー式電気自動車とともに、ジャガー・ランドローバーのワールドクラスの車両ラインアップにふさわしい能力と要件を備えた、エグゾーストパイプ排出ゼロのソリューションを提供していきます」。

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:sako)

電脳交通の配車システムをてだこモビリティサービスが採用、乗合機能でワクチン接種者の無料移動サービスを運行管理

てだこモビリティサービスは6月14日、電脳交通の配車システムを導入し、乗合機能を活用した医療機関へのワクチン接種者移動サービスの運行管理を開始したと発表した。

沖縄県浦添市では5月8日以降、デマンド型コミュニティバス「うらちゃんmini」を利用して新型コロナウイルスワクチンの接種会場まで接種者を無料で移送するサービスを提供していたが、準備期間の短さと従来の運行形態との違いから運行管理がアナログ管理となっていたという。業務負担が大きいだけでなく、現場ドライバーへの指示においてもヒューマンエラー発生確率の高さが課題となっていた。

また、ワクチン接種のための乗合サービスは別々の場所で接種者が乗車し、複数の医療機関へ移動する必要があるためルート設計が複雑になり、運行管理の観点においても課題があった。

今回採用された電脳交通のクラウド型タクシー配車システムは、乗車依頼を受けたオペレーターがシステム上でワクチン接種者の乗車位置と乗車順を設定するだけで、ドライバーの端末に順序およびルートが送られる。これで配車指示とサービス提供にかかる設定や手間が飛躍的に軽減され、業務効率および移動効率の大幅改善が見込まれるとしている。

電脳交通の近藤洋祐代表取締役社長は今回のサービス開始に関して、「これからも有事の際に地域交通が必要とするシステム・サービスを提供できる企業として、全国のタクシー事業者さまの要望を実現できるよう取り組んでまいります」と述べている。

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タグ:新型コロナウイルス(用語)電脳交通(企業)配車サービス / ライドシェア(用語)タクシーワクチン(用語)日本(国・地域)

Lucid Motorsがオール電化セダン「Air」の全テクノロジーを披露、主要音声アシスタントはAmazon Alexa

Lucid Motors(ルシード・モータース)がオール電化セダンAirの最終バージョンを発表してから8カ月、同社はついにその車載テクノロジーの詳細を明らかにした。曲線を描く34インチディスプレイ、セカンドタッチスクリーンから、基盤となるソフトウェア、統合アプリ、そしてAmazon Alexa音声アシスタントに至るまで、同社が2021年後半に納車を開始すれば、ドライバーや同乗者はそれらを利用できるようになる。

同社のブランド名を冠したLucid User Experience(Lucid UX)が目指すところは、顧客が求めるテクノロジーを、複雑さや煩雑さを増すことなく、8万ドル(約878万円)から16万9000ドル(約1854万円)の価格帯のクルマに搭載することだ。

「使いやすさ、学習曲線の短さという確固とした原則を基盤にして、迅速なレスポンスと全体的なエレガントさを追求しました」とLucidの設計責任者Derek Jenkins(デレク・ジェンキンス)氏は最近のインタビューで語っている。「過度に技術的であったり、サイエンスフィクション的であったり、あるいはスプレッドシート風であることから離れて、当社のブランドやデザイン精神に一層適合するものへと真の意味で移行したいという気持ちがありました」。

その内装は、Tesla(テスラ)のModel 3やModel Yほどシンプルではないし、ドイツの高級車のようにぎっしり詰まった感じでもない。ジェンキンス氏とそのチームは、ゴルディロックスが選んだお粥のボウルのような「ちょうどいい」テクノロジーを意識した。

「プロジェクト初期に、私はいつもチームにこう伝えていました。『母親にこのクルマに乗ってもらうことを想定して、このクルマでまず実現することを見いだしたいと思っている』」とジェンキンス氏は続けた。「母親は、ライトのスイッチとドアのロックが左側にあることを直感的に認識できると思います。なぜならそれらは常にその場所にあるからであり、そのようなものを掘り下げる必要はありません。あるいは、母親であれば空調はおそらくスクリーン下部にあるだろうと考えるでしょう。大抵そのあたりにあり、伝統的な配置だからです。直感的でシンプルなものにすべきという思いを純粋に抱きながら、印象的な機能や進化するシステムの装備を考慮していきました」。

画像クレジット:Lucid Motors

ハードウェア

「ガラス製コックピット」と称される湾曲形状の34インチ5Kディスプレイは、ダッシュボードの少し上に設置されている。車内で最も視認性の高いハードウェアだが、特筆すべき要素はそれだけではない。Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)が56インチのハイパースクリーンに採用した技術を使用して、1枚のガラスプレートの下に3つのディスプレイを搭載。左端にあるのはタッチスクリーンで、Lucidはここにウィンドウのデフロスター、照明、ワイパー設定など、最も重要な車両コントロールを配備している。

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中央のディスプレイには、速度とバッテリー残量を表示するインストルメントクラスターが配されている。インストルメントクラスターの右側にはウィジェット機能が実装されており、ナビゲーションや音楽の再生など、ユーザーに応じてさまざまな情報を表示可能だ。インストルメントクラスターは、先進運転支援システムが作動しているかどうかをドライバーが確認する場所でもある。

ハンドルに向かって右側に、Lucidが「ホームスクリーン」と呼ぶタッチディスプレイが位置している。ナビゲーション、メディア、通信機能がここに搭載されている。

中央コンソールエリアには、Lucidが「パイロットパネル」と名づけた別の湾曲スクリーンがあり、そこにはクライメートコントロール、マッサージ機能を含む座席機能、その他の車両設定が映し出されている。ホームスクリーンにあるメニューを下のパイロットパネルにスワイプすると、音楽やナビゲーションの詳細なコントロールを表示することができる。また、ドライバーが追加的なタッチスクリーンを望まない場合は、パイロットパネルを格納して、その背後にあるストレージスペースを利用することも可能だ。

なお、アナログスイッチは、ドアとハンドル、そしてパイロットパネルと上部ホームスクリーンの間のスペースという3つの領域で車内に残されている。ドアに付いているのはウィンドウスイッチと内部ドアラッチだ。センターコンソールのディスプレイの真上には4つの物理的なボタンがあり、エアコンの温度や風量を設定できる。

画像クレジット:Lucid Motors

ハンドルにはタッチバーと2つのトグルがある。これらのボタンを使って、Alexa音声アシスタントの起動、先進運転支援機能のオン / オフの切り替え、クルーズコントロールによる追従走行の設定、ボリュームの制御などが行える。

「物理的なボタンやタッチスクリーン上でのデジタル操作といったアナログ操作に関する議論を通して、数多くの研究を重ねました」とジェンキンス氏。「その結果、人々がまだ物理的な操作を望んでいる重要な機能があることがわかりました」。

