RandstadがMonsterを4億2900万ドルで買収、採用分野での統合が相次ぐ

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オンライン採用業界で大型M&Aが相次いでいる。本日、アムステルダムを拠点とする人材と採用に特化したRandstad Holdingsは、仕事探しポータルのMonster Worldwideを4億2900万ドルをキャッシュで買収すると発表した。

この取引は、1株あたり3.40ドルでの買収となる。月曜日の市場での取引後の株価に上乗せした金額で、Monsterの時価総額は2億6200万ドルだ。しかし、それは1999年に創業したMonsterが、翌年には早くも上場した勢いのある時期の価格には遠く及ばない。Monsterは人材スタートアップ2社が統合して設立した会社だが、当時の株価は91ドルで、時価総額は80億ドルだった。2007年でも、株価は51ドル周辺で、Monsterの時価総額は最大55億ドルだった。(似たようなを他でも聞いたことがあるかもしれない。どこも同じ話があるのだ)。

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それでもMonsterにとっては興味深いエグジットだ。彼らは、最初のドットコムブームからのベテラン企業(そして生存者)だ。業界で多数のM&Aが活発に起きている中での買収だ。6月には、Monsterは「仕事のTinder」であるJobrを買収し、7月にはIndeed.comがSimple Hiredを買収した。Indeed自体は日本の採用と人材大手Recruit Holdingsが所有している。

Monsterはブランドを維持し、別会社として運営を継続する。しかしより大きな計画は、採用と雇用業界における異なる要素を統合し、Randstadが言うところの「人材サービスのポートフォリオ」における規模の経済の活かすことという。

「大規模な技術革新が起きる時代、雇用主は人材と関わり、獲得する最適な方法を見つけるという課題があります」とRandstadのCEOである Jacques van den Broekは声明で伝える。「Monsterは業界を牽引するテクノロジープラットフォームで、簡単に伝えるデジタルかつソーシャルなモバイルソリューションです。Randstadとは自然と補完しあえる会社です。この買収は、私たちのTech and Touchの成長戦略に合致し、労働力の供給と需要を近づけ、人材と最適な仕事とをつないでいく取り組みを促進するものです。私たちはMonsterチームを歓迎し、共にグローバルな採用業界を形作れることを楽しみにしています」。

Monsterにとってこれが重要な動きなのは、戦略的に他の近いビジネスと組む必要があるからだ。Recruitといった企業が採用分野に特化してサービスを展開している。Monsterは、40カ国以上でサービスを展開し、 Q1の発表では自社データベースに5万人の雇用者が登録しているという。しかし、Indeedが所有するSimple Hiredだけでも5万人が登録しているのだ。

「Randstadに参加することは、より多くの人を仕事とつなぐ事業を進めるためのまたとない機会です」とMonsterのCEOであるTim Yatesは声明で伝える。「Randstadと共にMonsterは、私たちの中核となるミッションを達成する立ち位置につけ、私たちの従業員は大きく、多様性のある企業の一員になることで得られることが多くあります。同様に重要なのは、この買収で私たちの株主に対してもすぐに価値を提供できることです。私たちは、継続的に最高の採用メディア、テクノロジー、プラットフォームを構築するにあたりRandstadに参加することで、彼らの支援が得られることを嬉しく思います。スムーズに事業を以降できるようRandstadチームと協力していきます」。

Monderの収益源と主力事業はウェブサイトで、一方のRandstadは採用センターに注力している。およそ4500の支店を持ち、200万人を仕事とつなげたという。Monsterの買収で、それを拡張するオンラインの要素を獲得した。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website

オンデマンドの人材派遣プラットフォームHourlyNerdがシリーズCラウンドで2200万ドルを調達

On demand staffing startup HourlyNerd lands  22 million Series C   TechCrunch

ボストン拠点のスタートアップのHourlyNerdはスキルを持った従業員を派遣するオンデマンドの人材派遣会社以上の存在になることを目指している。大企業の従業員に対する考え方を変革するためのすべてのサービスを備えたプラットフォームを目指す。

「今日の企業について考えてみると、その構造は100年前と同じままなのです」と共同CEO・創業者のRob Biederman氏は語る。HourlyNerdは企業がオンデマンドの従業員をさらに活用する未来を見据えている。

その理由は、1つのプロジェクトを遂行するのにフルタイムの従業員を必要としない企業のニーズに応じているからだ。また、もう1つにはプロジェクト毎に関わるフレキシブルな働き方を求めているであろう労働者のためだ。

HourlyNerdはアナリティクス機能を始め、今後は顧客がオンデマンドで人を雇用するのみならず、勤労時間、成果物、顧客の求める人材要件を管理できるような機能を持ったプラットフォームを構築しているという。

HourlyNerdは、顧客自身で人材を採用したり、雇用したりせずとも、プログラミングや他のスキルを持った人材を短期間派遣することができる。

General Catalyst Partnersが率い、Highland Capital Partners、GE Ventures、Mark Cuban、Greylock Partners、Accanto PartnersのBob Doris氏が参加しているシリーズCラウンドで本日、2200万ドルを調達したと発表しており、HourlyNerdのオンデマンドの人材派遣のアイデアは比較的規模の大きい企業からの支持を得て、ますます勢いを得ているようだ。

今回のラウンド以前に、HourlyNerdは合計で1200万ドルを調達している。今回のラウンドが彼らにとって多額の調達であったことが分かる。投資家は、オンデマンドの従業員市場を次のレベルに押し上げるというアイディアに魅力を感じている。そして実際HourlyNerdのプラットフォームで市場のポテンシャルが見えたことから、彼らのビジョンの実現に必要な資金を大幅に増額することにした。

オンデマンドの人材派遣というアイデアには十分なメリットがある。今年3月、MITのオンデマンドエコノミー・カンファレンスでは、未来の人々の働き方の変化、そしてそれが過去100年の間に人類が構築した働き方のインフラに与える影響について多くの議論がなされた。

スピーカーは、HourlyNerdのビジョン「スキルのある労働者が数年間1つの企業のために働くというよりは、プロジェクトからプロジェクトを渡り歩いて働くようになる」と似た言葉で変化するエコノミーについて語った。

どのように従業員を管理するのか、パフォーマンスを測るのか、インセンティブを与えるのかを含む従業員との新たな関わり方が求められる。

現在、HourlyNerdは65人の従業員を抱えている。Fortune500の10%の企業を顧客として持っており、将来的にサービスを提供することを望むさらに幅広い顧客企業を魅了しつつある。その中にはPfizer、GE VenturesとしてシリーズCラウンドを通して財務面で支援を行っているGEも含まれる。

原文

(翻訳:Shinya Morimoto)

pairs運営のエウレカ、創業者の赤坂氏が代表退任——新代表にCOO・CTOの石橋氏

左からエウレカ新代表となる石橋準也氏、創業者で取締役顧問の赤坂優氏

左からエウレカ新代表となる石橋準也氏、創業者で取締役顧問の赤坂優氏

日本と台湾で400万ユーザーが利用するマッチングサービスの「pairs」、350万ダウンロードの恋人専用アプリの「Couples」を展開するエウレカ。2015年5月には世界各国でマッチングサービスや各種ウェブサービスを展開する米IACグループが100億円とも200億円とも言われる大型のM&Aをしたことでも話題になった同社だが、そのM&Aから1年弱で代表交代のニュースが入ってきた。7月下旬をめどに、創業者で現・代表取締役CEOの赤坂優氏が代表を退き取締役顧問に就任。現・取締役COO兼CTOの⽯橋準也氏が新たに代表取締役CEOに就任する。

赤坂氏は、2008年11⽉に共同創業者で取締役副社⻑を務める⻄川順氏とともにエウレカを設⽴。受託事業から始まり、デザイン特化のクラウドソーシングサービス「MILLION DESIGNS」、アプリシェアサービス「peepapp」、SNSを利用したアプリ検索サービス「Pickie」などを手がけてきた。MILLION DESIGNSはランサーズに売却しているが、これは「事業撤退」の意味合いの強い売却で、いずれの自社サービスも決して大きく成功したとは言えない結果だったという(同社のこれまで、そして2016年以降の戦略についてはこちらの記事をご参考頂きたい)。その後2012年10月にスタートしたpairsのヒットで会社の規模は大きく成長。世界各国でマッチングサービスを展開するIACグループのメンバーとして、日本・アジア圏でのサービス拡充を進めている。

エウレカでは今回の人事について、「今後のさらなる事業成⻑と組織拡⼤に向けた経営スピードの加速を⾒据え、⽯橋をトップとする経営体制に移⾏することが最適であると判断し、新たなステージへ進むことを決定いたしました」と説明している。

新代表となる⽯橋準也氏は、1987年⽣まれの28歳。大学では建築を専攻していたが、ITに興味を持ち⼤学を中退。制作会社での業務と個人での開発請負などを行い2013年にエウレカに⼊社。2014年に執⾏役員CTOに、2016年3⽉に取締役COO兼CTOに就任している。僕が聞いたところでは実はpairsは直近バックエンドの大規模なリニューアルを実施しているのだそう。同社では以前にそのリニューアルプロジェクトで失敗したことがあるが、執念でプロジェクト遂行までの指揮を執った人物こそが石橋氏だったという。

今回の代表交代について、赤坂氏、西川氏、石橋氏のコメント(一部要約)は以下の通り。なおコメントにもあるとおりだが、共同創業者である西川氏は引き続きエウレカの副社長としてメンバーをリードしていく。一方赤坂氏は、分散型動画メディア運営のエブリーへの出資をはじめとしたエンジェル投資家としての活動も開始している。エウレカでは、年内にもpairsのユーザー数500万人(日本と台湾の合計)を目指すとしている。

赤坂氏:

本当に沢山の方に支えられエウレカはここまで来ることができました。私が願うのは、エウレカがベンチャー企業とは一線を画し、創業者の存在など関係なく、永続的に発展を遂げる会社になっていくことです。これからは石橋新代表の元、事業を通じて未来を創って参ります。石橋はこれから組織が急拡大するのに必要な戦略性や課題解決力を持っており、経営者にとって最も必要な「執念」を持っているリーダーだと思っています。個人的には、エウレカの成長に寄与しながら、インターネット産業及び日本が経済的に発展するために、スタートアップへの投資や自分自身ができる事をしていきたいと思っています。

西川氏:

