オンデマンドシャトルソフトウェア開発のViaが事業を拡大へ、約147億円調達

従来の交通システムをアップデートしようという自治体からの需要の高まりを受け、オンデマンドシャトルとソフトウェアのVia(ビア)は、1億3000万ドル(約147億円)の増資を行った。この資金調達により同社の評価額は約33億ドル(約3733億円)に達した。

今回のラウンドはJanus Hendersonがリードし、BlackRockが運用するファンドや口座、ION Crossover Partners、Koch Disruptive Technologies、そして既存の投資家であるExorが参加した。Viaの累計調達額は8億ドル(約905億円)となった。

現在、約950人の従業員を擁するViaは、事業に2つの側面を持っている。同社は、消費者向けのシャトルバスをワシントンD.C.とニューヨークで運営している。一方で、自治体や交通機関、学校区、大学などが独自のシャトルバスを導入する際に販売するソフトウェアプラットフォームは、同社のビジネスの中核であるだけでなく、成長の主な原動力となっている。

共同創業者でCEOのDaniel Ramot(ダニエル・ラモット)氏は以前、2012年にViaを立ち上げた当初、自治体はソフトウェア・アズ・ア・サービスのプラットフォームにほとんど関心がなかったとTechCrunchに語っている。Viaは2017年末、オースティン交通局にプラットフォームを無料で提供した後、オースティンと最初の自治体提携にこぎ着けた。これは、Viaがケーススタディを発展させ、他の都市にサービスを購入するよう説得するのに十分なものだった。2019年には、パートナーシップ側の事業が「軌道に乗った」と、ラモット氏は2020年のインタビューで語っている。

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現在では、社内でTransitTechと呼ばれているソフトウェアの方が消費者向けの事業を凌駕している。Viaによると、TransitTechの売上は前年比で2倍以上に増加し、年間ランレートは1億ドル(約113億円)を超えているという。このソフトウェアプラットフォームは、米国のロサンゼルスメトロ、ジャージーシティ、マイアミなど、500以上のパートナーに採用されている。また、Arriva Bus UK(ドイツ鉄道の子会社)は、英国ケント州で通勤者を高速鉄道駅へとつなげるファーストマイルとラストマイルのサービスに使用している。

Viaは今回の資金を何に使用するかについて具体的に明らかにしていない。同社は、2020年のFleetonomyを含め、過去1年半の間に2件の買収を行っている。

2021年初め、Viaは現金と株式による1億ドルで、自治体が交通計画や道路設計に使用する地図ソフトウェアを開発しているスタートアップRemixを買収した。RemixはViaの子会社となったが、これはRemixが独立したブランドを維持するための措置だ。

この買収により、Remixのコラボレーティブマッピングや交通計画ツールと、Viaのオンデマンド交通データを組み合わせた製品がすでに開発されている。11月初め、Viaは自治体がオンデマンド乗車とバスなどの固定ルートの交通がどのように連携して機能するかを理解し、計画するのに役立つソフトウェアツールを発表した。

画像クレジット:Via

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

B2B請求・回収・支払を自動化するAnchorが約17億円のシード資金を獲得

企業は滞納された支払いの督促に膨大な時間を費やし、その結果、本来の業務に支障をきたしたり、キャッシュフロー問題を引き起こしたりしている。

支払いの回収にかかる時間の浪費やその他の課題は、主に手作業による請求サイクルやプロセスに依存していることに起因している。これらのプロセスは、手間と時間がかかり、ミスや不正が発生しやすい。イスラエルに研究開発センターを持つ米国のスタートアップAnchor(アンカー)は、こうした問題を解決しようとしている。

2021年設立されたAnchorは、請求書の発行や送金の作業を自動化することで、請求・回収・支払の問題を解決し、企業が顧客に支払いを促すために費やす貴重な時間を節約することを目指している。Anchorのクラウドベースのシステムは、サービスプロバイダーの請求・支払いプロセスをエンド・ツー・エンドで自動化し、支払い遅延の問題を解消する。

Anchorは米国時間12月1日、1500万ドル(約17億円)のシード資金を獲得し、チームの拡大、より多くのクライアントとの提携、マーケティング活動の開始など、成長を加速させる計画を発表した。

「今日は、既存のB2B決済プロセスを時代遅れにし、現代社会における請求、回収、支払いのあり方を再定義する、次の決済革命の始まりです。我々にとって、ベンダーとクライアントの信頼関係を強化し、請求書の不正や人為的ミスをなくすソリューションを開発することが重要でした」とAnchorの共同創業者でCEOのRom Lakritz(ロム・ラクリッツ)氏は話す。

「そうすることで、サービスプロバイダーとあらゆる規模の企業との間で、自律的に支払いが行われるようになります。数年以内に、Anchorがビジネスの基盤となり、ビジネスのやり方の金字塔となることを目指しています」とも語る。

Anchorは、米国の自律型課金システムのスタートアップで、イスラエルに研究開発センターを持つ

今回の資金調達ラウンドは、Rapydの新しいベンチャーキャピタル部門であるRapyd Ventures、そしてMonday.comやRiskifiedなど複数の企業に投資を行っているベンチャーキャピタルのEntrée Capital、イスラエルを拠点とし、Rapydを含む30社以上のポートフォリオを持つベンチャーキャピタルのTal Venturesが共同でリードした。

RapydのCEO、Arik Shtilman(アリク・シュティルマン)氏は「Anchorは投資したい企業であるとすぐにわかりました」と話す。「Anchorは、決済の未来を見据え、B2Bの決済と請求のための最新のフレームワークを構築しており、すべてのビジネスに必要なものになるはずです」。

Anchorのプラットフォームは「ライブオンライン契約」を通じて企業と顧客を結びつける一方で、自己完結型のエンド・ツー・エンドの請求・支払いソリューションは、ベンダーと顧客の契約をカバーし、請求書の発行、支払い、仲裁のステップを管理する。

同社のシステムは、クライアントの支払い情報やサービスプロバイダーの技術と統合することができ、サービスが提供されたり、請求書の支払い期限が来たりすると、契約に基づいて請求書が自動的に作成され、送付される。

Entrée Capitalの共同創業者でマネージング・パートナーのAvi Eyal(アビ・イヤル)氏は「B2B決済の分野は、各業種がある程度の専門性を必要とするため、非常に細分化されています」と話す。

「Anchorは、このようなユニークなチャンスを見つけ、同社のソリューションを何千ものサービス業に展開することで、業界の主要プレイヤーになると確信しています」とイヤル氏は述べた。

キャッシュフローの問題は、特に世界中の中小企業にとって、成長の最大の妨げとなっている。しかし、米国では中小企業が経済活動の44%を占めているように、ほとんどの経済の屋台骨であるこれらの中小企業がキャッシュフロー問題に直面する主な理由は、支払いの遅延だ。

MelioとYouGovの調査によると、米国ではほとんどの企業が支払い遅延を経験していて、インタビューを受けた企業のうち25社が支払い期日を最大30日過ぎても待たされると回答しており、事業を継続することが困難になっている。

だが、これらの問題はテクノロジーを活用することで解消することができる。

「ベンダーへの支払いを大変なプロセスにしている請求・回収の問題は、人間の要素に起因しています」とイヤル氏は指摘する。

「SpotifyやAmazonのアカウントから機械で生成された請求書を信用するように、もし人々がサービスプロバイダーから受け取る請求書を信用することができれば、請求と支払いはもはや苦痛なプロセスではなくなり、年間120兆ドル(約1京3550兆円)超と推定される市場で、容易に現金が流れるようになるでしょう」。

画像クレジット:Anchor. Anchor founders.

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(文:Annie Njanja、翻訳:Nariko Mizoguchi

シドニーのQ-CTRLは量子センシングを活用した「サービスとしてのデータ」市場を目指す

Q-CTRLは、量子制御エンジニアリングソリューションを提供するシドニーのスタートアップ企業だ。同社はオーストラリア時間11月30日、Airbus Ventures(エアバス・ベンチャーズ)が主導するシリーズBラウンドで、2500万ドル(約28億円)の資金を調達したことを発表した。このラウンドには、Ridgeline Partners(リッジライン・パートナーズ)、Main Sequence Ventures(メイン・シーケンス・ベンチャーズ)、Horizons Ventures(ホライズンズ・ベンチャーズ)、Square Peg Capital(スクエア・ペグ・キャピタル)、Sierra Ventures(シエラ・ベンチャーズ)、DCVC、Sequoia Capital China(セコイア・キャピタル・チャイナ)、In-Q-Tel(インキューテル)も参加した。

Q-CTRLの創業者兼CEOであるMichael Biercuk(マイケル・ビアキュック)氏は、この資金調達がスタッフの雇用を支援し、量子センシングを活用した新しいデータ・アズ・ア・サービス(サービスとしてのデータ)市場を実現すると述べている。同社はまた、量子コンピューティングのための量子制御や、加速度、重力、磁場を計測する量子センシングの開発にも引き続き投資していく。同社はこれまでに、総額6000万豪ドル(約49億円)以上の資金を調達している。