車両には32個のセンサーも搭載されており、その中には、車両の外側にあるノーズブレードの真下に位置する単一のLiDARも含まれている。その下に低めのエアインテークと前向きのレーダーが設置され、他のレーダーセンサーは外側のコーナーに配置されている。バックミラーの後ろのノーズとヘッダ部分には、外部カメラも装備されている。

車内には、インストルメントクラスターの下部に、ドライバーの方を向いたカメラが内蔵されている。このカメラはドライバーモニタリングシステムの一部で、先進運転支援システムが作動しているときに、ドライバーが注意を払っていることを確認するためのものだ。

他に特筆すべきハードウェアとして、Dolby Atmos(ドルビーアトモス)の21個のスピーカーで構成されるサラウンドサウンドシステムと、エアベントが醸し出すビンテージ風(そしてミアータ風)のディテールが挙げられる。Lucidは、ユーザーがデジタルタッチスクリーンを使って空気の流れの方向を変えるTesla Model 3とは異なり、人が触れて動かすことのできる物理的なエアベントをAirに持たせたいと考えた。しかしLucidは、チクレットスタイルのデザインで、空気の流れをオン/オフするためのサイドタブを追加した大きなエアベントは望まなかった。

解決策は、中央に丸いダイヤルが1つあるスリムダウンされたエアベントだった。ダイヤルをつまんで動かすことで空気の流れを変えることができる。また、特定のベントへの空気を遮断するための開閉も可能となっている。

「これは私たちには画期的なことでした」とジェンキンス氏は笑みを浮かべて語った。「60年代、70年代の車では極めてよく見られたことなので、画期的とは言えないかもしれませんね」。

ソフトウェア

物理的なタッチスクリーンやセンサーの裏側には、機能やサービスを提供するソフトウェアがある。

Lucidは、オープンソースのAndroid Automotiveオペレーティングシステムからスタートし、そこでアプリやその他の機能を構築した。Android Automotive OSは、Linux上で動くGoogleのオープンソースのモバイルオペレーティングシステムAndroidをモデルにしている。Googleはしばらく前から、このOSのオープンソース版を自動車メーカーに提供してきた。近年、自動車メーカーはGoogleと協力して、GoogleアシスタントやGoogleマップ、Google Playストアなど、Googleのすべてのアプリやサービスに組み込まれたAndroid OSをネイティブに構築している。Lucidは、Googleサービスプラットフォームのルートを辿ることはなかった。

Lucidはその後、各種のサードパーティーアプリをインフォテインメントシステムに統合した。そのリストには、現時点でiHeartRadio、TuneIn、Pocket Casts、Dolby Atmos、Tidal、Spotifyが名を連ねている。

Lucidはまた、デフォルトの統合音声制御システムとしてAlexaを採用。さらにLucid Airには、Android AutoとApple CarPlayの付属も予定されている。ユーザーのスマートフォン上で動作し、車のインフォテインメントシステムと無線通信するアプリだ。つまり、ドライバーはこれらのアプリでGoogleアシスタントやSiriにアクセスできる。ただし温度調整などの車両機能は制御できない。

加えて、モバイルとWi-Fi接続が統合され、ソフトウェアをワイヤレスでアップデートできる。Lucidはこの無線アップデート機能を通じて、新しいアプリやサービスを追加していくことが可能になる。

今後の展望

ジェンキンス氏によると、同社はすでに、駐車中にのみアクセスできるゲームやビデオストリーミングなど、さらなるコンテンツをインフォテインメントシステムに追加することを視野に入れているという。

Lucidの設計チームはさらに、Airの将来のモデルイヤーに向けて、リアエンターテインメントディスプレイなどのハードウェアベースの追加も検討している。

「おそらく2023年頃には、それを目にすることになるでしょう」とジェンキンス氏は語ってくれた。「リアシートはすばらしい空間ですから、この取り組みはとりわけ意味のあることだと考えています」。

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Dragonfly)

電動ロボタクシーでモビリティの革命を目指すMate Rimac氏がTechCrunch Sessionで語る

クロアチアでで電動ハイパーカーとその構成部位を開発しているRimac Automobiliの創業者でCEOのMate Rimac氏が、3年近く前に電動ロボタクシーの企業を立ち上げた。

まだステルスで操業しているその企業について情報は乏しい。今週はRimac氏がTechCrunchのTC Sessions: Mobility 2021で、お見せできるものが揃うまではその別企業を隠しておきたい、と述べた。

Rimac氏は、その電動ロボタクシー企業について、やや詳細を語った。それによると、会社のオフィスはクロアチアとイギリスにあって、さらにそれ以外の国に置くこともありうる。同社はグローバル企業を目指していて、今作っている製品は来年早くにお目見えできる。

Rimac氏はインタビューでこう述べた: 「なぜステルスを維持するかというと、この業界には熱気が満ちているからだ。PowerPointのプレゼンしかない企業がたくさんあって、でっかいものを発表するけど、何も出てこないこともある。そんな企業にはなりたくないから、まず実際に大量の仕事をしたい。そして、約束は少なく、お届けは多めに、で行きたい」。

その企業の存在さえ知らない人がほとんどだったが、地元紙がクロアチア運輸省への提出文書をすっぱ抜いてから情勢がやや変わった。その文書は、電動自律車を利用する都市部のモビリティエコシステムのプロジェクトを提案していた。その文書が見つかったのは不運だったとRimac氏は言いつつ、自分の仕事はもっと正しく公表したい、と言った。

「人びとはうちをハイパーカーの企業だと思っている」、とRimac氏は言うが、それは同社が大資産家の個人を対象にしていると見られている、という意味だ。実際にRimac Automobiliが披露した同社のConcept 2の製品バージョンは、Neveraと命名され244万ドルの値札が付いている。Rimac氏はこう語る: 「今は長期的な視野に立ってとても多くのことに取り組んでいる。私の考えでは、モビリティが新しくなれば社会が変わるだろう。たとえばスマートフォンは、電話業界だけを変えたわけではない。AppleはNokiaをディスラプトしただけでなく、私たちの生活を変えた。私たちがつかむ次の大きな変化は、きっとモビリティだろう」。

Rimac氏は、センサーや車の設計など、自動運転システムの細部については寡黙だ。

「全体像を見ずに個々の構成要素を重視している人がとても多い。たとえば、自動運転のシステムだけ、とか。でも差別化要因になるのは、そういう個々の構成部位ではないと私は思う。自律的モビリティのエコシステムの中にこそ、もっと別の差別化要因がある、と私は信じている」。

