【コラム】自動運転車の普及にはまず運転支援システムが消費者に信頼されることが必要

編集部注:本稿の著者Tarik Bolat(タリック・ボラット)氏はWaveSenseのCEO兼共同設立者。

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この1年間で交わされてきた自動運転車(AV)に関する議論の多くが「いつ自動運転車が公道で標準になるのか」という同じ疑問を中心に展開された。

業界のリーダーたちは2016年に、AVが路上を支配するというビッグゲームを論じていたが、今日では、一部の専門家たちはレベル4の広範な普及を10年以上先に考えている。しかしながら、そのようなタイムラインであっても、自動車メーカーが技術的にも行動的にも大きな障壁を乗り越えなければうまくいかない。AVを消費者に届けるという取り組みは予想以上に困難であり、その中核を担うのは大衆の信頼を得ることだ。

消費者の信頼度とAVの大規模な普及は密接に関係している。予測タイムラインの達成を目指し、この不可欠となる信頼の構築をすぐにも開始するために、自動車メーカーは先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver Assistance System)への自動運転機能の導入を加速すべきである。

現行のADAS技術が直面している課題

実際、消費者はまだ自分たちのクルマのADAS機能に信頼を置いていない。全米自動車協会(AAA)交通安全財団が2021年に実施した調査によると、ドライバーの80%が自動緊急ブレーキや車線維持補助などの現行の車両安全システムについて機能改善を望んでおり、現在提供されているシステムに対する消費者の信頼感の欠如が指摘されている。

Cruiseがカリフォルニア州で無人運転のテスト車両による乗客輸送の許可を取得するなど、業界における最近の顕著な進展にもかかわらず、AAAの調査によると、自動運転車に乗ることに抵抗を感じないのはドライバーの10人に1人程度だという。消費者はAV技術の急速な進歩を認識していると思われるが、こうしたユーザーからの信頼の欠如は完全な普及に対する大きな障害となり、技術がどれほど発展しようと、業界に脅威をもたらし得るものとなるだろう。

消費者の信頼の醸成を促進するために、業界は消費者の需要を満たすより高度で信頼性の高いADASの実現に目下注力する必要がある。しかし現行のオファリングは、多くの消費者が参加する前に解決すべき大きな課題に直面している。

  1. 一般的な悪条件下での信頼性の欠如:LiDARやカメラのような技術の範囲は、周囲を「見る」ことができるものに限定される。これらのシステムは、車両のセンサーが雪、土、漂積物などで覆われてしまうことで、容易に妨害される可能性がある。さらに、雪や大雨、オフロード条件により車線表示が不鮮明になったり、GPS信号の強度が不足したりすると、車両の位置を追跡する一般的なセンサーが正しく機能しないことが懸念される。
  2. 検知不良:劣化した車線表示、歩行者、他の車両、または一般的な路上物をADAS技術が検知できず、運転者や歩行者が負傷したり死亡したりした事例がいくつか発生している。
  3. 一般大衆からの理解が低い:独立して動作するように設計されたADASの機能がある一方で、システムの能力を最大限に活用して安全性を最大化する方法の理解に関して、一般大衆の知識における一貫した欠如が依然として存在する。この認識の欠如により、不注意にこの技術を誤用する運転者だけでなく、道路を共有する運転者にも不必要な脅威がもたらされる。

これらの課題に対処し、消費者に向けたより良い自動運転エクスペリエンスを創出することは、将来のAV技術の大規模普及に向けた必須のステップである。この領域で消費者の支持を得て変化を起こすための最も即時の機会は、信頼性とユーザーエクスペリエンスの向上を図ることにあり、特に動的な車両安全システムに関してはそれが重要となる。その目的において自動運転車に求められるのは、現行のシステムを強化し、その結果として自動化機能の安全性に対する消費者の信頼を高める、センサーとソフトウェアの改良である。

車両ポジショニングに関する新たな視点

この10年間で、業界はポジショニングシステムにおいて多様な進歩を遂げてきた。ポジショニングシステムとは、車道上でセンチ単位まで車両の位置を特定するシステムであり、従来のハードウェアスタックにとって極めて重要な追加機能である。そのため専門家たちは、堅牢な車両測位の最後の未完成要素として、地中レーダー(GPR、Ground Penetrating Radar)や新しいマッピング技法などの技術に賭けている。過酷な運転条件における操作や、高度に動的な環境のナビゲーションを行う能力に期待を寄せるものだ。

AVの信頼性向上にはさまざまな手段があることは明らかだが、自動車メーカーは依然として、広範な普及に必要な性能の進化を実現するアプローチを模索している。

これらの技術を傑出させる差別化要因を詳しく考察すると、次の3つの重要な問題にどのように対処するかが共通の論旨として見えてくる。オープンハイウェイや駐車場内、あるいはクルマがトラックに囲まれて視界が遮られている場合などにおける路側機能の不足、明確で一貫性のある車線表示が前提となるカメラベースシステムへの依存、そして地表のシーンが刻々と変化し、HDマップが途端に使用できなくなるような急激な環境の変化、である。こうした共通に見られる課題により、消費者は一貫性のない、信頼性の低いADAS機能に不満を抱いている。

これらの重要なギャップを克服する1つの方法として、信頼性の高い車両ポジショニングを確保するための別の手段を模索することが挙げられる。例えば、地中レーダー(GPR)は、今日の自動化システムが直面しているGPSの可用性の不足やその他の一般的な障害がある中で、悪天候や悪路での正確な位置を車両が特定できるようにする。自律性向上の実現性を示すことが肝要である。自動車メーカーは、これらの新しいアプローチを車両に追加することで、より信頼性が高く精度の高いADAS機能を生成し、自動運転エクスペリエンスを保護することができるだろう。

消費者の信頼と大規模なAV普及の足がかりとしてADASに傾注

Partners for Automated Vehicle Education(PAVE)の最近の調査によると、ADAS技術に詳しい消費者は自動運転車に肯定的な傾向があり、その75%は現在ADAS機能を持つクルマを所有し、将来の安全技術に期待を寄せている。これは、現行のADAS機能への消費者のエンゲージメントが、将来のAV普及に対するより肯定的な態度につながる可能性があることを示している。

業界として、私たちはどこに向かうのか。現在のADASシステムにおいて、自動運転の将来の課題に正面から取り組むことで解決すべき唯一の機会が存在することに、多くの人が気づいている。そうでなければ、自動運転は、大量普及を妨げる将来の難題となってしまう。

私たちは、ADAS技術を用いてこれらの重要な課題に取り組み、より優れた運転エクスペリエンスを創造して、大衆の信頼を得る必要がある。高性能なADASを大規模AV普及への経路として用いることにより、目的地に安全に到達できるであろう。

業界は、消費者と歩調を合わせながら、安全で自律的な未来を築くことができるはずだ。

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(文:Tarik Bolat、翻訳:Dragonfly)

半導体不足解消と新車需要によりフォードは2021年の利益増加を予想

Ford(フォード)は、2021年の第2四半期に、半導体不足がピークを迎えたにもかかわらず、SUV「Bronco(ブロンコ)」などの新型車の強い需要が追い風となり、予想を上回る営業成績を収めたと、直近の決算報告で述べた。

4月の時点で同社は、第2四半期に予定していた生産台数の約50%が失われ、同期間の利益が赤字になると予想していた。しかし、決算報告によると、会社全体で11億ドル(約1200億円)の利払前・税引前利益を計上することができたという。

米国時間7月28日の決算説明会で、フォードのJim Farley(ジム・ファーレイ)CEOが「すでに利益が出ている」と述べた電気自動車「Mustang Mach-E(マスタング・マックE)」をはじめとするフォード車に対する需要は、米国では2020年の7倍に増えており「半導体の供給が安定し、需要により密接に沿うことが可能になれば、事業は『バネのように跳ね返る』」と、フォードから発表された声明でファーレイ氏は語っている。

今後については「半導体の供給状況の改善が予想される中、自動車生産量の増加に伴い下半期の運転資本の好転が期待されるため、通期の調整後フリー・キャッシュ・フローの目標を40億ドル(4380億円)から50億ドル(約5480億円)に引き上げました」と、同社は述べている。

表面上は楽観的に見えるものの、会見中に質問を受けたファーレイ氏は、もう少し慎重で現実的な意見を述べた。

「半導体不足の問題は2021年いっぱい続くと見られ、来年の前半にも影響が出る可能性があります」と語った同氏は、次のように続けた。「我々はFABサプライヤー各社と話し合いを続けてきました。彼らは資源を再配分し、自動車向けの供給を増やしていると言っています。しかし、この困難を乗り越えたと本当に安心できるまで、予断を許さないと私は思います」。

自動車業界は、第3四半期に入ってからチップの供給に改善の兆しが見えてきているものの「状況はまだ流動的だ」とファーレイ氏は語っている。

ファーレイ氏は間違っていない。Semiconductor Industry Association(半導体工業会)によると、半導体の売上は、2021年4月に前月比1.9%増加したのに対し、5月には4.1%増加したという。さらに、6月に発表されたWorld Semiconductor Trade Statistics(世界半導体市場統計)の報告によれば、世界における半導体の年間売上高は、2021年に19.7%、2022年に8.8%増加すると予測されている。今月初め、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾積体電路製造公司)は、生産努力を強化したことにより、今期から製造現場での半導体不足が大幅に解消されると予想していると述べていた。同社は、すでに2021年の上半期にマイクロコントローラユニットの生産量を前年同期比で30%増加させており、新型コロナウイルス流行前の2018年の水準より最大30%以上まで引き上げるつもりだと述べている。

それは期待できそうだ。しかし、誰もが同じ考えを持っているわけではない。国際的なチップメーカーであるシンガポールのFlex(フレックス)は最近、世界的なチップ不足が2022年半ばまで続くだろうと警告している。これは、自動車、特に電気自動車の需要が増加していることに加え、新型コロナウイルスの影響からゲーム機、タブレット、ノートパソコンなど、娯楽用電子機器を購入する人が増えていることが原因だ。

フォードはSK Innovation(SKイノベーション)と提携し、バッテリーセルの製造者となることで、バッテリー供給の不安を解消しようとしているのと同様に、半導体メーカーやサプライヤーと緊密に連携することによって、将来必要となるチップ数の予測に役立てようとしていると、ファーレイ氏は述べている。

半導体が不足している大きな理由の1つは、2020年の春に新型コロナウイルス流行の影響から販売台数が減少した際に、自動車メーカーが発注を減らしたことにある。だが、2020年の第3四半期になって乗用車の需要が回復してきた頃には、すでにチップメーカーは家電やIT関連の顧客からの注文をこなすのに手一杯な状態になっていたのだ。

フォードの擁護のためにいうと、ウイルスの流行を予測し、そのためにどれだけのチップが必要になるかを予測するのは簡単ではない。2020年のトイレットペーパー買い占めによる品不足のような事態にならないことを祈ろう。

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Liliumの電動ジェット機のバッテリーは同じくドイツのCustomcellsが供給

電動エアタクシーのLiliumは、ドイツのメーカーCustomcellsと提携、同社フラグシップ機Lilium Jetのバッテリーを提供してもらうことになった。

Liliumによると、そのバッテリーのIPは複数の企業などが保有するが、製造そのものはCustomcells一社の仕事になる。両社の協定の一部であるバッテリーシステムの数をLiliumは明かさなかったが、Customcellsは2026年までに保証容量を生産する契約だ。