「Q-CTRLのビジョンは常に、量子技術のあらゆる応用を可能にすることです。今回の新たな資金調達は、宇宙、防衛、商業の分野に真の価値を提供するという当社のミッションを実現するために不可欠なものです」とビアキュック氏は述べている。

Q-CTRLは、この分野で最も差し迫った課題であるハードウェアのエラーや不安定性に対処し、量子コンピューティングのパフォーマンスを向上させるインフラストラクチャソフトウェアを提供していると、ビアキュック氏はTechCrunchに語った。

今回のシリーズB資金調達は、Q-CTRLが最近行った主要な技術および製品開発の発表に続いて実施されたものだ。それらの中には、量子論理ゲートとして知られるQ-CTRLのコア技術を用いて、実際の量子コンピューター上で実行される量子アルゴリズムのパフォーマンスを2680%向上させる技術デモが含まれている。

同社はまた、Fleet Space Technologies(フリート・スペース・テクノロジーズ)を中心としたオーストラリア企業のコンソーシアムと共同で、宇宙に適した量子センサーや、地球と月や火星の探査技術を開発している。その量子センサーの顧客には、Advanced Navigation(アドバンスド・ナビゲーション)、オーストラリア国防総省、空軍研究所、オーストラリア宇宙庁などが含まれる。

「このチームのすばらしい量子制御ソフトウェア群は、量子産業全体が急速に加速している今、速さと機敏さを可能にします」と、東京に本拠を置くAirbus Venturesのパートナー、Lewis Pinault(ルイス・ピノー)氏は述べている。「Q-CTRLは、月面開発、地理空間情報、地球観測など、先進的なアプリケーションやソリューションの幅を広げています。これらはすべて、現在我々が直面している加速的な惑星システムの危機に対処するための世界的な取り組みにおいて、ますます重要になっているものです。私たちが特に期待しているのはそこです」。

ビアキュック氏によれば、Q-CTRLの2020-2021年度の収益は前年比3倍となり、2020年後半に開始したばかりの新しい量子センサー事業の売上と予約で900万ドル(約1億円)以上を計上したとのこと。

多くの企業がそうであるように、新型コロナウイルスの影響で成長が大幅に停止したため、予定していた海外での販売・マーケティング活動に大きな損失が発生したと、ビアキュック氏は述べている。にもかかわらず、同社のチームは2020年1月以降、約20人から60人に増えたという。

ビアキュック氏は、同社が量子制御の専門家による大規模なチームを運営しており、30人以上の博士レベルの研究者が、量子コンピューティングと量子センシングの研究と製品開発を推進していると付け加えた。

Q-CTRLは最近、誰でも量子コンピューティングを学ぶことができるインタラクティブでアクセスしやすいオンライン学習プラットフォーム「Black Opal(ブラック・オパール)」を起ち上げた。ビアキュック氏によると、これは10日間の販売目標を2日半で突破したという。

Q-CTRLは2017年に、ビアキュック氏が量子物理学および量子技術の教授として勤務するシドニー大学からスピンオフした。

マイケル・ビアキュック氏(画像クレジット:Jessica Hromas)

現在はシドニーとロサンゼルスにオフィスを構えているが、年内にはベルリンにもオフィスを開設し、最初の従業員を雇用する予定だと、ビアキュック氏は述べている。

Boston Consulting Group(ボストン・コンサルティング・グループ)の報告書によると、量子コンピューティング産業は、2040年までに年間評価額で8500億ドル(約9兆6000億円)以上になると推定されている。BCC Research(BCCリサーチ)の報告では、世界の量子センサー市場は、2019年の1億6100万ドル(約182億円)から、2024年には2億9990万ドル(約338億5000万円)に増加すると予測している。

画像クレジット:Q-CTRL

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(文:Kate Park、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Energy Domeは太陽エネルギーの貯蔵に二酸化炭素を利用する

長時間にわたるエネルギー貯蔵は厄介だ。だが多くのバッテリー技術は「EVをさらに数百マイル走らせるために、バッテリーをどれだけ速く充電できるか」に焦点を当ててきた。急速充電は、月が夜空をゆっくりと散歩している12時間に使う電力を、昼の12時間で太陽から得ようとすることとは根本的に異なる問題だ。

米国時間11月30日、Energy Dome(エナジードーム)は、拠点を置くイタリアのサルデーニャ島での実証プロジェクトで、世界初の商用CO2(二酸化炭素)バッテリーを設置するために、1100万ドル(約12億5000万円)のシリーズA資金調達を行ったことを発表した。

同社によれば、CO2バッテリーの最適な充電 / 放電サイクルは4〜24時間であり、日次および日中のサイクルに最適だという。また、これは現在急成長している市場セグメントであり、既存のバッテリー技術が十分にカバーできていなことも指摘している。具体的には、太陽光発電の余力がある日中にCO2バッテリーを充電しておいて、電力需要が太陽光の供給量を上回る夕方や夜間のピーク時に放電することを想定している。なぜなら──まあ当たり前過ぎてわざわざ書くのもはばかられるが──夜は太陽が出ていないからなのだ。

同社は、市販のコンポーネントを使用して構築されているそのCO2バッテリーが、75〜80%の充放電効率を達成していると主張している。しかし、おそらくもっと興味深いのは、バッテリーの動作寿命がおそそ25年程度になると予測されていることだ。他の電力貯蔵ソリューションの事情をよく知っている人なら、ほとんどのソリューションの動作性能が、10年を超える頃には大幅に低下し始めることに気がついているだろう。同社は、製品のライフサイクルコスト全体を考慮した場合、エネルギーを貯蔵するコストが、同じサイズのリチウムイオン電池で貯蔵するコストの約半分になると予測している。

この技術は非常に優れており、同社はCO2をガスから液体に、そしてまたガスに戻す閉ループサイクルで利用する。ソリューションの一部となる、ガス状のCO2を充填した膨張可能なガス容器部品にちなんで、会社は「ドーム」と命名されている。

充電時には、システムは電力網から電力を引き込む。この電力を用いてドームからCO2を引き出して圧縮するコンプレッサーを駆動し、熱を発生させるのだ。この熱は蓄熱装置に蓄えられる。次に、CO2は圧力下で液化され、環境と同じ温度で液体CO2容器に保管され、充電側サイクルが完了する。放電時には、このサイクルが逆になる。液体のCO2を気化させ、蓄熱装置から熱を回収し、高温のCO2をタービンへ送り込んで発電機を駆動する。電気はグリッドに戻され、CO2は大気に放出されることなくドームを再膨張させ、次の充電サイクルに使われる準備が整えられる。このシステムの貯蔵容量は最大200MWhだ。

今回のラウンドはディープテックVCの360 Capitalが主導し、他の多くの投資家が投資ラウンドに参加した。その中には、インパクト投資アプローチを採用する大手銀行バークレイズの一部門であるBarclays’ Sustainable Impact Capital プログラム、ジュネーブを拠点とするマルチファミリーオフィスのNovum Capital Partners、そしてRMIとNew EnergyNexusによって設立されたグローバルな気候テクノロジースタートアップアクセラレーターのThird Derivativeが含まれている。

画像クレジット:Energy Dome

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:sako)

AI・IoTを活用した在宅介護プラットフォームのウェルモが20.4億円のシリーズC調達、東京海上・凸版印刷との資本業務提携も

AIやIoTを活用した福祉プラットフォームサービスを提供するウェルモは11月30日、第三者割当増資による20億4000万円の資金調達を実施したことを発表した。引受先はDGベンチャーズ(デジタルガレージグループ)、Aflac、Ventures LLC、東京大学協創プラットフォーム開発(東京IPC)、東京海上日動火災保険など12社。累計資金調達額は41億2000万円となった。調達した資金と業務提携により事業展開を強化・加速する。さらに今冬から来春にかけて、エクステンションラウンドも予定している。

また同社は、東京海上ホールディングスや凸版印刷との資本業務提携の締結も明らかにした。ウェルモが保有する在宅介護ビッグデータ×AIのノウハウや在宅介護プラットフォームと、各社が保有する技術・製品等をかけ合わせることで、新たなサービス開発・ビジネスモデルを構築する。

東京海上ホールディングスとの業務提携では、介護領域における社会課題の解決に向けて、両社が保有するテクノロジーおよびネットワークを連携させることにより、介護現場のDX化の促進と新たなソリューション、サービス開発・展開を進めるためとのこと。

凸版印刷との業務提携では、ウェルモが保有する介護データと、医療機関などが保有する医療データとを、凸版印刷の資本業務提携先ICIが次世代医療基盤法に基づいて突合・匿名加工し、医療・介護の匿名加工統合DBを構築する。今後の国内市場の重要性が予測される「医療」×「介護」に関する匿名加工統合データベースの構築を検討するという。

さらに、凸版印刷が提供するセンシングデバイスサービスと、ウェルモのケアマネジメントDX事業におけるデータ・ノウハウを掛け合わせたヘルスケアレポートシステムの構築を行う。凸版印刷の同サービスと、ウェルモが保有する「ミルモネット」に集約されている地域情報資源(保険内外サービス情報)を活用し、介護予防などに役立つ情報をレポート形式にて様々な階層のシニア層に対して提示。超高齢化社会に向けた新しい価値を創造するとしている。