その後Rimac氏は、ロボタクシーのユーザー体験が彼が注力しているひとつの分野であり、他社が開発しているものとは異なるものになる、と付け加えた。

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hiroshi Iwatani)
画像クレジット: Rimac Automobili

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Waymoが米テキサスで自動運転トラックのテストを物流大手J.B. Huntと共同実施へ

Waymo(ウェイモ)は、輸送・ロジティクスの主要顧客であるJ.B. Hunt Transport Servicesのために貨物を運搬する計画だ。2社がいう「テストラン」が米国で最も交通量が多い商業回廊で実施される。

Waymoのトラッキングと貨物輸送サービスWaymo Viaが州間高速道路45号線を使ってテキサス州のヒューストンとフォートワース間で荷物を輸送する。トラックはWaymo Driver自動走行プラットフォームで動くが、Waymoの「自動走行スペシャリスト」、ライセンスを持つトラックドライバー、そしてソフトウェア技術者がオペレーションをモニターするために各トラックに乗り込む。

J.B. Huntと、Alphabet傘下のWaymoが協業するのは今回が初めてではない。両社はここしばらく自動走行トラックの試験展開のために準備してきたようだ。

「我々はここしばらくオペレーションとマーケット調査でJ.B. Huntと緊密に連携を取っていて、自動走行テクノロジーを展開するために今後も協業を続けます」とWaymoはブログへの投稿で述べた。「長期の準備に備えて、通常のメンテナンスのための最善のプラクティス、今後の施設レイアウトがどのようなものか、どのレーンが自動走行テクノロジーに最適かなどを探ります」。

Waymoはこのテストランで何台のトラックを使用するのかTechCrunchと情報を共有するのは却下したが、広報担当は「どのように協業できるか、共同で長期計画を立てるという目標を持った」期間限定のパイロットとなる、と話した。

Waymo Driverはレベル4プラットフォームであり、理論的に人間のセーフティドライバーが運転席に乗り込まなくても走行できるが、それは(天候がいいなど)特定の条件下に限定される。

WaymoはDaimlerトラックにWaymo Driverを搭載するためにDaimler Trucksとも提携した。この他に電動ロボタクシーの開発でVolvoと、自動貨物バンの開発でFiat Chrysler Automobilesとも提携している。

関連記事:Waymoとボルボが電気ロボタクシー開発で「独占」提携

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タグ:Waymoロジスティクステキサス自動運転トラックJ.B. Hunt

画像クレジット:Waymo

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

2人乗りの自律型デモ航空機「Maker」をArcher Aviationが公開、商業運航への「足がかり」に

Archer Aviation(アーチャー・アビエーション)は「Maker」(メーカー)と名づけられた自律型電動2人乗り航空機を米国時間6月10日に発表した。同社は同機を、2020年3月に発表済の、より大型の操縦士付き5人乗り航空機の認証取得に向けたテストに使用する予定だ。

6月10日に発表された航空機は、2024年に商業運転を開始した際に空を飛ぶものではない。だがArcherの認証責任者Eric Wright(エリック・ライト)氏は、TechCrunchに対して、自律型航空機から始めることでより効率的にテストプロセスを進めることができると語っている。

ライト氏は「2人乗りのMakerは、認証取得への足がかりとなるものです」と説明する。そして「これは飛行制御システムや電気推進装置など、私たちが認証を受ける航空機に搭載するものについての知識や認識を深めるためのテストベッドです。同時に私たちの試験を通して米連邦航空局(FAA)によるその設計への信頼を深めることができるようにするためのものでもあるのです。もちろん、FAAもその開発を見守ることになります」と述べている。

Makerと、まだ名前の決まっていない5人乗り航空機は、どちらも全部で12個のローターを持ち、そのうち前部6個のローターが傾く「ティルトローター」を採用しているという仕様上の共通点を持つ。このティルト機構により、航空機はヘリコプターのように垂直に上昇し、飛行機のように前進することができる。

両機はまた、それぞれ安全のために6つの独立したバッテリーパックを搭載しており、1つのバッテリーが故障しても残りのバッテリーが作動するようになっている。このバッテリーにより、両機は時速150マイル(時速約241.4km)で60マイル(約96.5km)の航続距離を実現している。2人乗り機は、翼幅が40フィート(約12.2m)で、重量は約3300ポンド(約1498.2kg)だが、より大きな機体ではもっと重くなるだろうとライト氏はいう。

画像クレジット:Archer

パロアルトに本社を置くArcherは、Makerが2000フィート(約608m)の上空から発する音は、わずか45dBだと予想している。この騒音仕様は、エアタクシーへの展開を目指している電動垂直離着陸機(eVTOL)メーカーにとって特に重要なものだ。一般の人々や規制当局に、同機の大量導入が受け入れられる可能性が出るのは、航空機が十分な静粛性を備えている場合に限られる。

Archerは、United(ユナイテッド)航空から10億ドル(約1096億円)の受注を獲得したと発表した後、2人乗り機の高品質なレンダリング画像を公開するなど、ここ数カ月の間にMakerに関する情報を少しずつ提供してきた(なお、このレンダリング画像の公開によって、ライバルのeVTOL開発会社であるWisk Aero [ウィスク・エアロ]から企業秘密の流用を主張する訴訟が起こされた)。米国時間6月10日のイベントは、38億ドル(約4167億円)の評価を受けている同スタートアップが、実際の航空機を一般に公開する初めての機会となった。

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このデビュー機が自律型である理由を聞かれたライト氏は、そのことでテストや検証のプロセスをより効率的に進めることができるからだと答えた。ライト氏は「航空機を自律的に動かすことで、航空機のパイロットが実際に操縦する必要なしに、より迅速に物事を進めることができます」という。「そうすることで、入力に対する機体の反応を、自律的な観点から、より早くより効率的に見ることができるのです」。

自律型エアタクシーが都市部で人々を運ぶようになるのはまだ先のことかも知れないが、Archerは他のeVTOL開発企業と同様に、長期的な青写真の中で、自律型エアタクシーを単に大型機の認証プロセスを促進するものではなく、運用可能な航空機として捉えているのだ。

ArcherのCEOであるBrett Adcock(ブレット・アドコック)氏は、別のインタビューの中で次のように述べている「輸送の世界に本当に大きな影響を与えようとするなら、長期的には、操縦士を使った方法でそれを実現することは本当に難しいと思っています。航空業界に入り、認証を受け、それをすぐにでも実現するという意味では、操縦士を使うやり方は確かに正しい方法だと思います。そして将来的には、乗客とネットワークの両方の安全性を高めるために、自律的な航空業界への移行が重要になってくると思っています。だから、業界がうまくスケールして大きくなるためには、ある程度の自律化は避けられないと思っています」。