Customcellsは、航空機や自動車、海運業などのために高性能のリチウムイオンバッテリーを開発している。同社は最近、高級スポーツカーのPorsche AGとCellforce Groupという合弁事業を興し、レーシングカーやパフォーマンスカー用バッテリーの少量生産を行なうことになった。

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Liliumはこのところ、部品と機体のテストに向けて準備を進めているが、その中にはいくつかのパートナーシップもあり、Customcellsはその1つにすぎない。ミュンヘンのeVTOL企業であるLiliumは、パートナーシップの国際的なネットワークを築いており、その中には炭素繊維複合素材で日本の東レ、ジェット機の機体ではスペインの航空宇宙サプライヤーAciturri、ソフトウェアサービスでは同社の投資家でもあるPalantir Technologiesなどがいる。2021年6月にLiliumは、ジェット機の航行制御とアビオニクスのために、航空宇宙の大メーカーであるHoneywellをその名簿に加えた。

主要部品を既成のメーカーにアウトソースするLiliumの決定は、エンジニアリングと生産の大部分を内製することを選んでいるJoby Aviationといったその他の多くの主要eVTOL開発企業のやり方との訣別となる。Liliumのやり方には利点もある。何よりもまず、生産とテストのための設備機器に対して長期間、費用を使う必要がない。しかしLiliumの役員たちがほのめかすもっと重要な利点は、公的認可の過程かもしれない。

他のeVTOLメーカーと同じくLilium Jetも、商用運行のためには、EUの航空安全局と米国の連邦航空管理局からの認可が必要だ。Liliumも、その主要競合他社も、商用運用の開始を強気に2024年としている。既成の航空宇宙サプライヤーは、その最小限の性能規格に関して規制当局の認可をすでに得ている部品を使えるかもしれない。それによって、認可までの時間を節約できるだろう。

LiliumのチーフプログラムオフィサーであるYves Yemsi(イヴ・イェムシ)氏は、2021年初めにTechCrunchに対して次のように語っている。「エキスパートや航空宇宙のパートナーたちとのコラボレーションは、私たちの意図的な選択です。市場化までの時間を短縮できるだけでなく安全です」。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hiroshi Iwatani)

電動トラックメーカーNikolaの創業者ミルトン氏、詐欺容疑で起訴

電動トラックスタートアップNikola(ニコラ)の創業者で前CEO兼会長である、早口の演出巧みなTrevor Milton(トレバー・ミルトン)氏が3件の詐欺容疑で起訴された。

マンハッタンの米連邦地検が米国時間7月29日に開示した起訴状によると、ミルトン容疑者は個人的な利益のために「個人投資家を欺くために詐欺計画に携わった」とのことだ。ミルトン容疑者は2件の証券詐欺、1件の通信詐欺で大陪審に起訴された。

地検は訴状の中で、ミルトン容疑者が、車両を生産する前から「Nikolaについて誤ったミスリードする情報をマーケットに広めた」PRにおいて、どのようにソーシャルメディアを活用し、また頻繁にテレビに登場したかについて詳しく述べた。

起訴内容はNikolaと、同社を2015年に創業したミルトン容疑者の大急ぎの滅裂な事業を反映している。ミルトン容疑者は最初のプロトタイプを発表してかなりの注目を集め、Nikolaが「トラック運送のiPhone」を生産すると豪語した。その後、​​Badgerという電動ピックアップトラックを含む他のプロダクトに関する約束、アリゾナ州に工場を建設するという計画が続いた。

2020年3月に同社は特別買収目的会社VectoIQ Acquisition Corpとの合併を通じて上場すると発表した。同年夏に上場後、ミルトン容疑者は頻繁にTwitterに投稿し、個人投資家にメッセージを送っていた。そして同年9月、GMが同社への20億ドル(約2190億円)の投資を発表してから数日後に、空売りで有名なHindenburg ResearchがNikolaを詐欺だと糾弾した。米証券取引委員会が調査を開始し、2週間してミルトン容疑者は会長職を辞任した

Nikolaは7月29日、いまだに大株主であるミルトン容疑者と距離をとっているとの声明を出した。

トレバー・ミルトン氏は2020年9月20日にNikolaを辞め、以来、Nikolaの運営に関与しておらず、連絡も取っておりません。本日の当局の動きはミルトン氏個人に対するものであり、Nikolaに対するものではありません。Nikolaは調査を通じて当局に協力してきました。以前発表した目標とタイムラインに全力を注いでおり、2021年後半に製造施設からNikola Treバッテリー式電動トラックを出荷することにフォーカスしています。

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

フォードの電動ピックアップトラックF-150 Lightningの予約が12万件超え

Ford(フォード)と同社のベストセラー車両であるF-150ピックアップトラックは一貫してピックアップトラック所有者のブランド忠誠心を鼓舞してきた。J.D. Power 2020 U.S. Automotive Brand Loyalty Studyによると、Fordの顧客ロイヤリティ率は54.3%だ。そしていま、車両の電動化に動く中で、同社は新たな購入者を引き込んでいるようだ。

Fordは米国時間7月28日、2021年第2四半期の決算を発表した。現在も続く半導体不足にもかかわらず驚くべき収益をあげたことに加え、F-150 Lightning電動ピックアップトラックのプレオーダー件数が5月の発表以来、12万件に達したことを明らかにした。同社の2021年第2四半期の売上高は268億ドル(約2兆9360億円)と予想をわずかに下回り、純利益は5億6100万ドル(約615億円)だった。

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明確にしておくと、プレオーダーは注文ではなく、同社が今後販売する台数を正確に反映しているわけではない。顧客は払い戻し可能な100ドル(約1万1000円)のデポジットを払ってEVを予約できる。

しかしプレオーダーからは需要についての知見が得られる。

重要なことは、決算発表によるとこれらの新規オーダーの4分の3がこれまで同社車両に乗っていない客からのものであるということだ。決算発表時にCEOのJim Farley(ジム・ファーリー)氏は、Lightningのプレオーダー5件のうち2件がICE(内燃エンジン)ピックアップとの交換になるとも述べた。

これはFordの販売に影響を及ぼす可能性があるばかりでなく、同社の最近のバッテリー製造進出の妥当性をも立証している。世界中の自動車メーカーがセル会社や化学会社とのバッテリー合弁事業に関わっていて、Fordも例に漏れない。同社は米国でのバッテリーセル製造でSK Innovationと提携していて、電動化のための300億ドル(約3兆2865億円)の投資の一環としてミシガン州にR&Dセンターを建設中だ。

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販売増はまた、Fordがかなりの投資を約束している、埋め込まれた電動アーキテクチャのアップグレードを支える。ファーリー氏によると、これによりFordはずっと簡単に今後発売するEVをアップデートでき、新たなコネクテッド機能を使えるようにすることができる。

「ですので、我々が電気自動車のアップグレードについて語るとき、電気自動車のツーリングとエンジニアリング、部品、推進力への投資以上の基礎的なものなのです」とファーリー氏は決算会見で話した。「また、埋め込まれたソフトウェアとハードウェアのシステムへの完全に新しいアプローチも含まれています」。

F-150 Lightningは、基本価格4万ドル(約440万円)超を喜んで払う新規顧客に魅力的に映る多くのアップグレードをともなう。ガソリンで走るモデルと同じトルクとパワーを備え、加えてハンズフリーのADAS BlueCruiseシステム、包括的なインフォテイメントユニット、停電時に家に給電できるだけの容量を持つバッテリーも持つ。

ファーリー氏は決算会見で、価格が2万ドル(約220万円)〜のコンパクトなハイブリッドピックアップである新Ford Maverickの注文がすでに8万件近く入っていることも明らかにした。このモデルは、必ずしもピックアップトラックを求めているわけではないものの、実用性にひかれている人向けのものだ。

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「当社の初の大量生産EVに対する需要は明らかに当社の楽観的な予測を上回りました」とファーリー氏は述べた。「当社はいま、制限をなくしてこれら最新のバッテリーで動くEVの生産能力を増やすために懸命に取り組んでいます」。

決算によると、米国顧客の電動Mustang Mach-Eの注文と他のFord車両の販売の合算は、2020年同時期の7倍超だった。需要の高まりを受け、半導体の供給が安定したとき事業は「バネ仕掛け」でリバウンドする、とファーリー氏は述べた。

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

テトラが「空飛ぶクルマ」eVTOLの新機種「Mk-5」を米国で一般初公開、コンセプト動画も

テトラが「空飛ぶクルマ」eVTOLの新機種「Mk-5」を米国で一般初公開、コンセプト動画もテトラ・アビエーションは7月28日、世界最大級の航空ショー「EAA AirVenture Oshkosh 2021」(エアベンチャーオシュコシュ)において、「空飛ぶクルマ」とも呼ばれるeVTOL(垂直離着陸型航空機)の新機種「Mk-5」(マークファイブ)を7月26日に一般初公開したと発表した。合わせて予約販売も開始した。

今後、個人顧客向けに40機ほどの予約を獲得し、予約から1年後のデリバリーを実現する。また、米国においては、プライベートパイロットライセンスを持つ富裕層向けに販売することで顧客コミュニティを形成し、ユーザーとともに次世代eVTOLを開発し、量産へつなげる。引き続き日米の開発拠点を行き来し、資金調達をしながら開発を進めるという。

同社は、2020年2月に米国で開催された国際航空機開発コンペ「GoFly」において唯一の賞金獲得チームとしてディスラプター賞を獲得し、その後1年をかけてMk-5を開発した。Mk-5は固定翼に32個のローターにより垂直方向へ飛行し、尾翼にある1個のローターで水平方向への飛行を行うeVTOLとなっている。32個のローターのうち4つが故障した場合でも安定した飛行を行えるそうだ。

なお、現地時間7月31日8時30分(日本時間7月31日22時30分)からEAARadioへの出演も決定している。こちらのラジオはラジオアプリTUNEINを利用することで、日本からも視聴可能。

テトラが「空飛ぶクルマ」eVTOLの新機種「Mk-5」を米国で一般初公開、コンセプト動画も

テトラが「空飛ぶクルマ」eVTOLの新機種「Mk-5」を米国で一般初公開、コンセプト動画も

2021年7月、福島ロボットテストフィールド屋内飛行場にて撮影

テトラが「空飛ぶクルマ」eVTOLの新機種「Mk-5」を米国で一般初公開、コンセプト動画も

Mk-5製品仕様。現行はSN2、次機がSN3

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テスラがセミトラックの発売を2022年に延期、Cybertruckの遅延も示唆

電気自動車メーカーのTesla(テスラ)は、サプライチェーンの問題とバッテリーセルの入手可能性が限られていることから、電動セミトラックの発売を2022年に延期すると、米国時間7月26日に行われた第2四半期の決算発表の中で述べた。

テスラのElon Musk(イーロン・マスク)CEOは、以前からバッテリーの供給が限られていることについて警告しており、2017年11月にプロトタイプが初公開された電動セミトラック「Tesla Semi(テスラ・セミ)」にもその影響が及ぶ可能性があるとしていた。2021年1月、マスク氏はTesla Semiのエンジニアリング作業が完了し、2021年中に納車が開始できる見込みであると述べながらも、ただしバッテリーセルの入手状況によって生産能力が制限される可能性があるという警告を付け足した。

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この警告は、明らかに根拠のあるものだった。株式市場が閉まった後に掲載された株主への書簡には以下のように書かれている。

