中国の「データの罠」に陥るのを避ける方法

TechCrunch Global Affairs Projectとは、ますます複雑に絡み合うテクノロジー分野と世界政治の関係性を検証するためのプロジェクトである。

米国人事管理局(OPM、Office of Personnel Management)、航空会社の乗客リスト、ホテルの宿泊客データのハッキングなど、最近の顕著なデータ侵害事件によって、公共システムと民間システムの両方がスパイ行為やサイバー犯罪に対していかに脆弱であるかが明らかになっている。それほど明白ではないのは、外国の敵対者や競合相手が、国家安全保障やスパイ活動の観点からはあまり明確ではないデータを標的にする方法である。今日、広告主が消費者の選好分析に使用する種類のデータなどの国民感情に関するデータは、従来の軍事目標に関するデータと同じくらい戦略的に価値のあるものになっている。戦略的に価値のあるものに対する定義がますます曖昧になるにつれて、戦略的データを識別し保護する能力は、より一層複雑かつ死活的な国家安全保障上のタスクとなるであろう。

これは特に、戦略的データへのアクセスを求め、それを敵対国に対するツールキットの開発に利用しようとする中国のような国家主体に関して当てはまる。2021年11月、MI6の長官であるRichard Moore(リチャード・ムーア)氏は、中国の脅威を「データの罠」と表現し、次のように論を唱えた。「自国の社会に関する重大なデータへのアクセスを他国に許せば、やがて主権が損なわれることになり、もはやそのデータをコントロールすることはできなくなるだろう」。ほとんどの政府はこの脅威を把握し始めたばかりである。

2021年11月の議会証言で筆者は、今日民主主義を守るためには、外国、特に中国が特定のデータセットをどのように収集し、使用しているかについてよりよく理解する必要があることを主張した。また、将来的に戦略的データを適切に保護する(そして保護すべきデータセットを定義して優先順位づけを行う)には、敵対者がそれらをどのように利用するかを想定する創造的な取り組みが必要となる。

中国国家による権威主義的支配を強化する目的での技術の使用は、近年かなり注目されている話題である。新疆ウイグル自治区のウイグル人を標的にすることは、監視技術の侵略的で強制的な利用に後押しされ、この議論の焦点となっている。そのため、当然のことながら、中国の「技術独裁主義」がグローバル化するリスクについて考えるとき、大部分の人々は同じように侵略的な監視がグローバル化する可能性について考察する。しかし、実際の問題は、デジタルやデータ駆動の技術の性質ゆえに、はるかに重大であり、検出しにくい。

中国の党国家機関はすでにビッグデータ収集を利用して、グローバルな事業環境を形成、管理、コントロールする取り組みを推進している。それだけでは重要ではなさそうに見えるデータが、集約されたときに莫大な戦略的価値をもたらすことを同国は理解している。広告主は、私たちが必要としているとは認識していなかったものを売り込むために国民感情に関するデータを使うこともあるだろう。一方、敵対的な行為者は、そのデータを利用して、デジタルプラットフォーム上の民主的な議論を覆すようなプロパガンダ活動を発信する可能性がある。

米国をはじめとする各国は、前述のOPMMarriott(マリオット)、United Airlines(ユナイテッド航空)のような、中国を拠点とする関係者に起因する悪意のあるサイバー侵入のリスクに焦点を当ててきたが、データアクセスはデジタルサプライチェーンにおける悪意のある侵入や改変から導き出す必要はない。それは、中国国家のような敵対者に、下流でのデータ共有につながる通常の、そして合法的なビジネス関係を悪用することを求めているだけである。これらの経路はすでに発展しており、最近制定されたデータセキュリティ法や中国における他の国家セキュリティ慣行などのメカニズムを通じて、目に見える形で展開されている。

データにアクセスするための法的枠組みを作ることは、中国が国内および世界のデータセットへのアクセスを確保するための唯一の方法となっている。別の方法として考えられるのが、市場を所有することだ。最近のレポートで筆者と共著者は、調査した技術領域において、中国は他の国と比較して出願された特許の数が最も多いが、それに対応するインパクトファクターは高くないことを見出した。

ただし、これは中国企業がリードできていないという意味ではない。中国では、研究開発インセンティブ構造によって、研究者は特定の政策目的を持つアプリケーションを開発することになる。つまり、企業は市場を所有し、プロダクトを後から改良することができる。中国の指導者たちは、世界市場での優位性を確立し、世界的な技術標準を確立しようとする努力が、海外でのより多くのデータへのアクセスを促進し、最終的には異なるプラットフォーム間での統合につながることを十分に認識している。

中国は、そうでなければ注目に値しないデータを組み合わせて、全体として極めて明確な結果をもたらす方法を模索している。結局のところ、いかなるデータでも、適切な処理を行えば、価値を生み出すことができるのである。例えば、筆者は2019年のレポート「Engineering Global Consent」の中で、機械翻訳による翻訳サービスを提供する宣伝部門統括会社であるGlobal Tone Communications Technology(GTCOM、グローバルトーン・コミュニケーション・テクノロジー)のケーススタディを通じてこの問題を取り上げた。同社の広報によれば、GTCOMはHuawei(ファーウェイ)やAlicloud(Alibaba Cloud、アリババクラウド)などの企業のサプライチェーンにもプロダクトを組み込んでいる。しかし、GTCOMは翻訳サービスを提供しているだけではない。同社の役員によると、同社が事業活動を通じて収集するデータは「国家安全保障のための技術的なサポートと援助を提供している」という。

さらに中国政府は、将来的により優れた技術力を想定して、明らかに有用ではないデータも収集している。日常的な問題解決と標準的なサービス提供に貢献するのと同じ技術が、中国の政党国家の国内外における政治的支配力を同時に強化する可能性がある。

この増大する問題に対応するためには、中国との「技術競争」について異なる考え方をする必要がある。問題は、単に競合する機能を開発することではなく、将来のユースケースを想定して、どのデータセットを保護する価値があるかを知ることにある。国と組織は、自らのデータの価値と、現在または将来そのデータにアクセスする可能性のある潜在的な当事者にとってのデータの価値を評価する方法を開発しなければならない。

私たちはすでに、世界がよりデジタル的に相互接続されるようになるにつれて、中国のような権威主義体制が弱体化すると考え、その脅威を過小評価している。民主主義国家は、技術の権威主義的な適用によって生じる問題に、対応して自己修正しようとしているとはいえない。私たちは、現在の脅威の状況に合わせて、リスクを再評価しなければならない。そうしなければ、中国の「データの罠」に陥る恐れがある。

編集部注:本稿の執筆者Samantha Hoffman(サマンサ・ホフマン)博士は、オーストラリア戦略政策研究所国際サイバー政策センターのシニアアナリストで、独立したコンサルタント。

画像クレジット:PM Images / Getty Images

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(文:Samantha Hoffman、翻訳:Dragonfly)

中国が火星軌道周回機と探査車ミッションを7月に打ち上げ

中国の現在の宇宙開発計画によると、7月に火星探査ミッションを打ち上げる予定だ。これには火星を探査するための軌道周回機と、地表探査のための遠隔操作ロボット探査車(ローバー)が含まれる。一方アメリカも、火星でのロボット探査車ミッションを計画しており、火星へと最も効率的に飛行できる今年の夏に打ち上げられる予定になっている。

これは中国の宇宙開発計画にとって最初の火星への探査車ミッションとなり、NASAの宇宙探査計画に対抗する計画のうちの1つだ。NASAはこれまでに4回の火星探査車ミッションを実施しており、5回目のミッションはPerseveranceと呼ばれる最新の探査車で、2020年に打ち上げられ2021年2月に火星へと到着する予定だ。

NASAのミッションには、野心的な岩石サンプルリターン計画も含まれており、それを持ち帰るための初となる火星からの宇宙船打ち上げも含まれている。NASAはまた、このミッションで初の大気圏用空中探査機を火星に送り込む予定だ。これは、火星上空を短時間飛行しデータを収集するヘリコプタードローンである。

中国は新たに独自の宇宙ステーションを開発し2022年までに打ち上げるなど、いくつかの宇宙探査計画を進めている。また同国は最近、新しい有人ミッション用の宇宙船の試験打ち上げを行い、これは最終的には中国の宇宙飛行士を月面に着陸させるミッションにも使用されることになる。

一方NASAは、特に月への到達と恒久的な人間の存在を確立することに関連した、宇宙での国際協力を継続するために提案された新しい規則の草案を発表した。同宇宙機関はまた、米国時間5月27日の水曜日にSpaceXのクルードラゴン宇宙船で宇宙飛行士が搭乗した初のデモンストレーション打ち上げを実施し、米国の宇宙飛行士打ち上げへの復活を目指している。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

米国が「中国のハッカーが新型コロナ研究を標的にしている」と非難

米連邦捜査局(FBI)と、米国土安全保障省(DHS)傘下のサイバーセキュリティ専門とするCISAは稀に見る共同声明というかたちで、中国のハッカーが新型コロナウイルス(COVID-19)に関する米国の研究を盗もうとしていると非難した。

5月13日に出された声明文には、中国のハッカーが「新型コロナウイルス関連の研究を行っているネットワークや研究者から、ワクチン、治療法、テストに関連する価値ある知的財産や公衆衛生データを特定して不正に入手しようと試みていることが確認された」と書かれている。

「こうした部門をターゲットにする中国の動きは、米国の新型コロナウイルス対応への大きな脅威となる」としている。FBI、CISAいずれも主張の根拠を示さなかったが「『数日内』に詳細を公表する」とした。

これは、米国と英国が先週出した共同声明に続くものだ。共同声明では、「医療機関・医療研究機関に対して、ハッカーがIDやパスワードを組み合わせて連続的に不正ログインを試みるパスワードスプレー攻撃を使っている」と警告していた。これらの機関は、医療支援サービスと医療用品を一体となって提供し、事故を防止し、新型コロナウイルスの対応に集中している。

研究会社と製薬大手は新型コロナウイルスのワクチン開発を競っている。専門家に言わせると、厳しいロックダウンの規制を世界中で解除するにはワクチン開発がおそらく唯一の方法となる。新型コロナ感染が昨年12月に確認されてからこれまでに世界中で420万人超が感染しているのだ。

米当局は長い間、中国が米国のシステムをハッキングしていると非難してきた。2018年以来、司法省の検事は中国政府のために働いているといわれるハッカー数人を検挙してきた。これらのハッカーは2015年のAnthem情報漏洩、数十社ものテック大企業や政府系組織が影響を受けた事案などにかかわっていたとされ、最近のものとしては中国軍のハッカーが消費者信用情報大手Equifax(エクイファックス)から1億5000万件近くの記録を盗んだ事案などがある。

中国政府は繰り返しハッキングの疑いを否定してきた。しかし新型コロナ研究を盗むためにサイバー攻撃していると非難されている国は中国だけではない。今週初め、ロイターはイランが支援するハッカーが米国の製薬会社Gilead(ギリアド)を攻撃したと伝えた。同社の抗ウイルス薬「レムデシビル」はこれまでに新型コロナウイルスの治療薬としての有効性が示された唯一のものだ。

画像クレジット: Jane Barlow / WPA Pool / Getty Images

“新型コロナウイルス

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(翻訳:Mizoguchi

中国では未成年者の93%がインターネットを使用、情報格差は縮小傾向

中国の未成年者はすぐにネットを利用できる状態にある。想像もつかないような、あるいはこれまでの世代は利用できなかった方法でインターネットを使用している。

政府系機関の中国インターネットネットワーク情報センターと中国共産主義青年団が発表した共同レポートによると、中国の未成年者の93.1%、18才以下の1億7500万人が2019年にインターネットを使用した。