2008年、赤坂と二人で創業したエウレカが、USのMatchグループにジョインし、合計800万人のユーザーに支持され、100人を超える社員を抱えるようになるとは起業当時は想像も出来ませんでした。「創業者が経営者で居続けるべきか」は、様々な考え方があると思いますが、会社というのは生き物であり、ステージによって、最適な経営チームに変化していくことが必要だと、創業者でもある私は考えています。その点で、エウレカは、石橋という素晴らしい新CEOを輩出できたこと、赤坂が代表でなくなっても会社が成長し続けられる状態になったことを非常に感慨深く思います。私は、引き続き、取締役COO&CFOとして、新代表の石橋、取締役CSOの中村とともに、エウレカを世界に通用する企業にすべく、頑張ってまいりますので、今後ともエウレカをよろしくお願いします。

石橋氏:

私がエウレカに入社したのは2013年7月で、今から丁度3年前になります。当時はこんな日が来るとは思いもしませんでした。入社してからはいちエンジニアからpairsのリードエンジニア、執行役員開発責任者、執行役員CTO、取締役COO兼CTOと目まぐるしくロールが代わる中でとにかく目の前の課題に必死に取り組んできた3年間でした。創業者である赤坂から代表のバトンを受け取る、その重責を担うことを決めたのには2つ理由があります。1つは赤坂の覚悟の大きさを理解したこと。もう1つは赤坂や共同創業者の西川、取締役CSOの中村と話をしていく中で、私自身誰よりもエウレカの未来を明確に考えその実現に向けて執念を持てる人間だと自覚したことです。引き続きエウレカの成長とエウレカの成長を通した社会的価値の創出に全力を尽くして参ります。

 

新卒から中途、独立支援まで―、人材サービスのBranding Engineerが1億円調達

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就活中の学生にとって、今でも大手企業に就職するのが魅力的なキャリアであることに変わりないのかもしれないが、一方でスタートアップに参画したり、自分で起業したりなどキャリアのあり方は少し前とは変わって多様性が出てきたように思う。特にエンジニアであれば、大企業やスタートアップに就職するだけでなく、独立して働く選択肢もあるだろう。Branding Engineerはそうしたエンジニア向けの転職サービスを軸に、複数のサービスを展開する。今後Branding Engineerは学生の就職活動から、転職、そして独立まで様々なキャリアの段階での事業の確立を目指している。Branding Engineerは本日、East Ventures、ベクトル、JSH Holdings LLC、Skyland Ventures、バリュークリエイトから総額1億円を調達したことを発表した。techstars

TechCrunch Japanは昨年12月、Branding Engineerが提供するエンジニア向けのダイレクトリクルーテイングサービス「TechStars(テクスタ)」を紹介した。これまでの転職サイトでは、転職エージェントからのメールや必ずしも自分の希望条件に合わないメールが大量に届き、それらを確認するだけで手間がかかることもあった。転職を検討するエンジニアは「TechStars」のプロフィールに技術力、経歴、希望条件などを入力すると、その条件以上オファーを提示する企業からのみ連絡が届く仕組みを採用している。これにより、エンジニアと企業が効率的に出会える場を提供する。ローンチ以来、150社以上が「TechStars」を利用したとBranding Engineer、代表取締役COOを務める高原克弥氏は話す。

Branding Engineerは現在、中途採用事業、新卒採用事業、独立支援事業の3つの事業を展開していく計画と高原氏は話す。中途事業として「TechStars」を軸に、他に2つの関連サービスをリリースしている。1つは2016年4月から提供を開始した「TechStars PREMIUM」で、これはハイクラスのエンジニア向けの審査型転職サービスだ。年収700万円以上の求人情報のみを扱い、経歴や面談で審査を通過したスキルの高いエンジニアに提供する。もう1つプロダクトは、2016年2月からベータ版を提供している「Design Stars(デザスタ)」だ。これは「TechStars」と同じダイレクトリクルーティング方式のWebデザイナー向けサービスだ。

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2016年6月からは、新卒採用事業として就活生向けに就職サイトの登録やスケジュール管理をするためのツール「イッカツ」を提供している。就活生はたいてい5、6個の就活サイトに登録しているが、それぞれを上手く使いこなすのは難しいと高原氏は説明する。「イッカツ」を使うと、いくつか選択した就活サイトにその名の通り一括で登録することが可能だ。各サイトの情報は「イッカツ」内に統合され、企業情報やイベント情報を確認したり、企業からのメールに返信したりすることができるという。「イッカツ」では学生のキャリアの志向に応じて、その分野が得意な就活サイトとをつなぐ場にしたい考えだという。Branding Engineerとしては、学生と就職する企業との接点を「イッカツ」で確保することで、他の事業にも活かせるデータベースを構築していくことが目標と高原氏は話す。

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Branding Engineerは独立支援事業として、今年の10月に独立を検討するエンジニア向けに保障や福利厚生を提供する「MIDWORKS(ミッドワークス)」をローンチ予定だという。エンジニアのキャリアとして、会社で働く方法と独立して仕事を得る道が考えられると高原氏は説明する。会社で働けば保障も手厚く安定しているが、給与面での厚遇は期待できないかもしれない。一方で独立し、フリーランスとして働けば高い報酬も得ることもできるだろうが、安定的に仕事が得られるかは分からない。「MIDWORKS」では、エンジニアのスキルにあった報酬を受け取れる仕事を紹介し、共済や健康保険などを保障するパッケージを提供することでリスクを減らした上で独立への第一歩を支援するサービスだ。独立するにあたって必要な個人事業主登録といった手続きや経理業務などを行うシステムを提供するプランも用意する予定だという。「MIDWORKS」では、エンジニアにとって新たな働き方を提案し、それぞれがキャリアアップを達成できるよう支援していくという。

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2013年10月に創業したBranding Engineerは、もともと受託開発などの仕事を手がけてたが、1年ほど前に受託開発を辞め、自社サービスとして人材領域の事業を本格的に始めたと話す。人材領域、特にエンジニアのキャリアにおける課題を解決しようと考えたのは、Branding Engineerの共同代表でCEOの河端保志氏、そして高原氏のどちらもエンジニア出身で、エンジニアのキャリアの問題を学生の頃から感じてきたからと説明する。河端氏が通っていた大学では、多くの学生は先輩が就職した会社に就職することが一般的で、エンジニアとしてキャリアをどのようにしていくかを考えている人は少なかったという。高原氏もいくつかスタートアップの立ち上げに関わっていたこともあり、エンジニアの技術力やキャリアのステップアップに関心があったと話す。Branding Engineerでは各種サービスを展開し、エンジニアと会社との出会いを作ること、そして新たな働き方を提案することでキャリア開発のサポートしていきたいと話す。

今回の資金調達はこの3つの事業のグロースを目指し、人材の採用を行う計画だという。自社の技術力と営業力を強化し、ゆくゆくは人材領域に留まらず、ライフスタイル事業も行っていきたいと高原氏は話す。Branding Engineerにとって今回が2回目の資金調達だ。前回は、2014年10月にANRI2号投資事業有限責任組合から2000万円を調達している。

社員のスキルと保有資格を見える化、「SKILL NOTE」のイノービアが1億1000万円を調達

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どの社員が何のスキルや資格を持っているのか?何万人の社員を抱える会社にとってその管理は骨の折れる仕事だ。特に製造業では、重要なスキルを持っているベテラン層が引退して、プロダクトの品質に影響があっては大問題だ。イノービアの提供する「SKILL NOTE」は社員の持つスキルや資格を見える化し、そういった問題を解決する。本日イノービアはインキュベイトファンドから7000万円の第三者割当増資と日本政策金融公庫から4000万円をデットファイナンスで総額1億1000万円を調達したと発表した。

SKILL NOTEは主に製造業、工事業、IT業の企業が社員の保有資格やスキルを管理するためのクラウド型システムだ。SKILL NOTEにはスキルや資格の管理機能と各社員のキャリアプランのための機能、そして教育研修の募集や申し込み、参加履歴などを管理する機能などを備えている。SKILL NOTEの特徴は全社員の実務スキルと保有資格のデータを蓄積し、そのデータを可視化する点だ。例えば「スキルマップ」では、横軸に社員、縦軸にスキル項目が並び、誰がどのスキルを習得したかを一覧で確認することができる。習得済みや習得予定、レベルなど、全体の習得状況が一目で分かる。

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SKILLNOTEのスキルマップ

規模の大きい製造業の会社では全社で5万から10万種類のスキルを設定しているとイノービアのファウンダーで代表取締役の山川隆史氏は説明する。社員が1万人を抱える企業だとその情報量は膨大な量となるが、未だに各部署の担当者は社員のスキルを紙やエクセルで管理しているところもあると話す。エクセルの管理だと上書きした場合に過去の履歴が参照できなかったり、人材が異動した場合に対応できなかったりすると山川氏は指摘する。SKILL NOTEではそういった情報を一元的に管理することが可能となる。

ただ、「SKILL NOTEは紙やエクセルを置き換える以上の価値を提供することができると考えています」と山川氏は話す。SKILL NOTEに社員のスキル情報が蓄積するほど、現時点のみならず、将来のスキルの習得状況も予測できるようになる。例えば「年齢別スキル分布」のデータからは、各年代ごとのスキルの習得状況が分かる。ベテラン層に重要スキルが集中している場合、彼らが引退した時にその仕事を引き継げる人がいないという状況になりかねない。データを随時確認することで、事業を運営していく上で必要なスキルを保持するための統合的な人材育成を図ることができるようになる。

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SKILL NOTEの年齢別スキル分布

スキルの可視化で、キャリアプランの制定もしやすくなると山川氏は言う。SKILL NOTEの「ステップアップシート」では、会社が職種ごとに若手や中堅に求めるスキルや資格を明示することができる。これまでも会社側は社員のキャリアプランを考えてはいたが、それを社員に明示することは少なかったと山川氏は話す。会社は様々な教育研修を用意し、社員のスキルアップを促してきたが、社員の方としては全体のキャリアプランが見えないために、なぜこの研修を受ける必要があるのか理解できないこともあるという。そこを明示することで、社員は自分のキャリアプランを見て、ステップアップとして次にこういったスキルが必要だから研修に参加しようと計画を立てることが可能になる。研修を受けるモチベーションにもつながると山川氏は言う。

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SKILL NOTEのステップアップシート

山川氏は信越化学工業で市場開拓や次世代技術開発などに従事した後、2006年3月に製造業の人材育成を支援する会社を創業した。その会社では製造業向けの教育研修を担っていたが、次第に単発の研修だけでなく、技術者の能力を見える化して戦略的な教育研修ができるソリューションを提供できないかと考えるようになったと山川氏は話す。そのためのシステムを少しづつ構築し始め、このサービスの展開のため2016年1月にイノービアを設立した。2016年6月からサービスを「SKILL NOTE」にリブランディングしている。