創業3年目のこの企業は、2024年にロサンゼルスとマイアミを皮切りに商用運行を開始することを目指している。同社のシステムシミュレーションチームは、VTOL機離着陸場をどこに配置するかを決めるために、Prime Radiant(プライムラディアント)という名のシミュレーションツールを使っている。同チームを率いているのは、2020年12月にJoby Aviation(ジョビー・アビエーション)に売却された、Uber(ウーバー)のエアモビリティ部門Uber Elevate(ウーバー・エレベート)の、元データサイエンス責任者だ。

関連記事:2024年までにLAでの都市型エアタクシー導入を目指すArcher Aviation

またアドコック氏は、エアタクシーのルートを考える際には必ず必要となる、ファーストマイルとラストマイルの車での移動を統合するために、ライドシェア会社との間で話し合いを進めているのだという。

同社の共同創業者であるGoldstein(ゴールドスタイン)氏は、2024年のローンチ予定に先立ち、パートナーである自動車メーカーのStellantis(ステランティス)と2つの施設についての作業を進めていると語った。1つは従来の航空産業のように年間数百機を提供する施設で、もう1つは将来的にさらに大量の航空機を製造する施設だ。

Archerには、自動車メーカーと同様の製造上のニーズがあるとゴールドスタイン氏はいう「多くの部品に軽量のカーボンファイバーを使用し、自動車と同様に電気モーターやバッテリーを使用するのです」。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Archer Aviatio自律飛行eVTOLエアタクシー

画像クレジット:Archer

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:sako)

テスラが超高速モデル「Model S Plaid」の発売イベントを開催

Tesla(テスラ)はついに、待ちに待った、そして一度は予定を変更した、超高速モデル「Model S Plaid(モデルSプレイド)」の発売イベントを、カリフォルニア州フレモントの工場で開催した。同社CEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏は「金曜日の夜に25台の納車から開始して、その後は週に数百台の規模へと拡大していき、次の四半期には週に1000台に達する予定」と、このイベントで語った。

このModel Sの最新仕様に大きなサプライズはなかった。新設計のバッテリーパック、改良されたヒートポンプ、そしてモーターにカーボンで覆われたローターを採用し、空気抵抗係数は0.208という新記録を達成した。この数値は、おそらく新進気鋭のEVメーカーであるLucid Motors(ルーシッド・モーターズ)を揶揄することになるだろうと、マスク氏は強調した。2021年末に生産開始が予定されているLucid Air(ルーシッド・エア)の空気抵抗係数は0.21だ。

Tesla Model SのデザイナーであるFranz von Holzhausen(フランツ・フォン・ホルツハウゼン)は「いくつかの記録を破る」ための準備として、ハンマーを振り回しながらイベントを開始。そして、ダブステップの心地よいサウンドに合わせて、黒く輝くモデルSでテストコースを走り、ステージに滑り込んできたマスク氏を紹介した。

「このフレモントで最初に製造されたModel Sを納車してから9年が経ちました。ほぼ10年目となる今、私たちはPlaidでまったく新しいレベルに到達したと思います」と、マスク氏は会場に集まった多くのファンに向けて語った。「ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、私たちの商品企画は映画『スペースボール』から取ったもので、星が格子状(plaid)に見えるほどの高速という意味です。なぜこのように馬鹿げたほど速いクルマを作るのか。それは持続可能なエネルギーの未来にとって、非常に重要な意味があると、私は考えているからです。電気自動車が、間違いなく最高のクルマであると、示す必要があるということです。持続可能なエネルギーのクルマは、最速のクルマであり、最も安全なクルマであり、あらゆる面で最も優れたクルマになる、ということを明確にする必要があるのです」。

この4ドアセダンの電気自動車は、0-60mph(約96km/h)を1.99秒で加速する。マスク氏によれば、これまで市販車が破れなかった2秒の壁を初めて破ったという。最高出力は1020馬力。最高速度は(適切なタイヤを装着した場合)時速200マイル(322km/h)に達する。そして1/4マイル(約400m)を9.23秒で走り切ることができると、マスク氏と同社のウェブサイトは述べている。バッテリーは1回の充電で390マイル(約628km)の距離を走行可能だが、デュアルモーター構成では412マイル(約663km)まで伸びると、マスク氏は付け加えている(Model S Plaidは3モーターを搭載)。急速充電の速度が向上したことにより、わずか15分の充電で187マイル(約300km)の距離を走ることができるという。

この新型Model Sには新しいバッテリーパックも搭載されているが、マスク氏はその詳細については語らなかった。モーターのローターにカーボンスリーブを採用したことについては、かなりの時間を割いて説明した。カーボンスリーブローターは、その難しさから量産型の電気モーターに採用されたのは初めてのことだとマスク氏は主張する。その結果、モーターの最大回転数は20000rpmに達した。

Plaidの空調システムを動かす新型ヒートポンプは、寒冷地における航続距離を30%向上させ、キャビンの暖房や凍結を溶かすために必要なエネルギーが50%少なくて済むため、寒冷地でのバッテリー劣化を抑えられると、マスク氏はいう。

画像クレジット:Tesla(スクリーンショット)

Model Sのインテリアにもいくつかのアップデートが施された。米国運輸省道路交通安全局も注目する大胆な操縦桿型ステアリングホイールや、横型になった17インチ「シネマティック・ディスプレイ」、ベンチレーション機能内蔵フロントシートなど、すでに明らかになっていたものもある。GPUはPlayStation 5(プレイステーション5)レベルらしい。TechCrunchは、このイベント中に、車内でCD Projekt Red(CDプロジェクトレッド)の「Cyberpunk 2077(サイバーパンク2077)」をプレイしている人がいたことに気づいた。

このクルマのソフトウェアは、ドライバーの行動から学習し、ドライバーのニーズに適応するように設計されている。例えば、自宅の車庫から公道までドライブウェイをバックで出ることが多い人の場合、クルマはその場所をジオコーディングし、 Autopilot(オートパイロット)システムがドライバーに代わって自動的にその動作を行うようになる。

「クルマがあなたの心を読み、あなたの必要な操作は最小限で済むようになります」と、マスク氏は述べている。

12万9990ドル(約1420万円、日本での価格は1599万9000円)からという価格で販売されるModel S Plaidの最初の納車は、その性能をさらに引き上げた「Model S Plaid+(モデルSプレイドプラス)」の生産取り止めをマスク氏が正式発表したのと同じ週に行われた。テスラが5月に自社ウェブサイトで予約受付を中止したことで、Plaind+の発売は中止されたのではないかと憶測されていた。

関連記事:マスク氏がTesla Model S Plaid+発売に対し正式にブレーキ

「今週、Model Sはプレイド速度へ」と、米国時間6月6日にツイートしたマスク氏は「Plaid+はキャンセルされました。必要ありません。Plaidのスピードがあまりにも速いので」と続けた。