2021年にベルリンとオースティンで始まるModel Y(モデルY)の生産は計画通り順調に進んでいると、我々は考えています。しかし、それぞれの工場における生産量は、多くの新しい部品や製造技術の導入が成功するかどうか、サプライチェーン関連の問題が継続するかどうか、そして地域の許可を得られるかどうかによって左右されます。

これらの工場に集中するため、また、バッテリーセルの入手量が限られていることやグローバルなサプライチェーンの問題を考慮して、Semiトラックのプログラム開始時期を2022年に変更することにしました。なお、Model Yに続いてオースティンでの生産を予定しているCybertruck(サイバートラック)の製品化も進展しています。

業績発表や決算報告書の中では言及されていないものの、今回の延期は、同社の重要な幹部でTesla Semiの開発および最終的な量産に携わっていたJerome Guillen(ジェローム・ギレン)氏の退社にともなうものだ。ギレン氏が6月に退社したのは、同氏がSemiを含む自動車部門全体の社長職から、より責任の軽い大型トラック部門の責任者という職務に移されてからわずか3カ月後のことだった。ギレン氏は、2018年9月から2021年3月まで、テスラの自動車事業全体を率いていた。

一方、2021年後半に生産開始が予定されているCybertruckも、2022年にずれ込む可能性があるようだ。マスク氏は質問に答えなかったが、決算説明会ではマスク氏のコメントだけでなく、テスラのエンジニアリング担当VPであるLars Moravy(ラース・モラヴィ)氏のコメントからも、2022年にシフトする可能性が示唆されている。

電動ピックアップトラックであるCybertruckは、今のところ試作のアルファ段階にあり、車両の基本的なエンジニアリングとアーキテクチャが完成している。現時点ではModel Yが優先されるものの、2021年後半にはCybertruckをベータ段階に移行させる予定だと、モラヴィ氏は述べている。

「モデルYの生産が軌道に乗ったら、Cybertruckをテキサスで生産する準備に入ります」と、モラヴィ氏は付け加えた。

マスク氏は、おそらくCybertruckが2021年に発売されるという期待を緩和させるためか、Cybertruckを生産することの難易度について言及した。

「Cybertruckを完成させることは、新しいアーキテクチャーであるがゆえに困難が予想されます」と、マスク氏は語った。「すばらしい製品になるはずですし、もしかしたら当社のこれまでで最高の製品になるかもしれません。しかし、そこには根本的に新しい設計思想が多く含まれているのです」。

そして同氏は、これまでテスラの他の自動車が試作から量産に移る際に主張したことを繰り返した。すなわち「生産は難しい」ということだ。

「これまでの繰り返しになりますが、試作や少量生産は実際に簡単でも、大量生産されるものは、これは本当に重要なことなのですが、1万点にも及ぶそれぞれ異なる部品やプロセスの中で最も時間がかかることに合わせた速度で進みます」。

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

高級電気自動車メーカーのPolestarが2021年内に販売店舗数の倍増を計画

Polestar(ポールスター)は、年内に9つの新たな市場で販売を開始する予定であり、世界的な存在感を倍増させて電気自動車セダンの販売拡大を目指す。

Volvo Car Group(ボルボ・カー・グループ)傘下の高級電気自動車ブランドであるポールスターは、年末までに販売店の数を100店舗に倍増させ、サービスセンターも増設する予定だと述べている。販売店の中には、期間限定のポップアップストアも含まれる。このスウェーデンの自動車メーカーは現在、販売を展開している市場で650以上の「サービスポイント」と呼ばれるメンテナンス拠点を設けているが、これを2021年末までに780以上に増やしたいと考えている。

ポールスターは2020年に米国、中国、カナダ、ベルギー、ドイツ、イギリス、スウェーデン、オランダ、ノルウェー、スイスで販売を開始した。2021年内にはさらに、オーストリア、デンマーク、フィンランド、オーストラリア、ニュージーランド、香港、韓国、シンガポールへの展開を計画している。

米国内では、オースティン、ベルビュー、ワシントン、ボストン、デトロイト、デンバー、ロサンゼルス、ミネアポリス、ニューヨーク、プリンストン、ニュージャージー、サンフランシスコ、サンノゼ、アリゾナのスコッツデールにサービスセンターと販売店がある。今後は、カリフォルニア州オレンジ郡、ニュージャージー州中部、ノースカロライナ州シャーロット、テキサス州グレープバインにも店舗を開設する予定だ。

この拡大の勢いは今後も衰えることはないようだ。ポールスターのThomas Ingenlath(トーマス・インゲンラート)CEOは声明の中で、同社が2022年に新たな市場でも同様のペースで拡大することを目指していると述べている。「この継続的なペースは、新しい販売店コンセプトと相まって、オーナーの期待を超えるという当社の目標を支えることになるでしょう」と、同氏は付け加えた。

現在、ポールスターの主要製品は、完全な電気自動車である「Polestar 2(ポールスター2)」の1車種のみだ。しかし、今後数年間でさらに車種を増やしていく計画がある。2021年6月には、同社初となるオール電動SUVを米国で生産すると発表した。「Polestar 3(ポールスター3)」と名付けられたこのSUVは、サウスカロライナ州リッジビルにあるVolvo Cars(ボルボ・カーズ)との共有工場で組み立てられる。

ポールスター3は、電気自動車セダンのポールスター2と、ハイブリッド・グランドツアラーの「Polestar 1(ポールスター1)」に続くモデルとして、2022年に世界の複数の地域で生産が始まる予定だ。

ポールスターは規模の拡大に合わせて、顧客を獲得するための新しい方法を模索している。その主な戦略は、販売店を増やし、既存の市場で拡大を続けるとともに、新しい市場に進出することだ。同社は7月26日の発表で「Polestar Destinations(ポールスター・デスティネーションズ)」という新しいコンセプトの販売店も試みていくことを明らかにした。既存の「Polestar Spaces(ポールスター・スペーセズ)」と呼ばれる販売店が、基本的に都市中心部に置かれているのに対し、この新コンセプトの店舗はより規模が大きく、アクセスしやすい都市郊外の場所に設置される。これらのデスティネーションストアは、オンラインで注文・決済された車両を顧客が受け取る納車センターとしても機能する。

同社では2021年末までに60カ所の試乗できる場所も増設し、ポールスター2の実車により触れることができる機会を用意する。

このような事業拡大を支えているのは、ポールスターが4月に行った5億5000万ドル(約606億円)もの外部資金調達だ。この投資ラウンドはChongqing Chengxing Equity Investment Fund Partnership(重慶承興株式投資基金パートナーシップ)、Zibo Financial Holding(淄博ファイナンシャル・ホールディング)、Zibo Hightech Industrial Investment(淄博ハイテク産業投資)が主導し、韓国のグローバルコングロマリットであるSK Inc.をはじめとするさまざまな投資家が参加した。

このラウンドはポールスターにとって初めての外部資金調達ラウンドだったが、同社は当時、これが最後にはなるわけではないことを示唆していた。

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画像クレジット:Geely holdings/Polestar

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Lucid MotorsはEV工場拡張計画で市場デビュー

Lucid Group(ルーシッド・グループ)、旧Lucid Motors(ルーシッド・モータース)のCEOであるPete Rawlinson(ピート・ローリンソン)氏が、米国時間7月26日にアリゾナ州カサグランデにある工場を270万平方フィート拡張すると発表した。これは、同社が45億ドル(約4956億円)の資本注入を受けて正式に株式公開した数時間後のことだった。

また同社は、フラッグシップモデルの高級電気自動車セダンLucid Air(ルーシッド・エア)の有料予約が1万1000件に達したと語った。

Lucidの広報担当者がTechCrunchに語ったところによると、この拡張された部分の一部は、Project Gravity(プロジェクト・グラビティ)いう謎の呼称で呼ばれている、自動車メーカーが近々発表する予定の高級電気SUVに利用される予定だという。Gravityについては、2023年の発売予定であることと、Airと同じバッテリープラットフォームを採用すること以外、現時点ではあまり知られていない。欧州連合知的財産局に提出された特許図面は、ルーシッドフォーラムのメンバーたちが初めて目にしたものだが、ルーシッドのウェブサイトに掲載されているレンダリング画像以上のものではない。

また、主要部品であるボディパネルなどを含む、より多くの部品生産を内製化することを計画していると、広報担当者は付け加えた。これらの部品は、これまで外部のサプライヤーが扱っていたものだ。

カサグランデ市議会は、2021年3月に約100万平方フィート(約9万2900平方メートル)のスペースを拡張する計画を承認した。約7億ドル(約771億円)をかけて建設された工場の第1期工事は、着工から12カ月という記録的な速さで完成した。Lucidによると、生産能力を年間約3万台から最大40万台まで拡大したいと考えているという。

Lucidの公開までの道のりは長く、時には困難も経験した。同社は当初、電気自動車のセダンを早ければ2018年に生産することを目標としていたが、すぐに資金難に陥り、このスケジュールはどんどん後ろにずれていった。Lucidは、2018年にサウジアラビアの政府系ファンドから10億ドル(約1100億円)の投資を受けて大規模な資金調達を行った。同ファンドはLucidがSPAC(特別買収目的会社)のChurchill Capital IV Corpと合併するまでの間、筆頭株主を続けていた。

この合併には、先週ちょっとした問題が発生した。これは重要な提案に対して十分な数の票を集めることができなかったからだが、これは、一般投資家の増加とスパムフィルターの誤作動が原因ではないかと、経営陣は投資家向け電話会議で説明している。

今後、「Lucid Group」という名称で事業を展開するLucidは、ティッカーシンボルLCIDで上場されている。

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画像クレジット:Lucid Motors

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(文: Aria Alamalhodaei、翻訳:sako)

コネクテッドカーのビジネスモデル予測、日産、富士通らのキーマンはどう考える?

安全な運転の促進や効率的な保険の提供など、モビリティの安全性と利便性を向上させるコネクテッドカー。しかし、その活用方法やビジネスモデルの未来は未知数だ。そこで、フロスト&サリバンのモビリティ担当プリンシパルコンサルタントであるPaulo Mutuc(パウロ・ムトゥック)氏がモデレーターとなり、HERE Technologiesグローバル・セールス・ディレクター白石美成氏、Gojekモビリティ関連製品担当役員Vikrama Dhiman(ヴィクラマ・ディマン)氏、日産自動車コネクティド技術開発&サービスオペレーション部部長の村松寿郎氏、富士通中央および東ヨーロッパ地区コネクテッド・サービス、製造、モビリティ部門担当役員Tobias Geber-Jauch(トビアス・ガバー・ヤウ)氏がコネクテッドカー活用の未来を語り合った。

本記事はフロスト&サリバン主催『インテリジェントモビリティサミット2021 ゼロへのイノベーション』中のセッションの一部講演を編集、再構成したものとなる

日本、米国、中国で求めるものが違う

コネクテッドカーは世界的にどういった動きを見せているのだろうか。モバイルサービスにデータを提供するHERE Technologiesの白石氏によると、インドでは80%、中国では76%が「コネクテッドカーは有用」と捉えているという。

白石氏は「コネクテッドカーの活用促進には政府の政策も大きな役割を果たします。インド政府はMtoMを支援しているため、コネクテッドカーの体験も良くなっていくでしょう」と話す。

日産自動車の村松氏は、日本、米国、中国におけるコネクテッドカーの需要の違いに着目する。

村松氏は「コネクテッドカーへの取り組みは日米ではほぼ同時期にスタートしています。米国では、安心・安全のため、テレマティクスのためのコネクテッドカーという側面が強い。しかし、日本ではあまりそういう需要はありませんでした。しかし、最近ではユーザーもコネクテッドカーの有用性を理解し始めています。中国のコネクテッドカーはガジェット的な意味合いが強いですね」と話す。

Gojekのディマン氏はインドと中国の市場の性質の違いを指摘する。インドのコネクテッドカー市場は市場の期待で動き、中国の市場は政府からの支援で動くという。

コネクテッドカーは誰のためのもの?