社員数によって価格は変動するが、SKILL NOTEは社員100名なら料金は月額2万円からだそうだ。すでにリコーインダストリー、JFEスチール、ヤマサ醤油など大手企業を含む50社以上に導入が進んでいるという。小規模なスタートアップにも関わらず、大手製造業からの引き合いが多いのはスキル管理に特化したサービスが他に少ないこと、大手企業が抱える課題にうまく刺さっていることが理由のようであると山川氏は説明する。問い合わせの多くは各企業の人事やITソリューション部ではなく、社員のスキル管理に日々頭を悩ませている現場に近い技術部門からなのだと言う。

今回の資金調達では営業とマーケティング力の強化、そして導入企業のフィードバックを元にサービスの拡充を進めていくという。総勢20名程度スタートアップだが、次の2、3年でSKILL NOTEを国内の製造メーカーへの普及を進め、5年後には海外でも使用されるサービスになることを目指すと話している。

職場にもっと多様性を、まずは技術職から

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テクノロジー業界が性別、人種、民族や年齢において多様性を欠いているということは周知の事実だ。主要なテック業界の公開しているデータによると全従業員における女性の占める割合は25から45%でしかない。この格差は技術系の職種になるとさらに悪化する。Anita Borg Instituteの実施したTop Companies for Women Technologistsの調査によると、過去の5年間に渡り、技術系における女性の占める割合は 21%のまま全く動いていない

他の、人口構成比的に少数のグループに関しても結果は似たり寄ったりである。テクノロジー企業において、ヒスパニックの雇用は最高で11%であり、黒人に至ってはたったの2から8%だ。先ほど同様、技術職では、数値はさらに低下する。テック業界公表の雇用の多様性に関するデータによると、ヒスパニックでは2から8%、黒人では1から7%にもなる。

女性はテック業界においては、マーケティング、人事、会計や他の部門で多くの役割を果たしている。それ自体は良い傾向であるが、この業界の性格差を埋めるまでには至らない。なぜか。それはほとんどすべての企業において、最も雇用が増えているのが技術職だからだ。もし我々が今、女性が技術職を志向することに二の足を踏ませ続けるのであれば、この格差は今後どんどん開いて行くだろう。

2016年の今、全ての会社がテック企業だ

今日では、全ての会社がテクノロジー企業であり、全ての産業が生産性と革新性の向上をテクノロジーに依存している。金融機関、小売り業、メディアは技術者の採用を増やしており、多業種に渡って、非技術系の部門、例えばマーケティング、人事や会計などもどんどん専門の技術者への依存度を高めている。

テクノロジーのあらゆるビジネス領域への拡散はとどまる兆しを見せず、企業や機関の技術部門では、多様で才能あふれる人材をリクルートし、雇用、昇進させることが大変重要な意味を持つ。

また、単なる事実として、技術職は他のポジションに比べて、条件が良く給料が高い。より多くの女性および社会的に比率の低いグループの人々を技術職につけることが今ある格差を埋める上での鍵となる。

技術職における男女間の格差

なぜ技術系の従業員が特に重要なのだろうか。その点を説明するため、シリコンバレーにおいて著名なテック企業であるインテルに目を向けてみよう。インテルは今年度初旬に多様性とその受け入れに関する年次報告を公表した。

テルのアメリカ内の技術系従業員中で女性の占める割合はたったの20.1%だ。背景を説明するなら、インテルのアメリカにおける従業員のうち、何と86%が技術職である。

女性技術者をリクルートし、雇用、昇進させることは単に正しいだけでなく賢い選択だ。

インテルにおいては新規雇用の大半が技術職なので、同社はまず、技術職の均等雇用に取り組まねばならない。もしインテルの技術系従業員の男女比が同等であったなら、会社全体における性格差は今日存在しないだろう。

企業が特に技術職において雇用の多様化に取り組まない限り、組織全体に渡る男女の均等雇用などは夢物語に終わるだろう。

女性の昇進には過大な要求が立ちはだかる

女性はテクノロジーの分野で職を得るのが容易ではないが、昇進にはさらなる困難が待ち受ける。女性が上級職に昇進するためのハードルは男性の場合よりずっと高く設定されており、さらには女性は数学や科学が苦手だという考えが根強く浸透している。

その証拠に、Sequoia Capitalの投資家であるMichael Moritzのコメントを紹介しよう。この男性の意見では、もしテック業界にもっと才能のある女性がいるのであれば、そう言った人材はもう雇用されているだろうし、自分的には職場の多様性の確保だけを目的に採用基準を下げるつもりはない、ということだ。しかし、そのような採用基準とは一体なんだろうか。テックに職を求める女性はコンピュータ科学や工学の学位を持っているが、どうやらこの基準はこの男性には当てはまらないようだ。というのも、彼が持っているのは歴史の学位だったからだ。

この様な女性に対する一般的態度と、その結果テック業界で働く女性がいないことは大変嘆かわしいことだ。しかし、この様な問題があっても、女性のビジネスや社会における進出は目覚ましものがあり、その指導力は着実に高まっている。例えば、今年度のインテルのScience Talent Searchでは、最終選考に残った半分以上、さらには受賞者3人中2人が女性だった。

世界の知的資本の半分は女性であり、女性の参加により経済成長は飛躍的に増大することが可能だ。この事実を無視することは企業にとって損失だ。現代のようなペースの速い、過当競争下のグローバル市場で成功するには、企業は継続的に変革を続けなければならない。そして、多様性ほど変革を促進するものはない。女性の技術者をリクルートし、雇用、昇進させることは単に正しいだけでなく、賢明な選択なのだ。

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(翻訳:Tsubouchi)

エウレカがパパママ社員に優しい新人事制度、英会話全額負担や「pairs婚」手当ても

恋愛マッチングアプリ「pairs」を運営するエウレカが15日、福利厚生プログラム「baniera(バニエラ)」を導入した。これまでも一般的な福利厚生制度はあったが、結婚や出産、育児に関する支援を中心に充実させた。主な内容は以下の通りだ。

バニエラとは、古代ギリシャ語で「お風呂」の意味。アルキメデスが浮力の原理を見つけた場所で、そのとき「エウレカ!(わかったぞ!)」と叫んだと言われている。「エウレカでのひらめき・成長を支える場所」という意を込めて、バニエラと名付けたのだという

バニエラとは、古代ギリシャ語で「お風呂」の意味。アルキメデスが浮力の原理を見つけた場所で、そのとき「エウレカ!(わかったぞ!)」と叫んだと言われている。「エウレカでのひらめき・成長を支える場所」という意を込めて、バニエラと名付けたのだという

・オンライン英会話学習の全額負担
米国とのやり取りがある社員、月間受講日数が15日以上の社員にはレッスン受講料を全額負担する。

・海外カンファレンス参加費用負担
WWDC/Google IO/F8の参加者に飛行機代、ホテル代、カンファレンスチケット代を全額負担する。

・結婚祝い
5万円+上限20万円までの家電をプレゼント。乾燥機付き洗濯機やお掃除ロボットなどで、家事の負担を減らしたいという思いがあるという。

・Happy pairs婚
自社アプリ「pairs」を通じて結婚したメンバーには、結婚祝いに加えて5万円分のギフト券をプレゼントする。

・出産お祝い金
10万円を支給。男性社員には、出産時に家族に寄り添えるように3日間の「出産応援休暇」を付与する。

・育休中1on1/育休中でも会議出席
産休・育休中も月例の上長面談を継続。育休中でも全社会や重要会議に参加できる。どちらも復職を支援することが狙いで、Skypeでの参加も可能。

・banier for ペット
ペットを病院に連れて行く際、年3回の半休を取得可能。ペットが死亡した場合には2日間の休暇を付与する。

エウレカのオフィスでは創業当初から、副社長の西川順さんの愛犬が会社の成長を見守っているそうだ。

エウレカにはCDO(Chief Dog Officer)の「ジョブ」がいる。共同創業者・西川順さんの愛犬で、創業当初から会社の成長を見守っているそうだ。

メガベンチャーの福利厚生のいいとこ取り

エウレカは2008年11月に設立。日本と台湾で400万人が利用するpairs、350万ダウンロード超のカップル向けコミュニケーションアプリ「Couples」を運営する。2015年11月には、MatchやTinderなどのマッチングサービスを世界展開する米IACグループの傘下となった。

新人事制度は従業員が100人に達したことをきっかけに、安心して働ける仕組みを整えた。家族向け制度の内容を考案したのは、まもなく社内で育休取得第1号となる人事総務部の進真穂さん。「メガベンチャーの福利厚生のいいとこ取りをして、私が欲しいものを作りました」と語る。

「エウレカは平均年齢が28歳。出産や育児中の社員は少ないですが、30代で子供を持つ社員も増えましたし、これから必要な人も出てきます。充実した福利厚生があれば、社員が安心して働けるだけでなく、会社としてもアクセルを踏んで事業拡大しやすくなると思います」

バニエラではこのほか、有料セミナー参加費負担や自己負担200円の育児シッター制度、待機児童対策の引越し金援助などがあり、今後も社員の要望に応じて随時充実させる。現在は従業員の健康のために、営業時間中に社内でヨガを実施することを検討している。

スタートアップの福利厚生としては、フリマアプリのメルカリが産休・育休の8カ月間も給与100%を保障する「merci box」が話題になった。大企業に引けをとらないスタートアップの福利厚生は、これからも増えていきそうだ。

マネーボール理論を企業でも、ビズリーチが採用管理システム「HRMOS」公開

映画「マネーボール」といえば、貧乏球団のアスレチックスを強豪チームに変えた実在のGM(ジェネラルマネージャ)、ビリー・ビーンの活躍を描いた物語である。

ブラッド・ピット演じる主人公のビリーは、野球のデータを統計学的に分析して、選手の評価や戦略を決める「セイバーメトリクス」という手法を採用。これによって、資金不足にあえぐ弱小チームを、ア・リーグ記録の20連勝を遂げるまでに育てあげた。

このセイバーメトリクスを企業人事で実践しようとしているのが、転職サイトを手がけるビズリーチだ。

ビズリーチが発表した戦略人事クラウド構想

ビズリーチが発表した戦略人事クラウド構想

人事業務のムダをなくす

人材の採用から育成、評価までをクラウド上で最適化する構想「HRMOS(ハーモス)」を6月14日に発表。第一弾として、求人媒体ごとの採用状況を一元管理するサービス「HRMOS 採用管理」をスタートした。

例えばリクナビやマイナビといった求人媒体からCSVファイルを取り込むと、ダッシュボード上で応募者のステータスを一覧表示する。ビズリーチの転職サイト経由の応募者情報は自動的に、人材紹介エージェントや社員紹介による応募者情報は手動で入力すれば、ダッシュボード上で一元管理できる。

設定済みの面接や要対応メールの有無などのタスクをダッシュボードでわかりやすく表示する

ダッシュボード上では、「書類選考」「最終面接」「内定」といった応募者のステータスがわかり、人事担当者はやるべきタスクがひと目でわかる。応募者とのメールのやり取りもHRMOS上で完結する。