マスク氏はこのクルマの運転感覚が「言葉では表現できない大脳辺縁系の共鳴」のせいで宇宙船に似ているとツイートしているが、それがどういう意味なのかはわからない。

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タグ:TeslaModel SEVElon Musk

画像クレジット:Screenshot/Tesla

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

「アップルカー」実現に向け前進、BMW i3やi8の開発を指揮した新興EV企業Canoo元CEOがアップルに

Apple(アップル)は「Apple Car(アップルカー)」の呼称で噂されている自動車プロジェクトの開発を促進させるため、電気自動車会社Canoo(カヌー)の共同創業者で元CEOだったUlrich Kranz(ウルリッヒ・クランツ)氏を雇用したと、Bloombergが無名の情報源を引用して最初に報じた。TechCrunchがアップルに確認したところ、同社はクランツ氏の雇用を認めたが、職務内容や肩書きなどの詳細は明らかにしていない。

Canooが上場と新たなリーダーシップチームの結成に向けて舵を切った後、2021年4月にクランツ氏は同社の役職を辞任。それから数週間のうちにクランツ氏はアップルに引き抜かれたと報じられていた。今回のニュースが伝えられる数カ月前には、アップルのTim Cook(ティム・クック)CEOが、謎に包まれたApple Carに、自動運転技術が主要機能として搭載されることを示唆している。自動車業界の最先端で数十年の経験を持つ幹部を雇用したことは、アップルが自動車の製造計画を進めていることを明確に示すものだ。

関連記事:ティム・クック氏が自動運転技術とApple Carについてヒントを出す

クランツ氏は、BMW AGの電気自動車部門で上級副社長を務めていた時に、スポーティな電気自動車「i3」と「i8」の開発を監督した。この経歴は、将来のApple Carにおける潜在的な美学について、我々にヒントを与えてくれるかもしれない。匿名の情報筋によれば、クランツ氏は、現在Apple Carプロジェクトの責任者を務めるDoug Field(ダグ・フィールド)氏の直属になるという。フィールド氏は、かつてTesla(テスラ)で「Model 3(モデル3)」の開発を指揮した人物だ。

アップルは依然として、その自動車の計画について口を閉ざしている。Reuters(ロイター)が12月に発表した記事によると、アップルは2024年までに「画期的なバッテリー技術」と「自動運転技術」を備えた電気自動車を生産する意向だという。それ以外には、どのようなクルマになるのか、どこが製造するのか、といったことは誰にもわからない。しかし、アップルがハードウェアとソフトウェアの両方を開発するだろうということは想像に難くない。

関連記事:「アップルカー」の噂が再燃、2024年発売を示す新たな報道

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タグ:AppleApple Car電気自動車自動運転

画像クレジット:Canoo

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

NVIDIAが高精度マップスタートアップのDeepMapを買収、自律走行車テクノロジーを強化

半導体メーカーNVIDIAが高精度マップスタートアップのDeepMapを買収すると発表した。NVIDIAは、DeepMapのマップ技術はNVIDIAの自律走行車テクノロジーであるNVIDIA Driveに活かされるとしている。

NVIDIAの自動車部門バイスプレジデントでジェネラルマネージャーのAli Kani(アリ・カニ)氏は発表の中で「DeepMapのユニークなビジョン、テクノロジー、人材を高く評価して買収することになりました。DeepMapは我々のマップ製品を拡張し、マップの運用をワールドワイドにスケールし、完全な自動運転に関する専門性を高めるものと期待しています」と述べた。

乗用車の完全な自動化を達成する上での最大の課題として、各地域への適合と現在の道路の状況を反映した地図情報の更新が挙げられる。NVIDIAの自律走行スタックにDeepMapのテクノロジーを統合することで、精度が上がって自動車が自分の位置を把握する性能が高くなる。

DeepMapの共同創業者でCEOのJames Wu(ジェームズ・ウー)氏は発表の中で「NVIDIAと協力することで我々のテクノロジーをさらに迅速にスケールし多くの方々に早く利用していただけるようになるでしょう。NVIDIAのチームの一員として我々のジャーニーを続けていくことを楽しみにしています」と述べた。

DeepMapはGoogle、Apple、Baiduに勤務していたウー氏とApple、Googleに勤務していたMark Wheeler(マーク・ウィーラー)氏によって設立された。DeepMapはNVIDIA Driveのソフトウェアデファインドプラットフォームを使って自律走行車全体に対してマップを迅速にスケールすることができ、Over the Airのアップデートでデータストレージをそれほどたくさん必要としない。NVIDIAは今後、連携の一環としてDeepMapの新しい機能にも投資していく。

買収は2021年第3四半期に完了する予定だ。

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タグ:NVIDIADeepMap買収地図自動運転

画像クレジット:DeepMap

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Kaori Koyama)

eVTOL企業Joby Aviationがアジアや欧州でも早期に事業開始を計画

電動垂直離着陸型旅客機のスタートアップ企業であるJoby Aviation(ジョビー・アビエーション)は、最初の商業展開を北米で開始することを目指しているが、同社創業者でCEOのJoeBen Bevirt(ジョーベン・ビバート)氏は、アジアや欧州でも早々に存在感を示すことができると期待している。

米国時間6月9日に開催された「TC Sessions:Mobility 2021(TCセッション:モビリティ2021)」に参加したビバート氏は、最初に商業活動を行う場所は明らかにしなかったが、最近の発表によればロサンゼルス、マイアミ、ニューヨーク、サンフランシスコ・ベイエリアに絞られているようだ。しかし、最初の都市がどこになるかについては慎重に言葉を選んだ。

「3つの地域にそれぞれ初期の市場を設定することになると思います」と、同氏は語った。「最初に事業を起ち上げる市場については、私たちのチームの多くが現在活動している地域に近いという理由から、北米になる予定です。しかし、すばらしい好機や都市は世界中にあります。私たちはできるだけ早く、多くの人々にサービスを提供したいと考えています。そのために、製造規模の拡大に力を入れているところです」。

Joby Aviationは、Toyota(トヨタ)の協力を得て設計された45万平方フィート(約4万1800平方メートル)の製造施設の建設を、2021年後半に始める予定だ。同社はすでに先行生産用の施設を完成させている。

かつては秘密主義的なスタートアップだったJobyは、この半年間に多くの衆目を集めてきた。2021年2月には、Reinvent Technology Partners(RTP)と合併することで同意に達したと発表。RTPは、
著名な投資家でLinkedIn(リンクトイン)の共同創業者であるReid Hoffman(リード・ホフマン)氏、Michael Thompson(マイケル・トンプソン)氏、Zynga(ジンガ)創業者のMark Pincus(マーク・ピンカス)氏によって設立された特別買収目的会社(SPAC)だ。ホフマン氏は、ビバート氏とともにTCセッション:モビリティ2021にも参加した。