情報格差は急速に消失しつつある。都市部の未成年者におけるインターネット浸透率は93.9%で、農村部の浸透率を3.6%上回った。2018年には都市部と農村部では5.4%の開きがあった。未成年者のほとんど全員がスマートフォンを通じてインターネットに接続していた。比較の対象として、米国のティーンエイジャーがスマホを利用する割合は2018年に95%を記録した。

中国の学校の81.9%が携帯電話の使用を制限しているが、未成年者の74%がインターネットにつながる自分のデバイスを持っていると答えている。89.6%が教育目的でインターネットを使用している。何百万もの子供たちが家にとどまることになったた新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックがオンライン教育をより一層浸透させたのは間違いない。そして61%がゲームのために、46.2%がDouyin(TikTok中国版)やKuaishouといったアプリのストリーミングショートビデオのためにインターネットを使用した。動画共有は中国のソーシャルネットワークで最も使用が多い部門だ。

広まっている懸念とは裏腹に、インターネットに「精神依存」する状態になっていると答えたのは17.3%にとどまっている。しかしこの結果は回答者の主観的な評価に基づくものであり、注意が必要だ。67%が世界情勢の学習や日々の勉強にインターネットを使用すると答えた。そして60%がエンターテイメントのツールとして、53%が日々の雑用をこなすツールとしてインターネットをとらえている。インターネットは友達に会うための手段と答えたのは3分の1にとどまり、自己表現の手段としている人はさらに少ない18.8%だった。

多くの親が子供のインターネット使用に関して安全性を憂慮するようになっているが、未成年者の75.3%が正しい保護策を、そしてインターネット使用に関する不適切な行為を報告する方法を「ある程度理解している」と答えた。政府からの要求を受けて多くのインターネットプラットフォームが子供保護機能を導入した。中国の主要なショートビデオプラットフォームは昨年、未成年者のサービス使用時間を制限するペアレンタルコントロールモードを立ち上げた。ネット中毒対策でも同様の動きがあり、中国最大のゲームプロバイダーTencent(テンセント)はプレイヤーの年齢確認を厳格化した。

画像クレジット: Photo credit should read STR/AFP via Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

中国が新型の長征5号Bロケットで次世代乗員カプセルのデモ飛行

中国が新型の長征5号Bロケットを利用した、次世代宇宙船の実証ミッションを打ち上げた。これは、中国の次世代宇宙ステーションの部品の打ち上げにも使用される、新型の長征ロケットの最初の打ち上げでもある。

今回のミッションでは、中国で最新のロケット射場となる文昌(ウェンチャン)から、乗員を乗せない宇宙船が打ち上げられた。長征5号Bは推進力を高める4つのブースターを装備した10基のエンジンを搭載したロケットで、中国にとってこれまでで最も強力なロケットだ。このロケットは第2段がなく、大型のペイロードを地球低軌道に運ぶために特別に設計されている。これはまさに、同国が2022年までの建設を計画している宇宙ステーションの組み立てに必要なものだ。

乗員カプセルは低軌道で短期間の実証ミッションを行うが、現時点では飛行証明の準備段階だ。最終的には、軌道上の宇宙ステーションとランデブーし宇宙飛行士を送り込むために中国が現在使用している宇宙船の神舟と代わることになる。現在は3人乗りだが、最終的には一度に最大6人を輸送することができ、また最終的には月まで宇宙飛行士を運ぶことも可能になる。

これは中国の宇宙開発にとって重要なミッションであり、現在進行中のNASAによる商業有人ミッションと比較すると興味深い。アメリカは5月27日にSpaceX(スペースX)の商業宇宙船が宇宙飛行士を乗せて初のデモ打ち上げを行うという、大きなマイルストーンに近づいている。また同社のCrew Dragonは、構成によって最大7人の乗員を輸送できる。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

新型コロナ隔離者の日記、中国から米国、そして中国への逃避行

【編集部注】TechCrunchのライターであるRita Liao(リタ・リャオ)の中国から米国、そして中国への帰国の旅は、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックが世界中で発生する何カ月も前に計画されていた。パンデミックによって、単なる帰国は大変な印象に残る旅になった。記事には彼女が移動した場所には触れられているが、ストーリーの本題に集中するためその詳細は省く。

焦点は、新型コロナウイルスの感染規模が拡大するなか、移動とともに世界の展望と見通しが変化する様子をユニークな視点で見ることができたことだ。この期間の日記をここに掲載することで、読者に主観的な視点の一部を伝える。当然ながら、(テック業界で働いているかどうかにかかわらず)現在のあらゆる人の生活に関係しているテクノロジーを、この記事では切り口にしている。アプリは、実際に人と会うことができないときに我々をつなぎ、物事を進めるうえで不可欠なものになっている。各国政府は事態の追跡にテクノロジーを慌てて使用している。驚くべきことに、最も一党独裁主義的だと考えられた対策でも危機には十分ではないのだ。結局、我々の情報すべてはインターネットからくるのだから。

14日にわたる中国での隔離は、午前1時に核酸検査のために街外れまで連れていかれるなど、想像を絶したものだった

出発

3月13日夜、フィラデルフィアから中国へ帰国するフライトの前夜、滞在していたAirbnbのホストが私の部屋にお別れを言いに来た。私は多数のマスクやハンドジェル数個をスーツケースに詰め込んでいたところだ。2月初旬、米国に到着してすぐ新型コロナウイルス感染防止のために買いだめしたものの残り。中国で生産がハイピッチで行われるようになったので、中国の家族に持ち帰ろうと思っていたもののほとんどを米国の友人や親戚に譲っていた。

3月初めにこの家に着いた際、細身で快活な50代初めの植物学者のホストにもこれらの防御グッズが必要かどうかを聞いた。彼女は穏やかに微笑んで、自分は心配していないと言った。フィラデルフィアにはほとんど感染者は出ていなかったし、彼女はマスクは使ったことがないらしい。

丁寧に断りながら彼女はこう尋ねた。「マスクをすると病気だと思われるわ。アジアの人はどうしてマスクをするの?」。

一般の人にマスクが必要かどうかについては賛否両論があると説明した。新型コロナウイルスの伝染を防ぐためには効果があるというのが合意の下にあるのだと。西洋の衛生当局者は長らく、患者または感染者と接触のある人だけに着用を推奨していたが、最近米国では公の場ではあらゆる人にマスクを着用するよう勧める動きが出てきた

アジアでは、新型コロナの発生以前からマスクの風習があった。 この病気の潜伏期間は27日間にもなる場合があり、多くの人が気づかないうちにキャリアになる可能性があることから、マスクの着用が他の人を守る結束の表れになった。中国の都市では、すでに公共の場でのマスク着用が義務付けられていた。私にとって、マスクは気休めでもあり顔を触らないためにも役立っていた。

1週間のうちに感染は全米で急速に拡大し、フィラデルフィアにも新たに何十人かの感染者が報告された。あらゆる大規模なイベントは中止され、私のホストも何件かのキャンセルの被害にあっている。

防御グッズがいらないか、もう一度彼女に聞いてみることにした。「ありがたくいただくわ。ハンドジェルを持ってないし、 マスクも持ってないの」。今回は目を輝かせて答え、こう尋ねた。 「でも、どうやって着けるの?」。

グッズを渡しながら、自分がコロナウイルスから逃れようとするのは2回目であることに気が付いた。数カ月前、今回の米国旅行を計画しているときは、それが2回もの大脱出になろうとは想像もしていなかった。最初は病気の感染が広がり始めている中国からの脱出、そして同様の危機が起こり始めようとしている米国からの脱出だ。

第1~2週:パラレルワールドでの恐怖

50日ほど前に米国に旅立つ際、私は不安で落ち着きをなくしていた。 客観的に考えれば、私が新型コロナに感染する可能性は低い。効果的な対策をいち早く講じた台北のような被害の少ない都市にいたし、香港発のフライトの99%の乗客はマスクを着けていた。しかし、出入国管理の突然の変更や、予告なく行われたフライトキャンセルなど、伝染病の流行によって引き起こされた不透明な出来事が重なることで、私の不安も高まっていた。

到着地のテキサスは不気味なほど普通だった。2月下旬に米国初の市中感染が報告される3週間前のことだ。入国審査では予想していた検査はなかった。体温チェックも、最初の新型コロナウイルス発祥地の中国の都市、武漢にいたかどうかの質問もなかった。 安心すると同時に、機内で着けていたマスクを捨てた。「ここは安全だ」と自分に言い聞かせた。マスクを外した理由の多くは、この地にはマスクに対する偏見があるためだったが、マスクをしていない人たちを見ることで安心感を得ようとしていた。

この安心は長くは続かなかった。実際この時から8週間、私は理性と妄想の間で揺れ続けることになった。

宿泊させてもらうはずの親戚と友人は、私を泊めることができなくなっていた。 彼らの雇用主はどちらもアジア系で、テキサス州にはそのような規制はなかったものの、中国からの訪問者と接触のある従業員に14日間の自己隔離を義務付ける新しい規則が言い渡されていた。

3月上旬、クリーニング用品が品切れになったテキサス州プレイノのコストコ。この時点での州全体の新型コロナ発生件数は1件。 この地区には多数のアジア系の人が住む(写真: TechCrunch)

厳密には、私は自由に外出できたが、現地の中国人コミュニティ内に存在する恐怖は明白だった。 祖国から離れている人々の気持ちを祖国につなぐためのデジタルツールは、国外の現実から引き離すものにもなった。 WeChatからの恐怖をあおる多量の投稿を見て、多くの中国人移民は、米国で大規模な流行が報告されるずっと前から日用品の買いだめを始めていた。 チャイナタウンはゴーストタウンと化した。中国にいる母は、米国ではアジア系の人しかマスクをしていないことを聞くと縮みあがり、マスクをするように、人込みを避けるように、というメッセージを連日送ってきた。

私が従ったのは後者のメッセージ、人込みを避け、自主的に14日間、他の人との距離を取ることだけだった。感染を恐れてのことではなく、無症状感染者として他の人を感染させるのでは、という妄想にかられていたからだ。この伝染病を理解するための情報をむさぼる行為は不安を強めることにしかならなかった。ここで体験した沈黙は、コロナウイルスがすべての人類にもたらした大きな不確実さの中での孤立と同様に、耐え難いものだった。

第2~5週:折り合いを付ける

2週間後、ついに人との接触を再開することを決めた私は、礼儀として自分が中国から来たことを人々に明かした。人々の反応はさまざまだった。

ほとんどの米国人の友人は中国の状況に同情を示し、私が安全な場所にいることを喜んでくれた。高齢者と同居している現地の歯科医は、21日後までは診察できないと言った。新型コロナの症状がでるまでに最長で21日間かかるという。 米国在住の中国人の友人の何人かは、疫病からの脱出を祝福するジョークを飛ばした。脱出のために来たのではないが、実際私はラッキーだった。50代の中国人の知人は握手を避け、米国に来て何日経つかを恐る恐る聞いてきた。

私を疑いの目で見る人のことは気にしないように努めた。 彼らの反応は生き残るための本能に過ぎないのだから。中国での感染の拡大に伴って信頼も損なわれていった。隣人たちはおしゃべりをやめ、エレベーター内でくしゃみをする人はひんしゅくを買った。 仕方ないことだが、こうしたちょっとした態度の変化が長期的には人との関りや精神衛生に打撃を与える可能性があるだろう。