富士通のガバー・ヤウ氏はコネクテッドカーの普及率が低いことに注目する。「コネクテッドカーはプレミアムカーの特権のようなものです。しかしながら、ユーザー全員のクルマがプレミアムカーというわけではありません。シンガポールではほとんどのクルマがプレミアムカーなので、逆にコネクテッドカーの普及率が高くなります」と解説する。

では、コネクテッドカーを普及させるには何が必要なのか。ガバー・ヤウ氏は適切なビジネスモデルとユーザー向けの価値創出が必要だと語る。

「自動車メーカーは『データを使って儲けたい』と考えます。シンガポールでは、新しい交通・物流が必要でした。だからこそコネクテッドカー活用が進んでいます。規制によっては、自動運転のトラックが街を走ることになるかもしれません。しかし、1人ひとりのドライバーには、物流の変革なんてどうでもいいことです。自動車メーカーにとって『データを使って儲ける』ことには価値がありますが、ユーザーには価値がないのです。『データを使って儲ける』にはデータが必要ですが、個人個人のユーザーに対する利益が発生しないなら、彼らがデータを渡したくなる理由も発生しません。ユーザーも利益を得るビジネスモデルが必要です」とガバー・ヤウ氏。

白石氏は「Here Technoligiesは位置データを提供する企業ですが、もし自動車メーカーのデータを利用できれば、当社のサービスに生かすことができます。これは、自動車メーカーからすれば、データのマネタイズの側面もあります。しかし、自動車メーカーのデータがユーザーから収集されるものだとしたら、そのデータの所有者は誰なのでしょうか?これも考える必要があります」と問題を提起する。

スーパーアプリはゲームチェンジャーになるか

ここでモデレーターのムトゥック氏は「スーパーアプリとコネクテッドカーの今後はどうなっていくと考えますか?」と質問した。

スーパーアプリとは、1つのアプリの中でさまざまなミニアプリを開くことができるアプリケーションを指す。1つのスーパーアプリの中で数多くのことができるため、プラットフォームとしても機能する。

ディマン氏は「公共交通のデータを使ってどこに何があるのか、どこを通るのかといったことを把握できれば、スーパーアプリの中に車の移動に関するアプリも入ってくるでしょう」と話す。さらに「こうしたデータ収集がユーザーに何をもたらすのかをきちんと見せることができれば、データを持つ企業にとって大きなリードになもなるでしょう」という。

白石氏は「スマホは顧客との最初の接点です。自動車メーカーとスーパーアプリがどう手をつなぐのかが今後重要になります。これには、自動車メーカーが社内のディスプレイを通して、どうユーザーとコミュニケーションをとるのかという問題も含まれます」と指摘する。

さらに白石氏はミニアプリの重要性にも触れた。自動車メーカーがコラボレーションするスパーアプリを選定する際、ミニアプリが手がかりになる可能性があるからだ。さらに、スーパーアプリに搭載されるミニアプリが充実すれば、スーパーアプリがプラットフォームとしてさらに強力になるため、スーパーアプリだけでなく、ミニアプリの内容も考慮することが重要だという。

村松氏は、日産が展開する「Nissan Connect」を例に、日産とアプリの関係について話す。Nissan Connectは通信機能を使い、最新の交通情報を基にした最速ルートをドライバーに提供するなど、多様な機能を備えたサービスだ。

「当社にはNissan Connectというアプリがありますが、これを自動車業界ではないところと統合するイメージはつきにくいのが現状です。外のエコシステムとどう繋がるかは大きなテーマです。例えばエネルギー業界とLeafのデータを共有することができたら、ダイナミックに電力価格を設定することも可能でしょう」と村松氏は語る。

私たちはクルマを所有しなくなる

モデレーターのムトゥック氏は最後に「今後のコネクテッドカーの行方についてどう予測しますか?」と質問した。

ディマン氏はまずコネクテッドかーには5つの側面があり、それをまず考える必要があると話す。その5つとは、「1. vehicle to Infrastracture(クルマ-インフラ)」「2. vehicle to vehicle(クルマ-クルマ)」「3. vehicle to cloud(クルマ-クラウド)」「4. vehicle to pedestrian(クルマ-歩行者)」「5. vehicle to X(everything)(クルマ-すべて)」だ。

「では、こうした側面から、コネクテッドカーをどう活用するのか。例えば夜外食するのにクルマで出てきた時、パーキングが1時間見つからなかったら、ディナーが食べれなくなります。自動車がドライバーなしでパーキングを見つけ、駐車できるなら、ユーザーはゆっくり夕食を楽しめます。コネクテッドカーの話をすると、コネクテッドシティの話になりがちですが、大事なのは今の例のようにユーザー優先の発想です。これが今後重要になるでしょう」とディマン氏。

村松氏は自動車業界ではない業界との連携の重要性を指摘。「GAFAやBATHなど、IT業界との連携が重要ですが、10年後のIT業界がどうなっているかは見えませんね」と回答。

白石氏は「クラウドデータが自動車メーカーを含めたエコシステム全体で重要になります。クラウドソースのデータは常に更新されなければいけません」という。

ガバー・ヤウ氏は「10年、20年、30年後と、ビジネスモデルはどんどん変わっていきます。私たちはクルマを持たず、病院などの『行先』が私たちのところに迎えのクルマを出すようなパッセンジャーエコノミーになっていくでしょう。さらに、何か欲しい商品があったとき、商品の販売者の方からクルマで商品が持って来られるようなこともあり得ます。クルマを所有することをやめ、サービスとしてクルマを使うような社会が訪れるでしょう」と今後の展望を予測した。

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【レビュー】電動自転車VanMoof X3、ハイテクだが手頃な値段であらゆる人を信奉者にしてしまう

自転車レーンでそよ風に吹かれながら電動自転車をこぎつつ、新たに手に入れた自由についてあれこれ思いを巡らす。こんな経験をするまでは、過去10年の間に生まれた最高の消費者向けテクノロジーのいくつかに対してと同様、筆者は自分に電動自転車が必要だとは思っていなかった。

Nintendo Switchを購入する前は、簡単にバックパックに収納してしまえるこのキャンディーのような色をしたゲームコンソールが、長時間のフライトをこんなにも楽しいものにしてくれるとは想像だにしなかった。電動自転車、特にこの 電動自転車VanMoof X3についても、まったく同じように感じている。

筆者はオレゴン州はポートランド市に住んでいる。ここは自転車レーンが多く設けられていて、ネイキッドバイクライドイベントが開催される町。ポートランド市に引っ越して来た当初は、筆者も自転車に乗ってあちこち足を伸ばしたものだが、時間の経過とともに自転車に乗る機会が減っていった。というのも、週末のキャンプ旅行のために購入した自動車が、徐々に毎日の用事をこなすのに使われるようになっていったからだ。

引っ越してから数年後、ある慢性疾患の診断を受け、突如として自分が何をできるか、どこまでなら安全に行けるのか自信がなくなってしまった。その後筆者が自転車に乗るのは、すばらしい天気に恵まれた日に限られるようになり、シーズン中に数えるほどの日数になってしまった。そんな時、もっと自転車に乗れたら、本当に楽しいだろうに!と考えため息をついたものだ。

X3に試乗してみるまで、筆者は短い距離でも自転車に乗らずに自動車を使用する言い訳を見つけたものだ。往きは良くても疲れてしまって、自転車で家に帰って来られなくなったらどうする?雨が降り始めたら?職場についた時、汗だくでは困るのでは?電動自転車は、こうした心配の大部分を一気に解消してくれる。

気温が35℃以上あったとしても、X3は快適な乗り心地で筆者をさっと職場まで連れて行ってくれる。急な嵐がきてもスピードで乗り切れる。一日を汗だくの状態で始めるのが嫌なら、すてきなすてきな電動機能に頼ることで、汗の一滴もかかずにオフィスへ到着することも可能だ。

そして、これはぜひ強調したいのだが、自転車で風を切って進むこと(自分に適した労力を使って)、これは本当に、本当に楽しい。あなたがまだ電動自転車に乗ったことがないのなら、是非実地で試してもらいたい。というのも、かすかな電動音を感じながら、快適にすいすい進むこの感覚を言葉で伝えることは難しいからだ。

VanMoofの誇るハイテク自転車のペア、X3および同系統でやや大型のS3は、もちろん市場に出回っている唯一の選択肢というわけではない。その利点の一部はどの電動自転車にも当てはまるものだ。しかし、だからといってVanMoofがありふれた存在であるかというと、そうではない。VanMoof X3は、ある種の乗り手(私自身を含む)にパーフェクトにマッチする非常に特殊な外観、感触、機能を備えている。しかし、電動自転車をこれから購入予定の方々は、さまざまな側面を検討したいと考えておられるだろう。そこで、以下に詳しく特徴を掘り下げてみようと思う。

数値ディスプレイにはバッテリー寿命、スピード、その他の重要な情報が表示される

外見

筆者はVanMoof S3ではなくX3(写真では形状がやや奇抜に見える)に試乗した。これは、好みでそうしたというよりも、筆者の身長が162.5センチメートルであるからだ。X3は、身長が150~195.5センチメートルの人向けで、身長が172.5センチメートル以上の人向けのS3よりも少し小型でデザインもやや変わっている。X3のタイヤはS3の28インチと異なり24インチで、フロント部にバンジーコード付きの台座があり、どのように使うのかは定かではないが、何かしら運べるようになっている(別売りのバスケットを購入してフロント部に取り付けても素敵だと思われる)。

他の電動自転車と同様、X3は一般の公道用自転車や通勤用自転車と比べると、ずっと重たい。公表されている重量は約21kgで、仮にそれを遠くまで運ばなければならない場合、その重さは大変なものに感じられるだろう。筆者はオレゴン州ポートランド市の一軒家に住んでいて、X3に乗るために玄関からほんのわずかな距離を運ばなければならなかったが、まったく問題はなかった。

筆者はブルックリン市でエレベーターの無い建物の5階に住んでいた事があるが、X3を抱えて階段を上り下りすることは不可能だったろうと思う。充電のためにX3(または他の電動自転車)を一階に保管することができない場合は、この製品はあなたには適さないかもしれない。(あとから説明するが、写真では、チェーンの上部に、オプションの外付けバッテリーパックを装着できる小さな台座があるのに注意して欲しい。この台座は取り外し可能)。

紙の上で見た場合、筆者にはS3の方が好ましいと感じるが、実際には、駐車中でも誰かが乗っている場合でも、X3が不格好というようなことはまったくない。キュートで、未来的でありながら目立たず、多くの称賛を得ている。筆者の妻は、その外見を「デス・スターっぽい」と表現していて、その意味するところを筆者が完全に理解しているわけでないにしても、彼女は間違ってはいない。通勤途中、清掃トラックの運転手がトラックの窓を下げて「その自転車、とっても格好いいね!」と声をかけてくれた。どうもありがとう!