応募者の情報や面接の進捗状況をExcelで管理して、そこからメールアドレスをコピペして連絡する……といった人事業務にありがちな面倒な事務手続きから開放されそうだ。

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応募者ごとの選考ステータス

応募経路別の採用単価をグラフ化する機能もある。求人媒体や人材エージェント、社員紹介によるリファラル採用などで、一人あたりの採用にかかるコストを比較することで、もっとも効率のよい採用方法に注力できる。

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応募経路別の選考状況

面接官が応募者に出した評価もグラフ化する。面接官の山田さんは内定者に「A評価」を出す傾向があるが、面接官の鈴木さんは内定者に「C評価」を出す傾向があるので、「山田さんの判断を重視すべき」といった意思決定を支援してくれそうだ。

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面接官別の選考評価レポート

企業経営でマネーボールの理論は実践できるか

採用管理サービスに続き、第二弾として「HRMOS 勤怠管理」を今秋、第三弾として「HRMOS 業績管理」を来春にリリースする。これらのモジュールが連動しながら、自社で活躍する人材の行動や成果を人工知能が学習し、戦略的な人材活用の意思決定を支援するという。

ビズリーチの南壮一郎社長は「人事関連のデータを活用した企業経営が実現できる」と意気込む。

「◯◯さんは現在、どれだけ会社に貢献していて、採用時はこんなパラメータだった、ということがわかるようになる。自社で活躍する社員のデータと照らし合わせることで、高い実績を残すハイパフォーマーの採用や育成にもつながる。」

とはいえ、企業の業績は市場環境や競合などの外部要因で左右するもの。南氏も「経営は野球ほどシンプルな指標で分析できない」と認めるが、人事領域では「採用したら終わり」で完結しているのが問題点だと指摘する。

「営業やマーケティングでは効果検証を行うにもかかわらず、なぜか人事領域は例外。採用した人材が3〜5年後にどんな成果を出したかを数値化し、次回の採用の改善に役立てている企業は少ない。」

プレイヤーが乱立するATS業界

HRMOSをリリースするにあたっては、セールスフォース・ドットコムと業務提携し、機能面での連携を視野に入れている。今年3月に実施した総額37億3000万円(37.3億円で「みなみ」ということらしい)の資金調達では、Salesforce Venturesからも投資を受けている。

スタート時は特別価格として月額5万円で提供。すでに試験提供を開始していて、スタートアップ業界ではRettyやSansan、ラクスルなどが導入済み。2019年6月までに、ビズリーチの利用企業を中心に2000社以上の導入を目指すという。

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ビズリーチの南壮一郎社長

クラウド型採用管理システムは、ATS(アプリカント・トラッキング・システム)と言われ、米国では大企業向けのOracle「Taleo」やSAP「SuccessFactors」が先行、スタートアップではairbnbやsnapchatが導入することでも知られる「greenhouse」がある。

国内でもTaleoやSuccessFactorsが先行するが、古株では2005年に開始した「リクログ」、2008年に開始した「ジョブスイート」、直近3年では「jinjer」や「talentio」、シンガポールに本拠を置く「ACCUUM」も日本市場に進出するなど、新興サービスの参入も相次ぐ。

ちなみにマネーボールの舞台となったアメリカでは、人事にもビッグデータを活用するのは当たり前という風潮になってきている。このあたりの話は過去記事「経験や直感による採用はもう古い、人材採用に広がるデータ・ドリブンなアプローチ」に詳しいので、興味のある方は読んでほしい。

MicrosoftがLinkedInを262億ドルで買収、エンタープライズ向けソーシャルメディアに参入

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エンタープライズ、そしてソーシャル・ネットワーク業界における巨額のM&Aの発表があった。MicrosoftLinkedInを買収すると発表したのだ。LinkedInは社会人のソーシャルネットワークで4億3300万ユーザーを抱える。買収額は260億ドル、1株辺り196ドルで現金で買い取る。この取引は両社の取締役会ですでに承認済みだ。

1株辺り196ドルという提案価格は、金曜日の引け後の価格 $131.08から随分と上乗せされている。(もちろん今日の株式市場開始前の取引ではLinkedInの株価は64%近く上昇し、Microsoftが支払う予定の株価に近くなった。一方、Microsoftの株価は株式市場開始前の取引で4%下がり、49.66ドルだ)。

LinkedInはブランドとプロダクトと維持し、Micorosoftのプロダクティビティとビジンスプロセス部門の一部となる。LinkedInのCEOであるJeff WeinerはSatya Nadellaに報告を上げることになる。

この買収案件は双方にとって影響が大きい。

Microsoftにとっては、同社のエンタープライズ向けサービスをさらに展開するための戦略に欠けていた部分を補うことができる。現在、Microsoftはほぼソフトウェアにしか注力していない(縮小している携帯端末ビジネスでは少しハードウェアも扱ってはいる)。

LinkedInの買収で、Microsoftはソーシャル・ネットワークとプロ向けコンテンツにおいて広いリーチを得ることになる。Microsoftは2012年にYammerを12億ドルで買収し、法人向けソーシャル・ネットワーキング分野への進出の意図を見せていた。LinkedInの雇用主と雇用者に特化した広範なソーシャル・ネットワークを得ることで、Microsoftは自社プロダクトを届ける潜在的な販売チャネルを得る。すでにMicrosoftを利用している企業に対しては、コラボレーションやコミュニケーションを補完する役割を担うだろう。

他にもこの買収案件においてLinkedInのビジネスが魅力的な要素がある。例えば、LinkedInはLynda.comを買収している。Lynda.comは、LinkedInがユーザーにオンライン学習ツールを提供する取り組みを進めるために買収していた。職業開発に関して一番先に思い浮かぶ場所という立ち位置を確立するためだ。MicrosoftにとってはLyndaを活用し、ソフトウェアプロダクトの販売を促進したり、それらの使い方の学習の手助けを提供したりできるだろう。

「LinkedInのチームは、世界のプロをつなげることを軸に素晴らしいビジネスを作り上げました」とNadellaは声明で伝える。「私たちは共に地球上の全ての人と組織の力になりながら、LinkedIn、Microsoft Office 365、Dynamicsの成長を加速さることができます」。

(ちょっと注記すると、この買収を受け、Microsoftが少し前に行ったコスト削減のためのレイオフと売却を別の角度から見ることもできるだろう)。

LinkedInにとって、彼らのソーシャルグラフ上でさらにソフトウェアを積み上げ、どんどんLinkedInとの差を詰める競合企業とどのように競うかという問題に終止符が打たれる。しばらくの間、LinkedInは競合する方向で事業を展開するように見えたが、直近のユーザーと収益の成長に関する課題、そして株価の継続的な下落を受け、LinkedInは守りの姿勢に入っていた。

「私たちが仕事の機会とのつながりを変えたように、Microsoftとの関係、そして彼らのクラウドとLinkedInのネットワークが合わさることで、私たちは世界の働き方を変えるチャンスを手に入れます」とWeinerは声明に綴る。「過去13年間、私たちはプロ同士をつなげ、彼らの生産性を高め、成功を後押しするという独自の立場を築きました。そして今後、会社の物語における新たな章でこのチームを率いることを楽しみにしています」。

これは、崩落しかけている会社を別の会社が拾い上げたという話ではない。LinkedInの株価は過去12ヶ月の最高値、1株258ドルから下落したものの、上場しているテクノロジー企業でも高いパフォーマンスを示している方だ。

一方のMicrosoftは、ソーシャルネットワーキングの分野で大成功を収めたことはない。Facebookの上場前に賢く投資したり、以前私たちが報じたようにSlackに関心を持ち、80億ドルで買収を試みようとしたりはした。だが、LinkedInのソーシャルネットワークがあれば、この分野でしっかりと足場を固めることができるだろう。

LinkedInは200以上の国で利用でき、月間アクティブユーザーは1億500万人だ。全体の登録ユーザーは4億3300万人だ。60%のトラフィックはモバイルで発生し、強力なSEOのおかげで、四半期におけるPV数はなんと450億あるという。また最大級の求人数を持ち、現在700万のアクティブな求人掲載がある。LinkedInのビジネスの一部分は確かに停滞している。特にMAUの成長率(昨年からたった9%しか伸びていない)だが、求人に関しては成長ビジネスだ。昨年から101%成長している。

LinkedInの現在の中核事業は求人広告で、それほどではないにしろユーザーのプレミアム・サブスクリプションのビジネスもある。採用ビジネス(名称は「Talent Solutions」)は2015年の全体収益の30億ドルの内の20億ドルを占めた。

そして、上記の写真を見て分かるように、共同ファウンダーで現会長であるReid Hoffmanが取引に関与している。

「今日はLinkedInにとって再創業の日です。私たちのメンバーとカスタマーにとって素晴らしい可能性が開かれます。両社の組む新たなビジネスをサポートしていくことを光栄に思います」とHoffmanは声明で伝える。「この取引、そして役員会がそれに同意するという決断を支持します。私はそれに従い、彼らの推薦と合わせて投票します」。

同社は、8時45分PTから、カンファレンスコールを開始する。下記は彼らが提示するプレゼン資料だ。

[原文へ]

(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

「顔と名前が一致しない」を解決、人材管理ツールのカオナビが3億円調達

「顔と名前が一致しない……」

急成長中のスタートアップにありがちな悩みを解決しているのが、顔写真を切り口にした人材管理ツールの「カオナビ」だ。

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最大の特徴は、社員の顔写真がずらりと並ぶインターフェイス。顔写真をクリックすると、その社員のプロフィールに加えて、異動履歴、取得資格、評価といった項目が見られる。これらの項目は導入企業の環境に応じて自由に追加できる。

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顔と名前が一致するメリットは?