この時点で、私は自分はおそらく感染していないと思った。 テキサス州が正常に機能していたこともあり、閑散とした並木道を他の人と距離を取りながら歩くことができた。 平静を取り戻したところで、米国旅行の2番目の目的地、フィラデルフィアに移動した。私は中国語で書かれたこの伝染病に関する記事の山をむさぼるように読み始めた。ウイルスの暗闇の中に一縷の望みが見いだせればと思っていた。

室内に閉じ込められた中国の人々は、難しい問題を熟考せざるを得なかった。それは離婚率の増加など、意図しなかった結果を招いた。例を見ない数の市民活動や、今回の危機に端を発する討論は、多少の慰めになった。一般の人が病気と闘うストーリーが党や市民のジャーナリストによって鮮明に語られた。内部告発者の李文亮氏の死は、インターネット上で類を見ない怒りを生み出した。もう1つ興味深いことは、インターネットユーザーが暗号を使って検閲されたインタビューを急いで保存したことだ

中国当局に対する異例の集団抗議運動は、瞬く間に断片化されたデジタルの世界に姿を隠した。中国の強硬な封鎖が実質的な効果を見せ始めると、オンラインユーザーは国の緊急時対策をいち早く声高に賞賛し始めた。一部の人はモバイルゲームや動画のストリーミングなどの気晴らしに没頭することで時間をつぶした。この間、学校や企業は、民間のテック企業によるITサポートの下、デジタル技術を駆使して再開されようとしていた。

人民の活力を維持するため、新型コロナ危機の中働く中国のフードデリバリーグループ美団のスタッフ(写真: Meituan(美団)

オフラインの世界でも中国は通常に戻りつつあった。 実店舗は再開を許可され、移動の制限は全国で緩和された。 人々は徐々に自宅から出始め、警備員の目の届かないところではマスクを外して新鮮な空気をこっそりと吸い込むのだった。

日常生活にそれほど変化がない人にとっても、生活はより不確かなものになった。 高収入を得られる職業に就いている人は仮想会議に出席したり、テレワークブームの恩恵を受けたりする一方で、サービス、製造、物流業界で働く人々は自宅にいるわけにはいかず、人々の生活を守るために昼夜を通して働いていた。おそらく彼らには有給休暇はなく、多くは企業健康保険も持たない。今回の健康危機は、格差を浮かび上がらせることにもなった。

第6週: 安全を求めることの代価

中国行きフライトの出発ゲートにたどり着くやいなや、中国が近いことが肌で感じられた。群衆は一様に何らかの予防対策を顔に装着していた。私はまだだった。何週間にもわたるマスクのない環境に慣れ、シカゴでの乗継時には着用の必要性を感じていなかった。他の人との距離を保つことだけは注意していた。香港と中国本土への乗客以外には、空港ではマスクを着けている旅行者はほとんど見られなかった。

それでも、私も一致団結の精神にのっとりマスクをつけた。しかし他の人の防御手段は、私を恥じ入らせるほどのものだった。多くの人は医療用手袋をはめ、研究室用の保護ゴーグルを装着している人もいる。中にはプラスチックのポンチョをかぶり、自分で触った物を消毒してまわっている。マスクの片耳を外して水を飲んだ私は悪いことをしたような気になった。機内食を食べるなどもってのほかだ。

他の人の防御手段に圧倒されただけではなく、それぞれが入手したマスクの違いにも興味を引かれた。丈夫だが入手が困難なN95マスクには法外な値段を払わなければならない。ほとんどの人はより安価な医療用マスクをしているが、これも供給者にコネがなければ入手は困難になってきている。スポンジマスク、イラスト付きの洗える布マスク、果てには自作のオシャレなショールのようなものなど、効果が定かではないものを着けている人もいた。2002年にSARSが流行した時には、私もハローキティのマスクを着けて小学校に通ったものだった。

フライトも防御格差を見せる小宇宙となった。ファーストクラスでは乗客同士は安全だと言われる距離を保って席に着くことができ、窮屈なエコノミーの乗客は伝染病が大流行する最中に飛行機に乗るリスクと、安全だと思う国への帰国のメリットを天秤にかけたのだった。

飛行機の席を確保できたことさえ恵まれたことだった。 航空会社はいずれも渡航禁止令による影響を受けていたものの、大規模な政策変更の前後には、需要が一時的に急上昇する可能性があった。新型コロナを世界的パンデミックとするWHOの宣言を受け、世界中の学校がオンラインでの授業に移行し、学生寮は閉鎖され、海外留学生は自国へ帰るように促された。 航空券の値段は急騰した。 帰国を希望しながら、その値段を支払えない人は取り残されることになった。

第7週:不確実さとの闘い

新型コロナを持ち込まないための中国入国時の健康検査(写真: TechCrunch)

飛行機が地球を横切っている間、新型コロナの中心地は国外に変遷し、私の地元の深圳市では海外からの感染の流入を防ぐため、4カ国からの入国者への強制隔離を8カ国に拡大した。これには米国も含まれていた。

午後8時、深圳の税関検査は病院の待合室の様相を呈し、何百mにも伸びた列はほとんど動いていないようだった。 コロナウイルスの感染者を検出するための検査が行われていた。この最新の政策は正式には発表されておらず、多くの旅行者はまだ家族が到着ゲートで待っているものと思っていた。イライラと混乱が、強烈な蛍光灯に照らされるホールに充満した。 全員へのウイルスのテストは入国時なのか、あとで隔離場所でされるのか?外国人も無料でテストを受けるのか?隔離には料金の支払いが必要なのか?

入国審査官すら詳細を知らなかった。中国の封鎖対策はウイルスの拡大と同様に流動的だった。帰国者の波は国の医療リソースを急速に圧迫し、隔離施設に姿を変えた格安ホテルを満員にした。

午前1時、やっと私の体温チェックの順番が来た。旅行履歴や健康状態など、同じような質問が書かれた異なる政府機関用の十種類ほどの書類に記入した。優れた技術力を誇っているはずの中国で、なぜこのような面倒な作業がまだデジタル化または合理化されていないのか?国民を監視するリソースが、政府の他の優先事項に回っているのか?

私は疲れ果てていたが、私を検査した税関職員は私より疲れているようだった。12時間を超えるシフトによる疲弊は明らかだった。防護具を全身につけてはいるものの、彼はマスクが鼻の下にずれているのに気が付かないようだった。

「あなたはいつ家に帰れるの?」と私が聞くと、「さあ。帰国者はこんなにいるんだよ。また中国で大流行を起こすわけにはいかない。今は働くしかない」と何でもないことのように答えた。

私の書類が整うと、国境を超えることができた。 直ちに中国はテキストメッセージで私の入国を祝福し、公安部への登録が促された。通信事業者からのロケーションデータで、私が最近「感染の被害が甚大な」米国にいたことが示されているからだ。 ウイルスの蔓延は、個人を監視することを政府にさらに正当化させた。不思議なのは、政府はすでに豊富な市民データを自由に利用できるのに、なぜ当初、武漢からの旅行者の追跡に苦戦していたのか、ということだ。

Rita Liao(リタ・リャオ)@ritacyliao 2020年2月12日
中国政府が移動データを基にコロナウイルスへの感染リスクを測るアプリを立ち上げた。 しかしなぜ今? 地方政府や企業から市民データを収集/統合することが困難だったから? もっと前に導入されていれば、このアプリがウイルスの封鎖に役立っていたのでは?

Rita Liao(リタ・リャオ)@ritacyliao
@thisboyuanが教えてくれたように、政府が伝染病発生中の人々の移動の追跡に苦心したことから、北京で実施している国民の監視システムにはまだかなりの問題があることうかがえる
2020年2月12日 3:45 PM

私は20人の旅行者からなるグループに振り分けられ、隔離先のホテルへ向かうシャトルバスを待った。20人のうちほとんどが海外へ留学していた中国人学生だった。私たちはすぐに打ち解け、この現実離れした8時間の入国審査について愚痴を言い合ったが、実際に怒っている人は誰もいなかった。反対に、最前線で働く医療従事者と出入国管理職員に心からの感謝を一様に口にした。

お腹がペコペコだった。1人が全員のWeChatグループを作って、食べ物のデリバリーを注文することを提案した。「3.14隔離」というピッタリな名前が付いた私たちのWeChatグループは、さまざまな問題が発生した隔離期間中の情報交換や、支え合いに役立つことになった。道路清掃車の音が遠くから聞こえる。時計は朝4時を打ち、バスはホテルに到着した。

第8週: 混沌の甘受

体温チェック、食事の配達、核酸検査、各種政府機関からの電話、新しい隔離場所への移動などが突発的に行われるなか、ホテルでの隔離中に身体を中国時間に戻すのは事実上不可能だった。ある夜、私たちは30分で荷造りして、バスで深圳の外れまで移動するように言われた。そこで私たちはウイルス検査を受け、8時間後の午前3時にまた前と同じ地区にある別のホテルに連れて行かれた。

隔離仲間たちは、この予測不可能な状況にいら立ち、助けになりそうな人に手あたり次第電話をかけ始めた。ホテル従業員、現地職員、親戚、友人から得た情報の断片をWeChatグループで共有するなか、何かが見えてきた。隔離システムは、民間組織と公的機関の間の大規模な動員と複雑な調整によって行われているらしい。これには、医療従事者や共産党下級行政機関(居民委員会と呼ばれる)から、政府の助成を受けたホテルや団地までが含まれる。

政策立案者による頻繁な変更に際し、たびたび各地の当事者はこれを大慌てで実施しなければならず、誤解を招いたり、逆効果の行動をとってしまうこともある。私たちをバスに詰め込み右往左往したのもこの結果だった。持ち場の仕事の説明しか受けないので、プロセス全体を把握していない。そのため、政策立案者に近いところからの情報を得ることが死活問題だった。ホテル従業員に何が起こっているか聞くより、疾病管理部で働く親戚に電話する方が役に立っていただろう。不確実な状況で少しでも確実な情報を把握したいとき、中国では個人的なコネが一層重要なようだった。

内部情報を聞き出した一部の仲間が、この仕組みを解明した。隔離場所に送られる前に、私たちは自宅住所を報告していた。これは各区政府がその帰国住民の隔離を担当するためだ。通常、財源の豊富な地区ほど質の高い宿泊施設と食事を提供するので、少しでもよい扱いを求めるのに必死な人たちにとって、この情報も貴重だった。

私は混乱を甘受することにした。少しでも情報を収集し、上層部からの継続的な規則の変更を把握しようとしたが、この対処法だと瞬く間に不安に陥ってしまうからだ。

セルフケアのためのアイデアは、これまでにいろいろと提案されているが、コロナウイルスから2回の脱出を遂げた私としては、少なくともその有効性は証言できるだろう。情報は1つか2つの信頼できる情報源に絞り込むこと。身体を動かすことを忘れないこと。誰かに電話すること。ユーモアのセンスをなくさないこと。深呼吸をして、マインドフルネストークに時間を当てるのもいい。新型コロナによって長期的な変化が起きる可能性はますます高まっている。今後の変化に備える気概を維持しておくことがのぞましい。

3月29日の午後、私の地区の居民委員会の職員が私のドアをノックした。青い防護服に身を包んだ職員に最後の体温チェックを受け、隔離完了を告げる書類をもらった。私はすぐにマスクを着け、階下に降りた。

街は一瞬いつもと同じように見えたが、よく見ると、中国を離れた2カ月間で起こった、目立たないが長期的な変化が見えてきた。

あらゆる人がマスクをしている。一人で車を運転している人でも。建物の入り口では体温チェックと消毒が行われている。多くの小さなレストランは閑散とし、営業を再開しているところでは中で食べている人より、外で待っている配達スタッフの方が多い。戦時下のようなプロパガンダポスターが街頭のあちこちに貼られ、疫病との戦いはまだ終わっていないことを告げている。世界は、以前と同じ状態にはもう戻らないのだろう。