VanMoofの現行の電動自転車はマットペイントでコーティングされていて、クラシックでセクシーなマットブラック、または心地よい陽気なマットライトブルーのどちらかを選ぶことができる。以前のバージョンでは光沢のあるコーティングだったが、マットの方が傷がつきにくいと思われる。爆弾の破壊力に完全に耐えられるというほどではないにしても、ペイントはかなりしっかりしているように見える。ハンドルバーになぜか小さなキズがついていてペイントが剥げているがどうしてそれがついたのかはまったくわからない(フクロウのせい?)。

ちょっと重要だと思うのは、VanMoof X3やS3が電動自転車のようには見えないということだ。フレームから醜い膨らみが突き出ているということもないし、トップチューブとダウンチューブは厚みがあるが均一で、その厚みもそう気になるほどではない。

電子部品はフレーム内に収納されており、ドライブトレーンも収納され密閉されている。トップチューブに埋め込まれたLED指標ディスプレイがあるが、これはほぼ乗っている人からしか見えない。電動自転車であることを大声で喧伝しているかのような外見の電動自転車を探しているわけでなければ、VanMoofはベストの1台ではなくとも、ベストチョイスの1つだ。外見がすばらしい電動自転車というだけではなく、自転車として見てもすばしいのだから。

乗り心地

VanMoof X3は見栄えの良い自転車だ、ということはおわかりいただけたと思う。しかし、乗り心地の方はどうだろう?筆者は自信を持って、次のようにお伝えすることができる。通勤のために初めてX3に乗ってから20回目になるまで、X3はすばらしく楽しい時間を提供してくれるということを。

電動自転車が初体験の筆者には、ちょっと躊躇する気持ちもあった。電気の助けを借りたら、自転車に乗ることのすばらしさが安っぽいものになってしまうのではないか?シフトチェンジを自動でしてくれる自転車を自分は本当に欲しいのだろうか?しかし、ふたを開けてみれば、そのような心配はまったくいらなかったことがわかった。

VanMoof X3(とその兄弟のS3)は乗り手がペダルをこいでいるのを電気でサポートしてくれる。つまり、乗り手は自分の力でペダルをこいでいるのだが、電気の力も同時に借りてとても楽に少ない労力でより速く進むことができるのだ。X3のハンドルバーの右側には、ターボブーストボタンがついていて、米国では、通常のなめらかな電気アシスタンスを超えた強力なブーストを1時間に20分まで得ることができる。

乗り手は必要なアシスタンスのレベルを選ぶことができる。VanMoofアプリ(後で説明する)を使って、または実際のボタンを使って、必要なパワーアシストのレベルを0から4まで選ぶ事ができるのだ。0は電気によるアシストはまったくなく、乗り手がまったくの自力でペダルをこいている状態(これはよろしくない)で、4では、まったく汗さえかかない、労力のいらない楽な状態になる。

筆者がX3を試乗していた時は、ちょっとペダルを重くしてエクササイズしたい気分の時には「2」を使い、朝コワーキングスペースへ急いでいる時は「4」、それ以外の、例えば週末にブランチに行く、というような時には「3」にしていた。ペダルアシスタンスのレベルを選べるというのは大変大きな利点で、これによって自転車をフレキシブルにさまざまな場面に合わせて調整できる。

どのモードであっても、ターボブーストボタンは強力なサポート機能である。これによって急な坂はあたかも平面のようになるし、クルマの運転手が周囲に気を配っているか定かでないような混んだ交差点を横切る時など、ずっと安全に渡れる気がする。X3は、危険を避けた安全な街乗りにはもってこいの、楽しくすばらしい電動自転車である。

自動電気シフトに慣れるのにはやや時間がかかるが、それは本当にスムーズである。冷蔵庫やランプ、バイブレーターに、ナンセンスで無駄な「スマート」ハイテクが搭載されるまでは、それらが完璧に機能していたものだが、筆者は最初それと同じように、この電気を使った技術が邪魔に感じられるほど頻繁に不具合を起こすのでは、と予想していた。

長期間にわたって調査した結果、筆者はX3は今までにないほどスムーズでシームレスであるということができる。たまにペダルを踏み込む際スムーズでなかったり、ギアが瞬時に機能しなかったりするが、それはごく稀である。アプリを使って自転車が上下に移動するタイミングをカスタマイズすることもできるのだが、自分にピッタリあった自転車が手に入るのだから、それを試してみる価値は十分にある。

他には特筆すべきことは?米国におけるX3の最大アシスト速度は20 mph(時速32km)であるが、ヨーロッパでは15.5 mph(時速25km)に制限されている。米国で許可されているこの速度はすばらしく、X3で20mphまで速度を上げ維持するのは造作のないことだ。通常の自転車でそんなことをしようとするなら、筆者が所有する小回りのきくロードバイクですら、大腿四頭筋を痛めてしまいかねない。

それ以外にも、シートは非常に心地よく、乗り心地も快適にまっすぐでナチュラルである。X3にしばらく乗っていたせいで、筆者の愛すべきビアンキに戻るのが大変で、慣れ親しんでいたはずの快適な感覚を取り戻したいと切に願う羽目になった。

未来型テイルライト

価格

VanMoof X3はすべてを考慮するとすばらしい価格である。この会社は価格をいじくり回す変わった癖があるのだが、2020年に設計変更が行われ、大幅な価格の下落(3398ドル[約37万5000円]から一時は1998ドル[約22万円]に設定された)があって以降、X3は大変お買い得感のある値段がつけられている。現在の値段は2298ドル(日本では税込27万5000円)で以前の価格より300ドル(約3万3000円)高いが、それでもフル機能を備えた電動自転車を2000ドル(約22万円)程で手に入れたいと考えている人にとってはよい取引である。

この金額は、VanMoofの気の利いた付加機能がついていない、通常の新しい自転車を買う場合と比べてもそれほど大きく違わない金額である。ハイエンドの自転車を購入しようとしている場合には、この金額はさらにずっと低いものに感じられるはずだ。そして現実的な側面で言えば、電動自転車を購入するということは、従来の自転車の代りということではなく、車や公共交通機関など、目的地へ移動するのにお金を払うものに今ほど頼らなくても済むようになるということである(米国で2000ドル[約22万円]以下の自転車を探す場合は、Rad Power BikesおよびCharge でよいオプションを探して欲しい)。

VanMoofの価格設定は、高品質で機能豊富なハイエンド電動自転車に比べると、はるかに低額である。しかし同社の製品は、見栄えの点でも機能の点でもそれらのハイエンド製品に太刀打ちできている。しかし、VanMoofがすでに世に出ている自転車の価格をひそかにいじくりまわしているのはいただけない。狙いを定めて購入しようとした矢先に値段が吊り上がる、などということになったら最悪である。

この件について同社はもっと透明性ある対応をし、今後予定されている価格変更日についての情報を開示すべきである。自転車の世代交代もあるようで、現在購入できるX3は2020年のX3とは異なる可能性がある。これらは紛らわしいので、ウェブサイトにはっきりした情報を掲載するべきである。

VanMoofアプリのアプリ内ライドトラッキングとサマリースタッツ

航続距離

電動自転車(またはeと名のつくものすべて)で最も考慮しなければならない事の1つが航続距離である。VanMoofによると、X3の航続距離は「フルパワー」で走った場合は37マイル(約60km)、エコノミーモードでは最大93マイル(約150km)となる。93マイルまで行けたなら、ペダルアシスタンスをまったく使わないで走行していた可能性もあるので、その場合は、93マイルという数値を気にする必要はないだろう。最も低い37マイルという見積もりだが、これは、4番目のパワーアシストモードで走り頻繁にターボブーストを使用する人にとってはちょっと甘めの見積もりかもしれない。筆者の経験(通常モード3か4で、たまに2、ターボボタンは軽く使用)からいくと、35~45マイル(約56~72km)が順当なところだろう。

航続距離は問題ないと感じる。X3を週のうちほとんど毎日使用しても、充電は煩わしく感じるほど頻繁にしなくてもよい。筆者の場合、毎日短距離(通常2~2.5マイル[約3~4km])を走行し、たまに長距離(10~20マイル[約16~32km))も走行する。X3やS3を使用してもっと長距離を通勤する人の場合はもう少し頻繁に充電することになる。そうであっても、家から遠く離れたところに来ているのに、バッテリーがあがってしまうのではないかと心配するようなことには決してならないだろう。仮にそのような状況になったとしても、自転車なのでペダルをこぐことはできる(ただペダルがとても重いだけである)。ほとんどの人は一晩かけて充電を行うと思うが、必要なら4時間でバッテリーをフルの状態にすることができる。

注意すべきなのは、壁取付け型充電器を直接自転車につないで充電する点である。X3を1階で充電したり保管したりできない場合、自転車を抱えてコンセントのあるところまで運ばなければならない。取り外しできるバッテリーがない点が、エレベータのない建物や小さなアパートに住んでいる人にとってのVanMoof自転車のネックになるかもしれない。しかし適切な保管場所がある人には、迷うことなくお薦めできる自転車だ。

内蔵バッテリーによる航続距離もほどんどの場合十分だが、VanMoofでは、X3とS3向けに別売りの外付けバッテリーパックを発売したところだ。バッテリーは下の写真にあるように、小さな台座にはめ込むことができ、試乗用の自転車に取り付けられている。これによりX3の航続距離を大幅に伸ばすことができる。VanMoof はこのPowerBankアクセサリーを348ドル(約3万8000円)で販売している。このバッテリパックは小さくはないし、重さは約2.7kgある。しかしVanMoofによると、これにより28~62マイル(約45~100km)も航続距離が伸びるそうである。この上限値に到達する人はほとんどいないだろうが、下限の値であっても元の航続距離のほぼ2倍になっている。

VanMoofの外付けPowerBank

PowerBankは大きく、かなりかさばっている。ひどく不格好というわけではないが、そのためにX3は間違いなく電動自転車に見える。超ハンサムな電動自転車、Cowboyの取り外し可能バッテリーのようなエレガントさは無いが、それでも問題になるレベルではない。VanMoofの他の点はパーフェクトだがもう少し航続距離が必要だ、という場合、ある程度のお金は払わなければならないが、このオプションがあるのはありがたい。

技術的特徴

VanMoofのX3とS3の付加技術は、その他の電動自転車からX3とS3を大きく際立たせている。X3の価格は、信用ができ、見栄えのよい電動自転車の価格としては納得のいくものだが、それに加えうれしいのは、小技の効いた電動自転車を手に入れることができる点だ。

  • 数値ディスプレイ:自転車のトップチューブには、メタルディスプレイに組み込まれたLEDライトが、速度、バッテリー寿命、その他の役立つ情報を表示してくれる。これはキラー機能で、本当にいかしている!
  • アラーム:あなたの自転車に危険を及ぼしかねない相手には「文字通りうなる」アラームを発動することができる。アラームは強烈でかなり音が大きい。
  • キックロック:小さなフィジカルボタンをキックすると後輪にロックをかけることができる。自転車泥棒がいるような町に住んでいる場合、泥棒はトラックにひょいと自転車を投げ込んでしまうだろうから、キックロックがあればセキュリティは万全、というわけではないけれども(筆者は小型のクリプトナイトロックを使用していたが、これは効果を発揮した)。
  • iOSのFind My:iOSを使用している人の場合は自分の自転車がどこにあるか簡単に追跡することができる。しっかり自転車にロックをかけておけばこれは必要ないかもしれないが、すばらしい機能である。