ウェルモは、「持続可能な少子化高齢化社会の実現」をミッションに掲げ2013年4月に設立。ケアプラン作成支援AI「ミルモぷらん」、介護の地域資源情報を集約するプラットフォーム「ミルモネット」、児童発達支援・放課後等デイサービス「unico」といった事業を展開している。

宇宙商社Space BDが10.4億円調達、SpaceX「Falcon9」ロケット衛星打上げ枠の利用権確保など宇宙輸送手段拡大

宇宙商社Space BDが10.4億円調達、SpaceX「Falcon9」ロケット衛星打上げ枠の利用権確保など宇宙輸送手段拡大

宇宙産業における総合的なサービスを展開する「宇宙商社」Space BDは12月1日、第三者割当増資による総額10億4000万円の資金調達完了を発表した。引受先は、既存株主であるインキュベイトファンド、アニヴェルセルHOLDINGS、SMBCベンチャーキャピタル、みずほキャピタル、これに新規株主として、シンガポール政府系投資会社Temasek Holdings傘下のPavilion Capital PTE. LTD.が加わっている。融資も含めた累計調達金額は、18億9000万円となった。

2017年設立のSpace BDは、JAXAの初の民間開放案件「国際宇宙ステーション『きぼう』日本実験棟からの衛星放出事業」に採択されたことを機に、船外プラットフォーム利用事業、微小重力環境を活用するライフサイエンス事業、H-ⅡA/H3ロケット相乗り打上げ事業と、JAXAとのパートナーシップを軸にした事業を進めてきた。現在は、衛星打上げ事業のほか、宇宙をテーマとした地域産業振興、教育および人材育成事業、技術プロジェクトマネージメントなどを展開している。

今回調達した資金で、Space BDは「国内外の多様な打上げ手段の確保による衛星打上げサービスの拡大」と、人材採用と組織力の強化を行うとしている。特に打ち上げ手段に関しては、2021年11月にSpaceXのFalcon9ロケットの利用権を確保するなど、調達の幅を広げている。

「プロジェクトごとに異なる課題・目的に対し、ゼロからの事業立案・実行と技術的な支援をワンストップで提供することで、当社の設立理念である『宇宙を日本発で世界を代表する産業にする』に向けて邁進してまいります」とSpace BDは話している。

キャンピングカーと車中泊スポットの予約アプリ運営のCarstayが約1.1億円調達、プラットフォーム開発を強化

キャンピングカーと車中泊スポットの予約アプリ運営のCarstayが約1.1億円調達、プラットフォーム開発を強化

Carstay(カーステイ)のミッションの世界観を表すために発表されたコンセプトアート「Carstay 2025」。2025年までに100万人のユーザーに愛されるサービスの社会実装を目指す

キャンピングカーのシェアリングと車中泊スポットの予約ができる「Carstay」(Android版iOS版)を運営するCarstay(カーステイ)は12月1日、プレシリーズAラウンドのファーストクローズで約1億1000万円の資金調達を実施したことを発表した。引受先は、栖峰投資ワークス、W ventures、ミナミインキュベート、ほか既存投資家。今回の資金調達により、金融機関からの融資を含め累計調達額は約2億4000万円となった。年内には同ラウンドでの追加の資金調達も予定している。

「Stay Anywhere, Anytime. 誰もが好きな時に、好きな場所で、好きな人と過ごせる世界をつくる」をミッションに掲げるCarstayは、「移動」を基盤とした新しい旅と暮らしのライフスタイルをテーマに事業を展開するスタートアップ。事業開始から3年で、全国各地の車中泊スポット320カ所、車中泊仕様のカーシェア車両220台が登録されたプラットフォームを構築し、地方活性化プロジェクト支援、モビリティ各社やエンタテインメントとの連携、医療従事者や被災地の支援なども展開している。

同社のミッションの世界観を表すために発表されたコンセプトアート「Carstay 2025」。2025年までに100万人のユーザーに愛されるサービスの社会実装を目指す

Carstayは今回の資金調達により、「Carstay 2025」に描かれた世界の実現を目指し、プラットフォームの開発をより加速させるという。「動く拠点」となる車「バン」のカーシェア台数、「バン」で寝泊りできるスペースシェア登録数の増加を図るとともに、スマートフォンやパソコンを介して、それら車両や車中泊スポットを簡単に検索・予約・決済が行えるITプラットフォームの利便性や操作性の強化を図る。

GDPRコンプライアンスを自動化する英Soverenが約7.4億円のシード資金を得て脱ステルス

ロンドンを拠点とし、プライバシーリスクの検出を自動化して企業のGDPR(EU一般データ保護規則)およびCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)への準拠を支援するスタートアップSoverenは、650万ドル(約7億4000万円)のシード資金を得て、ステルス状態から脱却した。

同社は、組織のインフラ内のリアルタイムのデータフローを分析して個人データを発見し、プライバシーリスクを検出することで、CTOやCISOがプライバシーギャップを認識して対処することを容易にする。Soverenによると、全世界でおよそ1千万社の企業が、プライバシーインシデントの検出と解決を怠ったために、GDPRやその他の規制上の義務に違反するリスクを抱えているという。

Soverenの創業者兼共同CEOであるPeter Fedchenkov(ピーター・フェドチェンコフ)氏は、TechCrunchにこう語った。「セキュリティソフトウェアは、セキュリティ上の脅威にはうまく対処できますが、プライバシー上の課題への対処には限定的な影響しか与えません。これは、簡単に隔離できる他の機密データとは異なり、個人データは実際に日々の業務の中でアクセスされ、使用され、共有されるようにできているためです。当社は、プライバシーは新しいセキュリティであると信じています。なぜなら、同じように自動化された継続的な保護対策が必要だからです」。

フェドチェンコフ氏は、Soverenのアイデアは、EC分野での個人的な経験から生まれたという。「今日、データ保護とプライバシーのコンプライアンスがいかに手作業で複雑であるかを目の当たりにしました。時間もお金も労力も、必要以上にかかっています」。

Sovernはこれまでに、北米および欧州において、ソフトウェア、eコマース、旅行、フィンテック、ヘルスケアなどの分野で、10社のライトハウスカスタマーを確保している。

今回の投資ラウンドは、Northzoneの参加を得てFirstminute Capitalが主導し、Airbnb(エアビーアンドビー)やMulesoft(ミュールソフト)などから11人のユニコーン創業者、Sir Richard Branson(サー・リチャード・ブランソン)の家族ファンド、Palo Alto Networks(パロアルトネットワークス)の会長CEOであるNikesh Arora(ニケシュ・アローラ)氏をはじめとするひと握りのグローバルCEOが参加した。

フェドチェンコフ氏によると、Soverenはまず、この資金を使って製品チームを拡大し、セールスとマーケティングに投資する予定だという。「マーケティング面ではまだ何もしていないので、それを強化したいと考えています」と同氏はTechCrunchに語っている。

画像クレジット:Bortonia / Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Aya Nakazato)

日々のプロセスを自動化、開発者が重要なタスクに集中できるようにするツールのRaycastが約16.9億円調達

開発者向け生産性向上ツールのRaycast(レイキャスト)は、Accel(アクセル)とCootue(クーチュ)を中心としたシリーズAで1500万ドル(約16億9100万円)の資金を調達した。また、このラウンドには、エンジェル投資家として、Hopin(ホピン)のCEO兼創業者であるJohnny Boufarhat(ジョニー・ブファルハット)氏、Stripe(ストライプ)の製品責任者であるJeff Weinstein(ジェフ・ワインスタイン)氏、GitHub(ギットハブ)の元CTOであるJason Warner(ジェイソン・ワーナー)氏、Checkout.com(チェックアウト・ドットコム)のCTOであるOtt Kaukver(オット・カウクバー)氏などが参加した。

Raycastは、元Facebook(フェイスブック)のソフトウェアエンジニアであるThomas Paul Mann(トーマス・ポール・マン)氏とPetr Nikolaev(ペトル・ニコラエフ)氏によって2020年に設立された。彼らは、異なるSaaSツール間で開発者が継続的にコンテキストスイッチを行うことで日々失われる時間を取り戻す方法を模索していた。

「私たちが会社を始めたのは、コンピューターとの向き合い方を改善したいと思ったからです。私たち自身も開発者として、ほとんど価値を提供しない忙しい作業に多くの時間を費やしていることに気づきました。むしろもっと重要な仕事に時間を費やしたいと思ったんです。これがRaycastの前提であり、仕事を早く終わらせるためのツールを提供します」RaycastのCEOであるトーマス・ポール・マンは、TechCrunchのインタビューに答えている。

Raycastは、コマンドラインにインスパイアされたインターフェースにより、開発者が情報を見つけ、更新することを容易にすることを目的としている。このプラットフォームは、日々のプロセスやタスクの自動化を可能にし、開発者が重要なタスクに集中できるようにする。このデスクトップソフトウェアは「Superhuman」や「Command E」などの同業他社を参考にしており、ユーザーはキーボードショートカットを使ってすばやくデータを引き出し、修正することができる。ユーザーは、Jiraでの課題の作成や再修正、GitHubでのプルリクエストのマージ、ドキュメントの検索などを簡単に行うことができる。基本的に、Apple(アップル)のSpotlight検索の開発者向けバージョンであり、ソフトウェアエンジニアが開発作業以外のすべての部分を単一のツールを使って操作できるようにすることを目的としている。