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳: Dragonfly)

国際的な技術標準での優位性を狙う中国の次の計画

SpaceXは、リモートワークでのZoomの使用を禁止している。Google、Apple、NASA、ニューヨーク市の学校も同様だ。今週の初めに、FBIはZoomのテレビ会議やライブ教室が、「荒らし」にハッキングされることについての警告を行った。セキュリティの専門家は、Zoomに存在する技術的欠陥がユーザーデータを悪用されやすくするしていることを警告している。  ZoomのCEOであるEric Yuan(エリック・ユアン)氏は今週、プライバシーとセキュリティについて「混乱」していることを公に認めた

しかし、Zoomのセキュリティ上の欠陥に気を奪われている私たちは、より大きな問題を見逃している。プラットフォームを管理しているのは誰なのか?誰がそこで得をするのか?Zoomは、ロスアルトスに本拠を置くベンチャーキャピタル企業であるTSVCからシード資金を受け取っているが、そのTSVCは中国の国有企業である清華ホールディングス(中国清華大学の子会社)の資金を使って投資を行っている。中国人起業家によって創業され運営されているZoomの中心的アプリは、中国を拠点とする子会社たちによって開発されている。中国内のZoomサーバーもAES-128暗号化鍵を生成しているようだが、これらには、Citizen Labsのレポートが報告しているように、北米の参加者間の会議に使用されたものも含まれている。北京政府のプライバシー法により、中国で製造された鍵は中国当局と共有することが義務付けられている可能性 がある。

Zoomは、まさに北京政府が重視する種類のツールだ。中国共産党(CCP)は、グローバルなネットワークとプラットフォームを開発および獲得するために、何十年にもわたって、グローバルな標準を自ら定義するという、壮大な戦略を追求している。標準を握ることで、国際的な資源、交換、および情報に対する永続的な支配力が手に入る。強制力を伴うグローバルな地政学的オペレーティングシステムである。北京政府は、世界貿易機関 (WTO)がNational Standardization Strategy(国家標準化戦略)を発足させた2001年に同機関に加盟し、そのときから自身の野心を公式に表明し続けている。 

そして現在、CCPはその意図を行動に移しているところだ。北京政府は、国際規格を作成するための産業計画であるChina Standards 2035(中国標準2035)を立ち上げようとしているところだ。China Standards 2035は、Made in China 2025(中国製造2025)後継計画だ。このあと続く10年間のさらに大胆な計画は、グローバルな商品の製造場所を管理することではなく、それらを生産、交換、消費を定義する標準を策定することを狙っている。 

北京政府は、China Standards 2035に向けての2年間に及ぶ計画作業を、3月の初めに完了した。最終的な戦略文書は今年公表される予定だ。China Standards 2035の詳細はまだ発表されていないが、その意図、そして重点分野はすでに明らかだ。中国の国家標準化委員会は、今後1年間の作業を示す予備報告である「2020年の国家標準化作業の要点」を発表した。

私たちの会社であるHorizon Advisoryは、その レポートと過去2年にわたる計画関連情報を翻訳および分析した。私たちはその中に、COVID-19が中国の権威主義的情報体制を強化させることによって生み出す「機会をつかむ 」ための指示が含まれていることに気付いた。例えば産業用IoTを支配することによって、世界の産業を取り込むこと。次世代の情報技術およびバイオ技術基盤を定義すること。社会的信用システムを輸出すること ―― そして北京政府のインセンティブ形成プラットフォームのこれでもかというほどの強化などだ。私たちはそこに、商業、資本、協業を武器にしていこうとする明白でグローバルな野心を見た。 

北京政府が認識しているように、世界は変革の瀬戸際に位置している。「産業、技術、イノベーションが急速に発展しています」と、中国国家標準化管理委員会の第二工業標準部の責任者であるDai Hong(ダイ・ホン)氏は2018年に説明した。「グローバルな技術標準はまだ形成の途中です。このことは、中国の産業と標準に、世界を追い越す機会を与えてくれます」。 

ダイ氏はChina Standards 2035の計画フェーズがスタートした段階でそのように発言していた。同氏によれば、この計画は「集積回路、バーチャルリアリティ、スマートヘルスとリタイアメント、5Gの主要コンポーネント、IoT、情報技術機器の相互接続、そして太陽光発電」に焦点を当てるということだった。全体を通してみれば、重点は中国標準の「国際化」に置かれていた。

そして計画開始から2年が経って、China Standards 2035の初期の検討結果は、こうしたバズワードたちの具体的な意味を明らかにしている。China Standards 2035は、ハイエンド機器製造、無人車両、付加製造技術(additive manufacturing)、新素材、産業用インターネット、サイバーセキュリティ、新エネルギー、エコロジー産業などの、新興産業向けの標準策定に焦点を当てている。これらは、Made in China 2025にもあった、戦略的新興産業活動の重点分野とも一致している。まずターゲットを絞った実領域での足場を確保した北京政府には、独自ルールを定義する準備が整っている。 

たとえばDJIは商用ドローンシステムをほぼ独占している。国家標準化局は現在「『民間無人航空機システムの分類(Classification of Civil Unmanned Aircraft Systems)』の国際標準を策定することで、国内のドローン産業が技術的な優位性を占めるのを助けること」を目指している 

そして第二に、China Standards 2035は、社会信用システム、国が管理する(LOGINKとして知られる)国家輸送物流プラットフォーム 、医療および消費者向け商品などの各産業を接続する、北京政府の実質的基盤の強化を加速するだろう。

そして計画の三番目の側面は国際化である。「2020年の国家標準化作業の要点」の中では、「国際標準化機構(ISO)および国際電気標準会議(IEC)の中で、中国国家委員会の組織的かつ調整的な役割を十分に発揮する」という意図が示されている。なお、国家標準化委員会のレポートによれば、「十分に発揮する」という言葉は「戦略、ポリシー、ルール」を形作ることを意味すると説明されている。北京政府は、中国とネパールの標準化協力協定、ASEAN の標準化協力、そしてドイツ英国カナダなどとの新しい取り組みなどの、二国間および地域の標準化ベースのパートナーシップを通じた国際化を強化しようとしている。 

中国の標準策定計画は、明確で意図的な戦略の進行に基いている。北京政府は過去20年間にわたって、多国間組織ならびに対象となる産業分野に、影響力のある足場を確立してきた。そして現在、そうした足場を利用して、未来の世界のインフラストラクチャを定義する、自分たちのルールを設定しているのだ。中国の戦略計画によれば、これはグローバル化時代における「パワー」が意味するものに他ならない。「大国間の戦略的ゲームは、もはや市場規模の競争や技術的優位性だけに限定されるものではない。システムデザインとルール策定に対する競争がさらに重要度を増しているのだ」。

しかし、中国の戦略的ポジショニングに気付いている者が多くいるようには思えない。例えばChina Standards 2035とGoogle検索してみても、結果はそれほど多くはない。これは、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の世界的な災厄が起きる前までは飛び抜けて深刻な問題だったのだ。そして、その賭金はさらに釣り上がっている。グローバルなシャットダウンは、CCPが「その戦略的攻勢を加速するチャンス」と呼ぶものを生み出した。  私たちのロックダウンは、仮想接続への依存を誘発し、北京政府に前例のない角度からのアプローチを可能にしている。 

COVID-19の災厄に取り組む一方で、私たちは北京政府によるその災厄の悪用にも注意を払う必要がある。私たちは、標準の役割と、CCPがそれを武器化しようとする動きに注意する必要があるのだ。私たちは、安全で、規範に基づいた代替品で競争し、北京政府の影響からそれらを守る必要がある。そうでなければ、Zoomの荒らし以上にはるかに深刻な、セキュリティ、プライバシー、所有、自由に関する懸念に向き合うことになるだろう。

【編集部注】著者のEmily de LaBruyère(エミリー・ド・ラブルイエール)氏は、Horizon Advisoryの共同創業者であり、中国のグローバル競争への取り組みの、軍事的、経済的、技術的影響を文書化することの分析と報告に重点を置いた戦略コンサルタントである。もうひとりの著者であるNathan Picarsic(ネーサン・パカージック)氏もHorizon Advisoryの共同創業者であり、同様にグローバル競争に対する中国のアプローチの、軍事的、経済的、技術的影響を分析・報告することに重点を置いた戦略コンサルタントである。

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(翻訳:sako)

米政府がチーム・テレコムを正式組織化、通信インフラ事業への中国資本監視を強化

「チーム・テレコム」というのはシンプルな名前だが、国家安全保障関係の記事にうってつけの謎めいた響きがある。

チーム・テレコムはこれまで非公式なワーキンググループだ。この目立たないグループは国防省、国土安全保障省、司法省(管轄下官庁を含む)の担当者がFCC(連邦通信委員会)と協力して米国の電気通信インフラのセキュリティの評価と管理を行ってきた。

我々が知る範囲でいえば、グループの主な目的は、主要な通信インフラの所有権をモニターし、疑わしい勢力(つまり中国、ロシアなど)の手に渡らないようにすることだ。

2019年、Mark Harris(マーク・ハリス)氏はチャイナ・モバイルが米国市場への参入を申請してから却下の決定が出るまで7年以上も待ちぼうけの状態に置かれていたとExtra Crunch(有料)に寄稿している。

政府がチーム・テレコムを正式組織に格上げしたことにより。こうした非公式の取り扱いは過去のものとなった。新しい大統領行政命令はテレコム事業の許認可、買収、合併などFCCへの申請をチーム・テレコムの審査を正式なプロセスとして組み込んだ。

設置されたグループは「米国テレコムサービス分野における外国勢力参加評価委員会(Committee for the Assessment of Foreign Participation in the United States Telecommunications Services Sector)」というたいへん長い名前で呼ばれる(CAFPUSTSS?)。

委員会は「米国のテレコム事業への外国勢力の参加によって引き起こされる公益上の懸念の有無を国家安全保障および法執行の立場から評価することによってFCCを支援する」ものとされた。

チーム・テレコム同様、新しい委員会は司法長官、国防長官、国土安全保障長官で構成され、司法長官が委員長を務める。「委員会が処理する申請内容は米国政府の諜報責任者である国家情報長官に伝達され、分析を受ける」とされる。

7年間棚晒しという場合もあったチーム・テレコムとは異なり、新体制では審査のタイムラインにも基準が設けられた。行政命令によれば、当初の決定までが120日間、委員会が懸念を抱き追加審査の必要を認めればさらに90日間延長される。

FCCのAjit Pai(アジット・パイ)委員長は、短いコメントを発表し「大統領がチーム・テレコムのレビューを公式化し、これによって各省庁の専門家の評価が迅速にFCCに提供されるるプロセスを確立したことを高く評価する」と述べた。FCCは、オバマ政権時代の最後に提案され、それ以降継続しているチーム・テレコムに関するFCCとしてのルール作りを完了する予定だ。

チーム・テレコムの改革は、米国に対する外国勢力の投資全般を監視する組織であるCFIUS(対米外国投資委員会)の改革に準じたものだ。当初は諸官庁を横断する非公式なワーキンググループだったが、2018年に議会が改革法案を可決した後、2020年初めにCFIUSは正規の組織に改組された。

今回の改革で光ファイバーやモバイルネットワークなど米国の通信インフラの整備、拡張に関する事業の予測可能性が増すことは確かだが、同時に米国市場参入を図っていた中国などの事業者にとってはハードルがいっそう高いものとなるだろう。 事実、FCCは「China Mobile(チャイナ・モバイル)の(米国市場参入)申請を却下したことで2019年に示されたように、FCCは外国の脅威から我が国のネットワークを保護するために行動することを躊躇しない」と声明している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