SPACによる買収以前にも、Joby Aviationは長年にわたりeVTOLの開発で注目を集め、投資家を獲得してきた。トヨタは重要な支援者・パートナーとなり、2020年1月には6億2000万ドル(約679億円)の資金を調達したシリーズCラウンドを主導した。その約1年後、Jobyは複雑な取引の一環として、Uber(ウーバー)の空飛ぶタクシー事業であるElevate(エレベート)を買収している。

関連記事:Uberが空飛ぶタクシー事業ElevateをJoby Aviationに売却、最後の夢の事業から撤退

現在のJoby Aviationは、2018年から取り組んできた米国連邦航空局(FAA)の認証取得に加え、eVTOL(電動垂直離着陸機)の製造に注力しているところだ。同社はまた、どこでどのように運用するかというピースを組み合わせ始めている。従業員数も過去1年間で2倍に増やし、現在は約800人を雇用している。

Joby Aviationは2021年6月初め、まずはロサンゼルス、マイアミ、ニューヨーク、サンフランシスコ・ベイエリアを中心としたバーティポート(垂直離着陸用飛行場)のネットワークを構築するために、国内最大級の駐車場運営会社であるREEF Technology(リーフ・テクノロジー)および不動産買収会社のNeighborhood Property Group(ネイバーフード・プロパティ・グループ)と提携することを発表した。

2024年の運用初年度には、1〜2都市で事業展開することをビバート氏は想定している。

「私たちは、消費者のみなさまに変革をもたらす体験をお届けするために、十分な範囲のサービスを提供したいと考えています」と、ビバート氏はいう。「新しいサービスが開始されても十分な供給がないと、お客様は不満を抱くことがありますからね。私たちは、少なくとも需要の一部に確実に応え、お客様に本当に満足していただける体験を提供したいのです。私たちが企業として本当に大事にしている要素は、お客様を当社の熱狂的なファンにすることだと、私は考えています」。

関連記事:Joby Aviationが空飛ぶタクシー乗降場所として立体駐車場に注目

カテゴリー:モビリティ
タグ:Joby AviationeVTOLトヨタエアタクシー

画像クレジット:Joby Aviation

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ドイツのeVTOLメーカーのLiliumにハネウェルが飛行制御システムとアビオニクスを供給

ドイツの電動エアモビリティ企業であるLilium(リリウム)は、同社初のeVTOL(電動垂直離着陸機)である7人乗り「Lilium Jet(リリウム・ジェット)」の電子回路および機械システムの開発において、航空宇宙メーカーのHoneywell(ハネウェル)と提携すると発表した。

ハネウェルは、飛行におけるすべての可動部を制御するコンパクトなフライ・バイ・ワイヤ・システムと、航空電子機器のアビオニクスを、Lilium Jetに供給することになる。同じeVTOL企業であるVertical Aerospace(バーティカル・エアロスペース)の航空機にも、ハネウェルのコンパクト・フライ・バイ・ワイヤ・システムが採用されているが、Liliumが使用するアビオニクス・システムは、Lilium Jet特有の技術的要件に合わせて設計された専用バージョンになるという。

ハネウェルは航空宇宙製造業界の巨人であり、アーバン・エア・モビリティの専門チームをいち早く創設した企業の1つだ。また同社は、Liliumが特別買収目的会社のQell Acquisiton Corp.(ケル・アクイジション)と合併した際に発表された私募増資(PIPE)の募集に参加し、Liliumの投資家にもなっている。

両社は2019年2月から話し合いと協力を続けてきたと、Liliumのチーフプログラムオフィサーを務めるYves Yemsi(イヴ・イェムシ)氏はTechCrunchに語った。同氏によると、Liliumは内製に留めておきたいコアコンピタンス(例えば、推進システムやバッテリーシステムの設計と組み立て、航空機の最終組み立てなど)を特定し、航空機の他の部分に関しては経験豊富な社外のサプライヤーと提携するつもりだという。

「専門家や航空宇宙分野のパートナーと提携することは、当社にとって熟考した上での選択です」と、同氏はいう。「安全性を確保しながら、市場投入までの時間を短縮できます」。

このパートナーシップの大きな利点は、認証プロセスで大いに役立つことだと、イェムシ氏は説明する。ハネウェル製の部品の中には、FAA(米国連邦航空局)が認める最低性能基準であるTSO(Technical Standard Order)をすでに達成しているものがある。TSOに認定された部品を使用することで、認証プロセスの時間を短縮することができるというわけだ。

すでにLiliumでは、Design Production Approval(設計生産承認)とProduction Organization Approval(生産組織承認)の取得に向けてチームを編成している。これらは欧州連合航空安全局(EASA)が発行する2種類の承認で、基本的にその会社が製品を市場に投入できることを証明するものだ。これらの承認は、Liliumの航空機(と他のすべてのeVTOL)が商業運航を開始する前に、FAAとEASAの両方で取得しなければならない型式認証を補完する。

航空宇宙メーカーとして実績のあるハネウェルとの提携は、Liliumの計画を大きく前進させることになるだろう。イェムシ氏によれば、ハネウェルから部品の納入が始まると、次のステップはシステム構築研究施設を使って地上でアビオニクスや電子システムのテストを行い、航空機の開発とテストを進めていくことになるという。

「これから大変な仕事が始まるのです」と、イェムシ氏は語っている。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

自動運転Motional CEOが示唆する物流業界の自律的な未来

Aptiv(アプティブ)とHyundai(現代自動車)の40億ドル(約4379億円)規模の合弁会社であるMotional(モーショナル)が、自動運転トラックや物流への関与の可能性を探っていることを、同社のCEOが米国時間6月9日開催されたTechCrunch’s 2021 Mobility Eventのライブセッションで語った。

TechCrunchのトランスポーテーション担当編集者であるKirsten Korosec(カーステン・コロセック)が司会を行うパネルで、Motionalのビジネスモデルをトラック輸送に拡大する意図について質問されたKarl Iagnemma(カール・インヤマ)氏は「もちろん、同じコア技術が複数のユースケースに適用できることがすばらしいことなのです」という。「それは似ています。同じではありませんが、似ているのです。そのため、他のユースケースも積極的に検討しているところです。この分野では、さらなる活動を行う予定です。今日は特に発表することはありませんが、この先たくさん出てきますよ」。

もちろんMotionalは、たとえばロボットタクシーモデルのように、人間を運ぶための自動運転という難しい技術的問題を解決することが、最大の経済的チャンスになると考えているのだが、インヤマ氏は、人間を運ぶ場合でも小包を運ぶ場合でも、自動運転の核心には知覚、計画、意思決定、ローカリゼーションといった同じ難しい問題が横たわっていると認識している。