VanMoofはiOSの「Find My」アプリに対応している

  • ライト:VanMoof X3は、フロントにもバックにも優秀な内蔵ライトがついている。
  • アプリ:驚くべきことに、このアプリは大変優れものである。細々したこと(ベルの音量、アラームのオン・オフ、設定の変更)をカスタマイズでき、走行状況などの情報を表示することもできる。また、最も基本的な、自転車をこぐ、ロックを解除する、電気アシスタンスのレベルを変更するといったことは、自転車をアプリに接続していないくても実行できる。接続がうまくいかないことが時たまあったが(そのほとんどはAndroidで)、問題を解決するのは簡単で、そのために自動で走行記録が取れないことはあっものの、自転車の使用に支障をきたすことはなかった。またこのアプリを使って自転車がどこにあるかを追跡することもできる。VanMoofは、この機能とアラームシステムおよび盗難復旧チームを組み合わせることで、自転車をなくした人々が自転車を取り戻せるよう支援することができると宣伝している。

全体として、X3がすばらしいのは、その技術的機能がただの凝った機能ではなく、実用的でユーザー体験を大幅に向上させてくれるものである点だ。そして、これらはオプションである。アプリを使わなくても、パワーアシスタンスに助けられながら自転車に乗ることができる。普通のロックを使いアラームシステムをスキップする選択もできるし、実際のボタンコードを使って手動でこれを無効化することもできる。このボタンを使ってパワーアシスタンスモードを変更することもできる。これは優れた機能で、これにより電動自転車を自分の使いたいように使うことが可能になる。個人的には、インターネット、スマートフォン、アプリに接続が必要な電気自動車は購入するつもりはない。そういったものはトラブルの元だからである。

その他の考慮事項

  • 配送と組み立て:VanMoof X3およびS3は大きなボックスに入って郵送されてくる。組み立てはいたって簡単である。ただし1カ所だけ難しいところがあり、VanMoofのサブレディットを検索して(つまり、この箇所につまづいたのは筆者1人ではないということ!)これに小一時間ほど費やす羽目になった。
  • 追加サポート:VanMoofは自転車を正常な状態に保ち、持ち主が自転車を所有し続けることができるよう、3つの有料プランを提供している。3年間のメンテナンスプランは348ドル(約2万6000円)、3年間の盗難復旧プランは398ドル(約3万円)、またはこれらを組み合わせたプランは690ドル(約5万3000円)となっている(以下のVanMoofによる内訳)。

  • メンテナンス:VanMoofの自転車を購入する際、最も考慮すべきなのはどこに住んでいるかだろう。筆者は長期間にわたりX3が信用に足るか試乗していたわけだが、問題はほとんど起こらず、これには驚くほどであった。ブレーキパッドが擦れてしまったため、ある時点で前輪の中心を再設定しなければならなかったが、アプリの接続問題がたまに起こることを除き、この出来事以外の問題は起きなかった。もちろん、経年劣化はどの自転車にも起こるだろうから、そのモデルをよく知っているプロにチューンナップしてもらうのは良いことである。

VanMoofはアムステルダム、ロンドン、パリ、ベルリン、ニューヨーク、サンフランシスコ、シアトル、東京に本格的な店舗を構えている。この本格的な店舗以外にも、同社は同社自転車の整備のために大規模なサービスセンターおよび「認定ワークショップ」のネットワークを構築しているので、お近くにサービスショップかあるか確認するようにしよう。個人的には、2000ドル(約22万円)以上の投資とX3に備わった多くの技術的要素をパーフェクトな状態に保つことができるよう、VanMoofの店舗または少なくともサービスセンターの近くにいることが望ましいと考える。誰も修理のために、自転車を送り返したいとは思わないだろう。特にそれが重く技術的に複雑な要素を持った自転車ならなおさらのことである。

X3を試してみるまでは、筆者は電動自転車についてそれほど考えることがなかったし、電動自転車がそもそも誰を対象としたものだかよく知らなかった。数年前に初めて、筆者よりずっと自転車に熱心な親しい友人が、長い散歩に飼い犬(とってもいい女の子である)を連れて行くのに電動自転車を購入した時に、VanMoofの社名を耳にした。一緒にファーマーズマーケット(農産物の直売所)に行き、彼女のVanMoofをすばらしいと褒めたものの、これほど多くのテクノロジーを内部に備えた自転車が、時間が経過しても信頼に足るものであるのか、懐疑的だった。

自転車とは機械的でシンプルなものである。それこそが自転車のすばらしいところである!電動自転車は自転車に乗ることのすばらしいシンプルさを、ハイテクであるなにかに本当に置き換えることができるのだろうか?結果としてわかったのは、それは可能だ、ということである。VanMoof X3を試してみてそれが信用に足るものであることを確認し、その機能が日々の使用の中でどのように維持されるかを理解してみると、筆者は自分が以前懐疑心を抱いていたことを後悔するほどである。

筆者は、VanMoof X3を試している間どんなにか電動自転車、特にこの電動自転車が生活の細々したところを良い方向へと変えてくれたかを、十分言い尽くせないように感じている。自転車にもっと乗ること(そして電気自動車はより多くの人が自転車に乗るような流れを作っている)は、筆者をより幸せに、より健康にしてくれる。自転車にもっと乗ることで、運動不足になりがちなパンデミックの時期から抜け出し、周囲の世界との結び付きを感じさせてくれる新しい習慣を身に付けることができた。自分の住む町を新鮮な目で見、一度も足を踏み入れたことのない新しい近隣地域を訪れ、当たり前に思っていた小さな物事を大切に感じることができている。筆者が電動自転車について後悔していることがあるとすれば、それはどうしてもっと早く電動自転車に乗ってみなかったのか、ということだけである。

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Dragonfly)

Teslaの第2四半期の純利益は過去最高の約1257億円、決算好感で株価も上昇

Tesla(テスラ)は米国時間7月26日、第2四半期の純利益が11億4000万ドル(約1257億円)だっと発表した。アナリストの予想を上回り、同社の四半期利益(GAAPベース)としては初めて10億ドルを超えた。この決算内容を受けて同社の株価は時間外取引で2.2%上昇した。

サプライチェーン問題とビットコイン投資での損失を抱えたにもかかわらず、業績は予想を上回り、8四半期連続で黒字を達成した。営業利益は生産増とコスト削減により前年同期の3億2700万ドル(約360億円)から13億ドル(約1433億円)に増えた、と同社は述べた。そうした業績は部分的に営業経費の増加やサプライチェーン問題、規制クレジット収入減、前述のビットコイン関連の2300万ドル(約25億円)もの減損で相殺された。

サプライチェーン問題、特に世界的な半導体チップ不足と港の混雑が第2四半期の事業に影響した2大要因だった。Teslaはサプライチェーン問題が引き続き事業と2021年の納車台数増加率に影響を及ぼす、と指摘した。

「グローバルで記録的水準の車両需要があり、部品の供給は2021年残りの納車台数増加率に大きな影響を及ぼす」と株主向けのリリースで同社は説明した。

売上高は119億6000万ドル(約1兆3188億円)と2020年第2四半期の60億4000万ドル(約6660億円)から100%近く増えた。2021年第2四半期の売上高は、前四半期の103億9000万ドル(約1兆1457億円)も上回った。Factsetの調査対象のアナリストは売上高114億ドル(約1兆2571億円)、純利益6億ドル(約661億円)を予想していた。

同社の自動車関連の売上高は102億ドル(約1兆1248億円)だった。注目すべきことに、そのうち規制クレジット収入は3億5400万ドル(約390億円)にとどまり、これは前四半期より17%少なく、過去4四半期の中で最も少なかった。一方、自動車関連の粗利益は前年同期比28.4増%と過去最高となった。

11億4000万ドルという純利益は2020年同期の1億400万ドル(約114億円)から1000%近い増加だ。過去最高となった今期の数字は2021年第1四半期の4億3800万ドル(約483億円)の3倍近くだ。調整後EBITDAでは22億4000万ドル(約2470億円)で、前年同期の12億1000万ドルから100%近い増加となった。

Teslaによると、現金および現金同等物の四半期末残高は162億ドル(約1兆7856億円)に減った。減少は主に負債総額と16億ドル(約1764億円)のファイナンスリース返済によるもので、部分的には6億1900万ドル(約682億円)のフリーキャッシュフローと相殺された。

同社は7月初め、第2四半期に20万6421台を生産したと発表した。そのうち20万1250台を納車し、第1四半期に比べて9%近く増えた。

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

米インディアナ州とパデュー大学が走行中の電気自動車にワイヤレス充電可能なコンクリートの試験実施を発表

米インディアナ州とパデュー大学が走行中の電気自動車にワイヤレス充電可能なコンクリートの試験実施を発表

Kalocsai Tamás / EyeEm via Getty Images

米インディアナ州交通局(INDOT)とパデュー大学が、これまでにない新しいコンクリートの試験を実施すると発表しました。このコンクリートは全米科学財団(NSF)の資金提供により、パデュー大学およびドイツのMagment社が共同で研究開発する、電気自動車を走行中に充電するコンクリートです。

この試験で使われる材料が普通のコンクリートと異なるのは、磁化されたセメントを練りこんで作られるコンクリートだということ。具体的なメカニズムは説明されていませんが、Magment社の説明には、この磁性を持つ粒子を充填したコンクリート媒体は「最大95%の記録的な無線伝送効率」「標準的な道路建設コスト」「全天候型」「高い熱伝導率」「高い耐破壊性」をもつなど、夢のような表現が並びます。

試験はいくつかの段階で行われる予定で、最初のいくつかの段階は実験室内で行われます。そして、これらの段階で有望な結果が出たならば、INDOTは非公開の場所にこのコンクリートで舗装したテストコースを作り、モーター容量200kW以上の大型トラックによる実装テストを行います。これが成功すれば、次は州内の公道にこのコンクリートを使った区間を作ります。

走行中のEVを充電できる道路は今回のプロジェクトの他にも、少なくとも20年程前からいろんな国や企業、機関で研究されてきました。米国内ならカリフォルニア州やスタンフォード大、コーネル大、欧州や中東ならドイツ、スウェーデンやイスラエルでもやはり走行しながら電気自動車を充電するためのプロジェクトがあります。

いずれのプロジェクトも、もし実用化に成功すれば、長距離走行時のバッテリー残量管理のストレスからドライバーは解放されることでしょう。ただ、国のすべてのハイウェイを舗装し直し充電ハイウェイに変えるには、かなりの予算と時間がかかりそうです。

ただ、むしろ物理的な体積はそのままにバッテリーの大容量化を実現する技術を開発する方が、将来的にEVだけでなく家庭用蓄電設備や宇宙探査など、いまより大容量のバッテリーを求める分野への応用も効きそうな気はします。

(Source:Indiana Department of Transportation。Via AutoblogEngadget日本版より転載)

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トラブル続きのEVメーカーLordstown Motorsが株式売却で約442億円の命綱を獲得

Lordstown Motors(ローズタウン・モーターズ)が、同社の全電動ピックアップトラックを市場に投入するには十分な資金がないかもしれないという警告を発してから5週間後、投資会社Yorkville Advisorsが運用するヘッジファンドが、3年間で4億ドル(約442億円)相当の株式を購入することに合意したと、米国時間7月26日に発表された規制当局の報告書により明らかになった