テスラ中国工場でのModel 3ロングレンジの生産にゴーサイン

画像クレジット:Costfoto/Barcroft Media via Getty Images/Getty Images

中華人民共和国工業情報化部のWebサイトに米国時間3月6日に掲載された文書によると、Tesla(テスラ)は、同国政府から中国の工場でModel 3のロングレンジ後輪駆動タイプを生産するための承認を受けた。

ロイターが最初に報じた

テスラは、2019年末に上海工場でModel 3のスタンダードレンジプラス後輪駆動タイプの生産を開始した最初の納車も1月初旬に始まっている。今回の承認により、テスラは中国で販売する車種のリストを充実させることができる。最終的に同社は、中国の工場で電気自動車モデルYも製造する予定だとしている。

この動きが注目を集めるのには理由がある。というのも、テスラは米国ではロングレンジ後輪駆動タイプのModel 3の生産を中止し、現在ではそのバリエーションとして、デュアルモーター4輪駆動タイプのみを提供しているからだ。またこの動きは、中国ではModel 3の基本的なタイプを販売する、という同社が打ち出していた当初の計画からはズレている、と点もある。

テスラの中国版Webサイトによると、スタンダードレンジプラスのモデル3は、1回の充電で276マイル(約444km)を走破できる。しかし同社はまだ中国版Webサイトに、ロングレンジタイプの走行距離を掲載していない。

テスラは、2018年7月に中国政府と契約を結び、上海に工場を建造した。これはテスラと同社CEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏にとって、節目となるできごとだった。同氏は中国を非常に重要な市場であると、ずっと位置づけてきたからだ。また中国が、これをテスラと中国政府とのジョイントベンチャーとはせず、テスラが100%所有する工場として認めたという点でも注目を集めた。通常外国企業が中国に工場を作る際には、伝統的に現地のパートナーと50対50の合弁事業としなければならなかったためだ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Appleが中国で4年放置されていたApp Storeの抜け穴をやっと封鎖

こんにちは。TechCrunch中国まとめニュースにようこそ。これは中国の技術情勢を伝える最新情報と、それが世界中の人々にとって何を意味するのかをお伝えするダイジェストだ。今週、Appleは競争の激化に直面する中国国内における、コンプライアンスの強化を告げる大きな動きをみせた。しかし投資家たちは、この際どい問題に対する同社の中国内におけるアプローチに不満を示している。

ウイルスゲームが削除された

致命的なウイルスを、世界全体に感染させることを目標としたシミュレーションゲームの「Plague Inc.」は、先週中国のiOS App Storeから削除された。1月下旬にCOVID-19新型コロナウイルスが流行して以来、中国のユーザーたちは、この8年前から存在していたゲームを数多くダウンロードしていた。おそらくは流行を理解するための代替手段を模索していたのだろう。

市場調査会社App Annieのデータによれば、このタイトルは、年初の28位から上昇して、1月下旬から2月のほぼ全期間を通して中国で最もダウンロードされたアプリだ。

ゲームを制作した英国のNdemic Creationsは、声明の中で「状況(AppleのApp StoreからのPlague Inc.の削除)は、完全に私たちの手の届かないところにある」と述べている。中国政府が発表した削除に対する不透明な理由は、このゲームには「中国のサイバースペース管理局(同国のインターネット監視組織)によって違法だとされているコンテンツが含まれている」というものだ。

この出来事は中国内外で多くの注目を集めている。Plague Inc.のプレイが厄介なものになる可能性があると考えた北京政府の圧力に、Appleが屈したのだと推測する者もいる。1つの問題点は、そのチュートリアルの中で中国がデフォルトの感染開始国として扱われているということだ(実際のゲームでは世界中のどんな場所からでも感染を開始させることができる)。2018年に出された報告によれば、Plague Inc.は中国での配布の公式許可を実際に申請したものの、その「社会的に不適切な」コンテンツのため に却下されている。

またNiko PartnersのゲームアナリストであるDaniel Ahmad(ダニエル・アーマド)氏のように、プレイヤーが「フェイクニュース」を生成できるようになった12月のアップデートが、健康危機の中でアドバイスを求める人たちをミスリードする可能性があると、中国政府が判断したのかもしれないと指摘する声もある。

アーマド氏はまた、今回の禁止は、現在中国で進行している無許可のモバイルゲームの取り締まりにリンクされているかもしれないと示唆している。特にPlague Inc.の禁止は、Appleが先週行った中国のアプリストア内のすべてのゲームは、7月からはISBN番号の形式で 政府の承認を得る必要があるという発表と同時に行われた。この新しい規制プロセスが何を伴うのかについての詳細は、ほとんど明らかにされていない。また開発者たちには、現在公開されている公式には承認されていないゲームが削除されるのかどうかも知らされていない。

Appleの投資家たちは、同社が中国内でアプリを取り下げたことに満足していない。株主の40%はAppleが人権へのコミットメントを維持し、北京政府のアプリ検閲要求にどのように対応するかをより透明化すべきだとする提案を支持している

Appleの対応の遅れ

とはいえ、ゲームの許諾要求は新しい話ではない。実際、Appleは長年存在していた規制の抜け穴を、やっと塞ごうとしているのだ。中国政府は2016年の段階で、PCとモバイルの両方のビデオゲームに対して、中国内での流通の前にISBN番号を申請しなければならないと規定していた。数カ月のうちに、中国内の技術大手企業が運営している各社のAndroidストアたちは、違法ゲームを排除するために迅速な対応を行った。なお公式のGoogle Playストアは中国では利用できない。

しかし、Appleはコンテンツが厳しく監視されている世界最大のゲーム市場の中で、許諾されていないタイトルたちをなんとか維持し続けてきた。Appleには、そうするための多くのインセンティブがあるのだ。中国でのiPhoneのシェアの低下にもかかわらず(公平を期すなら、Huawei以外のすべての中国の携帯電話メーカーが、最近は市場シェアの低下に苦しんでいる)、中国におけるiOSアプリ、特にゲームはAppleにとって重要な収益源のままだ。

そのため、Appleにとって中国で公開するアプリのハードルをクリアすることは、最大の関心事なのだ。意志あるところに道あり。2016年以前は、中国でのゲーム公開の手間は比較的少ないものだった。同年に行われた規制変更に従って、Appleは各ゲームに対して政府からの許諾証明を要求し始めたが、そのポリシーを強制的には適用しなかった。地元メディアは、デベロッパーが適当に作成したISBN番号を使うか、最初に海外のiOS App Storeで公開しその後中国に切り替えることでルールを回避できると報道していた。

この疑わしいやり口は看過されなかった。2018年8月には、中国の国営メディアが、App Store承認に対するAppleのお粗末な見過ごしを激しく非難した。

ゲームに対する審査を強化したとしても、必要とされる許可を得るための資金と運営資源が豊富な中国の大手ゲーム会社には、ほとんど影響がないだろう。むしろ、彼らの挑戦は、北京政府のイデオロギーガイドラインに沿ったコンテンツを工夫することであり、その例はTencentによるPUBGの愛国的修正に見ることができる。

だが最悪の打撃は、App Storeの抜け穴を利用して、名前やロゴ、キャラクターを変えて偽装しながら大量にリリースされるいわゆる「ソックパペット(马甲包、靴下人形)ゲーム」を制作しているような、小規模の独立したスタジオや会社が受けることになるだろう。彼らはそうした工夫をすることで、より多くの流通を実現し収益を得ることができていたのだが、そうしたソックパペットたちが当局の厳しい審査を通過できる可能性はほとんどない。ある中国のゲームブログが予想しているように、この動きは不正行為を終わらせる可能性がある。

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(翻訳:sako)

5Gスマホをインドにいち早く持ち込むこと競り合う中国企業

インドでは、国内の通信事業者がまだ周波数帯オークションに参加していないので、少なくとも来年末までに5Gで実質的にカバーされる可能性は低い。しかしそうした事情も、中国のベンダーであるOppo(オッポ)、Vivo(ヴィーヴォ)、そしてXiaomi(シャオミ)が、5G対応のスマートフォンをこの世界第2位の携帯電話市場に持ち込む動きを押し止めることはない。

シャオミ、VivoのサブブランドiQoo(アイクー)、およびOppoのサブブランドRealme(リアルミー)はすべて、この1週間に相次いで5Gスマートフォンを発表した。インドで2年以上トップの座につく携帯電話ベンダーであるシャオミは、最近発表された5G対応のMiMix Alphaスマートフォンを、国内のいくつかの実店舗で展示しただけだが、他の2社は新しい携帯電話の発売を開始した。

インドで2番目に大きい携帯電話ベンダーであるVivoは、iQoo 3を発売した。この機種は1080×2400ピクセルの画面解像度の6.44インチディスプレイを備え、4440mAhバッテリー(55Wの高速充電をサポート)し、Android 10を搭載する。プロセッサにはQualcomm Snapdragon 865を採用し、8GBのメモリーと128GBのストレージが組み合わせられている。4つの背面カメラ(メイン4800万画素、望遠1300万画素、超広角1300万画素、深度センサー200万画素)と、前面には1600万画素のカメラを搭載している。

この携帯電話の価格は3万6990インドルピー(約5万7000円)から始まり、追加のストレージとメモリを備えた上位機種は4万4990インドルピー(約6万9000円)になる。

そしてインドで大手携帯電話メーカーと善戦を続けるRealmeは、90Hzのリフレッシュレートをサポートする1080×2400ピクセルの画面解像度を持つ6.44インチのディスプレイを搭載したX50 Pro 5Gを発売した。Qualcomm Snapdragon 865 SoCを採用し、12GBのメモリー、および65W Super Dart充電サポートを備えた4200mAhバッテリーを搭載している。

写真撮影という点では、背面にメイン65万画素、超広角800万画素、望遠1200万画素、ポートレート撮影時にメインカメラとともに使われる200万画素のカメラを備えている。前面には、3200万画素および800万画素のデュアルセルフィーカメラが装備されている。

Realme X50 Pro 5Gの価格は3万7999インドルピー(約5万9000円)で、追加のストレージとメモリを備えた上位機種は4万4999インドルピー(約6万9000円)と高くなる。

5G携帯をこれほど早く発売する理由は、将来の保証があるデバイスを提供するためだと各社の幹部は口にする。さらにQualcomm(クアルコム)が、電話ベンダーたちに対して、主力商品であるSnapdragon 865 SoCを使用する場合には、X55 5Gモデムの利用も要請しているという事情もある。

なお最近XiaomiからスピンアウトしたPocoのエグゼクティブは、以下のように発言している。

5G

皆さまご注目ください。お知らせしたいのは、私たちがご提供するのは皆さまの必要としているもので、不要なものではないということです (注:POCOは5G携帯を発表していない)

トップ画像クレジット:INDRANIL MUKHERJEE / AFP / Getty Images

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(翻訳:sako)

中国が見せつける最新の高解像度3D衛星画像

中国は11月に画像撮影用衛星Gaofen-7を打ち上げた。今回、その高解像度の3D画像を初めて公開した。この衛星は、その高度に対して精度は十分に高く、500km上空から一人の人間を識別できるほど。

Gaofen-7は、中国が保持する軌道上の撮影能力を一新することを意図して、全部で14機が計画されている衛星群の最新のもの。Planetのような企業が、数百機もの衛星を打ち上げて、地形ビジネス用に最新の画像を提供しようとしている中、他の国々と同様中国も独自のもの保有したいと考えるのは当然だろう。