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配送・物流モデルの何が最も魅力的なのかという問に対して、インヤマ氏は「現在開発中のものに、技術的な観点から最も近い位置にある優れたビジネスチャンスを探しているのです」と答えた。「本当に、それに尽きると思っています。こうした異なるユースケースは、場合によって、その周りにあるビジネスケースが大きく異なるため、機会も大きく異なるのです。そのことは、社内での順位付けにも役立っています。何がおもしろいチャンスなのでしょう?そしてまた、現在の技術開発の道筋に沿う形で、言ってみれば最小の労力増加で最大の機会増加につながるようにしようとしているのです。それが、Motional社内での戦略指針のようなものです」。

セッションのもう1人のパネリストだった自動運転車企業Aurora(オーロラ)の共同創業者でCEOのChris Urmson(クリス・アームソン)氏は、配車サービスや乗客輸送業における自動運転技術は、長期的には変革をもたらすビジネスであると同時に、トラック輸送を凌駕するビジネスになると認めている。Auroraは現在、ロボットタクシーではなく、貨物輸送アプリケーションに注力している。理由はいくつか挙げられるが、今すぐにでもスケールアップできるからというのもその1つだ。

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「ロボットタクシー市場は発展に時間がかかりますが、貨物・トラック輸送の市場はすでに存在しています」とアームソン氏はいう。

両パネリストとも、自動運転の世界には「安直に手に入る果実」は存在しないという点で一致している。自動運転車全体の課題を解決することは難しいが、都市の道路網の変動を考慮する必要のないトラック輸送であれば、もう少し簡単に解決できるのではないかとアームソン氏は主張する。高速道路はほぼ均一な性質を持っているため、そこを走行するための自動運転システムを構築することはより容易なのだ。

「ですから、運用が規定された設計領域で技術を成功させるという最初の難関を突破できれば、技術の拡大から運用の拡大へと展開が進んでいきます」とアームソン氏はいう。「それは、従来のビジネスのようなものにより近いものに見えます。このように、事業と運営の規模を拡大し、収益源を確保しておくことで、そのコア技術を応用して配車ビジネスに参入し、その分野でも刺激的なビジネスを構築することができる余裕が生まれると考えています」。

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:sako)

新興EVメーカーFiskerは2027年までに気候変動に影響を与えないEVの製造を目指す

電気自動車メーカーのFisker Inc(フィスカー)は、2027年までに同社初のクライメイトニュートラルな(気候変動に影響を与えない)自動車を作り上げるというムーンショット目標を掲げている。

フィスカーはまだ実際にクルマを販売していない(クライメイトニュートラルであろうとなかろうと)ので、この目標は野心的と言える。「Fisker Ocean(フィスカー・オーシャン)」と名づけられた完全電気自動車のSUVは、2022年11月の生産開始を目指していまだ開発が続けられている途中にあるが、クライメイトニュートラルになるのはこのクルマではなく、Henrik Fisker(ヘンリック・フィスカー)CEOによれば、まだ発表されていない別のクルマになるという。同氏は米国時間6月8日、投資家向け報告の中でこの目標を明らかにした。

ヘンリック・フィスカー氏は、Aston Martin V8 Vantage(アストン マーティンV8ヴァンテージ)や、Aston Martin DB9(アストン マーティンDB9)、BMW Z8など、印象的なクルマのデザイナーとして有名になったシリアルアントレプレナーだ。同氏は投資家向けオンライン会見で、他にもいくつかの最新情報を提供した。フィスカー・オーシャンの航続距離は、これまで推定されていた300マイル(約483キロメートル)を超え、最大350マイル(約563キロメートル)になるという。株主に配布された年次報告書によると、オーシャンには3月の時点で1万4000件以上の予約が入っているとのことだ。

2020年10月に特別買収目的会社のApollo Global Management (アポロ・グローバル・マネジメント)との合併により29億ドル(約3170億円)の評価額で上場したフィスカーは、2025年までに4台の新型車を市場に投入することを目指している。そのうちの1台は、同社のFM29プラットフォーム・アーキテクチャーを採用した「UFO」と呼ばれる高級車になる可能性があると、フィスカーは火曜日に示唆した。

フィスカーのカーボンニュートラル計画

これまでさまざまな業界で多くの企業が、カーボンニュートラルの実現という公約を掲げてきた。ヘンリック・フィスカー氏は、そのクライメイトニュートラルという目標を達成するために、カーボンオフセットを購入するつもりはないことを、投資家に強調した。カーボンオフセットとは、企業がプロジェクトや製品でCO2削減を「主張」するために購入できるクレジットのことだ。代わりにフィスカーでは、サプライヤーと協力して、気候変動に影響を与えない材料や製造プロセスを開発すると述べている。

同社のウェブサイトでは、提案している戦略の一部が紹介されている。そこでは自動車のライフサイクルを「調達」「製造・組立」「物流」「使用段階」「廃車」という5つの段階に分け、それぞれの段階でいくつかのポイントを上げている。例えば「製造の現地化」とか「100%再生可能エネルギーの使用」などだ。しかし、このような計画を立てても、自動車生産においてクライメイトニュートラルを実現することは非常に難しい。例えば、自動車には脱炭素化が困難なことで知られる鉄鋼などの素材や部品が使われているからだ。

フィスカーによると、同社の製造パートナーはそれぞれにクライメイトニュートラルを目標として掲げており、それは自動車の受託生産会社であるMagna Steyr(マグナ・シュタイヤー)にも当てはまる。欧州でフィスカー・オーシャンを独占的に製造する契約を結んでいる同社は、欧州では2025年までに、グローバルでも2030年までにクライメイトニュートラルを実現する目標を立てている。また「Project PEAR(プロジェクト・ペアー)」と呼ばれるフィスカーが2番目に発売予定のより低価格なクルマで主要なパートナーとなるFoxconn(フォックスコン)も、今世紀半ばまでにゼロエミッションの実現を目指している。

このようなムーンショット目標は、製造プロセスの革新を促進し、他の自動車メーカーやサプライヤーが同じ目標を目指すことを助長する可能性がある。他の自動車メーカーのPolestar(ポールスター)やPorsche (ポルシェ)は、いずれも2030年を期限とするカーボンニュートラルを約束しており、Mercedes(メルセデス)はその目標を2039年に設定している。

フィスカーは、EV用バッテリーが使用できなくなった際のリサイクルや再利用の方法も考えているようだ。同社は推定15年とされる車両の寿命の全期間に渡るリースプログラムの拡張を計画しており、これが実際に導入されれば、理論上では、寿命を迎えた多くの車両をフィスカーが所有することになる。