Lordstown Motors社内の騒動はCEOとCTOの辞任につながっただけでなく、同社を破綻の危機に陥れている。今回の新たな契約によりLordstownは、同社初の電気自動車を生産するために必要な資金を確保し、事業を継続できる可能性が出てくる。株主総会で承認されれば、ヘッジファンドのYA II PNは、発行済み株式の約19.9%に相当する3510万株を購入することができる。

この資本は、ここ数カ月苦戦していたLordstownに命綱を与えるものだ。また、1株7.48ドル(約826円)で同社の株式を購入できるヘッジファンド側は、株価が上昇すれば経済的な利益を得られる。

Lordstown Motorsは、前CEOのSteve Burns(スティーブ・バーンズ)が経営するWorkhorse Group(ワークホース・グループ)から派生した会社だ。 Workhorse Groupはバッテリー駆動の輸送技術を持つ会社で、上場企業でもある。WorkhorseはLordstown Motorsの株式を10%保有している。

オハイオ州の自動車メーカーであるLordstown Motorsは、2019年に設立され、1年以内に特別買収目的会社(SPAC)であるDiamondPeak Holdings Corp.との合併契約に至り、時価総額は16億ドル(約1766億円)に達した。同社は2021年後半から、オハイオ州ローズタウンの旧GM組立工場でピックアップトラック「Endurance」の生産を開始する計画を立てていた。

その計画は頓挫し、一連の不手際や不正疑惑が同社の問題をさらに大きくした。

2021年3月、以前Nikola Motor(ニコラ・モーター)に関して発表したレポートが証券取引委員会の調査と創業者辞任につながった空売り筋のHindenburg Research(ヒンデンブルグ・リサーチ)は、Lordstown Motorsのショートポジションを取ったと発表した。Hindenburgは当時、ショートポジションの根拠について「収益も販売可能な製品もない会社であり、その需要と生産能力の両方について投資家を欺いていると考えられる」と述べていた。

Hindenburgは、Lordstownの電動ピックアップトラックの予約注文が10万台に達したという主張に異議を唱えたが、これは2021年1月にLordstown Motorsが共有した数字だ。ショートセラーである前者は「広範な調査の結果、同社の注文は大部分が架空のものであり、資本調達と正当性の付与のための小道具として使われているようだ」と述べた。

その2カ月後、Lordstownは第1四半期の決算で、資金不足のためEnduranceの生産台数が約2200台からわずか1000台に半減する可能性が高いと報告した。

CEOとCTOが辞任した翌日、Lordstownの幹部らは、2022年5月までの電動ピックアップトラックの限定生産に必要な資金を提供するだけの拘束力のある予約注文を受けている、と述べて投資家を落ち着かせようとし、ますます深みにはまった。同社はこの発言を数日以内に撤回した

米国司法省(DOJ)と米国証券取引委員会(SEC)は、別々に同社を調査している

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Aya Nakazato)

企業秘密を盗用されたと主張するWisk AeroのArcher Aviationに対する仮差止請求を連邦判事が却下

米国時間7月22日、電動航空機のスタートアップ企業であるWisk Aero(ウィスク・エアロ)は、競合企業のArcher Aviation(アーチャー・アビエーション)に対する仮差止請求を、連邦判事に却下された。これは、Archerがその主力製品の航空機「Maker(メーカー)」の開発において、Wiskの企業秘密を盗んだかどうかをめぐり継続されてきた法廷闘争で下された最新の司法判断だ。

意見書の全文はまだ発表されていないものの、William Orrick(ウィリアム・オリック)判事は、先週初めに提出した仮判決の中で、Wiskが提出した「不正使用の証拠は、仮差止を正当化するにはあまりにも不明確である」と述べた。Wiskは5月に差止命令を要求しており、これが承認されると、Archerの事業は事実上、直ちに停止することになる。

Wiskは、Archerによって盗まれ、使用されたと主張する52件の企業秘密を裁判所に提出し、差止命令を求めることで、訴訟の最終判決が出るまでArcherがそれらを使用することを防ごうとした。これは異例の要求であり、オリック判事が不正使用のより確実な証拠を必要とすることは理に適っている。

オリック判事は暫定的な判決の中で「流用の疑いのある証拠はいくつかあるが、証拠が非常に不明確であることから、Wiskは差止命令という特別な対策を受ける権利はない」と述べている。「なぜなら、それらの真価が非常に不明確であり、Wiskは不正使用に基づく回復不能な損害を十分に示すこともできていない。不正使用の確かな証拠がなければ、差止命令はArcherの事業を大きく脅かすことになるため、不利益の比較衡量はArcher側の有利となる」。

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Wiskでは、差止命令に関する裁判官の判断は、訴訟の結果とは関係がなく「少なくともArcherを免責するものではない」と述べている。

「我々は、WiskのIPが盗用されたという確かな痕跡に基づいてこの訴訟を提起しました。そして、今日までの司法手続きを通じて集められた初期の限られた証拠は、ArcherによるWiskの企業秘密の不正流用が広範囲におよび、Archerの航空機開発に浸透しているという、我々の確信を裏付けるものに他なりません」と、Wiskは続けて述べている。「本日の判決を受け、Wiskは本格的に証拠収集を開始します」。

Wiskは2019年に、Kitty Hawk(キティホーク)とBoeing(ボーイング)の合弁会社として設立されたが、その電動航空機開発の歴史はもっと前までさかのぼることができる。同社はもともと2010年にLevtという会社として設立され、後に姉妹会社のKitty Hawkと合併した。Wiskによると、同社は(Kitty Hawkとして)2016年に固定翼に12ローターを採用した機体の設計に着手したという。同社がてがけた最初の航空機である「Cora(コーラ)」は、この設計が中核となっている。

それと対照的に、Archerはこの分野では新参者だ。4月に提出されたWiskの訴状の大部分は、Archerがそのエアタクシーサービスを市場に投入する速さを根拠としている。Archerはまた、多くの元Wiskのエンジニアを採用している。その中には元社員のJing Xue(ジン・シュ)氏も含まれており、Wiskでは同氏が退社前に5000件近くのファイルをダウンロードし、それをArcherに渡したと主張している。

シュ氏は反対尋問を受けた際、現在進行中の連邦捜査を理由に、憲法修正第5条を主張し、自己負罪拒否特権を行使した。

Archerによると、Wiskは訴訟の中心的な主張であるArcherがWiskの企業秘密を受け取って使用したことを示す実質的な証拠を提出していないとのこと。Archerの副法律顧問であるEric Lentell(エリック・レンテル)氏は、Wiskの主張は「陰謀論と明らかな虚偽」に基づいていると述べている。

Archerの共同設立者であるBrett Adcock(ブレット・アドコック)氏とAdam Goldstein(アダム・ゴールドシュタイン)氏は「Archerの勢いと革新の速さを認識したWiskが、自らの成功の欠如を補うために、我々の足を引っ張ろうとして、司法および刑事司法制度を悪用し始めたことは、本件におけるWiskの行動から明らかです」と述べている。

裁判所は8月11日にスケジュール調整会議を開き、そこで裁判官が本件の次の段階について概要を説明する。裁判の日程はまだ決まっていない。

この訴訟は、米国カリフォルニア北部地区連邦地方裁判所に、事件番号5:21-cv-2450として提訴されている。

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画像クレジット:Youibot / Wisk Aero

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

スウェーデンの電動航空機スタートアップHeart Aerospaceが200機を受注

スウェーデンの電動航空機製造スタートアップHeart Aerospaceは、これまでで最大の受注を獲得した。同社初の電動航空機ES-19を200機、航空大手United Airlines(ユナイテッド航空)と地域航空会社パートナーMesa Air Groupから受注した。

最大100機の追加購入オプションを含むこの取引は、3500万ドル(約38億円)のシリーズA資金調達ラウンドとともに発表された。本ラウンドはBill Gates(ビル・ゲイツ)氏のBreakthrough Energy Ventures、ユナイテッド航空のベンチャー部門、およびMesaが主導し、シード投資家のEQT VenturesとLowercarbon Capitalも参加している。

ES-19は19人乗りのリージョナル(地域間輸送)航空機で、従来のジェット燃料の代わりにバッテリーと電気モーターで飛行する。同社によると、最初の商用機は2026年までに出荷され、現行のバッテリー技術で最大250マイル(約402km)の飛行が可能になる。Heart Aerospaceの創業者で航空宇宙エンジニアのAnders Forslund(アンダース・フォルスランド)氏は、同社は商用運用の最初の段階において、より短いルートに注力すると述べている。ユナイテッド航空が運航する路線には、シカゴ・オヘア国際空港からパデュー大学空港までの118マイル(約190km)の路線や、サンフランシスコ国際空港からモデストシティカウンティ空港までの74マイル(約119km)の路線などが含まれる。

「当社の初期のフォーカスは、レンジの最大化ではなく、ユニットの経済性の最適化です」とフォルスランド氏はいう。「電動航空機の場合、ルートが短くなるほど、充電時間が短縮され、バッテリーの消耗が抑えられ、日々の飛行回数を増やすことができます」。

Heart Aerospaceは、技術革新の核となる電気推進システムの本格的なプロトタイプを作り上げた。しかし、商業運転開始までにはまだ多くのステップを完遂する必要がある。その中でも特に重要なのは、実際に完全な航空機のプロトタイプを組み立ててテストし、米国と欧州の関係当局の認可を得ることだ。

フォルスランド氏がTechCrunchに語ったところによると、今回の資金調達ラウンドは、航空機に搭載すべき多種多様なシステム(アビオニクスシステム、飛行制御システム、さらには重要な除氷システムなど)の安全性と信頼性の検証に向けてサプライヤーと協働するためのものだ。これらの残存要素について、同社は約50社のサプライヤーと協議しているという。同社はまた、ES-19の完全なプロトタイプを組み立ててデモを行うための大規模なテスト施設も建設中だ。

Heart Aerospaceは既存の航空インフラに乗る意向であるため(ES-19専用の垂直離着陸用飛行場はない)、少なくとも規制当局に関しては、電動エアタクシーよりも相対的に有利な立場にある。大きな技術革新であることが明らかな電気推進システムとは別に、同社は他の個々のシステムについて既存の技術にも依拠していく。

画像クレジット:Heart Aerospace

フォルスランド氏はTechCrunchとのインタビューで次のように述べている。「2026年というローンチ時期は、当社がインターネット上で展開したいと考える壮大な目標として掲げるものにとどまらず、協働するサプライヤー、そして認証機関がともに目指しているものでもあります」。

同社はスウェーデンに拠点を置いているが、少なくとも一部の航空機の最終組み立ては北米で行われ、これらの国の企業からの注文に応じる可能性が高いとフォルスランド氏は付け加えた。

Heart Aerospaceとの契約は、ユナイテッド航空が2021年行った、電動航空機に関する最新の賭けと言えるだろう。同社は2021年2月にも10億ドル(約1100億円)の発注を行っており、エアタクシースタートアップのArcher Aviationに投資している(フォルスランド氏はユナイテッド航空の発注金額を明らかにしていない)。ArcherとHeartとの購入契約はいずれも、一定の安全基準と運用基準が条件となっており、双方とも市場に出るまでに少なくとも数年はかかるとみられる。この投資は、低排出ガス技術とゼロエミッション技術(すでに個人向け自動車輸送でかなり進行している)に向けた航空業界の大きな変化の始まりを示すものだ。

この取引は、かってはこの地域の空の旅の主力であった19席の航空機を活気づけることにもなるだろう。このタイプの航空機は利益率の低さの犠牲になり、過去30年間で1500機以上が退役した。地域の航空旅行も、1990年代以降、米国において減少の一途をたどっている。Mesaは一時期、19席仕様の最大のオペレーターであった。