いたってシンプルなプロダクトだが、利用シーンはこんな感じ。

人事異動の会議。社員の名前がうろ覚えでも、「彼はこっちだ、あ、いや彼女はこっち」と組織全体の評価バランスを見つつ、最適な組織配置をドラッグ&ドロップ検討できるわけだ。

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カオナビを最初に導入したサイバーエージェントでは、入社年度を横軸、社員のグレードを縦軸に並べた上で、新規事業の責任者やチームを決めるような使い方をしている。

アパレルメーカーのトゥモローランドは、全店舗1200人のスタッフ情報に「身長」という項目を追加。スタッフを店舗異動させる際、身長をばらけさせている。身長の異なるスタッフが自社の洋服を着ることで、来店者が自分に似合うかイメージしやすくするためだ。

日本全国に店舗を構えるトゥモローランドは、エリアマネージャーが1日に数店舗を周ることも少なくない。そんな時は移動中にスマホアプリでスタッフの情報を把握し、一人ひとりに名前で声がけしているそうだ。

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「顔と名前が一致する」メリットは一見わかりにくいかもしれないが、「名前で呼ばれると、自分が認識されているという気持ちになる。その結果、やる気が出るだけでなく、ミスや不正も減る」とカオナビの柳橋仁機社長は語る。

メルカリから日清まで、前年2倍の200社超が導入

カオナビは2012年4月にサービスを開始。2016年5月末時点の導入企業は、前年同月比2倍の224社。社員数が数十人規模のスタートアップから、1万人以上の大企業までが導入する。

TechCrunch Japan読者にお馴染みの企業ではメルカリやgumi、Sansan、ピクスタなど、大企業では学研や日清食品など、意外なところでは、20歳以下のラグビー日本代表が選手選考のために活用している。

初期費用は無料、月額料金は3万9800円〜。IT・ウェブだけでなく、外食業やアパレル・流通業、スポーツ業界など、企業規模や業種を問わずターゲットが広がっていて、今後の成長が予想されそうだ。

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カオナビの柳橋仁機社長

国内の人事システムとしては、中小ベンチャー向けには「人事奉行i10」、大企業向けには数百万円の「OBIC7」、大企業向けには「SAP」などがあり、クラウド上でタレントマネジメントサービスを提供するスタートアップには「CYDAS」もある。

これらの人事システムについて柳橋氏は、顔と名前を一致させることに特化したツールはカオナビ以外になく、競合にはならないと見ている。既存の人事システムとの連携機能も用意していて、「顔と名前並べるだけで事業を伸ばす」と意気込む。

6月8日には、大和企業投資と日本ベンチャーキャピタル(NVCC)の2社から、総額3億円の資金調達を実施。調達した資金は新機能開発やマーケティング活動に当て、2019年3月までに1000社導入を目指す。

労務管理クラウドの「SmartHR」がAPI公開、社内システムなどと連携可能に

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社会保険や雇用保険など労務手続き自動化をするクラウドサービス「SmartHR」。サービスを提供するKUFUは5月25日、開発者向けに「SmartHR for Developers」を公開した。

SmartHR for Developersでは、他社製クラウドサービスとのデータ連携を実現するためのAPIやWebhookを提供しており、すでにマネーフォワード、キメラなどクラウドサービスを提供する4社と連携、もしくは連携に向けて協議を進めている。概要は以下の通り。

マネーフォワード:クラウド給与計算ソフト「MFクラウド給与
従来は給与計算ソフトには社会保険関係の情報を含む膨大な従業員データの入力が必用だったが、本連携により、入社手続きを行った従業員情報を1クリックでMFクラウド給与に取り込むことが可能になる。※すでに実装済み

キメラ:クラウド型採用管理サービス「Talentio

Talentioはキメラが提供する採用管理クラウドサービス。SmartHRとの連携により、入社が決定した内定者のデータを1クリックで同期し、そのまま入社手続を行えるような仕組みを提供する予定。将来的には在籍期間まで含めた採用KPIの分析機能の追加も視野に入れる

ソネット:クラウド型勤怠管理システム「AKASHI
本日公開のクラウド型勤怠管理システム。SmartHRとの連携では、勤怠データを1クリックで取り込み、勤務実績に応じて必用な手続きの有無を自動判別、そのまま手続を作成、役所へウェブ申請まで行えるような仕組みを提供する予定

ヴェルク:受託ビジネスに特化したクラウド型業務サービス「board
受託ビジネスに特化したクラウド型業務システム。連携では、SmartHRが持つ人事情報を活用し、人件費まで考慮された案件単位の損益管理機能を予定する

またSmartHR導入企業であれば、内製の社内システムとSmartHRの自社アカウントをシステム連携できるようになる。すでにSmartHRを利用するメルカリ、VASILYなどが社内システムとの連携を進めている。

各種クラウドサービスとSmartHRのシステムを連携することで、例えば従業員の入退社をトリガーにして各種クラウドサービスへ従業員情報を登録するなど、登録されている従業員データを様々な活用が可能になる。将来的には、外部サービスからデータを取り込んで必要手続きを自動作成したり、シングルサインオンを活用した各種クラウドサービスのアカウント管理をしたりと昨日を拡張させていく予定だ。

「クライアント企業からも『社内システムとSmartHRで従業員データのマスタを二重に持つことは面倒だ』という声があったことからAPI提供に至った」(KUFU代表取締役の宮田昇始氏)。もともと中小規模向けにサービスを提供してきたが、現在では1000〜4000名規模の企業もSmartHRの導入検討を進めているのだという。そういった背景もあり、API提供によるシステム連携に加えて、IP制限や二段階認証など、大企業のニーズにも応えられる機能開発を進めていくとしている。

テック業界の女性雇用をめぐる本当の問題とは?

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【編集部注】この記事の執筆者、June Sugiyama氏はVodafone Americas FoundationのDirectorを務めている。

私は20年以上をテック業界で過ごし、現在はシリコンバレーで新たなイノベーションを促進すべく、ある財団法人に所属している。これまでの活動の中で、多くの起業家との協業や社会的貢献を目指すいくつものスタートアップの成長促進をサポートする機会があったが、女性として今もテック業界で働いていること、更には指導的立場にいることの意味が、私にはよくわかる。

今では、紅一点であることに慣れてさえきた。そして、設立間もないスタートアップや、巨大なハイテク企業に入った際に、受付の女性を見て、彼女がオフィスで唯一の女性であると気付ことにも違和感を抱かなくなった。これまで訪れた交流会やネットワーキングイベントのいくつかは、志を同じくする技術者の集まりというよりも、男子学生の社交クラブのように感じた事もある。誤解しないで頂きたいのは、優秀なスタートアップは存在し、製品やサービスはマーケットの要望に応え、世界をより良いものにしているという意味で、成すべきことは成されている。ただ、もっと業界を良くすることができるのではないだろうか。

何がシリコンバレーから、またテック業界全体から女性を遠ざけているのだろうか?男性優位の環境に、有能な女性が威圧されてしまっているのか?米国における大学卒業生のうち、半数以上を女性が占めているにも関わらず、大手テック企業における女性社員の割合は30%でしかない。

広く報道されている、雇用をめぐった「タレント争奪戦争」や、法的措置につながってしまうような採用プロセスが蔓延する業界において、この事実は警告として捉えられるべきだ。一方で、大手テック企業が女性求職者を締出したり、無視したりしているという訴訟さえ起きているなど、かなりの二極化が見られる。

この問題は複雑で、答えが一つにまとまらないのは目に見えているが、テック業界で働く女性の数を増やすためには、短期・長期の両時間軸から問題をみつめ、制度的に女性の締出しを生じさせている壁を打破する必要がある。

テック業界における問題

最初のステップは、問題があるという事実を認めることだ。シリコンバレーの大企業の一部は、雇用における多様性の欠如の責任を負うべき立場にありながらも、そのうちの多くは、未だに採用方針は公平で、労働環境も女性にとって問題ないものであると考えている。しかし、驚くべきスピードで女性の流出が起きている事が数字からわかる。実際にハーバード・ビジネス・レビューよれば、STEM分野(理数工系分野)で働く女性の50%が、将来的には不利な労働環境を理由に職場を去ることとなる。

ほとんどの女性が、性別によるあからさまな差別を受けることはないものの、その代わりに、表面には現れない女性軽視への直面から孤独を感じることがある。全てのテック企業にとって、この問題を認め、真正面から取り組む時が来たのだ。女性に対してオープンな文化を作り、彼女たちのキャリア形成のサポートができるような採用方針を、男性も一緒になって実施していくべきだ。

これまで訪れた交流会やネットワーキングイベントのいくつかは、志を同じくする技術者の集まりというよりも、男子学生の社交クラブのように感じた事もある。

 

仕事への柔軟な復帰ができるような、画期的な産休制度を提供することで、優秀な女性を社内に留めることができる。また、これによって産休からの復帰後や、キャリアか子供かの選択に迫られた女性たちのバーンアウトを抑制することもできる。更に、より女性に優しい環境づくりに向けて、意識的に女性を指導的立場に置くという努力も必要だ。様々な人がその設計に関わってこそ、全ての人にとってより良いテクノロジーが生まれるというのは言うまでもない。(テック企業の皆さん、マーケットの半分は女性ですよ!)。

VCサイクル改革の必要性

女性起業家にとって、ベンチャーキャピタルからの資金調達は頭痛の種となっており、このままでは女性が次世代のテック企業を率いていくのは難しい。ベンチャーキャピタルのパートナーのうち、わずか9.7%が女性で構成されていることを考えると、2014年に設立されたベンチャーキャピタルが出資する米国のハイテクベンチャーのうち、わずか8.3%にしか女性CEOがいないというPitchBookの調査結果も不思議ではない。

民間VCの出資プロセスにおける男性優位の構図は、様々な話題が飛び交うテック業界でもあまり話されることのないトピックの一つだ。男性のベンチャー投資家は、男性主導のスタートアップに投資し、その取締役に名を連ねる。更には、投資を受けたスタートアップが、男性主導の一大テック企業へと成長していくのだ。男性優位のテック企業の悪循環を断ち切るためには、この男性優位のVCサイクルにも目を向ける必要がある。女性を加入させることで、VCは人口の残り半分に役立つよう投資先を多様化することができるのだ。

若者をターゲットに

人材のパイプラインにより多くの、才能ある若い女性を送りこむことが我々には必要であり、そうすることで業界に対して長期的かつ大きな影響を与えるチャンスが生まれる。Girls Who Codeによれば、女子中学生のうち74%がSTEM科目への興味を示しているにも関わらず、大学での専攻を決める際、コンピュータサイエンスを選択する女子高校生の数は0.4%しかいない。では、なぜこの変化が中学校と高校の間に始まるのだろうか?その答えの一部は、中等教育におけるテクノロジーという選択肢の欠如のほか、女生徒が持つ理数工系分野へのイメージの問題に起因する。

我々は、女生徒に対して科学や数学等の分野で活躍する女性のロールモデルを提示するとともに、テクノロジーに関する様々な実地体験をさせることで、科学や数学が男性向けの分野だというイメージを払拭しなければなならないのだ。Girls Who CodeやTechGirlzといった素晴らしい組織は、既に上記の問題に対しての取り組みを行っており、将来のテック企業はその利益を享受することができる。

STEM教育は、女性に活躍の場を準備するためだけの手段として必要なわけではない。拡大を続ける労働力の需要に対して、単純に男性だけでは数が足りないのだ。米国労働省は、2020年までにコンピュータ技術者の求人数が140万件に及ぶと予測しているが、現状を変えない限り、その頃には米国内の大学の卒業生でこれらの求人に適う人の数は、求人数の29%にしかならないだろう。