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画像クレジット:Fisker

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

フォードがコンパクトな新型ハイブリッドピックアップ「マーベリック」発表、市街地燃費17km/Lで約220万円から

Ford(フォード)は米国時間6月8日、潜在需要を喚起するコンパクトな新型ハイブリッドピックアップトラック「Maverick(マーベリック)」を発表した。

新型マーベリックは、これまでのフォードのピックアップトラックよりも小さくて扱いやすいサイズで、価格は1万9995ドル(約219万円)から。SUVやトラックのあるライフスタイルを欲しながらも、狭い市街地における取り回しや駐車のしやすさを求めるエントリーレベルの顧客に向けたモデルとなっている。

間もなく発売される「F-150 Lightning(ライトニング)」のように完全な電気自動車トラックではないものの、マーベリックはフォードの電動化推進計画の一環だ。同社は先日、電動化のための投資額を、これまで予定していた「2023年までに220億ドル(約2兆4080億円)」から、「2025年までに300億ドル(約3兆2840億円)」に引き上げると発表していた。

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また、マーベリックには、フォードのバンダイク・エレクトリック・パワートレイン・センター(かつてのバンダイク・トランスミッション工場)で設計・開発・テスト・製造された電気モーターを初めて搭載するという特徴もある。

コンパクトなピックアップは、市街地での駐車も簡単(画像クレジット:Ford Motor Company)

電気モーターを組み合わせた2.5リッター直列4気筒アトキンソンサイクル・エンジンは、最高出力191馬力と155ポンド・フィート(約210Nm)を発生し、CVT(無段変速機)を介して前輪を駆動する。最大2000ポンド(約907キログラム)までの牽引が可能だが、これは現在市販されている大型の5輪キャンピングカーを運ぼうと考えている人にとって魅力的ではないかもしれない。しかし、市街地における燃費の目標値がEPA(米国環境保護庁)基準で40mpg(17km/L)ということであるから、フォードは他にこのクルマの購入者を見つけることができるだろう。また、マーベリックには2.0リッター直列4気筒ガソリンターボ「EcoBoost(エコブースト)」エンジンと8速トランスミッションの設定もあり、こちらは最高出力250馬力、最大トルク277ポンド・フィート(約376Nm)を発揮。前輪駆動の他に4輪駆動も選べ、オプションの「4K Tow Package(4Kトー・パッケージ)」を購入すれば、牽引能力は最大4000ポンド(約1814キログラム)に増大する。

トリムレベルはFシリーズと同様に「XL」「XLT」「Lariat(ラリアット)」の3種類が用意されている。

「メイカースペース」にもなる荷台

  1. Ford-Maverick_2L-EcoBoost-AWD_Lariat_12

  2. Ford-Maverick_2L-EcoBoost-AWD_Lariat_09

  3. Ford-Maverick_2L-EcoBoost-AWD_Lariat_10

「F-150」の荷台が5.5 × 4.3フィート(1676 × 1310ミリメートル)であるのに対し、マーベリックの荷台は4.5 × 4フィート(1372 × 1219ミリメートル)という上品なサイズで、さまざまな用途にフレキシブルに対応できるように設計されている。このメッセージを確実に伝えたいと考えたフォードは「flexbed(フレックスベッド)」というブランド名を付けた。

フォードの代表的なピックアップトラックであるF-150シリーズは、仕事で使う電動ツールのための十分な電力を供給できるソケットと収納力を備えたユーティリティー性を重視している。これに対しマーベリックは、DIYを楽しむ人向けに作られた。フォードは12個のアンカーポイントとスロットを用意し、オーナーが好きなように区切って使えるようにした。このフレックスベッドには、DIY用工具に最適な12ボルト20アンペアの電源ソケット2つと、フォードが「ノートパソコンやテールゲートパーティーのために」電力を供給すると書いている110ボルトのコンセント2つが装備されている。

テールゲートといえば、マーベリックのテールゲートは多段式になっており、ドライバーは荷物に合わせて最適な位置までテールゲートを開けて固定することができるため、ベッドエクステンダーとしての機能も備えている。

ベッドサイドの外から荷台に手を伸ばすことができるのも、小型ピックアップならではの特長だ。特にデザイナーは、女性の5分の1が手を伸ばせば届くようにすることを重視したという。

テクノロジー

マーベリックは、最近の新型車に期待されるとおりの完全なコネクテッド・ビークルだ。このフォードの最新ピックアップには、最大10台のデバイスにインターネット接続を提供するモデムが内蔵されており、Apple CarPlay(アップル・カープレイ)とAndroid Auto(アンドロイド・オート)にも標準で対応する。オーナーはスマートフォンから「FordPass(フォードパス)」アプリを使って、エンジンの始動 / 停止、ドアの施錠/ 解錠、燃料レベルの確認、そして広大な駐車場などではクルマの位置の確認などができる。

このコンパクトピックアップは「Ford Co-Pilot360(フォード・コパイロット360)」と呼ばれる先進運転支援機能も搭載しており、自動緊急ブレーキ付き衝突回避支援機能や、前方に他の車両がいない時に自動でハイビームに切り替えるヘッドランプが標準装備されている。さらにオプションで、車線変更時に斜め後方の死角を監視して危険を知らせるブラインドスポット・インフォメーション・システム、車線維持アシスト、アダプティブクルーズコントロールなども追加できる。また、走行状況に合わせてNormal(ノーマル)、Eco(省燃費)、Sport(スポーツ)、Slippery(滑りやすい路面)、Tow/Haul(牽引や重い荷物の積載時)と5種類のドライブモードに切り替えられる機能も標準装備となっている。

インテリア

マーベリックのインテリアは、スマートフォンの充電台を備えたセンターマットや、空調の吹出口など、人との関わりを示す部分にカラフルなアクセントが施されている。トリムにはフェイクレザーやフェイクウッドは使わず、石目調のテクスチャーや斑点模様のプラスティックを採用している。

後部座席に装備されたFord Integrated Tether Slots(フォード・インテグレーテッド・テザー・スロット)は、カップホルダーや子どもたちを楽しませるためのiPadホルダーなど、顧客が車内に追加したいさまざまなアクセサリーを組み合わせることができる。また、燃料タンクを後部座席の下ではなくキャビンの後方に配置したことで、シート下の収納スペースが大幅に拡大した。フォードによれば、このキャビンには、前述の「テールゲートパーティー」のための、氷の入ったバケツも収納できるという。

マーベリックでは、ドアのアームレストや後部座席用ドアのスピーカーを廃止することで、みんなが大好きなS’well(スウェル)のウォーターボトルを収納できるスペースが確保されている。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Fordハイブリッドカー

画像クレジット:Ford Motor Company

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)