すでにGaofenプロジェクトは、このように重要なデータに対する外国の情報源への依存度を大幅に低減してきている。国外からの情報は、他の技術分野での摩擦を見れば分かるように、常に信頼できるとは限らないからだ。

新しい衛星が投入されるたびに、新たな軌道と最新の機器を使って、その領域に独自の、あるいは進化した機能を配置してきた。Gaofen-7では、マルチスペクトル対応カメラと、高精度のレーザー高度計を組み合わせて、構造物や地形について非常に精度の高い3D画像が得られる。

この画像は、明らかにフル解像度のものではないが、撮影可能なディテールのレベルを感じ取ることはできるはず

理想的な条件なら、衛星は1m以下の解像度でカラー画像を生成できる。つまり、幅1m未満のオブジェクトを、深度の解像度については約1.5mで検出できる。もし人が横になっていても検出可能だし、立っていたとしても識別できるだろう。

もちろん、1インチ(約2.54cm)ほどの高さまでも検出可能なNASAのICESat-2のような科学計測器の精度にはほど遠い。しかし、Gaofen-7は、どちらかと言えば汎用衛星であり、測量や建設などを目的としたものなのだ。

「これは、土地を測定するための正確な定規のようなものです」と、この衛星の主任設計者であるCao Haiyi(カオ・ハイイー)氏は、中国国営の新華社通信に語った。「過去には、測量と地図作成の仕事は労働集約型の作業で、数カ月、あるいは数年もかかるものでした。新しい衛星を使えば、こうしたタスクは数分で完了できます。Gaofen-7の打ち上げ前は、正確に測定できたのは高速道路の位置くらいでしたが、現在はGaofen-7によって、田舎の道でも正確に計測できます」。

Gaofen-7はすでに数千枚の画像を撮影しており、今後少なくとも8年間は軌道上の撮影が続くことになる。このプロジェクトの画像の一部は、全世界に公開される予定だが、Gaofen-7が撮影した画像については、おそらく今後しばらくの間は非公開となるはずだ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

ストックフォトShutterstockの中国検閲問題はハイテク企業が対中関係を見直すべき契機

あまりに強烈な印象を残すために1枚の写真がその時代の象徴となることがある。1989年の天安門事件の際に無名の青年が戦車の隊列の前に立ちふさがっている写真がその1つだ。フォトグラファーの Jeff Widener(ジェフ・ワイドナー)氏はこの写真で軍隊によって強権的に自由を弾圧しようとする中国の支配体制とそれと戦う市民の姿を世界の目に焼き付けた。

この写真は「インターネットの万里の長城」と呼ばれる中国の巨大検閲システムの内側でほとんど見ることができない。「無名の反逆者」ないし「タンクマン」の写真がブラックホールに投げ込まれ、中国の十数億人の記憶から消されたのはジョージ・オーウェルの小説「一九八四年」そのままだ。

Baidu(百度)などの中国の検索エンジンが政治的検閲を受けていることは今ではよく知られている。売上の大半を国内で上げている中国企業が、中国共産党によって定められた法や規則に抵触しないよう細心の注意を払っていることは、賛否は別として十分理解できる。

しかし現在問題になっているのは検閲に従い、協力しているのが中国企業に限らないという点だ。検閲協力企業には西側のハイテク企業が多数含まれている。しかし自由主義国の企業の社員は中国の反自由主義的政策の強制を助けるような作業をすることに強い不快感を抱いている。

最近の例の1つはストック写真を提供するShutterstockだ。同社は中国の「グレート・ファイアーウォール」検閲システムに協力したことが暴露されて強い非難を浴びている。先月、ベテラン・ジャーナリストのSam Biddle(サム・ビドル)氏がThe Interceptに掲載した記事によれば、Shutterstockは自由主義的価値を守ろうとする従業員と上り坂の広大な中国市場でなんとしてもシェアを獲得したい経営陣の間で深刻な分裂に見舞われているという。

ビドル氏は「Shutterstockが検閲機能を実装したことは社員の間に即座に強い反発をもたらした。180人以上のShutterstock社員が検索ブラックリストを作製する機能に反対する請願に署名し、中国市場でシェアを獲得するために自由主義的価値を放棄するものとして会社の姿勢を批判した」と書いている。

Shuttersotckの方針はこの請願でもまったく変わらず、LinkedInのプロフィールによれば、同社にフロントエンドのデベロッパーとして10年近く勤務したというStefan Hayden(ステファン・ヘイデン)氏が辞職するだけに終わった。

今日は私のShuttersotock最後の日となる。ここで9年間働いてきたが、倫理上の見解の相違が解決しないため会社を離れることとした。

しかしこの問題が政治的時限爆弾であることはShutterstock自身も認めざるを得なかった。同社が最近、SECに提出した年間財務報告によれば、重要リスク要因として「検閲機能」と「中国市場へのアクセス」を挙げている。

【略】

つまりこれがカギだ。「市場アクセス」のためならShutterstockは同社がよって立つ基盤である映像コンテンツへの自由なアクセスを犠牲にしてもいいというわけだ。これはストック写真を提供するSutterstockだけに限った問題ではない。この数週間、中国に対する姿勢が激しく批判されているNBAもこうした状況に置かれているのだろう。

Shutterstockの社員が自由とデモクラシーのために立ち上がったのは素晴らしいことだ。たとえ社内で十分な支持を得られなくとも、そうした価値をもっと重視する会社に移ることはできるはずだ。

残念なことに、ドルと元を追求するのに夢中でそれが自身のビジネスの根本的な価値を蝕むことを考ない企業、特にハイテク企業が多すぎる。売上と倫理の間に矛盾が起きればをそのつど慎重に比較衡量することが企業の方針とならないかぎり、この腐食は蓄積する。そうしてShutterstockが直面しているような困難に行き当たるだろう。

中国経済の急成長によって倫理問題の困難も一層拡大された。自由主義経済の企業が中国大陸でビジネスをする際に求められる根本的価値に関する内省と敏感さは新たなレベルに高まったといえる。しかし多くの企業の経営陣はこうした価値とそれが社員、株主にもたらすすリスクに関してきわめて貧弱な知識しか持っていないようだ。

今年初め、Google(グーグル)に中国問題が起きたときに「インターネットが社会の他の要素と切り離されたテクノロジー分野だという考えは100%死んだ。シリコンバレーの企業、社員には倫理的にものを考えるという困難が挑戦が待ち受けている。我々の行動はすべてなんらかの意味で妥協だ。新しい価値を創造すること―これこそシリコンバレーのスタートアップの環境でもっとも重要とされることだが―この創造そのものが著しい不平等の源となっている」とコメントした。

私は中国から撤退したGoogleの決断に全面的に賛成したが、Googleの正しさも相対的なものだ。第一、現在決定を迫られたのであれば決定は違ったものになっていただろう。またGoogleの行動があらゆる面で非の打ち所がないというつもりもない。しかし追求すべき価値が何であるかについて考えてきた点では他の多くのハイテク企業をしのぐと思う。

米国企業はそのビジネスを可能にしている米国社会の自由主義的価値を守るために全力を挙げるべき時期だ。.妥協を重ねていけば最後には守るべき価値をすっかり失ってしまうだろう。

中国は無視するにはあまりに巨大な存在だろう。しかし、いかなる企業も自由かつ民主的な社会を守るという根本的な責任を無視してはならない。 「無名の反逆者」が戦車の隊列の前に立ちふさがることができたなら、米国企業の経営陣は社員ととも倫理的に正しい諸価値を守る隊列の先頭に立つことができるはずだ。

画像:: Ashley Pon/Bloomberg/ Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

TikTokはウイグル人虐待に関する動画を削除したことを「人的ミスだった」と謝罪

TikTokは、新疆自治区でのウイグル人とイスラム教グループの虐待にことをみんなに調べて欲しいと投稿した十代の女性のアカウントを一時的に停止した一件を、公式に謝罪した。TikTokは「出来事の時系列に関する説明」をすると共に、そのバイラルな動画が11月23日に投稿されてから4日間、「モデレーターの人的ミス」のために削除されていたと話した。それはTikTokプラットフォームのコミュニティー・ガイドラインには抵触しないという( @getmefamouspartthreeのアカウトと問題の動画は今は復活している)。

だが、ツイッターで「ただ広く知ってもらいたいイスラム教徒」とプロフィールを書いている本人のFeroza Aziz(フェロザ・アジズ)氏は、TikTokの声明を拒絶し、こうツイートした。「私が以前に削除されたアカウントで投稿して削除された、関係のない前の風刺的な動画のために排除されたなんて信じられる? ウイグル人に関する3部構成の動画を投稿した直後に? うそよ」

TikTokが削除した動画で、アジズ氏はまず、見ている人たちにピューラーを使うよう求め、次にこう話している。「今手に持ってるその携帯を使って、中国で何が起きているかを検索してください。彼らが強制収容所を建設し、そこに罪のないイスラム教徒を放り込み、家族を引き裂き、誘拐し、殺し、レイプし、豚肉を食べるよう強制し、飲酒を強制し、改宗を強要しています。これは新しいホロコーストです。でも、まったく問題にされていない。ぜひ、このことを知ってください。新疆について知ったことを、今すぐ拡散してください」

TikTokはByteDance(バイトダンス)が所有する企業であり、問題の動画の削除は、北京に本社を置くバイトダンスが中国共産党の圧力に屈したためだとの説を呼び起こした(バイトダンスが提供するTikTokの中国版ドウインは、他の中国のプラットフォーム同様に法的検閲の対象になっている)。

中国に暮らすイスラム教少数民族への中国政府の指示による虐待は数年前から行われていて、およそ100万人の人々が強制収容所に拘束されていると見られているが、この事態が注目を集めたのは今月になってからだ。それは、2回にわたって漏洩した中国政府の重大な機密情報をニューヨーク・タイムズ国際調査報道ジャーナリスト連合が報じ、元収容者、目撃者、研究者の報告を裏付けたことによる。

アジズ氏は、バズフィード・ニューズに対し、中国少数民族の迫害については2018年から話題にしていると話している。なぜなら「私自身がイスラム教徒で、いつも抑圧され、仲間が抑圧されるのを見てきて、ずっと人権に関心があったから」という。

TikTokが謝罪投稿を行う前にバズフィードに掲載された記事では、アジズ氏のアカウント停止は、彼女が以前にオサマ・ビン・ラーディンの画像を含む別の動画に関係しているとTikTokは主張していた。その動画は、有名人をもてはやすネット上のネタを揶揄するもので、アジズ氏はバズフィード・ニューズに「あれは、究極的には彼だよねというブラックジョーク。まともな人間なら、絶対にそんなことは言わないから」と話している。TikTokの広報担当者は、「いずれにせよ、テロ関連コンテンツに関する規約に反する」と言っている。

「その動画が風刺であることは私たちも認識できますが、その分野に関する規約は、現在非常に厳格化されています。その手のいかなるコンテンツも、特定され次第、コミュニティー・ガイドラインと利用規約に違反したとみなされ、アカウントと関連デバイスは永久追放されます」とTikTokの広報担当者はバズフィードに話している。さらに、お化粧のチュートリアル動画を投稿しているアジズ氏の2つめのアカウントの停止は、前に停止されたTikTokアカウントにリンクされた2406のデバイスのブロックの一環とのことだ。

今日(米国時間28日)のTikTokの謝罪を受けて、TikTok USの安全担当責任者Eric Tan(エリック・タン)は、このプラットフォームはコミュニティー・ガイドラインと人間のモデレーターを「第二防衛ライン」として支えるテクノロジーに依存していると書いている。