私からの簡単なアドバイスは、部屋の中に誰がいて、そのうち何人が女性かということに気づきはじめるということだ。まずは、今自分のいる職場から観察し始めるのも良いだろう。テクノロジーは、我々の職場を多様化するために重要な役割を担っている。

最近、私があるイベントで目にしたKapor Cpitalの取り組みは良い例だ。そのイベント内でKapor Capitalは、アーリーステージのベンチャー企業数社を紹介しており、彼らは、人材開発や人事管理、生産性向上のプロセスにおける一部に改革を起こすことで、テクノロジーをテコに、大規模な人事面でのバイアス軽減に取り組んでいた。そこでは、求人から面接、業務割当、人事評価、昇進、報酬、苦情処理、トレーニング等のプロセス全てについての議論がなされていたのだ。このような考え方に沿った形で、企業は女性参画に向けた数値目標を掲げ始めており、これによって我々も本当に変化が起きているのかというのを測定し、確認することができるようになる。

テック業界における女性の必要性は上記のとおりだが、問題は各企業が女性獲得に必要な改革に取り組む気があるかということだ。変化の波は、徐々に確実に押し寄せている。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake 500px

 

「支払いは次の資金調達の際に」もOK、スタートアップのHR支援をCAVとインテリジェンスが開始

スタートアップの課題となるのは、採用や組織運営などいわゆるHR領域の話であることも少なくない。先日新ファンドの組成を行ったグロービス・キャピタル・マネジメント(GCP)でもIR、PR、HRの「3R」の支援を行っているという話があったが、米国の大手VCなどを中心にHRやPRを支援するような仕組みを内部に持っているケースも少なくない。

そんな中、サイバーエージェント・ベンチャーズ(CAV)も投資先スタートアップのHR支援に乗り出した。同社はインテリジェンスと組み、支援先企業の採用・組織に関する課題解決を支援する組織「HR Support Team」を設置することを明らかにした。

HR Support Teamでは、人材の採用・配置・育成や組織マネジメントに関する相談・コンサルティングを実施するだけでなく、インテリジェンスを通じた人材紹介において、企業の成長ステージに応じて採用手数料や支払期日が変動する特別プランを提供する。ステージにもよるが、「支払いは次の資金調達を行った際に行う」といった条件も用意するのだという。

果たしてそれでビジネスになるのか? とも思うのだが、CAVのHRアクセラレーターとしてHR Support Teamに参加するインテリジェンスの佐古雅亮氏によると、「ビジネス以上にスタートアップの人材活用の可能性を広げて、事業成長を支援するという新しい取り組み。国家戦略ではないが、次のベンチャーに元気になって欲しい。これまでの人材サービスはベンチャーにはフィットしないところもあったので、その領域で新しいことができないか考えた結果」なのだそうだ。

このほかHR Support Teamでは、求職者と起業家を繋ぐネットワーキングイベントやCAVの支援先スタートアップに限定した組織・人材に関するクローズドな勉強会も開催する。なおインテリジェンスとしてはCAV以外でもVCと組んでスタートアップのHR支援を行う予定。GMO VenturePartnersとも共同でスタートアップのHR支援を行うことが決定している。

Evernoteの波乱続く―Alex Pachikovなど著名副社長2人が辞任

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Evernoteでは依然として過渡期が続いているようだ。それを証拠立てるように、国際的にも有名な副社長2人が同社を離れたことが伝えられた。パートナーシップ開発担当副社長でEvernoteの設立最初期から9年以上在籍していたAlex Pachikovが来年1月に新天地を求めることをTechCrunchはつかんだ。またLinkedInのプロフィールによれば、ブランド担当副社長のAndrew Sinkovも最近Evernoteを離れている。

こうした人材の流出の5ヶ月ほど前に、CEOで共同ファウンダーでもあるフィル・リビンがエグゼクティブ・チェエアマンに移され、元Googler幹部のChris O’NeillがCEOのホットシートに座るという人事があった。リビンは名門ベンチャーキャピタルのGeneral Catalyst Partnersのマネージング・ディレクターも兼任しており、EvernoteのCEOを退くことになったのは「日々の決定を行う時間が取れなくなったのが理由であり、まったく自分の意思で行われたものだ」と強調している。しかしTechCrunchは先月、COOのLinda Kozlowskiが今年一杯で会社を去るという情報を得た。

EvernoteもPachikovも辞任の件の取材には回答していない。

Evernoteにとって2015年は波乱の年となった。経営陣の交代に加えて、同社はスタッフと業務も一新した。海外オフィス3箇所を閉鎖し、47人を解雇し、Evernote Food、Skitch、Clearly、Pebble Watchという人気アプリをシャットダウンすることを発表した。(Mac版のSkitchのみ斧を免れたらしい)。Evernoteではこうした改革を「コア・ビジネスに資源を集中するため」としている。

Pachikovのチームにはさらに大きな改革が行われ、ある情報源はこれを「新スタッフによって旧メンバーは大虐殺された」と表現した。 チームのカギとなってきた人材、パートナーシップ担当ディレクターのTammy Sun、パートナーシップ担当上級ディレクターのPearl Woon-TaiはボスのPachikovに習うように同社を離れた。スタンフォードの卒業生であるWoon-TaiはFacebookに移り、現在そこでモバイル事業のパートナーシップを担当している。

主要スタッフの離職はそれだけでは会社がトラブルに直面していることを意味しない。投資家はEvernoteのビジネスを詳細に検討した結果、不調に陥っており経営の根本的立て直しが必要だと結論したようだ。Evernoteの新CEO、O’NeillはEvernoteを支えるビジネスの柱を新たに構築しなければならないが、それを全く新しい陣容で実行できるのはあながち悪いことではないだろう。結局ビジネスでは結果がすべてだ。Evernoteにとって2016年は非常に重要な再出発の年になる。

画像: WhatleyDude/Flickr UNDER A CC BY 2.0 LICENSE

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ビジネスSNS「Wantedly」がいよいよオープン化、3つの機能が外部サイトでも利用可能に

ウォンテッドリー代表取締役の仲暁子氏(中央)とOpen APIを担当した相川直視氏(左)、坂部広大氏(右)

ウォンテッドリー代表取締役の仲暁子氏(中央)とOpen APIを担当した相川直視氏(左)、坂部広大氏(右)

ウォンテッドリーの提供するビジネスSNS「Wantedly」。6月に発表していたプラットフォームのオープン化がいよいよスタートした。同社は11月9日よりOpen APIの提供を開始。すでに発表されていたサイバーエージェント、クックパッド、ヤフー、ディー・エヌ・エー(DeNA)の4社に加えて、採用管理システムを提供するジャパンジョブポスティングサービス、ワークス・ジャパン、イグナイトアイがローンチパートナーとしてOpen APIの導入を実施。また、本日よりすべての企業に機能を開放する。ウォンテッドリーでは年内に100 社の導入を目指す。

Open APIを利用することで、Wantedlyのサイト外であっても同サービスの機能を利用できるようになるが、今回提供されるのは「話を聞きに行きたいボタン」「会社フィードボックス」「フォーム自動入力ボタン」の3つの機能だ。Wantedlyの会社アカウントを作成し、自動生成されたJavaScriptを一行ホームページに挿入すれば、これらの機能を外部サイトに導入できるようになる。これによって従来の応募フローには乗って来なかった潜在転職者や、採用のフローが面倒で離脱してしまうような転職者とも出会えることが期待できる。

Wantedly には、「本選考へのエントリ-」というかっちりしたものエントリーフォームではなく、カジュアルに企業へ遊びに行きたいという意思を表示する「話を聞きに行きたいボタン」がある。これまでWantedly内のクライアント企業各社のページでのみの利用できたこの機能が、外部サイト(例えばクライアント企業のコーポレートサイトなど)にも設置可能になる。

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「話を聞きに行きたい」ボタンのイメージ

「会社フィード」は、Wantedly上に日々の会社の様子を投稿して情報を更新できる機能。ユーザーは気になる会社フィードをフォローすることで、最新の企業情報を受け取ることができる。この会社フィードを外部サイトに表示するのが「会社フィードボックス」だ。

「会社フィードボックス」のイメージ

「会社フィードボックス」のイメージ

「フォーム自動入力ボタン」は、Wantedly上にプロフィールを登録するユーザーが、ワンクリックでその情報をほかのサイトのプロフィール入力フォームにコピーできる機能。例えば転職希望者がWantedlyで興味のある企業を見つけ、話を聞きに行ったあとでその企業の選考に正式にエントリーする場合、企業のエントリーページにこのボタンが設置されていれば、ワンクリックで情報を入力できるようになる。今まではコーポレートサイトにWantedlyの自社ページのリンクを用意するケースが多かったそうだが、今後はWantedly上の更新情報が直接コーポレートサイトなどから閲覧できることになる。

Wantedlyの月間ユーザー数は60万人。クライアントは1万2000社にまで拡大した。ウォンテッドリー代表取締役の仲暁子氏によると「もともと4000社くらいまではスタートアップが中心だったが、その領域はほぼ取り切って、そこからは中小企業や大企業、病院、学校、行政など利用企業の裾野が広がっている状況」という。

BuzzFeed Japan、思わぬ大物を創刊編集長に起用

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驚きの採用劇と言っても良いのではなかろうか。BuzzFeedジャパンは創刊編集長として、朝日新聞で長い経験をもつジャーナリストである古田大輔氏を起用することとしたのだ。BuzzFeedによれば、日本国内でのサービススタートに向けて、日本のエディトリアルチームの採用や、コンテンツ戦略を統括する立場になるのだとのこと。

日本の中でももっとも歴史を持ち、760万の読者を抱える朝日新聞社において、古田氏は東南アジア特派員、およびシンガポール支局長を務めた経験をもつ。2013年には東京に戻り、「朝日新聞デジタル」の編集に携わり、朝日新聞社の運営するBuzzFeed風サービスの「withnews」に記事を書いたり、またインタラクティブ要素やビジュアル要素を扱う作業も手がけていた。

BuzzFeedによると、古田氏はまずBuzzFeed JapanのBuzz、Life、およびNewsセクションおよびFacebookやSnapchatなどのソーシャルメディア上で扱われるコンテンツについて作業を行うチームメンバーの人選に携わるのだとのこと。

BuzzFeedは現在、9ヵ国でローカルコンテンツを扱っている。ただし、地元企業とのジョイントベンチャーとして運営するのは日本が初めてとなる。ジョイントするのはYahoo Japanで、日本でもっとも人気のあるサーチポータルのひとつであり、Googleとトップ争いを繰り広げている。