Raycastの成長に関して、わずか12カ月で、2020年10月に130人だったデイリーアクティブユーザーを現在までに1万1000人以上に増やし、その間に2000万以上のアクションがプラットフォーム上で実行されたと述べている。チームは現在12名のメンバーで構成されており、年内にはさらに多くの人材が入社する予定だ。

また、Raycastは、エクステンションAPIとストアをパブリックベータ版として公開し、開発者がカスタムエクステンションを構築し、チームやコミュニティで共有できるようにした。同社によると、このベータ版では、1カ月間にコミュニティが100以上のエクステンションを構築し、Figma、GitHub、Chrome、Notion、YouTube、Twitterなどのサービスにも接続しているという。Raycastは現在、エクステンションAPIとストアを公開し、世界中の開発者に開放している。

画像クレジット:Raycast

マン氏は、今回の資金調達について、Raycastは開発者の生産性向上分野のリーダーになりたいと語っている。「それが、今回の資金調達の目的です。今回の資金調達は、チームの規模をさらに拡大するために使用します。私たちは、このプラットフォームを誰もが利用できるようにして、誰もが望むツールを構築できるようにしたいと考えているんです」と述べている。

Raycastは今回の資金調達を利用して、開発者やツールのコミュニティの構築に注力し、プラットフォームの成長を加速させるとともに、チームレベルでのRaycastの導入も計画している。同社は今後も個人の開発者に重点を置いていくが、生産性向上のためのツールやワークフローを他の人と簡単に共有できるようにすることにも可能性を見出している。米国時間11月30日より、企業は早期アクセスプログラムに登録して、チーム向けの新機能を利用できるようになる。ユーザーは、チームのニーズに合わせてカスタムエクステンションやリンクを構築・配布できる、独自の社内ストアを作成することができるようになる。

「チームはエクステンションを構築し、それをチームメンバーと個人的に共有することができます。カスタムセットアップで生産性を向上させる社内ツールがあれば、チームメンバーも恩恵を受けることができるよう、それをチームメンバー内に共有することができます。これにより、チームとしての生産性を維持し、普段抱えている忙しい業務に費やす時間を節約することができます」とマン氏は語る。

RaycastのシリーズA資金は、2020年10月に行われた270万ドル(約3億円)のシードラウンドに続くものだ。今回のラウンドは、Accelがリードし、YC、Jeff Morris Jr.(ジェフ・モリスJr.)氏のChapter One(チャプター・ワン)ファンド、さらにエンジェル投資家のCharlie Cheever(チャーリー・チーバー)氏、Calvin French-Owen(カルヴィン・フレンチ・オウエン)氏、Manik Gupta(マニック・グプタ)氏が参加した。

AccelのパートナーであるAndrei Brasoveanu(アンドレイ・ブラソヴェアヌ)氏は「Raycastへのシード投資を担当して以来、Raycastが開発者コミュニティで成長し、牽引していることに感銘を受けてきました。これは、Raycastが開発者にとって不可欠なツールになる可能性を秘めているという当初の確信を裏付けるものであり、APIやストアの立ち上げやチームへの拡大によって、チームがさらに前進することに期待しています。我々は、トーマス氏とペトル氏の野心的な冒険を引き続きサポートできることをうれしく思います」と述べている。

画像クレジット:Raycast

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(文:Aisha Malik、翻訳:Akihito Mizukoshi)

愛犬のためのカスタムフレッシュフードPETOKOTO FOODSなど提供のPETOKOTOが約5億円のシリーズA調達

愛犬のためのカスタムフレッシュフードPETOKOTO FOODSなど提供のPETOKOTOが約5億円のシリーズA調達

ペットウェルネスブランド「PETOKOTO」を提供するPETOKOTOは12月1日、融資および第三者割当増資による総額約5億円の資金調達を発表した。引受先は、ベガコーポレーション、楽天グループ(楽天キャピタル)、ABCドリームベンチャーズ、DGベンチャーズ、Headline、15th Rock Ventures、既存株主のニッセイキャピタル、西川順氏、鈴木修氏。総調達額は約10億円となった。また、長期的なペットライフプラットフォーム構築に向け、住宅家具領域でベガコーポレーションと、トラベル領域・保険領域で楽天と業務資本提携を締結した。愛犬のためのカスタムフレッシュフードPETOKOTO FOODSなど提供のPETOKOTOが約5億円のシリーズA調達

調達した資金は、同社ミッションである「人が動物と共に生きる社会」の実現に向けて、プロダクト開発や顧客基盤・ユーザー基盤拡大に向けた営業・マーケティング、それらを支える優秀な人材の獲得などに使用する予定。経営および事業基盤をさらに強化することで、中長期的な成長を加速させる。

PETOKOTOは、「人が動物と共に生きる社会をつくる」というミッションの実現に向けて、2016年5月より専門家によるペットライフメディア「PETOKOTO」、同年12月より保護犬猫マッチングサイト「OMUSUBI」、2020年2月より愛犬のためのカスタムフレッシュフード「PETOKOTO FOODS」を提供。PETOKOTO FOODSにおいては、売上は前年比700%増加で成長しており、累計販売食数は500万食、会員数は1万人を超えたという。愛犬のためのカスタムフレッシュフードPETOKOTO FOODSなど提供のPETOKOTOが約5億円のシリーズA調達愛犬のためのカスタムフレッシュフードPETOKOTO FOODSなど提供のPETOKOTOが約5億円のシリーズA調達

今後同社は、家族品質のサービスを提供することでペットと暮らす体験を向上しペットライフのQOLを最大化するとともに、OMUSUBIを通じて殺処分問題をはじめ流通市場の課題解決を進めることで、ハード面・ソフト面でのペットライフの課題解決に取り組む。オンライン、オフラインでの接点の強化を進めるとともに、D2Cモデルを通じて取得した行動データから最良のプロダクト・サービスをパーソナライズに提案するペットライフのコンシェルジュプラットフォームの構築を進める。愛犬のためのカスタムフレッシュフードPETOKOTO FOODSなど提供のPETOKOTOが約5億円のシリーズA調達

東南アジアの多通貨ネオバンクYouTripが約34億円調達、法人カードも発行

多通貨取引のコスト削減と効率化に特化した、シンガポールを拠点とするオンライン銀行のYouTrip(ユートリップ)は現地時間11月30日、シリーズAで3000万ドル(約34億円)を調達したと発表した。

同社創業者でCEOのCaecilia Chu(カエシリア・チュー)氏によると、今回のラウンドは、アジアの著名なファミリーオフィスがリードしたもので、このファミリーオフィスは匿名を希望しているが、前ラウンドにも参加している。

今回のシリーズAにより、YouTripの資金調達総額は6000万ドル(約67億円)を超えた。同社によると、これまでに全世界で8億ドル(約902億円)超のカード利用を処理し、取引数は約2000万件、アプリのダウンロードは150万回を超えている。

チュー氏はTechCrunchに対し、YouTripが資金調達に踏み切ったのは「変曲点」に達しているからだと述べた。

「東南アジアがパンデミックから脱却し、シンガポールがワクチン接種率で先頭に立っていることから、消費者の間では、旅行に対する大きな需要の高まりと、消費者心理の回復が見られました。eコマースへの支出は確実に増加しており、旅行に関しては、シンガポールのワクチン接種済みトラベルレーンが始まって以来、1日の取引額が少なくとも2〜3倍に増加しています」。

YouTripはこうした追い風を楽観視しているが、旅行の回復については現実的なアプローチをとっている。中期的には、個人消費と、YouBizと呼ばれる複数通貨対応の法人カードを含む新しいB2Bビジネスに最も期待しているとチューは述べた。

YouTrip共同創業者でCEOのカエシリア・チュー氏

2022年、YouTripは地理的拡大にも注力する計画だ。現在、シンガポールとタイで事業を展開している同社は、フィリピンとマレーシアに進出するためにVisa(ビザ)と提携した。さらにチュー氏は、インドネシアとベトナムでのサービス開始に向けて、パートナーと話し合いを進めていると付け加えた。

TechCrunchが2019年にYouTripを取り上げたとき、コアな顧客層の1つは海外旅行者だった。そして新型コロナに見舞われ、同社は非常に迅速に適応しなければならなかった。

YouTrip Perksのような新機能を追加し、LazadaやShopeeといった業者と協力して最大15%のキャッシュバックを提供するパートナーシップチームを立ち上げた。「パンデミックの間、人々はオンラインで多くのものを購入していただけでなく、健康への意識も高まっていたため、スポーツ用品や健康補助食品の購入が増えました」とチュー氏は話す。「私たちは、ユーザーにとって最も関連性の高い業者をターゲットにして提携を促進してきました」。

同社によると、現在、取引額はパンデミック前のレベルに戻っている。YouTripは、消費者の支出や旅行の増加にともない、さらなる牽引力を期待しており、2022年初めに消費者向けアプリのブランドイメージを一新し、新たな決済機能を導入する予定だ。