「このプロセスが完璧でないことは、私たちも時折認識しています。本日の@getmefamouspartthreeの動画のケースのように、人は間違いを犯すものです」と彼は続ける。「しかし、こうしたミスが発生したときは、私たちは迅速に対処し修正します。トレーニングや、同じミスを繰り返すリスクを減らすための改善を行い、私たちが犯した過ちに対して、完全に責任を追うことにしています」

だがアジズ氏は、ワシントンポストにこう話している。「TikTokは、すべての問題を隠そうとしています。私は決して譲りません」

TikTokは、ユーザーの個人情報の管理に関するアメリカ政府による調査を受けることになり、論争が巻き起こっている。ロイターは27日、今年の第三四半期内に製品事業開発とマーケティングおよび法務部門をドウインから分離する計画をTikTokが立てていると伝えた。

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(翻訳:金井哲夫)

中国のトップスパイが豪に亡命、台湾大統領選や香港などに介入と中国は証言

中国情報機関の幹部職員とされる人物がオーストラリアに政治的庇護を求めている。この人物は事実であれば政治的に極めて重大な意味を持つ情報を携えており、これには中国、台湾その他の地域における秘密活動に関するものが含まれているという。この人物は中国が香港の自由化運動に対してサイバーテロ活動を行っていると主張している。

オーストラリアのメディアであるAgeによれば、 Wang “William” Liqiangこと王力強(ウィリアム・ワン)氏は 2020年の台湾大統領選挙に介入するため偽装の下で秘密活動を命じられた。王氏はこうした任務に反発して亡命を決め、中国政府の活動を国外から批判することにしたという。Ageによれば、王氏はSydney Morning Herald、60 Minutesその他のメディアに登場し、さらに広範囲な情報提供を行うという。

王氏は 香港に登録された中國創新投資有限公司(China Innovation Investment Limited)が香港の大学、政治組織、メディアに浸透するためのフロント企業として中国政府が設立したものだとして、その工作の内幕を詳細に説明したと伝えられる。

中国政府に批判的な書籍を販売していた呂波(Lee Bo)氏らが相次いで失踪した銅鑼灣書店事件は広い範囲から抗議を引き起こしていたが、王氏はこの誘拐に関しても個人的に関わっていたという。

王氏はまた中国政府を助けるサイバー集団が香港の自由活動家の個人情報を探り出し、ネットに晒すなどのテロ活動を助けたという。この中には2020の台湾大統領選に対する介入も含まれていた。

オーストラリアその他の地域での中国情報機関の活動も示唆されているものの、王氏に関する当初の記事では具体的に明らかにされていない。王氏は現在シドニーの秘密の場所におり、オーストラリア政府が正式に保護を与えるのを待っているという。

王氏にインタビューしたメディアによれば、今後さらに詳細な情報が明かされるという。

画像:Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

アフリカの物流スタートアップLori Systemsが、中国の投資家主導でシリーズA調達を実施

アフリカのオンデマンドトラック運送会社Lori Systems(ロリ・システムズ)は、中国の投資家Hillhouse CapitalとCrystal Stream Capitalが主導するシリーズA調達を行った。

他の参加投資家には、ナイジェリアと米国に拠点を置くEchoVC、Flexport CEOのRyan Petersen(ライアン・ピーターセン)氏、ナイジェリア出身の起業家のIyinoluwa Aboyeji(アイノルワ・アボジジ)氏が含まれている。

Lori SystemsはシリーズAの調達額を明らかにしていない。金曜日にDealStreet Asiaが、ラウンド額を3000万ドル(約32億8000万円)と報告したが、Lori SystemsのCEOであるJosh Sandler(ジョシュ・サンドラー)氏は、その内容を追認してはいない。彼はTechCrunchに対して、その数字は「翻訳の何かの間違い」であり「調達の性質を誤って伝えるものだ」と語った。

同社はMediumの投稿の中で初期報告に対する明確化を発表した。調達額を公開しない理由として、Lori Systemsの共同創業者であるJean-Claude Homawoo(ジャン=クロード・ウマゥー)氏は「Loriは調達の詳細を明かすことはありません。それは最も大切なことです。未開の市場の商品コストを下げようとしている私たちのミッションから目をそらす虚栄の指標だと考えているからです」と語った。

最近出たFinancial Timesの記事は、Loriの総資金調達額を2000万(約21億9000万円)ドルとしている6月のSEC Form Dファイリングによれば、Lori Systemsは2900万ドル(約31億7000万円)の株式資本を発行しているが、どこにどれくらいという詳細は与えられていない。

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2016年にケニアで設立された同社は、Uberのようなドライバーと提携業者のネットワークを通して、モバイルベースのオンデマンドトラックサービスを提供している。Lori Systemsは、東アフリカびケニアとウガンダで事業を展開している。

同社は2019年9月にナイジェリアに進出し、トラック運送会社Kobo360との競合に直面している。

「私たちは今回の調達資金を用いて、物流の世界的な革命を推進するために、運用を強化し、技術開発を行い、最高のチームを雇用します」とLori SystemsのCEOであるジョシュ・サンドラー氏は語った。

同社は最近、ナイジェリア出身のUche Ogboi(ウチェ・オグボイ)氏をEchoVCからCFOとして採用し、また元Quona CapitalのアソシエイトであるEfayomi Carr(エファヨミ・カー)氏も雇用した。Lori Systemsは2017年にStartup Battlefield Africaで優勝している。

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(翻訳:sako)

アップルの対中国姿勢が米国で超党派議員による政治同盟を生み出す

Apple(アップル)が中国政府の要求を聞き入れアプリの承認を取り下げた判断に対する手厳しい非難は、米国議会、上院議員、下院議員が、憎しみやいがみ合いを乗り越えて意見を一致させる珍しい事例となった。

ロン・ワイデン、トム・コットン、マルコ・ルビオ、テッド・クルーズの各上院議員と、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス、マイク・ギャラガー、トム・マリノフスキーの各下院議員は、「香港の抗議活動で目覚ましい役割を果たしているものを含むアプリの、中国政府からの要請によるアップルの検閲に対して深い憂慮を表明する」と記した書簡に署名した。

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ティム・クックはロン・ワイデン、トム・コットン、マルコ・ルビオ、テッド・クルーズ、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス、マイク・ギャラガー、トム・マリノフスキーから書簡を受け取った。

もっとも強力な産業のひとつに立ち向かうために、アメリカの敵対する政治派閥が手を結ぶというのは、2019年内には初めてのことに思われる。

論争の中心となったのは、HKMapsと呼ばれるアプリの承認を取り下げるといアップルの判断だ。これは、香港市民が警察の動きを監視するために利用している

数カ月間にわたり、小さな香港の中では、北京の中国政府からの香港の自治権への介入と彼らがみなす行為に抗議する人たちと、警察との間で衝突が続いている。かつて英国の保護領であったこの地域の住民は、1997年7月1日に英国から中国に返還されて以来、中国本土の市民には与えられない特権と人権を享受してきた。

香港の警察活動監視アプリを承認したとして中国政府がアップルを批判


「先週のアップルの判断は、HKMapsの承認を取り消すことで中国政府に便宜を図ることになり、大変に憂慮すべきことだ」と書簡の送り主たちは話す。「市場アクセスよりも大切な価値観を示し、基本的人権と香港の尊厳のために戦う勇敢な男女の側に立つようアップルに、最大限の強い言葉で方向転換を求める」

アップルは長年、人権(プライバシーと言論の自由を含む)の擁護者という立場を貫いてきた……アメリカ国内においては。海外においては、同社の歴史は潔癖だったとは言えない。とくに、アメリカ国外では最大の市場である中国からの圧力に対する態度は曖昧だ。

2017年、アップルは、すべての仮想プライベート・ネットワーク(VPN)アプリをApp Storeから排除せよとの中国政府からの要求に屈した。それらのアプリは、中国政府とその検閲機関の承認を得た情報だけにアクセスできるよう制限するグレート・ファイヤーウォールの回避を可能にするものだ。

関連記事:中国に屈してVPNアプリを取り下げたアップルは本国に苦悩を持ち帰る(未訳)

中国の非営利団体GreatFireによると、中国政府の要求を聞いてアップルが承認を取り消したアプリは1100本以上あった(このデータは今回の米議会からの書簡にも使われている)。その中には、VPNや、中国国内の反体制コミュニティー(ウイグルチベット)で作られたアプリが含まれている。

香港での騒乱に何らかの形で関係したとして中国政府から目をつけられた企業は、アップルだけではない。National Basketball Association(NBA)とゲーム会社のBlizzard(ブリザード)も、従業員や、これら企業が代表するスポーツフランチャイズやゲームコミュニティーなど個々の系列団体に関連するさまざまな公的な立場を理由とした自己検閲をめぐって揉めごとが起きていた。

しかし、アップルは中でも最大の企業だ。そのため、ターゲットとしても最大だ。アップルの立場は、本国での立ち位置は別に、戦略的に重要と思われる市場の圧力にはしぶしぶ従ってしまうことを示唆している。

問題は、米国の規制当局が書簡の送付を止め、独自に法的な要求を行うようになったときに何が起きるのかだ。

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(翻訳:金井哲夫)

中南米に芽生えるスーパーアプリの熱い戦い、WeChatやAlipayの中国式モデルとは異なる進化

WeChat(ウィチャット)とAlipay(アリペイ)は、中国のモバイルエコシステムには欠かせないスーパーアプリだ。ウィーチャットの月間アクティブユーザー数(MAU)は10億人を超え、アリペイの年間アクティブユーザー数(AAU)も10億人に達している。どちらも食事のデリバリーや自転車のシェアリングから、支払い、保険、投資といった完全な金融サービスまでも提供している。

現在、この中国式モデルの成功例にあやかり、自分たちの地域で同様のモデルを展開しようと世界中の企業が動いている。なかでも、中南米は新興スーパーアプリの激戦地だ。なぜなら、6億5000万人近くの膨大な人口を抱えながらも、言語、文化、宗教がほぼ似通った国々で構成されているからだ。さらに、移動体通信事業者や関連企業からなる業界団体であるGSMAのデータによれば、モバイルを主要デバイスとする人たちが多く、スマートフォンの普及率は62%にのぼっているという。

スーパーアプリモデルの拡大

WeChatとAlipayの驚異的な成功の後、世界中の企業が別の地域で中国式モデルを模倣する決定を下した。中国と地理的に近く、その影響力や経済的なつながりが強い東南アジアは早々にスーパーアプリが登場した地域のひとつだ。シンガポールの配車サービスGrab(グラブ)と、インドネシアのGo-Jek(ゴジェック)は、どちらも数十億ドルの資金調達を行い、地元でのUber(ウーバー)の勢力拡大を阻止しただけでなく、提供サービスのポートフォリオを配車サービスから食事のデリバリーや支払いなどの他のサービスに拡大した。

インドでは、Paytm(ペイティーエム)が中核サービスからの拡大を図り、とくにTapzo(タプゾ)がAmazon(アマゾン)に買収されサービスを停止した後、インドの主力プレイヤーの地位を狙っている。

面白いには、すべてのスーパーアプリがみな同じでないことだ。Alipayは、電子商取引を行う企業Alibaba(アリババ)から派生し、金融サービスに力を入れている。一方WeChatは、メッセージアプリとしてスタートし、金融サービスのほか、電子商取引、ゲーム、旅行などなど、サービスを拡張してきた。東南アジアのGrabとGo-Jekは配車サービスからスタートしてデリバリーを開始したあと、金融サービスに進出した。Paytmは、プリペイドのモバイルリチャージプラットフォームとしてスタートし、その後、金融サービスや日常生活のための各種サービスに進出している。

中南米で期待されるものは?