Yahoo Japanと連携することにより、同社の広告ネットワークを活用することができるのが、BuzzFeedにとっての大きな魅力となる(Yahoo Japan本体だけでも月間600億のページビューがある)。BuzzFeed Japanでの広告についてはYahoo Japanが独占販売権を持つことになっている。

ところでYahoo Japan自体もソフトバンクおよびYahooのジョイントベンチャーとなっている。ただしYahooは35.5%を保有する株式を売却する機会をうかがっているようでもある。

なお、Yahoo JapanはTwitterDigital Advertising Consortium、およびIntegral Ad Networkなどとも広告パートナー契約を結んでいる。

原文へ

(翻訳:Maeda, H

経験や直感よりデータ、人材採用に広がるデータ・ドリブンなアプローチ

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編集部注:この原稿は鈴木仁志氏による寄稿である。鈴木氏は人事・採用のコンサルティング・アウトソーシングのレジェンダ・グループのシンガポール法人の代表取締役社長を務めていて、シンガポールを拠点にクラウド採用管理システム「ACCUUM」(アキューム)をシンガポールと日本向けに提供している。

企業の人材採用活動において経験値や感覚値に頼るだけでなく、データ分析に基づいて採用を行う企業が増えてきている。アメリカでは、データ分析に基づいて採用活動のPDCAを回す「データ・ドリブン・リクルーティング」という概念が確立されていてソリューションも多く存在する。私自身がデータ・ドリブン・リクルーティングについて話す際に例として使う、映画「マネーボール」を交えながら、アメリカのソリューションを中心に紹介したい。

「マネーボール」は米国メジャーリーグベースボールでの実話を基にしている。主役であるオークランド・アスレチックスのGMビリー・ビーンが、データに基づく選手分析手法「セイバーメトリクス」を用いて、当時資金もない弱小チームを2002年にはア・リーグ記録の20連勝を達成するチームに育てるというストーリーだ。TechCrunch Japan読者でこの映画を観た人は、「データ分析 x ベースボール」という部分に少なからず興味をひかれたのではないだろうか。

「マネーボール」の舞台となったアメリカでは、様々な領域においてビッグデータ活用が謳われており、ここ数年は人事にもビッグデータを活用するのは当たり前という風潮になってきている。それに伴い、データ・ドリブン・リクルーティングという言葉も頻繁に使われるようになってきた。

採用プロセスは細分化すればきりがないのだが、一番シンプルにするとこんな感じだろうか。

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上記の採用プロセスの順に、データ・ドリブン・リクルーティングについて説明したい。

必要な人を決める

「探す/集める」という行為の前には、必要な人を決める(リクルーターたちは”求める人物像の策定”と呼んだりする)必要がある。社内のハイパフォーマーを特定して共通する特徴を分析したり、成功するために必要なスキルや経験を明文化したりすることだ。カルチャーフィットなど含め、社内ディスカッションなどで定性的に行われる部分もあれば、人事システムのタレントマネジメントモジュールやアセスメントツールなどを活用して定量的に行われることも多い。

「マネーボール」では、「セイバーメトリクス」という選手をデータで分析する手法が用いられる。これはアメリカ人野球ライター・野球史研究家・野球統計家であるビル・ジェームズらによって提唱された分析手法で、主観的・伝統的な評価軸ではなく客観的・統計的に選手を評価するものだ。例えば投手の評価においては、当時は伝統的に重要とされていた防御率は野手の守備力の影響をうけるため純粋な投手の力ではないとし、被ホームラン数、奪三振数、与四球数などを重要視する。ビル・ジェームズがこのような指標をもとに上原浩治投手を高く評価し、アドバイザーを務めるボストン・レッドソックスに獲得を強く勧めた話は有名だ。

例えば「マネーボール」では、資金難を理由に放出せざるをえないジェイソン・ジアンビやジョニー・デイモンといった2001年シーズンのスター選手の穴をどう埋めるかについて、ブラッド・ピット演ずるGMビリー・ビーンが「セイバーメトリクス」を信じない古株のスカウトマン達と議論しているシーンがある。2001年のオークランド・アスレチックス選手の年俸総額は約3380万ドル(30チーム中29位)、選手一人当たり平均にしても125万ドルと、総額・選手平均ともにダントツ1位のヤンキースの3分の1だった。その中で、超主力選手だったジアンビ(年俸710万ドル)とデイモン(同410万ドル)は、2人だけでチーム年俸総額の3分の1をしめていたのだ。

2001年に38本のホームランを打ったジアンビの代わりに同じタイプの選手を探しているスカウトマン対して、GMビリーは主要3選手の出塁率を平均すると3割6分4厘(0.364)であることから、出塁率が0.364の選手を3人探して穴を埋めろと指示を出した。スカウトの勘・経験やプレイヤーの体格といった定性的な視点はもちろん、ホームラン数や打率といった従来信じられていたKPIに頼ることを否定し、チームが勝つために必要なプレイヤーは出塁率や長打率などの高い選手であるという結論を導き出し、それに基づいてトレードやドラフトリスト作成の基準を決めたのだ。

探す/集める

求める人物像が決まったら、それを集めるのはリクルーターだ。リクルーティングにおいて、求人サイトやソーシャル・リクルーティング・サービスなどに代表される「探す/集める」領域は、サービスプロバイダーが一番多い部分といえるだろう。探す/集めるの領域のプレイヤー数が多い理由の1つは、1社につき1システムしか導入することのない採用管理システムなどの業務サポートシステムとは違い、メディアとして1社が複数利用することが多く、市場が大きいということがあるのだろう。全国求人情報協会発表のデータによると、2014年は年間540万件の求人がネット求人サイトに掲載された。求人サイト利用による1人当たりの採用コストは幅が広く(中途正社員採用:20万円〜150万円程度、新卒採用:100万円〜300万円程度、パート・アルバイト採用:2万円〜100万円程度)、掲載無料&成功報酬モデルもある。仮に平均単価が10万円としても5000億円を超える市場規模がある。

掲載型の求人広告とは少し異なるアプローチで、ダイレクト・ソーシングとも呼ばれる「探す」という行為もある。このアプローチでは、Linkedinのようなデータベースを活用することも可能だが、アメリカでは「People Aggregator(人の情報収集システム)」なども注目されており、EnteloやMonsterに買収されたTalentBinなどが有名だ。「Google for Jobs」(求人版のGoogle)と言われるIndeedがあれば、このようなサービスは「Google for Talent」(タレント版のGoogle)と呼ばれたりする。Enteloのサービスは検索した個人のEmail、Facebook、Twitter、LinkedIn、あるいはエンジニア向けサイトで個々人の技術スキルも分かるGitHub、StackOverflowなどの様々なサービスのアカウントをEntelo上でまとめるだけでなく、「現職への転職から24カ月目の節目は転職率が高い」とか「LinkedInのプロフィールを更新してから一定期間は転職率が高い」といったソーシャルシグナルの分析に基づく独自アルゴリズムによりターゲット人物をランキングしたり、その個人の各種サービス利用頻度などから直接連絡を取るのにベストな手段をサジェストしたりする。この辺りは「マネーボール」の中で、GMビリーが他球団と電話でトレード交渉を進める横で、GM補佐であるイェール大学卒業のピーター・ブランドが、ラップトップでデータを見ながらトレードで取得すべき選手の名前を次々に挙げていくシーンなどが思い浮かぶだろう。

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そして「集める」という行為をデータ・ドリブンで行うには、現状のチャネル分析や候補者行動分析などの小さなPDCAを常に繰り返し実行する必要がある。エクセルやグーグルフォームでなく、 採用管理システムを上手く活用してリアルタイムにデータ分析を行うことが重要となる。チャネル毎の応募数や採用数だけでなく、利用デバイスやブラウザなども分析することでポジション毎に最適なチャネルを選ぶことができる。この領域にはJobviteを中心に、JibeGreenhouseSmartRecruitersなど2500万〜5500万ドルを調達して注目されているアメリカ発のサービスが多く、当社が提供するクラウド採用管理システム「ACCUUM(アキューム)」もこの領域でサービスを提供している。これらの採用システムに共通するコア機能としてはATS(Applicant Tracking System)と呼ばれる応募者管理機能があり、ウェブサイトや人材紹介会社からの候補者を一元管理しチャネル分析などを行えるが、それ以外のマネタイズの方法は各社異なる。例えばJobviteは後述するビデオ面接機能を最近強化して選考側を強化している一方、SmartRecruitersは管理画面からIndeedやLinkedInなど外部求人サイトへ簡単に掲載させる機能により母集団形成側を強化している。OracleのTaleoやSAPのSuccessfactorsなど大規模人事管理システムではこのような機能は、MultiPostingなどとAPIで連携しているケースが多いが、採用管理システムではこのような機能も自前で持つところが増えてきている。こういったサービスを活用すれば、採用企業は、いくつもの外部サービスにログインして一つひとつ求人情報の掲載をしなくて済む。のみならず、今後は外部サイトに簡単に掲載できるだけでなく、ビッグデータ分析によって職種毎に使うべき求人サービスをサジェストする機能なども強化されていくことだろう。

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前述の求人サイトの掲載価格は、アメリカの求人サイトMonsterが1職種月額5万円以下(375米ドル)、東南アジアで強いJobStreetが1職種月額1万円以下(100シンガポールドル)であることを考えると、日本の求人掲載料はまだまだ高い。無料掲載のビズリーチのスタンバイや、月額3万円から職種数無制限で掲載できるウォンテッドリーなどが市場に変化を与えているが、自社の応募データを分析して、データ・ドリブン・リクルーティングで自社に合ったチャネル戦略を立てることにより、採用単価や採用スピードを改善できる余地は大きい。

選ぶ

「探す/集める」の次は「選ぶ」ステップになる。この領域において注目されているリクルーティングサービスの1つがビデオインタビュープラットフォームのHireVueだ。既述の通りJobviteなどが追加機能として提供するだけでなく、GreenJobInterviewSparkHireなどスタンドアローンのサービスも多いが、9200万ドルを調達しているHireVueがプロダクトとしてもクライアントベースとしても抜きん出ている印象だ。サービスがスタートした当初の質の低いSkypeといった印象から大きく進化を続け、今では総合的な採用プラットフォームになっている。その強みのコアは、やはりビデオインタビュー部分だ。Fortune 500 企業などを含む500社以上のユーザー企業を誇るHireVueによると、平均して1ポジションに約100名の応募があるが、そのうち面接の機会を与えられるのはたったの6人だという。ビデオ録画機能を使ってより多くの候補者に質問に答えさせ、面接での質問に対する300万件以上の候補者の発言などの分析をもとにしたHireVue独自のアルゴリズムで、やる気・情熱・感情・性格などを予測する。履歴書や職務経歴書だけで100名から6名に絞り込むよりも、より正確に企業やポジションに合った候補者を選ぶことが可能という。

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GMのビリーがニューヨーク・ヤンキースからデイビット・ジャスティスという選手の獲得を提案した時、年齢による衰えから2001年シーズンでは打率はピーク時の0.329から0.241まで落ち、ホームラン数は41本から18本に落ちていること、そして足の故障や守備のまずさなどを理由にスカウト達は猛反対をした。ただし、既述の出塁率が0.333と目標値に近く、また、年俸700万ドルの半分をヤンキースが負担するという好条件もあり、アスレチックはジャスティスを獲得した。従来のKPIだけで見ていたら獲得リストにも載っていなかった選手だが、GMビリーとGM補佐ピーターのアプローチによって選ばれた選手の一人だ。

口説く

最後は当然「口説く」ことが必要になる。私の知人が経営する会社では、本年度は特に採用が最重要課題であるという理由から、会社のトップセールスを1年間限定でリクルーティングの責任者においた。最近は日本でもこのようなケースが見られるが、アメリカではマーケティングや営業のスーパースターをリクルーティングチームに移すことは珍しいことではなくなってきている。もちろんただ単にコミュニケーション能力があるというだけの話ではない。口説く相手が100人いれば100通りの異なるストーリーを考えることが必要になるからだ。

映画の最終的な脚本ではカットされてしまっているが、出回っている英語版の脚本ドラフトで印象に残るシーンがあった。GMのビリーとGM補佐のピーターが、一塁手のスコット・ハッテバーグと話しているシーンだ。ハッテバーグは怪我によりキャッチャーとしてのキャリアを捨てざるを得なくなり、スカウト達が獲得を反対した選手の一人だ。この選手を一塁手にコンバートして獲得するというオファーを出したのだが、 実はハッテバーグ本人ですら何故アスレチックスがそこまで興味を示したのか、分からずにいた。入団後になるが、本人の過去のバッティングデータからストライクやヒットの多いゾーンについての傾向を教えると、本人はなるほどという反応を示す。次に、打席平均の相手ピッチャー投球数の4球という数字は、バリー・ボンズやジェイソン・ジアンビといった超一流打者の5球という数字には及ばないものの非常に良い数字であり、相手ピッチャーを疲れさせるためには非常に重要であるという根拠とともに「One of the reasons why we love you.(僕たちが君を高く評価する理由のひとつだ。)」と伝えると、この数字の重要性に気付いていなかったハッテバーグも、驚きをもって興味を示す。

情熱やフィーリングはもちろん重要だが、ビリー・ビーンの様にリサーチデータを基に候補者一人ひとりに合わせたストーリーで口説けるようになることもリクルーターとして重要なスキルの1つであり、そのためにはいくつかのソリューションを使いこなすことも必要だろう。

スクーとエン・ジャパンが業務提携、転職希望者のスキル育成支援で特別カリキュラムを提供

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オンライン動画学習サービス「schoo WEB-campus」を運営するスクーと総合求人・転職支援サービス「エン転職」などを展開するエン・ジャパンが8月18日、業務提携を発表した。

今回の提携はウェブ・IT業界の人材不足の解消に向けた新しい人材の創出と企業から求められる人材の育成を目指すもの。スキルを持った人材を育成すべく、まず最初の取り組みとして、エン転職のユーザーに「schoo WEB-campus」の「Webデザイナー」(3コース:14授業、計12時間)、「Webプログラマー」(4コース:13授業、計13時間)「Webマーケター」(2コース:12授業、計12時間)の講座を無料で配信する。

これだけであれば、schooのコンテンツの配信先が1つ増えたというだけの話だが、9月からは人材の育成、転職についてより具体的な支援をしていくのだという。具体的には、スクーがエン転職のユーザーに対して、プログラミングやウェブデザインなどの特別カリキュラムを提供し、すべてを受講したユーザーに対して修了認定を行う。終了認定されたユーザーに対してはエン・ジャパンが転職サポートを行うほか、入社後の活躍・定着に向けたフォローを行うとしている。

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医療系スタートアップのメドレーが三井住友海上、MRT、グリーから3億円を調達

メドレーのメンバーら。左から2番目が石崎氏、3番目が
5番目が代表取締役の瀧口浩平氏

メドレーのメンバーら。左から3番目が代表取締役医師の豊田剛一郎氏、5番目が代表取締役の瀧口浩平氏

メドレーのメンバーら。左から3番目が代表取締役医師の豊田剛一郎氏、5番目が代表取締役の瀧口浩平氏

医療系スタートアップのメドレーは6月30日、三井住友海上キャピタル、MRT、グリーおよび個人株主を引き受けとする総額3億円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。

今回メドレーに出資したMRTは、外勤紹介サービスの「Gaikin」、転職紹介サービスの「career」(いずれもMRTのコーポレートサイトで提供)、医局向けサービス「ネット医局」、ヘルスケア情報サイト「GoodDoctors」など、医療従事者向けのサービスを展開している。今後は、ジョブメドレーとGaikinのサービス連携、医師や医療従事者のネットワーク拡大、新サービスの共同開発を進めるとしている。

メドレーは2009年の設立。代表取締役の瀧口浩平氏は家族のがん治療の経験から、医療現場の効率化、情報の非対称性といった課題に気付き、それを改善すべく医療領域で起業した(同士は学生時代にも一度起業しており、これが二度目の起業となる)。

同年11月には医療・介護業界専門求人サイトの「ジョブメドレー」の提供を開始。2015年2月には瀧口氏と小、中学校時代からの友人である医師の豊田剛一郎氏を代表取締役医師として招聘。あわせてオンライン病気事典「MEDLEY」を公開した。また、2015年にはグリー傘下で介護施設の口コミサイト「介護のほんね」を提供していたプラチナファクトリーを株式交換により子会社化している。

同社にはこれまでにウノウ創業者でメルカリ代表取締役の山田進太郎氏やアトランティス創業者の木村新司氏といった個人投資家のほか、East Ventures、インキュベイトファンドなどが出資している。

社員数は現在約60人。役員を中心に、東大医学部卒業生も4人在席している。「2009年に創業した時は、医療分野をやりたいエンジニアなんかいなかった。だここ最近はApple Watchでヘルスケア情報が取得できるようになったりして、医療領域に注目が集まってきている」(瀧口氏)

医療情報の提供、「生半可な気持ちでやっていくつもりはない」

今回の増資を受け、メドレーでは前述のMRTとの協業に加えて、オンライン病気事典MEDLEYおよび医療系人材の求人サイトジョブメドレーのサービス開発を加速するとしている。

MEDLEYでは、医師や医療従事者が執筆する情報を、220人の専門医が校正。一度掲載された情報についても逐次アップデートするという体制を取っているそうだ。「病気を調べるときにパッと思い浮かぶ病気のサイトにしたい。将来的には疾患の基礎情報からQ&Aまでを網羅する。医者1人1人も時間が限られている。診断したあと、(MEDLEYの)URLや印刷物を渡して『聞きそびれ』をなくすようなものにしたい」(豊田氏)。

ここ最近では医療情報サイトもいくつか出ているが、その一部は、情報の信頼性に不安をおぼえるものも少なくない。例えば、ある医療情報サイトで「子宮肉腫」という項目が「良性の腫瘍」と説明されているのだが、実際は「良性の子宮筋腫と間違いやすい、悪性の腫瘍」なのだそう。競合サイトでこういった生死に関わる情報が正しく扱われていない背景を踏まえて豊田氏は前述のコンテンツチェック体制を強調。「サービスを生半可な気持ちでやっていくつもりはない」と語る。

またジョブメドレーも売上は伸びており(グラフを見せてもらったが、金額自体は非公開とのこと)、「採用決定数も競合比較で多くなっている」(瀧口氏)のだそう。

将来的には、遠隔医療分野を支援、効率化するサービスの提供も予定しているという。こちらも具体的な話は非公開ということだったが>、豊田氏いわく「医療は『サイエンスとアート』なんて言われることがある。そのサイエンスの部分をシステムに置き換えて、アート、つまりコミュニケーションなどのために医師が時間を使えるようにしたい」とのこと。

オンライン学習サービスのスクーがクラウドワークスと提携、「人材x教育」で地方創生に臨む

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人は誰しもキャリアアップしたいと願うものだろう。キャリアアップを実現するために学び、スキルを身に付け、自分の価値を高めていく。企業に勤めていればトレーニングも提供されるものだが、クラウドワーカーにとっては先行投資でありそのハードルは低くない。だがそれが無料で受講できるとしたらどうだろうか。

インターネットの動画配信を利用したオンライン学習サービス「schoo WEB-campus(スクー)」を運営するスクーは6月12日、クラウドソーシングサービス「クラウドワークス」を運営するクラウドワークスとの提携を発表した。提携第1弾のプロジェクトとして、クラウドワークスに所属するすべてのワーカーに対し、無料で特別カリキュラムを提供するという。

提供されるカリキュラムはデザイナー向けとライター向けの2種類。schooは通常、リアルタイムでの受講(視聴)は無料だが、録画での受講は有料となっている。だがクラウドワークスの会員であれば録画受講も無料になる。

スクー代表取締役の森健志郎氏は、今回の提携を「人材と教育の統合の第一歩」と話す。短期的にはクラウドワークスが抱える65万人もの利用者を取り込めるメリットがあるが、中長期的には利用者の学習データと就労データを結び付け、よりビジネスに直結するカリキュラムを提供することが狙いだ。今後はスクーのカリキュラムを一定時間受講したらクラウドワークスのサイトでバッジを表示するなど、ワーカーのスキルを担保する仕組みも作っていきたいという。

クラウドワークスにとってもメリットは大きい。同社では地方在住のワーカーが多い点を挙げ(約9割が東京都外)、オンライン学習によるスキルの底上げを目指す。また、ワーカーとして登録したものの仕事の実績がないうちは簡単に受注できない現実があるとし、スクーの受講履歴バッジでキャリアを担保し、これを解消したいと話す。

両社が共通して語っていたのが「地方創生」への思いだ。都市部への人口一極集中で都市消滅の問題が叫ばれる中、いつでもどこでも働けるクラウドソーシングは問題解決の糸口となる可能性がある。とはいえ、器を用意しただけでは足りず、仕事を受注できるレベルにまで教育する事が欠かせない。スクーのトレーニングでワーカーのスキルを上げ、将来的には国内だけでなく、海外からの案件も受注出来るレベルにまで育てたいと意気込む。

なおクラウドワークスは6月11日にサイバーエージェントを割当先とする約5億円の第三者割当増資などで合計約30億円の資金を調達すると発表している。今後は今回のような業務提携に加え、M&Aや資本提携などを加速させるとしている。