また、法人向けカードであるYouBizも2022年初めに導入する予定だ。チュー氏は、同社がB2B分野に参入した理由の1つとして、フィンテックサービスを導入する中小企業が増えていることを挙げる。

「私たちは、パンデミックに強い企業になることがどれほど重要かを知っています」と同氏は付け加えた。「国境がいつ再開されるかと毎日ニュースを読むのはやめようと心に誓いました。私たちは、新しい旅行対策に関わらず乗り越え、成功させ続けます」。

同社はまた、中小企業におけるパラダイムシフトを目の当たりにした。

「彼らはフィンテック商品や新しい銀行商品に対して、よりオープンマインドになっています」とチュー氏は指摘する。「当社に関連して言えば、在宅勤務やハイブリッドモデルの普及により、企業の分散化が進んでいます。給与支払い、ベンダーへの支払い、さらには売上の受け取りや消費者への請求までもが世界中に広がっており、外貨のニーズは確実に高まっています。ですので、この市場に参入するには最適な時期だと感じています」。

YouBizの提供が始まれば、YouTripは、AspireSpenmoVolopayなど、法人カードを提供したり、中小企業分野に焦点を当てたりしているVCが支援する東南アジアのフィンテック企業数社の仲間入りをすることになる。しかしチュー氏は、中小企業向けのサービスは消費者向けのサービスに比べて巨大であるだけでなく「サービスが十分に行き届いていないため、大きなチャンスがある」と話す。

特にYouTripは、従業員数1人から1000人までの企業にフォーカスする計画だ。このセグメントを選んだ理由は、YouBizが従来の銀行口座の代わりになるものではないからだ。YouBizは、中小企業の外貨取引にかかる費用を削減することを主な付加価値としている。また、出張の再開を見据えて、経費管理ツールの導入も予定している。

「中小企業の部門では、1人勝ちにはならないと感じています。しかし、競争の話に戻ると、私たちはこの分野に注意深く参入しています。当社には、際立った2つの優位点があります。1つは、テックインフラとライセンスインフラをエンド・ツー・エンドで所有している唯一のネオバンクであることです」。

YouTripは「消費者向け決済サービスではマージンが非常に小さいため、最高のコストと価値を提供するためには、製品のロードマップを含めて、バリューチェーンを完全にコントロールできるレベルまで最適化する必要がある」として、自社の技術スタックに多くの投資を行った。

YouTripの2つ目の強みは、すでに強いブランド認知があることだ。「ビジネスオーナーと話をしていると、多くの人が自分の買い物のためにすでにYouTripを利用しています」とチュー氏はいう。この実績は、YouTripが中小企業に売り込む際に役立っており、チュー氏によれば、B2Bサービス開始に向けてすでに1000件の申し込みがあるという。

画像クレジット:YouTrip

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(文:Catherine Shu、翻訳:Nariko Mizoguchi

銀行口座を持たないインドネシアの労働者向けサービスGajiGesaが約7.4億円調達、給料日前に給料を引き出せるEWAに注力

GajiGesaの給料日アクセス機能のユーザーフロー

インドネシアの労働者向けサービスに特化したフィンテック企業であるGajiGesa(ガジゲサ)は、プレシリーズAで660万ドル(約7億4500万円)の資金を調達したことを発表した。このラウンドは、MassMutual Ventures(マスミューチュアル・ベンチャーズ)がリードし、January Capital(ジャニュアリー・キャピタル)、欧州のEWA(給与サイクルの終了前に未払い賃金の一部を利用することができる金融サービス)会社のWagestream(ウェイジストリーム)(EWAはGajiGesaの主要機能)、Bunda Group(ブンダ・グループ)、Smile Group(スマイル・グループ)、Oliver Jung(オリバー・ジョン)氏、Patrick Walujo(パトリック・ワルジョ)氏を含むNorthstar Group(ノーススター・グループ)のパートナー、Nipun Mehra(ニップン・メーラ)氏(UlaのCEO)、Noah Pepper(ノア・ペッパー)氏(StripeのAPAC責任者)が参加した。戻ってきた投資家には、defy.vc(ディファイ.vc)、Quest Ventures(クエスト・ベンチャーズ)、GK Plug and Play(GK プラグ&プレイ)、Next Billion Ventures(ネクスト・ビリオン・ベンチャーズ)などがある。

GajiGesaの詳細については、250万ドル(約2億8200万円)のシードラウンドを実施した2月のTechCrunchによる同社のプロフィールを確認して欲しい。

アグラワル氏とマリノフスカ氏は、プレスリリースの中で、GajiGesaのチームは過去6カ月間で2倍の50人以上になったと述べている。このスタートアップは、今回の資金調達を、製品開発、インドネシアでの事業拡大、東南アジアの新市場への参入に充てる予定だ。

同社は、銀行口座を持たない労働者を対象としており、毎月の給料を待たずにすぐに給料を引き出すことができる「アーンド・ウェッジ・アクセス(EWA)」に注力している。

GajiGesaは現在、工場、プランテーション、製造業、小売業、レストラン、病院、テック企業など、さまざまな分野の120社以上の企業と取引している。同社は、顧客企業を対象とした調査によると、従業員の80%以上がEWA機能を利用したことで非正規の貸金業者の利用をやめるようになり、40%が請求書の支払いやデータリチャージなど、同社プラットフォーム上の他の金融サービスを利用しているとしている。

同社は「GajiTim(ガジティム)」と呼ばれる雇用者向けアプリを提供しており、これは東南アジアで「最初で最大の統合型従業員管理ソリューション」であると主張している。つまり、雇用主は、パートタイムやフルタイムの従業員、ギグワーカーなど、幅広い労働力の管理業務を行うことができるということだ。同社によると、GajiTimには現在20万人以上のユーザーがいるという。

今回の投資について、MassMutual VenturesのマネージングディレクターであるAnvesh Ramineni(アンヴェシュ・ラミネニ)氏は「(GajiGesaの)統合プラットフォームは、顧客中心の製品設計と世界クラスの技術インフラを組み合わせたもので、慢性的にサービスが行き届いていない市場に力を与え、東南アジアの何百万人もの人々の経済的回復力を高めるために、独自の地位を確立しています」と述べている。

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(文:Catherine Shu、翻訳:Akihito Mizukoshi)

正社員としての契約を与えることでフランスのフリーランサーに安定をもたらすJump

フランスのスタートアップJump(ジャンプ)は、アンブレラ型企業(一時的な契約業務に従事するエージェント契約者を雇用する会社のこと)の業界を破壊しようとしている。それら企業は、従来のフリーランスの仕事に新たに代わるものを提供している。彼らは労働者を正社員として雇用することで、労働力の安定性と正社員契約のメリットを得ることができる。しかし、労働者は独立性を保ち、複数のクライアントと仕事をしたり、自分で直接契約を交渉したりすることができる。

Jumpが従来のそれら企業と異なるのは、既存のサービスよりもはるかに低コストで、より自動化されている点だ。ユーザーは自動でアカウントを作成でき、最初の請求書も自動で送信されるため、Jumpのスタッフと話す必要もない。

登録すると、クライアントに自分への直接支払いではなく、Jumpへ支払いをするよう依頼し始めることができるようになる。ユーザーはいつでも未払いの請求書や、Jumpのアカウントにある金額を確認することが可能だ。

Jumpのユーザーは、給与明細書を作成し、給与を受け取ることができる。また、フランスの通常の正社員契約なので、国民健康保険制度に登録され、老後の生活資金を貯めることもできるのだ。顧客との関係がうまくいかない場合は、法定合意解約を申請し、失業手当を受ける権利を得られるようになる。

同社は、Index Ventures(インデックス・ベンチャーズ)を中心に450万ドル(約5億1200万円)のシードラウンドを実施した。Kima Ventures(キマ・ベンチャーズ)と16人のエンジェル投資家もこのラウンドに参加しており、Nicolas Brusson(ニコラス・ブルソン)氏、Hanno Renner(ハンノ・レナー)氏、Laurent Ritter(ローラン・リッター)氏、Thibaud Elziere(ティボー・エルジエ)氏などが名を連ねている。

従来のアンブレラ型企業は、年間売上高の一部を徴収する。価格はさまざまだが5%、7%、場合によっては10%になることもある。例えば、Jumpの共同設立者でありCEOのNicolas Fayon(ニコラス・フェイヨン)氏は、かつてITGに勤務していたが、ITGでは売上に対して6%から8%の手数料を徴収していた。また、ITGにさらに2%の追加料金を支払うことで、経費を管理し、給与を最適化することもできる。

Jumpは現在、月額79ユーロ(約1万円)の定額制でサービスを提供している。顧客は、Axa(アクサ)の社会人・個人向け生命保険、Alan(アラン)の健康保険、フリーランスマーケットプレイス(Malt、Talent.io、LeGratin)、その他いろいろなサービス(Simbel、Secret、HelloPrêt)など、サードパーティのサービスにもアクセスすることができるようになる。

これまでに、Jumpは何百人ものフリーランサーと仕事をしてきた。これまでの請求は300万ユーロ(約3億8400万円)にのぼる。開発者、不動産業者、ドライバーなど、多くのフリーランサーがこの製品の恩恵を受けることができるだろう。また、フランスに子会社を作りたくない外資系企業でリモートワークをしている人たちにとっても特に便利なため、アンブレラ型企業にとっては大きな市場機会があるだろう。

画像クレジット:Romain Dancre / Unsplash

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(文:Romain Dillet、翻訳:Akihito Mizukoshi)

巨大な電子レンジを使って短時間かつ安価に金鋳物を製造するFoundry Lab

Easy Bake Oveenを覚えているだろうか?色のついた粉と水を混ぜて生地を作り、それを型に入れてオーブンに入れると、いつの間にか「チーン!」と鳴って気持ちの悪いお菓子ができあがる。ニュージーランドを拠点とするスタートアップ企業のFoundry Lab(ファウンドリー・ラボ)は、化学物質と「オーブン」の代わりに、金属と電子レンジを使って同じようなことをする方法を発見した。

Rocket Lab(ロケット・ラボ)のPeter Beck(ピーター・ベック)氏から支援を受けているFoundry Labは、米国時間11月29日に800万ドル(約9億900万円)のシリーズA資金を調達してステルス状態を脱した。同社は「文字通り、巨大な電子レンジ」を使って、金属の3Dプリントよりもはるかに早く金属部品を鋳造すると、創業者兼CEOのDavid Moodie(デイヴィッド・ムーディ)氏は述べている。

「ユーザーにとっては非常に簡単です。文字どおりの型を取り、冷たい金属の粉末や金属の鋳塊を投入し、電子レンジに入れてボタンを押して立ち去るだけです」と、ムーディ氏はTechCrunchに語った。「出来上がったときには、チーンと音も鳴ります。電子レンジで夕食を温めるのと同じくらい簡単です」。

(Foundryの電子レンジは、ニュージーランドの典型的なミートパイの調理にも使用されたことがある。わずか数秒で出来上がったものの、ムーディ氏によるとすばらしい味ではなかったそうだ)

インベストメント鋳造、3Dプリント、ダイキャストなどの一般的な鋳造方法では、製造に1週間から6週間かかる。Foundryによると、同社ではコンピューター支援設計(CAD)で3Dプリントした金型と巨大な電子レンジを使って、自動車用のブレーキシューを8時間足らずで完成させたことがあるそうだ。現在は亜鉛とアルミニウムに対応しているが、ステンレススチールの試作にも成功しており、将来的には銅や真鍮などの他の金属にも挑戦したいと考えているという。

Foundryの技術は、将来的には金属の3Dプリントがカバーできない製造業に適用することが考えられるものの、当面の目標は、自動車メーカーの研究開発チームが量産に入る前のテストや試作に使用できる、量産型と同じように機能する金属部品を開発するのに役立つことだ。

「私たちが交渉中のある企業では、1台の自動車が市場に出るまでに600台もの試作車を作っています。その間に変更や改良を繰り返すため、あっという間に費用がかさむことになります」と、ムーディ氏は語り「そのための工具の費用は5万ドル(約560万円)から10万ドル(1120万円)以上になることもあります」と付け加えた。

ムーディ氏は、Foundryを設立する前、工業デザインのコンサルタント業を営んでおり、大量生産のための製品を設計していた。試作品では3DプリンターやCNCマシンで製造された部品を使用しているため、量産品とは物理的な構造が違っている可能性があるという理由で、試験機関から常に申請を却下されることに、同氏は不満を感じていた。

「そこで私は、ニュージーランド人らしく物置に行き、運良く機能する方法を見つけたのです」と、ムーディ氏はいう。最近のニュージーランドでロックダウンが行われていた期間には、ムーディ氏が作業場に入れなかったため、実験の多くは一般的な電子レンジを使って行われたという。「我々が解決しようとしているのは、実際の鋳造であり、ダイキャストをシミュレートしながら、それをより速く、安く行うことです。ダイキャストを作るために工具で機械加工をすると、3~6カ月かかってしまうのが普通です」。

Foundryはまだ設立から間もない会社だ。現在はその超大型の電子レンジを数台しか所有しておらず、潜在的な顧客に試用してもらっている段階だ。今回のシリーズAラウンドは、オーストラリアで設立されたVCのBlackbird(ブラックバード)を中心に、GD1、Icehouse(アイスハウス)、K1W1、Founders Fund(ファウンダース・ファンド)、Promus(プロマス)、WNT Ventures(WNTベンチャーズ)が出資している。同社ではこの資金を使って、2023年末までに生産体制を整える予定だ。

さらに資金の一部は、スタッフの増員にも充てられる。同社はここ数カ月で急速に成長しており、資金調達を開始した当初は6人だったスタッフが、現在は17人のフルタイム社員を擁するまでになっている。さらに今後数カ月で35人に増やすことを目標としているものの、ニュージーランドでは新型コロナウイルス感染拡大の影響で国境が閉鎖されているため、難しい状況だ。

「国境が閉鎖されていることが、私たちに打撃を与え始めています」と、ムーディ氏はいう。「この国にはマイクロ波の専門家が2人いますが、2人とも仕事を持っています。これが特に大変です。だから、誰かに助けに来てもらおうとしているところです」。

ニュージーランドでは、今週オークランドがロックダウンを解除し、12月中旬には都市の境界線が国内の他の地域に開放されるなど、内部的な開放が始まっている。オミクロンの新種が事態を悪化させない限り、2022年4月30日からワクチンを接種した旅行者の受け入れを始める予定だ。そうすれば、Foundryをはじめとするニュージーランドのスタートアップ企業は、海外から人材を採用するチャンスを得ることができる。

Foundryはニュージーランドを拠点に開発を進めながらも、米国や欧州の市場をターゲットにしている。同社のロングゲームは、電子レンジの研究を続け、大量生産に必要な台数を製造できるようにすることだ。

画像クレジット:Foundry Lab

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ブロックチェーンサービス開発プラットフォームのGincoが5.7億円調達、組織体制・プラットフォーム強化

Gincoは11月30日、第三者割当増資による総額約5億7000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先はみやこキャピタル、DBJキャピタル、三菱UFJキャピタル。調達した資金は採用・組織体制の強化およびブロックチェーン開発プラットフォーム構築にあてる。

Gincoの提供するブロックチェーンサービス開発プラットフォームは、インフラストラクチャ構築の複雑さとコストを軽減し、急速に拡大しているブロックチェーン市場へのアクセスを簡易化するという。

昨今、価値流通のデジタル化を背景として、暗号資産・NFT・セキュリティトークンといったデジタル資産市場が急成長していると同時に、ブロックチェーン技術の活用需要も増加傾向にある。だが需要が高まる一方で、ブロックチェーンサービスの開発では技術の複雑性や要求されるセキュリティ水準が参入の障壁であるうえ、参入後も企業がサービスの企画運営に集中できない要因となっている。こうした問題を解決するのがGincoのサービスとしている。

さらに同社は、開発プラットフォームだけではなくそれぞれのビジネス領域で求められる業務用システムパッケージの提供も行っている。このパッケージはセキュリティと利便性を高水準で両立したエンタープライズ品質を有し、暗号資産交換業者などに提供する業務用暗号資産ウォレットの分野では高い実績を挙げているそうだ。これらにより開発リソースに悩む企業でも迅速なサービス開始と業務体制構築が可能となるという。

2017年12月設立のGincoは、価値流通に革命を起こすブロックチェーン技術の社会実装を推進し、価値や権利を自由にやり取りできる「めぐりのよい経済」の実現に取り組むスタートアップ。創業以前より培ったブロックチェーン技術への知見、業務との親和性を高めたプロセス設計力、複数のシステム間の簡易接続や簡易な機能追加を可能とするシステム設計力を駆使して、暗号資産やデジタル証券、NFTなどのデジタルアセット活用に取り組む事業者を支援している。

フィナンシェとコインチェックがIEOによる資金調達に向けた契約を締結、2022年夏までに実現を目指す

フィナンシェコインチェックは11月29日、IEO(Initial Exchange Offering)による資金調達を実現するための契約を締結したことを発表した。この契約のもと、2022年夏までに実現を目指す。

IEOは、企業やプロジェクトがユーティリティトークンを活用した資金調達を行う仕組みであるICO(Initial Coin Offering)のひとつ。特徴としては、暗号資産取引所が主体となってプロジェクト審査およびトークンの販売を行う仕組みとなっており、資金を調達できるだけでなく、トークンを活用することでコミュニティの形成・強化がしやすいことが挙げられる。

実現の暁には、すでに100以上の個人や団体のトークンの発行・販売、企画・運用を行っているフィナンシェが「フィナンシェトークン」の発行を担い、コインチェックが2021年7月に提供を開始したIEOプラットフォーム「Coincheck IEO」において販売を担当する予定。コインチェックにとっては、今回のIEOは第2号案件となる。

今回のIEOにより発行されるフィナンシェトークンは、クラウドファンディングサービス「FiNANCiE」を利用して発行したクラブトークンやNFTを横串に活用するプラットフォームトークンとする計画だという。また同IEOにより、フィナンシェでは調達した資金の一部をFiNANCiEおよびNFT事業のさらなる拡大にあてる予定。

フィナンシェトークンは、記事執筆時点ではホワイトペーパーなど詳細は公開されていない。イーサリアム(Ethereum)ブロックチェーン上で発行され、FiNANCiEユーザーへのインセンティブ付与やエコシステム全体におけるガバナンス参加を促すという。FiNANCiEで発行されているコミュニティトークン同士をつなげ、長期的なトークン価値を向上させるためのプラットフォームトークンとして、FiNANCiEエコシステムにおける「ユーザー主体の運営」の実現を目指すそうだ。

フィナンシェは、2019年1月に設立された「10億人の挑戦を応援するクリエイターエコノミーの実現」をミッションに掲げている企業。ブロックチェーン技術を活用したNFT事業やFiNANCiEを展開しており、トークン(FTおよびNFT)の発行、企画・運用により新しい価値を生み出すトークンエコノミーの実現を目指している。現在は湘南ベルマーレやアビスパ福岡といったプロサッカークラブをはじめ100名以上の発行者(個人、クラブ、プロジェクト)のトークンの発行・販売・企画・運用を行っている。

中古の電動自転車を売買するオンラインマーケットプレイスを構築する仏Upway

フランスのスタートアップUpway(アップウェイ)をご紹介しよう。同社は電動自転車の中古マーケットプレイスを構築している。同スタートアップは、Sequoia CapitalとGlobal Founders Capitalから500万ユーロ(約6億4000万円)のシードラウンド資金を調達したばかりだ。

クルマのオンラインマーケットプレイスの世界に詳しい人なら、Upwayのやり方にも馴染みがあるだろう。同社は、消費者と企業の両方から電動自転車を買い取っている。買い取った電動自転車はチェックして、不具合がある場合には修理を行っている。その後、Upwayは自社のウェブサイトにそれらの電動自転車を掲載し、販売している。

現在、同社はパリ近郊のジュヌヴィリエに倉庫を構えている。5人の修理担当者のチームが、20種類のテストリストをもとに、届いた自転車を1台ずつチェックしている。Upwayは、ハンドルとペダルをフレームから切り離した状態の自転車を、段ボールで梱包して顧客に送る。

平均して、バイクは元の価格より20%から50%安くなる。Moustache(マスタッシュ)、VanMoof(バンムーフ)、Cowboy(カウボーイ)、Canyon(キャニオン)など、電動自転車業界ではおなじみのブランドの製品が多数揃っている。すべての電動自転車には1年間の保証がついている。

なぜ普通の自転車ではなく、電動自転車を扱うのだろうか。共同創業者でCEOのToussaint Wattinne(トゥーサン・ワッティンヌ)氏は、電動自転車は自転車業界で最も成長している分野だという。2020年、フランスでは50万台の電動自転車が販売されたが、これは前年に比べて30%の増加だった。とはいえ、サプライチェーンの問題もあり、すぐに新しい電動自転車を見つけて購入するのは簡単ではない。

さらに、個人が中古の電動自転車を購入する際には、モーターがまだ問題なく動くかどうかわからず、手に入れたときにバッテリーを交換しなければならないかどうかもわからないので、抵抗が大きくなる。そしてもちろん、電動自転車は高価な商品なので、購入に面倒を伴いたくないのだ。

Upwayは自転車を直接購入しているので、電動自転車の在庫を実際に保有していることになる。資本集約的なスタートアップになりそうだ。しかし、中古車市場の分野で成功している企業はたくさんある。Upwayも同じ道を辿り、電動自転車業界とともに成長していくことができるだろう。

画像クレジット:Upway

画像クレジット:Upway

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(文: Romain Dillet、翻訳:sako)

コワーキングとEdTechのTalent GardenがHyper Islandを買収してオンラインコースをグローバルに拡大

Talent Gardenはイタリア、オーストリア、ルーマニアなどにあるコワーキングスペースと、オンラインとオフラインのデジタル学習コースを組み合わせたビジネスモデルで「ヨーロッパにおけるWeWorkの総会」といえるような存在だ。シリーズBの企業で(直近のラウンドは7350万ドル、約83億5000万円)、500 StartupsやSocial Capitalなどから資金を調達した。このTalent Gardenが、ヨーロッパで「デジタルハーバード大学」として知られるHyper Islandの株式の過半数(54%)を取得して、さらに前進しようとしている。

Hyper Islandは90年代に成長し始めたUXとゲームデザインを学ぶ優れたスクールとして登場して以来、テック最大手に採用される人材を多数輩出し続けている。

Talent GardenとHyper Islandが手を組めば、両社のオンラインコース(そしてオフラインコースが開催される場合にはオフラインも)が今後成長していくであろうことは疑いない。

例えばTalent Gardenはデジタルに関するビジネストレーニングのコースを多数提供し、毎年2万人ほどの学生が参加している。同様にHyper Islandはこれまでオンライン教育で主に知られてきたが、Talent Gardenと組むことでさらに広がっていくはずだ。Talent Gardenにもヨーロッパ各地に20カ所のキャンパスがある。

Talent Gardenの共同創業者であるRasa Strumskyte(ラサ・ストラムスキット)氏は筆者に対し「当社のコースのうち60%以上はオンラインで、それ以外はキャンパスで実施しています。今後は特にオンラインに力を入れて、既存のコースを新たなマーケットに拡大し新しいコースも作っていきます」と語った。

今後数年間でデジタルに関わる仕事には9700万人ほどの新たな雇用が生まれると推計され、世界のデジタル教育市場は2020年の84億ドル(約9500億円)から2025年には332億ドル(約3兆7700億円)へとコロナ禍以降で最も急速に成長する分野の1つと見られる。

Hyper Islandは英国、シンガポール、米国、ブラジルに実拠点をもち、ヨーロッパ、アジア太平洋、南米、北米と世界的に事業を展開している。

Talent GardenとHyper Islandの両社は「就職率が98%、4500以上のスタートアップとデジタルイノベーターが教員やコミュニティのメンバーとして関わる」ことで、2022年の売上は5000万ユーロ(約64億円)、1年間で教育する社会人が2万人、社会に送り出す学生が5000人と予測している。

Talent Gardenの共同創業者で代表取締役社長のDavide Dattoli(ダビデ・ダットーリ)氏は次のように述べた。「Hyper Islandとの協力で我々のプロジェクトは飛躍します。重要性が高いのに細分化されているこの市場で、これまで以上にアグリゲーターとして、またゲームチェンジャーとしての役割を果たしていきます。デジタルトランジションの時代に生きる現在と未来の社会人に貢献できるように、トレーニングを提供します」。

Talent GardenのCEOであるIrene Boni(アイリーン・ボニー)氏は次のように述べた。「Talent Gardenにはヨーロッパのデジタル教育市場において成長の大きなチャンスがあります。デジタル化のメリットを活用したい個人や大企業にトレーニングを提供します。これはテクノロジーの問題ではありますが、何より人的資本の上でも重要です」。

ボニー氏はMcKinseyに勤務した後、ユニコーンのYOOX Net-a-Porter(現在はラグジュアリーブランドのRichemontグループ傘下)で副本部長を10年間務め、その後Talent Gardenに加わった。

Hyper Islandの社長であるFredrik Mansson(フレドリック・マンソン)氏は「Talent Gardenとの協力によってリソースが大幅に増え、企業としての成長と世界に及ぼす影響の両方を加速していきます」と述べた。

画像クレジット:Talent Gardenのチーム

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(文:Mike Butcher、翻訳:Kaori Koyama)

気候変動に配慮する企業の水に関するリスクと持続可能なソリューションを追跡するWaterplan

新鮮な水は、気候変動の影響をますます受けている多くの資源の1つである。そしてその影響は、この豊富だが限りある天然資源に依存している企業にも及んでいる。シードラウンドで260万ドル(約2億9000万円)を調達したWaterplan(ウォータープラン)は、企業の水使用が地域の環境にどのような影響を与えるかということだけではなく、避けられないと思われる危機が到来したときに事態を沈ませておくのに役立つ緩和策を分析し、追跡することを目指している。

Jose Galindo(ホセ・ガリンド)氏とNicolas Wertheimer(ニコラス・ヴェルトハイマー)氏、そしてその同僚であるMatias Comercio(マティアス・コメルシオ)氏とOlivia Cesio(オリビア・セシオ)氏は、環境セクターとその周辺で長年働いた後にWaterplanを設立した。同氏らは水にまつわる現状を意識していた。二酸化炭素排出に関する多くの行動、データ、計画が存在するにもかかわらず、水のリスクに関しては、それが脅威として認識されるに至っていないため、比較的ほとんど行われていない。4人は会社を立ち上げ、Y Combinator(Yコンビネーター)の2021年夏のコホートに参加した。

「より多くの企業が水の安全性や水に関するその他の考慮すべき事柄を開示し、行動していますが、水のリスクの定量化とメディエーションを担うSaaSプラットフォームが必要です」とガリンド氏は語る。「企業は事後対応型のアプローチを取ってきましたが、そうした(気候関連の)弊害が頻繁に起こるようになってきているため、事態の予測と先手を打つ行動のオポチュニティが生じています。気候変動はすでにこの分野に及んでおり、今後さらに加速していくでしょう」。

もちろん、これは「水道水を出しっぱなしにしない」というような単純なアドバイスではなく、雨押さえの補充や主要な自治体の工事など、産業規模の取り組みである。Waterplanはまず衛星画像からデータを抽出する。そして林冠、水域、その他の重要な指標を、客観的な測定値としてさまざまなコンテクストとともに示す。何年にもわたる画像と分析の結果から立証された明確な傾向に基づくものだ。この測定値は、これらの資源を綿密に監視する水や環境関連の当局による直接測定値と組み合わされる。

一例を挙げると、コーヒー豆を加工する工場では、近くの川の水を1時間に1万ガロン(約3万8000リットル)も使うことがある。工場の影響を示す過去のデータと将来的なデータを分析することで、5~10年後には持続可能な比率ではなくなり、下流で問題が発生することが示されるかもしれない。これらの問題により、会社はその時期に4000万ドル(約45億円)の損失を被ることにもなり得る。しかし、1000万ドル(約11億円)ほどのコストで、森林を再生して樹木の樹冠を拡大する現地の取り組みを倍増させれば、保水力が高まり浸食が緩やかになっていく。水の利用可能性が正味で増加し、4000万ドルのリスクを回避することにつながるだろう。

実際のレポートは明らかにより詳細で、特定の場所や企業に高度に特化している。それらがどのような規模で運用されているのか、どのような種類のデータを追跡しているのかを以下に示したい。

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  2. waterplan-2

  3. waterplan-3

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この種の分析とアドバイスは決して前例がないわけではないが、環境コンサルタントが年に1回か数回(もしあれば)行うようなものである。Waterplanのアプローチは、これを可能な限り自動化し、ビッグデータの問題として扱う。そこにはさまざまな因子が含まれており、リスクや緩和戦略のような要素が対極から浮かび上がってくる。もちろん、これはそれほど単純なことではないが、市場と自然現象の両方の変化が加速している現状では、より迅速に、よりターゲットを絞った実行可能な方法でこれを行う必要がある、と創業者たちは説明する。

「事前対応型よりも事後対応型の方がコストがかかります」とヴェルトハイマー氏。「私たちはこれを意識的な取り組みにする必要があります」。

ガリンド氏は、地元の水供給、復旧作業、その他の要因に関するデータの多くが断片化しており、互換性がないことを強調した。これらの異種の情報源を調整し、そのデータを統合されたマップと予測にまとめるには、多くの作業が必要となる。

ステージ上でイスに座る創業者たち。左からホセ・ガリンド氏、ニコラス・ヴェルトハイマー氏、マティアス・コメルシオ氏、オリビア・セシオ氏(画像クレジット:Waterplan)

「企業にとって重要なのは、さまざまな気候シナリオや場所で何が起きるのかを理解し、継続的にアップデートされた詳細な方法でそれを確認できることです」とガリンド氏は語っている。「現時点では水は安くて豊富ですが、常にそうであるとは限りません。2030年には需要と供給の間に30%のギャップが生じるでしょう。今後10年の間に圧力が生まれると考えています」。

より優れたデータを持ち、積極的に対策を講じてきた実績のある企業は、資源が減少したり、ウォータークレジットのようなものをめぐる競争が激化したりする中で、より有利な立場に立つことになる。現在でも、カーボンクレジットをはじめとする資源や投資が深刻に不足しており、何億ドル(何百億円)もの資金を投じたいと考える企業でさえ、そのオポチュニティを得られていない可能性がある(カーボン先物はこの問題を解決するポテンシャルがあり、清水などの資源についても同様の市場が出現することも考えられる)。

今後10年で気候監視エコシステムの大部分を占めることになるかもしれない分野に早期に参入することは、Waterplanの最初の投資家たち(Y Combinatorに続く)にかなり良い賭けだと判断されたようだ。260万ドルのラウンドをリードしたのはGiant Venturesで、参加者のリストには次のような著名な投資家が名を連ねている。Sir Richard Branson(サー・リチャード・ブランソン)氏一家、Monzo(モンゾ)の創業者Tom Blomfield(トム・ブロムフィールド)氏、Unity(ユニティ)の創業者David Helgason(デイビッド・ヘルガソン)氏とNicholas Francis(ニコラス・フランシス)氏、NFLのレジェンドJoe Montana(ジョー・モンタナ)氏、Microsoft(マイクロソフト)の元グローバルウォータープログラムマネージャーPaul Fleming(ポール・フレミング)氏、MCJ collective(MCJコレクティブ )、Climate Capital(クライメート・キャピタル)、Newtopia(ニュートピア)、Jetstream(ジェットストリーム)、Mixpanel(ミックスパネル)の創業者Tim Treffen(ティム・トレフェン)氏。

ヴェルトハイマー氏とガリンド氏によると、当面の計画は、主に開発を強化することに置かれているという。プラットフォームを構築するという複雑な作業を処理して、さまざまな業界や環境が望むような洞察を生み出し続けるためには、エンジニアや水文学者が必要だ。

同社が作成したデータや分析は政府やNGOに歓迎される可能性が高いが、変化をもたらす可能性が最も高いステークホルダー(そして、いわなければならないが、そのサービスのためにお金を払っている)は、リスクの削減や現地での地位の向上を目指す民間企業である。ただし創業者たち(以前は水へのアクセスやNGOとの関わりを強調していた)は、ひとたび牽引力が発揮され、プロダクトや手法が確立されれば、もっと広く利用できるようにしたいと考えている。

画像クレジット:dan tarradellas / Getty Images

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

オンライン学習最大手「Chegg」が語学学習スタートアップ「Busuu」を約496億円で買収

NYSE(ニューヨーク証券取引所)に上場されている教育メディアラーニングプラットフォームのChegg(チェグ)は、2008年にヨーロッパで設立されたオンライン学習のスタートアップBusuu(ブスー)を約4億3600万ドル(約495億9000万円)の現金取引で買収した。

Busuuのイグジットまでの調達総額はわずか1610万ドル(約18億3000万円)で、これはヨーロッパの基準でも少額であり、これまでに160か国以上で1億2000万人以上の生徒に届けたビジネスを構築したファウンダーらの強い気概を表している。Busuuは、50万人の有償サブスクライバーに12の言語でコースを提供している。

Busuuの最新ラウンドは2020年5月27日で、GP Bullhoundおよび超富裕層から200万ドル(約2億3000万円)を調達した。それ以前の出資者には、Harold Primat、McGraw-Hill Education、PROfounders Capital、Martin Varsavsky(マーティン・バルサフスキー)およびJohann “Hansi” Hansmann(ヨハン・”ハンシ”・ハンスマン)らがいる(CrunchBaseによる)。

Cheggのプレジデント兼CEOであるDan Rosensweig(ダン・ローゼンスワイグ)氏は次のように語った。「Busuuが加わることで、Cheggは自身のビジネスを拡大するとともに、既存ユーザーにすばらしい付加価値を与えられるまたとない機会を得ました。これによって国際市場へさらに進出し、Busuuの米国市場での成長を加速することが可能になります。Busuuのチームとは長年のつきあいがあり、カルチャー的にも非常に一致しています。彼らには本格的語学学習者向けのすばらしい学習サービスを構築した実績があり、Cheggの仲間に加わってもらうことを大変喜んでいます」。

Cheggは、Busuuの2021年の通年売上を約4500万ドル(約51億2000万円)、対前年比20%増と予測している。現在170億ドル(約1兆9341億2000万円)のデジタル言語学習市場は、今後5年間で3倍に増えると予想されている、とCheggの声明に書かれている。

Busuuの共同ファウンダーであるベルンハルト・ニーズナー氏とエイドリアン・ヒッティ氏

2008年にBernhard Niesner(ベルンハルト・ニーズナー)氏とAdrian Hilti(エイドリアン・ヒッティ)氏が設立したBusuuは、英国・ロンドンおよびスペイン・マドリードにオフィスを構え、精緻化された語学学習モデルとプラットフォームのあらゆる面の改善を繰り返してきたことで、メリーランド大学の学者による研究で、Busuuのユーザーは2カ月間にわずか13時間の学習によって大学の1学期(通常90~105時間の授業)分の成果を上げたことが示されるまでになった。同社は無料および有料のサブスクリプション・サービスを1カ月、1年、および2年のコースで提供している。

Busuuは個人利用だけでなく、企業の語学訓練にも使用されている。2020年同社は、Verblingを買収した後に、ライブ言語指導サービスを加えた。

BusuuのCEO・共同ファウンダーであるベルンハルト・ニーズナー氏は次のように語った。「世界をリードするEdTech企業で、学生を第一に考えるCheggファミリーに加わることは大変光栄であり、楽しみです。このパートナーシップによって、Cheggのとてつもなく広いリーチを生かし、特に米国で当社の拡大を加速する機会が得られます。言語によって世界の全員に力を与えることが私たちのビジョンであり、当社とCheggとの新たな関係によってこのゴールがさらに早く達成されると信じています」。

画像クレジット:Busuu team London HQ

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nob Takahashi / facebook