Heart Aerospaceは自社のウェブサイトで、小型の従来型航空機は、エンジンの所有コストが19席または70席と同等である場合、もはや経済的ではないと指摘している。しかし、同社の電動航空機はその方程式を変えるという。ES-19の電気モーターは、同等のターボプロップの20分の1の費用しかかからず、メンテナンスコストも100分の1に削減される、とHeartは主張する。

Heart Aerospaceは、スウェーデンのヨーテボリにあるChalmers University of Technology(チャルマース工科大学)の研究プロジェクトからスピンアウトして2018年に設立された。同社はY Combinatorの2019年冬コホートに参加し、同年5月に220万ドル(約2億4000万円)のシード資金を獲得した。Heartの従業員数は約50人に成長し、その勢いは衰える気配がない。

「航空機製造は難しさがありますので、車輪を再編成しない機体を構築したいと考えています」とフォルスランド氏は語る。「電気式で、安全性、効率性、信頼性に優れ、航空会社にとって収益性の高い航空機の製造に注力しています」。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Dragonfly)

GMの電気自動車Bolt EVが2度目のリコール、LG化学製バッテリーに発火のおそれ

GMは、電気自動車「Bolt EV(ボルトEV)」の2017年から2019年モデルに、発火の可能性がある問題が見つかったとして、2回目のリコールを行っている。同社によれば、欠陥のあるバッテリーを交換する計画だというが、それを行うまでの間、充電を90%までに制限するとともに、バッテリー残量が航続可能距離70マイル(約113キロメートル)を下回らないようにするようにと顧客に注意を促している。また、屋内に駐車したり、夜間に充電状態のまま放置することは避けるようにと、先週から繰り返し呼びかけている。今回のリコールは、2020年11月にGMが行った6万8000台以上のBoltのリコールに続くものだ。

GMはまた、Boltの顧客に、最寄りのシボレーEV販売店で、近い将来に起こるバッテリー問題を事前に警告する高度診断ソフトウェアを利用することも提案している。GMと同じくLG Chem(LG化学)からバッテリーを調達しているHyundai(現代自動車)は、Kona EV(コナEV)に搭載していた7万5000個以上のバッテリーを交換することになった。

このリコールは、2017年から2019年モデルのBoltで、これまで5件の火災が起きていることがきっかけとなって届け出されたものだ。これは憂慮すべき問題のように聞こえるかもしれないが、FEMA(アメリカ米国連邦緊急事態管理庁)の報告書によると、ガソリン車では1日に平均約150件の火災が発生していることも記しておく価値があるだろう。それでもEVメーカーは、より多くの人を傷つけることになる前に(そして電気自動車に対する否定的な感情が増える前に)、潜在的な問題に責任をもって対処できることを証明する必要がある。

編集部注:この記事はEngadgetに掲載されている。本稿を執筆したDevindra Hardawarは、Engadgetのシニア・エディター。

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(文:Devindra Hardawar、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Rivianが事業拡大を見据えAmazonのファンドなどから新たに約2760億円調達

Rivian(リビアン)は米国時間7月23日、AmazonのClimate Pledge Fund、D1 Capital Partners、Ford Motor、T. Rowe Price Associates Incがアドバイスしたファンドや個人がリードした25億ドル(約2760億円)の私募増資ラウンドをクローズしたと発表した。

Rivianによると、Third Point、Fidelity Management and Research Company、Dragoneer Investment Group、Coatueも本ラウンドに参加した。

「車両生産開始が近づき、次の成長段階を見据えて進み続けることが重要です」とRivianのCEOであるRJ Scaringe(RJ・スカリンジ)氏は声明で述べた。「信頼できるパートナーからの今回の資金注入により、Rivianは新車両プログラムを拡大して米国内の施設を拡張し、そして海外へのプロダクト展開の資金をまかなうことができます」。

D1 Capital Partnersの創業者、Dan Sundheim(ダン・サンドヘイム)氏は「顧客にとって優れたプロダクトとなると我々が確信しているものの商業化と納車においてRivianが変曲点に達している中で、同社への投資を増やすこと」に興奮している、と述べた。

Rivianはこれまでに約105億ドル(約1兆1610億円)を調達した。同社はポストマネーの評価額は公開しなかった。

現在7000人を雇用し、9月のR1Tピックアップトラック納車開始を準備しているRivianは、直近では2021年1月に資金を調達した。そのラウンドでは既存投資家のT. Rowe Price Associates Inc.、Fidelity Management、Research Company、AmazonのClimate Pledge Fund、Coatue、D1 Capital Partnersから26億5000万ドル(約2930億円)を調達した。新規投資家も参加し、情報筋が当時TechCrunchに語ったところによると、同ラウンドによりRivianの評価額は276億ドル(約3兆510億円)になった

今回の資金調達のわずか数日前に、Rivianは米国に2つめの工場の建設を計画していることを明らかにした。また、同社は「パンデミックの波状の影響」、特に現在も続いている世界的な半導体チップ不足で生産が遅れているために、R1TトラックとR1S SUVの納車を今夏から9月へと延期することも決めている。

関連記事:RivianがEVピックアップトラック生産開始に向け2753億円調達

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画像クレジット:Kirsten Korosec

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

Waymoが自動運転テックハブのピッツバーグにオフィスを開設

かつてGoogle(グーグル)の自動運転車プロジェクトで、現在はAlphabet傘下の独立会社である Waymo(ウェイモ)は米国東部で事業を拡大する。同社は米国時間7月22日、ピッツバーグにオフィスを開設すると発表した。鉄鋼の街として知られるピッツバーグで自動運転車両テクノロジーを開発・試験する一連の企業の輪に加わる。

同社はエンジニア12人ほどの採用から開始し、ベイカリー・スクエア地区にあるGoogleの既存のオフィスを使用する、とWaymoの動きに詳しい情報筋はTechCrunchに語った。7月22日時点でWaymoのウェブサイトに掲載されているピッツバーグエリアの求人は3件のみだが、同社は間もなく追加する。

新しいチームの一部メンバーは自動運転車両の意思決定を専門とするピッツバーグ拠点のテックスタートアップ、RobotWitsから加わる。ここにはRobotWitsの創業者でCEOのMaxim Likhachev(マキシム・リハチョフ)氏、そしてエンジニアリングやテクニカルのスタッフが含まれる。WaymoはRobotWitsを買収していないが、RobotWitsの知的財産権を買収した、と情報筋は述べた。

Waymoの自動運転プラットフォームWaymo Driverをピッツバーグで展開する計画は現在のところない、とも情報筋は付け加えた。その代わり新しいチームはモーションプランニングの開発、リアルタイムのルートプランニング、Driverの開発に取り組む。これまでのところ、Driverはアリゾナ州大都市圏のフェニックスで展開されてきた。同社のWaymo Viaトラッキング・貨物サービスはトラック運送会社J.B. Hunt Transport Servicesとテキサス州でテストされることになっている。

自動運転技術のライバルであるAurora、Motional、Argo AIはすでにピッツバーグにオフィスを設置済みだ。カーネギーメロン大学の人材で、ピッツバーグ市も自動運転エンジニアリング開発のための正真正銘のハブとしての地位を確立した。ピッツバーグはまた、自動運転トラックに取り組んでいるLocomationを含む、多くの零細AVスタートアップの拠点でもある。

Waymoはすでにサンフランシスコのマウンテンビュー、フェニックス、ニューヨーク、ダラス、インドのハイデラバードにオフィスを構えていて、ピッツバーグはこのネットワークに加わる。

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タグ:Waymoピッツバーグ自動運転

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

Lucid MotorsのSPAC合併は経営陣が議決権行使を促した後に株主が承認

電気自動車(EV)のスタートアップであるLucid Motors(ルーシッドモーターズ)が、特別買収目的会社(SPAC)であるChurchill Capital IVと合併することが、米国時間7月23日の株主総会で承認された。ただし、個人投資家の投票数が少なかったため、両社は合併の期限を1日延長していた。

このような問題が起こるのは珍しいが、伝統的なIPO(新規株式公開)を経ずにSPACと合併する企業が増えれば、より一般的になる可能性がある。

この問題が発生したのは米国時間7月22日で、株主は合併の一環として提案された議案のうち、1つを除くすべての議案を承認した。第2号議案は、会社の定款を改定し、重要な資金調達を行うためのもので、他の議案よりも高い定足数を必要とした。合併を実行するためにその議案の承認も必要だったため、定足数に達しなかったことで、結局すべてのプロセスが停止してしまった。

株主が足りなかった原因は、個人投資家がSPACのプロセスに慣れていなかったことと、信じられないことに、スパムフィルターがうまく機能しなかったことにある。

ChurchillのMichael Klein(マイケル・クライン)会長は、株主に送られた電子メールの一部が誤ってスパムフォルダに送られた可能性を指摘した。Gmailのスパムフィルターのようなローテクなものが、数十億ドル(数千億円)規模の企業合併を妨げるとは信じられないかもしれないが、今回のケースではそれが起こった可能性があるようだ。

クライン氏は22日に行われた投資家向け電話会議で「我々は単により多くの票を必要としているだけです」と述べた。Lucid MotorsのCEOであるPeter Rawlinson(ピーター・ローリンソン)氏も「第2号議案に投票していただきたい」と直言した。

「多くの方にとって、この投票プロセスが初めてであったり、標準的でないことを認識しています」とクライン氏は続けた。同氏はその後、多くの個人株主に感謝の意を表しつつ「新しいプラットフォームや新しいアプリから参加している」株主に議決権行使を促した。「それらのツールは必ずしも議決の場へはっきりと導いてくれるわけではないのかもしれません」。

パンデミックが始まって以来、アマチュアトレーダー、いわゆる「リテールトレーダー」の数が爆発的に増加した。大きく寄与したのはRobinhood(ロビンフッド)のようなアプリだ。ゲーミフィケーション戦略を活用して、ユーザーがどこからでも株式を売買できるようにしたのだ。この現象の極めつけは、GameStopやAMC entertainmentのような破綻企業の株式の爆発的な価格上昇として歴史に刻まれることになるだろう。価格上昇は、「r/wallstreetbets」というサブレディット上のリテールトレーダー軍団によって引き起こされたのだ。モルガン・スタンレーのレポートによると、米国の株式取引量に占める個人投資家の割合は約10%で、2020年9月の最高15%から減少している。

しかし、ミーム株の価格上昇が何かを示しているとすれば、それは個人投資家が強力な力を持っているということだ。モルガン・スタンレーのレポートによると「個人投資家は一般消費財、通信サービス、テクノロジーなど、消費者が親しみやすいセクターの企業を好む傾向がある」という。これが、Churchill SPACが多くの個人投資家の目に留まった理由かもしれない。

サブレディット「r/SPACs」に投稿された高評価の記事の中で、あるReddit(レディット)ユーザーは、新規の個人株主に議決権行使を促した。「これは普通じゃない。SPACが株主に自らの利益のために行動するよう懇願する必要が生じたことなどなかった。必ず議決権を行使して欲しい。行使しなければならない。不投票はイエスとはみなされない。不投票はただの不投票だ」。

Lucidの合併延期は、ミーム株取引とはまったく異なるシナリオだが、個人投資家が引き続き市場を形成しているという新たなリマインダーだ。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:電気自動車Lucid MotorsSPAC

画像クレジット:Lucid Motors

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi