UberはAPIを利用するアプリからの顧客増殖をねらう、デベロッパへの謝礼は5ドル

screen-shot-2015-06-30-at-9-17-52-am

Uberは同社のサービスを呼び出す”Request A Ride”ボタンを、すべてのモバイルアプリに載せたいと願っている。同社はこのほど、デベロッパに対する人参として、ユーザの登録一人につき5ドルの報奨金を提供することにした。地図アプリやレストラン、旅行、ナイトライフ(バーなど)関連のアプリなら、デベロッパにとってかなりの収入になるかもしれない。

デベロッパがUberのAPIを使うためには、ここで登録する。支払は総額が250ドルに達したら行われ、5000ドルを上限とする*。5000ドルを超えてさらに稼ぎたいデベロッパは、Uberのパートナー事業に加わる必要がある。APIからUberを利用するユーザは、最初の乗車(20ドルまで)が無料になる。〔*: 5000ドルを超えたらUberのパートナーになれる、とあるが、意味がよく分からない。〕

UberがAPIをローンチしたのは昨年の後半だが、利用するデベロッパは少なかった。ローンチ時のパートナーは、OpenTableやStarbucks、TripAdvisor、United Airlines. Sinceなどで、その後Foursquare、Hinge、Microsoft、そしてPebbleが加わった。

Uberのユーザの一人あたりの売上は長期的にはかなりの額になるだろうし、類似サービスとの競合もあるから、顧客獲得にこうやって金を使っても長い目で見れば得になる。料金の20%がUberの取り分だから、デベロッパへの5ドルの報奨金はたぶん最初の取り分額に相当するだろう(平均の料金が25ドルと想定して)。

でもUberはこれまで数十億ドルを獲得し、世界でもっとも資金が潤沢なスタートアップのひとつだから、顧客獲得のためのそれぐらいの初期投資は平気だ。むしろ今日のニュースは、その資金を企業の成長のためにつぎ込んでいく姿勢の証だ。相乗りサービスのUberPoolを始めたのも、実質的な低料金化で新規顧客獲得の幅を広げるためだ。

同社は、Lyftなどの類似サービスとの競合があるだけでなく、保有車両を現代化してUberの人気な部分を真似ようとしている既存のタクシー会社とも競り合っている。

この、各種のモバイルアプリが実質Uberアプリにもなる、という孫悟空的な分身増殖ワザが成功したら、もちろん合衆国以外の市場でも当然やり始めるだろう。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

ビールの冷蔵ショーケースのロックにGoogleの音声認識APIを仕込む…あるフレーズを言わないと開かない

 

一部の読者は、ぼくがカナダ出身であることを知っているだろう。その、多くの読者の北の方にある国が意識に上(のぼ)るのは、誰かがラッパーのDrakeやアイドルJustin Bieberの名前を挙げたときだけだろう。その我が国の建国記念日は7月1日、すなわち来週となっておりまして、いくつかのブランドが商機と狙っている。‘カナダビール’のメーカーMolsonもその一つで、でもその手口は、Googleのソフトウェアの力を借りたテクっぽいしろものだ。

その主役はGoogleの音声認識(Speech Recognition)APIで、ほかの通訳サービスでもよいと思うが、なにしろそのAPIは、冷蔵庫に最大で40種類の言語を認識させることができる。その究極の目標は、Molsonの長年のキャッチフレーズである”I am Canadian”を聴き取ることだ。

今回冷蔵庫が認識するのは、40か国語ではなくて6か国語だが、そのフレーズを聴き取った冷蔵庫はロックを外し、お客はMolson Canadianの缶を取り出せるようになる。その、言葉を聴き取る冷蔵庫を作ったのはデジタルスタジオThinkingBoxで、来週(==来月)トロントで行われるPan Amのゲームで初お目見えするらしい。

もちろんこれは、すみからすみまで、マーケティングのためのトリックだが、しかし良くできている。ぼくでさえ、ビデオを見ていて愛国心に駆られてしまった。ただし、Molson Canadianは今でもひどい味のビールだけどね。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

MashapeがAPIアナリティクスサービスのAPIを一般公開…デベロッパやDevOpsが自由に使える

screenshot-2015-06-23-at-17-53-29

APIのマーケットプレースMashape(世界最大を自称)が今日(米国時間6/24)、そのアナリティクスサービスのAPIを一般公開する、と発表した

同社は13000あまりのAPIをサーブしているが、それらをモニタするためのアナリティクスサービスも同社が作って提供してきた。今回はこのサービスのAPIをデベロッパやDevOpsたちに提供し、MashapeがホストしていないAPIでもそのパフォーマンスを理解できるようにした。

MashapeのCEO Augusto Mariettiによると、APIの公開を決めたのは数か月前だ。つまり同社のAPIアナリティクスサービスの機能には、普遍的な価値がある、と気づいたのだ。アナリティクスは同社の比較的新しいサービスだが、すでにMashapeのマーケットプレースの重要な機能だ。“でもそれのAPIがあれば、必ずしもマーケットプレースは要らない。独立のAPIサービスになったことによって、誰もが自分のところのAPIとマイクロサービスアーキテクチャを(Mashapeを経由せず)モニタできる”。

png;base6462bbcc0550cbf445

たとえばMashape AnalyticsのAPIを使うと、どのAPIやエンドポイントがもっとも頻繁に利用されているか分かる。内部クライアントと外部クライアントの、内わけもわかる。それらのパフォーマンスも分かる。まあそれは、APIのためのGoogle Analyticsだね、と Mariettiは言う。得られるAPIパフォーマンスデータは、リアルタイムだ。でも不具合が生じたら、個々のAPI呼び出しをリプレイして問題をデバッグできる。

Mashapeによると、いまどきの企業は自分たちのアプリケーションにマイクロサービスアーキテクチャを採用し始めているので、デベロッパが扱い、そしてモニタするAPIの数も必然的に増加する。New RelicやSplunkのような既存のツールは主にサーバのモニタリングツールだから、APIのモニタリングには使えない。その大きなギャップを、Mashape Analyticsのような専門的ツールが填めるのだ。

Mashape Analyticsを使いはじめるためには、まずエージェントをダウンロードする。するとそれが、トラフィックのモニタを開始する。

料金はNeww Relicなどと同じく時間制だ。24時間までなら無料、2週間のデータ保持なら月額149ドル、90日なら月額495ドルだ。

png;base648c22d8e204686e97

 

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

注釈サービスGeniusがAPIを公開、最初のパートナーはInstapaper

genius-logo

オンラインの注釈プラットホーム(annotation platform)Genius〔元Rap Genius〕は、ラップの歌詞のページに書き込みができるサービスとしてスタートし、やがてWeb上のどんなページでもサポートするようになった。同社は今ではサービスのAPIを…蓄積した注釈や音楽メタデータなどとともに…公開しているので、外部のデベロッパが自分のアプリケーションにその機能を実装できる。Betaworksは早速そのAPIのパートナーになり、InstapaperにGeniusを統合してその新しい機能Notesを実装し、それを昨日ローンチした

InstapaperのNotes機能では、ユーザがネット上の記事から短いテキストをセレクトして、そこにコメントをつけられる。それらの注釈はデフォルトではプライベートだが、共有を指定すればTwitterのtextshotで共有できる。また、FacebookやEvernote、Tumblrなどそのほかのアプリケーションでも共有できる。

InstapapeのNotes機能でユーザが注釈を作成すると、それをGeniusのAPIがGeniusにポストする。ポストそのものは、FacebookやTwitterなどにポストする場合と同じだ。

unnamed (1)

このAPIには投票機能があるので、読者の投票により注釈が”Genius IQ“と呼ばれる得点を稼げる。それは、Genius上の一種の評判システムで、いろんなアクティビティにポイントが付与される。

しかしGeniusのルーツが音楽の注釈なので、その無料で使えるAPIには音楽系のパブリッシャーにとって便利な機能がいくつかある。またデベロッパは、これまでGenius.comに蓄積された何百万もの注釈にアクセスしたり、あるいはGeniusの音楽メタデータのライブラリを検索してアーチストやアルバムや曲について知ることができる。

GeniusのAPIについて詳しく知りたい方は、どうぞこちらへ

Geniusは昔から目立ちたがり屋で、本誌のTechCrunch Disruptのステージでも必ずおふざけをやらかす。協同ファウンダのMahbod Moghadamはインタビューの席で、Mark ZuckerbergやWarren Buffetなどの大物について、(受けねらいで)不謹慎なコメントを述べたこともある。また同社はブロガーたちにインセンティブを与えて記事中にGeniusのリンクをたくさん書かせ、Googleの検索に対するいかがわしいSEO行為に及んだ。Moghadamはその後、カリフォルニアの銃乱射事件の犯人の声明文へのGeniusの注釈で、女性差別的なことを書き、辞任に追い込まれた

しかしGeniusのサイトそのものは、ほかの、スパム広告ばかり多い歌詞サイトに比べると、歌詞の読むためのリソースとしては優れている。またGeniusは、企業のプレスリリースに対する注釈で、煙幕のように真意の見えにくい企業語を、ずばり大衆の言葉に翻訳することが上手だ。たとえばここでは、Verizonによる(本誌の親会社)AOLの買収の一件を説明している。

今Genius.comの月間ビジター数は3000万で、毎月10万あまりの注釈が作られている。Betaworks/Instapaperに続くそのほかのAPIパートナーは、今後数週間以内に発表されるそうだ。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Googleがオンライン学習のUdacityとパートナーしてAndroid開発のナノ学位を立ち上げ、エジプト語へのローカライズも

uda

今日(米国時間5/28)サンフランシスコで行われたデベロッパカンファレンスI/OでGoogleは、Udacity とパートナーして6コースから成るAndroid開発のナノ学位日本語参考記事)をローンチする、と発表した。

これはビギナーのためのコースではなく、まだAndroid未経験のプロのデベロッパにAndroidモバイルアプリの“正しい書き方”を教える。コースが終了したらGoogleが彼/彼女を実際に雇うこともありえるほど、本格的な特訓教育を行う。

Udacityのそのほかの学位プログラムと同じく、ビデオ教材の視聴は無料だが、卒業証書や教育助手へのアクセスが必要なら、今回のコースでは月額200ドルの有料になる。

Udacityの協同ファウンダでCEOのSebastian Thrunによると、受講者は学位を得るために、6つのコースといくつかのプロジェクトを終了しなければならない。たとえばあるコースでは、アプリの中でSpotifyのAPIを使いなさい、と求められる。Udacityのそのほかの学習プログラムと同様に、実践的知識の獲得が最大の目的で、したがってコースよりもプロジェクトの意義がとても重要だ。

Thrunは曰く、“ねらいは、受講者が実践を通じて、Androidプログラミングに関して完全な自信を持てる状態になること。多項選択(三択四択〜〜)のテストなどは、やらない。いわばそれは、Googleが同社のデベロッパに持っていてもらいたいと願っている知識や技術をすべて叩き込む、というナノ学位コースだ”。

学位取得までの所要(許容)時間は6〜9か月、開始日は決まっているが、途中のペースは受講者が自由に決めてよい。

Google Play Services

Googleは、このプロジェクトに本気であることを示すために、年末に50名の学生を本社に招待して三日間のサミットを行う。その内容は、ハッカソン、雇用担当者とのミーティングなどだ。要するにGoogleは、実際に何名か雇うぞ、という姿勢を見せたいのだ。

さらにGoogleは、エジプト政府とパートナーしてこの学位の6つのコースを現代標準アラビア語(Modern Standard Arabic)にローカライズする。Udacityとしても、ここまでやるのはこれが初めてで、ビデオにアラビア語で字幕を入れるのではなくて、コースの全コンテンツをアラビア語化するのだ。

Googleはエジプトの学生2000名に奨学金を提供し、就職説明会や各種の集会を行う。Thrunによるとこれは、Udacityにとってもアラビア語圏に進出していくための好機であり、その地域に良質な教育を持ち込むと同時に、良質な就職機会も開拓していきたい、という。そして、“あそこらの戦争の数を減らしたいね”、とThrunは語る。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Chromecastが自動再生、キューイング、第二画面、マルチプレーヤーゲームなどを新たにサポート…革命的なユーザインタフェイスへ

driver-speedboat-paradise

GoogleのChromecastは、この検索の巨人を秘かに本格的なホームエンタテイメント企業に変えてしまいそうな、かわいらしい外見にパワーを秘めたメディアエンジンだ。このおちびエンジンに対応しているアプリケーション(もっとも典型的にはYouTube)のユーザが画面上の小さなボタンを押すと、コンテンツをテレビの大画面で楽しめる。この“Castボタン”はこれまで、合衆国だけでも15億回押された。そしてChromecastは、Googleのほかの船も浮上させている…たとえばYouTubeでは、Chromecastユーザの総視聴時間が従来より45%増加した。

Chromecastやその対応デバイス(Nexus Player、Nvidia Shieldなど)は、今年のI/Oカンファレンスで発表されるいくつかの新しい機能により、さらにパワーアップする。一言で言うと、これまでの単純なストリーミングマシンから、本格的なメディアデバイスに変身し、Chromecastとその操作デバイス(スマホなど)は、近未来のホームシアターやメディアルームの基本装備になる。Chromecast向けの開発をやっているデベロッパや、一般ユーザは、期待をふくらませて待つ価値があるだろう。

オートプレイとキューイング

ストリーミングTVがふつうのTVらしくなるためには、長時間の連続視聴が可能でないといけない。たとえばNetflixのようなWebアプリケーションでは、とくにユーザが操作しなくても複数のコンテンツを次々と‘上映’することができる。今度からChromecastでも、それができる、しかも、どんなコンテンツでも。

これをデベロッパのボキャブラリで言うと、最初のビデオが再生されているときに次のビデオをバッファリングしてキューを作り、一つのコンテンツが終るたびに次のコンテンストをユーザが指定する、という手間をなくす。しかもユーザはキューをコントロールして並び順を変えたり、新しいコンテンツを途中に入れたりもできる。これだけ高度なキューイングは、今のNetflixでもできませぬ。

今このAPIを導入しているアプリケーションは、NBA Game TimeとRed Bull TVぐらいだが、ほかのメディアアプリケーションも視聴者を長時間釘付けにするために当然導入するだろう。

ゲームマネージャAPI(マルチデバイス/マルチプレーヤーを簡単に)

複数のユーザが複数のデバイスを使ってChromecast対応のゲームを楽しめることは、元々この製品の大きな売りの一つだったが、これまでは乗り気でないデベロッパが多かったため、各人のスマートフォンをコントローラにしてTVに映しだされるゲームをシェアする遊び方は、あまり盛り上がらなかった。

I_O_Rolocule

しかし今度からはGame Manager APIというものが導入されるので、デベロッパにとって仕事がすごく簡単になる。ゲームに参加するデバイスはiOS、Android、Chromecast対応デバイスなど何でもよく、デベロッパはそういうマルチプレーヤー体験を容易に作れる。ローンチタイトルとして提供されるCatch Phraseは、よくあるパーティーゲームだが、この機能の活用例としては好適だ。

“マルチデバイス/マルチプレーヤは機能は最初から好評だったけど、それをもっと、デベロッパにとって使いやすくしたい、と考えた”、Chromecast担当VP Rishi Chandraはこう語る。“今では、モバイルゲームのデベロッパのほぼ全員が、このユーザ体験を作り出そうとしている”。

そこでGoogleは、TV画面上で共有されるスコアボードなど、共通的な機能を管理できるようにし、また個々のプレーヤーとデバイスのレベルでの、正しいセッション管理ができるようにもした。こうしてついに、Game Manager APIが誕生した。

ぼくはいつも感じていたんだけど、モバイルゲームも一人プレイはもう古い、マルチデバイス/マルチプレーヤには、未開拓の大きな可能性がある。これまでは、開発の難度と、参加〜プレイの容易化単純化正確化がネックだった。でもこの二つの大きな難点を、このAPIは克服できる。

リモートディスプレイAPI(iOSとAndroid)

スクリーンの二重化(デュアルスクリーン…ゲーム画面はTV、コントローラ画面はスマホ)はもちろんゲームにとって大きな意義があるが、Chromecastおよび対応ハードウェアを操作するAndroidとiOSアプリのための(ゲームに限らない)ジェネリックなAPI、Remote Display APIは、デュアルスクリーンの意義をさらに大きくする。これによりたとえば、TV(+Chromecast、〜対応デバイス)の画面にカーレースが映っていて、スマホ上では仮想ステアリングホイールを操作する、ということができる。あるいはTVの大画面を利用して写真の編集〜修正をやっていて、その細かい操作をスマホ上のUIでやる、といった“適材適所”の役割分担ができる。

i_o 2Pixlr

 

このAPIの初期のバージョンを実際に使っているのが、Autodesk Pixlrだが、これを見るとまさに、マルチディスプレイが新しいタイプのユーザインタフェイスだ、ってことを実感できる。Chromecastはこの、コンピュータシステムの歴史上かつてなかった、斬新な利用インタフェイスを支えるのだ。クリエイティブアプリ/アプリケーションはもとより、世界中のユーザ数がもっとも多い生産性アプリ/アプリケーションにとっても、これは朗報だ。それに、デスクトップアプリケーションがもっと多様な状況でモバイルにリプレースされるためにも、こんなインタフェイスがその基盤に必要なのだ。対象を見る画面は大(&高精細)、手による操作は手元の小型デバイス、という理想の仕事環境が、今後、社会の至るところで普及するだろう。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

迅速安全なAPI開発のためのプラットホームPostmanがシードで$1Mを調達…登録ユーザ数150万に

postman

問題解決への意欲から、強い企業が生まれる。それは、ファウンダを個人的に苦しめた問題であることも多い。APIを開発するチームのためのプラットホームを提供するPostmanも、それが良いスタートを切るためのバネだった。加えてこのインドのスタートアップは、Nexus Venture Partnersから100万ドルのシード資金を獲得した。

PostmanのCEOで協同ファウンダのAbhinav Asthanaは、Yahooでインターンをしていた2009年にAPIの開発を手伝い、その問題に遭遇した。

“APIの制作と、それを使った開発とのあいだを、行ったり来たりしなければならないんだ”、と彼は説明する。“その結果、APIも目的アプリケーションも、どちらも、ものすごく時間がかかる。時間がないから、APIのドキュメンテーションもきちんと整備できない”。

バンガロールのオフィスでAsthanaは、その後もこの問題に付きまとわれた、と語った。彼が2010年にパノラマ写真のアプリケーションTeleportMeを作ったとき、それはその後2012年に苦労してオープンソースのソリューションを開発するきっかけになったのだが、サイドプロジェクトの方がおもしろい、と感じる機会があった。そこで彼は2013年9月にPostmanをスタートし、元AdobeのエンジニアAnkit SobtiをCTOに迎えてAPI開発用プラットホームの構築に着手した。

それから18か月経った今、PostmanのサービスはChromeのアプリケーションとして可利用になり、一気に成長した。今、登録ユーザのデベロッパは150万に以上おり、そのうち80万あまりがアクティブユーザだ。ユーザは世界各国に分布し、合衆国ではBoxやMicrosoft、Ciscoなども利用している。

インドの社員9名の企業にしては悪くない結果だが、今回のシード資金で年内にサンフランシスコにオフィスを開く予定だ。社員増も、考えている。ただし、あまり大人数の会社にはしたくない、とAsthanaは言っている。

Postmanの中心的な機能は、APIのためのGoogle Docs、といったところだ。つまりチームが変化変更を追跡でき、コラボレーションで仕事ができる。それにより、破綻のない、コミュニケーションの齟齬のない、APIの開発ができる。

  1. postman-1.png

  2. postman-2.png

つまりPostman Syncは、API開発のワークフローの全体を一つの場所に置く。検索ができ、アプリ内のAPIをチェックすることもできるので、複数のサイトやドキュメンテーションを行ったり来たりして、どこで何がどう変更されているかなどを調べる必要がない。

またPostmanは、ユーザであるデベロッパにAPIのアップデートに関するニューズフィードを提供し、データをクラウドへシンクする。これによってバグをなくし、変更によってAPIが不具合になることを防ぐ。そして、サービスやアプリケーションが完全な管理下に置かれる。

“APIの扱い方を変えたいんだ”、とAsthanaは言う。“APIの最大の問題点は、仕様等がよく変わるけどそれがドキュメンテーションされないことだ。だから必然的に、アプリケーションはぶっ壊れる。うちは、そんな野蛮時代を終わらせたい”。

このサービスには無料のバージョンもあるが、Postman Syncの有料サービスはデベロッパ10名までが月額49ドルだ。Asthanaは、登録ユーザのせめて5%は有料会員にしたい、と願っている。また大企業などが利用するときは、料金の相談に応じる。

口コミで伸びてきたPostmanだが、今はSyncのコラボレーションプラットホームを改良中だ。それが終わったら、今度はネイティブアプリを作りたい、とAsthanaは言っている。モバイルアプリからの利用が多くなる、と見込めるならば、ということだが。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

YouTubeのライブストリームがHTML5のプレーヤーを提供、60fpsの再生をサポート

yt_advanced_warfare_5

昨年YouTubeは60fpsのビデオストリームを導入し、そして今日(米国時間5/21)同社は、そのなめらかな再生をライブのストリーミングでも提供することになった。

今日の発表でGoogleがいみじくも言っているように、これでゲームのストリーミングやライブのスポーツイベントなどがとくにエキサイティングになり、同社はすでにElgatoXSplitなどのゲーム実況中継サービスを60fpsでストリーミングしている。

YouTubeのライブストリーミングのAPIを使っているアプリケーションならどれでも、この機能を利用できる

YouTubeは60fpsでやってくるストリームを、自動的に720p60と1080p60のストリームにコード変換し、今のほとんどのブラウザとデバイスで見られるようにする。そのほかに対しては前と同じ30fpsのストリームを提供するが、それらに対しても数週間後には60fpsに対応できるようにする予定だ。

同時にYouTubeは、すでに通常のビデオでは対応していたHTML5向けの再生をライブストリームでもサポートする。それによって可変速度の再生がサポートされるので、たとえば数分ぶんバックしていたところから、倍速でリアルタイムに追いつく、といった見方ができるようになる。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

日本語版もあるTo-DoリストのWunderlistがAPIを公開―MicrosoftのSunrise、OneNote等と連携

2015-05-14-wunderlist

ドイツのベルリンに本拠を置くto-doアプリのWunderlist〔日本語版サイト〕は有料・無料合わせて1300万近いユーザーを獲得している。今日(米国時間5/13)、Wunderlistは有用性を大いに高める新機能、つまりAPIを公開した。これによってWunderlistに登録された「予定」を他のアプリから利用したり、書き換えたりする機能が実現できる。また他のアプリ内にWunderlistの予定のリマインダーを表示することもできる。

この1月からAPIのテストに協力していた SunriseSlackOneNoteHipChatZapierScanbotが、API利用のパートナー・アプリの第一陣となっている。

WunderlistはAPIのリリースを3月に予告したが、実は開発スケジュールはだいぶ遅れが出ていた。2013年にSequoia(ベルリンのスタートアップに投資したのはこれが最初だった)がリードしたラウンドで1900万ドルを調達した際に、私は「もうすぐAPIが出る」という説明を聞いた。

しかしAPI開発の前にチームはアプリ本体を完全にリニューアルする必要に迫られた(彼らのto-doリストはさぞや長いものになったことだろう)。新アプリは2014年7月にWunderlist 3として公開された

Wunderlistの開発元のスタートアップ、6Wunderkinderはこれまでに総額で2400万ドル弱を調達している。投資家はSequoiaの他にEarlybirdとAtomicoが加わっている。6Wunderkinderによれば、現在はさらなる資金調達の計画はないという(ただしいくつかの企業が買収に関心を示しているという)。

ある情報源は一歩進んで、「Microsoftが買収の最有力候補だ」と語った(APIパートナーのSunriseとOneNoteがMicrosoft傘下のアプリであるのは興味深い)。ただしWunderlistの広報担当者は私の取材に対してノーコメントだった。

M&Aの可能性は別にしても、高機能のAPIの実現は他のto-doアプリとの差別化に大いに貢献するだろう。

実際to-doアプリの数は多い。Zapier調べによれば、す 少なくとも40のto-doアプリが存在8するという。 Wunderlistは「この分野随一の急速な成長」を誇っているが、ライバルのAny.doにも1200万のユーザーがおり、その成長スピードはWunderlistに比べてさして劣らない

Wunderlistによれば、現在インテグレーション・センターを開発中だという。これはSlackなどがすでに提供しているが、ユーザーが指定したアプリの内容をWunderlistに自動的にインポートする機能のようだ(Wunderlistも昨年10月にはDropboxを相手にサードパーティーとの連携を実現している)。

APIもサードパーティーとの連携機能も利用は一切無料となるが、将来はなんらかの収益化が行われるかもしれない。とくにビジネス向けの有料プランを舞台として収益化が行われる可能性が高い。現在Pro版は月額4.99ドルで提供されている。Business版は利用する企業の規模によって料金が決定される。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

CiscoがコミュニケーションAPIのプロバイダ(Twilio的な)Tropoを買収

canstockphoto1697923

Ciscoといえば、誰もがネットワーキング機器のメーカーだと思う。でもCiscoには、WebExで知られるように、通信(コミュニケーション)やコラボレーションの側面もある。そのCiscoが今日(米国時間5/7)は、Tropoの買収を発表した。TropoはTwilioに似たコミュニケーションプラットホームで、デベロッパはここのAPIを使って、電話やメッセージングなどのコミュニケーション機能を自分のアプリケーションに加えることができる。

昨日(きのう)も書いたように、今のデベロッパはAPIを利用することによってアプリケーションにさまざまな機能を簡単迅速に加えられる。中でもデベロッパにいちばん人気があるのが、コミュニケーションの機能だ。先週行われたTechCrunch Disruptのハッカソンでも、何か重要なことが起きたらテキストメッセージを発信する、という機能をアプリケーションに持たせていたものが多かった。

コミュニケーションAPIのプロバイダとしてはTwilioがいちばんよく知られているが、でもTropoを買ったことによってCiscoは、20万あまりのデベロッパのコミュニティにアクセスできるようになる(数はCiscoの発表による)。Tropoはそのプロダクトをデベロッパに無料で提供しているが、アプリケーションのユーザがそのアプリケーションのコミュニケーション機能(==TropoのAPI)を使うたびに、課金が発生する(それをユーザでなくデベロッパが払うなら‘無料’とは言えない)。Ciscoがどういう料金モデルを採るのか、それはまだ明らかでない。

Tropo workflow chart.

Tropoのチームは、CiscoのCollaboration and Communications Groupに加わる。大企業の傘下に入ったチームとその熱心なコミュニティが、独立時代の活気を失わないようにすることが、Cisco側の重要な課題だろう。大が小を買うときには、いつもこの問題がつきまとう。

今年の初めにIBMがAlchemyAPIを買収したときも、同じ問題を抱えた。ITの巨大老舗企業に買収されたこの機械学習ツールにも、大きな熱心なコミュニティが形成されていたのだ。

CiscoはTropoのチームを歓迎するブログ記事の中で、この点に触れている: “両者が協力してCiscoのプラットホームを拡張し、現代的なAPIを通してサードパーティのエンドポイントやアプリケーションに奉仕し、Ciscoがデベロッパのコミュニティにより良い貢献をできるようにしていきたい”。もちろんこれは、今の事実ではなくて、あくまでも目標だ。

一方でTropoのユーザであるデベロッパたちは今後、Ciscoのより大きなエコシステムの一員になり、その多様なリソースにアクセスできるようになる。Ciscoのような成熟企業が小企業の買収を成功させるためには、この側面を強調することが重要だろう。

なお、買収の価額等は公表されていない。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

MashapeがそのAPI管理プラットホームKongをオープンソース化

screenshot-2015-04-27-at-14-41-33

APIを管理するプラットホームで、APIのマーケットプレースでもある、最近ますます人気のMashapeが今日(米国時間4/28)、そのサービスを動かしている中核的な技術の一つをオープンソースにした。それはMashapeのサービスを現在利用している15万名近くのデベロッパの、APIリクエストを扱うプラットホームKongだ。同社はKongについて、“高価でプロプライエタリなAPI管理システムに換えて、今からすぐにでも使いはじめることができる”、と説明している。

MashapeのCEOで協同ファウンダのAugusto Mariettiによると、KongはデベロッパがマイクロサービスやAPIを一点集中型で管理できるレイヤであり、Kongが提供する中央集権型ディスパッチャーによりデベロッパは自分のアプリケーションやAPIを動かしているマイクロサービスと対話できる。そのAPIはパブリックでもプライベートでもどちらでもよい。

MashapeはもちろんAPIの管理についてそのメインプロダクトの運用から多くを学んでいるので、Kongを使うデベロッパは、認証の管理、データの暗号化、ログ記録、使用量制限など、API管理システムにあるべき標準的な機能のすべてにアクセスできる。これらすべてが単純明快なRESTful APIで提供され、プラットホーム本体はNGINXプロキシサーバとApache Cassandraデータベース管理システムの上に構築されている。

なお、Kongはクラウドとオンプレミス、どちらのプラットホームでも利用でき、また複数のデータセンターを使う前提でもセットアップできる。

Kongのアーキテクチャは、暗号化、ログ記録、レート制限など主要機能をそれぞれプラグインとしてサポートしている。NGINXもすでにプラグインを提供しており、それによってKongを動かすNGINX Plusのインスタンスのモニタリングを行っている。Mariettiによると、プラグインシステムは近く拡張され、プライベート/パブリックなプラグインのサポートや、商用プラグインなどが導入される。将来的には、Mashapeがエンタプライズ向けの有料のKongのサポートを提供することも、ありえる。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Chrome 43(ベータ)は外付けMIDIキーボードをサポート、新たなパーミッションAPIも

chrome1

WebのAudio APIを使った楽器のWebアプリケーションを、すでにいくつかご存知だろう。しかし今度のChromeはWebのMIDI APIをサポートしているので、それらの楽器アプリケーションや音楽アプリケーションがMIDIにも対応していれば、MIDIキーボードをブラウザにつないで演奏ができる。

ブラウザがユーザのお気に入りのデジタルオーディオワークステーションに取って代わるとは思えないが、しかしこれによってデモなどが楽しくなるし、Audio APIを使ってみたくなるデベロッパも増えるだろう。

今度のChromeのもうひとつのビッグな機能は、Permissions APIだ。これまでは、ユーザの位置を必要とするサイトにアクセスすると、Chromeはただちに、ブラウザのウィンドウの上部に小さなリクエストを出した。それがどんな、何の、サイトかまだ分からない時点でも。しかし今度からは、デベロッパが(サイト〜Webアプリケーションが)パーミッションのステータスを調べたり見たりできる。Googleによると、“これによってサイト側のコンテキストの中でパーミッションを求めることができるので、ユーザ体験が改善される”、という。

Chrome 43はまだベータだが、デベロッパがレガシーなサイトでセキュアなHTTPSのリクエストとセキュアでない接続をミックスできる新しい方法が提供される。“変更できない大量のレガシーのWebコンテンツをHTTPS化するのは大仕事になる。リンク先がセキュアでないリソースだったら、いちいちウォーニングが出たりする”、とChromeのチームが今日(米国時間4/16)書いている。今度の新しい機能により、セキュアでないリクエストを、ダウンロードが始まる前に自動的にセキュアなリクエストにアップグレードする。ユーザは安全になるし、混成コンテンツに対するウォーニングも出なくなる。

今日のアップデートに関する詳しい説明(changelog)はここにある

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

アプリケーションのためのコミュニケーションAPI(電話、テキスト)を提供するTwilioからWebRTCによるビデオチャットが

5396124327_3777a6fd45_o

Twilioは長年、デベロッパが自分のアプリケーションに音声電話テキストメッセージングの機能を持たせるためのAPIを提供してきたが、今日(米国時間4/14)からはそのメニューにビデオチャットが加わる。その新しいTwilio VideoサービスはWebの標準規格の一環であるWebRTC — Twilioはそれをすでに一部のオーディオ機能に使っている — を使っていて、今はベータで利用できる。

TwilioのCEO Jeff Lawsonによると、ビデオはもうかなり前から、SkypeやFaceTimeのようなスタンドアロンの消費者アプリケーションや、ビデオ会議のようなビジネスツールの一部になっていた。今回のTwilioのねらいは、ビデオ通話機能をどんなアプリケーションにも容易に組み込めることだ。事故に遭って、保険会社に電話をしたい場合など、ビデオ機能があれば、口頭で説明するだけでなく、車の被害状況を映像で見せられる。

WebRTCはそもそも、そのためにあるものだが、これまでは主なブラウザがサポートしているだけで(Internet Explorerももうすぐ)、一般的なアプリケーションがスケーラブルにそして効率的に利用するためには、個々のデベロッパにいきなりWebRTCのプログラミングをやらせるというより、それを使いやすい形で提供するプラットホームが必要だった。またWebRTCだけではファイヤーウォールを通らないことが多いので、Twilioや、それと競合するTelefonicaのTokBoxのようなサービスがネットワーク横断の面倒を見る必要があった。

Twilio Videoでデベロッパは、最大4人までのビデオ電話と、無制限のビデオ接続、Twilioのデータセンターを介するレイテンシの低いリレー、そしてiOSとAndroid用のSDKにアクセスできる。

Lawsonによると、同社はこれまで2年がかりでビデオのサポートに取り組んできた。長くかかったのは、“P2Pのビデオ通話は速くないといけない”からだ。ただし、“グローバルに低レイテンシである必要はないけど”。チームは自社のオーディオの実装からWebRTCについて多くを学んだ。それは今年あたり、10億分の通話時間をサポートするだろう。

Twilio Videoの利用はデベロッパにとって、かなりやさしいはずだ。TwilioのAPIを過去に使ったことのある人なら、なおさら。ほんの数行のコードを書くだけでビデオを組み込めるし、ベータでは無料だ。料金は未定だが、Lawsonは、多くの他社のように分単位の課金にはしたくない、と言っている。

Twilio Videoを試してみたいデベロッパはここでベータに登録するとよい。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

トップVCのAccelがスタートアップを顧客とする新しいB2BとしてAPIビジネスに着目、早くもカンファレンスを

UberはUberだけではない。それはGoogle Mapsでもあるし、バックグラウンドチェッカーのCheckrでもあり、支払決済のBraintreeでもあり、Twilioのテキストメッセージングでもある。ビジネスの最良の構築方法は、すべてを自分でやらないことだ。成績上位の企業は近年ますます、いろんな専門企業のAPIを寄せ集めて自分のビジネスを組み立てている。彼らは車を再発明せず、むしろ既存の何かに、ユニークな付加価値をつけて売り出すのだ。

こういう、APIによるビルディングブロックがビッグビジネスに育ってくると、それ自体の課題もいろいろ生まれる。APIを多くの企業に使ってもらうには、どうしたらいいのか? デベロッパのエコシステムをどうやって支援するのか? APIの課金体系の適正な決め方は? 等々。

そこで、著名なVCのAccel Partnersが、そんな‘APIビジネス’に手を差し伸べることになった。同社は、BraintreeやSegment.ioやSlack、Checkrなどへの投資から、そのことを学んだ。でも、TwilioやHerokuなど、VCとしての投資の好機をのがした企業もある。同社は、もっと多くのAPIビジネスを惹きつけ、その知恵を共有するために、“APX”と名づけた新たな投資枠組みを創設した。APXとは、ビジネスのAPI化(API-ification of business)という意味だ。

Accel APXのパートナー、(左)Rich Wong、(右)Vas Natarjan

AccelのパートナーRich Wongはこう語る: “APXは現代のつるはしとシャベルだ”。ゴールドラッシュの時代にいちばん儲けたのは、採鉱ツール…削岩ハンマーと大型スコップ…を売る商人たちだったのだ。

パートナー仲間のVas Natarjanと共に、WongはAccelの資金をAPXにつぎ込むつもりだ。両者ともすでにこの分野に投資しているが、これからはこのファンドの公式のテーマになる。

まず3月19日に、Accelはサンフランシスコで初のAPXカンファレンスを開催する。APIを多用している消費者向けサービスの役員たちがゲストスピーカーとして招かれ、またAPIを提供している側のスタートアップも集まる。FacebookやAmazon、Dropbox、Twitterなどの大物と、URX、Checkr、Chainなどの若手企業が来席する。

ビルディングブロックを買うこと

デベロッパは、買うか作るか?という疑問をつねに抱えている。専門的機能を持ったAPIをお金を払って使った方が得か、それとも自前のリソースを投じて内製すべきか。でも、プロジェクトが複雑で、人材は争奪戦が激しいときは、内製は遅いしお金もかかりすぎる。

Natarjanはこう言う、“優秀なデベロッパを探(さが)しまくって、彼らに作ってもらう必要はない。必要な機能はすべて、信頼性の高いAPIにアウトソースすればよい。それはある種、人間の才能を売買するビジネスだ”。

Wongが続ける、“支払決済機能や、その記録分析機能、地図の機能などは、すでに良いAPIがいろいろあるから、自分で一から書くのは馬鹿げている”。


たとえばバックグラウンドチェックの場合は、InstacartやHomejoyのようなオンデマンドの共有経済スタートアップが、配達要員がネコババ(横領)をしない誠実な人間であることを確認しなければならない。これまで彼らは、自分で警察の監視対象リストや前科記録などを見て、人物をチェックしていた。

でも、彼らのビジネスは食料品の配達や家のお掃除であり、バックグラウンドチェックではない。そんなビジネスが、人をチェックするための部署を設けるのは、馬鹿げている。そこで、Natarjanは言う、“Checkrを利用すれば、その面倒な仕事が、APIを使うという単純な仕事へと、一挙に縮減する。どこかに、それをもっと上手にやってるところがあるのに、わざわざ自作する必要はない。これまでプロダクトの差別化努力に1%のリソースしか割けなかったのを、これからは100%割けるようになるのだ”。

売ることよりデベロッパの洗脳が重要

今は、APIのつぎはぎ細工のような企業、HotelTonightやUberやInstacartが栄えている時代だ。AccelのようなVCが、そんな部品に投資対象として目をつけるのも当然である。でもなぜ、AccelがAPXをやるのか?

“APIビジネスをスケールしようとすると、‘売る’という部分がハードルになってくる”、とWongは力説する。


そこでAccelは、次のような方面でAPIビジネスをアシストしたい、と考えている:

  • APIビジネスの市場開拓 デベロッパへの売り込みは、ITのトップをワインとディナーで接待することとは全然違う。“売り込むというよりむしろ宗教の伝道行為に近いね”、とNatarjanは言う。
  • デベロッパのエコシステムの活性化 Wongによると、“デベロッパは個性が強くて頭が良い”ので、“自分の方が良いものを作れる”と思いがちだ。だからとにかく、APIを試用してもらうことが重要。“理想的には、デベロッパの顧客がAPIビジネスに次に何が必要かを教える、という形が良い”、ということだ。すなわち顧客を巻き込めば、デベロッパも顧客の言うことには関心を持たざるをえない。
  • APIの料金体系 Natarjanはこう言う、”デベロッパは慢性的に、買うか作るかの決断を迫られている”。だから、“‘買う’を決断してもらうためには、長期的な料金体系がデベロッパにとって抵抗感のないものであることが重要だ”。
  • スケール(大規模化)とエンタプライズ対応 新しい顧客が一つ増えたな、と思っていたら、翌日からAPIビジネスの技術面の負荷が一挙に急増することもある。大きな負荷に対し、アップタイムを維持し続けるためには、雇用とオペレーション管理の戦略が重要だ。

APX Conferenceでは、Accelのポートフォリオに載ってる企業と載ってない企業の両方を対象に、上記の各トピックに関するセッションを行う。Bessemerなど他のVCもAPIビジネスへの投資に力を入れ始めているので、こんなカンファレンスで、競争に勝つことを意識することが重要だ。

“ここでは、スタートアップの心をつかむというよりも、デベロッパの心をつかむことが重要になる”、とWongは言う。“GoogleやMicrosoftやAmazonも、今では同じトレンドに着目しているから、彼らのようなモンスター企業も今、早期にコースを修正しようとしている(APIビジネスに本格的に取り組むこと)”。

Wongはこう語る: “4〜5年前までは、スタートアップにサービスを提供することが大きなビジネスになる、なんて誰も思わなかった。でも、今は違うね”。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa


良質なAPIドキュメンテーションと共にAPI利用者のためのデベロッパハブも提供するReadMe

Y Combinatorで孵化したReadMeは、デベロッパ向けにAPIを提供している企業が、APIの良質なドキュメンテーションを容易に作れるようにしてくれる。

今はほとんどのサービスがAPIを公開しているから、それらを利用すれば自分が作るアプリケーションやサービスに高度な機能を簡単に実装できる。でも、APIをデベロッパにぜひ使っていただきたい、と願っている企業から見ると、そこにはデベロッパたちのマインドシェアを奪い合う激しい競争がある。

デベロッパには、自分のところのマップを使ってもらいたいし、自分のところのレストランレビューデータベースを使ってほしい、というとき、どうしたらいいか? APIの機能と特長を、デベロッパの心に強く焼き付けるしかない。誰もが、自分が最高の好印象を持ったAPIを、使おうとするだろう。

でもStripeの速い成長が示しているように、機能が比較的安定している場合でも、その技術の利用や展開が果たして容易か、ということは、また別の問題だ。Stripeのドキュメンテーションには、その決済・支払APIの使い方がとても分かりやすく書かれている(良質なAPIドキュメンテーションのお手本、と言われている)。これだけやさしく書かれていれば、有料会員制を試してみたいと思っている個人のブロガーでも、あるいはもっとスケールして売上を増加させたいと願っているスタートアップでも、容易にその望み…決済支払機能…を実装できるだろう。

ReadMeはProduct Huntでとても好評だった。ローンチがやや遅れたにもかかわらず、大きな関心が集まった。同社は早くから利益を上げるようになり、また、オープンソースの人たちも注目した。オープンソースのチームは、このサービスを無料で使える。

ローンチしたばかりのクローズドソースのプロジェクトはReadMeの上にデベロッパハブを作って、そこからドキュメンテーションを提供できる。サービスの基盤にあるAPIキーの生成機能も便利だが、デベロッパにいちばん人気があるのは月額60ドルのサービスだ。ユーザはそこでカスタムドメインとHTML/CSSによるレイアウトを利用でき、またAPIエクスプローラーがドキュメンテーションの中からAPIの機能を試行/試用させてくれる。まさに、デベロッパハブ的な機能だ。

ReadMeの協同ファウンダGabriel Dillonによると、今では50万人のデベロッパが、さまざまなオープンソースプロジェクトや、Yammer、Getaround、IndiegogoなどのAPIのドキュメンテーションに、ReadMe上でアクセスしている。

スタートアップのデザインやエンジニアリングを指導しているGregory Kobergerによると、デベロッパが自分の目的に応じて最適のAPIを検索〜発見できるようになれば、ReadMeの魅力はさらに向上する。その点に関しては、最終的には、ユーザの閲覧履歴やGitHubのプロフィールなどからReadMe自身が判断して、お役に立ちそうなAPIをリコメンデーションしてくれるようになるだろう。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa


Dropbox For Businessから強力なエンタープライズ向けAPIリリースへ―Boxとの競争激化

Dropboxにはコンシューマー向けサービスのイメージが強く、またh本格的なエンタープライズ向けセキュリティー機能を欠くために企業向けのDropbox For Businessの普及が遅れていた。しかしTechCrunchが入手した情報によれば、Dropboxはエンタープライズ向けの強力なツールとなるDropbox For Business APIをリリースするという。これによってこの市場の状況は一変する可能性がある。

明日(米国時間12/3)、正式発表予定(ただしこのリークの影響で時間が前後する可能性あり)のDropbox For Business APIを用いると、エンタープライズ・ユーザーはDropboxにサードパーティーのセキュリティーやコンプライアンス・ツールを接続することができる。また独自のDropbox For Business (DfB)向けアプリを開発することも可能となる。Dropboxは Microsoft、Dell、IBMを始め多くのエンタープライズ向けツールのベンダーと提携し、ローンチの時点でDfB APIはそれらのベンダーの主要なプロダクトをサポートするという。

われわれの問い合わせに対してDropboxからの回答はまだない。

Dropboxはエンタープライズ向けに必要とされる機能をすべて自製するのは時間がかかりすぎると判断したようだ。特に、Boxは何年も前から広汎なエンプライズ向け機能を備えたプラットフォームを構築している。Dropboxは1年前にエンプライズ向けサービスとしてDropbox For Businessをリリースしたが、これまえはサードパーティーとの連携がなかった。今回のAPIでDropbox For Businessのユーザーはセキュリティーを始め、これまで欠けていた機能をすばやく補えることになった。フル機能のエンタープライズ向けクラウドサービスに乗り換えずにすむわけだ。大企業ユーザーのDropbox利用形態を一変させる賢明な動きといえるだろう。

なぜDropbox For BusinessにAPIが必要だったのか?

コンシューマー向けDropboxには、写真の同期から高度なファイル検索まで連携アプリがすでに10万種類もある。これらTDropboxの3億人のユーザーを大いに助けている。

しかしエンタープライズ向けサービスで必要とされる機能はコンシューマー向けとは大きく異る。そこでDropboxは企業向けに別個のサービスとしてDropbox For Business(DfB)を4月に一般公開した。 これにはIT部門が監査ログを共有し、誰が何を閲覧したかを正確にチェックし、一部のファイルにアクセス制限をかけたり、社員が辞めたりデバイスが盗難に遭ったりした場合、リモートでファイルを削除するなどの機能が含まれている。

DfBはSalesforce、Slack、Asana、Trello、Yahooそして最近ではMicrosoft Officeとも提携して、これらのエンタープライズ・サービスからDropboxのファイルに容易にアクセスできるようにしている。

しかし本格的なエンタープライズ・ツールとなるためには、こうした提携はまだまだ序の口に過ぎない。必要な機能は数多く、Dropboxがすべてを内製しようとすれば何年もかかる。そこでAPIを公開し、サードパーティーの力を借りることで大幅な時間短縮を図ったわけだ。

DfB APIの機能

Dropbox For Business APIはDfBと多数のサードパーティーのエンタープライズ・ツールを接続する。

  • データ漏えい防止 – 個人が特定可能な情報、給与情報のエクスポートを禁じる
  • データ・マイグレーション – ビッグデータのバックアップ、統合を助ける
  • 知的所有権管理 – 業界標準や当局の規則に基づいてデータを暗号化して管理する
  • 個人認証 – DfBへの社員のアクセスについてログインと認証管理を行う
  • 法務管理 – 後日の法的紛争の際に必要となるデータを証拠能力のある形で安全に保存する
  • セキュリティー情報及びイベント管理(Security Information And Event Management =SIEM)– 社員のアクティビティ監査ログ

DfBユーザーはまたAPIを利用してスクラッチで独自のアプリを開発することもできる。

われわれが入手した情報によると、Dropbox For Business APIはローンチ時点でMicrosoft Azure AD、Dell Data Protection、IBM WebSphere Cast Iron、Okta, Domo、Splunk、Meldium、nCrypted Cloud、Mover.io、SkySync、Ping Identity、CloudLock、Centrify、Sookasa、CirroSecureの各サービスをサポートするという。Dropboxは今後APIを拡充し、パートナーも拡大していくことになるだろう。

Dropbox For Businessの料金は、現行の一人あたり月15ドルから変更はない見込みだ。これはBoxのビジネス・ユーザー向け料金同額だ。

孤立した SAASは存在し得ない

今回のAPIのローンチで、DropboxはBoxの手強いライバルとなりそうだ。しかしBoxのCEO、Aaron Levieは私の取材に対して、「われわれがプラットフォームと言うときは単にエンタープライズ向けセキュリティーだけでなく、きわめて広汎な機能を意味している」と語り、エンタープライズの業務フローのサポートも重要な要素だと例を挙げた。Dropboxはこの面でもBoxに追いつく努力をしなければならないだろう。

しかしエンタープライズ向けクラウド・プラットフォームはまだスタートしたばかりの市場だ。ITのコンシューマー化、私用デバイスの業務利用、ボトムアップの分散モデルなどはエンタープライズITの形態を根本的に変えつつある。Levieは「社内でセキュリティーを完結させるというモデルは過去のものだ」と述べた。どんな大企業でもゼロからすべての機能を自製することは不可能だ。成功したければ企業はサードパーティーのツールの適切な利用法を学ばねばならない。

Levieは「この数年のうちにエンタープライズ・プラットフォームのエコシステムが劇的に発達するだろう。大企業もサービスのベンダーも、このテクノロジーの進歩に対応してマインドセット自体を変えていかねばならない」と語った。

Dropboxが1年ほど前からやっきになってビジネス・ユーザーへの対応を図ってきたのも当然といえる。エンタープライズITの環境の激変はその波にうまく乗れたものに対して巨額の売上を約束するものだからだ。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


Microsoftは自己の将来をOffice 365のデベロッパ利用に賭ける…新APIを次々と発表

今日(米国時間10/27)バルセロナのTechEd EuropeでMicrosoftは、Office 365の新たなAPIをいくつか発表し、またiOSとAndroid用のOffice 365 SDKも披露した。APIは、これまでプレビューだったものだ。

Office 365にメールやファイル、カレンダー、コンタクトなどのAPIが加わったことによってデベロッパは、自分のアプリケーションからMicrosoftのOfficeスイートと直接的に対話できる。これらのREST APIを使うと、たとえば旅行アプリがOffice 365のカレンダーにアクセスでき、営業用の自動化ツールがコンタクトやメールやファイルを利用できる。

APIをそのように利用しているアプリケーションの一つがIFTTTだ。たとえばユーザは、Outlookのアカウントに来たメールに基づいて何かをする、IFTTTの‘レシピ’を作れる。

Microsoftは、Office 365の公開APIは今後もっと増やす、と言っている。それらは、タスクやYammar、そして最近発表されたOffice GraphなどのAPIだ。Office 365のAPIは戦略的にもっとも重要、とCEOのSatya Nadellaも言っているから、これらのAPIも、もたもたせずにすぐ出すつもりだろう。

またこれらの新しいAPIをモバイルデベロッパが使いやすいように、iOSとAndroid Microsoft Open Technologies用のSDKも同時にローンチした。iOS用のSDKは当面Objective-Cのみだが、Appleの新しい言語Swiftも、じきにサポートされる。これら二つの新たなSDKが、既存のVisual Studio SDKを補完することになる。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


Twitterを各種モバイルアプリのための普遍的なプラットホームにしてしまう果敢なAPI集Fabric…初のデベロッパカンファレンスで発表

今朝(米国時間10/22)行われたTwitterのFlightカンファレンスで、CEOのDick Costoloが紹介したFabricは、Twitterというプラットホームの上でデベロッパがさまざまなアプリやサービスを構築できるためのAPIの集合だ。

この新たなAPI集を紹介するにあたりCostoloは、“これはTwitterのための何か良いことをねらっているのではなく、デベロッパのみなさまの生産性を大きく向上させることがねらいだ”、と述べた。

Fabricでは、デベロッパがTwitterというソーシャルプラットホームを自分のアプリで利用できるだけでなく、同社が買収したクラッシュ報告ソフトウェアCrashlyticsや、広告のソーシャルなターゲティングを行うMoPubなどにもアクセスできる。でもそれは、デベロッパが作ったアプリがユーザをTwitterにサインインさせ、広告を無理やり押し付ける、というもの*だけ*ではない。たとえば今日Twitterのモバイルプラットホーム部長Jeff Seibertがデモしたのは、テスターたちにアカウント作成を要さずにアプリのプレリリースを配布できるTestFlight的なソリューションで、特定のリンクのある特定のビルドをテスターに送れる、というものだった。

とはいえ、Twitterというソーシャルプラットホームが無視されているわけではない。今やモバイル用のネイティブのTwitter SDKがあり、デベロッパはそれを利用してTwitterからのリッチメディアをユーザに見せるTwitterクライアントを作ったり、モバイルアプリに普遍的なTwitterログインを統合したりできる。またデベロッパがMoPubを統合すれば、広告をより有利な広告ネットワークに回して、広告料収入を増やすことができる。

 

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


車の修理工整備士など用にOBDデータを可視化するDashがAPIを一般公開…多様な車載ソフトウェアの時代の幕開けか

DashはOBD IIのデータを見るための、デザインの良いアプリのひとつで、とくに車の修理や整備をする人たちにとって便利だった。そして今度はこのアプリがChassis APIと呼ばれるAPIを公開したことによって、一般のデベロッパが、車の燃費データや急ブレーキの履歴、速度オーバーをした時間などの情報にアクセスできるようになり、運転者にアラートを提供するなど、多様なアプリケーションが作られる可能性が生まれた。

今の各種超小型デバイスは計算機としての能力も高いから、誰もがOBD-IIのデータにアクセスできるようになったことによって、新しい豊かな市場が生まれるだろう。Disrupt SF 2014に登場したVinliは、そのための独自のハードウェアとプラットホームを提供し、すでにアプリの豊富な作例もあるから、参考になる。Dashそのものは単なるアプリだったが、そのAPIの公開は、デベロッパを奪い合ってVinliと競合することになる。でもこちらは、Amazonなどで売っている一般市販のハードウェア(わずか数ドルから数百ドルまで)を使えるぶん、有利かもしれない。

DashはNavdyとも競合する。Navdyは昨日(米国時間10/2)650万ドルのシードラウンドを発表したばかりのヘッドアップディスプレイのハードウェアプラットホームだ。もちろんそこへ、OBDをぶちこむこともできる。しかしChassis APIのプラットホームにはローンチ前から数百人のデベロッパがユーザ登録し、またDashはFordやGMの車載アシスタントサービスを統合している。その点、カーアプリのプラットホームとしてのアドバンテージがある。

今のところOBDポートを使うどのプラットホームにも、リードオンリーで車に対してライト(write, 情報入力・制御)ができない、ユーザへの保証がない、などの制約がある。しかし、走っている車の情報を集めて分析して、しかも車に対してフィードバックを与える技術には、大きな機会があるはずだ。AppleもGoogleも車載アプリの開発プラットホームを提供しようとしているが、Dashなどの小粒勢力にも独自のツールと発想と魅力があり、これからはとても高度な車両上ソフトウェアの時代が訪れるのだろう。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


ついにiPhoneのカメラがマニュアル操作可能に―アプリはその名もManualがオススメ

iPhoneはとうに世界でももっとも売れているデジカメの地位を獲得している。そこでAppleがiOS 8でアプリのデベロッパーに(つまり結果的にはユーザーに)対してカメラのコントロールの余地を拡大したことは大いに歓迎すべきニュースだ。

iOS 8は、フォーカス、シャッター速度、ホワイトバランス、標準グレーカード、 ISO(フィルム時代の「感度」に相当)、露出、逆光補正などなどカメラに関する多くコントロール項目を開放した。これによってデベロッパーはiPhone向けの本格的なカメラアプリを開発することが可能になった。

以前、私は写真界に身を置いていたので、最新のカメラアプリに絶えず注意を払っていた。それで知ったのだが、多くのデベロッパーがiPhone向けにカメラアプリを開発するのがおそろしく難しいと認めていた。このジャンルは真偽取り混ぜた「裏ワザ」が充満する世界で、一旦登録されたアプリが削除されたり、その後復活したりすることも珍しくなかった。Appleが公式にはカメラ機能のマニュアル・コントロールのAPIを公開していないため、開発は勘と試行錯誤による経験に頼る他なかった。しかも腹立たしいことに、AndroidもWindows PhoneもiOSよりずっと広範囲にカメラコントロールを公開していた。

ついにAppleがデベロッパーにカメラのコントロールを開放したことが私には大変うれしい。私は元プロのフォトグラファーで、結婚式からスポーツ、自然までほとんどあらゆる分野の写真を撮ってきた。しかしだいぶ以前からメインの(つまりいちばん使用頻度の高い)カメラはiPhoneになっており、iPhoneカメラの詳しいレビュー記事も書いている。 もちろん私はiPhoneが本格的な一眼レフの代用になるとは考えていないし、いろいろな理由からまだ今のところ 結婚式をiPhoneで撮るつもりはない

だが一般ユーザー向けのカメラとしてiPhoneは写真史上最高のプロダクトの一つだというのは間違いない。iPhoneはカメラとしてKodakのブラウニー、ペンタックスK1000、キヤノンのDigital Rebel(EOS Kiss)に匹敵する役割を写真の大衆化においた果たした。テクノロジー的にはもっと画期的製品もあったが、そのような製品の販売量はたかが知れていた。何千万、何億という消費者に高品質の写真を撮る能力を与えた点でiPhoneは今挙げたような偉大なカメラの仲間入りをする資格がある。

私はカメラの販売員をしていたこともあり、これも楽しい経験だった。私がその職について一二年後に写真界をデジタル化の大波が襲い、あらゆる面で写真というものをを変えた。液晶モニタを備えたデジタルカメラはその場で撮影結果を確認できるというのもその一つだ(シャッターを押すたびにいちいち液晶で結果を確認することをプロ・フォトグラファーの一部は〔チンパンジーのように見えるとして〕チンプするという言葉を作って嘲ったものだ)。しかし液晶モニタのおかげでカメラユーザーが初めてシャッター速度や絞りを変化させた効果をすばやく確認できるようになった。

単に結果を「眺める」だけではなく、その結果を次の撮影に生かすフィードバックがかかるようになった。これは写真の上達に非常に大きな助けになった。今やiPhoneもシャッター速度、露出、ISOなどの要素を自由に設定してその結果を見られるようになっことは私にとって実に嬉しい。おそらく近いうちに人気カメラアプリのCamera+VSCOcam にもマニュアル機能を追加するアップデートが出されるだろう。今のところ私はWilliam Wilkinson,が開発したマニュアルカメラ・アプリでその名もずばり、 Manualを愛用している。

Manualやそのたぐいのアプリを「上級者専用」だとする考え方があるが、私はそうは思わない。良い写真を撮ることに興味あるiPhoneフォトグラファーの全員に(つまりはわれわれのほとんど全員にということになるが)、こうしたアプリでマニュアル撮影を試してみることを強くお勧めする次第だ

原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+