中南米のスーパーアプリは、地域的な環境が中国とは大きく異なるため、地元の人たちによって、独特な方法で開発されるべきだ。

中南米でのインターネットのエコシステムは、通信、音楽、検索など数々の分野を支配している欧州と米国の技術系企業の影響を大きく受けている。その市場で地元のスタートアップが張り合うのは大変に難しい。しかし、中には海外企業が簡単には支配できない戦場もいくつかある。配車サービス、食事のデリバリー、金融サービスだ。これらは地域に密着した産業であり、厳しい規制のもとに置かれているため、規模の拡大が非常に難しい。とくに、国境を超えたサービス展開となればなおさらだ。まさにこうした産業に、その地域では前例のない規模のベンチャー投資に後押しされて、スーパーアプリの候補者が現れてきているのだ。

中南米で最も目覚ましいスーパーアプリ候補は、コロンビアのオンデマンドデリバリーサービスのRappi(ラッピ)だ。中南米で最も高額な投資を受けたスタートアップのひとつで、Sequoia(セコイア)、Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)、ソフトバンクといった巨大投資企業から、これまでに140億ドル(約1兆5000万円)の資金が投入されている。最初は食事のデリバリーのみを行っていたが、現在は電動スクーター、支払い、個人間の送金、映画のチケット、デビットカードなどのサービスも行っている。さらに、中南米で最も関係の深い、ブラジル、メキシコ、コロンビア、アルゼンチン、チリ、ウルグアイ、ペルーといった国々でも事業を展開している。

もうひとつ有力な候補に、電子商取引の巨人Mercado Libre(メルカドリブレ、MELI)の金融サービスMercado Pago(メルカドパゴ)がある。当初は、マーケットプレイスでのユーザー同士の送金を可能にするサービスとしてスタートしたが、今ではオンラインおよびオフラインの支払い、請求書の支払い、そして最近では投資(Mercado Fondoを通じて)といった金融サービスのさまざまなポートフォリオを提供するようになった。親会社のおかげで中南米全域に展開しており、年間の取り引はおよそ4億件にのぼる。

ブラジルのMovile(モビール)も、強力な競合相手の位置にいる。同社はすでに、食事からチケットのデリバリー、宅配、子ども向けNetflixに至るまで、多様なサービスのポートフォリオを揃え、ブラジル、メキシコ、コロンビア、アルゼンチンで事業を展開している。総額3億9500万ドル(約426億円)の資金を調達したばかりか、その傘下の企業iFood(アイフード)も総額で5億9200万ドル(約639億円)を調達している。

スペインのCabify(キャビファイ)もまた、スーパーアプリの地位を狙う企業だ。傘下のフィンテック企業Lana(ラナ)を通じて金融サービスを行っていたが、最近になって電動スクーターと自転車のシェアリングサービスを開始した。4億7700万ドル(約507億円)の投資を受けたものの、配車サービスの競争が激化しているスペインでキャビファイがスーパーアプリになるのは難しい。UberやDidi(ディディ)といった競合相手もさまざまなサービスを追加し、地位を固めようとしているからだ。

競合相手として興味深い可能性を持つのは、ブラジルのデカコーン(時価総額が100億ドル以上の未上場スタートアップ)であるNubank(ヌーバンク)だ。すでにブラジルでは800万人のユーザーを有し、メキシコ、アルゼンチン、コロンビアへの進出を開始している。現在はまだ、従来型の金融サービスのみを提供しているが、大口の投資企業であるTencent(テンセント)から現在までに11億ドル(約1190億円)を調達している。そのため、NubankがWeChatと同じような道筋をたどったとしても、驚きではない。

さらに、ブラジルのBanco Inter(バンコ・インター、BIDI11)は、最近になって金融サービス以外に、電子商取引や旅行などの顧客向けサービスを展開するためのマーケットプレイスを立ち上げた。同社は、評価額およそ70億ドル(約7550億円)の公開企業だが、最後の増資を行った後、現在はソフトバンクの支援を受けている。

以上が、中南米でスーパーアプリにもっとも近い候補者たちだ。とはいえ、ブラジルの小売りと電子商取引の大手Magazine Luiza(マガジン・ルイザ)が私たちを驚かせてくれる可能性もある。同社のCEOは、実店舗による小売り業者から技術系企業へと会社を改革した人物だが、すでに同社のアプリMagaLu(マーガルー)をスーパーアプリに作り変え、より多くのサービスを提供したいという意欲を示している。これはブラジルの市場で競争することになるだろうが、ブラジル国内での運用に限定された単なる一地方プレイヤーで終わるとは思えない。

中南米のスーパーアプリは中国のものとは違う

中南米ではスーパーアプリが芽生え始めているものの、市場がまったく異なる中国のスーパーアプリの道筋をたどることはない。むしろ、市場の類似性が高い東南アジアのプレイヤーを参考にすべきだ。とは言え、中南米のスーパーアプリは、その地域に適した独自の環境に落ち着くことだろう。

中国のスーパーアプリの成功物語に注目する企業は多いが、さらに多くの企業が中南米のスーパーアプリを目指して競争することになるだろう。すでにベンチャー投資家たちは、誰が中南米での主導権を握るかで賭を始めている。ひとつ確実に言えるのは、中南米に市場が大きく広がっていく様を見るのは爽快だろうということだ。この戦いの本当の勝者は顧客になる。

【編集部注】Thiago Paiva(ティアゴ・ペイバ)はフィンテック系起業家、作家、投資家。ブロックチェーン技術を応用した国際的な投資のためのプラットフォームLiquia Digital Assetsの共同創設者。

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(翻訳:金井哲夫)

アップルがグーグルのiOS脆弱性発表に「ウイグルだけの話」と反論

先週、iOSの脆弱性から数年間もiPhoneが密かにハックされていたという詳細な研究をGoogle(グーグル)が発表したことに対して、Apple(アップル)が不快げな反論を公表した。このiOSの脆弱性はは悪質なサイトを訪問するだけでルート権限を奪われるという深刻なものだった。

Appleは反論の中で「我々はユーザーが事実を把握することを望む」と述べているが、おかしな話だ。もしGoogleの研究チームが詳細な研究結果を発表しなかったら、こうした事実は一切ユーザーの目に触れることはなかったはずだ。

Appleは短い記事で「一部から(iOSのセキュリティがについて)懸念が出ているが、なんら危険はないと知ってもらいたい」と述べている。

Appleによれば「このハッキングはごく狭い範囲の特殊な条件を前提としており、大規模な攻撃には適さない。この攻撃を成功させたのはわずか10件程度で、すべてウイグルの(ムスリム住民)関連サイトだった」という。 一方、AppleはTechCrunchのiPhoneハッキングは中国政府によるウイグルのムスリム攻撃の疑いという記事を事実と認めた。

なるほど、iOSの欠陥を突いた攻撃に成功したのは少数のサイトだけだったかもしれないが、Googleの研究によれば、これらのサイトはそれぞれ毎週何千回も訪問されていた。しかもハッキングは2カ月にわたって続いていた。控えめな計算でも10万台以上のデバイスが侵入を試みられ、脆弱性があればマルウェアを仕込まれていた可能性もある。かりにiPhoneがデバイス100台に1台しかなかったとしても数千人のiPhoneユーザーがルート権限を奪われていたわけだ。これだけの被害が推定できれば十分に「大規模な攻撃」だったと私には思える。

ウイグル住民が主たるターゲットだったら安心せよというのだろうか?中国のある地方全体で宗教や信条を理由として大規模な迫害が行われていることは我々には無関係なのか?

もちろんここで論じられているのはiOSの脆弱性だが、ウイグルのムスリム攻撃ではAndroidデバイスもターゲットとなっていたはずだ。ウイグルのような地域ではiPhoneよりAndroidのほうがはるかにポピュラーなスマートフォンなので、セキュリティ研究者はAndroidに対するハッキングについても調査中のはずだ。

Appleは「(Googleは)当局がスマートフォンを通じて地域の全住民を網羅的にリアルタイムでモニターできるという不安をiPhoneユーザーの間に掻き立てている」と不平を言っている。

しかしこのケースでのGoogleの発表は根拠なく不安を煽っているわけではない。一見正常なウェブサイトを訪問するだけで検知不可能なルート権限奪取が行われるというのはまさに当局によるストーカー行為そのものではないだろうか?ウイグルのiPhoneユーザーが不安を感じても当然だろう。しかもこのような当局によるハッキングの試みがウイグル地域に限定されるという保証は何ひとつない。

Appleは「Googleの通報を受けたときには我々はすでにバグの修正にかかっていた」という。それはそれで大変結構だ。 しかしそれならAppleはそのバグの技術的詳細を他のセキュリティ研究者やユーザーが参考にできるようただちに公表したのだろうか?

Appleは「iOSのセキュリティーは万全」と長年主張してきただけに、ウイグル関連で強力かつ巧妙な攻撃が成功したことについて触れられるのは苦痛だったのだろう。こうした地域全住民をターゲットとするハッキングを行う動機と能力があるのは国家的組織であることはまず間違いない。ウイグル地区で中国政府がイスラム系少数民族に対して厳しい圧迫を加えていることを考えればiPhoneハッキングの背後にそうした背景を考えても不思議ではない。Appleは「セキュリティの追求は終わりなき旅路」だと主張している。しかし知らぬ間にiPhoneを乗っ取られ、行動を逐一モニターされているウイグル住民に対しても「終わりなき旅路」だから気にするなというつもりだろうか?

GoogleのProject Zeroの研究者がハッキングに関する詳細な文書を公表しなければ、我々はこの問題についてまったく知らずに過ぎてしまったことは間違いない。AppleはiOSのマイナーアップデートの無数の「セキュリティの改良」の中にこの問題も埋め込んでしまったはずだ。

iPhoneに対する攻撃は現実に成功し多数の被害者が出ていることが強く推定される。「終わりなき旅路」なのかどうかはともかく、これは深刻なセキュリティ上の問題だった。Appleが防御的になるのは理解できるが、「酸っぱいブドウ」的な負け惜しみを言う前にまず失敗を認めたほうがいい。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

トランプ大統領は中国とファーウェイについて話すつもりはない

今週大統領執務室で行われた記者会見で、トランプ大統領は、現在米国は過熱する中国との貿易交渉の中でHuawei(ファーウェイ)の話題を切り出すつもりはないと語った。この発言は、トランプ氏が交渉に際して、中国エレクトロニクスの巨人のブラックリスト入りについて話す意思があるらしいという過去の憶測に釘を刺したもの思われる。

「これは国家安全保障に関わる問題だ」とトランプ氏は言った。「ファーウェイは我が国の軍隊、我が国の諜報機関に関わる大きな問題であり、だから我が国はファーウェイと取り引きしない。それで中国に何が起きるかはいずれわかることだが、とにかくファーウェイは現在我々が話をしたい相手ではない」

ファーウェイの米国ブラックリスト入りは、安全保障とスパイ行為との関わりの可能性に端を発したが、制裁措置違反の疑いもある。しかしトランプ氏はこれらの問題を合体させることで超大国同士の貿易戦争の種を作り、新たな米中協定によって輸入禁止が解除されることを匂わせている。

中国の習近平主席との最近の交渉は、ファーウェイに対する制約の緩和を後押しした。もしGoogleをはじめとする米国企業との提携が完全に禁止されれば 壊滅的な結果を招きかねない。トランプ大統領は、この機会を利用して、もし米国企業が中国の部品や製造に依存しなくなれば関税は撤廃する可能性があることをあらためて示唆した。

一連の発言は、トランプ氏が今後中国主席との交渉の席でファーウェイに関して議論することを一時的に拒否すること意味しているようだが、詳細については語っていない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook